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1961-05-19 第38回国会 衆議院 建設委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月十九日(金曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 加藤 高藏君    理事 木村 守江君 理事 佐藤虎次郎君    理事 薩摩 雄次君 理事 瀬戸山三男君    理事 松澤 雄藏君 理事 石川 次夫君    理事 中島  巖君 理事 山中日露史君       逢澤  寛君    綾部健太郎君       上村千一郎君    大倉 三郎君       大沢 雄一君    大高  康君       金丸  信君    木村 公平君       齋藤 邦吉君    二階堂 進君       丹羽喬四郎君    細田 義安君       前田 義雄君    松田 鐵藏君       山口 好一君    石田 宥全君       岡本 隆一君    栗林 三郎君       北山 愛郎君    兒玉 末男君       小松  幹君    實川 清之君       日野 吉夫君    三宅 正一君       田中幾三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         大蔵政務次官  大久保武雄君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         通商産業事務官        (公益事業局長) 大堀  弘君         建設政務次官  田村  元君         建設事務官         (計画局長)  關盛 吉雄君         自治事務官         (大臣官房長) 柴田  護君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         建設事務官        (計画局参事官) 志村 清一君         専  門  員 山口 乾治君     ――――――――――――― 五月十九日  委員木村公平君、齋藤邦吉君、栗林三郎君、實  川清之君及び三鍋義三辞任につき、その補欠  として細田義安君、上村千一郎君、石田宥全君、  北山愛郎君及び小松幹君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員上村千一郎君、細田義安君、石田宥全君、  北山愛郎君及び小松幹辞任につき、その補欠  として齋藤邦吉君、木村公平君、栗林三郎君、  實川清之君及び三鍋義三君が議長指名委員  に選任された。     ――――――――――――― 五月十八日  地代家賃統制令の一部を改正する法律案岡本  隆一君外九名提出衆法第四二号) 同月十九日  建築基準法の一部を改正する法律案内閣提出  第一八二号)(参議院送付)  水資源開発促進法案内閣提出第一九八号)  水資源開発公団法案内閣提出第一九九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公共用地取得に関する特別措置法案内閣提  出第一七九号)      ――――◇―――――
  2. 加藤高藏

    加藤委員長 これより会議を開きます。  公共用地取得に関する特別措置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  田中幾三郎君。
  3. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 近来、公共用地取得がきわめて困難となりまして、それが今後の経済成長並びに公共福祉の増進にとって隘路となっておることは事実であります。でありまするから、用地収用を円滑に促進させるために本法案提出なされた趣旨はよくわかるのでありますが、この法案の中におきまして疑問となる点、また要望をいたしたい点も多々ありますので、私見を加えながら質問いたしたいと思うのであります。  まず、大臣にお伺いしたいのです。この特別措置法におきましては、特定公共事業を多数指定してあるのであります。しかし、公共の用に供するといっても、半ば私益のために、営利目的とする事業も多々あるのであります。たとえば私設鉄道であるとか、あるいは電源開発であるとか、要は公共のためでありますけれども、目的営利のためにやっておるのでありまして、ここに本法案目的となるのは、「公共利害に特に重大な関係があり」ということが最も大きな要件であると存ずるのであります。同時に、緊急を要するということもこの認定要件になっております。この最も肝心な、公共利害に重大な関係がある、緊急を要するということは、一体どういう基準によってこれを決定するのか。これを非常にずるくかまえて、ゆるくかまえて、何でもやるということになりますと、非常に幅が広くなってくるわけでありまして、従って、私権に対する制限も非常に多くなってくるわけであります。この点について御所見をお伺いしたい。
  4. 中村梅吉

    中村国務大臣 この法律を適用いたしまする事業については、第二条で明記いたしておりまするように、努めて特定公共事業範囲を限定して、しぼって参りたいという考え方に立ちまして、基本的なことをまず法律の中に明らかにいたしまして、なおそのほかに、この法律上列記いたしました重要度の高い公衆の利害と最も重大な関係を持っておりまする事業のうちで、さらに公共用地審議会の議を経まして、そのうちから具体的に慎重に検討をいたしましてしぼって参りたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 この四十八条によりまして、特定公共事業認定に関する事項審議をするために公共用地審議会を作ることになっております。この公共用地審議会の議を経て大臣がこれを認定することになるのでありますが、この審議会建設省付属機関ということになっております。付属機関といたしますると、つまりあなたの下にこの審議会ができて、そのあなたの下の者に審議させてあなたがこれを決定するということになりますと、非常にそこにわれわれは一つの不安を感ずるのであります。むしろこれが独立しておって、あなたの外にある機関としてやるのならばいいのですけれども、自分付属として、つまり自分部下として、部下と言っては語弊があるかもしれませんが、あなたに付随したこれは審議会でありますから、これの審議というものはどうもあまり権威を認められないように思うのであります。そこで、もう少しこの審議会権威あらしめるために、何とか組織なり権限なりを厳重に規定したらどうかと思うのであります。この五十条によりますと、「必要な事項は、政令で定める。」ということになっておるが、これもあなたが定めるのですね。ですから、もっとここに截然たる一つ権限といいますか、事項といいますか、明らかにして、権威ある審議会になさったらどうか、こういうふうに考えるのですが、いかがでございましょうか。
  6. 中村梅吉

    中村国務大臣 委員方々をお願いするにあたりましては、学識経験のある公正な方を御依頼いたしたいと思っておりますが、   〔委員長退席瀬戸山委員長代理着席〕さらに四十九条にも明記してございますように、委員建設大臣が勝手に任命いたしますのではなく、内閣承認を得てお願いをするという建前をとりまして、内閣全体として検討いたしまして、この方々ならば学識経験者として公正な御判断を願い得る人であるという内閣全体の総意による決定を待って任命する、こういう実は慎重な手続をとっておりまするような次第で、他の立法例とも比較いたしまして、この方法でよろしかろうと私ども実は考えておる次第でございます。
  7. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私どもの希望といたしましては、もう一歩遊んで国会の承認を得るとか、少し感じとしてもあなたの方から多少独立した感じのする制度にしたらどうか、こういう考えを持っておるのでありまして、これはこの法制定の過程においてもあるいは話があったのではないかと思うのでありますけれども、これは一つ御考慮を願いたい、かように思うのであります。  それから、本法におきましては、ほかの方も問題になさったと思いますけれども、遅延を防ぐために特に緊急裁決ということをやっておるのであります。緊急裁決条項を見ますると、「損失補償に関するものでまだ審理を尽くしていないものがある場合においても、同項の規定による裁決をすることができる。」、これは裁決手続としては非常におかしな規定だ。裁判ならば、大臣も御承知の通り、熟するを待ってこれを判決するのであって、審理を尽くしていない、裁決をする時期に至っていないものを、未熟のままで裁決を下すということは、これは非常に軽率であって、特に遅延を防止してすみやかにやるということのために、審理を犠牲にしておるというふうに考えるのであります。一体審理を尽くしていなくて裁決ができるか。これはどういうことになりますか。
  8. 中村梅吉

    中村国務大臣 緊急裁決をいたしますのには、まず概算見積もり決定をしなければならないわけでございますから、補償せねばならないものであるという原則はもちろん、補償をするにあたりまして、大体この程度であろうという概算見積もり決定するに足るだけの基礎的な調査ができていなければなりませんが、いろいろ補償関係には具体的なケースとしてはむずかしい問題が出てくる場合が想定できますので、それのこまかい内訳でありますとか、あるいはものによりましては特に権威のある人たち鑑定を要する問題でありますとかいうようなしさいな点が残されておるけれども、これを解決するのには相当の日子を要する。従って、そうしておったのでは公共事業の遂行上支障があるという場合に、との概算見積もりによる緊急裁決をいたします。しかしながら、他の条項で明らかにいたしておりますように、最終的な補償裁決をする資料として必要なものはすべて保存をしておけということにいたしまして、細目に文書の上に記載できるものは記載いたしますし、また現場についても厚真をとっておきますとか、あるいは鑑定をするような方に一応現物を見てもらっておきますとかいうような方法をとりまして、最終的な補償裁決をするのに必要な資料を残して概算決定をするという建前をとっていくわけでございます。さようなわけで、まるきり補償のめどがつかないような段階でこの緊急裁決というものはあり得ないのでございますが、特殊の事情によりまして最終的な補償裁決をすることが非常に手間取るというような場合を考えましての、これは緊急裁決規定でございます。
  9. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 おっしゃることは二十五条にも書いてありまして、緊急裁決をしようとする前の措置として、適正に算定することができるように土地物件の状況について必要な調査をしておかなければならぬという規定があるから、よくわかるのです。けれども、この緊急裁決は、いわゆる適正な補償裁決ではないということだけは明らかです。この二十五条には、今申し上げましたように、補償金額を適正に算定することができるように準備をしておけ、こういうのですから、緊急裁決適正裁決の前の仮の裁決でありますから、この緊急裁決、いわば仮の裁決というものは適正な補償をきめる裁決ではない、一こう言わざるを得ないと思うのですが、これは大臣でなくてもよろしい、立案者の方からでもけっこうです。
  10. 關盛吉雄

    關盛政委員 お尋ねのように、緊急裁決にかかる事項につきまして、いまだ審理を尽くしていないという疑問があることにつきましては、その限りにおいては最終的な裁決ではございません。二十五条の措置と相待ちまして行なうわけでございますが、その緊急裁決が行なわれた場合におきましては、収用委員会といたしましては遅滞なく補償裁決をするということで、被収用者に対する本裁決の確保、それによって正当な補償がすみやかに講ぜられるように確保しておるわけでございます。
  11. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 補償裁決のお話が今出ましたが、そうしますと、一つの事件の審理について裁決二つあるわけです。そうすると、これは一つ一つ独立した裁決になるのですか。もしくは最後補償裁決というものは、これが最後ほんとう裁決であるのか、ある一体をなして一つ裁決になるのか。これはどういうふうに考えたらよろしいですか。
  12. 關盛吉雄

    關盛政委員 これは補償裁決緊急裁決一体をなして一つ裁決であるというふうに観念しております。
  13. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうしますと、一体をなして二つ一つ裁決だとしますと、仮の緊急裁決というものは独立しては効力がないのではないですか。夢前の仮の裁決、いわゆる緊急裁決は仮の裁決ですから、これは独立した効力を持っていなのではないですか。これはほかでも問題になったようですが、この法案によると、緊急裁決には訴えができないということになっておりますね。最後裁決には、もちろんこれは訴えができるでしょう。その点から見ましても、独立して仮の裁決には訴えができない。訴権を認めていない。最後裁決は前の裁決一体をなして本裁決であるから、これには訴えが提起できる。そうしますると、仮裁決というものは、一体これは裁決としての効力独立してはないのじゃないですか。
  14. 關盛吉雄

    關盛政委員 緊急裁決という裁決法律上の効力といたしましては、緊急裁決のときには、土地収用法の四十八条に掲げております収用すべき土地区域あるいは使用すべき土地区域、その使用方法、期間あるいは収用の時期、その他法律で定める必要な事項は、もとより緊急裁決裁決内容としてきまるわけでございます。緊急裁決が仮であるというのは損失補償に関する部分だけでございまして、従って、その損失補償に関する部分緊急裁決をいたさなければならないというふうな例外的な場合におきましては、本裁決、いわゆるこの法律によっております補償裁決、それと合わせましてほんとう意味損失補償に関する部分の最終的な裁決が行なわれる。そういう意味で、補償に関する部分については両方合わせて一体としての損失補償決定が行なわれる。こういう意味で御説明を申し上げたのでございます。  従いまして、損失に関する補償ということについての訴えは、引き続いて緊急裁決後、収用委員会補償裁決審理を開始いたしますので、その場において関係権利者十分審議を尽くす機会が与えられておりますし、また収用委員会審理を直ちに開始いたしますので、訴訟の提起を認める実益がないので、そのような規定をいたしたのでございます。
  15. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私はこの緊急裁決、仮補償というものはこの法案の生命だと思うのです。これあればこそ工事が進行する。この仮補償という規定がなければ、どのほかの法律を見ても、補償した後でなければ工事進行ができないのです。ところが、この法案で進行させるために、この仮補償金というものをきめるための緊急裁決ということを――なかなか頭をしぼった点だろうと私は思うのですけれども、そこに疑惑が出てきますから、憲法論もここから出てくるわけなのです。しかも、仮補償金緊急裁決できまる。しかも、その仮補償金緊急裁決、仮の裁決できまったのですけれども、その補償金としてきめられた効果は本裁決と同じ働きをしているわけです。これは二十七条を見ればわかる。二十七条を見れば、「仮補償金は、土地収用法第九十五条第一項及び第二項」、すなわち補償金の支払いその他の履行をしたことになるので、緊急裁決で仮補償金でありながら、本補償金と同じ効果をここで認めさせているわけです。それでありますから、それならば緊急裁決もやはり補償裁決と同じように本裁決と同じ効果があるのじゃないか。「みなす」と書いてありますけれども、法律がそう書いて与えただけであって、「みなす」ならば裁決そのものも、緊急裁決補償裁決一つにして一つ裁決になるのではなくて、やはり緊急裁決裁決として独立裁決ではないか。一体をなして一つ裁決をするのに、前の半分だけに人並みの効果を持たしてあるのですから、そこにこの法律のなかなかうまく考えた点があるのじゃないかと思うのですが、むしろ二つ一体をなして裁決ではなくて、一つ一つ裁決としての効力があるということを言わなければ、二十七条の補償金効果を持たせるということが出てこないのじゃないですか。
  16. 關盛吉雄

    關盛政委員 解釈といいますか、考え方の問題でございますが、損失補償に関しましては、いわゆる仮補償金に相当するものが緊急裁決において決定された場合におきましては、本裁決と合わせてほんとう裁決になる。しかし、ただいまお話しのように、緊急裁決そのもの法律上の効力といたしましては、いわゆる土地収用法の第七章の「収用又は使用効果」に関する規定を適用いたしておりますので、ただいまのお尋ね意味におきましては、緊急裁決緊急裁決としての一つ効力を持っておるわけでございまして、それ自体一つ独立した意味の処分でございます。損失補償に関しましては、従ってこのときにほんとう補償額が支払わるべきものであるということになりますので、清算金を徴収すべきものがあれば清算金をとる、こういうことで損失補償に関する権利関係をその時点を中心といたしまして処理をしていく、こういう立て方であります。
  17. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうすると、仮補償金をきめる緊急裁決は、やはり裁決をしたときに効力があるとしなければ意味をなさぬわけですね。あと補償裁決で初めて緊急裁決効力を生ずるんだということならば、やはり遡及するとかどうとか、そういうことを書かなければならない。私はやはりこういうふうに独立効果を認めておる以上は、緊急裁決緊急裁決として一つ効力を持つ。そこで、それならばなぜこれに訴権を認めなかったかという問題が出てくるわけなんです。私は別に違憲論をここでむずかしく言うわけじゃないのですけれども、二十五条には、なお適正な補償金を後に算定すると書いてあるのですから、この仮補償金憲法にいわゆる正当な補償金ではない。いわゆる仮の補償金であって、あとで適正かどうかということをきめるのだというのですから、不適正とも言えないかもしれぬけれども、適正の未定な金額をここに提供して土地収用するということは、憲法の違反になるような気がするわけです。ですから、その点をもう少し明確に御説明を願わなければならぬ。二十五条によると、どうしてもこれは将来適正に算定するんだと、こういってありますから、仮補償金というものは適正でないわけなんですよ。その適正でないものを払っておいて土地収用するということは違憲ではないかという議論が出てくるわけなんです。私は、この規定がなければこの法律は死んでしまうのですから、そうむずかしく言おうとは思いませんけれども、その点をはっきりしておかないと、やはり、つくことはついてきますからね。この仮補償金というものはいわゆる仮補償金であって、真の代償ではないということは言えるのじゃないですか。
  18. 關盛吉雄

    關盛政委員 結局緊急裁決によって払われましたところの損失補償に関するいろいろな資料によりまして補償の額をきめますけれども、それは最終的な段階ではございませんので、従って、概算見積もりという意味の仮補償金でございます。そういう意味におきましては最終的な補償金ではないという意味で、いわゆる補償金の適正なる最終的なものではないということにつきましてはお尋ね通りでございます。
  19. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 これは緊急裁決によって大体の収用の仕事が進んでいくのでありますから、よほど慎重に緊急裁決をしなければならぬと同時に、それをやったあとでも適正な補償金をきめるように最もここに重点を置いてやらないと、私権を害するという非難の起こることは当然でありますから、この点は一つ十分に御注意を願いたいと思うのであります。  それから、収用法対象になる権利についてでありますが、たとえば電源開発等におきまして問題になっておるのは漁業権であります。漁業権収用でございますが、土地収用法五条によりますと、流水あるいは海水公共の用に供するため収用をする必要のある場合には漁業権収用することができる。たとえばダムを作る。水をとるために下流がかれて、アユがいなくなる。これは水をとるために漁業権が消滅するわけですが、この例はたくさんあると思うのであります。しかし、これは水そのもの公共の用に供するということが条件であります。ところが、海岸国道をつけると、海岸を通る場合に海岸埋め立てしなければならない。そこに漁業権があるという場合には、水を供するのでなくしてその地域を供するのでありますから、それは土地収用法対象にはならないのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  20. 關盛吉雄

    關盛政委員 ただいまの、海岸埋め立てを行なうということの結果、地先漁業権土地造成のために影響を受けるという場合につきましては、公有水面埋立法によって処理する、こういうことになっております。
  21. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 公有水面埋立法によりますと、これは完全補償しなければできないのですね。そうすると、この公共用地法案によっては、この海面だけはできなくなりますが、それでよろしいのですか。
  22. 關盛吉雄

    關盛政委員 この点につきましては、土地収用法の現在の規定がその権利に及ばないことになっておりますので、従って、特別措置法につきましても同様でございまして、及ばないということになっております。
  23. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 田中君に申しますが、今の問題で農林省の林田漁政部長が見えております。
  24. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それではもう一度お伺いします。海水そのもの公共の用に供する場合には漁業権収用ができるということが収用法に書いてあります。ところが、その地域をたとえば国道が通るためにその沿岸を通らなければならぬという場合に、これは水そのものを供するのではない。地域を供するわけですから、今、計画局長からお話しになった通り公有水面埋立法によってやらなければならない。そうしますと、これは今度出る法律のような緊急裁決というものはないのですから、やはり公有水面埋立法によって完全に補償してから事業に着手しなければならぬということになります。そういう建設省の見解ですが、それでよろしいのですね。
  25. 林田悠紀夫

    林田説明員 今の点は、公有水面埋立法によりまして漁業権のある漁場を埋め立てる場合には、やはり補償をしなければ埋め立てができないようなことになっております。
  26. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうしますと、局長、これはせっかくの法律ですけれども、もしそういう地域を通るようなことになりましたならば、そこでストップしますが、それでよろしいのですか。
  27. 關盛吉雄

    關盛政委員 土地収用法収用権利対象範囲にきつましては、ただいまお尋ねの点が確かに現行収用法から漏れておるのでございます。この点はいろいろ検討しておるわけでございますけれども、まだ他の部分と合わせて成案を得ておらないのが実情でございます。現在のところ、収用法収用対象になる権利ではないということになっておりますが、なお検討いたしたいと思っております。
  28. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それから、公益事業局長は見えておりますか。――これはこの収用には直接関係はないのでありますけれども、今私がお尋ねいたしました通り水そのもの公共の用に供してそれが川でなくなるというような場合には、これは漁業権がなくなるのですから補償対象になりますし、収用されぬでも、お互い協議するのは当然のことだと思うのです。ところが、たとえば電発ダムができる、あるいはそのほかのダムでもよろしいが、その放水によってそれが沿岸の港湾に流れ込むというような場合には、これは水質保全法律の適用を受けないわけです。きれいな水ですから、おそらくそうだと思います。そうすると、そういう清水ではあるが水温が変わるというようなことがあって、その漁業権影響を及ぼすということがあり得ると思います。ところが、これは工事が終わったあとのことです。作業が始まってからあとのことでありますから、収用対象にも協議の対象にもならないということになる。おそらくそうだと私は思います。事業が済んでからの放水ですから。しかし、放水によって多量の冷たい水が流れ込む、あるいは泥の水が流れ込む、あるいはセメントのアクが流れ込むということになれば、当然その地域、その港湾に対する漁業権に何らかの影響を与えるということなりますから、その付近の漁業組合もしくは漁業者が権利の侵害を受けるというので、放水を阻止するというようなことがあり得ると思うのです。こういうことについては、どういうふうにお考えになっておりますか。
  29. 大堀弘

    ○大堀政府委員 ただいま御指摘のケースの場合に、やはり冷たい水が流れ込んで、そのために実際上魚が逃げてしまうというふうなケースがございますので、そういう行き違いがあります限りは、これは当然補償いたすことになるわけでございます。具体的例では、尾鷲の発電所につきまして、これは電源開発会社がやっておりますが、ダムができまして流域変更して冷たい水が入ってきた場合には、これは実害が生ずるかもしれません。しかし、それはやってみないとどの程度の損害が出るかということは事前にはわからないわけでありますから、これにつきましては漁業組合と電源開発会社が協定いたしまして、共同の調査団を作りまして、実際に運転が始まりましたときに調査いたしまして、それに基づいて補償いたしましょうという約束ができておるわけであります。そういった方法によって実際上解決をはかっております。
  30. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 具体的に申されたので、わかりました。これは、つまり今のような場合、漁業組合が、一つの財産権ですから侵害を受けるというので、事業公共事業でも会社は私設の会社ですから、やはりその放水、その行為を阻止する何らかの手続がある程度できると思うのですけれども、そういうことになりますと、やはりせっかく開発の施設ができてもそれを十分に使うことができなくなるのでありますから、これはやはり事前に、収用ではないけれども、何らかの方法をとっておかないと非常に支障を来たすことがあり得ると思うので、何か事前にやっておくというようなお考えがありますか。土地ならばすぐ収用すればいいのですけれども、やった後に起こる問題ですから、しかも、設備ができてしまってからそういうトラブルが起こる。今私が考えておるのは、そういうような場合には仮処分で放水を停止できやしないかということまでちょっと考えておるのです。損害があるかどうかはわからぬけれども、あることは事実ですから、そういうことになると、何百億とかけてやった国家のことが、そういうことのためにせっかくの目的を達することができないということでありますから、土地収用に至らずとも、何か事前にそういう交渉をやっておかないと、これからこの法律を使ってやっていこうという場合に、この法律の適用によって促進できるならいいけれども、できない場面があるのですから、そういうことのためにストップするというようなことになっては、私は大へんなことだと思うのですが、何かお考えがありましたら。
  31. 大堀弘

    ○大堀政府委員 これは現在、農林省の東海区水産研究所におきまして検討していただいておるわけであります。その結論によりましてわれわれとしても善処の方法を考えたいと思うのでございますが、あるいはある程度損害が予想されます場合には、事前に補償するというような問題も検討の対象になっておるわけでございまして、そういった多少損失が具体的につかめる場合に、それを事前に補償するといったような方法で解決できるのではないかと考えておりますが、現在検討させていただいております。
  32. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 その問題はそれでよろしゅうございます。  それでは本文に移りまして、四十六条の規定でありますが、現物給付の問題であります。これはほかの方もおそらく御質問なさったと思うのでありますけれども、最後の方に、「特定公共事業を施行する者は、事情の許す限り、その要求に応ずるよう努めなければならない。」、これは訓示規定のようで、何か気休めに書いてあるような規定に見えるのですが、これは何かもっと強い義務のようなものがあるのですか。ただ「努めなければならない」という要望だけをしておる規定なんですか。これは前にどなたか聞いておるかもしれませんが……。
  33. 關盛吉雄

    關盛政委員 四十六条の規定の趣旨は、特定公共事業認定を受けました事業土地収用法手続によって進めますが、その進め方といたしましては、現行土地収用法の協議の方法によって話し合いで、特定公共事業の用に供する土地を契約で定めることが話がまとまる、こういうふうな場合もあるわけでございます。四十六条は、その場合のことを考えておるわけでございまして、そういう場合におきまして、土地または建物の提供、耕地等の、この法律に掲げてあります要求を被収用者がいたしました場合におきましては、金銭以外の方法による要求を、事業者は事情の許す限り聞くようにしなさい。もし本人が、特定公共事業の起業者が協議によって話し合いをするのに、金額はこれでよろしい、しかしその金額補償しないで物で下さいということを相手方が聞かない場合においては、それは収用委員会に持ち出せばいいわけでございますから、ここでは契約による場合といえども、いわゆる努力義務の規定でございますけれども、現物給付の要求を極力事業者が受け入れるようにしなさい。こういう意味でございます。
  34. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 これは、こういう書き方をすると、私は非常な問題が起こると思うのです。ですからここには、土地を提供する者には対価として払うのですから恩恵ではないわけです。恩恵でも好意でもなく、対価です。法律的にいえば、金なら対価、物ならそれにかかる交換ですから、相手の交換される物件に値段にでも争いがあれば、これは調停するのはいいけれども、対価と書いてあるのに、相手が好意的に努力しなければならぬということでは何にもならぬ、私はそう考える。対価ならば、おそらくこれは交換ということであります。自分土地と相手の何ものかとを交換するということであります。交換するというならば、交換しなければならないと義務づけておいて、そうしてそこに価額の相違があるならば、これは収用委員会なりあるいはその他の調停機関が入ってきめるというのでなければ、これでは、あの物がほしい、自分の方で少しくらい足してもあの物がほしいということになっておっても、相手がそれに努めてくれなければこっちの希望が達せられないということでは、この規定があっても、なくもがなということになる。これはどうでしょう。対価ならば、はっきりと物を提供しなければならぬが、値段について折り合いができないならばどうだ、ということにすべきじゃないでしょうか。
  35. 關盛吉雄

    關盛政委員 この規定の趣旨は、「対償として」とございますように、お尋ねのように、いわゆる補償に見合うものは金と物、あるいは金銭以外の給付、これをすべて含めまして対償という言葉を使っておるわけでありまして、従って現実にはかえ地を話し合いで、大きなダム事業の場合におきまして、この委員会においても先生方からお話が出ましたが、現物の補償の形で契約が行なわれた例がございます。従って、まず特定公共事業の場合におきましては、金銭的な方法による補償方法のみならず、いわゆる現物給付の考え方を取り入れまして、そして特定公共事業事業を施行する者が極力その線に努めるということが補償として考えるべきじゃないかということと、四十七条の規定をさらに追加いたしまして、一体として現場補償の対策について起業者が真剣に考えていただくことを期待いたしておるわけでございます。
  36. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 まことに親切な規定で、これがこの法案の非常に受ける点だと思うのでございますけれども、現物給付と書いてあっても、現物給付をするのでなくして、相手の事業者の心を対象にしているだけで、相手が努力してくれなければ何も現物給付はこないわけです。だからどうも、現物給付と書いてあっても現物給付ではない。現物給付を事情の許す限りしなければならないという事業者の気持をこれは対象にしてあるようなことに感じられるのです。これは何とかもう少しお考え願いたいと思います。  それから、次の「生活再建等のための措置」です。これも読んでみてどうもぴんとこない点は、「実施のあっせんを都道府県知事に印し出ることができる。」、こういうあっせんを頼むわけです。あっせんを頼むというと、お願いしますといって頼む。頼んだために現実的に来たるべきものは何かという、ものがはっきりしていない。「住宅、店舖その他の建物の取得に関すること。」と書いてあって、これは一体何のことかさっぱりわからない。あっせんを頼んだが、何がこちらへ戻ってくるかということの内容が具体的にはっきりしていないのが私は欠点だと思うのです。たとえば四号のごときは、「他に適当な土地がなかったため環境が著しく不良な土地に住居を移した場合における環境の整備に関すること。」、一体これは何を意味しておりますか。下水がなかったら下水も直す、その環境の整備に関することというので、これは何か基準でもありますか。これでは範囲も広いし、ぜいたくな、よくない人たちがあると、一体どういうことを頼むかわからない。ですから、この生活再建の内容を、むしろこういうむずかしいことを書かずに、低利の金を融通してやるとかどうとか、ずばりやった方が具体的でよかったのじゃないか。ばく然たる、こういうあっせんを頼むというようなことでは、実際これをやった上で現実にその人の幸福とかいうようなものはつかめないと私は思うのです。それはどういうことですか。
  37. 關盛吉雄

    關盛政委員 先ほどの四十六条は、繰り返しますけれども、いわゆる現物給付の努力義務を確かに特定公共事業の起業者の側にこの法律が期待いたしておるわけでございますが、どうしても特定公共事業事業者が四十六条の規定ではまだ十分言うことが聞いてもらえぬという場合におきましては、それは収用委員会にこの要求を持ち出せば最終的な補償が得られる。現物給付に関する要求が聞き届けられ、最終的な判断がしてもらえる。こういう形になるわけでございます。  引き続きまして四十七条の規定でございますが、この四十七条の規定というものは、対償の全部または一部として実施されるもの、それから補償と相持って実施されるものと、この二つ事項規定いたしておるのでございます。従って、それが対償の全部または一部として実施されるものの形は、これはいわゆる土地または建物の買収の対価にかえまして土地、建物等を提供するとか、あるいは失業補償金にかえまして事業施行者が職業の訓練とか、あるいは被買収音を就職させるとか、あるいは対償の一部として、水利の非常に便の悪いところ、こういうところへ集団的に移すというような場合に、お尋ねのような環境整備の下水、あるいは簡易水道というふうなものを実施する場合があるわけでございます。このような場合は対償の一部でございますから、もとより特定公共事業事業を行なう者がその実施を行なうべき義務を持っておるわけでございます。その実施を確保するあっせんも知事にうしろからお願いをしておるというのがこの規定でございます。  それから最後に、何か事業資金を貸すとかということをずばり書いたらどうだろうかというお話がございました。これは、補償金なり何なりは一応きまった、しかし、そのほかに対償と相待って実施されるもの、これも四十七条にその条文上書いてあるわけでございまして、これはその土地なり建物等の対価が金で払われまして、被買収者がその金でもって買収する土地なり建物のあっせんを頼みますと、あるいは公営住宅なり公団住宅の入居をあっせんをしてあげますとか、あるいは生業資金の貸付とか、あるいは大きな意味におきましては道路建設とか学校の問題とかいうものが集団の場合には起こるだろうと思います。そういったような個々のケースがたくさんございますので、四十七条の三項におきまして、知事が関係の行政機関なり市町村長なり特定公共事業の実施をする者と協議をいたしまして、再建計画を作りまして、それぞれの分担に応じましてその実施をやっていただく。こういう形が現実問題といたしまして、法律事項といたしましては適当であろうということでございます。  そういうわけでございますので、内容的に個々の事業を羅列するよりは、まあ国土開発縦貫自動車道建設法の例もありまして、このような生活再建の措置を知事に計画をさせるとか、あるいは実施のあっせん等をお願いする、こういう形になっておるわけでございます。
  38. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私の希望なり疑問の点を申し上げながら質問をいたしたわけでありますが、要するに政府の案に対する問題点として考えておりますことは、一つ特定公共事業の中に、電気事業のような多分に営利事業が便乗的に入っておるということであります。  それから第二といたしましては、これは人口を五十万と制限してありますけれども、四十万とか五十万になんなんとする都市は、それではそれでいいのかという点。むしろこれは都市計画があるのならば、場合によっては五十万以下でも認めていいのではないか。  それから、緊急裁決は、先ほど申しましたように、非常に私権を侵害するおそれのあるものですから、なるべく緊急裁決は行なわない。合わせてやるときには、もう最後補償裁決をする寸前に至るような証拠を十分に残しておくべきである。  それから、土地の評価の基準について、もっと明確な基準を打ち出しておいてもらいたい。  それから、ただいまの被収用者に対する生活再建のための規定は非常にあいまいであるから、もう少し具体的にできるような措置を講じていただきたい。  それから、公共用地審議会について、先ほど申しましたように、公正な権威のある審議会にしなければならないのではないか。  このような希望等を持っておるわけでありまして、これを申し上げて私の質問を終わります。(拍手)
  39. 瀬戸山三男

  40. 山中日露史

    ○山中(日)委員 通産大臣がお見えになりますと他の委員からいろいろ御質問があると思いますので、その間一点だけお尋ねいたしたいと思います。  この三十三条第二項の規定によりますと、「起業者又は土地所有者若しくは関係人は、補償裁決で定められた補償金額緊急裁決で定められた仮補償金の額との差額につき、収用又は使用の時期から前項の規定による清算金の支払の期限(その差額のうち、補償金の全部又は一部に代えて、替地が提供されるべき部分についてはその提供の期限、替地以外の給付がされるべき部分については補償裁決の時)までの期間について、年六分の利率により算定した利息を支払わなければならない。」、こう規定してあります。この規定によりますと、補償裁決で定められた補償金額緊急裁決で定められた仮補償金に差額があって、起業者が被補償者に差額を払う場合においてはむろん利息をつけて払うことになっておるのでありますが、それと同じように、今度起業者の方で逆に被収用者の方から、よけい払い過ぎたというので、それを戻してもらうという場合には利息をつけてもらう、こういうことになっておるのであります。起業者の方で被補償者に利息を払う、その法律的な根拠、理論はよくわかるのでありますが、起業者の方でよけい払い過ぎたということで、さらにそれから利息をとるという考え方一体どういう考えに立っておるのですか。これをお聞きしたいと思うのです。
  41. 關盛吉雄

    關盛政委員 ただいまお尋ね事項は、仮補償金補償裁決で定められた補償金との間における差額の清算に関する規定でありまして、この点につきましては、公共用地取得調査会におきましてもいろいろこの清算方式について御検討されまして、その結果、補償裁決で支払われたものよりもさらに追加して支払わなきゃならぬというふうな場合、あるいはまた補償裁決が払い過ぎであったという場合におきましても、すべて緊急裁決の時期をもって、金につきましては清算をする。従って、その場合におきましては、法定の年六分の利息をとりますので、ただいまお尋ねの被収用者補償金が行き過ぎておったために補償裁決で少なくなったということの結果とるという場合も、これは両当事者間の公平の原則と申しますかも、そういう考え方で両方とも利息はとるべきじゃないか、こういう答申もありましたのでこの規定ができておる、こういうわけでございます。
  42. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 山中君に申し上げますが、質疑中でありますけれども、通産大臣が今見えまして、非常に時間を急いでおられますので、あとでお願いいたします。  それでは、通産大臣はちょうど予算委員会の質疑続行中でありますから、約二十分、十二時十分までということで一つお願いいたします。  石田宥全君
  43. 石田宥全

    石田(宥)委員 せっかく通産大臣がお見えになりましたので、今回審議されておりまする公共用地取得に関する特別措置法案の中に、電気事業に関するもので発電または送電、変電施設等が含まれておるのであります。電気事業の発展は、国民生活にとっても、あるいは日本の産業の発展にとっても重要なことであることは言うまでもないのであります。従来しばしば発電または送電や変電施設のための用地取得に問題が起こりまして、あるいはごね得であるというような問題も新聞等にはしばしば出ておることは、はなはだ遺憾に存ずる次第でございますが、その原因を探究して参りますと、これは公共事業であることには相違ありませんけれども、本法案の第二条の各号の中で、この電気事業というものが一番営利事業的な性格が強いものであるということであります。それがために、用地取得に対しましては、ややもすると会社側がきわめて不明朗な策謀と申しますか、そういうことをやっておる。一部の地方のボスと結託をしてきわめて不明朗な取り扱いをする。また、一部の人にだけは相当多額の補償金を出す。こういう問題がしばしば起こっておるのであります。営利会社でありまする場合は、あるいはそいうこともございましょう。金さえ出せばというこの考え方が強い。そのために、かえって用地取得を困難にしておるというのが実情であります。実はこの法案審議を待つまでもなく、従来の公共用地取得に関しましては、むしろその他の公共事業の撹乱者である、用地取得をすべて困難にさせておる大きな原因が電気会社にあるといっても過言でないと私は思うのであります。  その中で、さらにその事業を掘り下げて参りますと、それに二つの原因があると考えられるのであります。一面においては、料金の値上げについては、電気会社の都合のいい計算に基づいて、国の所管省の承認を得てどんどん上げていく、こういうことが一つあると思います。もう一つは、従来の電気会社の処置というものがきわめて不当である。実はこの間から問題にしておるのでありますが、今日特に市街地は必ずしも一がいに言えないようでありますけれども、農用地等に関しましてはその線下補償のごときはほとんど無視されておる。これは公益事業局長もほとんど認めておるようでありますが、今日電気事業連合会の調査に基づきましても一億二千万坪に及ぶ用地が無償で使用されておる。そこには法律的には、昭和二十五年に失効しております電気事業法の関係と、その後にできた公益事業令、それからさらに昭和二十七年からできた電気に関する臨時措置に関する法律というふうに、法律的にもいろいろな経過を経ておるわけであります。現在の行なわれておる実情におきましては、昭和二十五年に失効いたしました電気事業法で、公用のための権限が会社に非常に大幅に持たせられておる。そういう状況のもとに、農民は法律にも非常に弱い。だから、農民にはそういう権限がないんだというように一方的に押しつけられて参っておる。そういうものに対する不平不満というものがこり固まって、電気事業の場合に用地取得を困難ならしめておるという事態が起こっておるわけです。  時間がないそうでありますから、簡単に質問をいたしますが、この間、公益事業局長の話によりますと、この一億二千万坪に及ぶ線下の問題について、実情は認めておられるけれども、それをどう処置するかということについては全然誠意のある答弁を承ることはできなかったわけです。これは大臣、御承知だと思いますけれども、線下になっておる用地はもう全く無価値にひとしい。たとえばそこが山間部であるから植林をしようといっても、その植林は不可能である、宅地に転用しようとすることも不可能である、工場用地にしようとしてもそれは不可能である、こういう制約が加えられている。しかるに、それに対して何らの補償も行なわれておらない。そして、それは昭和二十五年に失効したところの電気事業法に基づいて行なわれておるにもかかわらず、十数年を経た今日になって、それに対して通産省は明確な態度と方針を示しておらない。電気会社は一方的に法律の勝手な解釈をして、所有権の限界というものがあって、空間についてのものは必ずしも補償しなくてもいいんだというような、電気会社から言わせますと、勝手な解釈のもとになかなか補償に応じようとしておらない。これに対して通産省は全く誠意がないというか、誠意がないどころじゃない、電気事業会社の一方的な擁護の立場をとるという状況でありますが、一体こういう事態に対して通産省は怠慢である。ただ怠慢という言葉で片づけるわけにもいかない問題であると思うのでありますが、通産大臣の所見を伺いたいと思うのであります。
  44. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 よく事情を伺いました。今までは宅地等につきましては、線下の土地使用方法を制限するような契約を、相当の対価を払った上で結んでおるのでありますが、今御指摘のように、林についてもこれは補償しておりますが、農地だけは線下の土地に対して補償をやっておらないのが現状でございます。そこで、従来から通産省の内部に補償問題研究会というものがございまして、関係各省の職員及び民間の学識経験者を入れて、各種の補償問題について相当綿密な研究をしてきておるのであります。しかし、今問題になっておる線下の農地の補償問題はまだ取り上げたことがなかったのでございますが、御指摘もございましたので、この問題を一つ至急取り上げまして、なるべく早く結論を出しまして、われわれの将来の施策の基準にいたしたい、こう考えておりますから、しばらくの間お待ちを願いたいと思います。
  45. 石田宥全

    石田(宥)委員 研究会ができておるということはこの間も承ったのでありますけれども、これに基づいて一定の結論が出されませんと、農民の立場からいたしますると、きわめて経済力もない、知識力にも乏しい、訴訟をやるというようなことには実際問題としてなかなかなれないのですね。ですから、泣き寝入りをしておる。公益事業局長は、実害があったものは補償させると言っておるけれども、実害は、今申し上げたように全部あるのです。山林にしようとしたって山林にならないのだし、工場敷地にしようたって、そこだけを抜けば工場敷地にならないのだし、宅地にしようとしてもできないのです。転売をしようとしても無価値にひとしいのです。だから、従来の公益事業局長などの考え方というものはおかしいと思うのです。  そこで、しばしば農民の方から問題を起こして参りますと、電気会社は勝手な法解釈をやっておる。きのうは特に法律上の見解について参考人がここで公述をされまして、その意見を承りますと、所有権の限界というものは上にも下にも限界があるということが従来の定説であったけれども、広島の原爆以後というものは、最近法律の定説というものも変わってきておる、こういうことを証言しておるのです。その通りだろうと思うのです。ましてや電柱がいかに高いといっても、その線下に築造物を建設することができないというこの制限がある以上、全面的になければならないはずです。これは早急にというお話でありますが、大体いつごろまでに出せるか、これが一つ。  もう一つは、従来有償であると申しましても、ずっと以前、十年も十五年も前の経済単位の単価の時代に決定されたものが大部分なのでございまして、もう経済情勢ががらっと変わってきておりますから、これはやはり当然修正されなければならぬのでありますけれども、電気会社は言を左右にして、なかなか農民の要求に応じない、こういう実情です。これについては、たとえば電電公社やその他においては、それぞれなかなかりっぱな経済的な一つの基礎資料を持って臨んでおります。それが適正なものであるかどうかは別でありますけれども、とにかく一応理論的に、これは何人も、第三者の一応うなずけるような標準ができておる。でありますから、通産省におかれても、この点については、やはり第三者が見ても一応妥当であるというその一つの標準に基づいて、電気会社に対して、修正すべきは修正し、増額すべきは増額し、それから従来無償であったものは有償とすべきであるという指導監督の責任が、やはり私は通産省にあるであろうと考えるのであります。それらの点について、おおよそいつごろまでにできるか。今まで十何年も放任しておいたんだが、一体いつごろできるか。私どもは、その目安に従って会社に対する要求その他が行なわれなければならない。そういうことが放任されておりますから、電気会社が用地取得に参りますと、農民のそれに対する憤満が爆発するという実情にあるということを一つお含みの上で、ただいまの質問に答えていただきたい。
  46. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 自分がすべてを決定するわけじゃありませんから、いついっかまでという確たるお約束はできませんけれども、大体人選も十分にいたしまして、特に農地の問題でありますから、農林省の職員はもとより、同省の推薦に基づいて学識経験者等も入れて、そして問題を一つ広く、補償問題全体をまず頭に入れて、そして農地補償をどういうふうに考えていくかという進み方であろうと思うのでありますが、できるだけ一年以上はかけないで結論を出して、しかもすぐ行政に取り入れることのできるような結論を出して参りたい、かように考えるわけであります。
  47. 石田宥全

    石田(宥)委員 それでは、その言明を信頼いたしまして、その点はやめます。  それから、発電と変電または送電の用地関係でしばしば問題が起こるわけであります。その際に、会社側が一方的に一つの計画設計を立てる。それを少し変更すれば用地取得も困難でないような場合もある。もちろんそれは経済的には会社側に多少のマイナスが起こることもあり得るでしょう。私は、きょうは時間がないから例などは申し上げませんけれども、実はそういう実例が方々にあるわけです。そういう場合には、通産当局は――計画設計の変更をすることによって用地取得が楽になる、また地域住民の損害が少なくて済む、地方的にも協力を得られるという場合すらしばしばあるし、またそういうことを強く要求する場合もあるのでありますが、どうも従来は、会社側で作った計画設計というものをいこじに固執して、そうしていたずらに犠牲を大きくするというような事例がきわめて多いのであります。従来の法律のもとにすらもそういうことがあったのに、今度この法律が出まして、公権力をたてに取って農民に臨むということになりますと、これは私は非常に問題が起こるおそれがあると思う。ですから、電気会社が、この公共用地取得に関する特別措置法によってわれわれには非常な公権力の擁護がある、保護があるんだという意識を持って臨まれますと、かえって混乱が大きくなるおそれがあるのじゃないかと考えられますので、これらについては、ただ電気会社にまかせるということでなしに、やはり通産省が末端までその実情をよく調査されて、計画設計の一部変更をするならば用地取得が楽に行なわれるんだというような事態が認められる場合においては、適切な措置を行なわれなければならないと思うのであります。これはやはり通産省としての心がまえの問題でございますので、従来のようなことであってはならないんだ、こういう法律ができたけれども、地域住民の利害関係もあり、いろいろな情勢を考慮して、一方的にやってはならないんだという心がまえ、その考え方というものは非常に重大であろうと思いますので、これについての所見を伺わしていただきたいと思うのです。
  48. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この法律によりまして、用地取得についてはかなり権限が強化されたわけであります。権限が強化されるという一面においては、また事態に対する責任も相当にふえたことになるのでありますから、ただ片一方だけ見てむやみに権力を振り回すようなことのないように、それによってやはり責任感を十分に持たして、全体として誤りのない、そうして住民等の協力を今後とも円滑に得られるように指導する所存でございます。
  49. 石田宥全

    石田(宥)委員 時間がないのですから、あと一つだけ要望を申し上げて終わりたいと思います。  電気料金の値上げが次々と行なわれるようであります。これはいろいろ別の角度で問題にしなければならぬ問題でありますが、私はやはり国民所得倍増計画や農業基本法との関連におきまして、電気料金のうち特に農事用電力料金の問題、特に問題にしなければならないと考えておりますことは排水用の電力でございます。渇水期には火力発電等も必要といたしますので、これはやむを得ないと思うのでありますが、排水用の電力を使いますのはきわめて短時日でありまして、同時にまた豊水期であります。水が余って困るようなときに使われるものでありまして、渇水時にはその電力は使わないでいい。豊水時であって、水が余って困るようなときに使う排水料金、これは農民のかなり大きな負担になっているわけでございますので、今後料金の値上げに際しましては、小口の農両用電力もさることながら、そういうやや大口の排水電力の問題については特別の配慮が行なわれなければならない問題であろうと思います。これはまた別な機会もございましょうけれども、この機会に、やはり農民にとりましては大きな問題でございますので、特に大臣公益事業局長にこの点をお忘れないように御検討を希望いたしまして、私は質問を終わります。
  50. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 委員の皆さんに申し上げておきますが、ただいま大蔵省側から大久保政務次官、村山主税局長が見えておりますから、そのお含みで御質疑を願います。  山中日露史君。
  51. 山中日露史

    ○山中(日)委員 先ほどの質問に続いて、計画局長お尋ねいたしたいと思います。  先ほどの局長の御答弁によりますと、補償全額と仮補償金額の差額についての清算金に対しては、双方に利息を支払う義務を課したのは公平の原則によるのだ、こういう御趣旨の御答弁だったと思うのでございますが、私はそこはちょっと違うのではないかと思います。元来公平の原則と申しますのは、双方が同じ条件のもとに、同じ境遇のもとに、また同じ理論的な根拠の上に立つ場合に双方に公平に義務を課す、私はこういうのが公平の原則だと思うのです。ところが、この三十三条二項におきまして、起業者が被補償者に支払う清算金について利息をつける義務を課した、その立法の趣旨というのは、つまり起業者の不完全履行――全額を支払ってから当然収用すべきものを全額を支払わない、内金を支払って土地収用するということになるのでありますから、結局不完全な履行をしておるわけであります。従って、債権者である被補償者の立場からいえば、その不完全なる履行に対するいわゆる損害の意味において、起業者は不完全履行によって生ずる被補償者の損害を利息という形でもって補う、これが私は利息をつけるという立法の趣旨だと思うのです。また、こういうことはただこの法律ばかりでなく、すべて金銭債務の不完全履行に対する利息の支払いは、こういう一種の損害賠償的な性格を持っておるのだと思う。  ところが、逆に起業者が仮補償裁決によってよけいに払い過ぎたという場合においては、決して被補償者が普通に要求した金ではないのでありまして、この場合にその差額について利息までつけて払えというのは、立法の趣旨からいって公平ではないと思う。ですから、公平の原則ということで片づけられない問題だと思います。私はこの法律の精神からいうならば、被補償者に対して利息を支払うのは当然でありますけれども、起業者が被補償者に対して過払い金に対して利息までつけてとるという考え方は間違いではないか、こういうふうに思うのでありますが、その点についてどうお考えになりますか。
  52. 關盛吉雄

    關盛政委員 これはただいまのようなお考えも一つ方法だと思いますけれども、やはり緊急裁決のときにおきまして収用使用効果があるわけでありまして、損失の額につきましては、若干審議の過程において尽くされていない部分補償裁決のときにおいて正確な確定額を定める。従って、被収用者の側におきましても、もし補償裁決のときに緊急裁決の見積もり価格がオーバーであったというときには、金銭に関しての部分だけにつきましては両当事者間は公平に律するのが適当であろうというのが、調査会の各位の何ら疑われない意見であったのであります。また、関係各省におきましても、この点はどこの省からも意見が出なかったので、われわれもこのような案で成案を得たような次第でございます。  なお、払うべきものを払わなかったというふうなことにつきましては、本法におきましては起業者に対しましては過怠金をとるとか、あるいはさらに、この事業を実施する場合はすべて資力のある十分なものでございますけれども、さらに担保の提供を必要があれば定める、こういうような形で、むしろそちらの制度によって起業者の側に対する被収用者との間の一つのけじめをつけておる、こういうふうにいたしておる次第でございます。
  53. 山中日露史

    ○山中(日)委員 特に補償決定は、この法律にもありますように債務名義という性格を出しておるのでありまして、裁判も何も起こさずに決定でもって直ちに強制執行ができるということの強い権限を双方に持っておるのであります。そこで、今申し上げましたように、被補償者が金をもらった場合に、それがよけい入り過ぎたからということで過払い金を返還しろ、これは当然のことだと思いますが、そのときに、おそらく被補償者はすでにその金は自分の転換の生活設計のために使われておる場合が多いだろうと思う。その返還をするについても、その際にいろいろ困難な場合も出てくるでありましょうし、それにさらに利息をつけるということは、どちらかといえば被補償者というのはいわば犠牲者でありまして、弱い立場にある人であります。起業者は強い立場にある人でありますから、私はこの場合は、起業者の方で利息をとるということはすべきものではないというように考えております。従いまして、直ちにその点を削除する、修正をするかどうかという点は検討を要する点がありましょうけれども、しかし、利息の請求権というものは一つ権利でありますから、必ずとらなければならぬということでもないのでありまして、これはやはり一つの行政指導として、起業者が被補償者に対する過払い金の返還を求める場合には、できるだけ利息は請求しないようにという行政指導は私は可能だと思います。従って、そういう点について、そういう行政指導によって被補償者の弱い立場を保護していく、そういう考えがあってしかるべきだと思うのでありますが、その点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。ただ検討してみるということではなしに、希望に沿うように努力するくらいの御答弁を願いたい、こう思うわけであります。
  54. 關盛吉雄

    關盛政委員 ただいまお話のように、立法論の過程におきましては、この点はどの委員からも、また関係各省からも異論のなかった点でありますので、金銭に関する部分につきましては、ここで公平の立場から三十三条の二項が規律されておるわけでありますが、お尋ねのような場合におきまして、相手方となる人の立場等の具体的な事案につきましては、ただいまのような御意見につきましては十分指導、検討いたしたいと考えております。
  55. 瀬戸山三男

  56. 北山愛郎

    北山委員 最初に、この前お伺いをしました補償金に対する課税の問題、これを大蔵省にお伺いしたいと思います。  土地収用法の問題は、公法上の公権力によって財産権あるいは営業権、生活権というものを一方的に侵害するという、そこに基礎を置いた行為でありますから、損害賠償、損失補償につきましても、それは当然普通の強制売買でもなければ、あるいは損害賠償でもない。一種特殊な公法上の原因によって起こってきた問題だ、こういうふうに考えておるわけです。従いまして、損失補償について所得税あるいは法人税の課税をするということはどうしても納得ができないと思っておりましたが、今度公共用地取得制度調査会におきましても、そういう趣旨に基づいて、従来の土地収用についても課税の減免をしろ、今度の特別措置については免税をしろという答申をされておるわけであります。ところが、聞くところによりますと、これが本案の中に入らなかったというのは、これは大蔵省が反対をしたのだ、そこでこの答申のその部分が実現をしなかったのだ、こういうふうに言われておるのでありますが、その事実、あるいは、この補償金に対する課税についての大蔵省側の見解を承りたいのであります。
  57. 村山達雄

    ○村山政府委員 お答え申し上げます。現在譲渡所得につきましては、これは年々の営業所得とかあるいは給与の所得と違いまして、多年のいわば所得が、資産の含みが一時に実現するという関係にありますので、所得税法におきましても、特にその点はすでに所得税法自身で手当しているわけでございます。その一つは、譲渡所得は普通収入金額から譲渡の原価を引きまして所得が出ますが、それに対しまして十五万円を引いて、さらに半分にいたす、かような措置を講じておるわけでございます。そのほかに土地等を考えてみますと、明治以来持っておったというようなことで、今の貨幣価値に換算いたしますと、実は当時はただにひとしいものである、こういたしますと、それにいたしましても全額一応所得になるわけであります、全額に近いものが。最近における値上がりというものを考えまして、資産再評価法という法律を作りまして、その場合は古くから持っておるものにつきましては、昭和二十八年までの値上がり分についてはその平均的な値上がりによって再評価いたしまして、再評価額をもって取得原価といたす、かような措置もまた講じておるわけであります。  さらに今、委員からお話のございました、これは任意売買の場合でもその問題はあるわけでございます。強制的に収用された場合、すなわち所得はなるほど実現いたしましたが、それが自分の意思に基づかないで強制的にやられた場合においてはまた一般の場合とは別の考慮をすべきではないか、こういう議論がございまして、実はこの点も租税特別措置法において措置を講じておるわけでございます。すなわち譲渡所得、先ほど申しましたように、収入金額から原価を引きます。その原価の見方については、値上がり分は再評価をいたします。そういたしました場合には、特にその所得金額を半分にいたし、それについてさらに普通の場合と同様に十五万円を引いて半分にいたす、かようなことになるわけでございます。ですから、詰めて申しますと、所得金額が一定金額が出ますと、三十万円を引いて四分の一にいたしたものをもって課税標準にいたすということと同じことでございます。  現在の負担はどんなことになっておるかということを見てみますと、かりに補償金額一千万円程度出た場合でございます。これも租税特別措置法二つ規定しておりますが、一つは単純に売られてそのまま所得が実現したという場合と、そうでなくて、やはり強制収用されますと、大体の場合は代替資産、かえ地を求めることが多いわけでございますが、もしかえ地を求めた場合には、そのかえ地に要した価額の範囲内においては課税いたしませんということも同時に現在の租税特別措置法規定しているわけでございます。そこで、一千万円の補償金がかりに出たといたします。再評価額は大体七分の一程度が通常でございますので、さような計算例によって計算いたします。そういたしますと、一般の任意売買の場合には、その場合の負担が百四十一万七千円程度、所得に対しての率が一四%くらいでございます。これでも先ほど申しましたような再評価法と、それから所得税法の措置によりまして、一般よりは非常に安くなっております。これは累年の値上がり分が一挙に実現したということを考慮いたしまして、かような税制になっておるわけでございます。ただいま委員のおっしゃいました強制的に収用された場合でございますと、全然代替資産を取得しなかったという場合には、六十万円程度の負担になるということでございまして、その率は補償金額に対して二・六%程度、普通完全に代地を取得いたしますればもちろんゼロであります。再評価税だけ納めればいいということになりまして所得税はゼロでありますが、かりに七割くらい代替資産を買ったという場合を想定してみます。普通事例がその辺が多うございますので、その辺で計算例をとりますと、一千万円の補償金をもらいましてかかる金額は十七万円、一・七%くらいになっておるわけであります。  現在租税特別措置法、再評価法並びに所得税法、これらによりまして強制的に収用された方々の負担につきましてはこれだけの措置を講じておるわけでございますが、お話のように今度のような特定公共事業の用に特に提供されたものについては、さらにこの上に特別な措置を講ずる必要があるかどうかというところの判断の問題だと思います。われわれの方で強制収用の場合に一般の場合に比べまして特別の措置を講じておりますのは、本人の意思に基づかないで所得が実現されるというその一点をにらんでおるわけでございます。従いまして、そういう意味から申しますと、一般の収用の場合であろうと、あるいは特定公共事業の用に提供する場合であろうと、その本人の意思に基づかないという点においては変わりはないわけでございまして、また負担の程度を見ましてもこの程度になっておりますので、この上実質的に負担を軽減するのは全体の税体系のバランスから見ていかがなものであろうかということを考えたわけであります。  ただ、気がついておりますのは、今度の案を見ますと、代替資産として土地収用したかわりに家屋の一部を与えるとか、あるいは借家権を与えるというような場合もあり得るように規定上読まれます。現在の租税特別措置法の代替資産の範囲というものは、大体今までありました例で、従来は土地、家屋、住宅用であればやはり住宅用という代替資産の範囲でありますが、ただ八郎潟その他の例で湖を干拓しまして、そして漁業権の対価として農地をやる、あるいはそれにかわるべき土地をやるというような事例も出て参っておりますので、この程度の代替資産につきましては手当をしておるのでございますが、今度の法案で出ますような、法案の実施によりまして想定されるような、土地に対して借家権というような代替資産は実は想定していなかったわけでございますので、この点につきましてはさらに手当が必要だと思っております。この点は政令その他でまかなえると思いますので、いずれこの法案通り次第、この法案の実施上不都合のないようにわれわれの方で手当をして参りたい、かように思っておるわけであります。
  58. 北山愛郎

    北山委員 詳細な御説明があったのですが、それは税金を取る側の理屈です。私がお尋ねしたのは別のことなんで、これは売買じゃないです。今のようなお答えは、特殊な売買として、あくまでそういうふうな性格のものとして、特殊な譲渡所得としてやはり課税の対象に考えておる。そこで私はお伺いするのですが、収用に対する損失補償金というものは、あくまで損失補償金として支払われる。収用委員会裁決によって損失補償として観念上は――外部から免れば、あるいは多過ぎるとか少な過ぎるとか、そういう批判があるでしょう。しかし、そのきまった金額というものは損失補償として出されるのであって、それ以上ではないのです。ですから、一体大蔵省は損失補償について課税するという考えを持っておるのですか、その点をお伺いします。
  59. 村山達雄

    ○村山政府委員 強制収用の場合の補償金額、それは規定の上では損失補償と呼んでおると思います。補償金という名前がついておりますが、内容を見てみますと、実体から言いまして収用される物件に対する対価としての補償、それからたとえば移転料のようなもの、こういう実費補償的な経費、あるいはわれわれ具体例でお目にかかるのは協力料とか感謝料というような名前で出されるものもあるわけでございます。今私が申し上げましたのは、収用される物件の対価としての補償される部分について申し上げたわけでございます。なるほど、この補償の原因自体は本人の意思に基づかない強制力ではあるが、やはり経済的に見ますれば収用物件に対する対価であるということでございます。従いまして、先ほど申しましたように、所得税法上譲渡取得対象になる。  ついででございますが、いろいろな補償金額のうちの精神的の慰謝料のようなものにつきましては、これは所得税法上の規定によりまして課税をいたさない、非課税所得の中に扱っておるわけでございます。
  60. 北山愛郎

    北山委員 損失補償というのは、その中身がどんな項目がありましても、とにかく収用委員会裁決するのは損失補償として、全体として出しておるのです。これは観念上それ以上のものを出しているとは考えられない。  これは建設省の方に聞きたいのですが、収用委員会とかそういうもので、御承知のように、収用に伴った損失補償というのを出しているのは、客観的に具体的な場合において、あれは多過ぎるとか少ないとか、そういう意見は立つでしょうが、とにかく観念上は全体として損失補償なんでしょう。
  61. 關盛吉雄

    關盛政委員 損失補償でございます。   〔瀬戸山委員長代理退席、委員長着   席〕
  62. 北山愛郎

    北山委員 その中身が慰謝料であるとかなんとか、名目はいろいろ立てますけれども、それは技術的にはそういう項目でなければ工合が悪いということから立てるのであって、全体としてはやはり損失補償だ、これは建設省の言う通りなんです。  大蔵省は、損失に対して課税をしているわけです。かりに協議の場合におきましても、今度の収用法上の協議というのは普通の場合の協議と違うのです。対等の協議じゃないのです。その背景は、協議がととのわなければ強制的に収用されるという、公権力を背景にした協議なんですから、すでにその協議というのは私法上の協議じゃなくて、公法上の協議なんです。一方的な権力を背景にして協議という形で処理しようというものですから、その協議の結果出てくる場合におきましても、これは普通の売買と違うのです。だから私は、大蔵省が損失補償に対して課税をするというのは課税上間違っているのじゃないかと思う。金の出し入れについてはすべて税金をかけたい、その気持はわかるのですけれども、今度の特殊事情のごときは災害と同じことですよ。収用を受けた者にとっては災害を受けたことと同じなんです。しかも、自分の意思に基づかないで、収用認定があれば収用権が設定されてしまって、おそかれ早かれ、高くても安くてもとられてしまう。そういうことにきまっておるのです。ですから、これはいわゆる公益という理由のもとに財産権と収益を制限するという形なんです。公益の側から見て、侵害された財産権に対して、あるいは生活権に対してこれを償わなければならぬという全体としての損失補償なんです。そういうものに対して課税しているのですが、課税上損害賠償に対しては課税しないでしょう。この場合は損害賠償とは違うけれども、また別な性格のものであるけれども、そういう考え方と同じように、入った金が前に取得した金額よりも高くなったとかなんとかいう、そんなこまかいものじゃないのです。そうじゃなくて、とにかく収用の結果出てきたものが損失補償であり、それ以上のものではない。ですから、観念上これに対しては課税すべきじゃないのです。それが特別措置であろうが現在の土地収用法によるものであろうが、課税すべからざるものに課税している。ですから、損失補償であることは建設省も言っておる。損失補償に対してあなた方は課税しておる。そうじゃないのですか。
  63. 村山達雄

    ○村山政府委員 あるいは言葉が足りなかったので、所得が出ないのに課税しておるというふうにおとりになったかもしれませんが、そういう意味ではございません。普通補償いたします場合に、おそらく損失額を計算するときには、そのときの時価で計算されるだろうと思うのでございます。その土地の時価が坪当たり百万円であれば百万円、これが補償対象になると思うのであります。所得税法は、実はその補償金額が百万円と出されれば百万円、それはそのままに受け取るわけです。その場合に幾ら所得が出たかという計算を、所得原価との関係で計算しておるわけでございます。もともとその土地が一万円で買ったものだといたしますれば、そこで九十九万円が所縁になって出ます。こういうことでございます。先ほど申しましたように、その場合、資産再評価法でかりに一万円という所得原価でありましても、それを両評価価格まで上げて、たとえば十万円なら十万円というもので所得原価を計算した、そういたしますと、差引九十万円が出てくるわけでございます。通常の所得税法の場合でございますと、それから十五万円を引きまして七十五万円、そのまた半分の三十七万五千円をもって課税標準にいたします。こういうことでございます。ただ、ただいまのように強制された場合におきましては、初めからただいまの十万円を引いた九十万円を半分にして四十五万円、それからさらに十五万円を引いた三十万円、それを所得税法によってさらに半分にいたして十五万円を課税標準にいたすということを申し上げておるわけでございます。  従って、所得があるかないかという問題でございます。あるいは税法上もし疑問があるとすれば、譲渡所得の計算方法そのものに対するあるいは御疑問かもしれません。しかし、現行では、やはり所得というものは原則としてその収入金額から必要な経費ないし原価を引いて計算をいたす。ただ、その所得の種類に応じまして、所得税の税率は累進税率でございますので、それらの点を勘案いたしまして、一挙に実現したような場合におきましてはそれを勘案いたす。こういうような措置が講じてあるわけでございます。従いまして、土地収用法では損失金額といっておりましょうが、そのうちを見てみますと、所得税法上は譲渡所得があるわけでございます。
  64. 北山愛郎

    北山委員 所得には全部税金をかけるのだ、そういう考えじゃないでしょう。さっき言ったように、慰謝料については課税をしないというととは、どういう理由で課税しないのですか。やはりそれと同じように、これは一方的な公権力による財産権の侵害であり、それに対する償いとして出されたものであるから、これに対しては性質上、かりに金が一千万円入ったとしても、それは損失補償なんだから、税の一つの基本の理屈からしてかけるべきじゃないのだ、こういうことを言っておるのであって、あなたの言っておることとは次元が違う。あなたは金を取ることばかり考えておる。取るべからざるものを取っておる。所得を、もうかった金を差し引いて、あとの残ったものにかけますというのじゃ税務署の役人の考え方です。けれども、公用収用というものの根本の性格を考えて課税政策というものを作るべきだ。今までは間違っておる。  これは大蔵大臣に来てもらいたかったのですが、どうですか、政務次官。この問題は今までに解決すべき問題である。ところが、今度調査会の答申の中にその問題が出てきている。それを大蔵省が反対してこれを実行しない。大蔵大臣はけしからぬと思う。政務次官、どうですか。
  65. 大久保武雄

    ○大久保政府委員 ただいま局長が御説明を申し上げました通り、無常に困難な問題でございますが、やはり建前上、ただいままで代替資産の取得に対する措置等におきまして相当な考慮も払っておりますところでもございますし、ただいま答弁いたしました趣旨で御了承を願いたいと思います。
  66. 北山愛郎

    北山委員 それは私個人が了承するとかしないとかいう問題ではないのです。政治の根本理念の問題です。損害賠償に対して一体課税しているのですか。損害賠償とか災害とか、そういうものに対しては課税していないでしょう。それが原理なんです。だから、今度の土地収用なんかについても、これは単に財産の移動ではなくて、これに伴って生活権なり営業権なり、生活全体が変動する。だから、補償金額の内容もいろいろな名目で出している。出しているけれども、ともかく収用委員会なら収用委員会裁決できまったものは、これは全部が損失補償として出している。それ以上のものじゃないのです。足らない場合が多いのですが、それに対して課税している。損失補償に対して課税しているのです。そういうことは理論上合わない。これは次官、建設省考え方は政府部内でも違うと思うのです。だから、十分その点を検討されて、考え直される必要があると思うのです。
  67. 村山達雄

    ○村山政府委員 法人税にいたしましても、所得税にいたしましても、所得に対して課税するわけでございます。所得があるかないかという問題と、それから政策的に考えまして、先ほど申しましたように、所得があった場合にもその性質上どの程度緩和すべきかという問題と、二つあると思います。この場合、税法上所得があることには間違いはないと思います。先ほど申しましたように、現行の措置では、その所得が出ました場合には三十万円を引いて、それを四分の一にいたしております。これだけの政策措置は講じているわけでございます。負担から申しましても、一千万円の補償金がありますと、それに対しまして一・七%程度の負担になります。他の措置との関連もありまして、特定公共事業のための収用であるというそれだけの理由で、それ以上の特別の措置を講ずることは適当ではないのじゃないか、かような見解を持っておるわけでございます。
  68. 北山愛郎

    北山委員 それならば、先ほどお尋ねしたのですが、損害賠償によっていわゆる所得を得た、その際には課税するのでしょうか。
  69. 村山達雄

    ○村山政府委員 損害賠償の内容いかんによりますが、所得が出るか出ないかという問題でございます。ただ、精神的慰謝料その他につきましては、慰謝料は違法行為に基づくものでございまして、税法の分類で申しますと各号の所得のうち一時所得になります。資産の譲渡ということでなくて、一時所得に対してはまた所租税法の基本的な考え自身で特定の考慮を払っておる。これはやはり所得税法というのは、御案内のように、諸控除を引きまして累進税率で課税いたしております。従いまして、一時の所得に一挙にその年の所得として累進税率の高いところを課税するのはどうかという問題がございます。おっしゃるような今の精神的慰謝料のようなものは、違法行為に基づく一時所得でございます。こういうものは、なるほど所得には違いないでしょう。がしかし、かようなものに課税するということは、われわれの納税倫理の常識から見ていかがなものであろうかということで、これは今非課税にしたわけではございませんで、昔から非課税になっておるわけでございます。
  70. 北山愛郎

    北山委員 とにかく、大蔵省は土地の公用収用というもののほんとう意味を身をもって感じておられないのです。これはいわゆる公の権力で、法律の裏づけがない場合には、一方的に取るのですから強盗と同じことをやるわけです。ただ、それを合法化する、合理化する裏づけというのは公益という、公益の理由のために私権を侵害する、そういうことなんです。だからこれに対しては、被収用者に対して相当な償いをしてやろう、こういう理念というか、この法理に基づいてものごとを考えていかなければならないわけです。しかも被収用者の意思が全然じゅうりんされておるわけですから、そういう趣旨から損失補償を考えないと、あなた方はただ金さえ入ればすぐ所得だ、そういうような考え方で何でもかんでも税金をかけようという考え方なんです。だから何べん話してもわからない。これは大きな政治的な問題ですから、私は別の機会に大蔵大臣なり政府の責任ある方にお答えをいただきたいと思います。しかも、今お話しのように、損失補償であるということは建設省は認めておるのですから、損失補償に対して一体課税していいものかどうか、こういう高い次元の問題でありますので、この点は保留しておいて、あとでまたお伺いをしたいと思うのであります。
  71. 石田宥全

    石田(宥)委員 ちょっと関連して、一問だけお伺いしたいと思います。  主税局長にお伺いしたいと思います。先ほどの御説明の中で、代替地を取得した場合においてはこれは別である、こういうお話でしたが、今度の法案ができますると、今御説明のように、公権力でやられるわけです。土地なり、あるいは工場なり住宅なり、いろいろのものがあるわけです。そういうものを取り上げられてしまった場合に、すぐに官庁が代替地をやるとか、あるいは住宅をちゃんとあっせんしてやる、こういう場合はいいのですけれども、しかし、やはり店舗を営んでおった者は、いつの日にかまた店舗を営まなければならぬ。住宅を持っておった者は、いつまでも借家にいるわけにいかないから、また家を取得する。その間相当な時間があるとします。そうするると、そこで一応税金を取られておいて、それから相当年月を経る場合もあり得るのでありまして、そういうときに物件を取得した場合に、またそれに対して税金を払う、そうするとこれは二重課税になる。二重に課税されるわけです。そういう点からいっても、今の局長説明では、私どもはどうも納得がいかない。ですから、やはり北山委員が言われたように、本質的な問題もあるが、そういう面でも私は問題があると思うのですが、どうですか。
  72. 村山達雄

    ○村山政府委員 現在代替資産の取得の場合には、その限度におきましては課税しておりません。ただ、その要件といたしましては、原則といたしまして一年以内に代替資産を買っていただくということでございます。今回の国会で、その期間は一年以上延びる場合にも、およそのめどがつきますければ、税務署長にその旨を、おおよその見込みの期日を言っていただいて、それが確実なものと認められれば、やはり課税はいたさない、こういう措置を講じたわけでございます。  おっしゃるケースの二重課税の問題でございますが、これは譲渡所得でございますので、いつでも取得原価、買った場合のものを幾らで売ったか、その差額で譲渡所得は出るわけでございます。従いまして、一つの物件について一ぺん買って売ります。代替地を買うという場合には、その物件に関する限りもう課税の問題はないわけでございます。補償金額で代地を買います。買うときには所得税の問題はございません。そのかわりの金で買ったものを今度さらに速い将来売った場合に、そこで所得の課税の問題が起きてくる。こういうことでございますので、二重課税の問題はないのでございます。
  73. 北山愛郎

    北山委員 とにかくこの問題は、よく考えてごらんなさい、公共事業なんかは大体国がやるわけですよ。あるいは都道府県がやるというのが多い。国の機関がやる場合が多いのです。しかも、補償金をやっておいて、今度は左の手で税金までいただきますということなんですね。そういうふうなことは、全体としてやはり常識に合うような措置をとられる必要がある。何でもかんでも金が入れば所得だ、所得には課税するのだということは、税金を取る政府の狭い考え方だ。そういうことはよくお考えになっていただきたいと思うので、これはあらためて私は大蔵大臣なりあるいは政府の責任者にお伺いいたしたいと思います。
  74. 加藤高藏

    加藤委員長 午後二時より再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ――――◇―――――   午後四時二十五分開議
  75. 加藤高藏

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公共用地取得に関する特別措置法案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  石川次夫君。
  76. 石川次夫

    ○石川委員 自治大臣が見えておられますから、自治大臣の分だけとりあえず質問いたしたいと思います。この公共用地取得に関する特別措置法案に関しまして、各関係省の方からいろいろの意見がつけられておるわけであります。調査会の答申案に対する意見でございますけれども、その中で自治省の分について大臣の所見を伺いたいのです。実は本会議でも若干の質問はいたしたのでございますけれども、自治省のこれに対する意見は何らこの法案には実現をしておらないわけなんでございます。大臣のその折の答弁では、自分たちの意のあるところは法案には十分盛られておるという御答弁をされたわけです。しかしながら、この意見についての趣旨というものは全然法案には生かされておりませんので、お忙しいところを恐縮でございますけれども、念のためにあと一回お伺いをしたいと存ずるおけです。  そのまず第一は、答申案でございますが、「公共用地取得制度の改善に関する答申及び建議」という調査会の答申の「第二前文中「国の緊要な施策遂行上の要請にこたえがたい」旨の表現は、狭きに失し適当でないと思われるので再検討されたい。」という意見が自治省の方から出ております。これはどういうことを意味しておるのかというのが質問の第一点でございます。  それから第二の点は、「特別措置を適用する事業範囲については、「幅員九メートル以上の二級国道」「人口五〇万以上の都市」のように幅員又は人口等を基準として定めることは適当でない」こういう意見が自治省の方から出ておるわけであります。  それからさらに、「特別措置を適用する事業として「その他審議会の議を経て建設大臣が指定する事業」を加えられたい。」というような積極的な意見もあるわけでございますけれども、これは今度の法案の中には全然盛られておりません。この「適当でない」といわれたことの根拠につきまして、そうしてまた、それが今度の法案に生かされておらなかったということに対する自治省大臣の意見を伺いたいと思います。
  77. 安井謙

    ○安井国務大臣 公共用地取得制度調査会に対しまして、自治省側の意見が取り入れられてないじゃないかという点についての二、三点の御指摘の御質問でございます。  第一に、自治省側の意見と申しますものは、正式にこの答申案に対して省としての態度をきめて出したという性質のものではございませんので、この点は、私どもの行政局長審議会の専門委員として参画をいたしておりますために、いろいろ技術的な点で字句の表現であるとか、そういった点に対する個人としての意見を出しておるわけであります。その中には取り入れられましたものもありますし、取り入れられてないものもございますが、法律全体としましては、私ども大体地方団体が仕事を一緒にやっていきます場合に、支障のあるような構成にはなっておらぬと思っておりまして、この法案に賛成をいたしておるわけであります。たとえば「国の緊要な施策遂行上の要請」云々というようなものが狭きに失するというような意見が、当時答申案が出ます前に事務的に出ておりますが、これは全体を通して地方団体の意思が疎通できるようにしてほしいという全体を通しての趣旨が生きれば、言葉はこれでいいじゃないかというような意味から、言葉通りに採用されなかった。あるいは対象を限定します際、もっと幅の広いもので、必要に応じていつでもできるようにしてほしいという、より欲ばった考え方もあったわけでありますが、しかし、これはかなり画期的な制度でもありますので、一応限定をしてやっていこうという考え方には、自治省としては最後には同調しておるわけであります。
  78. 石川次夫

    ○石川委員 自治省という立場は、地方公共団体の利益、権益というものを代表し、地方住民の利益を擁護するという立場だろうと思いますが、今の私の質問は大して重要ではないと思いますから、一応この程度にいたしますけれども、その重要な自治省としての意見が、その次に自治省本来の立場に立っての意見が出ておるわけであります。それは答申案の第二の句で、「補償は現物補償を原則とするようにされたい。」、これはきわめて自治省らしい自治省本来の立場に立っての貴重な意見だというふうに思っておるわけでございますが、現物補償を原則とするというふうにはこの法案にはなっておりません。この点が私は自治省の側としては非常に不満の存するところではなかろうか、こう存じますが、その点に対する意見。  それからあと一つは、「生活再建対策は、起業者の責任において処理することを建前とし」て、「国及び地方公共団体がこれに協力する」というような形にしてもらいたい。これも私はまことにもっともな意見だと思うのです。しかし、これはこの法案の中には十分に生かされてはおりませんので、やはり起業者自身が自分の責任でとことんまで生活再建対策、めんどうを見るのだという配慮が住民の立場から見てぜひとも必要なことではなかろうか。こう考えるわけでございますけれども、この法案でいきますと、どうも地方公共団体がこの仕事をかぶってしまう。しかし、地方公共団体は、自分自身無関係ではないでございましょうけれども、起業者の立場ではないものですから、ついその再建対策がなおざりになってしまうという危険がきわめて多いと思うのです。従って、私たちは、起業者の責任で最後までこの生活再建対策を考えるという配慮が、ぜひともこの法案を作る上に実現をさしてもらいたいと思ったのですけれども、これは実現をしておりません。その点について、答申案に対して自治省の意見はきわめて適切なものであると思うのでございますが、これが法案に生かされなかったということについての大臣の御意見を伺いたいと思うわけです。
  79. 安井謙

    ○安井国務大臣 非常に有益な御指摘だと存じますし、われわれ、できればそういう点も十分考えられた方がベターだというような考えも自治省自身の立場からはあったかと思いますが、今の現物補償の問題にいたしましても、これは現物補償を決してやらないという一わけではない。行政指導で十分その精神は生きるというようなことから、これも自治省としてはのむというようにやったわけでございます。  それから、例の再建計画を立てるという場合には、何と申しましても都道府県がこれに協力をしなければなりませんので、そういう場合に、都道府県知事が再建計画案については作成において十分な力を貸す、あるいは作成をするというふうにやっております。しかし、これの補償を実施しますというような面につきましては、やはり施行者自体が責任をもってやるというふうになっておりますので、この点も実際上からは格別の支障はなかろうかと思っております。
  80. 石川次夫

    ○石川委員 今の御答弁だと、大体意見は出ておりまして、この意見はほとんど法案には盛られておらないと私は考えるのです。でありますから、自治省の大臣としては、この現物補償を、こちらは「原則とする」となっております。法案は現物補償することもできるというような建前になっておりますが、原則にはなっておりません。従って、これはあくまでも「現物補償を原則とする」という形になれば、私は今後における公共用地取得というものは非常に円滑にいくだろう、かように考えるわけです。この自治省の意見は、私はその点できわめて妥当なものである、こう考えるわけですが、この点について、それでは建設大臣、どういうふうにお考えになっておるか、一つ意見を伺いたいと思います。この「現物補償を原則とする」、それから、「生活再建対策は、起業者の責任」でとことんまでめんどうを見るのだ、これに地方公共団体は協力をするという建前でなければならぬというのが自治省の方から出ている意見であります。これについて御意見を伺いたいと思います。
  81. 中村梅吉

    中村国務大臣 現物補償の問題は、これは絶対にということになりましても、ときと場合によりまして、現物補償は事実上代替すべきものが人手できませんで不可能な場合もあり得るわけでございます。従いまして、この法律案の中におきましては、収用委員会裁決による現物補償と、四十六条の話し合いによる現物給付の場合と、二つの建て方で織り込んであります次第で、現物補償の申し出があり、それが妥当であり、また、現物補償として給付すべきものがあるような場合におきましては、できるだけ当事者の申し出を生かして収用委員会が現物補償裁決もすることができる。これは母法でございます土地収用法からもできるわけでございます。その建て方と、もう一つは、補償裁決をいたしませんで、話し合いで解決をする場合の四十六条の現物給付の規定、これらによって解決をしていく以外に道がない、かように考えておる次第であります。  それから、生活再建対策につきましては、これもこの法案におきましては、申し出に基いて都道府県知事が、関係市町村長あるいは関係行政機関、その申し出をした者あるいはその代表者、特定公共事業の施行者、こういう関係者の意見を聞いて生活再建計画を作成する。もちろんこれには関係市町村等の協力も得なければなりませんが、この計画を作成するにあたりましては、地方団体の中心でございます都道府県知事に責任を持ってその地方の実情に即して計画を作成してもらうということがやはり一番よいという考え方で、都道府県知事の協力だけではこれは不足でございますので、都道府県知事を中心に再建計画を作成していただき、その作成されたものをそれぞれの関係機関が実行に移していくという建て方でよろしいではないかというように、実はわれわれ考えているわけでございます。
  82. 石川次夫

    ○石川委員 ただいまの生活再建対策でございますけれども、地方の公共団体にまかせますと、これは関係がないことはないでしょうが、自分でやった仕事ではないものですから、最後までほんとうにめんどうを見てやろうという気持はどうしても薄いと思われる。さらにまた、地方公共団体の長といたしましては、これだけではございません、国でやるべきことを委任事務あるいはその他の関係でもって、何でもかんでもかぶせられてくるということに対する不満が非常にあるわけでございます。そういう点から見ても、生活再建対策は、この法案では十分に生かすことは困難ではないか、こういう懸念があるのです。従って、自治省の立場としては、当然起業者の責任において処理する建前であると言われる意見はきわめて妥当なものであると考えられますが、自治大臣の方からもこういうことの実現のために積極的に連絡をとり、協議をしてこの趣旨を生かすように、建設大臣ともどもに御協力を願いたい、こうお願いする次第であります。  あと一つ。これは自治省の意見ではないのでありますが、第九条に、市町村長が「同法第二十四条第二項の規定による手続を行なわないときは、起業地を管轄する都道府県知事は、起業者の申請により、当該市町村長に代わってその手続を行なうことができる。」、こうなっておるわけでございます。御承知のように、地方自治法第百四十六条には、市町村長がもし国の命令、県の命令を行なわないときには、職務執行命令訴訟というふうなものを起こして、裁判所の認定によって初めて知事が代行できる、こういうことになっております。これこそが憲法九十二条の地方自治の精神を生かした、原則にのっとったものではないか。中央政府が一方的に権力を発動することを、司法権がその中に介入することによって初めて一方的な発動を防止する。中央集権が過度に地方行政を侵すことのないような配慮がこの点で規定されているのだというふうに考えるわけでございます。ところが、この第九条で、起業者の申請によって直ちに市町村長にかわってその手続を知事が行なうというふうなことは、憲法九十二条あるいは地方自治法の精神にもとるものではなかろうか、こういう疑念を持たざるを得ないのですけれども、この点、自治大臣はどうお考えになりますか。
  83. 安井謙

    ○安井国務大臣 今の点は、地方自治法百四十六条で、市町村長が国の機関として事務を委任されておる場合の規定でございます。これの手続は、御指摘の通り、やれなかった場合あと手続は裁判の結果を待ってやるというふうな非常に複雑な手続になっておる。しかし、最近の情勢ではこの公共事業を緊急にやらなければなりませんし、長い間の裁判をいつまでも待っておるのではいかがかということで、特に緊急を要する公共事業の場合に、市町村長にかわって同じ選挙で出ております都道府県の知事が、やはり自治体の立場から、公平な裁断でこれを特にかわってやり得る、こういう場合があっても必ずしも自治権の侵害にはならないのじゃなかろうか。この法律を出します建前から見ましても、この程度の特例は設けてしかるべきものであろうと考えておるわけであります。
  84. 石川次夫

    ○石川委員 私は、その答弁が建設大臣から出た答弁ならそれでもよろしいと思うのですけれども、自治省の大臣はやはり地方自治を守るという建前で――こういう過度な中央の権力というものが地方の権利を侵害する、それを緩和するただ一つ方法として地方自治法の百四十六条というものは生かされておるのですから、これを無視したこの法案の出し方というものは、私は、地方自治の自治性というものを侵害する憲法違反の疑いが強い、こう思わざるを得ない。また、自治大臣としては当然そういう立場に立って、地方公共団体を守るんだという立場で見解を披瀝されることが妥当ではなかろうか、こう思うのですが、この点については、あと建設大臣に伺いたいと思います。自治省の大臣に対する私の質問は、不満足ではありますけれども、この程度にいたします。
  85. 加藤高藏

  86. 北山愛郎

    北山委員 自治省にお伺いしたい問題があります。ただいまの市町村長や知事の協力ということに関係するのですが、第三条の第二項に、知事や市町村長は「起業者に対し、事業の用に供する土地取得について協力しなければならない。」という一般的な協力規定があるわけです。これは、私はこの規定の性質から見て、やはり訓示規定といいますか、できるだけ協力するようにしろということであって、国の機関として義務づけたものではないのじゃないか、こういうふうに考えられる。それから九条の中にも、場合によっては市町村長が縦覧の事務をやらない場合もあり得るということを法律で認めている。そういうことの関連からしましても、あるいは知事や市町村長というのは、国の事務をやらされる立場にありますと同時に、地域住民の代表でありますから、その事業が公益の事業といたしましても、その地域によっては必ずしも住民の利益にならないという場合が現実にあり得るわけです。たとえばダムなんかを建設するときに、住民の多数が反対しているというときに、しかも議会でもってその反対議決をしたというような場合に、住民の代表としての市町村長と、国の機関としてのこういう協力義務と矛盾する場合が出てくる。ですから、これを、土地取得について市町村長や知事は常にこれに協力する義務があるのだという厳格な規定に読むならば、地方自治体の長というものは非常につらい立場に追い込まれる。ですから、これはできるだけ協力するようにという訓示規定であって、それに違反した場合、義務違反になるのだ、こういう厳密な意味ではないと解すべきが妥当じゃないかと思うのですが、自治省大臣の見解を承りたい。
  87. 安井謙

    ○安井国務大臣 今の御質問は、意味のとり方によりましてはこれは一種の訓示規定的なものだという御解釈については、私ども一応考えておるわけでございます。ただ、御承知のように、第三条の一項を受けまして、認定を受けます際にむしろ起業者の義務として、市町村長あるいは都道府県知事に詳細にして十分な説明をしなければならない。そこで、非常に妥当、合理的なものであれば、都道府県知事あるいは市町村長も大いにこれに協力しよう、こういう趣旨で、あわせて考えてしかるべきものであろうかと思っております。
  88. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、この第二項は、第一項のいわゆる起業者が事業認定の前にいろんな事業説明をPRする、その際に、その範囲でもって市町村長や知事は協力すれぱいいのだ、こういうことですか。この規定は、実は場所としてもおかしいんですね。第三条は「事業説明等」ということになっおって、第一項と第二項は別の問題を規定しておる。もしも大臣の言われるように第一項を受けた規定であるとすれば、ここに書いてある「土地取得について」ということは、いろんなPRをするとか、そういう起業者がやる仕事について協力をすればいいんだという範囲規定であるか。一般的に土地取得について協力をしなければならぬということを義務づけたものじゃないんだ、こういうふうな解釈ですか。
  89. 安井謙

    ○安井国務大臣 私も、義務づけたものというのと訓示的な性格を持ったものというのは、これは若干解釈あるいは感じ方の差異があろうと存じまするが、事業を起こそうとします際に、その内容について十分な説明を受け、それについて十分な納得がいけば、これは当然のこととして協力しなければいかぬ。内容を認定するということ自体が相当緊急を要しますし、また必要なものを定められるものだと思いますので、それについて十分な理解をして、その上で協力しなければいかぬというふうに受け取るべきものだと思っております。
  90. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、第一項のいろいろな説明を受けた、しかし協力できない立場にある、いわゆる納得できないという場合においては、協力しなくてもいいという程度の規定ですか。
  91. 安井謙

    ○安井国務大臣 今度の法律建前は、そういった緊急を要する事業はある程度強い意思で行なわなければいかぬという方針で立てられておると思います。従いまして、そのきまったものに対しましては、十分に手を尽くして施行者なり何なりが関係のある市町村、都道府県に十分に説明をして、納得をさせるようにはからわなければいかぬ。また、はかるべきものである。また、それを受けて、できる限りそういう内容に都道府県知事、市町村長は協力をすべきものであるというふうに考えております。
  92. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、第一項と第二項は関連があって、いろいろPRを受けて、それがよく納得ができたら協力すればいいというふうに御説明のようですから、その程度に解釈して了解しておきます。  それから、自治相にもう一点。収用委員会というのは、土地収用法の場合でも、この場合でも、非常に重要な地位にあるわけですね。ところが、この法案を作る際の公共用地取得制度調査会の答申の中に、今の弱体な土地収用委員会を強化しなきゃならぬ、事務局を置かなきゃならぬ、こういう答申があるわけです。ところが、それが実現されておらない。それには、自治省はこれに反対なんだ、そういう行政委員会に対して事務局を作ることは反対だということでそれが実現を見なかった、こういわれておるのですが、これは私どもから見るならば、この収用委員会は国の機関であって、都道府県にいわば間借りしておるような格好になっておる。国の機関であってしかも独立な行政委員会という、非常に重要な意義を持っておるのです。しかも、このような特別措置法ができる場合においては、さらに収用委員会の任務、役割は非常に大きなものになる。従って、今のような弱体なものじゃなく、もっと強化されなきゃならぬという調査会の答申は納得できるのでありまして、それに対して自治省が反対したというのはどうも受け取れないのですが、どういういきさつなんですか。
  93. 安井謙

    ○安井国務大臣 この事務局設置の問題につきましては、自治省としては一応建前論を申しておるのでございます。地方でそういうふうな設置されております機関に行政的な機構の新設、あるいはそれを複雑にするということに対しては全面的になるべく排除していきたい、なるべく簡素なもので簡便にいきたい。そういう建前から、従来の実績でいいましても委員会で扱います件数がまだ少ないので、そこまでの必要は目下ないのじゃなかろうか。しかし、これが実際に扱いまして、どうしてもそういったものがいいという場合に、何も絶対それはいかぬというほど絶対的な意思を持っておるわけのものではないのであります。
  94. 北山愛郎

    北山委員 これは、なるほど件数が少ないでしょう。しかし、その取り扱う内容というのは、いわば準司法的な性格を帯びており、非常に技術的な内容を持っているのです。評価あるいは鑑定というような補償金額をきめる、補償内容をきめるという非常に重要な役割をするわけです。従って、事務局もない、しかも非常勤の委員でもって仕事をするということはふさわしくない。これがこの土地収用全体のいわば骨組み、中心になるのです。そういうことを十分お認めいただいた上で行政組織の簡素化を考えるべきだと私は思う。ただ地方自治、都道府県の問題だというような立場から考えてはいかぬと思うのです。私は、建設省としては事務局を置くようにという希望だったと思うのです。それは収用委員会の重要な性格から見て当然の要求だと思うし、また、それだからこそ調査会としては答申の中に特に入れてある。一応簡素化という趣旨はわかりますよ。わかりますが、これは単に知事のもとで、知事の命令でやる機関ではなくて、御承知のように独立機関なんです。しかも国の機関なんです。ですから、国の方で金を出すなりして事務局を強化するというなら、それでいいんじゃないですか。  それとも、国の方では、収用委員会の経費は都道府県まかせで、金は出さない、しかし事務局は作れというのであれば、自治省が反対するのは理由があると思うのです。収用委員会の経費については、一体どうなっておるのか。建設省としては、こういうふうな事態にかんがみて強化するために、財政的に全部これは国が持つべきなんです。そういうふうな建前になっておるのかどうか。  あわせて、今、大臣は、必ずしも行政簡素化ということで事務局の設置をどこまでも反対する気持はない、こう言われましたが、建設大臣、自治大臣の両大臣から、こういうことに関連して、また、こういう特別措置法ができなくても収用委員会というものは当然強化すべきものなんで、そういう点から、事務局を設置し、また国の方からその財源は全部十分出すというふうに改善をするという言明が得られるかどうか、これを承っておきたい。
  95. 安井謙

    ○安井国務大臣 今の、委員会の経費はどうかという御質問に対しましては、これは自治体の一般経費からまかなっておる。しかし、一般経費につきましては、いわゆる交付税の算定の基準として、この財源を交付税の中で見ておるということにいたしておるわけでありまして、自治体の仕事は自治体固有のものもありますし、同時に国の委任を受けてやっておるというようなものもありましょうし、そういうものはそれぞれ財政上の計算をして、交付税の計算で見ておるという建前になっておるわけであります。
  96. 北山愛郎

    北山委員 それは少しおかしいんじゃないですかね。たとえば公安委員会みたいなものであれば、それは自治体警察なんです。公安委員会というのは自治体警察の運営をやる委員会なんです。しかし、この収用委員会は国の機関だということは、きのうですか、建設大臣がはっきり言われておる。しかも独立機関であって、知事の所轄のもとに置かれているということになっておるのですから、いわば建前からするならば、都通府県というところに間借りをしている国の機関なんです。従って、これは自治体の固有財源でやるとか交付税でやるという性質のものではなくて、やはり国費でまかなうというのが建前でなければならぬと思うのですが、どうでしょうか。
  97. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 便宜、私からちょっとお話ししたいと思います。  おっしゃるように、収用委員会のやっております事務はまさに国の事務でございますが、機関としては、自治法に基づく地方団体の執行機関として置かれております。従いまして、現在の財政の建前から申しますと、あらゆる経費は一応当該地方団体が出す。しかし、例外的に負担分がきめられておるものは負担法で出すという建前になっておりますので、この経費をどうするかということにつきましては、御指摘のような御議論はあろうかと思いますけれども、現在では一応地方団体が一般財源で支出する、こういう建前になっておるのでございます。
  98. 北山愛郎

    北山委員 国が地方に出す財政的な措置としては、補助の形もあるし、いろいろな形があるでしょう。しかし、収用委員会というものは重要な機関であるから、少なくともこれに対しては事務局を充実をしてやるような方針で自治省としても考えていただきたいと思うのです。いろいろな財政的な措置などについても、何か収用委員会は忘れられたような存在で、片すみに間借りをしておるというような格好になっておるのじゃないかと私は思うのです。この法案を見たり、あるいは土地収用法を見れば、収用委員会というのは非常に重要なものなんです。もしも都道府県に置くのは適当でない、それだけ重要なものである、また各府県の取り扱い案件も非常に少ないからというなら、これを切り離してしまって、中央に強力なものを置いて、そうして地方的な問題も臨時委員を置いて扱うとか、そういうふうにしてもらいたいというような積極的な意見を自治省が述べるなら、まだ話はわかる。しかし、中途半端な形にしておいて、そうしていろいろな制度の拡充、充実の点では非常に冷淡に扱うということでは、非常に困る。この点は、建設省にも自治省にも両方に関連があるし、また大蔵省なんかにも関連があるのです、この特別措置の一環なんですから。しかも、答申案にあるのを実行しなかった重要な問題ですから、これは考慮しなければならぬと思う。これは御検討願いたいと思う。自治省に対しては以上の点だけです。
  99. 加藤高藏

    加藤委員長 兒玉末男君。
  100. 兒玉末男

    ○兒玉委員 計画局長にお伺いしたいと思います。  今回出されております法案の中で、特に公共川地取得制度調査会の答申によりますと、その内容において道路の幅とかそういうふうな具体的なことが詳細に書かれておりますけれども、この法案においては、そういうような内容については政令によって定めるというふうに、調査会の答申と法案の内容に若干の相違があるわけでございますが、どういう理由でこれを政令で定めるというふうに変更したのか、その理由についてお伺いしたい。
  101. 關盛吉雄

    關盛政委員 この法律におきましてできるだけ特定公共事業範囲につきまして明定をいたすことがわれわれの最大の眼目であったのでございますが、法律技術的な関係もございまして、法律事項についてはできるだけ原案に盛られておるような内容で法律事項を明定し、そうして足らざるところを補足いたしまして、前回の農林委員会との合同審査の際に御配付申し上げましたような内容を政令で定める、こういうことで法律技術的な作成の過程におきましてそういう手続をとったというわけでございます。
  102. 兒玉末男

    ○兒玉委員 そこで、政令で定める重要な区域だとかあるいは施設だとか、こういうものは具体的に大体どんなものを想定しておるのか。また、このような事業を起こす場合における基準というものはどういうところに求めておるのか。この二点についてお伺いしたいと思います。
  103. 關盛吉雄

    關盛政委員 この法律に掲げてありますことは、公益性の商い、しかも当面実施をいたさなければならない緊急性のある事業の種類を限定列挙いたしまして、しかもその内容的な幅につきましては、極力制限をした形で範囲をしぼっていっておるわけでございます。従って、その基本といたしましては、先ほど申しましたような、いわゆる公共利害に重要な関係のある事柄、あるいはまた直接国民の利益に相当に関係のある事柄、こういったような事柄と、さらに従前の土地収用による実績等も見ましてその緊急性の判断をしておる。こういうわけでございまして、ここの政令で定める施設の範囲につきましては、前回に御配付申し上げました政令案要綱の通りでございます。
  104. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、特定公共事業認定を受けようとするときは、あらかじめ関係地方団体及び地方住民に事業説明と意見の聴取を行なうことになっておるわけでありますが、この説明は単に告示するという程度にとどめておるのか。その範囲とか限度についてお伺いしたいと思います。
  105. 關盛吉雄

    關盛政委員 この「事業説明」というのは非常に重要なことでございます。従って、事業計画を関係の住民によく理解をしていただくと同時に、その管内の地域を管轄する知事、市町村長にも十分に説明をしていただくということがまず基本でございます。従って、その内容につきましては省令にこれを譲っておりますが、単に文書でもって説明をするだけではなくて、公共施設の用に供することとなる土地等の関係権利名はもとより、その施設の影響範囲方々に適当と認められる会場に集まってもらいまして十分に説明をする、こういうことをその内容について規定をいたしまして、その際現われた取り上げるべき意見については、極力計画の内容に取り入れられることを期待しておるわけでございます。
  106. 兒玉末男

    ○兒玉委員 今の説明によりますと、この説明をする対象関係住民の範囲等がきわめて抽象的な表現がとられておるわけでございますけれども、特に緊急性という立場から相当この点は問題が生ずると思うのです。この関係住民の範囲というのは大体どの程度の考えでその範囲をきめるのか、この点についての見解を承りたいと思います。
  107. 關盛吉雄

    關盛政委員 これはこの特定公共事業の種類によりまして、関係住民の付近地の範囲がそれぞれあると思います。たとえは幹線的な鉄道でありますとかあるいは道路でありますと、その沿道の影響を及ぼす範囲方々、農村で申しますればやはり部落単位くらいのところまでが当然関係が及ぶ最低限度のところだと思っております。さらにダム等の場合でございますれば、やはりダム地点のみならず、ダムの設置によって影響をこうむりますところの漁業関係方々等のような部分のところも範囲にまで及ぶ。こういうわけでありまして、各施設々々の影響範囲というものが、この幹線的なもの、あるいは施設の広がりを持っております状況によりまして違いますので、そういう趣旨で関係住民の方々に十分説明するように努めるというのが第三条の規定の趣旨であります。
  108. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、この範囲に電気事業というものが入っておるわけであります。確かに公共性という面からいけば、電気事業も高度の公共性を持っておるわけでありますけれども、反面、電気事業は私企業でありまして、会社の利潤追求という立場ついて国が全面的な擁護を、公共性という名においてするということはきわめて重要な問題ではないかと思うのです。特に電気事業等に関する場合のその範囲というものは厳格に規制をしていく必要があろうかと思うのであります。この点は、他の鉄道、通信とは若干違った立場からこの問題を考えていくべきではないか、こういうふうに感ずるわけでありますが、この辺の問題について見解を伺いたいと思います。
  109. 關盛吉雄

    關盛政委員 第二条の第七号に規定いたします特定公共事業は、いわゆる発電、送変電施設のうち一定の規模以上のものを対象としておるのでございますが、これらはすべて非常に重要な電力供給施設、あるいは送電線にいたしましても超高圧の送電幹線というようなものを中心に定められる予定でございます。電気事業者といたしましては、電源開発促進法によるいわゆる電発等もありますし、また九電力もあるわけでありますが、電源開発促進法によりまして設置されております電発等につきましては、すでに法律によってできておりまして、政府も十分監督をしておるものでございますし、その事業と、また他の電気に関する臨時措置に関する法律に基づきまして発電をいたしておりますところの会社とは、その工事を実施いたします施設の内容におきまして、供給の施設の面におきまして、その事業の及ぼす公益性というものは区別することは非常に困難であろうと思うのでございます。今回の措置法の対象になりますものは、その事業の公益性、あるいはその事業の緊急性ということに着目いたしましたので、大部分はもとより国なり地方公共団体なり、国の関係の公団でございますけれども、そういう意味合いにおきまして私企業の経営にかかるものといえども区別をする必要はないのじゃないか、これが調査会の答申でもございましたので、そのような考え方で立案されておるわけでございます。
  110. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、土地収用法百二十三条との関係について、私たち今まで見ました資料によりますと、この調査会においてもかなり活発な論議が展開されたということを聞き及んでおるわけであります。特にこの点については、昨年の四月十五日の衆議院内閣委員会におきまして、建設省設置法の一部改正法律案に対して次のような附帯決議がされておるわけであります。それは「政府及び公共用地取得制度調査会が、土地収用法の検討にあたってはいやしくも、収用地その他の補償額決定以前に、起業者に対し、被収用者の意思に反して、その使用権を認めるがごとき公権力の強化に依り私有財産権を侵害することのないよう特に考慮せられんことを強く要望する。右決議する。」という附帯決議も出されておるわけでありますけれども、この百二十三条の適用をめぐる緊急性についての範囲の問題等について、どういうような論議がされたのか。また、今後の運用についてどういう見解をお持ちであるか伺いたい。
  111. 關盛吉雄

    關盛政委員 衆議院内閣委員会の附帯決議と、今回の特別措置法緊急裁決との関係につきましては、前回に大胆から御答弁もありましたし、昨日の田上参考人からもいろいろ御説明があったわけでございます。従って、この制度の立案につきましては、もとより内閣委員会の附帯決議の趣旨に反せざるよう特に調査会におきましても意を用いられたところでございまして、緊急裁決規定によって私有財産を侵害することのないように仮補償金の前払いの規定、あるいはまた緊急に実施するという場合、例外的ではありますけれども緊急裁決が行なわれるという場合におきましては、仮住居の提供、あるいは清算金に対する利息を付する、あるいは万一の起業者の義務不履行に備えまして過怠金を徴収する、あるいは強制執行の方法によってその起業者からとるべき債権を確保する、こういう方法を講じておるわけでございます。そして、ただいまお尋ねの現行百二十三条におきましては緊急使用の制度があるわけでありますが、これもいろいろ御説明が参考人からもありましたように、究極的に土地収用を前提とするような緊急使用の場合におきましては、かえって被収用者に対しましていわゆる損失補償の面について不十分である。従って、被補償者に対しましては、そのようなことについては、土地が道路用地になったりあるいは鉄道幹線の土地になってしまう、当然当初から収用を前提とした緊急使用というのはやはりこの際緊急収用という形にいたしまして、そして補償金を明らかにきめるということの方が適当であろう、現行の起業者の見積もりによる補償額の払い渡しという制度で仮使用の形でやるのは適当でない、緊急収用の制度がより適当であろうということが、調査会の討論の際に論ぜられました結論として、この立法が行なわれたのであります。
  112. 兒玉末男

    ○兒玉委員 これは今後きわめて重大な問題になろうかと思うのですが、縦覧、公告をやる場合に市町村長が拒否をした場合には、上の機関である知事が代行するということがうたわれているわけであります。この縦覧、公告ということは、たとえば鉄道等の場合において、あそこの町村を通る場合に停車駅ができないということでもって全然恩恵に浴しない、こういうような場合にかなりの抵抗というものが感ぜられるわけでございますけれども、この市町村長の縦覧拒否ということについてはどういうふうに対処し、また理解を受けようとする努力をするのか。この点についての見解を承りたいと思います。
  113. 關盛吉雄

    關盛政委員 この法律におきましては、単に縦覧拒否の問題だけではなくて、一等最初に、この事業を計画されます起業者が特定公共事業認定を受けようとする場合におきましては、第三条の規定によるいろいろな説明関係機関に行なうわけでございまして、そういう意味におきまして、その協力方をお願いをするということをまず十分とるという建前でできております。従いまして、お話のように、その沿道の地域は通過交通のために直接受益がない、こういうことから一部地元の反対のために市町村長がちゅうちょされるという場合もあろうかと思います。そういう場合におきましては、この事業の性質上、やはり収用手続が円滑に進行することを最後の保証として確保したいというので第九条ができておるわけでございます。こういうことのないように、実際は極力納得を得るように努めていくのが一番理想であろうと思っておりますが、万一の場合におきましては知事がその縦覧に関する手続を代行するということで、手続の進行が遅滞することのないようにいたしたいと思っております。要は全体としての事業の協力を、第三条の規定から始まりまして十分得るように努めるというのが本法の趣旨でございます。
  114. 兒玉末男

    ○兒玉委員 あと一問だけにしぼりたいと思いますが、補償金額基準を設定するのは、大体どの時期に補償金額基準を置いてきめるのか。認定をされますとまたその付近の土地が上がるということは、当然常識的に考えられるわけですが、その基準の設定をどういうふうに考えられておるのか。
  115. 關盛吉雄

    關盛政委員 ただいまのお尋ねは、この手続の進行に従いまして補償金の額というものがいつのときに決定されるかということでございますが、これは緊急裁決が行なわれます場合においては緊急裁決のとき、それから緊急裁決が行なわれないで本裁決が直ちに行なわれますときにおきましては本裁決のとき、収用使用効果の発生する時期、その時期の価格でございます。
  116. 加藤高藏

  117. 小松幹

    小松委員 昭和三十三年、四年、五年とこの両三年間に、建設省が案として出した程度の公共用地取得に関して、正規に土地収用委員会を発足さしてこの土地収用法を完全に適用した件数は幾つあるか、お知らせ願いたい。
  118. 關盛吉雄

    關盛政委員 収用委員会裁決等に関しまして収用委員会が処理いたしました件数の質問であったように思いますが、収用委員会裁決いたしましたものは、昭和三十二年におきましては十八件、三十三年におきましては二十一件、三十四年が十六件、三十五年が二十八件となっております。その他収用委員会におきましては和解、調停、協議の確認、緊急使用の許可等も行なっておりますので、それがただいま申しました件数のほかに、各年度によって若干の違いがありますけれども、十数件ございます。
  119. 小松幹

    小松委員 今のお話によると、この両三年間に収用委員会で和解あるいは裁決によってそれぞれ仕事ははかどっておる、こういうふうに聞えておるが、事実であろうと思うのです。それならば別に特別措置法を出してそういう方法をやらないで、今まで通りにやっても差しつかえはないのじゃないかと思うのです。スムーズに和解あるいは裁決が行なわれていっておるのに、どういうわけでこれをやらねばならぬか。その辺の理由を承りたい。
  120. 關盛吉雄

    關盛政委員 その点は、この委員会におきまして一番最初に、この法律の御審議をお願いするときに申し上げたのでございますが、現行の土地収用法におきましては、関係行政機関の意見書の提出遅延がありますとか、あるいは市町村長の事業認定申請書の縦覧手続がおくれる、あるいは土地調書、物件調書の作成の遅延のために裁決申請がおくれる、こういう事柄も手続の進行過程におきましてありますので、今後の公共投資の増大、公益事業の増大に対処いたしまして、できるだけ土地収用法の場面において事業実施をすることが、公益と私益の調整の上から見ましても必要なことでございますし、そういうことから見ましてもこの制度が必要であるということで、この法律を提案いたしておるような次第でございます。
  121. 小松幹

    小松委員 市町村長あたりが調整の労をとって、これが極度にサボってやっておるのではなくして、何かの手続上進まないというのは、それはそれなりにはっきり市町村長あたりの理由があるはずです。そういう理由を今度は聞かないで、しゃにむにやっていこうとするのか。そういうようなお考えでこれを立法したのですか。今まではスムーズにいかない、市町村長あたりがいろいろ文句を言って時間がかかっているからこの法律を出すのだ。それじゃ、今からはこの法律を出して、市町村長あたりがいろいろ言っておっても、有無を言わせずやっていこうというお考えに立ってこの立法措置をやったのか。その辺を承りたい。
  122. 關盛吉雄

    關盛政委員 これは制度を論じておるわけでございまして、市町村長さん方でこの土地収用法に定めておりますところの業務をおやりになっていただけないからという、それだけの理由でこの法律ができておるわけではないのでございます。これは調査会の答申にも明らかにありますように、今後の公共投資の増大なり、あるいはまた全体としての事業の緊急実施のために、特に重要な事業のみ限定列挙いたしまして、現在の土地収用法の運用のみでは十分に解決ができない点、その点についての特例事項規定したわけでございます。
  123. 小松幹

    小松委員 過去において市町村長はいろいろ、言葉は悪いですが、がんばってそれをおくらしたという事例もあったかもしれない。しかし、市町村長に言わせれば、それはそれなりに、その土地、土着の人たちの意見を十二分にいれ、民主主義の上に立ってやっておる。今度は市町村長の意見は付さぬでも、上部機関でぽんとやるというようになると思うのです。そうなれば、これは国民の意見、大衆の意見というものは、市町村長よりも県知事、県知事よりも建設大臣の方がもっと公共性の高い、あるいは民主主義を位を高く持っておるというようにこの法律は解釈しているのですか。大体民三主義とか公共性というものは、建設大臣がAクラスで、知事がBクラスで、市町村長は三級国道か二級国道程度に考えておるのか。民主主義や公共性というものは、こういうふうに段階があるのかどうか。その辺を伺っておきたい。
  124. 關盛吉雄

    關盛政委員 これは何も市町村、長の意見を聞かないで突っ走るという法律にはなっておりません。市町村長さんの意見を十分に聞くのは第三条にもありますように、また、市町村長さんの意見を聞かなければ正当な判断ができません。ただ、収用委員会あるいはまたこの事業認定申請書の縦覧という事務、あるいは収用手続関係の国の機関として担当していただいておられますその事柄の事務だけの問題を、この法律の特例といたしまして規定をいたしておる、こういうわけでございます。
  125. 小松幹

    小松委員 縦覧々々と言いますけれども、この法律は縦覧期間がきわめて短い。二週間かそこらの縦覧期間でそういう問題を、事が自分土地あるいは祖先伝来の墳墓の地というようなものを、そんなわずかな期間で強制的に、早く自分で処理をつけろ、早く精神的にも、あるいはいろいろな判断の上でもこれを解決しろというように、時間を区切ってあまりにやり過ぎておる。しかも、最終的には市町村長の意見を時間を区切ってやらなければならぬというように追い込んできておるわけです。この点が非常に問題点であります。特に建設大臣、この点は今までは建設省が起業者になる、建設大臣が起業者になる、こう言う。ところが、今まで土地収用委員会に出すような格好だけは作って、いわゆる事業認定書は出すけれども、その事業認定書は正規のほんとう収用委員会に持っていく事業認定書でないので、その土地、村民あるいは部落民、町村長をおどかすためのものをこしらえておる。これは、事実この前の参議院の建設委員会でも強く指摘されている。だから、そういうような格好に……(「どうして、そうひねるのだ」と呼ぶ者あり)ひねているのではない。問題がひねたようにいっているからだ。スムーズにいけばこういう問題は出てこないはずだ。土地収用委員会とか土地収用法というものがスムーズにいかぬからこういう法律が出てくる。スムーズにいかぬためにこそこの法律を適用しようとしている。だから、ひねたとかなんとかじゃない。問題がひねたような問題になるからこういう法律が出てきたんだ。これがスムーズに、すっと茶話のようにいくのだったら、こんな法律一つも要らない。ここが問題なんだ。それを建設大臣あたりが、そういうような市町村長の意見などを軽くあしらって、そして上の方で常にきめていくという考え方に立っておるところにこの法律の問題点がある。むしろ私は今までの収用委員会土地収用法でけっこうだと思う。こういう法律を出す必要はないと思う。  そこで、質問になりますが、そういうような一つ事業認定をやった場合に、本人あるいはその集落、あるいはその部落、大きな単位になるかもしれませんが、そういう人に、いわゆる事業認定あるいは裁決に至る間にどういうような意見を聞くのか。本人の意見は聞かないつもりなんですか、正規に何か意見を聞くときがあるのですか。それは法律的にどうなっておりますか。その点を伺いたい。
  126. 關盛吉雄

    關盛政委員 これは土地収用法の特例を今回の特別措置法に盛っておるわけでありまして、その基本はすべて土地収用法手続によっております。もとより土地収用法上、関係権利者及び土地所有者は十分にその意見なりまた自分権利を主張する機会を与えられておりますので、そのようなことを何も制限をするということではないのでございます。
  127. 小松幹

    小松委員 その事業認定の計画あるいは認定された場所等について本人が異議がある、どうもここよりもここの方がいいのではないか、道路をこう作るよりもこういう格好にした方が、この部落としては私的に考えてもいいのではないか、こういうような意見を持つ場合もあると思う。ただ感情的でなく、理屈の上で考えている。そうした場合の意見というものは、公共事業認定の場合にどういう処置で活用できるか。その点、具体的に聞きたい。
  128. 關盛吉雄

    關盛政委員 それは今回の規定におきましては第三条の規定がありまして、第三条の規定によりましてそれぞれの意見を聞くし、また協力を得るという手続がございます。従って、その経過の説明等も、特定公共事業認定を申請するに際してはっけなければならないととになっておりますから、あらかじめ起業者がそのようなことを考慮した事業計画が盛られれば、もちろんそれに越したことはございません。その上で特定公共事業認定をいたします場合におきましては、それらの意見も十分検討の上、公共用地審議会において特定公共事業認定をしていただく、こういう形になっております。
  129. 小松幹

    小松委員 それではお尋ねしますが、そういう意見は審議会に正規の意見書として持ち込まれるようになっているわけですね。
  130. 關盛吉雄

    關盛政委員 これは今申し上げましたように、経過説明書というものを特定公共事業の申請をいたします者が添付しなければならないことになっておりますから、当然そのような重要な意見は添付しなければならないということになります。
  131. 小松幹

    小松委員 そうすると、今までの建設省がおやりになったような事業認定書には、一応その土地のものは一回も聞いていない、あるいはそういう意見を一つも聞いていないが、過去のものはやらぬだったが今後はやるというお考えですか。
  132. 關盛吉雄

    關盛政委員 現行法におきましても、土地収用事業認定をいたします場合におきましては、縦覧手続をいたします。その縦覧手続に、意見のある関係権利者も地元の方もそれに対する意見をつけて、知事から建設大臣のところに参るわけでございます。今回はそのほかに第三条の手続をさらに追加いたしておるわけでございます。
  133. 小松幹

    小松委員 それが認定されまして、今度は地方の土地収用委員会の手に移された場合に、収用委員会資料というものがスムーズにいけば別に大したことはないと思う。スムーズにいかなかった場合には、全くずさんな計画で――どこの土地をだれが持っていて、何番地のものをどの人が所有しているかわからぬで、飛行機の上から航空写真をとってそれでもっていくというのですから、それで地方の収用委員会は完全な措置ができるかどうか。この点どうですか。
  134. 關盛吉雄

    關盛政委員 ただいまのお尋ねは、第十五条の土地調書及び物件調書の簡略調書に基づく収用裁決の申請の場合におけるお尋ねでございますが、この点につきましては、そういう簡略調書であるということを付記いたしておりますので、土地収用法規定によりまして土地収用委員会が現地を調査して、十分に関係権利者なりそれらの権利の内容等につきまして職権調査をいたしましてその不備を補う、こういうことになるわけでございます。
  135. 小松幹

    小松委員 土地収用委員会の職権調査があるかないか、それをお尋ねいたします。同時に、職権調査といっても、茨城県なら茨城県、栃木県なら栃木県の土地収用委員会にそれだけの能力があるかどうか。現在そういう能力があるか、あるいはその能力を持たせるためのその事務局機構というものをどのようにお考えか、その点を伺いたい。私の見るところでは、現在の収用委員会というのは二、三人おるだけで、それをやる職権もなければ、それだけの能力もないと思うのです。その能力のないものにばく然たる航空写真みたいなものを出して、これで補償をきめてくれといっても、調査できないじゃないですか。
  136. 關盛吉雄

    關盛政委員 その点は、土地収用法の第六十五条に収用委員会調査のための権限が与えられております。収用委員または収用委員会の派遣する職員が調査を実施いたすのでございます。現実に収用委員会裁決に必要な関係権利者権利の内容を熟知する必要がある場合においては、六十五条の規定において調査をいたしておるのでございます。  なお、収用委員会の事務局の強化につきましては、今後建設省といたしましても、できるだけ最善の努力をいたしまして進んでいきたいと思っております。
  137. 小松幹

    小松委員 事務局の強化については法律的には何も出ていないと思います。それはあなたの行政の上でやるというなら別ですが……。(「組織があるんだ」と呼ぶ者あり)それだけの能力はないと私は言っているのだ。その組織はあっても、それを調査する能力がない。   〔「ある」と呼び、その他発言する者あり〕
  138. 加藤高藏

    加藤委員長 静粛に願います。
  139. 小松幹

    小松委員 肝心な起業者さえも調書がとれない。航空写真でとる程度の、飛行機を動かして航空写真をとれるほどの起業者ならまだいいでしょう。ところが、飛行機さえ動かせない起業者が三文調書を出して、収用委員会でやってくれといっても、それを調べるだけの能力がない。その能力がないものが、どうして、だれを使ってやるのか。それだけの予算があるのか。どこから人を雇ってくるのか。それだけの調査をする能力はどこから出てくるのですか。
  140. 關盛吉雄

    關盛政委員 これは先ほども申しましたように、都道府県の職員等に命じまして、調査を専門的な立場でする必要があれば現実にいたさせております。
  141. 小松幹

    小松委員 必要があればやらしておるというが、必要があるのですよ。必要がなければ話はスームズにいくのです。スムーズにいかない場合に必要がある。そのときに一体だれが調査するか。収用委員会調査するんでしょう。調査しないで、まるのみで緊急裁決をぽっとやるのですか。やはり調査するんでしょう。それだけの能力がおありになりますかと言っておる。
  142. 關盛吉雄

    關盛政委員 そのような場合におきましては必要な調査をいたしておりますので、能力があるかというお尋ねでございますが、あります。
  143. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 関連して。今のところは、質問のときに一つ聞こうと思っていたのですが、落ちましたから聞くのですが、二十条のいわゆる緊急裁決は、審理を尽くしていない場合であっても緊急裁決ができるということになっておる。これを私は一方的な、いわゆる未熟裁決と言っておるのです。その場合に、二十条の第二項によって、申し立てをした方には、様式をこしらえて、その様式に従って書面で申し立てをする、こう書いてありますが、三項に参りますと、その申し立てをしたことを関係者に通知すればいいというふうに書いてあるのですね。私はこれを見て異様に感じたのです。そうしますと、緊急裁決するということを通知するだけで、一方にはこれに対する抗弁でも、あるいは反対の証拠でもあげる期間を少しも余裕か置いていないというところに、私は強権裁決だと考えておるわけです。こういう場合には、これは緊急裁決するということを通知したのですから、通知を受けて不服があるならば、何かそれを言ってこいということを言うべきではないかと私は思うのであって、被収用者の主張を非常に制限し、押えてあるのですね。何とか相手方の言うことを聞くという機会を与える意味において、やはりこれは何か手続をすべきではなかったでしょうか。
  144. 志村清一

    ○志村説明員 第二十条三項によりまして、収用委員会土地所有者及び関係人に緊急裁決の申し立てのあったことを通知することを規定いたしておりますが、これによりまして、土地所有者並びに関係人は緊急裁決に伴います特殊の補償の要求、すなわち物件の逆収用の請求なりあるいは仮住居の補償の要求なりというものができることになるわけでございます。さようないろいろな緊急裁決に伴います特別の規定土地所有者及び関係人等にお知らせをして準備をしていただくというつもりで三項の規定が置かれるようになっております。
  145. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 通知を受けましたら、被収用者の方の主張を聞くために、別に書類を出すとかあるいは反証をあげるとかいうことができるのですね。
  146. 志村清一

    ○志村説明員 緊急裁決の申し立てが起業者からございましても、必ずしもその必要性があるかどうか、収用委員会がきめることでございまして、その際に審理などが行なわれます場合には、当然意見が発表されるわけでございます。
  147. 小松幹

    小松委員 一応それだけの能力がおありになるとおっしゃいましたけれども、起業者さえも実際それを立ち入り調査あるいは完全なる計画書もできないようなものが、収用委員会の現在の測量能力あるいはそういう一切の事務局機構が完備していないときには、それだけの能力はないと思う。その能力のないものが、やたらに緊急裁決を振り回して緊急に裁決する。基礎の調書もできていない。認可されたそのものの証拠がずさんであっても、自分で調べる能力もない。それがあわてて緊急裁決をする。  緊急裁決しただけでなお足りずに、仮補償を積み立てる。問題がこじれてくれば緊急裁決までいくのがあたりまえだ。だから、この法律案公共事業認定緊急裁決だけが一番大事なところだと思う。ここをはずしたらこの法律は死んでしまう。緊急裁決があって、しかもその補償の完全なる品目、あるいは価額というものが出ないで緊急裁決をして、しかもそれを、金を積み立てておけばそれで事業がやれるという。問題は、金を積み立てるとか何とかでなくて、その積み立てるのに基礎というものが何もない。基礎というものがないで、調べる能力がないで、そしてやたらに緊急裁決という権能だけを振り回すような格好になっておる。権能だけ振り回して、しかもなお悪いのは、憲法違反としてほかの者から言われたと思うが、価額のきまらぬものをぽんと積み立てておいて、あとは仕事がやれるぞという最後のおどし文句になっている。私は、公共事業というものは、公共事業認定されようとされまいと、やはり公共性のある事業というものは私的な財産よりも最終的には優先し、勝つということは当然だろうと思う。個人のものが勝って、公共性のものが完全に押しやられていくということは、これは法治国家なりあるいは集団制のもとにおいてはあり得ないことなんです。当然公共性が最後段階においては勝ってくる。ところが、最終的には勝つから、もう結論は見えているんだから、その間はすっとす通りしてもいい、何でもかんでもいいんだ。結論はわかっているんだから、結論に向かってまっしぐらに急げ。その間に調書ができぬであろうが、時間が長びけば途中で打ち切る――そういうような形のやり方をしたら、いつのときに個人というものが救われるか。公共性と個人というものが対決する場所なんです。対決をしなければ、こういう法律はあってなきがごときものなんです。この法律を適用するということは、個人と公共性が完全に利害が相反して対決をするときに、初めてこの法律が利用されてくる。その利用されてくる場合に、ずさんな計画書、ずさんな調書、そして緊急裁決、しかも仮補償で積み立てる。これでは被害を受ける者は泣くにも泣けぬと思う、実際のところは。何らかの最後段階において時間をかけるなり――民主主義は時間と忍耐と寛容の繰り返しだと、自民党がよく言っている。民主主義とは寛容だ。ただ六カ月だ、いや二週間だ、六カ月だ、これで民主主義が守られていったら、民主主義というものは時間に追われるということになる。そして最後段階で、金で完全な補償をしていくというなら別ですよ。ところが、つかみぜにをぽんと供託しておいて、そして緊急裁決をしてやってしまうということは、あまりにこの法律というものは、公共性の名のもとに私権というものを圧迫していると考えざるを得ない。これは昔の、お国のためならばということで、すべて何でもかんでもやられたと同じです。戦後は大体公共性とか公といったら弱い、今の言葉で言うと。その弱いものに持ってきて、緊急裁決を持ってきて適用するということは言語道断だ。緊急裁決というものを持ってきて、しかも価額をはっきり表示できない。補償価額というものがはっきりきまらないものを、積み立てて事業をやっていくということは、私はこれはもう取り返しのつかぬ問題だと思う。たとえば遠路に作る。あとで何といっても、道路をこわして家を建てるわけにいかぬし、ダムに埋めたところをあとでひっくり返すわけにいかぬ。さっき参事官の人が逆収用ができると言うが、緊急裁決でやられたら、逆収用なんかできやしない。少なくとも私は、その最後のものは保留しておかなければならぬ。この法律公共性を急ぐの余り、肝心な魂を踏みにじっていると思う。この点について建設大臣、どうお考えになりますか。これは公共性だから、何でもかんでも、時間も短こうていいんだ、調書も作らぬでいいんだ、緊急裁決でやるんだ、こういうような考えは少し行き過ぎじゃないかと思うが、どうですか。
  148. 中村梅吉

    中村国務大臣 今御議論を承っておりますと、調書もできず、あるいは物件もよくわからぬでというお話等もございましたが、これは基本といたしまして、土地収用法四十八条に、収用委員会裁決をする場合には、せねばならない前提があるわけでございます。  その中の補償金額の細目といいますか、全体がまだはっきりしなくても、事業が非常におくれることによって公益が害されるという場合には、あと部分を残して緊急裁決をすることができる、こういう趣旨でございます。全体の補償額が算出できないということは、いろいろなケースを考えてみますと、ものによりまして綿密な計算を要するものもございます。あるいはまた、適当な鑑定人にさらに念のために鑑定をせしめて、結論を出す必要がある。概算としては、この土地の価額はこのくらい、建物の価額はこのくらいということはもちろん判定ができるにいたしましても、細目について仕上げが必要である、こういうことのために相当の日子を要するので、事業遅延して困るというような場合に、概算額を定めまして、概算額で緊急裁決をすることができるという趣旨なのでございまして、何もかもさっぱりわからないで緊急裁決をするということは、土地収用法第四十八条が前提になっておりますので、あり得ないことでございます。  それから、航空写真等を利用するという特殊の場合は、立ち入りをして綿密な検査をすることを所有者なり権利者が拒む。土地ならばその地形なり、あるいはその他立木の関係、建物ならばその建物がヒノキ材であるとか何材であるとか、材質とかその他綿密なこまかい点を立ち入って調査を要する場合に、立ち入りを拒否してどうしてもさせない。こういう場合に他の方法で、土地あるいは立木ならば航空写真、あるいは建物でありますならば、建築をした建築請負人がわかれば、そういうようなところから資料を取り寄せることによりまして、まず判定が概数としてできる。こういう段階に、初めて緊急裁決というものがあり得るわけでございます。  それから、収用委員会の事務の問題についていろいろ御意見が、先刻来あったわけでございます。これは現在は御承知の通り収用委員会の事務を担当しておりますのは、府県によって違いますが、府県の財務局の管財課でありますとか、あるいは県によりましては土木部の管理課でありますとかいうところが事務を担当いたしておりまして、この事務担当機関というものは収用委員会によって指定されておりますから、これらの機関が現在のところでは事務局としてやっておるわけでございます。先ほど国に置いたらどうかという御意見もございましたが、実は一番住民の利益を考え、住民の利害に密接な関係を持って親切に行なえるのは、何と申しましてもその住民をかかえている府県でございますから、こういう意味からいいまして、府県のある部局が指定を受けまして、住民の利益を考えつつ収用委員会の事務を遂行するということが目下のところは妥当であろう。こういうような見解に立ちまして、特に事務局の機構までは実は及ばなかったような次第でございますが、今後の推移によりましては、私ども、財政当局とも相談をいたしまして、特別措置法を運用いたしました結果、たとえば大阪でありますとか、東京でありますとかというような事業の量の多いところで、特別の事務局を設ける必要のあるようなところができて参りましたら、それに応じてそのような構造を考えていきたい、こう考えておるような次第でございます。
  149. 小松幹

    小松委員 今、大臣は事務局の機構の問題に触れましたが、確かに現状は事務局はそれだけの能力はない。建設省の方があると言われたが、かりにそれだけの能力があるならば、何も緊急裁決をしてあわてふためいてやらないでも、じっくりその機構をフルに動かして、緊急裁決に持っていかぬでいいような裁定をするのがあたりまえです。正規の裁定をすればいい。ところが、事務局機構は整っております、そう言う裏で緊急裁決というのは何ということですか。緊急裁決というのは、こっちが緊急というよりも、時間的にも労力的にもそれだけ整っておらぬから、事業の方が進み過ぎるから緊急裁決を急ぐわけです。そうなれば、言うことが逆になってくる。こういう点から考えたならば、緊急裁決というのはやらないでも、じっくり機構を拡大して、そうして、満足というところにはいかぬと思う、対決しているのだからなかなか満足すべきものではないでしょうが、しかし民主主義を唱えるならば、ほぼ犠牲者が納得するところまでいって裁定を下してもらわなければならぬ。事務局機構も整っておらぬ。しかも、その調査書類はそれほど完備していないで緊急裁決というのは、ちょっと行き過ぎだと思う。この点については意見の相違でしょうが、取り扱いは、今後特に建設省関係は起業者になる場合が多いのであります。実際今、指導的立場をとっておりますけれども、いよいよこれが適用されたら、道路を作っても、ダムを作っても、何をしても起業者になる。その起業者になる立場のものが、おれは法律ができたんだからこれは緊急裁決でと、こうやられたのでは困る。意見は相違しているかもしれません。  その次に、私は申し上げたいのは、今度はこの法律で生活再建の措置、特に環境整備というのは、付帯的につけたのかどうかしりません。体裁につけたのだと思うのですが、そう悪意に解釈しなくても、本気でそういうことを考えているのだろうと思って、まことにいいと思う。ところが、やはりここにも問題がある。建設省あたりは、すべて自分事業認定し、あるいは法律を作って、緊急裁決をやらせるまではとにかく公共性を振り回してどんどんやらせる。ところが、犠牲者が出た場合、その生活再建あるいは環境整備は知事がやれ。こうきた。その責任は知事だ。こうきている。最後のしりぬぐいだけは知事にやれ。そして、知事は他の関係機関や起業者と相談をしてやりなさい。そのしりぬぐいだけは知事がやれ、こうきている。一番もとは建設省なり国という一つの大きな公共性で抑えつけて、緊急裁決でやっておいて、責任は知事がとれ。そうなれば、知事はまじめだから、やりましょう。ところが、かりに今度はかえ地がほしいといった場合、知事は一生懸命かえ地を探しましょう。それまでは知事がやりましょう。今度は新しい村作りをやって下さいという要望が出たときに、ハタと困るのは知事が一番困る。村作りをやれといったって、知事がやれぬ。そこで建設省に泣きつく。建設省は、わしは道路とダムだけは作るけれども、村作りまではできぬ。それは農林省の予算に関係があるから、農林省と話してくれ。こういうことになる。実際そうなる。そうして今度は、部落に公民館がほしいといえば、いや、それは文部大臣に話してくれ。だから、知事はかえ地だけは一生懸命見つけますよ。あるいは建物を、物を作るとすれば、仮建物ぐらいは知事がどうにかやれましょう。ところが、問題は、大きな生活環境を作るというような村作り、あるいは現物補償のいわゆる土地、田地田畑の造成というような場合には、今の北海道のパイロット・ファームみたいに、建設省と農林省がやるような式でやれば、まる三カ月たてば新農村はできるかもしれませんが、そこまで行き着くにはちょっと知事の能力ではできません。だから、知事として、ただひたすらに被害者を納得させて、かえ地はここだと、満州の引揚者を追い散らかすように土地を見つけて、そして農林省と今話し中だからといって、とてもそういう村造りはむずかしい。結局、金をくれてやるから何とかこらえてくれぬか、というだけにすぎぬ。こういううまいことを法律では書いてある。生活再建の措置をやる、環境整理をやるというが、その責任は知事にまかしてもだめである。これは市町村長や知事が起業者になり、あるいは地方の電力会社がやるなら、知事でもできますよ。ところが、大きな住宅公団あるいは建設省が起業者になった場合は、知事の手ではできません。その場合にどうするか。法律は出したが、さて実際はどうしますか。この点をお伺いいたします。
  150. 中村梅吉

    中村国務大臣 四十七条の規定によりまして、都道府県知事は、関係行政機関関係市町村長、あるいは生酒再建の申し出をした者あるいはその代表者、特定公共事業の施行者等の意見を聞いて、御承知の通り生活再建計画を作成することになります。この作成ができますと、次の四項によりまして、特定公共事業を施行する者は買収をする対象になった人たちの対償となるべき事項についてはその計画を実施する義務をこの条項によって負わしております。次の条項におきましても国及び地方公共団体はもちろん、いつの場合にもこの予算の範囲内においてというのが一般の立法でございますから、そういうような記載をいたしておりますが、この国、公共団体等に対して一つの努力義務を明らかに明記いたしておるような次第でございます。  いずれにいたしましても、これらの公共事業を円満に遂行いたしまするためには、事業を急ぐ必要のある関係上、急いで進めることにはこの法律で考えておりますが、これらの関係事項につきましては努めて関係住民あるいは被買収者になる方々の御納得のいくような努力を、やはり関係機関、施行者はもちろんのこと、実施しなければ遂行できませんので、私どもといたしましては、できるだけ事業を急ぐ以上は関係者の御納得のいくような線にということで努力いたして立案をいたしたのでございますが、立法関係といたしましてはこの程度の表現よりはいたし方ないというような次第でございます。ただ、同時に生活再建対策あるいは環境整備等につきましては、単にこの法律でこうするのだということだけでは終わりを告げることができませんので、やはり万事相談ずくで進める必要がありますので、そういう法文上の建前になっておりますから、どこかゆるいような感じをお持ちになるのは御無理はないと思います。しかし、生活再建あるいは環境整備それ自体が、必ず独自にこちらの言いつけでやってよろしいものではなくて、相互に話し合って、関係者の納得のいくように進めるのが建前でございますから、法律の書き方といたしましてはこのような表現になっておりますが、われわれ法律の運用にあたりまして、との点は遺憾なきを期していきたいと思うのであります。
  151. 小松幹

    小松委員 もう質問しませんが、問題は、私はこういうものを法律建前で知事に責任をぶっかける。関係機関や起業者を集めるといっても、知事が関係機関で、出先など集めましょう。農林省の予算、建設省の予算、厚生省の予算、文部省の予算といったときに、一体関係者を集めて、今の官庁のセクショナリズムから考えたら、農林省は灌漑対策用のダムならば自分で一生懸命やります。ところが、建設省が治水用あるいは利水用に作る。水資源のときでも、所管がおれのところだといって各省で取り合いしたでしょう。それと同じように、建設省自分でイニシアをとって、自分で予算をとって自分でやるのに、何も農林省がもっこを持って、農林省の予算をとってやる必要があるか。それなら農林省の予算が減るじゃないか。だから、なるたけ人のイニシアをとったものはほったらかして、自分のイニシアをとったものを生かしていきたい。これは各省そうだろうと思う。そこへもってきて、建設大臣公共事業であると認定した。そしてうまいことを言うけれども、最後のところになりますと、どうも農林大臣に話をつけなければならぬ。厚生大臣に話をつけなければならぬ。昔、臨時立法であった国際観光港では、ぽんと建設省、運輸省、厚生省、みんな一新してやってきておるから、ひもつきで建設省も運輸省も厚生省もやらなければならないようになっておるが、これはそうではないでしょう。ないから、あくまでも各省との政治折衝において初めて生活環境あるいは生活再建というものが話し合いができるわけです。これだけの法律を準備しておって、そこのけじめがついていない。建設省が何もかもとりまぜて自分でばかう(取る)から、最後はしりぬぐいができぬで、各省に頼まなければならぬ。できぬから、しまいに建設省は道路を作るのとダムを作るのであるということで、逃げざるを得ない。やはり総理府等でまとめて、一つの政治的なトップというものをこしらえて、そこが一切のものを出していく。そしてそれぞれの予算で、百億なら百億の予算が要るというならば、そのうら農林省が二十億、建設省が三十億持ったら、厚生省が十億持て。こういうような割り振りがびしゃっとできて各省の予算に入ってくると思うが、今のところはそういう格好にいかない。だから、受ける知事の方としては、これはまことに心外な、責任だけおっかぶされる。だから知事、特に市町村長あたりになると困るのです。市町村長が困るから、なかなか縦覧をしない。あるいは民衆から突き上げられて、縦覧もできないし、やったあとで、村長、お前が責任をとれ、おれたちをどうしてくれるんだといっても、村長は自分の予算を持たない。知事のところに歩き回ったり、建設省や農林省を走り回らなければならない。市町村長はおっかないから、なかなかうまい工合に判こが押せぬということになるわけです。法律を作るという建前を考えるならば、もう少しこういう点について考えて、知事ばかりに責任を持たさないような法律を作ってもらわなければ、しり抜けになる。うまいことを言うておるけれども、実際は今までと何ら変わらない、しり抜けのものしかない。そして、しりが抜けぬ一番おもなところは緊急裁決だけだという。花も実もあるというけれども、花も実もないで、かすだけが残ったのが緊急裁決だ、こういうように私は酷評したいのです。この点について、意見になりますから、私はこれ以上質問しませんが、特に建設省は起業者でありますから、この点、生活再建、環境整備等については万般の配慮と予算的措置をしなければ、私は意味ないと思う。この点に法律を作るものとしては十分考えていってもらいたい。以上、最後に希望的なことを申し上げて、私の質問を終わります。
  152. 加藤高藏

  153. 北山愛郎

    北山委員 こま切れ質問みたいで非常に恐縮なんですが、この法律に関連しまして一つの問題になるのは、現在の土地収用法が基礎にたっている。ところが、土地収用法でいっておるいわゆる土地の所有者であるとかあるいは利害関係人、これの範囲というものは、古い昔の観念でいっているわけですね。従って、土地の所有権なりあるいは質権なり賃借権というもので、直接に土地に結びついたような権利者に対して保護すればいいんだというような考え方になっていると思うのです。ところが、この借間法にありますような事業は、大規模な事業です。いわゆるダムとかそういう事業は、昔のような小さな公共事業施設ではなくて、大規模な事業であって、影響するところはその地域土地権利者だけではなくて、非常に広範囲影響を与えるわけです。従いまして、たとえばきのうの質問でもありましたが、ダムを作ると下流の漁業権にも関係がある。あるいは泥水を流せば下流の農民にも関係がある、というような事態がいろいろ出てきておるわけです。そういう関係については非常に不備ではないか、もうすでに現状が法律と合わなくなってきているんじゃないか、こう思うわけであります。  ことに最近、私ある陳情を受けたのです。九頭竜川の奥越ダムの問題なんです。地元の和泉村の方々が来られまして、電発工事電源開発の方にやらしてもらいたいという陳情なんです。北陸電力ではなくて、電源開発の方にやってもらいたいというのです。ところが、両方の案を比較してみると、水没者の数は電源開発の計画の方がずっと多いわけなんです。水没で犠牲を受ける戸数が多いのに、なぜ電源開発の方を選ぶかといいますと、よく聞いてみると、結局湖水ができてあっちこっちにぼつぼつと残される。それではもう生活ができなくなってしまう。むしろこの際、ダムの水没面積が大きくて、いっそのこと水没者になって、補償をもらって移転した方がいいのだ。こういうことでありますから、電源開発の方にしてもらいたいという陳情なんです。ところが、現在の制度は水没者にならないと補償対象にならない。今の実例を見ましても、こういうような矛盾が非常に出てきておる。  そこで、私は大臣にお聞きしますが、このようないろいろな形で公共事業から影響を受けるようなものに対する補償については、一体どのような対策をおとりになろうとするのか、具体的な案件が出てきておると思うのです。それに対しては、土地収用法にもかからないし、話し合いで、政府に陳情して多少補償金をもらうというような格好になってきている。何かそういうものについてもあわせて土地収用対象にするとか、できるならばそうする、あるいはそうでなければ、そういうものはあとから影響がわかってくるものがありますから、それはまとめて何かの形でそういう補償公平に処理するような制度が必要じゃないか、私はそういうことを痛感するわけなんです。建設省としては、こういう問題についてはどのようなお考えなり対策を持っておるか。これを承りたいのです。
  154. 關盛吉雄

    關盛政委員 ただいまのようなお尋ねの場合は、確かに当該土地収用せられまして、少数が残存者として残る地域があるわけでございます。これは土地収用法上、直接その権利者の権利収用せられるという対象になりませんので、現実には用収法上の問題にはならないわけでございますが、実際の運用といたしましては、そのような場合におきます少数の残存者に対します対策は、任意契約の場において処理いたしておるのが実情でございます。法律の立場から見ますと、やはり当該地域内の権利使用または収用によって取得せられる、こういう場合に限っておりますので、直らにこの土地収用法の土俵の上に乗るかどうかについては、現行法上は無理でございますが、なお十分検討いたして参りたいと思っております。
  155. 北山愛郎

    北山委員 今のお話ですと、そういうケースについては話し合いでもって処理しているということですが、たとえばダムができて、そうしてそのダムにその田が水没にはならないが、やはり生活上は移転した方がよろしいというようなものについては、補償といいますか、法律に基づかないかもしれないが、建設省補償してもいい、してやる、またしてやっている、こういうことですね。
  156. 關盛吉雄

    關盛政委員 お尋ねのように、実際の事業を実施する者が契約で、話し合いでそういう解決をいたしておりますし、またわれわれの方でも、そのような部面が土地収用法関係して現われた場合におきましては、そのような指導をいたしておるということを申し上げたのでございます。
  157. 北山愛郎

    北山委員 これは大臣もおわかりのように、現在の事業の態様というものは形が非常に変わってきておるわけですから、そこで、古い形の土地収用法なりあるいは今度の特別措置、こういうものでは間に合わない。実際に合わないという事態になっておるのですから、この問題はあわせて十分熱心に御検討いただきたいと思うのであります。  それからまた、具体的な問題が出て参りましたならば、そういう問題は、ある意味からすれば、実際に土地収用なり補償対象法律上なるより以上に被害を受ける場合が実際はあるのです。ですから、これに対しては十分あたたかい気持で、その制度ができない前にも具体的な処理をしていくということにお願いしたいと思います。  この法案は、どうも自民党の方では緊急採決をしたいようなお気持であるようであります。多数の力を持っておりますとどうしても緊急採決がやりたくなる、こういうふうに思うのです。私どもいろいろ質問すべきこまかい点はたくさんありますが、私どもはこれに反対ですから、もう一点運用について十分考えていただきたいと思うのは、先ほども質問がありましたが、二十条の緊急裁決です。この条文だけ見ますと、収用委員会は「事業の施行に支障を及ぼすおそれがある場合において、起業者の申立てがあったときは」やるというのです。ですから、収用委員会というのは、ほんとう公平な立場でなければならぬのに、起業者の申し出があれば早く早くということで、それの意向を受けてやるのだということで、一方では申し立てについて土地収用委員会土地収用者関係人に通知するのだ。あとの方には確かに意見を求めるという規定がございます。ですが、その期限も一週間経過すればいいのだ。一週間あるいは二週間くらいに意見を出せといって意見を求める。最後通牒みたいなものです。そういうような格好でこの規定がこの条文で現われているような形、これは非常に危険な形なんです。乱用されますと、事業認定の方はスピード・アップしてやられている。ことに都市計画法のごときは、すでに事業計画というものが閣議決定されますと事業認定したとみなされるのですから、そっちの方はきまっている。そうして今度は緊急収用だ、緊急裁決だということになると、問答無用でまかり通ってしまうおそれがある。ほんとうはこの法律の中で、緊急裁決をする場合の一つの時間的な余裕、土地所有者なり利害関係者に時間的な余裕を与える。たった一週間では、これはいろいろな関係者がその意見をまとめて持ってくるというようなことは、ちょっと無理だと思うのです。そういう点について思いやりが非常にない。それから、緊急裁決する場合における収用委員会のやり方について、いろいろな手続等についてもっと親切な規定が必要じゃないかと私は思うのです。こういう点が非常に危険でありますので、運用については十分そういうことのないように、乱用されることのないように指導される義務が建設大臣にあるのではないか、こう思うわけです。その点について御見解を承りたい。
  158. 中村梅吉

    中村国務大臣 御承知の通り、二十条の緊急裁決に関する規定は起業者の申し出があったときでありますが、この場合はあくまでも緊急裁決をすることができるというのでございまして、申し出があればすべてしょうというのではもちろんございません。各府県に設けられました収用委員会が慎重に審査いたしまして、その申し出がまことに妥当であると認めた場合に裁決することができる。こういう建前でございまして、従って、われわれこの法律を運用いたしまする上におきましては、極力この緊急裁決の取り扱いにつきましては慎重を期して、関係者の不利益にならないように努めて参りたいと思います。
  159. 加藤高藏

    加藤委員長 石川次夫君。
  160. 石川次夫

    ○石川委員 公共用地取得に関する特別措置法につきましては、関係委員方々がいろいろな点で質問を続けられておりますので、できるだけ簡単に質問したいと思います。  実は率直に申し上げまして、この公共用地取得が非常に困難になってきたというのは、御承知のように、買収費が昭和二十九年が二%であったけれども、昭和三十三年に一四・五%にふえてきた。さらにまた、市街地の土地買収費というものは実に四割以上に上っておるというようなことで、これが公共用地取得に非常に障害になっておるということが、今度の法案の出た根本原因ではないかというように考えるわけであります。従って、私は、政府といたしまして、この土地の値上がりを抑制するという根本対策を立てないで、強権によって公共用地取得するのだという対策にのみきゅうきゅうとしておるというのは、根本を忘れて現象だけ追いかけているという結果になるのではないか。またそういうことで、はたしてほんとう意味での公共用地取得というものを附帯に進めることができるかどうかということにつきましては、非常に疑問を感ずる次第であります。  実は三月三十一日の当委員会におきまして、地価抑制対策につきまして問題となる点を私は列挙をいたしまして、いずれ日を改めて大臣の所信を聞きたい、こう申し上げておったわけでございますけれども、実はこの地価抑制対策につきましてここで討論し、質疑応答を繰り返すということになりますと、とうてい一口、二日でこれを尽くすことは不可能であると思います。皆さん方大へん緊急採決を急いでいられるようでありますので、私はその点あまり深く触れませんけれども、ただ一点、結論的に申し上げますと、政府がほんとうに地価を抑制するという考え方を持っておるのかどうかということについて、私は非常に疑念を持っておるわけであります。御承知のように、部会地におきましては、サラリーマンが営々とし三二十年も働いて退職手当をもらっても、土地を買うことすらできないというような非常にみじめな状態であることは言うまでもないと思う。しかも、この土地がどんどん値上がりすることによって莫大なる不労所得を得ておるのは一部独占資本だということは、これまた言うまでもありません。従って、われわれとしては、どうしても庶民の立場に立ってほんとうに生活の安定をはかるということであれば、公共用地取得ということを考えるより前に、地価値上がりを抑制するのだということに真剣に取り組むという態度がまず必要ではなかったか、こう考えざるを得ないわけであります。  そこで、地価抑制対策は、もうここでとても尽くすことはできませんけれども、この前言ったことの結論を申し上げますと、地価とは一体何であるかということをここで、学問的にとまではいかなくても、厳密に規定をしていくということがまず必要だ。しかも、なぜこの地価がこのように高くなってきているのだということの原因を追及し、そうしてさらに、その原因に基づいて一定の対策というものを考えなければならぬ、これは言うまでもないと思うのであります。値上がりした分が全部本人の所得に帰するということは不労所得であり、非常に罪悪である、こう考えますので、この値上がり分についての一定部分というものは社会に帰属せしめるべきだという基本的な態度を貫くことによって、初めて地価抑制対策というものを完備することができるのではないかと考えるわけであります。  そこで、大臣に伺いたいのですが、この抑制対策の一環として、どうしても評価の基準補償基準を確立することが第一前提として必要であります。これについては、いろいろな方面からいろいろの意見が出ておるようでございますけれども、全国数地域補償審議会というものを設置する、そして補償審議会の要望によって、要すれば都道府県ごとに鑑定委員会というようなものを設ける、そして公正な評価を行なうことによって取引の一つ基準を設けさせるようにするというようなことは、今度の公共用地取得の場合においても適用できることであるし、さらにまた、このことなくして地価抑制をするということは不可能ではないかと考えるわけであります。この補償基準を設ける、補償審議会を作る、そして都道府県ごとに権威のある鑑定委員会を設ける。これはドイツあたりでは設けておりまして、この鑑定委員会鑑定がなければ土地の売買はできないというようなことに規定をされておるというふうに聞いております。さらにまた、英国あたりでは、土地裁判所というようなもので全部評価を行なって結論を出すということであります。どうしてもこのような国家的な機関が必要ではないか。これは、はたして建設省だけで管理し得るものであるかどうかということについては問題があるので、これは内閣自体の問題ではないかと思いますけれども、とにもかくにも、このような根本的な補償基準を設けて、正当な評価機関を設けることが、まず土地の値上がりを抑制する最低限に必要なことだというふうに考えざるを得ないわけであります。従って、内閣は、庶民生活の安定を実現するために腹をきめて取り組んで、これを作るのだということをやらなければ、これは現象だけを追っている公共用地の対策にすぎないのではないか、こう考えるので、この点について建設大臣は国務大臣の資格においてつ御答弁願いたいと思います。
  161. 中村梅吉

    中村国務大臣 地価抑制の問題は非常に重要な事柄でございまして、私どもも実は深い関心を持ってこれに対していろいろな検討を加えておるような次第でございます。今御指摘もございましたように、税制の上にも大いに関係がございますし、また、今根本論としての御意見を拝聴いたしました地価に関する審議会のようなもの、あるいは評価委員会のような制度、これらにつきましてもいろいろな角度から検討いたしておるような次第でございます。御指摘のような点につきましては、極力研究を進めて参りたいと思っております。
  162. 石川次夫

    ○石川委員 この前も建設大臣からそれと同じような御答弁をいただいたのですが、この公共用地取得について、これほど緊急裁決を急ぐことよりも、こういう地価値上がりを抑制するための機関を基本的に作ることをなぜもっと積極的にやらなかったかという点を私は非常に残念に思うわけです。それがなければ、現象的な公共用地取得なんかをやっても、土地取得が円滑にいくという保証がないわけです。でありますから、これは建設大臣だけの所信として伺っておきますけれども、このように地価が上がることを放任したことは、自民党の非常な失政だと思うので、ぜひともこの地価の値上がりを抑制するために本腰を入れて、決意を固めて、早急に官民合同の大きな審議会を設ける、評価機関を設ける、補償基準を設ける。このことがなければ、この公共用地取得の問題も円滑には進捗しないということを強く要請いたしまして、この点についての質問は終わります。  それから、今度の法案について一つ問題になりますのは、現在の土地収用法ではどうしても円滑にいかないということで今度の特別措置法が設けられたわけでございますが、現在の土地収用法でも、事業認定の告示から土地細目の公告の申請、この間三年以内でなければ失効するということで、これを一年に詰めて、あるいはまた土地の細目の公告から裁決の申請まで一年以内とあったのを六カ月というふうにするということで、この間の期間を詰めておるわけでございますけれども、これはあくまで三年以内でありますから、何も三年間待たなくてもよろしい性質のものであります。そういう意味で、現在の土地収用法の運用というものを十分にうまく利用いたしますれば、何もこのような特別措置法というようなものは設けなくてもいいのではないか。  要するにこの法案で一番山になりますのは、先ほど来問題となっております緊急裁決の点であろうかと思います。この点については再三質問がありましたから私から繰り返しませんけれども、この緊急裁決による前払いという制度自体は、何回も議論になっておりますように、憲法二十九条違反の疑いが濃い。しかし、これは憲法学者の中にも意見が分かれておりまして、必ずしも定説というものはないかもしれませんけれども、現実の問題として、仮払いということで関係者の完全なる合意を得るということは不可能なはずであります。従って、そういう合意を得ないままで仮払いをし、前払いをすることによって土地を強制収用するということは、これは理屈を抜きにいたしまして、どう考えても私権に対して強圧をもって侵害していくという印象を避けることができないと思います。そこで一つ伺いますけれども、これは私の乏しい知識で、外国の文献を見たわけではありません、聞いて回ったところでは、このように仮払いによって強制執行するという例はヨーロッパ、アメリカあたりではないというように聞いておりますけれども、ほかの国の立法例にこういう例がありましたら一つお知らせ願いたいと思います。
  163. 關盛吉雄

    關盛政委員 外国の収用制度におきまして、補償額の確定以前に土地等を事業の用に供することを認めております例は、アメリカなりイギリスなりあるいはフランス、スイス等の各国の例にもあるわけでありますが、その内容は各国によって異なっております。今回の制度の特別措置法案と類似したようなものということになりますと、一九五八年のフランスの制度がこの緊急裁決規定と最も類似しておるというふうに理解しております。
  164. 石川次夫

    ○石川委員 私の聞いたのとだいぶん実態が違うようです。フランスあたりでも土地収用にかける前には完全に調査を済まして、そして金額を完全に評価した後でなければ着工しないというふうに私は聞いておる。しかし、この点はここで議論をいたしましても平行線になりますけれども、立ち入りをすることができない、従って、精密な調査ができないというような実態のままで正当な評価ができる道理がない。きわめてずさんな形で仮払い、前払いが行なわれることになるのでありますから、これはどう考えても私権に対する相当な侵害になることは争えない事実だと思います。この点の疑問をまず申し上げておきます。  それから二番目に、この適用事業範囲の問題であります。これは実は、この前の本会議における質問に対しまして建設大臣の答弁といたしましては、極力この対象を限定するのだというような基本的立場を表明されたわけであります。ところが、新聞の伝えるところによりますと、建設大臣は閣議で、この公共用地範囲を拡大して仕事をしやすくするのだということを発言されたというようなことを、私、はっきり覚えておりませんけれども、出ておったように思います。この点は一体どうなんでしょうか。
  165. 中村梅吉

    中村国務大臣 さような事実は全然ございません。
  166. 石川次夫

    ○石川委員 ございませんと言われればそれまでの話でございますが、新聞には確かに出ておりました。まあ、それはそれでよろしいといたしましょう。私の言いたいのは、適用事業範囲を広げるということではなくて、この事業範囲というものを少し広げ過ぎておるということであります。と申しますのは、言いにくいことをはっきり申し上げますけれども、電力事業あるいは私鉄、そういった民間の営利企業の場合、普通でやれば三年か四年かかってしまうのを、何とか早くやらなければそろばんに乗らないということで、非常に膨大な補償金を出した例が今までも再三あったわけであります。しかし、今度それが緊急裁決ということにひっかけて全部強硬に取り上げるのだ、それで前払い、仮払いでどんどんやってしまうということになりますと、そこから出る莫大な利益というものは、はかり知れないものがあるのじゃないか。従って、私はそのような、ほんとうに国の事業として緊急性が高い、公共性が高いというようなものについてこれを運用するということ自体には、いろいろ方法論やその他について疑問はありますけれども、そういうものについては私たちは反対はいたしません。しかしながら、このような営利目的とする事業――もちろん公益性のあることはよく承知をいたしております。私鉄にいたしましても、それから電力会社にいたしましても非常に公益性が多いということはよくわかりますけれども、事業の性質はあくまでも営利事業であります。それからさらに、こういう公益性が高いということをいえば、果てしなくこの対象というものは広がっていく危険があるわけです。たとえばガス会社にいたしましても、それから水道にいたしましても、それから極端にいえば、鉄鋼でも肥料でも公益性が高いということにならざるを得ないわけであります。従って、われわれはきらっとここで線を引くという場合には、あくまでも公共性の高い、相当緊急性の高いというようなものについてだけに事業対象を限定をすべきではないかということを痛感をするわけであります。  その中で、たとえは第二条の三号に第一種空港というものがございます。これはなるほど公共性が高いのだということをわれわれ理解できないことはありませんけれども、しかし、これがはたして現在の土地収用法によるところの手続で円滑に運用できないものかどうか。なぜこれがそれほど緊急性が高いということになるのかどうかいうことについて、われわれは非常に疑問に思うわけであります。  それからさらに、私鉄関係が四号の中に含まれてくるわけであります。  それから、あと一つ質問をいたしまするのは、この五号でございますけれども、これは調査会の答申に出ておらなかったのであります。しかし、これを今度新たに電気通信事業といたしまして追加したということの意味一体どこにあるのか。これは公共性のあることは理解できます。しかしながら、この中に、政令で定められておりますように、市外通話幹線路とか、あるいは電話取扱局の局舎とかいうものが出ておりますけれども、これはそう膨大な地域を必要とする性質のものではありません。また、ここでなければどうしても困るという性質のものではないのであります。なぜこれがことさらに答申案を越えて新たに追加されたかということについては、非常な疑問を感ぜざるを得ない。  従って、第一種空港とか電気通信とかいうものについては、この対象になったということについてわれわれは非常に疑問を感ずるわけですが、その点における見解を披瀝願いたいと思います。
  167. 關盛吉雄

    關盛政委員 第一極空港の問題につきましては、これは国際飛行場のことでございます。さらに、電気通信関係のうち人口五十万以上の市の区域における政令で定める施設というのは電話取扱局をいうわけでありまして、それらの施設というものはいずれも場所が特定いたしておりまして、しかも電話につきましては、既存の幹線的ないわゆる通話回数の非常に多いケーブル施設との関係がありまして、ことに最近の電話の需要というもののサービスも非常に必要に迫られておるわけでありますけれども、まだ十分なサービスが行き届いていないというふうな状況であります。全体としての特定公共事業基準を想定いたします場合におきましては、やはり国全体の立場からその緊急性、公益性の判断をいたしたわけでございますので、そういうふうな緊急度等も考えまして、これらの七つの事業特定公共事業としてあげられておるというのが実情でございます。
  168. 石川次夫

    ○石川委員 この点については完全に意見が平行線でありますので追及いたしませんが、たとえばその次の七号というのは、先ほど申し上げましたように、公益性は高いかもしれませんが、あくまでも営利会社であるべき電力開発の事業であります。従って、今度の公共用地取得に関する特別措置法によって、その対象として処置をするということになれば、湖底に沈むたくさんの人々が非常に安い前払い金、仮払い金というような形で村を追われなければならぬという危険性も今度は多く出てくるわけであります。従って、われわれといたしましては、あくまでもこの七項を入れることについては反対せざるを得ないということを一応申し上げておきます。  それと同時に、この事業範囲でございますけれども、ほんとうにこの公共事業というものを推進するのだ、上の方から強引に押しつけてこの仕事を円滑にやらなければならないという、権力のにおいが非常に強く私は感ぜられて仕方がないわけであります。また、これはそれをねらって出た法案でございますから当然のことでございますけれども、しかし、一方立場を変えて、ほんとうの大衆の立場というものを考えてこの法律対象を考える場合には、当面非常に困っておる住宅難というものを対象といたしまして、公営住宅というものは当然この公共事業取得対象にするのだという親心がここに見られれば、私たちは皆さん方の考え方に非常に共鳴をするところもあるわけでございますけれども、本会議の答弁におきますと、この住宅用地は円滑に取得できているから別に心配ないというのでありますけれども、現実の問題としてはそうばかりではないのであります。従って、国民の立場に立ってほんとう公共事業をやるのだという心がまえがあれば、当然住宅用地対象にするということに積極的に踏み切ってもよかったのではないか、こう考えるわけでございますけれども、この点についてはどういう審議が行なわれて、なぜこれが除外されたか。今まで円滑に取得されておると言いますけれども、私の知っておる限りにおいては、必ずしもそうばかりではないように思います。もちろん各住宅について全部というわけにはいきませんけれども、少なくとも公営住宅あるいは公団住宅についてその対象にするという配慮があれば、それこそほんとうに大衆の立場に立った法律であるという印象を与える効果があったと思います。この点について、除外された理由をお知らせ願いたいと思います。
  169. 關盛吉雄

    關盛政委員 ただいまお尋ねの政府施策の住宅でございますが、この点につきましては、五十戸以上の一団地の住宅経営というものは、現在の土地収用法によります適用ができる事業ということになっております。今日までそのような形になっておりますが、土地収用法によって用地取得をいたした例はないのでございます。今回の特定公共事業範囲を定めます場合におきましても、公共用地取得制度調査会におきまして、従来の運用の実績等もやはり一つの緊急度の基準ということに考えられておりますので、そういう意味からも特定公共事業対象になさらなかった、こういうことになっておるのでございます。
  170. 石川次夫

    ○石川委員 疑問点があとからあとから出てくるのですが、大ざっぱに重要な点だけ申し上げますから、開いていただきたいと思うのです。  何回も言われましたが、見解として一応繰り返して申し上げておきますけれども、この第九条は憲法九十二条における地方自治というものを侵害する結果になっておるという疑問をわれわれは感じております。地方自治法百四十六条で、先ほども自治省大臣に聞いたわけでございますけれども、町村がどうしてもやらないという場合に知事がこれを代行するということが許される場合には、やはり司法権がこれに介入をして、一方的に知事がこれの代行をするのだということを頭からきめてかかるということは私はきわめて危険な思想だと思うのであります。これは地方自治のあり方というものを完全に無視しておる、憲法違反の疑いの濃い条文ではないか、こう考えておるわけでございます。この点については一応意見として申し上げておくにとどめるわけでございます。  さらには第二十七条による仮補償金の払い渡し、これも先ほど申し上げましたように憲法二十九条に反するという疑念が非常に多いわけであります。緊急裁決によって仮補償金は渡せるというのが緊急裁決のねらいでありますけれども、その点が憲法違反の疑いが濃い。さらにまた、市町村長が協力しない場合には知事が代行するということ自体も憲法九十二条に違反をするという疑いが濃い。あらゆる点でこの法案は強権があまりに強く表面化しておるという点で、われわれとしてもいろいろな疑問を感ぜざるを得ないわけであります。  さらにあと一、二点伺いますけれども、生活再建対策についてであります。これは私も本会議でちょっとこのことについて触れたのでございますけれども、何回も中島委員の方からも質問がありましたように、三町歩も四町歩も持っておる人が三反歩取られても、それは生活の支障というものはそれほど響かないわけであります。六反歩の人が三反歩取られたということになれば、生活再建のめどが立たないというようなときにも、それだからといって補償金額を上げるということは、残地補償の面だけで多少考慮をするという程度以上には出ないと思うのであります。そうなりますと、これらの人の生活権は一体どうやって守るのだということが、現実の問題として大きく浮かび上がってくるわけです。これはもともと公共用地取得に関する特別措置法だけで処理できる問題ではなくて、親法である土地収用法自体からこれは修正していかなければならぬ根本的な問題であるとは思いますけれども、私が大ざっぱに考えた補償金庫というような面で、生活再建をほんとうに真剣に考えてやるというような考慮をぜひ払ってもらわなければならないと考えるわけであります。そうしなければ、職業補導とかなんとかいうここに響いてある生活再建その他の規定というものは、あくまでも倫理規定でありまして、起業者がほんとうに親身になって最後まで、とことんまでめんどうを見るということではなくて、あとは市町村にまかしてしまう、あるいは知事にまかしてしまうというような形になって、最後まで責任をとるという形になっておりません。従って、われわれはどうしても単なる倫理規定ではなくて、ほんとうに思いやりのある再建対策を考えるということであるならば、補償金庫というような制度を設けることによって、あるいは融資をする、あるいは補償金以外の金額というものを特に助成をするというような方法まで考える親心がなければ、いたずらに強権のにおいだけが表に強く出てくる。こういう危険があると思うのでございますけれども、この補償金庫の問題につきましては、今急にここで法案化するということは不可能でありますから、そこまでは望みませんが、将来必ずこの補償金庫の制度というものについて検討、考慮して、ぜひ実現をさせたいというお気持があるかどうかという点について、建設大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  171. 中村梅吉

    中村国務大臣 先日もこの点につきましては、多分石川さんからであったと思いますが、御指摘がございました。私ども非常に傾聴すべき御意見として、今後一つ真剣に研究をいたしてみたいと思っております。
  172. 石川次夫

    ○石川委員 今申し上げましたように、生活再建対策の方法といたしまして補償金庫というものをぜひ一つ設けるように、積極的な腹がまえでこれに対処をしていただきたいということを、ぜひ心からお願いをしたいと思うのであります。  それから、補償基準の問題であります。これは国鉄とかあるいは電源開発とか、あるいは建設省あたりでもぽつぽつ補償基準らしいものはあるようであります。しかしながら、これが、私が質問で申し上げましたように、国家的に統一的な補償基準というものを法案によって決定をするということであれば、きのうも参考人からの意見がありましたように、補償というものの基準が明確になっておって、それによって仮払いをする、前払いをするということであれば憲法違反の疑いは少ない。しかしながら、補償基準というものが明確にされておらない。あるいは立ち入りできないというようなところで、きわめて大ざっぱな概算払いというものを払うようになるというふうなことでは、私は憲法違反というよりは、現実的な問題として、きわめてこれは私権を強く圧迫するという結果になるということは当然だと思うのであります。従って、この評定機関鑑定機関というものを作らなければならぬと思いますけれども、同時に、補償基準というものをあくまでもこの法案に先行して作るという配慮こそ必要であった、こう私は考えるわけですが、補償基準について法案を用意をして、そして一つは値上がり対策に対応させるというような意味も含めて補償基準というものを設ける意思があるかどうか。設けるとすれば、一体いつごろまでにそれを法制化するというような積極的な気持があるかどうか、という点を伺いたいと思います。
  173. 關盛吉雄

    關盛政委員 この収用委員会がよるべき補償基準の問題でございますが、これにつきましては、この法律によりまして補償基準をこれから関係の専門の方々委員としてお願いしまして検討して参りたい、こういうふうに思っております。要は、通常受ける損失補償範囲並びにその分量についての検討でございまして、この点は収用委員会収用または裁決の実績等を検討いたしまして、信頼の置ける収用委員会一つ補償基準を作りたい、こういうふうに思っておりますが、そのもの自体は直ちに法律事項ということになるというものではないと思っております。
  174. 石川次夫

    ○石川委員 生活再建にちょっと戻りますけれども、国七開発縦貫自動車道建設法の第九条に生活再建のことが出ております。これは「建設に必要な土地等を供したため生活の基礎を失う者がある場合においては、政府は、その者に対し、政令で定めるところにより、その受ける補償と相まって行うことを必要と認める生活再建又は環境整備のための措置について、その実施に努めなければならない。」という法案が出ております。今までにこの法案を適用してどのような実績があがっておるのか。実はこの特別措置法案が出ましたときに、この生活再建については非常な配慮を払った画期的なこの考え方が出ておるのだ、というふうなことを強調されたわけでありますけれども、実はすでにこういう法案が出ておるわけであります。この法案に基づいて行なわれたその実績について伺いたいと思います。
  175. 關盛吉雄

    關盛政委員 法案と言われましたけれども、それが国土開発縦貫自動華道建設法に基づく意味であるといたしますれば、この法律の第九条によりまして行なう生活再建、環境整備の措置というものは、補償と相待ってということでございますので、補償金補償措置として解決し、しかる後の補償のほかの措置でございます。この点につきましては、関係各省を中心といたしまして、関係次官会議の申し合わせによりまして高速国道建設の促進協議会を中央において作り、また地方におきましては関係各省の出先機関も含めました協議機関を作りまして進めておるのでございますが、その内容とするところは、いわゆる関係公共事業との関連の仕事が多いのでございまして、地方の要望につきましては、その面からのものはそのつど取り上げられております。  今回の特別措置法におきましては、補償の一部として行なう場合と、補償と相待って行なう場合と、両方がありますので、その点につきましては、国土開発縦貫自動車道路建設法の場合とは内容が違っておる次第でございます。
  176. 石川次夫

    ○石川委員 この生活再建の条項が一応出ておりますと非常に明るい感じは受けますけれども、現実の問題は、これは単なる倫理規定に終わるのではないかということをわれわれは非常に懸念をいたしておるわけであります。この四十七条の「生活再建等のための措置」というものをほんとうに生かすということのためには、具体的な裏づけというものがなければならぬという点で、先ほど申し上げました補償金庫というようなものを具体的に考慮するということがあって、初めてこの四十七条というものは生きてくるということを繰り返して申し上げまして、この点に関する質問は終わりますけれども……。   〔発言する者あり〕
  177. 加藤高藏

    加藤委員長 私語を禁じます。
  178. 石川次夫

    ○石川委員 最後に、第四十八条の公共用地審議会であります。ここでは補償基準というふうなものを設けるというような、そういう任務を持った一つ審議会ができるわけでございます。しかし、これは先ほど小松委員から話がありましたように、何といっても建設省自身が起業者であり、起業者の立場で委員を任命して、そうしてこれは審議会の意見に基づいて公共用地取得に当たるということでありますから、あくまでも権力的なにおいが非常に強いわけであります。従って、われわれとしては、公共用地審議会というものが建設省付属機関にあるということについては疑念を持たざるを得ないわけであります。これは総理府の所管事項とすべきではないかという考え方も持つわけであります。少なくとも、その委員七名以内で組織をする場合、単に学識経験のある者というようなことではなくて――今までも収用委員会というのは各県にありますけれども、これはほとんど起業者の代弁者にすぎなかったことは今さら申し上げるまでもないわけであります。そして、土地収用される人に対する態度というものは、刑事被告人に対して裁判官が臨むというような形で今までも運営されてきたことは事実でありますし、またこの収用委員会決定した事項というものは、ほとんど起業者の意図のままにきめられたということがほとんど大部分であります。ほんとう収用される住民の立場に立って収用委員会が活動したというふうな例は、数えるくらいしかないのじゃなかろうか、こう思わざるを得ないのであります。かてて加えて、今度の法令に基づいて作られます公共用地審議会というものは、ただ単に学識経験のある者の中から任命するというようなことではなくて、やはり住民の立場からこの審議会に参加をするという規定を、あるいはまたそういう取りきめを、一つぜひ取りつけたいというふうに考えますけれども、この公共用地審議会は、ただ単にここに書いてありますように、「学識経験のある者のうちから、内閣承認を得て建設大臣が任命する。」ということだけで、特にこの内ワクについては何らの考慮も払われてないのかどうか。この点を一つ伺いたい。
  179. 中村梅吉

    中村国務大臣 審議会委員は、努めて公正な判断のできる学識経験者をお願いするのが最も妥当だと考えておるような次第でございます。従いまして、利益代表のような形でワクをきめて審議会委員を選出するということは、全体の公平を期する上から見まして、むしろ適当ではないのではないか、かように私ども考えております。  それともう一点、この審議会内閣に置いたらどうかという御質問がありました。本来内閣総理大臣のもとに置くべき審議会の性質は、私ども政治的感覚で考えまして、国策の大本を立案するとか、そういうような国策の大本に関係するような審議会内閣に置くべきでありますが、ある行政部門を担当するような審議会は、やはりこのような形で置くのが妥当である。ただ、建設大臣が勝手にこれを任命するような姿はよろしくありませんので、内閣全体の責任において、内閣の議を経て、承認を得て任命する、こういう形をとりましたような次第でございます。
  180. 石川次夫

    ○石川委員 この四十八条のことにつきましては、あとでまたわれわれの方の修正案のところでお話ししたいと思いますので、省略いたします。建設大臣建設大臣の立場として、そういう発言をされることは、これは当然ではないかと思います。  しかし、どう考えても、建設省自身が起業者である場合が大部分で、しかも、この起業者である立場の建設大臣審議会のメンバーを選任するということでは、収用される立場に立って発言をするという場がないし、またそれを代表する者もないということで、この法案自体も非常に強権のにおいが強いわけでありますけれども、それに輪をかけるということに結果的にならざるを得ないと思います。この点は、われわれとしては非常に憂慮しておるということを申し上げまして、ほかにもいろいろありますけれども、こまかい点は省略しまして、私の質問を一応打ち切ります。
  181. 加藤高藏

    加藤委員長 中島巖君。(発言する者あり)静粛に願います。
  182. 中島巖

    ○中島(巖)委員 各方面からいろいろの意見が出尽くした形であります。しかし、私は私としての意見を申し上げ、政府の見解をお聞きしたいと思います。しかし、時間も非常に経過して、他の委員の諸君もだいぶあせっておるようでありますから、私は全部一括して質問いたしますから、そちらへお書きになりまして、一括して御返事を願いたい、かように考えるわけであります。  そこで、この公共用地取得に関する特別措置法の出ましたときには、本年度のこの飛躍的な公共事業費の増大に伴って公共用地を容易に取得するところの法的措置が必要である、こういうように私どもも考えたわけであります。この公共用地取得に対する特例が出てみますと、これはただ用地取得のみにあせりまして、そしてこの場合においては、権利義務が相伴うものでありまして、用地取得される立場の者に対して保護措置がなければならぬのであります。ところが、これらの保護措置は、この生活再建というような倫理的規定だけで、具体的なものが何もなくして、非常にあせって、強権発動のみに走っておる。この法案全体を見まして、実に明治官僚の精神のほとばしっておるところの法案である、こういうように感じまして、実に独裁的なファッショ的な法案である、こういうことを私は言わざるを得ないのであります。  そこで、第一の質問といたしまして、これは關盛計画局長の答弁でよろしゅうございますけれども、こういうような、完全な補償をせずして強権をもって土地収用するというような法律は、先ほどあなたは外国にあるようなことを言ったけれども、おそらく私はないと思う。それから、フランスのことを先ほど言われましたけれども、フランスはこの収用土地取得する時分には、裁判所でもって行なっているのです。従って、どこにこんな、代価を完全に払わずに仮決定をして土地収用する法律があるか。その点をはっきりとお伺いいたしたい。  それから、先ほども申し上げましたように、強権を発動して早急に土地を取り上げる……。   〔発言する者多し〕
  183. 加藤高藏

    加藤委員長 静粛に願います。
  184. 中島巖

    ○中島(巖)委員 そこで、先ほど申し上げたのでありますけれども、この答申案にも出ておりますけれども、こういうような強権を発動して土地収用する場合においては、収用される方の権利を保障するところの何ものかがなければならぬ。そこで、先ほど石川委員の質問もこの点に触れましたけれども、補償基準の作成と評価の鑑定制度の確立について、答申案にもはっきりうたってあるわけです。当然これが伴うべきものだと思う。従って、この二つ法案をいつ国会に提出する考えであるか。これは建設大臣にお伺いいたしたいと思います。  次に、先ほどから非常に問題になっておりますけれども、例の緊急裁決の問題であります。緊急裁決において土地収用した場合におきましては、補償裁決まで異議の申し立ても裁判もできないわけです。その間に工事はどんどん進んでいってしまう。あるいはダムの底地になる、あるいは発電所の底地になる、あるいは高速自動車道の底地になる、こういうことになるわけであります。従って、この補償裁決あとにおいて訴訟の道はありますけれども、実質においては、ただいま申しましたような回復の見込みはないのでありますから、これは最終決定だと私は思うのであります。そういたしますと、憲法七十六条の二項によるところの「行政機關は、終審として裁判を行ふことができない。」、これに違反する傾向があると思うのであります。これに対しまして、おそらく建設省は、補償裁決の後において異議の申し立てもしくは裁判ができるからいいじゃないか、こういうようにいわれると思うのですが、ただいまも申しましたように、実質においてもう決定してしまうのでありますから」、これに対しての見解をお伺いいたしたいと思うのであります。  それから、仮補償でもって緊急裁決をして、さらに事業を進めることになっております。そこにおいて、憲法違反にならぬために、ごまかすために、第三十条において「収用委員会は、損失補償に関する事項緊急裁決の時までに審理を尽くさなかったものについては、なお引続き審理し、遅滞なく裁決しなければならない。」、つまり「遅滞なく」というこれでごまかしておると私は思うのです。具体的に「遅滞なく」ということはどのくらいの月日をいうものであるか、これが一点。そうして、ただいま申しましたような、この憲法違反に対するところの憲法二十九条の三項に対する見解はどうであるか、この点をお伺いしたいと思うのです。  それから、これは先ほど石川委員からも触れたことでありますけれども、この法案二つの柱は、公共川地の認定と、それからいま一つ緊急裁決だと思うのです。そこで今緊急裁決の問題について質問いたしたわけでありますが、公共用地審議会公共用地認定はかけるわけです。従って、これは仲裁裁定の性格を有する委員会だ。そこで、先ほどの質問に対して大臣はいろいろなごまかしのことを言っておった。つまり仲裁裁定機関というものは第三者の公平の立場でもって裁定すべきものだ。起業者であるところの建設大臣がこの仲裁裁定機関審議会委員を任命するということは、法的にも、論理上も、どうしてもこれは理屈に合わない。第三者にまかすべきだと思うのです。基本的な建設大臣の所見を承わりたい。  以上四点について。私はこれを一々こまかく、そちらの説明を聞いて突っ込んでおれば、一時間も二時間もかかる問題でありますが、諸君の早く帰りたい意図も察しまして、一括して質問したわけですから、はっきりとただいま申し上げたことについて建設大臣考え方をお伺いしたい。
  185. 中村梅吉

    中村国務大臣 補償基準の問題につきましては、御承知の通り、母法でございます土地収用法補償の基本となるべき事項は記載されておるのでございますが、現実に公共事業収用等をいたします場合の補償は、いろいろなケースがございますので、従来の土地収用法適用の場合にまちまちの傾向もある程度ございますので、私どもといたしましては、政令案にお示しいたしておりますような方法によりまして、直ちにあらゆるケースの、想定できる限りの場面を想定いたしまして、それぞれの場面に適した補償の標準といいますか、算定の仕方というようなものを出して、そしてこれを一つ基準として今後この法律の運用に当たっていきたい、かように考えておる次第でございます。  なお、評価鑑定制度ということは、先ほども御議論を承ったのでございますが、これらにつきましては、全く新しい制度でございますから、私どもも十分今後研究をして参りたい。先ほどお答えをいたしました通り、十分研究を重ねまして、妥当な道が見出せましたら進めて参りたいと思っております。  次に、緊急裁決は、一つの行政機関は終審としての判断はできないというにかかわらず、そういう姿ではないかというような御意見もございましたが、緊急裁決は次に来たるべき補償裁決につながっておるのでございます。補償の額につきましていろいろ算定上その他資料を整備いたしまして、最終的結論を出すのには非常に手間取るというようなケースの事態がありました場合に、この緊急裁決によって概算見積もり額を決定いたすわけでございます。しこうして、この概算見積もり額を決定して次の補償裁決に進みますについては、最後補償裁決をするに必要なあらゆる資料を証拠として整えておかなければならないという条項を定めておりまして、最終的な補償裁決をするのに支障のないようにして参りたい。この緊急裁決と最終補償裁決とつながった最終の補償額決定をいたしました場合には、それぞれ司法機関に対して訴訟の道も、御承知の通り土地収用法によって開かれております次第で、私どもはかような意味から憲法規定に反するのではない、かように考えておる次第でございます。  なお、「遅滞なく裁決しなければならない。」という点につきましては、これは期限を付するわけにも参りませんし、「遅滞なく」ということは常識で御判断を願う。また常識的に進めていく以外には道がないと思うのでございます。  それから、公共用地審議会の問題でございます。この審議会はどの事業一体この特別措置法を適用する事業に採用するか、特にこの法律の中で非常にしぼりまして事業範囲をきめ、あるいはまた政令でさらに具体的にいろいろな事業範囲をきめていけば、その中で特定公共事業として取り上げていいか悪いかということを御審査を願う機関でございます。争いのあります場合に、その争いを解決する仲裁裁定機関のようなものとはこれは全く性質が違うのでありまして、公正な第三者によりまして、申請のありました事業がはたしてこの法律の基礎の上に立って特定公共事業として取り上げるべきものかどうかを御検討を願う機関でございますから、お話のありましたような仲裁機関のような性格のものとは全く違うと私ども思うのでございます。従って、四十八条以下に規定いたしました制度でよろしいし、またこの程度のことを考える以外には審議会の制度としては方法がないのじゃないか、かように考えておるのであります。
  186. 關盛吉雄

    關盛政委員 ただいま私にお尋ねがありました部分についてお答え申し上げます。  それは、緊急裁決規定と最も類似しておりますのは、一九五八年のフランスの制度、大統領令によって定められておる制度、そのことをさして申し上げたわけでございます。  なお、緊急裁決のうち損失補償についてのみはこの特別措置法の四十二条第二項の規定によりまして「訴えを提起することができない。」と規定いたしておりますのは、三十条の規定によりまして、緊急裁決がありますと引き続き審理をいたしまして、補償裁決収用委員会が遅滞なく裁決をしなければならない、こういうことになっておりますので、緊急裁決に関する場面におきまして十分意を尽くされていなかったという点がありますれば、補償裁決審理をいたします場面において関係当事者からその必要な審理を尽くせばいい、こういうことで、その分だけは四十二条の特例の規定を入れたのであります。しかし、緊急裁決のその他の部分につきましては、もとより土地収用法の百二十九条の訴願、それから百三十二条の訴訟を提起することができることはもちろんでございます。
  187. 中島巖

    ○中島(巖)委員 これ以上質問しても議論になるだけですから私はやめますが、大体において大臣の答弁も局長の答弁も詭弁だと思います。  そこで、今の質問のうち一つ憲法二十九条に対する大臣の見解が落ちております。これを一つお答え願います。
  188. 中村梅吉

    中村国務大臣 憲法二十九条の点は申し落としたような気がいたしますが、多分憲法二十九条に「私有財産は、正常な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」、この規定との関係と思いますが、「正常な補償の下に」ということは、正当な補償をしなければならないということでございまして、この特別措置法の場合におきましても、もちろん緊急裁決手続による場合においても、緊急裁決で概算補償見積もりを決定し、これを支払いまして、さらに最終的には補償裁決がありまして、差額を生じました場合には利息を付して支払いをする。こういうような建前をとっておりまして、憲法の二十九条に定める「正常な補償の下に」この補償は完全に遂行されるわけでございます。御承知の通り、学説あるいは判例等をわれわれいろいろな角度から検討いたしたのでございますが、この「正當な補償」は必ずしも同時履行でなければならないという趣旨ではない、こういうのが一般の学説の一致したところでございますから、私どもはかような見地に立ちまして、憲法二十九条に背反するものではない、かように考えておる次第でございます。
  189. 加藤高藏

    加藤委員長 お諮りいたします。  公共用地取得に関する特別措置法案につきまして質疑を終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議ないものと認め、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     ―――――――――――――
  191. 加藤高藏

    加藤委員長 この際、日本社会党石川次夫君外九名提出にかかる修正案が提出されております。
  192. 加藤高藏

    加藤委員長 趣旨説明を求めます。  石川次夫君。
  193. 石川次夫

    ○石川委員 公共用地取得に関する特別措置法案に対しまして、実はいろいろ修正をしたい点がたくさんあるのであります。しかしながら、われわれとしては公共性の高い、そうして緊急性を要する重要な公共事業につきまして、このような法案の趣旨によって、公共の用に即して円滑な事業の進捗をはかるというこの考え方自体には反対するものではございませんので、ただ最も根本的に、これは公共性が乏しいのではないか、あるいは緊急性に欠けるととろがあるのではないかという点を削除するという大まかな点だけを修正することで、この法案に対してわれわれは賛成をしたい、こう考えておるのでございますので、何とぞ満場の諸君の御賛成を願いたいと思うのであります。  まず、その案文を一応朗読してみます。    二十八 公共用地審議会委員  以上でございます。これにつきましては、今までの質疑で再三繰り返されておりますので多くを申しませんけれども、冒頭何回も申し上げておりますように、われわれとしては公共性、緊急性の高い重要な公共事業の円滑なる施行ということにこれを局限しなければならないという建前から、先ほどの質問の中でも申しましたが、電力会社あるいは私鉄のように、営利企業というものは当然これを除外すべきではないか。これを通すということで莫大なる利益というものが予想されるということにおいては、若干これについてはいまわしい予想もないわけではないわけでありまして、この際これを明確にするためにあくまでも公営企業に限定をする、公共事業に限定するということをまずなすべきではないか。  さらにまた、第一種空港とか公衆電気通信施設というようなものは、公共性はなるほどあるかもしれないけれども、緊急性はそれほど高いものでない。あるいはまた大規模な利水施設というようなものも、災害復旧に要する治水施設というようなものと違いまして、これは土地収用法の現行法で十分間に合うよう十二分の措置を講ずべきものであるし、またそれで十分に間に合うはずではないか。こう考えますので、われわれとしては、事業対象をあくまでもこういうような特に緊急性のあり公共性の高いものに限定しなければならないと考えておる次第であります。  それから、さらにあと一つ、この法案では非常にわかりにくくなっておりますが、何回も申し上げますように、審議会委員というものは建設大臣が任命をする。すなわら起業者がその審議会のメンバーを任命するということでは、この法案自体が非常に強権のにおいの強いものを持ってきて、自分の任命した審議会、しかもその内容は単なる学識経験者というような内容だけしかきめられておりませんけれども、そのようなことで、一応同体の形で強権をさらに大幅に拡張するという結果になることを非常におそれますので、最小限度に緩和するという意味で、大幅な改正ではなくて、ただ革に任命を総理大臣にする、さらにはまた、この任命を国会の承認を得てなすという程度のことは、自民党の諸君も当然了解願えるところではないかと考えた次第でございます。  それからあと一つ最後の附則の中で、補償基準に関する法律が制定施行された時期においてこれを定めることにいたしましたのは、言うまでもなくこの仮払いという制度によるやり方というものは憲法違反の疑いがきわめて濃いことは、繰り返して申し上げるまでもないのであります。ただ、これをわずかに救うものとしては、補償基準を一応きめて、そういう一定の基準に基づいて仮払いをするということであるならは、憲法違反という疑いを多少緩和されるという見込みが立ちましたので、この点は最小限度のわれわれは謙虚な立場で修正案を出したつもりであります。  と同時に、われわれとしてはこの際どうしても評価鑑定機関というものを権威ある公認機関として設定をいたしまして、正当な評価をするということが、どうしてもこの際必要ではないかと考えますので、あわせてこの法案の中にこれは明記はいたしておりませんけれども、そういう意味を込めてこの修正案を出したわけでございます。  この程度のことであれば、われわれは決してこの法案の施行それ自体に協力しないという立場ではないのであります。こういうふうに対象を最小限に限定をするという立場でありますので、これは国民の立場に立てば、当然賛成すべき性質のものであると考えますので、あえて皆さん方の御賛同を得たいと考える次第であります。     ―――――――――――――
  194. 加藤高藏

    加藤委員長 修正案に対する質疑の通告は別にありません。  これより政府原案並びに修正案に対する討論に入るわけでありますが、別に討論の通告がありませんので、直ちに採決いたします。  まず、日本社会党石川次夫君外九名提出にかかる修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  195. 加藤高藏

    加藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  公共用地取得に関する特別措置法案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  196. 加藤高藏

    加藤委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  197. 加藤高藏

    加藤委員長 この際、田中幾三郎君より、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  趣旨弁明を許します。田中幾三郎君。
  198. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 公共用地取得に関する特別措置法案に対する附帯決議を、自由民主党、民主社会党共同いたしまして提案いたします。  まず、案文を朗読いたします。     公共用地取得に関する特別措置法案に対する附帯決議案)   政府は、本法による土地収用に際しては、個人の権利並びに私有財産権を不当に侵害することのないよう、公正妥当な補償を行うとともに、被収用者に対してなされる生活再建等の措置は、その実効あらしめるよう万全の措置を講ずべきである。   なお、特定公共事業は、その対象を最少限に縮少し、緊急裁決に当っては慎重を期し、乱用することのないよう強く要望する。   右決議する。  この決議案の趣旨をいささか述べたいと思います。  土地収用は、被収用者との協議のととのわない場合におきましては、本人の意思いかんにかかわらず、強制的に所有権を失わしめるものでありますから、個人の権利、あるいは私有財産を侵害するおそれもあるのであります。よって、本法の実施にあたっては、その個人の所有権と公共の必要性ないし重要性との見合いによって行なわなければならぬことは当然でありまして、従いまして、その対象となる公共事業認定するにあたっては、必要にして最小限度にとどめなければならぬと存ずるのであります。  また、緊急裁決は、最終の裁決を待たずして、仮の補償を定めるために行なうものでありますので、慎重に行なうべきであり、乱用し、乱決に陥ってはならぬと考えるのであります。  また、土地を失うことによりまして、生活環境の変化があり、生活を脅かされるような者に対する、いわゆる生活再建のことにあたっては、これが実効あらしめるように措置すべきであると思うのであります。  これがこの附帯決議を提案する理由であります。何とぞ御可決下さるようお願いいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  199. 加藤高藏

    加藤委員長 採決いたします。  田中提出の動議に賛成の諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  200. 加藤高藏

    加藤委員長 起立多数。よって、田中提出の動議の通り、本案に附帯決議を付することに決しました。     ―――――――――――――
  201. 加藤高藏

    加藤委員長 なお、本案議決に伴う報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議ないものと認め、そのように決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十五分散会      ――――◇―――――