○
坂村政府委員 御
指摘の
通り、
農業共済の会計のことにつきましては、毎年々々非常な不当
事項がございまして、まことに恐縮をいたしておる次第でございます。毎年、当
委員会におきましても、いろいろ御
指摘もございますし、あるいは御
注意もございまして、そういう点も十分取り入れまして、
指導に当ってきておるのでございますが、なかなかこの不当
事項を絶滅するという
状況には至っていないわけでございます。その根本は、先ほどおっしゃいましたように、今の
制度は
昭和二十二年から始まっている
制度でございますけれども、今の
制度が、最近の農作の災害、あるいは農作技術、それから農家
経済というようなものの実情に合わなくなっている部面が、相当あるということを言わざるを得ないんじゃないかというふうに思うのでございます。それからそれと同時に、現在の組織あるいは
事業の運営そのものが、私どもいろいろ
考えてみまして、大体
農民から遊離をしておるという感じがするのでございます。そういうような
意味からいたしまして、
制度としては非常にりっぱに仕組まれておる
制度でございまするけれども、そういう実情に合わしたものにこれを直さなければいかぬということで、 いろいろ毎年々々会計
検査院に
指摘をされまする
事項そのものを直すには、
制度の根本を直さなければならぬというつもりで、数年前からいろいろ検討して参ったわけでございますが、昨年の四月に学界の方々にも入っていただきまして、農業災害補償
制度の抜本改正のための協議会というものを設けまして、一年間これを検討して参ったわけでございますが、今度の
国会に改正案を提出いたしまして、御
審議をいただく、こういうことになっておるわけでございます。
そこで問題はどういうところかと申し上げますると、非常に大ざっぱに要点だけを申し上げたいと思うのでございますけれども、今の
農民の不安は、ざっくばらんに申し上げますると、掛金をかけておるのだけれども、ちっとももらえないじゃないかということが、
一つの不満だろうと思うのでございます。それは農業の災害というものが、あるいは農薬の発達、それから防除技術の進歩、それから土地改良が進んで参りますとか、その他農作技術が進んで参りまして、災害というものが、ほとんど天災というようなものに限られて参りまして、だんだん昔と形が変わって参ったということが
一つであろうと思います。それと同時に、地域的に災害が非常に偏在して参りまして、そういう
関係から、安定地帯では、いつでも金はかけっぱなしで金はもらえない、こういう不満があるわけでございます。それともう
一つは、いざ災害が起こった場合にも、もらい方が少ないじゃないかということが、これは確かにあるのじゃないか。こういう不満があるということは、
一つの不満であろうというふうに
考えておるのであります。
そこで、そういうような
状況でありまして、
農民が
自分で金をかけておるのでございまするが、その金がどこへ行ってしまうのだろうということを、非常に疑問に思っておる。どこかほかに使われてしまっているのじゃないかというようなことで、そういう不満がある。そういう
制度に対して、おっしゃるように、全部強制加入でやっているということは、いかにも困るじゃないかという不満が、大体今の
制度の中で私は一番
重点であろうと思っておるのでございます。ですから、そういう点を逐一検討いたしまして、今の
制度を
農民に密着させる、
農民の自主的な責任においてこれが運営されるようなことにすることが、
一つの根本問題であろうというふうに
考えまして、第一の要点は、現在の運営を末端に相当十分な責任を負わせるような形に持っていったらどうか、これが
一つでございます。それは、今は通常災害と異常災害というのがございますけれども、通常災害については、県
段階の連合会が全部責任を持っておるわけでございまして、そのうちの一割を末端の共済組合が持っておるわけでございます。ですから、そこで
農民がいわゆる
共済金を払う財源としての掛金をかけましても、そのうちの一割だけが末端の組合に保留されまして、残りの全部は連合会に行くわけです。そして連合会が通常災害の全部の責任を負う。通常災害を飛び越えた異常災害については、国が責任を持つ。そういう体制でございます。そこで
農民としては、
自分のかけた金が
手元にございませんから、県の連合会に行っちゃって、そしてどこか災害のあるところへ行ってしまうという不満があるのでございますので、実際十年以上の経験でございまするから、通常災害のときには、全部末端の共済組合におろそう、こういう
考え方が
一つの柱でございます。そういたしますると、通常災害については末端の組合が全責任を負うというようなことでございますると、
農民のかけた金は、末端の共済組合に積まれておるわけでございます。従いまして、かりに災害が二年なり三年なりなくても、
農民感情としては、
自分の目の前に金を積んでおるということでございまするし、無事戻しもやれる。あるいはある程度基準を越えまして積まれて参りますれば、いろいろの病虫害防除に使えるとか、いわゆる備荒貯蓄的な
考え方を末端では中心にしたらどうか。当然災害も非常に少なくなっていますから、掛金も今度のやつは相当下がって参ります。ですから、わずかの金であっても、備荒貯蓄的な
考え方でそれを積んでいく。それを飛び越えたものについては、現在もそうでございますが、これは国が責任を負う、国から支払いをいたしますという姿にする。そういたしますと、末端の共済組合は、いろいろ問題がありました基準反収をどうするかとか、損害評価をどうするかというようないろいろな問題も、末端の組合が責任を負う姿でありますれば、相当自主性を持たしてやっていけるだろうというふうに
考えております。そういたしますれば、
自分の組合の責任でありますから、むちゃな基準反収をきめたり、むちゃな損害評価をしたりということは、自主的になくなって参る、こういうことを期待しておるのでございます。その点が第一点で、一番大きな問題でございます。
それから第二番目は、先ほど申し上げましたように、そういう
制度に強制加入で全部入れというのは非常に不合理じゃないかという非難にこたえましては、これを、現在はある一定の資格、たとえば米で申し上げますると、一反歩以上の耕作をやっている者につきましては、全部当然加入といいまするか、三分の二以上の者が集まって組合を作りました場合には、全部が当然共済
関係が成立をするということになるのでありますが、その辺でも、現状では相当無理があると思うのであります。そこで、この画一的な強制加入の方式をある程度緩和をすべきであるということを
考えまして、その点は、
一つは、今まで法律上一反歩以下のものが任意加入で、一反歩以上のものが強制加入だというふうにきめてありましたものを、相当幅を広げまして、一応三反歩というところで押えてみまして、三反歩の範囲内で、都道府県の知事がきめたものについて任意加入と強制加入の境をきめさせようというふうに緩和いたしましたものが
一つ。
それからもう
一つは、
事業の種類ごとにこれを総会の決議でやめさせていったらいいじゃないか。やりたいものはやる、やめたいものはやめていい。たとえばその例を申し上げますると、北陸のようなところで、水田裏作の麦をやっておる。これは農家
経済からいって、ほとんど問題にならないことであります。たとえば青森等で蚕繭をやっておる。そうすると、これも実際問題としては
事業として成り立たない、問題にならないということがあるのでございます。こういうものは、みんながやめたいと言っておっても、今の
制度では全部の
事業目的を一緒にやらなければならないという
制度になっていますので、これを米をやめたい、麦をやめたいというようなものは、おのおの
事業の種類ごとに、
事業の目的ごとにやめてもいい、それからまた作りたい場合には作ってもいいというような
制度にして、そこのところをある程度緩和したらいいということが、第二点でございます。
それからもう
一つは、先ほど申し上げましたように、いざ災害が起こった場合に、非常にもらうものが少ないじゃないかという点でございますが、その点は、現在石立てといいまして、共済の引き受けは、一筆々々ごとに共済にかけまして、単位は何石という基準収量でかけておるわけでございます。もちろん、今はメートル法になりましたから、キログラムということにはなっておりますけれども、一般的にわかりやすく石立てで申しますと、そういうようなことでかけておるのでありますが、現在の
制度では、全損の場合にも、一石当たりに対しまして最低千五百円から最高四千九百円、こういう中で、何
段階かを
農民が選ぶことになっておりますが、これがきわめて少ないわけでございますので、これを相当上がる。最低は、少なくとも労賃部分くらいは補償できるような形に持っていったらどうか、最高の場合でも、少なくとも
生産費くらいは補償できる形に持っていったらどうかということで、農家の
所得補償という線を相当強く打ち出したいということで、最低三千円から最高七千円というところに押えて補償をやっていく。
〔丹羽(喬)
委員長代理退席、
委員長着席〕
それと同時に、今までの一筆単位というものは、農家の
所得補償という面からいいますと、合理的じゃない面もございますので、今後の問題といたしましては、農家単位で補償していくというような
考え方で、これを直していきたいというふうに
考えておるわけでございます。
それからもう一点大きな問題は、病虫害の問題でございまするが、病虫害が今共済の事故になっておりますことが、非常に会計
検査院でいろいろ
指摘されておりますごまかしができるもとになっておるわけでございます。病虫害があってもなくても、これはなかなか損害評価もできませんものですから、何割ということで平等に
農民に金を払うということが行なわれるものでございます。こういう点は、今後の問題といたしましては、病虫害の防除も非常に進歩して、ほとんど絶滅できるという体制になっておりますので、病虫害というものはとにかくはずしてもいいんじゃないかという
考え方もございますけれども、急にそういうわけには参りませんから、将来はずすということも
一つ頭に置きまして、とりあえずの問題としては、病虫害防除体制がきちんとできてくるところに対しては、病虫害を事故からはずさせまして、そうしてその場合には、共済掛金をその分だけ割引して安くいたしまして、それに相当する
金額は、国から病虫害防除費として
補助金を出そう、こういう仕組みでいけば、結局掛金も安くなりますし、そのかわり、
農民は病虫害防除に金をかけるのだから、その分は
補助金として一部を補助しますという
制度に切りかえてみたらどうか、ということを
考えておるようなわけでございます。
大体要点はそういう点が中心でございますが、そのために、現在は、
中央の
事業としては、
農林省において
特別会計がございまして、そこで運用しておるのでございますけれども、これが先ほど申し上げましたように、末端の共済組合に大体直接結びつくという姿になって参りますと、仕事も非常に能率的に運ばなければならないという点もございますので、
中央の
特別会計を分離いたしまして、農業
保険事業団という組織にいたしまして能率化をしていく、こういうことを
考えておるわけでございます。骨子は以上でございます。これによって、いろいろ行政管理庁からも監察の結果の勧告が出ておるのでございますけれども、そういう監察の結果等もほとんど大部分を取り入れて、今の
制度の改正を
考えているということに相なっておるのでございます。