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1960-11-28 第36回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年十一月二十八日(月曜 日)    午前十時三十一分開会   —————————————   委員異動 十月二十五日委員小柳勇辞任につ き、その補欠として重盛壽治君を議長 において指名した。 十一月二十六日委員重盛壽治辞任に つき、その補欠として小柳勇君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉武 恵市君    理事            加藤 武徳君            高野 一夫君            坂本  昭君            藤田藤太郎君    委員            鹿島 俊雄君            勝俣  稔君            紅露 みつ君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            山本  杉君            横山 フク君            秋山 長造君            久保  等君            小柳  勇君            藤原 道子君            村尾 重雄君   国務大臣    厚 生 大 臣 中山 マサ君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    厚生省医務局長 川上 六馬君    厚生省社会局長 太宰 博邦君    厚生省社会局母    子衛生課長   松尾 正雄君    厚生省児童局長 大山  正君    厚生省保険局長 森本  潔君    通商産業省石炭    局長      今井  博君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    労働政務次官  岡崎 英城君    労働省労政局長 冨樫 総一君    労働省労働基準    局長      大島  靖君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査  (一般労働行政に関する件) ○社会保障制度に関する調査  (一般厚生行政に関する件)   —————————————
  2. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ただいまより社会労働委員会を開きます。  まず、委員異動報告いたします。  十月二十五日付をもって小柳勇君が辞任し、その補欠として重盛壽治君が選任されました。十一月二十六日をもって重盛壽君が辞任し、その補欠として小柳勇君が選任されました。   —————————————
  3. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 労働情勢に関する調査の一環として一般労働行政に関する件を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 坂本昭

    坂本昭君 最初委員長並びに委員の各位にもお諮りしておきたいのですが、それは今病院ストが全国的に行なわれて、非常に深刻な問題を提供しております。ところが前々から、この日本医療制度の曲がりかどにおいて、医療費の問題やあるいは単価の問題やそういったいろいろな問題が従来取り上げられてきていましてその最中におけるこうした深刻な問題であって、われわれ委員会としましては、来年からの国民皆保険を控えて、今春以来この医療制度の問題については相当論議を尽くして参りましたが、今後もこの問題はずっと詳細にかつ徹底的に審議を尽くさなければならない点が多いと思います。  そこできょうは、まずこの病院ストという一つ労働争議の、特に中小企業における争議という形でまず問題を十分に取り上げて検討をし、それからさらに今度は医療制度の問題に入っていく、まあそういう形を実は審議の中でとらしていただく方が問題の本質をよく分析ができるのではないか、そういうふうに考えるものであります。  で、特にこの医療制度の問題に関連して、医療費の引き上げ、単価の問題、これも非常に深刻な当面する厚生大臣としての重大な要務になっておりますので、この際は特に最初中小企業における労働争議という形で十分これをつかんで、それから問題をさらに展開していきたい。まあそういう点で、一つ委員皆様方の御了承を得たいと思います。で、特にこの中小企業における争議という形でつかみたいということは、御承知通り、この医療というものが企業利潤も非常に零細であるし、それからまた、経営者の前近代的な性格、あるいは病院の中における人間関係の非常な封建性、まあそういった点で、そういう点も十分に検討をして、その中からこの問題を一つできれば的確に処理をしていきたい、そう思う次第であります。  そういう点で、私は新聞紙上に現われたいろいろな扱い方の中では、本日残念ながら労働大臣が病気のため欠席しておりますけれども労働大臣が十一月の八日に見解を述べた中で、労働条件改善にまず目標を置くべきであるというようなことを述べているのですが、この点は私は正しい見解だと思います。で、まずそういう点から質問を申し上げていきたいと思うのですが、その前にまず労働省にお尋ねしたいのですが、医療関係労働者人員、それからその内容、たとえば医師看護婦といったその内容、特に労調法第八条の関係もありますので、「医療」と「公衆衛生」というふうに言葉が分かれています。もし、そういうふうに分けて統計的な数をつかんでおられるとするならば、そういうふうに分けた数、それからそれらの中で組合がどの程度あるか、またその組織率がどの程度であるか、そういう一般的なことの説明一つ伺いたい。
  5. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) ただいま医療関係従業者一般についての御質問でございますが、きょうは統計調査部長も見えておりませんので、さしあたり私ども労政局として把握しておりまする組合組織状況について申し上げます。昨年六月末現在におきまする医療における組合組織数は一千百二組合でございまして、組合員数は約十万二千七百名でございます。推定組織率は約二五%でございます。主要なる単産といたしましては全医労、これは国立病院関係でございます。それから全日赤、全労災などがございまして、地域的組織といたしましては東京医労連新潟医労協京都医労協というものが主たる単産ということになっております。
  6. 坂本昭

    坂本昭君 そうすると、今の労調法八条の関係からいう「医療」と「公衆衛生」という、そういう区分は別に統計的にしておられないのですね。
  7. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) はあ、それはできてございません。    (「資料を求めようじゃないですか、この次に」と呼ぶ者あり)
  8. 坂本昭

    坂本昭君 ストライキが起こってからあわてて資料を作るというようなことでなくてもっと前から、特にこれから中小企業の問題が深刻になってくるのだし、来年から皆保険というような、そういう社会保障を進めるという際なんですから、労働省としても、当然法律の中にあるそういう、いざという場合には労調法八条の関係でいろいろな規制が加えられていくので、当然私は調べておかなければいかぬことだと思う。だからこの際、一つ綿密な資料委員会に出していただきたい。
  9. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) その趣旨に沿いましてできるだけ資料の提出をいたします。
  10. 坂本昭

    坂本昭君 それではまたさらにお尋ねしますが、これはこれだけの調査をしてないかもしれないのだけれども、今の調子だと。医療労働者賃金労働時間、労働条件、こういったものを労働省ではある程度調べておられますか。
  11. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) きょうは不幸にして……、統計調査部長が参っておりますればさらに詳しい説明ができると存じますが、労政局といたしましてはあまりそういう込み入った数字まで立ち入っておりませんので、多少の手がかりとして申し上げますと、統計調査部で作っておりまする毎月勤労統計という調査がございますが、これによりますと、ことしの六月の統計によりますと、医療保険関係のこの月のきまって支給する給与総額は三万一千二百七十三円、内訳として男子が四万六千二百三十円、女子が二万二千八百三円。ただし、この六月は一部夏季の特別手当が入っておると思いまするので、さらにそのうちきまって支給する給与、いわゆる月給といわれるものですが、それだけを抜き上げてみますると、男女計で一万八千九百円、うち男子が二万七千八百二十七円、女子で一万三千八百四十七円でございます。
  12. 坂本昭

    坂本昭君 あと、労働時間とか労働条件
  13. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 労働時間を申し上げます。医療保険関係で、六月の総労働時間数が二百十三時間、出勤日数が二十五・八日。これを男女別に分けて申し上げます。男子は、総労働時間が二百三時間、出勤日数が二十四・九日、女子が、総労働時間が二百十八時間、出勤日数が二十六・二日ということでございます。
  14. 坂本昭

    坂本昭君 今のその調査対象が、どういうのが対象になっているか、その辺の説明もないので、労働省医療労働者というものの労働条件というものをどういうふうに見ておられるか。一つ概括的な、労働行政の中で医療労働者労働条件をどう見ておられるか、説明をしていただきたい。
  15. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) これも弁解じみておりますが、専門局部長でございませんので感じだけでございまするが、個々の他の業種と綿密なる比較はできませんが、全般といたしましてそれほどいいと——個々にはいいものもあるし悪いものもむろんございますが、感じといたしましてそれほどいい水準だというふうには感じられません。
  16. 坂本昭

    坂本昭君 労政局は一体何しているのですか。この医療労働者関係労働基準法違反だとか、そういったものを  一体調べているのですか、どうなんですか。
  17. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 具体的には、ここに労働基準局長が見えておりますので、基準法違反関係その他についてその方から御説明申し上げます。
  18. 大島靖

    説明員大島靖君) 医療関係基準法違反関係について若干御説明申し上げます。  昭和三十三年——一昨年、まあ全般的な基準法に基づく監督につきまして毎年行政指導方針を各地方基準局長あてに出すわけなんでありますが、その中で特に医療関係労働条件につきましても重点的にこれは実施するようにということにいたしまして昭和三十二年までは比較的まだ監督実施の数も少なかったのでありますが、昭和三十三年から大体他の産業と同じ程度まで監督を実施するようになった。昨年度、昭和三十四年度において監督を実施いたしましたのが約二千の事業所につきまして医療関係監督を実施いたしております。この監督の結果、基準法関係違反で比較的多いものは、就業規則制定関係、それから女子労働時間の関係、休日の関係、こういった関係が比較的違反が多いようであります。これらにつきまして監督の結果是正勧告をいたしまして、その是正勧告に対して「何月何日からこれを実施するという請書と申しますか、そういうものをとる。さらに技術的にも非常に困難な場合もございますので、そういうものについては再監督を実施するということで、昨年再監督を実施いたしましたのがたしか四百事業所ばかり再監督をさらに実施いたし、これに対してさらに是正命令を出しまして大体九割程度のものは完全是正をさせておる、こういうふうな状況になっております。  なお、私ども監督なり指導いたしましての印象といたしましては、まあ、今申しましたような個々基準法条項についての違反もあるわけでございますが、何と申しましても基本的にはやはり就業規則というものを定めて、あるいは労働協約というものを取りきめて、それをやはり誠実に履行していく。就業規則の定めにいたしましても単に形式的にモデル就業規則によってただこれをこしらえるということじゃなしに、ほんとう実態に即した実施可能な就業規則を定める。また、一たん定めたらこれを完全に実施していくと、こういうふうな基本的な労務管理に対する態度、あるいは労使関係、こういうこと、が根本的には必要ではないか、かように感じております。
  19. 坂本昭

    坂本昭君 今の、昭和三十四年度から三千事業所監督せられて、いろいろと基準法違反を摘発し、それからまた再監督などしておられますが、そのこまかい数字一つ委員会資料として出していただきたい。今非常にばく然とした数を言っておられましたから、それでその選ばれた、たとえば三千事業所というものがどういう内容であるかということですね。小さいものか、あるいは大きい病院が入っておるのか、その辺もさっぱりわからない。それからさらに労働協約が一体何カ所くらいあるのか、あるいは就業規則を作っている病院診療所が一体どのくらいあるのか、今ここでおわかりになっておったら就業規則労働協約のことについてちょっと説明していただきたいのです。
  20. 大島靖

    説明員大島靖君) 全般保健衛生関係基準法で申しますと、基準法適用事業所と申しておりますが、この関係は全国で約四万事業所くらいになっておるのでありますが、この全般についての具体的な条件というものがどういうふうになっているかということは、私ども全般的な調査はいたしておりません。ただ、先ほど申しましたような監督を実施いたしました事業所につきまして、どういう違反状況であるかというような点については、地方の局から報告がきておりますので、これに基づいての一応の集計の御報告はいたせると思うのでありますが、ただその報告様式というものが今先生のおっしゃいましたような具体的な条項まで入っておりますかどうか、ちょっと私もつまびらかでないのでありますが、その辺できるだけの集計をいたしまして、後刻提出申し上げたいと思います。
  21. 坂本昭

    坂本昭君 ただ医療機関、特に医療機関のこの医療労働者過半数を占めているのは看護婦です。そしてその女性労働者というのは、いつの場合でも非常に無視せられているのです。たとえば保育所保母保母ども基準法の中で十三号に入るのか十四号に入るのか、まだきまっておらぬというよう、な、そういう状態なんですね。これも実は労働省厚生省がはねかけ合いなんです。両方でお前の方できめろ、そっちの方できめるということで、きまっていない、結局病院診療所の場合も過半数を占める医療労働者看護婦である。弱き者女性なりで、きょうは厚生大臣来てないのははなはだ遺憾ですけれども、そういう点で、非常に私は盲点になっているのじゃないかと思うのです。たとえば今病院では三交代制というものが実施せられており、看護婦の三交代制、あるいは生理休暇だとか、産前産後の有給休暇の問題、例の国立高田病院で問題になりました妊娠制限の問題、こういう日本労働者の一番弱いところ、婦人労働者にこういう問題がずいぶん残されている。で、私はそういう点で、労政の中でこの医療問題をどう扱ってこられたか、おそらく今承ると、去年あたりからぼつぼつやってきたようなことで、局長ばく然としたことしかつかんでおられない。結局そういう状態だから、医療労働者争議に突入してきた、私はそう思う。その辺は今、詳しいこれはデータは、今後これから議論していく上に必要ですから、労働省としてのこの資料を、これはできるだけこまかいものを出していただきたい。そしてわれわれとしても、いろいろな診療所形態病院形態についてよく検討して、来年から皆保険、皆医療にはならないと私は思うのですが、一応皆医療制度を作ろうとしているのですから、この際医療労働者労働条件というものを、十分検討しなければいかぬと思います。ところで、この直接監督責任にある厚生省の方、医務局では、一体医療労働者賃金労働時間、労働条件というものをどういうふうにつかんでおられるか、医務局一つ見解を承りたい。
  22. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 医務局といたしましては、医療法に基づいて指導監督をやっておりまして、今おっしゃったように、一般医療関係者賃金労働時間がどういう状態にあるかということにつきましては、特に調べておりませんので、全般的の資料が少ないわけでございますが、今度の争議に際しまして、そういう点をある程度調べてみておるわけでございます。個々病院平均賃金についてみますと、これの高いのもあり、低いのもありといった状態でありますが、各職種について個々に調べていませんので、はっきりしたことはわかりません。しかし、先ほどもお話がありましたように、看護婦さんの中には待遇のよくないものが少なくないように思います。もちろん国立病院につきましてはわかっておりますわけでございますけれども一般病院従業員労働条件がどうだということは遺憾ながらあまりつかんでいません。
  23. 坂本昭

    坂本昭君 大体医務局医師法——医療法はもちろんのこと、医師法も所管しておる。それから保健婦助産婦看護婦法も所管しておるし、ただ法律を作ってながめておるだけじゃないはずで、その法律のもとに医師がどういうふうな生活をしているか、あるいは保健婦助産婦看護婦がどういう生活をしているか、あるいはそれによって医療内容がどういうふうに的確に行なわれているか、そういうことを見ておられるはずだから、国立病院療養所職員についてはわかっているけれども、ほかのことについてはよくわからぬ、そういうことは私は行政責任者として怠慢きわまりないものだと思います。そんなことで今度の病院ストが起こったときに、厚生省がいろいろと忠告や警告を発しているけれども、そんなのは全くおこがましいと言わざるを得ぬじゃないですか。もう少し何か資料を持っておらぬですか。それで一体日本医療制度の全体的な監督をやっている医務局だといえますか。こんなことで来年から皆保険だとか、皆医療だとか、社会保障だとか、そんなことを言うのは口はばったいですよ。国立医療機関についてどういう見解を持っておられます。国立医療機関に勤務する医師看護婦その他の従業員の今の賃金あるいは労働時間、そういう労働条件はどういうふうだと考えておられますか。
  24. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 国立病院では御承知のように、人事院で、ことに医師その他の医療関係者職員給与調査をしていただきましてそれによって今度のベースアップ勧告となったわけでありますが、国立病院医師は従来民間医師に比べまして大へん給与が低かったのでありますが、看護婦民間のものと比べて給与が概してよいと考えています。しかし、次のベースアップによりますと、医師は特によくなりますが、まだ民間給与よりも少し低いのですけれども、その他の職種については民間給与に比べてあまり、遜色のないもののように思います。まあ医師の定数の問題につきましては、なお病院では足らない面もあるのでございますが、これは今後増員をしなければならぬと考えておるのでございます。勤務時間等は労働基準法の範囲でやっておるわけでございます。看護婦は四十八時旧制になっておりますので、これは来年度は何とか四十四時間制にしたいというように考えて、来年度は増員要求をいたしておるようなわけでございます。
  25. 坂本昭

    坂本昭君 国立病院療養所医師給与については、人事院勧告があって去年の勧告で中だるみがちょっとよくなり、またことしの勧告で少し上の方の医師給与がよくなり、全部、医務局としては一応それはまあ法的には人事院が、これは国家公務員についてはするのですけれども、いやしくも医療監督をやっている医務局として、特に厚生省が直轄している国立病院療養所についてその医師待遇がどうであるか、その結果医師の定員に欠けているというのが国立療養所実態じゃないですか。医者が非常に足りないというのは、結局給与が悪いからですよ。そのことくらいは先刻知っていなければならないのにかかわらず、そういうことについてあなたの方では積極的な努力もしていないで、全部、人事院まかせにしている。そういうことが結局は日本医療制度全般を動かしているわけなんですよ。何も国立国家公務員たるところの医師だけの問題じゃありません。ほかの民間医師についても、あるいは僻地の医師についてもみな当てはまる問題だと私は思う。たとえば合一番問題になっている日赤については、日赤医師あるいは看護婦給与がどの程度かということを調べたことかありますか、医務局長として。
  26. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 日赤医師は、先ほど申しましたように、個々医師について調べたわけではありませんが、医師平均給与などから考えまして、国家公務員よりも日赤医師はかえってよいように思います。看護婦給与は、少し国家公務員より平均して悪いのではあるまいかと思って、これも照会いたしたわけでありますけれども日赤は現在四十四時間制を実施しております。国立病院は四十八時間制でございますから、そういう点を勘案して考えますというと、日赤看護婦給与は、国家公務員たる看護婦給与に大体似たものではあるまいかと存じます。
  27. 坂本昭

    坂本昭君 もっと明確な数を出してから、そうして今度の、たとえば争議内容について厚生省がこれを指導するとか、あるいは是正するとか、そういう態度をとらなければ、ただばく然とした数をもとに議論をしても始まらないと思う。先ほど労働省は、ことしの六月の医療労働者男子は二万七千八百二十七円、女子は一万三千八百四十七円という数を出しておりましたが、これについては、医務局としてはその数をどういうふうに考えておられるのですか。そうしてこの数が、ほかの一般労働者との関連において特に医師のような非常に高度の技術を持たなければならない者についてこういう平均賃金というものをどう見ておられますか。  私の手元にある日赤の全部の賃金実態を見ますと、百二十一名の医師について調べて、平均年令が三十三・二年、平均勤続年数が四・六年、平均家族人数が一・八人、これで平均本俸が一万九千四百三十円、平均基本給が二万三千七百九円、平均賃金が三万三千四百九十一円、これは医師の場合、一番最高のところなんですよ。看護婦の場合は、一千三百五十八名調べて平均年令が二十七・八年、平均勤続年数が四・八年、平均家族人数は〇・一、これで平均本俸が一万一千八百四十四円、平均基本給が一万三千二百五十二円、平均賃金総額が一万五千八百二円、その他ずっと、栄養士だとか、調理師とか、運転手とか、事務員とか、それら全部では四千四百九十七名の、平均をとってありますが、これが平均賃金総額一万五千七百八十七円、こうした実態です。この実態だけで、ほかの労働者と比べて、あなたの方はどういうふうな考えを持っておられますか。厚生省としては。
  28. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 全体といたしましては、やはり低いものが多いように思います。しかし、先ほども申しましたように、同じ病院にしましても、中の職員の構成が非常に違っております。さらに一般産業と比較する場合におきましては、なおさら大へん職種ども違ってくるわけでありますから、一がいにそういうところが言えない点でございまして、遺憾ながら的確にその点について見解を述べかねるわけでございます。
  29. 坂本昭

    坂本昭君 的確に見解を述べかねると言いながら、この病院医療労働者が非常な不満を持って争議行為に出る場合に、その争議をしちゃいかぬいかぬといって、ただ頭から押えるようなことを厚生省がしておったって意味がない。意味がないどころじゃありません。ほんとう医療というものを前進させる手がかりにちっともならないと思う。さらに定員問題もありますが、もう少し先の問題を検討したいので、この際伺っておきますが、病院争議統計と実情について労働省の御説明をいただきたい。
  30. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 争議状況につきまして最近の数字を申し上げますると、三十三年に二十件、三十四年に二十五件、本年上半期で二十件。それぞれの争議参加人員を申し上げますと、三十三年で約二千人、三十四年で二千三百名、本年上半期で一万三千五百人、逐次ではございまするが、増加の傾向をたどっております。争議内容をもう少し検討してみますると、要求事項では、やはり賃金関係改善を求めるものが最も多くてそれに一部解雇反対、それから労働協約の締結、事業所休廃止反対といったようなものも若干はあるようでございます。  次に、争議行為を伴った争議の中で、いわゆるストライキを実施したものは三十三年で五件、三十四年で四件、三十五年の上半期で七件といったような状況になっております。
  31. 坂本昭

    坂本昭君 これらの病院争議を通じて労働省としてはいろいろの特徴をつかんでおられると思いますが、御説明いただきたい。
  32. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) いろいろの特徴がございまするが、特に私ども感じておりまする点を若干申し上げますると、先ほど先生もおっしゃいましたように、労使関係が、病院が、建物が近代化しつつあるにかかわらず、労使関係そのものは概して未熟であり、中小企業的ではないかということでございます。この点につきましてもう少し総合的に掘り下げて申し上げますと、労使とも一般的には高い知能水準を持っておるのでありますが、労働関係そのものについてはやや未熟である。管理者側にとりましても近代的な労務管理についてうとい。中には組合指導者の排除といったようなこともあるということを聞いております。最も労使関係の安定に必要な労働協約の締結率が低いなども今後改善していくべきではなかろうか。  一方、組合の方も中小企業的でございまして、組合を結成と同時にあまたの要求事項、ときには三十項目もの、いわば日ごろの不満をぶちまけるというような姿の団交といったようなことも多い。要するにこれらの特徴点は一般中小企業的である。  それから第二の特徴的なものとして感ぜられることは、人間関係がきわめて特殊的である。これは技術面から申しましても、仕事の内容から申しましてもそういうことが感ぜられる。この点につきましてはむろん大事なことで、人間関係が緊密であることは必要でございまするけれども、そのことが封建的な人間関係に堕して、近代的な労使関係と相矛盾するようなことであってはいけないのではなかろうかといったような感じがいたしております。  それから労働条件につきまして先ほどから御質問があって平均的な数字を申し上げたのでありますが、個々病院診療所について若干の資料などを見ますと、非常に労働条件病院間あるいは職種間にいろいろな大きな格差、アンバランスがあるようにも見受けられる。これなども労働争議の特徴的な原因の一つではないかといったような感じがいたします。
  33. 坂本昭

    坂本昭君 それでは今特に問題になっている全日赤の全国約五十カ所の病院スト並びにそれに伴って東京都内で数カ所ありましたが、それらについて概括的な一つ説明をしていただきたいと思います。
  34. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) まず日赤につきましてはあとから申し上げることといたしまして、東京都内のいわゆる都医労が本年の五月の大会で最低保障賃金一万円、一律三千円ということの賃上げ統一闘争を行なうという決定をいたしました。さらに八月の中央委員会で十月から一斉に具体的要求を出す。スト権を都医労に集約して統一闘争を実施するという方針をきめたようでございます。そこで個々病院におきましてそれぞれ団体交渉も行なわれたようでありまするが、結局十一月一日に、あるいは八日あるいは十四日、二十日、二十五日、こういうふうに一波、二波、三波というようなストが行なわれたことは私どもは大へん遺憾に存じております。これに対しまして、大臣談話も発表いたしてございまするが、各都道府県に通牒をいたしまして労使の団交がうまくいかない場合には労働委員会が出て平和的に解決するように要請いたしておるのでありますが、東京におきましては、都の労働委員会が非常に熱心にこの解決に乗り出しております。最近におきましても、この十七日以来寝食を忘れたあっせんの労をとっております。本日もまた十時からあっせん作業をやっておるというふうに承っております。このような努力が全然効果がないというふうには私どもには考えられません。適当のときに適当な妥結を見るものと期待しておるわけであります。  全日赤につきましては、個々的にはかねてから若干の紛争議があったようでございまするが、全般といたしまして、本月中旬の大会におきまして、年末手当のほかに最低保障賃金一万円、一律賃上げ五千円という要求を決定しております。それに基づきまして中央交渉を幾度か行なわれたようでございまするが、今のところ十分なる歩み寄りがなされておらないというので私ども憂慮しております。同時に、これは各地労委の問題であるとともに中央労働委員会の問題ともなり得る性格もあるようでございます。中央労働委員会においても事態を注視しているものと考えております。
  35. 坂本昭

    坂本昭君 その間における厚生省のとられた態度、あるいはそれに対してどういう見解を持っておられるか、承りたいと思います。
  36. 川上六馬

    説明員川上六馬君) ただいま労政局長からお話がございましたように、近年ストがかなりあちこちで起きているのでありますから、それにつきましては、従来府県の衛生部長会議や医務課長会議等におきましても、この問題について注意を与えてきたわけでございまして最近起きましたそのストにつきましては、それが全国的にだんだん波及して参る情勢にありまして私どもといたしましても特に患者の医療の面に支障が起きてはということで非常に心配をいたしておるわけでございます。厚生省としましては、スト権はありますけれども争議が始まりますと、どうしても患者にしわが寄ることになりますので、なるべくストはやらないで、団交でもって平和的に解決するようにということを申しておるわけでございます。しかし、どうしてもストに入らざるを得ないというような事態になりました場合は、患者の生命、身体の安全を脅かさないように、いわゆる保安要員などの協定をして、事故を起こさないようにしてもらいたいということを通牒をいたしておるような次第であります。
  37. 坂本昭

    坂本昭君 患者も人間であるけれども医療労働者の方も人間なんですよ。それを忘れないように一つお願いします。医師なり看護婦なりが、十分なる労働条件のもとにおいて、初めて患者もいい医療が受けられるということ、しかもあなたは、先ほどから確かに医療労働者労働条件はどうも悪いということは一応肯定しておられる、肯定しておられながら、その労働条件厚生省として改革するためのいろいろな努力や工夫というものを、私は十分しておられないと思う。その問題はまた後にしまして、次にお尋ねしたいのは、この場合、労働関係調整法の中で、第八条に、公益事業として四つ指定されております。その四番目に「医療又は公衆衛生の事業」というのがあがっていますが、この医療の公益性について労働省見解一つ聞かしていただきたい。
  38. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 医療の公益性は、私がここで申し上げるまでもないことと存じます。事、身体生命に関係し、ことに近代国家におきましては、十分に尊重され充実されていかなければならない。従いまして労調法におきましても、他の公益事業とともにこれにつきまして、一面におきましては争議予告の制度などを設けておるような次第でございます。
  39. 坂本昭

    坂本昭君 そのような見解から、昭和二十七年の法律二百八十八号による追加で、三十五条の二に緊急調整の項が追加されたと思いますが、緊急調整を決定する要件、これについてどういうふうに労働省として考えておられるか、また従来の病院争議の例の中で、この緊急調整決定というような事例があるかどうか、それを一つ説明していただきたい。
  40. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 今までのところ、先ほど申し上げましたように、全国的に一年間に二十件三十件という程度でございまするので、この緊急調整を医療関係について具体的に考慮した事態はございません。
  41. 坂本昭

    坂本昭君 同じく労調法の三十七条に、公益事業に関する場合は、十日前までに予告しなければならない規定がありますが、この十日前ということの趣旨、それからまた同時に現実の問題としてこの趣旨がどうふうに生かされているか、その具体的な事例について承りたい。
  42. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 十日前の予告と申しまするのは、一方におきまして、これを利用する患者、一般関係の人人に、十日後には争議行為が行なわれるであろうということを予告いたしまして、たとえばAの病院が予告があれば、何かある場合にはBの病院に行こうかといったような心がまえをいたすように要請いたしますとともに、一方におきましては労使が一段と、十日後には争議行為に突入する、いわば半分何と申しますか背水の陣と申しますか、そういう突き詰めた気持で、できるだけ自主的平和団交で解決する、場合によっては労働委員会の調停あっせんを待つというようなことで、できるだけ最後の平和的努力をしてもらうという趣旨、この両面の趣旨を持っているわけであります。今回の場合につきましても、できるだけその線に沿うて努力しているつもりでございます。
  43. 坂本昭

    坂本昭君 それでは、労調法の中で、病院ストについて最も重要なのは三十六条です。その三十六条に「事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行」とありますが、この「安全保持の施設」というのは、一体どこまでを含めるかという問題です。これが現実の問題として一番重要でかつ微妙な問題だろうと思いますが、たとえば保安要員をどこまで出すか、それについてどういう基準を作っておられるか、これは病院争議の場合、特にストの場合、一番肝心な点でありますが、これについて労働省見解を伺いたい。
  44. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 病院に関する患者の生命、身体の安全のためのいわゆる保安要員でございますが、われわれといたしましては、抽象的には、どの程度かということにつきましては、たとえば結核療養所と、あるいは外科、あるいは産婦人科といったような科目により、あるいは入院患者が満員かあるいは閑散か、あるいは争議行為が半日で終わるものか、一週間も続くものかといったようなことで、それぞれ差があるであろうというようなことの程度までは考えられるのでございまするが、あいにく専門的な知識もございませんので、建前としては、そういった抽象的なことしか申し上げられないので、先般労働次官から厚生次官に申し入れまして、できるだけ厚生省において、厚生省といたしましても困難と思いまするけれども、できるだけ現地の人、あるいは労働委員会において保安要員をどの程度にするかということの話し合いのあっせんなども求められる場合があるのでありますが、それに対する参考になるような資料を御提供を願いたいというふうにお願いしているわけでございます。
  45. 坂本昭

    坂本昭君 今の点は非常に大事なんですよ。私もこの間の病院ストについては現地を若干見ました。見て気がついたことは後ほどまた触れますが、警察官の介入というのが従来になく非常に著しいのです。制服でも来ている、また私服でも来ている。そうしてかれらは結局三十六条にひっかけて、安全保持を「妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。」というところですね、極端な場合には機動隊を出動させるというのです、機動隊を。もちろん警察官の方もよくわからぬものだから、一体機動隊を出動させる法的根拠はどこだということを聞くと、それは法律以前の問題だといってごまかしている。法律以前の問題というそういう法律はあるわけがないので、まさにこの三十六条にかかっているのです。その、三十六条について肝心の労働省はよくわからないと率直にさじを投げておられる。厚生省の方は一体どういう態度をとっておられるのですか。これは医務局長にお尋ねいたします。
  46. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 先般の通牒でも書いておきましたように、まあ入院患者につきまして必要な医療とか、あるいは看護とか給食などが確保されるようにというようなこと、緊急外来患者の受け入れ態勢を保持するようにというようなことなぞを通牒しているわけですが、要するに、病院全体が六安全保持の施設だとは解釈していないわけでありますけれども、入院患者や外来の救急患者等の医療上にぜひ必要だと思われるような施設は三十六条の安全保持の施設というように考えていますが具体的には個々病院状況によってきめるべきものだと考えております。
  47. 坂本昭

    坂本昭君 ちょっと待って下さい。非常に大事な点であって、病院全体は安全保持の施設ではないと、そう言われるのですか。
  48. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 全部がそのまま安全保持の施設だとは考えておりません。
  49. 坂本昭

    坂本昭君 そうすると、病院の大部分あるいは一部分は安全保持の施設そのものである。そうなれば病院では争議行為、ストということは全然できぬということになるのですよ。そういう一体考えを厚生省は持っておられるのですか。そうすると、労働省から今の安全保持の限界、その基準というものを早く作ってくれ。それについて具体的に一体厚生省はどういう作業をしておられるのですか。これは非常に大事なことだから、たとえば総合病院の場合、内科はどうする、外科はどうする、産婦人科はどうする、どの場合は安全保持の範囲内に入っている、これは争議行為としてでもこれをしてはいかぬと判断するか、その限界、限界を少し明確にしていただきたい。
  50. 川上六馬

    説明員川上六馬君) これは御承知のように、病院の任務、性格なり機能なり、それぞれ異なっておるのでありまして、そういう点についてもいろいろ検討をしてみたわけ、でありますけれども、先般通牒を出しましたような趣旨でもって、具体的には個々病院によってきめる以外にない、こういう判断をいたしておるわけなのであります。
  51. 坂本昭

    坂本昭君 今の先般の通達というのは、私読んでいませんから、ここで一つ披露して下さい。どういう通達をお出しになったのか、よく全委員にわかるように説明して下さい。
  52. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 争議中でも確保しなければならない点といたしまして、まず入院中の患者につきましては、必要な診療及び看護業務が確保されるべきであることはもとより、給食の確保についても十分に留意をすること。それから入院及び外来を通じまして、手術分べんを初め、特別な配慮を継続的に必要とするような患者、それから容態の急変が予想されるような患者に対する措置についても支障がないように配慮すること。それから応急受診を求める患者につきましても、即応の態勢がとられておらなければならないこと、なおピケ等によってみだりに患者の通行を妨げ、あるいは患者の受診を拒否する等の行為のないように留意すること、また、以上の業務を行なうために必要な消毒、滅菌、保温、電気供給、ボイラー操作、給水などの業務を確保されなければならないということを通牒いたしたわけであります。
  53. 坂本昭

    坂本昭君 今の通牒は、一つ委員にお配りいただきたい。  それから労働省は、今の厚生省見解についてどういうお考えをお持ちになりますか。それと、次官から次官あてに基準を示してくれということは、もう少し具体的なものを要望しておられると思うのですが、今の医務局長の答弁によって、労働省は実際的に三十六条の法の運用ができますか。
  54. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 私どもといたしましてはもう少し具体性を持ってほしいというふうに率直に考えております。ただいまの通達を私どもも拝見いたしまして、事柄の性質上、なるほど医務局としては大へん苦心されたところと考えていたのでありますが、なお御検討を進めて、基準の具体化をお願いしたいという気持でございます。
  55. 坂本昭

    坂本昭君 厚生大臣に伺いますけれども、きょうは、実は病院ストの問題を朝からだいぶこまかくやって参ったのです。きょうはこの病院ストの問題をこれは中小企業における一般的な争議というふうにこの委員会では見て、いきなりこれを、たとえば医療費の問題だとか、単価問題にくっつけるという格好じゃなしに、まずきょうは労働問題として十分検討していこうということから始まりまして、その中で、医療労働者というものの賃金労働時間や、一般労働条件というものが一体いいか悪いかということを両省にお尋ねしたのです。ところがはなはだ、労働省もまた厚生省も具体的な詳細な資料を十分持っておられない。労働省の方はまだいろいろな資料がおありになってあるいは労働基準法違反の事例などについても後ほど私ども資料を出すということになっておる。ところが、肝心の医師法並びに保健婦助産婦看護婦法を所管しておる医務局の方ではばく然とした、どうも医療労働者はあまり待遇がよくないようだという非常に不適格な、正確を欠いた説明であって、われわれとしては非常に残念だと思うのです。しかしまあ、労働省でも、実際にこういう病院医療労働者状態を調べ始めたのは、昭和三十四年ごろらしいのですね。そういう点で  一応まあ医療労働者条件が悪いということが一つわかって、そこで次は国立病院療養所はこれは国家公務員法で規制せられますが、一般病院はスト権があるのですからね。それで一体この争議労働法のもとではどういう問題点があるかということで、今まで労働関係調整法の幾つかを議論してきまして、一番大事な三十六条に争議行為の制限禁止という章があります。この中で、三十六条には、「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。」結局この三十六条が、病院ストの場合には一番問題になってくるわけです。つまり安全保持というものを基準どこに置くか、そうしないというと、これは第三十六条にきめた制限禁止のことに反してくるということで、いきなりぴしゃっととめられてしまう。ことに先般来の争議を見ますというと、警察官の導入が相当ひどいのです。これはまた別の機会に、全国的に調査してから取り上げますが、たとえば制服の警官が、これは武蔵野日赤です。武蔵野日赤あたりには二人ほど初日に。ピケを破ろうとして入って来ておる。それから武蔵野市の署長に組合から抗議に行きましたところが、給食、ボイラーをとめたら機動部隊を出す、こういうように署長が豪語しておるのです。それで一体機動部隊を出す法的根拠がどこにあるかと言ったら、署長は法律以前の問題だと答えたそうであります。ところが、実際は法律以前でも何でもない、労調法の三十六条に「安全保持」ということが書いてあるのですよ。この安全保持が今のように、確かに患者さんに給食をやらないのだとしたらこれは大へんですし、それからボイラーをたかなくなったら、この寒空に凍死するかもしれませんし、大へんです。そこで結局、この三十六条を、どういうように基準を作るかということ、これはわれわれ立法府におる者としても、また行政当局者としても、今まではあまりこういう事例はなかったのだけれども、今度は真剣にこれを検討しなければならない時期になってきたわけなんです。で、今医務局長は、この病院施設そのものが全部安全保持の施設であるかどうかは言えないが、それに該当する部分がある。それは確かに手術室などでもしストに入ったら、メスを取っておった者が途中でやめてしまう。これは確かに許されないことですよ。きょう手術しなければ、あした手術をしたんでは死んでしまうというような、たとえば虫垂炎が破れて腹膜炎になっておる、そうした場合、きょうはストだから、きょうはやりません、あしたやりますと、あしたになったら死にます。こういうものについては、やはり手術をしなければいかぬと思うのです。そういう場合、それを怠った場合、これは問題になってきます。そういう点の基準をはっきりしなければならない。現在でも厚生省では看護基準というようなものはあるのです。基準看護のいろいろな数などをきめてある、そうしてそれによって点数なども違う。ところが、基準看護というのがミニマムをきめるものか、スタンダートをきめるものなのか、その辺も非常にあいまいなんです。ですからだんだん問い詰めていくと、今のような医務局長のように、診療に差しつかえがあってはいかぬ、給食はもちろん、手術ももちろん、応急の病気ももちろん、それから最後にみだりに、この患者の何ですか、受診を断わってはいかぬとか、みだりにというような変な用語を使われますと、これは病院ストは手も足も出ないということです。しかも厚生当局自体がが医療労働者待遇が悪いということを一番最初にここでちゃんと説明しているのですよ。悪いにもかかわらず医療労働者はこれを変えることができない。だから今団体交渉をやって、それに対して、また応じないものだから、それでやむを得ずストということに突入しておるのです。しかし、具体的に見てみますというと、今度は非常に皆さん慎重、かつ穏健にやっていますよ。でありますから、新聞を見てもテレビを見ても、あるいはラジオを聞いても、この病院ストをやっておる労働者に対して非難の声というものはないですね。むしろ看護婦さんなどに対しては、ナイチンゲールでなくて、賃のない、ない賃ガールだとか、あるいはきたない寄宿舎の三等船室だというような、ああいうものを新聞などで説明をして非常に味方をしてくれておる。そういうように世論が味方をしてくれているんだけれども厚生省の方では、これはどうもストは工合が悪い、むしろスト規制の立法をするのじゃないかというふうな感じを、私は厚生当局については、そういう印象を受ける。労働省の方は、今も労政局長言われたように、どうもそんなばく然とした基準では困る、こう言っておるわけです。ここは、医療労働者の大半は看護婦ですよ。大臣と同じ同性の方なんです。ですから一体大臣としては、この病院ストについてスト規制というような考えをお持ちになっているのかどうか、それからスト規制をするのでなければ、当然三十六条に従ってこの基準を作らなければならぬ、その基準をいつまでどうやってお作りになるか、とりあえずその二点をお伺いいたしたい。
  56. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) ストと申しますような異常状態でございますのでございまするから、今までやっていただきました通り人数を下回るということは、これはまあ当然なことでございましょうが、先生は医療に関しては非常なベテランでいらっしゃいますし、長い御経験もおありになることでございますので、病院というものがいろいろ状態が違っておりますことは御承知通りでございましてその小さいところまで規制をするということは今まで打ち出されていないのでございます。それで厚生省といたしましても非常に悩んでおりますようなことでございまして、私も御承知通り衆議院の選挙があったものでございまするから、地方へばかり出ておりまして、これにさっそく取り組んでいくということもできませんでございましたのでございまするが、ただいま医務局の方から通牒を出しましたように、人命に関することでございまするから、これはまあ三池あたりのストのときには相手が何と申しますか、物質の石炭でございまするから全然通産省というようなことは新聞にも書かれませんで、労働省労働省ときておりましたのが、これは病院でございますので、結局厚生省の方にいろいろな攻勢がかかってきたようで、ある意味におきましては、これはそこに私は矛盾を一つ感じております。ですから労働省が全面的に三井、三菱の炭鉱のストをさばいたような、あの腕のさえでさばいていただけば、私どもはこういう事態にかんがみてその間にいろいろ研究もし、基準も作りたいと思っておりますが、労働省までわれわれ厚生省の方へ基準を作れ作れとおっしゃることは、少しうしろに退いていらっしゃるのじゃないかしらと思って、三井、三池炭鉱に対するときとどういうわけで違った態度をおとりになるかということが私の大きな疑問でございます。これは労働省においてぜひ一つ、かつての大いなる御体験にかんがみまして、ストはしっかり解決をしていただいて、そして私どもがそのあとを承ってするべきことはするということにしていただきませんと、私は女性であるがゆえに厚生大臣じゃないかとおっしゃる委員のお言葉もちょっといただきかねると思うのです。なぜならば、厚生省女性とか男性とかいうことは考えておりません。国民を全体として一つのワクの中におきまして、働く人はみなそのワクでこれは解決していかないと、男女同権ということはここにすたると私は思います。どうぞ一つそういう点をお考えいただきまして労働省は大いにこれをやっていただくということ、そのあとで私どもがその間に研究をいたしていかなければならないと思うのでございます。  私もいろいろとあちらこちらの病院を見て回っております。そこで私も得心のいかないことを多々見てきております。労働が非常にオーバーしているということは呉の病院でも聞いて参りました。それで、いろいろそういう点もあろうかと私もわかるのでございまして、いろいろあちらこちらで聞きますると、労働管理がやはり不十分であるということを私率直に認めたいと思います。それで厚生省の中にも病院管理研修所というのがあると、病院についてはそういうものが、病院の管理ということがございまして、熱海の病院でメッセンジャー・システムというのをやっていらっしゃいます。また熱海の病院なんてあれは昔は軍の保養所でございまして軍人が戦場へ出されることのためにわざと階段を作って、そこで訓練をしたのだそうでございますが、これを見て参りました。そういうことでほんとう病院としてはふさわしくないと私は思います。非常に御苦労していらっしゃるので、向こうではメッセンジャー・システムというものを編み出してそして看護婦さんたち、お医者様が過労にならないような組織をしていらっしゃるということは、私も実はこれはいいことだと思ってこういうことを私どもとしては全面的に一つ研究して、山手にある病院だけでなく、すべての病院にこういうことでもって私どももいろいろと進言すべきことがあろうかと思います。ストは規制法に追い込むかというのがお尋ねの一問でございまするが、私どもはそういうことはあまりしたくないと思っております。しかし、どうしてもこれが全国的に派生いたしまして、どうにもこうにもならなくなる場合には、やりたくないことも、あるいはやらされるようにならないとも言えないという気持でございますが、どうぞそういうことにならないうちに私は解決していただきたいというのが、私の心境でございます。
  57. 坂本昭

    坂本昭君 今の大臣のお言葉だと、この病院ストが全国的にならないならばスト規制というようなことにしないが、まあ全国的に及ぶような場合にはやむを得ない、そういう処置をいたすかもしれぬということですが、全国的にという意味はどういう意味ですか。たとえば去年のことですね、イギリスの医師会が全面的なスト宣言をやりました——おととしになりますか。四月に三カ月の猶予を置いて、七月からストをやる。御承知通り、イギリスは国家管理の医療をやっております。ところが、給与が低いというので、三カ月置いて七月からストをやるというスト宣言をやった。そのために特別委員会ができて、あの当時十数%引き上げることで妥結しました。そうして、その後新しい特別委員会ができてさらに二十数%引き上げなければならないという結論を、ことしになってたしか出しているはずであります。で、イギリスの場合は、これこそ全部の医者が、開業医も公的医療機関もみんながスト宣言をやったのです。で、あなたの場合は、そういう全国的な場合にはもうストそのものをやらせないような法律を作ってこれに対抗する、そう言われたのですが、それがはたしてほんとうに民主的な医療日本に、特に皆保険のもとにおける皆医療を作る私は道だとは思えないのですが、大臣はあえてそうなさるお決意ですか。これは非常に大事なことですから、慎重にお答えいただきたい。
  58. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) その後段だけをお取り上げいただいては困るのであります。前段から一つ参りたいと思いますが、やりたくないというのが私の真意であります。お医者様というお仕事というものは、単なる労働だとか、それによって賃金を得るだけでなく、人間の最も尊い寿命というものをあずかっていただいておりまするから、私は、もっと良識のあるお方々だということを前提に持っております。看護婦さんでもそうであろうかと思います。たとえば甲種看護婦さんのようなお方は、高等学校を出て、その上でまだ学校に行って、ほんとうに金もうけ主義ならば、工場かどっかに行けるような学校にも行けるのですね、その御研究になる年限から考えましたら。それにもかかわらず、こういう人間の命を守るというようなお仕事で御苦労いただいているのですから、私はそういうことにはならないと思うのであります。ですから、私どもは初めに申しておりまするように、個々病院において、できるだけ労使間でお話を片づけていただくことがいいのではなかろうかということを、まず第一に申しております。それで、できるだけそういうことに追い込まないでいただきたいというのが私の願いでございます。  それで先ほども申しましたように、石炭ストでございますれば、石炭という物質なんですから、このストとはまた性格が違うのですから、それで、私は、そういうことをしたくない——したくない人間を無理にさせないでいただきたいというのは、これは逆説かもしれませんけれども、私の心からの願いでございます。それで、まあ社会党におかれましては、英国のいわゆる社会保障制度をなにかお手本にするとおっしゃった時代がございましたね。片山哲先生とでございましたか。ですから、まあどうぞ、この点は英国にならわないでいただきたいというのが、私のもうほんとうの心からの願いでございます。今おっしゃいましたように、ストをやっている間に、どうしてもきょうやらなければならない手術、それがもしストで延びましたら、いわゆる何と申しましょうか、何やら殺人というのがございますね。手を下さないで殺す殺人なんとかいうのがありましたね、私は忘れましたが、そういう法律語がある。いわゆる自分は手を下さないけれども、結果においては人を殺したことになる。何か法律語があるのでございますね、そういう不作為ですか——とかなんとかいうのがあるのですね。そういうことになりますれば、ストをやった方もやはり非常に精神的にお悩みになることもありましょうし、何とかしてこの点、スト規制法を出したくないというのが、私が前段にお答えしたことでございます。それで、全国的に広がらないうちに解決してもらいたい、そうして、私どもの方でも、することはしなければならぬということでございますね、そういうことを申し上げておきたいと思います。
  59. 坂本昭

    坂本昭君 厚生大臣は全部、病院スト労働省にまかすなんと言っておったから、ほんとうにまかすかと思っておったら、最後になったら、まかせないで片をつけるようなことを言われたので、こっちが面くらいますが、まあ命は確かに尊いです。だから、病人を大事にするということはみな知っています。しかし、命を持っているのは病人だけじゃないですよ。医療労働者看護婦さんも持っております。  そうして患者さんが自分の赤ちゃんを産んで明るいいい家庭を作るように、看護婦さんも自分が赤ちゃんを産んで明るい家庭を作りたい。ところが、国立病院では赤ちゃんを作ることについて、妊娠の制限をやったり——例の高田病院の事件なぞあってそうして、看護婦さんの場合には、その命が守られていない。だから、こういうような問題が出てきているのです。私たちは、患者さんを大事にしなければいかぬが、同時に、その患者さんを大事にする看護婦さんを大事にして下さいということです。今の発言は、大臣、選挙のあとだったのでよかった。選挙の前に言っておったら、大臣は、医師会の票やら看護婦さんの票を全部失ってしまうところだったのです。選挙が済んだから、のんびりとして言われているのじゃないかと思いますが、この点は先ほど労働省に全部かぶせるようなことを言っておられましたが、この点は労働大臣がおられませんので、次官に一つ説明いただきたい。厚生省見解労働省としてよろしいのですか。
  60. 岡崎英城

    説明員(岡崎英城君) 本日は労働大臣がちょっと所用がございまして出ておりませんものですから、労働省全体としての責任のある御答弁はいかがかと思いますので、私自身として申し上げますが、(「そういうことはないよ」「そんなら、説明要らぬですよ「労働次官としてやって下さい」と呼ぶ者あり)ただいまの厚生大臣の……(「あなたの個人の意見なんか聞きたくない」と呼ぶ者あり)大臣のお話でございましたが、労働省はできるだけ各省の問題とは協力して一体となってやっていくべきだと思いますので、とくと厚生省の方とも話し合いをして、私どもの省で出てやらなければならない時期、また、やらなければならないことにつきましては、十分やりたいとこ、こう思う次第でございます。ただ、ただいまのストの状況その他について、ただいま労働省が全面的に出てこの問題に関与するかどうかという点については、相当に慎重に考慮しなければならない点もございますのでそういう点で十分厚生大臣の気持をしんしゃくしながら善処さしていただきたいと思います。
  61. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) ちょっと前のを整理さしていただきたいと思います。それは、私は言葉の何といいますか、あやと申しますかで、あるいは私の真意が受け取られなかったかもしれませんが、ストはどこまでも私は労働省だと思っております。しかし、御承知通り病院という性格にかんがみまして、人命の救助ということでございまするので、それで、普通のほかのストとは違ったという点で、その特殊性にかんがみまして、それをそこなうことがないような態勢へ持っていかなきゃならぬということはその前提にあるわけでございます。ストは労働省でさばいていただきたいということには変わりはないということを申し上げておきます。
  62. 坂本昭

    坂本昭君 ですから、その病院の特殊性というのは、そんな言葉をここで使われなくても、ちゃんと労調法の三十六条には、公益事業というものについて明確な規定がある。そしてその中で、今の三十六条の安全の保持ということ。だからその基準を一つ示していただきたいということですよ。これがないというと、非常にはっきりしなくて、どれがいいんだか悪いんだかわからない。だから、それは労働省の方も、これは専門厚生省で作っていただきたい、こう言っているわけです。ところが厚生省の方では、それは作らない、労働省の方でやってくれ。先ほどの大臣の御答弁はそういう御答弁されるから、少なくともこの安全保持の基準は厚生省がお作りになってこれを差し示すべきものである、そうではないですかと。そのために具体的にどういう作業をなされますか、もう一ぺん重ねてお尋ねいたします。私の方ではもうそういうことはしない、全部労働省にまかせたというならば、もう一ぺん労働省に、それで一体労働省はできるかということをお尋ねしなければ、現実に、また続いて病院ストをやられる向きの人たちはこの三十六条の取り扱いで非常に私は困惑すると思う。いわんや、警官がすでに法件以前の問題だといって機動隊を動員しようなんということを豪語しているんですからね。はっきりしてもらいたい。
  63. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 病院の規模が非常に違います。多種多様でございまするので、一つの基準を作ってそれをおのおのに当てはめていくということは、非常に技術的に困難があるわけでございまするから、異常な状態であるから、普通の、いわゆるこういう病人はこれだけのことで、今やっていらっしゃる病院に対して、これでなきゃならぬということを一つ一つ差し上げるということには、技術的に非常に困難な点があると私は思うのでございまするから、それは今後検討して参りませぬことには、今ここでどういたしますということは申し上げかねまするから、ふだんのその状態を下回ることはこれはやむを得ないだろうけれども、ある一定の限度は、お医者様ですから、このくらいならば何とかやっていけるという基準は御自分で私はお作りになれるのじゃなかろうかと、私どもとしては考えております。おのおの実は多種多様なんでございますから、公立の病院でございましたら、大体一定のものがございましょうけれども、種種ございまするので、そこに一つの非常にむずかしさがあると、私は考えております。
  64. 小柳勇

    小柳勇君 議事進行について。非常に大事な問題で、今ですね、全国的に心配している問題です。しかも今厚生大臣の御答弁聞きますと、まあ自分の職責の範囲については答弁されますけれども病院スト自体についてはこれは労働省の所管であるという観念が抜け切らぬでいるわけです。しかも次官は、答弁は自分の個人の意見は言うけれども労働省全体の意見ではないような発言でありますから、次官のお話の中にありました大臣は所用であるということでありますが、労働大臣の所用——現在どこにおられますか、ここに出席できないのかどうか、一つ労働省から御答弁願います。そうして労働大臣が来て、責任ある答弁をされませぬと、非常に大事なことで、この委員会質問を長時間かけましても何もならぬので、労働次官に出れるか、出れぬか、御答弁いただきたいと思います。
  65. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 大臣はかぜを引いて家で療養中という連絡がけさほどございました。なお、その後のかぜの経過の報告は今のところございません。
  66. 小柳勇

    小柳勇君 朝からもうこの委員会のあることはわかっているから、病気であれば診断書でも出してちゃんとここで明らかにするくらいの熱意がなければ労働大臣としての職責がないと思います。一つ診断書でも委員長のところへ出ているかどうか、委員長どうですか。
  67. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 今のところ労働大臣の方から診断書は出ておりませんが、ただいま労政局長からお答えいたしましたように、けさになりましてかぜのためにやむを得ず出席ができないという向きの御通告はございました。
  68. 小柳勇

    小柳勇君 そうすると、今厚生大臣がおっしゃいました労働省に対する厚生大臣見解に対しても責任ある答弁はだれから聞いたらいいか。政務次官一つ局長お集めになって答弁すると言われるか、労働省見解聞きませぬと、これは並行してわれわれも納得できませんから、その点についての御答弁を願います。
  69. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  70. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記を始めて。  それでは暫時休憩をいたします。    午後零時九分休憩    —————・—————    午後一時三十五分開会
  71. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それでは午前中に引き続き会議を開きます。  石田労働大臣の出席を求めたのでございますが、午前中申し上げました通り、かぜで出席ができないということでございます。従いまして、岡崎労働政務次官よりお答えをすることになっております。岡崎労働政務次官
  72. 岡崎英城

    説明員(岡崎英城君) 今回の病院のストも、また、一般のストについても同様でございますが、ストライキそのことについては、厚生大臣先ほども申された通り労働省の所管であることは、これはもう申すまでもないことでございます。従って、私の先ほど出席いたします前に労政局長が申し上げましたように、このいわゆる平和的解決のために従来も努力はして参りましたが、今後ともさらに一そう努力をして参りたいという所存でございます。  以上お答え申し上げます。
  73. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、午前中のその質疑を聞いておって非常に理解できないような面がある。一つの問題は、病院それから診療所、これは人命を預かる業務です。特に日本は皆保険、皆医療に進もう、国民の健康の保持のために政府もたびたび国民に訴えられて努力をされておる。問題は、私はそういう皆保険、皆医療をやっていこうというのなら、私は最大な条件をそろえていくというのが私は厚生行政だと思うのですね。それでいって、午前中の質疑を聞いておったら、賃金待遇が悪い。しかし、まとまったそこで働いている人がどうなっておるかという問題について把握がない。そうして争議が起きればあれは労働省の問題だ、今労働政務次官から労使調整関係については労働省の分担云々で努力をするとおっしゃいましたが、私は、実際争議が起きたときの調整の問題については、そういう形で努力をしてもらわなければならぬと思います。しかし、本来の人命の保持、健康保持、皆保険、皆医療を進めるためには、今のそこで働いている人がどういう環境の中で、条件の中で、それじゃ百パーセント厚生行政の面から願うような、国の施策として願うような形に置かれているかどうかという問題は、私はもっと真剣に考えてもらわなければいかぬと思うのです。その点がはずれていやせぬか。ストライキが起きたら云々、全面的なストライキが起きたらこういうことを心配いたしますというような、ストライキというものは好んでやるものではない、生活ができない、条件が悪くて百パーセント国の医療のために尽くせない条件の中でやはり生活をしていかなければならぬから要求をする。聞かない。そこで争議が起きて、しまいにはストライキに入るようになるのです。だからして、厚生行政で正常なこの医療の運営がやられておるかどうかということは、厚生省はつぶさに検討して、その悪いところを取りのけるということに日々努力をしていくことがストライキが起こらない根本の問題じゃないかと、私はこう思うのです。条件が悪い。そして不遇な立場に置かれているということだけは認識をおぼろげながらしておって、争議が起きたら労働省関係だというような、私はそんな物の考え方で厚生行政がやられているということは、私は午前中の質疑を聞いて憤慨をしていた。私は、厚生行政というものは、昔から振り返ってみて、たとえば精神病院がいかなければ厚生命令を出す、そして正常な病院の通常をやらす。私はほかの病院にもいろいろあると思う。本来の目的を達するためには厚生行政の面からもっと力を入れるべきだ。ストライキが起きないような情勢を厚生行政の中で作っていくべきだ。そういう点でまず力を入れますというなら話はわかるけれども争議が大きくなったら制裁するようなことをにおわす、それは労働省関係だというのは、私はとんでもない物の考え方だと、そう思う。それから本来の厚生行政、皆保険、皆医療を進めていくという本来のことについて一段と努力をするということについて、厚生大臣や厚生行政の担当者はなぜそういうふうにはっきり約束されないか。具体的にできた争議というものの調整事項は労働行政であるかわかりませんけれども、根本はストライキに入らないための努力ということ、正常に皆保険、皆医療というものを進めていくための行政上の努力というものは、私は厚生省がやられるのがほんとうだと思う。通産省の問題でもそうですよ。いろいろのストライキにおいても、ストライキが出たからといって、まるでストライキそのものを罪悪視したようなものの考え方は、根本的に間違っている。通産省の関係でもそうですよ。より生産を拡大し、再生産するためには、どういう条件のもとに再生産が生まれてくるかということを通産省は大いに考えて、大いに努力すべきです。ストライキ争議が起きない条件を、やはり総合的な判断によって努力するのが当然のことです。特に病院医療行政なんというものは、なおさらのことだと私は思う。そこのところに力が入っていないで、私は先ほど午前中からの医務局長厚生大臣の御答弁から見ると、その面が条件が悪いということまでは言われるけれども、その争議が起きる根本の問題をどうして直していくかという問題については触れられていない。非常に私は午前中の質疑について残念に思う。これはもっと力を入れて、もっと厚生行政を正常な皆保険や皆医療のために最善の、あらゆる角度から総合的に調査検討して、そうして必要なものについては勧告もし、必要なものについては指導もし、やっていくということ、私はその決意をここで聞かしておいてもらいたい。
  74. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 私は先ほどの答弁の中で、私どももまた大いに研究をして、いろいろな欠点のあるところは、これから是正していきたいということを申し上げたと思うのでございまするけれども、ここにまたあらためて御意見を承っておりますれば、私もおっしゃる通りだと思います。それで今後とも、私どもも大いに、改正すべき点は改正に努力をして参りたい、こう思っておりますので、さよう御了承願いたいと思います。
  75. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、出てきた争議そのものの問題を、そういうことが起きないように、日本医療行政を進めるために、決意を持って統計調査、それから勧告、それから補正、そういう一切のことに力を入れてやっていくと、こういうことですね。
  76. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 当局におきましては、いろいろとすでに考えて研究していてくれるようでございます。それで私どもも今後必死になって、こういう問題について、今までよりもより以上の努力をしていきたいという気持でございます。(坂本昭君「三十六条の件も、もう一ぺんあらためて説明しないと工合が悪いですね。」と述ぶ。)
  77. 冨樫総一

    説明員冨樫総一君) 労基法三十六条の保安要員の基準につきまして、厚生省と打ち合わせた上での答弁を申し上げます。  先般厚生省から出されました通達は、病院におきまする争議行為中の保安業務につきまして、相当研究した上で示された基準でございまするので、病院の労使当事者は、医学的に高度の良識のある方々でございまするので、あの通達によりまして個々の具体条件に応じた保安要員の範囲の認定はできるものと思うのでありまするが、なお、実際の場合に、その範囲につきまして労使間で認定が困難なような場合には、私どもの方の出先労政機関はむろん、厚生省の方の出先機関とも連絡いたしまして、事態即応の協力をいたしまして、事故のないように努力いたしたいと存じます。
  78. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記をやめて。    〔速記中止〕
  79. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記を始めて。
  80. 坂本昭

    坂本昭君 厚生大臣が、病院管理ということと、それから労務管理ということ、この辺の関係をどうも十分に把握されていないような気がするのです。で、病院労務管理というものは、これは私は、ほかの場合よりももっと直接的な、医療管理に関係があると思うのです。たとえば普通、生産を向上させるために、労務管理の面でいろいろな検討が加えられていますけれども病院のような、大体これはマスプロじゃないのです。こういうところでは、労務管理の適不適ということが、ある面では、医療の能率あるいは内容のよしあし、それに非常に関係してくるのです。ですから厚生省が何もかも労務管理の問題、こういったものを労働省に押しつけるということは、藤田委員が指摘した通りなんです。そういう面では非常に欠けている。これはおそらく与党の方も、こういう厚生省のことでは、来年からの皆医療だとか皆保険ができるかなとそういう不安が非常に強くなると思うのです。ですからこの点は、今後とも大臣とせられましても……所管は医務局です、医務局が今まで私は怠慢であったと思うのです、全部保険局にまかしておる、ですから医務局がもっとしっかりしなくちゃいかぬです。ですからこれは私は、また来月になってからも、当然ここで議論される問題だと思いますが、この際特にその点申し上げておきます。  それからさらに安全保持の問題ですけれども、これは現在のいろんな状態でも、安全保持は実はされていない面がたくさんあるのです。たとえば看護基準の一類、二類、三類というような基準看護ができています。しかし、あれでもなかなか十分な安全の保持はできていない。それは一度入院されたら、よくおわかりだと思うのです。大臣も、御主人が御入院なされましたから、おそらくその辺の事情は私はよくおわかりになられると思うのです。今の状態でも、なかなか安全保持はできていないのです。ということは、たとえばついこの間も、あなたの所管の国立病院、相模原国立病院で、未熟児を保育器の中へ入れておったところが、保育器の中で焼き殺されてしまったという事件があります。これなどは、現在でも安全どころじゃない、殺人しているのです、病院が。これは小さい問題のように見えますけれども、しかし、あなたの直接所管している国立病院ですよ。それでさえも、そういうふうな安全保持に欠ける事実がある。これはどういうことか。看護婦さんがくたびれているということですよ。これは、低賃金で腹一ぱい食べられない、それから労働時間が長い、それから、宿舎あたりも非常に悪い。極端な場合は、とにかく看護婦は倒れるまで働けというのです。これは、倒れるまで働けという名言を吐いたのは、国立の、東京の中にある世田谷の病院当局が、そういうことを言った事実があるのです。これは、あなたの任期になられてからじゃありませんけれども、前の前の大臣のとき国立東京第二病院です。ラジウム室に働いている看護婦さんたちが、非常にたくさんの照射を浴びる。それだからもうあぶなくてしょうがないから、その設備を直してもらいたい。それから自分たちが患者さんにラジウムをつけたりすることをやめさしてもらいたい。そういうことで団体交渉をやったことがあるのです。そのときに、倒れるまで働けというふうな暴言を吐いているということがある。こうした事実の中で、とりあえずもう少し大臣としては、直轄の病院については知っていただきたい。たとえば今の相模原の病院の事実ですね。これは御承知だろうと思うのです。これなんか全く赤ちゃんを殺しに病院に入院させたようなことになったのです。この事実なんか、私は、もし大臣が御承知にならないというならば、これを機会に、お互いにこの委員会調査して、何がこういう不幸を起こしたのか、機械が悪かったのか、そうしたら機械の予算をふやします。あるいは看護婦さんの人手が足りないとするならば、定員をふやさなくちゃならぬ。あるいは、時間が非常に超過勤務をやっておったというなら、普通の勤務にして、そうして、看護婦さんの数が足らなければ数をふやす。何とかそういうしかるべきことをやりたいと思うのです。これは、関連して看護婦さんに対する御理解があまりに薄いように拝見いたしますから、今の相模原の保育器の問題について、ちょっと御意見を伺いたいのです。
  81. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 私もこれを新聞紙上で知りまして非常に残念に思ったのでございます。それで聞き伝えるところによりますると、大体十五分おきぐらいには見回っておるという話も聞いておりましたのでございまするが、私も当局に命じまして、よくこれを調査させていきたいと思うのでございます。それでまことにそういう尊い人命が失われたということは、その御両親方に対しても、まことに申しわけがないと私は思っております。とくとこれを調べまして、欠点のあるところを早く見出して、そうして何とかしなければ、今後お産でお入りになる方も非常な不安をお感じになろうと思いますので、とくと調べたいと思います。そうして、いわゆるそういう病院の管理研修所というのがございますので、そこを督励いたしまして、今後いろいろな点でぜひ一つ、こういうおそろしいことが二度と再びございませんように督励をいたすつもりでございます。
  82. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はどうも納得いかないので、医療の根本についての厚生省のお考えをまず聞きたいと思う。私は今の相模原の例が出たので、とくと研究していきます、こう言っていらっしゃいますけれども、答えは明らかに出ていると思うのです。あそこでは、あの保育箱ですか、あれは非常に古くて、修理しなければいけないと業者から申し出があったのに、それをしていなかった。看護婦さんが十五分おきに回ることになっていたといっても、回れないような陣容が、私はわざわいしたと思う。そこで伺いたいのは、医療に対して厚生当局はどういうようにお考えになっていらっしゃるかということです。問題は、看護婦さんの定員にしても、何も法的根拠があって四対一にきめたわけじゃない。あの当時は、看護婦が足りなかった。だから四人に対してまあ一人ぐらいでいいだろう。そのときには、正規の看護婦が患者四人に一人ということであった。ところが、今は人手がないとか、あるいは特別会計制度等がわざわいしたのかどうか知りませんけれども、四・四・二でもってやっているのですね。正規の看護婦は十人のうち四人なんですね。そうして準看護婦、それから補助要員として、全然看護の経験のない人が看護婦の定員の中に入っているということ、だから夜中に行ってごらんなさい。坂本先生は、中山厚生大臣のだんな様が入院したからおわかりでしょうとおっしゃるけれども、そういう名士が入ったときは特別にやるのです。夜中に、八十ベッドに看護婦二人、九十に一人、こういうのが今の病院のあり方ですよ。五十人からの患者を正規の看護婦一人でどうしてやっていける。私などもしばしば入院してお世話になりますが、とても不安でいられないのですよ。そういうことは厚生省でわかっているはずなんです。そういうことでずっとくれば、看護婦の定員で、無理をしているということは明らかになる。そこで、これに対してどういう今後の対策を持っておいでになるか。これを私はまず第一に伺いたいと思います。  それからもうからない病院はどんどん整理していく、こういう傾向が出ているのです。公的医療機関のあり方として、もうからない病院をやめていくと、こういうふうなことがはたして許されていいものかどうか。もうからないところこそ、国が費用を注いで、その地元の国民に対する責任を果たさなきゃならない。この例はたくさんあります。埴生の問題のときだって、だんだん患者が減ったから病院を閉鎖をする。減ったのではないのですよ。ストップするのですよ。病院を出ていきたくない者は強制命令で退院を強要しております。さらに最近は、和歌山の国立病院で、これは廃止しようとしているでしょう。それに対しても、患者が入院を申し出ても、厚生省の方針がやめる方針だから、患者の入院をとめているのです。例を出せとおっしゃるならば、幾らでも出します。それから最近になっては、患者に対して命令退所を強要いたしております。これで一体厚生省医療行政に対してどういう考えを持っていらっしゃるか。私どもはとてもたまらない気持です。この三十日には和歌山病院を廃止することについて、あるいは労組の代表とか、あるいは患者代表、それに厚生省からはおえら方が行って会議をお持ちになるということも聞いております。それに対しては上部団体は入れない。こういうことで、何でもかんでも力でもって、権力でもって、廃止しようときめた以上はどこまでも廃止するのだ、こういうやり方なんです。これではたして公的医療機関としてのやり方が許されることでございましょうか。私は、もうからないところほど国が責任を持って医療を担当していくと、これでなきゃならないと思いますが、これはどういうわけなんでございますか。私は、こういうところに独立会計制で、それでもうかったところ、黒字のところには整備費が出る、赤字のところは廃止していく、これじゃ問題だと思うのです。それで、医者に来る人がないからやむを得ざることだという、いつも逃げ口をおっしゃるけれども、医者が来ない原因はどこにあるのでしょうか。医者が来ないなら、医者が来るようにするのが私は国の責任だと思う。何でも最後は低賃金というのですか、労働強化ということですか、医者も看護婦も、今の俸給でへんぴなところへ行きたくないのはあたりまえだ。行けるような対策を立てないで医者が来ないからやれない、患者が少ないからやれない、こういうやり方が露骨に現われておりますので、これらに対して今後のあなた方のお考えをまず聞かしていただきたい。私は日赤病院に関しても幾つも資料を持っておりますが、きょうは委員長が時間がない時間がないと騒いでおりますから、いずれこの問題は、これからあとじっくりと検討していきたいと思います。  まず、国の医療のあり方についての御決意のほどを伺いたい。看護婦の定員が足りないのはわかりきっているのだから、これをどういう方法で解消しておいでになる方針であるか。  それかららいの療養所なんか特にひどい。医者が半分もいないところがたくさんあります。保健所に医者のいない保健所がたくさんございます。こういうことに対して、看板だけ掲げれば中身がどうであろうとも責任は果たしているのだ、こういうあり方に見えますが、保健所の医者をどうして埋めるのか、看護婦の過重労働の問題をどう解消していくのか、公的医療機関としてのあり方、これに対してのお考えを伺いたいと思います。
  83. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 医療機関における医師看護婦の定員が足りないというお話でありますが、医療法では御承知のように、標準として示しております。従って、病院におきましては、必ずしもその標準にとらわれないで、特に重症患者が多ければそこに看護婦をよけいに配置するというふうにいろいろと操作をいたしておるわけであります。はなはだ遺憾なことには、医療法に示したその標準に達してない病院がかなりあるわけでございます。
  84. 藤原道子

    ○藤原道子君 ほとんどです。
  85. 川上六馬

    説明員川上六馬君) その点は医療監視などによりまして指導監督をして、その標準になるべく達するように指導いたしておるわけでございます。私どもの方といたしましては、現在の標準をもっと高くしろというような御意見も多いわけでございますけれども、まず現在の医療法の標準に達しせしめることの方が先だというふうに実は考えています。相模原病院の問題につきましては何とも申しわけない次第でございまして、いろいろと現在原因の調査をさしておるわけでございます。私の口から申し上げにくいことでございますが、相模原病院はかねてから管理状況がよいように聞いておりまして今度の小児病棟は、五十四の定床に対して十六人の看護婦を配っておりまして、その病棟には深夜二人の看護婦を配置しておりまして、その中一人はもっぱら未熟児室の看護に当たらしておったわけでございます。担当の看護婦さんもなかなか優秀な人であると聞いております。今日までの調査によりますと、モーターかヒーターの故障ではないかと考えています。従って、機械の管理につきまして一そう注意しなければならないと痛感しておるわけであります。いずれにいたしましても、二度とかような事故の起きないように、十分注意いたします。  それから、もうからぬ病院は廃止をするというようなことをおっしゃいますけれども厚生省としては、さような考えは毛頭持っておりません。御指摘がございましたような和歌山病院あるいは埴生療養所というようなものは、これは現在の医療需要の面から見まして存続する要がないと考えています。和歌山病院などは非常に立地条件が悪うございまして、外来患者もほとんどありません。そして、付近には適当な医療機関があるのでございます。そのような次第ですでに昨年の一月に廃止のことを通知しておったわけでございます。御承知のように、国立病院は終戦後軍等の施設を一応国が引き継いで経営してきたのでありまして、地方医療の需給の面から見まして必ずしも適当なものばかりではないわけでございます。その後もまたその付近に近代的な医療機関がだんだん整備されてきておるわけでございますから、その地方におけるそうした医療機関の整備状況などを考えまして、むしろ統合した方がいいものは統合し、また拡充すべきものは整備する考えでございます。しかし、もうからないところだからやめるというような考え方は決して持っておらないということを重ねて申し上げておきます。  それかららいの療養所などにはなかなか医師が得がたいのでございまして、この点に対しては非常に苦慮をいたしておるわけでございます。医師待遇も近々だいぶ改善される見通しでございますので、一そう医師の確保につきましては努力をいたす所存でございます。
  86. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  87. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記を始めて。
  88. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は問題ができてからまことに遺憾であるとか何とかいって、いつもそうなんです。相模原病院は管理はいい病院だというのなら、これはもっと問題が大きいと思う。管理のいいところでさえそうでしょう。この前どこかで赤ちゃんをお湯でやけどをさして殺したところがございましたね。これも国立病院だった。そのつどこういうことは二度と起こしませんとおっしゃる。で起きればまたそういう。大体医療に対しての熱意が足りないですよ。それかららいの療養所の医者が足りないというので苦慮すると——らいだけじゃないですよ。結核療養所でもそうです。保健所だってそうです。一体、これはやる意思があるかないかが問題だ。まあ、今委員長からの注意がありましたが、結局は、もうからない病院は廃止する意思は毛頭ないとおっしゃるけれども、現実にはそうなってきているのです。逃げ口上ですよ。  それからもう一つ伺っておきたいのは、病院ストの起こる原因がわかっておりながら、これに手がつけられない、起きれば、これは労働省関係だ、こう言うけれども、その起こる原因になっておる看護婦の問題、待遇の問題、これらに対してどう考えるのか。争議になった形だけの問題は労働省だとおっしゃるけれども、それじゃ済まないですよ。起こる原因の解決をどういうふうに考えているのか。それだけ聞かして下さい。
  89. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 今度の争議が起こる原因につきましては、病院が封建的であるとか、賃金が安いとか、あるいは労働がきついとか、いろいろ言われておりまして、私どもも施設者側に対しまして、さようなことのないように注意をいたしてきております。私の通牒にいたしましても、さような点も指摘いたしておるわけでございまして、むろんそういう面の改善をし、あるいはさらに、先ほどもお話しございました医療行政医療制度に対する御批判に対しましては、謙虚に耳を傾け、漸次これを改善して参らなくてはならないと考えています。幸い、医療制度調査会も開かれていますので、その御意見も十分尊重して、根本的な改善をはかる所存でございます。そしてこのことがストの根本的な解決策ともなると思うわけでありますが、それには相当の時日を要することでありますので、さしあたっては、先ほどから、労働省などから申されましたような方法によって当面のストの解決をはかって参りたいと思うわけであります。
  90. 坂本昭

    坂本昭君 おそらくこうして見てみますと、与党の方もだいぶ不服のあるような顔をしておられますよ。今のような医務局長の熱意を欠いた答弁では、われわれの委員会、参議院の社会労働委員会は今の厚生省の熱意を疑います。これは当然次の特別国会でも、日本医療をよくするために徹底的に追及いたします。  で、先ほどの相模原の病院の問題につきましても、あなた方みたいに熱意を欠いた方におまかせするわけにいかぬから、われわれとしても、あとでよく検討して調査に行きます。  それから和歌山病院につきましても、あなたの言われることと実際と違うならば、われわれとしても遠路遠しとせず、おもむいて、そして実際に当たってみる、そういうことをわれわれとしてもせざるを得ません。そのことを申し上げて、最後に、これは労働省にも、厚生省にも注文ですけれども、今度のストで、普通の新聞は、大体看護婦さんに非常に同情的な記事が多いのであります。ほとんど、非常に珍らしく看護婦さんに味方している。ところが、たまたま記事の中で「赤ちゃんが死ぬ暗い争議の余波で」というような記事が一つありました。これは非常に問題だと思ってこまかく読んでみました。読んでみたところが、記事としてもこれがストライキのために受け付けてもらえなくて死んだのかどうかについてはかなり言葉を濁しております。濁しておりますが、記事としては「赤ちゃんが死ぬ暗い争議の余波で」大きな見出しで書いてある。そしてまた、ストさえなかったら子供は死ななくて済んだのじゃないかというお母さんの記事も載せている。これはどこの新聞かと思って見たら日経連タイムスであります。日経連タイムスがこういう記事を書いている。私ははなはだこれは不都合だと思います。もしこれがほんとうならば当然三十六条の適用をわれわれ考えなくちゃいかぬし、われわれとしても病院当局並びに組合の人たちに忠告せにゃいけないのですね。こういう記事がしかしどうも故意に出されたのではないかと疑われる点があるということ、これは三十五年十一月十七日の日経連タイムスであります。で、一度調べておいていただきたい。むしろ問題は待ち時間三時間それから診療二分という言葉があるのです。三時間も待ってたった二分しか診察してもらえない。結局患者さんは待たされておってそこでかぜを引いてしまったり、いらいらして血圧が上がってしまったり、患者さんの被害は病院ストよりも、むしろ現在の医療そのものの実態の中にある。私はそういうことをむしろこの際は強調する必要があるのじゃないかということが一つ。それからさらにこれは先ほどもちょっと触れましたが、今度は病院ストについて新聞は非常によくこの実態を伝えていますが、今までは平穏に一応事故なく過ぎてきている。先ほど厚生省の方ではあまりやりたくないのだけれども、どうもだれかがやらせている。そういうふうな感じの発言が少しあったように感じましたけれども、私は何も私たちも病院に行きますけれども、われわれが、これを指導したりなんかしているのじゃ決してありません。むしろ今まで押えられてきた不満が爆発してきている。これに対して警官の介入が比較的多いということ。そして先ほど私はその具体的なことを武蔵野日赤の例を申し上げましたから、これ以上詳しく言いませんが、日赤の本社から各病院に対してスト権確立後における緊急処置についてというような指令が回っております。その文書の写しを私ちょっと見たのですが、それには県の警備課、市の警察に事前あいさつするように、そういう指令までなかなか懇切丁寧に回しておるのであります。これはまあどこまでが、私は本社の言い分を聞いておりませんが、こういう病院ストに対して自分の非をたなに上げておいていきなり警察を入れていくとか、まあそういうことについては労働省厚生省も十分慎重に戒めていただきたい。  さらに最後に一点、日赤の今度のストの問題で日赤の経営状況をちょっと調べてみた。そうしますというと、昭和三十四年の決算で、九十九の病院のうち赤字が十五病院であります。黒字が、その他の八十四で、赤字の病院の合計が一億二千三百四十万、黒字が四億六千八百万、差し引き三億四千万円くらいの黒字の経営をやっておる。あるいはまた、同じく問題になった女子医大が、七千万円程度の黒字であると伝えられます。これらのことは今後この問題を扱っていく上においてやはり相当な関係が出てくると思います。しかし、これらの資料の取り扱いについては当委員会としても十分慎重でなければいろいろ誤った結論を出すだろうと思う。従ってこの際特に厚生省からこういう問題の病院についてはそういった資料を整備させる、そうしてこの委員会で十分その病院当事者の意見も聞きたいと思います。そうして公的医療機関だけではありません。私的の医療機関についてもできるだけそういうデータをそろえてそうしてそれをわれわれとしては参考にして病院経営というものをどうするか、その中で労務管理をどうするか、そういうふうにこれから当たっていきたいと思います。どうか今の日赤その他の公的医療機関の問題については委員各位の御賛同もいただいた上で、これは次の特別国会なり、通常国会で十分検討して、そうしてわれわれとしても今後引き続いて全国的な病院ストが起こってきたのでは大へんな問題でありますから、十分われわれとしては審議を尽くしていきたい、そう思っておりますので、今若干最後に申し上げた点、十分お含みの上、労働省厚生省、それぞれ御努力をお願いいたしたい、そう思います。   —————————————
  91. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それでは小柳君。
  92. 小柳勇

    小柳勇君 私は去る九月二十日に発生いたしました豊州炭鉱の出水事故について質問いたしたいと思います。  去る十月十四日のこの委員会で私は次のような点を質問いたしましたが、まず初めに、その原因、それからこれに対する調査をいかようにやられたかという点。それから今後の対策及びその横に、中元寺川の横に発生いたしております新庄地区の家屋倒壊及びこれに対する補償問題、そういうものを主として質問いたしましたが、これに対しては調査なお不十分であるということで私は調査を依頼するとともに、資料の提出を求めてこの前の委員会質問を保留して今日に至っております。きょうその資料を通産省並びに関係省から提出していただきましてこれを拝見いたしましたが、その資料を読みながら重要な点を質問していきたいと思います。  まず第一は、事件のその後の経過でございますが、六十七名の埋没者があった。その死体を収容するために豊州炭鉱では相当の人手をかけて、死体収容にかかっております。同時に中元寺川の方では、川底の陥没を復旧するための作業を急ぐとともに、中元寺川の横の新庄地区の倒壊家屋の方たちの救済に当たっておるのでございます。通産省として今日までその後の、この前の委員会の後のとられた措置と、それから今後の対策についてまず冒頭御説明を願いたいと思う次第であります。
  93. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) その後の豊州炭鉱のいろいろの仕事の内容でありますが、坑外関係——坑の外でございますが、坑外関係の方は石炭局長から御説明願いまして、私は主として坑内関係を御説明申し上げたいと、かように考えております。坑内の方はもちろん現在やっておりますのは遺体の収容作業でございます。現在大体現地から報告がきておりますのは、百九十名前後の人間を当てておるという報告を受けております。しかし、私ども東京で判定いたしておりますのでは、作業の個所が非常に制約されておりまして、大体三個所で取りあげ、排水、仕繰りという作業をいたしておりますので、少し人数が多いのではないかという気持はいたしておりますが、現地からの報告では、坑内は大体百八、九十人からかかっておる、こういう連絡を受けております。もちろん作業の内容は四番交代で、普通ですと、一番よくやって、三交代というのをとっておりますが、特別に四交代制をとっております。それで排水の、現在のところは坑口から約四百五十メートルぐらい、災害当時はほとんど坑口すぐ近くまで水が参りまして、ほとんど全坑水没というような状況でありましたが、現在はとにかく最大のスピードで排水作業をいたしておりまして、現在坑口から四百五、六十メートル、大体四百五十メートル前後のところまでいっております。現在の状況では、私どもの考えでは、作業個所もかなりふやせるというような状況もありますが、だんだん深くなって参りますと、いろいろな関係で崩落の個所も、内容も大きくなるのではないか。従って、現在までの進み方ですと、災害を起こしましてから、坑内の取りあげ作業にかかりましてから大体一月平均三メートル半から四メートルくらいの早さで進んでおります。しかし、これから先の見通しとしましては、むしろ少しよけいかかるんじゃないか。これは数字で申しますと、今までのような進み方がなかなか困難ではないかという気持もある程度持ち得るのでございます。現在のような進み方で参りましても、まだ千八、九百メートルございますから、今の計算で参りますと、一年半からあるいはそれ以上かかるのではないか、非常に実は憂慮いたしておるわけでございます。しかし、収容作業につきましては、絶対に消極的な態度をとらぬように、少なくとも現状の方向を完全にとるようにということは、すでに先月末、厳重な通告を監督部長あてにいたしておりまして、現在の山の作業が少しでも消極化するというような事態が見えましたら、直ちに本省に連絡をとるようにということは言っております。作業個所の関係から、現在の人員はむしろ多くて、数字が少し違っておるんじゃないかというくらいに私ども考えております。これは御承知のように、坑道は非常に狭いところで、余分の人間がかけられないのであります。おそらく現在の人員では最大級の収容作業をやっておるんじゃないか、かように東京では見ております。現地でもこれ以上は困難だという見方をいたしておるのであります。従いまして、この作業が人員が減ったり、あるいは鉱業権者の考え方が消極化するというような事態が起こりますれば、直ちに私の方から現地に申し入れをしたい、かように考えておるわけであります。その他、ことに坑内は今までのところは、かなりバレもひどくて一日三メートル半から四メートルというのをもう少しスピード・アップをしたいわけでございますが、現状では、監督部長からの連絡では、これ以上早めるということがなかなか至難であるという連絡を受けております。従いまして、こんな程度で進みまして一年半、もっとこれを早い期間に収容さしたいという気持はやまやま持っておりまするけれども、現状といたしましては、いかんせん、この程度の作業を継続する以外にはないのじゃないか、かように考えております。坑内の状況としましては、大体以上の通りでございます。
  94. 今井博

    説明員(今井博君) 私から、坑の外の関係について、その後の経緯を御説明申し上げます。  坑の外の問題は、御指摘のありましたように、中元寺川の陥落しておる川底の問題と、それから第二には、田川地区のガスを吹いておる、それから、第三番目は、豊州炭鉱のちょうど上に当たります川崎地区の家屋の鉱戸、復旧、この三つに分かれるわけであります。  第一の、中元寺川の川底の陥落の問題につきましては、現在臨時石炭鉱害復旧法——臨鉱法を適用いたしまして約千八百万円の予算で、現在復旧の作業中でございます。この工事は、おおむね順調に建設省が中心にやっていただきまして進んでおりまして、十二月の上旬にはほぼ完成する、こういう見通しになっております。  それから第二の田川地区の消火の問題並びに鉱害の復旧の問題につきましては、これは先ほど委員会においても御説明いたしましたように、炭層が燃えておるという、この火を消すことは非常にむずかしい問題でございますが、さっそく現地の通産局に消火の対策委員会を設けまして炭鉱のいろいろベテランに集まっていただきまして、現在までに約三回この委員会をやっていただきまして、現地を二度調査をいたしました。その結論が一応四、五日前に報告がございまして、それに基づきまして、現在、川の横の火の元になっておる地帯に現在斜坑を一本おろす掘採をいたしております。それからさらに、火気を少し減少する意味で、縦坑を川の横に一つ掘りまして、火気がひどくならぬように手当てをいたしております。これはさらに詳細に申し上げますと、最初は、この調査委員会がさっそく現地におもむきましたときは、非常に従来のように、ガスがふえておる何が非常に減っておりまして、委員会の大体の空気はほとんど消火しておるのじゃないかという実は意見が圧倒的でございまして、ほっておいても火が消えるのじゃないかという意見も一部にあったくらいでございましたが、その後第二回の調査をいたしましたところ、やはり火がまだなお燃えておるということでございまして、しかし、初め想像いたしましたよりはその火の地帯は割合狭い。約四十メーターから六十メーターぐらいの縦横の面積の土を掘り起こせば大体いいのじゃないか、こういう見解でございまして、現在御承知の川のすぐわきの土を掘り起こしまして、そこから斜坑を一本おろしておりまして、もう少しで着炭するのではないかと思います。これの作業は、現在田川市が作業の主体になってやっておりましてもう少しすればこれについての消火の大体の方法並びに金額等については、はっきりいたすのじゃないか、こう考えております。はなはだこれが遅延いたしました事情につきましては、われわれとしましては現地に一日も早くその方法と金額を早く知らせてくれということを再三現地に連絡をいたしておったのでありますが、まず第一に、最初調査が割合火が消えかかっておるという委員の意見が圧倒的でございました。それと、やはり田川市がこの消火に当たるにつきまして、相当大きな金額になった場合に田川市が相当大きな負担をするのでは困るという金額の問題につきまして、非常に態度が消極的であったということがからんでおると思いますが、幸いにしまして、現地の報告が到着いたしまして、もう少しすれはそれの実態がはっきりいたし、われわれとしましても、それについての予算措置も十分講じられると、こう考えております。  それから田川市の鉱害の問題がさらにございますが、これはその消火が済みましてからこの家屋の復旧等については臨鉱法の適用をいたしまして、これは先ほどの川底の陥落と同じように無資力認定という臨鉱法六十六条を適用いたしまして、これは国の予算並びに地方庁の予算でもって復旧する。で、これは一応予算の見通しをつけております。  それから第二番目の川崎地区の鉱害の復旧の問題につきましては、これはまだ現在水を豊州炭鉱ではくみ上げておりまして、鉱害がまだ安定していないということもございました。しかし、最近ではほぼこれの鉱害も安定しかかっておるのじゃないかと考えておりまして現在、これは先ほど申しました臨鉱法の六十六条ではなくて、一般の鉱害といたしまして鉱業権者に現在交渉中でございます。まだ鉱業権者の同意を得るまでに至っておりません。  以上が今日までの被害の復旧の状況でございます。
  95. 小柳勇

    小柳勇君 保安局長に重ねて質問いたしますが、死体収容のためにあと一年半以上の期日を要するし、しかも百九十人ぐらいの作業人員が働いておるようでありますが、もちろん豊州炭鉱の方として今現在やっておるのですが、その責任を明らかにしないで、だれの責任かということをまだ明らかにしないまま、豊州炭鉱は自分の坑内の埋没であるので死体を収容しておると思うわけです。そういうようなわけで、しかも豊州炭鉱はもうあれを整備事業団に売って出炭はやっておらないと承知しておりまするが、今後のこういうような費用については一切会社が負担して、死体収容まで責任を持ってやるということについて会社の方から意思表示したものであるかどうか。お聞きしておきたいと思います。
  96. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) もちろん現在の豊州炭鉱の坑内の死体の収容作業、この作業について最後までやるという意思表示をもちろん鉱業権者からは得ておりません。そこで先ほど触れましたように、法的には強制する条文はないわけであります。しかしながら、まあ徳義上、自分の炭鉱で働いておった者がなくなっておるわけでありますから、鉱業権者は一応収容作業の方向を強力にとっていただく、そういう方向になるわけでありますが、現在、幸いにして鉱業権者といたしましては、私どもの考えておりますスピードで収容作業を続行いたしております。従ってこの作業をやめたり弱めたりするような場合がもし出ますれば、もちろん政府側としても能動的に出ざるを得ない、また、出なければならぬとかように考えておりまするけれども、まあ現在、私どもが考えておる最大の方法をとってくれておりますので、その事情につきましては、監督部長に十分注意させて、注視をさせまして、適当な時期には、現地も見ておりまするし、事情が変われば直ちに連絡するようにということは言ってやっておりますので、まあ了承は得ておりませんけれども、おそらく続行してもらえるものとかように考えております。これはおそらく炭鉱側でも、左部の方の人間は連絡がつきまして一応退避の態勢をとっておりますので、死体があるいは上部の方に相当おるのではないかという懸念もございますので、従って、会社側としても非常にその点力強く考えて収容作業を続行しておる。かような点も考えられますが、もちろん右部の方は連絡がつきませんから、これはもう作業個所そのままでおそらくその場でなくなっておるというような関係で、この辺の死体はもうおそらく非常に困難になるのじゃないかというように考えておりますが。幸いにして左部は避難の態勢をとったという点で、炭鉱側も放棄するには耐えられない実情にあるのではないか。しかし、もし今後炭鉱側で放棄するというような事態は、私どもはもうないと思っておりますし、ないものと期待をいたしております。もしそういった事態が起こりますれば、私どもといたしましてもでき得る限りそのときの情勢によって適当な判断をいたしたいと、かように考えております。
  97. 小柳勇

    小柳勇君 原因の問題についてはあとで質問いたしますけれども、通産省として、鉱業権者の責任でなくとも、その死体、自分の山に埋没死体があるのだから、六十七人出すのは義務であるということで、通産省としてそういう強制をするだけの権限はどこから出るのでしょうか。
  98. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) ただいま触れましたように、法的に強制する条文はないのであります。従ってもし鉱業権者が放棄しましたときに、放棄してはいかぬ、続行すべしということはできないわけであります。しかし、徳義上、鉱業権者として自分の使っておった、雇用契約のある労務者が坑内でなくなっておるわけでありますから、よほど収容作業それ自体が危険をはらんでくるとか、何がしかの新しい事情が出てこない限りは、徳義上からは当然収容すべきであるし、また、われわれも収容してもらえるものと、かように考えておる次第であります。
  99. 小柳勇

    小柳勇君 考えておられるのはけっこうでございまするが、これから石炭産業の将来についてもまだはっきりした見通しもつきませんときに、一年半なり二年というような長い歳月をかけて六十七名の死体収容をやってもらわなければなりませんが、もしそれを放棄するというような場面になることも予想しなければならぬが、そういうような死体収容の作業などについては、特に政府として費用の問題などについて考慮するというようなことについては、全然まだ論議されておらないのかどうか聞いておきたいと思うのです。
  100. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 死体の収容を国でやるという点につきましては、実はもうかねがね考慮いたしておるのであります。実は一昨々年ですか、東中鶴炭鉱でも、もちろん現在では出ておりませんけれども、十八名やはり出水で埋没いたしました事故があったわけでありますが、このときにも、国会でも国で持つべきじゃないかというお話が出たわけであります。で、私どもも当然いろいろのケースを検討いたしてみたのでありますが、これは非常にケースが、いろいろなケースがありまして、国で持っているという事態ではありませんけれども、持たざるを得ないような結果になっておるものもありますし、全然持っていないものもありますし、これはまあ山の遭難、飛行機の遭難、船の遭難、もういろいろなケースがございます。死体が全然取り出せないというような場合がございます。最後まで取り出せない場合もあります。ただ、炭鉱の場合で一番切実に考えられますのは、坑内におることがはっきりわかっておるのであります。ほかにはもう行かない、坑内ははっきりもう図面でわかっておりますから、この辺にいるということがあまりに明瞭にわかっておるために、それが収容できないということはあまりに残念でありますが、これはもう場合によりましては相当な経費がかかるわけであります。豊州炭鉱の例をとりましても、坑口から二千数百メートルございますから、ざっと計算いたしましても二カ年くらいでまあ億という金がかかるわけであります。従って、場合によりましては、特に炭鉱が中小の場合、たとえば東中鶴のような場合には租鉱炭鉱でありますから、炭鉱自体の寿命が五年以上はないわけでありますから、東中鶴炭鉱の場合はたしか災害のときから一年何カ月しかなかったと思います。そういうふうに炭鉱自体がもう消滅しなければならぬというようなケースがあるわけであります。そこで、国に出せと申しましても非常に大きな金の場合がある。たとえば北海道あたりで、これは人数が少ないのでございまするけれども、一、二名爆発で死体の出ないのがございます。こういうのが非常に坑道も崩落し密閉もしてしまって、それを取り分けて収容するというのは大へんな金額であります。そういうような場合に、是が非でもやれということを鉱業権者に申しましても、もちろんできない場合がございます。そういう場合にはそのときの情勢に応じまして適当に——適当に処置をつけるというと非常に表現は悪いかもしれませんけれども、そのときの情勢によって適当な措置、方法をとっておるのであります。  国でやるという点につきましても、いろいろ検討してみましたけれども、しょせん地方公共団体でやっていただかざるを得ないのであります。この辺にかなりのいろいろな難点がございまして、いまだに結論を得ないような実情にございます。
  101. 小柳勇

    小柳勇君 国の方では今のところ金を出せないが、とにかく炭鉱の方で道義上やってもらうという方針でいっておられるようであります。しかも今度は国でやるとすれば、いわゆる国でなくて地方公共団体でやらなければならぬということでございますが、現在としてはそういう方針でございましょうが、将来の問題については、なおこれは後日の問題として私は論議してみたいと思います。  次の問題は、これに関連しますけれども、原因についてこの前質問いたしましたところが、川底から——川底が陥没いたしまして、そこから水が入ったことは明らかであるけれども、その古洞の存在などについては十分資料がなかった、明らかでなかったということであった。ところが、週刊誌に永井渡という人が、以前からわかっておった、ということであるので質問いたしました。ところが、それによって資料が出ておりますが、供述書では広い範囲の古洞の存在については供述をしておらないわけです。そういたしますと、中之寺川の川底の陥没など、そういうような古洞の存在については一切わからない。あの辺についてはまだわからない。調査は現在やっておられるようであるけれども、そういうようなものはまだ明らかでない。こういうことでございましょう。
  102. 今井博

    説明員(今井博君) 古洞の調査につきましては、これは石炭局で毎年予算をいただいて調査をいたしております。今御指摘のありました永井渡氏の関係の古洞につきましては、お手元にさし上げました供述書の通りでございまして、その他の古洞、これはあの辺に古洞があるということはいろいろ言われておりまして、特に新庄地区、もう少し中元寺川の上流の方でございますが、そこに新庄地区——そこは現在企業合理化事業団がその炭鉱を買い上げております。そこの方から豊州炭鉱の方につながっておる古洞というものがあるということは、これはおぼろげながら知っておったのであります。川底にいっておるこの古洞については、実は全然発見できなかった。こういう状況でございます。
  103. 小柳勇

    小柳勇君 新庄地区の鉱害について現地から陳情が出て、福岡の通産局なり、こちらの本省の方にも何回かの陳情なり交渉が続けられておるようです。ここに日づけでずっと追って書いてございますけれども、六月四日から請願書が出されて、六月七日には石炭事務所に対して鉱区の決定方を依頼し、六月九日には福岡の通産局の保安部山口監督官及び田川石炭事務所大平氏、豊州炭鉱調査のため来市し、六月十二日には三世帯十五名が避難命令が出て地区公民館に収容されておる云々といわれています。陳情なり避難命令など出まして、その事件が発生いたしました直前、九月十四日、市長、総務員九名通産局に出向、現状を詳細に説明、警告、こういうようなことで日を追ってずっと出ているわけですね。それにもかかわらず、本省なり通産局の方のこれの受け取り方が非常に鈍くて、切実な現地の恐怖心というようなものが、通産局担当官としては非常にこれを鈍くとったような印象を受けて、それがああいうような六十七名死亡というような大きな事件に発展したような気がしてならぬのですが、これについての当局、保安局長なり石炭局長見解を聞いておきたいと思います。
  104. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 私の方の現地機関である監督部といたしましては、通産局で受けました陳情の内容が、大体鉱害の問題でありまして、しかも井戸の温度が熱くなり、非常に高くなって、飲料水としても使用しかねてきている、こういった実情の陳情のようでありまして、私も拝見したのでありますが、そういう関係で、おそらくあの辺の炭層に火災を起こしているのじゃないかという観点から、通産局に陳情の回って参りましたものを、監督部長が受けているわけであります。たまたま監督部長としましては、山口監督官があの辺の監督に巡回いたしておりましたので、さっそく連絡をとって現地の調査をさしたわけであります。その報告が、この提出の書類に内容が詳細に載っているわけであります。ただその報告によりまして、監督部長としましては、豊州炭鉱の坑内とも関連を持っている、明らかにガスなり蒸気なりが、その川向こうの亀裂個所から、豊州二坑の坑内の方に漏れてきているという点も、はっきりと調査いたしておりますので、従って豊州炭鉱の坑内の処置につきましては、もう明らかに旧坑との関連を強化するようにという通達書を出しております。その通達に従って監督官もそのあとを見まして、トレースしまして、はっきりガスの漏れもない、これでよろしいというもちろん計画書もとり、そのあとでき上がった完成届のあと、監督官も現地調査をしまして、これならよろしいという点をはっきり確認いたしているわけであります。  それから今の火災個所につきましても、まあ密閉するようにという通達を出しまして、この密閉も当時としましては完全にできているという監督官のトレースの報告を、部長としては受けているようであります。そこでガス関係につきましては、その亀裂を、どうして関連があるかという点については、非常によく私はやっているのじゃないか、ただ結果からみまして難点をつけるならば、水の点をなぜそのときにもう少し考慮できなかったかという点が残るわけでありますが、これは結果からみますと、そういう点考えられないことはないわけでありますが、監督部長としまして、なぜその採掘跡の水——川がその間にありますから、水の点を考えなかったかという点につきましては、私は三点指摘することができるのじゃないかと思いますが、これは川底がごく浅い、あれは陥没してしまった跡を見ますと、ほんの一、二メートル、すぐ真下といってもいいぐらいに、その近くまで炭層が採掘されております。しかしながら、それは結果として初めてわかったのでありまして、当時としましては、もちろん採掘の申請がありましても、川底五十メートル以内は鉱業法上からももちろん認可になるはずはない、これは常識としてだれも考えられることでありますし、たとえ申請があっても認可できない。ですから掘るはずがない。それがまあ一つ、鉱業法上の観点から掘られてないのじゃないか。それから通産局に坑内実測図というものがありまして、各炭鉱から採掘跡の坑内の実情を詳細に報告してくる、提出してくる書類がございます。この坑内実測図につきましても、川底は掘られてない、そういう図面にはっきりなっておるのであります。それからもう一つは、今の石炭局長も申しました古洞調査というものがすでになされて、そのときにも川底直下の採掘跡については実情の発見ができなかった。この三点からしまして、現地の部長としては、あの川底の直下が掘られておった、従って、水の危険性があるという断定は私は少し無理じゃなかったか。逆にこれを横田監督部長の判断としては、水の点は比較的安心してそしてガスの点は逆に吸い込んでおる現象を見まして、これは厳正にやらなきゃいかぬというので、この提出報告書のようにかなり厳重にやっております。計画書もとりましてその観測もやらしておりますし、それから完了届けも出させ、そしてそのあと監督官によってトレースさせて確認させております。まあこれだけやってもらえれば非常にけっこうじゃないか。ただ、まあ難点をつければ、先ほど触れましたように、結果から見て水の点をもう少し考慮できなかったかという点に、幾らか結果から見て疑問が残るということで、現地の処置としましてはかなりにできておったのじゃないかと、かように考えております。
  105. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、結局は横田部長が二十日の日に言われたように、あの被害というものは不可抗力であった、こうとしか結論づけられないわけですが、そういうようなことで認定されておるのですか。
  106. 小岩井康朔

    説明員小岩井康朔君) 原因につきましては、この前の委員会でもちょっと触れましたが、表面的な原因は非常に簡単なんであります。川底が陥没したために川の水が坑内に流入しておる。しかし、川底がなぜ陥没するに至ったかというその原因につきましては、ただいまも報告がありましたように、火災を起こしている点がかなり問題なのであります。また私どもは実情はわかりませんけれども、話によりますと、何回も爆発をしたように聞くわけであります。これも事故が起こったあとに聞くのですが、この前の六月に調査に参りましたときに、お話では、監督官は聞いておるようであります。従って確認はできておりませんけれども、何回か小爆発をやったのではないか。おそらくどの程度の爆発かわかりませんが、大きい爆発でないことははっきりわかりますけれども、小爆発をやったのじゃないか。これは一応考えられます。この爆発の影響によってあるいは起きたかもしれぬということが当然考えられます。あるいはまた、直下が掘られておりますから長い間にだんだんと亀裂ができたり、水が漏れば、その水が長い間にはだんだんその道が、水道が大きくなりますから、何年かたってちょうど水かさの多くなったときに破れたのか、この辺の原因究明になりますとなかなか簡単に参りません。非常に技術的にいろいろな点も考慮しなければなりませんし、従いましてこの前の委員会で原因についての要求がございまして、直ちに監督部長にも当然原因の調査をやっておるわけでありますから、さらに入念に一ついろいろな面から原因を究明するようにということを申しつけてございます。しかし、いかんせん非常にむずかしい素因がたくさん含まれておりますので、まだ返事をもらっておりません。で、まあこの委員会のあることも聞きまして、すぐ督促はいたしておりますが、現地といたしましても早急な解答というものには非常に苦慮をいたしておるのではないか。かように考えておりますが、政府として、原因はこれこれであるというふうに断定はまだいたしておりません。
  107. 小柳勇

    小柳勇君 その原因についてもうすでに三カ月ですか、たっていますね。十、十一月と、二カ月半ですから、まだ調査中だと言われれば追及のしようがございませんけれども、さっきの六十七名の死体収容に対する通産省の強い御見解を聞くというと、まあ古洞にも相当の責任があったのではないか。鉱夫にも責任があったのではないかということを感ずるし、その後の古洞の話を聞きますというと、鉱夫の方の責任はないと、こうわれわれは迷わざるを得ぬわけです。われわれは鉱区の鉱害の問題については専門家でないのであなた方の言葉を信頼する以外にありませんけれども、まず第一は、そういうのが再び起こりませんようにあの原因を追及することが第一の必要なことではないかと思うわけです。従って、今調査中であるといたしますならば、これを督促されまして、この際これが長くなりますと、また、調査もなかなか困難になりましょうから、この際その原因について徹底的に追及してもらって、再びそういう事故が発生しないように考慮願いたいと思いますが、関連して、川底五十メーター以下は掘れないにかかわらず、あれを見ますと、非常に浅いところに掘っている。しかもあの盗掘の、永井渡氏の掘ったところの近辺なんです。この永井渡氏の報告を聞きますと、掘ったあとには充填をする、そして経営者側の係員が立ち会いの上、当事者永井渡氏の自費で行なう予定と書いてありますが、それが出ましたあと、そういうような掘ったあとの空洞に対して充填を確認されたのかどうか。これに書いてあるわけですね。係員立ち会いの上永井渡が充填を行なうと書いてある。この充填が確認されているのかどうか。これを聞いておきたいと思います。
  108. 今井博

    説明員(今井博君) 永井渡氏の盗掘のあとの措置でございますが、これは現場のところはもちろん係官が行って十分調べておりますが、これを充填いたしましたときは、これは鉱業権者にそれを約束さし、鉱業権者がさらに永井渡氏にこういうふうにして充填しろ、それを永井渡氏が承諾して誓約書を入れたという形になっておりまして、実際に充填した、そのときにはわれわれの方の係官は行って立ち会って確認はいたしておりません。
  109. 小柳勇

    小柳勇君 さかのぼって、ここで非常に記憶は薄くなりますので何ですが、今言っておかなければなりませんが、この間の週刊誌を見ましても、永井渡氏は、自分の責任はない、自分が掘ったのは云々だと言って、しかもあの辺の古洞がたくさんあったのはわかっておったと言っている。ところが、上田清次郎さんの方としては、あれは盗掘があったから川底が陥没したのだという論争が出ております。従って今われわれが追及するとするならばそういうような論争があった、しかも十月十四日にはこの社会労働委員会であれだけ問題になったのでありますから、そういうような、ここで発言されたものについて当然通産省として保安部、保安局なり、石炭局が原因追及の一資料としてそういうものを使わなければならなかったと思うのですけれども、われわれがここで発言いたしましたようなことはその後何か資料にしておられるのかどうか。調査資料にしておられるのかどうか。聞いておきたいと思います。
  110. 今井博

    説明員(今井博君) ちょっと、あの先生のお尋ねの趣旨がはっきり汲み取れなかったのでございますが、これは古洞の関係につきましては、まあ先ほどから申しましたような事情でございますが、この川底の陥没につきましては、これは一応鉱業権者の、現在の鉱業権者の責任でないということになりました。これは先ほど申しましたように、現行法の六十六条の適用によりまして国の費用で全部やる、こういうことに決定いたしております。それから田川地区の消火の問題、それから鉱害復旧の問題、これは先ほど申し上げましたように、鉱害復旧の方は同じく六十六条の適用によりまして、これは国と地方団体の費用でもって鉱害復旧をやる。こういうことになっております。それから消火の問題は、何らかの形において国の方で費用を出してこれを消そうということになっておりますが、まだその金額等が確定いたしませんので、まだ決定はいたしておりません。  そういう状況でございます。
  111. 坂本昭

    坂本昭君 関連して。  この間、資料としていただきましたこの永井渡氏の出された図面、「本図は真実に相違ありません。」という永井渡氏の図面、平面図、縮尺が百分の一としてあります。これは、その図面、これだけですか。
  112. 今井博

    説明員(今井博君) これだけでございます。
  113. 坂本昭

    坂本昭君 ということは、この右の方にもうちょっと何かあったのじゃないですか。というのは、この図面を見ますと、この家の建坪の図があって、そしてAからFまで——これはAからFまでは大体家に近いところです。ところが、これから右の方に川があるのですよ、中元寺川が。この建物から中元寺川までの距離、私は二、三十メートルじゃなかったかと思うのですがね、現地で。で、この図面を見ましたら、右の方ヘは幾つも古洞の跡が出ているのですよ。当然これを見たらこの古洞がこれからあとどこへ行くかくらいは私みたいなしろうとでもこれを見たら、これは右の方はだいぶ行っているな。あと二、三十メートル行けば川底ヘ行くのですから、だから当然この川の底にこの古洞の続きがあったと私は想像できたんじゃないかと思うのですがね。この家の位置と中元寺川との関係、それから、当時この図面を見たときに係官は川とこの古洞との関係がどうなっているかということを詮議してないのか。さらに、このいただいた資料の四ページです。四ページに、「鉱業権者の意向」というのが書いてあります。これを見ますというと、「当採掘区域は、現在豊州炭鉱豊州二坑の肩部に当り、保安上(通気、排水)重要であるので甚だ迷惑である。」と書いてある。だから、私は、保安上重要ということの意味は一体どういうことなんだろうか。この図面を見まして、私は、ずっと右の方に古洞が続いておったのじゃないかということをすぐ——これはもうしろうとですけれども想像しまして、だからこれはずっと入って行ったらどの辺まで行くか。これは、かなり地表面に近いですから、川底にすぐ、直下にあるということを当時知ったのじゃないか。  それからほかの新聞を見ますというと、これは「週刊労災」という新聞ですけれども、これを見ますというと、こう書いてあるのですよ。「災害が発生する以前に付近の民家にガスが噴出したり、火の立ち上る事実については、鉱山保安監督部もその事実を認め調査している。しかも川底数メートルの箇所に盗掘された古洞を認めているのである。」これは、どういう記者が書いたのか知りませんが、かなり詳細に書いた新聞記事もある。また、この前いただいた資料を見ると、昭和二十八年の七月十二日に真杉熊夫氏の畑が直径三メートル陥没があり——二十八年の七月十二日にこの中元寺川と同じようにぽかっと陥没した事実があるということも書いてあるのです。だから、私は、私のようなしろうとでも、これはもうわかっておったのじゃないかという感じがするのですが、この図面の右の方についての調査をなぜやらなかったか。専門的な一つ見解を承りたい。
  114. 今井博

    説明員(今井博君) 地図は実はほんとうにこれだけしかついておりません。そういう右側から上にかけまして川のあることは事実でございます。それでわれわれもこれは当初非常に不思議に思いまして、さっそくこの当時の現場に行きました係官、これは高尾技官でございますが、現在も福岡の通産局に勤務いたしております。さっそくこの点は問い合わせましたところ、主としてよく検討いたしましたところが、これの斜線が入ったりいたしておりますここは、非常に詳しく見たそうであります。それからそういうところの入ってない、先ほど先生の御指摘のあったところにつきましては、実はこの辺まで行きますと坑道が崩落しておりましてとても入れないということが一つと、それから距離は先生が確かにおっしゃいましたように、三十メートルくらいでございます。それでこのまま行く場合には川底にこれはもうぶち当たるにきまっておる。これは当然この辺で終わっておるのだ。相当、事実崩落しておってとても入れない、こういうことを状況として報告いたしておりました。今から考えますとどうかと確かに思われますが、実際問題として非常に崩落が激しい。それから川底にぶち当たるようなところをとても掘っておるということは常識上全然考えなかったということでございまして、それから先ほど四ページのところに先生の御指摘のありました豊州炭鉱の「鉱業権者の意向」というところに書いてございまする二行目の「肩部に当り、保安上」云々というこの文句でございますが、これは古洞のあるとかないとかということでなくて、一般にこれは炭鉱の経営といいますか、炭鉱の採掘の技術からいたしまして肩部に当たるところはこれは常織上保安炭壁として掘らないで残しておく、こういうことが実は常識になっておりまして、肩部はとにかく保安上非常に重要だ、こういう実は意味合いからこの文句は出ておる。きわめて常識的にそう書いたわけでございまして、決して古洞のあるとかないとかということとは一応ここは無関係でございますので、その点御了承願いたいと思います。
  115. 小柳勇

    小柳勇君 今、石炭局長の古洞の問題もですけれども、さっきの消火の問題ですね。古洞に火がついて消火しているという、消火委員会を作って消火対策を今着々やっておられるようですけれども、この前のときは、消防署の責任かあるいは通産省の責任か、いろいろまだ論議があるということでございましたが、そういうものは論議されたのでございますか。
  116. 今井博

    説明員(今井博君) ちょっと誤解があるかもしれませんが、実は地下の炭層が燃えておる。これは、それを消火する場合に、どういう形で金を出していくかという、金を出す方法といたしまして、これはまあ、われわれが考えましたのは、自治省の特別交付金です。これでもって出していくということと、これはまあ一応市町村が先に消火して、あとで特別交付税で埋めると、こういう方式になるわけでございます。  それから第二の問題は、鉱山保安法ないし鉱害法の適用によってできないか、この二つのグループしか消火については現在まあ費用を捻出する方法がございませんので、どの方法が一番実際的で早いか、こういう見地から実は検討いたしております。金額がたくさんかさばらなければ——数百万円程度の金ならばやはり手っとり早く市町村にやっていただいて、それを特別交付税で埋めたらどうか、こういうふうに実は考えて大蔵省や自治省とも相談いたしまして、そういう方針を決定しておるわけであります。しかし、実際問題としてやり出しまして非常に金額が多くなると、こういたしますと、その範囲でまかなえないことも考えられます。そうなる場合にはやはり別途、まあ先ほどちょっとあげました鉱害法の適用ということも法律的には非常に無理でございますが、また何らかできるのじゃないか、その方面をまだ検討中でございます。一方は金額が小範囲ならば十分特別交付税の範囲でやっていける、こういうことで、われわれの方は、関係各省とは一応見解を統一いたしております。
  117. 小柳勇

    小柳勇君 消火対策委員会の構成、それから費用の問題につきましてはわかりました。  それから上の方の避難住民、それの援護対策、将来の復旧といいますか、将来どういうふうにして生活をやらせるか、そういうものについての答弁を求めます。
  118. 今井博

    説明員(今井博君) 現在避難いたしておりますのは、田川地区の三戸、それから川崎地区のたしか十七戸でございましたかが、現在東洋炭鉱という、現在整備事業団に買い上げられました山の炭住に、現在避難をしていただいております。それでそこから農業に従事される方は、そこから通っておられる、こういう格好になるわけでありまして、非常に御迷惑をかけているわけでございます。これの生活保障の問題につきましては、実はこの前の委員会でも申し上げましたように、費用を捻出する実は方法がございません。それで私も大へん実は苦慮いたしているのでございますが、やはりこれについては、鉱業権者ともいろいろ相談をいたしまして何らかの御協力を得られないかということで、いろいろな方面から実は交渉をお願いいたしておりますが、現在のところは、まだはっきりした見込みがついておりません。
  119. 小柳勇

    小柳勇君 これは社会労働委員会として調査に参りまして、委員長にも相当切々たる陳情がありましたか、すでに半年避難されているわけですが、生活について非常な不安があるわけです。従って、まだ交渉中であるということについては、われわれも不満ですが、具体的にもう少しどういうところで話が進められているか、お聞かせ願いたいと思います。
  120. 今井博

    説明員(今井博君) 先ほど申しましたように、この避難されている方の生活保障、この問題は非常にむずかしい問題でございまして、はっきり申しまして、実はうまい方法がないわけでございます。これはまあ農業に従事されている方は、炭住におられて、そこから通っておられる、こういう形になっております。  それから田川市の地区で相当まあ初めは避難されておったのでありますが、現在では永井渡さんのそばの三戸でありますか避難されまして、農業に従事されたりあるいはどこかへお勤めになっている方は、一応炭住を御利用いただいて、非常に不便でありますが、それで一応やっていくよりしようがない。しかし、その他一般生活保障をどうするかという問題は、われわれもまあ一番苦慮いたしている次第でございまして、これは今までのいろいろな方法から考えれば、やはりその関係の鉱業権者にお願いをして、善隣友好の考え方で何らかの御援助を願うというより方法がないのじゃないかと思います。しかし、現状では御承知のような、非常な大災害のあとでございまして、先ほど保安局長が申しましたように、死体の収容にも非常な日数と金額がかかるという状況でございまして、なかなかそういう問題をいろいろ詰めていくという段階にまだきておりませんので、ここで私の方からこういたしますとこう実ははっきり申し上げかねる、この事情は一つ御了承を願います。
  121. 小柳勇

    小柳勇君 事情はよくわかりますが、あなたを責めるのではなくて、田川の市会としても決議をもって、ここに決議がされておりますが、もう皆さんの手元にも行っていると思いますが、田川の市会としても、これは国の責任であると、はっきり書いているわけですね。前からわれわれは福岡の通産局にも言っておるし、通産局から本省の方にも耳に入っておるにもかかわらず、こういうことが起こった、しかも消火もおくれた。それでさしあたり避難はさせておるけれども、これは国の責任として生活保障をしてくれないか、こういう決議が市会の決議として市長から出ておるわけです。それをあなた方の方としては上尊炭鉱の方に鉱害としてこれを交渉中であるといいますけれども、上尊炭鉱としては六十七名の死体収容のために数億の金を使うでしょう。また、それどころではないといわれる。そうかといってまたあれだけの家族の方たちを生活の見通しもつかぬし、家もないでは、これはいたし方ございませんでは、あまりにも冷たい仕打ちではないかと思いまするが、何か特別な個人的な見解でもあるいはあなた方が局長同士、保安局長と石炭局長と同じであったこともございましょうけれども、もう少しあたたかい決意のほどをお聞かせ願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  122. 今井博

    説明員(今井博君) 川崎地区の方の鉱害の復旧につきましては、まあ鉱害がまだ安定しておらないという状況でございまして、これもほぼ安定しかかっておるということをさっき申し上げましたが、安定しますればこれは従来の鉱害復旧の家屋の予算は相当余地もございますし、ただ、これは鉱業権者の同意を得なければ実は家屋の復旧ができませんので、実はこれから多少時間がかかるのじゃないか、こう思います。鉱害の復旧につきましてはこれは従来の例もございますし、それから田川地区の方は臨鉱法の適用でもって国の費用でやる関係で、これは消火が済めば割合早くできます。ただ、その間の生活保障という問題は、これは私もできるだけの努力はいたしますが、決して冷やかな気持で申し上げておるのではなくて、実は一番私はこれを苦慮いたしておるわけでございまして、できるだけ一つあたたかい気持をもって善処したいと思います。
  123. 小柳勇

    小柳勇君 一つ公共施設の損害が概算百六十八万ぐらいのものが上っておるわけですね、公共施設の損害についても鉱害認定がありませんと損害賠償、損害補償はできないものと理解いたしますが、この点についてはいかがでしょうか。
  124. 今井博

    説明員(今井博君) 公共施設の上水道につきましては、これはさっそくやることにいたします。それから遺跡がございますが、これも陥没個所と大体同時期に復旧いたすつもりでございます。
  125. 小柳勇

    小柳勇君 それから市の道路の補修がございますが、その点いかがでしょうか。
  126. 今井博

    説明員(今井博君) 道路も川底の陥落した場所とすぐそばでございますので、その予算の中に実は入れております。
  127. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、こういうことでございましょうか。川崎の方は、これは鉱害で補償する、それから新庄地区の田川の方は臨鉱法六十六条で補償していくが、今のところちょっと手だてがない。それから公共施設の損害については建設省の川底の建設と同時に国の費用でこれを復旧していこう、こういうことでございましょうか。
  128. 今井博

    説明員(今井博君) 川底の方と川崎地区の方は先生のおっしゃった通りでございますが、田川地区の方は、鉱害の復旧は六十六条の適用によりまして国の費用で復旧いたします。ただ、消火の問題につきましては、まだ方法と金額が実は地方からはっきり出ておりません。これはやることはもう確実でございまして、一部もうやっておりますが、それの費用をどういう形でやるかということはもうちょっとお待ちいただきたいと思います。
  129. 小柳勇

    小柳勇君 それじゃほかの委員質問がございましょうから私は要請をいたしまして、査問を終わりますが、一つは、初め保安局長がおっしゃいました六十七名の死体収容について相当長年月かかるようでありまして、鉱害認定なり、あるいは原因の判定がないのに、道義上今のところはやっている。これを将来とも、六十七名の死体収容は必ずこれができまするように格段の措置ないし指導を願いたいという点、これが一つであります。  それから第二は、火が出るために自分の住居を追われて避難している方たちに対しては、早急に、最も早い方法であたたかい生活の安定を与えてもらうと同時に、その補償についても格段の配慮をしていただきたい。そのための復旧作業については、現状、着々進んでいるようでありますので、これが一日も早からむことを要請する次第でございますが、いずれにしまして、も、六十七名の死体が今日なお収容できないでいるということは、これは非常に悲惨な事故でございますので、格段の配慮を願って、一日も早く死体の収容と損害復旧、生活補償ができますように要請いたしまして、質問を終わる次第であります。
  130. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  131. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それでは速記を始めて。   —————————————
  132. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 社会保障制度に関する調査の一環としての一般厚生行政に関する質疑を議題といたします。
  133. 横山フク

    ○横山フク君 川上医務局長に伺いたいのですけれども、今助産婦の学校は日本全体で幾つあるのですか。
  134. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 現在助産婦の学校は二十六ございます。
  135. 横山フク

    ○横山フク君 生徒数は幾らありますか。
  136. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 生徒数は……。卒業生の見込み数でございますが、三百六十八人です。
  137. 横山フク

    ○横山フク君 一番少ない学校は何人生徒がおりますか。
  138. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 今どこが一番少ないということを記憶いたしておりませんけれども、応募者が比較的少のうございまして、定員にとうてい満たない状態であります。
  139. 横山フク

    ○横山フク君 私の聞いているところでは、応募者の一人もない学校があるように聞いています。それから一人くらいの生徒のあるところも聞いております。国家試験の受験者は一年に何人ありますか、医務局長に伺いたいのです。
  140. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 今正確な数字を持ち合わせませんけれども、ただいま申し上げましたように、一カ年に三百六十八人という卒業の見込みがございますので、大体それに近い人が試験を受けておるというように考えております。
  141. 横山フク

    ○横山フク君 実際に試験合格者は三百人を割っておるときがあると思っています。そういう私は報告を受けておりますが、それで助産婦の需給態勢が問に合うかどうか、局長はどうお考えになっているのですか。
  142. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 助産婦はやはりだいぶ少のうございまして、不足を告げておりますので、これはやはりふやしていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  143. 横山フク

    ○横山フク君 ふやしていかなければならないと考えておるのは前からだと思うのですが、そのためにどういう対策をおとりになったのでしょうか。
  144. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 昨年も助産婦の養成施設に対して補助金なども要請しておったわけでございますけれども、現在の養成施設の定員が満たされないというような状況にあるものでありますから、その予算も入らなかったような状態で、どうしても今後助産婦を希望する人をふやす工夫をしなければならないと考えています。これにつきましては現在実態調査をやっておりますので、その実態調査の結果に基づいて今後対策を立てて参りたいと考えておる次第でございます。
  145. 横山フク

    ○横山フク君 実態調査をやるということは、どちらを対象にしてやるのですか。
  146. 川上六馬

    説明員川上六馬君) これはまず病院の助産施設にどれくらいの人が現在働いているか、現在御承知のように、病院に、医療法におきまして、助産婦を何人置けという規定がございませんので、適当数というようなことになっておりますので、こういう点を一つどれくらい病院助産婦が必要なのかということを、調査し、それによって標準を定めてはと存じています。それで何人の助産婦病院で置くべきだということになりますと、自然助産婦の需要がふえてくるというふうにも考えているわけでございます。
  147. 横山フク

    ○横山フク君 私は、それは局長の考え方が違っていると思う。病院で何人要るか、どれだけ不足して何人要るかということがそれはわかっただけであって、応募者がふえるという形にならぬと思う。また同時に、病院だけの助産婦でなく、開業の助産婦という問題もあると思う。開業の助産婦がどういう形になっているか、その実態調査はしていないはずですが、病院勤務の助産婦実態調査で、それがベッドに対してどれくらいの助産婦が必要であるか、それだけ調査しただけで、需要がふえるという、そんな甘い時代ではないと思うが、どういう考え方でそれをやっているのですか。
  148. 川上六馬

    説明員川上六馬君) そういうことだけで需要がふえるというのではない。どうしても相当な助産婦の需要がふえるということは、一方助産婦の収入、所得が相当ふえなければ、なかなか希望する人がないと思うのでございますが、御承知のように、最近少し出産がふえてきておりますけれども、一時非常に出生率が下がってきたものですから、助産所で取り扱うところの助産件数が大へん減りましたために、開業の助産婦さんが相当減収になってきて開業を希望する人も自然少なくなってきておると思います。しかし、一方病院で分べんする件数はだんだんふえてきておる、従いまして、病院などにおきまして、助産婦の数をできれば規定してそういうところに助産婦の需要をふやしていくことを考えています。また保健所なども現在助産婦が少ないわけですから、そういうところにも助産婦を置いてもらうというふうな方向で考えておるわけでございます。
  149. 横山フク

    ○横山フク君 お産が少しふえたのは私わかっている。御承知のようにと言われたように、わかっているが、お産がふえたから助産婦の需要がふえるという形にはならないと思う。今保健所の方で助産婦を使うようにというのですか、需要をふやすようにというお話ですが、医務局でそういうことに対して何かに働きかけたことがあるのですか。
  150. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 公衆衛生局の保健所に対する問題につきましては私も関係をいたしておるわけでございます。
  151. 横山フク

    ○横山フク君 関係していて何かその間にお話し合いがあったのですか。保健所の方で助産婦をふやすような、定員をとるような話し合いができたのですか。
  152. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 申し上げますが、発言を求めて御答弁を願います。
  153. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 定員については、助産婦をふやすということにつきましては、私は進言をいたしておりませんけれども、保健所の定員の中には御承知のように、助産婦の定員もあるのでございますから、それを充足するようにという考え方で話をしているわけであります。
  154. 横山フク

    ○横山フク君 保健所問題はあとにしましょう。病院の問題にしましょう。病院助産婦が、看護婦と収入においてどのくらいの差をつけておりますか。
  155. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 今はっきり覚えませんけれども、御承知のように、助産婦看護婦を取得した者がさらにその教育を受けて、一年なら一年の教育を受けて助産婦になっているわけでございます。むろんその給与看護婦給与よりよくなければならぬというふうに考えておるわけで、人事院にもそういう方向でお願いいたしておるわけであります。
  156. 横山フク

    ○横山フク君 局長のお話を伺うと、非常に、よく覚えていないなんて……、こまかい問題ではあるのだけれども医務局としてはそうこまかい問題じゃないと思うのです。そしてこの問題は大きな問題だ。今、年間あなたのおっしゃる通り三百人、つい二、三年前までは百五、六十人。そうすると、今の助産婦平均年令五十三です。五十三の人たちは今にどかっとなくなる時期がきますね。そのときに、百人や百五十人、三百人くらいの養成で間に合うんですか。それに対してお考えがあるんですか。どうにかお考えを立てて、そういうことに対して手をお打ちになっているんですか。日本の出産ということに対してどういう考え方でこれをもっていこうとしていらっしゃるんですか。医務局長としては当然そういう日本の分べんということに対してどういう形でこれをやっていくか考えているはずだと思う。それを考えないで、ただ学校を作る必要があったから学校を作る、予算がとれないからできなかった、開業の助産婦はお産が減ったから収入が減った、病院は、という形だけで、ただ成り行きにまかせて、医務局というところは、国家試験をするとか、学校の受付をするとか、あるいは登録の手続をするとか、単なるそういう事務的なところでは私はないと思う。もっと医務局というものは、事務的なもの以外に、医療行政をどうするか、その医療行政の中の、分べんが少なくなったといっても、百七、八十万の人が年間出産する、それをどういうふうにするかということを考えながら、政府としてこれは考えていく問題だと思う。あなた、十五年たった後にどういうことになると思う。そのときになって助産婦がなかったといって急に養成して間に合うかどうか、その辺しっかりした考えを持っていくべきだと思う。だから事務的の受付だけをしているという事務的なものじゃないと思う。さっきの午前中の労働委員会質問と同じことなんです。そういうことなら厚生省医務局長でなくったって、事務の人でできるのだ。局長要らないのだ。私は平均年令が五十三とおまけして言ったけれどもほんとうは五十四になっている。五十四といったらもうおしまいですよ、ほんとういったら。あとどういうふうにしてその対策を立てるのか、百人や二百人という人でもって、その人たちの将来を考えると、その人たちだって消耗していく。その人たちが消耗するということになって、どういう人たちが日本助産婦の中核として残るのか。入院分べんがふえているけれども、また家庭分べんも六割、七割ある。それをどういう形でまかなおうとしているか。私は二十年、三十年先のことを言っているのじゃない。五年、十年先のことを私はどうすると言っている。今対策を立てなければ、五年、十年先のことは、助産婦できませんよ、農山村なんかでは、医者のかわりだって助産婦がやっている。学校を出てすぐ農山村ヘ行って助産婦をやれったって無理ですよ。その点今考えてきめておかなければなりません。それが東京の先ほどお話の武蔵野日赤産院の受験者が三人です。それで最後にやっと五人になったが、これでは入学試験の必要はない、そういうことでは優秀な助産婦ができるはずがない、それを考えたことがあるか、その対策を立てたことがあるか、それをしなければ局長は要りませんよ。
  157. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 一応助産婦の需給計画を持っているわけでありますが、今申しましたように、計画からいけば、やはり養成施設を毎年三校ぐらいふやしていかなければならないというような数字にもなるわけでございますが、現実に現在の養成所にもなかなか入ってこないというような実情にあるわけでありますので、一面今のように、あまり年数をかけたのじゃ助産婦を希望する人はないのじゃないかと、看護婦の資格を得てさらに一年というようなことになると、教育年限が長過ぎ、従ってそれに要する費用も相当かかるものでありますから、養成方法を変えなければいかぬというような意見も、実は母性保護医協会などからも御注意をいただいているようなわけでありまして、そういう問題についても、検討いたしているような次第でございます。確かにお説のように、助産婦の需給につきましてははなはだ憂慮すべき状態にあるわけでありまして、この問題につきましては先に申しましたように、実態調査の結果などによりまして、その対策を立てなければならないと思うわけでございます。
  158. 横山フク

    ○横山フク君 今の川上局長のお話は、助産婦の教育を下げても需給に間に合わせなければならないというお話でございますが、これはあなた、医務局長はいっその点に対して意見を変えたのか私はわからないのですが、今、中学校卒業者の全体のうちの高等学校へ行く人が何%か、中学校だけですぐ職につく人が何%か、そこらを考えていらっしゃるのですか。高等学校に行く人がどのくらいか、大学に行く人がどのくらいか、指導を受ける一般の妊婦の人がどのくらい教育を受けているか、その一般の指導を受ける高い教育を受けている人を指導しようという助産婦が低い教養で指導することができるか。ただ学問的でなくて、基礎教育でも、その基礎教育がなくちゃ助産婦の技術だけでその場に間に合うかどうか、一般の医者にしても教育が高くなっている、あるいは保健婦も高くなっている、看護婦も高くなっている、それで看護婦は医者の指導のもとに看護業務をやっている、あるいは保健婦もそうですが、助産婦医師のいないところで独自の立場で医療行為をしている、臨機応変の処置で完全にやっている、それが看護婦より保健婦より一般の人より教養が低いということではたして指導がうまくいくかどうか。今の助産婦の隘路といいますか、今の助産婦に対して少し不信感が世間にあるとしたら、そういう教育の面にも私は根ざしていると思う、それを再び繰り返すような形にいって、それでいいのかどうか、私はあなたの考え方がおかしいと思う。そうでなくてもっと職業というものを……、その需要というか、その職業がほんとうにいい職業だということになると、これはどんな教育を受けてもその職業につかせようということに社会がみななっている、だから低い教育ですぐなるということで、教育さえ下げれば助産婦になる者は山ほどあるというお考えが違っているのです。そういう時代ではない、時代が違っているのです。あなたの考え方が少しおかしいよ。
  159. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 助産婦看護婦よりも低い教育で養成しようという考え方は持っておりません。ただ、現在の看護婦教育、助産婦教育を見ますと、かなりダブるような面もございますから、こういう面を何とか調整できないかということなども研究いたしておるわけであります。決してただ教育年限を短くして、素質を悪くしてもいいのだというような、そういう考え方をしておりません。
  160. 横山フク

    ○横山フク君 私本論に入る前の序論でひっかかってしまったのですが、ダブる面とおっしゃるが、ダブってもいいのです。これからは開業助産婦という形よりは、病院助産婦という形が多くなってくると思う。病院助産婦ということになってくると、当然看護婦とダブっていかなければならぬ、ダブるべきだと思う。ただ、これから後の助産婦がどういう形になるか考えて、それに合わせる教育ということになると、今の教育をどういう形で変えるか、私はあなたの考え方がまだ具体的に——いずれこれはあらためて伺うことにしますけれども、私にはわからない。開業助産婦ということだったら、看護婦のことはある程度要らないかもしれない。しかし、病院でもってある特定の形であったら、それはできるものではない。病院助産婦ということになると、ただ分べんだけでなくて、看護ということに多く入っていくのです。そうしたら看護婦とダブるのはあたりまえだと思う。助産婦というものの職業の安定性というか、将来の明るい形をとるということが一番清潔だと思う。そうすると、自然どんな高い教育でも受けられる。そこのところをあなた方は少しも考えていない。収入源の確保ということが一番根本問題だと思う。そこをお考えになっていない。  その次の問題に移りますけれども、保健所です。保健所で助産婦は定員に入っているというけれども、はっきりした形で人っていない。このごろ、未熟児対策というのは助産婦がするわけです。未熟児の問題、これはこのごろの厚生省がてんでんばらばらだと思う。児童局では未熟児対策でもって保健所を使う。ところが、保健所というのは、公衆衛生局でも医務局の方でも仕事がふえる。みんな保健所、保健所というけれども、保健所の方は、仕事は新しくどんどんふえていっても、それだけの仕事をさばき切れるだけの定員のものになっていない。それを考えないでもって、各局がてんでんに新しい仕事、新しい仕事とお作りになって、保健所の方でそれをこなし切れるものになっていない。第一定員というが、あれは定員ないのです、基準ですから、標準ですから、その標準も満たされている保健所が幾つあるか。保健婦にしても、助産婦にしても、全国で保健婦を採っている保健所が何カ所あるのですか。何人いるのですか。百人といないのです。十人かそこらでしょう。未熟児対策から一切やったりできっこないのです。児童局では、先ほど問題になった保育器を二つずつ貸与しています。あれをだれが使うのか。家庭で保育器を使うたって使えっこない。それを保健所でやろうたって、定員が足りませんよ。開業助産婦だって使えといったって収入がなくてそれをやろうたって、収入考えないでお使いになるということもないでしょうね。そこのところ、医務局でも多少お話し合いあるのじゃないのですか。ないのですか。
  161. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 保健所や未熟児の問題は、公衆衛生局や児童局で扱っておりますので、私からは詳しいことを申し上げられませんですが、確かにお説のように、保健所の標準の中に助産婦があっても、助産婦というのは実人員というのは非常に少ないわけです。その点はお説の通りだと思うわけです。確かに私は先ほどちょっと触れたと思うのですけれども、やはり助産婦さんの仕事が安定して、それに希望を持つような状態にしなければ、助産婦をふやすことができないというお説には全く同感でございます。
  162. 横山フク

    ○横山フク君 いや、私は医務局長にそれを伺うつもりじゃなかったけれども助産婦の需給対策では、保健所の方に多く使ってもらうとかおっしゃったから聞いたのです。おっしゃらなければ聞かなかったのですけれども、それで児童局長おられないですか。
  163. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 呼んで下さい。
  164. 横山フク

    ○横山フク君 ちょっと保険局長おられますか。  保険局長はILOの百二号の社会保障の最低基準に関する条約というの御存じですか。
  165. 森本潔

    説明員(森本潔君) ILOの百二号条約、あることは承知いたしております。こまかい点の細部の一々までどうかとなりますと、これはちょっと自信がございませんが、一応そういうものがあった、概括的なことは存じておりますが、詳細に至りましてはちょっと不勉強でございます。
  166. 横山フク

    ○横山フク君 あれに、助産は現物で出すという形が出ているんですね。
  167. 森本潔

    説明員(森本潔君) 助産の給付につきましては、あの条約を批准する場合は、必要な費用を全部まかなわねばならぬという規定でございまして、ここには現物という考えではなしに、直接の給付でもよろしいし、また、費用の償還でもよろしいが、とにかく全額を何といいますか、保険で負担すべきであるというのが基準でございます。
  168. 横山フク

    ○横山フク君 それでは、その全額を、直接でもよろしいし、償還するのでも、全額を出すような形に態勢をおとりになったんですか。
  169. 森本潔

    説明員(森本潔君) ただいま申しましたのは、ILOの条約といたしまして、最低基準をきめておるわけであります。かりに批准をする場合あるいは批准をした後においてはそれを守るという問題がございますが、これは世界に国がたくさんございますが、たしか現在批准しております国は、七カ国か八カ国と存じますが、それ以外の国につきましては、それぞれの国の情勢によりまして、制度としていろいろ差異がございます。わが国におきますところの分べんの給付という内容は、この条約で要請するほどの内容にまで達しておりません。
  170. 横山フク

    ○横山フク君 それは七カ国が八カ国でも私はいいんだ。しかもそれは最低基準なんですから、それだけもまだいってないということは事実ですね。これは同時に医務局長に伺いたいのですが、助産婦——医師もそうですが、助産婦も応招の義務がある。法律で、正当の事由なくして招きを拒むことは、できないとなっておる。正当の事由ということは、自分が病気か、旅行していていないかだけのこと、ほかの謝礼、報酬ということで、謝礼をもらえないから拒むというのは拒む事由にならない。これを断わる、拒否するということは罰則になっておる。応招の義務を拒むということは、今までそういう事件がないから、それはできたら人道問題になる。医者だってやっています。応招の義務ということを法律でうたう限りにおいては、それに対する何らかの補償ということを国で考えるべきだと思う。ことに社会保障ということが進んでいって医療という形になれば、それは当然考えていい形だと思う。ところが、その応招の義務が課せられていながら、それに対して何ら考えられていないのが今の保険であり、また、医務局の考え方だと思う。当然考えていいと思うんですね。保険の方も、私伺うんだけれども、最低基準で現物給付になっていない。謝礼やればいい、この謝礼やればいいということは、今までよその国と日本の違うことは、助産ということの発達した歴史からいっても当然な形かもしれないけれども、医者でなくして、助産婦でなくして、だれにかかってもいいという形なんです。謝礼を出すということは、その範囲内においてだれからでもまかなってもらえばいいという形になっておる。それは応招の義務がある反面においてそういう形ができておる。事実なんです。その範囲内の手当をもらえば、その手当内でもって隣のおばさんにやってもらっても文句はないという形なんです。それはどこも拒めないんです。そういう形が、私医療行政として本質的なものかどうかということを伺うのです。どうでしょう。
  171. 森本潔

    説明員(森本潔君) お説のように、その医者などに応招の義務を課しておるわけであります。確かに、今の、お金がなくても診療費がなくても、払えないからといって診療を拒むことができないという解釈をいたしておるわけであります。従って、それに対して保障を考えなければならぬじゃないかということにつきましては、できればそういうようなふうに診療費その他の面で、医者なり助産婦なりというものが生活が安定するように、特にわれわれとしても考えていきたいと思うわけであります。
  172. 横山フク

    ○横山フク君 助産婦が減ったというときに、それは当然考えるべきことなんですね、医務局として……。ということは、このごろお金のある人は医者にかかると思う、都会地は。農村でも。あるいは払えない人は助産婦の方にくるという傾向があると思う。ところが、その払えない人は助産婦へ来て、数が減った上に、払えない人たち、あるいは規定料金を下回るような人たちだけが助産婦へ来たという形になったらどういうふうになる。日本医療というものが低下するのじゃないか。平常産は医療対象にならぬという形は、もう過去の時代だと思う。今日においては平常産も医療対象だと思う。じゃ、異常と平常は区別をどこにおつけになるか、医務局長、どこにおつけになるか。
  173. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 御承知のように、異常分べんは医者が扱うということになっておるわけでありまして……。
  174. 横山フク

    ○横山フク君 いや、異常は医者が扱うというのはそれはわかるけれども、異常と平常との境界をどこにお置きになるかということを伺うのです。医務局長御存じでしょう。
  175. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 私はどうもあまり臨床のことを詳しく存じないわけでございますが、やはり病的な状態であれば医師の手をわずらわせねばならぬ、こういうように考えております。
  176. 横山フク

    ○横山フク君 それはね、子供でも答弁する答弁なんですよ。異常と正常といったら区別つかないのです。はっきりいったら、羊水が多いからもう異常ということになる。羊水が多いか少ないかということをどこで区別するかというのです、端極に言ったら。羊水が少なくなればどうか、あるいは出血が多ければ異常、出血が正常なら正常、どこで区別するか。分べんの過程において出血が多いと思ったら異常、正常と思ったら異常だった。異常だと思ったら、出血が正常だった、正常では保険で扱えないということになる、これは困るじゃないか。あるいは羊水が多いから異常だ、あるいは位置が異常だ、それはレントゲンで見たんでなくて、外診や何かでわからない。ところが、位置が異常だというので、保険で扱う、ところが、実際は正常だ、ちゃんと正常なら保険で扱えないという形になったらどうするのです。まじめな医者ならこれは因りますよ、ほんといったら。ふまじめな医者だったら、私はいいと思うのですよ。異常だ異常だといって、みんな病院へ入れていいでしょう。そうしてまた出血が多かったといって、あるいは出血が少なかったといっても、それはだれが証明する立場に立ちます。分べんの瞬間だったらだれも証明者ないのですよ。どうにでもなりますよ。位置が悪かったといってだれが証明します。生まれた瞬間に位置が悪かったからといったって、あとになってさかのぼってのことを言ったって水かけ論になるし因るし、保険だったら自分は虚偽の形になると、良心的な医者だったら困りますよ。また、助産婦だって、ひがんで——異常だ、異常だといってみんなとってしまうといったら、みな困るでしょう。あなたひがみだといっても、ひがみだと言い切れない。その境界だれがつけるのです。私はこれ、おかしいと思う。最初から両方が保険だったらそういう差別もつかないし、苦情も出ないと思う。どうでしょう。
  177. 川上六馬

    説明員川上六馬君) そういう問題になりますと、客観的に判断するということになるかと思いますが、医者の仕事といい、助産婦の仕事といい、やはり、そういうことは良心的に行なわなくてはならないと思います。助産婦さんも医者に送らなくてはならないものは医者に送り、医者の方も正常分べんなら、助産婦の人に扱ってもらっていいというようなことで、お互いがその辺は良心的に扱っていかなければならないと思います。最近では何もかも病院で異常分べんのようにして扱うというような非難を一部から聞くわけでありますけれども、私はその点は、医師が良心的に対処してもらわなければ、異常か正常かの判断がむずかしい場合があるだけどうにもならない問題だと思います。
  178. 横山フク

    ○横山フク君 良心的にしなければならぬことにはどうにもならぬ——良心的にしていても困るときはあるのね。良心的にしていても因るということは、妊産婦自身が困るのよ。その瞬間に大体これを両方が異常だから保険だ、異常でないから保険でないという形に区別するところに、もうすでに平常産を平常だという形で保険対象外に置いておくところに、私は無理があるのだと思う。そうお考えになったことありませんか。医務局長保険局長、どうです。
  179. 森本潔

    説明員(森本潔君) 平常分べんと異常分べんの差はどうだという点が問題になっておりますが、私はあまり専門家じゃございませんが、保険の取り扱いにおきましては、従来から正常分べんという場合には、医学的な常識に基づきまして一つの幅がきまっておるようでございます。これはもう大体専門の産婦人科と申しますか、お医者さんの常識として一つの線がございまして、それの範囲のものは正常分べん、それからその範囲を出たものは異常分べんというように、これは常識的に医学常識としてあるようでございまして、その個々のケースの判断でございますが、これはまあ第三者がどうと言ってもわからぬのでございまして、主治医の方の個々の場合における判断によってきまる。しかもそれが常識的には医学常識に基づいたところの判断であるということしか言えないと思うのでございます。  それから異常分べんを保険の給付にしておいて、平常分べんを給付にせぬのはおかしいじゃないかということでございますが、これは両者の区別はちょっと今申しましたように、医学的に一つの区別がつくと思うのでございます。そういたしますと、片方の異常分べんは一種のこれは病気というような、疾病的な性格を持っておる。それから正常分べんは疾病というような性格ではない。まあその辺の一つ区別がつくと思うのでございます。それから保険の制度を見ますと、やはり保険制度ができましたのは、沿革から申しますれば、病気というものは、まあ予測し得る場合もございましょうが、多くの場合は不測の事態として発生するわけでございます。あらかじめいつごろ病気にかかるからちゃんとこれに対して医療費を準備しなければいかぬというようなことは、事実上困難でございますので、そういう不測の疾病に対してあらかじめ医療費を準備しておくというのが、これが医療保険のそもそもの最初の考え方でございます。ところが、一方出産、ことに正常なる分べんということになりますと、これはおよそ、いつごろからわかるのか存じませんが、いつごろ出産がある、それから普通のお産をする場合には大体こういう経費が要るということは、時期並びに金額等について大体めどがついておるわけでございます。まあそういうことでございますので、最初から医療保険には正常分べんというものを取り入れておらなかったというのが順序でございます。先ほどお話のように、正常分べんを非常に保険でも見なければいかぬという議論は、これは確かにございますが、異常分べん、あるいはその他の疾病と正常分べんの間には、おのずと保険として扱います場合に、考え方が沿革的にも、また、現状におきましても、違うということははっきり言えるのじゃないかと思うのであります。まあこれが今の医療保険の建て方の考えでございまして、このままでよろしいかというと、私は必ずしもそうだとは思いません。やはり将来の方向としては、先ほど御指摘のございましたように、ILOの最低基準もございますので、だんだんとこの疾病に対する保障と同じ方向に持っていくというのが、方向としてはそうあるべきじゃないかと思いますが、現在の扱い、当面の考えといたしましては、今申したような考えでございます。
  180. 横山フク

    ○横山フク君 今保険局長のお話ですけれども、沿革があるからと言って、そのままでいいものじゃない、だんだんと皆保険になってきた場合に、しかもこうして非常に何といいますか、精神面から言っても、肉体面から言っても社会が複雑になってきた時代に、このお産が平常だという考え方が私は違っていると思うのです。で、お産というものに対してそれは前から予測しているからと言って……それならお産を保険対象にしなければいい。しかし、やはり保険対象になっている。そうしてたとえ千円にしろ二千円にしろ、やはり保険の給付を受けておる。保険対象になっている。だから今のお話はおかしい。あらかじめ予測するなら保険対象にしなければいい。千円でも二千円でもお出しにならなければいい。千円でも二千円でもお出しになって、それの値上げをしようというのは、保険対象とお考えになっているからなさっているのじゃないですか。それなら現物にしなければいいので、保険対象にはなっているのでしょう。
  181. 森本潔

    説明員(森本潔君) お話の通り、この分べんにつきましては、保険の給付になっております。なっておりますが、その扱いでございます、私の申し上げましたのは。医療費の疾病についての、この医療費の裏打ちなり、それからのやり方と、それから分べんの際におきますところの医療費の裏打ちがどうか、そういうものに先ほど申しましたような差があるので、ただいまお話のような差が現実にもあるということで、保険に入っている者の保険給付であることはその通りでございますが、ただその間に差があるかないかという点になりますと、今申しましたような点で、差がおのずと出てきたんではなかろうかということでございます。
  182. 横山フク

    ○横山フク君 扱い方に今差があるということは私もわかっておる。だからこれを将来このままに置くのか、それともあるいは変えるのか、どういうお考えか、それはどうなんでしょう。
  183. 森本潔

    説明員(森本潔君) これは先ほども申しましたように、従来においても現在においても差ができておりますが、しかし、これはこのままでよろしいかと申しますと、私は必ずしもそうではないと思うのでありまして、将来分べんにつきましても、社会保障という見地から、その制度の改善をはかっていかなければならない。ことに先ほど御指摘になりましたような、ILO最低基準という原則がございますし、その方向に向かっていきたいという考えを持っております。しかし、これが実施につきましては財政上の問題もございますし、あるいは制度をどういうふうに立てるかというような問題もございますので、なお検討を要すると思います。
  184. 横山フク

    ○横山フク君 私は来年当然すべきだと思うのは、こうして病院でもって、実際に保険という形において平常産が扱われる——こう言ったら、お隣に谷口さんがおられるので、私はそれを言う言葉ではないかもしれないけれども、異常と平常との区別はこのようにつかない時代において、平常だからと言って保険で扱わない、異常だから保険で扱うという時代は過去の時代になってきておると思う。平常、異常だという区別は限界がない形。もうどこでそれが異常に移行するか、瞬間的にわからない形のときがあり得ると思う。そういうことを考えたら、やはり平常産を保険扱いの対象にすべきだと私は思う。それを考えていくのがあたりまえだと思うのだけれども、そうお思いにならぬかしら。  じゃ、これは医務局長に伺うのですが、医務局長は、先ほど助産婦が足りなくなっておると言っておるが、これは助産婦保険対象になるということで、実は病院や何かの助産婦の定員が違ってくるのですね、条件が確立するということ、たとえば医者が、病気のときにお金をもらって、あらかじめ病気になるのはわからない、わからないけれども、突然病気になったときにお金をもらって、そのお金の範囲内でもってお医者さんにかかってもいいわけです。ただそれじゃ医者さんにかかるか、おまじないにかかるかわからないが、平常産をしたときにだれにかかってもいいということで、ただお金を渡してやるという形、そのお金の範囲内でやるという形では医療内容の向上になっていかない。と同時に、病気の際に医者にかからせるということで医者の条件というものは確保されている、確立されている。つまり助産婦の場合には、お産のときにはだれにかかっても、お金をお前に上げるからその範囲内でしなさいということでは助産婦の身分が確立されていない形になる。これが助産婦の将来を非常に暗くしているし、そのために助産婦数が相変わらず三百人前後——三百六十人なんというのは多いくらい、私の報告にはそうなっていない。私が見てそうなっていると思うのですが、医務局長はそうお考えにならないかしら。
  185. 川上六馬

    説明員川上六馬君) これは保険で今の一般医療給付のような扱いにすれば、自然にちゃんと医者なり、あるいは助産婦にかかるということになると思います。そういうことによってその目的を達してくるし、そういうことによって助産婦の増収にもなるということなら私はけっこうだと思います。
  186. 横山フク

    ○横山フク君 私は今助産婦の減っているということは非常に困ったことだと思っている、それはこれから先の助産婦の、まあ今の助産婦たちは、同業者が少なくて競争が甘やかされているという、そういう考え方は決して持ってない。むしろこれから助産婦がどんどん出てきて、助産婦が楽しく生活でき、大勢の人々がほんとうに自分の職業を通して保健衛生に貢献するということを考えている。その場合に助産婦の身分がはっきりしてない、あるいは条件がはっきりしてないという形だったら助産婦が出っこない。しかも助産婦がなかったら今の平常産が扱い切れない。それに対して医務局が、だんだん滅っていくのが因ったという形だけで何ら考えてない形——さっきのお話に戻った言い方になりますが、もう少し医務局でもってこの問題に、これの問題の根本は、この保険対象がはずれているから、そこからきて病院においての助産婦の身分が確保されないのだという形、あるいは開業の助産婦の立場もうまくいってないのだというふうになる。ですからもう少し医務局保険局の方とお話し合いになってしかるべく……それも無理な話じゃないと思う、保険内容を充実する、高度化するという意味からいっても、あるいは何といいますか、保険内容を向上するという意味からいっても私はほしいことだと思う。それですから、当然そこのところを医務局保険局の方に前からそういう問題に対して話し合って、そして何とか助産婦のふえる形をとっていくような積極的な努力があっていいと思ったのですが、今までそういう努力が一つもなかった、私はこれは非常に残念だと思うのです。もっとはっきり言うと、そういう問題に対して医務局保険局と話し合いをつけて、そして助産婦生活ができるように、そしてしかも需要がふえていくような形を当然とってほしいと思うのですが、医務局長そうお思いになりませんかしら。
  187. 川上六馬

    説明員川上六馬君) そういう点では同感であります。
  188. 横山フク

    ○横山フク君 これから努力なさるのでしょうか、同感だけれどもそのままでしょうか。
  189. 川上六馬

    説明員川上六馬君) その点につきまして、保険局の方ともよく話し合いたいと思います。
  190. 横山フク

    ○横山フク君 これは私は医務局長にお願いしたいと思う。  それから保険局長に伺うのです。保険局ではもう理論的にはわかっていると思うの。これは現物にした方が、助産婦によってさせるという形、あるいは医者なり、助産婦なりによって平常産も扱わせるということ、それは保険内容を向上させるという意味でわかっていると思う。わかっているけれども、それをしようとしていない、あるいはそれは努力すると言ってもしようとしてない。それはほかに原因がある。一つは圧力団体になる形をおそれているという形がある、そういうけちな考えは出す必要は全然ないと思う。何も助産婦団体が医師会のような大きな団体でもなし、圧力団体になるわけじゃない。医師会自身も圧力団体でもない。まして助産婦団体が圧力団体になるわけではない、まして保険内容を向上させるというのです。それで今度予算要求をするのが、分べん料で、朝日新聞に出ておりましたが、通るか通らぬかわからぬけれども、七千円ということになっておりますが、七千円というのはどういう内容なんでしょう。
  191. 森本潔

    説明員(森本潔君) 基本的な考えにおきましては全然同じでございますが、具体的に来年度の話ということでございますが、来年度におきましては分べん費の現在の額を引き上げて参りたいという考えでございます。それで七千円の基礎というのは非常にむずかしいのでございますが、まあこの内容数字もどうなるかわかりませんが、一応従来の平均の分べん費の支給額が、大体平均三千五百円のような実績になっております。これはもらう人によって非常に違っておりますが、平均標準報酬月額の半分でございますから、二万円の月給をもらっておる人は一万円、五千円の人は二千五百円もらっておるというような分べん費の支給の方法でございます。まあ平均化いたしますと約三千五百円程度の教字になっております。でございますので、大体のめどといたしましてこれを倍額程度の七千円という一応のめどを立てたのでございます。実際の、これを実情に合わせてどういうことになろうかと申しますと、大体診療所と助産所におきまして、産前産後の処置を含めましての経費が、まあ平均的なことでございますが、およそまかなえることになるんじゃないだろうかということでございます。詳細なこれは積算の基礎となりますと、非常に議論がありまして、むずかしくなりますが、大体の大づかみの見当なり考え方はそういうことでございます。今申しましたのは健保の問題でございましてそれから他の保険におきましては、財政事情その他がございまして、御存じのように、日雇いでございますとか、あるいは国保においてはとうていそういうことは考えられないのでございます。一応財政状態が許して可能であれば、今申したようなことの方向に進んで参りたい、こういうように考えております。
  192. 横山フク

    ○横山フク君 今まで平均は三千五百円、今度七千円、これは報酬の半額ですね。半額ということであったわけですけれども、これが分べん費としてイコールいくわけなんですか。
  193. 森本潔

    説明員(森本潔君) まあその引き上げた額を分べん費の支給という形で出して参りたいと考えております。
  194. 横山フク

    ○横山フク君 実際問題からして、分べん費という内容が、定義が非常に多種多様だと思う。分べん費というものは医師または助産婦の謝礼ということにはなっていないんですね。分べん費ですから、それは分べんに要する一切の費用という形で概念的に行なっておると思う。従って、産着から、赤ちゃんのふとんから、それも分べん費として拡大——拡大でない、そういう解釈をするところもあるし、それも無理からぬ形になっていると思う。それであるので、それがそのまま医者なり助産婦に決していっていない。また、それを、いっている内容を指示して、これが医師または、助産婦の謝礼だということを、別にどこにも説明がついてないのですから、これはいかなくてもあたりまえのことであるかもしれない。で、そういうことに対して保険局では御存じなんでしょうか。
  195. 森本潔

    説明員(森本潔君) この現金給付という考え方でございますが、これは病気の場合も同様でございますが、病気になったならばこの程度の額がかかるだろう、あるいは分べんをすればこの程度の額がかかるだろうという場合に、それを全額分べん費で支給する考え方と、一部を支給する考え方がございますが、ただいまの考え方としましては、その一部に充ててもらう。その内容は、これはまあいろいろ違いましょうが、とにかく分べんという事実に基づきまして、直接間接の経費が要りましょう。それに対して、全額とは申しませんが、一部に充ててもらう、こういうことでございます。それから現実の問題から申しましても、この分べんの現在行なわれておる状況から見ますと、非常にこの経費のかかり方が違うわけでございます。御存じのように、農村等におきまして自宅分べん、これは大体八〇%ないし九〇%、郡部であるようでございますが、そういうようなところの分べんに要する経費、あるいは大病院に入った場合の、都会地においてやった場合の分べんに要する経費、あるいは診療所にかかった場合、助産所に入った場合、非常にアンバランスがございます。まあそれらのことを、いろいろこういう現在の状況におきまして平均的なものをきめてやるということも非常にむずかしい実情でございますので、一応分べんにつきましては、いろいろ経費が要りましょうから、保険財政で可能な範囲において一つの標準を設けて一部に充てていただくという考えであるわけでございます。
  196. 横山フク

    ○横山フク君 今のアンバランスだというお話ですけれども、私が全国を見ている範囲においてはアンバランスでないのですね。農山村の方が都会よりも分べん費は高くなっている。診療所病院も同じになっており、むしろ私の方が高いくらいで、国立あるいは大病院の方が安いくらいになっているし、アンバランス一つもなく平均的になっていると思う。また同時に、この一部に充てるというお話だが、三千五百円にしてもそう、七千円にしても分べん費にそのまま充てたらばむしろ余るくらいのお金であると私は思っているんです。自宅分べんあなたの方でも四千幾らということになっているから、当然これは余るだろうと思うのですし、入院した場合でも七千円あればまかない切れる、こういう形になっていると思う。大病院でもって一週間入院して七千円以下になっている場合があるし、当然そうなっているわけですが、ここまで上げたのにまだその現物給付の方ヘまでそれを切りかえる余地がないのでしょうか。
  197. 森本潔

    説明員(森本潔君) 先ほどのこの分べん費につきましていなかでも都会でもあるいは自宅でやっても大病院でやっても変わりはないというようなお話でございますが、どうも私たちの見ましたところでは必ずしもそう言えないのじゃないかというまあ気がいたします。これは何でございますから、調査と申しますか、見方の相違かと存じますのでこれはいたしませんが、七千円で現物ができないかという問題でございますが、これにつきましてはちょっといろいろ問題があるわけでございます。今申しましたように、この分べん費の経費について、たとえばこの医療費でありますれば、盲腸を切る場合にはどこの医療機関ヘ行っても大体一つ医療費の基準というものはできております。そういう意味におきまして、非常に分べん費についての開きがあるというまあ現実の姿、これは議論になりますけれども、その姿はあるということが一つ。従いまして、この現物給付やりますと、被保険者にとっても非常に不公平が出るわけであります。私の前提に立ちますと、非常に不公平ができてくる、こういうことが一つございます。それから御存じのように、この制度としてそういうことをやります場合はやはり相当問題がございまして、かりに今考えておりますのは、健康保険と船員保険ございますが、健康保険と船員保険等がその辺まで分べん支給できるという状態でございます。ところが、制度といたしましては、先般の法律改正によりまして、各疾病保険は大体保険給付費を同じやり方でやるわけでございます。療養の給付、これを法定基準にすれば各保険を通じてそういうことにする。それから給付内容も同様にするという建前でございまして健保は比較的そういう考えが取りやすいといたしましても、他の日雇いでございますとか、国保につきましてはとうてい今の財政状況から見ますと、そういう現物給付という考え方には踏み切れないわけでございます。そういう問題もございます。それとそれからもう一つ非常にこれも根本論になるわけでございますが、現在のこの現物給付、現金給付というのが保険制度としてどちらがいいかというよう議論も必ずしもないわけではないのでありまして、現に医療保険の方におきましても、現物給付か、あるいは現金給付かという、長い将来の問題にはなりますけれども、そういう根本的な議論も実は制度としてあるわけでございます。従いまして、この分べん特有の事情が二、三あるほかに、そういう根本的な問題でございますので、今直ちにそれらのことを無視して、現物給付に踏み切るということは、私たち今の事情を頭に入れて考えますと、将来の方向は別といたしまして、今直ちにということは非常に困難じゃないだろうか、こういうまあ気持でございます。
  198. 横山フク

    ○横山フク君 今お話で盲腸なんかは大体同じだというお話なんです。それは盲腸は保険になったから同じなんです。保険になる前に盲腸は同じではなかったと思うのです。全国同じ形ではなかったと思うのです、料金においては。であるので、今そこでそうおっしゃるが、今大体同じになっている。これは私の方で調査したのをお目にかけてもいいけれども同じ。ちょっとあなたの見方と違っているけれども、これは見方の相違といってもしかし盲腸は今同じです。保険になる前、盲腸は同じで保険にやったのだと、これは理屈にならないと思うのです、前には別々だったと。これが一つ。  それから今お話で私はおかしいと思うのは、将来の方向としては予算を現物の方に入れるべきだとこういうお話だ。しかし、もう一つのお話では、医療そのものも現物にするのがいいか金銭にするのがいいかわからないし、そういう意見もあるのだ。そのためにそれが一つの問題だから、だから無理に現物にしないで金銭に残しておくのだ。で、この問題が解決つかなければいかぬのだというふうにもとれる。あるいはそのときに金銭給付にしなければいかぬかもしれないから一つ残しておいて、また、医療の方でも金銭にいくかもしれぬということを表示されている。だけれども、将来の方向はいずれは現物に直しますというのではこれは話がわからないと思うのだ、私は。大臣に伺います、これをどうお考えになりますでしょうか、大臣としては。
  199. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 今の段階におきましては今保険局長が申されました通りでございまして、これをもっと研究した上で決定しなければなるまいかと思っております。
  200. 横山フク

    ○横山フク君 研究した上というのは、私はこれは、これはもう先ほど委員会の前にこれは研究してから後にその方にいこうとか、検討いたしますということに答弁はきまっているそうだけれども、こういう検討も、いい悪いはまあ個人的にはそれはお話はわかっているのだということを保険局長も言われているのだし、委員会と個人的とは違うと思うからその点私はとやかく言いませんけれども検討なさるならなさるでけっこうですが、どれくらいの後にこの検討の結果をお出し下さるでしょうか。
  201. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) まあ時期的にどれくらいということをここで即座に即答いたしかねますでございます。
  202. 横山フク

    ○横山フク君 まあ内閣もかわるだろうし、衆議院も開かれるのですからあとでけっこうでございます。この問題はほんとうに考えていただきたい。ただ、保険の問題だけではないだろうと思う。一般医療行政全般とからむ問題だと思う。であるのでよく考えていただきたい。時間もないしするので私はここらでやめますが、次に伺いたいのは、病院においての助産婦労働時間というの計算なさったことおありなんだろうか。
  203. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 今私ちょっとその点を記憶いたさないのでございますけれども
  204. 横山フク

    ○横山フク君 時間ないからけっこうです、時間ないからまあわからないという答弁が出るより仕方がないと思っていますが、そういう答弁が出ること自体が私はいけぬと思うのですね。看護婦労働時間というのは実労働時間というのは当然計算していいと思う。私はストというのはきらいなんだ、きらいだけれどもストをやらざるを得ない状態にあることは事実だ。そういう状態に置いたということを医務局長としては怠慢だと思う。そういう状態に置かれないような形にするのが私は政治だと思う。そういう政治をしないで、ストはいかぬというのはいけないと思う。私はそれは違っていると思うね。ことに助産婦の場合はなおさらですよ。助産婦の方が看護婦から見たら非常に労働時間が多いのですよ。しかもストもできない。ストをやったら保安要員に残るのは助産婦だと思う。助産婦のその定員も少ない。その定員も考えないでお前たちは助産婦なんだ、ナイチンゲールなんだ、そういうことを言って、自分たちの立場を考えて、御自分たちだって、いろいろ考えたらそういうことは人にはしいられないと思うのです。やはり、それはちゃんとした待遇なりをすべきだと思います。そういう形に指導すべきだと思う。そういう指導を何もしてないと思う。新生児のベットに対しても保険入っていない、やっと入れていただいた、半ベッドだけ。そうでしょう。半ベッド入っていない。生まれた瞬間ベッドはない。新生児のベッドはないはずです、保険では、入院は。御存じないの。
  205. 森本潔

    説明員(森本潔君) 保険の方におきましては、これが医療分では、先ほど申しました医療分でと申しますか、そういう場合には疾病の入院料として一人前出すわけでございます。病院の入院とみなしまして。それから普通正常分べんと申しますか、生まれてそういう病人扱いにならぬ場合におきましては、たしか介抱料という名前でございますが、子供はいろいろ世話がやけますので、あるいは看護婦さんも産婆さんもしょっちゅうついていなければならぬ、そういう必要から介抱料というような名前で若干の点数が見てあるわけでございます。
  206. 横山フク

    ○横山フク君 私の伺うのは新生児なんです。産婦じゃないのです。異常は産婦の場合なんです。新生児は成熟して出た場合は異常じゃない。それはどうなるのですか。
  207. 森本潔

    説明員(森本潔君) 大体同じことでございますが、病人として新生児が入っている場合には、これは入院料という一ベッド分を出すわけでございます。それから病人という形でなしに新生児という、正常分べんの普通の状態の赤ん坊として新生児として入っているときにおきましては、世話がやけますので介護料、世話料を見る、こういうことでございます。
  208. 横山フク

    ○横山フク君 私の伺うのは新生児ですね。正常分べんで分べんされた場合の新生児は介抱料を出すのです。異常分べんで分べんした場合においても新生児は、成熟児、普通児ですね、その場合にはどういう形になるか。分べんした産婦は異常と正常によって保険つけるのはわかります。生まれた子供は、分べんが異常であろうと正常であろうと分べんした子供は同じです。その子供にどういう差別をつけるのですか。
  209. 森本潔

    説明員(森本潔君) その場合でございますが、母親は異常分べんで病気の扱い、これは患者になる。それから生まれた子供が元気でぴんぴんしていると申しますか、普通の状態であるという場合には、これは介抱料が出るだけでございます。
  210. 横山フク

    ○横山フク君 そこに誤解がある。異常分べんであろうと、正常分べんであろうと、新生児には介抱料だけしかつかぬということですね。どちらも同じね。私はそこに一つの問題があると思う。保険で扱っていないから新生児は保険対象になっていない。ですから、介抱料だけしかついていない。これは私はわかる。しかし、保険対象になっていないから介抱料だけという形を、病院の方では新生児に対しては保険のものはもらえないという形で、介抱料はこのごろつけたのです、半年か一年前、私の方でそれを話したのでつけてくれた。しかし、この介抱料だけしかついてないという形は、産科から新生児の入院料というものは取れないのです。取れていませんよ、一週間入院。病院の請求書見てごらんなさい。保険の介抱料だけしかついていない。ところで、新生児というのは、普通の子供の入院よりは新生児の方が病院においては手数がかかるのです。かかるけれども保険対象になっていないから、介抱料だけしかもらえてないから、その人たちはベッドの対象には入っていない。四ベッドに対して一人という看護婦の定員の割合に入ってない。ですから、産科の方は普通でも四ベッドに一人という看護婦の基準はどうかということになってくる。産科の場合においてはそれだけオーバーになっている。実際の新生児に対してのベッドというのは考えの中に入ってない。それだけに看護婦がオーバー労働になる。助産婦がオーバー労働になる。ですから、産科にだれもが行くのをいやがっています。ですから、助産婦の資格があったって、看護婦の資格があれば、看護婦の資格において働きたいし、看護婦の資格において、よその科において働く方がからだが楽です。かつては病院に、助産婦としていずれは開業するために勉強しなければならぬという形で、労働時間が過剰であろうと、勉強するという形で甘んじてきた。しかし、開業するという見通しがなければ、そこで働くというだけならば、同じ楽な時間で、正常な労働時間で、そうして正常な労働賃金をもらった方がいいですよ。過剰労働でもって正常な賃金をもらうなんということは、だれだって好まないのはあたりまえです。しかし、そこのところが、保険対象になっていないから、新生児は保険対象でないから、しかし、新生児だって一週間というものはその病院で見てやらなければならぬ状態です。しかし、それが保険対象になっていない。正常産は保険対象でないから、従って、新生児も保険対象では見てくれないから、入院料も何も。ですから、その人に対しては病院では赤字になるのです。ですから、ベッドに対する看護婦の形も考えられないのです。産科は普通以上に、そのしわ寄せが総合病院では保険へ来る。だから、保険になさったらというのは、そこにもあるのです。病院だって保険というようになれば、そうすれば、新生児も自然解決つくけれども、今の介護料だけというが、介護料は何点ですか。
  211. 森本潔

    説明員(森本潔君) 今その正常分べんをして入った子供に対して保険の現物給付というのがないということを主張されておるわけであります。ただ、介護料というのがあるだけだということを言っております。
  212. 横山フク

    ○横山フク君 答弁中ですけれども、正常分べんだけじゃないのです。異常分べんで入った場合にも、新生児は介護料だけなんですよ。ですから、新生児に対しての入院のベッド料というものは入っていないのです。介護料だけなんです。ですけれども、新生児は、異常でもって母親が入っている限り、その人は当然親のそばに置いておかなければならぬ。しかし、それは保険対象で見てくれてない。介護料だけなんです。そうしたらば、それは収入において産科でも出せぬでしょうけれども病院の方でもそれは困る問題ですよ。それですから、それはやみの入院という形、入院料の、収入のない入院という、それを御存じなんでしょう。それに対してどういうお考えを持っていらっしゃったのです。
  213. 森本潔

    説明員(森本潔君) その点でございますが、それは先ほどの問題に入ってくるわけでございまして現物給付であれば、正常に生まれて健康な赤んぼうの入院料というものは、そういうような出すか出さぬか、これはまた制度の問題でございます。かりに出すとすれば、現物給付の形になるわけであります。今のところは、正常分べんにつきましては、分べん費の支給という形で一部を償還しているわけであります。それで、その際におきましては、入院しました赤ん坊の分については、これは保険の方からもらえます。分べん料をもらえますから、それは完全じゃございませんけれども、そこから自己負担として入院料を払ってもらうというのでありまして、全然医療機関においてただで入れておく、金を取っちゃいかぬ、そういうことではないわけであります。ただ、現物給付という形でないので、あるいは現金払いをしてもらわなければいけない、その現金給付につきましては、保険の方から見ますとこういう形になっておるわけであります。ですから、全然金が取れないという問題じゃないと思います。  それから、今いろいろお話がございましたが、産婦人科については、つき添い等が、要るので、看護婦なり産婆をふやさなければいかぬという問題です。これは私どもの問題と離れまして一つ、何と申しますか、医療法と申しますか、そういう方面でずっと解決をお願いしていきたいと思います。  それから、先ほどの介護料は、昭和十八年から出しておりますので、そのことを申し上げておきます。
  214. 横山フク

    ○横山フク君 一応介護料のほかに半ベッド見るという形を一年か二年前からとったというのはどれですか、一点半ベッド見るという形をとったというふうに私は報告を受けましたけれども
  215. 森本潔

    説明員(森本潔君) 非常にむずかしいことでございますが、あまり詳しく存じておらぬので知らぬことでありますが、従来は、母親が入院する、それから子供も一緒に入院しなければいかぬという場合、親子一緒に入院しなければいかぬという場合に、一人半分という計算をして二人の入院料を出した、二人の、母親と子供の入院料に対して一点半という計算をして出したことがございます。それは最近におきまして、ほんとうに子供が——ほんとうというか、子供が病気である場合には、半人分でなしに、まるまる一人分を出す、こういうふうに直したわけであります。
  216. 横山フク

    ○横山フク君 このごろ——この問題はもう少し医務局の方で考えてほしいと思うのですよ。今のお話ですと、一点半ベッドを二ベッドに直した、これも何か、とっさでもって、まだ調べが足りぬと思う。もう少し説明のわかるように——説明のわかるようにでなく、私がわかるように説明をしてほしいと私は思う。ちっともわからぬですよ。ごまかしているみたいだ。しかし、そこのところでもって、ゆっくりやりなさいと言うけれども、その半面、急いでくれというように私は感じたから早くいたしますけれども、これは、あとでゆっくり、もう少し事実や何か、改正になった事実や何か、時間的にわかるようにしてほしいと思う。  医務局長に伺いますけれども、入院を奨励していらっしゃるのですね。これは申し上げぬでおくけれども。ラジオで、もう少し入院した方がよろしいということを放送されているのです。私は、それがいいか悪いかは別です。いいと思う。でありますが、入院された方がいいことはいいですけれども、妊産婦の死亡率が高い、そのために入院する、妊産婦の死亡率の低減ですね、入院分べんの漸増とが平行線になっているかどうかということ、入院がふえているけれども、死亡率というものは横ばいなんです。これは数字が事実あるのだから。あなたの方にもあると思うのだが、横ばいなんです。そうすると、これは入院のせいじゃないのです。入院した方がいいことは事実なんですが、しかし、入院したために死亡率が減っていない。入院がふえても死亡率は減っていない。そうすると、これは、ほかに何かの問題がある。その問題があるということは、前に局長に、委員会ではないけれども詰めたことがあるけれども、それを調べるということだったけれども、お調べになったでしょうか。
  217. 川上六馬

    説明員川上六馬君) お話のように、最近は妊産婦の、死亡が横ばいになっております。入院分べんはふえているけれども、妊産婦死亡は減らないという状態にあるのですが、この問題は御承知のように、児童局の母子衛生課がやっておりますので、そちらで御返答願いたいと思います。
  218. 横山フク

    ○横山フク君 それは、松尾課長に聞くのも私は知っています。しかし、入院を奨励しているのは、医務局の方で奨励しているのです。あなたは、厚生省で奨励してラジオで言われているのです。そのラジオの日にちや何かも申し上げたいのだけれども、ここでは言わないでおくけれども、入院を奨励している。私は入院はいいと思う。だけれども、産婦の死亡率を減らすためにということを言うのだが、横ばいだと思う。だから、これは委員会ではっきりしておきたいと思う。横ばいになっているのです。最近——じゃないけれども、この十年間横ばいですよ。ほとんど減っていない。しかし、入院はどんどんふえている。これは日本の家庭から見るというと、入院は悪いとは言わない、いいと思う。しかし、それを死亡率とかなんとかいう形に説明を持っていくということは無理だと思う。それは、あなたの方に数字的な資料があるのだから、私はそれを詰めたことがあるのだから。横ばいなんですよ。ごらんになって下さい。これは、私は入院はいいけれども、それは、入院のために死亡率は減っていない。死亡率が減るというのは、何かほかにあるのであって、だから松尾課長にそれは聞くことだけれども医務局の方でももう少し考えた放送をしなければいかぬということを言う、松尾課長はこれはどうですか。
  219. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) お答えいたします。入院分べんがふえておりますのに、妊産婦死亡率が日本で減らないということは御指摘の通りでございます。妊産婦死亡率の減少いたしません理由を探求いたしますものは、なかなか確定的にはお答えしにくいのでございますが、一面にやはり日本の妊産婦死亡に影響いたします保健指導、最も基礎になる保健指導というものが不十分でございますと、妊産婦死亡率も減らないのではないかということを私どもは考えるわけでございます。
  220. 横山フク

    ○横山フク君 ちょっとぼやっとして答弁がよく聞こえなかったけれども、それはあとにしまして、妊産婦の死亡した原因というのはほかにあると思う。それに対する探求もするし、対策を立ててもらわなければいけないと思う。予算も足らないと思う。たとえば、妊娠中毒症や何かは、保健所の助産婦活動や何かしなければならぬと思う。しかし、保健所の指導が、先ほど児童局長がおられないので質問が中途になったけれども、松尾課長が児童局長のかわりに来られたと思うのですけれども、保健所が非常に仕事がふえているのですけれども……。
  221. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 児童局長も来ております。
  222. 横山フク

    ○横山フク君 児童局長も同じですけれども、保健所の仕事がふえてきていると思う。たとえば、助産婦の妊娠中毒症の指導とかあるいは新生児指導とか未熟児指導とか、こういうのを児童局の方でやって死亡率を減らそうという形をとっているけれども、保健所の定員や何かに対してそれをどうお考えになっているのですか。
  223. 大山正

    説明員(大山正君) 母子保健指導につきましては、御指摘のように、保健所を中心にして今までやっておりますわけでございますが、何分にも妊産婦あるいは乳幼児の健康の問題でございますので、保健所という広い地域では必ずしも十分対象把握ができないのではないか。むしろわれわれとしましては、これを市町村までおろしまして、市町村当局が開業のお医者さんなりあるいは助産婦なりにお願いして妊産婦、乳幼児の健康指導を将来やっていただく、それを保健所が指導監督していただく、あるいは市町村でやれない部面をやっていただくというような形に持っていくことが最も母子保健のためによいことではないかと、かように考えております。
  224. 横山フク

    ○横山フク君 保健所の人数が足りないから市町村におろす形、これは保健所から市町村におろしたのではないけれども、受胎調節の指導も府県から市町村におろされたですね、しかし、これは市町村におろされた結果成績が上がっていないのです、市町村で。市町村でただおろしただけでは市町村ではやれませんよ。それに対する予算というものを充てておかなかったら市町村でやれませんよ。それは積極的にやる市町村もあるでしょう、保健所でやるよりも成績の上がる市町村もあるでしょうけれども、成績の上がらない市町村がある。成績の上がらない市町村こそこの問題を一生懸命やってもらいたい市町村です。それをただ市町村におろしましてやりますという形で肩がわりしてもこれは意味ないと思います。市町村でもっておるすならおろすで、市町村でもってやれるような形に国が指導するのがあたりまえだと思う。そういう市町村がやれるような形にしていないで、市町村におろして市町村でやりますと言っても市町村では、国でもって新規事業、新規事業と言って新聞に書いて、厚生省の、何といいますか、社会保障面、医療面に対して非常に厚生省が親心を出しているように、新聞では厚生省はほめられて、問題は市町村におろされて、市町村では予算はかかるし、ほんとにいい災難ですよ。市町村がやれるような形をしてやらなければしょうがない。一つもやっていない。厚生省が母子衛生はこんなことをやりましたということを新聞に書いて、お料理の上っつらだけ食べて下ごしらえをさせる……。
  225. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) ただいま申しました市町村におろすということは、もちろんそれに必要な予算の裏づけが必要でございまして、来年の予算要求をしまして、私どもはそういう予算を要求しておるような次第でございます。
  226. 横山フク

    ○横山フク君 そういう予算要求をなさるということ、それははっきり補助金という形でおありになるわけでございますね、市町村に。交付税、交付金とかいうような形の中で、取ってほしいというような形でなくて、はっきり補助金で幾らという形をおとりになるわけでございますね。
  227. 大山正

    説明員(大山正君) 補助金という形で要求いたしております。
  228. 横山フク

    ○横山フク君 それでは、受胎調節の方は補助金という形をおとりになっていませんね。ということは補助金という形が違っていると思う。全体の予算のうちの全部補助金じゃないです。四分の一かせいぜい多くても三分の一いっていないでしょう、三分の一でしょう。これは三分の二というのはどこから出るか、三分の一上げてあとの全部は市町村でお持ちなさいと言って、予算的処置は講じましたと言っても、これは無理ですよ。貧弱な市町村でそんなに持てませんよ。それが、割合がどういう形になっているのですか。
  229. 大山正

    説明員(大山正君) 家族計画につきましては、国が三分の一、県が三分の一、それから市町村が三分の一、そういう形の補助予算で、従来やっておりますし、また、来年度もその形で要求しております。
  230. 横山フク

    ○横山フク君 家族計画、私も知っております。その三分の一すら持てないために、今度やめた市町村もある。それだけに未熟児対策だとか、妊産婦の対策だとかというような形を市町村におろして、補助金も従来やっておりますといってもその補助金が三分の一で、あとどういう形になるかということ。県で三分の一お持ちになるが、県で三分の一持つ。しかし、市町村で三分の一持ちたいが持てないということになる。市町村で三分の一持つが県では持たぬということもあるだろう。全部が全部三分の一ずつ持っていってそれで推進できるかということ。
  231. 大山正

    説明員(大山正君) 補助金でございますので、全額国で持つわけでありませんが、従来家族計画につきましては、確かに各県あるいは市町村等において十分予算化されないために、国の補助金で計上しました予算すら不消化であるというような形がございましたが、幸い本年度の様子を見ますと、各地方公共団体におきましても、非常に熱心に予算を組んで、むしろ国の補助金予算が足りないというような状況でありますので、来年度はさらに増額を要求しているような次第でございます。
  232. 横山フク

    ○横山フク君 大山局長は勘違いしていらっしゃる。私は家族計画を聞いているのじゃない。妊産婦の対策として、未熟児対策あるいは妊娠中毒症なんか、それの対策の新規補助金を聞いている。それから勘違いしていらしておっしゃったことであるが、今度予算を消化し切れたとおっしゃるが、去年一千万円予算を減らされている。だから使いこなせた。であるから使いこなされたということは、決して自慢にならないくらいです。ですから今度はどういう形をおとりなのか。三分の一なのか、県がどのくらいなのか、あるいは市町村がどのくらいなのかということを伺っている。
  233. 大山正

    説明員(大山正君) 補助率につきましては従来通りでございます。
  234. 横山フク

    ○横山フク君 それでもって現在市町村でうまくできるかどうか。また、私が伺いたいことは、家族計画のような問題でしたらば、保健所の監督ということを抜きにしてもできるだろうと思いますけれども、未熟児対策とかあるいは妊産婦の対策を市町村で、どなたをお使いになるのか、あるいは助産婦をお使いになるように聞いているが、その人を監督する人、その人の自己の責任において監督するか、あるいは保健所で監督するか。身分がないために保健所の監督というものは十分にいかない。やはりそういう保健行政というものは市町村と保健所とばらばらであってはいけないと思う。一般の保健行政というものが、保健所の監督があるならば、当然身分という形も保健所にあれば保健所で監督できるが、市町村にある身分の者を保健所で監督できるかという問題。予算は使いこなされるでしょう。最初から使いこなされないとは思いますが、市町村で持たぬと思います。そういう積極的な問題、予防的というか、事前的な問題には。しかし、かりに予算を使い切ったとしても、市町村でもってそういう監督のできるだけの能力者ということになると疑問です。やはりあなたのお話のように、保健所でもって監督するというか、保健所に身分のない人の、そういう監督をやりやすくすることが業務の範囲の中でむずかしいと思う。保健所があり、人があるけれど、あるものは保健所でもって保健行政、あるものは市町村行政というものでやるということになると、二元化になって、一元化の方がより並行的にうまくいくのに、そうして複雑化の形になりはしませんかというのです。
  235. 大山正

    説明員(大山正君) 妊産婦の保健指導につきましては、現在は保健所がほとんどやっておりまして、若干の市町村で独自にやっておるというような状態でございます。私どもは将来の方向といたしましては、先ほど申し上げましたように、大体市町村を中心にしてやっていく。その場合に市町村で開業のお医者さんなり、あるいは助産婦の方にお願いして、市町村が責任をもって妊産婦の保健指導を行なう、それに対して保健所が一般保健指導衛生に対する監督、指導という形で保健所がこれを指導、監督をしていくという形が一番適当である、かように考えております。そのような予算の要求をしている、こういうわけであります。
  236. 横山フク

    ○横山フク君 時間がないのですが、ちょっとそれに切りをつけたいので伺いたいのですけれども、保健所でも、今度は市町村でもなさるというようにすると二重になるわけです。保健所でなさる妊産婦の保健指導という形を全部市町村にお移しなさるのですか。また市町村でもやらなきゃならぬ。二重になるのも困るのです。ただ、その指導をする医者なり助産婦なりの身分というのか、給与、報酬の出どころを市町村にするのだが、監督は保健所でするのですか。そこのところが非常にむずかしい問題だと思うのです。そこら辺をお考えになっていただきたいと思います。これはお考えになっていただくでけっこうです。  今度は医務局長に伺いたいのですけれども先ほどの問題に戻りますけれども、妊産婦の入院ということは悪いことじゃない、妊産婦の死亡を減らす、減らさぬということでなくても、悪いことじゃないということは言えると思うのです。よき施設でもってお産をさせることがよりいいことは言えると思う。実際問題として助産婦でも入院施設を持っている人たちは現在でも昔以上にはやっている人が大ぜいいるわけです。だから助産婦でも入院施設を持つということをとっているわけです。またその方向で皆さんしていらっしゃる。その人たちは非常に栄えておられるのですけれども、まあ資金面で非常に問題がある。私はそういう資金面というのは国でもってめんどうを見てあげていいと思う、中小企業に対してめんどう見るように。医者にしても、助産婦にしても、みな所得倍増になっていいと思う。そうなるというと、そういうことをしたならば、今の一般の保健衛生上もいいし、生活も立ち直るということたったならば、何らかの形をとるべきだと私は思うのですね。ただ、母子ヘルス・センターも私はけっこうです。しかし、何でも国でもって建物を建てるという形で国が満足するのではなくて自分の力で立ち直っていこうという形があるならば、それに援助する方が早いし、そうしてまたより能率的だと思う。そういうことをお考えになったことがありますかしら。
  237. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 従来御承知のように、中小企業金融公庫で助産施設の少ないところにベッドを設けたり、その施設をよくするための融資をはかることについて医務局からも申し出て、そのようになっております。ただいまのお話は、そういう中小企業金融よりも特別な金融をはかるべきじゃないかという御意図だろうと思いますが、その点は最初医療金融公庫を作りましたときに、助産婦の施設もと考えておったわけでありますけれども、料金が自由になっております関係もありまして一応対象からはずされたわけでございますが、現在その点につきまして、いろいろ検討いたしております。
  238. 横山フク

    ○横山フク君 中小企業の貸付対象になったということはそれでいいです。しかし、それが今度医療金融公庫になった場合には、保険の指定医なり、指定薬剤師なり、指定歯科医師という形でないと、これは対象にならないわけです。助産婦だけはそれからはずされた形になる。これは何らかの形でもって努力し検討するとおっしゃいますけれども、どういう形になるのでしょうか。私はそれは答弁に困るだろうと思います。困って時間ばかりとったら私も困るので、ですけれども、これは医療公庫の対象にするためには保険で扱うというような形でなかったならば貸付の対象になれないという形ですね。それを何らかの形でおとりになるということもなかなかとれない。医務局もお困りになっておるだろうと思う。しかし、助産婦が施設を持つことによって初めて立ち直れるし、そうしてそうすることがこれから後の人たちが、助産婦が出てくるためのある明るい見通しになるわけです。何でも国で施設を建てて官立、国立、公立という形をとらないで、民間で自分でやりたいという人のために国が何らかの積極的の援助をすべきだと思う。その方がむしろ安い、経済的だ。それをどういう形でか解決しなければならない。なるほど料金はばらばらだとおっしゃる。ばらばらだとおっしゃったって、私たちの方で協定料金というものは私の方で認めないという形ならば、何らか協定させる形か、保険対象にするなり、何らかで、ここでもって考えなかったら切りがつかぬと思う。あるいはほかの形でもけっこうです。医療公庫で貸す。生業資金、あるいは住宅公庫の方は無理だろうと思うけれども、何らかの形で医務局で、どうも困りました、だめでございます、無理でございます、私の力でいたしましたけれどもという形であっては、これは何ら意味をなさぬと思う。いつまでたったってめどはつかぬと思う。助産婦が少なくなりました、何らかしなければなりませんと言ったって、それじゃ終わってしまうと思うのです。もう少し医務局の方で積極的にどういう形でかでもって、ここのところをこういう形でこうしたらいいのじゃないか、こうすべきではないかという形で積極的な助産婦対策というものをお考えになっていただかなければこれは仕方がない。今でも手おくれだと思う。お考えになる御意思があるのですか。
  239. 川上六馬

    説明員川上六馬君) その問題は、先生からかねて御要望があることでありますので……。
  240. 横山フク

    ○横山フク君 先生からの御要望で、してくれないでいいのです。あなた御自身が助産婦をどうするかということを考えてあたりまえだ。
  241. 川上六馬

    説明員川上六馬君) むろんそういうことでありますので、現在関係方面といろいろと打ち合わせをいたしておりますので、しばらく御猶予を願いたいと思います。
  242. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の助産婦、出生分べんの助産婦がどうしようもないという状態で、そうしてそのままになっておるというこの問題は、もっと厚生省の中で明確に計画を、日時を切ってこの委員会に返事をしていただいて、そのときにどういう計画でどういう工合にしてやるのだということを明確にしていただかないというと、私らは聞いていてもさっぱり……横山さんの言うように、ごもっともでございます、研究さしてもらいますというのじゃ、これで終わってしまうと思いますので、ぜひ一つこの次の委員会に明確に今後の計画というものをどうしていくのだということを明確にしてもらいたい。きょう御返事がどうもできないようですから、この次の委員会でこの問題だけを私は関連をして申し上げたいと思います。
  243. 横山フク

    ○横山フク君 何か藤田委員にすっかり結論をつけられた格好になってしまったのですが、今のお話の通りなんで、医務局の方でも、この問題は主管は医務局なんです。医務局の方で、私は自分が助産婦であるだけに、私が言うと何かほかにすなおにとってもらえない、気持もして今まで遠慮していたけれども、選挙の代表とかなんとかいうことを抜きにして、助産婦の減少というものをここらで真剣に考えなければならぬ、そのためにはどういうふうにしていくかということをもう少しはっきりと考えていかなければならぬ。その主体は医務局だ。医務局がたとえば現在の人たちに対して施策を直す、そのためにはどういうふうな形でもってめどをつけるとか、あるいはそのためには保険はどうするとか、あるいは市町村におろした、それに対して助産婦の手当、報酬なりをどういう形をとるか、私はお願いするけれども、家族計画の指導でもって四十円というような形で助産婦はそれはやっておりますよ。しかし、四十円という指導料ですね、一人に対して四十円でもって何回かかったか。しかし、むだがあってあるいは子供がいて行かれないとかいう形もあるわけですが、四十円といったら電車賃にもならぬですよ。そうして何回か指導しているのですよ。それであっては私はいけないと思うのです。もう少しそこらの点を助産婦の妊婦さんへの商売が暇になったから、妊娠中毒症の指導をやっていただいて、生活の方も潤していただきましょうというけれども、まるっきり潤していないのですよ。あべこべにマイナスのような形をとっちゃいかぬと思うのですよ。ほんとうに皆さんがなさるのならなさるような形で、もっと今の生活水準に合うような賃金から割り出して、一時間幾らに当たるとかいうことを計算しながら、そこに幾らという妥当な線を出してもらうべきですよ。今までの十円から見れば、四十円は多少いいでしょうけれども、四十円にしたって、私たちから見たら、いまどきですよ。一人の指導をするにしても、これは一切の旅費です。一回じゃありませんよ。一人の人ですよ。それで何回も行くという形であってはいけないと思うのです。そういうのも医務局が中心になって、助産婦をどうするかという形で各局や何かとお話し合いになって、そうしてしていただきたい。  大臣にお願いしたいことは、そういう問題はただの助産婦でない、百六、七十万の妊産婦の問題である。今お医者にかかるのがふえています。ふえていますが、しかし、日本全国を平均して七割というのは、助産婦がやっているのです。この助産婦をどういうふうにやるかということを真剣にお考えになってそのためにはどういう厚生省の対策、今藤田委員のおっしゃるように、この次までにそれに対するお考え方をおきめになって、それはこうする、ああする、それで最善の努力をして——できないものをとやかく言うのじゃないのです。最善の努力もしないで困ると言われましても、また、私もそう思います。おっしゃる通りでは、私は困ると思いますので、それを強くお願いいたしまして、これで質問を終わらせていただきます。またいずれのちにゆっくりともう一ぺんさせていただくこともあると思いますけれども、一応これで終わらせていただきます。
  244. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 社会保険医療に関しまして大臣と関係事務当局に二、三お尋ねをいたします。  第一点は、中央社会保険医療協議会の構成に関しまして前回にこの委員推選に関連いたしますることにつきまして大臣も御努力をして、何とか早急に努力するという話も承っておりました。その後御努力もあったとは存じますが、なお、現在未構成の形にございます。これをそのまま放置いたしますことは、皆保険対策の面におきまして国民の中でこの医療保障の実態について大きな、不信とまた不安を持つような状況にあると思います。従って、今までの状況につきまして、どのような形になっておるかという点を第一段階、その点でけっこうです。今までどのような御努力を払われましたか。その点について率直にお話を承りたい。
  245. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) この点につきましては、種々医師会にも懇請をいたしまして、すみやかにその御推選を願いたいということを申し入れておりましたのでございまするが、選挙の直前にも私どもお願いしたのでございまするけれども、今日までまだ御推選をいただいていないという、まことに遺憾な状態にあるわけでございます。本日も全医労の方、そういう関係の方々からもいろいろと御陳情をいただいておるのでございますが、何とかしてこの際踏み切っていただきたい、そういたしませんことには、これが前進できないということで、いろいろとこれに関しまして私どもが解決をしたいという問題の解決を見られないというまことに残念なことでございまして、関係者の御要望にもこたえられないという、まことに心をいためておりますことは事実なんでございます。それで、御承知通りの選挙というものがございましたので、それが選挙が済みましたことでございますから、これから真剣に私どももこれに取り組んでいかなければ、もう時期的に非常に切迫している感じを私どもは持っているわけでございます。
  246. 坂本昭

    坂本昭君 関連。もう一カ月で来年になります。来年を越させるつもりですか。
  247. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 越させるなどということは私どもは考えていないのでございます。さっそくと、私はこの日医の方々からの一つ委員を出していただいて、そういたしますればこれが開かれますのでございますから、私はぜひ一つ一日も早くこれが開かれまして、そうしていろいろのこれを待望していらっしゃる患者の方々の御要望にこたえたい、こう考えております。
  248. 坂本昭

    坂本昭君 それでは大臣の御決意された顔色を拝見しまして、来月中には満天下の患者さんがカナマイシンを使い得るという期待を持ち得る、そういうふうに私感じますが、よろしゅうございますね。
  249. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) お感じいただきまするのは、これは自由でございますけれども、私どもといたしましては、ここに私が最善の努力をするという決意はお感じいただきたいと思うのでございます。これまでもそういうつもりでやって参りましたけれども、その壁がなかなか開かれませんで、私どもの悩みの種なんでございます。それで、選挙も終わりましたことでございますので、一つもう一ぺん全力をあげて努力をしたいという決意を持っております。それで、時期的にいつということは、私どもも相手のあることでございますから、ここで申し上げられないことを残念に思います。
  250. 坂本昭

    坂本昭君 今までも同じ壁があったはずで、その壁に当たる同じ努力では、これはとうてい期待できません。だから、そんなことならば、私は大臣に一つ責任をとってもらいたいと思うんですよ。こういう患者さんが自分の命にかけて期待している薬品を三月も四月も、半年も使わせることができないようならば、それは厚生大臣はもう早くおやめになっていただきたい。全国民そういう気持を持っているということをお伝えして、この際大臣の奮起を一つお願いいたします。
  251. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいままでの御努力につきましては承りました。ここで私は決して大臣の責任を追求するという気持はございませんが、何といたしましても、この医療協議会に、当然諮問をいたしませんと、実施できない諸般のことが相当ございます。特にその中で、三十六年度の予算編成の中に関連のある重要なことが相当ございます。端的に申し上げますると、大臣のすでに御言明になられました一点単価の引き上げに関する問題となりますると、当然これは国の予算の中に織り込まれなければならぬ問題であります。こういったことを考えますると、かりに今明日中に委員の推選がありまして、委員会の構成ができましても、その審議状態を見ますと、なかなか間に合わぬような状況が起こってくるのじゃないか、こうなると、せっかくの言明またお気持につきましても、実施できないという形もあるわけであります。従って、もし早急に委員会が構成せられて、各委員の努力によって諮問案を審議するということがまあありまする場合は別といたしまして、もし委員を送られない、委員会が構成されないという段階に立ち至りましたときには、一応この辺でこの医療協議会の性格、運営等につきましても十分に掘り下げて検討を加えるべきでないかと思うのであります。そうでありませんと、延延としてこの状況がまた続くということも考えられるのであります。で、特に大臣は就任前の事柄でございまするし、はなはだ私はお立場を考えますると、御同情にたえないのでございまするが、とにかくその衝に当たられます以上、何とかこの辺で抜本的な事柄を考えていただきたい。端的に申し上げますると、医療協議会の改廃等にも及ぶのではないかと思うのであります。こういったことをまずお考えになられるかどうか。また、もう一つは、緊急措置といたしましてどうしても審議を要するものであるが、特に大臣の決裁によって行ない得ることがあるといたしますと、この諮問を経ずしておやりになられるお気持があるかどうか、この点についてお尋ねいたします。
  252. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 中医協の改組はやるつもりはございません。改組はやりませんでも、一つこれが効果を上げたいということが私どもの考え方でございます。今坂本委員からもお話のございましたカナマイシンの問題でございますが、やはりこれは諮問をしてやるべきであるということが、基本的の考え方に固まっておりまするので、それでぜひ一つ諮問の形をとりたいと、こう考えております。
  253. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいまの御答弁で、必ずこの医療協議会の諮問を経て諸般の運営を行ないたい、かように承りまして、これもけっこうであります。しかしながら、この現実を見ますると、どうもこのままでは根本的な結論が出ないように思われるのです。これを続けて参りますると、必然的に厚生当局の私は行政上のかなえの軽重を問われるという形になって参りますし、また、現在非常に緊急を要する事柄が相当多くあります。先ほども横山委員からもお話のありました問題につきましても関連がございまするし、予算編成を前にいたしまして何らかの私は強力な手を打っていただくということがありますれば、あえて私はこれ以上御質問いたしませんが、そのおつもりで、一つそれでは十分に御配慮を願いたいと思います。
  254. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) ただいまのお言葉を私どもも体しまして、今までに倍いたしました努力をいたしまして、何とか一つ結論を出したいという覚悟でおります。
  255. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 それでは第二点といたしまして、先ほどもちょっと触れました社会保険診療報酬の単価引き上げ改訂に関する件並びに点数表の改訂、すなわち甲乙両表の一本化、あるいは歯科補綴の点数表の改訂というようなことが、今回大臣の言明によりましてやられる、その作業につきまして、先般保険局長よりも目下その作業を進行中であるということを承っておりますが、医療協議会が大臣の御努力によりまして、早急に構成をせられるということになりますれば、直ちに早急にこの問題を審議していただかなければならぬ。その場合に最も大事なものは幹事案としてお出しになられる諸種のデータが必要であります。従って、作業等は予定通り進行せられておりまするかどうか、この点について承りたいと思います。
  256. 森本潔

    説明員(森本潔君) 私からお答えいたします。先般の委員会におきまして、大体の作業の見込みをややばく然としておりましたけれども申し上げました。ただいまのところ、その予定通り参っておりまして、なお私たちの気持といたしましては、予定よりもできるだけ早くやりたいという気持でおりますので、先般申し上げました予定よりもおくれることのないようにいたしたいというつもりでやっておるわけでございます。
  257. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 前回の保険局長の御答弁と、ただいまのお答弁で首尾一貫しておりまして、私も御努力を多としますが、非常にこれはむずかしい問題でございまするし、また、日本医師会におきましても、医業経理実態調査の実施には応じられないというような事柄で、昭和二十七年のデータを補正してお使いになるというようなことも新聞紙上にも見えておりますので、こういう点につきましては御如才もないと思いまするが、十分に一つ御配意をしてやっていただきたい、かように考えます。  第三点として、これは医療報酬に関連のありまする社会保険診療報酬に対する二八%の租税特別措置法の問題であります。これはもちろん前回三十二年に単価が八・五%、すなわち八分五厘の引き上げが行なわれた。その際には、この単価が決して適正なものではないというようなことから、当然その租税特別措置法というものが存続するという前提に立って八五%の引き上げが行なわれたということになっております。こういうような段階におきまして、ここに至っておりまするが、最近どうもこの社会保険診療報酬に関しまする特別措置法というものが、税体系から見まして廃止すべしというようなことが、税制調査会等においても答申に現われておるようであります。しかしこれは、そのよってくる歴史的な経過、昭和二十六年に取りきめをして以来わずかに八・五%というような上昇を見る段階におきましては、これは当然存置すべきものである、私はかように考えるのであります。かようなことでないと、現在低診療報酬にありまする医療担当者といたしましても、非常な不満をさらに増勢する点も多分にございましてこの点憂慮にたえない状況も考えられます。従って、厚生当局におかれましては、大臣におかれましては、この社会保険診療報酬に対しまする特別措置というものは当然存続せられるべきものであると私は考えますが、一応大臣の御見解を承っておきます。
  258. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 私どもといたしましては、ただいまの段階では、これは廃止にならないものという建前で物を考えております。
  259. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 本日は時間もございませんし、ただいまの大臣の御答弁で私は了承いたします。どうか事柄が非常に税の体系というような事柄からきまする一方的な御意見も相当あるようでありますので、十分御配意の上、この存続につきましては御努力があってしかるべきであろう、かように考えます。  以上をもって質問を終わります。   —————————————
  260. 坂本昭

    坂本昭君 二つの問題についてお伺いいたしたいと思います。第一点は、四年ほど東京地裁で審査して参りました例の朝日茂氏の裁判の件であります。これが去る十月の十九日判決が下りまして、生活保護で入院しておられる患者さんの日用品費の六百円が不十分な金額である、また、国立療養所の給食が症状や個々の嗜好に十分に応じていないということ、こういうことを浅沼裁判長が判決を下しました。で、このことにつきまして十一月の一日に厚生省はすぐに上告をいたしております。従来こういうふうな問題が裁判によって決定されたということはきわめてまれであってまた、特に生活保護の基準を、かねてから引き上げたいと努力をしておる厚生省としては、ある意味ではこの判決は厚生省の予算の引き上げなどについて、一つのささえともなると思うのであります。にもかかわらず、十一月の一日に上告をして、あくまでもこれを原告朝日患者と戦うというふうに見えますが、一体これは厚生省当局としては、あくまで判決に対する不服の態度というものを押し通すおつもりであるかどうか、まずその点伺いたい。
  261. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 便宜私からお答えいたしますが、お尋ねの東京地方裁判所のいわゆる朝日事件に対する判決を私ども検討いたしましたわけでございますが、お話にもありましたように、入院患者の日用品費の六百円が不十分である、それから療養所における給食の際に補食というものを認めるべきである、こういう二点が中心のようでございます。私ども検討いたしました結果、その点につきましては、不幸にして納得できない点がございますものですから、これはなお上級の裁判所において、さらに私ども見解を述べ、公平に判断してもらうという趣旨において、先般東京高裁に控訴した次第でございます。
  262. 坂本昭

    坂本昭君 そうすると、去年も、また来年度の予算についても、生活保護の引き上げについて、あなた方自身一生懸命努力しておられるのですが、それらの努力について、みずからそれほど引き上げなくてもいいということをお考えになっておられるのですか。
  263. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) これは何も厚生省の明年度の予算の折衝にまあ有利な面もございましょうし、また、不利な面もあるかもしれませんが、格別そういうものに重きをおかないで、ただ適正なる判決を求めるについて、私ども不幸にして、なお納得できない点がある、こういう意味で控訴した次第でございます。  なお、明年度の予算において、生活保護法のそれぞれの基準の改善要求しておりますことは御指摘の通りでございますが、これは現在の保護基準が現状において低いとかいうことで要求しておるのではないのでございまして明年度以降におきまして新しい内閣が積極的な政策を展開して参る、それによって国民の所得水準を飛躍的に上げるとか、国民経済を拡張するということがいわれておるわけでございます。そういう際におきまして私ども社会のこの日の当たらない谷間におるこの人たちについて当然考えてあげてしかるべきだと、その考えてあげるのも、一般国民の生活水準が豊かになって、それがぐるぐる回って、それからその人たちを潤すというのじゃなしに、まずそういう際にはできるだけその人たちのことを優先的に取り上げてあげるのが政治ではあるまいかと、こういう考えから改善要求をいたしておるわけでございます。
  264. 坂本昭

    坂本昭君 では厚生大臣に伺いますが、そうすると、承るところによると、来年度二六%程度というようなことも新聞に出ておりましたが、引き上げるということは、それはその所得倍増論に基づく引き上げであって、今日の生活保護法自体の不十分な点を基本的に変えていこうという、そういう面ではなくて、あくまで所得倍増に伴った分だけ引き上げると、そういう御方針なんですか。
  265. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) ただいまも政府委員から申しました通りでございまして、所得倍増ということになりますと、放置しておきますれば、片っ方におきます人たちはその谷間に停滞いたしておりまして、そこに大きなギャップが出て参りまするので、バランスの政治という考え方から、この方々もぜひ一つその収入の面において増になるような政治をとるということが一貫した所得倍増の論旨を進めることであろうと私どもは考えて、大いに努力をいたしております。
  266. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連して。  そういたしますと、生活保護費は今後長期計画で年々上がっていくわけですか、長期計画をもって。その初年度として二六%ということでおやりになっておるのですかどうですか。その点をはっきり。
  267. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 私どもといたしましては、なかなか、生活保護費というものは、申し上げるまでもなく、最低生活の問題でございますので、長期計画というふうにはなかなか乗りにくい面がございますので、そこまで考えておらぬわけでございます。ただ、最近非常に一般の国民経済なり生活水準もだんだん伸びて参っております。特にそういう、先ほど申し上げましたように、今後飛躍的に伸びるというような場合に、そういう一般の国民の生活水準なりまた国民経済というものの見合いにおきまして、やはり生活保護基準をどの程度におくかということを考えて参らなくてはならぬと思うのでありますが、これは明年二六%、これは生活保護だけでございません。その他も要求いたしておりますが、これらがどういうふうになるかは別といたしましてかりにそれが出る場合、その線でもって再来年、その次とずんずんやっていくというまでには考えておらないわけでございます。
  268. 秋山長造

    ○秋山長造君 それはおかしいと思うのですがね。これは政府の所得倍増というのは、ただムードとして、気分的なことを言うておられるわけじゃないのでしょう。十年間で、年々経済成長率を何パーセントに見ていって、そして十年間でほぼ倍にする、こういう相当の具体的な、しかも根拠を持ったことを言っておられるのだと思うのですよ。そういうようにこの間の選挙中も池田総理以下が言うて回られたと思うのです。そういたしましたならば、この生活保護基準について、ただ所得倍増計画の、一環として、とりあえず二六%やるのだという以上は、いずれにしても所得倍増に見合うものを、生活保護の面においても想定しておられるわけだと思うのですね。所得倍増に見合うものを、おそらく所得が倍増ならば、生活保護基準もほぼこの十年後には現在の倍増ということが想定されておらなければ、その初年度としては、その一環として二六%という数字が出てこぬはずだ。そうでしょう。出てこぬはずだ。だからそのことも今の大臣なり局長なりのおっしゃることでは、それはわれわれ納得できません。納得できぬし、それから第一その二六%というものが、倍増計画の一環として二六%要求しておるのだとおっしゃると、二六%というものがどういう根拠を持って二六%という数字が出てきておるのか、その説明くらいはして下さらなければ、それはただ所得倍増に、坂本さん質問が出たんで、とりあえず所得倍増に結びつけてお茶を濁すというような感じをやはり与えますねだからもう少しはっきりして下さいよ。そこを。
  269. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 所得倍増に結びつけて申し上げているんではないのでございます。これはやはりそういうことも政府の施策でございましょう。しかし、それによって国民の生活水準は、あるいはそのもととなります国民経済というものは、今後私ども伸びて参ると思います。従いましてそういう場合に一般国民の生活水準とのまあ見合いと申しますか、そういう面もございますし、また、社会保障に関する一般国民の理解の度合いと、あるいはこの保護基準というものに対する国民の感情というものもだんだん今後変わっていく、たいへんよくなっていくだろうということは私どもも考えておるわけでありまするけれども、いわゆるそれがすぐ所得倍増、十年で倍になるからこちらも倍にするのだ、あるいは倍にすればいいのだ、そういうふうには私どもは考えておらないわけであります。生活保護の最低生活といいますものも、一般の国民の生活水準なり、一般国民の理解なり、あるいは国の財政力なりというものの総合的な判断のもとにこれをきめて参るべきものでございまするから、必ずしも一つの計画というものによって上げていくのだというふうなことを、私どもとしてはこれについてはなかなか言いにくいということを申し上げたわけであります。二六%というのは、正直に私ども生活扶助について二六%の改善ということで財政当局と相談をいたしておりますが、これも現在の生活扶助基準を改善するとした場合に、まずどういうところを改善したらいいかというようなこともいろいろ考え、また、保護を受けておりまする家庭の最近の生活実態というものもにらみ合わせまして、これを積み上げたその結果が大体二六%の改善になっていく、こういうことでございます。
  270. 秋山長造

    ○秋山長造君 それはやっぱりそうでなしに、何じゃないですか、しいて所得倍増に結びつけるよりも、現行の保護基準というものが実情に沿わなくなっておる。ですからこの際できるだけ手直しをしたいというのがこれが実態じゃないですか。その方が納得しやすいのじゃないかと思うのですがね。現状でいいのだけれどもその上おまけをつけるのだという、そんな理屈はこれにはちょっとつかぬと思うのですがね。これはやっぱり今の保護基準というものが何でしょう、実情に沿わなくなっているのですよ。だいぶ物価の面から考えても、何から考えても、これは以前にできた保護基準なんで、今日の実情に沿わないから、あまりにも実情との隔たりがひどくなっているから、この際できるだけ一つ実情に即したものにしたいと、そのためにいろいろはじき出してみて二六%ぐらいであれば何とか曲がりなりにもその説明がつく程度になるのではないかということでおやりになっているのじゃないですか。私はそれが実情だと思うのですがね。現状のままでいいのだけれども、所得倍増だ、所得倍増だというかけ声もあるのでおまけをつけてあるのだという説明は、大蔵省ならそんな説明されますよ、もしその通りおっしゃるのだったら。そうじゃないのですよ。現状の実情に即していない数字になっているから改めるのだということでなければ、予算要求しても迫力が出ないじゃないですか。どうですか、もう少し正直におっしゃった方がいいと思う。
  271. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 別に……同じことを申し上げるわけでありますが、事実それはだんだんそういうふうに社会の一般の国民生活水準なんというものが向上して参りますれば、それだけ保護基準というものは変えていかなければ実情にだんだんそぐわなくなって参るわけであります。
  272. 秋山長造

    ○秋山長造君 そう遠回しの言葉ではなくても、これは実情に即さないということで……。
  273. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) しかし、これは私どもとしてはそれが今後飛躍的に較差が大きくなるということを考えているわけであります。
  274. 坂本昭

    坂本昭君 朝日裁判の判決は、厚生省当局としては確かに面目を失するかもしれませんが、しかし、役所が面目失してもいいじゃないですか、それで国民がしあわせになるならば。私は上告を取り下げて判決に服してそれによって確かにわれわれの努力が足りなくて済まなかった、場合によれば今まで政府の一部負担金など取っておった人は返してやる、そうすればずいぶん今保護を受けている人たち喜びますよ。何も自分のやった施策が間違いなくて正しいのだという面目にとらわれない。その方が私は結果的に国民もしあわせになるし、また、来年度の予算折衝にあたっても、あなた方としても非常に楽になるだろうと思うんですが、それはいかがですか。
  275. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) いろいろ御親切に言っていただきまして……。役所は確かに面目なんかにとらわれるべきものじゃないと思います。私どももそのつもりではございます。ただ、あの裁判の判決内容検討いたしました結果、先ほど申し上げましたように、私どもとしては納得いかぬ点がございまするので、そのままのむわけにはいかぬ、こういうことでございます。
  276. 坂本昭

    坂本昭君 当委員会は、厚生省の、第二審でも負けることを心から期待しております。その方が国民がしあわせになります。  そこで、生活保護法の基本的な問題はどうせまた次の機会で議論しますが、さしあたって、このような恵まれていない患者さんに年末が押し寄せてくるわけです。この年末の扶助の問題、越冬手当の問題、これについて、これは従来、厚生省は去年、それから本年度と非常に予算の場合に苦心をして努力してこられたことをわれわれも認めますし、また、われわれとしても何とかしてこれを成立させたいという考えを持っております。が、これについてもういよいよ近くなってくる年末について、どういうふうな準備をしておられるか。従来の経験を見るというと、都道府県によってはいろいろな名目で出しているところもある。あるいは共同募金などから実質的にその内容にふさわしいものを渡しているところもある。しかし、そういうものによらないで、国としてこの年末の手当を一つ出すような方途をとっていただきたい。それに必要ならば衆参両院で何らか努力をして、そうしてこの一九六〇年をあたたかく送って新年を迎える、そういうふうなことを考えるのですが、まあ金額としては、たとえば患者さんについては、やはり一人一千円程度が必要だと思います。これについての厚生当局のお考えはいかがですか。
  277. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) まあ年末に、平常の場合よりも被保護世帯についても何か考えてやってはどうかという御趣旨のあれかと思うのでありますが、私どもも、まあできたらばそういう方向に進みたいと思っておりまするが、ただ、三十五年度の予算におきましては、生活扶助基準、あるいは出産とか、葬祭とかという、もっと切実な方の問題の改定に力を注いでおるのであります。  それからまあこの次の、今度の特別国会にも補正予算をお願いいたしたいと思っておりますが、これは医療費が非常に最近かさんでおりまして、さような点で、そういうものをまず片づけねばならないというようなことでございまして、今の一般の期末一時扶助というようなものにつきましては、ただいまのところはそこまでには至らない状況であります。で、各府県によりまして、まあいわゆる慈善団体などの方で、たとえば毛布を送るなどというようなふうにしておやりいただいておる点は、私どもははなはだけっこうなことでもあるし、そういうことであるならば差しつかえないと思いますけれども、これをやはり一律に金額でどうこうするということにつきましては、まだ今日の段階では私ども検討を要するものと、かように考えます。
  278. 坂本昭

    坂本昭君 これは大臣に一つお伺いしたいのですが、去年度からこの年末の手当はいつも予算組んでいるのです。しかし、大蔵省に削られているのです。ですから、こうした場合に、せっかくの厚生当局の素志を貫くために、われわれ委員会としても、できたら御援助いたしたい。そしてせっかく中山厚生大臣が初めてこの年末手当を作ってくれた、こういうふうな喜びを保護世帯の人たち、あるいは長期療養患者の人たちにプレゼントとして贈りたいのですが、いかがですか。何かそういう考えございませんか。われわれとしても協力いたしますよ。
  279. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 非常にそのお声を聞いて保護世帯も喜ぶことであろうと思います。また、何かの場合にはぜひ一つ御協力をお願いをいたしたいと思いますが、私どもも来年度の予算の中にはそういう気持を盛り込んでいきたいということを厚生省としては考えております。
  280. 坂本昭

    坂本昭君 来年度ですか。
  281. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) まあこれからのことでございますから、来年度になるのでございませんか。
  282. 坂本昭

    坂本昭君 次に、朝日裁判で問題になった国立療養所病院の給食費の引き上げの点であります。これは昭和三十二年に九十六円から百二円に引き上げになって、そのままとまっております。この百二円に引き上げになったときにはここで前医務局長、それから大蔵省の主計官を呼んで当時かなり綿密な議論をしまして、最後に大蔵当局も少ないということを認めて、まあそういったことがきっかけになって百二円に引き上げになっておりますが、これは朝日裁判の結果に徴してもわかるということと、それからさらに例の医療費の問題のところで、現在の基準給食費は国立療養所が一日百五十円、それから国立病院は二百円になっております。ところが、国立病院の場合は百二円、ちょうど差額九十八円というものは国がつまり腹の中におさめてしまって患者に対しては百二円しかやってない。しかも基準給食費は二百円という、こういう矛盾もあるわけです。従って、私は当然これは大幅に引き上げる必要がある。そういうふうに考えております。これについてはまあ朝日裁判に関連して当局のお考えを承っておきたい。
  283. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 現在百二円でございますが、これは材料費でございまして、今二百円とっているのだというお話がありましたが、そのほか燃料費、人件費などを加えますというと、やはりそれくらいになります。特にそれによって国が不当にもうけているというようなことはないと考えているわけであります。  来年では、私はもう少し材料をよくしたい、あるいは物価の値上がりなどがあるものですから、材料費の方もふやしたいと存じています。  朝日事件の方は別で、これと関連して来年度上げるという考えに立ってはおらないのであります。  次に朝日事件に関して少し申し上げます。私どもでは患者の栄養、治療、嗜好等の立場から病院給食につきましては複数献立にしたりあるいは普通食と特別食に分け、必要により軟食を与えたり食欲の盛んな人には盛りつけを多くしたりし、また患者の病症により治療食を与えています。そのほかときどき嗜好調査などをいたしまして、材料味つけ等に工夫をし、なるべく残飯が出ないように注意し、患者に栄養の欠陥が起きないように、十分な栄養がとれますように努力をいたしておるつもりでございまして、当時の給食の状態が患者に栄養の欠陥を来たすものだというようには考えていないのであります。
  284. 坂本昭

    坂本昭君 それでは時間の関係資料として出していただきたいのですが、この朝日裁判のときの当時の食費の内訳の理論的な根拠を一つ示していただきたい。それから今あなたは病院の基準給食費が二百円で材料費が百二円、その差額の中には燃料費だとか人件費だとか、いろいろなものが入っている。どんなものが入っているか、それを一つ明らかにしていただきたい。そしてこれは病院について二百円、国立療養所については百五十円、これが二割引きになりますから百二十円になりますね。その内容を次の委員会までに一つ出して下さい。そして計算に合っておれば私の方もそれを一つ認めます。  それから最後に、先ほど藤原委員から問題の出ました和歌山病院の閉鎖の問題について、先ほどお聞きしますというと非常に時日が切迫しておって十一月の末日をもって閉鎖の準備を整えて厚生当局から明後日現地に行かれるということを伺ったのでございますが、これについては非常に問題があるし、たとえば埴生の療養所についても従来この委員会で何度も議論してきました。そして埴生の療養所が、最終的に十月の二十四日、われわれが選挙で帰っている間に最後に残った十五名の患者が転院している。転院の中には湯田の療養所に移った二人の患者さんの重症な人が、十月の七日に移って十九日に死亡しておるわけであります。それからまた、十月の八日に大喀血をした人を二十日に転院させている。非常に気の毒なことをしている、こういう事実を私は知っているのですが、和歌山病院のこの閉鎖問題について、いよいよもう明後日に迫って、われわれがまだ十分あなた方の説明も聞いてない、特に医療整備六カ年計画の内容の中で一体こうした国立病院をどういうふうに、どういう方針で統廃合していくか、そういうことについて納得のできる説明を聞いてないところで、勝手に今月末までに閉鎖してしまう。そういうことは私はもってのほかであると思うのであります。で、もしどうしてもやる気になろうというなら、われわれも現地に見に行きます。そしてあなた方が現地の人たちに対する説明をどうされるか。そして現地の人たちがそれに対して十分了解の上で、円満に統廃合ができる、あるいは閉鎖ができるというならともかく、そうでないなら、われわれとしては、これは閉鎖していただくわけにいかない。これについて、これは大臣の一つ御返答をいただきたい。
  285. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 和歌山病院は御承知通り、すでに廃止の方針を決定して延び延びになっておるわけでありますが、先般管理課長も参りまして、よく廃止すべき事情を説明をいたしましてだいぶん了解していただいておると考えておるわけでありますが、県、市などにおきましても、国のこの方針を大体了承していただいて、それに御協力を願えるような状態にあると聞いておるわけであります。いつまでも今のような状態に置きますことはかえって患者の療養上よくないように考えておりますので、実は病院課長、管理課長も近々に参りまして、さらによく現地で話し合うことにいたしておるようなわけであります。むろんただいまも御心配になりました重症患者の処置などにつきましては、極力遺憾のないようにいたしたいと思っております。
  286. 坂本昭

    坂本昭君 それでは、明後日というのは、そこでもう一ぺんよく話し合いをして、その話し合いの結果、現地も納得する、あるいはまた、これは単に和歌山病院だけの問題でなくて、全国にある国立病院療養所の問題でもあるから、当然全国的な問題として私は解決しなければならぬと思うのです。その、明後日というこの日取りは確定的なものなんですか。それともどういうものなんですか。  それからまた、国会の、私たち当委員会でも、数年来議論してきたことですから、これについてあなた方はどういう責任をおとりになられるのであるか、その点も一つ明らかにしておいていただきたい。
  287. 川上六馬

    説明員川上六馬君) 全体の病院等の関係において考えなければならぬということでありますけれども、和歌山病院は先生も御承知のように、非常に立地条件も悪く、しかも給水の状態も大へん悪いわけでございまして、付近にもだんだんよい病院もできてきていますので、ほかの病院の方針とは一応切り離して廃止することにきめております。先ほども申しましたように、この問題では大体私は、厚生省のそうした方針につきまして了承を得ている向きも多いというように最近は考えておったのであります。従って、患者さんをよく説得してなるべく患者さんの希望される病院に移ってもらうようにし、その措置に遺漏のないようにいたしたいと存じます。
  288. 坂本昭

    坂本昭君 大臣に一言伺っておきたいのですが、今の和歌山病院は、私も三年前に、その当時から問題になっているころに行きました。なるほどあの、昔あれは砲兵連隊か高射砲連隊のあった、離れたところです。ところが、前に和歌山の市内に国立病院診療所のあったのを、わざわざ撤去して、そうして現在のところで、診療を始めたというそのいわくがあるのです。今医務局長は、付近にいい病院がたくさんできたからと言うのですけれども、そのできたからということでは、はなはだ不穏当だと思うのですね。むしろそういった新しい病院を整備する場合に、国立病院としての任務を十分に保持しながら経営していけば、付近に病院ができたからもう要らなくなるというような、そんな不見識なことをしなくても済むはずです。特に最初市内にあったものを現在地に移転させ、移転させて数年たっているわけです。従って、私はその間に、そこに常に勤めている職員あるいは入院している患者さんにとって、なかなか割り切れないものがたくさんあると思うのですね。でありますから、これをただもう数年来の懸案だから、この際一挙に押しまくるということでは私は済まされないと思う。前、これはたしか堀木大臣のときじゃないでしょうか、もうそのころにも、どうしても押し切ると、当局は言っておりましたが、大臣からそれは十分検討して検討の余地のある場合には、決してそういう無理なことはしないということは、今まで何度も明言してこられた。私もそれを信頼しておった。ところが、突然先ほど藤原委員の発言があり、承ると、明後日に決定をするという、非常に緊急差し迫った状況に追い込まれているわけです。私はもう三、四年来、問題になっておった和歌山病院の問題でありますから、私たちが納得のできるまでは勝手にこの処分をおやりになるようなことをされては——委員会としてもきょう初めての問題じゃありません。数回にわたって和歌山病院、それから埴生の療養所並びに全国にある国立病院療養所の統廃合並びに整備計画、これはしばしば議論してきたところであります。ですからわれわれが納得のできる線をお出しになるまではあなた方の方で行政的に一方的な決定をされぬように、私たち、この委員会の今までの審議の結果によってもその点を強く要望して、大臣の御返答を承っておきたいと思います。
  289. 中山マサ

    ○国務大臣(中山マサ君) 坂本委員の御発言の中にも、この病院はすでにもうこういう問題に直面してから三年たつというお話でございまするから、その三年の間にはやはりこういう方向へ向かってきたことであろうと思いまするが、いわゆるこれがほんとうに適切でないという建前のもとでそういうことに相なったのではなかろうかと私は思いまするので、現地においても話し合いが済んでおりますものでございましたら、もう三年——石の上にも三年と日本では昔から申すんでございまするから、一つもっといい環境に患者さんたちがいらっしゃるように——今、何人かが運ばれたというような話もここで聞いたのでございまするから、現地で話がつきましたのでございますれば一つ御了解をいただきたいと思います。
  290. 坂本昭

    坂本昭君 石の上にも三年と言いますけれども、壁に向かっても九年と言う。これは、三年という言葉が解決のもとにはならない。確かに患者さんにとっても、あるいは職員にとっても、あるいは地域、和歌山県にとっても、これがよければそれは何も私たちはあえて言いません。しかし、まだなかなか納得しない声を幾つも聞きますし、今までも何回も審議されてきたことであるから、だからただ三年ひたすらそれは閉鎖するためにのみ動いておったというようにおとりになるのは、これは大臣としては少し早のみ込みだと思うのであります。でありますから、十分慎重の上にも慎重を重ねてやっていただきたい。で、われわれは、必要とあるならばわれわれも現地に参ります。ちょうど明後日というのは私の方でまた別の委員会がありますので、私個人として行けませんが、その翌々日くらいならば私、行ってみたいと思います。でありますから、現地に行って、なるほど皆さんがそれに賛成しておられ、そうして厚生省の指導もはなはだよろしきを得て、これならば安心しておまかせできるというならば私も納得して帰りましょう。それまではもう三年の間も非常に議論してきてその間にもうこれは石の上にも三年になったからよろしいという議論はまだ聞いてないのです。大臣は、今度就任されて初めてこの問題はお聞きになったと思いますから、これは失礼ですけれども、所管であろうけれども、もっと歴史は私の方が古いのですから、その点一つ御了承いただきたいと思います。ですから、十二月の初めに私も何とかして参ります。参りまして、そして皆さんのお考えと私の考えとも合えば、それは一つよろしく皆さんの御指導におまかせいたしますが、それまでは——ちょっとあまり突然のことでしたけれども、納得いたしかねますので、その点だけ申し上げておきたいと思います。
  291. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) よろしゅうございますか。  それでは、本件に関する質疑はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  292. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認めます。  それでは、これにて散会いたします。    午後六時十分散会