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1961-05-25 第38回国会 衆議院 社会労働委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月二十五日(木曜日)     午前十一時四十三分開議  出席委員    委員長 山本 猛夫君    理事 大石 武一君 理事 齋藤 邦吉君    理事 永山 忠則君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       小沢 辰男君    大橋 武夫君       亀岡 高夫君    藏内 修治君       澁谷 直藏君    田中 正巳君       中山 マサ君    服部 安司君       松浦周太郎君    松山千惠子君       森   清君    大原  亨君       河野  正君    五島 虎雄君       島本 虎三君    田邊  誠君       中村 英男君    吉村 吉雄君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 古井 喜實君  出席政府委員         厚生事務官         (児童局長)  大山  正君         厚生事務官         (保険局長)  森本  潔君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         労働事務官         (労政局長)  冨樫 總一君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局次長) 山本淺太郎君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    上原誠之輔君         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     中村  卓君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 五月二十四日  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  の一部改正に関する請願久野忠治紹介)(  第三九九三号)  同(島村一郎紹介)(第四〇二二号)  同(辻寛一紹介)(第四〇二三号)  同(赤澤正道紹介)(第四〇五二号)  同外九件(菅野和太郎紹介)(第四〇五三  号)  同(中村重光紹介)(第四〇八四号)  同(丹羽兵助紹介)(第四〇八五号)  同(津雲國利紹介)(第四〇八六号)  同(塚田十一郎紹介)(第四一〇八号)  同(吉田重延紹介)(第四一〇九号)  同(天野公義紹介)(第四一三八号)  同(井伊誠一紹介)(第四一三九号)  同(栗原俊夫紹介)(第四一四〇号)  同外六件(田中伊三次君紹介)(第四一四一  号)  同(富田健治紹介)(第四一四二号)  同(松平忠久紹介)(第四一四三号)  同(山手滿男紹介)(第四一四四号)  同(横路節雄紹介)(第四一七一号)  同(足立篤郎紹介)(第四一七四号)  同(井堀繁雄紹介)(第四一七五号)  同(稲富稜人君紹介)(第四一七六号)  同外一件(唐澤俊樹紹介)(第四一七七号)  同(高橋等紹介)(第四一七八号)  同(松浦東介紹介)(第四一七九号)  同(田村元紹介)(第四二七五号)  同(山田彌一紹介)(第四二七六号)  同(勝間田清一紹介)(第四三〇八号)  同(高橋清一郎紹介)(第四三〇九号)  同(渡邊良夫紹介)(第四三一〇号)  小児マヒ対策に関する請願椎熊三郎紹介)  (第三九九四号)  酒癖矯正施設の設立に関する請願河上丈太郎  君紹介)(第四〇二四号)  拠出制国民年金実施延期に関する請願河野  密君紹介)(第四〇二五号)  じん肺法の一部改正に関する請願外百六十八件  (広瀬秀吉紹介)(第四〇二七号)  小児マヒ予防に関する請願外一件  (川上貫一紹介)(第四一〇五号)  同外一件(志賀義雄紹介)(第四一〇六号)  同外一件(谷口善太郎紹介)(第四一〇七  号)  業務外せき髄損傷患者の援護に関する請願(大  原亨紹介)(第四一一〇号)  同民年金に関する請願外十一件(芳賀貢君紹  介)(第四一一一号)  同外十九件(安井吉典紹介)(第四一四五  号)  同外十件(栗林三郎紹介)(第四一六四号)  熊本県岱明村立睦合保育所設置に関する請願(  藤田義光紹介)(第四一四六号)  拠出制国民年金に関する請願外一件(角屋堅次  郎君紹介)(第四一五九号)  同外二件(常森芳夫紹介)(第四一六〇号)  同外一件(三鍋義三紹介)(第四一六一号)  同(八百板正紹介)(第四一六二号)  同(栗林三郎紹介)(第四一六三号)  墓地埋葬制度に関する請願井堀繁雄紹介)  (第四一八一号)  同外一件(大矢省三紹介)(第四一八二号)  同(西村榮一紹介)(第四一八三号)  同(林博紹介)(第四一八四号)  同(福永一臣紹介)(第四二七八号)  日雇労働者健康保険料引上げ反対に関する請願  (宇都宮徳馬紹介)(第四一八五号)  特殊漁船船員戦没者遺族処遇改善に関する請  願(綱島正興紹介)(第四一八六号)  同(瀬戸山三男紹介)(第四三三八号)  日赤争議早期解決に関する請願松平忠久君紹  介)(第四二二七号)  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  外一件(池田清志紹介)(第四二七四号)  国民健康保険事業窮状打開に関する請願外五  件(山崎巖紹介)(第四三一二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一七号)  通算年金通則法案内閣提出第一四八号)  通算年金制度を創設するための関係法律の一部  を改正する法律案内閣提出第一四九号)  年金福祉事業団法案内閣提出第一三三号)  児童扶養手当法案内閣提出第一三九号)  国民年金法案八木一男君外十四名提出衆法  第四号)  国民年金法施行及び国民年金と他の年金との  調整等に関する法律案八木一男君外十四名提  出、衆法第五号)  国民年金積立金運用に関する法律案八木  一男君外十四名提出衆法第九号)  労働関係基本施薬に関する件(日本国有鉄道  における労働問題)      ————◇—————
  2. 山本猛夫

    山本委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金法の一部を改正する法律案通算年金通則法案通算年金制度を創設するための関係法律の一部を改正する法律案年金福祉事業団法案児童扶養手当法案八木一男君外十四名提出国民年金法案国民年金法施行及び国民年金と他の年金との調整等に関する法律案国民年金積立金運用に関する法律案、以上八案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑を許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 昨日に引き続いて、国民年金法の一部改正案その他関係法案について質問を継続したいと思います。  拠出年金老齢年金のごく大綱について昨日まであらましの質問をしたわけでございますが、もちろん拠出年金の中には老齢年金のほかに障害年金遺族関係母子、遺児また寡婦年金というような制度があるわけであります。その点につきましても老齢年金で申し上げたと同様の、あるいはそれ以上の組み立ての非常な誤りがあるわけであります。それについてこれから質問をして参りたいと思いまするが、まず最初に、このような政府拠出年金制の中の、あるいは無拠出年金と関連してもけっこうでありまするが、障害及び母子年金等遺族年金について、どのような不十分な点があるか、政府自体としてはどのように認識しておられるか伺いたいわけであります。
  4. 古井喜實

    古井国務大臣 昨日来の御質問にもあり、またその節にも申し上げましたように、国民年金制度は全般的にだんだん育て上げて成長させなければならぬわけでありまするから、いろいろな点に将来改善向上をはかるべき点はあるのであります。これはきのう来いろいろ伺ったり申し上げておった通りであります。でありますから、また具体の問題についてお考えをかしていただき、また考えを申し上げたいと思います。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 昨日、国民年金制度については、その給付なり措置が必要な人には必ず対応したものがいくという建前であるべきであるというような厚生大臣の信念を吐露されましたし、またわれわれもそのように思っておるわけであります。そのような意味におきまして、このような所得保障、その中の年金というものが必要な度は、老齢障害母子のうちどれが一番該当するか、その程度が多いということをお考えであるか、一つ伺いたいと思う。
  6. 古井喜實

    古井国務大臣 これはそれぞれの理由があるのでありますから、老齢年金には老齢年金としての理由障害年金等についてはそれ相応の理由があるのでありますから、どれが上だ下だというわけのものじゃないので、それぞれ同じ理由で立っておりますものならば、それは上も下もあるかもしれませんけれども、それぞれ理由を持ってできておるのでありますから、この点はある角度から言えばこっちが先だということになるかもしれません。また別の角度で言えば別のことになるかもしれません。別にこれを上、あれを下というふうに一口には言ってしまえない、こう思います。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 大よその角度で言って、どれがより所得保障必要性が多いかということについて伺いたい。
  8. 古井喜實

    古井国務大臣 それぞれ立つ理由も必ずしも同一ではないのでありますから、普通から言えば、六十五とか一定の年令にならぬと老齢年金を出さない。しかし年がそこにいかぬでも出さなければならぬというだけの理由があるから障害年金等も出すということになっておりまして、そういう意味では障害年金等がより先だという見方も立つかもしれません。けれども、所得保障という意味では、全般的にこれは所得保障考えるのでありますからして、みなやはりそれぞれの理由があって、一口に優劣というか、先後を言ってしまうというのは、それぞれの理由があるのでありますから、少しこれは度が過ぎるのじゃないかと思います。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 非常にそつのない御答弁でございますが、審議を進める意味において、ざっくばらんにお答えを願いたいと思います。すべて個々ケースでは、それを一つ一つ障害とか老齢とかいうことで比較できないけれども、大まかな線では、どれが所得保障必要性が強いかということは、線が出ていると思う。個々ケース一つ一つ数えたらそういうことは一ぺんには言えませんけれども、その点で、障害程度がございますけれども、非常に重度障害の場合に、障害の人の所得保障必要性は、概括的に老齢よりも多いのじゃないかというふうに私は考えるわけであります。その理由は何かと申しますると、重度障害でありますから、たとえば両足がない、あるいはまた両眼が見えない、両手がだめであるというような場合に、これは特別の才能を持っている人は別として、通常の場合に労働能力がほとんど喪失をしている。従って本人が特別な財産を持っているときは別としまして、ほとんど所得能力がないということになるわけであります。そしてその障害者老齢と限定をされておりませんから、その年令が何才の場合もあるわけでございますが、それから後、長い一生をそのような状態で送らなければならないということになるわけであります。しかも障害者が男性である場合も、女性である場合もありますけれども、人間である以上は、日本国民である以上は、ほんとう人間としての基本的な権利である結婚というようなことが、当然できるような状態にならなければなりませんし、その方々としてはそういうことを当然できる状態にならなければ、ほんとう人間として生まれてきた意味がないということになろうかと思います。そういうことになりますと、自分自体所得能力がないほかに、結婚して扶養者がいる、さらにその子供に対する扶養を、所得能力のない身でそのような扶養考えなければならないという点がございます。世の中のこういう人たちに対する対象が非常に少ないために、その人たち結婚をあきらめる、子供が生まれても養育ができないからといってあきらめる方もずいぶんあるでありましょう。そういうことでは完全に人権がじゅうりんされたということになるわけであります。また逆に、結婚して子供を持ってから、交通事故その他でそのような障害が起こることがあります。その人たちとしたら、人権の方はあきらめるとしても、人権の方はこのような冷たい世の中でしんぼうするとしても、すでにできているかわいい子供たちをどうやって育てるかということが、ほんとうに苦悩の焦点になるわけであります。そういう人のことを考えると、その人自体の長い生涯、その人の家族の生活に対するその人の責任観、愛情、そういうことを考えましたならば、障害の人の所得保障というものが、総括的に言って、大体の点において老齢より以上に重視をされなければならない状態であることは一目瞭然のことだと思います。個々ケースでその逆のことを申し上げるつもりはございませんから、政治的に勇敢に、そういうことが必要であることは厚生大臣すでに御理解になっておられるし——御理解というようななまいきな言葉で申しませんが、最初から厚生大臣がそういうことを考えておられることであろうと思いますので、はっきりと障害所得保障というものは、総体的に見て概括的に見て老齢より以上に非常に大事なものであるということを明言していただく必要があると存じます。それについての御答弁をいただきたいと思います。
  10. 古井喜實

    古井国務大臣 障害、特に重度障害というものはきわめて話がきっぱりしておるわけでありまして、それで所得保障考えるのが至当でありましょうし、それ以外の社会保障ももっと面を広く考え理由が十分ある、これは話が非常にきっぱりしておると思うのであります。その限りにおいてはあなたのおっしゃることはごもっとも千万でありますが、問題はそれならば他の事由による年金理由が弱いということになるかというと、それはまた次の別の問題になると思います。老齢と申しましても、老齢にもいろいろありましょう。全く働く能力もなくなっておるような、そういう老齢の人も含まれておるわけであります。ただし、それはそれとして、障害に対する限りにおいては、あなたのお説はごもっともだと思うのであります。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 今の御答弁でけっこうであります。そういうふうに厚生大臣考えられ、ここにおられる委員諸君も大体はそう考えられると思う。ところが政府現行国民年金法は、拠出においても無拠出においても、障害者に対する措置が非常に低度であり、いろいろの資格要件が過酷でございます。この点は非常に不十分な案であり、また一部障害者についてごく少しの改正点を今度は改正案で用意しておられますけれども、それもはなはだしく不十分であります。それはどうしたことか、このようなことについて、それをわかっておられながらどうして重視をせられなかったか、その理由について伺いたいと思います。
  12. 古井喜實

    古井国務大臣 障害年金の点にもありましょうし、そのほかの年金にもありましょうし、つまりだんだん改善し充実していくべきものは残っておると思うのであります。今後の問題は残っておると思うのであります。その中で度合いがどこが強いか弱いかのことは、それはこまかく論ずるとあると思います。大きくいってこれから育て上げてりっぱなものにしていこうというわけでありますから、障害の面にも、それは問題は全部なくなってしまったというわけではないと思うのであります。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 障害についてこれから重視して考えていこう、その線はけっこうでありますが、問題は非常に急を要します。でございますから、今回の改正期においてそれをもっと大きくなさる必要があったと思います。国民年金について二年前に討議したときに、この点がずいぶん大きく指摘をされておるわけであります。それが今回の改正案併合認定という一つのやや進歩した制度がございますが、それ以外については一つもそういうような進展がないということは、厚生省並び池田内閣の非常な怠慢であると言われてもいたし方のないことだと私は考える。その意味で私どもは池田内閣なり——非常に敬愛する古井さんが怠慢であるなんということは申したくはないわけであります。怠慢ではないことをしていただいて、よくやっていただいたということを申し上げたいわけであります。まだ機会はあるわけであります。そういう点で、今国会中に理解ある与党の皆さんの協力を得られて、そういう不十分な点を重視する方向を打ち出していただくということが必要であろうと思います。その点についての厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  14. 古井喜實

    古井国務大臣 その点は十分御意見を伺ってみた上で考えていくべき点だと思います。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 障害の中で根本的に私が今の現行法欠点と思いますことは、おもに拠出年金の方で申し上げまするが、金額が少ないとかそういうこともございまするが、要件が苛酷な点にそれがございます。たとえば併合認定ということを出されましたことは相当の進歩であろうと思いますけれども、それ以前のことがございます。併合認定は、たとえば国民年金制度に入るまでにある種の障害がある、それから後に、年金制度に入ってから障害を受けられる、そのときにその両方障害程度を合わせて判定をして、そうして障害年金を支給すべきものとした場合には支給するということになって、現行法よりはその点で進歩であります。これは率直に認めて差し上げたいと思います。しかしながらそれだけで問題が解決しているわけではないのであります。と申しますのは、前に障害がある、その障害が二級の障害である、あるいは極端な場合は一級障害であるという場合でも、国民年金制度に入ってからあらためて新しい障害がなければ障害年金は出てこないようになるわけです。それでは一級障害でありながら、当然そのような給付を受けるべき立場にありながら、この国民年金法によって障害給付が受けられないということになり、非常に大きく穴があいているわけであります。この点が非常に重大な欠点と存じまするが、厚生大臣の御所見を伺いたいと思います。
  16. 古井喜實

    古井国務大臣 おそらくは、新しくこういう制度を設けたのでありますから、制度を設けたときから、実施してから後を対象にするという原則的な立場に立っておるのであろうと思うのであります。考え方基本があるのであろうと思うのでありますが、その実施前の障害をどうするかという過去の問題は、そういう意味で、原則的な考え方からいって、いわば例外的、ワク外的なことに考えておるのではないかと思うのであります。これも一つ建前かもしれぬと思うのでありますが、しかしだんだん御意見も伺ってみたいと思っております。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 自民党年金問題の権威者田中先生がおられますが、もう一人の権威者野田卯一先生がおられるところで質問をしたかったのですが、野田先生の姿が見えないので残念であります。しかし藤本権威者もおられますので、これから自民党の熱心な先生方の、私の質問に対しての政府答弁について御注視をぜひお願いしたいと思います。   〔委員長退席藤本委員長代理着席〕  そういうようなことで、何といいますか、前に障害を受けた人が、認定上の問題で、一級障害で当然もらうべきものが、そのように国民年金制度に入っていないために障害給付が受けられないのであれば、昨日厚生大臣がわれわれと意思統一をしました必要な人に必要な給付がいくということが、ここで大きくはずれているわけであります。対象者としては少ないからかもしれぬけれども、今の質疑応答で明らかなように、重度障害者一級障害者所得保障対象者として最も重視しなければならないことは明らかであります。明らかなものが、このような年金制度に入る前に一級障害を受けたからという理由だけで、これがはずれるというところに、政府拠出制国民年金の非常に冷酷なる社会保険制が出ている、ほんとう意味社会保障に徹底した制度でないという証拠があるわけであります。昨日申し上げました社会保障主義社会保険主義の違い、そういう点が方々に出ておりまするが、こういう点が大きく出ていることを厚生大臣ははっきりと御認識になって、少なくとも社会保障制度を唱えられる自由民主党並び池田内閣としてこれは恥ずかしい、即刻このような一番社会保障に必要な対象者に必要な給付がいくように、今国会においてこの改正がなされるようにされなければ、池田内閣としても自由民主党としても筋が通らないと思いますが、それについて厚生大臣の明確なる御答弁をいただきたいと思います。
  18. 古井喜實

    古井国務大臣 きょうの制度建前、それから出た結果かと思うのであります。従って問題は、これに対してこういう建前を固執しないで、今のお話のような点にまでこの年金を及ぼすかどうかということになると思うのでありますが、これは従来の建前もあることでありますから、なお十分御意見を伺ったり論じて結論を出したいと思っております。
  19. 藤本捨助

    藤本委員長代理 一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      ————◇—————    午後二時四十三分開議
  20. 山本猛夫

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。八木一男君。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 先ほど障害者に対して所得保障が最も必要であるということについて厚生大臣意見の一致を見たわけでございまするが、非常に重度障害者年金法適用を受けない前に重度障害を受けたときには、後に障害が起こったときには併合認定ということで救われる道があるけれども、そうじゃないとき、そのない点について追及をいたしましたところ、厚生大臣は、それは非常に不合理であって説明がつかないことを御認識になったわけであります。厚生省並び厚生省より以上に熱心な自民党の議員の同僚各位の手によって、この矛盾が今国会中に解決されることを期待して問題の話を進めて参りたいと思います。  次に、今回の併合認定のほかに、障害年金について過渡的に要件を緩和する点が改正案に出ているわけであります。ごくわずかな点でございまするが、両方ともに一歩前進であることは間違いないわけであります。しかしながら、一歩前進であれば数歩前進することが妥当であるということは初めからわかっていることでございまして、予算についてもそれほど大したこともないのに、そのときに、百歩は前進できないにしても、一歩前進の際に七、八歩前進する、あるいは四、五歩前進するということをやられなかった点について非常に残念であり、この点について政府の怠慢であることを指摘せざるを得ないわけであります。今までは三年間の要件を満たしておらないと障害年金がもらえない。これは遺族関係年金についても同様でございまするが、今後三年間だけは、すぐ年金法適用を受けても、三年という要件が達成せられなくても、過渡的な移行を考慮せられまして、一年間の要件要件を短くして金額を減らして、そうしてその間に障害給付をやる道を開かれたわけであります。  金額につきましては、一般通常の場合に二千五百円程度一級二千五百円くらいの場合が一番多いケースでございまするが、その者について、過渡的なものについては千五百円という支給金額改正案にはきめておいでになりまするし、二級の二千円については千二百円ときめておありになるわけであります。このような改正をなさるときに、なぜその少数の、特に所得保障の必要な人に対して同じ金額保障考えられなかったか。このくらいのものは同金額をされることが当然であろうと思いますが、それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  22. 古井喜實

    古井国務大臣 今度の改正は、ただいま御指摘の点は、今の三年というものを基本に置いて、その上で手直しをするという案でありますので、三年がもとでありますので、三年未満であれば減額するという式にならざるを得ぬ、そういうことであります。しかし、この辺はよく一ぺんあなたの御意見も伺ってみたり、またこの原案のわけのあるところも事務当局の方からも御説明させましたり、議論を詰めて論じていきたいと思うのであります。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 三年をもとにした建前でこういう案にされたというときに、今の厚生大臣の御答弁前進的な御答弁でございますからこれはいいわけでございますが、そういうただ人間が形式的にきめた——厚生省並びに保険局がきめられた三年というものを動かしてはならないという事情は一つもないわけでございまして、むしろ動かさなければほんとう所得保障をする意義が徹底をしないということになるわけでございますから、その設定をした事務的な基準を変えられて、このような期間中の者に同じような障害年金が支給されるように、これも至急本国会で実現するように御努力を願いたいと思います。それとともに、過渡的に三年間とされましたけれども、過渡的に三年を、要件を救われるということが必要であるといってやられた以上は、それ以降の条件についても、やはり短い要件適用されるということでなければ筋が通らないと思います。私の想像するところによれば、それに要する予算はそう大したことはないと思います。すっきりとこの場合に要件を緩和——緩和といっても完全な形じゃございません。一年未満まで下げておりませんから、ある程度しか下げておらないわけでございますが、そのようなある程度のものでございますならば、これを三年間の時限を切った要件緩和ではなしに、永続的な要件緩和になさるのが至当であると思います。その点についての厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  24. 古井喜實

    古井国務大臣 今度の改正のわけはさっき申したようなことであります。御意見はなお十分伺って判断をしていきたいと思うのであります。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 判断をして参りたいという御返事では不満足なのでございまして、厚生大臣は聰明な方でございますから、十分ではないかもしれませんが、私の問題の焦点を直ちに明らかにいたしまして、熱心に申し上げたことについて直ちに判断はしておられると思う。それをすべきかどうかということについては結論がついておられると思う。ただ予算関係その他について考慮しておられるにすぎないと思う。ですからそれはすべきものである。すべき方向について、今国会実現する方向でこういうことを考慮するという立場で御答弁をいただければしあわせだと存じます。
  26. 古井喜實

    古井国務大臣 ともかくこの段階における改正は、この辺が適当であろうというわけで案を出しておるわけでありまして、これとあわせて十分審議をしていただいて——方角について必ずしもいいの悪いのと言っているわけではありませんが、この段階においてどうするかという問題にもなってくるかもしれないのでありますから、その辺は私も早く頭が回りませんので、よく考えさしてもらいたいと思うのです。その上で考えを立てるように、寛大に一つ考えていただきたいと思うのであります。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵省はそばにいませんが、厚生大臣の指導のもとに動く人でございまして年金法を作った人であり、こまかい数字や何かに精通している小山君が控えておるということで、やはり権限は強くても、そのことを熱心にやって、この改正案を出してきたことに対する幾分の遠慮はおありなのじゃないかと思うのですが、そういうことは遠慮をなさる必要はないのでありまして、小山君自体この方向にしなければならないということについては十分知悉しているわけであります。ただそれができないというのは、予算関係とかそういうことであります。ですから厚生大臣はそういう方向はいい、やりたい、予算関係については少々難儀があるけれども、そんなものは押しつぶしてでもやって見せるというふうに、積極的におっしゃっていただくと問題が進みます。審議が進むというだけではなしに、全国民にとっていい方向に進むわけであります。大臣という立場は、いいことを全国的に進める積極的な責任を持つものでございます。古井さんはそういうことに最も熱心な方でございますから、まわりに遠慮などなさらずに、勇敢に明確に正しい線をはっきりと示していただければ非常にしあわせだと思います。その方向はいい方向であるから、大蔵省その他に折衝するのに少し困難があるけれども、そのぐらいのことは自分の政治力と与党の善意の人の協力によって必ずやって見せるのだというぐらいのことはおっしゃっていただいた方がいいと思うのです。その点について……
  28. 古井喜實

    古井国務大臣 八木さんの御熱心な御意見はよくわかりますが、そこまでを今おっしゃらずに、他の諸問題もまたお尋ねをいただいたり、お答えを申し上げたりさしていただいたらどうかと思うのであります。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 検討という字も入っておりますけれども、そういうことはいいことであって実現するつもりで検討をされて、そして急速にやられるというような意味だと解釈してよろしゅうございますか。
  30. 古井喜實

    古井国務大臣 これはいかように解釈されるかは聰明なあなたの御判断に待つわけであります。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 もっとざっくばらんに言っていただかないと時間がたってしょうがない。それは検討はされなければなりませんでしょう。野党の質問でよさそうに見えても、それは調べなければなりませんから検討もけっこうでしょうけれども、大体において私の言うことにうそがなければ、そしてそれ以上に猛烈な反対点がなければ、いいことだと認定されて一つも間違いないと思います。もしそういうことがいいと思われたからやると言われて、あとで八木委員質問したことには重大な誤謬があった、猛烈な反対の論点があったということであれば、そのときに、こういうことがあったからこれは考え直してもできないということを言われてもいいですけれども、そういうことはありっこない。あった場合にはいいですが、そういうことはありっこないので、そういう方向はいいから、いいことは実現したいという気持で一気懸命検討したい、敏速に善処したいというくらいの御答弁をいただきたいわけです。そういうようなお気持で御答弁されたと理解して進めて参りたいと思います。御答弁がなければそういうことと認識して参りますが、御答弁があれば別でございます。
  32. 古井喜實

    古井国務大臣 現行法とそれから対立する改正案とは、本質的に大きく違っているのじゃないのであります。いわば程度の違いである。でありますから、本質的にどっちが正しくてどっちが間違っているという問題じゃなく、程度の違いの問題だと思います。おっしゃらぬでも、いつかのときにはわれわれもやりたいくらいには思っておるのです。しかしこの問題についてそれ以上のことはきょうのこの瞬間では申し上げることは困難であります。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 前半ちょっと伺えなかったのでわけがわからないですけれども、大体厚生大臣が一生懸命やろうとしておられることはわかりましたので、そういう認識のもとに進めます。特にそれに御否定的な言葉がなければ、そういう認識として皆さんも御理解願えると思いますので、そういうふうに進めて参ります。  実は障害年金についてもう一つ問題がありまして、その対象については一級、二級が対象になっておりますけれども、外から見える障害——目の障害、足の障害、手の障害というようなものには障害年金が支給されることになっておりますけれども、目に見えない内科障害については支給されないような残酷な状態になっているわけでございます。このことは年金法審議の際にあらゆるところで論議をせられまして、与党の方も野党のわれわれもこの必要性を強調いたしまして、二年前の審議のときに明らかに附帯決議もついておるわけであります。従って問題の指摘国会側からしているわけでありますが、それについて厚生省当局が今まで怠慢にしてこの問題を片づける措置をまだとっておられない、今度の改正案にもこの問題を提起しておられないということは非常な怠慢であると思います。それについての厚生省大臣の御意見を伺いたいと思います。
  34. 古井喜實

    古井国務大臣 御趣旨はわからぬわけではありませんけれども、これはまだ問題の点もあるように思うのであります。そういうふうに今思っております。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 どういう点が問題の点でありますか。
  36. 古井喜實

    古井国務大臣 しろうとの私が申し上げるより、詳しい事務当局から一応申し上げたいと思います。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 事務当局の答弁はまだ必要でございません。困難な問題があるということは、厚生大臣は仕事が忙しいためにその問題に直接取り組んでおられないからだと思う。カナマイシンの問題については非常に勇敢な態度をとられて、法規上や中央医療協の問題ではすったもんだのととがあったけれども、断じて必要があるといって、十二月に処置をとられた。この問題については私は敬意を表しておりますが、これは同じ問題です。困難があるということは、やりたくない連中がやるだけの準備を怠けた言いわけであります。形式的ないろいろなことを言う連中の言いわけであります。もしそれに考慮を払う必要があるならば、形式的な論理で考えてもこの程度はしなければならぬということに踏み切っていい問題であります。そういう問題については勇気を出していただかなければ、これは厚生大臣としてほかの点で適任であっても、その一点でも厚生大臣はやめてもらわなければなりません。問題は、内科障害といえども、一級、二級、三級という障害等級がある以上は、それだけの労働能力がない、それだけの所得能力がないということは同じであります。労働能力所得能力がないのであるから、従ってそれだけの所得保障をしなければならない条件は同じであります。それができないというのは、今のような答弁によれば、内科障害ならばなおることがあるかもしれない、障害が同定したものでなければ障害年金対象にはできない、一級認定して、なおって二級になってしまったら困るというようなことが、それを実現しない理由になっているわけであります。ところがどう考えてももとに戻らない障害があるわけであります。少なくともそれだけでも即時実行すべきではないか。そのほかの障害が固定するか、あるいは回復の余地があるかの問題については十分に方法を検討したらよろしい。検討は至急にやって、検討した方法に従って内科障害について出すべきだ。少なくともそれまでに、どう考えても、御用学者がどう言っても戻らないにきまっているものがある。そのものについては出したらどうだということを指摘されているわけであります。それを御用学者、御用医者のいろいろなつまらぬ文句を悪く利用して実行しない。そういうことでは国民年金法障害に対する趣旨が通りません。例をあけて申しましょう。内科障害には肺臓の障害、心臓の障害、精神の障害、いろいろなものがあります。私は医者でありませんから、あとで戻るかどうかという問題について全部はわかりません。ですからそういう問題は、固定した障害かどうかということについては急速に検討を早く進めるべきであるということを言っておったわけでありますが、その当時から、明らかにもとに戻らないものが、医者が何と言おうとあるのです。たとえば肺臓は両側にある。大体大人の場合は、古井さんくらいのからだであったら四千くらいの肺活量がある。ところが四分の三以上の肺切除をしたならば残りは七、八百くらいになる。七、八、百の肺活量であれば階段を上ることも困難である。ましてや労働することも困難である。かぜを引いたならば、肺炎で活動機能が平分になれば、肺活量が三、四百になれば一時的に首がしまった格好になって、人生がおさらばである。そういうことになればあぶなくてほかのことはできないわけで、切り取った肺臓が再生するというような例はどこの生理学者も言っておりません。どこの医学者も育っておりません。再生するような、あるいはほかの内臓を植えかえて肺活量が増すような、そのような方策を望むのでありますが、現在の医学においてはそういうものはない。そうなれば、そのような六百の肺活量であるとか、ぎりぎりのものであれば、外から目で見える、足がないというような一級障害と同等以上に、労働能力所得能力がないということは明らかであります。そうしてそれはもとに戻る可能性はないわけであります。障害が固定しているわけですね。そのような明らかなものまで、三文医学者の話を聞いて、戻るかもしれないからそれを障害給付にすることは不適当である。そんなことは政治でありません。そんなことを言う学者は学者でありません。そんな者の言うことを聞いて問題点があるというようなことであれば、厚生大臣のこの点に対する理解はゼロであります。厚生大臣はゼロの理解を持つような無能な大臣ではないはずであります。有能だということはもっぱらの定評であります。われわれもほかの点においては有能なことを認めます。だからあなたの有能な点を発揮されて、カナマイシンと同じように、つまらぬやつがつまらぬことを言っても、いいことは直ちにやるという御答弁を明確に要求するものであります。
  38. 古井喜實

    古井国務大臣 八木さんからの熱心な御意見であり、どうしてどうして、なかなか専門のお医者さん以上の医学上の見解もお持ちのようでありますが、しかしもとに戻るとか戻らぬとか、私にはよくわからぬのであります。そこで今の点については私には判断がつかぬのですから、この点は同じように扱えないというわけを、私にかわって事務当局から答えさせたいと思います。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっと待って下さい。——それでは、お医者さんに参考人として聞こうと思ったのですが、医師の資格のある人がいないので、事務当局の答弁は私は必要ないと思うのですが、大臣がそう言われますから私はがまんして聞いてもけっこうです。
  40. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 この問題については、この席上で申し上げることもすでに数回に及んでおりまして、先生十分御存じのことでありますが、先ほど来非常にさぼっているというような前提でお話があったのでありますが、これは率直に申し上げて、どうも先生少し事情を御存じないわけでございまして、問題が非常にむずかしいし、取り上げるという方向で検討するにしても、技術的に解決をしなければならぬ問題が非常に多い。そういう事情からいたしまして、国民年金審議会の中に特に障害関係の専門委員を設けまして、昨年の六月から検討を開始しております。結核関係の人もおりますし、精神病関係の人もおる。こういうような構成で、現在いろいろの角度から検討しているわけでありまして、この問題については先生一つの見識をお持ちになっていることは有名なことでもあるし、それだけを切り離して議論をすれば、先生のおっしゃるような議論もできるわけであります。しかし何といっても、この種のことを取り上げるには相互のバランスを考えなければならぬ問題が非常に多いわけであります。それからもう一つ、先生の御議論の前提の中には、とにかく現実の問題としてそういう障害がありさえすれば障害年金を出すのが当たりまえなんだという前提があるわけであります。つまりその制度に入る前からあった障害であろうと、その制度に入ってきてから起こった障害であろうと、それは問題ないのだ、こういう前提でものをお考えになっているわけであります。それで考えますならば、実は技術的な問題は非常に楽になるわけであります。しかしこれは申し上げるまでもなく、この種の保険制度としてはいわば大原則の問題でありまして、その制度に入る前の障害をその制度に入ったときから自動的に支給の対象にするというような制度は、拠出制の制度では今のところ例もないし、非常に考えにくいわけであります。無拠出制度なら別でありますが。そういうわけでありますので、まだしばらく検討の時間がかかる、こういう事情でありまして、これもしばらく時間をいただきたい、こういうことでございます。
  41. 山本猛夫

    山本委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  42. 山本猛夫

    山本委員長 速記を始めて下さい。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 先ほどの小山局長の答弁でありまするが、少し時間がたちましたので、言葉は忘れましたけれども、少し前から審議会があってやっているというけれども、そんなものはほんとうにやる気があれば今までに結論がついておるはずです。このくらいの問題が、そのくらいの時間に判定がつかないような委員だったら、それはほんとうにやる気がないからだ。またそういうようなお医者であれば、そんなものは判定の資格はありません。最もなまけた証拠であります。その問題とともに、先ほど言った肺切除をしたものが戻らぬということは、こんなところでやろうとやるまいとわかっておるはずです。先ほども言ったように、たとえば結核で肺切除を七割とか八割、あるいは四分の三とったという場合に、肺が再生するというようなことは医学的に認められない、そういうことは断じてないということは常識であります。これは医師の資格のある人に伺ってみたいと思っておりますが、厚生大臣は聰明な方でありますから、そのくらいの判断ができないはずはない。人間はミミズとは違って、刃物で切った部分が再生するような未発達な生物ではない。残念ながらその点は未発達の方がいいと思いますけれども、分化し過ぎてしまって、内臓の、ことに肺に関する限りは、四分の三の肺の切除をやった場合に、再生するという例はないわけであります。あとの部分が少しふくらんで機能が増すということはあり得ると思いますけれども、ほかの切ったところ自体がはえてきてそういう肺の機能を果たすという事例はないと思うわけであります。それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  44. 古井喜實

    古井国務大臣 医学のことはあなたのようにはよくわかりませんが、もとに戻らぬ場合もそれはあるだろうと思います。戻る場合、戻らぬ場合、いろいろあるのじゃないかと思うのです。そこでこれはそういう限界、分界ということもあるかもしらぬけれども、その辺になると医学上の専門の人の御意見を尊重していかなければいけないのでありますから、私が勝手に、医学も知らないで、それはけっこうだ、こう言うわけにはいかぬのであります。
  45. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと関連して。内臓の疾患については身体障害年金の場合に問題であるばかりでなくて、その他厚生年金等においても、あるいは労災等においても、いつも問題になるところなのです。切除した臓器は、その切除をされた部分だけ機能が欠けることは、これは明らかです。しかし人体というのは順応する力を長い間にはだんだん備えてきますから、肺の三分の一を切ったならば、三分の一の機能が切った当初は確実になくなっております。長い年月がたつうちに、三分の二ですべてをまかなうことはできないけれども、やはり肉体を保持していくためには幾分の回復力が出て、残りの三分の二でやっていけることは確実です。一番典型的なものは、胃なんかは三分の一切っても、完全なときには五はいの飯を食べた、三分の一切ったため三ばいの飯しか食えなくなった、だんだんしているうちに四はいぐらい食えるようになる、こういう機能の回復が出てくるわけです。それと同じ形が出てくると思う。しかしそうだからと言って、その身体の障害、臓器の大きな欠陥があることは、これは確実です。従ってそれが三分の二残って三分の一切った、年金をそのまま、三分の一なくなったということで、手や足がなくなったと同じように適用することは問題があるけれども、幾分そこは軽減して障害年金を内科疾患にもやることは、先般来国民年金の母法を三十四年に審議をするときにも問題になって、あるいは恩給法においても政府はやはりこれを検討しなければならぬということをわれわれは臨時恩給制度等の調査会ですか、あれでも多分そういう決議をつけておったと思うのです。当然今の段階では、そういうものを政府はやっておらなければならぬと思うのです。当時もこういう問題は非常に専門的であるから、専門家の意見を聞いてやるという御意見だったわけですね。これは当然政府の方で、何かそこに専門的な方面の意見を聞いて、当然対策をお講じになっていなければならぬと思うのですが、それをやっていないのですか。
  46. 古井喜實

    古井国務大臣 これはさっき局長から答弁しましたように、審議会で検討しておるのでございます。しかし検討しておることは事実だが、まだ結論が出ていない、こういうことを申し上げたのであります。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 医務局長の出席を至急に要求いたします。  今滝井委員の医師としてのお話がありましたけれども、私は結核患者として長いこと療養をしたことがございます。まわりに肺切除をした人がたくさんあるわけでございます。先ほど私の質問のところに申し上げたように、肺葉のうち四分の三を切ったならば、残りの四分の一が幾分機能が増大する例はございます。しかしながら四分の三が再生する例は断じてございません。そして肺の機能からすれば、四分の一が増大したところで、それが筋肉的に破れるおそれがございますから、機能増大はわずかに一割か二割の程度であります。その増大についても、一、二カ月の増大であって、二、三カ月日には増大がストップをいたします。その点について、医務局長に明らかな証書を求めますけれども、そのような状態であります。しかるがゆえに、結核の肺切除の患者の機能はごく短期間に固定をして、それ以上伸びないという状態になるわけであります。それを厚生大臣に教えて差し上げますから、しっかりと覚えていらっしゃい。医務局長にもそれを教えますから……。そういうことであります。そういうことでありますから、短時間に幾分の機能の増大があっても、それは固定をする。そして四分一が一割ふえたとしても八百、九百の肺活量では、一級障害状態は脱却できない、そういう状態にあれば断じてやるのが厚生大臣の任務であります。そのようなことで、局長の答弁に藉口して逃げるような厚生大臣は、厚生大臣の資格はその点において断じてありません。  次に小山厚生年金局長に申します。小山君はそういうことを言っておられるけれども、二年前にもそういうことを言った。そういうことが二年間にできないはずはない。それをやり得ないような委員を選考、推薦をした、そういう責任は重大であります。そのような怠慢な無能な委員は全部取りかえて、急速に三カ月くらいにそれを措置すべきであります。  次に小山君の論点からすれば、私は前に言った年金制度に入っていないものに対して年金支給をしろという当然の理屈、その観点からすればそれが言えるけれども、今の現行法建前では残念ながらそうでないということを言われました。その点を分離して説明されたことは小山君の頭の明敏なことを示しておりますけれども、しかし問題を発展させる答弁にはなりません。今の年金法自体でも、年金に入ってから肺切除を受ける人があります。その人が内科障害を受けて、労働能力のない状態で、内科障害であるがために所得保障が受けられないということでは、所得保障の本義に徹したことにはならないわけであります。そのような年金法はいびつであります。かたわであります。年金法自体の障害について処置しなければならぬ。そのような状態にあることについて古井厚生大臣の明確なる御答弁を願いたいと思います。
  48. 古井喜實

    古井国務大臣 身体の欠陥は欠陥でありますから、内科障害について考えていけないという問題とは思いません。思いませんけれども、今のようにいろいろむずかしい、相当時間かかっても——あなたは無能とおっしゃるけれども、相当時間かかっても専門家が簡単に結論が出ないようなこともあるのでございますから、やはり専門の人の審議を尽してもらって、そうして結論を出す。とにかく審議してもらって結論を出して、これをもとにして決するほかはないと私どもは思っております。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 小山君に伺います。その審議会は何という名前なんですか。
  50. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 国民年金審議会の専門委員でございます。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 その構成のメンバーは、医師の数は何名です。
  52. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 全部で六名でございまして、今五名補充されております。
  53. 八木一男

    八木(一)委員 よくもそろって無能な委員ばかりを集めたものであります。その中に医師は何名おるか。無能な五名はすぐかえて問題を進めるようになさい。世の中にはたくさん有能な医師がある。障害に関係ある疾病についての権威者がいるのに、そういうことをちっともわからぬような医師だけを集めて問題をストップさせるような厚生省は実に怠慢である。厚生大臣は、常識的にほんとうに率直にお答え願いたい。結核の問題について、二、三カ月で固定することは明らかであります。私は教えてあげます。そういうわからない医者の連中が来ても、その連中に私は教えるからよく認識をされて、すぐ半年以内に、固定したものについての障害年金を出す、はっきりしておるものについてはすぐ出す、それ以外については、このような無能な者の編成をかえて、そうして無能な者を編成した責任を感ぜられて、その結論を督促せられて、直ちに結論を出される。少なくとも三カ月以内に結論を出されてそれを実行に移されるという決心を表明してもらわなければ私は断じて承服ができません。御答弁を願います。
  54. 古井喜實

    古井国務大臣 体験者としてのあなたのお話は大きに尊重してよく伺いました。それから今までおっしゃっておるお話はよくわかって聞きました。お話に、とにかく早く結論を出せとおっしゃっておることはまことにごもっともで、そういう御意見なよく考えて、その上で事を進めて参りたいと思います。
  55. 八木一男

    八木(一)委員 結論というものは、どういう病気についてはどういう点に固定する、従って、固定的な所得保障対象になるという結論になることが筋道である。各病気について固定したときには障害年金を出す、そういう結論であります。固定するかどうかわからないから出さないというような結論は許されないのであります。そういうことをするならば、それは無能であって、反国民的な医者であるということを認識していただきたいと思います。技術の名前に隠れて、技術を知らない善良な大衆をだまかすような医師、技術者はほんとうの技術者じゃない。技術を悪用する技術者である。そういう観点に徹底して指導をして、結論を出していただかなければならぬと思います。各病気についていつになったら固定するかという技術的な検討を急ぐ、固定した者については障害年金を出すという方針を厚生大臣は決心され、その決意を表明していただきたいと思います。   〔委員長退席、永山委員長代理着席〕
  56. 古井喜實

    古井国務大臣 よく考えてきめたいと思います。
  57. 八木一男

    八木(一)委員 次に、遺族関係年金について質問いたします。政府遺族関係拠出年金母子と遺児と寡婦の三種類出している。これは非常にけしからぬ制度であります。遺族というものは母子と遺児と寡婦だけに限りません。男性の遺族もあります。男性の父子家庭もある。なぜこのようなてんでんばらばらな制度を出したか。てんでんばらばらな制度をまとめる努力をこの改正案でせられなかったか。それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思う。
  58. 古井喜實

    古井国務大臣 おっしゃった意味、ちょっと私には十分わからぬところがありますので、どういうわけでおっしゃったのか、なお御趣旨を伺ってからお答えしたい。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 遺族年金というものは、いわゆる遺族保障の具体名であります。遺族保障というものは、ある人が死亡したために、それでその世帯の所得能力がなくなって、そうして暮らしができないか、暮らしがしにくいという状態に対して所得保障をするというのが遺族保障であります。その場合に具体的には遺児が一番気の毒である、あるいは母子が気の毒である、寡婦が気の毒であるということはもちろんわかります。しかしながら男性の場合でも同様に気の毒な場合が、少数でございますけれどもあります。男性が肺結核で長いこと寝ている、そうしその奥さんが一生懸命働いて暮らしておられる、子供がたくさんいる、年をとった老人がいる、そういう場合があります。そういう場合に一家の生計を保っていたそのけなげな女性が何らかのことで突然なくなった場合には、一家は路頭に迷うわけでありますから、その場合も同じく遺族保障をする必要があります。それをなぜ女性と児童のみにとどめたか、そういうところに抜け穴があります。理屈はわかっているはずだのに、それを抜かしたところに政府所得保障ほんとうにやる気がない、そういう金を出す気がないという証拠が現われているわけであります。何も父子家庭に全部出せとは言っておりません。そこに所得制限をしてよろしい。女性によって生計を保たれている場合に限ってよろしい。しかしながらそういうふうな状態ほんとうに遺族保障をする場合には父子といえども出す必要があります。それをなぜ抜かしたか、それについての改正をなぜ考えなかったか、それについての理由を伺いたいと思います。
  60. 古井喜實

    古井国務大臣 国民年金制度をだんだんきめをこまかく整えていく上には問題が残っておる点もあるかもしれません。あるかもしれませんが、これははたしてそうであれば漸次整えていくべきであると思いますが、今回の改正は幾つかのとりあえず必要な部分を改正したわけであります。前々申し上げるように、全部何もかもこれで済んだとは申し上げておらぬのでありまして、なおこれからも引き続いてこれを仕上げるために検討をしていきたいと思います。
  61. 八木一男

    八木(一)委員 全般的に制度を作ったときに、その制度の骨組みを作るのに忙しいからきめが荒っぽい、ざらざらしているという点は今までのこととして、まあ仕方がないと言えますけれども、改正々々となっているときにやはりきめをこまかくしていかなければなりません。そういう点で一般的に母子重視することは大事ですけれども、奥さんの方が非常に所得能力があるかもしれません。美空ひばりがお母さんであった場合には、はっきり言えば貧乏な父子よりも所得保障必要性が少ないわけであります。しかしながら一般的に女性は弱い立場でありますから、母子を中心に出すことは別に反対でありません。これでよろしい。しかしながらこぼれ落ちた者についても改正ということについてはすでにきめこまかい配慮があってしかるべきであります。そういう点の配慮が少なかった。これを今国会中に努力されることをやっていただきたいと思います。  次に母子自体のことでなく、ほかのことに移ります。母子と遺児、寡婦、この三つを分けたこと自体についておかしいのであります。政府の組み立てによると、男の人が要件に達していた場合に寡婦年金が支給され、母子年金は女の人が所得保障保障要件に達していなければ支給されないという奇妙きてれつな組み立て方をしておられます。何も奇妙きてれつな組み立て方をする必要はなくて、男でも女でも死んだならばその遺族にあげる。ただし女の人が死んだ場合に——男の人が古井さんのように月給を幾らかでも取っておる人であれば、それはやらなくてもよろしい。制限規定、そういうようなものをつけるだけで事は済むじゃないか。遺族を一括して同じような給付であるということが必要であります。三つ出したことは、自由民主党の方が政府より少しましだということにしますから、さっきのは取り消しますけれども、政府がなまけて金を出しにくいので、母子と同じように遺児をしない、寡婦をしないというために名前を変えたわけであります。名前がたくさんあるからたくさん給付を出しておるように世の中が思うと思ったら大間違いであります。世の中には目あきがたくさんおります。よくそういうことを検討いたしております。そういう間違いを直ちに正され、少なくとも遺児についても寡婦についても同等な程度にすべきであります。大体各国の例においても、政府案においても、遺族について、中心である母子についていえば、老齢年金の半額を支給するというのが基本になりますけれども、子供が多いときに、それについて加算をするということが基本になって組み立てられております。その基本は一応妥当なものと認めてもけっこうでございますけれども、絶対額が少ないのでございますから、この基本についてもやはり考慮の必要があるのであります。わが党案のごとく、十分とは言えないにしても、相当の程度に達しておりますときにはこのような比率でまあまあいいと思いますけれども、老齢年金の絶対額は少ないわけでありますから、その基本に従って母子家庭を半額にしたならば、母子家庭の生活を保障する十分な額にはならないわけであります。従ってそういう点についても形式的な二対一でなくて、率を上げるということを考えていただく必要があろうと思います。それはさておきまして、そのまあまあという率の二対一の比率の母子年金、それに対して、遺児についてはそうではないのです。遺児の場合の気の毒な程度考えていただきたいと思う。お父さんとお母さんが両方なくなってしまって、みなしごだけがいる場合、その場合と、父親が死んで母親が残っておる場合と、どちらが気の毒な程度が多いか、それは一目瞭然でございます。精神的にも経済的にも、お母さんは子供がかわいいから、お母さんが働くのは、気の毒でありますけれども、やはり何らかの収入を得る努力をされるでありましょう。そういうお母さんを持っておる遺児の場合と、そのお母さんもいない遺児の場合と、気の毒な程度は違います。ところが政府の今の案では、私どもが遺児だけのものに高くしたらバランスが合うと思いますのに、逆に遺児の方がはるかに低くなっておる、こういうような不合理な組み立て方になっておるわけであります。この点については経過など別にけっこうでございます。厚生大臣の率直な御答弁で、これは組み立てとして不合理であるということをお認めいただけると思います。厚生大臣はベテランの答弁をなさいますから、いろいろと言質をとられないように苦労をせられておりますけれども、幾ら苦労をせられましても、私は不合理な点は徹底的に追及します。あっさりと不合理なところは不合理であると認めるのが審議を進める道だと思います。不合理だと認めていただきたいと思います。
  62. 古井喜實

    古井国務大臣 不合理かどうかは別にして、そういう辺は方向としては改善を加えたい点だと思うのであります。そのように私はいたします。
  63. 八木一男

    八木(一)委員 古井さんのいい意味のがんこが今悪い意味のがんこできたわけであって、変えてもらいたいということは、不合理だから変えてもらいたいということで、これ以上申しませんけれども、あまり答弁の言葉をたんねんに考えられないで率直に答弁していただいた方が私も気持がよいですし、審議も進みますので、言葉にとらわれずに、一つ若造ですけれども、一生懸命言ったことに、すっぱりとその通りイエスとおっしゃっていただきたいと思います。今の御答弁は、不合理を認めた上で変えていきたいというお気持と理解して進みます。そういうことでぜひとも今国会に実現をする努力を、われわれもいたしますし、与党の方々もされますが、厚生省としても、これが実現するかどうかに非常に大きな力を持っておられるので、厚生大臣の力は非常に偉大でありますから、そういうことについて全力を注いでやるということを、一つ決心を御披瀝願いたいと思います。
  64. 古井喜實

    古井国務大臣 この段階で、よいことで実現できることは最大の努力をしたいと思います。
  65. 八木一男

    八木(一)委員 その方向は、実は遺族年金の率を老齢年金の半分にしたことは、形式的には各国の例であり、また各般の例でありますし、やはり老齢年金自体が低いのでありますから、その率を上げるということを一つ考え願いたいと思いますが、それと同時に単刀直入の問題としては、結局遺児年金基本額は、基本的なものは母子と同じようにする、子供の数による加算はもちろん同じようにやっていくというような方向で、遺族については同じようなもので、子供の数によって同じような加算がくるという方向が最も妥当だと思います。厚生大臣並びに小山年金局長に私の今申し上げました定義について御意見があれば承りたいと思います。
  66. 古井喜實

    古井国務大臣 大へんによく研究しておられる御意見でもありますから、大いに有益な参考の意見として伺って検討したいと思います。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 それでは今度他の問題に移りたいと思います。順序は少し不同になりますが、もとへ戻りまして免除の問題の関連であります。  政府拠出年金制度の案の中には任意加入という制度がございます。経過的な任意加入もございますけれども、被用者年金の家族については任意加入ということになっているわけです。従って労働者の奥さんは入っても入らなくてもよろしいということになっているわけです。この制度自体が私は非常に疑問であろうと思うのです。任意加入というのは、どういう意味で任意加入とせられたか、その趣旨を伺いたいと思います。
  68. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これはもうすでに八木先生十分御存じの通りでございますので、簡単に結論だけを申し上げますと、被用者年金の配偶者というものは最終的にどうやって守っていくかということについては、大きい二つの意見に分かれるのであります。これは被用者年金の系統で守っていくべきだという意見、それからそれはなかなかむずかしいから国民年金の方で守っていくべきだという意見、これは八木先生が有力に御活動になっている社会保障制度審議会において相対立する二つの意見で、系統からいえば、どちらかというと被用者年金の系統で守っていくべきだという意見の方がやや強くて、八木先生やや苦戦をしておられるといったような状況の問題であります。しかしいずれにしても現実の問題としては、被用者年金では配偶者の加給としてわずかに四百円がついているという、問題にならぬ守られ方でありますので、これは実際上大きい穴になっているということで、国民年金に任意加入の道を設けて、入りたい人には入る自由を与えよう、こういうことにしたわけであります。
  69. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、直接御答弁にならなかったのですけれども、労働者の配偶者が自分の老齢年金が今ないという現状についてどうお考えになりますか。
  70. 古井喜實

    古井国務大臣 これは賃金の構成そのものの立て方もいろいろあるかと思うのであります。一口には言えないかもしらぬと思うのでありますけれども、それは右の手、左の手という式にいろいろな年金があっても、必ずしも悪いことではないと思うのであります。しかしこれはやはり年金制度全体を統一的に考えていくのがよいのではないかしら——被用者だって、公務員から初まっていろいろありますね。そういうこともありますので、一口に私が簡単な軽率な結論も申しかねるのでありますけれども、まあそっちこっち両方重なっていくこと自体がひどく全体の体系を乱すことになれば困る、そうでなければ重複してもかまわぬ、そういうことかもしらぬ、あるいは多ければ多いほどよいというふうになるかもしらぬ。結論的なことは私はすぐ判断ができませんので、後日にいたしたいと思います。
  71. 八木一男

    八木(一)委員 率直な御答弁ですから、それであれですが、私の考え方を申し上げておきますから、一つ熟読翫味していただきたいと思います。今までそういう両論が対立をしたという点があったかもしれないが、そういうことではなしに、一般的な空気として問題が盛り上がらないのも、また厚生省自体としても、そういう点についてはっきり進める態度をとっておられないのも、労働者年金の方に遺族年金がある——加給があるということは本質的な問題でありますが、加給について気がついておられる方は少ない。遺族年金があるということで安心感がある。ところがこれは非常な間違いであります。労働者の奥さんで、御主人がなくなって遺族年金を受け取りたいと考えておられるような酷薄な奥さんは、一億の中に一人あるか二人ある程度でしょう。大体御主人は長生きをしてもらいたい。そうして退職年金なり老令年金を受け取られる。しかも自分もそういう年令に達したならば、自分の老令年金ももらうべきである。両方の老令年金を合わせて夫婦一緒に白浜の温泉に行ったり、あるいはまた、おいしいおさしみを食べに行ったり、そういうことをしたいということがほんとうの希望であります。ただ制度が複雑なために、希望が制度面についての要望として現われないだけの話であって、国民のほんとうの純粋の感情はそうである。そうなればその家庭の奥さんの老令年金というものを何らかの意味で確立をしなければ、そういう人たち人権がほかの人たちよりも軽視されているということになるわけです。はっきり言うと、労働者の奥さんだけが全国民の中で差別待遇をされているわけであります。そういうことは間違いであると思います。これはいろいろと問題があります。御主人の問題で、労働者年金の方で処置をしたならばいいという面もあることは知っております。しかしながらその場合に不幸にして離婚という問題が起こった場合に、どちらの婦人の方に年金がつくか、どちらかの婦人が自分の老令年金制度からはずれるという問題があります。従って基本的には独自の老令年金を持つことが必要であろうかと思いますが、それを強力に主張できないのは、政府のただいまの拠出年金がはなはだ不十分であるのみでなく、はなはだその組み立てが社会保険的であって、中間層以下の大衆にとっては非常に不合理な点がある、不利な点があるから、これを強制適用にしろという要求を出し得ない。しかしながら今任意適用として問題は進んでいるわけである。年金をもらいたいという労働者の婦人は、このような任意適用を受けておられる向きもあるわけであるが、これに対して魅力を感ぜず、登録をしない人もありまするし、受けておられる方も幾分かある。その人の立場について考えなければなりません。この任意適用人たちに対しては、現行法では免除の適用がありません。そのような不合理なことが、国民に公平な立場でしなければならない社会保障としてよいものであるかどうか、それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思うのです。
  72. 古井喜實

    古井国務大臣 先ほど来のあなたの御意見は、確かに一つの御意見、お考えのように思うのであります。よく御意見を伺っておきたいと思います。
  73. 八木一男

    八木(一)委員 全般のことについてはよく御検討になっていただきたいけれども、現実の問題として拠出年金の任意加入が進行している。皆さん方の、小山さんや何かのいろいろな啓蒙運動によって、いいものだと期待をして入っている方がある。ところがその人には、強制適用には免除があって——古井さんも小山さんも、免除があるから不合理な点はだいぶ解決しますと言っておられる。ところがその免除はしり抜け免除で、老令年金増大の要件ということになっていませんけれども、これは聰明な古井さんも熱心な小山さんも、早晩解決するために一生懸命やられると思いますが、とにかくこのような一枚看板にしておられる免除が、この任意加入には適用がない。それでは話にならない。それについての厚生大臣の御所見はどうですか。
  74. 古井喜實

    古井国務大臣 先ほど申し上げた通り、よく御意見を伺っておきたいと思います。
  75. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、なぜ免除を一緒に適用することにするという御返事が出ないのですか。古井さんのようなりっぱな、決断力のある政治家で、聰明な方は、私がこれだけ申し上げたら、それは不合理だ、直さなければいかぬという決断がすぐつくと思う。即座に免除の適用をしますという御答弁があってしかるべきだ。それくらいのことを古井さんみたいなりっぱな方が言われて、それで文句を言う池田勇人であり、文句を言う水田大蔵大臣であれば、世の中は通りません。池田さんだって水田さんだってりっぱな人ですから、いいことで、大して予算に関係がなくて、そして厚生大臣が断じてすると言われるのであれば従うにきまっております。それくらいのことができなくては、国会の審議は何も意味がないじゃありませんか。直ちに免除適用をいたします。小山年金局長も聰明な局長でありますから、その準備は二、三日でできます。そのくらいのことをおっしゃったらどうですか。
  76. 古井喜實

    古井国務大臣 八木さんは、年金の研究家としてはおそらく日本でもごく少数の、指折りの中の一人くらいの方だと私は思っている。あらゆる問題を考えて、研究して、そして自分の考えをお立てになっておるように思うのであります。私は、まことにどうも、ありとあらゆる問題を即席でかつぎ出されて、これはよろしい、これはいけないと振り分けるほどの準備もないし、ことごとくに対してそれほどの能力もありませんので、あとでしかられるかもしれませんけれども、正直に返事しておくほかないのであります。あなたのように自分をもって人をはかられては、私の力に負えないのであります。ですから、これは有益な問題のように思えるからというので、よく伺って、一つ腕を組んで考えてみようということもあるのであります。そこで、ありとあらゆる問題について一々右だ左だと言うだけの準備と力が私にはないことを一つ御了承願っておきたいと思います。
  77. 八木一男

    八木(一)委員 古井さんは大へん御謙遜でございますけれども、年金については私かなり研究はいたしました。しかし、決断力と申しますか、わかっている材料ですぐ決断するお力は、古井さんの方が先輩であり、われわれ以上の決断力をお持ちであると私は信じたいと思います。それで私は、年金は研究しましたが、その研究した結果によって、古井さんにおわかりになれるという判断のもとに、おわかりになる話し方でしているわけです。私の申し上げたことで、その通り判断していただいていささかも差しつかえがないと思う。それについて、小山さんも別に発言を求められるようなそぶりもありません。一方における、政府内の権威者である小山君も、それについて反対の論点が見つからないだけではなく、内心ひそかに賛成であるという考え方であります。首を振っているのは、大臣の手前、形式的にそうやっておるのでありまして、そうではないのであります。ですから、そういう意味で御判断を願いたいと思います。  それを実例をあげて申し上げます。厚生年金保険法の標準報酬の最低基準は、三千円だったか四千円だったか、私ちょっと忘れましたから、政府委員の中で御記憶の方があったら御答弁を願いたい。
  78. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 三千円でございます。
  79. 八木一男

    八木(一)委員 三千円でありますと、三千円の月給の人、これは標準報酬ですから平均値になって、三千円以下の人もあるわけでありますが、三千円という報酬の労働者がいる。その人にも奥さんがある場合があるわけであります。三千円の報酬で奥さんがあって子供さんがあれば、これは今の生活保護基準に入ることになってしまう。月々そのくらいの生活をしている方があるわけであります。任意適用で入るというのは、お前ら金があるのだから免除がなくても辛抱して入れということではなしに、さっき言ったような問題があって確立しないから、年金制度理解して入りたいという人は入る道を開いてあげましょうということで、非常に不十分ではありますが、任意適用ができたわけであります。それならば、その適用者の中に、強制適用者と同じような状態の人がいるということを頭に入れて問題を考えられなければなりません。政府の非常に宣伝しておられる免除基準以下の月給三千円という人が確かにいる状態にあるわけです。政府の方では、免除基準についてはいろいろ宣伝しておられます。数字は申し上げませんが、それよりはるかに上のところの免除をするといっているわけです。そういう家庭の婦人は、もちろん調子のいいときは払えます。ところが中小企業の浮き沈みがあって、ボーナスが出なければそれがうまくいかないときがある。そういうような免除基準を適用する経済状態にありながら、労働者の奥さんであるということだけで免除されないということでは、完全に国民一視同仁の平等の立場考えるということをはずれているわけであります。法律改正するのはわけないのです。そのような適用除外になっているところをちょっと変えればいい。こんなものは一分間でできます。そうして世の中のひずみが、その点部分的ではありますが、非常に直るわけであります。どうか一つそういうことを勘案いたしまして、労働者は必ず五万円くらい収入がある、三万円くらい収入があるというような御認定ではなしに、標準報酬三千円というような労働者が不幸にしてあるということを厚生大臣は御認識でございましょうから、そういう方の家族が免除になるようにしていただきたいと思います。そうでなければ、そういうような不合理なところに入りたいという人があっても入り得ない状況が出るわけであります。私は、今の政府拠出年金が非常に不合理であって不十分であるから、積極的にあらゆる労働者の家族の方に入ったらよろしいでしょうと申し上げる勇気はございませんけれども、しかしながらやはり将来のことをおもんぱかって、何らかの意味で自分の老齢年金を確保したいという純真な国民があるわけです。そういうような人たちに、同じような状態で、政府は、不十分な案にせよ、不十分な点だけでも、不十分な低い程度だけでも同じようにしてやることが政治の要諦であろうと思います。何回も繰り返して申し上げますけれども、これについて厚生大臣の御所信のほどをもう一回御披瀝願えれば非常に幸いだと思います。
  80. 古井喜實

    古井国務大臣 任意加入という建前でありますから、入るときには保険料は払えるということで入ることであろうと思いますけれども、後日事情が変わるということもなきにしもあらずということも考えられるのであります。よくまだ考えを尽くさぬ点も私にはあるかもしれませんが、よく研究したいと思います。   〔永山委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 八木一男

    八木(一)委員 まだ続いて御質問申し上げるつもりでございましたが、委員会の都合でほかの議題になりますので、きょうはこれで中途でやめることにいたします。きょうまでに申し上げましたことについて、非常になまいきな態度で申し上げましたけれども、この点は度量の深い厚生大臣一つ御了承願いまして、申し上げましたことについてはまともに受け取っていただいて、前進をされる御努力を急速に、今国会に実が結ぶように、一つ一生懸命にやっていただきたいと思います。それについてのいい御返事を伺って、きょうは一時中止をいたします。
  82. 古井喜實

    古井国務大臣 八木さんの数々の御質問のうちに大いに啓蒙されるところもありましたし、よい御意見に対してはできるだけ考慮を払っていきたいと思っております。      ————◇—————
  83. 山本猛夫

    山本委員長 労働関係基本施策に関する件、特に日本国有鉄道における労働問題について調査を進めます。  質疑を許します。吉村吉雄君。
  84. 吉村吉雄

    ○吉村委員 前回の委員会で、私は公共企業体等労働関係法の適用を受けるところの労働組合において、公労法が目的としたところの労使間の安定、業務の正常な運営、こういうものがなぜ一体期待通りに、その目的通りに実施でき得ないのかというようなことを中心としながら、その根本的な原因となっているものは公労法の持っているところの矛盾点、特に憲法に保障されておりますところの労働者に対する団結権、団体行動権、こういうものを不当にもマ書簡を契機としてこれを制限をする、そういうところに根本的な原因があり、しかもまたその公労法の適用にあたって、労働運動というものがだんだんと高揚をして参りましたのに、これを公労法をもって弾圧をして押えようとしておるというところに、その紛争の根本的な原因がある、こういうような点を指摘をしながら、労働省並びに特に国鉄の見解を求めたところでありますけれども、それらの中で、基本的な問題につきましてはなお機会を改めて追及をし、質問をしていくことにしていかなければならないというふうに思いますけれども、特にここで申し上げておきたいと思っておりますのは、今も国会の運営の点について若干雑談の中でも話が出ましたけれども、何と申し上げましても、社会秩序というものを保っていくためには、法の適正なる運用、その適用、これが最も大切な点であるにもかかわらず、現在までの公労法の適用なり何なりにつきましては、その法の不備を補うために、やってはいけないと考えられるところの公社法をもって不当にも処分を大量に出してくる。こういうようなことを再三繰り返しておりますために、公労協関係の労使関係というものが非常に紛争が拡大をして、そうして公労法が意図したところのその目的を達成するわけにはいかない、達成し得ない、紛争はますます拡大する、こういう状態になっているということを指摘いたしたところでありますが、本日は特にそれらの問題につきまして、一般にいうところの春闘の中で、たくさんの処分が国鉄関係の中から出た、これらの中で、特に具体的な事項について、国鉄当局の見解を求めていきたいというふうに考えるわけでございます。  まず第一にお伺いをしておきたいのは、今回の春闘の中で、門司並びに熊木の管理局の中に起こっておるところの処分、これもまた非常に大量であり、しかも私どもの調査をした範囲においては、相当過酷で、しかも事実誤認に基づくというような点があるように考えられますので、この点から一つ質問をしていきたいと思いますけれども、門司と熊本の関係について、今回公労法によるところの解雇処分あるいは国鉄法によるところの免職以下の処分、こういうものがどのくらいあったのかをまず国鉄当局にお尋ねをしておきたいと思うわけです。
  85. 中村卓

    中村説明員 お答え申し上げます。  門司におきましては、日鉄法の処分が二人でございます。公労法が一人でございます。それから熊本におきましては、公労法が六人でございます。
  86. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これだけではないでしょう。これは日鉄法関係と公労法関係の解雇もしくは免職でしょう。それ以外の処分があると思うのですがね。
  87. 中村卓

    中村説明員 そのほかに、停職が門司の関係で二十五人、熊本の関係で五人、それから減給が、門司の関係で四十七人、熊本の関係で十一人、それから戒告は、門司の関係では百三十三人、熊木の関係で芸名でございます。
  88. 吉村吉雄

    ○吉村委員 このうち、問題を整理する意味で申し上げて聞いておきたいのですけれども、まず熊本管理局の関係についてお尋ねをしておきたいと思うのです。もちろん、その前提となっているものにつきましては、この前、日鉄法によるところの免職あるいは公労法によるところの解雇、こういうことについては相当問題があるということで、あなたの方と私の見解とを、論争の中で行なってきましたけれども、この点はなかなか明らかになっていかない。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕 この点につきましては、後刻またやることにいたしまして、この熊本の管理局の中におきますところの公労法適用、日鉄法適用の先般の処分等の問題について、その発端になったところのものを一体どういうふうに国鉄当局としては考えられておるかをお尋ねをしておきたいと思うわけです。
  89. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 処分の前提になった事実はどういうことなのか、こういうお尋ねであると思いますが、熊本の方から先に申し上げますと、国鉄労組の熊本地本の山下執行委員、熊本支部の安永委員長外五名の職員は、三月三日十八時二十分ごろから、熊本駅下り操車場の詰め所で、構内の照明度が労働基準法違反であるということを申しまして、勤務者に対してオルグ活動を行ない、これを改善することについて勤務者とともに駅長に申し入れをいたしました。駅長は改善については努力する旨を述べておりますが、仕事はしなさい、勤務者には就業するようにということを再三にわたって業務命令を発したのでございますけれども、組合側は即刻改善をしなければいけないということを要求いたしまして、勤務につくことを拒否いたしました。結果として、構内勤務者の二十名のうち十七名をして四日の午前二時までに職場放棄の行動をとらせた、こういうような事実があったわけでございます。そのために熊本駅の構内の作業というものは一時停止の状態になりまして、次の通りの列車に影響を生ぜしめました。貨物列車が十七本運転休止ということになりました。また旅客列車が八本、貨物列車が十三本遅延をする。旅客列車の中には急行や準急列車も含まれておった。こういうようなことが熊本の構内で行なわれましたので、それに対する責任追及という意味で処分が行なわれたわけでございます。
  90. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいまの副総裁のお答えによりますと、構内の照明の問題でいろいろ交渉が行なわれて、早急に改善をしてくれ、ところが改善には応ずるけれども即時にはできぬ、時間をかしてくれという状態であるのにかかわらず、組合の方で闘争に突入した、こういうお話でありますけれども、熊本駅のその照明の問題というのはこの三月になって起こった問題ではないはずであります。調べによりますと、御承知のように、労働基準法に基づいてそれぞれのところに労働安全衛生委員会というものが設置をされておる。この熊本駅もその例に漏れないで、この協定なりあるいは法律の定めに基づいて、労使双方からなるところの労働安全衛生委員会というものが設置をされて、古くは昭和三十二年ごろからこの照明の問題について論議が行なわれておる。そうしてこの照明を何とかしなければならないということについては労使双方ともに意見が一致しておる。こういうふうに、この安全衛生委員会の記録は示しておるわけでございますけれども、そういう点について国鉄当局はその現地からの報告なり何なりを受けていないのか、受けているのか、これをまず一応お聞きしておきたいと思うのであります。
  91. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 鉄道の駅の構内の照明度ということにつきましては、これは私どもも鉄道構内の作業の環境をできるだけ改善していくという方針で、全国的に構内の照明度というようなことにつきましても一つの基準を作りまして、その基準に沿うように改善の努力を続けてきておるわけでございます。それで、そういう作業環境の改善というようなことのためには、できるだけやはり労使協力をしてやっていくという姿が望ましいことは申すまでもないことでございますので、ただいまお話しのございました通り安全衛生委員会ですか、そういうようなものを作りまして、そこでいろいろ問題のある点は意見を取りかわしながら改善に努めてきておるわけでありまして、そういうような点について何か問題があります場合には報告は受けておりまするし、また今回の紛争の原因の一つはやはりそういうことにありましたので、熊本あるいは門司等について、照明度の問題ということについては詳しく報告を受けております。
  92. 吉村吉雄

    ○吉村委員 鉄道当局として、この構内作業は御承知のように相当危険な作業であることはおわかりだと思うのです。国鉄全般の傷害件数の中で、しかも死に至るような傷害というものが、構内作業の中で、連結作業なり突放作業の中で相当起こっておる。こういう事情も国鉄当局は十分承知をしておるはずだと思いますから、当然この構内の作業環境の問題については留意をされているはずだと思うんです。しかも国鉄は他の作業場と異なりまして、昼間、夜間を問わず年じゅう作業をしていなければならない、こういう状況でありますから、この夜間におけるところの照明の状態というものは傷害の問題に相当影響をする、こういうことは言うまでもないわけですけれども、従って国鉄当局としてはこの構内作業を行なっておるところについてどの程度の明るさというものを基準として定められておるのか、しかもこの定められている内容というものが実際に、この場合には熊本駅の構内でもようございますけれども、それが国鉄当局で定めたところの照明基準に該当しておるのかどうか、この点をお聞きしておきたいと思うわけです。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 中村卓

    中村説明員 お答え申し上げます。国鉄といたしましては、三十一年の七月に鉄道施設照明委員会というものを作りまして、大学の教授とか照明学会あるいは色彩研究所、それから目のお医者さん、労働科学専門家、心理学、そういうところの専門家、あるいは国鉄の関係者、そういう学識経験者によって構成された、ただいま申し上げました鉄道施設照明委員会というものの答申が出まして、これをもとにいたしまして、なお二十八年度に照明学会編さんの照明携帯ブックというものもできておりますので、そういうものも参考にいたしまして、三十二年の七月に照明基準というものを定めたのでございます。これによりますと、大体ヤードの関係で申しますと、特AとA、B、C、Dとそういうような分類になっておりまして、平均のルクスが大体特Aで申し上げますと、ハンプのところでございますが一ルクス、それからAが大体ハンプと平面部とあるんですが、割に急速度でやる場合を考えまして、これが一でございます。それからBの関係は割に緩速度なところでこれを〇・五、パンプ、平面部とも両方とも〇・五でございます。それからCが車両の停留区間、とまっているところでございます。〇・二、それからDがやはり平面区間で〇・二というような基準を作って、これに基づいて設備の改善を一応やっているわけでございます。これに基づきまして、おもなヤードの現在の照明度というものを申し上げますと、門司の操車場は平均三から〇・二、これは暗いところは〇・二、明るいところは三ということでございます。それから鳥栖は五ルクスから〇・二ルクス、熊本は三・八ルクスから〇・二ルクスということで、最小限一番暗くても〇・二ルクスなくちゃいけないという基準には到達していると思います。
  94. 吉村吉雄

    ○吉村委員 この照明基準というものを国鉄当局で作られるのにあたっては、当然労働省の安全衛生規則等の関係を考慮されてなされたものと思うのですけれども、安全衛生規則の百九十五条によりますと、精密な作業においては百ルクス、普通の作業においては五十ルクス、粗な作業については二十ルクス、こういうふうに定められておるわけです。どれが粗な作業であり、どれが精密な作業であるかということについてはもちろん国鉄当局独自の判断はでき得ないと思いますけれども、労働省の基準局、来ておりますか。——この今の国鉄当局の照明基準というものが安全衛生規則上から見て、しかも国鉄のあの構内作業、こういうような特殊性から考えて、どこに該当しているというふうに考えられるのか。あるいはまたこれについてどのくらいの照明がなくちゃならないという指導なり何なりを現地各方面において行なっているのかどうか、こういう点についてお伺いをしておきたいと思うわけです。
  95. 上原誠之輔

    ○上原説明員 作業場の照明につきましては、労働安全衛生規則の百九十五条で、労働者を常時就業させる場所の作業面の照明につきましては、今お話がございましたように、精密な作業につきましては百ルクス、普通の作業につきましては五十ルクス、粗な作業につきましては二十ルクス以上、こういうことになっております。ここで労働者を常時就業させる場所の作業面と申しますのは、たとえばかんなの荒削りだとか、あるいは植字だとか、そういうふうな作業のように、その作業面に対して常時目を集中して作業する、そういう作業面でございます。従いまして国鉄の操車場におきましてそういう作業面がございます場合には、この作業の分類に従って照度を保たなければならない、こういうことになっております。
  96. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ですから、国鉄の構内作業というのは年じゅう一定のところへ目を置かなければならないというところではないかもしれません。しかし現実には列車がいつとなしに突放されて入ってくるのです。ですから、一定の個所から離さないでおくというわけじゃないけれども、常に目を各方面に注意をしておかなければならないという危険な作業場であることは労働省の方でもおわかりだと思うのです。私は、この百ルクスなり、あるいは二十ルクスまであるわけですけれども、こういう安全を保っていこうという任務を持っているところの労働省が、国鉄の構内作業についてどのくらいの明るさ、どのくらいのルクスを必要とするかという基準をあなた方の方として出しているのか、あるいは指導しているのかということを聞いておるわけですから、その点を一つお答えを願いたいと思うわけであります。
  97. 上原誠之輔

    ○上原説明員 現在の労働安全衛生規則の定め方といたしまして、百九十五条が作業面につきましての照度を定めた条文でございます。従いまして国鉄操車場のような全般の照明につきまして規定した規定はないわけでございます。国鉄の方におきましては、先ほど当局の方からお話がございましたように、専門の経験者等をもって組織されました委員会等によって一定の基準が作られております。従いましてそういう基準に適合いたしておりますならば、安全の面におきましては、一応の安全の確保はできておる、こういうふうに見ても差しつかえないのじゃないかと思います。
  98. 滝井義高

    ○滝井委員 関連して。今のところ私も実はこれを尋ねたいと思って基準局をお呼びしているわけですが、ちょうど同じところへ来ましたからお尋ねするわけでありますが、この安全衛生規則の百九十五条の労働者を常時就業させる場所ですね。操車場はこれは常時就業させる場所ではないですか。
  99. 上原誠之輔

    ○上原説明員 操車場はもちろん労働者が常時就業する場所でございます。
  100. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると一つの作業場であることは間違いないですね——そうすると作業面と作業場とはどう違うんですか。その違う具体的な根拠を一つ示していただきたい。
  101. 上原誠之輔

    ○上原説明員 ここで作業面と申しておりますが、先ほど私が申し上げましたように、その面につきまして目を集中して作業をする、そういうふうな作業面、と申しますのは、ここで規定いたしておりますのは第三編の衛生基準という章の中に規定されておるわけでありまして、もっぱら目を集中する場合が暗いために目が疲労する、また目の疲労によって身体の疲労を来たす、そういうことを防止するために設けられた規定、こういうふうに解せざるを得ないのでございます。
  102. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、操車場みたようなところは何にも見えぬでもかまわぬのですか。
  103. 上原誠之輔

    ○上原説明員 その点につきましては別の規定におきまして、たとえば労働安全衛生規則の八十九条でございます。この規定は「通路には、正常の歩行を妨げない程度に、採光又は照明の方法を講じなければならない。」こういう規定でございますが、操車場の中におきましても通路があるわけでございまして、適用するといたしますならばこの規定が適用になる。一般的に操車場全般につきましては現在労働安全衛生規則におきましては規定がないというふうに考えざるを得ない。従ってその場合に問題があるではないかということになるかと思いますが、当然私どもの方も問題がないというふうには考えておりません。問題があるといたしますならば十分検討いたしまして、法律上の整備をはからなければならないのではないか、こういうふうに考えております。
  104. 滝井義高

    ○滝井委員 あなた、操車場を通路と見るのですか、通路といえば作業場ではないのですよ。今あなたは操車場を作業場と言った。通路は作業場ではない。こういう解釈をもし労働基準局でやっておったら間違いです。操車場は通路と見るかどうか。
  105. 上原誠之輔

    ○上原説明員 操車場は通路ではございません。ただしかし操車場の中には通路があるわけでございます。従いまして、通路がある以上はその通路については適当な照度を保たなければならない、こういう規定でございます。
  106. 滝井義高

    ○滝井委員 私が今問題にしているのは、通路の問題ではない、操車場全体を問題にしている、あるいは駅の構内を問題にしている。あなたの方の門司なりあるいは佐賀なりの基準監督署からきているはずです。まず第一に横河電機製の簡易型照度計で門司の基準監督署が操車場をはかっている。文字盤が見えないのだから、われわれは、あれは明らかに粗なる作業場と見る。連結をやったりなんかするのは目を一ところに注がなければならぬ。朝から晩までそこに働く者は常時ではない、どの仕事だって常時そういうものはない。それは注いだり、注がなかったりする。その時間の間隔が多いか少ないかだけです。大工さんのかんなをかけるのだって、しょっちゅうかんなをかけているわけではない。列車の連結その他だって同じです。だから、これは明らかに粗なる作業場です。これはあなた方の解釈が勝手に今のような八十九条を苦しまぎれに探してきているのであって、今あなたの御説明のように、道路ではないことは確実です。道路でなければ作業場です。作業場ならば一体何だ、作業面か作業場かという違いだけです。作業面というのは限局した部分ではない、広い。操車場だってそれは作業面です。面は広がりを持っている。点ではない。作業場というのも面と同じです。それを場というか面というかという違いだけです。だから、そういうところで働かせることは明らかに労働基準法に違反しておる。あなたの方の見解その他もみんないかぬと言っています。現地の基準監督署はいかぬと言っている。ただしかし国鉄という公の機関のものだから、がちっとやることはできないだけです。婉曲に言っている。どうですか、それはあなたの見解ができなければ、これは一つ大事なところですから——人間が首を切られるか切られないかの境でしょう。もし労働基準法違反ならば、こちらの方が罪になる。一円や二円の問題ではない。あなたの方が違反だと言えば、少なくと何十億の金がかかる。違反でないと言えば首、首か何十億の金かという問題ですから、私はきょうはとことんまでやるつもりです。あなたの方が今のようなあいまいなことではいかぬ。もしあなたができなければ、基準局長と労働大臣を呼んで下さい。
  107. 山本猛夫

    山本委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  108. 山本猛夫

    山本委員長 速記を始めて下さい。  本日はこの程度にとどめます。次回は来たる三十日午前十時より理事会、十時半より委員会を開催することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十五分散会