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1960-12-16 第37回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年十二月十六日(金曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 池田 清志君    理事 田中伊三次君 理事 林   博君    理事 山口六郎次君 理事 坂本 泰良君       井村 重雄君    一萬田尚登君       上村千一郎君    唐澤 俊樹君       岸本 義廣君    小島 徹三君       千葉 三郎君    楢橋  渡君       飛鳥田一雄君    田原 春次君       坪野 米男君    畑   和君       田中幾三郎君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君  委員外出席者         検     事         (刑事局長)  竹内 寿平君         法務事務官         (矯正局長)  大沢 一郎君         法務事務官         (入国管理局         長)      高瀬 侍郎君         最高裁判所事         務総局事務次         長       内藤 頼博君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      守田  直君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十二月十六日  委員淺沼享子君及び片山哲辞任につき、その  補欠として飛鳥田一雄君及び田中幾三郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員飛鳥田一雄君及び田中幾三郎辞任につき、  その補欠として淺沼享子君及び片山哲君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一〇号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一一号)  法務行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 池田清志

    池田委員長 これより会議を開きます。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、質疑を継続いたします。田原春次君。
  3. 田原春次

    田原委員 この両法案の審議に入ります前に、刑事局長に二、三お尋ねしておきたいと思います。それは、主として新聞に出た記事からのことでございますが、最近私の気がついたことだけでも二つあります。一つは、去年、昭和三十四年にBOAC勤務スチュワーデス殺人事件というのがあり、そしてその重要参考人だったベルギー人のある神父取り調べをされておる途中で本国に帰ってしまった。もう一つはこれはきのうの新聞に出ておったかと思いますが、関税法違反被告人本国に帰ってしまった。そのほかおそらくまだたくさんあるのじゃないか。これは私の方から資料の請求をしましたところ、今いただいております資料の中には、第一のスチュワーデス事件に対しての経過の中に、しまいの方に「したがって本人が有効な旅券を所持し適法に出国手続をしてきたときにおいてはその外国人出国を阻止することはできない。」これは実におかしなものであって、それじゃ関税法違反その他でいろいろな事件を起こして身柄拘束されずに調べられておるときに、どうもこれは日本におったのではまずいから、逃げて帰ろうと思った場合、帰れるのじゃ、裁判はやらぬと同じことです。従って、こういう場合にわれわれ一般国民から希望することは、その疑いを明瞭にして、その後に無罪になって帰ることはいいのでありますが、取り調べ中の者に対しては、羽田の飛行場には警察官もおるし、それから出入国管理官もおるのでありますから、取り調べ中の外国人に関しては、飛行機の場合は羽田、それから船の場合は横浜、神戸というところへそれぞれ事前に通知をして、この種の者はむろん旅券を持っているに違いないけれども、または偽名等によって国外逃亡のおそれがある場合は、写真でも出して押えておかなければ意味がないと思います。同時に藤巻長吉ですか、この人に関する御答弁文書の中に、第三ページに「なお、被告人検察官裁判官に対して帰国の意思を洩らしたことは、全くなく、また、保釈決定裁判所に対して事前帰国許可を求めることもしていない。」これはあたりまえのことなんです。逃げて帰る者が、私はこれから逃げますからなんということを言うわけがない。だから、そういう場合に何も手を打たぬというなら、外国人に対する裁判はやらぬでいいことだ、こう思うのですがね。警察も各地にあるのでありますから、逃亡勝手たるべしというような今までの行き方はおかしいと思う。これに対する措置をなぜ講じないか、こういうことは国民の前に疑問があると思いますのでお答え願いたい。
  4. 竹内寿平

    竹内説明員 ただいま御指摘の御疑念の点は、私もごもっともだと考えるのでございます。  ただスチュワーデス殺し事件の点につきましては、きわめて簡単でございますが文書でお答え申し上げたところでおわかりいただけると思いますが、ベルメルシュ神父が、この事件の重要な参考人でありましたことは、捜査の過程において明らかになってきたのでございますが、しかし殺人容疑というようなものにまでは至っていなかったのでございます。従いまして、容疑者として取り調べをする、容疑者として進んで逮捕するといったような証拠は得られなかったのでございまして、今日もその通りでございます。そういう状況でございましたので、同神父が適法な旅券を持って出国をするということになりますると、これを阻止する方法現行法上ないということをここに記載しておるのでございます。私ども捜査並びにその事件を担当しております側といたしましては、重要参考人でございますので、その問題が解決するまで日本にとどまってもらって、そして嫌疑の有無が明白になりました後において、嫌疑がないということがはっきりしました後において、出国をしてもらうことが望ましいとは思いますけれども、その捜査官の側の考えとは違って、自分は出ていく、こう申してきた場合に、強制力をもってこれをとどめる方法現行法上ないということに基因するものでございまして、遺憾には存じますけれども、やむを得ないことであったというふうに考えておるのであります。  それから第二の藤巻長吉にかかる関税法違反被告、現に公判中の者が、われわれ官憲の知らざるうちに北鮮に帰還してしまった、こういう事件につきましては、これは非常に私、遺憾に思っておるものでございます。これをとめる方法はなかったかという点につきましては、もしこの藤巻長吉氏が朝鮮人であるということがわかっており、かつ北鮮帰還希望しておるという状況がわれわれにわかっておりましたならば、これは私どもとしてとめる方法があったわけでございます。ところがここに記載いたしましたように、彼は日本人として入籍しておりました関係で、終始日本人で通ってきておったものでございます。捜査中はもちろんのこと、公判におきましても日本人として取り扱われてきたのでございますが、この国籍関係につきましては、御承知のように日本の家に婿養子になっておりましても、本来が朝鮮人でございますと、やはり朝鮮人としての取り扱いも同時に受けるということになっておりますので、われわれの知らざる間に朝鮮人という立場で帰還申請をしており、これをチェックすることができなかったのでございます。これは私どもの方の手落ちであったわけでございますが、それを知り得なかったという点、どうして知り得なかったかという点がなお検討を要する問題であろうかと考えております。
  5. 坪野米男

    坪野委員 関連して。今の刑事局長の御答弁ですが、入国管理局というのは、法務省でございますね。検察庁として重要参考人としてお調べ中であったようですが、法務省連絡をとって、まだ重要参考人として取り調べを継続する必要があるという御見解であれば、そういった人の出国を阻止するような措置を講ずる必要、あるいはそういう道がなかったのかどうか、そういう点についてちょっとお尋ねしたいと思います。
  6. 竹内寿平

    竹内説明員 羽田の入管の事務所は、法務省所管入国管理局出先機関でございます。従いまして、われわれの方と密接な連絡をとることはもちろん可能でございますし、現にとっておるわけでございます。ただこれを阻止することができるか、法律上阻止することができるかどうかという点につきましては、先ほどお答え申しましたように、できないのでございますが、事実上の問題としまして捜査重要参考人として目されておる人でございまするので、本人に自発的に日本にとどまって、調べを完結してから処置を誉めてもらうということを要請することは可能でございますが、そういう要請をいたしたのでございますけれども本人希望によりましてどうしても帰国したい、こういうことで、これを阻止することができなかった、こういう状態でございます。
  7. 田原春次

    田原委員 これも今おっしゃった通りであろうけれども、その前段階で、もう少し、たとえば証拠固めをあらかじめしておいて、そうして重要参考人として呼ぶ呼んだときにはかなりこっちに材料を持っておるというふうにすべきである。しかるに重要参考人として呼んで、何度もやっておるうちに、これはまずいことになったから逃げちまえというので逃げるということでは、意味がないと思います。それからこれは事実であるかどうか知りませんが、松本清張氏の小説に、あたかもこれを全くモデルにしたような小説が出ております。お読みになっておると思いますが、それで見ますと、カトリックの方で密輸をやっておって、それとの帳消しにしてやったというようなことも書いてあります。これは検事局であるか何かわかりませんが、そのこと自体は小説ですから、この事件をなぞって書いたものであると思いますけれども、問題はそんなふうで、事前において秘密のうちに証拠を固めておいて、それで外国人だったら逃げる心配もあるから、調べたときには逃がさぬというくらいにしなければいかぬ。ただ簡単に重要参考人を呼んでおって、そして逃がすというようなことであったのでは、これは事実それきり日本に帰ってこないです。ベルギーに帰ったきりでしょう。これも小説のことだけれどもカトリック全体が、ベルギーカトリック関係、特に東京にいる関係が総出でもって応援をしたらしい。何かだんだん隠しきれなくなって、神父がブラッセルに着いたときに、日本新聞記者が面会している。面会したということは新聞に出ている。それから前後の問題をつづって一つ小説風にしてありますけれども、なるほど読んでみると、そういうふうな経過ではないかということを一応疑わざるを得ない。私がお尋ねするのは、外国人、特に西欧人に対して一種の劣等感裁判官検察当局が持っているのじゃないかという気がする。何か大事にし過ぎて、そしてとんでもないところへ逃がしてしまう。結局このスチュワーデス事件はそのままになってしまった。犯人があがっておらぬわけです。犯人があがらぬで死亡というようなことでは、これは国民としては納得できない。あくまでこの事件を追及して、明瞭にするか、あるいは重要参考人本国に帰った者に対しては、ベルギー政府に交渉してもう一ぺん来てもらう、場合によったら出先の適当な機関を通じて調べるとか、重要参考人であって外国に逃げたから調べぬということではおかしいと思う。しかも本来の真犯人があがっておらぬ。こういうことは、私はどうも検事局やり方が、ただ遺憾でありましたということだけではいかぬのであって、どこかで結末をつけて、真犯人を発見すべきでありますが、その後どういう手を打っているか、これをお尋ねしておきます。
  8. 竹内寿平

    竹内説明員 西欧外国人に対しまして劣等感と申しますか……。
  9. 田原春次

    田原委員 言葉は適当でないかもしれませんが、遠慮している。
  10. 竹内寿平

    竹内説明員 そういうものをもって遇しているのじゃなかろうかという御疑念でありますが、もちろんさようなものはいささかも持っておりません。問題は、あの場合きめ手となる証拠の収集ができなかったというところにあるのでございまして、特にその後さらに容疑が深まったというような事情でもございますれば、当然外交手続を通じましてもさらに取り調べを求める方法を講ずるのでございますが、現在のところそれについてさらに容疑が深まったというような報告は聞いておりませんけれども、人一人、御指摘のように死んでおるのでありまして、犯人があがらないということは、取り調べ捜査当局としましては、借りになっているわけでございます。あくまで真相究明に努めたいという考えを今もかたく持しておるのでございます。
  11. 田原春次

    田原委員 かたく持しておやりになるとして、具体的にどういうふうにやるか、私はしろうとですからわかりませんが、先ほどちょっと触れましたように、外国人犯罪容疑者に対する共同視察か準備かを、たとえば税関とか税関所在地警察、あるいは出入国管理局の所員、あるいは商事会社とか、そういうものと常時連絡して、取り調べが始まったらそう簡単に逃がさぬというようにすることが必要ではないかと思います。ここで明らかになったのは二つですが、私思い出しているのは、数年前にインド人でやみかなんかやって調べられている最中に、飛行機インドへ帰ってしまった、そういう事件新聞に出るだけでも三つ、四つ知っているのですから、実にだらしがないやり方じゃないか。そしてそれをだれも知らぬ、逃げた犯人だけが笑っておるというのでは、私が申し上げように――劣等感というのは言葉として適当ではありませんが、少しルーズではないかと思うのです。日本に来て殺人を犯して、取り調べ最中に逃げれば問題ないということになれば、今後殺人請負業あたりがどんどん東京へ乗り込んで、刑事局長なんか殺されたりして、殺され損で逃げ得だということでは、日本としてはそんなことが望ましいことではないとわれわれは思うので、今後そういうことのないように処置をとるという決心をしてやってもらわなければいかぬ。そういうことについてのお考えを聞かしてもらわぬと安心できぬのです。
  12. 竹内寿平

    竹内説明員 私も田原委員と全く同じような考え方をいたしておるのでございますが、御承知のように外国人入国ということにつきましては、わが方が絶対的な権利を持っておるわけでございまして、入国を拒否することはわが方の考え方によって決定する事項でございます。しかし、出国の場合におきましては、先ほど御説明いたしましたように、適法な旅券を持って出国したいということになりますと、出国手続としてはそれを確認して出すというだけのことでございまして、現に身柄拘束されておるとか、事実上出国ができないような状況になっておるかいなかによってきまるのでございまして、身柄拘束するだけの資料がなく、そういう状況のもとにおいて適法な旅券のもとに出国したいという場合には、これを阻止する方法がない、これが現行法律制度でございます。そこで、これらの制度は国際的にも一つの慣行があるわけでございますので、すぐ法規を改正してどうこうということはよほど研究を要する問題だと思いますが、こういう法規の面においての研究も、先般来その事件を契機として、私ども内部ではいろいろ論議もいたしておるような次第でございます。また一方事実上の行為として、これは強制ではございませんが、取り調べ済むまではいてもらうといったような形の事実上の説得行為というようなことも、なお工夫を要する面があるのじゃなかろうかというような点も考究をいたしておる次第でございまして、その点なお遺憾な点がございますが、現行法律制度のもとにおきましては、真にやむを得ない盲点と申しますか、そういう部分に当たっておるように思うのでございます。
  13. 田原春次

    田原委員 それは拘束をされておる者は出ていきはしませんから、拘束に至らざる程度の被疑者、これが自由勝手にふるまっておるのがわれわれの不満と不安であるわけです。入国の際の外国人扱いについては、日本決定権を持っておることはあたりまえです。たとえば政治的亡命――この間韓国のなんとかいう人が来ておって、これに対して韓国側から引き渡しを要求するし、日本側では取り調べが済むまでは渡さぬということでありますから、そういうことが言えるならば、出国だって同等に扱っていい。入国するときに日本許可しているのだから、出国のときに重要な刑事上の被疑者については、法規で縛れるかどうか問題でありますが、関係機関が集まって取り扱い上としてそれは切符を売ることはならぬということを、飛行機会社等に対して事前の注意を与えることはできると思うのです。これはやはり各省がそれぞれ別々にやって、そして全体としては抜けているというところに一つの欠点があるのですから、日本における外国人国外逃亡防止に関する機関なり扱いを、法規に基づかぬでも作っていいのじゃないかという気がするのですが、これはもし処置をやっていなければ、至急に考えてもらいたい。  私はこの問題についてまだもう少しお尋ねしたいことがありますが、一応質問を留保しておきます。  なおわれわれの委員側で、裁判官及び検察官給与の問題について質問をしたいと思っておりますが、私どもの側で最初にその質問をすることにきめておる委員が都合でまだ見えませんので、もうしばらくこのままで待たしていただきたいと思います。
  14. 畑和

    畑委員 入国の問題に関連して質問いたします。  これは今田原委員質問した問題とはちょっと違いますけれども、私がちょっと相談を受けたことがありますので、それについてこの際入国管理庁の方に質問をいたしておきます。朝鮮人婦人で、日本に母親をたずねて参って、何年か前に新聞の話題にもなった人ですが、それが一応収容所に入れられて、そしてそれから出していただいてその後日本滞在いたしておりますけれども、その滞在を許すかどうかということは管理庁の方の自由裁量である。それで二カ月くらいの切りかえでやっておる。ところで本人にとってそれが非常に重荷である。そしてその婦人は、私の知っている限りでは、日本にずっと長く滞在することを非常に希望いたしております。それで仕事も習って、覚えてやっておるまじめな婦人と見受ける。そういった際にその婦人ができるだけ長期に、一年とかなんとかいう形で滞在を許すというようなことをぜひやってもらいたいということで、過般私のところへ見えられたのですが、ちょうどいい機会でありますので、その辺どうですか。この女は間違いなくまじめであるかということを確かめた上で、相当長期に、一年なら一年ということで許可を与えるということをしていただきたいと思うのでございますが、そういったことができるものかどうかということをお伺いしたいと思います。たまたま日韓会談等があって、外交問題が関連をし、日本人韓国人に対する感情問題であります。それからまた一般韓国人の中にも、中には相当よくないのがある、これはよくわかる。しかしこの女の人が一応まじめな人で、日本滞在希望しておって、切りかえ、切りかえということで五、六年ずっとやってきておった場合には、これを相当長期に許すことを考えておるかどうか、この点をちょっと承っておきたい。
  15. 高瀬侍郎

    高瀬説明員 ただいまの問題は具体的のケースと考えますので、必要の資料を取りそろえまして、御趣旨を体して判断をしたいと考えております。
  16. 池田清志

    池田委員長 ちょっと速記をとめて下さい。     〔速記中止
  17. 池田清志

    池田委員長 速記を始めて下さい。
  18. 田原春次

    田原委員 裁判官検察官給与の改正について二、三お尋ねしたいと思います。  物価も上がってきておることだし、相当の体面を保たなければならぬから、給与の改定があることはこれは原則的には望ましいことだと思うのであります。ただ、それについて二、三お尋ねしたいことがあります。第一にお尋ねしたいのは、裁判官検察官の二本立にした理由はどういうところにあるのか。採用されるときは同じく司法官試験で採用されて、受け持ち上、また本人希望等もあって検察官となり裁判官となるのですから、いわば司法官俸給令というような一本でいいと思うのですが、それを二本にした理由はどういうのですか。
  19. 津田實

    津田政府委員 お尋ねの点でございますが、形式的にはもちろん裁判官報酬裁判所法によって別に法律で定めることになっており、検察官俸給検察庁法によって別に定めるということになっておりますので、行政職給与からむろん別建てになるということになります。ところが裁判官報酬に関する法律検察官俸給に関する法律を一本にすればいいんではないかという御趣旨でございますが、この点につきましては、もとより司法試験に合格いたしまして、司法修習生として採用され、二カ年ともに修習をいたした者につきまして、本人希望等によりまして裁判官になり検察官になるわけでございます。そういう意味におきまして、裁判官司法官であり、検察官は準司法官であるという意味におきまして、同じような待遇を従来受けて参りましたし、現在におきましても同じような待遇を受けておるわけでございますけれども、やはりこまかい問題についてはいろいろ事情が変わっております。一例を申し上げますると、裁判官につきましては、いわば原則として単独で裁判のできないような期間、すなわち十年間の判事補期間がございますし、その十年間の判事補期間を過ぎてから正式の裁判官と申しますか、いわゆる判事に認証されるわけでございます。一方検察官につきましては、これは修習生を終わって任命当時から一個の検察官としての職権を行使していくわけであります。そういう趣旨におきまして、やはり裁判官の場合はそういう段階があり、検察官の場合は、少なくとも認証官以前の段階においても同じ検察官であるというような制度上の違いもございまして、これを一本の給与法にすることは非常に錯雑をいたすのみならず、適当でないと考えられるので、かようになっておるものということに従来から了解されておるわけでございます。
  20. 田原春次

    田原委員 職務給与というものをごっちゃにしてきめておられる。なるほど判事判事補とは、職務の上においてあるいは権限の上において違いがあるので、必要上そうなったのでありますが、給与については別に何も二段に分けなくてもいいと思う。これを見ますと、判事判事補簡易裁判所判事という三階級にわけて、おのおの各号俸をきめてあるのであります。それからその上の方にいきますと、高等裁判所長官最高裁判所判事最高裁判所長官と分かれています。それから検事に関しては検事総長次長検事東京高等検察庁検事長、その他の検事長、こういう職名に付随する給与の分け方と、それから検事、副検事としてそれぞれまた分かれておるわけです。これは第一全体から見ましても、判事補は一号から十号、判事は一号から七号まで、それから簡易裁判所判事は一号から十四号まで、検事の方は十九号、副検事が十二号になっております。いたずらに繁雑にしておって、大学を出て司法官試験通り、ある修習期間を経て任官する、そのときから始まるのだから、給与給与としてスライドでいけばいいのであって、これから受けるわれわれの感じは、検察官より一段低いような格好に給与の面ではなっておるのです。ところが検察官というのはやはり国家の代表としていろいろな被疑者問題等を扱っておるわけですから、判定を下す裁判官事件を取り扱う検察官とは、職務においては違うけれども給与を一段下げなければならぬというのはどういうわけか。これは要するに先ほど申しましたように、司法官俸給令とかなんとか一本にしてやればいいので、初めからその差をつけておるのはおかしい。もちろん裁判官は重要な職務でありますけれども給与令は共通でいいのじゃないか、職務給与と切り離して考えられるのじゃないか、こういうような疑問が起こるわけですが、今の御説明は私の尋ねたところの説明になっておらぬので、現在の検察官に対しては検察庁法できめる、裁判官の方に対しては裁判所法できめる。なぜそういうふうに分けるかということについては一言も触れておらぬわけです。それから特別職では裁判関係で分けなければならないという理由をもう一度お尋ねしてみたいと思います。
  21. 津田實

    津田政府委員 御承知通り給与のきめ方、これは民間につきましてもその通りでございますが、ことに公務員の給与につきましては、その職務の複雑性、責任の度合いあるいは勤続年数というようなものをいろいろ配慮いたしまして、その度合いに従って給与をきめておるというのが現在の給与法の立て方でございまして、これは裁判官検察官、一般行政職を問わず、同じ考え方で立てられております。  そこで詳しく申し上げますと、今の裁判官の職種がいろいろ分かれておるわけでありまして、ことに判事補判事というものは正規の司法試験に合格した者から採用されるわけであります。簡易裁判所判事はさような資格者でない人も採用されるということになっております。検事の場合につきましても、検事は正規の司法試験に合格し、司法修習を終えた者から採用されますが、副検事はそういう資格を持っていないわけであります。そういう意味におきまして、従って扱う事件の種類等につきましてもやはり変更があり、責任の度合い、職務の難易が違ってきておるわけであります。それの度合いに従って俸給をきめておる。一方判事検事との関係におきましてもやはり職務責任の度合いが若干違うということも見えるわけであります。すなわち裁判は最終の決定を与える職種であるので、検察官に対しては若干の優位を認める、同じ法律からいたしましても、若干の優位を認めるべきであるという考え方もあるわけであります。それらの考え方を全部一つにまとめまして、それぞれの特殊性を発揮するように俸給表を定めておるわけでありまして、どうしてもこれを一本にするということにつきましては、それらの間の調整が非常に困難になるという不合理が出て参るわけであります。その意味におきましておのおの別の法律によっておるわけでございます。
  22. 田原春次

    田原委員 簡易裁判所判事の採用時における資格はそういう方針できておることはわかりますが、そのことで待遇に別に差別をつける必要はないと思います。たとえば、判事の今度の新しい案によりますと、六号俸八万八百円と簡易裁判所判事一号俸とは同額であります。簡易裁判所判事を何年やっておっても判事の五号俸、四号俸になれぬという最高の頭打ちがしてあるわけであります。こういう制限をどうしてしなければならぬか。たとえば有能な人で裁判所が認めて簡易裁判所判事に採用した場合に、多くの場合相当の弁護士として収入があったような人が、その人の御希望なり裁判所の都合で簡易裁判所判事になった。しかし給料はこれ以上出さぬのだということになると、事件が簡単だから給料は安くてもいいのだというわけにいかぬ。受ける方の国民の側からすれば、小さな事件でありましても、本人としては大事件でありますから、従って給与を特に差別する必要はないのじゃないか、こういうふうに差別をつけるなら、初めの方に最高裁判所長官判事東京高裁長官等をつけてあればあとはずっとスライドしていけばいいと思うのです。これは要するにこういう原案をきめた頭に戦前の勅任官――高等官、判任官といったような頭があるからじゃないか、民主的な憲法のもとにできておることに対して、給与面で初めから差をつけるということ、お前は簡易裁判所判事だから給与はこれしか出さぬぞというようなことを初めからきめるのはおかしい。外国の例を引くようでちょっとおかしいのだけれども、これはイギリスにおいてもアメリカにおいても、またソ連においても、中国においても職務給与とは別に切り離してある。低い職務でありましても、長年勤続しておりますと、高い人より給与が上になっておる。御承知だと思いますが、私はたくさんの例を自分で知っております。たとえばイギリスの例をとりますと、ブラジルのアマゾンに二十五年もおったイギリスの副領事がある。本国の外務省の高等官よりも地位は低いけれども、給料が上です。要するに勤続年数で給料が出るようになっておる。ところが日本ではつけ出し幕内というか、初めから上で入った者と下っ端で入った者とは、最後には給与の差がうんと開くというのが今度の給与令の大きな欠点である、これはわれわれの方からも指摘しておった。裁判官についても何もそれをまねをしてやる必要はない。人命に関する問題、財産に関する問題、権利に関する問題を判断するのに、簡易裁判所判事だから、お前は普通の判事の六号俸だということで出してきておる。相当ないい人を求めようとすれば、待遇をよくしなければならぬ。私のお尋ねしたい意味は、司法官俸給令というものと司法官官職とを切り離していくべきものではないか、世界にそういう例があるのでありますから、日本だけが封建的な戦前の古い形で学歴であるとか試験の合格のみによって初めから給料をきめるということはもうこの辺でやめるべきじゃないか、今回変える機会にそういう民主的な方法によるべきである、こういうことです。たとえば最高裁判所あるいは地方の冬裁判所の職員、これは裁判官でもないし、検察官でもないけれども裁判官検察官資料を出す重要な仕事をやっておる。しかしそれは事務官であるというようなことで一般職の方に回してしまう、そうしてなかなか最高の給与というものは、ある職種にいかなければもらえないことになっておる。これは今度の大きな給与の欠点であります。でありますから、日本では、諸外国の例、イギリスやアメリカの例を言うと、すぐ賛成する一種の劣等感があります。ソ連や中国等の例を言うと、すぐ初めからきらいますけれども、不思議に給与と職種については、共産主義の国も資本主義の国も同じであります。日本だけが徳川時代以来の封建的な気分が残っておるのではないかと思うのです。一般職に対してはただいま内閣委員会で論議しておりますから、せめてわれわれが尊敬する裁判官、検察並びにその補助機関である事務官に対しては、司法官ということで一本にしてもらいたい。そうして地位は低くとも、長年勤めたならば、給与最高裁判所長官くらいはもらえるようなスライド式にした方がいい。この機会に働いておる者の仕事の重要性でなくて、勤続年限によってきめるべきものではないか。このことが――判事補は割に若手でありましょうから、これが判事から見て少し給与が安いということはかなりあります。今おっしゃった簡易裁判所判事なんというのは、特殊な任務で、非常に重要な――一般の判事もむろん重要でありますけれども、地方の小さな町の判事をやっておる人は相当年輩の人がおりまして、かなり実情に即したいい判決をしておるわけでありますが、給与は低いわけです。これを特に差別する必要はないと思う。事件の大小によらず、その人の年令と勤続年限できめるようなスライドでいけばいいと思う。私の意見に対して簡単に一つあなたの考え方を聞かしてもらいたい。
  23. 津田實

    津田政府委員 一般職、特別職を通じまして、現在とっておりますところの給与制度におきまする給与のきめ方の基本的な考え方は、一般職の職員の給与に関する法律第四条にその趣旨が盛られているのでありまして、その内容は、「職務の複雑、困難及び責任の度に基き、且つ、勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤務条件を考慮したものでなければならない。」こういうことにきめられておるわけであります。特別職につきましては、特にその規定はございませんけれども、同じ趣旨を貫いてきておるわけであります。先ほど、職務の複雑、困難あるいは責任の度合いと申し上げましたのは、その点から参っておるわけでございます。  そこで、ただいまの御趣旨にございましたが、実は英米等におきまする裁判官につきましては、もっと日本より考え方は違っておるのでありまして、要するに、たとえばイギリスの大法官はいかに勤めても年俸一万二千ポンド、それからアメリカの最高裁判事は年俸三万五千ドル、最高裁長官は三万五千五百ドルという定額になっておりまして、勤続によって上がるというような制度はございません。下級裁判所についてもおおむねその通りになっております。  そういう趣旨もございますが、これはまた別といたしまして、わが国におきまする現在の制度から見ますと、判事補を十年勤めて判事になっていくという段階がございます。これが判事一つの系統になっておりますし、一方、別の資格として、簡易裁判所判事という資格があるわけであります。この簡易裁判所判事の中には、御承知のように、弁護士あるいは判事の前歴のある方もおります。こういう方が簡易裁判所判事になっておる。なぜかと申しますと、大体は六十五才の判事定年を過ぎた方が七十才まで簡易裁判所判事として勤めておるわけでございまして、その間は簡易裁判所判事給与を受けることになるわけであります。従いまして、正規の弁護士の資格のある方が簡易裁判所判事として低い給与に甘んじるというような場合は、実際問題としては判事の定年を過ぎた方以外にはほとんど生じないというのが実情でございます。  それから、一方、簡易裁判所判事につきましては、御承知のように非常に職権が制限されております。なるほど裁判事件の軽重を問わず重要でございます。従って、全体としてりっぱな裁判官を全部に配置できれば非常にけっこうなんです。有資格の裁判官をもって簡易裁判所判事にかえられる時代がくれば非常にけっこうなんでありますけれども、現在の実情はさように参らないので、やむを得ず若干資格の異なった判事を採用しておるという格好になるわけであります。その意味におきまして、やはりその責任の度合い、職務の複雑性を制限しておるわけでありますから、これに対しては一般の判事と同じような給与を与えることは適当でないと考えられます。  なお、簡易裁判所判事につきましては、ただいま御指摘簡易裁判所判事一号の、改正案によりますと八万八百円の上に、簡易裁判所判事の特号が二つございまして、最高は九万三千二百円まで参ることになっております。これはお手元に配付しております法務省法律案参考資料の三十一、二ページをごらん下さいますとわかります。なお法律案におきましては、この改正法律案の中に第十五条中改正がございますが、「「七万六百円又は六万五千五百円」を「九万三千二百円又は八万七千円に」改める。」となっております。これが簡易裁判所判事の特号の改正でございまして、簡易裁判所判事判事の四号までは進み得ることになっておりますので、この点によって、この制度は適当であるというふうに考えておる次第でございます。
  24. 畑和

    畑委員 裁判官報酬並びに検察官俸給、これの改定については、現在裁判官並びに検察官報酬あるいは俸給は、ほかの職種に比べて高いとされている。それで、今度の人事院の勧告は一般行政職給与の改定を勧告いたしていると思うのでありますし、その例にも、民間との格差がひどいということ、それを是正するということと同時に、また、この勧告のうちの報告にもはっきり問題点として書いてある。その最初のところに、「最近数年間、全面的な改善が行なわれなかった事情もあって、民間の給与に比して相当低く、またこれを裁判官検察官あるいは三公社等現業の職員の給与に比しても、同様に相当の較差がある。」こうしておりまして、一般職の国家公務員の給与が民間よりも低い、さらにまた裁判官検察官よりも低いとされている。そういった一般職の給与が低いその比較として、民間と同じように裁判官検察官とのあれが示されておる。従って、そういった場合に、裁判官検察官の方が高いのだ、一般職は低いのだ、だから直さなければならぬ、こういうのが人事院の勧告の精神だと思う。しかるにかかわらず、それに便乗して、同じパーセンテージでスライドしている。これはどうしても納得できない。この点を一つ説明してもらいたい。閣議等で今度のことは前例としたいという話でもっていったということを聞いたが、大体この人事院勧告の趣旨にも合わぬと思う。ほかが全部上がるから、従って裁判官あるいは検察官も上がる、これは当然だ。しかしながら、裁判官検察官に比べて一般職が低い、それだから直せという、それだのに、比べられる、高いといわれる方がやはり同じパーセンテージでスライドするということはけしからぬと思う。この点はどうしても私は納得できない、その点を説明してもらいたい。
  25. 津田實

    津田政府委員 今般の人事院勧告には、ただいま御指摘のような趣旨がその前文に盛られておることは、その通りでございます。この趣旨につきましては、法務省におきましてもこれを問題視いたしまして、人事院にその趣旨の説明を求めたわけでありますが、その説明は必ずしも法務省側としては納得できない説明なんであります。説明の内容は、要しますに、「裁判官との較差がある」ということを書いたが、それは裁判官との格差を縮めろという趣旨ではない、これは、戦前大学教授等の職種と裁判官の職種とはほぼ同じように扱われておったが、現在は格差が出ておる、その意味を盛り込んだわけであって、その報告の文字そのものは必ずしも妥当でなかったというふうに人事院の説明を受けております。そういう意味におきまして、人事院の趣旨も、その文章からはそう読めないのでありますけれども裁判官と一般行政職との格差を縮めるべきだということをいうものではない、こういうことでありましたので、法務省といたしましては、それ以上人事院に対してとやかく言う筋ではございませんのみならず、元来裁判官給与は人事院の所轄外のことでありますので、それ以上別に特段の措置はいたさなかったわけであります。御承知通り、国会の法務委員会の小委員会におきまして、裁判官報酬等に関する法律検察官俸給等に関する法律が制定いたされましたときの趣旨は、その当時からやはり一般職に対して相当の格差を設けるべきであるという趣旨でありまして、その理由とするところは、民主主義国家における司法の職責の重要であることは多言を要しないところであって、日本国憲法のもとに裁判所は一切の法律上の争訟に関する裁判権、つまり行政についても裁判権を有しておる、それから違憲審査権を持っておる、規則制定権を持っておる、こういうような重要な職務であって、この職権を行使するところの裁判官には、人格、識見ともに高邁であって、法律的な素養が豊かな適材を得、しかもその人が後顧の憂いなく、職務に専念し得るようにしなければいけない。そういう意味におきまして、裁判官が一般公務員に比して優遇を受けるのは当然である、こういう趣旨。それから検察官につきましては、裁判の前提である検察制度の運営に当たるのであって、その高度の素養と教養を必要とすることは当然であり、任用資格は全く裁判官と同一にされている、その身分も保障されているというような、いわゆる準司法的性格からして、検察官についても同様の待遇を与えなければならない。その意味におきまして、一般政府職員に対して優遇した法律を制定するという御趣旨が、当時の当委員会に出ておるわけであります。その趣旨は今日におきましても何ら変わるところはないのでありまして、そういう意味におきまして、一般行政職との優位を保っておる、こういうことになっておるわけでございます。
  26. 坪野米男

    坪野委員 裁判官検察官報酬俸給の点について、若干御質問したいと思います。  私は給与を受けた覚えがないので、給与のことはあまりわからないのですが、先ほどの質問に関連いたしまして、一般の判事及び判事補の場合、判事が七号、判事補が十号、それから検事の場合には、一般の検事が十九号に分かれております。検察官の場合に、八号、九号という、これに該当する判事補の号俸がないのですが、検察官の場合には十九号俸に分け、判事判事補の場合には十七号俸に分けるということの根拠が、どういうところにあるのかということを簡単に御説明願いたいと思います。
  27. 津田實

    津田政府委員 便宜お手元の法務省提出の法律案参考資料の三十一ページ、二ページを御参照下さいますとよろしいのでございますが、その表にございますように、検事八号、九号に当たりますところは、判事補の特号の一、二というのがございます。改正法律案で参りますと、先ほども申し上げました十五条中の改正に当たる部分でございます。つまり特別の者については、この給与が与えられるということでございまして、それが、いわゆる俗称特号といっておるものです。従いまして、判事補につきましては、検事の八号、九号に当たる者は、特号として扱っておるわけでございます。
  28. 坪野米男

    坪野委員 人事院勧告では、物価の値上げに応じて、平均一二・四%ですかの引き上げを妥当とする、こういう勧告になっておるようですが、一般職の場合には、やはり上厚下薄と申しますか、上に厚く、下に薄いというような、人事院の勧告の俸給表に準じて改正案が提出されておるようでありますか、判検事の場合にも、この人事院勧告に準じて、上に非常に厚い、また下にあまり厚くないという、こういう俸給表を作られた理由は、どこにあるか、伺いたいと思います。
  29. 津田實

    津田政府委員 御承知のように、これもお手元に差し上げました、ただいま申し上げました資料の最初の方にございますが、裁判官報酬法の第十条という規定がございます。三ページにございますが、第十条は、「生計費及び一般賃金事情の著しい変動により、一般の官吏について、政府がその俸給その他の給与の額を増加し、又は特別の給与を支給するときは、最高裁判所は、別に法律の定めるところにより、裁判官について、一般の官吏の例に準じて、報酬その給与の額を増加し、又は特別の給与を支給する。」こういうことになっております。これが、今回の人事院勧告は、若干の生計費、主として一般の賃金事情の変動によって勧告されたものでありますので、まさにこの十条に当たる場合に該当するわけでございます。従いまして、この十条は、「別に法律の定めるところにより」「報酬その他の給与の額を増加し」となっておりますので、ただいま御提案になっておりますのは、別に定める法律という形になるわけであります。そこで、それでは一般の官吏の例に準じて増加されるということは、いかなることを意味するかということでございますが、これは準じ方の問題であります。ところが、先ほど来申し上げておりますように、現在の給与制度考え方は、職務の複雑困難、あるいは責任の度合い、あるいは勤務条件というようなものが中心になって給与が定められておるわけであります。そこで、お手元に差し上げております資料の三十三、四ページをごらん下さいますと、判事補十号、検事十九号、これは一般行政職の、五等級の二号に当たる給与を従来もらっておるわけであります。従いまして、その判事補検事につきましては、その責任の度合い、あるいは職務の複雑性、あるいは若干の勤務期間というようなものの評価から見て、全く一般行政職のこれと、金銭的には同種の評価を受けるという考え方であります。従いまして、この五等級の二号の者が、一万八千三百円から二万五百円に今回改正されるという率、これは一二%の増加率でありますが、増加率になっているのは、一般職について、これが民間給与との対比において認められるからでありまして、その額を、すなわち判事補十号、検事十九号の、現行一万八千三百円を二万五百円に改めるという改正に移しておるわけでございます以上、これは大体それと同じになっているわけでありまして、従って、これは全く一般職の給与と対等額においてスライドしているという考え方に立っております。これは裁判官報酬法の、第十条の趣旨にまさに該当すると思われるわけでございます。  なお上厚下薄の問題でございますが、この検事十九号、判事補十号というような程度のところは、昭和三十二年以降すでに改定がなされておりますので、今回の改定率は低いわけでありますが、総平均いたしますと、大体二五%以上の改定を受けておるわけでございます。その意味におきまして、上級者が今回は高いように思われますけれども、前回と通計いたしますれば、大体同じ率になっておると申し上げてよろしいと思います。
  30. 坪野米男

    坪野委員 これは司法官ではありませんが、裁判所の書記官以下の職員、並びに検察庁の職員、あるいは刑務所の職員、そういった職員の給与、これは一般職として内閣委員会で審議されておるようでありますが、特に裁判所の書記官の職務は、司法官の特殊な職務権限、それに準じて非常に重要な職責であり、また勤務内容等から考えても、非常に重要な職種だと考えるわけでありますが、この裁判所の職員、特に書記官の給与等については、一般行政職の一ですか、それで一番低いわけですが、少なくとも税務職よりも低い俸給に押えられておる。一般上級職でベース・アップされておるのでありますけれども、この裁判所の職員のベス・アップ等について特別の配慮をすべきであるというような交渉を裁判所当局が特に尽力されたかどうか。裁判官給与のベース・アップについてのみ人事院勧告に準じてベース・アップすべきだという交渉は相当強くなされたように聞いておりまするが、下級の裁判所職員の給与のベース・アップについても、特別の配慮を払えというような交渉を強くなされたかどうか、その点裁判所にお尋ねしたいと思います。
  31. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判所の裁判官以外の裁判所の職員の俸給は、裁判所職員臨時措置法というのがございまして、特別職ではございますが、政府職員に適用されます一般職の職員の給与に関する法律の規定を準用いたしておるわけでございます。従いまして、政府職員の俸給が、人事院の勧告によりまして是正されますと、それを準用いたされまして当然上がってくるというわけでございます。結局人事院の勧告は、職権に基づきまして多くのデータを集め、民間の給与その他に検討を加えてできたのが俸給表でございますが、それが一番妥当であるということで人事院が勧告いたしておりますので、それに基づきまして裁判所の職員の給与が定められるならば、これはやはり一応妥当というふうに見ざるを得ないわけでございます。ただ裁判所職員の中で、御指摘のように、裁判所書記官の職務というものは、裁判官職務と密接に関連いたしまして、非常に重要な職でございます。この裁判所書記官になっておる者につきましては、これは職務の重要性等から判断されまして、俸給額の一六%が調整として加えられているわけでございます。従いまして、現行におきましても、一般の職員よりは、三千円ないし八千円以上は違っておるというふうに考えられるわけでございます。
  32. 坪野米男

    坪野委員 質問を終わります。
  33. 池田清志

    池田委員長 坂本泰良君。
  34. 坂本泰良

    ○坂本委員 私は給与に関連して、裁判の運用について少しお聞きしたいのであります。と申しますのは、このごろ労働事件あるいは選挙違反事件について、裁判所が裁判所独自の期日を、月に十日もそれ以上も指定いたしまして、そうして弁護人がありながら弁護人との協議をすることなく、その期日を絶対守って、出なければ国選弁護人をつけて強行する、こういうような傾向があるわけであります。これは重大なる問題であります。もちろん裁判官が司法権の独立のもとにおいて、その事件に対する判断、判決その他についてはわれわれは関与すべきものでない、こういうふうに思いまするが、裁判の運用においては、やはりこれは裁判官検察官、弁護人、被告人一体となりましてその審理に協力いたしまして、事件の真相を究明いたしまして、国民のための正しい裁判をすべきである、こういうふうに考えるわけであります。それを裁判官が一方的に無理な期日を指定いたしまして、もし弁護人がそれに出席しなかったならば、国選弁護人をもってやる。被告人が出席しなかったならば、刑事訴訟法に基づく、何と申しますか、今条文を持ちませんが、強制的に出頭を命じてやる。さらに発言をすればやたらに発言の禁止をする。さらに自己防衛のために発言をしようとすれば、ことに事件の内容について発言しようとしても退廷を命ずる。こういうような傾向は重大なる問題であると思うわけであります。裁判官だけが期日を任意に指定して、そうして形式的に国選弁護人をつけてやるのであっては、決してその真実の発見はできないのであります。このような点から考えまして、第一に私がお伺いいたしたいのは、このごろ刑事裁判官会同あるいは民事裁判官会同、こういうのが行なわれておりまするが、昭和三十五年度はこういう会同が何回か行なわれて、そうして最高裁判所の長官、並びに刑事においては刑事の専門、民事においては民事の専門がいろいろ訓示をやっておる。従いましてまず第一に会同が何回行なわれたか。そうしてそのおもなものでけっこうですから、おもなる裁判の運用について打ち合わせられた――打ち合わせと言ったら語弊があるかもしれませんが、合同において会合をされ、そうしてどういう結論を得ておられるか、その点を承りたいと思います。
  35. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 ただいま坂本委員から御指摘がございましたような刑事裁判における弁護人、民事裁判における訴訟代理人の地位または活動が裁判の上において非常に重要な要素をなすものであるということは、まことに御指摘通りであります。従いまして、その弁護人あるいは訴訟代理人の活動につきまして、裁判所が先ほどの運用をいたします上におきまして、十分に考慮すべきことは申すまでもないことであります。  ただいま御質問がありました会同でございますが、民事の裁判官会同、刑事裁判官会同は大体年に二度くらい最高裁判所で開いております。その際におきまして、最高裁判所長官が会同劈頭にあいさつをいたしますのが慣例になっておるわけであります。ごく最近の会同におきまして、私の記憶するところでは、民事裁判官会同におきましては非訟事件手続法についての会同をいたしたのであります。それから刑事の方につきましては、ただいま第一審の事実審のあり方についていろいろ問題がありますので、事実審裁判のあり方について協議をいたしたことがございます。
  36. 坂本泰良

    ○坂本委員 これは質問があったかと思いますが、特に裁判官に対して一般公務員より以上の給与をやるということは、終戦後の最初のときからきまっておりまして、先年この給与の問題で、行政官と裁判官給与の差額の問題について非常な問題が起こったのでありますが、われわれはやはり裁判官の独自性とそれから裁判官がほんとうに国民のための裁判をするためにその報酬においてはやはり一般の公務員より以上の報酬を与えて、その給与の面においても地位を認めてやったということは、これは一にかかってほんとうの真実発見をして、裁判の運用をよくやって、そして公正無私な裁判をやるために、われわれはそれを認めて参ったわけであります。しかしながら、現在第一審の事実審のあり方について非常に会同が持たれた。もちろんわれわれは裁判の進行については協力しなければならぬですが、被告人が百名、あるいはそれ以上に達する場合があるし、さらに被告人は数名でありましても、検察側の証人がまず百名も百五十名もある、さらに検察官が多数の証人を申請いたします事件に対しては、弁護人並びに被告人側においてもやはりそれと同じような証人その他の申請をいたしまして、そうしてその証拠調べをやって初めてほんとうに真実を把握しての裁判ができると思うわけであります。それを裁判官が単に早く審理を促進する、そういうような考え方に立ちましてそうして検察側の証人は大体全部認めますが、弁護人、被告人側の証人は非常に削減をしてくる、これは裁判官の法廷の訴訟指揮権に基づいての乱用である、こういうふうに考えられるのであります。私は、裁判官の訴訟指揮権は、裁判官の独立の中には入らないと思う。従いまして、その事件の内容におきまして、被告が一名か二名でありましても、検察官が多数の、五十名もあるいは場合によっては八十名も証人を申請する。これは労働事件だけでなくて、選挙違反事件その他の一般刑事事件にもあるわけなのであります。そういうような事件は単に三カ月や六カ月でこれを解決しようということ自体が無理である。ことに選挙違反事件というのは、公職選挙法に百日以内ということがあるわけです。もちろん選挙違反事件は早くこれを促進しなければならぬということは、われわれも時効制度その他の点からこれを肯定するのでありますが、しかしながら、検察官が起訴いたしまして、そして五十名も六十名も証人を申請する以上は、その証人調べを一日十人も十五人も強行突破で調べるということをやったならば、とうてい真の証人調べはできない。結局検察官が作った検察調書によってその裁判が行なわれるというふうになる。そうすると、何をもって当事者主義をとった公判手続が行なわれるかということになるわけであります。われわれ国民裁判官に期待するところは、その報酬も高く上げて、そうしてほんとうに裁判の運用をやる、そうするためにはただ形式的に早く解決するというものではない、やはり内容を、その実態を把握してやらなければならぬということであると考えるわけであります。こういう点について刑事裁判官会同で事実審のあり方について検討された点はいかなる点を検討されましたか、その内容を承りたいと思います。
  37. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 刑事裁判のあり方につきまして、坂本委員の御説はまことにごもっともでございまして、私どももまことに同感と申し上げる次第でございます。事実審の裁判にいろいろ問題があるわけでございますけれども、御指摘通り、ただいたずらに急ぐばかりが裁判の能ではないことも、まことにその通りでございます。特に会合におきましても、そういった点につきましては、事実審といたしましては、法廷の審理におきましてなまなましい証拠をそこに現出し、そして生き生きした心証で裁判をしていく、これが被告人のためでもあり、正しい裁判のためでもあるという方向において考えられているわけでございます。従いまして、ただいまお話がございましたような検事調書で裁判をするということのないように、そういう形式的なことによらないで、できればそこに実際の証人が出て、反対尋問にさらされて、そして証拠調べがされていく、そういうような形の刑事裁判がすべての事件に行なわれるということが、現在事実審裁判官の努力の目標になっているようなわけでございます。証拠の決定につきましては、これは個々の事件によることでございまして、裁判官が必要と認めました証拠の決定をいたしているわけでございます。この点について検察官の申請であるからどうの、弁護人の申請であるからどうのということはないと考えております。
  38. 坂本泰良

    ○坂本委員 なお、裁判の進行について、裁判官が訴訟を急ぐあまり、検察側が証拠申請するその前に、やはりこれは刑事訴訟法に基づいて被告並びに弁護人は事実の認否とそれに関連して意見陳述ができるわけです。その意見陳述を非常に制約する傾向がある。それが一つ。  さらに検察官が膨大な証拠を申請する。そうするとやはりそれに対しては立証趣旨を明らかにしなければならぬ。そういうような場合において、控訴審の事実の全般について、なんという抽象的なことを書いてくるから、弁護人の方からそれに対する釈明を求める。そうするとそういう釈明をあまり聞かない。そうして同意か不同意か、どうせ不同意でしょうから、不同意ならもう早くした方がいいじゃないですか、こう言う。しかしながら、被告人、弁護人としましては、かりに不同意でありましても、やはり提出された書証、物証は、これは反対しても同じですからあれですが、ことに検察官の面前調書、これについてはやはり内容を検討しなければできないのです。釈明もできないのです。さらに現在は検察官検事調書の閲覧を許さない。そうして弁護人に対して直接見てくれと言う。われわれはこれで非常に不便を感じておるわけです。検察官調書はやはりその弁護人が指定した、ことに検察庁に出入りしている者にその謄写をさせまして、そしてやはり膨大な事件においては膨大な検事調書がありますから、その謄写に基づいて徹夜でもしてよく検討しておく。そうすると最初に検察官が出されても、直ちにそれに対して同意、不同意のあれが出ても、それができない。そこに第一の蹉跌がある。そしていよいよ出してくると、同意か不同意かを早くきめろ、こうやる。そして今度はそれを強要するから、大体の弁護人なんかもうしようがないというところで同意をする。これは決して被告人のためではないと思うわけです。さらにひどいのは、そうしてそれを出したならば、その認否がおそくなるから、被告人の尋問を先にやると言うのですね。これは証人を先にするか、被告人尋問をあとにするかという刑事訴訟法上の当面の規定はありませんけれども、やはり事件の審理の過程といたしましては、書証並びに人証、いわゆる証人尋問をやったあとで被告人尋問をやるというのが当然だと思うわけです。それを弁護人の書証の同意、不同意がなかったならば、それはそのままにしておいて、被告人の尋問から先にやる。こういう態度に出てくる。そしてさらに、やむを得ないから被告人尋問が終わると、書証についての同意、不同意を求める。それはまだ閲覧その他ができないから、同意、不同意の確信が弁護人としてないからやらないと、それじゃ最初の四、五人の証人を最初調べよう、こういうふうに出てくる。そうしてさらに検察官に対しては、三百二十一条の書面を準備しておいてもらいたい、弁護人においては弁護人の証人を準備しておいてもらいたい、こういうことを言うわけです。三百二十一条の書面は、これは証人を調べて、その証言と、それから検察官の面前調書とどこが違うか、違う点がある場合は、その違う点を証拠に出すならば、その立証趣旨を明らかにして出さなければならない。それを、まだ検察官の面前調書の、いわゆる三百二十一条で予定されている書証の認否も済まない釈明の段階においてそういうことを言うことは、これは刑事訴訟法の乱用でないかと思うわけです。さらに弁護人に対して、弁護人の証人申請を準備しておいて次回に出して下さいなんて言うことは、もってのほかだと思う。弁護人は、被告人とともに、裁判所においてはやはり防御の立場にあるわけです。従いまして、検察官証拠調べが全部済んだあとにおいて初めて被告人並びに弁護人はその防御を確立することができるわけです。検察官が主張しておるところのいわゆる公訴事実を提起して、そしてその公訴事実の証拠の立証がつかない前に被告人に対して反対の防御をやれということは、これは不可能なことであるわけです。そういうことが今行なわれておるわけであります。こういう点について、これは裁判事務、公判の運用の問題だと私は思うからお聞きするわけですが、何か刑事裁判官会同において、弁護人が出ておらないときは国選をつけてどんどんやれ、証拠なんかも最初から双方に指示してやれ、こういうようなことでも行なわれたらどうか。まだいろいろありますが、まずこの点をお聞きしたいと思います。
  39. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 刑事訴訟の手続につきましては、ただいま坂本委員の御指摘になりましたような、無理と申しますか、そういうことがあってはならないことは申すまでもございません。刑事訴訟法並びに刑事訴訟規則によりまして裁判官が訴訟の指揮をしていくわけでございます。たとえば、先ほどお話のございました起訴状に対する弁護人の意見であるとか、あるいは証拠申し出申請に対する釈明であるとかいうようなことは、それぞれの適当な段階においてなされることだと存じます。その段階に応じまして、裁判官がそれぞれに訴訟を指揮して進めていくのが訴訟手続であるというふうに考えるわけでございます。今日の新しい刑事訴訟法にありましては、ただいまお話のございましたように、当事者主義ということをとって参ったわけでございます。従いまして、法廷の証拠調べの進行も、当事者主義に基づく進行をするわけでございます。そのためにはやはり検察官も弁護人も双方公判前に相当十分な準備がなされなければならないわけでございまして、その準備の上に訴訟手続がスムーズに進行することになるわけでございます。会同におきましても、そういった趣旨におきまして訴訟の手続のスムーズな進行をはかるという問題につきましては協議をいたしているわけでございますが、決して弁護人に無理押しをするような、たとえば期日の指定であるとか、そういうことをして訴訟を進行すべきであるというようなことは毛頭問題にするわけもございませんし、そういったことは私どもとうてい認容できないことだというふうに存ずるわけであります。  新しい刑事訴訟法が施行されて十年になるわけでございますけれども、今日なおいろいろな面でまだ工夫研究すべき余地があると私ども存じております。それにつきまして、各地の地方裁判所に協議会を設けまして、裁判官検察官、弁護士、それぞれが寄りまして実際の運用についていろいろ協議する制度を持っているわけでございます。大体各地におきまして、二、三カ月に一度はその会合を開きまして、実際の訴訟の運用に支障のないように、それぞれに工夫し研究をいたしておるわけであります。近ごろは、弁護士の方々の御協力もありまして、この新しい刑事訴訟法の運用が相当軌道に乗って参っているように存ぜられます。まあ、今後になお一そう努力すべき点はあると存じますけれども、おいおいそういった正しい軌道に乗っていっているわけでございます。  また、先ほどお話がございました検事の供述録取書の証拠能力の点につきましても、先ほど御指摘のございましたような、状況を明らかにしないですぐに裁判所がこれを採用したり、あるいは証人を決定するというようなことはないように、そういった面での研究工夫はいたされておるように私聞いておる次第でございます。
  40. 坂本泰良

    ○坂本委員 抽象的なことを今承りましたが、具体的な問題で、弁護人が出ていかなければ国選弁護人をつける、そして今度弁護人が出ていってもその国選弁護人をやめない。大体国選弁護人は、各弁護士会と話し合いがありまして、弁護士会から大体順序を追うて推薦をすることになっておる。それを、そういうことをせずに、裁判官自身が簡易裁判所判事上がりの古い御老体の方を国選弁護人に指定いたしまして、そうして、聞くところによると、そういう国選弁護人の方は、どうも研究問題だから出ていく、こういう現象も、ある裁判所では現われておるわけであります。これはもってのほかだと思うのです。国選弁護人の制度は、憲法の三十七条によって、弁護人がいない場合には被告人擁護のために国選弁護人をつけることになっておる。さらに、刑事訴訟法においても、弁護人がいない場合において、特に費用なんかの関係で私選弁護人の選任ができない場合に、国費をもって弁護人をつける、こういうことになっておる。しかしあれは、刑事訴訟法の三十七条でしたか、一号から五号までありまして、「その他」とあります。「その他」とあるから、それによって、私選弁護人がいたときでも国選弁護人はまだ解任せずにおいてもいい、こういう見解をとっておる。これは私は非常な間違いだと思う。研究のために行くなんという弁護人なら、弁護人はつけぬ方がいいと思うのです。これは、ほんとうに弁護料なんかの出ないほど貧困であって、私選弁護人が選任できぬから、その権利の擁護のために国選弁護人をつけるというのが憲法の国選弁護の趣旨なんです。たまに国選弁護人としてぽかっと出ていっても、何もできやしない。かえって、出ていくと、裁判官が訴訟を一日、二日延ばすことについて、協力するということになる。そういたしますと、かえって被告人に不利益になる結果になるわけなんですよ。そういうことをする裁判官がおるわけです。それは前科数犯なんていうのは、国選弁護人がつきましても、あまり熱心にやらずに、早く判決をしてもらって服罪したいという被告人もおるわけです。それでもやはり国選弁護になった以上は、弁護人はよく事件の内容を調査いたしまして、弁護をやって、幾らかでも被告人のためのいい情状はないかということをよく調査をして弁護をするわけなんです。ことに、以前はおざなりの国選弁護人が多かったのですが、このごろの国選弁護人は私選弁護人と同じように、あるいは事件によってはより一そう検討をしまして、そうしてその弁護に当たるわけであります。ことに上告審なんかにおいての死刑の廃止の問題等については、国選弁護人でありながら、非常な努力をして、被告人の権利の擁護のために、人権の確保のために努力する人があるわけであります。このごろの国選弁護人はほんとうに私選と同じように努力をしておるわけなのであります。そういう弁護人ならやりますけれども、私選弁護人がついている、そうして多数の被告人に多数の弁護人がついて、そうして一緒にそろうということはなかな困難でありますが、そこは主任弁護人、副主任弁護人の制度がありますから、そういうので運用しているわけなのです。それをやっておるのに、一時弁護人がいなくなったから、国選弁護人をつけて、その国選弁護人を解任しない、これは最も不都合だと思うわけです。こういうようなことが刑事裁判官会同で議題に上ったことがあるかどうか、こういうことについて検討されたことがあるかどうかをお聞きしたいと思います。
  41. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 会同におきまして、ただいま御指摘のような点につきましての協議は、私の記憶する限りではなかったかと存じますが、国選弁護人の運営につきましては、各地裁判所が、それぞれ弁護士会等の協力を得まして、スムーズに運用するようにいたしておるわけでございます。裁判所といたしましては、ただいま坂本委員のおっしゃいましたように、国選弁護人、私選弁護人、いずれも被告人の利益のために弁護活動をされるということについて、私選、国選の区別はないというふうに考えております。ただいま私選弁護人がついておるのに国選弁護人をつけて、しかもその国選弁護人を解任しないというお話でございましたが、もしそれによる不都合があるようでございましたならば、私はまだそういうような事例を聞いておりませんけれども、調査いたしまして適当にあれしたいと思いますけれども、大体私どもの伺っておりますところでは、期日の指定その他につきまして、弁護人がそれぞれに裁判所に協力されまして、支障のないように期日を定め、あるいはその進行に努めておられるように聞いておるのであります。何分にも裁判所も非常に多くの事件を持っておりますので、弁護士の方々の御希望が常にそのまま受け入れられるとも考えませんけれども、なるべく弁護人の都合の差しつかえのないように期日指定をし、訴訟の進行をはかっているものと存じます。弁護人の方でも、そういった意味におきまして、裁判所に協力されて事件の進行に努めておられるように私聞いておる、次第でございます。
  42. 坂本泰良

    ○坂本委員 さっきの条文は、憲法の三十七条です、三十七条の第三項の「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」というのですから、この趣旨で国選弁護人を選任しなければならぬと思うのです。さらに刑事訴訟法の三十七条には、「左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。」一が「被告人が未成年者であるとき。」二が「被告人が年齢七十年以上の者であるとき。」三が「被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。」四が「被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。」五が「その他必要と認めるとき。」こうあるのです。そこでこの憲法三十七条では「被告人が自らこれを依頼することができないとき」と、この場合に限ると思うのです。そういうような私選弁護人が数名いて、それが欠席した場合に、国選弁護人を二人も選任して、今度それを解任してくれと要望するとしない。被告人からも、私選弁護人のりっぱな方がつかれたから、国選弁護人の資格その他を云々するわけではありませんけれども、丁重に一つもうつかれたから解任してもらいたいと発言する、ところがそういう発言をさらに重ねようとすると、発言を裁判官は禁止する、そして依然として解任せずにおる。何で解任せずにおるかというと、刑事訴訟法三十七条の五に、「その他必要と認めるとき。」であるからやらない。私は「必要と認めるとき。」という場合でも、やはり憲法の三十七条に制限を受ける、弁護人がないというときで、私選弁護人があるのに、これはまた弁護人としては権威に関するわけです。弁護人がちゃんとついておるのに、国選弁護人をつけて、それを解任しない、そしてその弁護人は被告人のためにそれじゃやるかというと、ちっともやらない。かえって被告人の、あるいは私選弁護人の訴訟行為にじゃまになるわけです。だからお聞きしたいのは、この刑事訴訟法の三十七条の五の場合の「その他」の場合に、今私が申し上げたような具体的の場合が入るかどうか、またそういうようなことについて刑事裁判官会同であるいは協議されたかどうか、私たちは疑いを持つからその点を承っておきたい。
  43. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、そういう点につきましての会同の協議はなかったと存じます。刑事訴訟法第三十七条によりまして、「左の場合に被告人に弁護人がないときは、」という規定になっておるわけでありまして、もし国選弁護人の運営につきまして御指摘のようになることがありましたならば、そうい  私どもの方で十分注意したいと存じます。
  44. 坂本泰良

    ○坂本委員 これは弁護人の弁護権に対するところの重要な問題だと思うわけですから、やはり裁判官はそういうようなことをごたごたしていると、自然と事件の内容に入ってほんとうの審理ができないから、訴訟がかえって遅延するということになるわけです。だから一つ裁判官は、――ただそれはメーデー事件なんか十年以上かかっている、しかしそれは相当多数の被告がおるから、実際あのメーデー事件を担当せられておる裁判官は非常な熱意でやっておられるし、また弁護人もメーデー事件なんかは全力をあげてやっておるけれども、何分にも被告人が多いためと、その事件の実態そのものがこれは重要なものであるから、やはりこれは慎重審理する上においての期日の点はやむを得ないと思うのです。それを単に一般的に裁判が何年かかった、何回公判を開いたとか、公判の数とかなんとかで考うべきものではない。やはり裁判公判は、期日において、どれだけの証拠調べにいたしましても、その他の訴訟行為にいたしましても、その内容によってこれを判断すべきである。それはもう裁判官なんかは、弁護人が証人を申請するときは、何時間かかって何人証人調べをしたのだから、大体いいのではありませんかというようなことで制約する。弁護人はこれは法律家でありますけれども被告人はやはり裁判官からそういうようなことを言われると、さばかれる者の弱さで、あんなことを裁判官が言われるのに、しいてやったならばということになる。弁護人としては、これはこの事件の内容からして、もう少しこの証拠調べその他をしなければならぬと思っても、被告人は、もしこれに反対をして無理にやったならば、かえって重くならないだろうか、無罪を確信しておるのに有罪にされるのではないだろうかというようなそこに心配ができてくる。それが大きく裁判を誤るということになるわけであります。被告人だけではいかぬから、弁護人がいなければ国選弁護人でもつけてやろうというのは、やはりこの憲法の趣旨は、人権の擁護にあるわけなんです。それを運用においてそういうことをされると、決して真実発見の裁判はできないと思うわけです。だから私は、もう私選弁護人がついた場合は、たとい国選弁護人があった場合でも、これは直ちに解任すべきだ、こういうふうに考えるわけですが、最高裁の方ではどういうふうな御見解ですか。
  45. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 国選弁護人の制度から申しまして、御趣旨はまことにごもっともと存じます。なお、国選弁護人の運用につきまして、各裁判所と弁護士会の間におきまして、支障のないように運用をはかりますようにいたしたいと思います。
  46. 坂本泰良

    ○坂本委員 私はもう少しありますけれども、留保いたしておきます。
  47. 池田清志

    池田委員長 志賀義雄君。
  48. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 昨日私が申し上げたことで内藤次長の方から言われたことは、事が重大でありますので、今後またあらためて問題にいたすことにいたします。  けさ、菅生事件の上告審の判決がありました。検事側の上告は棄却されました。ところで、棄却されてみると、実際には菅生の交番所は爆破されているので、だれがやったかという問題が残るのであります。当法務委員会においても、当時、市木春秋という仮名であった戸高公徳という警官、これが真犯人の一人である、こういうことを申しておりました。ところが、この戸高公徳が後に共同通信の記者によって、新宿の春風荘で発見されたことも、皆さん御承知のことと思うのでありますが、この事件について、検察側の上告は棄却された以上、別に真犯人があるわけでございます。きょうは刑事局の方、来ておられますか。――法務大臣に申し上げておきますが、事はきわめて重大でありますので、検事総長と御相談なさって、それから警察の方にも御照会なさって、この問題についての御意見を――これはまあ植木法務大臣は今度初めて法務大臣になられたから、従来の経緯を御存じないかと思いますが、その点について、いずれ機会をあらためて、この事件を検察側としてはどうなさるおつもりなのか、これを一つ伺いたいと思うのです。と申しますのは、警察側に対して、被告人並びに弁護人――被告人ではなくなったのですが、被告とされた人及び弁護人側から告発も出ておりますが、これを裁判所側は取り上げずに、戸高公徳が爆発物を運搬したというようなことで、その点だけを有罪として出しているわけであります。これについて、一審裁判所はこれを無罪にしたのでありますが、その理由がまたきわめてあいまい薄弱なものでありまして、もうそれでは済まなくなっておるのであります。その起訴の問題をどうするかということについても、これはきょう刑事局長はお見えになりませんので、法務大臣の方から一つその点についてはっきりとしていただきたい、こういうことを申し上げておきます。  それから、私はこの九月に法務委員会から派遣されまして、和歌山の婦人刑務所並びに大阪方面の諸施設を視察したのでありますが、その中で問題になったことは、和歌山刑務所のことであります。きょう、矯正局長いらっしゃいますか。――これは法務大臣もあわせてお知りおき願いたいのでありますが、あそこは有名な南海地震地帯でございます。ところが、そこに、いざという場合の緊急避難をする場所が一つもないのですへいぎわに出れば、あの高いへいが倒れるおそれがあるというようなことで、刑務所側もまた収容者側も非常に不安なんであります。まして火災でも起こったら、みすみす多くの収容者をむざんな目にあわさなければならないのであります。その点について切実な要望があるのでありまして、裏にあきがあって、そこをへいを囲い込みにすれば、外部と遮断しても十分そういう避難の場所あるいは中に入れられている人々のいろいろの運動とか休息とかに利用することもできるのですが、それがないために、中にいる人は、外から顔を見られるようなところにあまり出たくないという気持もありまして、自然それが利用できない事実上の結果になっております。この点は国政調査の結果一つ重大な問題として――まあ重大な問題でなくても、出てきておるのでありますが、こういうことは一体どうなさるおつもりか。全国たくさん刑務所がありますと、あすこでやればこちらもやらなければならないというような振り合いのことで、問題がやかましくなるかと思いますが、婦人刑務所は数も少ないことでありますから、すぐできることだろうと思いますので、この点について矯正局長の方にお聞きしたいし、あるいは来年度の予算も請求されておるのかという点をちょっと伺いたいと思います。
  49. 大沢一郎

    ○大沢説明員 ただいま御指摘のございました和歌山の刑務所は、御指摘通り、地震地帯でございますし、また毎年台風が参るところでございまして、天災が非常に多いのでありますが、構内が非常に狭うございまして、ただいまお話しのような、万一の場合の避難所がぜひ必要な刑務所でございます。それにこれは女子を収容しておりますので、男子収容者以上に、環境的に抑圧された気持を開放するということは、処遇上も一つの必要性があるわけでございまして、われわれといたしまして常に考えておったのでございますが、もともとこの刑務所が男子受刑者を拘禁する目的で当初作られたものでございまして、構造等さような点で不十分な点が多々あったわけでございます。女子収容者の施設としてふさわしい雰囲気をどうすればいいかということを考えておったわけでございますが、たまたま本年当委員会で御視察をいただきまして、まことに適切な御指示を得ました。この御示唆によりまして、幸いにへいのうしろに約二千坪の池がございますから、順次これを埋め立てて、現在のところ約七百坪ばかりが埋め立てができておるわけであります。さっそく昭和三十六年度予算におきまして、これに壁をめぐらしまして、今の外へいの中に門を作りまして、そこを万一の避難所に、平素はレクリエーションの運動場ということに利用したいという案を立てまして、三十六年度予算にへいの建築費を要求いたしておる次第でございます。何分にもたくさんの施設がございますので、つい私どもまだ現地を見ておりませんので、具体案が非常におくれて申しわけなく存ずる次第でございますが、幸いにいい御示唆をいただきましたので、さっそく実行に移したい、かように存じます。
  50. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 予算の面は幾ら請求しているか、それをついでに言って下さい。
  51. 大沢一郎

    ○大沢説明員 現在、その場所に約二百メートルのへいを構築いたしますので、百四十万円要求いたしております。
  52. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこに図がございますが、いっそのこと敷地予定地に全部へいをめぐらしたらいいじゃないですか。つまらないところに使うより、そういうところに使った方がいい。百四十万円というような半端なものじゃなくて、あと幾らもかからないのですから……。そんなことを共産党はけちけち言いませんよ。
  53. 大沢一郎

    ○大沢説明員 現在、はす池でございまして、順次端から埋めておりますので、ただいま約七百坪ばかりの埋め立てができましたが、引き続いて埋め立てをいたしまして広げたい。そういう順序を追うことで御了承願いたいと思います。
  54. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 幸い、今度の法務大臣は大蔵省出身の方で、学生時代からよく存じております。だからいっそのこと、へいを全部めぐらしたらいいじゃないですか。長井さんも一緒に行かれたので、御存じですから、法務大臣によく陳情して、そんなちびりちびりけちなことをせずに、全部やったらいいじゃないですか。それくらい、法務大臣の手腕に信頼して、お取りになったらいいじゃありませんか。それを申し上げておきます。  それからもう一つ、和歌山の婦人刑務所の中に、当委員会でもかつて猪俣委員質問し、また神近委員質問されましたが、残念ながら神近さんは、今度法務委員におられませんが、徳島のラジオ商殺しの犯人であります。そのラジオ商の後妻である富士茂子、当年五十才の人が収容されております。これはきわめて奇怪な事件でありまして、法務大臣に申し上げますが、真犯人があとから出てきたのです。ところが、そこに雇われていた店員二人、これの証言に基づいて富士茂子が殺した、こういうことになっております。ところが刑が確定した後に、上告審のときに取り下げたのです。本人がいやになってしまったのでしょう。自分だけがつらい目にあえばいいというのと、経済上の問題がありまして、訴訟費用がないということ、それで取り下げたのですが、そのあとで真犯人が自首して出ました。それからもう一つ、その二人の証言をした者が、偽証であるということを言ったわけです。ところが高松の高裁に再審要求を出したけれども、管轄違いということで、あらためて徳島の地裁に出しましたところが、偽証云々ということを言っても、前の証言をくつがえすに足りるほどの信憑力がないというので、徳島地裁でこれを却下してしまったのです。どういうふうに考えてみても、このことは富士茂子本人がやったとは考えられない事件であります。おまけに当時九才で、そこに入っていた男を目撃した少女がおります。これが最近成人しまして就職しました。ところが、そのために結局解雇されてしまったというような事件まで発生しておるわけであります。なぜ私がこのことを法務大臣に特に申し上げるかと、申しますと、こういうことがあります。人権擁護局の方へ訴えがございました。それで人権擁護局長の方から、現地の人権擁護部の方に要請がありまして調べましたところ、検察上の行き過ぎが明らかにあると認められる。従って、これは再審で取り上げるべきだ、こういうことが言われているのであります。しかも、徳島の地裁でこれを却下するについては、検事側の意見、これを待たずに、検事が問題を取り上げたその意見が出ない前にやっておるわけであります。いかにも乱暴な処置で、弁護人の津田さんなんかも、絶対に承服できないと言って、今地元でも大きい問題になっておるわけであります。まことに奇々怪々な事件であります。これはおそらく法務大臣としては、御就任早々で初耳のことだと思いますが、そういう点についても、この際法務大臣の方で事情をよくお調べいただくことが必要ではなかろうかと思うのであります。このことは社会党の委員諸士の方から、これまで繰り返し要求がありましたが、残念ながら検察側を代表して当法務委員会に出られる方の答弁は、きわめてちゃらんぽらんでありまして、私ども非常に憤慨しておるわけであります。この問題はどうしても取り上げなくちゃならぬ。現に私は、国政調査のときに出かけて参りまして、その本人にも会いました。どうしてもあなたを救い出すように努力するから、こういうことを申しておいたのであります。こういうまことに奇怪しごくの事件があります。私の意見を申しますれば、警察がそういうようにむりやりに、にせの証言までもとってでっち上げたことを、検察側がそのままうのみにし、残念ながら裁判所までがこれに同調して、一たび判決を下した以上は、これについてあとから再審なんかをすると、自分たちの落度になる、体面にかけてもこれはやみに葬らなければならないというように考えられておるのじゃなかろうかと思われる節が多々あるわけでございます。こういう全く無実の人を、たまたまかよわい婦人であり、経済上の理由もあって、上告を取り下げたというような事件について、もう少し公正な取り扱いというか、確定判決を、本人が受刑中といえども、当然取り上げなければならない問題だと思うわけであります。最近も、その再審の請求の却下があったときに、地元の新聞なんか大きく取り上げております。関西の新聞も、これを取り上げております。こういう事件でありますから、一つ法務大臣の方にも、きょうは刑事局長がいらっしゃいませんから、このことを要望いたしたいと思うのであります。これだけを申し上げておきますが、その点について法務大臣からちょっと……。
  55. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいま志賀委員から御指摘になりました案件につきましては、事人権に関する重大な問題でございますから、事務当局の今日までの状況等もよく聞きまして、適当な機会において、またお答え申し上げるようにさせていただきます。  また和歌山の刑務所の問題等につきましても、よく事情を聞きまして、その上で極力善処したいと考えております。  以上お答えいたします。
  56. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それからもう一つ、和歌山ばかり出ておりますけれども、和歌山の家庭裁判所の建築物を、どなたか調査なさったことがございますか。
  57. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 裁判所の営繕のことは、最高裁判所でやっておりますけれども、和歌山の事情は存じませんから、お答えいたしかねます。
  58. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これは法務委員会で国政調査をやった場合に見たのですが、あれはあぶないですね。この次の台風にはやられる。私どもが国政調査をいたしましたのを、調査員の桜井君の方でちゃんと写真もとっておりますから、あなたの方にも出ているはずです。それを法務委員会側の方から、証拠というとこれは刑事上の問題になりそうだが、こっちから出されて、それであなたの方でまだまだ調べていませんとかいうことは、少し手抜かりですよ。それで法務委員会の発言は、きわめて遺憾だとか言っていばっておられるということは、まことにけしからぬですよ。
  59. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 私ども存じませんものですから、お答えを差し控えたのでありますけれども、今年度着工することになっておりますから、御了承願います。
  60. 池田清志

    池田委員長 午前中はこの程度にとどめ、午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十三分開議
  61. 池田清志

    池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。飛鳥田一雄君。
  62. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 裁判官報酬等に関する法律に関して一つ、二つ伺っておきたいと思いますが、今度お示しになりました裁判官の号俸、これは裁判官報酬等に関する法律第二条に基づくものだろうと思います。しかし、この号俸をお示しいただきましても、はたしてそれが妥当なものなりやいなやということを判定すべき手がかりというものはあまりないわけです。と申しますのは、一般行政職のような場合には、昇給期間あるいはその昇給方式というものがかなり明細に定められておりますし、それから各号俸の中に等級がありまして、通し号俸のような形もとられております。従って八級から七級へ飛びます場合にも、そのあとづけをすることができるわけです。ところが今回の別表を拝見いたしますと、十四号俸幾ら、十三号俸幾らと書いてあるだけでありまして、この各号俸の間をつないでいく基準というものが全然わからないわけです。ただ、出していただきました資料によりますと、裁判官の一号俸は一般職の大体どのくらいに当たるというような御説明は資料の中にありますけれども、はたしてそれが当たるものかどうか判断いたします場合には、やはりもっとこまかいものが必要になって参ります。そこでこの法律の第十一条を見ますと、「裁判官報酬その他の給与に関する細則は、最高裁判所が、これを定める。」こうなっておりますから、当然この細則に基づくものだろうと私たちは考えるわけです。当然この細則は法律に基づいて定められる細則でありますから、別に秘密にすべき筋合いのものでもありません。従ってこの細則を一つ全文をお見せいただいて、そして私たちはその御提案になっております号俸がおよそ妥当であるかどうかを判断したい、こう考えるわけです。これは検察官俸給等に関する法律についても同様でありまして、第三条に、「法務大臣は準則を定める、」こうなっておりますので、この準則を見せていただきたい、こう考えるわけです。いずれにもせよ、そういう意味一つ細則をお示しいただいて、そしてその細則に照らし合わせながら御説明を伺いたい、こう考えるわけです。
  63. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 裁判官報酬につきましては、御承知のように、判事判事補それから簡易裁判所判事と、その裁判官のそれぞれの種類によりまして号俸がきまっておるわけであります。それでそれがこの別表になっておるわけであります。そうして報酬法の第三条によりまして、「各判事、各判事補及び各簡易裁判所判事の受ける別表の報酬の号又は報酬月額は、最高裁判所が、これを定める。」ということになっておりまして、最高裁判所が各判事判事補及び簡易裁判所判事につきまして何号を支給するということをきめるわけであります。何号を支給するかにつきましては、いろいろ具体的にきまっておるわけでございますが、それにつきましては最高裁判所の人事局長から御説明申し上げます。  なお、裁判官報酬その他の給与に関する細則というものは、最高裁判所規則または規定によってきまっておりますが、これについても人事局長から御説明いたします。
  64. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 お尋ねの昇給期間等を定める第十一条の細則でございますが、第十一条によって昇給基準についての細則を定めてはおりません。ただ裁判官会議におきましてその昇給基準を定めまして、それによって実施をしていくという状況であります。もしそれでよろしゅうございましたら、お見せすることは差しつかえありません。
  65. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 裁判官会議というのは最高裁判所の裁判官会議ですね。
  66. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 さようであります。
  67. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そこで大体昇給の基準というものはおきめになっていらっしゃるということですか。そうしてそれは出していただいて差しつかえないということですか。それではそれはきょうは間に合わないでしょうから、後刻でけっこうですから一つお出しをいただきたいと思います。  それから第二に伺いたいのは、裁判官にしても検察官にしてもそうですが、大学を卒業して司法試験通り修習期間を通られて初めて判事補になられる。こういう場合に、一般行政職に比べると初任給は非常に高いわけですが、初めは高くてもしまいには次第にカーブが弱まって参りまして、一般行政職でとんとん号俸を飛んで行ったいわゆる出世組の方に比べますと、管理職手当を考慮いたしますとかなり低くなっておる、こういう傾向があるのじゃないか。こういう問題について裁判所の方ではどういう判断をされてこの号俸をおきめになったのか、一つ伺いたいと思います。
  68. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 裁判官報酬制度につきましては、第二回国会におきまして裁判官報酬法が定められまして、これによりまして先ほど御説明いたしましたような別表がでまておるわけであります。今回の改正は、一般の公務員の給与改定に伴う改定でありまして、それは報酬法第十条に基づきまして改正になりましたそういう手当などでございますが、裁判官報酬といたしまして、ただいま御指摘のように修習生の二年を終わって最初に判事補になるわけでありますが、その判事補の給料が行政職との比較において若干高いということが申されるかと存じますけれども、その後裁判官報酬の特徴と申しますか、一般の公務員の給与と比べてみますと、判事補十年を経まして判事の任命資格を得るわけでございます。判事になりました者が受けます給与、これは、私どもといたしましては、やはり一般の判事として考えなければなりません。すなわち判事としての職務と責任ということを基準にして考えるわけでございます。従いまして、一般の公務員と比べますと、そういう給与のあり方が当然差が出てくるわけでございまして、判事になりますればいずれも独立して職権を行なっております。そういう意味におきましては、判事になりました後の給与の差と申しますか、行政官と比べますと、格差がそうなくなっております。そういうことから、ただいま御指摘のように、上の方になりますと、今度は管理職手当によって行政官の方が上になるというような事態が生ずるわけでございますが、そういった特色があることは、これは判事職務、責任ということから、そういうことになるわけであります。
  69. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 判事職務と責任から月給が安くなってもいいんですか。私はそうではなくて、そういう管理職手当等が入って参りますので、一般職の方が実質収入が高まっていく、こういう問題について当然御考慮になりませんと、将来有能の人たちが裁判官になっていく率が少なくなっていくんじゃないか。そういうことを一つむしろここでは積極的にお考えをいただいて、この号俸をきめられているかどうかを伺っているわけです。判事職務と責任で、低い給料もやむを得ないというお説ならこれは別ですけれども、そうではないはずです。ですから、そういうことまでお考えに入れて、この号俸をおきめになっておるのかどうかということを伺いたかっつたわけです。
  70. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 裁判官報酬につきまして、もちろんただいま御指摘のように、今日のこの改正が決してあるべきものだとは思っておりません。そういう御指摘のような矛盾もあるわけではあります。先ほど申し上げましたように、今回第十条による手当という意味において改正し、立案されているわけでありまして、裁判官報酬につきましては今後当然あるべき報酬体系を検討して定めなければならない存じております。
  71. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今お話しのように、この十条に基づけば、「裁判官について、一般の官吏の例に準じて、報酬その他の給与の額を増加し、又は特別の給与を支給する。」こうなっておりますけれども、しかし現実には今御説明にありましたように、民間とのいろいろな格差が基本的な原因になっているわけです。従って、この際大胆率直に民間とのいろいろの問題とも比較をなすって、このような形であるということをはっきりと打ち出される必要があるんじゃないか、こう私たちは思うわけです。それでありますがゆえに、かえってまたもとへ戻りますが、十一条の「裁判官報酬その他の給与に関する細則」ということになってくるわけです。この号俸以外にその他の給与というのは一体何になっているのか、そしてそれがどのくらい支給をせられているかというような問題も私たちとしては知りたい。知らないと、これについての判断ができないんじゃないかという感じがするわけです。従って、今事務当局の方から、裁判官会議のおきめになりました昇給カーブであるいは昇給期間、こういうものに関するいろいろなものは出していただけるというお約束でしたが、同時に、この十一条による細則も私たちに見せていただきたい、こう思うわけです。
  72. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 ただいま諸手当のことも出ましたので御説明申し上げますが、裁判官報酬法の第九条をごらん願いたいと思います。裁判官につきましても、期末手当、勤勉手当その他管理職手当の一部も支給されておるわけでございます。この九条に基づきまして最高裁判所規則が定められております。もしそれが御必要とおっしゃるならば、その写しを出しても差しつかえないと思います。  それから、ただいまの御質疑の中に、裁判官判事の上の方は、行政官には管理職手当二五%が支給されている関係上、かえって低くなっている点を御指摘になりましたが、まことにその通りでございます。ただ十条の取り扱いの解釈は、対等の号俸でスライドするようになっておりますので、そういう関係からこの差は管理職手当の増額によって解決すべきものとして、最高裁判所ではそのつもりでいるわけでございます。
  73. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それじゃ検察官俸給等に関する法律について伺いたいと思いますが、同様な意味で「必要な準則を定め」と書いてあります。この準則に従って各検察官の受くべき俸給の号等を定めるとありますが、準則を見せていただけるかどうか。
  74. 津田實

    津田政府委員 御指摘検察官俸給に関する法律の第三条の準則につきましては、その内容をお見せいたすことにいたします。
  75. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 その内容というのはどういうことですか。そのままで見せていただけるということですか。
  76. 津田實

    津田政府委員 いろいろこまかい問題が細則にありますのですが、御必要になっている昇給期間につきましては、明らかにそれを認めておりますので、その点は当委員会に差し出したいと思っているわけであります。
  77. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 準則そのものを全部見せていただけますか。それが一番早いと思いますから、委員長、そういうふうにお計らい願います。  そしてそういうことを見せていただきました上で、さらにもう一つお願いがあります。何号俸の方は大体何年で次の号俸に上がったという今までの実績を統計的な表にでもしていただいて、私たちにいただければ非常にありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
  78. 津田實

    津田政府委員 検察官に関しましては、準則が当初以来数回改正になっております。検察官は御承知のように在職期間の長いものでありますから、当初からの分をやりますと非常に複雑なものができ上がるのでございますが、その部分の一部につきまして、できる範囲において御要望に沿い得ると思います。
  79. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 めんどうくさくない範囲でけっこうです。裁判官の方はいかがでしょうか。
  80. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 裁判官の方も同様でございまして、判事補のところは何回か号がふえたりいたしまして、幾多の切りかえが行なわれているわけであります。従いまして、そういったものを正確に出すということは相当時間がかかります。時間を相当かけていいということなればそれは出ると思います。
  81. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 時間をかけていただいてけっこうです。私たちは裁判官及び検察官報酬俸給と一般職との比較、あるいはこれを合わせていくことについて非常に今まで困難いたしておりますので、これから先の参考資料とさしていただきたい、こういう意味ですから、時間はある程度かけていただいてけっこうです。お願いいたします。
  82. 池田清志

    池田委員長 坂本君。
  83. 坂本泰良

    ○坂本委員 午前中法務大臣はおられましたけれども竹内刑事局長はおられませんでしたから、――検察官の方にお聞きしたいのですが、午前中裁判の運用について裁判所側にお尋ねしたわけですが、このごろ裁判の促進ということが非常に叫ばれております。その促進を一番阻害いたしますのは、検察官の面前調書並びに状況調書として提出するであろう――ほとんどこのごろは実際上は提出しておりますが、司法警察官の調書の閲覧謄写について、検察官は数年前まではすべてこれを弁護人に閲覧謄写させておりましたが、このごろになって閲覧謄写をさせない。そうしてやむを得ず裁判所の命令なりあるいは三百二十一条で提出する際に、そのときになって弁護人だけに閲覧をさせる、こういうようなことになりますから、非常にその点で裁判の遅延を来たす。今問題になっております検察官報酬についてもわれわれは特別職としてこれを認める。認めるというのは、やはり公正な裁判を迅速に行なうために言うわけなんです。従って、検察官が国家の費用をもって作っておる調書を、裁判になりましてから見せないというのは非常に不都合じゃないかと思うのであります。検察官は公益の代表者として、犯罪ありとしてそれを裁判に付する場合に公訴を提起するのであります。従って、公訴を提起する際においては、その被疑者、起訴されれば被告人関係においてはこれは有罪であり、訴追するに十分であるという確信のもとにやっておるはずであります。それを今度裁判になりまして、当事者主義で、被告人、弁護側はこの相手の立場に立って防御の策をやらなければならない。その際において、検察官が国家の費用で作った調書を見せないということはまことに不都合であろうと思う。民事事件ならば、原告、被告が対立をいたしまして、攻撃防御をやりますから、出すべき証拠も出さないし、いろいろ作戦があるのでありましょう。しかしながら、いやしくも犯罪ありとして起訴した者に対して、その捜査をした調書で起訴したのが無罪になれば黒星になる、昇給が悪くなるのじゃないだろうか、そういう自己自身の栄達とかあるいはその見そこないその他について批判を受けることをおそれて、起訴した者は絶対有罪にしなければならない、こういう民事訴訟の原告と同じような考えに立っておるのではないか、こういうふうに考えるのであります。しかしながら、これは大いなる誤りである。刑事事件においては、やはり憲法の規定されるところ、それに基づく刑事訴訟法に基づいて、その裁判において有罪、無罪を決定しなければならない。従って、検察官は、有罪にするについては、不利な証拠であってもやはり公益の代表者としてそれを調べておるから、いずれも出して、この被告に対してはこういうような捜査をしたのだ、不利な証拠もあるけれども有利な証拠もあるといって、被告並びに弁護人の防御の策を裁判官は上から見て、そうして証拠によってその有罪、無罪を決定し、有罪にする場合においてもその科刑において判断をするというのが真の民主的な裁判であり、国民のための裁判である、こういうふうに考えるわけです。そういう見地に立ちますと、検察官の面前調書は、起訴したならば全部被告並びに弁護人にはこれを見せまして、裁判の促進をやるために、検察官は長い間かかって、大きい事件は大きい事件なりにその面前調書もあくさんありますし、謄写の制度もありますから、検察官の監督のもとにおいてそれが紛失とか改ざんされないという範囲内においては謄写を許しまして、弁護人並びに被告にそれを十分調査させる。弁護人といえども、決して黒を白にするものではない。りっぱな国民のための裁判を受けるために防御の方法を講ずるわけであります。そうしなければならないと思う。それをこのごろは、刑事訴訟法に直接閲覧謄写が許されていないのだからということで見せない。今、在野法曹においてはその公開制を計画されておる、こういう状態にあるわけですが、このような検察官国民の税金で月給をもらって作った調書についてはすべて見せなければならない、こういうふうに考えるのでありますが、その点について大臣並びに局長の所見を伺っておきたい。
  84. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまの御意見に対しましてはごもっともと思われる点も十二分にあるのであります。しかし、それぞれ慣行もございますし、研究の余地も多々あることと存じますから、なお研究の上に正確なことをあらためて私からお答えさせていただきたいと思います。
  85. 竹内寿平

    竹内説明員 ただいまの訴訟関係の書類を検事が出し渋っておりますために、訴訟が遅延するというような事態がないともいえないかもしれない。もしそういう事実があるといたしますれば、非常に遺憾に存ずるわけでありますが、私の承知いたしまする限りにおきましては、実際の慣行といたしまして、今御指摘のような検事がこれを拒否するという事例は非常に希有な例でありまして、大部分の事件については円滑にその点は運んでおるように承知いたしております。  それからまた御指摘の点でございますけれども、一切の書類はすべてこれを見せるべきであるという御意見、これも一つ考え方として私も決して不当な考え方だとは考えておりません。御承知のように、旧刑事訴訟法におきましては、一つ捜査報告書に至りますまで、訴訟記録として日付の順序に編綴してこれをすべて裁判所に出すものでありますし、また裁判所に出したものは弁護人もすべて謄写いたしておったのでございます。そういう制度のもとにおきまして、これを見せるということは一つ考え方として確かにあるわけでございます。しかしながら、現行刑事訴訟法においてはかなり民治的な意味においての当事者主義的な訴訟形態をとっておりまして、証拠調べをしてもらいたいと思う書類は、これはすべて提出をするわけで、その前に弁護人、被告人側に提示するということになっております。そこでどういう書類を証拠調べをしてもらうかという範囲の問題、それからあらかじめごらんに入れるといたしまして、その時期はいつであるかというような点につきまして、きわめて少数な事件だとは思いますが、弁護人と検察官との間に意見の違う場合もあったと思うのでございます。その点につきましては、法律上の制度上の問題として検事は理解いたしておるのでございまして、もしそれを見せることによって無罪になるかもしれないから見せないとか、あるいは黒星になるとかいうようなことを考えてそういう処置をとっておるものではない点を御了解願いたいと思います。制度の問題といたしまして私どもも十分検討して参りたいと思います。
  86. 坂本泰良

    ○坂本委員 労働事件あるいは選挙違反事件、公安事件等については、ほとんど見せない。見せないというのは、時期の問題というのは、まず裁判が開始されますと、その公訴事実の認否のあった後は、検察官証拠の提出なのです。その証拠の提出について、書証として提出する。その場合に事前においてそれを閲覧しておかなければ、その書証について同意か不同意かわからないわけです。それが一番大事なところなのですよ。その同意、不同意の点において、すでにもう裁判の遅延になりつつあるわけです。そうしてさらに今度は見せなくて証人調べをして、三百二十一条によって提出する場合に初めて閲覧させる。そこにやはり日数を置いて裁判が遅延する。それを裁判官がその期間を置かずに、その期日をきめてどんどん進めると、被告と弁護人は防御の余地が少なくなってくる。そういう点があるから、訴訟の遅延を当然来たしてくるということになる。従って、その時期の問題を局長は言われましたけれども、その時期はまず公判が始まればまっ先にその問題が出てくるわけです。そこで起訴されたならば、やはり検事は書証として提出すべき書類は予定しているわけです。そして、要るならば、やはり弁護人側にもそれを閲覧させなければならない。それは弁護人の組織として国家の補助がたくさんあって、そうして独立の事務所を持って、検察官と同じようなああいうシステムになりまして、いわゆる組織ができておるならば、それはいいはずであります。これは刑事訴訟法が制定される当時に、その点が問題になって、そのときは日本はいわゆる占領下にありましたから、司令部の方では検察官が閲覧させるからこれでいいじゃないか、こういうことであの刑事訴訟法ができているわけです。それを今法律の文面からして、時期が来たら見せればいいじゃないかということで非常に制約をする。そうして見せない理由のもう一つはどこにあるかというと、警察とか検察庁は、一人そこに呼び出して誘導尋問をして、そうしてやっておる。いろいろなことを聞いておる。だからそういうところを見られると困るからというので見せない、これはとんでもないことです。やはり以前の秘密警察と同じような方法になってくるわけです。だからすべてこれを見せるということになれば、警察官にしても検察官にしても、最初からやはり公正に捜査を始め、そしてその捜査に対しての調書も作るはずです。それを秘密的に、そうして身分は、逮捕して調べておるから、それは見せたら困るような点を書いてある場合もあるでしょう。しかしながら、弁護人はやはりそういう点は良識をもって見るわけです。そういう点があるから、この検事の面前調書の閲覧の問題について、非常にもんちゃくが起こる。そういう点で裁判の遅延を来たしておる。そういうような関係にあるのに、裁判官はみずから期日をどんどん指定をする。裁判の方針として公判期日をきめてどんどん進める。形式上はそれで済むでしょうが、しかしそれではたしてほんとうの真実発見のもとにおける国民のための裁判ができるかというと、断じてできないと思う。検察官がそういう独善的な行為をやり、裁判官がさらにただ訴訟を促進するというので、公判期日をどんどんきめて、被告並びに弁護人はその防御の方法も確立せないうちにどんどん裁判がやられたのでは、これは決して被告人のための裁判は行なわれないと思う。特に裁判官検察官に対して、司法権の独立を前提にして、こういう報酬俸給の点も、当初において、他の一般職よりも高い地位にあるから、そして国民のためのりっぱな裁判をやるべく認めたのが基本になっていると私は考えるわけなのであります。従って、現在においても一般職との関係で非常な問題になっておるということは、もう皆さん方御承知通りである。われわれもそれを認める以上は、やはりこれはりっぱな裁判を、国民のための裁判をしてもらうがためにこれを是認し、また支援をする、こういうことになるわけでありますから、せっかく起訴したのだから、それは有罪にしなければならぬ、黒星になる、そういう点は絶対避けなければならない。ことに検察官は民事裁判と同じような方式をとられておる。民事裁判の原告と同じような、いわゆる利害の対立によって行なわれるところの、民事裁判と同じような考え方に立って、その証拠の提出その他をやったならば、決して公正な裁判は行なわれないと思う。それにかてて加えて、弁護人に良心がありますから、そういうことでは弁護ができないといっても、実際裁判官が期日をどんどんたくさん指定される。そういうことで訴訟準備ができなければ、被告人擁護のための弁護人として弁護権の行使ができなければ、これは弁護人を辞退するよりほかに道がないわけであります。それなら、弁護人が辞退するなら辞退しろ、なに国選弁護人を任命してやるのだといっても、その任命された国選弁護人があの膨大な大きい事件をかかえてほんとうの弁護ができるかというと、形式上はできると言えるでありましょうが、実際にこれはできないのです。破廉恥罪的な証拠の明瞭なもの等については、ただ科刑の点その他の点についての弁護権の行使は国選弁護人でもよいのでありますけれども、その有罪、無罪を争う事件においては、やはり被告人並びに弁護人に十分その防御の方法を与えてやって、その上で行政権に支配されないという確固たる地位にある裁判官が断固として有罪、無罪の判断をする、ここに初めて国民の信頼を受けるところの裁判が行なわれると私は思うのです。裁判官自身についても、裁判官は法廷秩序の権利を持っているのだ、言うことを聞かなければ十日でも二十日でも弁護士をぶち込んでやるのだということで、この間やったでしょう。田中耕太郎裁判官の弟の飯守とかいう判事がやったでしょう。二十日間も弁護士を監置処分にした。あそこにほうり込んで弁護士はどうなるのですか。司法権の独立というのは、裁判官が行政権の支配を受けずに、真の公正な国民のための裁判をやるのが司法権の独立である。特に今国論が二分されておるときにおいては、裁判官はやはり確固たる立場に立ってやらなければならぬと思うのであります。検察官もやはり行政権であり、時の政府の一部であるというような考え方ではいけないと思う。一方的に立つから検察ファッショというようなことを世間でいわれることになるわけであります。だから、そういうことのないようにしなければならない。そのためにはやはり法改正まで持っていかなくても、一般在野法曹で法律を改正しなければならないという声が起こるのは、これはよくよくの体験からここまで来ておるということを考えたならば、現在の法組織のもとにおいて、やはりその運用においてこれを改めてやってもらわなければならないと思うのです。私はこういうふうに考えておるのですが、どうですか、法務大臣の御所見を承りたい。
  87. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 御注意、御意見の点につきましては、十分研究をいたします。
  88. 池田清志

    池田委員長 この際お諮りいたします。  両案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。両案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  90. 池田清志

    池田委員長 次に両案の討論に入ります。  討論の通告がありますから、順次これを許します。上村千一郎君。
  91. 上村千一郎

    ○上村委員 両法案について、自由民主党を代表して賛成討論をいたします。  判検事給与の真のあり方については、本両法案は十分その意を体したものとは思わないのでありまするが、今回の両法案の提案は、先般の人事院勧告に基づき、裁判官報酬等に関する法律第十条その他に基づく改定によるものであるので、その意味におきまして賛成をいたしたいと思います。(拍手)
  92. 池田清志

    池田委員長 坂本泰良君。
  93. 坂本泰良

    ○坂本委員 基本的に裁判官並びに検察官報酬については、一般職より多少差をつける号俸がある。この点については、新憲法に基づく日本裁判制度からいたしまして、さらに司法権の独立を前提といたしまして、裁判官が独立をいたしまして、そして真に国民のための裁判をやるについて、その報酬を一般職よりやはり高い地位において認めておる。検察官においてもこれは行政官ではございますが、一般行政官と違いまして、日本裁判制度、司法権の独立の点からいたしまして、やはり同じような見解でおるわけであります。ただここに申し上げたいのは、裁判官がその地位の独立を誤解いたしまして、そして法廷警察権その他の地位を利用といっては語弊がありますが、単に形式上の裁判を促進する、こういうような意味において法廷警察権その他を乱用して、真に裁判に対するところの審理を尽くさずに、裁判をやる危険が今生じておる、こういうことを私は非常に憂えるわけであります。検察官は、犯罪の捜査に当たりましても、やはり国家、公益の代表者としてその捜査に当たるのでありまして起訴いたしまして裁判になりました際にも、やはり国民のための裁判であるということを前提にいたしましたならば、決して被告人を憎むべきではない。ただ、その犯した犯罪自身において有罪か無罪か、また有罪にいたしましても、その科刑の点等については十分考慮しなければならない。そうして国民の納得のいく裁判が行なわれなければ、やはり刑法の教育刑であるという目的がここに達成せられない。従って、司法権の不信をここに来たした場合は、やはり国家が危うくなるもとになる、こういうふう考えるわけであります。従って、この点については、今、日本の国論が遺憾ながら二分されておるこの状態においては、司法権こそ真に独立いたしまして、行政権の制圧を受けないところの裁判をやらなければならない。国民は今政府にたよっておりません。やはり最後は裁判にたよっておる。こういう実情でありまするから、その裁判が不信を買う場合においては、これは日本国民のためにも、国家のためにも重大なる危機であります。かように私は考える次第であります。そういう点について、一つ十分裁判官においても、検察官においても善処していただきたい。ことに検察官が民事裁判の原告のような考え方を捨てて、そうして大きい気持で事に処せられる、その基本の上に立ったならば、いろいろの訴訟手続等の問題も打開して、裁判官検察官、弁護人、ここに法曹一元になって、初めて裁判の運用が遂げられると思うわけであります。また裁判官報酬検察官俸給を一般職より高くするというのは、やはり弁護人からも、裁判官並びに検察官がどんどん出ていって、そうして法曹一元的に交流したときに、初めて国民の信頼を受けるところの裁判ができる、こういうふうにも考えまするときに、私たちは、裁判官あるいは検察官の特別の報酬俸給について、一般職より高い報酬俸給を認めておる基本がここに出てくるのでありまして、その点については私は賛成であります。  そこで、本法案でございますが、本法案は一般職に対する人事院勧告が契機となりまして、この報酬俸給の増額という問題が起きたわけであります。人事院の勧告は五月一日から実施することになっておりまするが、政府は十月一日からの実施期日にいたしておるのであります。長年にわたり人事院勧告がなくて、七年目ですか、ここに初めて行なわれたこの人事院勧告は、私は軍事費などは政府は削減しても、やはりこの給与は人事院勧告通り実施すべきが至当ではないか、こういうふうに考えるわけであります。わずか五カ月間の予算は、膨大な軍事費に比べますれば、そう大したものではないわけでありますから、五月一日からの実施がしかるべきだ、社会党はこういうふうに考えるわけであります。従って、本法案は、社会党の主張する五月一日からの支給でなくて、十月一日からの支給になっておりまするから、この点においてこの法案については反対をいたしておきたいと思います。
  94. 池田清志

    池田委員長 これにて討論は終局いたしました。  次に採決いたします。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、以上両案に賛成の諸君起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  95. 池田清志

    池田委員長 起立多数。よって、両案は原案通り可決せられました。  ただいま議決いたされました両案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  97. 池田清志

    池田委員長 次に法務行政に関しまする調査を進めます。  発言の申し出がありますから、これを許します。坂本泰良君。
  98. 坂本泰良

    ○坂本委員 警察行政について御質問をいたしたいと存じますが、それは、本日の新聞の報道によりますと、昨十五日の午後に、社会党委員長でありました故淺沼稻次郎氏が刺殺されました日比谷公会堂におきまして、山口二矢の慰霊祭が、右翼関係の主催で行なわれたわけであります。この際に、二人の警部が、右翼とは逆な左翼関係担当でありながら、喪章をつけてこの慰霊祭に参列をした、こういうことでございますが、このことについて、まずこういう慰霊祭がどういうような方法で行なわれましたかということが一つと、警視庁の警部が喪章をつけて参列した、こう報道されておりますが、この事実があったかどうか、参列したならば、どういう関係で参列したか、こういう点について、まずお伺いをいたしたいと存じます。
  99. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 昨日、山口二矢の慰霊祭が日比谷公会堂で行なわれましたことは、ただいまお話しの通りでございます。この慰霊祭につきまして、山口の自殺直後から、在京の右翼の統一団体でありまする全日本愛国者懇親会また全日本愛国者団体会議の二団体によりまして、それぞれ別個に計画されてきておったのでございますが、十一月十六日になりまして、両団体が合同会議を開いて話し合いました結果、十二日十五日に日比谷公会堂で開催することを決定いたしまして、それ以来、慰霊祭の事務局を設置して準備してきた模様でございます。この慰霊祭につきましては、事務当局から警視庁に対しまして、十一月三十日に集会の許可申請が出されております。それによりますると、十二月十五日の午後一時から四時までの間、日比谷公会堂において、全国約五百余の団体及び言論機関が主体となって国民慰霊祭を行ないたから許可してほしいという、東京都公安条例に基づく集会許可申請を提出して参ったのでございます。この申請につきまして、東京都公安委員会におきまして慎重に検討いたしました結果、幾つかの条件をつけまして、これを許可いたしたわけでございます。それで、昨日は、約二千三百名の者が参列をして行なわれたわけでございます。その際に、ただいまお話しの、警察官が喪章をつけて参ったというお話でございますが、これは葬儀に参列するという目的ではなくて、自分の職務上必要な情報を収集する目的をもって会場に入って行ったというふうに聞いておる次第でございます。
  100. 坂本泰良

    ○坂本委員 香典を持って行ったという点はいかがですか。
  101. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これは元来、右翼担当ではございませんが、自分の職務上、やはり最近は各種の集団行動等について右翼が、これに対して妨害行為とか各種の行為が行なわれるというような状況でもございますので、そういう団体の動向、また幹部の人相、そういうようなものについても知りたいという意欲から参ったというふうに聞いておるわけでございますが、その際に、警察官という身分をできるだけ秘匿して、自然の形において会場に入りたいという意味からいたしまして、香典を包んで持って行ったというふうに聞いておる次第であります。
  102. 坂本泰良

    ○坂本委員 そこで、一番問題は、もちろん慰霊祭をやるのはこれは自由でありましょうが、淺沼委員長が刺殺をされたその場所で行なわれた。そうしてさらに、当日は右翼関係の警備としては、新聞によれば、五十人以上の方がそこに入っておる、こういうことになるから、その警備においては、やはりその右翼関係担当の者でいいじゃないか。それに、労働事件関係担当のこの警部二人が、喪章をつけて、そうして香典を持って行ったという点に問題があるわけなんです。すなわち、労働事件その他公安事件捜査その他をする場合において、右翼団体の支援を受けてやっているのじゃないか、ここに深いつながりがあるのではないかという疑問がここに起きてくるわけであります。従って私は、この新聞の報ずるところによると、喪章をつけて香典を持って入った、そのとき右翼関係担当の巡査が、今のは警視庁の者だ、こう言った、こういうような点から考えますると、単に今長官が御説明になりましたような、捜査の目的のために行ったのではない。捜査関係ならば、すでに係員が十分である。だから、労働事件その他についてのこの関係担当の警部が二人行ったというのは、右翼団体と緊密なつながりがあるから、この慰霊祭に対しても香典を持って行き、喪章をつけて入ったのではないか、こういうふうに考えられるわけでありますが、その点いかがでありますか。
  103. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお話しのような意図は毛頭ないのでございまして、先ほども申し上げましたように、労働組合関係、労働運動関係等について見ておる者としましても、いろいろそういう大衆運動に対して、右翼というものとの関連が非常に深くなってきたということから、職務上その状況を見ておこうという意図で、しかも自然な形で入るというために、ただいま申し上げましたような方法をとったわけでございまして、右翼とのつながりを持っておったために入ったということではないというふうに聞いておるわけであります。
  104. 坂本泰良

    ○坂本委員 どうも今の答弁でわれわれが納得できないのは、石岡公安部長は、最初は警視庁はそういうのは入っていないと否定していた。ところが第三者がそれで見ておって否定できないから、初めて入ったということを認めて、その言いわけに情報収集の手段として香典を持って、受付で入った。今警視総監は出てこられないわけですが、こういうような状況があるわけなんです。こういう点から判断をいたしますと、警視庁と右翼との間に深い関係がある。だからこの慰霊祭にもやはり義理として喪章をつけて、そして香典を持って参列したのではないか、こういう疑問が出ておる。その疑問は、ひいては警察と右翼とは相通じておるのではないか、こういうことが、疑問どころではない、この事実によって立証されたのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。この点についてはどうお考えですか。
  105. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお話しのような誤解が非常に深くなるということでありますれば、私は非常に遺憾に思うわけでございます。また、新聞によりますれば、見出し等を見ていくと、どうも今お話しのような誤解を生じやすいような見出しになっていることも事実かとも思いますけれども、事の真相は私が申し上げた通りでございまして、当初これが出かけまして、警視庁の幹部が新聞記者等に聞かれた場合は、指示をしたわけでもない、また了解を与えたわけでもなくて行っておるわけでありますから、行った事実を知らなかったということは当然だろうと思うので、そういうことがあるはずがない、いわんや参列するというようなことはあり得ない、というふうに否定したのは、やむを得なかったのではないか。しかしだんだん調べてみると、事実そういうものは行っておる。どういうわけで行ったかということを調べてみると先ほど来私が申し上げたような趣旨で行っておるわけでございまして、警視庁の幹部とかあるいは警備担当者が右翼と深いつながりがあるというようなことは全くないことでございまして、この点は十判御了解を願いたいと思います。
  106. 坂本泰良

    ○坂本委員 新聞にも出ておりますが、この左翼関係の担当の警部二人と申しますが、その名前と、それからだれの指示で行ったか、その点をお伺いしたいと思います。
  107. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 公安二課の第二係長の東海林警部と武川警部でございます。それからもう一人笠原警部という三名のものでございます。
  108. 坂本泰良

    ○坂本委員 この三名はだれの指示で行ったか。
  109. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これは指示を受けて行ったのではなくて、自分の職務上の仕事と考えて自発的に行ったわけです。
  110. 坂本泰良

    ○坂本委員 どうもそんなことはないと思うのですが、さらにお聞きしたいのは、香典を持っていったというのですが、各自が幾ら持っていって、その香典はどこから支出しているか、その点をお聞きしたい。
  111. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 各自の手持金を五百円出したというふうに聞いておるわけでございます。
  112. 坂本泰良

    ○坂本委員 職務中に職務を行使するにおいて手持ちの金を持っていく。そういうことを警察でやっておるかどうか。
  113. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 もちろんこれも職務上行なった行為でございますから、請求を受ければ当然警察としては支払うべき金であると思います。
  114. 坂本泰良

    ○坂本委員 そういたしますと、こういうような金はどういう名目で出され、どういうふうにして請求するか、その点を伺っておきたい。
  115. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これは当然捜査費から支出されるべきものと思います。
  116. 坂本泰良

    ○坂本委員 こういうのが捜査費から出ておる。これは決算委員の問題とも思いますが、こういうような香典とか何とか、名目のいかんを問わず、ただ目的がそうであったといえば捜査費から出せるかどうか、その点いかがですか。
  117. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 目的が正当でありますれば、この場合も捜査費から出て差しつかえないものと考えております。
  118. 坂本泰良

    ○坂本委員 先般の淺沼問題で法務、地方行政の合同委員会をいたした場合に、共産党から出ておる書類を見ますと、藤井調査庁長官が行ってみやげ代まで入っている。そういう点が明らかになっておるわけですが、あれですか、捜査費の中でやはりこういうふうにして出した金は香典として五百円持っていった、そういうふうに明らかに帳簿上処理されているかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  119. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 帳簿上明らかに処理されるべめものと思います。
  120. 坂本泰良

    ○坂本委員 次にもう一つ、先ほど答弁があるいはあったかとも思いますが、公安、警備両部の右翼関係担当の私服刑事が約五十人ぐらいすでに会場に入っておる。その上にさらにいずれもこの三名は警部なんですね。相当の地位にある警部です。この全然担当の違う警部が香典を持って、ただ単身、巡査も何も連れずに三人行く。こういうのがはたして捜査の目的であるかどうかということは、非常に疑わしいわけであります。われわれは、これがわかったからあとから理屈をつけているのが、今の長官の答弁じゃないかと思う。そういうことでは国民は納得しないと思う。しかも警部だけが三名行っているでしょう。捜査ならば、警部が一人行く場合は大がい巡査か巡査部長ぐらいがついていくわけですね。だから、すでにこの慰霊祭に対する警備についてはもう右翼関係担当の方で十分であるから、そのほかに行く必要はない。そこに三人の警部だけが喪章をつけて香典を持って行ったところに、非常に疑惑があるわけなんです。疑惑どころかこれはやはり右翼との関係があるから、そういう捜査でなくて真に慰霊祭に出席して、そうしてその義理を果たした。過去の問題と今後の問題についてやはり右翼と深い関係警察は置かれておる、こういうような関係で行ったのじゃないかというふうな、非常な疑惑があるわけなんです。だからこの疑惑を解くためには、今あなたのここにおける御説明だけでは私は納得できないと思うわけですが、何かはかに理由でもあるのですか。あるならお聞きしたい。
  121. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお話しのように、相当数の右翼係が中に入って視察に当たっており、場内の警備にも当たったり、また場外には制服警察官を待機させて、何か事あるときに備えたということは事実でございます。しかし、先ほど来申し上げましたように、最近大衆運動に右翼が介入していくという事件が相当頻発してきております情勢下において、そういう右翼専門でない警備の幹部のものが、右翼の集合についての状況を視察するということは、私は当を得たことであろうと思います。たまたま新聞にこういうふうに大きく報道されましたために、誤解する方も多く出たかと思いますが、この誤解を解くのは、たまたま坂本先生から御質問いただきましたので、私の答弁によって誤解は解けるもの、こう考えております。
  122. 坂本泰良

    ○坂本委員 次に、新聞によりますと、淺沼刺殺犯人である山口二矢の捜査にわたって、任意出頭を求めた右翼関係の人に先生という敬称を使っていた当局の無神経さが指摘されておる、こういうような報道もあるわけですが、そういうような点についてはいかがですか。
  123. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私、この山口二矢の事件について、捜査の大綱については種々聴取をいたしておりますが、個々の取り調べにおいて先生と言ったことがあるかないかということは聞いておりません。
  124. 坂本泰良

    ○坂本委員 そこでもとに戻るわけですが、先生と言ったか言わぬかは御存じないでしょうが、こういう重大なる犯人のまだ結末もついていない際に、慰霊祭に喪章をつけて、そうして香典を出す、こういうような点を見ますと、右翼と警察関係が非常に密接である。密接であるから場所柄も時期もわきまえずに――警部といえば相当の地位の人なんです。これが単身三名も喪章をつけて香典を持っていく、ここに疑惑が起こると思うわけであります。この疑惑は単に捜査のためという一片の弁明で私は解決できないと思う。この点は、右翼団体と警察は深い関係にあるからその捜査がにぶり、さらにそれどころじゃない、逆に、慰霊祭にも参列をしなければならぬ、そういうような立場に立っておるんじゃないか。そういうような立場に立っておるならば、この右翼関係に対する捜査は真にできはしないじゃないか、こういうように憂えられるわけなんです。こういう点についてはどうお考えですか。
  125. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この前の淺沼委員長の刺殺事件以来、特に警視庁等においても、右翼の視察内偵というものに力を入れておることは、前々申し上げている通りでございます。そういう考え方に基づきまして、彼ら三名が状況を視察するということで行ったということが事実なんでございまして、私の答弁を信じていただけなければどうにもいたし方ないのであります。  それからまた新聞が報道することはもちろん自由で、非常に貴重なものと思いますけれども、この事実を知っている新聞もたくさんあるわけです。書いてない新聞もあるわけです。こういうふうに書いて「警官が刺殺犯人に香典」、「喪章をつけて参列」、こういうことになりますとただいま非常に誤解をされておるような状況のもとに、誤解をされる方も相当あるのじゃないかということを私も新聞を見て憂えたわけでございますが、視察は、先ほど来私が申し上げておる通りでございます。何だそういうことで入ったのかということで、大して気にとめず記事にもならない新聞もあるのでございます。私はどちらがいい、どちらが悪いということを申しておるのではございません。新聞の報道は自由でございます。そういうことで、すべてを知った新聞が全部これを書いておる、しかもそれを警察と右翼との結びつきというような印象づけになるというようなものではなかった、私はこういうふうに考えるわけであります。
  126. 坂本泰良

    ○坂本委員 長官の今の御発言に重大な問題があると私は思います。報道機関が出さないから大したことではなかったというのは、これはやはりもっと真剣に考えなければならぬと思う。あるいは書きたいけれども書かなかった。右翼の跳梁が非常に激しいから書かなかったのじゃないか、こういう疑問が大きくあるわけです。かつて毎日新聞でしたか、あの右翼団体の葬式のことを書いたらなぐり込みをかけられた、そういうようなことがあるから、そういうのを懸念して書かなかったのじゃないか、こういうようなことが巷間にはいわれておると私は聞いておりますが、この点は長官として――大臣もおられますが、新聞に書かなかったのは、大したことではないから書かないというのではなくて、ここに大きく二、三の新聞が出して、ほかの新聞が出さなかったのは、逆に新聞自体の経営とか、あるいは今後の災難をおそれて書かなかったのじゃないか、こういうことが非常に大きく考えられるわけです。だから、出ない新聞があるから大したことじゃなかったという判断は、これはもう一度考え直して、もっともっと真剣に考えなければならぬ問題じゃないかと思いますが、その点いかがですか。
  127. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、新聞が書く書かないということは自由であり、尊重せらるべきものだと思いますが、私申しましたのは、そういうふうに受け取った新聞もあるのじゃないかという意味で申し上げたのでございまして、書かなかったから、この問題を私自身も問題として考えないという趣旨で申し上げたわけではございません。
  128. 坂本泰良

    ○坂本委員 問題は、先般の国会において法務、地方行政合同委員会を開きましたが、やはり解散の日であったし、十分審議が尽くされなかった。しかし、審議が尽くされなかったけれども、右翼団体に対する資金源の問題、それから暴力に対しては絶対否定しなければならないというので、あのときは全会一致で暴力に対する決議案が議決されたわけであります。そういうようなことがあったのにもかかわらず、委員長が刺殺されたその場所で慰霊祭をやる、そこに担当でない者が、事もあろうに喪章をつけて香典を持っていって、それが捜査のためだ、それはちょっと納得できないと思うのです。しかも、そういうのはないということを警視庁は否定しながら、どうしても否定できなくなったら、捜査のために行ったのだ、こういう言いのがれをしているとしか私は思えないのです。この点は新聞に出たから、出ない新聞もあったからという簡単な問題ではなくて、もっと真剣に考えていただかなければならぬと思うのですが、あの臨時国会における暴力に対する決議があって以後、警察庁並びに警視庁は、右翼団体の資金源並びに右翼団体の跳梁に対していかなる取り締まりをやっておられるか、その大綱だけでもここに承っておきたいと思う。
  129. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど来申し上げておりますように、彼らが喪章をつけて行ったということにつきましては、彼らの心情といいますか、意図したところは、私、はっきり申し上げた通りでございます。ただこういう誤解を生ずるというような結果になったことにつきまして、その視察の方法が適当であったかどうかということは十分考えてみなければならぬ問題だと思います。  それから、先般の国会で満場一致で議決せられましたことはもちろん私ども尊重いたしまするし、その以前からもすでに警察といたしまして、警視庁を初めとして、右翼に対する視察要員の増強をはかり、また右翼にねらわれるおそれのある方についての身辺警護等の措置を講ずる、また危険を冒すおそれがある右翼分子についての具体的視察を強める、さらにまた青少年が刃物を持たない運動を推進する等、相当全国的に暴力撲滅ということについて努力を傾倒いたしておる次第でございます。資金源についてももちろん調査をいたしておる面はございまするけれども、資金というものを今のお話のように取り締まるということは、警察としてできるものではございません。
  130. 坂本泰良

    ○坂本委員 いろいろと弁解されるけれども、まず第一は淺沼委員長が刺殺されたその場所で、まだ涙のかわかないうちに慰霊祭を行なうことを許可したという警視庁の常識についても、私は非常に疑うわけです。警視庁はデモをやるについても国会周辺はいけないといって、全然許可しないというように、単なる民主的なデモ行為においても峻烈な態度で臨んでおりながら、しかもさらに刺殺をした犯人の慰霊祭を、選挙は終わりましたけれども、まだ幾日もたたないのにその場所に許可を与えた、これが非常に常識はずれじゃないかと私は思うのです。さらに右翼を取り締まるべき警察が、捜査のためという口実の上において、喪章をつけて香典まで持って行かなければ捜査ができない、そういうような態度でおる警視庁が、公安事件、労働事件なんかについては断固たる処置をとってやっておる、そういうことを考えるときに、私はこれまた常識はずれじゃないかと思うのです。しかも警部の地位にある三名、これはやはり右翼との間に相当関係があり、ことに左翼の弾圧に対しては巷間言われておるように右翼団体と警察と結託してやっているのじゃないかというようなことを疑われてもしようがない。今度の行為はこれを立証するものじゃないかと私には思われるわけです。そういうようなことは、単に今の御答弁だけでは私は納得できない。これは今後警察が真に暴力を排除し、右翼との関係がないという点は、今後の問題として重大に考えて処理しなければならぬと思うのですが、この点について大臣の所見並びに長官の所見を承っておきたい。
  131. 安井謙

    ○安井国務大臣 淺沼事件のあった場所で慰霊祭を行なうといったようなことは一体どうだ、こういう御批判につきましては、われわれも右翼とは主義主張を異にしておる建前からいたしまして、好ましいこととは考えておりません。しかし正規の届出をやって参りました集会につきまして、これを今の公安条例で禁止するという方法は一切ないのでございます。警視庁はそのために非常に厳重な制限、条件をつけて、いやしくも公安を乱ることのないように、十分な用意のもとにこれを認めたということに相なっております。  なおこの係長の警部が三人入った、これもどうも捜査技術上の問題で、なるべく顔見知りのない人が普通の参会者と同じような形で入っていって、よく状況を偵察したいという考え方でやったということにつきましては、私はこれにはいろいろやり方の批判の余地はあると思いますが、このこと自体が直ちに警官が右翼に弔意を表して香典を持っていったというものとは別の事柄で、捜査上あるいはやむを得なかったことじゃないかと思っております。しかしいろいろ御批判もあることでございまするから、今後こういった捜査やり方につきましてはまた重々気をつけて、なるべく誤解のないように今後も戒めていきたいと思います。
  132. 坂本泰良

    ○坂本委員 正式な届出というのですが、従来集会その他の届けを出した場合に、ここでは許可できぬからこっちにしろと、いろいろやられた場合がたくさんあるんですよ。そこでこの重大な問題の、社会党の淺沼委員長がしかも三党首立会演説の席上で刺殺されたその場所に、涙もかわかぬうちに許可をする、許可を拒否するあれがないからやったと言っても、私は今公安条例の規定を覚えておりませんが、ほかには幾らも以前にやっているじゃありませんか。たとえば宮城前でやりたいという場合には、ここは厚生省の許可がなければできないとかなんとか、なんのかんの言ってできなくなる。今度は神宮外苑だ。今度はそこは工合が悪いからどこかの内堀にしろというように、今までは警視庁といろいろ折衝の結果、ことに警視庁の強い指示によって場所を変更したことは幾らもあると思うのです。それを事もあろうにここにやったというのは、今のあなたの答弁だけでは私は納得がいかぬのですが、その点いかがですか。
  133. 安井謙

    ○安井国務大臣 屋外の場合でありますと、交通の問題でありますとかあるいはその他集会によって他に障害が及ぶといったような危険のある場合に、いろいろな指示や要請をする場合もたびたびあるかと思いますが、屋内集会につきましては、正規の手続、正規の手段を踏んで参りました場合に、これを断わった例は講和条約以来一回もないそうであります。ただ場所が確かに不適当であるという感じを持ちまして何とかこれは場所を変えられないかという勧奨は警視庁としてもいたしたようでありますが、ほかにどうしても場所がないのだ、こういうことでやむを得ず、これはそれ以上法規上押すわけにいかないので認めた、こういう実情と承っております。
  134. 坂本泰良

    ○坂本委員 その点については私は非常に不審に考えるのです。それを言うたか言わぬかということは調査されたですか。
  135. 安井謙

    ○安井国務大臣 そうです。
  136. 坂本泰良

    ○坂本委員 そのほかで言っていないでしょう。今後それはもっと調査してもらいたいと思います。集会をここでやりたいという場合に、そこはいかぬからどこにしろと変更したことは幾らもあると思うのです。私今確実な例が思い出せませんから申し上げられませんが、それは国家公安委員長の良識のある立場から考えたならば、そういうところは差し控えさせてしかるべきじゃないですか。その点はどうですか。ただ今まで例がないからとかなんとかいうのは言いわけでしょう。もっと善処さるべき余地は十分あったと思うのです。あなたの今の答弁は、やってしまったあとから理由づけるための理由にしかならぬと私は思うのです。私は今後実際そういうことがあったかどうかも調査しようと思うのですが、国家公安委員会でもまず第一にその届出が出た場合に、これは刺殺されたそこの場所だから、少なくとも二年、三年たった先ならこれは別ですけれども、まだ幾らもたたないうちにやるのだから、そういう点はもっとやり方があったと思うのです。その点についてあなたは遺憾も何も感じないですか、当然だと思うのですか、どうですか。
  137. 安井謙

    ○安井国務大臣 今申し上げましたように、この行為は私ども考えから申せばはなはだ遺憾だ、あるいは好ましいことじゃない、こういうふうに私は考えます。そこで今警視庁がどこか場所を変えられないかと勧奨したというのは、お前の思いつきの弁解じゃないかと言われるのでありますが、そうではないのでありまして、実は私が昨日警察庁から報告をとりました文書の中にも明らかに書いてあるのでございまして、決して今思いついて言っているのではないのであります。  なお、屋内集会につきましては、先ほど私が申し上げた通りでございます。
  138. 坂本泰良

    ○坂本委員 そうすると委員長は、この問題が起きてからきのう警視庁からの報告があったから、その報告に基づいてそう言われるわけですね。
  139. 安井謙

    ○安井国務大臣 その事情調べたものであります。
  140. 坂本泰良

    ○坂本委員 あなたとしては、報告を聞いた以外にできないでしょう。そこで最後に申し上げたいのは、これが個人の単なる問題ならばよろしいのですが、やはり野党第一党の社会党の委員長が刺殺されて、その刺殺されたのは三党首の立会演説会場でやられたのです。その犯人に対してまだ処分も決定していない、裁判もやっていない、その前においてその場所でやることを許可するというようなことは、それは法上拒否はできなかったならば、何とかこれを善処することができたはずです。それを善処せずにそこにやらせたところに、警察と右翼団体と深い関係があったのじゃないかという疑惑がここに深まるわけです。さらに喪章をつけて香奠を持って左翼関係の警部が行く。そうして捜査費からその香奠を出す、こういうような点から考えますると、私は一片の答弁ではいけないと思うのです。今後右翼団体に対するところの取り締まりその他がもしも緩慢になり、彼らがますます跳梁するということになったならば、民主主義の破壊どころか、その前提において私は警察並びに取り締まり当局の不信がそこに出てくると思うのです。こういう点については十分善処してもらいたいと思うのです。この刺殺犯人の山口二矢のその後の捜査関係においては検察庁はどういう状態になっておるか、その点を承っておきたいと思います。
  141. 竹内寿平

    竹内説明員 あの事件が発生いたしまして以来、検察庁におきましては警察当局と協力いたしまして、背後関係の究明には特に重点を置いて、広汎な捜査を進めて参ったのでございます。ところが御承知のように、不幸にも犯人の自殺という思いがけない事故が発生いたしましたために、犯人自身の取り調べからの背後関係の徹底的な究明ということは不可能と相なったわけでございますが、しかし、関係当局といたしましては、これによって背後関係捜査を打ち切ったわけではございませんで、その後も引き続き捜査を進めているのでございます。犯人の死亡ということによって背後関係の究明が困難になってきたことは否定できないところでございますけれども、なお現在も捜査当局から背後関係捜査を打ち切ったというような報告には接しておらないのでございまして、私の承知いたしております限りにおきましては、引き続き捜査を進めておる状況でございます。
  142. 坂本泰良

    ○坂本委員 警察当局においてはやはりこういう関係があって、これは右翼との深い関係がある。その取り締まりその他については非常に警察は弱いのじゃないか、こういうような右翼の取り締まりについては非常に弱いことを立証されておるのではないか、こういうような疑惑がありまするから、そういう疑惑がないために今後も大いに暴力の排除に対する決議の線に沿って善処してもらいたいということと、警察当局においては、この山口二矢のあの自殺がやはり明治維新当時の志士のような考えで、そして右翼の台頭とこういう慰霊祭を催してやる、こういうようなことになれば、新憲法に基づくところの民主主義はここに破壊される、こういうようなことになると思うのであります。われわれは善良なる団体行動はやらなければならないのでありますが、あの淺沼委員長が刺殺された当時のごとき、ことに政界、財界から資金が出て右翼団体が跳梁するというようなことは絶対撲滅をしなければならない、民主主義を守る上からもやらなければならぬし、そのためにはやはり山口二矢の刺殺事件については、徹底的な究明をしなければならないと考えるわけであります。この問題についてはさらにまた本委員会で質疑することもあろうかと思いますが、本日はその善処方を要望いたしまして質問を打ち切りたいと思います。
  143. 坪野米男

    坪野委員 関連質問をいたしたいと思います。  今の坂本委員質問で大体尽きておるかと思うのでありますが、同じ場所で山口犯人国民慰霊祭と銘打って行なわれたあの慰霊祭、これは社会党に対する挑戦であると私たち非常に重大視しているわけであります。なるほど現行の公安条例その他から、かりにこのような慰霊祭を許可しないということが法的に困難であるといたしましても、あるいは不可能であるといたしましても、われわれは、この事件直後から公然と山口を英雄視し、よくやったというような発言がなされておる右翼の団体によって行なわれるこの集会は、慰霊祭に名を借り、慰霊祭を擬装した一種の集団的な脅迫行動ともとれるわけでありまして、私はそういう集会を制限するあるいは禁止するという措置を講じなければ、今後こういった右翼の暴力テロを根絶する、根本から一掃するということが困難であろうと思うのでありまして、今後この種の非常に擬装された、しかも社会党に対するあるいは国民大衆に対する挑戦と目されるような集会を制限する、あるいは規制する措置を、右翼の暴力根絶と関連して十分検討を願わなければならぬと考えるのでありますが、その点の御所見を承りたいと思います。
  144. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 右翼の集会というものについて規制を考えるべきでないかというお話のように承ったのでありますが、集会、言論というものは憲法に保障された重大な権利でございます。従いまして、集会そのものを直ちに規制するという制度的な考えは現在持っておりません。しかしながら、運用上各種の条件を付しまして、これが公共の安寧に危害を及ぼすおそれのないように十分に注意を払って参るようにいたしたい、こう考えておる次第であります。
  145. 坪野米男

    坪野委員 その点につきましては、研究問題として残しておきたいと思います。  さらに、先ほど御答弁のありました捜査の必要上喪章をつけて警察官が参加したという行為でありますが、これも私はいかに捜査のためといいながら、きわめて不謹慎な行為である、またわれわれといたしましては、これは黙視できない問題だと考えるのでありますが、この点についても単に捜査のためであればやむを得ないというような弁解にとどまらず、今後の問題として十分警察当局においてもこれは考慮願わなければならないということを要請いたしておきます。  なお、もう一つお尋ねしたいのであります。山口少年の自殺事件はちょうど総選挙の最中であったかと思います。新聞紙上を通じて理解した程度でございますが、この自殺の真因と申しますか、原因については、捜査当局あるいは鑑別所でありましたかで調査されておると思いますけれども、外部から何らかの強制、圧力が加わって山口少年を自殺に追いやったというような事実がなかったかどうか、その点について一つお尋ねしたいと思います。
  146. 竹内寿平

    竹内説明員 ただいま御指摘のような、外部からの圧力によって死を選ぶというような事象は、当時検視に当たりました検察官の検視報告によりましても、認められなかったのでございまして、全く本人の自発的な行為というふうに認定せざるを得ない状況でございます。
  147. 坪野米男

    坪野委員 客観的な事実からでなしに、少なくとも心理的な原因から自殺に追いやられた、――もちろん外部的な要因によってですよ。そういった事実を推測するような状況はなかったかどうか、重ねてお尋ねいたします。
  148. 竹内寿平

    竹内説明員 推測考慮に価するような事情は認められなかったのでありまして、かえって本人が個人的に意思を決定したと思われるような事情の方が多かったのでありまして、結論といたしましては、全く自発的な自殺行為であるというふうに判断いたしております。
  149. 坪野米男

    坪野委員 もう一点お尋ねしますが、これは右翼に資金をみついでおる資金源の追及の点でございますが、前回の三十六国会で相当連合審査会で追及されたようでありますが、その後検察当局で相当詳しく調査されたと思うのであります。本日でなくてけっこうですが、検察当局捜査された資金源について、当委員会でもう少し具体的に一つ明らかにしていただきたいという要求をいたしておきます。
  150. 坂本泰良

    ○坂本委員 そこで、ただいま質問がありました山口二矢の自殺の問題、またこれに関連して非常に英雄視してこれを礼讃してやる、こういうようなことになれば、全く民主主義の破壊になりますから、さらにまた、今度の問題について、事もあろうに左翼関係担当の警部の地位にある三名が喪章をつけて香典を持っていった、これは単なる捜査上という一片のことで片づけるわけには参らないと思います。きょうは警視総監も見えておりませんから、その当局の方々の答弁も聞けなかったわけでありますが、これは今後委員長におかれて一つ理事会その他にも諮っていただいて、あるいは三警部を参考人に呼ぶとか、また山口の自殺等の点については委員会において調査をするとか、国会が開会になりましたから、そういう点まで尽くして真相を究明した方が国民の信頼を受ける、こういうふうにも考えられますから、その点委員長に善処方を要望しておきたいと思います。
  151. 池田清志

    池田委員長 理事会に相談いたしまして、進めたいと思います。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十六分散会