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石田国務大臣 アメリカの日貨排斥運動に対する
貿易上の
施策は、直接的には私の所管ではありません。ただその原因が日本の低
賃金労働にあるという
範囲においては、やはり貨金
施策の問題に当然なります。これは実は私も一昨年アメリカへ参りましたときに、これは非公式に私人として参ったのでありますが、やはり合同労組あるいは既製品の労働組合等の中で、日本の低
賃金労働による商品に対する排撃の決議というものが上げられたことがございました。当時私はそういう労働組合
関係の
人々と接触をいたしまして懇談をいたした結果でありますが、決議が出されたことは事実でありましたけれ
ども、そのときはその決議を採択せずして抑えることができました。現在も具体的にそういう決議というものが上げられる形にはまはだなっておりませんけれ
ども、しかしそういう空気がまた上がってきていることは事実であります。これに対して
労働行政としてやるベきことは、
一つはILO等の批准を早めまして、日本の労働
条件を国際水準に近づけていく努力を払うことによって、そういう非難を避けていくことであります。
それからいま
一つは、非常な誤解があります。たとえば繊維等の労働
賃金等につきましても、
一般的に日本の労働
賃金はアメリカと比べますると、日本を一〇〇としてアメリカは九五〇くらいになる。一ドルを三百六十円と換算をしたときであります。ただし西ドイツあるいはイギリス、フランス等と比べると、その数字はかなり違って参ります。日本を一〇〇といたしました場合、イギリスは二八七、アメリカは九二四であります。それから西ドイツが二三四、フランスが一六四、イタリアが一四八、こういうことになります。そこで、ただしこの場合に二つ
考えなければならぬことがある。
一つは円の実質購買力の問題であります。もう
一つは日本の
賃金外支出であります。米ドルあたりの円の実質購買力は、一九五九年の外務省で訓育をいたしました日本の労働
条件についてという
調査によりますると、二〇六という、つまり一ドルが二百六円という換算になります。それから各国間の消費者物価指数の比例を出してみますると、日本を一といたしました場合アメリカは一・八、イギリスは一。六、西ドイツは一・四、フランスは一・三、イタリアは一・四、こういうことになるのであります。これは一九五九年の数字であります。それからもう
一つ諸外国におきましては、特にアメリカ等におきましては、御
承知のように勤労者諸君の福祉施設その他は、勤労者諸君が
賃金の中から拠出いたしました労働組合費によって
運営されておるのであります。従ってここに出されておる
賃金の中にそういうものは含まれております。ただ日本の場合はこれは会社がやります。これはいろいろな数字のとり方がありまして一がいには言えないと思いますが、私の知識では、これはかなり大きな企業の平均でありましょうが、一月当たり七千円くらいに上る。特に紡績
関係ではそれくらいに上っておると記憶しております。そういうことと相関連いたしますと、もちろんアメリカの九二四という数字と比較することが困難であることは申すまでもございません。しかしイギリス、西ドイツあるいは特にフランス、イタリア等に比べますると、日本は今日低
賃金国として特別に攻撃を受けるような
条件には私はないように思うので、こういう点の誤解の一掃にやっぱり努力いたさなければなりません。ただ根本的にはやはり
先ほど冒頭に申しましたように、ILOの批准を通じ日本の労働
条件の
向上に努力することは、これは申すまでもございません。しかしこういう円の実質購買力あるいは
賃金外支出、その他を関連をいたして
考えますると、アメリカに誤解が多い、というよりは過大に宣伝をされつつあるということも、やはり、この際アメリカの
実情を打開していく、そういうことを理由とする運動を打開していくためにはよく
説明をする必要があると思います。