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齋藤(憲)
委員 きのうの連合
審査の際も田中
委員から、
法案がこれらを取り違えられておるのじゃないか、
鉱工業技術研究組合法案というものは、
科学技術行政の分野に含まれ、それから新
技術開発事業団というものは、
通産行政の分野に入るのじゃないかという
質問もあったのでありますが、私はそういう点は観念的にせつ然と区別できると思っているのです。いわゆる
科学技術の
基礎的な
研究を行なう分野というものは、
総合行政の
科学技術庁にあって、これが
企業化されるときには、
所管各省庁に分属されるべきものだ、私はそういうふうに
理想論として
考えておるんです。
現実はそういっておらぬというだけの話です。しかしそれをすぐ
理想論に持っていくのがいいのか悪いのかということは、国家として大問題なんです。そこにいろいろな感情上の問題もありましょうし、それからセクショナリズムの問題も出てきましょう。しかし
世界的に見ると、一体どうなっているかといえば、やはり今輻湊しておるところの
科学技術行政というものは、
各省庁に分属しておったのでは、
研究ができないことは明白なんです。農林省それ自体の農事試験場に行きますと、もう
原子力の問題がなければ
研究は一歩も進まないという態勢になっておる。ですからそれを
各省庁に分散して、おのおののセクションから総合的な
試験研究を追及していくということになりますと、そこに非常に広
範囲な紛淆を私は惹起するということは当然だと思うのです。ですからそこに
総合行政として、いわゆる
基礎研究を統括すべき
行政機関というものが必要だというので、
科学技術庁というものはできたんじゃないですか。そんなちっぽけな視野からなにしてあれが生まれたのではないのであります。それでありますから、
世界の情勢を見ると、第一に
原子力という画期的な
一つの発明が完成されますと、この
原子力から全部の
科学技術の
あり方というものが検討されて、初めて結論が生まれるわけです。エレクトロニクスというものが非常に高度化されると、あらゆる分野においてエレクトロニクス的な検討が加えられて、その
研究の結論というものが出るわけです。ここにあるところの
鉱工業技術研究組合というものができ上がっても、一体どういう設備をそこに設けるのかということになりますと、これは
工業技術院長に
質問しなくてもわかっておるのでありますけれ
ども、それは徹底的に
鉱工業技術の
研究組合が満足な試験を行なうべきところの設備をここにそろえろといったら、大へんなものになっちまうので、一枚の鉄板のどこに一体傷があるかということの
試験研究をやるだけだって、それは
金属材料技術研究所に行ってみればわかる。あそこには予算が二十億も投じられている。それでもなおかつ
一つの金属に対して徹底的な検討が加えられないという
段階にまだおるのでありますから、そういう点からいくと、
基礎研究というものがそんなに簡単に行なわれるものではなく、これは総合的な視野に立って
一つの
行政庁が充実したところの
研究機関を整備して、そこで国全体の責任を負うという
建前をとらなければ、あっちでやっている、こっちでやっている。出てくるところのデータは全部違ってくるというような
研究機関を作ったって、私はむだだと思うのでありますけれ
ども、こういう
工業技術院がお
考えになった、
鉱工業技術研究組合法案というものも、これは私はないよりはいいと思うんです。それは各
研究組合がたくさんできて、そこにお互いが金を出し合って、たとえ小さくてもそこに
研究のできる
組織を持っていくということはいいんです。いいんだけれ
ども、これで全部がやれるかというと、私はなかなかやれないんじゃないかと思います。でありますから私はあくまでもあるすべての業績に携わっておるものが、何とかして
自分の業態を発展せしめるために
研究をやっていこう、何とか創意工夫を生かして、新しい仕事の分野を開拓していこうということに対して、法的な処置を加えてこれを援助していくということは、非常にいいことだと思う。いいことだと思いますけれ
ども、これをどうせ作って、そういう希望を満してやるには、相当の決心を持ってやっていただかないと、中途半端になるんじゃないか。でありますから、ここに事業として書かれておりますが、「
組合員のために
試験研究を実施し、及びその
成果を管理すること。」「
組合員に対する
技術指導を行なうこと。」「
試験研究のための施設を
組合員に使用させること。」この
試験研究のための施設を、
組合員に使用させることというような状態は、私は京都やその他でもって見たのでありますが、貧弱な、われわれ見ると、こんなことではとてもできないのではないかと思われるような施設に対しても、やはりその施設を使って
研究をしている人は、それがあるために満足して毎日
研究を続けている。こういう施設は
日本には非常に大切であると思いますから、この
法案には私は初めから賛成をしておるのであります。賛成をしておるのでありますが、これぐらいのことをやって
鉱工業業者が新しい境地を、どんどん切り開いていくというような甘っちょろい
考えでもって、この
法案を提出されたということに対しては私は疑義がある。ですからこういう点に対しましては、非常に充実した将来の
構想をもっと敷衍する
一つの
段階としてのこれは
法案だというぐらいに私は
考えて賛成をしたい、こう思うのであります。