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北山委員 次に所得倍増計画案というのは、要するに
経済成長政策でありますが、昨日の
委員会で
池田総理は
経済成長というものは、要するに
国民のたくましい潜在的な創造力の現われである、こういうことでまことに抽象的な説明をされたわけであります。
国民の創造力、潜在的なエネルギーが成長を押し上げているのだというような、空気みたいな
お話でありましたが、私は今行なわれておる
経済成長の力、創造力というものはそういうきれいな創造力というよりは、むしろ非常にどす黒い、たくましい、利潤追求の力であろうと思うのであります。いわゆる高い利潤と、それからその
設備投資、またそれを保証していくところの資金の供給、こういうものが集まって、この数年来の
日本の
経済のいわゆる成長というものがなされておる。
経済成長の推進力というのは、大企業のたくましい利潤追求の力であり、欲求であり、またそれを可能にするところのいろいろの条件ではないか、こう思うわけであります。そのいろいろな条件がありますが、要するにもうからなければ企業家は事業を拡大いたしません。その高い利潤というものを保証するような
政策が、今の
自民党の
政府の歴代とってきておる
政策である、
経済成長政策である、こういわざるを得ないのであります。まず第一には大企業には都合のいい税制になっております租税特別
措置――本年度におきましても、千二百億も大企業を
中心として税の軽減の恩典がなされておる。また独占物価でありまして、大企業ほど、その独占――協定、カルテルの力によって値段を下げない。
生産性は上げるけれ
ども値段は下げない。こういう独占物価の体系というものが、大企業の利潤を保証しておる。ですからこの長い間、約十年間の卸売物価の指数を見ましても、
経済企画庁の卸売物価の指数によりますと、これは
昭和二十五年を基準とする去年の三月でありますが、食糧は一七二・三、金属が二四一、機械が一八六・九、建築材料が二七三・五というように、むしろ
生産性が高くなった、いわゆる合理化が進んでコストが安くなっておるべきはずのものが、卸売物価指数というものが高くなってきておる。そして
生産性の低い食糧、農産物というものが、比較的値段が上がっておらない。合理化が進んでコストが安くなるならば、その品物は安くならなければならぬはずでありますが、安くしないのであります。そこに独占物価というものが形成をされて、大企業の利益を保証しているのではないか。これがやはり
経済成長の大きな推進力になっているのではないかと思うのであります。そういうわけでありますから、税制の上でも三十四年の下半期の銀行の例をとりましても、全国銀行の決算を見ますと、その中にも貸し倒れ準備金であるとかあるいは価格変動準備金というものが約九百億も見込まれておって、それが税の対象になっておらない。約一千億の利益を上げながら、税金の方はたった九十二億円しか出ておらない。こういうような租税特別
措置の恩典を大企業ほど受けておるのであります。もう
一つは安い賃金、これはもうすでに
経済白書でも指摘をしておりますが、非常に安い賃金でありますと同時に、その労働者に対する分配率が非常に低いわけであります。イギリスは五七・一というのが労働者に対する分配率、いわゆる付加価値の、仕事の働きの五七・一%というものをイギリスの場合においては労働者にこれを分配しておる。ところが
日本の場合は三七・八%、こういうように非常に労働者に対する分配が低い。そして安い賃金の、しかも最近では中学校卒業というような年少の安い臨時工を大量に使っておる。労働の搾取が非常に高いということであります。ことし出ました
経済白書によりましても、労働者の
生産性はどんどん上がって、今の状態では
生産性において西ヨーロッパ並みになっておる。ところが労働賃金の方は、労働者の所得は上がっておらない。
生産性の上昇と労働賃金とを比べて参りますと、
昭和二十八年から三十四年までの平均を見ると、
生産性の方は七・六%の上昇でありますが、賃金の方は、実質賃金で見ると四%にも足らない。いわゆる
生産性の半分しか労働賃金が上がっておらない。ここに結局低賃金の上に非常な搾取が行なわれて、そして主として大きな企業がぼろもうけをしておる。そういうような上に大企業に対しては非常に豊富な安い金利の資金が供給をされておるわけであります。今度の
補正予算にもある、輸出入銀行に百二十億の国の資金を一般会計から出すことになっておりますが、この輸出入銀行に対しての貸付の利子などは四%、非常に安い金を貿易業者というものは借りて、しかも
政府資金を借りておれる。こういうように税金の面から見ても物価の面から見ても労働賃金から見ても、またその金融の面から見ても、あらゆる面で大きな企業というものが国の
政策の保護を受けておる。助成を受けておる。援護を受けておる。そこに
経済の激しい成長の原動力があるのだと思うのです。要するに大企業に対しては高い利潤を保証している。ですから、
池田さんが説明をされたように、
経済の成長によって産業なりあるいは所得の格差が縮まるのではなくて、むしろ労働者やあるいは小さい企業やあるいは農業というものの犠牲において、あらゆる
政府の恩典を受けて大企業が先頭に立って機関車のようにどんどん進んでいくという、いわゆる傾斜的な方式を初めからとられておる、そこに
経済成長の原動力がある、こう言わざるを得ないのです。この点について
一つしっかりとした材料に基づいて、
池田総理の御
見解を承りたいのであります。