○小松幹君 私は、
日本社会党を代表し、ただいま
議題となっております
昭和三十五
年度一般会計予算補正(第1号)及び
特別会計予算補正(特第1号)に対して、
政府原案並びに民社党案に反対し、わが党
提出にかかる
組み替え動議に賛成の
討論を行ないたいと思います。(
拍手)
討論に先だって、まず、池田
内閣の
経済政策を、勤労
国民の立場から少し批判してみたいと思います。
池田
内閣は、
所得倍増、
経済成長を一枚看板としておりますが、その強力な推進をはかっているにもかかわらず、その
政策は、むしろ、
国民所得の
格差を増大し、貧富の差をますます
拡大しております。そういう
経済政策をやっているわけであります。結果としてどういうことになるかといえば、働く者の貧乏、百姓の貧乏、いなか貧乏の度をますます深めているというのが、この
経済政策の結果であります。(
拍手)
企業の下請化あるいは二軍構造の
拡大はまずさておくといたしましても、最近の臨時工の異常な増大、低賃金
労働者群の
拡大は非常なものでございますし、あるいは農村においても、池田首相みずから認めておるように、離農者がどんどん出ておるわけでありますが、こういうことは、はなやかなる
経済成長の陰にうごめいておる裏目の実態ではないかと思うわけであります(
拍手)しかし、これがまた、この池田
内閣の言ういわゆる
経済成長をささえるところの重要なるファクターであり、そして、これが当然視されているところに、むしろ問題があるわけであります。まことに主客を転倒した
成長の実体であり、悲しむべき政治の現象であると私は言わなければなりません。(
拍手)
さらにまた、
減税を怠った徴税がますます盛んにやられております。大衆課税等の寄付金、あるいは次ぎ次ぎに攻勢をかけられてくる各種の料金の
引き上げ、あるいは消費物価の値上がりは、すでに昨年から四%増を示しております。
所得倍増とは反対に、善良なる勤労
国民を苦しめておるのが、
所得切り下げの実体であります。迷惑千万な話だと私は思うわけであります。これは、池田
内閣の
経済成長論の前に、まず出費倍増がきておることで、われわれは何とも残念で仕方がないのであります。(
拍手)
国民としては、池田
内閣の
所得倍増計画を喜ぶというよりも、その出費倍増
政策に大きな不安を感じておるのが、偽らない実情であろうと思うわけであります。(
拍手)あるいは続いてくるところの国鉄運賃の値上げ、あるいは九州方面ではすでに電力料金の
引き上げが問題になっております。来年は大学の授業料も
引き上げられる。そのほか、消費物価はますます上がらんとしております。
所得倍増も何も、こういうことで、あったものではない。池田さんの
内閣になって値下がりしたのは、池田さん自身が言っておるように、白菜だけであります。(
拍手)こういうことに至っては、池田さんの思惑とは別でありますが、将来の家庭
経済を心配しておる
国民の不安はますますつのるのみであろうと思います。民間産業の設備投資
拡大をただ
一つのたよりとして、過度な資本投下を進め、
経済の
成長をはかっていく池田
内閣の
経済政策は、労働の実質的価値を低下させております。そうして、
所得の
地域差をつけ、あるいは貧富の差をますます
拡大しておる。さらには、いたずらに消費面の高騰を引き起こして
国民生活を圧迫しておるというのが問題点であります。数量的
経済成長を無理に作らんとしても、それは必ずしも
国民は喜ぶものではありません。
国民の
生活の充実にも、
所得倍増にもならないということを、われわれは知っておるのであります。(
拍手)
この期にあたって特別国会が開かれたのでございますが、
政府はまず何をなすべきか、また、何をなさねばならぬかという問題が、まず第一にこなければなりませんが、私は、もちろん、
予算補正もまた当然よかろう、しかし、まず第一に取り上げねばならぬのは、大幅なる年内
減税を断行することであります。ことしの
年度当初より当然行なわれなければならなかった
減税であります。それを、
政府が、あるいは
自然増収を見誤ったのか、あるいは故意に見誤ったのか知りませんが、いわゆる
自然増収の低いことと、伊勢湾台風があるからという泣き言によって、ついに本
年度の
減税は見送られてしまったのでありますが、これを、今、私は、今度の特別国会ですでに
自然増収がわかったのだから、はっきり打ち出すべき段階にきておると思うのであります。(
拍手)年内
減税を来
年度に持ち越すというようなことは、私はやるべきではないと思うのであります。ことに、
自然増収が当初二千百五十億円を見込み、さらに、今次
補正予算においては千五百十四億を見積もっております。われわれの計算によりましても、さらに六百億以上の見通しがあるという段階にきておるのであります。すなわち、当初
予算から考えてみたときには、
自然増収四千億以上の税金を取り過ぎておることがはっきりしたわけであります。この四千億以上の税金の取り過ぎがはっきりした以上は、何をおいても大幅なる年内
減税を行なって、
国民に借りを返すことが当然である。(
拍手)池田さんは、
社会党に借りがあると言うが、
社会党に借りがある前に、まず
国民に借りがある。その借りを戻すべきである。(
拍手)これこそ、私は、
国民経済に不安を感じている
国民に当然示すべき政治の要諦であると思う。この政治の勘をはずしたところのこの
補正予算などは、まことに、私は、池田さんのほんとうの腹を読むような気がするわけであります。
そこで、今次
予算補正を見ますと、わずか
減税が五十八億、しかも、
給与所得者の来年の一月から三月までの三カ月間の控除額をやるところの、いわゆる年内
減税ではなくして、
年度内減税として
措置しておるにすぎないのであります。四千億の税金の取り過ぎをして、たった五十八億しか
年度内に
減税をしてやらないというような、お茶を濁したこの
減税は、
国民を愚弄したものといわなければならぬ。(
拍手)累進課税の税率を二年間も据え置き、三千六百億円以上の
自然増収を見込みながら、これを
財政資金として放漫な
予算を編成し、保守党
内閣の安定のてこにしておるに至っては、まことに民主政治を冒涜した悪政の限りと私は言いたいのであります。(
拍手)あるいは、
自然増収は
経済成長によって起こったことで、
政府の責任ではない、と言うかもしれません。しかし、
自然増収の見積もりを千五百億円以上も見誤り、さらに、来年三月までの見積もりを今度の
補正予算においても
過小評価しておるに至っては、まことに不可解千万といわざるを得ないのであります。今春当初
予算が
予算委員会にかかったときに、私は、
予算委員会の席上において、
政府、特に佐藤大蔵大臣に対しては、
租税の
自然増収を
過小評価しておる、二千百五十億円では計算の間違いではないか、ということを指摘したのであります。
自然増収のさらにあることを指摘して、限界
租税函数二五%以上だから、
自然増収は二千百五十億円より以上回るのだ、こういう克明な
説明を繰り返し、また、源泉
所得税の場合も、三十三
年度を基点として一四%増では
経済成長率に見合わない、少なくとも二〇%以上アップをしなければならないことも、その当時、私は佐藤大蔵大臣に述べております。
過小評価の分を私は本
年度の
減税に充つべきであると強調したのにもかかわらず、
政府は、
自然増収を低く見積もり、伊勢湾台風などの出費が重なったからということに事寄せて、当然やらねばならないところの
減税を見送ってしまったのであります。大体、大蔵省の
租税見積もり方式は旧式である。今度のいわゆる
補正予算でも、その見積もりはまことに誤りが多い。しかし、この大蔵省のいわゆる
租税の見積もり算定方式に誤りがあるとしても、
政府が
減税を意図的にサボったことは、まことに
国民に申しわけないことであり、その政治責任は重大であると私は考えるのであります。(
拍手)
次に、千五百十四億という
自然増収をもって
補正予算を組むにあたって、年内大幅
減税もなし得ない。それならば、人事院から勧告されている
給与改善案だけくらいは満足にのむのかというと、それも満足にのみ得ない。五月一日にさかのぼって
給与改善を
実施すべきであるという人事院の勧告が出ておるのにもかかわらず、これをやらない。
公務員のベース・アップは、長い間
実施を押えられて、低賃金に据え置かれたことから考えたならば、少なくとも今度だけは最小限人事院の勧告をのんでしかるべきだということを私たちは考えておるのにもかかわらず、やはり、期日の点で、五月一日より
実施するという勧告を無視したやり方をしております。しかも、上に厚く下に薄いという
給与内容のみはそのまま受け入れておるということは、まことに了解に苦しむ点であります。低賃金層の
給与引き上げにあえて反対し、上下の
所得格差をいよいよ
拡大し、低賃金層の存在を多くしている点は、池田
内閣の
経済成長の実体であるとは十分われわれも知ってはおりますものの、
公務員給与の
引き上げにこれほど問題がある点を一向に見向きもせず、
改善に取り組もうとしない
政府のやり方は、少し反省をしたらいいのじゃないかと私は思うわけであります。(
拍手)
また、
生活保護対策費の
予算補正にあたりまして、先ほどから、たびたび、
もち代五百円の計上と言われておりますが、わずかにさほどの少額しか
補正に繰り込み得ないということは、一体どうしたことでありましょうか。現在の
生活保護基準がすでに
憲法違反の額であるということは、裁判の判決に出ておるわけであります。これらを幾分でも考慮するならば、この
補正予算を組むにあたって、幾分かこの
生活保護費の満足なるアップをすべきであるのにもかかわらず、ほんの口よごし
程度にやっているということは、私は、これは職務怠慢であると同時に、
憲法違反であると考えざるを得ないのであります。(
拍手)
池田
内閣が、いかに口ではうまいことを、
社会保障をするんだとかなんとか言っておっても、それは
国民の目をごまかす手段でしかないと私は断定するのであります。失業対策費も、あるいは
災害地における救農土木事業費の積み上げも、
炭鉱離職者あるいは
駐留軍労務者の離職者対策の費用等も、この
補正予算に組み入れない
程度の実体であるならば、自民党が
選挙のときに
国民に
公約した三本柱の
一つであるところの、
社会保障制度の確立をしますというような、ああいう大言壮語は、まことにから手形にすぎない。期待はずれで、私たちは何とも言えないのであります。しかし、これが池田
内閣の真の実体であるとするならば、
社会保障など言わない方がいいのであります。
以上、私は数点にわたって述べましたように、膨大な
自然増収を見込みながら、
減税もやり得ない、賃金
引き上げも満足にやらない、さらには、
社会保障費も口よごし
程度にしか盛り込み得ない、名目だけの
補正予算を組んで、これが池田
内閣の
経済成長予算でございなど、今の野田さんのようなことを言うても、
国民はこれをほんとうにしない。しかも、ほとんどが
産業投資特別会計に
出資して、
経済成長が別個なところにその
予算を振り向けて、
財政の膨張をさせていくというような、こういう
補正予算の組み方については、遺憾ながら、私は反対せざるを得ないのであります。(
拍手)
社会党の提案は、満足ではないかもしれません。しかし、ささやかながら、この
組み替えによって、
予算を一部の独占資本の
予算から大衆の
予算にしようと考えている心組み、その心組みに対して私は賛成し、その
動議に賛成するものでございます。
民社党の案もまた、口ほ
どもない案として、私は賛成しかねるわけでございます。
以上申し上げまして、私の
政府案反対、わが党案賛成の
討論を終わるものでございます。(
拍手)