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1961-03-15 第38回国会 衆議院 運輸委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月十五日(水曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 有田 喜一君 理事 尾関 義一君    理事 川野 芳滿君 理事 高橋清一郎君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 山口丈太郎君       伊藤 郷一君    佐々木義武君       壽原 正一君    鈴木 仙八君       關谷 勝利君    塚原 俊郎君       細田 吉藏君    加藤 勘十君       勝澤 芳雄君    島上善五郎君       西宮  弘君    肥田 次郎君       矢尾喜三郎君    安平 鹿一君       内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 木暮武太夫君  出席政府委員         運輸政務次官  福家 俊一君         運輸事務官         (大臣官房長) 辻  章男君         運輸事務官         (海運局長)  朝田 靜夫君         運輸事務官        (鉄道監督局長) 岡本  悟君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  廣瀬 眞一君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局計画         官)      加納 治郎君         大蔵事務官         (主計官)   谷川 寛三君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     中村  卓君         日本国有鉄道常         務理事     兼松  学君         日本国有鉄道常         務理事     関  四郎君         日本国有鉄道常         務理事     磯崎  叡君         専  門  員 志鎌 一之君     ――――――――――――― 三月十四日  国鉄輸送力拡充及び資金対策確立等に関する  陳情書  (第四八六号)  四国地域国際観光施設整備に関する陳情書  (第五〇三号)  踏切事故防止措置に関する陳情書  (第五一四号)  国鉄運賃値上げ反対等に関する陳情書  (第五九六号)  冬季間の国鉄輸送力確保に関する陳情書  (第五九七号)  北海道の貨物取扱駅存置に関する陳情書  (第五九八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣  提出第七六号)  国内旅客船公団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六三号)      ――――◇―――――
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。高橋清一郎君。
  3. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 昨日に続きまして質問を続行したいと存じますが、これからお尋ね申し上げますことが今回の質問中心課題になろうと思われます分野であるわけでございます。この新五カ年計画実施のための資金の調達におきまして、運賃値上げによる方法以外にはなかったかどうか。だれがどれだけの負担をする方が一番公平であるかという問題でございます。この問題につきましては、昨年国鉄値上げの当初案である二千百億円の所要資金のうちの不足分六百億円を平均で旅客が一六・七%、貨物が一五%、定期で四四%の値上げでまかなうことを発表して以来、御承知のごとく、各界の人人、学識経験者消費者ジャーナリズム等の間におきまして最も真剣に論議された問題でありましたが、結局は、大臣提案理由の御説明にありましたように、不足分のうちの四百八十六億円は利用者運賃値上げの形で負担するということになったのであります。状況これはやむを得ない処置であると私も首肯せざるを得ないと思うのでありまするが、しかしながらこの際でございますので、私ども運輸委員会におきまして、過去におきましても再三論議の的となりました国鉄公共負担国家補償の問題でありますとか、赤字分利用者負担するか税金でまかなうかの根本的な問題につきまして、一応この際国民の前に明らかにし、概念整理をしておく必要があるのではなかろうかと思うので、政府並びに国鉄当局に対しまして御質問を申し上げる次第でありますが、どうかはっきりした御答弁をいただきたいと思うのであります。
  4. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 お答えを申し上げます。  まず今回運賃改定自己資金財源を求めないでほかの方法はなかったかというお尋ねでございますが、御承知通り今回の五カ年計画におきましては五カ年間に九千七百五十億、三十六年度におきましては千九百五十億円に加えまして二百億円の借入金の返済を合わせますると二千百五十億になるのでございます。従いまして一部の方の御意見のように、これを全部借入金をもっていたしますというようなことになりますと、今日国鉄が背負っておりまする借入金は現在におきましても三千七百億円の多きに達しておるのでございまして、今後借入金のみによってやるようなことになりまするならば、おそらく昭和四十年度におきましては一兆一千億円程度借入金なりまして、利息の負担だけで毎年七百億円にも達するというような状態になりまして、独立採算制見地から見まして、国鉄の健全なる経営を維持するということは至難のこととなるのでございます。しからば、出ておる赤字五百数十億円について、これを国家一般会計から支弁したらどうかというお話でございまするが、そういう説も一部にはございまするけれども、御承知通り日本国有鉄道は、わが国において、直営事業の当時におきましても、国民大衆の税収をもととする一般会計にたよるということをいたさず、いわゆる建設費用借入金により、あるいは取りかえ、改良費用自己資金によるというような沿革もございました。こういうような事情をかれこれ勘案いたしますると、今回の三十六年度の金をまかなうのに、昨年より財政融資を約七十何億円ふやした、一千億に近い九百九十六億円という借入金をもっていたしまして、また一方、減価償却費繰り入れが六百億円、また多年鉄道会計において合理化が叫ばれましたことが漸次実効を上げておりますけれども、今度国民に大きな負担をかけることを考えまして、国鉄当局はさらに心を新たにいたしまして、たとえば日本交通公社代売の手数料というようなものを引き下げるとか、あるいは広告料、あるいは国鉄の所有しておる建物、不動産等の賃料を適正にいたすとかいうようなことによりまして、約二十億円の自己資金を捻出いたします。それでもなお足らざる分があります。  御承知通り国鉄運賃というものは、ほかの物価の上がり方に比べまして、だれが見ても非常に低位に置かれてあるのでございます。高橋委員御存じのように、昭和十一年を一〇〇といたしまして、国鉄旅客運賃は、昭和三十四年度におきまして一一九で、ほかのものが三〇〇なり三八〇に上がっておるのに比較いたしますると、きわめて低位にあることを考えまして、今回は利用者負担によりまして、国鉄運賃改定で四百八十六億円程度自己資金として捻出いたしますることは、一はもって国鉄経営健全化に資するゆえんであるとともに、国民生活あるいは物価等影響することもほとんどないのではなかろうかという見地に立ちまして、今回の資金捻出をいたしたのでございます。事実、高橋委員も御承知のように、最近三回の国鉄運賃改定あと物価統計を見ましても、卸売物価は、場合によっては下がっておるようなときもあるのでございます。物価の変動というものは、需要供給その他複雑な事情によって変わるので、国鉄運賃のこの程度の値上がりによって物価に大なる影響を及ぼすように私ども考えないので、今回の措置に出たような次第でございます。また国鉄赤字負担いたしておりますことは、今御指摘通りでございまして、定期運賃割引率が、世界に例のない九二・二%という割引をしておりますことや、あるいは貨物運賃におきましても、国民生活影響を及ぼす百一品目につきましては、暫定割引をとっておりますことや、あるいはまた戦傷病者無賃乗車でありますとか、あるいは地方産業の振興のため、地方方々の要望によって毎年行ないます新線建設赤字であること、これらの赤字負担というものは、ただいま御指摘のように、五百数十億に上っておることは、これは国鉄経理経営の上から見ますと、相当の圧迫になっておることは論を待たないのでございます。しかしながら、国有鉄道公共福祉を増進することを目的とした仕事をしておるのでございます。それの能率化をはかるためには、公社が一方では独立採算制をとっておるのでございますから、独立採算制を重んずるゆえをもって、大所高所に立ちました公共福祉日本国民経済成長発展に役立つような赤字負担を免れることも、いかがなものと考える次第でございます。  そこで政府といたしましては、金額はまことに小ではございますけれども、この赤字一つのもととなっておる新線建設に対しまして、来年度から三億八百七十五万円の利子補給をいたしましたり、また戦傷病者無賃乗車に対しましても、来年度の予算においては金額をふやして、六千数百万円を補償するというような挙に出た次第でございますが、しかし、ただいまお話のように、赤字負担を少しでも減らして参ることが、国鉄経営の上から見てきわめて必要であることは、論を待たないのでございまして、今後におきましても、この赤字負担が少しでも減るように運営に力をいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  5. 谷川寛三

    谷川説明員 ただいま木暮大臣からきわめて詳細な御答弁がございまして、私が申し上げたいことを全部申されましたし、また今日までの審議におきましても、運賃値上げについてのいろいろな経緯等は、すでに御説明があったと思いますので、さらに私から贅言を加えることはいかがかと思いますが、私ども考えを一応申し上げておきます。  運賃値上げをした経緯につきましては、前々から申し上げておるところでございますが、国鉄の最近の経理状況を見ますに、経理上の収支の面におきまして、御承知通りすでに相当赤字が出ておって、このままで推移いたしますならば、数年間の収支を予想してみますと、さらに赤字が激増するおそれがある。こういうような前提のもとに、一方におきまして、これまた本委員会においていろいろ御説明がありましたように、一兆円になんなんとするところの建設を進めていくという現状であるわけでございます。従って、今の経常収支赤字の面を埋めましてさらにまたこの建設に当たっていかなければならぬ。そこで、考えてみまするに、建設におきましては、これまた先ほどからるる御説明がありましたように、全額を自己資金でまかなっていくべきか、借入金でまかなっていくべきかということになりますと、いろいろ議論があるわけでございます。私どもといたしましては、いろいろ議論をいたしましたが、工事性格によりまして、これは借入金でやるべきものもありますが、自己資金によりましてまかなってしかるべきものもあるわけであります。そういった点からの検討をいたしたのでございます。そうして、借入金に依存するといたしましても、これまた財政投融資の面に国鉄は御承知のように非常に大きく依存しておるのでございますが、投資効果の点、それからまたいろいろな他の重要な工事もありますので、そういった点につきましての国鉄シェア面制約もございます。それからまた、先ほどからお話がございましたように、現在すでに四千億近い借入金を持っておりますので、利払いの点、さらに償還の点につきまして借り入れ能力面制約もあるわけでございます。こういった点をなにいたしますと、どうしてもある程度自己資金を充実いたしまして経常収支の面で改善がなされなければ、たとい借入金でやっていくといたしましても、増高していく借入金利払いの点、その他ただいま申し上げました借り入れする能力の面、これが詰まってくるわけでございます。どうしてもある程度自己資金の充実が必要であるわけであります。そこで、考えてみまするに、現在の国鉄運賃が他の物価に比しまして不当に不均衡に低く押えられておる。それをある程度是正さしていただきまして、今の経常収支改善の面、それからまた建設につきましての借り入れ能力の面について改善ができるというのでありますならば、国民の皆様にも御納得がいただけるのじゃないかというところで、大蔵省といたしましても、今回の値上げに御同意申し上げた次第でございます。  一方、先ほどお話がありました公共負担相当大きいということ。確かに数百億に上っておりますところの大きな負担になっておりますが、これまた非常に大きな経営面の障害になっておることを認めるものでございます。いろいろ考えてみますと、これは公式論になるかもしれませんが、政府出資が八十九億、これは特別会計時代からのいろいろなものにつきましても再評価をいたしますと、表面上では八十九億でございますが、再評価後におきましては、資本金を是正しておるわけではございませんが、一兆二千億からになる。こういった巨額のものを政府では国鉄に出しておるということがいえるわけでございます。これを前提として考えますと、配当をかりにしてもらうとすれば、相当なものになるわけであるが、そういったことは国鉄には期待していない。それからまた、一般の私企業でございますと収益課税等が行なわれるわけでございますが、これまた国鉄にはやっていない。こういったふうに、いろいろな点につきまして国鉄に対しては別途の配慮がなされており、あくまでも、公式論とおしかりを受けるかもしれませんが、公共負担に対して一般会計でめんどうを見るかどうかを論ずるにあたっては、そういったこともあわせ考えなければならぬと思うのでございます。一方、先ほどお話にもありましたように、公共企業体としての国鉄公共性から申しますと、ある程度公共負担国鉄性格からいって当然やっていただく必要があるのではないかという考え方から、従来一般会計におきまして、つまり国民税金によってこれをカバーしていきますことは適当でないのではないか。これは、たとえば新線建設につきましてもそうでありますが、やはり利用者負担におきましてやっていただくし、みずからの負担でやっていく必要があるのではないかという判断をいたしておったのであります。今回は、いろいろ検討いたしてみますと、地方新線につきましては、一方におきまして、もちろん交通対策全般見地から、今後新線建設をどういうふうに進めていくかについては根本的な検討をなさなければならぬのでありますが、さしあたり国家的な見地からどうしても国の方でやっていかなければならぬというようなものにつきましては、この際として、ある程度一般会計からの負担もやむを得ないではないかというので、新線建設につきましては三億余りの建設費補助をすることにいたした次第であります。  これを要するに、運賃改定につきましては、今申し上げましたように、ただいまの物価体系の中におきまして、国鉄運賃があるべき姿よりも相当低く押えられておるという点に関連いたしまして、これを是正しながら経常収支改善をはかることを当面の問題といたしまして、一方におきまして、建設につきましての借入金利子負担等にたえ得るような経営の態勢に持っていくということを主眼として運賃改定に踏み切ると同時に、いろいろ議論はございますが、一般会計におきましても必要な新線建設の面にとりあえず建設費補助をやっていくということで同意することにいたした次第であります。
  6. 加納治郎

    加納説明員 経済企画庁におきまして所得倍増計画を作りましたときに、交通関係の正常な姿をいかにするかということが非常に重要な問題として検討されたのでございますが、その際大きな四つほどの原則を立てましていろいろの分析をすることになりましたその一つに、輸送関係企業の健全な近代化方向、従って、これは直接には運賃体系交通料金関係の是正ということが一つ上がってございます。別に輸送隘路打開なりいろいろ重要な要請もございますが、その問題で、運賃の合理的な姿というものも、古い体系交通の姿から近代的な姿に持っていくためには、急激な改変はむずかしいとしても、徐々に新しい体系に持っていく必要があるということをきめております。その観点からいたしまして、急激な改変はむずかしいとしても、できるところから逐次合理的な原価主義運賃体系に持っていくということが非常に好ましいことでございまして、その意味で、先ほど運輸大臣あるいは大蔵省の方から御説明のありましたように、現在の段階での体系といたしまして、非常に新しい方向への一環として十分意義がある、こう考えている次第であります。
  7. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 問題が重要でございますだけに、もう少し突っ込んだ質問をしたいと存じますが、国鉄のいわゆる公共負担の問題であります。これは御承知のように、新線建設でありますとか、農水関係貨物の特別な公共割引でありますとか、学生割引でありますとか、国鉄国家的社会的政策に基づいて実施しておりまする各種の負担でありますが、これにつきまして、以下若干の私見を述べさしていただきたいと思いまするけれども、私は、これは国鉄という性格上、必然的に当然負担せねばならないものと思うております。しかしながら国鉄経営のその年度収支が、収支償っておりまする場合、すなわち赤字でない場合におきましては、これは、公共負担に対する補償国鉄が国に対して行なうという問題は生じてこないこと、当然でございましょう。その理由とするところは、国鉄運賃制度は、御存じのように、貨物では明らかに運賃負担力主義をとっております。また旅客貨物を通じましても、全国画運賃をとっておるのでありまして、まずAという客からは原価以上の運賃をとり、Bという客からは原価を割った運賃しかとらない、そして全体として収支が合えばよい、そうすることが鉄道経営自体にも、国民経済上からも合理的であるという制度でございます。このような運賃制度のもとでは、公共性に基づいたいろいろの割引対象となっておる客、これをCと申しましょうか、このCの分の原価割れの分は収支償っておりまする年度では前述の原価以上にとられております客A補償しているものと考えるべきでありまして、政府補償という考えは出てこないと思うのであります。しかしながら一たび経営が赤になりました場合とか、今回のように自己資金が六百億円不足しておるという場合におきましては、一律の運賃値上げによりまして、すなわち前に申し述べましたAという客からも、Bという客からも、公共割引対象となっておりまするCという客からも、一律に値上げしてとるべきではないのであります。この場合には、まず公共負担によりまする受益者でありまするCが負担いたしまして、それでまだ足らなければ、Bも少し出してもらう、最後にAの方へ値上げに御協力して下さいということが順序ではなかろうかと思うのであります。今回の場合、国鉄当局が、値上げ問題を発表する前に、まず新五カ年計画財源として、公共負担分五百二十五億円をどうにかして下さいと政府に訴えましたのは、その金額妥当性は別にいたしましても、筋道といたしましては正しかったと思うのであります。しかしながら国家的社会的見地よりいたしまして、コスト割れ運賃しか負担しない、あるいは負担できない、公共負担措置によりまする受益者に対して、これはある場合におきましては、未開発地の住民の方々である場合もございましょうし、農林水産関係生産者である場合もございましょうし、消費者の場合もあるでございましょうし、学生である場合もございましょうけれども、この受益者に対しまして、赤字になったから普通のBのところまでの運賃を出してほしいと申しましても、それは不可能であるのは当然であります。ここに公共負担分政府補償ということが出てくるのであります。  かような私見に対しまして、政府当局の御見解を伺いたいと思うのでありまするが、私の申し上げました点に間違いがございませんならば、なぜ今回の場合、六百億円の不足を埋めるのに政府補償措置をいささかなりとも行なうことができなかったのか、少なくとも新線建設費分のこの百億円くらいの出資措置を講じたあと運賃値上げをやることができなかったのであろうかということでございます。あらためて御見解をお聞きしたいと思います。
  8. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 お答えを申し上げますが、国鉄運賃法の第一条によりまして、運賃原価主義によること、とともに、国民経済発展とか国民生活の安定とかいうことを勘案いたしまして決定するようなことに相なっておる次第でございまして、ただいま御指摘赤字なりまする暫定割引でありますとか、通学あるいは通勤定期の過大なる割引につきましては、今回の運賃改定にあたりまして、国鉄の内部でも議論なりまして、この際農林水産物等暫定割引というものは、そういう品目はすでに等級の上から見れば低い地位に置かれておる上に、さらに暫定割引をいたしておるんだから、こういう割引についてはこの際考えてワクをはずしていくべきじゃないかという議論もあったように聞いております。また通学定期の非常に大きな割引につきましても、その割引率をもう少し下げるべきではないかという議論もあったのでございますけれども、しかしながら、事は国民生活一般物価等に差し響かないことを期待することを目標といたすという、大所高所に立ちましたので、理屈はともかくも、今回の運賃改定では、こういう原価計算割れになって、みすみす赤字累積のもとになるであろうと考えられる暫定割引であるとか、あるいは通学通勤の大きな割引についても、そのままといたしまして手を加えずに、今御指摘通りに各品目一律に賃率を上げることによって四百八十六億円の増収をはかることに相なりましたわけでございます。こういうものにつきまして、政府に対してこの赤字を補てんすべしとなぜ要求しなかったかという御質問でございまするが、繰り返し申し上げまするように、この三十六年度におきまして行ないまする鉄道輸送力強化整備の中にも、たとえば通勤輸送の緩和に役立つ輸送力整備増強とか、あるいは踏み切りの改善でありますとか、あるいは駅舎の改良でありますとか、あるいは老朽施設の取りかえ工事であるとかいうようなことは、これは採算から見まするとペイしないことでございますので、こういうものは財政融資にたよるべきではなくて、むしろ自己資金によってやるのが経理上当然であるようにも考えられますので、四百八十六億円の自己資金利用者負担によって捻出したわけでございます。また政府の方から金を補給してもらうということは、とりもなおさず税収入を基といたしまする一般財政に依存するということになりまするので、今日は日本国有鉄道政府直営事業でなく公共企業体という一つ企業の形をとっておりまする上から見まして、この際は、そういう千二百億にも余るところの採算上ペイしない仕事に対しては、自己資金をもってやるべきである。すなわち合理化による金、あるいは減価償却繰り入れによる六百億円、また四百八十六億円の利用者負担によるべきものであるということを考えまして、政府にこれが赤字補給の申請をいたさなかった次第でございます。詳細は国鉄当局からお話し申し上げます。
  9. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 政府は今回の運賃値上げにつきましては——運賃値上げということはつまりは利用者から少しずつ金を出し合ってもらって調達するという意味でございまするが、この利用者から金を出し合って調達するか、国家税金収入から埋めるかということで、前者に負担してもらう方が合理的であるという御意見を発表されたのでございます。しかしながら今日港湾、道路などの公共施設は単にその施設を利用する者だけが受益者であるとは考えられない。これは常識であろうと思うのであります。ここに国家資金公共投資の正当性というものがあるのでございましょうけれども、今日の鉄道もこれに近いのではなかろうかと思うので、すなわち今回のような所得倍増計画に基づきまして国家的な鉄道近代化工事実施によりまする受益者というものは、ミクロ的には確かにこれを利用する者でありましょうけれども、マクロ的な視野に立って見ますならば国民全部であろうと思うのであります。この見地から考えますならば、直接利用者運賃値上げ分で多少は負担いたしまするが、国家もこのような工事資金につきましては大いに出資して当然ではないかと考えるのでありまして、このたびの措置というものは、政府の苦慮も推察いたしまするので、やむを得ないものと了承いたしまするが、今後大いに研究していただきまして、政府当局の具体的なる措置を三十七年度予算にはぜひとも一つ盛り込んでいただきたいと思うわけでございます。御熱意のほどをお聞きしたいのであります。
  10. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 道路、港湾等と同じように国家資金をもって鉄道をやるべしという御意見は、一応の御意見のように拝承いたすのでございますが、これが戦争前のように国の直営事業でやっておりましたときと違いまして、戦後、アメリカの指導によるものと考えますが、公共企業体という一つ企業の形をとりました今日におきましては、道路、港湾と同じに見るということもいかがかと思います。しかしながら一方では、鉄道というものが昔の鉄道のように日本における唯一の交通機関でなくして、バス、トラック等が発達いたしまして、これらと競争をいたすような、鉄道の地位が変わって参りましたことも勘案いたしまして、その企業体の負担となる赤字につきましては、国家の要請、公共福祉の増進ということの要請による赤字負担については、さらに一段と政府において考慮すべきものが非常に多いと私は考えるのでございます。御意見のほどは十分参酌いたしまして、今後の国鉄のあり方につきまして検討を加えたいと考えておる次第でございます。
  11. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 あと質問希望の同僚委員もございますと思います。とにかくこれらの諸問題につきましては、関係御当局におきましてもどうか責任をもって努力していただきまして、私どもの期待に沿うていただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  12. 三池信

    ○三池委員長 運賃法の一部を改正する法律、案の質疑は午後一時からの委員会で続行いたしたいと思いますから、国鉄関係者の方はお引き取り願いたいと存じます。      ————◇—————
  13. 三池信

    ○三池委員長 次に国内旅客船公団法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  14. 久保三郎

    ○久保委員 国内旅客船公団法の一部を改正する法律案に関連して、政府当局に次の点をお尋ねしたいと思います。  まず第一に、旅客船公団を改組というか拡大して、戦標船のスクラップ・アンド・ビルド方式でこれが立て直しをやろう、こういうことでありますが、戦標船は現在約七十万総トンが残っていると思うのであります。ところがこれらの戦漂船の代替建造としては、計画造船によるもの、さらには開銀の融資によるもの、さらに今回提案されている旅客船公団によるものと三方法があると思うのです。これらの三方法によっていかように建造計画を進めていくのか、具体的に一つお示しいただきたい、こう思うのです。
  15. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 お答えを申し上げます。戦時標準船の代替建造計画を、公団、開発銀行あるいは計画造船の三つの方法を通じて、どういうふうにやっていくのか、こういう御質問でございますが、ただいまお話のように、戦時標準船は商船だけで七十万総トンございます。そのうちすでに昨年実施いたしました十六次計画造船におきまして、リンクさせて解撤を決定いたしておりますものは約六万トンあるわけでございます。そこで十七次以降の計画造船におきましても、そういった新造に関連いたしまして、解撤を協力させますものが約十六万トンと私どもは見込んでおるのであります。従いまして十六次の六万トンと十七次以降の計画造船にリンクいたしまして解撤されるべきものと合わせますと二十二万総トンでございます。従いまして七十万トンからその二十二万トンを差し引きますと約四十八万トン残るわけでございますが、私どもが昨年八月各船主にアンケートを出しまして実態調査をいたしましたときに、戦標船船主のうちから二十八万トンばかりは補修費をかけましても継続使用をする予定のものがございますので、ただいまの数字から二十八万トンを引きますと約二十万トン残るわけでございます。従いまして、昭和三十六年度におきましてはこの二十万トンを対象にいたしまして、開発銀行の一般ワクのその他というワクの中に七億円、旅客船公団を改組いたしまして、共有方式を通じて代替建造をいたして参りますものにつきまして八億円の財政融資をもって代替建造の計画を進めて参ろうということでございます。従いまし三二十六年度の公団、開発銀行の合計十五億円で私どもは約四万トンの解撤を見込んでおるのでございます。従いまして二十万トンから四万トンを差し引きました十六万トンというものの三十七、三十八両年度にわたっての財政資金の大幅な増額に努力いたしまして、戦標船処理に遺憾なきを期したい、こういう考えでございます。
  16. 久保三郎

    ○久保委員 三十七年度以降十六万トンの残トンが出る、これを大体二年ほどでやっていきたいということですが、政府自身としてはある程度計画的な裏づけを持って——もっともコンクリートされているとは思いませんけれども、大よその裏づけ、見通しを持ってやられておるのかどうか。これは運輸大臣にお聞きした方がいいと思います。
  17. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 今お説のような裏づけを持ちまして、運輸省といたしましては今の戦標船の処理に努力いたすわけでございます。
  18. 久保三郎

    ○久保委員 その通りなら大へんりっぱだと思うのでありますが、どうもいつも運輸省だけの考えであって、政府自体の考えでない場合が多いわけです。これは後刻またお尋ねいたしますが、そういうことならけっこうな話であります。  ところで、今度の戦標船の代替建造について、建造費の三割は自己負担である。ところが自己負担がしょい切れないで辞退されるものが出ているのではないか。先ほど局長は二十八万トンは継続使用で、残りの二十万トンを考えればいいんだと言われたのでありますが、実際は負担にたえ得られない。こういうものはどうするのか。こういうものについて実は旅客船公団で救済すべきものであるが、実際はそのベースにも乗らないようなものが出ているのではないかと思うのです。この点はどうなんですか。
  19. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 仰せの通り戦標船船主は零細な中小船主が多いわけでございますので、御指摘のような三割もの自己調達が困難であるというものが非常に多いことは、全般的に申し上げてその通りと思うのでございます。そこに加えて解撤されるべき船舶の旧債、債務がその上にございますので、そういう点から言いますとなお苦しいわけでございます。私どもといたしましては使用料の徴収についてある程度の据置期間を設けたい、こういうような考えでおります。  三割の自己調達分についてもなお困難でそのベースに乗らないものは一体どうするかというお尋ねでございますが、この点につきましては、市中金融機関あるいは損害保険協会等ともよく話し合いをいたしまして、できるだけの御協力を得るように努力いたしたいと思うのでございますが、それでもなおかつ自己調達分ができないものは一体どうするか、こういうことになると、この点につきましては企業みずからの意思で、あるいは二隻つぶして二社あるいは三社合体して整備統合が行なわれるということも、将来問題として考えられるわけでございますので、そういういろいろな現象が出て参りますけれども、できる限り据置期間の設定、あるいは市中銀行、損害保険協会等ともよく連絡をとりまして、できるだけの救済をして参りたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  20. 久保三郎

    ○久保委員 そこでまたもとへ戻りますが、SアンドB方式、いわゆるスクラップ・アンド・ビルド方式は、この計画造船の場合、スクラップ船を所有しておればこのワクに入れるということでありますか。所有とはいろいろな形態がありますが……。
  21. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 自己の所有する船舶ということでありますが、あるいは系列のオーナーから買い取ってもいいということで、買い取って自己の所有にしてもいい、こういう方針で、昨年度のいわゆる計画造船においてもそういうことで実施して参っております。
  22. 久保三郎

    ○久保委員 買い取ってもよろしいということになると、これは力のあるものはこの計画造船に乗れる、力のない毛のは乗れないということも現実に出てくると思うのであります。これはどういうふうに考えておりますか。
  23. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 仰せの通り計画造船におきましては、力のあるものが乗れる、力のないものは乗れないというのはその通りでございます。私ども計画造船につきましては、力のあるものに作らしていくということでございまして、計画造船の性格は、戦時標準船の処理の対策と別個に考えておるようなわけでございます。従いまして現在の計画造船の根本的な建前は、企業  の力を強めていくということが前提でございまして、償却前利益方式を採用  いたしておりますのも、こういう考え方から出ておるのでございます。
  24. 久保三郎

    ○久保委員 それはまことに金融ベースの考えのように聞けるわけであります。海運政策としてはそれで妥当かどうか。償却前利益を標準、スクラップ船は買ってきてもよろしいということになると、これが日本の海運の再建策であろうかどうか、こういう点に疑問を持つわけですが、その点はどうなん  ですか。
  25. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 ただいまのお話非常、に重大な問題であろうと思うのでございますが、実は私どもが一昨年以来海運対策について、各方面の御意見を拝聴いたしまして、自由民主党、社会党も含めて、あるいは経済団体その他各方面からの御意見を伺いましたものに基づきまして、昨年度以来の海運政策を実施いたしておるわけでございます。その際にやはり船腹増強と企業の基盤を強化するということは相矛盾する命題でございますので、その問題をいかに調整するかということが現在の海運政策の一番大きなポイントであるわけでございます。船を作り過ぎまして、借入金が膨大な額に上っておりますし、支払い金利の額も非常に多額に上っておりますことは御承知通りであります。こういうようなことで、船は作っていって企業の力は弱くなるということではいけないのであって、これ以上の借入金の増大を防いで、しかもなおかつ船腹増強の要請にこたえていこう、こういうことをわれわれの今の海運政策の一つの方針に採用しておるわけでございます。従いまして、金融ベースでものを判断して、海運政策からものを考えていないじゃないかという御疑問でございますが、私どもは、定期船につきましては、その航路の適格性、あるいは海運同盟の問題、あるいは外国海運の勢力関係、あるいは日本の輸出の振興の観点、そういったものから海運政策を——定期航路については開発銀行に推薦するという方式をとっていますが、不定期船、タンカーにつきましては、一定の根本的な原則だけを定めまして、あとは金融判断によることが現下の海運企業合理化を促進していくのに最もいい方法である、こういう海運造船合理化審議会の御答申でもありますので、そういう方針を踏襲いたしておるわけでございます。
  26. 久保三郎

    ○久保委員 そこでさらにお尋ねしたいのでありますが、最近における傾向として、新しい海運の会社がそれぞれできているかどうか。
  27. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 最近新しい会社ができておるかというお尋ねでございますが、最近、新会社はできております。私どもの調査では自己建造にそういうものが多いのでございまして、自己建造につきましても償却前利益方式というものを準用いたしておりますので、しかも、先ほどから申し上げておりますような、海運企業の基盤が弱体でございますので、なおかつ他方において船腹需要が非常に旺盛であるということで、荷主あるいは造船所、海運会社の三者が集まって新しい会社を作って新造船を作っていく、こういう傾向が現われております。
  28. 久保三郎

    ○久保委員 そこにやはり一つの問題があると思いますね。先ほどお話によれば、大体力の足りない会社は脱落する以外にない、新興会社は出てくる、こういうことになると、どうも海運の政策としては、手っとり早く言えば、力のあるものだけ残していく、力のないものはふるい落とすということに、結果としてはなろうかと思う。それでうまくいくかどうかの問題が一つ残ると思う。これは後刻さらにまたお尋ねしましょう。いずれにしても、この海運自体の問題は、今までのような政策で、それでは長期経済計画に見合った、たとえば千三百三十五万トンというものを確保できる見込みがあるのかどうか、そういう方式でいってできるのかどうか、さらには日本の海運界を再建できる方策があるのかどうか、これはむしろ運輸大臣にお尋ねした方が適当かと思うのですが……。
  29. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 ただいま御指摘のように、所得倍増の十年後を見ますと、その間におきまして、日本の輸出が大体年率八%の増加を見る、輸入も九%ぐらいの増加を見ている、そういう大きくなりました貿易量に対処いたしまして、日本の海運収入を上げまして、日本の国際収支の上に海運収入というものを役立たせるようにいたしますためには、船がたくさんなくてはならぬ。そこで、ただいま御指摘の千三百三十五万トンという目標が出て参るのでございます。従いまして、現在外航船六百数十万トンありますが、その解撤等のことを勘案いたしますと、九百七十万トンを十年間に作りたい。それで結局四十五年におきましては千三百三十五万トンに達するという計画目標を持っておるのでございます。しかしながら、ただいま海運局長からもお話申し上げましたように、日本の海運企業というものが、戦後ほかのあらゆる企業は非常に経済的に恵まれて、基盤が強化になったに対しまして、御承知通り戦争中、船は八割以上沈められてしまう、アメリカの政策で戦時補償というものは打ち切られてしまう、そこで新しく建造する船は借入金による、そうして今日は借入金の過大な利息が経理内容を圧迫しているというような、非常に脆弱な海運会社の基盤でありますものですから、十年間に九百七十万トンを作ります場合にも、まず前半の五カ年間は、海運企業の成長をいたさせながら船を作らして、後半の五年に、成長して基盤が強化した船会社にたくさんの船を作らせるという方針がよろしいというふうに考えまして、現在におきましては、三十六年度におきましては自己資本と借入資本とによりまして五十万トンを作らせる、また三十七年はさらにこれよりもふやす、三十八年はふやすというふうにいたして、ただいま御指摘の目標に達するようにいたさなけりゃならぬと考えておるのでございまして、これに対しましては、ただいま申し上げましたような日本の船会社の実情でありますので、政府といたしましても、一方におきましては財政融資を年々増加いたしてやりますとともに、この財政融資に対する利払いはなるべく減らすようにしてやりたいというので、昨年からは、従来やっておりまして一時とだえました、市中銀行の金利の高過ぎるのに対して政府利子補給をいたしまして、大体七分五厘ぐらいで利用することができる、またことしからは、計画造船に対しまして、開銀の1従来六分五厘の特別の利子ではございましたが、外国の金利に比較いたしますと必ずしも安いというわけではございませんので、開銀の利子に対しましても補給をいたしまして、三十六年度からは開銀の利子も五分程度計画造船の資金を得るということにいたしておるわけでございますが、これをもって私どもは決して満足をしておるわけではございません。外国の海運振興に対する助成策というものは、あらゆる方面から日本などと比較にならないほどの国家の施設があるのでございまして、今後におきましては、われわれといたしましても海運振興のためにもつといろいろの助成施策を行なわなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  30. 久保三郎

    ○久保委員 大臣の御答弁で千三百三十五万トンを保有するようにするのには十年間で九百七十万トンの船腹増強をはからなければならぬ。よってこれを算術平均すれば一年に九十七万トン、これは先ほど海運局長の御答弁によりましても、償却前利益を目標にしてやっていく、こういう御方針だというと、大体業界の最近の償却前利益は年間二百六十七億くらいだと思います。そうだとすれば一トン十万にして二十六万七千トンということになります。先ほどの御答弁では五十万トンくらい、こういうお話だった。こういう矛盾がここにも出ているわけでありまして、これはどういうふうに理解したらいいのか、一つ海運局長から御説明いただきたい。
  31. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 仰せの通り償却前利益は昨年の九月期決算におきましては約百五十億円程度でございます。従いまして、これは半期でございますから一年間を通じますと三百億程度になるわけでございます。従いまして計画造船におきまして二十五万五千トンという三十六年度計画でございますが、一方におきまして自己建造、ただいま大臣からお話がございましたように、自己建造につきましては、先ほど申し上げましたような荷主あるいは造船所等の連携をとってできて参るものもございます。なおまた償却前利益のみに限定をしないで長期に荷物が保障され、長期の運賃契約がありますものは、その本船自体において採算が十分とれるものにつきましては、償却前利益方式の適用をある程度緩和いたしております。自己建造もそういうものがどちらかといえばインダストリアル・キャリアの色彩が濃いものでございますけれども、そういうものも出て参ります。現に昨年度におきましても、三十万トン程度の自己建造が達成されておりますので、二十五万五千トンとほぼ横ばいの自己建造量を合わせますと、五十万トン程度が三十六年度においても建造可能であろう、こういう考え方でおるわけでございます。
  32. 久保三郎

    ○久保委員 それにしても五十万トンの目標では、長期経済計画の九十万トンにははるかに及ばぬ。しかしこれは先ほど大臣答弁では、前半の五年は基盤強化が先である、それから急速に伸びてこれに追いつくのだ、こういう御答弁でありますが、その辺は言い方の問題でありまして、決して実際ではないと思います。これはいずれにしてもまたあとでもう少しお尋ねしましょう。  そこで先ほど海運局長の御答弁によりますと、いわゆる条件緩和のことで荷主との長期契約が結べてそれが安定性がある、あるいはこれは企業性があるというものは償却前利益にとらわれないでこれを緩和していく、こういうお話であります。その通りやっておられるようであります。ところがオペレーターとの長期の用船契約は、条件緩和には入らぬというように聞いておるのでありますが、これはいかなる理由でそういうふうにしているのか。
  33. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 ごもっともな御指摘でありまして、実は三十五年度からこの償却前利益方式を採用いたしまして、十六次の計画造船に適用いたしたのでございますが、その際に仰せの通り、荷主との長期契約は認めるが、海運会社のオペレーターの長期用船は認めない、こういう運用をいたしましたことは事実でございます。そこに問題がございますので、私どもは開発銀行とオペレーターの用船でもいいじゃないかという交渉をいたしたのでございますけれども、何分にも海運会社のオペレーターといえどもなかなか強力なものではない、むしろ荷物がはっきり保障されて、長期の運賃契約ができておる荷主との関係の方がより確実だ、この問題については最初の償却前利益方式の適用であるから、少なくとも三十五年度においてはそういうことでシビアな線でいこう、三十六年度以降についてはその点をもう一度再検討しようという線で金融機関との話し合いをいたしてあるのでございます。三十六年度におきましては、その点は一つ検討問題として残っておるわけでございます。
  34. 久保三郎

    ○久保委員 そこでさらにその問題は検討問題として残っておるというのですが、その検討を今度の予算なりこの一連の法案を出すについて話は詰めてあるのですか。どういう方向なんですか。検討として残っておるというのは、これから十七次造船というか、そういうものについて考えていとうというのか、これからですか、いかがですか。
  35. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 これは一つは金融判断の問題でもございますので、私どもはオペレーターの長期用船でもいいじゃないかという考えで実はおるわけでございます。従って金を貸す方の考え方は、どうもオペレーターよりも荷主の方がなお確実であるからということの考え方の違いでございますので、金融機関をある程度説得したい、こういう考えでおります。
  36. 久保三郎

    ○久保委員 それはもちろん説得ということに相なるのでありましょうが、いずれにしても金融機関としては、これは当然石橋をたたいて渡るという方式からいけば、荷主との長期契約があればこれに越したことはないでしょう。ところがこれではものの考え方、処理の仕方としては私は半端だと思うのです。これは大臣どうですか、開銀に対してこれから話を進めていって、そういう不合理をなくすようにする考えは強力に持っておられるのですか。
  37. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 そういう方向で金融機関に対しましても努力をして参りたいと思っております。
  38. 久保三郎

    ○久保委員 海運局長お話は聞いたので、最高幹部である運輸大臣のお考えを聞こうとしたのですが、それもあとでいいでしょう。  ところで、約束の時間がきましたのですが、いずれにしても、この旅客船公団の問題ですが、あと一つ資料を出してくれませんか。旅客船公団のできます際に、五カ年の事業計画をお出しになったと思うのですが、その後の進捗状況を一表にして出していただきたい、こういうように思います。  それから、きょうは船員局からはお見えになっておりませんか。
  39. 三池信

    ○三池委員長 きょうは見えておりません。
  40. 久保三郎

    ○久保委員 それでは、旅客船公団法が通過する際に、御承知通り委員会では附帯決議を付しているわけです。附帯決議としては、航路補助金の増額とか、海上旅客運送事業者に対する事業税あるいは固定資産税の減免、あるいは船員の福利厚生施設の整備、こういうものをやれ、こういうことでありますが、この問題はどういう措置を今までとられておるか。もちろん海運局長だけの所管ではないようでありますが、運輸省としてどういうふうにやっておりますか。
  41. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 公団の業務の進捗状況につきましては、後刻資料を提出いたしますが、この問題につきましては、御承知のように三十四年度政府出資の二億と財政資金の借り入れが三億とでもって発足をいたしたのでございますが、三十四年度におきましては三十隻、約三千二百トンの旅客船を船主と共同建造をすることになりまして、本年の二月末現在におきましては二十八隻の竣工を見ておりまして、残りの二隻も三月、今月中に竣工の見込みでございます。三十五年度におきましては政府出資二億の増額がさらにございまして、資金運用部資金の借り入れが五億ございましたことは御承知通りであります。三十九隻、約四千二百トンの建造と鋼船一隻の改造を決定いたしまして、今年の三月中に七隻が竣工する見込みでございます。残りの部分につきましても、大体この十月までに全部竣工をする見込みでございます。進捗状況は以上の通りでございますが、概して申し上げますと、おおむね順調に業務は進捗いたしております。すでに竣工いたしました船舶は、各船主によって運航されております。使用料も順調に徴収されております。  第二点の附帯決議の問題でございますが、事業税の問題、あるいは各種の税制の改善の問題、福利厚生施設の問題、それから財政資金の増大の問題、それから離島航路の補助金の問題は、ただいま御指摘通りでございます。初年度よりも財政資金出資、融資を合わせまして最初の五億から七億程度にふえておるのでございますが、なおこの分では附帯決議の大幅な増額に対処するところまではいっておりません。しかしなお今後とも附帯決議の御趣旨を尊重いたしまして、努力をいたしたいと思うのであります。   〔委員長退席、有田委員長代理着   席〕  地方税の問題につきましては、公団法に規定いたしております程度でありまして、趣旨の実現にまで十分に参っておりませんのは残念でございますが、ただ固定資産税につきましては、地方税の改正によりまして、内航船舶と同様に従来の六分の四から六分の三に低減をいたすことに大体きまっておるようなわけでございます。  福利厚生の問題につきましては、船舶の建造にあたりまして、その航路の状況、あるいは船舶の使用状況、あるいは船員がその船舶の中で居住いたします時間等を十分考慮に入れまして、船員の海上労働の条件が悪くならない、むしろ改善されるように、船舶の構造設計等についても十分意を用いて、公団の業務を遂行いたしておるようなわけでございます。
  42. 久保三郎

    ○久保委員 船員局長にも関係がありますから、あとで船員局長がおいでのときに再びお尋ねしますけれども、戦標船の解撤を含めて、代替建造の場合、当然乗組船員の問題が出てくる。この船員処遇の問題、これはやはり考えていかなければならない。こういうことで、去年の暮れの当委員会でも、きょうお見えになりません船員局長から、約三千人の船員が下船する、こういうことになって、その対策として職業訓練とか、あるいは短期の移民のための海外調査、それに必要な渡航費貸付、こういうようなことをとくと答弁されているわけなんですが、今年度の予算を見ますと、そういうことはやるにはやろうが、ちょっぴりということでありまして、とうてい解撤に対応した対策とは言いがたいものがあるわけであります。これに対してどういうふうに考えられているのか。  それからもう一つは、一ぱい船主といっては語弊があるが、特に国内旅客船というか、そういう部類、それから今後の戦標船の問題にいたしましても、これはいずれも小さい業者が多い。そこへ持ってきて、代替建造するのには一ぺん船員を解雇しなければならない。解雇手当も払い得ないような状態もあるかもしれない。そうだとすれば、海運局長のアンケートには載らぬ。私のところでは船舶局でお許しがある限度一ぱい使わなければならぬ、こういうととが出てくると思います。だから船員の問題をやはり並行して片づけなければ、解撤方式というか、そういうものはなかなか進捗しないだろうと私は思うのであります。そういう点で、大臣答弁いただけるならば一つお願いしたい。
  43. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 戦標船の問題につきましては、すでに御承知通りに、現在戦標船を持っておりまする者が中小船主であって、経済力の弱い者であるから、これを救わなければならないという、いわゆる中小企業の形をとった問題があることと、もう一つは、戦標船に乗っておりまする船員の数が、いろいろ言われておりますが、大体解撤することを予想される戦標船が百二十二隻、四十二万総トンといたしますると、予備員と乗組員を合わせて五千百名と役所の方では見ておるようでございまして、こういうような人たちが一応は下船をいたすわけでございますが、現在におきまする日本の船員需給全般から見まして、そう心配するようなことはないように考えられるのでございますけれども、戦標船の解撤と新しい船の建造の時期がずれて、一時的失業を生じ、あるいはまた代替船建造の建造比率の差であるとか、あるいは船型の相違等によりまして過剰船員の生ずる可能性がないとは言えないのでございまして、これらは運輸省といたしましては、三年間を通じて約六百名程度と推定をいたしておるわけでございますが、政府といたしましては、これらの船員の問題に対処するために、三十六年度におきまして約百五十万円の予算を今回計上いたしまして、積極的な求人開拓とかあるいは広い職業紹介とか、あるいは最近は日本人船員が外国船に乗り込むことが、たとえば西ドイツとかあるいはイラン、インドネシア等において要望がありますので、こういうところについても促進をいたしまするとか、あるいは下船しております船員の再教育の実施等の措置をいたしまして、これら船員の人たちの対策に遺憾なきを期したいと思います。詳細のことは、船員局長が今おりませんから、船員局長が参りましたら詳細に御説明申し上げたいと思います。
  44. 久保三郎

    ○久保委員 大臣のおっしゃる通り職業紹介というか、そういうものをやるのに百五十二万も出しておるというのですが、本省分が六十三万四千円で地方分が八十八万七千円、これで十分に職業訓練や紹介ができるとはわれわれは考えられない。だから名目上はあるが、実際にはあまり役に立たぬではなかろうか、こういう心配をしておるわけです。いずれ船員局長にはあとでこまかくお尋ねします。  それから移民の問題では、これは送り出し振興費として六十三万四千円上がっているだけなんです。六十三万円というと何人送れるのでしょうか、私は聞きたいのです。こういうことで船員対策なれりということでは、解撤の方式によるところの代替建造はおそらくなかなかむずかしいのではなかろうか、こういうふうに思われるわけです。船員局長のおっしゃるのは三千人だが、今大臣がおっしゃるのは役所の方では五千三百人だということで、だんだん上がってくる。こうなってくると大へんなことだと私は思うのであります。これはいずれにしても後刻また船員局長がおいでの際にお尋ねをいたしましょう。  さらに最後にきょうのところお尋ねしておきたいのは、十七次の計画造船について今日現在での概要を一つ御披露いただきたいと思います。
  45. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 御承知のように開発銀行の融資のワクは百四十億円でございまして、そのうちで十六次の繰り越しがあるわけでございますから、十七次造船に使いますものを基準に考えてみますと、二十五万五千トンの建造量になるわけでございます。このうち定期船が九万二千トンの計画でございまして、残りが十六万三千トンが不定期船とタンカーの建造トン数でございます。定期船の開発銀行の融資比率は七割でございまして、不定期船、タンカーにつきましては五割の融資比率でやっていこう、こういうふうな計画でございます。
  46. 久保三郎

    ○久保委員 条件等は別に変わりはございませんか。
  47. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 条件で変わりました問題は、ただいまの建造計画につきましては、昨年は定期船が八割の融資比率でありましたのを、一割下げまして七割ということにいたしまして、その分だけ最近におきまするところの大型船、専用船の世界的な傾向と、日本の貿易量の増大というものに対処いたしまして、定期船の融資比率を一割下げまして、トランパー、タンカーの方に回しまして、昨年度の十六次造船よりもそういったバルキー・カーゴを運びますものとか、あるいは石油類を運びますタンカーの需要が非常に熾烈なものがございますので、そういう方面に重点を移したということが変わっておる点でございまして、条件で変わりましたのは先ほど申し上げました定期船の融資比率の点だけでございます。
  48. 有田喜一

    ○有田委員長代理 それでは午前中の会議はこの程度にとどめまして、午後一時より再開して国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について質疑を行なうこととして、これにて休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————    午後一時三十八分開議
  49. 三池信

    ○三池委員長 午前に引き続き再開いたします。  国鉄運賃法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。有田喜一君。
  50. 有田喜一

    ○有田委員 私は、国鉄経営の基本方針並びにその将来の方向についてきわめて簡単に質問したいと思います。  国鉄は、言うまでもなく大きな企業体でありますから独立採算制の必要のあることは十分わかります。しかし一方におきまして、パブリック・コーポレーションとして公共的のいわゆる社会政策的の料金あるいは産業政策的の運賃ということから、相当公共負担が増大し、のみならず地方産業開発のために必要なる新線建設も行なわなければならぬ、その間の調整ということが私は非常に重大だと思いますが、これに関する運輸大臣並びに国鉄御当局の考え方、方針というものについて一つ承りたいと思います。
  51. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 お答えを申し上げます。国鉄公共福祉増進を目途といたしまする公共企業体であることによって生じまする高度の公共性から派生いたしまする公共赤字負担がだんだんと大きくなって参りますことと、一方国鉄もまた公共企業体という企業であることで、これを能率的に運営いたしまするために独立採算制見地から運営しなければならぬということは、相矛盾するような形をとっておるのでございまするが、今お話のごとく独立採算制を維持するという能率運営の見地にとらわれて、大所高所から見た国家国民公共的の使命を無視するということはできないと私ども考えておるのでございます。従いまして、国鉄自体の経営の上から見ますると、この公共負担と独立採算見地から見ましたところの赤字というものと、どういうバランスをとるかということは重要な問題であると考えます。ことに以前のごとく、日本国有鉄道がわが国産業経済のただ一つ輸送機関で、独占的の地位を持っておりましたときとは今日は全く違いまして、バスあるいはトラック等の新しい輸送機関が国鉄と競争をいたす立場に立っておることを考えてみますると、ただいま御説示のような御意見は、国鉄経営の立場から見るならば、有力なる御意見として重大関心をもって考えなければならぬ問題だと思うのでございます。しかしながら具体的に公共負担をどの程度国家において補助してやるかというような問題に相なりますと、そのときの財政等の都合もよく勘案いたさなければならないことでございまして、軽々しくそのやり方をここで申し上げることはあるいは適当でないことをおそれる次第でございます。しかしながら、ただいま有田委員お話なりましたような御意見は、国鉄経営の立場からしましてまことにごもっともな御意見と考えますので、今後国鉄経営について指導監督をいたしまする当省といたしましては、重大なる関心をもってお話のような方向に研究してみたい、こう考えておる次第でございます。
  52. 有田喜一

    ○有田委員 独立採算制でいかなければならぬということですが、国鉄運賃はいわゆる総括原価主義ということになっております。それはおそらく一線一線の原価主義でなくて、全国鉄のいわゆる総括原価主義だと思うのですが、その総括原価に基づいて運賃を定めなければならぬということですが、その総括原価の内容につきまして、運賃問題をめぐりまして、あるいは政府出資をもっとやったら運賃値上げをやらないでいいじゃないかという一つの説もあるし、またいわゆる利用者負担主義といいますか、国鉄を利用する人からとるのが当然だから運賃を大いに上げるべし、これも一つの説でしょう。あるいはもっと借金をして、それによってやったらどうかという行き方もありましょう。今の国鉄の行き方は利用者負担主義が中心となって、一方において借入金を行ない、今回また新線につきましては国から利子補給を受けておりますから、国家負担主義が一部加わってきたのであります。沿革的に申しますれば、今の国有鉄道の財産といろものは、利用者すなわち汽車を利用する人から集まった金が今日の国鉄の大きな財産になっておる。今までは利用者負担ということが大きなウエートを持っておることは言うまでもない。また現在の実情から申しましても、この利用者負担主義というものに大きなウエートがかかっておることは当然である。しかし将来の方向としましては、先ほど大臣も言われたように、他の輸送機関が大いに発達する。また国鉄としましても、時代の要請に従って大いに近代化を進めなければならない。そういう要請を満たし、あるいは公共的なことにも大いに手を伸ばしていかなければならないというと、将来の方向としては国家負担主義という方向に向かわなければならぬと思います。その一端として、今回新線に対する補給制度ができ上がった。これは一つ方向としての進歩だと私は思うのです。こういう方向でいくが、現実問題としてはそう極端に国家負担主義ということを一方的に言うわけにいかない。しかしウエートはあくまで利用者負担主義でいきながら、将来の方向としては国家負担主義を加味していかなければならぬと私は思うのです。これが国鉄経営の将来の方向として大事な問題じゃないか。運賃問題をめぐりまして、極端に国家負担主義でいくべきだということを強調する人もあるし、あるいは利用者負担主義でいくべきものであると強調する人もありますが、実際問題としては一方に借入金主義も加味しながら、いわゆる三本の柱、その問におのずからウエートの違いはあります、比重の差はありますけれども方向としてはだんだんと国家負担主義にいくべき方向になるのではないかと私は思うのです。これに対する運輸大臣並びに国鉄総裁の御所見を拝聴したいと思います。
  53. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 まことにごもっともな御意見だと考える次第でございまして、だれが考えましても、国鉄利用者負担というものを際限なく負担せしむるということは、実際問題として不可能だろうと思うのです。現在のところが限度であるか、まだ限度まできておらぬかということは、見る人によって違いますけれども利用者負担という毛のにある限度があるということは考えられると思うのでございます。従いまして、ただいまお話のように、国鉄の今後の経営を、公共負担をやる点を勘案いたしまして、政府財政融資、それから利用者負担する自己資本の捻出、それから一方ではできるだけ経営合理化をやることは企業経理上当然のことでございますが、これによって自己資本を捻出いたしますこと、また、ただいま金額は小なりといえども新しい方向に踏み切ったものとして大いに多とすべきものであると御賞揚をいただきました。従来かつてなかった赤字負担になる新線建設利子補給を今度やりましたことや、あるいは戦傷病者無賃乗車に対する補償の増額などのいわゆる財政負担というものを今後一つの柱にまで育成していきまして、日本の経済成長の動脈として大きな役割を持つ国鉄経理と申しますか、経営の安定、堅実化をはかる方向に大いに今後検討を加えていきたいということはまことに御同感でございます。
  54. 十河信二

    ○十河説明員 御質問のように、公共性企業性、公共企業体と民間の企業と同じような企業体と、二つの矛盾する性格を持っております。非常にその点でいろいろな問題が起こるのであります。従来は、国鉄政府の直営でありました。それから、さっき大臣から詳しくいろいろお話がありました通りに、独占的の企業でありました。独占企業でありましたのみならず、その当時の運賃は、総括的原価から申しまして、相当余裕のある運賃であったのであります。独占的企業であり、相当余裕のある運賃をちょうだいしておりました。従って、公共負担を背負う余力が相当多かったのであります。ところが、さっき大臣お話しになりました通り、今日は新進気鋭のバスであるとか、トラックであるとかいうふうな、競争運輸機関が出て参りました。従って、国鉄経営というものはだんだん独占でなく、競争しなければならぬ立場にある。その上に、けさも大臣からお話がありましたように、戦後インフレの関係で、運賃が非常に低位に押えられております。そこで、お話のように今日までは公共負担を背負って参りましたけれども運賃が他の物価に比べて比較的安いのですから、今のところは運賃で若干収入を増していくことができますけれども、だんだん今後は、競争上運賃増加にも限度があるように感ぜられるのであります。従って、公共負担を背負う余力が、年を重ねるに従って少なくなって参ります。今後は公共負担について、政府の方にお願いしなければならぬような必要がだんだん多くなってくるのじゃないか、私もかように考えておるような次第であります。
  55. 有田喜一

    ○有田委員 大臣並びに総裁のお考え方は、大体私も了といたしましたが、今回の予算に伴いまして、新線建設に対しては、政府利子補給という線が出たのであります。運賃の面におきましても、もちろん割引ということは必要でございますけれども、極端なる割引制度があります。そういうものはだれが考えても、それは必要だけれども、これほどまでせんならぬかと思うものがあると思うのです。しかしそれは今までの沿革もあって、なかなかそう簡単に元に戻すわけにはいかない。そういう場合は、その必要性があるならば、政府に向かって、国家としてこういう割引をする必要があるのだから、その幾分かは政府一つ補給しろという要求をしてしかるべきだと思うのですが、そういう要求は、運輸省並びに国鉄として大蔵当局にされたのですか、あるいは全然されずに見送られたのか、その事実だけお聞かせ願いたい。
  56. 岡本悟

    ○岡本政府委員 来年度の予算編成、並びに国鉄輸送力の増強計画、これらを検討いたしました際に、特に輸送力の増強に要する資金の捻出方法について、政府といたしましてはいろいろな角度から検討いたしたわけでございますが、もちろん意見としては、先ほどおっしゃいましたことは十分承知いたしておりましたけれども、ともかく一応利用者負担増、それから借入金の増、一部は国庫によって補助、こういうことで第二次五カ年計画を発足させることができる、こういうふうな確信のもとに、運賃値上げ並びに予算の編成というものをきめたわけでございます。
  57. 有田喜一

    ○有田委員 私が先ほども申しましたように、もちろん利用者主義ということが、大きなウエートを持たなければならぬことはわかっておりますが、今後の方向としては、いわゆる借入金相当加えていかなくてはならぬ。同時に国家負担ということも考えていかなくてはならぬ。運賃の面からも、そういうことは正当の理由があるのだから、また新線建設のことも出ましたけれども、両々相待って、運輸当局なり国鉄は、そういうことは遠慮なく、力強く推し進められてしかるべきだと思いますので、それは運輸当局も国鉄も、将来大いに考えていただきたい。  そこで借入金の問題になってくるのですが、借入金は利子が伴うものですから、これはあまり膨大なことができないことは明らかでございますけれども、やはり一つ経営をやる以上は、できるだけ長期な、安定した、しかも利子の安い借入金考えなくてはならぬと思うのです。それについて国際復興開発銀行、いわゆる世銀との借款交渉が、国鉄としても進められたということを聞くのであります。その経緯といいますか、一体どのくらいの金額で、どういうような条件のもとに話が進められ、そういうことがいつ成立しそうか、見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  58. 兼松学

    ○兼松説明員 お答えいたします。  東海道新幹線の建設は全部外部資金でやるということで、その一部として世銀の借款を政府を通じて一億ドル申し入れをいたしておったわけでございます。その後政府と世銀との間には、日本の、将来市場調達の可能性も含めて、全体として、ここ数年間一億ドル程度見るということで、その角度から見て、若干減額することがあるということを、昨秋大蔵大臣と世銀との間にお話がございまして、その前提のもとに、ことしの一月から約一カ月にわたりまして、いろいろな折衝をしておりました。その折衝の過程におきましては、最終的な額の決定は、その後来るであろう極東部長のローゼン氏並びに副総裁のナップ氏が来たところで、政府と最終的な確定をすることにして、その他の一般的なすべての条件を交渉しようということで、金額としては、そういったところであとの決定にゆだねられたのでありますが、その他の一般的な諸条件は、今度国鉄に貸すものは、別に輸入等と結びつけない、純然たる資金として貸すということで話がつき、それから手続も、他の前例によるよりは比較的簡易な手続でできるように大体きまりまして、契約書の草案は、二月の初旬にできて、そのあと金額を最終的に確定するという段階まで参っております。その後ローゼン氏が日本に参りまして、政府の大蔵大臣が主としてお話にお当たり下さいましたが、話し合いまして、その後ナップ副総裁が来た際に発表になりましたが、八千万ドルでいくということで、国鉄の借款は八千万ドルということに確定いたしました。  それから期限は二十年、利子は世銀のすべての借款がその調印のときにおける世銀債——ヨーロッパあるいは米国の市場で発行いたします世銀債の金利に、世銀の積立金一%と世銀の経費〇・二五%、合計一・二五%を足したものという規定になっておりますので、そのときのものできまることになるのでございますが、最近の金利情勢、世銀債のごく最近の発行実情等を見ますと、道路公団の場合よりも発行者側の利子が若干少なくて済むのではないかという見通しでございます。  調印の時期は、目下交渉されております電電債の売り出しと同時が世銀としては世銀が日本全体のいわゆる市場調達を助けるという意味から帳じりすると一番債券がさばけやすいという見解をとっておりまして、その意味で電電債の交渉が近くまとまるならば、その時期を一緒にしたいということをナップ副総裁が政府に申し入れておりまして、その辺のところで日本の政府側も——主として大蔵省の方でございますが、また世銀側もここ一、二カ月のうらに調印に運びたいと言っておりますが、一にかかって電電債の交渉の事情によっております。従って日付はうまくいけば十日くらい早くなるというような現在の事情でございます。
  59. 有田喜一

    ○有田委員 この問題については兼松理事も非常に御奔走になっておるということを聞きまして喜んでおるのですが、道路公団よりも利子が安いということで一そう喜びを感じたのですけれども、これは多くの国民影響するところ甚大でございますので、一つできるだけがんばっていただいて、有利な条件で進むようにお願いしたいと思います。  なお運賃の問題と関係しまして、やはり国鉄経営合理化ということが非常に重大だと思います。運賃を上げる前にまず合理化をやるべきだ、これはだれも言うことでありますが、大体のことでようございますが、今日まで経営合理化としてどういうことをやられたか、また今後どういうことをやろうとされておるか、その合理化された実績並びに今後の行き方について概略御説明願いたいと思います。
  60. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 お答えを申し上げます。  国鉄はこの数年来経営合理化に努力して参ったのでございますが、御承知通り昭和二十七年から昭和三十四年までの推移を見ますると、事業量は昭和二十七年を一〇〇といたしますると、昭和三十四年度におきましては二二三と、三割三分仕事の方はふえておるのでございます。その間におきまして、しからば動力費はどうなったか、人件費はどうなったかというようなことを見ますと、いわゆる経営合理化がわかるわけでございまして、その間における職員数は、昭和二十七年におきまして一〇〇のものが、昭和三十四年におきましても一〇〇でございますので、実質的に申しますると事業分量がふえたのだから当然ふえるべき人数を削減したと同等のことでございまして、三十四年度を三十一年度に比べますと約一万五千人節約いたしたことになるのでございまして、金額を計算いたしますと六十七億円になるわけでございます。  それから動力費につきましては、三十四年度は三十一年度に対して業務量が増加いたしたにかかわりませず、ほとんど変わりはございませんで、これまた動力費を節約したということに相なります。その間燃料の値段の値上がり等を勘案いたしますと、この動力費の節約が四十三億円になるのでございます。  また修繕費につきましても業務量の増加を考慮に入れますと、三十四年度は三十一年度に対しまして約五十二億円の節減となっておるのでございます。以上人件費と動力費と修繕費とを加えますと、ちょうど節約した分が百六十二億円という金額に相なるわけでございます。  一方、増収をはかることも努力をいたしておるのでございまして、運輸収入の増収に努めますことはもちろんでございますけれども、その他たとえば構内営業の料金でありますとか、あるいは広告料でありますとか、高架線の下の貸付料であるとかいうものを従来いろいろ議論のありましたものを適正化いたしますし、また今日遊休資産を相当に持っておるのでございますが、この遊休資産の売却を促進いたします等のこともいたしております。こういうようなことを合わせまして、かれこれ三十六年度には二十億円の増収をはかる、こういうことに努めておるようなわけでございます。国鉄といたしましては今回の運賃改定によりまして、利用者方々負担をかけるにあたりましては、みずから省みてみずからの節約、合理化によりまして自己資金を捻出するということに努力を払っておりますことを御承知願いたいと思うのでございます。
  61. 有田喜一

    ○有田委員 国鉄合理化に努力しておるその跡は了としますけれども、やはりもっともっと合理化を進めるべき余地があると思うのですが、このような運賃値上げによって利用者相当負担をかける以上は、今後も大いに合理化を進めていただきたい。なお合理化に名をかりて一方サービスの低下するようなことがあってはいけない。あくまでサービスを向上しながらむだの費用をやめるということで進んでいただきたい。昨年でありましたか、全国に採算の合わぬ線が五十カ線あるということです。そうしてそれを中央はどういう考えであったかしれませんが、地方におきましてはあたかもそれを今にも採算の合わぬ線路は取りはずすというようなことをやかましく言われまして、地方人心に非常な動揺を与えたことがある。地方としましては何も政治的にそういうものができたんではなくて、国の要請によってとうとい土地を提供して協力してできた線があるわけです。私の方でいえば篠山線というのはまさにその通りでありまして、戦時中の国家の要請に基づいてとうとい土地を提供して、そしてその線が作られた。採算が合わぬからといって、それを取りはずすという声があって、地方は非常に動揺しまして、大問題を起こして今なお人心きょうきょうたる状態でありますが、一方において産業開発上必要だというので、採算が合わなくても新線をやらなければならぬ。いわゆる公共の必要性に迫られてやる。ましてや、今まである線を引きはずすなんということは、これは合理化じゃない。実に無謀きわまることである。これが一営利会社ではなくして、パブリック・コーポレーションとして、公共企業体としてやる以上は、そういう極端なことはやるべきでない、かように思いますが、それに対して、今日どういう状態になっておるか、運輸大臣としてどう考えるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  62. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 お答えを申し上げます。鉄道営業線になりましたものを取りはずすとか、中止するとかいうようなことは、これは重大な問題でございます。先ほど来当委員会におきましていろいろ御議論の焦点になっておりますように、国鉄というものが単なる営利会社でなくて、公共性の高いもので、赤字を忍んでも国民経済のため、あるいは文化の向上のため、地方の産業の振興のため、また、近ごろよくいわれておりまする地域間の経済的の格差をなくするために、新しい線を営業線として運営をいたしておることは当然のことであると考えるのでございます。今、お言葉の中にありました篠山線とかいう線路のことを具体的に私は承知しておりませんけれども、そういうものが現在運営されておりますならば、地方民の利益、地方産業の伸展等を無視して、軽々に、にわかにこういうものを取りはずすというようなことは、国鉄本来の使命の上から見て当然あり得べからざることのように私は考える次第でございます。
  63. 有田喜一

    ○有田委員 大臣のお考えを大体承ったのですが、大臣はあまり詳しく御存じないというような前提お話しになったようでございますけれども、事務当局は御承知と思いますが、鉄監局長、どういうお考えか、はっきりさしていただきたい。
  64. 岡本悟

    ○岡本政府委員 国鉄経営合理化見地から赤字線の廃止をいろいろ検討しておるということは承知いたしております。また国鉄総裁の諮問機関でございます経営委員会であるとか、あるいはその他いろんな機関がこの経営合理化のために赤字線を廃止すべきだということを主張しておることも承知をしております。しかし、運輸省といたしましては、この赤字線の廃止の問題は、先ほど大臣が申し上げましたように、地方民生の安定に非常に大きな関係を持っております。国鉄といったような輸送機関が国民生活に果たす役割というものは、中央において観念的に考えているような問題とは性質が根本的に違うと思います。非常に大きな影響を持っております。でございますので、観念的、理論的に考えまして、赤字線の廃止が経営改善に寄与するといいましても、すぐこれを行なうということは重大問題であろうと思います。そこで、これも先ほどすでに大臣が決意を表明いたしましたように、かりに国鉄から営業線廃止の申請が出ましても、これを許可するかどうかということにつきましては慎重な態度で臨むべきであろうと考えております。よほどの場合でない限り、ここ当分はそういうことは見送るべきだというふうに考えておる次第でございます。
  65. 有田喜一

    ○有田委員 大体運輸御当局のお考えはわかりましたが、合理化は大いにやる必要がある。しかし、地方産業開発のために必要だといって作られた線は、赤字が出るからといってそれを軽軽にはずすというようなことは絶対にまかりならぬことだと思うのです。ほんとうの合理化と、採算の合わぬ線はやめるということとは全然別問題であるということだけは、国鉄御当局もよく御了知を願いたいと思います。  そこで、国鉄運賃が今度上がることになるのでございますが、他の公共料金、たとえば電気料金とかあるいは郵便、電信、電話、類似の公共料金があるわけでございますが、戦時中、戦後今日までの値上がりの指数というものがあるはずでございます。百何十というような指数でけっこうですが、大ざっぱに見て他の公共料金との比較のようなものがございましたら明らかにしていただきたい。たとえばこの運賃の上がる前はこうだ、今度は運賃が上がって、それでもこのくらいの率になるのだということをお示し願いたいと思います。
  66. 岡本悟

    ○岡本政府委員 国鉄運賃とおもな物価につきまして昭和三十四年と十一年とを比べてみますと、新聞購読料は昭和十一年の三百八十一倍になっております。郵便の第一種料金は三百三十三倍でございます。東京の小売物価は二百九十八倍になっております。これに対しまして、国鉄通勤定期旅客運賃は百十五倍、通学定期旅客運賃は九十一倍、定期外、つまり普通の旅客運賃は百五十四倍となっております。ただいまお尋ねの運賃改定を行ないました場合にどうなるかと申しますと、通勤定期旅客運賃は百十五倍が百三十一倍に、通学定期旅客運賃は九十一倍が百五倍に、定期外は百五十四倍が百七十六倍となります。
  67. 有田喜一

    ○有田委員 他の公共料金から比べて国鉄運賃の上げ方が戦後比較的軽微であったということは数字によってわかるのでありますが、しかし、運賃は安い方がよいことはわかり切っておることであります。今後運賃値上げというようなことをあまり何回もやることは、これは国民のためにも慎むべきだと思います。従いまして、先ほど来るる申しておりますように、今後の鉄道経営方向としましては、公共性のものに対してはそれぞれ国庫方面の援助を仰ぐとか、できるだけ利用者負担を軽からしめる。また一方においては合理化を大いに推進されて国民に迷惑のかからないような、しかも産業開発のためには必要な公共性を大いに発揮していただきたい。いわゆる公共企業体としての使命を大いに発揮されんことを要望してやまないのです。  いろいろと尋ねたいことがありますけれども、同僚の質問者も待ちかまえておられるようでありますから、この程度で本日の私の質問を打ち切りたいと思います。
  68. 三池信

    ○三池委員長 關谷勝利君。
  69. 關谷勝利

    ○關谷委員 大体お尋ねをいたしたい点は、有田君の方でだいぶ質問をせられましたので、簡単に、重複を避けてお尋ね申し上げてみたいと思います。  私は、運賃の改正というようなことがありまする際にいつも考えることなのでありますが、国鉄経営形態というものがこのままでいいものかどうかということをいつも考えるのであります。これは大きな問題でありますので、また別の機会に譲るといたしまして、この独立採算制公共性という二つの相反した目的といいますか、要素を含んでおる国鉄で、これを調和さすということは、先ほど大臣も御答弁せられておりましたように非常にむずかしいことでありまして、しかもいろいろ制約が独立採算の中にもあるというふうなことで、経営形態を変えるというようないろんなことはまた別の問題といたしまして、このままの形態を続けていくといたしましても、私は、ここらで何か考えなければならぬことがあるのではないかというふうな気持がいたします。これに対しまして、大臣、何かお考えになっておることがありますか。たとえば独立採算というふうなことをいうておる。しかしながらこれがほんとうの独立採算であろうかというふうなことも考えます。資金の面においても自主性はない、運賃の面においても自主性はない。こういうふうな形でこのまま国鉄を独立採算でやっていけといったところで、それは無理なのではなかろうかというふうな気持もいたしまするが、こういうふうな点について、大臣、どのようにお考えなりますか。また国有鉄道としてはどういうふうにしてもらいたい、これではなかなかやりにくいんだというふうなことが、言いとうて言えないことがあるのじゃないかというふうな気持もいたしまするが、思い切って、一つこうしてもらいたい、こうしなければやれないんだ、いつまでも政策面において独立採算を破壊するような政策を押しつけられたのでは、われわれとしてはやれぬのだというふうなことも出てくると思います。いろんな面から、国鉄はこうあるべきで、こうでなければこれから先はやりにくいというふうなことがあるのではないかと思います。この点、大臣からも総裁からも、一つお答えを願いたいと思います。
  70. 木暮武太夫

    木暮国務大臣 先ほど有田委員からも、国鉄経営のあり方についての御意見の御開陳がございました。ただいまの御質問も、やはりそういうことについて、深い御懸念のもとに御質問下すったことと思うのでございます。  先ほど来申し上げまする通り日本国有鉄道というものが、わが国における独占的の輸送機関でありましたときならばいざ知らず、今日は、バス、トラック等の新しい交通機関と競争併存しなければならないという、従来の独占的立場を脱しまして、新しい立場を今日は持ってきておるのでございまして、国鉄に対しましては、その経営健全化して、そうしてますます国鉄の使命である公共性を発揮していく基盤を強固にするという見地から見ましても、ただに利用者運賃を上げるということだけにのみ依存するということは、私個人の考えですが、なかなか困難だと思います。利用者旅客運賃あるいは貨物運賃というものも、おそらくは限度というものがあるんだろうということを考えて参りますると、ドイツなどの例を伺ってみましても、公共負担をやって割引をいたしておる分に対しては国家が補助をしてやるというようなことも伺っておりますので、かれこれあわせまして、もっと国家財政が日本国有鉄道というものの経営に対して深く関与するということが今後は必要の事態がくるんではないかというふうに考えておるのでございます。で、具体的にどうするかということにつきましては、まだ構想を持っておりませんけれども、今のままでこのままいけば、国鉄公共的立場からの公共負担というものをおのずから行ない得るような実力がだんだんと減っていくようになるんではなかろうか。これは日本国有鉄道のあり方としては考うべき事態であるようにも考えますので、今日直ちに、財政等の事情もありますので、しからばどのくらいの程度どういうふうに国家が関与する必要があるかという具体的の構想を私が申し上げることはきわめて不適当であると考えますが、考え方は、先ほど来申し上げました新しい考え方をもっていたしませんければ、国鉄の目的を達し、うちに省みては、経営健全化をはかるということはなかなか今後は至難な時代がくるんではなかろうかというふうに考えております次第でございます。国鉄総裁からは、また別に御希望、構想なりを開陳していただくことにいたします。
  71. 十河信二

    ○十河説明員 先ほど大臣からもたびたび御答弁がありましたが、国鉄は、輸送界においてかつて長い間独占時代が続いておったのであります。その独占時代には、国家があるいは強力な規制を加えて企業経営の自由を制約する必要があったかと思うのであります。今日でも多分に公共性がありますから、国家相当大きな監督をする必要があると思うのでありますが、あまりに今日は自主性が少ないじゃないか、独立採算制を強要する以上は、今お話のありましたように、もう少し自主性がないと非常にやりにくいんじゃないかということは、これは日本の国鉄だけでなく、世界の国鉄が一様にいっておるところであります。私どもももう少し自主性を与えてほしい、運賃お話が出ましたが、そういう意味において運賃でも、外国ではあるいは上と下と両方の制限を設けまして、その間は国鉄が自由にやってよろしいというふうな制度になっておるところもあります。それから投資にいたしましても、今日国鉄は、国鉄のレールの上だけしか投資ができないのであります。市場に向かっての手足は全部他人によっておるのです。独占時代ならばそれもけっこうであったのでありますが、今日は有力な競争相手があるから、自分の手足をもってやらないとどうも経営がうまくいかない、そういうふうな点もあるのであります。これらの点につきましては運輸大臣の任命せられた監査委員会から、また国会の決議によって設けられました諮問委員会等からも同様の、こういうふうにすべきじゃないかというふうな意見が出ておるような次第であります。もちろん急速にいろいろなことを改正するということはなかなか困難でありますから、漸次そういう方向に進めていきたい、そういうふうにさしていただきたいというふうに考えておる次第であります。
  72. 關谷勝利

    ○關谷委員 ただいまの大臣答弁を聞いておりますと、公共性の方へ比重をうんと置かれておりますために、国が関与をして財政援助をもっとやらなければならないというようなお話で、これも一つ考え方でありますが、これは大臣が言われておるようにいたしますと——独立採算と両立しないということに大臣ははっきりと割り切っておられるようでありますが、この形態の中でお尋ねをしたのですけれども、そういうふうなお考え大臣としては当然かとも思いますので、その程度にいたします。そこで総裁は独立採算の方に非常に重点を置いておるのでございます。ちょうど相反した御答弁になっておるのでありますが、これもまた経営者としては当然であろうと思いますが、総裁に私がお答えを願いたいと思いましたのは、こういうふうにして資金の面まで一々国に縛られてしまったのではどうにもならぬ、こうしてもらいたい、それから運賃も国会で一々こうやられたのではたまらぬ、というようなことが出るであろうかと思いましたが、そこらは遠慮しておられるようでありますので、ここで私も遠慮いたしましょう。  次に私は、こういうふうな運賃値上げ等をいたします際に、国鉄がもう少しPRに力を入れなければならぬというふうに考えます。この間原広報委員長あたりからだいぶ言われて、それでようやくやったのがどの程度でありますか、その程度も伺ってみたいと思いますが、もう少しPRに力を入れますと国民が納得をしてくれる、ただ国会相手にPRをやってみたり、それから駅に掲示をしたりするくらいのことでは、これはなかなか国民のPRにはなりません。これから先うんとこういうようなことに力を入れてもらいたい、私はこういうふうに考えておりますが、今度どの程度方法をやられましたか、簡単でかまいませんから、一つ述べていただきたい。
  73. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 運賃問題につきましてのPRが非常に不足しておるというお話はたびたび先生方から伺っておりました。私ども大へんしろうとで、こういう方面になれませんで、何をやりましても少し方角が違っておるようなことをやっておりますが、今度も多少時期が短かったようなこと等もございました。しかし、大体PRの方法といたしましては、まず何と申しましてもマスコミの一番の問題はテレビあるいはラジオ等の利用につきましても、積極的に各放送局あるいはテレビ局等にこちらからお話しし、また向こうの番組にも極力出席するという方法をとりましたし、また一般国民大衆相手に対するPRといたしましては、そういったマスコミのほかに、掲示あるいはパンフレット等を作りまして、たとえば都内などにおきましては、手で簡単に持てるようなきわめて小さい。パンフレットを作りまして、駅でもって現在の輸送力の現状あるいは今後の対策等につきましても詳しく述べたものを週一回ずつ国民にお配りするというような措置も講じました。また知識階級あるいはいろいろな世論の指導者、新聞社、雑誌社等につきましては、定期的に会合を持ちまして、国鉄の現状を御説明し、また今考えております第二次五カ年計画なりあるいは運賃値上げに至ったいろいろな経過につきましても詳しく御説明いたしておりました。しかしながらいずれにいたしましても非常にむずかしい問題でございまして、なかなか私ども力足らずして、十分に国民全体の御納得を得ることができなかったことは大へん遺憾でございますが、今後とも十分こういう方面には力を尽くして参りたいと考えております。
  74. 關谷勝利

    ○關谷委員 いろいろ御苦心をせられておるようでありまするが、この宣伝にはあまりけちけちしないように、少し思い切った宣伝をやられるように私は要望をいたします。かりに新聞等にいたしましても、一面全部くらい借り切って——一面でも二面でもいいですよ、それくらい紙面をさいて、そこで理由等も述べておこうし、それにそれぞれ地方地方によって違いますが、各支社管内で、あなたの方はこうなるという、あのできておったものを、その地方では大きく掲げてやるということになりますと、みんなそれを読んでなるほどというふうに納得ができるのではないかと思います。今度の場合はやむを得ないといたしましても、次の機会あたりには新聞等の利用をもう少し上手にやれば効果があるのではなかろうかと私は思いますので、この点要望をいたしておきます。  それから先ほど有田君も言っておられましたが、運賃値上げの際に合理化ということがいつも叫ばれております。この合理化をどういうふうにしておるかということで先ほど有田君が質問をしておられた。その際のお答えは、人員それから動力等をふやさないで事業量はこれだけふえてやっておるのだという、百六十二億か、これだけ合理化によって浮かしておるということでありましたが、国民が聞きたいのはそういうふうなことではないので、国鉄に対してはいろいろ疑惑を持っております。そういう疑惑の一掃できるような、今まで合理化はこういうふうにいたしましたということで、外郭団体の整理についてはどういうふうにしたということ、あるいは遊休資産というものもこんなに処分をして、それを財源に充てておるとか、あるいはガード下の料金徴収ということもこういうふうなことになる、あらゆる面でこれだけの努力をしてもう余地はありません。なお電化、ディーゼル化とか、駅の集約化というふうな合理化はもとよりでありますが、そういうこともやって、これから先合理化をやろうとすれば、いわゆる赤字線を廃止してみたり、公共負担という面を考えなければならぬ、そういうところへ目を向けなければならぬまでになっておるのだということを、これまたみんなが知りたがっておることなのでありますので、私はそういう点もあわせて十分PRをすべきものではなかろうかと考えておるのであります。これについても私いろいろ資料等を前に拝見したこともあるのでありますが、電化、ディーゼル化とかあるいは駅の集約とかいうことはここで御説明は要りませんが、今の外郭団体の関係とかあるいは遊休財産の処分とか、あるいはその賃貸料というふうなものについては大体こういうふうにやって、何年から何年までこの点についてやってもう合理化の余地はないのだということを、私ははっきり国民の前に示すべきだと思いまするが、その点をちょっとこの委員会を通じて示しておいていただきたいと思います。
  75. 兼松学

    ○兼松説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございましたような部外との関係につきましは私どもも逐年努力をいたしておりまして、過去御指摘をいただきました時点から考えますと、使用料その他雑収入も昨年度では三倍半になっておるわけでございます。さらに明年度はそういったものの処分で約二十億円の増加をはかりたいということも考えまして督励いたしているような次第でございます。昭和二十八年度に比べまして、三十五年度は三十一億円になっておるような雑収入の状況でございます。高架下の使用料金とか営業広告料というようなものは今回了解を得てできるだけ、上げられる限り上げたいということで準備をいたしておりまして、関係の方々の御理解を得るように努力いたしております。  なお懸案になっております高架下の整理等も管財組織を充実いたしまして、逐一直接の貸し借りに切りかえるというようなこともいたして参りまして、なお時期的には非常に短い期間にたくさんの値上げをいたしますために問題があって、不払い同盟とかあるいは訴訟にかかっておるものもございますけれども、これらも私どもといたしましてはできるだけ御納得をいただきまして、合理化の線に御協力を願うようにいたしておる次第でございます。  なお大臣から御説明のございました通り運賃値上げ等によって下請の手数料等が不当利得にならないようにというような点につきましても、私どもの方としては率を改定するという方針で目下準備いたしておるような次第でございます。  なおそのほかの資材の購入の単価を引き下げるということにも努力しておりますし、その他私どもとしては、現在ございます一切のものについて、今後ごく短い期間にできるだけ強く、一そうの管理の充実をはかって、あらゆる合理化の手が打ち切れるように、皆さんの御納得がいただけるように努力したいと考えております。
  76. 關谷勝利

    ○關谷委員 合理化の点ではますます能率といいますか、効果を上げるようにしていただきたいと思います。  それから今度の運賃値上げで、私たちは定期運賃が世界各国に比較しても破格に安いということで、これをこの機会に是正するであろうと予期いたしておりましたのに、これはそのまま据え置いたということになっております。これあたりも先ほどから私が繰り返して言うように、PRを十分やれば納得してもらえる問題だと思うのであります。この点先ほど答弁がありましたのでお答えをいただこうとは思いませんが、もう少しよく一般に理解してもらうようにして、次の機会には私は必ず是正すべきものだと考えておりますので、この点だけははっきり申し上げておきたいと思います。これが国鉄経営のガンと言ってもいいくらいなものでありますから、この点をよく納得をさせて、次の運賃改定の際には当然ここにも手をつけるべきだと考えております。  次に海運との関係でありますが、これは非常にむずかしいところでありまして、昔海陸運賃の調整というようなことが非常に問題になった時期もあったのでありますけれども、遠距離逓減とか、不当に安い運賃がそのまま据え置かれるというようなことがありますために、海運関係が非常に打撃を受けております。日本の海運界は鉄道運賃に押えられて、今ではどうにもならないというような状態で、もともと海上輸送をされておりました物資が陸へ上がってきておるというようなことも、私は非常に昔と変わった現象だと考えておるのでございます。こういうふうな海陸の調整という面でいきますと、運賃値上げをするよりほかにないということになるかもしれませんが、輸送の錯綜する面につきましては、海運との調節を何とか考えなければならぬ部面があると思う。そういう点どういうふうに考えておられますか、簡単でけっこうですから伺っておきたいと思います。
  77. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの私どもの方の運賃と海運の運賃との問題でございますが、確かにお説の通り、北海道から東京付近に運びますものにつきまして、私ども運賃が不当に安いために、当然海で運ばれるべきものが鉄道にくる現象がございます。この点につきましては、実は昭和三十二年の運賃改正のときに、当委員会の御了承を得まして、八百キロ以上のものにつきまして遠距離運賃の是正をいたしました。今回は五百キロから八百キロまでの中距離でありますが、それらについて一部是正するというふうに、徐々に遠距離運賃合理化するという方向に進んでいきたいと考えております。  もう一つ実際の問題といたしましては、荷主がとかく鉄道にたよりがちだ、これは取引単位の関係等の問題がございますが、当然海で送られるものを鉄道で送ってこられる。昨年秋、非常に輸送が輻湊いたしましたときに、北海道の地方輸送連絡協議会を作りまして、関係官庁、関係の荷主にお集まりいただきまして、極力鉄道から海の方に輸送を流すという方策などとりまして、具体的に海陸の輸送の調整をやったこともございます。やはり根本問題としては、運賃問題として将来徐徐に遠距離逓減を修正して参りたいという方向考えております。
  78. 關谷勝利

    ○關谷委員 もう一つ、これは合理化の一環としてお尋ねをしておきたいのでありますが、以前に私、委員会で御質問申し上げて、そしてなるべく近い機会にその結論を示してもらいたいということを言っておったのですがそのままになっております。幹線の航路は別であります。青函連絡とか宇野−高松の連絡、仁方−堀江というものは別でありますが、あの宮島−宮島口とかあるいは下関−門司というふうなところは、国鉄関係の利用者はきわめてまれなのであって、あれを民間に払い下げるということになると、民間も非常に助かるし、そして利用者が非常によくなるというのですが、あの航路の整理と申しますか、合理化についてはその後どのくらい進んでおりますか。下関−門司の関係あたりはずいぶん損をしておるはずであります。これを民間に渡して民間で会社経営をいたしますと、今までやっている経営とあわせて非常に能率的になって、利用者も喜ぶ、しかも国鉄赤字は年々何千万か消していける、こういうことでありますが、これは今どういうふうになっておりますか。
  79. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 以前、關谷先生からそういうお話のあったことを記憶しております。現在私どもの方でやっております小さい航路は、全部で四カ所、三十四年度における四カ所の赤字の合計が一億三千万円程度でございます。このうち今御指摘の関門航路につきましては、七千五百万円くらいの赤を三十四年度に出した。これらの航路の今後の対策をいかにすべきかということにつきましては、根本方針といたしまして、ただいま先生のお話のように幹線航路はこれは国鉄でやるが、ローカルな航路につきましては極力民間移譲等も考えるべきだという御意見もございます。いろいろ考えておりますが、やはり何と申しましても多数の職員が勤務しておりますし、ことに船舶関係の職員は、ほかに転職が実は非常にむずかしいというようなこともございますし、またこれらの船が御承知通り石炭だきの非常に古い船でございまして、船としての寿命があまりないというような点もございますので、将来、ことに今お話の関門につきましては、労働問題等とも関連いたしまして、具体的な問題として取り上げて参りたいと考えております。  それから大島航路、宮島航路につきましては、ことに宮島航路につきましては、宮島まで非常に多数の団体客が参ります。その団体客等がほとんど宮島の向こう側に渡りまして神社に参拝いたしますので、これは鉄道の団体客と一貫輸送するという意味で、やはり私どもの船でやった方がいいんじゃないかという考え方も持っております。大島航路も、大島の島の中は全部国鉄自動車でやっておりますので、やはり国鉄との連絡という意味から申しまして、私どもの船でやるというようなことになりますと、結局今お話の関門航路、あるいは仁堀航路等が問題になります。いろいろな点を考慮いたしまして、一応の結論をなるべく早く出したいというふうに考えております。
  80. 關谷勝利

    ○關谷委員 関門のことを申しましたが、仁堀は四国と中国との連絡で、これは置いておいてもらいませんことには大へんなことになります。幹線は別としてと言うておりますので、この点は、廃止する中へ入れてもらったのでは大へんなことになります。  それからもう一つ、私は経営の面でお尋ねを申し上げたいのでありますが、具体的な例をあげますると四国の関係であります。矢山支社長が行って以来、熱心にあらゆる創意工夫をこらして、四国の赤字をなくすにはどうしたらいいかということでやって、結局この赤字がなくなるというような段階に到達しておるか、ことしからそういう結果が出てくるかというようなことに——二、三十億の赤字というものがなくなるというふうになったと思います。そういうふうに、あの一番不便な四国の鉄道、一番閑散なところを預かって、それでも創意工夫をいたしますると赤字がなくなるということであります。私はほかの支社でももう少し創意工夫を—— あの支社長あたりがみんな出ていって、そして地方民と一緒に泊まり込んででも、自分の家へ一週間も十日もぶっ通しで帰らずに、その方面へ出ていって、いろいろ実情を調査してやるというあの熱心さから生まれたのがこの結果だろうと思います。もちろん頭のよさもあるのでしょうが、そういったふうなことで、あの四国で赤字が年々二十億、三十億とあったのがなくなるというふうになるのでありますから、私はよその支社でも、創意工夫をすればもう少し業績を上げることができるのではないか、こういうふうな気がするのでありますが、これについて、なぜ四国はそういうふうになるのか、ほかは四国と同じような状態のところを——もう少し私は検討もしてみたいと思いますが、ほかは四国以上に能率が上げられるのではないかと思います。それに赤字を出しておるところがあるのではないかというふうにも思いますが、少し創意工夫が足らないのではなかろうか。いわゆる国鉄というところは商売人の悪いところと役人の悪いところばかりをかき集めた国鉄になっておるというふうなことをよくいわれるのでありますが、そういうふうなほんとうの、商魂たくましくやるというふうな——まあ悪いことをしろというのではありませんが、相当創意工夫をこらして、運賃値上げ等にたよらず、もっと能率が上げ得られるのではなかろうかというふうな気がするのであります。ほかの管内と比較して四国があれだけまでにいった。そのようにほかの支社でもみんなやらしたならばいけるんじゃないか、あれをモデルにしてやっていけるんじゃないかというように考えられるのでありますが、これはどんなに考えられますか。
  81. 十河信二

    ○十河説明員 四国の場合の例をおとりになってのお話は、しごくごもっともだと存じます。従来は、他の地区から見ますと、四国の方がかえって非常におくれていた。そこで矢山支社長の努力と相待って、非常に顕著な効果が現われてきたというのが事実じゃないかと思います。もう一つは、四国は御承知のようにああいう離れ島で、いろいろな施策をやるのに非常に都合がよかった。そこで四国をモデル・ケースにいたしまして、他の地方も四国同様に合理化の成績を上げるようにということで、今しきりに鞭撻してやらせております。たとえば関西線におきましても、関西線のある間で十数億円の赤字を出しております。これも四国のモデル・ケースにならいまして、とりあえず湊町と奈良間を四国同様にディーゼル化いたしまして、そうして列車回数をうんと増し、貨物駅を集約いたしまして、あすこも今四国と似たような成績を上げつつあるような状態であります。他の地方にも漸次そういうふうに及ぼして、でき得る限り合理化をやって——われわれの合理化はまだまだ非常に足りない、もっともっと合理化すべきであるという御説は、私どもそういうふうに感じております。部下を鞭撻してせっかく努力いたしておるところであります。
  82. 關谷勝利

    ○關谷委員 それから今度運賃値上げの際に、一等の運賃を一・六六六倍ですか、通行税を含めて二倍というふうなことにしましたが、私はこの考え方はどうもおかしいという気がするのであります。飛行機との関係があるとかいろいろなことを言われますけれども、飛行機の輸送量というのは限度のあるものだし、ことにだれもかれも飛行機に乗るのではないので、飛行機というものに対して、一つの、何と申しますか、危険だというふうな感じを持っておる人もたくさんあったりいたしますので、私はそれをあまり気にする必要はないのじゃなかろうかというようなことで、この際二等の運賃はあの通り上がったが、この一等の運賃はこういうふうなことで安くなるというふうなことは、これは不合理なような気がするのでありますが、これはどうですかね、前の二・四倍というのは別に無理ではなかった、あのままがよかったんじゃないかというふうな気がいたしますが、これはどんなに感じられますか。
  83. 岡本悟

    ○岡本政府委員 確かに御説の通りに、一等の倍率をどうすべきかということにつきましては、運輸省といたしましても、国鉄側の申請案につきましていろいろ検討を加えたわけでございますが、しかしよく考えてみますと、あるいは国鉄側の説明を聞いてみますと、一等の旅客は絶対数がだんだん減って参っております。この原因につきましては、後ほど国鉄当局から御説明させたいと思いますけれども、やはり航空運賃との関係がある、これは否定できないだろうと思います。それからもう一つは、比較的に見まして、最近一等旅客に対するサービスと二等旅客に対するサービスというものが、質的に見ましてだんだん、特に車両関係におきましては接近してきておるというふうなことも、事実であろうかと思います。そういうことで、必ずしも一等を利用しなくとも、二等で十分だというふうになってきつつあるんじゃないかという感じも持っております。従って、運賃制度調査会あたりの意見もさようであったかと記憶いたしておりますが、むしろ将来の方向といたしましては、いわゆるモノクラスといいますか単一等級制度にすべきであって、多少の質的なサービスの違いによる負担の公平につきましては料金制度で調整をとる、こういう方向に進めていくのが筋ではないかというふうに考えましたので、先ほど仰せのような一・六六六倍、通行税を含めまして二倍という倍率にいたしたわけでございます。詳細はまた国鉄の方から御説明させます。
  84. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私の方から補足的に御説明申し上げます。  現在の一等旅客昭和二十八年ごろに比較いたしますとお客さんの数が約三割くらい実は減っております。この減りました一番大きな原因は、何と申しましても二等の設備がよくなった。必ずしも一等に乗らなくてもいいということが一つ、もう一つは、何といっても二等の二・四倍という非常に高い運賃ということでございます。今回一等をあまり上げないということは、飛行機との対抗よりもむしろ私どもの一等客をふやしたいという気持でございます。最近ちょっと一等客がふえておりますのは、これは詳細に調べましたところが、初めに二等の切符を買いまして、あとから一等に乗りかえるというお客さんが実は非常に多いのでございます。これらは結局突き詰めて申しますと、本来ならば二等で旅行する、たとえば女の方とか老人、子供とか、そういった方々が、非常に二等の輸送力がない、二等が込んでいるためにやむを得ず一等に乗りかえるというケースが非常に多いというふうに見るべきだと思います。従いましてこれからの一等の利用者というものは、いわゆる世の中の高級旅客というよりも、むしろ大衆旅客の中で特に今の二等ではとても込んでいてかなわぬという方々が利用されるという面が非常に強くなってきていると思います。従いまして、一等の運賃をあまり上げないことによりまして、簡単に一等に乗っていただくということができるようにいたしたいというふうに考えたわけでございます。それから昨年やはり当委員会で御承認を得ました昔の一等をやめました趣旨も、実は今鉄監局長が申されましたように、将来、現在の二等の輸送力がふえて参りまして、二等に楽に乗れるようになりました暁には、一等という制度をやめたい、単独等級にする一つ前提として、昨年当時の一等をやめさせていただいたわけでありますが、いずれ今度の五カ年計画でもでき上がったころは、二等の輸送力相当つきますので、そのころには一等を廃止いたしまして、ただ車の料金の差だけでもっていきたい。結局運賃は一本にしていくというのが新しい鉄道のあり方ではないかというふうに考えます。従いまして先生の御指摘通り、二等の方を上げて一等を下げるというのは非常におかしいじゃないかという御疑問も私どもよくわかるのでありますが、むしろ現在の一等の利用者は、決してぜいたくな方々ではなくて、二等でいいのだが、二等は込んでしようがないからやむを得ず一等に乗るのだという方々が非常に多いために、それらの方々に利用していただきやすいようにするために下げたのだ、こういうふうに私ども考えているわけでございまして、飛行機と競争する意味で下げるということは、付帯的にはそういうことになりますが、それは二の次であります。将来一等というものは廃止するという前提考えたわけでございます。
  85. 關谷勝利

    ○關谷委員 動力車のストは避けるのは避け得ましたが、このストの背景というものに、近代化への根強い不安ということが新聞に出ておるのでありますけれども、この近代化はもちろん運賃問題等にも重大な影響があります。国鉄経営から申しましてより近代化をしなければならないのでありますが、その際に根強い不安があるというようなことが新聞に取り上げられるようなことは私はおかしいと思うのであります。これは動力車の労組あたりとの話し合いというものが十分に徹底しておらないためにこういうことが新聞に出るのではないかというふうな気がするのでありますが、これはどういうふうになっておるのですか。よく徹底させて不安がないようにしておけばああいうふうな事態は起こらぬのではないかというような気がいたしますが、この点について、私は十分事情がわかりませんので、どういうふうになっておるのか、一つ説明願いたいと思います。
  86. 中村卓

    ○中村説明員 動力車のストの問題につきましては先生方にもいろいろと御心配をおかけいたし、なおまたるる問題が紛糾いたしまして列車の運行にも影響を及ぼすようなことがありましたことも、ただいま御指摘ありましたように新聞に出ておりまして、われわれとしては非常に遺憾に思っておるわけであります。動力車の組合員が自分たちの将来に非常に不安を持っておるということにつきましては、私どもといたしましては、いわゆる動力の近代化ということが一応国鉄の基本的な方針となっておりまして、これによりまして特に動力車乗務員の関係につきましては、将来配置転換、再教育というような問題が起こってくるということは十分承知をいたしております。連中にも詳細にそのプランを説明してございます。それにいたしましても、一方、要員対策委員会の方で、四十年以降一万五千人ずつ首切りをするというような答申も出ておりますので、両方からめまして非常に不安にかられている。ただわれわれとしてその問題について特に考えなければいけないのは、将来列車が五カ年計画の進捗に伴いまして非常にふえて参ります。そういたしますと、どうしても動力車の乗務員というのは、蒸気機関車から電車、あるいは電気機関車、ディーゼル機関車というふうに車種は変わるかもしれませんが、乗務員の数はどんどんふえていくわけであります。従いまして絶対にそういう連中が首を切られるということはあり得ないので、そのために配置転換、再教育というのは、いいかげん年をとった組合員にとってはなかなか大へんなことだろうと思いますが、自分たちの職場が技術の進歩に伴いまして、国鉄近代化によって新しい技術を取り入れてどんどん発展していくということは十分彼らも承知しているはずでありまして、どうもわれわれにはこの間の、この闘争を組んだ理由が十分納得ができなかったのであります。
  87. 關谷勝利

    ○關谷委員 先ほど有田君も触れておったようでありますが、合理化というと、すぐ赤字路線の廃止ということが口に出されるのであります。私は委員のメンバーの選定方法というふうなものも、委員の顔ぶれを見ますと、あれは委員族というのかもしれませんが、いつも同じ顔ぶればかりが出ております。そんな関係で、ああいうふうな赤字路線を廃止せよということが出るのだろうと思います。都会にいて、自家用車を乗り回して、鉄道を利用しようと思えば、電車、バス何でも利用できる環境に恵まれたところにおる人間が、赤字路線を廃止しろ、新線建設はこれを見合わせいというようなことを言うのでありますが、これは少しいなかの事情に通じた、もう少し気のきいた人間と入れかえたらどうですか。どうも国鉄や運輸省が選びまする委員の顔ぶれというものは、同じ顔ぶればかり寄せて検討いたしますために、いなかのことあたりは一つもわからないような人間が多いのです。道路といえばどこでも舗装道路であるかのように考えたり、どこでも鉄道、バスというようなものがどんどん走っておるというふうなことのように考えて、そこから出てくる話なんで、われわれ四国のいなかにおりますと、鉄道循環線すらまだないのであります。そういうふうな循環線を早くやり上げて、それによって資源の開発もやろうし、交通も便利にしなければならぬというふうに考えておるのでありますが、新線建設をやったら赤字になるのだから、新線建設は見合わせろとか、あるいは赤字路線は廃止しろというふうなことを言う人間は、もうこれからは委員に任命しないようにしてもらいたいと思います。こういうふうな委員の選定というようなことについてちょっと考えてみられたことがありますか。私はもう少し全国の事情のわかった——あの人らは恵まれたところにおって、何にもいなかの事情を知らないでああいうことを言っておるのでありますが、それにまた国鉄が何やら自分の方は独立採算からいって少しでも損をしないようにということでそれに便乗しておるというようなことであります。経営委員会でありますか、何かそこらにもそういうふうな人がおるらしいのですが、そんな人は一つのけていただきたい。全国の事情に通じた人を選んでもらいたいというふうに思いまするが、この辺の選定方式等についてこれから改めていこうというふうな御意思がありますかどうか伺っておきたいと思います。
  88. 岡本悟

    ○岡本政府委員 今の先生のお話には全く同感でございます。運輸省関係におきまして、特に委員の選定につきましては今後十分留意していきたいと考えております。ただ国鉄におきましては、従来仰せのような傾向がございますので、今後そういうふうに地方交通機関に恵まれない人たちの意見も十分反映するような委員の選定方をやるように指導いたしていきたいと考えております。
  89. 關谷勝利

    ○關谷委員 それからこれも運賃値上げに関連いたしまするし、先ほどの総裁の御答弁にもあったのでありますが、国鉄が投資ができるようにしたいというふうなこと、これは私はそうであろうと思います。手足になるようなものに対しましては投資をしたいというふうなことでありまするし、なおまた民衆駅あたり、これは投資ではありませんが、やはり土地を貸すというふうなことになるわけでありましょうけれども、いろいろやらなければならぬことがあると思いますが、民衆駅あたりではどういうふうな基準であれは許可をするようにしておるのか、簡単に御説明願っていいのでありますが、その許可条件がどんなものであるか、また民衆駅を作ると、作る以前よりはどの程度利用者がふえて、そうして鉄道の方の収益が、これはもちろん数字的にはっきりというのではありません、大体何割程度ふえるかというような見当でいいと思いますが、そういうふうなことも伺ってみたいと思います。  それと、投資をしたいと先ほど総裁も言われたのでありますが、どういうふうな方面へ投資をしたいのか、これも簡単にこういう点だという羅列しただけでけっこうであります。われわれ委員会といたしましても、以前に投資ができるということにしようといたしましたのを私たちが削ったことがありますが、そういうふうな関係から一応考え直さなければならぬのではないかというふうにも思われるので、そういうふうな点、どういうふうなところへ投資したいのか、それをやったらどういうふうに能率が上がるのか、民衆駅を設置する条件並びに設置した場合にどれほど利用者がふえて、どれほど鉄道の収益が上がるのか、今までの平均といいますか、概略でけっこうでありますが、これから先民衆駅を作っていくような関係もありましょうから、伺っておきたいと思います。
  90. 十河信二

    ○十河説明員 先ほど私から申し上げました投資の理由というか、最もわれわれの望んでおりますところは、先ほど答弁にもちょっと申し上げましたが、鉄道はレールのかかっておるところだけしか投資ができない。市場に出ていって手足を伸ばして活動するということが今日できていないのであります。それから世界各国の例を見ましても、自己資本でそういう機関を持っておる国もあります。また一部分投資をして、その投資を通じて支配しておる機関を持っておる国もあります。そういうふうに、今日は独占時代ではないのでありますから、競争しなければならぬのでございますが、市場に向かってもう少しわれわれが手を伸ばすことができるようにしないと、どうも思うように収入が上がらない。収入が上がらないというだけでなく、国民経済にとって最も安く、最も能率よく、サービスよく輸送をするということを実現するのに困難じゃないかと思うのであります。それでそういうところに最もわれわれは投資をしたいということを考えておるのであります。民衆駅は投資でありませんが、今日のたとえば新宿にいたしましても、地下鉄と西武と小田急と京王帝都、これだけがあの駅に集まってくるのであります。あの駅はこれらの諸鉄道会社と国鉄が共同で投資をしてあそこに駅を作る。新宿の駅というようなものはそういうふうな方法によってやった方がいいんじゃないかとも思われるのであります。ところが、今日はそういう自由がないために、民衆駅という形でやっているのであります。民衆駅は、都市計画上どうしても駅を作り直さなければならぬとか、戦災で非常に破壊されたが、国鉄はその地方の要望に応ずるような十分な施設ができないというふうなことのために、国鉄は自分の必要なところだけを金を出して作りまして、そのほかの部分は、高い土地を十分に利用するために、旅客公衆の便益になるような施設をその土地を利用して建てるという趣旨で民衆駅をやらしておるのでありまして、その民衆駅をやったためにどういうふうな利益がどれだけあったかということは、担当者からお答えいたさせます。
  91. 兼松学

    ○兼松説明員 民衆駅のことでちょっと補足して申し上げます。  民衆駅は、本則ではございませんのですが、ただいま総裁が申し上げましたように、戦災で老朽したような駅であるとか、狭隘になった駅で国鉄としてはもう建てかえなければならない時期に達しているような駅、あるいは拡張を要する駅でございまして、しかも国鉄としては直接駅に投資するほどお金に余裕がございませんので、輸送施設を重点にしたいということで、その地方において信用、資力の十分ある民間の方で、しかも国鉄の民衆駅に対する条件を十分のんでいただけるという場合に限りまして、民衆駅委員会にお諮りをいたしまして、慎重に審議の上で承認するということにいたしております。  民衆駅の承認の実際の形は大体二色ございまして、地方では大体公共団体等がやられる場合でございます。これらに対します条件は、国鉄がほんとうに直接使う分だけを支弁いたしまして、旅客公衆の部分、いわゆるホールとか、そういうようなところは、民衆駅を作る方に負担していただいて、寄付をしていただいて、その上で建物の用地の使用料を払っていただくというような形になっております。それから場所によりまして、もう少し繁華なところ、東京の近郊のようなところで、国鉄の使用する部分が比較的少ないようなものは、全額御寄付をいただいておるものもございます。そういうようなところでは、国鉄が自分の投資をしないで地方の施設が拡充できまして、しかもその土地からは財産の収入をいただけるというようなことになりますので、そういう意味で、私どもの方としては限定された範囲で承認をいたしております。現在までにすでに建てられましたものが二十六駅ございます。それから建設中のものが四駅ございます。今後もいろいろまだ話は出てくると思うのでございますが、委員会にかけて十分審査してやっていただくことになっております。国鉄としては、申し上げましたように、土地使用料というものが一定の率でいただけることになりますので、その分だけは財産が有利に運用されているという姿になる面もございます。
  92. 關谷勝利

    ○關谷委員 先ほどお尋ねしました、投資をするようにしたいという総裁のお話があったのですが、どういう業種といいますか、どういうものに投資されるのか、その投資の対象になるようなものをちょっと並べていただきたい。
  93. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 まだ正式に私の方できめた意見ではございませんので、そのつもりで申し上げますけれども、たとえば通運業であるとか倉庫業、それからただいまの民衆駅の問題、それから今後港湾地帯に臨港鉄道等が非常にたくさんできる、たとえば県営あるいは私営等の臨港鉄道、それらにももしできれば資本参加をいたしまして、国鉄との一貫輸送考えるということも必要かと存じます。  それから乗車券の代売をやっております業者が今いろいろございますが、これらにつきましても、今後バスが非常に発展して参ります、そうすると鉄道とバスとの客の取り合いになるというような場合に、やはり資本参加によってコントロールするということも考えなければいけない。とりあえず今考えられますのはその程度のことでございます。たとえば航空事業とかなんとかいうことはとてもまだ考えられませんが、先ほど総裁が申しましたレールから出て、しかもレールの培養になるような仕事について将来考えていくべきではないかというふうに考えております。
  94. 關谷勝利

    ○關谷委員 今度の運賃値上げというものは、私は五カ年計画の立場その他から考えましてやむを得ないとは思いますが、運賃値上げするだけでサービスは一向向上しないというようなことのないように、さらに一日も早く楽に乗れる汽車にしていただきたい、これが国民の要望であろうと思いますので、一日も早くそういうふうな事態が現出するように皆さん方の御努力をお願いいたしまして、私の質問を打ち切ります。
  95. 三池信

    ○三池委員長 次会は明十六日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十三分散会