○春日一幸君 私は、民主
社会党を代表し、
政府の
施政演説に対し、まず冒頭に、今回の解散の意義と目的について
池田総理の所信をただし、次いで、財政、
経済上の諸問題について
総理並びに
関係閣僚の所見を
お尋ねいたしたいと思います。
今臨時国会は、衆議院を解散するために開かれた解散国会であります。従って、本院は、この本会議の論議を通じ、この解散の意義とその目的をまず明確にいたさなければ相なりません。
顧みまするに、過ぐる第三十四回国会は、五月十九日夜半から二十日の未明にかけて
自民党の盲目的暴走に端を発し、国会は絶望的な混乱に陥り、
わが国議会
政治はまさに破局の危険にさらされたのであります。すなわち、
自民党の会期延長の無理押しと、新
安保条約の無通告単独採決という、まさに多数の暴力とだまし討ちをからませた国会運営は、期せずして全
国民の怒りを激発せしめ、自来、国会周辺は抗議デモの渦潮の中におおわれ、かくて、議長は登院し得ず、
総理またその所在を明らかにせずして、ために、国会は、その後月余にわたって、その機能を停止するに至りました。まさに
わが国議会史上かつて見ざる致命的大不祥事と申さなければ相なりません。(
拍手)申すまでもなく、国会は国権の最高機関であり、国の秩序のいしずえであります。この至上の権威を破壊し、その秩序を混乱せしめた原因は何か、私どもは、この際、まず、その真相を究明し、その事実関係をつまびらかにせなければ相なりません。(
拍手)
私は、まず、
自民党の国会におけるその行動の実歴についてただしたいと思います。
ワン・マン独裁宰相吉田さんの指揮権発動の古きは問わず、ここ三、四カ年の事例に限っても、たとえば、鳩山総裁のゲリマンダー小
選挙区法案、岸総裁のオイコラ警職法案、ニワトリ三羽百五十億のベトナム賠償から、あの恐怖に満ちた新
安保に至りますまで、国会を混乱に陥れたそれらの諸法案は、ことごとく、それは、自説を独断して他を顧みず、異論あらば数で来いと、ことさらに挑戦豪語したものであって、また、その国会運営は、事ごとに多数の横暴をほしいままにして、それをみずから夜討ち朝がけは兵家の習いなりとそらうそぶくほど、それは暴逆理不尽の一語に尽きるものであったと思うのであります。(
拍手)しこうして、
自民党は、その意思に逆らう者ことごとくを国際共産党の手先ときめつけ、問答無用とばかり、法規と前例をじゅうりんして、抜き打ちに、時にこそどろ的に、常にその原案をごり押しに押し切って参りました。まさに、議会
政治破壊の責任の一半は、この多数の暴力主義に耽溺した自由民主党そのものにあったといっても、決してこれは過言ではないのであります。(
拍手)
しかしながら、これに立ち向かった
社会党の実力行使は、これまた明らかに議会主義否定の暴挙であり、厳に戒められなければ相なりません。(
拍手)目には目を、歯には歯をと、暴に対し暴をもって報ゆるがごときは、民主主義、議会主義の断じてこれを許すところではありません。動機や理由がいかがあらんとも、われら議員の行動の限界は、院の内外を問わず、厳にその言論の範囲の内側にのみとどむべきであります。(
拍手)実力やすわり込みで会議を阻止したり、院外のデモや
政治ストによって国会審議に圧力を加うるがごときは、いたずらに多数者をして権力主義へ暴走せしめるだけであって国家と
国民のために百害あって一利なく、まさに愚昧の所業と申さねば相なりません。
池田総理は、あの第三十四回国会の未曽有の混乱と、ハガチー事件、全学連の国会乱入・流血の惨事、河上丈太郎氏や岸前
総理の刺傷事件、特に
淺沼委員長の痛ましい遭難を何と見るか、事ここに至らしめた原因について、院内第一党の総裁として、昨日来何ら責任を感じられての発言のないことは、まことに遺憾とするとこるであります。
ここに、わが党は、
安保問題については、かねがね、従来の
安保条約を段階的、漸進的に解消すべしとの見地に立ち、
軍事同盟的性格を濃くする新
安保には絶対に反対して、これを議会
政治のワク内で阻止するため、この最終決定は解散、総
選挙によって広く主権者
国民の意思によるべきことを主張いたしました。不幸にしてわが党の主張はいれられず、次いで、六月十五日、全学連の国会乱入・流血の惨事を契機として、
わが国民主主義、議会
政治が非常の危機に直面するに至りました。ここにおいて、わが党は、非常の決意をもって、もはや民主主義、議会
政治を擁護することこそが最大の急務と
考え、よって、国会の正常化と政局の収拾をはかるために、すみやかに
岸内閣は退陣し、国会は即時解散して、まず国会の正常化をはかるべきことを要求したのであります。それはもはや何人も動かし得ない圧倒的な
国民世論でありました。しこうして、この
岸内閣退陣、政局一新の要求は、世論の高まりとともに、ついに新聞七社共同宣言という異例の勧告となって現われたのであります。かくて、
岸内閣は退陣の余儀なきに至り、ここに政局収拾と人心一新の任をになって
池田内閣は成立を見たのであります。
従いまして、この
池田内閣の使命は何か、それはこの
池田内閣成立の過程に徴すれば、あまりにも明々白々であるが、それは、何事をも差しおいて、まずその国会を組閣直後に解散することにあったのであります。従いまして、その総
選挙における争点は新
安保にありといえども、同時にまた、それにも増して、その解散、総
選挙の重要な意義と目的は、すなわち、あのように動転した議会
政治を擁護するためにこそ、国会混乱の実相をつまびらかにして、各党はそれぞれ、その信条に基づき、その行動の結果について、主権者
国民の審判を仰ぐべきものであったのであります。
しかるところ、
池田内閣は、じんぜんとして解散を本日まで見送り、人のうわさも七十五日のことわざの通り、
国民の印象も記憶も薄れた今ごろになって、事もあろうに、
政策のABCである
経済問題などを、巧妙にも新
政策などと銘打って、これを総
選挙の課題にしつらえんとしたのでありますが、これは全く原因と結果を手品師のごとくずりかえるものであって、これでは一体何のための政変であったのか、
国民は、いよいよ戸惑い、ますますこれをいぶかるばかりであります。(
拍手)初心忘るべからず、と申します。まことに、今次行なわれんとする総
選挙の意義とその目的こそは、あのような混乱、無秩序に陥った
わが国の国会を、
国民主権者がこの総
選挙によって新しく再建確立するところにあり、各党また、つつしんでその信賞必罰に身をゆだねるところにありと思うが、これに対する
池田総理の御見解はいかがなものでありましょうか。(
拍手)率直に事実に基づいてその所信のほどを明らかにいたされたいと存じます。
次に、
社会保障、特に
国民年金についてお伺いをいたします。
福祉国家建設の道は、
所得の再配分によって貧富の
格差を解消することにあると思うのでありますが、この意味において、
政府はここに
経済成長政策を増進するにあたっては、まず、その大
企業、
高額所得者偏重の
政策を改め、特に
社会保障の拡充にその重点を置きかえなければ相ならぬでありましょう。
わが国においては、貧困と疾病の悪循環がはなはだしいので、このためには、生活扶助基準の
引き上げを行なうこと、医療の機会均等をはかること、あわせて防貧制度を拡充することの三点の実施が最も急務とされているのであります。
政府が、単なるかけ声だけでなくして、真剣に
社会保障の拡充と取り組む熱意をお持ちであるならば、いかにしてこれを完全に実施するのであるか、この際、
政府の具体案をお示しを願いたいのであります。
池田内閣成立後、
自民党が天下に声明した新
政策の中には、特に
生活保護世帯に対して期末一時扶助を支給することが申されておりましたけれども、これはごとしの年末にどの程度の一時扶助を支給するのであるか、この朗報に対しましては、特に生活困窮者ははなはだしく鶴首待望しておりますので、この点もあわせて
政府の具体案を伺っておきたいと存じます。
次は
国民年金についてでありますが、すでに前質問者諸君も尋ねられておるところではありまするが、
国民年金制度は
国民の強く要望するところでありますから、
わが国の
社会的、
経済的見地から、これは当然に推進せなければならぬことは言うまでもありません。しかしながら、現行の
国民年金制度にはあまりに問題点が多く、特に
拠出制年金については、その施行を前にして、
国民の非難は著しく高まりつつあるのであります。これは、本制度が保険主義的な
考え方によって貫かれておること、老後の生活を保障し得るものではないこと、一律の保険料が現在の
所得格差を無視したものであること、積立金の運用が不公正であることなど、それは、矛盾と撞着、欠陥とゆがみがあまりに充満したものであるからであります。よって、わが党は、かかる奇形の拠出制
国民年金は、その実施をとりあえず延期して、さらにその内容について時間をかけて十分検討の上、これを完備することといたしまして、当面は無
拠出制年金の充実に努力すべきことを強く要求するものであります。(
拍手)しこうして、
福祉年金制度は、その支給開始年令を六十五才に
引き上げ、年金額は月三千円支給することとし、母子
福祉年金は生別母子世帯、準母子世帯を含めることとし、障害年金は、内部障害を含めて三級障害まで支給することとして、さらにまた、
福祉年金の支給条件は、個人
所得制限を二十万円に
引き上げ、世帯
所得の条件は廃止すべきであると
考えるのでありますが、これに対する
厚生大臣、
大蔵大臣の所見はいかがでありましょうか。この際、責任ある御答弁をお願いいたしたいのであります。
次に、農業問題のうち、まずその生産対策について
お尋ねをいたします。
米は本年度においても史上空前の豊作が予想されておりますが、その結果、食管会計の赤字が累積し、本年度末には、内地米のみで二百八十億円、食管全体としては二百五十億円の赤字が予想されるに至っておるのであります。この赤字の原因は
政府の食糧行政の欠陥にあるのであって、この際、
政府は、配給面、流通面、消費面にわたって抜本的手直しの
措置を講ずべきものと思うが、
政府のお
考えはいかがでありましょうか。しかしながら、食管会計赤字の原因が生産者農家にあるかのごとき態度は断じてとるべきではないのであって、
池田総理、南條農相がしばしば繰り返し言明されたごとく、食糧管理制度を堅持するとの基本方針をくずすことなく、また、生産者米価は生産費及び
所得補償方式により算出し、かつ、消費者米価は据え置くことを前提として、なお、食糧行政に対する根本的改革の方針を承りたいのであります。
農業問題の第二点として、米麦
中心生産から商品作物生産への転換は、今後の
日本農業の運命を決する重要な課題でありますが、この点につき、
池田内閣の方針を承っておきたいのであります。
第三点といたしましては、三十五肥料年度の硫安公債の決定がおくれておる理由について、この際明らかにいたされたいのであります。今回の価格決定の遅延はメーカー側の強腰にあるとはいわれておりまするけれども、この種のメーカーの要求は毎年繰り返されているものであり、本年に限って
政府がこれをことさらに受けて立っているのはどうしたわけであるか、
政府の所見並びに硫安
企業合理化の見通しについて、この際、
政府の方針をつまびらかにいたされたいのであります。
次に、
中小企業対策についてお伺いをいたします。
中小企業問題は、
経済問題として、はたまた
社会問題として、きわめて重要なものであることは、論を待たないところであります。しかるところ、従来、
政府は口で
中小企業の振興を唱えながら、その実、
中小企業に対する予算
措置は僅々三十数億円である。これは、総予算のわずかに一厘六毛という、まさにゼロ数字にひとしいものであるのであります。(
拍手)また、
財政投融資計画を見ても、
中小企業に対する投融資額は、
政府関係金融機関を
中心として、全体の投融資額の一一%にしか達しておりません。およそ、予算と
財政投融資計画こそは
政府の
政策の真意を赤裸々に示すものでありまするが、この数字に現われた通り、従来の
自民党の
中小企業対策は、言うならば生かさず殺さずというような、ことほどさように冷淡薄情なものでありました。(
拍手)もしそれ、この先ともにこのような
政府の方針が続きまするならば、ひっきょう
中小企業は
経済成長から取り残されて、襲い来たる
貿易自由化の荒波に押し流され、やがて非常の困窮に陥ることは明らかであります。今にして
中小企業対策を根本的にかつ大々的に推進するにあらざれば、
事態まさに憂慮すべきものがあると思うのであります。たとえば、その恒久的対策といたしましては、産業分野の確保、大
企業の不当独占の排除、
中小企業金融基本法の制定、設備近代化の
政策的支援等、その緊急焦眉の懸案は枚挙しがたいほどに山積をいたしまして、また、特に当面の問題といたしましては、年末資金確保の要請が強く叫ばれておるのであります。今や
貿易自由化対策においても、その大いなる分野に責任をになう
中小企業が、その体質を改善し、近代化をはかることは、一日もゆるがせにできない段階に立ち至っておるのであります。
通産大臣及び
大蔵大臣は、これに対しいかなる対策をお持ちであるか、この際、両大臣の所見をお伺いいたしたいのであります。(
拍手)
次に、減税方針について
大蔵大臣の所信を
お尋ねいたします。
来年度の税の自然増収は国税だけで三千億円と予想されており、もし減税を行なわなければ、
国民所得に対する税負担は二三%に上昇することになりましょう。さきに、税制調査会は、
わが国の現状からして、税負担は
国民所得の二〇%が限界であると答申をいたしました。従って、
国民の税負担の限界から見て、来年度において減税を行なうことは当然の
措置であり、さればこそ、わが党は、つとに、国税及び地方税を通じ、少なくとも千三百億円の減税をなすべき旨、これを強く主張して参ったところであります。また、本年度の税の自然増収は、高原景気の持続により、さらに千五百億円に達するといわれておるのでありますが、本年度予算は、前年度に対しすでに二千億円以上の税の増収を見込みながら、あえて減税を見送ったのでありますから、このさらに加わった増収分に対しては、これを年度内にその納税者に返すことは当然の条理であると思うのであります。(
拍手)以上、減税の規模と時期、特に年度内減税の構想について、
大蔵大臣の所見はいかなるものでありましょうか、この際、
政府の方針を明確にお示し願いたいのであります。
次に、公務員給与の
引き上げについて
お尋ねいたします。
最近、
わが国経済の驚異的な成長に伴い、民間給与は顕著な上昇を示しておりますが、これに対し、公務員給与は、最近数年間ほとんど据え置かれたため、ここに少なからざる断層を生じたのであります。他面、消費者物価及び生計費は漸騰の傾向を示しているので、公務員の生活は、はなはだしき圧迫を受けておるのであります。この公務員の窮状にかんがみ、去る八月八日、人事院は、五月一日にさかのぼって公務員給与を、おおむね一二・四%のベース・アップを実施すべきむね、
政府に対し勧告を行ないました。公務員給与は民間給与に比例して常にこれと均衡を保つよう配慮することは、団体交渉権と争議権を持たない公務員に対し、
政府の当然の責務であると思うのであります。特に、本年度は、千五百億円に上る税の自然増収が見込まれ、財源には何ら欠くるところはありません。
政府は、口では法と制度を尊重すると言いながら、この人事院勧告の実施をことさらにおくらせている理由は何であるか。従って、当然この国会において必要な法律的、予算的
措置を講ずべきであると
考えるが、今なおそれをなさざる理由は何か。これに対し、
池田総理より責任ある御答弁をお願いいたしたいのであります。(
拍手)
次に、物価対策についてお伺いをいたします。
物価指数を見ると、卸売物価は軟調を続けているといわれてはおりまするけれども、それでも昭和三十年に比べると一割強の上昇と相なっております。これに対し、小売物価や消費者物価は引き続き強調を示し、特に
国民生活に直結する消費者物価は、ここ一年間に五%以上上昇いたしました。定期預金の一年もの利率は年六分でありますから、
国民大衆が勤倹貯蓄をしても、物価の上昇を差し引けば、その実質金利は年一%足らずにしかならなかったということに相なりましょう。消費者物価のうち、ほとんど恒常的に上昇しているのは住居費であり、次に雑費であり、また食料品であります。最近では、牛乳、食パン、うどん、小麦粉、肉類、野菜類、みそ、しょうゆなどの食料品が軒並みに
値上げされておりまするほか、理髪料金、入浴料金、クリーニング代等、サービス料金までも値上がりがあり、さらに、運賃、電気料金など、
公共料金の
値上げも時期の問題とされているのであります。ここに、理髪料金等のサービス料金は、生産性を向上することによって人件費高をカバーすることができませんので、
経済の成長とともに、今後ともその値上がりを押えることは困難でありましょう。運賃、電気、ガス等の
公共料金についても、設備拡張による
資本費の負担が重くなるので、これまた上知の傾向にあることは争われません。食料品等の消費物資を見ても、これら消費物資は、
中小企業により生産されるものが多いのであります。ここに、
中小企業では、人件費高、コスト高を生産性の向上でカバーすることがむずかしく、よって、これまた、その値上がりを阻止することは、容易なことではないと思われるのであります。
かくのごとく案ずるならば、ここに、消費者物価は、今後ともじりじりと上昇していくものと想定せざるを得ないのであります。
池田内閣の強調する
所得倍増計画は、物価の安定に基礎を置く実質
所得の向上でなければならぬと
考えるのではありますが、また、そのように昨日来論ぜられておるのではありまするけれども、かくのごとくにして、現実に消費者物価がこの先とも値上がりを続けるならば、
所得倍増計画はさながら砂上の楼閣のように無実のものとなり、時に物価の値上がりが低
所得者の
所得の増加をかえって上回ることになりはしないかと、私どもはこのことを最も深く憂えているのであります。(
拍手)
池田総理は、大切なのは卸売物価であって、小売物価や消費者物価ではない、と言っておられますけれども、
国民の大多数に直接の利害関係を持つのは、実にその小売物価であり、消費者物価であるのであります。
政府は、
経済企画庁に物価対策協議会を設けられて物価の上昇に対処するとのことではありますけれども、よしんば、独占禁止法の発動等によって、便乗的な
値上げだけは押えることができるといたしましても、根本的な抑制対策はとうていそれに期待できるものではないと案ずるのでありますが、これに対する
池田総理及び
経済企画庁長官の見解はいかがでありますか、この際、
政府の物価安定対策とその見通しについてお示しを願いたいと存ずるものであります。(
拍手)
次に、為替・
貿易自由化の実施について
お尋ねをいたします。
政府は、去る六月二十四日、
貿易為替
自由化計画の大綱について発表されましたが、その後、具体的には、いまだ何らの
自由化対策も、物資別輸入
自由化の実施時期も、十分に明示されていないことは、はなはだ遺憾にたえないところであります。
政府は、商品別の
自由化を、所要の対策と相待って、計画的な実施をはかると言っておるのではありまするが、ここに
自由化による影響を最も深刻に受ける国内
経済の弱い面、特に
中小企業、
農林漁業及び雇用面に対して、いかなる配慮をされておるのでありましょうか。ここに、
通産省が、
自由化の国内
経済に及ぼす影響について、このほど産業連関分析で調査した結果によれば、それは輸入が激増し、国内生産規模は総生産額で二〇%縮小し、雇用は
鉱工業だけでも百三十七万人が減少せざるを得ないであろうと発表いたしておるのであります。
通産省のこの調査が必ずしもそのままに現実性を持つものではないといたしましても、この期に至って
自由化の影響を軽視することは断じて許されません。来年の国際通貨基金の総会等では、いよいよ為替制限の撤廃と
貿易の
自由化が勧告されるであろうと取りざたされていることにもかんがみ、
政府は、今こそ、
自由化に備える実行計画としての総合的具体策をすみやかに
国民の前に明示すべきであると思うが、これらの諸点について、この際、
経済企画庁長官、
通産大臣並びに
大蔵大臣の御所信のほどをお伺いいたしたいのであります。(
拍手)
最後に、来年度の予算編成方針についてお伺いをいたします。
池田内閣は、来年度予算について、本年度の第四・四半期の補正予算と来年度予算とを一体とした、いわゆる十五カ月予算の構想をもってこれを編成すると伝えられております。この十五カ月予算を編成することによって、
池田内閣は、新
政策の三本の大柱である
公共投資、減税及び
社会保障を公約通り実施せんとされておるのであります。ここに、本年度の税の自然増収は約千五百億円、来年度の税の自然増収は約三千億円で、その他前々年度剰余金の繰り入れが約三百四十億と見込まれておるのでありますが、一方、これに対し、地方交付税交付金の増、国債費の増、
国民年金の制度の平年度化に伴う増、ロッキード関係の債務負担行為の予算化に伴う増、食管会計への赤字繰り入れ等の当然増を考慮するときは、
公共投資、減税及び
社会保障の新
政策に振り向けられる財源は、せいぜい多くて二千億円にとどまるのではないかと推算されるのであります。
しこうして、ここで注意すべきことは、その二千億の中から、公務員給与の
引き上げに要する財源として一般会計の分四百億円、地方財政に対する補給分六百億円、合計一千億円がさらにさかれなければならないということであります。かくて、残る新規財源なるものはわずかに千二、三百億円程度に減少されることは、批判の余地なき冷厳なる数字の答えであるのであります。ここに、
池田内閣は、このわずかに千二、三百億円程度という財源をもって減税を行ない、さらに、
公共投資と
社会保障を大々的に行なうと宣伝高唱されておるのであります。しかのみならず、来年度の予算要求は、一般会計で本年度予算の五割増の約二兆四千億円に達し、
財政投融資要求も、本年度計画の二倍の約一兆二千億円に上り、各省、各圧力団体は、
池田内閣の積極
政策に便乗し、競って我田引水に狂奔しているといわれております。かく観ずるならば、来年度予算は、いつしかそれが総花主義に終わって、今喧伝されておる
公共投資、減税及び
社会保障という三本の大柱なるものは、結局小さな三本のつまようじほどに削り細められてしまうのではないかとおもんばかられてなりません。
さらにまた、来年度予算がかなりの
経済刺激予算となる公算はきわめて大きいものがあります。
池田内閣が積極財政方針を明らかにしたこと自体が、すでに
経済界に強気心理を植え付け、下期
景気後退説は影をひそめ、民間の
設備投資はますます旺盛の気配を示しておるのであります。もしこれに積極的な財政支出が競合するようなことになるならば、
経済は過熱し、金融の正常化を阻害することは、すでに昭和三十三年度のなべ底
経済のそれにおいて私どもが最も痛烈にこれを経験したところであります。
以上、予算編成方針について危惧される若干の問題を指摘したのでありまするが、
大蔵大臣のこれに対する御所見はいかがでありましょうか。正確な数字に基づいて、その方針と見通しを明らかにせられたいと存ずる次第であります。
私は、以上の諸点について
総理並びに
関係閣僚の御答弁を求めますが、
政府の答弁内容いかんによっては再質問を行なうことを留保いたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君登壇〕