運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1961-04-25 第38回国会 衆議院 建設委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月二十五日(火曜日)    午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 加藤 高藏君    理事 佐藤虎次郎君 理事 薩摩 雄次君    理事 瀬戸山三男君 理事 石川 次夫君    理事 山中日露史君       逢澤  寛君    綾部健太郎君       大高  康君    木村 公平君       齋藤 邦吉君    二階堂 進君       丹羽喬四郎君    廣瀬 正雄君       前田 義雄君    岡本 隆一君       栗林 三郎君    兒玉 末男君       實川 清之君    三宅 正一君       田中幾三郎君  出席政府委員         検     事         (民事局長)  平賀 健太君         建設政務次官  田村  元君         建設事務官         (計画局長)  関盛 吉雄君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治者  委員外出席者         参  考  人         (都立大学教授磯村 英一君         参  考  人         (早稲田大学         教授)     松井 達夫君         専  門  員 山口 乾治君     ————————————— 四月二十四日  委員大高康君辞任につき、その補欠として山口  好一君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員徳安實藏君、廣瀬正雄君及び山花秀雄君辞  任につき、その補欠として前田義雄君、大高康  君及び兒玉末男君が議長指名委員に選任さ  れた。     ————————————— 四月二十一日  公共施設整備に関連する市街地改造に関す  る法律案内閣提出第五九号)(参議院送付)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公共施設整備に関連する市街地改造に関す  る法律案内閣提出第五九号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 加藤高藏

    加藤委員長 これより会議を開きます。  公共施設整備に関連する市街地改造に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は参考人として、早稲田大学教授松井達夫君、都立大学教授磯村英一君の御出席を願っておりますが、磯村参考人が若干おくれて出席されるそうでありますので、御了承願います。  参考人には、非常に御多忙のところ、本委員会に御出席下さいまして、まことにありがとうございました。どうぞ遠慮のない御意見をお述べ下さるようにお願いいたします。  議事の順序は、まず参考人から御意見を承り、御意見開陳が終わった後、委員各位より参考人質疑をしていただくことにいたします。  それでは、松井参考人にお願いいたします。松井参考人
  3. 松井達夫

    松井参考人 私、ただいま御紹介にあずかりました早稲田大学松井でございます。  最初に、この法律案に関しまして概括的な意見を申し述べさしていただきたいと思います。  御存じの通り、戦後、特に最近に至りまして、いろいろな公共施設建設にあたりまして、土地取得用地取得というものが大へんにめんどうになってきておりますことは、私ども部外におります者でも、いろいろと見聞きしておることでございます。その公共施設用地取得をどうすればうまくできるかということにつきまして、いろいろと各方面で論議されて参ったのでございますが、この法律案が出ましたということは、そういうことの具体的な現われではないか、こう観察しているものでございます。  ところで、この公共施設用地取得と申しますことは、わが国のような土地の非常に狭いところにおきましても問題でございますが、また、たとえばアメリカのような、非常に土地の広い、住宅事情日本ほどきつくないところにおきましても、大へんに問題でございます。特に市街地の中におきまして用地取得いたします場合に、そこに住んでいる人たちをどう動かすかということが、一番問題になっているようでございます。  たとえば、ニューヨークの話を聞きますと、あそこにジョージ・ワシントン・ブリッジという有名な、三十年ほど前にできた橋がございます。あの橋を、最近の交通事情に対応するために二階にいたしまして、そしてまた、新しい取りつけ道路とバス・ターミナルを作る、こういう仕事をやっております。その仕事ニューヨークポート・オーソリティというところでやっておるのでございますが、そこでも、そのための用地取得に大へんに苦心をしておるのでございます。そうして、そのためにどういうような方法をとっておるかと申しますと、そこの用地として必要な土地に現在ございます建物、そこに住んでいる人たちをいかに円滑に他の土地に移ってもらうかということに、異常な熱心さをもちまして、いろいろな世話をやいたりなどしておるのでございます。私は、昨年そういったいろいろな都市問題に関しまして向こう事情を見たいと存じまして、あちらへ参りました。その際に、説明を聞きましたり、あるいは参考資料をもらって参りましたが、その資料によりますと、全国各地ともそういった問題があるようでございまして、ニューヨークポート・オーソリティで、公共用地取得のために、そこに住んでおる人たち移転させるのにどういう手を打ったかということを、全国各地の市などからも見学に来ておるというようなことでございました。  それでは、東京その他日本都市におきましてはどうすればよいかということでございます。何しろ、向こうのように、土地も市の周辺に十分あり、道路等交通施設もたっぷりできており、また住宅施設もそう窮屈でないというところのまねを、そのままするわけには参らないのでございます。そういう居住者移転ということについて、特に親切な手を打たなければならぬということは共通しておりますが、その方法といたしましては、日本のような国土の狭い、また特に人口増加の多い、住宅難の強いところにおきましては、またそこに適当した案を考えなくてはならぬではないか、こういう感じを深めたのでございます。  その意味におきまして、今度の法律案内容を大体拝見いたしますと、そこに住んでいる方々を、なるべくそのまま、そのごく付近で今まで通り商業その他の商売を続けさせる、あるいはまた、そこに建物を建てまして、移転しなければならない人たちをそこに収容する、こういう趣旨のように拝見いたしまして、これは大へんうまい方法である、こういう感じを第一に受けた次第であります。そういう意味におきまして、一口に申し上げますならば、この法律案は大へんよく考えられた、うまい法律ではないか、こういう感じがいたすのでございます。これを実際に当てはめて仕事をやります場合には、またいろいろな予期しないような問題が起こってくるかもしれません。その節はまたそのときで、この法律案の不備な点を改良するとか、あるいはまた、その他の手段をもってその不備を補うという必要が起こるかもしれませんが、そういうことは、こういった初めての試みにおきましては、考えられないわけではないのでございます。たとえば、米国市街地の再開発という仕事も、一九四九年の住宅法で始まったのでございますけれども、その後、やり出してから、いろいろと予期しないことにぶつかりまして、これを改正し、現在の都市改造ブームに対応しておるということを伺ってきたのであります。そういう意味で、この委員会におかれまして十分御審議の上、できるだけ早くこれが成立いたしまして、東京交通問題の打開に役立つことを、私ども市民といたしましても希望する次第でございます。  概括的なこの法律案に対しまする感想、意見というものを申し上げますならば、大体以上のようなことでございます。
  4. 加藤高藏

    加藤委員長 これにて松井参考人の御意見開陳は終わりました。  質疑の通告がありますので、これを許します。  岡本隆一君。
  5. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 ただいま先生の仰せの通り、この法律案は、考え方としてはきわめて合理的な考え方で、ただ私どもは、この法律を今度は実施していく場合に、いろいろ思わぬ、この法律がねらってもいないような逆効果が出てくるのじゃないかということを実は心配しておる。  その前に、私は先生の御意見を伺いたいと思いますのは、日本公共用地というものの都市の中に占めるところの面積のパーセンテージが、たとえばワシントンとか、そういうふうな外国の町が四〇%、五〇%が公共用地であるのに、日本の場合にはそれが二〇%、あるいは悪いところでは一〇%というような状態であります。ことに東京なんかでも、今これだけ人口が密集いたしまして、非常な大きな交通地獄という現象が出てきておるということは、一にこれは道路が狭過ぎるということ、しかも、そこに市街電車なんかが走っておった、非常に交通のじゃまをしておるということでございます。従って、東京の町を近代的なものにしていくためには、東京の町を作り直すというふうなことをやらなければ、東京の町は近代化されませんし、また、前近代的なこういう町に住む東京都民というものは、これから後自動車が発達すればするほど、永久的にもう交通難から解放されないであろう、こう思います。そうすると、この改造法を全都的に実施していかなければならない。そうすると、非常にお金がかかります。この法律は非常にお金のかかる法律なんです。今としては、オリンピック道路をしたり、応急の事態に処していくためには、どうしても一部やらなければなりません。しかしながら、これではもうとても追っつかないので、われわれの間では早くから、こういうようにあとを追っかけ回すばかりで金のかかることをやるくらいなら、いっそのこともう一度東京を疎開して、新たな町を建設した方が財政的にもはるかに有利ではないか。そしてまた、日本では最近、都市計画らしい構想でもって始められた都市計画というものは、明治以後ございません。名古屋が戦災を利用して少し都市計画をやりましたけれども、たとえば奈良であるとか、京都であるとかいうふうなものが、昔、都市計画のもとに町が建設されましたが、その後そういう都市建設というものを合理的に、頭から計画的にやっていったという歴史はございません。ここらで、日本もそういう方向へもういくべきではないか。だから、いつもやっておるところの追随的なと申しますか、ひとりでに、自然発生的に町ができて、そこにあとから都市計画が追っかけていくという都市計画追随性というものを脱却して、適地を見つけて新たな都市計画をやって、ブラジルがブラジリアを建設したような形のものをやって、新都市建設する。そうすると、そちらの方へ相当大きな人口が自然的に流れていって、東京混雑相当緩和されることであろうし、また、そうやっていくことの方が、東京の再改進をやっていくことのためにも便利ではないか。こういうことが最近だいぶ世論にもなっておりまするし、私どもの間でもそういう議論が出て参っておりますが、そういうことについての先生の御見解一つ承らしていただきたいと思います。
  6. 松井達夫

    松井参考人 ただいまの御質問に対する私の見解でございますが、私は、そういう問題に対しまして今まで十分突き詰めた研究をしたことはないのでございますが、大体考えておりますことを御参考に申し上げます。  確かに、おっしゃる通りに、東京都の町は、こういった世界的な大都市になるものとして作り上げられた都市とはいえないかもしれません。そういう意味で、いろいろな手を打ちましても、東京の、たとえば交通難というようなことは、容易なことで打開することはできないかもしれません。それで、いろいろな方面から、あるいは中央官庁を別に移転して新しい都市を作ったらどうだ、あるいは東京大学——何でも調べによりますと、東京じゅうに、区部に百三十大学というものがあるそうでございます。そこの学生というものは、三十万人をこすような多いものがおる。そういう意味で、一つ大学をどこかへ移転して、新しい大学町を作ったらどうだ、というような話も聞いたことがございます。いずれも相当程度東京混雑というものを軽減するのには役立つだろうとは存じます。  しかし、そういうようなことがかりに起こったといたしましても、この東京というものがなくなるものとは、私ども考えられないのでございます。東京は、太田道灌がここに江戸城を作ってからできた町ということになっておりますけれども、現在のように非常に大きな町に発展いたしますのには、やはりそれ相当理由があるものだろうと思っております。と申しますのは、その交通上の位置というものがございます。交通上の位置と申しましても、陸上交通もございますが、また海上交通位置というものもございます。そういった意味で、都市としての生命というものは、東京はやはり将来とも失うものではないと考えております。その上に、現在のように大きな東京になりまして、単に大学とかあるいは官庁とかの町ではなく、日本の一番大きな商工業の町になっているわけでございます。そうして、そこにそういった商工業をやっておる人たち、あるいはその他の勤労者等、大へんな数が集まっておるわけでございまして、その人たちが簡単に自分たちも一緒によそへ移るというわけには、これはとうていいくものではないのでございます。その人たちといたしましては、やはり、その自分たちの住んでいるところをどうすればもっと住みよくできるかということに努力を続けていくだろうと思います。  そういう意味におきまして、東京の現在の状態をもう少し近代都市にふさわしいように改造していくという仕事は、そういった一部の移転があるなしにかかわらず、やはり必要ではないか、こう考えておるのでございます。  それからまた、そういったいろいろな施設移転ということが、いわば一つの思いつき的に取り上げられている段階でございます。場合によりましては、アメリカにおいてニューヨークワシントンとが別になっておりますように、中央官庁というものが別にあってもいいかもしれません。あるいは百三十の全部の大学でなくても、相当数の大きな大学が、米国とか、ヨーロッパの都市に見られますように、独立した大学都市を形作って、大都市を離れることもよいことかもしれません。また、最近におきましては、事務所の移転ということも一部に考えられておりまして、新聞紙上等で私どもが知りましたところでは、たとえば第一生命というような会社が、そのメーン・オフィスを遠方に移すという計画を進めておられるそうでございます。  先ほども申しましたように、昨秋アメリカ都市を見て参りましたが、そのある都市、たとえばボストンというような都市におきまして、やや郊外地——郊外といいましても町続きの一部でございましたが、東京でいいますとどの辺に当たりますか、山手環状線あたりかと思いますが、そこの新しいビルを見せに連れていかれまして、これはオフィス・ビルディングである、オフィスというものが郊外移転できるものかどうか、移転して成り立つものかどうかということに対する一つ試みとしてこれが建てられたのだ、まず大体うまくいっておるということで、わざわざそれを見せに連れていかれたようなわけでございます。  オフィス移転というふうなことも、オフィスと申しましても、その内容はすべて都市中央部になくてはならぬものはかりじゃないので、そういったことも考えられますし、私どもといたしましては、ある施設移転ということも考え得る問題でございます。そういったことを検討いたしますのに、あらゆる可能な問題をつかまえまして、それがどういった社会的な、あるいは都市全体に対する影響を持つか、あるいはその移転する施設というもの自体がどういう影響を受けるか、そういうようなことをここによく検討いたしまして、相互に比較いたしまして、可能な、しかも有効な方法をその中から選び出すというふうに持っていくべきじゃないか、こう考えておるような次第でございます。よそはこういうものがあるから、まずこれというふうに取り上げるのじゃなくて、全体によく調査研究いたしまして、可能な、しかも有効なものを取り上げるというふうに持っていくべきだろうと思っております。  いずれにいたしましても、そういったことがたとい起こったにいたしましても、東京というものがここに存在するという十分な理由があるのでございまして、その点で、東京都市の近代的な改造ということは一日もゆるがせにすることができない問題ではないか、こう考えておるような次第でございます。
  7. 加藤高藏

    加藤委員長 この際、磯村参考人がお見えになりましたので、御意見を承ることにいたします。  磯村参考人、お願いいたします。
  8. 磯村英一

    磯村参考人 大学の時間のために、大へんおくれましたことをおわび申し上げます。  松井先生からどういうお話がございましたかわからないのでございますが、きわめて短かい時間この法案に対しまする私の基礎的な考え方を申し上げたいと思います。  この法案は、第一の問題は、当面東京の問題を必ずしも対象にしたものではないという理解のもとに、まず申し上げたいと思います。従って、問題が今の松井先生お話のように東京の問題となりますと、おのずとまた違った観点も出ると思います。まず、原則としまして、この法律案に対しまする考え方は、現在の都市計画事業におきまして、日本都市計画聖業の一番大きな欠点は、土地利用というものに対しまする根本の政策がなかったということだと思うわけであります。これが最近の都市生活の変化に伴いまして、特に土地の共公性という問題が非常に重要になって参りましたにもかかわらず、現在までの都市計画のいろいろな立法の中におきまして、そういったような意味においての権限ははっきりしなかったということが、最も弱い点といえば言えると思うのであります。特にこれから都市公共性というもの、特にその都市というものが地域的に機能が分化をいたすと、すでに都市計画の中におきましては地域制というものをしいておりましたが、その地域制というものが単なる地域の指定ということだけに進んでおりまして、その都市に対しての具体的な政策がなかったということが非常に大きな問題だと思うのであります。今回特に道路等公共施設整備に必要な用地確保ということを目的といたしまして、この法律案が作られましたことは、確かに一つ進歩である、こういうものがすみやかに実現さるべきであったということは、第一に考えてよろしいと思うわけでございます。  第二の点は、この法案趣旨にもあげておりまするように、今度は市街地における宅地高度利用という問題であります。この問題もやはり、今申し上げましたような同じ趣旨でもって言えると思うわけであります。この点につきましては、今度は一定地域内をブロック別整備をしまして、そしてそこに宅地をあわせて造成する。しかも、それは高度利用であるという点におきましては、これまた確かに一つ進歩である。格段の進歩であるといってよろしいのであります。その目的が、現在の日本都市の最も欠点でありまする道路の築造という面をあわせて持っておりまする点におきましても、この法律案趣旨は大へん妥当なものである、こういうふうに思われるのであります。しかし、問題は、それでは、これでもって現在の都市の、いわゆる市街地改造というものがすべてなされるかというと、私は必ずしもそうとは考えられません。もし、こういったような法律案の、何と申しますか、一つの次の段階といたしまして、あるいはその実施一つの理念的な背景におきまして、この土地政策に対しましてのもう少し積極的な一つ考え方、たとえば現在政府なりあるいは地方公共団体が持っておりまするところの土地管理、あるいはそれの利用方法等について、この法案実施に伴ってもっと具体的な施策が考えられるならば、なおこの法律案が生きて使われるのじゃないかと思うのです。しかし、ややもすれば、公共用地といったようなものの維持管理、あるいはそれの処分等に関しましては、他において都市計画的なものを考えながら、そういう計画性というものとは離れたものがあるということが従来の経験から考えられます。従って、この法案の成立を強く希望する一面におきまして、必要な用地確保という反面におきましては、現に国有地あるいはその他の公共用地というものとの関連につきましても、たとえばこの法案におきましては対象になりましたその地域借地権あるいはそこに居住権等を持っておりまする者が、ほかに移るということを希望しました場合におきましては、そういったような公共用地との交換あるいは公共用地利用というものを共同的に考えるような措置が講ぜられましたならば、この法律というものがより円滑にいくのではないかというふうに考えられます。第三の点は、先ほどもうしあげました宅地高度利用ということは、確かに現在の日本都市のような非常に低い建物対象とします場合におきましては、当然高度利用ということにしなければならないのでありますが、ここにもし都市計画というものをさらに一つの包括的なものと考えて参りますと、一つにはやはり若干の問題点もないではないと思います。それは、高度の利用というものを、その一定事業対象になりまするそのブロック一つの任意的なものに、一体どの程度まかせるかということであります。現在までの、かりに大きな都市下水であるとか、あるいは水道であるとか、あるいは道路等が、なぜ次から次に行き詰まってくるかということになりますると、そういったような一つブロックというもの、あるいは一つ地域というものが、どれだけの容積を持つ一つ地域になるかということに、全然見通しがないということであります。具体的に申し上げますならば、丸ビルができましたときに一つ下水をこしらえる。次に新丸ビルができますと、非常に大きな容積下水水道とその他の施設を必要とするのであります。そのために最初に作った下水を広げる、水道管を広げる。こういうことが、次々にブロックごとにまた起こっていくようなことでありましたならば、せっかくできましたこういった法律があっても、それがためにさらに掘り返しを次々に繰り返さなければならないということが考えられます。従って、この法律案実施に伴いましては、一体どの程度ブロックがどのくらいあって、そこにはどのくらいの住民とオフィスができるという、非常に重要な問題についての見通し等もある程度考えになってこの法律実施されるようになりましたならば、日本都市の体質の改善におきましては非常に大きな役割を果たすというように思います。従いまして、こういったようなことは、特に既存の都心地域対象にだいぶお考えになっておるようでございますけれども、特に私が強く希望をしたいのは、都心地域ではいろいろの権利等が交錯しておりますので、急速に発展しております副都心、あるいは副都心のもう一つ先にできますような地域について、すみやかにこういう一つの方式を進める必要があるのじゃないかと思うわけでございます。たとえば、その点では東京の第二の副都心考えられます自由ケ丘であるとか、あるいは三軒茶屋であるといったような地域につきましては、すでにそれ以前からかなり地元の要望等があったのでございます。それにもかかわらず、いろいろな若干の利益の交錯のために、これを施行します地方自治体においてあまりにいろいろなことを考慮するために、その地域の発展というものに必要な事業を施行する上に次々と困難が重なっているのであります。こういう法律ができました場合におきましては、なるべくそういったような新しく開発する地域につきましても、若干の方策を進められまして、まずそういったような地域においては、この程度の副都心地域はこのくらいの高さで、どのくらいの人口と事務的なものがそこに集まるか、というような問題についても一つ見通しをつけることができますならば、この法律がいろいろな日本の発展、特に個々のいろいろな経済的な成長を前提とします場合においても、都市の発展につきましてはかなり大きな役割を持つと思います。  最後に、一点つけ加えたいのは、こういう計画と周辺のいわゆる住宅公団等による団地計画と、一体どういう関係を持たせるかということにつきましては、こういう都心の高層化という問題と周辺の団地計画とがある程度マッチいたすということが、都市というものの体質をほんとうに健全にすることと思いますので、そういう点の御配慮もあれば、この法律につきましての効果は非常に期待することができるのじゃないか、このように考えております。     —————————————
  9. 加藤高藏

    加藤委員長 それでは、両参考人の御意見について引き続き質疑を行ないます。岡本隆一君。
  10. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 日本都市計画は、自然発生的に町ができまして、そのできたあとへ次から次へと都市計画が追随しているのが現状であろうと思うのです。こういうようなことをいつまでやっていても、きりがないから、ここらで一つ根本的な町作りをやって、そこへ人口を吸収する。こういうふうな方向に進んでいくべきではないかという議論があちこちで出ておりますし、また、磯村先生もそういうふうな御意見をお持ちの模様で、お書きになったものも読ましていただきました。新首都建設論であるとか、あるいはまたそうでなくても、工業地帯にいたしましても、首都圏整備委員会なんかも計画はいたしておりますけれども、とにかく新しい構想のもとに広い土地をぽんと政府の方で獲得して、そこへ最初下水道から始めて、道路を作っていくというふうな根本的な都市計画をやって、工業なりあるいは商業を持ってきて都市を作っていく、というふうな構想で日本もいかなければ、だめじゃないかという考え方が私たちの間にも出て参っております。そういうことについての磯村先生の御意見を承らしていただきたいと思います。
  11. 磯村英一

    磯村参考人 ただいまの御質問は、この法案に関連するものとしてお答えをいたします。  私は、先ほどの松井先生の御意見と若干違うかもしれませんが、都市計画に関しましての日本の一番大きな欠点は、先ほどちょっと触れましたように、土地が自由にならない、土地というものが一番大事であることである、こういうように考えます。これは当然のことと思います。日本の国土が非常に狭小でありまして、しかも山岳地帯が多いということ、また封建的な社会を経過しておりますので、土地というものが非常にこまかく個人に分割されてしまっている。従って、これだけ近代的な国家になったにもかかわらず、公共用のための土地を非常に持っていないということから、かなり進歩的な都市計画を持っておりながら、実施段階におきまして非常にいろいろな困難に逢着するということが考えられます。従いまして、現在国あるいは公共団体が持っておる土地を、都市計画あるいは国土計画というものの面においてどういうふうに利用するかという一つの問題と、もう一つは、現に国が持っておりませんでも、最も重要だと思います土地に関しては、積極的にこれを公共用地として確保するという面の努力、こういうものがこの法案の提出に関連しても言えると思うのでございます。  同時に、なお考えられますのは、現在非常に巨大な国有地と、こういった市街地改造というものをどういうふうに関連づけるか、ということが一つの問題じゃないか。その意味におきまして、かりに東京を例にとりますと、東京の首都圏の中において一億万平方メートルといったような一つのまとまった土地があるということは、東京都といったような巨大都市都市計画的に考える場合におきまして、見のがすことができない事実ではないかと思うわけであります。一つの広大な国有地あるいは公共用地があるということが、今後の東京というものを考え一つの要点になる、こういうふうに思います。その意味におきましては、都心改造をこういうもので考えながら、一面におきましては、そういう公共用地東京都と申しますよりも私はむしろ首都と考えておりますが首都の性格をどういうふうに結びつけるかということは、首都計画あるいは国土計画において今日考うべき問題ではないかと思います。その前提におきましては、交通が非常に発達しておるということであります。あるいは国土縦貫道、あるいは東海道新幹線、これが現にできるというきわめて具体的な施策と、その近所にその土地があるという前提は、これは新しい首都の計画をする上におきまして非常に重要な要素じゃないかと思います。  それに、一番重要なことは何であるかと申しますと、東京にはこれまでに首都の計画はなかった。というふうに私は考えております。皇居は、京都が政治の中心であったところから、たまたま徳川の城を利用しただけでございます。京都には確かに都市計画はあったと思います。奈良の都も確かに都市計画はあったと思いますが、東京には都市計画はなかった。いわんや、首都計画はなおなかった、言い過ぎるかもしれませんが……。そう考えますと、太平洋戦争が終わった今日におきまして、日本の国自体の政治、経済の体制の変わる段階におきまして、今、私が申し上げました都市の存在条件、交通の発達の条件というものを考えてみますると、何らかの不可分の関係があるのじゃないかと考えております。  最後に申し上げますることは、これは最近ニューヨーク地域開発委員会でもって調べました結果でございますが、ニューヨークのマンハッタンのオフィス街の人口が減っております。なぜ減っておるかと申しますと、管理をするいわゆるトップ・マネージメントだけがそこにいるようになりまして、オフィスが周辺の郊外に出ております。そういう形というものは今後の都市一つのあり方だということを考えてみますと、先ほど松井先生お話にもございましたが、どの程度まで出るかということについては意見が違うかもしれませんけれども、やはりそういうものは形として出るのじゃないか。そういうことを考えまして、若干首都のあり方につきましても、しかも、具体的に交通都市改造ということを考えて参りますと、そこに一つの構想があってもよろしいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  12. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 先まど松井先生のお言葉の中に、基本的には東京という都市は、これから後もやはりこういう姿で繁栄を続けていくのだから、これの都市改造はもう見のがしにできない、どうしてもやらなければならないと言われましたが、いかにもその通りでございます。やっていかなければなりません。  しかしながら、たとえて言えば、この法律ができまして、それじゃ、ことしどれだけのことをやるのかと申しますと、ことしの事業量は財源としては一億五千万円、それから道路としては三千五百平方メートルの道路が、それによって確保されるというふうな程度のことでございます。しかも、それは東京に二カ所、大阪の駅前に一カ所というふうな、ほんのわずかな計画より、ことしは盛られておりません。政府のこれからの努力によりまして、どの程度この計画を拡大されていくかということは、これは予測は私どもにもできません。しかしながら、なるほどこの法律そのものは非常にいい、知恵をしぼり出して作られておるところはいい、こういうふうに考えられますし、また今後の都市改造というものは、この方針でやっていかなければならないというふうに私ども思います。従って、この法律そのものには賛成でございます。しかしながら、これでは、シジミ貝で井戸がえという言葉がございますが、全くシジミ貝で井戸がえで、あとからわいてくるわき水の方が多い。だから、何と申しますか、百年河清を待つというのと同じことが東京都の再改造等については言えるのではないか。しかも、少々ずつそういうふうな事業をせっかくやっていきましても、あとからあとからと東京へ流れ込んでくる人口のために、混乱はますますひどくなって、結局首都としての機能が十分に果せないのではないか。  だから、東京都というものが、これ以上もう膨張しないような施策を国としては当然講じなければならないのじゃないか。そのためには、やはりこの法律でもって、工場を建設してはいけないとか、こういう規模の建物、ビルは今後建ててはいけないとか、法律でもって規制していくという方法も一方ではあると思います。しかしながら一方ではそれよりも、もっともっと事業をやっていくのには、快適な事業をやっていくには、ずっと将来、ここで事業をやった方が有望だ、同じ規模ならここでやった方が将来得だ、同じビルを建設するならここへ建設した方が得ですよ、というふうなものをぽんと政府の方で作りまして、そこにどんどん人口を誘い込んでくるというふうな積極的な方策を講ずる。むしろこれは、東京都そのもののなにからいけば、なるほど能動的に働きかけておりません。ですから、姿は消極的に見えます。東京の抑制策というふうな形を正面に出しておりませんから、東京都の膨張に対する抑制策としては消極的に見えるかもしれません。しかしながら、町作りとしては逆にこれは積極的なものになると思います。だから私どもは、土地はどこに選ばれるか存じませんが、新首都というものを建設する。そこは最初は一面の野っ原である。そこへまず下水道を作り、道路を作って、それからぽつりぽつりと町を作っていく、というふうなことをやっていかなくてはならないのではないか。また、それをすることが、結局は、あとから人口の膨張に伴って道を広げたり、下水を作ったりするより、はるかに経済効果の点においても、公共投資としては実質的には節約できるのではないか、こういうふうに私は思っておるのでございます。現在日本では、自然的に人口が集まったものを、あとから整備していくというのが都市計画事業だ、というふうに考えられております。それはなるほどそうでございましょうが、しかしながら、それ以上に私たちは、やはりそこまで積極的な都市計画にこれから切りかえていかなければならないのではないか、こういうふうなことを考え始めておるのでございます。あるいは荒唐無稽なことかもしれませんけれども、私どもとしてはそういうふうな考えをいたしておりますので、松井先生磯村先生から、そういう点について御意見をもう一度聞かせていただきたいと思います。
  13. 松井達夫

    松井参考人 ただいまの御質疑に対してお答え申し上げます。  ただいま荒唐無稽かもしらないが、とおっしゃいましたが、それは決して荒唐無稽ではないと存じます。しかしながら、多少私の見解と違う点があるかもしれません。  もともと、東京に限らず、過大都市はいけないのだということは今日に始まった思想ではございません。たとえば今、都市計画協会の会長をしていらっしゃる飯沼一省先生のごときは、すでに大正の末に「地方計画」という本を著わしまして、そういった点の外国の思想を紹介されておるような次第でございます。また、大都市というものがあまり膨張しないように、たとえばグリーン・ベルトを作るとか、いろいろなことをやるということも、これもまた新しいことではございません。やはりその時代からある考えでございます。それが国際的にはっきり確認されましたのは、一九二四年にアムステルダムでありました国際都市計画協議会の決議でございます。ただ、これが実際に実行する面でその後だんだんと経験を積みまして、大へんむずかしいものだということは言われておりますけれども、この思想の流れといたしては、現在でもやはり生命を持っておるわけでございます。私どもアメリカへ参りまして、アメリカ都市事情を聞きましたら、二、三の都市におきまして、今度は自分たちの方で質問をするという。どういうことか、と聞きましたら、なんでも東京ではグリーン・ベルトを作っておるそうではないか、どうやったらそういうものが有効な効果をあげることができるのか、私どもやりたいのだけれども、なかなかむずかしい問題があって、簡単にはできない、といったような質問があったような工合でございます。  それで、その後東京に首都圏整備法というものができまして、まず第一に工業を東京へ集めないようにという方針で、今、行なわれておるようでございます。大へんにその方針もいい方針だと考えるのでございますが、その効果がそれほどあがっていないのではないか、というような批判も伺っております。私どもの気持といたしましては、これは単に東京だけの問題ではない、全国の問題だというふうに、もともと感じておったのでございますが、最近におきましては、北海道のあるいは東北、その他日本の国内のいわゆる後進地域におきまして、そこに人口を定着させるような工業その他の職場を作っていくというふうになってきているように拝見しておるのでございます。その意味で、大へんけっこうなことだと思うのでございます。そういう意味におきまして、ただいまおっしゃいましたような新首都というような問題、あるいはいわゆる後進地域その他の地域に新しい工業都市を作るというような問題、その両方でございまして、古い都市をいじるのではなくて、新しい都市を開発するという仕事は、これは今後日本じゅうにもっと活発に行なわれなくてはならないのではないか、こう考える次第でございます。  それから、今の新首都の問題でございますが、これに限らず、そういった大きな日本都市の問題がございます。現在におきましては人口の六〇何%はすでに市部人口という状態でございまして、都市をどうするかという問題は、また日本の将来の産業構造をどうするかという問題になってくるわけでございます。これは、私どものようないわゆる都市計画の専門家というようなものの扱う単なる技術的な問題ではなくて、もう政治の問題だと考えております。そういう意味で、むしろ私どもの方から、こういう委員会の方々に、一体どうするつもりかと質問したいくらいなものでございます。  なお、そういった意味で、先ほど申しましたように、大都市の規制ということと同時に、大都市をもっと合理的に作り直していくということは、新しい都市建設とまた並行いたしまして、先ほど申し上げましたような理由で、どうしてもやっていかなくてはならぬということは、私ども感じておるところでございますが、そのやり方におきましては、先ほど磯村先生もおっしゃいましたように、その都市の実態的な構造という面からも押えていかなくてはならぬ問題でございます。そういう面から見まして、外国の都市もそうでございますが、日本都市は特にいろいろ欠点がある。大都市の問題、あるいはその都市が古くなって参りまして、近代的な工業的な時代、あるいはモーター・エイジというような時代にふさわしくないというのは、東京が一番問題になっておりますけれども、これはひとり日本の問題だけではなくて、世界じゅうの都市がそれで悩んでいる問題でございます。そうして、世界じゅうの都市が、先ほど私が申しましたような意味で、その都市の生命というものは将来どうなるかという意味から、多くの都市は、やはりその都市がそこに現在ある、あるにはあるだけのりっぱな理由があるのだ、昔からあったし、また現在もある、こういうことでございます。  たとえばロンドンにいたしましても、ロンドンの成り立ちというものはローマ時代でございます。最近、なんでもあそこで爆撃の跡の建物の取り片づけをしておりましたら、その土台の下からローマ時代の別荘のかわらが出てきたということでございますが、ロンドンというものはローマ時代にできた町である。ローマ時代にそこにそういった町ができる理由があった場所でございます。しかも現在においてもあそこに大都市があるということに対し、また今後も続くであろうということに対して、何ら条件は変わっておらぬ。そういう意味で、ロンドンもあそこを捨ててしまって、どこかに行くということは考えられておらないわけでございます。ロンドンという町は東京と違いまして、建築物その他様子が違いますけれども、またいろいろ欠点は持っております。しかし、それをいかにして改造していくかということに、彼らは、その市民たち、あるいは英国の指導者は努力をしておるようなわけでございます。  そういう意味におきまして、日本都市も、今おっしゃいましたような新しい都市が今後できていきましても、私どもは、東京なら東京、大阪なら大阪というものは、今後も存在を続けるものではないかと思います。存在を続ける以上は、そこにやはり住民が住んでおる。現在住んでおる人もまた続けて住むであろう。また新しく入ってくる人もございます。新都市を作って、そこにいろいろな施設をやった方が安上りじゃないかという御意見もございましたが、全くその点は安上がりだろうと思います。けれども東京なら東京、大阪なら大阪というところに住んでおる人が、全部新しい都市に移るわけには参りません。また、そこの都市自体が発展するものといたしますと、そこに住む、あるいは入ってくる人があるわけでありまして、金がかかるから、もうそこはほったらかしておくというわけにいかないと思います。どうしてもそこに住んでおる人たちの生活のため、あるいは経済的な活動のために、現在の悪い状態を改良していかなくてはならぬということは捨てるわけにいかないと思います。また、そこに住んでおる人たち自身が、何とかしなければならぬと考えるようになり、またそういう仕事をするようになると思います。そういう意味におきまして、もうこういう古い、始末に困るような町はみな捨ててしまって、よそへ作った方がよいというのだけでは、やはり問題は解決できないのではないかと思います。  たとえば、去年見て参りました町の中にアメリカのピッツバーグという町がございます。これは日本で言うと八幡に相当するような製鉄の町でございます。この町はかなり古い町でございまして、もうどうにもならぬ。その上に、例の有名な煙の害があります。また、あそこは川が二本集まっておるところでございまして、洪水の害があったり、いろいろ弱っておりました。その上に街路の交通難ということもございます。それで、例の帝国ホテルを作った有名なライト氏——せんだって、なくなりましたけれどもあの方がそこの顧問をしておられまして、何回となく市民あるいはその指導者たちに、もうここは捨ててしまえ、どこかへ移れという案を提案されたそうでございます。あの町は、東京ほどでかい町ではございません。東京の数分の一という町でございますから、東京全部引っ越すほどの大問題ではないのでありますけれども、それにしても大問題でございます。そこに住んでおる人にしますと、そこにいろいろの仕事を持っており、そこにいろいろの財産を持っておる。そういう人たちにしますと、そこをすっかり捨ててしまってよそへ移るというようなことは、簡単にはいかぬわけでございまして、何とかして自分たちの町を改造しようということに努力をしまして、今では、きょうの東京の空のようなきれいな空が見られる。あるいは町の建物の古いものもどんどん改造いたしております。向こうはれんが造の建物ですから、こわすことが比較的楽でございまして、新しいアパートを作ったり、公営住宅を作ったり、というようなふうに改進をやっておるというので、アメリカの中でも有名な土地になっております。そういったふうなことが日本都市においても考えなくてはならぬのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。一方において、先ほど申しましたように、新しい町作り、特に現在では地方に工業都市を作るという必要に迫られておりますが、場合によったら、先ほどお話に出ましたような首都の移転、あるいは大学移転、こういったことは私どもが云々するよりも、政治家がきめて下さる問題だと思いますけれども、こういったものと同時に、古い町を作り直していくという仕事もどうしても大事だ、こう考える次第でございます。
  14. 磯村英一

    磯村参考人 松井先生からお話がございましたから、簡単に申し上げます。  私は意見が少し違います。それは、この法案自体は、現在の都市にとりましては絶対必要なものである、こういうことでございますが、それでは、一体都市の過大化というものがこの法案によって防止できるかというと、私は必ずしもできないという前提でございます。そのために衛星都市があるじゃないかということでございますが、この衛星都市という考え方も、これは日本の特性としまして、比較的近いところに衛星都市を作ったのでは、かえって都市を膨張させるわけであります。現に東京周辺には京浜工業地帯、京葉工業地帯というものができまして、工場が分散したようでございますけれども、分散によりましてその工場のおもな従業員はそこに住むのでございますから、それに付随する関連産業というものが東京の下町をさらに刺激しております。これが東京人口を非常に大きくしている状態でありますので、ある程度の工場分散というだけでは、かえって東京を膨大にさせる。でございますから、大へん口幅ったいことでございますけれども、現在の首都圏整備計画自体も考え直すべきではないかというふうに思っております。  それに加えまして、問題は、今、政府考えておられるところのいわゆる所得倍増計画ということによりまして、現在皆様方の方でも御審議の過程にあると思うのでございますが、農業基本法の何らかの実施によりますと、千五百万の農業人口のうちの大体三分の一、全部とは申しませんが、かりにそのうちの三百万というものは、やはり何らかの形において東京あるいは大阪周辺に集まる人口である。しかも、その人口の圧力を考えますと、この市街地改造法案によりまして都市がよくなればなるほど、これを吸収する。よほど強い力でもってこの力を押えるという方法がなければ、大阪や東京、特に東京への人口集中というものは、もう避けることができないというふうに考えます。しかも、問題は、その人口集中ということでございますが、人口は集中するだけが問題じゃございませんで、集中した人口の一部が中でぐるぐる回るということでございます。これが非常に大きな要素になると思うのでございます。たとえば、私どもは自分の住んでいるところで一つの場所を占める。これは一人の人口考えるのでありますが、離れたところに職場というものをきちっと持っておるのであります。これは、そういう意味で二倍の人口容積を占めているわけであります。それからさらに、映画館に行くとか、公会堂に行くといえば、全部の人にそのスペースを準備するわけではありませんけれども、何かの公共施設という意味でこれを要求するのでございますから、かりに東京人口が一千万だと考えますと、その一千万の人口規模でもって施設をすること自体がすでに問題を起こしておると思うのでございます。そうしますると、東京といったものが農業人口一つの圧力を受けて、工業分散によって周辺に集まったと思った人口が、関連産業によりまして東京をさらに刺激し、さらにこれが繁栄する。これは工業ばかりじゃなくて、商業も非常に繁栄している。そこへもってきて、職場と住居が分散しますから、ますますその中における人口の動きが激しくなる、ということを考えて参りますと、よほど思い切った何らかの機能を分散、と申しますか、延ばす必要があるのじゃないかというので、政府の一部におかれましても、基幹都市とか、あるいは広域都市とかいうお考えが出ておりますことは、大へんけっこうなことだと思うのでございます。しかし、そういったようなことは、結局地方の開発であると同時に、大きな都市への人口の集中を防止する施策として、こういった市街地改造法案に関連して当然推進さるべき問題であるというふうに思うのであります。  そういったような、いろいろな機能の集中するのを一体何がささえると申しますか、あるいは防止するかと申しますと、今、松井さんも言われましたけれども、それは日本の場合においては政治的な権力と申しますか、政治的な構造であるというふうに思います。従いまして、その政治的な構造というものも、今日のように交通が発達して、生活の構造の変わりました場合には、必ずしも一つのところに県庁とか市役所が並ぶ必要はないのではないか。県庁と並んで、そこでもって過当競争をするというようなことは、そういう意味においても、もう考えるべきじゃないか。従って、県庁というものは、事情によっては、ほかの都市に機能を若干移して考えられないか。そういう同じ理念からしまして、東京の政治的機能というものを、何も全然別のところへ遷都とかいう言葉ではありませんで、いわゆる機能を若干延ばす。それは三十分か一時間で行けるところへ延ばす、ということが考えられていいのではないか。それを、何県が首都をとるとか、そこへ遷都するとかいうような考えは、これは七十年前の明治維新のときの考えでございまして、今日におきましては、そういったようなものを考えてよろしいのではないか。それがニュー・トーキョーであろうと、ニュー・キャピタルという都市であろうと、あるいは日本という都市であろうと、それはよろしいのではないかと思っております。従いまして、そういう意味から考えて参りますと、特に今度の所得倍増計画の裏づけとして考えた場合には、東京のあり方というものを首都東京ではなしに、東京都と首都というものを別々に考えまして、そして、その程度に分散と申しますか、機能を新たにいたしましても、東京というものの繁栄は変わらないのではないか。従って、松井さんが言われましたように、この程度で、この市街地改造法案がようやく間に合っていくという程度ではないか。こんなふうに考えております。
  15. 加藤高藏

  16. 佐藤虎次郎

    ○佐藤(虎)委員 ただいま松井先生磯村先生から、私どもの非常に満足の得られるお話を聞かせていただき、ありがとうございました。  私は、この公共施設整備は、東京都だけに適用するものではなくして、今後新しく生まれてくる都市に対しても、そういう考えが必要だということのように解釈しておりました。そこで、しからば、現在東京都にこれだけの人口が密集することを十年前に予測しておったかどうか。私は、この建設委員会委員をずっとやっておりますが、私は、区画整理、都市計画というものを完全にしなければならないということを、声を大にして叫んできた一人であります。その当時ならば、率直に言うと、坪一万円も出せば、もう安いものだったが、ついに予算の裏づけなくして、今日坪二百万、三百万というふうになり、高層建築、不燃化建築ができて、移転補償というものにも国が大きな負担を背負わなければならない時代になってきた。まことに私は残念であります。しかし、十年前には、政治家も、学者も、経済界も、今日これだけに人口が密集するということは、何人も予測しなかったろうと私は思っているのです。そこで、しからば、これを一体どうして打開するか。これが公共施設整備法案を、まずおくればせながらやってみようかくらいの気持じゃないかと思うのです。  ただいま松井先生も、磯村先生も、言われましたように、一番隘路になっているものは道路であります。交通ひんぱん、これが一番の隘路です。この隘路に伴って、ただいま磯村先生お話しになられましたように、丸ビルを建てたときの下水道、上水道と、新丸ビルを建てたときの上水道下水道とでは、おのずと変わってきていると思う。そこで、私は思うのですが、もうこうなってしまったら、大手術をしなければならない。私ども、二十八年にヨーロッパ各国を道路視察に行って参りました。そのときに、パリで世界に一番模範になるものを見せろといったら、下水道なんです。下水道は、下水道であり、その中に水道管があり、ガスの線が配線されており、電線が配線になっている。こういうように、日本のようにせっかく舗装道路整備したものをまた掘り返してやらなくても、もう百二十年前にそういう施設をパリではやっておった。おそらく、学者も政治家も、あるいは建設省のお役人も、これを視察に行っておられるだろうと思う。なぜそのときから、十年前からこれを叫んでくれなかったかと私は言いたくなる。私はよくそれを叫んできた。でありますから、おくればせながら、公共施設拡充整備というこういう法案を出されたのは、まあおくればせながらも、がまんをしてやらなければならないことであるが、しからば、ただいま礎村先生松井先生も言われた通り、一体どうしたらそれが打開できるか、これが一番のポイントだ、こう私は考えております。  松井先生も言われた通り、私も昨年ヨーロッパからアメリカ全部を回って参りました。ニューヨークワシントン・ブリッジ、五十七年ぐらい前にできた橋だそうです。五十七年も前にあの橋をかけたときに、やがてはこの橋だけではだめだ、将来二階をつけなければだめだということを予測して、そして基礎工事を完全なものをやったから、あの橋に二階を今日つけた。こそくな、今こしらえれば一時しのぎでいい、というわけにはいかない。政治家も学者もその気持になって、大いにPRしなければならない時代じゃないか。ワシントン・ブリッジ、五十有余年も前に作った橋に、今二階をどんどんつけておる。これで交通の緩和をしようというのです。  そこで、私は、松井先生、礎村先生、また建設省当局にも、われわれ同僚諸君にも御賛成願いたいことは、今日、首都圏整備という問題が声を大にして叫ばれておる。たとえば、羽田から江戸橋までは同架線でずっと参ります。日本橋の本町から、現在できております。あの昭和通りのまん中に柱を建てて、高架で二階で行くというお話です。私はこれほどこそくな仕事はないと思っておる。率直に言うならば、あれから上野までずっと民家です。ビルがあってもよろしい。これを全部高層建築にしてしまう。政府は低利資金を貸せばいいじゃないですか。そして、高層建築にして、その二階を全部道路にしてしまう。三階、四階は住宅でも、あるいはアパートにしてもよろしい。こういう方法にいたしたならばどうか。今までは日本人は、御承知の通り、個人主義であります。自分のうちを、たとい一坪の土地でも放すのはいやだ。これが大きな隘路です。今日、道路拡張、都市計画の一番の隘路は、土地を愛する個人主義です。これに政府当局も悩んでおるのが今日の実情です。それでありますから、今日あの昭和通りが、まん中だけが自動車の置き場になって、両側だけ走っている。あれを、もしやったならば、八車線できます。現在は四車線そこそこであります。何のためにあんなところに掃きだめをこしらえて、何のためにあの上に首都圏の高速道路を作らなければならないか。それでなくてさえ交通ひんぱんで困っておるときに、あのうえ、屋上屋を重ねたならば、一体交通緩和すると思うかどうか。私は、それよりもむしろ、政府にそれだけの考えがあるならば、江戸橋まで川を埋めて、高架でずっと参りまして、できたならば、片側をずっと、思い切って政府の低利資金を肩入れして鉄筋コンクリートの家にして、その二階を自動車道路にする。三階、四階はアパートでも住居でもけっこう。これは外国では、松井先生も見てこられたと思いますが、たくさんあります。私は、そうした緩和策でもとらなければ、現在の実情ではいかないと思います。伴って、一番隘路になることは、下水道、上水道、ガス、電話線、電気線の配線について、一々掘り返さなければできない。ビルができれば、またやる。こちらのうちにまたでかいものができたから、また掘り返してやらなければならぬというようなことであったら、東京都がもう模範であります。こうやくばりで、一年じゅう、こしらえたあとから掘り返している。こういうことであってはいけない。  この東京都が、それでは大学が全部わきに行ってしまえ、こういう議論が今日あります。ところが、行けといったって、行くまいと私は思う。なぜ行かないかというと、先生方にまことに申しわけない言葉かもしれませんが、松井先生磯村先生にはそういうことはありますまいと思いますが、私立大学経営者というものは経営をしなければなりません。損をしてはできません。ところが、松井先生が今、早稲田に行っている。早稲田大学に昼間行って、何時間か教えておられる。しかし、それだけではどうも、サラリーが安いおかげで、子供を大学へやるわけにはいかない。寝酒の一ぱいを飲むだけの月給はくれやしない。そこで夜学に、こちらの学校に行き、こちらで一時間やって、またあちらの学校に行く。こうして今日子弟を養っている。家族に後顧の憂いなからしむるように、自分の体力と知力を働かせてやっているのが、現在の大学先生だと思います。これは間違いありません。これを、みんないなかに行ってしまえ、といったって、いなかに行ったら、先生はその学校でいただく俸給だけでは、率直にいえば、とうてい満足に本を読むこともできないと私は思う。  そこで、今、一番注意しなければならないことは何か。私は三十八年にドイツへ行ってみました。ドイツへ行ったところが、ドイツでは、生産工場の建物は実にりっぱにするが、会社の社長、重役、事務員のいるところはまるで裏長屋、というよりもバラックに入っておった。工場はりっぱなものだが、社長、重役、事務員の事務をとっているところは、まるで見られないところでやっている。しかるに、今日、一体何だ。東京のまん中を見れば、丸ビルあたりのあの建築は、坪当たりどんなに少なくても三百万以下ということはありません。それに何億もかけてあれだけのビルディングを建って、大学を出たか知らないが、重役、社長だけがいばっている。そこへ入ってくる人間というものは、一体どのくらいのものか。こういうものから一番先に、生産工場のあるところに持っていけ。そうすれば人間も少なくなる。そうすれば、生産工場で職工が忠実に働くのを見たならば、事務員どもも遊んでいられない。社長、重役も遊んでいられない。のろのろ肥えていられないので、おそらく労働争議もなくなるだろうと私は思う。自分たちだけが御殿のような妙なところに入って、職工さんたちが入っている工場というものは見るかげもないようなのが、日本の現在の実情です。  それだから、私は、公共施設をやるならば、これから改造せよ、心を改めろということを、あなた方の力で、一つ学者としての意見をPRする。政治家の意見というものは、なかなか用いてくれません。政治家の言うことは、社会党が言えば社会党の我田引水だ、自氏党が言えば自民党の我田引水だ、こういうことであります。でありますから、東京都をいかにすべきかということは、あなた方のお力を借りてPRをし、これに、私どもが相呼応して、政治の力でその実現に向かっていかなければならないじゃないか。もうこれだけ密集したのだ、密集した東京都は一体どうすればいいんだ、この一つのアイデアを私が出してみたのが、下水道の完全なものをやって、上水道も通し、ガス、電気、電話の配線をその中に入れるような施設にしなければならぬ。そうして、屋上屋に、現在の道路だけでさえも狭いのに、いけないところに道路を作るよりも、今言うりっぱな家屋の上を通せるような方法も一応考えなければならぬと思うが、両先生方の御意見はどうか。これに伴って、この法案が必要であるかないか、これを一つお聞きしておきたいと思います。
  17. 松井達夫

    松井参考人 ただいまの御質問、大へんお話が多岐にわたったのでございますが、二、三点について私の意見を申し上げたいと思います。  第一が、パリの下水道から、道路の掘り返しということでありました。まことにおっしゃる通りでございまして、パリの下水道というのは、世界で一番りっぱな下水道ということになっております。これができましたのは、パリの沿革の書物を読みましたところによりますと、何でもナポレオン一世のころから始まりまして、例のナポレオン三世——第二帝国と申しておりますが——ナポレオン三世が皇帝になったのはたしか一八四八年だと思っておりますが、そのときからパリの改造ということで、皇帝自身が始めたのだそうでございます。パリの改造というのは、それから五年ばかりたってから、オースマンという方がセーヌ県の知事になりまして、今の都知事みたいなものでありますが、ナポレオンの片腕になって、これの執行に当たったのであります。何しろ、東京都よりも古い都市であったのでありますから、そういう中世の古い町を作りかえるというので、道路を貫通させる、広場を作る、あるいは公園を作る、それから下水道、水道を作るというのがその主要な内容でございます。そのときに大体下水道もでき上がったように伺っております。それは、そういった時代の、言ってみれば皇帝の力によっての都市計画だということもできるのかと思うのでございます。しかし、その費用は、もちろん主としてパリの市がまかなったように聞いております。  現在の日本は民主主義の時代でございますので、皇帝の都市計画でやるという時代ではございません。やはり市民がこれに対して理解を持ち、これに協力する、自分たち仕事としてやるという気持にならなければ、今の日本ではできないかと思うのでございます。そのためには、先ほどおっしゃいました通り、PRというものが非常に大切でございます。先ほど申しましたワシントン・ブリッジの関係の立ちのきの問題にいたしましても、ポート・オーソリティはできるだけ早くからPRに取りかかったそうでございます。そして、一体この土地がどうなるのかということを、できるだけ早くその住民に知らせたということであります。と申しますのは、もしそれが少しでもおくれますと、そこに住んでいる人がいろいろ揣摩憶測いたしまして、どうなるだろうということから、いろいろとんでもない想像を働かして、流言飛語的なことになって、心理的に大へんな混乱を起こす。そういう意味で、早くからPRをやったということを、まず冒頭に自慢しておるような次第であります。そういう意味で、PRということは大へん大切なことだと思います。  話はちょっとわき道にそれましたが、今のパリの下水道に関連しまして、東京でも、なんとか道路の掘り返しを今のようにやらないように、たとえば共同溝を作るとか、あるいはどうしても掘り返しをしなければならぬときでも——アメリカ都市あたりでも、ごくまれには掘り返しておりましたが——そういうようなときでも、いろいろな業者がてんでんばらばらにやらないで、なるべくそういう仕事をまとめてやれるように持っていくとか、いろいろ方法があるかと思います。そういった措置を十分研究して、市民によけいな迷惑をかけることを避けなければならぬのじゃないか、こう考えております。  それから、もう一つの問題といたしまして、一つの例として、羽田から上野の方に行く高速道路のことをお話し下さいましたが、大へん傾聴すべき御意見だと思うのであります。と申しますのは、都市の物的な施設といいますか、問題といたしましては、建物の問題と同時に、やはり交通路の問題が今この時代では一番大きな問題になっております。これがどうも、ともすると、ばらばらになりがちでございまして、こういう時代になりました以上は、今後特に、昔以上にこの建物の問題と交通の問題を強く結びつけていかなければならぬのではないかと存じます。それで、今、高速道路というものを建物と一緒に作ることも、うまくいきますれば一つ方法だと思います。  また、そういった市内の交通の問題だけでなく、たとえば住宅団地を作るとか、あるいは新都市を作るとかいう場合におきましても、常に道路あるいは交通、輸送という問題を切り離してやってはいけないのでございます。ごく下世話な言い方をしますと、たとえば交通会社が住宅地を作るというぐらいな考え方交通会社が作るのでございますから、もちろん自分たちの電鉄なら電鉄の利用というものをもとにして考えておるわけでございましょうが、そういうことと多少立場が違いますけれども、そういったいろんな都市的な建物その他の施設を作っていくという場合に、常に交通との結びつきということを考えいかないと、ますます交通問題がむずかしくなってくる。とにかく今、ある電鉄があるから、そこに作ればよかろうというような安易なことではなくて、もっとその点を深く考えながら、住宅建設なら住宅建設をやっていかなければならぬのではないか。場合によったら、たとえば地下鉄道の建設と住宅建設を一緒に結びつけて考えていくということまでしなければいけないのではないか。これには、先ほどから話の出ましたような土地取得というような問題もからんで参りますけれども、そういったふうに考えていかなければならないのではないか、こう考えておる次第でございます。
  18. 加藤高藏

    加藤委員長 石川次夫君。  なお、はなはだ恐縮ですが、時間がだいぶ経過いたしておりますので、質疑答弁とも簡潔にお願いいたします。
  19. 石川次夫

    ○石川委員 委員長の御要望もありますから、簡単に御質問したいと思います。  松井先生にお伺いしたいのは、先ほど、ニューヨークワシントン・ブリッジの二階に取りつけ道路をするということで、非常に苦心をしておったというお話を伺いました。それについては、異常な熱心さをもってそれに対処しておるというお言葉がございましたが、これは何か特にアメリカとしては法律があるのですか。あるいはまた、具体的にどういうふうな取り扱い方をしたか。アメリカ日本とでは土地事情が大へん違いますから、同一に論ずるわけにはいきませんけれども、何かその点で、この法案に関連して参考になることがあれば御説明願いたい。
  20. 松井達夫

    松井参考人 今ここに資料を持っておりませんので、あまり具体的な数字その他申し上げることはできませんけれども、大体覚えておる範囲をお答えいたします。  第一は、先ほど申しましたように、早くPRをしたということでございます。それから、日本向こうといろいろ事情が違いますし、法律の様子なんかも違いますが、向こうにおきましてはポート・オーソリテイは土地収用権を持っております。建物の収用権を持っております。そして向こうでは、その土地収用を決定するということは、その関係の裁判所がございまして、そこに届けと申しますか、そういったことをすれば土地収用が認められることになるそうでございます。それが認められますと、その土地のタイトル、と向こうの言葉でいっております。こちらでは名義ということになると思いますが、こちらが事業施行者になるそうでございます。そして、その実際の補償費はあとでゆっくりきめる。それがいよいよ協議がまとまらないときは今の裁判所できめる。こういうことになるそうでございます。  向こうでは、そのタイトルが移れば仕事にかかれることになるわけでございますが、これが荒地とか何かと違いまして、人が住んでおるところでございますから、その人たちが移ってくれなければ実際の仕事にはかかれないわけでございます。それで、その人たちが他の住宅なりアパートなりに移ることにつきまして、あるいは店屋をやっている方ならば、他のどこかへ店舗を見つけてそこに移るということにつきまして、非常に世話をやいておるのでございます。そして、今のたとえばジョージ・ワシントン・ブリッジの場合には、たしか千八百十二世帯でございましたか、そういうような大へんな数で、人口にしますと五千人くらい移したのだそうでございます。  それで、ポート・オーソリテイの港湾とか、空港とか、いろいろな他の部局がありますが、そういうところからもその土地収用あるいは居住者移転関係の職員を集めまして、また新たに多少は採用した者もあるようでございますが、そういう者にみっちり、そういった関係の業務の、日本でいえば研修といいますか、講習をいたします。さらに、実際の事務に携わりながら経験を重ねていくというようなふうにいたしたそうでございます。そのために、要するに十分な人員をまず整備したということでございます。  それから、移転先を見つけるのにどうやったかと申しますと、一つは、その住んでいる人たちが自発的に探して見つけてくる、そしてそこに引っ越すというのが一つでございます。他の一つは、ポート・オーソリティの方で移転先を探してやるということで、熱心にそういったことをやったそうでございます。  今のところとちょっと違うところの例のようでございますけれども、一番ひどい例といたしまして、ある家族を引っ越すのに、二十カ所とか引っ越し先を世話したそうでございます。ただ、その家族が大へん貧乏人で、子供が非常にきたなくて、せっかく移転先を世話しても、向こうの方から断わったということで、二十カ所も探すようになったとか言うております。それくらいにしてやったということを言うております。また、その間、いろいろ移転先その他でごたごたしておるのでありますが、向こうでは、たとえばごく狭い地区の商工会議所があるそうでありますが、そういったものと連絡をとり、それから地区の納税者協会といいますか、そういったようなものとよく連絡していろいろな世話をやいてもらう。また、いわゆるボーイ・スカウトみたいなものと連絡いたしまして、たとえば夏場などですと、その地区の子供がそういったいろいろなごたごたで一時手足まといになるような場合には、そういった者を、日本でいえば林間学校とか、夏季学校式なものをやって、ボーイ・スカウトなんかにその子供の相手をしてもらう。そういう考えられるいろいろなことをやっておるようでありまして、そういったことで、住民たちが気持よくその間に処するようにしたというわけでございます。  それから、移転につきましては、先ほど申しました自発的に見つけた者とオーソリティの方で探した場合とは違いますけれども、とにかく、ボーナスというものを出したそうであります。これは半年かなんか期限が切ってございますが、それがだんだんスライドするようになっておりまして、早く移転した人にはボーナスをよけい出す、半年までかかればボーナスはほとんどなくなるというふうにしまして、そういったやり方についても、一つのちゃんとしたガラス張りの基準を作りまして、いわゆるごね得というものがないようであります。結局、ぐずぐずしておるに従ってボーナスは減るのです。それで万事いったのか、と言ったら、いった、と申しておりますが、そういうことをやったそうであります。その他実際の移転費とか、あるいは引っ越し先の家を修理する費用とか、普通に必要なものは全部出したそうでありますが、そういったようなことをやった。  それから、協力的に早く出た方には、日本でいうと表形状をやるというところですが、向こうは門口にそういうプレートをとめまして、この方は非常に協力してくれた方だという表彰のものを門口に張ったり、あらゆることをやったそうでありまして、アメリカじゅうからみなやり方を見に来た、と言って自慢にしておりました。  あらまし、そういったことであります。なお、詳しいことは、なんでしたら調べて差し上げたいと思います。
  21. 石川次夫

    ○石川委員 大へん参考になる御意見で、ありがとうございました。実は、このことはまだ突っ込んでいろいろ伺いたいのでありますが、時間がございませんので、簡単に二つだけ伺いたいのです。  裁判所が、普通の簡易裁判というか、日本の正式の裁判所ということになっておるのか、あるいはそういうところだけの特別の裁判所があるのかという点が一つ。  それから、補償という問題は、公開されておるのかどうかという問題です。日本は個人々々はわかりますが、あまり公にしません。公開してやっておりますか。  この三つをお伺いいたします。
  22. 松井達夫

    松井参考人 今の裁判所のことでございますが、これは私、法律の専門でございませんので、確定した御返事はいたしかねます。なお、官庁方面でそういうことを研究していらっしゃる方がございますから、そちらの方が詳しいかと思いますが、特別の裁判所のように聞いておりました。  それから、今の建物その他の補償費のことにつきましては、個々の建物の補償費とか土地の補償費とかいうものにつきましては、向こうでは評価人、アプレーザーという制度が確立しておりまして、この人たちが決定していくようであります。それですから、個々の家の補償ということは、公開の席ではないかもしれませんが、とにかく、そのアプレーザーがきめておる。それから、今のボーナスとか移転費は公開の数字になっております。
  23. 石川次夫

    ○石川委員 ありがとうございました。  それから、磯村さんにちょっと伺いたいのです。これも申し上げると、いろいろ申し上げたいことがたくさんございますけれども、結論だけ申し上げますと、東京の首都の人口の飽和状態に対する対策というのは、市街地改造法案というようなことだけではどうにもならないだろう、こうわれわれも考えておるわけです。そのための案といたしまして、首都あるいは大都市で持っておるいろんな機能がございます。大ざっぱに言って、政治的な機能あるいは経済的、産業的な機能、あるいは文教、教育的な機能というふうな、幾つかの機能がありまして、分散しても、それが都市に集中するような形にならないという、一つの機能をそっくり移すという格好でなければ、なかなかこの都市への人口過度集中というものは抑制できないのじゃないか。また、権力をもって膨張を抑制するといっても、なかなかこれはむずかしい。思い切って一つの機能をどこかに移さなければいかぬ。しかも、その距離は相当離れたところでないと、 かえって東京の周辺に、先ほどお話しになったように、それに関連する産業機能というものが発送することによって、都市集中を抑制しようという目的に違反することになるわけです。その効果は十分期待できないというようなことではないかというふうに考えて、その点、私も全く同感なのでございます。  そこで、実はこの前の委員会でもお話ししたのですが、東京都で、首都圏整備ということに関して根本的に考え方を改めなければならないというような観点に立って、その一つ方法としては、道路、運輸というようなものの対策を十年あるいは二十年先の遠大な計画のもとに考え直す。そのためには、東京都だけの予算ではどうにもならぬということで、副知事が外国に行きまして、外債を募集したいというようなことが新聞に出ておったので、そのことに関連をして、ここで建設大臣にも意見を聞いたわけです。この道路、運輸ということについても、東京都だけの考え方でやるということについては、いろいろ意見もございます。それはそれでいいとして、その中で、どうしても考えなければならぬ問題としては、東京湾の埋め立てということを一つの外債募集の条件のような形にしておったようでございます。これは確認した情報ではございませんで、新聞でございますから、はっきりはいたしませんが、それに関して建設大臣の意見を聞きましたところが、建設大臣は明らかにこれに対して批判的な立場でございました。東京湾を埋め立てるということで、これは費用の点その他いろいろございますけれども、こういうことで過度集中というものを抑制できるとは考えられない、結論としてはそういうような御意見であったわけです。東京都だけの考え方で、そういうものも含めて外債を募集するということについては、どうも賛成できないというふうにわれわれも考えたわけなのです。  そこで、この過度集中の対策として市街地改造法案というのは、これは糊塗策だといっては語弊がありますが、結果的には、予算の関係その他でそうならざるを得ない。根本的な対策としてはいろいろ考えられますけれども、今申し上げたような一つの機能をそっくりどこかに移すという場合に、政治の関係がいいのか。首都圏整備委員会では、文教というふうなことを考えておるようでございます。その他、産業という考え方もあるようであります。どういう機能を移した方が一番いいというふうにお考えになられるか。これは磯村さん、あるいは松井さんにも御意見があれば伺いたいのです。  それとあと一つ。今申し上げた埋め立てということと、それから一つの機能を遠く東京から移してしまうというような考え方は、これは対立する意見ではないでございましょうけれども、国の予算というようなことから見て、両方同時にやるということは不可能だと思うのです。従って、どちらがよりよい案かということについて、われわれも非常に迷うところなんでございますけれども、これに対して、松井さんなり、磯村さんとしての御意見があれば伺いたい。  あと一つは、先ほど佐藤さんからもいろいろ御意見が出たのでございますけれども、六大都市はいずれも人口の集中で困っておるわけでございますが、特に東京都の対策について、学会で、都市計画か何かで一つのまとまった意見を発表する場があるのかどうか。もしあるとすれば、先ほども佐藤さんの御意見にもありましたように、その学会で、東京都をどうするかということについての意見をまとめるような努力を、ぜひやってもらいたいものだと考えるわけですが、その点についての御意見一つ伺いたいと思います。
  24. 磯村英一

    磯村参考人 それでは、簡単に、と申しますか、率直にお答え申し上げます。  一番重点は、私は機能を移す論者でありますが、機能を移しましても東京の繁栄は変わらないということで、機能を移すということは遷都というような意味ではないという前提に立ちまして、それでは一体何を移すかということを歴史的に反省してみたいと思います。それは何かといいますと、日本都市の現在の形成は、封建時代においては大名の居城でございます。それが県庁に変わりました。現在の日本都市というものを、かりに県庁という政治的な場所を除外して地域計画を再編した場合に、一体どういう形ができるかということを考えますと、政治的な権力と申しますか、政治構造というものが、地域社会に非常に大きな基盤を持っておるということは、これは日本的な一つの特徴ではないか。私も一昨年から半年、ハーバード大学都市計画の方におりまして、アメリカ都市をいろいろ見たり研究したのでございます。アメリカの場合においては、たとえばニューヨーク市でございますけれども、アルバニーという四百キロも離れたところに州の州庁がございます。ロックフェラー知事はそこを飛行機で往復しまして、何ら差しつかえなく仕事をやっております。こういったようなことは、日本都市でもって今まではできなかったと思うのでございますが、交通が発達しました今日におきましては、そういう政治的な権力と、経済なりその他というものがむしろ過当に集中したものが、日本大都市への人口の集中を来たしておるということを考えて参りますと、政治的なものの一つの機能的な分散というものが、日本の体質改善の重点になるのではないかということが第一点でございます。それに伴いまして、それでは政治権力だけを一応若干ずらすかということではございませんで、私はこれに伴いまして、かりに申し上げますと、国会がどこかにお移りになれば、国会は国会図書館というような実に大きな一つのものをお作りになっております。こういったような図書館なんかは、東京大学が全部かかりましても、あれだけりっぱなものは持てません。ですから、私は大学が移ることは、これはいろいろ事情があってむずかしいと思いますが、大学院が国会図書館を中心にいろいろなデパートを持って、政治学というものは、早稲田とか慶応、東大あるいは立教というものが一緒になって、そこで研究するようなものは、国会図書館を中心にそういう町は作れる。それだけでも、東京への重圧というものは非常に変わってくるということを考えて参りますと、かりに今、これはその御決意でもって実施されれば国会と図書館、それからそれに伴って文教的なものは、まずこれに伴っていってよろしいのではないか、そういうふうに考えております。  それとともに、もう一つ考えられますのは、日本都市の形成で、今まで戦争でもって非常に変わりましたのは、軍事基地が変わったということでございます。これによりまして日本都市の興亡は非常に大きなものがございましたが、一体これをどうするかということでございます。ワシントンのペンタゴンという統合参謀本部がワシントンから四、五十キロ離れておりますが、そういうことを考えてみますと、かりに、ああいったものが東京のまん中になくてもいいというような、いわゆる政府機関の一部もまたそういう意味において分散すると申しますか、機能を延長するという形も考えられていいことではないかというふうに考えます。  それから、第二の、埋め立ての問題でございます。私は、この東京湾の埋め立てというものは限度があるというふうに考えます。東京湾は、御存じのように、東京沿い、神奈川沿いというのは非常に地盤沈下をいたすところであります。千葉県の方は地盤沈下が比較的少ない地域でございます。従って、現在京葉工業地帯がある程度発展をいたすことは考えられますが、私は遺憾ながら、産業計画会議等がお考えになっているような、ああいう形の、人口三百万か四百万にわたるような地域を作るということは、これはかりに今世紀のあとであるということは別でございますけれども、それより先に考うべきことは、国土縦貫道路というものが、一応はっきりした線でもって国会の御意思決定もあり、これに伴うところの部分的な予算というものも考えられておる段階におきましては、この国土縦貫道路に沿って都市作りをやる、部分的な機能分散をこういうところにやる、これが具体的な施策ではないか。必ずしも私は埋め立ての全部に反対するのではございませんが、経済的な効果、また人口の過度の集中をさらにするという面からいたしまして、埋め立て計画につきましては、私は若干批判的な立場を持っております。  第三点につきましては、道路、運輸等の問題でございますが、実は先はどの委員の方の御質問にもお答えしたがったのでございますが、この機会にあわせて申し上げます。  昭和通りが高架になる、これはけっこうでございます。そこでは、なぜ国鉄の山手線といったようなものを高架に利用しないかということでございます。これは道路建設省の所管であり、国鉄が運輸省であるということではないか。それでは、国鉄は自分の方は高架に使わないかというと、そうではございません。今度の三時間特急は、品鶴線の一部、自分のところはこれを高架で通します。こういったような官庁のセクショナリズムというものを考えてみますと、現在環状道路の非常に混雑するのを防ぐために、そういう多目的に山手線の一部、現在の国鉄の施設、を利用するような考え方が、もうあってよろしいのではないか。広大な操車場を非常に不経済に使っておったり、そういったようなことがありますが、事情によっては、東京駅の上のまるで航空母艦の甲板のようなところを一体どう利用するかということは、先ほどの昭和通りの二階構造の考えと関連して、やはりこれは、両省の上に立つような国会においてお考え願っていいことではないかというように考えております。  最後に、学会におきましてということでございますが、まことにこれは痛いところでありまして、松井先生なんかと御一緒にいろいろ学会等でもやっております。それは実は、北九州の問題につきまして、学会が全部出まして、五月の中旬にその計画について意見をまとめる考えでおります。東京の問題については、いろいろ意見が出ております。出過ぎております。むしろ、どうまとめて、強い力でもって皆さん方の御批判を仰ぐかという段階だと思いまして、松井先生ともできるだけ努力いたしたと思います。
  25. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 一点だけ。本国会に土地収用に関連する法案が三つ出ております。いずれも土地収用法の適用もしくは準用をしておるわけでありまして、参考人にお聞きしていいのか悪いのか存じませんけれども、こういうふうに土地の収得もしくは収用にかかる事業がたくさん出て参りまして、その中の大きな役割をなすのは土地収用委員会だと思うのであります。この土地収用委員会というものは、御承知のように、土地収用法によりまして詳細に規定してありますが、こういう事件がたくさん出て参りますと、もっと土地収用委員会の構成、権限というものを考えてみなければならぬのではないかというふうに考えるのであります。収用委員会委員の資格を見ましても、ここには単に法律、経済に経験のある人を知事が任命するということになっておりまして、別にこれに対する資格の審査は厳重にされておらないわけであります。事件によっては、裁判に関するようなこともありましょうし、土地の評価はもちろんでありますし、補償の算定についても重大な問題でありますから、こういう法律がたくさん出てきた今日におきましては、収用委員会の構成、権限というものをもう少し考え直してみる必要があるのではないか、私はかように考えておりますが、もし御意見がありましたらお述べいただきたいと思います。どちらの参考人の方でもけっこうでございます。
  26. 加藤高藏

    加藤委員長 両参考人の御意見は、田中先生の御意見はごもっともであるということでありまして、御意見がないそうでございます。  それでは、両参考人に対して他に御質疑はありませんか。——なければ、両参考人の御意見の聴取並びに質疑はこれにて終了いたします。  両参考人には長時間御苦労様でございました。いろいろ貴重な御意見をお述べいただき、まことに、ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  27. 加藤高藏

    加藤委員長 これより前会に引き続き政府原案に対する質疑を行ないます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。  田中幾三郎君。
  28. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 今の土地収用委員会のことに関しまして、資料を要求いたしておきたいと思います。  土地収用委員会委員の全国にわたる経歴、どういう資格を標準にしてやっておるかということです。  それから、過去何年と制限するわけにはいきませんけれども、収別委員会において扱った事件の種類、内容、そういうものの取り調べができましたらいただきたいと思います。どういう種類の事件、内容のものを扱っておるか。収用委員会の事件の扱い件数であるとか、あるいは扱った事件の内容。たとえは評価についてどういうことがあったか、あるいは権利関係についてどういうことがあったか、そういうことについても。  収用委員会委員の全国の名前と経歴等もわかれば出していただきたいと思います。  これは、この法案だけではなしに、あと公共用地取得に関する特別措置法案が出ますし、それにも関係がありますから、これを審議する間にいただけばけっこうですが、要求をいたしておきたいと思います。
  29. 加藤高藏

    加藤委員長 了承いたしました。     〔委員長退席、瀬戸山委員長代理着席〕
  30. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 民事局長の御出席を求めておきましたが、これはあるいは法制局の方でよかったかもしれません。民事局の方でも三法案についての案の作成についていろいろ御協議があったのですか、なかったのですか。
  31. 平賀健太

    ○平賀政府委員 建設省から協議がありまして、私の方でも案の内容を十分検討いたした次第であります。
  32. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それでは、この中に含まれております法律問題について二、三お伺いしたいと思うのであります。  土地収用によりまして、もしくは契約によって土地を収用された場合には、所有権は消滅する。移転するのですから、もちろんですぬ。従いまして、土地の上に設定されておった担保物権も同時に消滅する。これは争いのないところであります。ところが収用された土地にできた建物について譲り受けの申し出をする、あるいは賃借りの申し出をする。そこで、その権利が確定するのは、この公告のあった日の翌日ということになっておりますね。そうしますと、収用された日から公告の日までの間は所有権はないわけです。物権はないわけですね。その中にあるのは譲り受けを受ける権利と貸借りを受ける権利、それから、土地を収用された場合にはその補償として受ける供託金、こういうことになるのですが、この供託金も金そのものに対する権利ではなくして、供託金の返還を受ける取り戻し権の債権なわけであります。それから同時に、賃借りにしろ、あるいは建物の所有権にしろ、所有権を取得するまでは譲り受けを受けるという請求権、すなわち債権を持つ。  ところが、政府の説明によりますと、所有者は物上代位権を持つのだという説明になっております。しかし、その債権に対して担保権が消えてしまうのに、債権の上に物上代位ということはできないと私は思う。公告があって翌日に所有権、物権を取得するのですから、その前に所有権が消滅しておる。その間におけるところの今の譲り受け希望の債権、供託金を取り戻す権利、その上に対して物上代位ということはあり得ないと思うのですけれども、これはどういうふうにお考えになっておりますか。
  33. 平賀健太

    ○平賀政府委員 物上代位の規定は民法の三百四条にもございますし、土地収用法にもこの物上代位の規定があるわけでございます。この法律案に即して申し上げますと、土地所有者は所有権を失うわけでございますが、その対価といたしまして補償金、あるいは協議によってこの事業の施行者との間に協議が成立しますれば、その協議に基づく対価の請求権というものがあるわけでございまして、この補償金の請求権あるいは対価の請求権の上に従前の担保権者は権利を行なうことができる。これは民法の規定あるいは土地収用法の規定と同じ趣旨でございます。なお、この法律案におきましては、その補償金の支払いにかえまして新しい建築施設というものを給付することになっておりますので、その給付を請求する権利の上に従来の担保権などがいわば乗っかってくるような関係になるわけで、物上代位ということは民法にも、土地収用法にもございまして、可能であるわけでございます。
  34. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私は、それが非常に不合理であると思うのです。土地収用法の百四条によりますと、補償金またはかえ地に対して担保物権者は権利を行なうことができると書いて、しかし、これは債権ですから、「但し、その払渡又は引渡前に差押をしなければならない。」。これは債権者であっても、担保物権者であっても、その債権の払い渡しあるいは引き渡し前に差し押えをしなければならぬというので、つまりその手続をとらなければその権利は押えられないわけです。この規定によりましても、譲渡の場合には民法の規定によって相手方に通知をしなければ効力がないといって、どこまでもこれは債権として扱っておるわけです。ですから、もし、この譲渡もしくは差し押えをする前に第三債権者からこの権利を押えられたらどうなりますか。転付命令がかかったらどうなりますか。物上代位というけれども、中間においてその権利の上に差し押えがきて、転付命令を受けるというようなことがありましたら、どうしますか。これはトビに油あげをさらわれるようなもので、担保物権者はよそへ取られることになる。これではその補償金なり、かえ地なり、あるいは家屋に対する賃借りの請求権なりが消えてしまって、結局従前の古い担保権者は権利を失うということになる。そういう場合が必ずあり得ると思う。この物上代位ですけれども、権利の上に権利を行使することができるという一応希望の担保物権になるだけであって、その権利の上に直ちに質権が設定されることではないというように、この書き方からいうと考えられる。そうしますと、担保物権者は、土地収用もしくは譲渡の契約によってその翌日から権利を失う。将来差し押えで取れるという希望はありますけれども、その権利そのものに対する物上担保権のような確実な権利がないわけでございます。こういうふうに思いますが、どうでしょう。
  35. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その点は仰せの通りでございまして、民法の三百四条の場合、土地収用法の第百四条の場合と同じことで、やはり債権に対して優先権を行使できる。この三十二条も同じに考えるべきではないかと思っております。
  36. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それならば、先取特権があるというふうに考えるならば、民法を改正して、先取特権の種類の中に入れなければ、これは担保権者を保護できませんよ。物上代位ということならば、この収用によって所有権が消滅したときに、 この法律の規定によってスライド的に債権に対する質権を設定するというような効力があればいいけれども土地を収用されて権利は失う、担保権も消滅する。公告がなければ権利は現実にこない。こういうことですから、結局物上代位をするというなら、物に変わった債権に対して、法律的に自然的にこれが質権の目的物になって、そうして当事者の意思がなくても、それが直ちにその権利の上に質権が設定され、もとの担保権が自動的に移っていくということでなければ、担保権者はこの法律ではばかを見ると思いますが、どうでしょうか。
  37. 平賀健太

    ○平賀政府委員 そういう構成も考えられるわけでありますけれども、当事者が違って参りますし、それから、その権利の行使方法につきましても問題がございます関係で、民法でも土地収用法におきましても、当然その補償金に対する請求権あるいはかえ地に対する請求権の上に質権が設定されたことと同じに考えるというふうには構成していないのでございます。この法律案も、やはり同じ趣旨でございます。民法の物上代位あるいは土地収用法の物上代位の規定に比較して、担保権者の保護がより劣っておるということには相ならぬだろうと考えるのでございます。同じ保護を与えておるというふうに言えるのではないかと思うのであります。
  38. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 土地収用法の百四条によっても、この補償金の上には直ちに権利が行使されないわけであって、担保権者といえども差し押えをする、こういうことなんですから、今あなたが幾らそうおっしゃっても、補償金なり供託金の上に直ちにその権利が質権として移っていくということは考えられない。そうしますと、やはり担保権者というものを保護できないわけです。  かりに、それでは供託金を例にとってみましょう。施行者が補償金を供託する。そうすると、供託をした金を受け取る権利者は、施行者か、あるいは土地を収用された者か、どちらかである。その中間において第三債権者がおって、この供託金の還付を受ける。債権を差し押えて転付命令をとったら、その第三債権者に移るわけです。失われた担保債権者がいち早く見つけてやれば、それは格別ですよ。そうでなければ、時間があるのですから、その間に他から押えられて、これを取られるというようなことになりましたら、従前の担保権者というものは、何を一体担保に取ったらよいか。つまり、収用によって担保権が即時に消えるわけですから、こういうものを保護する必要があるなら、もっと第三担保権者を保護するために、そういうものの上に質権が直ちに設定されるのだ、先取特権があるのだ、といって民法を改正するなり、あるいはこの法律の中に、物上代位という言葉でなしに、権利そのものが担保権者のものになるんだということにしておかなければ、これは保護できないのです。あなたは、そういう答弁でずっといいと思いますか。事件で裁判が起こったらどうなりますか。これはもっと研究なさらぬと、担保権者が損害を受ける事態が起こってくるということを私は考えるのです。もう一度研究なさるならなさるで、けっこうなんですが、その答弁で済ますというなら、私はもう少しこの法律に明るいなにに聞かなければ、納得できません。
  39. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま仰せの点は、この法律案のみならず、民法の三百四条あるいは土地収用法、その他農地法なんかにも、いろいろ供託の規定がございますが、それに共通の問題であろうと思うのでございます。ただ、供託者といたしましては、一体その供託金というものがある土地の対価に相当するものなのかどうか、これはわかりますが、その土地に担保権が設定されていたかどうかということは、供託者としては当然わからぬわけでございまして、その関係で、やはり差し押えを必要とするというふうに解すべきではないかと、私自身は思っておる次第でございます。そういう関係で、仰せのように、当然質権が設定せられたのと同じように考えるというふうに考えますと、これは一番保護が徹底するわけでございますが、やはり統制的に問題があるのではなかろうかと思われる次第でございます。
  40. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それでは、もし、この補償金を受ける権利のある者もしくは供託をされて供託金を受け取る権利のある者が、よそへ債権を譲渡して、手続をとって債権譲渡の通知をしてやったら、この補償金なり供託金というものは、消えていくでしょう。担保権者は、その場合どうなりますか。
  41. 平賀健太

    ○平賀政府委員 もし、他の債権者が先に転付命令を受けてしまうということになりますと、担保権者は保護を受けられないという結果に相なるわけでございます。
  42. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうすると、この三十二条の給付を受ける権利、それから供託金に対して権利を行なうことができるといっても、これはほんとうに保護できない。それから、土地収用法の百四条には、これも私はどうかと思うのですけれども、「但し、その払渡又は引渡前に差押をしなければならない。」とあって、今度のこの三十二条には、こういうただし書きの規定はないのですね。これは、何か含みがあってこういう規定になったのですか。
  43. 平賀健太

    ○平賀政府委員 この解釈は、いろいろ見解が分かれておるわけでございます。民法の三百四条につきましてでございますが、私どもとしましては、やはり三百四条の、ただし差し押えをしなければならないというあのただし書きは、当然のことを言ったまでの規定であるというふうに理解いたしまして、この三十二条には特にその規定はございませんけれども、やはり同様趣旨と解すべきものではなかろうかというふうに理解いたしております。  なお、ただいまの点につきましては、これは民法の三百四条に根本問題があるわけでございまして、物上代位権者が権利を行使する前に、他の債権者が転付命令をとってしまっている、あるいは債務者が第三債務者に対する債権を他に譲渡してしまうという場合には、保護を受けられないことになるわけでございまして、物上代位についてはいろいろ学説でも議論が分かれておりますし、異議がございますが、実は私どもの方で、法制審議会におきまして民法の財産権の改正を今審議中でございますので、三百四条の問題も、これはぜひとも合理的に解決しなければならぬ問題だと思っておるのでございます。ただ、現在は民法の三百四条がそのままございます関係で、ほかの法律におきましても、第三百四条の趣旨にならった規定が多数できておるのでございます。将来、民法三百四条の改正に伴いまして、こういう法律の規定もやはり再検討する必要があるのじゃないかということは、私ども考えておる次第でございます。しかし、現状のもとにおきましては、この規定の三十二条あるいは土地収用法の百四条というようなことに相なるのではないかというふうに考えております。
  44. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 土地収用法の百四条のただし書き、私はこれもなくてもいいんだと思います。そうしますると、土地の収用処分に関連をいたしまして、所有権者保護はしてありますけれども、所有権の上に担保されておるところの担保権者の保護は、私はきわめて薄いと思う。ですから、この点は、私のただいま申しました通り、補償金を受ける権利、もしくは建物を譲り受ける請求権、あるいは借家を申し込む権利、これを一つの債権として、この債権の上に権利が直ちに設定されるという規定を作るか、さもなければ、これはほかへ譲渡を許してはならぬ、担保権のある場合には譲渡を禁止した法律を作っておかなければ、所有者は保護されて対償権を受けるけれども、あるいは変わった建物の譲渡を受けるけれども、担保してあったらこれが消えていくということになると、担保権者が非常に損害をこうむることになるわけですね。   〔瀬戸山委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、私はやはり譲渡禁止によって担保権者を保護するか、しからずんば、債権の上に質権を設定するという法律の規定によって権利を保護する。もしくは、建物の所有者になった場合には、前の物権が消えておるのですから、担保権は一たん消滅します。ですから、債権の場合には債権の上に質権を設定する。それから、建物の所有権が現実にその人にきた場合には、収用された前の担保権が新しい建物の上に復活するというのでなければ、これは第三債権者すなわち担保権者を保護するという規定にならぬから、これは私はどうしても納得することができません。ですから、もう少し研究願うか、やってもらわないと、われわれ法律をやって、常に訴訟もやっておる者にとっては、これは危険きわまる法律です。担保権者の保護にはならない、こう思う。ですから、ここで押し問答をしてみても、しょうがない。もう少し部内でも、通るまでに、これは法律的によほど研究してもらわないと、土地なり家屋の所有者は保護するけれども、その上に担保されておるところの抵当権、質権者は損失をこうむるということになりましたら、これはだれか損害を賠償するようなことになってきます。こういうむずかしい法律、しかも、人の所有権を土地の収用によって左右させる法律でありますから、この点は万遺漏のないようにしておかないと、私はこの点においては、少なくともこの法律のまずい点があるというふうに考えるのであります。
  45. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいまの御意見、私どもも非常にごもっともだと思うのでありますが、ただ現行制度のもとにおきましては、債権の上に当然質権が設定されておるのと同じような効果を生ずると申しましても、その公示方法が実はないのでございます。公示の点で非常に行き詰まりまして、 たとえば、その土地に抵当権が設定されておったとするならば、その土地の対価である補償金の請求権、あるいはこの法律案にありますような建築施設の譲渡を受ける権利、その債権の上に当然乗り移ってくる、法律上も当然乗り移ってくるといたしましても、その債権にそういう権利が発生しておるということを公示する方法が実はないのでございます。だから、その債権の譲渡を禁止いたしましても、もともと抵当権つきの土地に対する対価なんだということが公示できないのでございます。その関係で、これは非常に取引の安全を害する結果に相なるのではないか、譲渡禁止という考えは非常にごもっともだと思いますけれども、技術的に非常に困難を伴うのではなかろうかというふうに考える次第でございます。  ただいま仰せの点は、私どもとしましても、民法の改正の問題として今後十分に検討いたしまして、もっと合理的な方法考えてみたいと実は思っておるわけでございます。その際に、こういう法律におきますところの物上代位の規定も、あわせて検討さるべきものではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  46. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 物上代位という言葉を使っておるわけですけれども、実際において物上代位にならない。所有者は保護するが、所有権の上に設定されておるところの担保権者は保護されない。間接に権利を侵害することになりますから、私はもう一度この法案の通過する前に検討していただいて、納得のいく御答弁を願いたいと思うのであります。
  47. 山中日露史

    ○山中(日)委員 今、田中委員から御質問がありましたのに関連いたしまして、私も解せない点がありますので、この機会に、はっきりしておきたいと思います。  三十二条の物上代位の規定によります担保物権が消滅した場合に、それにかわる対償、つまり金銭的給付に対して物上代位するということだけでなしに、建築施設の部分の給付を受ける権利にも物上代位権があることになっております。つまり金銭的な給付を受ける場合に物上代位をするということは、意味はわかるのでありますけれども、それと同時に、建物の一部を受ける権利にも物上を代位するということになっております。従って、私どもが理解できないのは、建物の一部を譲り受ける、つまり給付を受ける、その権利に抵当権が物上代位をするというのは、一体どういうことを意味するのか。先ほど田中委員のおっしゃった通り、新しく給付を受ける建築物の一部に抵当権が及ぶのだというのであれば、理解はできるのです。しかし、そうではなしに、新しい建物には抵当権が及ばないので、ただ建物の給付を受ける権利に物上を代位するということは理解ができない。そのために抵当権も保護されないし、同時に今度の法律では、従来の法律と違って、ただ金だけくれればいいというのじゃなしに、金だけでは困るだろうから、金のかわりに建物をやろうというのが、この法案の基礎なんです。従って、その所有権を失った人も、金のかわりに建物をもらうわけですから、大へん助かるわけです。ところが、今度の法律を見ますと、建物の譲り受けを請求する権利のある所有者、つまり債務者は、抵当権者との間に話をして、その抵当権を抹消してしまわないと譲り受ける権利というものを撤回したものとみなす。つまり公告の日までに抵当権と話し合いをして、その消滅をしなければいかぬ。結局払うということだろうと思いますが、そうすると、債務者は抵当権者には金で払う。ところが、今度は金で払ってしまえば、対償物——建物はこないわけです。そうすると、その所有者は、金を抵当権者には持っていかれる、建物には入れないというような結果になって、結局抵当権者の保護にも欠くる点があるし、また債務者の保護にも欠くる点があるというので、非常に不合理な点が出てくるのじゃないか。  そこで、明らかにしたいのは、建築施設の部分の給付を受ける権利に物上を代位するというのは、どういう意味かということです。
  48. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これは、物の給付を請求する権利の方に代位しているわけですが、民法の三百四条にも、金銭または物に対して代位できるということで、物の引き渡しあるいは物の給付の請求権に代位するということは、決して不可能ではないと思うのでございます。この建築施設の部分の給付請求権が発生しました場合には、ほとんどすべての場合がそうだろうと思いますが、まだその建築施設は具体的にはできていないのでございまして、現実に特定の不動産があるわけではないのでございます。そういう関係で、将来そういう建築施設ができて、そうして工事完了の公告があったら所有権を取得する、そういう権利であります。その権利に対して代位して行くということなのでありまして、ただいま仰せのように、その建築工事が完了しまして、でき上がりますところの建築物の一部というものが、すでに給付請求権が発生したときに存在しているのであれば、その建築施設の一部に乗っかっていくことが可能でございますけれども、まだ、これは将来できるものなのでございまして、どうも、建築施設の一部に対して抵当権が当然乗り移っていくというような更生はできないように思うのでございます。
  49. 山中日露史

    ○山中(日)委員 そうしますと、結局将来の問題ですが、将来建築物ができたときに、その抵当権が全然乗っていかないということになれば、その間のそこの権利に物上代位するということは何も意味をなさぬことになるのじゃないですか。金銭的給付であれば、それによって物上代位ができると思いますが、将来建物の給付を受ける権利に抵当権が物上代位するといっても、その間、抵当権というものは一体どういう効力を持っているのか。それによって抵当権者はどういう保護をされるのか。そこがわからないのです。
  50. 平賀健太

    ○平賀政府委員 それは、やはり将来建築施設ができまして、この給付を受ける権利、これはやはり一つの財産権でございまして、民事訴訟法の定めるところに従ってそれを換価することができるわけでありますから、抵当権の実効としましては、その給付請求権を換価する、競売をするとか、あるいは裁判所の譲渡命令をとって債権者がみずから譲渡を受ける、というようなことは可能なのでありまして、決して有名無実と申しますか、実のない権利ではないと思うのでございます。
  51. 山中日露史

    ○山中(日)委員 そうしますと、先ほどもちょっと田中委員から言われましたが、単に抵当権者が第三債権者に転付命令をされたような場合においては、もう優先的効力は全然ないということになるわけですか。その場合においてはどうなんですか。
  52. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その点は、先ほど田中先生の御質問に対してお答えした通りでございまして、建築施設に対する給付請求権のみならず、補償金を払い渡す場合におきましても、その請求権は第三者から差し押えられ、転付命令をとられてしまうということになりますと、その担保権者は権利を失うという結果に相なるわけでございます。私どもの従来の解釈に従うと、そういうことになるわけでございます。もっとも、これにつきましては異論がございまして、そうでないという解釈論もあるわけでございます。しかし、従来の大審院なんかのとっておりますころの解釈に従いますと、先ほど田中先生にお答えしたような結論に相なるというふうに考えておる次第でございます。
  53. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 この点は、先取特権に関する民法三百四条の規定、これは当事者が売買して、なくなっていくのですから、いわゆる物上代位という言葉で土地収用法百四条のような書き方をしてありますけれども、本件の問題は、土地の収用によって半ば強制的な土地取得するわけですから、所有者の所有権を制限し、侵害するということについては非常に詳しくこの法律ができているわけです。同時に、客体となる土地もしくは土地と一体をなしている担保権については、所有者と同様にやはり保護すべきではないか。土地を収用されたがために間接に担保物権者が権利を失うというようなことではいけないではないか、という考えに立っておるのでありますから、民法にそういう規定があるからといって、担保権者の方は保護は軽くてもいいというような行き方では、少し手落ちになるのではないか、こういうふうに考えておるわけです。私も研究はしてみますか、あなたの方も、もう一度御研究願いたいと思うのであります。  それから、もう一点は、十三条の障害物の除却です。これは、判決も何も得ないで、直ちに施行者がその所有権を取り除くという、いわば執行力のある正体のような効力でやることになっております。判決で権利の実力行使をやるのは、やはり判決が確定して、執行文をもらって、執達吏に委任をする。そうでないと、たとえ裁判所で判決をもらっても、権利の実力行使、すなわち執行ということはできないわけです。ところが、この十三条によりますと、きわめて手軽にこの障害物の除却ということをやっておるのです。これは、やはり見方は、執行力のある正体と同じように見ていいのですか。これに対する異議のあるような場合です。十三条の四項の終わりの力に、「当該土地の原状回復又は当該建築物その他の工作物若しくは物件の移転若しくは除却を命ずることができる。」とあるが、この執行、現実の権利の行使は、一体だれがやるのですか。
  54. 関盛吉雄

    関盛政府委員 この障害物の除去につきましては、この事業を施行する者が行なうわけでございます。
  55. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうすると、これは測量のために立ち入りとか、あるいはじゃまになる簡単なものを取り除くとか、どけるというようなことと違って、所有権に関する物権もあると思うのです。それをただ命令で取り除くということになると、これは判決にも何にもよらないで、ただ行政官庁もしくは施行者の一存で権利を除去するというようなことになると、これは非常に強い命令権を持つことになるのじゃないですか。こういうことについての議論はなかったのですか。これは立ち入りや何かと違いますよ。
  56. 関盛吉雄

    関盛政府委員 この規定につきましては、住宅地区改良法におきましても、同じように知事がこういう事業を施行している者の監督者としてやれるような規定がございまして、住宅地区改良法の九条の五項も全くそれと同じような例文の規定でございます。
  57. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 まあ、ほかに例文があるのかもしれませんけれども、これはこういう公共施設のための行為ですから、つい簡単にこういう規定ができたということになりますと、これは非常に権利の保護について問題になるのじゃないか、こういうように考えるから質問したわけであります。もし、こういう場合には、防御する方法としては、行政事件の停止をするとかどうとかという救済方法はあるのですか。
  58. 平賀健太

    ○平賀政府委員 十三条の四項の障害物の移転、除却の命令、これに関しては当然行政訴訟を起こせるものと考えます。
  59. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それでは、もう一点伺っておきます。その収用された建物について借家権のあるものは、家主がその家産建物の所有権を取得したときにこれを借り受ける権利があるという、罹災都市借地借家臨時処理法のあの考え方だろうと思うのです。ここには賃貸借の条件その他のいろいろなこまかい規定を管理規定に書いてありますか、私のお伺いいたしたい点は、家屋を取得をした者が、さらに前の借り主に貸すという場合は、家屋の所有者と以前から住んでおった借家人との間の自由契約によって、借家に関する契約の条件がきまるわけです。そうすると、施行者その他の第三者は一向関係のないことですからもとからそこに家を持っておったものならそれは格別ですけれども、さらにその家をまた賃借りしておるというのは、これは家主と借り主との間の契約によって契約条件がきまる。そう思うのですけれども、それもやはり、この管理処分計画というものによってなお条件をきめるのですか。
  60. 関盛吉雄

    関盛政府委員 これは、建前といたしましては、ただいまお話のように、賃借人は、新しくできます従前の家主の持っておりました建築物の一部に賃借権を持つという関係になっておりまして、建物が新しくなりましたし、条件も変わりますので、その借家条件についてお互いに話し合いをするということで、その話し合いの内容について、借家条件の裁定について審査委員の同意を得まして施行者が定める、そういう形になっておるわけでございます。
  61. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうしますると、前の家屋の所有者が所有権を取得して前の借り主に貸すという場合には、その家屋の所有者と借り主との間においてきめるのではなくして、なお施行者がその中に介入して賃借り条件をきめることになるのですか。
  62. 関盛吉雄

    関盛政府委員 それは、建前は、いわゆる家屋の所有者と賃借人が話し合いをしてきめるわけでございます。その協議が成立しないときに、先ほど申しましたように、施行者が審査委員の同意を得て裁定をしてあげるということで、なるべく早く新しい建築物に移った間における事後のトラブルをなくしたい、こうい趣旨でございます。
  63. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それであったら、その審査委員意見に従わない場合は、どうなりますか。これは調停ですから、相手方ともう一方とがその調停に同意をしなければ、できないわけです。ですから、調停においても、そういうことで特に強制調停ということがありますが、実際問題として強制調停することは、千にも万にも一つもありません。そうしますると、もしその審査委員の調停に当事者が同意をしないという場合には、どうなっていきますか。
  64. 関盛吉雄

    関盛政府委員 ただいまのお話は、施行者の裁定の条件に関係者が不服である、従わない、こういう場合につきましては、六十三条の規定によりまして、異議申し立て、訴願、訴訟、こういう段階に移っていくということでございます。
  65. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 この法律は非常にこまかく微細に書いてありますから、実施については非常に問題が起ると思うのです。訴願、訴訟までいけばいいのですけれども、審査委員会なりあるいは土地収用委員会というものが法律問題にまで介入するということになりますと、これは裁判の内容にまで入っていくわけです。それで、土地収用委員会というものの構成、権限について、もう少し検討をして、そうして、この裁判所でやる法律係争事件にまで介入しないようにしておかないと、行政官庁なりこういう委員会が裁判所の行為に介入していくことになりますから、私は先ほど、土地収用委員会の構成その他について資料を求めておるわけであります。これは、この法律だけならいいけれどもあとでまた公共用地取得にに関する特別措置法ができまして、土地収用法よりも、もっときびしい土地の収用の規定が出てきますから、私、特にその点に御留意願いたい、こういうふうに考えておるわけであります。どうぞ、この点について十分御善処願うと同時に、この資料を拝見しまして、土地収用委員会のことについては、あらためてまた御質問を申し上げたいと思います。
  66. 加藤高藏

    加藤委員長 次会は明二十六日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十二分散会