○淡谷
委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
昭和三十五年度
一般会計予算補正及び
特別会計予算補正に対し、
政府原案並びに民主社会党の組みかえ動議に反対、
日本社会党の組みかえ動議に賛成の討論を行ないます。
一体、今回の
予算は
補正予算とはいっておりますが、
池田内閣が総選挙後初めて世に問う
予算でございますので、単なる事務的な組み方にとどまらない新年度
予算の性格をうかがうに足るものとして、そこに片鱗でも示されていなければならない性格のものでございます。
この
予算を、まず歳出に見て参りますと、給与改善費を最も大きく取り上げております。国家公務員の給与を改善するためのものといっておりますが、依然としてこの改善は上に厚く下には薄い改善——改善と呼ぶにふさわしくない改善と私には
考えられます。同時にまた、
内容に至りましては、自衛隊の
予算のごとき、明らかに本来の改善の方向を誤ったものといい得るものであります。この給与の増加
要求も防衛二法案、すなわち防衛庁の設置法及び自衛隊法の成立を見越してのものであって、その二法案成立の見込みがほとんどついていない今日、まして欠員が一万八千人もあり、その欠員の給与をここで削減しないで盛っていくこと自体が、いたずらに不用額を増すおそれが十分にあるのであります。本来、防衛庁の
予算は、年ごとに多額の不用額を出しておることはしばしば指摘されております。しかもさらにまた八千名の増員をこの二法案の通過によって見込みまして、その補正増額を必要とするということは、とうていこれは理論に合わない。むしろ逆にこれを削減すべきことが本来の姿であると思いますので、わが党の組みかえ案を私は極力支持いたします。質疑応答の過程で西村防衛庁長官は、同じ自衛隊でも火災出動と建設の任務につく自衛隊には志願者も非常に多いと
答弁されている。地元民もこれを喜んでおるという。むしろ無益な
戦争を誘発するようなおそれのある自衛隊の
予算は、進んで長官が返上されまして、わが党の
主張する国土建設隊を中心とするこの
予算組みかえ動議に御賛成下さいますように特にお願い申し上げます。
次に、一般公務員の給与につきましても、先ほど触れました通り、まことに上には厚く下には薄い。この公務員の給与はむしろ五月一日にさかのぼって支給さるべきものである。それから地方公務員も国家公務員と同じようにその給与改善を実施する。さらに地方交付税交付金の増額分以外に国で必要な
予算措置を講ずべきものと
考えるのであります。さらに公務員の年末手当等についても〇・五カ月分は計上し、社会福祉施設の職員についても、あるいは地方公務員についても、今申し上げました通り、同じこの改善の対象としてなすべきが本来の姿であると思うのであります。
減税等につきましても、勤労者の年末手当のうち一万円までは非課税とすべしとするわが党の
主張は、当然妥当としてお取り上げを願いたい。
特に社会保障につきましては、いろいろ先ほどから自民党の青木
委員が本来の
主張であるということを言っておりますが、どうも私どもに言わせますと、これまた給与改善と同じように、まことに社会保障という名にも値しないものでありまして、
総理は
公共投資と
減税と社会保障は
池田内閣の三本の柱だと言っておりますが、中で一番短い柱はどうも社会保障であるらしい。一千億
減税はやっても一千億の社会保障は必ずしもやるとは言っていないという
答弁もなされておりますが、一千億の社会保障をやらないまでも、この生活保護世帯に対して年末五百円のもち代を出すといったようなことを誇らかに言う気持が、私にはどうしても納得がいきません。このもち代を出すという
主張は、閣議で
総理がみずから持ち出した案であると聞いておりますが、五百円のもち代では、
幾ら失対労務者でもその生活は持ち上がるものではないと思う。これは私はもう少し徹底した社会保障の名にふさわしい態度を打ち出してもらいたい。生活保護基準を非常に低くしまして、憲法違反の判定さえ受けておりますこの基準は、さらに五割を引き上げること、寝具や家屋の修繕ぐらいは、この年末にあたって心配のないような措置を講じてやるのが、社会保障として当然のことであると
考えるのであります。同じ社会保障でも、他の
公共投資や
減税に比べてあまり短い柱では、この歳末に際しまして、柱が一本短いので屋根が傾いてしまうといったような心配もございますので、その辺は十分御考慮願いたいと思うのであります。
食管特別会計の赤字の問題は、慎重に考慮すべきものであると思うのであります。このままの姿でいつまでもあっていいかどうかは、これは重大な問題であります。特に、通常国会で農業基本法さえ出してくるという場合に、
日本の農業の生産構造等も十分
考えてこの問題の根本を突きとめてみる必要がある。私は、今の保護農業をやっていかなければならない事態においては、この赤字補てんは当然の
政府の義務と思いますけれども、農業そのものに対してこれはあえて
総理にもう少し深い理解を持っていただきたいと思うのであります。
答弁の過程を通じて聞いておりますと、
総理は、ときどき選挙前にとりました低姿勢を忘れまして、がぜん高姿勢に返ることがしばしば
答弁を通じて行なわれました。たとえばわが党の
主張しました中立外交につきましても、
総理は先般の
答弁におきまして、ぶらぶらして遊んでいるのが中立だと思っていると言っておる。何も私どもは中立外交をぶらぶらして遊んでいるというふうに言った覚えはございませんが、この食管特別会計に対する川俣
委員の
質問に対しましても、
総理は、簡単に農業人口を半分にすれば所得が倍になる——農業人口を半分にすれば所得が倍になるといったような、簡単にして不親切な認識で今後の農業問題一般に処してもらいたくもなし、特に食管特別会計の
内容に至りましても十分なる御配慮を願わないと、取り返しのつかない乱脈を示すことは明らかだろうと思いますが、そういう点に対する配慮が十分なされていなかった。災害につきましても、まだまだ補助率を引き上げるとか、あるいは地元負担を軽減するためのさまざまな処置をとるとか、これは言うべきことがたくさんございます。
特に私はきょうの
井手委員の
質問かあら
総理にはっきり申し上げておきたいのは、賠償に関する問題であります。今回の旧
連合国人の本邦内
財産の
戦争損害の
補償にしましても、あるいは前々国会で追及されたベトナムの賠償の問題にしましても、
国民の目の届かない遠いところでとかくの評を招いておるということは、はなはだ遺憾にたえません。この際
国民の疑惑が解けるような明確な
答弁をほしかったのでありますが、これは遺憾ながら得られませんでした。こういう形で今後また賠償が行なわれるならば、たくさんの
戦争犠牲者がまだ国内にいる場合、まことにゆゆしき問題として遺憾の意を表したいと思うのであります。特に
東芝の株のごときは、まだ外国の
会社が
株主になっておるということも聞いておりますし、それが出資額に上まさる賠償をとるような形が行なわれましては、これは非常に憂慮すべき事態をかもし出すと思うのであります。
次に、産業投資の問題であります。もう所得の倍増だけではなくて、所得の格差をなくするということも再々
総理は言っておられますが、具体的に現われた形を見ますと、どうも
総理の認識の中に一般庶民の生活というものは入っていないのではないかと思う。従ってこの産業投資などの面を見ましても、私は今にして非常に大きな反省を持ってもらいたい。今度の産業投資特別会計への繰り入れは、前年度剰余金の受け入れとともに百四十五億円、うち百二十五億円は
日本輸出入銀行へ出資するためのものである。
日本輸出入銀行については、輸出の増加に伴う資金需要の増大による融資資金の不足を生じたがためであると言っておられます。しかし同銀行の貸付状況を見ます。と、もう少し私は慎重な態度がほしいと思う。造船
会社など大口融資が非常に多い。
昭和三十四年度は総額六百四十七億八千四百万円と前年度を百七十六億九千五百万円と大幅に増加した上に、昨年度の融資承諾による未貸付分百十四億六千六百万円を本年度に繰り越しております。今度
予算補正によって出資する百二十五億はまさにこの繰越分と見合うものであります。しかも回収は昨年度の四百四十九億四千六百万円に対しまして、三百六十四億九千四百万円、すなわち回収率昨年度の九五%に対して本年度は五六%と大幅に下がっているのであります。
総理は
船舶企業は中小企業が多いと言っておりましたが、この輸銀の貸し付けた
会社の中では大口の
船舶業者が非常に多い。総額が大体一千九十六億二百五十七万八千円というものは今日なお貸付残額として残っておりますが、この六十社でこれだけの額であります。そのうちおよそ百億円以上の貸付残額を持っております
会社は、アラスカパルプ、浦賀船渠、三菱造船、石川島播磨重工業、こういったような明らかに大
資本優遇の産業投資の姿が露骨にも現われてきておるのであります。なぜこれだけの優遇と配慮を中小業者の金融あるいは農村金融の方にも与えられなかったのでしょうか。所得格差の解消という口の下から、もうすでに現われたあなたのうそのしっぽがのぞいているのであります。そのためには商工中金、中小企業金融公庫、
国民金融公庫に対して、ただ金利の補助というだけではなく、この歳末金融を控えまして、思い切った出資を多くしまして、その金融難を救ってやるのがまことに親切な政治であると私は信ずるものであります。なお地元負担の重圧のために
政府の施策さえ受けることのできなくなっている後進地域の開発のためにも、融資の道を開いて金利の引き下げをなすべき義務があると思うのであります。
こうしたたくさんの施策をしなければならないのに、大ていの場合
政府は財源がないということを口実にしてこれまで逃げて参りました。しかし今度の
補正予算の歳入を見ますると、明らかに税収の見通しを誤っておる。自民党の愛知
委員自体がその
質問の中で、千五百十四億円という
程度のものではないということ、この税収の増加の見通しはそんなものじゃないということを言っておられる。これは明らかに税収の見通しを誤っているのであります。むしろ一歩突っ込んで
考えるならば、ことさらに税収を隠しておいて、これを自由に使おうという意図さえわれわれには感じ取れる。われわれはさらに六百億円以上の
自然増収があると見込んでおりますわが党の組みかえ動議、さらに本年度は当初
予算に見込まれたほかに二千億円の
自然増収となるという
建前から、この組みかえ動議を大胆に受け入れて下さいまして、なさなければならないさまざまの策に対して大胆率直に踏み出されんことを私は心から希望するものであります。予測され得る妥当な限度内で最大限の歳入補正を計上したわが党の組みかえ案の方が、はるかに正しい行き方であることを私はここに強調するのであります。
結論として申し上げたいのは、
池田総理は所得格差の解消の有力な手段は所得倍増である。と言っておりますが、私はこれは論理が逆であると思う。逆に所得倍増のためにはまず所得格差の解消から始めるべきものであってこれを行なわないで所得倍増だけを
考えるならば、いたずらに大
資本の擁護になり、ますます貧富の差を大きくすることは目に見えております。どうか私どものこの組みかえ動議、一歩控え目になった民社党の組みかえ動議より、徹底してこの施策を行なおうとしておりますわが
日本社会党の組みかえ動議に、
総理は十分なる寛容と忍耐をもって従われまして、これは自民党の愛知
委員を初め先頭に立ってこの新しい案を支持していただきたい。
同時にこの
補正予算を見ておりますと、やはり何といいましても新年度の
予算の一斑がうかがわれます。これは総選挙の場合に
総理が
国民に約束をいたしましたあの方向とはかなりずれた方向に私は出てきておると思う。これは御無理もございますまい。
総理の生活と庶民の生活との間には相当大きな格差がございますので、この格差は容易に意識の上においても埋まるものではない。どうかその点では最も庶民の生活に近く庶民の意識を持って政治をやっております
日本社会党に大胆に同調せられますよう特にお願い申し上げまして、私の
日本社会党の組みかえ動議の賛成の討論を終わります。