○石川
委員 ただいま
田中委員の方から射
爆場の返還について
質問がありましたが、これは
田中さんもおっしゃったように、実は、ほんとうは
総理大臣に
出席をしていただいて、この点についてとことんまで決意を披瀝していただきたいと
考えておりましたが、ぜひ
一つわれわれの意見を率直に聞いていただいて、
総理大臣にわれわれの意のあるところを十分に伝えていただきたいということを、まず、もってお願い申し上げる次第であります。
今の問題に関連して
質問をしたいと思います。実は、ほかの
委員会で、私が朝霞の返還の問題について
質問をしたのでありますが、この朝霞は、当然返還されるものだという前提のもとにオリンピックの計画が進められたわけです。ところが、突如として返還は不可能だという回答に接して、非常にあわてまして、その結果、これは本来なら
政府の所管ではないわけで、東京都が
責任を持って開催をすべき行事ではあるけれども、しかし、
日本としては有史以来の初めての大
規模な国際的な行事であるという点で、
政府としても無関心でおるわけにはいかないということで、外務大臣なり、あるいは
政府当局自体が、積極的に
アメリカとこの朝霞の返還の件について交渉を進めておるということを聞いて、これはきわめて当然な
措置だというふうに
考えるわけです。ところが、この射
爆場付近にあります原研の問題は、これは一地方の問題ではなくて、
政府があげてこの
科学技術振興のために、
原子力科学の推進のために、積極的にイニシアチブをとって推し進めて参ったということは、今さら言うまでもないと思います。従って、オリンピックの場合とは違いまして、これは
政府自体が
責任を持って対処しなければならぬ性質のものである。それと同時に、この危険性の問題については、この
委員会では何回も申し上げておりますので、今さら繰り返す必要もないと思いますけれども、もうすでに誤爆が二百発くらいになっております。一番近いのは、この原研から去ること三百メートル程度のところにも落ちております。その後、今、
官房長官がおっしゃったように、いろいろと手段を講じて安全を保つという点で、射
爆場の的を海上に移すというような
措置もとっておりますけれども、だからといって、この誤投下というものが跡を断ったわけではないのであります。この原研があるということだけでも相当危険であるところに、かてて加えまして、コールダーホールというのが隣接して作られる予定になっておりますことは、今さら申し上げるまでもありません。ところが、これは十五万六千キロというきわめて膨大な設備であります。これが一たん
事故を起こすということになれば、はかり知れない大きな災害を与えるということで、今回提案されたこの
損害賠償法案となって現われたわけでございますけれども、このコールダーホールというものを設置するに際しましては、地元の県当局としまして、絶対射
爆場は返還されるんだということを前提としてこの設置に承認を与えることになっておりますことは、今さら繰り返すまでもないと思います。ところが、いまだにこの射
爆場返還の交渉が遅々として進まない。今お話を伺えば、極力
事故のないように、
保安上の設備について十分な配慮をするんだと言っておられる。これは、中曽根さんもここにおられてよく
事情はわかっておりまするが、射爆としては、陸上の的を海上に移したというふうなことで大体
事故を少なくするという可能性はありますけれども、海上の方からの射爆訓練というものは、いかに海上に的を移しても決して安全だとは言えません。もう曲芸のように、ぐっと超低空でやって参りまして、さらに急上昇しまして、そこでたまを放つというような、軽わざのような射爆になっておるわけでございますから、いかに細心な
保安上の
施設、
考慮を払いましても、絶対安全だという保証はできないということは、あの爆撃訓練を見て参りますと如実にそれがわかるわけです。従って、われわれは、
原子力産業の健全な発達を願う見地からいたしまして、世界
各国どこにも類のないような、原研の
施設が集中しておるという点にも問題がありますけれども、これのすぐそばに危険な射
爆場があるということになりますと、これは世界のどこにも例のないことです。定期航空路の下にも
原子力の
施設は作らないというのが
各国の常識になっております。
立場を変えて、これが
日本でなくて、
外国にこういうことがあったということになりますと、おそらく、国民の世論は絶対にこれを承認しないであろう。
日本人だから、
アメリカさんのことに対しては割合親善の気持というものが根源をなしておるかどうか知りませんけれども、黙々としてこれを黙認しておるという形になっております。最近、知事が
アメリカに行って、向こうで話をした談話が大きくイブニング・ポストでしたか、何か有力紙にも出たそうであります。これで、もし
事故が起こったらどうなるのだというふうなことが、でかでかとあちらの新聞にも出たそうでありますけれども、
アメリカ人の良識に訴えて、これは必ず理解される、こういう性質のものだろうと思います。私は、実は、個人的に小坂外務大臣にも会ってこの話もいたしました。ところが、
日米合同
委員会というものがあるので、そこを通じて話をするほかないのだ、こういう話であります。しかしながら、筋としてはそうでありましょうけれども、少なくとも、今度の朝霞の返還の問題に見られますように、すなわち、東京都と向こうに交渉するのが筋だといっても、それにはまかせられないというので、
政府が乗り出した。これよりもはるかに深刻な問題でもあるし、それから、一たん
事故が起こった場合を想定いたしますと、たとえば、
外国のウィンズケールにも若干の
事故がありました、それから
アメリカのアイダホにも
事故がありましたけれども、それほど大きく
日本では取り上げられませんでした。しかし、敷地の広さは、大体関東地方がすぽっと入るくらいの広さのところで起こった非常に大きい
事故であります。
日本ではそれほど大きな問題になってはおりませんが、
日本であれに類するような問題が起きたら、おそらく社会動乱で、
内閣総辞職は必然であります。それくらい
原子力の
事故は危険であるということを十分にお
考えに入れていただいて、そして、私がお願いしたいのは、今の
答弁では、何とか
保安上の
施設を完備さしたいというふうな御
答弁でありますけれども、一たん
事故があるということを前提として
考えます場合には、そのような中途半端な
考え方では重大な問題になる可能性を持っている、危険性があるということを
一つ十分にお
考えをいただきたいと思うのです。従って、私は、
日米合同
委員会の中でこの問題を処理するといいましても、向こうの軍部の態度は、むろん射
爆場がなければ困るという一点張りで、代替地を見つけろというふうなことで、一歩も前進しないということが
考えられます。しかしながら、これは、そういう段階での交渉ではなくて、もっとトップ・レベルで、もっと積極的な交渉を進めるべきである。というのは、先般茨城県議会で県当局が追及をされまして、前の言質をたてにとられて、当局は射
爆場の返還に熱意がないのじゃないか、これをやるという約束であったのではないかという追及にあって、知事が
アメリカに渡って交渉をしようというようなことになりましたけれども、知事が行って交渉するというのは邪道であります。これはあくまでも
政府間の交渉にまかせなければならぬ。従って、そういう目的も含めて現在知事が向こうに渡っておりますけれども、所期の目的を達成することは非常に困難だと思います。従って、このような、正統なルートでなしに、知事が
アメリカに渡って交渉しなければならぬところまで地元の方は追い詰められて、世論が非常に紛糾しつつある。この
原子力の危険性というものがわかりつつあるということから、非常な不満が根強く燃え始めてきておるというこの現場の実情、現地の実態というものをよく御認識いただかなければならぬと思うのです。そこで、私がお願いをしたいのは、今までの
考え方のように、
日米合同
委員会で処理するのだというようなことでは絶対にけりがつきません。そういう性質のものだろうと思うのです。従って、今度
総理大臣が渡米されるときには、おそらく
官房長官もついていかれるのではないかと思いますけれども、重要な案件の中にこれを
一つつけ加えて、国民の
立場に立って
——もしアイダホと同じような
事故が起こったら、もう大へんな動乱が起こる。これははっきり申し上げることができます。
アメリカだから大した騒ぎになりませんでしたが、
日本は立地条件が違う。今度の法案も、そういう
事情の違うことを無視して、
外国並みに作られた法案であるので、私は非常に不満の点が多いのですが、これはこの際除外いたします。ともかく、そういう実態をよく
考えていただいて、今度の渡米にあたって、このことについても積極的に向こうと話し合うということこそ、国民の
立場に立ち、また、
原子力産業の正常な発達を期待するためにぜひとも必要なことだ、こう
考えますので、その点の御決意を
一つ御披瀝願いたいと思います。