○帆足
委員 たとえば朝鮮の問題を担当しておる方は、李承晩が国外に逃亡したというようなときには、ショックを受ける方が健全な反応だと思うのです。従いまして、ダレス
外交が遂にスチブンソン氏、チェスター・ボールズ氏の線まで方向転換したということは非常にショックであるということの方が私は健全な反応であると思う。
外務大臣はわれわれと同時代の感覚でありながらえらくなり過ぎて、また吉田さん参りが度が過ぎて、いい
意味でも悪い
意味でも、少し感覚が鈍くなったのではあるまいかと世間はほんとうに言っておるのです。ですから、やはりもう少し新時代の感覚を持たれて、やはり汗を流すときには汗を流すということの方が健康でなかろうかと思っております。ただいまの大臣の御
答弁を聞いて、私は前途が非常に心配になって参ったわけです。
アメリカの
極東政策の反省に対して、
日本も積極的に寄与するというくらいの
外交政策が必要でないかと実は思っておるのです。
朝鮮は御
承知のごとく、南北に分断されました。たとえば九州と本州が分断されたと同じことと仮定してお考え下されば、それがいかに民族にとって苦痛なものであるかということは御了察願えると思うのです。神の合わせたまえるものは人これを離すべからずといいますが、人為的な諸障害が
一つの民族を二つに分断しているわけです。それに対しまして、もちろん北にもいろいろな欠陥があり、南にも欠陥があって分断されたのでしょうけれ
ども、北の生活もほぼ安定いたしました。またスターリン
主義の批判な
どもその間に行なわれまして、北は北なりに安定した良識ある社会
主義政権として成長しつつあります。南は遺憾ながら、立地条件の悪いのと李承晩の悪政のあとを受けまして、また
アメリカの軍事
政策の失敗のあとを受けまして、非常な塗炭の苦しみであることも御
承知の
通りです。しかも立地条件から申しますと、北には石炭と電力があるけれ
ども、南には全然それがない。北には豊富な鉄鉱石もありますし特殊金属もありますけれ
ども、南は米のほか見るべきものもない。従って南北
一つでなければこれは計画経済の立てようがないわけです。もし北と結ばなければ結ぶべきところはもうないわけです。従いましてイデオロギーは抜きにして、まず南北の懇談をしよう、あるいは懇談ができなければなせめて文化、経済の交流について話し合う
程度のことをしよう、そして互いに他国の政治に対しては批判は慎む、こういうことで交流しようという北からの呼びかけが非常なセンセーションを起こしておることは御
承知の
通りであります。私は多少朝鮮語もできますので、朝鮮の新聞を見る
機会もあるのですが、たとえば朝鮮の社会大衆党は――これは朝鮮の社会党です。声明書をすでに出しまして、親子、兄弟、姉妹ばらばらになっている状況のもとで、一カ月三、四回くらいの交通は合法的に許してもらいたい。また経済、文化交流くらいは許していただいてよいのではないか。統一問題については確かに将来のことであろう。ただ平和的統一の方向ということは南北両
国民の
期待であって、これは研究の課題である、こういう発言をしております。あるいはまた朝鮮の民主党が二つに分かれまして新民党というのができましたが、議席、数十を持つこの大きな政党の
責任者であり、同時に民議院副
議長の徐珉濠氏は、北韓――北朝鮮のことを北韓といっているわけです、その表現がいいかどうか存じませんが、北韓との問題はちょうど
東西ドイツの問題のように考えて、適当な
機会に、経済、文化それから人事の往来くらいは認めて、余剰物資を北に送り、北から石炭と電力をもらうくらいのことはどうしても考えなければならないのではあるまいか。かりに四国が九州から分断されてしまって、四国の火力発電所に全然北九州の石炭がこないということになったらやっていけるはずがないのです。しかも人口は南が二千万、北は一千万です。従いまして南からもこれに応ずる声が出ることは私は当然のことだと思うのです。京城の大学生の諸君はどうしているかといいますと、三十八度線南北の学生の交流をしたいということは、ほとんど満場一致の学生の決議として発表されております。あるいはまた北朝鮮からの呼びかけが単なる共産
主義の謀略、プロパガンダであるかどうかということは判断を差し控えよう、そういうことでなくて、事実に即して、慎重に南北交流のことを進めてはどうか。既成政治家は全部やめてもらいたい。そうして過去の悪い政治に
責任のない、新しい感覚、合理的感覚を持った政治家
たちに
自分たちは
期待したい。統一のために米ソ首脳部と朝鮮
政府は懇談すべきであるというようなことをその声明書に書いております。朝鮮の一流の知識人三百五十人を調べた世論調査によりますと、その知識人の七〇%以上は平和統一に賛成であり、少なくとも経済、文化並びに書信の往復、交流については即刻これを始めるべきであるという
意見を発表いたしておるわけであります。このような状況でございますので、私は朝鮮に対する
理解と友情があるならば、やはり朝鮮民族全体のことについてあたたかい配慮を持ちまして、これは四国と九州が分かれ、本州と九州が分かれておるような状況になっておる、そういう運命をになってあえいでおる民族であるから、従って南の朝鮮または北の朝鮮、いずれか一方だけを朝鮮全部を
代表した
政府であるかのごとく実質的に取り扱って――形式的には、
国連のいざこざのために、南朝鮮に自由
諸国の比重がかかっておることは周知の事実でありますけれ
ども、実際上は、南北は今停戦協定をして休戦状態になっておるわけですから、先ほど
外務大臣が言われたように、事実問題としては二つの
政府があるわけです。この事実に即して、そうして将来徐々に統一への方向に進む機運もあるのですから、事務的問題だけを語り合って、南北両鮮にまたがるような、またはいずれか一方が全朝鮮を
代表するような形の交渉はなるべく控えた方がよかろうということを、社会党はもう口をすっぱくして去年からたびたび
政府に御助言申し上げておるわけです。李承晩
政権が倒れましてから、南朝鮮は一挙に民主化されまして、いろいろな問題をもっと
弾力性ある
立場から朝鮮
国民が考え始めておる。その考え始めておるやさきに、まだ十分に信頼を受けてない
政権を相手にして直ちに南北全体を通ずるような話を進めることは、私は妥当でないと思うのでございます。また私
どもの方の全権大使の澤田廉三さんも人口骨柄りっぱな人でありますけれ
ども、もうよわい七十をおそらくおこえになっておるでしょう。李承晩さんと同時代の感覚、御年令も血液の温度も低温の方でございます。李承晩のときには澤田さんを出さなければ、爬虫類同士が互いに見合わす顔と顔というようなことであったのであります。しかしもはや人類の時代、民主革命が南朝鮮に起こって、民主革命の時代ならば、澤田さんのように恐惶頓首々々の時代に育ったのでなくて、こちらも小坂さんのような資本論くらいは一応読みこなしている
外務大臣がおられるわけですから、そして先方も民主革命後の新しい政治に移りつつある、そのうしろにおるところの
アメリカもまたチェスター・ボールズ氏の時代になったのでありますから、私は澤田さんがやることは、もはやあのときの構想ではむずかしいと思う。構想もむずかしいし人もむずかしいと思う。従いまして、やはりこの辺のところで
一つ外務省も忙しいから御休憩なさって、事にはやはり時期というものが大事ですから、休憩なさって、そうして日韓会談は新しい構想のもとに出直すことの方がむしろ実情に適するのではあるまいか、また
アメリカ国務省も、この問題については、
アメリカ国務省としての参考
意見もあるでしょう。それらのことも洞察せねばならぬ。最近のラオスの
事態などは――あとで申し上げますけれ
ども、英国は
アメリカのやり方に対してとても憤慨している。従いまして
極東政策全般に対して英国からしかられて、
アメリカもこれはよほど訂正するようになるのではないかと思いますが、だとするならば今の張勉
政権に対して
外務大臣があまり急いで事を進められることは、私は妥当ではないと思う。ましていわんや
外務大臣が急がれた
気持が、
一つには、李承晩ライン、漁民問題などについて早く事柄を安定せしめて、そして海洋国、水産蛋白資源に依存するこの国の漁業問題の安定のために資したいという御熱意から出たものであるとするならば、一そうのこと、この李承晩ラインの問題、漁民問題には張勉
政権は今触れたがっていないということならば、触れないくらいならば、他の案件については別に私は急ぐ必要もないのではないかと思う。従って漁業問題については事務的な連関を残しつつ、全体の動向については、この辺でお正月休みで一服して、もう一ぺん構想を新たにするということが妥当であろうと思います。これについて
一つ政府当局の御
意見を聞くと同時に、この際、いやもうお前の言うことは野党の言うことである、おれは自民党であるからというようなかたいお
気持でなくして、多少は野党の言うことも
一つ参考にしようというような大きな度量を持ちまして御検討のほどを願いたいと思いますが、
外務大臣の御
意見はいかがでしょう。