○尾村
政府委員 次々と進展する世界のこういうような研究に対する問題でございますが、結論から言いますとわが国が若干見通しがおくれをとったということは、率直に申し上げまして申しわけないことと思っております。と言いますのは、実はわが国の
小児麻痺の流行の年次の推測を年々しておるわけでございますが、三十三年ごろからもうすでにある程度の増加があり、従ってこれの対策を立てなければいかぬということで、三十三年度におきましては
予算を組みまして、まずこれの研究とともに、今使っておるソーク・
ワクチンの製造、研究にすでに着手いたしたわけでございます。三十四年には先ほど言いましたように
国立予防衛生研究所自身でモデル・プラントを作りまして、常に製造、研究と両方並行しているわけでございます。そこで六社の技術員を教育いたしまして、三十五年度からこれの民間生産に入ったということでございます。これは着々とやっておったのでございますが、その当時の見通しとしては、三十五年に急激に前年の二倍にもわたる大流行があるということは、だれも予測の説が出ておらなかったのでございまして、大体今の傾向でちょうどうまく防遏ができるということであった、そういうととろへああいう
事情が起こったわけでございます。そこでいわゆるソーク・
ワクチンに対するいろいろな研究、指導、
検定、こういうことで最近までは一ぱいの計画できておったわけでございます。そこで今度なま
ワクチンの問題が出て参りまして、これは三十四年度から、そのごく一部でございますが、長岡市を中心にいたしまして小量のなま
ワクチン人体投与
試験を実はやったわけでございます。これは国の責任でやらないといけませんから、予防衛生研究所の方が一部やりまして、これはそれなりの投与の副作用のない実験だけは済ませたわけでございます。昨年の秋、ソ連から十万人分の製造を終わったものが入るということで、これは決して国境の差でお断わりしたのでも何でもなく、わが国の研究陣営の
体制というものが、入ったからといってその場でできるものではなくて——当時から私
どもの方では計画をいたしまして、先ほど申しましたようにようやく十二月の下旬に、全国の関連のある権威者の合同的な研究
体制ができ上がった、そこで研究分担をいたしまして、せい一ぱいのととろで
予算をとり、今の発明者それ自体の了解と指定によりまして、われわれとしては最短期間に入った方である、実はこういうふうに結果から見て思っております。今言いました時期に入って、そして予研がこのような
体制をようやく整えて始めた、こういうことでございまして、実をいいますと予研なり各大学研究室なりも年度の途中でございまして、途中から開始するのは相当無理があった。といいますのは、予研から、先ほどいいましたようにどんどんやらなければならぬ
検定に、研究者を全部動員いたしまして、ほんとうをいいますと昼夜を分かたずという状況で、さらに責任重大な研究をかたわらやらなければならぬ。もちろん人員を雇い上げたり、いろいろな
方法は講じておりますが、これは非常に高度の研究でございます。ただ人夫を集めるというようなわけにはいかぬ。実はわれわれとして机上でいろいろ
予算さえ取れれば、ハッパをかけるのは何でもないことでありますが、現実にやっていただく学者側の
体制に、十分
手当しなければ無理があったわけでございます。さような形で、一般的には世界の
体制よりおくれをとったということは、もうあえてごまかすわけにもいかぬことでありまして、これは今の見通しが若干違っておったということでありまして、今後このスピードを取り返すには、われわれ
政府側としても、これにタッチする研究陣営の方々の御協力を願わなければ何もできないということであります。そういうことで大体意見一致いたしまして、今非常なスピードを上げていただいておる、こういうことであります。