○秋山
政府委員 火薬
工場のニトログリコールが薬害をもたらすというのは、三十四年ころから、当時はまだはっきりこれとつかめませんでしたが、問題が起こりまして、昨年の夏九州の旭化成の
工場で初めて死者が出まして、それから急に
労働基準局及び労働省でも問題を重視することになったといういきさつがございます。
加藤先生御
指摘のようにニトログリコールの配合率をだんだん上げてきたということが、今日でははっきり原因であるというふうにわかったわけでございますが、当時は実はその事実がはっきりしていなかったということでございます。問題は大体労働条件の問題でございまして、主として労働省がこの問題の処理にあたりまして、急拠学識経験者等の応援を求めたのでございますが、戦前は大体配合率が二五%ぐらいまでであったようでございます。これは一種の進歩でございますけれ
ども、戦後、ことにここ数年前から徐々に配合率を上げることが一般化して参りました。これはダイナマイトの品質を非常によくするということでございます。必ず原価が安くなるというだけでもない。むしろ質がよくなる。たとえば寒冷地におきまして配合率の低いダイナマイトはすぐ凍ってしまう。非常に危険でございます。それから作業上も、配合率をふやす方が薬がやわらかくなって作業が非常に容易になる、あるいはやや技術的になりますが、予捏和——あらかじめこねるわけでございますが、予捏和の工程を経ないでいきなり成形できるというような
関係もございまして、一番高い時期には六〇%ぐらいまで、ニトログリセリンよりもニトログリコールの方をよけい使うというような時期も、一時あったのでございますが、薬害問題がはっきりいたしましてから、これを再び下げるということで現在は基準局の指導によって四〇%以上に上げてはならぬということにいたしているのでございます。ただいまちょっと触れました予捏和工程の問題でございますが、かっては大きなたらいと申しますか、たるといったようなものの中であらかじめ一ぺんこねたものを成形したわけでございます。この際には実は全く上の方は開放された状態の容器の中で、大きなしゃもじのようなもので工員がこねるわけでございますから、非常に危険が多い事実、
〔
岡本(茂)
委員長代理退席、
委員長着席〕
また大正時代から最近までの間、予捏和をやっておりました当時、ダイナマイト
工場の事故の相当大きなものがこの過程で起こっておるという事実、同時にこねる際に相当濃厚なガスを発散するわけでございますが、予捏和工程を省くということは危険を防ぐということと同時に、ただいま問題になっております労務者の健康問題から考えましても、これをやめるということは、非常に長所だとわれわれは考えておるのでございます。ただ残念ながら、これはまだ世界的にそこまで技術が発達しておりませんが、ごく最近のニープマン式の自動成形機を使います際には、ある
程度以上のやわらかい原料を使いませんと、この機械にかからないということでございます。実は二月の初め、十一日でございますか、延岡の旭化成の
工場でニープマンの機械が爆発事故を起こしまして、いろいろ原因は探究いたしました。ほぼ見当はついたわけでございますが、その原因の一つに、ただいま申し上げましたような薬のやわらかさが足りなかったという点が、技術的に
指摘されておるのでございます。二月のちょうど寒い盛りでございましたので、どうやら普通の状態よりも、もう少しやわらかさを多くしなければいけなかったようでございますが、その点に気づかずに機械にかけたために、もちろん他にも原因はございましたようですが、爆発事故を起こしたという事実がございました。そんなことで、実は工程、ことに安全という面から見ますと、なるべくニトログリコールの配合率が高いことがむしろ望ましいのでございますが、他方御
指摘のような非常に猛毒を持っておりますので、その間の
調整をいかにするかということで、労働省ともいろいろ研究をいたしまして、外国の例等も取り寄せまして研究をいたしました結果、やはりあまり配合率をふやすことはよくない。しかし同時に危険を防ぐ
意味で四〇%あるいは三〇%前後の混和率が一番手ごろである。ただしこの場合薬害を防ぐために主として通風をよくするということが、絶対に必要であるということが判明いたしましたので、急遽その
工事を始めまして、すでに三月の二十日から月末にかけまして、全
工場ともほとんど全部完全に通風
設備等の薬害
対策の
施設を完了いたしました。部屋全体の通風をよくして、部屋の中の薬の濃度を下げるということがまず第一点。それから特に包装等で手で作業をする場合もございますが、その場合はエア・ドラフト、すなわち空気を吹きつけるというような装置をいたしまして、作業員にガスが直接いかないようにする。空気をうしろから吹きつけるわけでありますが、吹きつけると同時に、片方ではその薬の蒸気の入った空気をドラフトで引いてしまうというようなこと。さらに立っていろいろ作業をする場合にはエア・マスクを用います。これは防毒面でございますが、外気をパイプで吸い込むようにいたしましたニア・マスクを使う。あるいは皮膚にさわらないように手袋等の防護衣を用いるというようなこと。
施設面としては大体そういうことで、各
工場ともそれぞれ数千万円ずつすでにかけまして、完了をいたしました。
残りました問題は健康診断等、あるいは現に罹患いたしました患者の
あとの処置というようなことでございます。これは全く労働省
関係の問題でございまして、私も内容をつまびらかにいたしておりませんが、そういうことで、
設備完了後は、実は新規の患者は出ていないようでございます。現に入院しております人たちも、かって
設備の不十分であった時代に多少侵されて、それのいわば予後というような状態でございます。なお御
質問によってお答えいたします。