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1961-04-11 第38回国会 衆議院 運輸委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月十一日(火曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 有田 喜一君 理事 生田 宏一君    理事 尾関 義一君 理事 高橋清一郎君    理事 久保 三郎君 理事 山口丈太郎君       伊藤 郷一君    河本 敏夫君       壽原 正一君    鈴木 仙八君       關谷 勝利君    細田 吉藏君       加藤 勘十君    勝澤 芳雄君       西宮  弘君    肥田 次郎君       安平 鹿一君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 木暮武太夫君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 辻  章男君         運 輸 技 官         (港湾局長)  中道 峰夫君         運輸事務官         (鉄道監督局長)岡本  悟君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  廣瀬 眞一君  委員外出席者         議     員 久保 三郎君         議     員 安平 鹿一君         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     兼松  学君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 四月十日  倉庫業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一七八号) 同日  国鉄運賃値上げ反対に関する請願外一件(猪俣  浩三君紹介)(第二〇五六号)  同外八百九十九件(五島虎雄紹介)(第二〇  五七号)  同外百八十三件(原茂紹介)(第二〇五八  号)  同(中村英男紹介)(第二〇五九号)  同外五百五十一件(山中吾郎紹介)(第二〇  六〇号)  同外四百十一件(山中日露史紹介)(第二〇  六一号)  同外五百八十六件(吉村吉雄紹介)(第二〇  六二号)  同外十七件(川上貫一紹介)(第二一〇六  号)  同外千百四十七件(久保三郎紹介)(第二一  〇七号)  同外六百十五件(五島虎雄紹介)(第二一〇  八号)  同外三百十五件(坂本泰良紹介)(第二一〇  九号)  同外四百五十二件(下平正一紹介)(第二一  一〇号)  同外千五十三件(田中武夫紹介)(第二一一  一号)  同外三百五十四件(田邊誠紹介)(第二一一  二号)  同外十五件(谷口善太郎紹介)(第二一一三  号)  同外十六件(志賀義雄紹介)(第二一一四  号)  同外七百九十九件(中村重光紹介)(第二一  一五号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二一一六号)  同外九件(山田長司紹介)(第二一一七号)  同外七百十七件(山中日露史紹介)(第二一  一八号)  同外七百十一件(川村継義紹介)(第二一七  六号)  同外三百五十六件(石田宥全君紹介)(第二一  七七号)  同外十五件(河野密紹介)(第二一七八号)  同外八百十件(久保三郎紹介)(第二一七九  号)  同外六十九件(島上善五郎紹介)(第二一八  〇号)  同外三百九十三件(永井勝次郎紹介)(第二  一八一号)  同外九百五十四件(岡田利春紹介)(第二二  二一号)  同外九百七十九件(多賀谷真稔紹介)(第二  二二二号)  同外二百三十二件(松平忠久紹介)(第二二  二三号)  航海訓練所練習船大成丸沈没による遭難者の補  償に関する請願外一件(松本一郎紹介)(第  二二〇五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  倉庫業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一七八号)  鉄道軌道等事業における公共負担国庫負担  等に関する法律案安平鹿一君外六名提出、衆  法第一二号)  日本国有鉄道新線建設補助特別措置法案内閣  提出第一〇三号)      ————◇—————
  2. 三池信

    三池委員長 これより会議を開きます。  昨十日本委員会に付託されました内閣提出倉庫業法の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 三池信

    三池委員長 まず政府当局より提案理由説明を聴取いたします。木暮運輸大臣
  4. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 ただいま議題となりました倉庫業法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  昭和三十一年に現行倉庫業法が制定されまして、倉庫業の開始にあたっては、運輸大臣の許可を受けしめることといたした次第でございますが、冷蔵倉庫業につきましては、当時の事情により、当分の間は届出制にすることにいたした次第でございます。  しかるに、その後の冷蔵倉庫業の実情にかんがみまして、この際、上記暫定措置を廃止いたしまして、普通倉庫業と同じように施設の改善、業務運営適正化をはかることが必要と考えられるのでございます。  このほか、倉庫業者は、保管する物品の種類を表示させることによって、寄託者及び倉庫証券所持人の保護をはかる等の必要がございます。  以上がこの法律案提出するおもな理由でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに可決せられるようお願い申し上げます。
  5. 三池信

    三池委員長 本案に対する質疑次会に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 三池信

    三池委員長 次に、鉄道軌道等事業における公共負担国庫負担等に関する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。關谷勝利君。
  7. 關谷勝利

    關谷委員 提出者に御質問申し上げたいと存じますが、まず第一番にお尋ねを申し上げたいのは、この鉄道軌道等事業における公共負担国庫負担等に関する法律案、これを提出せられまする際に地方鉄道軌道整備法とのことを考えられたことがありますか。
  8. 久保三郎

    久保議員 ただいま御質問の点でございますが、これは一応考慮の中へ入っております。
  9. 關谷勝利

    關谷委員 そういたしますると、これには一つも触れていないが、どういうふうに処理をせられるおつもりですか。
  10. 久保三郎

    久保議員 この鉄道軌道法との関係でありますが、この法案の全体とこの問題とはもちろん密接な関係はございます。ございますが、一応公共負担の問題に限定しておりますので、この関係は触れておらないわけであります。
  11. 關谷勝利

    關谷委員 これを出される理由として書いておられるのは、そのために経営赤字になるから、それだから公共負担をしろというのが趣旨なんですね。そうでしょう。これをあなた方は提案理由にしておられますが、地方鉄道軌道整備法は、赤字が出た場合あるいは新線建設等をやっていろいろ資金を投資した場合に、六分を限度としての補てんをするのだ、こういうふうなことがきめてあるのです。あれを切り離してまたこれをということになると大へんなことになりますが、その点何も触れずに出しておられるということはまことに不用意きわまると思いますが、どうお考えになりますか。
  12. 久保三郎

    久保議員 お尋ねの冒頭でありますが、この法案提出理由として、赤字経営であるからという理由提案をしたとおっしゃいますが、そういうことには触れておりません。この法案提出した理由は、これは私企業にしてもあるいは国鉄企業にしてもいずれも本来の使命としての公共性は持っておるわけです。それ以外に、先般提案説明で申し述べました通り、いわゆる外的なそれ以外の条件、そういうものによって制約される部面もこれはその根源の責任において解決すべきである。もう少し砕いて申し上げますれば、いわゆる公共性といわれる公共的な使命、これはたとえば産業政策上、あるいは社会政策上、文教政策上、そういうものに基づくものまでも、そういう企業が負うべきでないという思想から出ております。よってその企業黒字であるか赤字であるかの問題とは別個であります。よって御指摘のようになるほど軌道整備法でありますか、この法律によりますれば、赤字であるという場合には法律に基づいて助成をするという規則がございますが、これとはまた別です。でありますから、一つ鉄道企業黒字であっても、たとえば国家政策上通勤あるいは通学の定期が相当に割引をさせられているという現実、あるいは貨物運賃暫定割引、こういうようなものは当然これは政府政策上から出ておるものでありますから、よってその責任政府において解決するという思想公共負担のこの法案の精神でございます。
  13. 關谷勝利

    關谷委員 もう少し地方鉄道軌道整備法を読んでからにしていただきたい。これは公共性があるがために地方鉄道軌道の場合においても、赤字が出た場合には補助する、あるいは新しくやった場合にはこれを補助するということになっておるので、これは公共性基礎として補助するということになっておるのですから、いずれもう一回この点は次の機会に重ねて御質問をしたいと思います。  これを見ておりますと国鉄の場合と私鉄の場合とを一本にしてやっておられるようでありまするが、これを一つにしておられるのは非常な無理があると思うのです。それで私たちもこれを議論する場合には私鉄国鉄とを別々に全く切り離して御質問したいと思いますが、これを一本で公共負担はすべてに、ということは非常におかしい、矛盾がたくさんあると思います。そういうことを前提としてお尋ねしたいと思います。  この前、あなた方は運賃計算を、これは原価主義でなければならないということを非常に説いておられたようでありますが、この原価主義というのはどういうふうなことが原価主義なのか、一つその原則をちょっと承っておきたいと思います。
  14. 久保三郎

    久保議員 原価主義運賃制度審議会でありますか、最近の方針というか、一つのオーソライズしたものの解釈を出しております。この中には当然経常の運営費はもちろんでありますが、そのほかに退職引当金とかあるいは建設のある程度の利子とかあるいはそれの償還とか、そこまで含めるのが当然だという原価主義がございます。この原価主義は一応今の運賃法からいっても原価主義中心であろうということは、これはわれわれもある程度理解しております。ただし公共負担というものと原価主義というものは別個に理解さるべきだと思うのです。たとえば一つの例でありますが、貨物暫定割引というのは、これは原価主義からいきますれば、一つ暫定割引原価を割るということは当然だと思います。この原価を割ること自体が、この総体原価でまかなう、いわゆる貨物暫定割引をしたそのマイナス面を全体の原価で償却するという方法は、形を変えていえば、いわゆる相互扶助的な形で国家政策を行なうということにとれます。そういう思想原価主義から排除すべきである、こういうふうに考えておるわけであります。
  15. 關谷勝利

    關谷委員 お尋ねすることだけを答えて下さい。横道に入らないようにして下さい。  原価主義の中にあなた方が考えておられるのは、もちろん資本に対する利息も含んでおりましょうね。それから適正なる利潤も含んでおるはずですが、それも含んでおりますかおりませんか、まずこれをお尋ねいたします。
  16. 久保三郎

    久保議員 国鉄というかそういうものに限定して考えた場合に、これは公企業でございますから、この場合に適切な利潤というものを含むべきか含まないべきかというのは両論ございます。われわれの考えは、いわゆる利潤というものは当然還元すべきである。ところが国の場合は還元する方法としては株主配当というものがございません、そういう必要はございませんから、それはあげてその企業整備発展に使う。それも満足するほどできておって、その必要はないというのであれば、当然運賃を下げるというところがわれわれの考え方でございます。
  17. 關谷勝利

    關谷委員 これはあなた方はずいぶん妙な答弁をしておられる。資本に対する利子、それから適正利潤は含むのか含まないのか、こういうことを私はお尋ねしておるんで、これをよくお尋ねしておきませんと、これから先議論をしていくのにこれが前提になりますから。国鉄あたり公共負担を五百二十五億三十四年度にやったのを、あなた方が言うのは、これをみな持てというんですよ。ところが、原価主義ということによって原価計算をするのに、資本に対しまする資本利子計算しないとかあるいは適正利潤を認めないというふうな原価主義が、世の中にあるのかということを私はお尋ねするのです。その点はすべての場合にそうでなければならぬと思いますが、あなた方どう考えておられますか。
  18. 久保三郎

    久保議員 一般論としては、御指摘のように、適正利潤を含むのが原価でざいましょう。しかし、先ほど申し上げたように、利潤の中に公共的な性格のものまで織り込まれて、それで消化していくということは、現在われわれの考えではとらない。
  19. 關谷勝利

    關谷委員 私がこれから言うのは、あなたが先へ先へ逃げよう逃げようとして答弁するから(発言する者あり)変な答弁をすることになるんですよ。これは運賃原価計算するということになったら、資本費利潤を見なければならぬのですよ。それを計算した場合には、現在国鉄公共負担として負担しておる額以上の収入が現われてくると思います。それと比較しなければならないという議論がここに起きてくるんです。この議論は当然起きなければならぬと思うんです。そうしてそれでなおかつ公共負担が上回るという場合に、私はこれをやれと言うので、一方で運賃を押えておるから、それで国鉄が非常に無理をしておる、そのために公共負担分が頭を出すから、その面を国庫負担をやれというふうなことは、これは運賃原価主義矛盾するものが出てくると私は思うのですが、そうお考えになりませんか。
  20. 久保三郎

    久保議員 御質問趣旨が半分ぐらいよくわからぬのでありますが、われわれのものの考え方を一応申し上げますと、先ほど指摘がありました、国鉄が言っている五百二十五億全体を負担しろとは、この法案ではいっていないんです。これは現実に対する一つの妥協だとわれわれは考えておる。というのは、一つは、原価計算というものが実は今日まだあいまいであるということからくるわけです。それからもう一つは、資本に対する利潤、これは御指摘通り、当然原価には含まれたければいかぬ。ところが、利潤というものと今この提案している法案というものは、計算が違うということです。別個なものである。それから、御指摘のように、運賃の中に利潤を含んだ原価であっても、それは是認しておるんです。それ以外にマイナス部面国家政策から出たものをその中で消化することは不都合であろう、こういう思想です。
  21. 關谷勝利

    關谷委員 私がお尋ねをいたしますのは、これは資本費計算をしなければならぬのだ。そうしてそれを計算して、それが国鉄あたりの場合には含まれておりません。そうすると、それを含んだ場合にどれだけの額になるか。かりに二兆という資産が国鉄にあったとします。そして資本利子がかりに一割ということになると仮定をいたしますと、原価主義のときには、これは含めるべきであります。そうしてそれを入れますと、二兆の一割ということになると二千億というものが出てきます。それを合わせて適正な運賃原価というものが出てくる。そうして出てきた場合に、公共負担がなおかつそれよりも上回るというふうな場合には、公共負担もこれは負担をしなければならぬ。一般会計からこれを負担すべきが当然だ。しかしそれがその限度を越えない場合には、これは負担する必要はないのではないか。これは一つ考え方ですよ。そういうふうな考え方をいたしますると、大体運賃計算というものが原価主義によっておらないのだ、こういう結論が出てくるのです。そうすると、今度の運賃値上げに反対したというのが筋が通らぬ、こういうことにたってくるのですが、そんなこと考えませんか。
  22. 久保三郎

    久保議員 後段から申し上げますが、運賃決定原則は、關谷委員御承知の通りでありまして、原価主義はなるほどものの考え方中心ではあるが、それ以外の三つ要素がございますから、これはやはり勘案していかなければならぬ。特にわれわれが運賃値上げに反対している理由は、もうすでに申し述べた通りでありますが、いわゆる物価倍増ということで公共料金が先行することでありまして、しかも今お話のように、全体の利潤を入れて原価をまかなえばというお話でありますが、それ以外に、先ほどものの考え方として申し上げたそれ以外に、結局国家政策から出たものを運賃の中で消化することが、われわれ自身のものの考え方としては、これは違うじゃないか。国家政策から出たものは一いわゆる鉄道なら鉄道企業使命というか、企業本来の立場からやることは、これは当然でありましょうが、それ以外に、外的な政府政策からゆえんしたそういうものの負担は、原価主義の中で消化すべきではない。たとえばそれを除いて利潤が出ましたならば、御指摘通り、その利潤はあげてこの国鉄整備拡充に使うべきである。ところが、その整備拡充ももう必要がないほどりっぱになったというならば、これは運賃値下げということをわれわれは考えております。
  23. 關谷勝利

    關谷委員 これは私が言うように、今の資本利子も含めて計算をし、税金等の面についても免除してあるのです。そういうふうなことを計算して、そうしてやった場合に出てくる原価主義運賃というものか、ほんとう運賃なんです。それで利潤が出てくる場合に、その利益の面を国民に還元する。国民資本だから還元するんだということで運賃を下げてもいいし、それから先の方法はいろいろあるのですよ。運賃原価計算というふうなことの場合には、その原価の中には資本利子も含め税金等計算して、そうしてやるのが本来なんです。私企業との比較があるのですよ。今、海陸の輸送分野とかあるいは自動車と鉄道との分野等、いろいろの交通政策を総合的に一貫性を持ってやろうといたしますると、すなわち、もとのような自然の姿に戻そうといたしますると、国鉄運賃が安過ぎるために、すべての総合政策ができないというのが今の状態です。あなた方総合政策というものをよく検討せられたら、国鉄運賃が安いがために、総合政策がみんなくずれていることがわかるのです。そういうふうな検討をしてみられたことがありますか。
  24. 久保三郎

    久保議員 御指摘のように、国鉄運賃がすべての陸運運賃基礎になることは当然だろうと思います。その規模からいっても当然だろうと思う。たとえば石炭輸送一つとりましても、内航船国鉄貨物運賃制度と開きがありますので、結局国鉄が石炭を大半とっている。そうしてこれは内航船に乗らぬというようなことも、当然見受けております。しかしこれは運賃政策上の問題であって、公共負担法の問題とは別個にわれわれは考えるべきだと思う、総合政策は。関連はあるというのは、あなたがおっしゃるのは、原価主義に立脚して運賃制度の中でお話しでありますが、原価主義というものの取り方自体に、今の国鉄運賃の中あるいは私鉄運賃の中にあるようないわゆる公共負担というものを含めて原価主義をやっていることに、矛盾がある。この矛盾を解決することが公共負担の性質である、こういうふうにわれわれは考えておりますので、総合的な体系、いわゆる陸運国内輸送におけるところの相互調整あるいは発展、そのための運賃基礎はどこに置くかという問題は、これは別個の問題とわれわれは考えております。全然関係ないとは言いませんが、この法案とは別個のものであると考えております。
  25. 關谷勝利

    關谷委員 これはあなたとだいぶん見解が違いますが、私たち考えておるのは、計算すべき運賃原価計算なら原価計算という基礎があるべきもので、私鉄でも国鉄でも区別すべきじゃないのです。そして、それで今度利潤が出た場合に、国鉄の場合には公共負担があるんだから、その公共負担の面については利潤によって消化をして、それだけのものはまかなってやれ、なお余りがあったら運賃を安くする、こういうところへ持っていくのが原価主義建前だと私は考えております。そういうふうにしないで国鉄運賃をきめておるから、国鉄運賃が非常に安い線でとどまっておる。そのために、今ほんとう総合交通政策等をやろうとする場合にもできないことになっております。だから、この公共負担の面を論ずる際には、まず適正な原価というふうなことをやって、その中で公共負担が消化できないという場合には一般会計から入れなければならぬですが、適正な原価がきめられた場合にはそれで余るようなことに私はなってくると思うのです。公共負担をその中で吸収をしておいて、さらに余ったものを運賃値下げとかいろいろ政策的な面へ持っていく、こういうふうなことにすれば、私はこれがほんとうの行き方であると思うが、あなたの意見を聞かせていただきたいのです。
  26. 久保三郎

    久保議員 お話は、適正原価をきめて、その中で利潤が出れば公共負担にこれを充てようという御論法のようでありますが、われわれは公共負担利潤を充てるのではなくて、そういう原価計算の仕方じゃなくて、公共負担が国の政策から出ているのでありますから、これが前の国鉄のようでありますれば、そういう一つ政策を実行する機関として国鉄はあったかと思いますが、今日は国鉄企業体として一つ独立体をなしておりますから、そういうことになりますれば、当然国家政策とは切り離すというのが建前ではなかろうか。でありますから、利潤が出ますれば、先ほどから申し上げるように、これは当然輸送力拡充なり何なりに振り向けて、旅客公衆に還元することが国家企業として当然ではなかろうか。でありますから、少し語弊がございますが、その中にはみじんも公共負担的ないわゆる社会政策的なものは含まれないでもいいじゃないか。もしそれを強要するならば、その面は政府が補充しろ、こういうことだと思います。というのは、公共負担原則からいっても、社会政策的なものを旅客なり荷主が負担することに矛盾がありはしないか、こういう思想です。
  27. 關谷勝利

    關谷委員 今のように言われますと、国鉄独立採算だけをやっていて、公共性の面は一般会計から負担しろという結論になるようでありますが、私たちはどうもそれには賛成しかねるので、私は今の国鉄運賃原価計算のやり方に問題があると思っております。それをほんとう計算をしていって運賃をきめたならば、そこで私は公共性も発揮ができるし、独立採算というふうなものもやっていけるし、さらに公共負担も吸収できる。だから、そういう形態に持っていくべきで、今の運賃決定方法というものは間違っておるんだ、こういうふうな気持で尋ねているのです。あなたは運賃決定方法というものは間違っておるというふうに考えませんか。
  28. 久保三郎

    久保議員 適正原価のきめ方でありますが、この原価は、先ほどお話がありましたように、運賃決定中心的な柱ではあるけれども、その他の三つ要素を勘案するところに、国家企業としての国鉄運賃があると思います。だからそれ以外のものはこの中にとるべきじゃないと私らは考えております。
  29. 關谷勝利

    關谷委員 押し問答のようで、行き違い、行き違いで並行線をたどっておりますので、その点あたりはその程度でやめたいと思います。  国鉄のいろいろな問題が議論せられる際に、公共負担一般会計負担すべきものであるというふうな議論が出ておるのでありますが、道路あたりでも、これは国がやっておるとかいろいろ言いますけれども、その財源を考えてみますと、ガソリン税というふうに、やはり利用者というふうなものが持っておるわけでありますので、公共負担利用者負担すべきものである、そういう面から運賃面あたり考えるべきものであるという点等から考えてみても、私は国鉄運賃決定方法に非常な誤りがあるのだ、そしてこれは改正すべきものであるというふうなことを考えておりますが、そういう面からも考えてみたことはありますか。
  30. 久保三郎

    久保議員 道路港湾はそれぞれ利用者の一たとえは道路だけお話がありましたが、なるほどこれはガソリン税負担するということがございましょう。その場合そのガソリン税は当然運賃に入ってくるから、受益者負担であるという問題もありますが、それではそれだけが全部そうであるかというとそうではない、こういうふうにわれわれはとっておるわけです。だからたとえば道路にしても港湾にしても、なるほど受益者負担ということも当然ありますが、そればかりでこの整備がされておるわけではないのは御案内の通りであります。でありますから、やはりそういう点のバランスをとるということも一つ考えなければいかぬ。こういう意味からも、これは妥協的な産物としてこういうものを出しておるのであります。でありますから、繰り返し申しますが、国鉄の主張してきた年間公共負担が五百二十五億あるというところをとらぬのは、そういうところにあります。
  31. 關谷勝利

    關谷委員 それから私が今公共負担一般会計から持つというふうなことに反対する理由は、運賃というものを物価指数等から考えますと、格安なところにあるわけなんです。これは今までいろいろ物価政策とかなんとかいう面でこういうふうにゆがめられた運賃でがまんしろというふうなことになっておりますが、私は物価指数等の面から言いましても適正なところへ直して正しくされるということが必要だと思います。そして公共性という面から今度はその公共負担というものもその中で消化をしていくというのがほんとう国鉄のあり方だろう、こういうふうに考えておりますが、その点についてはあなたはどういうふうに考えられますか。
  32. 久保三郎

    久保議員 特に物価指数の問題からこの運賃の問題についてお話がありましたが、物価指数のとり方には御案内の通りいろいろございまして、物価指数とたとえば鉄道運賃そのものと比較した場合には、なるほど御指摘通り非常に安いレベルにある、こういうことは言われるわけです。ところがこのこと自体で、だからこれは上げてもいいのじゃないかという論法は、ちょっと私には理解しがたい。と申し上げますのは、物価指数は平均でありますから、たとえば特定の方が十年に一ぺんぐらい使う品物が一割上がるのに比べて、毎日使わなければならぬ品物が一割上がるのは、指数は一割だけの値上げでありますが、影響するところは大へん大きいのであります。だからそういうことも考えますと、物価指数の云々ということは、とりょうによって違います。運賃決定は、やはり何といってもすべての産業、経済の基盤でありますから、これはそういうように簡単に割り切るものではないだろうとわれわれは考えています。
  33. 關谷勝利

    關谷委員 十年に一ぺん使うようなものは物価指数の計算基礎には入っていないんです。日常の生活必需品が基礎になって、それを平均してこの物価指数はできておるのです。その平均の仕方がかりに悪いとしましても、出ております物価指数は昭和十一年に比較いたしますと三百三十六倍です。それに対しまして、改正後の運賃が、貨物は二百十四倍、旅客が百七十九倍となりますと、これはけたはずれの低い指数なんです。そういう点から考えましても、物価指数に近くするように計算していけば、こんな公共負担国庫負担をやらなくても、適正な運賃をきめておけば、公共企業体としての公共性も持たせ得るし、独立採算もやっていけるので、こういうのが本来の方法ではなかろうか、それについての御意見を伺っているのです。
  34. 久保三郎

    久保議員 十年に一度ぐらいしか使わない品物というのは、たとえば家を建てるなんというのは三十年に一。へんくらいでしょう。ところが木材の指数はだんだん上がっていく。こういうのが物価指数の中に入りますから、そういうことを一例に申し上げたのです。いずれにしましても——物価指数でだけ——もちろんこれも御案内の通り無視してのきめ方はないと思います。ところが無視してはきめられないと同時に、もう一つは、物価指数だけに比重を置いて運賃決定をすることは、日本の経済の動脈を握っておるところの運賃ですから、そういうようにはきめるべきではなくて、むしろ先ほど申し上げたようにやる、私たち提案している公共負担というものの結末をつけて後において、経営が健全であるかどうかということをきめる、物価指数とにらみ合わせて運賃決定するというのが建前ではなかろうかと考えております。
  35. 關谷勝利

    關谷委員 それも一つ考え方かもわかりませんが、ほんとうを言えば、物価指数を無視してもいいんだというような議論には、私たちは賛成しかねるのです。そのために鉄道へ荷物が集中して、いろいろな施策をやらなければならぬというふうなことにもなってきて、不自然な輸送が行なわれておる。ほんとうは自由に選択のできるような平等の条件で輸送されるのが原則なんですよ。同じ条件の中で選択さすということになってくると、ほかの物価の指数に比例して運賃が上がるべきはずであるのに国鉄運賃を無理に安く押えておる、そして安い方へ流れていくということで輸送戦線に異常がある、こういうことになってきておるのです。これを総合的な施策をやろうといたしますると国鉄運賃が障害になることは先ほども申し上げましたが、そういうことになっておるのです。だからこれは公共企業体として独立採算を維持しよう、公共性も発揮しようとするときには、原価計算による運賃が出てきたならばそれでまるくおさまってくるから、そういうふうにすべきではなかろうか。これは理想論かもわからないが、現状では国鉄運賃を、はね上げるということではないが、そういうふうにすることで公共性ということについても、公共負担というようなものもその中で消化ができるし、なお余力のあるものはサービス改善、施設の改善へも回していける、いろいろなものに使っていって国民に還元できる、そういうのが本来ではなかろうか、こういう意味なんです。
  36. 久保三郎

    久保議員 自由選択というお話がございましたが、自由選択も一応うなずける論法でございますけれども、自由選択以前に、日本の交通全体の総合体系を確立する問題として、やはり別個な観点から考える必要があると思うのです。  それからもう一つは、自由選択とおっしゃいますが、その場合に想定されるのは現在二重投資の問題、三重投資の問題がございます。そういうものも含めて総合交通体系を作るべきです。その総合体系に基づいていわゆる輸送用というものの配置、この配置を考え運賃が当然出てくるべきだ。ところがそれは政府自体においてもまだそういうものは出ておらぬというので、現実に非常に混乱してくることは御指摘通りであります。  もう一つは、公共性を発揮することが可能ではなかろうかというお話がありましたが、これは前回提案理由の補足説明のときにも申し上げましたが、公共性というのはいかなるものであるかという問題が、大別して二つございます。一つは、先般申し上げた通り国鉄がいわゆる鉄道企業なるがゆえに持っている固有の公共性がございます。この固有というのは、たとえばダイヤ通り列車は運行せねばならぬ。あるいは運賃も御案内の通り運賃法というものがございまして今日制約がある。勝手に自由に運賃設定はできない。あるいは人や荷物によって差別をつけられないというようなこともあります。あるいは鉄道を勝手に改廃もできない、こういうことであります。こういうのがわれわれが言うところの固有の公共性、こういうふうに考えておるのであります。今提案して御審議をいただいているのはそれ以外の公共負担というもの、これは外的条件によって公共負担をしいられているということであります。外的というのは、先ほども申し上げたように、国の政策としてあるいは社会政策産業政策あるいは文教政策、こういう政策から出てきたものであるから、これが国鉄が二十四年以前のように国家一つのワク内に入っているならば別です。最近では、御案内の通り二十四年以来国鉄企業体として一つの制約、独立採算のワクの中でやっている。しかし、この政策の実施は政府責任である程度めんどうを見るのが当然ではなかろうかという思想であります。そういう意味でありますから、直ちに適正運賃というか御指摘のような運賃のきめ方によって、その利潤から公共負担をやっていくのが正しい、そういうやり方についてはわれわれは反対である、こういう考えです。
  37. 關谷勝利

    關谷委員 根本の考え方が違っておるわけです。一方では政策的にまず運賃を押えていけというふうなことで押えておいて、そうしてそこで公共負担が出てくるから公共性の分だけはこれは政府で持て、こういうふうなことでありますが、これは利用者と利用せざるものとの間の不公平といいますか、利用しないものまで全部が負担しなければならぬというよりは、やはり利用する者の中でこれは負担していく、道路あたりでもガソリン税でほとんど利用者負担しておるというふうな結果になっておるのですから、私はその面は運賃でまかなっていって、そうして適正な運賃をとって、それによってその中で公共性も生かしていこう、独立採算も生かしていこうというのが、ほんとうの姿ではなかろうか、運賃をまず押えてかかっていくというところに矛盾がある、運賃決定の方向に誤りがある、そういうふうな考え方を持っておるのです。この点あなたとは根底の思想の違いから出てきておる。これは仕方がないことで、ここらで打ち切りましょう。これからいろいろ派生してお尋ねしたい問題がたくさんありますけれども、これはやはり根本的に考え方が違いますから、私はあなたの言うことには納得しない、あなたも私の言うことに納得しないような答弁をしておるから、ここらで幾ら言ったって水かけ論になりますので、一応打ち切ります。
  38. 三池信

    三池委員長 勝澤芳雄君。
  39. 勝澤芳雄

    勝澤委員 今、關谷委員提案者の方との間での重要な論争点におきまして、そんなに御意見が食い違っておるわけじゃないようです。食い違っておるようにお互いに見せているだけで、議論を打ち切られて大へん残念だと思いますが、まず最初に私は、今回の運賃値上げに対しまして当然この問題が  一つ議論中心になってきた今日この負担法案を出されたということは、まことに時宜に適したものであるし、今日の国鉄をどういうふうに再建をしていくかということになれば、当然この問題を俎上に乗せて、これについて態度を明確にして、その上でこそ運賃値上げをすべきかどうかという論争をすべきであった、こう思うのです。このことは、やはり国鉄自体もこの公共負担というものをして、運賃の値上げをしなくてもやっていけるんだということが当初の計画に出されておったように私は聞いておるのであります。そういう点からいきますれば、野党である社会党が、数が少ないといいながらも、やはり筋を通して、そうして国民の負託にこたえたこの提案は、まことにけっこうなことでありまして、また本委員会におきましてもこの問題を取り上げて、そして運賃法が通った今日でさえもこの問題について論議をしていただくということも、今後の国鉄運賃なりあるいは国鉄経営のあり方からいっても、まことに画期的なことであり、特に今日諸外国におきましては、こういう方向に国鉄経営がなっておる現在においては、まことに必要なことだ、こう思うわけでございます。  そこで私は、公共負担という法案を出すに至った経過につきまして、その基本的なお考えについて、提案者の御説明を承りたいと思います。
  40. 久保三郎

    久保議員 ただいま御指摘になりましたように、この法案提出しようという考えを固めたもとは、御案内の通り運賃値上げの問題も出ておりますが、長年国鉄の運営については問題がありました。特にその中でも、国鉄整備拡充に関連して、一方公共負担の問題が今日大きくクローズ・アップされておる。これは昭和二十四年に国鉄が公共企業体としての編成がえをしたわけであります。それは御承知のように、当時いわゆる労働関係からこの公共企業体に衣がえをして、実際の国鉄企業としての運営については何らの措置がとられないまま、従来の経緯をそのまま引き継いでおります。そういうところに大きな矛盾が今日きておる。御指摘通り、その矛盾を解決し、しかる後運賃値上げをすべきかどうかということを検討するのが順序であろうということで、われわれはその前提条件であるところの公共負担に結末をつけていこう、これが正しい姿であるというのが、本法案提案した考えであります。
  41. 勝澤芳雄

    勝澤委員 この公共企業体としての運賃のきめ方についての意見というものは、先ほど關谷委員考え方をお聞きいたしておりますと、まず適正原価をきめて、そしてその中で公共負担限度をきめていくんだ、こういうお話を聞いておったわけであります。今提案をされている法律案を見てみますと、これは今日の国鉄公共負担というものがもう限度にきている、それを補正すべきである、こういうところにきているわけでありまして、従って、やはり公共企業体としてのものの考え方というものは、私は關谷委員考え方もそれから提案者の考え方もそう違わないと思うのです。そこで、公共企業体としての運賃のあり方というものについて、今の論点から言うならば、私は一致点というものは見つけられるように思うのですが、国鉄の当局としての、今の論争の中から公共企業としての運賃原価というものはどういうふうにお考えになるべきかという点を少し国鉄の方から御説明願いたいのです。これは運輸大臣も、この前の運賃法の論議の中で、国鉄の意見と運輸省の意見は違うのがあたりまえだ、こう言っているのです。ですからそれはあたりまえなんですから、国鉄はどう考えるか、しかしそれが運輸省なり国の方針でこうなったんだ、こういうことでいいわけですから、一つ公共企業体としての自主性を生かして、自主的な独立性のある御答弁を賜わりたいと思うのです。
  42. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 国鉄の立場といたしましては、現在運賃のきめ方については運賃法という法律が出ておりまして、その法律にございます四つの原則を総合的に考えまして運賃というものはきめらるべきものだというふうに思っております。
  43. 勝澤芳雄

    勝澤委員 これは監査の報告の中でも、数回にわたって指摘をされていると思うのです。それは、公共負担がある。これは漸次解消すべきである、こういう意見が出され、国鉄も漸次解消するように努力をしましょう、こういうことが言われておるのです。このことは、私はやはり運賃値上げ前提としては大へん重要なことだと思うのです。このことについて国鉄は同意をしているわけでありますから、公共負担についての考え方というものは、一体国鉄運賃原則というものは、やはりこの際独立採算というものをもう少し十分考え運賃にすべきであるというふうに、今日の傾向というものは、その監査報告なりあるいは国鉄の態度というものは変わってきておる。またそうなっていくというふうに思うのですが、その点どうなんでしょう。
  44. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 公共負担の問題については、いろいろ監査委員会からも御意見を承っておりまするし、諮問委員会からもいろいろ御意見を伺ったわけであります。が、しかし、これは現在の国鉄限りではどうすることもできないようになっております。それで、いろいろそれらの委員会等から御指摘を受けました諸点につきましては、私どももさらにいろいろ検討いたしておりまするが、そういうような点につきましては政府の方にも意見を申し上げまして、いろいろと御検討をお願いいたしておるようなわけでございます。
  45. 勝澤芳雄

    勝澤委員 監査委員会や諮問委員会が出されている公共負担というものを是正するという方向については、国鉄としてもこれは賛成であるわけですね。
  46. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 反対はいたしておりません。
  47. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そうしますと、一体そういうふうに公共負担がある、その公共負担は今日の国鉄経営の中ではだれがその公共負担をされておるというふうに理解しておりますか。
  48. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 これは、いろいろ学者の方々やなんかむずかしいことをおっしゃっておられますので、なかなかよくわからない点もあるのでございますけれども、そういうようないろいろな要素運賃全体の中で原価に込めておるように思っております。
  49. 勝澤芳雄

    勝澤委員 副総裁、それは運輸大臣も承知をされておるわけですから、何も遠慮する必要はないと思う。これはもうごうも遠慮する必要はないと思う。ですから、もしそんなことを遠慮されておったら——兼松理事が仲裁裁定を実施するためには定期運賃を上げにやならぬということを言ったとかということが新聞に報道されて、大へんこれは重大な問題になっておるようであります。しかしそれは公共負担という問題と考えてみれば簡単なもんなんです。ですから、そういう点は私はこの際やはり明確にした方がよろしいじゃないだろうかと思うのです。ですからこの公共負担になっている、これは是正しなければならぬというのは、国鉄の諮問委員会なりあるいは監査委員会なり、あるいは国鉄当局もそれを言っている。だれが一体負担をしているかといえば、これは公共負担をされていないほかの乗客なりほかの貨物の荷主がみな負担をしているわけであります。十円で行けるところをその人たちは二十円で乗らされているわけでありますから、それは十円に戻せ、あとの十円はこれは利用者に——倍とることでなくて、それは国の政策の中でやっておるのだから、それは国で負担すべきであるという議論というものは、これは私はまことに当を得たものだと思うのです。それがなぜできないかというのは別の問題だと思うのです。国の政策の問題だと思うのです。ですから国鉄はそれを割り切って、ここ数年来、その国鉄の諮問委員会やあるいは監査委員会の報告をてこに、公共負担公共負担ということを言ってきたわけでありますから——実はこの公共負担法というのは、私は国鉄から、あるいは政府から出すべき法律だったと思うのです。それが今日野党の社会党から出たということは、まことに遺憾ではありますけれども、この際やはり国鉄は一緒になってこの法律を通すために努力することが、国民に対する負託にこたえる道だ、こういうふうに思うんですが、どうなんでしょう。
  50. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまのお尋ねのお言葉の中に、国できめるべきものと国鉄がきめるべきものとおのずから区別があるというようなお言葉がございましたのですが、このいろいろ諮問委員会とか監査委員会等で御指摘のあります公共負担の問題、これをどうするかということは、やはり国鉄国鉄だけできめられることでございませんで、それらの委員会やあるいは諮問委員会等の御指摘の中にも、そういうような問題については政府でもよく考えていただくようにするようにということは書いてございます。それで国鉄自身がまずやらなければならないはっきりしておりますことは、国鉄の輸送力を整備して、国民経済の発展にじゃまにならないように、隘路にならないようにやっていくということは、これはもう当然私どもがやらなければならぬことでございますので、それに必要な財源の一部に利子のつかない金が得られるようにしていただきたい、それには運賃の改定ということもございまするし、公共負担あるいは税金の一部とかいうようなものを政府でめんどうを見ていただくという方法もあるかと思います。そういうような点を総合的に一つ御判断いただいて、私どもの進むべき道をお示しいただきたいということを、運賃法改正を御審議願います前に、前段において政府の方に申し上げました結果、政府がいろいろ御検討下さいまして、この際はまだほかの物価に比べて運賃が比較的低位にあるというような関係もあるし、いろいろ理論的に問題はあるかもしれないが、この際は今回御決定を願った程度の運賃値上げて必要な財源を調達すべきであるという御結論になったようなわけでございまして、私どもは私どもがやらなければならない輸送力の整備ということに全力を上げて邁進いたしたいと思っておるわけでございます。
  51. 勝澤芳雄

    勝澤委員 国鉄と私たちの意見というものは大体一致したようでありますので、次に大臣に一つお尋ねをしたいのですが、よろしゅうございますか。——今度の運賃の値上げの問題の中で全体的にいわれたことは、やはり、何といいましても、公共負担という問題が相当世論となって指摘をされておったことだと思うのです。これは大臣も御承知の通りだと思います。特に、たとえば貨物の特殊割引というような問題は、大臣も何回も何回も御苦労をされて、そのつど非常に関係各方面からの激励を受けて、何回も何回もまた延期をしてきたものだと思うのです。こういうふうに見て参りますと、やはり大臣自体としても、この公共負担というものについては、やはりある程度何とかしなければならぬというふうにお考えになっていることは、これは今まで努力をしてきた事実の中から判断できると思うのです。そこで、やはりその限度の問題だと思うのです。ですから、ものの考え方としては、公共負担というものについては、この際、やはり国の方である程度めんどうを見ていかなければならぬということは、お考えになっていると思うのです。もし国がめんどうが見れないとするならば、その暫定割引というものを徐々にやめていくべきだ、こういうふうにお考えになっているようでありますから、うらはらの関係だと思うのです。従って、基本的な問題で、今度社会党が提案をしている公共負担についても、大臣はそうまるきり反対だということは理論的に言えないと思うのですが、大臣どうなんでしょう。
  52. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 今回、ただいま議題になっておりまする法案は、いわゆる国鉄を初めとして、その他のいろいろの鉄道軌道などが行なっておりまする公共負担について、国家負担等を行なうことが適当であるという御趣旨のこれは法案でございます。ただいまの御質問がございましたので、考え方を申し上げますと、日本国有鉄道はもちろんのことでございますが、その他の鉄道軌道にいたしましても、これはあるものは公共企業体であり、あるものは営利企業体でありますけれども、しかしその鉄道とか軌道とかいうものをやっておりますものは、おおむねの考え方としては、やはりこれは公共性を持っておるものでございますので、そういう事業の性質から公共負担ということをなすべきものであって、これがその鉄道軌道等事業経営の現在から見て、この程度のことは公共性として公共負担をすべきが妥当なものであるという限りにおきましては、その企業公共負担をやってしかるべきものであると私は考えるのであります。  そこで国鉄としては、御希望が、なるべく公共負担はやりたくない、これは経理の健全をもっと高めていく上から見て、そういう希望があることはもちろんでございます。また国鉄をいろいろ経営診断などをなさった方々は、国鉄公共負担ということについては、これを是正すべしという御議論のあることも、そのお立場上当然だと私は思います。しかし、ただいま申し上げましたように、国鉄にしても、他の鉄道軌道にいたしましても、その事業公共性から流れ出ます公共負担というものが、その事業経理の現在から見て、この程度ならばがまんできる妥当適切なものであるという程度でありましたならば、これは負担していくのが、その事業公共性から見て当然だろうというふうに考えております。  政府といたしましては、今問題が国鉄に限られたようでございますが、国鉄負担いたしておりまする現在の公共負担というものは、この程度ならば国鉄経営の上から見てまだがまんできるところではないかというふうに考えておりますので、一方では現在の日本の財政の実情等を考えまして、今にわかに国鉄その他の公共負担を財政負担でまかなっていくというようなことには、御熱心な御主張ではございまするが、にわかに賛意を表することができないことはまことに遺憾といたしておる次第でございます。
  53. 勝澤芳雄

    勝澤委員 大臣のお考え方はよくわかるのです。そこで私は、しかし大臣の考え方とそれからやっている行動というものは、それは大臣は言えないだけであって、意見は何も私と変わらないのですから、それはあなたは言えないなら言えないと、ここで言ってもらえばけっこうだと思うのです。たとえば暫定割引というのを、われわれはこれは政策料金だから廃止すべきだが、廃止することができない、だから国が負担すべきだ、こう言っているわけで翻す。あなたの場合は、これは割引運賃というものは政策運賃だから、もう漸次やめていきたいとあなたも言っているわけです。私たちはそれは廃止することができなかったら国家負担をしなさい、こう言っているわけですから、何も変わらないのです。ですから、それをいさぎよく公共負担にせよというか、暫定割引をやめてくれというかの違いだけなんです。ですから、あなたの場合一番やりいいことは、暫定割引を廃止してくれろなんと言ったら、これはこの間と同じように農林水産、商工とか、ああいうのが寄ってたかってごちゃごちゃになって、また何か延ばしたのですね。六月だかに延ばした。あれは何回延ばしたか、もう五回か六回じゃないですか。それを当分の間暫定々々という。私は暫定というのはそんなに続くものじゃないと思うのです。しかしそれはやはり政治の中でしょうがないですから、それはよろしい。しかしこれは矛盾なんだから、この矛盾を解決する道はどうだというのを今度は考えて、こうすべきだというのが運輸大臣の仕事だ、こう私は思うのです。それを運賃の値上げにかぶしてくることは、これはあなたも好んでいないのですから、間違いだと思うのです。国鉄経営のできる範囲内でとあなたは言っているのですけれども、何も国鉄経営がやっているならそんなに私は文句はないと思う。しかし、だれが負担をしているかといえば、毎日あの棒で押し詰められているお客です。これはこの間参議院の運輸委員会で鉄監局長の話を聞きますと、鉄道営業法に違反してないというけれども、棒で押されて、定員一ぱいぎゅうぎゅう詰められているお客が、これじゃ困ると悲鳴をあげて叫んでいるのが現実の姿なんです。結局そこにしわが寄っているわけでありますから、一つやはりほんとうの気持を——ここは運輸委員会だけなんですから、別に農林の人たちや、あるいはほかの人たちがいるわけじゃないので、ほんとう国鉄がどうなっているかということから考えたならば、やはり公共負担の方向に漸次考えていかなくてはならぬときにきているというくらいのところは大臣御答弁できるのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  54. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 国鉄につきましてまことに愛情あふるるようなお話を伺って、国鉄当局としては非常に感謝しておるところであります。この間も多分参議院の運輸委員会だったと思うのですが、大蔵大臣がおいでになりましてお話しになって、将来そういう国家財政で負担しておるような部分がだんだんふえるようなこともあり得るということは考えられるが、しかし、まだその前にやはりやるべきことは、一体国鉄経営が今の状態でほんとうにいいのか、もっと国鉄をふるってみて、国鉄経営を何かの基準をもって一つ診断をしてみた上で、これじゃどうも公共負担をさせておくことは条理の上から見て不適当だというような結論が出たときに国家としてそういうようなことを考うべきようなことがあるじゃないかというような含みのあるお話がありましたので、私もそういうふうに今日でも思っておるのでございますが、ただ、国鉄だけの今の経理内容をよくしていこうというようなことだけに立脚、着眼いたしましてものを考えて参りますと、今の暫定割引のものとか、その他の公共負担の問題ということについていろいろ御議論がここで出るし、私としても議論をいたしたいと思いますけれども、やはり、いろいろ日本の産業全体や経済全体に広い考え方を持って視野を広くしてみますと、今の暫定割引というようなものを今にわかに撤廃していくとか是正していくとかいうようなことは、これはどなたが運輸大臣になっても政治的になかなか困難じゃないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。国鉄というものを指導誘掖してこの経済を健全にしていくという運輸大臣の立場と、また国務大臣の一人として運賃の影響の及ぼすところが日本の産業経済にどうあるだろうかということを視野を広くして見る場合とは、おのずからそこに違いのあることもやむを得ないことだろうと思うのでございまして、現在におきましては、先ほど私が申し上げましたような筋で、今の国鉄負担しております公共負担というものは、直ちに国家財政においてこれを現在新線建設の借入金の利子補給をやっておるとか、あるいは御承知の戦傷病者の無賃乗車の補助をやっておるとか以上に踏み込んでやるべしということについては、にわかに賛意を表することができないのが現在の財政の実情であるということを申し上げたようなわけであります。お前の気持はどういうところにあるか察せられるとおっしゃられれば、どうにでも御推察を下さってけっこうでありますが、速記録に残りましたことを私の意見として一つお認めを願いたいと思います。
  55. 勝澤芳雄

    勝澤委員 大臣の大へん美しいといいますか、政治的の御答弁といいますか、まあよくわかるわけですが、たとえば今の暫定割引を取り上げた場合も、やはり政治的にこれはたれが運輸大臣となってもなかなか困難だと言われればその通りだと思う。また運輸大臣という立場からだけでなくて、国務大臣という立場から考えるならば、物価の問題を考えるとなかなか是正できないことだと思う。そのことはその通りだと思う。片方はその通りでいっていながら、片方では運賃値上げをやって、運賃値上げの方は運輸大臣でも国務大臣でもないわけですから、その辺は矛盾なんですよ、大臣。その矛盾をだれが負担をしているかといえば庶民なんですから、別に国鉄が背負っているのではないわけです。ですから先ほど閾谷委員は、輸送原価というものをきめて、そしてその中から今度は公共負担をきめよう、こう言われているわけでありますから、別にああやった場合、こうやった場合においても、そんなに変わりはあるものじゃない。ですから行き詰まっておる現実というものが今ここにきているわけですから。そこであまり突っ込んでも、答弁する大臣も大へんでございましょうから、利子補給というものについての——今度できましたけれども、考え方、あるいは今おっしゃいました戦傷病者に対する考え方、これはどういうお考え方なのでしょうか。
  56. 岡本悟

    ○岡本政府委員 鉄道新線建設に対します利子補給でございますが、これは御承知のように、鉄道の新線建設はそれ自体相当巨額の金がかかりますし、また経営していきます場合に大部分が赤字である、従いまして、国鉄経営に対しまして相当の圧迫になっておることは今さら申し上げるまでもないのでございます。そこでこういった負担を少しでも軽減しようというのが今度の新線建設補助法案のねらいとするところでございます。また戦傷病者の無賃乗車に対する国庫負担も、これもやはり政策的な運賃割引といいますか、あるいは無賃乗車といいますか、そういうことを国鉄負担させておりますので、それを国が肩がわりしてやろう、つまり一種の公共負担国家が背負っていく、こういう格好であろうかと存じます。ただこの際申し上げておきたいのは、よく公共負担国庫負担の問題につきまして、欧州各国の鉄道の例が引き合いに出されるのでありますけれども、(「まだ質問しないよ」と呼ぶ者あり)大へん言い過ぎになるかと存じますが、ちょっと申し上げておきたいのです。御承知のように、欧州各国においては、なるほど公共負担国庫負担を一部いたしておるところはございます。しかしながら、そうかといって、それじゃ運賃改定、つまり利用者負担によってその財政を維持していないかと申しますと、やはりフランスにおきましてもあるいはドイツにおきましても利用者負担も願っているわけです。ただこの利用者負担という原則がくずれて参りましたのは、あるいはなかなかそればかりにたよっておりましてはできなくなって参りましたのは、対抗機関の関係から利用者負担に対する限界がきておる、そういうことから利用者負担による、つまり運賃値上げによる増収によってその健全性を維持するということができなくなりつつある、むずかしくなりつつあるというのが現状でございますが、そうかといって、やはりフランスにおきましても、ドイツにおきましても、一部は運賃改定によりまして利用者負担を願っております。これが真実の姿ではなかろうか、かように考えますので、この際公共負担国庫負担につきまして、欧州各国の例をよく出されまして、欧州ではすべて国庫負担によっているのだという説が一部に出ておりますので、そこらあたりから論議のこんがらかりが出て参りますといかがかと存じまして、申し上げたような次第でございます。
  57. 勝澤芳雄

    勝澤委員 鉄監局長、私たちの言っていることは運賃利用者負担しろということを言っているわけです。何も国で負担せいと言っていないわけです。しかし、輸送原価が十円なら、十円で運びなさい、輸送原価が十円であるにかかわらず、農家やセメントの運賃を東京の通勤者が払うようでは困る、こう言っているわけですから、その点は何でもかんでも国で負担せよというようなPRの仕方というのはちょっと極端だと思うのです。適正な運賃を払って、なおかつその上に不当な運賃を払わされている。これをとりなさい、こう言っているわけです。これは諸外国の例も同じことでしょう。特に今社会党から提案されている案は、ヨーロッパ各国に比べたらうんと低いやつで、せめて保守党の政権ですからこの程度はできるだろうと言っているので、予算も、国鉄ですと今までは五百二十五億と言っておりましたが、これは運賃が改定されておるにかかわらず三百億なんです。まことにお粗末な、ほんのわずかな負担なんですから。こういうふうにお考えをいただきたいのです。提案者はどうなんでしょう。
  58. 久保三郎

    久保議員 鉄監局長から論議を巻き起こすようなお話がございましたので、提案者としての今までの検討の結果を申し上げますと、なるほど鉄監局長のお話は一面をとらえておりますが、全体ではないということであります。結局、公共負担に限界がきているから、だからやるのだ、こういう理論というか、そういう見方で終始されておるようでありますが、限界にきているということは、どこの鉄道も同様でございまして、いわゆるフランス、イタリアあるいはドイツ、こういう国の実態も日本の実態も、その規模は違うかもしれませんが、模様、情勢は大体同じであります。いわゆる鉄道が独占性を失ってきたというのは、これは世界各国の傾向であります。これは当然です。道路あるいは自動車、こういうものの発達に従って、鉄道の独占性がなくなってしまった。だから独占性の中で今までは公共負担をやってきた。そのかわり日本の国有鉄道はいわゆる国家の直接の一つの機関としてそういう意味でやってきた。ところが日本の国鉄は公共企業体であるし、かたがたいわゆる新興競争機関というものが発達してきて、そこに独占性が失われてきたということがある。だから西洋各国に比べて、これが条件としては何ら違いがない。  それから御指摘のように、公共負担は全部が国家でやっているのじゃない、その通りです。われわれの提案したものも全部じゃない。この全部でないというのは、先ほど指摘のありましたように、本法案の当初予算で必要なのは三百二十億、これは施設も含めて、あるいは踏み切り等の開設問題も含めて三百二十億ですから、これはたとえば国鉄自体について、国鉄は中身が二百億くらいですから、そうしますと、あとの三百二十五億はどうするのかというと、これは運賃法第一条の二項の四つの原則で総括しよう、というのは、運賃原価を償うものであるという以外のもの、公正妥当あるいは産業の発達に資するあるいは賃金及び物価の安定というところであとの三百何億かは負担する、こういうことなんです。しかもそれで公共性の問題ですが、これは世界各国ともわれわれの理論と同様です。というのは、先ほども申し上げたように、本来の公共性は否定できない。それ以外の外的条件によるところの公共負担は、当然政策から出発しているのだから、それは負担しろ、そういうことでありますから、鉄監局長の見方は、少し何といいますか、全部ではないだろう、こういうように考えております。これは政府の当面の方でありますから、そういうふうに理論づけなければならぬ立場にも置かれると思うのです。ところで、そういう点はそういう点で、理論的におやりになるならば、やはり理論を展開して、ただし運輸大臣のように、今の国家財政の中ではめんどうは見られないと率直に言うべきだと思うのです。こうやらなければ混乱してしまう。そこで、政治はある程度妥協であります。妥協でありますから筋は筋として通すが、現実にはこの程度だということが漸進的にあるのだ。これをやらぬというとむしろ混乱してしまう。鉄監局長は混乱するというがそれこそ混乱すると私は思うのです。  それからもう一つは、先ほどお話に出ました公共負担を解消すべきであるということが、国鉄経営諮問委員会とか何とかからたくさん出ている。ところがわれわれ政治をあずかる者としてはいわゆる公共負担という政策を解消すべきではなくて、特に池田内閣が言っている所得倍増のもとはどうするか、いわゆる地域格差をなくする、あるいは業者間格差をなくするということでありますが、当然今持っているところの公共負担の制度は堅持すべきだと思うのです。たとえば定期の割引を高く持っていくとか、あるいは農林水産物の暫定割引をするとか、これは当然だ。当然であるが、これは一企業体であるところの国鉄の背負うべきものではない、こういう考えでございます。ですから公共負担を解消すべきであるという国鉄内部におけるところのいろいろな委員会の答申については、われわれは反対である。公共負担という制度は残すべきである。地域的な格差をなくするという場合には、農林水産物資のような奥地から出てくるものは、これは当然競争にたえ得られません。今回の運賃値上げではなるほど暫定割引が存続しておるようでありますが、実際の運賃は値上がりしている。ここがいわゆる所得倍増の政策とは相反するということであります。  それからもう一つ言及して申し上げますが、貨物運賃一つ例をとれば、国鉄はいわゆる採算割れしている、原価割れしているものが、特別等級としてあります。これは運賃法の第一条第二項によって当然です。これも本来ならば、純粋な理論から言えば外的条件でありますから、いわゆる特別等級の存在は否定されなければならぬ。一企業体としての国鉄から言えばこれは否定さるべき性質のものです。ところがこれは運賃法建前からいってこの程度は特別制度として背負うべきである、こういう考えでございます。だから鉄監局長とはいずれ席をあらためていろいろお話を申し上げますが、われわれの理論とはだいぶ違う、運輸大臣の理論の方が正しい、こういうふうにわれわれは考えております。
  59. 勝澤芳雄

    勝澤委員 今の答弁で、公共負担の基本的な問題につきましては御提案趣旨がよくわかりました。これに対する国鉄考え方なり、また運輸大臣として大へん御苦労されておることもよくわかりました。しかし基本的には国の政策というものに関連をすると思うのです。そこでぜひとも委員長にお願いをしておきたいのですが、これは画期的な法案であって、これからの国鉄の公共企業体としての行き方のキイ・ポイントになるものだと思うのです。それで与党の皆さんも根本的にはそう反対されている方がないように思うので、これは一つ十分審議をするためにも、池田総理大臣あるいは大蔵大臣にも来ていただきまして、基本的にこの際十分に討議を深めまして、大蔵大臣が国鉄経営の診断というようなことをこの際根本的にやってみようじゃないかというようなことも言われたということを先ほど大臣も言われておりましたから、われわれとしては、公共企業体何とか委員会とか、運賃制度調査会とか、何々委員会というようなのがたくさんあってもう結論が出ておるように思うのですけれども、しかし大蔵省の方から見ると、まだおれの方でやらなければ結論が出ないと思われているようでありますから、一つその辺も十分認識をされて、やはり公共負担についての考え方を御検討賜わるためにも、一つ総理並びに大蔵大臣に出席をしていただきまして、この法案が円満な成立に至りますまで、十分審議に御協力をいただくように、特に委員長のお取り計らいをお願いをいたしまして、あとこまかい理論的な、具体的な問題につきましては、また別の機会に御質問をいたしたいと思います。
  60. 三池信

    三池委員長 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。      ————◇—————
  61. 三池信

    三池委員長 次に、日本国有鉄道新線建設補助特別措置法案議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。山口丈太郎君。
  62. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 ただいま議題となりました新線建設の補助法とからみまして、わが党の提出しておりまする公共負担国庫負担法、この両法案はその性格におきまして、理論的に言えば同一趣旨に出ておると言っても過言ではないと思います。私は、国鉄運賃法の改正が通りましたので、一事不再議の原則によって、このことは申し上げませんが、しかしこの補助とは関連性を持っておりますからこれも質問をいたしたいと思うのであります。  まず第一に、今まで提案されました法案を通して国鉄の論議をして参りましたが、結論として言えることは、いわゆる今日の国鉄経営というものを中心に論議をいたします場合には、国鉄自体の主張と運輸省が政策として国鉄を運営する場合と、明らかに意見の相違と申しますか、根本的な主張の相違があると思います。これは私は認められておることだと思うのです。その理由は何かというと、政府政策としてやる場合におきましては、これは何といっても定期運賃割引であるとかあるいはまた貨物運賃割引であるとか、こういったものは私どもが主張しておりますように、産業、社会、文化の保護政策から出ておるものであって、これは一つは社会保障政策からそういう政策をとらざるを得ない。ところが一方において、政府政策的に国鉄に対して独立採算制というものを強く押しつけておる、そうなりますと、国鉄では経営に対しまして、独立採算的な主張をしなければならないということになります。しかも今日は資本主義経済の中において、この問題が論じられておるのでありますから、私は国鉄と運輸省の主張の相違というものは、当然あってしかるべきものであって、ないのはむしろおかしい、こういうふうに思います。ところがこれは、今申しますようにそういう相違があるということは、やはり矛盾であると言っても過言ではございません。その矛盾というものをどういうように合理的に解決していくかということに、私は政治というものがあろうと思うのです。その努力というものが、わずかではありますけれども、赤字の新線建設に対して融資の利子だけでも補給してやろうということになったのだ、こう理解をしておりますが、いかがですか。
  63. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 ただいま御指摘のように、国鉄のいわゆる経理の健全性を高めるとかあるいは独立採算制というような見地から見ますると、いろいろ赤字になる仕事を負担するというようなことは避けなければならぬことでもございますが、また一方、いつも言う通り日本国有鉄道の成り立ちから見まして、これは公共福祉の増進ということを目標として、高い公共性によって経営されるべきものでございまして、ただいまお話しのような、そのことが社会政策的から出ましてもあるいは国全体の産業政策から出ましても、地方の開発というような見地から発足いたしましても、公共負担ということを、事業の性質上独立採算制に籍口してこれを拒否するということはできない立場にあるのでございまして、いつもこの委員会お話がございましたように、矛盾といえば矛盾であるのでございまして、この矛盾をうまく調節いたしまする妙用を今行なっておるということでございます。これは国鉄ばかりでなく、人生至るところ矛盾ならざるはないわけでございまして、理屈のように割り切ってものができればこのくらい簡単なことはないのでございますけれども、ここにおもしろみもあるし、むずかしさもあるように感ずるのでありまして、そのままが今の国鉄経営に出ておるのでございます。そこで先ほどお話がございましたように、日本でも新しい交通機関ができまして、日本国有鉄道というものが日本の輸送機関のただ一つの独占的な王者であるという地位をいつまでも維持しておることにならないような状態になりましたことなどを政府としては勘案いたしまして、そういうふうになったにかかわらず、やはり事業の性質上、高い公共性から発露する公共負担もこの通りやらなくちゃならぬのだということの事情をよく勘案いたしまして、ただいまの国の財政の実情から見まして、この程度なら負担国家としてやってもしかるべきだろうという見当をつけたものが、ただいま御指摘の新線建設の借入金に対する利子補給であると私も考えておるのでございます。まあこれは金額は小なりといえども、国鉄経営の上から見ますと、画期的な政府政策の展開であるようにも原則的には考えられるので、国鉄としても喜んでおるし、政府としてもこれをやったことに対して、国鉄に負わしめておる公共負担に対して、義理を一部分果たしたという気持がこのものであると私は考えております。
  64. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 運輸大臣のただいまの答弁では、確かに矛盾であるということはお認めになってのことだと思うのです。しかしただ財政上その矛盾を全面的に解消し得ない状態にあるのだ、こういうように答弁をされておるのだと私は思うのですし、その通りの行政が現在行なわれておるのだと私は思っております。  そこで私はお尋ねをいたしますが、運賃法通りましてその翌日、国鉄は三十四年度並びに三十五年度は引き続いて全体として黒字である、三十四年度におきましては三十五億円の黒字、一二十五年度においては五十億の純黒字が出ておる、こういうふうに新聞に発表せられました。国民は、何だ国鉄赤字々々と言いながら黒字を公然と発表しておる。しかも運賃値上げ理由は新線建設その他諸施設の拡充等に必要な資金が得られない。しかもこのままの姿でいけば四十年度には、運輸大臣説明によると一兆円以上の借金になって、七百億円以上の利子を支払わなければならなくなる、こういう御答弁です。そうすると、私、今度帰って参りまして、中小企業の方々やその他多数の方々と面談をいたしました。しかし私の説明とその新聞に発表になっているものとでは全く違っている。国会というところは一体何をやっているのですか、こういうことで運賃値上げをされたのでは、ますますもってわれわれとしては立ち行かないじゃないか、所得倍増、所得倍増というけれども、われわれの方はちっともその所得の向上は望めない。むしろ全体の収入はそのかけ声によって低下をして、大へんな迷惑だけがわれわれにしわ寄せされているのだこういうことでさんざんなつるし上げにあって私は帰ってきたのです。これは一体どういうことなんですか。私はこれについては国会の威信というようなことでなくても、政治の信用性からいっても、国民の納得のいくよう、その内容を明らかにしてもらわなければならないと思いますが、いかがですか。
  65. 兼松学

    ○兼松説明員 お答えいたします。  国鉄の経理の上で、現在の運賃改定の場合も、大きな資金が要るということは申し上げたのでございますが、現在は赤字とは申しておりません。収支はほぼとんとんであるということを申し上げて参った次第でございます。ところで国鉄の予算と申しますものは収入の見込みでございまして、この収入が上がりますならばそれだけの事業が実行できるということで、予算上の支出権として国会で御承認をいただいておりますわけで、経費の方は予算で御承認があっただけしか使えませんとともに、収入の方は国会で御承認いただきました額が保障されているわけではなくて、多い場合もあるし、少ない場合もあるわけでございます。そこで昭和三十三年には予算より少ない収入でございましたので、工事経費をうんと切りまして、その関係で決算上差額として若干の益を出すとともに、五カ年計画がおくれたようなことになっております。三十四年度につきましてはほぼ御指摘通りでございます。三十五年度は予算の方の見込よりも若干の収入増がございまして、もし当初からそれが見込み得ましたならば、その年の資本勘定繰り入れとして工事経費に入れられるべきものでございますけれども、ことしの収入は私どもの制度の上で、国鉄法律の四十二条によりまして締めた上で、その上で黒が出たならば翌年の資金に充当することになっておるわけでございます。従いまして、今年度の決算として若干の収入と支出との許された額に差額が出ましたならば、それは法律によりまして来年度の工事の経費の財源になるのが原則でございまして、ただいまのところ、その額は当初の見積もりはとんとんでございましたが、五十億ないし六十億あり得ると思われております。ただしこれはもっと当初に見込まれておりますならば、五カ年計画の資金がもう少しふえたわけで、八五%の完成率が六なり七に上がってくる性格のものでございまして、その点は収入予算の方が毎年度の運輸実績から見る見通しでございますので、若干の差額が出てくる。それは翌年度の財源になるのが建前になっております。
  66. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 時間がないようですから、次会にいたしますが、兼松理事の新聞に発表になっております定期運賃の値上げの考慮など重大な新事態が発生しておるこのときに、私は極端にいえば、国鉄がこんなことをやって、そうして予算を提出するときには過小評価の甘い見積もりをして予算を出して、運賃値上げの口実にしてみたり、いろいろのことをやっている。こんな甘いことをやるなら一切の値上げなどすべきでないし、こんな補助なんてやるべき性質のものでないと考えているのです。ですから私は次会にもっと突っ込んで質問をすることにいたしまして、すべて質問を保留いたし、本日はこの程度にいたしたいと思います。
  67. 三池信

    三池委員長 次会は来たる十四日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十三分散会