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田原委員 日本とブラジルとの間における、長い間要望されておりました
移住協定ができまして、現地に在留の日系人並びに今後海外に
移住しようとする
国民の間にも非常な満足の状態でございますので、私
どももこの
条約成立までの間におけるブラジル側の御好意並びにその折衝に当たりました
日本の出先の当局の努力に対しては、これを多とするものであります。
ただし、この
条約が発効しました後において、
日本国内においては、従来の移民募集方法あるいは
移住後における資金の融資の
やり方、これらについて、私
どもは必ずしも満足しておりませんので、この機会に次の要望決議を出して、同僚各議員の御賛成を得たいと思っておるわけでございます。
まず要望決議の案文を読み上げます。
政府は本
協定発効後において国内の諸態勢を整備し次の諸点に留意し、もって大量
移住の促進に努力するよう強く要望する。
一、国内における海外
移住の啓蒙宣伝を強化拡大すること。
二、海外
移住後における独立営農資金、漁民自営資金、中小企業者の設備及び運転資金等の融資手続に関し、その簡素化をはかるとともに、これら中小業者への援助を強化すること。
三、
移住行政に関する
基本的な法制を樹立すること。
簡単に各項目について私
どもの
見解を申し上げたいと思います。
従来国内における海外
移住に関する啓蒙宣伝はまことに微力でございます。従って当然海外に行きそうな人までも海外、特に中南米各国に対する知識は不足でございますので、どうしてもこれは絶えざる努力をして
日本民族の海外
移住の決意を早め、
移住の早期の実現をはかりたいと思います。そのためにはたとえば全国の高等学校、特に農業高校内には海外
移住地
事情というような科目を設置するよう文部省その他と協議をしてもらいたい。また必要とあれば海外
移住読本のごときものを編さんしてこれを頒布してもらいたいと思うのであります。
次は
移住募集に関しまして民間の業者がありますが、これらの業者に対しては積極的にむしろこれを活用して、そうして募集上の協力をさせることによって
予定通りの募集人員に達するようにするように要望したいと思います。
第三は、次は、たとえばテレビ、ラジオ、新聞雑誌、ニュース
映画等の活用あるいは婦人会、青年団、部落会等の活用にいま一段の努力をすることによって海外
事情の普及に努めてもらいたい。
第二点の海外
移住後の独立営農資金等の援助の問題でありますが、
日本政府の資金を預かっております
日本海外
移住振興株式会社が、数年前からブラジルの各地に事業を進めておりますけれ
ども、大部分は独立営農資金等に回りますが、一部これらに対する貸付よりも大企業へ貸しておるような傾向がある、こういうことで在留移民から非常な不満が投書その他
陳情等もきておることは、同僚
委員の御
承知のところと思います。元来この会社設立の趣旨はちょうど
日本において零細事業家に対する
国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫があるごとく、その
意味で
考えますならば農漁民、中小企業者等への融資をまず先行すべきものである。大企業への投融資は
日本政府の投融資、特に輸出入銀行その他の制度があることでありますから、海外
移住振興会社の主たる努力は中小企業者へ向くべきものであると
考えますので、今後
政府においてもそういう方面への指導を強化されまして、多数の在留民が満足するような資金の融資をしていただきたい、これが第二の要望であります。
第三点は、移民行政に関しまして
基本的な法制がまだできておりません。なるほど移民保護法というものが言葉としては残っておりまするが、明治二十九年の制定であり、当時の内務省のむしろ警察的取り締まり
方針で立法されたものでありますので、それさえもすでに死文化しておる今日でありますから、
基本的な法制の樹立を望ましいと思っております。先ほど
戸叶委員からも指摘されましたように各省間における調整等もこの
基本法によっておのずからできるのではないか。外務、農林、労働、建設、大蔵各省間においては単にまだ連絡
会議程度でありまして、法制化しておりませんので、今回の
移住協定の
締結を機といたしまして大量海外
移住のために以上三点の早急なる実現方をわれわれは要望いたしまして、この
協定に賛成したいと思うわけであります。(拍手)