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1961-02-22 第38回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月二十二日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 堀内 一雄君    理事 竹内 俊吉君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 森下 國雄君    理事 戸叶 里子君       愛知 揆一君    浦野 幸男君       小泉 純也君    椎熊 三郎君       正示啓次郎君    床次 徳二君       中山 マサ君    長谷川 峻君       前尾繁三郎君    黒田 寿男君       田原 春次君    西村 関一君       穗積 七郎君    細迫 兼光君       森島 守人君    川上 貫一君  出席政府委員         外務政務次官  津島 文治君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (移住局長)  高木 廣一君         文部事務官         (調査局長)  田中  彰君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      鈴木 喜治君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    橋口  收君         文部事務官         (初等中等教育         局職業教育課         長)      安養寺重夫君         農林事務官         (振興局拓植課         長)      三善 信二君         労働事務官         (職業安定局雇         用安定課長)  木村 四郎君         日本輸出入銀行         理事      鈴木 義雄君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 二月二十二日  委員宇都宮徳馬君、中曽根康弘君、稻村隆一君  及び勝間田清一辞任につき、その補欠として  浦野幸男君、長谷川峻君、田原春次君及び西村  関一君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員浦野幸男君、長谷川峻君、田原春次君及び  西村関一辞任につき、その補欠として宇都宮  徳馬君、中曽根康弘君、稻村隆一君及び勝間田  清一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十一日  海外移住者助成金の増額に関する請願(二階堂  進君紹介)(第七一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国アメリカ合衆国と  の間の条約を修正補足する議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第一号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国パキスタンとの間  の条約を補足する議定書締結について承認を  求めるの件(条約第二号)  移住及び植民に関する日本国ブラジル合衆国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第三号)  国際法定計量機関を設立する条約締結につい  て承認を求めるの件(条約第四号)  日本国パキスタンとの間の友好通商条約の締  結について承認を求めるの件(条約第五号)  通商に関する一方日本国他方オランダ王国及  びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の  協定締結について承認を求めるの件(条約第  六号)  日本国グレートブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の文化協定締結について  承認を求めるの件(条約第七号)(予)  日本国ブラジル合衆国との間の文化協定の締  結について承認を求めるの件(条約第八号)(  予)      ————◇—————
  2. 堀内一雄

    堀内委員長 これより会議を開きます。  国際法定計量機関を設立する条約締結について承認を求めるの件、日本国パキスタンとの間の友好通商条約締結について承認を求めるの件、通商に関する一方日本国他方オランダ王国及びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の協定締結について承認を求めるの件、日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の文化協定締結について承認を求めるの件及び日本国ブラジル合衆国との間の文化協定締結について承認を求めるの件、以上各案件を一括して議題といたします。     —————————————     —————————————
  3. 堀内一雄

    堀内委員長 まず政府側より趣旨説明を聴取いたします。外務政務次官津島文治君。
  4. 津島文治

    津島政府委員 ただいま議題となりました国際法定計量機関を設立する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  計量に関する国際条約といたしましては、すでに明治八年のメートル条約があり、わが国明治十八年以来その加盟国として活動しておりますが、このメートル条約は、メートル単位国際的標準の設定、計量単位に関する研究等目的とする学術的性格を有しており、計量器の実際上の使用に伴って生ずる技術上、行政上の諸問題についてはこれを取り扱っておりませんので、これらの問題を国際間で統一的に解決するための国際機関を設立しようとする動きは、つとに第一次大戦後から見られたのでありますが、昭和三十年十月に至り、パリにおいて二十二カ国の代表によってこの国際法定計量機関を設立する条約署名されたのであります。  この条約は、昭和三十三年五月に発効いたしておりますが、前述の通り計量器の実際の使用から生ずる技術上、行政上の諸問題の国際的解決と、そのための国際協力とを目的とする国際法定計量機関の設立、同機関の任務、事業等につき全文四十カ条にわたって規定しているものであり、昨年末現在独、仏、インド、ソ連等二十七カ国がこれに加盟しております。  わが国といたしましても、この条約に加入し、国際法定計量機関加盟国となることによりまして、メートル条約加入以来のわが国計量分野における国際的地位をさらに向上せしめ、かつ、この分野における国際協力に積極的に寄与することができますとともに、わが国自身計量技術計量制度の発展に資することができると期待される次第であります。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に日本国パキスタンとの間の友好通商条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、一昨年来カラチにおいてこの条約締結するため、交渉を行なって参りましたが、昨年十二月アユーブ・カーンパキスタン大統領の来朝に際し、懸案の最終的解決を見るに至りまして、御承知のように同月十八日池田内閣総理大臣及び小坂外務大臣アユーブ・カーンパキスタン大統領との間でこの条約及び議定書署名を行なった次第であります。  この条約内容は、両国間の平和及び友好関係強化貿易及び通商関係促進並びに投資及び経済協力助長のため、無条件最恵国待遇の原則を基礎として、入国、滞在、旅行、居住、身体及び財産の保護、事業活動及び職業活動工業所有権仲裁判断関税為替管理輸出入制限貿易経済関係強化科学技術知識の交換及び利用の促進、国家貿易等広範な事項についての待遇規定しております。  両国の間には、現在関税及び貿易に関する一般協定が適用されておりますが、この条約締結により、両国間の通商経済関係は、さらに一そう安定した基礎の上に置かれることになるものと期待されます。  よって、以上申し上げました利益を考慮し、また、パキスタン側においても、近く条約批准措置をとる予定でありますので、この条約効力発生のため、わが国も必要な手続をできるだけ早急にとりたいと存じ、ここにこの条約締結について御承認を求める次第でございます。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。  次に通商に関する一方日本国他方オランダ王国及びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  御承知のように、わが国は、欧州諸国との間の貿易の拡大に努力し、特にわが国に対しガット第三十五条を援用しております諸国につきましては、貿易関係正常化安定化のため、同条援用撤回交渉を行ならかたわら、相手国の事情に応じ通商航海条約ないし通商協定締結交渉を行ないつつありますが、ベネルックス三国、オランダベルギールクセンブルグに対しましても昨年五月二十三日から通商協定締結に関する交渉東京において行ないました結果、最終的に妥結いたしまして、さる十月八日に東京で、通商に関する一方日本国他方オランダ王国及ベルギー・ルクセンベルグ経済同盟との間の協定正式署名を行なった次第であります。  この協定内容は、基本的には、さきわが国がオーストラリアとの間に締結しました通商協定にならうものでありまして、関税及び輸出入についての最恵国待遇相互供与のほか、締約国国際海運上の差別的措置及び不必要な制限の除去を奨励する旨の規定をも含んでおり、また、附属議定書でいわゆる緊急措置に関して規定しております。  この協定は、この種のものとしては欧州諸国との間に締結された最初の協定であります。ベネルックス三国の対日ガット第三十五条援用の結果従来不自然な状態にありましたわが国とこれら三国との間の経済関係は、この協定締結により、正常化され、貿易も大幅に拡大されるものと期待されます。  よって、このような利益を考慮し、また、ベネルックス側も近くこの協定批准を完了する予定でありますので、この協定効力発生のため、わが国も必要な手続きをできるだけ早急にとりたいと存じ、ここにこの協定締結について御承認を求める次第でございます。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。  次に日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和三十四年七月に岸前首相が訪英された際に、日英文化協定締結について話し合いを行ないましたが、その後、在京英国大使館よりこの協定英側草案が提示され、わが方も従来わが国締結して参りました文化協定の案文に沿った対策を提出いたしまして、東京において交渉を続けた結果、昭和三十五年十二月三日に東京正式署名を行なった次第であります。  この協定内容は、わが国が戦後締結したフランス、イタリア、ドイツ、エジプト等との間の協定に類似しており、両国の間の理解助長するため文化交流促進するいろいろな措置、たとえば、教員、学生交流奨学金の支給、文化団体協力などを協力してとることを奨励しております。  この協定締結は、両国間の文化関係の一そうの緊密化に資するところ大であると期待されます。  よって、以上申し上げました利益を考慮し、また英側においても、協定批准措置を進めておりますので、この協定効力発生のため、わが国も必要な手続をとりたいと存じ、ここにこの協定締結について御承認を求める次第でございます。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。  次に日本国ブラジル合衆国との間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  日本国ブラジル合衆国との間には、昭和十五年に署名された全文五カ条からなる文化的協力に関する条約昭和二十八年五月に復活されて存続しておりますが、昭和三十二年四月ブラジル側からこれにかわる一そう整った包括的な新協定締結を申し入れて参りましたので、政府は、この申し入れを適当と認めて新しい協定を結ぶことを受諾いたしました。自来ブラジル側と通常の外交経路を通じて交渉を続けて参りましたところ今般妥結に達しましたので、本年一月二十三日に東京で、正式署名を行なった次第であります。  この新協定は、わが国が戦後締結した諸文化協定とほぼ同様の内容と形式を有しており、前記の現行日伯文化条約に比較して、各規定をより詳細かつ具体的にしたものでありまして、両国相互理解助長するため文化交流促進するいろいろな措置、たとえば、教授及び学生交流助長相手国の留学生に対する奨学金の給付、相手国文化機関の援助、混合委員会の設置などを規定しております。  この新協定締結は、両国間の文化関係の一そうの緊密化に資するところ大であると期待されます。  よって、以上申し上げました利益を考慮し、またブラジル側においても、協定批准措置を進めておりますので、この協定効力発生のため、わが国も必要な手続をとりたいと存じ、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
  5. 堀内一雄

    堀内委員長 ただいま趣旨説明を聴取しました各件に対する質疑次会に行なうことにいたします。      ————◇—————
  6. 堀内一雄

    堀内委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国パキスタンとの間の条約を補足する議定書締結について承認を求めるの件、右二件を一括議題といたし、質疑に入ります。戸叶里子君。
  7. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま議題になりました所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約を修正補足する議定書に関して一、二点質問をしたいと思いますが、この提案理由説明さきごろ伺いましたときに、ここにも書いてありますように、「この修正補足議定書の主たる内容は、日本銀行及び米国連邦準備銀行受取利子相互免除を認めたこと、及び企業利子発生源泉規定が不十分なため二重課税を生ずるおそれもあったので、この点を修正して利子発生源泉を明確にしたこと」であるということを説明されているわけでございます。それは大へんにいいことではございますけれども、ただ問題は、日本アメリカとの経済力も非常に違いますし、国柄も非常に違うわけでありますが、その場合に日本銀行受取利子というものと、それから米国連邦準備銀行受取利子というものは、相当の差額があるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。その点はいかがでございましょうか。
  8. 塩崎潤

    塩崎説明員 租税協定目的経済交流及び人事交流円滑化にあることは御存じ通りでございます。現在のところ御存じのように、包括的な租税条約はございませんので、二国間の租税条約によりまして、今申しました経済交流人事交流円滑化を達成しようとしておるわけでありますが、ただいま戸叶委員のおっしゃいましたように、その二国間におきましては経済的地位、経済的な力が違うことは御存じ通りでございます。しかしながらその間の経済交流を円滑にするためにある場合に二重課税回避をはかりまして、できる限り資本の円滑な導入あるいはむしろ逆に円滑な投資、こういったことを達成することはぜひ必要だと考えておりまして、今回の租税条約の改定を行なった次第でございます。  お尋ねの日本銀行利子、及び連邦準備銀行利子、この問題につきまして、昭和三十二年にアメリカ輸出入銀行利子について相互免税を行なった際に、同様の質問松本委員からなされたことがございます。そのときには、まさしく戸叶委員のおっしゃるごとく、アメリカ輸出入銀行日本に対しまして貸付を行なう、日本輸出入銀行は逆にアメリカ貸付は行なうことはないといったことで片務的ではないか、こういうお話がございましたが、今度はその逆であります。日本銀行外貨準備一つとしてアメリカドルを持っておるわけでございますが、このドルアメリカにおきまして定期預金あるいはアメリカ財務証券投資しております。従いまして、その投資の結果利子を生じます。これの金額について常に聞かれるわけでございますけれども、外貨準備のことでございますので、詳細な数字は申し上げることは控えておるような状態でございますが、大体三十億円ぐらいのものが平均的にあるというふうにいわれております。正確な数字ではありません。これに対しまして、アメリカ側条約によって一五%の税金をかけることになっております。従いまして、アメリカ政府に入ります税金が四億五千万円ばかりになろうかと思います。この部分についてアメリカ政府は免除いたそう、こういう考え方でございます。この考え方は、政府に対する税金がかからないと同様に、同じく政府全額出資でありますところの日本銀行利子に対しましては、同じような考え方から免税にしよう、こういう考え方でございまして、少し趣旨の違った、純税制上の理由からいきましての免税でございます。一方アメリカ連邦準備銀行でございますが、これは日本には投資はございませんので、日本から受け取る利子はございません。従いまして、相互条件になっております一五%の課税の問題は日本では起こらない。先ほど申し上げましたように、輸出入銀行とちょうど逆の状態で、この面におきまして金額においても大体同様な条件相互免税の形が輸銀日本銀行の間で行なわれる、こういうふうにお考えになっていただいてもいいか、かように考えておる次第であります。
  9. 戸叶里子

    戸叶委員 私、受取利子が大体どのくらいになるかということを伺いたかったのですが、お答えの中にありましたので了承いたしました。  次にもう一点伺いたいことは、移住振興株式会社アメリカから融資を受けているわけです。それを日本に持ってこないで海外投資していると思うのですけれども、その場合の課税はどういうふうになるのか、この点を伺いたいと思います。
  10. 塩崎潤

    塩崎説明員 移住会社が具体的にどこで、どこから金を借りまして、どういうふうに運用しているか十分存じませんけれども、アメリカ税法におきましてどういうふうに課税になるか、一般的にお話申し上げたらいいかと思います。  アメリカ税法におきましてと申しますよりは世界的な税法では、事業所得につきましては恒久的施設という言葉が一般的に条約では使われておりますが、支店あるいは事業所、これがありますと課税いたすというのが一般的な形態でございます。従いまして、移住会社アメリカ側から金を借りまして、アメリカ支店を持ちまして、そこで事業を行なうといった場合には課税になります。そこで利ざやが生じた場合には課税になろうかと思いますが、具体的にどういうふうなケースになりますか思い当たりませんが、どういう運用をされるか、これによると思います。逆に、一つ運用形態といたしまして、適切な例になるかどうかわかりませんが、アメリカ輸銀から金を借りまして、移住会社アメリカ銀行預金をしておる。その場合に預金利子が生じます。こういった場合には、資産所得でございますので事業所得とは違う。そうなりますと、支店のいかんにかかわらず、先ほど申し上げました利子ならば一五%、配当ならば三〇%、こういった税率で課税される。一般的なお答えで、具体的な問題が頭に浮かびませんのではなはだ恐縮でございますが、この程度の答弁にいたします。
  11. 戸叶里子

    戸叶委員 その具体的な例は、どうせこの移住関係協定が出ておりますので、私そのときにお伺いしようと思いますが、そうしますと、今アメリカで借りてアメリカで使う場合にはもちろん課税の対象になるが、今度はアメリカで借りて日本へ持ってこないでほかで移住関係への融資をしているという場合になるとどういうことになりますか。当然かかりますか。
  12. 塩崎潤

    塩崎説明員 また具体的なケースがちょっと思い浮かびませんが、日本運用いたしまして日本果実を生じまして、そのうちの一部からアメリカ利子を払う、こういうことになると思います。これがまさしく利子源泉地の問題になろうかと思います。今回の改正はその面を明らかに規定した、こういうふうに私ども考えております。改正前の条約によりますと、利子源泉地恒久的施設——先ほど申しましたような支店日米相互にない場合には、その資金が使われたところに源泉がある、こういう考え方でございました。恒久的施設がある場合におきましては各国内法によって規定する、こういうふうになっておりましたが、各国内法おのおの哲学がございまして、日本アメリカ考え方は違っておりました。そのために二重課税の問題が日本航空の借入金を中心として出ました関係上、それは少し不合理ではないかというので、お互いに意思を一致しまして、二重課税の生じないようにしたのが、今度の改正趣旨でございます。どういう趣旨かと申しますと、日本で使いまして日本果実を生ずるならば、どこの国で使っておりましても、それは日本で発生したものとして、日本から送る際に日本所得税が一五%かかる。日本で一五%かかりますと、アメリカ税法はどうなるかと申しますと、アメリカの貸した会社に対しまして——あるいは輸銀かもわかりません。輸銀ならば免税かと思います。民間企業から借りますとアメリカ税金が一ぺんかかります。かかりました際に日本で納めた税金を控除いたします。それが二重課税の排除の一つの方法でございます。
  13. 戸叶里子

    戸叶委員 今の問題は私も大体了承しているわけなんですけれども、具体的な移住会社への貸付の例は、あとから引用いたしましてまた質問いたしたいと思います。
  14. 堀内一雄

    堀内委員長 ほかに御質疑はございませんか。——質疑がなければ、これにて右両件に関する質疑は終了いたしました。     —————————————
  15. 堀内一雄

    堀内委員長 これより討論に入りたいと存じますが、両件につきまして別に討論の通告もないようでございますから、直ちに採決いたします。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国パキスタンとの間の条約を補足する議定書締結について承認を求めるの件、右両件をそれぞれ承認すべきものと議決するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 堀内一雄

    堀内委員長 御異議なしと認めます。よって、右両件はいずれも承認するに決しました。  なお、ただいま採決いたしました両件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 堀内一雄

    堀内委員長 御異議がなければさよう決定いたします。      ————◇—————
  18. 堀内一雄

    堀内委員長 次に、移住及び植民に関する日本国ブラジル合衆国との間の協定について承認を求めるの件を議題といたし、質疑を行ないます。
  19. 田原春次

    田原委員 ただいま議題となっております日伯間の移住協定に関連しまして、きょうは主として事務当局に御質問申し上げたいと思います。いずれ基本的な態度、問題等につきましては、外務大臣の御出席を求めてあらためてもう一度申し上げたいと思いますので、その点は留保しておきます。私の質問は、第一は条約そのものに関する二、三の質問、第二は国内における募集問題、第三は現地における諸問題と、大体三つに分けて申し上げたいと思います。  第一の条約そのものに関する問題としてお尋ねしたいことは、第三条と第六条の言葉に関連して御質問申し上げます。第三条の自由移住の件で二行目に「それぞれの国の現行の関係一般法令の規定に完全に従って」云々とあります。それから第六条の第一行の中ほどに「現行の法令の範囲内で」という言葉がありますが、私の承知している範囲では、移住に関する法令は、移民保護法というのが明治二十九年に制定されたままになっておりまして、これは多分に移民取り締まり的な内容を持っているものでありますが、それ以外には移民に関する基本的な法令というものを聞いておりません。従ってこれは後ほど大臣にもお尋ねしたいと思っておるのは、移住基本法といったようなものを考えるときが来ておるのではないかということであります。それは別といたしまして、ただいまこの条約に載っている「関係一般法令」というのは何をさすのであるか、この点をまず最初にお尋ねしておきたいと思うのであります。
  20. 高木廣一

    ○高木政府委員 この第三条に言っております「それぞれの国の現行の関係一般法令」というのは、日本といたしましては、日本の憲法もございますし、出入国管理令もあります。伯国側におきましては入国法、移植民法というものがございます。この法律に従ってやるのだということでございます。  今田原委員が御質問になりました移民保護法は、確かに古い法律でございまして、現在の事態にほとんど合わないあれでございます。われわれ事務当局といたしましては、至急に移住基本法あるいは正しい移住保護法のようなものを作らなければいけない、こういうふうに思っております。明治二十九年の移民保護法は、当時非常に無規制になっておりました移住取り扱い業者、これを一括して海外興業株式会社を作り、またこういうものを政府が十分に監視しながら、これが活発な活動ができるような措置を講じたのでございますが、戦後におきましては事態が相当変わっておりますので、この新しい事態に応じまして、同じく移住が一そう活発にできるような措置を見出すことを考えていかなければならぬ、こういうような基礎移住保護法ができるだけ早くできるように推進いたしたい、こう思っておる次第であります。
  21. 田原春次

    田原委員 戦後の海外移住に関しては、基本的な法律がないために、閣議決定であるとか、あるいは各省間の連絡調整という程度で進めておるのでございますために、自然募集方法あるいは入植地の決定等につきまして意見が違う場合に不便が相当あると思います。従いまして今局長が言われるように、なるべくすみやかに移住に関する基本的な法令を用意されていかれることをまず希望しておきます。  次は第三十三条、これは教育及び衛生に関する点であります。この第三十三条の二行目の中ほどに、「植民者に対して医療に関する援助を行なうことができ、」と書いてある。これはどういう意味であるか。日本とパラグァイとの間の日パ移住協定には、この関係が明らかになっておる。主として日本移住者を診療する場合は、日本人の医者が当たってもよろしいという意味のものと私は記憶しております。現在ブラジルには、ブラジルの医科大学を卒業し、そしてそこの試験に通らなければ開業できないというような規定があるように聞いておる。ところが、医科大学の数も少ないし、卒業生の数も少ないし、また卒業者の大部分は大都会に偏在する傾向があり、日本移住を計画しておるアマゾンであるとかあるいはマットーグロッソというところになると、なかなか医者も少ない。また言葉の関係もありまして、ブラジル語の不自由な日本人の農民諸君等が病気になった場合、往々にして遠方まで行って、そうして高い診療費を払って見てもらうというような不便がありますので、やはり海外移住して定着するということになりますと、衛生と教育、金融というものが基本的な問題でありまして、この衛生の面において、ブラジルの今までの日本に対する態度は、日本人の医者が開業するのに非常に困難であり、禁止に近いものであった。今度の協定で、植民者に対して医療に関する援助を行なうことができるというのは、それは資金とか設備、病院あるいは薬品等の援助という意味であるか、あるいはまた、主として日本人が集団して入っておる植民地には、ちょうど日本・パラグァイ移住協定のように、日本から医者を送ることができるか、そういう内容がはっきりしておりませんが、この点を一つ明らかにしてもらいたい。
  22. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいまの点は、今度ブラジルとこの協定交渉いたしましたときに最も強く交渉した点でございます。われわれといたしましては、今田原委員がおっしゃいましたように、日本の医者がアマゾンのようなところで正式に活動できることを認めしめたい、こう思いまして、相当交渉した次第でございます。パラグァイの場合には、移住地に関する限り、日本に対してだけは先方はこれを認めたわけであります。ブラジルはこれを認めなかったのであります。南米各国の実情といたしましては、パラグァイとかボリビアのような非常におくれた国を除きますと、ほとんど全部は、外国の医者が国内で医者の仕事をすることに対して非常な反対をしております。欧米諸国も、実は南米諸国との文化協定なんかで、この医者の資格を認めしめようとずいぶん努力しながら、これは全部達成しておりません。しかしながら、われわれといたしましては、医者の施設の非常に少ないアマゾンとかその他のところにおいては、これは人道上の問題であるということで強くねばりました。そして、結局、両国政府が正当に認めた団体、ここではわれわれ日本側が認めた海外協会連合会の現地支部の医療機関の医療援助を認めしめたのでありまして、これは単に材料、器具の援助だけではなくて、突発的に病人ができた、これは放置できないという場合に、人道上放置できないのですから、この団体が手当をして、正規の医者が来るまでそごのないようにしようということでこの規定を認めまして、実際上われわれが望んでおります日本人に対する最小限度の医療を保証することにしたのであります。なお、これにつきましては、実はわれわれはこのように強くブラジル側交渉いたしましたが、サンパウロにおきます日系二世でございますが、この中には相当の数の医者もおりまして、彼らはむしろ、なぜ日本から医者を連れてくるんだ、われわれ二世の医者を使ったらいいじゃないかといって反対した経緯もございます。そういうようなことでこの規定となった次第でございます。われわれの希望通りではございませんが、南米の実情から見まして、これはやむを得ないんじゃないかというふうに考えております。
  23. 堀内一雄

    堀内委員長 ちょっと待って下さい。今の教育の問題は文部省が来てからにして下さい。
  24. 田原春次

    田原委員 それはあとからやります。  サンパウロには二世の医者がおることはよく知っておりますけれども、アマゾン地帯にサンパウロの日系の医者が行って開業しましたけれども、不親切で料金も高いというので、結局ブラジルの医者にたよっているような状態でありますから、必ずしも二世の医者の言うことだけにあれする必要はないと思います。やはりこれは——特に私は、サンパウロ州、パラナ州あるいはリオデジャネイロ等の主要地は遠慮して、奥地のこれから計画移住を入れようというようなところ、すでに入っているところ等に対しては、第三十三条を非常に広く解釈拡張、また要望されて、たとえば日本人の赤十字あるいは大学の診療班といったものを常時出張または駐在せしめて、研究の名目でも移民の名目でもいいですが、そういうことをやらぬことには、定住者にとっては非常に脅威だろうと思います。だから、その点について要望しておきます。  次に、第三十三条の終わりのところ、教育に関する問題、「教師がブラジル合衆国の国籍及び法律に基づく正規の資格を有することを条件として、初等教育に関する援助を例外的に行なうことができる。」こうなっておりますが、これも具体的に言うと、向こうの正規の資格をとるということになれば、二世で師範学校を卒業した者で教員の資格をとった者になるかもしれませんが、この二世自体が日本語の能力が非常に浅いのであります。いろいろ家庭にも悲喜劇も起こっていることは御承知通りでありまして、そこで、これまた、非常に大きな大都会の教育施設の完備しておるところにおる日本人と、それからたとえばアマパであるとかあるいはキナリーであるとかロンドリナといったような非常に奥地で、しかも二十家族、三十家族ぐらいで農業を営んでおるところ、これは学校の施設がないのであります。行っております移住者としては、子供の教育は非常に関心が強いのでありまして、そこでこれも何か便法を考えて、正規の資格をとりやすいような方法、援助、指導等をやりまして、日本から教員を送る。そうしてとりあえずそういう奥地の教育というものは、日本語とポルトガル語の教育を両方併用していくべきだと思うのです。そういうことについては、よく言われることは、日本人は集団をして日本語だけをしゃべるのは不同化であるということを言いますけれども、これは一知半解の議論であると僕は思う。やはり父祖の国の言葉を使うのがあたりまえでありまして、それにプラスしてその国の言葉を習うのでありまして、御承知通り、ポルトガル語あるいはラテンアメリカのスペイン語等は日本語に比較して非常に簡単でありますので、まあ二、三年やれば一応新聞でも読めるというのでありますが、日本語はそれに反して非常にむずかしい。そうして二世、三世となると、御承知のように、日本語をあまり使いたがらない。しゃべる方もしゃべらなくなるし、いわんや読み書きをあまりやらぬことになる。そうすると、日本の文化というものはそこで切れてしまう。これはたとえばアメリカを見ますと、もはや中国人は五世、六世になっておりますけれども、いまだに中国語の大きな新聞を持っている。あるいは電車の中でも、五世、六世が平気で大きな声で中国語をしゃべっておる。日本人は、遠慮深いというか気がねするというか、全然日本語と縁を切ってしまうということは、僕はよくないと思う。御承知のように、今ブラジルの連邦下院議員に田村という二世の代議士が出ておりますが、彼も四十才になるまでは日本語を知らず、それから知らぬことをもってむしろじまんしておった。いよいよブラジルの下院議員に立候補する段になりますと、やはり日本語も知らなければならぬということで、四十才になってから大急ぎで日本語も勉強した。しかし、これはいわゆる話す日本語だけであって、読み書きはどうしてもできない。こういうように年をとってくると二世も必要を感じてくるのでありますが、初めの間は非常に言葉がむずかしいためにいやがる。そこで私は、そういう意味からいきましても、日本文化の持てるよいものをやはり残してやる、広げるという意味においても、日本語の教育を遠慮する必要はないと思う。これは少し外務省が弱気であって、北米やハワイにおいてもほとんど日本語学校を廃止して、中南米に至っては全然やっていないということであっては、将来日本側としては考えなければならぬ大きな問題であると思うのであります。この規定を例外的に認めるとなりますと、全然認めるとは書いてないけれども、まず奥地の日本人の多いところでは学校を建ててやる、それから設備もそろえてやる、ブラジルの正規の資格を持った先生を雇ってやる。同時に、家庭でも必要であるからというので、補助的な意味において日本語の先生をやはり雇用する。そうして憶することなく堂々と、今からでは少しおそいけれども、やはり日本語を教えておく必要があると思う。この運用をどういうふうにお考えになっておるか。これは外務省の条約協定当時のお気持も聞きたいし、それから文部省にも私はお尋ねしておきたい。文部省は戦前は割合に海外発展というものに対しては興味を持っておった。たとえば三重、鹿児島、盛岡、宇都宮等の高等農林学校には拓植科というものがあったが、終戦後これはみんないつの間にか廃止してしまって、近ごろでは、海外事情というものは、高等教育では、限定された私立大学にしかない状態である。だから、高等教育においても海外移住に対する技術専門家を養成することは必要であります。  それで、私は文部省に伺いたいことが二つあるわけであります。海外在留の子弟の教育に対する方針、それから国内において、少なくとも全国の高等学校程度には、海外事情あるいは移民地事情といったようなものを常設して教えておく必要があるのではないかと思います。戦後の文都省の方針は、この点については非常に冷淡に見えるので、どういうことでそういうふうになったのか、また今後どういう方針を持つか、あわせて外務省の対策と文部省の方針を聞いておきたいと思います。
  25. 高木廣一

    ○高木政府委員 この教育の問題に関しましては、外務省といたしましても、今田原委員がおっしゃったと同じようなことを痛感しておるのでございます。移住地の現状は、子供たちはすぐに日本語を忘れて、そうして二世、三世になりますと、日本語を全然知らないで、相手の国の言葉だけを使う、これが実情であります。そうして従来同化という点で、一世はなかなか同化しにくいが、二世、三世はむしろ同化し過ぎているくらいであるという事情がある。この同化という言葉にいたしましても、われわれといたしましては、またそこでもだんだん考え方が変わってきまして、せっかく日本人が日本のいいところを残して、そうして一般的にブラジルに同化していく、これを英語で言いますとインテグレーションというか、融和という点で、日本のいいところをみんな忘れてしまうのはよくないのだという考え方も出てきております。ただ、中南米各国ともいずれも新しい国でございまして、いろいろの国民が寄り集まっているために一そう、国民を一つにしたいということで、教育などについては非常にむずかしくかた苦しい考え方を持っております。これは日本だけではなくて、欧州の移住者に対しても同じような要求をしているのでございます。ただ、日本人が入りますところは、欧州人が入らないようなアマゾンだとかその他のところにどんどん入っておりますので、その点で、われわれは彼ら以上に子弟の教育についての必要を感じておりますので、実は非常に強く要求をした結果、この規定ができたのでございます。決してこれで十分にできるということはございませんが、われわれといたしましては、これにあわせまして、日本文化の啓発というようなことから、正規の教育以外に、子弟に対して日本語の雑誌を送ってやるとか何かして日本についての勉強をせしめ、また一般的な日本文化の啓発で、子供、親を含めた日本教育をしたい、こういうふうに思っておる次第でございます。われわれが思っている通り規定ができないのはまことに残念でございますが、これが南米の実情でございまして、これはずいぶんがんばりましたのですが、こういうことになりましたので一つ御了承願いたいと思います。
  26. 田中彰

    ○田中(彰)政府委員 後段の方からお答え申し上げます。すなわち、国内における外国事情の紹介、あるいは拓殖教育と申しますか、移住教育につきましては、実は、海外移住審議会の方から総理大臣に対する答申もございまして、この方面の教育を充実しなければいかぬということで、教育委員会あるいは各都道府県の知事等に対しまして、この方面の移住思想の普及であるとか、あるいは教育、啓発、宣伝といったようなことを十分取り上げるように依頼をしているところでございます。  なお、学校教育におきましては、社会科の中の歴史、世界史とか人文地理の中でこれらの事柄を指導いたしますようにいたしております。それから移住教育につきましては、現在農業高等学校の中に拓殖科を設けているもの、あるいは農業科の一つのコースとして、その中で教育をいたすもの、あるいは農業クラブ活動といったようなことで子供たちを指導しているもの等がございます。たとえば現在実施をいたしておりますのは、宮城県、鹿児島県、栃木県、新潟県等、なおそのほかに現在研究中のものとしては香川県、神奈川県等がございます。これは中等教育の段階でございますが、なお大学教育におきましては、先ほども御指摘がございましたが、私立大学で、たとえば拓殖大学、天理大学、東京農業大学、神奈川大学等で、それぞれ、外国語学部であるとか、あるいは農業拓殖学科といったようなものの中で、あるいは貿易学科の中で指導いたしております。なお国立大学としては、東京外国語大学、あるいは宇都宮の農学部で拓殖学を教えているとかいったようなことが従来やっております実情でございます。  それからもう一点、現地における日本人子弟に対する日本語教育の問題、実はただいま外務省からも答弁がございましたが、全く同じ考えでおります。なお文部省といたしましては、おそまきながら来年度の計画といたしまして外国人に対する日本語教育をいかに効果的に行なうかといったような問題について、根本的にこういう問題と取り組みますために特に学識経験者にお願いをいたしまして、効果的な日本語教育の振興をはかる考えで準備をいたしておりますが、もちろん日本人子弟等に対する日本語教育の問題といたしましても、これらの面で効果的な教育を実施したいと考えておる次第でございます。
  27. 田原春次

    田原委員 文部省は海外移住教育に対しては非常に熱意が足らないので、きょうは時間の関係があるから後日文教委員会等でもう少し話を聞いてみたいと思うし、質問もしたいと思いますから、この程度にしておきます。  次は、この条文で見ますと、第三十七条「融資及び援助」の件のところで「金融機関による融資についての便宜を与える。」こういうことになっております。このことで、これは外務省にも大蔵省関係にも、また輸出入銀行関係にも聞いてみたいのでありますが、海外における——この際特にブラジルと限定してみますと、海外では南米銀行、東山銀行、日伯銀行等、ブラジルの邦人による銀行が三つと、コチア産業組合の銀行がありますが、この程度でありましてまことに貧弱です。たとえばブラジルやイタリア、イギリス、あるいはドイツ、こういう国々から来ておる人々に対する金融面での援助は莫大なものでありまして、従って貿易面においても、また現地における事業においても、日本側とは便宜の点において大へんな違いがあろうと思います。ただ日本でわずかにあるのは、海外移住振興株式会社というのがありますが、これは現地では移住不振興株式会社といわれるくらい、煩瑣な手続で、時間がかかり、貸す金も少なくて、これは名前だけでごまかしでやっておる程度でありまして、とうてい実際の移住振興にはなっておらない。これは移住振興会社の人に来てもらったときにあらためてもう一度質問しますが、とりあえずこの条約文だけで見た場合に、イタリアの場合は、御承知のようにイタリアとブラジルとの伊伯移住協定にはイクレという機関がありますね。イタリア語でインスチチューチ・クレディト・デ・ラボーレ・イタリアーノ・デル・エステーロ、これをとってイクレといっておるのは御承知通りであります。イクレは国内からの融資もいたします。それから現地で働いた人々の金を郷里送金する等の手続をとっておって、しかも十分銀行業務としてペイしておるわけであります。そういう点についての用意が足らないように見られるが、この第三十七条の第一行目後段の規定によってこれはできるのかどうか。つまり郷里送金、国内からの投資等について、移住振興会社以外に設けるべきものと思うがどうか。もしそうでなくて移住振興会社を一本の窓口とするなら、もう少し手続上の簡素化、融資金額の増大等についての努力を払うべきものであると思うがどうか。これに対して大蔵省及び外務省の見解をただしておきたい。
  28. 高木廣一

    ○高木政府委員 ブラジルに関しましては、今田原委員のおっしゃいましたように、日系の金融機関がございます。それ以外に移住振興株式会社が活動しております。それ以外の地域では移住振興会社の金融だけにたよっておる次第でございます。移住振興会社の活動ぶりについて、非常に手続が煩瑣であり、融資金額も少なく、徹底しておらないという御批判は、実はわれわれ自身も感じておるのであります。ただ戦後、移住が開始され移住振興会社が活動をいたしましてから、まだ時間も十分たたないために、またこれに経験のある職員が十分整っておらないために、なかなか思うようにいかない次第でございまして、われわれといたしましては、まず人の養成を含めて、移住振興会社が、ほんとうに移住者の必要を完全に満たすまでに持っていかなければならないと思っておる次第でございます。今先生のおっしゃったのは、われわれに対する鞭撻というように感ずる次第でございます。イタリアの場合には、さっき申されましたように、非常に大きな金融機関がございます。これは戦争中にブラジルが押えましたイタリア資産が凍結を解除されましたときに、その資金をこの銀行の基金といたしまして、これに新しい金及びブラジルからの金も加えまして、この銀行ができて、活発な活動をしておるのであります。われわれの場合には、それほど大きな凍結資産もなく、またイタリアと同じようにやることもできないで、移住振興会社だけができた次第でございます。われわれといたしましては、今後移住振興会社にできるだけ勉強していただいて、手続の複雑なところはできる限り簡素にし、でき得ればしっかりとした移住融資計画を立てまして、そのワク内で出先に十分の腕をふるわせ、あまり干渉しないというようなところまで持っていって、移住融資を有効になし得るようにいたしたいと思っておる次第であります。
  29. 橋口收

    ○橋口説明員 私、特別金融課長でありまして、政府関係金融機関の仕事をしておりますので、移住者の金融問題全体についてお答え申し上げる立場にございませんが、第三者として今のお話を伺いまして、現在あります海外移住振興会社の機能を強化するという方向で問題を処理するのが適当じゃないかと考えております。
  30. 田原春次

    田原委員 この際、文部省にもう一つ聞いておきたいことがあります。それは、今学校とか教育の問題だけでありましたが、そのほかに必要なのは海外在留日本人に対する慰問物資というか、あるいは普及運動といいますか、たとえば八ミリ、十六ミリの機械を購入してこれを配っていく、日本国内でのいろいろな文化映画、これは各官庁や団体で作っているところもありますが、そういうものを次々にやるということで、日本というのはこういうところだということを知らせる必要があると思います。あるいはまた日本で出ます適当な書籍を一般に募集してもいいし、またその他の方法でもいいですが、集めて、定期的に文化程度の低い奥地の方に送ってやるという手もあると思います。そういうことについて文部省は進んでやっておったという例を一つも聞かないのでありますが、教育というものはそういう目立たないところにやはり力を入れてやらなければならないと思います。今後そういうようなことについて構想があられるかどうか、この際伺いたいと思います。
  31. 田中彰

    ○田中(彰)政府委員 海外日本人に対する日本事情の紹介、あるいは教育面からのいろいろな教材等の便宜供与というようなお話は、まことにごもっともでございます。実は文部省といたしましても、過般東南アジアでございましたが、広く教育事情の調査を行なったことが最近ございます。その場合にも、いろいろな日本に対する教育協力という面からの要望がございました。従いまして、いろいろな、さような要望にこたえるために、今いろいろな構想を練っておるわけでございますが、今後、文部省といたしまして、外務省と十分連絡をとりながら、有効適切な手を打ちたいと考えておる次第でございます。
  32. 田原春次

    田原委員 私は東南アジアのことを聞いたのじゃなくて、中南米、海外日本人居留民のことを聞いたのでありますが、御答弁から見れば、まるきりやっておらぬ。ごまかしのような答弁をしておりまして、そういうことでは、文部省ははなはだ冷淡だと思うのです。しかし、きょうは時間がありませんから、これ以上質問することをやめまして、他の機会に文教委員会でお尋ねすることにいたします。  第二は、移住の募集運動の現状、国内における問題であります。しばしば新聞等で見ておりますと、毎年予算の編成期になりますと、来年度は一万人から一万一千人ぐらい出すのだ、こういうことを過去五、六年聞いておりますが、いまだに一回も一万人を越したことがない。一万人という数が大ワクになっておる。いつも七千人か八千人です。何ゆえに、一体海外に一万人を予定しながら行けないのかということです。このことについて、農林省、外務省、それぞれ一つ見解を聞かしてもらいたい。
  33. 高木廣一

    ○高木政府委員 仰せの通り、毎年一万人以上の送出を計画しながら、今日までまだ達していないのはまことに遺憾な次第であります。その理由はいろいろあると思います。根本的には、今度の戦争の結果、大陸及び南方から悲惨な経験を持って帰ってきた。従って、海外移住するのは物騒であるという考えが国民の中にかなりに浸潤しております。第二には、移住が始まりまして、昭和二十八年に初めてアマゾンへ五十四名の日本人が入ったのですが、今日まで、まだ十年たたない、やっと八年越したところである。しかも、戦後出しました移住者は、日本としてはどこへでも飛びついて行きたいような気持で、アマゾンへ出し、その他のところへ出したのでありますが、相手の受け入れ計画が十分でなかったというようなこともあり、また、受け入れ計画は一応よくても、そういうところに入るに適した人が十分選考されないで行っておる。たとえば、最初にアマゾンに入った人も、ほとんど大部分は都市から行った人であって、アマゾンを腰かけに、すぐサンパウロに行くというような気持で行った人がある。まじめな人でも、非常に環境の変化でこれにアダプトするには相当の努力を要する。にもかかわらず、それをよく指導するだけの準備がなかったというようなことで、最初にいろいろ移住についての悲惨なニュースが日本へ伝わった。これも移住を警戒さす、大きな原因であると思うのであります。ただ、幸いにいたしまして、八年たちまして、今日では海外へ出しました移住者、移住地において全く困るというのは、一つ、二つまだあります。これは今われわれ必死になってこれがうまくいくように努力しておりますが、その他の地域は、一時はずいぶん餓死戦線を彷徨するんだといわれていた。パラグァイが、すばらしい勢いで移住の軌道に乗っていく。あるいは、ついに一昨年ごろまでは人道問題といわれておりましたボリビアの移住地が、これまた、パラグァイに次いだ輝かしい移住地になってきたというような事情でありますので、これからは、これら移住地の改善とともに、そのニュースが日本へ伝わるに従って、相当飛躍的な移住者の増加を見るのじゃないか、こういうふうに思っております。ただ、そこで問題になりますのは、一万名そこそこでございますれば問題ないのですが、それ以上になりますとやはり輸送の問題なんかの問題をどうしても真剣に考えなければいかぬということになると思いまして、この次くらいからはその点も心配したいと思っております。三十五年度は予期に反しやはり一万名にいかないで八千五、六百名くらいでまことに遺憾でございますが、三十六年度は一つぜひ一万一千名、予算通りにやりたい、こう思っております。
  34. 三善信二

    ○三善説明員 ただいま外務省の方から答弁がございましたように、一万人一万人といっていながら実績はあまりふるっていないという御趣旨でございますが、二十七年から移住が始まりまして、戦後は、現在大体三十三年が七千六百、三十四年が七千六百、三十五年については一応実績としては、一月末を予定しまして、大体八千二、三百名いくんじゃないかと思っております。それで、昨年などに比べますと、少し上昇したという傾向にはございます。  で、この移住が不振の原因といいますか、一体それはどういうところにあるのであろうかということでございますが、先ほど外務省の方から述べられましたように、受け入れ態勢というのがあまりはかばかしくなかったという問題が一つあると思います。それから向こうに雇われて移住する雇用移住、そういう問題につきましては、向こうの賃金が非常に低いという問題もあって、なかなかこちらからそれに応募する人が少ないという点もあったかと思います。  それから、国内においても大きな問題としましてはやはり移住者に対する啓蒙、啓発といいますか、啓発活動が非常におくれていたということと、それから移住者の援護措置といいますか、これがあまり十分ではなかったという点があるのじゃないかと思います。特に、国内面におきましてその啓発活動や援護につきましては——啓発活動につきましてはまあ一番大きな問題は末端の市町村、特に移住者の大部分が農民としますと、その一番大きな問題は末端の市町村段階において特に啓発活動をしなければいけないという問題があると思います。それに関しましては、今度の予算でも千五百カ町村について——農協その他市町村段階の団体を集めまして協議会を作り、そしていろいろな啓発宣伝をやらせたいと思っております。それから、援護措置につきまして、これから新しく追加したいと思っておりますのは、いわゆる国内税金の問題です。これは前々から要望があったわけでございますが、今度租税特別措置法の改正を大蔵省の方にお願いいたしまして、その中で、一つ移住者につきましては譲渡所得についての課税を非常に少なくする、まあ一応私の方としましては免税にしていただきたいという要望は出しておったわけでございますが、ほかとの均衡もありますので、免税というところまではいかなくとも、実質的にほとんど税金を納めなくとも済むというような、そういう控除方法を特別に考えていただいているというような現状でございます。そういうことで、今後、特に移住者の援護措置や啓発活動に重点を置いて、移住促進をはかりたいと思っております。
  35. 田原春次

    田原委員 そういう、今の外務省、農林省の説明も確かに一理ありますが、実際全国あっちこっち回って見ている私からしますと、第一は最末端の機構がはなはだしく貧弱でありまして、中央から何県に何名募集すると言うていく。そうすると、県庁には大体海外協会というのがありますが、大体三人か四人しかおりません。多いところで七、八名。それから県の職員で担当しておるのはほとんどこれが兼職です。開拓課の兼職であったり、ほかの課の兼職であったりして、移住専任公務員というのはほとんどおりません。そこへ持ってきてぽかっと何月何日までに何名出せというようなことをやる。県の方ではそれを謄写版で刷って役場に出す。ところが県でも一週間くらいかかって、役場に行ってみると、もう締め切りまで十日しかないというような問題がある。十日間で移住者が牛から馬から家まで処分して移住あっせん所へ行けるものじゃない。はなはだしきは締め切りあとに手紙が着いたなどというのがある。まことにおざなりでありまして、中央から一片の指令を出せば意のごとくに海外移住希望者の財産の処理ができて行けると思うところに間違いがある。一例を申しますと、各県の移住担当職員は、広島県は県庁の職員で移住担当をやっておる者が五名、海外協会職員が五名、合わせて十名で扱っておる。これは山口、岡山等も同じであります。しかも県庁側から来る者は庶務と会計というようなことで内勤、外を回って移民の募集なんかをする人もいない。人が足らぬということです。さらに末端の市町村へ行きますと、小さな村の中へ行きますと、社会課長か経済課長がおいでになります。経済課では米の配給であるとかいろいろなことがあって、その課長の下に職員が二人くらいおる。そこへ次から次に県から書類が来る。何月何日までに移民を何人出せと言ったってできっこない。またこんなものが来たということで荷厄介にしている状態た。従って、あなた方が一万人募集するなんて言ってみても、実際は募集方法がはなはだしく形式的であり、通り一ぺんだ。財産の処理またしかりです。  御承知だろうと思いますが、ここで三十四年度の例を明らかにしておきますと、何丸に乗せるから向こう一カ月以内に移民を募集して決定してこいという通知か和歌山県だけで二十匹件行っておる。香川県に二十一件行っておる。愛媛県に二十一件、東京都が三十三件、茨城県が二十四件、大阪が二十六件、兵庫県が二十二件、宮城県が二十九件、山形県が二十六件です。それから二十件以下の十五名とか十八戸募集してくれというのが合計十三府県あります。こんなものは急行列車の寝台券を買うように簡単に中央では考えているが、そんなものじゃない。先祖代々あったところを家から田地田畑、牛馬を売り、それから子供が学校へ行っている途中のものをやめさせて、見も知らぬところに行くのでありますから、親類の送別会もあろうし、また中にはじいさん、ばあさんがそんな南米なんかへ行くのはやめてくれと引きとめるのもあります。それからまた今農林省がおっしゃったように、財産処理の形がまことに通り一ぺんでありますから、あれはブラジルに行くのだ、黙っていれば田をほったらかして行くだろうとか、買いたたきがある。これは数年前から、平川農林次官の時代からわれわれは言っておったのですが、ようやく農協で二十万円程度は貸すということになっておりますけれども、これがなかなか実際は貸さない。貸すようにあなた方が思っているのは大きな間違いで、地方の農協ではそう簡単に貸しません。半年くらいかかります。従って、あと十日後に船に乗れということで財産処理をほったらかしてとかなんとかということになると、結局キャンセルする以外にない。取りやめになっておる、そういう例がたくさんあります。これはあなた方専門だから、知っておると思います。従いまして、一万人にならぬのは募集方法が悪い。募集方法が中央官庁から地方庁に行く、地方庁から市町村役場に行く、一種の官約移民のような格好でやっておるものですから、行かない。行かないけれども、それはだれにも責任がない。のほほんとしていて、ことしも七千人か八千人かというだけのことであります。反面行きたい人はたくさんあります。今移住局長が言われた満州、南方から帰ったのが六百数十万あります。そのために恐怖心を持っているのも一部ありますが、逆にフィリピンや旧満州、東南アジア、台湾等から引き揚げた者で海外に行きたい者はずいぶん多い。これが一定の規格があって行けない。あらかじめブラジルに土地を買って行かなければならない。見も知らぬブラジルの山の中を帳面の上だけで買う。それも六十万、八十万の金が要るということになると、そう簡単に行けない。この点、海外移住は人口問題の処理じゃないと言われるのはきれいごとであって、イタリアの例を見ますと、イタリアでははっきり言っておる。イタリアは人口が多過ぎるから海外に出すのだ、海外に行ったイタリア人の郷里送金によって自分の国の財政を援助してもらうのだということを正直に言っております。日本も人口が多いし、勤勉だからお前の方で引き取れというような交渉をしてもらう。これは外交折衝です。同時にもう少し早く、せめて半年くらい前に合格を決定して、財産を処理しなさい。処理が不満足ならば金融にはこういう方法を講じましょう。それから船に乗る十日くらい前に大体行くことになっているが、今のように一カ月前に出してくれなんて言うても来れるわけがない、しかも今度神戸の移住あっせん所や横浜の移住あっせん所に行ってみますと、間違って船に乗りそこねて三十日も四十日も待たされることが逆にある。そうすると財産をすっかり処理してきて、船には乗れないというので、神戸や横浜の移住あっせん所で日傭かせぎの仕事を見つけてやって、次の便船まで待っておるという悲惨な状態です。中には東京にやってきましてくずひろいをやっている者もある。これは要するに海外移住という声に応じ、また本人も行きたいけれども、ところが募集から乗船までの期間が短いこと、財産処理に対してぞんざいなこと、そんなことで、新聞には出ませんが非常に迷惑している人がたくさんいる。これは戦前の例を見ますと、海外興業という民間会社があった。そしてフィリピン・ペルー・ブラジル等に土地を購入し、これを売ったり、倉庫業とかトラック業も兼営しておった。これは民間でありますから金もうけをいたします。当然であります。配当もしなければならない。その反面非常に熱心で、海外移住したいといろ人がありますと、何とかしてあげましょうということになる。今の県の海外協会や地方庁の開拓課あるいは市町村になりますと断わる方が多い。それではいけません、それじゃだめです、これは私の責任になりますというようなことで、行きたい人に対して断わる方が多い。こういう事情はおわかりになっておるかどうか知りませんが、たとえば小指が切れておると、これは断わられる。そうすると民間の方では、何とかしてあげましょう、上陸するときに小指を見せないようにしなさいというようなことを教える、あるいは床屋さんとかクリーニング屋さんが南米に行きたいが、床屋さんやクリーニング屋さんではなかなか南米に行けませんから、県庁ではだめですと断わられる。ところが民間に行きますと、何とかしてあげましょう、とりあえずどこかで農業をやったことにして農民になって行きなさいと、とにかく行く方に協力するが、県では自分の責任になるのはいやだから断わる方が多い。今の海外協会から市町村コースの成績が上がらぬのはあたりまえだ。いかに農林省、外務省が一万人募集の計画を立てても毎年いかないのはそこに原因がある。それだけではないでしょうけれども……。従って、これはことし限りでなく毎年のことでありますから、どしどし出してやるというには行く人の立場になって、財産処理にも十分の時間をかける。中央でいかにりっぱな計画を立てても、信用組合等では貸してくれない方が多いのですから、これに対しては別途の方法を考えたらどうかと思うのです。そこで私考えるのは、ちょうどイタリアのイクレのように国内と現地とに本店、支店を持った、その国で認められた法人を作って、そして海外に行きたい者の財産を、何といいますか、専門でないからわかりませんが、かりに百万円相当の不動産があるといたしまして、七十万円くらいすぐ渡してしまう、そして後日その田地田畑、家が売れたときに残りの三十万円を送ってやるというように、信託売りになりますか何かわかりませんが、そういうような機関をあわせて持たぬことには、相当の金持ちの人で、向こうに土地を持って、行くという計画移民の募集成績が上がらぬと思う。そういうふうに見られるかどうかお尋ねしておきたいのであります。従って今後出すということについては私はこう考えます。計画移住予定通りいかないのはそういうこまかい問題で困っておるのだから、その点を配慮する、改良する。募集から乗船までの時間をもっと見てやる。予報をする。それから今度財産の処分についてももっと親切に、金融機関がなければ金融機関を作る。たとえばかりに海外移住金融公庫みたいなものを作ってもいいのじゃないかと思います。そうして国内での不動産の信託行為をやる。それから海外にも送金してやる。海外支店を渇いて向こうから送金をさせるようなこともじっくり考えていいのじゃないか。このことは海外移住振興会社のやり方に関連をしますから、きょうは時間の関係で、この次、大臣も来たときに移住局から来てもらってゆっくり聞きたいと思いますので、その点には触れません。  今言葉に出てきました民間の取り扱い業者をこの際申し上げておきたい。口入れ屋みたいにうそを言って棄民のようにほったらかすというのは明治時代のことであります。最近はサービスに変わっておるのですから。この民間業者が今七、八社あります。ところがこれが実際には七千人とか八千人とかいう数字に対する非常に大きな効果を上げている。数字を見れば、たとえば七千人でありました昭和三十四年の海外移住者の中で、五千人はそういう民間業者が募集して送り出している。政府の計画の移民は二千人くらいのものです。間違っておったら訂正して下さい。私はそういうふうに了承している。それはどっちがいいか。呼び寄せとか雇用とかいうことに対しては、民間はむろん手数料を取ります。金もうけですから収入を上げなければならぬですからね。ところが政府側、公共でやっておるのは手数料を取りません。そのかわり非常に冷淡であり画一的である。たとえば海外協会連合会の今年度の予算が四億何千万円です。農林省で地方の海外移住協会に補助をやっておるのは一千万円くらいじゃないかと思う。その他本省の事務費がございましょう。そうすると約五億円くらいの金を国家は出しておる。すなわち国家としては海外に出したいという意味でそれだけの予算を出しておる。ところが計画移民で行く数はわずか二千人だとしますと、一人当たり見ますと二十五万円くらいかかったことになるのです。民間の募集取り扱い業者は五千円か八千円の手数料を取りますけれども、しかしそれはそのくらいかかるし、多少利益もなくちゃいかぬでしょう。その半面に船の出る日は横浜にも神戸にも民間の業者は送りに行って握手して激励している。向こうへ行ってからも、嫁さんがほしい、よろしい呼び寄せてあげましょう。それから向こうへ行って生まれた子供が内地の学校へ入りたい、よろしい、保証人になってあげましょう、宿舎を見つけてあげましょうというように、いわば血が通ってくる。それが市町村や県庁での扱い方がごくおざなりでありまして、なかなかそこまで親切が届かない。戦前の海興はいろいろ非難されながらも、戦争前に年間に二万六千人という移民を送ったことがある。これが最大であるといわれておりますが、戦後約十年移民問題を扱ってやっさもっさやっておりながら、わずか三万何千人ですから、年当たり三千人平均ですよ。これは実に国費をむだに使っているのじゃないか。従って民間業者をもう少し理解してこれを使うという気持になったらどうか。いたずらに、あいつらは金もうけするからなんて言っても、これは月給もらっているわけでもなければ、恩給もらうわけでもない。あるいは出張旅費があるわけでもない。従ってこれを善導してやっていけるようにする方法はないか。たとえば海協連で持っておる予算の中で、民間がかりに五千人募集したならば、一人当たり手数料が五千円かかるならば、二億五千万円という金を渡してやる。いわば下請みたいにしてやるとか何か方法がありそうなものだ。この点についていま一歩進んで一万人をこすという意味からいって、民間的募集方法と公共的募集方法との併用ということが考えられぬか。何もかも統制してお役人のもとで使わなければならぬということにはならぬ。現に七、八年間に一ぺんも一万人こえていないのだから、ほんとうを言ったら、悪うございましたといって辞職するぐらいの責任感を持たなければならぬと私は思う。これに対して外務省、農林省両方の見解を聞きたいし、ここで討論するわけではないが、どうしたら一体一万人こすかということを前提に考えて、民間の業者もやっていける方法を併用をしていったらどうかと思うのですが、これに対する御答弁を願いたい。
  36. 高木廣一

    ○高木政府委員 海外移住という問題について詳しく御存じ田原委員から、全く肯綮に当たった御質問があった次第でございます。昭和三十四年度は、おっしゃったように全くそういう自由移住の方が多かったのでありますが、三十五年度は、今日までのところでは、公募、呼び寄せを含みます計画移住が七割で、自由の方が三割になりました。これは海外移住を計画化していく、また呼び寄せにつきましても、現地の呼び寄せを計画移住に乗せてやっていくという努力の結果でございまして、つい最近もブラジル南部のリオグランデドスール州の、従来は個々の自由の呼び寄せで行っておりましたのを計画移住に乗せて、ブラジル政府の了解を得て入れるというようなこともできて参りました。移住全体といたしましては計画移住がこれから相当大きく伸びていくと思います。しかしながら田原先生もおっしゃったように、海外協会連合会あるいは地方海協、及び府県の努力以外に、旅行あっせん業者というのですか、これが従来移住に貢献した点はまことに多いのであります。確かに昭和三十四年度はこれの送った移住者の方がはるかに多かったのであります。この点はわれわれとして無視できないと思うのでありますが、同時にいろいろ弊害があったことも事実でございます。従ってわれわれといたしましては、この長所を生かして弊害はできるだけなくするような新しい組織を考えていくということは、非常に大事な課題であると思っております。それから国内における移住の募集ということがこれからは一そう大事になってきて、そっちの方は整ったがうちの方が届かないという実情になっていくと思います。これに対しましては、われわれといたしましては一応国内海外協会連合会及び地方海外協会が国内、国外を通じて移住の実務を一元的に行なっていくという方針で行なっております。これに旅行業者をいかに統制をとりながら協力をせしめるかという柱をどうしても考えたいというふうに思っております。本年、先ほども申しましたように、移住基本法のごときものをできるだけ早く立法化していただくように、われわれとしては希望しております。その中に今の点も解決されて入るような運びにまでいたしたいと思っておる次第であります。  なお、先ほど申されましたように、移住につきましては、移住の専門家の活動というものが非常に大事でございます。一たん移住者を一人送り出しますと、これは途中から、行った先、それから数年後になっても、送り出した人のところに責任が来るのであります。そういう点で移住のエキスパートというものを官庁の行政業務の連絡役あるいは促進役とし七養成していく、これが海外協会連合会、地方海協及び旅行業者のファンクションになっていると思うのであります。こういう点を十分考えた上に理想的な体制を早く確立するように努力いたしたいと思います。
  37. 三善信二

    ○三善説明員 先ほど御指摘のございました、農協が貸す場合に二十万円ぐらい、またあまり好んで貸していないのじゃないかという問題と、それから募集の問題についてお答えいたします。  現在融資の問題につきましては、農地に関しては自作農維持創設資金で大体二十万まで貸しつけておるわけでございます。それからそのほかの財産を処分する場合には、その財産を取得する者に対して農協が貸した場合に三十万円を限度として拓植基金を作りまして、それから補償している、御承知通りでございます。これは一応三十万円まで現在補償しているわけでございまして、ただ拓植基金の設立状況が、現在は二十五県くらいになっておりますので、三十六年度もあと五県くらいは設立して融資措置を円滑に進めたいと思っております。  それから募集の問題で、非常に時間的にも余裕がなくて混乱を来たしているのではないかという問題でございますけれども、これは今後計画的な募集というものをもっともっと進めまして、相当長期間にわたって一応計画を出し、その計画に基づいて、末端の募集をやらせるような方法に極力努めたいと思っております。その場合に、方向としまして、いろいろあると思いますけれども、まず県とか市町村にそういう計画、指導というものをやらせまして、海協連、地協連、全拓連、そういったいろいろの募集機関協力してやっていただくというふうに考えているわけでございます。特に旅行あっせん業者の問題につきましては、先ほど外務省の方から言われましたように、特に現在これをどういうふうに持っていくかということについて、はっきりした見解を持っておりませんけれども、やはり現在まで果たしました実績等につきまして、いろいろの欠陥はあったようでございますが、その欠陥を是正しながら、どういうふうにこれをもっていくかということは検討して参りたいと思います。
  38. 田原春次

    田原委員 あと同僚の西村委員から質問がございますので、私はたとえば輸出入銀行海外日本投資部を作ったらどうかという問題、それから海外移住金融公庫の問題等で聞きたいこともありますけれども、次会外務大臣の出る日に、あらためてまた御足労願ってお尋ねしたいと思います。  今、全般を聞いて、津島政務次官はどういうふうに感じられるか、海外移住問題に対するあなたの抱負なり、今までの問答を通じての今後のやり方等について、一言聞いておいて終わりたいと思います。
  39. 津島文治

    津島政府委員 ただいま田原先生の非常に深いお話を承りました。やはり何といたしましても、移住問題は人が行かなければどうにもならぬのであります。私も若干承知しておりますが、いつも計画を下回る、いまだかつて計画を上回ったことはないのであります。これについてはいろいろ外務省あるいは農林省からその理由がございましたが、やはり中央の意欲と末端の意欲、これが非常にちぐはぐになっておるというふうに考えられるのであります。そういう意味からいたしまして、これを成功させるためには、何としましても両省の考え方を強く末端に反映をさせて、末端の方々がほんとうに十分に活動ができるというような仕組みにしていくことが、非常に大事ではなかろうか、かように考えた次第であります。
  40. 堀内一雄

  41. 西村関一

    西村(関)委員 移住振興につきまして外務省、農林省、特に日伯移住協定締結に関して外務省が努力せられました点は多とするものであります。ただこの機会に若干のことをお伺いいたしまして、当局の御決意を促したいと思うのであります。  まず第一点は、ただいまも同僚田原委員から質問がありましたように、戦後わが国移住の伸びが計画をはるかに下回るというような原因がどこにあるかという点であります。これはいろいろな原因がございましょうが、一つは、一番大きな問題点は政府当局の移住政策に関する熱意のいかんにかかっておると思うのであります。いろいろ御苦労のある点はわかるのでございますけれども、各国に比べて、また戦前に比べて戦後のわが国移住政策が思うように伸展していないということは、一つはやはり政府当局の熱意の足りなさという点にあると思うのでございます。そのことは海外に出ようとする人たちにとりましては非常に大事な点でありまして、何と申しましても経済的、精神的圧迫のもとに、その圧迫を負いながら海外に出ていこうとする人たちでございますから、なるべくそのような重荷を軽くするということが為政者として考えなければならない点であることはいうまでもございません。精神的な問題については後に若干触れるといたしまして、まず海外に出る人たちの経済的な圧迫は何と申しましても移住についての費用がかさむということでありまして、これをできるだけ軽減させるという方途を講じなければならないと思うのであります。日伯移住協定締結一つのエポックになると思います。しかし外国のこの種の協定において見られます点と比較いたしますると、たとえば伯伊移民協定におきましては、ブラジルはイタリア移民に対しまして渡航費を前払いをいたしまして、二カ年間開拓に従事するときは報酬奨金としてその債務を免除するという規定が十三条にあります。二年間まじめにやれば全額を与えるということに相なっておるのであります。またブラジルとオランダの移植民協定によりますと、ブラジルはオランダ移民の渡航費を前払いいたしまして、移民は到着後五〇%をブラジル政府に償還するということがその第十八条にうたわれてございます。すなわち、それは半額補助でございます。ところが日本の場合は、これは貸付でございまして、しかも利子をつけて貸し付ける、利子までも償還しなければならないというようなことでありまして、まずこの点から非常な違いがあると思うのであります。これらの点について、この協定を結ばれる交渉の過程において話し合いがあったのかどうか、まずその点について移住局長から伺いたいと思うのであります。  なお、こういう状態に対して経済的な負担を軽くする、つまりやせ馬に重荷をになわせて、しりをひっぱたいて行け行けといってもなかなか行かないのです。荷を軽くして行きやすいようにしてやる。外務当局はこれらの点についての努力を払われたかどうか。また将来の見通しとして、そういうことが可能であるかどうか。もちろん白色人種に対する優先的な取り扱いが現地の感情としてあることは私も理解するのでございますけれども、そういう点が非常に違っておると思うのであります。また、こういう渡航費の経済的な負担の軽減ということに対して、大蔵当局はどういうふうに考えておられるか、まずその点をお伺いいたしたいと思います。
  42. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいまイタリアとブラジルの場合及びオランダの場合の御質問がございましたが、ヨーロッパの移民に関しましては欧州政府移住委員会、通称アイセムICEM、インター・ガバメンタル・コミティ・フォア・ユーロピアン・マイグレーションという組織がございまして、これが輸送を全部担当するということになっておりまして、オランダにいたしましても、イタリアにいたしましても、これに入っております。ブラジルも入っているわけであります。そういうことでございましたので、前のイタリアの移住協定では、その趣旨で、実際上先生がおっしゃったような規定がございましたが、アイセムの援助にたよっておりました。  それから、あのイタリアの協定は、実はその後また新しい協定ができたのでございまして、これは日本協定ができたあとでできまして、われわれも今条文を取り寄せて調べておるのでございますけれども、これによりますと、こういうことになっております。イタリアとブラジルの協定でございますが、その第十五条に「両政府は、移住者及びその財産のブラジル合衆国への輸送について、欧州政府移住委員会(ICEM)その他両政府が認める特別の国際機関の援助を要請する。両締約国は、前記の援助が与えられない場合には、交換公文により、前記の輸送を確保するための適当な方法と条件とを取りきめる。」というようなことになっておるのでございます。従来はこのアイセムの援助はございましたが、ブラジルがあまり実施できませんで、結局アイセムと、さっき田原委員が御質問になりましたイクレ——イタリアの移住者金融機関、これが援助をしておった次第でございます。このイクレの援助は従来やっていたわけです。農業移住に関しましては二年ないし三年の据え置き、その他については六カ月ないし十二カ月の据え置きで、担保は保証人二人、償還期限四年というような条件で渡航費を自由移住者に対し貸し付けていたのでございます。  それからアイセムにつきましては、一人当たり二百ドルまで、これはうちイタリア政府が六十ドル、アイセムの場合も業務費の一部は各国政府が持つことになっておりまして、その範囲内でイタリア政府も負担することになっておるのですが、アイセムといたしましては一人当たり二百ドル貸し付けるということになっております。この条件を見ますと、実は移住者の渡航につきましては、日本貸付条件の方がはるかに寛大な貸付条件になっておる、こういう実情でございます。  オランダの場合もブラジルとの協定はイタリアと全く同じ規定になっております。  それから申し添えますが、日本とブラジルの協定が標準になりまして、イタリア、オランダの新しい協定はほとんど同じ協定ができております。
  43. 西村関一

    西村(関)委員 今私の手元にはブラジルとイタリアとの協定の条文はちょっと見当たらぬのですが、先ほど指摘いたしましたオランダとの協定の十八条を見ますと、今私の申し上げた半額負担というようなことが出ておるのでございますが、この後この協定が変わったのでございますか。
  44. 高木廣一

    ○高木政府委員 失礼いたしました。オランダは間違いでございました。あとでできましたのはイタリアとスペインでございまして、オランダはそのままでございます。
  45. 西村関一

    西村(関)委員 そうするとオランダは半額ブラジル政府が補助するということに間違いないのでございますね。
  46. 高木廣一

    ○高木政府委員 実はオランダの場合は今おっしゃったような規定になっておるのですが、ブラジルが履行しておらないのでございます。それで実はわが方の交渉のときにも同じような交渉はいたしましたが、今度はブラジルがほんとうに実行できる協定でやっていきたいということでこのようになったわけであります。実際はオランダの場合は実行しておらないのです。
  47. 西村関一

    西村(関)委員 その点はそれでけっこうでございますが、戦前のわが国移住政策と比較いたしますと、渡航費につきましては現在二戸当たり四十四万円ですか、全部政府貸付でやるということでありますが、戦前拓務省は二百円全額補助をしておる。この二百円ということはブラジルまでの船賃ということでありまして、全部政府の補助で行っておったのであります。ところが現在はこれが貸付になっておるということであります。  それから支度金につきましては、三十五年度からは十二才以上が五千五百円、十二才未満三才以上が二千三百円、三才未満が二千円、こういう支度金がつくことになっておりますが、これを戦前と比較いたしますと、拓務省は五十円を支給しておった。現在の東京の卸売物価指数三百五十五倍をかけますと一万七千七百五十円になります。一万七千七百五十円と五千五百円とはだいぶ違うのであります。これも十分な熱意がここに現われておるということはまだ言えないと思うのであります。  それからまたこれは少しこまかくなりますけれども、移住教養所におきましては米一食一合、副食費一食六十円、これが移住者の負担と相なっておるのでありますが、戦前は全部政府の負担であった。また国内移住者の必要な費用、郷里から神戸までの汽車賃は割引がない、戦前は五割の割引があった。これは小さいことですけれども、こういったようなところから見ますと、戦前の移住政策よりは戦後の移住政策は後退しているというふうに考えられますが、その点はいかがですか。
  48. 高木廣一

    ○高木政府委員 今申された通りでございます。戦前は渡航費を給与しておりました。現在は貸し付けております。支度金も来年度はおとな七千円、子供三千五百円、幼児千七百五十円まで大蔵省の了解を得まして予算をふやすことにいたしましたが、これは実はわれわれといたしましては一万四千円を要求したのがその半額に削られた次第でございまして、これは予算全般の立場から、われわれとしては必ずしも満足したわけではございませんが、これで了承した次第でございまして、事務担当者といたしましては、できる限り移住に対する政府の保護、援助がもっともっと強化される必要があると思います。ただ移住につきましては、戦後移住が始まりましたころに、海外移住する者を援助するよりも、国内で浮浪者も多いしそっちの方をやるのが先じゃないかというような声がありまして、移住者に対しては非常に待遇がきびしかった、それが今日の援助が少ない基礎になっておりますので、われわれといたしましては今後ともできるだけこれの補助がふえるように努力していきたいと思いますが、国の予算全般との関係もございますので、そういうことになった次第であります。
  49. 西村関一

    西村(関)委員 もう一つこまかいことですけれども、旅券の発給に対する手数料ですが、これは一人五百円でございますね。一般は千五百円であるのが五百円ということなんですが、これも何とか移住者はただにしてあげるということができないのでしょうか。外務省の三十五年度の旅券作成費は六百八十四万四千円でありますが、歳入予算の方を見ますと五千五百四十六万何がしになっている。つまり一般の旅行者の費用、歳入がはるかに上回っておる。これだけ上回っているのですから、海外移住者の旅券の手数料などはただにしたらいいじゃないか、そういうことをお考えいただけないのでしょうか。  それから先ほどの点でございますが、わずかではございますが、旅費なども戦前は五割引きであったのですから、五割引きをするようにというくらいのことは外務当局としては国鉄に対して交渉をせられてしかるべきじゃないか。私の申し上げたい点はやはり熱意のいかん、そういうことが結局海外へ出る人に安心感を与えると思う。そういうことはこまかいことでありましても、小さいことでありましても、そういう努力が払われておるということが私は必要だと思うのです。その点いかがでございましょう。
  50. 高木廣一

    ○高木政府委員 移住者の旅券の発給手数料につきましては、われわれもほんとうに無料にしたいのでございます。三十六年度の予算では、とりあえず法律を変えないで政令の範囲内で下げられます最小限度二百五十円までの手数料に減らすことにいたしました。なお無料にするためには法律を変えなければいけませんので、将来はさらにそういうふうに持っていきたいと思います。  それからさっき言い忘れましたが、収容所におきまする副食費は三十六年度からささやかではありますが、国の補助にするということにいたしました。鉄道運賃の半額につきましてはまだ達成できないのはまことに遺憾でございますが、これも将来さらに努力することにいたしたいと思います。お説の通り、われわれといたしましてはこまかい点にまで移住者の立場を考えて出やすいようにするということで努力するようにいたしたいと思います。足りないところはまことに申しわけないと思いますが、今後ともがんばりますから、御了承願いたいと思います。
  51. 西村関一

    西村(関)委員 文部当局にお尋ねいたしますが、三十五年度の海外学生給与に関する予算を見ますと、二百二十三人を対象として五千三百五十二万円計上してありますが、これらの海外学生を受け入れた実数並びにその内訳、つまり移住の問題は、ただ送り出す側の過剰人口を受け入れる側に送り込むというだけでなしに、双方の国の理解と親善を深める、双方の国の利益を増進する、ひいては世界平和に貢献するという点にあるということを、高木移住局長は常日ごろから強調しておられるのでありますが、そういう見地から申しましても、わが国においてこういう多数の移住者を受け入れておるところのブラジルを初め中南米の国々から海外の留学生を受け入れて日本の事情をよく理解させ、双方の親善協力に当てるというような配慮が外務省と文部省の間に取りかわされて、そういうことの実を結ぶことが必要であるという観点から、その点現在はどうなっておるかということをお伺いいたしたいと思います。
  52. 田中彰

    ○田中(彰)政府委員 御質問の意味はおそらく国費で外国人を日本に留学させる問題であろうと存じますが、実はこの留学生には二つのカテゴリーがあります。すなわち第一は学部留学生と申しまして、大学で四年間勉強して学士号を取得するという種類のものであります。もう一つは、われわれは研究留学生と呼んでおりますが、これは現地の大学の卒業生であって、二年間日本の大学なり研究所なりで特定のテーマについて研究をするという種類のものでございますが、中南米その他欧米も同じですが、実は研究留学生の方を従来採用いたしておるわけでございます。ブラジルにつきましては日系人を招聘するという方針のもとに、毎年二名程度新規に受け入れておるわけでございます。現在ブラジルから参っております留学生は五名おりますが、来年度もこの程度の新規受け入れはいたしたいということで、寄り寄り外務省とも相談中でございます。
  53. 西村関一

    西村(関)委員 私の聞きましたのは、二百二十三名の予定のうち何名来たか、そしてそのうちブラジルは今おっしゃったように日系を二名ずつ受け入れて五名おる、来年もこの程度ふやしたいというお考えだと伺いましたが、ほかの中南米の国々からはどういう状態になっておりますか。もし今わからなければ、あとで報告して下さってけっこうです。私の言いたいことは、さきに申しましたように、外務、文部両当局がよく話し合って、これらの多数の日本移住者を受け入れている国々の人たちを、こういう国の費用でできるだけわが国に受け入れるというような努力をしていただきたいということを申し上げたいために、そういう質問をしたのであります。  それから、続いて文部当局にお伺いをいたしますが、先ほども田原委員から質問がございましたが、移住教育について、たとえば高等学校等における第二外国語として、ポルトガル語もしくはスペイン語、そのいずれかを課するというようなことも、一つの大事な——これはもちろん全部そういうわけにはいきませんが、ある特定の学校に対してはそういうような配慮をするということも、移住の盛んな県においては、必要じゃないかと思いますが、そういうようなことはどうでございましょうか。お考えはございませんでしょうか。私は移住者の精神的な負担と申しますのは、一つはやはり言葉の点だと思います。これは二週間くらいの準備期間中だけではとてもものになりません。ですから、やはりこういうことは恒久的な対策として教育の面から取り上げていくということが必要だと思うのでありまして、そういう点に対する当局のお考えを一つ伺いたいと思うのであります。
  54. 田中彰

    ○田中(彰)政府委員 高等学校におきましては、外国語としては、もちろん英語が大部分でございます。スペイン語、ポルトガル語といったような第二外国語としての教育は、高等学校の中にクラブ活動として行なわれているものがあるようでございます。なお、根本的にかようなものを正規の教育として取り上げるかどうかは、今後の問題として十分検討いたしたいと思っております。
  55. 西村関一

    西村(関)委員 次に、お尋ねいたしたいと思いますことは、ここにも資料としていただいております、昭和二十九年七月の閣議決定の事項でございますが、「海外移住に関する事務調整についての閣議決定」、この事項でございますが、これの第三に、「農林移民の募集、選考、訓練及び現地技術調査は農林省がこれを担当する。但し、右について農林省は主務官庁たる外務省との協議を必要とし、かつ、連絡会の決定に従うものとする。」という規定がございます。そしてまたこの閣議決定の内容の中に、大まかにいって募集は農林省がやる、しかし送り出しと向こうの受け入れに関する業務は外務省がやる、こういうことがきめられておるようでございますが、これはもちろんそのことにつきましては、海外協会連合会、地方海協がその末端の仕事、実際の募集の仕事をやるということに相なっておるようでございますが、どうも現地の状態を見ますと、極端に申しますと、送りっぱなしであるというような傾向が見えるのであります。やはり日本においては相当な農業の専門家、技術者でありましても、現地に参りますと、内地の経験は必ずしも十分に発揮できない。やはり現地に即したところの指導が必要であることは言うまでもございません。そういう点は外務省の方ではなかなかできないので、やはり農林省がその方に当たらなければならぬのでありますが、そういう点につきまして私の希望の意見としましては、移民の募集、選考、訓練、営農技術の指導ということも含めてここでやらなければならぬと思うのであります。閣議決定についてここでとやかく申しましても筋違いでありますけれども、一応こういう点につきまして外務当局と農林当局に御意見を伺っておきたいと思うのであります。私の言いたいと思いますことは、送り出した移住者の現地の営農技術の指導ということに対して国は一体どういう考えを持っておられるか。この点、どうもまだ十分でない、というよりはほとんど送りっぱなしという印象さえ受けるのでございますが、この点は外務、農林両当局においてはどういう調整と申しますか、どういう実際の働きをやっておられるか、伺っておきたいと思います。
  56. 高木廣一

    ○高木政府委員 移住者を送り出しましてからの指導、援助は、海外協会連合会現地支部が援助することになっておりまして、これに営農指導その他各種の援助の仕事をやらしております。実際の措置といたしましては、海外における農業の経験のある人々が各地におりまして、これが海外協会現地支部の職員として営農指導をし、また各地にはほとんど大部分——大部分と言ったら言い過ぎでございますが、海外協会連合会現地支部の事業として農業試験場を作る、試験場を作るまでに至らないところは委託栽培をやっていただいて営農指導に必要な農業研究、試験をやり、これが移住者を指導するという態勢をとっております。この移住につきましては、移住の実務は役所よりも民間団体である、今申しました海外協会連合会及び現地の支部、地方の支部、地方海協、こういうものがやっていき、役所はその上から政策、予算という面で指導するというのが一番実際的ではないかと思います。この閣議決定の趣旨もそういうことだと思います。
  57. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま西村委員の御質問になりましたのは、現地入植に際します営農技術等についてもっとしっかりやるべきではないかというような御意見かと存じますので、われわれも全くそのように考えているわけでございます。今の指導の態勢につきましては外務省からお答えがあったわけでございまして、われわれといたしましては、やはり送り出すほかに 現地に定着して、そして入った人の生活がそれによって高まるということが何よりの目標でございますので、そういう意味から、農林省といたしましても、今の海外協会連合会であるとか、あるいは移住会社であるとかいう方面に対しまして技術者を派遣するというようなことも考えておりますし、これはまた外務省の職員になるわけでございますけれども、必要な技術者を現地に、在外公館に派遣するというようなことによりまして、そういう面で役に立つ者はやはり指導していく必要があろう、かように考えておるわけであります。お話の趣旨につきましては、全く同様に考えております。
  58. 西村関一

    西村(関)委員 ちょっと、そういうふうに両方から伺いますと、うまくいっているように受け取れるのでありますが、実際はなかなかそういっていないのです。その点私は心配しているのでありまして、現地の出先の在外公館が海協支部の指導をやっておられる。それは建前上そうなるのですけれども、しかし、外務省は、やはり営農技術の指導ということには、これはしろうとなことは言うまでもないことなんですが、そういう点に対して、戦前のことばかり私は申し上げるつもりはないのですが、サンパウロには、戦前は、当時の拓務省ですか、農商務省ですかから技官が五名行っておったでしょう。そのくらいやはり熱を入れておった。ところが今お話を聞くと、外務省の所管のもとに技術者を派遣する、あるいはまた海協の海外支部に技術者を派遣するということを振興局長は言っておられるのでありますけれども、そのくらいのことで、あの広大な地域にあるところのブラジル国の移住者の営農技術の指導ができるかどうか。私はできないと思うのであります。こういう点に対しても外務省と農林省の話し合いはまだ不十分である。のみならず、両者の熱意が足りない。極端に申しますと、移民が送りっぱなしになっておる。こういうような現象が出ておるのでありまして、この点に対して再度御答弁をいただく必要はないと思いますけれども、今後十分にそれらの点の問題を解決するために御努力を願いたいと思うのであります。  次に、この日伯移住協定締結にあたりまして、私は特に当局の注意を喚起いたしたいと思いますことは、私が申すまでもなく、ここに至りまするまでに、多くの同胞、日系ブラジル人、また移住に貢献をした人たちがあったことはもちろん忘れてはならないことなんであります。特に、私は、御承知の松原安太郎という人が一九五四年の七月の一日に日伯移住協定の先駆的な取りきめをなさって、外務当局がこれに裏書きをせられた。こういうことが今回までブラジル移民の非常な貢献をしてきたということでありまして、この方がブラジルの政情の変化のために非常な不遇の状態に陥られて、現在白浜において病床に横たわっておられる。国はその人に対して勲章を贈って労をねぎらったようでありますが、こういう人が忘れられようとしておる。こういうようなことに対して、私は、ことさらに高木局長がおっしゃられないとは思いませんけれども、何ら触れておられない。いろいろな場合にお話をなさるとき、またものに書かれるとき、こういう隠れた人材が非常な私財をなげうち、犠牲を払って、しかも今は不遇な状態になって、日本のブラジル移民の行方を見守っておられる。こういう人の功労に対して、この日伯移住協定締結を前にして、私は、外務当局としては一体どのように考えておられるか。どのようにして、この人たちの働きを評価しておられるか。この点をお伺いしたいと思います。
  59. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいま西村先生がおっしゃいました松原さん、それからアマゾンにおられます辻小太郎さん、この二人がヴァルガス大統領との話し合いで、最初の日本人の移住のワクをとられた、これは非常に大きな功績でございまして、これは、われわれ日本におる者もブラジルにおる者も一様に非常に感謝をいたしておる次第でございまして、今度の移住協定ができました一番大きな基礎は、やはりこの二人が作られたといってもいいと思うのであります。これに加うるに、在伯四十五万人の同胞の、過去五十年以上に及ぶブラジル政府に対する功績が今日に至らしめた、こういう意味において、われわれはあらゆる方法をもってこの方々の尽くされた貢献に感謝をするし、また感謝以上の措置が講じられれば、その措置も講じなければいけないと思っております。
  60. 西村関一

    西村(関)委員 まだだいぶ質問が残っておりますが、本日は時間も経過しておりますし、大臣もお見えになっておられませんから、次会に延ばさせていただきまして、本日は、私の質問は一応これにて終わりたいと思います。      ————◇—————
  61. 堀内一雄

    堀内委員長 この際、参考人招致の件についてお諮りいたします。  ただいま本委員会において審査中の移住及び植民に関する日本国ブラジル合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件について、参考人を招致して意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 堀内一雄

    堀内委員長 御異議がないようでありますから、さよう決定いたします。  なお、参考人の人選その他につきましては委員長に御一任願いたいと存じますので、さよう御了承を願います。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十七分散会      ————◇—————