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1961-06-07 第38回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年六月七日(水曜日)     午後一時二十七分開議  出席委員    委員長 山口 好一君    理事 菅野和太郎君 理事 齋藤 憲三君    理事 中村 幸八君 理事 前田 正男君    理事 岡  良一君 理事 原   茂君       赤澤 正道君    有田 喜一君       稻葉  修君    仕々木義武君       西村 英一君    石川 次夫君       内海  清君  出席政府委員         科学技術政務次         官       松本 一郎君  委員外出席者         科学技術会議議         員       内海 清温君         科学技術会議議         員       梶井  剛君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府技官         (科学技術庁計         画局科学調査         官)      手束 羔一君         総理府技官         (科学技術庁計         画局計画課長) 橘  恭一君         総理府技官         (科学技術庁振         興局長)    前田 陽吉君         気象庁長官   和達 清夫君         参  考  人         (地震学会会員         東京都立雪谷高         等学校教諭)  宮本 貞夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地震予知等に関する問題  科学技術振興総合的基本方策に関する問題      ————◇—————
  2. 山口好一

    山口委員長 これより会議を開きまます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  これより、地震予知等に関する問題について、参考人より御意見を聴取することといたします。御出席参考人は、東京都立雪ケ谷高等学校教諭宮本貞夫君であります。  この際、宮本参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会調査のためわざわざ御出席を賜わり、ありがとうございます。  直ちに質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、この際、これを許します。原茂君。
  3. 原茂

    ○原(茂)委員 きょう、宮本先生においでいただきまして御意見をお伺いしたいと思いました動機について先に申し上げておきたいと思うのですが、昭和二十四年の十二月何日でしたか、同じように、地震予知、その観測問題について、当委員会におきまして何人かの参考人においで願って審議をいたしたわけてございますが、その後、依然として地震予知という問題について、むずかしい問題ではございましょうが、はっきりした定説もまだ確立されておりませんし、その方法等に関しましても、学理的にも、実験的にも、私たちが納得するようなものが出ておりませんので、自来、二年もたっております今日までに、その後、どのように研究が進められ、あるいは観測等が行なわれて参りましたかを、この委員会におきまして、参考人からも、あるいはきょうおいでいただきました和達長官からもつぶさにお聞かせいただきたいと思うわけであります。  このことをお伺いする前提として、特に委員長並びに同僚委員の皆さんの御了解を得ておきたいと思いますが、三つ前提を申し上げさせていただきたい。  その一つは、万が一、不幸にいたしまして、きょう、この委員会でいろいろとお話伺いましたあと、人畜に被害が与えられるような地震等のございましたときには、その直後に当委員会を開きまして、その予知に関して、その地震に対する観測に対してどのようなデータが出ているのか、どういう方法でこの予知に対する処置をとってこられたのか、その詳細について、地震のありました直後にこの委員会を通じてお伺いをいたしたい。このことを一つ委員長にも御銘記願って、そのときの理事会等を通じお願いしたいと思うのであります。  二つ目には、やがてこの委員会の焦点になる問題は、地殻変動問題といいますよりは、電磁気問題中心になると思いますから、この地震のあるなしにかかわらず、後刻電磁気関係専門家並び研究者参考人としておいでをいただきまして、前会やろうとしてでき得ませんでした電磁気関係専門家を集めての当委員会における審議を、それもなるべく早い機会に開催をお願いしたい。  なお、三つ目には、万が一、この委員会等でこれから真剣に審議をいたしました結果といたしまして、必要のある場合には、当委員会決議といたしまして、いわゆる継続観測などを、無定位磁力計といいますか、この高木式磁力計による継続的な、組織的な、国家機関による研究をすべきであるという決議にまで発展をさせ、急速にこれを実行せしめたいというようなことを考えておりますので、この点も、審議の経過から十分に委員長のところで御勘案をいただきたい。  この三つ前提を置いた上で、今からいろいろとお伺いをしてみたいと思うのであります。  そこで、第一に、和達長官に、先に数項目お伺いをいたしておきたいのであります。この前、たしか三十四年十二月二日でございますか、この委員会におきまして長官からいろいろとお話を聞かしていただきました。そのあと、私たちからも質問を申し上げたわけでありますが、その質問に対するお答えの中で、当時、はっきりと、こういうことをこれからしょうとおっしゃったお答えがございました。そのお答えの中で、これから申し上げるようなことに対してどういうふうに実際の措置をお進めになったのか、この高木式の特殊無定位磁力計といいますか、これを中心にした地震予知という問題でどのように措置をおとりいただいたのかを中心にして、お答えをいただきたいと思います。  まず、第一にお伺いいたしたいと思いますのは、当時、長官は、「われわれがそれを納得するならば、われわれが相当研究観測に取り入れ、それがまた有効ならば、業務に取り入れることも当然考える」こうお答えになっております。そこで、当時は、まだあなた方が納得する条件がなかったようでございますが、現在は何か研究をしよう、いわゆる業務組織的に研究していこうとなさるような納得に至っておられるかどうか、これが一つであります。もし、納得することができるようになったというならば、研究観測相当力を入れ、そうして、有効ならば業務にまでこれを取り入れよう、それが当然と考えますとおっしゃったのですが、一体、今そのような状態考え方になっておられるかどうかを最初にお伺いしたいと思います。
  4. 和達清夫

    和達説明員 一昨年十二月に、当委員会においてお答えいたしました通りでございまして、気象庁におきましては、宮本さんの研究されております地震と、それから、無定位磁力計によって観測した磁力変化というものについて検討を重ねて参りました。気象庁におきましては、高円寺にあります気象研究所と、それから、気象庁のすぐそばの内堀の中にあります地震計室におきまして、同様の器械をもって観測をいたしました。その目的は、第一に、こういう現象地震との関連性をとらえるには、その現象が相当広く広がって、そして観測されることが必要であります。そのために、宮本さんも観測網を作ってそういう観測を提唱されておるわけであります。宮本さんの御研究では、かなり遠いところの地震もその観測が有効であるようにされております。従って、たとえば、鹿島灘の沖あるいはそれより遠いところの現象でありますならば、東京都における丸の内、あるいは高円寺、あるいは雪ケ谷高校におきます宮本さんのところも、同時現象でなければ、その現象の実体をつかめない。その同時現象であるかどうかということを努力いたしました。現在のところ、遺憾ながらなかなか同時現象であるということがつかみにくいのであります。これはまだ今検討をいたしております。これについては宮本さんも御議論があると思います。  それから、第二に、器械特性であります。器械が安定した器械であるかどうか、どこでやっても、そうむずかしくなくその器械でつかまえられるものか。そういう現象であれば、その器械でなくても、その現象をつかまえれば、似た器械でも、あるいは既存の器械でもつかまえられる。宮本さんのは非常に特別の器械です。そういうような特別装置をしなくても何かつかめるのではないか。その器械特性でありますが、なかなか複雑でありまして、いまだにその器械特性という点について検討いたしております。そういうようなわけで、その現象、何を一体つかみ、どういう器械でつかんでおるかということを、なお研究を続行いたしております。  なお、五月五日、地震予知委員会が開かれました。これには第一線の地震のこの方面研究者約三十人が集まられて、宮本さんもおられましたが、宮本さんのこの観測についての討論も多少行なわれました。なお、宮本さんの器械その他この現象のこれについては、疑いを持っておる者も相当ございます。それで、なお研究続行中というところが現在の状態でございます。
  5. 原茂

    ○原(茂)委員 交互に一々お伺いして、まことに申しわけないのですが、こういうときに、必要に応じて参考人意見をお伺いしたいと思いますから、あしからず一つ協力をお願いしたいと思います。  今、お話の出ましたような長官お答えになりました第一の問題ですが、いわゆる同時現象といいますか、同じ東京都内——ほんとう都内でなくとも、都内に設置すれば相当遠距離まで観測できるというならば、当然同時現象が出るはずだ、こういうような御意見は、私もっともだと思うのです。その点に対して、まだ双方のデータを合わした上での検討ができているかどうか知りませんが、宮本さんに御意見がありましたら、その点、事前にお伺いいたしたい。  二つ目宮本さんにお伺いいたしたいのは、器械特殊性という言葉を今言われたのですが、もちろん、この種の器械が特殊なものであることは当然であると私は思う。これは特殊な装置があり、非常にデリケートなものでなければ、デリケートな地震予知なんか不可能であると思いますから、特殊なものであってよろしいと私は考えます。けれども、今、長官が言いましたように、この特殊な器械のその特殊性がつかめれば、何も同じ器械でなくても、他の器械でもやり得るのではないかという考え方も一部長官はお持ちのようですが、一体、この器械の、少なくとも、これとこれとこれとだけは特徴としてそろえてもらえれば、ほかの構造、ほかの器械でもいいんだというようなお考え宮本さんにあるかどうかをお聞きしたい。あなたが今お使いになっているこの高木式器械というものは、それと全く同じものでなければ困るとおっしゃるのか。たとえば、前にお伺いした記憶ですが、トタン板でなければどうしていけないんだということで、われわれも疑問に思ったわけです。ところが、あのとき宮本参考人お答えの中にはなかったのですが、あとで何かで読んだときに、しいて言うならば、コンマ三ミリの鉄板ならばいいんだ、トタン板でなければ、コンマ三ミリの鉄板と言った方がいいかもしれないというようなことを書いておられた記憶があります。はたしてそういうものであるのか、いや、絶対にトタン板で、しかも、まるくては困る。四角でなければいけないのだというような、少なくとも、これとこれとがこの器械特徴だというものがおありになるかどうか、その点を二つ目にお伺いしたい。  それから、この間、予知委員会で三十人くらい学者がお集まりになったそうですが、そのとき疑いを持っておられる学者もあった、私は、大部分疑いをお持ちであろうと思う。私は、先生の御研究なさっているこれに対して十分に疑いを持とうと心がけている。そして、とことんまで突き詰めた上で、いいものならいいということで、早くその意味の全体の協力が必要なんだということで、疑いを持とうと努力しているわけですから、学者先生方にすれば、当然疑いをお持ちになる。しかし、その疑いをお持ちになる立場ですが、現在、地震といいますと、マグマ論的なものと、あるいは今お考えになっておりますようなものと、何かそうでない、弾力的反発説というのですか、そんなような学説とか、おのおのの立場があるようです。そこで、疑いを持たれたらしい学者の大部分、あるいは三十人集まられた学者の中で、今の私たちが知っている範囲でいいますと、地殻変動説というものに準拠して地震研究する立場をとっておる人、そうでなくて、いわゆる電磁気的な立場地震というものを究明しようという人の比率がおわかりでしたら、お聞かせ願いたい。三十人も集まった学者の中で、どんな割合で、日本の学界の優秀な人々の割合があるのかを知りたいわけです。これは宮本さんから三つともお答えを願いたい。
  6. 宮本貞夫

    宮本参考人 お答え申し上げます。  まず、第一番目の、同時性ということにつきまして、ある程度資料を積み重ねておりますので、それに基づいてお答えをいたします。長官のおっしゃいましたように、確かに皇居内の地震観測室杉並区における地震研究所と私のところとの比較を、どうすれば科学的に評価できるかということがむしろ前提に立つのであります。すなわち、同じ器械らしく作ってあるということは認めます。ところが、その技術的な担当者——やはり責任を明らかにするために申しますと、湯村哲男という地震課の一員が実際上技術担当者となっておるのでありますが、残念ながら、計算を行なってからでないと科学的な研究データとはいえないという立場から、器械の下に敷くトタンが円形でなければ計算が困難である、私たちがやっておるようなかどばった長方形または正方形では、少なくとも、簡単には計算できないというので、今まで一年半の間にはやっておりません。そうして、私は、口で言うのではなく、実際上のデータで申しますと、井上部長のところでは、最初長方形でやっておった。そうしますと、磁石方向が非常に安定性がよかったのでありますが、円板にすると、数分間くらいの間隔でふらふらと非常に安定を失うのであります。言いかえれば、計算は便利かもしれないが、円板にしたがゆえに一番大事な安定性という特性を失ってしまうわけであります。しかも、湯村さんがやっておりますところは、都内電車からわずかに三百五十メートル、ゆえに、夜中の二、三時間だけは直線で、あと電車のレールから地面への漏洩電流影響ばかり描いている。これでは現象を認めることは完全に不可能であります。ゆえに、対応させようにも対応できないというのが実情であります。  それから、もう一つ杉並区においては、井上部長がおられれば証言して下さると思いますが、私が数回しておりますのでよくわかりますが、一時的なるがゆえにというので、ピンポン台の上に載せてやっておりまして、廊下を歩くと、それによって震動する、わけのわからぬ変化をいつもやっております。ゆえに、私のところの場合のように、完全に自然現象だけをつかんでおりませんので、そういう意味において、全く現段階においては正しい科学的な比較をすべき検討も行なっておらないという状況であります。  もう一つそれにつけ加えて申し上げますと、場合によれば、長官は御存じないかもしれませんが、ここに事実を明らかにいたしますと、湯村哲男さんのなさっている検討には重大な欠陥がある。たとえば、窓に対して、わずか紙一枚を四角な画びょうでとめている。そのために、強風があると強い風が中に入ってくる。そうして、器械をささえている台が、厚味がわずか二分の一センチくらいの手製の板で、不完全にささえているがゆえにゆれる。これは実に半年後に気がついたと言っておりますが、これでは、検討ではなくて、ただ単にやっているにすぎない。しかも、これは私が言うのではなくて、広野課長も完全に認め、これをできるだけ至急に改善しなければならないと井上部長がはっきりおっしゃった。長官のさっきおっしゃったことは、遺憾ながら何らの根拠がないのであります。何らの科学的な検討をやっておらない。しかも、百数十万円以上の費用がすでに投下されていると私は聞いております。このような態度長官がはたして検討をやっているというならば、その責任たるやきわめて重かつ大であると思うのであります。かつて昭和二十二年当時に、石川業六氏が柿岡で検討をやったときも、単なる専門家の一見解に基づいて全然不必要な部分品をつけたために前兆が出なかったのでありますが、そういうことと相関連を持つものではないかと思います。  第二番目の問題についてお答え申し上げますが、この器械は、はたして何台も何台も作れるような簡単な構造であるのか、あるいはごく特別な作り方を必要とするのかというような御質問と思いますので申し上げますと、きわめて簡単であります。私は手製で作っておるのであります。すなわち、私は、もしも費用があるならば、相当完全なものを作れると思うのであります。マッチの棒と同じような、長さ三十ミリの磁石アルミ板の薄いものにセメダインでくっつけております。しかも、合計しますと、わずか二万か三万円ででき上がっております。これがきわめて不思議な特殊な器械であるかのごとく一部の人が言っておられるのは全く言語道断でありまして、私たちが提案をしておりますものは、きわめて安価に、私が作るならば、いかに高級に作っても十万円はこえないのであります。これは学術的に認められている無定位磁力計といいまして、一本だけつっておりますと、御承知のように磁石は南北を示します。ところが、向こうの図にあるがごとく、上下に二十センチの距離を置きまして、極が逆になっております。NS、SNという逆になっております。ゆえに、どの方向にも安定した位置を保つ。無定位というのはそういう意味であります。そういたしますと、地球磁場影響を殺すので微妙な変化を記録するというふうに、まとめて申しますと、だれでも作れ、どこの会社でも作れる。ところが、ここにちょっと補足いたしますと、何ゆえに気象庁は重大な失敗を犯しているか。とれも長官の案外知らないことじゃないかと思いますが、井上部長、また、この湯村氏が、測器舎という会社営業部大橋という人と接触を保って作らせたようでありますが、私が大橋から聞きますと、目的を何ら聞いておらなかった。厳密な無定位を作るというために作ったと言うのでありますが、金属性円筒形を作ったために特別な電流が流れて、われわれの目的とする現象を全く記録しない、あるいはそれに近い状況であるということがあとから判明した。約四十万円の費用を投下しながら、やっとあとで気がついている。ゆえに、さっき言いましたように、湯村さんは木の箱を作って、こんこんと小さなくぎで何かの板切れをくっつけている。数十万円の費用をむだにして、本人は板で作って観測している。これでは何十万円の金が何にもならない。これこそが税金の浪費であると私は断言してはばからないものであります。すなわち、何らの科学的根拠に基づかざる観測をやっておる。これは吉松所長も認めて、この前の会合でも、湯村氏を相当とっちめたのであります。  もう一つは、〇・三ミリの鉄板でよいのか、あるいは鉄板というのではなくて、どうしてもその上に亜鉛メッキしたトタンでなければならないかということに対して、どの程度わかっているかという御質問だと思いますが、残念にも、私の場合は、やろうやろうと思いながら、白状しなければなりませんが、十分な費用がないために鉄板を買うことすらできないのであります。かつて買ったのでありますが、準備が不足のまま数カ月過ぎますとまっかにさびてしまって使いものにならなくなってしまったので、以後、その検討ができないという残念な状況でありまして、その点、申しわけなく思っておる次第でありますが、理論上の研究をすべく、東大または工業大学あるいは東北大学の先生方に文通あるいは直接お目にかかって、電磁気学的な基礎的な勉強をしつつある状況であります。  第三番目、それは、この前東大で開かれましたところの地震予知計画研究グループにおけるところの三十五名の学者のうち、何パーセントくらいがこれに対して理解を持ち、あるいは違う立場の人がおるかというお答えを申し上げます。私の今から申し上げる数値が多少ずれておるかもしれないということをお許し願うならば、私たちのというか、この電磁気学的な方法に対して、少なくとも過去においてこういう方面をやったと思われる人は、数にいたしますと、三十数名のうち三名と考えておる。名前は、吉松隆三郎所長湯村哲男井上宇胤部長がおられました。その他の方々は、ことごとくといっていいほど、みんな地震計または電磁気計傾斜計に基づくものであります。そこで、このことに関連するお答えを申し上げますと、和達長官におそらく証明をしていただけると思いますが、驚くべき事実がございます。すなわち、和達長官が次のようにおっしゃったのであります。和達長官は、私たち研究に非常に理解がありますので、特に質問をしていただきまして、約十数分以上質問があったと思うのです。これに対しまして、あしたかあさって国会で、討論があったという程度だけ答えるつもりだとおっしゃったところが、東京大学の坪井忠二教授は、討論があったということを言ってもらっては困る、あたかも私たち興味を持ったかのごとき錯覚にとらわれたら困る、何とかもう少し言い方を変えてもらえないか。それに伴って宮村助教授も、われわれは興味を持たないのだと叫んでしまっておる。すなわち、私があえて言うならば、これはあまりにも地震との関係がよいために、もしも、これが大々的に組織観測をするならば、他の分野に相当なやりづらさが生ずるのではないか。一例をちょっとかいつまんで申し上げますと、水準測量計画が、約十五億円の予定で十年計画で立てられておりますが、その実行機関係の長たる奥田院長は、五年に一回の水準測量であるがゆえに、残念ながら地震予知には何ら貢献することができない、ただ、基礎的知識を提供するにとどまる、こう言ったのであります。その他、土地の伸び縮みを調べる器械も、ごく特別なものを作る予定ですが、二年に一回ということを聞きまして、坪井忠二教授は、これでは何ら地震予知目的に合わないものだとおっしゃっております。  もう一つは、地殻変動観測所も、作り方によっていろいろありますが、穴を堀りますと一千万円、そうしますと、これはとうていたくさん作れないという結論が出まして、暗々裏に、どうしてもこの方法が将来大きな比率を占めるのではないかと思いながらも、何とかしてこれを消極的な表現をさせたい、こういうような雰囲気でありまして、非常に残念な状況でありました。
  7. 原茂

    ○原(茂)委員 和達長官は、だいぶ御多忙の中を、前の委員会で約束されたように、とにかく、この磁力計のよさを確かめるといいますか、その価値判断のためには意欲的な協力をして下さっているわけですし、宮本先生もずいぶん御苦労を願って、先生の個人的な大へんな努力に対しては感謝し切れないわけですが、一つ、できるだけやわらかくものをおっしゃっていただくようにお願いしたいと思うのです。  そこで、和達長官にお伺いしたいのですが、今、宮本さんのお話を伺っておりまして、二つのことが不思議に思えるわけです。一つは、せっかく内堀ですとか、あるいは高円寺でおやりになった器械が全く同じものでなかったという点が、どうもふに落ちない。とにかく、今問題になっておりますのは高木式磁力計なんですから、高かろうが安かろうが、せっかくおやりになる以上は、それと全く同じものでまずおやりになる、しかる後に、何か御自分の判断で、こういうふうに形を変えた方が安くできる、あるいはもっと観測が科学的に精密にできるという、判断に基づいて変えていくというのが、科学者の当然の態度でなければいけないと思うのですが、なぜ、一体トタン板の四角いものを円筒にしてみたりしたのかということですね。そこまで何か自信を持ってお変えになったのかということが一点。  それから、湯村さんという方に研究を正式にお命じになったと思うが、その湯村さんが今何をやっておられるのか、これは専門にかかっておいでになるのかどうか、この湯村さんという技術者の今の地位とやっている仕事、この磁力計と取っ組んでいる時間とか日数、専門にこれをおやりになっているのかどうか、この点を先にお伺いします。
  8. 和達清夫

    和達説明員 気象庁高木式の無定位磁力計宮本さんの器械比較観測をするときに、私は、全く宮本さんと同じものを作ってやる方がいいと思い、また、大体そういう趣旨で話をしたのであります。しかし、研究者というものはそれぞれの考え方を持っておりまして、まず、この無定位磁力計は、何らかの地球磁気の変化が下に引いてあるトタン板にインデュースされまして、その変化が無定位——無定位というのは一般の磁力には無感覚であるが、特別にトタン板にインデュースされたものをそこで感ずるというのであります。その原理が正しければ、形にはそう変わりない、そうだとすれば、四角ければ、第一、数学的計算がほとんどむずかしくてうまくわかりません、それから、方向によっても違う、そういうので、研究者的自分の良心から、これで同じ現象がつかまる、大きさや何かは違うかもしれませんが、この方が完全な器械であるからというので、全く同じ原理でやったので、まあ、そこが違うから違うんだとおっしゃれば、もう一ぺんやらなくちゃいけない。私は、宮本さんもそうおっしゃいますから、せんだっても気象研究所の方に、今度は宮本さんに設計してもらって、宮本さんと全く同じ器械でやりなさいと言って、その用意もしているようでありますから、今度は宮本さんの器械をそこへ据え付けられて比較されることを私も望みたい。しかし、いずれの器械にしましても、そう原理が違うものではありませんので、やはり同じような擾乱が横に出るのであります。宮本さんがおっしゃったことは多少誇張だと思いますけれども、科学的良心のある研究所の研究員が、そうでたらめの観測をいたすわけがございません。その点は御了承願いたいと思う次第であります。  また、一昨日、六月五日の地顔予知委員会にたくさん地震学者が——地震学者というのは地球物理学者でありまして、もちろん、地震学も知っておれば、こまかい専門ではありませんけれども、地球磁気の知識はだれでも持っております。ただ、今、自分が研究している部門が、地球磁気の方をやっている人もあれば、地電流をやっている人も、あるいは地殻変動をやっている人、その他いろいろある。それで、地震予知というものを、おれは地殻変動派だから地殻変動だけでやっていこうなんということは、だれも思っていない。あらゆる現象を総合して地震予知を達成しよう、もちろん、今その専門で研究している人は、その専門でその道を達成しようと思っている人であります。この点におきまして、ただ、今やっている専門家が少いからこれが顧みられず、多いのはみんなが賛成してやるという、そういうようなことではなく、全く科学的、良心的に最も確からしいものをもって進みたいと思っております。なお、その席上、こうやれば幾らか費用がかかるからと申しましても、それを最も効率的に、莫大な費用をかけずにやるのがわれわれの目的である、そういう話も出た。宮本さんの数字は、必ずしもその目的にそれだけときまったものでもございません。  湯村技官は、研究所の方でこの仕事がほとんどおもな仕事でやっておりまして、決して片手間ではありません。
  9. 宮本貞夫

    宮本参考人 実は、私は、事実を申し上げるのが国会に対する礼儀だと思いますので、その線に沿いまして申し上げます。  湯村氏は、津波の研究というか、仕事が本業でありまして、地震課長のお言葉通り私は申し上げたいと思うのですが、あまりその業務が忙しくて、この電磁気研究は、ほとんど片手間とも言えないほど片手間であります。すなわち、夜の七時ごろちょっと行ってやる程度でありまして、彼自身の言葉をかりましても、非常に残念でたまらない、いろいろなアイデアがあるが、あまり忙し過ぎてできない、こう言っているのです。課長自身も、この点を私が指摘したときに、課長も一部の責任はある、これは何とかしなければならないと言っておる。では、研究所の方ではどうかといいますと、助手の計算事務の職員が一日に何十分か携わるだけでありまして、だれ一人まともな研究者はこれにタッチしておらない状況であります。すなわち、確かに井上部長はその結果を見るでしょうが、それ以外の研究に忙殺されているということを御本人もおっしゃっておる。言いかえれば、実際上の担当者湯村哲男さんということになっておりますが、湯村さん自身は津波のいろいろな研究及び対策を課長から命ぜられて、それにすべての時間を注いでおる、これが実情であります。  それから、もう一つ、さっき長官がおっしゃったことは、私にとって非常にありがたいことをおっしゃったのであります。たとえば、今度作るとすれば、私の設計というか、あらゆる意味においてこちらと同じもので比較研究さしてあげたいというお言葉であります。私は、その通り実行していただけば非常に幸いと思うのですが、現実に見ると、あくまでも違うのであります。すなわち、あと数日たてば、暗幕さえ完成すれば、完璧な観測ができると井上部長がおっしゃるであろう、その器械は、私から言うならば全く別もものであります。どうしてかといいますと、金属円筒で作ったために、誘導電流という特殊な電流が働くということで、井上部長、広野地震課長及び湯村氏もびっくりぎょうてんしまして、あわてて作り直したのでありますが、今度は、ガラスを使わずにアクリル樹脂を使っております。すなわち、ガラスには鉄分があるからだめだという一会社の技師の意見を重んずるあまり、私には何ら相談なく、アクリル樹脂を使って完成しております。そのアクリル樹脂は、電気的にいいますと、非常に悪い性質を持っておりまして、非常に静電気というものが起こるのであります。これでは、やはり私たちの記録と対応させることは現実においては不可能であると思います。ゆえに、このようなことのないように、今後、設計段階においてぜひとも私たちと密接な連絡を保っていただくよう、切にお願いする次第であります。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 今、宮本さんの御発言で、下の方の実際の動きが、長官の意思に反しているといいますか、とにかく、変わったものができそうに今なっておるようなことを言われたわけですが、こういう点は、長官一つ至急に調査願って、せっかくおやりになるのですから、一度宮本さんのおっしゃったものを作らせる、これは研究を命令される立場ですから、ほかのものは一切やっちゃいけないということで、強くお進めなっていただいた方がいいのじゃないか、こう思いますが、この点に関する考え方も、あとであわせてお聞きしたいと思います。  今の湯村技官ですが、津波の研究を担当されているという宮木さんのお話です。もちろん、技術者ですから、津波も地震も同じところからの研究でいいのかもしれませんが、万が一、津波の研究というものに相当の時間を費すようですと、やはりこの磁力計を使った上での研究というものに手不足を生じているのではないだろうかという心配がございます。これは、私の構想で恐縮ですが、現在どういう機構か知りませんが、気象研究所地震研究部というものがあり、そこに第一、第二研究部といいますか、おありになるとするならば、もう一つ、第三研究部くらいそこへお作りになって、いわゆる電磁気中心にした地震予知という目的を持った研究部門を別途に作って——これは極端な話ですが、たとえば、もうそこまで研究して、熱心におっしゃっておる宮本先生をそこの担当にして、助手の二人か三人おつけになって、そうして、思い切ってやってみるというようなことまでできれば、もうずばりで一番いいのじゃないだろうか、これはしろうと考えで、しかも、機構の問題に私どもは注文をつけるようなことは申しませんが、そういうようなことまで思い切っておやりになっていい段階にきているのではないだろうか。とにかく、地震了知というものは、地震学者全体の何十年来の大きなテーマでありながら、ようやくここまできたのですが、いまだに、いわゆる予知というものが満足にできない。しかし、実際に予知できるかどうかはわからないのだが、できないとも言い切れない。できるとも、まだ現実に証明ができない。しかし、いろいろこのデータを見ると、あとからのことではございますけれど、あの地震があった前兆としてはこういう的確なものもあった、その事実、何回かの例の中の一、二は認めざるを得ないという現実もあるわけです。前回の委員会のときの長官お答えだったかと思いますが、一体、今、高木式のこのような器械予知をする以外に、現在の地震予知という立場で、この磁力計と同じような効果あるいはこれが三割予知ができるとするならば、三割程度は、ほかのこういう方法予知ができているのだというものがおありですかとお伺いいたしましたら、そういうものはないとおっしゃった。とするならば、たとえば、百のうち一つでも二つでも、地震予知にどうもこれは値しそうだというデータが現実に出ていることだけはお認めになるなら、私は、やはりこの高木式磁力計というものに対して、むだかもしれませんが、もし、それが万に一つでも予知ができたら、われわれ国民にとっては非常な福音なんですから、従って、研究部の中にもう一部門、いわゆる電磁気的な立場での宮木先生研究一つ起こして、ここに——これは一例ですが、私はそう思うのです。宮本さんあたりに来ていただいて、助手を使って専門に観測するというようなことをおやりになったらいいのじゃないだろうかということを、しろうと考え考えますので、この点も、あと質問と一緒に、そういうことは不可能だ、そういうことも一応考えていい、考えてみることができるなら、できるという一つ御答弁をちょうだいしたいと思うのです。  次にお伺いしたいと思いますのは、これはやはり長官にお伺いしたいのですが、この地震予知というものの原則なんです。どんな小さな地震でも、予知できなければ予知と言えないのか、少なくとも、南海の大地震であるとか、あるいは何々の大地震といわれるような大きなものだけでも知り得るという確証がつかめれば、地震予知としての価値を認め、その方式に対して、これはいわゆる地震予知方法としてはよろしいといえるものなのか、いわゆる地震の小さいものまで、百が百全部予知できなければ、この種の予知の常識から言うと当てはまらないのかどうか、この点を一つ伺いしておきたい。
  11. 和達清夫

    和達説明員 気象庁気象研究所地震研究室において、従来よりもさらに力を入れて、地震磁力との関係研究するということに力を入れるようにいたしたいと思います。現在いろいろな方面研究もございますし、人員の配置その他もございますので、その部面の拡張は必要とあればいたしますが、どういう方法でいたすかは検討させていただきたいと思います。  その次に、地震予知方法でございますが、地震予知というのは、そう軽々な、こういう場合にこうなったからという統計でやるのは、いたし方ない場合には行ないますけれども、結局その原理が問題でありまして、こういう理由でこうなったから、これを観測して予報するというために、小さい地震で起こる前兆なら——これは大きい、小さいの区別でなくして、どういう原理でこれがこうなったかということの究明が最も大事なところであります。この磁力を使う地震の究明は、その点では非常にむずかしいのであります。それで、一番原因、結果のわかりいい地殻変動に、現在の学者地震予知に近づく第一歩ではないかといって、それに今第一順位を置こうとしている者の相当あるのは、その機構、つまりメカニズムが推定できるからであります。そういう意味において、ただ考えがやさしいから、それで順位が先であるというのはもちろん正しくありませんので、いかに複雑な機構でありましても、地電流とか磁気というものがそれに至る非常に有力な方法であるならば、採用するのにだれしも異議がないところであります。しかも、簡単にできれば、なおけっこうであります。ただ、それには、その理屈が納得できなければ、たとえ簡単な方法でも、これを全国的にやるということについては、科学的に私ども思い切ってやることができない状態でございます。それでございますので、宮本さんがおっしゃいましたが、私が宮本さんと全く同じ器械を作ろうというのは、気象研究所が何か自分たち研究したいと今やっておる、それと別問題でありまして、気象研究所に宮木さんと同じ器械をこれから作って置くというのでありますので、研究者が何をしようと、それは宮木さんにも御理解願いたいと思います。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 その地震予知というのは、大、中、小はどうなのですか。どんな小さいのでも知らなければだめですか。
  13. 和達清夫

    和達説明員 地震予知目的からいえば、災害を及ぼすということがわかればいいわけでありますけれども、しかし、やはり地震予知が完成しますれば、原理が同じなら、かなり小さいのもわかるはずでありますから、それで、地震予知としましては、初めは、せめて大きいものだけでもわかるようにしたい。そして、だんだんその原理とやり方を完成していって、だんだん規模の小さいものに及びたいと思います。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、宮本さんにお伺いしたいのですが、前回の委員会では、遺憾ながら、まだ、なぜこういう前兆がとらえられるのか、この器械中心にした原理というものがわかっていない、残念だ、こういうお話があったのです。その後、約二年たっておりますが、その原理といわれるようなものが究明されたり、お考えになられたりしているのか、おっしゃれるのかどうか、それが一つ。  それから、もう一つは、地震の小さい、大きいですが、どんな小さいものでも、できるならとらえた方がいいはずです。人畜に被害を与えるようなものだけでなく、小さいものまで的確にとらえるということが、この器械中心にして、予算なんか考えないで、全国に何百カ所でも——測候所が二百十何カ所あるわけですが、そこに全部やれば、小さいのだってとらえてみせるというお考えなのか、この点一つ……。
  15. 宮本貞夫

    宮本参考人 まず、第一番目のことについて申し上げます。  実は、きょう、今から述べるための図面を持ってきておりませんでしたので、大部分が話だけに終わりますが、実は、原理を追求するのに、私は非常に成功したと思っております。その理由は、いかなる現象をつかんでいるかが二年ほど前ははっきりしなかったのですが、現在では、相当はっきりしてきました。その理由は、この上下磁石が二十センチの距離でありますので、ちょうど直径二十センチの円形のコイル部分、針金をぐるぐる巻きまして、それを約五十センチ離れたところに置きまして電気を流してみますと、約一秒あるいは一・五秒というふうに、二秒くらいまでの間に短い変化を与えますと、われわれの前兆と称するものがぴたり出てくる。きょうは、学会ではございませんので、簡単に申し上げますと、今まで気のつかなかったいろいろな点がわかりまして、自然現象をほとんど完全に再現できるという状況でございまして、ただ単に、短い早い変化であったと今まで言っておりましたが、そうではなくて、定量的に、記録を見ますと、何秒の週期でどういうような変化であるかをりっぱに証明できまして、地震学会及び地球電磁学会で発表いたしまして関係者から非常に注目していただいたような状況であります。残るところはどういう部分であるかというと、われわれが今後目標にしておるところを申し上げるといたしますと、今までの表現の仕方を変えて、もう少し電磁学的な基礎に立って表現をしたいという点が残っていることと、さっき原委員からお申し出があったように、トタンの本質的な究明、これが確かに残っております。いかなる金属板が最も効果的であるか、これは、できるだけ早い機会に気象庁ともいろいろ御相談いたしまして協力してやっていきたい、こう思っております。  それから、第二番目の、地震の予報がどの程度の規模の設備をすればどの程度までいけるかということに対する期待は、この図が答えてくれます。すなわち、私の場合は、二メートル強に近いものでトタンを置いております関係上、四百キロくらいまで大きな地震なら出て参ります。ゆえに、これと同じ性能のものを全国に五十数カ所置きますと、とにかく近距離、たとえば、百七十キロ以内の地であるならばことごとく出るはずでありますが、地震がどこに起こるか、千葉県に起こるか、あるいは茨城県、埼玉県に起こるかということを見るのには、感度の悪い器械——トタン板をむしろ小さくしまして、わずか三十キロ以内しか前兆が出ない、そういうふうに性能の異なる種類のもの——私は、あまり大きな予算を言わないで、ある程度の現実性を持たしていいますと、少なくとも百カ所、同じ性能のものが五十カ所、それから性能の劣るものを五十カ所——二百カ所、三百カ所あればさらにけっこうでありますが、少なくとも、百カ所程度あるならば、被害を及ぼすような地震は相当事前に予報することができるのではなかろうかと思っております。  それから、もう一つ、ちょっと新しい研究が進んでおりますので、それをつけ加えさせていただきます。   〔図を示す〕  この図のごとく、地震の前の約二週間あるいは一週間前に、たとえば、この図でありますと、一週間くらい連続的に起こっている。今申しましたように、どこに起こるか、一台であるために的確にいかない。かりに百カ所作ったとしても、ほんとうに確信を持って、これは水戸の地方に起こるとか、福島に起こるということは、はっきりいえばなかなかむずかしい。起こる可能性を言うだけであります。ゆえに、それを補うために、航空磁気測量——飛行機に特殊な磁力計を載せまして飛びます。現実に東北大学が成功しております。大島のごく、短いもので二キロくらいの半径の異常もはっきり記録しております。たとえば、こちら側で異常が出たときに飛行機に飛んでもらう、そして、観測船を中心として四百キロくらいの半径を、毎日々々一週間か十日連続して飛び続けるならば、必ずや地下の異常をはっきりとつかむことができます。その証明として、この間、日向灘の地震が起こりました。これは新聞で御存じだと思いますが、東北大学の加藤愛雄教授は、約半月後にこの上空を飛んだときに、実に震源を中心として三十五キロにわたって思いがけなく大きい八百ガンマ——ちょっと表現が困難ですが、相当大きい磁気の変化が震源付近で起こったことが証明された。要するに、器械の誤差でないとはっきり認められるりっぱな大きな値を震源の上空で確認をしておられる状況でありまして、このように、私たちは、総合的に考えようとしておるのであります。この器械だけで地震予知をして、そうして、場合によれば迷惑をかけるんじゃないかというようなことをせずに、これでもって事前に大体異常の予想をして、そうして、航空磁気測量を徹底的に行なってその震源をつかみ、しかも、また、そのほかに、協力すべきものがあったならばやるというふうに、これだけでやろうとしているのではない。非常に電磁気学の方が強いのでありまして、水準測量では何十億円か、極端にいえば何百億円かけてもこのような芸当はできないのでありまして、毎日々々水準測量をやることはできない。一年ごとでも、何百億とはいわないまでも、数十億はかかるはずであります。ゆえに、国土地理院の方は陸上、それから、海上三百キロ以内までは水路部でやるということは決定しております。それぞれ一億円ずつかけてやるのでありまして、それらが協力をしてやるならば、この方法はきわめて科学性に豊んだ方法として認められる時期がくるのではなかろうか、こう考えております。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 今の宮本さんのお話で、原理の話は、私はしろうとでよくわからないのですが、長官は、この原理というものを大体つきとめられるようにお思いになるのかどうかわかりませんけれども、もう少し原理というものが数値的に、科学的に、データーとしてある程度の裏づけがないと、原理としての、いわゆる納得を得られないのではないかと思いますから、この点、宮本先生大へんでしょうが、もう少しそういう方向でお進めになることが必要ではないかと思います。今お話あとでありました、その航空磁気測量と申しますか、それは実際におやりになったことがありますか。
  17. 宮本貞夫

    宮本参考人 私は、直接飛行機に乗って担当したことはございませんが、この前の地球電磁気学会におきまして、加藤愛雄教授が、その教室員二名と、合計三名が同乗しまして、東北地方の三陸沖は検討済みだそうです。一応観測したそうです。関東地方の大島の上空も飛びまして、変化した記録をとって、その記録をスライドで見たわけですが、その記録は、大島の地下構造によるところの、明快に誤差でない、大きな百数十ガンマという量をみごとに示しております。また、日向灘の場合にも、八百ガンマという大きな量を示しておりまして、飛行機には乗りませんでしたが、その記録の幻灯に映し出されたものを見ましたので、十分にその信頼性を保証することができると思います。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 前の委員会とダブってお伺いするようで恐縮ですが、しろうとですから、お伺いしておきます。この磁力計によって、たとえば、磁気あらしですが、さっきお話のあった電車による震動とかいろいろ違ったファクターがあるわけですね。地震と同じように、とにかく震動するという現象が起きる。そういうものは、これは出てきたものではっきりする。ほかのものでは、また、それを専門にとらえることができるでしょうが、この磁力計の場合には、そういうものと区別して、ちゃんと、きちっと出てくるのだというようなことをたしか言われたのだと思うが、そうなのかどうか、そうだとすれば、この点をちょっと説明していただきたい。
  19. 宮本貞夫

    宮本参考人 お答え申し上げます。手が届きませんので、指さすだけでお許し願いたいと思います。   〔図を示す〕  右から二番目のあの図の一番下に、先がとんがりましてヒシ形のように震動を記録しております。あれは土地が震動をしたときの記録でありまして、なぜ、初めがとんがってだんだんとふくれていくかといいますと、長い六十センチくらいの糸でぶら下げておりますので、時計の振子のような運動を次第次第に振幅を増大しながらやっておるわけでありまして、土地の震動では、あのように先がとがっております。ところが、私たちが前兆と称するものは全くタイプが違いまして、一番上のように、最初が非常に大きな振動で、あとは空気の抵抗で、たとえば、アルミ板が振動しますと空気の抵抗を受けますので、きわめてなめらかなカーブを描きまして、約十分ないし五、六分で振幅が減衰して参ります。そのように、一目見ただけで、土地の震動によるものであるか、われわれの称する地震の前兆であるかを区別できる。しかも、大地震の場合は、上から三番目のように、十秒あるいは数分という短い間隔で連続的に異常が出て参りますので、はっきりと大地震の前兆であるということがわかります。  それから、磁気あらしのことについて申し上げます。いささか言葉は前に戻りますが、この器械は、あくまでも土地の震動によって生ずる記録を前兆とするものではございません。すなわち、土地は全然動かないのでありますが、目に見えない地電流変化によって生ずる地表の付近の、これも目に見えない磁場の変化によりまして、トタンが、短い時間ですが、一秒か二秒の間だけ磁石になる。この磁石によってこの磁力計が回転を起こします関係上、土地の震動と区別できるということは繰り返して申しました。  今度は、磁気あらしで描くか描かないか。幸いに、約四十七、八回の磁気あらしが過去に起こりまして、これを柿岡地磁気観測所から教えていただきまして、その記録と対応いたしましたところ、全く描かない。その理由は、十分に説明することは困難でありますが、週期が長いのであります。一秒だとか二秒では変化しない。磁気あらしというものは、いかに早くても二十秒あるいは一分というふうに、時間的にゆっくりとした変化なのであります。そのために、この器械を十分に振動させる能力を磁気あらしは持っておらない。現在そのような結論に達しまして、多くの地磁気、電磁気あるいは地震学者を含めまして、大体学者の了承を得つつある状況であります。  しからば、地震以外のいかなる現象がまだ残っておるかといいますと、御承知のように、電車影響がひょっとするとかぶっておりはしないか、そういう疑念が実はあるのであります。幸いに、三十一年当時、尾鷲測候所で観測した当時は、電車はございません。それでも、地震の前、南海道のときには、約三週間以上にわたって異常がございました。それと同じようなタイプをわれわれは見ましたので、電車とは無関係であるということが逆に利用できる。また、幸い、神戸では私の友人がやっておりますので、もし、地上三百キロメートルの高さにおける電離層の何らかの変化であれば、神戸でも東京でも出るはずであります。しかし、両地点で同時に出たことはありません。このことは、高木時代、すなわち、十数年前にも同様なことが証明されております。ゆえに、電離層における変化を記録しておりません。また、電車による変化、すなわち、電車漏洩電流変化を記録しておらない。土地の震動とも区別できる。われわれの考え得るあらゆる地震以外の要素と対応させまして、たとえば、気温の変化、湿度の変化、その他雨量あるいは自然のいろいろな現象を対応させましたが、地震以外と説明せざるを得ないという結論に現在達しております。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 現在お聞きになっておられて、長官にちょっとお伺いしたいのですが、航空磁気測量というようなものと、それから、今、宮本さんが説明になりましたこの器械による違ったファクターによるいろいろな震動のキャッチの仕方なんですが、やはり長官のような専門家がお聞きになっても、今説明のあった点は納得のいくものでしょうか。磁気あらしですとか電車その他による震動が、この器械によっては全然別なああいう記録が出てくる。こういう記録を見ると、しろうとの私などは、なるほど、これははっきりと区別して、ちゃんと地震予知という線につながった、いわゆる磁気的な地震の起きる前兆として、何かこの記録を信用していいように思うわけですが、この点、長官は、技術者の立場でどうお考えになるか、一つ説明を願いたいと思います。
  21. 和達清夫

    和達説明員 まず、第一に、このはかっておられるものが非常に局所的のものであるかどうか、これは先ほど同時性と申し上げましたが、器械は多少違っておるかもしれませんが、丸ノ内と高円寺では同時性はございません。それから、今見せられておる材料は統計であります。こういう現象があってこうだというのですが、それが地震に結びついておるかどうかということは、この統計が偶然にしては多過ぎるということを立証しなければいけない。統計のときに非常に気をつけなければいけないのは、ある場合には相当いい相関を示しても、それが偶然の場合もあることは、従来ともしばしば経験したことでありますので、科学的には、さらに高い統計の相関を見なければなるまいと私は思います。それから、そこで観測されておりますのは、無定位磁力計の性質からもわかりますように、大体振動性変化を見るものであります。航空磁気測量の方は、そのときの磁力の強さの地域分布を見るものでありまして、地震がありまして、それが前からか、あるいは地震のときか、あるいはあとかは別として、前の磁力の分布と違った磁力の分布をしておることを見るわけです。それですから、もし地震磁力との関係が非常に密接で、しかも、前兆現象がある、そういうことがわかりますれば、磁力計変化をはかり、また、航空磁気測量あるいは地上の測量でもよろしゅうございますが、そういうことで磁気の測量をやる、そういうことから地震予知が進むということは当然考えられるわけです。私どもは、まず、その原理、どうしてそうなったか、しかも、それは地震と確かに関係ある現象であるか、これをつかみ、そうして、それに基づいて、それが適当であれば、いかなるこまかいネットでも張りまして、地震予知目的を達したいと存じております。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 今の長官お話を伺っておって、また、前と同じように疑問が起きてくるのです。たとえば、今の地震と地磁気、磁力との関係が、なぜ一体生じてくるかということがわからなければ研究の価値がないとか、そういうことがわかったら、それに対してやはり原理というものが出てくれば、それから研究なら研究をしようというお気持が起きるのだというようにとれるわけですが、ものの研究は、そんなことじゃないと思うのです。今までのわれわれの人文科学が発達してくる過程も、何か知らぬけれども、こういうものを作ってみた、食べてみた、腹が痛くなった、気持がよくなったというようなことから、あとから、これにいわゆる理論づけをして、薬となってみたり、いろいろ原理というものも追求をして、理論的な裏づけをして、そうして、何かできてきているように思うわけです。何でもかんでも、先にわれわれの頭の中で原理というものがわからなければいけないという考え方では、ものの発達も発明も進歩もとまっちゃうのじゃないだろうか。たとえば、前のときに、長官はこういうことを言っているのです。「土地の傾斜とか伸縮とかいうのは、地殻内部で何らかの力ができたというようなときには、土地には弾性的な性質がありますから、それが伝わって、土地が上がったり下がったり、あるいは傾斜したり縮んだりすることがある。そういうように、器械の結果がわかっております。ですから、それをはかりますれば、それがたとえ地震予知にそれほどの効果がなくても、これは基礎として積み上げていく科学的資料なのであります。」と答弁されている。地震予知にそんなことが直接関係があるかないかは別です。とにかく、いろいろ傾斜なり伸縮というものを積み上げてデータをとっていけば、やがて、それが基礎になって科学的な地震予知の資料になるかもしれない、そのために、こういういわゆる地殻の変動なり伸縮なり傾斜というものの研究をしているのだ、こういう御説明があった。同じように、このことも、何か今、宮本先生一生懸命個人的に努力しておられる、そのデータが積み上げられていった結果、その間に地震があった、磁気あらしがあった、何があったというようなことを、あとからいろいろとそれに符節を合わせてみたときに、やはりこれも必要である、地震予知としての非常に貴重な資料になるのだという考え方で、同じじゃないかと思うのです。そういう点、違うのでしょうか。
  23. 和達清夫

    和達説明員 私の言い方がまずかった点はおわびしたいと思いますが、研究というものは、原因がわからないから研究するのでありまして、これは申すまでもございません。観測のネットを張るような場合には、理屈がわかったものでなければ、いたずらに大がかりな組織をしても仕方がないということであります。なお、この問題に関しましては、先ほどからも申し上げましたように、一体、どういうものをはかっておられるのであるか、これを究明しなければならない。これをもっと研究してみなければ、あるいはわれわれの気がつかない人為的なものをはかっているかもしれない。気象研究所などでありましても、日中には擾乱が多く、夜には少ないという結果もあります。しかし、人為的なそういうものもたくさんありますけれども、太陽の運行もありますから、必ずしもそうも蓄えません。とにかく、いろいろなことで、この現象が何から起きているのだということを突きとめるのが一つであります。それから、地震との関係があるということは、こういう理由で、地震が起こりそうな場合には地電流なり地磁気の変化が起こってもよろしい、しかし、そういうふうにして起こるならば、これはもっと広い範囲に、震源のこっちの地域は強く、こっちは弱い、東京なら同じくらいにちゃんと出るはずだとか、方向がこっちからくれば、こういうふうに出るはずだとか、確かめるべき要素があるはずであります。そういうものを確かめまして、そうして、現象としてわれわれがそれを認識して、そうして、次の段階、次の段階と発展させていきたいのであります。宮本さんの研究がその段階を発展させていかれておるということはよく存じておりますが、私は、気象庁もやっております通り、今それを発展させていく段階であると思います。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 長官は善意でお答えになっているからいいのかもしれませんが、少なくとも、宮本先生が今やっておられる仕事が何をはかっておられるかわからないというようなことはないと思うんですね。少なくとも、地震というものを前提にして、それを予知しようという、そういう目標のためにこの仕事をしておられるので、何をはかっているかわからないというのは、そのわからない原理の探究、それがいわゆる研究なんだ、こういう前段のお言葉にそこが合っていくのであって、何をはかっているかわからないというふうに言うけれども、何もわからないのではなくて、地震予知のために、いわゆる地磁気の変動なり何かの変化というものをとらえて、そのとらえた蓄積によって地震予知に結びつけようとしている、そのためにそれをはかっているんだというふうに、しろうとの私は考えるわけです。何をはかっているかわからないというのは、ずいぶん失礼な言い方じゃないかと思うのです。学者同士ではそういうことが通用するかもしれませんが、とにかく、われわれにはちょっとそういう勇気がない。  そういう点を前提にして、今のお言葉でお伺いしたいのは、さっきの、丸ノ内にも器械をやってみたが、同時性がないと言われたのは、私は、やはり同じような原理で、この器械の特質をつかんで作ったのだといっても、そっくり同じでなければいけないんじゃないかと思うのです。なぜかといいますと、これは宮本さんの強調しているところなんですが、わからないから研究するんだとおっしゃる、その研究のために宮本さんの個人の費用一つだけ器械を作って、その一カ所で研究をしたのじゃ研究にならない、この研究こそは観測網を大きく張って云々という、その全部か一部を、ある程度全国的に何十カ所かの観測網を張ったそのことが研究なんで、それをやってみなければ、一つでは研究にならないということも、宮本さん前から言っているように、私は理解している。ですから、この研究は、観測網を張るんだという、いわゆる業務観測のようなつもりの考え方はあやまちなんで、そうでなくて、このような器械がせっかくできても、一カ所でいい悪いは今判断できないのだから、もっと全国に十数カ所か数十カ所か、同じような器械をやったときに初めて研究になる、観測ではない。そういうくらいに突き詰めて考える必要のあるテーマじゃないかというふうに私は考えますから、そういう点でいうと、やはり、ある何カ所かやるのに、ほとんど原理は同じであろうと想像しただけで、円板にするか四角にするかということを勝手にやられたのでは、これは同じ結果は出てこないであろう、同時性をやはり突き詰めていきたいと考えるならば、全く同じ器械——その器械が、こういうものでなければいけないと考えている学者意見にぴったりとしたものを、十数カ所なり数十カ所設置したときに、それが初めて研究になる、観測ではない、こういうふうに私は考えていきたいわけです。  今のことに関連をするわけですが、研究するのには、結局金の問題になるわけです。それでお聞きしたいのですが、たとえば、長官がこの間の、予知グループの会合でおっしゃったような、水準測量をとにかくやってみたいというふうなことをお答えしているわけですが、もし一カ月に一回ずつ、長官のお考えになるようなレベルといいますか、水準測量というものをこれからおやりになる、そうすると、一体、一年ないし十年の間に予算はどのくらいかかるものか、それから、宮本さんのお考えになっているような——これは私が勝手に推測するわけですが、この器械を、たとえば、観測綱じゃなく、実際に研究をするんだというので、大体四十カ所に同じ器械を置くというふうにしますと、観測室というものがなければいけませんから、一応、これが五十万円くらい、そうして、磁力計というものが一台二十万くらい、それから維持費、たとえば、印画紙ですとか現像代、製図用の道具ですとか、こういうものが大体十万円、人件費一人一年四十万円ぐらい、これを一カ所と考えて合計百二十万、これを四十カ所やって四千八百万円、この四十カ所を地方に分散しただけではだめですから、当然、中央にこれ専門の研究機関を置きたい、そういうものを置きましたときに、大体これを一名が担当するとして、人件費が約八十万円、それから、大体この器械の原理についてのいろいろなテストをやらなければいけない、その器械が何台か必要になる、一切の費用を含めて、大体中央においては千五百万から千六百万、合計いたしまして約六千五百万円から七千万円ありますと、あとは人件費だけで、先ほど宮本さんの言うような、からだに感じ、何か被害が起きるかもしれない日本の地震というものは大半つかみ得ると、とにかく、自信を持っているそういう施設が一応できるし、研究としての観測ができることになる。それが、当初、最初の設備等を入れても六千五百万ないし七千万でできる。それで水準測量をこれからおやりになるとする、月一回ずつその測量をおやりになったとして、その力は——私は予算はわかりませんが、予算はどのくらいかかるものか、この点を一つお聞かせ願いたい。
  25. 和達清夫

    和達説明員 水準測量の予算は、私詳しくは存じませんが、先ほどおっしゃった額、つまり、先ほどおっしゃった磁力観測網に比べれば、かなりの高額になるだろうと思います。まあ、おっしゃるように地震予知というものは非常に大切なもので、何とかこれを達成したい。私など、数十年間これに努力して参ったものであります。金額の大小にかかわらず、これが有効であり、できるものならば、どんなにでもして私はいたしたい。ただ、納得できないことは、たとえそれがそれほどの金額でなくても、私はいたしかねます。私は気象庁の技術者の意見も尊重しており、また、全国の地震学者——宮本さんも含めて、その意見を尊重しております。私一人が独断的に、これはいいから採用しよう、これは悪いからという意思はありません。もし、いいとなれば、金額の大小にかかわらず、研究であろうが、観測であろうが、全力をあげてやりたい。ただ、私が納得でき、そうして、それがまた内外の地震学者を含めて、まことにそうであるということにおいて私はいたしたい。ここにおいて、おっしゃるような意味はよくわかるので、検討いたしたいのでありますが、まず、その納得できるだけの研究を積み上げていこうと現在努力しておるわけであります。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 長官の言う納得できるということですが、納得できるまでの研究を積み上げる、その研究を今、宮本さん個人でやっておられるわけです。ところが、地震予知はわれわれ人類にとっても大問題である。十数年来というか、何十年間の宿題であり、一生懸命皆さんがやっておられる。われわれも、一日も早く予知されることを望んでおる。天気予報が最近正確になりましたが、あれと同じようになりましたならば、こんなにありがたいことはないわけでありまして、もうみなが待ち望んでおる。こういう状態の中で、長官は、納得できればという前提で、宮本さんも含めた内外の学者の納得できる研究であれば、とにかくいいことはやりたいと言われる。しかし、私が納得したらというのでは、長官が納得しなければ依然としてできないことになる。それでは、長官が納得する条件をまずお示し願いたい。
  27. 和達清夫

    和達説明員 私は、官の責任者として納得したらと言っておるのです。学問的には、私は、それほど独断にやる資格も、また、能力もないかもしれません。学問的には学会もございますし、委員会もございますし、あらゆる学者が知識を傾倒してこういう問題検討しております。また、私の方にもいろいろ進言して下さる方もおります。現在、宮本さんもそういうグループにおられるのであります。それで、そういう人たちもみな知っておるのであります。どうか宮本さんも、そういう人たちとともに、みなを納得させて、そうして、日本の国がこれをやるぞというところに持っていっていただきたいのです。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 長官と議論するつもりはないのですが、私は、むしろ、長官として何を納得するかということを考えた場合、長官立場長官として納得したらという意味だとおっしゃったのですが、私は、長官として納得する範囲は、ほかのことはあまり要らないので、これは研究に値するかどうかを長官判断し、納得すればいいのじゃないかと思う。研究に値するかどうか、このことが長官としては中心だろうと思う。学者としては、また、別におのずから説もあるでしょうし、お考えもあってしかるべきだと思いますが、長官としては、私は、これは研究に値するかどうかという判断をする、その意味の納得ということが必要なのです。私は、長官にどうしても研究が心要だという納得をしていただいて、国がやるとすれば、気象庁がおやりになる以外に今のところないわけです。科学技術庁はこのあっせんをしたり、指導したりすることはできますけれども、防災科学の上からいっても、この点に対する非常に強い関心は持っておりますし、各機関との間でこの種の研究が進むように、とにかく進んでやってもらいたいと、前の原田官房長からもそのような回答をいただいているわけです。ですから、そういうおのおの機関はあるでしょうけれども、せんじ詰めていけば、だれが担当するかというと、長官の管轄の中にこの種の仕事は入っていくだろうと思うのです。すると、やはり長官から、これは研究に値するものであるという納得をいつの日にかしていただいて、その意味で早くこれを取り上げて、先ほど私が例で申し上げたように、いわゆる気象研究所地震研究部に第一部、第二部があるならば第三部でもいいから、第三部があるならば第四部でもいいから、新たに電磁気中心の専門的な立場で、地震予知研究をこの器械中心にして推進するようにされていくという、一つ思い切った決断を長官としてはお下しになっていただいたらどうか、こう考えるわけです。特に、私がこの問題長官にもお願いしたり、やっていただきたいのは、当然、地震予知したいという国民の立場もあります。同時に、私の郷土の先輩である藤原咲平先生が、生存中に、とにかくこれに対して、まだ原理も不明なときに、これをやってみたいという意欲を持っていたことは歴然としています。それで、やれという命令というか、個人的な指示か知りませんが、高木技官に対してそれを与えておる。高木技官が今日に至るある過程を担当されて、そのあと宮本先生が一生懸命にやってこられたのです。それで、関東大震災のときの例はもちろん御存じでしょうが、一年前に予測をした。藤原さんがあとでそう言っていたわけです。一年前に予告をしたのだというようなことを、ものの本にも書いております。それを、やはり業務観測としての正しいデータがなかったために、正式な、いわゆる国全体への発表にはならなかったのだと思うのでありますが、そういったようなことに強い関心を持っていた藤原先輩ですから、おそらくこの経験からいって、高木式のこの種の方法に対して非常な興味を持ち、科学者としての立場から、これは価値があると判断して、とにかく、やれといって、高木さんにもやらせてきたのだと私は判断をするのです。それが、今日知らない間に、ずるずると、国として、気象庁としてやらなくなっているというようなことを今復活していただいて、とにかく、十回のうち一回でも、あるいは百回のうち一回でも、私たちに被害を及ぼすような地震に対する予知万が一できたとするならば、私は、われわれにとっては非常にしあわせだと思う。この観測的な研究というものは大した予算ではないのです。私が相当ゆとりをもって申し上げただけでも七千万あれば四十カ所にできるし、中央で一カ所の研究機関が正式に持てる。その七千万の予算を投じて急速にこの研究をやろうと長官立場で決断をしていただかなかったことが、ずっと長い歴史のあとで、やはりこの方式がよかったのだということが証明されたときには、今後起きる地震予知ができなかったその間における私たちの受けた被害に対する長官責任というものは、このことを論じてしまった以上、まことに重大だと思う。従って、私は、この前の委員会でもそうですが、きょうも長官から、これは地震予知なんか絶対できないものだ、関係のないものだという、はっきりした言明のない限りは、予知ができないとも言わないが、できるとも言わない、とにかく、研究に値するとお考えになったというふうな印象を与えられる。そういう研究に値するとお考えになった証拠に、宮本さんの言うものと同じ器械を作らせようと今までお考えになって、失敗をされた。きょう、この委員会では、同じものをこれから作らせますと言明されているということは、とりもなおさず、これが研究に値すると長官がお考えになった証左です。とするならば、そういうことを考えていながら、その研究のわずかの予算——レベリングの推進、測定をやるとするならば、月一回で何十億もお金がかかると思うのです。だから、何十億の予算が必要になるものと、八千万なり六千万でできるような、いわゆる研究の予算の点からいっても比較にならない。しかも、長官がやろうと決意なさればできるのですから、研究に値するとお考えになった以上は、急速にこれを研究される必要が私はあると思うのです。万が一、本年度の予算はお伺いしておりませんが、予算において欠けるところがございますならば、何としてでもこの予算の補充をしながら、少なくとも、追加予算の中に入れるなり何なりしながら、急速に全国的に四十カ所の観測研究を私はしなければいけないというふうに考えるのです。こういう点で、長官として研究に値するとお考えになったからこそ、この器械と同じものを作れとおっしゃったのですから、その研究をしようとなさる以上は、その研究が一カ所の点的な観測ではだめなんで、やはり、全く同じ器械で、何十カ所かで同時にやって初めてそれが研究になる。この器械を使う研究というものはそういうものなんだというふうに割り切って、一つ研究に対する予算的な措置なり、実際の国家機関としての何か思い切ったことをやっていただけないものかどうか、こういう点をお伺いしておきたいと思います。
  29. 和達清夫

    和達説明員 先生のおっしゃることはよくわかりますので、できるだけその方向にやりたいと思いますが、どうか御了解願いたいことがあります。研究に値するから、今度同じ器械でやってみよう、その通りでございますけれども、もっと先へ進む研究に値するかどうか、テストするためにやってみたいのでありまして、テストが悪ければいたしませんので、その点だけは御了解願いたいと思います。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう条件がつきますと、われわれの立場ではこわいのですけれども、テストに値するかどうかの判断というものをだれがおやりになるのかということが一つ。それから、そのテストに値するかどうかの判断をするために、今のこの高木式の無定位磁力計というものを何台作って、何カ所くらいで、このテストといいますか、一応の研究をやってみようとお考えになっているのか、その構想を一つ伺いたい。
  31. 和達清夫

    和達説明員 まず、非常に近いところの二台が正確に同じものを記録するかどうかを確かめたいと思います。それから、距離を広げていきまして、そして、どういう同時性とどういう分布をするかをはっきり確かめたい、一方、器械がどういう性能を持っているかも、他方、材料その他から検討したい、そして、この科学性が立証されれば、さらにさらに、おっしゃるようなところまでも進む価値が認められるならば進もうじゃないか、その判定は気象庁の担当の技術者、それとアドバイスする学界全体であります。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 わかりました。その二カ所なりでおやりになるという点も非常に必要だと思いますが、私は、この種のテストに値するかどうかの判定をなさるときには、これを最も時間をかけて、長期的な研究をされている宮本先生に、その二台なり三台なり設置して同時性が出る出ないという、たった一点だけでも、そのデータは常に宮本先生に見せ、その意見を聴取した後に、それがいわゆる判定の材料になるようなら、ぜひやっていただきたいと思うわけであります。  それで、最後に委員長にお願いしておきたいと思いますのは、どうかこれが急速に実施できるようにお願いをしたいのですが、あと、次の臨時国会その他の委員会で、予算がどのくらいあるものか、予算の点から一つこの問題を取り上げていきたいと思うのです。先ほど、前提として三つのことをお願いしておきましたが、これを実施していただき、また、今二カ所なり四カ所に設置したとするなら、その設置した暁に、その研究の途上で、何か宮本さんの言ったのと違った結果が出たようなときには、気象庁長官から当委員会に正式の報告をぜひするように一つお願いしておきたい、ごう思うわけです。  私、質問という立場でものを申し上げるのはこれで終わりたいと思いますが、最後に、参考人宮本先生から、今まで私がいろいろ申し上げたり、あるいは長官にお伺いしたりした中で、宮木先生立場で、参考までに、こういうことも聞かしておこうという御意見がありましたら、一つ伺いをして終わりたいと思います。
  33. 宮本貞夫

    宮本参考人 原先生から非常に熱意あふるるお話をいろいろお聞きしまして、感謝にたえない次第であります。  実は、残念なことに、私が最初に詳しく述べるチャンスがなかったのでありますが、今、原先生がおっしゃったことと和達長官がおっしゃったことに対して根本的に違う構想を持っておるので、原先生、ぜひお願いしますが、今の構想は全面的に撤回していただきたいということであります。  それはどういうことかといいますと、長官は、明らかに二カ所または三カ所でやってみて、同時性があればどんどん広げていく、これは長官独自のお考えだと思いますが、実は、これは東京大学の地震研究所の萩原教授並びにその他の方々が以前から常に強く主張されてきておったことでありまして、このやり方は、全面的に私は否定するわけであります。これはいけないのであります。つまり、全国に少なくとも最小限度十カ所、あるいは、でき得べくんば、原先生のおっしゃるように四十カ所または五十カ所設けてからこそ各所の同時性を調べるべきであって、私から言わしめるならば、どうせそんなことはあり得ないものだから、こういうことを言えばやめてしまうだろう、すなわち、やっつけてしまうための手段なんであります。どうしてこういうことを言うかといいますと、高木時代に神戸、大阪でやってみたが、実はなかなか同時性が出ないのであります。その理由は十分私も説明できませんが、磁石方向のわずかな差で結果が相当に異なるので、私の場合は二台でやっておりますが、磁石方向がなかなか同時に出ない。つまり、磁石方向が異なるので、同時に出ないのが当然である。トタン板の差、すなわち、こちらは長方形気象庁は円形という差から、同時性のないことを私は大体推定できる根拠を持っております。今は学会でありませんので、詳しく申し上げられませんが、少なくとも、私の希望しない方法気象庁がやってから、宮本どうだ、と言われても、十分な検討はできない。私が全責任者でなくても、少なくとも、何十カ所の設置に対して、設置段階において十分意見を述べる機会が与えられる条件があれば好都合であります。そして、これをだめにするか、または継続するかという判定は、少なくとも、五十カ所を最低限度に要求します。原先生、その点においてこういう大きな差ができますから、ここで二、三カ所やって、だめならだめ、しかも、その判定は技術者だけがやるというのでは、私は明らかに了解できません。いかに時間がかかっても、この点だけは長官に撤回を求めます。少なくとも五十カ所を設置して、かつ、少なくとも、十年以上観測して判断するなら納得するが、二、三年の判定では私は困る。十年やってだめだという判断が出ましたから、私は引き下がります。十カ所ではだめ、最低限度五十カ所をやる、しかも、十年またはそれ以上の時間をかけて、初めて判定すべきであります。すなわち、地殻変動の場合も、約三十年ぐらいの間はあまりいい結果が出なかったが、最近大台ケ原地震のときは、ある程度よい結果が出たのであります。少なくとも十年以上かけ、しかも、観測地点は五十カ所以上断じて要求します。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 最後にしようと思ったのですが、今の宮木先生お話で、二カ所あるいは三カ所で同時性が出ないということが、どうも私にはまだわからない、こうおっしゃったのですが、これがわからないと、どうもしろうとの私も納得できないし、それから、長官あるいはその他の単音も納得しがたい点もあるだろうと思いますから、大へんでしょうが、この点の研究は続けていただくこととして、現在の段階では、これは長官にまたあらためてお願いするのですが、今、宮本さんの言ううように、御自分の持っている二つだけでも同時性というものは出てこないのだ、ですから、そういうやり方では納得できないし、困るとおっしゃる、宮本さんに言わせると、現に経験済みのことなんですから、この経験済みのことを同じようにまた繰り返さないで、やはり予算の関係もおありでしょうけれども、安い費用で済むのですから、数十カ所おやりになった暁でのデータで、これに対するいい悪いの判定をする、同時に、その判定をする期間というものは、やはり相当程度必要だという主張なんですが、これは当然長官もお考えになっているでしょう。半年や一年でこれに対する決定はできないと思いますが、十年というのが正しいかどうかは別として、とにかく、長期間測定をしなければだめだ、研究はするのだという二つの条件をつけた前提一つ研究をやっていただきたい、こういう点を、一つ最後にお願いしておきます。
  35. 和達清夫

    和達説明員 そばに置いても同じようにはかれないということが、先ほど、私、何をはかっているかというので、大へん失言のようになりましたが、科学者の中では、何をはかっているかわからないというのは、決して悪口ではなくて、はかっておる対象がどういう現象であるかわからない、人為的なものであるか、地電流の流れからくるものかわからない、そういうことを申したのでございまして、同じところに器械があって、同じようにはかれなくて、どうして方々ではかってそういう問題を解決できるのか、その場所しか違わないなら、その場所であくまでも研究すればよろしいのだと私は思う。離せば離すだけ伝播していくような性質とか、あるいは、同時にいろいろと違ってくるような伝播していく性質のものなら、私は幾らでも広げてやりたい。そういうように、いろいろ技術的にも、学閥的にも研究の段階がございますので、私どもは、好意を持って宮本さんの研究を助けます。ですから、研究の内容につきましては、学者研究仲間——宮本さん等おりますから、また、気象庁も、できますならばお手伝いするということで御了解願いたいとと思う次第であります。
  36. 宮本貞夫

    宮本参考人 長官から非常にありがたい御意見を賜わりまして、私も安堵いたしましたが、二つだけつけ加えさせていただきます。  それは、長官に対して、私は、非常に感謝の念と同時に、新しい状況長官にお伝えするわけであります。結論だけ申しますと、私は、長官の御想像以上に広野課長と接触を保っておりますが、次のような言葉を申しております。これは非常に重大であります。他の地殻変動を含めて、いかなる器械よりも無定位磁力計方法に期待するというのであります。すなわち、地殻変動の量はあまりにも小さ過ぎる、あるいは、いろいろな点において他のファクターに左右されて、もしも、ほんとうにこれが実用段階に移されたならば、非常に困るというわけです。ところが、この器械がもしも原理がはっきりするならば、少なくとも一週間、二週間前に大地震が予想できるかもしれぬすばらしい方法である、それのみならず、井上部長も、長官に直接言っているかどうか知りませんが、私に、ぜひとも柿岡でやりたい、気象研究所の予算も、吉松さん、あなたに上げるからできるだけ早くやっていただきたいと、いうことを吉松所長に申し入れております。下部の組織では長官に言いづらいのかもしれませんが、できるだけ多数地点でやりたい、十カ所よりも二十カ所、二十カ所よりも五十カ所というように、できるだけ多数地点でやりたい。ただ、抵抗を示しているのは湯村哲男だけだろうと思っております。彼はあくまでも技術者という範囲内で考え、どうしても数学的に解析されざる限りにおいては、多数地点はやれないと言っております。今言った、大所高所から判断する広野課長あるいは井上部長は、徹底的に私と同意見であることをつけ加えておきます。しからば長官自身は何らためらう必要はないのであります。実際の担当者が、多数地点でやりたいと言っております。それに抵抗する根拠が私には理解できません。この抵抗は東大の一部の教授たちの無理解によるものでありまして、わずか数十名が、これはだめだと言ってしまう、そういうふうに、何ら検討せずに、だめだという言動を長官がなぜ支持されるのか。広野課長はなぜ一変したかというと、ずいぶん前には、かなり抵抗を示しました。ところが、私は、その変化の起とるつどに連絡をしておりまして、地震の起こる前に、どの程度の規模の地震が起こるかということを予想し、的確に当たるものでありますがゆえに、長官の御想像以上に、広野課長は、この器械以外に当たるものは期待できないと言っていることを長官に助言さしていただきます。  もう一つは、同時性がないということ云々については、私の説明が足りなかったことを長官及び皆さんにおわびいたします。すなわち、繰り返し申し上げますが、完全に同じものを作るならば、非常によい同時性が出てくるかもしれません。しかし、私どもがやっているのは、初めから二台でやるつもりでなかったために、どうしてもこれは二台を同じ条件でできません。狭い部屋でやっておる関係上、そのため磁石方向は完全に直角でありますので、むしろ、同時性がない方が——長官に助言いたしますが、私の研究では、同時性が少ない方がむしろよろしいということを実験で確かめておる。こういうふうに方向を九十度回しますと、いかに同じ強烈な変化を与えても磁石は微動だにしない。すなわち、どこから電流が地下に流れてくるか、震源が異なることによって一方が動き、片方が動かなかったりするのは、実験上確かめておりますが、これは私にとって不利な条件ではなく、現存、異なる条件に置いた器械が異なる結果を示すということはむしろ当然であって、私にとって百パーセントよい資料であるということをつけ加えます。
  37. 山口好一

    山口委員長 他に御質疑もないようでありますから、参考人からの意見聴取はこの程度にとどめます。  宮本参考人に申し上げます。  本日は、御多用中のところ、しかも、長時間にわたり貴重な御意見の開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して私から厚くお礼申し上げます。
  38. 山口好一

    山口委員長 引き続き、科学技術振興総合的基本方策に関する問題、なかんずく、科学技術基本法案立案の基本構想について政府より説明を承りたいと存じます。  科学技術会議議員梶井剛君、内海溝温君のお二人が御出席です。御質疑はありませんか。——齋藤憲三君。
  39. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 きょうは科学技術会議の梶井、内海両議員の御出席をお願いしたのでございますが、私は、この科学技術会議設置法の立案当時は国会におったのでございますが、科学技術会議設置法が通過をいたしますときは、私は落選中で、この国会に議席を持っておらなかったわけであります。それで、この科学技術会議設置法の一番大きなねらいというものは、この(目的及び設置)第一条、それから(諮問)第二条、これに明記されておるわけであります。その設置法の精神に基づきまして、総理大臣から第一号の諮問として、「十年後を目標とする科学技術振興総合的基本方策について」という諮問が出まして、それに対しまして、昨年十月四日、答申書が出たわけであります。私は、これを大体拝読いたしたのでありますが、科学技術振興に関する広範多岐にわたった問題を取り上げられて、この十カ年間を目標としての科学技術振興に対する作業をされたということにつきましては、非常に敬意を表するものでございますが、この答申を出されました後、総理大臣はこれを尊重しなければならないということになっておるようでございます。それで、この取り扱いはその後どうなりましたか、これにつきまして、一つその後の状態を御説明願いたいと思うのであります。
  40. 梶井剛

    ○梶井説明員 実は、第一の諮問に対しまする答申は、その当時、昨年の六月までに取りまとめまして、そして、三十六年度予算にそれが現実に反映するようにしたいという考えのもとに委員会を進捗して参ったのであります。しかし、何分にも、十年後を目標としてということになりますると、いろいろな調査を広範囲にしなくちゃなりませなんだために、ついに六月の目標が大体九月になってようやく取りまとめができまして、十月四日の本会議において答申をした次第でございます。でありまするから、それだけおくれましたことが、三十六年度予算に反映するのに非常に困難を来たしました。でありまするから、その後、私どもとしましては、各省が出されました予算等につきまして一々連絡をいたしまして、そうして、これを極力三十六年度予算に反映するように、協議の上で進めるより仕方がなかったのであります。その結果、ただいまここに数字を持っておりませんけれども、例年に比べまして科学技術の予算というものは相当ふえております。約二割くらいふえております。でありまするから、そこに効果は現われておるのでありまするけれども、しかし、私どもが答申案において希望しましたことが完全にそこに実現しておるかと申しますると、これはちょっと困難かと存じます。それは、科学技術を振興いたしますのに第一に重要なことは、人であります。人材が非常に必要であるということを特に申しておるのでありまするが、この人材を養成するためには、ある程度の年月がかかるということであります。その点におきまして、文部省においてさらに人材養成の案をお作り下さいまして、そして、それを国会にお出しになって、予算的にはある程度実現しておりまするけれども、しかし、これは一年やそこらでできるものではありませんで、少なくとも、大学を卒業するまでには四年かかるわけでありますから、効果としては四年後に現われてくるというようなことでありまして、その間に多少遅延というものが避けられない。でありますから、今後、三十七年度、三十八年度予算に対しまして、極力、答申案にわれわれ申しましたことを政府に尊重していただいて、そして、これを具体的に現わしていただくように、今後においても一そう尽力、努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  41. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 その十年後を目標とする科学技術の振興に対する総合基本方策というものを、非常に御努力をなさって答申としてお出しになった。これは総理大臣は尊重しなければならないということになっておるわけでありますが、一体、広範多岐にわたる、しかも、高度複雑をきわめておるこの十年後の日本の科学技術振興基本法方策というものを、一々、たとえば、三十六年度の予算に反映せしめるとか、三十七年度の予算に十分これの実現性を加味した予算の編成を要求するとかいうそのこと自体は、今の科学技術会議の機能でもってできるのですか、できないのですか。
  42. 梶井剛

    ○梶井説明員 今のお尋ねでございまするが、結局、われわれ科学技術会議の議員といたしましては、政策を作るのでありまして、これを実際具現することは政府に責任があるわけであります。でありますから、私どもは、議員としての立場において、政府にもっと早くやっていただきたいということをお願いする以外には、実行力を持っておるわけではありません。科学技術会議そのものは、要するに諮問機関であります。答申するが、あとは全部政府の御責任、しかも、それが各省にみなまたがっておりますから、実現する上においてなかなかむずかしい問題があるだろうと思います。
  43. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私の御質問申し上げておるのは、もちろん、予算の編成権は政府にあるのでありまして、科学技術会議の議員が予算を編成するのではないのでありますが、こういうふうな答申をお出しになって、これがどれだけ一体予算の中に盛り込まれて、どういう実現性を持つか持たないかということの検討を加えるだけの能力を、人員的に見ても、今の科学技術会議は持っておるのですか。これは文章にずっと書いてあるけれども、一々、これが三十七年度の予算にどれだけ食い込んで、どれだけ答申案に沿うたところの実効が上げられておるかということを検討、吟味するだけの力を今の科学技術会議の組織でお持ちになっておるのですか、どうですかということです。
  44. 梶井剛

    ○梶井説明員 科学技術会議というものは、御承知の通り、事務局を持っておらぬのであります。事務局のかわりをしてもらいますのは、科学技術庁の計画局がその中心になって事務をやっておるわけであります。従いまして、事務的には、科学技術庁の計画局の助けを借りない限りは、われわれにはそれ以外に手足はないという立場になっております。従って、今度の答申後におきまして、各省の三十六年度予算がきまりましてから、一々各省の担当の方に来ていただきまして、そして、前年度に比較して今年度は予算としてどのくらい通っておるかという御説明は全部拝聴しました。そして、今後に対してその不足の点はどういうところであるかということは、われわれは確かめております。しかし、あと、それを実行ということになりますと、やはり、これは会議においてわれわれ意見を述べる以外に——こういう諮問委員会に、ほかの委員会のように事務局がちゃんとありますと、もっと行動することができやすいのでありまするが、一応は形が諮問委員会になっておりますから、この点からいっては、いかんとも仕方がないのであります。
  45. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 答申の結論第一ページにおいても、われわれが傾聴し、大いに翫味かつ吟味をしなければならない大きな定義というものが掲げられておるわけなんです。それで、こういう定義が答申として出されて、そして、これを総理大臣が尊重するという建前でもってこれは尊重する、この答申は実にいい答申だ、これをのむということになりますと、この緒論のまつ先に書いてあるところの定義というものは、日本の科学技術を代表するところの真理的な観念になっていくわけですね。ですから、これは非常に重大な役割を演じておる科学技術会議であると同時に、この答申というものは、将来科学技術の憲法的な役割を示すものの考え方の基調の線だ、そういうふうに私は考えておるものですから、総理大臣がどこまでこれを尊重しておるのか、はたしてこれを将来の十カ年計画の基調としてやるという決心を科学技術会議として受け取っているのか、そういうことを非常に懸念しているわけなんです。これはどうですか、答申を出されて、大いに尊重する、これを一つのんで、これにのっとって大いに日本の十カ年間における科学技術の総合的基本政策をやるということが確立したのですか。
  46. 梶井剛

    ○梶井説明員 このことにつきましては、私どもは、総理の名前で、各省へこれを実行に移せという御通牒を出していただきました。これは、三十六年度の予算がありますから、それに対して特に力強く言っていただいたのですが、今後の問題に対しても、この答申の際におきまして、十分にこの答申の趣旨は尊重するということを総理みずから言明をされました。でありますから、私どもはそれを信じて!現実にこの通り通達を出していただいておりますから、年々歳々具現していくべきものだ、こう確信しておるわけであります。
  47. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 よくわかりました。私は、この緒論をきょう読み返してみたのでありますが、「科学技術は、世界平和の確立と人類文化の増進に奉仕すべき英知と創造力の結晶であるということを永久にかわることのない前提として、その振興に関する五つの基本原則をつぎのように定める。」ということになりますと、とにかく、私といたしましては、従来のいわゆる法律で定められておる科学技術というものに対する答申としては、非常な変更が加えられなければならないのじゃないか。たとえて申しますと、科学技術会議設置法に、「科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)というような、こんな妙なものがあると、大前提として掲げられたところの緒論における科学技術の定義というものは台なしになっていくのじゃないか、こう思うのですが、そういう点は一体どうですか。
  48. 梶井剛

    ○梶井説明員 設置法に、今の「人文科学のみに係るものを除く。」と、はっきり書いてあります。従って、私ども、その範囲内における答申をしたわけであります。しかし、広い意味におきます科学というものは、単に自然科学ばかりではなく、人文科学もみな含まれております。それからまた、自然科学の中にも、人文科学と関連性のあるものが相当あります。でありますから、そういうことを頭に置いて、われわれは最初前提条件を書いたわけであります。ですから、科学の振興ということに対する基本的な観念ということになりますと、人文科学であろうとも、自然科学であろうとも、その点は同じでなければならぬという考えでおります。
  49. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 今の「五つの基本原則をつぎのように定める。」という四の中の、「科学技術に関する知識と教養を人格の形成のための重要な要素とすべきである。」というようなところから見ると、人文科学のみにかかるものをわきに寄せて科学技術の振興をはかるということは、人間の英知と想像力は度外視してかかるのだということでないと、私はできない相談だと思います。  そこで、私は、きょうの本間に入るのでありますが、私の承っておりますところによりますと、科学技術会議の今後の大きな仕事として、科学技術基本法の制定をおやりになるということを承っておるわけでありますが、ここにも二百五十四ページに「科学技術に関する基本法の制定」という項目がございまして、ここに一から十五項目にわたって、科学技術に関する基本法の制定の要素が掲げられておるわけであります。私は、科学技術会議が総理大臣の諮問にこたえてこれだけの答申をなされた、その内容の検討をやってみますと、なるほど、これを総合的に、かつ、基本的に力強く遂行して参りますには、科学技術の振興に関する憲法的な基本法というものの制定なしにこれを行なおうと思っても、とても行なえるものじゃないと思う。今、梶井さんは、各関係の省庁の係官に来てもらっていろいろ説明を聞いたとかなんとかおっしゃいますけれども、それは聞かれたことは事実でありましょうが、徹底的に、これに書かれてあるところの科学技術の振興対策が各省庁にまたがって基本的に推進されているなんということは、今の現状においてはとうてい考えられない。おそらく、それは説明をお聞き流しになっただけであって、御自分のお考えになっておるような総合的な基本政策の推進がはたしてどれだけ力強くはかられておるかということの検討を加えられたならば、セクショナリズム的な欠陥だらけで、とうてい御満足のいかない状態であるということは、私が御説明申し上げるまでもないことだと思うのであります。そこで、科学技術の振興というものを根本的に推進していくには、科学技術の総合的な建前から、また、基本的な観点から、これを力強く進めていく、科学技術の振興に関するところの憲法的な、ほんとうの力強いものが必要である。そういう問題に関しましては、第一番目に、わが国産業の発達と国民生活の向上をはかるために総合的、基本的態勢を整備するということをうたってありますし、また、第二番目に、科学技術行政を総合的に行なう体制を確立すべきであるということも書いてある。でありますから、第一に掲げてあります通り、「科学技術は、世界平和の確立と人類文化の増進に奉仕すべき英知と創造力の結晶であることを認識し、これを基本理念として、科学技術の振興に関する総合的、基本的態勢を整備し、」それから第二番目に「科学技術行政を総合的におこなう体制を確立すべきこと。」この二つの点に関してだけでも、私は非常に大きな問題であろうと思うのでありますが、きょうお伺いしたいと思っておいでを願いましたのは、これは別段、今ここでお話し願って、一々それを公式な、責任あるお考えとして追及しようと思っておいでを願ったわけではないのでありますが、せっかく、この段階を過ぎて、次の段階には科学技術基本法というものをお作りになる御構想になっておるというのでありますから、どういうお気持でそれを今お考えになっておられますか、どういう理想的なものを作っていきたいとお考えになっておるか、それを一つお話し願いたいと思います。
  50. 梶井剛

    ○梶井説明員 今、お話しの通りに、科学技術に対しましての基本法が必要だということは、この前の一号答申においても十分にわれわれは述べたわけであります。現状における日本の科学技術振興に対して、基本法なり、あるいは総合力がないということは非常に大きな欠陥である、だから、これをやらなくちゃいかぬ、しかし、それにつきましては、第一号答申の際にそれを十分検討するいとまもなかったわけでありますから、一号答申後、引き続いて検討する意味において、基本法、それから総合行政機構、このことについて検討することになって、その後、総合部会において二回会合いたし、どういうふうにやるかということについての検討をいたしました。そして、総合部会の現在の人だけではとうてい十分手を尽くすことができないというので、新たに専門委員の方を、相当各方面から委嘱するように手配をいたしております。このことにつきましては、人選もすでに終わっておるのでありますが、いずれ科学技術庁の方に手続を済ませまして、御発令をいただけるだろう、そうしたならば、この六月中に第一回の会合をぜひやりたい、そして、大体基本法の完成は、できれば十一月中ぐらいには終えて、そして、次の通常国会においてこのことを御審議願いたい、こういうふうな希望を持っております。  なお、内容の具体的な問題につきましては、まだ十分に検討しておりませんので、今ここで申し上げにくいのでありますけれども、われわれとしまして最も重要だと思っておりますのは、先ほど申されました基本法に対する一つの精神です。科学技術というものは、やはり人間がやるのでありますから、人間そのものの精神が、ほんとうに人類のため、あるいは世界平和のために貢献するという、高潔な精神のもとに科学技術の振興をやっていただかなくちゃならぬということを、もちろん最初には言わなければなりませんが、しかし、同時に、日本としましては、日本の科学技術振興に対する一つの長期の計画を具体的に立てなければいけない。そうしないと、現在の政府の予算は、毎年々々そのつど予算編成をするのでありますから——研究というものは、一年や二年で完成するものではないのであります。従って、重要な研究に対しては、あるいは五年、十年という歳月を要するのでありますから、どうしても、継続的にこの研究ができるような長期計画を作らない限り、予算の裏づけも十分にできないというので、まず、長期計画を持たなくてはならない、そうして、その長期計画を継続事業のようにいたしますから、国会に対する責任が生ずる、でありますから、国会ごとに、その後の経過を常に国会が聴取していただくというふうにして、現実に国会からも関心を持っていただき、監督もしていただくというようにやっていきたいということを考えております。  また、総合行政の体制の問題につきましては、臨時行政制度調査会が現在やられておるのであります。その中の一部門に自然なるのでありますから、こっちだけでやりましても、それと抵触いたしますと非常に工合が悪い。でありますから、一応検討すると思いますけれども、臨時行政制度調査会と連絡してやらなくちゃならぬので、これをいつまでに完成するという日限は、ちょっと今申しかねております。できるだけ、われわれとしましてはこの問題を解決していかなくちゃならない、そうしないと、ほんとうに、今おっしゃられた通りに、各省との間にセクショナリズムがあって、むだが生ずる、また、実際に、今後の科学技術の研究というものは、一部門だけの研究によって完成されるものはだんだん少なくなってきている、総合力を発揮して、初めて大きな研究ができるのでありますから、各省にまたがっておるいろんな研究所が、お互いに協力して、総合的にやらなければならぬというような体制を作らない限り、大きな効果を期待することができないのじゃないか。従って、総合行政体制というものも非常に重要な立場になっておるのでありますが、長年の官庁制度、あるいは習慣というものは、これを根本的に改正するというときになると相当めんどうも多いと思いますから、その間をいかに打開し、それを最後のところまで持っていくかということについては、相当な努力をしなくちゃならぬのじゃないかと考えております。
  51. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 これは、先ほども申し上げました通りに、総理大臣の諮問にこたえたところの答申でありまして、これを総理大臣は各省に通達をして、これによって大いに科学技術の振興をはかれということで、これをのんだ、でありますから、私が先ほども申し上げました通り、第一に掲げられた科学技術の定義というものが、「世界平和の確立と人類文化の増進に奉仕すべき英知と創造力の結晶であることを認識し、」これを科学技術の振興の基本法に絶対的に入れるということになりますと、これは答申案にお書きになった作業の何十倍、何百倍の抵抗と困難というものを覚悟して、その基本法というものをお作りにならなければならないと私は思うのであります。また、そういう第一に掲げられたところの科学技術の定義を没却して基本法を作るというようなお考えであったら、私は作らない方がいいと思うのです。ですから、私の科学技術会議にお願いいたしたいことは、これを十月に作るとか十一月までに作業するとか、そんなせっかちなことはお考えにならないで、あくまでも、ここに掲げられました「世界平和の確立と人類文化の増進に奉仕すべき英知と創造力の結晶」というものを前提として科学技術の振興をはかる、そのためには、行政の総合的なあり方も考えていかなければならないし、ここに、以下、並べられたところの各個条というものが必ず必要なんだということで、これは、あらゆるセクショナリズムと抵抗を排除しても、この科学技術振興に必要な基本法というものは、科学技術会議の力で押し切っても作ってみせるというねばりと努力がないと、私はできないと思うのでありますが、一体、どうして十月などというお考えを抱かれたのか、その心境を一つ承っておきたいと思います。
  52. 梶井剛

    ○梶井説明員 はなはだ気が短いといっておしかりを受けたのでありますが、どうもおい先が短いものですから、どうしても気を短くやらざるを得ないのであります。(笑声)しかし、この基本法を作ることに対しまして、非常に力強い努力をしなければできないということは、直々われわれも知っております。また、抵抗が非常に多いと思います。でありまするから、私らの考えますことは、とてもわれわれの力じゃ及ばない、しかし、これは死力を尽くしてでもやろうという決心をしておるわけであります。ただ、この際に、一つお願いいたしたいことは、基本法を制定しない限り、日本の科学技術の振興というものは従来と同じ程度であって、そう大したことは期待できない。これはしゃにむにどうしても成立させなくちゃならぬが、それにつきましては、国会の方々のほんとうの力強いお力添えをいただかない限り、これはできないのじゃないかということを懸念します。それで、今、齋藤委員から非常にありがたいお言葉をいただいて、われわれはますます力を得たのでありますが、どうかこの委員会の皆様方にぜひお力添えを願いまして、大体目標としては十一月までに成案を得るつもりでおりますけれども、しかし、そうかといって、検討していくうちにいろいろな困難にぶつかりますと、必ずしもそのときに間に合わぬかもしれない。その場合には、すぐ国会の方々に御連絡をいたしまして、どういうふうにいたしますか、ぜひ御相談に乗っていただきたいと思っておるのでありまするが、どうかよろしくお願い申し上げます。
  53. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 科学技術会議設置法をわれわれ考えました立法の精神は、とにかく、この重大な日本の将来を決定すべき科学技術の振興というものは、トップ・レベルのハイ・クラスの人材を網羅した会議を設けて、そこで国家的見地から、世界情勢に即応するような科学技術振興の策を講じなければ、とうてい日本の前途というものは繁栄を来たすことはできないのだということで、科学技術会議というものを設けて、そして、梶井、内海先生を初めとして、議員というものを勤めていただいておるわけであります。ですから、われわれの立場からいくと、もうすっかり安心し切って、おまかせしておるという態勢なんです。科学技術の些末政策に関して国会議員がどれだけの認識を持ち、卓見を持っているかというと、それくらい持っておったら、何も陣笠はやっておらぬわけであります。また、妙なジンクスがありまして、あまり科学技術なんかに専念しておりますと、落選という懸念もあるわけであります。(笑声)ですから、一々国会にたよられたって、基本法のいいものはできっこないと思う。ですから、現在において、とにかく科学技術会議において十分一つ想を練っていただいて、衆知を集めて、どしてもこれでなければ日本の態勢というものは科学技術を前提として発展できる可能性がないのだという、はっきりした結論が出されるような基本法を私は作っていただきたいと思う。これに反対を加える者は、国家の繁栄に対して障害を与える行動だというくらいに割り切れるような、はっきりした、だれが読んでも、なるほど、これは当然制定すべき法律であるというふうにまで万全を期していただければ、われわれは、それを金科玉条として、国会において検討するにやぶさかでないと思うものでありますから、どうか一つこの基本法の制定に関しましては、今まで作業せられましたより以上の努力と熱意を持って、十分御検討あらんことをお願い申し上げて、私の質問はこれで終わることにいたします。
  54. 山口好一

    山口委員長 岡良一君。
  55. 岡良一

    ○岡委員 この非常に部厚い御答申をいただきまして、実は、この委員会理事会でも、せっかくの御労作でもあることだから、真剣に時間をかけて皆さんの御所見を承り、われわれの意のあるところも申し上げたいということを申し合わせながら、ついつい時期を逸したようなわけでございます。そこで、私は、基本法について齋藤委員から触れられましたので、若干私の意見を申し上げて、また、皆さんの御所見も承りたいと思います。  御指摘のように、この科学技術の基本法は、いかなる基本法にも優先して、私は必要なものだと思う。日本には、教育基本法がある、あるいは農業基本法ができた、また、中小企業の基本法を作れという声もございます。しかし、今日、このような激しいテンポで技術が進み、技術革新が進んでおるときに、そして、科学技術が、むしろ、経済外の力として経済を引きずり、政治を引きずっておるというような今日の時代においては、やはり科学技術の現在から将来にかけてのあり方を規制する、いわばレールを敷くということは、いかなる基本法にも増して私は必要なことであろうと思う。これは、科学技術会議の議員の皆さんも真剣に御努力を願いたいが、同時に、われわれも、皆さんにおまかせをすべき性質のものではないと私は思うわけです。原子力基本法を作りましたときには、与野党が共同で作業いたしました。そして、現実に、今日わが国の原子力政策は、あの基本法を大きなおきてとして進められようとしておるし、われわれは、また、その後における政府の原子力政策は、あの基本法をたてにして、常にコントロールを加えておるわけでございますので、そのような意味合いにおいても、立法の府の責任として、この基本法の制定には、当然、われわれ自体が積極的に参画すべきだとも考えるわけです。私どもの立場から申し上げますならば、これは、科学技術会議の中に、基本法のための特別な機関を設けられることも御自由ではございます。しかし、これはやはり、でき得べくんば、与野党共同の提案として国会に出すくらいの意気込みで、私どもも積極的に御協力を申し上げるのが至当かと思いますので、そういう機会を、積極的にお作りいただくようにお願いをいたしておきたいと思います。  そこで、この基本法の要綱のようなものが答申案の末尾に掲げられておりまするが、これは、科学技術会議としては、やはり将来の基本法の骨子はかくあるべきものだという御決定でございます。
  56. 梶井剛

    ○梶井説明員 ただいまお話がございました通りに、私どもは、その十五項目につきましては、一応そういうことを骨子として法案を作るべきだということで作りましたが、何分、自分らには法律的な知識も十分にありませんので、この基本法の分科会を作りまして、そこで各方面の衆知を集めて、十分に検討しようということになりておるわけであります。ただいま、与野党合同して、一致してやろう、こういうありがたいお言葉でございまして、国会というものは、国における最高の権威であります。そこにおられる方々は国民の中から選ばれた人でありまして、これ以上の方はないわけでありますから、その方々が、さように力強く力添えしてやろうということでありますと、われわれは、百万の味方を得たようなものでありまして、元気を出してやります。どうもありがとうございます。
  57. 岡良一

    ○岡委員 お礼を言っていただくのは、これから先のことであります。  そこで、これは齋藤委員も御指摘になったことですが、科学技術会議そのものも、実はこの委員会が満場一致で作るべきであるという決議案を決定いたしまして、その決議案に基づいて作られたものでございます。従って、科学技術会議が床の間の置物であってはならない。同時に、基本法も、これが一片の作文であってはならないということは、申し上げるまでもございません。そういう意味からいいましても、たとえば、第二項における科学技術行政の総合的な体制というようなものは、今日なお牢固として抜くことのできない、政府機構内におけるセクショナリズムというものの厳存を考えますときに、これは、非常に困難な問題がおそらく起こってくるであろうと存じます。  それはさておきまして、今、梶井議員がおっしゃったように、政府は、一応この答申案を尊重すべきである、この趣旨を体して、という旨の通牒を、総理は各省庁に出されたというようなお話でございましたが、私は、その点について若干お尋ねをいたしてみたいと思います。  たとえば、第一項「科学技術は、世界平和の確立と人類文化の増進に奉仕すべき英知と創造力の結晶であることを」云々と書いてあります。なるほど、これは作文として、きわめて格調高くうたい上げてございます。しかし、現実はどうであるか。たとえば、科学技術庁には宇宙開発審議会が設けられました。ところが、予算面で一体どうなっておるかと申しますと、防衛庁のロケット研究費は、本年度予算を含めまして約三十三億です。ところが、科学技術庁に設けられた平和利用のための宇宙開発解議会の予算は三億五千万円、十分の一です。そうしてみれば、世界平和の確立のために、わが国の科学技術がはたして寄与しようとしているのかどうかという点に、私は問題があると思います。これは、穏健な憲法学者である佐々木惣一博士のようた方でも、たとえ防衛の目的であろうとも、それは軍事目的である、従って、平和目的ではないということを、憲法解釈においてはっきり言っておられる。予算の上においてそのような矛盾がございます。私は、こういうような点、科学技術が、この第一項に掲げられた平和の確立へという目標とは、およそ違った道にゆがめられようとしておるのではないかという懸念を持っているのでありますが、その点いかがでございますか。
  58. 梶井剛

    ○梶井説明員 ただいまの御質問に対して、私が当然お答えすべきでありますが、恐縮ですが、あまりに私ばかりお答えしては申しわけないので、同じ立場におります内海議員からもお答えさせていただきたいと思います。どうぞよろしく……。
  59. 内海清温

    内海説明員 ただいま岡委員のおっしゃることは、全く同感でございます。ただ、私ども、防衛費というものには無関係でありますので、ひたすら、科学技術の振興予算について努力したいと思うております。ここに掲げました科学技術の基本理念として、世界の平和、人数の福祉に貢献するという言葉は、科学技術の振興の前提条件と申しますか、目標でありまして、この通りに考えておる次第でございます。  それから、この総合行政体制の確立、これもこの基本法の中にうたっておるのであります。これは、先ほど梶井議員も述べられましたように、ただいま、別に行政制度調査会ですか、それが検討しておりますから、これと並行して、お互いに連絡し合って答案を作りたいと思っておりますが、先ほど齋藤さんの言われましたように、非常に困難な問題だと思いますけれども、私どもは、諮問にこたえる等案を作るのでありまして、これを実行するのは政府であり、従って、また、基本法は国会で審議決定されるのでありますから、その前提として私どもが答案を作るわけであります。  それから、先ほど岡委員から言われましたように、国会も、与野党一致してこの問題を取り上げるというお話でございますから、まことにけっこうだと思います。この科学技術の振興については、与党たると野党たるとを問わず、みな非常に大きな関心を持っておられますから、どうかそうありたいと思っております。
  60. 岡良一

    ○岡委員 前段のロケット予算の問題は、実は、私は、予算委員会でも総理に質問をした問題なのです。これは、皆さんにお尋ね申し上げたところでせんないことかもしれませんが、ただ、内海議員のお考えについて率直に申し上げますと、科学技術行政というものは、科学技術行政というワク内のものだというようなお考えがもしあるならば、これは一つ大きく目を開いていただきたい。ということは、たとえば、アメリカとソビエトとで水爆を持った、大陸間弾道弾を持った、これは科学技術の発展なんです。そうしたら、フルシチョフもアイゼンハワーも、全面戦争を断念しなければならないところまで追い込まれた、科学技術の発展というものは、国際政治を動かしておるということです。そういう大きな力を持っておる、政治を引きずっておる、経済というものをリードしておる科学技術であるという立場から、科学技術というもののワク内において、防衛庁のことはおれは知らないんだというような考え方では、真の科学技術というものの理解が足りないんじゃないかと私は思うのです。
  61. 内海清温

    内海説明員 ちょっと私の申し方が足りなかったと思いますが、岡委員から、防衛費と科学技術振興費用との比較をなされて、それに対して意見を徴されたと考えまして、私どもは、防衛費はどうであろうとも、科学技術振興に対する予算をできるだけ大きくしたいという考えでありまして、防衛費の一部を取って、科学技術振興費に持ってくるというようなことは、私ども、科学技術会議の議員としてやるべきことでない、そういう意味で申し上げたわけでありますから、誤解のないように願います。
  62. 岡良一

    ○岡委員 それでは、私の申し上げたことを内海さんは少し取り違えておられるのです。三十三億五千万円のロケット研究費は、防衛庁の科学技術研究本部につけられた予算なんです。科学技術庁の宇宙開発審議会の予算は、三十六年度までで三億三千万円しかないと私は申し上げたのです。十分の一ではないか。これでは、世界の平和へというけれども、少なくとも、人工衛星あるいは人間衛生の飛びかっておる今日、日本のこのロケッ卜部門に対する予算においては非常に不均衡なものがある。これでは、平和へというのは、一片の旗じるしにすぎないというような事実を、われわれは予算の上で見せつけられておる。ところが、一方、総理は、この答申を尊重せよということを各省庁に言うておられるというが、そこに矛盾があるのではないかということを申し上げたのです。  そこで、第三項については、齋藤委員からいろいろ御所見がございました。第三項は、「科学技術のための研究投資の確保について積極的な方途を講ずべきこと。」なるほど、ことしの国会においても、研究投資についての租税の減免措置が若干講ぜられました。しかし、そういうことを意味しておるのでございますか、これはもっと具体的に、どういう御構想を持っておられますか。
  63. 内海清温

    内海説明員 この答申にも述べておりますが、いかにも今日の科学技術振興に対する予算あるいは研究投資が足りない、これでは世界に伍していくことすらできない、いわんや、世界のトップレベルまで日本の科学技術水準を上げるのには相当大きな予算を必要とするのだ、具体的にもこの中に述べておりますが、ただ、そういうことをこの答申で述べて、そして、総理大臣がこれを尊重すると言っても、具体的にもっと——ただ、尊重するといって、若干増したのも、これは尊重だといわれるようでは心もとないのでありまして、もっと何か、今の長期計画も予算のついた、金額のついた長期計画であって、そして、毎年の国会において、その前年度にどんなことをやって、どれだけ進んだかということを報告する、そういう義務を政府に負わせたい、こういう考えでおるわけでございます。
  64. 岡良一

    ○岡委員 この基本法の運営上、国会に報告をさせるというようなことも必要かと思いますが、ただ、問題は、なるほど、日本の民間産業の研究投資は少ない。これは統計で見ても——これは比較する方が無理かもしれませんが、デュポンが千七百億、ユニオン・カーバイドが千二百億、ヘックストが七十億、あるいは英国のICIが百二十億などというようなことを申されておる。日本の最高が、東芝の三十億、東洋レーヨンの十四億、こういうようなことで、非常に日本の民間の研究投資は少ない。これは、科学技術庁の資料を見ましても、とにかく年総生産額の、英米の国々が七%、六%、五%に対して、日本は、二%余というのがぜいぜいのところだというような状態でございますから、やはり民間の研究投資を推進するような方策をとらなければならぬ。ただし、もう一つ、日本の民間研究投資について問題があるのは、まだ大企業はそれでいい、しかし、その格差のある中小企業については、研究投資をしようにもできない事情にある。しかし、それでは、中小企業をそのままおくれた技術段階にとどめておくということは、日本の科学技術政策としては、きわめて好ましくない、どうして高めたらいいのか。そこで中小企業の共同研究を推進する、この共同研究に対しては租税は免除する、そういう親切な裏づけというものがなければならぬ。これだけを見ると、今日、日本政府がとった、大企業の研究投資に対する税の減免だけしか意味しておらない。これでは、真の国全体の経済の繁栄、国全体の産業の繁栄という大きな目標から見て、ともすれば、これだけでは大企業優先というような考え方であるので、私ども、今日にわかに賛成しがたい。こういう点を今度基本法をお作りになるときに、やはり十分に実態をお調べになって、どうあるべきかという具体的な点までも裏づけとしてはつかんだ上で、一つの原則を打ち出す、こういう御努力をぜひお願いしたいと思います。  それから、五、六は大体このようなものでしょう。  七項ですね。「わが国が国際経済競争において、安定した優位性を確保するためには、科学技術の水準を高め、特にわが国独自の新技術を開発することが重要であることにかんがみ、これについて積極的な方途を講ずべきこと。」これはまことにその通りなんです。特に、自由化のあらしの中に、日本経済というものの輸出の黒字基調もくずれようかという懸念もあるこの際、日本の国産技術の確立ということは至上の命題になってきている。ところが、先般、この委員会でも、新技術開発事業団法の審議をいたしました。政府の提案理由の説明によると、昭和二十五年から昨年までで、一千億に上る技術導入のための外貨の支払いをやっておる。輸出はその一%にも満たない。これでは技術の大きな後進性が克服できないというのが、この新技術開発事業団法の大きな提案理由であったのですね。ところが、最近の新聞を見ますと、外国からの技術導入については、さらにその制限を緩和しようということが通産省あたりで唱えられて、外資審議会でもこれを本格的な議題として、具体的にどうするかというようなこともすでに新聞に発表されております。こうなりますると、ますます技術導入というのは放任しよう、盲目的な技術導入というものをそのまま放任しようということになる。ここに、第七項にうたわれた国産技術の確立ということとの間に大きな矛盾がある。総理は尊重しようと言っておるが、尊重しておらない。ますますもって外国技術の導入に対しては制限を緩和しておるので、矛盾があるのではないか。こういう点を、やはり科学技術会議の皆さんとしては、真剣な関心を払ってもらわなければならぬ。この点、最近の通産省、外資審議会のあり方についてどう思われますか、皆さんの御所見はいかがですか。
  65. 内海清温

    内海説明員 今の国産技術の第七項目は、岡委員と全く同感でございます。ただ、最近、貿易・為替の自由化の準備として、外国の技術をどんどん導入している事実があります。政府がこれを緩和する方向にいっているということも新聞で拝見しまして、私どもは非常に遺憾に思っております。先ほど、岡委員から数字をあげられましたように日本は技術導入、技術導入で、技術輸出というものは百分の一もないくらいであります。ただ、今、早急に日本の科学技術の水準を世界水準まで一挙に持っていくことは困難でありますから、これは官民の努力によって、漸次外国に技術を輸出できるように——輸入を全然してはいかぬというのではありませんが、日本の技術よりも進んだものは輸入する、そのかわり、日本の技術の進んだものは外国に輸出する、その輸出、輸入のバランスがとれるところまではいかなければならぬというのが私どもの考えでございまして、岡委員と全く同感でございます。
  66. 岡良一

    ○岡委員 これは、やはり科学技術会議として、日本の科学技術のあり方としての一つの骨組みと思うのですが、これに逆行するような措置が政府においてとられたときには、やはり科学技術会議としては責任をとられる必要がある。責任をとられるというのは、とのことを一つの議題として、科学技術会議としても、少なくとも、その態度を御協議になる必要がある。科学技術会議として、自分たちの方針とは逆な方向に日本の政策が一方で進められようとするときには、これをやはりチェックするくらいの気ぐらいがあってもいいのではないか、見識を持たるべきである、そういうものとして、私どもの委員会は科学技術会議というものを万場一致で設立することに賛成しているのです。ただ理想を蒔くうたい上げたものを作文として出されるということではなくて、それを実際に行なっていこうという意欲を具体的な事実において見せていただきたい。ぜひ、こういう努力を今後もやっていただかなければならぬ。  それから、第八項目、九項目、それから四項目ですね。これは、この委員会でもしばしば政府側からも言っておられるととだが、国立研究機関、試験機関あるいは原子力研究所など、東大の卒業生が一人も受験しない。中堅がどんどん外へ行ってしまうというようなことですから、豊かな環境どころか、相難逆な環境があるわけですね。そういう点は、もちろん、各省とも努力してもらわなければならぬと思うが、そこで、第十三項目、「科学技術は、国際的交流を通じて進歩するものであることにかんがみ、これに対処すべき態勢を確立すべきこと。」これは具体的にどういうことでしょう。
  67. 内海清温

    内海説明員 これは、ここに書いてある通りでありまして、科学技術には国境なしといわれておるので、交流というのは、向こうからもくる、こちらからもやるという考え方で、そうして、世界全体の科学水準が上がってくるわけであります。具体的には、この答申にも、十年後を目標とした方策の中に書いております。今よりももっとこの技術交流をしなければならぬというふうに考えておるのであります。
  68. 岡良一

    ○岡委員 私は、この点をやはりもっと具体的に、これはこの基本法の中で具体的にうたうということではなくても、この意味を具体的な事実で裏づけておいていただかないと、これだけではあまりにも当たりまえ過ぎたことであるわけですね。そこで、私は希望を申し上げるのですが、今、内海さんがおっしゃったように、科学技術というものは、国境を越えた人類の英知なんですから、従って、このような英知の成果というものは、これは政治体制の相違などというような対立を越えたものでなければならぬ。だから、日本が科学技術行政を進めていく場合、あるいは科学技術外交を進めていく場合、その政治的体制の相違などということにかまけて毛ぎらいをすべきでないと思う。だから、いいものはどこからでもとるというだけの、幅の広い科学技術外交というものがなくてはならないと思う。これが当然あるべき正しい姿の科学技術外交だと思う。ところが、これも最近新聞紙を見ると、モスクワに科学アタッシェを持つことになった。ところが、これは軍事情報をもとる使命を持っておるというのかどうか知らないが、この科学アタッシェは、防衛庁が出そうというようなことが新聞に出ておるのですね。これはどうきまったかわかりませんが、そういうことは途方もないことなんですね。これはやはり科学技術庁からモスクワの大使館にアタッシュを——何といったって、スペース・ギャップ、ミサイル・、ギャップというような意味において、一方は数歩進んでおるのですから、ぜひこれは出してもらいたい。それでも、どうやらモスクワに出すことになった。今度は、さて、科学技術についての協力協定、特に原子力なんかは、今、日本が結んでおるのはカナダ、アメリカ、英国ですね。これはやはり、もうそういう毛ぎらいをしないで、すべての国と結ぶ、できるだけ早く、現在のイギリスやアメリカやカナダとの協定も、二国間のバイラテラル・アグリーメントではなく、国際原子力機関の条約に移したいというような方向にプッシュするということがやはり必要だと思う。そういう点で、この点も明確に、政治体制の別を越えて、科学技術の情報あるいは技術の交換を推進するというような、そういうおおらかな態度をやはり打ち出す必要があろうと私は思うのです。  もう一つは、東南アジアに対する技術協力、今、低開発地域に対する援助というようなことが非常に問題になってきております。日本が乏しい国民の税金を一つのファンドとして援助するといっても、たかが知れている。ですから、やはりおくれた地域に対する技術協力体制というものを置く。ケネディは平和部隊というものを派遣すると言っておりますが、これは日本も若干千行って調査もし、協力もして、非常に実績を上げているということを私は現実に見ておるのです。ですから、こういう点は、東西両陣営というような政治的対立を越えて、人類の英知の成果である科学技術については、その情報の交換をしたり、相互協力の上に発展を進めていくと同時に、おくれた国に対しても、わが国は技術的な援助を与え、技術的な提携協力をしていくという道をはっきり開くべきだというような点を、もう少し具体的に私はうたい上げていただきたいということなんです。その点の御所見を承りたいと思います。
  69. 内海清温

    内海説明員 国際交流に関してのただいまの岡委員の御意見は、まことに私ども同感でありまして、この基本法の案を作ります際に、岡委員の御意見も十分参考にしていきたいと思っております。  それから、今ソビエトに技術アタッシェを出すのは防衛庁からという話は聞いておりませんで、科学技術庁から行くことになっているように聞いております。
  70. 岡良一

    ○岡委員 もちろん、私は、それは新聞の誤伝だと思うくらいに不思議なことだと思っておったわけです。  それから、やはりこの基本法の要綱を通覧をいたしまして、一つ問題点が抜けておると私は思うのです。   〔委員長退席、齋藤(憲)委員長代理着席〕 これも、私は、決して社会主義政党という立場から申し上げるのではなく、科学技術の成果は、やはり人類全体、国民全体の福祉に貢献すべきだという考えから、国全体の繁栄に寄与すべきものだという立場から申し上げるのですが、技術革新がわが国において一体何に奉仕しつつあるかということです。たとえば、自動車産業において、今どこの、工場に行っても、大メーカーではりリミット・スイッチ、トランスファ・マシン、そうして、年産十万台以上というようなことである。しかし、あの大メーカーの下には、たとえばトヨタのように、スーパー・マーケット制を持っておる中小企業下請というものは、非常にひどい苦しい目にあっているようです。鉄にいたしましても、大きな工場は、ことしの春、十カ年一兆三千億というような計画で、純酸素吹工の例の銑鋼一貫炉ですね、七十万というような大きな溶鉱炉を据え付ける、そうすると、小さいところは太刀打ちができないと私は思う。それから、電子工業についてみましても、伊丹のあの一流の大きなメーカーに行きますと、白い帽子をかぶって、白いユニフォームを着た女の子が、自動機械のように、こまかに手を動かして、次から次に電気洗たく機ができてくる、テレビができてくる。しかし、中小企業から、もう一つ家内労働にいきますと、そこでは、何ミクロンというようなものを、朝から晩まで、家族があの小さなガラス管の中に入れたりしておる。そこで、一本が二十円か三十円である。一家三人働いて二万円あげればいい方だというようなことを現場の婦人が言っておるというのは、技術革新というものが、日本の大資本に奉仕していて、下にいけばいくほど、それらの部分を取り残しておるという状態である。現実には、技術確信が二重構造というものをますますやっておるのです。だから、日本の二軍構造というものを解消する、健全で安定した日本の産業構造に建て直すためには、日本の科学技術行政はどうあるべきかということ、これは、私は重大な問題だと思います。現状のままでは、私は二重構造はますます拡大するだろうと思う。なるほど、中小企業の設備の近代化というようなものなんかも、いろいろ統計を調べてみますと、これはほんとうに新しいものを入れておるのは少ない。四割、五割までは古いものを親工場から安く分けてもらっているという意味の近代化なんです。そういう意味で、アメリカや英国のような、中小企業としての専門的な部品工場というような形になっておらないのです。そういう点に、日本の科学技術行政というものが、産業構造の内部における二重構造の格差をますますはなはだしくしておる。これを一体どうカバーしていくかという点が、この要綱の中には出ておらないのです。こういう点も、当面の非常に重大な問題として、科学技術会議の方でもやはり真剣に御討論願わなければならぬ。  そういうことをいろいろ申し上げればきりのないことですが、一応、私がこの基本法に目を通しまして感じただけでも、今申し上げましたような点について、もう少し掘り下げた御検討なり、万人の納得のいく基本法を作る、こういう方向で今後作業を進めていただきたい、このことをお願いして、私の質問を終わります。
  71. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員長代理 他に御質疑がないようでありますから、本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時十八分散会