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下平協議委員 関連をして、二、三御
質問をいたしたいと思います。
災害といいますと、橋が流れてしまった、
耕地がつぶれてしまった、道路がこわれた、要するに、
被害がぱっと表へ出てくる陽性的な面は、だれにでも目がつきます。また、これに対する
対策等も、いろいろな面でかなり手が打たれているわけでありますが、事農林
災害になりますと、実はそういった陽性的な面のほかに、農民
個人々々あるいは
農業協同組合というようなものが、非常な
被害を受け、その
復旧のために大へん努力をしているわけであります。そういう面についての
対策といいますか、取り上げ方といいますか、それが、私は、若干
災害のときには不足しておるような気がしているわけであります。たとえてみますと、今度の
災害の特徴は、かなり湛水があります。あるいは田畑の流失もあります。おそらく数万
町歩に及ぶのではないかと思っているわけです。水が引いてしまえば、これはみなからになるわけであります。あるいは堤防がくずれ、田畑の流失があっても、若干の手直しをすればもと
通り復旧しますが、その間に行なわれている農民
個人々々あるいは
農協等の努力といいますか、
負担といいますか、こういう面が非常に大きいわけであります。私は、現在の
立法体系の中ではそういう
災害は救うことができないんだ、
法律の建前がそうだということで一がいに片づけてしまうわけにはいかない、大きな問題じゃないかと思っているわけです。たとえば冠水を受けたところでも、行ってみますと、稲は三日、四日で腐ってしまっております。水の引くのを待って、また田植えをしなければならぬ。田植えをするといってみたところで、もう今日の段階へくれば、苗しろなんかは、幾ら県に予備苗しろがあっても、あるものじゃない。四方八方手をつけまして、この間滋賀県へ行って参りましたら、岡山県まで行って稲を仕入れてきているわけであります。そして、反当たりで三千円から四千円の経費をかけて、また田植えをやっているわけであります。それでも田植えの済んだ人はいいのであります。これも常識的に
考えてみれば、私
どもの方の信州でもそうでありますが、土用を過ぎてから稲をいじくるなんというのは常識外のことであります。しかし、それでも農民は、水につかっているところをやむを得ないが、一たん水が引いて黒土が出てくれば、これは百姓根性で、幾ら経費がかかっても手前の苗を植えたいという心理であります。莫大な金をかけてくるのであります。これがはたして実るかといえば、実るか実らぬかわからぬわけであります。そして、実らぬ、あるいは収穫皆無だというので、農災法の
適用を受けてみても、わずかに反当たり七千円か八千円しか受けられぬ、こういう
状態である。あるいはまた、時期が時期でありますので、すでに予約を申し込んでおります。予約申し込みの際、前渡金の二千円ずつをもらっておる。予約金はもらってしまった、収穫は皆無だ、農災法は七、八千円しか補償してもらえない、こういう
状態の中に、今実際の
被害地の農民の皆さんはいると思うわけであります。従って、採算を度外視しても、一切のことを度外視しても、とにかく稲を植えよう、畑に何か植えようという気持で動いているわけであります。こういうものに対する経費というものは、
個人的に見ても、
農協等の団体から見ても、非常に莫大なものでありますが、これらについてのあたたかい思いやりというものがないのではないか、
対策が行なわれていないのではないかという気がして仕方がないわけであります。これでは私はほんとうの農民の政治、農政というものじゃないと思うのです。今、日本の農政をささえているものは、私は率直に言って、土地を愛し、採算を度外視しても、手前の土地で物を作り上げようという農民魂であると思います。これが日本の農業をささえている一番の柱であります。
災害のときのこういう農民魂、農民の行なっている努力というものに対して、何らかの
措置を講じてやるということが、私はどうしても必要だと思います。具体的に私は調べてみますと、大体一反歩当たり、冠水して稲がいけなくなってしまったという場合に、その稲を植えるためには、三、四千円くらいの費用がかかっております。もちろん、これは
個人の
負担ができませんので、
農協なりあるいは
地方公共団体では、なけなしの金をはたいてやっておりますけれ
ども、見て回りました六カ町村あたりくらいは、一カ町村平均三百万円くらいの
負担になっているのです。苗代金だとか、もみの代金だとか、あるいは輸送費などが莫大にかさんでいるのです。あるいはまた、一番悩みの種になっているのは、この時期になってこういう
災害を受ければ、当然の結果として、病虫害の発生が予想されることでありまして、これに対する病虫害予防
措置等もかなりの金額になっているのです。こういうものに対する
農林省あるいは
政府の
対策というものについて、私は、もし
法律がなかったら
法律を作ってもよろしいと思う。何らかこういった稲の隠れた
災害の
負担、陰性の部面というものを
救済する面を大きく取り上げる必要があるのではないか、こういうふうに
考えております。いろいろの例がありましょうが、
一つの例といたしまして、たとえば、これらの苗の補植に必要な経費、特に莫大な経費のかかる運搬費、あるいは苗を買い入れる金、病虫害の予防費用、こういうものに対して何らかの救助あるいは助成の
措置をお
考えになっているかどうか、この点をお伺いしたいと思います。