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井堀委員 時間の制約もあるようでありますから、ごくしぼって
お尋ねをいたしたいと思います。
本法案は、
立法精神にも明らかでありまするように、
中小零細企業のもとに働く
労働者のための
退職金の
積み立て制度でありますことはきわめて明確でありますが、
本法の今回の
改正案を
検討いたしますと、二、三了解しがたい点がありまするので、
お尋ねをいたしたいと思うのであります。大体五つくらいにしぼって
お尋ねをいたしたいと思っております。
一つは、
改正案の中心をなしておりまする
適用範囲の
拡大と、
国庫の
補助金の一部を
拡大された点でありまして、その
趣旨には全く
賛成であります。ただ
本法の目的とするところの
中小零細企業の
労働者に対するこの
制度の
運営といたしましては、この
改正は不徹底であるのみならず、矛盾を感じまするので、この点を明らかにいたしてもらいたいと考えます。第二に
お尋ねいたしたいと思いますのは、
予備金の
運営についてであります。第三は
事業団の性格並びに
運営について二、三
お尋ねをいたしたい。四番目には
審議会の
運営について
お尋ねをいたしたい。そして最後にこの
制度と
労働省の
中小零細企業に対する
基本的な
方針等を
お尋ねいたしたいと思うのであります。
まず
本法の
精神に立脚いたしまして、この
法案の
改正が
段階的に行なわれますることは、
立法当初にあらかじめ
約束されたことであると思うのであります。その
約束に基づいて漸次
改善が行なわれていくということは、われわれの最も歓迎するととろでありますが、具体的に
検討を試みますと、百人から二百人に
適用範囲を
拡大した点であります。ことに
サービス業や商業などに対する三十人を五十人に引き上げた、この点はいずれも日本の
中小零細企業の
実情を十分把握しておるものであるかどうかという点に
疑いを持つくらいであります。事実につきまして正確な
統計を得ることは困難であるといたしましても、概観することはできると思うのであります。たとえば
就業構造基本調査に現われておる数字だけをここに引用いたしましても、非
農林関係の
雇用労働者一千九百六十五万と発表いたしておりますが、そのうち百人
未満、すなわち一人から九十九人までのものが九百十八万をとえておるのです。百人以上の
事業場はわずかに六百万ちょっとであります。そのほかに
官公庁関係のものが四百二十万、こういう
データですが、かなり
信憑力のあるものと思うのであります。こういう実数から見てみますと、百人
未満、特に九人
未満三百六十万、十人から二十九人までが二百九十六万、すなわち三十人
未満の
零細企業がいかに多いか。そしてこの
人々が、この
立法精神にもありますように、独力で
退職金制度を持ち得ないという事実にかんがみて、その
保護政策として発足したことは事えない事実であります。でありますから、本来の
精神を貫きまするならば、
適用範囲を
拡大するということについては二の
段階、三の
段階において考えらるべきものであって、まずこの三十人
未満の、社会的、経済的あるいは政治的に及ぼすこういう客観的な諸情勢から判断いたしましても、
労働行政としてはこの部門に主力を注ぐべきではないか。もし
改正を行なうならば、そういうふうになすべきではなかったか。特に今度の
改正の第二の
眼目でありまする
国庫の
補助金を見ましても、きわめて零細な
金額でしかあり得ないのであります。これも
増額をするというのでありますから、
傾向としては私は好ましい
傾向であると思うのであります。しかし側々にはいろいろ
意見の相違はあるといたしましても、ごく
少額な
金額の
補助金をふやそうというのでありますから、いずれに
重点を置いて行なうべきかというととは、
法改正の場合のきわめて大切な
労働省の
態度でなければならぬと思うのであります。こういう点から考えてみましても、三年半までの掛金は、いずれもこれを二年に引き上げるというのでありますから、この点も漸進的ではあるが、
一つの進歩的な姿としてわれわれは好感を持てるのであります。しかしこの際も、先ほど引例をいたしましたように、
中小零細企業の実態を正確に把握しておくならばこういうことにならなかったのではないか。それは、これも
データを
一つ参考にしてみるべきだと思いますが、適当な資料がございませんから、
労働省が
立法当初において強調されました
昭和二十九年の
臨時調査に基づく
データがこの際比較的役に立つと思うのでありますが、それを
規模別に見ていきますと、
勤続年数がはなはだしく相違してきております。たとえば十人から二十九人、三十人
未満のつかみ得る
データだけを見ましても、平均いたしまして全産業が六・三年になっておるのに対して三・八年弱であります。それが漸次
規模が大きくなる、すなわち百人以上になるとぐっと成績が高くなってくる。また
定着率なんかを見ましても非常に大きな開きがあるのでありまして、こういう
雇用の
定着率などから判断をいたしましても、
零細企業の
労働者がいかに不安定な
雇用の
状態に置かれておるかということが一見明瞭であります。でありますならば、その
実情に沿うべく
法改正が行なわれていくことが、きわめて
少額なしかも貴重な
国庫の
補助金を分布する場合に、重要な考慮を払うべき点ではなかったか。こういう点が全く無視され、軽視されておるということは、
本法の
立法精神にそむくとまではいかなくても、
十分理解をした
態度ではないのではないか。この辺に対して、われわれはどうしてもこの
改正について
重点をはずした感じが強いのでありますが、これは全体にも影響を持つことでありますから、
一つ労働省のこれに対する見解を明らかにしてもらい、あるいは将来この点に対してどのような
方針を持っておいでになるかも伺っておきたいと思います。