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1961-03-22 第38回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二十二日(水曜日)     午後一時二十九分開議  出席委員    委員長 山口 好一君    理事 菅野和太郎君 理事 齋藤 憲三君    理事 中村 幸八君 理事 岡  良一君    理事 岡本 隆一君       赤澤 正道君    佐々木義武君       西村 英一君    保科善四郎君       石川 次夫君    小林 信一君       田中 武夫君    山口 鶴男君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 池田正之輔君  出席政府委員         科学技術政務次         官       松本 一郎君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府事務官         (科学技術庁振         興局長)    原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁振         興局科学調査         官)      前田 陽吉君         通商産業事務官         (工業技術院調         整部長)    堀坂政太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  核原料物質核燃料物質及び原子炉の規制に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇号)  原子力損害賠償に関する法律案内閣提出第  一〇六号)  原子力損害賠償補償契約に関する法律案内閣  提出第一〇七号)  新技術開発事業団法案内閣提出第一二四号)  科学技術振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 山口好一

    山口委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、この際、これを許します。石川次夫君。
  3. 石川次夫

    石川委員 科学技術庁長官に伺いたいのですが、これは中曽根さんが長官をしておられるころからずっと長い間の懸案になっておりますけれども、原子力都市周辺整備法案というのが出ると言われながら、いまだにまだ出ておらない。ところが、これによって非常な支障が現地では次々と出ているわけでございまするが、こまかいことは別といたしまして、この法案を今度の国会に出すことになっておるかどうかという点をまず伺いたいと思います。
  4. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 これはまだ実は準備ができておりませんし、残念ながら、その必要性は認めておりますけれども、今度の国会には間に合わないような実情でございます。
  5. 石川次夫

    石川委員 これは大へんなことだと思います。実は、予算委員会でもわが党の岡委員の方から、いろいろ地方居住者健康管理の問題というふうな点から、どうしても原子力都市周辺整備法というのができなければまずいという意見が強く出されたと思うのですが、  いやしくも必要と認めておられるのだったら、どうしてこれを早く出さないのか。出さないでおりますと、御承知のように、あの付近はどんどん工場誘致というようなことで非常な活況を呈しておりますけれども、どんどん工場ができてしまったというような現状に迎合しながら、妥協して、原子力都市周辺整備法案が出てくるということになると、とんでもないことになると思っております。たとえば、一つの例をあげて申しますと、茨城県で勝田というのが東海村のすぐ隣にございまして、日立製作所の水戸工場、そのほか今度那珂工場というのができました。日立工機という工場もできておりますが、そのほかに相当膨大な土地を、いわゆる工場団地として整備をすることになって、県庁も本腰を入れてこの土地の確保というものができたわけでございます。それに対しましては、首都圏整備委員会の方でも非常に積極的にこれに関心を持っておりまして、これに対しては多額の助成をして、何としてもこの完成を期したいということになっております。たとえば、首都圏整備委員会でそのようなことに積極的に乗り出した以上は、おそらく、原子力都市との関連事情というものを十分考慮に入れて行なったのだろうと思いますけれども、この際、首都圏整備委員会の方から科学技術庁の方にその件について何か意見を求めてこられたかどうか、その点を一つ伺いたい。
  6. 島村武久

    島村政府委員 お答え申し上げます。  私承知いたしております限りでは、その件につきまして首都圏整備委員会の方から何らの御提案あるいは質問等というものには科学技術庁は接しておらぬと思います。
  7. 石川次夫

    石川委員 そういうことになるから、私は非常に困った問題になるのじゃないかと思います。と申しますのは、勝田は、水戸のすぐ郊外のような地域になっております。これは首都圏整備委員会の方としても、県内における一番の重点としてこの開発本腰を入れておる。ところが、これが御承知のように原研からは幾らも離れておりません。ところで、その原子力都市周辺整備法案というもののでき方いかんによっては、そういう計画は全部御破算にしなければらなぬかもわからないし、あるいはまた、できちゃったら、今度の周辺整備法案というもの自体を、現状に迎合して、学問的な良心というものを抜きにしてでっち上げられてしまうということも出てくる危険があるのですから、そういう点からいっても、この原子力都市周辺整備法条というものが早くできないと将来非常に困った問題が出てくるという危険性が予想されますので、どうしてもこれを今国会に出さないと言われたのでは困る。これは、ただ単にこれだけの問題じゃない、ほかにもたくさんこれに関連して問題が出てくるわけであります。たとえば、原研菊池理事長の非常に良心的な、学者としての御発言だったと思いますけれども、この原研の近所に工場がどんどんできるということは非常に不安だということを、何かの機会に公式に発表されたかどうかわかりませんが、それが新聞に載ったということで、今度は東海村の住民あるいは勝田住民連中が、一体これだけ工場誘致を積極的に県が誘導をし、また、市や村が協力をするという態勢をとっておるが、危険なことを一致してやらしておるのか、こういう疑問が、きわめて素朴だけれども深刻な問題となって、今非常に大きな問題になりつつある。こういうことになると、これを危険であるとか、危険でないとかいうことを規制していくのはこの原子力都市周辺整備法ができるかできないかということにかかっております。これを一つ基準にするほかはないというところに追い込められておりますけれども、ほっておきますと、あそこにはどんどん工場ができてしまいます。三菱電機あるいは古河電工、その他富士電機もくることになっております。そういうことで、どんどん工場が誘致されるという状態になってきておりますが、この原子力都市周辺整備法というものは、そのあとでゆっくりとお作りになって提案をされるおつもりかどうか、その点を一つ伺いたい。
  8. 島村武久

    島村政府委員 問題は、二つあると思うのです。一つは、周辺都市整備法と仮称せられておりますような今お話しの、特に前々の長官でありました時代に当委員会等で申し上げておりましたような構想に基づく法案がどうしてできないのかという問題、もう一つは、現実に具体的な問題として、あの地区にどう対処するかということだろうと思います。  第一の点につきましては、思想的に、この周辺地帯整備法というものの考え方の問題でございます。一つは、今お話しのような、やたらにいろいろな施設ができるということは、安全というような面から、万一のことを考えて必ずしもおもしろくないので、的に、たとえば工場地区であるとか、あるいは住宅地区であるとかいうような、配置についても考慮を加えたものにする、あるいはまた、現地発展と申しますか、計画的な発展ということをはかることを主眼にすべきかどうかという、思想的な考え方の問題がございまして、これが基本的に横たわっておりまして、なかなかいろいろな考えがあって進まないということが一つあるわけでございます。  それからもう一つ現実の問題といたしまして、どういうような構想であの地区計画化していくかという問題でございますが、これは、従来ほかに見られましたいろいろな都市計画その他についても、従来御存じの通り、かりに周辺地帯整備法というものができましても、科学技術庁でありますとか、そういうところから天下り的に設計図を引きましてどうこうということにはならぬわけでございます。また、ただいまもお話がございました通り、県でありますとか、あるいはあの地区の町村でありますとか、そういうところの意向がもとになりまして、そこでそういった法の趣旨にかんがみていろいろな計画が練られていくというようなことになるのが通例でございます。それが著しく不適当であるとかいうような問題が起こりますれば、それに対して認めるとか認めぬということが出てくると思いますが、出発点は、やはり現地事情等も考えました点から始まるものと私どもは考えております。従いまして、従来非公式に私ども伺っておるところによりますれば、現地もいろいろな計画図を書いておられるようであります。県が中心になられましてそういうことをまとめておられるようにも聞いております。法律ができますとできませんとにかかわらず、その必要とするところ、あるいは原子力都市としての将来図というものについては、それほど大きな見解の相違がそうあるはずもございませんので、その目的に沿った計画が立てられたことと考えております。いずれにいたしましても、周辺整備法ができるできぬにかかわらず、たとえば、首都圏整備というような建前から行なわれる計画がかりに行なわれるといたしましても、そういった原子力の特殊の事情というものは、当然その中に盛り込まれるべき筋合いのものだと考えております。その構想というものは、県あるいはその地方の御意向というようなものが十分に入った案が、まず現地から出てくるという筋合いになろうかという工合に考えております。
  9. 石川次夫

    石川委員 今の答弁を聞くと、非常に心もとない感じがするのですけれども、地方住民気持とすれば、非常にこの原子力災害というものを誇大に、必要以上に恐怖感にかられて、小さな研究炉あるいは、実験炉に対し、それ一つでも全住民がこぞってこれに反対をするというようなこともあり得るわけです。逆に、何としても工場を誘致して、地方産業というものを発展させなければならぬという一つのムードができてしまいますと、おそらく原子力災害なんというものには全然むとんちゃくに、どんどん計画ができてしまうというのも、これはまた非常におそるべきことだというふうに考えている。そうして現実の問題としては、先ほど申し上げましたように、勝田周辺団地計画というものは、おそらくこの東京周辺では一番整ったりっぱなものであるかもしれません。また、事実首都圏整備委員会としては、一番重点を置いているというふうな現状にあるわけです。ところが、これは御承知のように、原研東海から幾らも離れておらぬというような、実態で、今御答弁によりますと、地方住民意向によって、都市計画だから作るんだというような御答弁のようでございますけれども、おそらく、原子力というふうな高度の科学性を必要とする、高度の知識を必要とするような問題について、地方でこれに対する正確な判断ができる道理がない。ですから、そういうことで菊池理事長が非常にこれを心配されたあげくに、ふと、そういう言葉が出てしまったのではないかというふうにもとれるわけですが、いずれにしましても、科学技術庁あるいは内閣自体責任をもって原子力都市周辺整備法案という一つ基準を作らなければ、現実の危険というものを無視してどんどん工場建設というものが進められてしまうというふうなことが現実なんです。ですから、どうしても、一応の基準としての原子力都市周辺整備法案というものを今度の国会にぜひ出してもらわなければならぬ。そうしないと、将来とも取り返しがつかないということを非常に私は懸念しておる。これはいろいろな事情があってむずかし問題とは思いますけれども、これをやらなかったらとんでもないことになるということで、ぜひ一つ——この都市周辺整備法は、それだけの理由ではなくて、そのほかにもたくさんあるのです。たとえば、今度原子力損害賠償に関する法律案というものが出ておりまして、これから慎重に審議をするということになっておりますが、実は、この前の国会でこれが提案になりましたときに、わが党としては、これは反対態度をきめておったのです。今度は反対ということにするかどうかということは、これからの問題でありますけれども、その反対の第一の理由は、これは都市周辺整備法ができないのに、これが先行するということは主客転倒ではないか。この賠償に関する法律・案それ自体の問題というよりは、都市周辺整備法案ができて、居住者に対するところの健康管理その他の危険区域というものをどうするかという、ふだんの基準というものがきまらなければ、一体どれからが災害というふうに規定づけられるかという判断基準が出てこないわけです。そういうところからいいましても、原子力都市周辺整備法案というものができないで、原子力損害賠償に関する法律というものができるのは、これは完全に逆なんです。そういう意味もあります。いろいろな点からいいまして、この都市周辺整備法案というものができないと、将来あの地方では取り辺しのつかない問題が出るという可能性があります。実は、原研の内部でも、給与の問題とかあるいは防護訓練問題等について、労働組合というものが中心になって非常に検討した結果、相当の異論が出て、問題も相当残っておりますけれども、しかし、そういう問題は別の問題にいたしまして、原研を取り巻く問題として、この原子力都市周辺整備法案というものができなければ、将来収拾がつかない事態になるということを非常に懸念をしておりまするし、また、これは火急の問題なんだというふうに考えますので、ぜひ今国会には責任を持って出してもらいたいということを強くお願いをしたいのですが、これに対する長官の所信をなお一度伺いたい。
  10. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 石川委員のお説はごもっともです。実は、今、官房長から詳細説明いたしましたけれども、私の気持からいたしますと、官房長説明もどうも少しおかしい。これは官僚的な説明で、そういうことをやっていると、これは仕事は少しも進まない。そこで、私が少なくとも長官として言える限りにおいては、地元の方々の御意見も聞き、また、内閣の方の、今の首都圏整備委員会の方の意見も私はまだ聞いていませんし、これを調整してやるのが私の役所の役目でございますから、早急に検討していきたい、かように考えております。
  11. 石川次夫

    石川委員 今非常に良心的な御答弁をいただいて、やや愁眉を開いたという感じがしますけれども、まだまだ安心できるという段階でないことはもちろんです。何としても、原子力都市周辺整備法ができないで、相次いでほかの法案が出てくるということは、どう考えても主客転倒、こう考えざるを得ないわけでございますので、ぜひ早急に検討して、実行力のある長官の手元で今国会に出してもらいたいということを、重ねて強く、要望いたします。  それと、ついでにといってはどうかと思いますけれども、原子力研究所中心として起こる問題としては、御承知のように射爆場返還の問題があります。これは御承知のように、湊と勝田東海中心に、三百六十万坪という膨大な面積を占める飛行機の爆撃訓練場があることは今さら説明するまでもないと思いますが、この誤投下の記録を見ますと、百八十三発の誤投下がありました。この誤投下による無事の人民の死亡者は、よく覚えておりませんが、多分六人くらいあったと思います。誤投下距離というのは、射爆場中心にして考えますと、原研ぐらいの距離のところでは幾らでも誤投下がある。これが一たん実験炉研究炉にでも落ちたら一体どうなるのだという真剣な問題が一つあるわけです。かてて加えて、湊、勝田東海のちょうど中心点にあるわけで、これを総合して一つ広域都市を作ろうという構想があるあるわけですけれども、どうしてもこの射爆場中心にがんとがんばっておる限りにおいては、総合的な開発計画が立たないという問題も残っておるわけでございます。これは、もちろん、原研安全性及びあの辺の都市発展という考え方に立ちますと、どうしても射爆場というものは返還をしてもらわなければならぬというふうに考えるのは、住民としてはきわめて妥当な考え方でもあるし、また、痛切な要望でもあるだろうということは御理解いただけると思います。この件についての長官お話は、ここで聞かなくても、おそらく返してもらいたいという気持はわれわれと同感だろうと思うので、あえて答弁は求めません。しかしながら、この件については、どうしても防衛庁の方の意見を徴さなければならぬと思いますので、ぜひ防衛庁責任者である長官に来ていただいて、この件についてのしっかりした見解を、科学技術振興の観点かち二つ伺いたい、こう思います。これは地元といたしましては、もちろん、社会党としては軍事基地反対という基本的な立場はあります。しかし、この問題は、純然たる基地とはまた性質が違っておりまして、そういうふうなことを全然度外視いたしまして、全く超党的に、地元自民党社会党も相協力して、地方開発発展のために、また、危険防止のために射爆場というものは返すのが当然である、そのためには、知事が県会において答弁したところによりますと、ケネディに会っても一つこのことを要求しようではないかというようなことにまで、地方としての大きな問題になっております。ですから、これは決して社会党がどうとか、自民党がどうとかいう問題ではございません。そういうことをよくお考えいただきまして、防衛庁長官にも来ていただきまして、原子力都市周辺整備法案とそれから射爆場返還問題、これが解決しないと、原形というものはすっきりした形で発展することができない現状に置かれておるのだということを一つ長官はお含み願って、それから委員長もこの点を御考慮いただきまして、防衛庁長官に出ていただいたところで、あと一回この点についてお願いしたい、こう考えておりますので、よろしくお取り計らいを願いたいと思います。
  12. 山口好一

  13. 岡良一

    岡委員 石川君のお尋ねに関連して少しお尋ねしておきたいのですが、この間、内閣委員会原子炉安全専門審査会ができるという節に若干お尋ねをしておきましたが、どうも私としては十分納得いたしかねる点がありました。しかし、ほかの委員会でもありましたので、私は遠慮申し上げておったのですが、第一の問題は、今石川君も指摘されたように、損害賠償法律案を出すという場合に、損害賠償に先行ずるものは、何といっても炉の安全である。そこで、安全専門審査会を作って、従来以上に厳正な、公正な態度原子炉安全性を検討して、その結果として原子炉設置の許可を認める、手続上それが一つ。しかし、それにもかかわらず、万一にも何らかの事故が起こったというときには、これは個々の炉については、その炉のタイプによっていろいろ技術的な安全性の問題もあろうと思う。しかし、どんな炉を置いても、すべての炉に共通する問題として、何としてもまず最初にきめておかなければならないことに、炉の立地条件というものがある。それはやはり人口の問題、気象の問題、水利関係状態、そのもう一つ以前に、最大許容量をどこに求めるのか、これが何もなくて、損害賠償を出すというようなことでは問題にならぬと思う。それこそ、文字通り本末転倒だと思うのです。そこで、まず、この間委員会でちょっと触れておきましたが、原子炉設置安全性人口密度との関係については原子力委員会はまだ結論を持っていないのですか。
  14. 杠文吉

    杠政府委員 先般、内閣委員会においてお尋ねがありましたおりにもお答え申し上げたと思いますが、共通する基準というものは、まだ持っておりません。実は、御承知通りに、原子炉安全基準部会というものは持っておりますけれども、その基準部会がまだ結論が出てないということでございます。
  15. 岡良一

    岡委員 今石川君が指摘しておるように、東海村には原子炉も集中的に建設されておる。しかも、その周辺には他の省庁の研究所もできつつあるようです。工場も、あそこへ行く沿道にも工場建設予定地、建築中、すでに建設を終わった工場などがあの地帯を目がけて集中しておるわけですね。だから、こうなると、どうしても、少なくとも人口密度原子炉関係というものは、立地条件としてはどの程度の人口密度かということはいち早く出さなければならぬ。一体その安全基準部会というのは何をしているのですか。原子力委員会としても当然重大関心事だと思うのですが、原子力委員長としてはどう考えるのですか。安全基準部会というものを作ってから三年越しだと思うのですが、どんな検討を今日までやっておるのですか。
  16. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 私は、その委員会の内容をまだ詳しく知りませんけれども、今、岡委員の御指摘になられましたように、これはきわめて大事なことである。ただ、遺憾ながら、日本は御承知のように土地が狭隘なために、委員会の方でも、あまり広い場所をとるような結論を出してしまうと、場所がなくなるとか、実際の問題で実は頭をぶつけている。そこで、おそらく計画としては、あるいは理想的な案としてはできるでしょうけれども、それを日本の現、実に当てはめたときには、なかなかそう簡単にはいかない。そういうところに私は大きな悩みがあって、結論が出ないのじゃないかというふうに考えております。これは仰せられるまでもなく、急いでそういうものは整えていかなければならぬということは言うまでもないことで、さような方向に進めていきたいと思います。
  17. 岡良一

    岡委員 いや、私が申し上げたいのは、そういう考え方がどうも私は本末転倒だと思います。というのは、アメリカ国立原子力研究所は、それこそ、全く西部劇の舞台のように荒涼たる原野の中にできておる。アメリカのビック・メーカーの原子力研究所も、やはり原子炉設置場所は実にへんぴなところです。それならば、人口密度との関連性というものは、ある程度まで研究の余地もあるかもしれぬ。しかし、とにかく荒漠として人がいないところにできているのだから、これはあわてなくてもいいでしょう。ところが、日本ではそうじゃない。大臣が御指摘のように、非常に人口密度が濃い。しかも、ますます濃密になろうとしておる。しかも、そこへまた原子力委員会としては原子炉を集中的に作ろうとしておるということになれば、これは人口が稠密であるから、ますます一日も早く原子炉安全性原子炉設置立地条件として、人口密度はいかにあるべきかということは、当然真剣に結論を出さなければならぬ。それを出さないでおいて、どんどん原子炉はできるわ、まわりに工場はできるわというようなことであったのでは、原子力災害賠償法が出され、万一事故があって災害賠償をするといっても、日を一日遷延すれば、ますます災害の範囲は大きくなる。だから、そういう手をやはり事前に打っておかなければならぬ。  原子力局長、外国では、あるいは国際会議においては、原子炉とその立地条件としての人口密度関連性というものは、どういう傾向にありますか。
  18. 杠文吉

    杠政府委員 最近、岡委員もおそらく御承知かと思うのでございますが、AECの方におきまして、このような基準であったらいかがなものであろうかというような案を発表いたしております。そのほかには、例のコールダーホールを日本に導入いたしましたおりに参考にいたしましたところのファーマーの論文というようなものがございますけれども、政府でこれでなければならぬというような基準を決定して、それを法制化したというようなものがあるということは承知いたしておりません。そこで、私の方の専門部会におきましても、そのような論文等を参考にいたしまして、日本現状に合うように基準を立てたいというので、いろいろ今日まで苦心していたのでございます。
  19. 岡良一

    岡委員 おととし、おそらく、原子炉周辺人口密度についての国際会議といえばローマ会議だと思うが、あそこで、ファーマーは御存じのような四つの条件を出しておる。あの四つの条件の中で、東海村はただ一つしか満たしておらない。学校はいずれ移転するが、まだ移っておらないのですね。それから、日立市を移転させるということはできないはずだから、そうすれば、私は、あの条件に欠けると思う。ただ、原子炉にすぐ直結した何百フィートかの範囲内は人口密度は非常に少なく、いないにもひとしいというような程度で、条件のただ一つを満たしているにすぎないのですよ。これはこの間、AEC原子炉災害部長のドクター・ペックですか、私は名前を忘れましたが、この前ちょっと申し上げたように、人口密度との関連性については、さらにストリクトな条件を出している。AECとして、少なくとも災害に関する責任者であるドクター・ペックが出しておる条件というものは、AEC原子炉設置を許可する場合における重要な一つ基準になっておると私は思うのです。政府として決定しておるかどうかということは、ペック氏が公開の席上で、あのようなストリクトな人口密度との関連性というものをはっきりさせておる。従って、東海村の現状に見るような状態であれば、一般的にも人口が稠密であればあるほど、ますます早く出さなければいかぬ。これは当然な原子力委員会の任務です。大臣、原子炉災害賠償法を出されるなら、まず、立地条件として、原子炉安全性人口密度関係は不可分な問題ですよ。  もう一つ最大許容量の問題は一体どうきめられましたか。学術会議は、一昨年のICRP、国際放射線防御委員会の勧告を採択すべきであるということを政府に申し入れている。この結果はどうなりましたか。
  20. 杠文吉

    杠政府委員 ICRPの勧告を取り入れまして、政令の改正をいたしております。ですから、ICRPの勧告よりも、ある点においては少しシビヤーになっているくらいのところで現在実施しております。
  21. 岡良一

    岡委員 私、詳しい数字を忘れましたが、そうすると、たしか一昨年の八月ですか九月ですか、ICRPが一番新しい最大許容量の数値を放射性沃度について設定いたしましたね。その後、日本の施行令あるいは取り締まり規則の中では、あの数値の十分の一以下ということになっておるのですか。
  22. 杠文吉

    杠政府委員 その通りでございます。
  23. 岡良一

    岡委員 それから、この機会に、さらに念を押してお尋ねしておきたいのですが、この間の委員会でも私が指摘申し上げておった点——私も法律案をざっと読んだ程度なんですが、一つの取締まりの方針は、一個の原子炉の、たとえば、排出口における放射性沃度が最大許容量の十分の一だというふうにうたってある、もう一つの取り締まり規則は、その周辺の地域住民に対する最大許容量がICRPの勧告の十分の一だというてある、これは矛盾しやしないか、というのは、東海村のように炉が今後二つになり、三つになり、四つになってくるという場合、一つ一つの炉では、炉から直接排出される炉と最も近接部分においては、ICRPの勧告の最大許容量の十分の一であっても、四つ五つがそれだけのものを出してくれば、十分の四にもなり五にもなるではないか、だから、一般住民最大許容量はICRPの勧告の十分の一という規定にしなければいかぬじゃないか、取り締まりの法規というものをそこに統一すべきじゃないかということを申し上げておったわけです。この点はどうなっておりますか。
  24. 杠文吉

    杠政府委員 内閣委員会で、すでにただいま御指摘通りの御質問がございましたので、私の方では、調整をいたしますという御回答をいたしておったわけであります。ただいま検討中でございます。調整を要する点がある場合においては、当然にお説の通りに調整しなければならぬだろうと考えます。
  25. 岡良一

    岡委員 それでは非常にあいまいなんだが、一体原子力委員会としての方針はどうなんですか。ICRPの最大許容量の十分の一をその地域住民最大許容量としようという方針なんですか。それとも、その調整をするというのだが、一つ一つの炉では十分の一だという方針をとるのですか、これはどう調整されるのですか。
  26. 杠文吉

    杠政府委員 内閣委員会でもお答え申し上げましたけれども、住民の安全保護という立場から、シビヤーな方に調整していきたいというふうに考えております。
  27. 岡良一

    岡委員 それでは委員長お尋ねをしますが、それは地域住民に対する最大許容量が十分の一である、こういう方針を持って調整を進められるということに了解していいのですか。
  28. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 当然そういう方向に行くべきだと思います。
  29. 岡良一

    岡委員 この原子炉の放射能の最大許容量という観念が、一昨年のICRP会議と違っておるということは、局長は御存じだと思う。放射能には最大許容量という概念はないのだ、受けないに越したことはないのだ。しかし、現に受けておるのだ。なるべく受けないようにしなければいかぬという考え方で、最大許容量という文字があるから、ここまではいいのだという観念であってはならないというように、最近における放射能の許容量の概念がそういうふうに変化をしてきた。しかも、こうしてあらゆる方面において放射能を放散する施設というか、機械というか、設備というか、そういうものがだんだんと普及してくるとともに、われわれは、自然の放射能以外に、日常気がつかないでそういう放射能を浴びておる。だから、ICRPの勧告も、一番初めからここ五年ほどの間——五年たたないかもしれません、従来の三分の一にしろと言っております。私は、十分の一にしなければならないと、ますますストリクトに考えておる。ですから、原子力委員会としては、災害賠償に関する法律案を出されるときには、人口が稠密であるだけに、狭い日本であるだけに、少なくとも、原子炉設置立地条件として、人口密度がどういうものであるかという関連性を、具体的な方針としてぜひ出していただきたい。  それから、そういうふうに個々の炉について、あるいはその炉に近接する地域の住民について、最大許容量をあるものは十分の一といい、原子炉が密集すれば、この法規でいけば地域住民は十分の四になるというような、いわば混乱した最大許容量というものの取り扱いの態度、方針を、今おっしゃったように、地域住民最大許容量をICRPの勧告の十分の一にするのだということを、やはり損害賠償法の審議の前提として、原子力委員会としては責任ある態度をはっきりしてもらいたい。このことを私は強く要望いたしまして、関連の質問を終わります。      ————◇—————
  30. 山口好一

    山口委員長 次に、核原料物質核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案原子力損害賠償に関する法律案原子力損害賠償補償契約に関する法律案及び新技術開発事業団法案の四法案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。
  31. 岡良一

    岡委員 この際、はっきり申し上げておきますが、私どもの党といたしましては、先ほど委員長から申された法律案の中で、とりあえず、新技術開発事業団法案について今検討を始めておるわけでございますから、損害賠償その他原子炉の規制に関する法律案等は自後に譲っていただいて、この点をまず先議として審議を実施したい、こういう態度おりますので、御了承願いたいと思います。  昨年も、技術開発事業団のような機構を、理研とは別個に作ろうというような努力もあったが、しかし、これはわずかの資金でもって理研の中に一括して技術開発部というようなものを作らせた。そこで、この一年間の実績は、具体的にどういう実績がありましたか、その実績を一つ御報告願いたい。
  32. 原田久

    ○原田(久)政府委員 ただいまの御質問でありますが、理化学研究所開発部を設けましたのは三十三年で、三十三年、三十四年、三十五年と三カ年経過したわけであります。三十三年は初めてのことでもございますので、資金量といたしましては八千万円、第二年度の三十四年は一億三千万円、第三年度目が同じく一億三千万円、計三億四千万円の資金量をもちまして開発いたしました。テーマといたしましては、第一年度に人、工水晶の開発でございます。それから球状黒鉛鋳鉄、その二件を取り上げております。第二年目の昭和三十四年でございますが、石炭を原料とする炭素材の開発、それから質量分析装置の開発を第二年目にいたしております。第三年目の三十五年は石炭ガス化燃焼装置、ニッケル電鋳製品、それから多層薄膜といっておりますが、この三件を取り上げております。  いま少し詳しく御説明いたしますと、人工水晶につきましては、山梨大学の国富博士が発明されました。新しいくず水晶から人工的に天然水晶と同じような水晶を作るという装置が研究されておりましたので、それを東洋通信機に委託して開発をいたしました。その金額は二千六百五十七万円でございますが、これは開発期間が三十五年五月で終わりまして、認定をいたしましたところが成功ということで、これは一応完了いたしております。  それから、球状黒鉛鋳鉄に関しましては、東北大学の音谷教授の発明でございますが、委託先は東北特殊鋼株式会社であります。これの金額は六千二百二十万円でございますが、これも開発株式会社といたしまして成功という認定を受けております。  他の五件ほどは開発の途上でございまして、まだ成功の段階には至っておりませんが、金額と委託先を申し上げますと、石炭を原料とする炭素材につきましては、東洋カーボン株式会社に委託をいたしまして、金額は六千二百  六十三万五千円。それから質量分析装置、これは日本電子光学研究所株式会社でございますが、金額は三千六百四十四万三千円を委託料として出しております。それから石炭ガス化燃焼装置でございますが、これは株式会社大東工業所に委託をいたしました。金額は七千百六十一万九千円。ニッケル電鋳製品、これは池上金型工業株式会社でありますが、四千三百万円、以上が委託をしましたものでございます。最後の多層薄膜につきましては、開発委員会において審議をいたしました結果、委託することが適当であろうという候補といたしまして、日本真空工学株式会社が候補に上がっておりまして、目下手続中でございます。金額は千九百五十万円ということを予定いたしております。
  33. 岡良一

    岡委員 それでは、人工水晶の場合は、山梨大学の教授がくず水晶からこれを大きな水晶にする技術研究を完了された。このアイデアを技術開発部としてはどうして申請したのですか。
  34. 原田久

    ○原田(久)政府委員 人工水晶の件につきましては、これは理研の開発部として初めてでございますので、どういうテーマを開発すべきかということで、各大学、国立研究機関、公益法人の研究所等に照会をいたしました。研究として一応完成しておるか、いまだ採算ベースに乗る程度の規模において実施したことがないようなテーマがあるならば、そういうテーマをお知らせ願いたいと御照会をいたし、また、理研の職員が大学その他に回りまして、その開発部の仕事の制度、趣旨等を御説明などいたして参りました。その結果、非常に数多くのテーマが出て参りましたものを、開発委員会開発テーマの候補としてかけまして、そのうち、わが国の現状から見て最も重要であろう、また、研究としても一応試験研究の段階は終わっておる、ただ、事業規模において実施した経験がないというようなテーマを開発委員会で選択いたしまして、その結果として上がってきましたのが人工水晶、球状黒鉛鋳鉄という二候補が第一年度に上がってきた、こういうことでございます。
  35. 岡良一

    岡委員 そこで、それを東洋通信機にこの開発委員会の決定に基づいて委託されたのですね。これはたとえば、ぜひおれにやらせてくれというような希望の会社を幾つか募って、そこで開発委員会が、審議した結果、これが適当であろう、こういうことで東洋通信機に委託した、そういうことになるのでございますか。
  36. 原田久

    ○原田(久)政府委員 御承知かと思いますが、東洋通信機株式会社は、戦前から通信機関係の、特に水晶発信機など使います通信機につきましては、わが国唯一といっていいような会社でございます。それで研究陣も相当おりますし、水晶を使う量も非常に多いということでございまして、調査の過程におきまして、開発を委託するには最も望ましい会社ではないだろうかということでございましたので、ここに委託することにきめたわけでございますが、その間、申請書が出てくるとかいうような手続を踏んで出したというものではございません。
  37. 岡良一

    岡委員 それではこの東洋通信機の方に開発を委託した、この結果三十五年五月には完了した、しかも成功であった。そこで開発された技術というものは、東洋通信機が、いってみれば独占をしてやっておるわけでありますか。
  38. 原田久

    ○原田(久)政府委員 開発を委託する先と理研との間におきまして、委託にあたりましては契約を結びます。契約を結びます精神といたしましては、新しい技術でございますので、一応開発が終わりましても、直ちに市場的に見て十分採算がとれるかどうかわかりませんので、ある期間は優先的に開発を行なった会社を保護していく必要があるだろうという観点から、契約の内容としまして、三カ年間は優先的にこの人工水晶の発明の実施権を付与するという契約を結んでおります。その期間を経過いたしますと、今後は第二、三の会社が現われて、もうすでにノー・ハウなども確立しておりますから、ぜひやらせてもらいたい、また、やる場合には、開発で行なったような、失敗をするかもしれぬというような危険はもうないように技術では成長しておりますから、三年の独占実施の期間を経過しましたならば、さらにそういう申し出のあるところには再実施をさせるような契約になっております。その場合には、考え方としましては、最初の実施者である東洋通信機よりも若干高い実施料をもって実施させるということになっております。
  39. 岡良一

    岡委員 少しこまかいようなことをお尋ねしますが、山梨大学の教授に対しては、やはり若干の給付がなされるわけですか。どのくらいなされたのですか。
  40. 原田久

    ○原田(久)政府委員 山梨大学の発明者と理研との間にも契約を結んでございます。それはどういう契約かと申しますと、まず、権利の所属につきまして、理研の場合ですと、理研と発明者である国富教授とが権利を共有するという契約を結びます。共有して開発を東洋通信に委託したわけでございますが、その間、技術はまだいわゆる経済性を持っておりません。開発が成功しますと経済性が出てくる、すなわち、事業としてこれを行なうことができるという段階になりますので、その段階から、先刻申しましたような実施料が理研に入るわけでございます。入りましたものを全部理研の収入とするのでなくて、その半額を発明者である権利者の方に差し上げるという契約をあらかじめしてあるわけであります。料としましては、理研と東洋通信機との契約が成功した場合の実施料は四%、それから、そのうち発明者に半分の二%差し上げる、そういう契約になっておる次第であります。
  41. 岡良一

    岡委員 それでは、三十四年度の石炭を原料とする炭素材、質量分析装置、それから石炭ガス化燃焼装置に関するテーマ、これらは、それぞれそのアイデアはだれが提供したのですか。
  42. 原田久

    ○原田(久)政府委員 先刻説明をはしょりましたので補足さしていただきますが、石炭を原料とする炭素材は、工業技術院の資源技術試験所におられます本田課長でございます。それから質量分析装置でございますが、これは京都大学の佐々木中二博士、それが二十四年度でございます。それから実施料の関係でございますが、成功いたしました場合の実施料の契約は、石炭を原料とする炭素材につきましては二%、それから質量分析装置につきましては四%という契約になっております。そのうち、前者は一%を発明者の方に差し上げる、後者は二%、すなわち半額を差し上げる、そういう契約になっております。
  43. 岡良一

    岡委員 成功後における委託会社の優先権は何年間ですか。
  44. 原田久

    ○原田(久)政府委員 おおむね二年ないし三年でございます。
  45. 岡良一

    岡委員 石炭ガス化、多層薄膜、ニッケル関係も、やはりプロフェッサーとか、そういう人ですか。
  46. 原田久

    ○原田(久)政府委員 石炭ガス化燃焼装置、それからニッケル電鋳製品、多層薄膜の研究は、昭和三十五年の委託でございますが、発明者は、石炭ガス化燃焼装置は東京工業大学の川下教授でございます。それから、ニッケル電鋳製品は理化学研究所の大越諒博士であります。多層薄膜は東大の久保田広、それから大阪工業試験所の岩田稔という方でございます。
  47. 岡良一

    岡委員 そうすると、結局、今度できる新技術開発事業団でも開発審議会というものが設けられて、大学の教授の研究室におけるアイデアあるいは理化学研究所なりのそういうものが、やはり審議会によってどれを今年のテーマとして選ぶかということが決定される、そこで、その委託会社に対して委託料を支出する場合、その会社の条件は、そのテーマを技術化するにふさわしき設備なり人間なりについて条件を備えたものを選ぶ、そして、いよいよそれが技術として開発され、成功した暁には、その会社に二年なり三年の間は優先的に実施権を与える、今度の場合、こういうようなことにやはりなるわけでございますね。
  48. 原田久

    ○原田(久)政府委員 おおむね岡委員のおっしゃった通りでございまして、変わりございませんが、今回新しく新技術開発事業団法を制定するにあたりまして、従来は開発委員会でやりました経験と、それから、今までは理研の開発部ということで、親母体といいますか、理研自身がそういう技術機関を持ってやっておったものを、今回新技術開発事業団という形で独立させます関係もございますので、そういった観点から、開発委員会という組織を開発審議会に改めております。この点が若干従来とやり方が変わっております。変わっておる点は、従来どういうふう  にやっておったかと申しますと、開発をいたしますテーマの選定、それから実施します条件、それから成否の認定、さらに、第三者に開発実施させる再実施の委託先あるいはその再実施の条件等、すべて開発委員会で決定したものを理研の責任において執行するという形であったわけでありますが、この際、独立させますので、そういった、あまりこまかい事務的な責任まで開発審議会に負わせるのはどうだろうかということが考えられましたので、今回は、名称を、審議会と改めると同時に、法案の二十三条に書いてございますが、新技術開発に関する基本方針の決定、開発を実施すべき新技術の選定、それから、新技術の開発を実施した成否の認定、こういった大綱的な急所だけは審議会の意見を聞かなければならないということに改めております。その点だけが相違でありまして、あとのところは、ただいま岡委員のおっしゃったような実施の運用を行なって参ります。
  49. 岡良一

    岡委員 理化学研究所がここ三年くらいの間にパテントをとった件数はどのくらいありますか。
  50. 原田久

    ○原田(久)政府委員 ただいま手元にある資料で申し上げますと、昭和三十三年十月から昭和三十五年三月までにとりました特許でありますが、六十四件ございます。それから実用新案が十三件、こういう数字が出ております。
  51. 岡良一

    岡委員 この理化学研究所のとった特許として、ニッケルの場合があげられておりますね。理化学研究所の方でも、せっかく応用的な研究をやっておられるわけだが、六十四の中で一つくらいしか取り上げられないということになっておる。あとのせっかくの特許はどうなっておりますか。
  52. 原田久

    ○原田(久)政府委員 理研で研究しました成果のうち、特許をとりましたのが、ただいま申したような数字になるわけでございますが、これが即新技術開発事業団あるいは理研の開発部の開発を経なければ市場性を持たない、役に立たないかと申しますと、そうとは言えないと思います。理研の研究成果の中には、そのまま理研の権利として、それを他の民間その他の事業の中に繰り入れられて使用されておるものが相当あるのじゃないかと思います。その件数がどのくらいかという数字はただいまございませんが、申し上げたい点は、新技術開発事業団が取り上げたのは、たまたま一件でございますが、他のものはおおむね何らかのお役に立っておる、こういうふうに申し上げられるかと思います。
  53. 岡良一

    岡委員 それでは、工業技術院で三年ほどの間に特許をとった数はどのくらいありますか。
  54. 堀坂政太郎

    ○堀坂説明員 ただいま資料を持ってきておりませんけれども、おそらく、年間に百件以上になると存じます。
  55. 岡良一

    岡委員 私のもらった資料とだいぶ違うので、お調べを願って、あと、また参考に御提出を願いたいと思うのだが、そこで、今度通産省の方から、おそらく中小企業を中心としたものでしょうが、鉱工業技術研究組合法案が出ておるようです。これはどういう趣旨のものでしょうか。
  56. 堀坂政太郎

    ○堀坂説明員 鉱工業技術研究組合と申しますのは、鉱工業に関しますところの技術を振興することを目的としまして、関係の業界のものが一つの特定のテーマにつきまして協同して研究しようという希望を持ちました場合において、協同で研究をするに最も適当と思われる組織を作るということを目的としたものでございます。現在協同で研究をする組織としてはいろいろございますけれども、それぞれ一長一短がございまして、研究が相当長い期間続き、かつ、その成果というものは、あらかじめ必ずしも十分に予見できないというような場合が大体多いのでございます。そのような研究事業を遂行する上におきまして、税制上の優遇を与える、あるいは補助金等をも必要に応じて出すということが望ましいのでございますが、従来までの制度におきましては、そういう点でいろいろ欠陥がありますので、その最も適当なものと考えまして、協同研究組合という法人を作ることを企図したものでございます。
  57. 岡良一

    岡委員 そうすると、もちろんこれは大学でもなければ研究機関とは言うけれども、直接のメーカーですから、やはり直ちにそれは技術に発展をしなければならない。また、そういう方向に指導せられておるわけであります。大体これまでそういう協同組合形態のようなものをとった実例があったら、御説明を願いたいと思います。
  58. 堀坂政太郎

    ○堀坂説明員 ただいままで、通産省関係におきまして、協同研究の形態をとったものであって、国といたしまして相当の補助をいたしましたものは、大体二十五の団体がございます。一、二の例を申し上げますと、高分子原料開発研究組合、これは石油の精製過程にできますところのナフサ、これはガソリンになる一歩前でございますが、これを原料とするアセチレン、エチレン等を効率的に開発するということを目的としたものでございまして、今二十三社が協同でやっております。それから、カメラ工業技術研究組合、これはカメラメーカがたくさんございますが、レンズ焼けの防止法、あるいは写真レンズの性能向上というような、この関係業界の共通の問題を解決いたしますために、ただいままでは任意の組合としてできているものがございます。あるいは自動車の部品工業会、これは研究組合という名前はまだ冠しておりませんが、自動車部品の性能向上、あるいはラジエーターの性能向上、あるいは空気ばね装置の性能向上というようなことで、部品のメーカーが協同いたして研究しているこのようなものを含めまして大体二十五団体ございます。
  59. 岡良一

    岡委員 カメラ工業は何社くらいでやっているのですか。
  60. 堀坂政太郎

    ○堀坂説明員 十社でございます。
  61. 岡良一

    岡委員 自動車部品は……。
  62. 堀坂政太郎

    ○堀坂説明員 自動車は十二社でございます。
  63. 岡良一

    岡委員 名前は……。
  64. 堀坂政太郎

    ○堀坂説明員 全部の名前は書いてございませんが、日本発条、それからブリジストン、住友電気、横浜護謨、萱場工業その他でございます。
  65. 岡良一

    岡委員 私がこういうことを少したんねんにお尋ねをしておるのも、実は所得倍増格差の解消と言いながら、技術開発政策というものが大経営に集中している、国の恩恵もそこに偏在しておるというようなことであっちゃならない、もう一つは、こういう技術開発というものは、やはり総合的に、一元的に運営されなければならぬ、この二点からお尋ねしておるわけなんです。  そこで、まず原田さんに申し上げますが、今お尋ねをいたしました点でわかったことは、一応大学の教室における有能な教授の、あるいはその教室における基礎的な研究のアイデアというものが具体的に取り上げられ、そして、それがその能力において適当な条件を持っておる大きな経営に委託される、そして二年なり三年していよいよ技術として開発される、そして成功した会社は二年ないし三年の実施の優先権を持つ。ここでも、この段階まででは中小企業の近代化とか技術の向上というものに何ら役に立っておらない。それから、今工業技術院のお話を聞きましても、ひっきょうずるに、これまでの協同研究らしきものをされた会社というものは、今自動車のケースでも見ましたが、特に、高分子関係ともなれば、なおさらのことでございますが、やはり、これは石油産業なり、自動車産業なり、カメラ産業なりのビッグメーカーというようなことなんですね。そこへ国が補助金を与えて育成する、そうして、しかも、その実施権は、これらのビッグ・メーカーがやはり何年かみずから独占するということになったのでは、一体、このすぐれた日本人の発明という英知のたまものが、今特に設備においても、技術的にも立ちおくれておる中小企業にはどういう形でこの恩恵がいくのかということですね。逆に申し上げますと、これは単に大企業の利益のために技術開発を促すものであって、日本の中小企業に対しては、今日の技術の立ちおくれに対してもあまり役に立たぬのじゃないか、むしろ、この格差というものは、こういう形でプッシュしていけば、格差は広がっても埋まるはずはないんじゃないかというようなことを懸念するのですが、こういう点について、皆さんそれぞれ直接にその事務を担当しておられる立場から、どうでございますか。
  66. 原田久

    ○原田(久)政府委員 お答えさせていただきます。  新技術開発事業団法で考えております研究成果の対象といたしましては、先刻も例示申し上げましたように、おおむね大学の研究あるいは国立、公立試験研究機関の研究、あるいは公益法人の研究等、公共的な色彩を持った研究機関の研究成果が大きな対象になるかと思います。それが今回の事業団法による開発専業として取り扱う場合に、委託先はどういうところへいくかという問題でございますが、今までの理研の三カ年の実績で申し上げますと、会社の資本金を御参考に申し上げますと、名称その他につきましては比較的世に通った会社もありますが、資本金などでいきますと、比較的小さいわけでございます。また、名もないところもあろうかと思います。御参考に申しますと、東洋通信機株式会社が資本金一億二千万円、東北特殊鋼が、最近増資しているかもしれませんが、今わかっておるところでは六千万円、それから東洋カーボンが一億四千万円、それから日本電子光学研究所が九百九十五万円、大東工業所が千二百万円、池上金型工業株式会社が千四百万円、こういった程度でございますので、むしろ、委託先が資本的に見て貧弱過ぎやせぬかという御批判を受けるのではないかと心配しているぐらいのところが多いのでございます。こういう結果に過去三年間なりましたと申しますのは、研究成果を実際実施させるのに、名の通った大企業、大会社というものに委託すればできるかということを考えてみますと、必ずしもそうでない。いわゆる万能選手にお願いするのがいいか、単能の選手にお願いをするのがいいのかということになりました場合に、この新しい研究成果を企業化するという場合に、やはり専門的な人がそろっているということと、また、それについて熱意を持ってやっていただくという会社が好ましい。そればかりではございません。大メーカーの方にも、もちろんお願いするテーマが今後出てくるかと思いますが、今までの実績は、そういうことであったわけでございます。そういう原因の一つは、従来新技術のために使います資本ワクが毎年八千万とか一億三千万という程度でございまして、二件、三件使いますと、もうなくなってしまうというような制限もあったわけでございます。今回資本金を三億、政府出資の金額を加えまして六億四千万円ほどの金額にいたしますが、それでもまだ微微たるものではないか、将来はさらに拡大していく必要があろうかと思って  おります。そうなりますと、取り上げるテーマも、むしろ金額的には大きなものが、取り上げられるのではないかという期待を持っております。その金額が大きくなるから、イコール大企業にいくとも、これまた即答的には出てこない問題でございます。これは技術の性質等によって、しかるべき委託先を、最も効率的にやれるような委託先を発見するという努力をいたしまして、国の資金が最も効率的に使われるような考え方で今後とも努めたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  67. 岡良一

    岡委員 そういう点で、これは原田さんも御存じのように、アメリカでは、こういう技術開発の委託を受ける民間会社があって、僕もその内部の運営はよく知りませんが、今おっしゃったように、おそらく単能の、あまり大きくない専門工場へ委託して、それで技術開発をやっているのではないか、そういう操作があるのではないかと思いますが、アメリカの実情を少しお話しいただけませんか。
  68. 原田久

    ○原田(久)政府委員 アメリカの例といたしましては、アメリカン・リサーチ・アンド・デベロップメント・コーポレーションというのがございます。ただいま私どものところにあります資料で申し上げますと、特別法は民間企業に対してはございません。それから資本金は六十万ドル、それから役員は、こまかい話になりますが……。
  69. 岡良一

    岡委員 運営はどうなっておりますか。
  70. 原田久

    ○原田(久)政府委員 運営といいますか、目的及び業務の概要という線でいきますと、中小企業の新しい事業を振興させるのが目的で、新技術を実施する会社に出資し、または投資を行なうというような目的で、方法といたしましては、MIT等、大学研究所の発明の工業所有権の譲渡を受け、これを企業者にあっせんし、実施契約を結ぶと書いてございます。ただし、ここにあります資料だけで申し上げます。
  71. 岡良一

    岡委員 そうすると、独自の研究所を持っていないのかね、独自の施設は。
  72. 原田久

    ○原田(久)政府委員 今のアメリカの例では、それ自身が研究所を持っているということはございません。職員は三十名ぐらいな職員でございます。御参考にイギリスの例を申し上げたいと思いますが、イギリスの例は、日本の例にかなり似通っております。ナショナル・リサーチ・デベロップメント・コーポレーションというのがありまして、昭和二十四年発足しておりますが、これはデベロッブメント・オブ・インヘンンヨン・アクト——発明振興法と申しますか、この法律のもとに作られております。政府資金の借り受けをいたしましてやっておりまして、資金ワクとしましては五十億円で、政府から借りる限度額が五十億円であります。それには金利を支払うというシステムになっておりますので、必要最小限度の借入金で運営しておりますが、一九五四年に法を改正いたしまして、借り受け限度額も百億円、邦貨に換算いたしまして、百億円ほどに拡大をしてやっております。ここも研究所を持っておりませんで、それぞれ多方面にわたるエキスパートがおりまして、公共的な発明を、ここで委託費を出して実施開発する、こういうのが主力でございます。そのほかに国の機関、大学等の特許権などもここで管理をするというので、その実施料収入などで、年間二億五、六千万円の収入はそれだけであげておるというようなことでございまして、このイギリスのナショナル・リサーチ・デベロップメント・コーポレーションを新技術開発事業団法の主たる対象といいますか、ひな形にさせていただいたという経緯もございます。
  73. 岡良一

    岡委員 ソビエトあたりの技術開発体制というものを見れば、研究から応用化、技術開発まで国家の資金あるいは国家の強制的な権力で進められている。アメリカでは、どちらかというと、民間会社が非常に高額な研究投資をやっている。デュポンは千七百億くらい一昨年研究投資をやっておる。それからユニオン・カーボンでも六、七百億やっておる。英国でも、ICIなり、それからドイツのヘックストあたりは、やはり二百億近い研究投資をやっている。ところが、どちらかといえば、アメリカ側の技術開発体制というものは、民間会社、ピック・ビジネスが強力な研究投資をやって、それで進めている。ソビエトでは、国の権力と資金でやっている。間にはさまっておるヨーロッパ型が、今御指摘の英国のような、いわゆる協同研究体制でやっている。フランスでも四十ばかり、鉄鋼、石油協同研究所もできて、相当な成果を上げていると報告されているが、日本もその中間をいこうというわけで、ヨーロッパ型で技術開発体制をとろう、そういうことに理解していいんですか。
  74. 原田久

    ○原田(久)政府委員 岡委員の御質問に対しまして、いささか方針的になりますので、私からお答えするのもどうかと思いますが、おおむね、御指摘のように、純然たる自由経済主義といいますか、民主主義と申しますかの形でばかりでは日本はいかないのじゃないか。と申しますのは、わが国でも、発明特許などは、最近は世界ナンバーワンといわれるほど出願がありますし、それから権利の数も非常に多い。それから論文なども、世界に比較しましても相当の数の論文が出ておる。しかし、技術導入などは、昭和二十五年以降一千億を越すほどの技術導入をしておる。技術輸出は、まだ十億前後しか輸出していない。こういうような状況でございますことを勘案いたしますると、アメリカ型の自由経済主義といいますか、そういう形だけでは、とてもこの際太刀打ちできぬのじゃないか、そこで、研究成果としてでき上がったものがあって、ただ企業的に採算がとれるかどうかわからぬというようなものにつきまして、やはり国家の資金を投入して開発を促進するということは日本としては必要じゃないか、新技術開発事業団法のようなものが必要じゃないかというようなことになると思います。  それから、研究組合組織でございますが、これは御指摘のようにヨーロッパ諸国で発達をしておりまして、わが国の国情としましては、これまた同業者が集まって協同して研究するという機運がなかなか醸成されないというような事情もございますが、それを何とか促進していくことによって協力の美を生み出すというような制度というものは政府としても考えなければならぬのじゃないか。これは工業技術院の方が御説明される方が適当かと思いますが、私の方の意見としましても、そういったような制度はわが国にあってしかるべきじゃないか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  75. 岡良一

    岡委員 要するに、この技術開発のための事業団とすれば、優秀な基礎研究者と企業とをやはりコーオペしなければならぬ。それから、一方では、高分子関係の仕事なり自動車関係において、両者のコーオペによって生み出そうとするのが新しい技術だと思うんです。そういう方向は、私どもは正しい方向だと思うんですよ。日本はそれでいいと思う。また、それを進めなければならぬと思うが、しかし、ここでざっと先ほど来の御説明を聞いて、私は、もう一つ、これは事務的な立場におられる方の率直な意見を聞かしてもらいたいのだが、今、原田さんがおっしゃったように、昭和二十五年以来の支払いロイアリティが約一千億、こちらの受け取りの対価が十億に至らない。やはりこういうものができてくると、一方では規制していかなければいかぬと思うんだな。国の方でこういう努力をやっても、一方、業者が利益を競合して、無政府的に技術導入を競合する、これをコントロールすることができないということになれば、これは名目的な存在になる危険があるわけだね。これは事務的な立場におられる皆さんとして、どうしたら一体コントロールできるかという、何か名案がありませんか。
  76. 原田久

    ○原田(久)政府委員 技術導入につきましては、御承知のように外資審議会で審議をいたしまして決定いたしますが、その過程といたしまして、主務大臣と大蔵省、それから技術的な面では、科学技術庁とで構成されております幹事会というものがございまして、そこで産業行政上の角度及び技術的な角度につきまして十分案件を検討いたしまして、その上で外資審議会に意見を添えて出しまして、外資審議会の御決定を受ける。こういうような形をとっております。その間、何か野放図に技術が導入されるのはどうか、ある程度ブレーキをかけておるのかどうかという御質問だと思いますが、産業行政の角度では、たとえば通産省関係におきましては、通産省が通産行政の角度から需給関係を見、将来の見通しを立てて、あまりに競合するようなことがあれば制限を加えるというような措置もとっております。それから、技術士から申しますと、わが国の研究がどの程度今進んでいるか、その研究と導入しようとする技術との関係も検討いたしまして、わが国にある技術で、それが使えるというものであれば、しいて輸入する必要はないのじゃないか、導入する必要はないのじゃないかというような意見も出しておるような次第でございますが、何分、日本に対しまして導入すべき相手国というものの数も非常に多うございますし、終戦後以来の混乱期もありまして、わが国の技術というものがまだまだ諸外国におくれておるというような実情もございますので、技術導入は御指摘のように非常に金額も大きなものになっておるという現状でございます。
  77. 堀坂政太郎

    ○堀坂説明員 技術導入のあり方につきましては、ただいま原田振興局長から申し上げたところでございますが、われわれといたしましても、国内ですでに開発されておる技術だけでなくて、開発途上にあって、比較的近いうちにこれはものになるというような場合につきましては、技術導入についてかなりシビヤーな態度を実はとっております。ただ、技術導入全般を抑制するということによりまして、日本の現在の技術的なレベルの後進性を回復するのをおくらすことのないように心がけねばならないので、その点非常に苦心をいたしておるところでございます。将来の問題といたしましては、技術導入全般のあり方について、全般的には、自由化の方向でもございますので、自由化した場合において、国産技術の育成ということにかえって障害にならないような一つのあり方というもについて考えていかなければならないようになるであろうと存じておりますが、今日は、御承知のように外資法によりまして一件々々審査をいたしまして、先ほど申し上げましたように国産技術との関係考慮してやっておりますので、それで一応その調和をはかっておるつもりでございます。
  78. 岡良一

    岡委員 それでは、最近、技術導入が外資審満会に競願された事例で、何かコントロールされた事例というものはありますか。
  79. 堀坂政太郎

    ○堀坂説明員 申請がやはり相当数があっても、そのうち一件か二件しか許可されていないという事例はいろいろあります。
  80. 岡良一

    岡委員 具体的な例を申し上げると、一時新聞を騒がしたポリプロピレンの導入ですね。あのポリプロピレンなんかは、要するにナフサからエチレンがとれる、エチレンからポリエチレンを作っていく。調べてみると、あの技術も、日本の石油化学関係の業者は、十三の会社が、全部違った外国の会社から技術導入をやっているのです。また、ポリエチレンについては何らコントロールがない。まあ、やれやれという形でやらしたということです。さて、今度は四割プロピレンがとれる、そこでポリプロピレンという世紀の繊維ができるということになった。これは競願がたしか四つあったかと思うのです。ところが住友、三井、三菱が結局その技術導入を許可された。しかも、導入の条件は、十何億かの頭金、ロイアリティ六%、そして輸出市場を制限されております。こういう非常に過酷な条件です。ですから、ポリプロピレンのコスト計算からいくと、この技術導入の条件では、これで作ったポリプロピレンが海外の市場で太刀打ちするということは、私はとても困難なことではないかと思うのです。ところが、このポリプロピレンを日本のソーダ会社がすでに研究してやっておった。九分通りまで研究はやっておった。私は、その研究責任者からいろいろその経過をお聞きしたこともあるのです。そういうことになれば、問題は、この技術開発事業団はこれを力づけてやらなければいけない。技術導入に三井、三菱、住友があせっておるのをそのまま放任しておいて、結局これは技術導入があればつぶれてしまうのです。一方のソーダ会社の、もう一息というポリプロピレンの研究を発掘して、これをプッシュしてやるということで、ただ、いけないというわけにはいかないと思うのです。技術導入というものは、日本はもうここまできておるのだという実態をつかんで、これはしばらく待て、むしろ住友、三菱、三井が徳山曹達に協力して、政府がそれこそコーオペラティブの態勢でポリプロピレンの技術を開発にする、生産にいくというような方向にいかなければ、これはほんとうの技術開発事業団というものの仕事はなくなる。僕は、今の協同研究組合にしても、そういう形に持っていってもらわなければいけないと思う。だから、そういう意味で、国内のまじめな研究者が民間企業の中で研究するときには、やはり自弁で外国の文献を集めたり、読んだりしながら、すぐれたアイデアを自分だけの独自の力でやっている。しかも、あるところまで達成しておる。ところがこれをキャッチしないで、一方では、そういうこととは無関係で同じ方向に進んでいる。研究がほんの一足先に特許権をとったというので各社が競合していくという、この矛盾をどうして解決していくか。われわれは、何も機械、技術の導入はいけないというわけではないのだけれども、これは御存じのように、貿易が自由になってきたら、技術の競争だと私は思うのです。最近の技術革新時代における新技術というものは、思いつきではだめなんです。経験主義的なものではないわけです。おそらく、一つの新しい技術というものは、生物学の領野にも、医学の領野にも、化学の領野にも非常に深い関連性を持って、そして、そういうものの基礎研究の上に一つの新しい技術が出ておる。上だけぼっと取ってきて植えてみたところで、それは造花なんです。造花にすぎない。もう実を結ばない。花が開いただけで、また新しい品種の花ができてくれば、これはしおれざるを得ない。これでは、いつまでたっても日本の科学技術の自立というものはできない。だから、そうすれば、やはり埋もれたそういう研究発明というものを発掘する。そうして、それとにらみ合わせて盲目的な技術導入というものをコントロールしていく。ただ技術導入はいけないというのじゃない。これをもう少しプッシュしてやろうという大きな視野から考えられなければならぬと思う。ところが、これはまだ遺憾ながら、そうなっておらぬと思う。それは科学技術庁にしたって、おとなしい篠原さんが出ておられて幹事会を作っておられても、方針はそうであろうが、事実は何らかのチェックをされたことはないと私は思うのです。まあ、今度あるかもしれない。こういう点をもう少し大きく、大局的に日本の国産技術を育てるという立場、からやっていっていただかないと、この事業団の目的、あるいは協同研究組合にしても、やはりわれわれの期待するほんとうの成果というものが結びにくいのじゃないか、そう思うわけです。そういう点について、何かやはり具体的に皆さんのお考えがあれば聞かしていただきたい。
  81. 堀坂政太郎

    ○堀坂説明員 ただいまの岡先生のお話、まことに私どもごもっともでございまして、研究組合にいたしましても、今のような情勢に対しまして、将来新しい国産技術を生んでいくという趣旨において、私どもも将来の発展を期待いたしておるわけでございます。片一方に新しい国産技術を生んでいくという環境を作るということがねらいでございます。
  82. 松本一郎

    ○松本政府委員 ただいま岡さんの御質問は、本事業団発足にあたりまして何よりありがたい御意見と拝聴いたしました。  問題は、今るるお述べ願いました御趣旨の通り、そういう目的をもって本事業団を発足させたいと考えておりますが、今後は、この運営ということが非常に大事である。いま一つは、せっかく国産技術を開発するといういろいろな手段を講じても、反面に、自由経済下において、外国の新技術をどんどん導入するというようなことでは、芽ばえをつむ危険がありはせぬかという御趣旨じゃないかと考えます。ですから、そういう面につきましても、事業団を作り、その運営が軌道に乗って、いわゆる国内の技術の開発という一応の現実というものが実を結ぶということと歩調を合わせて、片方、外資導入、外国技術提携という面にもある程度のブレーキかけて、そうして国産技術の開発を早めなければならぬ、こういうことは痛感しております。先ほど石油化学のお話も出ましたが、私も、食品化学の面で、最近わが国の技術が相当伸びており、ことに重要な国策の仕事に関連を持っておりますが、残念ながら、外資審議会においてアメリカのコーン・プロダクトと日本の二、三の会社との提携が許可になり、九州熊本に合弁会社が設立になります。私は非常に残念に思った。しかしながら、反面、微々たる民間企業の新技術の開発でありますために、勢いそういう結果を招きましたが、今後こういう機関ができて、強力な国産技術開発の仕事が軌道に乗れば、そういう面においても、外資審議会とても深甚の考慮を払わなければならぬはずだし、また、それができぬということならば、別に法律をもってしても調整するということにならなければならぬのじゃないか、かように考えております。よろしくどうぞお願いしたいと思います。
  83. 岡良一

    岡委員 今ちょうど齋藤さんがお見えになったから、この際、特に、私は、次の問題点として、どういうふうに取り扱われているのかということなんですが、今協同研究組合では、石油産業あるいは自動準工業は今の花形産業です。それから、これまでの技術開発部のお仕事も決してむだなものではない。りっぱな仕事ではあるが、技術院でやられる仕事とは、またちょっと何か違った感じがするわけです。問題は、もっと日本の国土に即した技術開発があっていいのじゃないかということなんです。たとえば、齋藤君の主張しておられるラテライトの研究とか、砂鉄の研究とか、そういうものを取り上げて、もっと日本の国土の現実に即した、——ただ外国でこういう技術がこの分野でここまで進んでおる、おくれまいぞというので、そのはやりものを追うという形でなく、日本の国土に即した技術開発というものが当然やられなければいけない、選ばれなければいけない。これまでの開発の実績も若干あるようではございますが、ラテライトの問題なんかも、やはりやられるべきだと思うのです。そういう方針をこの際承っておきたいと思う。
  84. 原田久

    ○原田(久)政府委員 ただいま岡委員の御指摘になりましたのは、要するに、わが日本国土に即した意義のある研究というものを推進しなければいけないのじゃないかということに尽きると思いますが、この点につきましては、まあ、ラテライトの問題につきましては齋藤委員からも強い御要望がございました。一つこの際取り上げて研究すべき問題ではないかということで、今進めつつございます。まだどういう形で進めるかという点につきましては、今検討しておりますが、そういう形で進めつつあります。  それから、砂鉄等につきましては、これは工業技術院の地質調査所あたりでいろいろ御調査を進めておられるという形で進めておられます。しかし、そういった角度がなお貧弱であるという点については、おそらく、御指摘の点はそういう点にあるかと思いますが、こういう研究の角度につきましては、わが国全体としまして、国の予算としましてもなお不十分でございまして、今後大いに増強していく必要があろうかと思います。そこで、この研究の段階と、それから本日御審議の新技術開発事業団との関係についてちょっと申し上げますが、開発事業団の方は、完成した研究成果と申しますか、一応完成したものを企業的規模において実施してみるという使命を持っておりますので、ただいまの国土に即した研究という面を推進するというのは、その前段階の過程におきまする科学技術研究の推進という角度で今後も推進して参らなければならぬ問題であろう、この点は十分考えまして、私ども行政の衝に当たるものも一生懸命やって参りたいと考えておる次第であります。
  85. 岡良一

    岡委員 問題は、直接技術開発事業団の仕事には今のところなり得ない、しかし、国が大幅に出資したり、国が予算を受け持っておる研究所は、大学の研究所と性質が違うと思うのです。これはやはりある目的をちゃんと設定して、その目標の上に研究というものを積み上げていくという態勢でなければ、私は国立研究機関というものの意味がないと思う。大学においては、研究室では、もっと自由な雰囲気の中で豊かな研究をやってもらいたい。しかし、国立研究機関というものの性格は、そうであってはならないと思う。ただ外国でこういう分野にいろいろ次次と成果が出ておるというので、そういう方向にだけ目をとらわれないで、国立研究機関は、国の必要とする技術というものがどこにあるか、どの方向にあるかという、やはり国土に即した研究テーマを取り上げる。理化学研究所がかりにそれをやる、あるいは地質調査所でやる、その他の研究機関が共同してやる、そうしてやったものがある程度まで実用的な可能性が出てきたときに、技術開発事業団がそれを今度技術開発に取り上げていくという一貫性がなければならぬと思う。そういう点、たとえば鉱工業技術研究組合法ができるとすれば、日本の鉄鋼業者がやればいいのじゃないか。皆それぞれ研究所を持っているのだから、やはり指導して、ラテライトなり砂鉄の研究をさせたらいい。それに対して、やはり国としては資金的に優先的な処遇、税制上の優先的な処遇なりを考えて、そうして仕向けていくという、そういう大きな、太い筋金が通っておらない。ただ業者が持ってきた適当なテーマを取り上げるというような放任主義じゃなくて、もう少し、おくれた技術的な空白を取り返そうとするのなら、新しい強力な角度からやっていかなければならぬ。  それからもう一つ、これも技術開発事業団と直接には関連はありませんが、将来の運営上相当問題点だと思うのは、先ほどお話しいたしましたポリプロピレン、これはミラノのモンティカティニ社へ日本の四社がミラノ参りをやって、そうして住友、三井、三菱等がどうやら技術導入をやることになった。大体あの頭金は三百万ドルですか、十億余りでしたか、ところが、これは非常に高いものだといわれておる。実に高いものを買ったものだ。ところが、さらにそれを全部モンティカティニ社が取るのかというと、そうじゃない。なぜかというと、これはドイツの化学産業グループの方に分けておる。六割くらい分けておる。モンティカティニ社のポリプロピレンの特許申請というのは、非常に広範な、万国特許のような形でとっておるのだが、技術的な基礎においてはドイツの化学産業グループが非常に協力しているわけです。だからそれが実施される、他国へ技術を売るというような場合、対価の支払いを受けたら、それをどういうふうに分配するという契約があるわけです。ヨーロッパでは、ドイツとイタリアとがポリプロピレンについては技術提携をやっておる。そういう意味の国際提携をやっておる。これは日本に直接関係はないかもしれませんが、東南アジアとの経済協力といえば、何といっても日本の高い技術が非常に大きな問題点となってくるわけなんだが、向こうだって引き上げてやらなければならないというような立場から、日本の技術に関する最高政策というか、そういう国際的な協力体制というものを今後考慮に入れておかなければならない。この問題は、この委員会の直接の問題でありませんから、また別の機会に申し上げる機会があったら申し上げたいと思いますけれども、そういう点、非常に重要な技術の開発については、できるだけ国全体の大局的な規模において、ひいてはアジア全体の開発という点から、大企業にだけ偏重しないで、中小企業にもその恩恵が普及し得るような、そういう運営をぜひやってもらわなければならない。それには開発事業団、それから今度の協同研究組合法にしても、それは、なるほど鉱工業技術研究組合は、これは新しいテーマをこれから取り上げていくのだけれども、やはりやることは同じことになると思うのであります。一方では新技術開発事業団、一方では鉱工業技術研究組合というようなことになると、いわば同じことをしようという方向において同じ機関があることになる。科学技術行政というものは、科学の現在の姿から見ても総合化すべきである、一元化すべきである。大臣も、この間の予算委員会において、これは断じてやりたいと言っておられた。そのときに、新しい科学技術、新しい分野というものを、各省でてんでに——いろいろ必要な措置ではあるが、無限に出されてくると、そのことがほんとうに能率的な日本の科学技術の振興になるかというと、非常に疑問があると思うのです。こういう点について、十分に皆さんも気をつけてやっていただきたいと思います。私は、これで質問をやめますが、あとで田中君が少し質問があると言っておられますから、そういう機会をぜひ委員長においてお取り計らい願いたいと思います。
  86. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私も、次会に新技術開発事業団について質問いたしたいと思いますが、その質問の予備知識を得るために、一つだけ伺っておきたいのは、「新らしく発足した新技術の開発」という理化学研究所の発行したものに書いてありますが、この理化学研究所で従来新技術開発部としておやりになった構想を、新技術開発事業団はそのまま受け継いでいく構想であるか、それとも、今回新しく事業団として発足するのであるから、そうではなくて、もっと別な構想を加えて発足するつもりなのか、それだけ私ちょっと承っておきます。
  87. 原田久

    ○原田(久)政府委員 お答え申し上げます。  新技術開発事業団が行ないます業務のやり方でございますが、これは従来の理研の開発部がやって参りましたやり方と全く同一でございます。これは従来のものに付加し、あるいは従来のものから取り除くというものはございません。ただ資金量を拡大いたしまして事務量をふやすということでございます。ただし、独立するにあたりまして、運営の方法としまして、先刻も御説明申し上げたのでございますが、開発委員会というものがございますが、これを開発審議会に変えまして、大綱的な、方針的な問題、重要事項はこの開発審議会にかけるということに変えまして、理事機関の責任体制を明確ならしめるという運営をはかりたいという点が違うだけでございます。そのほか、内容は変わりございません。
  88. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 次会の適当な機会に瞬間を一つ与えていただきまして、質問いたしたいと思います。
  89. 山口好一

    山口委員長 明日行ないます。  本日は、この程度にとどめ、次会は明二十三日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後三時二十二分散会