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1961-04-14 第38回国会 衆議院 運輸委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月十四日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 有田 喜一君 理事 生田 宏一君    理事 尾関 義一君 理事 高橋清一郎君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 山口丈太郎君       伊藤 郷一君    佐々木義武君       壽原 正一君    鈴木 仙八君       關谷 勝利君    細田 吉藏君       西宮  弘君    内海  清君  出席政府委員         運輸政務次官  福家 俊一君         運輸事務官         (海運局次長) 若狭 得治君  委員外出席者         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 四月十一日  国鉄運賃値上げ反対に関する請願外百十四件(  横山利秋紹介)(第二三一九号)  同外千三十二件(阪上安太郎紹介)(第二四  六〇号)  同外六件(多賀谷真稔紹介)(第二四六一  号)  同外千五百十九件(中澤茂一紹介)(第二四  六二号)  山野線水俣、大口両駅間ディーゼルカー運行に  関する請願池田清志紹介)(第二三六五  号)  身体障害者乗船運賃割引きに関する請願(池  田清志紹介)(第二三六六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補  給臨時措置法案内閣提出第六四号)      ————◇—————
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法案を議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。内海清君。
  3. 内海清

    内海(清)委員 この法案は、今日きわめて経営基盤の脆弱なわが国海運業の基礎を強固にして、そしてこれが国際競争力強化し、そうして国際収支黒字基調を持続拡大しよう、さらにこれによりまして池田内閣の一枚看板でありまする所得倍増計画に対応しようとするものであると思うのであります。これに関連した若干の質問を行ないたいと思うのですが、大臣がお見えになりませんのをはなはだ遺憾に思います。  まず所得倍増計画最終年度であります昭和四十五年、この四十五年に、今から十年後でありますが、倍加いたしますわが国貿易量、これはどの程度に相なりますかお伺いいたしたいと思います。
  4. 若狭得治

    若狭政府委員 お答え申し上げます。所得倍増十カ年計画によりますと、昭和四十五年度におきます貿易規模は、輸出が約二千三百万、昭和三十四年度輸出実績は九百六十三万トンでございますので、倍数としては約二・四倍になるわけでございます。それから輸入につきましては約二億トンでございまして、昭和三十四年度実績が七千二百万トンでございますので、その倍率は約二・八倍になるわけでございます。このうち特に増加いたしますのは鉄鉱石及び石炭でございますが、鉄鉱石につきましては、昭和三十四年度の約三一八倍、石炭につきましては同じく昭和三十四年度の四・七倍、また石油類につきましては約三・五倍という程度貿易量が非常に増加するということが予想されるわけでございます。
  5. 内海清

    内海(清)委員 かように非常に増加いたします貿易量、これを日本船の積取率を多くしまして、そうして運賃収入を増して国際収支黒字にするというのがわが国海運の使命でもあると思うのでございます。そこでこの昭和四十五年におきまする、ただいま御答弁のありました非常な増加でありまするが、これを日本船によってどのくらいの程度積み取るか、この積取率をどの程度にお考えになっているかお伺いいたしたい。
  6. 若狭得治

    若狭政府委員 昭和三十四年度わが国船舶による積み取り比率でございますけれども、これは輸出につきましては五六%、それから一般貨物輸入につきましては五一・九%、石油類につきましては五〇・八%という実績になっておりまして、昭和三十五年度実績はまだ最終的な統計はできておりませんけれども、大体一般貨物輸入につきましては四八%、それから輸出につきましては五五%、油類につきましてはやはり四八%というふうに輸入比率が五〇%を割るというような状況になっておるわけでございます。これに対しましてわれわれといたしましては、昭和四十五年度におきましては輸出につきましては六三%程度、それから一般貨物輸入につきましては六〇%、油類につきましては六五%程度の積取率を維持したい。こういう程度の積み取り比率を維持しなければわが国海運重要物資輸送という面から見ましても、また国際収支の面から見ましても、この程度の積み取り比率はぜひとも維持したいというふうに考えているわけでございます。
  7. 内海清

    内海(清)委員 そういう積み取り比率をお考えになっているわけでございますが、そうすると、昭和四十五年度においては先ほどお話になりました非常な貿易量増加、それに対するただいまの積取率ということから考えまして、これは一部所得倍増計画などでも私ども見ておりますが、今後十年後の昭和四十五年においてはわが国外航船舶はどの程度拡充しなければならぬか、こういうことですから、それをお伺いいたしたい。
  8. 若狭得治

    若狭政府委員 先ほど申し上げました貨物の積み取り比率を維持するということを前提として所要船腹を算定いたしますと、貨物船につきましては九百八十五万トン、タンカーにつきましては三百五十万トン合計千三百三十五万トン船腹が必要であるというふうに考えております。
  9. 内海清

    内海(清)委員 そうすると、四十五年には千三百三十五万トン外航船腹がなければいけない、こういうことでありまするが、それからいたしますと、三十六年度以降十年間にどれだけの外航船腹拡充をやらなければならぬか、これをお伺いいたしたい。
  10. 若狭得治

    若狭政府委員 現在の外航船腹は、昭和三十五年三月末におきまして、五百七十万トン見込みでございますので、今後十年間に老朽船となり、あるいは海難事故等によりまして代替されるもの等を計算いたしますと、この十年間に九百七十万トン程度船腹を新しく建造していかなければならないという状況になると思います。
  11. 内海清

    内海(清)委員 ただいまの、三月末で五百七十万トン外航船腹というのは、これは例の今後解撤を予想されておる外航船腹は含まれておりますか、どうですか。
  12. 若狭得治

    若狭政府委員 含まれております。
  13. 内海清

    内海(清)委員 そういたしますと、今後十年間に九百七十万トン外航船腹拡充しなければならぬ。そこでこれを年平均にいたしますと、九十七万トンということになるわけであります。まず三十六年度におきます計画造船自己資金船で、どの程度建造が可能であるか、これをお伺いいたしたい。
  14. 若狭得治

    若狭政府委員 昭和三十六年度につきましては、一応予算新造船財政資金としては百四十億を予定いたしておりまして、これによって二十五万トン程度新造船を行ないたいというふうに考えております。なおこれ以外に、自己資金船としては大体二十五万トン程度建造されるであろう。これは過去三、四年間の実勢から見まして、大体二十五万トンないし三十万トン程度自己資金船は出てくるものというふうに期待しているわけでございます。
  15. 内海清

    内海(清)委員 そういたしますと、三十六年度においては、計画造船自己資金船で約五十万トン、こういうことなんですね。そうすると七五十万トンと九十七万トンという大きなギャップがあるわけです。そこで一つお伺いしてみたいと思いますのは、御承知のようにわが国外航船腹は、第二次大戦前には約六百万トンといわれておった。ところがほとんどこれは戦争で壊滅に瀕した。その後これが再建をはかられてやってきたわけでありますが、戦争被害わが国だけでなしに、それぞれ参戦国は非常な被害を受けておる。ところが、外国主要海運国におきましては、やはりその後急速な立ち直りをして、今日海運が非常な不況に低迷しておりますけれども、わが国海運界のような、きわめて経営基盤の脆弱なところは少なく、日本海運のみが非常な不況にさらされておるという現状だと思います。こういうふうにわが国海運が特に不況にさらされているが、これは何によるのか、これを一つお尋ねしてみたいと思います。
  16. 若狭得治

    若狭政府委員 わが国海運が、諸外国海運に例を見ないほど経営内容が悪いということは、御指摘の通りでございます。この原因については、いろいろな原因があるわけでございますけれども、まず第一に、わが国海運外航活動というものが、終戦後禁止されておりまして、昭和二十五年に至ってようやく外航活動が許された。そしてわが国海運界外航活動しようといたしましたときには、すでに外国海運わが国近海航路に入って参りまして、ほとんどその航路権を荒らしておったというような状態でございました。これを回復するためには、非常に急速に多額の資金を注ぎ込んでいかなければならない。しかもわが国海運界というものは、戦争中の船舶の保険の代金については、戦時補償の打ち切りによりまして、全く自己資本というものはございません。すべて借入金によって急速な建造をやってきたわけでございます。しかもその借入金金利が、諸外国に比べて非常に高金利である。そういう高金利資金借り入れて、急速に多量の船舶建造して参ったというところに、根本的な原因があるのではないかというふうに考えるわけであります。しかも、そういう自己資本のない、全く借入金によって経営を続けているわが国海運業というものは、その市況によって、たとえば船舶建造についても、その市況によって調整するというような余裕がなくて、非常な高船価のときにやはり新造を続けていかなければならなかったというところに、大きな原因があるのではないかというふうに考えております。
  17. 内海清

    内海(清)委員 ただいま日本海運不況原因について、いろいろお話があったわけでありますが、しかし、これは占領政策による外航船腹建造が禁止されたというふうなこと、これが一つ大きな原因だと思うのであります。ところが、先ほどお話しのような所得倍増計画から考えますと、初年度からそういう計画にはいかないにしても、五十万トン・ベ−スでいくというふうなことになると、ここに大きなギャップがあるわけであります。ところが、ただいまお話のような日本海運市況であり、さらに今日の計画造船は、これは私が申し上げるまでもございませんけれども、非常に海運経営基盤が悪化しておるというようなことで、新造船償却前の利益範囲内、こういうような建造方式になっておるわけであります。もしこういう計画造船方式が今後も守られていくというふうなことになりますと、所得倍増に見合う船腹というものは、とうてい確保はむずかしいと思う。特にまた自己資金船にいたしましても、今日まで延べ払いその他において、造船所資金負担というものがかなりあるわけであります。おそらく修繕船修繕料というものを加えますと、今日造船所がそういう方面に出しております金は四百億以上に相なるんじゃないかと思う。これはまだ表面に出ておりませんけれども、造船所自身でかなり苦慮しておる問題であります。これも考え合わせますと、今後はたして自己資金船が、あるいは自己資金船も二十五万トン以上に拡大していかなければむずかしいかとも思うのですが、それができるかどうか、こういうことが顧慮されるわけであります。この点につきましてお伺いいたしたいと思います。
  18. 若狭得治

    若狭政府委員 御指摘のように、現在船舶建造につきましては、償却利益範囲内における建造ということを実施いたしておるわけでございますが、これは海運会社債務を現行以上に増加させないということを主眼としておるわけでございまして、その期に得ました利益のうちから償却に回すその限度において新造するということになりますれば、借り入れをするということになりますれば、船会社債務増加しないわけでございますので、そういう原則によって新造を認めておるわけでございます。今期、昭和三十五年三月期の大体収支の予想を見ますと、主要船会社五十九社の償却利益の総額は約百五十億でございます。従いまして、これを年間に直しますと、三百億程度償却利益範囲額が出てくるというわけでございますので、三百億といたしますれば、トン当たり十万円と計算いたしましても約三十万トン船舶しかできないというような状況であります。なお、昨年度実績等に徴しましても、これ以外に本船採算が非常によくて、一時的な金融機関からの借り入れがございましても、その船舶採算だけでその債務を償還していけるというようなものにつきましては、償却前の範囲外でありましてもその建造を認めているわけでございます。そういうものを自己資金船として期待しているわけでございますけれども、今までの実情から見まして、本年度二十五万トン程度期待しておりますけれども、おそらく来年度それ以上のものはとうてい困難ではないかというふうにわれわれは考えているわけでございます。従いまして、計画造船によりまして二十五万トン自己資金船によりまして二十五万トン合計五十万トン建造が予定されるわけでございますけれども、所得倍増に対応すべき船腹拡充につきましては、さらにこれ以上何らかの金融的な措置あるいは企業に対する措置というものがなければ、とうていこれは実現することはできないものではないかというふうに考えております。
  19. 内海清

    内海(清)委員 ただいまのお話によりますと、やはり今後何か特別の処置をとらなければ五十万トン程度よりも出ないということであります。そうすると、これは九十七万トンとの間には大きなギャップがあるわけであります。国際収支の上から見まして、昨年の十一月一日の経済審議会会長からの池田首相に対する答申である国民所得倍増計画、この数学を見てみますと、昭和四十五年度には、先ほどお話がありました千三百三十五万総トン外航船舶が必要だ、そうして、海運関係国際収支では、昭和四十五年に千三百三十五万トンにして三億一千四百万ドルの赤字を出す。しかし、総合収支じりで一億ドルの黒字になる、こういうふうなことが述べられておると思うのであります。ところが、御承知の毎日の記者稲田正義さんのパンフレットによりますと、五十万トンベースでいくならば将来まことに重大な結果が出てくるだろう。昭和四十五年の国際収支は、海上運賃を現在の水準で横ばいと仮定いたしましても、海運面で四億八千万ドルの赤字となって、総合収支じりでは、他の項目の収支が変わらないとしても、黒字はわずかに三千万ドルになるのではないか。さらにまた、現在係船されております約三百八十万重量トンといわれております不定期船、あるいは約五百六十万トンといわれている輸送船、こういうふうなのが今過剰状態で係船されておりますが、これが解消される。さらにまた、船価人件費が上昇してくるだろう。こういうことから考えて、現在低迷している海運市況も必ず三、四割上がってくるであろう、こういうふうな見方というのは、これは海運業界でも有利な見方であると思うのであります。かりに三割運賃が上がるといたしまして試算してみますと、五十万トンベースでは、昭和四十五年度海運国際収支は六億三千万ドルの赤字になって、総合収支じりでは、こうなって参りますと赤字転落は不可避だ、こういうふうに見ておるのであります。こういうふうになって参りますと、所得倍増計画はこの面からまず挫折してくるのではないか、こういうふうに考えるのであります。そこで、昭和四十五年度におきましては、どうしても千三百三十五万総トン外航船舶を持たなければならぬ、こういうことに相なるのであります。そのためには、今までのような五十万トンベースではいけない、先ほどお話のような特別の処置を何とか考えなければならぬということに相なるのであります。最近新聞紙上その他で見ますと、まだこれは公のものでないかもしれませんが、三十六年から四十年までの五カ年間におきまして、四百万総トン外航船腹建造しようという計画が進められておるように思うのですが、この点はいかがでございますか。
  20. 若狭得治

    若狭政府委員 御指摘いただきましたように、千三百三十五万トン建造を本年度以降十年間に実現するということは、現在の海運業にとって容易でない問題でございます。ことにこの海運企業基盤強化ということは、海運界にとって何をおいてもまっ先に解決すべき問題でございますので、そういう企業基盤強化と、それから船腹拡充ということを並行的に推進しなければならぬというところに今後の大きな問題があるわけでございます。そういう面から見まして、前半期と後半期とこの十年間を二期に分けまして、前半期におきましては企業基盤強化に重点を置いた施策を実施したい、後半期においてそのおくれを取り戻すため船腹拡充を実施したいというふうに考えているのであります。ただ、現実の問題といたしましては、わが国の積み取り比率が、先ほど申しましたように、三十五年度におきましても輸入はすでに四八%台に落ちております。また、今後の物量の増加がさらに加わりまして、この比率はこのまま推移いたしますとまた下がってくるというような状況でございます。また一方、外国船がどんどん長期契約日本の荷主の荷物を運んでいるというような傾向がふえて参っておりますので、できるだけ倍増計画の線に沿った計画に今後改定していきたいというふうに考えましたのが、この中間年次昭和四十年度を目標とする五カ年計画でございます。この五カ年計画におきましては、定期船を八十万トン不定期船を二百二十万トン、油送船を百万トン合計四百万トンを五カ年間に建造したいというのがわれわれの計画でございまして、この面から年度割りにいたしましても八十万トン建造が必要になりまして、現在の五十万トン建造見込みよりもさらに三十万トン追加建造を必要とするというような状況になるわけでございますが、先ほど申しましたように、企業の面から見まして現在の五十万トンが一応限度というふうに考えられているわけでございますので、あとの三十万トン建造につきましては、まず建造資金の調達の問題、それから建造した船舶海運企業にどのような影響を及ぼすかというような問題等につきまして、今後慎重に検討を進めていかなければならないというふうに考えております。
  21. 内海清

    内海(清)委員 それは今大体海運局の方のお考えだと思うのですが、それにつきまして経済企画庁なりあるいは大蔵省関係とすでに、三十万トン追加建造といいますか、そういうふうなものは具体的に話が進められておるわけでございますか。
  22. 若狭得治

    若狭政府委員 この問題につきましては、まだ事務的に五カ年間の建造の総量について経済企画庁検討を進めているという段階でございまして、大体の考え方といたしましては、この程度船腹は必要であるというふうには事務当局相互間では意見が一致しているわけでございます。
  23. 内海清

    内海(清)委員 先般の参議院の予算委員会におきまする松浦清一議員質問に対して、大蔵大臣も、現在の建造計画ではこれは少ない、だからこれをふやす方向に考えておる、また経済企画庁長官も同様で、目下検討中だというふうな答弁をされておるわけであります。従いまして、この運輸省の計画というものが強力に進められる機はだんだんと熟しているのではないかと思うのであります。これらにつきまして、大体三十六年度においてこれらの追加建造が実現できる可能性があるかないか、この見通しをお伺いいたしてみたい。
  24. 若狭得治

    若狭政府委員 現在の段階におきましては、私の個人的な見通しを申し上げますれば、追加建造の数量は二十万トンないし三十万トン規模におきまして実現できるものと思っておりますけれども、問題は、これに必要な財政資金を獲得するというような問題あるいは利子補給予算を追加するというような問題だけではございませんで、海運企業の面から見まして、現在のような海運企業にこれ以上の船舶を持たせるのがいいかどうかというような点に相当の問題があるのではないか。具体的に申しますと、この四百万トン建造に要する資金は四千億必要なわけでございますけれども、現在の主要な海運会社資本金というものは約一千億でございます。しかも現在の借入金の残高は約三千億ございます。それにさらに四千億の借入金が加わるわけでございまして、資本構成の面から見ましても非常に大きな問題になるわけでございます。従いまして、今後建造される船は絶対に海運企業内容を悪化させるようなものであってはならないということは当然でございます。そういう問題だけではなしに、海運企業体質を建て直さなければ、この新しい建造の受け入れができないという問題が根本的に横たわっておるわけでございます。そういうめどを立てた上で、四百万トンの今後の建造の問題並びに本年度追加建造の問題に対処していきたいというふうに考えております。
  25. 内海清

    内海(清)委員 ただいま御答弁になりましたように、わが国海運業は非常な不況に見舞われておる。借入金は、今お話がありましたようなことで、利子にいたしましても二百億に余る金利を払わなければならぬというようなことで、資本構成が非常に悪い状況になっておるわけであります。これに対しましては、もちろん海運業者自体体質改善基盤強化ということは重要なことだと思うのでありますが、船はどうしても作らなければ、所得倍増はこれで挫折してしまうという状態なんです。そこにはやはり国といたしまして何とか海運助成政策というふうなものも一段と強化されなければ、これはとうてい実現困難だと思うのであります。  そこで一つお伺いしてみたいと思いますのは、世界におきまする主要海運国海運助成策、これはいろいろあると思うのです。低金利の問題、補助金の問題、利子補給の問題あるいは航海補助の問題、その他いろいろあると思いますが、これについて一つ主要海運国でけっこうでございますが、お伺いいたしたい。
  26. 若狭得治

    若狭政府委員 外国海運助成につきましては、その目的がいろいろございまして、たとえばアメリカのごときは、必ずしも商業ベースによるものではなしに、国防的な観点からの助成というものもございますし、また西ドイツのごとくわが国とほとんど同じような条件のもとに戦後海運活動が再開されまして、そうして思い切った助成をして、今日ドイツの経済復興に非常に活躍しておるというようなところもございますので、一律にこの助成厚薄でもってその国あるいはその海運の問題を論議することはできませんけれども、一応現在手元にあります資料によって御説明申し上げれば、アメリカにおきましては、建造価格の二分の一を建造補助金として船主に交付する、そうして残額のうち四分の三を年利三分五厘、二十年年賦払い償還政府から貸し付ける、こういう政策がとられております。これに要します一九六〇年度予算額は一億三千万ドルでございます。またこれ以外に運航補助というのがございまして、アメリカ政府の指定します海運会社十五社に対しまして、同一航路に就航する外国船運航費との差額を補助金として交付いたしております。一九六〇年度予算額は一億三千万ドルでございます。従いまして、両方合わせまして、邦貨に換算いたしまして約千億円の海運補助を行なっているわけでございます。またフランス、イタリア等におきましても建造価格の二〇%ないし三〇%の建造補助を行なっておりますほかに、建造資金金利が四分五厘程度になるまで利子補給を行なっているというような状況でございます。また西ドイツにおきましては、商船隊復興のために約千三百億円の無利子融資終戦後行ないまして、現在の船主金利負担平均は約三分程度に引き下げられているという状況でございます。またイギリスにつきましては、わが国と異なりまして戦時補償を完全に受けたわけでございますけれども、船舶建造資金として普通償却のほかに船価の四〇%までを無税で積み立てるというような措置を講じているということでございます。
  27. 内海清

    内海(清)委員 世界の主要海運国におきましてただいまお話のような、それぞれきわめて有利な海運助成策が行なわれておる。よくわが国海運の立ちおくれは、海運業界の非常な不況というものは、戦時補償が打ち切られたからだということを言われるのでありますが、しかしこれはドイツもやはり占領政策によってわが国と同様戦時補償が打ち切られたわけであります。他の国は戦時補償がなされておるわけです。日本とドイツが同じように戦時補償を打ち切られて戦後出発したわけであります。ところが片方のドイツにおきましては海運業というものがその後非常に優勢になってきて、今日の世界的な不況においても、ドイツではなお相当の余裕を持っておるという状態だと思うのであります。これは今言われましたような多額の無利子建造助成がなされたということが最毛大きな原因だと思いますが、なお日本とドイツの間にそういう助成策その他で特別な差異がございますかどうか、これをお伺いします。
  28. 若狭得治

    若狭政府委員 わが国とドイツの海運につきましては、その商船隊規模等から見まして、また戦後の事情等から見ましてもほとんど同様な状況でございまして、ただわが国建造というものは先ほど申しましたように昭和二十五年度以降において急激に行なわれて、しかもその金利が国際的な金利水準から見まして非常に高い金利によって建造されてきた。具体的に申しますと、わが国建造資金の大部分を占めております財政資金にいたしましても六分五厘でございますし、また市中資金にいたしましても九分五厘程度金利を支払っているわけでございます。これに対してドイツの海運におきましては、先ほど申し上げましたように戦後千三百億円の無利子融資を行なったというばかりでなく、国内の金利水準も日本のように高金利ではなくて、もっと低い金利融資を受けて海運助成をやっているということでございます。
  29. 内海清

    内海(清)委員 そういたしますと、ドイツ海運においては千三百億というような無利子建造資金助成がされた、さらに金利が非常に安いということ、海運業の面から見ましてわが国金利水準が非常に高いということ、これが最も中心的な問題だと思う。従って今回政府におかれても、との面を解決しなければならぬということで、この法案が出されたと思うのであります。ところが、開発銀行は計画投資においては五〇%以上の融資をしておるのでありますから、これをやれば最もいいのだが、この程度利子補給ではなお世界の金利にかけ離れておることがきわめて大きいと思う。運輸省は予算編成にあたって、海運金利を大体三分五厘程度にしたいということで大蔵省に折衝されたようでありまするが、これが大体五分程度に落ちついたということです。運輸省としてはわが国海運経営基盤強化して、そうして国際競争力を増して国際収支を拡大するという、これがわが国に今日課せられた最も大きな問題であるのにもかかわらず、そういうふうなことで大蔵省との折衝で折り合われたという点については、はなはだ私どもは遺憾に思うのでありますが、この問題について御意見があったら伺っておきたいと思います。
  30. 若狭得治

    若狭政府委員 今御審議いただいております開発銀行の利子補給につきましては、御指摘の通り五分までに船主負担がなりますように、一分五厘の利子補給を行なうというものでございますが、これは実質五年間というふうに期限がきめられております。ところが一方輸出入銀行の金利は現在四分でございますので、四分と五分というものとの権衡がはたしてそれでとれるのかどうかという問題があるわけでございます。それから五年間で利子補給を打ち切って、その後はやはり六分五厘に戻るわけでございますけれども、それと輸銀金利の四分というものとの比較につきましては、予算当時におきましてもいろいろ論議したわけでございますけれども、輸銀の金融というものは短期の資金である、それから開発銀行の資金というものは設備資金で長期の資金であるという問題がございまして、しかも日本海運企業というものは、輸銀のように据置期間のない七年ないし十年というような償還期限ではとうてい返済がむずかしいという状況がございましたので、償還期限については三年据え置きの十三年償還という程度の償還期限にする、従いまして輸出入銀行よりも償還期限は長くする、三年の据置期間を認めるということで、そのかわり金利を多少輸出入銀行より高くするという結論になったわけでございます。なお輸出入銀行の金利自体につきましては現在検討中のようでございまして、今後の国際金利情勢の推移並びにわが国の市中金融の情勢というものを勘案いたしまして、輸出入銀行の金利自体が再検討されるものと思いますけれども、そういう輸出入銀行の再検討という機運を背景として五分という海運金利がきまったということでございます。なお同時に市中金融につきましても、昨年度から復活いたしました利子補給制度がございまして、現在九分五厘の金利に対して約二分の利子補給を行なっておりまして、船主金利負担は七分五厘になっているわけでございます。最近の金利低下の傾向に伴いましてさらに約三厘ないし四厘程度の引き下げが実現されるものと期待いたしております。そういうことになりますれば、わが国計画造船による船主金利負担平均金利は約六分程度になるかと存じます。六分の金利負担輸出入銀行で外国船主が建造いたします場合の金利負担は約五分一厘ないし二厘程度になるかと存じます。その間にもちろん差異はございますけれども、その差異を海運企業の努力でもってできるだけ補っていただきたいというふうにわれわれは考えているわけでございます。
  31. 内海清

    内海(清)委員 輸銀の金利の問題が出ましたが、これは私は予算委員会の分科会で大臣にもお尋ねして、この輸銀の金利を引き上げたらどうかという声も一部にあるがこのことは今日のわが国造船業の立場なり一ことに造船業は御承知のように昭和三十二年以来わが国輸出のトップをいっております。同時に世界におきまする建造量の第一位を維持してきておるわけであります。この造船業にきわめて影響が多い、ことに今日わが国造船業というものはこの輸出船によって大部分まかなわれておる状況なんです。このことは非常な大きな問題であるわけです。この輸銀の金利が安過ぎるのだ、従ってわが国のいわゆる海運金利というものとの均衡上、輸銀の金利を上げるということはむしろ逆である。この海運金利の方を下げる努力をすべきでないか。輸銀の金利の引き上げということは絶対に阻止しなければ所得倍増計画の上から見ましても、国際収支の上に非常に大きな影響を及ぼす。従ってこれはどうしても阻止すべきであるということを申し上げまして、大臣もあらゆる努力をして阻止に当たる考えだという答弁があったのであります。従って輸銀との関係で一分弱の差があるが、これは海運企業自体の努力によってこれを補っていこうという御答弁でございました。今日まで、これは私どもよりも十分御承知の通り、海運企業もかなりの努力はしてきておると思うが、なおこれを下げる見込みがあるのか。この海運金利が六分になりましても、主要海運国海運金利から見れば、なお二分程度の差があるのではないかと思う。そこではたして今後海運企業の基盤の強化ができて、国際収支を十分償っていき、世界の海運界にこれで伍していけるかどうか、もっと私はこの海運金利を下げることを政府当局では考えられるべきじゃないかと思う。これをやらなければ所得倍増に見合った船腹拡充はとうてい困難であろうと思う。これに対する御意見をお伺いいたしたい。
  32. 若狭得治

    若狭政府委員 海運金利の引き下げにつきましては、もちろん今後輸出入銀行の金利状況等を勘案いたしまして、償還期限の問題その他いろいろ再検討しなければならないような事態になるのではないかと考えております。なお海運企業の合理化といいましても、もちろん合理化自体についてはほとんど限度にきているというふうにわれわれは考えておりますけれども、過去の合理化努力の結果が漸次海運会社経営に現われて、船腹増加するにかかわらず、その経費はほとんど増加していないというような状況でございますので、今後船腹増加すればするほど、日本船舶というものは非常に競争力の強いものになっていくというふうにわれわれ考えておるわけであります。また具体的に申しますと、船員費等につきましても現在非常な節約を海運界全体として検討いたしておりますし、また一般管理費、重役の賞与等につきましては、長い間これを辞退しておるというような状況でございます。従いまして一般管理費のごときは、昭和三十三年から相当減っておるというような状況でございまして、これを船腹増加状況に比較いたしますと、そのコストというものはだんだん減少するというような傾向にございますので、そういう面が今後ともさらに強化されるようにわれわれは期待しておるわけでございます。
  33. 内海清

    内海(清)委員 今回の法案によって、大体海運に対する利子補給というものが五年間続くわけです。そうすると今後海運金利というものは約六分、それで持っていって先ほどお話所得倍増計画に見合ったところの四十五年度における千三百三十五万総トン、前半五年におけるその約四割に当たります四百万トンというものが拡充できるかどうか、このままでいって拡充できるというお見通しがありますかどうか一つお伺いしたい。
  34. 若狭得治

    若狭政府委員 先ほど申し上げましたように、まず財政資金につきまして相当思い切ったものを投入するということが必要でありますと同時に、現在の海運企業について、何らか抜本的な方策が実施されなければ、円滑にこの目標は達成できないというふうに考えるのであります。
  35. 内海清

    内海(清)委員 財政資金増加というと、さらに抜本的な何か方策がなければならぬ。その抜本的な方策というもので今お考えになっておるのにはどういうものがあるのですか。
  36. 若狭得治

    若狭政府委員 一昨年来、海運対策としては各方面からいろいろな御意見が出まして、経済団体連合会あるいは運輸大臣の確聞機関であります海運造船合理化審議会あるいは産業計画会議、その他各方面から、海運対策というものにつきまして、いろんな案が出ておるわけでございます。われわれはそういう案を見ながら、最も現実的な方策について、昨年の暮れから本年度予算におきまして、開銀の資金に対しまして三分五厘まで利子補給していただきたいということを予算で要求いたしたわけでございますけれども、そういうような何らかの措置が講じられない限り、この四百万トン建造というものを円滑に実施することは、非常に困難であるというふうに考えております。
  37. 内海清

    内海(清)委員 いろいろ運輸大臣の諮問機関の各審議会その他ございますが、今わが国海運を建て直す中心的な問題は金利の問題だと思う。その他いろいろございますけれども、ほとんどこれにしぼられております。そこでこの法案も出たと思うのですが、三分五厘程度にすれば、わが国海運の基盤も強化され、国際競争力も増して、そうして同時に所得倍増計画に見合うものができるだろうというお考えであったと思う。それで三分五厘ということに大蔵省に要求されたと思うのですが、これが五分になってしまった。結局海運金利というものは市中融資との関係で六分程度ということであります。これを強力に推し進めなければとうていこれはできぬと思う。同時に、他のいろいろな諸外国で行なっておりますような助成策、これがあわせ考えられなければならぬと思います。それらが十分今後実現できるというお見通しがありますかどうか。もしそれがないとするならば、いろいろな計画は全く水泡に帰するものであって、机上の空論にすぎぬと思うのです。この見通し一つ……。
  38. 若狭得治

    若狭政府委員 実は昨年度におきまして本年度予算で三分五厘まで利子補給をお願いしたいということを申し上げましたのは、将来の開発銀行の融資についてのみの問題ではございませんで、現在の開発銀行から船会社が借りております融資残高は約千五百億ございますけれども、それに対しましても、同様にその金利を三分五厘にしてもらいたいという要求であったわけでございます。今後の船舶につきましては、今度の法案によりまして開発銀行の分につきましては五分になるわけでございますけれども、問題は、先ほど申し上げましたように、現在の海運事業自体の基盤が非常に劣弱でございますので、そういうものに何らかの補給を加えなければこの四百万トン建造というものは非常に困難であるというふうに考えておるわけでございます。その施策として、その既往の開発銀行からの借入金についても利子補給をお願いしたいというふうにわれわれは考えておるわけでございますが、この見通しについては非常に困難ではございますけれども、今後各方面の御協力を得て、できるだけその実現に進みたいというふうに考えております。
  39. 内海清

    内海(清)委員 これらの問題につきましては、大臣がおいでになりませんので、いろいろ申し上げてもむずかしい問題があると思うのです。しかし、これはわが国の今後の経済の発展という問題から考えまして、非常に重要な問題だと思うのです。でありますから、どうしても一つ、運輸省はもちろんでありますが、政府部内で強力にこれを進めてもらって、船腹の増強ということを実現されなければ、池田内閣の一枚看板であります所得倍増も空論に終わってしまうのじゃないかというふうに私ども考えておるわけであります。いずれまた機会がありましたら、大臣にもお尋ねいたしたいと思うのでありますが、今回のこの開銀に対します利子補給というものは、金額的にはきわめてわずかであります。しかしこれが今日一応予算の上に現われて参りましたことは、わが国海運界のために非常にけっこうだ、こういうふうに考えるのでありますが、こういう程度では、とうてい今後外航船腹拡充もできぬ。従って、この問題につきましては、来年度はもちろんでありましょうが、本年度におきましても、さらにこれが何らかの方法によって——ことに経済企画庁長官にしても大蔵大臣にしても、これには関心があるのでありますから、強力に進めていただきたい。今のままでは、これは調べれば調べるほど、まことに心もとない気持がいたすのであります。どうかこういう点をお考えいただきまして、運輸省におかれても一つ腹をきめて、経済企画庁や大蔵省と交渉して、そうして強力に進めていただきたい。同時に所得倍増計画の前半五カ年間のいわゆる四百万トン建造ということ、これに対しまして、本年度もこの追加建造ができますような処置を講じていただきたい、こういうふうに考えるのであります。  私はとりあえず、以上をもって質問を終わりたいと思います。
  40. 三池信

    ○三池委員長 次会は来たる十八日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十八分散会