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1961-04-11 第38回国会 衆議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月十一日(火曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 山本 猛夫君    理事 大石 武一君 理事 齋藤 邦吉君    理事 永山 忠則君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    浦野 幸男君       小沢 辰男君    佐伯 宗義君       櫻内 義雄君    澁谷 直藏君       田中 正巳君    松山千惠子君       渡邊 良夫君    大原  亨君       河野  正君    五島 虎雄君       島本 虎三君    田邊  誠君       中村 英男君    吉村 吉雄君       井堀 繁雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         通商産業事務官         (軽工業局長) 秋山 武夫君         労働事務官         (大臣官房長) 三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         議     員 五島 虎雄君         労働基準監督官         (労働基準局労         働衛生課長)  加藤 光徳君         労働事務官         (職業安定局失         業保険課長)  鈴木 健二君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部企画課         長)      住  栄作君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 四月六日  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全印刷局  労働組合関係)(内閣提出議決第一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全造幣労  働組合関係)(内閣提出議決第二号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全専売労  働組合関係)(内閣提出議決第三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労  働組合関係)(内閣提出議決第四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(日本国有  林労働組合関係)(内閣提出議決第五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(アルコー  ル専売労働組合関係)(内閣提出議決第六  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働  組合関係)(内閣提出議決第七号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力  車労働組合関係)(内閣提出議決第八号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄職能  別労働組合連合関係)(内閣提出議決第九  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄新潟  地方労働組合関係)(内閣提出議決第一〇  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄金沢  地方労働組合関係)(内閣提出議決第一一  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(新国鉄大  阪地方労働組合関係)(内閣提出議決第一二  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全逓信労  働組合関係)(内閣提出議決第一三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国特定  局労働組合関係)(内閣提出議決第一四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国郵政  労働組合関係)(内閣提出議決第一五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国電信  電話労働組合関係)(内閣提出議決第一六  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国電気  通信労働組合関係)(内閣提出議決第一七  号) 同月七日  港湾労働者雇用安定に関する法律案五島虎  雄君外十二名提出衆法第二〇号) 同月十日  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  の一部改正に関する請願(逢澤寛君紹介)(第  二〇二一号)  同(井堀繁雄紹介)(第二〇二二号)  同(宇野宗佑紹介)(第二〇二三号)  同外一件(内田常雄紹介)(第二〇二四号)  同(草野一郎平紹介)(第二〇二五号)  同(河野密紹介)(第二〇二六号)  同(志賀健次郎紹介)(第二〇二七号)  同(島上善五郎紹介)(第二〇二八号)  同外一件(田邉國男紹介)(第二〇二九号)  同(内藤隆紹介)(第二〇三〇号)  同(二宮武夫紹介)(第二〇三一号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二〇三二号)  同(福田赳夫紹介)(第二〇三三号)  同(綾部健太郎紹介)(第二〇八二号)  同(金丸信紹介)(第二〇八三号)  同(櫻内義雄紹介)(第二〇八四号)  同(中川俊思君紹介)(第二〇八五号)  同(三浦一雄紹介)(第二〇八六号)  同(加藤勘十君紹介)(第二一五二号)  同(首藤新八紹介)(第二一五三号)  同外一件(砂原格紹介)(第二一五四号)  同(渡海元三郎紹介)(第二一五五号)  同外一件(西村力弥紹介)(第二一五六号)  同(細迫兼光紹介)(第二一五七号)  同(前田榮之助君紹介)(第二一五八号)  同(三鍋義三紹介)(第二一五九号)  同(臼井莊一君紹介)(第二二〇七号)  同(黒金泰美紹介)(第二二〇八号)  同(始関伊平紹介)(第二二〇九号)  同(重政誠之紹介)(第二二一〇号)  同(千葉三郎紹介)(第二二一一号)  同(三和精一紹介)(第二二一二号)  同(森清紹介)(第二二一三号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第二二一四号)  同(米田吉盛紹介)(第二二一五号)  同(森田重次郎紹介)(第二二一六号)  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  (石橋政嗣君紹介)(第二〇三四号)  同(原田憲紹介)(第二〇九一号)  同(五島虎雄紹介)(第二一四二号)  同(森下國雄紹介)(第二二〇六号)  元南満州鉄道株式会社職員の戦傷病者戦没者遺  族等援護法適用に関する請願内海清紹介)  (第二〇三五号)  同(赤澤正道紹介)(第二一三九号)  同(有馬輝武紹介)(第二一四〇号)  同(村山喜一紹介)(第二一四一号)  酒癖矯正施設の設立に関する請願内海清君紹  介)(第二〇三六号)  同(受田新吉紹介)(第二〇三七号)  同(坂田道太紹介)(第二〇三八号)  同(杉山元治郎紹介)(第二一五一号)  同(黒金泰美紹介)(第二一九七号)  国民年金実施延期に関する請願外五百六十六件  (太田一夫紹介)(第二〇三九号)  緊急失業対策法改正に関する請願岡本茂君  紹介)(第二〇四〇号)  同(藤井勝志紹介)(第二〇九三号)  同(篠田弘作紹介)(第二一五〇号)  同(關谷勝利紹介)(第二一九九号)  宗教法人立保育施設取扱い改善に関する請願  (重政誠之紹介)(第二〇四一号)  原爆被爆者援護に関する請願重政誠之君紹  介)(第二〇四二号)  同(重政誠之紹介)(第二一九八号)  日雇労働者健康保険改善に関する請願島上  善五郎紹介)(第二〇四三号)  同外六十九件(山花秀雄紹介)(第二一六〇  号)  同(吉村吉雄紹介)(第二一六一号)  全国一律八千円の最低賃金制法制化等に関する  請願中村英男紹介)(第二〇四四号)  失業対策事業就労者石炭手当制度確立に関す  る請願中村英男紹介)(第二〇四五号)  日雇労働者健康保険法改善に関する請願(野  原覺紹介)(第二〇四六号)  同(肥田次郎紹介)(第二〇九二号)  じん肺法の一部改正に関する請願外百五十八件  (広瀬秀吉紹介)(第二〇四七号)  化粧品店薬用化粧品等取扱いに関する請願外  四件(阪上安太郎紹介)(第二〇八八号)  水産物小売業者営業許可要件に関する請願(  内藤隆紹介)(第二〇八九号)  同(牧野寛索紹介)(第二〇九〇号)  拠出制国民年金失業対策事業及び生活保護基  準に関する請願外六千二百二十九件(志賀義雄  君紹介)(第二一一九号)  日雇労働者健康保険料引上げ反対に関する請願  (五島虎雄紹介)(第二一四三号)  国立病院療養所の医師及び看護婦増員に関す  る請願笹本一雄紹介)(第二一四四号)  アフター・ケアの内容充実に関する請願笹本  一雄紹介)(第二一四五号)  結核予防法の一部改正に関する請願笹本一雄  君紹介)(第二一四六号)  同外三件(福田赳夫紹介)(第二二〇〇号)  医療費値上げ反対に関する請願外一件(笹本一  雄君紹介)(第二一四七号)  全国一律八千円の最低賃金制確立等に関する請  願外二十五件(志賀義雄紹介)(第二一四八  号)  拠出制国民年金実施延期等に関する請願外二  十四件(谷口善太郎紹介)(第二一四九号)  国立病院療養所看護婦増員等に関する請願  (吉村吉雄紹介)(第二一六二号)  基準看護及び給食の内容改善に関する請願(福  田赳夫紹介)(第二〇一号)  結核療養者文化費予算化に関する請願福田  赳夫紹介)(第二二〇二号)  結核回復者コロニー設置に関する請願福田  赳夫紹介)(第二二〇三号)  結核回復者の職及び住宅保障に関する請願(福  田赳夫紹介)(第二二〇四号)  墓地埋葬制度に関する請願森田重次郎君紹  介)(第二二一七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第三八号)  失業保険法の一部を改正する法律案小林進君  外十一名提出衆法第一九号)  港湾労働者雇用安定に関する法律案五島虎  雄君外十二名提出衆法第二〇号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 山本猛夫

    山本委員長 これより会議を開きます。  五島虎雄君外十二名提出港湾労働者雇用安定に関する法律案議題とし、審査を進めます。
  3. 山本猛夫

    山本委員長 提案理由説明を聴取いたします。五島虎雄君。
  4. 五島虎雄

    五島議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました港湾労働者雇用安定に関する法律案提案理由説明いたします。  本法案を提案する第一の理由は、港湾日雇い労働者就業が全く不安定であり、従ってその生活も保障されず、また労働災害の多発に悩まされ、今日では必要労働力が得られなくなり、港湾の効果的な運営に大きな支障を来たしつつあるという事実に基づくものであります。周知のように、港湾に働く日雇い労働者は、関東では風太郎、九州では権蔵といって、全く社会的にも蔑視された呼称をもって呼ばれています。そのように蔑視される理由は、これらの労働者が従来、労働者としての基本的権利を認められず、長年の慣習の中で、社会の最下層に押し下げられた結果でありまして、そういう慣習を作り上げたものは旧支配階級であり、使用者であります。今私は、これらの労働者生活の一端を御説明申し上げたいと思います。  一例として、横浜港における港湾日雇い労働者生活状況を見ますと、本人以外の家族のいない者が全体の四五・三%を占めているという事実が示されております。これを一般日雇い労働者と比較してみますと、一般日雇い労働者の場合、本人以外に家族のいない者は一六・四%となっており、港湾日雇い労働者生活がきわめて特殊なものであることを示していると思うのであります。港湾日雇い労働者の大半が家族を持ち得ない根本理由は、結局これらの労働者賃金収入が少なく、就業が不安定であるためと考えられるのであります。また一方、港湾労働は非常な重労働である上に、現在でも一カ月四百八十五時間という長時間労働が強制され、連続二十四時間労働も行なわれており、そのために労働災害は全産業中の一、二を争うという実情に置かれているのであります。この労働災害防止については、ILO条約、第三十二号まであるのに、政府は一向にこれを顧みようとしないのが実情であります。  このような港湾日雇い労働者労働状態改善するためには、どうしても就業つまり雇用を安定させる必要があると思うのでありまして、ここに日本社会党が本法案提出する第一の理由が存するのであります。  第二の理由は、国際収支の面から見て港湾作業料を低く押えることに問題があると思うからであります。御承知のように、わが国海運事業は年々発展の一途をたどり、その年間取り扱い量も増大し、今日では年間四億トン以上の取り扱い量を示しているのでありまして、海運業発展わが国経済発展にとって主要な部分を占めていることが明らかにされております。しかし問題は、わが国政府港湾作業料低額に押える政策をとっている事実にあると思うのであります。これは国内の一般料金とは異なり、対外的な問題でありますとともに国際収支面にも大きな影響を与えるものであります。たとえば諸外国港湾作業料を見ますと、トン当たり平均五ドルというのがその相場であります。ところが日本の場合はトン当たり平均一ドルでありまして、きわめて低額料金となっているのであります。一方、年間取り扱い量四億トンのうち、二億トンが外国船取り扱いとなっているのでありまして、結局一トン当たり四ドルの損失と見ましても、約八億ドルの損失をこうむっているのであります。政府港湾作業料を低く押えるという方針をとっている結果、国際収支面でこのような問題を生じているのであります。この事実を私どもはきわめて重視し、対外的な方針の是正と、わが国海運業の正しい将来のためにも、本法案提出する第二の理由が存するのであります。  第三に、本法案ILO港湾労働者雇用恒常化に関する決議の線に沿うものでありまして、国際的見地から見ましても、本法案成立が必要となってきているのであります。  以上三つの理由が本法案提出いたしました理由でございますが、これらの理由根本に、わが国の低賃金構造の問題があることを強調しておきたいのであります。御承知のように、わが国労働者賃金はきわめて低いのでありますが、それは結局、ここで取り上げている港湾日雇い労働者のような低賃金労働者が無数に存在しているからであり、従ってわが国の低賃金構造を打破し、正常な労働関係を樹立するためには、これらの低賃金労働者への対策を確立し、雇用近代化生活の向上をはかることが必要であると思うのであります。ここに私どもが本法案成立を重視し、その成立を期する理由が存するのであります。  次に私は、本法案内容を簡単に説明しておきたいと思います。  第一に、日雇い港湾労働者不安定性を除去し、計画的な雇用を促進するために、日雇い労働者登録制を実施することにしました。  第二に、港湾労働計画的雇用を推進するために、中央港湾労働委員会地方港湾労働委員会を設けることにしました。  第三に、この港湾労働委員会が常に港湾労働事情の実態を調査し、港湾運送事業の合理的、総合的計画を立て、それによって各港湾ごとに必要な労働力の定数を定めることにしました。  第四に、この必要な労働力に比して、常用港湾労働者数が不足する場合は、登録港湾労働者の中から不足せる労働者数を指定し、指定した労働者を優先的に雇用する義務を雇用主に課することにしました。  第五に、この指定労働者が万一不就業の場合は、不就業手当を支給することにし、不就業手当は原則として雇用主負担とし、その一部を国庫が補助することができるとしました。  右が本法案の趣旨ならびに内容の簡単な説明でありますが、つけ加えておきますと、世界の先進海運国は一九四七年ころ港湾労働法を制定しております。一九四九年にはILO港湾労働者雇用恒常化に関する決議を採択して、各国の港湾労働法の制定を促しているのが実情であります。  以上が港湾労働者雇用安定に関する法律案提案理由説明でありますが、何とぞ慎重審議の上、本案の採択を望むものであります。
  5. 山本猛夫

    山本委員長 本案についての質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  6. 山本猛夫

    山本委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑を許します。井堀繁雄君。
  7. 井堀繁雄

    井堀委員 私は、最近新しい職業病といわれておりまする俗に火薬病といっておりますが、この新しい職業病に対する政府対策についてただしたいと思うのであります。  この火薬病と申しまするのは、ダイナマイトの製造にその基剤として使用されておりまするニトログリコール中毒によるものであります。この薬剤毒性は、従来見ることのできない悪性でしかも強烈な毒素を持っておるのであります。最近この中毒によりましてすでに十一名の多くの人々死亡いたし、千四、五百名に上る多くの労働者がこの中毒のためあるいは重態となり、あるいはその症状がいつ生命に及ぶかもはかりがたい危険にさらされておるのであります。このような職業病が今日まで等閑に付され、もしくは不徹底な保護政策しかとられなかったということは、まことに遺憾しごくであるといわなければなりません。この機会に私どもはその事実をある程度ここで明らかにいたしまして、その抜本的保護対策を要求せんとするものであります。  まずニトログリコール毒性でありますが、他の薬剤と異なりまする点は、第一に、その中毒が直ちにその従業者並びに周囲の人々から発見し、もしくはその対策の対象になるには非常に困難な現象を持っておるのであります。たとえば、この薬品は無色であり、無臭であります。でありますから、目に映じない、さらに嗅覚を刺激するというようなことがありませんから、ついその中毒に対する自己的防衛という意識が労働者にも比較的起こってきにくいというような点があげられると思うのであります。しかしそれにもかかわらずこの薬剤は常温で蒸発しやすい、すなわち気化するのでありますから、それが呼吸器を通し——他薬剤と違いまして、単に呼吸器から侵入するだけではなくて、皮膚を通して、しかも脂肪分に対して非常に強い溶解力を持つのでありますから、皮膚あるいは呼吸器を通じて体内にあります脂肪分に対して侵入してくるおそるべき性質を持っておるのであります。そしてこの中毒に遭遇をいたしますると、初めのうちは頭痛を感じましたり、目まいを感ずる程度の軽症でありますが、ある程度その毒素に冒されますると、逆にそういう苦痛感というものが一時平均化されますることによって、何かそういう中毒に冒されているという自覚症状が薄くなるのであります。しかしその間にだんだん薬害というものが侵透をいたしまして、遂には胃腸障害を起こし、あるいは俗に使われております言葉を用いますと胸しぼりと申しますか、胸が苦しくなる。もうこのころになりますると重態を意味するといって差しつかえないと思うのであります。さらにこの状態が進みますると、遂には手足がしびれて、貧血の状態を起こして死亡するというような、同じ過程をたどって十一人の人が死んでおります。この機会に私は、その死亡のまぎわに立ち会っておりました遺族の報告がございますから、これを一つ紹介をしておきたい。十分御存じと思いますが、一般のためにも紹介をしておく必要があると思いますから、ちょっと時間を拝借して紹介をいたしたい。  それは山口県にありまする日本化薬の厚狭工場吉田憲雄君の死亡に対して、その細君が手記をわれわれに提出をいたしております。昭和三十四年八月四日になくなっております。昭和三十二年にからだの調子が変だというので、特別に感じはしなかったけれども、突然血尿が出た。驚いて日赤病院にその血尿を持っていって検査をしてもらったところが、その結果結核性でも梅毒性でもないということが証明されて、肝臓が少し悪いくらいであろうという程度診断しか受けられなかった。ところが血尿が一回だけでとまったので安心をしておったら、その後胃が悪くなってきた。ときどき吐きけを起こすという症状がしばらく続いた。しかし本人薬害とは自覚しなかったようだ。ところが三十三年じぶんから三十四年八月に死亡しておるその間に、二回ないし三回くらい発作を起こしておる。その発作場所が通勤途中の場所でありましたりしておるということと、いつもその発作の起こるのが月曜日に限られる。さらに発作が起きましてからその苦しみというものは、とうていはた目で見るに忍びない苦しみをする。何か胸を鋭利な切れもので切りさいて痛いものをつかみ出してもらいたいといったような訴えをたびたびいたしておる。こういったような病状を述べておりまして、その死亡の際には全く手のつけようもない有様で、医者の診断を受ける前に死亡してしまった。同じ職場で、もう一人紹介をして見ますと、同じようなことを訴えておりますが、これは三十四年の三月九日に、やはりこれも月曜日でありますが迫田憲三さんがなくなって、その奥さんのセツ子さんの手記でありますが、こう訴えております。昭和三十三年の盆過ぎの月曜日であったと思う。作業のために夜勤に出勤したところ、胸しぼりが起こり、二直の部屋で休んでいたが、苦しいので林医院に行って診療を受けました。三十四年の一月ごろ、これも月曜であったと思うが、朝出勤前に胸しぼりが起きて、足が冷え、目が見えなくなった。二十分ほどして回復したと思うが、さっそく林医院診断を受けた。昭和三十四年の三月の九日月曜、出勤前に胸しぼりが起きて、私は時間が来たので主人を置いて先に出勤をいたしました。その後死亡したのでありますが、死亡の通知を受けてあわてて家へ帰ってみたら、すでに死んでいた。その場所は庭の泉水のそばに倒れて、多くのはきものをして死んでいた。その形相は、相当苦しかったものと見えて目をつり上げ、苦しさのあまり方々に傷を受けて、特に顔の上部に打撲傷や擦過傷を起こして、見る目もむざんな姿であった。いかに苦しい死に方をしたかということをまざまざと訴えておるのであります。  いずれも、この十一人の死亡された人々状態は以下同様であります。このように薬物によって死亡いたしまする人々は、今までは、いろいろの診断でそれが職業病であったということの判断が下されるようになりましたのは、十一名のうち二、三の人にすぎないのであります。それまでは職業病として取り扱われない。すなわち労災法適用も受けなかったというような始末であったのであります。それが最近労働組合の運動やこういう被害者訴えがあるようになり、あるいは基準審議会などにおいて取り上げられるようになりまして、ようやくこれがニトログリコール中毒であるということが問題になったというようないきさつであります。  以上のような次第でありまして、この中毒は他の職業病と異なりまして以上のような事情に置かれておりますことは、多くの事例で明らかであります。  そこで私は当局にこの際一つ明確に御答弁をいただきたいと思いまするのは、こういう実情をいつごろ把握されて、またどのような対策が今とられておるか。ことに抜本的な対策が非常に困難なものと思いますが、私も労働基準法並びに労働法規その他を検討いたしましたが、適切なる保護立法とは思いがたい節がたくさんあります。そういう点について順次お尋ねをいたしたいと思いまするが、まず以上の事実についてどう判断されるか、どのような措置がとられておるかを伺っておきたい。
  8. 加藤光徳

    加藤説明員 ニトログリコール中毒につきましては、新しい職業病でございまして、従来わが国においては見られなかった現象であります。最近というか、昭和三十二、三年ごろから、ダイナマイトを製造いたしまする場合におきましてニトログリコールを使用するようになって、だんだんその使用量が高まって参ったというような事情であることは事実であります。従って従来ニトログリセリンにおきますものは蒸発が非常に少ないために、ガスとして吸入することがあまりなかったので、そういう症状は見られなかったのであります。ニトログリコールにおきましては、ガスになりますのがニトログリセリンに比べまして数倍、あるいは数十倍に及びますので、そういう点、ガス吸入が多かったということになったものだと思います。先ほどお話のありましたようないろいろな症状でございますが、まず、初めにおきましては、頭痛とかあるいは目まいとか嘔吐とか、さらに腹痛を覚えたり胸しぼりを感じたりしますが、重症になりますと、主として狭心症様の症状発作的に起こって参ります。あるいはまた手足がしびれる場合もあるのでございます。従いまして、そういう問題が最近になりましてからようやく明らかになったのでございます。その間におきまして、こういう疾病が存在するということはあまりはっきりしなかったのでございます。三十三年におきまして北海道において基準局から一応調べたことがございますが、そのときには何らの症状も見られませんでした。これはまた同時に会社の事業が始まったばかりでございましたので、そういうものが見られなかったというのでございますので、そのままにして捨ててあったということでございまして、この問題のきっかけになりましたものは、昭和三十五年の九月下旬におきまして、宮崎局の旭化成におきまして発生いたしましたニトログリコール中毒でございます。その速報を受けましたので、直ちに、そのニトログリコールを使います事業場の調査をいたしたわけでございますが、現在ニトログリコールを使用いたしております事業場は、これはダイナマイトの製造のために使っております三社四工場でございまして、そのほかのところは使っていないのでございます。この三社四工場についての調査をすることが必要であるということになったわけでございます。従いまして、同九月になりましてニトログリコールを取り扱います事業場を管轄いたしております四局に対しまして、ニトログリコール中毒の現状の調査を指示いたしたわけでございます。そして、早急にこの問題の手を打たなければなりませんので、十月の七日になりましてから、ニトログリコール中毒予防に関する通牒を出しまして、そのニトログリコールのガスの発生いたします作業について、健康診断をやるとか、測定をやるとか、保護具を使うとか、あるいは環境改善に対する考え方を明らかにするというようなやり方で、その指示をいたしたわけでございます。それから十月の七日と十二日になりまして、その一番近いところであります愛知の日本油脂武豊工場に、衛生研究所と労働衛生課との共同で実態調査をいたしまして、その作業工程あるいはそれに従事いたしております方々の実態とか、あるいは一部血圧の調査とかあるいは血液の調査、尿の調査というようなことをやって参ったのでございます。しかし、この疾病につきまして客観的な証明というようなものについては、医学的な面におきましては、なかなかこれといってつかみどころのない非常に特徴の少ない疾病でございます。そういう点で、診断なるものにつきましては従来苦労していたと思いますし、またその点について今後研究が必要だろうというようなことが出ました。特に血圧につきましては、若年者に対します血圧と高年者に対します血圧の上昇というものはあまり著明に現われていない。すなわち、年令によります血圧上昇というものがある正常人につきましては存在するわけでございますが、この場合におきましては、血圧が降下するというような作用がございますので、高年者に対し、まず血圧の上昇というものがないという特徴がつかめたのでございます。同時に、各国におきますニトログリコール中毒というようなものを調査いたしましたところ、各国におきましても同様の症状を呈するものが過去にあったという例がございますし、先ほど御指摘になりましたように、その先の転帰をとるような場合におきましては、月曜日になくなるという特徴がございますので、そういう点は、各国にありますニトログリコール中毒わが国において見られましたニトログリコールの中庭と全く同じような形をとっているということが明らかになりました。なお、西太平洋地域の合同専門家の会合、ゼミナールがございましたときにも、日本にこういう症状の者があるということを発表いたしましたら、そういうことにつきまして、外国にも同じようなことがあるのだということで、大体各国においてニトログリコールの問題点としてそういうものが存在するということが明らかになって参ってきておるのでございます。  十一月の三十日になりましてから、中央労働基準審議会におきましてニトログリコールについて検討をすることが決定いたしました。その後十二月八日になりまして、ニトログリコール中毒対策のための中央労働基準審議会の衛生部会が開催され、その後十二月十五日に第二回の専門委員会が開かれ、そして、火薬方面の方あるいは施設改善の仕事をやっている方、あるいは医学君というような方にお集まり願いまして、専門委員会を開いて参っております。そして、さらに、十二月二十日には労働基準審議会の衛生部会を開催いたしております。二十二日には中央労働基準審議会を開きまして、十二月二十八日に最後の衛生部会を開きまして、ニトログリコールの予防に関します緊急措置の建議に対します答えといたしまして、緊急措置を作りたわけでございます。それにはニトログリコールの配合率、火薬製造の面からいたしまして、あるいは冬季におきます凍結の問題というようなことを考えまして、火薬学者の御意見といたしまして、四〇%というところの一つの数字が出ましたので、その四〇先以下になるようにするということをいたしました。  それから、健康診断の項目を示しまして、どういう検査項目を用いていくことが適当であるかということでございます。たとえば血圧をはかるとか、尿の量を測定するとか、あるいは尿の蛋白を見るとか、赤血球あるいは白血球の検査並びに血色素の調査あるいは心電図をとって心臓の異常状態を発見するとか、そういうような検査項目を作成いたしまして、それに従って検査をすること。それから環境改善につきましては、各作業別の換気に局所排風機を用いるとか、あるいは排風機を用いるとか、あるいは防毒マスクによります保護具を使うとか、そういうような作業の問題を取り上げまして、それについてそのことを考えるようにする。さらに保護具の使用につきましてもその問題を考えていく。と同時に、測定についても、まだはっきりいたしておらない点がありましたが、一応、われわれとしても使用できる方法でありますグリース試薬法を用いまして、ニトロ基の訓育をいたしていくということでございまして、その中毒の原因になっておりますニトロ基の問題が大きく取り上げられましたので、そのような方法をとるということをいたしております。これらによって、三月末日までにそれらの事柄についての緊急対策を完了するように、それから健康診断をする、あるいは測定をするということを命じて参ったわけでございます。そして、十二月二十八日にそのことを通牒いたしまして、一月早々からその事柄について各社ともにやっていただく。やってもらうと同時に、基準局から監督官が出向きましてその実施状況を調査するということにいたして参っております。  その結果、全体といたしましてはこちらの指示の通りに努力いたして参っておりまして、健康診断測定あるいは環境の改善等につきましても、こちらの指示通りにやって、三月末日までにほとんど完了いたしております。ただ、一部において、新しい機械を購入しなければならぬところについては多少のおくれがあるということもございますが、そういう点で完了が待たれておるわけでございます。  そして、さらにこちらといたしまして考えて参りますことは、今後におきまして緊急対策よりもさらに恒久対策と申しましょうか、もっと恒久的な面につきましてやらなければなりませんので、その間において専門委員の方に各工場を全部回ってもらって、実際に測定し、あるいは患者のいろいろな問題についてお聞きをし、それから換気とかあるいは防毒マスク、そういうような保護具、環境改善につきましての実際面に合うものをどうするかということを検討いたして参っておるわけであります。従ってそれらの方々の調査をいたしましたものを取りまとめまして、二月の二十四日に第一回の打ち合わせ、その後数回にわたりまして打ち合わせをいたしまして、現在のところさらに恒久的な施策といたしまして緊急対策でやりましたものを手直しをしたものについて大体の成案ができておりますので、今月の二十四日でございますか、今月の衛生部会あるいは基準審議会の方にかけて最後の決定を見ていきたいと考えておる次第でございます。
  9. 井堀繁雄

    井堀委員 事実については十分お認めのようでありまするし、また緊急対策もおとりになっておるという御回答であります。しかしその後依然として頭痛を訴える人あるいは目まい、肩のこり、胃腸障害、息切れ、胸しぼり、手足のしびれといったような患者の数が跡を断ちません。たとえば労働組合の三会社四工場の調査によりますと、頭痛を訴える者、すなわち軽症でありましょうが、六百二十八人、目まいを訴える者が百八十一名、肩のこりを訴える者五百二十九名、胃腸障害三百二十二名、息切れを訴える者が百九十二名、胸しぼりが百二十二名、さらに手足のしびれを訴える者が二百十七名というのであります。これでいきますと軽症患者が千人以上、重症を訴える者が五百人に近づこうとしておるわけであります。こういうような状態で、今伺いますと、緊急処置として配合率をかげんをするとか、あるいは薬温に対する注意を払うとか、あるいは環境に対する適当な指導を行なうという御意見でありましたが、いずれも不徹底なやり方であることは、恒久対策を後に考えようということでも明らかであります。こういうように労働者の人命、しかもそれが本人の自覚をしない間に侵されるというような問題は、他の職業病に比載いたしましていかに残忍なものであるかということが明らかであります。でありますから、こういうものについては、できるならば私はこういう製造を一時中止せしめる、あるいは中止することが困難であるならば、ほかの法律規定にも十分あるのでありますから、人命に関する薬剤は使用を禁止するというような措置がとらるべきではないかと思うのでありますが、一つは通産省の所管でありまするから、その方の御回答を願いたいと思います。  火薬取締法令によりますと、そういうような問題についてはいつでも製造を禁止する権限を政府は握っておる。また労働基準法は労働者の生命に関するような危険な状態にある場合には、その作業を中止せしめる権限を労働省に与えておるわけであります。そういう権限をこの際用いられて、労働者の生命あるいはその健康を保護するという措置をお考えになっているかどうか。それができないとすれば、その間どうするか、生命がだんだんと危険にさらされていきつつあるのですから、こういう点に対する政府の考え方をはっきり伺っておきたいと思います。
  10. 加藤光徳

    加藤説明員 緊急対策をやっておる間におきましていろいろの症状がまだ残っておるということは確かにございます。それでその問題につきましてさらに調査をいたしまするので、配置転換をいたした者がどうなったかということの調査をいたしてみたのでございます。そうしますと、配置転換をいたした者が完全に症状がなくなるというには一、二カ月後になって参るのでございまして、従来の蓄積作用というようなものがありました関係からいたしまして、その問題がまだ残留しているものであるというふうに考えているわけであります。現在恒久対策につきましてやっておりますのは、そういうふうなものが出ないところまで下げていくという行き方で恒久対策の方に向かっておりまするので、その対策がなされて参りますならば必ずそういう問題がなくなるであろうという線で、今調査、研究いたしております。
  11. 井堀繁雄

    井堀委員 基準局長がお見えでありますから一つ伺っておきたいと思いますが、基準法の四十二条、五十一条、五十五条の規定はいずれも、こういう生命の危険に瀕するような作業については、その労働を禁止せしめる権限を政府に付与しておるわけであります。ニトログリコールのように、その生命を完全に保障できない、その健康をむしばむ実情を認めながらその対策が立たぬような場合に、この法律を私は活用すべきではないかと思いますが、この点に対する基準局長の御答弁を伺っておきたい。
  12. 大島靖

    ○大島政府委員 ニトログリコール中権の問題がここ一、二年間非常に大きな問題になって参りました。先ほど労働衛生課長から御説明申し上げましたように、中毒の予防についての措置につきまして私も懸命に努力をいたしております。ただいま御指摘の基準法の関係におきましても、近代科学の進歩、技術改善に伴いましていろいろな原材料が出て参っておる。これが一方において労働衛生、一方において安全の問題とも関連して参るわけなのでありますが、基本的には、私どもといたしましては科学の進歩、技術の改善に伴って出て参ります安全上の問題、衛生上の問題があるからこの新しい技術、新しい材料というものを使わないという方向ではなしに、この衛生の問題、安全の問題を技術的に解決していって、労働者の保護をはかりながら新しい技術の改善に即応していくということで参りたいと思っております。  今回のニトログリコール中毒の問題につきましても、これが絶対的に予防措置の不可能な問題でございますればさらに考えなくてはいかぬわけでありますが、現在までこの衛生の問題、安全の問題についてのわが国における最高権威の専門家の方々にいろいろ御研究、御検討を願っておるわけであります。同時にまたこの三社四工場におきましても、基本的な排気装置の改善にそれぞれ巨額の費用を投じて改善に努力いたしております。これはおおむね完成いたしつつありますが、完成の暁におきまして、さらにニトログリコール中毒の問題について配合率の問題であるとか保護具の問題であるとか、あるいは健康診断、健康管理の問題について万全を期して参りたい、かように存じます。
  13. 井堀繁雄

    井堀委員 私のお尋ねしておりますのは、万全を期さなければならぬことは論を待たないところでございます。ただ当面の緊急対策として、あなたがおっしゃられるように高度の技術、科学の進歩はわれわれの望むところでありますが、それが生命や健康に影響を及ぼさないような薬剤の使用ができればという前提でなければならぬ。労働者の健康や生命を犠牲にして近代科学を押し進めるということについてはとるべきではないという根本的な考えをわれわれは持っております。現実に先ほど来述べておりますように、また当局が認めておるように、その生命が刻々と侵されておるという過去の事実が、また現況がこれを証明しておる場合に、労働基準法の五十一条なり五十五条なりというものをこの際発動して、労働者の生命を守り、その健康を保護するということが、この法律の精神であると思います。この法律適用されて、抜本的対策が立つまでの間暫定的なものとして、その作業を休止せしめるなり、あるいは作業の休止が困難であるならば労働者の長時間就業を押えるなり、そういった措置が命ぜられると思いますが、これは基準局長の至上命令だと私は思います。抽象的な対策ではなくて、具体的な対策が迫られておる現状でありますから、この基準法の適用をなすべきではないか。もちろんそういうことによって進歩が妨げられるという他の抵抗は、私は次の対策を別に考えて、その対策が成り立った後に今主張される方向に行く。この点は私は労働省の立場としてはむしろ逆ではないか、こういうふうに考えますが、御所見はいかがですか。
  14. 大島靖

    ○大島政府委員 先ほど衛生課長から御説明申し上げたと思いますが、昨年の暮れに会社の方といたしましては、基本的な問題として排気、換気の装置を速急に改善する方針を立て、また実施に移したわけなんでありますが、その間における労働者の保護をいかにするかという問題で、昨年の暮れ、十二月の二十八日でございますが、労働基準審議会の衛生安全部会において緊急対策を御決定願ったのであります。直ちにこの御報告によりまして、その通りの措置をいたしております。その根本は、ニトログリコールの配合率を低下せしめることと、各作業工程に応じた保護具を使用せしめる。さらに健康診断を行ないまして、異常所見が現われますれば、直ちにこれに対して所要の措置をとる。所要の措置と申しますのは、作業の転換でありますとか、あるいは時間の短縮、こういうふうな措置を講ずる。それから空気中の蒸気の測定を実施いたします。こういう点につきまして、緊急対策基準審議会で御決定になりまして、これを実施に移しておるのであります。先ほど申しましたように、現在実施中の換気、排気の装置の完備を待ちまして、さらに根本的な対策を講じたいと思います。もちろん、ただいま御指摘のような使用の停止というような問題もございましょうが、この緊急指貫によりまして、私どもとしては労働者の保護に遺憾なきを期して参りたい、かように考えております。
  15. 井堀繁雄

    井堀委員 時間も制約があるようでありますから、適当にやめたいと思いますが、ただ問題は、同じ法律の中でも、通産省所管になります火薬取締法令の中には、早くからニトログリコールの危険を取り上げまして、そしてその製造上の設備その他についても、ある程度の制約を加えようとする意図が現われておる。特に最近の火薬の輸送関係からくる危険を防止するための法律がちゃんと規定されておるのです。肝心なその作業に従事する直接の労働者の生命や衛生に関する保護の任に当たらなければなりません労働省、その法規である労働基準法は、じん肺やその他の特殊なケースの問題については、法律規定が行なわれておりますが、この悪質で非常な激烈な毒素を持っておるニトログリコールに対する特別な法規定がないということは、私はまことに遺憾にたえぬところであります。もちろんわれわれ立法に携わるところの者も共同の責任を感ずるのであります。しかし今日の基準法をもってしても臨機の処置をとることは認められておるわけであります。でありますから、私は先ほど数字をあげて申し上げましたように、すでに重態患者として入院しておる者、それからその状態が跡を断たないという現状において、漫然と日を送ることは許されぬ、ぜひ一つ緊急な措置を一方で思い切ってとりながら、完全な生命の保護や衛生に対する管理が行なえるという限界のみにおいてこの製造を許す。そして安全で、かつ合理的にそういう薬剤が使用されることができるような状態が完成したら、これに越したことはないと思うのでありますが、そういう問題につきましては、私は政府当局の十分なる監督と指導と、特に労働者の生命、健康の保護については一段と努力されまして、万全を期することを要望いたしまして、後日他党との協力を得まして、私どもは立法措置の必要も痛感しておりますから、その節また質問いたすかと思いますが、一応本日はこれにて私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  16. 五島虎雄

    五島委員 関連いたしまして簡単に二、三点について質問をしておきたいと思います。  今、井堀委員からいろいろ説明されましたけれども、このニトログリコール中毒によるところの死亡率は一体どれくらいの高度に達しておるか。それから、かつてベンゾール中毒事件が非常に世間を騒がして、基準局も非常に悩まれて、その施策に非常に努力されたと思うのですけれども、当時は大体七〇%程度がその罹病率だったということを記憶しておりますが、このグリコールの罹病率といいますか、死亡率といいますか、これは他の産業の工場と比べて一体どういう傾向にあるかということを教えていただきたいと思います。私が知る限りにおいて、これはよその工場よりも比較的商いのじゃないか、こういうように思いますが、どうでしょうか。
  17. 加藤光徳

    加藤説明員 ニトログリコールによります死亡率ということでございますが、実際の数字から申しまして、ニトログリコールに携わっております者が千二、三百でございます。今まで正式に死亡の確認はいたしておりませんが、いろいろな報告などを総合いたしますと十数名ということになろうかと思いますので、そういう点からいたしますと一%ということになると思います。
  18. 五島虎雄

    五島委員 低いのですか、高いのですか。
  19. 加藤光徳

    加藤説明員 割合に高い方だと思います。  それからベンゼンにつきましては、これもベンゼンの作業をいたしておる労働者の数というものはなかなか把握が困難でございますので、正確な数字はございません。ただ大阪におきまして約二百人ばかりヘップ・サンダルをやっておりました昭和三十三年ごろの中毒事件がございましたが、そのときにおきまして貧血状態というものが七〇%程度ございまして、そのうち死亡いたしましたものが五名か四名と存じております。ですから、そういう点におきましてはやや似ておるような点があるのではないかと思います。
  20. 五島虎雄

    五島委員 こういうように死亡率が高いということが数学的に、率的に出て、そうして近年のことですが、いろいろこの問題については、今まで発生した問題をどうするかということと、これから発生しそうなことについてどう対処するかということ、そうして労働者も安心して労働ができるというような万全な対策が必要じゃないかと思う。そうすると一方では、従来は、冒頭に井堀さんから厚狭工場日本化薬の問題で死亡されたところの奥さんの訴えなどを言われたわけですけれども、これに関連して、なくなられた方に対するところの補償について、労災補償では一体どうするのだというような問題があると思うのです。聞くところによりますと、会社がなかなかその補償の手続をしない。それはニトログリコールの直接の関連でなくなったのじゃない。それは私病としての心臓病でなくなったのだ、こういうことならば労災の補償はないということです。従ってこういうように顕著に現われて、そうして労働基準審議会でもこういうように建議が行なわれて、それに基づいて基準局長の通達をもって各関連工場に、設備その他防具あるいは測定等々についてやれというような比較的万全な通牒を出されておるようでありますけれども、そうすると今まで罹病されあるいは死亡された方についての労災補償等については、一体どういうように考えておるのですか。
  21. 大島靖

    ○大島政府委員 このニトログリコール中毒の異常所見の現われ方というものが非常に医学的に複雑な模様でありまして、最初に目まいとか頭痛、吐きけが出まして、さらに血圧症とかこういった異常所見の現われ方が非常に不規則で、たとえば土曜日まで働いておって日曜日に休んで月曜日に出ますと、麻薬の禁断症状のような形で出てくるとか、非常に複雑なようです。この補償の問題につきましては、現在までのところまだ労災保険の申請は出ておりません。ただ、これが出ていないのは、私ども現在まで会社と接触したところによりますれば、労災補償の申請をするのがいやだから出さないということではなくして、むしろ医学的な究明がまだ十分でないから出さないということであります。その点、業務上の傷病ということではなかろうと思いますが、労災補償としての医学的な関連につきまして早急な専門的な結論を出す必要があるということで、ことしの一月早々から専門家を委嘱いたしまして、労災補償の認定基準、ニトログリコール中毒の認定基準の作定に専念していただいております。従ってこの関係がほどなく結論が出ると思います。そういたしますれば、おそらく会社といたしましても労災保険の申請をいたすと思います。それによって措置ができると思っております。
  22. 五島虎雄

    五島委員 現在、労災補償の公病死でなければ労災は適用されないわけですけれども、今までになくなった方たちに対しては、さっき課長から説明を聞いたら、大体日曜明けの日に心臓病でなくなるとか、あるいは池のほとりで倒れたり便所で倒れたりして、工場で倒れたような人はまだない。そうしてだんだんやってくるから、ちょうど九州の水俣の水俣病のようにだんだんにやってくる。それで工場で働いているとき死亡するということじゃなくて、家で死亡する。そうすると、その医学的な証明ができないから、いまだに私病で死んだとか、心臓病で死んだとかいうようなことで労災が行なわれていない。従って患者もそれに対するところの補償があるのかないのか、私はないと思うのですが、こういうことについて基準はいつごろできるのですか、すぐできるのですか。そうすると従来なくなった方たち、たとえば三十二年ごろから大体ニトログリコールの含有量のパーセンテージが非常に上がってきた、こういうようなことで急速にこれらの特殊なケースの病気がどんどん出てきた。そうすると三十二年ごろからの発病、死亡重態というものについては適用されるわけですか。
  23. 大島靖

    ○大島政府委員 労災補償の認定基準につきましては、ほどなくでき上がると思います。いつまでにでき上がるかということは、私ども専門家に委嘱を申し上げておりまして、その方々は今懸命に急いでやっていただいておりますので、ほど遠からぬうちにこれができると思います。そういたしますれば、それによって申請が出て参ります。その認定基準によって措置したいと思っております。過去の問題につきましては、労災保険法の規定によりまして、その所定の件については速急に措置いたしたいと思っております。ただ、それ以前の問題につきましては、労災補償の遡及にならない場合もありましょうが、その場合におきましては、その傷病のデータによりまして会社との間の関係ができると思います。その辺もさらに検討してみたいと思っております。
  24. 五島虎雄

    五島委員 ニトログリコールの含有量の問題は私は全然わからないのですが、薬品の点については昭和三十二年から三十四年ごろにかけて国際的にか、あるいは市場の競争ですか、あるいはコストを低下させる意味でか知りませんけれども、従来四〇%程度の混合率であったのを五〇%にし、近時は四〇%対六〇%、ニトログリコールを六〇%混入して、その経過において罹病率がふえてきたというふうに説明を聞いたことがあります。そこで今度は労働基準審議会決議されたその中に、大体四〇%程度の混合率にせよ、そうして四〇%の混合率をさらに三〇%程度の混合率に近づけるようにという方向の建議がなされたと思うわけですけれども、これは衛生課の方では、基準局の方では大体どのくらいの混合率が適当であるか、そうしてそのくらいの適当な混合率であれば今後当該労働者は病気をしないのだというような基準的なことが大体わかっておりますか。
  25. 大島靖

    ○大島政府委員 ニトログリコールの配合率の問題につきましては、先ほど申しましたように、昨年暮れの基準審議会の結論といたしまして、四〇%以上にはしない、それから四〇%からさらにできれば三〇%に近づける、こういうふうな御答申になっておるわけであります。ただ、配合率の問題につきましては二つの問題点がございまして、一つの問題は、配合率を低下いたしますと衛生の面では確かにいいわけなんでございますが、一方火薬の爆発の危険性が出てくるという問題があります。従って四〇%から三〇%に下げることが直ちにいいとは言い切れない。それともう一つ根本的な問題といたしまして、配合率を下げますと、薬の温度、薬温が逆に上がらざるを得ない。従って問題は空気中の蒸気の問題があるわけです。配合率は低下したけれども薬温が上がりますので、従って空気中の蒸気の濃度が多くなる、こういった問題で、必ずしも四〇%から三〇%にしたからいいという結論は、ちょっと専門的に出にくいようであります。従って四〇%から三〇%にできるだけ低下するのがいいけれども、その点については薬温の問題と、もう一つは爆発の危険性の問題、この二つの観点からして、慎重に検討するように、こういうふうな話であります。従ってそういうふうな専門家の御意向、これは労働衛生の専門家と労働安全、すなわち爆発の関係の専門家、両者とも、現在わが国における最高権威者の方に委嘱いたしまして御検討願う、そういうふうな結論に従って現在措置いたしております。
  26. 五島虎雄

    五島委員 そうすると基準局長の通達として、十二月二十八日に発送されて、施設の点にはこうせよ、あるいは空気の含有量の測定はどうせよ、それから罹病者の発生した場合は直ちにこれを報告せよ、そうして現在の状況はすみやかに三月三十一日までの間に報告するように、いろいろの点で通牒を出されているわけですけれども、そうするとこの通牒の内容は追って変更して、さらに指導されるような場合もあり得るのではないかと想像されます。それで今日通牒を出された、いろいろの通牒の内容を経営者が完全にそれを実施したと仮定して、病気は発生するおそれはないのか、あるいは冬季と夏季の自然的な温度というものも違いますから、冬季ではこれでよかったかもしれぬけれども、夏季ではこれで悪いというようなことなんかの自信を持った通牒にたっているのかどうかということについて、その所見を向いたい。
  27. 大島靖

    ○大島政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年暮れの対策は緊急措置でございまして、三月までの間に基本的な施設である換気、排気の装置を完備いたすまでの間の緊急措置であります。従ってこの換気、排気の装置が完成いたしますれば、基本的に室内の空気中における蒸気の濃度が違って参ります。従ってそういう新しい環境のもとにおけるさらに改善された対策というものを専門家にお願いいたしておるわけでありますが、と同時に現在までのところ、配合率を下げるということ、それから保護具を使います。この二点によりまして、できるだけ予防措置を講ずるわけでありますが、ただそれでも万一出てきますと大へんでありますから、一月と二月に精密な健康診断を実施いたしまして、そのデータを現在各社からとりまして、これをさらに専門家に検討してもらいまして、新しい装置の完成と相待って恒久対策をきめて参りたい、かように存じております。これは本日の御審議を通じまして、井堀先生、五島先生、両先生からこの問題について非常に真剣な御心配を賜わりまして、私どもも今後さらにこの問題について一そう真剣に努力いたしまして、万全を期して参りたいと思います。ことに、この作業に従事いたします労働者諸君が何といっても一番心配感が強いだろうと思います。そういった技術的にむずかしい点につきましても、労働者諸君の十分な御理解を得られるような措置もつけ加えまして懸命の努力をいたしたい、かように考えております。
  28. 五島虎雄

    五島委員 あと一点伺います。それでこういうようなニトログリコール中毒といいますか、危険な度合いにかんがみまして、あるいはまたえたいの知れない、一名水俣病といわれるのですが、水俣病でどんどん死亡がある、あるいは重態患者が生ずる、あるいはベンゾールのような問題もある。そうして新薬による被害が非常に大きく社会的な影響を与える。ただ一つじん肺だけが職業病としての特異な法律が作成されておるのですが、仕事をしなければ生活ができない、生活をするために仕事をすれば病気になる、そうしてとうとい命に、あるいは身体に重大な影響を及ぼすというような一連の病源がある。これについて労働者を保護し、衛生上の面やあるいは安全の面からも、この一連の職業病に関するところの保護の法律案が必要な時代になってきやせぬか、こういうように考えるわけですが、この点については、局長はさっきからいわれる権威ある筋によってというようなことですが、権威ある人々も、職業病の保護立法について、三年以内に作らなければならぬというような意見を持っておる人たちもたくさんあると思うのです。政府は、労働省はどう考えられるか。私たちはほんとうに安心して仕事のできるような職場環境を作り出していかなければならぬ。非常に危険な作業日本産業に非常に重大な意義を持つ、重大な意義を持てば持つほど、労働者を保護していかなければならぬ、こういうように思いますが、職業病の保護立法についてどう考えておられますか。
  29. 大島靖

    ○大島政府委員 職業病対策の問題あるいは広く労働衛生の問題につきまして、私どもとしては病気が起こったからこれに対して措置するということだけではなしに、広く技術の進歩、科学の進歩に伴って、そういうふうな起こり得る可能性についてまで検討いたしたいと思うのであります。その点につきましては、たとえばまだ日本国内に従来なかった材料とか技術工程、こういったものもだんだん入って参りますので、そういった場合どういうふうな衛生上の障害が起こりますか、こういう点につきましても、すでに使っておりますような外国の事例等も十分参酌する必要があるわけであります。そういう意味合いにおきまして、ごく最近でありますが、世界の労働安全衛生、もちろん職業病の問題も含んでおりますが、こういう問題のインフォーメーション・センターというものがジュネーヴに設立されたのであります。これに対して私どもの方も加入いたしまして、ここから世界各国における労働衛生の問題、職業病問題についての情報を入手し得る方法が開けた。そういう新しい問題点につきまして、病気が起こってからということではなしに、起こらない前から特別の監督をいたしまして、特殊の健康診断をして、異常所見が出るか出ないかということを調べていく、こういう対策を実施に移したいと思っております。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕  なお、職業病の特別立法につきましては、現在の法制なり行政措置によってできるか、できないか、その辺のことを、さらに技術的な問題もございますので、慎重に検討を進めたいと思っております。
  30. 島本虎三

    ○島本委員 ただいま五島虎雄委員の方から質問されまして答弁がありましたが、それに関連して一、二具体的に伺いたいと思います。  その一つは、昭和三十五年十二月二十八日ですか、いろいろと措置するように通牒を出された。その中で病気のある者の健康診断、それから施設の改善の問題または空気の湿度並びにいろいろな問題、それから保護具を完全に使用する問題等について、それぞれ措置をされたようですが、それ以前にも、このような措置をしないままに、こういうようなきわめて重要な、労働者には危険を伴うようなおそれのある作業に従事をさせておったのかどうか。あらためてこういうような通牒を出さなければならないように初めて認識されたのかどうか。これはまことにけしからぬ問題にもなるおそれがあるのではないかと私は思うのですが、この点を明確にしてもらいたいと思います。
  31. 大島靖

    ○大島政府委員 火薬の製造工程においてニトログリコールが使用されだしましたのは、わが国においてはここ数年来のことと承知しております。もちろんこのニトログリコールを使いだしましてから異常所見はあったのでありまして、会社の方でもその点については健康管理について相当やっておったのであります。ただ、先ほど来申し上げますように、異常所見と業務との関連性あるいはその異常所見の異常の状況の進み方という問題につきまして、医学的になかなか解決が困難であったわけであります。昨年来ことに力を入れまして、専門家の御検討を願っておったのであります。従来に増して今後もやって参りたいと思いますが、医学的に非常にむずかしい問題のようであります。現在におきましても、専門家にそういうふうにしさいの御検討を願っております。なおかつ医学的にも問題点はありましょうが、しかし必ずしも決定的な結論が出なくても、そういう異常所見が今後出ないように措置する方法をいろいろな形で進めて参りたい、かように考えております。
  32. 島本虎三

    ○島本委員 いろいろな形で進められることは今に始まったことじゃなく、こういうような問題に対しては、ほんとうに以前からでもやってもらいたかったし、やってもらわなければならない重大な要素を持っております。こういうように働いている人が病気になったり、あるいは工場の施設が不備のために爆発を起こしてようやく施設を直し、対策を講ずる。こういうようなことは、いつも行政の方がおくれ、結局は指導の方がおくれて、人畜に被害を及ぼす結果が発生することがあるのではないか。こういうことはまことに遺憾きわまりない。今いろいろな答弁を聞いても、現在のところ法上に不備があるのかないのか、こういう点で、最も重要な問題でもあるので、その点もう少し深く研究し、不備のあるものなら早く改正をすべきではなかろうか。基準法の問題でも、このにおいの問題等については、環境衛生の問題としてまことに重大な要素を持っておる点があると思う。ところがこのにおいに対して完全に指導し、完全にこれを取り締まるような方法が現在あるのかないのか、この点についてもきわめて重要な関連がございますので、明確にしてもらいたい。
  33. 大島靖

    ○大島政府委員 昨年来この問題につきまして三社四工場がこの作業に該当いたしておりますので、これに対して私どもの方から各種の施設その他についての指示をいたしております。この点は必ずしも法律に基づいてやっておるということではなしに、事実上の指示をいたしておりますが、私どもの指示につきまして三社四工場においては完全に実施してもらっております。従って法上の不備というような問題は、現在のところこの問題について私どもとしては感じていないわけであります。従って専門家の結論が出れば、私どももこれに対して必要な指示はいたしまして、三社四工場においてはこれを完全に実施していくという態勢にあると思っております。  ただ後段の御質問の、においの問題につきましては、これが一般工場の臭気、工場外に及ぶ臭気ということになりますと別問題でありますが、工場事業場内、作業場内における臭気の問題が労働衛生上の問題となります場合には、私は現行法制下におきましても必要な措置はとり得ると思います。
  34. 島本虎三

    ○島本委員 そこが大事ですから一点はっきりお伺いしておきます。とり得るという答弁でありますが、とり得るならばもっと具体的に指導しなければならない。そういう事業体が、今問題になっておりますニトログリコール中毒に関するいろいろな施設または中毒患者という問題と別に、ずいぶんあると思う。むしろこれが発生したからこれに対する措置を考える、それと同様に、三社四工場というものに対して、皆さんの指導や指示、措置というものが今後完全に行なわれるならば、おそらくはこれに対する法の制定と相待って今後完璧を期せられると思いますが、問題は限定されたこれだけの問題でしょう。ところが同じようにして、法として不備はないということでありますが、この法の不備の点が現在若干あるところに、作業上労務者に及ぼすにおいに対する影響なんかもあえて考慮されない点があるのではなかろうか。またこれが周囲に及ぼす環境公衆衛生上の立場からほうっておけないような問題も当然あるのではなかろうか。そういう問題もあわせて今後考えてやる必要があるのではないかと思って聞くわけであります。実際上の問題として、鶏の飼料と肥料、この二つは一貫作業によって作られるように現在は工場ができておりますが、この中に働く人はこのにおいに相当悩まされておりますし、工場から発する臭気によって周囲の人も相当因っております。これを具体的に取り締まる何ものもないということはちょいちょい聞かされる。もしもにおいなんかについて取り締まる何ものかがあるならば、こういういろいろな事柄なんかも未然に防げるような可能性もあるのではないかとさえ思うわけであります。このにおいに対して万全の措置を講じ得るというならば——今私が言いましたような飼料や肥料を作っている工場なんかに対しては、この点が割合に不完全のようでございます。また同時に火薬の工場に勤めておる者のニトログリコール中毒患者、こういうものに対してはいろいろありましたが、同じような工場に勤めておる人たちに防具と申しますか、保護具ですか、この保護具を使用させないがために、中毒にはいかないけれども、からだに対するいろいろな悪影響を受けている向きが相当あるようです。こういうものに対しては、私はもっともっと考えて指導すべきじゃないかと思う。具体的にあげろと言われますならばあげます。今は関連ですから、これの問題だけで深入りはしませんが、これの保護具を使用する場合の処置や、これを怠った場合の指導、こういうものをもっともっと完全にしなければならないと思います。今のにおいの点に関連して、もう少し具体的に所見を伺いたいと思います。
  35. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいまの臭気の問題につきまして、法的規制との関係でございますが、工場、事業場内におきまして、労働者に対して労働衛生上障害があるという点につきましては、私ども、現在の法制下において措置し得ると思います。ただ、これが工場外に及ぼす問題になりますと、いわゆる公害という問題になりまして、基準法のワクははずれるわけでございます。ただ、今御指摘のありましたような臭気の問題につきまして、私どもといたしましては、労働衛生研究所におきまして、さらにこういう問題についても研究、検討させたいと思います。  それから、先生がこの問題を御指摘になります御意図の中には、大工場もさることながら、中小零細企業の問題もお含みになっていらっしゃるのじゃないかと思うのでありますが、これらの問題につきましても、先般御可決をいただきました三十六年度予算におきまして、中小企業の労働衛生の巡回健診の特別の予算を措置いただいたわけでございます。この点で中小零細企業の密集地帯に対して巡回診療を実施いたしまして、そういう問題の解決に資して参りたいと考えておりますが、今後労働衛生研究所の研究あるいは私ども労働衛生の行政を通じてさらに懸命の努力を続けて参りたいと考えます。
  36. 島本虎三

    ○島本委員 ニトログリコール中毒に関するいろいろな経過並びにその措置等はわかりましたが、私は、この問題は、起こってからやるのじゃ、実際としてはその措置がまことに不完全である、当局自身は怠慢じゃないか、こうさえも思うわけなんですけれども、今後の皆さんのこれに対する完全な措置並びに指導を心から期待して、この辺で一応質問を終わりたいと思います。  あわせて今度はにおいの及ぼす問題、ことに大企業と中小企業——中小企業の場合は、保護具その他において、その使用の困難さはもちろんございましょうし、能率の点もありますから、これを簡略にするおそれもあります。その点等は十分に注意するように皆さんのいろいろな措置を心からお願いしておきたいと思いますと同時に、関係方面とよく協議して、これは皆さんの範囲外になりますけれども、公害の問題等についても、一般国民を対象にしても、働く人にも当然重大な問題でありますから、十分検討されるようにしてもらいたいと思います。そのようにするならば、あえて答弁は要りませんが、十分なる御研さんと努力を心から要請しておきます。
  37. 五島虎雄

    五島委員 さっきちょっと聞かなければならぬのが一つあった。基準局通牒を出されたとき、こういうような危険な空気を吸い込んだり病気になっていくので、施設をよくせい、環境をよくせい、健康診断をせいというような指示をされたわけですけれども、そのとき、労働者に対するところの労働時間のことは配慮されなかったのでしょうか。換気をしなければならぬというのは、ニトログリコールが発散して空気に触れる度合いが高いからだ。そうすると、完全なる保護具というのがあるかないかわかりませんが、それでは作業がしにくい場合があるでしょう。私は最初に断わったように、このニトログリコールがどういうような液体か、どういうような科学的な性能を持っているかということは全くわかりません。そこで、こういう空気を吸いながら労働しておれば、自然々々にからだが衰弱し侵されていく、こういうようなことならば、配置転換の問題等々は配慮されているようですけれども、その労働時間の問題などについてはよほど今後考慮しなければ健康体を保持することはなかなか困難ではないかと思うのです。ただその緊急措置だけで完全に中海原因が排除されるのならばいいのですけれども労働時間のことについて考慮をしないのか。ILO条約では四十時間の勧告もありますが、現在何時間働いているのか。やはり健康を保持するしにおいても、あるいは人間として楽しい生活をする上にも危険であるから、時間の短縮をして、労働者の衛生、健康の保護をしなければならぬ。この点について一つ……。
  38. 大島靖

    ○大島政府委員 先ほど来申し上げましたような所要の予防措置を講じまして、なおかつ異常所見が出て参りますかどうか、その点について定期健康診断を実施せしめているわけでありますが、その場合に、異常所見が出て参りますれば、これに対して配置転換並びに労働時間短縮等所要の措置を講ずるように、私の方から三社四工場に対して指示いたしております。ただいま御指摘の通り非常に重要な問題でありますので、今後とも異常所見の発見に伴う必要措置として配置転換並びに時間の短縮、これらの点を考慮して参りたいと考えております。
  39. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 午後三時まで休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ————◇—————    午後三時三十二分開議
  40. 山本猛夫

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出失業保険法の一部を改正する法律案及び小林進君外十一名提出失業保険法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑を許します。五島虎雄君。
  41. 五島虎雄

    五島委員 失業保険法の一部を改正する法律案提案理由説明を読みますと、日雇い労働者賃金の上昇度合いにかんがみて失業保険法の一部を改正するのである、大体こういうようになっておるわけです。ところが、中心をなす日雇いの賃金がそれほど上昇しているのかどうか、それからまた予算上の問題から、一般失対の日雇い賃金は五十数円上がったわけですけれども、今回改正するのに、四百八十円以上は三百三十円の給付をしよう、あるいは二百八十円以上の人には二百四十円支払おう、それ以下の人には百七十円支給する、それぞれこういうようなことになっているのですけれども一般失対の賃金の中においても、四百八十円以上になる人が一体どの地区でどういうようになるだろう、というように考える。そうすると、一般失対に働く人々が失業をする場合、その賃金はただ単に四百八十円以上の人には三百三十円払うのだぞときめてやっても、これは日雇いの人々が大体平均で示されておりますから、それと男女間の差もあるでしょうし、あるいは地域的に、一般賃金が高いところは一般失対の方もそれぞれ高く支給されるだろうと思うのですけれども、四百八十円以上になるほど、一般失対の労働者賃金がそれほど上回るようになるのでしょうか、どうでしょうか。
  42. 堀秀夫

    ○堀政府委員 最近におきまして労働省で実施しております屋外労働者の職種別賃金調査の結果を見ましても、たとえば昭和三十四年の八月におきましては、平均四百十四円程度でございましたが、その後漸次上昇いたしまして、昨年の八月には四百六十円、大体一一・一%程度上昇しておる、こういう数字が出ておるわけでございます。また失対労務者につきましては、ただいまお話のございましたように、三十五年度におきまする失対労務者の労力費の予算の平均単価は、全国平均三百三十四円でございましたが、これが五十二円アップされまして、本年四月以降は三百八十六円ということに相なります。従いまして、約一五・六%程度上昇ということになるわけでございます。ところで、この三百八十六円と申しますのは全国平均の単価でございます。御承知のように地域によって地域差がございます。それからまた作業や職種の内容によりまして差がつけられておるわけでございまして、この四百八十円以上にどのくらいなるであろうかということでございますが、これは大体、たとえば東京とか北海道とか、あるいはこれに準ずる六大都市周辺の失対労務者の方々のうち、作業内容の比較的高いものに従事しておられる方々がこの四百八十円の中に入るであろう、四百八十円以上の範疇に入るものが出て参ります。大体四百八十円以上になる失業保険金の日雇いの受給者の率は、全体の被保険者の一〇%程度になるであろう、このように私どもの方は予測しておるわけであります。失対労務者につきましては、全国平均三百八十六円で、東京が四百二十円程度でございまするから、その東京、それから先ほど申し上げましたような都会地におきまするところの失対労務者のうち、比較的作業内容の高度な事業に従事しておる失対労務者諸君の相当部分がこの中に入ることであろう、このように推定しております。
  43. 五島虎雄

    五島委員 大体一〇%程度がそれに該当するということですね。そうすると現在、たとえば福岡の一般失対賃金を、福岡県の粕屋郡や田川郡、飯塚市、直方市、あるいは山田市、こういうところで、この間社会党の河野委員からも質問があったと思いますけれども、粕屋郡では一般失対が男三百六十円、女は三百三十円、それから田川、飯塚、直方、山田では大体男子が三百三十円と三百円、同一地域において三百六十円と三百三十円、三十円の違いがある。こういうような状況で、女子でも三十円の違いがある。ところがこれは一般失対の場合ですけれども、これが今度それぞれ地域的に上昇してくると思いますけれども、三百三十四円の平均のとき、男で三百三十円、女で三百円ということが大体一般になっている。ですから東京や六大都市周辺と福岡の地域差はそれぞれ違うかもしれませんけれども、すべて男も女も通じて三百三十四円からぐっと減ってしまっておる。ところが特失を見てみると、これが四百四十五円だけれども、やはり粕屋郡では四百九十円が男子の賃金になっておる。ところが女子の賃金は四百五円になっておる。ところが田川、飯塚、直方、山田では男が四百五十五円、女が三百六十円、こういうような工合にして、それを平均すると、四百四十五円の平均からずいぶんダウンされてしまっているのじゃないか。そうして同一地域、福岡におけるところの隣接地域のところで、こういうように賃金が一カ所ぐんと飛び離れておる。しかもその他のところは平均にすら達していない。こういうようなことなどは一体どうだろうか。それからまた公共事業に従事するところの労務者の賃金としては、これがちょっとこの資料を見てもおかしいのだけれども、職安局の調べではどうなっているか。これは河野委員も質問されたと思うのですが、ダブることはごかんべん願って、公共事業に従事する人々では、これは平均賃金が四百四十五円となっておる場合、男が三百円から三百五十円、女が二百二十円から二百八十円と、こういうことになっているわけです。そうすると一般失対は地域差もそれぞれありましょうし、特失においても地域差もそれぞれありましょうし、あるいは緊就においてもそれぞれあるかもしれませんけれども、公共事業に従事するところの賃金が三百円から三百五十円ということになると、この表だけでいうならば、われわれはそこに何か中間搾取が行なわれているのじゃないかという疑問さえ生ずるわけです。いろいろわれわれは聞くのですけれども、たとえば施工主が一つの工事を請け負って、そうして労働者賃金が渡るときは、このように男では三百円から三百五十円、女では二百二十円から二百八十円、こういうような状態になっているのか、なっていないのか。なっているとするならば、一体こういうようなことはどういうように指導したらいいのか。そうしてまた四百四十五円の  大体国の施行する公共事業とかあるいはその他の公共事業に従事する平均賃金がこのように安くてもいいのかどうか、こういうような疑問が生ずるのですけれども、この点についてはどう考えられますか。
  44. 堀秀夫

    ○堀政府委員 一般失対の労務者の賃金につきましては、福岡地方におきましては、今回のアップによりまして、さらに従来の賃金に平均いたしまして五十一円を上昇させる、こういうことに決定いたしました。従いまして、先ほどお話がありました数字につきまして、私どもはただいま手元にわれわれの方の数字を持っておりませんので、ただいまお示しになりました数字が実際その通りであるかどうか、後刻調査させたいと思いますが、かりにそれが事実でありますれば、それに五十一円プラスされる、こういうことになるわけでございます。  それから公共事業につきましては、その請負の予算は、その積算をいたしますときにいわゆるPW等を参考にして、積算の基礎に使っておるところでございますが、これを業者に発注をするわけでございます。その際におきましては、別にその賃金内容等について規制はしておりません。ただし、緊急失対法に基づきまして、それに吸収すべき失業者のパーセントは示しておるわけでございますが、そのような関係もありまして、公共事業における労務者の賃金というものについては、積極的な統制をしておらないわけでございます。この福岡県におきますいろいろな地方における公共事業の賃金につきましても、ただいま手元にわれわれの資料を持っておりませんので、おそらくいろいろな職種あるいは作業内容、そういうようなものにつきまして、全体の平均と違いましていろいろな差別が出てくるものがあろうと思いますが、ただいま手元に詳細な資料を持っておりませんので、後刻調査させていただきたいと思います。
  45. 五島虎雄

    五島委員 そうすると公共事業に働く労働者についての賃金の指示はない。ところが公共事業に対するところの建設、土木、それらの面については政府から補助が行なわれる。そうしてたとえば地方自治体が行なう場合は、地方自治体の持ち出しになるかもしれませんけれども、入札でやっているわけですね。そうすると入札でやっている場合、業者はやはり利潤を上げなければならぬわけですから、従って労働賃金がそれだけ頭打ちになるか、あるいは一般的な屋外労働者としての賃金がこういうようにダウンされてしまう、理屈としてはこういう工合になりはしませんか。そこで失対の賃金よりも、より低い賃金が支給されることによって労働者生活しなければならぬというような問題等々が生じはしないか。生ずるだろうと思われるならば、そうだと言って下さい。
  46. 堀秀夫

    ○堀政府委員 福岡県におけるただいまのお話のPW平均値四百四十五円、これは重作業の労務者の平均賃金でございまして、軽作業は三百円になっております。公共事業に就労する労務者諸君の賃金につきましては、ただいまのような請負によって業者が請け負い、あとは作業内容、それから職種等によりまして決定をしておるところでございますが、これは重作業的なものもございまするし、軽作業的なものもございます。それからまたその地域によりましてのいろいろな特殊性もございます。要するに作業内容、職種の態様、地域というようなものについてそれぞれ違った態様をしておるのでございまして、従いまして、私どもただいま先生が例としてあげられました公共事業の三百円から三百五十円というような点につきまして、ただいま手元に資料を持っておりませんが、そういうようないろいろな要素からいたしまして、違いが出てきておるのではないか、このように考えております。
  47. 五島虎雄

    五島委員 緊急就労につく労働者が、雨が降ると仕事ができない、あるいは休まなければならぬというような状態があるわけですけれども、この人たちの賃金が非常に安いんじゃないか。そこで、この緊急就労に収容する人たちは五千五百十八名も福岡におられるわけですけれども、福岡の失業者は、全失業者で二十七万人もおられる。そうして福岡県におけるところの失対の適格者の月別異動としては大体二万七千程度だ、こういうようなことですが、緊急就労につく人は一般失対の方には配置がえというのか、そんなのはできないのですか。それからまたこういうように二十七万人も一地域に失業者があるということから、適格者の月別異動数は二万七千人程度だ、わずか一割のところであって、どうしても一般失対の方になかなか吸収されないという訴えの声が非常に強いわけですが、そういうことはやはり予算上の中からそれを制限していかれるわけですか、必要に応じてふやされるのですか。
  48. 堀秀夫

    ○堀政府委員 緊急就労対策事業には、炭鉱離職者臨時措置法に基づきまして炭鉱離職者を重点的に吸収するように措置しておりますが、この基本的な考え方は、臨時措置法で、御承知のごとく広域職業紹介によって炭鉱離職者の方々を適職に配置転換をして参るということを基本的な考え方といたしました。しかしその過程におきまして、現地においてやはり滞留するような方々を緊急就労にお世話するというようなことでございますから、広域職業紹介等に適するような方々をなるべく就労願っておるわけでございます。私どもといたしましては、やはりこの炭鉱離職者に関する施策の基本的な中心は、一つは現在障害になっておりまするところの離職者用の住宅等を整備すると同時に、職業訓練、転職訓練等を活発に行なうことによりまして、他の産業、他の地域への配置転換を円滑に行なって参るということが第一であると考えます。それと同時に、現地におきまして産業を振興することによって、他の地域に移動することが不可能な方々はその方面へ吸収をはかるということが重要であろうと考えております。緊急就労対策事業等あるいは一般失対事業等につきましては、そのような措置をもってしてはうまくいかないような方々を過渡的にお世話する、こういう考え方で進むのが適当であろうと考えておるわけでございます。そこで、この緊急就労対策事業に炭鉱離職者の方を重点的にお世話をするわけでございますが、従いまして一般失対の方には、私どもの基本的な考え方としては、これはなるべく炭鉱離職者の方はそっちの方には滞留しないように仕向けていくという基本的な考え方で運営して参りたいと思っております。ただしいろいろな現地の事情がございまして、炭鉱離職者の方々であってもこの緊急就労対策事業に就労できないというような方は、例外的にこれは一般失対の方にも適格基準がありますればお世話をしていく、こういう考え方で進んで参りたいと思っております。
  49. 五島虎雄

    五島委員 局長の説明によると、五十一円福岡でも上がる、もちろん全国的にも三百八十六円を基本としますから、五十二円上がっていくわけです。ところがその前に、島本委員からも質問をされたわけですけれども、三百八十六円の中に、一般失対の賃金は三百八十六円支給するのだといって予算づけをされる、ところがそのうちの一円は、全国労働者は喜んだけれども、そうじゃないのだ、石炭手当の方に回っていってしまうのだ。そうすると、三百八十五円であって、五十一円は全国の平均の上げ方になっていくのです。そこで予算の面では、全国の、北海道を残したほかの労働者に対しては、一円だけ見せかけの予算で喜ばした、こういうようになるのではないか。ところがその一円の性格も何だかわからないような、どうも石炭手当を出さなければならぬとか寒冷地手当を出さなければならぬが、まあこの際ごまかす——ごまかすということは語弊があるかもしれませんけれども、一円だけ何とかつけてしまって、石炭手当であるかのごとく、寒冷地手当であるかのごとく、寒いからここにふやしてやれ、こういうような何か行政上の措置みたいなことが行なわれておる。こういうようなことについては、そういうような老婆心があるならば、石炭手当なら石炭手当としてはっきりここに労働者生活の基本を打ち立てるために明快にして、そして一般失対の日雇いの賃金はこれこれだということを示す必要があろうと思う。ところがその日雇い賃金がこのように五十二円予算上では上がったわけだけれども、五十一円それぞれが上がってきても、九〇%程度は今回の失業保険の四百八十円以上の第一級を支給されないということですね。ですから、そういうようなところはこういうものを中心として考えて、法律改正が行なわれるべきである。僕は、大部分の人たちが大体一生懸命働いて、そしてそれぞれの所定日数を働いたならば、この一級程度の保険金の給付はなさるべきだ、ただそれより以下の、基準に満たない労働日の人たちに対しては、またそれぞれ考案してもいいのではないか。ところが一級が新たに設定されるけれども、なおその九%はこれに該当しないのだ、そういうようなことで、特に原案によると、その三級のいわゆる二百八十円以下百七十円というような、現状に合わないようなことが原案で打ち出されておる。こういうようなことはいけない。従ってわれわれはこれを二段階に区切るのだ、こういうような考え方を出しているわけですけれども、それぞれ提案されて以来、いろいろの面で話し合われているから、この点については私は質問はしません。ところがここにさいぜんから局長の口を通じてPW、いわゆる屋外労務者の賃金の件について二、三触れられたわけです。従って私たちは、一般失対の予算賃金を出される場合、やはりこれは緊急失対の十条におけるそういうことが勘案されて、予算づけをされるんだ、こういうように理解をしておった。従って一般職種別賃金の八割から九割というようなもので、一般失対の賃金で予算が作られるんだ、こういうように積算上の問題は理解をしておったわけです。従って一般職種別賃金という調べは、毎年八月実施されて、すみやかにこれを計算して集積しなければならないと書いてある。そうしてまた従来は大体年の終わりまでに計算されて、その計算に基づいて、一般職種別賃金の給料はこうなるんだというようなことで予算上に現われてくるんだ、こういうように考えておった。こういうように考えない限りにおいては、緊急失対の十条は一体どうなったか、こういうように思わざるを得ないわけです。ところが今回のことしの予算の編成にあたっては、一般職種別賃金がどういう程度になるだろうから、あるいはなったから、三百八十六円にするんだというようなことはなかったらしいのです。ただ見込みとしては、作られただろうと思うのですけれども、実際に一般職種別賃金を調べて、そうしてその集積の中に平均を出して、平均の八掛なら八掛というようなものを一般失対の賃金にするんだ、こういうようになるんだろうと思っておったところが、ことしはそうでなかった。しかし五十二円の上昇というものは、労働大臣は非常に自慢をされるように、従来にないように出された。しかしわれわれは、五十二円上げたからといって、これで足りるものではない。労働者諸君が五十二円上がって、三百八十六円で扶養家族の多い人たちが自分たちの労力によって生活を維持するということには、いまだほど遠いと思っておる。しかし遠いと思っていても、その中で五十二円上げられたということは、近年まれなことだ。労働大臣が自慢されることは、自民党政府労働大臣としては自慢してもいいと思う。ところが五十二円上げるところのその基礎は一体どこからきたのですか。従来日雇い賃金がどういうように上がってきたかということを調べてみますと、二十四年の四月から百六十三円で始まった貸金が、九月には百九十三円になって、そうして二十六年の四月には二百円になって、その秋二百二十五円六十銭になった。そうすると、PWでは二十六年の一月の発表では二百五十六円になっていて、二十六年の四月には二百円になっているから、まあまあ八〇%でやっておる。ところがその秋の十月にはまた物価指数とか何とかが上がってしまって、そうして労働賃金も上がったからというので、二百二十五円にされた。そのときのPWが二百八十五円であった。これも八〇%だ。それから二十七年にも八〇%強上がっている。これが二百四十八円になっていわゆるニコヨンという名前がついた。そうして二年たった二十九年には二百八十二円になって、これもまたPWの八〇%程度が実施された。それから三十二年四月に三百二円になり、十月に三百六円、去年の四月に三百三十四円となった。それからずっとPWがおそくなってしまって発表がされない。発表がされないままに日雇い賃金を上げざるを得ない情勢になってきた。そうして三十六年四月実施三百八十六円となって、PWの方は四月一日に発表されたはずである。四月一日に発表されたはずであるのに、予算上の三百八十六円の賃金というものは去年の十二月に編成されたか、ことしの一月に編成された。そうすると三カ月ないし四カ月の幅を持って、そうして四月一日予算が通った今日においてやっと一般職種別賃金が発表されているわけです。そうしてそれが四百六十円になったと発表された。四百六十円になったと発表されて、今までPWというのとそれから緊急失対の十条の同種の屋外労務者の賃金の八掛ないし九掛でなければならぬという法律の条文と、このPWの積算が予算づけをされた三カ月も四カ月もあとからPWが発表されて、そうして大体バランスは合っているじゃないかということになれば、その間の技術的な操作をわれわれは疑わざるを得ない。ですから今や何かPWに先がけて日雇い賃金が設定される。私たちは決してPWの八掛あるいは九掛を賃金にせいということを今まで言ってきていない。PWそのものが悪いんだ、頭打ち賃金だと言ってきている。ところがこれがごっちゃになっておるようなきらいがある。従って私が言ったことに誤りがないかどうか、私の言ったことに誤りがあったならば、訂正をしてもらってもけっこうですが、誤りはないでしょうか。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
  50. 堀秀夫

    ○堀政府委員 第一番目の北海道の冬季賃金加算の問題でございますが、これはこの委員会におきましても何回か御説明申し上げましたように、北海道の冬季はいろいろ物入りがかかるであろうという考え方から、私どもは石炭手当というものを創設することをわれわれの理想として関係省にも折衝をいたしたのでございまするが、それが残念ながら本年度においてはできなかったわけでございます。しかし予算折衝の最終段階におきまして、全国平均いたしまして一円程度の金額の原資は、北海道における冬季のいろいろな物入りがかかるというような実情にかんがみまして、これを認めてもよろしいということになりましたので、私どもはこれで十分とは思っておりませんけれども、北海道あるいはその他のこれに準ずるような地域におけるところのこのような考え方の今後の足がかりにする意味におきまして、今までよりも相当の改善になるわけでございまするから、全国平均して一円程度の原資を北海道の賃金の冬季加算に入れるという措置を講じたわけでございます。今後におきましてもさらに努力はいたしたいと考えております。  それから次に、いわゆるPWと失対の労務費の決定の経緯でございますが、御承知のように、毎年八月に労働省におきまして、屋外労働者の職種別賃金調査というものを実施しておるわけでございます。その結果がまとまりまして、それを待って必要があればPWの改定を行なうということになるわけでございますが、この失対労務者の賃金につきましては、同種の同一地域の労務者の平均賃金の八割から九割にきめるというようなことが、緊急失対法及び緊急失対法施行規則に基づきまして、その基本方針が定められておるわけでございますから、私どももこの新しい年度の失対予算の編成にあたりましては、その一番新しいものをぜひ使いたいという考え方で作業をしたわけでございます。昨年の八月におきますところの屋外労務者の調査の速報が昨年の十二月末になりまして出て参りました。これに基づきまして、全国的な上昇率がどの程度になっているかということが判明したわけでございます。それを用いまして失対の予算を編成いたしたわけでございます。基準局におきましては、この十二月に一応出て参りましたものは全国平均の速報的な数字でございますから、さらにこれを地域別、職種別、その他いろいろな集計分析を行ないまして、そしてその作業が年度末に完成したわけでございまして、これに基づいてPWの改定を行なったわけでございます。従いまして失対の労務費の予算案は、その前にきまったわけでございますが、これはただいま申し上げました経緯によりまして、われわれは一番新しいものを利用するという見地から、その全国的な速報的な集計を先にやってもらいまして、それを利用したということでございます。  それからただいまいわゆる低賃金率のお話がございましたけれども、私どもは最近における失対労務者諸君の実情からいたしまして、昨年度までは低賃金率は八七・五%でございましたけれども、本年度におきましては、これはできるだけ引き上げるということで九〇%ということにいたしました。それをとりましてただいまの五十二円、北海道を除きますれば全国平均で五十一円という失対労務費の改善を行なった次第でございます。
  51. 五島虎雄

    五島委員 そうすると何かを基礎にしなければならない、その基礎は速報だということですね。大体速報と、四月までかかって集計され発表されたこととは大して変わりはないようですね。ところがPWの経過としては、八月三十一日現在でどれだけを対象としてPWを調べられるかちょっとわかりませんが、抽出法はなんでしょう。その抽出法で各事業主にこれを指定されるわけでしょう。規則を見ると、指定されてから今度事業主は一カ月こえて九月の二十日までに、都道府県の労働基準局長にこれを提出するということになっているようですね。それからまた都道府県労働基準局長は、毎年九月三十日までに労働大臣に提出する、十日こえて労働大臣に提出するという、これが規則十条でしょう。それから労働大臣は、その結果報告を作成してすみやかに公表しなければならない。そのすみやかが九月三十日までですから、十、十一、十二、一、二、三と半年かかって発表されるわけです。それで私がなぜこのPWの問題をここに質問するかというと、労働者賃金がめぐりめぐって頭打ちにされるのじゃないか、こういうように考えるから、特に一般職種別賃金の問題を問題にするわけです。それで報告はどこから行なわれるかというと、事業主だけから行なわれるわけです。私は何も疑っているわけではないですけれども、そうすると公平に正直にこの賃金がつけ出されているかどうかというような問題があるのではないか、こういうような疑いが立つと思います。それからもう一つは、毎年々々行われる賃金で、そうしてその賃金によって八掛から九掛の一般失業対策事業の中における労働者賃金がきまるわけです。そうしてこれが今年度の賃金であるぞといって、それが予算づけされて賃金が支給される、そうして公共事業などにそれが影響する。そうするとさいぜん言ったように、公共事業に働く労働者は、一般失対よりも以下になる場合があるだろう。そうして今度はその年の八月の三十一日を現在として屋外労務者の賃金は一体どうかといって調査される。そうすると半年から数カ月の間に、回り回って調査が行なわれる。その調査を基準として、今度は一般失業対策の八掛から九掛だというような法の十条が適用されて、そうしてその翌年の労働者賃金になる。従って屋外労働者賃金一般失対の賃金が大きく影響するのではないか。大きく影響しないならいいですけれども、大きく影響して、そうしてその中には需要と供給の問題がありますから、労働者が少なければ賃金もそれぞれ上がってくるでしょうけれども、それぞれ相互関連をして、そうして労働者賃金が頭打ちとして据え置かれながら、報告から予算へ、そうして実際の労働者賃金へとなって、回り回って幾らかはアップする場合があるかもしれぬけれども、経済の発展度合いに比較すれば、そうそれにマッチすることはないじゃないか、こういうように考えられるわけです。従って私がPWの問題を論ずるにあたって、もうPWというものは要らぬのじゃないかと思うのです。それから要らぬのじゃないかと思うばかりではなくて、もうすでに政府に対する不正手段による支払請求の防止等に関する法律を廃止する法律によって、その一部が今日依然としてPWだけが存置されて、それが一般緊急失対の賃金の八掛から九掛に影響しておる。大部分が廃止された法律そのものは、終戦直後の異常なる状態のときに作られた法律であって、その後なぜこれが大部分廃止されなければならなかったかということは、もう十分御承知の通り、すでにそういう時期でなくなったのだ、こういうようなことだろうと思うのですけれども、まだPWを存置することが有効であると思われますか、あるいはこのPWはもう廃止してもいいとお思いになりますか。これは決して単独にPWの問題だけを質問しておるわけではなくて、ひいては、もしもそういうような関係のある労働者が失業をした場合は、一級でやられるのか、二級でやられるのか、あるいは三級でやられるのかということに大きく影響しているからお伺いしているわけです。従ってこのPWのことについてどう考えられるか、お聞きしておきたいと思います。
  52. 堀秀夫

    ○堀政府委員 失対事業の予算編成にあたりましては、私どもは毎年実施されております屋外労務者職種別賃金調査の一番新しい結果を一つの大きな基準にいたしまして関係各省と折衝をするわけでございます。ただいまいろいろな御意見がございました。中にはごもっともな点もあると思いますが、私どもといたしましては、この失対労務者の労務費をきめるにあたりましては、やはり客観的な基準というものがあって、それを手がかりにして失対の労務費予算がきまるということが現状では望ましい姿であると考えております。要するに、政府内部における各省間の、たとえば力関係等によりまして失対労務費の予算が高くなったりあるいは低くなったりするというようなことよりは、やはり同種労働者の同一地域における平均的な賃金というものが基準になって、それよりもやや下回る線において失対労務者の賃金がきまる、この形が現状では妥当なものではないかと考えておるわけでございます。いろいろなお話がございましたけれども、たとえば三十四年の末から三十五年の末にかけてのこの屋外労務者賃金調査による上昇率と、それからそれ以外の全然別の、たとえば毎月勤労統計等におきまする日雇い労務者あるいは建設関係の産業賃金の上昇率というようなものを比較してみましても、大体同じになっておるわけでございます。私どもは、この屋外労務者の賃金調査をもとにして、そうしてPWがきまり、それから失対労務者の労務費もきまるということが、決して不当に押えられておる結果にはなっておらないと考えます。やはり主観的な各省同士の話し合いによるよりも、何か客観的なそういう基準がある方が妥当な線が出てくるのではないか、従いまして、現状におきましては私どもはやはりこの線が妥当であると考えております。ただPWのもとになる法律のお話もございました。こういう問題について現状をどう考えるかという問題については、これは検討すべき点がいろいろあると思うのでございまして、労働省といたしましても検討はしておるわけでございまするが、たといどうなるにいたしましても、この失対労務者の労務費予算の編成にあたりましては、何か客観的なそういう基準というものがやはり現状では必要なのではないか、このように考えておる次第でございます。
  53. 五島虎雄

    五島委員 PWそのものではなくて、さいぜん申しました政府に対する不正手段による支払請求の防止等に関する法律、二十五年にこれは廃止されました。そうして一般職種別だけが残っている。そうして二十五年に廃止されるとき、その法律第百九十号の提案理由がどうだったかと思って調べたところが、こういうように当時の提案理由の中に説かれておるのです。相次ぐ統制額の撤廃により、漸次その存在の基礎を失ってきた、他面この法律制定の根拠になった覚書を廃止する旨の覚書が、連合国軍最高司令官から本年一月四日付で発せられた、しかしながら政府直傭の連合国軍関係労働者、及び公共事業関係労働者に対し、一般職種別賃金を支払う必要があります。また国などを相手方とする契約に基づく工事の完成、物の生産、役務の提供等に関係ある労働者に対する一般職種別賃金支払いの原則は、昨年七月、三十二回国際労働会議——これはいわゆるILOの九十四号条約ですが、ILOの九十四号条約で、採択され、わが国もその原則を別個の法律として制定すべき時期にきていると考えられる、この法律廃止にあたってその旨を明らかにすることが適当と考えられます。こういうように提案理由説明の中で述べておられる。そうすると、これは非常に重要なことであって、政府を一方の相手方とする契約においては、公契約の場合は働かせる労働者に対する労働条件等々は明細に規定して請負をさせるのだ。今ではそういうことはないようですね。今ではそういうことはないものだから、さっきから説明するように、公共事業における賃金が、福岡では男三百円から三百五十円、女二百二十円から二百八十円というように、ちょっとおかしな現象が出てくる。これはまだそちらで調べてないと言われるのですが、大体こういうことは間違ってないと思うのです。そういうようなことで、労働賃金が非常に下回り、あるいはダンプ・カーのように、長時間働いて賃金が上がらないから睡眠不足になって、そうしてぶっつけて社会を騒がせる、あるいは迷惑をかけるというような事態も発生するのじゃないか、こういうようにいわれている面もあります。いろいろそういうように、請負者と労働者、施工主と請負者というような関係が悪循環をするのじゃないか、従って、ILOの九十四号条約が締結されている関係で、そこで、すみやかにこういうことは国際条約に基づいてこれらが明確になるようにしなければ、いつまでも労働者賃金というものは明確化しない、こう考えるわけです。  それからもう一つは、その残ったPWの問題については、今言いましたように、明らかに公契約の法律を制定する前の日までこれが有効であるというようになっているわけです。それで、大臣がおられるのならば、こういうような法律政府自身が作っていかれる気持があるのかどうかということを聞きたかったわけですけれども、これを局長にその意見を聞いておきたいと思うのです。   〔藤本委員長代理退席、柳谷委員長代理着席〕 これを廃止する法律提案理由には、すみやかに法を制定する必要があると述べられておるわけです。ですから、どうして私がこのことについて今日特に何か関係のないようなことについてPWの問題を持ち出したかというと、これはめぐりめぐって彼らが失業した場合の、四百八十円を限度とし、あるいはそれを上下するか、あるいは二百八十円を上下するかというような、賃金に重大な影響があるから、私はあえてこれを聞くわけですけれども、その法の制定をする気持はあるのかどうか。それからまた、さいぜんの答弁によって何らかの基準が必要であろう、こういうように言われた。私はいろいろの問題について基準は必要だと思う。従って、政府が国のあらゆるセンサスを作って、そうして調査されて、いろいろの統計を統計規定によって作られなければならぬ。その統計を基本としてもいろいろの問題が利用できると思うのです。それを直ちに一般失対、緊急失対は八掛でなければならぬとか九掛でなければならぬとかいうように、一割も二割もこれを下回る。失対の労働者は一生懸命働かしておきながら、一般職種別賃金収入よりも二割は安くてもいいんだというように、一般失業者の生活を二割切り下げて蔑視しているのじゃないか、こういうように思うのです。ただそれが、二カ月とか三カ月日に、新しい健全な職業にどんどん切りかえて就職できるような状況ならばいざ知らず、五年間も十年間も、もう十年間にもなっているような労働者に対して、二割も一般職種別賃金よりも差別をして、これが君たちの賃金だというようなことは、労働者にとって非常に悲しむべき問題ではないか、こういうように思うから、私はこういうような一連の質問をするわけです。この点について……。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  54. 大島靖

    ○大島政府委員 PWの制度の存廃の問題につきましては、従来からいろいろ御議論のあることで、私どもも慎重に検討しておるのであります。たとえばPWの制度が直接適用のありまする公共事業の政府直轄事業につきましても、PWの制度を廃止いたしますとしましても、やはり何かよるべき基準が必要なことは、国家予算の執行の問題でありますから当然出てくる。また先ほど職業安定局長が申し上げましたように、失対賃金の算定の基準としても、何かよるべきものが必要だ、こういった関係で、かりにPWの制度を廃止するにいたしましても、かわるべき代替方式というものが必要なので、こういう点につきましてもいろいろ検討いたしておるのでおりますが、先生が御指摘の存廃の御論拠につきましても、私どもも十分心にとめまして、今後PWの存廃の問題ないしはこれにかわるべき代替方式の問題をさらに慎重に検討を続けて参りたいと思います。  なお公契約の問題につきましては、わが国の企業の実態が、大企業と中小企業で非常に大きな労働条件の格差がございます。今直ちにこれを実施することについては非常に問題も多かろうと思います。この問題につきましても、なお慎重なる検討を要するものだ、かように考えます。
  55. 山本猛夫

    山本委員長 大原亨君。
  56. 大原亨

    ○大原委員 今のPWの問題なんですけれども、このPW方式を採用する結果出てくる矛盾、こういうものは私はたくさんあると思うのです。そういう出てくる矛盾をあなたらは認めていますか。いかがです。
  57. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま申し上げましたように、PWの制度の利害得失あるいはこの制度の存廃の問題についていろいろ御議論もあるわけでございますが、これらの点総括いたしまして、いろいろ検討いたしております。ただ先ほど申し上げましたように、廃止するといたしましても何らかの代替方式が必要なのでありまして、それらとの相対関係もございますので、今後とも検討を続けて参りたいと思います。
  58. 大原亨

    ○大原委員 私は今までの御答弁を聞いておりまして、全然納得できない。日々雇用の関係で失業対策事業として今日まで約十年間やってきたわけですが、日々雇用の形式で十年間も続いている、そういうところに非常に大きな社会問題が発生をしている、こういう一つの現実があるわけです。それじゃ国がやる失対聖業の本質をどう理解するのか、こういうことになってきて、たとえば生活保護との問題を考えてみると、四人家族であれば、東京では大体一万一千円くらいにはなるでしょう。失対事業で働きますと、適格基準もあるし、あるいは就労日数の制限もあるし、そういうものと関連しまして非常にたくさんの問題が出るんじゃないかと私は思う。大蔵省の予算折衝の過程においても、私はおそらく逆に大蔵省からやられたと思うのですけれども生活保護には、客観的な基準、客観的な基準と先ほどから言っておるけれども、やはり最低生活についての基準があるわけです。失対事業についてPWとか、その他そういう公共事業の関係あるいは、失対事業に対する規制というもので、ぐるぐるあらゆる面から規制をいたしまして、そうしてこれをストップするような方式になっておるわけです。私は客観的な基準は最低生活を保障するということだと思うのです。国がやっておる事業であって、しかも十年間もかかっておるのですからね。だから、それは安易な方法からいけば、政府賃金をきめる基準といたしまして、できるだけ低くきめるような基準があるわけですけれども、じゃどういう方法かといえば、私の方法は、やはり失対事業であっても、憲法二十五条によって社会保障制度の一つの方式としてやるんだから、最低生活については保障するような責任がなきゃいけない。きょうは労働大臣は要求しておるのに来てないから私は質問が続けられないけれども、あとで十分時間をかけてやりたいと思うけれども労働大臣はいつも出席しない。労働大臣は、法案が上がろうというのに出席しないということはけしからぬと思う。委員長は、労働大臣を呼んでいるのにどうしたんだ。
  59. 山本猛夫

    山本委員長 大原君に申し上げます。労働大臣は、ただいま政府委員室を出ましたから間もなく参ります。どうぞお続け下さい。
  60. 大原亨

    ○大原委員 最低生活だけは保障するという方式で国が仕事をやらなければ社会問題は解決しないですよ。所得倍増もくそもないのですよ。この問題については、私は、これからILOその他の問題に関連して、国際的な常識とも関連しまして、そういう政策のインチキ性を徹底的に明らかにしたいと思う。だから、こういうPWというような方式で、制度で押えるというのでなしに、最低生活を保障して、しかも十年間もたっておるんだから国がきちんとやるということが必要なんだ、そういうことをやらなかったら政策の進歩というものはないのです。私は決して客観的な基準がないとは言わない。客観的な基準は最低生活を保障することである、こういうふうに私は考えて、PWはすみやかに廃止すべきである、こういう点を意見として申し上げまするが、これに対しまして御所見はいかがですか。これは労働大臣について何回でも私は重ねて質問いたします。
  61. 堀秀夫

    ○堀政府委員 失対労務者の賃金は、御承知のごとく緊急失対法の第十条に基づきまして、同一の地域において同一の職種に従事する労働者に通常支払われる賃金を基準として定められることになっておるわけでございます。この低賃金原則等について御意見をいろいろ承りました。私どももこれが問題点の一つとして、今後十分に検討はいたしたいと思いますが、失対事業就労者の民間雇用、公共事業等への促進をはかる見地から、現状におきましては緊急失対法十条に基づきまして、このようなやり方で進むことが妥当であると考えております。ただし、ただいま御指摘のいろいろな御意見については、今後十分検討はいたします。
  62. 大原亨

    ○大原委員 その失対事業というのは、地方の自治体においても非常に大きな政治問題になっておるわけです。今やこれは漫然と日を過ごすことはできない、こういう事態がきておると思うのです。その解決のめどは何かと言えば、だれもが納得のできるようなそういう客観的な筋道をつけなければいけない、こういうこと以外にはないわけです。だからこのことについては、私は今までの古いレコードを何回も繰り返すような質疑応答では進まない。たとえば、これから雇用促進事業団の問題も取り扱うし、日雇い健保の問題も取り扱うのですが、しかしそれらを総合して、こういう問題の一つは、日本の低賃金構造はここにあるのですから、三十五万の登録者が日雇いとしておる。それに対して十数年間も無権利状態で、しかも客観的な最低生活の保障もないということにおいて、この問題を解決することはできない。この問題をいつか私は根本的な手段を講じてやらなければいかぬと思うのです。それをやっておけば労働規律とかその他の問題は立つわけです。不正を防止したり、いろいろなことができるのです。労働規律を立てようとしたら、社会問題を解決しなければいけない。この問題はあなたとやりとりいたしましても、あなたの答弁の範囲というものは大体想像ができるわけです。あなたはよく知っていて、しかも自民党の反動政策の範囲の中において答弁されておるのです。それが私はわかるわけです。しかしながら、そういう御答弁では私は納得できないのです。そうでしょう。十年間続けて無権利状態にしておいて、三十数万の人がおって、生活保護よりもそれが低いでしょう。だったらPWという方式を廃止いたしまして、最低生活保障をやるという憲法二十五条の方式で、ここで政策を確立することが何といったって一番当面大切な問題ではないか、この問題をずっと私がやりますと、適格基準の問題がある。失業保険の問題をやったら待期日数の問題がある。それから適格基準だけでなしに、就業日数の問題がある。それから失業対策事業の身分関係の問題がある。こういう問題を私は総括的にやらないと、いくら雇用促進事業団——私は非常に積極的でありますから、雇用促進事業団の質問まで今いたしておりますが、そういうことに至らないと、やはり形を作っても魂を入れないということになる。そういう点によって徹底的に議論しなければ国会じゃない。それは現在社会問題として、自治体等においてもほんとうに因っておる。それは何かといえば、やっぱりそこに問題があるからだ。問題によって解決をしないような、そういう審議の仕方はいけない。そういうところをそっとしておいて、上っつらばかりさっとやるようなことじゃものにならぬですよ。  そのうちに労働大臣が見えるということでしたが、労働大臣、来ないじゃないですか。けしからぬ、こういう重大な問題について、将来どういう面について研究しようかという方向だけでもちゃんとして、次の問題に発展をしていくことにおいて審議の値打がある。労政局長、職安局長、基準局長でやれといったって、この問題は限界がある。だから、この問題はやりとりすれば時間のむだ使いになるから、この問題については、残余の点は保留しておきまして、私の質問は以上をもちまして終わります。
  63. 島本虎三

    ○島本委員 私は今までのPWに関連して、大臣が来るまでの間、局長の責任ある見解を聞きたいと思う。私の質問はいつも簡単ですから、答弁の方は的確にしてもらいたいと思う。  それは北海道の石炭の問題について、皆さんの方では、これは支給する必要ありと思うのですが、これは見合う賃金の積み上げをしておって、その程度でいいと思うのですが、この基本的な考え方を聞かせて下さい。
  64. 堀秀夫

    ○堀政府委員 労働省といたしましては、本年度の予算折衝のときにおきましても、北海道の失対労務者に石炭手当を支給するという案で関係各省と折衝した次第でございますが、本年度は賃金の増加措置ということで決定をいたしたわけでございます。今後においてもさらに努力はいたす所存であります。
  65. 島本虎三

    ○島本委員 もしそうだといたしますと、賃金の問題でなく、石炭の額を幾らとして大体考えておられましたか。その額の点もついでに御発表願いたいと思います。
  66. 堀秀夫

    ○堀政府委員 本年度の予算の要求にあたりましては、冬季におきまして、一人一日百円程度という予算要求をいたしたわけでございます。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 一日一人百円程度というふうにして、大体総計幾らというふうに出されましたか。
  68. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま手元に予算の資料を持って参りませんでしたので、後刻調査の上御報告申し上げます。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 石炭手当ということにして支給するということを考えておったということはわかりました。しかし、残念ながら、皆さんの努力は十分だったのですが、これは大蔵省の認めるところとならずして、みな一人平均二十円くらいのことで妥協せざるを得なかったというのが、苦しい皆さんの状態でなかったかと思うのですが、大体その通りですか。
  70. 堀秀夫

    ○堀政府委員 先ほど申し上げました通り、今後における一つの足がかりとして、とにかく相当の改善になるわけでございますから、私どもはそれで了承した次第でございます。今後においてもさらに努力は継続いたします。
  71. 島本虎三

    ○島本委員 今後においてやるということは、前に労働省が当然考えた、世帯として、これを公務員に支給されておる面がございますが、それを参考にして、やはり少なくとも一万八千円くらいは一世帯が年間たいておりますから、それだけの額は一応算定として考えておったのではないかと思います。そういうように考えても差しつかえない問題だと思いますが、これはどうでしょうか。
  72. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま本年度の当初の予算の要求を持ち合わせておりませんので、なるべくそのような趣旨に基づきまして検討いたしたいと考えております。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 この問題につきましては、まだまだ要領を得ませんし、これは大臣が来るまでの間暫定的に、犠牲的に質問しておるので、今回私が残念ながらこの困っている暗い谷間にある人を代表して言えなかったという責任は、大臣がおそく来たということに一にかかっているわけです。今後この問題につきましては日をあらためて十分検討して、皆さんとこれを討論申し上げたいと思います。それまでの間にはっきりした資料を整えておいて、私をして失望させないような準備だけは十分考えておいてもらいたい。これだけ申し上げまして、私はこの質問を一応保留ということにしてやめます。
  74. 山本猛夫

  75. 小林進

    小林(進)委員 大臣に一点だけお伺いをいたしておきたいのでありますが、それは離農者に対する処置の問題でございまして、農業基本法はまだ審議中で発動していないようでありますけれども、現実においては農村における離農、兼業、第二次、第三次産業に流れていく人員というものは非常に多いという傾向が生じているのでございますが、これに対して大臣は一体どういうようなお考えを持っておるのか、政府の農業基本法の第二十条には、就業機会の増大と銘打って、「農業従事者及びその家族がその希望及び能力に従って適当な職業に就くことができるようにするため、教育、職業訓練及び職業紹介の事業の充実、農村地方における工業等の振興、社会保障の拡充等必要な施策を講ずるものとする。」という規定が織り込まれているわけでございます。私どもは社会党の立場で、農村における離農者、零細農家の跡始末はもう農林省ではどうにもならない、だから一つ厚生省におまかせをする、労働省におまかせをする、こういう政府のお考えであるというふうに考えておるのでありますが、この農業基本法の第二十条に従って、労働省としてはこれを受けて立つ態勢が私はでき上がっていなければならないと思うのでありますが、今どういうような施策を具体的にお進めになっておりますか、お伺いをいたしたいのであります。
  76. 石田博英

    ○石田国務大臣 大体三十五年度から四十五年度まで十一カ年間に、農村人口から実質的に第二次、第三次産業へ移って参ります数は二百二十万前後と計算いたしております。農業における就業人口の減少というものは、約一千万前後になるわけでありますから、五百万近いものが減少するわけでありますが、しかしその中には離退したり死亡されたりするということが計算されますし、また新規学校卒業者の農業への参加ということも考えられますから、実質的には二百二、三十万前後と考えておる次第でございます。これは意識的に農業から離れて二次産業、三次産業へ移すというのではなくて、二次産業、三次産業労働条件がいいということから、そして労働力の吸収力があるというところから、そちらへ流れていく人口と理解をいたしておるわけでございますが、そういう場合に農村の移動していきます人々が有利な条件をつかめますようにいたしますためには、まず第一に職業訓練の実施が必要でございます。これは今の二百二十万という人々に見合う訓練計画を立てておるわけでありまして、現在でも総合及び一般職業訓練所の約半数は農家、第一次産業の子弟であります。まず第一に職業訓練を充実して参りたい。  それから第二には、やはり国内における低開発地帯の開発計画と相待ちまして、近代的産業を農業の地方に分散して発達するようにいたさなければならぬわけでありますが、しかしそのためにもやはりそれに応ぜられる技術を附与していく、この点に中心と重点を置きまして、文部省所管の一般教育と呼応いたしまして、まず新規学校卒業者をそういうところに向けるように、ひいてはそうでない人々もいわゆる転職訓練を受けられるようにということに施策の重点を置いて、今計画と準備を進めておる次第でございます。
  77. 小林進

    小林(進)委員 この問題につきましては、大臣が三十六年二月二十三日の衆議院本会議場において、自民党の農業基本法に対する質疑にお答えになっておる答弁とやや似ておるのでありますが、ただ現在、大体四十五年までに二百三十万前後とおっしゃいましたが、二十三日には二百四十二、三万と数字をお表わしになっている。十二、三万名の数字の違いがありますから、こういうことはやはり大臣の権威に関しますから、そういうお間違いのないように一つ御注意をいただきたいと思うのでありますが、それにいたしましても、これから流れていく離農者は、大臣も御存じのように新規卒業者が少ない。大臣のよく言われる中高年層が、今日の状態では季節労働、自由労働の形で中小企業に流れて参りまして、これからの農村の問題は、むしろ新規卒業者が農村に不足をするという問題があるわけです。時間がありませんから、私は質問の形でやらないで、私も調べた数字を申し上げておるのですから、これは局長、間違っていたら首を振ってお教え願いたいのですが、今年度の新規就労者は百三十万前後ですか、そのうちで農村で新しく農業に従事した者、就職した者が十五万前後、そうすると百十万前後の方々が新規卒業者の中から第二次、第三次産業に流れていく。農村に新規卒業者が十五万くらいしかとどまっていないというところに、将来の農村にむしろ大きな問題が出てくる。同時に今度は中高年層の中には、少なくとも農業従事者と銘打つからには、一年を通じて二カ月以上農業に従事した者が農業従事者といわれておるのでありますが、この階層からもまるで潮が引くように、職業を求めて、季節労働者となって、中小工業、零細業者に流れていっている。同時にそのほかに農業従事者と銘打たない者、いわゆる一年を通じて二カ月も農業に従事し得ない、潜在失業者といいますか、あるいは自由職業といいますか、こういう人たちが農村に滞留している、これは五百二十万いる。この人たちも全部職を求めて、そして農業基本法におどかされながら、今職業を求めて彷徨しているという、こういう現状でございますが、私はその長期の問題と短期の問題の解決と、二つを大臣に伺いたい。  今季節労働者となって流れていっている諸君の失業問題——やがてはこれは失業するのです。これは三カ月なりあるいは六カ月なり働いて、また春耕と同時に帰ってくる。こういう方々の失業問題、これは今現在手を打っていただかなければならぬ問題ですが、こういう者の失業の手当、保護政策が一体十分にいっているかどうか、やるお考えであるかどうか。  それから長期の問題としては、私は今大臣が言われたその計画は了承いたしまするけれども、これはやはりプランだけじゃいけないのでございまして、これを一体どう具体化するのか。たとえていえば、近代産業の地方分散を行なうとおっしゃいましたが、その分散を行なうために、どういう具体的な計画をお持ちになって、どういうふうにこれを予算化されるか。しかも職業訓練所もふやすとおっしゃる。こういうことは当然今年度の予算に出てこなくても、八月からのいわゆる労働省のおやりになる予算の中にこれが現われて、来年度の計画に出てこなくちゃならぬと思いますが、一体そういう態勢を大臣はお考えになっているのかどうか、この二点、長期の対策と今の短期の対策の二つを一つお伺いいたします。
  78. 石田博英

    ○石田国務大臣 農村から出て参ります労働力、その相当部分が日雇いとか臨時工とかいうような形で現在存在しておる事実は、やはりその通りだと思います。とれに対する失業保険制度は、短期九カ月のものについて制定せられておりますことは御承知の通りでありますが、それよりもう少し根本的に、やはり現在の臨時工制度あるいは社外工制度あるいは日雇い制度というもの自体について、基準法との関連におきまして、具体的な対策を講ずる必要があると考えております。これは目下鋭意検討を命じておるところであります。  それから長期的には、もう一つは、これら労働力はやはり第二次産業、第三次産業の需要に応じて移動するわけでありますから、季節的な面による短期的失業ということは、それはあると思いますけれども、しかし全体的にその需要が減らない限りにおいては、その需要に応ぜられる余地は続いていくと思います。ただ若い人と違って、いわゆる職業の再訓練の機会が  機会は同じでありますけれども、実質的になかなかむずかしい。そこで中高年令層が職業訓練も受けられて常用雇用に入り得られるような訓練所の運営を心がけたいと思っております。農山村向けと申しますか、そういう地域における一般職業訓練所は、昭和三十五年度におきましては十四カ所、三十六年度におきましては十八カ所予算化いたしておるわけであります。しかし、実は各地方の自治体における希望はもっと高いものでございまして、私どもといたしましては、各地方に盛り上がっておるその空気を逃がさないように、次の機会に善処いたしたいと思っておる次第であります。恒久的にはそういう計画でいたすつもりであります。  それから先ほど非一次産業へ転換する人口を、十一年間に二百二、三十万と申しました。先般は二百四十三万と申したことも事実であります。若干数字の記憶力に劣るところをおわび申し上げます。
  79. 山本猛夫

    山本委員長 滝井君。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 これは附帯決議にしてもらいたいところでしたが、少し話に夢中になって忘れたんですが、実は東北地方から北海道に多数の農業労働者が行くわけです。かつてこれらの季節的な労働者には多分失業保険が適用されておったんじゃないかと記憶しておったのです。しかしその後多分三カ月に失業保険を変えるときに、それらのものは除外をされてしまったんじゃなかったかと記憶するのです。あるいは私の記憶間違いかと思いますが、これらの農業労働者に失業保険を適用してくれという要望は非常に強い−わけです。これに対して、先般個人的にいろいろお尋ねしたときには、政府は、それらの基準について検討中だ、近くそれらの農業労働者については失業保険の適用を実施したいという意向の表明があっております。その後この農業労働者の失業保険の適用の問題はいかように進展をしておるのか、それについて明白にしておいていただきたいと思います。
  81. 石田博英

    ○石田国務大臣 ただいまの滝井さんのお話は、北海道でよく聞く話でありまして、かねてから要望、御議論があることであることはよく承知いたしております。これは、失業保険法の第八条における、第六条各号の事業主以外の事業主の行なう事業ということに該当いたしまして、労働大臣の認可事項になっておるわけであります。従って、ただいまこの点につきまして実態調査を進行中でありまして、その実態調査の結論を待ちまして善処いたしたいと存じます。実情はよく承知いたしておる次第であります。
  82. 山本猛夫

    山本委員長 八木一男君。
  83. 八木一男

    ○八木(一)委員 労働大臣に簡単に御質問申し上げます。前にも滝井委員から触れられましたけれども、もう一回ちょっとその問題について伺いたいと思いますが、失業保険法は、五人未満の事業所にまだ今強制適用がないわけです。五人以上の事業所でも、失業保険、また労働関係ではございませんが、健康保険が、強制適用ではありながら漏れがあるという点がありますのを、やはり五人未満を全部強制適用にすることによって、そういう事業所の関係者が全部健康保険が適用されるという認識が深まりますと、結局そういうような漏れがなくなると思います。それと同時に、五人未満の事業所に失業保険、健康保険が必要だという要件の方が先でありますが、そういう意味で強制適用への道を進めていただく必要があると思います。今すぐといってもこれは無理でございまするが、非常に労働大臣は労働行政に御熱心なことでございまするので、そういう点について前進的な方向で、緊急に、一生懸命御検討願って、次の国会にはいい議案を出していただきたいと思います。そういう点についてのお考えを伺いたいと思います。
  84. 石田博英

    ○石田国務大臣 五人未満の事業所に対する失業保険の拡張適用は、前に私が労働省におりましたときにいたしたのでありますが、これを効果あらしめますためには、今八木さんのおっしゃったように、それ以上のものに完全に強制適用をするということがやはり前提だろうと思います。そういうことがあって初めてそれ以下のところに影響が及んでくるのでありますから、ただいま御議論の御趣旨に沿いまして検討を続けておる次第でございます。
  85. 八木一男

    ○八木(一)委員 今の御答弁非常にけっこうでございますが、われわれ期待いたしてお待ちをいたしております。  もう一点でございますが、これもこの前滝井委員から御指摘があったものでございまするが、山林関係の労働者や漁業関係の労働者が、やはり失業保険について非常に希望しておるわけでございます。その中にいろいろな業態があると思いまするが、もちろん季節労働者にも必要でございまするが、季節的でなしに、日雇い形態であるけれども、そういう林業の方に働いているという労働者がたくさんおるわけです。両方とも考えていただきたいのですが、特に山林労働者などの失業保険の適用について前進的に一つお考えをいただきたいと思います。そうして次にまた私どもの期待するような法案なり方策なりぜひ出していただきたいと思いますが、それについての労働大臣のお考えを伺いたいと思います。
  86. 石田博英

    ○石田国務大臣 大体問題は先ほどの滝井さんの御質問と同性質のものだろうと存じます。山林業に従事しておる労働者の実態を、私も実は山林県の出身でございますので、よく承知いたしております。さらに、御指摘がございませんでしたが、一人親方というような業態のものをも含めまして、この問題の処理について検討を加えたいと存じておる次第であります。
  87. 八木一男

    ○八木(一)委員 最後に一言申し上げます。  今度は日雇い労働者関係の失業保険の部分を主体とした改定でございますが、失業保険全般について、たとえば国庫負担をもとに戻して、給付の期間の延長と金額を引き上げる、あるいは適用を拡大するということについて、労働大臣から前進的な御検討の御回答をこの委員会の審議を通じていただいたわけでございます。それについて、少なくとも次の通常国会においてりっぱな成案を得ていただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  88. 山本猛夫

    山本委員長 これにて両案についての質疑は終局いたしました。     —————————————
  89. 山本猛夫

    山本委員長 ただいま委員長の手元に、齋藤邦吉君、小林進君及び井堀繁雄君より、内閣提出失業保険法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されております。
  90. 山本猛夫

    山本委員長 修正案の趣旨の説明を聴取いたします。齋藤邦吉君。
  91. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました失業保険法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。  今次国会には、政府から失業保険法の一部を改正する法律案提出をされておるわけでありますが、最近における労働者賃金実情を見ますと、日雇い労働者賃金のみならず、一般労働者賃金も向上いたしておりますので、この際、一般失業保険についても改正を加え、最高給付額の引き上げを行なうこととするとともに、政府提出法案において三段階制とされておりまする日雇い失業保険金日額について、第三級の等級を廃止し、二段階制とし、その給付額の引き上げを行なうことといたしたのであります。  以上がこの修正案を提出いたしました理由でありますが、その要点を御説明申し上げますと、まず、修正の第一点は、政府提出法律案におきましては、一般失業保険における最高給付額に関する改正規定は設けられておりませんが、現行三百円となっております。しかし、この三百円は、失業保険金額の自動的変更の措置により、現在五百九十円とされておるのでありますが、この最高給付額を七百円に引き上げるというのが修正の第一点でございます。  修正の第二点は、日雇い失業保険につきましては、賃金区分に応じ、すなわち四百八十円以上の賃金区分の者と二百八十円以上四百八十円未満の者と、第三級といたしまして二百八十円未満の者と、この三段階の賃金区分に応じて、それぞれ保険金日額並びに保険料を規定をいたしておるのでありますけれども、この際これを二段階にいたそうというのでございます。すなわち第三級を廃止いたしまして、賃金区分を第一級は四百八十円以上の者、これにつきましては保険金日額三百三十円、保険料十六円とし、第三級を廃し第三級と第二級を統合して、四百八十円未満の者についてはすべて二百四十円の保険金日額、保険料十二円にいたそうというのでございます。  以上が修正の内容でございます。何とぞ各位の御賛成を得たいと存ずる次第でございます。
  92. 山本猛夫

    山本委員長 修正案についての御発言はありませんか。     —————————————
  93. 山本猛夫

    山本委員長 御発言がございませんければ、次に内閣提出失業保険法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 山本猛夫

    山本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  これより採決いたします。  まず、内閣提出失業保険法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  95. 山本猛夫

    山本委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  96. 山本猛夫

    山本委員長 起立総員。よって、内閣提出失業保険法の一部を改正する法律案は、齋藤邦吉君外二名より提出の修正案の通り、修正議決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 山本猛夫

    山本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  次会は、明十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十六分散会