○井堀
委員 建設大臣と
経済企画庁長官の考え方はまるで食い違っておるようであります。どっちでもけっこうでありますけれども、私がこの法案を見ますと、そうはっきりしてないんですよ。
企画庁長官がおっしゃられるように、間に合わせ的に現在足らぬところにやろう。やる場合には、こっちの役所がうるさいから、こっちの役所との
関係をこうしてやろうというようなものであれば、なるほどなと思うようなところもあります。ところが、この中を見ますと、第四条の三項には「
基本計画には、治山治水及び電源開発について十分の考慮が払われていなければならない。」ということを
政府に義務づけておる。これは私は当然だと思う。今の間に合わせといたしましても、これはあとでお尋ねしようと思っております十四条との
関係が起こってくる。十四条との
関係は損失の補償についてであります。これは今まで多くの人が
質問されておるところであります。これは
農業、すなわち
灌漑用水を主体的に考えれば、
工業用水にはまた問題がある。
工業用水に主力を注ごうとすれば
飲料水に問題がある。
飲料水、
工業用水を近い水源地に求めることが困難な場合は、かなり遠隔な土地に求めるわけでありますから、その場合にも個人的な利害得失がはなはだしく食い違ってくる。あるいは
地域集団に与える損害も大きい。そういう利害得失というものが、はなはだしく強く現われてくるわけであります。だから、そういう問題を行き当たりばったりに、損害を補償をしては格好をつけて、問題になったところにこうやくを張って片をつけていくというやり方は、今日もう許されぬのじゃないか。
具体的に一、二例をあげて申しますと、東京の人口がこう加速度的に集まって、ある
地域に
工場が密集してくると、
飲料水にしても
工業用水にしても、その近くの
水系——先ほどから
利根川、荒川が出ておりましたし、多摩川も出てくるかもしれぬが、その辺のところは利用できるだけのことはした。今度は群馬県あるいは埼玉県にまたがる
水系を活用して東京都に水を送り込もうということになれば、その途中に位する埼玉県、あるいは水源地を東京都のために
計画するとすれば、群馬県は非常な迷惑を受ける。受ける利益が少なくて損害だけ多いということになりますと、その
調整だけでも大問題が起こると思う。一例をあげて申し上げますと、埼玉県の場合は、東京の洪水をある
程度調整するために荒川の中に横堤というものを作る。これはわれわれしろうとから考えるとばかげたことだと思う。川の土手というものは縦にあるものだと思ったら、横に一々はしごのように上手を作る。要するに、横堤を作って水勢を防ごうという理屈らしいのです。そのために、横堤を作られた周辺の
地域は、耕地はもちろんのこと、住宅まで荒らされる。しかし、そのことによって東京の洪水をある
程度防ぐことができる。かなり原始的なやり方だとわれわれは思う。
今度は
多目的ダムが
計画されるということになれば、幾分そういうものがチェックされることは認めてよろしい。少なくとも総合
計画を持ち、あるいは国の治水
計画ということになりますれば、こういう問題の解決ができないようなことでは、こういう法案の価値は意味をなさぬと思う。なぜもう一歩踏み込んだ
措置がとられなかったか。さっき申し上げたように、四条の三項や五条の中にそういう意欲がちょっぴり出てきているのです。さっきからお二人の御答弁を聞いていると、閣僚の間にも受け取り方に違いがあるように思う。だから、この法案は私はどちらにも向くと見ておる。
経済企画庁長官が言うように、今水あさりをしておるものを窓口だけを
調整して、まあまあというふうに考えた法案とも思われる。それから、
建設大臣が言うように、少なくとも治山治水につながる、特に
建設大臣の立場では、ここに書いてありますが、これは政令にも盛り込んでおりますが、
事業団の中で
建設大臣の任務が規定してあります。そういうものを何か補助的に取り上げてきておる。しかし、これはほかの
法律でも明示せられておりますから、ここに関連がくることは言うまでもない。だから、必要に迫られていることは、
建設大臣の言う
通り、このままではできません。いいかげんに調子を合わせてまあまあということでは済まなくなってきておることは、
建設大臣の言う
通り明らかです。
経済企画庁長官の言う、何とかこうやくを張ってその場をしのごうというお考えも、わからぬわけじゃない。しかし、われわれは少なくともこの時期において、この時点において、こういう法案が出た以上においては、もっと抜本的な、今すぐは、やれないにしても、アメリカのように百年
計画なんて気の長いことは日本人にはできないにいたしましても、
政府も五カ年
計画を持っておりますから、五年や十年くらいの
計画は盛り込んでいいのじゃないか。それが出るようでもあるし、出ないようでもあるということで、この法案に対して私どもは非常な疑いを持ったわけです。今の御答弁で大体わかりましたけれども、これはしかし起案者の考えであって、国会としては少なくとも今の国の要請に基づいて、いい方向へ育てていけるようにしなければならない義務がわれわれにありますので、その点お二人の意見の一致点をもう少し伺いたいと思います。