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1960-12-19 第37回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年十二月十九日(月曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————   委員の異動 十二月十五日委員永末英一辞任につ き、その補欠として基政七君を議長に おいて指名した。 本日委員岩間正男辞任につき、その 補欠として須藤五郎君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事            梶原 茂嘉君            中野 文門君            平島 敏夫君            米田 正文君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            小林 英三君            小柳 牧衞君            小山邦太郎君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            西田 信一君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            山本  杉君            湯澤三千男君            荒木正三郎君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            基  政七君            小平 芳平君            辻  政信君            森 八三一君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 古井 喜實君    農 林 大 臣 周東 英雄君    通商産業大臣  椎名悦三郎君    運 輸 大 臣 木暮武太夫君    郵 政 大 臣 小金 義照君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 池田正之輔君    国 務 大 臣 迫水 久常君    国 務 大 臣 西村 直己君   政府委員    内閣官房長官  大平 正芳君    法制局長官   林  修三君    法制局第一部長 山内 一夫君    法制局第三部長 吉国 一郎君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省欧亜局長 金山 政英君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      鶴岡 千仭君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主計局次    長       佐藤 一郎君    大藤省主税局長 村山 達雄君    大蔵省理財局長 西原 直廉君    大蔵省為替局長 賀屋 正雄君    文部省管理局長 福田  繁君    厚生大臣官房長 高田 浩運君    厚生省医務局長 川上 六馬君    農林大臣官房長 斎藤  誠君    運輸省港湾局長 中道 峰夫君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君    自治省財政局長 奥野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十五年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出衆議院送  付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について報告いたします。  去る十五日、永末英一君が辞任されまして、その補欠として基政七君が選任されました。   —————————————
  3. 館哲二

    委員長館哲二君) 昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十五年度特別会計予算補正(特第1号)、以上両案を一括して議題といたします。
  4. 鈴木強

    鈴木強君 委員長議事進行について。私は、審議に先だちまして、補正予算提出をされております中味の中で、財政法上から疑義があると思います点がありますので、この際明らかにしていただきたいと思います。  それは、提案をされております公立中学校校舎整備費の約四十億の経費でございますが、この中味を拝見しますと、明らかに三十五年度、六年度、七年度、各中学校児童数が非常に多くなるということは、文部省が策定をしております五カ年計画中味を見ましても明らかであります。従って、私は、財政法第二十九条にいう当初予算作成後に生じた事由により必要避けることのできない経費限り補正追加ができる、こういう建前から申しますと、この事実は、明らかに当初予算編成当時に明らかになっておった問題であって、この補正予算提案しようとする経過からしますと、非常に重大な疑義があると思うのです。こういう点を一つ提案をされております最高の責任者である総理から伺っておきたいと思う。
  5. 館哲二

  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 財政法の解釈の問題でございますから、所管の大蔵大臣よりお答え申し上げます。
  7. 館哲二

  8. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 確かに、御説明のようなことになろうと思います。ですから、私どもは、今度特別法の御審議を願って、それによってこの補正をしようということにしたわけでございますが、当初は確かにわかっておりましたが、従来は、当該年度のものはその年度予算でやるということでずっとやって参りまして、今までは支障がございませんでした。ところが、御承知のように、今年度は中学生が七十万人ふえるし、来年度百万というふうに、こんなに大幅にふえることは初めてでございますが、三十五年度の七十万人も、従来のやり方でやってみましたところが、これは実際を見まして大へんなことで、とてもこれだけ急増するというものを、当該年度予算処理は無理だという事情が予算執行後判明してきましたので、それでは、来年の百万人急増というものに対しては、とても来年度予算措置ではこれが間に合わないという事実が今年の経験でわかりましたので、これは万全の予算措置の必要があるということで、今おっしゃられましたような財政法等の問題もございますので、これができるような特別法の御審議をお願いして、それによってこれをやろうとしたわけでございます。
  9. 鈴木強

    鈴木強君 経過としては、私は、私の申し上げるように、追加予算提案する建前としては、少なくとも財政法二十九条がある限りにおいては、それに準拠しなければならないことは、これは大蔵大臣もお認めだと思います。その当初予算執行後において、なるほど本年七十万の生徒数の増、さらに三十六年度は百万、三十七年度は四十万、こういうふうに急激に増加しているという事実は、これは何も当初予算を執行して後に出た事実ではないので、そんなものは明らかに十年も二十年も前からわかっている。そういうものを、当初予算の際にわれわれが要求したにもかかわらず、それでいいんだといってスタートしたのです。ですから新たな事実じゃないのですよ。これは、大体五カ年計画というものが文部省から策定されておるのですが、その中で、こういう事実にぴたっとマッチするような予算措置をして、支障のないようにやるのが政府責任でありましょう。従って、私は文部大臣にもちょっとお聞きしておきたいのですが、そういった事実が前の予算のときにもあると思うのですね。当初予算のときに、そういうものを大蔵省があえて削ったかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、政府の全体としての責任から言うならば、こういう手ぎわの悪い、財政法違反である追加予算を、特例を出したからといって、それに籍口して通そうという、そういう考え方が私はなっておらぬと思う。もう少し文教政策に対して根本的な対策を立てることが重大ではないでしょうか。そういう意味において、私はこの出されておる補正予算については重大な疑義を持っている。これを解明してもらわなければ審議に入れぬのです。そういう意味において私は答弁を求めているのです。ですから、文部大臣からもいきさつを一つ説明していただきたいと思います。どうしてこういうばかなことをやるのか。
  10. 館哲二

  11. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  すでに大蔵大臣から御説明申し上げている通りだと申し上げるほかにないわけですけれども、率直に申し上げますれば、今までの学校施設整備が、うしろ向きと申しますか、その年度生徒が増加しましたものに対応すべき施設整備をその年度予算整備するということで御承知のように従来きておりますが、これは、生徒数が比較的少ない場合は、実際問題としてそう支障なく、一時のすし詰めをがまんしてもらって、間もなく解消するということができたかと思いますけれども、今回の急増生徒数を念頭に置きますれば、なかなかこれは容易なことではない。すし詰め状態が、青空状態が相当長く続くことを考えざるを得ない。そうだとすれば、理論上は今お話通りかとも思いますけれども、今までのうしろ向き状態を前向きにすることを国会で御承認願って、そして生徒たちを不自由な状態に置かないようにすることを、今からでもおそくない式に考え直して、国会の御承認を得て、その事態に対処したい、こういうことで、文部省としましては、大蔵当局補正予算要求をいたしたわけでございます。たまたま年度内の財源等も当初は十分見込めなかったでございましょうが、今度の補正の時期において、ある程度の見通しもついたということもあってと思いますが、今申し上げたような前向き状態、それが望ましいことでございますから、この際、五カ年計画の最後でもあるし、生徒急増のピータを一挙にまかなうようなやり方でやることの方がより適切であることは申し上げるまでもございませんので、そういうことで要求もいたしたし、特別法も今御審議をお願いしておるような次第でございます。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 総理大臣、私の今質問している趣旨はおわかりだと思いますが、私たちは、国会立場から、財政法というものを根拠にしてこれは考えざるを得ません。そういう際に、少なくとも政府の一貫した施策の欠除から生じておる問題だと私は思うのです。文部大臣おっしゃられるように、前向きにやろうということについて、私は実体論については否定しません、けっこうなことだと思うんですよ。ただ、根本を流れておる、文教政策に対する根本的な対策というものがやっぱり欠けているからこういうことになると私は思うんです。従って、財政法というものがある以上は、それに準拠して予算追加をやるというのが建前でしょう。従って、当初予算は多分前の総理大臣時代でありましたが、しかし、あなたも通産大臣でおられたんでしょう。今度総理になられたのでありますから、少なくとも法律というものに準拠して予算作成等を十分やっていただくように、私はあなたに特に要請をしておきたいと思うのです。  それから、たとえば、今まで見ておりましても、財政法が悪いのか、どっちが悪いのか、私は実態から言うとわかりませんけれども、とにかく財政法では、当初予算についても、十二月中に国会に出すということを常例とするということになっておるにもかかわらず、毎伸々々年度を越して出てくる。こういうことについても、何回かこの委員会でもお伺いしたんですが、法律があってもそれに準拠できない。もし実態に合わないなら、私は財政法を変えたらいいと思うのです。そういうことで法律というものがある以上は、それに準拠するという根本的な立場をとって私は今後やってもらいたいと思うのです。そういう意味で、総理からその点について一つ所信を明らかにしてもらって、誤りのないように法の運用をしていただきたい。こう思います。いかがですか。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話通り財政法に準拠して行なうことは当然のことでございます。しこうして今回の文部省関係予算をこういうふうにいたしましたのは、別に法律を出しまして、特例として今回やった次第でございます。今後におきましても、財政法に準拠してやることはお話通りでございます。
  14. 館哲二

    委員長館哲二君) これより質疑に入ります。羽生三七君。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 昭和三十五年度補正予算審議に際しまして、予算に直接関連する問題につきましては、同僚各位に譲ることといたしまして、私は、主としてこの際外交問題並びに経済問題にも若干触れてお尋ねをしたいと思います。  アメリカ共和党アイゼンハワー大統領が、新しく当選しました民主党ケネディに変わったわけでありますが、このケネディ大統領のもとで、いよいよ新しい時代を迎えることになりましたが、この布陣も、ラスク国務長官、それからボールズ次官、さらにスチブンソン国連大使という新しい布陣で大いに世界の注目を集めておるわけであります。アメリカ民主党共和党から政権が移動したといっても、アメリカのことでありますから、日本自民党社会党ほどの大きな違いはありませんから、当然に地すべり的な変化が起こると考えるのはもとより早計でありますし、私どもももとよりそうは考えておりません。しかし、それにもかかわらず、これがアイク・ダレス路線の後退であることは間違いありませんし、また従って、ケネディ政権のもとで何らかの新しい動きが起こってくることも予想されると思います。しかも、アメリカだけではなしに、さき共産圏諸国会議もあり、さらに、あらゆる地域における反植民地闘争も熾烈に行なわれて、何となく世界が新しい動きを示しそうな徴候が現われております。従って、わが国としても世界情勢を的確に把握して、誤りのない、正しい外交路線を確立しなければならぬと思うのであります。私はまず最初に、これに関連をして、さき衆議院河野委員が若干触れました中立問題、それに安全保障問題等についてお尋ねをして、それから逐次、次の問題に移りたいと思いますが、先日の衆議院河野氏に対する総理答弁を伺っておりますと、これを要約すると、中立は幻想である、それで今日のこの時代において、軍備なくして一国の安全が保たれるはずがない、従って、日本米国協力をしてその安全を保持する、これが総理答弁を要約した見解だろうと思います。この考え方は、私は昔の、どろぼうには戸締まりという議論、そういう形での国防論議だと思いますが、これは今日の想像を絶する科学兵器発達長距離ロケット時代における防衛論議としては、そのまま受け取るわけには参らぬと思います。私は、しかし、自民党の言うことは全部間違っておって、社会党の言うことが絶対安全だと、そういう形で問題を論議しておるわけではありません。問題は、どちらの側の主張に、より安全の度合いが多いかという、ウエートの問題であります。具体的にいえば、私は日本に対する直接の外国からの攻撃侵略、これは直接であります、直接の攻撃侵略よりも、日本外国軍事基地を提供しておることから起こるその危険性の方が、より危険が多い、こういう形で私たちは問題を与えております。従って、安保反対闘争も、おそらくこういう形で行なわれたものと私たちは理解しておりますが、この事態について、総理は、外国からの直接攻撃侵略が近い将来あるとお考えになるのか、その危険と、今申しましたように外国基地を提供することによって起こる危険と、その比重はどちらが多いとお考えになりますか、まずこの点からお伺いをいたします。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、今の現実情勢から申しまして、世界の平和は力のばバンスで保たれておるということが一般考えではないかと思います。この前提に立ちますると、やはり安保条約を結びまして、日本安全保障と独立を保つということが現実的な姿ではないかと考えておるのであります。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 問題は、政府安全保障に対する基本的な考え方だと思います。政府安全保障政策というのは、今も総理からお話がありましたように、軍事的均衡だけにすべてをゆだねる。だから、問題は、軍事的側面からだけとらえられております。従って、他の重要な諸条件が全く見落とされているか、あるいは全く無視されておる、こういうことだろうと思います。もちろん私は、軍事力が一国の安全を保障し、防衛の重要な要素としてその役割を果たしてきたという歴史的な事実のあることは間違いないと思います。そしてまた、その歴史的惰性が今日もなおかつ続いておることもまた確実だろうと思います。しかし、さきにも触れましたように、今の科学兵器発達、一度全面戦争になれ土ば、人数の破滅を意味するようなこういう時代において、軍事力の増大だけや、あるいは力の均衡だけに安全保障の道を求めるよりも、戦争の原因をどうして取り除くか、その条件をどうして排除するか。しかも、日本を取り巻く国際環境極東地域国際環境です、この緊張をどうして排除するか。しかも、それを成功させることが最大の安全保障だということを確信するわけです。だから、力のバランスだけにすべてをたよって、現に存在しているこの緊張、しかも、具体的にいえば、日本を取り巻く国際緊張緩和について、何らの具体的な処置を講じないで、ただアメリカとの軍事的協力関係だけに安全保障の道を求める、これでは私は真の安全はできないし、また、これは新しい時代安全保障とは言えないと考えますが、この安全保障についての総理見解をもう一度お尋ねいたします。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君)東西両陣営政治理念を異にしておりましても、それは単に政治理念が違うというだけで、戦争に至らないようにする努力は必要でございます。従いまして、私は国連世界の完全な平和維持機関であることを念願し、それに向かって進みたいと努力いたしておるのでございますが、ただ現実の問題といたしましては、戦争回避具体的方法にいたしましても、西陣営がなかなか意見の一致を見ない。で、やむを得ずと申しまするか、今の現状といたしましては、力のバランスの上に立ちながら、国連強化によりまして、力を用いない、いわゆる世界平和機構を打ち立てていきたい。だから、理想といたしましては、私は羽生委員のお気持はわかりますが、現実の問題としては、やむを得ない姿ではないかと考えておるのであります。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 歴代の保守党内閣で、緊張緩和に寄与した政策というと、ただ一つ鳩山内閣日ソ国交回復があると思います。ちょうど昭和三十年七月のことでありましたが、私は、参議院の委員会で、当時の鳩山首相との閲で質疑をかわしまして、しかも、非常に感慨深い場面を経験したのであります。私の質問というのは、当時、保守合同が進められておった当時のことでありますけれども、御承知のように、自由党の中には、根強い日ソ国交回復反対論があったのであります。従って、私は保守合同ができた場合、はたして鳩山さんは再び総理として現職にとどまれるかどうか、またもう一つは、多年の公約である日ソ国交回復を、そういう条件の中でやり遂げることができるかどうか、こういうことが私の鳩山さんに対する質問百であったのであります。ところが、そのときに鳩山さんはこう答えております。以下は鳩山さんの答弁をそのままここで読み上げるわけであります。  実は、私の日ソ交渉に対する考え方は、四年前、私が病気で倒れたとき以来のものであります、当時、世界的に一九五三年米ソ開戦説が唱えられたが、私はどうしても第三次世界大戦を避けなければならぬと考え、そのためにも、日本ソ連戦争状態を終結して、日本米ソ間の橋渡しをしなければならぬと思った、このように日ソ交渉に対する念願はだいぶ前から抱いたものであって、私の悲願である、私はこれをどうしてもやりとげたい、こう答えました。ここまで答えて、声涙ともに下る感激的な場面となったのでありますが、しかし、これは鳩山さんが病気だったからということで片、つけるべき性質のものでは私はないと思います。これは、鳩山さんは戦争を避けるために、あるいは緊張緩和の具体的な政策を示したのであります。また事実、みずからソ連に足を運んで、その実現に努力もいたしました。それのみか、米ゾ橋渡しをしたい、こう言い切っております。それが実現されるものであったかどうかは別として、とにかく私はりっぱな見識を持った一つ政治家の態度であろうと思います。これはある意味中立政策とも言えますけれども、それは別として、この鳩山さんの考え方は、今日の日中関係にもそのまま私は通ずる問題ではないかと思います。だから、具体的なこの緊張はそのままにしておいて、何にもそれを緩和する方法を講じないで、そうしてただ対米関係だけ維持していけば、力の均衡だけにたよっておれば、それで事足りるのだ、これではもう正しい意味の私は緊張緩和ではないと思う。従って、私は、この鳩山さんの考え方、これはそのまま日中関係にも通ずる問題だと思うのでありますが、総理のお考えを承りたい。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ソ連の何と申しまするか、世界各国に対する立場と、中共のそれとは私は違っておると思うのであります。ソ連アメリカソ連とイギリスその他の国々との関係は、現在の中共各国との立場とは違っておる、それが今の中共問題がむずかしい問題となってきておるのでございます。鳩山先生の日ソ共同宣言に至るまでのお気持はわかりますが、そういう違いがあるところに今の悩みが存しておると私考えておるのであります。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 ソ連中国との違い等は、私も若干勉強しておるつもりでありますが、しかしまあ、きょうは時間がありませんからそういうことにあえて触れようとは思いませんが、しかし私は、そういう違いにもかかわらず、しかも、極東緊張緩和させるという意味においては、私は同じ条件のもとにある、こう考えております。そこで、政府のこの外交の基調は、米国との提携の強化、それから国連中心主義でありますが、対中国関係についても、ほとんど国際情勢待ちであります。この一語に尽きます。総理は、先日も勇み足は好まない、こういうことでありましたが、しかし、日華事変以来、長い間迷惑を相手にかけてきたこの日本としては、たとえ台湾政権との関係があっても、世界の大勢がきまったらあとからこれにならうというようなことでなく、国連の中にみずから一つの機運を作って、国際関係の打解に急速に努めるべきではないかと思います。これは、基本的には国交回復が早急に実現されることがわれわれの念願であるし、また当然要請される問題とは思いますけれども政府立場もありましょうから、私は今直ちに諸懸案を一挙に解決してくれとは言いません。難きを求めるわけではないのであります。そこで、当面まず日中貿易については、せめて政府間協定だけはぜひ進めてほしいと思うのであります。この日中貿易問題は、米国ドル防衛対策の影響をチェックするという意味からいいましても、日本としては当然この市場転換意味も含めて私は喫緊のこれは要請として日程に上っておる問題だと思います。この点純経済的な問題についてはあとから触れますが、この政府間協定はぜひ進めてもらいたいと思う。重ねて総理の御見解をただしたいと思います。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 根本が、日中が正常な外交関係に入るときかどうかということが前提になるわけでございます。私は中共を承認するとかいうふうなことにつきましては、今直ちにどうこうというわけにはいかない。こういう前提に立ちますと、日中の政府間貿易協定というものがどういう格好になるかという問題でございます。従いまして、政府間の貿易協定というのが、中共承認という格好で行くのならば、これは私は今踏み切るわけには参りません。しかし、外交関係を正式に回復するということでなしに、具体的に貿易を強化していく、あるいは国際慣例でありますように、その国を承認しなくても、特定の事項、郵便、気象関係等々におきまして、お互いに話し合いを進めていくということにつきましては、私はやぶさかではない。そこで問題は、中共を承認するかどうかという問題にからまない程度の問題につきましては、私は両国間の話し合いを進めていってもいいんじゃないか、貿易ならば、日中間におきましては積み重ね方式でいくのが望ましいのじゃないかと考えているのでございます。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 だから、総理のお答えにもありましたが、私自身としても、その希望は希望として述べますけれども現実の問題として、今すぐ政府がこの中国政権、北京政権を承認することもなかなか困難であろうと思うので、せめて政府間協定ぐらいはすみやかにやってもらいたいということを、端的にお尋ねしておるわけであります。北京政権を承認しておる国は、現在三十二カ国だろうと思います。それから未承認国でも貿易は進めております。この中国の態度は、しかも、一ころいわれた政経不可分論ではない。だから、日本のあの岸内閣のときにあったようなむずかしい問題を向こうが重ねて持ち出しておるわけではありません。これは可分とも理解されます。事情が変わってきておる。しかも、今年上半期における中国と西欧十一カ国との貿易は非常に増加して、昨年同期に比しまして、輸出では七〇%増、輸入は四三%増となって、日中貿易の中断以来、西欧の貿易面での中国接近というものは非常に具体的に現われております。なぜ政府が足踏みをしておるのか、どうしても理解できない。私が今すぐこれを国交回復中国承認と、これをこの席で直ちにやれと要求したって、これは政府の都合もあることでしょうから、これは容易なことじゃないということは私も理解しております。しかし、せめて政府間協定だけはもっと真剣に取り組まれてはどうか。もちろん、総理は強制バーター方式を緩和する努力をやっておると、こうおっしゃるかもしれません。確かに若干の手直しは通産省で進めておるようであります。しかし、そんな民間にすべてまかしっきりで、あと政府は国際情勢がきたらというようなことでなしに、せめて、承認ということは別として、この政府間協定だけは早急に進めるようにしていただきたいと思う。重ねて、なぜそれができないのか、承認とは別でありますよ、重ねて一つお答えをいただきたいと思う。ぜひ進めていただきたいと思う。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この政府間協定と承認とは別だ、別だが、承認につながるものではないかという懸念がある。だから、私は先ほど申し上げましたように、そういう懸念がなくて、具体的にどんどん貿易の進んでいくことを念願しておるのであります。そうしてまた、郵便協定とか、気象関係等につきましては、これは今までの慣例で承認とはつながらないというふうな観念が行きわたております。そういう問題につきましては、進めていきたいという気持でおるのであります。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 それは、交渉の話し合いの過程で明確にしたらいいと思います。日本の事情をよく説明して、明確にしたらいいと思う。それは外国の例もあります、ほかに幾つも。私、例をみんな調べました。だから、政府間協定があっても、必ずしもそれは承認とは直接つながるものではないということもあるので、ここまできて、そんなに足踏みをされるのか、どうしても私理解できない。よく事情はわかるが、もう一度、さらに積極的に前向きにこの政府間協定を促進されるために努力される御意思があるかどうか承っておきたい、くどいようですが。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そこで、私は所信表明にも申しておりますように、世界情勢の推移を見ながら弾力性のある心がまえでやっていきたい、こう申し上げておるのであります。私は、常に情勢の変化等を考え、また過去歩んできたいわゆる台湾政府を承認している関係等々、外国のそれと違った点も日本にはございますので、そういう点を十分考えて、弾力性ある心がまえでいきたいということを申し上げておるのであります。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 真剣な推進を要望して次の問題に移りますが、この緊張緩和へ進める手段としていま一つ、やはり今触れました中国国連加盟の問題があります。もし現在のこういう状況のもとで中国が核兵器を保有するようなことになれば、アメリカもまた核兵器の日本への持ち込みをまじめに考慮する状態になるかもしれぬと思います。これでは緊張緩和どころか、逆の方向へ向かうことになります。そこで、このような状態をこのまま放置しておくことは適当と思いません。私はむしろ中国国連加盟を実現して、また中国の軍縮会議への参加の道を開いて、核兵器を初めとする一般軍縮について有効な機構を作り、そういう処置を通じて緊張緩和の方向を確立すべきであると思います。私は、単に一般的な加盟論だけでなしに、そういう具体的に極東緊張緩和していく場合に、このままでは中国が核兵器を非常に近い将来持つかもしれません。そうなれば当然アメリカ日本に持ち込みを考えるようになるかもしれないと思います。それでは緊張緩和の方向にあるとは言えない。従って、中国国連加盟を認めて、さらに軍縮会議に参加してもらって、そうして有効な核兵器を含む一般軍縮の機構を作って、そうして中国も持たず、また日本に対するアメリカの核兵器の持ち込みも起こらないような状態を作っていくことが、私はやはり極東緊張緩和を推進する一つの道であろうと思います。そういう意味で次の機会に国連においてこの加盟が議題になった場合、政府としては積極的に賛成の方向に踏み切るべきだと思いますが、この点はいかがでありましょうか。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中共国連加盟の問題が最近とみに論ぜられるようになったのは、今の中共の核兵器の問題、また軍縮問題に関連して相当起こってきたと思います。しかし、この加盟と申しますか、代表権を認めるかという問題につきましては、私は衆議院でも申し上げましたように、国際情勢の推移を見ながら慎重に考えていきたいと思っております。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 おりおり古い話を出して恐縮ですが、一九一七年にロシヤ革命が起こったあと日本は一九二五年、当時の労農ロシヤを承認しております。アメリカの方は一九三三年でありますから、日本はこれに先んじること八年、アメリカに先んずること八年、当時の労農ロシヤを承認いたしております。当時、後藤新平氏は一部から国賊扱いされながら、しかし、日ソ、当時の日露外交の上に、実に多くの寄与をしております。今日、日本政府としてはもっと強力に日本の自主性を生かして、新しい時代に対応する経論を示してもらいたいと思うのであります。しかも、一九六一年は、この中国問題については、新しい動きが起こることは確実であります。そこで、総理お尋ねしたいことは、この中国問題については、米国の態度いかんにかかわらず、日本独自の立場で自主的に対処することがあり得るかどうか。今弾力性を持つと申されましたが、さきに触れた日中貿易政府間協定の問題は、中国国連加盟と見合うのかどうか。私はこの問題は国連加盟の問題とは別個に、それ以前に解決すべき問題だと思います。つまり日中貿易の問題は、中国国連加盟問題の解決のいかんにかかわらず、それ以前にやった方がいいと思います。なぜならば、国連加盟問題は必ずしも次の総会で決定されるとは限っておりません。これは議題となるだろうと思うし、あるいは決定になるかもしれないし、また、持ち越されるかもしれない。しかし、日本の経済の現状から、日中貿易の再開、拡大、これは日ソもそうでありますけれども、これは喫緊の要請となっております。従って、未確定の要素である国連加盟と見合って日中の貿易の政府間協定考えることは適当でないと思います。従って、その国連加盟の問題とは別個に、独自にこの日中の政府間貿易協定の問題を考えてもいいと思いますけれども、その点は国連加盟の問題と見合っておるのかどうか。その問題と、それから、これもちょっとえげつないことになってあまり言いたくないのですが、前の内閣時代に、アメリカの態度がきまりそうだから、きまる前に事前通告をしてもらいたいということを申し入れるとか申し入れないとか言ってだいぶ——前というのは岸内閣の当時ですが、問題となったことがありますが、そういう見苦しいことでないように、全く自主独立の立場外交をやっていただきたいと思いますが、それは余分なことでありますから、それはとにかくとして、今申し上げました国連加盟の問題と、日中貿易政府間協定の問題は可分か不可分か、私は切り離して別個にそれ以前に解決すべきであると、こう考えますが、この点についてお答えをいただきたい。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど政府問貿易で申し上げたのを繰り返すようでございますが、私は中共国連における代表権を認める認めないというものと承認とはうらはらでないと思います。その実例は、イギリスは中共を承認しながら、代表権の問題につきましては反対しております。うらはらというわけには参りません。ただ問題は、中共を承認していない日本といたしまして、代表権の問題と全然関係がないかと申されると、全然関係がないとも言い切れない、理論的でなしに。私は先ほど申し上げましたように、代表権の問題と、それから中共承認の問題とは関係がある程度あります、日本といたしまして。そうして承認ということと政府間貿易協定と関係がないかというと、これは一応あると見るのが常識ではないか。従って、その間の関係につきまして、やはり国際情勢の推移を見ながら慎重に弾力性ある心がまえでいきたいと申しておるのであります。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 どうもそこのところがはっきりしませんが、国連加盟のいかんにかかわらず、日中貿易政府間協定については決定することもあり得るのですか、ないのですか、そういう弾力性なんですか、はっきりしていただきたい。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その点についての結論を国際情勢の変化を見ながら考えていきたいと思います。
  33. 千田正

    ○千田正君 関連して。羽生委員質問のお答について、もう一ぺん私はお聞きしたいと思いますのは、ただいま羽生委員が言っておるように、一九六一年、来年は非常に国際的に、東洋を舞台とした大きな転換があると予想されることは、先般も羽生委員も言っておる通りでありますが、国連におけるところの情勢が変わってくる。たとえばケネディアメリカ大統領がすでに国連に対する大使の変更を意図して新たなる大使の任命をされようとしておる。同時に、国連におけるところの中共問題というものは重大なる一九六一年におけるところの課題であるということを考えますときに、日本政府としては当然これに対処する方針を立てなければならない。私は、総理大臣として当然これを立てておられると思いますが、この点ははっきり所信を明らかにしていただきたいと思うのであります。一つ総理の御答弁をお願いします。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今の情報によりますと、一つの課題であるとは受け取れますが、しかし、それは課題であるということだけで、先ほど申し上げましたように、国際情勢の推移を見て私は慎重に考えたい、こういう答弁をしておるのであります。
  35. 千田正

    ○千田正君 重ねてお伺いしますが、そうしますというと、日本といたしましては、あくまで国際連合という一つ外交舞台があるのだから、国際連合を通じて以外は日本独自の外交というようなことは考えておらない。国際連合あるいは国際情勢動きというものは、少なくとも国際連合を中心として動いておるから、それ以外のことは考えておらない、こういうふうにお考えでありますか。
  36. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国際連合を通じて日本外交方針はやりまするが、国際連合の憲章に触れない問題、個々の問題につきましては、独自に考えていくのであります。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 次の質問はちょっと抽象的になってはなはだ恐縮でありますが、総理は先日も、また今の答弁でも、力の均衡だけにすべてを託されておるようであります。従って、日本は率直に申し上げて現在の力の均衡の上にあぐらをかいておる、こう考えられます。ところが、この均衡が破れてアンバランスになった場合にどうするかということです。それでは日本アメリカと運命をともにして心中をするのか。いかなる場合においても自国の安全が最大の目標でなければなりません。さりとて、バランスが破れて変化が起こったからといって態度を急に変えるなんということも、これはなかなか国際信義上できにくいことだろうと思う。そういう意味からも私は日本立場で主張すべきことは勇気を持って不断に主張する、これが真の友好の道であるし、政治外交の正しいあり方と考えております。だから、むしろこの方が、日米の友好関係を正しく永続的な基礎に置くためにも、私は必要な条件だと思う。だから、均衡だけにすべてを託して、バランスが破れたらどうしますか、この考えだけで、均衡にすべてを託しておるということは、非常に危険であるし、必ずしも適当ではない。しかも、世界は大きく動く、だから、この際、均衡が破れたからといって、情勢が悪くなったからといって、さようならをするというわけにもなかなかいかないだろうと思うので、どっちがその均衡を破るであろうか、そんなことはわかりません。だから、長いほんとうの意味の日米の友好ということを考えるならば、もっと言うべきことを率直に言って、日本立場を、あくまで正しいことを正しいと主張するような、そういうあり方を強く今日から堅持することが、将来へつながる正しい路線であると確信いたしますが、どうでありますか、非常に抽象的な質問で恐縮ですが。
  38. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日米関係におきましても、また、その他の国におきましても、われわれの主張は、言うべき点ははっきり言って、そうしてお互いに理解を深めていくことに友好が成り立つのでございます。主張はあくまで主張いたします。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 こういう議論は非常に抽象的で、平行路線で、あまり意味のないことになってしまうので、私これ以上申し上げません。  次に、日韓交渉についてでありますが、これは当面の懸案を片づけるために会議を進行させるのはいいと思いますが、御承知のように、世界緊張が高まっておるとか、あるいは非常に困難な問題をかかえておるとかいう国は、ことごとく同一国内に二つの勢力圏を持っておる国々であります。これは、例証をあげるまでもなく御存じのことであります。従って、韓国との交渉においても、当面の懸案の解決はとにかくとして、それ以上に基本条約の締結にまで進むことになれば、私は非常に大きな問題を将来に残すと思う。しかも、東の方の窓は絶対に開かれない。西の方の窓は、あける必要のない窓まであけようとされておる。必要があるかないかしりませんが、とにかくバランスが全くとれておらない。しかも、必ず将来に問題を残す。また日本一つ将来に新しい問題を背負い込みます。ですから、当面の問題を処理するのはいいが、基本条約の締結については慎重を期せられたいと思いますが、いかがでありますか。
  40. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれとしても、南北朝鮮がりっぱに統一されることを望んでおるのでございます。しかし、現実の問題といたしましては、韓国が、今のように日本と話し合いをするという気持になられたときが私は懸案を解決するのにいい機会じゃないか、もちろん、朝鮮というものが南北統一されていないという事実は、頭に入れて交渉いたしておるのでございます。懸案解決に私は一歩を進めることが適当であると思っておるのであります。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 いや、それは基本条約の問題になると別であります。財産請求権の問題にしても、はたしてこれは韓国だけのことなのか、それを支払えば南北朝鮮に及ぶのか、そういう問題もあるし、しかも、国際緊張の存在している現状において、私は、当面の諸問題の解決に今政府が、取り組んでおることに異存はありません。しかし、この南北朝鮮の将来の統一に障害になり、あるいは新しくその問題が将来にわたって何か禍根を残すような形での基本条約の推進については、慎重を期せられたいということを重ねて申し上げたいのでありますが、私は当面の問題と切り離して、基本条約をお結びになるのかどうか、こういうことですから。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたように、三十八度線以北の問題があるということは、頭に入れてやっておるのでございます。条約の締結の段階に至りまして、そういうことは頭に入れて交渉し、また今後も考えていきたいと思います。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 外交問題は時間の関係でこの程度にして、次に移りますけれども、最後に、これについて一言触れたいことは、日本政府与党と野党との距離は、ものすごく離れております。今の質疑応答で明らかなことく、全く非常な距離である。そこで、そういう意味から、外交上の重要な問題については、野党の責任者と話し合われてはどうか、私は一から十までということは申しません。そんなことをやったって……、これは国会にこういう正常な委員会があるのですから、それを無視して、党首間だけで話をすればいいということを言うのじゃありません。しかし、国の基本的な重要な問題については、あるいは意見が一致しないかもしれない。現状では意見の一致しないことが多いと思いますが、しかし、隔意なくお互いの意見を述べ合うという意味で、最重要な問題について、今後とも野党の責任者と十分話し合われる慣行を作られてはどうかと思うが、外交問題の最後は、この問題を伺っておきたい。
  44. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御意見ごもっともでございまして、私は、三党首の会議以前におきましても、民間におきまする意見を総合して、一つの結論と申しますか、方向を見出すべく外交問題懇談会を設けまして、すでに過去六回くらい開いておると思います。これは評論家とか、あるいはジャーナリストあるいは財界の人等を、そうしてその人選もできるだけ広い範囲でいこう、こういうことをやって、同時にまた、他党の党首と、外交問題のみならず、国策の重要な問題につきまして、私は話し合うということはいいことであると考えております。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 次に、米国のドル危機、ドル防衛問題に関連してお尋ねをいたしますが、このドル危機に端を発するいわゆるドル防衛方針は、世界の自由諸国に多くの影響をもたらしておることは御承知通りであります。先に発表されたICA関係のほか、海外基地の縮小と今日まで出てきたものは、いわば第一段で、今後通商貿易の面にも相当な影響が出てくると思います。この問題は、根本的には米国の冷戦政策に由来するところと思いますけれどもアメリカが平和共存政策に転換をすれば格別、従来の方針を変更せず、これをいわゆる自由諸国の負担における肩がわりという形でその責任の分担を求められた場合に、今後とも日本は、無制限に応じていくのかどうか、これには限界があるかどうか、この問題をまず最初にお尋ねいたします。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) アメリカの経済援助についての肩がわりを要求した場合に、限界がある——当然あることでございます。日本の力に応じまして、しかも、日本の利益になる、そうしてそれが低開発国の利益にもなるようにやるのでございます。肩がわりを申し出られたから、おいそれというわけにいくものではないことは当然でございます。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 続いて、この種のICAの関係あるいは海外基地の縮小等、こういう現に起こっておる問題が、純然たるドル防衛対策だけなのか、あるいはアメリカ世界戦略体制にある種の変化が起こるきざしなのか、その辺はどう判断されておりますか、これは私NATOにポラリス潜水艦、あるいは核ミサイル等を提供して、今後——その管理はアメリカのようですが、世界戦略上非常な変化が起こってくると思います。まあこれは新大統領との会談のあとでないとはっきりしないようでありますが、しかし、世界的に必ずしもドル防衛対策だけではないと思われるふしが相当あるのです。従って、そういう意味からいって、これはアメリカの戦略体制の上に何らかの変化を起こすきざしであるのかどうか。その辺はどう判断されておるのか。これは必ずしも総理大臣に限らない、はっきり認識されておる方、どなたでもよろしいのですが、この点を伺いたい。
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) アメリカ外交政策または防衛政策につきまして、私は共和党から民主党へかわったからといってそう大した変化はないと思います。ことに外交政策につきましては、今回のドル防衛の問題から、今度はアメリカのやっておりまする軍事的防衛措置に対してどういう変化が起こるか、これは今私は想像するのは少し早過ぎるのではないかと思います。しかし経済的の問題といたしまして、ICAの問題以前におきましても、軍の配置あるいは軍属あるいは家族等々によりましていろいろな問題が起こることは一応の想像はできます。そうしてその程度もわかります。また第二段にドル防衛一つの道として向うの輸出ドライブが、日本の輸出等に対してどういう影響を与える等々の問題も、当然起こってくる問題でございます。そういう問題につきましては、事態が判明のつど対策を講じていくよりほかにないと思います。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 かりに、もしドル防衛対策から、さらにまたドル防衛対策だけに限定してもいいし、それにプラスしてさらにまたアメリカの戦略態勢に何らかの変化が起こって、在日駐留軍の削減等によるかりにそういうことが起こった場合、そういう戦力低下を来たした場合に、その補充を日本の自衛階の増強に求められるような場合、これに応ずるのかどうかです。つまり日本独自の自衛隊の計画だけでなしに、在日米軍が将来削減されることになっている、それに見合う、つまりアメリカの削減される部分の戦力低下を補充する意味で、日本の自衛力増強というものを求められた場合にはそのまま応ずるのかどうか。さらにそういう場合には第二次防衛計画というものが変更されるのかどうか。この補充ということは必ずしも人員だけじゃありません。これは近代化あるいは機械化等を含めて、質的なことも意味してのお尋ねであります。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたように、軍略的のことにつきましてはまだはっきりいたしておりませんから、ここでお答えは差し控えたいと思います。しかしいずれにいたしましても、われわれとしては日本防衛問題につきましてはアメリカ協力していこう、こう思っておるのであります。しかしまた日本自身としての防御につきましても、国力に相応して漸増ということははっきりしておるのであります。そこの減り方によって戦力が衰えるという断定を下すのもまだ早いのではないか。私はアメリカと、こういう日本防衛につきましては十分協議して善処いたしたいと思います。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 アメリカが今日まで発表いたしましたドル防御対策のほかに、かりにもし貿易面で輸出競争に出てきた場合、これは対米関係はもとより、すべての海外市場に出てくる複雑な波紋や影響は、相当なものじゃないかと思います。日本としてはこの際西欧諸国やアジア、アフリカ諸国はもとより、先に触れました中ソ貿易の拡大等も徹底的にやるべきだと思います。そういう意味市場転換、市場拡大対策を強力に推し進めるべきではないかと思います。しかもこの西欧諸国すらドル防衛の影響をこうむることになる見通しでありますから、これまで通りの輸出の伸びを期待できるかどうか、非常に危まれるわけであります。従って世界景気の後退や、あるいは米国が輸出競争に出てきた場合の対策に万全を期さなければならぬと思います。そのためには今お話のあったように、ドル防衛について協力に限界があるかどうかということを先にお尋ねいたしましたが——いやこれは戦力のことでありましたが、ドル防衛協力だけに限定してもそれには限界があるかどうか。それから、そういう意味からむしろ私は限界を持つべきだと思うし、また輸入の自由化のテンポも私は十分もう一度考えて、品目によっては考える必要があるんじゃないかと思います。さらに日本の輸出が拡大可能な地域、これはまあ輸出市場の今の事情は、これは時間があとちょっとしかありませんから詳しくは申し上げませんが、非常にアジア、アフリカ、その他西欧、中南米等、アメリカと違った所になっておりますが、そういう可能な地域からの輸入問題を検討する。輸入がこなければ輸出も進まないのですから検討する等、政府の高度成長政策に見合う輸出の達成を可能ならしめるための、総合的な対策が要ると思うのでありますが、きょう新聞を見ますと、アフリカ、中南米等に在外公館を設置して強化する措置を講ずるようでありますが、これは非常にけっこうだと思いますが、いずれにしてもこの影響というものは軽く見ないで、しかも通常貿易の面にくる影響というものを十分頭に入れながら、十分私は将来に備えて輸出の対策を講ずべきだと思いますけれども、そういう点についての具体的な一つ見解を御披瀝願いたいのであります。
  52. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話通りでございまして、昨年は一昨年に比べまして対ドル地域アメリカ地域との貿易は五割以上ふえております。本年に入りましてからは、ドル地域との貿易はある程度はふえてはおりますが、そう伸びておりません。反対に、西欧諸国に対しましての輸出は、前年に比べまして五割近い伸びを示しておるのであります。また、アフリカに対しましても、日本の貿易は将来有望な地域でございます。またソ連ともこの八月におきまする見本市の開催以来、いろいろ商談が進みまして、私は相当伸びてきておると思いますし、今後もかなりの伸びを示すのではないか。できるだけこのソ連貿易も伸ばしていきたい。こういうふうに、今まではドル地域が伸びる中心でございましたが、今後はこのソ連、西欧、アフリカ、こういう面に十分の力を入れてやっていけば、かなり伸び得るのじゃないかと考えております。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 まあ今ソ連貿易の点だけに触れて、中共貿易等には触れられませんでしたが、まあそれはとにかくとして、今非常に簡単な御答弁でありましたけれども、先日衆議院予算委員会における総理見解を承ると、この来年の景気見通しなんかについても、そんなに必ずしも悲観されてはおらない。私もそんなに極端な悲観論者でありませんが、しかしケネディ政権が五%成長政策に非常に期待を持っておるようでありますが、この所期の目的が達成できればけっこうであります。しかしこのドル危機から今きておるアメリカ経済のいろいろな矛盾というものは、これは根本的には冷戦費の支出にある。これはまあ当然であります。しかし、そのほかに私は国際金利の差というものも見逃がせない一つ条件であると思います。国際金利差であります。そうだとすれば、米国が急激に刺激的な政策をとり得ない条件もあるのじゃないかと思う。またアメリカのこのリセッション、景気後退というものが、今までよりも深く大きいという見方もある。現に失業者の数は近く五百万になろうとしております。だからそういう意味から言って、これはアメリカケネディ政権の五%成長政策に過大な期待をかけるというようなことは、いささか楽観に過ぎはしないかと思います。私はやはりできるだけそれを成功してもらいたいと思うけれども、そういうことを少し当てにし過ぎて、会ソ連貿易等も伸ばすというお話がありましたが、将来のそういう輸出対策についても、若干楽観されておるのではないかという気がするのですが、この点について重ねてお尋ねします。
  54. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ケネディの五%成長論、これは一つの公約となっておるのでございまするが、私は非常にアメリカが好況に向かうと言っておるわけじゃない。やはり今の政治といたしましては、不況を避ける施策をアメリカでも常にとっておるのでございますけれども、リセッションがわが国の対米輸出が非常に減少するというふうなものとは私は考えていない。これを申し上げたのでございまして、決してアメリカが好景気に向かって日本の物をどんどん買ってくれるというふうには考えていない。リセッションというのは大したことはない。やはりアメリカの高原景気は一応続いていくものと見るのが至当とこう衆議院で答えておるのであります。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 明年度予算編成方針は最近のドル防衛問題等を見込んだものになるのですか。あるいは従来通りの方針で行かれるのですか、その辺はどうでありますか。
  56. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御承知通り、ドル防備問題のその範囲につきましては、アメリカ予算上の分では一応想像できます。私はICAが全部なくなり、また家族の人が相当帰国し、また軍事的に後方部隊の削減がありましても、昭和三十六年度において国際収支に二億ドルの影響があろうとは思いません。幾らあっても一億ドル余りと考えておるのでございます。こう思ってみますると、ドル防衛、直接のいわゆるICA等につきましては、私は国際収支面から見ると大した問題では……、大した問題ではないと言うとまたすぐ楽観といわれますが、国際収支が今年度六億の黒字、二十億ドルの外貨手持ちということになれば、本年度六億ドル、昨年も四億ドル、その前も五億ドル、こういうふうな状況を続けてきておりますときに、一億ドルあるいは一億五千万ドルの影響があったからといって、そう必配は要らないのじゃないか。で問題は、日本の輸出がどれだけ伸びるか、こういう問題でございます。私は大体一割程度輸出の伸びを見込んでいいのじゃないか。こう思いますというと、そう私の成長論を変えていかなければならぬというのでなしに、かえって伸ばして輸出振興にもっともっと力を入れるべきだ。そうして何と言いますか、この試練を乗り切るべきだという結論に立っておるのであります。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 そこでですね、まあ高度成長政策を依然として貫いていかれるということでありますが、この明年度の国際収支が、かりにですよ、これは仮定のことを言うのもどうかと思うのですがね、この輸出振興だけが思うようにいかないで見込み通りの輸出が期待できないような場合に、若干保有外貨を食いつぶすことになっても高度成長政策というのは続けるのかどうか。その際輸出に触れないでしかし成長政策はそのままということになれば、三十二年度、いわゆる神武景気のあとに起こったような反動も予想できる。さりとて成長政策をストップすれば所得倍増計画は問題が出発点からこの計画の変更が必要になると思います。だからその辺の調整はどうお考えになっておるのか。もっとも私はお断わりしておきますが、私は必ずしも消極論ではない。私はこの委員会で拡大均衡論を説いてきた一人であります、消極論ではありませんが、今一億二、三千万ドル減少と言われておりますけれども、通常貿易の面で、しかもアメリカだけでなしに世界の各地域に大きな波紋を起こして所期通りの輸出が達成できない場合、輸入をまかなう輸出が所期通りいかなかった場合、そういう場合にはどういう成長政策に若干の手直しをするのか。あるいは所得倍増計画の方を直すのか。その辺の調整というものはどう考えられるのか、お尋ねしたい。
  58. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この国際収支が赤字を出したからといってすぐ赤信号を出したがるのですけれども、私はそういう策はとらない。赤字を出した場合に、日本の輸入原材料がどれだけあるか、日本経済の動きがどうであるか、これが主でございまして、赤字がある程度あるからというのでどうこう言うべき問題ではない。ちょうど昭和三十二年の一月ごろにも、輸出が減っても在庫品やあるいは設備をふやしておればいいのだ、あるいは借金があってもそれに見合う以上の物があればいい。従いまして私は三十二年度のあれを、そう失敗だとは考えておらない。あのときも言っておりましたが、六月にやめたときに十月から黒字になるのだ、それは何と申しましても三億ドルぐらいの赤字のときに輸入原材料は四、五億ドルふえておったのでございます。ということで国際収支が赤字になったからすぐ根本方針を変えなきゃならぬという筋合いのものでもございません。経済の動きを精細に調査して考える。ただ私の、今のところでは何と申しましても六億ドルの黒字という今年の予想が立つのは、通常貿易では一億数千万ドルでございまするが、ユーザンス期間を延ばしましたのが一—三月に出て参りますので、一—三月で二億ドルあまりの黒字、これは主としてユーザンス関係の影響でございます。従いまして六億ドルふえたからといって、これがほんとうの通常貿易でふえたとは私も見ていない。だから赤字というものがどこから起こる問題か、これが長続きするかどうか、そうしてその程度がどうかということから考えるべき問題でございまして、国際収支というものは見かけだけによらず、実際を見ていかなきゃならぬ。従いまして結論といたしまして、私はただいまのところドル防衛の問題がございましても、国際収支は来年度は赤字にはならないだろうと、こう考えておるのであります。再来年度はどうかということになりますと、これは三十七年度予算、経済政策を立てるときに考えるべきことで、ただいまのところ、ドル防衛に対しまして成長政策は変えるという考えは持っていない、変えずに努力によって乗り越えるべきであると考えております。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 総理の説明を待つまでもなく、私も黒字だけを蓄積するのが目的だといっているのじゃないので、それは私この前もこの委員会で一萬田大蔵大臣、山際日銀総裁に経済基盤強化基金のあった当時のことでありますが、病人が出たときに医者にもかけずに栄養、ミルクも卵も与えるのでなしに持っている金は貯金をするのですか、こういうお尋ねをしたことがあります。私は必ずしも外貨保有がすべてに優先するということを言っているのではない。かりに、もしその基調が変わってきた場合は、これを食いつぶしてどんどん高度成長政策を続けるのか。あるいはそれを何らかの形で手直しをすれば、今申し上げましたように所得倍増計画というものは出発点から変更になるけれども、その調整はどうかといいましたが、まあ今総理お話では将来の見通しがあれば、若干の赤があってもそれは問題ではない、依然として続けるということでありますが、この十二月十四日の記者会見で山際日銀総裁は、消費をふくらますような輸入がふえて赤字を招きそうなら金融引き締めをやる、こういう談話をやっておりますが、この辺は総理はどういう判断に立ちますか。
  60. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日銀総裁の考え方と私はあまり変わっていないと思うのでございますが、談話の一ところだけをとってどうこう批評を加えるのはいかがかと思います。ただ直接の消費物資がどんどん輸入せられて国際収支が赤字になるということは、これは好ましいことじゃございません。しかし将来の生産のため原材料というものが入ってくるということは、私は心配要らないと考えております。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 このほかたくさん問題があるのでありますが、時間がもうちょっとしかなくなったので最後の質問をちょっと一問だけ触れておきますが、ガリオア、イロアの返済の問題は、私、当参議院の本会議委員会等で数回触れてきた問題でありますが、この際政府にぜひお考えをいただきたいのは、私は今まで余裕を残した質問をしてきたのであります。というのは、政府答弁が、数字をかりに出した場合、それが対外的に既定事実として受け取られては困りますので、一国民として配慮して私はあまり具体的なことを今まで触れなかった、非常に抽象的な形で質問してきたのであります。そこでこの債務と確定する場合には国会の承認を要することは、これは当然でありますが、その承認とは政府は必ずきまった額を計上して、そして予算の決定を得ればそれは承認だとお考えになっているかと思う、憲法八十五条の解釈をそういうようにされておる方もあります。しかし、まあその解釈の問題は別として、出てきたものを承認か不承認かという形で問題を提起されても、これは私は非常にまずいと思う。だから問題はむしろそれが妥当であるかどうか、原則的に債務と認めるのかどうか。またかりに認めるという場合においても、それはどういうふうにして算定をしたのか、そういうことをはっきり確かめる意味においてもぜひこれは慎重に扱ってもらいたい。というのは、この前もお尋ねをいたしたのでありますけれども、御承知のようにいろいろ材料を持っておりますけれども日本は終戦処理費で五千二百億円払っております。ところがこれは当時換算して四十七億ドルということになっております。これはどうしてこういう五千二百億円が四十七億ドルというような計算が出てくるかというと、当時は正式なレートがなかった、複数レートであります。この複数レートと、もう一つは、政府が暫定的な軍の換算率によって五千二百億円というのをきめたのでありますが、これを四十七億ドルというものを今の金に換算すると一兆数千億になる。だから今アメリカの請求が十八億ドルか二十億ドルかは別として、とにかく五千二百億円は終戦処理費で払ってきております。それから対日援助物資は、これを積み立てて、見返り資金特別会計として運用され、その後開銀に受け継がれまして、今日では産投特別会計に受け継がれておる。この詳細は数字をみな持っております。それはともかくとして、それは産業に貢献したのだから、三千数百億円が対日見返り援助資金として積み立てて運用されていたとか、産業に貢献されていたといえばそれまでです。また、見返り物資は国民が全部払っていたのだから二重払いになるということも、政府答弁では、対アメリカ関係では決済がされておらないから払うのは当然だということです。しかし、どういうふうにして換算されたか。正式なレートがなかったから、複数レートで換算して、五千二百億円と当時の金で評価されている。でありますから、そういう非党に矛盾があるのに、大づかみで二十億ドル程度、三分の一で五、六億ドル程度を五年間据え置き、その後三十年賦、西独方式というのでは、私はあまり問題が簡単過ぎると思う。しかも私どもは、国会で何回も感謝決議をやっておる。特に参議院ではたしか特別集会か何かやって感謝決議をしたことがあります。だから、これは当然そのことには感謝いたしますが、われわれとしては、それは済んだことだと思っております。それなのにこれがこういう形で問題を提起されてきたというのは非常に残念に思います。  私は時間がないのでこれでやめますけれども、そういう疑問を解明なしに、アメリカと何億ドルときめられて、何十年賦で、利息は幾ら、何年据え置きときめられて、そしてこれを国会で承認するかしないかで問題を提起するのは適当ではないと思います。むしろ問題を国会で事前に協議を求めて、あらゆる疑問を提起して、かりにそれが債務と確定した上で正式な交捗に移った方が私はノーマルなやり方だと思いますが、この点は慎重な考慮を願いたいと思いますが、この点に関して最後にお尋ねいたします。
  62. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ガリオア、エロアは、たびたび申しておりました通りわれわれは債務と心得ております。しかし、この問題につきましてアメリカとの交捗に入る場合におきましては、十分お話のように慎重な態度で進めていきたいと思います。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 これは質問ではありませんが、意見だけ最後に述べさしていただきます。  私は、世界の将来は力の均衡というよりも、こういう力の均衡やロケット政策というようなものよりも、必ず将来は経済競争の時代に入ると思います。これは確実だろうと思います。また、ある意味においてはそういう時代に入っていると思います。いわば斜陽の政策であるこの力の均衡政策にすべてを託して、そうしてあとは国際情勢が進んだらまたそのときにということでは、非常に私は嘆かわしいと思います。だから日本としては、率先して国連の場において共存の問題、軍縮の達成を主張して、東西の均衡のとれた自主独立の外交を展開して、内においては国民生活の安定向上のために全力を傾けられるのが、新らしい時代の方向ではなかろうかと思う。これは質問ではありません。私はこれを要望いたしまして、時間がないので、まだいろいろガリオア、エロアについては疑問が一ぱいありますが、これは将来に譲ることとして、私の質問はこれで終わることといたします。
  64. 鈴木強

    鈴木強君 関連質問。ただいままで羽生委員池田外交の基本的路線についていろいろ御質問がありましたが、どうも抽象論で納得できないので、私はちょっとこの際伺っておきたいと思いますが、羽生委員のおっしゃっているように、アメリカ国民の日本に対するものの考え方、こういったものをいかに適正に把握するかということは、外交政策の一番基本にならなければならないと思う。今までの日本の終戦以来の外交政策というのは、一面においては、占領下にありましたから、ある程度アメリカの方を向かなければできなかったかもしれません。しかし、そういう中におきましても、先にお話になりましたように鳩山さんが少なくとも対ソ連との国交の回復に努力をされたことは、これは私は偉大なものだと思う。そういう若干の前進はありましたが、それを受けた前の岸内閣、ますますこれは安保改定等を中心として対米従属の姿が出てきてしまっている。これは歴史を見ればわかるように、たとえば日本に自衛隊を押しつけたのは、これは朝鮮動乱の勃発した二十五年六月二十五日、そのすぐあと、七月八日に警察予備隊を作れという話がきた。それからチャーチルの報告でも、回顧録でも明らかのように、日本の中華民国の承認についても、明らかにダレスの圧力なんです。そういうことによって日本の対日講和条約を締結する前提として、代償として、条件として、日本は蒋介石政権を認める。こういうふうな内政干渉もはなはだしいようなことがやられてきている。こういったことは、すでに戦後十五年間たっている今日において、私は池田内閣は勇気を持って、日本のほんとうの独自の立場に立った外交を推し進めていくべきではないかと思います。  先ほど中共政策の、中共の加盟の問題を質問しても、客観情勢といいますか、一般的な情勢を見て考えるのだ、こういうことを言っております。しかし私は、もう少し国連の場においても日本はきぜんたる態度をもって世界に訴える必要があると思います。最近のエチオピアの問題にしても、あるいはパキスタンの問題にしても、これは大使館や領事館をどんどんふやしているようですが、大体その情報一つにしても、新聞の情報よりもおくれるというようなばかなことはないと思う。そういうようなことが世上に報道されることは遺憾であって、もう少し私は自主性ある池田内閣としての外交路線を明らかにして、そしてほんとうにアメリカ国民に、あるいは反対側のソ連中国に対して、日本の実情というものを十分認識させる努力をもっと積極的にやらなければだめだと思う。そういう意味において私は池田総理に、党派は違っても、日本国民の共通の広場である外交問題について大いに期待しております。従って、そういう今後のアメリカとの従属関係というものをある程度自主独立の立場に立って切って、そして日本立場というものを鮮明にする。こういう路線をはっきりしなければ私はいけないと思う。そういった点がどうも岸内閣の全くあとを継いだ池田内閣として、その自主性のほどが質疑の中ではっきりしませんので、こういう点について総理の所信をこの際承っておきたい、こう思います。
  65. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御意見よくわかります。所信表明で申し上げましたごとく、自主的に、しかも弾力性ある心がまえで進んでいきます。   —————————————
  66. 館哲二

    委員長館哲二君) この際、委員の変更について報告いたします。  岩間正男君が辞任されまして、その補欠として須藤五郎君が選任されました。  午後は正一時から再開することにして、休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩    —————・—————    午後一時二十一分開会
  67. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会を再会いたします。  質疑を続行いたします。
  68. 羽生三七

    羽生三七君 議事進行について。先ほど総理お尋ねした問題に関連いたしまして不明確な点がありますので、一言だけこの席から発言させていただきます。  それは核兵器の日本の保有またはアメリカの持ち込みは認めないという従来の岸内閣からの方針に、池田内閣においても変わりはないかどうか。これは中国が核兵器を持った場合、アメリカがもし日本への持ち込みを考慮するようなことがかりに起こった場合、今までは抽象的な論議で来ましたけれども、かりに具体的にそういう問題が起こることになれば、これは非常に問題だと思いますので、先ほど私は国連にすみやかなる加盟をして、核兵器を含む一般軍縮の早急な達成を要望したわけでありますが、従来の岸内閣以来の方針に変わりがあるかないか、この点が答弁では明確になっていないので、この一点だけはっきりりさせていただきたい。
  69. 館哲二

  70. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 核兵器につきましては、前の内閣と何ら変わりございません。
  71. 館哲二

    委員長館哲二君) 武藤常介君。
  72. 武藤常介

    ○武藤常介君 私は、今回の所得倍増、並びにこれに関連いたしましての諸政策、それから貿易の自由化、これらの問題につきまして、総理並びに関係大臣に対しましてお伺いいたしたいと存じます。  総理が今回所得倍増政策を打ち出し、一方において所得の倍増をはかると同時に、農工、大企業、中小企業間の格差を縮めていくという大政策を表明されましたが、これは国民に明るい将来を約束するもので、まことにけっこうなことと思います。この政策は、総理が多年にわたる経済閣僚としての現実に即した政見から、日本人の将来に対する見通しに自信を持たせるようになったのだと存じまするが、戦後自信を失った日本国民に向かって、日本人の潜在的な能力に自信をもって、この潜在的な能力を実現するのが政府の使命である、こう呼びかけているものであると私は思うのであります。日本の戦後の発展を見ましても、また海外各国の評価を聞きましても、所得の倍増についてはあまり心配はないようでありまするが、現に当初心配しておりました向きも、次第に賛成に傾いてきたように思われます。ただここで最近に至りまして、新たに米国のドル防衛政策が打ち出され、新しい問題が生じたことは否定できません。しかしながら、これは直ちに日本の国際収支に重大な影響を及ぼすことはないようですが、米国政府のこれまで打ち出した特需の関係の措置のほかに、今後日本の輸入自由化に対する要求を一段と強くするようなことが実は心配であります。  そこで伺いたいのは、昨年決定いたしました三年で九〇%の自由化の計画について、そのままでよろしいのかどうかという問題であります。昨年の国際通貨基金のコンサルテーションでも、自由化をもっと急速に進めてくれ、こういうふうに要望されているようであります。その後の外貨準備も日本には大へん増加して参りまして、それがきわめて著しいものがあるようであります。こういった状態考えますと、日本の国内産業だけからいうと、ずいぶんと努力を要するところの三年間九〇%の計画も、国際的に考えて見るというと、あるいはそれでは不十分であるというような認定をされないとも限らないと思うのでありまするが、日本に対する差別的な輸入制限を排除して、輸出を伸ばしていくためには、自分の方も貿易の自由化に十分な努力をしていることを外国に認めさせなければならないわけでありまするが、現実に個々の商品について問題を考えて見ると、この問題を積み上げ式に考えて見ても、九〇%の徹底ということは、なかなか容易でないというようなことを言われております。外国との関係で、困ったからといって、急にスピードアップをするというのでは、経済界も混乱を来たし、従って政府もまた情勢いかんにかかわらず、三年間九〇%という方針を動かさないのであるかどうかということを伺っておきたいと思うのであります。これについて総理並びに関係閣僚の御意見をお伺いしたいと存じます。
  73. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 為替貿易の自由化につきましての貿易自由化の問題でございまするが、私は以前から貿易自由化をやるべしという考えでおったのでございます。しかも日本の経済が、また国際収支が非常によくなって参っておりますので、私は昨年、一昨年くらいからこれを考えておったのでございます。昨年通産大臣を引き受けまして、直ちに貿易自由化に踏み出したのでございます。これはドル防衛問題があるなしにかかわらず、日本としてこれ以上に成長発展をし、世界経済の伸展に貢献するのには自由化を急いでやるべきだ、こういう考えのもとに進んでおります。しかしこの自由化は、あくまでも日本の経済の成長と、世界貿易の拡大に対しまする手段でございます。それ自体が目的ではございません。従って日本の経済がたえ得る程度に、できるだけ早くやるという方針に変わりはないのでございます。先般、今年の五、六月ころでございましたか、自由化のテンポを一応作って参りました。それにはまず第一、ドル地域に対しまする差別、いわゆる十品目につきましては早急にやるというので、今大豆とラード二品目程度に相なったかと思います。その他の問題につきましても、日本の産業が伸びるに従いまして、また自由化によってより以上伸びるという見通しがつくものから順次やっていこうといたしておるのであります。なお、ヨーロッパ諸国で、対ドル地域に対しましては九十数%まで自由化いたしておりまするが、日本が全体に九〇%以上こえるということは、そう早急に実現できないのではないか。まあ砂糖とか石油等につきましては、ある程度早く考えられまするが、特定の機械とか、あるいは中小企業関係のものとか、あるいは石炭━粘結炭等につきましては、かなりの配慮を要すべき点かと思います。なお農産物につきましては、各国の例もありますごとく、これはよほど先になると考えておるのであります。ただいまのところ、要するに、ドル防衛の問題あるなしにかかわらず、できるだけ日本の経済の実情に即応して急いでやる計画に変わりはございません。
  74. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま総理の御説明で大体了解いたしましたが、大体この九〇%三カ年の自由化ということは、なかなか言うべくしてむずかしいのでありまして、この内容を商品の部門によりまして積み重ねて参りましても、あるいはむずかしいんじゃないかというような考えを持っておる向きもあり、こういう品目は一体どうなるんだろうかというような話もありましたが、ただいま総理お話によりますと、着々とその方針もきめていられるようでありまして、これはまことにけっこうでありまするが、そろそろこの三年の自由化ももう第二年に入って参りますので、第二年に入って参りまするというと、やはり経済界の心配を一掃してやるために、第二年度計画というものを大体案を作って、そしてこれを業界に明示すると、こういうことが必要であろうと思いまするが、そういうことは現在大体案ができておるのでありましょうか。それとも近き将来において案を発表するのでありましようか。その点を一つお伺いいたしたいと思います。
  75. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私の所響いたします農林物資に関しましては、大体そういうお話のような計画を進めております。今日まで大体自由化いたしましたのは四七%になっております。それらに関する品目も、別に資料として差し上げてけっこうであります。これらはいずれも、農業者にとりましても一般国民にとりましても、有利なものにつきましては先に進んであります。今後の問題といたしましても、原則として自由化の方向は、ただいま総理が申しましたように、日本の輸出を増進させるためには原則として必要でございますが、しかしながら、あくまでこれからの物資につきましては、品日別に当たりまして、それが農村農家に対して不利にならぬような形の必要な場合においては処置を、あるいは関税の上において、あるいは国内的な予算の上においてとりつつ自由化を進めると、かように考えております。これらについても、大体品目は考えております。
  76. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農林以外の物資、ことに通産関係のものにつきましては、たとえば工作機械でもいろいろ種類がございます。民間のいわゆる競争力を見ながら、これなら大体まかなえるだろうというところを随時検討いたしまして、結果を発表するように今までもいたしておるのであります。自動車工業につきましても、最近は非常に技術提携も進んでおるようでございまするから、私は日本の製造技術の進歩が対抗し得る程度に相なりましたならば、そのつど発表して、そうして自由化の線を進めていきたいと考えております。
  77. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま総理や農林大臣の御答弁で大体わかりましたが、この日本の経済が非常に伸展して参りまして、ドルが非常にふえたという関係から、外国でも、日本のこの自由化に対しまして、今後また自由化の促進を要求されるのではないかと思うのでありまするが、こういう方面に対しましては、総理関係大臣は相当の用意があるごとと私は思うのであります。  この辺はこれで打ち切りますが、次に所得の倍増についてですが、一番問題とされるのは、所得の格差の縮小が、これが一体どういうふうに実現されるかということであります。ところが、一般民間では所得倍増というと、十年というのを忘れちゃって、あしたにも倍増になるような考えを持っておる。こういうふうな考えは、これはあえて心配するにはあたりませんが、この経済の拡張の程度でありまするが、経済の非常に拡大する部門には非常に労働者も集まる、また経済のあまり拡大しない方面には労働者が集まらない。これは自然の理でありまして、生産性の低い農村においてはだんだん人口が減りつつあるのもただいまの実態であります。今後の問題は、こういった正しい方向に国民を誘導する、これが私は非常に重要な問題であろうと思うのですが、この進め方が非常にむずかしいのであります。一例を言うと、農村の非常にへんぴな方面では案外土地に対する昔の考えにこびりついている。こういう考えから、なかなか誘導してもそれに応じない。こういうふうな点につきましては、相当むずかしい点でありまして、特に私は考えるのに、青少年は非常に進歩的であり、また新しい天地を開拓するという方面をあまり苦慮する必要はありませんが、中年以上の農民というものは、もうかたまっておりまして、非常に山間で耕作反別はふえない、かりにふやしても、それは地域関係上、あるいは交通の関係上、あるいは田畑の階段式な、あるいは機械の使用にたえないようなところがありまして、こういう方面の中年以上の者、あるいは老年の者、こういう方面を考えなくちゃならぬのでありまするが、この生活向上のために一体どういうふうにするかという点で、政府では相当お考えになっていることと存じまするが、これらの点について一つ御意見をお伺いしたいと思うのであります。
  78. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お話の点、ごもっともであります。私どもも一がいに——農業所得と他産業との格差をなくするということ、またその結果、農家の所得と他産業従事者の所得との間に比例をとらせるということは、抽象的には申せますが、具体的になりますると、各地方別に、またその農業なら農業、林業なら林業との関係におきまして、いろいろ違った形が出て参ると思うのであります。御指摘のように、山村におきまして、階段地のたんぼを持っておる小さい所、そういう点についてはなかなかこれはむずかしい点があると思います。しかし、そういう点は、大体において林業との結びつきもあるようでございます。そういう場合に、林、農、このものの一つの連関において考えていく必要があろうと思いますし、大きく将来における農業所得の他産業との比を縮めるために、農業生産というものを拡大していくという面におきましては、一つは、やはりその対象となるべき作物の問題なり、農業経営の対象となるべきものの転換というものを起こさなければならぬと思うのです。これらは、農林行政と申しますか、これらの指導をなすべきまとまった形を一つとっていく必要がある。従来は、今度私ども政府考えておりますことは、農林省にいたしますと、各局ばらばらの政策を立てておったのを、今度は新しい意味における農業をどっちへ持っていくかということについて、各局が総合的な計画の一分担部局として、全体の一部をやるというくらいの立場で総合計画を進めたい。こうしなければ、山村における小さい面積をどういうふうに持っていくか、経営をどっちへ持っていくかということが非常に困難であろうと思います。大体そういうような考えのもとに、各地域における特殊性に応じつつ考えていきたい、かように考えております。
  79. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま農林大臣は、相当考えておられるようでありまして、けっこうでありまするが、この農村に対する指導方針をすみやかに具体的に決定していかないというと、農民が不安感を持っておる。これではやはり政策としておもしろくないのでありまして、どうか早くこの政策を具体的に決定して、この方面に対処してもらいたい。ただいま農業基本法というのが審議中のようでありまするが、私も拝見いたしますると、あれだけでは今度の所得倍増問題にさっそくこたえ得るかということになると、なかなかそういかぬようでありまして、なお一段と突っ込んだ具体策を研究して、そうしてこれを農民方面に徹底させる必要があるのじゃないかと私は思うのでありますが、どうかするというと、いつの内閣でも、あまりこまかな農村問題に入っていくというと、あまり評判がよくないという関係上、どうもそういう問題は回避されるというような風がありましたが、問題が深刻化して参りましてからでは間に合わないのでありまして、そのときになってあわてないように、今から十分一つ政策を立てて、納得のいくような対策を具体的に指示してもらいたい。もちろん現内閣は、所得の倍増とともに、この格差の縮小ということに非常に力を入れられております。これはおそらくはこの格差の縮小なんということに思い及んだ内閣は今までなかった。ただ、総体的の経済の進展はずいぶん論じられたが、こういうことはないのであります。これは国民として非常に喜んでおる。最初に申しましたように、非常に明るい感じを持っておるのでありますからして、どうかこれを徹底的に一つ御趣旨のあるところを貫徹してもらいたい、かように存ずる次第であります。  そこで、最初も申しましたように、その中には中年や老年の農民の生活をどうするかという問題を、やはり具体的に克明に一つ指示してもらいたい、そういうふうに織り込んでもらいたい、こういう考えなんですが、特に中年、老年に対する何か政府の案がありましょうか。それを一言何かお考えがありましたら、お漏らしを願いたいと思うのであります。
  80. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。  ただいまお話のありました農業基本法制定というものに関しましては、相当に深く掘り下げた、仕事のできるような形に今の案ができているようであります。ただ、私どもは、これを受け取りまして、ただいま再検討中でございます。これには、大体ある程度大きな一つの方向を示すことを考えつつ、別途これに関連する付属法令と申しますか、関係法令を相当数出していってこれに対処したい。この方はかなり具体的に出て参ると思います。要は、いろいろと抽象的に議論されておっても、具体的にどうするかという問題が一番要点であります。これにはかなり私は時間もかかると思います。それについて、ただいま御指摘になっておりますように、私ども政府考えております事柄を誤りなく農村の方々が受け取っていただくようにこの法令を制定して、大体具体案ができますれば、でき得る限り機会を得て農村の方々に理解を求めつつ協力をしていただくという形に持っていかなければならぬ。たとえば先ほど申しましたように、大きく転換すべき作付とかあるいは農業経営の対象とか、農業経営の形態とか、あるいは商工業関係、第二次、第三次産業の方に転換していく人々に対する施策のごとき、往々に強制的に出すがごとき印象を与えておりますが、これらはそうではなくて、よりよく導いていくということも考えているのでありますから、こういう事柄を真に理解していただいて、そうして政府と国民と一緒になって新しい農村への方向を作っていく、かように私は考えております。御指摘の点は、よく農村に対して理解を求めるということについては全く同感で、そういう考えでいきたいと思います。  最後のお尋ねの、老年者に対してどうするかということでありますが、これは御趣旨の点よく承りまして、具体案を作るについて、特殊な農村に対する対策につきましては研究していきたいと思います。
  81. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま農林大臣のお話で大体納得いたしましたが、農林大臣は農林行政には前から非常に明るいのでありまして、今度こそ私は総理のこの所得倍増問題とあわせてこの問題が実現するだろうというような大なる期待を持っているものであります。  そこで、次の問題に移りますが、所得の格差の問題の一つは、中小企業の育成強化であります。政府の育成保護のための政策としてはいろいろありましょうが、まあとりあえず私は減税という問題を一つ考えなければならぬじゃないかと思うでありまするが、年々御承知のように自然増収がある。その自然増収は、大体半数あるいは三分の一ぐらいは減税に振り向けるというのでありまするが、さて、その減税に振り向けるということは、御承知のように税率を下げるということになると思いますが、そこで、中小企業者というものは、きわめて税に対するところの計算やあるいは準備が不足でありまして、実際は減税をされても納税する総額は変わりがない。これはちょっと皮肉な話になりまするが、どうも税務署から来るというと、去年よりは売り上げが多いだろうとか、あるいは純益が多いだろうという理由のもとに、かえって減税されても納税の実質は変わらぬ。こういうふうな例が相当ありまして、まことにこれは中小企業者の非常な悩みなんでありまするが、これを何とか、今度はほんとうに中小企業を育成する、いわゆる所得の格差を縮めていく、こういう点からは相当考えなくちゃならぬと思うのでありまするが、しかしこの中小企業のうちでも租税に関連した方面を厳密によく研究していくというと、なかなかそういうただいまの売り上げが多いであろうとか、あるいは純益が多いであろうというふうなことに関係のない方面も相当あります。私は、とりあえず、本年は格差縮小の第一年として申し上げてみたいことは、先年から非常に騒いでおられましたこの林業問題でありまするが、そのうちには、ほかの税にはあまりないような問題があります。たとえば木材の引取税というのがあります。これは、現在農村が非常に労務も少なくなりまして、大工業地帯にみんな吸収される。そういう関係で非常に労務者に困っておる。林業者もあるいは製材業者も非常に困っておる。そこで、現実的に言うと、かえって所得の減少を来たしておる。これを救う道はどうかというと、これは何でもないのでありまして、これは業種によっても違うでしょうが、木材のごときは、木材を買い取るときに五%の税金を取られる。五%であったのがだんだん——数年問題にして、私お願いしたので、だんだん二%に減っております。二%には減っておりますが、現実的な納税は昔の五%のときと同じである。これが非常に困難で、業者は集まっては全国的に騒いでおるのでありまして、これを引くことは何も大したことではない。ただ問題は、町村の収入が減るというのでありまして、これは政府の方で考えれば何とかできることであろうと思いまするから、こういう方面は、とりあえず私は考えていく必要があるんじゃないかと思うのですが、まあ今にわかにどうというわけにもいかないかもわかりませんが、農林大臣、どんなものでございますか。御意見を承りたいのですが……。
  82. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 引取税の問題が負担になっておるということについては、私もさように考えますが、三十三年におきまして、思い切ってこれは半減にいたしましたですが、今日は地方税の全般にわたって考究いたしております。直ちには、全廃をするとかということをここで申し上げる段階にまだ至りません。しかし、十分に御趣旨を承って研究はいたしたいと思います。同時に、引取税のことにお触れになることは、要は木材の業者が、あるいは山村における森林経営者が、非常に収入の点について困っておるという点でございます。これらにつきましては、でき得る限り林業経営にあたって設備の近代化——これは採木、運材等に関しましてはかなりコストを引き下げ得る設備ができております。そういう方面を国としては森林組合等の団体に持たせつつ、でき得る限りコスト引き下げの方向に持っていって、程度を上げるというようなことも考えております。税につきましては、ただいまのところ、全廃いたすということを、まだすぐには申し上げる段階じゃございません。
  83. 武藤常介

    ○武藤常介君 一例を申し上げたので、ただいまの引取税の問題をここで解決するということを私は願っているわけではありませんが、こういうふうな特殊な税金は、まずもって研究の材料ではないかということを申し上げたのでありますが、十分なる御研究を願いたいと存じます。  次に、所得倍増のための関連から、公共投資の拡大が叫ばれておるのでありまするが、いろいろありまするが、私は治山治水の問題、これについてお伺いしたいのでありますが、数年前から治山治水の問題を叫びまして、前々の建設大臣のときに五カ年計画をやるということでありました。このときには建設大臣はなかなか意気込んでおられたので、絵にかいたもちのようにならないように一つやってくれということで、大臣も非常に努力を払われまして、いよいよ五カ年計画が実施の段階に入ったようでありまして、これはまことに私喜びにたえないのでありまするが、ただ、出たものを見るというと、この河川改修等に関係するものから言うと、どうも思ったような結果が出ていない。もっとも日本の国の経済から言うと、そう期待する方も無理であろうと思うのでありまするが、それにしても、今すこしこれは仲ばさぬならば、一たん災害が襲来するならば、とんでもないことになるのではないか。実際は一〇%の費用をかければいいものが、今度は、一たん災害のためには一〇〇%の費用を要する、こういう結果になりますので、国土の保全のためには、もっと私は国家全体の観点から見て力を入れなければならぬではないか、かように私は考えるのであります。一例を申すというとある河川は今から二十年も前に河川改修を十六カ年の計画で着工いたしました。それから二十数年たっておりましてもまだ五〇%の仕事しかできていない。それでは下の方には堤防ができても、上から入ってくるというと、せっかくの洪水の災害を防ぐこともできない。今少しこれはこういう方面にカを注ぐべきではないか。これは建設大臣に関係いたしておりますので、あわせて私は道路の問題につきましてお伺いいたしたいと思うのでありまするが、道路も御承知のように五カ年計画、または十カ年計画という二つの大きな計画によりまして、われわれほっといたしたのであります。しかし、私この計画をよく拝見いたしまして、その輪郭を見まするというと、国道であるとか、あるいは地方道の重要道路であるとか、こういう方面に重点を注いでおるようでありまするが、実際、地方にもよりまするが、産業の開発あるいは地方の所得倍増の観点からいうと、どうもそういった道路ばかりでなく、もっと細部にわたった道路の改修が必要であると思うのでありまするが、この河川改修の五カ年計画あるいは道路の五カ年並びに十カ年計画というものは、前から計画を立てておりまして、だんだん発表されたようでありまするが、今回の総理の所得倍増の線に沿っては少しく物足らぬ、こういうふうな感に打たれておるのでありまするが、これを建設大臣から一つお伺いいたしたいと思います。
  84. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) お答えいたします。  御承知のように、河川につきましては、三十五年度を初年度とする五カ年計画を立てまして目下進行中でございますが、三十六年度計画といたしましては、さらに速度を速めるように実は予算要求をいたしまして、今後の予算折衝に待ちたいと思っておる次第でございます。従いまして、御趣旨の線に沿って、大体、この五カ年計画でいいますと、御承知のように、全国重要の百河川につきまして十五カ年で治山治水の河川改修を完了するという方針でございます。できるだけ速度を早めてやって参りたいと思っております。  道路につきましては、御承知のように、これも五カ年計画の途中でございますが、さらに三十六年度から新たに五カ年計画を策定いたしまして、もっと速度を速めて道路の改修及び舗装の完備を進めて参りたいと思います。地方道につきまして非常に重点を置くべきであるという御指摘がございましたが、これはもちろん御趣旨はごもっともでございます。しかし、幹線になる道路がまず舗装され改修されて、それと並行してやはり進む必要があるかと思いますので、御趣旨の点は十分体しつつ努力を進めたいと思っております。
  85. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま建設大臣の御説明で、大体この計画を実行されると、こう言うのでありまするが、まあそれよりほかないのかもわかりませんが、私の希望するところは、河川にしても道路にしても、この計画をこのまま五年やる、あるいは十年やるというのでなく、新たにまた五年計画や十年計画を更新さしていく新たなる計画が近い将来においてできなければ、この国土の保全あるいは交通の産業的な奉仕ということはできないのじゃないか、かようなことを申し上げたのでありまして、どうか、御答弁は要りませんが、十分一つ考えを願いたいと思います。  それから時間もありませんから、次に医療制度の問題でお伺いしたいと思うのでありまするが、御承知のように、東京都内を中心といたしまして、看護婦のストということは、これは重大な問題でありまして、古井厚生大臣も非常にこの方面に心配されて、いろいろ計画をされ、最近また何かこういう方面に対する処置も発表されつつあるようでありますが、これは私は、やはり医療制度というものを今までのような状態でなくがっちりしたものを制定し、また管理の方面からも進んでいかなければならぬではないかと、かように考える次第であります。  それから時間の関係で一緒に申し上げますが、この日本全国の見地からいうと、医療状態がどうなっておるかというと、この医療機関の配置というものは非常に片寄っておる、こういうふうな状態でありまするが、ある地方では医療機関が余っておる、ある地方ではどうも病院もろくな病院がないというような状態でありますが、これは一体だれがそういうことをやるのかというと、大体県におまかせになっておるというのでありますが、これはやはり県におまかせになっておる今日までの制度であったかもわかりませんが、今後はやはりこの医療というものは非常にこれは重要な問題でありますので、全く地方の県の独自の考えにまかせておくということはきわめて危険でありますので、やはり国が相当の指導をしなければいかぬ、十分なる調査もしなければいかぬ、そうして適正なるこの機関の配置が必要であろう、どうもあるところに行くと、医療機関は相当多いけれども、お互いに患者は割合に少い、ろくな機械もない、きわめて旧式なところの医療をやっておる。それじゃいかぬからして、そこへ新しい一つ医療機関を建ててやろう。何だか医療が企業的になりまして、金もうけ的にそこに一つ大きな病院でも建てようじゃないか。そうすると、国は実際地方の事情がわからないので、それに対して相当の融資をすると、こういったようなことは、はなはだおもしろくないのでありまして、どうか十分御調査の上、こういうことをやっていただきたい。今度の古井厚生大臣は地方の実情にも明るのでありまして、どうか今後こういう方面を十分御調査になりまして是正していただきたい。そうして配置を十分に考慮していただきたい。かようなことをお願い申し上げまして私の質問を終わる次第でございます。
  86. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) ただいまの御意見はまことに有益に拝聴いたしました。そこで医療制度全体が、まあ御案内のように、社会保障というか、保険診療というのがぐんぐん前進いたしますし、非常にまあその意味でも従来の医療機関との間に混乱を起こしたり、困難も起こしておるわけであります。一方、医学もどんどん進むというわけで、医療制度全体について、これを何かこう軌道に乗せるようにはむずかしいかもしれませんけれども、早くしなければなりませんので、この四月から例の医療制度審議会も発足しまして、もうきょうまで八回熱心に審議もして参りましたが、何かこう全体的に軌道に乗せるようにしたいと思います。  それから医療機関の適正配置、ごもっとも千万でありまして、県内の配置のことについては、これはまあ県の当局が一番実情をよく知っていると思いますが、全国的な見地から厚生省も目をつぶっておるわけにはいきませんし、従来とても、これはまあ閑却しておるわけではないのでありますが、一そうその点は考えなければならぬと思います。すべての国民が、だれも適切な医療を受けられるように医療機関の配置も考えなければならぬと思います。一そう努力したいと思います。
  87. 武藤常介

    ○武藤常介君 時間は過ぎたようですが、一問だけお許し願いたいと思います。  港湾の問題でありますが、御承知のように、外国との交通は飛行機の発達によりまして非常に盛んになりましたが、飛行機は日本の観光方面においては非常な利益があることは十分あります。また、御承知のように、外国のいろいろ視察や何か、あるいは日本の事情を彼らに知ってもらうのには非常に必要でありまするが、この産業上の根本的な問題はやはり港湾によらなければならぬ。船によらなければならぬと私は考えておるのでありまするが、どうも港湾が少ない。港湾がまだまだ十分になっていない。県によりましては港湾の設置を非常に要望されておる。港湾の設置がないために、あるいは産業の開発もできない、こういうところもありまするので、今一例を申しますというと、茨城県のように非常に海岸線が長いところにも、ようやっと一つの港湾が出現したというだけでありして、それもまだ初めは漁港として出発いたしたのでありまして、それがだんだん避難港になり、今日では商港になりましたが、しかしまた商港になりましても十分の機能を発揮しない。それで土地の者が非常に要望をされておりますが、しかし力さえ入れれば、もはや港湾というものはどこでもできるような状態に進んで参りました。港湾に対するところの技術というものが非常に進歩して参りました。かような状態でありますので、港湾に対するところの予算を増額いたしまして、そして船の交通を盛んにして日本の生産物を東南アジアにせよ、あるいは南米にせよ、どこにでもどんどん持っていかれるような船の交通を盛んにすることが、いわゆる所得倍増に関連する重要な問題であるということを私は考えておるのでありまするが、これに対する、予算関係もありましょうが、大臣のお考えを一言お伺いいたしたいのでございます。
  88. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) お答え申し上げます。  わが国の産業の伸展の伸び方の非常に激しいのに伴いまして、外国貿易の振興のためと産業基盤を強化するために、ただいまお話しのような港湾の設備を十分にするということは、きわめて大切なことだと存ずるのでございます。御承知通り政府が策定中でありまするところの国民所得倍増計画に平灰を合わせまして、港湾の整備を、これを長期的に計画してやらなければならぬと考えまして、運輸省におきましても、港湾の整備の長期計画を今立案中でございまして、名省とよく連絡をして相当長期の計画によってこれを行ないたいと思うのでございまして、この場合におきましては、今お話しのように、大きな港湾、いわゆる六大港湾ばかりではございません。地方の産業の拠点となり、産業基盤を強化するような関係のありまする地方港湾につきましても十分の整備の力をいたしたいという考えを持っております次第でございます。   —————————————
  89. 館哲二

    委員長館哲二君) 東隆君。
  90. 東隆

    ○東隆君 私は、所得倍増に関連して、農業と他産業との較差をどうすれば収縮することができるか。また、中央と地方の所得の較差を短縮するのにどうしたらよいのか。政府がどういうお考えを持っておるのか。これを中心にして、主として食糧の管理関係の問題、それから税金関係の問願としてお伺いをいたそうと思います。従って、率直な御返事を願いたいのであります。  まず第一番目に、米の統制について政府はどのような考えでおられるのか、私は将来を見通して、この際その存続についてお答えを願いたいと思うのであります。理由は、いつも内閣がかわりまして農林大臣が就任されますと、米の統制問題について最初に言明をされるのが、これが常になっております。そのお答えは、おおむねそのとき限りのように聞こえる答弁でございまして、これでは満足をいたしません。周東農相はその道のべテランでございますから、せめて所得倍増の計画の十年ぐらいを見通してお答えを願いたいのであります。米作農民はこのことを非常に関心を持っておりますし、また一般消費者も、食糧問題でありますから、これは重大な関心を持っておると思います。さらに私は、食糧庁の関係の公務員諸君は、これは身分の安定にも至大な関係があるのでありまして、私は十分に安心をさせて大いに働いてもらうことが大切だと、このように考えるのでありまして、この際、私の質問一つ、米の統制問題についてお答えを願いたい。
  91. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。  米の統制問題は、いつも内閣がかわるたんびに問題になるというお話でありますが、私はこのたびの第二次池田内閣の成立に当たりまして、総理の言っておりますように、所得倍増という問題を考えておりまして、それと関連いたしまして、当然新しい農業のあり方というものが検討されて参るわけであります。従って、単に御指摘の内容として、食管会計が赤字を繰り返えすからどうだという議論よりも、いかにして将来農業が他の産業と均衡を得た生産の伸びができ、農家自体がいかなる形の農業をとることによって収入を確保することができるかということの観点に立ってものを考える必要があろうと思うのであります。御承知のように、米というものを中心とする食糧生産政策というものが、戦後における農政の中心であったことは御承知通り、これは当時の食糧事情としては当然であります。また、その役割をりっぱに果たして、農家の方が御努力下されたことは国としては感謝すべき問題だと思います。しかし、今や米ばかりを作っておるということは、いつも御指摘になるように、農業の生産の伸びと鉱工業の生産の伸びの差が非常に違うと御指摘になるその内容としては、農業の対象としておりまする米というものは、日本人だけが食べて、輸出できないものである。こういう点が他の鉱工業生産の伸びと違うということの一つの大きな原因だろうと思います。そういたしますると、そこに将来における農業の実態と申しますか、農業者が確実にもうける農業を営むためには、その作付なり、あるいは農業経営の対象となるべきものをいかに考えていくかということが問題になると思うのであります。従って、私どもはその作付に関して、ある程度は米というものに関する将来の必要量の見通しを立てる必要があろうと思います。私は米というものがここまで伸びて参り、これからもやはりある程度増産が必要だと思いますが、その点は、主として人口の増加に伴う問題が米食率増加の要因をなすと思います。しかしながら、生活程度は上がる、また食生活の改善等による蛋白、脂肪の取り方がふえるに従って米食率が減る、これは米食率減少の要因をなすものと思います。それらの二つの要因を合わせて考えたとき、ある程度十年後における米の生産数量はいかなる形に持っていくかということの答えが、私は一応の見通しが立つのではないか。その限度においていかに米を生産していくか、他のたんぼは、畑はいかなるものを作らして農家の所得を上げさせるかということから立てていくことが必要だと思うのです。そういうことから関連して、食管会計をいかにするかということを考えたいと考えております。従って、今それらの基本問題に解れて一つ食管会計をどうするかということを考えていきたいと思いますので、ただいまのところ直ちに今の食管会計をやめるということを申し上げる段階ではございません。
  92. 東隆

    ○東隆君 私は今の御答弁としては、食管会計そのものについてお聞きをしたのではなくて、米の統制を存続するかしないか、こういうことを中心にして、せめて十年間くらい見通しをされてお答えを願いたいと、こういうことを質問を申し上げたのであります。その点もう一度お答えを願いたいと思います。
  93. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ただいま食管会計の主たる目標が、米の統制下にあって、米を国家管理していることから起こっている問題でありまして、私はそれを裏からお答えを申し上げたのであります。今の点が、その意味から申しますれば、ただいま米の統制を今すぐはずすということは考えておりません。それは根本の問題と関連して考えていきたい、かように考えます。
  94. 東隆

    ○東隆君 私は米の統制問題等に関連をして、実は食管会計の赤字の問題を政府の方は非常に敏感にお考えになっていると思う。それで私企業の場合でありますると、赤字は私は致命的なものである、しかし公企業の場合における赤字というものは、そう問題にならない。理由がはっきりして、そうしてその間の事情が明白に国民にわかる、こういうことでありまするならば、私は問題でないと思う。しかし、どうも政府は食管会計の赤字を取り上げて、そうして国民の負担がこのように増加をするから、従って米の統制はやめるのではないか、やめようと、こういうような手段にするように邪推をされますので、この点は一つそういうようなことはないのだ、こういうお答えを一つ願いたいと思います。
  95. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 政府といたしましても、あなたが御指摘のような考えで今日まできております。米の食管会計の赤字は、商売下手で損をする場合とは性質が違っておる、一面においては大きく農業者に対する保護の役割りをし、一面においては消費者に対する保護といいますか、役割りを果たしてきております。その意味において、政府はたびたびの赤字に対して一般会計から補てんしてきておるのは御承知通りであります。ただしかし、そのことははっきり政府としては認めておりますが、米の事情なり、麦の事情が変わってきておる現状においては、国民経済の点から考えたら、この形がそのままでいいのか悪いのかということは考えていかなければならぬと思うのであります。しかしその場合においても、あくまでも政府は農業者の側の損失にならぬような対策考えていかなければならぬ。その点は私が一番初めに申しましたように、農業基本政策というものをいかに立てるかということは、その点なんかに触れて考えられる問題であって、ただ赤字が出るから、これをやめていく、統制をやめるということは考えておらないと申し上げたのはその点であります。
  96. 東隆

    ○東隆君 十年の見通しの点については、まだお答えがないようでありますが、しかしこれは政府としては、ただいまお答えができないというふうに考えて、次の問題に移ります。  私は、次は麦の統制でありまするが、昨日の新聞紙に現われた農林省案を見ますと、これは食管法から取り除くような案になっておるように承知をいたしました。きわめて重大なことなので、この際、麦の統制について農林省はどういうお考えなのか、この点を伺います。
  97. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 麦の問題につきましては、ただいま麦対策協議会に御審議を願っておりますので、その答申を待って結論を出したいと、かように考えております。まだ農林省として決定案をお示ししたことはございません。ただしかし、御承知のように、今日は現実において大裸麦に関する需要が、どんどん減退しておるのは御承知通りであります。そこをいかなる形に持っていくか、そういう形のままで、下がっていくのにかかわらず、従来通り価格で買い上げるのがいいのか悪いのかということは、やはり大きな立場から研究してみなくちゃならぬと思います。しかし前内閣の終わりに発表したように、いかなる政策をとろうと、麦生産農家に対する損失の出ないような形はとっていかなければならぬ、こういうことの抽象的なことはこの前発表しております。私は麦対策協議会の答申を待って善処いたす覚悟であります。
  98. 東隆

    ○東隆君 その麦対策協議会なるものは、本月の二十二日か二十三日ごろ開会をされて、そうしてそれに対する原案が農林省から出て、その協議会でもっていろいろ相談をされる、そういうふうに新聞は報じておるのであります。従って、もう相当決定的な段階になっておりますし、しかも、来年度予算その他にも大きく関係をすることであろうと思いますので、私はこの際農林省の考え方を率直に一つお伝えを願いたい。というのは、農林省の考え方を中心にして私は協議会においても審議をされるのではないか、こういうふうに考えますので、もう決定的な段階に到達をいたしておると、こう考えますので、この機会を逸しますと、はなはだおくれたことになるのじゃないかと、こう思いますので、この際一つ中身を明らかにしていただきたいと思います。
  99. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ただいま申しましたように、抽象的にはどういう形になりましょうとも、麦作農家に損失を与えぬような処置をとるということだけは申し上げられますが、やはり公的に麦対策協議会というものに諮問をして、その方での答申を待っておるわけであります。政府の方が先に出てここでお話しすることは、協議会を無視することでありますので、ここで申し上げることはできないのであります。
  100. 東隆

    ○東隆君 私は新聞に出た中身を見ますと、政府日本の麦作を奨励をするのではなくて、これをなるべく阻止しようとしておるのではないかと、こういうおそれを抱いておるのです。政府は麦作を奨励するつもりなのか、それとも補給金を三年か四年くらい出して、そうしてあとはこれを打ち切ってしまって、輸入麦に依存をする考えでないか、こういうようなことを非常におそれておるわけであります。そこでこの辺を一つ明らかに言明してもらわないと、私はなかなかこの問題は容易ならざる問題だと、こう考えますので、その辺を一つ明らかにしていただきたいと思う。
  101. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 先ほども申しましたように、これは東さん御承知通りで、大裸の方は、需要がどんどん減退してきておることは事実なんでして、それを増産奨励へ持っていく手は、政策上ないと思います。しかも、それならば必要量を外国から買うか、今日まで外国からどんどん買うことは避けて減しております。輸入大裸については、そういう格好にありまするので、私どもは輸入する必要があれば、国内における農家のためにいかなる形をしてでも増産していただいて、その所得をふやす方向に持っていくのが、裸の生産の根幹であります。しかし、現実において需要が減ってきておる現状ならば、これはむしろ、どんどん話し合いのうちにこれを減らしつつ、かわるべき作物によって農家の所得を上げるということをやっていくことが、農政が正しい方向にいくのではないかと、かように考えます。
  102. 東隆

    ○東隆君 私は大麦と裸麦が国内産のものを政府がだいぶストックをしておることは、十分承知をいたしておるのであります。しかし、昨年度は輸入をいたしております。そういうことを考えて参りますると、私は麦作を今日のような状態にした責任政府にあると、こういうふうに考えておる。なぜかと申しますと、戦後食糧の不足の際に海外から食糧を輸入するのは、これは当然のことなんです。しかし、国内で生産が軌道に乗って、そうして海外から食糧を輸入する場合に、それを次第に減少していかなければならない。輸入を減少するのが、これが私は国内生産を高める唯一の方法だろうと考える。ところが麦の問題については、これはそういうような方法をとられなかった。米については、これは東南アジアの非常に強い輸出の要求を、これをけってしまいました。それからほかから来るのもこれをけってしまいましたが、しかし、このごろは韓国やあるいは台湾の米を政治的な配慮から入れておるようでありますが、外交上の配慮からでありましょうが、入れておるよでありますけれども、これは減少をしたのであります。しかし麦に関する限りは、政府は食管会計の赤字をなくするためかどうか知りませんが、輸入をどんどん続けてきておるわけであります。で、大麦も裸麦も御承知のようにストックが大きくなるので大あわてをして、本年輸入をやめた。こういうのが、これが現実でなかったかと、こう思うわけです。従って、私は麦の問題についての責任、私は国内産の麦を非常に減退さした責任、こういうようなものは、私は実は政府責任でないかと、このように考えるのであります。この辺を一つ解明をしていただきたい。
  103. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えいたしますが、食用の麦は輸入がだんだん減っております。飼料の一部はふえております。しかし食用の中でもソフト小麦といいますか、そういうようなものは減してきております。これは一がいに麦はどんどん輸入をふやして内地貯蔵をしているということは、あるいはお考え違いではないかと思います。私どもはあくまでも現実に立って農家の損にならぬように、そうして需要の減るものはこれを減らして、かわった作物で利益を上げる、所得を上げるという方向をとろうとしてきておるわけであります。大きく大裸等に関する内地需要が変わってきておるということ、これは東さんもよく御存じだと思いますので、多くをつけ加えませんが、それに即応して政策をとることは当然ではないか。過去においては、ともかく大裸に対しては需要があったんです。どんどん減っていく現状に即して、これに即応していこうと考えておるわけであります。
  104. 東隆

    ○東隆君 MSAの関係で小麦を輸入する問題から始まって、実は今もお話しになりましたソフトとハードの関係、これはその当時、非常に私は心外に思ったわけです。それは軟質の小麦の方が非常に価格は安いものでありますから、従ってそれを多量に輸入をしたのであります。これは私は少なくとも水田の裏作に小麦作をやることができる。これが日本の通常の状態なんです。これを完全にボイコットしてしまって、そうして現在のような状態に持ってきた。私は食生活の改善というような場合に、海外から輸入した小麦を中心にして、食生活の改善をやるなんというようなことは、私はこれはほんとうの考え方でないと思う。やはり国内で生産をされたものを元にして、そうして食生活の改善をやらなければならぬ。そういうような点で、私は国内で十分に生産することのできるようなソフト小麦を多量に今まで輸入したことは、これは大きな農政上の私は間違いであったと思う。こういうように考えるんですが、この点はどういうふうに考えておりますか。
  105. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ごもっともなお話しでありますが、現在日本でわれわれがおいしく食べておるパンは、あなたの御指摘のソフトでなくてハードのものです。グルテンの多い小麦でありまして、これは日本の内地でなかなか生産がしにくい事情は、あなたは御存じのはずです。で、これは私ども何とかして、農事試験等において、かつて昭和八年ごろに一応成功した段階にあったんですが、これの試験研究は命じておりますが、パン用の小麦としてはハードであります。この方の関係で輸入しておりますソフトはだんだん減しております。御承知を願いたいと思います。
  106. 東隆

    ○東隆君 硬質小麦が私はパンになることは十分承知をいたしております。従ってその硬質小麦について農林省が生産適地を選んで、そうして新種をまた育成しておることも承知をいたしております。これは将来硬質小麦の輸入も減すためにお考えになっておることと、こういうふうに考えておるわけであります。過去において、うどんやその他のめん類にすることができるようなソフト小麦をわざわざ国内に持ってきたことが、日本における小麦作を非常に後退さした理由ではなかったか、こういうふうに質問をしておるわけであります。
  107. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) その点は先ほど申しましたように、三十四年度後半から今日までソフトはだんだん大幅に輸入を減しております。
  108. 東隆

    ○東隆君 小麦の輸入というものについて、政府は実はあまり減少をさせないのではないかと、こういう疑問を持っておるわけです。小麦の輸入ですね、これを将来なかなか輸入を減少しないのではないか、こういう疑問を持っておるわけであります。理由は、私は今度のドルの防衛関係から、私は少なくとも日本の工業生産品をアメリカに送り込むためには、私はどうしてもアメリカの第一次の生産物であるところの石炭であるとか、鉄鋼であるとか、あるいは農産物、こういうような第一次的な生産物、これがアメリカでは少なくとも輸出の五〇%以上を占めておると思うのであります。工業生産物は五〇%に達しておらないはずであります。そういうふうに考えて参りますと、先方から私は第一次の生産物であるところのたとえば綿花、あるいは小麦、こういうようなものを日本は輸入をして、そうしてその代償に日本の工業生産物を送る、こういうことになるおそれが非常に大きいのであります。これは貿易の伸展をする意味からも、私は非常に大きいと思うのであります。これは私は通産省と、それから農林省との間に非常に大きな考え方の相違ができる点であろう、こう考えます。従って、この点を一つそういうようなことはないと、そうしてあくまで国内の麦の生産を助長するために農林省は大いにがんばるのだ、こういうことを農林大臣からお答えを願いたいし、また総理大臣からも一つその点について明確に一つ断を下していただきたいと、こう考えるわけであります。
  109. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) でき得るだけ内地の生産を増加して農業者の所得を高める方向へ持っていきたいと思っております。ことに、今御指摘の小麦の輸入等は、アメリカの圧力によってアメリカの小麦を輸入するかというお尋ねであったように思いますが、これは食管会計によって国が買いますのでありまして、その需給計画に基づいて買いますので、これはアメリカひとりに独占させることは許されないことでありまして、必要量買う場合においては、グローバルテンダー方式という、何かむずかしい言葉を使っておりますが、無差別競争入札の方法によって買うことにきめられております。それでどの特殊な国から特別に買うというようなこともございません。
  110. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 貿易は農林大臣が答えましたように、原則としてグローバルでいくべきでございます。ただ、以前においてはドル地域の十品目については制限をしております。これはもうほとんど大部分なくなりました。大豆あるいはその他一品につきましてこれをはずせばグローバルでいくべき筋合いのものでございます。ただ問題は、低開発国につきましては、輸出入の関係である程度の考え方は変えていかなければなりませんが、アメリカに限りましては、アメリカ合衆国に対しまして特に輸出せんがために輸入するというふうなことはございません。
  111. 東隆

    ○東隆君 アメリカの方は御承知のように余剰農産物として小麦は非常にストックされております。一ブッシェル七十五セントくらいのものを、一ドル補給をしてそして買い上げたものが何でも二年分の生産をストックしておる、こういうので、アメリカの私は海外に輸出する希望というものは、これはもうすこぶる大きいものがあろう。従って、今お答えになったことではそう間違いのないようなお答えでありますけれども、しかし、今のアメリカの余剰農産物の中における小麦の数量、こういうようなものを考えますと、私はそう安心ができないのであります。従って、この点は一つお答えを願ったことを信用いたしますので、一つ国内の麦の生産について力強い方針で進んでいただきたいと思う。私はなぜそういうようなことを申しますかといいますと、酪農を振興させるためにも、また畑作を輪作その他を考えましても、私は少なくとも麦を農産物の中に入れなければほんとうの意味の酪農の振興なんということはできないと思います。また麦ができるような土地でなければ私は第一級の土地でないと、そういうような意味で、どうしても国内で麦の生産を相当進めていく、こういう考え方に立たなければ、日本の農業というものは私は完全に発達をしない、こういう考え方を持っておるわけであります。従って、麦作の対策協議会等における私はいろいろな意見を述べる方は、主として経済方面その他の方面の人が多いのじゃないか、こういうように心配をいたしておりますので、一つ麦の方面の優秀な技術方面の方等から意見を十分に聴取して、そして国内の麦作の進展ということについて、一つ農林大臣、十分にお考えを願いたいと思います。  次に……。
  112. 羽生三七

    羽生三七君 委員長、関連……。
  113. 館哲二

    委員長館哲二君) 東君、よろしいですか。
  114. 東隆

    ○東隆君 それでは……。
  115. 羽生三七

    羽生三七君 今、東君の御質問で、食糧の食管制度、特に米の今の機構は動かすことがないというお話でありましたが、それはそれとして、農家の売り渡し、政府の買い入れのことは今のお説の通りだろうと思いますが、配給機構ですね、何か配給日数をふやすとか何とか言っておりますが、その方は何か変更するのですか、既定方針通り変わりはないか、この点ちょっとお尋ねしておきます。
  116. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 政府の買い上げ、貯蔵しておる米は相当ございますので、配給の日数ですかをふやしたらどうかということは、今研究をいたしております。まだ決定いたしておりません。(「配給をふやすから機構をいじるかということですよ」「自由販売するかということです」と呼ぶ者あり)
  117. 羽生三七

    羽生三七君 配給の日数はふやすということは承知しておりますが、機構をいじる考えがあるのかないのか、そういうことです。
  118. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ただいままだ決定いたしておりません。
  119. 東隆

    ○東隆君 次に、私は食管会計の赤字に対してどういうふうに政府はお考えになっておるのかお伺いをいたしたい。それは大蔵大臣と農林大臣とではだいぶ考え方が違っておるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。これは新聞の中に書いてあることをここに持ち出すわけではございませんけれども、先ほどお答えになりました公企業における赤字の問題について、農林大臣の考え方と、それから大蔵大臣の方ではあくまで赤字をなくしよう、縮小しようと、こういうお考えでありますので、この岡にだいぶ対立があるのじゃないか、こう考えますので、面相から一つそれぞれお答えを願いたいと思います。
  120. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私が先ほど申し上げたことは、決して対立も何にもないのであります。よく大蔵大臣とは連絡をしてお話を申し上げております。
  121. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 食管会計は、当初食糧不足のときに、これを公平に国民に配分をするという機能を重んじて作った制度だと思いますが、その後この機能も現在では私は喪失していると考えております。むしろ米価を安定させることによって農家生計の安定に寄与するということと、一定の価格で一定の配給を保証するということによって、消費者の生計の安定に寄与するという面の方が今食管制度の持っている機能としては重い。しかもそのうちで増産になり、余裕が出てきましたために、やみ値が配給価格より下がるとか、あるいは食糧配給辞退者が多いというような事態考えますというと、消費者の生活安定という方向に寄与するよりも、むしろ生産農家の生活安定に寄与しているという機能の方が今一番強い制度になっておると考えております。もし、そうだとしますというと、ここから出る赤字というものは、先ほど農林大臣が答えられたように、単純に考えるわけにはいきませんので、私どもはできるだけ現行制度の合理化し得る面は、運営において合理化し得る面は合理化するようにいろいろの工夫をこらすことが必要だとは思いますが、しかし、今出ているような赤字というものは、これは考え方によれば、農業保護政策から出た赤字とも思われますので、今後農業をどう保護するかという根本的な農業政策が確立するときには、農業を保護する金としてかりに何百億円の国費が出ようとも、これはやむを得ませんし、またそういう政策を今後立てる必要があるかとも思いますが、そういう基本的な農業政策ができないときにおいては、今の食管制度がそういう面の機能を果たしておるというふうにも考えておりますので、この赤字をできるだけ現行の食管制度内の改善において赤字を減らしてもらいたいということがわれわれの希望でございますが、やはりこれは農業政策根本的なものの確立を待って合理化していくべき制度だと、この基本政策ができない限りは、私どもはこの赤字はやはり一般会計からもうきれいに負担してやるよりほか仕方がない。けっこう、これについては先ほど神経質ということでございますが、この食管制度の機能が変わってきている現在の実情を見ますというと、あまり神経質にもいられませんので、私どもは割り切つた今考えを持っておると、こういう状態にあります。
  122. 東隆

    ○東隆君 私はどうも頭が悪いんで、お二人の話が同じものだとは実は考えないのであります。そこで伺いますが、私は食管会計における赤字は、農林大臣はこれは補給金のような、補助金のようなものだと、こういうふうに言われたとかどうかということが新聞に出ておった。私はまさにそうでないかと思うのです。それで食管会計の赤字をこしらえるのはぞうさもないことでありまして、生産者米価を高くして消費者に配給する価格を安くすれば食管会計の赤字はすぐ出てくるわけでありますから、従ってこの問題は、今の段階において赤字というのは、これはもし合理的に経営をされておるとすると、この赤字は補助金のようなものと、こういう農林大臣の考え方は私は正しいと思います。  そこで、私はこの際政府がいろいろ減税だの何だのいろいろな方法をされるのでありますけれども、私はそういう減税をするお金があるならは食管会計に大きく補給をして、補助金を出して、そうして生産者価格は生産費を十分に償う価格で出すし、それから消費者にはできるだけ安い価格でもって配給するということになりますと、農民所得もふえて参りますし、従って購買力も出てくる。また、消費者も実質的な収入がふえたことになるのでありますから、購買力がふえる。こういうことによって初めて生産もどんどんふえて参ります。この連鎖反応の方が今お話しございましたように、内部でもって食管会計の赤字を少なくする、合理的に少なくする、そういうようなお考えよりも、そういう考え方の方が、私は所得倍増に大きな役割を果たすのではないか、こういう考え方を打つわけでありますが、これは私は、大蔵大臣、農林大臣にお聞きするよりも、総理大臣に私の意見を一つ述べましたが、これについて御所見を承りたい。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はせっかくの御意見でございまするが、賛成しかねるのでございます。やはり一国の産業は、農業、工業、商業といわず、全般が均衡のとれた方向でいくべきであると考えます。米の生産者価格をどんどん高くして増産して、そうして消費者価格を据えて置くか、あるいは下げる、そうしてうんと税でまかなうということは、戦後はそういう考えでやって参りましたが、昭和二十四年からだんだんそういうことは改めまして、いわゆる補給金、竹馬経済というのは、日本の自由主義経済、日本の経済の発展によくないというのでやめてきたわけです。私は米の問題につきましては、東さん御承知通り昭和二十六年には、統制を撤廃しろと決意したのでございますができませんでした。その後石橋内閣のときに、私は消費者価格を引き上げました。いわゆる赤字解消ということでやったのでございますが、だんだん年がたつにつれまして私の考え方が変わって参りました。今、農林大臣、大蔵大臣が答えた通りに言っているのであります。だといって、あなたのその説には私は賛成しかねる、そういうことで、あなたの説でない私の考え方の方が、農産物に対しまする大体今の世界の流れではないかと思います。ただ私は赤字を少なくするために合理化はやっていかなければならぬ、赤字のために、この非常に効果を上げておりまするところの食管政策、あるいは今の米の統制を変えていくという考えはございません。
  124. 東隆

    ○東隆君 首相は反対をされましたけれども、私は米はこれは国際的な商品としての農産物ではない。特に日本人に一番関係の深いものでありまして、しかもおそらく大部分の日本人は米を食っているわけでありますから、この基本的なものに手を加えることによって、私は日本の物価体制、値段ですね、価格体制をある程度チェックすることもできるし、所得倍増の基本的の問題に私は関連をすると思う。なぜかといいますと、昔は米の値段でもって諸物価がきめられておった。これがスタンダードになっておった、標準になっておったわけです。しかし、統制経済が進められて、外部のいろいろな農林資材その他の配給によって決定する、こういうようなことになって逆の形になっている。しかし、私はそういうふうになっているがゆえに、米の価格に手を加えることによって物価を安定させることができる、こういうような考え方に立つのでありますが、これはあまり申し上げると時間を食ってしまいますから申しませんけれども、しかし、政府の所得倍増論を考えてみますときに、物価の安定ということについてお考えがないと思う。で、所得倍増をいかに進めてみましても、物価が上がったのでは、私はイタチごっこになってしまって、そうして決して国民の幸福な状態にはならぬと思うのです。だから、この点は十分一つ反省を——こう言うと言葉は過ぎるかもしれませんが、お考え直しをいただきたい、こう思うのです。  そこで時間もなくなりましたから、私はその問題をこの程度にとどめて、工場誘致の問題です。これは工業を地方に分散させるということが私はやはり所得関係の倍増に非常に関連があると思うのですが、この点について質問をいたします。私は中央から地方に工業を分散させるいろいろな方法をお考えになっておると思うのでありますけれども、どういうお考えか、これを一つお聞きをいたしたいのであります。これは企画庁長官にお伺いをするのが筋道かもしれませんが、しかし今おりませんから、一つ関係の大臣にお答えを願いたい。
  125. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お話の点もっともであります。内閣が所得の倍増の中に、ことに農業関係を他の産業と均衡せしめるようにするという問題の中には、当然農業プロパーの発展によって所得を上げる部面と、農家としての所得としては農業外所得をふやしていくということを二つねらっておるわけであります。この点が総理の言われる、商工業の方に移動していく人間を、これを頭に置いてお話しになっている点でございますが、これを遠く京阪神あるいは北九州あるいは京浜地帯に出さなくても、農村地帯あるいは後進地域に工場を分散させて、家から通いつつ、農家外所得を上げる方法考えていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。ただ、これにつきましては、具体的に、産業別にどの産業をどの地方へ移すかということは、水の問題及び電気の問題等あわせて考えていきたい、かように考えます。
  126. 東隆

    ○東隆君 私は工場の立地条件その他等を考えたときに、実は北海道のような地帯における工場誘致の問題には私は非常に国が考えを進めていかなければならぬと思うのです。で、今北海道では、御承知のようにビート、テンサイ糖業工場の誘致の問題、それから漁業関係の大きな会社が実は陸に上陸をして参っております。これは大きな問題になっておりますが、しかし、私はほんとうに工業を育成するためには、北海道の内部でもって条件が整わんけりゃならぬと思うのです。その意味において平素主張をいたしておるのでありますが、北海道における寒冷地帯その他の地帯における所得税の特別控除、これを当然考えなければ、工場の地方分散、こういうようなことは考えられない。特に北海道のような条件の所では私は所得税の特別控除を大幅にお考えになる必要があるのではないか、こういう考え方で、これもいろいろな理由その他を申し上げますと長くなりますから申し上げませんけれども、ただ公務員の石炭代の減免というような、そういうことをやりましても、これは工場を誘致するというような点には何も関係がないと思うのです。それからまた、工場を誘致するために、たとえば固定資産税を減免をするとか、あるいはそういうようなことをやってみたり、あるいは来年は何でも土地の方には固定資産税を上げて、そうして設備の方面にはこれを下げるんだ、こういうようなことを言われておりますが、しかし、こういうようなことで工場を誘致するということはできないと思うので、基本的に、私は北海道のような特別地帯には、寒冷地控除というような意味で、所得税の特別控除を考うべきでないか、こういう考え方を持っておりますし、この考え方については北海道選出の国会議員もすべて同感であろう。この点についてどういうようなお考えをお持ちであるか、特に首相から、また大蔵大臣からもお伺いをいたしたいのであります。
  127. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 寒冷地と申しましても、なかなか範囲がむずかしいことは御承知通りでございまして、寒冷地という理由によってこういう特別措置をとるということは、税制においても、その他の問題においても、私は困難だと思っております。結局この問題は、後進地の開発計画の一環として、国が今後こういうものに対してどういう措置をとるかという角度から考えて解決をはかるのがいいのじゃないかと、私自身はそう思っております。
  128. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 固定資産税のことについてお尋ねがあったようでありますから、簡単にお答えしておきます。これは地方税法にきまっておりまして、三年ごとに固定資産税の改定をやる、ことしその年度にあたっておりますが、ごく非常に最低の土地についての固定資産の評価がえの基準を今市町村に示しておるわけでありまして、特別に施設について格別の措置をやるということは特に考えておりませんが、農家につきましては、農家の建物につきましては、これはその利用度とか、あるいは床面積とか、そういった利用度の非常に低いという点について、むしろ軽減措置を考えるのが至当じゃないかと思って、これについては行政措置を考えておる次第でございます。
  129. 東隆

    ○東隆君 私は工場誘致その他についての地方分散の条件、これについてもう少し具体的なものをお聞きしたいと思うのです。私が今申し上げたのは、私は一つ方法だろうと思う。それで、それ以外にいい方法がございましたら、一つそれを承りたい。そして、私はこれで終わることにしたいと思います。
  130. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 従来、工場誘致の問題といたしましては、主として地方自治団体において、固定資産税の一定期間の軽減ということが行なわれております。また、国全体といたしましては、低開発地方に対しまして特別の公庫を設けまして金融の道を開いておったのでございます。しかし、それだけでは十分でございません。従って、私は今後におきましては、工場の分散という意味でなしに、新しい工場を地方に持っていくように、いろいろな助成方法考えたい。たとえば固定資産税の軽減というのも、三年、五年というのでなしに、やはり事業によってその年限を伸ばしていくとか、あるいは工場が設けられたことによっての標準財政収入の見方をどうするとか、あるいは国税の方において特別措置をとっていく、すなわち資産の償却について特別の方法を講ずるとか、あるいは所得に対して特別の方法を講じるとか、いろいろな手もあると思います。また、金融におきましても特別の金融を考える、また金利の点等々、いろいろな問題があると思うのであります。外国におきましてもそういう例がございますので、私は十分検討いたしまして、この低開発地方の開発の一助といたしまして、新設工場をできるだけそういう地方に持っていくような助成措置をとりたいと考えております。   —————————————
  131. 館哲二

    委員長館哲二君) 小平芳平君。(「要求大臣来ていないじゃないか」と呼ぶ者あり)まだもう少し待って下さい。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めに総理大臣にお伺いしたいのでありますが、わが国の経済にも、また国民生活にもいわゆる二重構造という格差が大きい、同じ産業の中でも、企業の規模別に見ても、いわゆる大企業と中小企業、あるいは大企業と零細企業というふうに非常に一人当たりの賃金にしても、労働生産性にしても大きな格差がある。また、産業別に見ても第一次産業と第二次産業というふうな格差が大きい。あるいは地域別に見ても、いわゆる低開発地域というような大きな格差が存在している。こういうことはわれわれが現実にも感ずることでありますし、また統計資料でも詳しくわかっているのであります。ところで、そういう格差を解消して国民全体が繁栄を満喫できるような方向へ発展していくべきである、そういう点についても、だれしも異論がないことと思うのであります。ところが、問題は、その格差をどのような方向で解消していくか、この点が非常に問題になっていると思うのです。池田総理大臣は、経済の高度成長というような中に、その格差を解消していくというふうに了解してよろしゅうございますか。
  133. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は経済の成長が、国全体の経済力の拡大になると同時に、もう一つ大事なことは、お話の、各般における所得の格差をなくしていく、これが一つの大きい目的であるのであります。御意見と全く同じでございます。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 その格差を解消する方法として、高度経済成長、高度経済の成長によって格差が解消できる、このように了解してよろしいわけですか。
  135. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) さようでございます。
  136. 小平芳平

    ○小平芳平君 その経済成長率について、また、非常に問題にされているのでありますが、経済の高度成長が格差を拡大する、かえって拡大するというおそれがあるという意見もありますし、また、現在総理大臣がお答えのように、格差をなくす方法であるというふうにもいわれているのであります。ところが、成長率、経済の成長率は七・二%が、たとえば少ないとか、九%が多いとかいいましても、それは将来の見通しでありまして、どれほどの確実性があるか。それが単なる見通しか、それとも政策の目標として推進していくというふうに理解してよろしいか、そのどちらですか。
  137. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この経済の成長は、これは政治家あるいは内閣がこうやってやるんだ、これだけ伸ばすんだということは、私は言えないと思います。成長というものはやはり外部から押しつける問題でない。国民が経済の成長を決意し、そうして、それに向かって行動していくということ、こういう決意と行動によって初めてでき上がるものでございます。私といたしましては、この国民の決意、行動、すなわち創造力、ポテンシャル・エナージーというものを刺激して、これを強化する、そして自由な建前においてこれを伸ばしていくという、いわゆる雰囲気を作り上げるということがわれわれのなすべきことであると考えておるのであります。従いまして、私が所得倍増を唱え、また過去の状況から見まして、大体国民のポテンシャル・エナージーをうまく伸ばしていくならば、大体十年を待たずして倍増ができるのではないか、しかもそうすること以外に各般の格差をなくする方法はない、こう考えて、十年以内の倍増論を考えたのでございます。しこうして、最近の状況を見ますというと、私は来年度におきましても、昭和三十五年の総生産を三十一年—三十三年の物価平均で見まして十三兆六千億これを土台にしていくならば、昭和三十六年におきましても九%の成長率は一応見込み得るのじゃないか。幸いに九%という見込みつきましては、社会党さんも民社党の方々も大体同じような意見であられるように私は聞いておるのであります。
  138. 小平芳平

    ○小平芳平君 経済が高度に成長していくということは、もとよりだれしも反対する理由はないわけでありますが、ただ九%という一つの目標が立ったときに、いかなる条件のもとでも九%を推し進めていくことができるかどうか。たとえば今日のように、アメリカのドル防衛措置に関連する一連の政策などはもとより総理大臣としてはお考えの中に入れての九%というふうに理解するのでありますが、今後どういうような条件が、非常に条件が変わった場合には当然九%という見込みが大きくくずれることもあり得るのではないかと思われますが、この点いかがでございましょうか。
  139. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは小平さん御承知通りに、過去八、九年、十年ぐらいをとり、また最近の五年ぐらいをとりましても、その年によってよほど違っております。たとえば今年は実質的に一〇%をこえる、昨年は実質的に一七%七、一昨年は五%、こういうふうに動きはございますが、なべて私は年平均三カ年間の見通しとしては九%平均でいくのではないかという見通しをつけております。なお、三十六年度におきましては、私は先ほど申し上げましたように、三十一年ないし三十三年の物価によりましてはじき出した三十五年の十三兆六千億という総生産を基本にいたしますれば、三十六年度の伸び率は九%は私はいけると思っておるのであります。三十七年度においてどうか、三十八年度においてどうかということになりますると、これは三十六年度の実績とは申しませんが、経過を半年ぐらいずっと見てやるべきである、しかし、これはあくまで目標でございますから、来年三十六年度において九%の年率の予想が一二%になるからそれはいかないといって成長をとめるというわけには参りません。しかし、行き過ぎは改めるような方針をとらなくてはならない。しかしまた、三十七年度が四%しかいかないというのを無理やりにこれを九%にしようということはいかがなものかと思います。しかし、前年が一〇%程度にいったときに、その翌年が三%とか四%とかいうようなときには、どこに原因があるのか、そしてその次年度においてはどうなるかということを見ながら、これは弾力的政策をとっていかなきゃいかぬ。ただ、年率九%というのは最近の情勢を見まして一応そういう見方でいいのじゃないか。ことに私は少し急ぎまするゆえんのものは、三十七年度におきましては、新規労働力は百七十万くらい、三十八年、三十九年には新規労働入口が百八十万人程度にふえると、こういうことを見込んで、それに対応する措置を少し急いでとるべきではないか、こういう考え方で三年間のものを見込んだわけであります。
  140. 小平芳平

    ○小平芳平君 成長率については九%ということが、かりに民間の団体などで国民の決意として推進しようという場合の成長率と、それから政府が九%を基本として倍増計画を立て、また予算編成しようという場合と根本的に違うように思うわけであります。政府が高度の成長率をとる、そしてその上で重点的に政策を実施し、また予算編成するということが今問題になっているわけであります。そうして高度の成長率の政策が実施されていく場合には優勝劣敗と申しますか、やはり自由主義競争の結果として当然強力な産業や企業は九%を上回った成長を遂げるのでありましょうし、また弱小の産業や企業は九%にも及ばないものもあるでしょうし、またあるいは企業閉鎖しなきゃならないようなものもあるいは出てくるかもわからないのであります。そういう場合に格差は一時的に拡大するということもこれは事実として認めざるを得ないのではないでしょうか。
  141. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 誤解があってはあれでございまするが、政府が九%の成長率をまずきめてどうこうするというのじゃないのです。民間の方がそれだけいくだろう、しこうして民間は個々の産業につきまして自分の経営から割り出しますが、民間がそういうふうにいった場合に、政府として行なうべき公共投資あるいは減税あるいは社会保障、こういうものを、民間がこれくらいいくだろう、そういう伸び方を政府が押えてもいかぬし、はっぱをかけ過ぎてもいかぬ。大体この程度で政府がそれに対応する施策を講じていこうというのが順序であるのでございます。  それから第二段の、産業のことでございまするから、しかも外国関係がございますので、うんと伸びる産業もありましょうし、また斜陽産業もございます。お話通りに石炭なんかも斜陽産業でございます。船なんかもそうでございます。そういうものにつきましては、許す限りにおきましてこれが対応策を講ずる。だから、伸びるのもあるし、伸びないのもある、その格差をどうするかという問題は、これは別個の問題で、政府としてできるだけの格差の少なくなるような、そして斜陽産業の他への転換とか、いろいろな点で考えていくべきであると思います。
  142. 小平芳平

    ○小平芳平君 経済の拡大成長率と政府政策とは別個の問題であると、それは一応別個の問題ではありますが、やはり政府の施策というものはそういうような斜陽産業あるいは二重構造の底辺と申しましょうか、そうした面の救済もまた大きな一つの施策の面であると、このように考えてよろしいでしょうか。
  143. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その通りでございます。
  144. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、いろいろと政策面の重点的な施策が考えられてくるとは思いますが、経済が高度に成長する。しかし一方にはまた非常に取り残される面ができる。そういう実情の中にあって、たとえば社会保障というような問題について、総理大臣から組閣の当初、社会保障を再重点にするというような所信が表明されたように思うのでありますが、その点については今も変わらないということでしょうか。
  145. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 変わりはございません。私はその当初よりも、今の経済その他の状況から申しまして、当初考えておったよりも、より多くできることを私は自信を深めて言っておるのであります。
  146. 小平芳平

    ○小平芳平君 何かその点について、具体的に来年の予算編成に関する方針がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  147. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 来年度におきまして三つの柱、すなわち減税と社会保障と公共投資、こう言っておりますが、御承知通り私は七月に内閣を組織いたしましたころのあの経済状況から由しますると、減税は平年度千億円余り、こう言っております。しかしそのときに一般にいわれておることは、七月ごろは今年度の自然増収は千二百億ないし千三百億円だろうか、こういっておりました。来年度の収入増は二千二、三百億円あるいは二千五百億円くらいじゃないかといわれておったわけであります。しかるにだんだん時が経過いたしまして、最近では千二、三百億円という自然増収が千六百億を見込み得るようになりました。そうするとそれだけ経済基盤が大きくなる、伸びたわけです。しかし減税の点に至りましては、平年度千億円余り、この限度を置いております。だから来年度の増収分二千五百億円というのが三千億を超える状況でございます。しこうして減税の方は、当初の経済基盤があまり伸びなかった分で押えておりますから、収入増の分は、私は社会保障制度に、あるいは公共投資の方に回し得る。だから当時考えておったよりも社会保障制度の拡充強化は、七月に私が言い出したときよりも、経済が伸びた、減税をそのままにしたというので、社会保障制度その他においては大へんな自信ができた。よく新聞では後退したといわれますが、私自身は一つも後退していない。非常に前進しているということを確信を持って言えるのであります。
  148. 小平芳平

    ○小平芳平君 社会保障につきましても、また、たとえば中小企業対策とか、あるいは完全雇用とか、いろいろ問題があると思いますが、時間の関係でそれは内容に入らないでいきたいのでありますが、要するに社会保障制度は十分にやっていく。それから、十分にと言われても程度があるわけですが、要するに経済の高度成長、それに伴う社会保障制度の充実、また中小企業対策をやっていく。特に経済が成長していく過程において日の当たらない産業、それからまた日の当たらない階層と申しましょうか、そういう底辺の部分についても十分に考慮していくという施策が当然とられなければならないと思うわけであります。  それからもう一つ、今度は別の問題ですが、最低賃金法による最低賃金制が決定されているわけでありますが、その状況について労働大臣から御説明願いたいと思います。
  149. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) お答えいたします。ただいま約三十八万人に適用されております。その結果大体一制から二割の程度の賃金の上昇を示しているのであります。明三十六年から向こう三カ年の間に二百五十万くらいの適用労働者数に伸ばしたいと考えておる次第であります。
  150. 小平芳平

    ○小平芳平君 この実施されているところの最低賃金法は業者間協定というような、まあ労働者側にとっては非常に不満の多い現行法でもありますけれども、それにしてもその徹底の状況が相当な成果をおさめたというふうにお考えになられるか。まだまだ今後相当徹底していけばもっと成果を上げ得ると、そういうふうな将来の見通しについてもう少し詳しく承りたい。
  151. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 現行の最低賃金法についていろいろ問題があり、そしてこれが完全なもの、理想的なものであると私は考えておりません。将来改良を要する点がたくさんあることは当然でございます。ただわが国の中小企業の実情、その他から勘案いたしまして、現在の段階では現行法の行政効果をあげていくことに全力を注ぐのが最も効果的であり、適当であると判断いたしておる次第であります。現在、先ほど申しましたように三十八万人の労働者に適用されているのでありますが、その状態は数においてもちろんまだはなはだしく不足であります。しかも、これは地域的にはそのうちの組三分の一、四分の一以上は静岡県に非常に普及いたしておるのでありまして、地域的に全国的に普遍的であるとは言えないと思います。それから行政指導その他にあたりまして、特に十五才で決定いたします場合においても、一日日給二百円を下らないように行政指導を今いたしておる次第であります。先ほど将来の見通しを申し上げたのでありますが、二百五十万程度に普及することを現在の目標といたしまして努力をいたし、その経過を通じて問題点を拾い上げて、さらに前進するように改正等もその後において検討いたしたい、こう考えておる次第でございます。
  152. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一つ労働大臣から失業対策につきまして、まあ完全失業者が七、八十万人から、あるいは四、五十万人に減り、またなお減る傾向にあるというふうにも言われているのでありますが、一方において経済の高度成長と、またそれに対する完全雇用に対する大臣の見通し、見解について御説明願いたい。
  153. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御承知のごとく、わが国の現在の雇用情勢というものは、経済の順調な伸びに従って非常に好転をいたしつつあります。しかしそれだからといって問題がないわけではないのでございまして、完全失業者の割合からいうと、現在各国に比べて非常に低く、かつそれが減少の道をたどっているのでありますが、その背後に相当数に上る不完全就業者の存在があります。それから自営業あるいは家族労働者というものの存在、特に就業構造上から、先進国と比べて特徴的な存在であります。また、先ほど総理に対する御質問の中にございましたように、石炭その他特定の職域から集中的に出て参りまする失業者の問題、それに関連をいたしまして、雇用情勢地域的なアンバランス、それから年令的アンバランスあるいは技術的アンバランスというものが存在をいたしておりますことは、御承知通りであります。従って、雇用の状態を改善をいたして参りまして、そうしていわゆる完全雇用に近づけて参りますためには、このアンバランス是正いたしますために、労働力の移動性を確保いたしまする諸般の施策が必要と考えるのであります。すなわち地域的偏在に対しましては、住宅の建設あるいは移転、移住資金の給付、それから特に失業者の集中的に発生いたしております地域に対しましては、やはり企業の誘致、不況地域に対する特定の施策というものが必要であろうと考えますし、また年令的なアンバランスにつきましては、中年層、高年層に対する職業の造出あるいはそれの適職の調査、さらに産業界の協力を求めていく手段が必要であると存じます。技術的偏在につきましては、職業訓練の強化とともに、学校教育の内等等についても、技術者の養成に努力をしていただくように願わなければならない、こういうふうに考えている次第であります。
  154. 小平芳平

    ○小平芳平君 特にただいま大臣が御指摘のように、炭鉱離職者の場合にいたしましても、本人の悲惨な生活はいうまでもなく、さらに社会的にも社会不安の原因となりかねない。そうしてまた一方においては、経済の高度成長がうたわれながらも、また一方においては、ここわずか二、三年の間に何万人、数万人の炭鉱労働者が減っている、今後も減らさなければならない趨勢にあるというような状況にあるわけでありますが、炭鉱の離職者に対する施策についての今後の見通し、特にその首切られてから失対事業を起こしてもおそいわけでありますから、ある程度その見通しがついたならば、それに対する施策も当然考えられなければならないと思うわけでありますが、この点について。
  155. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 炭鉱労働者の減少の状態でありますが、三十四年度は約三万人、三十五年度は四月から十月までが一万五千くらい出ました。三十六年度は二万五、六千名出るのではないかと考えているわけであります。これらに対しましては、御承知のごとく、炭鉱離職者臨時措置法を中心といたして、諸般の施策を進めているわけでありますけれども、御指摘のように、どうも失業の発生に就業対策の方があとを追っかけているという状態である御批判は免れ得ないと存じます。そういう認識の上に立ちまして、さらに積極的な施策を、失業の発生に先んじて行なうように努力をして参りたいと考えているわけであります。現在のところは、まず第一、広域職業紹介につきましては、三十四年度は三千五百名程度、それに県内あるいはその地域内の職業紹介は約八千くらいであります。それから三十五年度におきましては、四月から十月の岡に二千七百名に対して広域職業紹介をいたしまして、これとその自県内の職業あっせんを加えますと一万一千名程度に止っているわけであります。また、他地域に対する新しい就職移動等のために給与いたしまする移住資金の給付総数は、三十五年は九千名の予定でありましたが、現在すでに六千名をこえる者に給付をいたしておるわけであります。しかしながら、今までの炭鉱離職者援護会あるいは臨時措置法の適用の範囲ではなお適当でなく、かつ不十分な点も見られまするので、今期、炭鉱離職者援護会の余裕金をもちまして、明年度予算を待たないで、労働力の不足地域に対しまして、労働者の移動用の住宅の建設をすでに開始いたしまして、現在名古屋に六棟、大阪に一棟、神戸に一棟建設中であります。  なお、職業訓練は、一般総合及び公共合わせまして六千名程度の職業訓練を行なう準備を進めておるのでありますが、現在のところ、すでに卒業を見ました者が八百名弱、それから現在訓練中の者が千六百名弱じゃないかと思っておるのでありまして、これは私どもの準備が足りないと申しますよりは、まだいろいろの点がございまして、職業訓練所へ入所希望者の数がわれわれの朝待するほどに上っていないという実情であります。ただ、職業訓練所を出ました者の就職率は、一般的に申しまして九七%以上に上っておりまして、その残った三%も就職口がないというのではなくて、その他の事情によって、たとえば自動車の運転の訓練を受けましたが、免許証をまだもらえないというような事情によって延びている者が多いのであります。従って積極的に職業訓練所へ入所していただくように勧奨をいたし、進めて参りたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  156. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、地域格差の問題について少し御質問いたしたいのであります。人口が都市に集中し過ぎる、そして都市では非常に人口が多く集まり過ぎて、住宅難、交通難、環境整備の立ちおくれ、そういう問題が指摘されているわけであります。一方農村、またその他の中小都市では非常に若い働き手が大都市へ流れていきますから、ますます貧乏県が貧乏県になり、貧乏都市になっていくというようなことがすでに指摘されて久しいわけであります。そこで今日でも、なお最近発表されました国勢調査の結果を見ましても、二十六の農業県の人口が減っている。またこれはそれほど確実な統計資料かどうか、ちょっと私もよく見てないのでありますが、通産省が行なった十カ年の見通し、工業立地の見通しというその調査でも、既成工業地帯へほとんど集中しようという傾向にある。あるいはただいま労働大臣から御答弁の炭鉱離職者の広域職業紹介の就職先といいましても、結局東京とか神奈川、大阪、愛知、兵庫というような点に集中しているのが現状なんであります。そこで、池田総理大臣といたしまして、何かそこに抜本的なお考えをもっと明るい見通しを築いていくというような点がありますかどうか、お尋ねしたいと思います。
  157. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般答申になりました所得倍増計画におきましても、またお話の通産省の十年後の見通し等につきましても、実は私が考えているほど、また希望している理想ほどに所得格差、ことに地域的格差という問題についての関心がちょっと薄いのではないかという気がいたしている次第であります。従いまして所得倍増計画案にいたしましても、まずベルト地域の方へ工場を設けた方が能率が上がる、能率本位に考えて、国土の総合開発ということについての私は考えが、もちろんおありと思いますが、私ほどにないのではないかという気がいたしておるのであります。従いまして、先の御質問がありましたように、今後各国の事例等を見、また日本の実情に沿うように思い切った、いわゆる地方低開発府県の開発を私はやっていきたい。なお、通産省の方におきましても、従来から工場の適地調査というのを数年前からやりまして、各府県の各特定の地域について地質がどうだとか、水がどうだとか、いろいろなことを調べておるのであります。この調査をもっと進めて参りまして、私は国土の総合開発に先ほど来申し上げておるように力を入れていきたいと考えております。
  158. 小平芳平

    ○小平芳平君 大へん御熱意のある御答弁一つ大いに推進していただきたいと念願するわけであります。  それから経済企画庁の方へお尋ねしたいのですが、国土総合開発法というのができまして、ちょうど満十周年記念というのをやったそうでありますが、どうもその総会開発計画ができていない。それは特定地域の指定とか、あるいは北海道、東北、九州、四国というような開発促進立法はできておるのでありますが、どうもその総合開発計画ができていないのでありますが、この点についての見通しを一つ御説明願いたい。
  159. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 御指摘の通り、国土総合開発法ができましてから十年になりますが、国土総合開発計画というものは、まだできておりません。これにつきましては、いろいろな困難な情勢が以前あったためにできなかったのでありますが、今回所得倍増計画も策定せられました関係上もございますし、先ほどの地方分散の問題、あるいは地域的な格差の是正の問題、ただいま御指摘になりました人口の都市集中の問題等も関連をいたしまして、どうしても総合的な国土開発計画を立てなければならないという必要に迫られて参りましたので、先日企画庁におきまして、それに着手をいたしまして、できるだけ早く成案を得たいと目下努力をいたしておるところであります。
  160. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは先ほどの東委員の最後の御質問にあったのでありますが、今の総合計画に関連いたしまして、企画庁長官から、もう一つお答え願いたいと思いますことは、工場の地方分散に、よほど積極的な措置がとられないことには、やはり総合開発計画もうまくいかないと思いますが、この点いかがですか。
  161. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) まことに御指摘の通りでありまして、地方的に工場を分散するために必要な要件を整備するために、目下何か法律的な措置でも講じた方がいいのではないかという考え方もありまして、その問題も研究をいたしております。
  162. 小平芳平

    ○小平芳平君 時間がありませんので、最後に建設大臣から、高速道路を将来どのように作っていかれるか。日本の国には満足な高速道路が一木もできなかったのが今日の結果なのでありますが、それは国土が狭いとか鉄道が先に発達したとか、いろいろ原因もあったと思いますが、政治の貧困も一つの大きな原因であったろうと思うわけであります。  そこで、今後特に首都高速道路、これもできるできるといって、一向に工事がはかどっていないようであります。三十六年度以降において高速道路中央道、東海道二つとも案ができているわけでありますが、どのように進行していかれるか見通しを承りたい。
  163. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 首都高速道路の方は、公団ができましたのが、まだごく最近でございまして、三十四年の九月ごろから実際に基礎的な着手をいたしておるような状態でございますが、三十五年度におきましては約八十四億円ほどの予算を計上いたしまして、一号線ないし四号線及び八号線の建設事業を行なう予定で、目下著工中でございます。現在一号線及び四号線につきましては、すでに相当延長の着工になりまして、現在工事契約が済んでおりますものが約二十二億円ほどございます。おそらく年度末までには、約この予算の九〇%までぐらいは工事契約が完了できる、かような見通しに立っております。いずれにいたしましても、御承知通り首都高速道路公団の担当いたします地域は、非常に困難な地域でございまして、目下その打開について努力をいたしておる次第でございますが、なお前国会にも提案をいたしまして次の通常国会にも御審議をわずらわしたいと思っております俗に申します市街地開発法というような、これを促進するための立法措置も講じたい、かように存じております。  それから他の主要な日本高速道路公団の担当いたしております高速道路につきましては、各地区で——観光地域あるいは名神国道等をごらんの通り進行いたしておる次第でございます。そのほかに先に国土開発縦貫自動車道建設法という法律が三十四国会において成立いたしまして、この方につきましては、すでに三十四年度までに一億六千万円ほど調査費を投じまして鋭意調査中でございます。三十六年度におきましては、やはり相当な——三十五年度は三千万円でございますが、三十六年度はさらに増強いたしまして、調査費をふやしていただきたい、かように存じておる次第でございます。  もう一つ、御承知の同じく三十四国会で成立をいたしました東海道幹線自動車国道建設法、これに基づきまし  て、これもせっかく国会でそのような立法も、手続も終わった次第でござい  ますから、三十四年度すでに八千百万円ほど、三十五年度四千三百万円ほど、三十六年度も引き続きまして調査費の計上を願いまして、鋭意基礎的な地質調査あるいは気象状況、経済効果等を調査いたしまして、できるだけすみやかに進行をいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  164. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは最後に希望でありますが、国土総合開発あるいは高速道路の建設あるいは都市計画、こういう問題につきまして、一つ目先にとらわれることなく、選挙とか利権とか、そういうにおいがするようなことを指摘されることがないように、一つ十分に推進していただきたいと思います。  以上で終わります。
  165. 鈴木強

    鈴木強君 関連。建設大臣にちょっとお尋ねしたいのでありますが、今お話の中央自動車道ですが、三十五年——本年から調査費を計上して鋭意調査をしていただいておりますが、今お話によりますと、三十五年、六年、さらに七年も、大体基礎調査もするんだ、こういうお話なんですが、大体三年間も、そんなに調査研究にかかるのですか。で、建設省はほんとうに中央道というものをやる気があるのかどうなのか。やる気があるとすれば、大体いつごろ予算をつけて国会へ出そうとするのか。  そういう点を一つこの機会に承っておきたいと思う。
  166. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御指摘の点は、御承知通り、山岳地帯を通過いたします中央道につきましては、今申し上げましたように、鋭意、地質関係あるいは道路の技術的な関係、気象状態等、調査をいたしておるのでございますが、非常に困難な地域の開発でございますから、まだ目下のところ、遺憾ながら、いつ現実に着工がができるという段階には達しておらないような状態でございます。ただ、東京から甲府方面に参りまする部分につきましては、できるだけすみやかにこれを事業決定をいたしまして進行いたしたいということは、すでに道路審議会等においても議せられておるところでございますので、できるだけ早く可能な地域から進めて参りたい、かように存じておる次第でございます。
  167. 鈴木強

    鈴木強君 そこで、もう一つ大臣の決意をお聞きしたいのでございますが、この中央自動車道というのはもう超党派的に国会を通過し、しかも予定路線法案についても、満場一致で通っておる、私はその東海道については反対するということはないのです。総合的な見地から政府がお考えになることは当然でありましょう。だがしかし、中央を通るこの高速自動車道というのは、この意義がきわめて私は大きいと思うのです。将来の日本の産業構造にも影響する使命を持っていると私は思うのですね。ですから、なるほど赤石山脈を突き抜けていくということになりますと、まあ地形的には困難なところがあるとは思いますけれども一つ本腰を入れて、建設省も基礎調査を促進すると同時に、そういった大きな意義を持っておる中央高速度自動車道だけに、新しくなられた中村建設大臣も一つ決意をさらに強化して、そうして積極的に推進するように私はお願いしたいのです。  そういう意味で、大臣の一つかたい決意を伺いたいと思います。
  168. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御承知通り、三十五年度の調査費は三千万円でございますが、三十六年度におきましては倍額以上の実は予算をお願いいたしておる次第で、熱意をもって調査を進めておりますることは、この事実によって御理解いただけると思うのであります。十分基礎的な調査をすみやかに遂げた上で、具体的に進行するようにいたしたいと思います。
  169. 館哲二

    委員長館哲二君) 明日は、午前十時より開会することにいたし、本日は、これをもって散会いたします。    午後四時四分散会