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1960-10-23 第36回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十五年十月十七日)(月曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 西村 直己君    理事 上林榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 野田 卯一君 理事 八木 一郎君    理事 井手 以誠君 理事 田中織之進君    理事 今澄  勇君       青木  正君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    植木庚子郎君       小川 半次君    岡本  茂君       北村徳太郎君    久野 忠治君       河本 敏夫君    櫻内 義雄君       重政 誠之君    田中 正巳君       中曽根康弘君    楢橘  渡君       丹羽 兵助君    橋本 龍伍君       福田 赳夫君    藤山愛一郎君       船田  中君    古井 喜實君       松浦周太郎君    松野 頼三君       松本 俊一君    三浦 一雄君       山本 猛夫君    渡邊 良夫君       岡  良一君    木原津與志君       北山 愛郎君    久保田鶴松君       小松  幹君    河野  密君       島上善五郎君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    横路 節雄君       佐々木良作君    鈴木  一君       西村 榮一君 ————————————————————— 昭和三十五年十月二十三日(日曜日)     午後一時五十八分開議  出席委員    委員長 西村 直己君    理事 上林榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 田中伊三次君 理事 野田 卯一君    理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君    理事 田中織之進君 理事 今澄  勇君       青木  正君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    植木庚子郎君       小川 半次君    川崎 秀二君       北村徳太郎君    久野 忠治君       倉石 忠雄君    河本 敏夫君       櫻内 義雄君    重政 誠之君       床次 徳二君    楢橋  渡君       橋本 龍伍君    福田 赳夫君       船田  中君    古井 喜實君       松浦周太郎君    松野 頼三君       松本 俊一君    三浦 一雄君       山崎  巖君    山本 猛夫君       足鹿  覺君    岡  良一君       北山 愛郎君    久保田鶴松君       河野  密君    島上善五郎君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       楯 兼次郎君    辻原 弘市君       成田 知巳君    八木 一男君       神田 大作君    田中幾三郎君       西村 榮一君    武藤 武雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 小島 徹三君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 中山 マサ君         農 林 大 臣 南條 徳男君         通商産業大臣  石井光次郎君         運 輸 大 臣 南  好雄君         郵 政 大 臣 鈴木 善幸君         労 働 大 臣 石田 博英君        建 設 大 臣 橋本登美三郎君         自 治 大 臣 周東 英雄君         国 務 大 臣 江崎 真澄君         国 務 大 臣 迫水 久常君         国 務 大 臣 高橋進太郎君         国 務 大 臣 西川甚五郎君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         内閣官房長官 佐々木盛雄君         内閣官房長官 小川 平二君         法制局長官   林  修三君  委員外出席者         通商産業事務官         (軽工業局長) 秋山 武夫君         日本専売公社総         裁       松隈 秀雄君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 十月十八日  委員岡本茂君、田中正巳君及び丹羽兵助辞任  につき、その補欠として山崎巖君、田中伊三次  君及び倉石忠雄君が議長指名委員選任さ  れた。 同月二十二日  委員渡邊良夫辞任につき、その補欠として床  次徳二君が議長指名委員選任された。 同月二十三日  委員中曽根康弘君、岡良一君、小松幹君、河野  密君、島上善五郎君、横路節雄君、佐々木良作  君、鈴木一君及び西村榮一辞任につき、その  補欠として川崎秀二君、成田知巳君、滝井義高  君、足鹿覺君、八木一男君、多賀谷真稔君、武  藤武雄君、神田大作君及び田中幾三郎君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員足鹿覺君、多賀谷真稔君、滝井義高君、成  田知巳君、八木一男君、神田大作君、田中幾三  郎君及び武藤武雄辞任につき、その補欠とし  河野密君、横路節雄君、小松幹君、岡良一君、  島上善五郎君、鈴木一君、西村榮一君及び佐々  木良作君が議長指名委員選任された。 同日  理事西村直己君七月二十二日委員長就任につ  き、その補欠として田中伊三次君が理事に当選  した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  国政調査承認要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 西村直己

    西村委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。予算実施状況につきまして、議長に対し国政調査承認要求を行なうこととし、その手続については委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西村直己

    西村委員長 御異議なしと認めまして、さよう決しました。直ちに委員長において所要の手続をとることにいたします。      ————◇—————
  4. 西村直己

    西村委員長 次に、理事補欠選任の件についてお諮りをいたします。現在理事が一名欠員になっておりますので、これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 西村直己

    西村委員長 御異議なしと認めます。よって、田中伊三次君を理事指名いたします。      ————◇—————
  6. 西村直己

    西村委員長 これより予算実施状況につきまして調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これをお許しいたします。福田赳夫君。
  7. 福田赳夫

    福田(赳)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、池田内閣政策の大綱につきまして御質問したい。  総理演説を承ったのですが、その概要は外交内政一体原則の上に立って、外交的には中立政策を排し、また内政的には経済を大いに拡大して民生を安定する、それによって国際的地位も向上し、また国民生活の向上をはかっていく、こういうことにあるように思うのであります。私、考えまするに、武力を持たない日本が今日世界においてどういう立場をとるべきであるか。戦前世界の三大海軍国、また五大陸軍国ということで、ともかく武力背景にして世界にものを言い、世界繁栄と平和に貢献をしておったのです。ところが、それを持たない今日の日本というものが、どういうふうにして日本の国を安定させ、また国民生活を保障して、同時に世界に発言をするかということを考えてみますると、これは経済力発展させるほかはない。保守党歴代内閣が営々として過去十五年にわたって今日までその方向で、そういう認識のもとに努力をしてきたというふうに思うのであります。そういうことによりまして、国民一人々々がみんな不満のないという社会状態を現出させる、それによってまた海外からの信頼も高まってくる。振り返ってみますると、もうすでに国際連合にも加入した。国際連合に加入すれば、直ちに社会保障理事会理事国にもなる。さらに今日は経済労働理事会理事国までなっておる。そして国連におきましてもわが国の重さというものがますます加重されておる。こういうことはひとえに私は日本経済発展に原因していると思うのです。  安全保障条約の問題にいたしましても、これを平等に改定するということは歴代内閣の宿題でもあります。また国民世論でもあったのです。そういう世論背景にいたしましてこの交渉が始められた。ところが、鳩山内閣のとき重光外務大臣がわざわざワシントンに派遣されましてこの交渉に当たった。そうすると、これはアメリカ国民租税負担において日本に兵が出され、日本を守っておる、ために日本は安全ではないか、それならば、一朝事ある場合にアメリカが要請したならば日本は兵が出せるということを条約にはっきりさせ得るならば、それで初めて平等なんだ、自余の点も全部平等にしよう、そういう議論重光さんはこの平等改定というものを断わられておる。それが前内閣になりますると、そういうむずかしい議論なしに日本国民感情もよくわかった、不平等な点も全部平等に改定しようじゃないかということですらすらと変わってきておる。  私この五月にモスクワに参ったのであります。時あたかも安全保障条約の東京における論議がなかなかきびしいころでございますから、さぞ私に対するソ連政府の待遇というものは相当きついものがありはしないかというふうに考えて参ったのでございますが、しかし向こうに参ってみますると、ソ連政府の私を迎える態度というものは私どもの予想に反しまして非常に丁重です。それは何かということを私は感じたのでありまするが、日本ソ連の隣に位して、非常に工業力が進んでおる、経済力がすばらしい発展を遂げておる。これに対する認識というものが今やソ連政府においても看過し得ないところまで来ておる、こういうことではなかろうかというふうに思うわけでございまして、あなたが内政外交一体原則のもとにさような見地から諸政策を進められる態度方針というものは、私は全面的に正しい態度である、さように考える次第でございます。しかし、経済を上昇させ、国民を安定させるのも、結論におきましてはやはり国民の自由を守る、またその基盤となる自由世界を守るということにその根拠を置かなければ、これは砂上の楼閣ではないか、こういうふうに考えるのでございます。総理演説を承りましたが、内政外交面にも触れておられますが、経済面が浮き出されて大きく力説されております。それでいいと思いますが、しかし、その考え方の根底というものにはどうしても国民の自由を守り、世界の自由を守る、そのためにこそ内政外交一体政策というものが進められるのだということはしっかり腹の底にかまえておかなければならないことではなかろうかというふうに思いますが、その点に関する総理の所信のほどを承っておきます。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 軍備を持たないわが国として、世界の信用を受け、そうしてともにともに平和への道を進んでいく場合においては、福田委員お話通り経済を拡大し、外国と有無相通じて、そうして日本も栄えると同時に外国も栄えていくようなことをとることが一番だと思います。私はその意味におきまして、それでは日本経済をどういう格好で持っていったならばうまく早く発展ができるかということを考えますると、日本で申しましても、戦争中あるいは戦後三、四年間経済統制をやり、補助金でそれのつじつまを合わす、こういうやり方ではもう日本経済は伸びていかない、こういう考えのもとに、昭和二十四年から補助金制度をやめて、自由主義経済で、統制を廃した、これが私は今日の発展を促したと思うのであります。物を統制したり、あるいは、ことに労働統制するような共産主義的なやり方では日本というものは立っていかぬことはわかり切っておる。やはり日本人は他の国に比べまして一番勤勉の国民であるし、また一流のいい頭を持っておる。その勤勉ないい頭を持っておる日本人創意工夫をこらして自由に働いていく、これがやはり経済を拡大するもとである、こういう考えで進んでおるのであります。日本経済が拡大すればそれだけ外国からも信頼を受け、そして外国もお助けできる、これが共存共栄のもとであると考えるのであります。
  9. 福田赳夫

    福田(赳)委員 今日の世界情勢考えてみますると、これはまことに遺憾なことでありまするが、自由主義陣営、また共産主義陣営という二つの世界に分かれまして、相対立、抗争しておる、こういうことは争えない事実であるというふうに思うのです。昨年の秋にキャンプ・デービッド会談が行なわれた。さようなあとで雪解け論というものが盛んに流布されまして、わが国におきましてもそれを期待する向きが相当多かった。しかしながらその後の世界動きを見ておりますると、必ずしもキャンプ・デービッドの雰囲気というものは続かないのみか、むしろ逆の方向、逆の方向へといっておるわけです。前回の通常国会におきましても、あるいは安全保障条約改定審議にあたりましても、今雪解け方向である、しかるにそれに逆にさをさして安全保障条約改定を行なうというような政府態度というものに対しまして、野党からも相当その点に関しまして非難があったわけです。前内閣におきましては、それに対しまして、それはそうじゃないのだ、それは表面の動きであって、世界の二大勢力対立動きというものはこれは固定したものなんだ、これはなかなか一朝一夕に解決できるものじゃないのだ、そういう見解の上に立ちまして通常国会にも臨み、また安全保障条約改定論議にも臨んできたわけなんです。その通りになったわけでございますが、巨頭会談は決裂する、あるいは軍縮会議も非常に悲惨な結果になる、あるいは過日の国連における状態はどうかというようなことを考えてみますると、まことに世界対立というものはだんだんと激しい方向へというふうに向かっておるわけでございます。今日、日本外交をどうするかということは、やはりこの認識問題にあると思う。今の対立の潮流というものが臨時過渡的なものであって、雪解けというものが本質なんだというふうに理解するのか、あるいは逆に雪解けというものこそ過渡的な現象なんだというふうに理解しますか、そこで大きく外交施策考え方というものが違ってくるのではあるまいかというふうに考えておるわけでございますが、総理はそれについてはどういうふうな認識見解を持たれますか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 世界各国とも東西対立雪解けになることを念願しておるのであります。われわれもその一人でありますが、お話し通りこれはなかなか願うべくして実現困難ではないか。われわれはあくまでも雪解けを願いながら、現在の状態を慎重に考えていかなければならぬと思っております。
  11. 福田赳夫

    福田(赳)委員 そういうふうな見解が私は当然だろうというふうに思うわけです。一方において雪解けを念願する。念願するけれども対立の形勢というものを事実として考えながら、そのもとに立って外交政策考えなければならぬ、こういうふうに考えるのです。  そこで私はこれから外交政策、また内政各般の問題につきまして逐次政府見解をただしたいのです。また野党との見解相違点にも触れながらいきたいというふうに思っておりまするが、外交政策で、そういう観点に立つ新内閣外交方針と、また野党、特に社会党外交政策との相違点として具体的に現われてくる問題は、社会党の主張する中立外交論ではないかというふうに考えておるわけでございます。中立というと、観念的にはそういうことも考えられる関係もあって、一部の間にはそういう論をなす人があることを聞くのであります。しかしながら、これは突き詰めて考えていきますると、なかなかむずかしい問題で、あなたはそれを結論的には非常に明快に割り切っておられる。一、わが国をめぐる国際環境具体的検討を怠り、二、わが国東西間の力の均衡に多大の影響を持つ事実を看過し、三、経済繁栄とその高度化自由諸国群との協調を第一義的な基盤とするわが国立場に対する洞察力を欠くなど、一種の幻想である、こういうふうに言われておるのでございまして、私は、これはまことに申し分なくこの中立論に対する態度を明らかにしておるというふうに思うのです。しかし、そもそもこのあなたのいわゆる中立論というものは、どういうふうに理解してそういうふうに言われておるのか。これについていろいろ見方に違いがありますので、これは外務大臣でもよろしゅうございますが、どうか中立論そのもの、特に総理大臣が言われておる中立論はどういうものを意味するのか、また世界の現状はどういうふうに中立論が当てはまりつつあるのかということについて御説明願いたいと思います。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 社会党政策とわれわれの政策の違いは、社会党護憲民主中立、こう言っておられます。護憲民主は幸いにわれわれと同じです。中立が違う。中立論は御承知通り従来からあるのでございまするが、日本において特に中立論か叫ばれ始めたのはやはり安保条約審議からだと思います。新聞その他で中立論を聞きますと、中立とは他の国と集団的安全保障同盟を結ばない。またその土地に外国軍の駐留あるいは基地を認めない。これが社会党さんの言われる中立論立場であると私は考えておるのであります。従いまして、お話し通り、今の情勢からいって私はそういうことをとらないということをはっきり申して、来たるべき選挙におきまして私は国民の批判を、これによって受けようという気持があるのであります。
  13. 福田赳夫

    福田(赳)委員 中立論というものは、これは長い沿革を持つのでございまして、ソ連中共中立論を言い出した。これは日本では、今安全保障条約というようなお話でございますが、ソ連中共の方では、現在のフルシチョフ政権になってから特にこれが強調されておる。ソ連外交政策というものを見ますと、これによってソ連勢力世界に拡大しよう、こういうことだろうというふうに思うのです。戦前あるいは戦争中におきましては、共産主義ソ連領域内にきょくせきされたというふうに、大きく見ますれば言えるのじゃないかと思うのです。これが拡大され世界発展する機会が与えられたのは、ソ連の加わったところの連合国側の勝利ということでございまして、終戦前後、またその直後を通じまして共産主義世界に拡大するという傾向をとったわけでございます。たとえば、ソ連はバルト三国を併合する。これは相互不可侵条約を作っておった三国でございましたが、これを併合してしまった。そうしてこれを共産主義下に置いたわけです。あるいはポーランドも三分の一程度をその国に合わせてしまう。東プロシヤしかり、チェコスロバキアからもルテニアを取ってしまう。あるいはルーマニアからベッサラビア、ブコヴィナという地方をその領域に編入するというので、直進政策をとっております。ところがこれに対しまして自由諸国西欧諸国群安全保障体制をもって、この進出を完全にチェックする政策に出ております。そういう集団安全保障体制に対しまして共産主義進出がはばまれた。この際に次の手段は何かというために、この中立主義というものが中共ソ連、そういう共産主義の国から出されておるのであるということを、私ども考えておかなければならぬと思います。今日社会党中立外交論を振りかざしておる。これは私は、社会党の諸君が日本立場において、日本社会党としてこの外交論を展開しておるというように考えたいのでありますが、しかし結論におきましては、この社会党の提唱する中立外交論というものも、ソ連が沿革的にとってきたこの中立外交論と、結果において全く同じことになるのではあるまいか、そういうふうに観念をするのでございます。これは、そういうふうに理解すべきものであるというふうに思いまするが、総理大臣、どういうふうな御見解でございますか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 共産主義の国々におきましては、考え方として中立主義というものはないのだ、こう私は開いておるのであります。レーニンの言葉に、中立主義は反革命運動の偽善か、しからずんば無知だ、こう言っております。こういうことはブルガーニンも言っております。また毛澤東氏にいたしましても、第三の道はないのだ、こう言っておることを見ましても、一たん自分勢力圏内に置いたならば、中立は絶対認めない。その証拠は、ハンガリーの問題であり、またチトーがソ連共産主義から分離して、そして否定された。だから彼ら共産主義国の中には、中立主義というものはあり得ない。しからば何がゆえに中立論日本なんかで起こるかといったら、一応自由国家群安保体制を、中立の美名のもとに中立さして、そうしてお話のように、併呑してしまったと同じような方向をとるということは、私は過去の歴史からいっても、また共産主義中立を認めない考え方からいっても、あなたと同じような気持を持っております。
  15. 福田赳夫

    福田(赳)委員 総理の御答弁まことに明解でございますが、中立になれということは、すなわちソ連中共になれ、こういうことを意味されておると思うのです。それでは日本が、日本の置かれておる環境、また日本の資源の状況各般状態から見て、一体ソ連中共というものと行動を共にし、社会主義共和国というような体制をとることにおいて幸福になり得るか、こういうことを考えざるを得ないのでございます。社会主義という体制は、これは極端に私はソ連中共の例をとって言うわけでありますが、政府のもとに全国民はひとしく使用人なるという立場に立ちます。政府監督指導のもとに全国民が働く。工場だとか、会社だとか、そういうような監督体制の整うところにおきましては、この体制である程度の能率が上がると私は思うのです。しかし農村あたりになると、そうはいくまいと思うのです。五月に私はソ連に参りましたので、当時農林大臣でございましたから、ソ連の様子を見てみた。モスクワ郊外でございますが、農村状態というものは、私どもが思ったよりはるかに程度の低い状態であります。日本農林大臣として、私はいささか安心したような感じを持ってきたのでございますが、御承知通りソ連では日本より耕地面積が広いのです。日本では一戸当たりの耕地面積は一町歩です。モスクワ近辺におきましては七町歩です。その七町歩農家が三百戸平均寄りまして、一つのコルホーズという組を作っております。この組が共同経営をする。この共同経営でできました農産物、これはもとより政府に供出するわけであります。その供出代金々得て給料が払われるという体系をとっておるのでございますが、しかし、行ってみますと、七町歩で三百戸でございますから、境のない一つの畑が二千町歩です。それを、あるいはトラクターだ、コンバインだという農具を使って耕しましたり、取り入れをしたり、草取りをしたりする。アメリカでも容易に見ることのできないような近代農業をやっておりますが、内容を見ると全く逆である。なかなか監督も行き届きませんから、どうしても働きが鈍ってくるような状況が見られるのでございます。今日ではソ連政府におきましても、そういう情勢をためる意味におきまして、めいめいの三百戸の農家庭先に、庭先自由農園というものを作っております。これは、七町歩から申しますと三%に当たる。すなわち二反歩です。わずか二反歩でありますが、それをめいめい農家庭先につけて、庭先自由農園と称して、そこでは何を作ってもよろしい。またできたものは、どこへどういう価格で処分してもよろしい。こういうふうにいたしますと、ソ連農家は非常に喜びまして、この二反歩の方に全勢力を上げるという傾向になってくるのでございまして、私調べたところによりますと、七町歩からの所得と、わずか二反歩庭先自由農園の所得が、昨年、一昨年を通じてみますと、大体においてイコールであるというような結果になってくるわけでございます。ソ連のような膨大な国土を持ち、ロスがあってもかまわぬという社会におきましては、あるいは社会主義経済体制というものが成り立つ余地もあるのかもしれませんけれども、これを日本のように、狭い国土に、人口が稠密しておる、耕地も少ない、資源も少ない国で、どうやってそれを適用できるかということを考えてみると、私は一刻、一日といえども、そういう体制ではやっていけまいと思うのです。そういうことを考えてみますと、中立主義というような考え方、これは武力の点を主として言っておるようでございますが、しかしその根底には、どうしても政治的なものを持っているのです。ソ連化する、中共化するという一つ考え方があるわけです。またそれがあるなしにかかわらず、結果においてそういうものが出てくるわけで、先ほど申し上げた通りです。そういうことを考えますと、どうしても私は、政治理念としてもこの中立主義というものは、わが国には適用できない理論であるというふうに考える次第でございますが、この点について所感を承っておきたい。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 全く同感で、共産主義国経済政策というものは、やはり文明の進んだわれわれには、とうてい受け入れられないと私は考えておるのであります。
  17. 福田赳夫

    福田(赳)委員 中立論に関する総理見解は明らかになりましたが、今朝の新聞によりますと、さきにわが国に来朝したことのあります、アメリカの上院議員のマンスフィールドが、上院の外交委員会に報告書を出しておるのでございます。これが大きく報道されておりますが、これはまだ政府で詳報を得ておるかどうか存じませんが、知れる限りの程度の報告、並びにそれに対する外務大臣見解を承っておきたい。
  18. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。ただいまお話しアメリカの上院議員マンスフィールド氏の報告に関しましては、まだ詳報を得たわけではございませんから、その後に見解を表明すべきものかと考えるのでありますが、とりあえず私の感じたことを申し上げたいと思うのであります。御承知のように、先般東京で行なわれました列国議会同盟会議に出席いたしました同氏が、帰国後上院外交委員長に対しまして、政策に関する同氏の報告を提出したものでありまして、もちろん米国政府見解ではないことは当然であります。この報告は、日本の政治情勢の分析を行ないましたあとで、アメリカ日本の国内政治に対しまして、不介入の態度を維持すべきものであるとしております。これはもとより当然のことと考えます。また日本中立主義的な傾向に触れておるのでありまするが、日本の基本的進路は、言うまでもなく、日本みずから決定すべきところであって、政府としては、現下の情勢下において、日本中立主義をとるべきでないということは、すでに施政方針演説でも表明いたしたところでありますし、ただいま福田委員総理大臣との間にかわされました見解においても、同様に明らかになったところであります。なお、これは若干よけいなことでありまするが、私は、中立主義は、今お述べになりましたほかに、これが共産主義にいくという場合に、それでは日本という国が共産主義国として、一国としていけるかどうかという基礎条件を考えてみますると、これは、言うまでもなく、ソ連中共のような国柄とは違うので、日本は、貿易によって立っておる国でございますから、当然そうした場合は、衛星国にならざるを得ない。そうした場合の国民の悲惨の状況というものは、すでにわれわれは実例を見ておるところでありまして、とうていこうした主義に同意することはできぬのであります。そこで第三に、安保条約に関しまして、マンスフィールド議員は、極東の情勢が許し得ますならば、その改定考えるべしとの趣旨を述べておるのでありまするが、これは同時に、マンスフィールド議員も、現在の情勢下にあって安保条約が非常に重要な役割を持っておるという旨を述べておるのでありまして、日本の自主性尊重の立場から、将来日本国民の多数がこれに反対し、しかも極東の情勢において、こういう言葉を使っておりますが、コソディションズ・イン・ザ・ファーイースト・ウォラント・イット、極東の情勢がそれを許容するものである。すなわち、中共状態、あるいはソ連の現在における態度、そうしたものが、もっと平静に帰して、そうした安保条約が要らないというような情勢ができ、さらに国連が強化されたという情勢ができたという前提に立っておるとわれわれは考えるのでありまして、そういう趣旨で言っていると思うのであります。しかしながら、私は、国民多数の支持を背景とする現在の政府といたしまして、新条約改定考えておりませんし、アメリカ政府もさようであろうと考えるのであります。現状において、日本国民の多数はそれを欲していないことは、明らかだと思うのであります。その他、日本の貿易に関しまして、今後とも米国市場を開放し、他の市場への拡大をも援助すべきであるということを述べております。これはまことにわれわれも同感でありまして施政方針演説等にも触れておるところであります。さらに、韓国問題に関しまするオーストリア中立方式による解決の可能性ということについても言っておりまするが、これは他の国のことでございまするし、私は論評を差し控えたいと考えます。これを要しまするに、この報告は、日本に対する報告のうち、わが日本に関する部分は、日本の自主的立場を尊重しつつ、今後における民主主義国家としての日本発展に協力すべきである、こういう趣旨と考えておる次第でございます。
  19. 福田赳夫

    福田(赳)委員 承りますと、大体内容がさもあるべしというふうにはっきりしたのでございますが、池田内閣方針といささかも違うところはない、かように理解いたします。わが国が、ただいまお話がありましたような外交方針のもとに、それを基盤といたしまして、経済発展に努力をしてきたわけでございます。経済の今日までの発展は、実にすばらしい状況でございまして、世界にもこういう例はないというくらいな発展じゃなかろうか。かの西独でも十年間の平均発展率というものが七・三であるというのに比べまして、わが日本は一〇%という発展を示してきたことは、やはり私は日本経済政策の中心をなしておるところの自由主義政策、これが今日花を咲かしておるともいうべきものであるというふうに考える次第でございます。今後の日本経済を展望いたしますと、やはりこの勢いが続いていくのではあるまいかというふうに考える次第でございまして、昨年の春の参議院選挙にあたりまして、前内閣は所得倍増計画というものを提唱したのでございます。この倍増計画が提唱されましたのは、今後の日本経済の展望といたしましては、今日までともかくも七年間に倍の拡大を達成しておる日本経済が、今後十年間で倍の拡大を達成しないはずはない。この倍に拡大されるということ自体につきましては、そう問題とする点は、私どもは、というか。自由民主党は持たなかったのです。  ただ問題になりますのは、そういう経済発展させる過程におきまして、政府としていろいろこれに即応してしなければならぬ問題がある。その一つは、産業環境の整備という問題であります。あるいは輸送の問題一つ考えてみましても、十分これに対応するところの体制というものがなければならぬ。それからもう一つは、総理は、経済が伸びれば格差は縮むというふうに申されましたが、私も、経済が伸びなければ格差の縮小ということはできないと思う。できないと思いますが、ほっておいたのではこれは縮まない。やはり経済の伸びと並行いたしまして、ここに格差解消の積極的努力というものが必要になってくる、かように考える次第でございます。そういうことを考えますと、十年間で所得は倍以上になる。その際に心しなければならぬことは、今から計画を立てて、この環境の整備と格差の解消政策というものを進めなければならぬ。そこにこそ重点がある。所得倍増計画というけれども、倍増というところにアクセントが置かれておるのじゃなくて、計画というところにアクセントがあるのだというふうに理解しておるのですが、総理の御理解、大体きのうの演説をそのように承ったのですが、なおこの点は重要でございますので、明らかにしていただきたいと思います。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 所得の倍増計画というものは、福田さんもこの前の参議院の選挙で言われたのですが、私はあなたのちょうど半年くらい前から言っておる。私ばかりじゃございません。イギリスは三、四年前から言っております。イタリアは四年ぐらい前に所得五割増し、五年五割という計画を立てておる。これはどこでも言っている一つの念願であります。だから、倍にしようということは、お話通り、何も変わったことじゃない。しかし倍にするためには、どういう施策を政府としてやるべきかということが問題なんです。私はいろいろな点があると思います。倍にするのには、倍になるような基盤を準備していかなければならぬ。いわゆる公共投資その他の基盤を準備していく、そうしてまた働く人を準備していく。これは基盤ができたからといって、労働力がなかったら、お話通りに年七%の成長率を遂げておったドイツが、労働力不足のために、伸長率がよほど鈍って参りました。だから基盤をこしらえること、そうして働く人を作る、こういうことでございます。そうしてまた集中的になにしますといけませんから、やはり土地の地域的の利用、こういうこと、そうしてまたこれに対しての金融の正常化、これが要ると思います。しかも、また、倍になったという結果を見る場合において、その倍になることがいいか悪いかということ、これは倍になって、特定の人ばかりよくなって、大衆が悪くなったならば、これは倍にならずに、二割、三割の方がいいわけです。倍になるということは、上の人はあまりふえなくても、下の人が三倍、四倍になること、これがやはり倍増論のときの根本の考え方であります。何がゆえに倍増論かというと、全体が倍になって、上の人がたくさんになるのだったら、倍の意味がない。上の人が二割とか三割で、下の人が三倍、四倍、五倍になっていくというのが倍増論を考えるゆえんであります。だから、倍増ということはだれも言うことですが、どういう方法で、どういうステップで、どういう考え方で、そうして今の各方面における格差を、倍にしながら格差を縮めていくということが倍増のほんとうの意味するところであるのであります。私はそういう意味においてあなたと大体同感でございます。
  21. 福田赳夫

    福田(赳)委員 総理の御答弁でこの計画自体はそういう体制というか、公共投資等によりまして環境を整備する、同時に小さいものは二倍、四倍にするが、大きなものには、二倍にならぬで、控え目に一・八とか一・五でがまんしてもらう、そういう気持で計画を作るのだという趣旨がはっきりいたしてきたわけでございます。そこで、私はそういう際に具体的な施策といたしまして非常にここで重要視し、また内閣としても真剣に取り組んでもらわなければならぬ問題、これはやはり都市集中化といいますか、都市が繁栄し、そして地方がさびれる、こういう事実のある点でございます。最近の傾向を見ますると、東京でも毎年三十万人ずつも人口がふえる、そのうち、地方からの転入者は三分の二以上を占めるわけでございます。また中学校の卒業生等が就職するその就職状況を見ましても、同じような傾向を示しておるわけであります。地方では人口はふえないが、都市を中心にして日本の人口はふくれ上がっていくというような傾向をたどっております。東京都を見てみると、近い将来にこれは交通問題で詰まってしまいはしないか。あるいは水の問題、これも非常に難関に到達するような事態になる。汚水の問題、衛生の問題、いろいろの問題が詰まってくると同時に、都市が繁栄する反面におきまして、農村を中心にいたしました地方の都市、また農村、山村、これがさびれていくという状態が出つつあるのです。私はそういう状況に対しまして、どうしても抜本的に都市の地方分散化というものをここで考えていかなければならぬ段階にまさにきておる、こういうふうに考えておる次第でございまして、それにはたとえば関東地方に例をとると、大宮を中心といたしまして、そこに百万都市を作るということにする。そうするとそこの中小企業が繁栄するのはもとよりこれは当然でございますが、同時にそこに誘導されました工場等に勤めるために、その近傍の農村の子弟というものがそこに就職をする機会が与えられるわけです。しかもこれは自分のうちから通えるという者が大多数になってくるのです。これは経済上非常に違ってくるのです。それから農家が大体変わってくると思うのです。今までのような養蚕農家あるいは麦作りの農家、そういうものから百万都市に野菜を供給する、乳を出す、あるいは卵を出す、肉を出す、そういう農家に変貌してくるというふうに思うわけであります。そういう状態を現出することによってのみ、農村と都市との均衡というものも回復できるし、また地域格差といわれる問題も解消できる。あるいはこれは一部分、全体にはわたりませんけれども、中小企業と大企業との格差という問題の解決にも大きな影響を持ちはしないかというふうに考えるのでございまして、この都市の分散化、これはやはり所得倍増計画の一つの根幹をなすべき問題じゃないかというふうに考えるわけでございます。これについてどういうお考えを持っておるか、私はぜひこれを大英断をもって実現してもらいたい、こういうふうに思うのでございますが、所見を承りたいと思います。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 明治、大正、昭和の初めにかけましては、各地において、地方で大工業の発展を促すようないろいろな条件が相当あったのであります。たとえば電力が安くあるということ、あるいは安い労賃で雇われるというふうな、地方にも工場を分散する条件が相当あった。従って北陸とか郡山等の発達がきたのでございますが、戦後におきましていろいろな関係で、もう電力も発電所のあるところ必ずしもそう低くない。だんだん高くなってくるというふうな傾向があります。労働問題にしましても、地方と都会とは同じようになってくる。そうすると、地方をこのまま置いておいたら、工業の分散ということは今の状態ではなかなか困難です。しかもまたいろいろな点から関連産業が多いものですから、一ところに集まった方が経済的には効果があるということで、えてしてほっておいたならば集中主義になる。しかしそれでは全国民が同じようにいくという理想に反します。その結果が東京の人と宮崎、鹿児島県の一人当たりの所得が三対一、こういうふうな結果が出てきますから、われわれがほんとうに福祉国家とし、国民全体が経済発展の余沢をこうむるということになるには、それが一時経済的でなくとも、強力な施策によって工場その他の分散をはかっていかなければならぬ。私は、いずれ今後出て参りましょうが、農家というものが農業専業とか第一種農業ということも残りますが、相当程度自分のうちから工場へ働きに行くというふうな格好にする意味におきましても、いわゆる産業の地方分散ということを一つ強力に考えていかなければならぬと思っております。
  23. 福田赳夫

    福田(赳)委員 これは非常に重要な問題でありますので、建設大臣おりますか。——建設大臣、あなたはどういうふうにこれを準備されておるか、その準備の状況について承っておきたい。
  24. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 ただいま総理からお話がありましたように、都市人口の集中の傾向は最近著しいものがありまして、三十五年の状況を見ますと、大体四千五百万人が都市人口に集まっております。将来の見通しを考えますと、このままで放置すれば、東京都の例で申せば、十年後には千六百五十万ぐらいの都市人口が集まる、こういうことで、建設省におきましては国土計画といいますかその基本線に立ちまして、広域都市を建設する。これは福田委員からおっしゃいましたように、地方にいわゆる都市を分散する。大体私たちの考えておりますのは、五十万前後の都市を全国に配置するような指導を行なっていく。それがためにはいわゆる道路網の整備が必要であって、私は道路は港湾なりという建前から、軽工業の奥地移転、こういうことによっていわゆる全国的な広域都市の建設を考えておるわけであります。これはまことに重大な問題でありまして、いずれ機会を見て広域都市建設促進法というような法律も必要かと考えておりますが、その際におきましては各位の御協力をお願い申し上げたいと考えております。
  25. 福田赳夫

    福田(赳)委員 政府においてそういう準備をされておるようですが、これができれば、私はいわゆる農工格差の問題というようなものにも大きな変化があり、また農家は所得倍増ではない、三倍、四倍というような所得の増加が実現できるという基礎ができると思いますので、ぜひこれは政府総力をあげて関係各省で実現をしてもらいたい。要望しておきます。格差問題で最も重要な問題は農業問題です。農業問題もそういう方角からも検討しなければならぬことはもちろんであります。私はさきの内閣農林大臣をしておりまして、そのときこういうことを言ったのです。曲がりかどにきたという農業、この曲がりかどというものは所得の格差が拡大しつつある。これを抜本的に解決しなければならぬ時期に到達しておる、こういう問題であるということを言ってきたわけでございますが、しかしその解決の方向としては、これは農村問題、今までの農政、まあ農林大臣が主管する行政の面だけではとうてい解決できない。日本経済全体の中に織り込んで初めてこの農業問題というものは解決できるのだというふうに考えておるのです。つまり農林大臣が主管する農業の生産性の向上、このための幾多の政府の助成、これはもとより重要でございまして、この努力は続けなければならぬけれども、しかし平均一町歩というような零細農業で、所得の倍増をこの農業だけで実現しようと思いましても、これはとうてい不可能なんです。そこでこれは日本の当面する問題といたしますと、どうしても農家に農業以外の収入、特に伸び行く日本の工業収入の所得を取り入れるということを考えなければならぬ。そういうふうに考えてきたのでございますが、ある場合には、そういう考え方によりますと、農家が百パーセント工業収入に依存するということになりまして、これは離農というような現象も起こってくるわけです。しかし、かりに三反、五反のものを三人で耕しておったという農家におきましては、奥さんが農家の仕事をやる。いわゆる食い扶持は奥さんが取るが、主人と子供は工場からその収入を持ってくるというような形態も多々出てくると思うのです。私はこういう形で今後の農家というものは所得を倍増していくということを考えざるを得ないのでございます。この考え方につきましては、農家の意気を阻喪させはしないかというような考え方もありまして、今まではあまり大っぴらに言われなかった。今回池田総理大臣が非常に明快に大胆にこのことを明らかにされたことは、私は今後の農政の方向を示すものであり、かつほんとうに親切に、農家はかくして安心できるのだ、かくして初めて農家はその所得を他の階層と均衡をとって進めることができるのだということを示すものとして、これは非常にいいことを言ってくれたというふうに私は思うのです。ただ口が走りましたと申しますか、四割削減論ということにも触れられたようでございますが、これはその後総理見解を承ってみますと、ただいま私が申し上げたような趣旨のことをたまたま数字をもって表現されたのではないか、こういうふうに思うのでございまして、私も四割という数字のことにつきましては深く検討しておりませんが、その趣旨はまことに今後の農政の根幹をつくものである。こういうふうに考えておるわけです。四割という点は、これはどういうことか存じませんが、この四割を言い出された——私はこれはそのときに頭にあった勘というか、そういうところで申されたのじゃないかと思いますが、その経緯、考え方の持っていき方というものにつきまして、この席で一つ具体的にお示しを願いたいと思います。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 私は施政演説で申し上げましたごとく、今の日本の農業の状態は、これは長く続けていかそうといっても無理なのだ、それは農民のために不親切なやり方だ、こう考えて過去二年ばかりいろいろ所得倍増論とあわせまして検討いたしておったのであります。いろいろ表を作っておりました。たとえば十年間一割一分の成長をしたならばどうなるか、一割の成長をしたならばどうなるか、そして九%ならばどうなるかとこういうことをずっと検討いたしまして、たとえば一割一分のときには設備投資がどうなるか、そうして工場がどの程度ふえるか、また第一次の産業がどういくか、それに必要な労働人口は第二次に何んぼ、第三次に何ぼ、こういうことをずっと計算してみました。そうして各国の就業状況わが国の新規労働者が自家労力に幾ら、他産業に幾らといういろいろの統計をとってやって、実は一一%の分と九%を間違って、初めは三分の一になる、こう言ったわけなんです。それは一一%伸びたときの表でちょっと言った。すぐあとで訂正しました。そういう状況でございまして、私はこれが三分の一になるとか半分になるとかいうことは末の問題でございます。それよりも農業が農業自体として近代産業として立ちいかすような方法を講ずるにはどうやっていくか。その場合において専業農業はどうなるか。第二種はもうなくなってしまうと思いますが、第一種の方はどうなるか。それでどういうふうな格好になっていくか。相当農業に専業される人口が減ってくる。今十年先の問題、夢を描いておるようはものでありますから、このときに五分とか一割とかいうことは、日本経済が十年後どうなるかという絵を見ずに、その前の石ころなんかを見ている議論であって、私は政治家としてとるべきじゃない。根拠は一応試算はしておりますけれども、しかしそれよりも私は、まず三年間に十年間の基礎を作る。私は農業の問題につきましても、もうすでに私の知った人に調査を命じておりますが、モデル地区をこしらえて、そうして一戸当たり二町歩とした場合に、二町歩の分を米を幾ら、牧草を幾ら、養鶏、養豚、こういうふうな計画を今専門家に聞いてやらしておりますが、私はこれが間違いなら間違いと言われてもいい。ただ農家というものは、ほんとうにりっぱな、工業、商業と対抗してやっていけるということになるには、半分以下にならなければならぬと私は考えております。それが農家のためにいいのであって、これを小さい農家をやめてしまえとかなんとかいうのじゃない。自然にそういう姿になりますから、われわれはそれを目標にいろいろな施策をやっていこうというのであります。農業を助ける意味の、農民を愛するがゆえの言葉であることを申し上げておきたいと思います。(拍手)
  27. 福田赳夫

    福田(赳)委員 つまり総理の言われることは、二町歩農家、それを今までの三人なら三人、五人なら五人の労力で同じ生産を上げる、こういうことになれば所得は倍ということでございますから、そういうことを意味されるのであろう。それからたとえば五反耕すという人は、一人でそれをやってあとの人は勤めに出るというような形でも実現できるので、決してこれは貧農切り捨てだとかなんとかいうむちゃなことを言っているのではない、さようなことを言うのはためにする宣伝であるというふうに理解しておきます。それから私は、農業生産性とあわせて、さような日本経済全体からの人口的角度の検討も加えて、初めて農家の所得倍増というものは速成でき、均衡のとれた姿の実現ができると思うのです。しかしそれでもこれは絵にかいたもちじゃないかというふうな不安感を農家が持ちたがる傾向にあります。そこで私は、この段階になりますと、どうしても農業基本法を制定して、そうしてこれでいくんだという方向を明らかにすべきではあるまいか、こういうふうに考えておるのですが、政府は農業基本法について次の通常国会にはこれを提案する用意があるか、この点承りたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 農業の問題でございますけれども、今の農業の就業人口の問題は、イギリスなんかは御承知通り農業は労働人口の四%ないし五%程度でございます。アメリカのような土地の非常に広いところでも一九四〇年と一九五九年、今まで十九年間にアメリカの農民はどう変わっていっておるか、見てみますと、これは一九四〇年には全体の人口の二〇%が農民でございます。しかるに十九年後の昨年は一〇%を切れておる、半分になり、そして全体の農業所得は三倍になり、一人当たりの農業所得は五倍になっておる。これはアメリカの過去二十年間の状況です。二〇%が二十年間に半分になった。日本が急激に産業を拡大していけば半分程度になるということが、これは十年と二十年と違いますが、そうなっていくのが自然の勢いだ。だから今の日本の、徳川明治時代の一反歩とか八畝歩の耕地でどうして所得を倍にし得るか。私は社会党さん、民社党さんのいろいろな所得倍増論を読んでみましたが、日本において今一七%の耕地を三〇%にされると言いますが、一三%条件の悪い土地を開墾して、そして条件の悪いところへ条件の悪いものを植えてそれがどうなるか。今のように条件のいいところでも、福田さん御承知通り小麦の価格はどうですか、外国から輸入した価格の五割増しじゃございませんか。こういうことをしたならば、消費者、国民全体が困るのだから何とかこれを合理化して、農業が企業として成り立つように、各国の事例を見ながら私はやっていくべきだと思っておるのであります。
  29. 福田赳夫

    福田(赳)委員 農業基本法は……。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう意味におきまして、この農業基本法を制定してそういう方向で画期的な施策を講じていくことが、農民に対して親切であり、国民全体に対してやるべき政治家の務めであると考えております。
  31. 福田赳夫

    福田(赳)委員 なおさきの国会におきまして、前内閣が自由化施策に関連いたしまして農産物に対する態度を明らかにしたのです。それによりますれば、農産物につきましては原則として自由化はいたさない、つまりその条件の整ったものからやるのであって、その条件の整ったものということを考えてみますと、なかなか整うものがない。そこで主食とか酪農製品とかにつきましては絶対にこれの自由化ということは考えておらぬというふうに申したわけでありまするが、前内閣の自由化についての農業物に関する方針と、現内閣はいささか違いがありますか、ありませんか、その点を一つ……。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 違いはございません。ただ福田農林大臣のときはおおむね大豆は十月からと言っておりましたが、少しおくれたという違いはあります。農産物で大豆だけは早晩一つやりたい。昨年四月にやりましたラードも、これは農産物といえば農産物かもわかりませんが、とにかく日本の産業、ことに農業を伸ばしていくということがわれわれの考え方でございます。それにじゃまになるようなことはしようといったってするはずがない。これを取り越し苦労して、また何のために言うのか、農産物がすぐ自由化されては大へんだと言う。これは外国の事例を見ましても、アメリカなんかにしても農産物については特例を設けて自由化していない。イギリスだってそうです。そして最近になりましてドイツだって農産物に対しまして特例を設けている。しかも世界のガットの会議におきましても当然認めておる例です。それを日本だけ自由化したら農産物もすぐに自由化するという考え方は、あまりに世界情勢を曲げた考え方であります。
  33. 福田赳夫

    福田(赳)委員 中小企業の問題につきましては、かねて中小企業者の間で税と金融につきましていろいろの要請があるわけであります。中小企業は申すまでもなく非常に複雑な形態でございまして、これに一律な方策というものはなかなかむずかしいのでありますが、特に税と金融につきましては新内閣におきまして特に推進してもらいたい。その中でも所得税につきましては青色申告者の専従者控除、これはぜひ引き上げを実現してもらいたい。それから白色申告者につきましても新たに特別控除制を新設してもらいたい。また法人税におきましても耐用年数を思い切って短縮せられたい。さらに同族会社に対する留保所得、これも思い切ってやってもらいたい。また特別償却、中小企業者に対しましては特にこれを拡張されたい、いういうふうに考えておるわけでございますが、この点大蔵大臣でもいいのでございますが、全国中小企業者が待望しておる諸問題でございますので、ぜひ明快なる御回答をいただきたい。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 税制におきましてのあなたのお考え方は全面的に入れる予定でおります。勤労者につきましては今五人家族で三十三万円までは免税でございますが、これが四十万円まで免税になるようになります。それから青色申告の場合につきましてもこれを拡大いたしますから、課税最低限が四、五万円上がってくると思います。それから白色の分も今までは認めておりませんでしたが、今後は免税点が二十六万円が三十一、二万円になると思っております。中小企業に相当各般の減税措置がいかれると思います。償却の点なんかにつきましても全般的の償却のみならず、中小企業に対して特殊の償却を私はある程度認めるべきである。たとえばライターなんかの型でもこれは半半、一年でだめになってしまう、中小企業はたくさんの者が償却財産がございませんから、大企業とはおのずから事情が違いますので、中小企業につきましては、耐用年数計算上特別の方法を講ずるように大蔵大臣の方へ強く懇請しておるわけであります。あなたの今のお話の点は、もうすでに大蔵省と私とは話し済みでございまして、実現することは確実でございます。
  35. 福田赳夫

    福田(赳)委員 金融につきましては現在の金融機構下におきまして中小企業に相当の金融が行なわれておるように考えておるわけであります。しかし私はやはり利息、利子が中小企業者というものは、非常に重く響くわけであります。この問題につきまして財政も相当余裕ができた、こういう今日におきますと特別の配慮をすべきであるし、またし得る段階にきておるのではないかというふうに思うのでありまして、いわゆる政府三金融機関等に対しまして政府の出資あるいは投資等によりましてこれを実現する考えがあるか、これをお伺いいたします。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の産業におきまして、他の国のそれと比べて一番条件の悪いのは金利でございます。だから為替貿易の自由化をはかっていく上におきましてまずやらなければならぬのは金利の低下——これは私の年来の主張でございまして、大蔵大臣も非常に主張せられております。しこうして中小企業に対する金利につきましては、来年の一月から各金融機関、すなわち商工中金、国民金融公庫、中小企業金融公準、この三機関では三厘下げます。また特別の開発関係会社につきましても三厘下げることにいたします。今度は金利もそうでございまするが、中小企業、農民の方に対するお金の使い方も、私は昨年通産大臣でしたが、大蔵省ではなかなか聞いてくれなかったのですが、今度は通産大臣よりも総理の方が大蔵省に力があるからうんと出すつもりでおるのであります。そこでどういう格好で出すか、私は今ここでは申し上げられませんが、とにかくさすがにやるわい——、それは今言ったらいいと思いますが、こういうものは全体の予算の作り方で考えなければなりません。ただきょうも私は参議院でいろいろ質問をしておる間に、一つ大蔵大臣に承諾を得たのは、今度特別国会に補正予算を出しますが、そのときにはやはり商工中金の金利を下げる関係上二十億前後の出資をいたします。それのついでに近代化にもっと金を出さぬかと言ったら、そうですな、大体いいんじゃないかという了解を得たところですが、近代化の資金も、自由化の前提として早く中小企業に近代化資金を出すようにする。そうしてアメリカの輸出入銀行が三千万ドル中小企業化のために金を貸すということが非常に有望であると大蔵大臣から聞いたのですが、こういう金がきまってくれば、それとタイアップして、私は近代化のために相当のお金を出す考えであります。今までは戦後生産を急激に上昇させるためにある程度大企業に重点がいっております。しかし御承知通り鉄にいたしましても、もう財政資金を要しないようになります。今度は中小企業に対しまして重点的に出すことをここではっきり申し上げておきます。(拍手)
  37. 福田赳夫

    福田(赳)委員 近代化資金まで出すということにつきましては、私大いに敬意を表します。ただついでにもう十月、十一月ですから、年末金融という問題があるわけであります。昨年も十月末におきまして、政府三機関に対しまして百億円の臨時融資をするということをきめたわけでございまするが、本年度はどうするか。私、いろいろ周囲の情勢を考慮しますと、最低百五十億円の資金源を用意されたい、こういうふうに思うのでございまするが、大蔵大臣どうでございますか。
  38. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その問題で、きのう本会議で私は百億円以上は年末融資のお金を出す、こう言いましたところが、実は与党政調会から足らない、もっと出すべきだと言いますし、社会党、民社党からも強い要求がありました。さらにきょうは総理から半ば命令的に、今あなたの言われる程度の金を出すべきであると言われたのですが、この問題については総理を頂点とした超党派的な圧力が加わっておりますので、私も慎重に考えて、きょうは政府原資を洗いざらい洗いましたが、百五、六十億の余裕しか年末にはないということがはっきりしましたので、もう最大限度までということで、百三十億前後までは年末にその金を出すということで考えております。余裕があればまだ考えますが、現在のところその程度と御承知願いたいと思います。(拍手)
  39. 福田赳夫

    福田(赳)委員 さように一つ御努力願いたいと思うのです。総理経済政策全般を通じまして、世の中でいろいろ批判する人もある。私どもはこれによってこそ内外の日本の施策というものは進み得るというふうに考えまするが、しかし世の中には、一部にいろいろな批判がある。特に国際収支でこの構想が行き詰まるときがあるのではあるまいかというふうな説をなす者もあるわけでございます。大体所得が九%、先へ行きますと多少鈍るかもしれませんが、少なくとも十年後には倍以上になるということにいたしますると、やはり輸入がふえてくる。輸入依存度と申しますか、それには大体一定の統計的な動きというものが示されておるのです。それを見ますると、輸入増加というものが端的に所得増加の裏に現われてくるのではあるまいか。そうするとこれをまかなうだけの輸出増加ということが一体期し得るか、こういうことなんです。それから諸外国日本よりは所得の伸びが非常に少ないわけであります。そうすると日本の輸出先の方の所得が伸びないのでありますから、世界の輸出全体としての伸びは日本経済の成長率よりははるかに低いわけでございます。従って日本が今後輸出を増加しようといたしますれば、これはよその国を押し分けてよその国の輸出分を食わなければならぬということでございまして、これはなかなか苦しい足取りとなろうか、こういうふうなことを懸念するものがあるわけであります。私もこれはなみなみならぬことであり、総理がかりに国内消費でいいんだ、国内消費がどんどん伸びればいいんだ、輸出なんかそう重要視する必要はないというふうな印象を与えておるとすれば、これは大きな問題であるというふうに考えます、そういうことはゆめにもないと思いまするが、これは大へん心配している向きがありまするので、見解を明らかにしていただきたいと思います。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 私の経済政策につきましていろいろ心配なさる方は多い。私は野にあったときにもいろいろ忠告も受け、またそのときの政府の見方ともかなり違ったことを言って人を驚かしたと申しまするが、私は昭和三十三年の国際収支は五億以上だ、三十四年の国際収支は四億以上だ、こう申しました。閣議でも言った。しかし三十三年は一億五千万ドルの黒字だ、これは五億以上だ、三十四年は初め一億六千万ドル、私は通産大臣になってから三億くらいと書けと言ったが、どうしても二億か二億五、六千万しか書かなかったが、四億以上の国際収支になった。今までの政府や民間の一部の人があまり取り越し苦労で伸びるものも伸ばさない、伸びなんだという格好をして、いわゆる二宮尊徳の経済論をやり過ぎたと私は考えておるのであります。それでは日本の伸びる国民のエネルギーというものを抑えることになって私はよくないというので、いろいろの経験からああいうふうなことを出しておるのであります。輸入依存率につきましても、福田さん御承知でございましょうが、三年、四年、五年くらい前の企画庁のあれは輸入依存率は二割ないし二割五分といっております。こんなことはありっこないのであります。たとえば電気冷蔵庫なんかを計算してみますと、輸入依存率は六%程度である。世界各国の輸入依存率は大体総生産に対して一割一、二分から一割三分くらいしかありません。日本の輸入依存率というものは、これは通関の数字と為替の数字で違いますが、大体において日本の依存率というものはみな一割を下回る程度でございます。昭和三十二年のときには、一割ちょっとこえましたが、これは普通以上に外国原材料が滞貨したのでございます。私は大体経済発展すればするほど日内の労働力というものが加わっていきますから、輸入依存率は下がるという考え方でいっております。これには異論がございますが、大体最近われわれの輸入依存率というものが世間で認められたと思います。私は、今お話の国内消費が必要だということは、日本経済を伸ばしていくためには何が一番伸びる材料になるかといったら、大衆の購買力であります。大衆の購買力が日本経済を伸ばす。輸出は日本経済を伸ばし、大衆の生活を引き上げるための手段だ。だから見てごらんなさい。昭和二十四年のときには全体の総生産は三兆三千億、今は十二兆円だ。そうするとふえた九兆円というものはだれが消費したかというと、九千万国民が消費した。そのうち一割あるいは一割一、二分が輸出にいっている。三十四、五億ドルというと一兆円余りございますしょう。十二兆円のうち一割ちょっとが輸出であります。この輸出というものは輸入の代金をかせぐために必要な手段である。しかし九兆円もふえたこの生産をだれが消費していくかといったら、大衆に消費してもらわなければならない。大金持は一ぺんに洋服を二枚着られないのですから、みんな農民も労働者もどんどん所得を伸ばしていって、そうして洋服も五、六着、十着くらい持ってもらうようにしたいのが私は理想なんです。そこで国内の消費を、大衆の健全な消費ができるように大衆の所得を上げて、そしてどんどん生産していく。そしてその一部を輸出に向ける。どこの国だって、イギリスだって総生産の一割四、五分しか輸出しておりません。八割五分は五千万人の人が消費しているのです。これはフランスやイタリアにおいても総生産の一割足らずしか輸出しておりません。アメリカは総生産の三%か四%しか輸出していないのです。生産物は、八、九割というものは国内の同胞がこれを健全に消費していくところに経済の伸びがあるのでございます。私は輸出をおろそかにするわけじゃない。輸出というものはあくまで国内の生産を伸ばし、生活水準の引き上げの方便なのです。しかし世界の競争が非常に強うございますから努力はいたさなければなりません。国内の生産を伸ばして、いい品物を安く作るということになったならば、よその国と競争して負けません。従って去年なんかは世界の貿易の伸びは五%ですが、日本の貿易は輸出入とも二割にいっておる。昔から日本の貿易の伸び力というものは世界の平均の二倍へ三倍くらいいくのが今までの過去の例であります。国際収支につきまして、過去三年間四年間を心配しておりますが、私は常に楽観主義でいっておる。しかしその通りにいっておる。来年の三月には十七億五千万ドル、十八億ドルになるとだれが言ったですか。私ははっきりそれを言っておるわけでございます。ただ、今の問題は、輸出入だけの問題の黒字が大体今年は一億二、三千万ドルになりましょうか、そして輸出入以外のユーザンスその他の分が三億ぐらいになると思いますが、そういうことを心配して取り越し苦労をする人がありまするが、日本経済が伸びてくれば伸びてくるほど、そうして日本経済が堅実であればあるほど日本にどんどんお金が入ってくる。それは借入金であっても日本の信用を高めるのでありますから、私はけっこうだと考えております。心配はあまり要りません。
  41. 福田赳夫

    福田(赳)委員 ただいま承りましたところによりますると、大体日本経済は今後大いに伸展し、またいわゆる問題の格差問題も、中小企業、農家、それぞれの対策が立て得るように思います。ただそういう諸対策が立てられましても、日の目の当たらない階層というものはどうしても避け得られない。これが世の常だと思います。その対等といたしまして、やはり内閣におきましては社会保障ということを重要政策として掲げておられる。これはまことに私はもっともな見解であるというふうに考えるのでございます。社会保障は、申すまでもなく自由民主党におきましてずいぶん努力をしてきております。その根幹をなすものは、国民皆保険と国民年金なのです。国民皆保険は大体完成の域に達しておるというふうに思うのでございまして、この点につきましては若干の補正をするというようなことかと存じまするが、国民年金は、昨年福祉年金が始まった。来年からいよいよ拠出年金に入るという段階にきておるわけです。国民年金は、自由民主党が数年の長きにわたりまして検討して成案を得まして御提案を申し上げたわけであります。しかし、これだけの大きな制度をやる、短期間に仕上げるというのでございますから、これは実施してみれば、やはりいろいろ反省しなければならぬというような点も出てきておるわけであります。そういう点につきましては、これを提案するときからも、この推移を見てこれを改正するというふうに申し上げておるのでございまするが、特に拠出年金の実施を前にいたしまして国民のすみずみの意見を聞きますると、かけ捨ての問題ですね、これをまず振り返って見なければならぬかというふうに思うわけでございます。六十五才にならない前に死んでしまえば掛金はもらえない。これは全国民がこれを訂正されたいという希望を持っておるわけです。それから六十五才からこれを支給するというふうになっておるのでございまするが、六十才くらいまでこれを早めることはできないかという声もちまたにあるわけであります。私どもいろいろこの問題を皆様から承りますると、どうしてもこれは皆様の民の声である、こういうふうに考えるので、ぜひ自由民主党といたしましても政府に対し訂正方を要請し、この点に関する総理の明快なる御所信を承りたい。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 民の声を聞くことが民主主義の根本でございますので、かけ捨てのないように、また六十五才まで待たずに六十才から減額してもらいたいという方々に対しては、そういうことを実現いたしたいと今考えております。
  43. 西村直己

    西村委員長 福田委員に申し上げますが、持ち時間が大体迫っておりますし、きょうは特に理事会の申し合わせで、できる限り時間は厳守いたしたい、また質問者も多数通告がございますから、その点を含んで一つやっていただきたい。正確に申し上げますと、持ち時間はあと二分でございますが、そこのところを適当に一つ含まれて……。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)委員 最後に大蔵大臣に承りたいのですが、ことしは臨時国会というものがこの国会以外には開かれなかったのでございます。それで災害等の緊急な諸問題があるのでございます。一つはただいま申し上げました災害でございますが、一つは中学校の校舎を建設しなければならぬ、これが焦眉の問題だろうというふうに考えるわけであります。なお公務員の給与問題もある。それらの問題を考えますると、どうしても年内に補正予算を編成する必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。そういう段取りになっておるのかなっていないのか。またなっておるとすれば、ただいま申し上げました緊急な三問題はこの中に措置するつもりであるかどうか、これを明確に承っておきたいと思います。
  45. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 公務員の給与引き上げの実施時期を、政府は十月一日にするということを決定いたしましたので、それに関連して今年度の補正予算の準備をただいまやっておる最中でございまして、今言われましたような中学生の急増に対する校舎増設の問題とか、本年度の災害、それから昨年度の災害に関するものとか、社会保障費の不足分が出ておりますので、いろいろこういうものに対して一連の予算補正をやりたいというので、今準備しておりまして、おそらく予算項目というようなものを明日の閣議あたりできめられるのではないかと思っておりますが、段取りとしましては、そこまで進んでおります。
  46. 福田赳夫

    福田(赳)委員 以上で私は池田内閣の施政に関する質問を終わりますが、承りましたところ、わが党のいわゆる新政策をそのまま池田内閣において実現するということになっておることを確認しておきます。どうか、解散も間近だし、また総選挙になるわけでありますから、この新政策を振りかざして、政策については決してあなたは低い姿勢であってはならない、高姿勢で大いに戦ってもらいたいということを要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
  47. 西村直己

  48. 成田知巳

    成田委員 日本社会党を代表いたしまして、自民党のいわゆる新政策並びに総理の施政方針演説に関連して、質問いたしたいと思いますが、淺沼事件については、三党の話し合いで、あすの法務、地方行政の合同委員会で質疑をすることになっておりますので、これは省略させていただきます。そこで、池田内閣の新政策背景にいたしまして、これは私だけの感じではなしに、世間一般の批評として、経済政策に重点を置いているけれども、政治、外交、貿易、こういう基本問題については非常におざなりである、むしろ問題を回避しておる、こういう批評があることは、御承知通りなんです。その批評にこたえられてか、今度の施政方針演説で、外交方針については相当御発言があったわけですが、しかし、それはいたずらに言葉が多いだけで、しかも中立政策についてイデオロギー過剰と申しますか、むしろ感情的にまでこれを批判するだけで、前向きの姿勢というものは私あまり見受けることはできなかったわけです。そこで、そういう基本問題について二、三お尋ねしたいのでありますが、まず新政策で、国民信頼される公明な議会政治の確立がすべての政策の前提である、こうあります。ところが、現在の日本の政治、議会政治が国民から信頼されていない根本の原因は何かといえば、これは言うまでもなく、総選挙の前でありますが、あまりに選挙に金がかかり過ぎる、金に左右される政治、そのための腐敗堕落が、国民の政治に対する信頼を失墜しているわけです。総裁自身たびたび総選挙をおやりになって、金と政治の結びつきは、特に選挙の場合御承知のはずなんです。さらにまた、今度の総裁選挙で世上この問題についてとかくの批評があったことは、みずから総裁選挙をおやりになって知っているはずです。従って、ほんとうに総理日本の政治の確立と申しますか、国民から信頼される政治をやりたい、こういう御決意があるならば、新政策なり施政方針演説で、この金権政治というものをなくするんだ、こういう決意をまず表明すべきであったと思う。ところが、新政策についても、一言半句触れていない。施政方針演説においても、この問題について触れられておりません。一体総理としてこの金権政治についてどういうお考えを持っているかということについて、国民が疑惑を持つと思う。総理は政治は力なり、力は金なり、こういう政治哲学の持ち主だといわれてもいたし方がないと思いますが、まずそれについての御見解を承りたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 民主主義の発達には公明選挙が絶対の要件でございます。われわれは従来ともこれに向かって努力して参りましたし、今後も私は努力していきたいと思います。私は政治は力なり、力は金なり、こういうふうに言った覚えはございません。
  50. 成田知巳

    成田委員 私はあなたが言ったといっているのではないのです。国民が一番問題にしておりますところの金権政治の問題、特に総裁選挙で、自由民主党の大野さんからさえ、わが大野陣営は池田の実弾で続々倒れた、こういう批判さえ受けている。国民は金権政治を一番問題にしている。従って、あなたが言ったというのではない、そう思われても仕方がないじゃないかということを私は指摘しているのです。なぜこの新政策なり施政方針演説で金権政治をなくするという大方針をあなたは国民に訴えなかったか、それを聞いているのです。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 私は施政演説で公明選挙ということを言っております。そして金権政治はもちろん打破しなければならないのであります。そうして総裁選挙におきまして私は金を使ったとか、私は全然自分の手から金は動かしておりません。
  52. 成田知巳

    成田委員 それは世間の常識が判断すると思います。そこで、金権政治をなくしたいというのですが、具体的にどういうお考えを持っているか、どういう方針をお持ちになっておりますか。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 私はやはり選挙法の改正と同時に、片一方では国民全般の政治意識を高揚させる、こういう二つの点からいかなければならぬと思います。
  54. 成田知巳

    成田委員 選挙法の改正でも、今度の特別委員会で特に与野党一致しまして、いわゆる後援会によるところの寄付あるいは連座制の強化、これについては各党一致したはずなんです。出先では一致したのですが、本国へ持ち帰りますと、本国の方で、いろいろ自由民主党の方で批判があって、難色を示されてついにできなかった、そういう点についても、自民党としてはもう少し真剣な反省をしていただきたいと思います。それから金権政治によるところの政治の腐敗堕落、これが現在の暴力とテロリズム、その背景をなしている、その温床をなしまして連鎖反応を起こしておるというのが、今の日本の現状だと思います。そこで保守党の金銭に対するモラルの回復と申しますか、その確立が必要だと思います。それはやるとおっしゃるだろうと思う。そこで私具体的にお尋ねしたいのでありますが、世上自由民主党が政治資金規正法で届け出るべき届出をまだやっていない——この政治資金規正法によりますと、届出がおくれた場合には関係者は五年以下の禁固に処せられる。これが四カ月も五カ月も行われていない。そのおくれた理由というものは、約一億五千万円に上るところの資金の使途が不明である、こういうことでおくれておる。自治省の方でも非常にこれを問題にしておられるらしいのでありますが、総裁あるいは総理としてこの点はどうお考えになっておりますか。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 私は総裁でございますが、党の方はあまり直接にいろいろな事務を見ておりませんので、いずれ調べましてお答えすることにいたします。
  56. 成田知巳

    成田委員 そういう事実がありましたら、総理としまして——これは法律で罰則まであるものでありますが、私は罰則の適用だけで問題が解決すると思いませんが、最大の政党であり与党である自由民主党が、政治資金規正法の届出に違反するということでは、政治に対する国民信頼というものはなくなると思うのです。そういう意味で十分総理としては断固たる措置をおとり願いたい。自民党としても最大の反省をしていただきたい、これは特に申し添えておきます。次に、新政策民主主義の擁護、こういう題がありまして、話し合いによる政治の運営に努めることが国民の自由な意思の表明による議会政治を確立するための不可欠の要件である、こう言っておられます。そこで、国民の自由な意思の表明というものは一体何か。話し合いの政治、まことにけっこうなんです。しかしながら、この話し合いの政治というものは、単に国会内におけるところの与党、野党の話し合いだけじゃなしに、まず考えなければいかぬことは、国民との話し合い、新政策にもあります国民の自由な意思の表明、こういう意味で重要な問題については国民の意思に問うということで総選挙に訴える、これがいわゆる国民の自由な意思の表明による、こういうことだと私は理解しております。そこで、最近国会でいろいろ混乱がよく起きるのでありますが、この経過並びに内容を見ますると、昭和二十五年の朝鮮動乱、翌年二十六年安保条約の締結、それ以来のできごとなんですね。たとえば教育二法だとか、小選挙区法あるいは警職法、憲法調査会、あるいは今度の新安保条約、こういう案件が突如として出されてきたということなんです。これに対して私たちが抵抗したときなんです。私が突如と申し上げたのは、これらの案件について総選挙の際の自由民主党が、一度でも国民の信任を問うたことがあるかどうか。いつも総選挙のときにはひた隠しに隠しているのです。隠していて、選挙が済んで政権の座につくと、これを国会に出して、多数で押し切ろうとした。そこに混乱の根本原因があるのです。特に今度の新安保条約のあの五月十九日の事態もそこに原因がある。こういう事態について総理は一体どういうお考え方を持っておるか。今後重要な問題については必ず総選挙によって国民の信を問うんだ、こういう政治慣行というものを確立される御方針があるかどうか。これがほんとうの国民の意思を聞く政治だと思うのですが、いかがでございましょうか。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 御指摘の安全保障条約につきましては、この前の参議院の選挙にもはっきり選挙の題目にいたしておるのであります。突如としてやったわけではない。私はあの混乱は解散をせずにやったからというのじゃございません。その取り扱い方におきましていろいろ両党間において意思の疎通を欠いたからと思います。従いまして私はまのあたりあの状態を見ましたので、今後は民主政治のルールを確立するために謙恭と忍耐、寛容と忍耐で、話し合いの政治でやっていこう、こういう考えでおるのでございます。しこうして御質問の重要な案件については常に解散をするかという問題でございますが、私は今のイギリスなんかの解散の例を見ましても、重要な案件で解散したというのはごく少ないと思います。いかなるものが重要かということにつきましての認識もありますので、私は大きい問題があった場合につきまして、ことに憲法なんかのようなものは、私はこれをひっさげて国民に問うということが必要だと思います。しかしいろいろな法律問題で常にこれを解散に問う、憲法はともかく、条約について解散するということは、私は自分の私見としては好みません。しかし今後どういう問題が起こったらということにつきましては、問題の性質によっておのずから違ってくると思いますが、私は重要問題については常に解散するという前提には承服できません。
  58. 成田知巳

    成田委員 新安保の問題について参議院で問うたと言うのですが、参議院選挙のときも非常に抽象的な問い方なんです。しかも国民の意思を問うのは衆議院の総選挙なんです。これは議会政治家である池田さんが参議院選挙で問うたから衆議院選挙では要らないという考え方は根本的な誤りだと思うのです。それから条約なんかは重要でも総選挙に問わないと言われるのですが、今度の安保条約を見ましても、たとえば砂川判決で最高裁が、条約と憲法の関係で、これは憲法違反であるかどうかというのは高度の政治性だということで、条約の問題を逃げている。     〔委員長退席、野田(卯)委員長代理着席〕 事実上条約で憲法が抹殺されるというような傾向になっているのですね。そういう意味条約なるがゆえに総選挙に問わないということは、これまた本末を転倒していると思うのです。そこで具体的にお尋ねしますが、憲法の問題については総選挙に問いたいと言われていますが、たとえば警職法の問題とか、あるいは小選挙区法の問題、さらには最近荒木文部大臣がいろいろ談話を発表しておられる。私、朝新聞を見ましても荒木文相語るということを見ますと、戦争中の荒木貞夫文部大臣を思い出しますね。ただ違うのはひげがないだけなんです。それほど最近の荒木文相の行政というものは戦時下の方向をたどっている、逆行していると思うのです。そこで教育基本法を改正される、こういうことを言っていらっしゃるのです。この教育基本法というのは御承知のように教育に対する憲法なんです。こういう意味でこういう重要問題については当然総選挙に問うべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろなあなたの頭に出てきた問題を題にして解散する条件かどうかということにつきましては、私はお答えできません。
  60. 成田知巳

    成田委員 次に外交の問題についてお尋ねしたいと思いますが、岸内閣の時代にとにもかくにも外交原則といたしまして国連中心主義、自由主義国家郡との協調、アジアの一員としての立場の堅持、これが三原則になっておりました。ところが今度の施政方針演説を拝聴いたしましても、また自民党の新政策を拝見いたしましても、このアジアの一員としての立場の堅持という言葉はもうなくなってしまっているのです。そうして言葉といたしまして経済外交の中に入り、特にその一つとして経済開発について協力する、こういうところに解消されてしまっているのです。そのかわりに現われたのが日米安全保障体制の堅持ということになる。ということは、岸内閣時代よりも池田内閣になりまして事アジアの外交に関しては後退した、こういう印象を受けるのでありますが、なぜ三原則のうちからアジアの一員としての立場の堅持という言葉がなくなったのかどうか、その見解を承りたいと思います。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 国連中心主義でいくという根本原則に変わりはございません。また安全保障体制でいくことも変わりございません。そうしてまたAAグループの一員として、AAグループと協調していくことも変わりないのでございます。表現はそのときのあれでございまして、思想といたしては変わっておりません。私は、しいて変わったといえば、経済問題その他につきましては多辺的と、こう申しておりますが、やはりヨーロッパ諸国、そうしてAAグループとの間の関係をもっともっと強化していきたいというのが前よりも少し変わってきておると思います。
  62. 成田知巳

    成田委員 前の外交の三原則の中にも、たとえば経済問題を無視しておるわけじゃないのですね。ところが三原則の中にアジアの一員としての立場の堅持という言葉が強く出ておった。この三本の柱の一つが抜けたということは、何と申しましても池田内閣においてアジア外交が後退したということだと思うのですね。その例といたしまして今度の国連におきまして、たとえば米ソ着脳会談を提唱いたしましたところのナセルだとか、あるいはチトー、ネール、スカルノ、この決議案に対して日本の代表は水をかけている。そうして修正案を出すということでいろいろ奔走しまして、この動きに対してはアジア・アフリカ諸国から総攻撃を受けているのですね。こういう事実、さらにまた中国代表権の問題でも日本は全く自主的な立場がない。世間では日本アメリカの投票機械だと、ここまで言われているわけですね。この中国代表権問題につきまして米国に同調したアジア・アフリカの諸国というのは、トルコ外九ヵ国なんです。米国案に反対した立場のものはAAグループ三十五ヵ国あるわけですね。こういう事実から見ましても、池田内閣のアジアの外交というものは非常に後退したということになる。こんなことではたしてアジア・アフリカ諸国民の尊敬と信頼をかち得ることができるかどうか、これは私たちが非常に残念に考えるわけなんです。そこで、今度の施政方針演説で特に総理が発言されました中立外交は幻想だという御発言ですね、この問題について総理の御意見を承りたいと思いますが、たとえば中立外交をとっている国は、オーストリアだとか、スイスだとか、スエーデンあるいはインド、ビルマ、インドネシア、アジア・アフリカのたくさんの新興国があるわけです。こういう世界的な事実、これをはたして幻想とお考えになっておるのかどうか、これについてまず承りたいと思います。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 AAグループの一員としての地位は、もしあなたが弱まったとおっしゃるならば、施政演説をこういう機会に補足して申し上げますが、前以上に強めていくつもりでございます。そういうふうに御了承願います。それから中立主義は幻想だというのは、私はよその国を言っておるのではない。日本中立主義を唱えるということは、事情を知らぬ幻想だと言っておるのであります。
  64. 成田知巳

    成田委員 多分そういう御答弁があると思ってお聞きしたわけです。日本中立主義をとることが幻想だ、こう言われますが、先ほど福田議員の質問に対しまして、特にマンスフィールド上院議員の報告書に関連して小坂外務大臣から御答弁があったのですが、大切な問題については触れておられなかった。マンスフィールド議員は政府じゃございません、日本は、昨日の施政方針演説でもありましたように、中立主義はとりません、こう言って、あとは安保の問題に問題を移していらっしゃるのでありますが、マンスフィールド議員が、どういうことを言っておるか、大切な問題については小坂さんは報告されていない。マンスフィールド議員の言っておる、特に中立主義の問題についての重点は、戦時と占領時代の経験は日本に強い平和主義を植えつけた。これは中立主義傾向の拡大となって現われている、これが一つです。先ほど福田議員との質疑応答の中で、何か中立主義というのは、日本ソ連、中国から押しつけられておるのだ、そういうふうな御発言があったのですが、中立主義というのは、御承知のように、社会党が結党以来唱えておるところです。総理安保条約の問題があってから中立主義の問題が起きてきたように言っておられますが、決してそうじゃない。社会党は結党以来十数年間叫び続けておる。しかも最初ソ連だとか中国は——総理は非常に博学でいらっしゃると思いますが、ブルガーニンとか、毛澤東の言っておるように、中立主義はあり得ない、そしてそれを受けて日本共産党は、社会党中立主義アメリカの代弁だといってそこまで私たちを攻撃した。ところがこの中立主義というのは、何といっても世界対立を緩和するのだ、平和に役立つのだ、この社会党の正しい主張がわかって、最近日本共産党も中立主義を主張しておる。この事実を一つお忘れないように願いたいと思います。第二にマンスフィールドが言っておることは、日本外交政策はいわゆる中立主義方向が強まることが予想される。第三に、安保条約はこの日本における中立主義傾向に逆らっているので、国民の不安の的になっておる、こういうことを率直に言っておるわけです。このマンスフィールドの意見というのは、安保反対運動に見られたところの、日本国民中立を望む、平和を望むところの考え方というものを率直に認めておると思うのです。米国人がこのように日本におけるところの中立主義傾向、その必然性を認めておるのに、日本総理大臣だとか外務大臣が、中立主義は幻想なんだというに至っては、はたして日本総理大臣外務大臣かと聞きたいのです。これを幻想だという総理大臣のお考え方自体が私は幻想だと思うのです。この問題について、マンスフィールドのことを申し上げましたが、総理はまだ幻想とお考えになっておるのかどうか。マンスフィールド自身がその傾向は必然性があると認めておる。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、ソ連中立主義日本に押しつけるという気持があることは、安保審議中に向こうからの覚書によって、これを感知しておるのであります。しこうしてマンスフィールドの報告は、詳しくは読んでおりませんが、彼は日本国民の一部にそういう考え方をしている人があるということを報告しているのであって、そういう考え方の者が日本の大多数とも言っていないと私は見ているのでありますが、いずれにいたしましても私の考えは、日本人として日本状態考えたときに、中立論というものは幻想であるということに、マンスフィールドが何と言おうとも変わりはございません。
  66. 成田知巳

    成田委員 決して、マンスフィールドの報告書は国民の一部なんということは言っておりません。その傾向が強まりつつあるということを言っているのです。そこで、中立政策というのは、ただ抽象論で論議すべきじゃないのす。やはり具体的な政策論議すべきだと思うのですが、中立主義の私たち主張しているところは、いかなる軍事同盟にも参加しない、これが一つのねらいです。もう一つは、あらゆる国との友好関係の樹立なんです。そして軍事同盟の問題が今度の安保条約ということになって現われてきているわけです。そこで私たちは、今度の安保条約の危険性を説いて反対をしてきたわけであります。ここで安保条約の問題について一、二お尋ねしたいのでありますが、たとえば安保条約の第二条、日本アメリカとの間の経済的な食い違いを是正する、これが貿易の自由化となって現われたことは、国民承知通りなんです。第三条のいわゆる日本の自助及び相互援助能力の増加、今までの安保条約では、単にアメリカに期待するとなっておる。今度の条約では義務になってきた。そういう意味で、これから日本の防衛費が激増していくということも、国民は非常におそれております。もう一つ安保条約戦争の危険性の問題なんですが、これは第五条、第六条だと思うのでありますが、日本の平和と安全、極東の平和と安全を維持するためにアメリカ軍が日本に駐留する、この第六条を受けまして、交換公文で、米軍が出動するときは事前協議ということになっていることは、総理承知通りなんです。そこで、この第六条並びにこれを受けた交換公文によるアメリカ軍の出動は、安保条約の前文に個別的自衛権及び集団的自衛権によるとありますが、個別的自衛権によってアメリカ軍隊が出動するのですか、それとも集団的自衛権に基づいて出動されるのですか、どちらとお考えになりますか。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 条約の問題でございますので、そのときに当たった法制局長官が一番詳しいと思いますから、法制局長官から答弁いたします。     〔「総理に聞いている」「法制局長官じゃだめだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  68. 林修三

    ○林(修)政府委員 御質問の趣旨は条約の解釈問題だと存じますので、当時の条約の締結並びに国会における説明の衝に当たりました私からお答えするのが適当と思います。今第六条に基づくと申しますか、第六条に基づくというのはちょっと語弊がございますが、要するに、米軍が日本を基地として、日本の平和と安全あるいは極東の平和と安全のために出動するのは、個別的自衛権に基づくのか、集団的自衛権に基づくのかという御質問だと思います。これは米軍としては両方の場合があり得る、かように考えております。
  69. 成田知巳

    成田委員 安保条約の基本的な問題なんです。そして池田総理自身、この安保条約の強行採決について、閣内におけるところの積極的な活動をなさった方なんです。そこで私は当然責任を持つべきだと思うのですが、特に個別的自衛権か集団的自衛権かということは、総理も閣内におられて十分論議をしてお聞きになっているはずだ。     〔野田(卯)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで今法制局長官が、アメリカとしては両方あると言われたのですが、それなら総理にお尋ねいたしますが、これは国連憲章に基づくものと考えてよろしゅうございますか。     〔発言する者多し〕
  70. 西村直己

    西村委員長 御静粛に願います。
  71. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 しばしば私の名前があげられておりますから、私からお答えいたします。その前に、先ほどの御質問中、今度の外交方針には三原則ということがないのじゃないかというお話がございましたが、私の方針といたしまして、外交の問題については、これは非常に弾力性を持たねばならぬものでございますから、特に原則というようなものをあげない、プリンシプルというものは、もちろん中にあるわけでありますけれども、その動いていく国際情勢に対処していく、そういう考えでおるわけでございます。さらに先ほど国連における決議案その他の問題についてお触れになりましたが、あの問題については本会議で御答弁申し上げましたから、すでに御承知をいただいておるものと思います。さて、ただいまの御質問でございますが、これは先ほど答弁がありましたように第六条に関係いたしましては米軍の側におきまして、これは集団的、個別的な両方の自衛権があると考えますし、この安保条約自体が国連憲章との関連においてできておるものでございますから、さような点は異議がないものと考えております。ただ第六条につきましてはすでに成田議員御承知と思いますが、前の条約の場合には、軍隊の駐留ということが特に規定されておるのでありますが、この場合は施設の使用ということが主になっておるわけでございます。さよう御承知おき願います。
  72. 成田知巳

    成田委員 今のアジア外交の問題については、総理の答弁と外務大臣の答弁と違うと思うのです。総理は、もしそういう違いがあるとすればアジア外交というものを表面に出しますということをはっきり言っておる。むしろ表現が足りなかったということをお認めになった。ところがあなたは、これはフレキシブルなものを考えているのだといって問題をごまかそうとしています。そこで食い違いがあると思うのです。そういう点はもう少しはっきりしていただきたいということです。  それから今、外務大臣は個別的自衛権及び集団的自衛権に基づくものだ、これは国連憲章五十一条に基づくものだ、こういうことをお認めになりました。そこでお尋ねいたしますが、アメリカが集団的自衛権に基づいて第六条に基づき交換公文によるところの出動をやろうというときには、日本に対して現実な攻撃があった場合、これだけだとお考えになっている、こう理解してよろしゅうございますね。現実に日本に攻撃があった場合、その場合にのみ初めてアメリカ軍隊は出動できる。事前協議の前の問題ですね。そう考えてよろしゅうございますね。
  73. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 前段の原則論の問題につきましてはこれは食い違いがございません。それから後段にお話のございました日本に攻撃のあった場合に限るかということでございますが、これは成田議員の御承知のようにこの条約日本の安全並びに極東における国際の平和と安全、そのために規定されておるのでございまして、そうした状況が起こるという場合には発動されるものでございます。
  74. 成田知巳

    成田委員 そこがあいまいなのです。今までの国会においてもそこが非常にあいまいな答弁だったわけですが、日本のの安全ということと、日本が現実に攻撃されたこと、これとは私はおのずから違うものがあると思う。では日本の安全を脅かすような危険があった、それだけで出動できるのか。それとも現実に攻撃があった場合初めて出動できるのか。その点はこの前の安保国会で非常に明確を欠いているわけです。今の外務大臣の御答弁も非常に明確を欠いている。そこで私は、現実に攻撃があった場合に初めてアメリカは集団的自衛権の行使ができるのかと聞いておる。これは五十一条の規定かと言ったら、五十一条だ、こうおっしゃる以上、日本に駐留するアメリカの軍隊というものは、日本に現実な攻撃が他国から加えられた場合以外は出動できないのだ、このように理解してよろしゅうございますね。
  75. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。現実の攻撃ということがなかなか——あなたははっきりせぬとおっしゃいますが、そのこと自体がいろいろ程度の度合いもあろうし、規模の度合いもあろうし——(発言する者あり)その現実の攻撃というのをいかに認識するかという認識の問題であろうと思います。
  76. 成田知巳

    成田委員 国連憲章五十一条には、攻撃のおそれがあるとか、平和に対してとか、そうじゃないのです。攻撃に対して個別的、集団的自衛権を行使するとある。攻撃が発生しなければできないことなのです。
  77. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 攻撃に対しということが書いてある、その通りであります。ただその攻撃に対しというのが、どの程度にそれを攻撃すると判断するのかということだと思います。これは法制上の解釈でありますから、法制局長官から答弁させます。     〔発言する者あり〕
  78. 西村直己

    西村委員長 成田君質問ありますか。
  79. 成田知巳

    成田委員 国連憲章五十一条は、発生した攻撃に対してということなのですよ。そういうおそれがあるとかいう問題じゃないのです。外務大臣いかがですか。
  80. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今お答えした通りでありまして、法律解釈の問題でありますから、林法制局長官をして答弁させます。
  81. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの点は、全国会の質疑応答においても相当詳しく私はお答えしたところだと考えております。この国連憲章第五十一条の条件は、かりに米国についての自衛権の発動要件は、米国について全体に考えるべき問題でございまして、日本に駐留する米軍についての自衛権とか、あるいはフィリピンにいる米軍の自衛権とか、個別的に考えるべきものではございません。つまり米国としては、米国の領土あるいは米国の軍隊、こういうものに対して攻撃が加えられた場合において、米国は集団的自衛権または個別的自衛権が発動できるわけでございます。そういう条件のもとにおいて米国は五十一条の行動をするわけでございます。従ってこの条約にそれを当てはめてみた場合でございますが、第五条は、もちろん、これは日本に対する攻撃の場合だけでございます。しかし米軍の行動というものは、駐留米軍でありましても、必ずしも日本に対する攻撃のみの場合に限らないわけであります。米国としては国連憲章五十一条の要件を満たす限り、個別的自衛権または集団的自衛権を発動し得るわけであります。その場合に、日本に駐留する米軍が、日本に対する直接の攻撃でなく海外に飛び出す場合、これが日本にとっていろいろ危険があるからこそこの事前協議条項が入っておるわけであります。その事前協議条項は、そういう意味で入っておるわけであります。
  82. 成田知巳

    成田委員 五十一条は米軍全体に関する規定だ、個別的な日本にいる軍隊に関するあれじゃない、その場合には攻撃が発生した場合云々という御答弁なんですが、この日米安全保障条約というのは、日本アメリカの関係なんです。そしてアメリカの軍隊が日本の基地を使用する条件というものを規定しておるわけです。しかもそれは国連憲章五十一条に基づいておるわけです。従って、その五十一条が基本的な原則なんです。何も米国と台湾だとかあるいは李承晩だとか、そういう関係の条約の問題じゃないのです。日米間の条約なんです。日本の基地を利用する条件なんです。しかも米国が個別的あるいは集団的自衛権を行使する場合も、現実に攻撃が発生した場合に行使できるのです。そうすれば、日本に対する現実の攻撃とか、あるいは米国に対する現実の攻撃があった以外は、外務大臣の言うように、そういうおそれがあった場合にも出動できるという考え方は間違いなんです。もしそういう考え方ならば、この第六条の規定は私は国連憲章違反だと思うのです。では具体的に聞きますが、ケネディ、ニクソンの論争で、金門、馬祖が非常に問題になっておるのですが、あの場合アメリカに対する攻撃でもない、もちろん日本に対する攻撃でもない、そういう場合にアメリカの軍隊は出動できますか。——外務大臣、これは政治問題ですよ。
  83. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は日本領域以外の地に起こることに対して、仮定の質問にお答えできません。     〔発言する者多し〕
  84. 西村直己

    西村委員長 御静粛に願います。
  85. 林修三

    ○林(修)政府委員 政治的な点を除きまして、私から法律的な点だけ御説明申し上げます。ただいまの第五十一条の解釈は、もちろんおそれのある場合を含まないことは仰せの通りであります。第五十一条はその攻撃が発生した場合の規定でございます。その点は間違いございません。これは五十一条をお読みになればその通り書いてあるわけでございます。そしてこれをかりに米国の立場に立って考えてみました場合に、米国に対する攻撃あるいは米国が個別的自衛権を発動し得る場合あるいは集団的自衛権を発動し得る場合、いろいろありますが、米国が個別的自衛権を発動し得る場合は、米国の領土あるいは領海等に対する直接の攻撃と、米国が集団的安全保障条約を結んでおりますような国におります米軍に対する攻撃、こういうふうなものがいわゆる個別的自衛権の問題になると思います。それから集団的自衛権の問題でありますが、これは米国に対する直接の攻撃でなくとも、米国が集団的安全保障条約を結んでおります国に対する攻撃、これがいわゆる集団的自衛権を発動する要件になると思います。この二つの要件の場合のみ、米国は第五十一条を援用して行動し得るわけであります。その場合に米国のその要件は、先ほども申しましたように、各地に散在しております米軍を個々的に観察するのじゃなくて、米国あるいは米国軍隊あるいは米国との関係を総合的に観察してきめるべき問題だ、かように考えるわけでもります。従いまして日本におります駐留米軍もただ黙って駐留させれば——駐留はもちろんこの安全保障条約に基づいて駐留さしておるわけでございますが、黙っておれば、米軍としては米国の持つ個別的自衛権あるいは集団的自衛権の要件に当たる限りは自由に出動し得るわけでございます。しかしこれについては、これが日本に対する攻撃であり、あるいは日本に駐留する米軍に対する攻撃である場合は、日本の安全にとって非非に危険でございますから、これは第五条でいわゆる無条件に規定しておりますが、それ以外、つまり日本の外に出ていくという場合につきましては、これを日本の意思にかかわりなく出ていくということについては、旧安保条約のときにこれはあぶないじゃないかという御議論のあったことにかんがみまして、今度の新しい条約では、第六条に基づく交換公立で、いわゆる事前協議条項を入れたわけでございます。それで米国がかりに第五十一条の要件に従って行動する場合でも、日本以外に出ていく場合にはこの事前協議条項によって縛る、これが第六条に基づく交換公文の趣旨でございます。
  86. 成田知巳

    成田委員 総理または外務大臣にお尋ねしますが、今金門、馬祖に攻撃があった場合、そういう仮定のことに答えられない。国民が一番心配しておるのはそれじゃないですか。アメリカでもこれは大統領の論争になっておるのですよ。そこで私はお伺いしたいのですが、たとえば台湾に対する攻撃があった、韓国に対する攻撃があった、しかもそれはアメリカに対する直接の攻撃ではない、この点は法制局長官もお認めになった。アメリカに対する直接の攻撃がなければ自衛権の発動はできない。そういう場合に日米安保条約日本にいて、第六条で基地の使用を許されている軍隊が、アメリカとか日本に対する直接攻撃がないにもかかわらず出動できますかどうですか。
  87. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 念のためにもう一度申し上げますと、第五条は成田議員よく御承知のように……(「第五条は聞いていない」と呼び、その他発言する者あり)だんだん申し上げますから……。「日本国の施設の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」そういうことを認める認識の問題であるということを申し上げたわけであります。第六条は、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」云々と書いてあるわけでございます。従ってこの場合には、交換公文によるところの事前協議の条項があるわけです。すなわち極東における国際の平和と安全に害があるかどうかという認識の問題であるということを申し上げたわけであります。従いまして、先ほどの金門、馬祖に関する答弁も、これはこういうものに加わるかどうかということは、これは御承知のように、私も日本国の外務大臣といたしまして、そうした政治的な機微にわたる問題に一つの仮定を置いて、その場合にどうする、こうするということを申し上げることはできない、こういうことでございます。
  88. 成田知巳

    成田委員 私は極東の範囲の問題を聞いているのじゃなしに、極東の平和と安全というような抽象的な規定で出動できるのか、現実の攻撃があった場合に初めて出動できるのか、この問題を聞いているわけでございます。これに対する明確な御答弁がないわけですが、だから私たちは中立政策というものを問題にするのです。安保条約を問題にする。総理安保体制を強化すると自信を持って言われたけれども、こういう危険がある。だから私たちはこういうものに反対するのが中立政策中立政策たるゆえんだということを申し上げているのです。時間が非常にたちますから、私はこの問題はこの程度で打ち切りまして次に入りたいと思います。     〔発言する者多し〕
  89. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 どうぞ一つ、これは大事な点でありますから、誤解があるといけませんから……。もし、今お話のこの金門、馬祖に対しまして、これは法律的な見解でございますが、中共より攻撃が加えられました場合に、万一アメリカが何らかの形でこれに介入する場合において、日米間に安全保障条約の関係があるからといって、日本が巻き込まれることはないということを申し上げます。ただ私は日本外務大臣といたしましてこういう場合を想定して、これが事前協議の対象になるかどうかということをこの場合言明することは適当でない、そういうことは現実にない問題である。またない問題をあると仮定して外務大臣が言うことは政治的に適当でない、こういうことを申し上げます。
  90. 成田知巳

    成田委員 時間がございませんから先に移ります。答弁は非常に不満だ。  そこで中立政策のもう一つの問題であります中国問題でありますが、御承知のように今度の戦争日本が被害を与えたのは中国の人たちなんです。蒋介石と戦争したというよりは中国六億の民と戦争をしたわけでございます。従って、日華条約だけでこの問題の解決がついたと考えることは私間違いだと思います。この点について総理は日華条約を締結したから責任は回避されておるのだ、このようにお考えになりますかどうですか。     〔「総理々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  91. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げますが、この問題については条約局長から申し上げた方が適当かと思います。
  92. 成田知巳

    成田委員 これは単なる条約技術論じゃありません。最大の政治問題です。     〔発言する者多し〕
  93. 西村直己

    西村委員長 もう一ぺん質問して下さい。
  94. 成田知巳

    成田委員 今度の日本と中国との戦争日本が迷惑をかけたのは中国六億の民なんです。日本は単に蒋介石と戦ったわけじゃないと思います。中国六億の民と戦って、非常な迷惑をかけている。(「そのころは蒋介石政権だ」と呼ぶ者あり)そのころは台湾に行っていたのだから、黙って聞いていなさい。そこで日華条約だけを締結することによって、日本の責任が解除されたと総理はお考えになっているかどうか。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 日本は蒋介石政権と戦ったことになっておるのでございます。しこうして、その相手方の蒋介石政権と講和条約を結んだので、法律的には一応これで済んだと考えております。ただ問題は、経済的にとかいろいろな道徳的に申しますと、その後において中共というものが一つになったものでございますから、ある程度政治的には問題が残っておると私は考えております。
  96. 成田知巳

    成田委員 日華条約の締結されましたときの政府の公式発表でも、この条約の効力は中国本土に及ばないということを言っているのです。しかもそのときには蒋介石は台湾の一地方政権になっている。条約の効力は中国に及ばないと言っている。従って、中国と日本との間の不自然な状態というものは、決して日本の責任は法律的にも政治的にも解除されていないと思う。単に経済的な問題だけじゃないと思う。これについて一つお答え願いたいと思います。
  97. 池田勇人

    池田国務大臣 日華条約が中国には及ばないということはどこにあるか存じませんが、われわれとしては、蒋介石政権と戦い、そうして講和条約を結んだのでございまするから、法律的には片づいたと考えております。
  98. 成田知巳

    成田委員 その点は非常に見解の相違なんです。また事実に反していると思うのです。中国本土にはこの条約の効力は及ばないということになっている。そこでお尋ねいたしますが、総理も法律的には解決したと言うけれども、やはり不自然な状態であるということをお認めになりますか。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 実際において中国というものができました関係上、その点普通の場合とは違ったものがある、かように思います。
  100. 成田知巳

    成田委員 普通の場合と違ったことがあるのは認めるというのですけれども、それは不自然な状態であるということをお認めになったと思うのですが、そこで総理としまして中国との国交回復、一挙にはいかないと思いますが、最近中国が非常に弾力的な態度を出しているわけです。貿易の再開の問題ですね。特に政府間協定による貿易再開をやるために大臣級の会談をおやりになる、こういう御意思があるかどうか。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 政府間において貿易の協定をするまでに私はまた至っていないのではないかと思います。やはり以前のように積み上げ方式でいって、だんだんそういうことになることを望んではおりまするが、ただいま直ちに大臣級での国と国との貿易協定というところまでは進んでいないと私は考えております。
  102. 成田知巳

    成田委員 その判断の底には、かつて総理が言われました共産圏と貿易すればだまされる、こういう発言をされたのでありますが、まだそういうお気持がおありなんですか。まじめにそれはお考えになっているのですか。たとえば西ドイツとか英国でもどんどん中国と貿易している。ソ連とも貿易している。だまされた国がありますか。そういう考え方をまだお持ちなのかどうか承りたいと思います。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 だまされるという言葉は行き過ぎかと思いますが、実際におきましておととしの四月ですか、相当の注文を受けておったのであります。しかもまた日本船が漢口に参りまして、そして売約済みのものまでも一時にぴしゃっととめられた。政府はこのしりぬぐいをするために予備費を出したわけであります。また国内におきましても鉄鋼その他の注文で生産しておったところがぴしゃっととめられた。この現象はどう説明したらよろしゅうございますか。
  104. 成田知巳

    成田委員 これは総理の中国に対する基本的な考え方が間違っておると思います。やはり日本と中国とは法律上はまだ戦争状態にあるのです。その状態を解消しないで貿易をやろうとする、そこに岸内閣の対中国敵視政策というものが出てああいう問題になるのであります。だからといって、だまされるなんかという表現を使うことは間違いだと思います。これは訂正されたそうですからけっこうです。一歩前進です。それから、どうもまだ機が熟していないと言われるのですが、中国貿易をやると何かアメリカから反対があるのですか。アメリカの反対をお考えになって中国貿易は遠慮していらっしゃるのですか。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 私はアメリカの反対があろうがあるまいが——私はないと思いますが、私はそんな問題で中国との貿易を考えるということはいたしません。自分は自分として日本経済発展のために、また中国民族の幸福のために貿易をすることは望ましいことで、私はずっと四、五年前から言っておる。やろうといたしましても、それ文のあったものがキャンセルされる、こういうことのないように積み上げ方式でいかなければならぬと思います。
  106. 成田知巳

    成田委員 アメリカの反対がないとすると、中国貿易をやると、何かアメリカから経済報復、こういうものがあると総理はお考えになっておりますか。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそういうことはないと思います。私ちょっと申し上げましょう。さきおととしある会社がプラント輸出をするということについて相談にきました。そのときにこのプラント輸出したならばアメリカとの貿易がきらわれてできぬようなことになりはしないか、そんなことはない、私は今すぐそれをやることは反対だ、なぜかといったら、プラント輸出が完成したというときにすぐ国交断絶だということになったら君どうするのかということをさきおととしの秋ですかやったわけです。こういうことを私は考えておるから、だまされたという言葉が悪ければ、とにかくひどい目にあったことは確かです。
  108. 成田知巳

    成田委員 そこで日本が中国貿易をやっても、アメリカ経済的な報復をすることはない。それは当然だと思います。そこで安保条約の問題に戻りますが、国民の総意が安保条約を解消しろということになりまして、アメリカ安保条約の解消交渉をやる、そして解消することによってアメリカ日本経済的な報復を加える、こういうふうにお考えですか。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 日本国民の大多数が安保条約改正になるかならぬか、なった場合には私は一つ考えたいと思います。
  110. 成田知巳

    成田委員 なった場合、アメリカが解消するからということで経済報復をする、そういうような国とお考えになりますか。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそういうことを考えたくない。今日本の大部分が安保条約を解消しようという気になっていないのですから、その場合にこいつをやったら向こうがどうするか、向こうのきらうようなことを今ここで議論するということはよくないと思います。
  112. 成田知巳

    成田委員 貿易については今のところ考えていない、しかしアメリカ経済報復をすることはないだろう、その場合はっきり言われる。安保条約の問題については、なぜそれが言えないのですか。
  113. 池田勇人

    池田国務大臣 現に四、五年前までは年に六千万ドルずつ二年ないし三年やっておった。何も言ってないじゃないですか。だから私は過去の事実に基づいて言っているわけです。
  114. 成田知巳

    成田委員 筋としては考えられませんか、単なる事実でなしに。事実というものはやはり何か根拠があると思います。アメリカという国はそういうことはやりっこない、そういうふうにはお考えになりませんか。
  115. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは相互信頼のもとに立ってやっておるのであります。何もいろいろな仮定を設けて、向こうの気持をそんたくするということはよくないと思います。
  116. 成田知巳

    成田委員 池田さんは割合にものをはっきり言われるのが特徴だといわれていましたが、だんだん吉田さん——吉田学校の校長さんの癖がうつりまして、仮定の問題については答えられない。まことに遺憾だと思います。そこで次にお尋ねいたしますが、国連におけるところの中国の代表権の問題でございます。御承知のように国連における中国代表権の問題は、逐年アメリカの支持票というものは減っておるわけなのです。ことしは特にそういう傾向が強い。来年になれば国連加入ということが現実の問題になるのじゃないかといわれておりますが、この際中国という大国を無視して池田さんの言われる国連の強化というものもあり得ないし、世界の平和というものもあり得ない。こういうふうに国連への中国の代表権を認める問題について、アメリカ政策を変えない以上、日本は代表権を認めるという方向に踏み切れないのですか。それともアメリカ考えとは別に踏み切る意思があるかどうか。
  117. 池田勇人

    池田国務大臣 国連における中国問題は、だんだん年とともにいろいろ変わってきておることは認めております。しこうして、今国連で問題にいたしておるのは、中国を承認するかしないかという問題ではなしに、中国につきましてどうするかということを議論する段階でございます。私は日本立場アメリカの言う通りになるかといったら、言う通りにならぬ場合もありますし、われわれと意見が一致すれば同一行動をとることもあります。現にイギリスにおきましては中共を認めておりますが、国連におきましては、われわれと同じ態度をとっておることは御承知通りであります。われわれは独立国家ですから、自分の考えでやっていきます。
  118. 成田知巳

    成田委員 国連では中国の代表権の問題がまだ問題になっていない、そうじゃないのです。それを討議することを今きめるかどうかということが問題になっている。ということは直接間接に中国の代表権の問題が問題になっているわけです。そこでアメリカの投票機械なんといわれないように、日本独自の立場でこの問題をお考え願いたい。  次に日韓会談の問題でございますが、その前に北鮮帰還の問題についてお尋ねしたいと思います。これは人道主義という見地から、北鮮帰還の問題に岸内閣当時踏み切ったのであります。ところがどうも最近韓国との関係で、そういう政治的な配慮のために北鮮帰還問題が暗礁に乗り上げている。最近少しく曙光が見えて参りました。これはあくまでも人道主義の見地で解決することは当然だと思う。韓国との政治問題はからますべきじゃないと思いますが、総理の御意見はいかがですか。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 北鮮帰還の問題は前内閣におきまして人道主置に基づいてやっておるのであります。従いまして十一月十二日に期限が切れますので、われわれはスピード・アップいたしたい、そうしてなるべく早くこれを解決したいというので、先月の十八日に新潟での会談をしたわけでございますが、不幸にして決裂いたしました。しかしもう期限も迫って参っておりますし、また帰国したいという方もたくさんおられますので、いずれ近いうちに再交渉に入るのではないかと思っております。
  120. 成田知巳

    成田委員 再交渉に入るのですが、その場合の総理の御方針ですね。やはり人道主義という見地からいきまして、無修正で一年延期、こういう立場をとるべきじゃないかということを申し上げているのですが、いかがでしょうか。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 交渉の前でございますから、心がまえをここで言うわけには参りません。従いましてそれは無修正一年延期ということだけでいくか、あるいはスピード・アップをどうするか、いろいろな問題がございますので、今ここで私が交渉の腹を言うわけには参りません。
  122. 成田知巳

    成田委員 人道主義という見地からいけば当然私の言ったようになるべきだと思いますが、そういうように御善処願いたいと思います。  そこでどうも韓国とのからみ合わせで、この問題がいろいろトラブルが起きているように考えられるのでありますが、総理は韓国政権は朝鮮の唯一の合法政権とお認めになっているのか、それともこれは南朝鮮だけを代表しておる政権とお認めになっておるのか。
  123. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 韓国の問題につきましては、国連において統一選挙をやってくれということで、すでに毎年選挙を行ないまして、昨年の実績は三十五カ国がその統一選挙をやった韓国を唯一の正統政府と認めるということで、これに反対するものは十一カ国というような実情になっております。一つの国に二つの政府を認めるわけにいきませんので、どちらかにということでございます。しかし現実に北に現実的な地域を支配する政権があるということも事実でございます。さように考えております。
  124. 成田知巳

    成田委員 今外務大臣がお認めのように、現実に二つの政権があるわけです。特に国連の決議がありましたときに韓国は南朝鮮の地域を支配する政府である、こういうことで地域的に限られているわけです。従って北鮮まで南韓国が支配するということはあり得ないと思います。現実に二つの政権があるということをお考えになれば、今度のマンスフィールド議員の言うように、オーストリア方式で北朝鮮、南朝鮮、この統一というものを考えるべきだと思うのですが、この意見に対してはどうお考えですか。
  125. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国連における決議で三十五カ国賛成しているというのは、何も韓国の政府が支配しているその地域だけに限って韓国政府があるということではないので、いわゆる朝鮮、コーリアというものに対して国連の勧奨したところの統一選挙を行なった政府は韓国の政府であるから、これを正統政府と認める、こういう考え方に立っておるわけであります。ただ後段にお話のございましたマンスフィールド議員の意見に対しましては、これは他国のことでございますから論評は私はいたしませんが、御承知のようにオーストリア方式というものは一九五五年にあの地域を占領しておりました米英仏ソ、この四カ国の共同管理を除く方法といたしまして、永世中立ということを条件にいたしましてオーストリアは独立したわけでございますが、オーストリアの場合はその当時単一政府であったわけであります。韓国の場合は今お話のように事実上三十八度線以北を現実に支配する政府があるわけでございますから、これは若干その事情は違うようにも私は考えるのであります。しかし最初に申し上げたように他国のことでありますから、私は論評を差し控えます。
  126. 成田知巳

    成田委員 時間がございませんから、次に経済問題に移りたいと思います。今論議の対象になっている所得倍増ですが、池田さんは最初月給二倍論と言われた、それが所得倍増論になったわけです。月給二倍論と所得倍増論というのは、内容はどうなんですか、考え方は同じだというのじゃなしに、性格は違うと思いますが、いかがですか。
  127. 池田勇人

    池田国務大臣 私は所得倍増論を言ったのであります。新聞が月給倍増論と書いたのであります。
  128. 成田知巳

    成田委員 一番最初月給二倍論ということを言われまして、いろいろ論議があった。月給二倍論ということではないわけですね。ではわかりました。そこで所得倍増の問題ですが、いろいろ論議されております。先ほどの質問にも池田さんは最初経済成長率一一%にした場合に、第一次、第二次、第三次はどうなる、あるいは九%にした場合にどうなるか、こういういろいろ計数をはじいた上の根拠ある数字だ、こういうようにおっしゃった。そこで生産所得として所得倍増の場合に、第一次産業、第二次産業、第三次産業の配分は、大体の数字でよろしゅうございますが、どうなっているかお答え願いたい。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 今数字を持っておりませんが、とにかく相当の——人員で申しますと御承知通り四千五百万の労働人口がございますが、第一次で千五百五十万、そうして第二次、第三次で三千万足らずでございます。これが所得倍増ということになりますと、第一次の場合は全体としてそうふえないとすれば、第二次、第三次は相当ふえなければならぬ、そのときにどれだけの人口がどういう方面にふえるかということは検討しておりますが、今数字を持っておりません。ただ私は総理になる前の私としての勉強でございますから、総理大臣としてここで発表するわけにはなかなか参りません。
  130. 成田知巳

    成田委員 所得倍増というのは、池田さんがそういう数字をはじかれてお出しになった責任ある数字だと私は思うのです。私が今お尋ねしたのは、雇用構造の問題じゃないのです。第一次、第二次、第三次産業の所得倍増の場合の経済の成長率、その配分はどうなっておるか、その大体の数字をお聞きしたわけです。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 今、私ここに数字を狩っておりません。私の試案でございますから、適当な機会に……。
  132. 成田知巳

    成田委員 私はそういうこまかい数字をお聞きしているのではないのです。大体の数字でよろしゅうございますから、第一次産業、第二次産業、第三次産業の配分をお示し願いたい。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 今持っておりませんから、ここでお答えできません。
  134. 成田知巳

    成田委員 少なくとも所得倍増という場合、所得倍増については総理自身もお認めのように、月給の安いものを二倍、三倍にしなければいけない、それから農業とあるいは第二次産業、第三次産業は成長率が違うのです。それを全体として二倍にすると言われた。しかも総理自身、福田さんの質問に対して数字ははじいたと言われた。従って私はこまかい数字を言えと言わないのです。十年後に第一次産業の成長率が大体平均して幾らになるか、第二次産業はどうなるのか、第三次産業はどうなるのか、これをお聞きしておるわけです。
  135. 池田勇人

    池田国務大臣 自分で数字をはじいたのでございますが、一ぺんはじいたものは一カ月も二カ月も前のことで正確に覚えておりませんし、またここで私が答えるにはそれを持たなければ答えるべきでありません。私が答えると、すぐそれが既成事実になってしまいますから、適当な機会に私は申し上げたいと思います。
  136. 成田知巳

    成田委員 それならば分配所得、やはり法人所得と個人所得が問題だと思うのです。法人所得と個人所得の成長率は大体どのようにお考えになっておりますか。
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 産業全体として見ております。
  138. 成田知巳

    成田委員 産業全体として、政府の数字というものは、すべて分配所得でも、個人所得と法人所得に分けておるのです。これが最近政府一つの慣例になっておる。こういうことは、池田さん、なかなか数字が得意だということを言っておられました。下らぬ数字をお出しになって、こういう所得倍増の基本的なものについては数字をお持ちにならない。全くインチキだということです。じゃあ、私は待っておりますから、数字を出して下さい。
  139. 池田勇人

    池田国務大臣 私が日本の政治経済を運ぶ上に、こういう考えでいくといって結論を出したのでございます。出した結論を私はあなたにお見せしなければならぬ義務はございません。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  140. 西村直己

    西村委員長 総理大臣から御発言を求められておりますから。……。どうぞ。
  141. 池田勇人

    池田国務大臣 今発言中にすぐ大声で言われたのでございますが、私の気持を申し上げます。これは九%とするか、一一%とするかという問題のときに、私がいろいろ試算をいたしました。そうして、公開の席上では今までの成長率、過去五年、過去十年の成長率を平均してみると、九%あるいはそれをこえます、こういうので、九%を自分は採用することにした、これは公開の席上で言っております。しこうして今後それじゃ九%ずっといったならば、どうなるかという問題のときに、いろいろな計算をしておりまするが、これは私が九%ということをきめる上においての一応の試算でございます。そこで総理大臣としてでなしに、成田さんと池田との関係でどんな勉強をしているのかということならば、これは私はあしたでもお答え……。     〔発言する者多し〕
  142. 西村直己

    西村委員長 御静粛に願います。
  143. 池田勇人

    池田国務大臣 しかし問題は、九%についての根拠というものは、過去の現実でやっておるのであります。それから、今の御質問の個人と法人とはどうか、こうおっしゃいますが、この計算には、個人と法人との区別はいたしておりません。第一次産業、第二次産業、第三次産業の方にはいたしておるのでございます。従って、ここで総理大臣としてどういう根拠だということになりますると、内閣の責任になりますから、そういう見通しはどうだ、今申し上げておるように、九%、一一%といろいろな計算をしておりますが、とりあえず私は三カ年間の九%というのでやっておるのであります。だから自分が私的に勉強しておった数字を、総理大臣になったときにすぐこれを総理大臣として出せと言われてもこれはなかなかむずかしいのです。だからあなたが池田成田の間で一つ勉強の程度を知らせてくれとおっしゃれば、私はあしたでもごらんに入れます。(発言する者多し)ただいま私の心境を申し上げた通りでございまして、個人としていろいろ勉強いたしました。そこで総理大臣として……。     〔発言する者多し〕
  144. 西村直己

    西村委員長 静粛に願います。
  145. 池田勇人

    池田国務大臣 総理大臣としてこれを出す義務はないということは言い過ぎかもわかりません。気持は多少おわかりいただけると思います。個人としてならばいつでもごらんに入れます。ただ総理大臣としては、そういう出すものにつきましては閣議にかけたりいろいろな点をしなければならぬと思いますが、私個人としてはそういう気持でございますから、総理大臣として責任がないという意味はそういう意味でございますから、御了承願いたいと思います。     〔「委員長、今のははっきりしなかった、訂正がなかった」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕     〔委員長退席、上林委員長代理着席〕     …………………………………     〔上林委員長代理退席、委員長着席〕
  146. 西村直己

    西村委員長 先刻の総理の発言の措置に関しましては、理事会においては話し合いがつきませんでしたので、委員長において次のように議事進行を措置いたしたいと思いますから御了承願います。すなわち総理の発言中、答弁の義務なし云々の件は総理大臣の釈明において大体明瞭になったとは思いますが、誤解を生ずるおそれもありますので、速記録を調査の上、不適当の個所あれば委員長において適当に措置いたしたいと思います。質問を続行いたします。成田知巳君。
  147. 成田知巳

    成田委員 ただいまの総理の御発言、私たちまことに納得できないのですが、質問の趣旨はそういうことを問題にするよりも、池田内閣の新政策なりあるいは施政方針演説に表われました政府政策、これを質疑応答いたしまして、国民の前に明らかにする、こういうことが趣旨でございますので、私も質問を続けさせていただきたいと存じます。そこで引き続きお尋ねいたしたいのでありますが、先ほど私が御質問申し上げたことは、総理は公開の席上、施政方針演説あるいは自民党の新政策で、経済成長率、最初の三カ年間は九%、そうして十年たてば二倍以上に国民所得がなる、こういうことを言っておられるわけです。従って最初の経済成長率三カ年間の九%、十年後の所得倍増ということになりましたならば、当然その具体的な内容があるはずなんです。しかしこまかいところまで私聞こうとは思っておりません。当然第一次産業、第二次産業、第三次産業でどれだけの経済成長があったか、これが出なければいかぬのです。決して総理の個人的な計算を私要求しておるわけではありません。政府は公式に経済成長率九%あるいは所得倍増というからには、その積算の基礎がなければ出せないはずです。これは初等数字だと思います。その積算の基礎をお尋ねしているわけでございますから、その公式の政府見解一つ御発表願いたいと思います。それから先ほど私は生産所得と分配所得についてお尋むしました。生産所得というのは池田さんのいわゆる経済成長率なんです。しかし単に経済が成長しただけでは問題の解決にならないので、その成長した経済がいかに国民に分配されるか、ここに問題があると思います。そこで法人所得と個人所得に分けて御説明願いたいということを申し上げたのです。これはもう常識だと思うのです。たとえば生産所得の場合は一次産業、二次産業、三次産業、運輸、通信、公営企業に分けるわけです。分配所得では当然勤労所得、農林漁業所得、非農林所得、利子、賃貸料所得、法人所得、その他になるわけです。単に経済が成長したというだけでは、国民生活に及ぼす影響は具体的に出ないわけですから、分配所得ということが問題なのです。ところが総理は、すべて一次産業、二次産業、三次産業だという分け方をしておるということは、国民所得の分類方法としてはおかしいと思うのです。そういう意味で二つに分けて政府の公式資料というものを御発表願いたいと思います。
  148. 池田勇人

    池田国務大臣 私は経済成長率三カ年九%ということは、公開の席上で言っておりますし、説明いたしております。九%が何からそういう結論が出たかということにつきましても、これは公開の席上で、過去五年間、過去十カ年の今までの実績が大体それに近いものだということを、公開の席上で今まで言っておる。十年後に総生産がどれだけになるかということは、一応十年以内に倍以上にするという目標でいっております。こういうことを言っておるのであります。これは公開の席上で言っております。しかし十年以内に倍以上になる目標でいっておる、こういうことだけでございまして、その間の第一次、第二次、第三次産業がどうなるかということにつきましては今まで言っておりませんし、ほんの私の試算はございますけれども、まだ発表の段階に至っておりません。しこうして一応三カ年間九%に閣議決定その他でいたしましたから、その後においてどうなるかということは企画庁の方で今検討させておるわけでございます。これができましたならば、これは内閣できめることでございますから申し上げます。それから全体の所得がどうなったときにこれを進めていけば各年次においてどうなるということは、あなたの言うようにやらなければなりません。ただお話の個人企業がどうなるか法人企業がどうなるかということにつきましては、これはなかなかむずかしい。御承知通り個人から法人になる場合が非常に多うございますから、これはなかなかだれもできないのではないか、法人から個人になることは少のうございます。こういうことで法人、個人の十年後ということはなかなかむずかしいのではないか、しかし総生産がどうあって、分配所得をどうするか、政府の投資がどうなる、財政支出がどうなる、減税がどうなるということにつきましては、今企画庁の方でやらしているわけでございます。私はそこまで十分な調査をしたわけでないのでございます。過去の実績から九%ぐらいを三年間見込んでいこう、だから私はこの三年間毎年九%ということを考えておりません。また十年九%にしても、年によっては五%のときもありましょうし、年によっては一三・四%のときもありましょう。そういうことでございますから、一応十年以内に倍にしたいという目標のもとに一応の私は試算はしておりますが——三カ年の九%というのは、これは公式にきめたことでございます。
  149. 成田知巳

    成田委員 三カ年の九%は過去の実績に基づいた、こう言われるのですが、この九%の経済成長率が非常に問題になることは、たとえば農業所得——農業の経済成長率なり、農業所得が七・二%の場合には、たとえば三%だ、しかも十年間には倍増にならない。それ以上に今の日本の農業は生産性の向上ができないのではないか、そこで九%という数字をお出しになりますと、ただでさえ第二次産業、第三次産業と農業所得との間の格差が拡大しようとしておる現在の状況におきまして、九%ということになれば、ますます農業所得との格差が拡大するのではないか、そこで九%という経済成長率をお立てになった以上、これに対して農業所得は、農業生産性の向上は、どうごらんになっておるか、これはだれだって疑問になると思います。そこで私は第一次産業、第二次産業、第三次産業の配分というものはどうなっておるかということをお聞きした。ただ過去の実績だというのでは、九%というのは根拠がないということになる。これから経済企画庁で計算させるといいますけれども、問題は第一次産業、第二次産業、第三次産業というものが九%の経済成長率の中でどういう位置づけになるか、これは国民の知りたいところです。そういう意味で、これは単に池田さんが九%とお考えになったということだけで何ら根拠がない数字だ、こう言わざるを得ない。それから法人所得と個人所得を私が問題にしたのも、先ほどの福田さんとの質疑応答を見ますると、低所得の給与は三倍、四倍に引き上げるのだ、こう言われる。そうしますと第一次産業、第二次産業、第三次産業において法人所得との関係はどうなるか、そういう例はないと言われますけれども国民所得を計算するときの一つの方式として、必ず今私が読み上げましたように、勤労所得、農林漁業所得、非農林業種所得、利子賃貸料所得、法人所得、こうしまして、この国民の総所得というものがどのように分配されるかということは——最近の経済企画庁でもお出しになっておる数字というものはいつもそれなんです。従って、それのワク内ではいわゆる経済の成長は相当大幅であったけれども、大企業の所得がふえて個人の所得というものはふえないのではないか、こういう問題もあるわけです。従ってその九%の経済成長率をお考えになった場合には、最初の三年間で個人所得はどうなる、法人所得はどうなる、十年後に所得倍増ということになれば、その最終段階において個人所得はどうなるのだ、あるいは法人所得はどうなるのだ、こういう見通しがなければ、これは所得倍増でも九%の成長でも何でもないと思うのです。そこで私は数字の問題をこまかいところまでは申しませんが、大体の数字がなければ、積算の基礎がなければ、これから経済企画庁に計算させるといったのでは、九%あるいは所得倍増論というものは、全く架空の数字だ、こう国民は判断せざるを得ないと思うのです。
  150. 池田勇人

    池田国務大臣 第一段の第一次産業、第二次、第三次産業がどうなっていくかということは、過去の実績でも、九%平均で出た場合におきましても、鉱工業生産がどうなる、そうして農林業がどうなるということはわかっております。それで御承知通り第一次産業の所得は三%、四%、あるいは本年はどうなりますか、五%をこえるのじゃないかというのもございます。しかし鉱工業生産というものは相当ふえておる。そういうような大体のところはわかっております。しかしこれは私の試算でございますから、ここで申し上げるのはまだ適当でない、こう申し上げて、そうしてあなた方にごらんに入れるのは、九%でいった場合に三年間はどうなるということは、いずれお話し申し上げます。それから今の個人所得、法人所得というのは、誤解があってはいけませんが、あの試算の場合の法人所得というのは、私の考えるのは法人の留保所得の意味なんです。私が今答えたのは、個人の所得、法人の所得、これはわかりませんというのです。しかし全体の所得があったときに、あそこに出ておる法人所得というのは留保所得その他を言っておる。そうしてその他が個人の所得——勤労所得とか、事業所得、こうなっておるのです。それはわかるはずでございます。ただ個人企業と法人企業ということになるとこれはいかがか、それを言っておるのであります。
  151. 成田知巳

    成田委員 結局、新政策並びに施政方針演説で、九%あるいは所得倍増という線をお出しになったが、その内容についてはおわかりにならない、積算の基礎はないということなんです。特に問題なのは、国民所得の配分が問題なんです。特に農業が問題なんです。それをこれから計算するのだというのでは、全然政策がないということなんです。ただ過去の実績でこうなるだろう——しかし過去の実績をそのままやったのでは、農業所得と第二次産業、第三次産業所得の格差はますます拡大する。従ってこれは単なる目安にすぎないということで、政策でも何でもないということになる。そういう点で、今度の池田さんの所得倍増計画というのは砂上の楼閣である、こういう結論をいたさざるを得ないと思います。  そこでもう少し具体的な内容に入りたいと思いますが、総理は非常に巧みな論法をお用いになりまして、設備投資をやれば生産がふえるのだ、そうすると所得がふえるのだ、所得がふえれば貯蓄がふえる、貯蓄がふえればこれが設備投資に回る、そこで循環して日本経済は無限に拡大するのだ、こういうような御説明をなさっているらしいのでありますが、ここに一つギャップがあると私は思うのです。ということは、設備投資をやりまして、生産能力が拡大する。生産能力の拡大が即所得の拡大にはならないと思うのです。当然、経済の成長というのは、生産能力と、この生産能力をフルに動かすだけの有効需要というものがなければいけないと思うのです。ところが最近の日本経済というものを見ますと、民間の方で設備投資をやる。そこで有効需要を起こすためにさらに設備投資をやりまして、これが一部有効需要になる。そしてその生産能力の一部を吸収する。さらにまた能力の過剰が出るものだから設備投資をやる。こういうことで悪循環を続けてきた。そのために最近はいわゆる生産過剰の傾向が出ておるわけです。いわば赤信号とまでいかなくとも、桃色の信号が出たわけです。そこで今度の池田内閣政策というものは、民間人がやるところの設備投資というものを、公共投資という形で、国民の税金で一つ設備投資をやりましょう、これで需要を喚起しよう、これが公共投資第一主義のほんとうのねらいだと私は思うのです。そこで、これは国民の税金である。本来を言えば、設備の方を作るのは民間がおやりなさい、それで民間が自分の責任で解決するのならいいのですけれども、生産過剰の傾向が出たものだから、民間でも少し手控えしよう、そこで国民の税金の形で、公共投資ということをおやりになる。これによって有効需要を拡大しよう、これが私は非常に問題になると思うのです。むしろ設備過剰の傾向があるとすれば、これに対して国家が二重投資、過剰投資を押える配慮をまずやるべきだと思う。この配慮をやらないで、設備投資は自由にやりなさい、その有効需要は国民の負担において公共投資で解決しようということは、これは私は政府としてとるべき態度じゃないと思うのですが、まず過剰投資ということになって、二重投資の傾向があるとすれば、このむだな投資というものは国家がコントロールしまして、そして過剰投資なり二重投資のないように、社会的な規制を加えるということが必要じゃないかと思うのですが、これに対する総理の御見解を伺います。
  152. 池田勇人

    池田国務大臣 九%は根拠がないとかなんとかおっしゃっておりますが、私はいずれごらんに入れることができると思います。そうしてまた今の成田君の議論は、日本の実情をお知りにならぬと思います。公共投資、まあ設備投資というものが過去においてどうやってきたかと申しますると、昭和二十八、九年までは設備投資というものは大体一年に七、八千億が上々でございました。七、八千億というのが、三十年から一兆三千億になってきました。三十二年にもその程度、三十三年は一兆五千億、去年は一兆八千億といっておったが二兆円、ことしは二兆三千億円ぐらいになります。これは日本の非常に伸びる力を表わしておるのです。どこに生産過剰がありましたかどこに赤信号があったか。これが日本世界に誇るべき経済政策であるのであります。それは非常に需要が少ないというときにやると、ある一時的には過剰ということがありますが、ずっといろいろなことから考えて、そう過剰というのは私は認めなくていい。これがどんどん伸びていく。こういうことをやって経済の成長ができた。こういうことをやっておりますから、卸売物価が安定しておるのであります。そこで私は、きょうも問題になりましたが、日本の鉄鋼というのが非常に伸びてきました。世界で五、六番目というのが、もう四番目くらいに来年くらいなって参ります。これがあるから日本がインフレにならず、物価が安定している。そうして経済が拡大しておる。設備投資をふやしてどんどん物を生産して、そうしてそこに所得をふやして一般大衆が健全な消費をしていくのが、われわれの経済政策であるのであります。
  153. 成田知巳

    成田委員 設備投資をふやしまして生産能力を拡大して、そうして生産を大きくして所得をふやすというのですが、私が先ほど申し上げましたように、経済の成長というのは、生産能力とそれに見合うところの有効需要が必要だということなんです。設備投資の拡大、生産手段の拡大、生産手段の需要、これだけでは真の有効需要というものは出ない。今一兆二千億とか二兆とか言いましたけれども、それだけ生産能力が拡大した場合に、その拡大された能力がフルに動くためには有効需要が必要だということなんです。それを今まで設備投資、設備投資ということである程度の有効需要を作っておりますが、これは追いつかないと思うのです。そういう意味で、有効需要の拡大というために、公共投資というものを国民の税金の形で持ってきた。民間の方でも自主調整なんかという声がありましたけれども、それはできないのです。民間資本家に自主調整なんかといったって、これはネコの前にカツオブシを置いて食うなというのと同じことなんです。やはり個別資本というのは、もうけようとしてどんどん設備投資をやる。ところが総資本としては生産過剰になる。その有効需要をいかに拡大していくかということが一つの問題だと思う。今総理は、こういうことをやったから卸売物価は上がっていないのだ、こう言って自画自賛されましたが、卸売物価ははたして上がっていないでしょうか。ということは、昭和二十八年から昭和三十三年までの工業生産の生産性向上、これは毎年約七八%から八%、その間の労働賃金の値上がり状況というのは五・五%くらい、賃金コストとしては約二%下がっているのです。自由主義経済原則から言えば、生産性が上がってコストが下がれば物価は下がらなければいかぬ。それが下がっていない。少しにしろ上がっているということは、実質的に物価高ですよ。そのこまかしがあるのです。生産性が上がってコストが下がれば、値段は下がるのがあたりまえです。これは自由主義経済原則なんです。それが下がらないでおるということは、実質的なインフレ現象だということです。ということがなぜあるかといえば、独占価格というものがあるからだ。大企業というものが独占価格でもって、当然下がらなければいかぬものを——少数企業が独占あるいは寡占の形で価格協定をやっておる。これに対して協力してきたのが今までの保守党政府やり方なんです。従って卸売物価が上がっていないという考え方は間違いだというのです。非常にこれは国民に対する欺瞞だと思うのです。当然下がるべきものが下がっていなかったのです。
  154. 池田勇人

    池田国務大臣 問題は二点あると思います。設備投資、これが税金であったとおっしゃいますが、二兆何千億というのは大部分民間資本で、税金であったのではございません。そこで、公共投資と今の設備投資は違います。誤解のないように。そこでどんどん設備投資をして、そして生産が伸びてきましたが、その分は主として大衆の消費になっておる。これは先ほど申し上げましたが、総生産がふえている。ふえた分の一割、一割二、三分が輸出であって、その他の分は国内で消費せられているわけでございます。しこうして今の生産過剰というようなところまでいっておりません。それから生産性が伸びたほど賃金が伸びていない。これはおととしから去年、ことしへかけては賃金の伸びより生産性の伸びが強うございました。しかしその前の二、三仲間というものは、賃金の上昇の方が生産性の伸びよりも上になっている。これはそのときによっての波でございますから、今の状態であなたのような結論は出ません。
  155. 西村直己

    西村委員長 成田君に申し上げますか、持ち時間がもう迫っておりますから、一つその点を含んで簡潔に願います。八時十五分までになっております。
  156. 成田知巳

    成田委員 これは池田総理らしくない御説明だと私は思うのです。やはり生産能力の拡大だけが有効需要を決定するのじゃないのです。有効需要を最終的に決定するのは消費力なんです。だからこそ、社会保障という問題も起きてくるのです。直接の有効需要を決定する最終的なものは国民の消費購買力です。生産能力の拡大ということで設備投資をやっても、懐妊期間があるのです。従ってそれが直ちに有効需要になってこない。そこで生産過剰という傾向が出てきているわけですから、最終的に消費力を決定するものは国民の購買力です。そこで経済的合理性、社会的合理性、両面からいきましても、社会保障の拡充をやるべきだ、これが私たち社会党の主張であったわけです。ところが残念ながら社会保障の問題については非常に後退された。これが一つの問題です。  それから最終の消費力を決定する国民の購買力なんですが、社会保障の問題ともう一つは減税の問題だと思うのです。減税の問題についても今度の新政策では資本蓄積ということで、むしろ今私が申しましたように生産能力の拡大の方向に持っていこうとしている。生産と消費のアンバランスというものはそこから出てくるので、むしろ私は国民の購買力を増大するという意味におきまして、大衆課税の減税を中心にすべきじゃないか。従って酒、たばこ、あるいは砂糖の消費税とか、あるいは最近問題になっておりますところの入場税、こういうような大衆課税の減税をやるのが当然だと思うのであります。現に日本の租税の負担率というのは二〇・五%、小坂外務大臣は本会議で、日本の防衛費というのは、予算に対する割合は非常に低い、世界各国と比較して非常に低いと言って自画自賛されているのですが、確かに数字は低いかもしれない。しかしながらそれを負担しているのはだれかといえば、租税負担率が非常に高いということは、国民大衆が防衛費を負担しているということになる。単にそれが八%とか九%の問題じゃないのです。世界各国租税負担率と日本租税負担率とを比較したことがございますか。非常に高い租税負担をしているのは大衆なんです。その大衆の税金によって防衛費がまかなわれている。この問題を言わないで、単に防衛費が八%であるから国民は大した負担を受けてないのだ、こういう考え方はまことに事実を隠蔽した考え方だと思うのです。それからもう一つは、国民の購買力の問題として、何と申しましても農村の所得をふやすということで、価格支持制度というものを考えなければいかぬ。これをあくまでも堅持しなければいかぬ。ところが最近農林省では、裸麦、大麦の買い入れ値段を来年ぐらいから下げるという御方針らしいのです。食管会計の赤字を云々されますが、食管会計の赤字はまた別の財政政策で解決すべきだと私は思う。やはり農村の所得を確保すると同時に、都会の消費者の立場考え、価格も考える、いわば一つの大きな社会保障なんですから、これに対して二百億、三百億の財政補給金を出すことは当然あってしかるべきだ。ところが来年から麦の耕作反別は減反しようということをすでに指示していらっしゃる。来年は麦の買い入れ値段を下げるのじゃないかと思いますが、この際総理大臣に、麦の買い入れ値段は下げない、こういうことをはっきり御答弁できるかどうか、承りたいと思います。
  157. 池田勇人

    池田国務大臣 何か成田君は考え方が、私が施政演説で述べたと同じようなことを言っておられる。また福田君に答えた通りに、生産を伸ばして、伸びた生産物は大衆に消費してもらうのだ、これは先ほど答えた通り、一人で洋服二枚を着るわけにはいかない。大衆の健全な購買力を養う。それからまた施政演説にも、生産の増強は、社会保障の拡充とか減税というものが生産の増強に通ずるものだ、みんなそれがお互いに原因となり果となっていくのだ、こういうことを私は言っておるわけでございます。それから食管の赤字の問題、これは御承知通りに、今大体食管は四百億くらいの赤字が出るべきところを、安い外国の麦を内地の麦と同じくらいに売る関係で、相当の利益が出て参りますから、本年度予算では二百億前後だったと思いまするが、しかし増産になり何かいたしますると、食管制度の買い入れ価格につきまして、ことに麦につきましては検討を要するのじゃないか。またこの麦の値段をどうするかということにつきましては、閣議でも何もきめておりませんし、農林大臣からも聞いておりませんが、日本の麦が非常に割高であるということだけは、やはりこれは国民に知ってもらわなければなりません。そこでどうするかという問題については十分検討いたしたい。私は価格支持政策というものを否定するものではありません。農産物につきましては、これは考えなければならぬ一つの重要な要素です。だから農業基本問題のときにこういう問題につきまして十分検討を加えようと思っておりますが、麦の値段を来年どうするかということは、まだ研究のところまでいっておりません。問題があるということはここで申し上げておきます。
  158. 西村直己

    西村委員長 成田君、持ち時間は厳守していただいております。時間を超過しておりますから、一つ簡単に願います。
  159. 成田知巳

    成田委員 私は総理と同じ見解じゃないのです。生産能力を拡大したからといって、即それが国民所得にならないということなんです。そこで私たちは社会保障なり、大衆課税の減税ということで直接に国民の購買力を増大しろ、こういう主張をしているわけです。まっこうから意見は対立していると思います。それから麦の値段について言を左右にされておることは、結局選挙前には言えないけれども、選挙後は大麦、裸麦の値段は下げる、こういう御方針だと承らざるを得ないわけです。それから最後に来年度の予算との関係なんですが、総理は財源というのは作るものだ、こう言われた。いかにも財政通の総理らしいので、そこで私たちは財源をいかにして総理が御捻出になるかということを刮目して見ておったわけですがどうも新政策並びに施政方針演説を拝見いたしますと、租税の自然増収だけにたよっていらっしゃる。租税の自然増収というのは、ある意味においては税金の取り過ぎなんです。それでは総理が財源をお作りになったと大きなことは言えないと思います。財源をお作りになるということになれば、財源というのは大体三つしかないと思うのです。一つは税収の増加をはかる。これが租税の自然増収ということで総理がお考えになっておることだろうと思う。もう一つは公債の発行だと思う。もう一つは不要不急の経費を削減するということ。そこで経済成長率九%の問題もございますが、もし来年経済の見通しを誤りまして、九%の成長がなかった。その場合に、公債発行ということをお考えになるのじゃないか。また一歩譲って、九%の成長があったとしても、当然増の経費が相当あるわけなんですね。そういう意味で、公債発行を来年お考えになるのじゃないかということを、国民は非常に心配しているわけです。その点について、一つ明確に御答弁願いたいということ。ほんとうに財源を捻出するという御意思があるならば、租税特別措置法ということで、毎年一千億以上特別な減免が大法人その他利子所得者に行なわれておる。これをまず法定通り取ることが、真の財源の捻出の道じゃないかと思う。さらにまた不要不急の問題、これはまた再軍備論争になるから私は申しませんが、社会党としてはやはり防衛費というものは減らすべきだ、せめて池田内閣でも防衛費の増強を押えて財源捻出をすべきだと思うのですが、それをやらないで財源を捻出するということで、単に租税の自然増収にたよったというのでは、これは国民の勤労の結果出てきた財源、いわば取り過ぎた税金なんです。これで新政策をやろうといったって、これは池田さんのお手柄にならないと思うのです。そういう点を一つ最後にお伺いしておきます。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 この自然増収という言葉でございますが、今年の予算よりも実績が多くなったというときには、自然増収という言葉をわれわれは使っております。しかし三十六年度において経済が拡大して収入が非常にふえた、前年の予算あるいは実績に比べてふえたということは、自然増収という言葉を使わない。私が財源は作るものだということは、とくにかく税収入というのは経済活動の上昇によってふえてくるわけです。だから今までのように相当伸びるにかかわらず、低目に見て収入を少なくして、その年に自然増収の出るというやり方はよくないから、適当な見方で翌年度の予算を作るべきだ、こういう考え方であるのであります。従って来年度におきましては、これは以前に七%くらいの上昇率だったら二千五百億円くらいの収入増、こう言っておりますが、九%で見込み、また最近の経済界の好況によりまして、来年度の収入見込み額は——自然増収ではございません、収入見込み額は相当ふえると私は考えておるのであります。従って今のところ今年の経済成長が、所得増が一〇%をかなりこえますから、そうしてみれば来年度の収入は相当私はあると思う。しかも九%程度の見込みなら無理ではございません。今のところ赤字公債で処置しようという気持は、来年度におきましてはございません。
  161. 成田知巳

    成田委員 赤字公債というけれども、建設公債ということをお考えになっているかどうか。一挙に赤字公債ということは、幾ら積極政策池田さんでもおやりにならないと思うのですがね。
  162. 池田勇人

    池田国務大臣 この建設公債という意味がよくわからないのですが、今まででも政府事業で電電公社、国鉄あるいは道路公団等は出しておる。これを建設公債というのならば、私はこれは出すことは当然、今までもやっております。その額につきましては、来年度の状況——今後の経済発展についての基盤を強化する意味において、私は特別会計の公債は出すつもりでございます。ことに国鉄なんかの状況を見ますると、生産が伸びても輸送が足りません。国鉄なんかについては、ある程度ふやさなければいかぬのじゃないかと考えております。また地方債の問題も今後国と地方との間の状況を勘案いたしまして、地方債をなるべくふやさないつもりでございますけれども、いろいろな点からふやすことを要すれば、従来通り地方債を出すことは当然だと思います。
  163. 成田知巳

    成田委員 特別措置は……。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 財源を生み出ず上において特別措置、こういうことでございますが、租税特別措置法は、やはり村税原則によりまして、国の発展のために必要なときには特別措置をやるということは、各国でやっておることでございます。しかし日本経済というものは相当基盤が強くなってきましたから、そういう意味におきましては、特別措置法をシビヤーといいますか、減免を少なくしていく方向には税制調査会でもいっております。われわれもそういう考え方で進みたいと思います。
  165. 成田知巳

    成田委員 以上で終わりますが、質疑応答を通しまして、経済成長率九%というのは全く架空の、根拠ない数字であるということが明らかにされた。それから中立政策を幻想だと言われましたが、中立政策こそ現実的なんで、今の自民党のとっておるいわゆるアメリカ自由主義陣営に一辺倒した政策こそ、安保の質疑応答を通しましても、非常に戦争の危険にさらされるものだ。こういうことが明らかになったと私は確信しまして、質疑をこれで終わります。(拍手)     …………………………………
  166. 西村直己

    西村委員長 今澄勇君。
  167. 今澄勇

    今澄委員 私は民主社会党を代表して、議会制民主主義をいかにして守るかという点が第一点、それからもう一つ外交と防衛の問題について、第三点に経済の問題についてお伺いをいたしたいと思うのであります。第一に、私は総理大臣にお伺いいたしたい点は、何といっても今のこの民主主義と議会主義を守るためには、院内における多数派の単独採決、力による強行的な状態一つやめて、話し合いによる院内の運営をやるということが、やはり今日一番大事な問題ではないか。そこで今度解散を前にして思い出されるのは、この間の安保の騒然とした社会情勢に対する岸内閣態度であります。私は六月十五日、岸内閣が閣議において、治安維持のために自衛隊の出動を検討されたことがあることを知っておりますが、そのときにアイクの訪日に関連して、時の閣僚でありました池田さんは、積極的に自衛隊の出動を強く要請せられております。この治安の維持と自衛隊の出動ということは重大な問題であって、今総理大臣として、池田さんが日本の治安と自衛隊との関係についてどういう考え方をしていらっしゃるかということを、まず冒頭一つお伺いをしたいと思うのであります。
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 自衛隊の出動の問題が五月ごろ閣議の問題になったということは、私記憶がございません。従って自分でどうこう言ったことはもちろんございません。
  169. 今澄勇

    今澄委員 自衛隊と治安に関するあなたの考え方一つ……。
  170. 池田勇人

    池田国務大臣 自衛隊の出動につきましては、自衛隊法できまっておるのであります。国内が内乱騒擾で、警察力をもってしてはこれをどうもできないというときに自衛隊の出動があり得ると自衛隊法に規定してございます。
  171. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は、防衛庁長官にお伺いをいたしますが、あなたがこの間自民党の総務会で説明せられた三十六年度自衛隊業務計画の第五項に載っておりますが、警備力の強化をはかるため、治安行動の教範を自衛隊において今作成せられつつあり、その草案についても私は内々調べておりますが、今あなたの方で作ろうとしておる治安行動教範並びに治案部隊というものの目的について、一つ長官からお話を承りたいと思います。
  172. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ほど総理から御答弁がありましたように、自衛隊法の第三条によりまして、国の安全を保つために、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを任務とする、こういう任務がありまするから、平素から訓練をいたしておることは当然でございます。訓練をしておるということと出動をするということとは、これもおのずから別な問題でございます。そこで三十六年度の業務計画に関連をいたしましては、その任務の特殊性と申しますか、たとえばにわかの事態が起こりましたときに、電源を守るとか、水源地を守るとか、あるいは放送局を確保するとかいったような特殊な任務があるわけでございまして、そこでそういう特殊な任務を遂行していく上に支障のないような訓練を平素から施していく、こういう訓練を考えておるわけでございます。今教範のようなものを、こういうお話でございましたが、教範というと何となく旧軍隊を思い出すような熟語でございますが、訓練指導要綱とでも申しますか、そういったものについて準備をしておることは事実でございます。
  173. 今澄勇

    今澄委員 私は、こういう治安の重大な、安保紛争などの結果、前防衛庁長官赤城さんのときにどうしてもこれらの治安部隊を作るということが必要であるということで、杉田幕僚長を中心に、今のあなたの言われる行動というのか、治安行動の教範というものが屡次にわたって草案ができ上がって、全国にこの治安部隊を配置するという計画であったのです。ところが長官になられて、全国にこれを配置するいうことは問題であるということで、あなたの発案で、これを大体今のところ練馬に、市ケ谷にあるのと同じのを置こうという状態に相なったわけですね。だから私はこの際、これは重要な問題ですから、どういうわけで、そういうものを全国に新しく作って配置をする計画ができたのか。しかもそれを今度練馬部隊だけに置こうということに縮小された原因は何か。その教職の内容については、私どもの入手しところによると、なかなか相当な問題でありましてその中の第一編、最後の項などを見ると、執銃行進の際は通用着剣し、状況に応じては射撃または刺突の準備を行ない、なるべくその威容によって暴徒を退散させ、射撃及び刺突は指揮官の命令により最後の手段して行なうなんというのが、その草案には載っているのです。治安を乱す大きな威力的デモも問題だけれども、そういうものに対する自衛隊の態度というのが、こういう行動教範というようなものを作ってやるということになると、これもまた大問題なんです。私は、日本民主主義と議会主義を守るためには、国民にそういう今自衛隊が考えておるほんとうのことをおっしゃっていただくことが、今の議会政治を検討する上には重大なことだと思うから聞くのですから、一つ率直な話をお聞かせ願いたいと思うのです。
  174. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 今澄議員、非常に消息に通じておられるような御質問でございまするが、全国にそういうものを置くということはございません。私もさような問題については承知をいたしておりません。ただ練馬というお話でございましたが、練馬ではなくて、市ケ谷に、そういった問題が起こったときにどう対処するかという訓練を施していくモデル部隊———個大隊でございます。これは人員にすれば五百名程度のものでございますが、そういったものを一つ置いて、そうしてさっき申しましたように、教範などという決定的なものではなくて、指導訓練要綱というようなものについて検討をいたしておる。また今お読み上げになりましたような草案があることは、私も承知をいたしておりません。だからそういうふうに成案を得たものでないということを、この機会にはっきり申し上げておきたいと思います。
  175. 今澄勇

    今澄委員 私はこれが防衛庁の正式決定になったものでないことを聞いて安心をいたしました。ただ私はこの際、赤城長官がこの前の安保騒動のときは再三にわたる岸総理の要望を退けて、自衛隊の出動については車両その他の出勤にとめておる実情をよく知っておりますから、日本人同士が今言うところの刺突であるとかあるいは特車、戦車等による流血の惨を見なかったことは、当時の赤城防衛庁長官態度を私は非常に多としておるものであります。私はそれらの消息を知っておるからして、今日この質問をするのでして、われわれは今池田内閣が、そういう防衛庁の中に市ケ谷に大隊、今度練馬に一大隊作ろうという事務当局の計画です。長官一つ一ぺん帰られてよう念を押して検討してもらいたい。私はそういう計画で、そういう治安に対して実力をもってこれを鎮圧していくような本格的体制を整えられるということは、いかがなものであろうか。そういう事態を前にして、私は池田さんにお願いしたいことは、再び市ケ谷の自衛隊が出動したり、あるいはそういう刺突並びに飛行機から威嚇弾を発射して、最後は銃剣で突き刺すような教範を作るがごとき状態日本が陥るとすれば、これは出動するわけではない、訓練をしておるだけとは言うけれども、大へんなことになると思うのです。そういう日本の現実の事態を率直に今総理にお聞きをいただいて、この際政治家というものは、やはりこの範をなす国会の運営において、そういう大きな問題が背後にあるのであるから、われわれは議会の中で、少なくとも政治家が実力をもって法案を阻止するというような実力闘争もいけないが、時の多数党を代表する池田さんは、少なくとも、単独審議はやらないのだ、少なくとも多数の力で方的な審議はやらないのだということだけは、この際委員会を通じ明言なさるか、それとも西尾委員長が質問されたように、議会の決議案にして、こういう今日の事態を政治家の率先した国会運営を通じて一つ改めていく、こういうことの方が自衛隊におけるそういう具一体的な——きょうは時間がないから申し上げません、まだ具体的な多くの問題を私はひっさげておりますが。ちょうど二・二六が起こるときの前の日本の軍部の内情について私が調べておるところと、今日の自衛隊の内部における一部の青年将士の考え方には通ずるものがあって、私はなかなか大きな地すべり的断層が起こりはしないかということをおそれておるのです。その意味においても私は、今日総理としてあなたが、そういう日本の風潮を押え、民主主義、議会政治のためには一つ勇を鼓して、われわれが主張をいたしておりまする国会の正常化、少なくともあなた方の方が多数で審議を打ち切るとか、多数で単独採決するというようなことはやらないという態度を、この際勇気をもって一つ御答弁願い、ほんとうの日本の議会政治のために邁進していただけるという決意を見せていただきたいと思うのですが、一つ総理の御答弁を願いたいと思います。
  176. 池田勇人

    池田国務大臣 せんだって、西尾議員の御質問に対して答えた通りでございます。私は、組閣以来申しておりますように、身をおさめ、党をおさめて非民主的なことはしない、あくまで忍耐強く話し合いでいく、これで御了承願いたいと思います。
  177. 今澄勇

    今澄委員 その答弁というのは、今後多数をもって、単独採決等を、重要法案について、そういうことはやらないという意味でございますか。
  178. 池田勇人

    池田国務大臣 話し合いでやっていくというのでございますから、社会党さんも、民主社会党さんも、そのおつもりご話し合いをしていっていただければ、単独審議というのは起こり得ないことだと私は思います。
  179. 今澄勇

    今澄委員 私は、民社党が考えておる議会政治についてのわれわれの立場というものは、そういった答弁の口先だけでなしに、今の日本の政治情勢から見て、私どもは、少なくとも、今日の議会運営においては、わが党が主張しておるこの考え方でいかなければ重大な政治的断層が起こるんだ。浅沼事件といい、岸さんの事件といい、いろいろあります。岸さんを刺した荒牧さという人は傷害罪で釈放になっているそうですけれども、右翼の専門家というものは心臓は刺さぬのですよ。右翼の専門家というものは、動脈のある上膊やももを刺せば、これは傷害罪なんです。ここを動脈が通っているから、これを切れば五分以内で死んでしまうのですよ。そのときには傷害致死ということになる。心臓をねらえばやりそこなっても殺人未遂ということになる。だから、そういう右翼の専門家というものは必ずそういうところをねらうわけだ。それがただ単なる傷害罪で、しかももう保釈で本人は出てのうのうとしているというような状態。片方では自衛隊の中に今防衛庁長官が言ったような実力部隊を治安のために配置して、重大な方向に向かっておるのですから、私は総理大臣が少なくともわが党が主張している国会の正常化、そういった運営、そういうものについてはその場のがれの御答弁などではなしに、ほんとうに日本民主政治のために、私は何党が内閣をとり、何人が総理になっても、この点についてはまず多数党が反省し、十分これらの問題について善処する必要があると私は思います。だけれども重ねて答弁は求めません。ぜひこの点を要用して私の第一議会政治の質問を一つ終わっておきたいと思うのです。第二番目に、外交の問題ですが、さようマンスフィールド議員の報告を見ると、「われわれは現安保条約に対する反対が継続し、拡大することを想定し、もし条約の期限満了前に極東の情勢が許すならば、相互に受け入れ得る条約改定を求めるイニシアチブをとり、さらに提案される改定日本政府との条約に基づいていつでも受け入れる用意があることを明らかにする。」という報道がありました。これに対して、わが民社党は、かねがね今日の安保条約についての不備な点が多数ありますから、わが党はこの安保条約の段階的な解消を主張し、現段階における具体的な改定案を用意をいたしておるのであります。その私ども改定案は、第一に自衛力の増強を約束した第三案を削除するということ、第二に日米の相互防衛方式を約束した第五条を廃止するということ、米軍の常時駐留を有事駐留に改め、駐留の目的を日本防衛に限り、極東への出撃のための駐留を禁止するということ、第四に事前協議に対する日本の拒否権を確立して、核兵器の持ち込み禁止を明文化する、条約の期限については一年の予告で改廃ができるようにこれを改める、以上の五点を、私どもはこのマンスフィールド氏の報告になりました安保条約に対する日本における一政党の態度としてこの委員会を通じて一つ明らかにいたします。アメリカの選挙の結果民主党が勝利を占めるということになれば、マンスフィールド議員は何といっても外交国務省関係の要人になるでありまょう。そういう際に、いよいよ選挙が終わって民主党でも内閣をとったというとき、向こう側から安保改定のイニシアをとられる前に、日本側からも私どもはこうい一つ一つの問題について、具体的な日本政府の提案をなし、安保の現実に国民に対する危険の部面、不平等な部面について改めていくということが、今日のアメリカの良識を代表するこの議員の提案にもこたえることになると思うのですが、私どもの提案をも申し上げ、あわせて一つ総理見解も聞いておきたいと思います。
  180. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私からお答えを申し上げます。  私は、現在の日米安保条約がなぜ必要となったかということから御了解を得たいと思います。もちろん、今澄議員もお考えになっていらっしゃることと想像いたしますけれども国連による安全保障というものが完全にできればそれに越したことはないわけでありますが、御承知のように、現在国連が行動をとります場合、安保理事会の決定というものが前提になるわけであります。ところが、安保理事会におきまして、大国側の拒否権というものが認められておりますので、現在の状況下においてはどうしても、そうした安保条約の想定するような場合においては、当然に拒否権というものが発動されることが予想されるわけでございます。そこで、一九五〇年の平和結集に関する決議案に基づきまして、国連において特別緊急総会を招集するということができるようになっておりまして、今次のコンゴの問題等についてもそうしたことがなされておるわけでありますけれども、やはりその決議は決議でありまして強制力を伴わない。またそうした事態が現実に発動してくるまでに、ある程度の時間がかかるというようなことがありますので、それを完補する意味においてこの二国間の協定というものがなされておるわけであります。従いまして、現実にそうした事情というものを必要と認めるか認めないかということが、この安保条約の要、不要の問題の議論の分かれるところであると私は考えるのでありますが、私どもは現実の問題としてそれが必要であると考えております。ただいま御指摘のマンスフィールド議員の報告は、先ほども成田議員にお答えを申し上げた通り、要するに、先般の列国議会同盟会議に出席されました同氏が、帰って、外交委員長に対して提出した一議員としての報告であろうかと思うのであります。けれども、その中に、ただいま今澄議員もお読み上げになりましたように、もし極東の情勢が許すならばという前提論がございます。私は、今日そういう情勢が許すならば、しかも日本国民の大多数がこれを望むならば、それをあえてアメリカは拒否することはないのじゃないか。ということは、そうした前提において、私どもは、今申し上げましたようなことで、必要であると考えておりますから、今、今澄議員が仰せになりましたようなことは、われわれとしても賛同いたしかねるところであります。
  181. 今澄勇

    今澄委員 私は、今外務大臣からお話がありましたが、このマンスフィールド議員というのは、何せアメリカの良識派であり、今度の選挙でもし民主党が勝利することにでもなれば、外交の責任者にすわると擬せられているだけに、話は現実問題でもあるし、重大であると思うのです。もしアメリカの方からそういう事態になって、安保改定について、向こうがイニシアをとるということにならぬとも限りません。そういう場合においても、総理はこの改定には応じないつもりなのか、それともそういう段階的な解消についての具体的な交渉については、総理は時がくればやられる場合もあるのかどうか。この点について総理見解一つ聞いておきたいと思います。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 マンスフィールド議員の意見書は、けささっと読んだだけで、外務大臣の方が詳しいので、外務大臣から答弁をさせましたが、外務大臣の言うように、日本国民の大多数がという前提でございまして、これはマンスフィールドの単なる私見の報告でございます。私は日本総理といたしまして、そういう意見の発表につきまして、しかも前提のあることにつきまして、お答えすることはよしたいと思います。
  183. 今澄勇

    今澄委員 私は、総理に伺いたいのは、しきりと国連中心主義、国連中心主義と言われておりますけれども国連中心主義を片方で唱え、片方で日米安保体制が、軍事条項も含めてだんだん強化されていくということは、これは国連の基本的な方針に沿うものではないと思います。理想的に言えば、国連の集団安全保障が一番いいでしょう。けれども、今外務大臣が言うように、そういう集団安全保障についてのネックがあるとすれば、だんだん日米両国の軍事同盟の色彩を薄めて、そうしてこれを将来国連の集団安全保障に持ち込むような体制にいくことが、日本国連中心主義というものの具体的な姿ではないか。そのためには中国の大国である中共国連に入っておらぬというようなことでは、現実の世界平和の上にも、極東の平和の上にも大きな妨害だから、中共国連加盟を促進し、あわせて日本アメリカとの安保体制の軍事条項を減らしていって、そうして将来国連の集団安全保障に国連加盟の日本が持ち込むという行き方こそが、日本外交方針を持っていく上に正しいのじゃないか。われわれは容共的な立場だとかあるいは観念的な中立論立場から申しておるのではなしに、国連主義というものと日本の安全のためには、そういう方向へ行く以外には日本の行く道というものはないのじゃないか。そのためには今日マンスフィールドが提唱しておるこの考え方にも理解ができるのではないか、こういう考えに立っておりますが、国連中心主義と安保の軍事条項が非常に強化しつつある今日の事態の矛盾について、一つ総理から御答弁を願いたいと思います。
  184. 池田勇人

    池田国務大臣 安保条約締結の際におきましても、理想は国連の集団安全保障でいくことが理想なんで、それが実現できるまでわれわれは無防備でおるわけにいきませんので、日米の安全保障条約を結んだのでございます。これは両者矛盾するわけではございません。しこうして中共の問題につきましては、単にそれだけで決定できることではないのでございまして、私は国連を中心とし、国連考え方等を十分頭に入れましてこの中共の問題につきましては慎重に、自主的にきめていきたいと思っております。
  185. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一言補足させていただきまするが、今度の安保改定による新条約は、国連憲章五十一条との関係が、従来の安保条約では明瞭でございませんでしたので、その関係を明瞭にしたというところにむしろ大きな特徴があると私は考えております。
  186. 今澄勇

    今澄委員 その国連憲章との関係については、この前の委員会で、いかにこれが形式的なものであるかということで議論は終わっておるのですから、きょう私はここでは蒸し返しません。ただ外務大臣に聞きたいことは、この事前協議の交換公文は、アイゼンハワー個人と岸総理個人との間に取りかわした公文ですが、アイゼンハワー大統領もかわり、岸さんも交代したが、この事前協議に関する交換公文の効力というものについては、これは両国を拘束するものですか、そういう個人の交代によって効力がなくなるものであるか、一つ外務大臣の御意見を聞きたいと思います。
  187. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは当然公人としての立場の交換公文でございますから、人がかわりましても継続されるものでございます。
  188. 今澄勇

    今澄委員 当事者が交代したけれども、この交換公文については拘束力があるということになれば、この事前協議の問題について先般も本会議でいろいろ議論がありましたが、少なくともこういう重大な問題の、さっき改定の中でも申し上げましたけれども、相談をするにあたっては、これは超党派外交の常道としても、これらの事前協議の問題については、野党の領袖と総理大臣は事前に打ち合わせるということが、自民党からも言われておりまする超党派外交の根底をなすと思うが、この交換公文による事前協議の規定について総理大臣はどうされるおつもりか、一つ詳細ここでお考えを述べていただきたいと思います。
  189. 池田勇人

    池田国務大臣 事前協議を受けた場合においての決断は、政府がこれをきめるのでございます。政府国民気持を十分頭に入れまして決定いたしたいと思います。
  190. 今澄勇

    今澄委員 政府が決定するのだが、すべて外交というものは政府の責任においてやるのだが、その前に、そういう交換公文にもきめられたような重大な国の運命なんだから、ただ選挙目当てだけで超党派外交なんというのではなしに、そういう問題はそれこそ事前に野党側と協議をして、そうして野党の領袖の意見も聞いて判断を下すということが、私は一国の総理としては当然だと思うが、それについてはどうかというのです。
  191. 池田勇人

    池田国務大臣 政府の責任において決定いたしますが、先ほど申し上げましたように、そういう場合における国民気持は十分頭に入れてやるつもりでございます。今ここで野党のだれだれと相談するということは申し上げかねます。ただ私はそういう場合におきまして、政府の決定につきましては、国民気持も頭に入れて決定する、これで御了承願いたいと思います。
  192. 今澄勇

    今澄委員 私は安保並びに行政協定の今後の運用のいかんが、この際きわめて重大だと思うのです。特に、第五条の極東への派兵の問題、共同防衛の問題並びに第六条の軍事基地使用許可の問題及びそれを受け継ぐ行政協定の米軍の基地管理権、米軍の航空機、船舶の自由出入問題、核兵器持ち込みの問題など、すべてこれは国民生活に直結する重大な問題ばかりであります。特に、行政協定については、この前の国会においても、ほとんど審議するところがなくて、それが国民生活にじかに結びついているものだけに、その取り扱いは慎重でなければなりません。ところが行政協定はきわめて大ざっぱな取りきめがなされておるだけで、国民が疑問といたしておりまする細部の重要問題については、一体それがどのように運営されるのかについてすら明らかにされておらない現状であります。この際、池田内閣としては、国民の疑惑を解くためにも、行政協定の個々の規定に対する運用の基本方針を明確化して、これを国民の前に明らかにされる必要があると私は思うのです。これが、総選挙を前にして、安保並びに行政協定についての国民の判断を求める大きなゆえんだと思います。これは外務大臣から一つ御答弁願いたいと思います。
  193. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。条約第六条の後段に関しまして地位協定が結ばれておるのでありまするが、地位協定は旧行政協定に対しまして、これが運用の経験または諸外国の類似の協定等を考慮いたしまして、所要の改善を行なった次第でございます。その内容は、米軍の駐留に伴いまする技術的性格のいろいろの事項を律するものでございまするが、国民生活と密接な関係がございまするから、これが実践に際しましては、安保条約の目的達成と国民の利益保護、この二つの面の調整をはかりまして、国民と米軍との間の関係の円滑化をはかる考えでございます。
  194. 今澄勇

    今澄委員 なおもう一つ私は新協定の発効によって、安保条約第六条によれば、基地の使用は提供ではなくて使用許可に変わっております。新条約が発効した以上、今まで米軍が使用しておった基地は一たん日本に返してもらい、使用を許可するものに新たな日米協議によって再契約をされるという条約上の建前になっておるが、一つ一つの基地についての政府のとっておりまする態度は、一体どういう状態になっておるか、この基地の問題も一つあわせて御答弁願いたいと思います。
  195. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 行政協定のもとにおきまして、その手続に従って米軍に提供しておりました施設及び区域で、行政協定終了時に米軍が使用いたしておりました区域は、地位協定第二条、一項(b)の規定によりまして、当然に地位協定に基づく施設区域とみなされまするから、個々の施設区域につきまして協定を一つ一つ結び直す必要はない、かようなことで処理いたしておるわけであります。
  196. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は小坂さんにも聞きたいのですが、最近の日本外交は、国連中心主義で方針を堅持しておるというお話がさっきから総理外務大臣からありますけれども、最近の状態を見ておるというと、たとえばオランダの空母の寄港の問題についても、一たびはオランダに対してこれを許可したが、インドネシアから抗議が現われるや、直ちに手のひらを返すようにして——このオランダ空母の問題が、大きな日本の動揺する外交の姿であるということを示しております。さらに私は聞きたいのですが、今ソ連は三万トンのタンカーを日本に向けて発注を切りかえておりまして、すでにギリシャ船主が引き取りを組んでおりました新造タンカー、これを播磨造船から三万九千二百重量トンを買い付け、さらに飯野重工からも同じような新造タンカーを買い付けております。これはいうならば、今アメリカにおいてはキューバの問題が重大で、石油をソ連から送る、キューバの砂糖を買い込むためにはどうしても大きなタンカーが要るのだが、そういうソ連側の要望にこたえて、一気に大きな重量トンのタンカーを日本ソ連側に売り渡し、その発注を受ける。かたわら、ロッキードについては、先般の岸内閣のときからの懸案でありますが、このロッキードの手数料は、ロッキード航空あっせん会社のハル社長のところから二七%の手数料を言うてこられて、しかも防衛庁はあまりに手数料が高いので、今日今なおロッキードについてはこれを決定することができない。価格も含めてきめたのならばいいのですけれども、価格をきめる先に買い入れをきめた防衛庁というものは、一体この二七%の手数料を支払うということになれば、ロッキード会社の利益、さらにこの手数料、日本の飛行機会社の利益等を含んでみても、五割は利潤に吸われて、まるきりこれはアメリカの言いなりになるということになるのです。だからキューバの石油の問題を見れば、アメリカの敵対行為に回り、ロッキードの建造についてはアメリカ側の言う通りになる。あるいはオランダの空母については、あるときはオランダ側の言われる通りにきめる、インドネシアから抗議を受ければ、とたんにインドネシアの言うことに屈するという、この日本外交の基本的な姿というものは、私をして言わしてみるというと、根本的な日本の進むべき方針というものが、普通の一般外交経済外交を通じて確立しておらぬのではないか、私はこれらの点について、一つこれまた外務大臣の答弁を求めておきたいと思います。
  197. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。オランダの空母カレル・ドールマンの寄港の問題につきましては、この際明らかに申し上げておきたいと思いますが、これは日本とオランダとの修好三百五十年を祝って日本に来るのだ、こういう話が五月の十九日とかにあったのであります。これは友好国の艦隊がお祝いに寄るというものを断わる国際慣例はないということで、大体口上書を受け付けまして、これが六月でありましたが、さようなことで進んでおりました。しかるところ、ただいまお話のように、この空母が、紛争の地となっております、インドネシア側に言わせれば西イリアン、オランダ側に言わせれば西ニューギニア、こちらへ寄って日本に来るということのために、インドネシア側はどうしてもこれについては困るということであります。そこで私はオランダ側に対しまして、いやしくも日本との修好のお祝いに来てくれる船のゆえをもって、日本に無用な摩擦が起きるということになりますると、これはどうも祝賀の目的を達し得ないのだ、そういう事情をよく了解してもらいたいということで、私からこの問題は延期してもらうように要請いたしました。これはたしか九月になってからでございましたのですが、さようなことで一時、今御指摘のようにはなはだ無方針、無定見というようなそしりも一部にございましたのでありますが、その結果といたしまして、別に大したことはなく相済みまして、実はインドネシア側の方においては、これを機会に日本との間に通商航海条約を結んで、さらに経済提携を深めたいということになりますし、オランダ側においても、日本側の言うことはよくわかったということで、例のベネルックス協定、オランダとベルギーとルクセンブルグの間の三国との協定を結ぶことができまして、これもまた日本の通商増進に非常に役立つことになりました。あのいわゆる共同市場の六カ国との間に、初めて最恵国待遇の通商条約が結べたようなわけでございます。これも経済外交といたしますと、やはり国民のためにできるだけ通商関係をふやして、それによって、貿易によって立つわが国経済を進めていくという上から申しまして、まあいろいろの原則的ななには、事情によっては批評はあるかもしれませんが、実質的には非常にうまくと私から、言うとおかしいのですが、いったように思っている次第です。他の問題につきましては、それぞれ所管大臣からお答え申し上げます。
  198. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 ロッキードのお話がございましたが、これは御承知通り日本で製造してない搭載の部品、兵器、そういったものを御承知のライ社というところが販売代理店として取り扱いをするわけでございまして、梱包料、また送料、そういったもの全体を含めまして、先ほど仰せの手数料を払うわけでございまして、これは米軍がロッキード社から買い入れをいたします場合にも、商習慣としてそれだけの手数料を払っておるわけでございまして、不当なものを払っておるというわけではございませんので、念のため申し上げておきます。
  199. 今澄勇

    今澄委員 まあ、時間がないですから詳しくは言いませんが、二割七分なというような手数料を、とにかく使い残しの、一線を退いたロッキードのために国民の血税から払うというその考え方は、私は大へんなことだと思うのです。それからもう一つ、防衛庁長官に聞くが、防衛庁長官がおわかりでなければ、運輸大臣、通産省にも前もって通告をいたしておきましたが、石川島造船でインドネシアから潜水艦母艦の発注を受けておる。インドネシアからの軍艦の発注は初めてであります。私はこの問題について、一つもう少し詳細な御答弁をお願いしたいと思います。
  200. 南條徳男

    ○南国務大臣 今澄議員にお答え申し上げます。石川島造船に内定しておりますインドネシアのテンダーシップといいますか、御質問は潜水母艦ということでありますが、これはインドネシア賠償の補給船についての質問と考えて、お答え申し上げます。インドネシア賠償第二年度の実施計画に船舶九隻の要請がありましたので、その中に補給船がありましたが、賠償実施連絡協議会、これは外務大臣を長として関係各省の次官をもって構成しておりますが、その同意を得まして、本年二月初め日本とインドネシア同国政府間に右実施計画の合意があったのであります。契約の大体の内容は、賠償は直接方式でやることになっておりまして、インドネシア政府は右実施計画に基づいて直接業者を選定し、石川島、日立、川崎重工、その他二、三社と聞いておりますが、本年二月十五日に東京で指名入札を行ないまして、結局石川島重に落札、両者間で契約作成の上に外務省に認証を求めて参りましたので、関係省におきましても審査の上、本年九月二十四日認証を行なった次第であります。本船は、大体起工本年の十一月で、進水が来年の五月、引き渡しが側八月の工程の予定であります。補給船の実施計画計上についての当否は、大体外務省で判断しております。本船の外容は、長さ大体百三メートルでありまして、排水量が六千七百五十トン、速力十六ノットであります。まだそういうものでありまして、使用の目的は、兵員の輸送、それから燃科、清水、電池等を潜水艦等に補給する目的のものでもあり、また病院の施設も持っております。
  201. 今澄勇

    今澄委員 私は、これだけ言っておきましょう。防衛庁のさる高官が石川町を訪れて、何と防衛庁の知らない間に潜水艦母艦の発注を受けておるとは驚いたという、その発言を直接私は聞いておるのです。防衛庁長官は、とにかく日本においてもヘリコプター空母を作り、インドネシアの潜水艦母艦も、これは石川島で調べればすぐわかるのです。今、南運輸大臣が何と言われようとも、私は確たる事実を握っておる。これは調べればすぐわかる。国会であなた方はそういう答弁をして、現実にはインドネシアから海軍自衛隊幹部の訓練をも頼まれ、しかも潜水艦母艦の発注も受けておるというこのことは、防衛庁長官もそこにおられるから私は追及したいのですけれども、時間がないからいいです。いいですが、こういうことは、少なくとも総選挙を前にして、国民には一つもわからない。そうしてその陰では、あれだけインドネシア賠償で私は追及しましたが、問題のあるところへ、今度はオランダの軍艦を入港させるという。はたから文句を言われれば、すぐこれに言うなりになる。あわせて今度は、潜水艦母艦の注文を受けるということは、私は、経済的な問題ではあるが、政府外交方針については、まるきりこれは定見がないと思うのです。防衛庁長官も、この潜水艦母艦についてはいずれ明らかになりましょう。私は選挙が終わってから、一つ池田内閣とこの問題については、船はまだあるのですから、対決をしたいと思っております。なお、アラビア石油ですが、アラビア石油の暫定的な取り扱いについては、この聞きまったようです。だが、このアラビア石油というのは、日本の石油の半分まで将来引き受けるというところから、イギリスのシェルも非常な抗議を申し込んで、政府はなかなかお困りのようなんです。アメリカの政界は申すまでもなく、スタンダードあるいはヴァキューム等の石油会社との因縁が洗い。そこで、日本をめぐる石油問題というものは、これは米英、西欧民主主義陣営の大国といいますか、米英のこれは一番大きな関心をなす問題なんです。そういう問題とも見合って、日本の石油問題というものを、根心的な建前から対策をきめられたのかどうか。これもまた行き当たりばったりで、そうして一応割当はしたが、これは当面の問題、来年からの基本的なアラビア石油に対する対策は、一体これを全量日本に入れるつもりなのか。外国石油商社との関係等について、その方は詳しいようですが、総理大臣から一つ見解を聞いておきたいと思うのです。
  202. 池田勇人

    池田国務大臣 アラビア石油の開発につきましては、内閣でこれは適当なものだと了解はしておるようであります。大体どの程度に採掘できるかというと、三年ぐらいで一千万トンとか聞き及んでおります。しこうして日本の石油の需要量は、私は、三、四年後には三千万トンをこえるというふうな状況となろうと思います。そこで、最近の事情は存じませんが、私は英米資本が、お話のように非常にエキサイトしておるとは思いませんが、最近の事情は、所管大臣からお答えすることにいたします。
  203. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 今、日本の目内において、石油の使用里は約千五百万トンでございますが、だんだんこれがふえていきまして、今申しましたように、何年か近いときに、三千万トンぐらいになる。そういうときに、アラビア石油という問題、それからソビエトからの輸入の問題等々、いろいろな問題がここに起こってくると思うのであります。アラビア石油の問題は、今度はまだわずかでございまして、ためしにこうだああだというような話をいたしておる程度でございまして、最後的なものにはまだ至っていない状態でございます。これからいろいろな問題が複雑になってくると思いますので、十分間違いないような判断をして、そうしてこれに処していくようにいたしたいと思っております。
  204. 今澄勇

    今澄委員 とにかくその石油の問題についても、そういった諸情勢から勘案して、アラビヤ石油を要求通りどんと入れるというわけにもいかない。アラビア石油を入れただけほかの石油会社も外貨がほしいと、こう言っているのですから、為替の自由化という建前からいけば、ほかの会社にもまた割り当てなくちゃならぬでしょう。私は、この石油の問題一つ取り上げても、意地悪く追及はしませんが、少なくともこの池田内閣というものが、経済外交的な問題についての定見がないということを、一つ知っておいてもらいたいと思うのです。私は、こういう問題は、将来の石油の生産についてどうするのだという基本的な対策がない。今お話を聞いてもありません。  もう一つ、防衛庁長官に聞きたいのは、今度初めて日本は、日本の海上自衛隊に、航空母艦というのができる。私が調べたところでは、ヘリコプター空母を作ることになっておるようです。このヘリコプター空母というものの任務は一体どういうもので、何台ヘリコプターをその上に載せるのか、防衛庁長官から一つお答えを願っておきたいと思うのです。
  205. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはまだ来年度の業務計画として発表をいたしただけでございまして、きまったものではございません。御承知通り日本は四面海に囲まれております。このごろ海上兵力というものは、海上からむしろ水中に姿を没した傾向がだんだん強くなっておることは、御存じの通りでございます。従いまして、もし急迫不正の侵略でもあるというときには、当然潜水艦に対するわが国の防衛を考慮に入れなければならぬことは、これも説明の要がないと思います。そこで、ヘリコプターというものは、停止することができます。停止したこのヘリコプターから水中にレーダーを入れて、この潜水艦を探知する、こういうこともできるわけでありまして、今計画いたしておりますものは、搭載は十八機でございます。予備として九機を持つわけでございまするが、同時にまた、このヘリコプターなるものは、自衛隊の災害出動時におけるいわゆる救済活動の花形とでも申しますか、非常に利用度は多いわけでございまして、現在すでにフランスにおいては建造済みでございます。あるいはドイツとか、またイタリア等においても、ヘリコプター空母というものが考えられておるわけでございます。
  206. 今澄勇

    今澄委員 このヘリコプター空母についても、予算が百五十億から六十億だけれども、航空母艦というものは駆逐艦の護衛がなくちゃ動けないのですから、駆逐艦をまた数隻、これがまた三百四、五十億、もうこれだけでも七百億、八百億金が要るのでして、日米安保条約という条約の軍事条項を強化したから、私の想定するところでは、日本のヘリコプター空母は、グァム島に常時集結して、対潜哨戒並びに爆撃等の、いわゆるソ連潜水艦対策をこれが担当するものと私は見ておるのです。言うならば、従来は日本の海上自衛隊というのは、日本国民が食べる糧食その他自立に必要なための船舶の護衛に当たる。その護衛の範囲が小笠原までか沖縄までかということでいろいろ議論があったのが、今度は一挙に、攻撃兵器であるヘリコプター空母まで作らなければならなくなっているこのことは、安保条約日本に攻撃的な要素をも加味しておるものであるといううらはらをなす具体的な事実です。私はだから、安保条約の軍事条項を漸次解消をして、そうして将来国連の集団安全保障に期待しなければならないはずの日本の安全保障というものが、少なくとも安保条約は強化する、攻撃兵器のヘリコプター空母まで作ってくる、こういう状態は、われわれも、無防備、まる裸の申立論が、日本の最善の道であるなどとは思っていない現実政党であります。私どもは国を守るに足る、最小限のみずからを守る力は必要だと思います。けれども、それは、国家予算国民経済、その他諸外国情勢の中からきめるものであって、こういうような攻撃的な航空母艦まで日本の海上自衛隊が作ろうなどということについては、安保条約とも関連して、陸幕の制服の中でも、これは安保条約のさらに行き過ぎたものであるという批判さえ出ておることは、防衛庁長が御承知通りであります。私はだから、今一連の事実を申し上げましたのは、池田内閣はえらい自信に満ちたようなことを言っておられるけれども、取り上げてみるというと、ソ連の三万トンの大きなタンカーを日本は用立てて、キューバに対するアメリカの非常な反感を買い、アラビア石油の問題ではアメリカの非備中な反感を買い、ロッキードではアメリカ会社の要求に屈し、ヘリコプター空母ではアメリカの言うなりになり、一たびはオランダの言うなりになって空母を入れようと約束したが、長い間のインドネシアとの関係から文句が出れば一ぺんでこれを一擲し、さらにインドネシアの潜水艦母艦まで引き受けてしまうというこの外交の姿というものは、私は現実的なこれらの事実に徴して、少なくとも一貫した、日本国民信頼するに足る、自主独立の外交方針ではないではないか。私は中共国連加盟だとかAA諸国における日本立場だとかあるいはそれらのいろいろな問題について抽象論を申し上げないで、現実的なこの一連の事実を通じて池田内閣やり方に一定の基本的な方針というものがないということを非常に遺憾に思うのです。今日池田内閣外交については大きな批判がございます。私は少なくとも日本が独立国としての権威を保つためには、何も中立論などというようなことではありませんけれども、もう少し自主的な、アメリカの言いなりにもならないし、不当なものならばこれを押える、ロッキードの二割七分なんという、そんなむちゃくちゃな手数料はこれを押える。インドネシアに対しては、賠償の中から軍艦を日本がインドネシアに差し向けるということは、穏当なことじゃございません。圧力に屈したからというて、こういう右往左往する状態一つ改めてもらいたいというのが、外交についての私の池田総理に対する質問でありまして、御答弁をお願いしたいと思います。
  207. 池田勇人

    池田国務大臣 オランダあるいはインドネシアとの関係は、外務大臣が申したように、初めは日本との三百五十十の修好に来るということであったからお迎えするといったのが、途中で変な事態が起こりましたが、これは日本の独自の考えでいくのがあたりまえでございます。従って結果におきましては、インドネシアと早急に通商航海条約を結ぶ段階に参り、オランダからも今言ったようにして、結果として悪くございません。われわれは独自の考えできめたわけでございます。石油の問題についてはアメリカからとやこう言われる、言われたって何もこっちが遠慮する必要はないじゃございませんか。そうしてまたソ連のタンカーの注文、これは貿易をするのはけっこうですから、ソ連がどこへ使おうとわれわれは何も遠慮する必要はありません。経済的なものは日本が独自できめていいのでございます。今の手数料の問題は、これは国際的にそういう認められた手数料ならばわれわれの考えできめていく。決してぐらぐらいたしておりません。われわれは自主的にきめておるのであります。
  208. 今澄勇

    今澄委員 ぐらぐらしておる証拠には、ロッキードの発注もまだきまっておらぬのですよ。きまっておるならぐらぐらしておらぬと思うのです。アラビア石油だって国内に販売させてもらいたいという要望があって、池田さんなどはこれを応援しておられるのですよ。だがしかし国内の販売はまかりならぬということで抑えられておるのです。そういう現実はすでにぐらぐらしておる証拠だと私は思うのです。少なくともロッキードの発注もきまり、アラビア石油も国内販売ができるというなら、一つもぐらぐらしてはおらぬのですけれども、現実的には、何と言われようともそういう事実というものは、あちらに気がねしこちらに気がねしておる証拠なんだから、それならば一つもう少し慎重におやりになったらどうか、こういうことを申し上げて、経済の問題に入りたいと思っております。  先ほど来いろいろ九%の問題について御議論がありましたが、端的に申し上げると、経済企画庁長官にお願いしたいのですが、経済企画庁は七・二%の成長率で、これまで作業をしておったはずです。内閣がそういう長期経済計画を立てる際には、経済審議会というのがあって、その経済審議会に諮って、それを経済企画庁が策定をして、これを閣議に諮って、経済の成長率、長期計画というものをきめなくてはならぬのだけれども、今度のこの九%は経済審議会に諮ったのか、それとも経済企画庁の七二%とはどういう関係にあるのか、長官から一つ御答弁を願いたいと思います。
  209. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 昨年の十一月に、経済審議会に対して所得倍増計画を問うという諮問をいたしました。そのときに経済審議会の方では大体どのくらいの期間に所得倍増ということを前提として計画を立てるのが妥当であるかということをまず研究をいたしまして、十年間というところを出しました。従ってそれから逆算いたしますと、年平均成長率は七・二%ということになるのであります。従いまして経済審議会の方では七・二%の平均成長率をもって目下作業をいたしておりまして、近くその答申が得られる予定であります。しかし現実の問題といたしまして、明年度あるいは明後年度における経済の成長率がどのくらいになるだろうかということは、これは政治の実際計画画を立てる——計画といいますか、見通しの問題でございますが、そういうことをわれわれが考えましたときに、おそらく七・二%といういわゆる平均成長率、算出せられたる平均成長率よりももっと高い成長率になるだろうということは、これは今総理も言われました通り、過去の実績から推して、また本昭和三十五年度における経済成長の趨勢から考えて、三十六年、三十七年あるいは三十八年、平均成長率七・二%と算出せられた、この成長率よりもっと高いものが出るだろう、大体幾らになるのだろうかということを研究しまして、まあ九%と一応想定していろいろな経済施策の基準にしよう、こうきめたのであります。従って九%は経済審議会に諮問をいたしておりませんし、われわれの経済施策の基準といいますか、目標といいますか、そういう意味でございます。
  210. 今澄勇

    今澄委員 私は、今の経済企画庁長官お話ですけれども、目的を定めてそれから成長率を逆算ではじき出すというのは、一体どういうことです。それは少なくとも現状を分析して、その上に積み上げて目的が出てくるべきだ。それを目的を先に選挙口当てに定めておいて、それを割り出すとは何事ですか。
  211. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 われわれの方から諮問した経済審議会が、十年間で所得を倍にする計画を立てようというところから、そういう作業をした。十年間で所得が倍になるということは、複利計算の原則を適用いたしますれば年成長率七・二%、こういうことなんですから、それは経済審議会の方から、こちらに答申をしてくる内容なんです。われわれの方はそれを受けて、それを基礎にして政府の施策をこれから進めていく、こういうことです。
  212. 今澄勇

    今澄委員 その七・二%ですらも、目的を先に定めて割り出した数字なんです。その目的を先に定めて割り出した数字もなお足らないで、九%という数字が閣議で出ている。私はその閣議に出すときは、少なくとも経済企画庁長官は九%という数字に自信がなければ、あるいは九%という数字の出た根拠がなければ、その閣議の席上大いに反対をして、良心的な経済企画庁のほんとうの計画というものを持ち出すべきであると思うのですが、私に言わせれば、今度の九%をきめる際は、経済企画庁長官の存在は全く無視されていると思っているのですが、一つあなたの政治的な見解を聞いておきたいと思う。
  213. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 私は決して無視されたとは思いません。データを全部詳しく、こういうような数字、こういうような数字ということで九%になりますということを説明するのは、今日時間の迫った場合においてはなはだ不適当だと思いますから、それは私は申し上げません。材料は持っております。しかし九%というものが可能であるということは確信をいたしましたから、来年、再来年においては九%の成長率を一応の基準にして政府施策を進めよう、こういうことをきめたのであります。
  214. 今澄勇

    今澄委員 しからば長官経済企画庁が決定をする際に、経済審議会は七・二%といったのに勝手に九%にするということは、経済審議会の審議は間違いであるということですか。
  215. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 一つよく聞いていただきたいと思うのですが、経済審議会の方は十年間で所得を倍にするという前提で、そういう前提を持った作案をいたしました。従って逆算をして七・二%という成長率が出てきたのです。しかし経済というものは生きものでありますから、七・二%きちんと毎年々々いくようなふうにはならない。従ってある場合には九%、ある場合には、ことしあたりは一〇%をこえる成長率になる。しかし何年か先へいってからは、場合によっては六%くらいになるかもしれない。一応十年間で所得を倍にする場合の計画はどうかということは、経済審議会の研究であります。それを今度は答申してくるわけですから、その七・二%と九%は、いわば基準計画は七・二%であるけれども、毎年々々の年次の実施計画は、当面三カ年間は九%で作る、こういうことだと御承知願ったらいいと思います。
  216. 今澄勇

    今澄委員 私はそこで意地悪は言わないで、そのまま言えば、経済企画庁は七・二%、下村さんの経済成長率は一一%だから私はおそらく内閣は、一一%ならば設備投資が幾らで、輸出の伸びの率は幾らだ、そうして需要の伸びは幾らだという数字があるだろうと思うのです。それから七・二%ならば迫水さんの手元に経済企画庁の数字があるだろうと思うのです。ところが九%というのは、そういういずれの根拠からもはずれた妥協的中間の腰だめ的数字だからこそ、先ほど来——私もこれから聞こうかと思っているのですけれども、おそらく数字がないんじゃないですか。だからそういう基礎的な九%を先にきめてから、あとからそれに合わせるような基礎的な作業をあなたの方はおやりになろうという、これが今の段階で間に合わなかった。十年間で所得倍増にするためには七・二%の成長率でなければならぬというので作られた。いずれも目的の方が先で理屈はあとからこれにくっつけようとしておることは歴然たるものがあるんですね。だから私はそういう目的が先で、どうも七・二%じゃ工合が惑い、一一%と言っているけれども、一一%ではこれはどうも経済企画庁は賛成しかねる。そこで妥協的に九%というような腰だめ的な数字を作って、それが閣議にも三カ年の基礎的な数字が出ておらない。国会の予算委員会で質問されても、これについての基礎的作業がまだ終わっておらないからといって答弁ができない。輸出の伸びについても何の伸びについても同じだろうと思います。これから私はそういうことを問題外にして抽象的に聞きますけれども、ここに問題があるのではないか。だから総理大臣にこの際私が言いたいのは、そういう目的を先に所得倍増を定めて、その結果を割り出して七・二%をはじき出した、あるいは妥協的な九%という成長率を作って、一一%と七・二%はあるが九%のものはないなんというような、こういうことは一枚看板であるあなたの方の三カ年計画としては、私はほんとうにこれは総選挙日当てであって、残念だと思うのです。従って総理大臣のこれは率直な御見解を聞いておきたいと思います。
  217. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 決してそういうものではないのです。今澄さんはそういう場合の計画を立てる計算方式を御存じかどうか知りませんけれども、生産係数というものが一であるか、〇・九%であるか、〇・〇八%であるか、〇・七%であるか、そういうような問題も一つ議論の種です。いろいろなそれは見解の相違というものがありまして、その生産係数を一とするか〇・七とするかによって成長率が違ってくる。従ってある一定の仮定の数字を設けて、やはり一一%毎年成長するということも計算上出て参ります。ただし七・二%というのは、そういうふうにして出したのではなくて、十年間で所得が倍になる計算で、逆算して出た数字です。九%の場合は、やはり一つの生産係数その他いろいろな仮定の数字を置いて、ずっと並べてみて、大体それがよさそうだということできめるわけですけれども、今われわれの方では、一応経済審議会の方が七・二%、十年倍増という計画を立てておるから、これを一応基準計画として受け取ろう、それに対して、実施計画としては、実際来年は七・二%くらいの成長率じゃないですから、九%というほんとうのものを見込んでいこうというのですから、加えて二で割るというような妥協したものではないということを御了解願いたいのであります。
  218. 今澄勇

    今澄委員 ほんとのものならば、これから作業をして一応資料を整えるというような不手ぎわなことでなくして、経済企画庁が責任を持って閣議に諮り、総理を補佐して、その九%の貿易の伸びはこれだ、総所得、需要の方はこれだ、設備投資はこうだという数字が簡単に出なくちゃならぬ。それが出ないところが、私が言っておるように、大体経済企画庁長官が軽視されたか、ほんとうをいえば、あなたは憤慨して辞表を出さなくちゃならぬくらいなものです。
  219. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 決して辞表を出すというようなことではなくて、総理大臣は私の言うことを非常によく聞いて下さいまして、そうして今作業をしております。もうすでにできて、われわれの方のものはあるのです。ただし九%連続して十年間成長するというようには私の方では想定をいたしておりませんから、それは作っておりません。
  220. 今澄勇

    今澄委員 この問題は明らかになりましたから、これでよろしゅうございますが、問題は補正予算です。どうもこういう調子でやられるから、補正予算も、大蔵大臣に聞くけれども、編成の骨子をここで私は御説明願いたいと思う。おそらく私の見るところでは、国会では報告はしないが、解散になって選挙の始まるころには、補正予算編成大綱はこういうふうなものなんだといって出すように、あなた方の間では相談されたとほのかに聞くけれども、私はそういう政府態度は、いかに選挙を前にしているとはいいながら、あまりにも党利党略であって、国政をもてあそぶものではないかと思う。私が大蔵大臣に聞きたいのは、補正予算は総選挙が終わるまでその骨組みについても側についても出さないのかどうか、もし出すのなら、この予算委員会であなた方の方から詳細な説明をすべきである。私はさっきこの予算委員会の席を退席するということは、いたずらに審議権を放棄することになるから反対をいたしましたが、いやしくも政府側が、開かれた予算委員会には、補正予算の編成大綱は議員には示さないのである、だが国民大衆には、選挙を前にして、必要であればこれを示すのであるという、そういう態度で、一体まじめな政府の財政経済政策と言えますか。私は大蔵大臣が、そういう発表は選挙が終わるまではやらないのか、いずれここ一両日中にやるならば、その大綱について予算委員会で説明をしてもらいたいと思うのです。
  221. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先ほど申しましたように、人事院勧告による公務員のベース・アップは、時期を決定したのでありますが、それに関連して予算補正の作業に入ってくれという要望が総理からございまして、私どもの方は、今この補正予算の問題についていろいろ検討しておりますが、数字はまだ確定的なものが出ておるわけではございません。どういうものをこの際補正の対象にするかという項目の研究をもっぱら今日までやって参りましたが、これはきょうまでは間に合っておりません。二、三日のうちに項目くらいの検討はできるつもりでおりますが、それから初めて閣議にかけて、いろいろ政府で都内の検討を始めるというところまで今段取りが進んでおるということをさっき申し上げた通りでございますので、きょう現在、補正予算はこれこれの項目にどうする、金額をどうするというところまでいっておりませんので、御承知願いたいと思います。
  222. 今澄勇

    今澄委員 私のこの質問を、国民はさっきの九%といい、今の補正予算の問題といい、聞いておると思うのですよ。あなたは予算委員会の部屋だから、そう笑ってぬけぬけ言っておられますけれども、少なくとも重要な補正予算の骨組みについて、あるいは補正予算の大綱について、国会議員のわれわれの方には説明はしないで、大体私の見るところでは、あすかあさって、あなた方の方は解散を前にして発表する段取りであることは間違いないようだ。そうして選挙のためにはそういうものを発表して、内閣はやっているのだという非常なゼスチュアを見せる。しかも、開かれた予算委員会の席上では——あした出すといえば、もうほとんどきまっているに間違いないじゃありませんか。ほとんど骨組みがきまっている、その荒筋だとか、その見通しについてすらも、何も金額を言えというのじゃないが、あなたはよう言わぬ。こんなまるっきりふまじめな内閣はないと思います。そういう態度日本の議会政治がどんなに話し合いでやろうとかなんとかいったって、なかなかそれは話し合いがむずかしいんじゃないか。大蔵大臣、私はあなたの腹の中は知っているんです。もう一度出てどういう骨組みで作ったか答弁しなさい。
  223. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国会の予算委員会で言わないという問題ではなくて、まだ閣議にもこの問題を出していない段階でございますから、別にここでうそを言って、あしたすぐ発表するというような作業段階になっていないということを申し上げたので、これは事実でございます。
  224. 今澄勇

    今澄委員 総理大臣、今お聞きのように、この補正予算の問題一つをとってみても、その荒筋すらも大蔵大臣は説明しないのです。私も時間がないからそう繰り返しては聞きません。しかし、そういう態度は、いかに総選挙を前にしておるとはいいながら、私は政府としてはふまじめだと思います。少なくとも補正予算の大綱に、給与の問題についてはこういう考え方、自然増収についてはこの程度を見積もる、そのくらいの話を国会の正規の予算委員会に述べないということは、これは予算委員会の権威にも関しますよ。私は予算委員長にも、超党派的な立場から、これが予算委員会の権威に関するものであるということを申し上げておきたいと思います。なお、私の質問については関連質問がありますから、もう一点だけで終わりますが、少なくとも物価の面について私どもは非常な矛盾の点を一点だけ指摘をしておきたいと思います。その第一は、なるほど卸売物価は横ばいをし、安元をしておると言われるけれども、一般の指数は一〇一から一〇二くらいだが、食料品、燃料、建築材料の物価高は一三〇程度で、まるっきり是正されておりません。これは特別にこれらの建築材料、燃料、食料品が高い。しかも、卸売物価の中心をなすべき、一例をあげれば、さっき独占価格と言われておったが、鉄鋼、総理から説明のありました鉄鋼については、これは政府の公販制度による指示価格なんです。鉄鋼の値段というものは生産性が上がっているからずっと安くならなくてはいかぬが、これが安くなると減産をして、輸入をある程度押えて、そうして政府の力によって値段が横ばいでとまっておるのです。いわゆる一般の物価、散髪代であるとか、宿賃であるとか、その他一般の零細な中小企業関係の物価は、人件費だとか、それらの基礎物質だとか、いろいろな間正題が重なっておりますから、これは私はある程度物価が上がってこなければならない要因があると思うのです。そういう要因のあるものについては、政府は頭からこれを押えるようなゼスチュアだけを示して、鉄鋼、二次製品等の国が操作しておるような、国の公販と政策に関係ある点の値段についてはこれを下げさせない。だから中小炭鉱を見てごらんなさい。私はこの門現地を視察したが、炭車は人件費を含めて四割の値上がり、小さな炭鉱で機材は四割の値上がり。だが、炭の値は政府の合理化政策で引き下げろ引き下げろということになっている。しからば合理化資金はどうかというと、二十億しかなくて、多くの炭鉱は申請したが、みなこぼれている。そうして炭の値は下げろといいながら、炭車は四割も上がる。これは一例ですよ。中小炭鉱は一体どこへいけと政府は言うのだといって中小炭鉱はみんな怒っております。輸入の問題、輸出の問題あるいは公販の制度、政府の指示価格等の、いわゆる政府立場において下げられるべきものを——通産省からも役人がいろいろ民間にも出ておりましょう。きょうは時間がないから申しませんが、多くの機構の上からこれは大目に見ておいて、そうして零細な中小企業の、上がるべき要因を多く持っておるこれらの物価については、上げてはいけないというようなゼスチュアを見せておる今日の政府の物価政策というものは、その根底において私は誤りだと思っております。私はこれらの具体的な問題を見て、総理大臣の物価政策に対する根本的考え方を承っておきたいと思います。
  225. 池田勇人

    池田国務大臣 物価は安定するのが第一義でございます。従いまして、お話しのように、たとえば繊維関係の方はあまり下がり過ぎるといけませんので、操短を法律の範囲内におきましてやらしておるのであります。物価は安定ということを主題にしてやっておるのであります。従いまして鉄も二年前と一年前とはよほど違って参つりましたが、一応安定いたし、しかも増産ができ、鉄のために非常に困ったということはないようにできておるのであります。私は物価政策は安定ということを第一義に考えております。     …………………………………
  226. 西村直己

    西村委員長 武藤武雄君より関連質疑の申し出があります。これを許します。武藤さんに御注意申し上げておきますが、九時五十六分までが持ち時間でありますから、できるだけその範囲内で関連を終わっていただくように……。
  227. 武藤武雄

    武藤委員 私は先般九月二十日福岡県の豊州炭鉱で起こりました六十七名死亡の大惨事発生の根本原因につきまして関係大臣の答弁を願いたいと思うのであります。時間がございませんから、最初に要点を申し上げまして、答弁をあとから願いたいと思います。  第一、この大惨事発生の根本原因について、通産当局はどういう原因であったかということをどういうふうにつかんでおるか、答弁を願いたいと思います。  それから次に豊州炭鉱での災害は古洞の存在と密接な関係があるということは明らかでありまして、この周辺は最も古洞の多いところで、これはもうすでに有名であります。中元寺川の河床にある古洞の存在を当局は一体知っていたのかいないのか。この点について一つ当局側の説明を承りたいと思います。
  228. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 豊州炭鉱の災害はまことにお気の毒なことでございまして、いまだに六十数名の人の状態がわからない次第でございます。せっかくこれの発掘と申しまするか、その現場に到達するための努力を続けておる状態でありますが、ただいまお尋ねのありました災害発生時の原因は、川底に今お話しのように古洞がありまして、そのために川底が陥落いたしたのであります。そうしてそのためにそこの中元寺川という川の水が坑内に流れ込んで、豊州炭鉱が水一ぱいになってしまったということでございます。これがどうやって起こったものであるか、これは天災であるかというようなこと等もいろいろ研究してみたのでありまするが、天災とは思われない。しかし不可抗力であるかどうかの判定についても、今はまだつかない状態でございまして、いろいろな角度からこれをただいま鋭意調査中でございます。  それから、この川底にそういう古洞のあったことを役所は知っておったかということでございまするが、これらの古い坑道の調査はずっと続いてやっておったわけでございまするが、この川底にああいう古洞があったということはこういう問題が起こるまで全然知らなかった状態でございます。
  229. 武藤武雄

    武藤委員 ただいま通産大臣の答弁だと、調査はしておったが知らなかったというのでありますが、私どものつかんでおりまする調査の結果によりますと、少なくも会社側は坑道の掘さくにあたって、当然川底にある古洞を発見できる状態にあったと私どもは思っておるのであります。それでは、当局はつかんでいなかったということでありますが、これはどういうわけでつかんでいなかったのが、われわれは理解に苦しむのであります。鉱山保安法の第二十三条には、「鉱業権者は、海底、河底若しくは湖沼底の地下又は土地の掘さくにより鉱害を生ずるおそれの特に多い地下において鉱物を掘採しようとするときは、省令の定めるところにより、特別掘採計画を定め、鉱山保安監督部長の認可を受けなければならない。」こういうふうになっているのでありまして、これはもう特別採掘のための認可を受けることが条件になっておるのであります。それで、実際は、われわれの調査によりますと、昭和二十八年、その付近にありました永井という人の盗掘事件が明るみになりまして、その場合会社側は、盗掘現場を測量して、これに関連する古洞を発見したという事実をわれわれはつかんでおるのでありますが、これは、一体そういうことが通産省に提出をされておったかどうか。また、当局はこれを承認していたのではないかと思うのでありますけれども、その事実について一つ答弁をしてもらいたいと思います。きょうは時間がございませんが、われわれはその確実な資料、証言も持っております。ただ、重大な社会問題でありまするこの事件に対しまして、その証言をする者も非常にちゅうちょをしております。ちゅうちょをしておるということは、今の世相とも関連があるのでありまするが、そういう重大な証言をすることによって、何か困った事態になるのではなかろうかということでちゅうちょをしておる向きもあるのであります。われわれは、その証言の内容もちゃんとつかんでおりまするけれども、この前の盗掘事件のときに、河床に向かってスクリューをしておって、そこに古洞があったという事実が明らかになっておるのであります。これに対して通産当局は、この二十三条の法文によっても、これらのものは当然つかんでいなければならなかったと思うのでありますが、これらについて通産大臣の答弁を願いたいと思います。
  230. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 今お話のありました、二十八年度でございますか、永井という人であったと思います。その川の向こう側、この鉱山の向こう側のところで盗掘が行なわれたということがあったことは、私も聞いております。その古洞とこの川の底の古洞とどういう関係にあったかということは私は詳しく承知いたしておりませんが、今あなたのお話で、いろいろこれについての何か証言し得るものがあるということでございますれば、私どもは今これをどういうふうにしようかといろいろ研究しておりますが、そういうものをぜひ知らしていただきたいと思います。
  231. 西村直己

    西村委員長 武藤さん、もう時間が超過しておりますから、あと一問にして下さい。五十六分までですから。
  232. 武藤武雄

    武藤委員 これは重大な問題でありまして、当然あのような出水事故が起きるということは川底に古洞がなくてあのような事故が起きる道理はないのであります。これはもうだれが考えてもわかる問題でありますから、この問題については、私はもう徹底的に調査をしなければならぬと思います。従いまして、本日は時間がございませんから、来たるべき通常国会等におきまして、この問題は根本的な問題として追及しなければならぬと思いますから、十分一つ通産当局においても責任を持ってこれらの真相が究明できるよう強く要求をいたしまして、私の質問を終わります。——通産大臣の答弁はどうですか。
  233. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 今のお話、よく承っておいて、よく私どもの方でも研究いたしておきます。     …………………………………
  234. 西村直己

  235. 滝井義高

    滝井委員 池田内閣の三本の柱といわれる公共投資と減税と社会保障、この三つの、かなえの三本の足の中でどの新聞を見てもどういう雑誌を読んでみても、社会保障がその三つの政策の中で一番どうも後退をしておるということが書かれておるわけです。政府の方は依然としてそうでない、こういうことを強弁せられております。そこで私は、池田総理にお尋ねをいたしたいのでございますが、総理は、減税については千億という数字をお出しになっている。また、衆議院の本会議におきましては私見ではありましたが、公共投資の中における一番重要な道路については五カ年間で一兆円、一級道路は九割五分、二級道路は五割以上舗装するのだ、こういうことを明白にせられたわけです。そこで、一体、では社会保障は幾らなんだということについての数字は、寡聞にしてまだ聞いたことがないのです。ここで三本の柱にそれぞれ具体的な数字をお出しになったのですから、社会保障についてもお出しになることが、選挙を前にして、この三つの政策を中心にわれわれはあなたの内閣と争うことになるわけですから、一つお出しになっていただきたいと思います。社会保障には一体幾らのお金をおつぎ込みになるのか。私は三カ年間に九%の経済の成長が毎年あるという、その三カ年間をお聞きしようとは思いません。まず、やはり、少なくとも一千億以上の減税をやろうという、同じ程度の御答弁を社会保障についてもいただきたいと思うのです。これを一つまずお尋ねしたい。
  236. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、社会保障に一番力を入れたいということを考えております。従って、平年度一千億以上の減税というときには、よく新聞に出ておりましたが、まあ三十六年度は二千億以上あるいは二千正五百億くらい増収があるのではないかというときに、平年度千億以上、とこう言っている。しかし、今では九%を見積もり、ことしの景気もよいので、相当多うございます。初めの予定より多くなってきますが、平年度一千億以上ということは、これは私は動かさぬつもりです。そうして多くなった分はどこへ行くかといったら、おのずからおわかりでございましょう。そうして、道路の大体二兆円近くということは、これは万人の認めるところ五カ年計画であります。五カ年計画で、初年度どのくらいになるかということは、私はまだ言っておりません。だから、減税の規模というものは収入の増においても動かしていないということ、そうして道路の方も五カ年計画で初年度の金額を言っていないということは、これは、私の腹づもりでは、社会保障にできるだけたくさん持っていこうということなんでございますから、それを一つ考え願いたい。そうして、後退するということを言っておりますが、何も後退してはいない。私は、減税というものは、もとがふえてもふやさないのだ、こういうことでいって、そのふえた分は社会保障に大部分持っていこう、こういうことであるのであります。
  237. 滝井義高

    滝井委員 そこで、私見でけっこうだと思います。道路について具体的に私見をお述べになったわけです。少なくとも五カ年間には二兆円だ、とこういう数字をお示しになったわけです。これは一年生でも、五カ年間に二兆円ということになれば、一年にどのくらい出るなということは、割算してみればすぐにわかる。四千億くらいだなという腹づもりができてくるわけです。そこで、社会保障については、大体私見としてどの程度お出しになるのか、これが一番大事なところなんです。ここをあなたがはっきりしないから、どの新聞を見ても、どの専門誌を読んでみても、社会保障は後退をしたんだ——うしろにおられる中山さんは、私を池田内閣のアサガオの花にしないで下さいと言っておる。これは、あなたが日本内閣史で初めて任命になった女性大臣を、やはりアサガオの花にしてはいかぬと思うのです。そういう意味で、この際、私見でけっこうですから、一つはっきりさしていただきたいと思います。
  238. 池田勇人

    池田国務大臣 この道路の問題は、一応初めある人は二兆三千億、そしてある人は一兆五、六千億こういうふうなことが言われておったのですが、私は建設大臣、大蔵大臣等の意見を聞いて二兆円とは言っておりませんよ。二兆円になるべく近くということを言っておるのです。しかも今、だれが考えても、五年で二兆円ならば年に四千億、こういう数字が出るからいかないのです。四千億じゃないのですから。ガソリン税の増徴等でいくのですから、初年度は平均よりも相当少なくなる、そういう誤解があってはいかないから総理大臣というものはなかなか言えないのです。しかも今言ったように、後退どころか、二千億あるいは二千五百億の、本年度に比べて増収があるというにかかわらず、私が常に平年度千億以上というところで言ってくれというゆえんのものは、このふえる分を減税の方であまりふやさないように、社会保障制度その他をふやすということでございますから、後退どころか前進しているといっていいと思います。それで今社会保障制度は、御承知通りいろいろなアイテムが多いのです。減税などは所得税と法人税だけで、そして特別措置法だけだから、すぐ出て参ります。しかもこれは計算する人はエキスパートで、一つの役所です。しかし社会保障制度ということになりますと、役所がずっといろいろなところがありますし、そして事柄自体が非常に複雑でございますので、私が今申し上げない方がかえって国民に喜ばれると考えておるのであります。
  239. 滝井義高

    滝井委員 どうも一番大事なところを言わないというのが、これは池田内閣の結局数字だけを言って国民にぬか喜びさしておって、あとはばっさりやるというこの手です。そこで具体的にお聞きしますが、しからば所得倍増の十カ年計画をお立てになる。そして少なくともこれから三カ年間は経済は九%ずつ願望的に拡大していこう、こういうことなんですが、そうしますと、岸内閣のときに、経済に長期計画があるように社会保障にも長期計画を作ります、ことしの八月までにはそれを完成いたしますということは、昨年の六月渡辺厚生大臣が言明をしておる。長期計画を作ることは、川崎君が昭和三十年に厚生大臣のときから私はこの予算委員会で再三にわたって責め立てた結果、やりますやりますと言うのです。今度池田内閣はうそを言わない。あなたは正直な人であると言われておる。貧乏人は麦めしを食いなさい、食糧不足のときにはやむを得ぬ、これは正直だとみなほめています。社会保障の長期計画はもうおできになっているはずです。八月までに作る約束を渡辺さんはしているのです。どうです池田さん、お作りになっていますか。
  240. 池田勇人

    池田国務大臣 私は八月までに作るということは聞いておりませんが、計画をなるべく早く作るということは必要でございましょう。しかし御承知通り計画倒れになってもいけませんし、それとまた計画が非常に少な過ぎてもいけません。持っていく財源が、今申し上げたようにきまっていないのでございますから、財源をきめずに計画を作るよりも、財源がきまり、そして今後の見通しもついて計画をきめた方が、ほんとうの計画になると思います。私は数字をなるべく言いたいのですけれども、わからない数字は言えないことを一つ御了承願います。
  241. 滝井義高

    滝井委員 あなたの方の出している新政策を読ましていただきますと、不幸な人々に対する社会保障の施策を毎年計画的に充実し、とこうやって計画的にと書いておる。そして具体的にいろいろな項目を書いていらっしゃる。毎年計画的におやりになるならば、一体来年にはどういうことをやる、再平年にはどういうことをやるというこが、——所得だけは十カ年に倍にしますといったときに、社会保障を一体その計画がなくして何で所得が倍になるということがはっきりしますか。一人々々の国民が……。さいぜん成田さんも言われたように、有効需要を拡大していくためには、社会保障というものが十要な役割を演ずるのですよ。所作再分配の面においてこれくらい大きな役割を演ずるものはない。その再分配を演じたその結論が、今度有効需要となって現われてくるのです。その場合に、持っていく社会保障の計画は何もかいもくわからないのだ、所得だけは先に倍になるのだ、こういうチンプンカンプンな政策というものはありはしない。だからこれは一つどうですか。厚生大臣、あなたの方で長期計画というものはもう私は再々にわたって御警告も申し上げておるし、作るというお約束ができておるはずだが、これは経済企画庁とあなたの方とで十分練っておできになっているはずだと思うのです。どうですか、社会保障の長期計画はできていませんか。
  242. 中山マサ

    ○中山国務大臣 厚生行政におきましても、長期的な視野のもとに、人口の見通し、経済発展、ことに雇用構造、賃金の動向などの長期的予測ともにらみ合わせていかなければなりませんので、鋭意この問題については計画をしておりますのでございまするが、御承知のように、私ども厚生省といたしましては、いろいろな施設もやって参らなければなりませんことでございますし、そういう策定を始めたといたしまして、ほかのものにつきましても目下いろいろ社会保障制度審議会の御答申を待ってやることに時間待ちでございます。それでそういう点を御了解いただきまして、私どもも鋭意やっておりますことでございますから、これはいわゆる経済の、そういうものは見通しでございますけれども、私どもは毎年計画的にやっていくという点でございまして、それを積み上げていくことにつきましては社会保障制度審議会の御答申によらなければならない、こう考えております。
  243. 滝井義高

    滝井委員 今から六年も七年も前からこの問題はやっておるわけです。まだ社会保障制度審議会の答申もしないし、結論も出ないなんていうそんなばかな内閣はありはしないですよ。それならばもうちょっと具体的にお聞きしますが、明年生活保護基準を厚生省は二割六分上げるということを予算要求せられております。賀屋構想は、五割上げるということをうたっておりまして、社会党生活保護基準の五割引き上げを党議決定をいたしております。さいぜん池田さんは経済が拡大をしていけば、洋服は十着でもやりますと、こういうお話があった。現在結核療養所に三カ月以上入院しておりまして、生活保護を受けておる結核患者は一年にパンツー枚です。生活保護でパンツー枚しかやってない。二年に、はだ着二枚です。これが日本の低所得階層の実態ですよ。しかも生活保護を受けておる人百六十六万、六十二万世帯あるのです。こういう人たちは一カ月二千円で食っております。私たちは総評と力を合わせて、二百三十世帯について極秘に調査をしてみました。ところが驚くべき結果が出たのです。すなわちおとな一人現在約二千円程度生活保護費が、無収入ならば支給されます。ところがこの二千円で食っている人は、六十六才のおじいさんたった一人の世帯が一軒ありました。あと二百二十九の人はどこからか七割程度極秘にかせいできておる。これを見つけられればケース・ワーカーから断ち切られてしまいますから、極秘にかせいできておる。ちょうどあの南極に置き忘れられてきた太郎と次郎が何かを食って、翌年行ったときに生きておったと同じ姿が日本国民の中に起こっておるということですよ。そしてあなたは所得を倍増するという。しからば一体過去の保守党の政治の中でこの生活保護者の所得が倍になったかどうか。経済は九%過去十カ年に上がってきた。昭和二十六年には一般都市の消費支出に対して生活保護者の支出は五二・五%だった。ところが三十四年度は三九・七%に下がっておる。日本国民の中には九人に一人の割合でボーダー・ライン層がおって、低所得階層がおって、一カ月に一万二千円かそこらで生活しておる。そうしてしかも国民の中では、四分の一、二割五分が栄養失調なんです。厚生省の栄養白書を読んでごらんなさい。国民の中の二割五分は栄養失調だという、これがあなたのもとにおける黄金の時代であり、岩戸景気であり、神武景気なんですよ。だから従ってまず第一にあなたがやらなければならぬものは、上の方の倍ではないのです。減税の恩典にも浴さなければ、社会保障の恩典にも浴することの少ないこの千百十三万、二百四十六万のボーダー・ライン、低所得階層と百六十六万、六十二万世帯のこの底上げをするということです。それには乗り岩間の最低賃金じゃなくて、ほんとうの一律の最低賃金を実施して、生活保護をぐっと最低五割上げるということです。これがなければ人間の生活ではない。だから、ごらんなさい。淺沼委員長と同じ名前の東京地方裁判所の浅沼武というあの人情豊かな、ヒューマニズムに富んだ裁判官が何という裁判を下しましたか。今の生活保護法というものはだめだ、憲法二十五条違反だという判決を下しておる。これがあなたの政治のもとにおける日本の大衆の姿です。こういうものに対して、あなたは幾ら上げるということは言えない。幾らにするということも言えない。まずどうですか、二割六分ほんとうに上げますか。
  244. 池田勇人

    池田国務大臣 二割六分という要求が出ておることは聞いておりますが、今何ぼ上げるということは、これは予算編成上の重要問題でございます。総理といたしましては、できるだけ多く上げたい気持でおります。
  245. 滝井義高

    滝井委員 税についてはそれぞれ数字をあげてあなたは言います。税については幾ら減税するのだ。たとえば九万円については、税制審議会で今度は家族の者についても妻の座を強化するというようなことを平気でおっしゃる。ところが、この一番大事な問題について、減税の恩典にも浴せない暗い谷間におるこの生活保護の問題については言明ができない。それが保守党の政治の姿ですよ。もう少しあなたが良心があるならば、この選挙を前にして日本の大衆をやはり喜ばせなければいかぬ。百三十億の年末金をやりますといって百三十億の金を出したと同じように、良心的な大蔵大臣ならば二割六分くらいをやると言われるでしょう。水田さんどうですか、百二十億の年末金は入れた……。
  246. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 生活保護基準の引き上げはいたします。(「幾らやりますか」と呼ぶ者あり)そこで生活保護者に対しては、今問題はこの生活保護費をもらっており、ほかでいろいろなかせぎをして所得があるということがわかると、すぐにこの保護費をそれだけ減額されるというところにいろいろ問題があると思いますので、この生活保護者がほかで収入を得ても、すぐにこの生活保護費を切るようなことをしないというような、いろいろな考慮とにらみ合わせて適当な引き上げをしたいということで、今厚生省の意見も聞きながら概算要求の説明を聞いて、これからわれわれはそういう検討の上で査定に入ろうというところでございます。ですから、まだきまっておりません。
  247. 滝井義高

    滝井委員 この問題についても数字を明らかにすることができません。  次には、日本の医療の状態は、現在国民所得の医療費は四%を占めております。四%ということは、十兆の国民所得ならば四千億です。非常に大きいです。ところが、最近は健康保険では金があまり要らなくなって、医療費をのまなくなったのです。従って、ここでわれわれが問題にしなければならないのは、健康保険における家族が現在五割を負担しているということです。従って、健康保険の家族について大きな施策が必要です。それからもう一つは、老人性の疾患がふえてきた。脳溢血とか、心臓病とか、ガンとか、こういうものは前もってそのからだを見て予防的な方策を講ずればいいのです。ところが、現在健康保険は予防給付がないのです。たとえば一番予防給付を必要とする典型的なものは、今はやりのいわゆる小児麻痺です。小児麻痺では、十CCが五百四十円のこの注射の液が医者に渡るときは、一CCが四百五十円ですから四千五百円になるのです。どこかで中間マージンをたくさん取っておる人がいるんです。そうしてそれが今度は患者に打たれるときは、医者の技術料その他が入るから、六百円から千五百円です。これを三回打たなければならぬ。千五百円というと四千五百円です。こういうべらぼうな予防注射なんというものを一体日本の大衆が打てますか。これがあなたのもとにおいて平気で行なわれておる政治です。そうして、しかもソーク・ワクチンの研究のための経費は幾ら出しておると思いますか。ほとんど出していない。そうして日本の生後六カ月から一年半くらいの子供というものは戦々きょうきょうです。そうしてその子供を持っておるお母さんたちはみな泣きの涙です。ワクチンがない。あなたの前の政府は、厚生省が要求したワクチンをばっさり半分くらいに切ってしまった。二万人分ぐらいしか認めない。こういう姿なんです。だから、こういうものについては、健康保険で、予防で、保険証で注射が打てる姿を作ってやらなければいかぬということです。これが健康保険の問題です。  もう一つ国民健康保険です。これは日本における医療の大宗なんですが、十月一日ですでに四千六百万の人が国民健康保険に入っている。そうして今それが五割給付のために、半額支払うために、あなたがこれから切り捨てようとする中農以下では保険証が使えない。保険料はかけ捨てです。その大衆が今度は年金のかけ捨てをやるわけです。これが今五割です。これを七割に上げることは、生活保護の引き上げとともに日本におけみ何よりも緊急な政治への要請です。先日東北で大会が開かれた。ところが、その集まった保険者のすべては意見の一致を見ました。それは七割給付と、国が四割負担してくれということです。これは民の声です。民の声を聞くことは民主政治の要諦です。どうですか、七割給付と四割の国庫負担を来年度の予算から実現させると、池田内閣はここに総選挙を前にして国民に明言できるか。それとも依然として数字をあいまいのうちに大衆をごまかしていくか。どちらをやりますか。
  248. 池田勇人

    池田国務大臣 滝井さんは今貧農を切ると、こういうことを言ったが、私は総理大臣としてそんなことを言ったことはございません。(滝井委員「結果は切ることになる」と呼ぶ)そういうことはどうぞよく今までの質問応答を聞いて言っていただきたいと思います。  今の社会保障のところで数字を申し上げないのは、お話のようにいろいろな重大問題があるのです。われわれはそれをいかに調整していこうかということで苦慮しているのです。それは、税利なんかの問題等は先ほど申し上げましたようになかなか厄介な問題である。そういうところも直ちに七割と、こういうわけにはいきませんが、これはどういうところからやっていこうか、たとえば結核とか精神病の方の分は、世帯主は七割やっていこう、こうきまりました。しかし世帯主でなくてもやったらどうかという議論もあるのです。万般のことを考えるから、先ほど申し上げましたように数子がなかなか言えないというところです。
  249. 中山マサ

    ○中山国務大臣 ただいまのソーク・ワクチンの問題でございまするが、これはできるだけ値段を下げていくということ、そうしてこの二億一千九百十八万円もらいましたそのお金によりまして、これが来年の一月から市町村におろされて参りますから、そこでこの初めの原価でもってこれがそこへ渡って参りますので、そういうふうにお医者様も市町村の立場によってのお仕事になって参りますから、お医者様に対する経費は全然要らないことになりますから、御心配はなくなると思っております。
  250. 滝井義高

    滝井委員 そこで、もう一つ社会保障で重要な問題は年金の問題です。いろいろと年金の問題をたくさんお出しになった。国民はいろいろなものをお出しになるから、何が何やらよくわからない。そこで、拠出制の年金についてはどういう改正とどういう改正をおやりになるか。無拠出の手金についてはどういう点とどういう点を改正になるか。拠出年金に対する財源は、たとえば死亡一時金を出すためでも二百億ぐらいかかりますよ。そうしてこれは大きな積み重ねで何カ月もかかって計算したんですから簡単にはいきません。だから、そういう拠出制の年金の改正点とその財源、それから無拠出の年金の改正点とその所要財源、そうして今一番池田さんの重要な公共投資に関係のある積立金の運用の基本方針というものを池田内閣としてはどうするか。岸内閣では答弁を得ておりますが、これが変わるといけませんから、岸さんと同じであるかどうか。政府当局からもお聞きになっておると思う。岸さんからは私は言明をとっております。もう三つの委員会から答申になっておりますが、年金の積立金が財政投融資の中に入っておる。この運用の問題を一体どうするか。この三点について、一つ数字についてきちっと御説明を願いたい。
  251. 中山マサ

    ○中山国務大臣 福祉の年金の方におきましては、いわゆるかけ捨てという問題はございませんが、この老人に対する福祉のお金でもって死なれたときに全然渡らないということで、なくなられました場合にはその遺族にそのお金を差し上げるということが改正の一点でございます。  また拠出側の方におきましては、かけ捨てがないようにということが私どもの聞いております点でございますので、それでもし死亡された場合には、一時金を差し上げるということになっております。この点を申し上げておきますが、その予算がどれだけということはまだ私どもの方では大蔵省と交渉中でございますので、その金額について申し上げるわけには参りません。
  252. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 運用につきましては……。     〔「総理がやらなければだめだ、大蔵省と対立があるから」と呼び、その他発言する者多し〕
  253. 西村直己

    西村委員長 発言中ですからお静かに願います。
  254. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 厚上年金審議会であるとか、社会保障制度審議会、預金部資金運用審議会、この三つから意見が表明されていることは御承知だと思います。結局この拠出者の意思を重んじて、公共施設、社会、福祉施設に金を使えという意見が強うございますし、またそれも必要であるが、しかし国家資金として統一運用をしなければいけないという意見が出ておりますので、結局これを調整してやるよりほかには仕方がないと思います。統一運用をするということで一応預金部にこの金を入れる。しかしたとえばその中の二五%なら二五%は自主運用と申しますか、還元運用と言ってはあれですが、一定の機関があって、その金はここに使えという機関を置いて、その決定で運用するというようなことがよいだろうというような意見が今有力でありますので、私どもはそういう運用をしたいと実は考えております。と同時に、この今の運用の機構が全部役人によって運用されておるので、これをもう少し民間を入れた民主的な運用にしたいという意見も、三つの意見が全部強うございますので、こういう点も私ども考えたいと思います。要するにそういう三つの意見を統合して、納得の行くような方向で資金の運用をやっていきたいというのが私ども考えであります。これは今検討中でございますので、これから結論を出そうというところであります。大体この三つの審議会の意見の方向というのはもうわかっておりますので、私どもはその方向で改善したいと思います。     …………………………………
  255. 西村直己

    西村委員長 八木一男君より関連質疑の申し出があります。なお持ち時間の中で関連質問はやっていただくことになっておりますが、持ち時間はわずかでありますから、それをお心得の上御質問を願います。この際これを許します。八木一男君。
  256. 八木一男

    八木(一)委員 池田内閣総理大臣にお伺いいたします。ほかの答弁は拒否をいたします。  まず、今の積立金の運用、管理の問題についての総理大臣の明確な御答弁と、それから総理大臣は現在政府がやっておる現行法の拠出制年金の欠点について、いかに考えておられるか、簡潔に明快にお答えを願いたいと思います。
  257. 池田勇人

    池田国務大臣 年金資金の運用につきましてはいろいろ重大な意見がありますので、各方面の意見を徴しまして決定いたしたいと思います。拠出制年金につきましては先ほど言われたように、かけ捨ての問題とか、六十五になるまで待てないとか、六十から出せとか、いろいろな問題がございますが、これは党において今検討いたしております。内閣におきましても十分そういう意見を今検討して、大体結論が出たようでございます。
  258. 八木一男

    八木(一)委員 今のような、内閣の中でこういう重大な問題についてまだ結論が出ていないようでは、非常に政府は怠慢であると言わなければならないと思います。水田君が言ったように二五%だけを還元融資して、ほかを独占資本に使うというのが有力であるというようなことはとんでもないことであります。社会保障制度審議会などいろいろな審議会がありますけれども、最高の権威の社会保障制度審議会の答申は、そのような内容ではございません。先ほど厚生大臣から社会保障制度審議会を非常に援用して答弁しておられました。都合のいいときには社会保障制度審議会を援用し、都合の悪いときにはその意見に従わない。そのように、政府は実に審議会というものを勝手に使っていて、ほんとうに民主的な権威のあるものとして使っていないということになるわけであります。そういう点について池田総理の猛省を促したいと思います。  次に池田総理が先ほど、かけ捨ての問題と六十五歳の問題についてのみお答えになりました。池田総理は現在の拠出制年金がどんなものであるかということを、ほとんど全部知らない証拠であります。社会保障を重視するというが、今社会保障の一番の論議の中心点は国民年金である。政府の拠出年金の不十分不合理、そして一部収奪のある点が攻撃をされておる。そのような時代に、まだ自分のやろうとする年金の欠点を知らない、そんなことで社会保障を語る総理大臣としての資格はありません。これからよく教えますから聞いていらっしゃい。今の拠出年金の最も悪い点は何か、よく聞いていらっしゃい。最も悪い点は、最も必要な人に年金がいかないということ、それが焦点であります。この点についてはおそらく池田さんはまだ研究をしておられないと思う。よく考えて下さい。保険料は定額である。松下幸之助さんも、その日暮らしの人も同じ保険料を納めなければならないということになっておる。従ってその日暮らしの人にとっては、保険料の負担が非常に重くてかけにくいわけであります。次にそういう人たちに対する特別な掛金の減額、あるいは免除の措置がほとんど皆無といっていい。まず減額の処置である。減額の処置については現行法においては何もありません。政府側の答弁では免除があるからいいといっておる。ところが掛金は三カ月分を一緒に納めることになっておる。夫婦二人であると、百五十円が二人として三百円、三カ月分になると九百円、千円に近い金をまるまる納めるか、あるいは全部免除してもらうかでは、ほんとうのボーダー・ラインの人たちに対する配慮がないと言わなければなりません。免除はたくさんしてくれればいいけれども、ちょっとのところで免除にひっかからない、千円納めなければ罰金をとられる、そういうようなことでは大へんなことになると思います。次にその免除でありますが、その免除が言葉だけでごまかしているだけであって、全然役に立ちません。政府の拠出年金は、十年間の保険料を納めなければ一切の老齢年金を支給しないということになっております。障害、母子については別な条件がありますが、老齢年金は十年間の保険料を納めなければ、年金を支給しないという冷酷むざんな規定があります。免除というものは、十年間の保険料を納めた上において免除が有効に働いて、たとえば十年保険料を納めた場合に十五年免除の適用を受けておれば合計二十五年として計算をされて、減額された六十五才から二千円の年金がもらえる、その点において免除が有効であります。しかしながら一つ違って保険料納入が九年である、免除が十六年である、その場合、合計二十五年でありながら一文の年金にもならないわけであります。ボーダー・ラインの人が一回千円にもなるような年金を十年払おうとすれば四十回払わなければなりません。そういうことはほとんど不可能であります。従って免除規定があっても、そのような非常に生活の苦しい人たちにとっては、その免除規定は生きてこないのであります。日本社会党案のように、何回免除を受けても、一銭も払わなくても、六十になれば月七千円、年八万四千円、六十四才になると四十二万円になって、政府がゼロの場合に四十二万円を支給するような、そのような内容ではないのであります。そういうことでありますから、定額である、減額がない、免除が幽霊である、従って保険料が払いにくい人は年金がもらえないということになるわけであります。保険料が払いにくいような人が、老齢になったときに最も年金が必要なのであって、そのような人たちにいかないような年金は社会保障ではないのであります。しかも政府側は、国庫負担五割があるとおそらく言うでありましょう。百円について五十円がつく、百五十円について七十五円がつく、従って年金はよいのであるというようなことを中山君あたりは言うでありましょう。しかしこの五十円なり七十五円はどこにいくのか、年金をもらえる人につくのであります。積み立てばするけれども年金をもらえない人には国庫負担は還元されません。従って国庫負担は年金の保険料支払いが容易な、比較的裕福な人には必ずつく、保険料が払えないような人にはほとんどつかないか、全然つかないということになる。年金は社会保障の中軸でございます。所得保障は社会保障の中の大きな柱であります。社会保障というものは金持から非常に生活が苦しい人に金が回って、そうしてそういう人たちが生活が楽になるようにするものだということが一般の認識であり、まさか池田さんもそれは否定はされないと思う。ところがこの国庫負担分では、貧しい人がたばこの税金から砂糖の税金から二級酒の税金から納めている税金が、必ず保険料が納められるような金持に回って、最も年金が必要な人に回ってこないわけであります。この点において所得再分配の反対の現象を政府の拠出年金は示すわけであります。
  259. 西村直己

    西村委員長 八木君、ちょっと御注意申し上げます。簡潔にして下さい、時間を超過していますから、質問に移って下さい。——質問に移って下さい、時間を超過しております。
  260. 八木一男

    八木(一)委員 しかも政府の年金の中には非常な収奪があります。というのは、死亡一時金を作ったと称している。生存のときには、十年未満のときには保険料を返すと称しておる。しかしそれは九年間全部は返しません。三年分だけ差し引いて返すということになっている。生命保険の場合は任意保険でありますから、入ってすぐ解約したときには、一、三年分は解約返戻金は来ないということは、任意保険である以上いたし方がない事情があるでありましょう。しかしながらこの拠出年金は政府の強制保険であります。強制保険で入れておいて、年金がもらいたいために苦しい中から三年未満十一回の保険料を納めた、それ以上は息が続かなくて保険料は納められなかった、そういう非常に苦しい人の努力の結晶を政府は没収する制度になっているわけであります。社会保障制度と称して、そのような冷酷むざんな収奪である制度、そのような制度が今池田君がやろうとする拠出年金であります。池田君は社会保障についてはあまり御存じがないと思います。中山君もこの点についてはあまり御存じがない、御存じがないままにそのようなことをやってはいけません。ですから、そのような冷酷むざんなものは今延期をして、そうしてりっぱな手本が日本社会党案として昭和三十三年の通常国会に出してあります。これは今年金についての不平不満の出ておる一切の問題を解消する内容を持っております。そのりっぱな手本を見て、即時に通常国会日本社会党案と同じものを出すか、われわれの出したものに即時自民党も同調をしてこれを通すということによって、年金制度は発展せしめるべきであります。池田さんが言われるように、社会保障というものは大衆購買力を作る。それは生産に大きな関係があります。また所得保障が非常にりっぱなものになれば、農家の老人の人が安心して隠居をする。若い人に経営権が移る。そのことによって農業の近代化ができるわけです。中小企業またしかり、生産の点においても大きな関係があります。そのためには十分にして合理的な、国民の納得のいく国民年金制度にしなければなりません。その意味において、政府の現在の非常に不合理、収奪である国民年金を一時中止し、来たるべき特別国会において、政府社会党案を十分参考にして改正案を提出されるべきであると思いまするが、その点について池田内閣総理大臣の明快な御答弁を願いたいと存じます。(拍手)
  261. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見は承りました。拠出制年金につきましては、従来からいろいろ議論があり、またむずかしい点もあるのであります。しかし一応国会を通った法律でございまするから尊重いたしたいと思いますが、まだ改正すべき点があり、しかもそれが合理化されるならば、政府の財政もにらみ合わせまして、十分検討していきたいと考えております。
  262. 西村直己

    西村委員長 八木君、ちょっと待って下さい。発言を認めていません。だいぶ時間は超過していますから、あと一問を簡単にお願いいたします。
  263. 八木一男

    八木(一)委員 今そのようなおざなりの答弁であります。私が今申し上げた拠出年金の欠点はこれが致命的なものであります。一番必要な人に年金がいかない。国家の大事な国費が金持ちの土持ちになって、そうして貧しい人にいかない。そのようなことは非常に重大な問題であります。それにもかかわらず、もっと率直な意見の表明がないことはほんとうに遺憾であります。池田さんはかつて、貧乏人は麦を食えと言われた。その点については、日本の国家の経済再建のために言ったのであって、言葉が流れたのであるから、これをしんぼうしてほしいと弁解をしておられる。しかしながらいついかなるときにおいても、日本人に、あるいは国民の方々に麦を食ってくれというのなら、これは話はわかるけれども、貧乏人は麦を食えといった思想は、これは社会保障の思想とは断じて相反するものであります。池田さんがほんとうに後悔をしてその決心を変えて、ほんとうに社会保障に徹底されるのならけっこうでありまするが、その決心を披瀝されるのならば、そのような抜本的な改正を必ずする、社会党案と同じものを出すという御答弁を現在いただきたいと思いまするし、それがいただけなければ、社会保障という看板はにせものであって、直ちにおろしていただきたいと存ずるのであります。それについて池田内閣総理大臣の御答弁を願いたいと存じます。
  264. 池田勇人

    池田国務大臣 社会党、提出の案をそのままのむという御返事はいたしかねます。     …………………………………
  265. 西村直己

  266. 足鹿覺

    足鹿委員 私は今次総選挙の大きな争点になることが予想いたされます農政の問題に限定して、総理大臣並びに関係閣僚にお尋ねを出し上げたいと存じます。  まず第一に、農業基本法の制定と農政の基本についてであります。池田総理大臣並びに南條農相は、昨日の本会議におきまして、農業基本法を次の通常国会に提出することを言明いたされましたが、間違いはありませんか、確認をしておきたいと思います。
  267. 南條徳男

    ○南條国務大臣 農業基本法は、昨日も本会議で申し上げたように、次の通常国会に提案したいと目下考えております。
  268. 足鹿覺

    足鹿委員 総理大臣に伺いますが、先ほどの成田委員の質問に対して、画期的な施策を講ずるということを言われて、農業基本法の問題にはお触れにならなかったのでありますが、ただいまの農林大臣の御答弁でよろしいのでありますか。
  269. 池田勇人

    池田国務大臣 自由民主党の新政策にも載っておりますし、私も農林大臣と相談して、次の通常国会に出すようにしてもらいたいと思っております。
  270. 足鹿覺

    足鹿委員 次の通常国会に出すということを、昨日の本会議でも言われておりますし、これ以上は追及することを差し控えますが、その基本法の目的はどこを中心になさいますか。
  271. 南條徳男

    ○南條国務大臣 経済の成長に伴って、一般の産業構造が非常に躍進いたしましたので、これに対応するために、今曲がりかどに来ておるといわれます農村経済を充実いたしまして、農民の生活の安定、繁栄をはかるということに重点を置いて、いろいろな施策をいたしたいと思うのでございます。内容も、いろいろな点がございますが、これは審議の過程の場合に、詳細申し上げたいと思っておるのであります。
  272. 足鹿覺

    足鹿委員 それはけっこうでありますがどこにその重点を置かれるか。たとえば所得の均衡に重点を置かれるかどうか、その点を明確にしていただきたい。
  273. 南條徳男

    ○南條国務大臣 先ほど申し上げましたような目的でございますから、もちろん他産業との所得の均衡をとるための施策、あるいは農業構造の改善、あるいは生産の面においての、農業経済のいろいろな改善をしようというようなことにも施策をしたいと思っております。
  274. 足鹿覺

    足鹿委員 しからば、所得均衡の具体的目標をどこに定めていかれるのでありますか。これは総理の所得倍増の問題とも重大な関係があるのでありまして、特にこれは総理大臣の御所見を承って、明らかにしておきたいと思います。
  275. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまの、農業、非農業との所得はかなりかけ離れております。従いまして、他産業との均衡をどういうステップでとるかということは、重要な問題でございます。それは、しかも農業基本法の内容になる問題でございますので、そういう点をなるべく早く均衡するようにという考えで立案できると思います。     〔委員長退席、八木一郎委員長   代理着席〕
  276. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、そういう抽象的なことを聞いておるのではない。現在政府考えております、本年五月十一日に農業基本問題調査会が正式に答申をしたもの、また今月の一日農林省案として発表された農業基本法の構想、この二つについて、私はお尋ね申し上げておるのでありまして、先日の南條農相の御答弁にありましたように、農業基本問題調査会において長時間の研究をいたしました、その答申に基づいてこれからやるのだ、こういうことを言っておられるわけであります。その答申によれば、町村地域から都市的要素を除いた地域の勤労者を、所得均衡の具体的目標にするのだと言っておるのであります。何ゆえに、全都市の勤労者平均あるいはまた中小都市の勤労者平均を比較してやれないのか。いわゆる、町村地域の都市的要素を除くと申しますから、人口四、五千程度のいなか町の、しかも、そこの勤労者の所得を標準として均衡をはかるということになりますると、いかにその均衡所得の目標が低いものであり、みじめな者を対象にしておるかということは明らかではありませんか。これが、いわゆる農業基本法による所得の均衡を得せしむるという対象である以上、この農業基本法の構想は、現実における零細企業等の労働者並みの所得を農民に保障するのであって、何ら内容的には発展はないと言っても過言ではないと思うのでありますが、池田さんの御構想はいかがでありますか。
  277. 池田勇人

    池田国務大臣 まだ私は、今の答申を見ておりませんので、しかも所管が農林大臣でございますから、農林大臣からお答えすることにいたします。
  278. 足鹿覺

    足鹿委員 総理は、昨日の本会議において、経営規模を多角化し、経営規模を大きくするよりほかにない。そこで第一種兼業二百三十万、第二種兼業百六十六万、これは農家と名づけるのはいかがかと思う。もうそれは農家ではない。こういうふうに断定をして、新しく何割減るかは問題ではなしに、そういう意味において、十年後のために施策を講ずるのだと、はっきり言っておるではありませんか。何を目標にこういう言葉を御答弁になったのか。目標もなく、見当もつかないで、所得の倍増や均衡を論じても、それはナンセンスではありませんか。
  279. 池田勇人

    池田国務大臣 農業全体といたしまして、今の農業の実情から、そういうふうな方向で、農業を企業として、非農業とつり合いのとれるような方向に持っていく、その基準並びに方法をきめるのが、農業基本法でございます。答申でどういうふうに出ておりますか、今答申を見ておりませんが、それを今後私としても十分検討していきたいと思っております。
  280. 足鹿覺

    足鹿委員 この「農業の基本問題と基本対策」の十一ページに、いろいろな場合を想定して、そして最後に、大体基本問題調査会がとろうとしているものが、今私が述べたものであります。これに基づいてやるのだと、南條さんは昨日言っておるのでありますが、これを否定するのでありますか。南條さんはこれに基づいてやると言い、総理大臣はまだ読んでおらないから何をするかわからぬ、こういうふうに、この正大な問題をお逃げになるということは、納得がいかないと思いますが、その点いいのですか。
  281. 南條徳男

    ○南條国務大臣 これは、昨日も私が申し上げましたが、お説のように、農業基本問題調査会で答申がありましたのに基づいて、この農業基本法を作るわけでございますから、その内容は、大体この基本問題調査会の答申の内容が多く含まれておるわけでございます。そこで、どの程度に均衡をとるかという、その基準のことでございますが、一応案の中には、町村の他の従業者との均衡というようなことにも見えますけれども、それはいまだ確定したわけではありません。いろいろとそういうようなものの生活環境、あるいは社会情勢等から見て、なるべく近い所得の人の標準がよかろうというようなことが、一応の案になったわけでございまして、これは今後もなお検討する余地があるということになっております。
  282. 足鹿覺

    足鹿委員 それは、あなたがこの答申をよく読んでおられないからです。総理大臣は答申を読まないで、農民所得を倍にするのだ、こういうことを不用意にも言われます。あなた自身も、これを読んでおられない。この十一ページに、「これは、町村の勤労者家計は農村の低所得の直接的影響を受けているという問題があり、また町村地域の勤労者家計についてはあまり統計が整備されていないという難点もあるが、他面、生活環境生活様式も類似しているので比較可能性があり、」云々とちゃんと言っているのです。ですから、そういうふうに不用意に、不勉強でこういうことを云々されることは、少しお慎みを願いたい。もっと確信のある一一これは少なくとも今度の総選挙における争点の重大な問題であります。その焦点をぼかして、何を農業基本法はやろうとしておるのか。
  283. 南條徳男

    ○南條国務大臣 今、足鹿委員のお説のようなことは、まだ確定したものではございません。一応そういうことに書いてありますけれども、それはどの程度の範囲にしかく基準をするかということは検討中だということには間違いございません。
  284. 足鹿覺

    足鹿委員 あまりこの問題で時間を食いたくありませんが、南條さん、もう一ぺん昨日のあなたの答弁をお読みいたしておきます。農業基本問題調査会において長時間の間研究いたされました、その答申に基づいて、これが今の日本における農業政策の基本であるという考えに立ちまして、それを実行いたしたいというのが農業基本法の考え方でございます、と言っておるじゃないか。何をあなたは言っておるのですか。
  285. 南條徳男

    ○南條国務大臣 赤路さんや参議院でもその点についての御質問がありまして、具体的に私はそのときにも今私が申した通り言っておるのです。基本問題調査会では答申はありますけれども、今度の基本法の制定にあたりましては、内応は十分その点を研究いたしまして、妥当な線を作ろうというので、いまだ決定しておりません。     〔八木一郎委員長代理退席、委員長着席〕
  286. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは総理に伺います。総理大臣の所得倍増論には農業も入っているのかどうか。
  287. 池田勇人

    池田国務大臣 全体を十年以内に倍以上にしたい、こういう考え方の内容は、今は農業は他の産業よりも非常に低うございますから、その意味で、私は農業の方はもっと倍以上にいたしたい、こういうふうに考えております。
  288. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは何パーセントでなければならないとお考えですか。
  289. 池田勇人

    池田国務大臣 農業は、他の産業よりも非常に低うございますから、全体が倍になれば、低い方はうんと高く、そうして高い方は倍にならなくていい、こういう考えであります。
  290. 足鹿覺

    足鹿委員 農業基本問題調査会が答申をしております、それによりますと、農業所得の狂者の伸び率は、経済成長率七・二%を前提として計算をされ、それが是認されておるのであります。経済白書なり調査会の答申第一号をよくごらんいただきたい。これが所得倍増論の数字的根拠であります。先ほどの成田委員の質疑等を通じて明らかになりましたが、総理大臣は、経済の成長率を少なくとも三カ年間は九%に引き上げたい、こういう御意見のようであります。そういたしますと、その場合、農業の成長率を何ぼに見られるのでありますか。それを聞いておるのであります。
  291. 池田勇人

    池田国務大臣 所得倍増計画は三年側であれするわけじゃない。そのもとを作るのでございますから、今急に農業所得が何%になる、三十六年度は門%になるという計算はいたしておりません。全体として九%でいこう、しこうしてその内容につきましては、ただいま企画庁で検討いたしておるのであります。
  292. 足鹿覺

    足鹿委員 そうではないのです。現在の五%というものが出ておるので、三%の生産率の上昇、あと二%はいわゆる人口の間引きによって、そして五%というものを出しておるのです。これが七・二%の根拠になっておるのですよ。それでは経済企画庁の長官に伺いますが、この根拠を、九%の伸びとした場合には幾らに改訂をされるのでありますか。
  293. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 足鹿さんの御質問は九%十年間という意味ですか。
  294. 足鹿覺

    足鹿委員 三年です。
  295. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 三年間で、三年目に大体農業所得が何%上がっておるかということをお聞きになっていらっしゃるわけですか。三年先に何%上がっておるか——その計算は、ただいま私手元に持っておりませんが、まだできていないと思います。
  296. 足鹿覺

    足鹿委員 しからば五%の改訂が必要であるということをお認めになりますか。
  297. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 所得倍増計画というのは、先ほど申しましたように、十カ年で倍にする、すなわち七・二%ずつ成長していくということを前提とした一つの基準計画なんです。その場合には、農業所得はそうなるということは、関連がちゃんとございます。しかし今度はさしあたり三年間は九%ずつ成長するであろうといった場合に、三年目にどうなるかということについては、数字がまだできていない、こういうことです。
  298. 足鹿覺

    足鹿委員 要するに、そうしますと、農業の成長率は五%だ、あるいは五%以上である、どちらなんですか。
  299. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 おそらく五%以上になると思います。
  300. 足鹿覺

    足鹿委員 幾らになるのですか。
  301. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 ですから、これは三年間というものについて、三年目に幾らになる、工業所得は幾らになる、何になるということは、今のところ計算を持っておりません。十年間というものは……。     〔「三年がわからなくて、どうして十年がわかるんだ」と呼ぶ者あり〕
  302. 足鹿覺

    足鹿委員 五%を幾ら上回るか、その伸びによっては、農業は状態が悪くなるという逆な現象が出てくるのです。ですから、私は、その点をしつこく追及しておるのです。あなた方は農業の所得と他の産業所得との格差を縮めて均衡を得せしめると言っておる。しからばその五%を、九%になった場合には幾らにするか。その率によっては、逆に農業が不利な立場に追いやられるという事態が起きることを御存じですか。そういうことになるのです。だからこの点を私ははっきりして下さいと言っておるのです。
  303. 南條徳男

    ○南條国務大臣 この点は、足鹿委員に申し上げますが、お説のように農業生産が三%、人口間引きによる比率が二%ということは、年々農村から他産業に約三十万から四十万が流れておるわけです。それが大体千五百万に対する二%三くらいになっておりますが、合わせて五%二、三ということで、実際は五%よりもっと上です。そこでこれを他産業ともっと格差を縮めて、農業生産を高め、そうして農業の所得を伸ばすためには、今後いろいろな施策の中に、たとえば今のような農家の営農規模が小さ過ぎる。これを共同経営する、あるいは多角経営することによって、農業人口というものが他産業にもっと流れます場合には、現在の三十万以上、他産業が経済の成長で伸びますと、総理の言われるように、もっともっと伸びる。もっと農村から人口が減るだろう。そうしますと、三十万のものがその場合に二%二である。これがかりに五十万になれば、さらに一%五ぐらい伸びる。そうするとこの方が四%になりますと、合わせて七%以上になる。こういうことでございますから、つまり農業の合理化的な経営をすることによって、農村を今後、今のような形でなく、自主的な農業、近代的な農業を経営するということになりますと、こういう意味農村の所得が伸びる、かような考え方で、十年間には相当伸びるという考えでございますから、他産業が九%いく場合においても、農村の方がそれに近い数字にいくだろうという計算でおるわけでございます。そういうわけですから、それには農業経営を、いろいろな面で、どういうふうにするかということについては、いろいろ案があるわけで、いろいろ申し上げたのであります。
  304. 足鹿覺

    足鹿委員 今、南條さんからいろいろお話がありましたが、一つの具体的な問題についてお尋ねをいたします。農業生産対策の面から、今の農業の伸び率を三%の目標を達成しようという場合には、今後十年間に、今まで投ぜられた土地改良に対する二千億あるいは耕種改善に使われたところの四百億、この数字を四倍ないし七倍にしないことには、三%の成長率をも期待できないのが現状なんです。これはあなた方が政府資料として出されました「農業基本問題に関する検討事項、調一般NO4」にちゃんと書いてあるのです。そのものによりますと、二百十五ページには土地改良等農地基盤の整備について八千六百六十一償円、耕種改善等には三千二百九十償円の予算を伴わなければ、三%の農業経済の所得の伸びは出ないということがちゃんとあなた方の政府資料に載っておるのですよ。三%の農業所得の伸びを期待するのにはこれだけの経費を必要とするのでありますが、しからばこれに伴う長期計画というものがあるのでありますか。三%においてこれですよ。今南條さんのおっしゃることによりますと、四%をもっとふやすんだ、そうして間引きもやるんだ、こういうお話でありますが、三%の伸びのためにもこれだけの措置を必要とする。いわんや今あなたがおっしゃったようなことになりまするならば、財政的あるいは金融投資なり予算の面においてどういう措置を講ずればそういう数字になるのでありますか。具体的な計画を一つお示し願いたい。
  305. 南條徳男

    ○南條国務大臣 お答えします。農業の生産の三%は三十五年、ことしの統計で見ますと、六%になっているという統計が出ております。これは農産物の価格というような面もありまして、一がいにそれだけが生産だとも言われませんけれども、相当伸びるという可能性はほかにも因縁があるわけであります。そこで今後この農業基本法によりまして農業の繁栄をさせるために、近代的な農業にするためにはもちろんいろいろな施策をいたすのでございますから、これに対しては財政的な措置を十分しょうという計画で、三十六年度の予算にもこの要求をしておるわけであります。
  306. 西村直己

    西村委員長 足鹿君に申し上げます。あなたの持ち時間は十一時八分までですから、その間に一つおやり願います。
  307. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣に伺いますが、昨日の本会議においても農林大臣は多角経営ということを力説され、本日もまた多角経営ということを力説されております。しかしながら現在における農業近代化の指向するものは、基幹部門を確立するという基本方針の線に沿って経営の近代化を促す、また牧畜等の作物についてはこれを大経営規模化していく、また園芸、養蚕等はこれを高度化していく、畜産は共用地を拡大して多頭飼育をやっていく、これはあなた方政府の出した資料によって明らかである。つまり多角経営を農林省当局は考えておるのではない、経営の高度化、専門化、分化を考えておるのであって、あなたの言っておられる多角経営というのは、これは全く時代おくれの昔の、戦前のいわゆる篤農家主義の多角経営論でありまして、その議論をもってしては、農業経営の近代化はおろか、合理化はとうていできません。もう少しその点は基本的にあなたの頭の中から検討し直して御出発を願いたいと思います。多角経営などというような段階ではありません。今日の日本農業が零細規模の中に閉じ込められて、非常に困った状態で低生産性を彷徨しておるということは、従来の誤ったいわゆる多角経営篤農主義がもたらした、いわゆる零細自作農主義がもたらした結果であって、それをあなたはおくめんもなく、多角経営で経営を近代化していくなどというようなことを一国の農林大臣として答弁されますことは、農政を知らざるもはなはだしいではありませんか。
  308. 南條徳男

    ○南條国務大臣 足鹿委員からおしかりを受けますが、用語の違いならば別でございますけれども、私の言う多角経営ということは、農業経営規模を拡大しまして、零細農の二反、三反というようなものを共同化するということは御承知通りであります。そういたしますことによって、今までの米麦中心のみならず、畑作の振興ということから畜産酪農ということをする、あるいは園芸果樹ということもやらせる、その他いろいろな土地の利用をいたしまして多角経営をさせようということでありまして、もし用語の点においてあなたの言う考えと違うならば、これは訂正いたしますれけれども、そういう意味のことであって、農業の高度化、近代化ということには違いございません。
  309. 足鹿覺

    足鹿委員 そういう御認識ではとうてい日本農業の近代化は不可能である。これは議論になりますからこれ以上申し上げません。  次に時間がありませんので、肥料問題について伺いますが、昨日の肥料審議会は事実上の諮問案を返上したと同じ結果をもたらしておると思いますが、肥料のマル公価格はいかようにして御決定になるのでありますか、また幾らに御決定になるのでありますか。
  310. 南條徳男

    ○南條国務大臣 今年のマル公の最高価格を肥料審議会に諮問をいたしました価格は一かます三十一円七十一銭でございます。
  311. 足鹿覺

    足鹿委員 それは何ですか、マル公価格ですか。
  312. 南條徳男

    ○南條国務大臣 最高価格であります。三十一円七十一銭の引き下げを昨年に比べてするということであります。
  313. 足鹿覺

    足鹿委員 それはマル公ですか。
  314. 南條徳男

    ○南條国務大臣 昨年の一かますの価格よりも、今年は最高標準価格を……(「マル公かと聞いている」と呼ぶ者あり)マル公です。標準価格ですから、昨年に比較いたしましては三十一円七十一銭の引き下げをいたすということであります。
  315. 足鹿覺

    足鹿委員 別に昨日は答申をしておらぬじゃないですか。だからこれはあくまでも暫定価格と解すべきではないかという説もあります。今の大臣のお話によりますと、マル公だと断言をされますが、それは答申のないマル公ということになりますが、それでよろしいのですか。
  316. 南條徳男

    ○南條国務大臣 お説のように昨日審議会におきましては、生産の合理化ということを一緒にしなければ——この五月の需給審議会でそういう御要望がございまして、そのために七月に上げますのが延び延びになっておった。ところが今度の合理化案というものが不十分であるから、今回はこの点については答申しかねるという意見でございました。しかし肥料価格がきまらぬということは、農村自体においても非常に混乱を来たして困るというような農業団体の方からもお話がございまして、今後この合理化案というようなものは二月ほど延ばし、選挙後には政府としてもきめたい。その間暫定的にこの肥料価格だけをきめておきたいということで、政府側にこの答申を審議会の会長から話がございまして、それを今まかせられておるような次第でございます。
  317. 足鹿覺

    足鹿委員 今のお話は、正式の答申は、硫安工業の合理化案というものが出てきたときには、その三十一円七十一銭の値引きも変わるかもしれないでしょう。だから十二月か来年の一月ごろまで延期をするんだ、こういうことになっておれば、これは暫定価格ではありませんか。これは一応のマル公ではあるかもしれぬ。しかしそれは十二月の正式答申を待てば当然もっと下がるべき性質のものと解すべきものではないでしょうか。でなければ、合理化案などというものはナンセンスではありませんか。
  318. 南條徳男

    ○南條国務大臣 先ほど申した通り、どこまでも暫定価格でございますから、年末にこの合理化案と一緒にきめますときにさらに検討する。一応これは暫定価格であります。
  319. 足鹿覺

    足鹿委員 マル公価格をこえて取引をすることは、臨時肥料需給安定法第十四条は禁止をしておるのですが、もしこのマル公価格が下がった場合はみずから第十四条をあなた方は無視するのですか。そういう結果になるのですよ。需給安定法第十四条をお読みいただきたい。
  320. 南條徳男

    ○南條国務大臣 年末にこの暫定価格についての合理化案と一緒に最終的に決定する場合におきまして、これがさらに変動のないような指導はしていきたいという考えでございます。
  321. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと大蔵大臣に伺いたいのですが、三十五年度から四カ年間に約八十億円程度の価格差補給金を出すということが巷間伝えられております。大蔵当局はこれに対してどのように対処されようとしておるのでありましょうか。今度この問題をはっきり割り切らなかったゆえんは、選挙後にこれを持ち越したというゆえんは、いろいろなうわさも飛んでおるわけです。なかなか含みのある態度としていろいろな疑惑とうわさを生んでおるということを一般世間の人は言っておるのでありますが、大蔵大臣は補給金を出すということに対する基本的な御所信をどういうふうにお持ちでありますか、はっきりしておいていただきたい。
  322. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 肥料の問題は、掘り下げれば掘り下げるほど、結局これは本質は価格の決定問題であって、価格の決定によってどうにでも善処できる問題ですから、これは一般会計で特に補給金を出すというような問題では絶対にないと私は思っております。
  323. 足鹿覺

    足鹿委員 御明答をいただきましたので、それではその程度にいたしますが、通産大臣に一つだけ伺っておきたいと思います。  日本のメーカーの生産費と外国硫安の価格は非常に開いております。向こうは四十ドルを割っておりますが、こういう安い肥料を日本へ入れてくること自体が、貿易自由化ではそういう面をおやりになれば、国内産業も合理化してくるじゃありませんか。相当抵抗力もある大企業でありますし、むしろ外国産硫安を輸入しようという考え方も出てくるでありましょうし、また一部には、肥料二法の廃止によってもっと合理化を促進したらどうか、こういう意見もあるわけでありますが、農林、通産両大臣の御所見はいかがでありますか。
  324. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいまは四十七ドル見当で合理化をやっております。しかしこれでは勝負になりませんので、四十二ドルを目標として今やろうとしておるわけであります。これにしますと大体合うのでございます。しかし何せ世界じゅうがひどく競争しておる問題でございます。これはもっともっと下げるような方向にも進んでいかなければならないと思います。こういう道程において、外国と戦いのできるような合理化も進めながら、今のような自由化の問題も考慮していきたい、こういうふうに思っております。
  325. 足鹿覺

    足鹿委員 もうあと重要な点が一問ありますので、肥料問題の結論だけを申し上げておきますが、硫安問題の背景は、世界市場に対して日本が最初にダンピングをやったことが今日の事態を招来しておるのであります。従って、国際競争に敗れた日本の硫安メーカーがこれではならぬというのが、国内肥料価格の値上げを策したり、あるいは硫安輸出会社の赤字処理を持ち出した理由になっておるのでありまして、そういう点を考えたならば、もっと合理化に対して熱意を持ち、合理化を促進していくということを考えなければいけないのであります。たとえばバルク・ライン方式が事実上においてくずれるような算定をことししておいでになります。あるいは特別償却を見るとか、運賃を増額するとか、あるいは下がっておらなければならない労賃が上がるとか、三十一円七十一銭値下げの根拠の資料についても、われわれはいろいろな資料をもらって検討したのでありますが、それは本日のことにはなりませんので留保いたしますが、とにかくそういう自分たちの合理化を真剣にやることを怠って、そうして補給金にこれを求めたり、あるいは副次製品にその道を求めたりするところに大きな矛盾があるのでありまして、この硫安問題に対しては、三十八年度を目途として合理化をするといったようなのんきなことでは済まされない問題である。このことだけは指摘しておきたいと思います。  最後に農業災害補償法の抜本改正問題について伺いますが、政府はさきに農災制度研究会を設置して、農民から喜ばれないこの農災制度の根本改正に乗り出しました。本年四月一日に農業災害補償制度協議会——各界委員が四十四名、議長は清井正氏でありますが、これを設置して、制度の検討と意見の調整を行なうこととし、四月二十六日まで三回、五日間にわたる全体会議を開いたが、五月九日以降は二十名の小委員会において項目別の問題点の検討に入りました。三回、七日間に及ぶ慎重なる検討の結果、議長に試案作成を委嘱し、去る九月二十日の第四回小委員会に議長試案が提出されました。小委員会は、この案につき十月十三日、十五日の二日間にわたって審議をいたしました結果、機構については、農業共済事業団及び任意共済一元化に関し、小委員中一名の反対意見を留保して小委員会案が決定をいたしました経過は、大臣も報告によって御承知のことと思います。そこでこの小委員会案を、十月二十日に全体協議会を開き、これに報告し審議の上政府に報告する予定であったのであります。私もその小委員の一人として全く寝食を忘れて努力をいたしました。ところが、この際二十日にそれを答申しなければ、この制度の改正による三十六年度の産米から実施するということが困難であるという事情を政府も与党も知りながら、十月十八日、突如政府は一方的に二十日の会議を延期し、長い間の委員の精励と熱心な努力の結果を無視して結論を選挙後に持ち越してしまったのであります。このことはまことに一方的な横暴きわきる態度でありまして、われわれは納得できません。しかもその全体会議を中止した真意は、自民党政調農林部会がその原因だと言われているのであります。政府自身が発意したものではない。農林部会の一部の策動によって制度改正を事実上見送るような結果に追いやってしまったのでありますが、これに対して農林大臣はいかような御所信を持っておられますか、この点を伺いたい。  なお三十六産米等から抜本改正によって実施できない、こういう事態が起きました場合は、これは現在全国においても二百をこえる解散、事業を休止した組合が続出し、われわれは、抜本改生ができるのだからいましばらく待てというので、建設的な態度で対処してなだめてきました。にもかかわらず、これが事実上において来年度実施できないということになりますならば、この制度は全国的に音を立てて総くずれになるでありましょう。その責任は一体だれが負うのでありますか。特にこの制度の現状維持を策し、自民党の内部にあるところの一部の勢力が自己の保身を考えつつあるやにも伝えられておりますが、そのことはまず別問題としましても、小委員会案を農林省は省議決定したと伝えられておるが、これは事実か、これが第二点であります。  また法律改正はまだできない。答申もないわけでありますから、改正はできますまい。とすると、何に基づいて来年度の予算を計上するのか。第一次要求はすでに終わったと聞いておりますが、何を根拠としてこの予算を組もうとしておるのか、どういう性格の予算を組もうとしておるのか。これは農業政策としては、昭和三十五年度においては百十五億円弱の膨大な経費を使う農業政策一つの柱ともなっておるのでありまして、その点について十分に御検討の上御答弁を願いたい。  第三は制度協議会の運営について、今後協議会を存続し、選挙後も引き続き運営する意思があるかないか。  それから第四点として抜本改正の実施が困難な場合の措置をいかにするか。たとえば法四十六条解散条項について、行政庁の認可を受けなければその効力を生じないとなっておりますが、これをたてに取って経済局長通牒によって、各地において解散を正式に議決しても知事が握りつぶして解散をさせない。これは法に明らかになっておるものを一片の行政通牒をもって阻止しておるという不当、不法の行為であろうと私は思いますが、この通牒を撤回する用意があるかないか。また事業団の構想と任意共済一元化についての大臣の御所見を伺いたい。  それから災害対策の基本法の問題でありますが、これは自治大臣にもお伺いしておきたい。年々頻発する各種の異常災害に対して国の責任を明らかにし、制度の不合理を是正するために、災害立法は災害のつど特別立法することはやめて、恒久的立法化をはかって、災害の程度に応じて一定基準に基づいて自動的に適用できるような総合恒久立法化は必要があると思いますが、自治省の手元において目下検討中といわれておりまするが、次の国会にいかようなものをお出しになるお考えがありますか。この点も明確にしていただきますると同時に、本年度災害対策の進行はきわめて遅々たるものがあるように見受けますが、これが早期実施についていかようにお考えになりますか。われわれの任期中に発生した災害は任期中に復旧すべきであると私ども考えますが、この点についていかようにお考えになりますか。もしも総選挙までこれを留保して総選挙中にこの問題を解決するがごときことがありますと、幾多の弊害が予期されると思うのでありますが、この点についていかように考えられますか。また連年災害につきましていかように対処される所存でございますか。十月十日自民党は一つの案を決定しておるといわれておりますが、閣議決定をして早急にこの連年災害等に対する措置を講じられるお考えがあるやいなや、この点を農林大臣、自治大臣御両氏に伺いたいと思います。
  326. 西村直己

    西村委員長 まだ質問者が残っていますから、閣僚の御答弁も簡潔に願います。
  327. 南條徳男

    ○南條国務大臣 農業災害補償問題について御答弁しますが、御承知通りこの災害補償協議会を開いておりまして、たびたび足鹿委員を初め御熱心に御審議を願って、そこで最終的には今お説のように結論はありましたけれども、これは政府として別段農林省は省議できめておるわけではございません。従って各保険組合等の脱退、解散というようなことについても、事態の推移を見まして、今後十分措置をとるつもりでございますが、小委員会の結論等を十分尊重いたしまして、通常国会には抜本的な改正案を出したい、こういう考えであります。
  328. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の災害の起った場合の災害基本法的なものを作っていこうという考え方は、前内閣時代から特に研究を始めておりますが、まだ関係当局の間に一致した結論が出ておりません。これは内容的にも財政的にもいろいろ問題の多い点でありますので、引き続き研究を続けまして、でき得るならば次の国会に出したい希望を持ってやっておりますことを申し上げておきます。     …………………………………
  329. 西村直己

  330. 神田大作

    神田委員 時間が制限されておりますから、農政問題等について池田首相にただしたいと思います。池田首相は農業人口の削減について御答弁をされまして、六割を削減をして四割にするというようなことを言われましたが、一体これはどのような方法でもって六割削減を実現しようとするのか、伺っておきたいと思います。
  331. 池田勇人

    池田国務大臣 六割を削減するということを言ったのではないのであります。経済発展によりまして第一次産業からだんだん第二次、第三次産業に移り変わっていくだろう、こういうことを言っておるのであります。
  332. 神田大作

    神田委員 六割を削減したと言わないということでありましたが、公開の席上において首相は全国を遊説して六割削減を現に言っておるわけであります。また農林大臣はこの六割削減を聞いて、だいぶあわてて首相に一体どういうことなのかと言って農林大臣が首相に尋ねるというような、われわれからすればまことに奇異の現象を与えるようなことがあったのであります。あなたは全国の演説会場においてあれほど声を大にして六割削減を言いながら、そういうことは言わないというようなそんなことは国民を欺瞞することであると思いますが、いかがでございますか。
  333. 池田勇人

    池田国務大臣 削減すると言ったらこっちが故意に減らすということであります。しかし結果がそういうようになってくるだろうということとは意味が違います。だんだん経済が進んで農業人口が、いわゆる農家の数が減ってくるということを言っておるのであります。
  334. 神田大作

    神田委員 六割削減の問題についてだんだん数が減って、六割減って四割になる、こういうことを言われた。だから私はその方法はいかなる具体的な方途をもって四割に削減をするのかということを伺っておるのであります。
  335. 池田勇人

    池田国務大臣 今の農業の実態を見まして、このままにほうっておいてよいでしょうか、私はそれを考えるのでございます。農業自体が農業として一つの企業として成り立つようにしていくためには、その経営が今のような小規模でなしに大規模であり、多角経営でなければならぬ。片方では産業の発展によって新規の労働力が要る。これをずっと見ていくと、ほんとうに農業が専業農業としていく場合におきましては、それが非常に減ってきて、四割程度が専業として残るのではないか、こういうことであります。
  336. 神田大作

    神田委員 今の農業が零細農業であって、農家経済はどうにもやっていけないというようなことは、これは首相に言われなくても全国の人はだれもわかっておるのであります。問題は、いかなる方途をもってこれを適正規模農業に転換していくかということが問題であります。そんなことはあなたが言わないでもだれでもわかっておる。どんな方法でやっていくか、その具体的方途を示してもらいたい。
  337. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来言っておりますように、農業基本法を制定し、そうして農民が喜んで他の産業に移り変わる、また残る農家は十分企業として成り立って、所得が他のあれに比較してつり合いのとれるように——それは今でも年に三十万あるいは四十万他へ転業しておりますので、今、君はどうせい、君は残れ、こう言うのではありません。経済原則によって利益の多い方に流れていく、こういうことでございます。
  338. 神田大作

    神田委員 農業が自然に第二次、第三次産業に流れていくことによって四割になる。そういうことだとすると、今までやはり他産業に流れておるのですが、あなたのように十年たって四割程度というように大規模に農業が減るという根拠は、ただそれだけじゃ僕は納得できない。どういうような過程をとってどのような基礎に基づいて、六割削減になるか、四割になるかということは、あなたが全国民に訴えた以上はその基礎があるわけだ。確固たる基礎に基づいて——ただ十年たったら四割になるだろうというようなことであったら、これは総理大臣の放言だと思う。こういう根拠のないことを言って農民を惑わしちゃいかぬと思うのでありますが、その根拠を僕はついておるのです。その点言明願いたい。
  339. 池田勇人

    池田国務大臣 農業自体につきましては、農業基本法の制定等であります。そして所得の地域格差をなくするというので産業を地方に分散する。そしてまた農民の方々、ことに子弟の方では高等工業、つまり技術をあれする、産業の地方分散、そして農業自体の改良、こういうことでやっていこうと思います。
  340. 神田大作

    神田委員 総理のその答弁だけでは、私は、数字的に農民が十年間に四割になって必ずそういう状態になるということにはならぬと思う。それは抽象的です。農業の改良をやるとか、あるいは他産業に流出するということは、これは抽象的なんです。少なくとも一国の総理大臣が天下に言明した以上は、それは科学的な根拠がなくちゃならぬ。それをただ十年たったら四割になるであろうというようなことを言われるのでは、はなはだ迷惑な話です。本会議において首相は、いわゆる兼業農家は農業でないとか、あるいは兼業農家をふやすことによって農業を離農させるとか、あるいはまた兼業農家全部をほかへ、第二次、第三次産業へ転出させることによって、専業農家が四割になるとか、そういうことを言われておりますけれども、一体兼業農家というものに対して首相はどのように考えておるか。
  341. 池田勇人

    池田国務大臣 これは第一種、第二種の兼業農家が他へ行くということにきまっておるわけではございません。専業農家でも規模の小さい人は、また土地の関係でいわゆる第二種兼業になる場合もござましょう。しかし全体として農業が一つの企業として立っていき、非農業との関係を考えると、経営規模を拡大し、専業農家が十分やっていけるような方法で処理していかなければならない。しかも片一方で第二次、第三次の産業が発達いたしますから、必然にまた農業人口をこっちに受け入れる、受け入れなければならぬ、来てもらいたいという状況が生み出てきますから、私としては大体十年後には、企業として立っていく専業農家は今の四割程度になる見込みだと言っておるのであります。
  342. 神田大作

    神田委員 兼業農家を全部他産業に吸収いたしましても四割にはならない、これは統計にもちゃんと出ています。兼業農家といわれるもので独立できると思われるのは約二〇%、二百万である。この二百万戸が第二次、第三次産業にいっても、とても六割削減などというようなことはできない。第二次、第三次産業へ農家を転入させただけでは四割には農家はならない、首相はどう思いますか。
  343. 池田勇人

    池田国務大臣 第一種、第二種の農家の方々が全部なったと一応仮定いたしますと、大体穴百万世帯のうちで四百万だけありますから、これは今の専業農家なら四割以下になる。しかし私は専業農家は動かないで、一種の兼業、二種の兼業を言っておるのではなく、全体としてそういう姿になるであろう、所得が倍、生産が倍、しかも非農業との権衡をとるということになると、そういうふうな見通しになっていくということを言っておるのであります。
  344. 神田大作

    神田委員 それはきのうの本会議におけるあなたの答弁と非常に食い違っておる。あなたの場合は、兼業農家を第二次、第三次産業に吸収することによってこれを推し進めていきたいということがあなたの本会議における答弁です。そうなると私の質問に対するこの委員会におけるあなたの答弁と本会議の答弁とは非常に食い違っておると思うんです。ただ単に他産業に転出するだけによって六割の現在の日本の農業人口が吸収できるとはわれわれは考えられない。そのほかにこれはもっと抜本的な対策を立てなければならぬと思うのですけれども、この第二次、第三次産業への転入以外に首相はどのようなことを考えておられますか。
  345. 池田勇人

    池田国務大臣 それが今申し上げたように農業基本法である。そしてまた私の考えでは、今の経営規模が非常に小そうございます。一反とか八畝くらいの分を個別的にやっております。こういうものは一緒にして、耕耘機などを使う場合には広くした方が能率が上がります。そういうふうに農業の今の経営規模を変えていきたいというのが私の念願であります。
  346. 神田大作

    神田委員 農業の経営規模を変えることは、これは今後われわれとしても今までのような農業経営ではとてもやっていけないことはわかっております。しかしそれかといって六百万農家を四百万減らしていくということはこれは並み大ていのことではない。農民にはまた土地に対する非常な執着があるわけであります。たとえば適当な職業があったところで土地を放さない。そういうものを持っておるから、首相の言われるように適正拡大規模農家というものができるとはなかなかわれわれは考えられない。それを十年たって農家が四割になる、たとえば第二次、第三次産業に何%どういう工合にして移っていくか、あるいは総合開発等によって何戸どういうふうにして農家を拡大していくか、いろいろあると思う。そういうこまかい計画をわれわれに提出しないで、ただ大衆の前で、大衆にアピールするために演説をやっておるというようなことは、これは首相としてはまことに軽率な、しかも無責任な言辞だろうと思うのですが、いかがでございます。
  347. 池田勇人

    池田国務大臣 私は念願として、十年以内に全体の所得を倍以上にしたい、そういう目標を立てたときには、各産業がどうなるかということで——ことにお気の毒な今の農業については、これはりっぱにやっていける一つ農業にしていこう、そうして他の余った人と申しますか、余った人は他の方へ行く、しかもそのときに、あなたのおっしゃるように、土地を放したくないというふうな人たちがおられることを知っております。そういうのを、いわゆる共同経営だとかあるいは農業法人とか、いろんなことを施策していくよりほかにないと思います。
  348. 神田大作

    神田委員 それは首相のは抽象論です。十年後に四割になるというような確固たる計画はない、またそういう見通しのないことを理想としてあなたは言っただけにすぎないのです。これはわれわれから言わせれば、そういうようななまやさしいことでもって六百万戸からの農家が二百万戸になって適正規模になるということは、現在の状態においてでき得るはずがない。そういう根拠のないことを選挙を前にして公衆の前において首相が披瀝するということは、これはまことに農民を惑わすことであり、私は非常に遺憾なことだと思う。しからば、十年たって農家が四割になって、いかなる適正規模になるかということについて詳細な資料を提出してもらいたい。
  349. 池田勇人

    池田国務大臣 私は今の農業の状態、漁業の状態を見まして、政治家として十年でこういう目標を立ててやるということは、たとい、各年において、そうして土地の処分をこういうようにやるんだと具体的にきまらなくても、この際そういう目標のもとに農業経営というものを大改革していかなければならぬということは、決して無責任な言葉じゃないと思います。
  350. 神田大作

    神田委員 それは非常に無責任な話です。それはあなたが総理大臣でもない、そういう責任ある立場にない者であれば、これはそういうことを言ってもいいでしょう。十年たってから四割にするとかあるいは三割にするというようなことを言ってもいいでしょう。しかしながら、少なくとも一国の首相ともある者が、詳細な計画を持たず、またそれに対する科学的な根拠を持たずに、ただ十年たったら六百万の農家が二百万になる。そうすれば農家は所得を倍増して裕福になっていくということ、そういうことはその辺の人たちが演説をぶつならば、これはいいけれども、いやしくも一国の首相ともあろう者がそういう科学的根拠のないことを公衆の前で言うということは放言です。この問題について日本農家は、農業転換の上において悩んでおる農民は、非常に迷惑しておる。一体それじゃわれわれのような五反百姓は、いつ今度強制的に離農させられるか、あるいはまたいろいろの経済の荒波の中にもまれ、そうして離農せざるを得ないような立場になるのかといって非常に不安に思っておる。私はこの点について、選挙を前にして、総理のような責任ある立場に立っておる者が、こういう大問題を、単にそうした方がいいというような観点に立って発言することは、非常に遺憾だと思います。その点についてどのように考えておりますか。
  351. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、今の農家の現状を見て、このままではいかぬからこういうふうにいたしたいということを政策として申し上げるのでございますから、これは国民が批判して下さると思います。このままではいかないということは自他ともに認めておる。それをよくしよう、よくしたならば農家はこういうふうな状況になるでございましょうという見通しを言っておるので、決して無責任とは思いません。
  352. 西村直己

    西村委員長 神田君に申し上げますが、持ち時間が大体参っておりますから、あと一問くらい簡潔にお願いいたします。
  353. 神田大作

    神田委員 首相は、だれでも市井の人たちが思っておるようなことをただずばずばと言った。それはそういうことになることが理想である。そうすると、科学的根拠がないのにそうすることがいいことであると、ただ単にそう発言された、こういうようにわれわれはそれでは了解いたします。  時間がありませんから次に進みたい。農林大臣にお尋ねしたいが、肥料の問題で先ほど足鹿委員も質問されましたが、一体輸出赤字を内地の消費者に転嫁しないということは再々あなたが言われておるようでありますけれども、この点について変わりありませんか。
  354. 南條徳男

    ○南條国務大臣 別段変わりございません。
  355. 神田大作

    神田委員 それではきのうの価格の決定の諮問にあたって、あなたは三十一円七十一銭ですか、これだけを去年の価格より安くするというような諮問を出したそうですが、この根拠を一つ御説明願います。
  356. 南條徳男

    ○南條国務大臣 従来肥料の価格の決定は、いわゆるバルク・ライン方式できめておるのでございまして、今年もこの計算できめたのでございます。その根拠を示せとおっしゃれば、資料は事務当局にございますから政府委員をして説明させます。
  357. 神田大作

    神田委員 大体去年は操短をやっておる。操短をやったために三十円は高くなっていたのです。ところが今年は操短をやめた。そうなりますと、操短をやめただけで価格は三十円安くならなくちゃならぬ。そうなりますと、いうと、この企業の合理化に基づく硫安価格の引き下げ等は全然これに入っておらない。この点をいかがに思いますか。
  358. 南條徳男

    ○南條国務大臣 この計算の基礎でございますから政府委員から説明いたさせます。
  359. 神田大作

    神田委員 時間がないから。……政府委員の説明は大体私もわかっておる。ただ問題は、去年の操短でもって三十円安い。すでに三十円というものはそれできまっておる。だから三十円安くしても、何ら安くはなっておらない。われわれの計算によりますと、六十円から安くならなくちゃならないのでありますけれども、これを三十一円七十一銭程度でとめたということは、内地の消費者に三十円からの高い硫安を売りつけるということになるのです。そうするというと、輸出赤字を、内地の農民に売りつける価格によって補てんするということは明らかなのです。これは大臣が、先ほどいわゆる輸出赤字を内地の農民に転嫁しないと言っておりますけれども、数字の上においてこれははっきりしておる。輸出赤字を内地の農民に完全に転嫁しておると思うのでありますが、その点はいかがですか。
  360. 南條徳男

    ○南條国務大臣 その点は、先ほど来申し上げておる通り決して農民にはね返りをさせたのでない。いわゆる毎年計算をいたしますバルク・ライン方式によって事務当局、農林省、通産省で十分いたしたのでございますから、もしその資料説明がほしければ、させようということは、その通りでございます。
  361. 西村直己

    西村委員長 神田君ちょっと待って下さい。約束の時間がだいぶ超過しておりますから、あと一問にしますか、一回だけに。神田君発言の前に、それでよろしゅうございますか。あと一問にして下さい。
  362. 神田大作

    神田委員 いや、まあちょっと……。
  363. 西村直己

    西村委員長 いや、あと一問にしてもらいますから、いいですか。
  364. 神田大作

    神田委員 相当今まで時間を食ってきたのだから、今までのものが相当延びている。
  365. 西村直己

    西村委員長 いや、いや、理事の約束通り守ってもらわなければ困りますから。——勝手な発言は許しません。委員長として申し上げますが、すでに約束の時間はだいぶ過ぎていますから。——それではあと神田君に二問あれしますから……。
  366. 南條徳男

    ○南條国務大臣 そこで神田さんに申し上げますが、今時間の関係で、政府委員からの答弁は時間がないとおっしゃるならば、その決定いたしました資料を差し上げるようにいたしますから、ごらん下さい。
  367. 神田大作

    神田委員 それは政府の勝手に作った資料であって、そんなものを見たって、それは都合のいい資料を作ってわれわれに見せたところで、しろうとじゃないのだから、そんなことでもって納得するわけにいかない。  ところで、肥料問題は、時間がないから以上にいたしまして、一つ特約栽培に関係して……。
  368. 西村直己

    西村委員長 質問を一括して下さい。
  369. 神田大作

    神田委員 専売公社の総裁が見えておるようですからお尋ねしますが、タバコの収納価格というものが、現在非常に低くきめられておる。特に、公社の調査に基づいてわれわれが計算したところによりましても、一日の価格は二百五十円程度にしかなっておらぬ。これは、ほかの作物に比較いたしましても、非常に低い価格であります。ここのように特約栽培といたしまして、専売公社だけにしか納められないようなタバコの価格の決定をするにあたりまして、いかなる方法でもって決定しようとするか、私は当然生産費所得補償方式によって、労賃あるいは肥料その他のものを勘案して決定すべきであると思うのでありますけれども、現在の価格の決定が、イモとかあるいは繭とかいうように斜陽作物を参酌して、そしてその価格を参酌して決定することになりますから、非常に低い価格に決定されます。こういうことにつきまして、農民は非常な不満を持っており、タバコ耕作に対しまして熱意を失っておりますが、総裁はこの価格の決定を今後いかにしようと考えておるか、お尋ねを申し上げます。
  370. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 御承知通り、葉タバコの収納価格は生産費、物価その他の経済事情を参酌して決定することになっております。お尋ねは、生産費あるいは所得補償方式に切りかえたら、こういうようなお話でございますけれども、葉タバコの場合には米と違いまして嗜好製品でありますし、その葉タバコの品質ということが個々の耕作者によってだいぶ違いまして、必ずしも生産費と比例的関係を持つ、こういうわけにも参りませんので、今にわかに生産費あるいは所得補償方式をとるということは適当でない、かように考えておるのでありますが、生産費を重視するという点についてはごもっともなことでございますので、今後十分生産費が反映していきますように、なおあらゆる観点から総合的に適正な葉タバコの収納価格をきめるように努力したいと思います。
  371. 西村直己

    西村委員長 簡潔に願います。
  372. 神田大作

    神田委員 次に食管会計の問題についてお尋ね申し上げますが、麦の価格を一俵当り二百円下げる、そういうことになりますと、麦の買い入れ価格を下げる意図が十分にわれわれは見受けられると同時に、大蔵省の考え方によると、もう米はたくさんだ、そういうようなことを言っておる。そうなりますと、米の買い入れに制限を加えるというようなことでもって、食糧管理法の改正とを企図しておるというようにわれわれは見受けられますけれども、一体麦の買い入れ価格を下げる意向があるか、あるいは米の価格について、消費者価格を下げ、あるいは買い入れ価格を下げる、そういう意向があるかどうか、これをお尋ねします。
  373. 南條徳男

    ○南條国務大臣 米麦の統制を集荷、配給の面でどうかという御質問でございますが、これは本会議でも申し上げたように、消費者あるいは生産者のいろいろな特殊な事情もございまして、このまま継続するという方針に変わりございません。ただ御承知通り、米も麦もそうでございますが、特に麦の点につきましては、買い入れ量が政府として七十万トンにもなりまして、今年は七十七万トンからの買い入れでございますけれども、約一年分近いものが滞貨しておる。そこで、逆さやでもございますし、そのために食管の赤字が非常に出る一方でございますので、これらにつきましては何とか一つ検討しなければならぬという話はございます。ことに麦の消費をもっと拡大するような方向に方法を考えようというようなことから、今神田委員の言うようなことが出たと思いますが、しかし農家の所得として、麦の買い入れ価格を下げるというようなことはなかなか重大な問題でございますから、いろいろな検討はありましても、農家の所得を減らすというような措置は、農林省といたしましては絶対しないという方針には変わりございません。
  374. 西村直己

    西村委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後十一時五十七分散会