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井村委員 これは非常に重要な問題で、
医師が非常な搾取行為をやっているというふうな印象を社会に与えるということは非常にまずいことでありまして、なるほど
医師の
収入が、あなた方の目から見れば倍になったとか、あるいは一・五倍になったというふうにとれますけれ
ども、戦後十年の間に、
社会保険の被
保険者が非常に急速に伸びて、全
国民のほとんどが、支払い基金なりあるいは
国保連合会を通じて支払いがなされておるから、いわゆる戦前、戦後直後の
医師の
収入と比べれば非常に多いのだという点を明瞭にしておいてもらいたい。
いま
一つ、第二の点は、これは非常に一部分の統計でありますけれ
ども、昭和三十五年では、公的病院及び法人組織の病院の
収入が、
社会保険、
国保を通じて大体四八%となっておる。基金その他を通じて、支払いは非常に大きいけれ
ども、国立病院、大学病院、その他
国保病院、いろいろな公立病院で、これがすぐ歳入の面へ返ってくるのです。国の病院であれば、基金から支払った病院の
収入は、即国の歳入になるのです。これが大体四八・六%。地域的にへんぴなところは三〇%くらいの程度でありますが、これが公的
診療機関である。だから、単に支払い基金の支払い額をつかみにして、
医師の
収入が戦後数倍になっておるから非常に純利益があるだろうという見方は、よく
考えていただかなければならぬ。こういうふうな点の数字の発表についも、私は十分慎重な
態度をとってもらわないと、
医師は依然として困った階級からの搾取階級であるというふうな印象を与えるということは、私は非常に困るという点を御注意申し上げておきます。
さてそこで、
医療費の、先ほどの一〇%が妥当か三円が妥当かということについては、私はあえてこだわりません。
医療費の
値上げというのはなかなかむずかしい問題でありますが、今日常識的に御判断をいただきたいことは、
医療費の
値上げは、即そのまま
医者のまるもうけだというふうな印象を与えてはならぬということであります。
病院ストの起きたゆえんは、やはり今日の
医療従業員等が、民間のその他のいんしん産業あるいは公務員との
収入ベースに非常に大きな開きがあるというところに
病院ストが起きた原因があることを
考えれば、これが即
医者のまるもうけだというふうな
考え方は、私は十分
考えていただきたいと思うのであります。と同時に、もう
一つ。
医療費の
値上げというものは、単なる経済行為のみならず、私は学問に対する再投資だと思う。けさの
新聞を見れば、
御存じの
通り、英国でも近代
医療設備をやるために、あの完璧な
保障制度をやはり一部
国民の負担にしなければならぬというふうな問題が
新聞紙上に報ぜられておる。英国の二年前、三年前にやった
社会保障のあの近代設備をもってしてさえも、今日時代おくれだから
医療制度を進歩させなければならぬ、
医療内容を向上させなければならぬ、
国民がこれに対する再投資をするのだ。国家全体の
保険医療株式会社という名前があるならば、その進歩のために、犠牲は犠牲だけれ
ども、われわれは幾分これに増資の肩持ちをしなければならぬというふうな
考え方もこの際必要であると思う。私
どもは学問の進歩を忘れてはならない。あなた方は単に経済的に
医者が三円高い、一円高い、五十銭で負けろというふうなことについて
——それは単に
診療部門に払うのだけれ
ども、この
診療の発展の裏に、基礎医学に従事している学究あるいは将来ある生徒がどれほど勉強しているか。その学問に対するある程度の国家全体の投資だという
考えを、私はこの際幾分思い起こしてほしいのです。
医師会としても、納得がいき、合理的なものであるならば、決してそういう無理押しをして
患者から搾取するというふうな非時代的な
考えは持っていないと思うのです。
お互いにそこに親切な合理的な話し合いと納得がないからやはりこういう問題が起きるのです。だからその点も私はよく
考えてもらいたいのです。
いま
一つの重要な点は、現在の
社会保険診療というのは決して
社会保障制度ではない。これは強硬なる官僚統制です。私は特に
国民保険について申しますが、戦時中軍の圧迫で、農村の
国民健康保険単価八銭で契約されました、その観念がいまだにこの
保険を貫いておる。たとえばわれわれが一剤のみを投じた場合
において、その内服は二・九点ではありませんか。それが二剤をやった場合には二・三点です。ということは、二剤をやること、すでにそれは
医療手段ではないのだ、これはぜいたく
診療だという観点で縛っておる。こういう点も
考えなければならぬ。たとえば今日入院料は四二・六点、四百二十六円です。
医者が朝晩診察して薬を与えて、看護婦が大小便をとり、洗たくをしてやり、電話を聞いてやり、娯楽設備をいろいろした。冬のときには朝晩湯たんぽを入れ、暖房設備をしてやって、どうです。ここの表にありますが、入院一日が一番高いところで六〇・三点、六百円です。今日冷や飯を握ったような弁当を持っていく中学生の修学旅行の一泊の宿泊料が六百円です。こういうことで
医療をやれるかどうか。これで
医者は金をとっておるとかいうふうな
考え方は
一つ変えてやってほしいと私は思う。しかも今日地方の自治体の病院は、都道府県では一二・六%の赤字を出している。市町村立病院は二七%の赤字を出して一般財源を食っているのです。こういうことを見のがして、単に民間
医師の要求する
診療費が意外に不当であるとかいうことは、私は十分
考えてほしいと思うのです。こういうふうに
病院ストが繰り返されると、ほんとうに
日本の
医療体制は乱れるのですから、十分注意していただきたいと思います。
さらに
国民健康保険について一言申し上げたい。
国民健康保険は現在、制度自体が非常に無理であります。ということは、日銭をかせげる階級を全部他の
保険に連れていって、農村ではもはや母子家庭とかあるいはわずか三反歩しか持たない百姓とか老人のみがおるとかいうふうなものだけが被
保険者に残されておる。今日、
日雇い労働者といえば非常に貧しいようですけれ
ども、農村では
日雇いが一番裕福な階級であるということさえもいわれておる。これは二重加入ということを
法律で全部禁止された結果、全部零細者のみが残ったのですから、
国民健康保険というものは無理です。これは
社会保障の一環として大幅に、ほとんど国庫負担をしてやらなければならない。今日世帯主だけ結核と精神病を七割国庫負担にしましたけれ
ども、
国保を重圧するものは長期の結核と精神病であります。これは全世帯に及ぼすべきものだと私は
考えます。このことをお
考え願いたいと思います。
もう
一つ、看護婦の養成機関について何かお
考えがありますか。今日民間、公的病院を問わず看護婦が非常に不足しておりまして、日赤あるいは国立病院等では養成機関を持っておりますけれ
ども、民間の看護婦養成機関について
厚生省は十分に
考えないと、行き詰まる時期が来ると思いますので、その点についてのお
考えを承りたいと思います。