○
鈴木(義)
委員 私も、ただいま
長谷川君の
質問されたと同じことを申し上げたいのでありまするが、おそらく前に問答が繰り返されたと存じますから、できるだけ簡潔に、要点だけを申し上げたいと思います。そして
文部大臣の御
決意を承っておきたいと思います。
授業料問題から
私学、ことに
私立大学の
経営の問題が、今注目を浴びておるわけであります。これは前から存在する問題で、何とかしなければならぬということは、
教育に携わっておる者すべてが痛感しておることであったのであります。御
承知のように
私立大学は、とうてい
授業料だけでは
経営していくことができないものが多いのであります。もし、いわゆる
大学基準なるものがなくて、四十人に一人ずつの
教授、
助教授を配せよというようなことでなければ、何千人も入れて、マイクをつけて知識の切り売りをして、そして
授業料を相当取れば、今よりずっと安くても大いにそろばんが成り立つが、そういうことを許さない。だから四十人に一人ずつ
教授、
助教授を配して、各個人的に
学生を
教授するということが
教育の
趣旨であり、それでこそ初めて
教育の効果も上がるわけであります。そういうことを強制する以上は、やはりどうしても
経営についてまじめに
考えなければならない。普通大きな
学校、名をあげることははばかりまするが、入るのに
一定の
寄付金をしなければ、まず入れないということが行なわれておることは、
文部大臣も御
承知であろうと思います。あらかじめ銀行が出張してきております。そして受け取っておる。入学試験を受ける前に、百万円とか
一定の金を納めて、多いところはもっと多いようでありまするが、そしてその受け取りを持たなければ、入学試験が受けられない。入学試験を受けて落第すれば、返すということは当然のことでありますが、及第して入れば、その金は
寄付に転化されて、
施設拡充費というものになる。
入学金というものは、むろんそういうことに充てるために相当多額になっている。今回も、三倍に上げるというようなところが多いようでありますが、所によっては、県内の者は今の倍にするとか、県外から入ってくる
公立の
大学には、現在の五倍、はなはだしきは十倍にするというようなところもある。
公立の
学校でも、もはやそういうようにそろばんを置いていろいろ操作をしているような次第であります。それから入ってから、今度は
寄付金、これは
施設拡充費というような名前で取るのであります。それが、そのとき一度ではない。四年に分割して取るところもあり、
学校によっては一度に五万、十万を取っている。
学生から取らないで、父兄のところへ手紙をよこし、あるいは勧誘をして、一つ特別にお願いをしたいというようなことで集めている。そして
授業料の値上げは、これは主として人件費になってしまうのでありまして、人事院勧告のべース・アップに見合って、とうていあれに追いつくものじゃありませんけれ
ども、少しずつ上げなければ
教授がかわいそうだ、また団交等によってやかましく言うところもあって、結局上げざるを得ないわけであります。ですから、今
私立大学のよいところへ入れようとすると、それは膨大な
経費を父兄としては
負担せざるを得ない。私のごく近いところにも、二、三人そういう者がおりますが、父親は
政府の役人でありますので、とても
私立へは入れられないから、何年浪人しても
公立または
国立へ入ってくれと言っているが、私は所見を異にする。そう長く浪人していることはよいことじゃない。一年くらいの浪人はよろしいが、何年も浪人をすれば、必ず精神的に悪い影響があります。むしろその子供にはそれぞれの特徴があって、決して
国立でなければりっぱな人間になれないというわけじゃない。
私立ならば入れるところが多々ある。しかし、父親ががんとしてそれを聞かないのです。またそろばんを置いてみれば、全くその
通りなんです。私も助成してやるということで、今度は
私立でも受けてみるというところまで妥協したそうでありますが、入った後は、やはり非常な
負担をせざるを得ない。そういうことを
考えますと、これはただ捨てておくわけにいかない問題であります。
憲法を作るときに、アメリカの
制度をまねたわけでありまして、御
承知のように、公の支配に服せざる
教育、慈善事業または博愛等については、これを支出等をしないことというふうに書いてある。アメリカのように、どの
大学も
寄付金でやっていけるならばいいが、実際
日本の
理事会なんていうものは、ただ
名目だけでありまして、金を出してやっているところはごくわずかです。慶応くらいのものでありましょう。金を出さないで、ただ同窓であるというだけで、並び大名式にすわっている。金のことは、全部父兄及び
学生に依存する。ですから、そういう
制度のもとに、アメリカのような
制度をまねることは間違っておるのであります。
憲法第九条で自衛隊ができるものならば、私はこの八十九条で、
私学に
補助を与えることは何の差しつかえもないと思う。いわんや十分公の支配にも服しておるのでありまして、相当干渉を受けておられる。その
教育なり思想上の
教育方針なりについて、干渉さえなければやむを得ないと思いますが、とにかく外国のように七〇%か三〇%
——三〇%ぐらいはやっていただいてもいいのじゃないかと思います。
補助を与えるというところまでいかないでも、今のような
設備について一%だけの
補助というようなことでは、まるですずめの涙式のもので、ないよりもいいという程度のものであります。その他低利の金を長い年賦で貸すという御親切なこともやっていただいておるが、これもいつかは返さなければならない。実情は、教職員が非常に経済的に苦しんでおります。そこで、来年の
授業料を担保として銀行から金を借りて、そし十月一日から少し増加さしていくというような
私学が相当あるのであります。
一方、
学生の方では、御
承知のように
授業料値上げ絶対反対ということで、また一騒ぎ起こりそうであります。そういうことで、これもまた一つの問題になるのじゃないかと私は心配しておるわけであります。これに関連しては、いろいろ
学校法人化の問題でありますとか、あるいは法律を改正する問題でありますとかございますけれ
ども、とにかく私は今の
日本の
私学の
経営をあのままの形においてよろしいとは思えない。不肖私も、一つの
私学の
経営に参加しておりますが、全く無報酬であります。何か
私学というのは金もうけをする、だいぶもうかるだろうということをいう人がありまするが、少なくともそういう職員は無報酬でなければ成り立っていかない程度に逼迫しておるのであります。それで、どうしても一つこの際国家として
——教育に二つはないのであります。
公立、
国立、
私立では、
私立が断然多いのでありまして、百四十校にも及んでおる。
公立は合わせて七十二校であります。そうして国家の文化の発展に寄与しておることは、決して
国立に劣らないのでありまするから、これは一つ大きな見地から
文部大臣、大蔵
大臣あるいは池田内閣として一つお
考えを願いまして、ぜひ
私学がもう少し健全に立ちいくように御配慮願いたい、かように
考える次第であります。それに対して、
文部大臣の御所見を承っておきたいのであります。