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1961-06-01 第38回国会 衆議院 建設委員会 第40号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十六年六月一日(木曜日)    午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 加藤 高藏君    理事 佐藤虎次郎君 理事 薩摩 雄次君    理事 瀬戸山三男君 理事 松澤 雄藏君    理事 石川 次夫君 理事 岡本 隆一君    理事 中島  巖君       逢澤  寛君    綾部健太郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       浦野 幸男君    尾関 義一君       大倉 三郎君    大沢 雄一君       大高  康君    金丸  信君       亀岡 高夫君    久保田円次君       二階堂 進君    丹羽喬四郎君       前田 義雄君    松田 鐵藏君       栗林 三郎君    兒玉 末男君       實川 清之君    西村 関一君       日野 吉夫君    三宅 正一君       山口 鶴男君    玉置 一徳君  出席国務大臣         建 設 大 臣 中村 梅吉君         国 務 大 臣 迫水 久常君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  曾田  忠君         建 設 技 官         (河川局長)  山内 一郎君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治君  委員外出席者         建設事務官         (河川局次長) 鮎川 幸雄君         参  考  人        (長野県副知事) 笠原 吉三君         参  考  人         (群馬県知事) 神田 坤六君         参  考  人         (滋賀県知事) 谷口久次郎君         参  考  人         (愛知用水公団         理事)     伊藤  佐君         専  門  員 山口 乾治君     ――――――――――――― 六月一日  委員綾部健太郎君、上村千一郎君、仮谷忠男君、  山口好一君、三鍋義三君、山中日露史君及び田  中幾三郎辞任につき、その補欠として亀岡高  夫君久保田円次君、尾関義一君、浦野幸男君、  西村関一君、山口鶴男君及び玉置一徳君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員浦野幸男君、尾関義一君、亀岡高夫君、久  保田円次君、西村関一君、山口鶴男君及び玉置  一徳辞任につき、その補欠として山口好一君、  仮谷忠男君、綾部健太郎君、丹羽喬四郎君、三  鍋義三君、山中日露史君及び田中幾三郎君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  水資源開発促進法案内閣提出第一九八号)  水資源開発公団法案内閣提出第一九九号)      ――――◇―――――
  2. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 これより会議を開きます。  水資源開発促進法案並びに水資源開発公団法案の両案を一括議題として審査を進めます。  本日は参考人より意見を聴取することといたします。  ただいま御出席参考人は、長野県副知事笠原吉三君、群馬県知事神田坤大君滋賀県知事谷口久次郎君、以上の方々でございます。  なお、愛知用水公団総裁濱口雄彦君は所用のため出席できないとのことで、同公団理事伊藤佐君がお見えになっておりますので、同君より参考人として御意見を承ることにしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 御異議ないものと認め、そのように決しました。  参考人には非常に多忙なところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。どうぞ忌憚のない御意見をお述べ下さるようお願いいたします。  議事の順序は、まず参考人から御意見を承り、御意見の開陳が終わった後、委員各位より参考人に質疑をしていただくことにいたします。  なお、時間の都合がありますので、お一人十分くらいにお願いいたします。  まず、長野県副知事笠原吉三君。
  4. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 長野県の副知事笠原でございます。時間の制約もあるようでございますので、簡単に申し上げたいと存じます。  この二つ法案によりますと、水資源開発利用のやり方を検討いたしますと、本県などのように水を供給する立場にあるものの利害と申しますか、そういうものが十分に考慮されていないように思われます。水の供給を受けます側、水を利用いたします立場中心となっておりますことは、若干問題のあるところであろうと思われるのであります。特に河川は申し上げるまでもなく、利水の面だけでなくて、治山治水という大事な仕事があるわけでございます。でありますから、そういう総合的な見地からこれを管理していく必要があるのは当然のことであります。また、水資源開発はその地域の、たとえば私どもでいいますと上流のいろいろな社会の水に関する慣行というものや、地域開発特異性というものがきわめて大きな影響を持つこととなろうと思いますので、地方住民の意思を十分に尊重していただいて、水系全体にわたりまして均衡のある開発が行なわれますように、特に次の点について御考慮をいただきたいと思うのであります。  まず第一は、水資源開発促進法案によりますと、「河川水系における水資源の総合的な開発及び利用合理化促進を図り、」というふうに響いてございますけれども、これはすべて水資源保全涵養基本といたしまして初めて考えられる事柄でありますので、水資源開発のこの二つ法案にぜひとも水資源保全涵養を進めるというような規定を入れていただきたい。この法律水資源保全涵養目的とするものであるということをはっきりと一つうたっていただいて、そうして、私どものような上流県と申しますか、そういう住民たちを安心させていただきたいというふうに考えるのであります。これが第一点。  第二点は、当面する地域の水不足を補うということ。これはもちろん経済成長等とからみ合わせまして非常に大事なことであるのはもちろんでございますけれども上流地域開発もあわせて計画する必要があろうと思うのであります。単に上流の水を下流利用するというだけの考慮ではなくて、上流におきましてもこの水を利用しまして、上流地域開発をはかりたいという大きな計画のもとで水資源開発を行なっていただきたいということでございます。申し上げるまでもなく、経済成長やあるいは地域格差問題等が、今私どもの県でもなかなかうるさい、しかもなお大事な問題として取り上げられておりますので、どうかこういうふうにおくれた地域開発も考えながらこの法案を運用していただきたいということが第二点でございます。  それから第三点は、これはもうすでに議論になっておるところでございますけれども河川法管理体系の根本に触れますような変革は避けてもらいたい。これは御承知公団法二十三条第一項のことでございます。河川法の根本的な改正なり何なりは別に取り上げて研究していただいて、この公団法でこういうことを規定して管理体系を変えていくということはお取りやめ願えれば幸いだ、こういうことでございます。  最後に、水資源開発に伴います特定施設使用というようなことも、なかなかはっきりいたしておりません。あるいは政令規定するようにもなると思うのでございますけれども、私どものような貧乏の県では、こういう費用負担等がどうなるのであろうかというような心配もあるわけでございますので、抽象的でございますけれども費用はできるだけ国において負担していただくような措置を願いたい、こういうことでございます。  まことに簡単でございますが、以上の四点を申し上げまして、私の陳述にいたしたいと思います。(拍手
  5. 加藤委員長(加藤高藏)

  6. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 群馬県知事神田坤六でございます。私も長野の副知事さんと同様に、上流水源地帯開発あるいは民生の安定ということに責任を持たされている立場からいたしまして、今回の水資源開発立法に対しては意見を申し述べる機会をぜひいただきたいとこいねがっておりましたところ、幸いにして意見を申し述べる機会を与えていただきまして、まことに光栄かつ感謝にたえません。  そこで、内容的な問題を申し上げる前に、上流県水源地帯知事という立場から、また群馬県の知事という立場から、率直に諸先生方に聞いていただきたい点を、立場上の立脚問題を申し上げて、それから内容問題を申し上げようと思います。  第一に、大へん失礼なことを申し上げますけれども、今回のこの二法案のお取り運びが非常に不自然で唐突であって、私どもには非常な懸念と不安を持つということが偽らざる実感でございます。仄聞するところでは、利水三省との調整問題がむずかしくてなかなか具体案ができなかったのだ、それには大へん苦労があったのだということも何っておりますけれども利水三省政府当局の間の権限の調整だけが中心問題とされまして、生命線につながるような一番重大な深刻な関係のある地元県、上流県水源県、地方側に対する御連絡や御相談というものがどうも非常に手薄であったように思うのでございまして、私ども立場から見ておりますと、何やらぼそぼそと進められてしまったような感じがして仕方がないわけでございます。この点は、一つそういう立場の点だけを申し上げておきたいと思うわけでございます。  次に、率直に申しまして、群馬県の県民は、こういう問題を見ますときに、かねてうわさに出ている沼田ダムという問題を当然念頭に浮かべるわけでございます。いよいよ沼田ダムがやってくるなということを旺盛的に本能的に考えて、そしてこの法案を見るわけでございますから、非常な神経質な、神経鋭敏で深刻な不安と懸念を持っているということでございます。沼田ダムのことにつきましては、もう先生方も御承知でございましょうから、あまり多く申しませんが、二千何百戸も水没するとか、八億トンの水をためるとか、えらい広大な話でございますけれども、それがどうも責任のあるような、ないような、もやもやとした話がちらほらとしょっちゅう流されて、まことに地元民としては、いても立ってもいられない。こういう実情があるわけでございます。  その次に、今、長野の副知事さんからもお話が出ましたが、今度のこの資源法は、上流水源地帯に対する配慮の跡がさっぱりないのであります。ただ水をつかまえて下流に持っていって、産業人口集中地帯に分けるということだけを願っておるような感じが強いので、上流水源地帯に対する配慮は、どこをやっていただいたのだということが何もないわけであります。これはもちろん緊急の当面のねらいが集中地帯開発でございますから、またこの立法特別法でございますから、そういう点が主眼になることは了解はできるわけでございますけれども、しかし、やはり水は下流でだけ使うべきものじゃない。やはり公平に、合理的な配分ということをどうしても考えていただかなければならぬわけであります。端的に申しまして、この二つ法案群馬県民が見まして、群馬県民にこの法律関係があるかないか、こう言いますと、関係がないとは言えないわけで、重大なる関係がある。それならば何か希望の持てるような、期待の持てるようなことがあるのかというと、一つもないのであります。ただ関係があるのは、不安と懸念、ひどい口にあうかもしれないという心配が残るだけであって、積極的な、内容的な希望とか期待は全然感じられない。そういう法律が作られるのは、地元民としてはえらい心配にたえないということでございます。  次に、河川管理権限の問題とか、経費負担の問題とか、そういう重要な問題が、きわめて包括的に政令に委任されているわけでございます。経費負担率がどうなるとか、国庫の補助率がどうなるとか、そういうような問題は非常に重要な問題で、考え方によっては、それだけのために特別立法していただくほどの価値のあるくらいな大きな問題でございますが、そういう数々の問題を十ぱ一からげに政令に委任しておられるわけであります。政令規定でも如才のない御配慮を賜わることだろうとは思っておりますけれども、しかし、何やら公団さえ作ればあと仕事はどうにか片づける、とにかく何が何でも公団を作ればというような、取り急いだような感じが強くて仕方がないのであります。私どもは必ずしも今の段階に至って、公団はけしからぬとか、よせとかいう意見は申しませんけれども、しかし、公団中心にして仕事を進めていくことになれば、やはりそれに関連するところの地元関係等のいろいろな問題は、相当深い、幅のある配慮をして安心をさしていただきたい。そうして、理解と納得の上で協力をさしていただきたい、こういうふうに考えておるのであります。  以上、総論的な問題でございますが、あとは内容的な問題を簡単に申し上げます。  第一は、何といいましても水資源開発目的のところへ、長野の副知事さんもおっしゃいましたように、ただ産業人口集中地帯に水を持っていって分けるというだけでなくて、どうしても上流水源地帯に対する開発あるいは民生向上発展ということも計画の中に配慮されているんだ、こういうことをどうしてもうたっていただきたいのであります。それは物事には順序もありますし、タイミングもありますから、下流緊急地帯から仕事が始まるということは当然だ、私どもも決してそれを妨害しようと思っておるわけじゃありません。だけれども、それだけであって、上流やその他の地帯には関係がない、何も手を打たぬという形は、どうしても片手落ちの法制のような気がして仕方がないわけであります。これはどうしても全般的に御配慮を賜わって、上流水源地帯地域開発とか民生安定向上という問題も、どうしてもうたい込んでいただきたいわけであります。いろいろお話が出ていますように、後進地域開発奥地振興という問題は、現在の政府当局が重要な国策として掲げておられるポイントであります。そのポイントにどうも逆行するような扱い方では、非常に地元としては納得をいたしかねる、こういうような都合があるわけであります。  その次に、開発基本計画の決定の手続関係知事意見を徴する、これを協議にしていただきたいというような問題。それから、基本計画記載事項の中に、やはり上流地帯地域開発関係する問題とか、あるいは関係者の補償問題とか厚生対策に関する事項等も、原則的な趣旨はうたい込んでいただきたいと考えます。  なお、開発審議会開発審議会は、大体全責任を持って具体計画をお作りになるようですが、開発審議会の中には、できれば水源県の知事を任命していただきたい。しかし、それがどうしてもできなければ、何らかの方法でそうした立場を代表するような発言を入れていただく方法がありそうなものだと思うわけであります。  それから、事業の実施方針の制定または変更等について、知事意見を聞くだけでなくて、協議にしていただきたい。  それから次に、河川法のいろいろな特例事項がたくさんあるわけであります。河川工作物新築等に関する河川法の十七条というような問題は、公団法の二十条でいろいろ協議とか手続はありますが、そういうことで十七条というような問題は結局排除されているのか、適用されるのか、はっきりいたさないわけであります。同じく河川法について、十八条の河川の敷地あるいは流水の占用に関するというふうな基本的な問題でございますが、これなとも排除されるのか、残っているのか、はっきりしないわけであります。それからなお、特定施設に対する地方負担の率とか、受益県の分担とか、そういうような点が一括政令に委任をされておる。明確でない。  それから、河川使用料の徴収問題というものは、河川法の四十二条にありますが、これなどもあまり触れてはおりませんけれども、一体存置されておるのか、どういうふうになるのか、こういうことも非常に不安なわけであります。  なお、河川法特定施設関係するところの費用都道府県負担の割合とか、あるいは灌漑排水にかかる受益地帯都道府県受益者負担だとか、その他受益者負担等についてのいろいろな規定が全部政令に譲られておるということであります。はっきりとしない、こういうことであります。  以上、私は気づきました点を羅列的に申し上げましたが、結論的には三つの点になると思うわけであります。  第一点は、「目的」の点において、どうしても幅の広い奥地水源地帯開発という問題を取り上げていただきたい。それから、明確にうたい出していただきたい。  それから第二の点は、河川法関係のいろいろな例外規定がたくさんあるわけであります。この点は十ぱ一からげに政令でもってきめるのだ、適当にきめるというようなことでなくて、できれば法律で明確にしていただかなければならぬ問題だと思うわけでございます。少なくとも審議の過程でよほど明確にして、将来時間が経過しましても動かないという明確な線が出なければいけないだろうと思っているわけであります。  第三には、経費負担の問題について。非常に深刻、重要な問題でございますが、それらに対する問題は包括的に政令に移されておって、そうしてあとで適当にということでは済まぬと思うわけでございます。  その三点等につきまして、さらに一段慎重な御検討をぜひお願いをしまして、私の意見を終わります。(拍手
  7. 加藤委員長(加藤高藏)

  8. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 滋賀県知事谷口久次郎であります。  私のところの水資源は、他の水資源地帯とは異なるものがありまして、御承知琵琶湖利用するということが結局水資源ということになる地帯であります。特に私の地帯大阪中心とする大きな工業地帯を持っている。ここに今大阪工業状況を考えてみますと、この際どこかに水を求めなければこれが死に固まってしまうというような状況になりつつあるのであります。その結果は地下水を盛んに利用する。地下水利用する結果は地盤の沈下を来たすということで、非常に脅威を来たしておるということであります。このときに、たまたま近畿には琵琶湖という大きな湖があって、近畿ではこれを有効に使えば非常にけっこうだということになるわけでありますが、われわれ滋賀県民としましても、この近畿工業地帯の繁栄の中に滋賀県もともに置かれておるのであるという観点から、この琵琶湖をフルに利用するということには少しも異議はないのであります。われわれはあくまでもこうした危機に面するようなときには琵琶湖を開放して、そして近畿工業地帯を守らなければならない、こういう考えに立って常に下流知事等とも話をしておった次第であります。  しかしながら、琵琶湖は御承知通り年間五十四億トンという水を下流へ流しておるのであります。この琵琶湖水位を一センチ下げますと七百万トンの水が得られる。そういう大きなものを持っておるということでありまして、この琵琶湖のできたのは三十万年ほど先だといわれておりますが、それ以来琵琶湖というものと県民生活というものは全く一体となって、これの水位ということについては県民は非常に神経をとがらして考えておるのであります。それで、平常水位というのを零点というておりますが、この零点から五十センチ高くなるまではしんぼうができる、五十センチを一センチでも多くなると、滋賀県の県民生活の上に非常な脅威を受ける。なおまたこれがマイナス五十センチをこえるということになると、これも非常な深刻な影響を受ける。今度の琵琶湖開発はわれわれはきん然としてこれに応ずるけれども、その点に対しては十分な施設と補償を取らなければならぬというのがわれわれの立場なのであります。  そんな関係から、いろいろとこの法案を検討してみますと、今お二方からもお話がありましたいわゆる水源涵養保全とかいうことが一つも見てない。五十四億トンというものが年間に流れますが、それは明治時代も今も五十四億トン。これは日々計算しておるので、はっきりいたしております。この絶対量というものには変わりはありません。ところが、洪水期になってくるとうんと水が出てくる。また、渇水期になると流れる水がないという状態は、明治時代と非常に変わっておる。これは何を物語るものかといえば、上流水源地のうっそうとした森林が切り尽くされて、そして水源涵養するようなものがないためにそういうような現象が起こっておるということなのであります。われわれは琵琶湖利用するならば、まずこの水源涵養するために植林をしていったならば、滋賀県の山は大体総面積の三分の二を持っておるということなんでありまして、そんな関係から、これにうっそうとした植林をやるということになったら、将来は脅威を感ずるようなことはないであろうと思います。ところが御承知通り、山村の経済は近ごろ非常に疲弊しておりますので、植林をするというような力はとうていないということであります。そんな関係から、今度のこの法案には水源涵養水源保全ということをもっと強調されていただけばわれわれは非常に安心するのであります。この点が欠けておるということが非常にわれわれは心配する点でありまして、そんな関係で、今の五十四億トンというものを流すのに、日々同じような水量、いわゆる有効水量として流そうとすればどうするかということであります。これはちょうど堅田締め切り案ということが今いわれておりますが、一番狭いところに堰堤を作って、北と南に琵琶湖を分ける。足らぬときには、北の方の水位を低めて流量をよけいにしていく。また、水の多いときにはそこにためて、水が不足したときに備える。こういう操作が一番よいということがいわれております。ところが御承知通り、三十万年もわれわれはあの琵琶湖の中に住んでおるということで、生活の中に浸透しているこの琵琶湖水位を一センチ下げることさえも非常に脅威を感ずるということで、いろいろな点に関係を持っておるということ。その関係はどうかと申しますと、漁業ありあるいは港湾があり、あるいは交通あり、観光資源としての問題、それから地下水の問題――これは水位が五十センチ以下に下がってくると、地下水水位が下がってくる。私の方で近ごろ、余呉湖水位を七メートル下げて下流のためにやったのであります。ところが、この結果はどうかといいますと、余呉湖の水圧が下がって参りますと、下流の方の十キロから離れたところで井戸水が低下して、くみ上げができぬということになり、井戸の掘り下げをせんならぬという現象が起こっております。今あれは低下四メートル案、三メートル案ということがいわれておりますが、私は絶対にまず最初は二メートル以上は下げてはいかぬということを言うております。そうして経過をながめてやることでなかったら、どんな災害が起こるかわからぬということでやっておるのであります。そんなことで、この水位がもしも大きな下がり方をするということで、地下水影響を及ぼすということになりましたら、何もかも大きな影響を受けます。それらに対する対策をどうするか。これらもいろいろ研究して、われわれは対策を持っておりますが、そんなことには相当の金が要るということ。ことに観光資源としての琵琶湖滋賀県に琵琶湖がなかったら、これはもうほとんど観光の何ものもないというほど観光資源として使われておる。そのものをめちゃくちゃにしてしもうたら、滋賀県は台なしになってしまう。これに対してどう対策を講ずるか。これに対する成案をわれわれは持っておるのであります。これらも、必ず公団においてやり遂げるのだ、こういうことであれば、われわれはきん然としてこれに応ずる用意を持っておるのであります。  それで、今の法案をいろいろながめてみると、もう少しこういうふうにしであったらいいという点があります。ほんとをいえば、琵琶湖のような特殊なところには、琵琶湖水資源開発促進法という特別立法をしてほしい、全く事情が違いますから。けれども、そういうことを言うても仕方がないから、これによるということでなければならぬが、今申し上げるような点が非常に欠けておるということであります。これにはやはり水源涵養をどうするか。これは聞くところによると、水源涵養は、農林省のやっておるあれによりさえすればできる。これができることなら、今山は荒廃しておりません。それができぬから水が減っていったということなのであります。やはりこの琵琶湖利用するという以上は、あくまでもそうした点に責任を持ってもらえるということでないといかぬと思われるわけなのであります。そんなことで、大きな点はその点が一点。  もう一つは、二十三条の、知事河川管理権というものを制約する。この法の性格から言うたら、知事一つきかんぞというたらできぬような法案ではいかぬ、やはり知事河川管理権というものを幾分制約するということでないとこういう法案は成り立たぬであろう、こう思いますが、事実はそうではない。全く反対だと思います。滋賀県の場合で、もしも強制されてこれをやるのだというような印象を県民に与えたら、絶対にできません。八十万の県民が、一人々々がみんな関係を持っておる。あの蜂之巣城であれば、あそこのダムをこしらえる関係者だけがかれこれ言うだけであります。滋賀県の場合は、県民一人々々がみんな反対しだしたら、知事権限を制約したくらいなことで解決つきません。そういうことをもっと私は大乗的に、知事権限に触れるようなことはせずに、知事はあくまでも権限を持っておるのだが、自発的にこれをやるのであるという体制を立ててほしいと思うのであります。もしも、そうした県民の意に反して、補償もせずに、また希望するものもいれずにやろうとしたら、おそらく指一本させたら、私はお目にかからぬと思う。いかほど国の力でやられても、それはおそらくできぬであろう。これはあくまで自主的に、下流工業県の開発のため、われわれは繁栄をともにする地帯のためにはこれを開放しなければならぬ、こう自主的に出て初めて県民納得する。今のところも、そう言えば県民が大体納得しておるのであります。これを知事を押えつけてやるんだというような体制で臨んできてもろうたら、くそ食らえというようなことになると思います。  そういうことでありますので、この法案には、私らの希望からいえば幾多の欠陥がありますけれども、この間からいろいろ質問応答の中にもうたわれておりますし、なおまた、これに対してあるいは附帯決議をしていただくというようなことで、そうした点をはっきりとやっていただくということになれば、われわれはこれに基づいてやるのであります。それで、これを開発するためには、もっともっと御考慮をいただきたい。これを言うておるとだいぶ時間が経過いたします。滋賀県の琵琶湖の場合は、これを取り上げたら際限がない。一時間言わしてもろうても足りませんけれども、要点はそういうことでありますので、一つ格別の御考慮をお願いいたしたいと思います。
  9. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 伊藤佐君。
  10. 伊藤参考人(伊藤佐)

    伊藤参考人 愛知用水公団伊藤でございます。  二法案について意見をお求めいただいておるのでありますが、実は詳細の研究をいたしておりませんので、具体的なことにつきましては差し控えさしていただきます。最近の水の需要増大、工業用水あるいは水道用水、あるいは農業用水の合理化といったようなことが非常に叫ばれておりますし、またその必要が非常に切実になって参っております現状からいたしまして、すみやかにこういったような方法を講ぜられまして、水の開発促進あるいは治水の面、総合的な水の処理をしていただくことが必要である、かように考えます。これはわれわれの乏しい経験からいたしまして、このように感ずる次第でございます。  簡単でございますが、以上。
  11. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 これにて参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  12. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。  中島巖君。
  13. 中島(巖)委員(中島巖)

    ○中島(巖)委員 参考人の方々には大へん御苦労さまでございます。私、社会党の中島でありますが、この法案が提出されました経過、それから私ども立場、それから御質問をしたい点の要旨などについて、若干前置きをしないとおわかりにならぬと思いますので、前置きをいたしまして、それから各条項についてお尋ねいたしたいと思います。私は三県知事に質問いたしまして、愛知用水公団に対しては他の方から質問があると思いますので、私は省略をいたします。  実は、この二法案が提出されましたのは、先月の二十三日に本会議で趣旨説明があり、二十四日に当委員会において法案の趣旨説明があったわけであります。御承知のように、先月の二十四日は通常国会の最終日でありまして、あと会期が十五日間延長をされておったわけであります。それで、私ども社会党の態度といたしましては、この水資源を合理的に開発いたしまして、工業用水その他の用水に充当せねばならぬというこの方針に対しましては、賛成なのであります。しかし、先ほども各県の知事さんから指摘のありましたような幾多の問題点を含んでおるわけでありまして、各省間におきましての折衝が一年有余もかかりまして、そして最終日の二十四日の委員会にかかって、あと十五日間でこの法案をあげてしまわねばならぬ、こういうような態度に対しまして、私どもは何と申しますか、理解のできない考えを持っておるわけであります。すなわち政府と自民党さえ話ができれば、あとは問答無用であげてしまうという態度に対しましては、遺憾ながら納得ができないのであります。今まで出ました各種法案の衆議院におけるところの審議日程を見ましても、三十四日とか三十八日とか、一番短い森林開発公団法案でさえ衆議院段階において十七日の日数を使った、こういう状態であります。従って、社会党はこの法案に対してさらに慎重審議をせねばならぬという態度を持っております。  そこで、この審議の過程においてわれわれが印象を受けたことは、水資源開発促進法とは申しますけれども、これは全国的のものではなくして、すなわち太平洋工業ベルト地帯と申しますか、つまり東京を中心とした京葉地帯、名古屋を中心とした地帯大阪中心とした地帯、北九州、福岡を中心とした地帯、当面この四つの地帯に限られておるわけであります。これらの水系は、利根川、木曾川、淀川、筑後川の水系になるわけであります。従って、その上流水資源県と申しますか、それらの知事さんたちと話し合いができておるかどうか。そういうような点に非常に疑問を持ちまして、すでに三日ほど前に、金曜日に皆さんに御出席を願いたく理事会に要求をいたしたわけでありますけれども、昨日になって突然きょうということにきめられたわけであります。この突然出た法案に対して、皆様の方にも準備をしてくるだけの日数を与えなければならぬという考えでありましたけれども、何にいたしましても私どもは数が少ないので、こういうような結果になったわけであります。  ただいまいろいろお話がありましたけれども、三県知事さんに第一番に質問をいたしたいことは、これは所管大臣が五人もある奇妙な法律でありますけれども、この公団法の成立以前に経済企画庁なりその他の官庁から、この大きな四河川水源県であるところの各知事さんに、これについて相談があったかどうかをお伺いいたしたいと思います。
  14. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 中央の官庁から具体的な御相談とか御連絡というものはありませんでした。
  15. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 具体的な相談と申しますと、特に知事にはなかったかと思いますけれども法案の内容なり、その他につきましては係が相当知っておりますので、多分どこかで説明があって、どこかで聞いてきて、どこかで理解しているんじゃないかというふうに思います。知事には直接なかったかと思います。
  16. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 正式の相談、きょうは正式に相談するのだというものは受けておりません。しかし、この問題は大きいだけに、どうするのかというようなことで、しょっちゅう建設省あたりの係官が出てきていろいろ話し合いをして、こういうものが出るであろうという予想はして、またお話も聞いておりました。そういう程度で、正式の相談は受けておりません。
  17. 中島(巖)委員(中島巖)

    ○中島(巖)委員 結論的に申し上げれば、三県知事とも正式に相談がなかったということで、これらにつきましては、後刻委員会において十分検討いたしたいと思います。  そこで、この法律は、端的に言えば、行き詰まったところの四大工業地帯へ水を供給するという法律であります。私どもも現在の四大工業地帯の窮状から見まして、そういうことの考慮を払わねばならぬと考えておるわけであります。しかし、そういう反面におきまして、この水源関係に対しての施策が何らこれに含まれておらぬ。早くいえば、あなたたちの県、水源県の水を収奪するところの法律であると言えるのです。   〔発言する者多し〕
  18. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 静粛に願います。
  19. 中島(巖)委員(中島巖)

    ○中島(巖)委員 反面そういう法律だと私は考えるのです。そこで、水源県の知事さん方は、この法律ができることによって水源県として何らかの恩恵があるとお考えになるか、その点をお伺いいたしたい。
  20. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 その点については、先ほど御説明を申し上げましたように、地元県としては具体的な直接の恩恵というものは感ぜられないということであります。
  21. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 地元県も恩恵を受けますように御配慮を願いたいと、先ほどお願いしたわけでございます。
  22. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 この法律が成立し工事が行なわれることが何か恩恵を受けるかということでありますが、われわれの要望がいれられるということであれば、一面からいえば恩恵的なものもないことはない。今の水源涵養というようなことに力が入れられるということになれば、現在山村で経費的にでき得ないような仕事もできてくるということで、恩恵があると思います。しかし、被害は非常に大きいが、この被害も補償されるということがあればしんぼうせざるを得ないということで、私はそういう点がこの開発法の施行にあたっての問題点であると思っております。これは無視されずにいけるものだ、こういうふうに思います。
  23. 瀬戸山委員(瀬戸山三男)

    ○瀬戸山委員 関連質問。参考人知事さん方にお伺いいたしておきます。先ほど社会党の中島委員の、この法案の立案途上において知事さん方に何か御相談やお話があったかという御質問に対して、御相談がなかったようなお話もあり、あるいは知っておるから何かあったんじゃないかというようなお話もありました。私が承知しておりますところでは、この法案政府が成案を得るまで相当長い時日を要しておる。しかも、御承知のように、日本の大新聞はほとんどがこの問題を大きく取り上げてきたわけであります。それはまあ別といたしまして、この法案の提案をする前に、私、直接ではありませんが、聞いておるところによりますと、われわれ、知事会からしばしば印刷物をもらっておりまして、知事会の名前によってこれに対する要望がなされておる。しかも、自治省が中心になってそれを代表して、政府部内でいろいろ検討されておるということでありますが、この知事会の要望というものはどういうことになっておるのですか。直接関係のある皆さんでありますが、そういうことを全然今日まで知らないでここにお臨みになったのか。それを一つ御説明願いたい。
  24. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 ただいまの御質問の点ですが、これはお説の通りに、こうした問題が中央で非常に熱心に御検討なさっておられるという様子は当然わかるわけで、私ともも非常に重大な関心と関係がございますから、積極的にいろいろお伺いをいたしまして、関係県が寄ったり、知事会が中心になったりいたしまして、いはいろとお願いをいたしましたり、また担当の方に御出席を願って御説明をいただいたり、そういうことはできるだけいたしたわけでございます。ただ、最終的な法案の文書とか体裁とか、そうした結論的なものがまとまって提案になる過程はずいぶんあわただしいものがございまして、もう少しじっくりいろいろとお願いをする機会をいただきたかったということを実は考えておりますけれども、でき得る限りは私ども立場から積極的にいろいろとお願いもして、一部お聞き届けもいただいたりして今日の運びに至ったということでございます。
  25. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 直接知事に話があったかというお話でしたから、直接はなかったようでございます、しかし、いろいろ聞くチャンスはあったようでございます、というふうにお答えしたのであります。そのほかはただいま神田知事の方からお話があった通りであります。
  26. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 私は事前に何ら相談を受けておらぬというのは、私は出席しなかったのでわからないのでありますが、五月の十三日に世話人知事会というのがあった。そこで企画庁の方から南部参事官という方が出てきて詳しい説明があった。相談を受けておるということになります。そんな関係で、私の先ほどの何ら相談を受けておらぬということは、そういうことで、事務的に受けておるということであります。
  27. 中島(巖)委員(中島巖)

    ○中島(巖)委員 そこで、自民党さんの方からだいぶ反対のような御意見もありますので、全般にわたらずに、直接都道府県知事関係のある法案についてのみお伺いいたしたいと思います。  この法案の第二十条に、「公団は、第十八条第一項第一号の業務を行なおうとするときは、政令で定めるところにより、前条第一項の事業実施方針に基づいて事業実施計画を作成し、関係都道府県知事協議するとともに、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。」、こういうようになっております。さらにその二十一条において、「主務大臣は、政令で定めるところにより、第十八条第一項第二号の業務につき、施設管理方針を定め、これを公団に指示することができる。この場合において、主務大臣は、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。」となっております。この第十八条第一項第一号というのは、「水資源開発基本計画に基づいて、次に掲げる施設の新築又は改築を行なうこと。」とありまして、一号のイが「ダム、河口堰、湖沼水位調節施設、多目的用水路、専用用水路その他の水資源開発又は利用のための施設」。それから口として「イに掲げる施設と密接な関連を有する施設」となっております。さらに第一項第二号は「前号の業務を行なうことにより生じた施設の操作、維持、修繕その他の管理を行なうこと。」、こうなっておるわけであります。これは単にあなた方に「協議」をせねばならぬ、こういう規定になっておるわけであります。しかし、特定多目的ダム法の第二章の四条におきましては、「建設大臣は、基本計画を作成し、変更し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事及び基本計画に定められるべき、又は定められたダム使用権の設定予定者の意見をきかなければならない。この場合において、関係都道府県知事は、意見を述べようとするときは、当該都道府県の議会の議決を経なければならない。」。このように多目的ダムの場合においては、都道府県の長の意見を聞かねばならぬし、都道府県の長は意見を言う場合においては、関係都道府県の議会の議決を経ねばならぬ、こういうように関係都道府県立場をはっきり法律で明記して尊重しておるわけであります。今度の公団法は、あなた方と協議せねばならぬ、こういうことだけをうたってあるわけでありますけれども、これについてどういう御意見を持っておるか。三県知事の御意見を承りたいと思うわけであります。
  28. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 ただいまの御指摘の点でございますが、私ども立場からいたしますれば、県民生活に直結するような深刻重大な問題がいろいろ策定されたり、方針決定されたりする時分には、できるだけ県民の理解と納得を得られるような方法を講じていただきたいというのが念願でございますから、できるだけ行き届いた措置をとっていただきたいということが私ども希望でございます。
  29. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 ただいま神田知事かちお答えしました通りでございます。
  30. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 私も両君と同様でございます。
  31. 中島(巖)委員(中島巖)

    ○中島(巖)委員 これは知事さん方にあらかじめお願いしておきますが、正式の話ではないが、自民党の諸君も多少の修正は応じよう、しかし、ここ一日のうちに強行採決をするのではないかというような意図が見えるわけです。従いまして、これは最後の皆様の意見を開陳する機会だと思いますので、各地方庁においては、いろいろ中央官庁の厄介になっておることもあるでありましょうけれども、忌憚ない意見をこの際述べるべきだと私は思うわけであります。  次にお尋ね申し上げることは、先ほどもいろいろ御意見がありましたけれども、二十三条において河川法のいろいろな特例を設けてあるわけです。私どもは、この基本法である河川法を特例によって――この法案には特例が三十四カ所もあるわけであります。従って、われわれは法律学者を参考人として呼んでいろいろと意見を聞きたいのでありますけれども、先ほども申し上げましたように、多数でもってごり押しにこれを通そうというような態度で、なかなか希望が達せられないわけなんです。そこで、これは私が申し上げるまでもありませんが、河川法第六条によって地方庁にかかわるところの河川は地方庁が維持管理に当たるべしとはっきりと規定をいたしておるわけであります。ところが、この規定によって河川法体系をくずすとも思われるような、公団が維持管理に当たるような規定がここにたくさんあるわけであります。そこで、特に私は長野県の出身でありますけれども、こういうようなおそるべき権限を与える公団でなくして、電力会社などが、たとえば天龍川水系においても至るところにダムを建設しておる。この委員会でもしばしば問題になりましたけれども、泰阜発電所の門島ダムは、このダムの設置のために上流二十キロにわたって河床が上昇し、八キロ、九キロの上において五十尺も河床が上昇しておる。それに対して、河川法において知事がこれを変更、撤去するようなことのできる規定はありますけれども、なかなかできぬ。それがために沿岸村民は年々歳々災害に苦しんでおって、幾多の行政訴訟などを経てきておるような経験もあるのです。しかるに、この公団法は、これらの維持管理の権利までこの公団に移すのでありますから、今の電力会社なんかと違った強力な立場になる。ことに長野県なんかは、これがために防災工事とか災害工事とかいうものに対して、国と府県の一部負担で実に莫大な金をかけておるのです。しかも、こんなものじゃない、今申し上げた河川法の特例を設けて公団は実施できるのだ。おそらく今までの状態から見て、県なんかでは手もつけられぬような状態になると思う。これはまた一つの例を申し上げますけれども水資源開発なんだから、電力なんかもこれに含めるべきものだと私は考えるのです。  電力関係について申し上げたので、一言、あるいはよけいなことかもしれませんけれども、つけ加えておきますが、水利使用料をわずかもらって、そのような災害工事を年々やっておる。すなわち、水を電力会社に収奪されてしまって、残っておるのは災害だけなんです。それから、電気ガス税というのがあるでしょう。おそらく現在は電力料金が四千何百億、五千億近いものになっていると思います。そうすると、電気ガス税では四百何十億という金が入るのです。長野県なんかは、たった二億か三億しか入っておりやせぬ。その電力をもらって繁栄をしている都市へ電気ガス税が四十億も五十億も入っている。これらを見ましても、この電気ガス税を変えて電源税とかなんとかいう名目にして、地方税を一部修正すれば、いわゆる赤字県がたちまちに一年にして富裕県になる。つまり政府の施策が間違いであって、山村県はますます窮乏に陥って、山村県で唯一の資源である水が強奪されてしまうというのが現存の状態である。これは政治が悪いからこういうことになる。  この法案も、それに関連する法案であります。この条項に対して、いわゆる河川法の特例に対して三県知事さんの御意見はどうであるか。この点をお伺いしたい。
  32. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 二十三条を中心にしたところの政令委任に関する条項の問題についての御質問でございますが、率直に申しまして、この二十三条などは問題の規定であって、私も先ほどの陳述の際に、河川法の特例の問題や経費負担問題等についてあまりに包括委任的な規定が多過ぎるので、非常に不安と懸念を持ちますということを申し上げました。こういうような点は非常に重大な点でございますので、できれば克明にやはり法律にうたっていただくのがほんとうだろうと私ども思うわけでございます。ことに知事権限を制限するということで、特定多目的ダムの関係には現にそうやっておるじゃないかということもあるわけでございますけれども、建設省、建設大臣がおやりになって相手になる場合と、公団が相手になる場合とは、また実際の仕事の現場ではちょっと違ってくるわけであります。建設省さんが直轄でおやりになる分には、困ったことがあると、いろいろな公共事業でもめんどうを見て下さいとか、あるいは何か特別の事業でもまた色をつけて下さいとか、いろいろおねだりをしたり無理を言うたり、いろいろなことをやって地元の力にもおさまっていただいたり、いろいろやるわけです。公団は水の開発専門ということで、幅のない形で臨まれることになると、私はやはり、建設大臣がおやりになるよりもたいぶむずかしい、やりにくい格好が出るおそれがあると思いますので、こういうような点については、できれは法文の上で、もう少し明確に書いていただくのがほんとうだ、こう思っております。
  33. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 私も公述の際に、この規定は県の立場からはよくないということを申し上げました。  そのほかは、ただいま神田知事から申された通りであります。
  34. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 今の点につきましては同意見でありますが、先ほど申し上げましたように、こういう規定があると、県民に国に強制されておるのだというような印象を与えておもしろくないから、知事権限にはあまり触れてもらいたくないというのが私の希望であります。しかし、それもいろいろ他の方面に必要であるということならば、これを忍んで、私は県民に被害のないように最善をはかっていくべきであろうと信じておりますので、でき狩ることならばこういう点は修正をしていただきたい。やむを得ぬ場合はこれで少しいってみよう、私はこう思っております。
  35. 中島(巖)委員(中島巖)

    ○中島(巖)委員 だいぶ自民党さんもじりじりしておるようでありますので、もう一言質問して終わることにいたします。  ちょっと言い過ぎるかもしれませんけれども、この法案は、どう考えてみても水資源を四大工業地帯に収奪するものとしか考えられぬのです。そうして、水資源県に対しましてここに何らの恩恵の措置がない。もう一つ重大なことは、これらの法案の策定に先だって、工業地帯に対していわゆる工業立地計画というようなものがあるはずなんだが、これもない。これは別としまして、あなた方の各県におきましても工業立地の政策などがあると思います。それに伴ういわゆる水資源というようなものも確保しておかなければならないのじゃないか、こういうように考えるわけでありますが、それらに対して何か御研究になったことがあるかどうか。  さらに希望することは、きょう皆様の御意見をお伺いいたしまして、私どもとすれば、自民党の皆様方にも修正案を出しまして、なるべく御希望をいれるような話を進めていきたい、こういうふうに考えるわけでありますので、ただいまの計画とともに、御希望があったらさらに追加していただきたい、かように考えておるわけであります。
  36. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 上流水源地帯で具体的な水の使用計画とか開発計画というようなものがありそうなものじゃないかという御質問でございますが、その点は実は私どもも非常に悩んでおる点でございます。現在これを見て下さいというような具体的な開発計画、従って、何の用途に何トンの水をいつまでにどうして下さいというような、明確な計画を持つことが遺憾ながらできません。農業用水の問題については、土地改良のいろいろな問題をかかえておりますので、ある程度そうしたととが予想されるわけでございますし、また予定を立てて計画を立てておるわけでありますけれども、工場その他のいろいろな用途の全部を包括するような形で、具体的な水の用途刑の計画をお目にかけるというところまでは、なかなかいき得ない。それは非常に心外なんですが、しかしそういう事態が、実は奥地県、水源県、未開発県としては非常に悩みの種なんで、これが具体的に非常に明確な開発計画、立地計画というものが割り切れてどんどん進められるようになれば、あまり心配はしないのでございます。そういうような関係で、財力の関係とか、経済史力の関係とか、いろいろな観点で、そういうものが明確に割り切り出せないという非常な悩み、あせりがあるわけでございます。それだけに、今の段階で、あるだけの水資源を使い切ってしまうかもしれないという懸念は、非常に深刻なものがあるわけであります。上流地帯、奥地地帯開発問題で唯一の力になるのは、水があるという問題なんであります。それは、今すぐにどこへ持っていってどう使うという青写真は、全面的にはできない。しかし、それだからといって、今のうちに芽をつまれてしまうのでは、将来希望な持てない。こういう懸念があるわけでございまして、その辺の苦しい未開発上流地帯立場は、私たちは御同情を持って御高察を賜わりたいと考えておるわけであります。
  37. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 お答えします。経済成長の速度なり規模なりによっても違うと思いますけれども、私どもの考えは、地方格差をなくするために、そして、ひいては経済成長をより早くするためには、やはり低開発地域と申しますか、そういうところの開発が大事だと考えまして、私どもも自民党の、と言うと語弊がありますが、所得倍増計画等に基づきましていろいろ研究をしているわけです。今お尋ねのことでございますけれども、千曲川の沿岸になりますけれども、軽井沢、小諸、上田、長野を通じまして、これは沿岸ベルト地帯の向こうを張りまして千曲川ベルト地帯と私ども言っておりますが、ここに上水道、下水道、工業用水等を確保いたしまして、そして工場誘致等にも力を入れる。あるいは観光等にも力を入れまして、低開発地域の振興に努力いたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。その際に、これは水系があるいは違うかもしれませんが、一般的に申しますと、下流工業地帯工業用水を確保するに急な余り、上流がおろそかになっては大へんという気が非常に強いわけでございます。具体的な各水系ごとの計画というものは今立てつつあるわけでございまして、ここでまだ申し上げるあれじゃないと思います。
  38. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 滋賀県におきましては、そうしたことに対しては企画課を設けまして、そうして今詳細調査をし、案を作成をし、また進めております。先ほど申し上げましたように、それには水の二重利用ということが非常に大切なことであるということで、工場誘致等も行ないまして、ちょうど明治以来誘致された工場と同様の面積の工場が二カ年で滋賀県に誘致されているというようなこと、そうしたことで所得の格差を少なくするというようなことに対しても、いろいろ計画を進めております。そんな関係から、このことについては、ほんとうに精力をここに集中するほどに考えていろいろやっております。
  39. 加藤委員長(加藤高藏)

  40. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 きょうは参考人の皆さん御苦労さんです。私は、初めに各関係県の知事さんにお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど来、お三方とも口をそろえて、この法案に対して必ずしも協力を惜しむものではないけれども、いろいろ上流水源地帯の自治体の首長として心配の点があるから、これこれの点を一つ考慮願いたい、こういうまことに真実のこもった御陳述があったのでございます。一つ具体的に、もしこの法案が国会を通過いたしまして効力を発生いたしました場合に、それぞれの関係県にどういう影響を及ぼしてくるか。具体的に先ほどおあげになりました水源涵養というような面につきましても、水を下流工業地帯に供給することだけでなしに、水源地帯保全涵養をはかってもらいたいという御要望でございますが、それらの点につきまして、各県といたしましては具体的などういう影響をもたらすとお考えになりますか。また、それを防ぐために、国として、ただ法案の中に保全涵養ということを入れるだけでなしに、具体的にどういうことが望ましいか。植林の方は林野庁の関係でということでなしに、具体的にどういうふうにやってもらいたいとか、保全涵養という言葉の内容、裏づけといいますか、そういったような点につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  41. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 お答えを申し上げます。最初に陳述を申し上げました点で大体申し上げているような感じがするのでありますけれども、私どもが主としてお願いをいたしております点は、今回の法が、水を確保して人口の集中と産業の集中地帯に配分することに急であって、奥地帯水源地帯に対する開発とか民生という問題について配慮されておる形跡がない、こういうことで非常に理解納得をいたしがたいという形である。  それから、さっき申し上げましたように、沼田ダムというような非常に気味の悪い問題も実はちらつくのでございます。公共用地の取得に関する特別の法律だとか、こうした問題であるとか、あるいは東京湾の埋め立てであるとか、何かそういうようなおぜん立てのような措置ばかり先に進めまして、首都圏の整備の問題だとか、後進地域開発の問題とか、奥地開発の問題とか、そういう問題がなかなか進行して出てこない。そこで、こういう問題をどうしても並行して、下流下流でこういう開発をするが、上流地帯水源地帯もやはりこういう観点でこういう形で取り組んでいくのだというような、並行した全面的なお扱いが少なくともうたい出されていなければ、非常に上流県水源県としては納得理解がいたしにくい。従って、御協力の熱意がなかなか沸かない、こういう点が私は主眼だと考えているわけでございます。  あとの点は、河川法権限の問題とか、あるいは経費負担問題等について、この席で一条々々を問い詰めているわけにもいきませんから、私も御遠慮するのでございますけれども政令に対する包括委任が多くて不明確である、そしてその内容のきめ方いかんによっては重大な影響があるおそれがある、こういうことで申し上げておるわけでございます。
  42. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 群馬県の神田さんにお伺いをいたします。先ほど沼田ダムお話がございましたが、すでにあなたの県におきましては矢木沢ダムの工事が進められておるわけでございますし、これは赤城、榛名の畑灌事業、主として農業用水の事業であるのでございますが、これが公団で行なわれるのか、県営になるのか、国営になるのかというような点については、各関係省との間でお話し合いをなさいましたか。その点、具体的な事例でございますが、そういったようにこの公団法通りますと、たちまちあなたの県に影響がある問題であると思いますが、そういう点等につきましてはどういうふうに御検討になりましたか、お聞かせ願います。
  43. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 沼田ダムの問題につきましては、そういううわさがあって、地元民関係民というものが非常に深刻な不安、懸念を持っているということを申し上げたわけでございまして、具体的に責任ある話があったわけでもありませんから、具体的にどうということではございません。  なお、矢木沢ダムに関連して群馬用水のお話も出たわけですが、この問題につきましても、どういう形でどういうふうにという結論的な、具体的な御相談というところまでまだ運んでいるわけではございませんけれども、これは最近の農業行政からいたしまして、どこの県でも同様かと思いますが、土地改良の事業を非常に長い間、年月がかかって、いつまでたってもなかなか仕事が仕上がらぬで、水が届かない。その間に関係農民が、年々負担を現実にしなければならないので、こういうような昨今の農業行政では容易じゃないという深刻な問題があるわけであります。これは仕事が仕上がって水に手が届くようなことになれば、農家の方々も相当の理解と熱意を持って、ある程度の負担もよかろうけれども負担だけしておって、いつまでも水に手が届かぬというところでその問題がむずかしいんだ、そして仕事が仕上がるまではだれか責任を持ってまとめて仕事をやって、でき上がったところで、農家の方々と負担の問題や協力関係やそういうものについて具体的な相談をすれば非常に円滑にいくんじゃないか。こういうような土地改良に関する深刻な最近の事情がいろいろあるわけでありますから、そういうことに関連して、群馬用水のような大きな問題で具体的に事を始めるとすれば、公団のようなものがもし制度的に生まれるとすれば、そういう形で大きな土地改良のようなものを手がけていただくのもよろしいんじゃないかというような議論や意見はあるわけであります。
  44. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 今の群馬用水の問題につきましては、今までの国会審議の過程におきましては、まだ公団でやるかやらないかということが明確になってない。やはり政令にゆだねられておるわけでございます。これはやはり今、知事さんが言われますように、県民に非常に重大な影響があるものでございますから、そういうような点も当然御心配になるはずのものだと思いますので、私はあえてお伺いをしたわけです。さういったようなととがまだ、公団でやるのか、国でやるのか、府県でやるのか、あるいは団体でやるのかというようなことが、すべて政令にゆだねられておりますから、非常に不明瞭な点が多々あります。そういった点も、関係府県におかれましては十分に研究をなさる、そして十分に中央官庁と折衝をなさるということが大事じゃなかろうかと思いますから、お伺いをしたわけでございます。  続いて、他の県の知事さんから……。
  45. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 お答えします。私の県と申しますが、これは当然のことですけれども治山治水と申しますか、水源涵養して、川を改修して、灌漑用水を豊富にして、工場用水も豊富にする、これは当然のことなんですが、先ほどから問題になっておりますように、この法律を見ますと、そういう現住の川下の地帯工業用水に事欠く、それを押えていこうという感じがするわけなのです。そうではなくて、長い目で見ていただいて、上流におけるいろいろな開発に事欠かないような法律であってほしい。そういうことは、裏返していいますと、公団中心のような書き方ではなくして、あくまでも知事――知事だって、これは国策に幾らでも協力するわけでございますから、もっと知事立場を尊重して、その下に公団がつくような格好の法律でけっこう間に合うのじゃなかろうかということを申し上げておるわけであります。  具体的に、それじゃこの法律が通るとどういうところが困るかというようなお尋ねのようでございますけれども、それはさっき和田知事から申し上げましたように、知事河川に対する今までのいろいろな権限を、ある程度といいますか、相当といいますか、制約される。あるいは財政の負担の点がはっきりしないというようなことでございまして、具体的にどういう点がとなると、なかなか申し上げにくいかと思います。
  46. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 今お話しになりましたように、この法案水源涵養水源保全の条項が掲げてない。これは一大欠陥である。しかし、この水源涵養こそ、これからの水を確保する唯一の道であると思うておりますので、このことには全力を注いでやっていただかなければならぬ。ところがそれは、公団にしても国にしても、できる方でやれというようなことで、見物されておるようなことになってはできない。この法案にはっきりとこの点を明らかにして、これをやる場合にはどういうことを仕向けるんだぞということが規定されて、初めてわれわれは安心して水を開放することができる、こういうことであります。この点についても、いろいろ先般来の質疑応答の中にも出ておりますし、大体において安心はできるのでないかと思いますけれども、これがいよいよ実施となりますと、逃げられてしまうというおそれがありますので、この点について特に最善の御検討をお願いしたいと思っておる次第であります。
  47. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 次は、促進法案の第十四条に損失補償の規定がございます。「基本計画に基づく事業を実施する者は、当該事業により損失を受ける者に対する措置が公平かつ適正であるように努めなければならない。」という条項がございます。この損失補償につきまして、上流水源県の立場としてはどういうふうにお考えになっておられますか。これは一つ、代表して谷口知事にお伺いいたします。
  48. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 ただいまのお尋ねでありますが、どうも損害のあったときにこれを補償するということについて、この法案は非常にたよりない点がありますので、今後いよいよ実施する時期に難航するのはそういう点じゃなかろうかと心配をしておるわけであります。これは審議の過程におきまして、十分政府の意のあるところをついて、そうして将来の誤りなきを期していただきたい、こう思うておるのでございます。しかし、これは法にはっきりと示されるほど確かなものはないというわけでありますので、でき得るならば、法にそういうことをはっきりと示されるような方法でも講じていただきたい、これを切に念願をしておるわけであります。
  49. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 次は、第一条でございます。促進法案の第一条は「目的」がうたってあるところでございます。この第一条から見ますと、「水の需要の著しい増大がみられる地域に対する用水の供給を確保するため、」、こういうことがうたわれておりますけれども、今までの国会審議の過程におきまして、必ずしも農業用水を軽視するものではない、もちろん無視するものではない、こういう関係者大臣の答弁であったわけでございますが、今までの利水の割合から見ますと、ほとんど九〇%までが農業用水であることは御存じの通りでございます。この法案によりますと、農業用水が圧縮される。私はあえて収奪とは申しませんけれども、圧縮されて、工業用水に使われるという面が非常に多くなってくる。これは自然の成り行きでございまして、そのことは日本の産業の発展過程におきまして、当然のことと申さなければならぬのであります。しかし、そのことのために農業用水に事欠くというようなことがあっては相ならぬと思うのであります。先ほど谷口知事の御陳述の中にもございましたが、琵琶湖水位が下がるということのためにいろいろ影響があるというお話の中で、私の聞き漏らしかもわかりませんが、農業用水に影響がくるということを落とされたと思うのですが、これは非常に大きな影響があると思う。先ほどは保全涵養という面の御主張が強かったのでありますけれども、農業用水に対する御見解を、特に農業県の知事として責任を持っておられるところの谷口知事から承りたいと思います。
  50. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 今お話しの点は、われわれも重大な関心を持っておることであります。これがために地下水が低下をして、水田の水が早かわきをするということは、今までもしばしばあり得たことなんであります。今までは水田の水が三日持ったやつが、一日しか持たぬ。これは地下水が低下すればそういうことになるので、これに対する対策を講じなければならぬということです。これもいよいよ具体的な問題に入って相談をするという場合になりますと、私は、湖岸の町村には必ず上水道あるいは簡易水道を設けて琵琶湖の水を逆水して使用できること、それから、上流の地にはダムを設けて農業用水の不足をせぬような方法を講じる、これあたりは絶対必要じゃないかと思うておる。もし、これができぬということになると、先ほど申し上げましたように、なかなかこれに手をつけることはできぬ。この点は、こちらの要望が満たされて初めて手がつくということでありますので、非常に重大な関係があると思います。そうした点については、どういう方法を講じておくべきかというようなことをこの委員会において十分御検討願うて、万遺憾なきを期していただきたい、かように存じておる次第であります。
  51. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 次は、促進法の第二条でございます。ここには「基礎調査」に関する規定が掲げられてあります。この基礎調査につきましては、昨日の連合審査における私の質問に対しまして、迫水長官から、これは関係各省の調査を持ち寄って審議会で調査の結果を集約する、こういう答えがありました。それには関係各省の基礎調査とともに、各関係県の調査をもこれに加えて審議会において集約して決定をする、こういうお答えでございましたが、今まで水資源開進についての基礎調査を、県におきましてはどのようになさいましたか。先ほどの中島委員の御質問に対して、計画等についての御答弁がございましたが、計画前の各関係県の水資源の基礎調査は、今までの段階においてどのような調査をなさいましたか。それぞれお三方から伺いたいと思います。
  52. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 お答えを申し上げます。従来は土地改良に必要な農業用水を中心にして、あらゆる水系にわたって水源の調査というものを府県の耕地、農地関係で専門にやっているわけでございますが、特に最近は工場誘致とか第二次産業の開発とか、そういう問題が重大化しておりますので、工場用水その他の面についての調査も真剣に取り組んでいるわけでございます。特に群馬県では矢木沢ダムの問題がただいま実施段階に入っていただいているわけでございますが、これらの調査等につきましては、何年来非常に詳細な専門的な調査を重ねつつ、東京都さんなんかの御協力もいただきながら、非常に熱心に、非常に克明の調査を遂げてきたというようなことがございます。ただいま内容的なものを申し上げるわけにいきませんので、その程度にお答えを申し上げたいと思います。
  53. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 お答えいたします。従来この水資源につきましては、主として農業関係のことで水質あるいはその他を調査しておりましたけれども、最近一つは防災という見地から、一つはやはり工業用水の確保というような見地も加えまして、私ども企業局というような局も作りまして、そういう関係で今調査を進めておるわけであります。
  54. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 お答えをいたします。この水の調査につきましては現在やりつつあるのでありますが、いよいよこれを実施されるということになりますと、もっと根本的な調査をしなければならぬということであります。県としてこれに対処するために、必要な程度においての調査は今実施をいたしております。しかし、いよいよこれをやろうということになれば、もっともっと根本的に調査をしなければならぬ、かように存じております。
  55. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 ただいまの私の質問に対しては、群馬県は一応の調査ができておるという御答弁のようでございましたが、ほかの二県の方はまだ調査が十分にできてないということのようでございました。そのように理解してよろしゅうございますか。
  56. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 調査もだんだん綿密にというふうになって参りましたので、全然できていないというわけではないのであります。御承知のように、総合開発局等でも、そういう多目的ダム等の建設につきましてずっと水系ごとにいろいろ調査をいたして、すでに実施をしておる面もあるわけでありますから、そういうふうに御理解をいただきたい。
  57. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 それでは、ただいままでの調査の結果を、資料として後日の委員会に提出していただければありがたいのですが、そのようにお願いいたします。  次は、公団法案の第二十条、「事業実施計画」でございます。事業の実施計画につきましても、内容はすべて政令に委ねられておるのでございますけれども、第二項の考え方といたしましては、御承知通り賦課金は、いわゆる料金方式をとらないで、アロケーション方式をとるということになっているのですが、アロケーション方式によりますと、農民の水に対する共有権、いわゆる持ち分権というものが発生するというふうに私どもは解釈しているのであります。そういうことになりますと、実施計画公団が事業を行ないます中で、農民の水の持ち分権というものを確保するという考え方に立ってこの事業計画を進められることが願わしいものであるかどうであるかというようなことにつきまして、水源地帯の県の知事さんとしてはどういうふうに、お考えになりますか。その点をお尋ねいたします。
  58. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 率直に申しまして、私はこの二十条の二項というものは、少し勉強が不行き届きで、実はあまりよく心得ておりませんが、それは関係農民の方々が流水の使用権を持っておられるような場合は、当然に尊重されるはずのものだと考えております。そういう当然予定される農業用の水利権等の問題については、私は当然のことと考えて、実はあまり懸念もせず、深く考究もしないで参りましたので、もしそういう点について懸念があるようなら、これは大へんな問題だと思っているようなわけでございます。率直に申し上げまして、お答えとします。
  59. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 済みません。私もちょっと不勉強で、その点ははっきりいたしません。
  60. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 政令にゆだねると書いてありますが、この法案は、政令によってきめるというものが非常に多いのであります。ところが、この間御質問に対して、政令をこしらえるときには全国知事会へ協議をする、こういう御答弁があったように承っておりますので、その場合にはやはり全国知事会から関係の府県に対していろいろ意見を聞いて、相談に応じられることになるであろう、こう思うております。政令を定めるときには慎重な態度で、各府県の意見も取り入れてきめていただけるものである、私はこういうふうに解しておりますが、その際の全国知事会の責任は非常に大きいものがある。これはやはりいろいろの立場における関係府県の意見を聞いてやられるものだ、その点についてはそういう解釈をとっておる次第であります。
  61. 岡本(隆)委員(岡本隆一)

    ○岡本(隆)委員 関連して、一、二問お尋ねしたいと思います。  まず第一に、先ほどから問題になっておった協議の問題でございます。これはやはり議会の同意が要るということにしておいた方が、知事さんとしては、政府との間で交渉をするのに、非常に大きなバックができてやりよいのではないか。ただ単に知事協議を要するとか、あるいは知事の同意を要するとかいうふうなことでは、まだ少し弱いのじゃないか。議会の同意を要するということにすることによって、初めてそこに県民の側との完全な一致体制ができるというふうに私たちは思うのですけれども、そこまでのことは、どうも希望しておられないかのように先ほどのお話ではとれるのです。また、いただきました陳情書の中には、同意を要することにしてくれというふうに書いてございますけれども、その辺について、どなたからでもけっこうでございますが、もう少し明確なお答えをいただきたいと思います。そういう点について先ほど一番お話のあったのは、滋賀県の知事さんですが、滋賀県の知事さん、いかがでしょうか。
  62. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 私は耳が遠いので、はっきり聞こえませんので、何という御質問であったか、はっきりとわからなかったのですが……。
  63. 岡本(隆)委員(岡本隆一)

    ○岡本(隆)委員 それでは、大きな声でもう一度申し上げます。この事業実施計画をきめるのには、知事意見を聞くというふうになっております。ところが、陳情書には、議会の同意を得るようにしてくれというふうな陳情書をいただいておりますが、御意見を承りますと、どうもそこまではしてもらわなくてもいい、とにかく知事の同意を得るということにしてもらったらいいというふうに受け取れるのでございますが、私はやはり議会の同意を得るというふうになっている方が知事としてはやりよいのじゃないか、こういうように思うのでございますが、その点いかがでしょうか。
  64. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 お説の通りであります。やはり知事協議に応じようというような場合には、議会というものの意向が十分反映されることが望ましいことで、これがものを円満にまとめていく上からいうたら絶対的な要件だと思います。われわれが最初この陳情書をこしらえるときには、議会の同意を得るということはこれは非常に必要なことである、こういうことでこの陳情書をこしらえたのです。このことは、大体言うと、滋賀県の場合は、私が考えていることより議会の方が深刻に考えていてくれます。私はほんの代表的に言うているくらいのことで、深刻に考えているのは議会の方がおもなんで、今日ここまで進みつつあることも、議会が主導的な立場に立っているくらいであります。どうあろうと、われわれがいろいろの協議に応ずる場合には、必ず議会の意向を聞いて、そして協議を進めていこう、こう思うております。法によって、議会の意向を聞いて、そして知事協議に応ずるという体制ができれば、これが一番いい体制だ、こう思うております。
  65. 岡本(隆)委員(岡本隆一)

    ○岡本(隆)委員 従来の河川法の考え方というものは、洪水を防止して住民を守るということに重点が置かれておりました。その一部を農業用水その他に使っていくというふうな考え方になっておりました。しかしながら、今日での河川対策というものは、単にそれにとどまりません。そこで、多目的ダムというふうなものの考え方も出て参りました。従って、これから後の河川対策は、流量の調節ということに一番の重点が置かれなければならない。降った水をある程度調節して流していく。それでもって水をまた工業、農業あるいは環境衛生、あらゆる面に活用していく。こういうふうな考え方の上に立って多目的ダム法ができ、さらにまた今度の水資源開発促進法案というふうなものが出て参った、このように私たちは理解いたしております。従って、水資源開発ということにつきましては、まず第一は治山治水をやって、ことに上流に対するところの十分な措置を講じた上で水資源涵養をやる、それでもって貯留できたととろの水を十分に活用していく、こういう建前に立った法律だというふうに理解して、その上での審査をやっておるのでございます。  しかしながら、ここ二、三日前からずっと委員会で聞いておりますと、とにかく当座の水が要るのだから、当座必要な水の手当のための公団法というふうな考え方が非常に濃厚のようであります。従って、この法律の性格あるいは発生の動機というものは、われわれが考えておったことは期待を少し裏切られたように私は思って、失望しているのでございますが、それは知事さん方も御同様であろうと思うのです。しかしながら、河川に対する対策ということになって参りますと、流量の調節が重要な問題になってくれば、今度は勢いその河川のいろいろな施設に対する監督は、その施設のある部分の知事さんの監督ということだけではどうしても不十分であり、そういう施設の監督は、その水系全体にまたがる他府県にも及ぼす影響が大きゅうございますから、勢いこれは国が監督をしなければならない。そういうような方針に変わっていかなければならない。それを公団が代行するということに私は非常に不安を持つのでございます。同時にまた、知事さん方も、そういう施設の監督権については、ある程度国に権限が移譲されてもやむを得ないというふうに考えていただかなければならないと思うのでございますけれども、それについての知事さんの御意見を承りたいと思います。
  66. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 お答え申し上げます。私どもも、全国的な、また全地域的な見地から総合的な国力の開発なり地域開発をしなければならぬということは当然認めなければならないわけでございますから、上流治山治水とか奥地開発だけを先にやって、あとから下流をやればよいというようなわがままを言うわけでは毛頭ございません。そういう点はないわけですが、ただ、やはり水の開発については、先刻も陳述をいたしました通り上流水源地帯は全然かまわないのだ、無視するのだ、取り合わないのだということはどうしてもいけないので、制度なりあるいは基本方針なりの立て方、かまえ方としては、全域の総合開発地域開発という問題を手がける、取り組むという建前、かまえ方、基本方針、考え方ということははっきり打ち出していただかなければならない。それから、具体的な仕事をどこからどういうふうにタイミングを合わせて進めていくかという問題は、おのずから具体的な事情に即してきめていかなければならない問題と思うわけでございますが、基本的な体制や方針として、上流水源地帯のかかえているいろいろな深刻な問題はどうしてもあわせて配慮に組み込んでいただきたい、こういう点をお願いしているわけでございます。
  67. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 お尋ねでございますが、河川法、今の法律でも国の関与する面があるわけで、間違っておったら失礼いたします。そういう面では国の権限もあるわけなんで、だから、ただ抽象的に権限が少し移ってもよいかというだけのお尋ねですと、移らぬ方がよい、とこういうようにお答えするようなことになると思いますけれども、いろいろ目的なりやり方によって違ってくるじゃないかと思います。今の法律でも、ある程度国が関与することになっておったかと思います。
  68. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 この点は、実際の場合にあたると微妙な関係もあると思います。私が最初申し上げておりますように、これはやはり知事が自主的にやるのだという印象を県民が受けるような法になることが必要であると思うておるわけなんであります。しかしながら、この法自体がそういうものではないということ。やはり法の建前としてはこういうふうな行き方でないといかぬじゃないかと思われる点もありますので、立法上のなにとしては、こういうことでいけば政府のほんとうの考えを審議の過程において聞いていただくというようなことで、この間からいろいろ御苦心を願うておるということでありますが、そうした点がうまくいくということであれば、私はやむを得ないのではないかと思っております。しかしながら、われわれの立場からすれば、今申しますように、知事河川管理権というようなものには一指も染めてもらいたくない、私のほんとうの希望はそこにあるということであります。
  69. 岡本(隆)委員(岡本隆一)

    ○岡本(隆)委員 ことに私は琵琶湖下流に住んでおりますので、滋賀県の知事さんとはいろいろな点で考え方も違ってくるかと思うのでございますけれども滋賀県に対して、洗(あらい)せきができてから、下流利用も非常に変わりました。同時にまた、滋賀県自体も、洗せきによって大雨の降るときにはご迷惑でしょう。しかしながら、渇水期にはまた洗せきによって水位が維持されておる。そのために渇水期には下流ではほとんど水がかれてしまって、私の生まれる以前のことだからどの程度のことであったか知りませんが、私の曾祖父あたりが宇治川の川蒸気を始めたなどというふうなことを聞いております。とにかく宇治川には舟運の便というものがあったのが、洗せきができたために完全に舟運の便というものが閉ざされている。だから、お互いに上流下流というものは持ちつ持たれつ、迷惑をこうむることがあれば、片方また逆な恩恵も受けるというふうなことになってくると思います。だから、長い間疎水の問題、洗せきの問題、天ケ瀬ダムの問題というふうなことで、滋賀県と京都府とはある点利害が反するというようなこともあり得るかと思うのです。しかしながら、共同してそういうふうなことが起こらないようにまた一緒に考えていかなければならないと思います。そこで、琵琶湖の締め切り案などというようなものもできておりますが、その締め切り案によって琵琶湖の水をどんどん使うという前に、今度は琵琶湖上流に対するいろいろな施設というものも考え、琵琶湖水位をある程度維持できるような上の調節のダム、また琵琶湖水位を維持するための調節のダムというものも作っていかなければならないし、同時にまた、森林の水源涵養のための施設もやっていかなければならない。こういうふうに思うのでございますけれども、そういう意味においては、やはり高い立場に立って全水系水量を調整し、全水系について水がうまく利用できるような方向に事を運んでいかなければならないと思うのです。そういう意味においては、そこの調節ダムの存在する位置であるとか、あるいはいろいろな管理権の主張というようなことについては、やはり高い立場に立って、関係府県の者が全部協議してやっていくという体制が機構として作られていかなければならないのではないか、こういうふうに思うのでございます。そういう点について、現在の河川法にもそういう機構というものは作られておりませんし、また今日の多目的ダム法、あるいは今度できます公団法にも、関係府県の協議機関というものが構想の中に出ておりませんが、それについて滋賀県の知事さんの御意見を承りたいと思うのでございます。
  70. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 先生が京都府の方であるというのを初めて承りました。先ほどからそのことを知らぬでしゃべっておりました。ところが、近畿各府県の関係は実に密接であります。滋賀県に住んでいるから下流のことは知らぬのだというようなことではいかぬ。私は、特にこういう点は近畿が一体になっていく。この間も大阪府の知事に、滋賀県はこういう立場で臨んでおるんだ、これに対して知事はどう思うかと誓うたら、いや、もう滋賀県の考える点に双手をあげて賛成するんだと言うておられる。やはり上流とか下流とかいうような考えでなしに、近畿としてどうしていくのか、この水をどう利用するのか、利用するについて被害を受ける滋賀県をどうするのか、これが根本の問題だと思うのです。これはお互いに腹を立て合うて、いがみ合うたらできぬようになってしまう。これはいがみ合うこと要らぬように法をきめてもらうことが必要である、こう思っておる。それで、私が近畿一体論、近畿合併論を提唱したのは、こういうところにある。一つになって、一つの議会において、ああ、これはこうせんならぬ、滋賀県のことはこうせんならぬぞということが協議できる体制が一番いいんじゃないか、こう言うておったんです。ところが、なかなかそういうことはむずかしい。けれども、私はあくまでも議会の意見も聞き、諸県一体において体制を立て、下流の方もこれに対しては、あくまでも滋賀県が水を開放できるように仕向けねばならぬ。こういうことでやらねば、この問題は実際においてできやせぬと思います。先生は幸い近畿の方でありますので、一つこれから御相談を申し上げてやっていきたいと思います。
  71. 加藤委員長(加藤高藏)

  72. 山口(鶴)委員(山口鶴男)

    山口(鶴)委員 時間もだいぶおそくなって参りましたので、重複する点はできるだけ避けましてお尋ねをいたしたいと思います。  三県の知事さんにお伺いしたいと思います。いずれの知事さんも口をそろえて、いわゆる上流県水源涵養の問題について、今回の促進法並びに公団法については配慮がなされておらない、こういうことをおっしゃっておられるわけでありますが、河川法規定は、都道府県知事河川管理権がございます。その上に立ちまして、地方自治法におきましても、都道府県の任務というものが、河川管理をしておる都道府県の重要な権限といたしまして、河川涵養するためのいわゆる治山治水、またこれに関連をする林産資源、水産資源、その他の天然資源の保全及び開発、産業立地条件の整備、開拓、干拓、こういうような問題については、一応地方自治法の第二条におきまして都道府県知事基本的な任務として定まっております。これは河川管理権とうらはらの問題として当然だろうと考えるのでありますが、そういう法の体系があるにかかわらず、今回この水の活用、特に水資源開発といっておりますが、極端に言えば四大工業地帯開発とか、あるいは東京開発というふうにもとられかねないこのような法案の中で、管理権の問題について規定をいたしておることについて、私も疑点を持つ者の一人であります。  そこで、お尋ねをいたしたいのは、上流県は、今申しました地方自治法の規定によりまして、水資源涵養のために相当のいわば財政負担をいたしておると思うのであります。治山治水には相当巨額な経費もかかるわけでありますし、また災害復旧に対しましてもやはり相当な経費を自治体として負担しておられる。しかも、えてして上流県は、地方財政の問題についてどうかといえば、財政的には困窮の自治体が比較的多いのではないかと思うのであります。といたしますならば、よけいに水源涵養に対して従来県の財政の中で支払って参りました犠牲というものも、相当大きかったのではないかと考えるのであります。三県の知事さんはいずれも上流県知事さんでございますが、こういった水源保全等に対して、県財政のどのくらいの割合をこれに充てて参ったか。県の財政がこういう水源涵養のために相当圧迫をせられておるという面もあろうかと思うのでありますが、こまかな数字はけっこうでございますから、県の財政の中で大体どの程度の負担をし、また自主財源をどの程度持ち出しておるか。こういう状況について一つお示しいただきたいと思うのであります。
  73. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 お答えを申し上げます。山口委員さんからお話のありました通り上流県水源県というものは、明けても暮れても治山治水の問題をしょって苦心惨たんしておるわけであります。ことに群馬県の場合などは、山口委員さんも御承知通り、昭和二十二年のキャスリン台風以来災害々々で、ほとんどそれだけのために、県民をあげてそれだけでもう精一ぱいだ、ほかの維持管理とかあるいは積極的な開発というものに、ようやく目が向けられたり手が届いたりしたのはつい最近のことで、ほとんど災害復旧、治山治水で明け暮れて、極端な言葉になりますけれども、県政の全力をあげて治山治水に没頭してきたというくらいに申し上げても、実は差しつかえないということでございまして、これは大へんな金額であり、労力であり、県民負担であった、こういうふうに考えるわけでございます。年々何ほどくらいの治山治水経費負担するかというお話でありますが、私も不勉強で、ただいま数字の持ち合わせもございませんけれども、公共事業の関係、また幾つかの県単事業の関係で、土木を初めとして林務、耕地、農政関係の大部分の経費はそれに充てられるわけでございますから、私も今何億ということを申し上げる用意がちょっとございませんけれども、相当莫大な、おそらくは少なくとも中数億かあるいは二十億見当くらいになるような、私の県でも莫大な経費を年々投じてやっているだろうという感じがいたします。実は数字の点は準備がございませんので、責任のある数字を申し上げられなくて恐縮でございますけれども、そういうような事態でございますことを御了承賜わりたいと存じます。
  74. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 大へんいいことをおっしゃっていただいたし、また大へんいいことをお尋ねいただいたわけですが、私もちょっと正確な数字を覚えておりませんので、せっかくのいいお尋ねにお答えできないのがまことに残念でございますけれども、あしからず。
  75. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 財政的にいろいろの圧迫を受けておることは事実であります。特別交付金のあるときには、いつでも、滋賀県は琵琶湖を持っておるために非常に費用が要るから特別交付金をなるべくよけいいただきたい、こういうことを言うておるほど財政的にもいろいろ問題があるわけであります。その他の県において下流のために非常に災厄をこうむっておるということはもう事実でありまして、琵琶湖の水を南郷の洗せきでせきとめて操作をしておることは御承知通りでありますが、そこで水量が増してきて、あの淀川の堤防が危険水位に達したというたら、そこをもうぼんと締め切ってしまって、そして滋賀県に何ぼ水がはんらんしてもかまわぬというやり方です。これがために、一昨年の伊勢湾台風では農民が六億円という損害を受けておるのであります。そして、必要なときには極度に下げていって、上の方が舟楫の便もないというようなやり方をやっております。知事はこれに対して一指も染めることができぬ。これは地方建設局でちょんとやったら、この通り無理往生をさせられておる。こうした点も、今度琵琶湖の中に堰堤を作るときにそういうようなことになったら、もう少し大きいものになる。これに対してはわれわれは相当の発言権を確保しなければならぬということ、これらが重点になっておるわけでありますが、いよいよこれを具体的に協議をするという段階になると、なかなかむずかしいことがあろうと思います。けれども、このときに上流県立場を全然無視されるということであったら、結局先ほど申し上げましたように、協議も成り立たぬということだろうと思います。以上のような次第でございます。
  76. 山口(鶴)委員(山口鶴男)

    山口(鶴)委員 それぞれお答えがございましたが、各都道府県、特に上流都道府県が非常な財政的な負担をしながら水源涵養をやっておる。しかるに、今回の開発促進法におきましては、第一条において単に産業の発展及び都市人口の集中した地域に対する水の需要を確保するということのみに限定をされておりまして、水資源保全涵養という点に対する基本的な考え方が落ちておるという点については、ただいまのお話と同様、私どもも疑点を感ずるわけであります。  そこで、国の直轄事業に対する都道府県の分担金もございましょう。それから、公共事業に対する都道府県のいわゆる分担分もございましょう。及び県の単独事業としての御負担もございましょう。こういうものにつきまして、あとでけっこうでございますから、資料を各関係都道府県の方から出していただきますように、これは委員長さんの方にもお願いを申し上げます。
  77. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 はい。
  78. 山口(鶴)委員(山口鶴男)

    山口(鶴)委員 つけ加えてお尋ねをいたしますが、結局上流県におきましても、それぞれの地域開発するということについてはいろいろと御熱意を持っておられることと思うのであります。所得倍増計画政府が立てる場合におきましても、当然府県の所得格差を詰めていく、解消していくということも大きな一つの目標でなければならないはずだと考えるのでありますが、結局これらの府県におきましても、いろいろな意味で御苦心をされまして地域開発をお考えになっておられる。工場誘致をするということになりますと、どうしても工業用水がその地域においても必要でありましょう。それからまた、農村振興の問題といたしまして、まず取り上げなければならないことは土地改良事業であることは申すまでもございません。といたしますと、今までの多目的ダム法におきましても、結局水の配分を一体どうするか、工業用水に一体何トン、水道用水に一体何トン、あるいは農業用水に一体何トン使うということが、それぞれ建設省あるいは関係都道府県との間のいろいろな折衝の焦点になったと伺っておるわけであります。今回のこの法案では、それぞれ各委員から御指摘のありましたように、都道府県の発言の機会、あるいは都道府県立場を確保するという点の規定が非常に少ないわけでございます。そういう点と関連をいたしまして、この地域での総合開発というものと関連して、水の配分につきましてはどうお考えであり、それがこの法案に対してどういう現われ方がほしいとお考えでございまするか。その点を一つお聞かせをいただきたいと思います。  お三人は大へんだと思いますので、群馬県と長野県の知事さんからお答え願います。
  79. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 お答えを申し上げます。先ほどもちょっと御意見に出ましたように、上流県水源県が水の開発や配分について文句があるならば、お前の地元では何のために幾らの水をいつまでに使うのだという具体的な注文を出せ、ということを言われるおそれや可能性があるわけです。地元知事の発言の場を与えて下さいとか、協議して下さいとかいうお願いをしているわけですが、そうしたら、それじゃ具体的なそういう注文を持ってこいということになるおそれがあると私は思っております。ところが、そういう形でつれなく問題を扱ってもらったのでは、どうも上流県、後進県というものは、これはまた妙なことを言いますけれども、立つ瀬がないので、山口委員の御指摘もありましたように、大体において上流県、奥地県というものは、自己の財政力はいろいろな関係でどうしても貧弱でございます。県独自の力をもってして、こういう各方面の用途にわたった総合開発計画をやりますからという、自信のある青写真を持って堂々とぶつけるというようなところまでなかなかいき得ない弱み、悩みが深刻なものがあるわけでございます。私どもは、そういう用途別の水の配分を具体的に要求するところまでなかなかいき得ないと思っておりまするけれども、それだからといって、上流地帯は取り合わないのだということでは困るので、これはわがままなお願いになるかもしれませんけれども、こうした大きな基本的な問題に取り組む政府立場、国全体の立場として、やはり上流地帯、後進県の地帯の分についても積極的に関発発展の計画を御心配を賜わりたい。そういう建前で法律の文句などにもうたっていただきたいし、実際の運用にあたっても、そういうおくれた地帯に対する思いやりのある積極的な御配慮から御計画をお願いしたい、こういうふうに申し上げたいのであります。大へん勝手なことを、わがままを申し上げるような感じもいたしますけれども、実際問題としてそういう形になります。地元といたしましてもできるだけの工夫と努力をし、また財力の限りを尽くして地元開発のために努力しますけれども、やはり政府の方針、国の全体的な立場からも、一緒に全体開発の建前で手をかけていただくということがなければ、しょせん大幅な基本的な計画はできないわけでございます。そういうお願いを申し上げたいと考えているわけであります。
  80. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 群馬知事と全く同じ意見でございます。
  81. 山口(鶴)委員(山口鶴男)

    山口(鶴)委員 次に、費用分担の問題についてお尋ねいたしたいと思うのでございます。この公団法規定でありますと、公団として費用を分担する、あるいは国が負担をする、あるいは都道府県受益者負担、こういうような形になっておるわけであります。そこで、まず問題になりますのは、たとえば農業用水、土地改良事業も付帯して公団が工事をいたします場合におきましては、この受益者負担金というものを都道府県知事が徴収するような規定になっておるようであります。  そこで、お尋ねいたしたいのでありますが、結局どこの地域でもそれぞれ国営、県営の土地改良事業をなされておる。こうした場合に、今の費用の徴収というものにつきましては、自治体といたしましても非常な御苦心が存するところではないかと存ずるのでございます。また、土地改良区におきましても、その資金の徴収には非常に苦心をされておる。ところが、今回の法律案を見ますと、管理権は公団が握るようになっておりますが、いわば受益者負担金の徴収というような非常に苦心の要るところの仕事は、逆に都道府県に押しつけておるという感じがいたすのであります。この費用の徴収に関しまして、どのような御意見をお持ちでございますか。その点一つあわせて、どなたからでもお答えを願いたいと思います。
  82. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 ただいま御指摘の点は私どもも全く同感でございまして、非常にやっかいな、深刻な問題だけを知事に仰せつかるのもまことにつらいことで、弱ったものだと考えております。ただめんどうくさいからいやだというだけの問題でなしに、もう一つ私が重要だと思いますのは、現実に農民なら農民の方々がどういう顔をして、どの程度の気がまえで金を納めてくれるか、協力してくれるか。そういう最末端の現実の事態というものが、事業計画をどういうふうに作るか、どういうあんばいに段取りを進めていくかという事業計画とその進捗に不可分の関係になってくる。そういう点は全部人にやらしておいて、こっちは青写真にかいたものを片っぱしからやればいいんだという仕事の行き方になりますと、私はどうしても地についた仕事にならないのではないかという不安を持っているわけで、そういう意味をも加えまして、公団が全責任を持って仕事をおやりになるというなら、公団が金の徴収の面についても、公団立場で御苦心をなさってみることが当然でもあるし、仕事もその方が円滑に手ぎわよくいくのではないかと考えております。
  83. 山口(鶴)委員(山口鶴男)

    山口(鶴)委員 最後にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、先ほど群馬県の知事さんから、沼田ダムの問題についても懸念をされているというお話がございました。実は建設省が、二月二十五日付で水資源開発公団の事業計画案という資料を出しておるわけでございます。これを拝見いたしますと、とりあえず利根水系、木曾水系、淀川水系というようなものを指定をやられる御予定のようでございまして、そこで事業計画を立てて進めていく中には、現在建設省が建設をいたしておる多目的ダム等も含まれておるようであります。今後調査を実施し建設予定のものといたしまして、利根水系が一たん出ておりながら、さらに利根水系、それから吉野川水系、築後川、遠賀川水系というのが出ておるわけでございます。そういたしますと、利根の水系におきまして、矢木沢、下久保、神戸、こういうものが予定に入っており、さらに今後調査するものといたしまして利根水系をとりわけうたっておるということになりますと、結局現在着手ないしは建設予定のもの以外に、何かの開発を企図しているのじゃないかというふうに考えられるのであります。そうなって参ります~、霞ケ浦の問題もございましょう。そして尾瀬なり沼田などの問題も考えられるような気がいたしますし、現に建設省としてはそれらの地点に対する調査等も行なっておるということをつけ加えますと、私どもとしても、知事さんと同じような懸念をいたすのであります。これら尾瀬あるいは沼田というものに対する知事さんということでなくて、たとえば県の議会なら議会の御意向があったといたしますならば、そことしてはどういうような御意向を出しておるか。そしてまた、どういう点でこれらの御懸念をお持ちになっておられますのか。こういう点、一つ最後にお尋ねをいたしたいと思います。
  84. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 沼田ダム中心にした利根川の将来の開発の見込みとか予定とかいうものを仮定しての御質問でございます。私も、先ほどの陳情で申し述べましたように、別に責任のある提案とか意見とか計画とかいうものをまだ伺ったわけでもございませんけれども沼田ダムの問題というものは、しょっちゅう目の先にちらつきまして、それがどういう形で運ばれるか、運ばれないかということで、何しろ問題が大きくて深刻なものですから、地元県民としては容易ならぬ不安と懸念を持っておる、こういうことでございます。群馬県の議会では、産業計画会議がかつて新聞紙上かに出したような、ああいう非常に乱暴な、途方もない計画というものは反対だ、こういうことで議会としての議決もしておられるわけで、反対の意思表明をしておられるわけであります。私どもも、まだ具体的に提案されたものでないような問題に対して、かれこれと意見を言うこともいかがかと思いますけれども、ただ二千何百戸も水没するかもしれないという、地元地域をひっくり返すような大きな問題を少なくとも包含しているそういう問題については、これは軽々に取り組んでもらっては大へんなことになるということで、先ほど損失補償の問題について滋賀県の知事さんからもお話がございましたが、そういう何がしかの損害を与えたならばそれを金で償ってあとをおさめる、そういう考え方や扱い方では、もうおそらくはいけないのではないか。この沼田なら沼田という一つの都市、一つ地域社会をどういうふうに発展、繁栄させるんだという、地域開発の問題がまず先に提起されて、それに対する具体的な計画や段取りが運んで、しかる後に水の問題とかダムの問題というものが、もし提案されるとすれば話に出る、というくらいななにでなければ、ただ従来の損失があったら金でまかなうというような考え方、そういう行き方で、しかも公団なら公団というものが水の確保の専門機関というような立場から、能率的に手取り早くという観点で、もしかりにそういう問題に性急に取り組むようなおそれがありとすれば、私どもは非常に重大な懸念、不安を抱かざるを得ない、こういう立場にあり、考えでございます。
  85. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 なお、この際申し上げておきますが、参考人の時間の都合等もございますので、質問の要旨は重複を避けて簡潔にお願いしたいと思います。
  86. 山口(鶴)委員(山口鶴男)

    山口(鶴)委員 これで終わります。先ほど発言の中でお願いをしておいたのでありますが、三県における水源涵養及び治山治水の問題に関しまして、直轄事業の分担金、県の公共負担分、それからそれぞれの単独事業分について、年々どの程度の費用負担をされておるか。こういう点について、一つ三県から資料をとっていただきまして、委員会に提示をお願いいたします。
  87. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 承知いたしました。
  88. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 だいぶ関連が入りましたので、私の質問は端折って進みます。  先ほど滋賀県知事お話にございました資源開発施設の維持、管理、操作等につきましては地元関係が非常に多い、地元住民に及ぼす影響がきわめて大きいから、関係府県の知事の同意なり、事前の通告をするようにしていただきたい、こういう御発言がございました。  その次の問題として、これらの施設を作る、特に特定施設費用、操作、維持、修繕、管理を含むのでございますが、これらの特定施設費用につきましては、国が公団に交付するところの額の一部を関係府県に負担させようというような考え方があるということに対する御懸念があるようでございますが、そういう点については、地方財政上、ぜひ一つ国でそういう施設の維持、管理、修理等の費用は持ってもらいたい、こういう御要望があるように伺うのでございます。この際、本委員会におきまして、その点について知事さんからお伺いするのはこれが最後でございますから、どなたでもけっこうでございますが、滋賀県の知事さんが一番御年配ですから、最後に代表して一つ……。
  89. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 しばしば賀川の問題が出ておりますが、この費用地元負担せしめるというようなことになったら、これは大へんじゃと思います。それでなくとも、先ほどから申し上げますように、そういう水資源を持っておるために相当の費用を使うておるのであります。ところが、この開発のために、かりに治山油木にしましても、県民負担でできるようなことなれば、今までからできたんです。それが何々の疲弊等からそういうようなことはできぬために、水資源が非常に乱調になってきておる。下流へ適当な水を流すというようなことができぬことになっておるので、これを開発しようということなら、そういう費用はあくまでも国費でまかのうてもろうて、私はまた一部公団――こういうことは関係はどうなるかわかりませんけれども琵琶湖年間五十四億トンという水を流しており、それは工業用水に三として使われておる。そうすれば、一トンを一円と仮定しましても五十四億円という水が流れる。こんな資源を持っておる。そしてまた、おまけにこちらが負担せんならぬということを県民に呼びかけても、問題にならぬと思うので、これらは適当な方法によって、県民負担をしいるというようなことは絶対いけないということにならぬと、この話は成立をしない、こう思うております。その点については格別の御配慮をいただきたい、かように存じておる次第であります。
  90. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 最後に、愛知用水公団伊藤理事さんにお伺いをいたします。水資源開発公団法によりますと、愛知川水公団がどうなるかという問題についていろいろ関係方面において配慮されておるわけでありますが、昨日の連合審査におきまして、私の質問に対して迫水経済企画庁長官は、農林省の伊東農地局長の御寺弁を肯定せられております。それによりますと、昭和三十七年度には新しい水資源開発公団に吸収する考えである。しかし、世銀の借款等の関係があるからそれを整理して、そのために今すぐにというわけにいかないが、三十七年にはそれができる見通しである。こういう御答弁があり、迫水経済企画庁長官はそれを確認されたのであります。愛知用水公団創立の当初から今日の成果をあげるまでこぎつけて、御苦労なさいました伊藤理事さんといたしまして、愛知用水公団の行方と申しますか、この水資源開発公団に対して、いつ、どのような形で吸収されるべきであるか。吸収と申すのは、はなはだ言葉がまずいかもわかりませんが、愛知用水公団の持っておられますところの優秀な技術陣を国家的見地から活用するためには、この水資源開発公団との関連においてどういう形で生かしていくべきであるかということに対する御見解を承りたいと思います。
  91. 伊藤参考人(伊藤佐)

    伊藤参考人 お答え申し上げます。御承知のように、愛知用水公団といたしましては大体この六月の末に通水をいたしまして、なお十月から十二月の末までには全部後始未も終わる予定でございます。それで、この水資源開発公団がいつから事業を開始されますか、その辺のところとも関連いたして参ることでございますが、ただいま御承知のように国会におかれましては、すでに衆議院の方では、国営事業として今施行されております豊川用水を愛知用水でやれということになっておりまして、それが参議院の方で通過されれば、それによってさしあたりは豊川川水の方を主としてやる、こういうことになるわけでございます。そこで、ただいまお尋ねの、水資源開発公団ができた場合、どういった形で、いつ、どういうふうになるかということでございますが、私どもといたしましては、こういったような公団が成立いたしますれば、また、先生の今おっしゃいましたように、こういう重大事項につきましては、吸収されると申しますか、入り込んでいくと申しますか、そういう事項につきましては、世銀との借款契約によりまして向こうの了解をつけなければならぬということになっておりますので、その了解期間がどのくらいになりますかわかりませんが、それをつけまして、その上で、私どもの技術陣営が十分腕をふるえますような格好において入り込ましていただければ幸いと、かように考えます。
  92. 西村(関)委員(西村関一)

    西村(関)委員 ただいまの答弁でけっこうでございますが、あなたの部下であるところの職員の人たちが非常に心配しておられる。いつ、どういう形で新しい公団に入っていくのかということに対して深い心づかいをしておられる。これはもう御承知の通のだと思います。そういう点について、今のお答えの通りでけっこうでございますけれども、十二分に御配慮になりまして、愛知用水公団の完工のために心血を注いだ部下の方々の技術が、国家的な見地でさらに活用されるような努力を重ねていただきたい。いろいろ世銀等の関係、また予算等の関係がございますけれども、そういう点についても愛知用水公団責任者として十二分の御配慮と努力を願いたい。重ねてその点をお願い申し上げて、あなたの部下の労働組合員の人たちが心配しないように、十分に気を使っていただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。
  93. 伊藤参考人(伊藤佐)

    伊藤参考人 ただいま西村先生の仰せの通りでございまして、せっかく一生懸命やって参りまして、どうやら成績をあげた職員一同、安心して十分に腕をふるえろような格好においてぜひとも御活用いただきたい。われわれといたしましても、もとより努力をいたしますけれども、どうぞ一つその点につきましては、諸先生方の一そうのお力添えをお願い申し上げたいと思います。
  94. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 石川次夫君
  95. 石川委員(石川次夫)

    ○石川委員 滋賀県あたり大へん遠いのでございますけれども、昨日急にお呼びたてをしましたところが、関係知事さんにはさっそく全員御出席いただきまして、水に対して非常に関心が深いという一つの意思の表われと考えますと同時に、心から感謝をいたす次第でございます。  大へん時間もおそくなりましたので、具体的に質問をしたいと思っております。その前に一言お許しいただきたいのは、実は私は茨城県でございます。この前委員会で茨城県の立場を若干お話を申し上げましたので、繰り返して申し上げたくありませんけれども、実はきょう茨城県の知事もぜひここに呼んでいただきたかったのでございますが、現存外遊中でございまして、その機会を得なかったことは非常に残念でございます。  茨城県の特殊事情は、ここにおられる委員長も茨城県の出身ですからよく御存じなわけですが、もともと利根川というのは鹿島灘へ注いでおった川ではございません。東京湾に注いでおったのを、切りかえ切りかえして、現在のような水系に百キロ余りその水脈を延ばしたのです。これはなぜそうなったかといえば、言うまでもなく江戸を水害から守るという考え方、万里の長城のような形にして外敵を防ぐという二つの意味を狩りた関係上、工作技術も進んでおらないにもかかわらず、非常な無恥をして、水脈を鹿島灘の方につけかえたという歴史的ないきさつを、持っております。従って、水害が起これば東京の方に水がいかないで、必ず茨城県の力に水がくるという形で、長い間非常な水害であえいでおった。また長い間に堆積した土壌が、関東ローム地帯という軟弱な地質と一緒になりまして、低湿地帯がずっと形成されまして、霞ケ浦の付近の湿地帯というのは、一回水が出てしまうと蒸発するまでは水が引かないというような特殊事情になっているわけであります。その間どれくらいの費用がかかったかということは、はかり知れないものがありますけれども、茨城県といたしましては、この災害に要する交付公債の金額が日本で一番多いということが端的にそのことを物語っております。昭和二十四年ころの災害の記録を見ましても、大体二年間で三十億という災害復旧の予算を使っております。これは全部が全部利根川水系ではございませんけれども、大部分が利根川関係費用と思って間違いない。こういう形で、茨城県は大体水源地というよりは下流地帯という特殊の立場にあるのと同町に、これから開発されようとする霞ケ浦という水源を持っておるという二つの性格を持っておりますので、おいでになっている知事さん方とは若干立場が違うかもしれませんが、おそらくきょう述べられた御意見と同じような意見、あるいはそれよりさらに強い意見ではなかったか、こう考えますので、一応茨城県の立場を代表して潜越でございますが一言申し上げたいと思うわけで、あります。  それから、この法案の内容でございますけれども、具体的に伺います。  この水資源開発促進法の関係で、第七条、これは審議会のことが出ております。初め滋賀児の方から出ておりました要望修正意見というものでは、この審議会に必ず知事が入っていることが望ましい。さらにまた、いろいろな意見を聞くときには、関係府県知事出席させて意見を聞いてもらいたい、こういう意見が出ておったわけであります。ところが、その後関係水源府県、九県でございますが、その修正意見によりますと、知事がここに出席するということが除かれております。これはいろいろな利害が対立する、上流下流という関係もありましょうし、複雑な事情もあるので、知事がこれに加わるということはかえって問題を紛糾させるのではないかという配慮から、滋賀県の意見あとから出されました九県の意見とが違った形になって出たとは思いますけれども、少なくとも審議会の中に知事会を代表するという立場の人が一人くらい入らなければ、私は不当ではないかと思う。上流下流という意見の食い違いはありましても、関係都道府県知事という形でなくても、知事会を代表する、知事間の意見の調整をするという立場の人が一人入らなければまずいのではないか、こう考えますので、この間についていろいろいきさつがあればお伺いしたいし、その点について滋賀県の知事さん、その他の知事さんの御意見を伺いたい。
  96. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 お答えを申し上げます。審議会の委員知事を入れていただきたいということは私ども考えておったわけで、そういうお願いもしたのでありますけれども、ただいまお説にありましたような関係で、特定の何某の知事が出るということになるとなかなかむずかしいだろうというような、いろいろな議論がございまして、結果として、具体的な形は、九県の連絡会議の総合結果としては表に出なかったような関係であります。念願といたしましては、ただいまお説にありましたように、私ども知事そのものがこの会議に列席させていただけなくても、何か適当な推薦とか、あるいは地方側を代表するとか、何か知事側、地方側地元側、水源側、奥地帯というふうな辺について十分な認識や御同情や、また経験を持っていらっしゃる、しかるべき力をそっちの方の側から一つ送り込ませていただくという手が何とかありそうなものだと思って、考えているわけであります。そういうようなことをぜひお願いしたい、こう思っております。全くお説に同感でございます。
  97. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 神田知事から申し上げました通りであります。
  98. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 大体において今のお説に同感であります。しかし、これに知事が参加するということ、このことは利害両面があるように思われますので、慎重に検討を要すると思うのであります。今の体制であるいはいいのではないかと思う節もあるわけでありまして、学識経験者、そういうことで大体いいのではないかと私は思っておる次第であります。
  99. 石川委員(石川次夫)

    ○石川委員 次に、こまかい点がたくさんございますが、大ざっぱな点だけ伺います。  同じく促進法の第十四条でございます。これは損失の補償でございます。実は先般、同じこの委員会で問題になりました公共用地の取得に関する特別措置法という法案が出ました。そのとき社会党といたしましては、この趣旨に対してはもちろん賛成ではあるけれども、電源開発関係のような私営事業、こういうものは対象から除外すべきではないかという修正意見を出した。これは多数決ということでわれわれの意見は通らなかったのでございますけれども、現在まだ参議院でもって審議中でございます。それで、知事さんの意見を伺いたいのでございますけれども、この公共用地の取得特別措置法が参議院を通過して、法律として成立するということになりますと、緊急裁決の対象になり得るわけでございます。そうなれば、今までの土地収用法よりもずっと期間を詰めることができると同時に、問題になっております憲法違反の疑いがあるということで、われわれも非常に問題にしたわけでございます。前払い制度、仮払い制度でもってどんどん事業を遂行することができるという性格を持つようになるわけです。これは公共事業であると認定ができればわれわれはあえて反対するものではありませんけれども、少なくとも利潤追求の私営企業であり、今まではそろばんをとって、三年かかっては非常に不経済だ、これを何とか一年間詰めなければならぬということになれば多くの補償金を与えるということもできたわけでありますが、今度は緊急裁決ということで、特定公共事業というものに認定さしてこの対象に移してしまえば、そういうふうにそろばんずくでもって多額の金を出す必要もなくなる。土地収用法による強行突破ということも実現をする危険性があるわけであります。それで、一つ知事さんの御意見を伺いたいのでございますが、この第十四条の損失の補償は、公共用地の取得の特別措置法が出ることによってなおさら不安に感ぜられる点があるのではなかろうか、これが第一点であります。  それからあと一つは、損失の補償かどうなるかという問題で、われわれとしては、少なくとも建設省でやる公共事業の土地収用の対象にする場合の補償の基準は確立されておらなければならぬということをいつも強調しておったわけです。しかしながら、補償の基準なしに特定公共事業の収用制度が衆議院段階では通過を見たわけであります。これに対して、知事としてはおそらくわれわれと同じ意見じゃないかというふうに感ずるわけでございますけれども、この点の御意見を伺いたいと思います。
  100. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 私は先ほども申し上げましたが、損失補償という問題は、何がしの損失があったら金で解決をするということではいけないことなんで、やはり問題が大きくなれば、結局補償問題はその地元社会の開発、発展策であり、御当人たちの生活再建計画である、こういうふうな割り切り方をして扱って下さらなければいけないのじゃないかということを根本的に考えております。そういう意味で、公共用地取得の特別措置法の問題で生活再建の問題をうたってあることは、私は一歩前進のような感じがいたしますけれども、その生活再建の計画を、どうやら何か知事の方にかわしてよこされるような表現であって、その点はまことに不安なのであります。しかし、それは今申し上げるべき場面じゃないから申し上げませんが、先ほど申しましたように、そういうおぜん立てのいろいろな特別措置法がどんどん先に進んでいって、そうして奥地開発とか、地域開発とか、全面的な工場立地とか、総合開発の問題がだんだん取り残されていくという意味では非常に不安と焦燥、懸念にかられるのであります。相当御同情のある、行き届いたお扱いをなさらなければ、公共用地の取得に関する特別立法ができただけに、私どももその運用の仕方によっては一そう懸念が増すような感じを率直のところ持っておるわけでございます。  補償基準の設定の問題については、お説の通りでございます。これは勝手な熱を吹いて笑われるかもしれませんが、損失補償の問題についてはそういう考え方をしているので、金でもって何がしの損を埋めるということではなくて、やはり公共の立場でもって大きな仕事を進められる場合には、地域開発的な、生活再建的な補償ということを考えに置いて、相当しっかりとした補償基準を確立して臨んでいただきたい、こういう意見であります。
  101. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 日野吉夫君
  102. 日野委員(日野吉夫)

    ○日野委員 大体同僚議員からみな触れられておりますので、私は簡単に伺いたいと思うのです。  いずれも水源地知事さん力で、そして池田内閣の所得倍増計画には縁の遠い地域知事さんでございますが、まことに不安にかられておる状態もわかるのでございます。ただやはり、この計画は治水と利水の両面にわたって一貫した合理的開発利用規定されなければならぬのですが、この法律はどうしても利水の点に重点が置かれておる。水源涵養の点が十分にうたわれていないということは、過般来の審議の経過から見てみんな一致したところでございますので、その点については、いろいろこの法の体系からも考えておるのでございます。  長野知事さんの言われる管理体系の変更を避けられたいということは、同じ知事さんたちの要望書の中にも、開発公団法の「第二十三条第一項は、河川法管理体系の根本的な変革となるので、同条同項を削除すること。」、こう規定してありますが、これと同一の趣旨と見てよろしいかどうか。これは長野知事さんから伺いたいのです。  また、この要望書は、きょうここに出されただけでなく、ほかに総理大臣とか建設大臣とかにもこの要望書を出してありますかどうか。この点も伺っておきたい。  それから、群馬県の知事さんに伺いたいのです。この法律は非常に政令に委任している点が多い。三十何項もある。あなたが力説された、地方経費負担政令にまかされたのでは困るということは、私たちもそう思う。そのほか三十余もある政令を令部法定事項にせいということになると、時間的にこれは間に合いませんから、そのうちあなたが考えておられる、これとこれはどうしても法律で定めてもらわなければ困るというようなものがありましたら、一つその点を伺っておきたい。
  103. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 包括的に政令に委任されて困るという点で、どこが一番困るかというお話でございましたが、ほかの知事さんからもお話がありました通り、一番問題点となるのは何としても公団法二十三条の六項、七項あたりの、河川法権限に関する問題である、こう思っております。その次には、経費負担に関する問題がございます。負担の割合とか、あるいは該当県とか、これは私は内容がよくわかりませんから、いいとか悪いとかいう議論は別として、そういうものが非常に重要な問題で、定め方いかんによっては地元県としては大問題であるので、こういう点はできれば法律に明確にうたっていただきたいということでございます。時間もございませんので、その程度にお答えを申し上げておきます。
  104. 日野委員(日野吉夫)

    ○日野委員 滋賀県の知事さんにちょっと伺います。あなたの御主張に、琵琶湖開発促進を単行法としてきめてほしいということがありましたが、特定地域開発が何かでこれをお出しになったことはございませんか。
  105. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 先ほど申し上げましたように、滋賀県の水源地関係は他と大いに異なるものがありますので、ほんとうにぴったりした法をきめるのならば、琵琶湖水資源開発法案というものをきめていただけば一番適当である、こう思っております。しかし、それをきめてもらうということは非常に時日を要するということでもあり、この法案によって適当に修正を加えていただくなりして、滋賀県の場合でも決して支障がないというものにしていただけるのであるならば、この立法でけっこうだと思います。しかしながら、ほんとうをいえば、琵琶湖の場合は特別立法をしてもらうだけの理由があろうか、こう思っております。しかし、今のところそういうことでけっこうだと思います。
  106. 日野委員(日野吉夫)

    ○日野委員 もう一つ、要望書の二項の2「都道府県の総合開発計画をも考慮の上、これが合理的調整を図ること。」とありますが、国土総合開発法の二条二項で指定しておる全国総合開発計画、それから都道府県総合開発計画、そのほか二府県以上にまたがる地方総合開発計画、それから特定地域の総合開発計画、四つあるのですが、そのうちの都道府県開発計画だけをこの要望書はさしておるのか、この点どうなんですか。
  107. 笠原参考人(笠原吉三)

    笠原参考人 ちょっと失礼します。私、書いたわけじゃないから、よく聞いて御返事します。
  108. 日野委員(日野吉夫)

    ○日野委員 それじゃ、いいです。
  109. 石川委員(石川次夫)

    ○石川委員 時間が大へん切迫したようでございますので、公団法関係を一括して御質問を申し上げますから、御回答願います。  先ほどの御答弁について、ちょっと私の方から意見を申し上げてみます。公共用地の取得の場合、被償の基準をきめろということはわれわれの主張だったのですが、それとあわせて、起業者が全部責任を持たなければならない。都道府知事にまかせることはけしからぬという考え方はわれわれも持っております。  あと一つは、生活再建対策というものを明文化したということは一つの進歩かもしれませんけれども、これだけを倫理規定のように規定しただけでは本物ではないのではないか。従って、これについては別個な予算をつぎ込みまして、補償金庫、補償公庫みたいなものを設けるとか、具体的な方策をとらないと、単なる倫理規定になるのじゃないかという意見を持っております。これはまだ参議院で審議の段階ですから、知事さんの方でそういう意見があれば、参議院の方に積極的にその旨を申し入れてもらいたいということあわせてこの機会に申し上げておきます。  それから、公団法の第十九条、第二十条、第二十一条、第二十三条を一括して御質問いたします。  十九条は事業の実施方針でございますが、これをきめる場合に知事意見を聞くということに相なっております。それから公団法の第二十条には、実施計画の場合でございますが、知事協議を求めるということが書いてあります。それから公団法の第二十一条には、施設管理方針については別に知事意見を聞くということが全然明記されておりません。それで、関係都道府県知事の要望といたしまして、この事業実施方針については知事意見ではなくて、知事協議をしてもらいたいという希望が出ております。それから二十条に対しましては、実施計画にあたっては知事協議というだけではなくて、関係都道府県議会の議決がほしいという意見が出ておったと思います。それからさらに、二十一条の施設管理方針につきましては、知事意見を求めるということを明記してほしいということは、われわれからすればまことにもっともな御意見だと考えております。この点につきましては、実は何回もこの委員会でも当局には質問しておるのですが、明らかな答弁が出ておりません。しかし、われわれとしては、どうしても皆さん方の御要望に沿った修正をしたいと考えておりますけれども、これはどうしても修正をしなければ困るという強い御意見なのかどうなのか。その点お伺いしたいと思います。  それから、二十三条の件でございますけれども河川法の特例ということに相なります。この二十三条につきましては、実は滋賀県の方から出た要望書は、二項についてだけこれを削除してもらいたいという意見が出ておったわけであります。ところが、今度関係都道府県の要望書によりますと、二十三条の二項には触れておられませんで、かえって一項の方を削除してもらいたいという意見が出ておるわけであります。従って、この二項をどうしても削除してもらいたいということを希望された滋賀県知事さんの御意見を伺いたいのです。二項ではなくて逆に一項にすり変わったという点について、滋賀県の知事さんとしては特別御意見がないのか。  以上の点を、一括して御質問して恐縮でございますけれども、伺いたいと思います。
  110. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 二十三条の、知事河川管理権を制約するということ、これは私の場合は、知事がそういうことで河川管理権なども制約されるということになると、すべての仕事が圧迫されてやっているという感じ県民に与えることが一番きらいだと言っているわけです。知事が自主的にやるのであるという体制を立てて進めば、琵琶湖開発あたりはスムーズにいけるが、法の上からも常に知事が制約を受けてやっておるのだという感じを受けて、県民があらゆることをそういうことを基調にして考えるようになったら、これは成立しないというのが私の心配しておる点です。この点は一つ削除をしていただきたいというのが、私の要望なんです。これは各府県とも、要望がそういうことになって出ておる。これはどこでも同じことであるということであります。この点については、これによって知事河川管理権が何らか抑えつけられるということのあることは、これから仕事をしていく上については非常に支障である、私はこう思っておる次第であります。
  111. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 お答えいたします。第十九条の事業実施方針には意見を求めると書いてあって、第二十条の事業実施計画には協議を要すると書いてあるわけでございますが、この文句もいきさつのあった文句であります。事業実施方針と事業実施計画というものは内容的にどの程度固まってくるものか、具体的な実施の段階にならないとよくわかりませんが、私ども懸念しております点は、こういうふうに事業実施方針と事業実施計画というもので扱い方をかえておられます結果、意見を徴して一応固めた話だからよかろうじゃないかということで、協議の方はあっさり進められては困る、こういう懸念が率直のところあるわけであります。そこで、両方とも協議をしていただくならば、しっかりした協議をしていただきたい、こういうことを考えているわけであります。  二十一条につきましては、私どもの県からは実は積極的に発言をいたしませんでしたが、先ほどもお答えいたしました通り地元県民が非常に懸念を持って見ている問題でございますので、なるべく地元の実情に即しつつ連絡をとりながら進めていただくように、できるだけ行き届いた御配慮と措置をお願いしたい、こういうことを申し上げたいと思います。
  112. 石川委員(石川次夫)

    ○石川委員 滋賀県知事さん、答弁がちょっと私の要求したのと違うのですよ。というのは、二十三条の二項を削るという希望だったのが、一項ということに変わったけれども、そのいきさつはどこにありますかということです。
  113. 谷口参考人(谷口久次郎)

    谷口参考人 今のお尋ねになりました点は、いわゆる河川法の「規定にかかわらず」ということですね。河川法によって知事河川管理権というものが認められておる。これが抹殺されるようなことになってはいかぬと思います。この二十三条の二項の問題は、十分検討しておりませんが、私の言わんとするところは、知事河川管理権が何らかの形で押えつけられるというようなことは絶対にいかぬ、こう言うておるわけです。
  114. 加藤委員長(加藤高藏)

  115. 瀬戸山委員(瀬戸山三男)

    ○瀬戸山委員 参考人の皆さんは大へん長時間でお疲れでありましょうから、ただ一点だけ御意見を承っておきたいと思います。  というのは、今問題になった河川法との関係であります。誤解があったりいたしますといけないので、この点についてさらに皆さんのお考えをお尋ねしておきたいのです。と申しますのは、これは前から問題になっておったところでありますし、私も一、二回皆さんとも会って、直接お話を承ったこともありますが、二十三条で、河川に関する工作物についての、河川法第七条の規定を除外することになっております。ところが、これをよく見ていただくとおわかりだと思うのでありますが、この七条を適用しないというのは、ここに書いてあります通りに、五十五条の第二号に書いてある工作物について工事することを公団に認める。それは何だというと、ダムだとかあるいは河口せきとか、いわゆる基本計画、それから実施計画でもって定められたその工事を公団がやる場合に、公団がその工事ができるのだという規定でございます。御存じのように、河川法の七条は、原則として河川に関する工作物は都道府県の皆さんの方でおやりになる。しかし、他府県にわたったり、あるいは規模が大きかったり、特別の工事をしなければならぬというときは、建設大臣が直轄工事でやるのだ、こういうふうになっておるわけでございます。そこで、御承知だと思いますが、五十五条の第二号というものはまさにそういう仕事でありまして、これは特別大規模なものであったり、あるいは他府県にまたがったりする工事であります。本来ならば、これを公団でやるかどうかということは、ここにも書いてありますように、基本計画でその方針をきめることになっておりますが、これを国でやるか、あるいは地方公共団体でやるか、あるいは公団でやらせるかという区分けをするわけであります。これは特別にこういう機関を作って、そして公団にやらせる方が適当だという考え方で、政府はこれを出したということで説明をしております。従って、普通ならば国が直接やるべきものを、公団という国の一面の仕事をする特殊な組織を作って、それにダムの建設をやらせたり、あるいは河口せきをやらせたりする。その工事が、河川法の七条の規定にかかわらず、本来ならば都道府県やあるいは建設大臣が工事をやるのだけれども、この五十五条によって基本計画に定められたもの、あるいは実施計画によって定められたもの、こういう仕事公団ができるようにしますということであります。それができないというなら、公団は要らぬということになる。公団が要るということであれば、公団にその河川に関する工事をやらせなければならない。こういうふうに私ども政府の説明を聞いて了解をいたしております。河川管理権の原則を根本的に変えるというふうに皆さんの方から出ておりましたけれども、そういうことは一つもこの公団法には触れておらない、こういうふうに了解しております。繰り返すようでありますけれども、皆さんの県に川が流れている、それは皆さんの方でおやりなさい、こういうことです。しかし、大規模なものは直轄でやってくれということは、むしろ地方からも始終陳情を受けておるというような実情でございます。その直轄でやるべき分を、ここに特別の組織を作って公団でやらせよう、これだけのことに私どもは了解しております。従って、河川管理権というものを取り上げるとか、排除するとかいう規定じゃないという説明で私どもは了解しておるのであります。公団がいかぬという御議論であれば別ですが、公団を作って仕事をさせるというならば、県と国と公団という組織がやる仕事、しかも特定されたこの五十五条の二号に並べてあります工事というものは、先ほど来ずっと御意見の交換がありましたように、基本計画というものを聞き、また実施方針というものを聞き、さらに公団が実施計画を立てたときに皆さんの方とよく協議をして、その協議ができた後にこの仕事をするというのでありますから、それは公団がやるということは河川法の原則に反するということは、私どもは数日これを聞いておりますが、どうしても了解できない。これだけ申し上げて、さらにこの問題についての皆さんの御見解を承りたい。
  116. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 ただいまの御意見にお答え申しげます。私ども、根本的に公団でなければ仕事ができないかということについては意見もありますけれども、それは今の段階で申し上げようとは思っておりません。公団を認めるからには、当然こういうことになるのじゃないかという御意見ですが、そのお説もわからないこともないのですけれども、ただ、こういうような規定の仕方で、「かかわらず」という言葉だけでもって、河川法の七条を、従って多分十七条の問題もひっかかると思いますが、十七条のことはどこにもうたってありません。十八条もうたってありませんけれども、この「かかわらず」とい言葉だけでもって河川法の七条、十七条のような非常に重要な規定をてんからはずされてしまって、従来河川法でもって権限を与えられていた知事立場というものは、てんからノー・タッチで事が運ばれてしまうであろう、こういうふうに考えられます。やはりそういうことではなくて、従来の河川法の建前とか、知事立場というものは一応尊重して、そして公団にやらせるならやらせるように、適当な形で許可するとか、承認をするとか、協議をするとか、いろいろの方法があるのですから、何もてんから知事をはずして、ノー・タッチで事を運ぶということはいけないじゃないか、こういう考え方であります。  なおもう一つ、建設省の直轄でおやりになるのと知事に対する関係は同じだ、こういうことであります。それもよくわかるのでありますけれども、これは少し心配が過ぎるかもしれませんが、さっき申し上げました通り、私どもは建設省が直轄でおやりになる場合と、公団という専門屋が仕事本位におやりになる場合には、率直に申しましてどうも不安が多いわけです。これはよほどよく行き届いた配慮をして、そうした仕組みの上でやっていただかぬと、公団の場合には非常にドライな仕事本位、能率本位のなおざりな進め方をされては、地元としては非常な懸念がある、こういう不安を持っておるわけであります。
  117. 瀬戸山委員(瀬戸山三男)

    ○瀬戸山委員 論議をするつもりはありませんので、できるだけ御了解を得たいと思います。今お話がありましたように、もちろん公団等が都道府県あるいは地元の皆さんとけんか腰でやったら、仕事はできるものじゃない。それは十分に御理解を得て、御協力を得なければ、工事はできないと思います。それはその通りだと思います。ただ問題は、河川法の問題についてお話がありましたが、それは今お話を承っておっても、まだまだ私の了解と知事さんの了解は少し距離が遠いのじゃないかというように、失礼でありますけれども感じます。と申しまするのは、「規定にかかわらず」と書いてあるから、知事さん方に無断でやるようなことでは困るというようなお話であります。重ねて申し上げて恐縮でありますけれども、きつき申し上げましたように、これは特定された五十五条の第二号に列記されたものであります。しかも、その第五十五条の第二号に列記された仕事というのは、先ほど申しましたように、実施方針から実施計画まですべて最後には御協議を申し上げて、そしてこれをやろうじゃないか、この分は公団がやるのだときまった後の仕事でありますから、知事さんや都道府県に無関係で、何も御相談もしないでやるということにはならないのじゃないかと思うのです。それでも実はやり方によって、もちろん地元とは十分御理解を得、御協力を得なければできないことは当然であります。これは運用の問題でありますが、制度の問題としていかがでしょうか。
  118. 神田参考人(神田坤六)

    神田参考人 大体お説のほどもわかりますが、いろいろな基本計画とか事業計画というものを立てて、それは固めるまでにいろいろな連絡もするし、相談もするじゃないかということと、「かかわらず」という言葉だけでもって河川法の七条、十七条、十八条というものを置きかえて排除されてしまった、こういうふうに私どもは考えておるのです。まあ実質的には、結果において具体的にはあまり隔たりはない結果になるかもしれませんけれども、そういうような基本計画の作り方とか、事業実施計画の作り方等の手続とか、「かかわらず」という言葉でもっていつの間にか河川法基本的な重要なものが排除されてしまった形になっておるということは、何か私はえらいお扱い方が簡単過ぎるような感じがいたします。もう少し河川法に基づく本来の知事が与えられた権限というものは基本的にどうするのだということを、まっこうから取り組んでいただいてもいいんじゃないかということと、でき得れば従来の河川法も古いものですから、いろいろななにがあるわけでしょうけれども、従来の知事河川法に基づく権限というものは立てておいて仕事を進めるというような方法があるまいか、こういうことを考えるのであります。
  119. 石川委員(石川次夫)

    ○石川委員 瀬戸山さんの御意見ですが、直轄の陳情が出るというのは、おもに治水の側から河川改修をしてもらいたいという場合にそういう陳情が出るわけであります。これは主として利水の側から出た陳情でありますから、性格が全然違うわけであります。従って、二十三条を全部削除すると公団それ自体が生きてこないじゃないかという懸念もわかります。わかりますけれども知事の言い分も理解してあげなければならぬと私は思うので、その点については知事の言い分を考えながら、自民党と大いに修正をどうしたらいいかという点について相談をしたいということを一応申し上げておきます。
  120. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 参考人に対して他に御質疑はありませんか。――なければ、参考人に対する質疑はこれにて終了いたしました。  参考人には、お忙しいところ、まことに御苦労さまでございました。(拍手)  本会議散会後再開することとし、それまで休憩いたします。    午後二時四分休憩      ――――◇―――――    午後五時二十六分開議
  121. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  開会前に、日本社会党の諸君の出席を求めましたが、御出席がありません。従って、やむを得ず、遺憾ながら会議を開いたわけであります。  水資源開発促進法案及び水資源開発公団法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  玉置一徳君。
  122. 玉置委員(玉置一徳)

    玉置委員 再々御質問もございましたから、重複するかと思うのでありますけれども、私の方の党の態度を決定いたします上に必要でございますので、重ねてという形になるかもわかりませんが、一、二御質問を申し上げたいと思います。  まず、私たちの基本的な態度といたしましては、政府の提案理由の説明にもございます通り、非常に水が不足して参りまして、ことに工業用水あるいは都市用水にその傾向が顕著でありますが、これは過度な人口集中と無計画な工場誘致というものが原因したんじゃないか。従って、この問題を側面やはりとらえて、計画的な国土開発計画を樹立してお置きにならなければ、この問題だけではとうてい処理することができないように感ずるわけであります。従って、そういう国土開発というような観点とこの法案との関連におきまして、どういうような形でそれを処理してお置きになるかということをまず第一点にお伺いしたいのであります。
  123. 中村国務大臣(中村梅吉)

    ○中村国務大臣 東京初め大都市における過度の人口集中を、何とかその傾向を排除していかなければならないという点につきましては、政府はかねがねいろいろな措置を行ない、また立法等もいたしまして努力をいたしておる次第でございます。従いまして、東京及び首都圏内の既成市街地等におきましては、工場等制限に関する法律まで制定をいたしまして、一定規模以上のものの流人を防止いたしておるというような次第でございます。その他首都圏の事業等は、主としてそういう点に重点を渇きましていろいろな企画を進めておるような次第でございます。しかしながら、現実に東京初め大阪、名古屋等にいたしましても、大都市の水が、水道用水の上から見ても足りませんし、その上に工場がいろいろな立地条件の関係でその圏内にできまする傾向にあることは御承知のような次第でございます。そこで、この水資源開発については、私ども考えますことは、この法律はそれぞれ水資源の思い思いの枝川をしないように、できるだけ総合的に合理的に高度利用をするように開発をしていかなければならないということと、この促進法並びに公団法等ができまして、それらの現実をまかなうということと、やがてはこの水域においてはこれが最高限度であるという線を一般に周知徹底するような線がやがて出てくると思うのであります。かようなことによりまして、過度の集中もやはり限度がありますから、その限度で、国民全体の理解の土に立って行ない得る時期がくることを私ども期待いたしておる次第でございます。  他の地方にできるだけ、工場を分散しなければならない点につきましては、御承知通り、通産省が中心になりまして、工業立地条件の調査を先年来始めておりまして、本年からさらにこれを業種別に立地条件の調査を開始いたします。これに奉りきまして、各地方に工場分散をして、地方開発をはかるということも考えておる次第でございます。この促進法及び水資源開発公団法の考えますところは、先ほど申し上げたように、総合的な開発を要する区域の水系を指定してやるということでございますが、総合的でない単純開発のできる地域につきましては、工業の地方分散に並行いたしまして、これは国の責任として、また都道府県責任として当然進めることでございまするから、この総合開発をいたしましても、地方的な単純開発がおろそかにされるということは絶対にあってはならないことでありまするから、さようなことのないように、われわれは今後とも善処して参りたいと思います。
  124. 玉置委員(玉置一徳)

    玉置委員 経企庁の長官にお伺いいたしたいのであります。この法案がとりあえず企図されておりますのは、淀川水系、利根川水系、木曾川水系というようなところの、きょうまで主として建設省が御許画されました治水上のダムというものが当面計画に乗っておると思うのです。淀川の水で見ましても、十年間大阪では現在の淀川の三倍の流水を必要としておる。あそこには琵琶湖という職官な水がございますので、あるいはその他の方とは別と思いますけれども、利根川の治水目的のダムくらいのことでは、とうてい東京都のばく大な、しかもこれから押えても著しく伸びていくような場合に、あれでは無理じゃないか。従って、外国の例に見ますように、汚水、廃水の処理までいたしまして、あるいは海水の利用等によりまして、それを補っていくということを同時に企画していただくようなお考えがあるかどうかということを経企長官にお伺いしたいと思います。
  125. 迫水国務大臣(迫水久常)

    ○迫水国務大臣 所得倍増計画におきましては、水の所要量というものを一応はじいておりますが、その場合にも、水をどれだけ回収するかというようなことについての仮定を設けまして、相当の回収した水の利用ということを考えております。その回収につきましては、通産省が中心になりまして、一つの施策をいたしておりますので、もし具体的にその回収についての施策の説明が必要ならば、通産省の要務当局から答えさしていただきたいと思います。
  126. 玉置委員(玉置一徳)

    玉置委員 ただいまのお話によりますと、そういうことを企図されて、いろいろ企画されておるということはわかったわけであります。従って、本法案でとりあえずおやりになるほかに、そういうことをなるべくすみやかに御計画なさるようにお願いを申し上げたい、かように思います。  次に、建設大臣にお伺いを申し上げたいのであります。水資源開発促進法でございますが、この法律の第一条の目的にございます通り、これは特定の河川水系を指定されるわけであります。普通法律体系で申しますと、水系を指定された場合には、指定の法的な効果、ここで申しますと水利権ということが問題だと思うのです。また例を引きまして恐縮でございますが、京都府、大阪府が治水目的のため、利水目的のために、先ほどおいでになつておりました琵琶湖のダムをこしらえるのでも三府県、一兵庫県を入れて四府県がどうしても話がまとまりませんというようなことで、私は先ほど質問をされた方々とは逆な立場であって、現在まで開発されておる水というものは別といたしまして、これから開発される水に対する一番効用を発揮する効率的な配分をせなければならないのじゃないか。そうすると、水利権というものを府県の知事がお持ちになっているものをそのままにしておったのでは、口で言うべくして事実上は行なわれない。そこで、それのもう一つ上の機関がその開発された分だけの水利権は配分してもらいたい、権利を持ちたい。ただ、私思いますのには、審議会の委員の中へは関係府県の知事も入れまして、その答申に基づいて、ここだったら総理が水利権を行使されるというような効果を持たなければ、水系を指定された効果が那辺にあるかということが非常にはっきりしないのじゃないか。ここでは各条文に知事意見を聞き、知事の何々をしと書いておりますが、意見を聞いて、もしもいやだと言うたときには、一体この法律ではどうなのかということを一つはっきり教えていただきたいと思います。
  127. 中村国務大臣(中村梅吉)

    ○中村国務大臣 先ほど御指摘のありました水系の指定ということと、都道府県知事が持っております水利権とは、直接の関連はないわけであります。水利権は従来通り都道府県知事が持っておりますが、河川についての総括の責任を持っておりまする建設大臣が、その点は総合開発をする上におきましてコントロールをして、適当に調節をつけていくという以外にないと思うのであります。
  128. 玉置委員(玉置一徳)

    玉置委員 まことに恐縮でございますが、簡単でけっこうでございますから、もう一度おっしゃって下さい。
  129. 中村国務大臣(中村梅吉)

    ○中村国務大臣 水系指定ということは水利権とは直接つながりはないわけでございます。水利権は従来通り都道府県知事が持っておるわけでございますが、しかし、河川に関しましては、建設大臣が総体の河川管理上の基本的な権能を持っておりますから、この河川に関する建設大臣の権能を活用しまして、各関係都道府県知事の水利権の調整をはかるという道を講じて参りたいと思うのであります。
  130. 玉置委員(玉置一徳)

    玉置委員 私の方の門司君が二、三日前の連同審査のときにお伺いを申し上げたと思うのです。富山県の水を長野県へ持ってきたり、よその府県のものを逆流さして必要なところへ持ってくるような措置まで考えなければ、とうていほんとうは満足な措置ができないと思うのです。そういうような関係では調整という言葉は非常に便利でございますけれども、きょうもお話がありましたように、調整ということと、意見を聞きということと、協議をするということは、いろいろ言葉は違いますが、われわれもヒヤリングの間でいろいろお伺いしたのでございますが、知事さんがそういうようなことをおっしゃる方はないでしょうということで逃げられるのが落ちなんです。今、大臣のお話を聞きまして、そういうことがほんとうかもしれませんけれども、私は知事の水利権をぶった切るというのでは決してございません。今府県の自治体を守ると同町に、広域行政というものは、もう経済欄がこのくらい拡張されて参ります以上、水に関する、あるいは交通に関する広域経済圏という一つの動きというものは、都道府県を認めないという意味じゃなくて、認める上におきましても、もう考えなければいかぬ時期じゃないか。まして、ここに問題になっております水というものは、最もそれの顕著なものじゃないかとわれわれは思うのです。そういう意味におきましては、調整をとっていくというところが、知事がもしもいやだと言った場合、その水をどういうようにお扱いになるのか。意見を聞くというときに、拒否された場合に、上級機関の考え方でもって処理できるかどうかということを一つお伺いしたい。
  131. 中村国務大臣(中村梅吉)

    ○中村国務大臣 もちろん調整をいたします場合に、府県によりましてはなかなか困難な事態が起こる場合もあり得ると思います。知事はそれぞれ自分の県民の利害を代表しておりますから、そういう事態もあり得ると思うのでありますが、しかし、それには他の工業開発をしますとか、地域開発をいたしますとか、政府としましては、その県民なり知事なりが納得するような、また他の措置も政治全体としましては可能でございますから、それらの方法によりまして適切な調整のできるように、政府の努力いかんによっては、私は常に公正な調整の道をはかっていくことが可能である。また、そういうふうに努めていかなければならない、こう思っておる次第でございます。
  132. 玉置委員(玉置一徳)

    玉置委員 重ねてお伺いいたしたいのでありますが、本法案が非常に俗にいうなわ張り争いと申しますか、官庁関係の調整のために手間取りまして、国会の会期のいよいよ終わりごろになってからこういう重要な法案が国会に提案されたといういきさつを見ましても、なかなかむずかしい問題があるのだと思います。非常に御苦労なさいまして、お作りいただきました公団法案を見ましても、それぞれ主務大臣の指示を受けながらやるわけでありますけれども、問題のむずかしいのを全部公団責任者におっかぶせてしまったというような感じがするのであります。そういう意味におきましても、建設大臣に申し上げてまことに恐縮でありますけれども、先ほど申し上げましたように、ただに水系におけるダムというような問題だけじゃなしに、その他廃水、汚水の利用から海水の問題、あるいは総合開発との関連というような大きな問題があるわけでありますので、将来なるべくすみやかにいわゆる資源開発庁と申しますか、国土開発庁と申しますか、そういう機関をお設けになりましてやらなければ、せっかくきょうまで苦労されてようやく間に合わされました文章でありますけれども、その解決はほとんど見ておらないのじゃないだろうかという心配をするのであります。この点、経企庁長官は一体どういうようにお考えになりますか。
  133. 迫水国務大臣(迫水久常)

    ○迫水国務大臣 お話のような意見は方々にございまして、また、その中には傾聴すべき点があるとも思います。しかし、これはきわめて重大な問題でありまして、政府といたしましても寄り寄りそういう話は出ておりまして、研究をしなければならないということには、いっておるのでありますが、今日のところまでは、まだそういう段階にはなっておりませんけれども、これから十分に研究をさせていただきたいと思います。
  134. 玉置委員(玉置一徳)

    玉置委員 最後に、先ほども申し上げました通り、このものが出発しますのは、治水上の多目的ダムというものからとりあえずやっていこうというお考えでありますこともよくわかりますし、あれもこれもやらなければならぬということがわかっても、あしたからそういうものがやっていけるものでなし、一つ一つずつ順序を踏まれまして、膨大な機構にまでなった場合におきましては、おそらくそういった形にまで発展していくのじゃないか、かように思うのであります。何しろ新聞紙上をにぎやかしまして、今度はそのまま御提案にならぬのじゃないかというほどに思っておりましたようなものが、最後にぽつんと出たわけであります。われわれはこの法律だけを見ましても、何か基本法のような法律でございまして、内容その他がはっきりわからないところが多いのでありますけれども、あのくらい生まれるまでに難擁したものでありますので、おそらく審議をもっともっとやらなければ、どこか不可解なところが多いのじゃないかと考えておりました。非常に緊急を要する問題ではありますけれども、慎重を要する問題であることも事実であると思いますので、継続審議をして、慎重に御審議をいただくように私たちの考え方をまとめておるわけですが、どうか政府の方におかれましても、先ほど来いろいろとお話がございました問題にも御留意いただきまして、でき得ればこれを慎重に御審議をいただきまして、審議をさす時間をいただきたいと思います。この点につきましては別に御答弁をいただこうとは思いません。私の方の希望を申し上げたわけでございます。
  135. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 両案に対して他に御質疑の申し出がありませんので、これにて質疑を終局いたしたいと存じますが、両案に対する質疑を終局するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  136. 加藤委員長(加藤高藏)

    加藤委員長 起立多数。よって、両案に対する質疑は終局いたしました。  次会は明二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十八分散会