○
説明員(
竹内壽平君) 本年八月から九月にかけまして、ただいま
委員長かり御
紹介のありましたように、
ヨーロッパで
三つの
国際会議がございました。私も
日本側代表の一人としまして
ヨーロッパへ参りまして、
三つの
会議に
出席をいたしました。まだ
会議の際に配付されました書類が全部届いておりませんので、私が荷物の中へ持って参りました
結論と
日程表のようなものだけを仮訳いたしまして、ただいまお手元に配付をいたしました。私は話をなるべく簡潔にいたしまますために、このような措置をとりましたが、誤訳のものもございますので、後日間違っておる点がございましたなら訂正さしていただきますことをお許し願いたいと思います。私は、去る八月四日夜
東京を立ちまして十月三日の夜に
東京へ戻って参りました。第一回の
会議はこの「第二回
国連犯罪防止及び
犯罪者の
処遇に関する
世界会議」というつづりをごらんいただきたいと思います。この
会議でございますが、八月八日から二十日まで
ロンドンの
ウェストミンスター寺院の一角にございますチャーチ・ハウスという所で開かれました。
世界各国から約八十三の
各国とテリトリーから
代表が参って、おりまして、
日本からも十名参加いたしましたが、
各国の
出席者は千人を突破いたしておったように記憶いたしております。
まずこの
会議の
模様を申し上げたいと思いますが、第一口に
開会式がございましてこれは大法官といわれているロード、
チャンセラー上院議長の
開会のあいさつから始まりまして、午前中はその
開会式で終わりました。午後から
三つの
部会に分かれまして、さっそく討論に入ったわけでございます。
二つの
部会と申しますのは、この最初の所に書いてありますように第一部におきましては「
少年非行の新しい
形態——その
原因、
防止及び
処遇」という題、それから「
少年非行の予防のための特別の
警察行政」、この
二つが論題になりました。それから第二部、第三部、それぞれここに書いてある
通りでございますが、私はこの第一部の方に終始
出席をいたしております。従いまして、この第一部の点につきましてやや詳しく御
説明を申し上げたいと思います。
まず第一部におきまして私どもがあらかじめ出しておりました
ナショナル・
ペーパー各国からそういう
報告書が出ているのでございますし、それからさらに各その道の
権威者に
国連が依頼いたしまして
調査報告を求めております。それらの
各国の
ナショナル・
ペーパー、あるいは
研究調査報告、そういうものを全部閲覧をいたしまして、
総括報告書というものを
西ドイツの
ウォルフ・ミッデンドルフという判事が
国連の依嘱を受けまして報をまとめております。その
ウォルフ・ミッデンドルフ判事がまず
議長の呼びかけに応じまして、約一時間にわたって
報告の
内容を
紹介いたしました。その
紹介の後に、約十分間ずつ
希望者に時間を許しまして、それぞれの国から約三日間にわたって、三回のセッションにわたって
発言がございました。その
発言の結果を取りまとめましてその次のページにございますが、第一
部会と書いてあり律すが、「
少年非行の新しい
形態—その
原因、
防止及び
処遇」という題で、「第一
部会の
討議から引出される問題」というクェスチョンズをつけまして、そしてこの
問題点の一から十一までございますが、この
問題点につきまして、さらに順を追いまして、五分間ずつの
討議で
各国から
発言をいたしました。この
会議にはソ連及び
ソ連圏からの
各国からも
代表が来ておりまして、
各国から五分ずつの
意見の開陳がございました。これらの
意見をふんまえまして、
最後にこの
結論と
勧告というものを
協議をいたしました。これは本
会議の席上で
討議をしたわけでございますが、この
結論と
勧告につきましては、第一
部会以外の第二
部会、第三
部会に
出席しているところの人の
発言ももちろんあるわけでございまして、だいぶここで
議論が出たわけでございますが、一応全部採択されております。ただ、これは
総会に提出されましたドラフトを翻訳したものでございまして、若干の字句の
修正等がございましたものについては、決議の成文というものは、私どもいただいておりませんので、いずれ
国連の
会議録に載ると思いますけれども、ここにおきましては
総会の席に出されました案につきまして翻訳をいたしたのでございますが、私のつたない語学の力では十分でございませんけれども、あまりこの案と違った
結論にはなっておらないと考えております。こういうような経過で、約二週間の
会議を終わったわけでございますが、ここで申し上げてみたいと思いますのは、
少年非行につきましての
各国の現状、考え方でございますが、
ウォルフ・ミッデンドルフ判事がまとめました
総括報告書は、非常に詳細に、しかもりっはな
報告であったと私考えております。その
報告はプリントになって出ておりますので、それに基づきまして、概略御
説明申し上げてみたいと思います。
まず、現下の
少年犯罪でございますが、この
少年犯罪あるいは
少年非行、
ジュベナイル・デリンクェンシーという
言葉を訳しておりますが、この
ジュベナイル・デリンクェンシーという
言葉の持つ意義、定義、これが問題であるということで、特に
ヨーロッパでは、この
言葉はおとなが犯した場合には
犯罪となる
行為を意味しているのに対しまして、
アメリカでは、かなり広くこれを使っている。学校をなまけたり、不純な性交をしたり、あるいは夜間徘回したりというような
不良行為もを
ジュベナイル・デリンクェンシーという用語の中に含めて考えているようでございまして、まあ
日本などはこの中間的な立場で、
虞犯少年という
言葉を使っておりますが、罪をおかすおそれのある
行為をも
ジュベナイル・デリンクェンシーの中に入れておるわけでございまして、
日本はその中間的でございますが、
ヨーロッパと
アメリカがややこの広さ狭さの点において対照的になっておりました。従いまして、その
統計もやや広いのとやや狭いのとの間で
議論がされますので、若干の多いとか少ないとか申しましても、そこにそういうニュアンスがあることを頭に置いて理解しなければならぬと思います。
まず、この
少年犯罪が
増加している国はどういう国かといいますと、
アメリカ合衆国、イングランド、
ウェールズ——これは
英国であります。
南アフリカ連邦、
オーストテリア連邦、
ニュージーランド、
西ドイツ連邦、東
ドイツ、
オーストリア、
ギリシャ、
ユーゴスラビア、
フランス、
スエーデン、
フィンランド、
日本、
フィリピンがまあ掲げられておるわけでございます。この詳細は省略をいたします。
それから
少年犯罪が減少しているという国、この部類に属する国としましては、
スイス、イタリア、
ベルギー、
カナダがあげられております。ただ
カナダでは
少年裁判所に出頭した
少年の数を一九四七年と一九五五年とを比較してみると、全体で約八十人減少したということを申しております。
もっとも罪種別に申しますと、
財産犯罪と
性犯罪とが全体に対する比率におきましてはふえておるという
報告になっておすます。
次に、
再犯の状況でございますが、これは
オーストリア、
アメリカ合衆国、
英国、
オーストラリア、
日本、
スイス、
スエーデン等で、それぞれ
再犯の問題に触れておるわけでございまして、要するに総括的な
結論といたしましては、
少年犯罪の
一般的傾向は多くの国においてその
増加が著しく、またある幾つかの国における累犯の
増加という点が
特徴であるというふうに指摘をされておるわけでございまして、この問題についての
研究がきわめて緊要であるということを申しおります。
さらに新しい
研究といたしまして、
アメリカ、ルイジアナの
サウザンド大学における黒人と白人との間における
再犯原因についての
比較研究などもこの点に触れております。
そこで、これが
一般概況でございますが、新しい
少年犯罪の
形態といたしまして、
財産犯罪、
交通違反、
集団犯罪、特に
ギャング、野蛮な
粗暴行為—ヴァンダリズムというふうに英語で書いてありました。それから
性犯罪、
アルコール中毒、
麻薬等の
薬物中毒というような点に新しい
形態の
犯罪をとらえております。
まず、この
財産犯罪でございますが、ここで特に問題になりましたのは
自動車窃盗でございます。
アメリカにおきましては一九五五年の
統計によると、
自動車窃盗のうち六八%は十八歳以下の
少年によって犯されているという
報告になっております。
カナダ、
英国等においても急激な
増加が
報告されております。同様なことは、
フランス、
ベルギー、
スエーデン、
イスラエル、
オーストラリア、
ギリシャ、
タイ—タイはこれは
自動車でなくて自転車でございますが、同じようなことが
報告されております。
なおこの点で
少年裁判所の
裁判官の
国際協議会事務総長という肩書きのあるロック氏、これはブラッセルの人でございますが、この方が
自動車窃盗についてのかなり詳細な
報告書を出しております。それからまた
スエーデンのエリクソンという人の
報告によりますと、これまた非常に
興味のある、たとえば
自動車窃盗は多分性的な敗北を埋め合わせるための
行為と言えようというような
興味のある
報告でございますが、また
イスラエルや
オーストリアの
報告あるいは
ギリシャ、いろいろな角度から
社会学的、心理学的に解剖いたしまして、
自動車窃盗の実態の
分析、解明をいたしております。ただ全体として見まして、
自動車窃盗でございますが、これが
ほんとうの
窃盗じゃなくて借用なんであります。借りるという、まあ
使用窃盗でございます。多くの国においてこの
使用窃盗に終わって
ほんとうに取ってしまってこれを売り飛ばして金にしようというのでなくして、乗りたいほうだい乗って捨ててしまうという形の
自動車窃盗であることが
特徴的でございます。そして、この分野におきましては、刑事学的な
研究も不十分であることを指摘しておりますし、
西ドイツでは
自動車窃盗で刑務所に収監された百十一人の
少年について
研究があるという
紹介がございました。なお、そのほか
財産犯罪につきましては、
イスラエルからくだものの
窃盗について、また、イギリスからは
レコード屋から
レコードを盗むという
万引の問題、
ベルギーからはデパートメント・ストアーからの
万引、こういうものが多くなっている。そして、これらの
万引のうち九〇%までが十二才代の
少年、特に男の
グループによって
興味本位に安価な物をねらって行なわれているという
報告がございます。しかもこれらは、通常よい
家庭の
少年によって、また、
監督の不十分な、
両親が共に働きに出ているような
家庭の
少年によって犯されているというところが
特徴であるという
報告になっております。
詳しく申せば切りはありませんが、次に、
交通違反でございますが、
少年による
交通違反が非常に
増加しておる国として、
アメリカ、
ニュージーランド、
日本、
ギリシャ、スェーデンがあげられております。
アメリカの
上院の
少年非行に関する
委員会がございますが、この
委員会の
報告はなかなか
興味のあるものでございまするけれども、
交通違反について
少年裁判所が管轄を持つ所とそうでない所とがある。
交通違反の
少年を
少年犯罪者として特別な取り扱いをすべきかどうかという点については非常に見解が分かれておる。これは
日本でも同様でございます。一方では、
社会が
交通違反を道義的に責むべき
犯罪と考えていない以上、
交通違反は他の
犯罪と同様に考えるべきではないという
意見があるとともに、他方では、
成人の
交通犯罪については
社会が寛大な
見方をしているとしても、人格の
形成期にあって、あらゆる法の順守の
必要性が強調されなければならない
少年の場合については、
成人と同様に考えてはならないというような
意見がある。さらにまた、第三の
意見としましては、重大な
交通犯罪や素質上の問題を持つ
少年による
交通犯罪につきましては、
少年裁判所の熟練したスタッフによって真の
犯罪者として取り扱うべきだという
意見、この
三つの
意見が出されております。なお、
アメリカの人ですが、ラーソンという人の常習的な
交通犯罪者という
報告がございますが、この人は、
一般犯罪者に有効である
グループ・
セラピー、これに必要な修正を加えて
少年の
交通違反者に
グループ・
セラピーを施すのが有効だというようなことを申しております。
それから第三としましては
集団犯罪でございます。非常に
少年の間に
集団で罪を犯す
傾向が増大している。この
集団は、町かどの
グループ、
ストリートコーナー・
グループという
言葉を使っておりますが、町かどの
グールプ化または緊密な、階級的な、
組織的団結である
ギャングの
形態をとって現われている。で、これら
二つの
グループの組み合わせもありますし、また、可能であるし、特殊な現象としましては第三の
犯罪集団の出現である。それは、この
ストリートコーナー・
グループの
ギャング活動とも関連するのであるけれども、
青少年による
集団騒擾——マス・ライオティングという
言葉を使っております
——ないしは反
社会的な
行動形態がこの第三の
集団犯罪として指摘されるということを言っておりまして、いろんな国でいろんな
名前がついております。どういうふうに翻訳するのがいいかわかりませんが、
ドイツでは、青二才と
日本語で訳せば言えるような
名前のついたニックネームがついておるわけでございますが、
フランス、
英国、イタリー、ポーランド、ロシアなど、それぞれあだ名がつくほど有名な、
日本で申しますと
マンボ族とか何とかいうような
名前のものだと思いますが、そういう
名前がそれぞれ
各国につくほど
集団的な
青少年の
グループというものは有名であるようでございます。
これももう少し
内容を詳しく申し上げますとおもしろいと思いますが、時間の
関係で、はしよりまして、次に、
青少年の
ギャングの問題でございます。これはロックスという方の
報告でございまするけれども、
青少年の
ギャングにつきまして、これは多くの国においてまさに真実である。反
社会的行動をとる、
青少年ギャングの起源にさかのぼると、われわれは十才から十八才までの
少年たちは
両親の
監督からのがれて秘密の
社会をつくることが特に好きであることを発見する、という
心理分析をいたしております。このような
年令層の
少年特に男子は、
集団を形成する
傾向がある。先生や
少年団の
結成者などは、その
教育方法としてこのような自然の
少年たちの
傾向を利用している。それらの団体のあるものは、かなり健全なものもあるし、あるものは反
社会的行動に出る前に消滅してしまうようなものもある。ところが、あるものはばか騒ぎや残忍な
行為の段階を通っておそらく軽微な
犯罪をまき散らし、そうして突然予期しないような
伝染病にかかったように、
社会に対する反逆の性格を持った積極的な
犯罪集団に軟化していくのだ。このような
ギャングのメンバーは、主として
両親の短見、無関心または敵意によって
家庭から追い出された
少年たちから編成されるのだ、という
見方をしております。その
子供たちは、
家庭から追われて
自分の父母は
自分を愛してくれない、
自分は要らない
子供だといったような観念にとりつかれて街頭をさまよい歩いて、いわゆる
ストリートコーナー・
グループに転化していくのだという
分析でございます。
ギャング活動は一番多くは
アメリカ合衆国に見られるのでありまして、この
アメリカ合衆国の状態も細かく
報告がございます。そのほか、
英国、
ニュージーランド、
オーストリア、
西ドイツ、
フランス、
ユーゴスラビア、
インド等からそれぞれ
報告が出ております。フイリピンの
報告も
アルゼンチンの
報告も、やはり
ギャングがふえているということになっております。
それから、
最後に
ヴァンダリズムでございますが、乱暴な
破壊行動が
世界の多くの国で問題とされている。特に
アメリカの
上院の
少年非行委員会がこの点について強い
意見を出しているのでございますが、マーフィーという人からの
報告によりますと、
犯罪原因は主として
少年の
家庭と
少年を取り巻く
環境のうちに見出されるということでありまして、実際問題として
ヴァンダリズムに巻き込まれる
子供たちのすべては、
漫画本、
映画、最近は
テレビジョン等を通じて
犯罪的破壊行為を感情的に誘発するような
環境において品目養育されているというようなことを申しております。それで、ここ十五年間ほどわれわれは暴力と
汚職頽廃のもとに生活している
子供が成長するということは一つの冒険である。
道徳観念は薄れ、
子供たちはとほうにくれている。
両親はこの道徳の混迷した
雰囲気、価値の転換しつつある
社会で
子供たちを導くのに困難をしている。しかし、
子供たちが従う矛盾のない健全な
価値体系を教え、その模範を示すのは
両親たちの義務である。われわれはよりよい
家庭と、より賢明な家族を持つことによって
ヴァンダリズムはより減少するであろうというのがマーフィの
結論になっております。なお
イスラエル、
スエーデン、
オーストリア、
カナダ、
フランス、
フィンランド等からもそれぞれ大体今のような
意見に近い
意見が述べられております。
それから次が
性犯罪でございますが、今7までの
自動車窃盗あるいは
ギャング、
ヴァンダリズムと
性犯罪とは、またこれ別々にあるのではなくて、しはしば結びついておる。この
性犯罪につきましては、いずれまた
売春のところで触れたいと思いますので、ここは省略いたしますが、
ベルギーの
報告によりますと、十四才に達しない
年少者による
性的非行の著しい
増加を
報告しておりまして、ときにはこれらの
非行者は相手方の
名前さえも知らないほどに頻繁に不純な
関係を持っているということを
報告しております。そういう
原因といたしましては、
裁判官たちは
映画、小説、ポピュラー、
ソング等によって促進される自由と享楽の
雰囲気、
両親の冷淡さと優柔不断、
ダンス・
ホールその他の歓楽の場所における頽廃的な
影響等による成熟の
早期化に注目をいたしております。特に私、気がつきましたのは、
ダンス・
ホールが開かれるやいなや、小さな町や村に
非行が
増加するということは驚くべきことであるという
報告がなされております。そのほか
南オーストラリアの
性的非行の
増加、特に
年少少女で上・
中流家庭の少女による
不純性交を指摘しております。それからヒモの問題、コール・
ガール組織なとが
スエーデンから
報告されております。
アルゼンチン、
フィリピン、
ドイツのハンブルグで行なわれた男の
少年の
売春の
調査などが
報告をされております。
アルコール及び薬物の
中毒の問題でございますが、
スエーデン、
フィリピン、
カナダ、
ユーゴスラビア、
西ドイツ——特に
ユーゴスラビア、
西ドイツでは、
少年犯罪者は罪を犯すとき、しばしば半ばめいていしているとされております。それから
インドでは、
禁酒地区に酒類を密輸入するため
少年たちが利用されているといわれ、その理由は、
少年たちに対しては処分が
一般に寛大であるからであるというふうに
報告されております。それから
毒物中毒の点は、
アメリカ合衆国では非常な重大な問題になっているということでありまして、ニューヨーク、シカゴ、デトロイト、ロサンゼルスにおきましては
麻薬中毒者が
増加しており、現在
アメリカには約五万の
中毒患者がある、そのうち約六〇%は二十一歳から五十歳までの者、その一二%は二十一歳以下の者、一〇%は十八歳以上二十歳までの者、残り二〇%は十八歳にも達しない若者であるというようなことを申しておりました。
日本からは
鎮静剤のことを
報告して、これが三年ばかりの間に跡を結ったという効果のあった施策の
報告をいたしまして、これも
国連で取り上げて
報告書の中に出ております。
以上が大体大づかみに申しまして
世界各国の
少年犯罪の現況でございますが、これに対しまして、
犯罪原因は一体何であるかということが一番大事な問題になって参ります。通常この
犯罪原因を
三つに分けております。生物学的な
原因、
社会学的な
原因、心理学的な
原因でございます。この
犯罪の遺伝ないしは人格形成面における
原因ということは、
ヨーロッパ各国においてはいまだに根強いのでございましてここにも出ておりますが、イギリスのケンブリッジ大学の刑事学会の会長をしておられますラジノヴィッツ教授は、そういう方面の方でありますし、先般
日本へ招聘いたしました
アメリカのハーバード大学のグリニッタ教授とか、あるいはイギリスのマンハイム教授などは、むしろそれとは違いまして
社会学的
原因が重視されておるわけでございます。つまり
社会学的な
原因論の方は、家族とか近隣とか文化とかマス・メディア等の影響をより重視したものの
見方をしておるわけでございます。
フィンランドの
報告によりますと
——これはきわめてつまみ食いのような
報告で申しわけございませんが
——一九五六年に三週間にわたって行なわれたゼネストが、法を軽視する風潮を生んだことを指摘しております。
フィリピンの
報告は、十代の
少年犯罪の
増加に影響を及ぼした
原因といたしまして、貧困な境遇、失業その他の経済問題、
少年の精力のはけ口をつけ、それを指導育成する方策の不十分さをあげております。それから刑事学者でございますが、ほとんど一致をいたして、
少年にとって最も重要なのは家族の影響であることを認めております。このことは、高い生活水準と多くの欠損
家庭を持つ西欧諸国において特にそうであります。家族
関係が破壊されていく
原因は、権威の危機、いわゆる進歩的教育、
両親の間における権威衝突、そうして心理学の新しい
傾向等の中に見出されるというようなことを申しております。
アメリカのそれは、婦人が旧来の
社会的、法律的な従属的な地位を解放されたことの一つとして、
両親の間における権威の混乱が生じている、いわば軍隊にあまりにも多くの将軍ができ過ぎたようなことになってしまっておるのだというようなことを申しております。それからマス・メディア、マスコミの
関係でございますが、この点の影響については
意見は一致しておらないのでございまして、いろいろの
意見に分かれております。メキシコの
報告によりますと、
アメリカ映画が
少年犯罪に及ぼす影響として、学生が教師を侮辱したり攻撃すること、若者たちが目的を達成するために一時的の
ギャングを構成したこと、個人の自宅や通行人に攻撃を加えたこと等をあげて、
アメリカ映画の影響であるということを申しておりますが、ただ、もう一つの考え方は、これは
国連の
社会防衛課長口ペッレイなんかの考えですが、現在の
少年犯罪に対する
研究の態度が、あまりに精神医学的、心理学的な理論や方法に偏し過ぎておる、それは早急に改めなければならぬとするような
意見もあるわけでございます。むしろそういうものに災いされて対策を誤まっているのではないかというような反省でございます。
要するに、
少年犯罪の
原因についての
意見は、今申しましたようにいろいろ分かれておるのでございますが、
原因論についてはもっと掘り下げて
研究がされなければならぬ。これらの
研究が積まれれば積まれるほど
犯罪防止の計画をよりよく作ることができ、さらに多くの
研究を発展させることができるというのが皆さんの一致した
意見でございます。
それからもう一つ申し上げたいのは、これらの学問的な
研究と
犯罪防止の点につきましていろいろな
意見、対策が述べられておるのでございますが、
世界各国でいろいろな
研究をやっております。特に
アメリカにおきまして集中的な
研究が行なわれておるのでありまして、英連邦諸国のそれと比較しながらいろいろ
説明をされておるのでございますが、
少年非行の
防止に関する
研究をミッデンドルフは次のように分けております。第一は
少年非行の
原因に関する
研究、第二は現在及び過去の
処遇効果に関する
研究、つまり
少年裁判所制度、プロベーション・パロールとアフター・ケアの問題、それから次には短期の
処遇、それから次には長期の収容
処遇、それから次には
グループ・ワークの効果、もう一つは将来の行動の予測
研究でございまして、刑の宣告、これは
裁判所による処分、
再犯の
防止、潜在
非行者の早期発見、これは現在及び過去の
処遇効果の
研究、
少年裁判所制度の問題にも触れるわけでございまして、この点は
日本でも非常に大事なところでございますが、時間の
関係もございますので、ここはまた後日御質問の機会にさらに詳しく述べさせていただくことにいたしたいと思います。
あとは短期
処遇の問題、長期の収容
処遇の問題、
グループ・ワークの問題、予測
研究の問題、それぞれ
研究並びにその方面の
権威者の
報告が詳細に
報告をされております。こういう
報告に基づきまして、先ほど申しましたように、
各国がそれぞれ十分ずつの討論をいたしまして、三日間くらいそれを続けました結果、
問題点をここへ十一掲げてございます。これも一々詳細に読みますことは省略いたしまして、お目通しを願うことにいたしたいと思います。
それから
最後に
結論と
勧告になったわけでございますが、これはそう長いものではございませんから、
結論という意味で読んでみたいと思いますが、「
少年非行の問題は一国の
社会的構造を離れては考察することができない。
少年非行は多くの国において旧来の型においてか、机らしい型態の外観をとってか、いずれにしろ再び上昇を示すという基本的性格をもっている。これらの
統計上の上昇は、部分的には、
犯罪の
防止と
犯罪者の
処遇に関する組織がよりよく作られるに至ったために多数の事件が発覚するという事実と、さらに、ある国々においては、
非行の中に一群の軽微な規律違反
行為や
社会不適応が含まれている事実とに起因することを注意しなければならない。しばしば余りにそれは誇張されすぎているのであるが、新らしい
少年非行の型態は、必ずしも重大な反
社会的行動であるとは限らないが、
社会秩序という観点からみて重大でありうる
ギャング活動、無動機犯、ウァンダリズム、
自動車等の面白半分の無断使用などといった
特徴のある型をとっている。
「従って、次の
結論が採択された。本
会議は、
(1)
少年非行問題の領域は不必要に拡げられるべきではないと考える。
各国において
少年非行として考慮さるべき事柄について一つの基準となる定義を形ち作るかわりに、本
会議は、次のことを
勧告する。(a)
少年非行という文言の意味は、できるかぎり刑罰法規(CriminalLaw)の違反に限定さるべきである。そして(b)
少年保護の目的のためであっても、大人であれば訴追されないような軽微な規律違反や
社会不適応
行為について
少年を処罰するような特別な罪を作るべきではない。
(2) 公刊されている
統計資料によって或る国々においては、これらの
犯罪を
防止するためにとられた大きな努力にもかかわらず、或る型の
少年非行が出現し、それが最もすみやかにしかも重大に
増加しているようにみえることに注目し、かつ、このような外観的に見た
増加が真実の
増加であるかどうか、もし、そうとすればその
原因は何であるかを確かめることを希望し、かつ、
少年非行の
防止と
犯罪者の
処遇についてよりよい対策を作り、実施するために、この問題が国際連合の
社会防衛部門の仕事のうちにとり入れられ、この問題に直接の関心をもつ専門機関と非政府機関との協力のもとに遂行されるように
勧告する。
(3)
少年の
再犯の問題は、たんに厳重に法を施行することと、とくにより長い期間、
少年を拘禁することのみによっては解決しえないと考える。予防と
処遇に関する各種の方法が必要であり、矯正施設に収容されている
少年に対する釈放及び
社会復帰(
社会への再適応)についての諸準備について特別の注意が払わるべきである。この目的を達するために、施設出所後の援護を組織立てることが重要かつ必要である。
(4) 新らしい型態の
少年非行の出現は、継続した
研究と
犯罪の予防及び
犯罪者の
処遇に関する継続的であるとともに実検的な方策をより強力に推しすすめることを必要ならしめているとの
結論に達する。ゆえに、
(a)
ギャング活動をも含めて
集団非行の問題を処理するに当っては、公的、半公的及び地域的、
社会的組織が若者のエネルギーを建設的な方向に向けるよう一致して助力しなければならないと考える。コミュニティ・センター、
青少年ホステルなどといった制度や余暇時間活動、スポーツ、文化的活動、家族の休暇プログラム等々といったその他の方法がもっと広く採用せらるべきである。
(b) 特殊の型の
非行や
非行者に特別の注意を集中するばかりでなく青
少年犯罪者の人格や
社会歴についてより深い
調査がなさるべきであると考える。
(c)
社会的、経済的、政治的機構に応じて異った国の間にあって
少年非行を
防止し
非行者を
処遇するためにとらるべき方策については幾分の相違があることを認めるが、問題は、多く、学校及び家族を通じての教育にあると考える。ここで教育というのは、知識を与えることと人格の形成との両者を含む意味で用いられている。適当な
両親による指導
監督が欠けており、かつ、
子供達の自律が欠けているところには、大人のレベルと
子供のレベルとの双方における強力な教育が必要である。このような教育は、大人と
子供の間に理解と同情とを増大せしめ、世代の間のギャップに架橋し、かつ道義的、
社会的責任の観念を拡げるように向けられなければならない。
(d) 或る種のフイルム、出版、
漫画本、センセーショナルな
犯罪や
非行に関するニュース、低劣な型の文学、テレビジョン及びラジオ番組といったようなものが或る国々においては
少年非行の一つの
原因とみなされていると考える。故に、それぞれの政治的
社会的、文化的諸制度や諸観念に従って、
各国はマス・メディアの濫用と考えられ、かつ、
少年非行を発生せしめる一要素と考えられるこれらのものの影響を紡ぎ又は減少させるために、合理的な手段をとることを妨げない」
——と訳しましたが、Maytake。という字を使っております。とってもよろしいという意味でございましょう。
「(e)職業指導と職業訓練についてのより適切な施設が設けられるべきであり、また、当該労働施設や学校を卒業した
青少年の当該施設における仕事のために財政的援助が行わるべきであることを
勧告する。
(f) 公的と私的の
社会福祉機関の協力及び
少年非行の
防止と
非行者の
処遇に関する専門的機関と民間の機関との協力が強化さるべきであることを
勧告する。地域
社会の
協議会、地域計画、
少年局
青少年委員会といったようなものは、このような協力
関係に貢献するところが大であろう。」
これが新しい型態の
少年非行とその
原因、
防止及び
処遇についてのコンクルージョンでございます。
それから同じ第一
部会の
少年非行の
防止に関する特殊警察部門の
結論でございますが、これはその次の紙に翻訳してありますように、簡単なものでございますが、
「本
会議は、
一、警察官は、
犯罪を
防止するというその
一般的任務の遂行において新らしい型の
少年非行の
防止に特別の注意を払うべきである。しかし、警察官は、
社会教育的その他のサービスの分野によりよく適する特殊な機能を引受けるところまでゆくべきではないと考える。二、
少年非行の分野において警察によってなさるべき防犯活動は、人権保護に従属しなければならないと考える。
三、国家的必要に応ずる差異を認めつつも、国際刑事警察機構が、
少年非行の
防止における特殊警察部門という表題で提出した
報告は、
少年非行の
防止のためにそれが好ましいと考えられるところでは、特殊警察部門の組織と構成についての適当なよりどころを提供すると考える。
四、しかしながら、若年
犯罪者の指紋の採取及び警察によって善良市民賞及び不良マークの制度を設けることの
勧告については、幾分の留保をする。
五、
少年非行防止のための手段について警察、各種の国家機関及び
一般大衆との間の最も広い協力が極めて大切であると考える。」
結論を申しますと、特段目新しいところもないのでございますが、
関係の
報告などをいろいろかみ合わして考えますと、なかなか貴重な
研究であると考えます。
これをもちましてこの第二回の
国連の
世界会議の御
報告を終わりたいと思います。
その次は、九月五日から九月十日までオランダのへーグにおいて行なわれました
犯罪学
会議でございます。この
会議におきましては約五百名くらい参加をいたしまして、
国連の
会議とともにこれに参加した方が多かったように思います。日程等はここにごらんの
通りでございますが、この
会議におきましては私は第二
部会に参加をいたしました。第二
部会の第一問は、てんかんと
犯罪という題でございまして、その次は性的
犯罪、その次は
万引の問題でございます。で、これは特に御
報告申し上げるには、あまりに、刑事学と申しましても、他の精神病学、心理学といったようなあらゆる学問を動員してこの刑事
裁判の方に十分反映させるべきだ、そういうものを幾ら援用しても
裁判に悪い影響を与えるものでないというのがどうも
結論のようでございました。これは簡単にとどめさしていただきます。
次は第二十一回国際廃娼
会議、九月二十七日から三十日まで四日間、これはイギリスのケンブリッジで行なわれました。ケンブリッジのセント・キャサリン・カレッジという所を提供して下さいまして、私どもはその学生の泊まる寄宿舎に入りまして、カレッジの講堂か
会議場になっておりました。正式のメンバ一で、リストに載っていましたのは、私勘定しましたところ百二名か三名でございましたが、そのリストができてから後に参加をされた方が二十数名あるということでございましたので、百二十名くらいが参加者であったように思います。ここにおきましては、この
日程表でごらんいただくとわかりますように、
開会式のあと「べルギ一領コンゴにおける
売春」ということで
報告がございました。それから「
ギリシャにおける
売春」、それから「オポルトにおける
売春の現代的地位」という
説明、それから「
インドにおける
売春の
社会学的条件」、「米国における
売春の現状に関する
報告」、そのほか、イギリスの道路
犯罪法というのが
売春取締法なんですが、その「法律とその機能」について国
会議員から
報告がございました。私も「
日本の
売春防止法の運用」について
報告をいたしました。「イタリーにおける
売春の現代的地位、
フランスの
売春関係立法の現代的改革」というような
報告、講演がございまして、これを
中心にして各参加者の討論が行なわれたわけでございますが、特にその討論が終わりましたあとで、各
グループに分かれて討論をいたすことになりました。私はこの
三つに分かれた
グループの中で「
売春による搾取に対する刑罰法規の
研究」という
部会に
出席いたしました。そのほか「
売春に関し、世論を構成する方法」とか、「
売春婦の更生」とかいう部門がございました。私の
出席しました刑罰法規の
研究につきましては、夜、午後八時ごろから始めまして、翌日午前二時ごろまでぶっ続けにこの
会議をやるというので、いささか閉口したわけでございますし、それから
会議がほとんど七〇%
フランス語でやられまして、私
フランス語はわかりませんですから非常に難渋いたしまして、イギリス人で
フランス語のわかる人と仲よしになって、その人に隣にすわってもらって、英語で翻訳してもらうということもやりまして、結局まん中辺にプリントいたしましたように、第一
討議グループでの
問題点がここに出てきております。「
売春の行なわれる場所」。街路、公共の場所、私宅、もぐりその他の娼家、旅館、アパートなど、これらにつきまして、ホテルはいいとか悪いとかいうような
議論まで出て参りまして、なかなか
売春の行なわれる場所がどこかということの
議論さえもなかなか
意見が尽きませんでした。
第二は、「ヒモの存在と機能」。第三が、「婦女を
売春のために募集すること、または
売春婦(コールガールも含む。)のために客を募集することを助長する周旋人の種々のカテゴリー」。第四が、「もぐりその他の娼家の経営方法。」第五が、「外国人によるまたは外国における
売春の範囲と起源
——現在の婦女売買機構と用いられている手段。」第六が、「各種の
売春婦の顧客。」第七が「
売春等周旋事件において要求される証拠」。第八が「
売春等周旋に対する刑
——現在の地位と将来の修正
——警告方法の採用。」こういうことを二日間にわたりまして熱心に
討議をいたしました。このチェアマンになられましたのは、パリ大学の法学部の教授のルヴァスールという方で、非常に熱心におやりになりました、
なおその次に、国際廃娼
会議案としてA条と書いて翻訳してございますが、これはパリ大学の法学部の教授と、この廃娼
会議が一応
売春の搾取を処罰するということで、一つの提案、
議論の根拠にするために、向こうから私どもに示された案でございましてこれをごらんになりますとわかりますように、
日本の
売春防止法は、これをさらに分解しまして幾つかの条文になっております。ここに「他人の
売春を助長し又は他人の
売春によって利を得る者は…に処する。」という簡単な条文で書いてございますけれども、
日本ではこれが分解されて
売春防止法の罰則の中に幾つかはすでに現行法としてなっております。
そこで決議の要旨でございますが、これをちょっと読ましていただいて私の
報告を終わりたいと思います。ここに三十日、
ロンドンとございますが、これは
ロンドンは要らないので、ケンブリッジだけでよろしいわけです。
「一、人身売買及び
売春搾取の禁止に関する条約ヘの加入、批准及び国内法の整備を要望する。とくに右条約未加入国であっても、娼家の禁止及び娼家を経営し又はこれに財政的寄与をする者を罰すべきことを要望する。
二、娼家の管理及び娼家よりの搾取を処罰する法を厳重に適用することに留意し、とくに、カモフラージュされたものの発見と断圧に特別の注意を向ける必要がある。
三、新らしい型の
売春に適合する処罰立法が緊要である。周旋屋の経営者、コール
ガール組織の
結成者等は秘密の娼家経営者として処罰されるべきである。
四、
売春を継続させるために
売春婦の更生を妨げる者を処罰する必要がある。
五、単純
売春そのものは処罰さるべきでないことを強調する。但し、
売春の実施方法が
社会秩序をみだすようなものは罰すべきである。新聞や店頭の広告などで
売春の勧誘や
売春の要求を
内容とするものは、擬装されたものをも含めて、厳重に取締らるべきである。
六、ヒモや
売春搾取者に対する取締が強化さるベきである。情を知りながら全部又は一部他人の
売春に依存して生活する者をヒモとし、その立証を容易ならしめるため、
売春婦と同居し又は常時これと行動を共にする者、
売春を助け、すすめ又は強要する等
売春婦の行動を規制し、指導し又はそれに影響を及ぼす者は、反証のない限り情を知って
売春に寄生するものと推定する旨の規定を設けるように
勧告する。
七、立証を容易にし巧妙な娼家の経営や周旋組織等に対処するため、
売春や性に関する罪が行われている合理的な疑のある場所を司法機関の発する令状によって昼夜をとわず捜索しうるような刊事訴訟手続きを設けることを
勧告する。」
この六と七につきましては、
日本の法律では若干問題があるわけでございます。
なお決議の第一、第二でございますが、これは
最後のところが「法律で、
売春を助長しまたは
売春により利益を得るすべての者を罰するために
売春という
言葉を定義するのが、便宜である場合があるが、
売春婦(Prostitute)という
言葉は、その人格ベッ視的な性格の故に、法文においてこれを用いてはならない。」ということを申しております。
日本の
売春防止法には
売春婦という
言葉はもちろんないわけでございます。
決議の第二でございますが、「
売春は現存の
社会的諸条件を反映するものであるから、次の方法によって
一般世論を変えるために強力な行動をとることを要求する。
a 新聞及びその他のマス、メディアをより広く教育、宣伝のために利用する。
b この問題についての科学的及び心理学的
研究に十分の注意を向ける。
c 一人一人が自己の責任をしかと抱き、かつ男と女とが相互に尊敬しあうように、
家庭、学校及び宗教的、文化的及び
社会的諸団体が
子供の教育に努める」。こういうことになっております。
これで私の
報告は終わるわけでございますが、もう一言つけ加えさしていただきますと、廃娼
会議におきまして、私どもはアドミニストレーション・オブロ・アンチ・プロスティテュション・ロイ・イン・ジャパンという英文のパンフレット、これは
日本の
売春法運用の実情を詳細に書いたもので、その附則としまして、
日本の
売春防止法が書いてございます。この書類をこの
会議の席で配付いたしまして参考に供したのでございましたが、この
日本の
売春防止法が非常に
各国の注目するところとなりました。その第一は、
日本の
売春防止法第三条の「何人も、
売春をし、又はその相手方となってはならない。」という
売春禁止の規定でございます。これは非常に
日本のは進歩的である。
各国ともここまでは踏み切れないのでございまして、ちょうど単純
売春を罰してはならないということの考え方、つまりこれは道徳の規律の問題であって、法律が入ってくる分野ではないという考え方が一つあると思いますが、この考え方がありましてせいぜいここに書いてありますように、
売春というものは道義的によくない
行為だというところまでは皆言えるわけでございますが、違法であると、法律に反するというところまではなかなか
会議に来ておった人は言えなかったのでございまして、
日本がここまで踏み切ったことについて非常な敬意を払って、私はそのためにいろいろ質問を受けまして、実は英語が十分話せませんので、
説明に困難をし、まあ非常に困ったほどでございましたが、また非常に誇りにも感じた次第でございます。御承知のようにオランダ、
ドイツ、ハンブルグ等にはまだ娼家、公娼がございまして、私どももこの
会議の
関係上、見せていただく機会を得ましたが、
日本にはそのような青線、赤線が今日ではございませんので、何かこう胸のふくらむような思いがいたして、それを見て参りました。それからイギリスにおきましては、昨年の八月十五日から先ほど申しました法律が施行されたのでございますが、それまではハイド・パークのそれこそ町かどにはたくさんの売笑婦が客を待っていたそうでございますが、今日では全く街娼は
ロンドンからは姿を消しております。ただ
ロンドンの盛り場のピカデリー・サーカースの裏の方にはソーホーとか申します浅草のような遊楽街がありますが、そこにはたばこ屋だとか新聞売り場等に、この決議の中にも出ておりますように、
売春婦、コール・ガールでございますが、
名前と番地と電話番号などを並べて登録してありまして、そこへ電話をかけますと、英語を教えますとか
フランス語を教えますとかいうようなカムフラージュをしてありますが、それに電話をかければコール・ガールが来るというようなことで、現に私も最初の
ロンドン会議のときにはそんなリストを見たのでございますが、二度目にケンブリッジの
会議でもう一回私が
ロンドンに参りましたときには、そのコール・ガール・システムのリストを全部寄せ集めて出版をいたしました。新聞屋に広告するのが合法であるならば、それを寄せ集めて一冊の本にするのが違法であるはずがないじゃないかというのが、その事件で検挙されました被告側の介護士の言い分でありましてこれが新聞にも載っておりましたが、しかしながらイギリスの方ではこれに対して有罪の判決をするだろうというのがその
会議の席で私の伺いました話でございました。
まあそんな話をすれば切りがございませんが、一応以上をもちまして
会議の
模様の
報告を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。