○
山本幸一君 私は、
日本社会党を代表して、
総理の
所信表明に対し、以下、数点の
質問をいたしたいと存じます。(
拍手)
まず、私は、先ほど
総理の
所信表明をお聞きして、残念なことには、何
一つ内容をお聞きすることができなかったのであります。(
拍手)はなはだ遺憾だと存じております。過ぐる総
選挙の際の
池田総理の
公約は、
選挙が終わったとたんに次から次へとくずれつつあるのは言うまでもございません。
私は、この際、
経済問題等の
公約につきましては同僚の
質問に譲ることにいたしまして、あれだけ派手に登場した
所得倍増計画が
アメリカの
ドル防衛の一声でぐらつき、兜町をあわてさせ、
自民党の内部からすらもその変更を迫る声が起きている事実を見のがすことはできないと存じます。(
拍手)
また、
社会保障は、今回の
組閣人事に明らかに現われました
通り、過日発表された
厚生白書は、かねてわれわれの心配いたしました
通り、
政府の
所得倍増計画によってはますます
所得の
格差は広がり、
低額所得者階層の増大をもたらすことを明らかに指摘していると思うのであります。しかも、この
厚生白書にあわてふためいた
総理は
関係者をしかりつけたと伝えられているのでありますが、まことに皮肉といわなければなりません。
さらに、
選挙中しばしば強調した
話し合い政治は、
池田総裁みずからの手によってくつがえされてきたのであります。すなわち、過般の
議長選挙、
常任委員長の選任などで明らかなように、擬装的な
話し合いの姿を見せるため、時間をかけたように見せかけながら、その実は、多数の力によって一方的に押し切り、独占するという
態度は、従来と何ら変わるところがございません。(
拍手)一体、
総理の
公約は、
選挙用だけのものであったのか。
国民は、
池田総理もまた前
岸総理の三悪追放と同じ
運命をたどることをおそれているのであります。
総理は、これらの
公約を誠実に
実現し、もって
国民の
期待にこたえる意思があるのかどうか、まず第一に伺っておきたいと存じます。
第二は、
アメリカとの
関係についてお
伺いを申し上げます。
現在、
国際情勢は、
ケネディ新
大統領の出現、
世界共産党声明における
平和共存政策の確認、また、アジア・
アフリカ諸国などにおける
中立主義の台頭など、大きく動きつつあるのでありますが、これは、
池田総理の、
中立は幻想であるという
言明とは全く逆に、最も実際的、現実的な
政策であることを示していると思われるのであります。(
拍手)しかるに、
選挙中、
総理は、
アメリカと結んでソ連と対立するのほかはないと公言されたことが伝えられているのでございますが、一国の
総理大臣が、
特定国の名をさして、これと対立するというがごとき言動は、前代未聞の事柄であるばかりか、
総理の思慮に欠けた
態度とその
国際的感覚の古さには、ただただ驚くほかはございません。(
拍手)もっとも、この
言明は、
安保条約を
基礎とする
自民党政府の
外交方針を、歯にきぬを着せずに表現したものであるともいえましょう。だが、しかし、原水爆、
ロケット時代の今日、ある
特定の国と結んで他の
特定国と対立することは、軍事的に見て
日本の安全を脅かすことはもちろん、九千万
国民を破滅に導くものでありまして、
さきのU2機事件によっても、
国民の目にますますはっきりしてきていると思うのであります。その上、最近
アメリカ政府がとったいわゆる
ドル防衛措置は、
政治的、
経済的に見て、
アメリカとの
協調がいかに不安定なるものであるかを、
国民にいやというほど示したと存じます。(
拍手)
ドル防衛措置によって最も多くのショックを受けたものは、すなわち、韓国、台湾、
沖繩、南ベトナムなどでありまして、この事実は、
アメリカとの
結びつきが強くなればなるほど、これらの
国家の
自主性は失われ、
アメリカが一方的な
措置をとった際には、その
影響がいかに深刻であるかを示していると思うのであります。また、最近の
アメリカ景気の停滞、金の流出による
ドルの弱化などは、
アメリカ経済の
地位が相対的に低下したことを証明しているのであります。このような
状況のもとに、なお
アメリカ追従の
方針を主張するのは、みずから進んで
日本の
地位を弱化し、かつ、危険に陥れることになるのでありますから、この際は、かえって
中立の方向に勇気をふるって前進することのみが
日本の
地位を強化し、その
繁栄を保障するものであると思うのでありますが、
総理にその
決意がありやいなや、お
伺いをいたしたいと思うのであります。(
拍手)
さらに、最近モスクワで行なわれた
世界共産党声明において、
平和共存政策を強力に
推進することが明らかにされたのであります。平和のためなら悪魔とも話し合えという
言葉があるように、われわれは、この
言明をすなおに受け取りまして、これにこたえ、
平和共存を
実現するために一そうの
努力を払うべきであると信ずるのであります。そのため、私は、
東西首脳会談の開催こそ、
平和共存実現に重要なる一歩を画するものでありまして、全
世界の人々はみな強くこれを望んでいると思うのであります。この際、
政府は、
東西首脳会談推進のために、米、ソ、英、仏の各
首脳に積極的に働きかけて、それを
実現させることに努めるべきであると思いますが、
総理の所見をお尋ねいたしたいと存じます(
拍手)
第三は、
日本と
中国との
関係についてでございます。
第二次
世界大戦が済んでからすでに十五年を経過いたしておるにもかかわらず、
わが国は、すぐ隣の
中国との間にいまだ国交が
回復をしていないのであります。このような不自然な状態は、二千年の歴史を持つ
両国の
関係から見てとうてい長続きしないことは、何人の目にも明らかでございましょう。この行き詰まりを打開し、
日中両国の
関係を正常化することこそ、現在
わが国外交の最大の課題であるといわなければならぬと存じます。(
拍手)また、われわれの言う
中立外交とは、現実的には
日中国交回復をさしているのであることを、この際、私は明らかにしておきたいと存じます。
ところで、第一次
池田内閣の成立後の動きを見てみますると、
日中関係打開の
熱意が全く見られないばかりか、
国連総会において
中国の代表権承認問題が表決に付せられた際、
日本は、
アメリカの意のままに、
うしろについて、これに
反対投票をし、その後の
国連関係における各種の
国際機関においても、常に
アメリカに追従しているのでございますが、全く情けない次第ではございませんか。(
拍手)
池田総理は、先般来、口を開けば、
日本は
大国であるとおっしゃる。まさにその
通りであります。その
大国であるべき
日本が、
事ごとに
アメリカに追従するに至っては、
大国の
言葉に恥ずべきであるとともに、
わが国の
自主性いずこにありやと疑わなければならぬのであります。(
拍手)
そこで、私は、
総理にお
伺いいたしますが、
中国の
国連並びにその
関係諸
機関における代表権問題について、今後もなお、
アメリカの言うままに、一貫して
反対投票をなさるつもりか、それとも、
自民党政府として、せめても棄権ぐらいはすることにより、
アメリカに対して
大国日本の
自主性を示し、同時に、
日中国交回復に対する前向きの姿勢を天下に明らかにする意思をお持ちかどうか、明確にしていただきたいと思うのであります。
さらに、日中
関係において当面最も緊急を要する問題は、
政府間貿易協定の締結でありましょう。長崎国旗事件をきっかけに、
両国間の貿易が断絶してから、すでに二年有余になるのでございますが、
日本政府にはいまだ貿易再開の
熱意は全く見られないどころか、
池田総理は、
選挙中に、共産圏との貿易はだまされると公言されているのであります。皆さん、およそ、一国の
総理が、他国と貿易をすればだまされるなどという非常識、不見識な言辞を弄した例を、私は寡聞にして知らないのであります。このことは、かつて、
岸総理が、台湾
政府の大陸反攻作戦を支持するとの暴言を吐きまして、
内外のひんしゅくを買ったと同様、
池田内閣もまた岸前内閣と何ら変わるところはないと非難を受けることは当然といわなければなりません。(
拍手)しかも、
池田総理自身、先日の記者会見で、ソ連との貿易は今日順調に
増加し、最近は長期協定が締結され、数十億に上る造船の発注さえ行なわれていると公にされたのでございます。しかしながら、このことは、
池田総理の
言葉をもってすれば、ますますソ連にだまされていることになるのでありますが、一体、
総理はいかにお
考えでございましょうか。現実は、日ソ貿易の
拡大によって
両国ともに外くの人々が利益を受けていることは、否定のできない事実でありましょう。また、このような日ソ貿易の伸展をまのあたり見て、
国民が日中貿易の再開を要望するのは、きわめて当然のことではないでしょうか。現在、
中国側は、
政府間貿易協定を締結する用意があると
言明しており、従って、この問題は、一に
自民党政府の
決意いかんにかかっておるのでございますが、
総理は、この際、
中国側と閣僚級の会談を開き、
政府間貿易協定を締結し、他の懸案の解決をはかる
考えがあるのかどうか、この際、お尋ねをいたしたいと存じます。(
拍手)
これと関連して、いわゆる超党派
外交について一言いたしたいと思います。
五年前、鳩山内閣のもとにおいて日ソ国交正常化が行なわれたとき、わが党はこれを強く支持し、保守陣営内の一部
アメリカ一辺倒分子の妨害にもかかわらず、ついに日ソ共同宣言の調印、批准が成功したのでございます。これは、わが党が一貫して鳩山内閣の日ソ国交
回復の
方針を支持、激励したからにほかなりません。われわれは、
池田内閣が
中国との間に
政府間貿易協定を締結し、日
中国交正常化の方向に一歩を踏み出すならば、わが党はあげてこれに支持、
協力する用意のあることをつけ加えて申し上げておきたいと存じます。(
拍手)
第四は、日韓会談についてでございます。
わが党は、ともに
アメリカと軍事同盟を結んでおります韓国と
日本とがその
関係を緊密化することについては、きわめて慎重な
態度をとらなくてはならないと
考えておるのであります。特に、朝鮮が三十八度線によって分割され、その南北
両国の間に戦争のあったことを思い起こすとき、われわれは、日韓
関係のいわゆる正常化が将来
わが国の
外交路線を引き返しのできない袋小路に導かないように、細心の注意が必要であると思うのでございます。また、われわれは、最近、李承晩政権崩壊後、韓国において、全朝鮮の
中立化による統一を要望する声が著しく高まってきたことに重大な関心を払わなければならぬと存じます。伝えられるところによりますと、韓国
政府の代表は、数回にわたって公然と韓国、台湾、
日本、フィリピン、
アメリカを含めた同盟条約を提唱しているというのでございますが、もし、このようなことが実際に行なわれるとしたら、
わが国は新
安保条約反対のとき以上の大きな混乱に投げ込まれるであろうことを、私は、この機会に声を大にして警告するものでございます。(
拍手)このような重大な
内容を持つ日韓会談について、今次
選挙において、
政府・
自民党は一言も触れていなかったのでありますが、もし、それ、かかる会談が進められるとするならば、それは、岸内閣のもとで行なわれた二年半前の総
選挙において、警職法や安保改定について全く触れなかったものと同じであり、われわれとしては断じてこれを黙視することができないと存じます。日韓会談については、去る九月一日、わが党の公開
質問状をもって
総理にただしたのでございます。しかるに、今日に至るも何らの回答もないのでありまして、きわめて遺憾なことと存じます。
そこで、私は、この際、次の二点について
総理の明快な答弁を要求するものでございます。
その
一つは、日韓会談は韓国
政府を全朝鮮を代表する唯一の正統
政府として認める立場に立って行なわれるものであるかどうか、いま
一つの問題は、
日本、韓国、台湾、フィリピン、
アメリカを連ねる条約を結ぼうとする意図はあるのかどうか、率直に答弁をされたいと存じます。(
拍手)
第五は、
沖繩の施政権返還についてでございます。
言うまでもなく、
沖繩は
日本の領土であるのにかかわらず、今なお
アメリカの実質上の軍政下にございまして、その通貨も
ドルが通用しておるのであります。そのため、今度の
ドル防衛による
アメリカ側の一方的
措置によって一大打撃をこうむり、
日本の領土でありながらも
日本商品をボイコットするという、全く道理に合わない現象が起きているのであります。
沖繩の同胞は一日もすみやかなる
日本復帰を熱望いたしておるのでございまして、
政府は、
沖繩施政権返還
実現のために、すみやかに
アメリカ政府と交渉すべきであると思うが、
総理の所見をお尋ねいたしたいと存じます。(
拍手)
第六は、金権
政治についてでございます。
御承知の
通り、
選挙は
政策の対決であることは、今さら言を待たないのであります。しかるに、
わが国の現状は、ほとんど
政策以前の段階で
選挙が戦われて、その勝敗が決せられているのが実情でありましょう。
選挙に際して
自民党が財界から莫大な資金を受け、その金額は
選挙の回数を重ねるごとにいよいよ大きくなり、特に、今回の
選挙には、それが空前の額に達したことは、財界の
首脳部自身が公然と認めているところでございます。(
拍手)今回の
選挙で
経済再建懇談会が
自民党に出した金は表向き八億円といわれ、それ以外に、この額をはるかに上回る金が、失礼でありますが、
自民党内の派閥を通じて投ぜられたということは、公然の秘密とされておるのでございます。(
拍手)一体、
政策の対決が
選挙のあるべき姿であるとするならば、何ゆえかかる莫大な金が
選挙に必要とされるのであろうか。答えはすこぶる簡単であります。それは買収の一言に尽きるからであります。(
拍手)現に、今次総
選挙においても、買収等の悪質違反は、そのほとんどが、残念ながら、
自民党の候補者諸君であることによっても明らかでありましょう。(
拍手)わが党は、かねがね、わが党内
の悪質違反者については、情においては忍びないが、厳重な処分をすることを、天下に明らかにいたしたのでございます。
総理は、一体、あなたの方のこれら悪質違反者に対して、どのような
政治的、道義的責任を感じておられるのか、明確な御答弁をいただきたいと存じます。(
拍手)
次に、金権
政治の最も悪質な事例として世人の記憶に新たなるものは、御承知の、岸総裁から
池田総裁に至る二回の
自民党総裁
選挙でありましょう。
自民党の総裁たらんとする者は、財界本流のバックと強い支持がなければその
地位を得ることができないといわれているのでございます。すなわち、最もよく金を集め、これを散じた者こそ、
自民党の総裁資格者と称せられるのであります。このことは、外国ではどうしてもわからぬと言っております。しかし、遺憾ながら、
わが国の保守党
政治の実態であるといわなければならぬと存じます。(
拍手)このままに放置すれば、
国民が議会
政治そのものにあいそをつかす日がこないという保証は、何人もできないでありましょう。民主主義と議会
政治を守ろうとするものが金権
政治の排撃を叫んで立ち上がるのは、今こそ一番必要なことではないかと存じます。(
拍手)金権
政治の悪弊の根源は、
選挙に金がかかり過ぎるのでありまして、この問題にメスを入れることなしに、この弊害を断ち切ることはできないと存じます。わが党は、特にこの点に留意し、金のかからぬきれいな
選挙を
実現するため、
選挙法を抜本的に改正し、悪質違反の厳罰、連座制の強化、
選挙公営の
拡大などを行ない、さらに、
政治資金規正法を改正し、政党と財界の
関係をガラス張りにすることを提唱しているのでございますが、これらの諸点について
総理の誠実なお答えを
伺いたいと存じます。(
拍手)
第七に、憲法改正問題についてでございます。
ここ数年来、憲法改正は
選挙のつどのテーマとなり、今回の総
選挙でも
一つの争点であったことは、言うまでもございません。
池田総理は、たとえ
自民党が三分の二以上の議席を占めても、憲法改正は
国民の意思に反して行なわない、と
言明されたのであります。今回の
選挙の結果では、憲法擁護の勢力が三分の一の議席を上回り、再び改正の不可能なことが
国民の意思によって明らかになったのでございます。(
拍手)従って、岸内閣のもとにおいて憲法改正の意図を持って作られた憲法
調査会は、全くその存在理由を失ったことは明らかでありますから、われわれは、もはや同
調査会をすみやかに解散し、
国民の不定にこたえるべきであると思うのでございますが、
総理はどのようなお
考えであるか。(
拍手)
また、これと関連して、教育基本法を初め、秘密保護法や治安立法を制定するという意向が伝えられておるのでございますが、あわせて
総理のお答えを要求するものでございます。(
拍手)
最後に、ここ数年来、
国会において与・野党激しい対立が生じ、しばしば混乱が見られたのであります。しかし、その際問題になった案件を見ると、実質的に憲法の
内容に触れる重大な性質を持つものばかりであり、かつまた、総
選挙の際に
国民に対して
公約しなかった案件等であるのでございます。
選挙の際には
国民に耳ざわりのよい甘言をもってし、
選挙が終われば開き直り、
国民の権利や生活を脅かす案件を、多数の力にものを言わせて押し通すというやり方が続いたのでは、議会
政治が正常に円滑に運営されるはずはございません。
さきに、
選挙中の三党首討論会において、わが党は、
選挙の
公約になかった重要案件はもちろんのこと、
国民の多くが反対し、与・野党の意見が激しく対立する案件等については、
国会を解散し、
選挙を通じて民意を問うなり、または
国民投票等によって
国民の意思を問うべきであることを提唱したのでございますが、これは民主的な議会
政治のあり方として最も基本的な問題であると思うのであります。この提唱に対して、
総理は、この本
会議を通じて、あらためて所見を明確にしていただきたいことを要求いたしまして、私の
質問を終わりたいと存じます。(
拍手)
なお、答弁によりましては、再
質疑をいたしますることを、あらかじめお断わりを申し上げておきたいと存じます。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇〕