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1961-02-23 第38回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月二十三日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 山本 猛夫君    理事 大石 武一君 理事 永山 忠則君    理事 藤本 捨助君 理事 柳谷清三郎君    理事 小林  進君 理事 滝井 義高君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       加藤鐐五郎君    藏内 修治君       櫻内 義雄君    澁谷 直藏君       田中 正巳君    中山 マサ君       福田 繁芳君    松山千惠子君       赤松  勇君    淺沼 享子君       大原  亨君    五島 虎雄君       島本 虎三君    田邊  誠君       中村 英男君    吉村 吉雄君       井堀 繁雄君    本島百合子君  出席政府委員         厚生政務次官  安藤  覺君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         労働事務官         (労政局長)  冨樫 總一君  委員外出席者         参  考  人         (日本病院協会         長)      橋本 寛敏君         参  考  人         (日本医療労働         組合協議会議         長)      岩崎 清作君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月二十三日  委員西村榮一君辞任につき、その補欠として井  堀繁雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件(  医療機関における労働争議に関する問題)につ  いて参考人より意見聴取      ————◇—————
  2. 山本猛夫

    山本委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れの件についてお諮りいたします。ただいま大蔵委員会において調査中の、東北北陸地方の雪害に対する金融措置等に関する件について、大蔵委員会連合審査会開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本猛夫

    山本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 山本猛夫

    山本委員長 厚生関係及び労働関係基本施策に関する件、特に医療機関における労働争議に関する問題について調査を進めます。  本問題につきまして、本日参考人として、日本病院協会長澁本寛敏君及び日本医療労働組合協議会議長岩崎清作君の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。参考人方々には、御多忙のところ御出席をいただきまして、ありがとうございます。当委員会におきましては、近時相次いで発生いたしておりまする、医療機関における労働争議に関する問題について多大の関心を有し、先般米調査を重ねておるのでありますが、本日は特に労使双方の代表の方々に御出席をいただきまして、本問題について忌憚のない御意見を承り、もって当委員会調査参考に資したいと存ずるのでございます。なお、議事の整理上、最初意見を約十分程度に要約してお述べいただき、その後委員質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず最初橋本参考人からお願いいたします。日本病院協会会長橋本寛敏君。
  5. 橋本寛敏

    橋本参考人 病院労働争議が起こりましたのは、病院従業員待遇が悪いからでありまして、その待遇のうち、給与の増額を求めるストが起こったのであります。それに応じられないのは、病院経済が詰まっているからであるというのであります。病院経済が乱れているのは、院長管理が悪いからだという説がございます。もう一つは、病院収入の大部分を占めている保険支払いが不適当に低いからであるという両説がございます。私自身意見としては、両方が悪いと思うのであります。ただしこの病院管理の面におきまして、それが悪いというのは、学者である院長が理財にうといからであるというのでありますが、実はこの病院予算を立てますときには、院長ばかりで立てるのではなくて、設立者一緒になって立てるものでありますが、そのところにおもなる欠点があり、不合理があると私は思うのでございます。医学進歩につれて病院近代化し刷新せねばならぬ。病院の需要が増すので拡充せねばならぬ。これはもう近来の趨勢でございます。また医学研究費教育費多額に要する病院もございます。これらを患者収入から取るとすれば、経営費が大幅に削減されて参りまして、従業員給与に充てる金が限られてくるのでございます。病院刷新拡充は、今日の趨勢としてぜひ必要なものであり、公共性を帯びたものであるとするならば、国あるいは地方公共団体が他の財源からこれを得るために尽力せねばならぬと私は思うのであります。現にある県では、経済が窮乏しておるにもかかわらず、住民の健康を増すために県立病院の存在がぜひ必要だというので、乏しい経済から無理にこれを支出している事実もございます。また教育研究費の問題でございますが、これが多額に及ぶ病院があるとすれば、特殊病院でそういう病院がございますが、これもまた別個の財源から得るべきでありまして、患者収入からこの財源を求めるというのは不合理であると私は思うのであります。もし日本は、国として医学研究教育を促進せねばならぬと思うならば、文部省なども黙っているべきではないのではないかと思うのであります。  次に、保険支払いが不当に低いということは、いろいろ論じられまして明らかなことでありますが、これをただいま申しましたように、特殊の方面に充てるのでなくて経営費にだけ充てるといたしましても、高級な組織医療を実行するところすなわち病院では、最も困るのであります。それがむずかしいというので、院長管理が不手ぎわであることだけに罪を着せるというのは筋違いであろうと私は思うのであります。私どもは常に医療合理化を叫んでおりますが、この合理化という意味は、進歩する科学を人のしあわせのために十分に応用する医療をやろうということでございまして、産業などの合理化という言葉に、ややもするとオートメーションをやって人手を少なくするという考えがございますが、私どもの仕事は人間である患者を取り扱うものでございまして、しかも多くの職種の従業員があり、それがチームワークでもって病院業務を行なうものでありますから、従業員の中に不満人間などあったならば順調な病院業務というものは行なうことのできないものでございます日本の興隆は、私は人の働く力によると思っておりますが、その働く力の基をなす体力を増すために、医療と健康を増進する保健に力をもっと注ぐべきでないか。いんしん産業ほどでなくとも、少なくともまともな待遇従業員にすることができるようにしたい、こういうふうに念願して、絶えずそういう方向に向かって努力しておるのが私どもでございます。私が参考人としてお呼び出しを願いまして、まずごあいさつ申し上げるのは、これだけでございます。
  6. 山本猛夫

  7. 岩崎清作

    岩崎参考人 日本医労協議会議長岩崎です。  まずさきの病院争議についての御意見を申し上げます。これらの争議が、昨年来全国的に広がっておりますが、これがなぜ起こったか、このことについてはもうすでに昨年来いろいろ、世間も驚くような低賃金重労働労働強化、さらに関連をして前近代的な労務管理の問題が世間周知のところであって、ここでちょうちょう申し上げることはないと思うのです。特にわれわれ医療労働者としても、この医療の社会的な任務、使命ということを痛感し、長い間耐え忍んで参ったのでございますが、われわれ医療労働者といえども雲やかすみを食っては生きていけないのでありまして、このお手元のプリントにもありますように、賃金というよりも、あてがい扶持の一万円以下のものが、特に東京争議の起こった各病院の例を見ましても、東京女子医大において一万円以下の者が六六%というふうな劣悪な状態で、日赤全体をとりましても基準内の平均賃金が一万五千五百五十六円、これを公務員の二万一千三百七十八円に比較をいたしますと、約六千円の格差が出ておる。このような状態。さらにはまた中小病院におきましては、平均して五千三百円、最高が九千円というふうな非常に極端な例もある。賃金一つとらえてもこのような状態です。関連をしまして労働強化の問題は、端的に、昭和二十四年に医療法施行規則によりまして、病院勤務者患者に対する基準が示されておるわけですが、たとえば看護婦一般病院においては患者四名に対する一名、結核は六対一、このような十二年前のものがそのまま今日に至っておる。その間どれほど医療が進み、あるいはまた看護治療が複雑高度化しておるかということは、これもまたちょうちょう申し上げるまでもないことなのですが、そのような状態の中で、一昔前の患者に対する職員の割合というものがくぎづけされておる。このような事態は必然的に労働強化になり、労働基準法のごときはほとんど頭から無視されておる。このことは看護婦にたとえれば、生理休暇あるいは産前産後の休暇あるいは年次休暇、こういうものがとれない。極端なところでは、国立高田病院に起こりましたように、いわゆる年間出産件数を四名に制限せよと、看護婦長がはっきりと内命しておりまして、さらにその四名はダブってはいけない、こういうふうな形で非常に人権侵害の問題が出ておる。非常に極端な低い人員患者をどんどん消化しなければならないというふうなこと、またそのようなことが必然的に患者にしわ寄せされて、たとえば一個病棟五十名の入院患者に対する準夜勤務あるいは深夜勤務の場合には大てい一名が多いのであります。従いまして、その中で重症が起きてそれにかかっていると、他の患者が病状急変した場合には手が回らない。従って、あとで知らない間に患者がなくなっておったというようなひどい事例がある。あるいはまた人手が足りないために、看護婦がおらなくて、実務に使っておった看護婦の生徒が薬を間違えて患者がなくなった、このような事例は、国立日赤を問わず全国至るところにある。いわゆる人命軽視状態が現われておるということを私は率直に申し上げたいのです。しかもそれらの根本原因はどこにあるかということについては、医療本質から見まして、国民全体に日に日に進む医療技術を平等に与える、いわゆる機会均等の原則というものがあるというふうにわれわれは考えておるわけです。ところが今までのようないわゆる日本社会保険医療中心として発展をして参ったその社会保険は、いわゆる掛金中心で、それで保険医療全体のバランスをとろうとする。従って一日でいえば、自前で、安上がりの保険制度で、しかもその支出の面では、医療機関に支払うものを極力ワク内に押えようとする。これがいわゆる制限診療規格診療といわれて近代医療から大きくかけ離れた医療をいわゆる保険経済に従属させておる。このような流れこそがこういう事態の起こる根本原因をなしておる。従いまして医師会あたりの問題についても、一口にいえば医療の再生産はできない現状にある。しかもその中で皆保険前提として、医療機関がすべて独立採算制というワクの中で収入を上げなければならない、従って低医療と低賃金、低人員、こういうものは密接不可分に関連を持っておる、こういうことを申し上げたいと思うのであります。従ってそのような医療機関が、あたかも営利会社か、あるいはまた町工場以下のようなひどい状態で、人手が足りないあるいは予算が足りない、火の車のような状態の中で、医療合理化独立採算制ということから人命にまでこの合理化が及んでおる。この事態は、積もり積もったものが当然起こるべくして起こったのではないか、そのことが根本的にはやはり今の医療政策そのものにある。少なくも医療本質から見てそのような営利主義独立採算保険財政ワク内での制約された医療、こういうふうなものが矛盾矛盾を生んでおるというふうに考えておるわけです。  次に現在の病院争議現状でございますが、われわれはそのような一貫した貧困医療政策の中でがまんがまんを重ねてやってきたわけです。その中でいよいよ現状——端的に言えば外米で待ち時間が三時間で診療時間がたったの二分である、いわゆる患者を数でこなすというふうな状態の中で、われわれとしてはどうしてもこの低賃金と低医療を打破しなければならない。良心的な医療もなし、看護の問題もとてもでないができないところにまできておるという形で、昨年来の賃上げと大幅な人員要求はとりもなおさず今日の行き詰まった国民医療改善の第一歩であろう、このように考えまして団結権の行使に入っているわけです。しかしながら今日までの状態の中で全国的に広がっていったということは——少なくも全国医療労働者三十六万が期せずして自分らの悩んでおる毎日の勤務の中で矛盾を感じ、またそのような悲惨な患者状態にまで追い込まれる日常勤務の中での不満が爆発的に起こった。それで最小限ざっと五方が統一闘争に参加をし、今日まできておるわけですが、すでに御承知のように、われわれもこのストライキにはなるたけ早期にこれらの問題を解決したいという中において、東京段階でもあるいは地方段階でもわれわれの納得のいく解決策経営者側が出したところにおいてはすでに終結を見ておる。ただし全日赤特に厚生省外郭団体のようなところではなかなか頑強に、われわれのささやかなる賃金要求その他の要求についてもまだ全然回答すら出しておらない。これほど何人も認めておる低賃金あるいは重労働、このような状態に対してまだ経営者が誠意を示しておらない。全日赤あるいは健保連、このような厚生省外郭団体においては強い支持もあろうかとわれわれは推測しておるわけですが、そういうところにおいてはまだ解決に至らず、そればかりでなくていろいろの警察権の介入や組合分裂あるいはまた右翼までが、和歌山日赤の例ですが、おどかしにくるというふうな干渉がいろいろな形で入っておる。今日の状態が長引いておる原因は一にそのような経営者側分裂工作にある。またもう少し政府当局において適切なる行政指導、たとえば医療法の違反の問題あるいは労働基準法がめちゃくちゃになっておるという状態当局がよく知っておるにもかかわらずそれらに対して適切な処置を講ぜられていないというふうな事柄が今日これらの問題を長引かしておる原因であるというふうにわれわれは考えておるわけなんです。従ってわれわれは今後においてもあくまでこの医療労働者のせめて最低一万円をという要求、しかも一律方式で賃上げという一点と、さらに人員をふやして、患者に対してもう少しゆとりのある勤務を、あるいは看護を施したい。これは婦人労働者が多いわけですが、少なくとも生理休暇の、いわゆる心身障害のある日、そういうような生理休暇とかあるいはお産のときの休みぐらいは満足に与えるような人員を確保してもらわなければならぬ。いわんや深夜、準夜で若い看護婦が一名で五十名の患者を見ておるというような状態を何とか打開してもらわなければならぬ。これらのことをまず中心二つ要求として大幅な賃上げと大幅な賃金要求をしておる。これらに対してせんだって来いろいろ問題になっております医療費の問題についても、われわれもう一つ問題にしておるのは、保険に従属された医療、しかも掛金中心にしておること。しかしながら御承知のように日本貧困層が過半数を占めるという中で、医療費引き上げについても絶対に大衆負担にならないように、それはやはり資本家側々がその引き上げ分負担をし再生津を保障すべきである。その前提になる医療労働者の生活、労働条件の保障ということが緊急の問題であるというふうに考えて、特に今度の一〇%引き上げ部分の中で、国庫が七十四億、患者負担が六十五億、この問題についてはわれわれ自身が被保険者立場でもあり、われわれの家族がかかった場合、当然そのかかった分は、五割給付の自己負担がふえていく。こういう形は各国から見ても保険料率掛金が高いといわれておる中で、さらにそういうふうな直接間接の形での患者負担には絶対反対であるというふうな立場から、もしわれわれのこのような昨年来——ストライキそのもの目的じゃございませんので、世間全体が、また政府においても認められておるその起こった原因、また病院協会橋本会長も認められておるように、待遇が悪いからだという点、端的なそういうふうな事態からこの問題が起こっておるにもかかわらず、病院当局並びに政府関係機関においてこれらのすみやかなる処置が適切になされていないために長引いておるし、われわれとしては長い間この積もり積もった矛盾であり不満であり切実な要求である限りにおいては、ぜひともこれらの要求を貫徹することがまた国民医療立場から見ても当然である。われわれは国民の理解と支持に基づいて、以上の要求を掲げて今後においてもあくまでもこれらの要求を貫くために戦いを進めたいというふうに考えておるわけです。以上で私の陳述を終わります。
  8. 山本猛夫

    山本委員長 順次質疑を許します。滝井義高君。
  9. 滝井義高

    滝井委員 今橋木先生並びに岩崎さんから医療機関における労働争議に関する問題について非常に有益な参考意見をお述べいただきましたが、二、三の点について主として橋本先生にお尋ねをいたしたい。橋本先生病院争議原因というのは院長管理能力と申しますか、管理力が非常によくない、もう一つ保険支払いが低い、こういう両説があるけれども自分はその両方だときわめて端的に御指摘になったわけです。実は当委員会で再三にわたって厚生省意見なり労働省意見をいろいろ聞いたわけですが、その結果、原因らしきものが五つばかり出てきたわけです。一つは、先生の御指摘になりました通り病院に従事をしておる医療従業員労働条件が非常に悪い、特に給与が悪いということ、もう一つは、これは院長管理の問題とも関連しますが、病院経営管理がうまくいってない。それから診療報酬が適正でない、これは保険料支払いが低いという点にも関連してくると思います。それからもう一つ医療制度が悪い。そして最後に労働省見解として、労使関係が未熟である、前近代的な労使関係というものが日本病院にはなお残っておるのだ。労働厚生両省から言われた原因をまとめるとこういう五つの点になるようでございます。今先生が二点を御指摘になったわけでございますが、まず第一の病院管理の問題です。これは厚生省側からも、病院経営管理がうまくいってないのだ、こういうことがあったわけです。日本医療における病院立場というものは、最近近代医学進歩とともに比重が非常に重くなってきたわけです。最近厚生省はこの病院ストが起こりましてからどろなわ式に病院経営管理改善懇談会というようなものをお作りになったわけです。三月までにその結論を出すのだということで、主としてどういうことをおやりになっておるのだと言いましたところ、主として病院組織の問題、たとえば人事管理をどうするか、施設管理をどうするかというような問題、あるいは病院開設者管理者の問題、こういう病院の問題を中心専門家に論議をしていただいておるのだそうでございますが、病院経営管理がどういうあり方でなければならぬかということは、同時に、日本病院における労使関係が未熟であり前近代的であるということとも、これは密接な関連があるわけです。うらはらの関係になるわけです。この病院経営管理の問題について、経営者立場にあられる橋本先生はどういう御見解を持っておられるのか、これを少し具体的に御説明願いたいと思います。
  10. 橋本寛敏

    橋本参考人 非常にいい御質問でございますので喜んでお答えいたします。  病院管理が悪いと私申しましたが、どういうところが悪いかと申しますと、皆さんもよくおわかりと思うのですが、日本病院というものは歴史的にどういうふうに発達をしてきたかと申しますと、学術研究目的とした病院がモデルとなって、それからだんだん発達して参りましたので、医者作業場として発達して参りまして、患者を大事に世話するという方面は全くないがしろにされております。皆様方これは思い当たりがあると思うのでありますが、これを第一に病院管理においては是正せねばならぬ。これが一つ。  それから先ほど申し上げました通り病院というものは、建造物の大小ばかりでなく、ベッドの数が二十以上と定められておりますが、そこに注文があるのです。科学的にして適正なる診療が行なわれるような組織運営がなければならぬ、こういうふうに書いてあります。だからいい管理をせねばならぬということは初めから医療法の一条にうたってあるのであります。それがいけない。それはどういうことが悪いかというと、近代科学が十分に応用されるためには、それを持ったタレントがあり、設備があり、最も大切なことはチームワークであります。近代医学の傾向は、御存じと思いますが専門化しております。専門化した診療というものは視野の狭いものでございます。深く掘り下げるだけで狭いものでありますから、すべての科が集まって総合力を発揮しない限りは病院らしい働きはできないのであります。この管理、これが最も欠けているところでございます。  それから先ほど御指摘がありました組織が悪いということも、この組織というものは、そういう共同作業ができて、喜んでタレントを一人々々が発揮するような組織を作る、そういう運営をする、そういうことでございます。  それは病院おのおのによってきめればいいので、一律にこうしろというわけにはいかないと思うのでございます。  それからもう一つ労使関係、これも未熟でございます。何となれば、わが国では医者作業場としてできてきて、医者中心主義、これが強いのでございます。そして親分子分関係を非常に重んずる。そういう習慣がどういうものか伝統的に伝わっていて消えないのでございます。そして先ほど申しましたように、喜んでみんなが働けるようにする、能率を上げるようにするには、どこでも今はやりのいわゆるヒューマン・リレーション、人間関係が大切だということは全くその通りで、ベースボールですらチームワークをやるときには、みんな喜んで一緒になれるようにやらなければ負ける。それと同じです。ですから病院管理がいけないということは、私は根底が欠けているからだと思っております。そしてそれを急に直すのはなかなかできないのでございますが、私どもはこれを改善するために日夜努力しております。
  11. 滝井義高

    滝井委員 経営管理の問題と労使関係の未熟の問題について御説明いただいたわけですが、日本病院学術研究の場として発達をしてきたのだということと、優秀なタレント設備チームワークを必要とする、こういうことが総合的に一体になった病院でなければならぬことは当然だと思います。そうしますと問題は、学術研究の場として発達してきた病院に、新しい近代制度の装いを持っている国民健康保険とか健康保険という皆保険政策がかぶさってきていることであります。従って保険医療というものは研究を許さない。病院の歴史的な発展の過程は、先生のおっしゃるいわゆる学術研究の場として発展をしてきたということになりますと、この二つの間に矛盾が起こってくるわけです。この矛盾解決は一体どうされたいと思いますか。
  12. 橋本寛敏

    橋本参考人 まさしくその通りでございます。それで学術研究のために建てられた病院、それはますますやるべきでありますが、先ほど申しました通り一般病院患者を大切に取り扱うということ、患者取り扱いの一番の筆頭は看護でございますが、そういうものを重んずるようにならなければならぬということ、これは一つ申し上げました。  それから先ほど医学研究保険ワクというものの矛盾というお話がございましたが、医学研究保険のうちにあるべきでないと私は思っております。これは強くそう考えております。それで研究しながら健康保険——これは医療を保障するための健康保険でありますので、それにおんぶしてやるということはいけない。大学などでは公立の大学ですらこれが錯覚に陥っております。昔は研究のための施療患者というものがございまして、その他多くの研究費を大学の予算に盛って消費していたものでございます。いつの間にやら保障制度ができまして、医療の社会化が行なわれるようになりましてから、それからとるのが当たりまえだというような考えになって、施療患者というものはなくなってしまったでございましょう。これが錯覚に陥っていると私思うのであります。ですから研究費というものは別の財源から求めるべきである。それで先ほども申し上げましたように、もし医療研究医療教育というものが国のために必要と思うならば、公共の団体であろうが、だれであろうが、そういうものに金を出すのもよかろうし、第一、国で黙っていてはいけないのじゃないかと思います。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと問題は、現在医科大学の付属病院でさえ保険医療機関になっているわけです。そして大学は御存じの通り研究とそれから教える方と診療と、三足が四足くらいのわらじをはいておやりになっているわけですね。こういうことになりますと、これは本来の学術研究の場である大学でさえもが、保険医療機関としてそのかせぎの中から大学の運営をやらなければならぬ。たとえば単科医科大学なんかそういう傾向が出てきているわけです。こういう点の改革というものがほとんど行なわれないんですね。たくさんの無給の助手や副手が働いておるけれども、それらの諸君は保険医として働いておるが、そして保険医として責任を持たせられておるのにかかわらず、給与はもらっていないのだ。責任だけ負わせられている。こういう矛盾が現在の大学の中にはあるわけです。こういう点は截然と区別をして、先生の今の御意見だと研究するところは研究をおやりなさい、そのための財源は国なり地方公共団体で出す、それから今度は診療に当たる病院は一筋に診療に当たっていく、こういうことになるわけですか。
  14. 橋本寛敏

    橋本参考人 その通りでございます。研究費はどこの医科大学の研究費でも別の財源から求めるということは、これは一つはっきり申し上げておきます。  もう一つは、それならば医科大学は、一般の大衆の診療はやらないようにしたらどうかという意味でございますか。——そうでない、これはやるのが当然でございます。たとえばイギリスの例を考えますと、イギリスでは医療の区域制度、レジオナリゼーションというものを行なっておりますが、その基幹、病院中心となるものは大学としてございます。何となればきわめて高級の医療で、めったに使わないようなものは大学にのみあるというものがたくさんございます。何となれば大学は研究目的とするからで、あらゆる高級な進歩した医療研究をやらなければならないが、一般病院でそれをみなそろえるというのは、これはむだなことであります。めったにないような珍しい病気を取り扱う、その意味において最高級のものは大学にある、それを利用する、こういうことがイギリスなどの態勢でございますが、世界中やはりこういう態勢になりますから、大学が一般公衆の医療関係するということはごく大切なことでございます。そこで患者を選択することがいいかどうか、それは別の問題でございます。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕
  15. 滝井義高

    滝井委員 大学病院のあり方と普通の病院のあり方についてはなおいろいろ議論がございますが、時間の関係で、きょうは直接それと今関係がないようでございますから、次に移ります。  さいぜん院長管理能力の問題とともに、保険支払いが低いという御指摘があったわけです。これは主として病院運営財源の問題に連なってくる問題で、病院院長管理能力の問題とうらはらの関係になるわけですが、現在の保険診療では低いということが主張されておる、その両方だと思います。管理能力両方だと御主張になったのですが、先生の御経験から申しまして——一体医療労働者要求というものは一律三千円ないし五千円のベース・アップをしてもらいたい、そうして少なくとも最低の保障というものは、医療に従事する労働者は一万円にしてもらいたい、こういう要求があるわけです。その要求は一体適正であるかどうかということを、先日当委員会に呼びました日本医師会長の武見太郎氏に尋ねましたところ、医療従事者が一万円を要求することは適正であろうという御答弁もあったわけです。従ってまず第一に、今のそういう医療従事者の待遇が非常に低いが、三千円のベース・アップなり一万円の最低保障というものが日本現状から見て、医療技術者、医療従事者として適正であるかどうかということが一点。もしそれが適正であるとして取り入れた場合においては、病院経営の実態というものはどうなるか、この二点について意見を述べていただきたいと思います。
  16. 橋本寛敏

    橋本参考人 世の中が変わっておりますので、物価というようなものも変わっておりますから過去をどうこう言うのが大へんむずかしいと思いますけれども、今そういうことが言われていて、要求されているとすれば、それは妥当であるだろう。何となれば先ほども申し上げましたが、いんしん産業の給料というものは非常に上がりますが、それまでいかなくともとにかく満足して働けるような給料は出すのはあたりまえだろうと私は思います。それからそれを出したら病院経済はどうなるかという問題でございますが、これは病院によってみんな違います。そういうふうにすれば経済が危殆に頻する病院もございますし、それに耐え得る病院もございましょう。いろいろございますが、私先ほど申し上げましたが、大きな穴があるぞということを申し上げたのでございますが、その大きい穴は、病院の拡充及び研究というようなものを取り除くことができたならば、ずっと楽にいくのでないか。おそらくかなり楽にいくと私は思います。医療支払い改善されたならば、そういうふうに思っております。
  17. 滝井義高

    滝井委員 御説明の真意がわかりかねるのですが、病院の拡充、研究を取り除くというのは、病院の拡充の経費や研究費というものを国あるいは都道府県等の地方公共団体が出してくれる、そういうことになると、大体三千円程度のベース・アップは、病院によっていろいろ違いはあるけれども、大局的に見るとやっていける、こういう御説なんですか。
  18. 橋本寛敏

    橋本参考人 違います。今のままではそうはできないと思います。これまでそういうことをやらない病院ですら困ってきたのですから。もちろん変えた上でそういうふうになればいいと思います。
  19. 滝井義高

    滝井委員 そういたしますと、今われわれの耳に入っているのは、現在の診療報酬が適正でないようなニュアンスが強いという発言は、うしろにおられる医務局長も言っておるわけです。これははっきりしてきておるわけです。われわれの耳に入っておるのは、日本医師会は今の単価を三円上げてもらいたいと言っておるわけです。先生の所属される病院協会の方は二七%、二円七十銭と出てきておるわけです。それから慈恵医大、織本病院、慶応大学等がやはり三千円アップの要求をのむときに、経営者側は、われわれとしては三千円のアップをのんで、一万円近くの最低保障をするとすれば、二円上げなければとても病院の経営はできないという要求があったわけです。日医が三円、先生の方が二円七十銭、それから昨年の暮れ病院ストを終息したところは二円が最低必要だといっております。これは大がい三百ベッド以上はあるようです。それから自由民主党が一円五十銭、厚生省が一円、こういうふうに三円から一円まで五つ並んだわけです。最近社会福祉協議会等の病院で、国立病院と同じ程度に自分病院の人件費その他を持っていくと、三円六十銭要るというのが一部では出てきております。これを加えると六つ並んでおるわけですが、当面問題の焦点になるのは、三円から一円までの五つの配列の中にあるわけです。そうすると現段階で、研究費とか施設の整備費等を全部国が、すべての日本病院に出すなんということは、これはとても今の日本の保守党の医療政策では不可能です。不可能のことを議論してもしようがない。ですからやる意思がないわけです。そうすると次に問題になるのは、しからばそういうものができないとするならば、病院管理者として先生の方は一体どうすればいいのか。二円七十銭というものが当面このスト解決するために絶対必要なのかどうかという問題に焦点がしぼられてくると思うのです。現在御承知通り、多分きようも病院ストライキがあります。われわれが注目しているのは、全国的な規模でもってやる日赤病院です。これは全く見通しがつかない。こういう見通しの中で病院協会、いわゆる管理者のお集まりである先生方としては、当面このスト解決しなければならぬという問題があるわけですが、その点どうお考えになっておるのか。五つばかりありますが、先生の方でも二円七十銭というものをお出しになっている。そういうことでいけばうまく当面——恒久的な問題は医療制度とか、病院経営管理の問題とか、いろいろな問題がありますけれども、当面の問題として、次の段階は恒久的な問題に入っていけばいいと思いますから、当面の二円七十銭をお出しになった背景、考え方、ストとの関係、こういうものを一つ御説明願いたいと思います。
  20. 橋本寛敏

    橋本参考人 やはりあなたのおっしゃった通りでございまして、病院協会では、二七%上げてもらわなければいけない、こう思っております。  それから先ほどの、拡充費は国から出してくれ、公共団体から出してくれと言ったって望み得ないことだといっても、現にある県では出している。県、市などでも出すのはあたりまえだと思っています。ですからそういうことが絶対ないというわけではございません。そういうことも大いにやってもらっていい。国が出すかどうかは別の問題でございまして、国もやはり十分に考えてもらいたいと思っていますが、とにかく少なくとも経常費に関しては、運営費については二七%上げることによって従業員待遇が大体解決されるだろう、そういうふうに思っております。もしそれができなかったならばといっても、できなかったならば待遇が悪いままであり、病院は刷新されずそのままである、それだけのことでございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 研究費その他施設の改善のために、なるほど県立なんかは幾分出ておることはよく承知しております。問題は、日赤とか済生会とかいう公的医療機関です。こういうところは実際問題として、先日葛西副社長にも来ていただいていろいろ討議をしたり、また政府当局意見も聞きましたが、そういうものが出る状態は全然ないわけです。そうしますと二七%の要求をされておるが、これが進まなければ結局待遇は悪いし、施設は改善されない。こうなりますと、そこに働く医療従事者の犠牲、設備更新の犠牲のままでいくということになる。それがある限界にくると、結局診療内容が低下していくという形になって、日本医療というものはますます危機に陥ることは大体わかりました。  そこで次に進むわけでございますが、今日本医師会が四つの要求をお出しになっているのですが、先生方の方が二七%、しかし何といってもやはり制限診療撤廃、甲乙二表の一本化、地域差の廃止、事務の簡素化というようなものは、三円とか二円七十銭とかいう経済問題が片づくことによって突破口ができ、それによって他の問題もおのずから軌道に乗るのだと私は考えております。なかなかこれは、そう重い軽いの差はないが、しかし何といっても経済問題がどういう工合に片づくかによって他の問題はおのずから軌道に乗って片づく方向ができる、こう私は認識をしておるのですが、現在病院経営管理については、病院経営管理改善懇談会でおやりになっており、医療制度が悪いということは、もちろん医療制度調査会でおやりになっておるわけですが、そうすると当面は労働条件をどうするか、どういう工合に改善するか、前近代的な労使関係をどうするか、診療報酬の低いのをどうするかという問題になってくるわけです。これは今の厚生省の古井厚生行政としては、医療協議会で一切のものを解決しようという形です。ところがもう十九日にも一斉休診があり、五日にもおやりになるという、いわばストライキは進行中であり、火事は燃え盛っておるこの中で、この火事を一体どう消すか、どういう方法が一番いいのかということを医療協議会でやったらよろしかろうということが今出てきておるわけです。ところがこれは橋本先生御存じのように、今大内先生の社会保障制度審議会におかけになっておりまして、そこで答申が出ますと、それを今度は法律案を作って国会にかけることになる。そうすると一カ月以上まだかかる。そんなにストライキその他を放置することは許されないと思います。何らかの形で、この燃え盛っている火事に対して適当な方法を考えなければいけないと思います。先生の方で、この当面する火事をどう消すかということについて何かいい方法をお考えになっておれば、一つ簡明率直に御披露願いたいと思います。
  22. 橋本寛敏

    橋本参考人 そういうことをおやりになるのがあなた方だと思います。どうしてこの火事を消したらいいか、これは私たちそれを担当する者としてただ意見を申し上げるだけであります。やはり日本は法治国だと思っておりますから、定められた中央医療協議会と申しますか、そこでもって値段の上げ下げとか計数の直しとかみんなやるべきだと思います。あれを早く開催されまして、どんどん運ぶようにしていただきたいと思います。どうしてそんなにおそいのかと思うのです。
  23. 滝井義高

    滝井委員 御存じの通りに火事は燃えておるわけです。ところが大内さんの方の諮問機関におかけになっておるのです。私は先生意見には賛成です。今の日本の政治は政党政治です。従って政党が昨年の十一月二十日にそれぞれ公約を掲げて選挙をしてここに池田内閣が成立しておる。従ってこういう火事を消すために医療協議会が最高のものであるとお考えになるならば、当然政権を握っていらっしゃる自由民主党あるいは池田内閣、古井厚生大臣が端的に自分の意向を表明して、こういう場合にはこう解決するのだということでなければならぬと思います。ところが古井さんはそれをおやりにならないで、医療協議会にどうしたらいいかということを白紙で諮問している。それで今そういう古井厚政の立場があるので、きょうは先生方に来ていただいて、当面燃え盛っておる火事の当事者なんで、先生のからだの方にどんどん火が燃え盛っているのですから、外におる者がうまいこと、よその意見を聞いておるわけですから、今焼け死のうとしている人の意見を聞く方が一番早いのじゃないかということで、御意見を聞かせていただきたい、こういうことです。それはわれわれもやります。われわれもやりますが、この際火中にあってクリを拾わなければならない先生方は一体どうなのか、こういうことですから……。
  24. 橋本寛敏

    橋本参考人 私ども病院管理者としての意見を申し上げるだけでありまして、それをどうして消すかについては、皆さん方の方がはるかに識見をお持ちだと思います。私どもがこれはどうしたらいい、ああしたらいいと言っても、おそらくこれはしろうと考えになる点が多いと思いますから、こうしたらいいというようなことは、ここで私は申し上げるべきではないと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、二七%というものは何とかしてもらわねばならぬ、その方法は一つ政治家でよろしくやってくれ、われわれの立場としては二割七分を上げてもらう以外にないのだ、こういう点がはっきりわかりました。それ以上のことは一つ私たちの方で考えさせていただきます。  もう一つ先生にお尋ねしたいのは、だんだん日本では皆保険政策が進捗をして参ります。ことしの四月一日からは九千三百万の国民は何らかの形で医療保障の網の目の中にみんな組み入れられてくるわけです。その場合に、現在の皆保険政策のもとにおいては、医師と患者と、先生の言われるヒューマン・リレーション、病院の中にはチームワーク、ヒューマン・リレーションがなければならぬと同じように、医師と患者との間のヒューマン・リレーションというものも必要になってくるわけです。ところがその医師と患者とのヒューマン・リレーションというもののほかに、もう一つ今度は保険者というものがここに入ってきたわけです。三角関係ができてきた。昔から三角関係になると、なかなか家庭などでもトラブルが出てくるわけですが、日本の社会医療も、その三角関係が非常に顕著になってきたところに一つの問題があるような感じがするのですが、この保険者立場というものは、医療においてどうなければならぬとお考えになっておりますか、これを一つお聞かせ願いたい。
  26. 橋本寛敏

    橋本参考人 それも非常におもしろい問題なんですが、医者患者の直接人間関係を重んずべきであって、第三者が介入すべきものでないとかつてほかの国でも申しました。ところが、医者患者だけでやってきたところが、医療費が高くなって高くなって、金のないときでも病気になるし、金のある人ですら、貧乏にもなる。そういうふうになると、この医療というものを確保するには、どうしても社会の集団の力によってこれを実現せねばならぬとなったのが、これが社会医療でございます。これは世界の大勢でございまして、そうなりますと、必ず保険者というものがそこに介入すべきものでございます。組織なしに、勝手にやっていたところが、医療費に困るようになってきて、医者も困り、患者も困るようになったのでありますから、そこに第三者が介入する。しかもそれが顔ききがきてただ話をするのでなくて、社会の責任において、力においてこれが行なわれるとなれば、必ず第三者が介入して参る。しかし、その第三者の介入することによって医療がゆがめられてはいけないということは確かでございます。規格を設け、制限を設けることがないようでなければならぬ。それでその医療の社会化の最も極端なものは、医療国営でございます。何となれば、社会の責任においてやって、社会の集団の一番大きいのは、力のあるのは国でございますから、国営でございます。しかし国営の場合でも、そうすることによって医療がゆがめられ、正しい医療が行なわれないような統制をすることがいけない、こういうことでございます。  わが国におきましては、先ほどからもこちらのお話がありましたが、掛金に幾らか、少し労使双方から出す掛金があり、それで事務費か何かちょっと補助してもらう、こういうことでこれは医療保障だというのは、少し言い過ぎでございます。みんな患者から掛金をさせて、保険だけで国が医療保障をする、こういばるのは少し言葉が過ぎるのでないかと私は思っております。ですからもし足らなければ、国が補助金をどんどん繰り込んだらいいじゃないか。それだったらほんとうに医療保障である。しかしこのごろ医療保障というのは、一時は非常に使ったのですけれども、使わなくなりました。そう私は思います。揺籠から墓場までと言いますが、それはイギリスで言った言葉でございまして、それをそのまま言うのは、まだ少し早過ぎるのではないか。これは私のただ一個の考えでございますから、あまり強くお取り上げにならないようにしていただきます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 今のところは全く同意見です。規格あるいは制限を医療に設けてはいかぬ、しかしこれも無原則ではいかぬでしょうから、大ざっぱな大綱的な原則だけにすべきだという真意だろうと思うのであります。  それから最近、先生が御指摘になった通り日本の皆保険というのは、全く保険主義なんですね。これで国はほとんど金を出していない。特に政府管掌の健康保険のごときは、今まで五億円、今年三億加えて八億円、九百万もの零細企業の労働者の保険にわずかに八億円だなんというのはけしからぬ話だと思うのです。それから零細な中小企業、農民の国民健康保険についても、わずかに二割程度しか出してない。五分の調整交付のほかに二割しか出さない。そういう点については、ぜひ医療担当者として、あるいは病院管理者として、医療保障というものをもう少し声を大にして、われわれもやりますが、御推進を願いたいと思います。そうでないと、そういう声は池田内閣の耳には入りません。先生は多分厚生省の顧問をされておったと思うのです。今やられているかどうか知りませんが、前に顧問をされておったと思うのです。そういう点十分一つ大臣あたりに警告をお発しになる必要があろうかと思いますが、ぜひそういうことを要望いたしたいと思います。  それから保険者の問題、保険者というものは、今の皆保険政策の上で仕組みはそういうものがなければならぬと私は思うのですが、そのあり方、あるいは医療に関与する限界、ここが問題だと思うのです。それは一体どの程度の関与をすべきかということになると、規格や制限というものをあまり保険者がやってはいかぬという意味に先生は言われたのじゃないかと推察しておりますが、その点をもう一ぺんもうちょっと明白にしていただきたいと思います。
  28. 橋本寛敏

    橋本参考人 それも非常におもしろい問題でございますが、保険者が関与する場合に、わが国は、いうように保険でございますから、基金が加入の制限がございます。赤字が出そうになると削ってやろう、こういう考えでカットする、カットすることによって、医者が正しいと思ってやった医療の一部を医者負担せねばならぬということになりますから、そういう行き方がいけないというのでございます。保険者が、今の制度として必要ある場合にはこれをやってもいいという項目がたくさんございます。それから五つかの病気には治療指針というものを出しております。二つの薬の使い方によっては治療指針というものを置いて、ある型にはめております。病人がどんな容態にあろうとも、薬を使う順序をきめたり、この薬を使ってはいけない、あの薬を使ってはいけないということを言っておりますが、まあ保険ならそんなことをする者もあるかもしれないが、しかし、治療指針なんというものを掲げて、これに違反したらカットするなんということはほかの国にはございません。これは日本の特徴でございまして、こうすることによって日本医療を善導するなんという考えがちょっとでもあったら、これは大間違いだと私は思います。患者を見てない人がカットするのですから。これはおもしろいことがあるのですけれども、あれをやるのは医者がやるのだ、医者委員にまかせてやるのだから、医者医者をかみ合わせるのだからいいと言っている人がございますけれども、その場合に、今度はこれだけカットしてやれという指令を出す人があるのでありますから、こういうことは不合理だと思うのです。こういう不合理をやめなければならぬ、こう思います。
  29. 滝井義高

    滝井委員 あとにまだ二、三人おられますから私これでやめますが、医療制度調査会における重要な問題点として病院診療所のあり方、機能の問題が出ているわけです。この病院診療所のあり方、機能の問題ですね。これは最近厚生省の点数でいくべきだということでいろいろ問題があったのですが、病院診療所がどういうあり方をやるかということによって、同時にこれは医療従事者の待遇の問題とも関連をしてくるわけです。現在病院は入院だけではやはりやっていけない、だから外来をよけいとらなければならぬ、外来をよけいとれば、それだけ医療従事者の労働が加重してくる、こういう循環が病院診療所のあり方の中からも出てきているわけです。病院診療所のあり方について先生の御意見を伺っておきたいと思います。
  30. 橋本寛敏

    橋本参考人 病院診療所のあり方という問題を申し上げますと、ずいぶん当たりさわりがありまして、問題を起こす危険がございますけれども、せっかくお尋ねがございましたから、私がこう思っているということを申し上げます。  病院が外来診療が多い、これは正しい形でないと思っております。病院にある施設及びタレントをフルに応用しなければ診療できないような患者で、しかも病院に寝泊まりしなければならないような人をおもに取り扱うようにならなければいかぬ。その他の病人はなるべく個人の開業している人に見てもらった方がいい。何となればその人は数が多く世の中に分布していますから……。そういう人が取り扱っていただければいいと思うのです。  診療所というのはどういうものであるかというと、今の日本医療法できめておりますことは、十九床以下のベッドを持っているか、あるいはベッドがないでもいいのですが、そこでやっている人、こういうところでございます。大体日本の規則で。そうは申しましても患者を見たらすぐ家へ帰せない病人がございます。そういう者はどうしても泊めなければならぬから、十九床のベッドでやる。今四十八時間置いていいときめてありますが、あれは大体あり方としては正しいあり方だと思います。さらに進んでなお病気が長く続くようであって、高級なる診療を行なわなければならぬときには科学的な適当なる診療をやる組織及び運営のあるところに送るべきである。  私思いますのに、個人で開業しておいでになる方がこれからもっと力を入れなければならぬことは、病気を予防し、そうして住民の健康を増進するための相談役、教育者となることだと思っております。ですから何人かの家族をちゃんと握って、そうして絶えずその指導に当たるというような——昔そういう医者があったもので、私のおやじなんかそういう医者をしたのでございますが、そういうものがどうしてなくなったか、世界じゅうどこでも大都会ではこういうものがなくなってきております。ですからこういうものがあるべきである。イギリスはこれを法的に組織によって実現しようと努めておるのでございますが、そういうことが必要だ。それからもう一つ専門を、何病気だから取り扱うということを言わない医者でなければならない。専門家であって今度は個人開業する人はどうしたらいいかというと、一番いいことは、集団診療組織という制度ができておりますが——昔の勧工場みたいなものです。みなが同じビルディングかなにかに一緒になって、そこへ設備を備えて共同に使ってやる、それは患者を泊らせないというだけなんです。通いで来る人をやる。こうしなければ専門家の利用はできない。専門家というものの一番働きいいところはやはり病院であります。ですから、イギリスなんかは専門医は病院で働くことにきめておるのでございます。しかし、そうでないとすれば、グループ・クリニクという形態をとったらどうか。しかして、そこには検査場がある、設備もある。それをみなが利用する、こういうふうに考えております。
  31. 滝井義高

    滝井委員 ありがとうございました。
  32. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 大原亨君。
  33. 大原亨

    ○大原委員 日本医療制度は非常に大切なところにきている、というのは、御承知のように昭和三十六年から皆保険が始まるわけでありまして、今御議論になることを聞きましても非常に明確な点があると思うのです。そして私は別の角度から、若干ダブる点があるのですが、簡潔にお尋ねいたします。  私は労働組合の方からごらんになって、現在の経営で特に改善をすべき点はどういう点であろうか、争議中の労使の関係中心としてお考えになって。これは医療労働者が中で仕事をしていて人権問題が起きている、生活問題が起きているということは、やはり病院の機能を発揮してないということなので、そういう立場からごらんになりまして、現在の経営について、端的にどういう点を改善すべきであるか。制度上の問題もあるでしょうし、実際上の個々の経営の問題もあるでしょうが、まとまった意見ということもできないかと思うのですが、医療労働者の方からごらんになった御意見をお聞きしたい。
  34. 岩崎清作

    岩崎参考人 われわれの立場から見た経営の改善すべき点、一番大きなのは、やはり制度上の問題だということは、冒頭にも申し上げた通りです。つまり相互扶助、掛金中心安上がりの保険制度、これがやはり従属をされた医療、端的には厚生省の中でも保険局と医務局との関係を見ても、保険局に従属された医務局、保険局の一課に過ぎない。向こうがきめた単価なり診療報酬に対していかに医務局は、直接経営しておる国立病院ですね、これをどのようにどんぶり会計でつじつまを合わせるかということで、かせげかせげというて、相撲の番付のようなものをこしらえてそういうもので追い回しておる。こういうような制度上の問題が、日本経済が伸びたという中に、だんだん国民の貧富の断層が大きくなっていくという中である。これは掛金においても非常に給付がアンバラであるし、そういう中での医療状態を見た場合には、機会均等という問題からもこういうものがあり、また無差別平等の面から見ても非常にちくはぐになっておる。  もう一点、具体的な経営の状態ということで、とかく病院経営者は何のことはない、厚生省のそういうような当てがわれた制度の中でつじつまを合わそうとする。そういう中では、労働組合に対しても、一つの例をあげると、やはり、おれの目の黒いうちには労働組合は絶対作らせないというがんこ一徹のような考え方が端的に現われておる。それとまたいわゆる軍国主義時代からの奉仕の精神、あるいは忍従の精神あるいは犠牲、こういうものを一つのモットーとして患者に奉仕する、こういうような考え方を大きく改めてもらわぬと、労使関係が未熟であるわれわれがああ言っても、労働運動全体の中で、医療労働組織の面からいっても確かにおくれがある。従ってそういうような歴史的な条件の中で封建的な一つの牙城のような形になっておる。そこに人命というものの軽視が起こっておるわけであります。われわれの側にも若干反省点がないとは言えませんけれども、とかく経営者の側の時代感覚のズレ、このような問題が昨年来起こっておっても、どこかで何か単価でも上げてくれなければというような、全く人ごとのように考えておられる、積極面がない、こういうようなことをまず改めてもらわなければならぬし、少なくとも厚生省、上からの、官僚が中心になってくるいろいろの御指示なりそういうような行政問題についても、もう一歩、第一線にある医療機関経営者として、自主性を持った立場を明確にしてもらうならば、もっとこれらの問題も私は解決が早いのではないか、こういうように考えております。
  35. 大原亨

    ○大原委員 ただいま、経営者側といってはいかぬが、日本病院協会橋本さんの方の側では、労働組合に対する認織とか、人権尊重に対する認識とか、あるいは不当労働行為の例がここに出ておりますけれども、非常識なのが出ておりますけれども、そういう感覚を改めることで、医療の従事者に対しあるいは患者に対してしわ寄せになっている、学問や技術の進歩国民に奉仕するような新しい医療制度に逆行をしたそういうものをなくしていくことはぜひ必要だと思うのです。だから、そういうあなたの話を聞いておりますと、学者でありますからやはり非常に感心するところもあるけれども、率直に言うて、失礼な話ですけれども、全般的にちょっと足りないところがある。その点については、私はやはり十分経営者側に警告を発せられる必要があると思うのです。この点は一つ要望として申し上げておきます。  それから私端的にお尋ねするのですが、皆保険ワクの中で処理しきれない問題で、研究費の問題については、よくわかるのです。いわゆる皆保険の中においては研究費の問題はワク外に出すべきだ。それから普通の学校なんかでどんどん教育している生徒があるのですから、文部省その他の関係で。だから看護婦の養成なんか、単価の中から計算していくというようなことでは、保険費の中から計算するというのでは、これもやはりおかしいことが出てくると思うのです。だから、研究費と、たとえば看護婦の養成、今まで議論されなかったが、そういう問題はあると思うのです。これを全部背負い込んでおるということはいけないと思うのです。これは、私は将来ぜひ改正すべき点だと思います。この点はあなたも同感でしょうね。   〔柳谷委員長代理退席、永山委員長代理着席〕  もう一つ保険の中身の問題で、やはり設備投資に対して金がたくさんかかっておる。建物とか、中の機械器具、そういうものに対して融資でやるか、補助でやるかということがあると思うのです。補助でやるということになると、今の政府の政策では限界もあり、なかなか熱意もないようだし、そういうことは、今の予算編成後の時点ではいろいろ問題があると思うのですが、融資の面でこれを合理化して、利子の経営者負担を安くするとか、そういう面についての御意見がおありですか。融資の面でどのくらい経営が改善できるかどうか、これはお二人に一つ簡単にお聞きしたい。
  36. 橋本寛敏

    橋本参考人 私は経済学者でもなし、経済にも明るくございませんから、融資の問題についてどうしたらいいかというようなことは申されませんけれども、とにかく融資を受けるといっても、短い期間にそれをみな返済せねばならぬ、それから高利である、そういうような場合には、今申し上げましたような問題が起こるのでございます。三十年とか、五十年とかでだんだん返していいというような融資をしてもらう。市町村の方でそういう融資に頼るところもあるようでございますが、病院の拡充とか、新設するときも、そういうふうなことならいいのだろうと私は思っております。
  37. 岩崎清作

    岩崎参考人 われわれ経営者立場じゃないのですけれども、何といっても大きなのは、やはり設備投資の問題だと思います。少なくとも、医療法からいっても、公的医療機関——それにはまた特殊な、先ほども育った養成所とか、研究施設といった公的医療機関としての特殊な使命、性格というものがある。それは国からの助成の道は全然ないわけではないのですけれども、ほとんど入っていない。それがみな保険による自前であるというところに、ことさらの過重がある。こういう点は医療法三十三条ですか、あれによるところの融資というよりも、やはり助成の迫をもっと大きく開くべきじゃないかというふうな考えを持っております。
  38. 大原亨

    ○大原委員 皆保険になったのですから、やはり国民全部に、不備な皆保険制度のもとにおいてそういうものを負担さすべきじゃない。国費で負担をする、助成をするということと、長期、低利の融資をやって、現在高い利子のものなんかは借りかえをさせるというふうな思い切った措置をとるべきである。これは御両人とも御同感の意を表明されたので、私はあらためてこのことは言いませんけれども、もう一つ皆さんが、医師会その他ということでなしに、ほんとうによくするという立場で考えていただきたい点で、私はしろうととしていつも疑問に思う点は、皆保険を進めていく際に、どうも薬の値段を薬業資本家のもうけほうだいにさしておるのではないか。その点の規制もしないでおいて、上の方だけ押えていく、こういうことが結局は患者医療に従事する人にしわ寄せになるのではないか。そういう点を抜きにしておいて、低医療費政策というものを一つの政策として押しつけておる、そういう官僚機構というものが、私はやはりガンじゃないかと思う。だからその薬品にいたしましても、保健剤なんかひどいというのだが、四十が原価とすると末端価格は百になったりしておる。あるいはいろいろな宣伝費、広告なんか見てみましても、専門家だけしかわからないような広告について、どんどん新聞その他テレビ、ラジオ等でやる。だからそういう問題について、それは専門家がわかればいいのですから、それを中心として、いろいろなそういう点を合理化していかなければ、結局はそういう政策の中で弱い者にしわ寄せになってくるのじゃないか。これは大まかな政策ですけれども、私はその点は、保険全体のワクをきめているのですから、そのワクの中を、やはり皆保険の趣旨に従って、医療保障制度の趣旨に従って、規制をしていく、その面は、研究費の問題を外へ出す、あるいは看護婦の養成を外へ出す、あるいは今お話がありました補助とかあるいは低利融資の、長期の金を持ってくる、借りかえて経営を改善していくということと、それからもう一つは、やはり薬品を——薬品については、自由競争の中でもうけほうだいにするというようなことはせぬで、どんどん独占化は進んでおるのにそういう点をやらないでおいて、そして皆さん方だけにしわ寄せするということはいかぬと思う。そういう点は私は、日本病院協会も、医療労働者の方も、医師会の方も、同じような立場だと思うのですよ。だからその点はやはり協力できる点は思い切って、医療の学問や技術の進歩、あるいは国民への奉仕と、こういう観点から力を合わせてやる、こういう点があってもいいのじゃないか。病院というものは経営としては中小企業なんですから……。特殊な病院はありますけれども……。その点について、私はコストの面から、薬品その他について安く買う方法はないのだろうか、こういうような端的な質問を、橋本さんと岩崎さんに一つお聞きしたい。
  39. 橋本寛敏

    橋本参考人 薬を安く買う方法はないか。悪い薬を安く買ったんじゃ、これは何にもなりません。日本の製薬は非常に発達しておりまして、このごろなかなかいい薬を作って参ります。でありますけれども、またその広告もなかなか活発でございまして、医者たちにそれらの新しい薬を何でもかんでも用いるようにそそるような広告をいたします。そうすると私ども病院でも、院長がいかに偉くとも、一人々々の処方まで限定するわけにはいきません。そこで私としてはどういうふうな方法をとっているかと申しますと、いろいろ新薬が出て参ります。新薬が出て参りますときには、病院委員会がございまして、この新薬のうち代表的な最も信頼できる薬はこれだけだ、これだけを病院に備える。それっきりで、処方したって薬は作らぬぞと、こういうふうに言っておきます。そういうふうにして私は規制いたしますが、先ほどのもう一つの、製薬会社が非常に攻勢をとってくるやつを何とかならないか。これは私どもの仕事の範囲外でございまして、それは厚生省の方におっしゃって下さい。
  40. 岩崎清作

    岩崎参考人 私どもの方も、ともあれ、われわれは非常な各種保険のアンバランス、非常に近代医療からかけ離れておる、従ってこれは各種保険の中の弱いところへの国庫負担ということを言っておりますが、そのことはすぐ野放図に国民医療費を拡大する、その半面、やはり重要なことは、とかく日本医学は治療中心であるといわれておりますから、それと、また一面いわゆるこの予防の問題ですね。公衆衛生活動、特に問題になっているあの保健所あたりの機能が半ば麻痺状態になっておる、こういうふうな問題も治療以前の問題として、あるいはまた今御指摘の独占製薬の問題、それからテレビ、ラジオのような膨大な宣伝力を持つああいうような問題等、そういうような問題の中に、国庫補助という問題ももう一歩前進して打開していかなければならぬ問題点がある、こういうふうに考えておるわけであります。
  41. 大原亨

    ○大原委員 最後に、一つ岩崎さんにお尋ねしたいのですが、制度、経営自体を改善し、合理化していく、むだを省いていくということと一緒に、そういういろんな工夫をしながら、その可能性についても、見通しについても判断しなければならぬ。当面、そういう十分なことはできませんけれども、皆さん方がごらんになって、医療単価の値上げは、やはり医療保障の制度なんですから、国庫補助でやるべきです。それは原則です。そのことを貫かなければならぬという御意見でしたが、そういうことを前提にいたしまして、単価を何%ぐらい上げるべきが適当か、一つ意見をお聞きしたいと思います。
  42. 岩崎清作

    岩崎参考人 正確に言って、何%上げるべきであるということは、われわれの立場からいろいろ問題があるのではないかというふうに考えております。ただ、先ほどから申し上げておるように、国立病院の実態を見ても、毎年、入院、外米が平均一日おのおの一千名ぐらいずつ平均人員を上回っておるが、それでさえも年度末の決算のつじつまを合わせるのがなかなか容易じゃない。いわんや、整備費は一般からの繰り入れになっておるわけですけれども、そういう状態から見て、少なくとも今のまともな医療を考えた場合には、とてもじゃないが、拡大再生産などできるものじゃないということだけは明確に申しておるわけです。しかしながら、それを今言った賃上げだけの面から何%という——まだまだ医療改善の内容の問題、設備その他のファクターがいろいろあるので、あまりその要求をわれわれが前面に出していくと、経営者がよくやってくれるということで何もかも請負でやって、それこそアベックというような格好になりかねない。その場合には、日赤であろうと各企業であろうと、その経営と企業の実態ははたしてどういうことになるか。経営者側がそれくらいのことを言うのは当然であろうし、やはりその大元が時の政府当局にものを言う立場にあるのではないかということから、われわれはそのことにあまり深く何%という要求として言うのはどうかというふうに考えておるわけであります。
  43. 大原亨

    ○大原委員 大体わかりましたが、最後に申し上げたいことは、現在のワクが小さい。医療費ワクを小さくして、このままで皆保険に突入するのはやはり困るだろう、こういう大まかな御意見であって、そのことは制度全般、経営全般を考えて、あなたは経営者だから、あなたも言うところはちゃんと言って、医師会と協力することはしなければならぬ。医師会の悪い点については批判をされる。そうしてやはり、日本病院協会と医師会が医療の担当者なんだから、あまり対立するということもよくない。厚生省、自民党とけんかするところは大いにけんかしてやるだけのやはり自主性を持ってやらなければ、こういう問題は共通の問題として、その対立の中で解決するということで、その点ははっきり行動される、そういうことが適切じゃないか。あなたはちょっとほかのことになるとお話にならぬようであります。しかし、その点は思い切って、この際正しいということは大いに言われて、そうして、だれが悪いということはないけれども、みんなの力でやるべきじゃないか、こういうふうに感じます。特に労働組合管理、その他の問題については、古い親分、子分の関係その他がいろいろ医療界の中にあるというお話ですが、そういう点が近代化する一つのポイントじゃないか。そういう点は一つ協会等で会合等がありましたら、よく御注意いただいて、厚生省指摘しておる点でありますから、この状態解決するために、一つ前向きの態勢をとっていただくようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  44. 永山忠則

    ○永山委員長代理 島本虎三君。
  45. 島本虎三

    ○島本委員 橋本さん、岩崎さん、両方に私は医療機関における労働争議に関する基本的な考え方を具体的に伺いたいと思います。  今説明を聞いておりました中で、私自身も賛成し、なおかつ若干疑義の点もあったのは事実でございます。その中で、どうしてこの問題がこじれているのか、この問題についていろいろ理由を探索してみた結果、私は、日本病院協会会長の橋本さんが言って下さった、日本は法治国であるんだ、従ってこの中でいろいろと問題を解決すべきが妥当であるというふうに滝井さんにいろいろと答弁をされた。あの言葉は私も賛成なんです。そういうような立場に立って、私としては労使の問題の解決のために一、二こういうような方法をとったかとらないかを双方に聞いてみたい。たとえばここに週休や年休や生理休暇や産休、こういうような権利が完全に剥奪されておるというような訴えがあり、その要求解決する立場に立っておるのが労働組合側の第二項の要求に掲げられてある目的であります。この説明によりますと、これまた、出産手当、または休暇、こういうようなものでもとれないような現状にあるんだというようなことを今組合側から報告があったわけです。これは法治国として基準法という法律もあり、労働組合が発生し、経営者または労働組合はこういう立場に立って問題を解決しようとする以上は、当然労働協約等によってこういうような問題を具体的に解決する方途があったはずです。これをどちらかが拒否してまだこの協約ができていないのか、またはそういうようなことを要求してもこれを経営者が認めないのか、こういうような点について具体的に双方からお答えを願いたいと思うのです。これは基準法の実施上大事な問題だと思うのです。
  46. 岩崎清作

    岩崎参考人 無権利状態基準法違反が山積しておるということであります。日本医労協としてもそういう点を指導しておるわけです。過去においてはそういう点が非常におくれておったという点はわれわれも認めておるわけですが、国立関係は協約権がないわけです。しかしながらこのことについても、数年来いわゆる直轄しておる厚生省に向かっていろいろ団体交渉その他で病院の問題とそういう事実を追及をして、少し古くなりますが、異常産の調査をしたことがあるのです。約四二%近くの異常産があるというのがわれわれの調査の結果なんです。こういうふうな事実があることを厚生省はよく知っておるが、それを何ら改善しようとしないし、また時間外勤務、超過勤務手当等も実働に対してほとんど支払われていない。金がないから、あるいは負けてくれとか、それは奉仕の精神でよきにはからってくれというような形で、労働基準法そのものに対する理解と申しますか、そういうものが病院にはやはり通用しないのだというのが、まだ一般的な病院経営者の考え方のかなり支配的なものではないだろうかというふうに考えております。特にわれわれは民間の労組に対しては、そういう点を積極的に指導をして、今日の問題も、やはり協約を含めた要求も各単産が個別要求として、大きな問題として出していくということであります。
  47. 島本虎三

    ○島本委員 今基準法を守るために、そういうふうにしていろいろ努力をされておりますが、これは協約を結んでいない国関係の方では、厚生省を初めとしてその管下にあるところでは守っていないので困るのだというのが組合側の考えのようですが、こういうようなことに対して、橋本さん、重大な決意をもってこれをやらなかったならば、人権の問題にもなるんじゃないかと思うのですが、この解決の方法としてはどのようなお考えをもって当たりますか。
  48. 橋本寛敏

    橋本参考人 労働基準法にのっとる待遇をするという問題でございますが、これは今のお話では、分娩のときの異常ということが大へん多くあるようなお話にも伺えましたけれども、これは私どもの方ではそう問題になっておりませんので、今の赤ん坊が生まれるときの話ですが、それはある病院ではそういうことが大へん問題になったかもしれませんが、私どもの方としてはこれが病院協会のいろいろの討議や何かに、中心としてなされたことはございません。今後もしそういうことがひんぴんとして起こるようなことがあるならば、申し合わせをして、できるだけそれにこたえるようなよい待遇をするように取りはからいたいと思っております。
  49. 島本虎三

    ○島本委員 これはほんとうはここで、両方に対して、こういうふうな答えなんですけれどもどうですかと言って結論を出せば私としてはいいのですが、判事でも検事でもないし、そういう立場ではありませんから、これ以上要求はいたしませんが、そのような立場に立って、こういう法違反が現に行なわれている事実があるとおっしゃっていますから、それらを十分調査して、これがないように努めるのが、第二の要求項目の解決になりますから、そこを一つ考えて具体的に当たっていただきたい。また厚生省がそれに反対しているような事実があったならば、逆に会長さんの方から社労委の私どもの方へその事実をお示し願いたい、そういうように思いますから、その点よろしくお願いいたします。  次に、今申しましたように、病院基準法は通用しないのだという考え方が、国の方の関係病院にあるということを聞いたのですが、以前にも銀行の問題で、岩手銀行の争議があったおりに、具体的な問題として、中小企業でさえも基準法を守らないのに、われわれが守っていられるか、それよりも罰金を払って守らないような立場の方が有利なのだという態度を出している、これはけしからぬというので、基準監督署から書類をもって送検されている事実があるのです。組合の方でもそういうような事実があるならば、こういうことによって法的に明確に処置するのも解決の早道じゃないかと思うのですが、やったことはございますか。そういう事実があるならば、どんどんやるべきじゃないですか。組合の方どうですか。——わからなければいいです。  では次に進みます。先ほどいろいろ岩崎さんからの意見の開陳の中で、一つ人手が足りないために患者を死に至らしめた事実もかつてあったというのです。それから薬を間違えて死に至らしめたようなこともあったというようなことを申された。これほどまでにいわゆる人も足りないし待遇も不完全だ、こういうような意味に私はとりました。はたしてこういうような事実が不可抗力なのか。これに対して、刑事的ないろいろな責任問題が発生しないのか、こういうようなことは私は重大だと思うのです。もっともこういうようなことは、起こったとたんにもう管理者として、経営者としても責任がある。この問題について刑事的にいろいろ始末するほかに、問題が起こったところからすぐこれは何とかしなければならない。これは問題解決一つの端緒にもなる事件なんです。こういうようなことをただ漫然として、そういうことがあったというだけで済ませておいて、事務的に解決してはならない。一つの人権問題というか、人命軽視というか、大きな問題だ。こういうことが許されることが管理の欠陥を暴露することになるのですから、病院協会会長さんの方でもしかるべく手を打って、完全にこんなことのないようにすべきだというのが私どもとしては当然考えなければならないところじゃないかと思ったのです。こういうことは、この争議全般の解決一つの端緒として考えられなかったかどうか、この点について御意見を伺いたい。
  50. 橋本寛敏

    橋本参考人 そういうことが争議中にあったというお話ですか——そういうことじゃないでしょう。常々の病院の経営にあった、これは許すべからざることでありまして、そういうことを見て、不問に付して、これを何のせいだ、かんのせいだと言って責任を転嫁するということでは、病院長としての資格はございません。そういうことをやるために病院長というものがあるのです。そう思います。
  51. 島本虎三

    ○島本委員 争議以前であっても、こういうことが不完全な教育しか受けていない看護婦または不完全な給与を受けてしかいないような状態に置かれておる医療労働者、こういうような人たちの不完全な立場においてこれが発生するということから、すでに争議の以前であろうと争議の中であろうと、こういうことは管理者として考えるべきことが正しい管理者としての立場だと思ってそれを聞いたわけです。こういうようなことについて、将来解決を早めるためのこれも一つのポイントになる問題だぞ、こういうように思っておりますから、その点も会長さんの橋本さんの方でも十分将来の参考にして解決のポイントにしていただきたいと思います。
  52. 橋本寛敏

    橋本参考人 ちょっと一言。争議中に保安要員が足りなかったためにそういう事件が起こったかもしれませんが、起こったとすれば、それは争議のやり方について考えなければならぬと思います。そういう救急患者、重傷患者が死ぬことがないような人員は、必ず争議中でも残さなければならぬ、こう思います。
  53. 島本虎三

    ○島本委員 それから組合側から参考に出されている、なぜ問題がこじれているかという点の三、四、この中に盛られている問題は、いろいろな争議中に、ピケ破りのために暴力団を雇っておるというような事実があったということ、それから右翼や警察までこれに干渉させておるという事実があるということを申し述べておる。私としては争議解決のためにはおそるべき愚劣な方法である、こういうように思うわけで、こういうようなことをする前に、前に滝井先生もここで質問されまして、当然それはやるべきであるという答弁もございましたが、問題になっておるところのいわゆる最低保障の賃金の引き上げの点や、または人員をふやしていろいろな仕事を十分できるような立場にしてくれという問題や、いろいろ申し述べてありますが、この問題を解決するために取っ組んでいって、早く話し合いの結論をつけることが主であって、こういうことをするのは、逆にこじらせたり長引かせる一つのもとになっても、解決のための何ら手段にならないと思います。こういうようなことは会長さんの橋本さん、どういうように考えられますか、御意見を伺いたい。
  54. 橋本寛敏

    橋本参考人 私ども今の警察が干渉したり暴力団が来たり、そういうことはいい方法であると蘇ったためしは一度もありません。これはその現地の人たちがそう思ったのでございましょうが、病院スト解決のために病院協会としてとりました手段は、保安要員を確保すること、こういうことでございます。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 私どうも聞くのが下手なものですから、お答えが少しずれるのです。しかしこれ以上はいいと思います。問題はこういうふうなことに対して、保安要員だけというのに対して、ここまでするということだったら行き過ぎていますから、橋本さんの考えも及ばないことをしてなおこじれさしているという結果になりますから、そこは一つ注意を喚起してやって問題の解決を早めるのが経営管理者としての一つの道だ、こういうふうに私は思いますから、その点お考えおき願いたいと思います。  それから私はここで聞きたいことは、会長さんも御存じだと思いますが、二月の十六日に、ちょうど同じこの場所へ医師会会長の武見さんに来ていただいて、医師会の立場を述べられた。この中で私ども今でも忘れられない言葉が一つあるわけです。それは、今ちょうど橋本さんもその中でちょっと言っておられましたが、医学進歩による新しい医学を、社会保障の中にどのようにして入れていくかということが大きい問題だ。明治、大正のころの個人的な医療とはもうすでに異なってきておる現状では、疾病の原因は社会にあるというような考え方にもなつてきておる。従って社会の責任でなおし、社会の責任でこれを予防するのだ、こういう考え方が今では一般的になっており、われわれの考えにもなる。従って社会保障制度の中の医学は根強くなければならないのだということを前提として、いろいろ申し述べた。私もそれによって啓発される点もあったわけであります。今先生滝井委員の質問にいろいろ答えられて、この問題の解決は二割七分をいただく以外にないのだ、こういうようなことをおっしゃられた。そういうことでやっておるならば——われわれの立場としてもずいぶんこの問題に対しては真剣に取り組んでがんばり、努力しておったわけであります。これを阻害しておるのは何かというと、われわれ自身がやろうとしても現にやれないのだけれども、その問題に対するガンになるような問題があるわけです。社会党だけではとうていまだまだそこまでやれるような完全な実力がないわけです。そういうことは先生も御存じだろうと思います。  さて、こういう問題を前にして、やはり先生としては、ここに病院経営者としてどのような行動をしてこの問題を解決しようと考えられますか、また今までこれをやって参りましたか、これをお伺いしておきたいと思います。
  56. 橋本寛敏

    橋本参考人 話は皆さんも大体おわかりになっているし、私たちもこうすればいいということはわかっておりますが、それならどうしてこれが解決されるかというと、やはり世の中の人が、すべて医療機関及び病気を予防する機関というものが萎縮して微力になったならば、そのはね返りは国民の健康にくる、また将来日本国民の体力が衰えていく、こういうことをみんなよく認識してくれて、そうして皆さん方、直接それに携わる方々にしっかりやっていただき、それを目標としてまた私ども自分たちの意見をどこででもあけすけに話をしていかねばならぬと思います。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 あまり、長くなっても申しわけありませんが、そういう考え方は、そこまではいいのです。それではどうしてもできないということになれば、組合の方は組合の方で、これはやはりできないものに対してまでも最後までがんばってやれというようなわからない人はいないと思います。そういうような点についてもっともっと話し合って、そうして双方でこの問題の焦点は何なんだ、どこを突っついて解決すればいいのだということをそこで諮って、解決のための一つの前進をすべきではなかろうか。そう思っておるだけなんだと言って引っ込んでおっても争議解決にはならないし、具体的問題の解決にもならないと思います。思うだけではだめです。行動をしなければだめですよ。その行動をする前に、組合ともっと基本的考え方の問題で話し合ったらどうですか、こういうことをちょっと聞いてみたのです。
  58. 橋本寛敏

    橋本参考人 ストの起こった病院院長、あるいは設立者組合と話し合っておるのでございます。結論を得たところもあり、まだだらだらしているところもある。しかし大体においてまとまりかけているのではございませんか。
  59. 島本虎三

    ○島本委員 大体においてまとまりかけておる、今後早くまとまるのだ、基本的な問題に対しても話し合っておる、こういうような話のようですから、それならば組合側の意向を一応伺っておきます。今のようなそういうお立場であるならば当然に解決しておると思いますが、この問題について御意見をいただきたいと思います。
  60. 岩崎清作

    岩崎参考人 先ほど来申し上げておるように、この問題は根本的に根が深いところにある。基本的にはどの辺に根本原因があったかというようなことについても、せんだっても病院協会にわれわれがまとまって一つ話し合おじゃないかということで申し入れをしたのですが、結局病院協会との話し合いの場は持てませんでした。この状態では決して時間が解決するというような状態ではないと思います。こういうような中で、もう少し経営者団体としても積極的意欲的に、この問題の解決についてすみやかに手を打ってほしいということを考えておるわけであります。せんだっての両者の交渉というものは、そういうような形で実を結ばなかったというような事情があるわけであります。
  61. 島本虎三

    ○島本委員 いろいろ長い間ありがとうございました。  最後に、私として要望を申し上げておく次第であります。やはりそういうふうにして厚生当局が悪いというならば、遠慮なしに今後こっちの方にお申し出願いたいし、両方で話しをした上で、これは社会党は賛成しておるのだが自民党が聞かないのでだめだというならば、遠慮なしに皆さんそういうような運動を展開したらよろしいし、われわれも一生懸命になってやりますから、この問題解決のために大いに努力していただくことをお願いして、これでやめます。
  62. 永山忠則

    ○永山委員長代理 井堀繁雄君。
  63. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は民主社会党を代表いたしまして、お二人の参考人にお尋ねをいたしたいと思います。大へん時間が少ないようでございますので端的にお尋ねいたします。多少失礼にわたる言葉を使うかと思いますが、御了承いただきたいと思います。それから私のお尋ねすることについて、お二人が同時にお答えをいただくように質問を続けて参りたいと思います。  私どもは、この病院ストライキは、患者立場にとりましてはこれほど大きな悲劇はないと思うのであります。また一般的に見ましても、こういうストライキが事前に防止されることが望ましいことは、今さら申すまでもございません。しかし発生するのにはそれぞれの原因があるわけでありますから、一がいにストライキは、国民の希望でありましても否定することはもちろんできないと思います。ことに今参考人からのお話を伺っておりますと、ストライキ原因になることもかなり明確になったようであります。本来でありますならば、原因について詳細にお尋ねしてからその対策をお尋ねするのが順序でありますが、先ほど申しましたように時間の都合がありますので、どのようにしてストライキを防止するか、またできた問題は、いかにしてすみやかに合理的な解決をするかということが国民一般の要望であろうと思うのであります。そういう意味で、具体的な点をお尋ねをいたしていきたいと思うのであります。  第一にお尋ねをいたしたいと思いまするのは、先ほどの質問にお答えになっておりましたように、病院の場合のストライキには、おおむね二つ原因をあげておいでのようでございました。もし間違っておれば御訂正を願いたいと思うのでありますが、一つは、病院の経営が近代的な労使関係と申しますか、あるいは近代的な産業の中に行なわれておりまする労使関係のように正常な、といいますと言い過ぎかもしれませんが、問題を合理的に解決するためにはここに大きな欠陥のあることは、御両者ともお認めのようであります。第二の問題は、労働条件を引き上げなければならぬということについても意見が一致しておるかのように伺ったのであります。しかし、労働条件を引き上げるためには、その原資、すなわち財源をどうするかということについても言及されておったようであります。そのようにしてきますと、労使ともに、ストライキの発生いたさなければならぬような原因については、ある程度めどがついておるようにうかがえるのであります。しかし両者だけの努力によっては解決できない。たとえば、社会保険やその他の医療制度の公的な性格がありましょうから、そういう方面にも努力を払わなければならぬことはだんだん明らかになっておるやに見えますし、私どももまた御協力申し上げなければならぬ点もかなり明確になっておるようであります。そういう問題は一応問題があるといたしまして、そういう問題をも含んで、病院の場合の労使関係というものは、言うまでもなく公益事業でありましょうから、一般の営利を目的とする事業関係とは異なって、そこには労使の間に話し合いを極力進めなければならぬ性質のものが、他の産業に比較いたしまして非常に高いと思うのであります。ところが、今まで伺っておりますると、その話し合いの場所がまだできていないのではないか、あるいはあっても不完全なものではないかと思われるのであります。専門的な言葉を申し上げて恐縮でありますが、労使関係をまず合理化していくためには、日本の、今慣行なりあるいは法律、制度の中でいわれておりまするものは、労働協約をよいものを結ぶということが前提になっておるようであります。この点について、経営者側を指導なされる病院協会のお考え方、それから労働団体の上級機関として全体を指導なされておりまする立場の協議会の議長さんでありますから、この点についてそれぞれのお考えがおありになろうと思うのです。私はできるだけこういう種類の事業場においては、こういう問題については労働協約の中である程度こなすべきものではないか、またこなせるものではないかと思われるのでありますが、今までそういう内容を盛り込んだ協約が結ばれておるということを伺っておりません。もちろん、こういう問題が発生して、時間的にいいましても、こういう問題を盛り込んだ協約を結ぶということはそうにわかにできるものとは私は思いませんが、そういう問題について組合側もあるいは協会側もどのように御指導なされようとしておいでになるか、まずこの点について両方の御意見を端的にお伺いしてみたいと思います。
  64. 橋本寛敏

    橋本参考人 病院協会と申しますのは、病院を代表する者の集団であります。代表すると申しますのは、管理、経営する者の集まりでございます。また医療従業員の集まりもございますけれども、皆さん御承知でございましょうか、病院には医療に従事する職種は十種以上ございまして、またいろいろの性格を帯びておりますので、それが一つにまとまっているのではございませんのです。それで、この労働協約というものを結ぶといっても、その段階までにはなかなか達しておりません。今の御意見で、そういうこともいいであろうというお話でございますが、これは今の医療費支払いを増額するよりももっとむずかしいことでございます。国が日本医療を金を出してもっと保障するということよりももっとむずかしいことでございますので、だんだんそういう世の中になるのかもしれませんけれども、今日のところすぐできるとは私は思っておりません。
  65. 岩崎清作

    岩崎参考人 私どもも、この事態に入る以前から、非常におくれた職場の環境と申しますか、そういうようなものを打破するために、特に労使関係のルールを確立する。具体的には協約の問題等に努力して参っております。しかしながら、さいぜんから申し上げるように長い間の因習と申しますか、そういう中で、経営者側が、基準法に明らかにされておるような諸問題についてすら、いわゆるうちは経営がどうのこうのという問題から発して、なかなかこれをやはり認めようとしない。しかしながら、今後ともわれわれとしてはこのような協約を中心にして努力をして参りたいし、指導もしたいというふうに考えております。  それからもう一つ労働者がいろいろ歴史的な悪い条件の中で、非常に未組織の多い——約四十万のうち十万そこそこしか組織されていない。この組織が今急速に伸びている中で、これらの問題も含めて指導をやっていきたいと考えておりますが、今までも、われわれこの事態に入る前においても、相手側がなかなか旧時代的な感覚と申しますか、そういうことで応じてもらえないし、またそのようなルールが十分に確立できなかったという、非常な困難があったことをつけ加えて申しておきます。
  66. 井堀繁雄

    ○井堀委員 橋本参考人にはなはだ失礼なお尋ねをするようになるかもしれませんが、日本のこういう労使関係、ことに公益事業に対しましては、御案内かもしれませんが、労調法、労働関係法という法律で、雇い主側、経営者といいますか、そういうものに対してもきびしい義務を要求しておられるのです。それから、もちろん政府にも要求しております。そういう公益事業に対してはいろいろ特段の配慮が払われた法律があるわけです。その中でもいっておるのでありますが労働協約を結ぶことをこの法律は当事者に勧めておる。またそれを指導する機関もあるわけであります。ことに労働省ども局を設けてその指導に当たっておるわけでありますし、また病院関係には厚生省という行政的な指導あるいは監督をする機関もあるわけでありますから、直接的には労働省であるかもしれませんが、厚生省政府としての規定がなされておるわけであります。詳しいことを申し上げられませんけれども、その規定の中で、こういうところには合理的な労働協約を結んで、すなわち、今まで質問の中で明らかにされましたような問題は、お互いに正規の機関、すなわち労使関係というものが話し合いをちゃんとしていくような場所をまず作る。それから内容についても十分話し合うということを前々からこの法律は規定しておるわけであります。その場合に、病院の経営にも問題があることはたびたび言われておりますから、そこから改めていかなければならぬかもしれません。しかしそういうことを言っておる間に、善意の第三者である国民患者は非常な迷惑を受けておるわけであります。両方の言い分の中にも出ておるようでありますが、組合の私どもにお示し下さいました資料の中にも言語道断だと思われるようなものがございます。たとえば病院スト組合側は四つばかりあげております。なぜ問題がこじれておるかという中に、先ほどの方も言っておりましたが、ストに対するピケの問題で、そのピケがいいか悪いかについては私ども問題があると思うのであります。しかしそのことは組合側からいえば、争議行為を推進していくためには、ピケを張るということは当然の主張になるかもしれません。また病院側の方はそれに対する対抗策があったといたしましても、おのずから法治国でありますから、規定された範囲内のものしかやれないのでありましょうけれども、しかし他のストライキと非常に事情が違いますのは、そのピケ・ラインにひっかかって、精神的にも、それから患者といたしましては生命にも関係するような場合がたまたまあるわけでありますから、そういう全く善意の第三者に重大な影響を与える行為となって現われるわけであります。でありますから、労働組合団結権を主張する立場あるいは罷業権を行使する立場から言いますならば、ピケは合法的であったといたしましても、患者立場にとりましては生命の問題でありまして、こういうところに私は公益事業のもとにおける紛争というものの非常に困難な事態が発生する一つの大きないい例だと思うのであります。でありますから、こういう事態を発生しないようにまずすることを労働関係調整法は強く規定しておるわけであります。その以前の問題もここには一緒に論じられておりますが、私はどうしてもこういう問題を解決するためには当事者同士の誠意と努力は言うまでもありません。しかしこの場合にはこういう関係をずうっと探っていきますると、労調法にも言っておりますように、私は政府にも重大な責任があると思う。それは労働省あるいは厚生省であるか、ともかく政府にも責任があることは、労調法の第三条できびしく規定しておりますから、私ども政府にもこのことを要請する所存であります。しかしその前提はあくまで当事者の誠意と努力に期待しておることを私はこの機会に強調しておきたいと思うのであります。先ほど橋本さんの御答弁を伺っておりますと、なるほど病院協会というものがそういう直接の問題についてどれだけ強い発言ができるかについては私も疑問を持っておるのでありますが、きょうはせっかく病院側でおいでになっておりますから、あなたを通じて当事者に訴えるいい機会だと思いますからお尋ねをしておるのであります。  それからさらに第五条、第四条には、それぞれこういう問題が発生した場合の措置を規定しておるわけであります。これは労調法八条には、公益事業として医療機関が指定されております。これはもうごらんになったかと思いますけれども、今までのお話を伺っておりますと、何か第三者のような軽いお気持で御答弁なさっておいでになるわけでありますが、あなた自身は直接経営をなさっておいでにならなくても、病院協会という立場からいきましても、私はこういう問題に対してはもっと強い責任をおとりいただかなければならぬのじゃないかというふうに考えております。それは私が考えるのじゃなくて、今申し上げました労働関係調整法の中にそのことは厳に規定してある。特に労調法第二条の中で、さっきお答えいただきましたが、労働協約の問題について、組合側の方でも熱心に要求されたようでありまして、相手側の経営者側の方でのれんに腕押しだというような感じを私は今受けました。これではならぬのじゃないか、試みに読んでみますけれども、第二条には「常に労働関係」、労使関係のことですが、「労働関係の調整を図るための正規の機関の設置及びその運営に関する事項を定めるやうに、」そうしてそれは労働協約、こう書いてある。でありますから、私は病院には労働協約を、労働組合ができると同時に組合側も要求されるでありましょう。経営者の方は、労働組合組織あるとなしにかかわらず、組織が行なわれた場合には受けて立つ用意がなければならぬ。また労働組合は、先ほどお話がありましたように組織前提になるのでございましょうから、今日労働者が労働組合を持たないということは、これは確かに時代おくれでありますから、その組織のために労働組合が積極的な努力を今なさっている最中だというふうに伺っております。まだここまで手が届かぬというふうに伺えるのでありますが、私はぜひこの法律の精神を生かしてもらいたい。いやしくも労働組合ができた以上は、この労働協約によって事態を最大限にやはり解決していく。しかし労使関係意見の調整というものはここだけではできないということはこの法律も予定しております。そうして第三条では、政府がこの関係を指導せよということ、指導するということを規定しておるわけであります。これは私どもはあとで労働省厚生省に強く警告を発する所存でありますが、その前に当事者の関係というものが非常に重大だと思いまするので、お尋ねしてみたのですが、今のお答えで大体想像がつきます。こういうことは私はいけないのじゃないか、ぜひ一つ橋本さんにはそれぞれの病院経営者の当事者、責任者に対して、ぜひ協約のいいものを作られるように一つ御指導いただきたい。それから労働組合の方でも、ぜひ一つここにあげられておるような問題は、私はおそらくそういう協約を結ばれれば全部解消できるものだと思うのであります。中には経済要求どもありますが、これもお伺いすればいいのでありますが、時間の関係で御迷惑だと思いますから省きますが、ぜひ一つそういう点にお心をお使いいただくようにお願いを私の方はしながら、次のお尋ねを一つしてみようと思うのであります。  それは、それ以前の問題がここに一つ二つあるようでありますが、よい機会でありますから一つ御両所にお尋ねしてみたいと思います。何か組合の言っている言葉は、このまま読んでみますと、一は経営者側に責任があるという見出しで、回答を出してもらえない。二番目には不法な圧迫が加えられている。三番目には暴力団を雇ってピケ破りをやり、傷害事件まで起こっている。四番目には右翼団体や警察官まで経営者側立場に立って労働組合を圧迫しておるというふうに書いてありますが、これなんかは言うまでもなく前時代的なできごとでありまして、これはそれぞれの事実があったからでありましょうけれども、こういうことがあってはもちろんならぬのでありまして、労働者の当然の権利というよりは、むしろこういう病院などで患者のために十分な奉仕をしていただく、すなわち公益事業としての目的を達するためには、労働者の人格、ことに近代社会にありましては組織的な人格がこれは基本的なものになっておるわけでありますから、経営者側の方でもこういうような事柄は何かのはずみで起こったものとしか私どもはとれないのであります。しかし事実があったということはまことに遺憾なことだと思うのであります。こういう点についても、病院協会はそういうことをなさる機関じゃないかもしれませんが、しかし病院という限りには、その建物でありますとか、設備でありますとか、医療器具、薬品、それに医師といったものと切り離すことのできない、あるいはそれ以上に重要な要素である従業員との関係がこのようなことでありましては、われわれは安心して病院などというものにたよれないということになるわけであります。非常に意外に私どもは思っておるわけであります。こういう前時代的な労使関係なんというものはすみやかに解消をすべき事柄である。現に先ほど申しましたように、労調法第八条には、公益事業に対してはこれこれのことと、非常にきびしく規定してあるわけであります。ですからこういう点についてきょうはお尋ねするのが私どもの役目でありましたけれども、一々お尋ねすると大へん時間がかかりそうに思いましたから、端折って私の方から先に意見を申し上げて、これに対する御両所の見解を伺っておきまして、われわれもまた考えていきたい。
  67. 橋本寛敏

    橋本参考人 非常に世の中が進歩するとともに労使関係がむずかしくなる。だから、それに対してだんだん近代的な方法をとって改善していこう、みんなが喜こんで公益の事業に励むようにしよう、そういうことについてはよく考えております。ただし、どういうことから手初めにという問題は、私ここで、これこれをやろうとしておる、これからやるつもりであるということをすぐ申し上げることはできませんので、むしろこの会が終わったあとで、あなたからもっと御意見を聞きたいような気もするのでございます。  もう一つの問題でございますが、今労働何とかとお読み下さったのは、ストライキをやったときの法律でございますか。私、知らないからお聞きするのですが、そうなんですか。
  68. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そうじゃございません。ストライキの起こる以前のことを規定し、それからストライキが起こった場合のことも規定してある。
  69. 橋本寛敏

    橋本参考人 就業規則というものを私どもの方ではもちろんきめて、どこの病院でもちゃんと経営者側従業員と話し合った上できめたはっきりしたものがございますが、それには待遇勤務の時間も生理休暇の場合もみんな書いてありますが、それじゃないのでございますね、今のお話は。
  70. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そうじゃございません。それはまた労働基準法という規定もございます。これは労調法という労使関係の調整を……。
  71. 橋本寛敏

    橋本参考人 それじゃ後刻もう少し伺いまして勉強いたしましょう。
  72. 岩崎清作

    岩崎参考人 さいぜんから申しました通り、われわれはこの事態の発生後においても、たとえばピケ等の場合も、労調法のいわゆる医療公共性ということから、保安要員の問題など、第一義的には経営者側に責任があるのですが、こちらから話し合いで保安要員の協定を結ぼうとしても、話し合いに応じてもらえない、雲隠れされるという事態になっても、われわれの方から保安要員は出すという建前で進めておるし、それ以前の状態の中でも、いろいろやはり話し合いないしは解決——ここに書いてある無権利状態の問題も、一つの壁になっておりますのは、何といっても十二年前の医療法の定員の基準というものが壁になっておるのと、経営の状態の中で、なかなか話し合いの中では解決できないというのが実情でございます。そういう点においても、今後さらにこれらの問題を協約の中で話し合いの場——ただ、何回も申し上げますが、病院管理者側は労働組合そのものを否定される、これは一つの罪悪だというような考え方で、何とかこれをつぶそうという前提なものですから、なかなか話し合いではいかない。やはり実力行使をかけなければだめだという実態があるということもお含み願って、われわれとしても、問題解決のために今後とも早急にさらに一段の努力を重ねたいという気持は十分持っておるわけです。
  73. 井堀繁雄

    ○井堀委員 もう一点お尋ねしておきたいと思いますが、それは、この労調法の関係で、公益事業については特に項を設けておるわけであります。もし病院のようなところにストライキが発生した場合には、そのストライキ解決について、法律はこういうことを規定してある。第十八条の三号に「公益事業に関する事件につき、関係当事者の一方から、労働委員会に対して、調停の申請がなされたとき。」四号に「公益事業に関する事件につき、労働委員会が職権に基いて、調停を行う必要があると決議したとき。」五号には「公益事業に関する事件又はその事件が規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるために公益に著しい障害を及ぼす事件につき、労働大臣又は都道府県知事から、労働委員会に対して、調停」を請求することができる。こういうように三つの問題解決法のための機関が行動することをこの法律は命じておるわけであります。このうちの第三号の場合は、関係当事者の一方ですから、どっちでもいい、病院側でもいいし、組合側でもいいが、労働委員会に調停を依頼した場合には、当然その問題解決のために労働委員会が行動を起こすわけであります。こういうように、法律は事前に事態の発生を最大限に排除するために労使関係のよき話し合いの場あるいはその方法、いろいろな条件をできるだけ具体的に文書にきめなさいということを命じておるわけであります。それでもストライキが起こるということを予定しておるわけでありますから、その場合には今言うような三つの方法によって調停をやろう、こういうわけであります。それほど法律はなかなか用意周到でありますので、われわれはこういう常識の中から判断して、病院ストなどというものは、これらの手続をずっとくぐってきてまだストライキが継続しておる、こういう点から解釈すればすべきなんです。ところが今度の調査によりまして、御両所のお答え、あるいは資料の提出などによりまして、それ以前の問題だというに至りましては、これはひとり当事者の不幸だけではありません。患者の不安だけではなく、国全体としての力を入れなければならぬ問題だと思うわけであります。そういう意味で、実はきょうは皆さんのいろいろなお答えを詳細に願いながらと思っておりましたところが、まだまだその以前の問題があるように伺いまして非常に意外に思っておるわけであります。そういうわけでございますので、今ストライキが発生しておるようでありますが、こういう三つの方法があるが、第三、第二の問題は別として、第一の問題は当事者の一方がやればいいのであります。こういう機関を利用なさることにはまだ少々無理があるようにも思われますが、しかしここでいうと、回答を拒んだというのでありますから、組合側が要求したら、それに経営者側はこたえなければならぬことを、労働組合法でも労働基準法でも、この法律のほかに規定してある。だからこういうことは、法律で当然経営者側の責任が問われることが現実に残っておるということになりますと、労働者の権利などというよりは、この以前の組織的な人格というものが否定されておるということに尽きるわけであります。組合の方もなかなか大へんだと思うのであります。経営者側の方にも、また監督者の方にも、こういう問題について問題があると思うのでありますから、その方面は先ほど繰り返して申し上げましたが、橋本さん、あなたの病院協会はこういう問題をどういう工合にするということのできる機関じゃないのですか。その辺はよくのみ込めていません、あなたの答弁では。
  74. 橋本寛敏

    橋本参考人 私の方の病院では、このストが起こりましたについて、やはりこれは大きい事件でございますから、このストについていろいろと考えもいたしました。私、先ほどから皆様の御質問に対してお答えすることがまことにしろうとくさくて歯がゆくお思いになったと思いますが、あそこに傍聴に来ている人で、これの専門家がおります。その人にお聞きになったらすらすらとお答えになると思うのですが、そういうわけでございます。これは不問に付しておるのでございます。先ほど何か三つの調停の仕方があるということですが、あんなことはみんな実行しておるのでございます。当事者たちはみんな実行しておる。ストをされた委員長たちはみなやっております。それがうまくいかないでだらだらになっているところが多いのでございます。手続はみんな踏んでございます。
  75. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これは組合はどうですか。
  76. 岩崎清作

    岩崎参考人 端的に申すと、みんな慣れていない。われわれは考えておるわけでありますが、なかなか団交そのものにも応じてこない。そこへ乗っけるだけでも大へんだ。三者機関という問題もわれわれは考えているわけですけれども、当事者の相手側がそういう頭ではうまく軌道に乗るものではない。そういう中でこの事態発生前から、日赤の例に書いてありますように、あの問題が起こったのは実に昨年の九月からです。安いことはわかっている、ひどいことはわかっている、しかし何も出ておらぬという状態は何を意味するかということで御推察願えると思うのです。そういう例が日赤に限らず多々あるということです。
  77. 井堀繁雄

    ○井堀委員 組合側の方にお尋ねいたしたいことがたくさんあるのでありますが、時間の都合もありますし、今橋本さんの御答弁を伺いますと、こういう問題についてはほかに専門家がおいでになるようで、会長さん御自身は十分御理解していないような趣でありますから、公平を欠いてはいけませんのでまたの機会を得たいと思いますし、また個人的にお尋ねをしてみようと思います。またどうやら責任の所在も、当事者間だけでは困難だと思われる節もあるようで、いろいろ私の方も調査を進めて参りたいと思いますから、資料などについても快く提供していただきたい思っております。一応私の質問はこの程度にとどめておきたいと思います。
  78. 永山忠則

    ○永山委員長代理 参考人各位にごあいさつを申し上げます。  御多忙中出委員会に御出席をいただき、かつ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。御苦労さまでございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十四分散会