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谷口参考人 滋賀県知事の
谷口久次郎であります。
私のところの
水資源は、他の
水資源の
地帯とは異なるものがありまして、御
承知の
琵琶湖を
利用するということが結局
水資源ということになる
地帯であります。特に私の
地帯は
大阪を
中心とする大きな
工業地帯を持っている。ここに今
大阪の
工業の
状況を考えてみますと、この際どこかに水を求めなければこれが死に固まってしまうというような
状況になりつつあるのであります。その結果は
地下水を盛んに
利用する。
地下水を
利用する結果は地盤の沈下を来たすということで、非常に
脅威を来たしておるということであります。このときに、たまたま
近畿には
琵琶湖という大きな湖があって、
近畿ではこれを有効に使えば非常にけっこうだということになるわけでありますが、われわれ
滋賀県民としましても、この
近畿の
工業地帯の繁栄の中に
滋賀県もともに置かれておるのであるという観点から、この
琵琶湖をフルに
利用するということには少しも
異議はないのであります。われわれはあくまでもこうした危機に面するようなときには
琵琶湖を開放して、そして
近畿の
工業地帯を守らなければならない、こういう考えに立って常に
下流の
知事等とも話をしておった次第であります。
しかしながら、
琵琶湖は御
承知の
通り、
年間五十四億トンという水を
下流へ流しておるのであります。この
琵琶湖の
水位を一センチ下げますと七百万トンの水が得られる。そういう大きなものを持っておるということでありまして、この
琵琶湖のできたのは三十万年ほど先だといわれておりますが、それ以来
琵琶湖というものと
県民生活というものは全く一体となって、これの
水位ということについては
県民は非常に神経をとがらして考えておるのであります。それで、平常
水位というのを零点というておりますが、この零点から五十センチ高くなるまではしんぼうができる、五十センチを一センチでも多くなると、
滋賀県の
県民生活の上に非常な
脅威を受ける。なおまたこれがマイナス五十センチをこえるということになると、これも非常な深刻な
影響を受ける。今度の
琵琶湖の
開発はわれわれはきん然としてこれに応ずるけれ
ども、その点に対しては十分な
施設と補償を取らなければならぬというのがわれわれの
立場なのであります。
そんな
関係から、いろいろとこの
法案を検討してみますと、今お二方からも
お話がありましたいわゆる
水源の
涵養保全とかいうことが
一つも見てない。五十四億トンというものが
年間に流れますが、それは
明治の
時代も今も五十四億トン。これは日々計算しておるので、はっきりいたしております。この絶対量というものには変わりはありません。ところが、
洪水期になってくるとうんと水が出てくる。また、
渇水期になると流れる水がないという状態は、
明治の
時代と非常に変わっておる。これは何を物語るものかといえば、
上流の
水源地のうっそうとした森林が切り尽くされて、そして
水源を
涵養するようなものがないためにそういうような
現象が起こっておるということなのであります。われわれは
琵琶湖を
利用するならば、まずこの
水源を
涵養するために
植林をしていったならば、
滋賀県の山は大体総面積の三分の二を持っておるということなんでありまして、そんな
関係から、これにうっそうとした
植林をやるということになったら、将来は
脅威を感ずるようなことはないであろうと思います。ところが御
承知の
通り、山村の
経済は近ごろ非常に疲弊しておりますので、
植林をするというような力はとうていないということであります。そんな
関係から、今度のこの
法案には
水源の
涵養、
水源の
保全ということをもっと強調されていただけばわれわれは非常に安心するのであります。この点が欠けておるということが非常にわれわれは
心配する点でありまして、そんな
関係で、今の五十四億トンというものを流すのに、日々同じような
水量、いわゆる
有効水量として流そうとすればどうするかということであります。これはちょうど
堅田締め切り案ということが今いわれておりますが、一番狭いところに堰堤を作って、北と南に
琵琶湖を分ける。足らぬときには、北の方の
水位を低めて流量をよけいにしていく。また、水の多いときにはそこにためて、水が不足したときに備える。こういう操作が一番よいということがいわれております。ところが御
承知の
通り、三十万年もわれわれはあの
琵琶湖の中に住んでおるということで、
生活の中に浸透しているこの
琵琶湖の
水位を一センチ下げることさえも非常に
脅威を感ずるということで、いろいろな点に
関係を持っておるということ。その
関係はどうかと申しますと、漁業ありあるいは港湾があり、あるいは交通あり、
観光資源としての問題、それから
地下水の問題――これは
水位が五十センチ以下に下がってくると、
地下水の
水位が下がってくる。私の方で近ごろ、
余呉湖の
水位を七メートル下げて
下流のためにやったのであります。ところが、この結果はどうかといいますと、
余呉湖の水圧が下がって参りますと、
下流の方の十キロから離れたところで井戸水が低下して、くみ上げができぬということになり、井戸の掘り下げをせんならぬという
現象が起こっております。今あれは低下四メートル案、三メートル案ということがいわれておりますが、私は絶対にまず最初は二メートル以上は下げてはいかぬということを言うております。そうして経過をながめてやることでなかったら、どんな災害が起こるかわからぬということでやっておるのであります。そんなことで、この
水位がもしも大きな下がり方をするということで、
地下水に
影響を及ぼすということになりましたら、何もかも大きな
影響を受けます。それらに対する
対策をどうするか。これらもいろいろ研究して、われわれは
対策を持っておりますが、そんなことには相当の金が要るということ。ことに
観光資源としての
琵琶湖。
滋賀県に
琵琶湖がなかったら、これはもうほとんど
観光の何ものもないというほど
観光資源として使われておる。そのものをめちゃくちゃにしてしもうたら、
滋賀県は台なしになってしまう。これに対してどう
対策を講ずるか。これに対する成案をわれわれは持っておるのであります。これらも、必ず
公団においてやり遂げるのだ、こういうことであれば、われわれはきん然としてこれに応ずる用意を持っておるのであります。
それで、今の
法案をいろいろながめてみると、もう少しこういうふうにしであったらいいという点があります。ほんとをいえば、
琵琶湖のような特殊なところには、
琵琶湖水資源開発促進法という
特別立法をしてほしい、全く事情が違いますから。けれ
ども、そういうことを言うても仕方がないから、これによるということでなければならぬが、今申し上げるような点が非常に欠けておるということであります。これにはやはり
水源の
涵養をどうするか。これは聞くところによると、
水源の
涵養は、農林省のやっておるあれによりさえすればできる。これができることなら、今山は荒廃しておりません。それができぬから水が減っていったということなのであります。やはりこの
琵琶湖を
利用するという以上は、あくまでもそうした点に
責任を持ってもらえるということでないといかぬと思われるわけなのであります。そんなことで、大きな点はその点が一点。
もう
一つは、二十三条の、
知事の
河川管理権というものを制約する。この法の性格から言うたら、
知事が
一つきかんぞというたらできぬような
法案ではいかぬ、やはり
知事の
河川管理権というものを幾分制約するということでないとこういう
法案は成り立たぬであろう、こう思いますが、事実はそうではない。全く反対だと思います。
滋賀県の場合で、もしも強制されてこれをやるのだというような印象を
県民に与えたら、絶対にできません。八十万の
県民が、一人々々がみんな
関係を持っておる。あの蜂之巣城であれば、あそこのダムをこしらえる
関係者だけがかれこれ言うだけであります。
滋賀県の場合は、
県民一人々々がみんな反対しだしたら、
知事の
権限を制約したくらいなことで解決つきません。そういうことをもっと私は大乗的に、
知事の
権限に触れるようなことはせずに、
知事はあくまでも
権限を持っておるのだが、自発的にこれをやるのであるという体制を立ててほしいと思うのであります。もしも、そうした
県民の意に反して、補償もせずに、また
希望するものもいれずにやろうとしたら、おそらく指一本させたら、私はお目にかからぬと思う。いかほど国の力でやられても、それはおそらくできぬであろう。これはあくまで自主的に、
下流の
工業県の
開発のため、われわれは繁栄をともにする
地帯のためにはこれを開放しなければならぬ、こう自主的に出て初めて
県民が
納得する。今のところも、そう言えば
県民が大体
納得しておるのであります。これを
知事を押えつけてやるんだというような体制で臨んできてもろうたら、くそ食らえというようなことになると思います。
そういうことでありますので、この
法案には、私らの
希望からいえば幾多の欠陥がありますけれ
ども、この間からいろいろ質問応答の中にもうたわれておりますし、なおまた、これに対してあるいは附帯決議をしていただくというようなことで、そうした点をはっきりとやっていただくということになれば、われわれはこれに基づいてやるのであります。それで、これを
開発するためには、もっともっと御
考慮をいただきたい。これを言うておるとだいぶ時間が経過いたします。
滋賀県の
琵琶湖の場合は、これを取り上げたら際限がない。一時間言わしてもろうても足りませんけれ
ども、要点はそういうことでありますので、
一つ格別の御
考慮をお願いいたしたいと思います。