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1961-03-20 第38回国会 衆議院 運輸委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二十日(月曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 有田 喜一君 理事 生田 宏一君    理事 尾関 義一君 理事 川野 芳滿君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 山口丈太郎君       伊藤 郷一君    浦野 幸男君       岡田 修一君    加藤常太郎君       木村 俊夫君    河本 敏夫君       壽原 正一君    鈴木 仙八君       田澤 吉郎君    高橋 英吉君       塚原 俊郎君    細田 吉藏君       増田甲子七君    山田 彌一君       勝澤 芳雄君    島上善五郎君       西宮  弘君    肥田 次郎君       安平 鹿一君    吉村 吉雄君       内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 木暮武太夫君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      新井  裕君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  曾田  忠君         通商産業事務官        (公益事業局長) 大堀  弘君         運輸事務官         (大臣官房長) 辻  章男君         運輸事務官        (鉄道監督局長) 岡本  悟君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  廣瀬 眞一君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豐君         日本国有鉄道常         務理事     中村  卓君         日本国有鉄道常         務理事     兼松  學君         日本国有鉄道常         務理事     關  四郎君         日本国有鉄道常         務理事     磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     滝山  養君         日本国有鉄道参         与         (工作局長)  宮地健次郎君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 三月二十日  委員佐々木義武君、關谷勝利君及び増田甲子七  君辞任につき、その補欠として岡田修一君、田  澤吉郎君及び加藤常太郎君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員岡田修一君、加藤常太郎君及び田澤吉郎君  辞任につき、その補欠として佐々木義武君、増  田甲子七君及び關谷勝利君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣  提出第七六号)      ————◇—————
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  勝澤芳雄君。
  3. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 一昨日に引き続きまして私は質問をさせていただくわけでありますが、質問に入る前に、前会にも申し上げましたように、今回の国鉄運賃値上げについては多くの国民が多大の疑義を持っておるわけでありますし、また、与党の中においてすらいろいろと御意見もあるわけでありますから、一つこの委員会を通じて十分な審議を行ない、国鉄運賃値上げをする理由を明確にして、国民要望、期待にこたえるように十分な審議一つわずらわしたいと思うわけであります。審議を急ぐのあまり、何でも通りさえすればいいということのないように最初に申し上げておきたいと存じます。  前回の質問の中で特に問題となっております只見線の問題につきまして、きょうは経済企画庁並び通産省がお見えになっておるようでありますから、もう一度この問題についてお伺いいたしたいと思うわけであります。企画庁につきましては前会少しお聞きいたしましたが、通産省に対しまして、この問題についての経過なり今日の考え方一つお尋ねいたしたいと存じます。
  4. 大堀弘

    大堀政府委員 只見線につきましての御質問でありまするので、今日までの経過を簡単に申し上げたいと思います。  電源開発株式会社田子倉発電所建設のための資材輸送用といたしまして、会津線川口田子倉間に敷設されました専用鉄道は、敷設工事は全部国鉄に委託をいたしまして、全長約三十二キロメートル、工事費で約二十九億円をもって施工されたわけでございます。本鉄道路線のうちで川口只見の間の二十八キロメートルにつきまして、この工費が約二十一億円でございますが、これにつきましては、敷設工事に先だちまして、昭和三十一年の一月三十一日に閣議了解を得まして、田子倉ダム完成国鉄営業路線に編入するということが了解されたわけでございます。これに基づきまして、三十四年の秋から電源開発会社日本国有鉄道との間で譲渡価額等について折衝を重ねて参りましたが、結論が得られないわけであります。その後、監督官庁でございます通産省運輸両省の間におきましても折衝を重ねて参りましたが、話し合いがつきませんので、三十五年の三月に両省から経済企画庁に対しまして、文書をもって本問題の調整を依頼いたしたわけでございます。現在、経済企画庁を中心といたしまして目下これに協力をして解決に努力中でございます。現在企画庁の方へ調整といいますか、調停をお願いしている段階でございます。
  5. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、三十四年秋に結論が出ないので、三十五年三月に経済企画庁調整を依頼している、結論が出ない理由というのはどこにあるのですか。
  6. 大堀弘

    大堀政府委員 電源開発立場から申しますと、この鉄道資材輸送したわけでございますが、その輸送に要した経費に相当する部分は、仮設備として償却をいたしまして、残存価値で引き継いでいただけるものと了解をして話し合いをやっておったわけでございますが、国鉄側といたしましては、この線が赤字路線であるから有償で引き受けることはできないという立場で反対をされている、こういう関係話し合いがまとまらないわけでございます。
  7. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 有償ではいけないということは、逆に言うならば無償ならばいい、こういうふうに考えられるのですか、そうなんでしょうか。
  8. 大堀弘

    大堀政府委員 私ども国鉄当局の御意思の点は最終的にはよくまだわかりませんが、実はそういうふうに承っているわけでございます。
  9. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それでは、国鉄の方にお尋ねいたします。
  10. 兼松學

    兼松説明員 本件につきましては、電源開発会社からのお申し入れに対しまして、国鉄といたしましては有償というようなことはもちろんでありますが、かりに無償といたしましても、現在の線は冬季運行を休止するような設計でできておりまして、もし営業線にするような場合には、四億ないし七億の工事費が必要でございます。現に数日前も大きななだれがあって、滝発電所の付近で障害があるような非常な豪雪地帯でございますので、かりに無償でも大へんな工事費を要しますし、また営業した場合にも非常に大きな三億に近い赤字が予想されるということで、そう簡単にお引き受けはできないというお答えをして参ったような次第でございます。
  11. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると、経済企画庁においても、この路線というものは、今国鉄が言われたようなものだということは十分御存じになっておるわけでございますね。
  12. 曾田忠

    曾田政委員 お答えいたします。只見線の経営上の問題でございますが、金額は、いろいろ計算の仕方があるかと思いますけれども相当赤字路線であるということは承知しております。
  13. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そういう経済路線でないというのがわかっておりながらも、なおかつ国鉄に押しつけなければならない理由というものはどこにあるのですか。それは閣議できまったからということだけでなくて、なお電源開発のいろいろな電力料金とかその他の問題があるとかということを聞いておりますが、それはどういうふうになっておるのですか。
  14. 曾田忠

    曾田政委員 お答えいたします。もともとこの只見線電発におきまして資材輸送路といたしまして敷設する場合におきまして、いろいろな問題があったわけでございますが、最終的に閣議了解によりまして、一応電源開発国鉄に委託いたしまして鉄道を敷設するということで、竣工の結果におきまして国鉄営業路線に編入するというよう閣議了解になっておる事情もありますし、われわれといたしましては、その閣議了解の線に従いまして手続を進めるのが妥当ではないかというふうに考えて参ったわけでございます。赤字路線の問題につきましては、単に只見線のみの問題を考えずに、全般といたしまして国鉄の新線建設と申しますか、そういうふうな他の問題もあわせて考えるべきじゃないか。特に只見線のみが赤字でありましたらこれを国鉄に編入すべきでないというような議論もありますが、全般的に新線建設の問題と同様に考えるべきじゃないかというよう考えております。
  15. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 考え方は、只見線だけが赤字でなくて、それ以外の赤字路線国鉄が作っているのではないか、だからこれだって入れたっていいじゃないかというお考えはわかると思うのです。確かに線路を作ることはけっこうだと思うんです。しかし、そのために一般の罪のない、縁のない乗客がそれ以上の運賃を負担しなければならぬということにもならないと思うんです。そこに私は問題があると思う。ですから、これは突き詰めていくと・こうなるのじゃないですか。結局電源開発で作った。そして電力料金の算定をする場合においてこの問題が重要な問題になっている。だから、どうしてもこれを国鉄に引き取らせないと、電力料金計算する場合に問題になる、こういうことだと聞いておりますが、どうなんですか。
  16. 曾田忠

    曾田政委員 先ほどお答えを申し忘れましたが、電力料金の問題につきましても、ただいま先生のお説の通りの問題が起こっております。率直に申し上げますと、電源開発会社といたしましては、奥只見ダムの問題でございますが、現在の電力料金は、一応国鉄に大体十五億円の予定譲渡をでき得るという前提計算しておるわけでございます。一応暫定料金としてそういうことになっておりますが、これも結局、国鉄にどういう価額で今の鉄道を引き取っていただくかどうかによって、今後の電力料金の値上がりという点に相当影響があるという点を、われわれといたしましては十分考えなければいかぬという考え方であります。
  17. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると、十五億の予定譲渡できるだろうということで暫定料金計算された。今の話の中では、無償なら、こういう話も出ておるわけでありますが、そのときの電力料金は、一体初めの計画あとからの計画でどういうふうに変わるのですか。
  18. 大堀弘

    大堀政府委員 田子倉発電所引き渡し価格キロワット・アワー当たり暫定料金四円七十六銭ということで現在計算されております。これは、ただいまお話通り専用鉄道が十五億円で譲渡できるという計算前提にいたしまして、かりにこれがゼロといたしました場合、どれだけ影響があるかということを計算いたしますと、キロワット・アワー当たり三十銭高くなって、五円六銭になる計算になります。
  19. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、この電力料金を安くするために、今度は国鉄にそれの赤字をしょえということの理由になるわけですね。一体ここの電源開発、それから電力はどこですか、東京電力ですか。それから国鉄というのは、企業としてはどういうふうに認識されておるのですか。この三つはどういう企業として認識されておるのですか。
  20. 大堀弘

    大堀政府委員 電源開発会社電気は、東京電力と東北電力へ卸売りされるわけでございます。もちろん初めからこれは無償で渡すべきだということにかりになっております、あるいはそういう場合でございますと、結局全額建設費が、それだけ電源開発会社田子倉建設費に全額入ってしまうという予定をしておりますればそういう計算になるわけでございます。当初は、道路によろうか鉄道によろうかという計画があったわけでございますが、鉄道国鉄予定路線にもなっておったので、結局鉄道によろうということになったのだと思います。そこで、電源開発側計算といたしまして十五、六億円差がついております。鉄道の場合と道路の場合、鉄道の方が十五億円ほど高くなるという計算が出ております。鉄道を利用して建設資材輸送いたしまして、それだけ仮設費として償却いたしまして残存簿価を出しますと、かれこれ十五億円ぐらいに相なりますので、十五億円で国鉄に引き取っていただくのが経済的な計算としては妥当なところじゃないか、こういうふうに考えまして、十五億円で譲渡するという提案をいたしたわけでございますが、これは結局話し合いがつかない。おっしゃるように、これは電力料金の方へぶっかけるか鉄道の方へかかるかということになるかと思いますけれども電気もやはり経済的に開発をいたしますので、できるだけ安い電気料金建設をしたい、安くなるよう建設をしたいと努力するのが当然でございますので、鉄道鉄道として後ほど御利用になるけれども、とにかく建設にそれを使って、できるだけ償却をしてそれを国鉄に引き継ぐ、こういう考え方経済的な計算をした結果、かように相なったわけであります。
  21. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 運輸省通産省と比べれば、経済考え方というものは通産省の方がそろばんが上手だと思うのです。その上手な通産省が今話をしておるのですけれども、よくわからないのは、十五億でやって、今国鉄兼松常務説明でも四億から七億ぐらい設備しなければならぬ、毎年の赤字が一億何千万円になる。これは通産省として国鉄に押しつけることが正当なことかどうか、あなたはどういう認識をされますか。それともう一つは、電源開発会社日本国有鉄道とどういうふうに違うのですか。
  22. 大堀弘

    大堀政府委員 電源開発会社株式会社でございますが、大部分政府の出資でございますから、非常に公的な色彩の強いものと考えております。その点は、国鉄は公社でございますから、似たよう性格だと思いますけれども、私ども電源開発会社の方が多少私的会社に近い性格のものと考えておるわけでございます。私ども、さっきちょっと申し上げましたように、これはある意味では道路でやった方がよかったのじゃないか、十五億円安くできたのじゃないかということもございますが、国鉄予定路線でもございますし、地元の御要望もあったと思いますが、鉄道を敷設してそれを建設に利用し、かたがたできたあとはこれを鉄道路線営業線に編入していただく、こういう考え方閣議で御了解になったものと私は考えております。私どもとしましては経済的に考えまして、建設に役立った分だけを償却をしましてその価値で引き継いでいただけるよう閣議了解を得ておると思いますので、そういうペースで考えまして、そういうふうにいたしたのであります。
  23. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 今日の段階経済的に考えたら、今のお話の中でこんな不経済なものはないということをあなたは御理解できると思うのです。どうでしょうか。もしそれが御理解できないということになれば、もう少しお伺いをしなければならぬと思うのです。今あなたは十五億だ、国鉄の方はただでもらっても仕方がない、そしてこれを国鉄に編入するなら四億から七億かかる、なおその上年間一億何千万という赤字が生ずる、これがいかに不経済なものであるかということは公益事業局長もおわかりだろうと思うのですが、どうですか。その点だけ切り離して考えた場合、あなたはどういうふうにお考えになりますか。
  24. 大堀弘

    大堀政府委員 国鉄当局としてこれは赤字路線であるとおっしゃることは、国鉄予算の方の計算でさようになるということは、これは私ども了解できることでございます。さようになるだろうと思います。過去におきましてこういういきさつできまっておるものでございますから、私ども営業路線として引き取っていただくということは、はっきりは書いてございませんけれども、やはりこれは経済ベースでいくものと私ども了解いたしまして話し合いをいたしたわけでございますが、話し合いがつきませんので、今日では当初に申し上げましたように、経済企画庁調停にお願いいたしまして、公平な立場で検討して結論を出していただければ、私どもはそれに従うつもりでございます。
  25. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 これは鉄監局長にお尋ねしたいのですが、これは鉄道建設審議会の中では当時どのよう審議されたのですか。
  26. 岡本悟

    岡本政府委員 閣議了解がなされました三十一年の一月でございますか、その当時の事情はよく存じておりませんが、鉄道建設審議会でこの問題が取り上げられたかどうかということにつきましては、取り上げられていなかった、こう申しげたいと存じます。
  27. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、予定路線に入っておったという今の公益事業局長のお言葉ですが、それは予定路線には入っておったのですか、どうですか。
  28. 岡本悟

    岡本政府委員 鉄道敷設法の別表の予定線には入っております。
  29. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、これはやはり鉄道建設審議会の方で何ら意思表示がなされていないときにおいてこの問題が進められたということで、今公益事業局長の話ですと、国鉄全体からすれば赤字線を作っているのだからこれ一本ぐらい引き取ってくれろ、こういう意見というものも、国民の全体的なものから見れば、私は何かわけのわかったようなわからぬような気がするのです。ですから、やはりこの赤字路線に対する考え方、新線建設に対する考え方というのが、運輸省当局でまだ明確な意見がきまっていないところに大きな問題があると思う。もし運賃値上げをしなければならぬという現状の中でこの線を国鉄で引き取るということになったら、それだけ余裕がある国鉄だったら運賃値上げをする分だけ下げてもらいたいということを、国民は当然要求すると思うのです。ここには道路が通っておったということを公益事業局長は知っておったわけです。道路が通っており、そして鉄道よりもこの道路の方が便利だということもおわかりになっているわけですけれども、こういう点も勘案されて、今もなおかつこれは閣議了解の決定の上にこれを解決されようとしている、こういうことなんですね。
  30. 大堀弘

    大堀政府委員 電源開発に着手いたします前に閣議了解を経まして、そういう方針でやって参りましたので、今日もこの方針によって処理していきたいと思います。
  31. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この問題は閣議できまった事項に基づいて実施をするということで、ここで関係局長さんたちの中で私がいろいろ意見を聞いても、これは無理だということはわかります。従って、その方針に基づいてやられるということになるでしょうけれども委員長一つぜひお願いいたしたいことは、この問題で通産大臣経済企画庁長官を呼んでいただきまして、この問題に対する締めくくりをさせていただきたいと思うわけであります。それと同時に、との問題のいかんによりましては、こういうむだな投資を行ない、電力料金肩がわり国鉄がする、また一方むだな路線を押しつけられる、こういう問題にも重要な関係がありますから、一つ発展によりましては総理も呼んでいただくよう要望いたしておきます。  それでは、只見線関係につきましては以上で終わりまして、次に鉄道公安官の問題につきまして質問をいたしたいと存じます。  この鉄道公安官は、昭和二十五年の八月十日の法律第二百四十一号鉄道公安職員の職務に関する法律によってこの制度が作られまして、立法当時の混乱という異常な状態の中からこの法律ができたわけでありますが、今日は当時の状態と比べてみますと、もう変わっている、従ってとの存在の意義がなくなっていると思うのでありますが、運輸省なり国鉄の方はどういうようにお考えになっておりますか。
  32. 岡本悟

    岡本政府委員 仰せのように、この制度は戦後、社会の混乱に乗じまして犯罪が急激にふえまして、鉄道関係の施設内におきましても、御承知ように停車場内あるいは列車内におきまして相当多数の犯罪が出て参ったのでございまして、それに対処するために鉄道公安官制度が作られたことは今御指摘の通りでございます。現在もうすでにその効用を失ったではないか、こういうふうなお話でございますけれども運輸省といたしましてはさようには考えておりません。やはりいろいろ犯罪が行なわれていることは事実でございまして、御承知ように、一例をあげましても、夜行の寝台列車あたりにおきましては相当窃盗犯が出ているよう状態でございます。依然としてその存在理由はりっぱにあるというふうに解釈いたしております。
  33. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この法律ができる前は、一体どういうふうになっておったんでしょうか。
  34. 岡本悟

    岡本政府委員 これは御承知ように、たとえば列車関係にいたしますと、乗務車掌便宜鉄道司法警察吏として指名いたしまして、ある程度の司法権を行使しておるというふうに私は解釈いたしております。
  35. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 従来そうやっておって、やられてきたのが終戦当時の混乱の中からこういう新しい制度ができた。そして今も言われましたように、そのときの状態とは変わってきておるということでありますから、従来に戻したらいいと思うのですが、従来に戻すということは、この法律は今日は要らなくなっている。今までやられてきた方法に戻した方が適切じゃないだろうか、こう思うのですが、その点どうですか。
  36. 岡本悟

    岡本政府委員 御承知ように、鉄道関係犯罪というものは相当ございますので、従来のよう制度に返すかどうかにつきましては、やはり旅客なり、あるいは荷主保護、いわゆる公益保護という観点から慎重に考えなければならぬと存じますが、現在の制度の方がより有効であるというふうにわれわれは判断いたしております。
  37. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 結局そういたしますと、これは国鉄に対する特殊な警察だと思うのですが、国鉄だけがこういう制度があるわけですけれども私鉄なんというのはどうなっているのですか。あるいはよその国ではこういう鉄道警察というものはどういうようなことになっておりますか。その点を一つ説明賜わりたい。
  38. 岡本悟

    岡本政府委員 私鉄におきましては、こういった特定の公安官制度というものはございませんようです。つまり警備係といったようなことで、そういった警備をやるということですが、しかし何しろ世帯が違いますので、おのずからそういった規模の大小といいますか、制度の違いというものはあるかと存じますが、私鉄におきましても、やはり旅客に対して安全な輸送であるとか、あるいは荷主保護ということは当然考えなければならぬと存じます。  諸外国の例でございますが、たとえばアメリカのニューヨーク都市交通公団と申しますか、ニューヨーク・シティ・トランジット・オーソリティでございますが、そういうところは相当のやはり公安官公団自体が保有いたしておりまして、凶悪な犯罪からあるいは窃盗犯というふうな小さい犯罪に至るまで、旅客保護する、こういう見地から相当数公安官を持っております。
  39. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 刑事局長、お見えになっておりますね。  この鉄道公安官と、それから警察との関係はどういうふうになっておりますか。
  40. 新井裕

    新井政府委員 お答えいたします。当初から申し合わせをいたしておりまして、はっきりした協定を作りまして、おのおの業務の分担をいたしております。御承知ように、われわれの方は一般警察であり、鉄道の方は特殊警察でございますから、一般的にはわれわれの方が引き受ける。法律の中にも、御承知ように、逮捕した犯人は全部われわれの方に引き受けることになっておりますが、そういうような建前で打ち合わせをし、協定をいたしまして円滑に業務を執行するということであります。
  41. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 特殊警察というのは、どんなものがあるでしょうか。また、どんな仕事をされているのでしょうか。
  42. 新井裕

    新井政府委員 日本におきましては厚生省の麻薬の取り締まり、あるいは農林省関係の森林警察、あるいは入国関係のものが戦後できているわけであります。そういう特別の職務を限定いたしまして、それについて警察職務を行なう警察、そういうものを私はかりに特殊警察と申し上げたわけであります。
  43. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、一般警察でやれない部分特殊警察という制度が作られて、その中でやられている、こういうふうに理解してよろしいですか。
  44. 新井裕

    新井政府委員 これは警察の機関をどういうふうに作るかという一つは政策的な問題でございまして、アメリカは今お話がございましたように、非常にそういうふうに社会の複合的な形そのものに即しまして、各方面に特別の警察というものを割合に自由に認めておるようでございます。ヨーロッパではイタリアなんかはそういう傾向が顕著でございますし、そのほかの一般の国は、警察の職務というものを一般的なふうに観念いたしまして、特別の対象を持つ警察というものを数少なく持っておるということでございますから、これはいいんだとか、これは悪いんだとかいうことは理論的にも申せますけれども一つは政策的な問題でもあり、あるいは沿革的な問題でもあろうと私どもは理解しております。
  45. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この法律そのものは大へんむずかしい状態の中でできたようでありまして、この法律を突き詰めていけばいくほど、何となく疑問が拡大するわけです。そこで私の立場は、これはこういう終戦当時の混乱の中から出てきたものだから、もう戦後ではないから、これは当然廃止をすべきだ、国鉄国鉄本来の仕事をやるべきだ、こういうふうに思っておるのですが、今、鉄監局長説明ですと、国鉄として必要だとは言われておりますけれども、ないよりあった方がいいというものだろうと私は思うのです。こういう鉄道公安職員の職務に関する法律としてきめたようなものを、今の一般警察の中でやろうと思えば、やれる能力があるわけですね。
  46. 新井裕

    新井政府委員 そういう仮定の問題について私どもはよく検討したことが最近ございません。おっしゃいます通り、最初この制度ができましたときには、若干その制度の存続といいますか、存在理由についてわれわれも考え、また鉄道の当局とも話し合いをしたことはございます。現在はそういうことで業務の限界も大体明確になっておりますし、また仕事の上の連携、協同動作というものも比較的うまくいっておりますので、私どもの方では今そういうことを考えてもおりませんし、お答えできるほどの考えを今持っておりません。
  47. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 しかし、常識的に考えると、警察でやるべき仕事を国鉄に代行させている、こういうふうに私は理解するのですが、どんなものでししょうか。
  48. 新井裕

    新井政府委員 少し私がましい意見がまじるかもしれませんが、戦後の犯罪の状況は、御承知ように非常にふえて参りまして、今われわれの方に与えられた人員で与えられた任務を達成するためにも大へん人数が足りないというので、今年度も人員の増加をお願いいたしておるような状況でございます。従いまして、そういうものを全部御破算にして、抽象的に考えたらどうか、こういうことであればおのずから答えは出るのでございますけれども、現在の条件を前提にして考えますと、今の状態で私どもの方は特別に差しつかえがあるというふうには、実は考えておりません。その程度で御了承願いたいと思います。
  49. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、こういうものはどれだけあったらいいかというのは、なかなか限界がむずかしいと思うのです。しかし、警察の能力というものも一つの限界があるし、なかなか人もふえない。ですから、少しでもお手伝いをしてくれるものがたくさんある方がいいとは思うのですけれども、よその私鉄ようなところに対しては、国鉄公安官があるのと同じようなといいますか、ある程度それと類似したような協力といいますか、こういう点が一般警察の方はどういうふうになっているのですか。
  50. 新井裕

    新井政府委員 私鉄は、御承知ように営業のキロ数もそう多くありませんし、鉄道の施設もありませんので、一般警察でカバーをしてやっておるわけであります。先ほどちょっと申し忘れましたけれども、そういう鉄道警察のやり方として、一つ典型的なことは、フランスのように特殊に警察の中の一つの部門として鉄道警察というものを持っておるものと、お隣の同じラテン系の国でありながら、イタリアのように全然別個の人格を持った鉄道警察というものを持ったものとあるわけであります。従いまして、私鉄というものが非常に膨大なる施設なり人員なりを擁しておるということであると、いろいろ問題がございますけれども、今までのところは、そういうことで一般警察がこれをカバーしてやって、少しも支障なくやっておるわけであります。
  51. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この公安職員の職務の内容というものはどういうものでありますか。
  52. 中村卓

    ○中村説明員 お答え申し上げます。大体、先生も制度の目的は御存じだと思いますが、国鉄の客貨輸送の安全を確保するというような目的でございまして、鉄道の施設内における犯罪並びに鉄道の運輸業務に対する犯罪について捜査することを内容といたしております。
  53. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 公安職員が最近各所で労働組合運動に介入をし、紛争を起こしておるようでございますが、この介入をする法律的な根拠は何でしょうか。
  54. 中村卓

    ○中村説明員 公安職員の職務は今申し上げたようなことでございまして、結局鉄道列車の運行を阻害するとか、あるいは鉄道の施設を不法に占拠するとか、あるいはまた国鉄の職員の職務執行を妨害するとか、そういうよう鉄道業務に支障を起こすような具体的な行為で犯罪になる場合は、これに対して捜査をするということでございまして、これの原因が労働問題であるかどうかということは、この際関係がないというふうに考えております。
  55. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それは法律的には何の法律なのでしょうか。
  56. 中村卓

    ○中村説明員 ちょっと問題がデリケートなところでございますけれども警備あるいは秩序維持というだけの面から申し上げますれば、これは当然総裁の管理権の発動というふうに考えます。それから、それにもし犯罪があるというふうに思慮いたしまして捜査をする場合は、この特別な法律によって捜査するというふうに考えております。
  57. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この法律的な根拠についての論争は過去何回となくやられてきたようでありまして、内容を見れば見るほど不可解千万な解釈で、ある委員からは、これは二足のわらじだというふうな発言もされておりますけれども、まことにわからない存在だと思うのです。守衛さんが単なる守衛でなくて警察権を持っているというよう立場で、その点なかなかデリケートで、実際に出動されるときには総裁達で出動して、そして総裁達で仕事をしていながら、何かあったと思うと、これがこの法律によってまた動くというような形になっておるわけでありまして、大へんその点がわかりにくい点があるわけなのであります。国鉄から見れば大へん便利なことです。しかし一般警察官の警職法から比べてみれば、まさに拡大されておるように思うのです。私は、この取り扱いというものについての問題を追及するということは、きょうは目的ではありませんから、法律的な論争はいたしませんけれども、最近労働運動に対して公安官が介入した件数、あるいは公安官の介入によって現在事件になって起訴されている件数というのはどの程度ありますか。
  58. 中村卓

    ○中村説明員 ちょっと手元に資料がございませんのですが、御希望でしたら後ほど調べてお知らせいたします。
  59. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 最近の公安官の人員というものは大体どれくらいで、ふえているのですか減っているのですか。それと、この公安官に対する予算というものはどういうふうになっておりますか。
  60. 中村卓

    ○中村説明員 公安官の人員は、大体二千八百五十人くらいでございます。そういうことで人件費は予算に計上してございます。このほかに管理部門等を入れますと、約三千三百人になります。予算はそのまままるまる予算人員に入っております。
  61. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 予算は、私がちょっと聞いた資料によると、三十三年までしか出ておりませんが、十三億五千八百十七万五千円・これが三十三年度の公安官関係の費用だといわれておりますが、三十四年、三十五年度はおわかりになりますか。
  62. 中村卓

    ○中村説明員 三十四年度はわかっております。十四億六千百八十万円くらいでございます。三十五年度はまだ決算が出ておりませんので、ちょっとはっきりいたしません。
  63. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この公安官の仕事というものは、あなたも、先ほど鉄監局長も言われたように、終戦の当時の混乱の中から旅客運輸の安全を守る、こういう立場から作られたものであるわけでありまして、そういう立場からいうならば、今日はある程度漸減をしなければならないと思うのでありますけれども、これができ上がった当時から今までというのはどんな数になっておりますか。
  64. 中村卓

    ○中村説明員 犯罪は若干、実は二十五年当初よりも輸送量がふえたとかいうことも関係があると思いますが、犯罪、事故、そういうものにつきましてはふえております。一応具体的に申し上げますと、刑法犯につきましては約二%ふえておりますし、その他のたとえば営業法違反とか、あるいは暴力行為等処罰二関スル法律、火薬類取締法、たばこ専売法違反、そういう諸法令の犯罪につきましては二一二%とふえております。そういうふうに犯罪自体が増加しておりますので、公安官につきましても、先ほど鉄道監督局長からもお答えがありましたように、われわれとしましてもこれを減らすというようなことはただいまのところ考えておりません。
  65. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 国鉄が経営上行き詰まって困っておるときに、年間十五億もかけてこういう仕事を維持しなければならないような今の状態になっておるのでしょうか。
  66. 中村卓

    ○中村説明員 われわれといたしましては、やはり旅客、貨物の安全な輸送という面から考えまして、ただいまの制度はぜひ必要だと考えております。
  67. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 先ほど鉄監局長並びに刑事局長からもお伺いいたしましたが、私鉄ようなところではこういう制度がない、一般警察の中で十分補てんをしているようであります。しかし、これを詳細にばらばらに分けてみたら、やっぱり似たような現象になると思うのです。結局、一般警察で十分とまではいかないとしても、相当部分というものはこれに転嫁することが私は可能になってきておるというふうに思うのです。しかるに毎年々々予算が増加していくということについて理解に苦しむわけでありますが、過般、だいぶ前ですか、これはやはり漸次減らすべきだという意見が強く出されたということを聞いておりますけれども、そういう点は今までなかったのですか。
  68. 中村卓

    ○中村説明員 先ほど申し上げましたのは、人件費が昇給あるいはベース・アップの関係でふえているということでありまして、頭数はここ数年変わっておりません。  それからちょっと聞き漏らして恐縮でありますが、どこかから減らせという意見があったということですか。
  69. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうです。
  70. 中村卓

    ○中村説明員 かつて行政管理庁の方から三十年に一応減らしたらどうかという御意見がありまして、三十一年に運輸大臣から漸減の方針ということで、一応当時若干減らしたわけでございます。その後また業務量がだいぶ増しましたので、また若干もとへ戻りまして、現在のような数になっております。
  71. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 国鉄本来の仕事というのは、私は輸送を安全に行なうということだと思うのです。今日さえ国鉄の人員が足りないということがいわれているわけであります。足りない足りないといわれておりながら、片方の国鉄の本職の方の人員は、どんどん減らしていきながら、内職といいますか兼職といいますか、こういうふうな人が大蔵省から言われて一時的に三千人になり、それが三十三年からまた三千二百人になっていったということは、一体国鉄はこんなに人員に余裕があるのですか、どうなんでしょうか。
  72. 中村卓

    ○中村説明員 実は昭和二十二年のころには非常にこれが多くございまして、警備関係は大体一万人ぐらいいたのでございますが、それがこういう法律ができまして、こういう制度が創設されまして、専門的にこの人たちがやるということになりましてから、大体三千人台に減ってきたのであります。そういう意味におきましては、われわれといたしましては、先ほど申し上げましたように、現在相当犯罪もふえてきておりますし、相当苦しい人繰りの中からも、これだけの人員を確保していかなければいけないというふうに考えておる次第でございます。
  73. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私の方の、公安本部から出された資料によりますと、昭和二十五年のときには三千八百六十五人だった。それが昭和三十年には三千百六十七人に下がり、三十二年では三千三十九人に下がっておるのにかかわらず、三十五年では三千二百六十三人にふえておる。昭和二十五年から三十五年までをとってみるとふえているわけです。一体、国鉄の職員全体は、この昭和二十五年から三十五年までをとってみたら減っているじゃありませんか、大幅に作業量はふえていながら、あるいは能率の向上はさせられていながら、公安官だけがふえている。これでは国鉄は、本来の仕事というようなものからはみ出て余裕があるということになるじゃありませんか。副総裁、どうでしょう、これは。
  74. 吾孫子豐

    吾孫子説明員 先ほど来お話が出ておりますように、輸送の安全を確保する、また輸送の上におけるいろいろな秩序を維持するということは、国鉄業務を遂行していく上の大前提でございます。その意味で、必要最小限度の警備関係の要員を確保するということで、ただいまの公安職の人数がきめられておるようなわけでございまして、この全体の人員につきましては、当初は、先ほど中村常務から申しましたように、一万人もおったのでありますけれども、この程度にしぼってきたわけでございます。今、二十五年よりも三十五年の方がふえておるようお話でございましたが、二十五年には三千八百六十五名でございまして、それが三十五年には三千二百六十三名ということで、六百人ぐらい減らしておるわけでございます。ふえてはおりません。
  75. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それは私の数字と同じですから、数字の間違いはないわけです。  今、国鉄の現場の中では踏切警手が足りぬとか、あるいは荷扱手が足りないとか、線路工手が困るとみな言っているときに、国鉄が三千二百六十三人も、年間十五億の莫大な経費を入れてやらなければならないほどこの問題は重要視しなければならないか。先ほど刑事局長からも話を聞きました。私鉄一般警察でやっていると言っているわけです。ましてや大蔵省からも言われているじゃありませんか。大蔵省から言われたから減らした、こう言っているじゃありませんか。大蔵省から言われて、確かに二十一年、三十二年には減らしました。三千三十九人になりました。しかしそのとたんに、その翌年の三十三年には今度はまた二百三十人ばかりふえているじゃありませんか。公安官は漸次縮小すべきであるという大蔵省の意見というものが明確に出されているじゃありませんか。にもかかわらず、ふやさなければならないというのは、そしてなおかつ鉄道運賃も上げなければならぬ。一般の現場の方も合理化しなければならぬ。駅員も今までおったのを減らして、そしてサービスを片方では低下をしておるにもかかわらず、こっちばかりふやすというのは、まさに私は主客転倒しておると思うのです。こんな余裕があるのだったら駅員の無配置駅を片方で作るようなことや、あるいは輸送のもっとお客に対するサービス、こういうものを向上させたらどうでしょうか。
  76. 吾孫子豐

    吾孫子説明員 先ほど、これも中村常務から申し上げておりましたのですが、鉄道内におけるいろいろな犯罪事故、それには刑法犯とか、営業法違反とか、諸法令違反というようなものも、遺憾ながらなかなか減少いたしませんし、また犯罪ということには必ずしもならないのもあるかと思いますが、線路妨害事故でありますとか、運転機能の妨害事故でありますとか、あるいは信号通信に対する妨害事故その他いろいろな輸送の安全確保上支障のおそれがあるような事故がなかなか減りません。それで私どもといたしましては、もちろんそういう事故が減って参りますれば、公安職員のような、いわば国鉄本来の輸送業務とは少し性格の違った仕事でございますので、そういうものを減らし得るよう状態になれば、それに越したことはないと思っておりますけれども、遺憾ながらまだそういう事故が減りませんので、これを残しておく必要があるようなわけでございます。しかし、ただ公安職員も警備一本やり、純粋の警察官のように、ただ取り締まりばかりやらせるということではなく、かなりお客様のお世話とか誘導とか、そういうような面にも働いてもらっておりますので、純粋の警察官の方とはおのずから違った、鉄道職員らしいお客様に対するサービスという面でも公安職員は相当働きをいたしておると思っております。
  77. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 大臣にお尋ねしたいのですが、今度国鉄運賃値上げをするにあたりまして、いろいろの遊休施設とかあるいはスワローズの七百万円までを節約して、年間約二十億というようなものを節約をして、そうして運賃値上げをしなければならない。これほど国鉄財政が逼迫しておるのだということを天下に公表されました。しかし今もお聞きになりましたように、従業員は漸次少なくなる。そしてなおかつ国鉄はこれからいろいろ大へんな問題を控えているときに、三千二百人というような人数と、年間十五億というような膨大な金を使って、こういう鉄道本来の仕事以外の仕事をやらなければならぬということが行なわれておるわけでありまして、やはりこういうことは本来、相当部分削減をして、一般警察でやってもらうという部分があると思うのです。ですから、今度の運賃値上げを契機に、この公安官の問題につきましては、再検討をし、漸次減らして、そうして本来の仕事の方に人員を移すべきだ、こう思いますけれども、大臣はどうお考えになりますか。
  78. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 お答えをいたします。元来、鉄道ばかりでなく、警察とかいうようなものは、なければこれに越したことはない。ないような時代がぐることを、お互いに希望しているわけです。しかし、犯罪を犯す者があれば、これは善良なる人を保護するために警察があるのは社会の当然なことで、好んで警察をふやすとか鉄道公安官をふやすというようなことはない。これはもう必要やむを得ずこういうものがあるわけで、理想としては、警察とか鉄道公安官なんというものはないような事態がくることを私どもは希望をいたしておるわけでございますが、ただいま御説明申し上げましたように、戦後における社会行政の混乱から、凶悪な犯罪、あるいは悪質な鉄道犯罪というものができまして、旅客、貨物等の輸送にいろいろ支障を来たす、これはこのままにほうっておけないというので、国会の御意見によりまして、議員立法によって昭和二十五年に鉄道公安官法律ができたのでございます。その後の事情を見ますと、今御説明申し上げました通りに、犯罪は減るどころか、ますます悪質な犯罪がふえている。また鉄道の悪質な妨害犯罪というものもふえておりますといたしますと、鉄道といたしましては、鉄道公安官というものを好んで置くわけではないが、これを減らすわけにはいかぬ。ことに御承知通りに、その後国会におきまして、鉄道公安官というものを廃止せよという御意見のある方が、国会においてもあるものと見えまして、二回廃止の法律案が出たのですけれども、国会においてこれを否決いたしまして、鉄道公安官制度はそのままに置くべしという国会の意思が表明されたのでございます。従いまして、国会の意思という、いわゆる国権の最高機関の意思がそこに表明されたものでございますから、やはり私が今申し上げたように、今のよう犯罪が激増する場合には、鉄道公安官というものはやむを得ずこのままに置く。減少するというような方向にいかないということはまことに遺憾であるが、やむを得ないことであると私は考えておる次第でございます。
  79. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 大臣、私はバランスの問題だと思うのです。そんな余裕があるならば、国鉄は本来の仕事を満足にやっておればいいと思うのです。しかし、国鉄の本来の仕事を十分尽くせずに、なおかつこういうものをやっているから問題になると思うのです。もう戦後ではないというのは、常識なんです。そしてなおかつ犯罪が多い、こう言っている。犯罪が多いなんて統計のとり方ですよ。統計をひねくり回せば幾らでも犯罪は多くなる。しかし、これは国鉄本来のやるべき仕事かどうか、と言っている。ですから、私は公安官制度そのものを今ここで廃止せよという論議をあなたとしようとは思っていない。しかし国鉄運賃値上げしなければならぬ段階において、鉄道本来の仕事がそれだけ行き詰まっておるなら、経費を削減すべきだ。年間十五億も使っておるような金を十億に、五億に減らす努力をすべきだ。そうしてその分をどうしたらいいか、それからはみ出たものは一般警察にお手伝いをしてもらう。戦争前はそうやっておったのです。終戦後の特殊事情の中で、これか起きてきたのです。それを大臣は、ただ単にやっておることをよしとせずに、国鉄運賃値上げしなければならぬ、国鉄のむだがあるかないか、大臣としてもう少し責任ある検討をし、その上でなおかつこれは運賃値上げをしなければならぬというなら、国民も納得すると思う。たくさんのむだがあるわけです。その一つの問題として公安官の問題を言ったわけでありまして、これは大蔵省からも指摘をされておるじゃありませんか。「鉄道公安官は終戦後の混乱という異常事態に生れたものであるが、治安の回復状況からみれば、その存在の意義は少くなっている。国鉄では、この公安官警察的な事態ばかりでなく、荷物の事故調査という国鉄本来の業務を持っているほか、労働組合対策上必要であると主張しているが、すくなくとも事故調査業務にたずさわる以外の公安官は、漸次縮減すべきではなかろうか。」こういっておるじゃありませんか。これは私は国家全体から考えて、国の行政から考えて、あるいは金をどうやって有効に使うかという立場から当然なことだと思うのです。せめて、運賃値上げしなければならぬ、国民に忍んでもらわなければならぬという立場である以上は、もう少しこの問題を真剣にこの際再検討し、そして国鉄にもがまんをしてもらって、本来の仕事の方にもう少し力を入れるようにさせるべきだと思うのですが、大臣、どうでしょうか。
  80. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 いろいろ御意見を拝聴いたしましたが、遺憾ながらあなたの意見と私は違った考えを持っておるのでありまして、今大蔵省の意見などいろいろ御指摘になりましたが、私まだそれをよく聞いておりませんけれども、しかし事いやしくも鉄道公安官に関する限りは、国鉄運輸省意見が正しいものだと私は考えておる。大蔵省というものは財布を持っておるものですから、何のことについでもなるべく金を出さぬようにしておることは、これは委員諸君が御存じの通りで、鉄道公安官ばかりでなく、何の問題でもなるべく金を出さぬようにということでやる。大蔵省の立場としてはその意見は当然のことだろうと思いますけれども、しかし事いやしくも鉄道公安官の存置、あるいはこれを増すとか減らすとかいうような問題につきましては、その仕事に当たっておる国鉄運輸省意見を尊重していただくことが事態の急に応ずるものであると私は考える次第でございます。先ほど来申し上げる通りに、これは日本の国全体といたしましても、警察の費用はむだではないか、あるいは防衛庁の費用はむだではないかというような御意見は幾らでも出るのですが、しかしそういうことが必要だというような世の中なら、これはやむを得ず置くわけで、理想社会ならば警察も要らなければ防衛庁も要らぬというように私はなると思うのです。今、もう戦後という時代でなくなったというお話ですが、私は国民の皆さん方の御努力とその後の政治のかじのとり方がよくて、経済状態は戦後ということをもう脱したような気がいたしますけれども犯罪の問題、ことに鉄道の施設内でやるとかあるいは鉄道関係して輸送を妨害する悪質の犯罪というようなものがふえておる今日におきましては、鉄道事情によく通じた鉄道公安官というものが普通の警察官よりいいのじゃないか。あなたと逆の考えでおそれ入りますけれども、先ほども他の政府委員からお話しになりましたが、普通の警察官じゃどうも間に合わないというお話がございました以上は、鉄道の施設内における犯罪であるとか鉄道に関する犯罪とかいうものに関しては、鉄道事情のわかっている人がこの犯罪の捜査に当たるということは当然だろうと私は思いまして、これを減員するようなことはただいま考えておりません。あなたの御意見を反駁するようなことで、別に感情を激成したとかなんとかという意味じゃございませんけれども、率直に一つども立場を申し上げまして御理解と御協力をお願いいたしたいと思います。
  81. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私は運輸大臣の答弁を聞いておるつもりなんですが、どうも運輸大臣のようじゃなくて、警察庁長官か何かの答弁のようなので大へん残念に思うのです。私は警察の仕事をするところが運輸省じゃないと思うのです。国鉄はお客や荷物を運ぶのが本来の仕事なのです。そのお客や荷物を満足に運べずに、運賃値上げをしなければならぬ。踏切警手が足りない、駅の出札や改札の人が足りない。そうして一般企業よりもとんでもない安い給料で人を使っていながら、なおかつそれをやらなければならぬというのが私はわからないのです。それはあなたは監督している大臣という立場から、運賃値上げしなければならぬときだったら、もう少し冷静に国鉄の経営の中をやるべきで、警察庁長官でないですから、警察で仕事をやらなければならぬようなものは国鉄でやるべきではない、だんだん減らしていったらどうかということぐらい考えるのはあたりまえだと私は思う。公安官に関する法律は国会でどうとかこうとか言ったからそれは何とかだ、こう言っておりますけれども、私はその根本的なものについては論争をいたしませんと先ほどから言っておる。ただ今日の事態は、少しは減らして、その経費をよそに向けるべきときにきているのじゃないかと考えている。だから国鉄は遊休施設を払い下げするとか、たった七百万円のスワローズの金まで考えているのですが、これは十五億ですよ。三千二百六十三人ですよ。これだけ大きな人員と予算はそのまま目をつぶって、とんでもないところに目をつけている。ここに経営全体の問題があると言っているわけです。まあ大臣も意見が違うようでありますから、きょう一日であなたの意見を私に近寄らせるのは無理でありますから、やはりそれは時代の問題でもありますので、ぼつぼつ話をしていきまして、ここ一、二カ月の間に私の意見と同じようになるように私も努力したいと思います。  そこで最後に、私は国鉄の中で大へん気の毒な人たちがおることを知っております。今、国鉄は定員が足りないために臨時職員という制度があるようでありますが、その臨時職員は全体で何人ぐらいおりますか。
  82. 中村卓

    ○中村説明員 現在、年間平均いたしまして八千人前後と思います。
  83. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それでこの採用を前提とした臨時雇用員の人たちの給料というものは日給が二百二十円だといわれておりますが、これは事実でしょうか。
  84. 中村卓

    ○中村説明員 具体的な数字についてははっきりまだ確かめておりませんが、大体各地域ごとに労働省の告示によってきめられた範囲で採用しているわけであります。
  85. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 数字がわからないようですが、私が調べた職員に聞いてみると、私は日給二百二十円です、一日二百二十円で一カ月二十五日間働かされております、どんな仕事をしておりますか、ほんとうの職員と何も変わりのない仕事をしております、こういうことを言われました。まことに驚いた状態であります。二百二十円で二十五日間といいますと五千五百円です。一体高校を卒業した諸君が二百二十円というような安い給料で使われているという国鉄の職場というものについて、そしてその職員が一人前の仕事をさせられているということについて、大へん驚いたわけです。副総裁、これは大へん驚いた給与ですけれども、何とかこの問題は解決しなければいけない問題だと思いますが……。
  86. 吾孫子豐

    吾孫子説明員 臨時雇用員というものの中身はやはりいろいろございますので、全部の臨時雇用員が今御指摘のありましたような給料で働いておるというわけではないと思います。中村常務から申し上げましたように、それぞれ地方によりまして労働省の告示で定まった基準に基づいて給与をきめておるわけでございまして、これらの臨時雇用員の中には、さしあたりは臨時雇用員として使いますけれども、将来欠員ができたときには本職員に採用するという予定で雇っておる者もございますし、給与の水準というのは、決して高いとは申せませんけれども、世間に比較してむちゃくらやに国鉄が安く使っているというほどのことはない。特に将来職員に採用されるというような希望を持って働いている人もあるわけでありますから、現在の給与というものは、問題がないとは申しませんけれども、まずまず妥当なところではなかろうかというふうに考えております。
  87. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私は、副総裁、大へんなことだと思うのですよ。私が二百二十円と言うのは静岡で二百二十円なんですから、全国おしなべてみたら二百二十円というのは、二百二十円以下というのがたくさんあるというのをあなたが承認したと同じことになる。二百二十円に二十五をかけたら幾らになると思いますか、五千五百円じゃありませんか。五千五百円が安くないと思うという認識は私は大へんなことだと思う。大体短くて六カ月、長くて一年以上の人たちが二百二十円で雇われているのです。それは将来国鉄が本採用してくれるから、こういうことなんです。そして今徹夜している職員のことを聞いてみましたら、一日二百三十五円です。徹夜料を幾らもらっているかと聞いたら二十三円ですよ。一晩徹夜して二十三円です。一般の職員は徹夜料の最低保障が七十円です。臨時職員は、臨時なるがために二百二十円で徹夜させられ、二十三円の徹夜料をもらっておる。こんなことが国の企業の中で一体許されるでありましょうか。今日、中学を卒業した子供でさえ八千円、九千円、高等学校を卒業すれば一万円以上じゃありませんか。一体、これを是正する考えはないのですか。
  88. 吾孫子豐

    吾孫子説明員 先ほど申し上げましたように、私も決して高いとは思っておりませんが、世間並みに比較いたしましてむちゃくちゃに国鉄の賃金が安いということもないと思います、ということを申し上げたようなわけでございまして、これは本職員の給与につきましても、国鉄の財政の許す範囲で、職員諸君の御協力も得ましてだんだんよくしていきたいと思っております。従いまして臨時雇用員の諸君につきましても、本来の職員の給与の改善と並行しまして、だんだんよくして参りたいと考えております。
  89. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 これは私は重大な問題だと思うのですよ。そう高くないと思うというと安いととになるのですが、一体五千五百円でどこで今雇われる人がありますか。結局それは半年なり一年後には国鉄に本採用してくれるからだというえさによってやられているわけです。明らかにこれはまさに低賃金の見本じゃありませんか。この二百二十円なり、徹夜でたった二十三円しかくれないこういう給与が、国鉄の今日の労使の根本的なあり方として問題になっているわけです。ですから、公労協がストライキをやる、国鉄はけしからぬと言う前に、国鉄の当局者として、どれほどよそ並みの給与を出しているかということをもう一回反省すべきときにきていると思う。それをせずに、何やかやとおどかしばかりかけているということは、やはり私は経営をしている皆さんの立場としてもう少し考えるべきだと思う。一つ私は、この雇用員の二百二十円、徹夜料たった二十三円という問題につきましては、せめて今度の国会中にこれを何とかもう少し具体的に、世間並みに、人並みにするように努力をし、その結果を報告してもらいたいと思いますが、どうでしょう。
  90. 吾孫子豐

    吾孫子説明員 臨時雇用員に対する賃金の支払額というのは、昭和三十四年度では大体十三億円くらいと思います。従いまして、全体の平均から申しますと、四百三十円くらいになるかと思うのでございます。ただ、最初のうちは御指摘の通り、安い方もあることは確かにその通りだと思いますけれども、全体の平均がそんなに低いわけではないというふうに思います。しかしながら、かつては臨時雇用員というものは、季節的に業務がふえたときに使うというのが本来の建前であったわけでありますが、最近いろいろな事情から臨時雇用員の数も増してきたわけであります。これは国鉄業務のやり方を今後はいろいろ研究して参らねばなりませんし、また現に研究中でもありますので、臨時雇用員の使い方につきましては、その基本的な点まで触れまして今後十分検討して参りたいというふうに思っております。
  91. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 副総裁は知っていて言わないのか、ほんとうに知らないのかよくわかりませんが、四百三十円というのも臨時人夫ですよ。いつ首を切られてもいいという臨時人夫の二百二十円というものは、これはおとりなんです。お前は来年本採用にしてやるから入っておれということで六カ月なり一年なり、長いものは一年半も二百二十円で使われておるんですよ。しかも徹夜で二十三円です。ここにおられる皆さんはみんな驚いていると思います。国鉄は二十三円で徹夜させておる。それもそう安くないと考えられているのですが、片方でそういう酷使をしているわけですよ。私は国鉄としてこのように人夫を一カ月五千五百円で使って、駅で連結をさせるとか、踏み切りをやらせるとか、切符を切るとか、一般と同じような仕事をさせているということは大へんなことだと思いますよ。それは皆さんの方から通達をするときには、なるべく責任のない仕事をさせておけという通達をしておりますけれども、現場では人が足りないのです。ですから人間を一人前に使わなければならないのだが、これではとても気の毒でしょうがない、二十三円で徹夜させるわけにいかないからといって、駅長や助役がポケット・マネーを出して、うどんをくれたり夜食をくれたりして励ましているじゃありませんか。こういうことが積み重なって、今国鉄輸送が行なわれております。人件費がどうとかこうとか、あるいは全体に対する人件費が多いとか少ないとか言っておられますけれども、しかし、基本的な問題は、国鉄経営そのものが裸にされて全部やらないととろに問題があると思います。この問題は一つ十分検討されて、この結果がどうなるのかという点をもう一回私はお聞きしたいと思います。もう少し国鉄の職場で喜んで働き、そうして喜んでサービスをすることができるような態勢を一つ作っていただきたいことを私は要望いたしておきます。  あと通産大臣なり企画庁長官なり、あるいは総理に対する質問はまた別にいたしまして、以上で私の質問は終わります。
  92. 三池信

    ○三池委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後一時半より理事会、午後二時半より委員会を再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後二時四十一分開議
  93. 三池信

    ○三池委員長 それでは、再開いたします。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題とし、引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  吉村吉雄君。
  94. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私は、現在の国鉄運賃をめぐっていろいろな問題が内外にあるわけでございますが、その中で特に重要だと考えられますものは、この国鉄の大企業を運営するにあたっては、四十数万に上るところの従業員の協力がなくしては、国鉄の経営というものはどうしてもうまくいかないのではないか、こういうふうに考えておりまして、特にそういう従業員の現在の業務の実態から、国鉄がどのよう考え方を持っておるかというようなことを質問の重点にしようと思っておったのでございますけれども、はからずも今この委員会に来る途中に、国鉄の労使の関係について非常に大きな影響を与えるであろうと思われますところの、しかも従業員全体に大きな衝撃を与えたに違いない問題を耳にいたしましたので、まずそのことからお尋ねをしたいと思います。  きょう聞くところによりますと、過般の十五日の動力車労働組合の闘争に対しまして、国鉄当局では本日大量の処分をもってこれに報いた、こういうような報道がありますけれども、その報道が事実かどうか。事実だといたしますならば、その内容はどうかという点について、総裁にまずお尋ねをいたしたいと思います。
  95. 十河信二

    ○十河説明員 国鉄の正常な運営をいたしますにつきましては、今お話のありましたように、四十五万の職員が一致協力して当たらなければならぬと思うのであります。その一致協力の標準は、法律、命令に従いましてその法規命令を中心にして業務の運営に協力して当たるということでなければ、いろいろな百人百色の意見を持っておりますから、めいめいの考えで行動せられたのではなかなか規律が立たず、業務の正常な運営はできないと思うのであります。このたび動力車組合におきましては十割休暇闘争ということを宣省いたしまして、団体交渉の最中に職場を放棄する、多数の人を動員して職場を放棄せしむるというふうな事態を引き起こしました。われわれといたしましては十分話し合いによって解決しようじゃないか、話し合いのつくまでは実力行使をしないようにしてほしいということの了解をつけて、話し合いを進めておったのでありますが、そういうふうな事態が起こりまして、多数の列車をとめるというふうなことで正常な運営を阻害いたしましたので、私はやむを得ず法に従って処分せざるを得なかったのであります。処分の詳細につきましては担当理事から御報告いたさせたいと存じます。
  96. 中村卓

    ○中村説明員 ただいま総裁から大体の概略につきまして御説明申し上げたわけでございますけれども、さらに補足いたしまして私から申し上げたいと思います。  本日通告いたしました処分は、動力車関係がただいま総裁の申し上げましたように三月十五日の未明の闘争の関係で公労法による解雇十二名、それから……(「内訳は」と呼ぶ者あり)内訳と申しますと、現地へ行きました中央闘争委員が三名、あとはそれぞれ現地の責任者でございます。地方は、動力車関係は旭川の地本の書記長、水戸の地本の執行委員長、同じく水戸の支部の執行委員長、東京地本の組織部部員、静岡の地本の執行委員長、浜松支部の執行委員長、北陸地本の執行委員長、広島地本の執行委員長、広島第二支部の執行委員長、以上でございます。  なおこのほかに、三月八日、九日の電話業務の合理化反対闘争で問題を起こしました釧路の関係で釧路の地本の執行委員長、それから三月六日から中旬にかけまして新見地区におきます順法闘争で違法な行為を行ないました関係で岡山地本の新見支部の副委員長、それから国労関係で二人、公労法による罷免の通知をいたしております。
  97. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいまの処分の通告の内容で全部ですか。
  98. 中村卓

    ○中村説明員 ただいま申し上げましたのは公労法による罷免の関係でございますが、そのほかに日鉄法による処分その他がございます。これを申し上げてみますと、停職が合計で十八名でございます。それから減給が二十名でございます。それから戒告が二十四名、それから訓告、これは正式な行政処分ではございませんけれども、これが十五名あります。
  99. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいまの国鉄では、何かといいますと処分々々ということで、労働者の運動を弾圧してきたところでありますけれども、それにしてもまれに見るような大きな処分をきょう通告したということが、この委員会国鉄当局の方から明らかになったわけでございます。そこで先ほど総裁は、今回の問題については話し合いをもってきめたいと思っていたのにもかかわらず云々というようお話がございました。しかし今回の十五日の問題については、国鉄当局も十分御承知ように、合理化に対するところの問題をめぐって、動力車労働組合と国鉄当局との間に数次にわたって団体交渉が行なわれ、しかも十五日の事態発生の直前まで話し合いが行なわれまして、最終的には話し合いがついて、組合の方ではそれぞれ現地の方へその行動を中止するようにという措置をとったことは、十分御承知のはずだと思うのです。そういう点から考えてみますと、今までの経緯からいたしましても、事前にお互いの話し合い相当煮詰まって措置をしたというよう状態になっているにもかかわらず、先ほどの総裁の答弁では話し合いの途中で云々ということを言われますけれども、この間には内容的に相当違いがあるのではないかというふうに考えられるわけです。従って今までのこの種の問題に対する措置と比べてみますと非常に過酷に過ぎるとも思われるような、しかも話が一たん途中でついているにもかかわらず、具体的に労働組合の方でもあるいは当局の方でもそれに対する事後措置をとっておった、そういう事態収拾というものが行なわれておったにもかかわらず、その事態収拾からはみ出た分というものに対して今回のような措置をとるということは、非常に異例に属すると思いますし、今までの国鉄当局のやり方からすると非常に過酷に過ぎる。さらに総裁の先ほどの言明内容は、私の知っている範囲からするとだいぶ相違があるのでございますけれども、この点について再び総裁の方から明確にしていただきたいと思います。
  100. 十河信二

    ○十河説明員 先ほど申し上げましたように、私はどうしても四十五万名の職員の協力を得なければならぬ、協力を得るためには職員に十分理解をしていただかなければならぬ、合理化あるいは近代化というのはどういうことをしようというのか、その合理化、近代化をした結果がどうなるかということについて十分理解を得たいと考えまして、根本の方針を立てる際にも、今から数年前でありますが、合理化、電化の委員会を作りました際にも労働組合に申し入れをいたしまして、こういう事態でこういう委員会を作るからどうか委員会に参加してもらいたいということを懇請いたしましたが、最初は容易に労働組合が承知してくれないのであります。いろいろと懇請いたしました結果、やっとオブザーバーといいますか個人の資格といいますか、そういうことで参加してくれるようになったのであります。これは、私は、個人の資格でも何でもいいからとにかくわれわれがやろうとすることはどういうことであるか、そのやった結果は結局国民へのサービスの向上になりそうして労働環境の改善にもなるのだ、必ず諸君に納得してもらえる、こう考えまして、どうしても参加して聞いてもらいたいということで、オブザーバーとして参加してもらうようになったのであります。  今回の動力車労働組合の主張は、事前の協議ということと走る時間あるいはキロ程というふうなことが問題になっておったのであります。そういうふうに、私は当初から事前協議をしたいということを申し入れ、やっておったのであります。それでありますから、この問題については私は組合の方に誤解のあるはずはないと考えましたから、当局者に十分話をするようにということで、団体交渉の際にも、話し合いの途中ではどうか列車をとめてお客に迷惑をかけるようなことをしてくれないようにということを懇々と話し合いをして、了解を得ておったはずであります。ところが話し合い途中にそういうことが起こりましたので、これは法規に違反した上に最初の了解とも違っておるように私は感じました。やむを得ず私は涙をふるって処分に同意せざるを得なかった次第であります。
  101. 吉村吉雄

    ○吉村委員 総裁は処分のつどやむを得ず涙をふるってという言葉をよく使われるのですけれども、そういう際にふるう涙というものがどのくらいあるのか、私もよくわかりませんが、ただ私の今聞いておりまするのは、この十五日の問題につきましては、国鉄当局と動力車労働組合との間にその当日の直前まで団体交渉が進められて、事態収拾策について話し合いが行なわれ、最終的には事前協議についてこうしましょうということまで話がまとまって、それぞれの機関に対して指示あるいは指令をして事態収拾に具体的な措置をとった、こういうふうに私は考えている一わけです。そういう意味で今までの問題とだいぶ違っておる。事前にもう話し合いがついて、それぞれの事態収拾策がとられておったのであるから、そういうことに対しては、今までの例からすると非常に過酷に過ぎる処分ではないか、このように私は考えてその点を質問をいたしておるわけですから、一つその中心をぼかさないで答弁をしていただきたいと思います。
  102. 十河信二

    ○十河説明員 私はただいま申し上げた通り考えております。団体交渉の経過等は担当の理事から説明させたいと存じます。
  103. 中村卓

    ○中村説明員 少し補足して御説明申し上げようと思います。  当時、動力車労組と私たちとはいろいろとその問題につきまして団体交渉をやったわけでございますが、十五日零時から闘争を組んでいるという話を伺いまして、私どもといたしましては、大体闘争を事前に食いとめるのにはどのくらい時間が必要かということを組合側にただしましたところ、組合側は、大体二時間くらいあれば何とか食いとめるだろうというお返事がありましたので、それではこれから夜十時までに妥結することを目標にして一応団体交渉をやろうということでずっと団体交渉を続けてやったわけです。ところが十時になりましてもまだ話し合いがつかなかったので、当局といたしましては団体交渉をやっている間は不測の事態が発生しないように組合側で責任を持ってもらいたいということを申し入れまして、動力車労組もそれを承諾したわけであります。従って、当局側といたしましては、零時過ぎになりましてもああいう事態は起こらないだろうということを確信を持って、そういう前提のもとに動力車労組と団体交渉を続けたわけでございます。結局三時五十分に至りまして妥結をいたしまして、動力車労組側は四時に闘争解除の指令をしたわけでございますが、その零時から四時までの間に浜松において不幸な事態が起こったということでございます。
  104. 吉村吉雄

    ○吉村委員 今、事務当局の方からの説明で大体そのときの情勢が明らかになったわけですが、特に私がこのことを問題にいたしまするのは、従来の場合にはその事前に交渉が行なわれてそうして話し合いがついたというようなことはあまりなかった例が多いと思うのです。今回は、当局も組合も、双方とも事態の収拾に熱意を持って努力をして、時間的には若干の差があっておくれたとはしましても、できるだけ混乱を少なくしょうという熱意を持っておったことはあなた方も十分認められるところだと思うのです。そういう点から考えてみますると、それに対してはあまりにも今回のやり方は過酷ではないか、こう私は考えて、そのことを総裁に再三質問をいたしておるわけです。特に総裁に私はこの際よく聞いておきたいと思いますけれども、いろいろの従業員の要望なり要求なりというものがある。そういうことに対して当局の方に話し合いなり何なりが行なわれて、どうしても話し合いがつかなくて、組合の方でもそれこそそんなことを望んでいないけれども、どうしてもやむを得ない場合に、いろいろな問題が起きる、紛争が起きる。そういうふうな事態に対して、国鉄当局は、いわばいつでも弾圧、馘首、あるいは免職、停職、こういった権力を重点にしたところの対策をもって臨んできておる、こういうふうに言っても過言ではないと思うのであります。そういうよろなことで、一体これから国鉄当局に対する従業員の協力というものが得られるかどうか、それは権力によっていかに押えてみたところで、ちょうど草が石を載せてみたところで伸びていこうとする場合にはひねくれた形ででも太陽の方向に向かって伸びていくと同じように、労働者、従業員の持っている気持がほんとうに満足され、当局のやることに対して協力するという気持にならない限りは、いかに権力をもって弾圧一点張りでやったところで、私は本質的な問題の解決にはならないと思うのです。そういう点から考えてみまして、今国鉄がいろいろな問題に当面している。このような事態の中で、わざわざ、私から言わしめるならば、まさに問題を拡大するために、あなた方の方で波紋を大きくするこういう行為をするということは、非常に遺憾なことではないか、このように私は考えます。この点について、総裁から考え方を聞かしてもらいたいというふうに思います。  他の一点は、先ほどのお話によりますと、公労法によるところの解雇は十二名ということでございます。そのほかには日鉄法によるところの停職以下の処分、これが五十九名に及んでおる、こういうお話でございます。ここで国鉄の当局にお尋ねを申し上げたいと思いますのは、今国鉄当局では動力車労働組合、あるいは国鉄労働組合というものを正規の労働組合と認めて団体交渉をやっている、こういうふうな状態にあると思うわけです。この点についてはまず国鉄労働組合と動力車労働組合とその他の労働組合を、それぞれの労働組合と認めて国鉄当局は団体交渉なりその他の話し合いに応じているのかどうか、ここをまずお伺いしたいと思うわけです。
  105. 十河信二

    ○十河説明員 第一の点について、私から重ねて申し上げますが、私はどこまでも話し合いによって事態を解決したい、実力行使あるいはストによって解決することは邪道である、こう考えまして、どこまでも話し合いを続けていきたい、こういうのであります。しかるにもかかわらず、一方において十五日と日をきめて、十割の休暇闘争、職場放棄ということを宣言しておられる。これは事態が容易でない、こう考えましたから、われわれの仲間同士で、組合と経営者と仲間だけで話し合いをするよりか、事態が迫っておるから第三者を入れて調停をしてもらった方が、話し合いによって事態を解決する上に有効であろうということも考えまして、どこまでも私たちは話し合いによって解決しようという方法を固執して参ったのであります。それが遺憾ながら十五日のストというふうな宣言があったために、ああいう不幸な事態を起こしたのは私は遺憾にたえないと考えておる次第であります。  第二の問題については、担当理事から御説明申し上げます。
  106. 中村卓

    ○中村説明員 私たちといたしましては、国鉄関係の労働組合はりっぱなものと認めて、これを相手に団体交渉なり話し合いをやっているわけであります。
  107. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういたしますと、日鉄法の三十五条には、国有鉄道の労働関係については公労法による云々、このように書いてあります。今のお答えによりますと、国鉄の労働組合あるいは動力車労働組合は正規の労働組合として団体交渉を行なっておるという当局の態度でございますから、従って、今回の問題等につきましてもあるいはこれまでの問題もそうでありますけれども一つの紛争行為に対して、ある一方においては公共企業体等労働関係法を適用する、ある一方においては日鉄法を適用する、こういうような事態は法の乱用ではないかというふうに私は考えます。従って、同一の行為に対してあなた方が別々の法律を適用する、その法的な根拠をどのように理解されているのかお伺いしたいと思います。
  108. 中村卓

    ○中村説明員 この問題につきましては、前々からいろいろと御見解の相違はあったかと存じますけれども、われわれの方の立場から申し上げますと、やはり日鉄法によります懲戒処分と、公労法による免職と、二つの法体系で考えていって一向差しつかえないと考えて、従来も実行してきたわけであります。
  109. 吉村吉雄

    ○吉村委員 確かにいろいろな見方なりあるいはその論議のあることは私も十分承知しております。しかし、労働組合としてあなた方が認め、そうして団体交渉をやっておるその労働組合が、  一つの紛争に対して下級機関に行動の指令をするということは、労働組合に保障されておる権利だから、そのことによって行なわれる一つの行為について、二つの法律を適用するということはまさに法の乱用である、このように言わなければならぬと思うのです。しかし、このことについてはいかに論議をしてみましてもおそらくあなた方はあなた方の見解を述べるでありましょうから、これ以上は触れないことにしておきたいと思うのでございます。ただ、先ほど総裁にも聞きましたけれども、今の国鉄の労使の関係については、決して今日偶然に起こってきた現象ではなくて、いろいろ深い根源があって今日の事態を招いている、そのことについては私は今この委員会で労働問題だけについてあまり時間をとりたくないと思いますから触れませんが、そのこと自体は、仲裁委員会の裁定の問題等についてもむしろ総裁の方がよく知っておるはずだというふうに思うのです。  そこで、今、総裁の答弁の中で私が納得することができませんのは何かといいますと、話し合いをする、話し合いをすると言っていながら、何か事が起きると非常に強圧的な権力を行使した弾圧をどんどんとこのごろ強化をしてきておる。そのために国鉄当局に対する従業員の信頼感、協力感がだんだんと薄らいでいる、こう言って過言でないというふうに思うのです。従って、話し合いという精神で事を処理しようとするならば、それは事後処理においてもそのような角度から処理していくことが本筋じゃないか、このように私は考えるのです。このような問題についていかに権力なりあるいは法規なりをもって押えようとしても押えることができない歴史的な事実があるんだ、このように私は考えておりますので、遺憾ながら今回の処分あるいは今日までの処分等については、従業員がほんとうに十河総裁に協力し、国鉄に協力しようという熱意を全く喪失させると同時に、非常に多くの問題をかかえておる国鉄がこれからそれらの問題の処理にあたって大きな障害になるのではないか、なるに違いない、このよう考えざるを得ないわけでございます。再びこの点について総裁の考え方を明らかにしていただきたいと思うわけです。
  110. 十河信二

    ○十河説明員 私はでき得る限り話し合いによって事態を解決したいと今日までも努力して参りました。不徳にしてこういう事態を起こしたということは私みずから非常に反省しております。今後も一そう話し合いによって解決するように努力いたしたいと覚悟いたしております。
  111. 吉村吉雄

    ○吉村委員 今の総裁の最後の答弁は、こういう事態を起こしたことについては深く反省をする云々という一項がありましたけれども、その言葉の意味は、今後そういうことをしないようにするというふうに解していいのですか。
  112. 十河信二

    ○十河説明員 今後はそういう実力行使というよう法律違反をやってもらいたくない、やってくれないように努力をする。やられると私は法律によってどうしてもいやでも何か処置を講じなければ、国民から国鉄を預かっておる責任者として、やむを得ずそういうことをしなければならぬ。だから、どうかそういうことをしてくれるなということをどこまでも懇々と、しんぼう強く説得をいたしたい、こう覚悟いたしております。   〔「そうだそうだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  113. 吉村吉雄

    ○吉村委員 だいぶ与党の方の声援があるようでございますけれども、私は実際に現場で生活を二十七年間もやっておるのです。従ってついこの間までは国鉄の職員であったわけです。今、法律を守れ、あるいは法規を守れと再三強調されましたけれども、では、実際に国鉄内の法規を守った場合に、いわゆる正常な列車の運行というものができる自信があるかどうかということを、総裁にまずお尋ねしておきたいと思います。
  114. 十河信二

    ○十河説明員 私は、国鉄を愛し国を愛して、そういう精神で法律を守ってくれればできると確信いたしております。
  115. 吉村吉雄

    ○吉村委員 線路をまくらにして討ち死にという名句を総裁は吐きましたけれども、そういう観念と感情の議論だけでは問題は解決をしないと思います。私の申し上げているのは、具体的に現場の従業員は、あなた方が作った部内の法規というものを守っておったのでは、正常な列車の運行は確保できない、こういう実態にあるということを私は申し上げている。自分で長い体験を通じて私はそのことを知っておるのです。だから総裁が法律を守れあるいは法規を守れというのであるならば、皆さんが作ったところのその法規なり何なりというものをそのまま全部従業員に守らせた場合に、正常な列車の運行なり業務の運営ができる自信があるかということを私は質問しているのであって、感情的なあるいは観念的な答えを求めているのではないのです。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  116. 十河信二

    ○十河説明員 まことにたびたびで相済みませんが、私は法律というものはそうこまかいところまで規定はできない、またそういうふうに規定すべきものではない。従って法律の規定、その精神をくんで、国鉄を愛して解釈していただいて行動していただければ、大体正常な運行ができるものと、こういうふうに私は信じておるわけであります。
  117. 久保三郎

    ○久保委員 関連して。総裁、あなたも御存じだと思うのでありますが、たとえば最近起きている踏み切りの事故を一つとりましても——これは私が調べた一つだけで申し上げましょう。これは去年だと思いますが、亀有でいわゆるトラックと電車が衝突した事件がございます。このときの実例からとりましても、あなたがお作りになって、職員にこれを守れという運転取扱心得で、はたしてあの踏切警手が健康なからだであっても、あの一、二秒かそこらの間に、運転規則にきめられたところの地点まで行って赤信号を出すなり発雷信号を出すなりというととは不可能だということです。可能ではない。私は決してあなたの言葉じりをつかまえるのではない。観念的にあなたが国を愛し鉄道を愛するという気持になっても、でき得ないものを押しつけておくことはどうなのかということです。できますか。それをあなたは現実に目をおおって、国を愛するとか国鉄を愛するとかいうだけでやろうとするところが間違っておるということだ。総裁一人だけが国鉄を愛するのではないのですよ。今四十五万の人間がおりますが、すべてが国鉄を愛そうということでやっておる。先般、日本経済新聞の記事に投稿が出ておりましたが、ある踏切警手が言っております。秒で仕事をしておるのだ、われわれは秒族だ、それでもなおかつこれはできない、こういうことを訴えております。お読みになりましたか。これは東京都内のある踏切警手の寄稿であります。お読みになったと思うのですが、どうでしょうか。これをお読みになってどうお感じになりましたか。国を愛し国鉄を愛するだけでそれができますか。それを吉村君が今質問されているのではないですか、まじめに御答弁下さい。
  118. 十河信二

    ○十河説明員 たびたび申し上げますように、法律は十分に規定することは非常に困難であります。だから法律の精神をくんでやっていただけば私は大体うまくいくのではないかということを申し上げたわけであります。もちろん、法律も人間のこしらえたもので、不備でありますから、日々それは検討して改善をしていかなければならぬというととはもちろんであります。しかし大体において法律を守っていただけば、どうにか安全にいけるのではないかということを私は申し上げたのであります。
  119. 井岡大治

    ○井岡委員 関連して。総裁は国鉄四十五万の信頼を得て、国鉄を完全に守っていきたい、そして業務を遂行したい、こういうように言われておるわけです。そういう立場から組合とも話をしたい、同時にしていっておるのだ、こう言っておられますが、現実にはそれと違う事実があるのです。これは八王子の駅長さんの中島勘司さんという人が各家庭に配った不当労働行為の原文です。この中に、総裁は法律を守らなければいかぬのだ、こう言っております。不当労働行為はやってはいけないのだということに法律で規定してあります。にもかかわらず——読んでみましょうか。「今回は時間の問題だと言われるILO条約第八七号が批准になれば、労組の専従(職員中から選出されて国鉄の仕事から離れて組合の仕事に従事する)役員制度が無くなり職員でなくとも組合員から選ばれれば役員になれることになるので、この際闘争の先頭に立って首にされれば組合から国鉄の退職金より多い御手当金が出るので徹底的に闘争すると云ふ思惑がある」、こういうものを各家庭の奥さんに出して、そしてILO八十七号といういわゆる国際条約をひん曲げて脅迫をしておる。しかもこれは不当労働行為なのだ。駅長さんが本年の三月に出しておる。これを総裁はどういうようにお考えになるか。こういう不当労働行為をやってもよろしいというのかどうか、明確に御答弁をいただきたい。そしてこういうものに対して総裁はどのような処置をとられるのか、明らかにしてもらいたい。
  120. 十河信二

    ○十河説明員 八王子の駅長の出した何ですか、手紙ですか、そういうものは私、今伺ったばかりであります。十分に検討いたしまして、善処いたした  いと存じます。
  121. 井岡大治

    ○井岡委員 あなたがいかに国鉄の職員に対して協力を求めようと思っても、あなただけでなくて、あなた以外の人たちがあえて挑発をかけるような、しかも不当労働行為をあえて行なうようなことであって、はたして国鉄の労働慣行というものが正しく樹立できるのかどうかということなんです。これについて、今聞いたのなら、この事実に対して総裁はどういう処置をとるのか、明確にしてもらいたい。
  122. 十河信二

    ○十河説明員 十分に調査をいたしまして、適当な措置を講じたいと思います。
  123. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 総裁にお尋ねしたいのですが、総裁は、就任以来、レールをまくらに国鉄を再建するとこう言われた。再建された結果というものはもう十分出ておると思うのです。その出ておる結果というものは、私が言いましたように、国鉄総裁の権限は何か、首切ることだけだ。一体あなたが就任以来今日まで各年度別に幾人首を切ったか、ここで一つ発表していただきたいと思います。
  124. 十河信二

    ○十河説明員 私は今手元に材料を持っておりませんから、後日御返答を申し上げます。
  125. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それじゃ中村常務理事、十河総裁就任以来、国鉄の従業員を幾人首を切ったか、すぐ資料を出して下さい。おわかりになるはずです。
  126. 中村卓

    ○中村説明員 ただいま手元にはございませんので、後ほど調べて御返答いたします。
  127. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 総裁にお尋ねいたしますが、十河総裁が就任以来、首を切った人数というものは、ほかの電電公社とか、郵政とか、そういうところに比べてより多くの膨大な数に上っておるということをあなたは御存じだと思いますが、どうでしょうか。
  128. 十河信二

    ○十河説明員 とれだけの数になりますか、私は今正確なことは存じません。そういう事態をたびたび引き起こしたということは、さっきから申し上げておりますように、私の努力がまだ足りないからだ、私の不徳のいたすところだと、私は深く反省いたしております。今後も命がけで努力をいたします。
  129. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それは命がけでやられることはけっこうです。しかし、あなた以外の二百名、三百名という国鉄従業員というのは、あなたのために首切られているんです。あなたの不徳によって、あなたの無責任さによって首切られている。これをどうするんですかあなたは。
  130. 十河信二

    ○十河説明員 まことに申しわけありません。遺憾千万で、私は非常に気の毒なことをしたと思っております。
  131. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 その原因というのは一体どこにあるんです。あなたが首を切らなければならぬ——あなたもまた責任を感じている、そして国鉄はほかのところに比べてより以上の処分というものを出している、一体どこに原因があるのですか。それはあなたの国鉄経営のやり方が問題だからじゃありませんか、あなたはどう思いますか。
  132. 十河信二

    ○十河説明員 先ほどから申し上げている通りでありまして、私は一そう努力いたします。
  133. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、総裁は十分責任を感じる、そして従業員だけに責任を負わしていることは申しわけないと思っている、あなたも責任をとる決意だ、そのためには国鉄経営を根本から立て直す、こう言っている。国鉄経営が今行き詰まっている原因は何か、それはあなたが諮問した国鉄諮問委員会が明確に出しているじゃありませんか。それを今度の運賃値上げの中で私は質問いたしました。あなたは公共負担の問題に対しましても、あるいは赤字路線の問題に対しましても、国鉄経営全般の問題に対しましても、何もせずにみんなその責任を国民に転嫁をして、運賃値上げでごまかしておるじゃありませんか。これが一体レールをまくらにして国鉄を再建しようとする国鉄総裁のあり方でありますか。これだったらだれでもできますよ。国民に負担をさせるよう運賃値上げをやるんだったら——これをしもあなたが判こを押して赤字路線を作ってくれ作ってくれと言っている。だからきょうの午前中、通産省局長でもそう言っているじゃありませんか。こういうばかばかしい経営が国鉄の労使の間をますます困難にし、紛争させているじゃありませんか。そしてなおかつ今日二百二十円というような低賃金で労働者をこき使って、これを安くないと思っているというよう考え方、私は、あなたの責任はまさに重大だと思う。そしてそのしまいには何を言うか、法律を守れと言っている。あなたは今日以後、あなたの従業員に対して法律を確実に守って国鉄の運営ができるかどうか、もう一回一つ確信ある答弁をしてもらいたい。そして国鉄法規を守ってこれからの仕事をするように厳達をすることを私は要望いたします。どうぞ御答弁下さい。
  134. 十河信二

    ○十河説明員 絶えず厳達をいたしておりますが、さらに一そう厳達をいたしたいと思います。
  135. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私は、関連質問ですからこれ以上は申し上げませんけれども一つ総裁に、国鉄運賃値上げをするというような重要なこの段階において、労使の間を円満に解決しなければならぬ、また円満に話をすれば円満に解決したんですから。解決したという事実は、話がまとまったんですから。なぜまとまったか、あなたの方は、組合一が何かやったからまとまった、やらなくてもまとまったんだ。ここの認識の問題だと思う。一つ今後こういうことが起きないように十分考えて、国鉄総裁としてほんとうに国鉄経営というものを立て直すにはどうしたらいいか、もっと真剣に考えていただきたいと存じます。
  136. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいま関連質問がたくさん出ておるというのは、それだけこの問題が非常に重要であるということを意味するわけです。簡単にできるからといって人を解雇するというようなことは、非常に重要な問題であるだけに避けなければならない。今回の問題なんか特に避けるべき性質の問題であったというふうに私は考えるわけです。先ほど関連質問の中でも出ましたけれども、それは、一つの不当労働行為の問題でありますが、私は一つの氷山の一角だと思うのです。今、国鉄の内部には、そういう不当労働行為的な問題がたくさんあるわけです。あなたが、従業員あるいは労働者に対しまして、法律を守れ、法規を守れ、守らない者はこうだ、それはあたりまえなんだということを再三強調をし、与党の議員の方々も、それはあたかも当然であるという声援を送っておりますけれども、もしそうだとしたならば、不当労働行為という法違反をやっておるあなた方の忠実ないわゆる現場の長、そういう者に対しましてもあなたはやはり厳正な態度をもって臨む、とういろような答えを当然に出さなければならないはずだと思うのです。こういうことに対しましては、あなたは、それは調査をしてみる。調査をしてみると言うから、具体的にそういう事例があった場合にはどうするか、こういう質問に対しても、調査をするの一点張りで逃げている。こういうふうに、一方に対しては厳正な態度をもって臨み、一方に対しては優柔な態度をもって臨んでおる。言いかえますと、弱い者はどんどん押えつけようとする。それは意識的ではないかもしれないけれども、あなたの八十何年かの間に植えつけられた権力主義というものが、そこにみなぎっておるというふうにいわざるを得ないことをきわめて残念に思うわけです。今後今回の解雇の問題等につきまして、あるいはそれ以前に門司あるいは熊本等でもこの種の問題が起こっておるわけでございますけれども、再三私は申し上げますが、そういうようなことによっては、あなたが念願としておるところの従業員の協力というものは絶対に得られない。ですから、そういう権力を使うとかなんとかということでなくして、国鉄が今政府の方針によっていろいろな圧力を受けている。そうして先ほど来問題になっておりまするように、赤字ということがわかりながらも、それを買わなければならない、建設をしなければならない、こういった中でどれほど苦しい合理化をやっているか、こういうよう国鉄の実態というものをむしろ世間の中に明確にしていく。このことによって国民がほんとうに国鉄というものを理解する、あるいは従業員もほんとうにそのことによって国鉄当局に対する信頼感を増していく。そして初めて国鉄国民に愛される国鉄になり得るというふうに私は考えるわけです。そういうふうな政府側に都合の悪いようなことについてはこれを伏せておいて、そして内部だけで何とか処理をしよう、こういうよう方針をずっと続けてきておるために問題が潜在をし、あるいは沈下をしてしまって、非常にひねくれた形になってきておる、こういうふうに私は指摘せざるを得ないと思うわけです。ですから、これらの点につきましては十分に現場の実態というものを考えられて、国鉄が今置かれている事態を明確にしながら、国民の協力が得られるような、そういう措置をむしろそういう場合にこそ大胆にとっていくということを、この際総裁に強く私は要望しておきたいと思うわけです。  次に、国鉄では運賃値上げしなければ、とうてい現在の政策に対して輸送業務というものを担当する設備あるいは能力を維持するわけにいかないというようなことで、五カ年計画を立案されて、各職場にわたってそれが実施をされておるはずでございます。この中で私がお聞きしたいと思いまするのは、輸送といいますと、あるいは国鉄といいますと、走っている列車、走っている電車、こういうものだけを連想しがちでございますけれども列車を走らせるため、あるいは電車を走らせるためには、その下積みになって働く従業員というものがたくさんおる。あるいはそういう職域があることは言うまでもないと思うのです。国鉄では電車なり機関車なり貨車なり、こういうたくさんの車両を持っておると思うのでありますが、この車両の状況につきましては、従来までは電気機関車を重点とした輸送計画でありますから、これがだんだんと変わらざるを得ない、あるいは変えていく、こういう状況にありますので、今国鉄がこの車両の保守あるいは検修についてどういう計画を持っておられるのか、どういう方針で進められようとしておるのか、このことについてお伺いをしたいと思うわけです。
  137. 關四郎

    ○關説明員 お答え申し上げます。御説の通り国鉄では、直接輸送に携わります車両そのものが、最近の鉄道業務におきましては非常に変化して参りました。従来長い間国鉄輸送の根本をなしておりました蒸気機関車というものが、もう席を電気またはディゼール機関という動力を利用したものに譲りつつある、こういうことでございます。これが戦後の輸送状況、それから動力車のいろいろな技術の進歩によりまして、非常にこういうような新しい電気とかディーゼルの動力が進歩したために、これに大きく移り変わっていくことが将来の国鉄建設するために非常によいということで、昭和三十一年に幹線電化調査委員会、それから三十四年に動力近代化調査委員会、こういうような外部の方々を入れました委員会を作りまして、将来の国鉄の動力というものがいかにあるべきかということを諮問いたしました結果、大体十五年間、昭和五十年ぐらいまでに蒸気機関車の寿命が全部きてしまいますので、寿命がきたと同時に、蒸気機関車を新たに作らずに、これを順次電気機関車またはディーゼル機関車、電車、ディーゼル動車にかえていこうという動力近代化計画というのが三十四年にできまして、その線に沿って今進みつつあります。ただこれによって従来の車両の検査修繕をやっております内容が非常に変わります。たとえば工場で申しますと、従来蒸気機関車を主にしてやっておりました修繕体制というものが、電気またはディーゼル車両にかわっていくということから、修繕の体制または職場の重点というものがすっかり変わってしまう。これに対してどういうふうな態度でいくか、どういうふうな長期計画でいくかということを目下検討中でございます。
  138. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういたしますと、動力の近代化というものは必然なので、それに対応する対策というものを考えつつあるけれども、具体的にどういうふうにしてこの検修の体制を進めていくかということはまだ成案を得ていない、こういうふうに理解をしていいわけですか。
  139. 關四郎

    ○關説明員 そうでございます。
  140. 吉村吉雄

    ○吉村委員 それではお尋ねします。国鉄には従来の車両の保守あるいは検修につきましては、車両工場と、あるいは機関区とか客貨車区とか、こういうふうに全国にそれぞれの任務を持ったところの機関があるわけでありますが、この中で車両の保守あるいは検修については主要な役割を果たしてきておるのが工場ではないかというふうに考えられます。そこでこの車両工場というのは全国で一体どのくらいの数に上っているのかお尋ねします。
  141. 關四郎

    ○關説明員 車両工場は現在二十六でございます。
  142. 吉村吉雄

    ○吉村委員 二十六で間違いございませんか。
  143. 關四郎

    ○關説明員 本工場二十六で間違いございません。
  144. 吉村吉雄

    ○吉村委員 この車両工場が大体従来の車両の保守あるいは検修の主役的な役割を果たしてきたということについてはどうでしょう。
  145. 關四郎

    ○關説明員 蒸気機関車の時代には、工場の力なくしては車両の保守というものはできなかったと思っております。
  146. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そうなりますと、今後のことにつきましては、国鉄部内でもすでにこの動力車の近代化についてはいろいろ検討が加えられておる、こういう話でありますけれども、具体的にはどういうことでやっておられるわけですか。内部だけの検討なんですか、外部からの意見も取り入れたような検討が加えられておるのか、このことについてお伺いします。
  147. 關四郎

    ○關説明員 現在国鉄の中で検討しておりますのは車両検修調査委員会と申しまして、これは内部だけの機関でございます。ただし昭和三十二年に工場調査委員会というのを持ちまして、との中で車両の検査修繕に関する非常に詳細なる調べをいたしておりますので、これは外部の方々もおいで願って将来の修繕体制というものをここで議論いたしますので、それを基礎にいたしまして内部でもって大体の方向づけをしよう、こういうことで現在やっております。
  148. 吉村吉雄

    ○吉村委員 車両検修委員会なり何なりで今検討が加えられておる、こういう話で、五十年までには蒸気機関車は全廃になるわけです。こういうことが明らかになったわけでございますけれども、この計画について、今現場の方では、いろいろな問題が起きておるやに私は聞いておるわけであります。それは従来からあったところの客貨車区あるいは機関区と工場というものが、検修の様態の変更に伴って、国鉄の部内でいろいろ競争的に、おれの方でやる、あるいはこちらでやりたいというようなことで、この検修委員会というものがなかなか前に進み得ないでおるというような話を聞いておるわけですが、この話やあるいはうわさは事実かどうか。さらにそういう思惑というものが手伝いまして、現場の方ではそれに付随をして、いろいろ不必要な資本が投下されておる例もあるやに聞いておるわけです。具体的に申し上げますと、工場という大きな、今までたくさんの資本を投入したところの設備がある、すぐその近くのまた機関区というところに新たに資本投下を行なって設備を拡張しておる、こういうようなことを聞いておるわけでございます。あるいはまた、逆にこれと反対のような傾向もあるというようなことで、将来の方向が明確にならないだけに、現場の方では、思惑だけで、そして資本が不必要に二重に投下されているのではないかと見られるような節々があるわけでございますけれども、先ほど言った第一点についてはうわさだけなのか、あるいはまたあとで指摘をしましたようなことについては事実あるのかないのか、こういう点についてお尋ねを申し上げたいと思うわけであります。
  149. 關四郎

    ○關説明員 この車両検修委員会でもって、いろいろな立場から議論が出ておることは事実でございます。しかし、これはみな国鉄の車両検修というものを通じて国鉄を何とかよくしていこうという熱意の現われでありまして、立場々々によっての意見でありまして、そのために変なふうにゆがめられているというようなことは私はないと信じております。  それから工場と区の二重投資の問題でございますが、これもおのおの見解がございます。それからまたもう一つは、たとえば区と工場の検修のあり方というものが非常に長い歴史的な過程を経ておりますので、これを将来どのようにすっきりした姿に転換さしていくかということがなかなか議論のあるところでございまして、こういうような議論の過程において、実際の設備は早くやらなければならないというような場合に、あと考えたときにこれはかなり過剰な設備負担であったのではないかという御意見の出るようなものもあるかと思いますが、これは将来そういうものはむだのないように使っていくということでカバーしていきたい、こういうよう考えております。
  150. 吉村吉雄

    ○吉村委員 特にこの問題を私が指摘を申し上げていますのは、今国鉄運賃値上げをしなければならないというよう状態にある。この中で検修の方向というものが明確にならない。その期間はどのくらい続くのかわかりませんけれども、その間といえども現在保有されている車両の検査なり修繕というものは進めなければならないという状態になっておる。それに籍口いたしまして、本来検修委員会というものが明確な態度を打ち出しさえすれば、むだな投資になってしまうようなことがどんどんと行なわれてしまって、むしろそれを各系統別に競争的にやっておるというふうなことを私は事実聞かせられておるわけであります。今の答弁によりますと、結果的に見てそれは二重投資になるものもあり得るというような話でございますけれども、そういうようななまやさしいことが今の国鉄の経営の中では許されるべき筋合いではないと私は思うのです。ですから、昭和五十年度までに蒸気機関車を全廃して、ディーゼル化あるいは電化をしていくという方針がきまっておるとするならば、その間に新製車はどういうふうにするとか、あるいはその他の検修の方針が一応きまっておりさえずれば、今までのようなたくさんの資本をむだに投資をして、お互いに競合し合うようなことはなくて済むんじゃないか、そうでないと、運賃値上げというようなことを言いながら、一方では非常にたくさんのお金がむだに使われているという印象を、内部の者にもあるいは一般の者にも与えていくというふうになると思いますので、今、關常務が話しましたけれども、結果的に見てそういうことになるかもしれぬ、こういうようなことでははなはだいかぬと私は考えますので、この機会にお伺いしておきたいと思いますのは、この検修委員会というところでいろいろ検討をされておるその検討の結果あるいは結論というものは、大体いつごろまでに出される予定なのか、出る考えなのか、このことを明らかにしていただきたいと思うわけです。
  151. 關四郎

    ○關説明員 ただいま私の言葉が足りないために誤解をいただいたかのように思いますが、今後の投資については、二重投資になるようなことをしないつもりでおりますが、過去のものに、あるいは観点によってはそういうふうに思われるものもあったかもしれないけれども、今後についてはそういうことのないように車両検修委員会でやっておるというようなことでございますから、この点御了承願いたいと思います。  それから検修委員会の中で議論いたしまして、現在大体まとまったというか、話し合いがつきまして、これはうちの役員会にまたかけなければならないわけでありますが、経過の過程でちょっと申し上げておきますと、大体、区では運用をやる、そして車両の管理は工作でやる、運転では運用をやる、こういう線は大体まとまっております。しかし、先ほど申しましたように、今までの歴史的な過程からいって、区でもって修繕をやっているものが一部あったりなにかするのを、こういうものを今すぐ工場で直すとかなんとかということは、設備、人間の点から容易じゃありませんし、五十年になるまでは蒸気機関車はあるわけでありますから、こういう点をどういうふうに時期的に合わしてやっていくか、こういうことが一番むずかしいところでございます。それで御質問の、結論はいつごろ出るかというお話でございますが、これは、結論はまだまだかかると思いますけれども、さしあたりの中間報告的なものは夏くらいまでに出したいと思っております。
  152. 吉村吉雄

    ○吉村委員 次にお伺いしたいのは、国鉄の経営の中で、たくさんの車両を保守あるいは修繕をしていくというために多額のお金が使われているだろうと思うのです。車両修繕費といわれておるこの種の金額は、昭和三十一年度から大体予算額と決算額はどういうふうな状態になっておるか。今すぐわからなかったらあとでもいいですけれども、それをまずお尋ねをしておきたい。
  153. 關四郎

    ○關説明員 大体の数字で申し上げますと、工場における車両修繕費が約二百七、八十億、それから区における修繕費が百億足らず、こういうことで、総計三百六、七十億ということになっております。年次別の修繕費については、現在手元に資料がございませんので、後刻差し上げます。
  154. 吉村吉雄

    ○吉村委員 総計三百八十億前後に上っておるところの車両修繕費につきましては、これを運用する権限というものはどういうふうになっておりますか、お尋ねします。
  155. 關四郎

    ○關説明員 お答え申します。権限と申しますと、工場の分は工作局、それから区の分は運転局で運用しております。
  156. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいまの答弁によりますと、それは本社の方の工作局で一括して工場の分については運用しているというふうに受け取れるのでございますが、その通り解釈してよろしゅうございますか。
  157. 關四郎

    ○關説明員 さようでございますが、これの実際の運用は支社長の方でやっております。両者あわせて支社長の方でやっております。
  158. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これは支社ができる以前はどうなっておりましたか。
  159. 關四郎

    ○關説明員 支社のできる前には総支配人でございます。その前はこの車両修繕費は、一本で工作局でやっておりました。
  160. 吉村吉雄

    ○吉村委員 支社が発足する以前、もっと前には支配人制度ですか、それ以前は本社の工作局で一本に扱い、現在は支社長権限でこれを扱っておる、こういうことでございますけれども、支社長が運用をするというふうになって以降の車両修繕費の予算額と決算額の状況はどのようになっておりますか、お尋ねします。
  161. 關四郎

    ○關説明員 詳細については、今、手元に資料がございませんので、お答え申し上げかねますが、車両修繕費につきましては、御存じのように、この中に工場の人件費が含まれておりますために、逐年ある程度の膨張を来たしております。
  162. 吉村吉雄

    ○吉村委員 支社長が運用するようになって以降、私の聞いている範囲では、車両修繕費というものは予算額よりも相当黒字に決算をされておる。これは比較の問題でございまして、支社長が運用する以前と比べてそうだ、こういうふうに聞いておるのでございますけれども、この点は間違いないかどうかお尋ねしたい。
  163. 關四郎

    ○關説明員 その点については、ただいま予算と決算の比較した資料がございませんので、後刻お答え申し上げたいと思います。
  164. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私はきょう車両の検修問題について質問するというふうに前もって通告をしておいたはずですし、車両検修の中で一番大きな問題は車両の検修費であるはずなので、そういうことについて一つ前もって資料を準備してきていただきたかったというふうに思うのでございますけれども、ないそうでありますから、これはやむを得ないと思いますが、あと一つ提示をしてもらいたいと思うわけです。  この車両修繕費の運用が支社長権限にかわってからというものは、私の知っている範囲では相当多額に黒字決算をされておる。それ以前は一ぱい一ぱい、ぎりぎりの決算額であった、このように私は聞いておるわけです。これは数字がないという話なので、どうも私の方で一方的な知識をもとにして話を進めていかなければなりませんけれども、これと並行いたしまして、従来は車両の検修計画につきましては本社の工作局がその権限を持っておった。ところがそれ以降運用権がかわると同時に、この車両の検修計画についてもそれぞれの局長の方に権限が移行され、具体的には工場との間に協議を行ないながら車両の検修計画というものを定めるようになった、こういう状態であろうかと思うのでございますけれども、そのように理解をしていいかどうか、お伺いをします。
  165. 關四郎

    ○關説明員 本社は、日常業務に対するものはなるべく支社、管理局に権限を移譲して、本社はもっと前途に誤りのないよう計画をしろということで、数次にわたって御勧告いただいておりますので、車両の検修につきましても、大きなものは支社長、それからもっと小さなものについては管理局長に委任しておりまして、本社といたしましては、工作局、運転局打ち合わせまして、ごく大綱の方針を協議してそれを支社に落としていく、こういうふうにやっております。
  166. 吉村吉雄

    ○吉村委員 車両の検修のあり方というものは、非常にスピード・アップなり何なりが行なわれてきた今日におきましては——それぞれの局なり支社なりで予算の範囲内で修繕をする、あるいは検査をするというような方向をとっておるのが現状である、このような答弁でございますけれども、そういたしますと、支社ごとによって受け持つ車両の状態が変わった結果を来たす可能性があるのではないか、こういうふうに考えられますが、その点はどうでございますか。
  167. 關四郎

    ○關説明員 修繕の状態につきましては、できばえ審査とかその他修繕の基準とかを設けております。また、一両当たりの修繕の費用とか標準とかいうものについては、本社で大体基準をきめております。
  168. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいまの答弁の通りだといたしますると、一両当たり幾ら幾ら、こういうようなことでやっておるので、あまり差は出ないというようお話でございますが、そうだといたしますると、各支社ごとの車両修繕費の結果は同じような割合で黒字なりあるいは赤字なり、そういう大体同じような水準で結果が出ている、こういうふうにならなければならないと思うのですけれども、そうなっているかどうか、一つお尋ねをします。
  169. 關四郎

    ○關説明員 これは一応の基準でございまして、またこれには御存じの修繕回帰の問題がありまして、何キロ走るとか何カ月ごとにやるとか、これには一つの幅がありまして、その範囲で支社長が運用するために差が出てくる。また支社長のいろいろな創意工夫ということもある程度取り入れて、できるだけいい修繕を安くやらせようというのが私どものねらいでありますし、これはまた皆さん方の要望されるところでもありますので、多少の差はどうしても出ることと思います。
  170. 吉村吉雄

    ○吉村委員 よい修繕を安くというところに国鉄企業性というものが出ているわけですけれども、ただ非常に問題だと思いますのは、どういう問題もそうでございますけれども、何か大きな運転事故なり列車事故なりというものが起きてみないと対策というものが立てられない、こういう事例は日本の場合には多いし、特に国鉄の場合にはそういう事例がたくさんあるように見受けられます。ただいまの答弁の中に出ましたように、回帰キロの問題については局長の方に権限があるので、各支社の方には一両当たり幾らという修繕の予算がいっておってもその通りに運用はされていない、ということは、回帰キロをどう運用するかにかかっているというふうに答弁をされているようにお聞きをするわけですが、とにかくこの回帰キロの問題についてはその運用権というものが局長に移管をされて、以降の車両の修繕というものは、今お答えになりましたように安く、安くという気持の方が先行しておる。と申し上げまするのは、今の国鉄状態は合理化の方針というものが根強く作用いたしておりますから、そこで管理局というのは車両の修繕についてはいわば専門家ではない、こういうようなことなので、できるだけ車両を効率的に運用していくことを重点として考える。この結果、車両の保守体制、検修体制というものはどうしてもおろそかになる危険性があるのではないか。幸いに今日までそのような危険な状態なりあるいは事故なりというものは起きてはいないからいいとは思うのでございますけれども、従来の方向から見ますると、相当回帰キロというものが延長されて、そしてぎりぎり一ぱいのところまで車両を運用しておるというのが実態であり、またそうするように現在のところ車両の検修というものが進められているのではないか。このことは安全を第一としていくところの国鉄の経営から見て、車両に事故があったら非常に大きな惨害が起こるのは言うまでもないわけですから、この検修の現在のあり方というものについては、局長の方に回帰キロの運用権限というものがまかせられておるというようなことについて、車両の保守と安全運転の確保という点から見てほんとうに責任を持ってそれでいいんだ、このように言い切れるかどうかを一つお伺いしておきたいと思うわけです。
  171. 關四郎

    ○關説明員 ただいままた私の言葉の足りないためにちょっと誤解をいただいたようでありますが、車両の回帰キロまたは回帰月数というのは本社できめております。支社長なり局長のところではそれに対して、大よその見当ですが一割程度の変化はあってもよろしい——たとえて申しますと、電気機関車の丙修繕が大体八万キロあるとしますとそのうちプラス・マイナス八千キロ程度は前後して、ちょうどダイヤの工合のいいところで修繕に入れる、こういう意味でございます。それですからお話ように安全なりっぱな車両の保守をするというようなことについては、いささかも程度を落とさないように、また車両の設計にあたりましてはそういうような不安全なものをなるたけなくしていく、そしてできるだけ修繕に手のかからない車両を設計していくということに、設計の当初から努めているというのが現状でございます。
  172. 吉村吉雄

    ○吉村委員 今、本社の方で回帰キロについては基準をきめて、それであと一〇%程度を支社長の方で運用できるようにしてある、こういう話でありますが、これは数字が変わったのかどうかわかりませんが、大体二〇%程度の運用をしておるように私は聞いておるわけなんです。そういういたしますと、先ほども申し上げましたように、今の国鉄の経営の状態からすると、車両をなるたけ効率的に運用していきたいというのは、経営をつかさどっているところの局長としては当然の気持だと思うのです。そこで以前のように車両の保守、こういうものを考えておる工場に検修権というものが一元化されておったときと比較をするならば、どうしても危険な状態というものは増大しておる、このように言わざるを得ないと思うのです。再三申し上げますけれども、事故が起きる以前はあまり苦にしない、しかし一たん事故が起きた場合には、私はそれは重大な結果を来たすと思うのです。それだけ車両が酷使をされている。何十年という長い間の歴史を持っているこの回帰キロというものを、ある時期から延長をして、しかも、いわばしろうとであると目されるような人が検修の問題について携わっているということでございますから、非常に危険な状態にあるのではないかというふうに考えられます。従ってこの点についてはいささかの心配もない、こういうことでございますけれども、今まではちょうど十キロ走ったものを今度は十二キロ走ってもいいというふうにしてあるわけですから、ぎりぎり一ぱいまで運転をしてその後工場の方に修繕に入れる、機関庫の方に修繕に入れる、こういうことをやっておるわけですから、これは専門的な立場から見れば相当危険性が内包されておるというふうに言わなければならない、このように私は考えるのです。しかし、そのことについては議論をするだけになりそうでありますから、これ以上は触れません。ただ車両というものの保守のあり方、検修のあり方というものについては各支社ごとでやるというよりも、どちらかといえばこれを一本化して、どっかで運用あるいは車両の検修の方針というようなものをきめ、車両の運用までこれをやっていくという専門的な立場で検討する、さらにこれを一元化してやることの方が車両の運転保安上最も適切な措置ではないか、こういうよう考えるのですけれども、現在の制度と私が今申し上げましたようなやり方と、どちらが一体安全性があるというふうに考えられますか、そのことについてお答えをいただきたいと思うわけです。
  173. 關四郎

    ○關説明員 先ほども申し上げましたのですが、大体国鉄の中の組織でいいますと、運転の方で車両の運用をやり、工作の方で車両の管理をやる、こういう線でございますので、たとえば修繕の回帰キロをきめるというようなことは当然工作局の権限でございまして、工作局が基準をきめ、これを現場の区にも適用する、こういうことになっておりますので、この点は修繕の回帰キロについては工作局が車両の管理という面からこれをきめているということを御承知おき願いたい、こう考えております。  それから、御存じと思いますが、これの検修一元化という話がございました。検査と修繕を一元化する。検査と修繕を一元化しました場合に、残りますのは車両の運用であります。運用と検査と修繕と三つをどういうふうに一元化するかといいますと、修繕と運用というものを非常に密接にくっつけておかなければ車両の運用というものがうまくいきにくいという観点からする、いわゆる車両運用の一元化といいますか、こういうことと、それから修繕と検査を一緒にして検修を一元化しなければ、車両のほんとうの性質を見て最高度に能力を発揮するわけにいかないという検修の一元化、この二つの意見があると思います。それですが、例の占領下のCTSのもとで、御存じのよう国鉄の中に輸送局、車両局というものができまして、一応車両局でもって車両を一元化したようでございますが、車両の運用はやはり輸送局でやっておりまして、このために結局現場の機関には手がつかなかったというのが実情でございます。それですから、これをいかに現場の実際と一致させるかということで、私が言っておりますのは、車両の検修一元化というイデオロギーの問題ではなくて、いかに修繕を安くやって、最高能率でもって使うのに一体どうしたらいいかということで、車両検修委員会は議事を進めておるのだ。しかも昭和五十年に蒸気機関車がなくなった状態の場合に、工場並びに区の職員の方々が、あまり大きな犠牲なしにその新しい方向に移っていくにはいかにするかということが、私どもの一番苦労しておるところでございます。
  174. 吉村吉雄

    ○吉村委員 今、回帰キロについては工作局の方でやっているのだという話がありましだが、車両の運用権というものについては運転の方でやっておる。この運用の中で若干の操作をする権限というものは局長の方にあるのではないかと、こういうふうに私は質問を申し上げているので、基準については確かに工作局の方にあるのはその通りだと思う。ただ運用の範囲というものは、先ほど關常務が一〇%というふうに言われましたけれども、これらについては局長の方で運用をでき得る範囲だ、こういうふうになっておるのではないか。そのことが局なりあるいは支社の方によって異なっている状態にありますから、当然企業性というものが追求されるのあまり、どうしても節約、こういうことに走るだろうし、あるいは専門的な車両修繕に対する知識のない人がやるために、保安上の問題からも軽視できないような、そういう問題が内包されるのじゃないか、こういうことを申し上げているわけですから、このことについて一つお答えを願いたいと思うわけです。
  175. 關四郎

    ○關説明員 もちろん回帰キロをきめまして、これにある程度の余裕度を見るということは、余裕度といっても、車両一つ一つが全部同じというわけではありませんし、またその使い方によりましても、それにある程度の変化があってしかるべきだというところからつけているわけでありますが、またこの車両の入場計画については、もちろん局長にある程度の権限はいっておりますけれども、工場長との話し合いによってきめておりますから、そういうよう状態が非常に悪くなるというような心配はないものと考えております。
  176. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そこで、今のような回帰キロというものが従来から延長されたということによって、工場の従業員——工場は、従業員の算出はむずかしいやり方をやっておるようでありますけれども、人数上から見て、工場の職員が一体どのくらい少なくなるような結果になったか、こういうことについて一つ答えてもらいたいと思うわけであります。
  177. 關四郎

    ○關説明員 この車両検修委員会では、まだ設備の問題をやっておりまして、要員の問題には全然触れておりません。しかし大体の方向といたしまして、動力近代化委員会の報告によりましても、昭和五十年度には蒸気機関車がなくなる、それから電気機関車とかディーゼル機関車が、ほぼ五千両程度という現在の機関車の程度で、あとはほとんど電車とディーゼル動車になるというようなことで、車両の内容が全く変わってしまうわけでございます。それと同時に輸送量が昭和五十年には非常にふえて参ります。それからまたサービスを改善するために列車キロ並びに車両キロというものを非常にふやしていかなければならぬ。こうしますと、乗務員の要求が非常に強くなるだろう。車掌とか機関士、運転士、こういうような乗務員が非常にふえてくる。といいますと、これをどのようにして捻出していくかということ、それからまた工場の中で申しますと、たとえば製缶職場とか鋳物職場というものが非常に小さくなりまして、むしろ電気職場とかディーゼル・エンジンの修繕職場というものが非常にふえてくる、また電車またはディーゼル動車の修繕が非常にふえてくる、こういうような工場の中の職場の配置転換、それから乗務員と検修要員との間の交流というようなことでありまして、こういうようなことを全部総合いたしまして、しかも五十年度になくなるまではとにかく蒸気機関車はありますから、この修繕、こういうものを全部にらみ合わせて、いかにこれを円滑に、また職員の方々に犠牲を少なくして転換していくかということについて、これから検討していきたい、こういうよう考えております。
  178. 吉村吉雄

    ○吉村委員 将来の長期計画についての要員計画をお尋ねしたわけではないのです。今聞きましたのは、回帰キロの延長といいますか、運用に局長が携わるというようなことができる、こうなって以降どういうような要員上の変化が工場の人数の中に起きたか、こういうことをお尋ねしたわけですから……。
  179. 關四郎

    ○關説明員 これについては、別に局長に権限がいったから非常に要員が減ってきた、こういうような意味じゃなくて、私ども動力近代化という場合に考えておりますことは、常に職場環境をよくして、しかもいい修繕をするにはどうしたらいいか、車両の種類等もそう考えております。最近新しい車両の修繕の仕方、または製作の仕方というものが非常に進みましたために、自然にこの回帰キロを延ばしても十分に使えるというようなことになったために延ばしたわけでありまして、人間を減らすために回帰キロを延ばしたというわけではございません。
  180. 吉村吉雄

    ○吉村委員 それはうらはらの関係でしょうけれども、そうしますと、今の答弁の内容では、回帰キロの運用権というものが局長に移って以来といえども、工場の要員については変化がなかった、こういうふうに答弁をされたというふうに理解していいわけですか。
  181. 關四郎

    ○關説明員 この回帰キロの延長によって、当然検修要員は、車両の増加とそれから車両の回帰キロの増加による在場両数の減少、この両方をにらみ合わせて仕事量が減れば、人間が余るわけであります。
  182. 吉村吉雄

    ○吉村委員 その仕事量が減少をした結果として、要員というものが少なくて済む、この差は一体どういうふうになっておるかということをお尋ねしておるのです。
  183. 中村卓

    ○中村説明員 これにつきましては、昨年の秋、組合の方と団体協約を結びまして、大体千八百人配置転換をするという協定ができたわけでございます。そのうち大体千百人は管理局の系統、それから七百人は、同じ工場内でございますけれども、他の工場へということで話がきまりました。その実行の状況につきましては、大体現在までに千八百人のうち三百人は配置転換が済んでおります。それから、なお計画中で話がつきそうなのは三百人くらいでございますが、残りは大体三十六年度一ばいくらいには配置転換が終わるのではないかというふうに考えております。
  184. 吉村吉雄

    ○吉村委員 だいぶ質問が専門的になってきますから、話題を変える意味で、国鉄の中ではたくさんの車両の修繕を行なっておるわけですが、今お話がありましたように、回帰キロの延長あるいは車両そのものが近代化されていくということのために業務量が減っていく、こういうよう状態にある。しかし工場で設備があり、しかも修繕なり製作の能力がたくさんあっても、工事量が少ないために人間を他の部分に配置転換をしなければならない、こういう状態であるという話があったわけですが、ことで、私がちょっとお尋ねしたいのは、現在車両の検修にあたって、国鉄の工場以外に修繕なり製作なりをしてもらっている工事の量は、一体人工に換算をしてどのくらいなのか、あるいはこれを金額に換算して、どちらでもよろしいもでございますけれども、どのくらい一体外注がなされておるのかお尋ねをしたいと思います。
  185. 宮地健次郎

    ○宮地説明員 部外に外注いたします仕事につきまして申し上げますと、大体三十四年度で五億五千万円見当でございます。これを人工に換算いたしますのはちょっと粗雑な結果を招来するかもしれませんのですが、それでよろしければ、概算で申しまして大体四百人分に該当するんじゃないか、このよう考えております。
  186. 吉村吉雄

    ○吉村委員 三十四年度で五億五千万円の外注をなされておる、この外注をするのにあたっての方針なりあるいは基準なりというものがあるはずだと思うのですが、それを一つ明らかにしてもらいたいと思います。
  187. 宮地健次郎

    ○宮地説明員 外注いたしますには御承知通り基準がございます。大体三つの基準を考えておりますが、その第一は特許などのために部内では製作できないものでございます。第二には特別な技術などが要りまして習熟するのに非常に時間がかかる、あるいはまたこれを直営でやるといたしますればその機械設備等に莫大な経費を要する、しかもその製作車両が少ない、こういうふうな場合、主として大企業に依存するわけでございますが、こういう場合が第二でございます。それから第三には、これは主として中小企業に依存するわけでございますが、鉄道工場の乗率と比べまして、乗率が安いということがおもな原因で比べました場合に案外修繕をしてもらえる、こういうふうなもの、この三つを原則として立てております。
  188. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいまの説明によりますと、主として経済効果というものと、それから部内にその設備がないような場合、こういうことで限定をされるようでありますが、そういたしますと部内で製作でき得るもので、あるいは修繕でき得るもので、経済的にも部内でやった方が廉価にできる、そろうような品目についての外注は全然ない、このよう考えてよろしゅうございますか。
  189. 宮地健次郎

    ○宮地説明員 そのよう考えていただいてもけっこうでございます。
  190. 吉村吉雄

    ○吉村委員 次にお尋ねをいたしますけれども国鉄の車両で大体限度がきてしまって、それで廃車にしなければならないという車両も数多くあろうかと思うのです。この廃車ということについては、大体部分品とか、あるいはその全体をまとめてみるとか、いろいろな見方があろうかと思うのです。部分品だけを廃品にするという方法もあるでしょうし、それから一車両まとめて廃車にしてしまうという方法もあろうかと思うのです。これはどちらの方法が採用されておりますか。
  191. 宮地健次郎

    ○宮地説明員 両方の場合がございますが、主として第一の場合の方でございます。御承知かと存じますが、車両の保守には予備品制度というものがございまして、車両の部分品は修繕しながら常に予備品として一定量たくわえられております。これが循環しながら車に取り付けて参ります。その結果廃車に該当いたします車でも、この取りはずしました予備品は案外寿命から申しまして新しい場合が普通でございます。従いましてこれを再用いたしますので、部分品の方は回収する。そうしてそれ以外を廃車にして解体する、こういうふうにいたすのが普通でございます。
  192. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういたしますと、部分品で再用のでき得るものは、そのまま取りはずして再用しておく、こういうことになりますね。それは三十四年度の部分品を取りはずして得たところの収入、雑収入になるわけですか、大体どのくらいになりますか。
  193. 宮地健次郎

    ○宮地説明員 ちょっと手元に資料がございませんで、後刻報告申し上げたいと存じます。大体主として貨車でございますので、貨車は三十四年度はある程度の量を廃車しておりますから、相当な額になるかと存じます。数字は後刻御報告申し上げます。
  194. 吉村吉雄

    ○吉村委員 資料がないということでありますが、私の理解している範囲では、部分品を取りはずして、廃品にしてこれを売却するというようなことよりも、車両ごとに廃車にして処分をしているという方法がとられているというふうに考えておったわけですが、そうでないということでございまするので、これは国鉄の経営上非常にこまかいところまで信用してやっておるということになると思うのです。そういうお答えでございますので、部品として廃品にして処置をして、それによって得たところの収入あるいは車ごとに廃車することによって得たところの収入、こういうものをここ二、三年来の数字を一つ提示をしていただきたい、このよう考えます。
  195. 三池信

    ○三池委員長 吉村君に申し上げますが、運輸大臣が参議院の予算委員会から出席を求められておりますので、大臣に質問の事項がありましたら一つ先にやって下さい。
  196. 吉村吉雄

    ○吉村委員 どのくらいいるのですか。
  197. 三池信

    ○三池委員長 十五分くらい——大臣は向こうから要求があれば迎えに来るそうですからその間……。
  198. 吉村吉雄

    ○吉村委員 運輸大臣が行かれるそうですから、なるたけ運輸大臣に関係する部門についてお尋ねしておきます。  今まで私は主として国鉄の車両工場、この受け持っておるところの車両の検修というものについていろいろ質問をいたして参ったわけでございますけれども、これは先ほど来総裁が非常に主張いたしておりまするように、従業員の協力を得なければ国鉄というものはやっていけない、こういうことと関連をするので、時間をかげながらやっておったわけですが、今国鉄の中の特に下積みになっておるといわれますところの工場の職員はどういうことを言っているかといいますと、戦争後車両が非常に少なくて、しかもその状態が悪かった時代には、毎晩々々、三時間、四時間、五時間という超過勤務をさせられながら一生懸命車両の保守に当たって、あるいは修繕の向上に努力をしてきた。ところがこの二、三年来車両の状態がよくなったということで、先ほどの答弁に見られるように、今度は回帰キロを延長した結果、工事量というものが少なくなった、こういうようなことが一つは原因をする、そういうことによってお前たちはもう不要なので、他の部門の方に回ってくれということが、非常に積極的に国鉄当局から言われておるわけです。そういたしますと、素朴な気持としましては、一生懸命車両の検修なりあるいは修繕に当たってきて、その状態がよくなればお前たちはもう不要なんだ、極端な言い方をしますと、首だ、こういうようなことになる。これはどういうわけなんだろうかという疑問を、素朴なるがゆえに持っておるわけです。従って、私は、この車両の検修の問題については、車両工場という修繕工場の運命といたしまして、車両の状態なりあるいは全体の近代化なりというものが進むに従って、工事量が少なくなるのは当然のことだとは思うのです。しかし、そのことによって、そのしわ寄せというものが、職員にだけしわ寄せされる今の状態というものは、決してその職員を満足させて国鉄の運営について協力をさせる意思を起こさせることにはならないのではないか、このよう考えざるを得ませんので、こういう点につきましては、むしろ今までの修繕なりあるいは業務に貢献をしてきた者に対して、何らかの方法で安定をして現在の作業なり何なりというものに従事でき得るような施策を与えてやるということが、ほんとうの意味での協力体制を打ち立てるゆえんになるのではないか、こういうふうに考えて、今までいろいろ当局の経営に対するあり方を尋ねて参ったわけです。そういうような素朴な気持を持って働いておる職員がたくさんおるわけですから、総裁もあるいは副総裁も、そういうことにつきましては今までの労苦というものを一つ無にしないように、将来にわたって安定をして、そこで国鉄に協力しながらやっていける、そういうような具体的な措置というものをとっていただくように、特にこの際お願いを申し上げておきたいと思うわけです。  それから一つだけ付随をして申し上げますが、工場の要員問題についての対策委員会の方からも話がありましたけれども国鉄の職員の年令構成というものはきわめてまずい状態で、ちょうちん型というふうに表現をされておるようですが、こういうふうになっているので、四十才以上くらいになれば云々ということが言われております。これは全般の問題でありますから、それらに対する方針というものは当然これから樹立をしていかなければならない問題だと思うのですが、特にここで私が申し上げたいのは、鉄道の車両工場というのは技術を主体としたところの職域でございますけれども、これが全然ここ五、六年来新しい者が採用になっていない。そうしますと、現在の国鉄の工場の職員の平均年令というものは大体三十六、七くらいになっているかと思いますけれどもあとが続いてこない、こうなりますと、修繕の技術に断層が起きてくる。こういう問題が当然現在起こっているわけです。これは今は問題はないにいたしましても、将来大きな問題になるだろうというふうに考えざるを得ないわけですけれども、こういうことに対する当局の具体的な措置、いわゆる修繕の技術というものをずっと継続させるためには、新規に青年層というものを採用していく、こういうような方向以外に道はないのではないかというふうに考えられますけれども、これに対する対策はどのよう考えられているか、お伺いしたいと思うわけです。
  199. 關四郎

    ○關説明員 それについても、私どももその点を非常に憂慮しておりまして、そのために車両検修調査委員会では、要員問題については、設備の中間報告を出したあとでこれは十分に検討して、先ほどからたびたび申し上げましたように、できるだけ職員の方々に不安のないように、また円滑に転換していけるようなふうに、また将来の検修体制を確立していくためにはどうしたらいいかということを真剣に討議していこう、こう考えております。
  200. 吉村吉雄

    ○吉村委員 次に、これも、特に車両の運行にあたってはいわば下積みになっている部門だと思うのでございますけれども、施設部門の問題について質問をしたいと思うのです。特にこれは要員関係だと思うのですけれども、今、線路の保守に当たっているところの国鉄の職員というものは、大体総数でどのくらいいるのか、お伺いしたい。
  201. 中村卓

    ○中村説明員 現在のいわゆる線路工手の定員でございますが、これは大体三万四千七百人ぐらいでございます。
  202. 吉村吉雄

    ○吉村委員 この三万四千七百人という線路工手の数字というものは、現在満たされた数字になっておりますか。
  203. 中村卓

    ○中村説明員 現在はそれよりも千百人くらい下回っている実情であります。
  204. 吉村吉雄

    ○吉村委員 三万四千七百人のうち千百名下回っている。こういうことからして、相当数欠員の状態になっているというふうに言える一わけです。これは一体いつごろからこういう欠員の状態になっているのですか。
  205. 中村卓

    ○中村説明員 はっきりと詳しい時期的なことは存じませんけれども、二、三年前からある程度の欠員は出ていたと思っております。
  206. 吉村吉雄

    ○吉村委員 千百名も欠員になっているというのですから、この穴埋めの意味での採用というものはどのような方法で補充をされておりますか。
  207. 中村卓

    ○中村説明員 いわゆる臨時職員によってやっておりまして、これが大体一カ月二十五日稼働といたしますと、千五百人くらいに相当いたします。
  208. 吉村吉雄

    ○吉村委員 千百人ぐらいの人数がこ三二年くらいというものは欠員である、この分を穴埋めするために一日千五百人くらいの臨時職員を採用してやっている、こういうお話でございますけれども、線路の保守というものは非常に重要な作業だと思うのです。もし間違いがあれば大きな事故が起きるのは言うまでもないと思うのですけれども、こういうようなところに三年も四年も五年も長い間一千人にも近い人が補充をされないで、しかも先ほどの説明によりますと、臨時人夫というものは季節的に採用することを建前とする云々というお話もありましたけれども、非常に重要な作業をやっている線路の工手のような仕事に対して、これほどの人たちを五年もの長きにわたって補充をしないというのは何に原因をするのですか。
  209. 中村卓

    ○中村説明員 実際問題といたしまして、ある程度新陳代謝がございまして、やめていく人のかわりにこういう人々の中から本職員に採用しているわけでございまして、たとえば昨年一カ年間に約八百八十人くらい新規採用職員に採用しております。しかし、やはり全体として欠員がございますので、先ほど申し上げましたように年間平均いたしまして千五百人くらいの臨時職員を使っているというような実績になっておるわけでございます。将来の問題といたしましては、たとえば今度の新五カ年計画によりまする軌道の近代化とか、作業の機械化とか、そういう方面のことも勘案いたしまして、できるだけ生産性の向上に努めたいというよう考えます。
  210. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私の聞いておるのは、千名から千百名くらいの人たちが、しかも重要な線路の保守に当たっている職種の人たちが、長い間欠員のままになっておるのはどういう理由に基づくのかということを聞いておるのです。
  211. 中村卓

    ○中村説明員 三年前から千百人と申し上げたわけではございませんので、千百人になりましたのは最近のことでございます。その前はもう少し少なかったということを先ほど申し上げたつもりでございますが、いずれにいたしましても、今申し上げましたように機械化とか合理化とかそういう線のことも考えておりますし、それから、まあとりあえずの問題といたしまして、一応臨時職員で働いていただいて何とか穴が埋まっているものですから、そういう格好でやっております。
  212. 三池信

    ○三池委員長 吉村君、運輸大臣は今参議院の予算委員会に行かれるそうですが、質問を続行していただきたい。
  213. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これから実はいろいろ国鉄の内部のことについてお聞きをして、最終的に運輸大臣の見解を求めようと思ったわけですけれども、だいぶ急がれておるようであります。運輸大臣にこの際お尋ねしておきたいのは……。
  214. 三池信

    ○三池委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  215. 三池信

    ○三池委員長 速記を始めて。  五時半から再開することとして、暫時休憩いたします。    午後四時四十三分休憩      ————◇—————