○
政府委員(
中野正一君) それでは私から、お
手元にございまする今度御
審議を願います
海外経済協力基金法案についての
内容の概略を御
説明いたさせていただきます。
お
手元にありますように、第一章は総則で、
最初の一条に
目的を掲げてございます。「
海外経済協力共金は、
東南アジア地域その他の
開発途上にある
海外の
地域の
産業の
開発に寄与するため、その
開発に必要な
資金で
日本輸出入銀行及び
一般の
金融機関から
供給を受けることが困難なものについてその円滑な
供給を図る等のために必要な
業務を行ない、もって
海外経済協力を
促進することを
目的とする。」というふうにございまして、御
承知のように、
東南アジア地域その他の
開発途上にありまする
地域は、資源の
開発利用なり、あるいは
工業化というものを急いでおりまして、これによりまして迅速なる
経済の
発展と
国民生活の
向上を意図しているわけでございますが、そのためには、何といいましても、
資本面あるいは
技術面で多くの点につきまして
先進工業国に
期待をしているわけでございまして、また、一方
先進工業国の側からいたしましても、このような
要請に応じまして、これらの国に対して
経済協力をする、
経済協力を
推進するということは、それが直ちに直接的な
貿易の増加なりというようなものに結び付かない場合でも、結局は
世界的な
経済の
地域的だ
格差といいますか、
地域的な不均衡といいますか、そういうものを是正いたしまして、
長期的には
経済環境を
向上し、ひいては
輸出入市場の
開拓確保ということにも資することになるわけであります。
経済協力を積極的に行なうという空気が非常に最近強くなって参りました。御
承知のように、今度
法律を出しまして
出資をすることになっておりまする、いわゆる第二世銀というものができまして、特に低
開発国に対して低利また
長期の
資金を貸す、また、その貸した金の返済も
現地通貨でよろしい、いわゆるソフト・ローンというような形で積極的に低
開発国の
経済発展を
援助しようということになって参りました。また、御
承知のように、低
開発国援助グループというものが十ヵ国で開催されまして、すでに三回ほど
会議が行なわれておりますが、そういう
会議の
発足等によりまして、
国際的規模におきまして、お互いに
先進諸国が
協力をいたしまして、低
開発国の
経済援助をやろうということになってきたわけでございます。このような
情勢下にありまして、
わが国といたしましても、
経済協力を一そう積極的に
推進するという必要が非常に強くなって参ったわけであります。従来、御
承知のように
経済協力に必要な
資金の
提供機関といたしましては、
わが国には、
輸出入銀行があるわけでございますが、これも今まで相当活発にやっておりまして、現在で
輸出入銀行の
融資残高というものが一千億をこえるということになっているわけでありますが、この
輸出入銀行は
金融機関でございまして、その性格上、どうしても
貿易を主とする
経済協力、すなわち、直接的に
わが国の
輸出入市場の
開拓ないしは
確保というものを
目的といたします
金融を行なうものでありまして、先ほど来申し上げました
開発途上にあります低
開発国の
地域の
産業開発に寄与することを
目的といたしまする
経済協力の
要請に応ずるための
金融には、なお不十分な点がございまして、そういう
意味合いから申しまして、今度提案いたしておりまする
海外経済協力基金というものは、端的にこの
要請にこたえまして、
東南アジアその他
開発途上にありまする
地域の
産業の
開発に寄与することを直接の
目的として、その
開発に必要な
資金でありまして、この
法律にもありますように、
輸出入銀行ないしは
一般の
金融機関からは
資金の
供給を受けることがむずかしいというものを、この
基金から、
融資ないしは
出資というようなふうな
業務、また、必要がある場合には
基金がみずから
調査をする、また、
あとで
法律に出て参りますが、こういう
開発事業に
協力するのにはいろいろ準備的な
調査が非常に必要なんでございまして、そういう
調査のために必要な金も貸す、また、いろいろな
プラントなり
工場を作る場合に、試験的にこれを
現地でやってみるという必要もございまして、そういう試験的な
実施のための金も
供給し得るというようなふうな、
輸出入銀行よりもうんと幅の広い、またゆるやかな
条件のもとに
資金を円滑に
供給してやろう、こういう
必要性から出て参ったわけでありまして、この第一条の
目的のところはそういう
意味合いでございます。なお、第一条の三行目に「その円滑な
供給を図る等」とございますが、この「等」の
意味は
あとで御
説明申し上げますが、
輸出入銀行と違いまして、
一般的に独自の
調査権限を本
共金は持っておりますので、そういう
調査事務をやりますので、それは
資金の
供給だけではございませんので「等」という字をつけてあるわけでございます。
それから第二条は、「
経済協力基金を法人とする。」、それから三条が事務所、四条が資本金でございまして、付則の七条のところにございますが、
日本輸出入銀行から継承した資産の金額五十億――ちょっと七条を見ていただきますと、付則の七条に「
基金は、その成立の時において、」例の
経済基盤強化法によりまして五十億の金を
政府から
輸出入銀行に
出資をしておりまして、これは
東南アジア開発協力基金として現在積んであるわけでございまして、これは国際的な
協力機関に
出資をするために積んであったわけでありますが、そういう事例が今まで起こりませんでしたので、この五十億は三十三年にできましてからずっと積みっ放しになっておるわけでございます。この五十億を
輸出入銀行からこの
基金に
出資をさせるということになっております。従って資本金は、まず
輸出入銀行から承継いたしまする五十億と、それからその次の付則の八条の第二項というのは、この五十億の金の運用益というものが出て参っておりまして、これをまた別個に
輸出入銀行では積み立てることにしてありまして、この積み立てた金も一緒に
輸出入銀行から引き継ぐ、これは十月末現在で三億七千五百万円ほどの運用益になっております。この三億七千五百万円は十月末でございますので、この
基金が来年の三月中にはできると思いますが、そのほかに成立の日までの運用益をプラスしたものを本
基金が
輸出入銀行から引き継いでそれを資本金にすると、こういうことでございます。その次に
政府が必要と認めるときは予算の定める金額の範囲内において
基金に
追加出資をすることができるということで、
基金は今後相当各方面から
期待もされておりますし、
資金は五十億だけじゃ非常に少いじゃないかという議論も相当強いわけでございます。
政府としてもできるだけ来
年度の予算におきましてもこの
出資を増額をしたいということで、われわれとしても今予算の折衝をしておるわけでございまして、そういうふうに予算で追加になりまするというと、その第三項で、前項の規定による
政府の
出資がありましたときには、その
出資額によって資本金を増額するという規定を置きまして、一々
法律を改正をしなくても、
出資金が増額できる、予算だけで、予算できめれば
法律の改正を待たずして資本金が増額になるという規定になっておるわけでございます。
それからその次は、第五条は定款でございまして、これは例文でございますので
説明を省略さしていただきます。
第六条は登記、それから名称の使用制限、民法の準用ということになっております。
以上が総則でございますが、その次に役員等、第二章に入りたいと思いますが、この
基金は、役員といたしましては総裁一人、
理事が二人、監事一人という強力簡素な機構で発足したいというふうに考えております。
理事につきましては二人では足りないじゃないかというような議論もあるわけでございますが、まだ発足早々のときは資本金もそんなに多くありませんし、また将来事業活動の範囲が非常に広がった場合に、そういうことは考えていったらいいじゃないかというふうに考えております。
総裁の職務、権限が第十条にございまして、監事、それから役員の任命につきましては、総裁と監事は総理大臣が任命をする。
理事は総裁の任命、その
理事二人の中で第十一条にございますように、一人は
日本輸出入銀行の総裁の推薦に基づいて
輸出入銀行の
理事の中から選ぶということで、二人の
理事のうち一人は
輸出入銀行の
理事が兼任をするということになっております。先ほど御
説明いたしましたように、本
基金は、
輸出入銀行では
資金の
供給がうまくいかないというようなものについてめんどうをみるということになっておりますので、
輸出入銀行との
関係は非常に密接でございます。
あとに条文がございますが、
輸出入銀行との
関係については、
基金で調整をする義務があるようになっておりますので、また、実際の事務的な審査、
調査等につきましては、窓口を一つに
輸出入銀行にいたしまして、
輸出入銀行に事務的なことを委託するという建前になっておりますので、そういういろいろな点からいいまして、
輸出入銀行の
理事に兼任さした方が適切であろうというふうに考えまして、十一条の規定が置かれておるわけでございます。
それから次は、役員の任期、それから役員の欠格条項、それから役員の解任ということで、内閣総理大臣なり総裁なり任命権者は、十四条に該当するに至りましたときは役員を解任する。それでその次に、「職務上の義務違反がある」とか、あるいは「職務の執行に堪えない」という場合には「その役員を解任することができる。」ということで、解任権を認めておるわけでございます。
それから十五条は、役員の兼職禁止の規定でございまして、これは、こういう特殊法人には大体ある規定でございますが、ただし書きがついておりまして「
経済企画庁長官が、役員としての職務の執行に支障がないものと認めて承認した」ときには兼任を認めるという規定にいたしておるわけでございまして、たとえば、総裁につきましては、一部ほかの仕事をしても、この
基金の
運営には差しつかえない、また、そうした方がいい人が得られるというような場合も想定いたしまして、長官の承認した場合には兼任をしてもよろしいという規定を置いたわけでございます。
十六条は代表権の制限、それからその次の十七条において「
基金に、
運営協議会を置く。」、これは非常にほかの特殊法人とちょっと変わったところでありますが、この
経済協力という仕事は、御
承知のように
経済外交という面では外務省、それから通商、
産業、
貿易という点では通商産美省、また農業
関係が
海外に進出して参る場合には農林省、あるいは建設省、また為替
金融という面におきましては大蔵省ということで、非常に、
関係をいたしております官庁が多いわけでございまして、従って、この
基金を運用する場合にも、常にそういう
関係官庁の意見というものは十分参酌をして運用に当たらなければならないのが実情でございまして、そういう
意味におきまして、この
基金に
運営協議会を貫きまして、ここにありますように「総裁の諮問に応じ、
基金の
業務の
運営に関する重要事項で
関係行政機関の所掌事務と密接な
関係があるもの」この二つの制限がございますが、
関係行政機関の所掌事務と密接な
関係があることで、特に至要事項につきまして、
運営協議会は総裁の諮問に応じて
審議をする。そうしてその次の方で「総裁に意見を述べる」ということになっておりまして、この
基金が一々
関係官庁の意見を個々に聞くということも非常にわずらわしいわけでございますので、合議体としてむしろこういう
運営協議会というものを置きまして、これは
基金に意見をいうということにいたしたわけでございます。4にあります「
関係行政機関の職員のうちから内閣総理大臣が任命する
委員十五人」というのは、ちょっと多いようでございますが、先ほど御
説明申し上げましたように、非常に
関係しておる官庁が多いので、少し幅を広く
委員の数はとっておるわけでございます。
それから、十八条は職員の任命、それから十九条は役員及び職員の
地位で、「法令により公務に従事する職員とみなす。」ということで、この適正を期したいわけでございます。
その次は第三章、
業務でございますが、二十条、二十一条に
業務の範囲というのがございまして、第一条に掲げました
目的を
達成するための
業務といたしまして「
東南アジア等の
地域の
産業の
開発に寄与し、かつ、本邦との
経済交流を
促進するため緊要と認められる事業」、これを
開発事業と名づけまして、そのために必要な金を貸しつける。第二項は、特に必要がある場合には、貸しつけだけではどうしてもうまくいかない、非常に
資金が
長期に出まして、やはり
出資ということでないと、その
開発がうまくいかないというような場合には
出資をすることができる。これは
輸出入銀行と非常に違っておりまして、
輸出入銀行は
出資をするという規定はございません。従ってこの
基金は
金融機関というよりは、どちらかと言えば、投資機関と言いますか、事業会社と言いますか、そういう性格の多い特殊法人であるということが言えると思います。第三項「
開発事業の準備のための
調査又は
開発事業の試験的
実施のために必要な
資金を貸し付けること。」、
開発事業の準備、
調査のための金を貸し付けることができる、また試験的
実施をするという必要もございますので、そのために必要な金を貸し付けるということになっております。これは特に今後
東南アジア等に
わが国の
中小企業が進出するというような場合には、やはり予備的な慎重な
調査などは必要だろうと思いますので、この規定の活用によりまして、
中小企業あるいは農業、水
産業というような事業が
海外に出る場合には、非常にこの規定が活用されるのじゃないかというふうに考えております。それから、「前三号の
業務に関連して必要な
開発事業に関する
調査を行なうこと。」ができる。こういう規定を置いておるわけであります。
それからこのような貸付なり
出資というものは二十一条でいろいろの制約がございまして、
開発事業について
輸出入銀行なり
一般の
金融機関から通常の
条件で
資金の貸付を受けることがむずかしい、あるいは
基金以外の者から
出資を受けることがむずかしいという場合に貸す。それからその次に、「
開発事業に係る事業計画の
内容が適切であり、その
達成が確実であると認められる場合」にも貸すということになっておるわけでありまして、通常の
条件で貸付を行なうことがむずかしい場合というのは、
輸出入銀行でありますると、
業務方法書によりまして、いろいろこまかい
条件がついておりまして、期間、期限なり、
輸出入銀行でありますると、
一般的には期間を十年以内ということになっております。それから
海外投資金融あたりでございますると、
金利は四分五厘以上ということになっております。それから償還でありますが、償還につきましてはその貸した金の償還確実なものという規定がございまして、償還確実ということになりますと、必ず必要十分な担保を取るということが
条件になっておるのでありまして、そういうような貸付
条件から見まして、当該
開発事業に金を借りる場合に、とてもそういう
条件には当てはまらないというふうな場合には、この
基金の方でその金を貸すことができるわけでありまして、われわれの今の考えでは、
業務方法書で、
基金の方で
業務方法書を作りまして、
経済企画庁長官の認可を受けることになっておりますが、今申し上げました貸付の期間、貸付の利率、担保
条件というようなものは
輸出入銀行よりも相当緩和をいたしまして、特に担保
条件につきましては、その次にありますように、事業計画の
内容が適切でしかも
達成確実というふうに、いろいろの点から見て認められるという場合には、必ずしも十分な担保を取らなくてもいいという解釈ができるわけでありまして、そういう点につきましては
輸出入銀行よりもうんと弾力的な
運営ができる、それがまた本
基金の特徴になっておるわけであります。そういう貸付のいろいろな期間でありまするとか、利率でありまするとか、あるいは担保
条件というようなことにつきましては、
業務方法書で詳細を規定をいたしまして、
経済企画庁長官の認可を受けるということになっておるわけであります。
それから二十三条で、事務の一部、これはもちろん意思決定にかかわるような重要なことを委託することはもちろんできませんので、まことに事務的な点、たとえば受付であるとか、受け付けて、それを
調査する、審査というふうなような事務的なことの一部を
輸出入銀行に委託をするということにしておるわけでございます。
二十四条は、先ほどちょっと言いましたが、
基金は
輸出入銀行との
業務の調整に努め、また
一般の
金融機関と
競争してはならない。こういう規定でございます。
第四章は、財務及び会計でございまして、これは大体ほかの特殊法人とほぼ同じようなことになっておりまして、二十五条が事業
年度、二十六条が収入及び支出の予算等の認可、これは
経済企画庁長官が本
法律の主管大臣でございますので、
経済企画庁長官の認可を受ける。それから決算、財務諸表等につきましても、これを決算が済みますというと、もちろん企画庁長官の承認を受ける。それから利益及び損失の処理でございます。二十九条にありますように、毎事業
年度利益が出ました場合に前事業
年度から繰り越した損失を埋めて、なお利益が上がればそれを積立金として置いておくということで、
輸出入銀行等につきましては御
承知のように相当の剰余金が出ますと国庫に納付することになっております。木
基金はその性質上ある程度赤字が出るということも予想されますので、出た利益については全部この
基金に積んで置く。そうしてそれでこの損失を埋めていくというような考え方で国庫納付の規定はございません。
それから第三十条が余裕金の運用でありまして、国債の保有なり
資金運用部への預託、日本銀行への預金ということで、実際上は
資金運用部に預けて運用費を出すということになると思います。
三十一条は、給与及び退職手当の支給の基準、これは役員及び職員につきまして、給与なり退職手当の基準を作りましても、これは
経済企画庁長官の承認を受けることになっております。それから
関係の法令につきましては総理府令に委任をしております。
第五章は監督でございまして、
基金は
経済企画庁長官の監督下に置く。そうしてこの
法律を施行するために必要がありますときは、
基金に対してその
業務に関して監督上必要な命令ができるのだというふうにしておるわけでございます。
報告、検査、これも大体例文でございます。
それから次に第六章、雑則でございまして、三十六条をごらんいただきたいのでありますが、
経済企画庁長官はこの
法律の規定によって認可なり承認をしようとするときは、
関係のあります外務大臣、大蔵大臣、それから
通産大臣に協議をするということにいたしております。これも先ほど御
説明いたしましたように、大蔵省なり外務省なり通産省が非常に
経済協力については密接な
関係がございますから、こういうところと十分連絡をとってやるという
意味合いにおきまして、協議の規定を置いたわけであります。
第七章は、罰則でございます。これも大体例文でございますので、これも省略さしていただきます。
附則になりまして、施行期日であります。公布の日から起草して三十日をこえない範囲において政令で定める日から施行をいたします。それから附則十八条から二十条までの規定というのは、
輸出入銀行なり
経済基盤強化法によりまして積み立ててありました金をこの
基金ができ上がる日にそれを引き継ぐ、先ほど申しました五十億とその運用益の三億何がしというものを、本
基金が公布の日から三十日以内で現在の
法律を施行いたしまして、そうして総裁、監事というような者になるべき人を内閣総理大臣が指名をいたしまして、そうして設立
委員をきめまして、この
基金の設立の事務をやるわけでございます。そうして三十日以内に、公布した日からなるべく早く
基金の設立にかかりまして、その設立をした日に十八条から二十条までの規定を同日付でもって施行をする。そうして
基金ができたときに
輸出入銀行の方からその五十億、それとプラスの運用益というものを引き継ぐということのためにこういう二段構えになっております。
基金の設立につきましては、普通のあれと変わっておりません。七条、八条におきまして
輸出入銀行から資産を承継するということになっているわけでございます。大体三十日と六十日でありますので、大体九十日以内にでき上がることになるわけでありまして、できれば本
年度中に本
基金を成立させたいということで、この九十日という制限をおいておるわけであります。
あとは大体経過規定でございます。
関係の
法律の改正でございますので、
説明を御省略させていただきたいと思います。
以上をもちまして
補足説明を終わりたいと思います。