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1961-03-09 第38回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月九日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 山本 猛夫君    理事 大石 武一君 理事 齋藤 邦吉君    理事 永山 忠則君 理事 藤本 捨助君    理事 小林  進君 理事 滝井 義高君       小沢 辰男君    大沢 雄一君       藏内 修治君    佐伯 宗義君       櫻内 義雄君    田中 正巳君       中山 マサ君    福田 繁芳君       松山千惠子君    赤松  勇君       淺沼 享子君    大原  亨君       河野  正君    五島 虎雄君       島本 虎三君    中村 英男君       井堀 繁雄君    本島百合子君  出席政府委員         厚生政務次官  安藤  覺君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚生事務官         (薬務局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童局長)  大山  正君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      畠中 順一君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局次長) 山本太郎君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月三日  委員大原亨辞任につき、その補欠として田中  織之進君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田中織之進君辞任につき、その補欠として  大原亨君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員藏内修治辞任につき、その補欠として稻  葉修君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員稻葉修辞任につき、その補欠として藏内  修治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月三日  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する  法律案内閣提出第一三二号)  年金福祉事業団法案内閣提出第一三三号) 同月四日  児童扶養手当法案内閣提出第一三九号) 同月六日  緊急失業対策法改正に関する請願仮谷忠男  君紹介)(第一〇三八号)  同(楯兼次郎君紹介)(第一〇三九号)  同(橋本龍伍紹介)(第一〇四〇号)  同(上林山榮吉君紹介)(第一〇五五号)  同(福家俊一紹介)(第一〇五六号)  同(松山千惠子紹介)(第一〇五七号)  同(下平正一紹介)(第一〇七一号)  同(杉山元治郎紹介)(第一〇七二号)  同(山口好一紹介)(第一〇七三号)  同外一件(齋藤邦吉紹介)(第一〇八六号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第一〇八七号)  同(有馬輝武紹介)(第一一〇〇号)  同(赤澤正道紹介)(第一一二五号)  同(小澤太郎紹介)(第一一二六号)  同(草野一郎平紹介)(第一一二七号)  同(倉石忠雄紹介)(第一一二八号)  同(宮澤胤勇紹介)(第一一六九号)  同(森田重次郎紹介)(第一一九三号)  同(濱田幸雄紹介)(第一一九四号)  同(田中彰治紹介)(第一二〇七号)  同(安倍晋太郎紹介)(第一二二三号)  同(今松治郎紹介)(第一二二四号)  同(三浦一雄紹介)(第一二二五号)  同(中馬辰猪紹介)(第一二二六号)  同(徳安實藏紹介)(第一二五八号)  日雇労働者健康保険法改善に関する請願(三  宅正一紹介)(第一〇四一号)  同外六百三件(野原覺紹介)(第一〇七四  号)  同外三百九十九件(野原覺紹介)(第一〇八  四号)  同外百九十九件(野原覺紹介)(第一二五九  号)  職業訓練法の一部改正に関する請願三宅正一  君紹介)(第一〇四二号)  理容師法の一部改正に関する請願大石武一君  紹介)(第一〇五八号)  同(澁谷直藏紹介)(第一〇八五号)  同(永山忠則紹介)(第一一二九号)  同(永山忠則紹介)(第一一八二号)  同(小林進紹介)(第一一八三号)  医療費引上げ分全額国庫負担に関する請願(櫻  内義雄紹介)(第一〇五九号)  理容師法及び美容師法の一部改正に関する請願  (田中榮一紹介)(第一〇六〇号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(田  中伊三次君紹介)(第一〇六九号)  同(秋山利恭紹介)(第一〇七〇号)  同(服部安司紹介)(第一一六八号)  同(岡本茂紹介)(第一二〇六号)  同(中馬辰猪紹介)(第一二二七号)  墓地、埋葬等に関する法律の一部改正に関する  請願大橋武夫紹介)(第一〇八一号)  同(澁谷直藏紹介)(第一〇八二号)  同(河野正紹介)(第一二三一号)  都市清掃施設国庫補助増額等に関する請願外  四百三十一件(滝井義高紹介)(第一〇八三  号)  同(阪上安太郎紹介)(第一一六五号)  拠出制国民年金実施延期に関する請願外八百  十件(高田富之紹介)(第一一〇一号)  社会保険医療改善に関する請願井出一太郎  君紹介)(第一一〇二号)  へき僻地医療振興法早期制定に関する請願(  井出一太郎紹介)(第一一〇三号)  清掃事業強化対策に関する請願井出一太郎君  紹介)(第一一〇四号)  国立三朝温泉病院建設に関する請願赤澤正道  君紹介)(第一一三〇号)  宗教法人立保育施設取扱い改善に関する請願  外二件(海部俊樹紹介)(第一一三一号)  同外二件(海部俊樹紹介)(第一二〇八号)  原爆被爆者援護に関する請願内海清紹介)  (第一一六二号)  同外二件(高橋等紹介)(第一一六三号)  同(松本俊一紹介)(第一一六四号)  同外二件(前田榮之助君紹介)(第一一九一  号)  同外二件(高津正道紹介)(第一一九二号)  同外五件(永山忠則紹介)(第一二五七号)  国立大田病院療養所併存に関する請願櫻内  義雄紹介)(第一一六六号)  精神薄弱者対策促進強化に関する請願中村高  一君紹介)(第一一六七号)  同(小林進紹介)(第一一八四号)  同(野田武夫紹介)(第一一八五号)  原爆被害者援護に関する請願田口長治郎君  紹介)(第一一八六号)  同(中村重光紹介)(第一一八七号)  同(二宮武夫紹介)(第一一八八号)  同外一件(芳賀貢紹介)(第一一八九号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第一二二九号)  同外二件(五島虎雄紹介)(第一二三〇号)  同(小沢辰男紹介)(第一二四八号)  同(岡田修一紹介)(第一二四九号)  同(倉成正紹介)(第一二五〇号)  同(島本虎三紹介)(第一二五一号)  同(中村幸八君紹介)(第一二五二号)  同(長谷川峻紹介)(第一二五三号)  同(柳谷清三郎紹介)(第一二五四号)  同(山中日露史紹介)(第一二五五号)  同(永山忠則紹介)(第一二五六号)  原爆被爆者援護法制定に関する請願外六件(二  宮武夫紹介)(第一一九〇号)  児童収容施設措置費引上げ等に関する請願(中  馬辰猪紹介)(第一二二八号)  化粧品店薬用化粧品等取扱いに関する請願(  大矢省三紹介)(第一二四六号)  同(野原覺紹介)(第一二四七号)  採炭勤労報国隊勤務中の負傷による身体障害者  援護に関する請願海部俊樹紹介)(第一二  六〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する  法律案内閣提出第一三二号)  年金福祉事業団法案内閣提出第一三三号)  児童扶養手当法案内閣提出第一三九号)  予防接種法の一部を改正する法律案内閣提出  第三九号)      ————◇—————
  2. 山本猛夫

    山本委員長 これより会議を開きます。  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案年金福祉事業団法案及び児童扶養手当法案、以上三案を一括議題となし、審査を進めます。
  3. 山本猛夫

  4. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  戦傷病者及び戦没者遺族等援護に関しましては、御承知通り昭和二十七年に戦傷病者戦没者遺族等援護法が制定されて、障害年金遺族年金等支給の道が開かれ、続いて翌二十八年には恩給法の一部改正により旧軍人にかかる公務扶助料等支給されることとなり、さらにその後数次の改正により援護充実及び受給者相互間の公平がはかられて参ったのであります。しかしながら、これらの援護措置については、なお若干の不均衡もあるように考えられますので、種々検討を重ねました結果、別途本国会提案されております恩給法等の一部を改正する法律案と関連してこの法律案提案する運びとなった次第であります。  以下、この法律案の概要につきまして御説明いたします。  まず改正の第一点は、旧国家総動員法により徴用された者等が、もとの陸海軍有給軍属として戦地または事変地以外の地域で勤務している間に業務戦時災害を受けて不具廃疾となり、または死亡した場合において、その者を準軍属として取り扱い、その者またはその者の遺族障害年金または遺族給与命支給することとしたことであります。  すなわち、これらの者は現在、旧令による共済組合軍からの年金受給者のための特別措置法により措置される建前となっているのでありますが、支給要件等関係上、同法による措置を受けられない場合があるのであります。このため、同じ被徴用者等であって戦傷病者戦没者遺族等援護法の準軍属として処遇されている者すなわち被徴用者等であって有給軍属とならずに一般工場に勤務していた者と比べて均衡を欠く場合が生じているので、被徴用者等である非戦地勤務有給軍属を準軍属とし、その者またはその遺族が旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法による年金を受けられない場合には障害年金または遺族給与金支給することとしたのであります。  改正の第二点は、死亡した軍人軍属等が旧民法にいう入夫であった場合、その者の妻の父母遺族年金または遺族給与金支給を受け得べき遺族範囲に加えたことであります。旧民法による入夫婚姻により入夫となった者とその妻の父母との間には、法律上の親子関係はないのでありますが、生活の実態としましては、婿養子と同じような関係にあり、これを遺族範囲から除外しておくことは法の趣旨から見まして妥当でないと考えられるのであります。  改正の第三点は、第四項症以下の障害年金等増額したことであります。これは、別途本国会提案されました恩給法等の一部を改正する法律案による傷病恩給増額との均衡をはかるものであります。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次いで年金福祉事業団法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  御承知のように、本年四月から拠出制国民年金が発足することにより、国民年金がようやく実現の運びとなりましたが、その主柱をなす厚生年金国民年金積立金につきましては、厚生年金においては昭和三十六年度分のみでも一千四十億円の増となり、また、国民年金においても初年度三百億円に達すると推定されております。この両年金積立金運用をどのように行なっていくかは年金制度の今後の発展にきわめて密接な関係を有する問題であり、また、国民がつとに重大な関心を寄せているところであると存ずるのであります。  政府といたしましては、これらの積立金が、被保険者事業主から集められた零細な保険料の集積である点にかんがみまして、かねてからその性格にふさわしい運用方法を種々検討いたし、また、資金運用部資金運用審議会社会保障制度審議会国民年金審議会などの各種審議会の御意見もあり、昭和三十六年度におきましては、積立金を被保険者福祉増進のために連帯する一つ方法として従前から行なわれている厚生年金還元融資と、さらにこれとほぼ同様の性格において新規に開始いたします国民年金特別融資とのワクを、積立金増加額の二五%、すなわち厚生年金国民年金を合わせて三百三十五億円に増額いたしたのであります。  しかしながら、従来から行なわれております厚生年金還元融資のうち地方公共団体を通じて民間に転貸される部分は、この転貸という方式に伴い融資先等におのずから制約がある等種々の不合理な点があるのであります。これを改善し、環元融資及び特別融資を円滑に実施するため年金福祉事業団設置せんとするものであります。すなわち資金運用部から資金を借り入れて、これを直接厚生年金国民年金及び船員保険の被保険者福祉増進に必要な施設設置または整備しようとするものに貸し付ける特別の法人設置せんとするのでありまして、明年度におきましては、厚生年金国民年金還元融資の総ワク三百三十五億円のうちから地方公共団体以外のものに直接貸し付ける分として五十億円がこれに充てられることとしております。なお、本事業団は、当面、右の融資を行なうことを主たる事業とすることといたしておりますが、厚生年金国民年金船員保険の各法に基づく福祉施設設置または運営する道を開くことといたしているのであります。  本法案は、このような事業団設立趣旨に基づいて事業団の目的、融資の相手方や融資対象となる事業等業務範囲を定めるとともに、役職員の任命など事業団の組織に関すること、予算決算その他会計の方法事業団業務についての厚生大臣監督等について規定しているものであります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。なにとぞ慎重にご審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  続きまして、児童扶養手当法案について、その提案理由並びにその要旨を御説明申し上げます。  政府は、かねて児童福祉施策充実に努めて参ったのでありますが、父母離婚後父と生計を異にしている児童、父と死別した児童、父が廃疾である児童等については、社会的経済的に多くの困難があり、これらの児童を育てる家庭所得水準は一般的にいって低い場合が多く、児童扶養の資に困難を見る事例が見られるのであります。政府といたしましては、このような事情に対しまして、社会保障制度の一環として母子家庭児童及びこれに準ずる状態にある児童について一定手当支給する制度を設け、これによって児童福祉増進をはかりたいと存じ、この法案を提出した次第であります。  次に児童扶養手当法案の内容について、その概略を御説明申し上げます。  第一に、支給範囲でありますが、この手当は、父母離婚、父の死亡等理由義務教育終了前の児童を母が監護している場合及び父母のない義務教育終了前の児童父母以外の者が養育している場合に支給することといたしております。ただし、すでに公的年金制度による年金を受けている場合または一定程度以上の所得のある場合等には支給しないことといたしております。第二に、児童扶養手当の額でありますが、児童が一人の場合は八百円、二人の場合は千二百円、三人以上の場合は、千二百円に三人以上の一人につき二百円を加算した額を支給することといたしております。第三に、児童扶養手当に関する費用でありますが、給付費及び事務費とも全額国庫負担することといたしております。第四に、施行期日でありますが、昭和三十七年一月一日から施行いたすことといたしております。  以上が児童扶養手当法案提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  5. 山本猛夫

    山本委員長 各案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 山本猛夫

    山本委員長 予防接種法の一部を改正する法律案議題といたし、審査を進めます。  質疑に入ります。河野正君。
  7. 河野正

    河野(正)委員 このたび予防接種法の一部改正によりまして、小児麻痺予防接種を行ならべき疾病の一つに追加された。このことは、今日きわめておびただしい小児麻痺罹病者、またこの小児麻痺に基づきまするたくさんの死亡者を出しておる現況から見て、私はきわめてけっこうな法案だと考えまするが、しかしこの法案が立案されまする過程におきましては、いろいろ問題点もたくさんございます。なおまたこの法律が施行されるにあたりましても、私どもが心配いたしまする問題点がなお若干ございます。  そこでまずお尋ねを申し上げておきたいと思いまする点は、この法律が施行されるにあたりまして、これの裏づけとなりまする法律に対しまする体制、そういうものが完全であるということが一番望ましいわけですが、現時点においてはたしてどういう体制が確立されておるのか。この点は少なくとも法律を完全に円滑に運営していく上におきまして、非常に大きな意義があると思いますので、まずその点に対します御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  8. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 今回の法律改正で一応予定いたしておりますのは、四月一日からの施行実施ということになっておりまして、この対象は〇・五才から三才までの者に定期予防接種をする、なおそのほかに集団流行が起こりましたときには、ここに臨時予防接種を、この年令以外の者も含めましてやる、これが一番のねらいでございます。その裏づけといたしましては、予防接種をいたすことでございますので、予防接種液、これの確保ということが第一点でございます。なおこれを実施いたしまするのに、やはりこれは相当な価格のものでございますから、この負担に耐えない者があっては、たとい液がありましてもできない。従ってこれの負担に対する措置、この二つが一番の中心でございまして、そのほかに、もちろんこれを実施するための医療機関あるいは保健所のこれの事務に当たる体制というようなものが実施の場合にそろっておりませんと裏づけにならぬわけでございます。このいずれに対しましても予算措置並びにワクチン供給計画、それからこれの実施に当たります実施機関体制、との法律に盛られておりますものの実施に必要な裏づけは、いずれも現在の予算につきましてはお願いしております予算法案の中にこれは含めてあります。それから供給計画も、これは薬務局需要量に見合うものを今確実に進めてもらっております。それから実施体制も、先般これに関する地方部長会議、それからこれの専門の課長の会議を催しまして遺憾のないように協議をし、また指示をいたしましたので、裏づけは現在のところ見込み十分だ、こういうふうに存じております。
  9. 河野正

    河野(正)委員 もちろんただいま局長から御説明をいただきましたように、実際に法律はでき上がりましても、その裏づけと申しますか、体制というものが確立されなければ、これは全く絵にかいたもちでございまして、私は全く意味のないものだというような意味から、今若干の御説明をお願いを申し上げたわけでございます。ところがその中で第一番に問題になって参りまする点は、要するにこの予防接種を行ないまする場合には、何といっても予防接種液というものが確保されなければならない、この点はただいま御答弁通りでございます。ところが実際にはその点についていろいろ今日までたくさん問題があったようでございます。  その問題の一つとして、実は今全国の乳幼児に予防接種をするための国産ワクチン、これにおそらく当局側でも一段の努力が行なわれると思います。ところがこの国産ワクチンが実際に検定という段階に遭遇したところが、どうも思わしくない。まあ国産ワクチン検定に不合格という量が、私ども仄聞するところによりますると六十二万人の分は不合格だ、検定にひっかかったというようなことが実は伝えられておるわけでございます。そうしますと、なるほど需要計画供給計画というものは、一応デスク・プランとして実施されましても、実際それに実物が伴わなければ、これはとんでもないことでございますので、その辺の事情というものがどういうふうな事情になっておるのか、その辺の事情に対しまする御説明をお願いしたいと考えております。
  10. 牛丸義留

    牛丸政府委員 国産品の製造は国内の六社によって現在製造されておる段階でございます。ただいまの御質問のように、この国雄品検定が不合格になったのじゃないかという御質問でございますが、昨日の新聞でありましたか、一部の新聞に出ておりますのは実は誤報でございまして、阪大の微生物研究所で作成された八百リッターのワクチンがすでに検定を終えまして、そのうちの四百リッターは出荷いたして各府県に配付済みでございます。最後の四百リッター、この分が何か検定が不合格になったということがきのうの一部の新聞に出ておるわけでございますが、これは安全試験並びに力価試験国家検定試験基準はこの二つ試験でございます。安全であるか、それから力価がどうであるか、この二つ試験合格しているわけでございます。たださらにそこに來雑物が一部あったということで、これは検定基準にないものでございますが、念のためにその試験をやるために多少おくれたというだけでございまして、検定合格してはおります。従いましてその点の念を押して、絶対ということであれば直ちに出荷をする手はずになっておるわけでございまして、その点は別に心配はないわけであります。ただ一番最初に、これは一月でございますが、千葉血清の分が生産されたわけでございます。これは力価について多少の疑義があるというわけで、なお試験のリピートをやっておる段階でございまして、まだ不合格が決定したということではございません。従いまして国内で六社生産しておりますので、他の四社につきましても、これは途中で輸入ワクチン検定を待っているような状態でございまして、国産品につきましても輸入品と同様に品質において変わりはないというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  11. 河野正

    河野(正)委員 安全試験あるいは力価検定と申しますか、それについてはもう先ほど私どもから御指摘申し上げました点は誤報であって全然問題にならぬということでございましたが、ただあとで來雑物があったというような御説明もございました。少なくとも国の指導によって行なわれる予防接種でございますので、私はその來雑物が入っておる、そのために安全性を欠くとか、あるいは効果が薄くなるとか、そういうことのみでなくて、やはり來雑物が入っておるということは、これは医学的に見ても、化学的に見ても不適当であるということは当然のことであって、ただ、それが來雑物が入っておっても安全性は大して問題にならぬ、あるいは効果についても大して問題にならぬということでございましょうけれども、私はそれは必ずしもベターのものではないというふうに考えるわけです。そこで少なくとも一部において來雑物が入っておるということが明白であるならば、国民はたとい法律であっても、安心して法律に応ずるわけには参らぬ。これはやはり実際問題として來雑物が入っておっても、安全性なり、効果の上では大して問題ないとおっしゃいますけれども、しかし今日までもこの安全性は大丈夫だ、効果もあると言われながら、やはりいろいろな要素で、たとえば特異体質あるいは個人的な特殊な条件、そういうために熱発をしたり、あるいはまたその他のいろいろな現象を起こしたり、こういうことがしばしばあるわけですね。たとえばペニシリンの例のごときもそうだ。ペニシリンの例一つ取り上げて参りましても、検定をして安全性はあるのだ、あるいは効果の上においても問題はないのだといいましても、その人の、個人のそのときの条件、あるいはまたその生体の特殊性特異性、こういうものでやはり生命を落とすというような非常に大きな問題も起こってくる可能性があるわけです。それをやはり私は万全のものだとおっしゃっても、ある場合には若干問題のある場合があると思うのですよ。にもかかわりませず、今からすでにその安全性においては問題ない、あるいは効果の上において大して問題ないということであるけれども來雑物が入っておるのがあった、それでは私は国民は安心できぬと思うのです。というのは、安全性の上から申しましても、効果の上からも、それから來雑物なんか一切入っておりません、こういうことでも、やはり国民というものは心配するわけです。実際地方予防接種をしておりますと、大丈夫だ、大丈夫だと言っても、心配する人が非常に多いのです。それだから、今から一部來雑物が入っておったというようなことでは安心できぬと思いますが、その点いかがですか。
  12. 牛丸義留

    牛丸政府委員 ただいま河野委員からおっしゃったようなそういう危険がございますので、すでに国家検定の基準を合格しておりながら、なおその点、念のためにやっているわけでございまして、そういうことが絶対に安心であるということで地方に発送する措置をとるために、今時間をかけている、そういう状態でございます。従いましてそれが恕限度を越えたものであるならば、むしろ検定基準に対して問題が出てくるというふうに私は考えるわけでございますが、その点は学問的に十分な安全性を確保するために一応検定基準合格した上でも、合格の判定をしないでなお検討しているという段階でございまして、検定に不合格になったという報道は誤りであるということを私は申し上げておるわけでございます。
  13. 河野正

    河野(正)委員 そこで私が申し上げましたように、単に一つ検定基準ということにとらわれることなく、要するに問題は、もともと検定基準を作りましたゆえんのものも、やはり国民が安心をしてその予防接種に応ぜられるということから生まれて参っておるというように私ども理解をするわけであります。そこでそういう検定基準ができまする精神から見ても、今局長からも若干お話がございましたように、機械的に検定基準にとらわれるのではなくて、万全を期すると申しますか、国民が安心をしてその法律に応ぜられるという方針をぜひとも私は貫いていただきたい、この点一つ御要望を申し上げておきたいと考えております。  それから今のことに関連してでございますが、なるほど国産品検定合格という問題は誤報であったということでございまするけれども、今日市町村段階でいろいろ予防接種実施いたしておるわけでございます。ところがどらも厚生省から供給される小児麻痺ワクチンが時間的におくれて仕方がないということで、地方におきましては非常に不満があるかのように承っておるわけです。この点はただおくれた、おくれたということでございますけれども、これは免疫上非常に大きな問題が医学的に出てくるわけです。そこでもし検定問題で供給がおくれたということでなければ、どういう理由地方に対しますワクチンの供給というものがおくれておるのか、その辺おそらく理由があろうと思いますから、理由一つお示しいただきたい。
  14. 牛丸義留

    牛丸政府委員 ただいまの配給計画は、製品を包括的な需要に対して非常に有効に供給するということが必要でございますので、私どもの方で府県の希望数というものをあらかじめとりまして、そしていわばコントロールをしているような状態でございます。それで現在の段階でおくれましたのは、一つは先ほど申しましたように、国産品のそういう検定の問題が私どもの予想しました時期よりもさらに安全性をとるために多少おくれたわけでございます。しかし全体としては、そのほかの外国輸入品ワクチン検定はただいま順調にいっておるわけでございますので、全体の計画は多少地域によっておくれておるものがございますけれども、その分はこれからの早急な手配によってカバーされていくように思っております。
  15. 河野正

    河野(正)委員 ちょっと考えますと、時間的におくれたのは、何か精神的な面の影響だけのような感じがいたしますけれども、実際には予防接種いたしまして、約半年しなければ免疫性というものが現われてこないということになりますると、もし夏場になって非常に流行期に入るというようなことになりますと、その予防接種液の供給関係がうまくいかずにおくれる。そのために結局流行期に間に合わなくて、とうとい生命を失ったり、また小児麻痺に感染するということになったならば、私は時間的におくれるということが非常に大きな問題になってくると思うのです。私は実際に小児麻痺に罹病したりあるいは死亡したりしたそういう方々の立場になりますと、恨んでも恨みきれないのでなかろうかというふうな感じを持つわけでございますが、その辺はいかがでございますか。
  16. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの御質問にありました予防接種二回までで、これは大体一カ月ないし一カ月半の間隔で終了するわけでございますが、その後七カ月たたないと免疫ができない、それが一そう供給のおくれでおくれたら非常に工合が悪いのじゃないかというお話でございます。一回目、二回目における免疫のでき方でございますが、これはわが国でもその点非常に重大問題でございますので、一昨年予防衛生研究所が詳細な試験をしたのでございますが、これによりますと、二回までの終了で、免疫に必要な最小限度の免疫抗体の生産量が四倍というのを一応最低の量にいたしておりますが、二回終わりましたもののうちの七五%が、この四倍量以上の免疫抗体に上がる、ただし二五%はそこまでいっておらぬ、こういう形でございまして、これに七カ月後の三回目をいたしますと、完全な免疫体が一そうふえる。こういうことでございますので、二回目までは一切無効ということでなくて、これは相当な量の効果がある。これは英国で大々的に数十万人以上にやったわけでございますが、そのときの例でも、二回のものが大部分で、三回やりましたものはむしろ少なかったのでございます。この英国の例によりましても、このやり方で大体五分の一に発病率が減った、こういうことでございますので、一番望ましいのは三回、さらにその後一年半後の第二期接種、これをやりますほど完璧になりますが、しかし二回だとむだだからということでちゅうちょすることは誤りでございまして、やはり二回でもやる、こういうことをいたしませんと、本年の一月以来始めましたものが、いずれにいたしましても最初の一カ月と次の七カ月、合わせて八カ月かかるのでありまして、八月以降九月でなければ三回終わらぬわけでございます。その間何ら効果がないというようなことではなくて、それは二回までに完全ではないけれども相当な効果があるというので、予備費もとりまして開始しておる状況でございますので、この点は万全ではございませんが、やはり効果があるとして、二回目まででもどんどんやってもらう、こういうことが望ましいわけでございます。
  17. 河野正

    河野(正)委員 私の先ほど御指摘申し上げました点は、何も効果がないからあとは放棄するということではなくて、やはり国の政策であります以上は万全を期さなければならぬ、しかもそのことが事生命にも関する問題でございますから、ただいま局長がおっしゃいますように、一回、二回で七五%の成果を上げるということでございましょうとも、少なくとも実験結果から二五%については問題が残っておるわけでありますから、私はやはり国の施策として一〇〇%の効果を上げるといいことが方針でなければならぬと思うのです。最初から七五%だから、あとは少々おくれてもいいじゃないか、何か七五%がこのおくれる責任を回避する一つ理由にされたら国民はたまらぬと思うのです。それですから、国の方針としてはやはり私は一〇〇%の成果を上げる、それに基づく法律である、こういう建前でなければならぬと思いますが、そういう体制が現時点においてでき得る見通しがあるのかないのか。私ども、間に合わぬから七五%でいいじゃないかということでなくて、やはり予防衛生研究所でそういう実験結果が出ておるわけですから、万全を期する意味でそれだけの供給計画というものが実施されなければならぬと思うわけでございますが、実際問題としてそういう点はどうでございますか、一つお尋ね申し上げたいと思います。
  18. 牛丸義留

    牛丸政府委員 この予防接種法改正によって予定されております六カ月から一才半並びに一才半から三才までの対象というものと、それに要するワクチンの総量、それを私ども供給計画として考えておるわけでございますが、それは現在すでに国内で生産され並びに輸入をされ、検定をしているもの及びこれからの国内製品、それを検定をする計画、これによって十分まかない得るという計画のもとにやっておりまして、その点は心配要らないというふうに思うわけでございます。
  19. 河野正

    河野(正)委員 今、体制としては万全を期しておる、自信があるというお話でございましたが、それは国産ワクチンだけでそういうふうな体制が確立されるのか、あるいはまた輸入ワクチンも含めてそういう体制が確立されるのか、その辺の事情を御説明願いたいと思います。
  20. 牛丸義留

    牛丸政府委員 これはこまかい数字でありますが、現在までにすでに約四千八百リッター程度の輸入をしております。一部検定は終了し、一部検定中でございます。それにプラス国産の六社の生産が、大体各社一回で六百リッターないし千リッターのものが生産される見込みでございまして、これはすでに一部は生産をされ、検定中であるし、また一部は検定の順番を待っているというのが実際の具体的な検討の結果でございまして、国産品だけじゃなくて、輸入品国産品の総ワクにおいて現在の需要をまかなう、こういう計画でございます。
  21. 河野正

    河野(正)委員 輸入品国産品によって計画の万全を期していくという方針のようでございましたが、これは先ほどの質問と関連するわけでございますが、まあ検定基準に達しておるけれども、なお万全を期するためにそれをどうするかということで若干時間もかかるのだというようなお話もございました。しかも先ほど公衆衛生局長のお話にもございましたように、時間的にも万全を期していかなければならぬ、一〇〇%の効果を上げていかなければならぬという問題等もありましたので、そこで計画としてなるほど輸入品国産品とミックスしてやるということでございますが、実際問題として今の段階では、輸入品をよけい使うという方針で臨まなければ万全を期せられないのではなかろうかというふうにも思いますが、その辺の御事情はいかがでございますか。
  22. 牛丸義留

    牛丸政府委員 今、河野委員のお話しの通りでございます。当初はどうしても国産品が生産のピッチを上げ得ませんので、ほとんど大部分を輸入品によってまかなう。しかし、四月以降はだんだん国産品がそれにかわってくる、そういうふうな供給の見込みになるわけであります。
  23. 河野正

    河野(正)委員 私がその点を御指摘申し上げましたのは、それは冒頭において公衆衛生局長さんからもお話がございましたように、まず量の確保である。それから第二には価格の問題であるというふうな御説明もあったわけです。そこでその点は実は私は国民負担と申しますか、そういう意味からきわめて重要な点になってくると思うのです。と申しますのは、すでに御承知のように現在の国産品は大体一グラム三百四十七円でございますか、輸入ワクチンの方は実際は五十円か六十円くらいと思うのですが、そういうふうに日本の国産ワクチンというものが大量生産という過程に入っておりませんから、今日非常にコスト高だということは、これは常識的な問題でございます。しかし、輸入ワクチンというものが非常に安い。しかも当面して輸入ワクチンのよけい使うものとプールして実際の国民負担額を決定されておるようではございますけれども、しかし輸入ワクチン国産ワクチンとを使う中で、輸入ワクチンの比重が重くなっていくということになって参りまするならば、私はやはり国民負担いたしまする価格というものも当然低下させなければならないというふうに考えるわけです。この点は非常に国民負担の問題でございますので、国民はやはり何といっても非常に関心を持っておりますので、その辺の御所見を承っておきたいと考えます。
  24. 牛丸義留

    牛丸政府委員 輸入品の量と国産品の量というものを年間でプールして現在の価格を決定しておるわけでございますので、輸入以後、一部国産品検定不合というので緊急輸入をいたしましたので、比率が当然違ってくるわけであります。従いまして、その比率に応じまして価格の再決定をしたいというふうに現在検討中でございます。しかし、これは需給計画をさらに詳細に検討しまして、ことしの四月以降においてさらに緊急輸入をする必要があるかどうか、そういうことも含めまして決定をしたいと思いますので、現在その辺の事情を検討している最中でございます。
  25. 河野正

    河野(正)委員 この価格の問題は国民負担の問題ですから、非常に重大な問題だと思いますが、この点は、今私が申し上げましたように、輸入ワクチンを大量に使うということからも、価格の引き下げということが当然考えられなければならぬ、今の段階では。それからさらには、やはり諸外国でもだんだん製造を始めて時間がたちますると生産が軌道に乗るわけですから、そういうためにコストがだんだん下がっていくということでございます。そこで私は当然輸入ワクチンに比重を置くという建前からも、さらには国産品一つの生産軌道に乗っていく、そういう建前からも、私は現在の国民負担というものがどんどん下がっていかなければならぬと思うわけですし、国民もまた実はかわいい子供のためですからぜひやってもらいたい、しなければならないということでありますが、やはり価格の点については非常に頭を痛めておる。鋭意研究中ということでございますけれども、大体来年度はどのくらい下げられるだろうというふうにお考えでございますか。国民に対しまする朗報でございますから、一つお聞かせいただきたいと考えます。
  26. 牛丸義留

    牛丸政府委員 参考のために、アメリカが一九五五年にソーク・ワクチンの製造を始めたわけでございます。そのときのこれはカッター・ラボラトリーズの例でございますが、価格は一CC、三百六十円でございまして、今日のわが国の価格よりも高価でございます。それが二年たった一九五七年には二百四十円というように低下しております。来年度といいますと、三十六年度は今の価格決定においてすでに私どもは見込んでおるわけでありますので、来年度国産品のコスト・ダウンということがどの程度までできるかということは、今直ちには……。(「現在幾らなのか、日本では」と呼ぶ者あり)現在日本では、当初四百五十円で販売しておりましたのを、輸入品とのプール計算によって三百四十円にまで下げたわけでございます。約百十円程度下げたわけでございます。これは最終の販売価格でございます。これは安い輸入品とのプールによる価格のダウンでございますので、それをさらに、それ以後の輸入量によって比率が違いますので、その点のコスト・ダウンはできると思います。  それからもう一つは、国産品が年次的に、これはどうしても最初はコストが高くだんだん安くなっていく、そういうふうな経費の算定は、三十七年に入らないと経費のダウンはできないんじゃないか、と申しますのは、この一年間というものはすでに私どもとしては検討をして、今度の計算の基礎の中に、プール計算の基礎としておりますので、三十七年になりましたら国産品だけで大体三百四十五円くらいのコストが、それが相当の幅で値下がりができるんじゃないかというふうに私どもは一応予想しております。大体三百円程度くらいまでは純国産品だけの計算では価下げができるんじゃないか、これは予想でございますが、一応そういうふうに私どもとしては踏んでおるわけでございます。
  27. 河野正

    河野(正)委員 重ねてでございますけれども国産品で大体三百円、そうすると結局輸入品も一部使うということになれば、大体国民負担というものは三百円よりも以下、こういうふうに理解してけっこうですか。
  28. 牛丸義留

    牛丸政府委員 輸入を三十七年も続けますならば、これは当然もっと三百円よりも二百円に近い価格まで下げ得るわけでございます。しかし三十六年度において国産品は相当生産が順調にいく見通しでございますので、三十七年以降も輸入に待たなければならぬかどうかということは、私は今の予想では、おそらく三十七年以降は輸入する必要はないのじゃないかということでございますから、そうしますと、今度はプール計算というのは、三十七年以降においては一応考えないでいいのじゃないかというふうに考えますので、今の河野先生のような通りになるかどうかは、ちょっと今のところはっきりその点は申し上げにくいと思います。
  29. 河野正

    河野(正)委員 これは日本の業者を育成するということもありますから、私は必ずしも輸入ワクチンということばかりを強調するわけには参らぬと思いますけれども、しかしやっぱり一方、国民負担ということもわれわれは考えなければならぬし、これは非常にむずかしい点だと思います。そこでその点は、今まで行政指導で業者のワクチン製造について指導されたわけですから、ある程度軌道に乗ったらもうあとはどうでもいいということでは行政上済まされぬ問題もあろうと考えます。さればといって一方においては、今申し上げますように、国民負担という問題がからんでくる。そういう意味ではどんどん輸入してもらった方がいいわけですね。これは非常にむずかしい問題です。ある程度業者の立場というものは尊重するけれども、しかし国民負担というものはさらに尊重するという建前で、三十七年度の価格の問題については一つ御配慮をいただきたいと思います。この点は政策上の問題になってきますから、厚生政務次官から御答弁願いたいと思います。
  30. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 御指摘の価格の点につきましては、これがぜいたく品であるとか何とかいうものじゃございませんので、のみならず、なくてはならぬものになってきております折からでもございますので、できるだけ事務当局にも督励を与えまして、御趣意に沿うようにいたしていきたい、かように存ずる次第でございます。
  31. 河野正

    河野(正)委員 いずれにいたしましても、小児麻痺の流行を防除するということが建前ですから、そういう建前からさらに話を発展させて、そうしてこのワクチン問題の検討に当たりたいと思います。御承知のように、ソ連はもちろんですが、アメリカでもすでに予防接種段階から、今までたくさん罹病者がおりますから、治療の段階ということで、いろいろこの治療薬についても新しい研究が進められ、またそれに対するいろいろな成果が発表されておるわけです。そういう面に対する現在の状況を一つ説明いただきたいと思います。
  32. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 治療問題でございますが、これは二つございまして、急性期における治療、この場合に一番危険なのは呼吸麻痺を起こすための死亡でございますが、これを中心とする治療とそれからあとで後遺症として肢体不自由を残す、麻痺を残す、これの治療と、両面に分かれるわけでございますが、これは不幸中の幸いといいますか、かかった者のうちの致命率、死亡率は年々著しく減少をいたしております。すなわち急性期における直接の死亡というものは非常に減少して参っております。これは急性期における治療がある程度成功しておるということも比較的に言えるわけでございますが、たとえば従来、今から十年前、昭和二十六年ごろでございますと、病気にかかりますと一三・五%が死んだ。一割三分以上が死んだということでございます。昨年大流行がございましたが、昨年ではこの致命率すなわち死亡率が五・六%ということでございまして、約三分の一に低下したということでございます。この点の急性期の治療はかなり進んだ、こういうことが言えるわけでございます。ただし、この場合の一番の死亡原因であります急性の呼吸麻痺、これに対しては、鉄の肺に一時入れて人工的に呼吸をさせる、これが必要でございますから、昨年はこの人工呼吸器の肺が若干不足をいたしまして、応急措置として国内のもののほかにアメリカ等からの一時借用、寄贈もあわせて救命措置に当たっておるのでございますが、本年度はできるだけさようなことがないように、今鉄の肺の増配置を計画的に進めておるわけでございます。これによりまして急性期の問題は比較的よくなるのではないか、一そうこの死亡率の低下が成功するのではないか、こう思われます。ただ後遺症として麻痺を残すもの、この症例は、北海道の例を見ますと、一時的な麻痺を入れますと、約五割に発生する。さらにこれが三月以上の長期の麻痺を残す者は三割ぐらい残すということでございます。これの防止方法としては、急性期に早期に整形外科的ないろいろな治療をやることと、それからやはり収容をいたしまして、家に置いてはいけないということで、これは一昨年からやっておりますが、伝染病予防法の指定伝染病になりましたので、これを予防法に基づきまして公費で隔離収容する、そして早く脊髄にコリン剤等を注射するとか、ビタミン剤を注射するとか、極力麻痺を残さぬような初期の処置をやる、これがだんだんと拡大しておりますので、麻痺の後遺率も減ると思いますが、しかしまだ現に相当出ておるということでございまして、この残った麻痺を早く回復させるという方法が、先般来特殊薬といたしまして、ヒガンバナ製剤であるガランタミンというようなものが外国でも工夫されまして、わが国でも今試用中でございます。この試験使用でこれが確かに有効ということのデータが出、さらに使用方法も日本の子供に適当な量が出ますれば、これは正規の輸入薬の方法をもちましてどんどん使うことになるかと思いますが、現在まだ正確なデータは出ないで、相当量権威者による試験使用が行なわれておるということでございます。ただ従来の成績から見ますと、これは一般的な神経の新陳代謝に必要なコリンを溶かしてしまう酵素を抑制するというような機能を持った薬でございますので、これはあながち小児麻痺の麻痺だけにきくのではなくて、神経麻痺のいろいろなものに使われてきておるわけでありますが、まだこれの成績というものが不定でございまして、これがほんとうの意味の治療剤かどらかという結論はまだ出ておらない。早くこれの結論を待ちまして、相当程度有効ならば、これはこれなりにどんどんと使うようにするということが望ましいと思っております。そのほかの治療方法につきましては、やはり長期に残る麻痺というものは非常に悲惨なものでございますから、各学界ではこれに対する治療方法というものをいろいろな方法試験されておるわけでございますが、これをやれば麻痺のうちの何十%にきくというようなものは、まだ遺憾ながら決定版が出ておらない、一生懸命みんな研究しておるという状況でございます。
  33. 河野正

    河野(正)委員 この小児麻痺の罹病を防止する上においては、今いろいろと治療方面の問題が詳述されたわけでございますが、そういう面と、もう一つは予防注射と関連いたしまする予防内服の問題があると思います。すでにこれもアメリカあるいはソ連においても非常に大きな効果を上げておるといわれておりますし、なお先ほどソーク・ワクチンの方は三回注射をして、そのために約八カ月かかるというふうな局長の御説明もあったようでございます。ところがこのなまワクチンの方は、三回飲用で、大体二カ月で所期の効果を上げる。時間的にも非常に楽でございますし、それからまた飲む方ですから、それが実際きくとするならば、これは子供たちのお菓子やあるいはまた飲みもの、そういうものにまぜて飲ませるならば、子供たちも非常に喜んで飲むし、親御さんも注射に連れていくのは実際なかなか大へんなことですから、そういう意味の精神的な苦痛もなくなるし、そういうことでソ連あたりではこのなまワクチンの飲用によって小児麻痺を絶滅したというふうな、これはどういう内容かわかりませんが、一応そういうふうな大々的な宣伝もあるわけです。しかしアメリカにおいても非常に効果を上げておるという報道もございますしいたしますから、これはやはりソ連だけの宣伝ではなくて、相当科学的にも立証されつつあるのではなかろうかという理解を私どもは持つわけです。しかも今申し上げましたように、時間的にも八カ月が二カ月で、非常に短縮される。子供たちの苦痛はなくなるし、両親の精神的苦痛がなくなるということで、私どもは非常にけっこうだと思いますが、そういう点に対してどういうふうな御所見を持っておられるか、これは国民も非常に関心を持っておると思うので、一つこの際お聞かせいただきたいと思います。
  34. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 いわゆる弱毒なまビールス、弱毒ポリオ・ワクチンでございますが、これは今のお説の通りでございまして、世界でも初めて生きたビールスを口から入れて免疫を作るという、これは昔から見ましても初めての画期的なことである。これが日本人にとっても安全で、しかも有効であるということになれば、これにこしたことはないのでございまして、お説の通りでございます。従ってこれがそういうふうなものであることを確認するならば、できるだけこれを早く実施したい、こういうことでございまして、それにはソ連の詳しいデータもわれわれ入手しておりますし、アメリカも昨年、一昨年と大量の試験をやっております。それで三種類あるのでございますが、そのうちセービンという人のが、今世界各国で使って成功を見ておるというふうになっておるわけでございまして、それを利用いたしまして早く日本でも結論を出したいということでございます。政府でも三十五年の予備費といたしまして千六百万円、それから三十六年度の正規予算といたしまして五千七百万円、合わせて約七千三百万円ほどになりますが、これだけ、このために特別な研究費をとりまして、国内でもこれは一、二の場所でやったのではとても結果が急速に得られませんので、大体国内の二十単位の大学の教室、その他権威のある、これをこなし得るところを網羅いたしまして、これに関する研究協議会を十二月に成立いたしました。日本医学会の会頭の田宮猛雄博士が会長になりまして、実際の中心になる国立予研の、この方の専門である副所長が幹事長になりまして、現在研究を続行中でございます。すでにこれに要します。発明者セービン博士の指定する原液、ビールスが生きておる原液でございますが、これが約十日前に日本に到着いたしまして、予研ではすでに第一の研究段階である、これが安全であるという試験を、サルに植えつけて試験中であります。といいますのは、これが非常に大事でありまして、生きた菌を人間にやるわけでありますから、途中で殺すという操作がない。従いましてこの菌は安全であっても、他の有毒な結核菌とか、サルに流行しておりますBビールスという別なビールスがございます。これが一緒に増殖して入りますと、これは安全でも、他の増殖した有毒菌で人間が参ってしまいますから、従来のソークのように一ぺん消毒しないことになりますから、これは一番重点です。これが約二カ月かかりまして四月中旬までに終わる。それが終わりますと、今度は人体に試験しましても責任が負えるので、これを今の二十単位のそれぞれの研究機関が、子供さんの協力——これは実際は親御さんの承諾ということになりますが、それと地方の行政機関と一緒になりまして、精密な投与試験を行なう。こうなりますと、その投与した個人にどういうふうになるかということと、それからお腹の中でこれが発育いたしまして外にまかれるわけです。それが自分の兄弟の子供たちに、どのくらいの期間で、どういうふうに感染するか。それがさらに次々と外に出てくる、一ぺん弱めた菌でありますが、日本の環境でまた強い菌に戻るかどうか、この試験で初めてそれに結論が出るわけであります。これは極力確実に、しかしながら急いでやってもらうということで、これに参加しております権威ある学者の皆様方も、国民の要望ということも十分御納得願いまして、研究という立場のほかにそういうような背景も十分了承されて力を注いでいただくことになりましたので、これは外国以上にスピードが上がる研究をお進め願えるのじゃないか。その結果において答申を得ればいよいよ踏み切る、こういうふうになっておるわけでございます。
  35. 河野正

    河野(正)委員 これは人体実験もいたしますことだし、それには人権問題も伴って参りましょうし、非常に重要なものだと思うのでありますが、いずれにしてもそれが効果ありといたしますならば、国内の親御さんにとりましては非常に大きな福音になるというふうに考えるわけであります。そこで、そういうふうに非常に効果があっても、これがまたあんまり国民負担がかかるということでは、一方に非常に大きな問題が出て参りますが、大体これはなまワクチンの場合、実際に生産に入っておるわけでありますけれども、一体価格の点ではどういう見通しでしょうか。この点があらかじめわかりますならば、一つよく国民の方々にお知らせ願いたいと思います。
  36. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 これは今大量に何千万人分とやっておりますのはソ連だけでございまして、これは御承知のように国家生産であり、国家検定であり、全部国一本でやっておりますので、価格の点は今まで入手できていないのでございます。従ってわが国でもそれをやり出した場合に、今までのソーク・ワクチンと比較してどういうふうになるかというのを予測したいところでございますが、ただこの場合にソーク・ワクチンの製造装置のある部分までは使えるわけであります。弱い生きた菌を培養するまでは使える。ただその過程におきまして、価格に一番大きな大差が出るであろうと思われるのはサルの問題であります。と言いますのは、ソーク・ワクチンでございますと、もちろん健康なサルを輸入いたしまして、これをある程度観察して、比較的使えるサルの生きたじん臓に培養するわけであります。その場合には、もしサルに若干ほかの病気がありましても、最終におきまして一ぺん消毒いたします。全部滅菌いたしますので、他の雑菌があっても滅菌される。だから來雑物として若干残る可能性はありますが、いわゆる非常な毒力を発揮する、病気を起こすということにはならない。しかしこのなまワクチンの場合には、その使うサルのじん臓に絶対他の病菌が入ってきてはいけないので、植えつける弱毒のヴィールス以外に雑菌はないということが百パーセント確実でなければならないというわけで、今の見通しではおそらく今の三倍か四倍のサルのロスがある。今のところは大体冬でございますと、十頭輸入いたしますと、ソーク・ワクチン用でございますと二頭か三頭がロスになります。あとの七、人頭は使えるのが常識でございますが、この場合には、今のような外国の輸入の状況でございますと、おそらく一割か二割しか最初の間は使えないのではないか。これは買い出しから始めまして、現地でもう健康なサルを選択して入れませんと非常にロスが多い。この点で、製造過程でまず第一に非常な価格の変動がありますので、従ってちょっと価格の計算が今から見込みがつかない。  それからもう一つは、サルの問題で、検定のときに、これが今のようなことで、他の生きた菌があるかないかの検定は、ソーク・ワクチンよりは二倍程度綿密にしなければいかぬ。この点がプラスになる。それからマイナスになります面は、菌を増殖して、さらに濃厚に増殖した原液を百倍とか五十倍に薄めて、それをいろいろなものに加工してやるわけでございますから、この点は非常な倹約になるわけです。これはむしろ価格を引き下げる因子になるわけです。さような形でございますが、現在のところはまだ価格が一体どの程度下がるか、あるいは当初は同じくらい見るかということはちょっと申し上げる段階にない、今のところ資料も不足ということでございます。
  37. 河野正

    河野(正)委員 ただいま研究段階でございますから、具体的に御答弁を求めることも困難と思いますけれども、やはり国民負担ということに対して、価格というものに対して非常に関心を持っておりますので、そういう意味でお尋ねをいたして参ったのでございます。  今までいろいろ言葉のやりとりをいたしましたように、小児麻痺を予防するあるいは治療するという上におきましては、いろいろな問題がたくさんあると思いますが、いずれにいたしましても、疾病には国境がないわけですね。これは世界各国流行いたしまするように、疾病には国境がございません。時間がございますればインフルエンザについても若干触れたいと思いますけれども、インフルエンザでも同じでございます。と同時に私は、人道上の問題でございますから、科学にも国境があってはならぬ、こういうように理解をいたすわけです。ところが、疾病にも国境がないと同時に科学にも国境があってはならぬということでございまするが、実は昨年の秋でございましたか、総評に対しましてソ連からガランタミンを送るという話があった場合に、厚生省がストップをかけたというようなことで、これは当時非常に問題を起こしましたが、私は疾病に国境がないと同時に、科学にも国境があってはならぬという建前からも、どうもそういう厚生省の措置については納得のいかぬ点がございまするので、その点を一つ厚生次官にお尋ねをして、あとはまた事務当局にお尋ねしたいと思います。
  38. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 お答え申し上げます。  ガランタミンにつきましては、まだこちらでほんとうにそれを確認しておりませんので、一応お断わりしてあるのだそうでございます。ただ、今お話しの、病気に国境がない、従ってこれを治療するにあたっての薬品等においても国境をなくしていくことが肝心だというお説につきましては、私もこうした、ことに小児麻痺のような恐ろしい病気、そうしてそれにかかって不具になれば、生涯一人前の人間として働くことのできない立場に立つ。個人的には不幸この上もないのみならず、社会的にも国家的にもまことに不生産的な重大な障害でございます。かように考えてきまするときに、将来におきまして、もし日本のこうした自由主義経済のもとにおいて、どうしても諸般の事情から価格が高い、国民がこれを使うために非常に困難するというようなことであるとしまするならば、国家財政の方から何らかの形において手伝ってでも、これを低廉なものにしていくということがなくてはならぬ、かように考えるわけでございまして、ただいまの河野先生の基本のお考え方について、私もできるだけそれに同調して参りたい、かように考えるわけでございます。
  39. 河野正

    河野(正)委員 実は先ほど公衆衛生局長の御答弁にもございましたように、このなまワクチン・ヴィールスが十日ほど前に到着をして、二十単位の研究機関においてそれぞれ研究の段階に入ったというお説のようでございます。ここまで来るについては、いろいろな文献に対しまする研究、あるいはまた情報に対しまする研究というようなものは、私は厚生当局においても当然行なわれておらなければならぬと考えますし、ソ連においても、またアメリカにおいてもいろいろ研究をして、その成果がどうであるかということについては、局長も科学者でございますから、当然重大な関心を持っておられると思います。そこで、昨年の秋にそういう話があって、もし科学に国境がないという非常にフランクな立場であったならば、私はさっそくこの問題と取り組んで一つ研究に入るという処置が望ましかったと思うけれども、十日前にやっと二十単位の研究機関で研究に入ったというような今までの経緯を承って、私が先ほど申しましたし、厚生次官からも御同意を得ました科学に国境がないという考え方に、どらも厚生省当局のおやりになることは相反するのではなかろうか。新聞には、薬も色目で見たがる傾向がある、これは科学を冒涜するものだというようなことを指摘しておるようでございます。そこで一つこれは科学者の立場から、そういう点に対して局長がどのようにお考えになっておるか、お答えをいただきたいと思います。
  40. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 次々と進展する世界のこういうような研究に対する問題でございますが、結論から言いますとわが国が若干見通しがおくれをとったということは、率直に申し上げまして申しわけないことと思っております。と言いますのは、実はわが国の小児麻痺の流行の年次の推測を年々しておるわけでございますが、三十三年ごろからもうすでにある程度の増加があり、従ってこれの対策を立てなければいかぬということで、三十三年度におきましては予算を組みまして、まずこれの研究とともに、今使っておるソーク・ワクチンの製造、研究にすでに着手いたしたわけでございます。三十四年には先ほど言いましたように国立予防衛生研究所自身でモデル・プラントを作りまして、常に製造、研究と両方並行しているわけでございます。そこで六社の技術員を教育いたしまして、三十五年度からこれの民間生産に入ったということでございます。これは着々とやっておったのでございますが、その当時の見通しとしては、三十五年に急激に前年の二倍にもわたる大流行があるということは、だれも予測の説が出ておらなかったのでございまして、大体今の傾向でちょうどうまく防遏ができるということであった、そういうととろへああいう事情が起こったわけでございます。そこでいわゆるソーク・ワクチンに対するいろいろな研究、指導、検定、こういうことで最近までは一ぱいの計画できておったわけでございます。そこで今度なまワクチンの問題が出て参りまして、これは三十四年度から、そのごく一部でございますが、長岡市を中心にいたしまして小量のなまワクチン人体投与試験を実はやったわけでございます。これは国の責任でやらないといけませんから、予防衛生研究所の方が一部やりまして、これはそれなりの投与の副作用のない実験だけは済ませたわけでございます。昨年の秋、ソ連から十万人分の製造を終わったものが入るということで、これは決して国境の差でお断わりしたのでも何でもなく、わが国の研究陣営の体制というものが、入ったからといってその場でできるものではなくて——当時から私どもの方では計画をいたしまして、先ほど申しましたようにようやく十二月の下旬に、全国の関連のある権威者の合同的な研究体制ができ上がった、そこで研究分担をいたしまして、せい一ぱいのととろで予算をとり、今の発明者それ自体の了解と指定によりまして、われわれとしては最短期間に入った方である、実はこういうふうに結果から見て思っております。今言いました時期に入って、そして予研がこのような体制をようやく整えて始めた、こういうことでございまして、実をいいますと予研なり各大学研究室なりも年度の途中でございまして、途中から開始するのは相当無理があった。といいますのは、予研から、先ほどいいましたようにどんどんやらなければならぬ検定に、研究者を全部動員いたしまして、ほんとうをいいますと昼夜を分かたずという状況で、さらに責任重大な研究をかたわらやらなければならぬ。もちろん人員を雇い上げたり、いろいろな方法は講じておりますが、これは非常に高度の研究でございます。ただ人夫を集めるというようなわけにはいかぬ。実はわれわれとして机上でいろいろ予算さえ取れれば、ハッパをかけるのは何でもないことでありますが、現実にやっていただく学者側の体制に、十分手当しなければ無理があったわけでございます。さような形で、一般的には世界の体制よりおくれをとったということは、もうあえてごまかすわけにもいかぬことでありまして、これは今の見通しが若干違っておったということでありまして、今後このスピードを取り返すには、われわれ政府側としても、これにタッチする研究陣営の方々の御協力を願わなければ何もできないということであります。そういうことで大体意見一致いたしまして、今非常なスピードを上げていただいておる、こういうことであります。
  41. 滝井義高

    滝井委員 今なまワクチンなり、ガランタミンの御説明がいろいろありましたが、問題は非常に社会的な不安が起ころうとしておることです。われわれは昨年、各地に小児麻痺が流行するので、すみやかに予防体制をとれという強い要請をしたわけで、政府はそれに対して、予備費を二億余り計上して、予防注射の体制を整えることになったわけですが、問題は、まず一月なら一月に第一回目を注射をしまして、それから一カ月ばかりして第二回目を注射する。その次の第三回目の予防注射というのは大体六カ月ないし七カ月あとにやることになる。今河野先生からいろいろ御質問がありましたが、ワクチン検定力価が不足であったとかあるいは副作用があるとかいうようなことは、それはデマだ、來雑物だけだというような御説明がありました。予防接種の方はそれでいいのかもしれませんが、問題は第三回目の注射をするまでに七カ月ある。そうすると二回目の注射では、さいぜん御説明があったように七五%しか効果がない。七五%の免疫が出るかどらかもなお問題があると思います。個体の差があるから問題があると思いますが、一応政府のその御説明を信頼するとして、なお二割五分程度の免疫力において欠けるところがあるという問題がある。そうしますと、ちょうどこれから夏場に入りまして、小児麻痺の流行期に入るわけです。従って三回目をやらなければ百パーセントでない。二回では十分でないというところに実は流行地には不安がある。しかもこれが今から寒い冬に向かうというならいいのです。特に流行を見る夏場に向かうというところに問題があると思う。そこで今度は一つなまワクチンでも飲ませてもらったら、こういう経口投与をやらしたらという問題が出てくるわけです。何か北海道方面では、そういう意向が非常に強くなって、厚生省にすわり込むのだという話もあるということを実は漏れ聞いておるわけです。お父さん、お母さん方は、私が実験台になってもよろしい、厚生省には責任を負わせませんから飲まして下さいという意見さえ私の耳に入ったわけです。これはやはり流行地における子供を持っている父親なり母親なりの心配というものは、そういう点があると思うのです。そこでまず第一に、厚生省としては、二回やったら七五%の効果があるんだということを徹底するとともに、そういう申し出た諸君に対しては、やはり何らかの納得をさせるか、一つの地域を限って、流行地帯というものは大体地域はきまっていますから、相当大量のなまワクチンでも実験をやってみるかどらかという、ここらあたりの思い切りをやらなければならぬ時期が来ていると思うのです。そこで、予算書は、あとで私の質問になったときにいろいろお聞きしますが、五十人かそこらずつのグループでおやりになるわけでしょう。それではやはり実験にも欠けるところがある。もし北海道の地区でそういう申し出がほんとうに真実にあるとするならば、一定の地区を限って流行地帯だけ飲ましてみる、こういうことも私は一つの大きな実験方法になるんじゃないかと思うのです。それによってなまワクチンヘの道が開けてくる。そこに北海道大学その他学者を動員をして、やはり御協力を得ていく。幸い予算があるのですから一なければ予備費あたりから出していただく。そう何億の予備費を出す必要はないと思うのです。こんな実験なら三千万か五千万かそこら出せばいいんじゃないかと思うのです。相当大規模の実験をやるにしても。そういう点、あなたはどうお考えになっておりますか。何か今そういう問題があると聞いておるのですがね、北海道方面から。それを関連してお聞きしたいと思います。
  42. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 この点につきましては、いずれにいたしましても使うなまワクチンが、最初の実験室における安全試験でございますね、すなわち今予研でやっております他の危険は菌がないということを通過したものでなければいかぬと思いますが、その場合、幸いといいますか、今さしあたり実験にかかっておりますのが一リットル入っております。各型を一リットル——そういたしますと、これのうち、まず毒力試験にごく一部を使う。それからさらにこれのうちから、一単位五十名ずつ、二十班といたしまして千名分を投与するわけでございます。それぞれの型を。そういたしますと、まだ大量に残るわけでございます。そうなれば今の研究の進行状況によりまして残りのものは、安全試験はいやしくも済んでいる、それから投与方法はある程度まで、今の精密な投与をやりまして、五十人ずつでございますが、これは月に一ぺんずつ血液も糞便も取るというわけでございまして、いわゆる統計をとる場合の精密な科学的検査の対象になるわけであります。それからそのほかに大数計算として、そこまでわかっておれば危険はないので、どの程度の集団的な予防効果があるかというのも、これまた別の意味で必要なわけでございますので、一リットルあてということは、すなわち十万人——これは薄めていきますと十万人分ある。そのうちで、今言ったようなことである程度減るということで、残りが何万か残るということになります。今お説の通り、二回までは済んだが、あるところに集団勃発した。そこで何としても不安だから、それだけでも追加しておくということがあれば、これはむしろ実験という形で、あくまで実験で、しかも毒力については責任を持ったものでございますから、これは研究協議会としてもそういう必要が起こるということを予測しておりまして、われわれもそういう事態になれば、それは研究の意味をかねてやる必要があるであろう、こういうふうに大体協議会としての——総会ではそういう話し合いになっております。
  43. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、だいぶ私はよくわかったのですが、実験をしてやるということでいいと思うのです。問題は不安を除けばいいわけですから。ところが大爆発をするきざしが見えてしまってからではおそいのであって、その前にやはり——これは昨年非常に広範に発生したところは大体菌が残っておると考えていいわけですから、その地区で、一つぜひそういう実験をということになれば、やはりやるときには集団的に一つの地区をやっておかぬと、もしものことがあったときの防疫体制その他が散発的になると困るから、やはり一つの地区を限って学者その他を動員して、今のような投与の試験を本格的におやりになる。何万人残るか知らぬけれども、六、七万も残れば、これは安心のいく程度の地区はやれると思うのです。北海道は今まで一番不安のあるところですから、そういう非常に強い御意見があれば、早急に御検討になることが必要だと思うのです。これは政治的な問題も含みますが、安藤政務次官、どうでしょう。
  44. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 実は滝井先生の御質問のように、ここ数回熱心な御陳情をいただいておりまして、私自身お目にかかっておるようなわけでございます。現在ただいまも、一昨日お約束いたしまして、その陳情の方々にお会いする約束の時間でございますが、諸先生方の御質問もおありになるということでございましたので、そちらを延期していただいて、ここに足をとめておるようなわけでございます。  ただいま局長からお答えいたしましたような方法が行ない得るとするならば、ぜひこれを推進していきたい、かように存じておるのでございます。なおこの場合、その陳情等もお受けいたしまして非常に心配でございましたので、大臣にもいろいろと御意見も伺い、御相談も申し上げたのでございますが、何分にも人体を試験台として実験することでございますので、大臣としては、科学者の意見の一致したところにおいて、諸般の打つべき手は打っていきたい。大体の安全性というものがそこに承認されない限り、やはり人命に関する問題でもあり、過去において厚生省として大きな失態をした事実があるそうでございますので、こういう意味において大臣としては慎重な態度をとりたい、かように申しております。よく御陳情の中で、イデオロギーの壁があるのではないかという御心配を受けておりましたが、私も各局課長に、どちらからかイデオロギー的な意味において、この薬を使うことを遠慮せよというような話を受けておるかということを尋ねましたところ、そういったことは他からは全く受けておりません、全く学者的良心において事が処せられております。かように申しております。従いまして大臣も、私もまたさようなことを申したことはございませんから、御憂慮のようなイデオロギー的な面から来る障害はないということを、ここに御確約できると思います。
  45. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、科学者の意見の一致を見て、あなた方が残りの分で相当——北海道なら北海道の流行地帯に何万人分かをやり得るという体制ができるのは、どの程度の日数があれば大体そういう結論が出ますか。
  46. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 安全試験は大体四月の半ば過ぎに終わるという予定でございます。従いまして、それから各地に渡しまして、五月から六月にかけまして、今の実際の精密投与試験が始まるわけであります。従いまして、その前にこの研究協議会——三部会を作っておりますが、この幹事の集まりをひんぴんとやるわけでございますが、そのときに、この残りのものを研究計画の中に、いわゆる浅く、広くやる大量投与計画を作ってもらうというようなことに、先般の総会でなっておるわけでございます。従っておそくとも五月ころには、今の協議会の学者方のこれをどういう形でやるかという結論が出るかと思います。ただその場合に、先ほどのお話もございましたが、たぶんそれも含んでおると思うのでございますが、北海道に非常に流行したといいますと、流行しておる地域そのもの——昨年流行したところでは、発病しなかった者にも、かなり低年令まで、自然免疫が他より相当濃厚にできておる可能性がある。そういたしますと、そういうところに投与した場合に、ほっといても精神的な不安だけで、さほど出る見込みがなかったところにこれが行く、その他のところに行った場合に、これが研究の内容として、はたしてその成績が価値があるかということが一番問題になるわけでございまして、従ってある程度やるからには、その地域の中和抗体のできておる状態、これを参考にして地域をきめませんと、おそらく学者方としては、それはただ精神的な慰謝のためにやることであるというような感じになってしまいまして、科学的な結論にもならぬし、また学者の協議会できめてやるからには、そういうことがわかっておりながら、ごまかしでやるということには、きっと納得されませんので、実施する場合に、さような条件はつくと思います。そういうような基礎に立ってこれは処理する、そういうことになるかと思います。
  47. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今の結論でいきますと、大体五月ごろから流行期に入るのだが、その流行期の前くらいまでには見通しがつく、こう理解して差しつかえありませんね。
  48. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 そういうふうに今の協議会の方に相談をしていただく、こういうふうに存じております。
  49. 河野正

    河野(正)委員 話を戻しますが、先ほども御指摘いたしましたし、なおまた厚生次官から若干の所信の表明がございましたが、昨年のソ連から十万人ガランタミンを送る、ワクチンを送るということに対して、厚生省当局では受け入れ体制ができぬということで、これはストップをかけたのだというような御説明もございました。しかし世間では、さっき申し上げますように、やはりどうも思想的な背景でそういうことが行なわれたのじゃなかろうか。それに対しては、厚生次官から、断じてそういうことはないというようなお話がございましたが、その場合に今度問題になりますのは当局側ですね。事務当局が真に科学的な立場でこの問題に対して臨むかどうかということですね。たとえば厚生大臣なり次官は、そういうふうな一切な政治的なイデオロギーというものは超越するとおっしゃるけれども、今度は補佐する方の当局側が、技術的な面から実はこうだというふうな考え方でありますと、結局そういう方は科学に対して必ずしも専門的でございませんから、そこで結果的には薬まで色目で見るというような現実が生まれてくるわけです。いろいろ説明がありましたけれども、どうも厚生省が今日までやってこられた態度というものは、国によって冷淡な態度が見受けられる。そのことはひいては国民というものが非常に不安を持つわけですね。そこで私はこの点の国民に対しまする疑惑というものははっきりと一掃する必要があると思うんです。厚生省は科学的立場から一切の思想、政治というものを離れて、国民のための施策を実行していくのだ、そうして国民の不安を一掃する、こういう建前をとらなければならぬと思うのです。そこで厚生次官から、先ほどから若干所信の表明がございましたが、今までもそうでもないが、さらに今後もそういう点は十分科学というものを尊重して臨むのだという態度というものを、一つあらためてここで明確にしていただきたいと思うのです。
  50. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 河野先生からただいま重ねての御質問でございますので、さらに重ねてお答えを申し上げます。  この問題は、科学と同時に人道の問題でございます。大臣にいたされましても、補佐いたします私にいたしましても、その問題にからめてイデオロギーを云々しようということは全くありません。のみならず、監督機関の者たちに対しましても この点徹底せしめるようにいたしたいと存じております。ただ科学者の誠意と学者的良心から云々ということであり、同時に、その寄って研究せられました結果が全的に安全度を持たない、安心できないということであられます場合には、これはいたし方ございませんけれども、その担当せられる科学者の立場においても、できるだけイデオロギー等によって災いされることのないように私たちはこれを指導していくようにいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  51. 牛丸義留

    牛丸政府委員 薬のことでございますので、今の政務次官の考え、私も同様でございますが、過去の事実につきまして多少説明さしていただきます。  実は私どもがイデオロギーに左右されてないと申しますのは、昨年のソーク・ワクチンの輸入におきましても、三回の輸入の一回はソ連から八百リッターの輸入をしております。それは今現実に検定に入って、昨日検定合格しております。そういう事実もございますし、昨年十一月にソ連なんかからわが国の総評あてにガランタミンが三万人分となまワクチン十万人分の寄贈の通知があった。それに関しまして、なまワクチンにつきましては先ほど公衆衛生局長から申し上げましたような事情で、まだ研究態勢ができてないということで、こちらがその受け入れ体制がないということを説明したわけでございます。ガランタミンにつきましては、総評の三万人分の第一回が三千本入ったわけでございまして、これにつきましては総評の担当の部長から厚生省の私どものの方に、通関についての免税措置をしてくれというような連絡がございまして、これは大学に試験用として配付するものであるということを総評から聞きましたので、その旨大蔵省の関税当局にも連絡したようないきさつもございます。それは現に一部入っているわけでございまして、そのように、過去におきましても、特にソ連なりあるいはその同様な地区から入ってる薬について差別待遇をするとか、あるいはソ連製品なるがゆえに薬の輸入の許可を延期する、あるいは禁止する、そういうふうな考えは毛頭持っておりませんし、また事実もございませんので、この点だけをちょっと御説明さしていただきたいと思います。
  52. 河野正

    河野(正)委員 時間もございませんからだんだん結論に入りたいと思いますが、今局長からも御答弁ございましたし、なお先ほどは厚生次官から厚生省を代表しての明快な御答弁がございましたから、私どももその点に対して信頼をして、今後ともそういう確固たる精神で国民の不安を一掃していただくことにさらに格段の御努力をいただきたいと考えております。  そこで、時間の制約もございますから、最後に小児麻痺ワクチンのみならず、ワクチン行政をひっくるめて、一つ結論的に御質問申し上げて、御所見を承っておきたいと考えます。それはこの小児麻痺でもさようでございますし、それからまた最近非常に猛威をふるいました流感、これもさようでございますが、どうも行政上の指導に欠陥があって、疫学上の研究というものが非常に阻害されておる。たとえば流行ですから次から次へと流行していくわけですね。それですから、疫学上の研究というものが予防に非常に大きな貢献的な役割を果たすということは、これはもう科学的に否定することのできない事実であります。ところがどうも行政上の指導が悪くて、たとえば流感の例で取り上げますと、地方によっては非常に的確に資料の報告を行なう。ところが地方によっては的確な資料が出てこない。そうしますと、実際に上の方で総合的に判断をする場合には非常に大きな欠陥になるわけですね。これはさっき公衆衛生局長から北海道の実情を科学の立場からいろいろ御説明がございました。同様にやっぱり行政上の指導を行なっていくためには、その前提として疫学上のりっぱな完璧な基礎というものがなければ、小児麻痺もそうでございますが、流感の場合でも、その予防の万全を期していくことは私はできないと考えます。ところが今申し上げますように、どうも行政上の指導に欠陥があって、極端に言いますと、それが今度の流感の猛威の非常に大きな原因になったというふうな説もあるわけですね。そこでこれは結論でございますから、小児麻痺、流感ひっくるめてのワクチン総論でございますけれども、そういうワクチン政策というものに対して行政上の手落ちがなかったかどうか。世間では、あった、そのために非常に大きな壁にぶつかったというような説もあるわけです。そこでそういうふうなワクチンひっくるめての問題に対して、行政上の手落ちがなかったかどうか。もし手落ちがあったら、そのために、たとえば流感の場合このワクチンの供給がうまくいかぬということになりますと、これは国民大衆に非常に大きな迷惑をかけるわけでありますから、そういう建前から、結論的にワクチンに対します行政上の措置はいかがなものであったかということについて、最後に御所信を承っておきたいと思います。
  53. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ワクチン措置となりますとワクチン供給の問題でございますが、十分間に合うかどうかというためには、今の疫学的な流行予測というものが必要でございます。今の両者ともに、これはヴィールスという、背からあるのではなくて最近ようやくわかってきた病気でありまして、しかもそれが日本人の間に、ある年をおいて、あるいは連続いたしまして、相当波を打ちながら消長してきておる病気でございます。従いましてこれはただ地方の大学の一研究室等がちょっと手を出したというのでは全国の傾向をつかめないわけです。どうしても地方の県立の行政力を持った地方衛生研究所というものが、常時相当数な県民のヴィールスに対する免疫力がどうなっておるかという消長をつかんでおくことが流行予測に対する一番確実な科学的な根拠になるわけであります。その点におきましては確かに、今までの大学もそうでございますが、こういう行政系統の研究所の能力と、それに対応する施設設備というものが非常に貧弱なものでございます。おくれております。ようやく地方衛生研究所につきましては来年から初めてヴィールスを中心にする検査能力の拡充のための補助予算というものが新規でついたわけであります。これは決してわかっておってなまけておったというよりも、伝染病の主要部分をヴィール性の疾患が占めるようになってきたごく最近の状況、これに対して疫学予想するためには相当高度を要しますが、これらの多数の人間に対する免疫抗体の測定方法、これがわかってきたのがむしろごく最近でございまして、今まではそのためのずれがあった。この点はもう地方も中央も十分着目いたしまして、今の話のように来年から地方のみならず予研の方も拡大する。それから公衆衛生院に疫学部というのがございまして、これらデーターを分析して予測を立て、これに続いて疫学会、それから伝染病予防調査会という機関がございますが、これにデータを提供して年々の政府の流行予測をやってもらう、それでこれの基礎的な条件が非常に強化される、こういうことでありますので、まあ今までが手落ちといえば手落ちかもわかりませんが、今の学問の進歩と、実際の国内のそういうようなもののわかり方がごく最近のものであるということで、おくればせながら今後は非常な充実を見る、こういうふうな自信を持っているわけであります。
  54. 河野正

    河野(正)委員 時間がございませんから、最後に一つ申し上げておきたい点は、今も御説明がございましたように、ワクチンそのものを非常に効率的に使用するにいたしましても、やはり疫学上の発生統計というものが非常に貴重な存在になるわけです。そのことによって地域、時期というものも予見されまするし、そういうことでその地域なり時期というものが疫学上の発生統計から予見されるということになれば、そこに重点的にワクチンをつぎ込めばいい。それがまんべんなくつぎ込むと、たとえば流感のごときがはやった、さらにそこからワクチンを作る——これは作っておりましても、結局効果の期間がありまして、一年以上きかぬわけですから、そこで常に作ってたくわえておくわけにいかぬのですね。それで地域、時期を予見するということが非常に大事な問題です。その場合に私はやはり教育機関、大学並びに研究所だけにたよっていても、そういうところの資料だけでは行政力がございませんから、なかなかこまかい資料が出てこないと思うのです。そういう点、やはり行政力を発揮して、そしてそういう研究所やあるいは大学あたりで手の届かないところに対しては行政力を発揮して、そして完全な疫学上の資料を作成しておかなければ、より効率的な防疫というものはできぬと思うのです。そういう意味で、なるほど今まで予算をつぎ込んでそれぞれ研究機関なり大学なりに研究を委嘱されることもけっこうですけれども、その足らざる点は一つ十二分に行政力を発揮して補っていく、そこに私は初めて予防の万全が期せられ得る最大の条件があるというふうに考えるわけです。そこで手落ちがあったとかなかったとかいうことは表現の問題ですけれども、私はそういう点からいえば、やはり力が欠けておったわけですから手落ちだったと思うのです。私はそういう考え方に基づいて、今後一そう力を入れていただかなければならぬと思うわけですが、その点に対しても、総括して厚生次官から御答弁を願って私の質疑を終わります。
  55. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 河野先生の御質問に対して、ただいま尾村局長から数種の点から反省いたしました御答弁を申し上げたわけでございますが、さらに私からというお言葉でございますので私からも申し上げますれば、まさにそうした事態に対処するためには御指摘のような点について十分なる留意をして計らっていかなければならぬと存じます。今後におきましてさらに局長を督励いたしますのみならず、私たち自身も注意を深くいたしまして御期待に沿うように進んでいきたい、かように存じておる次第でございます。
  56. 山本猛夫

    山本委員長 午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十九分休憩   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕