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1961-05-31 第38回国会 衆議院 建設委員会地方行政委員会社会労働委員会農林水産委員会商工委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月三十一日(水曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員  建設委員会    委員長 加藤 高藏君    理事 木村 守江君 理事 佐藤虎次郎君    理事 薩摩 雄次君 理事 瀬戸山三男君    理事 松澤 雄藏君 理事 石川 次夫君    理事 岡本 隆一君 理事 中島  巖君       逢澤  寛君    綾部健太郎君       上村千一郎君    大倉 三郎君       大沢 雄一君    大高  康君       金丸  信君    二階堂 進君       前田 義雄君    松田 鐵藏君       兒玉 末男君    實川 清之君       日野 吉夫君    三宅 正一君  地方行政委員会    理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君    理事 川村 継義君 理事 阪上安太郎君       伊藤  幟君    小澤 太郎君       大沢 雄一君    久保田円次君       富田 健治君    永田 亮一君       前田 義雄君    二宮 武夫君       山口 鶴男君    門司  亮君  社会労働委員会       浦野 幸男君    亀岡 高夫君       藏内 修治君    井堀 繁雄君  農林水産委員会    理事 秋山 利恭君 理事 丹羽 兵助君       田邉 國男君    綱島 正興君       本名  武君    森田重次郎君       足鹿  覺君    片島  港君       川俣 清音君    北山 愛郎君       西村 関一君    湯山  勇君  商工委員会    委員長 中川 俊思君    理事 岡本  茂君 理事 田中 武夫君       有馬 英治君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    田中 榮一君       田中 龍夫君    中垣 國男君     早稻田柳右エ門君    岡田 利春君       加藤 清二君    西村 力弥君       大矢 省三君  出席国務大臣         建 設 大 臣 中村 梅吉君         国 務 大 臣 迫水 久常君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  曾田  忠君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         建設政務次官  田村  元君         建 設 技 官         (河川局長)  山内 一郎君         自治事務官         (行政局長)  藤井 貞夫君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局参事         官)      南部 哲也君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局総合開         発課長)    玉置 康雄君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  聖成  稔君         厚 生 技 官         (公衆衛生局水         道課長)    石橋 多聞君         農林事務官         (農地局企画調         整課長)    長田 秋雄君         通商産業技官         (企業局工業用         水課長)    藤岡 大信君         建設事務官         (河川局次長) 鮎川 幸雄君         専  門  員 山口 乾治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  水資源開発促進法案内閣提出第一九八号)  水資源開発公団法案内閣提出第一九九号)      ————◇—————   〔加藤建設委員長委員長席に着 く〕
  2. 加藤高藏

    加藤委員長 これより建設委員会地方行政委員会社会労働委員会農林水産委員会商工委員会連合審査会を開会いたします。  先例により私が委員長の職務を行ないます。  水資源開発促進法案並びに水資源開発公団法案の両案を一括議題とし、審査を進めます。  前会に引き続き質疑を続行いたします。  加藤清二君。
  3. 加藤清二

    加藤(清)委員 私はただいま上程されております水資源開発促進法案公団法案について、二、三の質問をいたしてみたいと存じます。  促進法の「基礎調査」に関することは、きのうすでに同僚議員質問をいたしたのでございますが、基礎調査政府で行なうということに相なっておりますけれども、一体政府のどこで行なわれるのでございましょうか。この点をまずお尋ねしたいと思います。
  4. 迫水久常

    迫水国務大臣 それぞれの各省で分担して、それぞれの立場で行なわれるわけでございます。それは建設農林通産厚生等であります。
  5. 加藤清二

    加藤(清)委員 そういたしますと、承れば今まででもばらばらで、なわ張り争いが行なわれておったということでございますが、はたして今後そのようなことが行なわれずにスムーズに基礎調査が進むのでございましょうか。もっとも、これは賢明な経済企画庁長官調整に当たっていらっしゃるようでございまするから、心配はないとおっしゃればそれまででございまするけれども、どうも基礎調査の点について懸念がございまするが、この際、長官の所信を承りたいと存じます。
  6. 迫水久常

    迫水国務大臣 私は、そうむちゃくちゃに、ばらばらになる調査はしないと思います。それぞれ政府部内でありまするから、省間連絡しながらやっておるのですから、決してめちゃくちゃな、ばらばらなことにはならないと思いますが、なお念のために第二条の第二項で、経済企画庁でこれが調整を行なう、そうして、基礎調査について報告を順次段階的に求めて調整を行なうと書いてございまするから、御心配のような点はないと信じます。
  7. 加藤清二

    加藤(清)委員 それを信じまして、次に進めたいと存じます。  きのうの御説明によれば、水系指定の時期を六カ月以内とか承りましたが、それで間違いございませんですか。
  8. 迫水久常

    迫水国務大臣 六カ月を待たずに、できるだけ早く水系指定は、たとえば利根川のごときについては、そう言ってしまうとおかしい話ですけれども、だいぶ基礎調査も進んでおりますので、水系指定はなるべく早くやりたいと思います。
  9. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、第四条、第五条の「基本計画」、これは一体いつ行なわれる予定でございますか。
  10. 迫水久常

    迫水国務大臣 審議会が発足いたしますのは本法施行間もなくでございますので、審議会が発足いたしましたらすぐに基本計画を諮問したい、こう考えております。
  11. 加藤清二

    加藤(清)委員 その審議会は、一体いつごろ発足の予定でございますか。
  12. 迫水久常

    迫水国務大臣 本法律案を今国会で成立させていただくことを前提といたしますれば、そういうふうに確信しておるわけですが、七月ごろ……。
  13. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に十二条にかかわる問題でございまするが、この「事業実施」についてでございます。一体公団が行なうべき事業基準が設けられていないようでございまするけれども、これはどうなっておるのでございましょうか。
  14. 迫水久常

    迫水国務大臣 それは、審議会でこの仕事公団にやらせるということをきめるわけでございますが、結局現在国直轄工事でやっているような大きな仕事公団にやらせるということになります。
  15. 加藤清二

    加藤(清)委員 たとえば継続事業のごときはどうなるのでございましょう。
  16. 迫水久常

    迫水国務大臣 現在国でやっております継続事業も引き継ぐ場合があり得ると思います。引き継ぐ場合には法規の改正をいたします。
  17. 加藤清二

    加藤(清)委員 アロケーションは、一体その場合どうなるのでございましょうか。
  18. 曾田忠

    ○曾田政府委員 アロケーションは、今までの引き継ぎ前と同じような考え方で考えております。
  19. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこで、次にお尋ねしなければならぬのは、きのう事業実施予定地域を承ったわけでございますが、その際の長官お答えは、利根川淀川等々のことをお答えになりました。一体この木曾水系の御予定はどう相なっておるのでございましょうか。特に木曾三川予定について。
  20. 迫水久常

    迫水国務大臣 ただいま三川についての基礎調査をいたしておりますので、その基礎調査がまとまりますれば、本年度中にでも執行いたしたいと思っております。
  21. 加藤清二

    加藤(清)委員 すでに建設省の方の事業として長良川締め切り工事予算に盛られていると思いますが、これと公団との関係はどうなりますか。
  22. 山内一郎

    山内一郎政府委員 長良川河口せきにつきましては現在調査段階でございまして、事業実施段階までまだ参っておりません。
  23. 加藤清二

    加藤(清)委員 経企庁のお出しになりました国民所得倍増計画によりますと、水の必要性が強調されているようでございます。特に通産関係所得倍増計画実行に移すにあたりましては、まず第一番に必要なのが土地と水と機械と人、こういうことに相なっておるようでございますが、この所得倍増計画実施するにあたりましてだけでも、必要な工業用水というものは、この説明によれば膨大なものになっておるはずでございます。きのうちょっと御説明があったようでございますけれども、その説明だけでは私は納得がいきませんので、本日ここにあわせて御質問申し上げてみたいと存じます。もう少し詳細にわたって工業用水必要計画量と申しましょうか、施行し得る範囲内の計画と申しましょうか、それを一つ説明願いたいと存じます。
  24. 藤岡大信

    藤岡説明員 昨日御説明いたしました通りに、昭和四十五年度見通しといたしましては、工業用水所要量は全体で淡水のみで八千三百万トン必要でございます。そのうち、詳細にということでございますが、水源別のわれわれの現有の計画では、買う水と自家引用水、とわれわれ申しておりますが、工場自身で引く水と両方ございまして、工場自身で引く水が二千三百万トン、買う水は三千九百九十万トン、約四千万トンでございます。これは上水道及び工業用水道供給をされる水。それから回収する水、これは一たん使いました水をさらに工場内で再使用するという計画でございますが、これが約二千万トン。こういうふうな計画にいたしております。
  25. 加藤清二

    加藤(清)委員 昭和三十三年度ないし四年度の実績を基準として、ただいまおっしゃいました必要量倍数ないしは比率等をあわせて御説明願いたい。
  26. 藤岡大信

    藤岡説明員 お答えいたします。昭和三十三年度から昭和四十五年度見通しの倍率でございますが、ただいま申しました自家引用水におきまして一・四三倍、買水におきまして十三・七倍、それから回収水におきまして四・一四倍、淡水合計では三・四七倍になっております。
  27. 加藤清二

    加藤(清)委員 今さらここで水の必要性を説くまでもございませんが、企画庁ないしは通産省の御調査に基づきましても、倍数買水において十三・七倍になっておるはずでございます。今おっしゃいました通り工業用水のごときは基準年度と比較いたしてみますと、なんと二十六・八六倍に相なっておるようでございます。これは大問題ではないかと思われます。それを実行に移さなければ所得倍増にかかわるところの工業の三・三倍率ということはおよそ不可能である。いうならば、工業用水確保ができるかできないかということによって、長官のところでお作りになりました国民所得倍増計画ができるかできないか、こういうことに相なってくるわけでございます。  そこで、さしあたって十年先の目標はわかっておりますが、それでは初年度、次年度目標に達するところのワン・ステップ、ツー・ステップの計画一体どのように行なわれておるのでありましょうか。
  28. 藤岡大信

    藤岡説明員 昭和三十六年度計画といたしましては、昨日お答えいたしましたように、百七十億円が工業用水道事業に投下されるというふうに今計画されております。
  29. 加藤清二

    加藤(清)委員 初年度はそうでございますが、きのうのお話によりますれば、その費用は何と四千億である。ところが、ことしは百七十億しかその予算がない、こういうことでございました。そこで、その点はわかっておりますから、一体この計画をほんとうに十年先に約二十七倍にするというなら、先ほどお尋ねしましたところの基礎調査、それに基づいたところの基本計画というものが、この法律を通してもらいたいという以上は、あってしかるべきではないか。本年度だけの計画ではとうていこの倍増計画には沿い得ないではないかと思われるので、お尋ねしているわけでございます。
  30. 藤岡大信

    藤岡説明員 今御説明申し上げました百七十億円という工業用水道計画は、通常予算と申しますか、工業用水道通常の年次の計画を言っておるのでございまして、公団事業ばこれにプラスされるというふうにわれわれ考えております。そういうことがありますので、この公団事業がぜひ必要であるというふうにわれわれ考えておる次第でございます。もちろんこのベースになります百七十億円程度、あるいはそれを上回る程度のものは年々必要になって参ります。本年度事業量は昨年より約倍近い事業量になってございます。さらに来年度もそれに近いような比率でもって伸ばす必要があると思いますが、これだけでは工業用水供給確保されないということから、今回の公団の問題が起こって参ったことでございますので、この公団に期待するととろは、工業用水道といたしましても非常に大きなウエートをもって考えざるを得ないというふうに考えております。
  31. 加藤清二

    加藤(清)委員 今あちらのお話通り、この倍増計画実行に移すにあたって、通産省側としては、年間四百億は当然必要とされるもののうち、初年度においては百七十億しかない、こういうことで、あとは公団に期待するところが大である、こういうお話のようでございます。しからば、公団工業用水に関する限り、通産省計画とは別途に別な計画があって、そこでプラス・アルファをなさる御予定でございますか。もしそうだとするならば、その計画一つ承りたい。これは企画庁の方から承りたい。
  32. 藤岡大信

    藤岡説明員 ただいまお答えいたしましたように、公団事業といたしまして考えておる水の量、それから一般工業用水道現状事業計画におきますもの、これを合計いたしまして先ほど先生がおっしゃいました四千億円程度事業量が必要であるという概算を出しておるものでございまして、これまで百七十億円の資金を出しておるというのは公団事業外でございます。これは通常工業用水道事業計画というものでございますので、その間にはだいぶギャップがある。そのギャップを埋めるような措置は、どうしても公団等の特別な措置が必要であるというふうに考えているわけでございます。
  33. 加藤清二

    加藤(清)委員 この際、政府の方の補助金はどうなっていますか。
  34. 藤岡大信

    藤岡説明員 公団におきましては、公団法補助金の規定がございますので、その程度補助金が出てくるというふうにわれわれ期待いたしております。もちろん、補助金現状通りのことを工業用水道の今後のものにつきましても期待いたしております。
  35. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、ことしの補助金はどうなっていますか。
  36. 藤岡大信

    藤岡説明員 本年度補助金は約二十五億が工業用水道事業に出されております。
  37. 加藤清二

    加藤(清)委員 私がこの際申し上げなければならぬことは、年間四百億も資金が要るというところへもってきて百七十億しかない。政府補助金が二十五億程度しかない。こういうようなことで、はたして計画が行なえるか行なえないか。また、事実計画が行なえたとしても、その結果生ずるところの工業用水コストが、はたしてきのう松尾局長がおっしゃったように五円程度でおさまるのか、おさまらないのか。今のような資金ソースであったとすれば、当然五円程度ではおさまらないという問題が起きてくるではないか、こう思われます。特に最近できました愛知用水工事工業用水にいたしましてもさようでございまするが、第一期工事予定通り行きましても、第二期工事以降の水の価格については、必ずしも政府がおっしゃっていらっしゃるようなことには相ならぬ、このように思うわけでございます。一体そんなことで、はたして計画実行に移されますか。はたして五円程度でおさまることができましょうか。この点をはっきりどうぞ。
  38. 藤岡大信

    藤岡説明員 きのう局長お答えいたしました通り公団事業におきまして、五円以上になるような場合につきましては、五円以下になるように、あるいは五円程度料金になるよう措置していきたいというふうに考えております。御承知のように、公団事業内容及び補助率、その他非常にこまかいところについてはまだ決定をいたしておりませんので、その決定の際に、そういった内容になるようにわれわれとしては努力をいたしたいというふうに考えております。
  39. 加藤清二

    加藤(清)委員 水を得ることがあなたの方の倍増計画、これを実行するに最も大切なことと思いますが、その水を得るにあたって、水源確保資金確保ということが一番基本にならなければならぬと思います。もしそれが怠られますと、かりに事業を遂行いたしていきましても、資金調達の面で総裁や副総裁がしょっちゅうかわってみたり、あるいはやめてみたり、ときには犠牲者として死ななければならないという問題も起きているのです。  あなたの方が、今のような計画でうまく四千億になんなんとする資金確保されるということでありますならば、私は一つ具体的に承りたいことがございます。一体愛知用水から取り水する工業用水、第二期工事から出来するコストはどの程度になりますか。
  40. 藤岡大信

    藤岡説明員 愛知用水の第一期につきましては、四円の料金ということで計画をいたしておりますが、おっしゃいますように、第二期につきましては、大体五円程度になるではないかというふうに今の計画では考えてございます。
  41. 加藤清二

    加藤(清)委員 大蔵省の方がいらっしゃらぬようでございますので、次に建設省の方に承りたいと思います。  建設省では、愛知用水公団ができました以降におきまして、多目的ダムという立法措置を依頼されたことがある。私も審議に加わったことがある。あの多目的ダム法律実施されまして以来、一体どんな多目的ダムが実現したのでございましょうか。
  42. 山内一郎

    山内一郎政府委員 建設省といたしましては、昭和十何年からいわゆる多目的ダムというか、洪水調節並びに上水、工業用水をあわせて補給するという多目的ダム、これを実施いたしておりますが、昨年度までに四十八ダム完成いたしております。そのうち、多目的ダム法実施以来といいますと、この四十八のうち約半数以上になっておりますが、大体多目的ダム法により実施している、こういう状況になっております。
  43. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこから生じまする農業灌漑用水飲料用水工業用水、あるいは水力源になっておるかもしれませんが、これらの受益者が負担するととろのコスト一つの例でもよろしいし、あるいはできましたら、その平均が出ていたら平均を一度そこで出していただきたい。
  44. 山内一郎

    山内一郎政府委員 コストの点は詳細は調べないとよくわかりませんが、従来やっておりますのは、工業用水でいいますと四、五円以下になっております。それから上水道につきましては、これはだいぶ高くなりまして、高いのは二十円くらいじゃないかと思いますが、詳細は後ほど調べて御報告いたします。それから灌漑用水の方は値段をとってない、こういう状況であります。それから発電につきましては、これも詳細は後ほど調べてから御報告いたしたいと思います。
  45. 加藤清二

    加藤(清)委員 ただいま私が要求いたしました件、後ほど調べて提出なさるそうでございますから、ぜひ至急資料として御提出願いたいと存じます。
  46. 山内一郎

    山内一郎政府委員 至急調べて差し上げるようにしたいと思います。
  47. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは愛知用水関係の方にお尋ねいたしまするが、私が承るところによりますと、今、多目的ダムの場合に農業の方はお答えがなかったから、これは比較することができませんけれども、愛知用水関係では受益者は反当たり四万三千円を分割納入しなければならない。それから工業用水は、先ほどお話がございました一期工事は四円程度でおさまるけれども、二期工事以降においては五円を目途としているが、あるいはこれより伸びるかもしれぬ。そこで、この点大蔵省にお尋ねしたいのでございまするけれども、いらっしゃらないので、次に進んで、今度は飲料用水の問題でございます。  ただいまの多目的ダムの方によれば大体二十円程度であるということでございますけれども、愛知用水に関する限りは、なるほど幹線工事にかかる分は大体その程度でございますけれども、支線工事その他を合わせますと、一立米について四十三円前後に相なるわけでございます。この点、愛知用水コストに対する認識は私が間違っているのか、間違っていないのか。一つお答え願いたいと思います。
  48. 聖成稔

    聖成説明員 お答えいたします。愛知用水公団関係県営水道の末端の価格は、先生おっしゃいますように一立米四十三円程度になっておりまして、名古屋市と比べますと約三倍程度高いということは事実でございます。これは愛知県営水道が、御承知のように愛知用水公団より原水を受けておりまして、その建設費に見合う原水料金が非常に高い。それから、愛知水道計画では、愛知用水公団に対する負担金、さらに浄水場あるいは排水施設といったものを建設しておりますので、非常に割高になっておるということで、供給料金が高くならざるを得ないというような実情にあるわけでございます。しかしながら、受水しております市町村は主として知多半島でございまして、非常に飲料水に困っておる。未給水の地域もまだ相当にございまして、非常にコストは高いのでありますが、反面非常に水に困っておる地域でございますので、水の供給が円滑に行なわれるということによりまして受益しておるというふうに考えられるわけでございます。しかし、この料金を何とか低廉化いたしたいということは私どもも考えておりまして、いろいろ各市町村ごとの経営の内容なども考慮いたしまして、今いろいろ検討いたし、何とか少しずつでも安くなるように努力して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  49. 加藤清二

    加藤(清)委員 ただいま飲料用水についてのお答えがあったわけでございますけれども、なるほど大へん御努力いただいておるようでありまして、まことにけっこうなことです。また、水の乏しい地域に、今後この公団法ができましてそこに供給されるということは、これまたけっこうなことなんです。しかし、乏しいからというて、国民が日々消費するととろの飲料用水が高くあってしかるべきであるという理論は、どこからも生まれてこないわけです。ことに愛知用水公団に関する限りは、どうも受益者として比較してみて納得のいかない点がたくさんあるのです。なぜかならば、同じ木曾川の水が知多半島へいくのに、工業用水飲料川水と比較いたしてみますと、十倍ほど飲料用水の方が高い。それは予算が違うからと説明してみましても、それでは一体名古屋飲料用水木曾川からきている。ところが、この名古屋のは最高十円である。こちらは四十二、三円、これもわからぬことだ、こう言う。それは設備費の問題だから、新しく作った場合にコストが高くついたのだからやむを得ないじゃないか、しんぼう願いたい、こう言うて説明してみても、なかなかにこれは納得いかない。最も納得のいかない点は何かといえば、同じ厚生省のお世話にかかるところの簡易水道、この水と今度の愛知用水の水とを比較してみますと、ここにもまた大きな相違があるわけです。簡易水道の場合はあなたの方がよく御存じの通りでございまして、これは厚生省の御努力によりまして、十立米平均として二百円程度。しますると、これは十立米四百二、三十円と比較して半分以下なんです。しかも町役場、ないしは市がこれを管轄いたします場合には、大体二百円徴収しておっても百円から七、八十円前後、安いところは五十円程度でペイして、残りは蓄積されているわけなんです。これと比較してみますると非常な相違です。それの理解がなかなかできない。理解ができないだけではございません。ここに問題になる点は、同じ町村の中で、同じ飲料用水として、すでに簡易水道によって月百円から二百円で済んでいる。そういう既得権を持っていらっしゃる方々がある。   〔加藤建設委員長退席、瀬戸山建設委員長代理着席〕 そこへ今度の四十円以上の水が流れてくる。これと競合するものをどううまく合わせたらいいかということが、ただいま受益地区の市町村会議員、県会議員、村長、町長さんたちの頭痛の種になっているわけなんです。こういうことはこの地区だけでなくして、今後多目的ダムとして作られ、あるいは公団として水が供給されるようになった場合に当然考えておかなければならぬ問題でございます。従いまして、私は今後の一つの一里塚として、あるいはお手木として、これをうまく解決する必要があるではないかと思われますのでお尋ねするわけです。これをどう解決すべきがほんとうでございましょうか。
  50. 聖成稔

    聖成説明員 先生の御指摘はまことにごもっともだと思うのでございます。この問題は私どもも非常に重要な問題だと考えておるわけでございますが、御案内のように、簡易水道は五千人以下の小規模の水道でございまして、これは農村の水道であって、財政力が弱いとか、あるいはまた建設経費が割高であるというような理由で、現在四分の一の国庫負担金を出しておるわけでございます。そういったことから、既存の簡易水道につきましてはおっしゃるように割安に給水されておる。ところが、一方に愛知用水から受水しました県営水道による給水地域につきましては、非常な格差があるということは、一応建設経費が高くついているとか、いろいろ理屈はございますけれども、おっしゃいますように、実際に一つの市なり町村で、片方は非常に安い、片方は非常に高いというアンバランスがありますことは、確かに問題であることはよくわかります。今後公団事業が発達いたしますに従いまして、こういうような地域がさらに出てくるということも考えられますので、十分に対策を研究していきたいと思います。
  51. 加藤清二

    加藤(清)委員 対策を研究していただくことはありがたいと存じますが、ただいますでに六月試験通水、八月から実施に移すという段階になっておって、権利と義務の問題がすぐに目の前に迫ってきているわけなんです。これについては、一体どのように対処をなさるお考えでございましょうか。ことに簡易水道を引いた既得権を持っているもの、それはあくまで既得権を主張するでございましょうし、新しく受益するところの受知用水の受益者は、やはり通算してもらいたいという考え方をお持ちでございましょう。ここらあたりを一体どう対処なさるお考えでございましょうか。せめて基本方針なりとも、できておりましたら伺いたい。この問題は、何も飲料用水だけじゃありません。工業用水も同じことでございます。工業用水の方も同じ意味において一つお答え願いたいと存じます。
  52. 聖成稔

    聖成説明員 お答え申し上げます。今の場合は、既存の簡易水道と新しくできました水道と全部管をつなぎまして、一本の水道にしてしまうということになりますれば、これは平均といいますか——単独で新しい水道の場合には相当高いものが、結局簡易水道があることによってそちらの方が薄まるということは考えられるわけですけれども、簡易水道の方は今までよりも少し高くなるという結果が出てくることには非常に問題があります。これは水道市町村公営という建前から考えまして、既得権の問題は確かにあると思いますが、これを早急に解決する方法ということになると、ちょっとむずかしいのじゃないかと思います。
  53. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、工業用水の方はどうなったのですか。
  54. 松尾金藏

    松尾政府委員 御承知のように、工業用水は各工場の使用量が大へん大量でございます。そういうことも考えまして、前の供給契約のものと別個に、第二期の工事が進みますればその間に値段の相違が出てくることはやむを得ない。おそらく取水条件がだんだん悪くなって参りますので、あとから供給を受けるものが若干値上がりいたしますれば、前からの水道から供給を受けている工場で新たな水道からも水を受けるということになりますれば、プールせざるを得ない。そういう状態でございます。
  55. 加藤清二

    加藤(清)委員 アロケーションは以前通りにするというお答えをなさったので、私はあえてこの問題に触れてみたわけでございますが、これが同じ厚生省のいわゆる簡易水道と今の水道の場合は、同じ管轄だからまだ処理がしやすいのでございます。今あなたは、第一期工事と第二期工事は値段は違うけれども、その受益者は同じ人間であると言われた。これは一番処理のしやすい場合をお答えになったと思うのです。  ところが、ここに問題になる点は、工業用水においても、飲料用水においてもさようでございますけれども、これは私企業が経営しておる場合がある。それと最後の末端は連結してしまう。こういうときは一体どういうことになるか。すなわち私企業が住宅を分譲いたします場合には、ガス水道つきということで売っておるわけです。これは私企業が作っておる水道なんです。なるがゆえに、地価は高くなっておる。ところが、今度政府公営にかかるところの水道が流れてきた。それと連結したところが、その水道料金は意外に高い。これと連結した場合に、一体アロケーションの始末をどうなさるおつもりでございましょうか。今まで通りお答えになりましたが、この公団法によってはどう御処理なさるおつもりでございますか。答弁のいかんによっては、私は生きた実例を申し上げて御質問したいと思います。
  56. 曾田忠

    ○曾田政府委員 先ほど御質問がありましたのは、現在工事中の、たとえば多目的ダムを作る場合におきましてアロケーションはどうなるんだという御質問に対しまして、引き継ぎ以前のアロケーションの方式をそのままということを申し上げたわけでございますが、それは一応別といたしまして、アロケーションの考え方といたしましては、現在やっておりますのは、いわゆる身がわり妥当方式というものをやっております。  問題は、たとえば工業用水の場合を例にとって申し上げますと、きのうからお話がございましたように、五円あるいは五円近い数字を基礎として出すという考え方は大体いいと思うのですけれども、水道事業の場合におきましては、各地とも現在の水道料金が非常にアンバランスになっております。従いまして、今までやっておりますのはいろいろなやり方がございますが、たとえばある地域の現在の水道料金、たとえば十七円とか十八円、あるいは十四円、そういうような料金基準といたしまして、今の身がわり妥当方式を計算するというやり方と、あるいは現在の最も新しくできました上水道専用のダムの水の一立米当たりのコスト基準といたしまして、それでアロケーションをやるといういろいろなやり方があるわけであります。われわれといたしましては、要するに現在の基準に従いまして、身がわり妥当方式でアロケーションするという考えは変わっておりません。
  57. 加藤清二

    加藤(清)委員 長官、よろしゅうございますか。ここは長官にお尋ねしたいところでございますが、長官お留守ですから、ほかの人に質問せいというお話で、ほかの人に質問しておったら、それは同僚委員から、経企庁に聞くことだとおっしゃる。なるほど、それはその通りなんです。私は委員長の命に従って、留守だから向こうに聞いておったわけですが、要点はこういうことなのです。水を今後供給するにあたっては、必然的に水資源を遠いところから運ばなければならない結果に相なるであろう。さすれば、この建設コストが高くなる。建設コストが高くなるにもかかわらず、政府の出資や補助金は、先ほど来承っていると、まことに微々たるものである。年間四百億も要るところにもってきて、二十五億の補助金しかない。これでは、今後建設していけばますますコストは高くなるだろう。そこで、その問題をはっきりしておかないと、水の乏しい、水のほしいところへ水を持っていくという事業は——過去においては必ず感謝されて、神社を作ってこれが氏神様になった例がほとんどなのです。ところが、あにはからんや、そうあってしかるべき今日においては、感謝の声が出ていない。どこに声が出ていないかといえば、コストが高過ぎるからである。その高過ぎる結果、あまたの問題が惹起してきている。それをどう処理していただけますかということを私はお尋ねしているのです。  その一例として、たとえば飲料用水ですが、名古屋水道は大体コストは最高が一立米十円です。ところで、できた愛知用水は四十二、三円になる。簡易水道でこれを行なっておりますると、十立米使って二百円ですから大体二十円程度名古屋の倍が簡易水道・そのまた倍の四十円が愛知用水、こういうことになっている。ところで、その簡易水道の方は二十円、つまり十立米平均として二百円ずつ納めているけれども、実際の内訳はといったら、五十円から七、八十円・多くて最高が百円程度で済んでいる。それを二百円とって、残りは役場にタンクしてある。減価償却以外のものにタンクしてある。ところで、今後公団によって給水が行なわれます。それは処女地帯もあるでございましょう。しかし、すでに既存のそういう既得権を持っているところへもいくでございましょう。そうすると、最後の末端はこれが連結されるでございましょう。当然同じ町村にその管理の権限が与えられれば、連結するのがあたりまえです。連結しなくても、会計は同じ水道会計になるでございましょう。そのおりに問題になる点は、既得権を持っている人は、私たちはこれだけ安い水をちゃんともらっているのだから、もうこれ以上高くしてもらっては困ります、と言うでしょう。ところが、連結する以上は、今も質問してみますると、事務的にはやはり平等にしなければ工合が悪いとおっしゃる。現にこの問題は、知多半島にはどの町村も起きているわけです。こういう場合にアロケートはどうなさるかといったときに、あなたが見えぬときに聞いたら、それは前々通りにするというお答えであった。それで、前々通りのアロケート、いわゆる電源開発法によるところのそれでやっていってうまくいけますかとお尋ねしている。この電源開発法によるところの、きのうもそういうお答えでございましたが、これは昭和二十九年のそういうアンバランスのなかったときのアロケートの方式なんです。今後新しく公団が発足して給水をなさると、必ずそういう問題が起きてくるでしょう。それに対して大臣、どう基本的にお考えでございますか。
  58. 迫水久常

    迫水国務大臣 非常に具体的なお話でございまして、私も少し勉強が足りないのですけれども、とにかく今まで水がなかったところに水がいくわけです。それで、前に既得権を持っているからといって、水の値段を一切上げては困るのだ、ほかの人はちょっとは困ったっていいじゃないか、新しくできた水道で初めて水が供給される人はうんと高いものを使え、自分たちは前から古い水道だから安いものでいいのだ、ということを、一体その町村の人が言うでしょうか。そういうときはやはり隣保共助というか、連帯的な考え方からいって、おのずからそこにまた別な考え方が出てくるのではないかと思います。これは九州電力の値上げのときも、しきりにこの国会でも問題になったところでございまして、九州電力の値上げをしなければならないのは、新しい電力を生み出すためにどうしても金が足らぬから電力料金を上げなければならない。自分たちはちゃんと古い安い料金でもらっているのだ、おれたちは新しいものを引く必要はないのだといって、もし古い住民の人ががんばったら、もう土地全体の繁栄というものはないのですから、私はそういうところで、おのずからそこに一つ調整ができてくるものと思います。従って、御質問の要点が、既得権者の安い水の料金というものは一切上げてはいけないのだ、上げるのは間違っているのだということを前提として、何か補助金でも出す方式があるかというような趣旨の御質問だとすると、それは個々の場合についてよく考えて、あるいは非常に上がるような場合は何らかの措置を、そのときに適切な処置を講ずる場合もあると思います。ただ、工業用水の場合は、昨日松尾企業局長は大体五円より高くなっても大して高くない、大体五円というところを目標として調整するつもりであるということを答えております。大体たしかそうだと思います。
  59. 加藤清二

    加藤(清)委員 権利義務と債権債務の問題を、長官はまるで道徳で律したらそれがうまくいくようなお答えでございますが、しかくさように簡単なものではございません。もし今度の公団においてそういうような考え方を持っていらっしゃるとするならば、政府の企画して生じたそのしわ寄せを一番末端の地方自治団体長、すなわち町長あるいは町会議員とか県会議員たちの手によって処理をせよ、こういうことに相なるわけです。あなたは先ほどいらっしゃらなかったから、なんですが、現在その調節に苦しんでいるわけです。もしかりに百歩譲ったとして、あなたのおっしゃる通り簡易水道もあるいはあとからできた愛知用水も、これはお上でやっていただいたことだ、だから少々高くなってもしんぼうしなさい、こう言えば、それは村人たちはしんぼうもするでございましょう。  ところが、ここにしんぼうや道徳律だけでは処理できない問題があるわけです。すなわち工業用水にいたしましても、飲料用水にいたしましても、国家系統やあるいは地方自治団体系統ではなしに、私企業が行なっているものがあるわけでございます。その答弁はまだございませんので、私はお尋ねをするわけなんですが、私企業が住宅建設をいたしまして、切り売りをしているわけであります。ガス、水道つきなるがゆえに地代も高ければ、家屋代も高くなっているわけでございます。との中には完全に水道というものが権利として加わっているわけです。これを買った人は権利として支払っているわけです。ところが、同じ町村の中に国家の経営する高い水が入ってくる。片一方の水は簡易水道ととんとんの値でございます。倍にふえるわけでございます。未来永劫にふえていくわけでございます。その際に、土地を高く買った者は一体どこへ苦情を持ち込んだらよろしゅうございましょうか。こういう問題はこれだけではない。今後必ず起きてくる。
  60. 迫水久常

    迫水国務大臣 つまり簡易水道が引いてあるので、簡易水道の値段は十立米で二百円という前提でその値段を払った。ところが、そのあと、その町には全体的に水が足りなくなったために、今度は公団の施設による上水道を引っぱっていって、その簡易水道と連結することによって簡易水道の値段が高くなった。そうすると、二百円として払った権利なんだから、それは払い過ぎだ。料金が上がったら損になるのじゃないか。それはどこへ苦情を持っていくのか。こういう御質問ですが、私がどうもふに落ちませんのは、公団なりが強制的にこの水を使えといって、押し売りをしておるということを前提にして御質問になっておるような感じがするのですが、そうではなしに、その村としては、町としては、当然水がよけい必要で、どこからも水を取ってくることができない。安い水がもし簡易水道によって、他の自然にわく湧水なら湧水を水源とする簡易水道を作れば安くいく、こういうことで済むならば、その水は使わないだろうと思う。ほかにどうしてもないから、高いけれども、しょうがないからその水を使うのでしょうから、そこのところをちょっと見れば、苦情を言う筋合いはないじゃないかと私は思うのです。
  61. 加藤清二

    加藤(清)委員 私の説明不足と解釈します。まさか、あなたが曲げて解釈していらっしゃるほど人の悪いお方だとは思いません。そこで、問題は同じ町内におきまして——私は地図を持ってきておりますから、何々町、何々字ということを申し上げてもよろしゅうございますけれども、数が幾つかございますので、あえてそれは申しませんが、こういうことなんです。私企業がすでに水道事業を行なっているのは、町全体ではございません。その町の甲地区でございます。甲地区はこれで水は十分ある。よそからプラス・アルファする必要はない。ところが、同じ町の乙地区、丙地区には、別な公営のものができた。ところで、それが末端が連結される。なぜそうなるかと申しますと、町としては水道事業は常に一つの会計で行ないたい、こういう希望があり、そういう過去の因襲と申しましょうか、先ほどおたくの方もおっしゃったアロケートは前々通りやる、こういう過去の実績に従っておやりになる。ここに問題が出てくる。町の経理としては当然一つに行なわなければならない。その際に、権利は喪失されるわけでございますが、これは一体どこへ苦情を持っていったらいいか、こういう質問なんです。さきの補足説明をいたしました。
  62. 迫水久常

    迫水国務大臣 御質問が、連結をしなければならないということですが、もしどうしても甲地区の人たちが値段を上げることがいやだ、町長さんとしても値段を上げるわけにいかないというならば、それは連結しなかったらいいと思うのです。連結をしてしまって、そして町の経理上どうしてもそういうふうにしなければならぬという、そういう必要があった場合には、それに対する対策というものは当然払わなければならないのではないかと私は思いまして、何でも安い権利を持っている者は永久にその権利の上にあぐらをかいていくというものの考え方はだめなんじゃないか。それではとても、一町村の中でみんなが連帯的にやっていくということではなくて、ある地区の人だけは非常に楽にしていく。そういうことを言い始めたら、同一の町村内で地面の値段に甲乙のあるのもおかしいじゃないか、私はこういう議論が出てくるんじゃないかと思うのです。町の繁華なところは高い、繁華でないところは安い。同じ町村の住民でありながら、Aの方の土地は売っても安い。だから、そこら辺に町村連帯の感覚を入れて考えたら、そういう問題はそのところで解決をすべき問題であって、どこに苦情を言いに行けばいいかとおっしゃっても、私はちょっと、どこに行ったらいいだろうというお答えはできません。
  63. 加藤清二

    加藤(清)委員 やはりあなたは道徳律で解決しようとしていらっしゃるようでございます。つまりこの公団法を通す以前に、アロケーションの新しく出来するであろうところのことが予想されずにいた。つまり新しい事態に対処するところのアロケーション基本方針というものができていない、こう見て差しつかえないわけですね。それでは、その基本方針がはたして新しい時代に対処し得る方法であるかいなかは、一つお手並み拝見といきましょう。  次に、今の問題は、同じ飲料用水工業用水の中から生じている格差の問題をお尋ねしたのですが、今度は同じ水道管から同じ時期に参りました水の値段が、やはりこれまた違うわけでございます。工業用水の場合、飲料用水の場合、農民の受益者の負担の場合、それぞれが違うケースが多いようでございます。この点については、一体どのようにお考えでございましょうか。今後公団で行なわれます実施計画、そこから生ずる水の料金受益者の負担等々は、一体どういう基本方針を持っていらっしゃいますか。
  64. 曾田忠

    ○曾田政府委員 お答えいたします。アロケーションの問題でございますが、先ほども申し上げましたように、原則といたしましては身がわり妥当支出法によって計算したものを適用するわけでございます。やり方といたしましては、御存じだと思いますけれども、問題は基準となります料金をどう見るかというのが一番大きな問題じゃないかと思っております。私どもといたしましては、現段階におきましては、最近の要するに工費によりまして一応単価を妥当として見ております。先ほども申し上げましたように、工業用水道につきましては、大体五円程度で現在おさまっております。それから、特に問題になりますのは上水道用水でございますが、これも各地区ばらばらでありますし、また、最近の新しい上水道用水の建設単価におきましてはいろいろございますけれども、あるいは十円とか、一トン当たり二十五円とか、そういうような数字もありますが、できれば新しい最近の基準によりましてアロケーションを出す、そういうふうに考えているわけであります。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 問題の基本は、政府が行なったところの、また今後行なうであろうところの水道事業、そこから生ずる値段が既設のものより常に高いということは、これは建設費もさることながら、その資金源に多くの問題があるのではないかと思うわけでございます。また、工業用水飲料用水、あるいは農民の受益者の負担と、こう並べてみました場合に、工業用水は四円で、飲料用水が四十円で、農民の負担は反当四万三千円、こういう——首を振っておられますが、これは事実なんです。こういうことが行なわれているということ、あるいはまた、将来公団で行なわれますることはこれと同じ傾向をたどるであろうと思われる。この事柄、これは一体どこに起因するかといえば、問題は資金源なんです。資金ソースの問題なんです。こうなって参りますると、ほんとうは、政府公団を作ってやるからには、全責任を持って資金を持つということであれば、問題は少のうございます。それを常に公団の作り得る金で準備させようということになるから、こういう問題が起きてくるわけなんです。政府としては、公団が行なう事業に必要な資金源は、あとう限り政府資金を使わせる。これでいけば、すべての問題が解消するわけでございます。にもかかわりませず、過去の実績から見ますると、一番極端な例は、工業用水飲料用水の相違なんです。このことは、電力料金にも同じことがいえるわけなんですけれども、一般家庭用電灯料と大工場の使う電力料金とは、同じ一キロワットについて、片や十七、八円から二十円近くしているのにもかかわらず、片や一円六十銭から、せいぜい高くて三円五、六十銭、こういうことが行なわれているわけなんです。このことは、今後政府が行ないまする公団事業によってますます格差を広げる傾向にあるわけなんです。こうなって参りますると、政府は所得格差を縮小するのだ、とこれに書いていらっしゃる。それが国民所得倍増一つの柱である、こう言うていらっしゃる。にもかかわりませず、所縁格差は、この調子であればますます広がる傾向にあるわけでございます。これに対して長官は、一体どのようにお考えでございましょうか。  特にもう一つ申し上げておかなければならぬことは、池田内閣の公約は、公共投資をしっかりやる、充実させるということが三本の柱の一つであったはずです。もし、それがほんとうにそうだとするならば、公団が行ないます事業にかかる事業費は、当然政府が持ってしかるべきなんです。にもかかわらず、生むには生むけれども、食わせるものは食わせない、着せるものは着せない、こういうあり方のようでございます。これでは捨て子と一緒でございます。それでもって、はたして公共投資を十分行ないますという公約が行なえたと言えるでございましょうか。私は、この二点について、ほんとうは総理に承りたいところでございますけれども……。
  66. 迫水久常

    迫水国務大臣 いろいろお話がございまして、所得格差の是正という根本方針にも反するじゃないかとか、あるいは公共投資を重視するという看板にも反するじゃないかという御議論がございました。これについては私も申し上げたい点がございますけれども、御質問の要点が、この水公団に対して事業資金のもとはどうする気なのかという御質問と考えまして、そういう意味で御答弁を申し上げます。  先般来から申し上げております通り、この公団には現在出資の問題がありません。出資の問題がないのですけれども、将来出資の問題を考えるとするならば、どういうわけで出資の問題を考えていくかとすれば、そのできてくる水の値段が不当に高くなるような場合には、要するに利子のつかない金をそこにまぜることによって資金コストを下げて水の値段を下げる、そういう作用があるために出資金というものは考えるのだと私は思っております。従いまして、基本計画ができましてからいろいろ研究をいたしまして、そうして出資の必要があるということになりますれば補正予算を組んでもらうつもりだ、ということは毎々申している通りであります。なお、借入金等につきましても、できるだけ利子の安い金を使う。あるいは場合によっては補助金も、将来のことでありますからわかりませんが、必要があれば増していく。そういうようなことにして、要するに、できるだけ出てくる水の値段を不当に高からしめないように、モデレートな値段で水が生産されるように指導いたしていきたいと思っております。
  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 時間を急げというお話でございますので、その趣旨になるべく沿うように、あと二点お尋ねをいたします。  建設費とともに大事な問題は、建設技術でございます。幸い建設大臣もいらっしゃったようでございますので、技術の問題についてお尋ねしたいのでございます。愛知用水実施されるにあたりまして、アメリカから技術導入がされていると聞いております。一体その技術のコスト及び効果はどんなものでござんしたんでしょうか、簡単に御説明願いたい。
  68. 伊東正義

    ○伊東政府委員 愛知用水が当初始めますときに、世銀から借款をしたわけでございます。そのときに、アメリカのエリック・フロアという会社と提携して技術援助を受けるという話がございました。世銀の借款全部で当初七百万ドルでございましたが、減りまして、四百七十万ドルになりまして、そのうち技術援助関係だけの費用はたしか百二十万ドルか三十万ドルと記憶いたしております。もし間違いましたらあとで訂正さしていただきます。そういう借款の中に技術援助の金が入っております。これによりましてあの工事を仕上げたのでございますが、これは工事のやり方等につきまして、従来に比較しまして非常に変わった点がございます。といいますのは、従来農林省等がやりました工事で、末端等でもかなり設計をしたりしておりましたが、そういう仕事は一切やめまして、中央で集中的に設計をしまして、第一線はその設計通りやればいいというような、やり方の変更を来たしたこともございます。その他ダムの地質の問題、あるいは水路の開渠の場合セメントの使用量を減らすというような、従来のいろいろな技術に比較いたしまして進歩があったというふうに私ども考えております。ただ、私どもとしましては、今後やります場合には外資を入れてまで技術援助を得なくても、愛知用水で十分な技術を修得したのじゃなかろうかというような判断をいたしております。
  69. 加藤清二

    加藤(清)委員 私も愛知用水工事につきましては、でき上がったところのコストは高いけれども、その工事の技術についてはずいぶんうまくいっていると漏れ承っております。これはまことにけっこうなことで、それを生かして今後の建設工事をより一そう充実させてみたいというただいまの御答弁には、私も大賛成でございます。  ところで、長官並びに建設大臣の、今後の工事工業用水をこの計画通り充実させるだけでもなお四千億の費用を要するというきのうの御答弁等からかんがみてみまして、日本の技術をフルに活用させるということは最も肝要ではないかと思われます。技術導入という手もあるようでございまするが、日本の鉱工業の技術を進歩発展させるために払っておりますパテント料というものは、これはもう膨大でございます。従って、でき得べくんば国内に今保有され、研究されている技術をフルに活用するということが最もふさわしいのではないかと思われるわけでございまするが、この点について長官ないし建設大臣はどのようにお考えでございましょうか、御所見を承りたいと思います。
  70. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 今、愛知用水についてお話が出ましたように、外国の技術についても参考にすべき点、また取り入れるべき点があるとは思いますが、現在日本のダム建設に関する技術は世界的に相当優秀なものであると、われわれ実は自負いたしておる次第であります。極力国内の技術及び力を動員いたしまして、本法が制定されました暁には所期の目的を達成するようにやって参る考えでございます。
  71. 加藤清二

    加藤(清)委員 この点を考慮に入れられましたのか、池田総理は、公団発足と同時に愛知用水公団の持っているところの技術を全部吸収する、愛知用水公団そのものを全部吸収するのだ、こういうお話でございました。技術というものはそこに働く技術者が修得しているものでございまして、これがざんばらりんになりましてはその技術を十分に発揮することもできないでございましょうから、それはさようあってしかるべきだと存じます。池田総理は、すぐにそれをするとおっしゃいました。大平長官もまた同じ意味のことをさきの農林、商工の合同委員会で答えておられます。農林大臣も、先般の本会議場で本法案の上程されましたおりに答えておられるわけであります。念を押すまでもないと思いますが、本法が施行されました暁において、その中心となられる建設大臣、特にそれを総括なさって、総理の代行をなさるところの企画庁長官等は、一体この愛知用水の技術あるいはそこに働く技術員、従業員等の問題についてどうお考えでございましょうか。
  72. 迫水久常

    迫水国務大臣 たびたび申し上げております通り、将来においては愛知用水公団はこの公団に吸収せられるのでありますが、順序がありますので、段取り等はただいま研究中でございます。
  73. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 今、企画庁長官お答えを申し上げた通りでございますので、十分段取りをつけまして、当然愛知用水公団全体、及びその保有されておる技術あるいは人的資源、こういうものは、新たに公団ができましたらやがて吸収されるものと考えております。
  74. 加藤清二

    加藤(清)委員 最後に一点。昨日の長官の御答弁によりますと、公団ができた場合の事業計画はまず利根川水系、それから淀川水系、こうおっしゃられました。伊勢湾工業地帯の水の問題についてはお触れになりませんでした。ところが、すでにあなたのところのお作りになりましたこの計画実行に移すには、もう伊勢湾工業地帯も、愛知用水の水が全部工業用水に転用されたとしてもなお足りないほどの需要があるわけでございます。しかも、東海製鉄を初めとして今着々工事が進められておるわけでございますが、この需要量はどんどん伸びつつあるわけでございます。しかも、それと同時に、この計画にはいろいろな工場の系列、コンビナート・システム、これを総合して発展させると書いてある、当然のことでございます。それを行ないますには、東海製鉄一つでは何ともならぬわけでございます。それにまつわるあまたの関連産業をここへ設立しようとすれば、これは来年、再来年の問題でなくて、すでにその工場の設営にあたって、水がいつどれだけ工場に配当されるかわからないがゆえに、その設営計画が停頓している状態でございます。これについて、長官としてはどう対処なさるお考えでございましょうか。
  75. 迫水久常

    迫水国務大臣 中京地区につきましては木曾川、長良川、揖斐川、これも当然指定水系になるのでございまして、先ほどちょっと申し上げたと思いますが、調査の完了次第昭和三十六年度中にも水系として指定したい、こう考えております。中京地区に膨大なる新しい産業地区ができることも知っておりますが、こういうことを言っては悪いかもしれませんけれども、水の計画が全然わからないのに、どんどん計画をする事業家も事業家だと実は思っておりますけれども、しかし、決して中京地区もほったらかしておるわけではございませんで、水系指定いたしまして、水の供給の可能量を確定したいと考えております。
  76. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 次に、阪上安太郎君。  質疑をなさる皆さんにお願いしておきますが、多数の皆さんが質疑の通告をされておりますので、できるだけ重複しないように簡潔にお願いいたします。
  77. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今、委員長から御注意がありまして、ごもっともだと思いますので、きわめて簡単に御質問申し上げますから、端的にお答え願いたいと思います。  本日私は主として水資源開発公団の設置に関して問題点を御質問申し上げたいと思うのです。昨日からいろいろと論議されておりますが、なお納得できない点もありますので、多少重複するかもしれませんけれども、御了承願いたいと思います。  端的に伺いますが、水資源開発公団予算というものができておるのかどうか、この予算一つ説明していただきたいと思います。水資源開発に関する予算というものはわかっておりますが、公団それ自体の予算というものがあるかどうか、これを一つお伺いいたしたい。
  78. 迫水久常

    迫水国務大臣 水資源開発公団に関する予算は、今回の予算にはまだ計上されておりません。
  79. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、お伺いいたしたいのでありますけれども、予算が明確でない。それにもかかわらず、大へん急いで公団を作ろうとする理由がわからないのであります。むしろ水資源開発基本計画、こういったものを決定して、開発事業の分担というものをきめて、しかる後、必要があるならば公団を創設するという順序をたどっていくべきであろうと思いますけれども、今お答えがありましたように、予算それ自体が明確でないということは、結局水資源開発の基本計画というものが決定していないということだと思うのであります。重ねてお伺いいたしますけれども、なぜそんなにお急ぎになるのですか。
  80. 迫水久常

    迫水国務大臣 いろいろ考え方がございまして、基本計画を作る審議会の方だけを先に発足させて基本計画を作り、それによって予算ができまして、その予算との関連において公団の設置法の審議をお願いするのが順序かと思いました。思いましたけれども、基本計画ができたときに公団ができていないということに相なりますと、せっかく基本計画を作っても実施がおくれて参りますし、私がそういうことを言うとまたしかられるかもしれませんが、こういう基本計画を作ってどこに実施させるのだという御質問が必ず国会で出ると思ったのです。そのときに、実は公団のようなものを考えておりますと言ったら、その公団はどこにどういうものを作るのか、それを言わぬと通さぬということを必ず国会ではおっしゃると思いましたから、公団法を一緒につけて出したのであります。水資源の開発というのを非常に急ぐことは御了承願えると思いますので、至急に基本計画を作り、公団を発足させて、もしそこで年度内に金の要ることができれば補正予算を組んでもらう。これが一番早く事柄を実施に移す方法であるし、国会の御審議を尊重しても、公団法の格好ができなければ通してやらぬと必ずおっしゃると思ったものですから、急いで出した次第でございます。
  81. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あまり深追いしないことにいたします。  そこで、基本計画でございますけれども、促進法の五条の一号に「水の用途別の需要の見とおし及び供給目標」ということがうたわれております。これはもっともなことだと私は思います。そこで、用水の需要量、この見通し、こういったものを立てる前提として何をお考えになっておるか。率直に言いますが、私の考えといたしましては、こういった用水の需要量というものをきめていく前提として、関係水域におけるところの開発計画、もっと総合的な開発計画、逆に言うならば土地の利用計画というものが当然先に行なわれなくてはならぬ。それでなければ見通しというものがつかないんじゃないかと思うのであります。そういったものは、できておりますか。
  82. 迫水久常

    迫水国務大臣 きわめて適切な御質問だと思います。実際、水の用途別の需要の見通しを立てるのに、その土地の開発計画事業見通しがつかなければ立たないのであります。これは必ずしも正確に立つか立たないかわかりませんが、現在関係各省ではそれぞれの計画なり調査を持っておりますし、各都道府県においてもそれぞれの計画調査を持っておりますので、そういうものを審議会が集めまして、そして研究した上でその前提となるべき開発の目標を一応きめ、それに基づいて需要の見通しを立てることになると思います。
  83. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これはかつて長官から御説明をいただきました、例の低開発地域工業開発促進法案、私はこの法案は趣旨としては非常にいいと思っておるのでありますけれども、どうも具体性に欠けておるということを実は指摘いたしておったのであります。そればかりでなく、同時にああいった工業開発をやっていく場合に、それの受け入れ団体としての地方公共団体、こういったものに相当思い切ったそれ自体の再開発もやっていかなければならぬ。そういった基本的な計画がまだまだ具体的に表面に出てきていないときに、水資源の方も趣旨はけっこうでありますけれども、実際に、はたして軌道に乗るのかどうかという心配が実はあるわけであります。その点でお伺いいたしたのでありますが、長官にお伺いいたしますが、政府として水の需要量を決定する以前にぜひ必要であるところのそういった地域開発計画、それらは各省から追い追い出てくるということでありますが、どういったようなものが出てくることになっておるのですか。
  84. 迫水久常

    迫水国務大臣 その一番大きなのは、私たちが今研究をいたしております全国総合開発計画、それから地域的な開発計画がございますし、それから、都道府県がおのおの計画を現在持っておりますから、そういうようなものが出てくると思います。
  85. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今おっしゃったように総合開発的なもの、あるいはまた各地方に今できております特別立法で処理されておりますところのもの、あるいは予想されるところの基幹都市といいますか、工業都市といいますか、そういった建設促進の法律、そういったものが速急に出て参りませんと、これ自体だけではどうにもならない、こういうことになるであろうと思うのであります。ぜひ、その点については政府におかれても促進されて、ああいう低開発地域工業開発促進法というような、租税の減免措置だけでもって工業開発をやろうというようなものだけにたよっておられては、おそらくこれはできないのではなかろうかと思いますので、一つ要望申し上げておきたいと思います。  そこで、話をもとに戻しまして、一体水資源の開発を国と地方団体のほかに、公団は、今世界各国どこでも公団ばやりでありますけれども、どうして公団を設けて行なわしめなければならぬのか。そういった基本的な理念を一つ伺いたい、こう思うのであります。
  86. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 便宜私から一応お答え申し上げます。この開発促進法ができまして、基本計画ができまして、どこにその開発聖業をやらせるかということは促進法に基づく審議会審議過程においてきまっていきます。それで、法案にもございますように、公団、都道府県、あるいはその他建設省が直轄でやる場合もあるわけでございますが、要するに府県がやるような場合には、非常に需要目的が単一であるとか、開発の方法なり事業それ自体が単純なものであって、一本の河川をこうすればよろしいというような場合が主になってくると思うのであります。何本かの河川あるいは大きな水系全体にわたりまして総合的な開発をやっていこうということになりますと、府県たけでももちろんいけませんし、あるいは建設省が従来やって参りましたような方式たけでも、水の需要自体が通産省あるいは厚生省農林省、いろいろな方面に需要があるわけでございますから、それらを総合して水資源を遺憾なく開発をして、要するに水のむだ使いをしないように総合的な開発事業をやろうというのには、やはり公団のような特殊な機関が必要である。かようにわれわれ実は考えております次第で、公団の使命としてはそういうところにあると思うのであります。
  87. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今おっしゃいましたように、国の直轄事業としてやるという場合に、いろいろ各省間のなわ張り争いか何かが出てくる、非常にやりにくいのだ、単純なものについては地方公共団体にやらすのだ、総合的なものについてはそういうことでやりにくいのだ、だから公団を作る、こういうお考えを今示されたわけであります。私は、それだからといって、直ちに公団に持っていかなければならぬという理由はその中からは見出せないのであります。それならばむしろ行政機構を改革されて、水資源局でも何でもいいから、そういったものを作ってやっていくべきではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。大体こういった空気や水というような普遍財は、元来だれの所有でもなければ、それに伴うところの水利権等につきましても、灌漑用水その他においては慣行が非常に尊重されておりますけれども、元来こういったものはすべて公の手でもって管理されるべきものである。また、そういった権限というものも公の国ないし地方公共団体が握るべきものだと私は思う。この公団内容をつぶさに検討してみますと、その中には河川法上の権限をすらこの公団に移すというようなかまえができているわけでありますけれども、もともと水というような普遍財をそういうように放置しておくこと自体が私は間違っておると思う。そういう観点から考えて参りますときに、おっしゃったようなそれだけの現出によって公団を作らなければならぬということはおかしいのであって、むしろそれならば思い切って、国の直轄事業としてやりにくければ行政機構を変えていくというような考え方を持ってこそ、私は水資源に対する近代的な管理の形態になっていくのではないかと思いますが、この点について逆に一つ長官に伺っておきたいと思うのであります。私は水などというものは、ほんとうに公の手でもって支配すべきであると考えるのでありますけれども、この点どうでありますか。
  88. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 先ほどの点に補足をさしていただきますが、先ほど申し上げましたような観点のほかに、たとえば国あるいは地方公共団体等が事業実施することになりますと、年々予算措置を講じなければなりませんので、予算で縛られていくわけであります。かような関係で、資金的の面からも公団のような組織によって、要するに先行投資といいますか、将来の先行きを見通して大規模な投資をして水資源の開発をする。それを長期的に償却をしていくというような資金の面から考えまして、行政機関で直轄でやります場合にはやはり窮屈があるわけでございます。その窮屈を乗り越えて、水資源を活発にできるだけ規模を大きく、そして先行きを見通して先行投資をやって、長期的な償却、こういう形で水資源を開発するのにはやはり公団方式をとる以外にない。こういう実は観点に立ってわれわれは考えている次第でございます。
  89. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいまの御答弁は、私は非常に納得するところが多いのであります。しかしながら、資金の集中投下、あるいは今言われたような先行きの見通しを持った先行投資をやっていく。こういうことでありまして、それが現在の予算制度の上から、どうも現在の予算制度ではやりにくいのだということはわかります。それならば、予算制度を変えたらいいじゃないですか。それを直ちに何でもかんでも公団々々という考え方は、私は納得できないのですが、どうでしょう。
  90. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 従来建設省多目的ダム等につきましても治水特別会計でやっておるわけですが、これは各需要者から負担金を取って事業実施をするわけでございます。これらの負担金の割当でございますとか、徴収でありますとか、そういうようなことがそうたやすく一ぺんにはまとまらないのでありまして、従って、公団でやりますと、それらの大体見当をつけまして事業実施をいたすかたがた需要関係あるいは費用の負担関係等をきめまして、先ほど申し上げましたように、公団が調達をいたしました資金によって、まず開発の方に先行投資をして活発に推進することができる。こういうような次第で、他の公団、道路公団にいたしましても、その他の公同等にいたしましても、大体考え方はさような必要性から、近代公団の組織がいろいろな事業について考えられておりますので、この水資源につきましても、そういったような角度から公団を設置して、先ほど申しましたような事業規模のものについては公団に担当せしめることが、水資源の活発な開発を期していく上に必要であるという考え方をいたしておる次第でございます。
  91. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ほかにも公団を作られる理由がないと私は言いません。しかしながら、先ほどお述べになりました道路公団その他いろいろな公団が、はたしてそれでは能率的な運営がなされておるだろうか。直轄でやる場合以上に効果があがっておるという面が、先ほど言われた先行投資的なものの考え方は別といたしまして、これは運営面からながめてみてそういった能率が上がっている、ほんとうに公団にしてよかったというような例があるでございましょうか。これを一つ伺っておきたいと思います。
  92. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 率直に申しまして、私どもの所管をいたしております公団関係については、住宅公団にいたしましても、日本道路公団にいたしましても、相当に成績をあげておる。公団組織であったればこそこのくらいのスピードで進行しておる。名神高速道路も近々のうちに完成をいたします。いずれにしても、ある程度の時日をかさなければ目に見えた実績はあがって参りませんが、いずれも相当の実績があがってきておる。これが公共事業であったなら、あれだけのことはおそらく不可能でおったろうと私どもは実は考えておる次第でございます。公団も近来いろいろできておりますから、実際に実績のあがっていないものもあるいはあるかもしれませんが、やり方次第によっては、また政府なり国民の熱の入れ方いかんによっては、相当効を奏することができる、かように考えておるわけであります。
  93. 阪上安太郎

    ○阪上委員 道路公団その他にいたしましても、この役員の構成等をながめてみましても、大体古い役人の方が集まってやっておられる。新しい一騎当千の若い役人が集まっておる国の行政部門における直轄事業は能率が上がらなくて、役人の古手が集まっておる公団が非常に能率が上がる、こういう理屈になってきょうかと思うのであります。これは私実際に心配しておるのであります。もう少し突っ込んでお話し申し上げたい、かように思っておりますが、この程度にいたします。  先ほどちょっと触れましたが、この法律によりますと、公団に河川法上の権限を移管しております。移管される理由は、一体どこにあるでありましょうか。
  94. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 これは現在といいますか、従来は建設省が所管をしておりました河川に関する権限といいますか、その部分が公団に移されるわけでございます。もちろん公団仕事を、どういう個所にどういう事業をやるかということは、政府機関において、内閣総理大臣が最高の責任者として閣議において決定をして参りますし、また公団事業実施する場合には、それぞれの所管大臣が監督権を持ってやって参りますわけであります。従って、河川法と深い関係のあります河川に関する公団の業務については、法案にございますように、建設大臣が所管大臣として指揮監督をしていくことになりますから、建設大臣が従来持っていた権限をここへ移しても何ら支障を来たすことは起こってこないという考え方に立ちまして、公団にやらせる以上はそういうふうな処置を講じなければ公団事業ができませんから、さような措置をとっておるようなわけであります。
  95. 阪上安太郎

    ○阪上委員 御説明によりますと、公団は国の事業の代行機関だという観点から差しつかえないのだというような御答弁でございます。また、公団はそういう権限を移管されなければやっていけないのだ、こういうことであります。しかしまた率直にいって、こういう公団政府会社でもないと私は思う。そういたしますと、これは一つ事業執行会社であって、そういう性格を持っているものに公法上の権限を与えていくということは、どう考えてみても私はおかしいと思う。施設だけを作って、これを都道府県なりに移管するということであるならばまだしも、水利権まで持たせてやっていくという考え方、これはどうなんでしょうか。
  96. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 公団の行ないます事業の中には、五十五条にも定めておりますように、特に建設大臣が所管いたします施設の中に、洪水防御のための施設、あるいは河川の正常な機能の保持のための施設等を含めて、そういう施設を建設し、管理することになっておるわけでございます。ところが、御承知のように、河川法におきますと、そういう権限につきましては、従来国の機関としての都道府県知事また建設大臣がやっておるわけでございますが、いろいろな水資源開発の要請から、こういうものを一体として建設するという必要が出て参りましたので、こういうものにつきましてはあわせて建設をする建前から、これらの河川管理上重要な機能を含みます施設の建設につきましては、先ほど大臣から御答弁がありましたように、公団にも河川法上の権限、特に河川に関する工事あるいは管理に必要な範囲の権限を、河川法に基づくそれぞれの機関にかわってやらせるというふうにいたしておるわけでございます。
  97. 迫水久常

    迫水国務大臣 今御質問の中に、水利権までやるかというお話があったようですが、水利権は都道府県知事が留保しているのですから、これは誤解ないように……。
  98. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そうしますと、公団が作りました施設、その上を流れる水というのは公水ですか、私水ですか。どっちなんですか。
  99. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 公団が作りますダム等に貯留される水、あるいは公団建設いたします施設の中で河口せき等によって貯留される水等は、公水でございます。
  100. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それが公水だということになりますと、私水との区別はどうなるのですか。たとえばダム等の施設その他によって、この施設の上を流れてくる水は、施設の上を通っている間は公水なんですか。
  101. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 公水と私水についての厳密な法律上の区分というものはなかなかむずかしい点があるかと思いますが、河川の区域内に流れております場合は公水として考えられるわけでございますが、水利権によって水路を建設いたしましてやる場合には、通常これは私的管理に属する施設として考えられますので、そういうものは私水というふうに考えておるわけでございます。
  102. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それじゃ、公団の施設から水を第三者に供給する、それは売買契約でやるわけですか、使用料でやるわけですか。
  103. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 公団の水の供給をどういう方法でやるかというお尋ねでございますが、まず公団事業の主たる目的は、河川の水を貯留いたしましてそれをためるということでありますが、さらにそれをある地域まで、たとえて申しますと幹線水路等を作りまして、ある地域までこれを運んでいく。その先はそれぞれ水道事業者あるいは工業用水道事業者というものにこの水を渡すことになるわけでございます。その際は、それぞれの事業者は、あるいは水利権を設定しその水をもらうということになりますとともに、費用の負担関係から申しますと、との公団においては、今までたびたび御答弁がございましたように、そういう事業者が特定いたしております場合にはその特定の事業者が先に費用を一部負担いたしますとともに、将来そういう事業者が負担いたしました場合には、その負担いたします場合にそれぞれの契約によって負担の額及び負担金の徴収方法が定まっていくというふうに考えておるわけでございます。
  104. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その場合、価格決定について地方団体の意見は反映されますか、法律はどうなっておりますか。
  105. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 価格につきましては、先ほど来これも御答弁がございましたように、それぞれの用水についていろいろ条件と内容が違っておりますので、水資源開発促進法に基づく審議会においていろいろ検討も行なわれるかと思っておるわけでございますが、これを価格として考えるか、その施設の費用の負担として考えるか、またその負担の長期割賦方式というふうになるか、これらの点につきましては、今後検討される点であります。その際には、地方公共団体の意見は、実際問題としては徴取されると思いますが、法律上その点についての意見を聞くようにはなっていないわけでございます。
  106. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あまりよくわからないのです。先ほどから、この公団方式によると水が安くなるというようなことを言われた場合もあるし、質問によって追及されていった場合に、現実には高くなっているというような説明も出てきたと思うのであります。こういった公団で扱う場合の水の原価計算というものは、何か方式があるのですか。それを一つ伺っておきたいと思います。
  107. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 まず水の価格の計算の考え方は、いろいろとまた検討される一つの大きな問題でございますが、ただいま考えている点を申し上げますと、まず一番大きなウエートを占めますのは建設費でございますが、そのほかに資金コストが非常に影響してくるわけでございます。そこで、その建設はできるだけ合理的に行なわれるようなコストになるとともに、資金コストにつきましては、先ほど来お話がありましたように、なるたけ料金が安くなるように、借入金の場合も低利資金等を投入するというような考え方、また料金等に非常に影響を及ぼすような場合には、これに出資金等を加えて、必要があればそれに対する法律的な措置予算措置が必要でございますが、そういうような財政上の措置を加えて、できるだけ安くなるようにする。安くと申しますか、現在の価格に即応するような考え方でいくというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  108. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この水の価格の高い安いの問題なのでありますが、公団方式でやる場合に、直轄事業でやる場合よりも水の価格が安くなるという理由は見出せるのですか、どうですか。
  109. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 御承知のように、現在河川法に基づきます直轄工事は、一般会計からの資金でやっておるわけでございます。これはもちろん政府の税金から入った金でございまして、利子もないわけでございますが、先ほど来お話がございますように、現在の水資源開発を急いでやるし、また事情に即応してやりますためには、そのような資金だけでは不十分な点もあるわけでございまして、そのためには借入金あるいは政府資金等も必要になってくるわけであります。従いまして、資金の中身が全然違ってくるわけでありますので、そういう点では比較にならないのではないかと考えております。
  110. 阪上安太郎

    ○阪上委員 だいぶ時間がたちましたので、二つだけ伺っておきたいと思います。  こういう公団方式でやる場合に、先ほど質問申し上げたような公法上の権限が公団に移行されていく。こういうことによってあるいは地方公共団体が持っておる河川管理上の権限が移っていくということになれば、河川管理上非常にばらばらになってしまう。それでなくても管理者を統一しなければならぬような段階にきておるときに、逆の方向をたどることになると思うのでありますが、この点について建設大臣の御意見を伺っておきたい。そういうことになりはしないでしょうか。非常に混乱を来たすのではないかと思いますが、どうでしょう。
  111. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 公団に河川に関する権能が移りますのは、工事に直接関係のある部分だけでございます。しかも、その工事事業方針及び事業の施行判断につきまして、河川に直接関係のある事項につきましては建設大臣が主務大臣として直接監督をいたしますから、建設省自体が河川の管理をいたします場合といささかも異なりがないように十分監督をして参るつもりでございます。
  112. 阪上安太郎

    ○阪上委員 もう一点だけ伺います。この水資源公団総裁制になっておるのでありますが、理事長制をとられずに総裁制をとられたのは、どういう理由でありますか。
  113. 迫水久常

    迫水国務大臣 これは道路公団とか、そういうような全国にまたがっておるものの先例が大体みんな総裁ということでありまして、格を合わせるというのが私どもの考えであります。
  114. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 午後二時より再開することとし、それまで休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議   〔加藤建設委員長委員長席に着 く〕
  115. 加藤高藏

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  水資源開発促進法案並びに水資源開発公団法案の両案を一括議題とし、質疑を続行いたします。  西村関一君。
  116. 西村関一

    西村(関)委員 農地局長にお尋ねをいたします。  水資源開発公団法案の二十六条、二十八条、二十九条並びに三十条であります。二十六条の一項の「政令で定める費用」の中の不特定海潮というのはこの中に入るのだと思われますが、特定灌漑がこれに含まれるのであるかどうか。特定灌漑の分が国の交付金に含まれないとするならば、二十八条と二十九条及び三十条のカッコ書きはから振りになるというふうに考えられますけれども、その点いかがでございますか。
  117. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御質問の二十六条、二十八条二十九条、三十条でありますが、あとの方から申し上げて恐縮ですが、二十九条は、この政令で定めるというのは、従来農林省でやっておりますような事業公団でやられる場合でございます。ここの「政令で定めるところ」というのは、土地改良区はきまっておるのでありまして、この政令ではたとえば費用の納付の方法でございますとか、あるいは費用の範囲はどうするとか、あるいは負担金の額の算出方法はどうするとかいうようなことが政令で書かれるわけでございまして、従来の農林省がやっておりましたような事業に該当するというのが二十九条でございます。  三十条は、それに該当します都道府県の負担を書いておるのでございまして、これはやはり政令で負担率とか、その負担の支払い方法、県が幾ら負担するのかということが書かれるのだろうと考えております。  それから二十八条でございますが、これはいわゆる特定施設に基づきますところの特定灌漑の問題でございます。この政令では、たとえば従来の特定多目的ダム法でございますと、アロケートしました費用の十分の一ということが法律で書かれております。それを県が徴収するというようなことが特定多目的ダム法にあるのでございます。ここの政令ではまだおそらく大蔵省と最終的にきまっておりませんので、この段階で幾らということを申し上げかねますが、従来の特定多目的ダム法の特定灌漑十分の一というものがございますが、それに類したような率になるのかとも思いますが、最終的にはさまっておりません。その建設期間中の利息でございますとか、あるいは現物で支払うというようなことが、いわゆる特定多目的ダム法のダムに準じまして行なわれますので、そういうことが政令で書かれるのだろうと思います。  二十六条は、今申し上げましたような特定施設につきまして不特定灌漑の規定であります。
  118. 西村関一

    西村(関)委員 特定灌漑の場合でございますと、従来の普通の灌排事業におきましては国が六、県が二、農民が二ということでありますけれども、特定灌漑の場合でございますと、国の補助が六、県補助が三、農民の負担が一、こういうような工合になるわけでございまして、農民の側が普通の灌排事業に比べて非常に有利であるというふうに考えられますけれども、ダムの建設農林省に所管されます場合には一割増になりますから、農林省の所管工事をやることをしぶる傾向がある。農林省においてはあまり喜ばないというような傾向が出てくるのですが、今度同一公団事業の中でこのようなアンバランスが出て参りますと、公団事業そのものが進捗しないという心配が出てくるわけでございまして、そういう点、補助率を同一にするということがやはり必要じゃないかと思います。二十六条の二項は政令にゆだねておるわけでございますけれども、その政令の内容というものはまだ今日まで決定されていない。そういうことで、農林省としてはどういう見解をとっておられるか。  また、建設省側は農業者の負担は一割で、大蔵省側は農業者の負担は二割というような見解を持っているというふうにも漏れ承りますが、政府としてはどういう考え方に立っているか。最後の点は企画庁長官からお伺いいたしたい。最初に農林省の立場をお伺いしたい。
  119. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先生御質問通り、現行の制度自体で特定多目的ダム法によります場合、これは治水が入っておるわけでございますが、それと治水を目的にしませんたとえば農林省だけでやりますダム等におきましては、負担が違っておりますことは、先生のおっしゃる通りでございます。現行の制度大体そのままがここに持ち込まれているというような形にこれはなっております。先生二十六条とおっしゃいましたが、二十八条の問題でございますが、二十八条の政令で、今負担率がまだ最終的に決定いたしておりませんということを申し上げたのでございますが、これは立法の過程におきまして、実は同じ公団法という体系の中で補助率がいろいろあるのもおかしいじゃないかという議論等いろいろございましたが、あまり今の制度を変えましてこの公団法を早急の間に作りますことにもいろいろ意見がございますので、これは大体従来の考え方をここへ持ち込んでこようということで、こういう規定が入ったわけでございまして、最終的には先ほど申し上げましたようにきまりませんが、現在の一割というものがやはり大きな要素になるのだろうということは考えております。
  120. 迫水久常

    迫水国務大臣 一割、二割の問題は、今後公団でやりました場合にどうなるかということについては、十分よく研究をいたしたいと思います。
  121. 西村関一

    西村(関)委員 その点研究中ということでありますから、それ以上追及いたしませんが、どうもそこに一つ問題があると思いますので、その点は関係各省十分によく意見の調整をしていただきたいと思います。  長官がお見えになりましたから、長官にお伺いいたしたいと思います。開発促進法案の第二条でございますが、ここに「基礎調査」の事項が出てございます。これは昨日来の質問にも若干御答弁の中で触れておられた点ではございますけれども、なお明瞭でない点がありますので、この基礎調査の点について最初にお伺いいたしたいと思います。この基礎調査は各省がばらばらに行なう建前になっているのであるか。あるいは企画庁が中心になって、十分な調査費を組んで、統一的に、総合的に行なうというお考えであるのか。午前中の御答弁ですと、各省や各府県において調査をしているから、それを持ち寄って審議会において一応の調査の結論を出すのだ、こういう御答弁であったようでございますけれども、それではどうも統一性、企画性というものがあまりにもなさ過ぎると思うのでございます。何と申しましても、本法案の根底になります基礎調査というものが大事であることは言うまでもございません。この点につきまして企画庁としては、企画庁の中の予算調整費でおやりになるのか。あるいは別に調査費の予算を計上なさるお考えであるのか。すでに利根川水系基礎調査につきましては、農林省並びに建設省の三十六年度予算の中に計上されておることは御承知通りでございますが、企画庁としては予算要求をなさるのか。基礎的な調査についてどういうお考えを持っていらっしゃるか。長官基本的な御見解を承りたいと思います。
  122. 迫水久常

    迫水国務大臣 基礎調査は各省ばらばらにやるとおっしゃいましたけれども、それぞれ所管のところで、所管の範囲でやるのでありまして、ばらばらという言葉の意味ですけれども、全く脈絡なくやるのではなくて、おそらくお互いに連絡はとりつつやるのだと思います。個々にそれぞれの所管でやりますのを調整しますのは、私の方で持っておる調整費を使って調整をいたしまして、企画庁でまとめましたものを基礎にして、企画庁としては基本計画案を作り上げ、その基本計画案を審議会に提出して審議をお願いする、こういう段取りであります。
  123. 西村関一

    西村(関)委員 第二条の第一項の「政府」というのは、一体どこをさすのでございますか。各省をさすのでございますか、あるいは企画庁をさすのでございますか。その点お伺いいたします。
  124. 迫水久常

    迫水国務大臣 各省をさします。
  125. 西村関一

    西村(関)委員 各省が基礎調査を行ないまして、企画庁がこれを調整をして最終案を作るということであるようでございますが、そういうことのために、企画庁としてはどのくらいの予算をお持ちになっておいでですか。
  126. 曾田忠

    ○曾田政府委員 企画庁といたしまして、三十六年度調整費といたしまして、事業費を含めて九億五千万円という調整費を持っております。そのうち約一割程度調査費という考えでおります。そのうちから必要な事項について調査のための経費を出す、そういうふうに考えております。
  127. 西村関一

    西村(関)委員 基礎調査内容でございますが、水資源の問題は国家的な大きな問題であることは言うまでもございません。それだけに私は基礎調査が大事だと思いますので、あえてお伺いをいたしておるのでございますが、基礎調査が正鵠を得ませんと、諸般の計画も総合性、企画性を欠いてくる。国全体の重要な資源であります水資源をいかに有効適切に利用するかということが本法案のねらいでございます。そういうことのために基礎調査をなさるわけでございますが、昨日来の御答弁の中にも、この法案に盛られておる水系指定とはどこを当初考えておられるかという質問に対して、利根川水系、淀川水系を最初に考えておるという御答弁があったのでございます。私といたしましては、日本の水資源は、もちろん近年急速に発展をして参りました臨海工業地帯というようなところに多量の水が必要になってきたというところから、急速に水を供給しなければならないという要請に基づいてこの法案が出てきたと思うのでございます。しかしながら、長官お答えになっておりますように、日本全体の水資源の問題、国土の総合開発という観点に立って、水資源の問題を取り上げていくのだ、そういう当面の要求にこたえていくということがこの二つの法案が出されるに至った当面の契機ではあるけれども、しかし、それだけではなくて、日本の国全体の水資源の開発に対して国は総合的な見地に立って、まだ多くの未開発の状態にあります水資源をどのように開発して、どのように国土建設に役立たせていくか、国土計画にマッチさせていくかというところに政策の重点が置かれなければならないということは、長官の昨日来の御答弁でもうかがわれるのでございます。そういう点に対して、ただどの水系、この水系という、特定の水系だけの調査ではなくて、日本の国全体の水資源の基礎的な調査ということに対して、企画庁としてはどういうお考えを持っておいでになりますか。私は水の問題は、これは地表水、つまり河川とか湖沼とかいうようなものだけでなしに、地下水の問題も大きな要素を持っていると思うのでございます。地下水は、もちろん水系関係がございますけれども、また水系関係のない、岩床となっているところの地下水もいまだ未開発のままに、非常に多くのものが国土に埋蔵されている。そういう地下水の問題に対しても、どのような基礎的な調査をなさるお考えであるか。また、これをどのように利用しようとお考えになっていらっしゃるか。少なくともこの法案には、そういうことが現われておりません。一応水系というものが中心となって取り上げられておりますけれども、しかし、国全体の水資源の開発という点を考えるならば、そういうことをおろそかにすることはできないと思うのでございます。こういう根本的な、基礎的な調査に対する企画庁の心がまえをお伺いいたしたいと思います。
  128. 迫水久常

    迫水国務大臣 非常に示唆に富む貴重な御意見だと、つつしんで拝聴いたしました。現在のところ河川の流水につきましては、今後特定水域として指定する河川以外についても、建設省において研究いたしておりますし、調査もいたしておりますが、御指摘の地下水については、私これは言い過ぎかもしれませんけれども、ほとんど何もしていないじゃないかと、率直に言って思いますから、その問題につきましては、よく関係方面とも相談をしまして、勉強するようにいたしたいと思っております。
  129. 西村関一

    西村(関)委員 地下水の問題につきましては、一部工業用水として地下水が利用されておりますが、その工業用水として利用されている地下水が、何らの規制なく、むやみやたらに掘られておりますために、地盤沈下の問題が起こりましたり、また、掘り方が間違っているためにそういう現象を促進させるようなことになったり、何ら国の規制が行なわれていない。総合的な地下水の開発計画が何らなされておらない。また一方におきましては、旱害地帯というようなところにおきましては、どうしても地下水を利用するということを取り入れなければ、灌漑水の問題の解決もつかないところが多々ありますることは、長官も御存じだと思うのであります。すでに御承知のように、佐賀県におきましては、前知事がこの地下水の利用に非常に力を入れて、旱害を少なくするということに非常な努力をしてこられた。それがまた成果をあげているということも御存じだと思うのでございます。さらに、これは農業用水の問題だけではなくて、工業用水の問題、あるいはまた飲用水の問題、いろいろな面におきまして、日本の地下水がほとんど七〇%以上眠っておる。未利用のままに残されておるというような点に対して、企画庁長官としては、鋭意関係各省とも連絡をとって十分な検討をし、施策を進めるという御答弁でございますから、なおこの上とも御答弁に沿うような御努力をしていただきたいということをお願いいたしまして、この点についての質問を終わりたいと思います。  次の問題につきましてお伺いをいたします。次は、公団法の第七条の役員の項でございます。この七条には「役員として、総裁一人、副総裁一人、理事八人以内及び監事二人以内を置く。」ということになっております。この公団は、昨日来の御答弁にもございますように、また趣旨御説明の中にもございますように、関係各省にまたがる公団でございますから、この役員の人事構成というものをよほど慎重におやりいただかなければならぬと思うのでございます。この七条にあげられておりまする役員人事の人事権は、これは総裁は内閣総理大臣が任命するということに相なっておりますが、これは企画庁長官が主管をなさるのでございますか。この人事権の問題。  それからまた、農林関係の人事等につきましては、どこがその主導権を持つのでございますか。  また、愛知用水公団の役員と水資源開発公団の役員との関係は、どのように相なるのでございましょうか。その点お伺いいたしたいと思います。
  130. 迫水久常

    迫水国務大臣 総理大臣の人事に関する権限につきましては、企画庁長官がこれを補佐する立場でございます。  それから、農林関係の人は、おそらく総理大臣が農林大臣にどういう人がいいかということを推薦を求められてするのじゃないかと思いますが、総裁と監事が総理大臣の任命であるとは、総裁が選んだものから内閣総理大臣が認可するのですから、そこのところはおそらく農林大臣あたりと相談して総裁がきめられるのじゃないかと思います。  愛知用水公団の役員の人事の交流の問題は、まだそこまで問題を考えておりませんから、ちょっと御答弁ができません。将来愛知用水公団を吸収しました場合には、役員の数をふやすかどうかということも将来は問題になるかもしれませんけれども、その点も現在においてはまだ考えておりません。
  131. 西村関一

    西村(関)委員 私は、役員の構成が非常に大事だと思うのでございます。この公団が成功するもしないも、役員の構成がうまくいくかいかないかということにかかるといっても過言じゃないというくらいに、私はこれを重視しているのでございます。これがごてごてしますと、公団はうまくいきません。その点は、総理大臣を補佐する立場におられまする誇り高き経済企画庁長官一つ英知を働かして、公正な人事を行なわしめるように適切な補佐をしていただきたいと思うのでございます。  ただいま愛知川水公団の問題に多少触れたのでございますが、これも午前中の御答弁の中にもございましたが、いずれは吸収合併するんだ、しかし、現在はまだその進行中であって、どういう形で吸収するかというようなことについてはまだ答える段階ではない、こういう御答弁のように伺ったのでございます。しかし、この水資源開発公団法には、愛知用水公団の吸収については何ら触れておりませんし、また、これについての閣議了解事項等もあったように伺っておりません。どのような形で、いつ吸収されるかということが問題であると思うのでございます。吸収合併につきましては、法律は、愛知用水公団法の第四十七条に解散についての事項がございますが、吸収合併については、いつ、どのような形でなさろうというお考えでございますか。これはやはり、愛知用水公団に労苦を払って参りました多数の役員並びに従事者のひとしく関心を抱いているところであろうと思いますから、その点につきまして明確な御答弁を願いたいと思います。
  132. 伊東正義

    ○伊東政府委員 私から御答弁いたします。愛知用水公団につきましては、先生の今おっしゃいました通り公団法の四十七条で、解散の場合につきましては「別に法律で定める。」という規定がございます。受知川水公団につきましては、御承知のように、今、公団法の一部改正で、豊川の特定事業愛知研水公団が承継して事業実施していくという法律改正を御審議をお願いしておるわけでございます。これにつきまして、愛知用水公団は実は世銀との借款の関係がございまして、公団の性格が変わるという場合には世銀の了解を求めるというような約束になっております。それで今、先生がおっしゃいましたように、合併等をいたしますにつきましては世銀との新たな交渉も要りますので、私どもの腹づもりといたしましては、三十七年度以降におきましてなるべく早い機会に愛知用水公団を解散しました上でこちらに合併するというようなことをしたらどうかというふうに考えております。この法律に直接入れますことは、附則等に吸収合併するということを入れますことは、世銀の了解なしにやることは困難でございますので、あえて規定には入れなかったのでございます。関係者みんなの意見といたしまして、先ほど申し上げましたように、三十七年度以降なるべく早い機会に準備を終えまして、その時点における人全部、仕事と一緒にこの公団と一緒になるというふうに考えたらどうかと思っております。
  133. 西村関一

    西村(関)委員 ただいまの農地局長の御答弁、長官も御了承になりますですか。
  134. 迫水久常

    迫水国務大臣 農地局長の答弁をした通りでございます。
  135. 西村関一

    西村(関)委員 私はまだ多くの質問を用意いたしておりますけれども、また明日委員会に差しかえで出て参りましてお伺いすることにいたします。ほかの委員が待っておられますから、私の質問はこれで終わります。
  136. 加藤高藏

    加藤委員長 川俣清音君。
  137. 川俣清音

    ○川俣委員 建設大臣、お見えになっておりませんか。——それでは、企画庁長官にお尋ねするのは少し無理じゃないかと懸念するのですけれども、この水資源につきましては、政府の部内で十分検討されたとは理解しがたいので、こういう国民経済に関係の深いものは、やはり十分検討する必要があると私は少なくとも理解いたしまするし、国会といたしましても、ただ政府が提出された法案であるからということで無条件に可決をすべきものではないと思いまするので、あえてお尋ねをするのでございます。  そこで、建設大臣の関係になると思うのですが、先に企画庁長官からお尋ねします。企画庁長官は、水資源に関していろいろな調査水系調査等を行なって調整をされるそうでございますが、調査基準は、何をもって基準とされますか。今までは、やはり基本的には既存の法律があり、その範囲内において調整をされるのが大臣の権限だと私は理解する。法律の根拠のないものの調整ということは不可能ではないか。あるいは総理大臣の任命するところの審議会といえども、法律に基づかないものは、——閣議は立法機関ではございませんから、やはり法律の範囲内においてのみ決定することができると思うのであります。御承知通り、河川についての定義、または水についての定義、私水と公水の区分、または水とはどんなものかという概念的な区分も、学説が分かれておるわけです。水利権の争いについても、行政裁判所の判例も、非常にまちまちな判例になっている。水裁判の判例も、非常に違った判例が幾つも行なわれておるのでございます。こうした裁判所の異なった判例があります際に、どれに基づいて調整をされるのかということは、苦慮しなければならないと思いまするが、大臣は一体何を基準として調整をされるか。この点をお尋ねしたいと思います。
  138. 迫水久常

    迫水国務大臣 川俣さんのお尋ねは、促進法第二条の第二項にある経済企画庁長官調整の問題を御議論に相なっていらっしゃるのだと思います。私たち、この法律を書きました当時のものの考え方では、各省の基礎調査についての調整であって、たとえば航空写真というようなものをとる場合に、各省ばらばらにやらないで、まとまってやった方がいいじゃないかとか、そういうようなことを調整するつもりで、水とは何ぞとか、公水とか私水とは何ぞということまで、あまり知識がなくても、常識でできる範囲でやるつもりで実はおりました。
  139. 川俣清音

    ○川俣委員 常識といいましても、基本になるのは、日本においてはやはり法律だと思うのです。この範囲を逸脱した常識というものは、行政官として使われないではないかと思うのです。そこで、一体何が基準調整されるのか。おそらく各省では、法律的に言うと逸脱したような調査か行なわれるだろうと思うのです。従来の水資源開発審議会ですか、制度調査会におきましても、いろいろな意見が出ておったのです。それらの意見には、将来法律を改正すべきだという前提に立っての意見もございました。法律の改正を必要条件としての意見もあるわけです。従って、どこを基準にされて調整をされるかという質問に、常識的な判断だというわけにはいかない。学者の意見ですら固定してはおらないのです。従って、基準がつかまらないのに調整をするということはなかなか困難ではないかと思うのです。  次に、第三条のことです。「河川の水系を水資源開発水系として指定する。」、これは総理大臣のやることだからおれは知らないとおっしゃるかもしれませんが、この法案を出されてどれほど責任を持っておられるかわかりませんが、立法府に対しまして企画庁が提出されたのでありますから、従って、これに対する御質問を申し上げるのです。「合理化を促進する必要がある河川の水系」、この中で「河川」というのは、どういう河川のことを言われますか。
  140. 迫水久常

    迫水国務大臣 第三条の総理大臣の権限については、当然企画庁長官はこれを補佐いたしますから、非常な責任があります。決して知らぬという立場ではございません。「河川」というのは、具体的に言いますと、利根川とか、淀川とか、あるいは木曾川、長良川というような、そういうところを指定するつもりであります。
  141. 川俣清音

    ○川俣委員 利根川の上流はどこまでが利根川ですか。木曾川というのはどこまでですか。これは私、決してあなたを苦しめるためではないのです。建設省の河川研究会ですら、河川に対する日本の定義はないという前提に立って、将来河川法を改正しなければ十分じゃないといっている。そればかりではなく、現行の河川法が不備でありますために、河川法の特例の特例というような法律も幾つかできているのです。そこで、この法律の河川とはいかなるものか、経企庁長官の河川とはいかなる河川でありますか。
  142. 迫水久常

    迫水国務大臣 昨日この委員会における質疑応答の際に、河川局長に対して、利根川水系指定する場合にはその水系はどこまでさかのぼるのかという御質問が、だれでしたかから出ました。私は、川俣先生から河川というものの定義が非常にむずかしいことを聞いておりましたから、注意深く河川局長の答弁を聞いておりましたところが、河川局長はこう答弁しております。利根川水系指定した場合においては、この法律によって施設をするところまでがこの河川である、それから上はこの条文でいうところの河川ではない、こういうふうに答弁をいたしましたから、なかなかうまい答弁だと思いまして、私はそういうように解釈しております。
  143. 川俣清音

    ○川俣委員 重大な御発言だと思うのです。建設省の河川は一定の定義がある。河川法に基づいて指定を受けたる河川が河川でありまして、河川法の河川はこの法律に基づいて認定したものを河川というという説明がついておるのです。ところが、河川法適用外のところにも施設をなした場合には、この法律の河川に入るのですか。
  144. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川法にいう河川は、河川法を適用する区域、これは、はっきり書いてございます。ただ、現在その区域はどこであるかということははっきりいたしておりますが、今後水資源開発施設を作るとかいろんな点で、河川法の河川にした方がいいという点は河川法を適用するように区域を広げていきたいと思っております。
  145. 川俣清音

    ○川俣委員 長官説明とちょっと違うのです。やはり河川法に基づいて指定をすれば河川法上の河川だ、こういうことですから、適用外のところでも、作れば河川ではないんですね。そこを指定して河川にする、河川の指定を受けてそこに施設をするということらしいです。  建設大臣にお尋ねしますが、この公団の性格は一体どういう性格なんでしょうか。行政庁の代行機関的性格を持ったものじゃないか、こういうふうに思うのですが、これは誤りでしょうかどうか。
  146. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 代行機関的な要素も含まれておると思います。しかし、本質的には企業的要素もあるわけでございます。
  147. 川俣清音

    ○川俣委員 これは一体どっちに属するかということによって、この法律審議の仕方があると思うのです。この条項の中には、確かに府県知事の持っておる権限を代行すると申しますか、権限を取得するのでありまするから、この取得の状態から見ると行政府の代行機関だという性格が明らかに出ております。そこで、河川にしても付属物にいたしましても、事業河川までは含めますが、これは公物の、公のものとしての管理であることには間違いないわけですね。これには一点の議論がない。学説も分かれておりません。公物の管理だ。従って、公物の管理をするために知事の持っておる権限をさらに公団が取得するというのでありまするから、この面においては確かに代行機関的な役割だと思うのです。そうなんでしょうな。ちょっとその点……。
  148. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 その通りであります。
  149. 川俣清音

    ○川俣委員 そこで、河川法の三条は規定の除外を設けておりますね。この三条の除外というのは、二十三条の四項で、「河川法第三条(私権の排除)の規定は、適用しない。」というのがある。公物については私権を排除するというのが従来の建前です。従って、私権の排除の規定が河川法の基本をなしておるわけですね。これを「適用しない。」ということはどういう意味でしょうか。企業体だとすれば、これはやはり私権になるわけでしょう。そこで適用しないということにしたろうと思いますが、私権の排除規定というものは、河川法ではやはり重要な規定だと思うのです。この重要な規定を、企業体だけが特権を受けるということは、どんな根拠に基づくのでありますか。
  150. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 今お話しのように、河川法におきましては、河川の公的な管理をいたしますために、河川の付属物にこの場合には河川法第三条によって私権が排除されるようになっておるわけでございます。公団におきまして特に二十三条で私権排除の規定を適用いたさなかった理由は、先ほど御説明もございましたように、公団は公的な機関でありますとともに、企業的な性格を持っているわけでございまして、借入金その他の資金を投じまして施設を建設いたしますと、それにつきまして財産的な管理をやっていかなければならないわけであります。従いまして、そういう企業的な財産管理の建前から、その権利の排除規定はこの河川付属物といたしましても残すことにいたしておりますが、河川の管理が一貫してできるようにその観点においては考えておるわけでございます。
  151. 川俣清音

    ○川俣委員 必要なために適用の除外を求めたということはよく理解ができる。しかし、単なる企業体が河川法の基本の適用をまぬがれるということは、河川法の本来の趣旨に反するんじゃないか。もしもそういう企業体が必要ならば河川法自体において改正を行なうべきじゃないかと思う。政令の定むるところによって公団がこの適用を受けることができるというふうに、適用除外の規定を河川法に設けるのが本来の姿ではないかと思うのです。あえて河川法を改正しないで企業体に特権を与えた理由はどこにあるか。
  152. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 公団建設いたします施設は、公団法にも明示されてありますように、洪水調節、洪水防御の機能や河川の機能を維持するための施設とあわせて水資源の開発の目的を達するための施設になっておるわけでございまして、これらのものを建設するに必要な範囲におきまして、公団に河川法上のいろいろな規定に基づきます権限、すなわち建設管理に必要な規定のみを公団法において与えておるわけでございます。で、先ほどの私権排除の規定を特に二十三条に設けましても、なお河川管理上は特別に支障を来たさないように、私権排除以外の河川付属物といたしまして管理するようにいたしてその目的を果たすようにいたしておるわけでございます。
  153. 川俣清音

    ○川俣委員 そんな答弁は答弁にならないですよ。しかし、あなた方のやり方は、従来でも、二十九年ですか、省令で共同施設に関する規定というのを作りまして、この三条の適用をやったことがあります。これは問題だということで、あとに出た多目的ダムの問題はなるべくこの規定に触れないように、あえて負担の規定を作ったじゃないですか。あなた方のやり方は二つあるのです。二十九年の共同施設に関する規定の省令——これも省令なんです。——河川法を直さないで省令で基本法を動かすということは、法律の体裁からいうと避くべきであるというのが従来の学説だったと私は理解する。それをあえて電源会社等に対する共同施設に関する規定、三条の規定排除の規定を省令で設けたことがございます。しかし、それはちょっと行き過ぎではないか、いろいろな問題がありまして、あとに出た多目的ダムのときには、建設省が直営でやって、それに対して使用権を与えるという、やはり負担は負担ですけれども、使用権を与えるというやり方でやられた。二つの方法を建設省はとっておられた。なぜこの公団多目的ダムの方法でなしに、電源会社と同じような方法で三条を排除されるようになったかということを聞いているのです。三条の説明は、従来国会にあなた方、二つ説明しているのですよ。そこで、なぜ今度はこの方をとられたかという説明をお聞きしたい、こういうのです。建設省の内部で問題になったのです。問題になったのを、あらためてこれをまた提起されたから、何ゆえ提起されたか、こういう質問なんです。
  154. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまお話がございましたように、共同施設を建設し、また管理します方法といたしましては、省令に掲げてありますようなやり方と、今お話がございましたように多目的ダム法によるやり方とあるわけでございまして、この法律では省令による共同施設の建設に関するやり方とほぼ同様なやり方でやっておるわけでございます。特にこういう方法によりましたのは、この水資源開発公団の施設はいろいろな目的を含む施設を含んでおりますし、これに関する費用負担者も多方面に分かれておるわけでございまして、建設省が従来やっております多目的ダム法によるやり方につきましてもいろいろと検討いたしたわけでございますが、現在の段階におきましては共同施設による省令的な行き方が最も妥当だと考えまして、この方法によった次第でございます。
  155. 川俣清音

    ○川俣委員 どうもあなたの説明はおかしいですよ。この水資源の問題についてはいろいろな用途がある、従って、多目的ダムの方法によったというなら、これはわかります。共同施設というのは、あなた方十分に御承知通り、電源会社に費用を負担させたいために共同施設にしたのでありまして、これは電源会社にほとんどきまっているのです。それに適用したやり方を今度また使うということは、あなたの説明によると、いろいろな用途があるのだからして共同施設のようなやり方をするのだということですが、そうではなくて、共同施設とはいうものの、これはいわゆる土地改良区であるとか、あるいは耕地整理組合であるとかいうのと電源会社だけなんです。共同施設はほとんどそうでしょう。むしろ電源会社のために作られた省令みたいなものです。多目的ダムというのは、初めから多目的な用途を持って作られるダムなんです。その方式をとらなかったというのはどういうわけですかと聞いているのです。目的が非常に多い用途を持って作ったダムの方式をとらないで、あえて共同施設の省令の方をとったのはどういうわけかと聞いているのです。
  156. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 多目的ダム法の対象となっておりますのは多目的ダムでございますが、今度公団事業の対象になりますのは、ダムのほかに河口せきあるいは湖沼開発という施設が入ってくるわけであります。制度といたしましては、御指摘のように多目的ダム法によるやり方が非常にすぐれたやり方だと考えておるわけでございますが、河口せきあるいは湖沼開発施設につきまして、そのまま従来の制度を用いるということには、まだいろいろの点で検討すべき点が残っております。従いまして、現在この法案におきましては共同施設に関する省令とほぼ同様な考えでやったわけでございます。
  157. 川俣清音

    ○川俣委員 建設省公団に対して非常に親切な考え方でやられたということは理解できます。こういうものを作っておかなければ、建設省からだれも入る人がないから、なるべく親切なものを作っておこうという明瞭な意図は了解できるのでございます。  そこで、続いてお尋ねいたしたいのですが、河川法の十二条は行政庁の工事請負を禁止する規定です。十三条は工事請負の制限規定です。一体なぜ行政庁が工事をやってはいけないのかということについて、いろいろな疑問があるようでございます。建設省の解釈によりますと、これは建設省河川局の研究文書でございますが、それによりますと、「河川法第十二条は行政庁の河川工事の請負の禁止を規定しているが、本条の立法趣旨は、地元請負の慣行が河川法制定以前に存していたので、これを禁止せんとしたものである。地元公共団体の行政庁が請負をなす場合においては、その工事につき損失を蒙ったときは、地方公共団体の公費をもってこれを支出せざるを得ないこととなり不適当であることによるのである。本条の行政庁は、単に地方公共団体の行政庁のみならず、土地改良区その他の公共団体をも含むものと解すべきであろう。」という解釈をしておられるわけです。そういたしますと、先ほどこの公団の性格は行政庁の代行機関であるという性質をも持っておるという説明でございますが、河川局の研究によりますと、「単に地方公共団体の行政庁のみならず、土地改良区その他の公共団体をも含むものと解すべきであろう。」という解釈になっておりまして、かつて河川法を制定されたときの解釈と現在とは違っておるのですが、ときどき便宜主義で幾らでも変えるというやり方のようであります。河川研究会ですから、相当権威があるものと私は理解してこの引用をいたしたのでありますが、これは権威がないということになれば私は引用をやめます。
  158. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 十二条の行政庁の解釈につきましては、私どももその解釈がほぼ妥当ではないかと考えておるわけでございますが、公団がこの行政庁に入るかという点でございますと、私どもはこの行政庁には入らないというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、この立法の趣旨は当然私どもも考えるべき点でございまして、河川法の適用あるいは準用につきましては、公団法二十三条にいろいろと政令で規定することになっておりますので、政令制定の際にこの条文の取り扱いについては十分検討して参りたいと考えておるわけでございます。
  159. 川俣清音

    ○川俣委員 ところが、公団法によりますと、「河川法の特例」を幾つも規定されておる。河川法の特例を受けるような公団というものは、ただ単なる公共団体だというばかりではなくして、行政機関的な性格を持っておるというところに河川法の特例があると理解すべきじゃないかと思うのです。単なる公共団体でありましても、基本法の特例を設けるということは、立法例としては少ないと私は見ておる。国会の法制局の見解によりますと、珍しい例であるということであります。従って、特例を設けるからには、やはり行政機関的な機能を持っておるものと理解するのが本質ではないかと思う。その本質に基づいて河川法の特例の規定があるのではないかと思う。しかも、重要なことは、第七項の「河川法に規定する地方行政庁の権限を行なうことができる。」ということです。行政庁の権限を行なうのです。この権限を行なうということになりますと、単なる土地改良区であるとか、その他の公共団体よりも、もっと行政機関的な性格があると見るのが普通の解釈ではないでしょうか。土地改良区もこんな権限は持っておりませんよ。その他の公共団体も、こんな大きな権限は持っておりませんよ。公団がそれだけ大きな権限を持つとすれば、なぜ持てるかといえば、行政機関的な機能を行なうのであるからその特例が認められたと私は理解するのです。だから、一方からいえば非常に行政機関的な、代行機関的な性格を持っており、それは権利を取得するときには非常に大きな権限を持たせるけれども、今度第三条になると、企業体だということにしたいためには第三条の適用を免れる。一方からいえば、権限を拡大するためには行政機関的な権限を拡大していく。ところが、それではやりにくい点があるから、企業体としての本質も幾らか持ちたいというので第三条の適用の排除の規定がある。そこで、総体としては明らかに大きな権限を持つ公団であることには間違いないじゃないか。そうなれば、公団が第十二条の規定を犯してやるということは河川法の趣旨に反するのではないか、私はそう思う。従って、結論を急ぐと、これは大臣、河川法を改正してそれから公団を作らないと、こういう特例の特例と、河川法の特例が幾つも出ることになる。河川法の本体がなくなってしまって、特例でみな運用する。河川法くらい特例のあるものはないです。同じ建設でも、道路法などは割合整備されておる。河川法を直すだけの勇気もなしに、現状の問題を解決しなければならぬためだけに特例々々でやるということは、これは行政機関としては一番やりやすい方法かもしれませんけれども、立法府としては十分制肘を加えていかなければならないものだと思いまして、あえて時間をさいて質問するゆえんがここにあるのです。御答弁願いたい。
  160. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 河川法の特例を設けた点について御説明申し上げますが、現在の河川法では、御承知のように、河川管理につきましては国の機関であります地方行政庁がその機関の区域において河川を一貫して管理をする建前になっておるのでございます。この河川法の建前をくずさずに、河川法上の必要な河川管理の中で、水資源の開発と一緒に建設いたします洪水防御のための施設等をあわせてやりますものの範囲に限って、河川法につきまして特例を設けまして、必要な建設管理ができるようにいたした次第でございます。(「明瞭」と呼ぶ者あり)
  161. 川俣清音

    ○川俣委員 明瞭ではないのです。必要だからおやりになるということについて私はあえて反対しておるのではないですよ。必要だからやらなければならないことに押し詰まってきたということは認める。それだからやるということは、近代的な産業に、国民生活に即応するように河川法をまず改正をして、それから公団を作るのがほんとうでなかったか。そのことを怠慢にして、今要請が起きてきたからという説明では説明にならないじゃないかというのが私の質問の要点です。答弁は要らない。どうせわからないのだから答弁は要らない。  そこで、企画庁長官にお尋ねするのですが、これは水資源ということの表現があります。これは常識でいうと、治水でも利水でもない。水資源というものは、やはり水の生まれてくるところが資源だというのが日本語としての通念だと思う。資源ですから、生まれてくるところでなければならない。生まれてくるところの開発については、この水資源開発促進法にしてもあるいは公団法にいたしましても、指定したところだというのですから、生まれてくるところはもっと上流ですね。上流についても、施設についてはこの公団もやらないしあるいは促進法も手をつけないのですか。やはり水資源というからには、水の生まれてくるところです。今後の治水の上においても、上流から穏やかに水が流れてきて利用させるというのが、私は促進法の必要なゆえんだと思うのです。きた水をどうして防ぐかということではなしに、穏やかに徐々に天水をうまく利用させるということ、このほんとうの必要性に応じた公団が作らるべきじゃないかと私は理解をするのです。そこで、もっと上流に対しての施設あるいは開発というものについて、もっと考慮すべきであったのではないかと思うのですが、これは放任するのですか、どうですか。
  162. 迫水久常

    迫水国務大臣 私は、水の生れてくるところは水源といって、水資源とは呼ばないのじゃないかと思うのです。資源というのは戦争中にはしばしば使った言葉ですが、物的資源とか人的資源とか、通常の言葉では物という言葉ではないか。それで、水資源というのは、そういう水を利用するという意味であって、その水の利用を豊富にするためには、水の生まれてくるもと、水源を大事にするということはもちろん当然だと思います。従いまして、水源の方については、この条文の中にも治山治水等に十分の配慮をしなければならない、こういうこともちゃんと書いてありますから、水源の涵養ということあるいは水源地域における砂防とか、そういうものをないがしろにしておることは決してないので、私は、基本計画を作成する中には、あるいは一定のダムを作るためには、そのもっと水の源、水源の方にはこういう砂防工事もしなければならぬという付帯的な計画も当然入ってくるのじゃないかと思っておりまするから、水資源を利用開発をするための水源の涵養ということについては、きわめて慎重に対処いたしたいと思います。
  163. 川俣清音

    ○川俣委員 だいぶん勉強されたけれども、少し足りないのですね。けなす意味じゃないのです。ところが、政府でも予算編成の上に、水資源涵養のための水源林の培養という予算項目があるのです。水資源培養のための水源林の施設という費用項目があるのです。水資源涵養のための水源林の買い入れとか、そういうふうに使われておるのです。これを別な言葉でいえば、項目からいけば同じ治山でありましょうけれども、大きな項では予防治山という項目になるかもしらぬが、小さな目になると水源林の培養とある。これは最近ようやく電源開発会社等も水資源の涵養のために上流地に保安林、水源林を持つということはあえていたしておる事情もあるわけです。もう電源開発会社等が水源に手をつけなければ水量を確保することができないという事態になってきて、確かに治水のことが必要になってきたことは私も認めて、この趣旨にはあえて、反対ではないけれども、こんなことでは追っつかないのではないか。あまりに便宜主義で追いつかないのではないか。今広大な理想を持ってこの法案を出されたからには、もっと水資源についての施設を用意しなければならない。それは公共事業でやるのだと言われるならばそれでもよろしいけれども、この点、建設大臣どうなのです。
  164. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 水源涵養のきわめて重要でありますことは、全く御指摘の通りであります。そこで、水源涵養のための治山あるいは砂防というようなことは、当然国家の任務として国の施策としてやるべきことだと私ども思うのであります。この水資源開発促進法及び公団法関係いたしておりますものは、かくいたしまして国家の任務として培養されました水を、思い思い、ばらばらに利用しないで、できるだけ総合的に開発をし、総合的に利用する、いわば高度利用をしようということがねらいなわけでございます。従って、水源涵養に関しては、別途国家として責任を負って活発に進めるべき事項であるかように考えております。
  165. 川俣清音

    ○川俣委員 建設大臣の答弁はなかなかりっぱです。りっぱですけれども、実際はどうか。災害が起きた場合、あるいは砂防工事などをする場合でも、農林省と争うときには、砂防はおれの方のものだということで争ってまでなさる。その熱意は理解いたしますけれども、権限争いになると非常な熱意を示しながら、実際に砂防をやるかということになると、放任されている場所が非常に多い。私は資料は持っておりますけれども、時間がないからあえて指摘はいたしません。これは建設省としては、農林省よりもおれの方でやるんだという覚悟はされておりますけれども、予算の都合上、権限は主張しても施設は行なわない。そればかりじゃない。災害が起きたときに国の補助や融資を仰ぐというと、それは私有地じゃないか、個人の堤防じゃないか、個人の山じゃないかということで、補助もしなければ融資もしておらない。水資源でありますならば、個人の水域を流れてくるでありましょうけれども、下流にくると公共性を持ってくるものであるから、上流の施設であっても、特に経済的に恵まれない山間地域におる住民の施設の災害については補助や融資をすることが考えられなければならないと思う。権限争いをするときはおれのところだと言うけれども、災害が起きた場合に、災害の補助の陳情について建設省に行ってごらんなさい。それはおれの方じゃない、農林省だと言う。農林省に行くと、それは建設省だと言う。補助や救済を仰ぎに行っても、簡単に逃げてしまう。これはおれのなわ張りだけれども、上流のものは見てやらないということでは、言葉だけは水資源の涵養、水の涵養ということを言われてりっぱだけれども、いただきかねるのです。この点、今後どうするつもりですか。
  166. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 水の培養ということについて川俣さんが平素から非常に御熱心でありますことは、私も敬意を表しておりまして、同感でございます。今後一そう水の培養を行ないまして、水資源を豊富にしていくということに国家として全力を尽くすべきであると思います。  今、権限に関するいろいろのお話がございましたが、昭和三年に農林省、内務省、両省間に協定が設けられまして、御承知通り、林野庁と現在の建設省の間は大体この協定の線に従いまして、きわめて円満と言い切れるかどうかわかりませんけれども、大体円滑に今日運行されております。しかしながら、砂防等にいたしましても、十分でない実情にありますことを私どもは承知いたしております。今後一そう十分な措置を講じていくように、われわれとしましては全力を尽くしたいと思っております。
  167. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点にしぼりますが、林野庁は治山もやる、予防治山もやりますけれども、おもに山林保護のための治山をやる。山上の森林を保護するための治山です。下流のための治山ではない。建設省は山腹砂防はやられるでしょうけれども、上流の、それより上の方がどうなろうとかまわない。下流のことだけ考えられる。これは、一貫性がなければ水資源の培養にはならないと私は思う。いずれも権限は主張するけれども、施設に対しては十分じゃない、こう判断せざるを得ないわけです。現在あなた方がやっておるのはその通りです。大きな山林地帯における治山工事には、かなりの経費をかけてやっておりますが、ほんとうの水資源のための治山のようなものは予防治山ということでやりますけれども、ごく微々たるものです。それではほんとうに国民経済の上から必要な水の確保ということが困難になってくるのではないかと思うのです。上流地帯から治めてこなければ、下流の利水の上に十分なものが得られないということは、もう明らかなんです。そこで、もう少し上流について熱心な施設を講ずる必要があるのではないか。川はあなたの方の管轄かもしれませんが、川に入ってくる水を大切にしなければこれを利用させることは困難です。もう少しほんとうに水を愛護するという止揚に立った施策を講じなければならぬ。やります、やりますというが、予算の上には一つもないじゃないですか。三十六年度予算の中にも大したものはない。これは幾らか施設をしても、もうかるから公団がやればいい、それは確かに認めます。公団の利益であるばかりでなく、利水をする人のためにも確かに必要である。両得であるから、やられることについてはあえて私は反対しないけれども、この資源が枯渇したのでは何にもならない。ダムを作りましても、枯渇したダムはたくさんある。作っても、上流からもう水が流れてこないということになったのでは、意味をなさないのじゃないか。その意味において、上流の涵養が十分行なわれなければならないと思うのです。企画庁長官建設大臣から、もう一度その点だけ念を押して聞いておきたいと思います。
  168. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 御熱意のあるお尋ねに対しては全く同感でございます。砂防等についても、どうも力が入らないではないかという御意見も拝聴いたしたわけでございますが、実は私どもとしましては、就任以来努力をいたしておる次第で、一般治水費の三十六年度の伸び率は一%幾らでありますが、治山関係は一七%幾らという工合に、治水関係では砂防関係の経費が一番高い伸び率を示しておるのでございます。今後もこういう点には遺憾のないように、われわれとしましては十分御指摘のように、水源の涵養、それからダムを作りました場合に土砂が流出いたしまして、せっかくのダムの効用を減殺するようなことになっては因りますので、砂防等については十分力を注いでいきたいと思っております。
  169. 迫水久常

    迫水国務大臣 おかげさまで、私も川俣さんからいろいろな知識を供給していただきまして、今後この法律を運用していくにあたって、基本計画を策定するのは私の方の役目のようでございますから、そういう場合には十分川俣さんのおっしゃったことに注意して、間違いのないように、よく見てやっていきたいと思います。
  170. 加藤高藏

    加藤委員長 西村力弥君。
  171. 西村力弥

    西村(力)委員 おしまいごろになりましたので、簡単にお尋ねしたいと思うのです。水資源の逼迫した情勢は、日をきわめて宣伝されておりますが、日本の実態としては私は豊富の中の貧乏である、こう思っておるのです。それは、外国に比して降雨量が、アメリカに比しても倍以上もあるのですから、これはやはり豊富だろうと思う。それから、私たちは従来水というものはただだという観念はぬぐい切れない状態にあるわけなんです。ところが、その中に今貧乏の要素が加わってきて、こういうあわてた状態で、国会の会期末に促進法を出すというようなことになっているわけなんです。その豊富の中の貧乏というもののよってきたるゆえんというものは、水の開発のためにまず検討されなければならないと私は思うのです。豊富の中の貧乏のわが国に現われてきておる原因というものは何であるかということ、これは経済企画庁長官 どういう工合に分析しておられますか。
  172. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 御承知通り、確かに日本は降雨量が多いわけで、雨量としては持っておるわけでありますが、地形の関係でその雨量がむだに海まで落ちておる。そのためにしばしば洪水等を起こしまして、災害をこうむるというのが日本の特殊事情でございますから、これを努めて洪水調節、水路との関連をにらみながら、水の資源的な利用を考えるということが日本の国情としても非常に大事なことであるわけでございます。近来、産業の飛躍的な発展に伴いまして、その事情が一そう切迫してきておるというのが現段階であると思うのであります。かような意味におきまして、われわれとしましてはこの促進法及び公団法等の成立を期しまして、十分今御指摘のような方向に対処して参りたいと思っておるわけでございます。
  173. 西村力弥

    西村(カ)委員 そういう二つのこと、日本の河川が急流であるということ、これは確かに利用度を低めることになるだろうと思うし、工業の発展は、きのう滝井君の質問の中では、将来三倍の需要が見込まれる、急速な需要増がきておるということは間違いのないことなのでありますが、それだけではないと思うのです。やはり根本的には水に対する観念の問題、この観念は私は大きく作用しておると思うのです。それはとにかくとしましても、一つはやはり国土の荒廃、戦争を中心として荒れてきておるということ。それからもう一つは、やはり生活水準。所得倍増計画をやる政府としては、生活水準の向上による水の利用量の増大、これは当然見込んでいかなければならないことであります。早い話が、自動車があれだけふえただけでも、自動車の洗浄水だけでも大きい。洗たく機がはやると、それだけ水をよけい使うということになりますし、生活水準の向上ということから相当水の使用量というものはふえていくだろうと思うのです。あるいは日本の国土自体が安山岩とか第三紀層とか、こういう崩壊しやすいところにある。そういう地質であるということ。それから、やはり農業、稲作が水利用の重点であるということ、いろいろあると思うのです。工業の発展に付加して、偏在、集中、こういう問題もあるわけです。  そのほかに、もう一つは、やはり行政が一貫しないということ。これの象徴的な現われは、今回の法案の準備段階において現われたという工合に私は見ざるを得ないのですが、本日関係大臣がみんなおられれば——あれだけの争いをしたことは国民のひんしゅくを買うということは間違いない。ですから、あれだけの争いをせざるを得ないという各省庁の自己主張というものをここではっきり出すということは、国民の疑惑を解く道であると思って、私は関係大臣がそろっておれば、一人一人その自己主張をここで述べてもらう。これはちょっといやがらせのように見えるけれども、国民に対して明確にすべきである、私はそう思うのです。ですが、残念ながら、経企長官、窓口ですか、それから一番御獄心な中村さんしかおいでになりませんから、そういうことを求めても無理でありますので、やめておきますが、そういうことの分析がやはり大事であるということは、これから施策を行なう場合に、ただ水をためて、そして持ってくればいいのだというだけのことではだめだ、こういう考え方を基礎にしなければならぬから、私は今指摘をしておるわけであります。  ところで、根本にある水というものをあまり空気に近く考え、その恩恵になれ過ぎているというようなことをためるには、いろいろあるでしょうが、どうも実効のある方法としては、高い水にするということが一番だと思うのです。そういうことをやると、生活にも困るし、工業製品ですと対外競争力が弱まるということになりますので、そうもできないのですが、こういう点について何らかの方法というものは、これはやはり水開発促進の裏の問題として考えていかなければならぬ問題であると思います。この点は、実際は今のところ何もないじゃないかと思う。それに近いものとして水の再生利用、効率的な使用、利用というものは当然考えなければならぬと思うのですが、ことしの科学技術庁の予算を見ましても、各省の予算を見ましても、そういう研究のために支出される項目というのは全然ないという工合に私は見ておるのです。これはやはり開発ばかり急いで、もっと重点的に、効率的に使うということをおろそかにしている片手落ちの措置であると思います。何か建設省あたりにありましたか。科学技術庁の方にはないし、通産省の方にあるかというと、これもやはりない。経済企画庁のことしの研究項目の中にもそういうものがないということになりますと、この点に関する企画庁長官のこれからの構想、これは一つのお考えだけでもけっこうです、まとまらないにしても、これは一つ明確にしてもらわなければならぬと思います。
  174. 藤岡大信

    藤岡説明員 工業用水の面に関しまして、今おっしゃいました再生利用の方法等でございますが、計画の面におきましても、四十五年の工業用水の需要量八千三百万トンのうち約二千万トンを再生利用の水を使うという計画にいたしておりまして、淡水総計で先ほど言われましたように三倍強の増加でございますが、回収水におきましては四倍の増加を見込んでおります。従いまして、この再生利用をこれだけやっていただくということにつきましては、大へんな御努力が各会社に必要だと思いますので、その普及のために、今後予算におきましても再生利用のための普及宣伝ということに重点を置いた予算の編成をしていただいております。  さらに、淡水の水源が今後足りなくなってくることも考えまして、工業技術院におきまして海水の淡水化の技術開発をはかっておりまして、二、三年前から研究をいたしておりますが、ことし三十六年度におきましても特研費を計上いたしまして海水の淡水化をはかっております。  さらに、公共的な再生利用といたしましては、東京都の工業用水道の水源に下水の処理水を使うことを計画をいたしております。名古屋市の工業用水道におきましても、下水の処理水々使う計画をいたしております。大阪市の南港の埋め立て地域供給する工業用水道につきましても、同様下水の処理水を使う計画をいたしております。他にも下水の処理水を工業用水道の水源に使うという研究及び計画をいたしておりますが、ほかものはまだ具体的なものではございませんが、相当熱心に考え始めておるということを御承知おき願いたいと思います。
  175. 西村力弥

    西村(カ)委員 農地局長、あなたの方でも、やはり水の使用を節減する指導というものを当然やらなければいかぬ。また、抜本的には漏水を防ぐとか、そういう農業土木ですか、そういうこともやらなければならぬ。農業土木関係は金のかかる問題ですが、栽培技術の問題だけでも節水ということはやはり相当考えていかなければならぬのじゃないかと思うんです。そういうもののこれからの指導方針とかは、どうなんですか。
  176. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今御指摘になりましたように、日本の農業が非常に水を使い過ぎるのじゃないかという、ことに水田の問題についていろいろな外部からの非難もございます。また、農業の内部におきましても、地域の中で非常に水がほしい地域と、片方では比較的潤沢だというような地域もございますので、農業自身としまして、先生がおっしゃいましたように、これは水の使い方を合理的にしていくということは当然だろうと思います。先生、営農の問題で御指摘がありましたが、農林省の中でも、実は節水栽培といいますか、そういうことも試験場その他で研究しまして、最近やります田畑輪換等の田の場合には節水栽培をやろうというようなことで、県の試験場なり国の試験場で研究したものを実際の土壌に応用していくということをやりかけております。  またもう一つ、そういう営農面からだけでなくて、先生がちょっと触れられましたが、従来の慣行水利権等で使っていた施設を合理化して、そこから水を浮かして農業のほかの部面に分ける。あるいは他種水利に回すとか、そういうことも当然考える必要がありますので、今後農業の中で要るものについては積極的に開発いたしますし、また水の使い方を合理化するということにつきましては、またこれも積極的にやって参りたいと考えております。
  177. 西村力弥

    西村(カ)委員 続いてお尋ねします。将来は畑地灌漑も相当進めて参らなければならぬと思うのですが、そういう工合にして節水した水で畑地灌漑をやる、こういうことまで進められないかどうかということなんです。それで、現在の農業の使用量が一番よけいなわけですが、これから田をどれだけふやすかわかりませんけれども、そういうふやすところ、それから畑地灌漑に水を用いるところ、それに節水することによって、マイナスの面と差し引き勘定して、これからどのくらいの需要増が農業用水として見込まれておるか。これはどうですか。
  178. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今御指摘になりました水の量の問題でございますが、これも厳密にいって今後動かぬ数字でございますという数字までは試算しておりませんが、大体現在どのくらい使っておるかという推定でございますが、灌漑等をとってみますと、一日で大体六億七千万トン、約七億くらいの水になります。これは海潮期の最大の水量でございます。秒速にすると七千七百トンくらいになるのじゃないかというので、非常に大きな水量を今使っておるわけでございます。
  179. 西村力弥

    西村(カ)委員 年間何日ですか。
  180. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今のは一日で、たとえば灌漑期九十日としますと約六百億ぐらいの数字になります。ただ、これを全部河川から上げなければならぬとは限っておりません。その間、天水等もございますので、そのうちの四百五、六十億トンくらいが九十日間で使われるのではないかという推算はいたしております。これは現在でございます。将来どのくらいふえるかという問題でございますが、いろいろ試算はいたしておりますが、農林省としまして、企画庁その他に十年先はこうでございますということはまだ言っておりませんけれども、水田は、十年先でも大体現状と同じ面積くらいのものを予定いたしております。そのほかに畑地が二十万町歩くらいございます。そうして、畑灌というものが出てくるだろうというようなことを考えてみますと、先ほど灌漑期には現在七千七百トンくらいのものを使っておると推定されると申し七けたのでございますが、また千トンくらいのものが灌漑期には要るんじゃないかというような推定はいたしております。数字そのものについては、まだはっきりこうでございますとは申し上げかねますが、水の利用の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、今後新しく作る水というのは相当金のかかる高い水でございまして、その点は注意をしまして、極力節約した合理的な使い方をしたいと考えております。
  181. 西村力弥

    西村(カ)委員 通産省にお尋ねします。アメリカの製鉄事業の水の使用量はどういう工合になっておるか。これと日本製鉄事業、海水使用じゃなく、普通の工業用水の使用と対比した場合、その使用の比較はどうなっておるか。
  182. 藤岡大信

    藤岡説明員 確実な数字を今持っておりませんが、われわれ聞いたものの二、三を申し上げますと、一トン当たりの使用量としてはあまり違わないようでございます。ただ、再生利用の率がどれほどになっているかという点が多少違っておるという点はあると思います。日本の鉄鋼業は、工業用水の中では非常に再生利用が盛んな業種でございまして、現状におきましても部分的には九〇%以上の再生をやっておる、再使用をしておるということが言えるわけでございますが、アメリカ等で一番砂漠に近いような場所では、工場全体で九五%再生利用の水を使っておるという例もあるということでございます。もちろん水の非常に豊富な地域におきましては、やはり日本と同じような水の使用状況でございまして、再生利用ということにつきましては必ずしもそう高くないというふうに聞いております。
  183. 西村力弥

    西村(カ)委員 少ない範囲ですが、私が調べたことと少し違うのであります。水の少ない地方では、特にアメリカ方面においては再生利用ということを相当強力にやっておるということであります。それで、今のお話ですと、水の豊富なところはアメリカにおいても決して再生利用に力を入れてないということでございまして、使用量は日本と大差ないということですが、再生利用というものが原価にはね返る限度というものは何%ぐらいまでか。こういう限度というものはどういう工合に考えておられるのですか。
  184. 藤岡大信

    藤岡説明員 もちろん再生利用と申しましても、水のコストが非常に高くなって参りますと、コストが製品価格にはね返って参りまして、輸出力等、先ほどおっしゃいましたような問題がございますので、現状においてはトン当たり三円程度あるいはそれ以下とい一、ようなコストを再生利用をした水について考えておるようでございます。場合によりましては三円より少し上になることもあるようでございます。御承知のように、鉄鋼においては相当高い温度の範囲で水を使いますので、ほかの業種に比較してそういう再生利用ということが割合にやりやすいおけであります。そういう意味で、場所によりまして部分的には九〇%以上の再生利用をしておるという事態があるわけでございますが、その九〇%以上やっておる場合においても、全工場平均いたしますと七〇%くらいに落ちるという事態でございます。アメリカの場合の九五%といいますのは全工場においての比率でございますので、日本における場合よりも高い比率のものもあるという事例はわれわれ聞いております。
  185. 西村力弥

    西村(カ)委員 私は水の開発という、水の供給量を増大し、それを恒常化するということとは逆な使い方の問題から話をしておるわけなんですが、そういう使い方の研究も一応含めていかなければならぬ段階にきておる。これはやっぱり各省のそれぞれの分野において、相当強力に進めていただかなければならぬのではないかと期待をするわけです。  次は、供給量の増大と恒常化の問題であります。こういうことは前々からえらく論議されたと思うのですが、第一に、今度の促進法というのは、初めから限定された地域の水を開発する。こういうことに対しては、私は山形県ですが、非常に不満であります。こういうことではなく、これは全国的視野において行なわなければならない。このことの前提として、国十総合開発というものが早く立案されなければならないのではないか。あるいはまた地方都市の建設計画が策定されなければならぬのじゃないか。そういう大綱の計画があって、それから個々の、ことに急を要するところから手をつけていかないと、この計画はほんの対症療法的なものになってしまって、その結果は十年を待たずしてまた行き詰まりになることは間違いないのじゃないかと思われる。現実に日本の現状というものは、東海岸の方にだけ工場や何かの重点が置かれて、日本という一つの船はまさに転覆しようとしておる。これは建設大臣に言ったってどうにもならぬのですが、片側だけに重点がかかって日本は転覆しますよ。とにかく所得格差を縮めるとか、低開発神域の開発とか、うまいことを並べているのですから、もっと平均のとれるように施策を持ってこなければならぬと私は思うのです。これはひがみで言うのじゃないのです。そうすることが、ほんとうに日本の国力の充実になるのだと私は思うのです。そういう趣旨も含めまして、基本の方針というものが定まらないで、局所々々の対症療法的なことをやっておったって、どうにもならぬのじゃないかということなんです。国土総合開発計画とか、あるいは日本の過度の都市集中を排除するという計画は、いつできますか。
  186. 曾田忠

    ○曾田政府委員 お答えいたします。国土総合開発法に基づきまする全国の総合開発計画につきましては、大体六月末を目途にいたしまして事務的に努力を重ねておる次第でございます。
  187. 西村力弥

    西村(カ)委員 総合開発計画はそれでいいですけれども、地方都市建設計画というか、これは過度集中を排除して分散させる趣旨のものだと思うのですが、それはいつできますか。これは各省とも、自治省がどう言っているとか、経済企画庁がどう言っているとか、さまざま案を出して、また練っているような状態ですが、これはいつできるのですか。
  188. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 地方都市建設に関する考え方は、自治省の基幹都市という考え方、あるいは建設省が従来から構想を練って検討いたしております広域都市等、言い方はいろいろ変わっておりますが、実体は同じようなことであります。そこで、これらを調整いたしまして、できるだけすみやかにその成案を得るように努力を今いたしておるわけであります。今国会に間に合いませんでしたので、これはおそくも来年度予算編成に八、九月ごろから着手することになりますが、その段階までには取りまとめをいたしまして、来年度実現のできまするように進めていきたいと思っております。
  189. 西村力弥

    西村(カ)委員 そういうことをお聞きするのは、たとえば利根川開発を急いでやるのだという場合に、自然膨張をある程度チェックしながら、十年後あるいはその後をも見込んで一体どれたけの人口に給水しなければならぬか。人口はこれだけだが、生活様式の向上によってこれだけ増す。水道用水一つでも、そういうめどがなければ計画は立ちはせぬ。あるいは工場の配置でもそうです。利根川の水を使ってやる工場がどれだけの数、どれだけの規模、どれだけの業種、こういうものの一つ見通しがなければ、利根川の開発だってできっこないことになる。現実に東京の水道用水だって、小河内の貯水池を作るときには、人口はこのくらいで一日の水の使用量が三百六十リットルなら三百六十リットルという工合に見てやったのだが、今の実態はそんな計画というものは吹っ飛んでいるんですからね。そういうことで基本計画が立てられるということになると、せっかく金をつぎ込んでやってみたって、またすぐ行き詰まりがきてしまうということです。だから、その基本が立たないうちは利根川の開発計画というものは立ちっこないと思う。そういう計画をやはり前提として確立することが、まず行なわれなければならないのじゃないかと思うのです。そういう意味からいいますと、この法案の成立をあまり急ぐということは、やはりおかしいと私どもは思わざるを得ないのです。  それで、工業用水の件はいろいろお話があったと思うのですが、水道については厚生省がおやりと思うが、これからの水道必要量を見込む場合に、どんな要素をずっとその中に加えていくか。その中の生活向上による水の使用量の増大というのは、現状からどれだけ伸びるだろうか、こういうはじき方はどうしておるかということ、これは厚生省の方に一つ聞きたいと思います。
  190. 石橋多聞

    ○石橋説明員 水道におきましては、一人一日当たりの給水量は毎年増加しておりますけれども、これは各都市の性格によりましてそのふえ方が非常に変わっておりまして、都市ごとに今までのふえ方の実績増加率を将来に引き延ばして参りまして、大体十年ないし二十年先の増加分を見込みまして、水道計画を常に立てております。
  191. 西村力弥

    西村(カ)委員 具体的に、東京では現在の一人当たり使用量はなんぼであり、それは十年後の所得倍増計画なら所得倍増計画で、伸びはどのくらいになるか。
  192. 石橋多聞

    ○石橋説明員 詳しい数字はちょっと忘れましたけれども、東京都の場合、現在大体一人一日当たり、夏の一番使う日におきまして約四百リットルになっていると記憶しております。これは現在東京都では急速に一人当たりの水量が伸びておりますが、今まで大体年に一人当たり十リットルないし二十リットル、年によって違っておりますが、伸びが出ております。
  193. 西村力弥

    西村(カ)委員 少し計算が低目じゃないか、こう思うのです。一年当たり十リットルないし二十リットルということになると、二十リットルにしても十年間で二百リットル。そうすると十年後に六百リットルか七百リットルということになるが、これは少し計算が低いのじゃないか。低目でないにしても、現実にやるときにはもっとよけいに見込んでいかないと、これは行き詰まりがくるのじゃないかと思います。数量としてはそのようですが、その場合に水道用水の中にはどういうものをずっと見込んでおるか。自動車の洗浄なんかも先ほど私はあげましたが、これなんかも一つ入るでしょう。そのほか街路の散布とか、自分の庭先の散布とかいうこともあるでしょうし、あるいは電気洗たく機、そういうものによる水の使用量の増大とか、ふろによけい入るとか、さまざまあると思うのです。こういう中で、やはり大きく見積もっていかなければならぬ消費増というものは、どういうものであると見込んでおるか。
  194. 石橋多聞

    ○石橋説明員 水道に使います水は、その市の全供給量を給水人口で割りまして一人当たりを出しておりますが、この水量の中には、上水道供給しているところの市内にあります工場工業用の水、それからビル等におけるところの冷房用の水、こういうものももちろん含まれております。しかし、一番大きな要素を占めますのは家庭用水であります。家庭用水だけについて考えますと、一人当たりにつきまして、大体夏の一番使う口におきまして百リットルから二百リットルの範囲にとどまっております。大都市におきましては、大体百五十リットルくらいが夏の一番使う平均となっております。今後ふえます分としまして、最近はビルの冷房用の水がかなり大きな要素を占めておるように見ております。また、各家庭におきます使用量がふえておりますが、それは水洗便所の普及が一番大きな要素を占めております。次に電気洗たく機の普及が、従来よりもよけいに洗たく用水を使う要素になっております。
  195. 西村力弥

    西村(カ)委員 あっちこっちのお話になりますが、今地下水のくみ上げのことをやりましたが、今度この法案で水開発を十分にやっていけば、地下水のくみ上げということは完全になくするのかどうか。水資源の開発では、地下水と地表水と一体として考えていかなければならぬということは当然だろうと思いますが、地下水のくみ上げによって、日本の沖積層地帯は地盤沈下で被害をもたらしてくる。これは争えないことで、すでに危機の段階にきておるわけでありまして、水資源開発促進という、こういう法定してやっていく仕事では、地下水のくみ上げというようなものは、これは完全になくするような構想を持たなければならないと思うのですが、この点はどうなんですか。
  196. 藤岡大信

    藤岡説明員 現在工業用水につきましては、工業用水法によりまして、地下水の過度くみ上げによる被害を生じている地区につきましては制限をいたしております。昭和三十二年以来七地域地域指定いたしました。七地域と申しますのは、東京、川崎、横浜、名古屋、四日市、大阪、尼崎でございます。その七地域指定いたしまして、その地域での工業用水のくみ上げの制限を、今言われましたように完全に行なうつもりかどうかということにつきましては、われわれとしましては、できるだけ完全に近い形で亀下水のくみ上げを禁止していきたいという感じで行政指導をいたしておりますが、工業用水の中には、非常に低温の水が必要になっている部面がございまして、その部分につきましては依然として地下水を使わなければその生産が維持できないというようなものがございます。これはごく一部でございますので、地盤沈下等の障害を起こさないでやれる部面であるというふうにわれわれは認識いたしております。工業用以外のものにつきましても、大々的に各省において相当検討しておられるようでございまして、逐次そういうものの成果があがってくるというふうに考えております。  地下水のくみ上げは、先ほど他の先生からおっしゃいましたように、地盤沈下を起こさない地域におきましては、これは極力利用した方がいいものでございますので、そういう地域におきましては、工業用に使う地下水も極力使うように、われわれは会社方面に勧誘をいたしております。現在問題になっております地域、これは四大工業地帯を中心とする既成の工業地帯におもに起こっている現象でございまして、これは沖積層の地下水をくみ上げるということによって起こる問題でございますので、そういう地層を持っていないところにわき出す地下水というものについては、極力利用するという方向にやってきたい、今後も行政指導をそういうふうに持っていきたいというように考えております。
  197. 西村力弥

    西村(カ)委員 私のお尋ねしたいと思うのは、二十何項目あったのですが、そんなことをやっているひまもないし、今までも十分やられたと思いますので、最後にお尋ねしたいと思うのは、費用負担の問題であります。たとえば具体的な例として、今度群馬県の神戸(ごうど)ダムなら神戸ダムを作るということになった場合に、これの費用負担は一体どういう算定になってくるのか。これは建設省で一応の腹づもりというものがあるのじゃないか、こう思いますが、この促進法に基づいて分担してもらうということになれば、神戸ダムの費用というのを、何億かかるか、それをどういう工合に負担さしていくのか、これを促進法公団法に基づいて説明をしてみてもらいたいと思います。
  198. 山内一郎

    山内一郎政府委員 現在神戸ダムの計画につきましては調査中でございます。目的といたしましては、洪水調節、それから各種の用水に供する、こういうような構想のもとで、現在調査中でございます。その建設費のうち、治水分といいますか、洪水調節分につきましては、治水十カ年計画に基づきます特別会計、これから、もし公団がやるといたします場合には公団に交付する、こういう形になると思います。それから、そのうち用水をどういうふうに使うか、その使い方によりましていろいろ考え方が変わって参ると思います。まだ調査中でございますので、幾らの立方メートルを何に使う、こういうことはきまっておりませんが、特定の灌漑に使うというような場合には、そのアロケーションのうち九割は治水分で、そのうちの六割は国、三割は府県負担、それからあとの一割は土地改良区の負担、こういうような格好になると思います。それから、工業用水、あるいは水道用水が確定する場合には、おのおのそのアロケーションに基づく負担をその需要者から取る、それがまだ確定しないで始まる場合には、公団が借入金によりましてそれの建設を始める。こういうような方法で建設に着手されるというふうに考えられます。
  199. 西村力弥

    西村(カ)委員 工業用水とか水道とか、そこからじかに引くわけじゃないので、こういうのは、この神戸ダムによってどれだけ工業水として利用しているか、水道用水として利用されているか、ということの算定はどうなるのですか。
  200. 山内一郎

    山内一郎政府委員 その何々に幾ら使うかという点につきましては、審議会基本計画作成のときに、ほかの水資源開発施設と一緒にあわせまして、各種需要のうちこれとこれはこれで持つとか、そういうようなことできまってくると思います。
  201. 西村力弥

    西村(カ)委員 もう一つ。まあ急いで重点的な利根川その他の四地域ですか、こういうところに相当膨大な資金というものが投入されるということになると、治水十カ年計画というものがありましても、この伸び率は計画を見ますると七%ぐらいです。ところが、そんなことで満足される現政府ではないと思いまするし、われわれとしては、もっと今の状況では、池田さんが言うまでもなく、もっともっと伸びるだろうと思うのです。そうすれば、当然そういう十カ年計画で七%の年々の伸びということになっても、実際はもっと九%か何か伸びていくようになるのじゃないか。この十カ年計画の伸びをあのままにしておいて、そのまま固定したものであるとは思わない。国民の経済の伸び、収入の伸びによって、やはりその伸び率も上がってくるという工合になるのじゃないかと思うのです。  ところが、こういう工合に重点的に金を使ってくると、そういう点が見込み得ないようになってくるのじゃないか。見込み得ないばかりじゃなく、今度はマイナスの面として、いろいろ資材の高騰とか物価の上昇とかいうことから、あの伸び率だけでは、この工事量というものは低下してくるではないだろうか、こう思うのです。そういうことは防ぎ得るのかどうか。やっきとなって、この四大工業地帯の治水のために莫大な金をつぎ込むことによって、そのしわ寄せが各地域にもたらされるのではないか。計画においては確かに計画通りの金額が組まれていくかもしらぬけれども、実質的にはやはりマイナスになってくるのではないだろうか、こう思うのですが、そういう点は建設大臣、どうでしょうかね。
  202. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 開発指定地域の開発のために、指定区域外の治水が犠牲にならないようにすることは最も大事でありますから、われわれはその点は十分注意をし、努力をしていきたいと思います。この促進法は、さしあたり今まで議論になっておりますような地点から地域指定をしていくということになりますが、水資源開発審議会の任務としましては、全国的に水資源の問題を審議調査し、必要に応じて開発の工夫をしていく使命を持っていると私は思うのであります。しかしながら、さしあたり指定しようとするような区域は、御存じの通り、水の需要が非常に逼迫をいたしておりますので、このままほうっておきますと、水を使う必要のある方面は、水道にせよ、工業用水にいたしましても、それぞれほしいわけでございますから、何と申しますか、八つざきという言葉がありますが、三つざき、四つざきにして計画のない使い方をするということは困りますわけで、従って、それを総合的な開発をし、需要に見合った開発をし、供給の全きを期していくということのためには、どうしてもその逼迫している区域から先に開発地域として指定をして進めていくことになると思いますが、その他の区域につきましても、もちろん常に留意していくべきだ。また、工業の地方分散等に関連いたしまして、他の地方に水の必要な分ができますれば、単純開発でできますものは建設省の任務として、これらが重要開発地点の開発のために犠牲にならないように、建設省としてはそういう点に十分目を配って、工業の地方分散等に支障のないように、単純開発は建設省のみ、あるいは所在の府県等によってもできますから、さような方法によりまして遺憾のないように進めていきたいと思っております。
  203. 西村力弥

    西村(カ)委員 そういう点は十分今のお話通りやってもらいたいと思います。  伊勢湾台風のとき、たれの投書であったか、日本では証券預かりは絶対安全だ、保証するが、人命の保証はたれがやってくれるのだ、という政治に対する不信の叫びがあったのを見たのです。あれは防潮堤がくずれたこともあるでしょうけれども、こういうことで、今の目先の工業用水その他の必要によって、集中的にそこにいくというような政治であってはよろしくないと思うのです。そのことによって全国的な治水計画が少しでも影響されることは絶対に避けるべきだと思います。これはぜひともやってもらわなければならぬと思います。  それだけにしますが、私の希望としては、この法案を見ますと、前々から指摘された通り関係各省の争いが自後に移されただけだという批判が強い。われわれもそういった感じを受けるのですが、そういうことは適当にしてもらわなければいかぬじゃないか、こう思っておるのです。大体日本の河川は国内河川で、外国との関係がないから少し気がゆるみ過ぎていると思う。諸外国の河川は、国際的な関連において水の利用をやっているということは間違いないと思う。そういう外国的な困難な問題をかかえながらも、諸外国においては水の開発をやっている。しかるに、日本ではもう国内の各省庁の争いなんかに血道を上げるということは、全くわれわれとしては見るにたえないというか、嘆かわしいことであるわけでありまして、こういうところは一つ十分に大臣のコントロールというか、大臣自体が先頭に立って徹夜をしてまで争うなんということは、私はよろしくないと思うのです。そういう点を十分にお考え願いたい。そこで、総理がおれば、公団の役員の人事なんというものは総理の見解を私はよほどただしておかなければならない、こう思っておるのです。そこに各省庁のひもつきが出て、またそこで口角あわを飛ばして、要らぬ争いに日を暮らすようなことになってしまえば、こうやって夜おそくまで審議しても、国会というものは、ざまを見やがれというようなことになってしまうのじゃないか、こういうことを憂えておるのですよ。ぜひその点は十分にお考えを願いたいという気持を申し上げまして、私は終わります。
  204. 加藤高藏

    加藤委員長 井堀繁雄君。
  205. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ごく簡単に二、三問お尋ねいたしたいと思います。この水資源開発促進法の中で、どうもわれわれこの法案全体を見まして、何か不徹底なきらいがあると思う点を一、二お尋ねしてみたいと思います。  元来、この法案を見ますと、水資源を確保することにかなり力を注いでおる点はよくわかるわけでありますが、少なくも日本の場合においては、水資源を確保するということは、一つには水の調整をはかるといった方が実際的ではないか。年々歳々台風などによって大きな水害を繰り返しておるといっていいくらいです。ある場合には、大洪水になって被害を与える。それをどうしてコントロールするかということがむしろ水資源開発のねらいでなければならぬと思います。すなわちあり余って、その結果は非常に大きな被害をもたらしておる。だから、その被害を防止するということが行なわれれば、水資源を確保するということは解決するのじゃないか。従って、需給の関係というものもある程度促進されてくる、こういうふうに見るべきではないかと思うのであります。  そういう観点からこの法案をながめますと、たとえば政府基本計画を立てる場合におきましても、そういう問題に対しては一言も触れてないといってもいいくらいに、何かほかに逃げている。たとえば公団法の中の建設大臣のお仕事で、非常に重要だと思うような部分を政令に逃げておるといったようなふうに感ぜられるのであります。この基本的な問題について一つ、この法案を設立されたときの政府の考え方に何か食い違いがあるように感じられるので、お尋ねをするのでありますが、第一に考えなければなりませんのは、日本の水資源の一番重要な点は、ここにもあげてありますけれども、その水系をどう処置するかということにあるわけです。促進法には、治山治水ということを付属的に四条で取り上げておる。私は、治山治水に終わるんじゃないかと思うのです。暴風を伴ってくる多大の水量が、短時間にぐっと押しかけてくる。それをどうコントロールするかということに対して、それを貯蔵するということについて、政府はどうしてお考えにならなかったか。考えてもどうにもならなかったというのであるか。まず、との点を一つお尋ねして、私の質問を展開していきたいと思います。
  206. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 御指摘のように、確かに問題の中心は水の総合調節利用ということであるに間違いないと思います。それが非常に大事なポイントであるわけでございますが、調節利用をいたしますのには、やはりダムの建設とか、そういうような建設に関する事柄が中心になりますので、そこで法律案の名称も水資源開発ということに相なったものと私は思うのであります。従来も、御承知通り洪水調節あるいは水の利用ということに関連をいたしまして、各所にダム等を建設いたしておりますが、ダムの建設ということは、一カ所建設するにいたしましてもなかなか大事業でございまして、建設省の治水事業としてだけやっていくのでは、利用の面から申しますと非常に不十分な点が起こってくるわけでございます。かような角度から、先刻も申し上げましたように、水をできるだけ総合的に開発する。総合的に開発しますと、同じ水系でありましても、上流の支川において幾つかのダムを作る。そして流水されたものをまた下流において、総合的にこれをまとめてもう一ぺん使うというような方法もございますし、あるいは河口せきの方法等によりまして、その流水された水を最高度に利用する。しかも、その利用の仕方は総合的に使っていこう。そのためにはこの種の構造がどうしても必要である。かような角度から立案をいたし、提案をいたしておるようなわけでございます。
  207. 井堀繁雄

    ○井堀委員 であるとするならば、この法案で随所に見られるのでありますが、たとえば十一条の規定で国土開発や電源開発の問題をよけて通っておる。むしろこの際、水資源開発ということになりますならば、今、建設大臣の御答弁もありましたように、水をコントロールするということである。ある地域には年々洪水に近いほど雨量がある、ある地域は旱魃に絶えずさらされるというように、日本の場合にはかなりはっきりしている。これはよその例をとって恐縮ですけれども、アメリカのビクトンソン・プランなどを見ますと、この点をやはりついておるところに成功があったと思うのです。どうもこの法案を見ますと、たとえば今までの臨時立法の中では、台風常襲地帯における災害の防除に関する臨時措置法のようなものを作ってみたり、あるいは治水治山にいたしましても、森林法があるかと思うと、河川法であれもこれも食いかじるというような形でありまして、むしろこの際国土総合開発の中において治山治水というものが考えられてくるべき時期ではないか。そういう計画の上に一歩前進していくべきではないか。巷間伝えるところによりますと、各役所のなわ張り争い調整するがごとき小乗的な法案になって現われたという風聞がありますが、この法案を見ると、確かにそういう巷間伝えられるものも描写しているような感じがいたすのであります。この際、国土開発計画あるいは電源開発のようなものとはっきり結んで、もっと大局的に大規模な計画を打ち立てるべきではないか。ただわずかの資源を確保したり、あるいは部分的な開発をやるというようなことでは、私は今後の水資源の需要に対しても問題になると思うのです。こういう点に対して、なぜ十一条のように、わざわざ加えなければならぬ大事なものを避けていったか。その辺のいきさつをちょっと伺ってみたいと思います。
  208. 迫水久常

    迫水国務大臣 ほんとうのことを言いますと、十年前にできました国土総合開発法という法律があります。それはもう十年も前にできておりまして、全国総合開発計画とかいろいろな計画を作っておるべきはずなんですけれども、それができていないものですから、つい、いろいろなものがあとさきになってしまっておることはまことに残念でございますが、全国国土総合開発計画というものを現在立てつつあります。その中にも水の問題が出てくる。それとこの法律基本計画の間に、もし調整を要するものがあるとするならば、総理大臣は調整をする。それから、電源開発の方は電源開発の方で基本一つの方針があり、系統がありますので、この部分についてもそれと一緒にするということは、目的が違うのですからなかなかできない。容易なことじゃない。何も一緒にする必要もないと私は思っておるのでして、しかし、その間調整をとるべき必要が出てきたときには総理大臣再調整をする。それで、もう十分動くと思うのです。
  209. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私が申し上げておりますのは、ここで言っております水資源の総合的な開発をやるというこの考え方が、さっき建設大臣の御答弁で明らかなように、水の調整なのです。日本は絶対量がないというのであれば、私は開発というものがそういう意味にとられていいと思う。あるときには洪水になって被害をもたらすほどあるのです。ある時期には全く枯渇してしまうのです。この点は私は数字的に検討したことはもちろんありませんけれども、一般の承知する範囲内では、日本の場合は水不足というのではなくて、その調整だと思う。それで、国土総合開発との関係が出たり、あるいはダムのお話がありましたが、ダムということになると、何か多目的ダムとは言っておりますけれども、実際は電源開発にその大部分が注ぎ込まれておる。そうではなしに、さっき私が例を申し上げたように、アメリカのビクトンソン・プランの中で、たとえば一つ事業であるあのコロラドを征服いたしました。それはあのフーバー・ダムによって代表されておりますけれども、あれは言うまでもなく電源開発ではなしに、要するに水の調節をしただけにすぎぬのであって、その結果が幾つもの利益をもたらしておる。それがたとえはアメリカの今日の発展の基礎をなしたとまでいわれているくらいなのです。日本の場合は、年々あの台風やその他の水害のために失っている損害はかなり多額に見積もることができる。そういう点で、この際こそ、もしこういう法案を考えるとするならば、治水治山の対策の中で——しかも、これを見ますと、各省にまたがるものを調整をしようということにかなり苦心の跡が見られる。そういう消極的なものではなく、積極的な、各省の仕事を統合して、そして企画を進めていくのであるならば、私は大きな意義があると思う。こういう観点から実はお尋ねしておるわけです。  それで、さっき御答弁を伺っておりますと、経済企画庁長官のお考えと建設大臣のお考えとは、そういう意味ではかなり開きがあるようにもとれます。たとえばビクトンソン・プランの中でも非常に深く感動させられるのは、ロッキーの山を境にして東と西、一方には常時天然の湖にとうとうと水をたくわえる雨量がある。反対側の方は、もう西部劇に出てくるように赤はだの山で、水さえあれば豊富な農耕地を得ることができる。こういう問題を解決しておるのであります。すなわちロッキーの横っ腹にトンネルをあける。そうして人工の湖を作って、天然の湖からそこにポンプ・アップして、それを反対側に落としている。その落差を利用して電源開発も行なわれるし、それが工業用水にもなり、飲料用水にもなり、あるいは赤い山に今日緑地帯を作り上げて、レクリエーションの場にもしておる。こういうように前例があるわけなのでありまして、アメリカが今日の工業の繁栄を誇っておりますのも、これに成功したからだとアメリカ人は強調しております。日本の場合はむしろ年々歳々莫大な被害をもたらすのは、言いかえれば水が一ぺんにやってくるというだけの話でありますから、それを受け取めて調整をしていくということこそが、私は日本の治水対策の根本でなければならぬと思う。そういう問題をこの際取り上げるべきではなかったかという意味で、実はお尋ねをしておるわけであります。  でありますから、この第一条の「目的」の中にも「水資源の総合的な開発」という言葉を使っておるわけでありますが、一体総合的開発は何かといいますと、二条で受けて、政府は水資源開発基本計画基礎調査をやる、そうして審議会の方に検討をさせるという形をとった。それで、実施機関は公団に、あるいは地方の自治体に一部を施行させようというのであります。どだい私は、今までのあり合わせをあっちこっちから継ぎ合わせたという感じであって、せっかく公団を設置する以上は、総合的治水計画、利水計画にまで拡大すべきではないか、あるいは整理統合をはかるべきではないか。行政機関の窓口だけを調整するということでは、本末を転倒しておる。目的は水資源の開発であります。あとは手段であります。そういう点について、たとえば第五条の基本計画などについても、水の用途の需要供給関係とか、あるいは供給目標をどうするとか、いわば需給関係のバランスだけを考えていく。私はそうじゃないと思う。たびたび恐縮でありまするが、アメリカのビクトンソン計画を学ぶまでもなく、しかもこれは百年計画で、もう七十年くらいになりましょうか、六十何年かになるのでありますけれども、もう一〇〇%の成績をあげているという。こういう長期計画でありますから、なおさらのこと、間に合わせじゃなくて、やはりそういうものはもっと長期にわたる計画の上に乗せてなさるべきではないか。どうして政府はこの法案をお作りになるときに、そういう点をお考えにならなかったか。また、そういう計画に乗るものであるかどうか。どうもこの法案の説明を聞きあるいは資料を見たのでは了解ができませんので、この機会に私は両大臣から御説明を承りたいと思います。
  210. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 日本のような地勢から見まして、水利の重要でありますことはお説の通りであります。そこで、政府としましては、治水治山緊急措置法に基づきまして、治水については今後とも災害の起こりませんように全力を注いで参るつもりでございますが、かたがた水の総合的な開発利用ということに関係をしまして、治水ということは常に留意して参らなければなりませんので、治水に関連いたしまする施設等につきましては、建設大臣が所管大臣として公団を監督指導をして参る建前をとっておるわけでございます。  それから今、井堀さんの世界的な御研究のうんちくを拝聴いたしたのでございますが、確かに広く考えますと、水資源の開発ということは、治水という面からもっと高度のものもあると思うのです。日本の地勢で、はたしてそういうところがあるかどうかは今後の検討に待たなければなりませんが、かつて私、朝鮮の長津湖発電を視察したことがあります。あれは鴨緑江の方に向いた谷間を利用して、沢のところにダムを作って、天から降る天水だけをそこへ貯水し、それを日本海に落としてあれだけの発電をやっておる。こういうようなこと等から考えまして、日本の地勢上、今後流水だけでなしに、地勢的に向く個所にダムを作ることによって、その面積がこのくらいあり、その地方は雨量がどのくらいあるかという調査の結果、そこに利用すべき相当量の蓄積ができますならば、それらの開発をやっていくことも水資源の開発をやっていく上における一つの使命であろうと思うのであります。いずれにいたしましても、現状から見まして、洪水調節と治水とあわせて水資源をできるだけ総合的に高度利用をする必要性が今日、至上命令的な要請として起こっておりますので、この解決に対処いたしたいというのがわれわれの考えておるところでございます。
  211. 迫水久常

    迫水国務大臣 井堀さんのお述べになりましたお話は、結局国土の総合開発のために水をどういうふうに使えばいいかというところに帰着するだろうと思うのですけれども、この法律が目的としておりますのは、「特定の河川の水系における水資源の総合的な開発及び利用」というようなことが書いてあるのでして、人口が集まってどうにもならない、あるいは工場が集まってどうにもならない地域に水を供給するためにはどうすればいいかというきわめて対症療法的な法律案であります。そこで、お話のように日本の経済の体質を改善していくというような基本的な問題は、実はこの法律には含まれていないのです。そういうふうに考えていただきたいと思います。
  212. 井堀繁雄

    ○井堀委員 建設大臣と経済企画庁長官の考え方はまるで食い違っておるようであります。どっちでもけっこうでありますけれども、私がこの法案を見ますと、そうはっきりしてないんですよ。企画庁長官がおっしゃられるように、間に合わせ的に現在足らぬところにやろう。やる場合には、こっちの役所がうるさいから、こっちの役所との関係をこうしてやろうというようなものであれば、なるほどなと思うようなところもあります。ところが、この中を見ますと、第四条の三項には「基本計画には、治山治水及び電源開発について十分の考慮が払われていなければならない。」ということを政府に義務づけておる。これは私は当然だと思う。今の間に合わせといたしましても、これはあとでお尋ねしようと思っております十四条との関係が起こってくる。十四条との関係は損失の補償についてであります。これは今まで多くの人が質問されておるところであります。これは農業、すなわち灌漑用水を主体的に考えれば、工業用水にはまた問題がある。工業用水に主力を注ごうとすれば飲料水に問題がある。飲料水工業用水を近い水源地に求めることが困難な場合は、かなり遠隔な土地に求めるわけでありますから、その場合にも個人的な利害得失がはなはだしく食い違ってくる。あるいは地域集団に与える損害も大きい。そういう利害得失というものが、はなはだしく強く現われてくるわけであります。だから、そういう問題を行き当たりばったりに、損害を補償をしては格好をつけて、問題になったところにこうやくを張って片をつけていくというやり方は、今日もう許されぬのじゃないか。  具体的に一、二例をあげて申しますと、東京の人口がこう加速度的に集まって、ある地域工場が密集してくると、飲料水にしても工業用水にしても、その近くの水系——先ほどから利根川、荒川が出ておりましたし、多摩川も出てくるかもしれぬが、その辺のところは利用できるだけのことはした。今度は群馬県あるいは埼玉県にまたがる水系を活用して東京都に水を送り込もうということになれば、その途中に位する埼玉県、あるいは水源地を東京都のために計画するとすれば、群馬県は非常な迷惑を受ける。受ける利益が少なくて損害だけ多いということになりますと、その調整だけでも大問題が起こると思う。一例をあげて申し上げますと、埼玉県の場合は、東京の洪水をある程度調整するために荒川の中に横堤というものを作る。これはわれわれしろうとから考えるとばかげたことだと思う。川の土手というものは縦にあるものだと思ったら、横に一々はしごのように上手を作る。要するに、横堤を作って水勢を防ごうという理屈らしいのです。そのために、横堤を作られた周辺の地域は、耕地はもちろんのこと、住宅まで荒らされる。しかし、そのことによって東京の洪水をある程度防ぐことができる。かなり原始的なやり方だとわれわれは思う。  今度は多目的ダム計画されるということになれば、幾分そういうものがチェックされることは認めてよろしい。少なくとも総合計画を持ち、あるいは国の治水計画ということになりますれば、こういう問題の解決ができないようなことでは、こういう法案の価値は意味をなさぬと思う。なぜもう一歩踏み込んだ措置がとられなかったか。さっき申し上げたように、四条の三項や五条の中にそういう意欲がちょっぴり出てきているのです。さっきからお二人の御答弁を聞いていると、閣僚の間にも受け取り方に違いがあるように思う。だから、この法案は私はどちらにも向くと見ておる。経済企画庁長官が言うように、今水あさりをしておるものを窓口だけを調整して、まあまあというふうに考えた法案とも思われる。それから、建設大臣が言うように、少なくとも治山治水につながる、特に建設大臣の立場では、ここに書いてありますが、これは政令にも盛り込んでおりますが、事業団の中で建設大臣の任務が規定してあります。そういうものを何か補助的に取り上げてきておる。しかし、これはほかの法律でも明示せられておりますから、ここに関連がくることは言うまでもない。だから、必要に迫られていることは、建設大臣の言う通り、このままではできません。いいかげんに調子を合わせてまあまあということでは済まなくなってきておることは、建設大臣の言う通り明らかです。経済企画庁長官の言う、何とかこうやくを張ってその場をしのごうというお考えも、わからぬわけじゃない。しかし、われわれは少なくともこの時期において、この時点において、こういう法案が出た以上においては、もっと抜本的な、今すぐは、やれないにしても、アメリカのように百年計画なんて気の長いことは日本人にはできないにいたしましても、政府も五カ年計画を持っておりますから、五年や十年くらいの計画は盛り込んでいいのじゃないか。それが出るようでもあるし、出ないようでもあるということで、この法案に対して私どもは非常な疑いを持ったわけです。今の御答弁で大体わかりましたけれども、これはしかし起案者の考えであって、国会としては少なくとも今の国の要請に基づいて、いい方向へ育てていけるようにしなければならない義務がわれわれにありますので、その点お二人の意見の一致点をもう少し伺いたいと思います。
  213. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 ただいまのお話の中に、どうも上流地帯は犠牲にだけされるのではないかというような意味のお言葉もございましたが、私どもの考えとしましては、これは全地域にわたりまして公正に水が高度利用されるように進めるのがこの水資源開発促進法に盛り込まれた精神であると思うのです。たとえて申しますと、利根川水系で申しますと、私が兼務いたしております首都圏整備の方では、埼玉県下あるいは群馬県下、栃木県下等、各地に衛星都市の計画をいたしまして、すでに指定したところもございますし、指定準備中のところもございます。あるいはすでに相当の工場団地を買収したところもございます。これらの地域工業都市を作っていこうということになりますと、当然そこに工業用水の問題が起き、またそこに従業員の住宅団地ができますと、それらの人口の増に伴う水の需要というものも起こって参りますから、これらの総合的な研究として、基本計画を立てます際には全体をにらんで、すべての方面から見てなるほどと思われる結論を得て実施すべきものだと思います。かような意味において、審議会の議に付して内閣総理大臣が決定して参りますわけで、審議会にはできるだけ視野の広い、各方面の権威のある方々にお集まりを願いまして、公正な御検討を願って、部分々々で見て水の利用を考えておるような考え方でない立場に立って、公正な、しかも高度的な水の資源開発と同時に利用の道を考えていきたいというようなわけでございます。
  214. 迫水久常

    迫水国務大臣 どうも、中村建設大臣との間に意見が違っているとは私は実は思ってないのです。この法律に即してこの法律の御説明をいたしたのでありますが、要するに日本の治山治水というものは、それの基本計画といいますか、治山治水の問題にはそっちで法律が別にあるわけです。全体の治山治水の問題については治山治水緊急措置法という法律が別に現在すでにあって、それによって建設省が中心で計画を立ててやっておるわけなのでございます。もしそっちの方との関係がぶつかってきてはいけないというので、そちらの方の計画を配慮しなければいかぬというのがそこに書いてあるところでございます。この法律だけは、要するにさっき申しましたように、水の需要が非常に大きいところに水を供給するために、特別な措置で特定の河川についての開発をしようというねらいなのでありまして、お話基本的な大計画とはちっともそごをしない。問題は、そういう計画がないのにこういう個々のものをやるのはおかしいじゃないかという御議論なら、それはごもっともだと思うのですけれども、それは治山治水の大きな計画建設省は持っているわけでございます。先ほど私が申しましたように、ほんとをいえば、全国総合開発計画というものが十年も前に法律があるのですから、そういうものができて、その一つの部分としてこういうものがあればいいのですけれども、それが出おくれになっていることはまことに申しわけないということを先ほど申し上げたような次第です。
  215. 井堀繁雄

    ○井堀委員 正直な御答弁だと思うのでありますが、私の言っているのは、何もあげ足を取ろうというのじゃないのです。それから、今の経済企画庁長官の答弁によりますと、この法律はごく限られたものだと、正直におっしゃられた。それでいいと思うのです。しかし、そのことはそれにとどまらないということを指摘しているわけです。建設大臣にはすぐ責任が降りかかってくるわけです。ただ、この場合は水資源の開発という大げさなことをいっておるけれども、あなたの説明をかりて言えば、いわゆる水争いなんです。分け前のけんかをさせぬように行政機関の間で調整をしよう——確かに役割は果たせるかもしれない。しかし、それはごく小乗的なものであって、その必要も今迫られているでしょう。今あなたがそういう御説明をなさったから、私はそういうふうに理解できるわけです。しかし、それじゃ済まされぬということをさっきから言っている。  そういうことは、一つには、この法律だけを見ますとすぐ問題になります。この第十四条に「損失の補償等」とあって、「基本計画に基づく事業実施する者は、」、これは政府ですよ、「者は、当該事業により損失を受ける者に対する措置が公平かつ適正であるように努めなければならない。」とこの法律は義務づけている。公平にいくものですか。いきやしないということをさっき言ったじゃないですか。私さっき具体的にあげた、たとえば利根川水域、荒川水域。荒川水域の場合にはその支流が幾つもある。私はかつて予算委員会のときに質問を申し上げた例を引きますと、たとえば荒川の水域を、今隅田川と荒川放水路との関係調整するために水門ができておる。その水門によって本所、深川の洪水が救われました。非常に大きな利益です。その水門ができたために、川口は毎年水没する。というのは、芝川の水門を締めなければならぬ。荒川の水位が高くなると芝川の水門を締めるわけであります。そうして川上の方は雨量がどんどん累増してくるわけでありますから、出口をふさいで水のたまるのを待っているというわけでありますから、こんなばかげたことはない。そうして申しわけにポップをつけて、ポンプ・アップしようという、まことに幼稚きわまるものです。これが東京に隣接しているところの現状なんです。一体こういう政治があるかということです。徳川時代だって、そんなばかなことはしなかった。水は走らせるなということで、ゆっくり歩かせるようにいろいろな政策をとった。今はあべこべで、水門を締めて水がたまるのを待って、そのために十二万戸も十三万戸もの工業都市が経済的に麻痺してしまう。衛生その他から受ける被害というものは莫大なものだ。しかし、それは過去のことになりますけれども、今度こういう計画を立てて、そういうことを建設省がおやりになりますか、公団がおやりになるか知りませんが、その補償をしてくれと言った場合、どうしましょう。今度しなければなりませんよ。この法律では、これはどうしても解決しなければならない。これはもう自然の法則ですよ。荒川の水門を締めると水位が高まる。水位が高まると芝川はますます水位が低くなって、逆流をするからその水門を締める。そうして上から来る水を待って、たまり水の中でお前たちしんぼうせいということは許されませんよ。この場合に、建設大臣、どういうふうに十四条の解釈をなされますか。「公平かつ適正」であります。公平ということになると、東京の方のためにはいいが、これに隣接する埼玉、東京の一部は水のために非常な被害を受ける。それはどういう工合にこの条文を適用して、「公平かつ適正」な処置をとるか。この具体的な事例についてお答えいただけばすぐわかりますが……。
  216. 迫水久常

    迫水国務大臣 その条文は、ダムを作るために湖ができる、その湖の底になる人たちにどういうふうに補償するかというような点を言っているのでありまして、事業を行なう者、すなわち国だろうとおっしゃいましたけれども、それは工事施行者が公団である場合もあり、国である場合もあり、地方公共団体である場合があるのですが、工事によって直接の損害をこうむる者です。工事が設計の悪さ、というと語弊があるかもしれませんけれども、そういうことで、本所、深川は助かったが、川口は助からない。そのときに、そのために川口の方にどう補償するかという問題は、この十四条の範囲外の問題でありまして、これは別の高度の政治的な問題と考えます。
  217. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ところで、この五条の第二号にはこう書いてあるのです。——第一号に「水の用途別の需要の見とおし及び供給目標」、これが政府の責任になっている。そして、それを受けて立って審議会が立案するわけです。でありますから、その基礎調査政府が提供する。それから二号に、「前号の供給目標を達成するため必要な施設の建設に関する基本的な事項」、その施設の建設は、今の企画庁長官によるとダムだけに限っている。(「水路もある」と呼ぶ者あり)水路もあるでしょう。水路もあるということになりますと、さっき申し上げた横堤のようなものとか、いろいろな計画が出てくるわけです。その場合に、今の川口のことは過去の具体的な事例を申し上げたのですが、今後だって起こり得ますよ。そういうことが起こらないということを、技術者で責任ある答弁ができましょうか。こちらは法律学者ですから、一つ技術者の見解を聞いておきましょう。これは専門的技術の上から見て、水系というものの中にはそういうものが入っていると思う。私もしろうとですから、よくわかりません。さっき申し上げたのは、私は事実を申し上げたのです。私は確かに、荒川水系の中で荒川放水路を作るということは賛成です。絶対必要かもしれない。しかし、それによって起こってくる問題はあるのですから、過去のことを言ったってしょうがないのですが、これからも起こりますよ。そういうことが絶対起こらぬというので、ダムだけだというなら、そのダムの地域に埋没する人たちだけのことですから、割合狭い範囲で解決がつくかもしれません。しかし、これはそうはいかぬのじゃないですか。たとえば利根川水域ということになると、いろいろな問題が出ますよ。たとえば、今、私どもしろうと考えで見てもわかるけれども、自然の関係でありますけれども、あまり乱伐したために、洪水の場合に土砂をどんどん下流へ押し流してくる。そして、川の底が上がってくるわけです。上がってくることによって、その下流の灌漑地域というものは全くその水源を失ってしまうというようなことで、今争いが起きている。そこで、川底をさらえて砂をとってしまえばどういうことが起こるかというと、今度は反対の現象が起きてくるわけです。一例をとってもそういうものがあるくらいでありますから、ましてや今、東京都が計画している群馬県の下久保ダムですか、あそこのダムのことで私は質問書を出したことがありますけれども、あの政府の答弁書だけを見ましても、とにかくあなたがおっしゃるようにダムの中の関係だけじゃありませんよ。そこでダムを作ることによって、それから下流の一定の地域の農村は灌漑用水を失うのです。水は高いところから低きに流れるのにきまっているのですから、それを逆流させるということは、それぞれの設備が要るわけです。そういえば、あるいはそういう施設も含んでいるかもしれませんよ。だから、これはなかなか問題がありますよ。だから、十四条の損害の補償というものはダムの埋没する地域だけの問題などとお考えになることは、われわれしろうとをだますことはできるかもしれませんが、これはいかぬのじゃないでしょうか。その点の見解はいかがでしょう。
  218. 山内一郎

    山内一郎政府委員 隅田川の治水対策の一環として、隅田川を改修するかわりといいますか、荒川の放水路を作るということは、東京都の洪水対策として出たわけでございますが、それができたために川口市の周辺に、荒川の水位が高いときに水門から逆流してしまう。これはやはり、そういうことを一緒に措置しなければいけなかったのではないかというふうには考えております。ただ、国家の財政の点とかいろいろな点で芝川の工事がおくれておりますけれども、これはただいま極力放水路を作ることをやっております。  今回のこの促進法に書いてございます補償の関係といいますか、これは水資源開発施設を今後作るためにいろいろな支障が起こる。たとえばダムを作れば水没者が出てくる、これは当然でございます。なお、その他道路の関係とか、従来の灌漑用水が取れなくなってしまうとか、そういう点については、やはり今度の水資源開発施設の事業に伴う補償的なこととして当然やらなければいけないのじゃないか。そういう点で、芝川とこの促進法の補償の関係とは多少違うところがあるのじゃないか、こういうように考えております。
  219. 井堀繁雄

    ○井堀委員 かなり遠慮して答弁しておられますが、これは皆に見えるのですよ。すぐわかってくるのです。しつこいようですけれども、この芝川の例は、最初の企画の中にはそういうことは予定してあったのです。戦争という事態が発生したし、それから東京都の方だって、木所、深川の方はいいのですけれども、足立の方は川口にくるたまり水を放水路で流そう、中川に落とそうという計画だったのです。今度はそこが抵抗して反対している。でありますから、運河を作ってみても、その下がないというわけです。中途半端になっている。これは過去の政治家の責任だと言ってしまえばそれまでですけれども、そういうような苦い経験が要するにものをいっているわけなんです。これはやはり解決しなければならぬ問題の一つだと思うのです。建設大臣は自分に課せられた部分だけを何とか言いのがれようとすればいいのかもしれませんが、経済企画庁長官は総合計画の中でものをやろうというのですから、もっとこれは本質的に考え直す必要がある。私はこの法案を見てますます不安が重なってくる。  それから今、局長の御答弁がありましたけれども、下久保ダムの例がありますよ。灌漑用水だけじゃありませんよ。たとえば、あそこにダムを作って、あれからどのくらいのキロ数があるか知りませんけれども、東京まで飲料水もしくは工業用水を運ぶということになると、空を飛ばすわけにいきません。どういう技術的な措置を講ずるか知りませんけれども、その間の水路というものがある。水路の敷地になるところも非常な迷惑をします。そういうところの解決は、私はなかなか簡単にいかぬと思う。それから今、企画庁長官の答弁を聞きますと、どうやら総合的なそういう調整をやる一番大事な扇のかなめに当たるところの大臣が、存外簡単にお考えになっているようでありまして、そういうずさんな考えでこういう法案が提案されたとするならば、われわれは簡単に同意はできません。重大だと思う。ただ下久保ダムで飲料水工業用水を東京に持ってこようという計画だけでも、灌漑用の被害を下流の農村が受けるというだけではなしに、そこから水を運ぶためには相当の設備をしなければならない。用地の買収くらいで済めばけっこうですけれども、そうも簡単にいかぬと思う。また、そこには心理的な影響も出てきます。要するに、自治の立場を尊重しなければならぬのであります。群馬、埼玉の知事やあるいは市町村長は、今日公選ですから、地方住民の利益を守らなければならぬ第一義が法律で規定されておる。東京都民の利益のために何も群馬県や埼玉県が——金銭的に何か補償ができることであればいいというけれども、そういうものは金銭的に補償するだけでは解決しない。そこには日本国民全体の総合的な共助関係というものが生まれてこなければ解決できないのですよ。そこにこの法案の精神がなければならぬ。だから、金さえくれれば片づくなんという考え方はとんでもないことだと思うのです。隣保相互といいますか、この部分では東京都民のためにわれわれは奉仕するが、こういう部分でまた反対給付は受けられるといったような関係が政治にはあるはずです。そういう点がこの十四条でなければならぬと思ってお尋ねしたところが、存外そうでないということになりますと、これはあきれ返るということ以外にないわけです。建設大臣はすぐ仕事にかかる場合に、何とか解決しなければいかぬ。企画庁長官はごたごたが起こったときに中に入るというようなおつもりかもしれませんが、あなたの場合はそうはいかぬのじゃないでしょうか。この点に対する見解をもう一ぺん聞かして下さい。
  220. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 十四条によりまして損失の補償に関することは当然行なわなければならないわけでありますが、損失補償のほかに、この水資源の開発利用の諸施設のために影響を受けるような、先ほどいろいろ事例としてお述べになりましたような関連の事項がございますれば、これは水資源開発それ自体が内閣総理大臣の責任において基本計画を立てるのでございますから、関連工事あるいは関連の作業としまして、そういう被害をどうして起らないようにするかというような事柄は、当然関連工事として基本計画の中に含まれるべきものであると私は思うのでございます。下久保の問題につきまして、私ども非常に近隣でございますので、在野当時からあそこの予算措置等についての運動をした一員でございますが、あれらも当初から関連工事として計画されていたが、戦争のために頓挫してしまった。その後、戦後の施策がおくれておるという現状でありますが、この水資源開発に関する限りは、そういう関連した工事は即時に基本計画の中に入れて、同時に解決をしていくべきものである。この促進法には、事業実施は地方公共団体、あるいは国、あるいは公団が、基本計画に定めたものをそれぞれやることになりますが、国が基本計画を定めるにあたりましては、国の責任においてさような関係地方のことについて配慮をして決定していくべきものである、かように考えております。
  221. 迫水久常

    迫水国務大臣 私は十四条の規定というのは、その工事によって直接——直接という言葉は当たらないかもしれませんけれども、それに密接に関連して起こるべき損害に対するところの補償の規定だと思っております。今、井堀さんがお述べになりましたように、東京都というか、下の方の利益のために埼玉県なり群馬県なりの知事さんが困る。そういうな場合には、この基本計画について知事さんに意見を聞くわけです。そのときに知事さんが、それならばこういうことをしてくれないか、ああいうことをしてくれないかと、おそらく意見を言われるでしょうから、自然それが基本計画に組み入れられることになってきますから、それは十四条の補償の問題ではなくて、基本計画のところの条文ですか、地方長官の意見を聞いて、その意見がまとまらないときはどうするかということになります。これをきのう西村さんが御質問になりましたときに、私はこう答弁しました。まとまらないときはその基本計画は成り立たないのです、しかし、ただ反対せんがために反対されるようなことでは困るのです、というようなことを言いましたら、そういう知事さんはいないだろうということを西村さんはおっしゃいました。そこのところはきわめて政治的に、隣保相互の精神で基本計画はでき上がる。そういう程度で、今おっしゃいました上流地帯の人たちの利益は確保しなければならぬ。一方に耕地がなくなったとすれば、他方に何らかの措置が講ぜられる、こういうことになると思います。
  222. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今の経済企画庁長官の御答弁で、われわれは非常に不安を持ってきたのです。あなたは地方の知事は賛成するだろうとおっしゃられますが、それは一つは十四条の補償がものをいい、一つにはやはり日本国民の隣保相互の思想が普及してこなければ、すなわち物心両面からなる協力関係が成り立たなければこれは行き詰まる。行き詰まればこれは成り立たぬからと、あなたも投げてしまう。投げてしまうような法案なら出さぬ方がいい。ほったらかしておけばいい。そうでなしに、ほっておけない水争いが今起こっておる。一方では、はなはだしく水が不足して、一方では洪水が出るほど余っておるという状態があるのです。そこにこの法案の必要が生じたのでありますから、まあ正直といえば正直ですが、経済企画庁長官の答弁を聞いて、そうですかとわれわれ引き下がるわけにいかない。今群馬県、埼玉県の例をとったのですが、問題はどこでも同じです。知事には知事のそれぞれの立場がありますから、それをやはり納得させるように——これは、知事個人が納得するとかしないとかいうことではないのです。その地域の住民の納得が得られなければならぬ。もしその地域住民の意思と全く違ったことを知事がやったら、それは知事の地位をみずから冒涜することになるから、理屈の上からそんなことはあり得ない。ですからやはり、特別なものは別として、一般に住民のある程度の了解が得られるということが第一なんです。その了解を得られるようにするためにはということであって、われわれこの法案を作るときには非常に重大な責任を感ずるわけであります。あなたはそういう点を非常にはっきり割り切って、のんきにかまえておられるようですが、そういうことではこの法律はもう意味をなさぬし、非常に危険が伴うので、ちょっとお尋ねをしたわけでありますが、建設大臣と経済企画庁長官の考えをはっきり終始ずっと伺うことができました。  この際私は、わが党の立場も明らかにいたしまして、要望を申し上げて私の質問を終わりたいと思うのです。それは、冒頭にもお尋ねいたしましたように、治水治山の問題は政党の立場やイデオロギーを越えて手を染めなければならぬ。日本民族全体の利害のために国土総合開発の中において考えられるべき時期がきている。それは、水が足らぬところとか、あるいは争いが起きているところを調整するというような症状的なことでは解決しない。むしろこの際、年々歳々洪水のために莫大な被害を受けておるその水の猛威をコントロールして、そしてやはり日本経済、国民福祉のために活用する方向にこの種のものは考えていくべき機会にある。でありますから、そういう意味で、今すぐこういうものが実現しようとは思いませんけれども、将来これがそういう方向に成長していけるものであるということだけは絶対の条件だと考えまして私は質問をいたしました。建設大臣はややこれに近い御答弁をいただきましたので、最後にそういう将来を十分に見通して、本案の改正すべき点は改正し、あるいは運営の面において改善をはかるべき点ははかることを強く要望いたして、私の質問を終わりたいと思います。
  223. 加藤高藏

    加藤委員長 門司亮君。
  224. 門司亮

    ○門司委員 ごく簡単に二、三の点だけを聞いておきます。  最初に聞いておきたいと思いますことはこの法案の性質です。これは水系別と書いてありまして、そして三条にややはっきりしたことが書いてあるように見受けられます。この関係をちょっと聞いておきたいのですが、三条はどういうふうに解釈しておいてよろしゅうございますか。この法案の条文を読みますと、大体は水系別に開発していくということがあって、三条で、もし必要があればほかの水系も一応考えて、二つの水系一つにして開発することができるというように解釈しておいてよろしゅうございますか。この辺がちょっとわからないのです。そういうことを私が聞きますのは、実際日本の状態を見てみますと、もう河川の水系だけで議論する段階を越えているのじゃないかと思うのです。たとえば北九州にいたしましても、五市が合併して一つの大きなものになって洞海湾の開発が行なわれるということになりますと、もはや遠賀川水系だけではだめなんですね。どうしても筑後川水系に持っていく以外水の取りようがないのです。遠賀川水系と筑後川水系とは水系が違うのです。片一方は熊木です。そうでなければあそこの開発は大分県に水源をとる以外にない。そこで三条にこういうことを書いて、もしそういう必要があればずっと総合して開発ができるのだというふうに私には受け取れるのですが、これはそういうふうに解釈しておいてよろしゅうございますか。
  225. 迫水久常

    迫水国務大臣 それはそれでけっこうだと思います。たとえば木曾川、揖斐川、長良川、この三つの河川があるのですけれども、それは総合的に一つ水系として考える。あるいは遠賀川、筑後川という二つの水系指定して、それを総合的に考えるということはできることであります。
  226. 門司亮

    ○門司委員 この点はこの法案の非常に大事なところだと思います。こうなってきますと、先ほど井堀君から話がありました地方自治体の長の立場というものは非常にめんどうになると私は思うのであります。そこで問題を解決するには、三条が私の今聞きましたような意味だとして、また長官お答えになったような意味だといたしますと、知事の立場というものがどういう形で統制されるかということです。やはり知事としては、熊本県は熊本県の発展計画を立てていると思います。そうすると、将来これだけ水がどうしても必要になってくるというとき、この法案で調整はつきますか。
  227. 迫水久常

    迫水国務大臣 熊本県知事なら熊本県知事が、ほかのところは考えないで、自分のところだけ考えればいいという知事さんでしたら、なかなかつかないと思います。実際そこのところをつけるのはむずかしいのですけれども、つけなければいけないと思います。
  228. 門司亮

    ○門司委員 そういう御答弁ですから、できないことだと私は思います。今の形で、何でもこの法律でやってしまうというわけにはいかないと思います。ところが、問題になりますのは、工業地帯はおのおの条件を持っているわけです。重工業を山の中へ持っていくわけには参りませんし、やはり海岸で港を持って、持ってくるもの、搬出するものが便利なところでなければならない。工業立地、工業立地といいますけれども、おのずから条件があるわけです。そういう場合にこの三条の規定が、そういう計画を立てている都道府県に非常に大きな影響を及ぼして、蹉趺をするようなことがありはしないかと私は思います。一つ水系別でありますと、割合と話がしょいのです。利害関係があるにしても近接いたしておりますから、お前のところでそういうふうにすれば、おれの方で困るじゃないかということがすぐわかるのですが、今の日本の状態は、水系がまたがって離れておりますと、なかなか住民感情というものはそう簡単にいかないと思うのです。それはそれでよろしゅうございます。長くなるからそれ以上聞きません。  もう一つの問題は、そういう問題になって参りましたときに、たとえばこの法律を読んでみますと、もとの計画は国、または治山治水関係については知事が行なう。それから、その他の水利については当該市町村になろうかと私は思います。この法律をそのまま読みますと、そういうふうに書いてある。そうすると、地方の自治体はおのおの十年ないし二十年、あるいはあるところでは相当長い期間の水の量というものを大体予定して、そうして水道計画をみんな立てると私は思います。そこで問題になりますのは、かりに開発公団事業をいたします。その中のおのおのの自治体の持っておりまするその水に対する権利、という言葉はどうかと思いますが、予定されておる水をどうしても確保しなければならないということは、これは私は言えると思う。それが現在の状態でありますと、たとえば東京なら東京は、東京の水利権だけを持てばいいのである。しかし、それが国の総合的な開発になるために、どうしてもそこに割り込んでいかなければならない。その場合に費用の負担は、治山治水等は都道府県と公団がおやりになりますが、市町村の場合の費用の負担はおのおの市町村が負担する。こういうふうに私はこの法律は解釈しておりますが、そういう将来の問題について、地方の自治体の負担関係というものはどういう形になりますか。これは平たく言いますと、ある程度の水利権を確保するということです。かりに一個の水で一万人の人間が養えるといたしますと、百万人の都市では大体一側の水を必要とする。その都市が将来五年なら五年のうちに百二十万になると、百二十個の水を確保しなければならない。そうすると、現在ある水よりも、何年か後における水量の確保というものはどうしても必要になってくる。そういうものについてはどういうふうに解決されますか。公団で一本になって、そういう権利の確保はできますか。
  229. 山内一郎

    山内一郎政府委員 審議会基本計画段階で、需要とそれから供給計画関係がいろいろ議論されますが、ある市町村で、将来長期計画として水道をこれだけやりたいという場合に、その全部の負担金を一度に出せないというような場合が生じてくるのじゃないかと思います。その場合には、そのうちのある年限だけの負担金公団に出す。そのあとの開発分でございますが、これは借入金によりまして公団が水資源を作りまして、将来その需要がきまったときに負担金として納める、こういうような制度も考えております。従って、はっきりとその審議会基本計画で、そういうある公共団体の水道の分が計画の中に入れば今のような方法でできる。従って、市町村が全額長期の分まで一時に出す必要はない、こういうふうに考えております。
  230. 門司亮

    ○門司委員 地方自治体の負担というのは、今の御説明によりますと、事業計画ができたときに御相談して、そして、その中で大体消化されていくというように考えておいてよろしゅうございますか。私が心配しておりますのは、水というものは非常にやかましい問題でありまして、たとえばダム一つこしらえて開発をするという場合に、みな将来に備えておのおの権利を確保しておきたい。そういう場合には、水が余っておればいいのですが、片方の自治体は金があるからといって、水資源の確保を割合によけいやっているが、片方の自治体は金がないものだから、当分間に合わせだということでやっていると、権利関係ができてきはしませんか。水が十分あって、全体をまかなえればそういうことは起こらない。しかも、必ずしもそういうところばかりじゃないと私は思う。一方の自治体は水が十分できて、一方の自治体は手当をしなかったために、せっかく開発された水が確保できない。しかも、この開発は、考えようによっては水を規制してしまう。おのおのの自治体が、現在のように、自分はこの川の支流に一つダムをこしらえて水を取ろう、ということにはいかなくなってくる。全く地方自治体は、従来のような考え方で水源開発はできなくなってくる。そこで、私はそれを非常に心配する。現在なら大体地方によって、たとえば私の方の横浜なら横浜がどの水系にダムをこしらえるということで、これは自由にできるのです。ところが、これで今度ずっと規制されてしまうから、いやがおうでもここに根拠を持たなければ水を取得できないということになると、さっき申し上げましたようなことで、非常なめんどうな問題が起こりはしないか。その場合に、あらかじめ金を出しても出さなくても、その地域にどれだけの水が必要ということなら、それだけはいつでも分けてやることのできる余裕と準備がこの中で行なわれて、今の御答弁のように、あるとき金を払えばいいというようなことになれば私はけっこうだと思いますが、水の争いというものはなかなか深刻だから、やる方もなかなかやりたがらない。そういう点はどうです。
  231. 山内一郎

    山内一郎政府委員 今回の公団法の金の負担の制度としては、先ほど申し上げましたように、将来要るという水を借入金で作って、負担者がきまればそのときに負担してもらう、こういうふうになっております。実際に水が非常に少なくて需要者が多いという場合、はたしてそこまでいくかどうかということは、やはり懸念される問題でありますが、そういうことが起こらないようにできるだけ開発を促進していく、しかも、長期の見通しをもって促進していきたい、こういうのが公団法のねらいでございます。
  232. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ問題になりますのは、河川に対しましての維持、管理の問題が出てくるかと思いますが、河川の維持、管理はどうなるのですか。ダムをこしらえて、そして水だけは公団が統制しますが、あとの維持、管理はやはり従来通り都道府県でやる、こういう形になるのですか。
  233. 山内一郎

    山内一郎政府委員 従来の維持、管理の体系は、今度公団ができましても、やはり河川管理者としてやる。ただし、その施設を作ったために護岸がこわれるようなことが起こったとか、そういうような原因がはっきりした場合には、やはり公団が行なわなければいけないと思いますが、それ以外は、従来の河川の維持、管理、こういう点は変わりません。
  234. 門司亮

    ○門司委員 今の御答弁ですが、この法律の中にそういうことがはっきり書いてありますか。水の統制だけは国がやり、公団がやり、あとの維持、管理はお前さんの方でやりなさい。実のあるところだけは公団がみんな持っていってしまって、あとの方だけはお前らがやりなさいということになると、都道府県は因ると思うのです。やはり水を自分のところで持っておって、そうして、それからくるいろいろな問題を、金をかけて護岸を直すとか、いろいろな維持、管理をしていく。これは理屈がわかる。しかし、実のあるところはみんな公団に持っていかれてしまい、あとはお前の方でいいようにやれということは、ちょっと困ると思うのです。これはちょっと知事さん困りはしないか。今答弁されたことがほんとうにこの法律の中のどこかに織り込んであって、そうしていさかいのないように、私はこれは問題になろうかと思うからこの際聞いておきます。維持、管理は知事がやるべきか、あるいは公団がやるべきかということが明確になっていませんと、将来問題を起こす。問題を起こして迷惑するのは近所の住民だ、こういう話に私はなろうかと思います。この点は、この法律の中に明確になっておりますか。
  235. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ちょっと言葉が足りなかったようですが、公団が作りました施設の管理は公団がやる。それ以外の従来の、公団の施設に関係ない個所の管理、これはもう従来の河川法の建前でやる、こういうことでございます。
  236. 門司亮

    ○門司委員 その辺の問題ですが、そう割り切ってしまわれると、地方の自治体は割りの惑いものができてしまって、水利の権利は持たないがその河川だけはお前の方だ、こわれたときはよいように直せということになりましても、川というのはなかなかそうは簡単にいきません。川の形を変えますと、いろいろなところに、被害が出てくることは、皆さん御存じの通りだと思います。そういう場合、水利権は国が取り上げてしまい、維持管理はお前の方でやれということでは、ちょっと困ると思います。もう少しそこをはっきりして下さい。
  237. 山内一郎

    山内一郎政府委員 水資源開発施設、たとえばダムを作りました場合に、そのダムを作ることによって影響する区域といいますか、そういう点については、公団も維持、管理、そういうのを責任を持つ、こういうことになると思います。
  238. 門司亮

    ○門司委員 はっきりわかりませんけれども、皆さん御迷惑だと思いますから、あとでまた機会があれば、どなたにでも聞いてもらいたいと思います。どう考えても、権利だけは国が握ってしまうが、あとの始末はお前さんの方でやれということになって、地方自治体の固有の権限、住民の当然の権限が非常に薄くなって、負担だけがかぶされてくる。権利は国が取り上げるというようなことは、どう考えても少し、この法律だけを読んだのでは片手落ちのような気がします。この点については、また後ほど他の同僚から当該委員会で聞かれると思いますので、きょうは非常におそくなっておりますから、これで一応質問を終わります。
  239. 加藤高藏

    加藤委員長 以上をもって本連合審査会を終了いたします。これにて散会いたします。    午後五時三十四分散会