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1960-10-24 第36回国会 衆議院 地方行政委員会法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年十月二十四日(月曜日)     午前十時十五分開議  出席委員  地方行政委員会    委員長 西村 英一君    理事 纐纈 彌三君 理事 高田 富與君    理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君    理事 加賀田 進君 理事 阪上安太郎君    理事 門司  亮君       相川 勝六君    金子 岩三君       亀山 孝一君    川崎末五郎君       津島 文治君    富田 健治君       中島 茂喜君    三田村武夫君       太田 一夫君    川村 継義君       佐野 憲治君    中井徳次郎君       野口 忠夫君    安井 吉典君       大矢 省三君  法務委員会    委員長 山口六郎次君    理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君    理事 田中伊三次君 理事 高橋 禎一君    理事 福井 盛太君 理事 菊地養之輔君    理事 坂本 泰良君 理事 田中幾三郎君       世耕 弘一君    瀬戸山三男君       竹山祐太郎君    馬場 元治君       古井 喜實君    山口 好一君       井伊 誠一君    猪俣 浩三君       上林與市郎君    三宅 正一君       伊藤卯四郎君    吉川 兼光君       志賀 義雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 小島 徹三君         自 治 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官 佐々木盛雄君         内閣官房長官 小川 平二君         法制局長官   林  修三君  委員外出席者         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         公安審査委員会         委  員  長 山崎  佐君         公安調査庁長官 藤井五一郎君         公安調査庁次長 關   之君         自治事務官         (選挙局長)  松村 清之君         判     事         (最高裁判所事         務総局家庭局         長)      市川 四郎君         警 視 総 監 小倉  謙君         警  視  長         (警視庁公安部         長)      石岡  実君         専  門  員 円地與四松君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  治安に関する件      ――――◇―――――     〔山口法務委員長委員長席に普く〕
  2. 山口六郎次

    山口委員長 これより地方行政委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。  両委員長の協議によりまして、法務委員長たる私が本連合審査会委員長の職務を行なうこととなりましたのでよろしく御協力のほどをお願いいたします。  これより治安に関する件につきまして調査を進めます。  まず去る十二日、日比谷公会堂における日本社会党中央執行委員長淺沼稻次郎君の遭難事件に関し、本事件概要、その原因及び背後関係事件社会的影響、並びに今後の対策等につきまして周東国務大臣小倉警視総監、柏村警察庁長官小島法務大臣より順次説明を求めることといたします。それでは周東国務大臣
  3. 周東英雄

    周東国務大臣 淺沼社会党委員長が去る十が十二日、日比谷公会堂における自民党、社会党及び民主社会党の三党首立会演説会におきまして演説中、右翼の一少年凶刃により不慮の死を遂げられましたことにつきましては、私どもはまことに遺憾に存じておるところであり、ここにつつしんで哀悼の意を表する次第であります。われわれは今後重ねてこのような不祥事件が起こることのないよう新たなる決意をもちまして、さらに治安の万全を期する所存でありますが、最初に私から、本事件概要及び事件当日の現場における警備体制等につきまして、簡単に御説明を申し上げたいと思います。  まず事件概要についてでありますが、当日の三首立会演説会は、御承知のように、東京選挙管理委員会公明選挙連盟及び日本放送協会の共催によりまして、午後二時過ぎから約千名の聴衆を集めて開催されたのであります。ところが開会劈頭から、大日本愛国党員等聴衆中の一部の者によりまして相当激しいヤジが行なわれたのであります。最切の弁士でありまする西尾民主社会党委員長に次いで、二時四十五分ごろから淺沼社会党委員長演説が開始されますると、これらの者によるヤジは一段と激しさを加えるとともに、場内においてビラをまいた者がおり、警戒中の警察官がこのビラまきなどを行なった大日本愛国党員四名を検挙するという事案もあったのであります。しかし喧騒をきわめているヤジは依然として静まりません。午後三時ごろには演説内容も聴取できないという状態に陥りましたために、司会者淺沼氏演説中断を申し入れ、聴衆に対して静粛にしてほしい旨の場内放送を行なうに至ったのであります。淺沼氏演説が再開されて間もない三時五分ごろ、演壇に向かって右側の端から一人の男がやにわに演壇にかけ上がり、脱兎のごとき勢いで、隠し持っていた短刀さやを払いながら、演説中の淺沼氏体当たりをするような姿勢で同氏の左胸部を突き刺したのであります。これはまことに一瞬の間のできごとであったのであります。演壇付近警戒中の警察官は、犯人壇上にかけ上がるや、時を移さず飛び出して犯行の阻止に努めたのでありますが、遺憾ながら間一髪危機を救うことができなかったのでございます。この突発事件によりまして、場内は騒然となり、特に壇上は淺沼代の救護と犯人逮捕に当たった警察官その他の関係者及び報道陣で一時大混乱に陥ったのでありますが、淺沼氏は直ちに丸の内警察署のパトロール・カーによって近くの日比谷病院に収容されたのであります。しかし、関係者の必死の努力もむなしく、淺沼川は三時十分ごろついに絶命されたのであります。   次に、当日の警備態勢についてでありますが、事前情報によりまして、当日の演説会に対する愛国党員等による相当活発な演説妨害いやがらせ等行為が予想されましたので、警視庁におきましては、主催者である都の選挙管理委員貝会と二度にわたって事前打ち合わせを行ない、当日は、制服私服警官合わせて百五十九名を現場に派遣し、この種集会警備といたしましては異例の厳重な警戒態勢をとったのであります。しかし、犯人山口二矢その他の直接行動に関する事前情報はなかったのであります。  山口二矢は、現在警視庁において引き続き取り調べを続行中でありますが、同人は本年十七才の少年であり、大東文化大学学生でありました。同人は、昨年五月六日本愛国党に入党いたしたのでありますが、本年五月、二名とともに同党を脱党し、その後それらの者が結成した全アジア反共青年連盟に加盟いたしたものであります。本件背後関係等につきましては、目下鋭意捜査中でございます。  以上、事件概要及び警備態勢等について簡単に御説明を申し上げたのでありますが、このような事件を防止できなかったことはまことに遺憾なことであり、今後再びかかる不祥事件を繰り返さないよう、警備技術方法等について、あらゆる角度から検討を加えて参りたいと存ずる次第でございます。
  4. 山口六郎次

  5. 小倉謙

    小倉説明員 淺沼社会党委員長不慮の死を遂げられましたことにつきましては、直接首都治安責任にある者としてまことに遺憾に存じております。つつしんで哀悼の意を表する次第であります。  本事案概要につきましては、ただいま国家公安委員長の御説明通りでありますが、私から若干の点について補足説明をいたしたいと存じます。  まず当日の主催者である東京選挙管理委員会側警察側との事前打ち合わせについてであります。十月五日に丸の内警察署次長警備課長その他と、都選管事務局長選挙課長らとの間にこの打ち合わせが行なわれております。その際選管側から、警備は相当数お願いしたいが、会場内制服で入られては困るという話があり、警察側としましても、当然のことでありますが、私服員場内には派遣するということを伝えました。さらに選管側が、会場整理には階下に十一名、階上に三名、合わせて十四名ぐらいで当たりたいというような話がございましたが、警察側では、会場状況等にかんがみまして、最低六十名ぐらいはほしいという話をいたしました。そのほか会場内整理については記者席――これは階下の一番前列の方であります。記者席うしろの通路のところに整理員を一名ずつ配置して、そこから前へ一般入場者を立ち入らせないこと。それから第一次的にはヤジの制止など場内整理主催者側が行なうこと。主催者側の手に負えないときには警察が出ること。そういうようなことを申し合わせまして、さらに当日午前中会場において、これらの事項を署長事務局長の間で再確認をいたしております。  次に事前情報といたしましては、十月十日に大日本愛国党赤尾総裁東京選挙管理委員会を訪れまして、選挙管理委員会が三党首のみの演説会を主催するのは選挙違反である、これは事前運動であって、公明選挙を擁護するという選挙管理委員会の任務に反するものだというような抗議をいたしました。また十一日には、同人警視庁を訪れまして、三党首演説会東京選挙管理委員会みずからが選挙事前運動を行なうものであるから、これを取り締まられたいというような要望をし、また会場党員を動員するというようなことを申しておりました。そのような事実がありましたので、演説会当日は愛国党員中心に相当活発な演説妨害いやがらせ行為が行なわれることが予想されたのであります。そこで事前愛国党員に対しましては厳重な警告を与え、注意を促すとともに、当日特に警察といたしましても厳重な警戒態勢を行なったようなわけであります。しかしながら犯人山口二矢その他の直接行動に関する事前情報はなかったのであります。  次は警備態勢でありますが、以上のような動向に対処しまして、丸の内警察署長は正午ごろ、現場警備本部内幸町巡査派出所に設け、制服警察官九十七名、私服警察官六十二名、計百五十九名をもって警戒に当たったのであります。会場内には私服警察官五十七名が当たったのでありますが、演壇に向かって左側にたむろする愛国党員その他の者に対しまして重点的に配備いたしましたほか、場内の要所に適宜な配置をいたしたのであります。  一方場外の警備は、丸の内署制服部隊及び機動隊の一部をもってこれに充てました。なお機動隊の一部を日比谷公会堂の地階に待機させまして、不測の事態に備えたのであります。なお、主催者側の都の選管及びNHKの整理員は、先ほど申し上げましたような状況で、当日は五十九名が入口及び場内整理に当たっておったのであります。  次に事件概要についてでありますが、すでに国家公安委員長の御説明通りでありますが、西尾民社党委員長に続きまして淺沼社会党委員長演説を開始されましたのは午後二時四十五分ごろであります。愛国党員やその他の者のヤジ西尾委員長のときにも増して一段と激しくなりまして、二時四十七分ごろには二階からビラをまいて演説妨害を行なったので、ビラをまいた者二名を検挙いたしたのであります。次いで二時五十二分ごろには愛国党員中の一名が演壇に向かって右側から壇上にかけ上がり、淺沼氏の方に向かってビラをまいたので、演壇付近警備配置についていた私服警察官三名がこれを直ちに逮捕いたしたのであります。その後も場内ヤジは一そう激しさを加え、その間、丸の内警察署長は、演壇に向かって左側の一団の愛国党員の中で最も激しくヤジっておりました党員の一名を部下とともに検挙するなどのこともありましたが、午後三時ごろになりまして、主催者側はついに淺沼委員長演説中断を申し入れ、場内喧騒をきわめている者に対しまして静粛にされたい旨の場内放送を行なうに至ったのであります。淺沼委員長演説が再開されて間もない三時五分ごろ、演壇に向かって右側から一人の男がやにわに演壇にかけ上がり、脱兎のごとき勢いで隠し持っていた短刀さやを払いながら、演壇中央部演説中の淺沼委員長にかけ寄り、体当りをするような姿勢でその左胸部を突き刺したのであります。演壇の周辺で警戒に当たっておりました警察官は、当時騒然たる雰囲気の中で愛国党員その他の警戒を要する言動をなす者に対し、注意警戒をしておりましたことなどから、犯人行動開始の発見が一瞬おくれたのでありますが、時を移さず飛び出して犯行を制止しようとしたのであります。しかし、遺憾ながら間一髪危機を救うことができず、折り重なって犯人逮捕凶器を取り上げたのであります。なお、この逮捕にあたりまして警察官三名が凶器により切り傷を受けました。  捜査状況でありますが、犯行の直後現場において犯人逮捕し、身柄を警視庁に引致し、直ちに取り調べを開始するとともに、捜索差し押え許可状発付を得まして、同日午後十一時ころから翌十三日午前一時ごろまでの間に、被疑者自宅、全アジア反共青年連盟など六カ所の捜索を行ない、メモ、ノートなど二十六種類、九十点を押収したのであります。さらに十月十三日捜査第四課の応援を得て、公安第二課と丸の内警察署との合同特別捜査本部を設置し、現在本格的な捜査に当たっております。  犯人山口二矢は、昭和十八年二月生まれ、本年十七才の少年であり、事件当時大東文化大学中国文学科学生でありました。同人の自供によれば、昨年五月の参議院議員選挙の際、大日本愛国党総裁選挙演説を聞いて、その主張に共鳴し、昨年五月十日同党に入党、同党本部宿舎に起居するようになったのでありますが、その間、同党員として活発な活動を行ない、公務執行妨害傷害器物毀棄などの容疑で前後十数回にわたって検挙されております。その後、本年春ごろから同党内における感情的なもつれや、同党の運動について批判的となったことなどから、たまたま本年五月末脱党した他の二名の者に引き続いて同党を脱党し、その後七月一日に結成された全アジア反共青年連盟に加わっていたのでありますが、同連盟の事務所にも最近は出入りしておらなかったようであります。  さらに同人本件を敢行する動機につきましては、警職法闘争勤評闘争安保闘争など、一連の大衆行動を通じ、これに強い反発と憤りを感じ、大日本愛国党のように左翼デモ集会などに対するなぐり込み、ビラまき等消極的運動では日本の赤化を防止することができないと信ずるようになり、結局は左翼指導者を一人一殺によって葬る以外には他に手段がないと意を決するに至った模様であります。  そして本年の夏ごろから日教組小林委員長共産党野坂議長とともに社会党淺沼委員長をねらうようになったのであります。そして事件当日、たまたま新聞紙上で三党首演説会のあることを知り、かねてねらっていた淺沼委員長をこの機会に倒そうと決意し、午後二時ごろ中野区本町通二丁目の自宅を出て日比谷に向かい、午後三時少し前に会場に到着し、受付において入場券を入手して場内に入り、機をうかがって犯行に及んだと申し述べております。  捜査本部においては、現場における目撃者等により事件裏づけ捜査を行なう一方、参考人任意出頭を求めて事情の聴取を行ないました。一方、犯人と深い関係にあると認められる者の取り調べ関係場所捜索を行なったのであります。現在のところ、被疑者単独犯行主張しておりますが、なお厳重にその背後関係などを究明中であります。  以上、事件概要補足説明を申し上げた次第でございます。
  6. 山口六郎次

    山口委員長 次に柏村警察庁長官
  7. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私から、今次事件の及ぼした各種の影響また今後の対策等につきまして、簡単に御説明申し上げます。  今回の事件は、総選挙を前にして行なわれました三党首立会演説会の席上におきまして、野党第一党の淺沼委員長演説中に突如暴漢の凶刃に倒れられたということ、しかもこのテロ行為一般聴衆の面前で公然と行なわれ、その状況テレビ放送を通じて広く全国視聴者の目に映じているだけに、全国民に対しましてなまなましい実感をもって深刻な影響を及ぼしているように存ずるのであります。そして今回の事件が、六月の河上代議士刺傷事件、七月の岸前首相刺傷事件に次いで行なわれました三回目の右翼的人物によるテロであるために、一部には往年の右翼テロ横行時代の再現ではないかと危惧する向きもあり、ひいては右翼に対する取り締まり上の責任として警察に対する批判が強まりますとともに、一般には、この種事件に対してさらに強力な取り締まりを要望する世論が高まっておるのであります。  まず、いわゆる革新陣営に与えました影響でありますが、この事件革新陣営に対して相当大きなショックを与え、淺沼氏の死に対し政府及び警察抗議するという大規模な大衆行動が直ちに組まれたのであります。すなわち革新勢力におきましては、事件発生のその日直ちに緊急動員を行なって、抗議集会デモを、東京を初め全国十都道府県にわたりまして実施し、約一万五千名がこれに参加したのであります。その後も東京中心抗議大衆行動が組まれ、その間、東京におきましては、一部届け出デモ・コースの路線変更や、いわゆるフランス式デモなどが行なわれ、特に全学連主流派は無届けの集会デモを行ない、さらに警察車両拡声機ガラス等を破壊したり、警察官に対して暴行を加え、首相官邸への突入をはかるなど、過激かつ暴力的な行動にまで出た者もあるのであります。しかしながら全般的に見ますると、指導者自主統制等によりまして比較的平静に推移いたしたと存じます。  次に右翼陣営に与えた影響でありますが、この事件に対する右翼団体右翼分子の評価は、その個々の性格を反映いたしまして、受け取り方にも若干の差異が認められるのであります。その中には、従来の社会党の態度からして当然起こるべきものが起こったとして、山口行為を是認し、これを英雄視する言動がかなり見受けられますことは厳に注意を要するところであると存じます。またその一部には、その行為を是としながらも、時期的に見ていまだその段階になく、右翼大衆化にとってマイナスであるから、この際軽挙盲動を惧しむべきだとする団体も見受けられるのであります。なおこの事件の直後、一部行動性の強い右翼中心となり、山口矢救援対策本部などを設置する動きが台頭して参っておるのであります。  次に今回の事件海外に及ぼした影響についてでありますが、すでに御承知通り海外諸国に対しましてもきわめて大きな反響を及ぼしているところであり、自由圏共産圏を問わず、十三日付の各国主要新聞はトップでこれを報道し、一斉に論評を加えている模様であります。そしてこれらによりますと、共産圏諸国のものが今回の事件を目して、事国主義の復活であり、これは池田内閣アメリカ帝国主義責任であるとしており、また自由圏のものは、日本民主主義の基盤の弱さとその前途を憂慮し、あわせて特に極右の暴挙に対する反動としての左翼暴力化を懸念する論評中心となっているようであります。いずれにせよ、この事件が列国の対日信用をそこなった点は、きわめて大きいものがあると認められる次第でございます。  次に今後の取り締まりの方針、対策について申し上げます。警察といたしましては、安保問題等をめぐって革新陣営側大衆行動が激化するに伴い、これに反撃する右翼行動もまた先鋭化する傾向が見られましたので、これらに対し厳重な取り締まりを行なって参ったのであります。ことに六月河上代議士に対し、さらに七月岸前首相に対する刺傷事件が相次いで起こりましたので、一部狂信的右翼分子によるテロ危険性を考慮し、右翼に対する視察内偵を強化して参ったのであります。ところが、今回三たびこのような不祥事件を起こしましたことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。  警察といたしましては、この際新たなる決意を持ってこの種事態未然防止努力をいたす所存でありますが、その要点を申し上げますと、第一は、今後危険性のある右翼的人物に対する視察警戒をさらにきびしくすることであります。そのために必要な増員措置等もすでに実施いたしておるところでございます。第二は、右翼テロ暴力の対象となるおそれのある方々に対しましては、警察側から積極的に連絡して、御承諾を得た向きには直接警護をつけるなどして、身辺の護衛を強化いたしたいと存じておるのであります。第三は、今後もこの種集会につきましては、主催者その他関係者と緊密な連絡を十分にとりまして、警戒を厳重にいたしまするとともに、特に選挙期間中につきましては、暴力事案その他の悪質な妨害未然防止に努めて参りたいと存じております。第四は、このような事件犯行に用いられますおそれの強い銃砲刀剣類等所持取り締まりを一そう強化いたしますとともに、たとえば青少年に対しては、未成年者等刃物を持ち歩くこと等は、とかく傷害事件等を起こしやすいので、学校その他関と係向きと連絡して、少年刃物等を持ち歩かない運動全国的に展開いたしたいと考えております。  警察自体といたしましては、とりあえず以上のごとき対策を進めておるのでありますが、かかる暴力事犯は、そのよってきたるところきわめて深刻なるものがあると存じますので、警察日体その職責遂行に邁進することはもちろんでありますが、関係機関とも緊密に連絡して、その防止対策に万全を期しますとともに、広く国民協力を得て暴力否定の風潮の高揚されることを切望いたしておる次第であります。
  8. 山口六郎次

  9. 小島徹三

    小島国務大臣 私は終戦後片山、戸田内閣当時、与党議員といたしまして、あるいはまたその後政治的立場は異にいたしましたけれども、おりに触れいろいろとかわしましたあの当時の淺沼君の親しみ深い人のよさとあの温顔を思い出すときに、今回の事件というものに対しまして、私は限りない憎しみと悲しみを感ずるのであります。つつしんで淺沼君の御冥福を祈る次第でございます。  私は、暴力というものは左右を問わず、主義主張を貫徹するために行なわれるということは民主主義の敵であるとかたく信ずるものであります。民主主義を擁護するためには、一切のこのような暴力をなくさなければならぬというかたい決意を持っておるものでございます。そのためには一日も早く迅速な対策を立てまして、この世から暴力というものをなくするということを考えておる次第でございます。もちろんかかることは言葉では非常に簡単でございますけれども、実際の問題といたしましてはなかなかむずかしい問題でございまするし、それにつきましては一般的には政治、教育、経済その他あらゆる方面からこれが対策を講じなければなりませんけれども、検察面からいたしまして私はこの暴力の温床となるべきものに対しては断固たる処置をとって、萠芽のうちにこのような暴力行為というものが起きないようにしなければならぬ、かように考えておる次第でございます。そのためにはもちろん今日の検察制度のあり方あるいはその技術というような面におきまして、さらにさらに検討を要するものがあるであろうと、目下研究をいたしておる次第でございます。  ただ私として一言申し添えておきたいと思いますことは、世間ややもいたしますと、こういう問題が起きますごとに、直ちに治安立法を強化したらどうだというような意見が起きるのでありますけれども、私といたしましては、いたずらに法律の上に法律を作ってこれらを取り締まるということを考えるよりも、今日ある法律をいかにして守ってもらうかというところに重点を置いて、私の政策を進めていきたいと考えておる次第でございます。私はいたずらに治安立法を強化するということは考えませんけれども、しかし、今日の法律をあえて無視してもかまわない、暴力によって自分の主義主張を通そうというような考えを持つ者に対しましては、今日許されておるあらゆる手段をもって断固として法律を守ってもらうようにいたしまして、よってもってこのような暴力行為というものが再び出てこないようにしたい。かように考えておる次第でございます。
  10. 山口六郎次

    山口委員長 以上をもちまして本事件に関する政府当局の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 山口六郎次

    山口委員長 これより治安に関する件について質疑に入ります。質疑は理事会の申し合わせによる各派割当時間及び発言順位により行ないますので、あらかじめ委員諸君の御協力をお願い申し上げておきます。なお、関連質問につきましては各派割当時間の範囲内においてこれを許すことといたしますので、この点もあらかじめ御了承を願っておきます。なお、小倉警視総監にはよんどころのない都合によりまして午後一時までには退席し、以後は警視庁公安部長及び警備部長をして答弁いたさせたいとの申し出がありますので、この点も御了承を願っておきます。それでは田中伊三次君。
  12. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 ただいま政府側の事案についての御説明を承りますと、国家公安委員長のお説では、このたびのこの事案は異例といわれるほどの厳重なる警戒をしたのだというお言葉であります。警視総監の報告を聞いてみると、五十数名の警官を中に入れて全力を尽くして警備をしてみたが、あっと思う間の、間髪を入れざる行動でやむを得なかったという御説明であります。この両君の御説明を総合すると、何だか不可抗力によって本件事件が起こったかのごとくに聞こえる。私は、はたして本件警備が万全を期した警備であるということがいえる状態にあったのかどうか、この点について具体的な見解を述べて、警備の計画それ自体をお尋ねをしてみたい。三党首がいやしくも立ち会い演説をやる、場所は公会堂である。こういうことになると、本件のごとき事件の起こる余地のないようにするための第一の考え方は、警備という点から考えて、しろうとが考えてみても、まずここに示してある図面で明らかなように、公会堂の入口は一カ所しかない。なぜこの一カ所しかない公会堂の聴衆の入口を警戒しないのか。本件事件を起こした加害者の少年は、過去十三回にわたって暴力事件で検束を受けておる。一口にいえば札つきの少年である。警視庁右翼担当の者がこの少年の顔を見て、あっ、これだ、山口だということが一目にしてわからなくてはならぬ人物だ。私、その前に聞いておきたいのでありますが、現行法のもとにおいては、この入口を警備した際に、凶器を持っておるかどうかということの身体検査をする余地が法律上ないと思う、怪しいと思ったからといって入場を拒む余地はないと思うが、行動の危険がある少年であるかどうかということを入口において確認することはできるだろう。そんなことはできませんか。確認をしたら、確認した人物については尾行をして、場内に入ってからの行動というものを監視するくらいのことができなくて、どうして事が未然に防げますか。まず入口において身体検査その他をやる法規、方法がないのかどうか、危険人物だと思ったときには入場を拒む法規の根拠はないのかどうか、これをまず伺ってみたい。
  13. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答えいたします。ただいまお述べになりましたような、だれでも入り得るという建前になっております会場の入口において、警察官がこれを拒むということはできません。また凶器を持っているかどうかということについて、身体を捜検するということはできません。
  14. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 警視総監に伺ってみたい。なぜこの入口の警備をしなかったか。確認をして、確認したる者を場内において尾行をして、その行動を監視する、これは法律上差しつかえがない。距離を置いてやることであります。どうしてこの入口に万全を期することをしなかったか、警視総監のお答えを願いたい。
  15. 小倉謙

    小倉説明員 当日の状況は、先ほど申し上げましたように、愛国党が当日の演説会妨害する、あるいはいやがらせ行為をするという予想といいますか、これは事前に察知しておったのでありまするが、犯人あるいはその他の者による直接行動ということにつきましては、事前情報はなかったのでございます。しかしながら、そのような愛国党の行動が予想されますので、当日入口のところに私服警察官配置いたしまして、入ってくる者の様子を見ておったのであります。開会の時間が近くなりまして、愛国党員並びにその他の右翼関係者がだんだん入って参りました。大体警視庁の方で考えておりました人物が入り終わりました。その後も様子を見ておったのでありますが、二時半ごろ場内の空気が非常に騒然としてきた。また、そのころはもう会場に入ってくる者がほとんどいなくなってきたというようなことで、私服警察官はむしろ会場の中の警備協力するということで、二時半ごろ入口付近を去って、会場の中に入ったのであります。事後になりまして、山口取り調べてみますと、山口会場の入口に来ましたのは大体二時五十分ごろでございます。まことに残念な気持がするのであります。
  16. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 警視総監ばかりを責めるわけではありませんが、暴行の起こるような情報がなかったということが警視総監の一貫した報告であるけれども、大体警視総監お考えになるとわかるように、六月には河上事件が起こっておる。七月には現職総理大臣の岸事件が起こっておる。そういう大事件のあった直後に、総選挙を行なわんとする直前の三党首演説会だ。具体的な情報があろうがなかろうが、想定としては、何らかのことが起こる危険があるということは、警視総監の頭で考えなくちゃならない。情報の有無の問題じゃない。客観的事実は六月なり七月あるのです。そういう場面の警備を行なうときに、ある時間は監視をしておった。場内が騒ぎ出したらその大事な監視が解けて、その警備員は場内に流れ込んだ。これでは警備は完全ですか。一体だれを警戒しているのです。三党首中心としてその身辺を警戒している。三党首が会堂の中の演壇におる間に、どこでどんな騒ぎが起ころうとも、その会場に入ってくる聴衆を監視するということは怠ってはならぬ。五時間の時間にわたって三党首会場の中におられたとするならば、会場の中におられる時間は初めからしまいまで入口を監視しなければならぬ。凶器を持った人間が、事を起こそうという人間が、監視をしておるときに入ってきますか。監視の目を離した瞬間に入り込んでくる。この札つきの少年が何時何十分に入場をしたかということの確認ができておらぬようなことでは、当日の警備というものにこの点においてまず第一に万全を期したということは言いかねるのではないか。まことに遺憾では事は済まぬ。どうする、これから後もこういう警備をやる考えなのか。あぶなくて立会演説なんかやれやしない。何を目的に警備をするのか。三党首の身辺を警備することが目的ならば、三党首会場の中におられる間は、一分間も表の入口は見放してはならぬ。こういう整備のやり方において、まずこの点についてのみ考えてみて遺憾な点がなかったか、警視総監からお答え願いたい。
  17. 小倉謙

    小倉説明員 通常こういうような種類の集会には、人口附近において警察官が監視をしておるというようなことはやらないのであります。またやることは適当でないと一般的にも思われておるのであります。ただ当日は、愛国党員のそういうような行動か予想されるということで、入口附近に私服警察官配置して、先ほど申し上げましたような右翼関係者の人場を監視をしておったのであります。もちろん今日の情勢におきましても、直接行動というものは全然ないというふうに考えることは間違いでございまして、警察としましては、一般的にそういうようなこともあり得るということを考慮の上に置いて措置をしなければならないと存じますが、通常の集会等に対する警察措置といたしましては、ただいま申し上げましたような状況でございます。ただ事件が起こりまして反省してみますると、これはやはりさらに十分な措置を講ずべきであったというふうに考えておるのでございます。今後の問題につきましては、その状況によりまして、多少警察官が目だつということはありましても、必要な配置はしなければならないか、かように考えております。
  18. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 警視総監のお言葉を聞いておると、やらぬでもいいことをやったのだ、こういう工合に聞こえる。身体検査をして凶器を持っておるかどうかを調べるというような事柄、怪しいと思うと入ることはいけないといって拒否するような事柄は、法律が許さない。しかし法律、制度の許す範囲において万全の警備とはどういうことを言うのか。距離の離れたところの警備員の目で入場してくる人間の姿を監視することはどこがいけない、どこが普通でないのですか、これは許されることじゃないか。はるかに距離の離れたところから入場してくる者一人々々を監視する、これは自由ではないか。通常やるべきでないとおっしゃるが、重要なときにはやっておるから、これはいいのだという。法律で許されたことにおいて全力を尽くすことはやらなくちゃならぬじゃないか。やらなくちやならぬことなのに、やらぬでもいいことをやっておったのだから、警備しておる時間もあったが警備しておらなかった時間もあったということは差しつかえないという言い分であるが、そうは問屋がおろさない。法律の範囲内においてやらねばならぬ最善の警備とは――ここはよく聞いてもらいたい。入場する者一人々々を監視をすることは法律上許された最大の仕事である。やらねばならぬことである。そのやらねばならぬことを、ある時間はやっておったが、中が騒ぎ出したらやらずにおいたというのではいけない。これは万全か。あなたはこれを万全とお考えになるかどうか。責任を追及するのではないですから心配せぬでいい。事を明白にしておかなければ国民ががまんをしない。これが万全であったと考えるのかどうか。重要な関所をたとい瞬間の間でも手抜かりがあったということに重要な点があるのではないか、もう一度お答えを願いたい。
  19. 小倉謙

    小倉説明員 事後の反省検討をいろいろやっておりますが、ただいまの入口付近の配置につきましては、私は万全だったとは申しません。
  20. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 それから第二点、このうしろに大きな図面があますが、演壇があって演壇に向かって左右にそでがある。これをそでというのかどうか、新聞がいうておるからぼくは言うのでありますが、そでがある。この演壇、舞台というものは相当高い。私のような小男であるというと、私の背の高さより高い。しかし、その演壇に向かって在右のそではだんだんと低くなっておりまして、犯人が飛び上がるおそれがあると、かりに大混乱の起こったときに暴漢が飛び上がるということを考えてみると、だれでも常識は、上がればそでである。中央は、警視総監の御説明のように、新聞記者席もあり、テレビもあり、ラジオもある。一般人が通行できないように前は囲ってある。これはまことにけっこうである。そういう措置がしてあるほかに、演壇に向かって左右のそでの入口がいわば場内の関所、会場の入口は外の関所、左の方は右翼が騒ぐからというので関所の方にはたくさんの人がおった。向かって右の、この少年が虚をついて飛び上がっていったそで近くには、警備員が一人しかいない。どうしてこういう配備をしたのか。なぜここに数名の者を置かなかったのか。警視総監が報告された、二階からビラをまいた、そのビラをまいた犯人をとらえて表に送り出しておる間、一人しかいないから、その一人が他に移動したそのすきに乗じて、この少年が飛び上がっていったという事態がある。どうして演壇に向かって右そでの入口に万全を期して数名の人員を配置しなかったのか、どうしてやらなかったのか。
  21. 小倉謙

    小倉説明員 この事件の発生いたしましたときにおきましては、右そでの座席のところに警察官を三名配置いたしております。
  22. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 三名の警官を配置しておって、どうしてそでから飛び上がっていくやつが押えられなかったか。あなたは何か勘違いではないかな。このそで近くには人しか配置ができていないのではないか。いいかげんな答弁はいけませんよ。一人しか配置ができていないのじゃないか。その一人が移動したあとはだれもいなかった。そこから上がっている。よく図面をごらんなさい。三名もおったのかどうか。何という名前の者が三名おったのか。
  23. 小倉謙

    小倉説明員 ただいま申し上げましたように、そでのところの近くの座席のところに三名おります。これは小塙、千葉、古川この三名がおりました。このそでの手前の座席のところです。
  24. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 三名の警備員がおって少年を押え得なかったのはどういうわけですか、どういう事情ですか。
  25. 小倉謙

    小倉説明員 その点を若干説明さしていただきますが、当時ビラまきあるいは非常に喧騒にわたるということで、検挙者四名を出し、場内は非常に騒然といたしておった雰囲気でございましたが、その配置いたしておりました付近の配置警察官の小塙、千葉の両名を調べてみましたところが、演壇に向かって、図面で説明いたしますと、ここに警察官がおるわけです。それでこのすぐそばにも、愛国党にもヤジを飛ばすし、また演壇の方にもヤジを飛ばして、非常に興奮しておる男がおる。それからここに、学生服姿であるが、場内整理員と口論をしたり、かなり興存した様子の男がおる。ということで、これを押える、またこれに警戒を払っておるというような状況です。で、犯人はここを来まして、そしてずっと行ったわけでありますが、まあそれに注意できなかった。といいますのは、ここらにも人がさらにおりまして、ときどき通っておったというような状況があるのであります。
  26. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 そこで伺ってみたいが、小塙、千葉君がおられた位置は、そでの上がり口とはだいぶん距離のあるところです。あなた御自分で地図を見てわかるでしょう。距離があるでしょう。私の言うておるのは、そでの上がり口の大事な関所にどうして人を置かなかったのかということです。あなた気がつかぬけれども、一人はおったんです。一人はおったが、騒いでおる間に、他に移動して留守になっておるから上がっておるんです。三人おったというのは距離があり過ぎるでしょう。関所の入り口に、上がり口にどうして人を置かなかったのか。急所の急所なんです。警備の急所です。こんなことができなかったら警備になりませんよ。だれもいなかったんじゃない。一人はおった。離れたところには三、五人おった。千葉君、小塙君以外の者もおった。そでの上がり口にどうして人を置かなかったのかということです。上がろうとしたら、待てということがどうして言えぬのか。何でもないじゃないか。どうしてその急所に人を置かぬのか。はるか離れたところでは、間髪を入れずというようなことはとても困難です。間髪を入れられちゃ困る。どうして上がり口に人を置かぬのか。何でもないことじゃないですか。急所じゃないですか。上がり口なら人間の腕一本でいいんです。いけない、でしまいだ。どうしてそこに人を置かなかったのか、こう言うんです。
  27. 小倉謙

    小倉説明員 もちろんその点は事後における検討の非常に問題点であります。そこで……。
  28. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 総監、総監、それは問題点であって、反省をしておるということならよろしいから下がって下さい。  それから第三点、警備の不備としろうとの私が考える第三点について所見を申し述べます。第三点は、警視総監にお聞きをいただいておきたいのでありますが、第三点の急所は舞台であります。三党首演壇中心として、演壇に上がってお話しになる。演壇全体、舞台全体を監視する警備員の要員が必要であることは言うを待たぬ。ところが、これが一人も置いてなかったということです。やや説明が要るから説明をいたします。数名の警官は上にはおった。演壇の左右にはたれ幕、上から下にたれた幕があります。この幕は何のためにあるかというと、聴衆席からはそこに人がおっても見えぬようになっておる。しかしたれ幕の下に立っております者からは舞台全体が見えるようになっておる。そういう便利なものがたれ幕という。そのたれ幕の中に数名の警官がおったが、この数名の警官はどんな警官かというと、池田総裁の身辺を守る警官、淺沼君の身辺を守る警官、個々の代表者の身辺を護衛する専任の任務を命ぜられた警官のみが数名おった。この舞台全体のできごとを、間髪を入れず起こってくるかもしれぬその舞台全体の監視をする警備の役目を持った者が一人も配置されていなかった。これは一体どういうわけか。池田総裁の身辺を守っておる者がこのできごとの最中に飛び込んでいって、ほかのできごとにタッチすることはできない。任務違反である。淺沼さんの身辺をお守り申し上げておる者が池田に対するできごとにタッチするわけにはいかぬだろう。それは任務が違う。そういう人々がそこにおることは当然で、私はそれをとかく言うのではありませんが、どうしてこの舞台全体を警備する要員をここに置かなかったのか。第一、私が勝手に判断をしてもいかぬが、置いておったのか置かなかったのか、置いておったとすれば何人、どういう名前の人を置いておったか、これを伺いたい。
  29. 小倉謙

    小倉説明員 ただいまの御質問でありますが、特別舞台のみに限ってそれを注意しておるという警察官は置いておりません。しかしながら、個々の警察官はそれぞれ任務を与えられておりまするが、しかし眼前に起こった事態に対しましては、その任務をときに離れて行動するということもあるのでありまして、現に池田総理を護衛する任務を帯びておりました警察官の中からも三名かけ出しまして淺沼さんの身辺にかけ寄っておるのであります。
  30. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 警視総監は、国会で答弁をするのだから、そういう言いわけを言っちゃいけない。あなた警察官出身でしょう。池田を護衛せい、淺沼を護衛せいという指命を受けておるときに、指命を受けた警官はどういう行動で、どういう意識が働くかというと、事が起こった瞬間には、おのれの任務とする池田は大丈夫か、淺沼は大丈夫か、まずこれを判断して、これが大丈夫というゆとりがある場合でなければ人のところにタッチしない。そんなことはわかり切ったことです。訓練を受けた、命令に忠実な警官ほどおのれの主要任務に重点を置く。間髪を入れぬ間に事を起こされたのはこれが原因なんです。ここをよく聞いておきなさい。これが原因なんです。おのれの主要任務にみんながとらわれておるから、あっと思った瞬間に、ついでに応援をしに出ていくから事が手おくれになる。主要任務を受けておっても、主要任務以外にほかの任務もやっていい、そんな説明はここで聞かぬでもわかっている。どうして舞台そのものを監視するそういう主要な任務を持った要員をそこに置かなかったのか、置いた方がよかったと思うのか、今後もやはりそういうものは考えぬでいいんだ、ついででやったらいいんだというのか、どう思いますか。どういうふうにお考えになりますか。
  31. 小倉謙

    小倉説明員 もちろん事後の反省、検討材料としては十分考慮すべきだと思います。
  32. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 私はしろうとで、理屈は言うが警官になったことなく、指揮、命令を与えたことのない男でございますから、いろいろ私が言うのだけれども、こういうしろうとの私が考えただけでも、関所の押え方に押え足らぬものがある。当日警視総監の指揮のもとにお立てになった警備計画それ自体のもとで、第一線の警官としては、今報告の中にあったように三名となっておるが、実際は四名でしょう。あなたは三名だと言うが、四名の警官がこのメスに触れてけがをしておる。しかも重傷を負っている。負傷をしたなんという報告の筋のものではない。短刀を握った者は四本の指がぶら下がって落ちかかるようなけがをしておる。この立てられた警備計画のもとにおいて第一線で働いた警官は、身命を賭して行動をとったと見ていい。それは実にりっぱな行動です、警官の行動は。たよりないのは警備計画がたよりない。政治責任を負うて、池田内閣においては山崎公安委員長が辞職なさっている。本件の立会演説をもくろんだ責任者としての選挙管理委員会委員長はみずから進んでおやめになっておる。深刻な反省です。淺沼さんのおなくなりになったことに対するその重大なる結果に対する、そのおそるべき結果に対する反省なのです。あなた方がお立てになった警備計画というものが手落ちがあったものかなかったものかということについての反省は、この国会で私たちが論議をせなければその反省ができないようなことでは困る。一体警視総監というものは、警備部長がやったのだというのかもしらぬがそうじゃない。警備部長がやっても、警察署長がやっても、課長がやっても、その警備計画について手落ちがあるかないかの指揮命令、監督の権限は警視総監に法律上ある。地方警察本部長としての権限でしょう。責任は全部警視総監です。指揮命令、監督の権限のないものは責任を負う必要はない。政治的判断をして、政治的な責任を負う場合は別である。警備事務の責任としては、最高責任を持つものは警視総監でなければならぬ。その指揮命令権のある者が反省をする。反省をするということが非常に大事なことなんです。今後いろいろな重要な事柄が選挙の場合にも起こってくるであろうと思いますが、深刻に反省をして、警備それ自体がおろそかであってはならぬ。これが私の意見でありますが、私はあなたにどうせよというのじゃない。政府は、国家公安委員会の警視総監に対する措置をとにかくそのまま見のがしておる。しかし、この警備が完全なものであったかどうかということについて、これを追及し得る権限のあるものは、わが国の国法の上では国会以外にない。国家公安委員会というものは行政官庁ではあるが、行政官庁は政府との間には独立をしておる。政府はその独立の立場を尊重してノータッチでおる。これを論及するものは国会以外にない。与党の私からは大へん話のしにくいことであるが、国会の立場において論及せざるを得ないので追及をするわけです。関所々々が一つもできておらぬ。間髪を入れられるような警備というものはあるものじゃない。だれが警視総監で、どのような手段、方法を講じても避けられなかった不可抗力なできごとだということが言えなくてはならぬ。そういうことが言える場合に、警視総監が責任をとらぬでいいということになるのです。この点はよくお考えになる必要があると思うが、警視総監は将来に対してかかる手落ちのなきょうにするためにはいかに善処をする考えか、あなたの心境を最後に伺います。
  33. 小倉謙

    小倉説明員 今回の事件につきましても、ほかの事件とこれは同じでございますが、私はもちろん責任を感じております。ことに今回の事件の重要性、またその及ぼす影響にかんがみまして、私といたしましては、現場警備については事前においてできる限りの最善の措置をとったとは思いますけれども、しかしながら結果的に見まして、未然に防止し得なかったということは事実でございますので、その点についてはさらにいろいろ反省すべき点があると存じます。従いましてそういう意味合いにおきまして、この事件の重要性、その影響するところにかんがみ、私の進退を考慮すべき時期であるということで、警察庁長官を通じ国家公安委員会に対しまして進退をおまかせしたのでございます。しかるところ、いろいろな角度から御検討になり、大所からあのような結論をお下しになったのであります。私といたしましては熟慮の末、私の気持は気持でございますが、その私の気持によって左右するということもできません。従いまして私としましては、この際国家公安委員会の結論に従いまして、今回の事件の徹底的究明また今後の右翼取り締まり、今後の治安保持ということに最善の努力をして参りたい、かように考えておる次第でございます。
  34. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 私の質問の第二点は、この暗殺の動機、原因について伺ってみたいと思います。この少年は過去十三回にわたって暴行事件で検束されておりますが、検束をしただけなのか、それとも検束をした結果、検察庁あるいは家庭裁判所に対していかなる送致手続を踏んだか、警察側の送致手続を踏んだ措置、十三回にわたってどういう処置をしたか。
  35. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答えいたします。これは十数回検挙されておるわけでございますが、非常に短時日の間に頻発いたしておりますので、適切な保護措置あるいは厳重な処分の要あるものと認めるという意見をすべて付しておるわけでございます。そのうち二、三例を申し上げますと、昭和三十四年十二月十四日新潟市におきまして、北鮮帰還反対運動愛国党員として無許可のデモを行ない、公務執行妨害の現行犯逮捕になった場合でございますが、この際には、結論だけ申し上げますが、その非行は少年補導上黙過し得ない状況と思われるので、関係機関に収容の上適切な補導を要するものと認められるという意見を付しております。それからその前の昭和三十四年七月二十九日、これは新橋ステージにおきまして安保反対演説中、社会党の河野密氏に、会場の懸垂幕を引き上げて妨害した事案でございますが、この際は、やはりこれが矯正保護の全きを期せられるよう適当の処遇を願いたいということを申し出ております。
  36. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 それでけっこうです。時間がありませんから、かけ足でいきますが、法務大臣、法務大臣に伺っておきたいことであります。  今警察庁長官からの答弁の内容で明らかなように、この少年に対しては、適当なる国の施設に収容して反省をせしむべきものであるとの意見を付して事件のたびごとに送致されておる。家庭裁判所に送致をする場合があり、検察庁に送致をする場合がありましょう、場合によって違うが……。検察庁はどうしてこういう意見を付して送致されたもの、自由ではあろうけれども、自由裁量であろうけれども、どうして適当な国家の施設に収容して本人を保護するということをやらなかったか、どうやら一度もやってないようですね、法務大臣。
  37. 小島徹三

    小島国務大臣 お尋ねの通り一カ年半くらいの間に十数回にわたって検挙されておることも事実でございまするし、検察庁におきまして、これを保護観察処分に付すべきだという意見をつけて家庭裁判所にも送っておったのでございます。もちろんその意見の中に収容云々の言葉のなかったことは事実のようでございますけれども、少年法の範囲内ではございまするが、検察庁といたしましては、いろいろと考えた末で適当な処置をとったものと私は考えますが、詳しいことにつきましては刑事局長から答弁させます。
  38. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 裁判所は見えておりますか。恐縮ですが、だれですか。――それでは裁判所の家庭局長に伺っておきます。今お聞きの通りの事情、時間を省いて二重に言いませんが、裁判所は――これは誤解のないように、ここは立法府でありますから誤解のないように申し上げますが、裁判所の御判断による判断がよいとか悪いとかいうことを言うのじゃない。これは言うべき立場ではない。これは裁判所の御自由でいいのです。憲法通りおやりになればいい。どういう見解でこの少年に対して保護処分ができなかったのか、見解を伺っておきます。
  39. 市川四郎

    ○市川最高裁判所長官代理者 私、家庭局長でございますが、ただいまの御質問で簡単にお答え申しますと、この事件は御承知のように少年事件でございます。少年事件は公開の法廷で行なうというわけには参りませんので、その内容につきましても、裁判官がどういう心境のもとにこの少年に対して先ほど法務大臣からお話のあったように保護観察処分に付したか、この心境については私どもとしてお答え申し上げることはできないわけでございます。しかし家庭裁判所で担当の裁判官が、この少年について従来の非行事実をもとにして保護観察処分に付したということは、結局いろいろな観点から、この少年については保護処分が相当と認められてやったことと私どもは確信いたしております。
  40. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 そこでこの第二点の最後に警視総監に伺いますが、この少年淺沼委員長の命を奪おうと殺意を生じた最初の原因、動機、これはいろいろありましょう。経過的に見ればいろいろありましょうが、殺意を生じた動機、原因をまずここで、お調べになっておるでしょうからお述べを願いたい。
  41. 小倉謙

    小倉説明員 ただいままでの取り調べによります本人の自供によりますると、本人は学校において社会科に興味を持ちまして……。
  42. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 殺意を生じた急所だけでいいです。一日でいいです、時間がないから。
  43. 小倉謙

    小倉説明員 大ざっぱに言いますると、反共といいますか、左翼に対する反発的な気持を非常に強く持ちました。前にも申し上げました通り、その左翼の方の指導的な者を一人一殺でやらなければならないというような考えをついに抱くことになったのでございまするが、特に淺沼委員長をどうしてねらったかという理由として、本人が申しておりますのは、これは故人に対しましてはなはだ失礼になるのでございまするが、本人の自供によりますると、淺沼委員長社会党の中でも右に行ったり左に行ったりして政治的に信念のない、時代便乗のひより見主義者である。それから中共を訪問して、アメリカ帝国主義は日中共同の敵であるなどと声明して、共産諸国に迎合的である。それから勤評闘争安保闘争などを通じて左翼の集団暴力の先頭に立って、労働者、学生を指導、扇動したものであり、革命の際ケレンスキー内閣の役割を果たすものと考える、こういうような人物は云々、こういうふうに申しておるのであります。
  44. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 私の質問の第三点はテロ暗殺事件、これは暴力事件もちろんでありますが、テロ暗殺事件としばりまして、テロ暗殺事件を根絶する対策について池田総理大臣の御意見を伺ってみたいと思います。私が今意見をちょっと申します。そこで私が総理にお伺いをいたしたいのは、このたびのこのテロ暗殺という事件が起こったことに便乗して――便乗というと非常に言葉が悪いのですが、そういうことを動機として警備力を増強するのだ、法律に不備な点があるから警備が十分にいかなかったのだから警職法を改正するのだと、こういう行き過ぎた――私が党を代表して言うのでありますが、そういう行き過ぎた考え方がどこかにあるやにうわさをされる、大へん迷惑なことであります。池田総理大臣はそういう誤ったお考えをお持ちになっておるのかどうか。これを明らかに願いたい。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 今回のような事件が起こったことはまことに遺憾であり、許すべきでないと考えております。従いまして、二度とこういうことを起こさないのは、やはり政治の姿を正していくということが第一であり、そうして既存の法律を順法するという観念を盛り立てなければならぬと思います。私はそういうことが主であって、法律を改正するとか、あるいは警備力の強化とかいうことは二の次に考えていきたいと思っております。
  46. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 申し上げるまでもありませんが、私の考えも同様でありまして、テロ暗殺を根絶するために警備力を増強したり、警職法の改正をするなどということを行なうことは邪道である。そこでテロ暗殺の根絶でありますが、これは何といっても行き過ぎた行動言動というものを世の指導者が慎むということ以外にはないのではないか。新聞、雑誌、ラジオあらゆる方面で論ぜられておることは教育が悪い、教育もあるいは間接の原因であろうかと思う。またテロ、グロの最近の映画が度を越えておる、こういうことも間接の原因としては私は全くないものとは思われぬ。しかし、何と申しましても政府、与野党、総評、日教組等の、この世の指導者がおのれの言動の行き過ぎを深く反省をして、単に反省をするのみならず、その行き過ぎの反省の実を将来に向かって示してくる。こういうことがない限りは、テロ、暗殺の風潮というものは伝染をする危険が多分にあるのではないかと考えるのでありまして、少なくともわが政府与党の長として内閣総理大臣池田さんは、この点をまず身をもって実践をせられて、そうしてあくまでも行き過ぎの是正ということに全力を尽くして、反省のある言動というものをとっていくことに範を示されたい。こういうふうに考えるわけでありますが、総理大臣の御所見を伺いたい。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 全く同感でございまして、自由民主党の総裁、また池田内閣組織以来そういう気持でやっておるのであります。世間では低姿勢と申しまするが、これは低姿勢でなしに、まことの正しい姿勢であると考えております。
  48. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 最後に一口、時間が参りましたので総理にお尋ねをして私の質問を終わりますが、集団暴力に関する問題であります。この集団暴力未然防止をするために集団暴力取締法を制定する御意向があるかどうか。集団暴力が度を越えるところにテロ暗殺が横行するおそれがある、集団暴力根絶のためには集団暴力取り締まりの新たなる法律を制定する必要があると存じますが、総理の御所見を伺いたい。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま申し上げましたように、刑法その他既存の法律、条例等によって一応万全を尽くすことが本筋だと思います。しかし治安の推移その他を見まして、また各方面の意向を参酌しまして、もしそういう必要がありとすれば考慮してみたいと思いますが、ただいまは考えておりません。
  50. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 終わりました。
  51. 山口六郎次

    山口委員長 猪俣浩三君。
  52. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ただいま田中委員の質問によりまして、警察当局が淺沼刺殺当時における警備に関し相当のミスがあったことが明らかにせられました。警視総監も深く責任を感じておられるようであります。およそ民主政治責任政治でありますがゆえに、官界、政界を問わず、責任を明らかにすることが根幹であることは申すまでもありません。そこで私はこの観点から、池田総理大臣が過般衆議院の本会議におきまして御説明になりました点二、三につきまして、池田さんの所信を伺いたいと存ずるわけであります。  前置きを申し上げておきますが、今回の淺沼テロ事件につきまして、池田総理大臣を初めといたしまして閣僚の諸君、自民党の諸君が心から遺憾に存じ哀悼の意を尽くしておられることにつきましては、深甚の敬意を表するものであります。しかし、責任責任として事を論じなければなりませんので、私は主として法的見解からお尋ねしてみたいと思うわけであります。  池田総理は、今回の淺沼テロ事件について山崎国家公安委員長が最高の政治責任をとってやめられたというふうに御説明になっておるわけであります。これに対しまして世上相当の疑惑がある。一体最高の政治責任とはどういう意味なのであろうか、悪く言うものは、それは選挙対策だと言う者がある。私どもはさように考えませんけれども、法規的に見まして、一体淺沼テロ事件の最高の政治責任を負う立場で国家公安委員長があったであろうかどうか。私は法規的に見てないと思うのである。これに対し最高の政治責任を負ってやめたということ、これに対しては御説明をしていただかぬとのみ込めない点がある。  まず第一点といたしまして、あなたが説明なさいました前国家公安委員長山崎氏の最高の政治責任とは何ぞや、いかなることを根拠としてさような処置をされたものであるか、その点について御説明をいただきたいと思います。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 かかる不祥事件が起こりましたことは、天下に非常な衝撃を与えたのでございます。国家公安委員長といたしまして、法律上の責任は私はないと考えまするが、最高の政治責任というのじゃなしに、高い意味の政治的観念から辞表を出されたから、そういう意味で許可したのでありまして、最高の政治責任という意味ではございません。
  54. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法律上の責任はないが高い政治責任でやめたのである、それが実は私ども納得がいかない。責任は結局何らかの法規的な根拠がなければならない。権限がある者がその権限を尽くさざるところ、そこに責任が発生する。また権限がある者が何らの故意過失なくしてもその立場上から責任を負う場合があり得るだろう。政治家の責任は高くなるほど無過失責任になると思うのであります。  しかし一体国家公安委員長の法的根拠――国家公安委員長はいかなる権能がありましょう。国家公安委員会は一人の委員長と五人の公安委員で成立しておりますが、事を決しまするには五人の公安委員の合議制になっておる。国家公安委員長は議決権がありません。ただ、五人のうちだれか一人休まれて二対二になったときに裁決する権能があるだけで、五人が出て合議をした際には多数決で決せられる。国家公安委員長がいかなる考えを持っておりましても、国家公安委員会の意思形成にはならぬのであります。かような立場の人が高度の政治責任とは何ぞや、私ははなはだ理解できない。のみならず、国家公安委員長公安委員を選任する権限もない、またやめさせる権限もない。警視庁あるいはその他の警察実行機関に対して指揮命令をする権限もない。何も権限がない。これは結局内閣と国家公安委員会の間の連絡機関にすぎないことは立法当時から明らかである。ここに問題もありましょう。問題もありましょうが、それは二の次といたしまして、現行法の解釈として、国家公安委員長なるものは淺沼テロ事件の失態に対しまする最高の責任を負うような立場にない。内閣総理大臣にある。それをすりかえられたと思う。そこで私はこの責任をお聞きしているのであります。一体公安委員長にどういう責任があるのであろうか。これは内閣と公安委員会の連絡が不十分であったという責任であろうか。そういうことで高度の責任と称してやめさせられたならば、山崎さんははなはだ寝ざめが悪かろうと存じますが、どうも、やめさせたんじゃない、やめたんだと称します。そんなことは言葉の争いです。あの人がみずからすき好んでやめたんじゃないことは明らかです。そんなことは言わぬ方がよろしい。そこであなたは、こういう法規的に、警察法上ほとんど責任の地位にあらざる国家公安委員長を、やめたでもいい、みずからやめることを認めて、これで全部責任は解消したと思われておるかどうか、御所見を承りたい。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 山崎さんが辞表を提出せられたのは、こう私は正確に申し上げます。法律責任はお話しの通りございません。ただああいう事件が起きた、そうして国家公安委員長であるということから、大所高所から、この際自分が政治責任と言いますか、政治的配慮、これが適切だと思います。政治的配慮のもとに辞表を出されたのだと思います。私はこの事件に対しまして、内閣総理大臣として、今後こういうことが二度と起こらないように努力することが私の立場でなければならぬ、こう考えております。
  56. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は法律の専門家でないあなたと押し問答はあまりいたしません。結論を聞けば、その結論に不満であっても先に進むことにいたします。  今回のテロ事件に対しまする警察責任の第一は東京警察であります。警察は警視総監と都公安委員会から成り立っておりますが、これは両者とも責任があることは明らかです。これが第一次の責任で、田中君が追及した通り。第二次は警察庁長官であります。第三次は国家公安委員会であります。第四次は内閣総理大臣であります。ですから、最高の政治責任といえば内閣総理大臣のことで、まさか国家公安委員長内閣総理大臣より上だというわけにはいかぬでしょう。最高の政治責任、無過失責任、ただ法規上の責任のある地位にあるということによって辞職するとかいうことが起こる、これが最高の政治責任という意味だろうと思う。もちろん、あなたが心からこのテロ行為を憎んでいられることはよくわかるのであるから、私はあなたの過失でも故意でもないことは明らかだと思うけれども、しかしこの警察法の精神を御理解なさっておらぬのじゃないか。巷間国家公安委員長といえば、それが全責任のように民衆が思うのは無理もありません。そういう無理解に乗じた処置じゃなかろうか。すべて法規を厳正に解釈して、その上にのっとって合理的な政治というものが行なわれなければならない。総理大臣を差しおいて責任を負わなければならぬような高度の立場に国家公安委員長はないのであります。そこであなたに聞いているのです。この第一次、第二次、第三次、第四次、警察行政に対する責任の順位は、私は今申しました順位だと思います。これは、あなた専門家じゃないからいいとして、逢うなら違うように、その通りならその通りのように、だれか政府委員の専門家が答弁しなさい。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 最高の政治責任という言葉じりをとらえるわけじゃございませんが、誤解があるといけませんのではっきり申し上げます。先ほど申し上げましたように、こういう不祥事件が起こったことに対しまして、大所高所から政治的に配慮して山崎さんはおやめになったのであります。この警察権の行使につきましては、国家公安委員会、そして都の公安委員会、警視総監、こういうものについてでも論議はありましょうが、内閣としての直接の責任は負わなくともいいと思います。
  58. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 さっぱりわからぬのですが、まあよろしい。  そこで第二に、やはりあなたの衆議院の本会議における説明を聞きますと、内閣総理大臣法律的な責任がないのだという声明をなさったのであります。いやしくも国家の行政権の中の最強と称せられる警察行政について、内閣総理大臣責任がないということは、重大な問題であります。そこでその点についてお尋ねしたい、私は警察行政について、先ほど申しましたような最高の責任内閣総理大臣にあると言うものでありますが、その点につきましてあなたの所見を承りたい。(発言する昔あり)今ヤジみたいなものがありましたから説明しますが、国家公安委員会というのは、いわゆる政党内閣制度下における多数党の警察権乱用をコントロールするために設けられたものであり、制度そのものとしてはいいと思うのであります。しかし、それはその目的の範囲において理解すべきもので、何でも内閣の責任は全部国家公安委員会にかぶせてしまうという意味じゃない。それを誤解してはいけない。そこでもし何でもかんでも国家公安委員会が全責任があって、内閣総理大臣責任がないとするならば、しからば憲法の第六十五条、これは一体どういうふうに理解することになりますか。憲法第六十五条は、すべての行政権は内閣にあることになっております。警察権が行政権であることは申すまでもない。もし総理大臣が全くこの責任がないということになりますと、憲法の六十五条はどう理解すればいいのであるか、警察権は行政権じゃないというのであるか、その説明をいただきたい。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 法律問題でございますから、法制局長官に答弁いたさせます。
  60. 林修三

    ○林政府委員 政治的な点は抜きにいたしまして、法律的な点だけから申し上げます。  今御指摘のように、憲法第六十五条は、「行政権は、内閣に属する。」とございます。しかし、これはすべてのいわゆる行政上に関して内閣が一々の指揮監督権を持たなければ憲法違反だということまでには及ばないのじゃないか。御承知のように警察の行政という、政治的中立を非常に必要とする行政につきましては、やはり内閣から相当独立した機関を作って、その独立した行政機関がその責任のもとにこれを運営していくということがいいのではないかという理論があるわけであります。そのほかにも、たとえば国家公務員に関する人事行政とか、あるいは労働委員会の問題とか、こういうふうないわゆる行政委員会という制度、この行政委員会という制度は、御承知のように独立性を主とするものでございまして、もしも内閣が指揮監督権を持つなら独立性の機関を作る必要はない、委員会を作る必要はないわけであります。こういう行政委員会は必ずしも憲法違反ではないと、従来学者も考えておりますし、私どもも考えておるわけであります。警察につきましては、ただいま出しましたように、そういう意味で独立性の強い行政委員会を作って、警察官の行使はそれにまかしておるわけであります。これは猪俣先生に御説明するまでもございませんが、現行の警察法では、第一線の警察運営の責任は都道府県警察でございます。東京都でいえば都の公安委員会と警視庁、これに警察運営の全責任があるわけであります。その上に国家機関として国家公安委員会と警察庁がございますが、これは人事とか組織とかいうことに関する全般的な統一整備ということの権限だけでございまして、警察運営に関する任務は、御承知のように警察法第五条に特記されております二つの事案についてしか権限を打っておりません。そういう意味でいわゆる警察運営の責任は都道府県警察にあり、その上に乗っかっております国家公安委員会の権限は今申したようなことであります。従って公安委員会はまた行政委員会で、警察法の第四条でございましたか、内閣総理大臣の所轄のもとに置くと書いてございます。所轄というのは非常に独立性が強いという意味でありまして、具体的な指揮監督権は総理大臣に何もございません。要するに人事権を持っているだけでございます。そういう意味で法律的な責任は指揮監督の権限とうらはらでございまして、指揮監督の権限があれば、その指揮監督の責めについても責任はございますけれども、そういうものがなければそういう意味の法律責任はない、私はかように考えております。
  61. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は、警察大学の教授、検察官出身の法律の専門家あるいは憲法学者等、相当の本を沈んで今質問したのです。あなたのような答弁をしている者は珍しい。みな憲法違反だと言っていますよ。もし全く内閣総理大臣が何らの責任がないとするならば憲法違反だ。さっき私はそういう答弁があろうと思うから断わった。国家公安委員会というものは、多数党政治警察権の乱用を防ぐためのコントロールの組織である。行政権の最高の責任は内閣にあることは明らかです。そんなことは、その具体的な指揮権がなくても、あらゆる方面において権能があるじゃありませんか。第一、国家公安委員長並びに委員の任命というものは、警察法第七条によって内閣総理大臣の職権じゃないか。人事権を掌握している。それから警察法第十六条によって警察庁長官任免の承認を与える。四十九条によって警視総監任免の承認を与える。これは拒否権を含んでいるものであることを学者はみな説明している。警察法第十六条には警察庁長官の任免の承認、警察法四十九条には警視総監の任免の承認、みな内閣総理大臣が持っている。国家公安委員の任命権もあり、警察庁長官あるいは警視総監の任免についても拒否権を持っている、承認権はある。こういう権限を持っておって何らの責任がないということはどういうわけですか。それは憲法にも違反するし、法律の精神に大体違反している。それで今言ったように、私はこれを国家公安委員長と比較して言っているわけです。国家公安委員長は最高の責任を負っている。しかしこれは法規的に議決権さえない。いわゆる委員の任命権も何もあるものじゃない。しかるに内閣総理大臣はかような広大な権限を持っている。なおまた国家行政組織法三条三項の趣旨に従って、総理府設置法においては国家公安委員会は総理府の外局になっておって、その長が内閣総理大臣。そこであなたにお聞きしたいのだが、国家公安委員会の主任大臣は何人なんですか。
  62. 林修三

    ○林政府委員 ……。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちょっと待って下さい。総理大臣にその理解があるかどうか聞きたいのです。国家公安委員会の主任大臣というものは――各省に主任大臣がある。これは内閣法にも国家行政組織法にもあるわけです。行政事務の分担に主任大臣を置く。国家公安委員会の主任大臣は国家公安委員長であるか、内閣総理大臣であるか。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 法制局長官をして答えさせます。
  65. 林修三

    ○林政府委員 ただいまの主任大臣はだれかというお話でありますが、これは内閣総理大臣でございます。しかし、先ほど来申し上げましたように、いわゆる行政委員会の制度全般について、もちろん憲法六十五条あるいは七十二条との関係から憲法違反ではないかという説が一部にはございます。しかし大部分の学者は、行政委員会は今の憲法で違反ではないと言っている説が多数説でございます。またこれは人事院につきましても、あるいは国家公安委員会につきましても議論があったところでございますが、しかし、政治的中立を要するような行政については、合議制の機関を作って、合議制の機関の責任においてやっていく。こういうことがやはり行政の本質上いいのだ。こういう考え方が強いわけであります。それに基づいてこういう行政組織ができておりますが、しかし、何らかのつながりがないと憲法問題が起こりますから、人事権、任免権ということだけでつながっておるわけであります。しかし任免権以外の権限は内閣総理大臣は何にも持たない。すべて合議制の国家公安委員会が警察運営、警察組織の権限は全部持っておる。これに対して指揮監督権は総理大臣にはございません。具体的な指揮監督権はありません。従って、政治的な点は別でありますが、法律的な責任というものは、結局指揮監督権のうらはらの問題であります。従ってそういう具体的な指揮監督権のないところに、そういう意味の法律上の責任があるということはすぐには出てこない。人事についてのもちろん任免権がありますから、人事がよかったか、悪かったか、あるいは人事をどうするかという問題はございましょう。この点だけであります。それから主任の大臣でありますが、主任大臣は、御承知通り現在行政委員会についても主任の大臣はあるわけであります。これは総理府の外局である以上は内閣総理大臣であることは問題ございません。主任大臣であるからといって一々指揮監督権を持たないということは、これはまた各個の行政組織に応じて考えるべき問題であります。行政委員会に対しては、かりに主任の大臣であっても、直ちにこれから指揮監督権は出てこない。こういうのが、従来からの解釈であります。そういう理解のもとに今の警察の組織はできております。
  66. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたと論争するつもりで来たのではない。総理大臣と論争するつもりで来たのに、長々と答弁して私の時間に食い込んでどうにもならぬ。それはいいとしても、しかし行政委員会が憲法違反になるとは私は言っていない。そんなことはだれも学者は言っておりません。行政委員会が憲法違反ではないにしても、行政権の最終の責任は内閣にあり、内閣総理大臣にあるという議論ですよ。憲法六十六条を見てごらんなさい。やはり国会に対して責任を負うものは内閣であります。そうしてその首長たる内閣総理大臣。憲法六十五条、六十六条の精神をとるならば、行政権のうち最も強大な警察権に対して、最終的な責任を少なくとも国会に対して負うものは内閣総理大臣であらねばならない。その責任を言うておるのです。これは法制上、憲法上の責任じゃありませんか。何ら法律的に責任がないということは出てこない。憲法上の責任というものは何よりも大事である。この責任がある。少なくとも国家公安委員長よりは、主任大臣だという点だけでも直接の責任があるわけだ。もしこれは法律責任じゃないというならば、それはそれにしておいてもよろしい。よろしいが、もし高度の政治責任というならば、こういう憲法的、法律的な根拠がある。国家公安委員会の所管大臣なんです。公安委員長じゃないのだ。そうすれば、そういう高度のもしそれが政治責任だとしても、筋道を立てるならば内閣総理大臣責任じゃないかと僕は言うわけなんだ。それを国家公安委員長が高度の責任を負うたということは筋道が立たぬ。それをあなたに聞いておるのです。国家公安委員会の所管大臣じゃないですか、主任大臣だ。少なくとも政治責任があるはずだ。もし厳密な意味における法律責任がないにしても、国家公安委員長よりは政治責任があるはずだ。それを聞いている。一国の総理大臣が警察行政に対して最終的な責任を負わぬ、ということになったらどうなりますか、大へんな問題です。これは治安対策の根本であります。行政権の最も強大なるものは、人の基本的人権に関係ある警察権、治安対策で最も重大な関係のあるものは警察権、この警察権が、行政の首長である内閣総理大臣が最終的な責任を負わぬ――厳密な法律的議論としての法律責任がないにしても、政治責任だけは少なくとも国家公安委員長よりは内閣総理大臣は高度にあるはずだ。そのあなたの責任感を聞いている。一体国家公安委員会の所管大臣としてどういう責任がありますか。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、先ほど来法制局長官が言っているように、法律的の責任はないと考えております。従いまして、この事件に対してどういう措置をとるかということにつきましては、いろいろ考えたのでありますが、先ほど申し上げたように山崎さんが辞表を出されたから、高い政治的配慮からごの辞表を認め、自分としては、内閣総理大臣として、今後こういうことが起こらないように努力することが私の務めであると考えております。
  68. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 とにかくそうすれば警察行政の実際の権能のある国家公安委員会、その国家公安委員会の主任大臣である内閣総理大臣は、警察行政については最終的な責任は負わぬのだ、こう理解してよろしいか。そういうことで治安が保てますか。それを再びお聞きします。法律上の責任なり、政治上の責任なり、私はこれは憲法上、法律上の責任だと思う。憲法上なら六十五条、六十六条に規定がある。法律上ならば、警察法あるいは国家行政組織法あるいは総理府設置法、みな規定があります。みんな法律的に総理大臣の責任の規定がある。だから私は法律責任だと思いますが、それはさておいても、一体高度の政治責任という言葉をもってして、内閣総理大臣警察行政に対しては高度の政治責任もないということになるかどうか、それをお尋ねします。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 法律上の責任はございません。しかしいろいろの意味におきまして、すなわち内閣総理大臣としては、政治的につきましては関係のあることは私は承知いたしておるのであります。
  70. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 責任があるかないかという質問に対して関係があるということは一体どっちなんだ、それは。あるのか、ないのか、どっちなんだ。そういう言葉は、私どもは頭が悪くてよくわからぬですがね。責任があるというのか、ないというのか、それをはっきりして下さい。
  71. 池田勇人

    池田国務大臣 直接の政治責任はございません。しかし広い意味と申しまするか、高度な政治責任というものは、これはあることになっております。
  72. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこであなたに私は最初から聞いているのだ。高度の政治責任ありとして山崎国家公安委員長はやめたのだ。一体あなたは高度の責任――山崎さんとあなたを比べれば、あなたの方が高度だと思うのだ。その高度の政治責任を負うならば、内閣総理大臣が負わなければならぬものじゃないか。何の権能もない国家公安委員長責任を負うたことでこの責任は解除されないではないか。しかし私は、今直ちにあなたにやめろとかなんとか言う意味じゃないんです。ただ責任の所在を明らかにして、一国の総理大臣が警察行政に対して最終的な責任がない――それは法律的でもいい、政治的でもいい、最終的な責任を一国の総理大臣が負わないで国の治安が保てますか。それを国家公安委員長が最高の政治責任だと称してあなたとすりかえていると最初から私は言うている。だからあなたは責任があるとおっしゃったから、それはもう一ぺん念を押しておきます。間違いないでしょうね、それは。
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 山崎さんが最高の責任を持っていると私は言ていない。大所高所からのお考えでやられたのであります。しこうして総理大臣というものは、先ほどお話しのように法律的な責任はございません。ただ行政については、広い意味におきましてある程度の責任を持つことは、これは憲法の規程通りであります。
  74. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 さっきあなたは高度の責任があるとおっしゃった。今度はある程度になっちまった。これまた、はっきりさしていただかなければならない。ある程度なのか高度なのか、どういうことになるわけですか。そうぐららぐら変わられたらどうにもならぬですね。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 高度という意味が強いという意味か何というか、私は高度というのは広い意味の責任でございます。
  76. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 まあ、われわれが常識に使う言葉と違う言葉をお用いなので仕方がない。私どもは高いというのは高い、広いというのは広い。高いというのは立体的観念だし、広いというのは平面的観念、あなたは広いのと高いのと一緒になっちゃう。どうもこれはわけがわかりませんが、まあまあ仕方がないです。高いものも平らになっちまったり、平らのものが高くなったりする。これはやむを得ないが、とにかく責任があるということは明らかにしていただいた。私はそうしないと治安がおさまらぬと思うのです。決してあなたを責める意味においてではない。あなたは全く責任のないような説明を衆議院の本会議でやっていらっしゃる。そうしますと、これからの治安が保てませんですよ。何といったって内閣総理大臣国民中心として、いかなる責任でも内閣総理大臣がとるということにならなければいけない。たまにはやはり野党の意見も聞いておいて下さい。  それから第三点といたしまして、やはりこれもわが党の河上顧問の、暴力団体の資金源をどうするかという質問に対しまして、どうもあなたの答弁がないようなんです。あなたは施政演説の中に、暴力の温床を除去するという説明をなされた。これはけっこうなことだと思うのであります。その暴力の温床にはいろいろございましょうが、しかし彼らの団体を維持するに必要な資金というもの、これがある以上はなかなか暴力団は終末しない。そこで各種の暴力団あるいは矯激なる右翼団体に対し、これに資金を提供するものがある。これに対して適当な処置をとらなければ、なかなか今言ったように暴力の温床は除去できません。そこであなたの暴力の温床を除去するについての一つの重大な問題は、この暴力団の資金源にあると思う。これは私どもがただあなたを責めんとして言っておるわけではありませんで、ほとんど天下の世論だと思うわけであります。これは朝日新聞の二十二日のあなたの施政演説の後の論説でありますが、「暴力をふるうおそれのある右翼の資金源は、この際、断じて断ち切る必要がある。だれかが金を出し、かばっていくから、一定の職もなく、生活の根拠もないものが、いわば暴力の供給者として集まってくる。それに、左翼の集団的な暴力に対抗するつもりで、右翼を養うといった考えがありとすればこれほど愚なことはない。暴力は対抗勢力によって消散するものではなく、むしろ激発するにすぎない。当局はその資金源にメスを入れて、暴力を助長するような後援者の氏名は遠慮なく明らかにし、世のきびしい批判にさらすがよい。」これは各新聞がみな論じております。ただこれについてのあなたの具体的な方針が、どうも衆参両院におけるあなたの御説明によりましても明らかにされておらぬのです。私は、この点についてあなたの御所見を承りたいのです。そうしてこの暴力団の資金問題について、この新聞が論じておるようなことについて、どういうふうにあなたがお答えなさるか。これは天下の世論だと思うのです。具体的な御説明をいただきたい。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 この前お答えいたしましたように、暴力団の排除にはいろいろの方法がございまするが、お話の資金源を断ち切るということが、一つの有力な手段であると考えております。
  78. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは自治庁長官にちょっとお尋ねします。ちょっとお確かめしたいのですが、これは今度の政治資金規正法に基づく収支の届け出の明らかになったのは、何月から何月までですか。三十五年度の前半期と申しますか、これは事務当局の方でもけっこうなんです。
  79. 松村清之

    ○松村説明員 お答えいたします、  政治資金規正法による収支の届け出は半年ごとになっておりまして、現在期らかになっておりますのは、ことしの一月一日から六月末までの分でございます。ただこの報告は、団体によっておくれているところがございますので、お手元に差し上げてありますもの全都がまだ載っておるものではございません、今手元に集まった分だけを集めたものでございます。
  80. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私も政治資金規正法に基づく届け出を少し調べたのでありますが、とにかく右翼団体と称するようなものに、ほとんど日本のあらゆる会社が金を出しておる。大体三井銀行だの、三和銀行だの、銀行まで出しておる。NHKまでが出しておる。それからなお奇怪なのは日本銀行まで出しておる。一体これはどういうことであるか、はなはだ奇怪だと思うのです。なおまた池田さんの後援会だと思われます宏池会ですか、ここからも少しであるが出ている。これはあなたが御存じであるかどうか知りません。知りませんが、本年の一月二十六日と五月七日と二度出ております。  そこで、なおあなたの対策を聞くためにみなここで言うのでありますが、これはあなたが総裁でない時分、岸総裁の時分でありますけれども、あなたも内閣の重要な閣僚として参画せられた。アイゼンハワー大統領が日本に来るに対して、警備の態勢を作るそのために、警察官の補助機関として三万五千名の民間人を動員する。今の建設大臣の橋本登美三郎氏が団長格で、そうしてそのわたりをつけたのは、全国愛国社団体会議という、おもなる右翼団体の集合体、この構成メンバーの人が大半この動員に参画しておる。それに数千万円の金が出たということですが、そこは私は確かめておりませんが、橋本登美三郎氏を委員長とするこういう警察の補助部隊としての警備隊を右翼団体に頼んで組織したということは天下隠れもない事実である。金が相当出たと聞いておりますが、そこまでは確証はありません。一体そういう事案――あなたは今度新たなる自民党の総裁となられ、内閣総理大臣になっておられるのであるが、どうもとかく自民党は右翼団体に深入りし過ぎておる。一人心々の代議士諸公からも、自民党の本部の会計からも相当金が出ている。これは非常に世人の疑惑になっておる点であります。  そこであなたから、こういうことのあるなしよりも、一体今後どうされるか。この右翼団体の中にも、原理、原則で思想的に結合しておるのがあるが、これは思想の自由であり、結社の自由です。これは何も差しつかえない。しかし、ややもすればやくさや博徒を集めて政治結社と称し、それをまたさっき読んだ新聞のように、保守党の諸君がどうも利用しようとする。それではこういう暴力団体というものはなかなか絶滅できません。今私が知り得ました点についても二、三ありますが、もう一つは、自民党から治安確立同志会なるものに金が出ております。こういうニュースもあるわけです。これはもちろんあなたが一々知っておるわけではありません。ありませんが、やはりあなたは総裁として――個人々々の代儀士諸公が、あまり親分の葬式に花輪を出すとか、あるいは警備を頼むとか、さようなことをなさるならば、まるでわれわれは自民党内閣の依頼を受けた、権力者の側に立つ、自分たちは仲間であるような思い上がった態度で、場合によっては警察を侮辱し、場合によっては革新団体に威圧を加える。また一般の市民に対して政治家の名前をかさに着ることによってどうかつする。こういうことが絶え間なく起こると思うのであります。これに対しまして、こういう具体的事案を頭に置かれまして、あなたはどういう対策があるか。一体こういうすぐ腕で来いという団体、言論によらず、思想によらずしてかようなことをやる団体、これが日ごろ育成強化せられておるとするなら民主政治もヘチマもない。戦時中軍部並びに財閥があの暴力団を育成強化し、それが暗殺となって現われ、ついに戦争に突入し、悲惨な運命をわれわれは味わった。今回もやはり第二次世界大戦前夜のような状況が今出てきておる。あなたはこれに対していかなる決意を持って対処せられるのであるか。どうぞ虚心たんかいに具体的なるあなたの決意を伺いたいと私は思うわけであります。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 私は従来厳に右翼団体との関係はございません。常に注意して断っておるのであります。しかして自民党の問題につきましても、総裁になりまして以来、そういうことを厳に資金局長にあるいは幹事長に申しつけておりまするから、従来の考え、ことにこういう問題が起きましてからは資金の点につきまして十分注意をし、そういうことのないように努めていきたいと思います。
  82. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたは安岡正篤さんと非常に御懇意である。この方はしかし右翼であっても理論家である。ただし戦時中は、軍部の少壮将校あるいは右翼団体に深く影響を与えられまして、私は戦争の原因の一つをなした人ではないかと思う。あなたはこの方と非常に親交を厚くされておると聞いておりますが、宏池会という名前もこの方がつけたのだと聞いております。これはしかし思想的な立場に立っておる人であるから、あなたが参考としていろいろお話しなさることは差しつかえありませんけれども、えてしてやはりそういう右翼的な方向に近づいておられますと、そういうふうな団体のグループに巻き込まれるおそれがあります。私は、あなたと安岡さんの御関係を承っておきたいと思います。
  83. 池田勇人

    池田国務大臣 安岡先生には、非常な博学な方でございますので、いろいろ博学という点でおつき合いを願っておる次第で、別に金銭関係などは毛頭ございません。
  84. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 この資金関係につきましては、これは徹底的に調査をしなければなりませんが、私どもも今調査が緒についただけで、まだ徹底的になっておらぬのでありますから、これはいずれかの機会にまた明らかにしなければならぬと思います。ただ、今ここで自治省の方が御説明なさったように、この政治資金規正法はちゃんと報告の日を法定されておる。第一期の四月三十日までのものは五月十日までに、第二期の八月三十一日までのものを九月十日までに、第三期の十二月三十一日までのものを一月十日までに。しかるに私どもが政治資金規正法の報告を見たいために自治省に調べに行きますと、自民党の報告がこないためにまだまとまっておらぬ。これはもうとうに日を過ぎておるのですよ。この第二期は八月三十一日までなんです。それを九月十日までに出さなければならぬ。私どもは十月になって調べたのにできておらぬ。この詳細を、これは事務官の人でけっこうですから説明して下さい。
  85. 松村清之

    ○松村説明員 ただいまのお話の中で、この政治資金規正法は、先ほど申しましたように半年に一回出すことになっております。それでこの上半期の分は七月の十日が期限でございますが、お手元の資料のようにみなこれ届け出がおくれておるわけでございます。ただいま御指摘のように自民党の分もおくれましたけれども、現在の資料では、これはもうちゃんと出ておりますから、これに記載してございます。
  86. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 政治資金規正法は、今、いわゆる不当なる献金、右翼団体に対する献金問題を検討する唯一の法律であります。これは厳重に励行してもらいたい。この政治資金規正法第二十五条によれば、この届け出をする期間に届け出を怠った場合においては五年以下の禁錮または五千円以上十万出以下の罰金に処する、こうなっている。ところが、大政党といわれるものがこれを怠ってしまっているというようなことに対して、自治省は一体督促したのですか。その責任を追及したのですか。
  87. 松村清之

    ○松村説明員 これは自民党に限らず、その他の政党、政治団体も大へんおくれているわけでございます。いまだに出しておられぬ大きな団体もあるわけでございますが、これらについても再三督促はいたしております。しかし、これは経理の関係でなかなかまとまりがおそくなるのかとも思いますが、督促は再三いたしておるわけでございます。
  88. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 この七月四日に、治安確立同志会というところへ献金があるようなことが自民党から届け出がありますか、ありませんか。
  89. 松村清之

    ○松村説明員 今ちょっと原本で調べましてお答えいたします。
  90. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちょっと原本で調べて下さい。  そこで政治資金規正法の問題については、総理大臣の御答弁は抽象的でさっぱりわけがわからぬ。もっと具体的にどうするかということを、あるいはここですぐ申しかねる点があるかも存じませんが、これはあなたを弾劾するというよりもお願いですが、どうぞこの政治資金規正法の精神をくみ取って、こういう暴力団体その他に対する献金につきましては、一つ厳重に対策を講じていただきたい。ことにあなたの党である自民党にその疑いが十分かけられている。これに対しては自粛自戒を私は促したいと思うのです。時間がありませんから、なお二、三材料はありますけれども省きまして、今の点わかりましたか。
  91. 松村清之

    ○松村説明員 実は今のお話の七月四日でございますと、これはことしの暮れでないとまとまらないわけなんでございます。
  92. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その前にありますか、治安確立同志会というものは……。
  93. 松村清之

    ○松村説明員 今まででございますか。今調べておりますが、今のところなかなか見つからない状況でございます。
  94. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで今度は、まあテロ対策と申しますか、それについてお尋ねいたしたいと思いますが、一人一殺主義を公然と唱える団体山口少年行為を讃美する徒輩、こういう集団、この間テレビなんかでも実に驚くべきことを放言いたしておりますが、こういう集団なり個人に対して、破壊活動防止法が考慮されるのじゃないか。この民主政治の今日において、一人一殺、山口は英雄だというようなことを広くラジオやテレビで宣言する、こういうことが一体許されるであろうか。私は破壊活動防止法の第四条二号又、つまり刑法の百九十九条殺人を扇動し、教唆するような徒輩は、この破壊活動防止法第四条違反として責任を追及できるのじゃなかろうかと思うわけでありますが、これは法務大臣でも、公安調査庁の長官でも、あるいは公安審査委員会委員長もお見えになっておりますから、どなたでもよろしゅうございますが、この山口少年行為を大いに是認し、そうしてこれを英雄とし、しかも徳田球一を襲撃した人物は、私は力が足らぬでできなかったが、山口は大したものだ、こういうことをテレビ、ラジオで言っておるのですよ。こういうことに対して、一体何らの取り締まる法律がないだろうか。私は勉強が足りませんので解釈が間違っておるかもしれませんが、破防法にあるんじゃなかろうか、こう思うわけであります。それに対する御意見を承りたい。
  95. 小島徹三

    小島国務大臣 こつういうY少年のような行為を賞賛するような言葉をラジオ、テレビで吐くとか、あるいはだれそれを殺せというようなプラカードを持って歩くとか、あるいはラジオを通じてアメリカ人は全部殺してしまえというようなことをしゃべるということ自体につきましては、決して好ましいものでないことは私ははっきりいたしておると思うのであります。これについてはだれも御意見がないと思うのであります。ただ問題は、それがはたして法律上どうなるかという問題でございまするが、もちろん殺人を教唆、扇動したということになりますれば教唆犯になるということはございまするが、ただそう言ったからといって直ちにこれは殺人を教唆したものであり、あるいは扇動したものであると言い切ってしまうことができるかということになると、なかなかむずかしい問題がございまして、御承知のように表現の自由であるとかという問題もございまして、なかなかむずかしい問題でございます。従いまして破防法におきましても一人一殺を賞揚するような言葉につきましては、もちろんいろいろ形態とか態様によって異なりまするけれども、そういう政治上の主張を通したり、あるいは政治上の主張に反対するような目的を持ってやっておるということになれば、もちろん破防法の三十八条の適用を受けるものである、かように考える次第でございます。
  96. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもって、左に掲げる行為の一をなすこと。」は破壊活動と認める。それは「刑法第百九十九条(殺人)に規定する行為」そうしてこれを予備、陰謀もしくは教唆をし、またはこれを扇動する者は処罰するとなっておる。あなたの答弁は、刑法の教唆扇動罪と破壊活動防止法の教唆扇動罪とを一緒に考えておられるのじゃないか。違うのですよ。これは非常に論議のあったところなんです。刑法の教唆よりも非常に範囲が広いのです。刑法の教唆は出し上げるまでもなく、ここで殺意を生ぜしめる言動をなす者があり、それに殺意を生じ、その生じた意思に基づいて実行をやった。これが教唆です。しかし破壊活動防止法の教唆は、殺意を生ぜしめるような言行をやればなるということは政府が答弁しておるのだ、破壊活動防止法の説明のとき。だからああいうふうにラジオ、テレビで、あありっぱなことをやった、あれは当然だ、自分は力足らずでできなかったが、山口はりっぱだ、英雄だ。これは一体教唆にもなるし、あるいは扇動というのは不特定多数の人間に宣伝することだから、明白な扇動じゃありませんか。これはどうしてならないのですか。
  97. 小島徹三

    小島国務大臣 お答え申し上げます。破壊活動防止法の団体として認められるようなものにつきましては、猪俣さんのおっしゃることも一つの理屈でございますが、私の先ほど申し上げましたのは、ただ一人一殺というような態度を賞揚するようなこと自体が直ちに触れるかということになりますると、やはりそういう破防法三十八条の規定によるより仕方がないのではないか、こういうことを申し上げているのであります。
  98. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なおこの際申し上げることは、これは一人一殺、そのよってきたるところはデモ行進の行き過ぎにある。そこでデモ暴力だし、一人一殺も暴力だ、これを平等に考えて、そうしては対策を講ずるという主張、私はこれは非常に間違った考え方だ。これは戦時中、血盟団あるいは五・一五事件、このテロをやったのも悪いが、政界、財界が腐敗しているからなあ、こういう論法がいかに害毒を流したか、これは結局テロ行為容認の思想であります。つまりテロによってデモ行進を抑制する。それでやはりそのきき目があるとするならば、山口少年は英雄ということになるわけです。内閣でも手を焼いているのを山口一人でやった、英雄だ――池田総理大臣がテロ行為によって直ちに責任辞職するものではないというのも一つの倫理があると思う。しかし、それはほんとうは厳密にいうと違った論理です。やられたのは野党なんだから、権力者がやられたのではない。野党がやられたのだから、野党をやることによって権力者がやめるということは何にも――それゆえに続いてくるものは、今の内閣を倒すためには野党を片っ端からやればいいという考えになる道理はない。ですから、観念は違いますけれども、しかし一応の筋がある。どのデモの行き過ぎもわれわれは賛成するわけではありません。もしそれが原因だからこうだというならば、しからばどうしてデモがああいうふうになるかというそのまた原因をつかなければならぬ。それはゆっくり一つ考えることでございましょう。今差しあたっての問題は、このテロをどうするかということである。私どもそのテロの相手の中に入っているらしい。まことに毎日不安である。これをどうするか。私はデモの先頭に立ったこともなければ、アジ演説をやったこともありません。しかるに私もその中の一人に入っておる。何のためだかわけがわからぬ。これがどうも財閥なんかにもそういう思想があることを私は非常に驚く。新聞に報道したことが事実であるといたしますならば、十月十三日の毎日新聞に、石坂泰三経団連の会長が、暴力行為は決していいものではない。だがインテリジェンスのない右翼の青年がかねて安保闘争などで淺沼氏行為を苦々しいと思っていて、あのような事件を起こした気持もわからないではない。一体何という言葉だ、こういう徒輩がみんな暴力団に金を出しておる。これは一体どうするのです。私はこれは破壊活動防止法違反だと思うのだ、こんなことを言うことは。教唆扇動しているではありませんか。一体財閥がまたぞろ右翼と結託して、こういうテロ行為を容認するような態勢に出てきている。ますますもって第二次世界大戦の前夜の様相を呈してきた。それはやがておのれの頭上にかかってくるでしょう。政府はこれに対して、財界と密接な関係がある、ことに池田総理大臣は適当な警告を発してもらいたいと思うが、いかがですか。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろの人がいろいろの議論をお吐きになることは、これは私から個人的に、どういう気持でおっしゃったのか聞くことは、総理大臣としてそういうことは事実を知らぬのですから、いい悪いの論評は差し控えたいと思います。
  100. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私はテロ行為対策としまして、一人一殺を主張するような者に対して相当破壊活動防止法の適用を考えていただきたい。これは対策の一つであります。そうして財界等が無責任なる発言をしないことを要望したいのであります。政府の見解も研究中だというようにとれるのでありますが、これは公安調査庁の長官の御所見を一つ承りたい。どうです、あなた聞いておられたのでしょう。あのラジオの放送、テレビの放送、ああいうことに対してあなたは何も考えませんか、御所見を承りたい。
  101. 藤井五一郎

    ○藤井説明員 お答えします。テレビは全部聞いておりません。しまいの方をちょっと聞きましたが、もちろんああいう一部の放送について、私の聞いた範囲内においては賛成いたしません。
  102. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 だれだって賛成しないよ。そんなこと聞いているんじゃないです。公安調査庁の長官として、ああいうことに対してはどういう対策を立てるかというのです。ただ賛成しないと聞いていられたんじゃしようがない。
  103. 藤井五一郎

    ○藤井説明員 お答えします。先ほどからの破防法の適用問題でありますが、私は今のところこう思っております。一人一殺を唱うることが破防法所定の教唆、扇動に当たるかどうかということでありますが、これは法律の解釈上、一人一殺を唱えることがすべてこれに当たると断定し得ないのでありまして、検討した上で、もし当たるものならば正規の処理をとるべきものだと思っております。
  104. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務大臣も、それから公安調査庁長官も、もう少し真剣に考慮していただきたい。それはテレビですよ、ラジオですよ。しからば一体扇動とは何ぞやと私は開き直って聞きたい。刑法百九十九条を扇動するということはどういうことです。扇動とは不特定多数の人に刺激を与えることだとみんな本に書いてあるじゃありませんか。あれは一体刺激を与えないのですか。非常なショックを与えましたよ。あれは扇動じゃありませんか。しからばあれ以外の扇動というのはどういうことなのです。教唆でないにしても扇動、扇動とは不特定多数の人に強い刺激を与えることだとみんな学説は書いてあるじゃないか、一体あれはどう思う。その定義から扇動になるのかならぬのか、それを承りたい。
  105. 小島徹三

    小島国務大臣 先ほど申し上げました通り、全く好ましいことではございませんし、これが扇動、教唆になるかならぬかということは非常にデリケートな問題でございますので、これは事務当局から答弁いたさせます。
  106. 竹内壽平

    ○竹内説明員 所見を申し上げます。扇動という意味につきましては、ただいま猪俣委員が仰せのように私どもも解しておるわけであります。先ほど大臣から御答弁のありました点につきまして補足して申し上げますと、その扇動が法律上の意味においての扇動になるかどうかという点について十分検討しなければならぬということを仰せられたのでありまして、もちろん一人一殺を唱える者がありましても、その具体性と申しますか、その事情によりまして、あるものは成立する場合もありますし、あるものは消極に解さなければならぬ場合もあるという意味を申されたのだと思います。つまり単なる扇動でなくして、政治上の主義主張を支持し、反対する等の目的で、真に殺人を計画している者というふうに事実関係が認められるならば、その行為の態様によりまして破防法に違反することはこれは当然なことでございます。そういうふうな余地があるということは言えるのでありますが、そうでなくて、事実関係がそういうふうに認められない場合には消極に解せられることもあるので、そのような事実につきましては十分検討した上で考えたい、こういう趣旨と私は理解いたします。
  107. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 徳田球一を襲撃した古賀という人物、あれがテレビだかニュースに言っている。あれは治安確立同志会なるものの副会長である。治安確立同志会は政治団体としてちゃんと届けています。警察庁が出した右翼団体の中にちゃんと出ている、その副会長たる人物だ。だからある一定の政治信条を支持し、主張し、あるいはある主張に対して反対する団体であることは明らかである。そこの責任ある幹部です。これが一人一殺を謳歌するような不特定多数に多大の刺激を与える言動をやっている。まさに破壊活動防止法にぴたっと当てはまっている。どこが当てはまらないのか、当てはまらぬところを言っていただきたい。
  108. 小島徹三

    小島国務大臣 お答え申し上げます。御承知のように破防法の適用する団体ということにつきましては、これは非常に重大な問題でございまして、そう簡単に破防法を適用するということはできないのでございまして、慎重に調査いたしております。しかし、具体的に猪俣委員の言われました団体についてどういうことになっておるかということにつきましては、事務当局から御答弁させます。
  109. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 とにかく閣僚の一人の荒木文部大臣は、日教組を破防法すれすれの団体とまで言っているのだから、そこで一体日教組が破防法すれすれであるのに、一人一殺をいう団体というのは今考慮するということは、ちょっと私どもどうもおかしいと思うのだ。とにかくこれに対して今すぐ断定を下さないなら下さないでいいが、検討するならする、どう対処するならするか、それをもう少しはっきり言って下さい。
  110. 關之

    ○關説明員 お答えいたします。今までのお答えをあるいは繰り返すことになるかもしれませんが、法律上の点にわたって少し補足いたしたいと思います。  先生のおっしゃるまず殺人、そういうこともやむを得ないとか、あるいはそれは大へんよかったとかいろいろ言葉の段階があるわけであります。そこで一つ宣伝という言葉を出してみますと、あるいは宣伝的価値はありましょう。さりながらその宣伝が直ちに教唆、扇動になるかということになれば、法律的にはノーなのであります。たとえて申しますと、破防法の第四条第一項の前段の方に内乱の正当性、必要性を主張する文書、これはすなわち宣伝の面を取り扱うものなのであります。ところで今の殺人などの教唆、扇動においては、宣伝の面は実は取り上げていないのであります。そこでその言葉が単なる宣伝なのか、さらに一歩進んで教唆になるか、扇動になるかということは、これは法律上非常に重大な問題でありまして、その点を見て私どもは慎重に検討しているところでございます。内容の具体性の問題から見て教唆、扇動との関係でこれをどう考えるかという問題を、最近そういう言葉が大へん散見いたしますから慎重検討しておるわけでありまして、そういうことに対して私どもは責任を回避するわけでもありませんし、むしろわれわれの当面の責任だと存じて慎重に今資料を収集し検討しているところでありますから、御了承いただきたいと思います。
  111. 山口六郎次

    山口委員長 ちょっと猪俣委員にお諮りいたしますが、先ほど申し上げましたように、小倉警視総監が一時に退席することになっているのですが、まだ猪俣委員からは警視総監への御質疑がないようですが、よろしゅうございますか。
  112. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は警視総監について質問はありません。さきの田中委員の質問で尽きておりますので私は質問ありません。  なおテロ行為絶滅の一つの方法として、刑法の規定等を改正するか、あるいはテロ行為取り締まりに関する特別な法律を作るか、要するに連座規定ですね。とにかく親分子分の関係をつないで、衣食を給して、それに過激なる思想を吹き込んで、その少年に人を刺させる。そうしてそういう少年は偏向教育を受けていますから、口がかたくて、教唆の事実を明らかにしない。そして十七才の少年少年法の適用を受けますから死刑はない。十年か十五年の刑以外にない。それをちゃんと計算に置いて、私は相当の未成年の青年をどこかでテロ行為のために訓練しているということを聞いている。一体さようなことが不問に付していられるかどうか。これというのも警察のやり方が、ただ反共、ただ革新陣営、そういう方向の内偵ばかりに全力をあげている。これはあとで聞きますが、笑いごとじゃない、ほんとうにそうなんだ。右翼テロ団とは親密の関係に立っておる。あなた方否認されるならば私は証拠をあげる。そういうことで内偵が十分できておらぬ。それに世界に恥をさらすようなことが起こってきた。そこでみなこのテロ団体というものは、若い、矯激な、訓練しやすい少年をかかえ込んで、矯激な思想を吹き込んでいます。私はある程度の連座規定を設けなければ、このテロ団の組織を壊滅せしめることはできないと考える。こういう親分があって、その親分に私淑して長らく生活した者がテロ行為をやった場合においては、たとい殺せという具体的な指令をしなくても、ある矯激な訓練を施したその親分が責任を負うという連座規定を作る必要があるのじゃなかろうか、かような点について政府はどうお考えになっておるか、お答え願いたい。
  113. 小島徹三

    小島国務大臣 お答え申し上げます。猪俣委員の言われる連座制の規定ということになりますと、これはなかなか重大な問題でございまして、そう簡単に、直ちに連座制の規定をこしらえるということは、私は今のところ考えておりません。
  114. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 時間がありませんから急ぎますが、あなたは簡単に考えておらぬとおっしゃる。それは問題がありますが、あとでまたやることにいたしまして、もう一つは政治資金規正法ですが、今政党献金を規正する唯一の法律はこれである。これが実にルーズきわまる。私どもまだ詳しく点検していないが、とにかく支出でも収入でもずさんきわまるものである。これに対して査察権か何か、自治庁の権として持たせることが必要じゃなかろうか。ただでたらめなことを届けっぱなしです。だからこれだけ見ちゃさっぱりわからぬ。しかも法律には、虚偽の届けをしたら厳罰に処するようになっておるが、虚偽であるかほんとうであるか、査察権がないからわからぬ。実際これはどうしているんです。届けっぱなしなのか、ほんとうかうそか調査しているのですか。虚偽なあれをすれば五年間の懲役だの、何万円の罰金だの、法律には書いてある。しかし、虚偽であるか、ほんとうであるか、査察もできないで一体どうしてそれがわかるか。これは実際どうしていますか、自治庁の方にお聞きします。
  115. 松村清之

    ○松村説明員 現在の法律では、政党、政治団体から収支の報告書がありましたら、それを受け取りましてこれを公表する、そして世間の批判を仰ぐ、こういう建前になっておるだけでございまして、これについて査察云々のそういった権限はございません。
  116. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 総理大臣に伺います。今のような状態でありますが、今言ったような暴力の温床を根絶する意味において、資金関係は最も重大である。これに対してもう少し厳重に査察する制度にしたらいいと思うのですが、あなたの御所見を承りたい。
  117. 池田勇人

    池田国務大臣 大きい問題でございますので、慎重に検討いたしたいと思います。
  118. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務大臣はどう考えています。
  119. 小島徹三

    小島国務大臣 総理大臣のお答えになった通りであります。
  120. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 結局、何にも対策を持っていないということだね。あれもやらぬ、これもやらぬ、まあそれでよかろう。  そこで今度は警視庁の――これは事務的なことですから警視総監でなくてもいいです。警視庁右翼及び左翼の係、これは公安部でやっているのですか。この機構をちょっと説明していただきたい。そうして、右翼係には何人、左翼係には何人と、それは今じゃない、淺沼刺殺当時の機構をちょっと説明していただきたい。  なおついでに経費ですが、公安二課が右翼団体の係だ、そういうようなことを言っていますが、この経費が、左翼係の方面の経費と右翼係の方面の経費とがどうなっておるか、予算関係を聞きたい。  それから、私の聞くところによると、左翼係の刑事連中は非常に優遇されておる。共産党のビラでも一枚見つけると非常におほめにあずかるが、右翼の方はさっぱり、あまり輝かしいことにならぬらしい。それで皆左翼係になりたがっているということを内部の人が言っている。あなた方は、そんなことないと通り一ぺんに言うかもしれぬが、それはいいとして、この人数、それから予算がどうなっておるか、右翼左翼に分けられたら分けて答弁していただきたい。
  121. 石岡実

    ○石岡説明員 最初は、公安部の機構はどうかというお話でありましたけれども、公安一課がもっぱら左翼取り締まりをいたしております。公安二課の三係が右翼取り締まりをいたしております。公安三課が資料、あと外事課でございます。第一課の定員は全部で百七十八名でありますけれども、公安二課三係の定員は三十四名であります。経費の詳細については手元に資料がございません。
  122. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 経費はわかりませんか、経費は今答弁できなかったらあとで出していただきたい。  それから今右翼対策について私は破防法のこと、特別法の制定のこと、政治資金規正法の改正のこと、みな申し上げましたが、とにかく法律の改正もさることながら、警察活動を今までのように偏向さしてはいかぬと思う。きのうも共産党の志賀義雄君から相当の機密文書が発表せられた。これは志賀君から質問があると思います。あれを見ましても、全く左翼関係については全機能をあげ、金の大半を住いでやっておる。右翼に対してはあけっぱなしみたいなものです。そこで公安調査庁に聞きますが、右翼の係員と左翼の係員の人数を言って下さい。
  123. 關之

    ○關説明員 お答えいたします。公安調査庁におきましては全調査官が千三百人おります。そのうちの一割前後が右翼関係に従事しておるということに相なっております。
  124. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 千三百人のうち一割、百三十人だけであとは全部左翼ですか。右翼左翼の比例を聞かして下さい。
  125. 關之

    ○關説明員 そういうことに相なるわけであります。
  126. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 わかりました。驚くべきことだね。やっておらぬようなものだ。千三百人のうち百三十人で、あと全部左翼係、警察がそのあと控えておる。その間隙を縫ってテロが、右翼団体が勃興してくる。そこでこれは総理大臣に聞きますが、こういう警察なり公安調査庁の片寄った捜査機構を一体どうしますか、これでいいですか。
  127. 池田勇人

    池田国務大臣 今回の不祥事件からかんがみまして、そういう点につきまして再検討を加えたいと思います。
  128. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今いろいろ法律の改正をなさらぬ、警職法や警察法の改正はなさらぬという答弁がありましたが、これは当局でも御存じだと思うのですが、インドネシアのペムダという新聞、本年六月九日の新聞です。これは政府警察なんかで人手なさっていると思いますが、驚くべきことが書いてある。日本を襲う政治台風、民主主義のかわりに原子爆弾、こういう題目で、これを読んでみますと、安保条約を強化するために機密保護法を考えているし、法務省に特別使命を帯びた参事官室を置いて、そうしてそれを主宰しているのは有名な小谷悦雄という昔の陸軍大佐だ、これはソ連の暗号電報を解読する世界屈指の人物だ、こういうことが書いてある。そうして行く行くはこれをいわゆるスパイの中心、諜報機関の中心として機密保護法を作り、また背の特高警察的なことを強化する、こういうふうな参事官室が法務省に下準備してある。こういうことが報道されております。これはインドネシアの新聞でありますが、政府もお沈みになっているかと思うのですが、こういう事実について、いわゆる機密保護法を作るような考えがあるかどうか。あるいはこれは法務省となっておりますから、法務省参事官室にこういう下準備機関があるという報道になっておりますが、これに対しまする御答弁をいただきたい。デマならデマでけっこうです。
  129. 小島徹三

    小島国務大臣 お答え申し上げます。はっきりと申し上げますが、そういう新聞のあることは私は初耳でありますが、法務省にはそういうものは一切ございませんから御了承願います。
  130. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務大臣だけが知らぬのじゃないかな。あなたの耳になかなか入らないのだよ。軍事機密保護法のようなものをアメリカと打ち合わせの上に作る、それには原子兵器をどうしても持ち込むということになっておる。これは安保条約締結の際にアメリカと日本の秘密覚書がある。その秘密覚書に基づいて原子兵器を輸入する。それにはアメリカの原子力法の規定に従って機密保護を制定しなければならぬ。それからスパイを強化する、そこヘソ連の暗号電報を解読する世界的な人物を持っていく。こういうような内容のものであります。これが堂々とインドネシアの新聞に発表されておる。そこで池田総理大臣に聞きますが、一体機密保護法を制定するような企てがありますか。今非常に準備しておるということが書いてある。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう考えは持っておりません。
  132. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 公安調査庁長官、知らぬかな、こういうペムダという新聞です。
  133. 藤井五一郎

    ○藤井説明員 お答えいたします。どういう新聞でどういう系統の新聞でございますか。
  134. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そんなことは知らぬ。あなたに聞いておるんです。
  135. 藤井五一郎

    ○藤井説明員 私どもそういう何はまだ見ておりません。
  136. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 訳文がここに全部あるのですが、左翼がかった文献はずいぶんお集めになっておるが、こういう文献はお集めにならぬ。これは新聞社にあるはずだ、お調べになっていただきたい。(「確固たる事実じゃないじゃないか」と呼ぶ者あり)だから事実でなければないとはっきり言えばいいのだ。それからもちろんこういうものは相当デマ、宣伝がありまして、私どもはこれを信じておるわけではございませんが、一応こういう新聞が出ておりますから皆さんにお確かめしたい。なお、私どももこういうデマ、宣伝はお互いに気をつけなければならぬということで、社会党や総評が金をもらったようなことのデマ、宣伝を飛ばす、その上に中共から指令書をもらった。これも法務大臣に一つ聞かなければならぬと思うのだが、中共の指令書によって総評や社会党は動いておると、にせものの指令書を作って、それが岸内閣総理大臣の手元に入った。そこで岸さんは、この安保条約反対は日本国民ではなくて、一握りの国際共産主義者の扇動だ、われに証拠がある、こう言った。この証拠がにせものの中共指令書だ。これは八月二十二日の読売新聞に詳しく出ておる。そうしてにせものを書いた男までも私の方ではわかりました。それが岸さんの手に入ってからに、そこで社会党なり労働組合が何か中共の指令で動いておるというようなことを、内閣乳総大臣がにせものをつかまされて、そうしてそれを信じ込む。そしてそれが右翼団体に流れる。そうしてこれは国賊だということになってテロ行為を扇動することになる。これはお互いに気をつけなければならぬ。そこでこれは警察でもあるいは公安調査庁でも調査になったはずですが、この中共の指令書なるにせものを作った本人及びその後の状況はどうなりましたか、御答弁願いたい。
  137. 關之

    ○關説明員 お答えいたします。御指摘の読売に掲載されました問題でありますが、もちろん一つの情報問題として私どもも検討いたしておりまして、終局的な段階にまだ至っておりませんが、私どもも本物でない点については深い疑いを持っておることを申し上げておきます。
  138. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、何人がこういうにせものを作ったか、それまで調べがついておるのか、ついてないのか、もっとそれを具体的に事情を説明して下さい。これは公安調査庁職権でおやりになっておると思う。何人が一体こういうにせものを作ったか。
  139. 關之

    ○關説明員 一応調査は進んでおるわけであります。ただいま手元に資料がございませんから詳細は申し上げられませんが、一応調査は進めております。
  140. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 この人物は台湾の国民政府側の人物であるということを聞いておりますが、それだけの調べが出ていますか、どうですか。
  141. 關之

    ○關説明員 国民政府側かというお尋ねについては、私はノー、そうではないようであります。
  142. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお今回のテロ事件関係します全アジア反共青年連盟、これには韓国及び国府の人間が出入りしておった。鳩居堂の二階には韓国の新聞社の事務所がある。そうしてこのにせものの中共指令書を書いた人物と、この全アジア反共青年連盟関係した人物とが同一人ではないかと思われる節がある。これは大へんな問題ですよ。今まで日本の反動団体といえども国際性はなかった。これは日本右翼団体の一つの特徴であった。しかるに今回は、どうもこのテロ事件には国際関係があるようなにおいがする。それに対して一体警察なり公安調査庁は何か調べがついているかどうか、その実態をお聞かせ願いたい。
  143. 柏村信雄

    ○柏村説明員 今度の山口二矢につきましては、背後関係等慎重に捜査を進めておりますが、今のところこれは出ておりません。それからただいまお話しの全アジア反共青年連盟の事務所が鳩居堂の一室にあるということは、これは事実でございますが、私の聞いておりますところでは、同じ部屋に別の韓国系統の団体の事務所が同居しておるということで、そういうことが今のお話しのようなことになってきているのではないか。国際的な関係というものは今のところ出ておりません。
  144. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私はまだたくさんありますけれども、私の持ち時間が終わってあまり人に迷惑かけてはいけませんから、もう一点だけ山口少年のことにつきましてお聞きしたい。  これも私まだたくさんお聞きしたいことがあるわけでありますが、これは省略いたしまして、ただ先ほども話が出ましたが、この山口二矢という少年は十三回か十四回検挙されている。この犯行の内容も、家庭裁判所の審判録によって調査しますと、これはひどいことをやっておる。傷害、暴行、公務執行妨害、あらゆる暴力関係法律を犯している悪であります。これに対しまして家庭裁判所では保護処分に付しておるというわけですが、そこで現在激増しておりまする非行少年、これとの関係でありますが、法務省なり最高裁判所なりは、一体これに対してどういう対策をとっているかはなはだ疑問であります。たとえば小松川の高校生殺し、あれなんかは心理分析をいたすならば、ああいう犯罪を犯す可能性が十分あった人物であるはずであるのに、少年鑑別所の鑑別がずさんででたらめで、全くなっておらぬ。また保護司もこれは模範少年などのごとき報告書を出している。それが人殺しをやっている。二人も殺している。一体少年鑑別所は何をやっているか。これはいつか愛知さんが法務大臣の時分問題になりまして、いわゆるもう少し科学的に少年を鑑別する制度を整えなければならない。アメリカのグリュック博士のグリュック理論なんかを根底として、日本の民族に適応した一つの非行少年の鑑別基準というものを作らなければならぬじゃないか。それであらゆる方面から鑑別するならば、非行を行なう少年のある程度の線が出てくる。それを全然何をやっておるか知らぬが、こういう一見すぐわかる、それに一年間に何回も検挙されているんですよ。こういう人物を家庭裁判所まで検察庁が送っているのに、何か野放しにしておいて、一体どういうことになっておるのかわけがわからぬ。そこでこういう非行少年についての鑑別は家庭裁判所の管轄であるか、あるいは法務省の管轄であるか、一体その両者の連絡はどうなっておるのであるか。おのおのからお聞きしたいと思う。  現在非行少年は社会の、全世界の大きな問題であります。これに対する対策はなっておらぬ。そこで私は現在おやりになっておる家庭裁判所側及び法務省側からその実情を報告していただくとともに、これの根本対策に対する池田総理大臣のお考えを伺いたいと思うわけであります。順序は違いますが、まず事務当局から御説明いただきたい。
  145. 竹内壽平

    ○竹内説明員 問題の少年が、御指摘のように昨年の六月から今回の事件を惹起いたしますまでの間に十数回にわたりまして検挙せられ、その事件が検察庁に送致されました。検察庁におきましては、これらを審査いたしました上に、保護観察が相当であるという意見をつけまして家庭裁判所に送っております。家庭裁判所におきましては数件の事件を一括いたしまして、昨年の十二月二十一日に保護観察処分に付したのでございます。その保護観察中においてのできごとでございまして、結果論的に見ますると、すべてがむだに帰したような結果になるわけでございます。従いまして、私どものとって参りました処置につきましては深甚な反省をいたしておるわけであります。ただあとから見て、警察では収容すべきであるという意見をつけまして検察庁に送っておるわけでありますが、検察官は保護観察が相当であるという意見をつけた点につきまして、その処置ははたして適正かどうかということが反省されております。この点につきましては、一つ一つの事件は、今日になって全都をそろえてみますると、容易ならざる性格を持った過激な少年であるということがうかがえるのでありますが、ばらばらに発生してきた事件を受理いたして、この事件一つ一つを見ますると、事件そのものは必ずしも重大な事件ではない。しかも彼は当時満十六才でございます。今日は十七年七カ月になっておりますが、そういう関係でこの者を直ちに収容して収容所に入れるということが適正であるか、あるいは刑事処分に付するのが適正であるかということは相当問題でございます。検察官が保護観察処分を相当といたしたことにつきましては、私どもが考えてみましても、これを不当というわけにはいかないように私も考えております。そこで本年になりましてからの事件につきまして、現在検察庁の手元に三件未済を持っております。これは事件の処理を怠っておったのではなく、事件全体を見て、この段階になってくると、十七年七カ月ではありますけれども、収容処分あるいは刑事処分ということが考えられるのではないかというような考え方からいたしまして、保護観察所における保護観察の状態等をも見きわめました上で処理をしたいという考えであったようでございます。その間にこの事故が起ったのでございまして、ほんとうに私どもとしては少年を扱う者としては残念に思っておるのでございます。  そこで少年の犯罪についての今後の処置でございますけれども、私どもとしましては、すでに数年前から、少年犯罪の著しい増加、質の悪質化して参ります状況等にかんがみまして、いろいろな対策を講じておりますことは、猪俣委員が先ほどそのうちの一部につきまして御披露のあった通りであります。何と申しましても少年と申しますのは、その少年の性格、特にその少年がある種の非行を犯します環境、家庭の事情その他諸般の事情が非行へ導いていくということは、これはもう何人も争い得ない事実でございます。従いまして性格を矯正しますためには、ある種のケース・リーカーの専門的な科学を導き入れた処遇が必要でございます。環境を直していく、家庭の状況を是正していくということにつきましても、これまた非常にむずかしい問題ではございますが、何としてもこの点は今後一そうの努力をわれわれに要求されている点だと考えております。  なお、ただいまの御質疑の中に、裁判所と法務省との間に何か考え方に相違のようなものはないだろうかという御懸念もあったのでございますが、この点につきましては、もちろんいろいろ対策につきまして、私ども議論の必ずしも一致しない点はございますが、だからといってしっくりしないといったような問題はございません。事は少年を扱うことでございまして、お互いにいかにしたならば最もいい方法であるかということにおいて議論はいろいろ分かれておりますけれども、現在までのところ、家裁と検察庁あるいは法務省との間に、何らその点につきましてはわだかまりはないと信じております。  それからなお反省させられます点といたしまして、少年処遇の機関が非常に分化しております。この点がややもすると連絡を欠くというきらいがないでもないのでございまして、今回の般り扱いにつきましても、若干そういう点について欠陥があったように私は反省されるのであります。この点につきましても十分検討いたしまして、少年犯罪につきましての取り扱いについて万遺憾なきを期して参りたい所存でございます。
  146. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたは法務省の刑事局長としてそういう答弁をなさるより仕方がないかもしれぬが、これは法暫界の非常に長い間の宿題ですよ。非行少年に対してとる方法は検察庁側と裁判所側において二元的になっている。これはいろいろな弊害を生じている。そこでこういう非行少年の鑑別あるいは保護監視と申しますか、審判をとるそういうものを一元的にして――少年鑑別なんというのはアメリカあたりは非常に理論が進んでおりますが、徹底的に科学的に鑑別をして、こういう非行少年が続出することを防ぐ道をもっと講じなければならぬと思うのです。  池田総理大臣にお尋ねいたしますが、こういう非行少年に対する国家的な施設として、あなたはどういうふうに考えておられるか。これは申し上げるまでもなく世界的な現象であるのみならず、日本におきましてまことに重大な社会問題として今展開されていると思うのです。この山口少年のごときが出まして、しかもこれが家庭裁に付せられ、保護観察に付せられておりながら人を刺殺するということをやっている。ですから家庭裁判、保護観察というものは一体何をやっているかわけがわからぬということになるわけですが、これに対して抜本的な対策をとらぬと非常に社会を茶毒することになると思う。あなたの総理大臣としての御方針を承りたいと思う。
  147. 池田勇人

    池田国務大臣 最近非行少年が続出し、またそれが非常に悪性になってきていることは存じておるのであります。今回の事件の結果にかんがみまして、お話しの通り、私は抜本的の緊急な措置を講じていきたいと考えておりますし     〔山口法務委員長退席、西村地方行政委員長着席〕
  148. 西村英一

    ○西村委員長 伊藤卯四郎君。
  149. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 まず最初に池田総理にお伺いしたいと思いますこ御存じのように、世論から議会政治危機として相当心配されている。それからまた相当酷評もされている現状であるが、これに対して池田総理大臣はこれをどのように認識をしてこれに対処しようとしておられるか。それから今後どのようにして議会政治国民から信頼、期待されるような運営をするか。政府の最高責任者として考えておられる点を、池田総理の政治的生命をかけての重大な問題と思うので、この点の信念、所信を明らかにしていただきたいと思います。
  150. 池田勇人

    池田国務大臣 最近の議会に対する国民の不信はいまだかつてないほどでございます。私は、民主主義、議会制度の建前から、この不信を払拭しなければならぬと組閣以来努めておるのであります。それには少なくとも私がまつ先に立って、身をおさめて、そうして謙虚誠実であらねばならぬ、こういう気持でおります、従って、それにより国民に信頼せられ、また各政党とも、おのおの寛容で忍耐強く話し合いで円満な国会運営をしていきたい、こういう考えで進んでおります。
  151. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 先の岸内閣が、主権在民の憲法政治を尊重して、安保改定は、その内容を具体的にして、総選挙において国民の意思を問うて、しかる後に最後的決定をすれば、さきの国会のごとき安保問題についての議会政治の混乱、安保騒動と俗にいわれるような、ああした多くの事件は引き起こらなかったと私は思っておる。われわれはこうした考え方から、岸内閣にその当時、衆議院を解散をして総選挙をやるべきであると強くこれを要請したのであるが、これを全然聞こうとしませんでした。そういうところから御存じのハガチー事件なども引き起こったし、従って日本の国際的信用も相当あれで失墜したことは、これはいなむことのできない事実である。その当時岸内閣の閣僚の一人として、また内閣の中においての実力者の一人、重要な発言権を持っておられた池田総理は、岸内閣が、主権在民の総選挙を無視し、議会政治を否認するようなやり方をあえてやった。これはもう世論がひとしく認めるところであるが、これらのやり方について、池田総理は、今日これをどのように考えておられるか。あれを正しかったと考えておられるか、あれは非常に民主政治の上において間違いであったか、どういう判断をしておられるか。この点について、さきにあなたの御答弁になった問題と関連して、重要な点であると思うから、明確に一つお答え願いたい。
  152. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、あの場合、国会を解散して安保条約を民意に聞けということにつきましては、反対の気持を持っておりました。そういう問題が起こったことはございませんが、私は、そのことは今年の一月に新聞にも意見を発表しております。しかし、解散しなかったということがあれを起こしたとも私は考えません。その後の運営におきましていろいろの問題が積み重なってああいうことになったと私は思います。その後の問題につきましては反省いたしております。
  153. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今総理が答弁をされたそういう考え方であれば、憲法に示されたように、政治の主権は国民にあるということが明確になっておるのであるから、従って重大な、また重要な政治問題については、議会を解散して民意に問いながらこの議会政治を運営していく、これが私は民主政治を一番尊重したやり方であると思う。しかもあの場合には、先の岸総理は三年も前からアイゼンハワーとの間にあの話し合いをして、本年の一月条約仮調印をしてきた。それらの三年近くの間において、どのようにそれが進行しつつあるかということを当然国民に問うべきであった。それを全然国民はつんぼさじきに置いたまま、さきの衆議院選挙をやっておる。こういうような重大な問題を、そういう民意を無視してやって、はたして主権在民の民主政治を重要視しておると言えるだろうかどうだろうか、これらについての見解を一つお聞かせ願いたい。
  154. 池田勇人

    池田国務大臣 いかなる場合に解散をするかということは、これは問題でございます。だから私は、岸内閣には閣僚としておった場合もありますし、また出ておった場合もあるのでありまするが、私の当時の私見といたしましては、過去の何と申しますか、行きがかりと言っては何んでございますが、参議院の選挙にも安保の問題は議論になっておりますし、これにつきまして解散する必要はないと考えておりました。
  155. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 池田総理は、私はもう少し民主政治というものについて理解を持ち、またこれを尊重してやられるものだと今日までほのかにそれを期待しておった。ところが今の御答弁を伺っておりますと、全然この主権在民の民主政治というものを尊重していない。政治の置きどころをどこに置くべきかということを明らかにされていない。私は、安保問題を選挙の公約として選挙をすれば自民党側に不利であるというところから、これを公約にして選挙でやらなかったものだと思う。だから、あなたが組閣されて低姿勢に出ておられるということを、なるほど私は、国民の中に一部、その当時池田さんは相当高姿勢に出るかと思ったが案外低姿勢でいいじゃないかという人気のあったような気もいたします。ところがそれも、故淺沼稻次郎君のお葬式がこの二十日に行なわれましたが、そのお葬式が済んだらがぜん高姿勢に出るということは、自民党の中でもっぱらうわさがありました。そういうところから、二十一日の施政方針演説に対するあなたの答弁などはかなり高姿勢であったと国民は見ておる。そういうところから、結局、あなたが議会政治を尊重していくと言われ、話し合いをしてやっていくと言われるその政治の根本の置きどころをどこに置くのか、民主政治を尊重するのか、尊重しないのかによって分かれ目がある、こう思うのです。あなたの今の民主政治に対する御答弁では納得ができませんが、あなたはやはり今御答弁になったようなことだけで、単に表向きの話し合いだけでうわべをごまかしていこうという考えであるかどうか、それについてもう少しはっきり、大事な点でありますから、今後われわれが議会政治運営にあたって池田内閣をどう見るかということについて重大な関係がありますから、はっきり一つお聞かせ願いたい。
  156. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、内閣組織以来、私は寛容で忍耐を旨とし、話し合いでいく、これが民主主義の本義である。これに変わりはございません。
  157. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今池田総理が答弁しておられることで、私は池田内閣が今後民主政治を尊重する、主権在民政治を尊重する上について全く失望せざるを得ない感を強くいたしました。そこで六月二十日零時五分に衆議院において自民党のみで、しかもこのときは議場にいた自民党の議員の大多数の人々は、安保条約が採決されることを全然知らなかった。ただ会期の五十日延長が単独で押し切られた。そこで自民党の議員の人々は議場から出ようとしたところが、議場から出るなといって議場にそのまま幹部がカン詰にした。そこで自民党の議員の諸君の中では、これは何事かやるのじゃなかろうかというので、何をやるのだろうと思ったらしい。ところが私はこれをこう考える。野党をだまし、抜き打ちするのには、まず味方からだましてかからなければその目的を達成することはできない。こういう考え方から、私はああした単独採決、しかも世論から非難攻撃をされるようなああいうやり方をしたと思うのである。あの当時のあのやり方も、やはり池田総理はあれを正しかったとお考えになっておるかどうか、これを一つお聞かせ願いたい。
  158. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、あのやり方は遺憾であった、まずかったと私は考えております。
  159. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 遺憾、まずかったという点は、どういう点を遺憾、まずかったとお考えになっておるか、その一、二のあなたのお考えを一つ明らかにしていただきたい。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 私はあの日の午後六時ないし八時半ごろまで、実は松村さんと私とで安保条約決議に対して附帯決議の案を相談しておった状態でございます。お話しの通り、私もあの日にやるということは知らなかったのでございます。しかるところ、ああいう伊藤さんも御存じのような乱闘騒ぎになりまして、乱闘騒ぎの間にああいうことをやることはあの当時としてはやむを得なかったかもわからぬが、まずかったと考えております。
  161. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも今後の議会政治の運営について、ただ頭を下げて話し合いというだけ以上には池田総理は何も言われません。私はそれだけでなくて、もっと議会を円満に運営していこうとするなら、やはり遺憾の点は遺憾と、具体的に謙虚にこれをお互いに認め合って、そうしてどうして議会制民主主義の軌道を確立するかということを与野党とも真剣に取り組まなければ、議会政治の信用を回復することはできないと思っております。ところが、どうもさっきから伺っておると、池田総理の答弁ではそういう大事な点において自分の所信を述べられておりません。この点を私ははなはだ遺憾にたえないと思っております。  そこで私ども民社党が当時、さきのあの混乱国会を救うために、今後将来の議会主義政治のあり方を軌道に乗せよう、これを確立しようというところから、今後は絶対に単独採決はやらないこと、並びに今後は絶対に院内において実力行使を行なわないこと、こういう内容等をもって、お互いに一つ議会政治の軌道を確立するために三党話し合いをして自粛の決議をしようじゃないかということで、これを提案をしたのでありましたが、ついに私どもの申し出は自民党、社会党ともこれの賛成を得ることができませんでした。そこで私は、なぜ一体自民党、社会党はこれに賛成をしてくれなかったのかと申しますなら、やはり自民党の方では相手の出方次第では今後も単独採決をやるのだ、そういうことを留保をしておられるところから、私はすなおに賛成されなかったと思っております。それからまた社会党の方でも、場合によっては実力行使もまたやむを得ないのだ、こういうやはり強いものを持っておられるところから、私は同意を得られなかった、こう思っております。議会政治の軌道をほんとうに確立しようとするなら、多数党も多数の横暴単独採決はやらない、絶対やらない、少数もまた最後には反対であっても多数決に服する、これが守られない限りは、私は議会政治は確立しないと思うのである。そういう点から、さきに岸内閣当時、自民党が私どものこの提案に対して賛成をしなかったということについて、池田総理は自民党総裁としてどのようにこれをお考えになっておるか、この点も今後のために重大な問題でありますから、あなたの政治信念という点から一つ明確に御意見をお伺いしておきたいと思います。
  162. 池田勇人

    池田国務大臣 私は三党がそれに一致すれば賛成でございます。趣旨、個人としては全く賛成なんです。しかしこれについては相手のあることでありますから、みんながその気持になれば私は賛成でございます。
  163. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 池田総理、自民党総裁の意見としましてはどうも少し逃げておるのじゃないか、責任を転嫁しておるのじゃないかという気がいたします。たとえば三党が賛成であるならと言われるが、民社党はすでに提案者である、そうすれば自民党と政府、あなた方が賛成であるという意思表示を強くされて取り組まれるなら、政府与党が今後いかなることがあっても単独採決をやらないということをはっきりしてくれば、これは社会党の方も実力行使をする必要はないのでありますから、この点は私は社会党も賛成してくることは当然であったと思う。問題はやはり与党と政府とが議会政治を運営する上については寛容と責任をもってその衝に当たるということが大事であります。そういう点からして、どうもあなたの今おっしゃる点においても、私、あなたは議会政治の確立ということについて、具体的にそのようなことをやらなければならぬということについてどうも真剣にそれをやろうとしておられないという気がするが、その点についてもう一回、一つもっと明確に、自分が将来こうしていくということについて、ただ単に低次勢、話し合いというだけじゃなくて、そういう具体的な問題についてどうするのかということについてお聞かせ願いたい。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 単独採決はやらない、しかして今三党あるから自民党と主唱者の民社党が賛成すれば単独採決はない、百数十名おる人が出ていっても、これは二党おるから単独採決でない、こういうことは私はなかなか言えぬと思う。そこで単独採決をしないというのは、みんなが加わって反対か賛成かをきめようという意味でございますから、私は理想として、やはり三党がその気持にならなければいけない、こういうことを出し上げておるのであります。
  165. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 与党の総裁である池田さんがそのような考え方で今後この議会政治に臨んでいかれる限りにおいては、議会政治の軌道をほんとうに確立をして国民から信頼、期待されるような議会政治にすることはできないのじゃないかと私は失望します。やはり政府、与党が多数でありますから、その総裁が、どのように議会の運営にあたっては自分が責任を持ってやっていくかということについて、具体的に問題が出たならそれを検討し、それと取り組んで、たとえば三党首会談をやるとか、あるいは何かそういう責任ある権威機関によってそれを実現さすというようなこと等をおやりになる努力が必要だと思う。ところが全然そういうことについての努力もしておられぬ。また今あなたの答弁されておるようなことでは、私は、全くこれは議会政治の信用を失墜しておることを今後もなお繰り返すのじゃなかろうかというような気がするのですが、あなたはそういう心配はありませんか。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、単独採決をやらない、暴力は一切排除するということは、個人的には賛成なんでございます。これは伊藤さんよくお聞き願いたい、賛成なんです。ただ単独採決じゃないが、民社党と自民党だけでやれば、これは形式的に単独でないから、社会党が出ていくようなことがあってもそれはやむを得ぬというふうな考え方はしない。全部が入っていくのだ。この原則を私は打ち立てるべきだと思います。従ってその前提といたしまして、片一方の柱として暴力は一切使わない、こういうことは私はけっこうなんです。
  167. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私どもとしても、何も社会党の参加しないものに、あえて政府与党との間に議会政治の運営をすることは、これは邪道でありますから、われわれはそれは毛頭考えておりません。池田総理も個人としては賛成だとおっしゃる。あなたには私は政治の運営上、政治責任上においては個人はないと思うのだ、自民党の総裁、そして内閣総理大臣、従ってあなたが考えておられることは、やはり自民党の総裁として私は重大な責任を持っておられると思う。そのあなたがいいと思うことなら、政治のリードをするという、そういう立場に立って努力をされていかれるということが私は大事だと思う。そういう点について今後あなたは池田個人と自民党の総裁、総理大臣との間に、三者別なものがあるとお考えになっておられるということになると、あなたのおっしゃることをわれわれはなかなか聞き分けするのに官が折れるが、その辺は一体どういうようにお考えですか、もっとはっきりして下さい。
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 伊藤さんは、やはり伊藤さんの党において党務を長くやっておられるから御存じと思いますが、総裁がこうだから、委員長がこうだからといってその通りになるものじゃございません。私はここで天下に公表するように、そのこと自体は賛成です。だからわが党もそういうふうになることに私は導いていくのに、効果を奏するか奏しないか、結果はまだわかりませんが、その気持でおることはここで申し上げておるのでございます。これをお疑いになるのは少し行き過ぎじゃないかと思います。
  169. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 個人の暴力事件は問題にもすぐされやすいし、また処分もすぐされますこれはきわめて簡単であるし、また当然なことでございます。ところが、集団の暴力になりますと、その処分がなかなか明確でない。たとえば樺女子学生が御存じのように国会構内で殺されております。この原因についてどういうような点が明らかに発表される点であるか。たとえばどういうなにで殺されて、その殺した人間をどのように処分、処理しておるか、こういう点が明らかにされません。それから安保騒動においておびただしく御存じのように重傷者が出ております。この重傷者の問題などについても明らかにされておりません。それから警視庁の装甲自動車が十六台も焼き討ちをされたと発表されております。こういうことについての真相が明らかにされておりません、これらはいずれもみんな政治問題に関連することでございます。であるからして、当然責任者である内閣あるいは池田総理大臣から、この政治的な事件からこういう問題が数々起こっておる、これは内閣、政府、それぞれの機関としては、このように調査をし、具体案を作ってそれぞれこういう解決をしておるということを明らかにされなければならぬと思うのであるが、こういう点が一向明らかにされていませんから、きょうそれをここで政治責任上具体的にそれぞれの関係閣僚、責任者から私は発表願いたいと思う
  170. 小島徹三

    小島国務大臣 樺美智子さんの件につきましては、地検におきまして捜査を完了いなしまして発表いたしております、その他の点については、捜査中のものでございますので、事務当局から詳しく説明させます。
  171. 竹内壽平

    ○竹内説明員 樺美智子女学生の問題につきましては、すでに地検で捜査をいたしました結果をかなり詳細に発表いたしております。それは、御承知のように樺美智子さんが警察官とのせり合いの際に、警察官によって扼殺されたんだという趣旨の告発に基づいて、また検察庁みずからの捜査に基づいて捜査をいたしたわけでございますが、その結果は、衝突の際に起こったのではなくして、その前の段階において、うしろから押す、前かち下がるというようなことで、その人なだれの中に落ち込んで圧死を遂げたものと推定されるということが、捜査の結果に基づきまして報告をされております。それからその他の点につきましては、当時の事件としましては二十数件告訴、告発が出ております。その点についてはただいま東京地検において捜査中でございますが、中には捜査をいたしましても事実をはっきりさせることが困難なような事案もございます。たとえば警察の自動車の焼き討ちのような問題、これはきわめて重大な問題でございますけれども、犯罪の捜査ということになりますと、犯人を確定いたしまして、その犯人がその犯罪を犯したということの証拠を集めるという仕事でございますが、犯人の確定並びにその証拠収集という点につきまして非常な困難を伴っておりますために、あるいは真相をはっきりすることが困難ではないかというような危惧もありますけれども、検察庁といたしましては、最大の努力を払って真相究明に努めております。
  172. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 調査中だと言われれば、まあ一つの逃げ道だと思いますが、事件があのように国の内外に影響を与えた重大な問題である。それから国民もこの問題に対しては非常に関心を持っておる問題なのです。そこで大体において警察側の重傷者、それから民間側の重傷者等がどのくらいあって、民間側あるいは警察側というか、そういう関係方面の人々の処分という問題も、どのようにしようとしておられるかということは、一応検察庁の方針としては、もうかなり時間もたっておることでありますから、私は大体の方向というものはきめられておると思うが、その最高の方向について、一つ発表のできる程度をここで発表してもらいたい。
  173. 竹内壽平

    ○竹内説明員 最高の方針と申しますならば、暴力は、その事のいかんを問わず厳重に処分するということが最高の方針でございます。従いまして、すでに犯罪の明確になりましたものにつきましては、それぞれ起訴をいたしております。ただ先ほど御指摘の点につきまして、なお捜査未了の点がありますことを申したわけでございまして、私ここへ数字を持ってきておりませんので、もしお許しをいただきますならば、後刻さらに数字をもってお答えを申し上げたいと思いますが、いずれも事件として明確になりましたものは、それぞれ適切な処置をいたしております。公判にかけましたもの、あるいは起訴猶予にしましたもの、少年につきましては家庭裁判所に送致をいたします等、それぞれ適正な処置をいたしておる次第であります。
  174. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それでは資料としてでよろしゅうございますから後刻私どもに、警察側がどういう事件でどのように、どれだけの数が起訴されておるか、あるいは民間側がどういう事件としてどのくらい現在起訴されておるかという点についてと、それから軽傷者は要りませんが、重傷者の人々が民間、警察側合わしてどのくらい出ておるのか、その結果はどういうようになっておるのかという点をあわせて一つ資料の提供を要請しておきます。  それから三池の炭鉱ストの事件についてでありますが、あれは裁判所の判決がついに執行することができなくなってしまったのであります。そこでこれは法治国としてははなはだ遺憾であります。こういう点ではやはり法治国の権威というものを維持することは、もちろんできないのであるが、何ゆえにこの裁判所の判決の執行ができ得なかったのか。どういう点でこの法治国家の権威を維持することができなかったのか、これは大きな問題でございますから、この点について総理大臣なり法務大臣なり、それぞれ一つその当時執行のできなかった内容について、どのようにお考えになっておるかを明らかにしていただきたい。
  175. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答え申し上げます。ただいまお話しの不執行に終わったという問題は、おそらく七月七日の仮処分の決定に基づくものについてだろうと思います。あの執行の命令は、ホッパーの付近の相当広い地域でありますが、常に数千名非常な武装と申しますか、力を注いでピケを張っておった個所に対しまして、その区域のピケを排除して執行吏の占有に移すという命令でございます。趣旨はそういう命令でございます。これは二週間を徒逝いたしますると、執行することができないということになります。ただいま御指摘のように、裁判所の決定が執行できないということはきわめて重要な問題でございますので、福岡県当局といたしましても、非常な決意をもちまして、どうしても期限内に応援の要請があれば警察の力をもってこれを排除する、相当の犠牲を払っても法の執行を確保するという決意をもちまして、私どもの方にも連絡し、大阪、京都、兵庫を初め、近畿、中国の各府県からの助勢も受けることにいたしまして、最後は期限が二十一日に相なるわけでありますが、十七日には総数約八千名の警察官を現地に集結をいたしたわけでございます。そうして十八日にはどういう段取りでピケの排除をするかというような、集まりました部隊の指揮者による会議を開きまして、十九日に部隊を現地に出して厳重なる警告をする、それを聞かない場合には、二十日の未明に執行吏の要請に応じまして、警察が実力をもって排除するという段取りをきめたわけでございます。しかるところ、たまたま内閣の更迭がございまして、これは私どもも予想いたしておったのでありますが、そうした場合に抵抗せずにピケが解かれるという情勢ではございません。従いましてその間に相当多数の負傷者を出すということは、まず必至というのが、われわれもそう思いましたし、組合の指導者の方々もそう見ておられたわけであります。たまたま内閣の更迭にあいまして、池田内閣におかれては、あくまでも流血の惨は避けるべきであるという高度の政治的な御判断の上、中労委のあっせんという方法をおとりになり、それに対して組合側は、直ちにこれに応ずるという態度をとり、会社側もいろいろ慎重に考えられたようでありますが、最後にはこのあっせん案に応ずるということに相なりまして、そうして非常に熾烈化いたしておりました状況がほぼ解消することに相なったわけでありまして、そのためにそういう政府の方針、情勢の変化に基づきまして執行吏からの要請というものがなかったわけであります。執行吏の要請がなければ警察は出るわけには参らない。警察独自の判断で出るわけではございません。従いまして、警察としては、最悪の場合、執行吏の要請があったときに相当の犠牲を払っても、実力をもって排除するという決意を固め、その事実上の準備までいたしたわけでございますが、ただいま申しましたような情勢に基づきまして出ないで済んだという結果に相なったわけであります。その間の事情を申し上げた次第であります。
  176. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私も、池田新内閣が組閣されて、池田総理がみずから指示されて労働大臣に命じ、労働大臣がまた中労委にそのあっせんを依頼して、あの事件が重大事に立ち至らないうちに、一応中労委のあっせんで解決したということは、私も心から喜んでおる一人でありますが、さてあれが解決をいたしまして、それから整理者の千二百名の問題もそれぞれ大部分が解決をし――また一部は法廷闘争ということに持っていってやろうというなにもありますけれども、しかしその後依然としてあのにらみ合いの状態は継続をしております。なお調べによりますと、やはり二千名以上の家族は疎開をして帰れないということになっております。帰ればやはり問題が起こってきます。さらにまた生産再開も、今のような状態であればおそらく本年一ぱいにもできないのじゃないかと言われています。そうすると一万五、六千にもわたる大多数の従業員が、一年間も安定した職場生活につくことができないということは、これは大きな問題であります。何か私どもの調べによると、会社側の損害が三百億以上に上るということをわれわれ聞かされております。そうすると、結局従業員の借金もおそらく十万以上になる。会社の借金もそのように膨大である。結局、これをだれが払うかということになれば、働く従業者がこのしわ寄せの支払いをするよりほかに方法はないわけであります。ところが職場の方はそういうことで依然として生産再開ができないという状態になっておる。そこで池田総理大臣は、一応あの問題を救出をされたのは、単にあの事件だけを救出すればよろしいということじゃなくて、一日も早く生産再開がやれて一万五、六千の全従業員が安心して喜んで職場生活につけるという状態を作ってやるということが、私は池田総理が指示された責任上からも、当然深くお考えにならなければならぬことじゃないかと思うのです。もちろん生産再開は経営者が責任者で、従って、これに労働組合がどのように協力するかという問題になるわけでありますけれども、どうしてもそこで話し合いがつかないという状態であれば、やはり指示された池田総理、あるいは中労委、そういうところをしてできるだけ早く生産再開がされて、全従業者に希望を与えるような状態まで政治的に導いてやる。やはりあの問題は政治的に導いて解決をしてやらなければなかなかできない問題じゃないかと思うのです。そういう点について池田総理は御存じでなかろうと思いますから、今のような点等がありますから、こういう点についてお聞きになっておるかどうか、これはわかりませんが、一つ池田総理は、跡始末について生産再開まで自分はなお責任をもってこれをすみやかに解決できるようにしてやらなければならぬということについてのお考えと努力を、そうしようとお考えになっておるかどうか、この点を一つお間かせ願いたい。
  177. 池田勇人

    池田国務大臣 労働大臣より随時報告を受けております。生産再開につきましてのいろいろな条件につきまして、まだ少し未解決の点があるやに聞いておるのですが、早晩私は話し合いがつくと思います。気持は伊藤さんと同じような気持で進んでおります。
  178. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 さらに集団暴力行動の件についてでありますけれども、たとえばさきの安保騒動のときのような、ああいう集団事件が――われわれは政治問題については少なくとも与野党を問わず、収府も政治の上においてああいう事件を引き起こさないようにお互いに自粛自戒をし、えりを正して民主主義議会政治の運営に当らなければならぬことは論ずるまでもありません。それからまた三池の争議のような、ああいうような事態がまた再びいずれかの労働争議に起こらないように、これはわれわれも努力をしてやらなければならぬ、お互いであるとも思います。しかし、ああいうような事件がもし今後また起こるというようなことがいずれかにあったといたしますなら、さっき警察庁の方では、あとの解決の点だけを何か喜ばしく言っておられましたが、あの長い過程においては、どっちかといえば警察関係も無力というか、無能であったか、実際上なすことを知らなかったということは論議の余地はないのです。そこで今後あのようなことの起こらないようには全員が努めなければならないが、もしあのようなことが起こるというようなことになったならば、いかにして死傷者というか、そのために犠牲者を出さないようにしなければならぬか、そういうことについての警察力の治安維持の問題あるいはそれらに対する解決の方針の問題、ああいう幾つかの重大な問題の経験の上に立って、今後法治国家としてどのようにああいうことを国民に不安を与えないようなことでこれを処理、解決しようとしておられるか。その教訓の上から見られた考え方を一つお聞かせ願いたい。
  179. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお述べになりましたように、ああいう事態が起こってからこれを警察でどう処置するかということは、もちろん警察責任でございますが、まず起こらないような状態ということが私は非常に願わしいと思うのであります。しかし、そういうふうな事態が万一起こるということになりますれば、警察責任上これに対して不法行為は許さないという態度をもって厳正に取り締まりを実施して参る所存でございます。そのためには、警察におきましてもいろいろ技術上あるいは装備上考慮すべき問題が多々あるかと思います。教養の問題もございましょう。そういう点につきましては、私どもも鋭意検討いたしておるわけでございまして、単に量の問題ということでなしに質的に、必要に応じては量的に警察力の真の意味の強化というものをはかって参らなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  180. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも抽象的で一向信用できるような答弁になりませんさしかし、これは今後のことでありますから、私は警察庁側に言っておきますが、ああいうもろもろの事件が起こらないように、また起こっても双方の犠牲者を出さないように、どのように事前にまたそのときに当たって措置すれば民主国家にふさわしい事態の処理、解決ができるのかということについて、私は十分一つ考えてもらいたい、こういうように思っております。  それから最後にいま一点お伺いしておきたいのは、さっきから私が質問しておりますように、やはり何といっても政府の態度、与党の態度、警察の態度というものが、集団的な暴力事件に対して相当大きな刺激を与えて、突発的なものを絶えず引き起こしてくるということは、われわれの多く経験したところであります。そこでやはり度が過ぎれば反動の起こるということもまた当然であります。この点を私は非常に心配をしておる一人として考えておりますのは、第一次人戦直後、私のドイツに行っておりますときに、共産党とヒトラーの率いるナチス党とが非常に激突して多くの殺し合いをやりました。殺し合いの上でヒトラーの率いるナチの方が勝ちまして、ついにああいう独裁政治をしいてしまいました。それはムソリーニによるところも大同小異です。それと東条内閣が三国同盟を結んで、御存じのような国を減ぼす不幸を作ってしまった。こういう点も私は日本に憂慮なしとは言えないと思う。すでにわれわれが深く掘り下げていろいろな動向を考えてみますと、単なる山口少年テロであるとか、あるいはその他の個人テロであるとかいうこと以外に、われわれは相当根深い、また事によっては大きく動く危険性のあることも感じられないこともありません。そこでこういうことに対しての責任は、やはり議会政治の運営が大きく信頼、尊敬されるか、期待される状態にあるか、これがあるなら私はそれを相当防止ができると思っております。ところが、そこに信用がおかれない、また集団暴力行動においても法治国の権威もない、こういう状態が繰り返されておりますならば、結局左右の集団の暴力暴力の激突は、これは歴史の必然として起こっております。そういうこと等が起こってくるその責任の大半は、やはり政権をとっておる政府与党、そういうところに民主政治を尊重するか、議会政治の信用を回復するかどうかということがかかってそこにあると私は信じておる。そういう点から、こうしたことに対して、結論的に、池田総理がそうして起こってくる集団と集団の激突、あるいはそれからよって起こる社会不安、それをなくするために、自分は政治の最高責任者として、それを防止する方法について今後どう努力をするかということについての、私は強い信念を同っておきたいのであります。この両暴力が激突すれば、従って民主主義というものは圧殺をされてくるわけでございます。議会政治は無力化して、これはもうその機能が国民から何ら信頼、期待もされないわけでございます。そうなればこれは容易ならぬことになるのでありまして、せっかくこの主権在民の世界に誇るべき民主的平和憲法を持っている国である。この憲法を具体的に政治の上に、国家機構の上に、国民生活の上に生かしていくということは、これは与野党を問わず、われわれが責任を持たなければならぬ点ではないか。その常に先頭に立ってリーダーシップをとって、この努力をするのが政府与党あるいは総裁、総理大臣である池田さんの相当重大な使命であると私は思うが、こういう点について一つはっきりお伺いしたいのだが、さっきからあなたの言われておることでは、どうもコンニャク問答みたいな、のれんに腕押しみたいなことで私は納得できないが、私の納得できないということでなくて、こういう重大な問題が自分の今後の発言、政治行動の中にあるのだということを身にしみて、あなたにお考えがあるなら一つお聞かせ願いたい。
  181. 池田勇人

    池田国務大臣 今のあなたのお話は私全く同感でございます。それでございますから、組閣以来私の言動にそれを表わしておるつもりでございます。不敏でございまするから十分ではないかもわかりません。私は日本政治の最高の責任者である、こういう重大な責任を持っておりますので、先般来お話し申し上げたように、ほんとうに国民から信頼せられる政治、そうして国会はあくまで寛容で忍耐強くみんなが話し合っていく、こういうこと、これが国民から信頼される大きい一つの柱でございます。また政策のよさも国民から信頼される柱でございます。私は政策としてそして議会運営につきまして、常に反省し努力していきたいと思っております。
  182. 西村英一

    ○西村委員長 この際暫時休憩いたします。午後三時より再開いたすことといたします。午後二時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十五分開議
  183. 西村英一

    ○西村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。治安に関する件について質疑を続行いたします。渡海元三郎君。
  184. 渡海元三郎

    ○渡海委員 私は暴力排除の対策につきまして若干質疑をいたしたいと存じます。近時、暴力の激増はまことに目に余るものがあります。昭和二十三年に比べまして昭和三十四年度は、粗暴犯において実に三倍になっております。本年度の警備関係暴力事件の発生件数を見ましても、八月までですでに昨年の五百七十五件に対しまして七百六十六件に及んでおるのでございます。もちろん今回の山口少年テロ事件とこの一般単純な暴力事件を同一視するものではございませんが、かかる暴力のびまんがまたこのような不祥事件の温床となったということは、見のがすことができぬと思うのでございます。私は今こそあらゆる努力を傾けて暴力一掃に当たらなければならぬ、かように考えます。暴力の追放には政治、文化、教育と総合的な施策が行なわれなければならないことはもちろんでございますが、私は本日は主として治安対策についてお尋ねいたしたいと思います。その第一点は刑町対策であります。率直に申しまして、現在は暴力事犯に対して刑罰は軽きに失しておるのでなかろうか、かように私は考えるものであります。人を殺しましても、殺人犯で七年、傷害致死で三年、これが大体刑罰の平均でございます。しかも仮釈放とか、あるいは恩赦等で二分の一の刑期を勤めればよい、このようなのが現状でございます。試みに英国と比べてみましても、大体殺人事件でみましたなれば、ほとんどが死刑か無期かということが原則になっております。日本ではやくざのような殺人で、おそらく三年か七年の懲役に処せられるというふうな刑でも、向こうでは死刑か無期というふうな刑になっておる、こう聞いておるのでございます。また傷害や暴行事犯をとりましても、英国では体刑をもって罰しておりますのが傷害で二三%、暴行で八%、こうなっております。わが国は傷害では三%、暴行では〇・六%、驚くべき開きがございます。もちろん私は厳罰主義を望むものではございません。民主主義で最も尊重されなければならないのは人権であると思います。犯罪人の人権といえども当然尊重されなければならない。また刑罰に対じましても、私は応報刑主義よりもむしろ教育刑主義を多く賛同するものでございます。しかしながら今日の現状では、むしろ被害者の人権を無視するという考え方が一般にびまんしておるという姿が現在の姿でないかと思うのでございますが、これに対し法務大臣はいかに考えられますや、御所見を承りたいと思います。
  185. 小島徹三

    小島国務大臣 お答え申し上げます。確かに最近における殺人罪とか、あるいは傷害罪等に対する刑罰が軽過ぎるのではないかというような御意見が一部にあることは確かでございまするけれども、御承知通り刑法上におきましては相当幅広い科刑をいたしておるのでございまして、その間においてどの程度のものを科するかということについては、一にかかって裁判官の良識に待つところでございますので、法務省としてその点についてかれこれ批判めいたことを申し上げることはどうかと思うのでございまするが、ただ結果として、今日どういう状態になっておるかという詳細につきましては、事務当局から御答弁いたさせます。
  186. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいま御指摘のように、粗暴犯が特に少年の中に非常に最近増加しておりますことは、社会一般の認めるところでございますし、私ども衝に当たっておりますものの統計にも表われておる事実でございます。これに対しまして、渡海委員からの御指摘の一つといたしまして、教育刑をもって臨まなければならないけれども、なおかつ科刑が怪いのじゃないかという御意見でございます。日本の刑法と外国の、イギリス法をお引き合わせになりましたが、イギリスその他の国の刑法の法定刑と比較してみますると――もちろん法体系が異なっておりますので比較をしますにも若干の修正を加えて比較をしなければなりませんが、大体論を申し上げますならば、法定刑におきましては必ずしも日本の刑法が低い刑を法定しているのではないように私考えております。ただしかしながら、日本の刑法は御承知のように非常に幅の広い刑を法定しております。従いまして殺人について申しますならば、上は死刑から下は三年までの懲役刑、しかも執行猶予の規定等を加味いたしますると、御指摘のように殺人を犯しても決行猶予になる場合があり得るわけでございます。このような非常に幅の広い法定刑を定めておりますので、この中から事犯に即しましていかなる刑を盛るかということは、裁判所にまかされておるところでございます。しかし、この裁判の実際の結果を見ますると、ただいまおあげになりましたように、統計面の上におきましては非常に軽い結果になっておるのでございます。この点は私どももっとに気がついておるところでございまして、私どもも教育刑をもって臨まなければならぬという考えを持っておりますが、他面におきまして治安責任者として考えてみますると、やはり刑罰によって一般を他我し、そして犯罪を予防するという、その刑法の機能をも無視するわけに参らないのであります。その間、裁判所の判決に対しまして、検察官としましてはできるだけ検察官が相当だとする刑を盛ってもらうように努力をいたしておるのでございます。その努力はもちろん証拠の呈示の段階においてやる、あるいは論告の段階において明らかにし、あるいは一審の判決に対しまして刑の量定が不当であるという理由をもって事件を控訴審に上訴して、そしてさらに適正な刑を求めるというようなこともいたして、この適正化に努めておる状況でございます。もちろん粗暴犯が広く行なわれることにつきまして、そのような実情が一つの因をなしておるということにつきましては、私どもも深く反省をいたしておりますが、事情は右のような次第でございまして、私どもとしましてはせっかく努力をいたしまして、適正な刑を盛るということが第一の必要な当面緊急なことだ、かように考えておる次第でございます。
  187. 渡海元三郎

    ○渡海委員 午前中の猪俣委員の質問の中に、連座規定を設けてはどうかというふうな御質問がございました。法務大臣はそのようなことは考えていないというふうな御答弁でございましたが、西独におきましては、暴力団の根絶について犯罪的な結社についての体刑の処罰規定を設けており、これによって組織的な暴力団を絶滅することに非常な効果を上げておる。このようなことを聞いておるのでございますが、これに対しどのような考えを持っておられますか、御所見を伺いたい。
  188. 小島徹三

    小島国務大臣 けさほども申し上げました通りに、連座規定を設けるということにつきましては、確かに封建時代におきましては罪一家族に及ぶとか、三等親に及ぶとか、いろいろなことがございましたけれども、今日の考え方といたしましては、そういう考え方はとってはいけないのではないかと思うのでございます。ただ西独におけるただいま渡海議員のおっしゃいましたことは、おそらくある暴力団体のようなものがあったときに、その中からだれかが暴力をふるったというような場合に、その団体に対して、団体を構成しておるその構成員のおもなる者に対して体刑を科するというようなことを意味しておられるのではないかと思うのでございますが、そういう考え方については、これはまた一つの与え方として考えてみる必要があろうかとも思いまするから、慎重に研究してみたいと思います。
  189. 渡海元三郎

    ○渡海委員 次には保釈制度と保護観察制度についてお伺いしたいと思いますが、保護観察制度につきましては、午前中の質問で十分議論を尽くされましたので省略させていただきまして、保釈制度につきまして、現在暴力事犯に対しましてはあまりにも軽く保釈されておるのではないか、このために善良なる市民が目に見えぬ恐怖を持っておるのではないか、お礼返しをおそれて犯罪の届けをしない、被害の届けをしない、これが実情ではないか、かように考えるのでございます。もちろん現行法制上では、権利保釈と申しますか、与えられた権利として行なわれる制度になっておりますから、どうすることもできませんが、しかし運用上保釈金の金額を相当高額に引き上げるという制度によりまして、これらの事犯に対しこのようなおそれを一掃することができるのではないか。私は運用の面において相当考えるべき点があるのではないか、かように考えるのでございますが、御所見を承りたい。
  190. 竹内壽平

    ○竹内説明員 保釈制度についての御質疑でございますが、保釈と申しますのは、申すまでもなく保証金を提出させまして釈放するという制度でございます。日本の刑事訴訟法におきましては、建前としまして、保釈の請求がありましたときは、原則として許さなければならない。それがただいま権利保釈と仰せになりました点であるのでございます。しかしながら、これに対しましては例外がございまして、保釈を許可しなくてもいい場合がある、その許可しなくてもいい場合というのは重罪の場合でございます。そのほか重い罪のほかに、今お話も出ておったのでございますが、被害者等に対して財産上の害を加えまた畏怖させると疑うに足るような理由のある場合というようなのも入っておりますけれども、いずれにいたしましても、重い罪の場合を除きましては、保証金を積みます場合には保釈してやらなければならぬという建前になっております。この制度は、制度といたしましては進歩的な制度でございまして、一がいに簡単に非難し去るわけにはいかない制度だと私は考えております。しかしながら御指摘にもありましたように、問題は運用の問題でございます。それは保証金を一体どのくらいにしてこの制度のほんとうの姿を維持していくかという点でございますが、その点につきましては、遺憾ながら日本の裁判所が命じております保証金の金額は従来非常に安かったと思います。この点につきまして裁判所も最近は逐次多額の金額を保証金として納めさせるようにいたしておりますけれども、なお私どもの立場から見ますといかがかと思われるような点もあるのでございまして、検察庁といたしましても、もしこの権利保釈に該当しない場合であるにかかわらず、どんどん理由なく出すということになりますれば、これは異議の申し立てによって訴訟上争う方法もあるわけでございますが、そうでない場合でございますと、今の保証金の問題につきまして十分意見を述べまして、保釈という本来のいい制度と、それから保釈をすることによってもたらすところの被害者に対する畏怖の観念とか、あるいはそういうことが原因になりさらに粗暴犯が広く行なわれるといったような諸現象とを合わせまして、保釈金というものをきめなければならぬのでございますから、その保証金のきめ方につきましても私どもとしては十分配意をいたしまして、そういう面からの粗暴犯を抑止するという態度で進めたいと考えております。
  191. 渡海元三郎

    ○渡海委員 ただいまの答弁で大体了解するのでございますが、先般岸前総理を傷害した荒牧某がすでに保釈され、公々然と闊歩しておる。このようなことでは世間の恐怖というものは去らぬと思う。私は、もしここで御承知であれば、どういうふうな経過、どれほどの保釈金で彼が保釈になっておるか、御答弁を賜わりたいと思います。
  192. 竹内壽平

    ○竹内説明員 岸前首相に危害を加えました荒牧退助は、すでに保釈になっておるのでございます。この場合を私どもとして検討してみますると、荒牧は傷害罪で起訴されたものでございますが、すでに公判も二回くらい済んでおりまして、彼は公判廷で事実関係につきましては全部事情を進んで述べております。それから先ほど申しました権利保釈に該当するかどうかという点でございますが、これは除外事由に該当しない場合でございまして、要するに権利保釈に該当する場合、つまり権利として保釈をしてもらえる罪に当たるのでございます。そこで保釈金でございますが、裁判所の命令によりまして十万円ということにされております。検察庁としましては、その十万円が現金で納付されたという以上は、これを押えておくことは法律上許されませんので、その現金の収納をいたしまして身柄を釈放した、こういう状況でございます。
  193. 渡海元三郎

    ○渡海委員 次にお伺いいたしたいのは、警察官に対する職務執行の尊厳の問題についてであります。およそ民主主義の国家におきましては、警察官一般民衆の生命と財産を守る人権の擁護者として保護せられ、特別の尊厳が与えられねばならない、これが原則でございます。しかるにわが国におきましては、戦前のあの残渣がまだ残っておりますためか、遺憾ながらはなはだしくその尊厳が傷つけられておるのじゃないか、これは治安対策上にもゆゆしき問題であろうと思うのであります。英米におきましては、警察官を殺害した者は、ほとんど例外なく死刑に処せられておる。わが国でも戦後二十数名の警察官が職務のために殺害されておる。しかしその犯人にいかなるような処罰が行なわれておりますか、わかっておりましたらお知らせ願いたい。なお、傷害暴行事件警察官に対し数限りなく行なわれておるのが現状でございます。警察のガラスがこわされ、車が引っぱり出される、これが日常茶飲事で行なわれておるのが現状でございます。このようなことで警察の尊厳が守れるか、治安の第一線を守れるか、こういうふうに考えるのでございますが、一体このような傷害事件に対し、どのくらいな件数があり、いかなる処分がなされておるか、またこの尊厳の問題について公安委員長はいかにお考えになっておるか、お伺いいたします。
  194. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいまの渡海委員のお話はまことに同感であります。私は国の治安の第一線を守る警察官に対しては、その待遇なりあるいは教養なりを高めるというような事柄についても、十分考慮いたすべき必要があると思います。従ってまたそれらの警察官に対する一般国民の尊敬の念といいますか、これはおのずからそういうことが具して参りますと高まりましょうし、やはり国民一般に、治安の第一線を守ってもらっているのだ、これには大きく感謝すべき態度で臨むような国民的な運動が必要だと思います。
  195. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答え申し上げます。ただいま御質問の警察官が殺された場合におきまして、その犯人がどういう処分になっておるかという点は、私ただいまはっきり承知いたしておりませんので、なお詳細調べてみたいと思います。  それから傷害を受けました者につきましても、正確な数字がただいま手元にございませんが、例をことしになりましてからの三池の問題あるいは安保闘争にとりまして、その数を申し上げますと、三池におきましては警察官の負傷が約六百、そのうち重傷が二十九名、それから安保関係では負傷者千八百、重傷百十名ということに相なっておるわけでございます。  ただいまお話しの警察官の尊厳の問題でございますが、これはいろいろ事情があると思いまするが、私どもといたしましてはまず警察が、その職務の執行、その他教養の面において、真に国民に信頼されるような警察官になるということが、まず第一に努むべきことではないか。幸いにいたしまして最近警察に対する同情、理解も深まって参りまして、各方面からの激励なり御理解なりをいただいておりますことは、まことにありがたいことでございますが、私どもといたしましては、警察官の教養にさらに一段と力を尽くし、真に民主警察に徹した、国民から信頼される警察に仕立てていかなければならない、こういうように考えておる次第でございます。
  196. 渡海元三郎

    ○渡海委員 今柏村長官のお答えでは、警察官を殺害した者に対する処罰は、以後調査するということでございましたが、英米におきましては、警察官を殺害したような犯人は例外なく死刑になっておると私は承知いたしております。なお、日本においては二十数名の警察官が殺害されておりますが、いまだに死刑の判決をされた者が一名もないというのが、私の知る限りの実情でございます。これも刑罰ではございますが、警察の尊厳が害されておる一つの現われではなかろうかと思う。さらにはなはだしきに至りましては、有識者といわれる人々、指導者といわれる人々が、公衆の面前で、あなた方を資本家の犬だ、税金どろぼうだ、こう言っておる。政府の御用機関だ、こう言っておる。今回のこの事件に対しましても、一斉に新聞に書かれました世論も、警察右翼に甘いと書かれておる。これが純粋な気持からする警察の今までの行き方に対する、あやまちに対する警告でございましたらけっこうでございますが、もし右翼と結託しておるのだ、警察のやり方がそうなのだといったような、悪意に満ちたものであったとするならば、私は、これは政治的中立に立たねばならぬ警察に対する尊厳を傷つけるのもはなはだしいと思う。私は、この場において警察政治的中立を国民の前こ示していただくためにも、右翼に対してあなた方がどのような態度をこれまでとってこられたか、二、三の点聞きたいと思いますが、まず最初に公安委員長より、右翼に対して甘いといわれるが、確信を持ってそうでないのだと国民の前に告げられますかどうか、公安委員長の御所見を承りたい。
  197. 周東英雄

    周東国務大臣 よくそういうお話を聞きますが、特に警察右翼にだけ甘くて、左翼にきついということはございません。最近は、その証拠と申しますか、一つの例ですが、むしろ逆に右翼の方からは、最近における左翼の動きに対して警察は甘いのじゃないか、右翼ばかりを圧迫するのじゃないかというような声も聞かれます。私どもは、警察官はお話しの通りあくまでも中立的態度を持って、右翼であろうが左翼であろうが、悪いものは悪いということで、しっかりした取り締まりをやるべきだと思っております。
  198. 渡海元三郎

    ○渡海委員 現在一般暴力団と右翼とを分けます見解をどういうふうに考えておられますのか、またその観念に立って、右翼団体というものがどのくらいあり、その総数がどのくらいになっておるか、その中でいわゆる行動右翼といわれる人数はどのくらいありますか、御調査がありましたらお答え願いたいと思う。
  199. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答え申します。右翼と一がいに申しましても、いろいろの基準によって考えなければならぬと思うのでありまして、警察が視察の対象といたしておりますものは、あるいはただいまお話しの行動的な右翼という言葉がそれに当たるかと思いますが、不法行為を犯しあるいは犯すおそれのあると認められる団体について、特に視察をいたしておるわけでございます。その大体の数は、団体としては二十数団体、それから一人一党的なものもございますので、そういう構成員、行動的な団体に加入していると思われる者は約一万と踏んでおります。しかし、そのうちで特に危険性があるという者は約千五百ということでございます。それからただいま右翼に甘いということでございますが、大臣からお述べになりましたように、警察はあくまでも中立性を堅持いたしまして、左翼たると右翼たるとを問わず、不法を取り締まるという厳然たる態度でおるわけでございます。この一月から八月にも、先ほどお話しのように相当の警備事件が起こっておりますが、その中で、少なくとも右翼の犯したものにつきましては、警察が発生したと考えたものは全部検挙をいたしておるわけであります。警備事件全体についてはそういうふうには参っておりませんが、右翼的分子によって行なわれたものについてはこれを全部検挙いたしております。たとえば道交違反というようなことでも検挙をいたしておるわけでございまして、これは一例でございますが、そういう実績からも甘いということは私は当たらない、こういうふうに考えております。
  200. 渡海元三郎

    ○渡海委員 最近安保問題等をめぐるあの騒動によりまして、右翼の集団暴力事件が引き続いて起こっておるという状況でございます。また河上社会党顧問、岸前総理、このような事件も起こったのであります。それになお淺沼委員長が殺害されるような不祥事件を起こした。警察は一体どうしておるのだ、これが世間の声でございます。このような右翼の最近の行動に対しまして警察はいかなるような処置をされておったか、それでも食いとめ得なかったかどうか、皆さん方がこの右翼事件の多発に対しましてとられた今までの処置に対し、詳細に説明を賜わりたいと思います。
  201. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答え申します。最近河上氏、それから岸前首相の二度の刺傷事件に続きまして、最近淺沼氏に対する刺殺事件というのが起こりました。まことに残念に存じておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、右翼に対して厳重に取り締まりをする態勢をとりつつあったわけでございますが、例の河上さん、岸さんの事件のあと特に通達を出しまして、従来よりもさらに一そう危険分子に対する視察を強化する。また要人に対しての警護、これは警視庁といたしましても御協力を願って身辺警護の完璧を期したいという趣旨から、警護を申し出ていただければいたしますということを各方面に御連絡を申し上げておったような次第でございます。ただこの三件につきまして、ただいま私ども考えますのは、最初の河上さんに対するものは、これは右翼の構成人物ではございません。本人はいわゆる右翼的な考え方を持っておりますけれども、全く自分の考えでやったというふうに認められておるわけであります。それから岸さんに対するものは、これは戦前において右翼団体に入っておった者でございますが、最近においてはそういう右翼とのつながりはあまりなかったようでございます。そういうことで、全く個人的な考え方でああいうことを決行したということでございます。今回の山口二矢につきましては、ただいま鋭意捜査を進めておるわけでありますが、現在までわかりました状況におきましては、本人が全アジア反共青年連盟に加盟しておりますけれども、これらと気脈を通じ、計画的に行なった犯行ということは現在までは出てきておりません、本人の自供のみで結論を出すわけには参りませんが、本人は今年の九月に入りまして大学に行って勉強をしておるという格好をとっておったわけでございまして、これもなかなか視察としてはむずかしい点があったのではないかというふうに思うのであります。もちろんこの山口二矢につきましては、警視庁としても、愛国党を脱党しまして別の団体に加入したということから、その後も立ち回り先等についてそれとなく調べをしておったわけでございますが、所在がわからぬ。このときは山梨県に行っておったそうでございますが、そういうようなことで、九月に入りましてからは自宅におって勉強しておる格好でございましたので、自然警視庁としても、従来ほどに目をつけるということがないというのも、これはやむを得なかったのではないかというふうに考えております。この三件についてはそういう事情でございますが、さらに先ほど申し上げましたように、右翼に対する視察を厳にする、それからそのための要員も増強する、さらに対象となるようなおそれのある方々に対しては極力身辺の警護に任ずる。さらに演説会場等についての私服配置等についても検討を加える。また銃砲刀剣所持取り締まりの強化をするというような点を考えておるわけでございます。そういう点を推進いたしておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、さらに全体として国民一般暴力否定の風潮が高まっていくことを念願いたしておるような次第であります。
  202. 渡海元三郎

    ○渡海委員 山口少年の観察につきましては、これはすでに保護観察に付せられておった。この観察制度に誤りがなかったかどうかということについては、午前中の質問がございましたので抜かしていただきたいと思いますが、今のような処置をしておられて、今までに右翼の不法事犯を事前に防止し得たというような事例があったのですか、もし事例がありましたらお知らせ賜わりたいと思います。
  203. 三輪良雄

    ○三輪説明員 右翼団体が今度の安保改定におきまして、しばしばデモにいわゆるなぐり込みをかける、こういうような場合に、警察が強行尾行と申しますか、自動車であとをつけていきまして、これを食いとめた事例は数多くございますし、また三池闘争におきまして、いわゆる火をともす会という会が旧労に対しましていろいろ実力行使をはかったときに、これを食いとめたという事例もございます。個人テロはなかなかむずかしいのでございまするけれども、かつて神戸の青年が吉田総理を刺す目的をもって大磯を俳回をいたしておりましたときに、これを逮捕したというのものがございます。それから某団体が新橋のステージにおきまして演説会を催します際に、某国の首脳者の像を作りまして、これを引き回すというような計画がございましたので、国際関係等を顧慮いたしまして、厳重にこれを食いとめて制止をいたした事例がございます。
  204. 渡海元三郎

    ○渡海委員 集団的な暴力事犯は計画的であり、防止しやすいが、個人テロ、偶発テロは防止しにくいという今御説明でございましたが、そうであろうと思います。今回の事件を見ましても、今までのかかる会合に対しては大体二十名か三十名かで警戒に当たっておられた。今回は特に日本愛国党ですかのこともありましたので、百五十何名かの警官が当たってなおこれを防ぎ得なかったというふうに、非常にむずかしい問題であろうと思いますが、一人一殺主義が唱えられるような世の中になったのでございますから、十分に警戒に当たっていただきたいと思います。午前中の柏村長官は、対策として、危険人物と思われる者は厳重な監視を行なう、こういうことを言っておられましたが、一体危険人物と思われるような人の数がどのくらい現在あるのか。また対象になるようなお人に対しては、もちろんその方の用心も必要でございますが、護衛をつけるということでございましたが、あの事件以来、皆様方のこの方針に基づいてそのようなことを行なっておる事例があるのかどうか、お示し賜わりたいと思います。
  205. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答えいたします。危険人物と直ちには言い切れないかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、特に注意を要するということで視察を強化いたしておりますのが千五百名程度でございます。それから警護を要します方々については、警視庁といたしまして、これは無理におつけするわけには参りませんので、ご承諾をいただかなければなりませんが、そういうことで御承諾をいただいておる方も二、三ございます。     〔西村地方行政委員長退席、山日法務委員長着席〕
  206. 渡海元三郎

    ○渡海委員 時間がないそうでございますので、これらの問題につきましてはこの程度でやめさせていただきたいと思いますが、私は暴力対策は総合多岐にわたらなければならないと思いますが、その根本は、現下の緊要事は、私は何といっても政治のあり方にある、こう考えるのであります。われわれは戦後十五年、民主政治危機に直面しておるということを正視しなければならぬと存じます。この際国民は、政治家も思想家も言論人も、国民すべての知能と努力を結集して、民主政治を破壊する風力の根絶を期さねばならぬ、こう考えるものでございます。また世論もこのことをあげて要望しておるのでございます。今こそ私たち議会人は党利を去り、私心を去って、率直に現在の政治のあり方について反省しなければならぬ、かように考えるのでございます。総理が就任以来、絶えず政治の姿を正すると述べておられるのも、私はこのためであろう、かように存じます。また先般来、三党国会対策委員長間におきまして、本国会において暴力排除の決議案を提出しよう、二つには、改選後の国会においては、常設的に各党から委員を出して、暴力排除に対する対策を講じようじゃないか、このような二つの申し合わせができたと聞いておりますが、これもその現われにほかならぬと存じます。総理は、重ねてこの政治のあり方についていかに考えておられるか、また多数党の総裁として、このような三党国会対策委員会の申し合わせを忠実に実行し推進に当たるといういかなる御決意を持っておられるか、承りたいと思います。
  207. 池田勇人

    池田国務大臣 暴力民主主義の最大の敵であります。私はこういう意味におきまして、今お話しのごとく、まず政治家が第一にこれを排撃し、そして政治のあり方を正していくのが一番だと私は考えます。就任以来そのつもりで自分の身をおさめて参り、また国民に訴えてきたのでございます。今後ともこの気持を続けていきたいと考えております。
  208. 渡海元三郎

    ○渡海委員 総理は、治安対策として直ちに法の強化をはかるようなことはしないのだ、またいたずらに警備力の増強をはかるようなことはしないのだ、また単なる機構いじりもしないのだ、現行法のもとで着実にこれを実行するのだ、また現行機構の運営に最大の砂を発揮して治安対策の完璧を期するのだ、このように申しておられます。私もこの総理の態度に賛同するにやぶさかではございません、それは一片の法律を改正するよりも、国民の信頼を得ることがより以上の治安対策であり、国民の協方こそが防犯の唯一のものである、こう考えるからでございます。しかしながら、そのことが現行機構や法制の欠陥に目をおおうものであってはならぬと私は考えるのであります。これらの点につきましては、さっき述べましたような常設的な三党の委員よりなるところの委員会ができましたなれば、私心を去って率直に語り合わねばならず、当然検討されねばならぬ問題点であろう、私はこのように考えるのでございます。もしこのような委員会において結論を得、また真に国民の理解を得たなれば、抜本的な対策、法の改正までの対策等も講じなければならぬものと考えますが、この点についての総理のお考えを承りたいと思います。
  209. 池田勇人

    池田国務大臣 全く同感でございます。
  210. 渡海元三郎

    ○渡海委員 最後に総理は就任以来、忍耐と寛大を旨とし、世人はこれを低姿勢と呼んでおります。私もこの総理の謙虚な態度には敬意を表する者であります。しかし他面、民主政治というものの欠陥は、民主政治を破壊するものに対しても寛大であり、これを阻止することに勇気を欠くことにあるともまた言われておるのであります。第一次欧州大戦後のドイツがいかにしてヒトラーの独裁を生んだかということは、午前中伊藤委員から申された通りでございます。わが国におきましても、満州事変発生後、青年将校の政治暴力に対し寛大であったためにあの破局を招いたことは、いまだに忘れることのできない私たちの心の傷でございます。今回の事件に対しまして、一部狂信的な右翼団体の言行はさておきましても、大体の世論というものがこれに対し強烈なる批判を向けておるということに対しては、私は喜んでおる者でございます。しかしながら、戦前の青年将校の行なったあの右翼的な政治暴行、政治的な暴力、愛国という美名のもとに世論がこれに寛大であったように、今日においては行き過ぎた集団的な左翼行動が、民主主義という実名のもとに、寛大とは言いませんけれども、ばっこし過ぎておるのではなかろうか、かように考えるのでございます。もちろん私は、デモの行き過ぎのゆえをもって、あのテロ行為を是認するものでは何らございません。しかしながら、このような集団暴力がばっこすることが因となり果となって、今日のようなあの不祥事件が起こったということは、歴史が明瞭にこれを示しておるのでございます。民主主義は忍耐と寛容の政治であるといわれておりますが、同時に民主主義は、破壊せんとするような暴力に対しましては、右といわず左といわず、私は断じて寛大であったり、または根絶に勇気を欠いてはならぬと思います。われわれはかかる暴力にはあくまでも峻厳なる態度、強き勇気を持って排除に邁進せなければならぬと考えておるのでありますが、最後にこの点につき、総理の御決心と国家公安委員長の御所見を承って、私の質問を終りたいと思います。
  211. 池田勇人

    池田国務大臣 政治は買春と忍耐でやらねばならぬと同時に、悪は悪とし、筋を通すことがその根本でございまして、最も必要なことであると考えます。
  212. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいまの総理大臣のお話の通りであります。
  213. 山口六郎次

  214. 阪上安太郎

    ○阪上委員 午前中から今回のテロ事件につきまして、相当長時間にわたって質疑応答がなされて、解散も迫っておるようでありますので、できるだけ簡単に短い時間で質問いたしたいと思いますが、本論に入ります前に、一つだけ池田総裁に伺っておきたいと思うことがあるのでございます。  それはきょうの午後一時半ごろ院内へ、山口二矢後援会、これの有力なメンバーと目されておる五名の人々が社会党に見えまして、そして大したことではありませんけれども、いろいろとわれわれの書記長に対し、あるいは成田政策審議会長に対しまして抗議を申し込んできたのであります。これらの人々は、新聞等でも報ぜられておりますように、山口二矢のあの行為はきわめてりっぱな行為であるというようなことを平気でしゃべっておる人々でありますが、この人々がなぜ――こういった重大な審議をやっているさなかに、新聞その他でもひんしゅくを買っておるようなこれらの人々が、院内で横行濶歩するということにつきましては、非常に私は奇異な感じがいたすのであります。そこで一体あの通行証はどこから出たのだということを調べてみましたところ、これははっきり申し上げまして、自民党の幹事長室から三枚出ておるということなのであります。なるほど国会へ入るということは自由でありましょうけれども、どうもこの段階に、こういったことが平然と行なわれるということについて、非常に不愉快な感じがいたすのであります。つきましては、先刻来からこの問題についての背後関係ということがやかましく言われておるのでありますが、これらの人々と自民党との関係は一体どうなっておるのでありましょうか。この点について総裁として一つお答え願いたいと思います。
  215. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそういう事実は今初めてでございますけれども、これらの人々とおっしゃっても名前がわかりませんので、事情は後刻調べてから御返事いたすことにいたします。
  216. 阪上安太郎

    ○阪上委員 名前を言ってもよいのでありますけれども、どうもこれらの人々は売名的な人々でありまして、名前を出せば得意になっているということで私は実は差し控えているわけであります。どうぞ一つ事情をお調べの上、適当なときにその事情をお知らせ願いたいと思います。  そこで本論と申しましても、時間もありません。二十一分三十秒しかないのでありますから簡単に質問いたしたいと思いますが、午前中の質問の中で、わが党の猪俣委員からの質問がございまして、非行少年対策、これについて一体総理はどう考えるか、こういう質問がございましたが、総理は非常な力を込めて抜本的な措置をしたい、こういうようにはっきりとおっしゃっておられるのです。非常にけっこうなことだと私は思います。しかしながら今までの政府の非行対策なり、もっと大きな意味における青少年対策というものについての実際の姿をながめておりますと、全くこれはもう総合性も何も欠けたところの行き当たりばったりの施策であったと思うのであります。こういう点について総理が抜本的に一つ措置しよう、こういう強いところをお出しになったのでありますから、具体的にこまかく総理にお伺いをするということもできますまいが、大体において、大まかにどういった点で抜本的な措置をしようとしておられるか、これを一つ伺いたいと思います。
  217. 池田勇人

    池田国務大臣 まず第一に、そういうことの起こらない、少なくなるように教育方面、家庭の方面、これがあると思います。それからきょうも午前中から聞いておりますと、一応の札つきと申しますか、非行少年は、何回もこれを繰り返すというようなことが多いのでございますので、一度あったことにつきましては、その性格をよく見まして補導していく、こういう各方面からやっていかなければならぬと思います。これはいずれ、先ほども渡海さんのお話にありましたように、各党がこぞってこういうことについての対策を講じてもらい、政府検討をしていきたい、こういうように考えております。
  218. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今回の山口二矢の事件というもの、これは明らかに彼自体が青少年でございます。今までにありましたところの行動右翼テロ行為の最前線に立っておるのは、これはほとんどが青年でございます。そこで最近のこの問題につきましも世間では、青少年対策を抜本的にやらなければならぬという世論が明らかに強く出てきております。そこで先ほども私申し上げましたように、政府の青少年対策というものが、在来非常に等閑に付されておった感じが強いということを申し上げたいのでありますが、なるほど文部省等におきましても、あるいは厚生省におきましても、あるいは総理府におきましても、あるいは建設省等におきましても、それぞれ青少年対策というものを持っておられるようでありますけれども、どうもこれがばらばらに行なわれておる、こういう状態であります。  多少私の意見を申し上げてみたいと思うのでありますが、御案内のごとく西ドイツというものは、わが国と同じに戦争のうき目を見た国でありますけれども、非常にりっぱに立ち上がってきておるのでありますが、その背後には、祖国再建の柱として考えられる一つの線は、もちろん産業、経済の復興であったが、同時に青少年対策というものが大きな役割を果たしておった、こういうふうにいわれておるのであります。ところがわが国では再建復興の線は、産業、経済の面においては非常に推し進められてきたのでありますけれども、遺憾ながら戦後十年たち十二、三年たちましても、このもう一つの系列でありますところの青少年対策というものについては、いまだにこれが確立されていない。こういうことを考えますると、先刻来質問に対しましてお答えのありました今回こういう非行少年が出るというようなことは、教育上の欠陥があって、その欠陥が、明らかにこれは日教組等の教育のやり方というものが間違っておるのだ、総理はそれに対して全く同感である、こういうふうに先ほども言われておったようでありますけれども、一体人を殺すなどという教育を日教組がやっておるのでありましょうか。テロ行為をやれというようなことを日教組がやっておるでありましょうか。私はそういう問題をすりかえたようなものの考え方で、ほんとうに青少年対策というものを推し進めていくことができるかどうか、この点については非常に私は不思議に思うのであります。そこで、問題は学校教育も大事であります。しかしながら学校教育だけで青少年対策というものを考えていくということは片手落ちでありまして、もっともっと青少年対策というものを広い分野で求めなければならない。そのために大事なことは、私はやはり学校教育と同時に、他方においてやはり社会教育の面における青少年対策というものをもっと強く取り上げなければならぬと思うのであります。きょうは文部大臣がおりませんので総理にお伺いするようなことになるわけでありますが、最近の世界の青少年の非行の原因というものは一体何にあるか、またわが国における非行の青少年の原因というものは端的にいって一体どこにあるのか、どういう中からそういうものが出てくるのかということについてつかんでおられますれば、お話を承りたいと思います。
  219. 池田勇人

    池田国務大臣 私は専門でございませんから、お気に召すかどうかわかりませんが、大体戦後の教育につきましても、道徳観念、倫理観念というものの教育が欠けておったのじゃないか。そうしてまた私の聞くところによりますと、小学校その他におきまして、敵か味方かというふうな思想がかなりあるように私は聞いておるのであります。それからまた家庭におきましても、今までわれわれの子供のころとは違って、よほど個人主義的な気持が強いのじゃないか。そうしてまた学校を出ましてからの社会のありさまが、非常に先鋭化しておるような状態ではないか。私はこういうことが非行少年が非常に多くなる――非行少年が非常に多いということは世界的の現象でございまして、わが国ばかりではございませんが、こういうのがおもな原因ではないか。だから私はこういういろいろな原因をつぶさに検討いたしまして、各方面からこの対策を講じていかなければならぬと考えております。
  220. 阪上安太郎

    ○阪上委員 総理が今おっしゃいましたような非行少年が出てくる背景というもの、それは一つの考え方であろうと思います。しかし私はいま一つ大事なことがあるのじゃないかと思うのであります。それは何かといいますと、この近代機械文明の中で、労働に対して精神の緊張といいますか、そういったものを要求する部面というものは非常に多い。時間的には最近の労働というものは非常に制限を受けております。在来のように一人や二人時間がおくれたからといって生産ができるという体制ではございません。自分がいなくなれば、その場所にいなければ生産それ自体がストップするというような状態にあることも事実でありましょうし、それからそこまで通っていく過程におきまして交通が非常に繁雑をきわめておりまして、全くいらいらした気持でもって職場につかなければならなぬというような状態の中に青少年の労働者も置かれておる、こういうようなことも事実ではなかろうかと思います。それからまた機械に追い回されておる近代の労働の特質というものがございます。こういった中から近代の青少年は特に感化されやすいのでありまして、その面で弱いのでありますが、そういった中で青少年というものは全くいわゆるノイローゼにかかってしまっておる、こういうことが一つあろうかと思うのであります。  それからいま一つは、資本主義文明が生んだところの悪い文化財といいますか、それがこの世の中に、都会に、至るところに充満しております。そういったどぎつい刺激から青少年がやはり一種のノイローゼにかかってくる。そういった結果、大へん青少年はいらいらした気持で毎日を送っておるというような状態になっておりますが、これを何とか除去していく方向というものを考えてやらないと、私は青少年の非行なんというものはなくなるものじゃないだろう、こういうふうに考えるわけであります。  そこで西ドイツにいたしましても、その他のヨーロッパ各国にいたしましても、アメリカにいたしましても、青少年に対して非常に思いやりのあるところの青少年対策が行なわれております。日本のように、道徳教育をやらなければいけないとか、あるいはまた何をやってはいけないとか、かにをやってはいけないというような、べからず式の青少年対策などというものはどこにもない。讃外国では明らかに青少年が欲するところのものをできるだけ多く与えてやるというような方向へどんどんと青少年対策が進められておるわけでありますが、わが国の最近までの青少年対策を見ますると、どうもそういう方面の取り上げ方が少ないようであります。たとえば青少年問題協議会として取り上げております問題にいたしましても、問題点を引き抜きまして、そうしてこれに対して臨時の手当をしていく、その場限りの手当をする。あるいは警察庁におきましてもやはりそういった問題が起こって参りますと、抜本的な方法というものを考えることができないで、そういう施策を打っているひまがないので、仕方なく当面うみを出すような形における施策しか行なわれていない。しかし総理が先ほど言われたような抜本的な対策を講ずるということでありますならば、私が今申し上げましたような点の救済まで当たってやらないと、ほんとうに最近の青少年は救われないのではないか。そういう愛情のあるところのものの見方でもって、抜本的な青少年対策をする必要があると思うのであります。そのためには、ただ単に警察庁でその施策を考えてみたり、公安委員会でもって頭をひねってみたり、あるいは厚生省でもって考えてみたり、文部省で考えてみたりというような、ばらばらな考え方では私はだめじゃないかと思うのでありまして、もっと思い切った総合的な施策を進めていかなければならぬと思います。そういった総合的な対策を行政面において、あるいは制度において、何かここに作り上げていこうとする考え方を総理はお持ちでございましょうか。その点伺いたいと思います。
  221. 池田勇人

    池田国務大臣 従来政府におきましても中央青少年問題協議会を置いておるが、これもあまり活発な活動はしていない。そうして事務的になりがちである。今のお話のように、青少年の労働者その他がノイローゼになる。これを緩和するのには、今のように交通関係もごさいましょうが、リクリエーションなんかを考えてやるとか、心の休まる施設を講ずる必要があると思うのです。大体一番大事なことは、やはり人間ですから、これは変なあれでございますけれども、神、仏という宗教心というものが非常に必要だと思います。そういう点なんかも考えていくべきだと思いますけれども、いずれにいたしましても、先ほど渡海委員のお話がありましたように、こういう問題は事務的とか専門家ということよりも、やはり政治家の皆さん方にひとつ真剣にお考え願い、政府もまた事務当局を督励し、またあなた方と協力いたしまして、ほんとうに大事な問題でございますから、私が先ほど申し上げましたように伐木的な施策を講じていきたいと思っております。
  222. 阪上安太郎

    ○阪上委員 しつこいようですが、いま一点だけお願いを兼ねて質問をしておきたいと思います。諸外国では、ほんとうに青少年が何を好んでおるかということを科学的に調査いたしまして、ほんとうに現在の青少年が今好んでおるものは何か。もちろんそれに先行いたしまして、青少年の完全雇用の問題があります。しかし同時に、今おっしゃったリクリエーションとして与えてやるべきものは何かということを科学的に調査しておるのであります。その結果、青少年は映画が好きだ、よい映画を与えてやろうじゃないか、青少年はスポーツが好きだ、いいスポーツを与えてやろうじゃないか、音楽が好きだ、いい音楽を与えてやろう、読書が好きだからいい読書を与えてやろう、手工芸が好きだからいい手工芸を与えてやろう、そうして旅行が好きだからこれを旅行を通じて与えてやろう。ここまではっきりしたところの青少年対策というものを打ち立てております。今総理は、各政治家もあるいは財界もみなそろってこの点を考えなければならぬと言われましたが、同感であります。しかし、何はさておきましても、まず金がなければこれだけの施設を与えてやることはできないのであります。青少年の家を全国で四カ所や五カ所毎年作っておるようなことではだめだと私は思うのであります。こういった総合的なリクリエーションを与える場所というものを考えてやる、そのことのためにも、相当思い切ったお金を出していただかなければ、これはできはしません。きょうは、特にこの問題にからんで、私は総理にお尋ねをしたいのは、抜本的とおっしゃった中に、思い切って青少年のリクリエーションのために、ほんとうに諸外国に劣らないようなりっぱな施設を与えてやる、こういう考え方が含まれておったかどうかということをお伺いいたしたい。
  223. 池田勇人

    池田国務大臣 青年の家等につきましては、先般御殿場の青年の家に参りましてはっきり約束して帰ったのでございます。私はこれが非行少年防止の一つの役にも立つ、こういう考えで約束いたしましたが、一度に外国並みというわけにいきませんから、できるだけ早い機会に、外国に劣らないようにやっていきたいと思います。義務教育の方では世界一の金を出しておる。しかしそれが済んだあとについての施策は、まだ非常に劣っております。私は、こういう意味でよほど力を入れていかなければならぬという気持を持っております。
  224. 阪上安太郎

    ○阪上委員 文部大臣がおられませんので、総理ばかりにお伺いすることになりますが、こういった問題とからみまして、学校教育制度の中で、現在定時制の高等学校というのがございます。私は、先刻来から述べて参りましたようなものの見方から申しますと、あれほど青少年の基本的人権を無視したところの学校制度はないのじゃないかと思う。昼、日中八時間一生懸命に働いて、そうして疲れたからだでもって夜間の高等学校へ通わなければならぬ。こういった問題を一つ取り上げてみましても、全く学校教育の中においてすら、青少年というものは満足な扱いを受けていないということが言えるわけなんであります。この場合、もっと思い切った国民職業学校的なものの考え方で、ほんとうに十二分に平日余暇を与えて、青少年を再教育していくというような方向の教育制度というものが考えられなければならぬ段階に来ております。これまた諸外国の例に徴しても明らかでありますが、こういった問題につきましても、総理はお考えになっておるのでありましょうか、その点さらに伺っておきたいと思います。
  225. 池田勇人

    池田国務大臣 定時制の高等学校のあり方につきましては、お話のような点があることは私は存じております。また夜間大学にいたしましても、定時制高等学校ほどではありませんけれども、いろいろな無理な点があることは存じておるのであります。ただ、昼、学校に行けない青少年のために、とにかく国でそれをだんだん設置してきたのでありますが、今後においては、そういう定時制高等学校のあり方を、やはり検討してみたいと思います。
  226. 阪上安太郎

    ○阪上委員 先刻来から青少年対策につきまして、いろいろと申し上げたのでありますが、こういうふうにお話し申し上げ、話し合いをいたしておりますと、青少年対策の一つの中においても、やはり政府自体にいろいろと考えてやらなければならぬたくさんの仕事があり、欠陥もあるということがはっきりしているわけなんであります。従いまして、今回の事件に際しまして、ただ単に学校教育の一部を担当しておる日教組だけに大きな責任があるような言い方は、あまりやってもらいたくない。そういうことばかりに頭を使っておりますると、今申し上げましたような社会教育だとか、あらゆる面の、ほんとうの青少年対が忘れられがちになる。だから、一つ全般的にこの問題をお考えいただく、こういうことを希望申し上げまして、私の質問を終りたいと思います。
  227. 山口六郎次

    山口委員長 門司亮君。
  228. 門司亮

    ○門司委員 時間がございませんので、率直に聞きますから、ごく簡明に御答弁を願いたいと思います。  まず総理に聞いておきたいと思いますことは、今度の事件というよりも、この種事件の原因について、私の考え方では、最大の原因は、政治の不信から来るものだと一応考えざるを得ませんが、総理はこれについてどういうお考えでございますか。
  229. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、国民が今の政治のあり方につきまして、満足していないということは存じております。だから政治の姿を正そうとしておるのであります。しかし、これが直ちに政府の不信――山口政府を不信に思っているのか、あるいはだれが思っているとおっしゃるのか知りませんが、全般的に政治のあり方をもっと正してもらいたいという国民の気持は、私はわかっております。
  230. 門司亮

    ○門司委員 そうだといたしますと、その正す方法、それから同時に政治の不信感を国民に抱かせた原因等について、お話しを願いたいと思います。
  231. 池田勇人

    池田国務大臣 それはやはり、さきの国会におきます国会のあり方が、私は主たる原因だと思います。従いまして、私は組閣以来政治の姿を正し、国民に信頼を受ける政治をしたいというので努力いたしておるのであります。
  232. 門司亮

    ○門司委員 今総理は、これらの政治に対する不信感の原因がさきの国会にもあったように御答弁なさいましたが、私はそれについてさらに総理に聞いておきたいと思いますことは、過般の本会議のわが党の西尾委員長の質問に対しまして、総理は答えておられない点がありますので、この際これに関連して聞いておきたいと思います。そのことは、西尾委員長は総理に対して、将来多数党は単独採決というようなことをやるかやらないかという質問をされております。これについて、そのとき総理は答弁をされておらないと私は記憶いたしておりますが、重ねてここでその点をはっきりさせておいていただきたいと負います。
  233. 池田勇人

    池田国務大臣 午前中伊藤委員の御質問に対して答えた通りでございます。民主社会党のお考えになっていることは同感でございます。すなわち、単独採決はしないように、また国会内での暴力行為は絶対やめることは賛成でございます。ただ、単独審議をしないといっても、相手方が出ていってしまうというようなことがあったら、これは問題になりませんから、三党が一緒にその決議をするということが望ましいのだ、私はこう申し上げておきます、
  234. 門司亮

    ○門司委員 今の答弁は非常に抽象的でありまして、私が聞いておりますのは、そういう状態のときに単独審議をするかしないかというようなことでなくして、総理自身の決意として、単独審議をしないという決意を持っておるかどうかということを、もう一度あらためてお伺いいたします。
  235. 池田勇人

    池田国務大臣 単独審議はしたくない、こういう決意であります。
  236. 門司亮

    ○門司委員 今の総理の答弁は非常にあいまいでありまして、もう少しはっきりした与党の態度というものがなければ、結局かね合いのようなものであって、おれの方は単独審議はしないつもりだ、しかし相手があるからというようなことでは、私はこれは直らぬと思う。やはり行政の責任者であり、多数をお持ちになっている人が、単独審議はしないのだということをはっきり言い切られなければならぬ。何といっても議会運営の主導権をお握りになっておるのですから、そうしませんと、いや自分の方はそう考えておるが、相手のあることであるから、やるかもしれぬというようなことでは済まないと思います。その辺もう一ぺんはっきり……。
  237. 池田勇人

    池田国務大臣 二つの案件の中で、暴力行為は絶対にいたしません。これは自分から出ることでございます。しかし、単独とか合同とかいうことは、いかに単独審議はしないといっても、相手が出てこないときは、これはどうやったらいいのでございましょう。国会の運営はとまってしまいます。私は単独審議はしたくないのですから、三党ともそういうふうに決議するなら私は成り立つと思います。
  238. 門司亮

    ○門司委員 顧みて他を言うというここもありますが、そういう総理のお考えでは、なかなか政治の不信感というものは取り返せないと思う。やはり総理が、偶発的に起こった、あるいはそのときに起こるであろうということを予測されて答弁されるということは、総理の決意の表明にはならぬと思う。総理の決意の表明としては、そういうとを予測しないで――これは間違いはいろいろありますし、予測しがたい事件が起こることもございます。しかし、そういうことを予測して、相手方がみな出ていただけば単独審議はしないということはあたりまえのことなんです。だれもそんなことを言いはしない。ところがあたりまえでないことをかつてあなた方はやられたから、私は念を押しているのである。それを私は聞いているのでありまして、何もあなたの方で出ていただければそういうことをしませんという答弁では、だれでもわかり切ったことであって、無理に押し出すわけにも参りますまいし、そういう総理の答弁では、私はなかなか政治の不信感というものは取り返せないと思う。やはりこの際総理はもう少しはっきりしたことを言っていただかないと、この政治の不信感の原因を取り除くということが非常に困難じゃないかと私は考える。このことは何も総理自身を責めるわけじゃございませんよ。われわれはやはり国会議員として、当然国会の秩序というものは守るべきであるということは、みな承知しているのである。しかし、それをするには、多数党であるあなた方の心がまえがはっきりしておらなければ、これは実行は不可能なことでありますから、そういうことを私は聞いておるのでありますが、これは時間がありませんから、その次に移っていきたいと思います。もう一つ聞いておきたいと思いますことは、淺沼事件につきましてでありますが、総理は当時この目撃者の一人であります。このことは非常に大きな問題だと考えざるを得ないのでありますが、これは公開の席の前で、しかも一国の総理大臣の前で野党の首領が刺殺されるなんというような事件は、おそらく世界のどこへ行っても今日まで私はなかったと思います。従って、あの当時、事件を目撃された総理のその当時の心境を一つこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  239. 池田勇人

    池田国務大臣 私は淺沼委員長から一間半、二間ぐらい斜め後方におって、淺沼委員長演説を、淺沼君を見ながら聞いておったのであります。しかるところ、こちらの私の左手の方からすっと淺沼君のところに人が行って、なぐりに行ったのかくらいな瞬間しか私は見なかった。そうしてそのときに払は淺沼君の方へ行こうとしましたところ、私のところは警官がすぐ取り巻きまして、そうしておりましたところ、犯人が、何と申しますか、胴上げされるような格好で五、六人につかまえられました。そのときに私は刀を見た。こだけのことでございます。常に横を見ずに、淺沼君演説に聞き入りまして、淺沼君のからだだけ見ておったものですから、そういう犯人が私の前を通ったのも知らぬ程度であります。
  240. 門司亮

    ○門司委員 私はそんなことを聞いているのじゃないのです。私もテレビで見ましたから、様子は大体知っております。ただ事件の内容がああいう内容でありますから、そういうことを目撃された当時の総理大臣としての責任感ですね。総理大臣としてのその当時の心境を聞かしていてだきたい、こういうのです。
  241. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、そのときには、淺沼君が刺されたということしか知らないのです。なくなられたということは、そこのステージから休憩室へ入りまして、そうしてしばらく待って、自動車に乗って官邸へ帰った。官邸の門でラジオを聞いたような状況でございます。だから殺害せられたということは私は全然知らなかった。ひどいことをするものだ。始めはなぐりに行ったように思いました。そうしてあとから刀を持っておったということを知った状態でございます。しかし、いずれにしても、そのときには、ひどいことをするものだ、これではいけない、そこでやはり政治の姿を率先して正さなければいかぬという気持を持ったのであります
  242. 門司亮

    ○門司委員 これも時間の制約がありますから……。私は、総理の当時の心境というものがもしそうだったといたしますならば、これは非常に不幸だと思います。そのことは、少なくともさっき申し上げましたような状態の中における事件でございますので、総理としてはこれの抜本的な対策を立てることがやはり必要である、あるいは総理としてのその当時の責任感をどういうふうにお考えになったか、もしお答えができまするならば、この際お答えをしていただきたいと思います。
  243. 池田勇人

    池田国務大臣 法律上の責任のあるなしは論じませんが、私はないと思っておりますが、しかし法律上の責任がなくても、こういう不祥事を起こし、国民に非常なショックを与えたということに対しましては、私は政治的に適当な措置をとらなければならぬ。それで山崎君が自分は広い高い意味での政治責任をとりたい、こういうので辞表を出されましたから、それを許可すると同時に、総理としては、二度とこいうことのないように全力を尽くさなければならぬ、そうしてこれを防止することが私の務めであると考えた次第でございます。
  244. 門司亮

    ○門司委員 どうも先ほどからの質問の中に、法律上の責任があるないということで議論されておりますが、私どもはこういう事件については、法律だけでこれが律せられるものではないと思う。法律の根底にはやはり道義があるということですね、法律はすべて導義の上に立っておるということです。そこで法律だけを論じておったのでは、道義が廃頽してしまったのでは、政治はやれないと思う。従って、私どもが総理にたださなければなりませんのは、結局法律を越えた道義上の責任がどういう形であるかということを聞いておるのでありまして、それについて今もお話がありましたし、午前中にもお話がございましたが、山崎さんは国家公安委員長でございます。今日の警察制度の根本をなしておりますいわゆる行政委員会制度というものに対する考え方をここで長く議論することは、私は時間がありませんからいたしませんが、この点は一つ総理もお考えを願いたい。公安委員長は総理の任命であります。よろしゅうございますか。公安委員は、法律上は一応総理が任命される形をとっておりますが、国会の同意を必要といたしております。従って、総理大臣が勝手に公安委員はきめられるものではございません。従って、警察の最高の責任者というものは、公安委員長でなくして、総理大臣であるということが、今日の警察の組織の上から考えれば当然であります。このことは、例の昭和二十九年でありますか、警察法改正のときに、私はずいぶん議論した問題でありますが、しかし警察法がああいう形で改正されておる。そこで山崎さんは、単に公安委員長としておいでになりますが、総理大臣の任免によって自由にできる人であります。だから、私どもは、今日の警察の組織の中では、何といっても、この治安の問題については、やはり総理大臣が責任を負うべきだ、こういうふうに考えておりますが、この公安委員会の組織と総理大臣との関連性について御答弁を願っておきたいと思います。
  245. 池田勇人

    池田国務大臣 治安関係の直接の責任は、私は公安委員会だと思います。ただ、政治の問題といたしまして、けさほども論議されたように、憲法には、内閣総理大臣が全体の責任を負う建前になっております。しかし、内閣総理大臣公安委員会に対して指揮命令権も監督権もございません。私は、広い意味の政治上の責任は総理大臣にありますけれども、直接にこの問題について責任は――直接という言葉は悪いかもわかりませんが、広い意味の責任はございますけれども、公安委員会が直接の責任を負うものだと考えられております。
  246. 門司亮

    ○門司委員 その点がきわめてあいまいでありまして、私は、今申し上げましたように、公安委員会の組織というものから考えてみますと、これは当然総理大臣だと考える。それなら聞いておきたいと思いますことは、警察行政の最高の責任者というものは一体どなたですか。
  247. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、最高ということはなんですが、東京都内におきますことには東京都の公安委員会と警視総監、そうして全体的には国家公安委員会だ、こう考えております。
  248. 門司亮

    ○門司委員 今の御答弁は、警察行政に対する考え方でありますが、警察制度に対する最高の責任者はどなたですか。
  249. 周東英雄

    周東国務大臣 門司さんの御承知のように、二十九年の改正のときに、それまでになかった大臣を国家公安委員長に任命した趣旨は、一面には警察の中立性というものを明確にするということ、しこうして、また国会と国民に対しては政治的に公安委員長が負う、こういう形をはっきりさしたものだと思っております。だからその意味合いにおきまして、法律上、この間の事件に対して直接の責任はないけれども、広い意味において公安委員長がやめられたということはそういうことから出ておると思います。
  250. 門司亮

    ○門司委員 この問題は警察制度の根本に実は触れる問題でありまして、私どもがさっき申し上げましたように、責任の所在を明らかにするには、少なくとも国会の承認を得る委員会の委員であって、その上に総理大臣の任命の大臣が長になっておるということは、これはこの組織の上からいっても私は誤りだと実は考えておる。従って、この責任はどこまでもやはり任命権者である総理大臣にあるということが私は正しいと考える。これは組織の上から見ても正しいと考える。大臣にその責任を負わせることは私は気の毒だと思う。大臣は総理大臣が勝手にきめられるのですから。ほかの委員は国会の承認を得なければならぬことになっておる。この委員と長との関連性というものは、警察法自身についても私は問題があろうと思います。しかし、私どもは何と言われましても、この警察制度の建前の上からいけば、最高責任者というものは総理大臣であるということをいわなければならないのであります。これも押し問答する時間がございませんから、次に率直に聞いておきたいと思います。この問題の、ことに淺沼委員長の刺殺事件の起こりました問題に直接の関係として聞いておきたいと思いますことは、当時の講演会は入場券が要ったはずであります。そうしてこの入場券は、関係団体と三党で大体配分されたはずだと思います。そうだといたしますと、犯人の持っておった入場券は、一体どこから出ておったものであるか。あるいは入場券を持たずに入ったとすれば、どういう経過で入ったものであるか、その点を一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
  251. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答え申し上げます。当日入場券は約三千枚作ってあったわけでございますが、会場に入ったのは千名程度であります。本人、山口二矢は入場券を持たずにやって参りまして、入口近くでNHKの係員から入場券をもらって、そしてそれによって入ったというふうに聞いております。NHKかどうか、そこははっきりしないのですが、会場の係の者です。
  252. 門司亮

    ○門司委員 どうもどこかわからぬというようなことでなくして、犯人取り調べられておりますので、取り調べの経過の中でどうなっておりますか、それを一つ聞いておきたいと思います。
  253. 柏村信雄

    ○柏村説明員 受付がございまして、その受付におった係員から入場券を受け取って、そうして入った、こういうことでございます。
  254. 門司亮

    ○門司委員 そこで次に聞いておかなければならないことは、警察制度の問題として、警察行政の責任が、今は、この事件に関しては、東京都で行なわれたから警視総監だということに一応私はなろうかと思います。しかし問題は、警察行政のすべてのものをつかさどる。さらに警察の建前として、これは古いのでありまして、私昭和二十七年だと思いますが、昭和二十七年ごろ、警察庁から右翼取り締まりに関する要項が出ております。もしそれを必要だとするなら、警備警察何とかいうあなたの方から出されておる本の中に書いてあるから間違いない。それを読んでみますと、それのたしか十一項だと記憶しておりますが、そこには、右翼は特に資金源を調査することが必要だ、こう書いてあります。そうだといたしますと、この右翼団体についての資金源の調査は、午前中からいろいろ議論されておりますが、どの程度まで進んでおりますか。もし明らかにされるものがあれば、一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
  255. 柏村信雄

    ○柏村説明員 右翼の資金関係でございますが、右翼団体の資金は、その規約によりますと、基本的な財政は会費、機関紙誌代、寄付金あるいは事業収入などをもって充てることにいたしておるわけでございますが、現実には印刷所とか農場とかを経営しておる一部の団体を除きましては、大部分広告料であるとかあるいは賛助費名義による資金カンパに依存しておるようであります。しかしながら、その実態につきましては、ほとんどが最高高幹部の独裁的な経理にゆだねらておるということでございまして、なかなかその実態についてはつかみにくいものがあるわけでございます。先ほど来お話に出ておりますように、政治資金規正法に基づく届出によりますと、二、三の例を申し上げますと、大日本生産党が本年の上半期における収入額が三百六十八万、護国団が百八十八万、国民社会党が千百八十三万、大日本愛国党が百八十万というようなことでございます。それからまたこれに対してカンパの形で出ております――カンパと申しますか、収入のうち政治資金規正法に記載されておりますものの多くは会社とか事業所等、その他篤志家からの資金カンパでございますが、これらのものもその運動に共鳴して出したというようなものは少ないようでありまして、いわゆるおつき合いというような気持で出しておるものが多いようでございます。犯罪に関係いたしません問題については、ここで一々申し上げることは適当でなかろうと思います。一応概要だけ申し上げておきます。
  256. 門司亮

    ○門司委員 犯罪の直接の問題を私どもは聞くことがいいと考えておりましたが、今の答弁はおざなりです。  さらに警察庁の長官に一応聞いておきたいと思いますことは、この問題についての警察としての責任の所在はどこにありますか。公安委員会としての政治的の責任委員長が負われておる。しかし、現場を指揮し、現場を監督する警察の直接の責任の所在はどこにあって、そうしてそれらの諸君はどういう処置をとられようとするのか、その点を一つ明らかにしておいていただきたい。
  257. 周東英雄

    周東国務大臣 本事件に関しまする直接の警備責任は、東京都の公安委員会と警視庁にあると思います。それに関連しましては、結局警視庁のあの演説会場における警備に万全の処置がとられたか、欠陥がなかったかというようなことからきまるものだと思います。今までの公安委員会の考え方といたしましては、一応警備の処置はとっておった、そこに警備上の過失はなかったであろうということで、公安委員会は一応辞任をせぬでもよいという形になっておる。しかし、けさからいろいろ皆さん御承知のように、解明せられた点につきましては、なお遺憾な点があったやに認められる。これに対処して警視総監は深く反省しておるということであります。そういう事態が今日までの警備上の責任のありかの問題であります。
  258. 門司亮

    ○門司委員 この警察責任者の問題でありますが、今の御答弁を聞いておりますと、警傭に大体落度がなかったからいかにも責任がないようなお考えのように、私には聞こえるのでありますが、これでは警察行政と治安の全うは私はできないと思います。おそらくこの種の事件に対しましては、何といってもやはり大きな責任者というものがその進退を明らかにしなければ、まごまごしておると、当該当轄の警察署長か、あるいは当時警備に当たっておった警察官の諸君が責任を負わなければならないようなことになりはしないかと私は考える。もしこういうことになって参りますならば、これは警察行政の上において私は非常に大きな問題を起こすと思う。こうした淺沼事件のような、国家的にあるいは社会的に衝動を与えるような大きな事件がありますならば、これは警察の行政の最高の責任者、公安委員会が責任を負うということと同時に、これは形は公安委員会が責任を持っておりますが、それからゆだねられた行政権に基づいて実際の権力行使をしておるのは、警察庁の長官と同時に警視総監だと考える。この権力の行使者が当然やはり責任を感ずべきであると私は考えておる。これが責任は何もないのだ、警備に落度はないのだとういようなことでは、一体将来の日本警察行政はどうなりますか。私は警察行政が今日より以上――今日が必ずしも悪いとは言いませんが、今日以上警察行政が廃頽していったならば、日本治安というものはたよりないと思いますよ。少なくとも警察だけは両度の責任性を考えられて、そうして国民に対しても、下僚に対しても、国家権力の作用と言われているほど大きな権力を持っておる首脳者でありますから、従ってこういう大きな事件が起こるならばその責任を当然感ずべきである。自分たちの持っている権限は、国家権力の作用として最高の権限を発動しておる。しかし責任については、これは警備がこうであったからというような単なる三百代舌的な言いのがれでなければ、日本の将来の警察行政というものは非常に大きな暗雲を呈することになりはしないか、こういう私の質問に対して、もう一度御答弁願いたしと思います
  259. 周東英雄

    周東国務大臣 私は門司さんの御意見に多分に同感の点もございます。ただ本件に関しましては、一応先ほど申しましたのは、直接あの事件に関しての責任の所在は東京都の公安委員会と視総監にある。ところがあの事件に対しまして、都の公安委員会は、一応警備上に関しては、調査の結果、やめる程度に至る責任はなかったやの考え方で、辞任せぬでもいいという決定を与えたのであります。それでけさほどからいろいろお話がありましたように、相当に考えなければならぬ、反省しなければならぬ警備上の穴もあったやに伺いますし、また警視総監も、みずからは、当時の状況から見て、辞表を出しておったのでありますが、公安委員会の決定によりやむなく留任いたしております。しかし深く反省し、今後これを起こすことのないような努力をするという形で答弁がありました。私どもは、今門司さんのお話しのように、将来の警察の制度の問題なり、それからこういう場合における治安の確保の上から、種々警察制度の上にも考え方を新たにしなければならぬ点もあると思います。かくのごとき状況によって一応今日は落ちついておりますけれども、今後の問題としては私ども深く考えてみたいと思います。
  260. 門司亮

    ○門司委員 最後に公安調査庁長官に聞いておきたいと思います。  この事件は、御承知のように、破壊活動防止法の七条を適用する必要が私はありはしないかと思います。刑法百九十九条に規定されております殺人行為を行なう団体であるというように考える必要がありはしないかということでございます。この破壊活動防止法の第七条には、明らかにこうした団体に対しては解放を命ずることができると規定されておるように私は記憶いたしております。従ってこういうテロ行為を繰り返して行ならような危険性のある団体については、私は当然解放を命ずべきであると考えておりますが、この点に対するお考えを一つこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  261. 藤井五一郎

    ○藤井説明員 お答えいたします。目下調査中でございまして、結論を得ておりません。
  262. 門司亮

    ○門司委員 調査中であって結論が出ていないというお話でありますが、これは調査をするというよりも、現実に問題が現われておりますから、私はこの際はっきり聞いておきたいと思いますことは、なるほど事件概要あるいは背景等についてはいろいろな問題があろうかと思います。しかし全アジア反共青年連盟でありますか、これに所属しておる者に間違いがない。そしてこの団体が一つの右翼団体であるということにも間違いがない。そうだといたしますならば、その結社の会員がこうした行動に出るということ自体については、公安調査庁としては、当然現実をそのまま直視せられて、そうしてこの種の問題については解散を命ずるとかいうようなことを、この際はっきり言われることがよろしいのではないかと私は考えますし、またその腹が私はあるはずだと思います。ただ、調査の結果、これをしなくてもよろしいのだということになれば、これは人殺しをする団体も認めてよろしいということになろうかと私は思いますが、これは非常に微妙な問題でありますから、その点を、ただ調査をしておるというだけではなくて、一つ明らかにしていただきたいと思います。
  263. 藤井五一郎

    ○藤井説明員 破防法を適用するにはいろいろな事案について厳格な条件があるのでございまして、その条件に当てはまらないと規制処分を求めることができない。現在においては、そのすべての条件が、解放なら解散の条件に当たるかどうかもまだ明確でないと思います。それで調査しておるのであります。もちろんこれが正確に当たるものなら、たとえば規制処分として解散を求むるにやぶさかではありません。
  264. 門司亮

    ○門司委員 その点なんですが、あれは三条か四条のところに、刑法百九十九条に該当する行為を行なうものとちゃんと書いてありますね。これは殺人行為であります。ところが実態は現に殺人行為を行なっております。そうだとすれば、情状を聞いて、こういう団体が再度そういうことを繰り返すかどうかなんということを見きわめていくということに私はなろうかと思いますけれども、再度そういうようなことをやるかやらないか見きわめてということは、事件が発生しなければなかなかわかりませんし、そうすればまたもう一人の被害者が出る。もう一人の被害者が出るまでこれをそっと置いておくというような手は、私はないと思うのです。事実上テロ行為が起こった、しかも何人かの人をねらっておったというようなことが明らかにされております以上は、この事実をもって律することが、私は治安の確保のためには正しい行き方ではないかと考えております、その点をもう一度御答弁願いたいと思います。
  265. 關之

    ○關説明員 御説明申し上げます。御意見の点はごもっともと思います。そこで、本件において問題になりますのは、破防法の規定は、団体活動として行なったかどうかということに相なるわけであります。かりに本件事案が三人なり四人なりの団体で相談して行なったという事実が明らかになりますれば、破防法の団体の活動として行なったということになって、団体解放という問題も生ずるわけであります。問題は、どうも今までの警察の方の調査の結果の御報告によりますと、背後関係がなくて、自己の単独犯を主張しているわけであります。そういたしますと、団体活動としての関連がどういうことになるか、まだもう少し捜査の結果を見て判断しなければならぬと考えております。そういうような事情で、そこで破防法の団体規制を運用するかどうかという問題があるわけであまして、この点を御了承いただきたいと思います。
  266. 門司亮

    ○門司委員 もう一つだけ、最後にこれは締めくくりとして総理大臣に聞いておきたいと思いますが、先ほどからずっと質疑あるいは答弁の中で聞いておりまするとこうした事件責任の所在というものがきわめてぼやけております。総理大臣は、先ほど、政治の不信であるということについては反対ではなかったようでありますが、それを除去する一つの方法として、押し問答みたいな形で終わったのでありますが、私どもはこうした事件をほんとうになくするというためには、政府のそれぞれの責任者が法律的にこれを云々するのでなくて、先ほどから申し上げておりますように、法律の根底には道義がありまして、道義の上に法律は成り立たなければ私は法律ではないと考えます。従って、法律以前の問題として、道義的に政府が早くこの問題の責任を十分にとられることができるかどうかということであります。山崎さんだけではおやめになりましたけれども、山崎さんのおやめになった責任上の立場というのは、さっき申し上げておりますように、今日の警察法自体の中にも私どもは多少の疑義があるのでありまして、これを山崎さんに責任を負わせることはどうかという考え方を持っております。これは当然総理大臣が責任を負うべきであるということが一応今日の制度の上で言える。同時に警察権の行使に関しましては、先ほどから申し上げておりますように、何といっても国家権力の一つの作用であるごとに間違いがございません。従って、国家権力の作用の実権を握っております警察庁の長官なりあるいは警視庁の総監なりが、やはりみずからの責任の所在を明らかにしていくということが、警察行政の建前から申し上げましても、政治道義の建前から申し上げましても、私は当然だと考える。それらの点について、総理大臣の所見をもう一度伺っておきたいと思います。
  267. 池田勇人

    池田国務大臣 責任についていろいろ議論はあることと思います。私は、先ほど来申し上げましたように、こういう事件が起こって国民に非常な衝撃を与えたというこの事実に対して山崎さんをやめさせたというのじゃございません。山崎さんが進んで自分は辞職したいということを申し出られましたから、私は山崎さんのお気持がわかりまして、これを受理したのでございます。先ほども申し上げましたように、私はこういう衝撃を与えたということはまことに遺憾であります。これが根絶を期するということが私の務めであると考えまして、努力を続けておる次第でございます。なお、直接その衝にあった警視総監並びに都の公安委員会あるいは警察庁長官につきましては、私がここでとやかく申し上げることは差し控えたいと思います。
  268. 山口六郎次

    山口委員長 川村継義君。
  269. 川村継義

    ○川村委員 きょう午前中の審議を通して今回起こった淺沼委員長刺殺事件に対するいろいろの取り締まり、あるいは対策について総理が非常な決意を述べられた。あなたの決意については、よく了解できるわけでありますけれども、きょうは実はその具体的な対策をもう少しはっきり聞きたいのでありましたけれども、これがどうもはっきりしていないことを非常に残念に思っております。  私が申し上げるまでもなく、こういうようなものは決意だけで決してうまくやれるものではないと思っておるのです。岸内閣のときにも三悪追放というような形でずいぶん大きな政策を掲げられましたけれども、何にもできてない。むしろかえって暴力のごときは助長されたといわなければならぬという状態であります。総理が決意を持つならば、本日はこういう点についてはこうやる、こういう問題についてはこういう施策をやるというような具体的なものをお聞かせいただきたかったのでありますけれども、そういう点についてどうも不明確であるのは、せっかくのこの委員会を私非常に残念に思っておるわけであります。たびたびこの責任の問題が午前中から出て参りましたが、私これらの行政上あるいは政治上の責任をただすということは、これはやはり一つの大きな方法ではなかろうかと思っております。それらについて午前中からいろいろと論議されたのでありますが、ここでくどくそういう点について私申し上げようとは思いません。ただ、どうしても私が納得できない点がございますので、あらためて総理からお聞かせいただきたいと思います。今門司委員の質問に対して、総理は、山崎さんが責任をとられたことについて、自分から要求したのではない、山崎さんが自発的におやりになったのだ、こういう御答弁がございましたが、実はそのころわれわれが聞いたところでは、山崎さんとしても、自分には行政上あるいは政治上の責任はない、自分はやめるなどということは考えていないというような御意思であったようであります。われわれはどうも総理のせっかくの答弁でありますけれども、やはり総理の言葉にありましたように、政治的な配慮という意味から、総理大臣が辞任を求められたのじゃないか、こう疑っておるのであります。この点初めにはっきりお聞かせ願いたい。
  270. 池田勇人

    池田国務大臣 こういうことにつきましてうそを言ったならば、私ばかりではございません、山崎さんに対しても申しわけないことであります。絶対にそういうことはございません。
  271. 川村継義

    ○川村委員 それでは総理の言葉を信ずることにいたします。今門司委員からも、あるいは午前中猪俣委員からもいろいろお話がありましたが、山崎さんがお一人で責任をおとりになった、内閣には政治責任もないというような総理のお考えでもあったのでありますけれども、午前中猪俣委員の質問に対して、あなたは高いところ、広いところの責任はあるようだというような御答弁がありました。なかなか要領がつかめないのでありますが、いかがでございますか。こういうような大きな事態が起こったときに、行政上の責任あるいは政治的な責任ということを考えると、委員長たる山崎さんだけにこの責任を負わせるのではなくて、公安委員皆さん方に責任を負ってもらうというようなことは、これは不可能なんでありますか、できなければどういう点でできない、できるならばできる、こういう点で一つ御見解を聞きたい。
  272. 池田勇人

    池田国務大臣 公安委員会の委員の方に責任をとれということは、私から申すことは法律上できないことになっております。
  273. 川村継義

    ○川村委員 あなたは、たびたびの本会議の答弁でもあるいは本日の答弁でも、いわゆる政治責任はないんだけれども、大所高所から、あるいは高く広く考えて山崎さんに責任をとってもらった、つまり政治的配慮からというような言葉をおっしゃっております。何も私言葉じりをつかまえるわけではありませんが、総理がお考えになっております政治的配慮というのは、一体どういう内容を意味するものでございましょう。
  274. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう、何と申しますか、世界でもまれに見るような不祥事件を起こしたということにつきましては、行政上最高の立場を持っております私といたしましては、非常に遺憾に存じておるのであります。従いまして、私は、自分としては、こういうことの再び起こらないように努力する、そうしてその責めをふさぎたいと考えておるのであります。
  275. 川村継義

    ○川村委員 政治的配慮ということ、どうも今のお言葉では不明確でありまして、私受け取りにくいのでありますが、やはりこういう大事件が起こったので国民に対しても申しわけないことであるというような意味合いであるとするならば、これは公安委員長だけの責任ということは私はどうかと思うのであります。たびたび指摘されたように、最同のものはあなたでありましょうから、これは内閣がやはり責任をとるということが大事じゃないか、こう思われるのです。またそうでなければ、あなたから公安委員会に対してそういうような指示ができないということであれば、これは何かの形でやはり公安委員の皆さん方が責任をお感じになるということをやることこそが、国民に対する一つの大きな政治的な配慮であるし、その責任ではないかとも思うのですが、見解はいかがでしょう。
  276. 池田勇人

    池田国務大臣 公安委員に私がそういうことを言うことは、先ほど申し上げたように規定上できないことになっておるのでございます。それからまた法律的に責任がない、政治的に私がどうこうと言うことは今差し控えたいと思います。
  277. 川村継義

    ○川村委員 あなたがその法的権限がないということであれば、公安委員の皆さん方がそういう立場でおとりになることについては、あなたどう考えますか。
  278. 池田勇人

    池田国務大臣 公安委員の行動に対しましては、私は今批評を加えません。
  279. 川村継義

    ○川村委員 法制局長官にちょっとお聞きしたいんですが、国家公務員法の四十八条の解釈、これはどういうふうに解釈しておられますか、ちょっと聞かしていただきたいと思います。
  280. 林修三

    ○林政府委員 ちょっと御趣旨でございますが、国家公務員法の四十八条というのは、「試験は、人事院規則の定めるところにより、人事院の定める試験機関が、これを行う。」こういう規定でございますが、この解釈でございますか。
  281. 川村継義

    ○川村委員 失礼しました。十条ですね。
  282. 林修三

    ○林政府委員 国家公務員法の十条は、「人事官の給与は、別に法律で定める。」――警察法の十条ですか。
  283. 川村継義

    ○川村委員 私が間違えておりました。国家公務員法の百四条です。
  284. 林修三

    ○林政府委員 百四条、「職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、人事院及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。」この規定でございますが、これはいわゆる報酬を得て他の営利企業以外の企業の団体の役員になる、これについては、一般職の職員につきましては人事院、直接の上官、こういう規定でございます。
  285. 川村継義

    ○川村委員 それは報酬を得てということになっておるようですから、報酬を得さえしなければその他のいろいろの役員、顧問、そういうものになっても差しつかえないと読んでいいわけですね。
  286. 林修三

    ○林政府委員 お答えいたします。営利事業についてはもちろん別でございますが、営利事業以外の事業につきましては、一応報酬が無報酬であればいいということになっております。あとは各自のそれぞれの判断によることになっておるわけであります。
  287. 川村継義

    ○川村委員 警察庁の長官にお尋ねした方がいいかと思うのですが、現在の国家公安委員の皆さん方で、このように別にそれぞれの団体あるいは関係で役職を持っておられるのがあろうと思いますが、それらを各人について一つお聞かせいただきたい。
  288. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私も今そういう資料を持ち合わせませんので正確に記憶いたしませんが、安井委員はほかの仕事はたしかやっておられないのではないかと思います。それから永野委員は富士製鉄の社長をしておられます。従ってこれは正規の報酬を受けないで、いわゆる日当といいますか、お出になったときの手当を出しております。それから金正委員は、かつて総同盟の会長でございましたことと、現在も何か大阪方面のそういう仕事をしておられるのではないか、しかしこれは正規にすべて手続をとっております。高野委員は弁護士でございまして、これは別に役職員ということではございません。小汀委員についても、今ほかの役職についておられるという記憶はございません。しかし、すべてそういうものについては正規に手続をとって間違いのないようにしております。
  289. 川村継義

    ○川村委員 これは、今の百四条の規定は、警察法によりましてもたしか準用されることになっておるのですが、今長官のお答えではどうもはっきりしないようであります。こういう点、もう少し詳しく長官としてお知りになっておく必要があるんじゃないかと思うわけであります。もちろん百四条の適用を受けるときには、総理大臣の承認を得ることになりますが、池田さんが任命されたのではないから池田さん御存じないかもしれませんけれども、こういう点を一つもう少しはっきり、やはりその所轄の事務の責任者としても長官がお調べになっておく必要がある。きょうは、池田総理は、たびたび、暴力排除等についての御見解の中で、政治姿勢を正すということを言われましたが、私はやはり総理大臣を初め、各閣僚あるいは行政の責任者の皆さん方が、そういうような形で、国民からいろんな形で疑惑の目を向けられないような立場において責任をとって仕事をしてもらうということが大事じゃないかと思います。そういう点から一つお尋ねするわけでありますが、池田総理は岸総理と違って、おそらく日本の新聞も毎日読んでおられると思いますが、毎日新聞をお読みになっておられますか。
  290. 池田勇人

    池田国務大臣 特定の毎日新聞ですか、毎日、新聞を読んでおるかどうかということですか。
  291. 川村継義

    ○川村委員 朝日、毎日の毎日新聞です。
  292. 池田勇人

    池田国務大臣 毎日新聞はとっております。しかし読むといいましても読み方がございまして、初めからしまいまでということはございませんが、だいぶたくさん新聞をとっておりますから見出し程度で……。
  293. 川村継義

    ○川村委員 毎日新聞に、今の国家公安委員をしておられます小汀さんが書かれた意見があるのですが、それをお読みになりましたでしょうか。
  294. 池田勇人

    池田国務大臣 最近非常に忙しいので、そういう人の言はあまり読んでおりません。小汀さんのは読んでおりません。
  295. 川村継義

    ○川村委員 それではちょっと総理の御所見を聞いておきたいと思いますが、小汀さんが「淺沼刺殺事件に思う」ということで、「まず教育を建直せ」というようなことで御意見を書いておられます。初めの方は、非常に残念であった、そしてこれが起こってきた原因等を書いておられるわけでありますが、その中段のあとにこういうような見解を述べておられます。「すなわち暴力絶滅の最初にして最後の努力はいまの教育を根本的にたたき直すことに向けなければならない。そしてその第一は暴力肯定ないし奨励の日教組をたたきつぶすことである。」こう言っておられます。私はこれを見まして、ただ小汀さんが単なる評論家としてこういう見解をお述べになることは、これはもう自由であろうと思います。しかし国家公安委員としてこういう激越な御意見を出されるということについては、実は疑義の念を持つわけでありますが、総理はこれについてどのような――私が今読んだような見解に対してどのようなお感じを持たれるか、お聞かせ願いたい。
  296. 池田勇人

    池田国務大臣 小汀先生が新聞に意見を出されたことにつきまして、私はここで批評を差し控えたいと思います。
  297. 川村継義

    ○川村委員 総理、ただ単なる個人、あるいは評論家として出されることについてとやかく言うのじゃありません。あなたが任命された、内閣が任命された国家公安委員として、こういうような言動、意見を吐かれるということ、しかも日本の大新聞に書かれたということについては、これはそのまま見のがすわけにいかないのじゃないかという感じを持つのです。一向差しつかえありませんか。
  298. 池田勇人

    池田国務大臣 私は公安委員の方が積極的に政治運動をなさるということにつきましては、これはよろしくないと思いますが、個人の意見としていろいろな発表をなさるということにつきまして、総理大臣がこれに対して批判を加えるということは、ただいま差し控えたいと思います。全部を読んでもおりませんし……。
  299. 川村継義

    ○川村委員 あなたは、先ほどたびたび政治姿勢を正すと言われました。あなたの後援会である宏池会とかいうような問題も出てきた。しかしおそらく今はそういう点については御関係がないかもしれません。で、各閣僚の中にまたそういうような疑惑を持たれるような方があってもならないと思います。そういうことがこの暴力をなくする一つの大事な道ではないか、具体的な一つの考え方じゃないかと思うのです。しかも、あなたが責任者である行政委員会の中に、こういうような極端な考え方を述べられるというような方がおられるということは、これは一体どういう影響を与えるか、考えてみたければならない大きな問題ではないかと思うのです。で、今までよく指摘されましたように、警察当局は、あるいは右翼に甘いとか、今度の事件が起こっても、あるいはラジオ、テレビ等で相当問題をすりかえたような形でこういう労働組合等の抗議集会行動についての指摘がそれぞれの方面からなされておる。小汀さんのような国家公安委員である者が、こういうことを公々然と発表するということについては、そういうものに火をつけることになりはしませんか。日教組をたたきつぶせ、教育を根本的にたたき直せというようなことを言われるということは、いうならば右翼思想を培養しておる一つの元凶じゃありませんか。そういうような見方をするわけです。あなたは見解を差し控えられると言われますけれども、あなたの足元の国家公安委員の中にこういう意見を持っておる人たちがおられるということについては、警察行政の上においても大きな疑惑を国民に与える。警察が結局右翼に甘いんだなどと言われることは、こういう人たちが委員をしておられるからこそ出てくるんじゃないか、こういうふうに思われたらどうなりますか。いかがですか。
  300. 池田勇人

    池田国務大臣 公安委員が政治団体の役員になったり、あるいは政治活動をするということは禁止しておる。しかし小汀さん個人が政治的見解を述べるということは禁止していない。それは法律的にそういうようになっておるのです。しかし小汀さんが自分として政治的な考え方をお述べになるのを、それが適当であるか不適当であるかということを一々私がここでお答えするということは差し控えたい。こう申し上げておるのであります。
  301. 川村継義

    ○川村委員 あなたが今申されたこともわからぬでもありません。しかし、国家公安委員として、右翼を、そういうテロ行為等があった場合に、これを援助するような、そういう見解を述べられるということについては、これはやはり適当だとはおそらくあなたも思わないだろうと思います。問題は政治活動をするとかしないとかじゃなくて、こういう国家公安委員がおられるということは、一体警察行政をどういうふうに動かしていくかということについて心をいたさねばならぬのじゃないか、こう思う。私は個人の名前をあげて言っておりますけれども、そういう意味において国家公安委員というものの姿勢が正されることが大事じゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  302. 池田勇人

    池田国務大臣 国家公安委員の一人が日教組に対して自分の見解を述べられ、それが右翼を助けるんだとか、あるいは左翼を支持するんだとかいうふうなことによって、これにどうこう私が意見を言うことは差し控えたい、こう言うのでございます。
  303. 川村継義

    ○川村委員 あなたの文部大臣の本会議の答弁や参議院の答弁を聞いておりましても、常にこの右翼テロの問題をすりかえよう、すりかえようとしておる。と同様に教育を根本的にたたき直さねばならない。その第一は日教組をたたきつぶさなきゃならない、こういう意見を述べられるということについて、私は警察行政の立場から不適当じゃないかということを、あなたの見解を聞いているわけです。  総理にお尋ねしますけれども、国家公安委員の選任にあたって、国家公安委員という方々の選任をなさる場合の一体基準といいましょうか、あるいはどういう方が好ましいという形で選任をしておられるのですか、任命をしておられるのですか。
  304. 池田勇人

    池田国務大臣 これは御承知通り国会の承認を得ることになっているのでございますが、公安委員になったからといって、共産主義がよくないとかいったから、これは公安委員にしないとか、こういうふうに片手落ちをするということはどうかと思います。その人の全体の人柄を見て私は考えていきたいと思います。
  305. 川村継義

    ○川村委員 よろしゅうございます。次に警察庁長官にちょっとお聞きします。実はもうくどくどは申し上げませんが、当日の警備問題については、午前中田中委員から非常に重要な、大事な質問がありましたので、私としてもそれ以上聞くことはないかと思いますけれども、ただ一つ、どうしても私が疑念に思っておる問題は、あの山口という少年が入り込んで、そしてあの地図にもございますように、客席の二列目を行ったり来たりしておるわけです。そうすると、あそこにはちゃんと警官の配置もあったようですが、その山口という少年をなぜ一人として見とがめていないか、それを見ていないかということです。問題になりましたように、十数回も事件を起こして、これはもう刑事の皆さん方はほとんど知っておられると思う、顔見知りじゃないかと思う、よくわかっていると思う。しかも保護観察に付せられておったような少年だという。それが会場で何べんか動き回っておるのに、しかもあの観客の中に入っておるのに、警官もそこにおられたのに、それが山口だということが全然キャッチできなかった、この辺についてどう分析せられますか。
  306. 柏村信雄

    ○柏村説明員 山口二矢は三時少し前に入ってきたことは、先ほど小倉警視総監から申し上げた通りでございます。そうして壇に向かって右の二列目の――右の廊下からわきの入口を入りまして二列目のところをずっと静かに歩いていったわけです。それで、ここから前に出てはいけないというところで、整理員に手をもって阻止されたわけです。このときには、何も脱兎のごとく走っていくという態勢ではなくて、普通の聴衆のようにして、服装も普通でございますから、そういうことで、こう手を出されて、そして引き下がってきて、また廊下に一度出ておるわけです。そして刺殺したときの前に、今度もう一度入ってきて、一番こっちの列をまた静かにすそのところまで歩いていった、こういうことでございまして、山口を知っておりまする右翼係がそこに居合わせて見とがめることができなかったということは、非常に遺憾でございますが、非常に異常な風体とか、異常な様子によって何回も歩いておったという、不審な挙動ではなかったように聞いておるわけでございます。
  307. 川村継義

    ○川村委員 安保国会のころにたくさんの集団の人が、あるいは学生も、いろいろ陳情行動に出向きまして、そのときによく警官と学生とが衝突をしておる。そのときに衝突した一番大きな原因と思われるものには、学生の中に全学連のいわゆる幹部の諸君がまじっておったときに、それに刑事の人たちがあそこにおったということで目をつけて、それを逮捕しようというような行動に出たときによく衝突しているようであります。あのたくさんの学生の中に、全学連の幹部がいるということをすばやく見つけ得るように、あなたの方の刑事さん方はみな優秀である。その刑事さん方が、あの日に限って、その山口という、ちゃんとれっきとしたような少年を、全然見のがしておったということについては、国民は非常に大きな疑惑を持っておる。この点につきましては、時間がありませんので、いろいろ問答しているあれはありませんが、一つ十分反省、検討を加えていただかなければならぬのじゃないかと思います。  時間がありませんから、私最後に、実はきょう文部大臣に対していろいろ質疑をしたいと思ったのでありますが、これはやめますけれども、総理、先ほど私が申し上げましたように、やはりこういうものは一方的に強圧的に出てもだめでありますし、よく文部大臣は衆議院の本会議でも、参議院の本会議でも、非常に日教組のやり方を攻撃しておられるようであります。攻撃されることは自由といたしましても、こういうような方が文教の府におったりなどされるということについては、よほど考えていただかなければならないのじゃないかと私は思うわけです。文部大臣は、よくあの人の言動から考えますと、少しも教師というものの善意を解しておられない。その教師たちの団体の教育活動というようなものを全くばかに考えておられる。日教組とは面会しないのだ、話し合いをしないのだ、交渉する資格はない、こういうことで高飛車に出ておられるわけであります。そして教育基本法のごときは、アメリカの押しつけた法律だから、これを改正するのだ、こういうようなことで、修身教育がなくなったから今日の混乱が出たのだ。大体考え方がむちゃじゃないかと思うのです。そうしたら、昔修身教育があったときにこういう事態がなかったか。昔の修身教育必ずしもりっぱな人間を作っているわけではない。これは私が指摘しなくてもおわかりのはずであります。昔だってたくさんのこういうおそろしいテロ事件が起きている。そういうような修身教育などと道徳教育を結びつけて、新しい民主教育における道徳教育というものを考えないで、ただこれを修身教育の復活のようなことで出てこられるということは、実にけしからぬことだと思います。そういうような不見識も非常にはなはだしい態度に出られるということが、あるいは右翼をこういうようにまた挑発する原因とならぬとも限らぬ、よほど文教の責任をとっている人は考えていただかなければならぬ。先ほど阪上委員かいろいろ青少年不良化防止対策等についても質疑申し上げましたが、青少年がいろいろな社会環境等の影響を受けて、非常に非行少年が多くなっておる、不良化が増していくということは、これはあなたの方では青少年問題の中央協議会等を作られていろいろ対策を立てておられますけれども、実際どれだけの実効を上げておるかわからないでしょう。これについて文部省のごときも、一体青少年の不良化防止対策などといって何を考えているか。教育の面において何にも考えていないのであります。青年の家を作ることけっこう、スポーツの費用を出すのもけっこう。しかし青少年の下良化対策について、警察にだけまかしておいて、文教の責任をもつところの文部省が何にも手を染めないということは、実際これは嘆かわしいことだと思います。去年もことしも青少年の不良化防止対策に一体幾ら組んであるか。ただ会議費として三十万七千円組んであります。これでもって文部省が青少年の不良化防止対策をやろうなんて、全くけしからぬわけです。こういうことは全然抜きにしておいて、ほんとうに文部省が教育面からあるいは社会教育の面から青少年の不良化対策を考えなければならぬのに、そういうことは全然やらぬでおって、教育が悪い、基本法が悪い、道徳教育がなっておらぬ、こういうような出方というものは、不見識もはなはだしいと思います。きょう文部大臣おりませんが、総理、こういう点についてもよく一つ考えて置いて、あなたがこういうようなものを抜本的に対策を立てられる場合に、ぜひともこの少年の不良化問題については、非行少年、不良化の少年をいかにしてりっぱになしていくかということについても、全力をあげていただく施策を考えていただくことを要望するのであります。以上。
  308. 山口六郎次

    山口委員長 志賀 義雄君。
  309. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は昨日島根県警本部の多くの書類について記者会見で発表しましたが、これは島根県だけの資料ではございません。警察庁からの指令その他の写しもたくさんございます。それに基づきまして、きょうの委員会において若干質問を行ないたいと思うのでありますが、今度の淺沼君の暗殺について淺沼君は私の四十年来の友人でありますが、いろいろと理由をあげられて、今度の暗殺事件について哀悼の意を表します、遺憾でありますとは言っておられますものの、具体的に責任をおとりになろうとはしていないのであります。ところで警察の方では十分こういうことが起こることを前もって予知せられておったのではないか。というのは、柏村長官も御存じでしょう。警察警備一課の警視正山寺通雄君という方がおられますね。これは右翼の非常な専門家であります。これが「警察時報」十一月号であります。これは淺沼君刺殺の前に原稿が書かれ、印刷されて発表されたものでありますが、この山寺君の論文の最後のところに「なお一部においては、現情勢がすでに左翼革命への段階に入っているとの判断から、事態を極めて危険視し一人一殺的直接行動によって是正しようとする萌しもみられており、場合によっては左翼勢力の指導的幹部あるいは一部政治家などに対する攻撃も考えられ当面する治安上の問題として軽視し得ぬものがある。今後の動向は相当注意を要するだろう。」こういうふうに書かれております。そうしますと、警察としては右翼の動向については視察をどういうふうに具体的にやっておられるのでしょうか。この資料にも相当出ております。三輪さんですか、これは古い資料だから、そのとき右翼はそんなに活動していないから、左翼の資料が出るのはあたりまえだと言われたですが、論より証拠ということがありまして、あとその証拠もお目にかけますが、最近は右翼のこういう動きに対してどういうふうな、山寺君が書いてあるようなことがあるのか。どういうふうな警備をやっておられましたか。
  310. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答え申し上げます。先ほど来申し上げておりますように、またそこに山寺君が書いておるような情勢も一部うかがわれますので、右翼については特に最近厳重なる視察、内偵をするように督励をいたしておったわけであります。
  311. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 きょうのこの委員会での問答を聞きましても、柏村警察庁長官には何だかあまり責任がないようで、小倉警視総監責任は相当午前中も追及されたようでありますが、現行の警察法から見ますと、警備警察に関しては全国的に統一的に指揮がなされているのではありませんか。私がそれを主張する根拠は警察予算、国庫支弁金、つまり警備警察の活動費は国家予算であり、これは国家公安委員会の方も十分その点は熟知されていることでありましょうが、あなたの方で国庫の金を配分する、これをやって全国的に警備警察というものを掌握されているのでしょう。その下の小倉警視総監のところでああいうことが起こったとすれば、これについては予算面からいっても、あなたに対して今申し上げた点から私は責任があると思うのですが、その点については午前中からの質問もそこまでは触れられなかったし、あなたもその点については何も言われなかったですが、警察庁長官、そこはお考えいかがでしょう。
  312. 柏村信雄

    ○柏村説明員 今回の事件につきまして私も心から遺憾に存じ、また私の職掌柄としましても責任を感じております。しかし、私はこの責任の果たし方として、今後さらに一そう今の態勢を固めて職責の遂行に邁進するのが私の相当の任務であるというふうに考えまして、私は辞意を表明いたしておりません。また警察法上ただいま警備については全国を握って指揮、監督しておるというふうなお話でございますが、法律警察庁が所掌している事務としては持っておるわけではございません。これは各都道府県がやるわけでございますが、非常に関連がございますので、調整事務として相当にいろいろの連絡をとっておることは事実でございます。なお警備についての予算というものは国費でございますので、これは警察庁でそれぞれの分野において適当に府県に配分するということにいたしております。
  313. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 じゃあ、それは一応伺っておくことにします。あとで資料に基づいてもう一度あなたの今言われたことについて質問いたしたいと思います。右翼の財源のことが言われておりますが、新青年協議会というものがあり、これについてはきょう委員に配付された公安調査庁の資料にも出ている団体でありますが、これにどうやら自民党広報委員会から二十万円の金が出ているようであります。どうして、これがわかったかというに、吉富新青年協議会委員長がこの金の分配のことについて横領したとかなんとかいうことがあって、「新青年通信」八月五日付号外で発表されております。この横領事件については東京地検の方に何か出ておりますか、お調べになったことがありますか。刑事局長いかがですか。
  314. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいまの点につきまして私聞いておりませんので、調査してみたいと思います。
  315. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これは何でしょうか、自治省の方ではこの金が届けられているかどうか御存じでしょうか。二十万円自民党広報委員会から出た金の分配について仲間争いが起こって、こういうことが暴露されているのですが。
  316. 松村清之

    ○松村説明員 ただいま調べていますから……。
  317. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あとで調べたところを伺うことにします。池田首相の後援団体である宏池会が三十五年度上半期の政治資金規正法届け出の書類によれば大日本菊水会、右翼雑誌祖代、頭山塾、護国団広島本部、全国愛国者団体会議事務局長荒原朴水、総合文化協会、こういうふうに金が出、なおそのほかに熱海政治道場建設資金というのにも百万出されております。これは自治省では確認されておりますか。
  318. 松村清之

    ○松村説明員 調べてみます。
  319. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 調べてみるって……。あなた方の方からお出しになった政治資金規正法届け出の書類に書いてあるのですがね。それを調べてみるというのは、何をほかに調べられますか。もう少ししっかりして下さいよ。
  320. 松村清之

    ○松村説明員 それは、ちょっとお聞きしますけれども、広島でございますか。
  321. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いや、広島というのは、四月二十八日護国団広島本部というのがありまして、あとは広島ともどことも書いてございません。
  322. 松村清之

    ○松村説明員 これは出ております。
  323. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 もう一つ、自民党の方から出ている金のことについて伺いたいと思います。昭和三十四年五月二十一日、護国団、同じく七月四日、治安確立同志会、これは今山口二矢救援本部の看板がかかっておることは東京テレビにも出ておりました。ここにも出ております。それから十一月五日には天皇中心会へも出ております。これも確認されますか――もう少し調べてもらいましょう。答弁はあとでして下さい。何しろ時間がないから先を急ぎますから。これはほんの若干の事実であります。池田首相にお伺いします。あなたは自民党総裁になられましたが、こういうふうにいろいろとあなたの後援団体からも出ておる、自民党からも出ているのでございますが、あなたは総裁におなりになって、こんな金を出すことをおやめになりますかどうか、この点を伺いたいと思います。
  324. 池田勇人

    池田国務大臣 総裁になりましたときに、右翼団への寄付は絶対にすべきだということを指令しております。
  325. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そういうふうに絶縁する、今度からは出さないと言われるなら、経済団体連盟の会長の石坂泰三氏が、淺沼委員長が殺されて国民全部が悲しみを抱いていたときに、毎日新聞十月十三日の談話で、けさ猪俣君も言ったように、あの少年の気持がわからぬわけでもないと言っておる。ところが経済団体連盟事務局長なんかが中心になって、経済再建懇談会その他の形を通ずるものもありますが、自民党へ、新聞によれば八億円とか、十億円とか、いや二十億円とかいう金を出す、こういうことも言われておりますが、今右翼団体には今後金を出さないと言われた。一方で石坂氏自身があの少年の気持はわからぬでもないという。自民党には金をたくさん出そうと言われておる。どうです池田さん、この金をお受け取りになりますか、お断わりになりますか。
  326. 池田勇人

    池田国務大臣 自由民主党の政治活動に必要な資金として適当な金なら受け取る考えでございます。金額の点その他は私はまだ聞いておりませんが、こういう問題は幹事長に全部委任いたしております。
  327. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうもこういうことを勝手に放言する人ですが、会長さんをやっておられる団体から多くの金が出るということになりますと、やはり自民党はその手足を縛られ、せっかく首相右翼からの金は一切もらわない、絶縁すると言われても、裏から大きい金が出るんだ、金権政治ということ、選挙に金がかかるということに、非常に国民が遺憾に思っておるところでございますが、そういう点について首相が今言われたことは、私はどうも納得いきがたい。そこで次に伺うのでありますが、台北で本年反共アジア会議が開かれたのですが、これに出席した日本人はだれでしょうか。警察庁でお調べになりましたか。
  328. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私は、その人たちの名前を存じません。
  329. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 こういう点についても、もう少し調べて下さい。何でも渡辺銕蔵君という方もちょうどそのころ行っておられたそうだが、一体どういう資格で行かれたのですか。日本はそのとき反共アジア会議に正式に加盟したといわれている。どの団体が、どういう何で加盟したかということを調べていただきたいと思います。インド首相ネール氏は、アメリカの謀略機関の国外退去を強硬にアメリカに要求したことがありますが、今後、国際謀略団またその背後にアメリカの諜報機関などがあった場合に、池田首相としては、ネール首相と同じように、強硬にその退去を求められますかどうか。今後具体的な事実が明らかになったときに、その点のお心がまえを一つ伺っておきたいと思います。
  330. 池田勇人

    池田国務大臣 事態によって判断を下したいと思います。
  331. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 事態によってネール首相のような判断をされることを希望します。そうでないと、またそのときに問題にします。さて、時間がありませんので、次に、昨日発表した警察資料について申します。これは私ども合法的に入手したものでございますが、新聞に、警察庁では何だか共産党が盗んだ、盗まれたというようなことをいわれている。盗まれたと人を疑う前に、おひざもとの方をもう一度調べ直して下さい。お調べになりましたか。その結果がきましたか、どうですか。
  332. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お答えいたします。何分昨日のきょうでございまして、十分な調査はできませんが、大量に文書がなくなったということは非常に驚くべきことであります。合法的に入手をされたというお言葉でございますが、警察側としては、合法的に外にたくさん出すという権限はありませんので、お願いできますことならば全部お返し願って、それから綿密に調べたいと思います。
  333. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それは名答弁のつもりでしょうが、もう少しあなた方が事実を発表したら、こちらからも言います。あなたは恥をかきますよ。幾ら警察の権限だって、こちらが合法的に入手したものについて手は触れられませんよ。あなたがそういうことを言うから、よろしい、あなたの手紙を今から朗読します。――三輪局長は三輪良雄さんといわれますね。
  334. 三輪良雄

    ○三輪説明員 はい。
  335. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 昭和三十年七月十四日、三輪良雄。警視庁警備二部長様、各府県本部長様、各管区公安部長様あてのあなたの手紙があります。拝啓、酷暑のみぎり、ますます御壮健で何よりと存じます。間は省きます。ことに警備情報の収集については場所を明記して盗聴器をかけて情報を得たとか、郵便集配人を工作して協力させたとかいうことをこまかく載せ、管内の警備対象者、外勤巡査別の警備情報報告成績表などが全部記してあります。監察の際の報告書などに右のような情報活動の具体的事例をそのまま掲げるというのは、警備感覚としてははなはだ欠けているとしなければなりません。対象者や――これはスパイに使う人のことですね、情報報告の数などは、よくある例として当方の手段をそのまま記録するなどということは全く困りものです。こういうようにあなたは書いている。あなたはこういう手紙をお出しになった御記憶がありますか。これは昭和三十年秘密文書綴、警備課、この中にちゃんとあなたのがあります。こんな手紙をお出しになりましたか。
  336. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お答えをいたします。前のことでありますから内容は詳しく存じませんが、警備警察に関して特に注意をすることを私は出した記憶がありますから、それが島根県警察から出たものとすれば、それに当たるものと思います。
  337. 山口六郎次

    山口委員長 志賀委員に申し上げますが、割当時間が経過しておりますので、結論をお願いいたします。
  338. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 簡単にやります。ところで次に柏村長官に伺いますが、あなたのところに警察庁斎藤警部という方がおられたがこういうことを言っておる。警備予算は制度切りかえにより昨年の二倍半以上になっている。本年度の本格予算が無傷で通れば、六二・二%を示している。地方の予算が窮屈になっているのに、警備予算はある程度潤沢になっている。このような点から、大蔵省も会計検査院も注目していると思われる。こういうふうになって、であるから、これを自分のところの警備だけにあまり狭く解釈してそれだけに使うと、警察予算六二%もとっているのは、ほかの警察警備以外の人たちにうらやまれ、ねたまれるからこれを全部自分のところで使ってはいかぬ。少しほかにも配れ、そしていい例としてこういうことを言っています。「いい事例としては、署に対しては警察官割、警備警察官割などを考慮して署に配付しているため、全警察官警備活動の触覚として活動していた実情で、このようにあらねばならないと思う。」こう言っています。ここに書類がありますが、こんなことを警察庁からやらせたのでしょうか。
  339. 柏村信雄

    ○柏村説明員 警備につきましては、常に厳正に行なうように指導をいたしておるわけでございまして、不当な警備をするような指導をしたことはないと考えております。
  340. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それはいいことを聞いた。厳正におやりになるという、ところが斎藤警部は警察庁から行っての訓示に「最近会計検査が近畿と九州で行なわれている。ところによってはきわめて厳格に、ところによってはきわめてゆるやかに行なっている。次席立ち会いのもとに金庫をあけて、現金と出納簿じりを合わせて、そのそごのあるところではやかましく言われている。そのねらいは、県費でまかなうべきものを警備予算でまかなってはいないか。また目的を変えて使ってはいないか。また二重帳簿で経理してはいないかなどをついていると思われる。これらより見る場合、検査に際しては会計検査用帳簿と現金を厳格に一致させ、その他のものは置かないように、備品の関係についても正式の備品とその他のものとは区別していただき」これは一体何ごとですか。厳正に使用させるというが、会計検査院が来るときに会計検査用の帳簿は別に作って、その他のものは置くな。ある現金と会計検査院用の帳簿とがちょうど合うようにしておく。あなたは今も厳正にやっておりますと言われていた。こういうことを警察庁から行って訓示しているのですよ。何ごとですかこれは。一体これはどうなさるおつもりですか。一つ覚悟のほどを言って下さい。
  341. 三輪良雄

    ○三輪説明員 訓示とおっしゃいまして文書をお持ちでございますけれどもこれは何かの会議に斎藤警部が行っての話をだれかがメモしたものか何かかと思います。それが新聞に出ましたので、二重帳簿を作ることを斎藤が要求したというようなことで、けさ本人から電話で聞いたところによりますと、あるところの検査で、会計検査院へ出します証憑書類のうちに、先ほど御指摘の協力者の名前があったというようなことでうまくない例があり、そこで公式に出しますものには本名を入れないようにというような趣旨で注意をしたように聞いております。
  342. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 うまくない例というのをちょっと説明して下さい。うまくないというのはどういうことなのですか。
  343. 三輪良雄

    ○三輪説明員 組織の中で協力して下さる方の名前がその組織に知れることは、今後協力をいただく上に都合が悪いからでございます。
  344. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そんなことを私は言っているのじゃない。それ自体が警察法の違反ですよ。そんなことを警察法のどこに書いてあります。ちっとも書いてありはしない。別のことを言っている。会計検査用の張簿を作れと言って、それがここにある書類では、警察庁から来てこういう訓示をされたから、各署長に訓示を出している。そのようにやってほしいと、同じようなことを書類で出ている。だからあなたのは答弁にならぬですよ。それで会計検査院に聞いてみましたところ、松江には最近五、六年行っていないそうです。ほかには行っている。どこでもこういうふうなことが来るとちゃんと準備をして、警察署長に至るまでそういう訓示が次々に出されているという状態です。これはきょうはここで結着はつきませんけれども、これは大きい問題になりますから通常国会でも必ず問題になりますから……。さて次に長官に、そろそろ最後に近づきましたからお伺いをしたいが、右翼の人間に警察から金をお出しになるようなことはありませんか。
  345. 柏村信雄

    ○柏村説明員 原則的に右翼の人間に金を出すようなことはないと思います。ただ左翼の方にも協力者として出すことがあると同じような程度において右翼に出すということがあり得るかと思いますが、私はそういう事実を知りません。
  346. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 左翼のことを言われたが、もしそういうものが共産党にでもあれば、あとで参考のためにその名前を伺いにいきますが、どうせばれているのだから、一つ名前を全部出してごらんなさい。それはあとでちゃんとやります。岡崎功という右翼の人物があります。これは島根県警でも非常に注目している人物でありますが、その人物について、これは将来政治家その他について非常に危険な行動をするおそれがあるから、これについてのなには、その周囲の三人を完全に協力者にしたといっているのです。しかもつまり岡崎功という下にいる三人の旗頭みたいなものをスパイにした。しかもその岡崎功に対してたびたび警察から金を出しておられるのですね。そういうことがある。これは一体どういうことでしょう。一方ではスパイを使ってその男の動静は一々わかっているというふうに書いてあるのです。他方ではその岡崎功に対して警察から――ここに捜査費出納簿に、岡崎功に何月何日幾ら金をやったということが前後六回ほど出ておる。これは一体何事ですか。一方ではスパイを入れて、これは危険で将来中央の政治家に対しても一人一殺をやりそうな男だ、だから三人のまわりの者をスパイにしてやっているという報告が二度出ている。しかも他方この男に対して松江県警本部から、金が六回も出ている。これは何事ですか私が一番問題にしたいのはここです。右翼の動静を探る、厳重にやると言いながら、その右翼に対してこういう金が警察から出ている。捜査費出納簿にまでそのことがはっきり出ている。こんなことでどうして右翼取り締まりができますか。疑われるなら、あとでこれを見せますから見て下さい、ちゃんと出ている。こういうことをやっているのですよ、どうです、この点について長官からお答え願いたい。
  347. 柏村信雄

    ○柏村説明員 その岡崎某について、どういう理由で出したかは私は承知いたしませんので、よくそういう点は調べてみたいと思います。
  348. 山口六郎次

    山口委員長 志賀委員に申し上げますが、五〇%以上も申し合わせ時間を超過しておりますので、結論をどうぞ。
  349. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 では最後にいたしますが、こういう奇々怪々な事件が、この文書を調べますと次々に出てくるのであります。そこでCICに対していろいろと贈りものをしたりする、これはこういうことがあるのでございましょうか。やはりこの捜査費出納簿に出ておりますが、そういうことをなさるのですか。たとえばこれは二十九年の十二月二十三日、まさにクリスマスのときですが、CICクリスマス・プレゼント九千五百七十八円と出ております。こういよことをずっと慣行としてCICなんかと警察とは各地でなさっておるのでしょうか、どうでしょうか。
  350. 柏村信雄

    ○柏村説明員 それはいつのことか、またどういう理由であったか私存じませんが、CICと連絡をとっておる点ももちろんあるだろうと思います。そういうことで、島根県においてその当時何か関係を持ってそういうものを出したのではないかと思いますが、とにかくあなたの方にそういう資料があって、私の方には全然ないのでありますから、いずれまたそういうものを見せていただいてよく検討したいと思います。
  351. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 委員長警察庁長官はあんなことを言っている。自分のところで作った資料が自分のところにないから見せてくれ、ちょっと恥ずかしいじゃないですか。しかもそういうものは今の捜査費から出していいものですか、どうですか、それを伺います。捜査費というのは、あなた方からいえば、犯人が悪いことをする、それを捜査するという費用でしょう。クリスマス・プレゼントと捜査費とはいかなる関係があるのか、それを一つ言って下さい。
  352. 柏村信雄

    ○柏村説明員 その点はお話しの通りで、もし出す必要があるとすれば交際費で出すべきで、捜査費で出すべきでないと思います。
  353. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これは昨日の記者会見でも発表しましたが、捜査費出納簿に芸者の花代というのがあるのです。これは八束郡玉湯付場町の八勝園、これは温泉宿でしょう。そこでの芸者の花代というのがあります。芸者の花代と捜査費とはどういう関係がありますか、捜査費の中から出ております。
  354. 柏村信雄

    ○柏村説明員 芸者の花代は、捜査費で出すというべき筋のものではございません。
  355. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ちゃんとここに書いてあるのです。出すべきものでないのだが、出したと書いてあるのですよ、芸者の花代が。それを一体どうなさるおつもりですか。これは会計検査院が五、六年も行かないところの文書ですが、全国でこういうことをやった日には、一体警察費というものが今日全国で中央、地方を通じて幾らになるか、またそのうちの警備警察費がどれくらい――斎藤警部は六二・二%と言っておる。何百億円という金ですよ。それがこんなにめちゃくちゃに乱費されている。出すべきものではございませんで済みますか。どうなさるのですか、それを一つ言って下さい。
  356. 柏村信雄

    ○柏村説明員 よく調査をいたしまして、処置すべきものは処置いたします。
  357. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 じゃ最後に一つ。同じ捜査費から、公安調査庁長官藤井五一郎君が松江に来られたときに、みやげ代を捜査費の中から出しております。みやげ代と捜査費とはどういう関係がありますか、柏村さん。
  358. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほども申し上げましたものと理由は同じだと思います。
  359. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 みやげ代というものは、同じ役人の儀礼として、自分の俸給の中から、乏しくても出し合うというのなら、これは礼儀の正しいことで、私どもはそんなことでかれこれ言いません。小島法務大臣、帰ってくるはずだったが、約束通り帰ってきません。藤井長官に伺います。あなたも共産党に対しては悪いことをしているのだ。そうしてこんなみやげ代とっているのだ。どうです、今の内情を暴露してみて、そのみやげもらって、思い出して気持がいいですかどうですか。
  360. 藤井五一郎

    ○藤井説明員 お答えします。私は全然記憶がございません。
  361. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 記憶はないが、今私が言ったら、これは人間として思い出すべきだろう。もう一つあなた、公安調査庁のいろいろな帳簿を調べてごらんなさい。あなたは何年何月何日に山陰地方を視察に行ったとかなんとかということがある。何をみやげにもらったか、そこまでは書いてない。みやげ代千七百円と書いてある。私が言いたいことは、これほど今の警察というものは経理の面から見ても、その捜査のやり方から見ても腐り切っているのです。右翼に対しては、これは暗殺までやる危険な人物だから、虞犯人物だから、腹心の三人の人物をスパイにしてとっているから、日常の行動まで全部わかると言いながら、警察からこういうふうにその男に金を何回も何回も出している。こういうことだから今度の淺沼君の暗殺のようなことが起こるのです。一般論として私は申し上げるのじゃないのです。こういう具体的な例をもって申し上げるのです。もしもこういう腐敗がなかったら、もうちっとはましな警備が当日日比谷公会堂でできたかもしれません。警察はここまで腐っているのです。もうどうにもしようがないのです。池田さん、警察の現状はこういう通りになっております。あなたも憲法第六十五条にいわれる行政について内閣として責任をとられるわけですが、あなたはこういう警察に対してどういうふうになさるおつもりか、それを最後に伺いたいと思います。
  362. 池田勇人

    池田国務大臣 事実をよく調査いたしまして、誤りなきを期したいと思います。
  363. 山口六郎次

    山口委員長 坂本泰良君。
  364. 坂本泰良

    ○坂本委員 私は、時間がありませんから二点だけ総理にお聞きしたいと思います。その前に、本日資料が出ておりまするのは、政治資金規正法の十二条に基づく政党、協会その他の団体の収支に関する報告書の概要ですが、これは三十五年の一月一日から六月の三十日までです。その前に、先ほど確かめましたが、公式にここでお聞きしたいのは、三十四年の七月四日に十万円自民党本部から治安確立同志会というのに献金されておると思いますが、その点お伺いしたいと思います。
  365. 松村清之

    ○松村説明員 お答えいたします。その通りでございます。
  366. 坂本泰良

    ○坂本委員 治安対策じゃなく、治安確立ですか。
  367. 松村清之

    ○松村説明員 お答えいたします。治安確立同志会という名前になっております。
  368. 坂本泰良

    ○坂本委員 この治安確立同志会は、徳田球一氏を襲撃した古賀一郎氏が副会長であり、さらに淺沼委員長山口ニ矢に殺害をされまして、その後この治安確立同志会と同じところに山口ニ矢救援会本部、こういう看板がかかっておるわけでございます。従いまして献金は昨年の七月四日ですが、引き続いてこの治安確立同志会が暗躍をしまして、そうしてさらに今度の山口の救援会木部を作っておる。こういうことから考えますると、淺沼委員長を倒した山口の救援会本部、これに十万円も寄付しておるわけです。これは総理が総裁になられる前ですが、やはり自民党の有力な粋部であられたので、この点について総裁としての事務引き継ぎはあったと思うのですが、どういうふうにお考えですか、所見を承りたい。
  369. 池田勇人

    池田国務大臣 私は一切存じません。総裁としての事務引き継ぎにつきまして、経理のことは幹事長同士でやっておるわけであります。
  370. 坂本泰良

    ○坂本委員 先ほど公安調査庁ですか、警察庁ですか、右翼資金源の問題は最高幹部の独裁によっておる、こういうふうに言われておるのでありますが、このようにいわゆる右翼団体に自由民主党から寄付をする。こういうようなことを考えると、今度の淺沼委員長の殺害についても何かの関係があるのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。従って、先般アイク訪日に際して警察外に三万五千人の民間人の有志を動員した、こういうようなことが言われておるのでありますが、自由民主党においてはこれは九牛の一毛でございまして、やはり多年――多年と申しても数年間、こういうような右翼団体に寄付をして養って、そうしてアイクの訪日に際しては三万五千人も動員する。民間人を動員すると申しましても、普通の民間人は動員されるわけはないのであります。こういうような点からいたしまして、やはり自由民主党が右翼団体を養っておる、こういうふうに考えられますが、総理はいかがお考えですか。
  371. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそういう事例を一切知らないのでございます。
  372. 坂本泰良

    ○坂本委員 それでは、あなたの所属しておられる、また幹部であった自民党からこういう金が出ておるわけなんです。こういう資金源によって右翼団体が養われておる。そして今度の問題がそこにしわ寄せして出てきた。こういうふうに一般に考えられるわけですが、総理はいかがにお考えになりますか。
  373. 池田勇人

    池田国務大臣 自由民主党の幹部と申しましても、会計事務には一切タッチしておりません。従って幾らの金がどういう人に出ておるのか、いつ出たのか、何も知らないのでございますから、私の考えを申し上げるには材料があまりにもなさ過ぎるということを申し上げておるわけであります。
  374. 山口六郎次

    山口委員長 坂本委員に申し上げますが、時間がきておりますので、どうぞ結論を願います。
  375. 坂本泰良

    ○坂本委員 これは「新青年通信」というパンフレットに類似する一つの新聞、日刊か週刊かわかりませんが、これに出ておる事実でありますが、本年の四月、十五全大会の終了後に、この新青年協議会から機関紙の基金の賛助を自民党広報課に要請した。そこで三十五年の五月の十日に、これはS代議士と書いてありますからわかりませんが、S代議士より新青年協議会に電話があって、吉富委員長と高橋同志がS代儀士のところに行って、同日の午後九時ごろ十万円の賛助を受けて帰ったと報告した。ところが、実際は二十万であったらしい。それでその残りの十万円について刑事問題が起きまして、この新聞によりますと、新青年通信の中央本部における殺人未遂事件の真相というので出ているわけです。会資金の横領を追及され、吉富委員長ついに暴力をふるう、こういうふうに出ているわけですが、本年の五月にもこの新青年協議会というのに自民党からS代議士を通じて出ているということがうかがわれるのですが、この点はいかがですか。
  376. 池田勇人

    池田国務大臣 前にお答えした通りに私は何も存じないのでございます。前の幹事長時代にどういうふうなことがあったか知りません。しかし今度私が総裁になりましてから、そういうことは一切とめております。
  377. 坂本泰良

    ○坂本委員 これは三十五年の五月十日になっておりますが、自治庁の方には届出が出ておりますか。
  378. 松村清之

    ○松村説明員 お答えいたしますが、三十五年にはそういう事実を確認いたさないのでございますが、三十四年の六月十三日に十万円の届出があります。
  379. 坂本泰良

    ○坂本委員 その十万円の届出はやはり出ておりますが、あと十万円について刑事問題が起きておる。この点について検察庁では取り調べあるいは告訴その他が出ておりますか、どうですか。
  380. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいま東京地検について調査してみましたが、告訴、告発ともに受けておらないのであります。
  381. 坂本泰良

    ○坂本委員 これは新聞に出ておる記事でございますし、十万円は届け出が出ておる。こういうことからいたしますると、やはり自由民主党は十万円あるいは二十万円と出しておる事実がうかがわれる。時間がありませんから省略しますが、このように金が出ておるということは、一般に疑われておるように、やはり自由民主党といわゆる右翼団体とのつながりがすでに昨年、一昨年ごろからあったのである。しかもアイクの訪日その他については民間人として動員をされておる。こういう点から考えて、やはり淺沼委員長の殺害というのは今始まったものじゃない。やはりこういうような大政党の自由民主党自身がこういうふうにして右翼団体を養うから、あの三井三池の久保さんの事件も樺美智子さんの事件もやはり一連の関係があるのである、こういうふうに推測できるわけです。ですから淺沼委員長の死については、河上丈太郎社会党顧問の事件、岸首相事件、この二つと関連があるというふうにこの委員会では言われましたが、私はもっと幅広く、三井三池の闘争について現われた暴力事件も、今度の安保闘争におけるところの樺さんの死、その他文化人に対する暴力団の事件も、こういうような関係があるから、勇敢に彼らは民主団体あるいは文化人をなぐるとか、あるいは凶器をもって殺害するとか、こういう問題が起こると思うのです。従って今後このような問題は絶滅をしなければならぬ。その絶滅をする上において、この右翼団体に対する政治献金、これにはわずか十万、二十万でありますが、今後総理はこういうような問題について絶対関係を絶って、そうしてほんとうの民主政治の実現をやられるお考えがあるか、その御所見を承りたい。
  382. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来お話しの事実につきましては私は全然知りません。しかし私が総裁になってからの自民党といたしましては、そういう金は一切出さぬように指令をいたしております。
  383. 山口六郎次

    山口委員長 古井喜實君。
  384. 古井喜實

    ○古井委員 一つ二つの点について総理にお伺いをしたいと思うのであります。淺沼委員長があのような死を遂げられたことは、委員長個人に対してまことにお気の毒に思うわけでありますし、また社会党にもいろいろ御迷惑があったろうと思うのであります。同時にまた、ああいうことが起こった、日本は一体こういう国であるのだろうかという惑いを起こすわけであります。われわれは日本はとにかくここまできた、文化社会を持っておると思っております。文明社会を持っておると思っておる。それから進んだ民主主義の国だと思っておるわけであります。あのような事件日本で起こったのだ。いかにもわれわれが頭で思っております日本の国というものと、現実というものは距離があるような気がしてならぬのであります。これで一体文明社会だの、あるいは民主主義国だといわれるのだか、こういう疑問さえ起こってくるわけであります。事柄はきわめて重大だと思うわけであります。過去に対する問題としましてはいろいろこの委員会でも、また外部においても議論をされてきておりまして、ほとんど論じ尽くされたように思います。ただどうも二つばかりのことが残ったような気がしてならぬのであります。一つは事件の内容についてでありますけれども、各方面が背後関係というものを非常に問題にしておる。この背後関係をできるだけ早くはっきりしなければならぬと思います。そうして差しつかえない限り天下に明らかにしなければならぬと思うのであります。これはいろいろ疑惑がつきまとうのであります。過去の、たとえば岸前総理のあの難を受けられた場合、あるいは河上丈太郎さんの場合につきましても、背後関係が何だかうやむやに、あいまいになってしまったのではなかろうけれども、とにかくそのままになってしまった。これがつまり疑惑を呼ぶのであります。ことに世にいう右翼というものの関係でありますだけに、これはぜひ一つ今度ははっきりしてもらいたい。それもなるべく早くそうしてもらいたい。これは私がここで言うだけの、私一個の希望だとは思いません。それが一点であります。  それからいま一点は、警備にほんとうに手落ちがなかったのだろうかどうだろうかという点であります。これは責任問題を離れて将来のために、ほんとうにどうにもこうにもならなかったのか、やはりまずい点があったかということはよく検討をしてもらいたいと思うのであります。これはやはり正直にいって、みなどこか割り切れぬものが残ったような気がします。これはよく部内においても検討してもらいたいと思うのです。これは責任問題と関係ない問題としてであります。責任問題については、きょうもいろいろ議論がありましたけれども、私は、警備当局についてわれわれとしてここでかれこれくちばしをいれるべきものでないと思っておる。公安委員会制度というものを何のために設けておるか。一々われわれがくちばしをいれるということになったら、公安委員会制度がくずれてしまう。やはり警察というものの中立性を守っていく意味からいえば、一一の場合には多少疑問が残っても、やはり公安委員会というものの決定を尊重しなければならぬと私は思う。その意味において責任の問題をかれこれ言うのじゃないのであります。また政府政治責任、これをかれこれ言うのでもありません。法律的、制度的には政府には責任がないことは明白だと思う。政治的の責任が議論されますけれども、これはまずもって政府の判断に待つべきものである。それに対して国会は批判することはできましょう、最後には国民が批判することもできましょうけれども、まずもってこれは政府の判断に待つものでありますので、われわれが特にこれに対して、いや、どうもまずかったと、かれこれ言うほどのことはないと私は思う。責任問題は別であります。警備がまずかったか、手落ちがなかったかは、よく将来のために研究してもらいたいと思うのが第二点であります。  なお、きょうのいろいろの質問から感じたのでありますけれども、さっき志賀委員が、役所の書類のようなものをたくさん持って出て、いろいろな質問をしておりました。一体官庁の書類が部外の者の手に入る、これがあったとすれば、ちょっとおかしなことじゃないでしょうか。あれがほんとうのものだったら、役所はよほどどうかしていると私は思う。これは一問題だと思う。私はそんなことはなかろうと思う。そんなわけのものじゃなかろうと思うのです。まだ私には、あれが本物だというふうな気がしないのである。そんなことはあるはずがない。これはよく気をつけてもらわなければならぬ。また書類の中にかれこれ事務の整理、会計の記帳の問題など不備があるようなこともしきりに言っておりましたけれども、そういうこともよく気をつけてもらいたい。下らぬことを言われぬように警察も――私はないと思うから、よけいなことでありますけれども、この上とも気をつけてもらいたいということをつけ加えて希望を申しておくのであります。そこで、お尋ねしたいのは今後の問題に対してであります。さっきも申しましたようにやはり警備の問題をできるだけ工夫してもらいたい。改善の余地があれば改善を加えてもらいたい。現在の法律のもとではどうしても足らぬのだという点があるなら、それは法律の問題にしたらよかろう。足るのか足らぬのか、手が届かぬのか届くのか。警備の工夫、改善について、これはむろんよく考えてもらわなければならぬと思うのでありますが、さらに大事なことは、ああいうことが起こるということには深い根源があるように思えてならぬのであります。その根源をきわめて、これに対して対策をとっていかなければ、これから先もああいうことが起こるのじゃなかろうかという心配がどうも残るのであります。警備を万全にしてもらえばそれでいいのか、もっと根深いものがあって、それに対して策が講ぜられなければ警備だけでは及ばぬのじゃないかというような不安さえ残るわけであります。私は、その点について三つの事柄をあげて総理の御所見を伺いたいと思うのであります。私は、ああいうことが起こる根源の問題として、一つは今日の社会的風潮、一つは政治に対する不満、一つは国内対立の激化、この三つのことを思うのであります。今、社会全体の風潮を見まして、暴力はいけないんだ、法は守らなければならぬのだ、一体そういう観念が、むしろ極端にいえば徹底しておるでしょうか。至るところ、暴力を憎む、あるいは法を守らなければならぬという考えが薄いのではないかと私は思えてならぬ。これが一つの風潮のように思えてならぬのであります。こういう風潮のもとでは、暴力ざたも起こりかねないと思う。こういう風潮が起こるにはいろいろ原因があると思います。それは相済まぬけれどもマスコミなどにも考えてもらわなければならぬ点がある。テレビや映画にも考えてもらわなければならぬ点があると思う。教育にも考えてもらわなければならぬ点があると思います。そのほかにもっとあると思います。いろんなことが寄り合ってでしょうが、今日の風潮を改めなければ、なかなか根絶できないのではないだろうかという心配を持つのであります。これが第一点、社会的風潮であります。第二の点は、政治に対する不満、つまり政治政治家にまかしておけないというやるせない気持が国民の中に起こっておるんじゃないかという点であります。政治家にまかしておけないという、そういう不満が起こるのじゃなかろうかという点である。率直にいって、今日の議会政治の現状というものを見て、国民に不満がないでしょうか。過去の幾多の例を見まして、国民に不満がないでしょうか。私は大いに考えるべきものだと思う。また、今日の政治に対して、よいにせよ、悪いにせよ、選挙となれば巨億の金が要るんだ、どこから持ってくるんだ、こういうことも、金の政治なんていうことをにおわしておるのも、国民はあんまりいい感じを持たぬだろうと思います。つまり今日の政治に対して不満がだんだん高じておるんじゃないか、このことを考えてみないと、この問題にも答えなければ、ああいう不幸なことが起こりかねないのじゃなかろうか、こういう点が第二点。これはお互いの問題になってくると思います。いま一つの点は、国内の対立がだんだん激化してくるように思えるのであります。そうして一方が出れば片っ方が出る。こういうわけで対立がだんだん険しくなってくるような気がしておる。政治はどうだ。われわれの立場は、こういう対立をなるべく緩和し調整して、解消していく方向でなければならぬと思いますけれども、それならわれわれの政治が、この対立しておる国内に対して、そういう方向に動いておるのか、激化させておるというような半面がないだろうか、これは考えてみなければならぬ。背景にこういう大きな国内の対立というものがありますれば、これは何とか政治の面において努力して、この調節、そして一本にいくようなことを考えないと、右、左がだんだん出てきて、連鎖反応を起こしてくるということが起こるのじゃなかろうか。これはなかなか重大な根深い問題だと思うのであります。これに対してもわれわれ政治に立つ者に大きな責任があると思うのであります。私は、少なくともこの三つのことは根元の問題としてどうも横たわっておるように思えてならぬのであります。そういう点について総理はどういうふうな御認識をお持ちになるか、一つそれを聞かしていただきたいと思います。
  385. 池田勇人

    池田国務大臣 全く同感で、今の三つの点につきまして、われわれはよほど考えていかなければならぬと思います。政策の面で争うことは、これはもう当然なことでありまするが、これに対しましても、やはり争い方があくまで建設的な争い方でなければなりません。また政治に対しましても、不信のないように、われわれ政治家が第一に立って姿勢を正し、ほんとうに国民の信頼し得るような態度、考え方、行動でいかなければならないと思います。一そうしてまた一番初めの社会の今の情勢、雰囲気を、ああいうことの起こらないように各般の措置を講じていくべきだと思っております。
  386. 古井喜實

    ○古井委員 そこで総理にお尋ねいたしますが、そうすると、暴力を根絶するという対策、手段方法というものはなかなか面の広い、そしてまたよほど抜本的なものでなければならぬというふうに思う。暴力はいけないのだ、根絶するのだと一口に言ったら、それでなくなってしまうほどやさしいことではないと思うのです。やはりこれは本気で暴力を根絶やししたいという考えで粘り強くやっていかなければいかぬではないかと私は思うのであります。そういたしますと、この国会では、暴力排撃という考え方は、言い方は別にして、超党派というか、各党派に一致していると思います。だからこの国会における空気、考え方というものははっきりしていると思いますけれども、ここでまたわれわれがすぐさま選挙ともなり、一息切れてしまって、またそれでこの話はおしまいになった。そのあげくはもう一ぺんこういうことが起こるというのでは、全くもって困ったことだと思うのであります。そこで暴力を絶滅するために、それの対策を広い面にわたって突っ込んで考える。そうしてほんとうに成果をおさめるようにしますために、一つ外部の民間の人など、マスコミの人なども、みんな加わってもらい、国民総がかりで知恵を出すように考えることはできまいか。つまり本気でこの問題に取り組もうというならば、政府としては、一つ暴力対策の民間の各界の人を含めたような審議会でもお考えになって、そうしてほんとうに根気よく、また各方面にわたって対策を考えて成果を上げる、こういうことをされる必要があるのではないかと私は思う。一回の国会の論議でこれがおしまいになったというのでは、いかにもあきらめ切れない。そういうことを考慮されることが必要ではないかと私は思うのでありますけれども、総理はこの辺どうお考えになりましょうか、御所見を伺いたいと思うのであります。     〔山口法務委員長退席、西村地方行政委員長着席〕
  387. 池田勇人

    池田国務大臣 ごもっともな点もございますので、政府といたしましては十分考慮して参りたいと思います。
  388. 古井喜實

    ○古井委員 時間もだいぶおそくなりましたから、私はこれで質問をやめたいと思いますが、ぜひ一つただいまの問題は考えていただきたいと思う。お願いいたします。なおお願いついでに、右翼団体と自民党というものはとかく疑惑を起こしておりますから、党と、党でなくても党に属する個人と右翼団体との間に疑いを起こすような事実がありますと、党にかかわってくる。その辺は一つ党という立場のみならず、党に属する者全体に対して、総裁としてよくその辺の疑惑を一掃していくように統率をしていただきたいものだと思うのであります。これを希望いたしまして私の質問は終わりにいたしたいと思います。
  389. 西村英一

    ○西村委員長 これにて本連合審査会の議事はすべて終了いたしました。これにて散会いたします。午後七時五分散会