○村山政府
委員 お答え申し上げます。現在譲渡所得につきましては、これは年々の営業所得とかあるいは給与の所得と違いまして、多年のいわば所得が、資産の含みが一時に実現するという
関係にありますので、所得税法におきましても、特にその点はすでに所得税法自身で手当しているわけでございます。その
一つは、譲渡所得は普通収入
金額から譲渡の原価を引きまして所得が出ますが、それに対しまして十五万円を引いて、さらに半分にいたす、かような
措置を講じておるわけでございます。そのほかに
土地等を考えてみますと、明治以来持っておったというようなことで、今の貨幣価値に換算いたしますと、実は当時はただにひとしいものである、こういたしますと、それにいたしましても全額一応所得になるわけであります、全額に近いものが。最近における値上がりというものを考えまして、資産再評価法という
法律を作りまして、その場合は古くから持っておるものにつきましては、昭和二十八年までの値上がり分についてはその平均的な値上がりによって再評価いたしまして、再評価額をもって
取得原価といたす、かような
措置もまた講じておるわけであります。
さらに今、
委員からお話のございました、これは任意売買の場合でもその問題はあるわけでございます。強制的に
収用された場合、すなわち所得はなるほど実現いたしましたが、それが
自分の意思に基づかないで強制的にやられた場合においてはまた一般の場合とは別の考慮をすべきではないか、こういう議論がございまして、実はこの点も租税
特別措置法において
措置を講じておるわけでございます。すなわち譲渡所得、先ほど申しましたように、収入
金額から原価を引きます。その原価の見方については、値上がり分は再評価をいたします。そういたしました場合には、特にその所得
金額を半分にいたし、それについてさらに普通の場合と同様に十五万円を引いて半分にいたす、かようなことになるわけでございます。ですから、詰めて申しますと、所得
金額が一定
金額が出ますと、三十万円を引いて四分の一にいたしたものをもって課税標準にいたすということと同じことでございます。
現在の負担はどんなことになっておるかということを見てみますと、かりに
補償金額一千万円程度出た場合でございます。これも租税
特別措置法で
二つ規定しておりますが、
一つは単純に売られてそのまま所得が実現したという場合と、そうでなくて、やはり強制
収用されますと、大体の場合は代替資産、かえ地を求めることが多いわけでございますが、もしかえ地を求めた場合には、そのかえ地に要した価額の
範囲内においては課税いたしませんということも同時に現在の租税
特別措置法で
規定しているわけでございます。そこで、一千万円の
補償金がかりに出たといたします。再評価額は大体七分の一程度が通常でございますので、さような計算例によって計算いたします。そういたしますと、一般の任意売買の場合には、その場合の負担が百四十一万七千円程度、所得に対しての率が一四%くらいでございます。これでも先ほど申しましたような再評価法と、それから所得税法の
措置によりまして、一般よりは非常に安くなっております。これは累年の値上がり分が一挙に実現したということを考慮いたしまして、かような税制になっておるわけでございます。ただいま
委員のおっしゃいました強制的に
収用された場合でございますと、全然代替資産を
取得しなかったという場合には、六十万円程度の負担になるということでございまして、その率は
補償金額に対して二・六%程度、普通完全に代地を
取得いたしますればもちろんゼロであります。再評価税だけ納めればいいということになりまして所得税はゼロでありますが、かりに七割くらい代替資産を買ったという場合を想定してみます。普通事例がその辺が多うございますので、その辺で計算例をとりますと、一千万円の
補償金をもらいましてかかる
金額は十七万円、一・七%くらいになっておるわけであります。
現在租税
特別措置法、再評価法並びに所得税法、これらによりまして強制的に
収用された
方々の負担につきましてはこれだけの
措置を講じておるわけでございますが、お話のように今度のような
特定公共事業の用に特に提供されたものについては、さらにこの上に特別な
措置を講ずる必要があるかどうかというところの判断の問題だと思います。われわれの方で強制
収用の場合に一般の場合に比べまして特別の
措置を講じておりますのは、本人の意思に基づかないで所得が実現されるというその一点をにらんでおるわけでございます。従いまして、そういう
意味から申しますと、一般の
収用の場合であろうと、あるいは
特定公共事業の用に提供する場合であろうと、その本人の意思に基づかないという点においては変わりはないわけでございまして、また負担の程度を見ましてもこの程度になっておりますので、この上実質的に負担を軽減するのは全体の税体系のバランスから見ていかがなものであろうかということを考えたわけであります。
ただ、気がついておりますのは、今度の案を見ますと、代替資産として
土地を
収用したかわりに家屋の一部を与えるとか、あるいは借家権を与えるというような場合もあり得るように
規定上読まれます。現在の租税
特別措置法の代替資産の
範囲というものは、大体今までありました例で、従来は
土地、家屋、住宅用であればやはり住宅用という代替資産の
範囲でありますが、ただ八郎潟その他の例で湖を干拓しまして、そして
漁業権の対価として農地をやる、あるいはそれにかわるべき
土地をやるというような事例も出て参っておりますので、この程度の代替資産につきましては手当をしておるのでございますが、今度の
法案で出ますような、
法案の実施によりまして想定されるような、
土地に対して借家権というような代替資産は実は想定していなかったわけでございますので、この点につきましてはさらに手当が必要だと思っております。この点は政令その他でまかなえると思いますので、いずれこの
法案が
通り次第、この
法案の実施上不都合のないようにわれわれの方で手当をして参りたい、かように思っておるわけであります。