○帆足委員 ただいまの岡田委員の質問に関連いたしまして。
本日をもってキューバの戦局はまた重大な変化が起こりつつあるようでございまして、朝から電報が再開されまして、昨日はカリブ海も天気晴朗なれ
ども風荒らしで、上陸作戦は失敗したようでありまして、急激に外部からの反乱軍が勢い衰えたように新聞は伝えております。そこで、この問題について今岡田君が突っ込みました。私
どもは
国連精神に生きる、そして国際的正義と平和に生きる国民といたしまして、この問題に対して冷静に、そして正しい態度をとる必要がある。そういう観点から、今岡田君が原則を明らかにしろ、こう言っていることに対して、仮定のことには答えられない。仮定のことには答えられないというせりふは、何とかいうおじいちゃまが始終言われておったせりふだと思いますけれ
ども、私は仮定のことでも外交の原則はやはりお答え願わなければならぬと思うのです。ケネディ大統領は、自由に亡命したキューバ人が自国の政治に不満を抱いている、そして戻ってきて、その政権に対して反対運動をするということに対して、自分
たちは同情を持っている。しかし武力干渉はしない。こういう趣旨のことを言っておりますけれ
ども、確かに亡命家に対する政治的、思想的な理解とか同情とかいうものはだれしも認めるところでありますけれ
ども、しからば、これに対して軍事的援助をしたりまたは訓練をしたり、または飛行機をただでやったり、そういうようなことになると、先ほど
条約局長の言われたようにこれは内政干渉になってくるということは世論の示すところでありまして、特に西ヨーロッパの世論を見ますと、ニューヨーク・タイムスの十八日付を見ましても、「米
政府が過去長い期間にわたって米国領土およびグアテマラでキューバ亡命者
たちを武器、訓練その他の便宜で支援してきたことはかくれもない。このことはあまりにも公表されていて、もはや無視することはできない」アメリカの朝日新聞といわれているニューヨーク・タイムスがこう書いておりまして、さらに、この事件に対する米国の
立場は、まことに残念なことであるけれ
ども、道義的に弁護できる範囲のものかどうか疑われておる。そこで、
国際連合においてキューバの外務大臣が、この侵入部隊はグアテマラから一部は来、一部の勢力はアメリカで訓練されたものである、と主張したときに、グアテマラの代表は、私の方から行ったのではないと答えた。アメリカの代表スチブンソン氏は、私の方からでもないと言われたので、キューバの外務大臣は手をあげて、それでは天から降ったか、地からわいたか、どこから来たのでしょうか、と言ったら満場笑い出した、こう書いてあるのでございます。
第二には英国、保守系政党の諸君のメッカとも頼む良識ある英国はどう言っておるかといいますと、英国の世論はこれに対して深い憂慮の念をおおい隠そうとはしていない。額面
通りケネディの言うことも受け取っていない。反カストロ軍がフロリダで編成されていることはまぎれもなき事実である。グアテマラとフロリダとの間に密接なる連携があることも明らかである。グアテマラを進発してマイアミに着陸した反カストロ軍の爆撃機の操縦士について、これに米国人がまじっていたこと、米国側の出入国管理当局はその姓名をすら隠したこともまぎれもなき事実である。米国が、気に入らないからといってカストロ政権を転覆させようとする、その反カストロ勢力に同情する気持はわかるけれ
ども、これに対して有形無形の軍事的支持を与えておることに対しては、西ヨーロッパ諸国も憂慮の色をおおい隠すことができない、ここまで論じておって、しかも戦局は天気晴朗にして波高し、こういう状況でありますから、
一つ外務大臣もアメリカに遠慮もありましょうし、エチケットやらも心得なければならぬと思いますけれ
ども、やっぱり国際的原則をこの際明らかにして、いただく必要がある。そこで二つのことをお尋ねしたいのです。
第一は今度の内乱は単なる内乱じゃなくて、亡命者が外から入ってきたわけです。これに対してアメリカなりその他の国がこの亡命、外から入ってきた反乱軍に対して、やはり武器援助、ジェット機その他を与えたとしたならばこれは遺憾のことであって、それは仮定の事実であろうとも、これほど世間が論じていることでありますから、それは遺憾のことであって、他国の政権に対してそういうおせっかいなことを
お互いにするなという態度は
国際連合で明確にするという態度は、私は保守党の諸君も必ず賛成して下さることであろうと思うのでございます。これが第一で、賢明なる小坂大臣はきょうこの問題に対しては内政不干渉であると参議院で言明されたそうでありますが、その態度を維持していただきたい。
第二には、キューバの大使からおそらく情勢報告をしようというたびたびの申し入れがあったと思いますけれ
ども、国交
関係を結んでいるキューバの国の大使の面会に必ずしも応じられてないようでありますけれ
ども、それは一体どういうことになっておるのか。
時間がありませんから一緒に質問しますが、第三に、これがうまくいかないために、アメリカは昨夜深更異例の閣僚
会議を開きまして、在留米人の安全保護を名目に、米兵は形を変えて派兵に踏み切るかもしれないということが、きょうの夕刊に出ておるのでございます。その国にいた一、二の新聞記者その他の危機を
理由にして、そうして保護占領するという手口は、もう百年の間続いた植民地支配の手口でありますけれ
ども、それが正常なる国交の間に不幸なことがあったなら、外交交渉で解決すべきである。そしてさらにそれで行き届かなければ
関係国に相談し、
国連に相談すべきものであると思うのです。いわんや国交を断絶しておいて、そうしてその反乱軍に対して武器を提供しておいてうろちょろした若干の者がその犠牲になったからといって、直ちにこれをもって派兵の
原因にするなどということは、もうそれは前の時代ならとにかく、原子力と人工衛星と理性と平和が世界を支配しつつある今日の時代においては、私は国際的に通用せぬと思うのです。
従いまして第二の問題として、国際紛争の中にそういう遺憾なことが起こったならば、それはことごとく
国際連合に訴えて解決すべきものではあるまいか。私はかねて小坂さんはほかのことでは
意見の相違はたくさんありますけれ
ども、
国際連合における国際正義のルールを尊重する、またソ連と
条約を結ぶときにはいつも互に内政不干渉の原則で平和共存をしようじゃないかといって、今も漁業
協定が進んでおる。これは党派を越えて普遍妥当の憲法の保障する原則でありますから、仮定の事実には答えられないなんという八十じいさんの言うことなどをまねするのでなくして、仮定の事実であるけれ
ども、原則はこの際外務
委員会の権威にかけて明確にしておこう、具体的適用は事実を調べてよく善処しよう、こう言われるのが当然であろうと思いますので、今の二つのことについて外務大臣から、前の藤山さんもときどき非常に見識のあるいい答弁をなさったのですが、新外務大臣に
一つ気骨稜々たる論理の通った発言を期待して質問する次第です。