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鈴木強君 私は
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
昭和三十五年度
予算補正二案に対し反対をいたします。
以下反対理由を逐次申し述べることにいたします。
その第一は、補正
財源と減税措置についてであります。収府は補正
財源として千五百七十二億円の租税の増収を計上し、それより
所得税減税分五十人億円を除いた千五百十四億円を計上しておりますが、伺知の
通り、三十五年度当初
予算において二千百五十四億円という税の自然増収を見込んだのでありますが、当時伊勢湾台風の災害復旧費、治山冷水事業の緊急実施のため減税はできないと説明されておるのであります。しかるところ、今回こつ然として千五百億円の自然増収を出して参り、
政府が
予算委員会に提出した資料によっても今回歳入補正を行なわなかった揮発油税で八十億円、専売収入で五十億円の余裕
財源がまだあることが明らかにされております。このほか補正された各税目につき私が詳細に
検討してみました
結論としては、今回補正増のほか、なお最低六百億円以上の自然増収が出ることが確保だと思います。従って、当初からの対三十四年度当初比租税等の自然増収額は実に四千四百億円に上るのであります。佐藤前大蔵
大臣が本年度は減税ができんと口実にされた伊勢湾台風の復旧費は、高潮
対策や緊急治山冷水事業を含めて約七百億円でありまして、本年度
予算外の自然増収額は実にその三倍であります。そこで、私はなぜそのような歳入
予算の誤算が生じたかを問題にせざるを得ません。
政府はそれはまず
予算編成後
日本経済の
発展が意外に大きかったせいに期するかもしれません。私もかかる要素があることは率直に認めますが、本年三月十日は本
予算委員会で高木慶大教授があの時点において、かつ
政府の
経済予測に基づいて、三十五年度の租税の自然増収は二千百億円ではなく、三千数百億円に達するであろうということを確言されております。そして減税は三十六年度にできるとかできないという
論議ではなしに、三十五年度でやるべきであると公述されたことを想起するのであります。私は納税
国民の名において、このようなずさんな歳入の見通しをやった
政府当局を信頼することはできません。今回の補正における歳入の見積もりも
国民を愚弄するものだと言いたいのであります。この問題は本年度の税収が幾らになるかの当てごとではありません。わが党はこの事実に基づき
政府の減税
計画の根本的修正を
要求するものであります。
政府は今回の補正と関連して、明年一月以降の
所得税の臨時特例法案を提出しておりますが、これはとりもなおさず、
昭和三十六年度のいわゆる千億減税の
国会承認を求めているものであります。ところで、この減税案の骨子となっております税制調査会の答申は、本年度四千四百億円からの自然増収のあることを大蔵当月より示された上で作定されたものでありましょうが。税制調査会の基本的
態度は、
国民の租税負担は国税、
地方税を合わせ、当初
予算の二〇・五%より二〇%にまで引き下ぐべきであるというのであります。本年度の国税の自然増収等を四千四百億円とし、
地方税の自然増収も五、六百億円と見れば、
国民の租税負担率は逆に対
国民所得で二二%に達するかと思います。そうなりますと、税制調査会の減税答申は、全く
考え直さなければならない。さらに調査会の減税案ですら過大であるとして、これを削減縮小した
政府原案は全く不当であります。私は
国民の租税負担の程度、従来の減税の経緯からかんがみまして、
要請さるべき減税の内容は、決して
所得税や法人税の軽減にとどめるべきではなく、これまで直接税軽減の犠牲となった各種消費税、流通税等、間接税の軽減を断行すべき時期に来ていると確信するものであります。さらに減税の均衡というか、納税力なき階層への減税という意味で
生活保護費、医療扶助、児童保護、母子手当、失業給付、社会保障費の
引き上げが当然考慮されなければならんと信じます。
次に、歳出面について申し上げます。今回の補正は、
財政法の規定します補正
予算提出の要件をかなりはずれた経費を含んでおります。歳出の内容を分解すれば、大体四つの部分からなっておりますが、第一の
予算作成後に新たに発生した必要経費、第二の国の義務費負担金の不足に基づくものはこれは問題はありません。問題があるのは、第三の
財源の余裕と見合って計上されている経費と、第四の補正
財源の構成いかんによって動く
地方交付金であります。この第三に属するものが補正額千五百十四億円の約半分と見られるのでありますが、その中には中学校佼舎増設費のような、本来は当初
予算のときから想定されていた経費が
要求されており、また、過年度災害の補正増、伊勢湾高潮
対策費の増等も、本来は当初
予算編成の
方針の欠陥に基づくものでありまして、そのとき勝負の
政府の無為無策をまざまざと示しており、
財政法違反と言わなければなりません。
以上の観点に立ってさらに費目別に反対理由を述べたいと思います。まず、公務員の給与改善費でありますが、御
承知の
通り公務員諸君は現在不当にも団体交渉権、ストライキ権を奪われておりまして、人事院勧告はスト権にかわる唯一無二のものとなっております。しかるに、制度発足以来今日まで人事院勧告が完全に実施されたことはほとんどなく、われわれの大いに不満としておるところであります。
政府は口には人事院御告の尊重を唱えながら、六年振りにやつとこさ出された今回の勧告についても、これが完全実施をさぼったことは断じて許すことのできないところであります。これでは労使間の正常化は望めず、わが国
行政水準の
引き上げと、円満なる運営は期待できません。まことに遺憾のきわみと言わなければなりません。
政府は
財源がないと言っておりますが、ただいま指摘をいたしましたように、本年度内においてなお余裕
財源を温存しておきながら、賃金
引き上げの実施期日を一方的に十月一日よりとしておるのでありますが、なぜ勧告
通り五月一日より実施しないのか理解に苦しみ、何としても
納得のできないところであります。わが党は五月一日の実施をここに強く
要求するものであります。
また、給与
引き上げの内容を見まするときに、
引き上げ率平均一二・四%はあまりにも少なく、さらに最低最高の倍率ははなはだしく較差が大きく、
国会の修正によって最低八百円が九百円に
引き上げられたものの、課長補佐級の一五%、課長級の二一%、局長級の三一%、
総理大臣の二十五万円、七〇%の
引き上げ率に比して問題にならないのでありまして、公正妥当なものとは言えません。下級者の
引き上げ率はわずか一一%で、
物価事情、社会事情を無視したあまりにも低過ぎるものでありますから、私は下級者の
引き上げ率の手直しを強く
要求し、その
財源は十分あることを指摘するものであります。また、今回の給与改訂の
予算では、公企体
関係職員の給与改善費を全然見ておらないのでありますが、これら職員の給与
水準はその特性を無視されて、今日まで一般職の公務員とほぼ同等に置かれておりますことは遺憾であります。しかるところ、さきに平均わずか四%、八百円余の仲裁裁定がなされたことに藉口し、一般職の公務員より有利となっているという理由から、現実には今回の公務員一二・四%の
引き上げによって明らかに不利となり、低位に置かれていることを無視して、何らの
予算措置も行なわなかったことははなはだ不満であります。公企体職員はおそらく実力をもって待遇上の不均衡を是正させるでありましょうが、その際無用の紛争を来たすとすれば、その責任はあげて
政府にあることを警告しておきます。
次は、社会保障費の追加についてであります。これは総額百一億円でありますが、その九九%までが前年度の不足精算金、給与改訂に伴う当然増でありまして、低
所得者のための費用は、失対労務者の年度末手当一億一千三百万円、
生活保護家庭、及び保護児童の年末手当八千五百万円合計一億九千八百万円にすぎぬという驚くべきものであります。
生活扶助者百四十五万人、保護児童七十三万人、失対労務者二十万人に対するものではたった一人当たり平均八十数円にしかなりません。
池田内閣は発足当時、社会保障優先を唱え、
明年度予算では一千億円を社会保障への増額に向けるなどの構想もあったようであります。その後日を追って社会保障優先の声は細くなり、三本の柱のうち最も影の薄い柱になろうとしております。これではわが国の社会保障の
水準はどうなっていくか、
国民とともに憂えるものであります。厚生白井の指摘するごとく、企画庁案の
倍増計画が完全に実現されたとしても、
昭和四十五年度に至りまして振替支出の
水準は現在の西欧の最低
水準に達せず、社会保障に関するILO条約を批准し得るためには、
昭和四十五年度に予想される一兆五千億円にさらに五千億円を追加しなければならぬとされているのであります。いな、そのような遠い先のことはともかく、現行の
生活保護
水準の非人間的低劣性、特に結核入院患者に与えられる保護
水準は
日本国憲法第二十五条に反するという先般の朝日判決に見られるごとく、まことに血も涙もない冷酷無慈悲なものであり、全
国民はあぜんとしているのであります。現行基準によりますと、一年に一足のたび、一枚のパンツ、二年に一着のはだ着等々というのが結核公費入院者に許される保護
水準なのであります。このような
状態が現に
日本国中に存在しており、被保護者、ボーダー・ラインの家庭を含めれば、二千万人を下らないと見られております。これらの気の毒な
国民の救済は焦眉の急務であり、わが党は
生活保護基準の抜本的
引き上げを行なって、
政治がこの人
たちの上にあたたかい手を差し伸べるよう強く
要求するものであります。
その他、産業投資特別会計への繰入金百四十五億円、災害
関係費等についても多くの
意見がありますが時間の
関係で省略いたします。
以上述べて参りましたように、本
予算補正は、きわめて不十分かつお粗末なものであります。従いまして、わが党は衆議院
段階において二千四百五十億円に上る組みかえ案を提出し、給与改訂の五月一日実施、上厚下薄の抜本的改訂、年末手当〇・五ヵ月分の増額、石炭産業合理化に伴う炭鉱離職者
対策、アメリカのドル防衛に伴う駐留軍離職者の就労
対策、
生活保護基準の
引き上げ、中小企業への年末金融の大幅増額等々を強く
要求したのでありますが、
自民党と
政府は、数の力をもって、天の声、地の叫びであるわが党の
要求を否決してしまったことは、まことに遺憾にたえません。本院は衆議院における愚を再び繰り返すことなく、満場の諸君がわが党の
要求に賛成されるよう、ここに厳粛に強く強く期待して、私の反対討論を終わります。(拍手)