○齋藤(憲)委員 時間もおそくなっておりますし、長官少しかぜぎみだということも承っておりますので、なるべく大臣に御答弁をちょうだいいたしたい点にだけ局限をいたしまして、簡潔に御
質問を申し上げたいと存ずる次第であります。
この
原子力損害の
賠償に関する
法律案は、
原子力平和利用を推進して参りますにつきましては、どうしてもこれを制定しなければならない重大法案でございまして、
日本の
原子力平和利用の推進の
最初から、なるべく早くこの法律を制定して、一般国民大衆に安全感を与えなければならないということをわれわれも考えておったのでございますが、なかなか問題がむずかしいために、今日までまだ制定を見ないでおるものだと思うのであります。この提案の
理由を拝見いたしますと、あくまでも
安全性の確保を
前提として
原子力平和利用というものは行なわれなければならないのだが、
原子力そのものが、まだ未知の分野を大きくかかえている、従って、あらゆる観点から
安全性の確保を考えてこれを行なっても、なおかつ、そこには不安全の分野が残るのだ、そこで、災害が起きた場合に対する
賠償の責めをどこかで負わなければならないという観点からこの法案が必要だというので、もっともな提案説明だと私は思うのであります。この
原子力損害の
賠償に関する
法律案の第一条には、そういう趣旨から、「損害
賠償に関する基本的制度を定め、もって被害者の保護を図り、及び
原子力事業の健全な発達に資することを目的とする。」という制定の眼目が書かれているのでありますが、これに対しましては、提案の御説明にもございました
通り、
原子力委員会におきましても、昭和三十三年以来、この問題について鋭意
検討を続けられて、昨年の三月には
原子力損害賠償制度の確立についてという決定を行なわれた。ずいぶん長い間、その専門的な見地に立って
検討を加えられたのでございますから、私は、この法案がその目的として掲げております、被害者の保護をはかり、
原子力事業の健全な発達という点に対しましては、現在において考えられるあらゆる
条件を
検討して、万違算なきを期せられた、こういうふうに善意に解釈して、この法案の根本的な趣旨というものに対して、私は疑義をはさまないことにして御
質問を申し上げて参りたい、こう思うのであります。
そこで、大臣にお伺いをいたしたいのは、この
賠償法の第二条第二項のただし書きで、従業員の業務上受ける損害が除外されておるのであります。すなわち、「ただし、次条の規定により損害を
賠償する責に任ずべき
原子力事業者の受けた損害及び当該
原子力事業者の従業員の業務上受けた損害を除く。」これはどういうような御趣旨に基づいておるのであるか、これを一つ大臣に御答弁を願いたいと思うのであります。この法案を見ますと、一般の被害者は無過失損害
賠償を受けられるという規定になっておる。ところが、実際その
仕事に従事しておる者は、この無過失損害
賠償から除去されて、労災給付しか受けられないという、いわゆる従来の一般的な
仕事に従事している労働者の建前でもって被害というものに対して定められておる。こういうことは、法案を読んでみますと、何か非常にアンバランスな感じがするのであります。私らの考え方からいきますと、一般の被害者が受けるところの損害よりも、実際
仕事に従事しているところの従業者が受ける被害というものは比べものにならないほど大きい、そういうふうに私は思うのでありますが、どうして「当該
原子力事業者の従業員の業務上受けた損害を除く。」というふうに規定をされたのか、これを一つ伺っておきたいのであります。
また、ついでに、諸外国においてはどういうようなことをやっておるか、これも簡単でよろしゅうございますから、事務当局から御説明願いたい。