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田原委員 そういう、今の外務省、農林省の
説明も確かに一理ありますが、実際全国あっちこっち回って見ている私からしますと、第一は最末端の機構がはなはだしく貧弱でありまして、中央から何県に何名募集すると言うていく。そうすると、県庁には大体
海外協会というのがありますが、大体三人か四人しかおりません。多いところで七、八名。それから県の職員で担当しておるのはほとんどこれが兼職です。開拓課の兼職であったり、ほかの課の兼職であったりして、
移住専任公務員というのはほとんどおりません。そこへ持ってきてぽかっと何月何日までに何名出せというようなことをやる。県の方ではそれを謄写版で刷って役場に出す。ところが県でも一週間くらいかかって、役場に行ってみると、もう締め切りまで十日しかないというような問題がある。十日間で
移住者が牛から馬から家まで処分して
移住あっせん所へ行けるものじゃない。はなはだしきは締め切りあとに手紙が着いたなどというのがある。まことにおざなりでありまして、中央から一片の指令を出せば意のごとくに
海外移住希望者の財産の処理ができて行けると思うところに間違いがある。一例を申しますと、各県の
移住担当職員は、広島県は県庁の職員で
移住担当をやっておる者が五名、
海外協会職員が五名、合わせて十名で扱っておる。これは山口、岡山等も同じであります。しかも県庁側から来る者は庶務と会計というようなことで内勤、外を回って移民の募集なんかをする人もいない。人が足らぬということです。さらに末端の市町村へ行きますと、小さな村の中へ行きますと、社会
課長か経済
課長がおいでになります。経済課では米の配給であるとかいろいろなことがあって、その
課長の下に職員が二人くらいおる。そこへ次から次に県から書類が来る。何月何日までに移民を何人出せと言ったってできっこない。またこんなものが来たということで荷厄介にしている
状態た。従って、あなた方が一万人募集するなんて言ってみても、実際は募集方法がはなはだしく形式的であり、
通り一ぺんだ。財産の処理またしかりです。
御
承知だろうと思いますが、ここで三十四年度の例を明らかにしておきますと、何丸に乗せるから向こう一カ月以内に移民を募集して決定してこいという通知か和歌山県だけで二十匹件行っておる。香川県に二十一件行っておる。愛媛県に二十一件、
東京都が三十三件、茨城県が二十四件、大阪が二十六件、兵庫県が二十二件、宮城県が二十九件、山形県が二十六件です。それから二十件以下の十五名とか十八戸募集してくれというのが合計十三府県あります。こんなものは急行列車の寝台券を買うように簡単に中央では考えているが、そんなものじゃない。先祖代々あったところを家から田地田畑、牛馬を売り、それから子供が学校へ行っている途中のものをやめさせて、見も知らぬところに行くのでありますから、親類の送別会もあろうし、また中にはじいさん、ばあさんがそんな南米なんかへ行くのはやめてくれと引きとめるのもあります。それからまた今農林省がおっしゃったように、財産処理の形がまことに
通り一ぺんでありますから、あれはブラジルに行くのだ、黙っていれば田をほったらかして行くだろうとか、買いたたきがある。これは数年前から、平川農林次官の時代からわれわれは言っておったのですが、ようやく農協で二十万円程度は貸すということになっておりますけれども、これがなかなか実際は貸さない。貸すようにあなた方が思っているのは大きな間違いで、地方の農協ではそう簡単に貸しません。半年くらいかかります。従って、あと十日後に船に乗れということで財産処理をほったらかしてとかなんとかということになると、結局キャンセルする以外にない。取りやめになっておる、そういう例がたくさんあります。これはあなた方専門だから、知っておると思います。従いまして、一万人にならぬのは募集方法が悪い。募集方法が中央官庁から地方庁に行く、地方庁から市町村役場に行く、一種の官約移民のような格好でやっておるものですから、行かない。行かないけれども、それはだれにも責任がない。のほほんとしていて、ことしも七千人か八千人かというだけのことであります。反面行きたい人はたくさんあります。今
移住局長が言われた満州、南方から帰ったのが六百数十万あります。そのために恐怖心を持っているのも一部ありますが、逆にフィリピンや旧満州、東南アジア、台湾等から引き揚げた者で
海外に行きたい者はずいぶん多い。これが一定の規格があって行けない。あらかじめブラジルに土地を買って行かなければならない。見も知らぬブラジルの山の中を帳面の上だけで買う。それも六十万、八十万の金が要るということになると、そう簡単に行けない。この点、
海外移住は人口問題の処理じゃないと言われるのはきれいごとであって、イタリアの例を見ますと、イタリアでははっきり言っておる。イタリアは人口が多過ぎるから
海外に出すのだ、
海外に行ったイタリア人の郷里送金によって自分の国の財政を援助してもらうのだということを正直に言っております。
日本も人口が多いし、勤勉だからお前の方で引き取れというような
交渉をしてもらう。これは外交折衝です。同時にもう少し早く、せめて半年くらい前に合格を決定して、財産を処理しなさい。処理が不満足ならば金融にはこういう方法を講じましょう。それから船に乗る十日くらい前に大体行くことになっているが、今のように一カ月前に出してくれなんて言うても来れるわけがない、しかも今度神戸の
移住あっせん所や横浜の
移住あっせん所に行ってみますと、間違って船に乗りそこねて三十日も四十日も待たされることが逆にある。そうすると財産をすっかり処理してきて、船には乗れないというので、神戸や横浜の
移住あっせん所で日傭かせぎの仕事を見つけてやって、次の便船まで待っておるという悲惨な
状態です。中には
東京にやってきましてくずひろいをやっている者もある。これは要するに
海外移住という声に応じ、また本人も行きたいけれども、ところが募集から乗船までの期間が短いこと、財産処理に対してぞんざいなこと、そんなことで、新聞には出ませんが非常に迷惑している人がたくさんいる。これは戦前の例を見ますと、
海外興業という民間
会社があった。そしてフィリピン・ペルー・ブラジル等に土地を購入し、これを売ったり、倉庫業とかトラック業も兼営しておった。これは民間でありますから金もうけをいたします。当然であります。配当もしなければならない。その反面非常に熱心で、
海外に
移住したいといろ人がありますと、何とかしてあげましょうということになる。今の県の
海外協会や地方庁の開拓課あるいは市町村になりますと断わる方が多い。それではいけません、それじゃだめです、これは私の責任になりますというようなことで、行きたい人に対して断わる方が多い。こういう事情はおわかりになっておるかどうか知りませんが、たとえば小指が切れておると、これは断わられる。そうすると民間の方では、何とかしてあげましょう、上陸するときに小指を見せないようにしなさいというようなことを教える、あるいは床屋さんとかクリーニング屋さんが南米に行きたいが、床屋さんやクリーニング屋さんではなかなか南米に行けませんから、県庁ではだめですと断わられる。ところが民間に行きますと、何とかしてあげましょう、とりあえずどこかで農業をやったことにして農民になって行きなさいと、とにかく行く方に
協力するが、県では自分の責任になるのはいやだから断わる方が多い。今の
海外協会から市町村コースの成績が上がらぬのはあたりまえだ。いかに農林省、外務省が一万人募集の計画を立てても毎年いかないのはそこに原因がある。それだけではないでしょうけれども……。従って、これはことし限りでなく毎年のことでありますから、どしどし出してやるというには行く人の立場になって、財産処理にも十分の時間をかける。中央でいかにりっぱな計画を立てても、信用組合等では貸してくれない方が多いのですから、これに対しては別途の方法を考えたらどうかと思うのです。そこで私考えるのは、ちょうどイタリアのイクレのように
国内と現地とに本店、
支店を持った、その国で認められた法人を作って、そして
海外に行きたい者の財産を、何といいますか、専門でないからわかりませんが、かりに百万円相当の不動産があるといたしまして、七十万円くらいすぐ渡してしまう、そして後日その田地田畑、家が売れたときに残りの三十万円を送ってやるというように、信託売りになりますか何かわかりませんが、そういうような
機関をあわせて持たぬことには、相当の金持ちの人で、向こうに土地を持って、行くという計画移民の募集成績が上がらぬと思う。そういうふうに見られるかどうかお尋ねしておきたいのであります。従って今後出すということについては私はこう考えます。計画
移住が
予定通りいかないのはそういうこまかい問題で困っておるのだから、その点を配慮する、改良する。募集から乗船までの時間をもっと見てやる。予報をする。それから今度財産の処分についてももっと親切に、金融
機関がなければ金融
機関を作る。たとえばかりに
海外移住金融公庫みたいなものを作ってもいいのじゃないかと思います。そうして
国内での不動産の信託行為をやる。それから
海外にも送金してやる。
海外に
支店を渇いて向こうから送金をさせるようなこともじっくり考えていいのじゃないか。このことは
海外移住振興
会社のやり方に関連をしますから、きょうは時間の
関係で、この次、大臣も来たときに
移住局から来てもらってゆっくり聞きたいと思いますので、その点には触れません。
今言葉に出てきました民間の取り扱い業者をこの際申し上げておきたい。口入れ屋みたいにうそを言って棄民のようにほったらかすというのは
明治時代のことであります。最近はサービスに変わっておるのですから。この民間業者が今七、八社あります。ところがこれが実際には七千人とか八千人とかいう
数字に対する非常に大きな効果を上げている。
数字を見れば、たとえば七千人でありました
昭和三十四年の
海外移住者の中で、五千人はそういう民間業者が募集して送り出している。
政府の計画の移民は二千人くらいのものです。間違っておったら訂正して下さい。私はそういうふうに了承している。それはどっちがいいか。呼び寄せとか雇用とかいうことに対しては、民間はむろん手数料を取ります。金もうけですから収入を上げなければならぬですからね。ところが
政府側、公共でやっておるのは手数料を取りません。そのかわり非常に冷淡であり画一的である。たとえば
海外協会連合会の今年度の予算が四億何千万円です。農林省で地方の
海外移住協会に補助をやっておるのは一千万円くらいじゃないかと思う。その他本省の事務費がございましょう。そうすると約五億円くらいの金を国家は出しておる。すなわち国家としては
海外に出したいという意味でそれだけの予算を出しておる。ところが計画移民で行く数はわずか二千人だとしますと、一人当たり見ますと二十五万円くらいかかったことになるのです。民間の募集取り扱い業者は五千円か八千円の手数料を取りますけれども、しかしそれはそのくらいかかるし、多少
利益もなくちゃいかぬでしょう。その半面に船の出る日は横浜にも神戸にも民間の業者は送りに行って握手して激励している。向こうへ行ってからも、嫁さんがほしい、よろしい呼び寄せてあげましょう。それから向こうへ行って生まれた子供が内地の学校へ入りたい、よろしい、保証人になってあげましょう、宿舎を見つけてあげましょうというように、いわば血が通ってくる。それが市町村や県庁での扱い方がごくおざなりでありまして、なかなかそこまで親切が届かない。戦前の海興はいろいろ非難されながらも、戦争前に年間に二万六千人という移民を送ったことがある。これが最大であるといわれておりますが、戦後約十年移民問題を扱ってやっさもっさやっておりながら、わずか三万何千人ですから、年当たり三千人平均ですよ。これは実に国費をむだに使っているのじゃないか。従って民間業者をもう少し
理解してこれを使うという気持になったらどうか。いたずらに、あいつらは金もうけするからなんて言っても、これは月給もらっているわけでもなければ、恩給もらうわけでもない。あるいは出張旅費があるわけでもない。従ってこれを善導してやっていけるようにする方法はないか。たとえば海協連で持っておる予算の中で、民間がかりに五千人募集したならば、一人当たり手数料が五千円かかるならば、二億五千万円という金を渡してやる。いわば下請みたいにしてやるとか何か方法がありそうなものだ。この点についていま一歩進んで一万人をこすという意味からいって、民間的募集方法と公共的募集方法との併用ということが考えられぬか。何もかも統制してお役人のもとで使わなければならぬということにはならぬ。現に七、八年間に一ぺんも一万人こえていないのだから、ほんとうを言ったら、悪うございましたといって辞職するぐらいの責任感を持たなければならぬと私は思う。これに対して外務省、農林省両方の見解を聞きたいし、ここで
討論するわけではないが、どうしたら一体一万人こすかということを前提に考えて、民間の業者もやっていける方法を併用をしていったらどうかと思うのですが、これに対する御答弁を願いたい。