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1960-08-10 第35回国会 参議院 法務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年八月十日(水曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————   委員異動 本日委員江田三郎君及び千葉信辞任 につき、その補欠として坂本昭君及び 小柳勇君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松村 秀逸君    理事            大川 光三君            高田なほ子君            大谷 瑩潤君    委員            後藤 義隆君            大森 創造君            小柳  勇君            坂本  昭君            千葉  信君            赤松 常子君            市川 房枝君            辻  武壽君   国務大臣    法 務 大 臣 小島 徹三君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    警察庁警備局長 三輪 良雄君    法務省刑事局総    務課長     神谷 尚男君    法務省刑事局刑    事課長     河井信太郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (司法及び検察等基本方針に関す  る件)  (六・一五事件をめぐる人権問題に  関する件)   —————————————
  2. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日付をもって江田三郎辞任坂本昭君選任。以上であります。
  3. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  まず、小島法務大臣から、今後の基本方針についてお伺いいたしたいと思います。
  4. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 私は、先般はからずも法務大臣の重責をになうことになったのでありますが、私の検察灯政に関する方針と申しましても、簡単に一言で申し上げまするならば、あくまでも検察行政というものは至公至平でなければならない、厳正であるということが私は一番大事ではないか、かように思っているのでございまして、一党一派に偏するとか、そういうことの絶対にないように、私は今後検察行政をやっていきたいと思います。ただし、同時に注意しなければなりませんことは、ややもすると、ときどき検察ファッショという言葉が聞かれるのでございまして、そういうことがありましては、検察行政に対する国民の信頼を失うことになりますので、この点は厳に慎まなければならない、よほど警戒しなければならない、かように考えておる次第でございまして、先ほど申し上げました通り一言で申し上げまするならば、私は、あくまでも至公至平、同時に検察ファッショに対する疑いが毛頭起きないような方法をもって検察行政を行なっていきたい、かように考えている次第でございますので、何分皆さんの格別の御協力をお願い申し上げます。
  5. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 以上をもって小島法務大臣の今後の基本方針に対する御説明は終わりました。  御質疑のある方は御発言を願います。——別に御発言もなければ、本日の基本方針に対する質疑は、この程度にとどめたいと存じます。   —————————————
  6. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 次に六・一五事件をめぐる人権問題、特に樺美智子さんの死亡中心として調査を行ないます。政府当局としては法務省から小島法務大臣河井刑事課長鈴本人権擁護局長警察庁から三輪警備局長木村保安局長が出席されております。  まず政府当局から事件についての経過の大要を御説明願います。
  7. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 樺美智子さんの問題につきましては、事が非常に重大でございまするので、検察当局におきましても、慎重にこれが調査をいたしまして、ことに、御承知通りこの問題につきましては、検察庁自身が独自の考えで調査をいたしまするとともに、同時にまた総評弁護士団から、あるいはまた社会党不当弾圧対策委員会等から告訴告発も起きておりまするので、非常に慎重な態度をとりまして、六月十六日から今までかかって調査いたしたのでございまするが、その結果といたしましては、結局のところ、樺美智子さんの死というものは、胸部圧迫による窒息死に原因しておるものであるということに結論を得まして、そうして先般検事局としての意見発表いたした次第でございます。詳細にわたりましては、事務当局から詳しくこれを御説明申し上げまするが、そういういきさつをもちまして、総評弁護士団あるいは社会党不当弾圧対策委員会等から提出されました告訴告発並び検察庁独自の調査も、これを打ち切った次第でございます。
  8. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) ほかに御説明ございませんか。
  9. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 刑事課長でございます。樺美智子さんの死亡事件につきましては、本年六月十五日夜、警視庁から、国会デモに参加した女子学生一名が警察病院に収容され、死亡した旨の報告を、東京地方検察庁において受けましたので、直ちにこの事件捜査に着手いたしたのであります。その結果、被害者樺美智子さんであることが判明いたしましたので、被疑者不明の傷害致死事件として、検事を特命いたしまして、この捜査に当たらせるとともに、東京監察医務院医師死体の検案を求め、また事案の性質にかんがみまして、慶応義塾大学校医学教室死体解剖の上、死因等鑑定するように嘱託するとともに、この事件学生中心とするデモに端を発して発生いたしておりまする関係から、このデモ事件捜査いたすべき東京地検公安部以外の特捜部検事に特に本件捜査を命じた次第でございます。一方、総評弁護団から、警視総監以下現場出動警察官全員の共謀による樺美智子さんの殺害事件告発がなされ、社会党不当弾圧対策特別委員会からは、他の負傷者に対する職権乱用を含めた同趣旨の告発がなされましたのでこれらの事件をあわせて捜査に着手いたしたのであります。本件捜査経過は、現在まで主任検事以下検事延べ約四百三十五人、検察事務官延べ約六百十五人を動員いたしまして、参考人等合計二千百六十四人を取り調べますとともに、現場の検証、実況見聞等を行ない、極力事案真相を究明いたしました結果、樺美智子さんが当日東大文学部学生デモ隊に参加いたしまして、学生デモ隊の先頭から十数列目に位置し、学友とともにスクラムを組んで、午後七時ごろ南通用門から構内に侵入し、旧議員面会所右前付近の中庭に進出した際、警官隊に阻止され前かり後退してくる学生と後方から進出してきました学生集団の渦の中に巻き込まれ、スクラムが解けてささえを失い、人波にもまれて後退するうち、デモ隊の人のなだれの下敷となって、躯幹部、ことに胸部圧迫せられ窒息死亡した事実が認められたのであります。なお、同女の転倒した位置は、旧議員面会所東北角付近から植え込み地帯に及ぶ地点であると認められ、その時間はおおむね午後七時十分ころと判断されたのであります。以上の事実によりまして、樺美智子さんは警官隊接触する地点にいなかったことが明らかであり、学生の渦の中において人の流れにより下敷となり、胸部圧迫により窒息死亡したものと認められたのであります。一方、慶応義塾大学校医学教室中舘久平、同中山浄両氏鑑定によりますれば、「本屍の死因窒息死であり、その窒息死胸腹部圧迫によって惹き起されたものと推定される。」としておるのであります。この鑑定に基づきまして、再鑑定を委嘱いたしました東京学校医学教室上野正吉氏の鑑定結果によりますれば、「死因腿幹部、特に胸部圧迫による窒息」によるものであるとされたのであります。もっとも、中舘中山鑑定人は、「本屍の頸部扼痕存在が認められるので、頸部圧迫によって窒息を惹き起したことは推定できるが、扼痕程度から判断して、窒息死を招来したとは考え難い」とされ、頸部扼痕存在を認めておるが、この創傷に関する鑑定書の記述において、四個の頸部内景に存する出血中一個については、指圧によって生じたものであり、それが扼痕であることは、本出血部外方に位する右側皮膚扼痕反応が弱陽性の成績を示しておることから明瞭であるとされておるのに対し、上野鑑定人は全くこれを否定されまして、頸部内景に対する四個の創傷及び頸部外景に存する一個の創傷もまた窒息の一徴候として発現したものであるというふうにされ、その根拠については、過去において胸部圧迫による窒息死解剖事例を引用して詳細な検討を加えられておるのであります。以上の各証拠を総合いたしますれば、本件告発事実のごとく警察官による暴行陵虐行為により窒息死に至ったと認むる根拠は全くなく、犯罪嫌疑がないことが明白となりましたので、去る八月六日、右検事認知にかかる被疑者不明の傷害致死事件及び総評弁護団告発にかかる事件につきましては、犯罪嫌疑なしとして不起訴処分に付した次第であります。
  10. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 御質疑のある方は御発言を願います。
  11. 坂本昭

    坂本昭君 暑いおりから特に委員長からお許しをいただきまして、樺美智子事件の不起訴処分をめぐりまして、主として次の三つの点について伺いたいと思います。  その第一は、新聞発表されました文書、この文書に盛られている状況についての説明であります。第二点は特に死因についての説明であります。第三点は、今回特に問題になっております鑑定書の公表など、法医学の諸問題であります。  この三つの点について、いろいろとお伺いいたしたいのですが、まずお伺いしたいのは、八月の六日、地検から新聞発表されましたあの印刷物、これはだれの責任で作られたものか。だれの責任でまた発表されたものか、そうして、これは十分もちろん責任を持たれる資料であると思いますが、一応その点を伺っておきたいと思います。
  12. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 竹内刑事局長が八月四日に出発いたしまして、約二カ月の予定で国連主催犯罪防止等国際会議ほか二つの会議に出席するためヨーロッパに海外出張しておりまして、その間、総務課長であります私が刑事局長事務代理を命ぜられております。きわめて不行き届きでございますが、何とぞよろしくお願いいたします。
  13. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) ただいまお話がありましたように、刑事局長欧米出張中でございますので、事務代理総務課長刑事局長代理として発言させて差しつかえございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) ではどうぞ。
  15. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) ただいまのお尋ねに対してお答え申し上げます。  八月六日に発表されました文書は、東京地方検察庁検事正責任におきまして、東京地方検察庁検事正発表されたものでございます。
  16. 坂本昭

    坂本昭君 それでは委員各位の皆様のところには、一応私が新聞記者から貸与されましたその資料を印刷をしたものをお手元に差し上げてありますから、質問の都合上、この今の印刷物中心として順を追って質問をしていきたい、そう存じておりますからどうかそのおつもりでこれを見ていただきたいと存じます。  なお、やや細部にわたる点の御質問もありますし、特に八月六日、新聞記者団発表されたとき、記者団からも若干質問があったようであります。しかし、それに対する御答弁は、新聞記者の話によりましても、はなはだ簡潔過ぎるというようなことでありましたので、私はそういう点も含めまして、こまかい点についても若干わたることを一つ御了承願いたい。  それで、もちろん十分な御答弁ができ得ない場合でしたら、即答しかねるものは、後日文書として一つまた御回答いただきたい。そういうふうに御了承いただきたいと思います。
  17. 高田なほ子

    高田なほ子君 その前にちょっと聞きたいことがありますけれども、これの内容は、東京地検検事正責任をもって発表したものだと、こういう御答弁をいただきましたが、検事正名前と、それからもう一つ、この資料はあれですか、警察庁のだれか官房総務課長名前か何かで出されたような文書もあるようですが、だれの名前で出されているものか、検事正名前はだれなのか、もうちょっと……。
  18. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 東京地方検察庁検事正野村佐太男名前で出されたものであります。この文書につきまして警察庁発表に関与したという事実はないはずでございます。
  19. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは警察庁の方からは何も本問題に関する特別な文書というものは出ていませんか。
  20. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) この八月六日当時においては警察庁から出たということは承知いたしておりません。
  21. 高田なほ子

    高田なほ子君 八月六日以後に本問題に関する警察庁から何か文書が出ておりませんか。全然出されておりませんか。
  22. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 樺美智子さんのこの解剖所見並びにただいまお話発表について、警察庁から発表いたした事実はございません。
  23. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると今、河井刑事課長説明されたのは、東京地検野村佐太男検事正がものされた文審に基づいて説明されたわけですか今の説明は。
  24. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) この事件につきましては、事件発生後、必要に応じて東京地方検察庁から最高検察庁に順序を経て報告があり、最高検察庁から法務大臣あてにそれぞれ報告がございました。それを事務当局で取りまとめたものをただいま御報告申し上げた次第でございます。
  25. 大川光三

    大川光三君 ちょっと関連して伺いますが、各種のこの鑑定はどの方面から御依頼になったのでしょうか。
  26. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) この事件について捜査を担当している東京地方検察庁検察官から鑑定を嘱託したものでございます。
  27. 坂本昭

    坂本昭君 第一番目にお伺いしたい点は、お手元のプリントの一ページの終わりから五行目になりますが、「現場証人確認の困難、出頭示達学生の不出頭総評弁護団等告発人側証拠資料提出遅延等のため困難を極めた。」ということが書いてあります。で、困難をきわめたことの理由でございますが、なぜたとえば現場証人確認の困難を来たしたか、学生の不出頭等を来たしたか、その点の理由がどうであったかを一つ伺いたい。
  28. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) この事件捜査において最も困難いたしましたとわれわれが聞いております点は、現場において被害者樺美智子さんの行動を十分に見聞していた証人というのがなかなか発見できなかったということにあるのでございます。それで、検察庁といたしましては、告発をされました総評弁護団あるいは学生諸君の方にできるだけそういう証人を出してほしいということを要望する等のことによって、そういう証人の発見に努めたのであります。検察庁といたしましては、わかる限りの証人、たとえば警察官とか、そのほか消防団員とか、そういう者はできるだけ調べるように努めたのでありますけれども、さらにまだほかに現場状況を見聞している証人があるかないかということについて、八方手を尽くして参ったというのがその捜査の実情と聞いております。そういうわけでございまして、できるだけ的確な証拠を収集しまして事実の真相を明らかにしようと努めたわけでございますが、何といたしましても樺さんの行動を見聞している証人というのがはっきりつかめなかったということに帰するのでありまして、その点をさしておるものでございます。
  29. 坂本昭

    坂本昭君 しからばその困難はどういうふうにして解決されましたか。
  30. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 私ども承知いたしておりますところでは、検察庁から総評弁護団あるいは社会党不当弾圧対策特別委員会等の諸機関に対しまして、できるだけ証人あるいはその他の証拠を出していただきたいということを申し出るごとによりまして、できるだけ的確な証拠の収集に努めたと、こういうふうに聞いております。
  31. 坂本昭

    坂本昭君 この際、大臣にお伺いしたいのですが、なぜこういうふうに困難をきわめたかということは、実は非常に明確なのです。それは六・一五のあの事件騒乱罪適用を受ける、また逮捕される、そういうことを学生諸君は非常に憂えたわけです。非常におそれたわけです。それで的確なる証人が実はおりながら、なかなか出てこないのです。私は、実はけがをした学生諸君の救援に当たっていましたから、比較的よく実態を知っている。私の方でお金のしりぬぐいをやっているのですから、当然私の方には何もかも言わなければならない立場にありながら、なおかつ学生はびくびくして来ない。いわんや地検が言ってくれ言ってくれと言っても、うっかり証人として出たら逮捕されてしまう、そういうことをおそれておるというのが一番大きな理由なのです。ですから、こういうことを御承知にならないで、困難だ困難だと言っている。むしろ今度の処置は、最後の不起訴処分は、もうついに地検としては手をあげてしまった、あきらめてしまった、もうどうもしようがない、現場を見た者もないし、首を押えた者もないし、同時に、これはいくら待っても出て来ないし、しょうがない、首を押えた者はないだろうということで、非常に処置を急いだのではないだろうかと、私は非常にそれをおそれるのです。むしろ騒乱罪適用を原則としてはしないということを六月の終わりに発表せられましたが、私はあの内容につきまして、この際、大臣から一つ明確に御答弁をしていただいて、なおかつ私はこうした問題はこれからでもまだ解決の余地はある。とにかく数千の学生が入って、その数千のうち皆さん取り調べになられた学生も数百人あります。一人々々やっていけば必ず出てくるのです。だから私はそういう態度で臨んでいただきたい、そういう気持のものから、この際、六・一五の騒乱罪適用の問題について、大臣からとくと御説明を伺っておきたいと思います。
  32. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 私のところに参りました報告によりますと、その発表当時の段階においては騒擾罪にするにはまだ十分ではない、こういうことでございまして、騒擾罪にしないという最終的な決定をしたわけではないと私は了解いたしております。  それから証人の件でございまするが、この点につきましては、先ほども事務当局から説明いたしましたように、いろいろな点を詳しく調べまして、鑑定書が出た以後におきましても、鑑定書は先ほど申し上げました通り胸部圧迫による窒息死だといわれておりますけれども、さらにその上に、現場事情、傍証と申しまするか、警官がその接触地点になかったというような点につきましても十分なる調査をいたしました結果、この不起訴処分になったものだと私は了解いたしております。
  33. 坂本昭

    坂本昭君 それでは次に、これは大臣に伺っても御承知ないと思いますが、実は今のように非常に事情が判明しない、実は地検担当検事の方も非常に心配しておられました。で、私たちも相談を受けたし、私たちもこの点を心配しまして、実は七月の終わりごろに弁護団地検との、何と申しますか、懇談を通じて、何とか学生協力さしていく、そのかわり何もやたらに出てきた学生国会構内に入っておったという事実をもって何もかも住居侵入罪で引っぱっていくとか、そういうようなことはしないという一つの了解のもとに、学生協力が始まったのです。実は始まったその週の終わりに、当局は不起訴処分を決定してしまった。この今の学生協力ということは、今犯人を探すのにちようど何といいますか、全国指名手配をやって写真を出しておりますね、ああいうような意味で、私はやはり必要なことではないかと思うのです。今大臣騒乱罪適用については、まだしないときめたものではないと言っておられますが、地検の今のような弁護団との一つの話し合わせといったもの、そういったものは、もう一切不起訴処分になってしまったから、もう今後は何も考えない、あるいは学生が何か意見を言ってきた場合に、そういった場合にもう意見は一切聞かないということで終始せられるものか、この際、ちょっと伺っておきたいのです。
  34. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) この事件につきましては、御承知のように総評弁護団あるいは社会党特別委員会等の方で告発にもなっておる事件でございますので、そういう関係で、当然ある時期には証拠を出していただけるものと、検察庁では期待しておったようでございます。そういたしまして、できるだけ証拠提出をお願い申し上げたと思うのでございますが、そういうふうにいたしまして、捜査に着手しましてから五十数日間経過したわけなんでございます。そういうふうに相当時日をかけまして、証人出頭などを待ってずっと参ったのでありまして、それら出てきました証人の証言その他の証拠あるいは鑑定の結果等を総合いたしました結果、今までの証拠では、かような警察官による暴行凌虐といった事実が認められないということで、結局不起訴処分に付したというように私たち聞いておるのであります。ただ、一たん不起訴にした以上、もう捜査は全然やり直しをしないというものでは決してございません。従いまして、今後におきまして、もし的確な証拠でもございましたらば、また検察庁の方にお申し出いただけば、検察庁の方でしかるべく方途を講ずるものと信じております。
  35. 坂本昭

    坂本昭君 次に、資料の二ページの最初のところになりますが、救護活動に従事した警視庁職員三十六人というのがあがっております。ちょっと伺っておきますが、その中に医者はいたのか、だれという医師がおったか、服装は白衣を着ておったか、平服であったか。また看護婦はおったか、だれという人か、また服装はどうであったか、おわかりになりますか。
  36. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) その点はつまびらかにいたしておりませんので、後ほど調べたいと思います。
  37. 坂本昭

    坂本昭君 なお、南門付近国会構内救急車活動状況、当時数台の救急車が配置されています。これはほんとうの救急車ではなくて、いわゆる消防庁救急車ではなくて、警視庁が使っている救急車でありますが、その配置、それから治療患者数、どういう患者さんを治療したか、何人くらいしたか、これもおわかりにならなければあとで出していただいてけっこうでございます。  それからもう一つ担架使用担架を何回使っておるか、どういう患者をどこに輸送するために使っているか、おわかりになりますか。
  38. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 警視庁の当日使いました救護班についてのお尋ねでございますので、便宜私どものわかつておることをお答えいたします。当日警視庁の車は五台ございましたが、常時そういうことに使っております車が二台、レントゲン車が一台、小型輸送車が二台、当日医師五名を含みます警視庁職員五十七名で五個班の救護班を作ったわけでございます。一個班と申しますのは、医師一名、看護婦二名でございます。その氏名はただいまわかっておりません。それから、全体の責任者は、厚生課長柿内正憲警視でございます。それから当日救護班で扱いました負傷者数でございますが、学生が二百七十九名、警察官が三百二十九名でございます。そのうち現場手当のみでは不十分と認められまして、学生四十六名、警察官八十名、これは消防庁救急車によりまして、警察病院等に収容いたしたわけであります。
  39. 坂本昭

    坂本昭君 それでは、一番最後に申し上げた、今の担架使用の回数とか、特に南門付近構内における、救急活動、これは柿内厚生課長から具体的に一つ文書として御説明、御答弁をいただきたいと思います。  では次に、同じく四行目に、警備出動警察官千七百十一名とあります。つまり警備出動警官を千七百十一名取り調べられたということですが、特に女子学生との接触の点についてどういうふうな取り調べをしておられるか。私の調査では、七百四十一名の負傷者中、病歴だとか氏名の明確な者、現在四百七十七名までかなり正確な病歴を作っております。その四百七十七名のうち五十一名、つまり一割以上、一割以上が女子であります。またその女子の場合非常に重傷が多いのであります。で、どのような調査皆さんの方でしておられるのか、特に女子学生についての調査内容を伺いたいのですが、まず内容的に申しますと、女子学生にさわったといいますか、さわった者は一千七百十一名の中に一人もいなかったのかどうか。さわったといってもなでるようなさわり方じゃなくて、警棒でたたくということになりますけれども、警棒で女子学生をたたいた人は一人もいなかったか、あるいは警棒でついた、上腹部をついた者は一人もいなかったか、あるいは女子学生の首に手を当てた、あるいは首を絞めるということをした者はいなかったか、それらのことについて、どうせこの一千七百十一名の、特に女子学生との接触について取り調べられたと思いますから、その内容を明らかにしていただきたい。
  40. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) そういう詳細な点につきましては、今存じておりませんから、いずれまた取り調べの上で御返事申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げました通りに、樺美智子さんの死亡と申しますか、救助された当時におきましては、警察官接触地帯にいなかったということが先ほどの事務当局での説明でございまして、従って、その当時において女子接触したこともなかったのだろうと私は想像しております。その後のことは私まだわかりません。
  41. 坂本昭

    坂本昭君 重大なことを言われて……警察官女子一つ接触しておらぬだろうと言われますけれども、あとで写真をお見せしますけれども、ずいぶん、幾らでも接触しておりますよ。なかなか念の入った接触の仕方をしておりますし、五十名は相当な重傷を負って頭蓋の脳内出血の疑いのある人もおります。私がなぜこういうことを聞くかといいますと、あのとき樺さんという名前を知ったのは十二時を過ぎているから、お互いにだれも名前もわからないでごたごたやっているわけです。だからそれは何か間違って警官の中には手を出した人もあるかもしれません。だれかずっと、皆さんの言われるように、はずれのところだったかもしれない。なるほどあそこは距離的に離れておるかもしれないが、もとをただせばだれかがさわったりたたいたりしたかもしれない。そういうことで、千七百十一名を調べるときに、漫然と、お前は何をしていたかと調べるのはけしからぬ。女子学生とはどういうふうに接触してお前はどうだったかと、一人々々調べられて、さわっておらぬというならさわっておらぬでよろしい。これは非常に大事なことで、特に警察庁では学生を調べている、それから警官を調べている。それは正義も法律も万人に対して平等でなければならぬと思う。これは法務大臣はそういう信念はおありだと思うのですが、たとえ大臣であろうとも悪いことをしたときは罰せられなければならない。指揮権発動なんかちょいちょいやられるようですが、大臣でも悪いことをしたときは悪い。学生であろうと、警官であろうと、ぐれん隊であろうとも、悪いことをしたときは悪い、いいことをした場合はいい。だから私ははっきりとしておきたい。私は何も警官に恨みがあるものじゃありません。私の友だちにも警官の友人がおります。私の選挙のときは私を支持してくれる警官もおりますから、私は警官を個人的にとっちめてやろうというのじゃありません。しかし、正義を立てていくためには、やはり強引に調べなければならない。だから私は千七百十一名についてどういう内容のことを取り調べをしていられるか明らかにしていただきたい。私は今三点申し上げましたから、ぜひこの点については、後日文事で一つ出してもらいたい。  念のために申し上げておきますが、この写真でもちょっと出した通り、非常にたくさん女子学生は負傷しております。それからまた警棒をこういうふうに使用しているのはテレビにも写っております。ですから、私がこうやっているときにあやまってだれか女子学生に当たったというような人もおられるかもしれない。だったからといって、私の方でこれを厳罰にしようというのじゃありませんので、そういうふうに一つよく詳しく調べていただきたい。  特にこれは警察庁お尋ねしますが、こういうふうにやるような訓練というのは、何か課目の中に入っているのですか。これは今度聞きますと非常にたくさんあるのです。ずいぶんやられている学生がある。これはこの関係の報道班の者でもやられて、三日間声が出ないという人がある。何かこういう特殊な訓練というか、課目があるのでございますか。
  42. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 警察官は現在柔道、剣道のいずれかを正課としてやらなければなりませんので、その中の、柔道の絞めわざというのがありますが、そういう具体的な活動で首を絞めるという訓練をしているということはございません。
  43. 坂本昭

    坂本昭君 この際、法務大臣に特に一つ説明を申し上げておきたいと思いますが、実はきょう私は、これは時間がありませんから簡単に申し上げますが、六・一五の事件のときに、非常に負傷者がたくさん出ている。私は大体一千名以上、正確にいうと今のところ七百四十一名の患者を、四百七十七名まではこまかく調べております。氏名あるいは偽名のダブらないように、非常にこれは苦心の要るところで、いずれこれはでき上がりましたら、私は、検察当局にも有田検事等ともお約束しておりますから、御報告申し上げようと思っています。それを見て感じたことは、警官行動を、これを通じてよく知っていただきたいと思います。今後のいろいろな教育や訓練のために。それは負傷は頭やら肩やら腕やら幾つもありますが、その中で一番重いものを取りまして詳しく調べたところの三百九十二名、これは後頭部が七十四、前頭部、ここが十八、側頭部十七、頭頂部四十五、そのほか病歴を見てもはっきりしないのが三十四ある。合計は百八十八ですが、これを見まして、ずば抜けて多いのは後頭部です。後頭部がパーセントでいうと四割です。これは、つまり逃げているのをうしろからやったと思います。幾らやったって前に向かっているのは……。うしろからやるということは逃げているのをうしろからやっている。非常に多いんです。後頭部が四割もあります。これは本州事件のときも第四機動隊が警棒を振り上げたときに、やはり後頭部が非常に多いのです。どうも、何といいますか、訓練といいますか、教育が、その後あまりはかばかしく進んでいない印象を受けます。ことに裂傷です。あれでやりますと、ぱっと口が開きます。その裂傷を針で縫うわけですが、三針以上縫ったのが五割です。非常に大きいけがなんですよ。ちょっとなでたとかというのじゃなくて、思い切ってばんとやったという非常に大きなけが、三針以上が五割です。  さらに特殊な例を申し上げますと、肋骨骨折、これは明確な肋骨骨折、これが二例。下肢の骨折が一例。上肢の骨折が四例。この中には、たとえば頭をたたかれて、助けてくれと言って両手で頭をおおう。すると、その上からぽんとたたかれる。そのため、手の指が骨折する——中指骨骨折です。こういうのがはっきりあります。それからなお、骨盤骨折が一例であって、まだ入院しております。これは女子学生です。ただし、これは皆さんが指摘された樺さんの人なだれの場所とはだいぶ違いまして、南門の外のところで、門柱をひっくり返した。それでけつまずいて、その上にたくさん乗っかって骨折を起こしているのがあります。  そのほか、今度非常に特殊なのは、催涙弾による火傷であります。催涙弾というものを涙を出すのが目的だと思ったら、そうではない。あれでやけどをさすのが目的のような使用をしているのがたくさんあります。火傷が三例。そのうち、ひどいのが鼓膜の欠損です。つまり人の中にはうり込んで、ばんとやったから鼓膜が破れてしまったのです。これは催涙弾でなくて、鼓膜破裂弾ですね。ずいぶんひどいのがあるということですね。  さらに、これは一つ市川先生お許し願いたいのですけれども、陰嚢の打撲——睾丸の打撲ですが、二例以上あります。これはずっと見ておりますと、鼠径部あたりをけられたというのがだいぶあります。この鼠径部は陰嚢の中に入れませんでした。どうもこれはねらっていたのかもしれませんが、はっきりと睾丸をけられたというのが二例以上あります。  それから今度は非常にたくさんの死人が出たと言われたのは、脳内出血の疑いが多いということです。私の見たところでは脳内出血の疑いが八例。そのうち、私自身の見た十六日朝、危篤状態、昏酔状態で、きょう死ぬか生きるかわからないというのが三例ありました。さらに、現在、東大で脳波の検査をやっておりますが、まだ変化が残っております。せっかくのノーベル賞をもらう天才になる学生が頭が悪くなるということが起こるかもしれないということで、非常に心配しております。それから最も心配しているのは、右の眼球の摘出をやったのが一例あります。これは明らかに警官の側の投石によるものであります。そういうのが一人おります。  それからこれを原因別に、はっきりと原因のわかった者、二百五十二名を調べますと、警棒でたたかれたのが百五十六名、ちょうど六一%——六割をこえております。それから今度気がついたのは、踏んだり、けったり、なぐったりという、何というのですか、私ども警官暴行という言葉を使っておりますが、一つぽんとやるのじゃなくて、踏んだり、けったり、なぐったり、たたいたり、あらゆることをやるのが十九例あります。それから今の右の眼球を摘出した、これは一番ひどいのですが、投石による負傷が九例あります。  大臣、おそらく就任以来初めてお聞きになると思いますが、このような事実についてお聞きになっておられたか、全然お知りになっておられないか。私の今の説明に対してどういうふうにお考えになるか。これは、きょう私はさらにほかのことをお尋ねしますから、ごく簡単に大臣の御所感だけ伺っておきたいと思います。
  44. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 何ぶん大混乱の際でございますからして、具体的にだれがどうしたとかこうしたということは、私からはっきり申し上げることはできませんし、今までのところでは、そういう話について詳しい報告は受けておりません。
  45. 大川光三

    大川光三君 ただいま坂本先生から傷害の各態様についての御説明を伺ったのでありますが、このうちで、首に扼痕のある傷害者というものはあったのでございましょうか。その点についてお尋ねいたします。
  46. 坂本昭

    坂本昭君 扼痕といいますといわゆる拒行為ですね、首を絞め殺す行為、その行為を組織学的に顕微鏡学的に調べまして、扼痕反能というもので、上から押しますと筋肉の線が切れるわけであります。従ってその切れているものは、たとえばこの奥底に筋肉の出血がある。そうすると皮膚の上に扼痕反能があれば、それは中でひとりでに出た出血でなくて、外から押されて出た出血つまり扼痕反能陽性というように言うのです。今の外傷の場合とは、つまり全然別問題でございまして、いわば法医学の窒息死の判定のときに使われる何といいますか、特殊な反能の基準として一つ扼痕反能、あるいは扼痕という言葉があるので、普通の生きている人について扼痕云々ということは普通使いません。   —————————————
  47. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日付、千葉信辞任小柳勇君選任。  以上であります。   —————————————
  48. 小柳勇

    小柳勇君 ただいま大臣答弁を聞きまして、私は、坂本委員質問途中でありますから意見は差し控えますけれども、あれだけに痛ましい例を言って、大臣、具体的にお知りかどうか、これを聞いてどういうふうにお感じになるかという第二点の問題については、大臣意見を出されませんでした。少なくともこの委員会で、国民の前に実情が発表される委員会の発言として、まことに淡々として語られますが、あの痛ましい事件に対する大臣の御見解としては、まことに遺憾でありますから、もう一度大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  49. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 御承知通り、これらの問題につきましては現在調査中でございまして、まだ詳しい報告を受けておりませんが、事実そういうことがあるとすれば、まことに遺憾にたえない次第でございます。
  50. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣、今、遺憾にたえないという御答弁をいただいたのですが、私はまだそれでも不満なんです。少なくとも人権尊重というのは検察行政をつかさどられる大臣としての最高至上命令だというふうに私思います。そうだとするならば、今、坂本委員が、この事件が発生以来一日の休みもなく昼夜を分かたず現場を朝から夜まで、それこそすがりつくようにして調査されたいろいろな問題が発表されたわけです。ですからこの資料は、単に社会党の議員が出したというのでなくて、人権がいかにじゅうりんされているか、こういうような私は一つの人権問題として、大臣は肝に銘ぜられるべきであって、これはもう当然さらに調査をせられまして、本問題に対して万遺憾なきを期したい——遺憾であるというだけではなくて、遺憾なきを期したい、こういうような御答弁を私はほしかったのです。少なくとも近代社会で、人の上に法律があるのでなく、法律の上に人があるというこの建前を忘れないでいただきたい。遺憾であるというようなことではなくて、遺憾なきを期したい、こういう御答弁はいただけませんか。
  51. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 実は私の言葉が足りなかったかもしれませんが、いずれ坂本先生からもこういう資料につきましては、検察庁の方にも多分御提出願えることになるのだろうと思いますが、そういうことを調べました結果、もし万一そういう事実があるといたしまするならば、それに対してはそれ相当の措置をする。もちろん私は非常に遺憾千万でございますし、そういう点につきましては今後も十分留意してそういうことを再び繰り返さないようにしなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  52. 高田なほ子

    高田なほ子君 しつこいようですけれども、それ相当の措置ということになりますと、かなり具体的になることと思います。ここで的確に大臣の御答弁をわずらわすということは無理かもしれませんけれども、少なくとも警棒の使用等については、頭部を殴打しないというような、こういう限界ぐらいはこれははっきりしているわけです、警視庁では、当時警棒の使用については非常に注意したというような説明も私は間接に聞いておりますけれども、うしろから、逃げる者を追って裂傷を負わせた、頭の頂点をなぐって裂傷を負わせたというような警棒の使用等については、その規定の範疇を越えるような場面が、今、坂本さんの発言ではっきりしているわけなんです。こういうような具体的な問題が出ているわけなんですから、これらの言うところの職権乱用等については、どういう御態度で今後臨まれるのか、こういう点についても、もう少し具体的に御答弁願いたいと思います。
  53. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 先ほど申し上げました通り、そういうことにつきましては、現在でも検察庁におきましては慎重に取り調べ中でございまするし、いずれまた坂本先生からもそういう資料の提供をしていただきまして、事実そういう点がはっきりいたしましたならば、それに対しましては、私は相当の処置をとらなければならぬ——とるつもりでおります。また同時に、警棒の取り扱い等につきましては、公安委員長の方におきましてまた十分なる御処置をとられ、今後の対策も講じられると、かように考える次第でございます。
  54. 坂本昭

    坂本昭君 では、次に資料の三ページの七行目から八行目のところの問題。将棋倒し、人なだれ、これが幾たびか起ったというふうに書かれてありますが、それを一つ具体的に説明していただきたい。大体将棋倒しというのは、将棋のこまをばたばたと倒していくのですから、これは数人が倒れたと思うのです。こういうことで人が圧死するなどということは考えられません。また、人なだれというと、これはもっと数がふえてくると思うのです。では、この人なだれが一体どの場所で何時何分に起こって、そこで負傷者が何人でたか、そういう具体的な皆さん方は所見を持っておられるか、御説明いただきたい。
  55. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) この点につきまして、これ以上具体的に報告は受けておりません。
  56. 坂本昭

    坂本昭君 人なだれで死んだというのに、人なだれが具体的に報告がないと……。これはなんですか一体。
  57. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) ここでの説明は、その次に掲げられております混乱の幾つかの事例、それの説明として書かれておるのでありまして、具体的にはここにあげられておりますような事例があったということを説明しているものと了解いたしております。
  58. 坂本昭

    坂本昭君 大体南門から入る者と出ようとする者と、その中に混乱が起こるということは、これは当然考えられます。しかし、なだれといったら、大体落差があって、そして重力のあるものが、たとえば雪の場合だったら、傾斜面をだっと落ちてくるのがなだれなんです。人なだれといったら、何かたとえば今まで文献では、ロンドンの地下鉄で、戦時中に空襲で逃げようとして地下鉄の中に入った。そして、数百人が入ったところで一番下のおっかさんと子供がだっとひっくり返った。それにばたばたとひっくり返って全部で百七十三名死亡しているのです。これは今度の鑑定の中にも再々引用されてきている事例なんですが、これはたとえば二重橋事件のときもそうです。二重橋を中心として三十万の人がひしめいていて、外へ出ようとしたって、かきで出ることができない。そこで一人ひっくり返るというと、上へばたばたと重なってくる。つまり、そういう物理的な限界というものが引かれた所でなだれ、圧死ということが起こる。これは国会構内のあそこはどうかというと、平坦地ですよ。たとえば、あそこへ行ってごらんなさい。今皆さんの指摘された場所は、南門から入ったすぐ左側の所で、ちょっと上がっている。特にたくさん泥がついたというあたりは、ちょっと上がっていまして、何といいますか、なだれの所は下へだだだっといっておるから、少し傾斜地の低い所なんです。ともかく、ちょっと盛り上がったような所になだれがいくということは、ちょっと私は解しかねる。従って、そういう点をはっきりしておかないというと、これは言葉はいいのです、人なだれ、人なだれと言うけれども、一体どこにあったかということ、少なくとも、皆さんも、これはこの説明を見ますと、四行目には、「一齊に構内に突入、約五〇〇人が一団となって」と書いてあります。そこで、言いかえれば、五百人の学生が中へ入ったと見られる。それからまた、この図面を見ますと、なだれのある所が五カ所あります。そうすると、五百人が一カ所でなだれになったのじゃなくて、五カ所に分散しているということは、一カ所については比較的数が少なくなってくる。私も、これは負傷した学生を通じて、今の将棋倒しの場所だとか、人なだれの現場というものはかなりこまかく知っているつもりですが、皆さんの方でここの(1)からずっと(9)まであげているのを見ましても、たとえば、一番最初に胸部を押されて目が見えなくなった、これは一体、失明したのだか、失神したのだか、あるいは、押されているときに頭を叩かれて、それで脳震湯盪を起こしたのだか、そういうこは、この学生A君だけじゃありません、ずっとあとの方の学生I君、J君あたり、これだけ読んでいたのでは、なぜ失神したのか、ひょっとしたら警棒で頭を叩かれて失神しているかもしれない、そういう点は非常にあいまいなんですね。だから、これは、今総務課長は、聞いておりませんからと言うから、よほど直接自信がないようですから、一つ、もっと具体的に、何時何分にどこそこからどこそこにわたって何十人倒れた、その場合には、一番下に樺美智子さんがここで圧死を遂げて、そのそばには、すりむいた患者が何人、手を折った患者が一人とか、そういうはっきりしたものを資料として出して下さい。そうしなければ、ただこれだけ読んだのじゃ、どこで倒れたのだか、さっぱりわからない。いかがでしょうか。今、御答弁できなければ、一つ文書として出していただきたい。お約束できますか。
  59. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 東京地検におきまして捜査をいたしました結果、証拠に基づいて認定されました事実のうち、報告を受けております——時間的な関係及びデモ隊警官隊との位置等について報告を受けております点について、御説明申し上げます。  当日午後五時半から大体七時までの間におきましては、委員長のお席のうしろに掲げられております図面によって御説明申し上げますと、議事堂の南門の入口付近までの間に、総理官邸のあたりからあの道路一面に、約八千人程度の、学生中心とするデモ隊が集まった、そうして七時までの間、あの南門の内側に第四機動隊と滝野川中隊と警察官が内張りのいわゆる警備配置につきまして、その間、学生側から投石されて負傷した者、あるいは、竹ざお、旗ざお等で叩かれて負傷した警察官が合計で百七十七人ほど出、そのために午後七時ごろには、あの内張りの線で警備をすることが不可能になったということで、一たんこの警備している警察官は、旧議面の先ほどの7のトラックのありますうしろの方まで後退して、そこで、さらに侵入してくるデモ隊を阻止しようという態勢がしかれたということが、証拠によって明らかになっているのであります。大体七時五分ころになりますと、そこに示されております図面の、大体旧議面の玄関のもう少し左側の6、5という点線がありますが、あのもう少しうしろのあたりから半円形を描いて警察官の警備配置がとられ、これに対して南門から門扉を破り、これを押し倒し、あすこに並べてありますトラックを引き出し、火をつけて燃して、中にデモ隊が入って来た。そして警察官と相対して、旧議面の正面玄関のあの玄関と書いてありますあたりを423という数字のもう少し前進した位置にデモ隊が位置した、こういう状況であったというのであります。  そこで、大体七時六分ころになりまして、警察官側から「前へ」という号令がかかって警察官が警職法に基づくところの制止行為に移り、実力によるデモ隊の排除にかかった。そのときに樺美智子さんの位置は一体どのあたりにあったかということが本件捜査中心課題になるわけであります。証拠によって認定されたところでは、そのときに、そこの図面でありますと、旧議面の旧という字の書いてありますもう少し左側の所の前の位置というあたりにあったものと認定されるのであります。で、「前へ」の号令で警察官に実力によって排除された先頭部隊のデモ隊が後退する、うしろの方の南門の方から押されて来るデモ隊はどんどんと前進しようと思って前へ押して来る。そこで人のなだれが、旧議面のあのかどのあたりを中心として人のなだれが起こった、こういうふうに認定されるのであります。そうしてその結果、だんだんと後退して、そのなだれが移動して、旧議面の南門から入った所の右側のあの池のような図面が書いてありますが、あの下側の所、南門と旧議面の右側の間あたりにおいて人のなだれが最も激しく起こり、下敷きになる人が出て、その中には立ったままで気絶するような人も起こった、こういうことが証拠によって認められる。樺さんはこの地点において人の下敷きになって人事不省に陥ったものというふうに認定され、その時刻はおおむね七時十分から七時十三分ころであるというふうになっておるのであります。  これが証拠によって認定された事実でございまして、それでは、一体どの地点で樺さんがどのようにして下敷きになり、だれがこれを救出したかということは、さきに御説明申し上げましたようなたくさんの証拠と、できるだけの写真その他による物的証拠、あるいは証人、参考人等を取り調べましたが、これを発見することができない状況で、傍証によって今のような事実を認定した。こういうことでございます。
  60. 坂本昭

    坂本昭君 それでは、このお手元にあります資料の四ページのあとから三行目に「学生N君の供述」というのがあります。それから五ページの六行目に「学生O君の供述」というのがあります。この学生N君並びにO君、これは本名は田中並びに石川と私は判断しますが、それでよろしゅうございますか。
  61. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) ここに掲げられてあります学生の具体的な氏名については、明らかにすることを御容赦願いたいと思います。
  62. 坂本昭

    坂本昭君 これは非常に重大な点だと思うんですが、現在捜査をしておって捜査のために非常に不都合であるというならばこれはともかくも、一応もう事件の処理は済んでいる。そうしてそれをさらに確認するために皆さんの方にはここにN君とか、O君とか出してある。これが一体正しいものかどうか。私どもの方ではこれは多分田中と石川とではないか、そうして伺っているのですから、それに対して当委員会でそれを拒否する理由はないと思います。どうしてもそれは答えられないというのですか。
  63. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) その点につきましては、刑事訴訟法上の建前といたしまして、捜査官が収集しました証拠、特に証拠書類等につきましては、公判開廷前にはこれは明らかにしてはならないという原則が示されているのであります。それは刑事裁判資料とする目的で捜査官が特に強い権限を与えられて証拠を収集することはできることになっているのでありますが、それを裁判以外の目的のために使用するということになりますと、いろいろ差しさわりも出て参りまして、それはよほどの理由がなければならないと考えられます。特に個人の名誉と秘密に関する事項にわたることも考えられますので、われわれとしましては、だれだれ君がどういう供述をしておったということを、具体的に名前をあげてするということは、御本人の立場もございますので、裁判以外の場所でこれを明らかにするということは、検察運営に種々支障を来たすことも考えられまして、これは私どもの立場としてしないことになっておりますので、その点、御了承願いたいと存じます。
  64. 坂本昭

    坂本昭君 ここに、たくさん名前があがってくる人たちは、私たちもある程度見当のつく人がたくさんいる。そうしてそれぞれ大事な証人であると私たちも思う。従って、皆さんとともに真実を明らかにするために私たちもできるだけ協力をしていきたいんだが、あなた方の方で名前を明らかにせぬということになれば、私の方ではあなたの作っているN君、O君、P君、Q君というのはみんなインチキだと言わざるを得ない、われわれは天下に向かってインチキだと。法務委員会においてもあなた方はこれを明らかにしない。しかも、もう捜査上に支障も何もない。むしろあなた方がすることによって、このN君やO君は、住居侵入罪皆さん訴えることができるかもしれない。そういう皆さんには利点はあるかもしれませんが、この事実を明らかにする上において、何ら私は妨げはないと思う。これはどうしてもあなたの方では明らかにされないということでございますか。
  65. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) その点でございますが、これは先ほど事務当局から説明申し上げました通り事情でございますので、従来ともそういたしておりませんから、これを御了承願いたいと思います。  なおそのほかにも、これに関連したまた事件が起きているわけでございまして、いろいろ差しつかえもございますので、その点は一つ御了承願いたいと思います。
  66. 坂本昭

    坂本昭君 これはしかし非常に重大なことになってきます。実はここにあがっている中で、また後ほど指摘いたしますから、またそこでもう一ぺんやりますが、あなた方の誤認があるかもしれない。間違った判断があるかもしれない。むしろ私はそういう非常なおそれというか、不安を抱かざるを得ない。だから特にこれが捜査上支障があるならば、それは私も何も言いませんが、何も支障のない範囲内においては、私は当然これは説明していただくべきだと思う。このN君、O君よりももっと大事な人があとで出てきますから……。その前に、先ほど河井課長からいろいろの説明がありましたが、ちょうど私の図面をお使いになっての説明がありましたので、この際、一つ委員長のお許しをいただきまして、今、課長も説明されましたが、私の写真による御説明委員の各位どうぞお聞きになっていただきたいと思います。  簡単に申していきますが、まずこれは、後ほども地検の書類の中で触れてくることですが、第一番目は、南門の入口の所で非常に放水が行なわれているところであります。この通りまっ正面からどんどん水をひっかけています。従って、放水のために門に入る前にびしょぬれになっているわけです。これは皆さんの方では樺さんがびしょぬれになって泥んこになっておったと、それでびしょぬれになっておった所は国会のこの辺の地域だと、警官接触しない地域だという一つ根拠にあげておられる。それから泥んこということは、この南門から入ったすぐ横のここだけが泥があるのです。だからこの辺に倒れたんだという根拠にしておられる。ところが、実際はこれだけ水を浴びればびしょびしょになっているということですね。所はどこと限らないわけです。みなびしょぬれになっている。  それからここにかつがれていっている女子学生、この人のスラックスを見るというと、泥んこですよ。それじゃこの人が今のこの植え込みの所に倒れておった人か、そうじゃありません。そういういろいろな点で反証ができてくるということです。  次に申しますと、これは南門へ上がっているたくさんの人ですが、大体樺美智子さんの位置は指摘されます。これはまるじるしをつけています。この点については皆さんも私どもも大体同じ見解であります。大体南門に入る十数列——あるいは写真の計算でありますと十三列という計算が出てきますが、十三列とぴたりと言うのはどうかと思いますが、十数列というのは皆さんと同じ見解です。そこで、今度は中に入って行きますと、実はこの図になりますが、南門の所へ、大体十数列目の所に樺美智子さんがいる。今ここに一、二、三、四、五、六、七、八と名前のわかった人たちがおります。これはずっと入って行きますと、この辺に初めトラックがあるのです。トラックに当たりまして、それでこっちからもだいぶ入って行くわけです。最初五百人くらい入ったといいます。それで、トラックを押しながら入って行って、東大の先頭部分の経済学部と文学部は右の方に行ってしまうのです。右の方では小さいトラックが三つか四つぐらい並べてあって、行き詰まりなんです。ここで入れなくなって、うしろの後続部隊、ちょうどこの辺に女子学生を置いてあった。うしろの方に置いてあった。その女子学生が先頭になって左に折れるわけです。そこでその写真がちょうどこれなんです。この写真を見ますというと、トラックの右側の所に入って来ています。これをすぐそばで写真班がとっているのがこれです。これは東大の経済学部、文学部の連中がおっかなびっくり入りかかっている。しかし、たくさん自動車があるものだから、たくさん入れなくて詰まってしまって、つまり後続部隊の方が左に折れる。これは左に折れたところです。これは旧議面のところに入って来ています。これは赤じるししてありますが、このときの樺さんの位置は十数列の——もっと東大からいうと数列前、相当先頭に出ているということが言えるわけです。さらにそのときに、警官隊はうしろに引きますから、ずっと出て来ます。その出て来たときの数は、私はやっぱり六百名くらいが旧議面の北側に出て来ていると思います。皆さん方五百名くらいと言っていますが、それくらい出て来ている。そのときに、この写真を見るとわかるように、学生の先頭は旧議面の玄関前をはるかに越えています。相当こっちへ来ている。この写真を見てわかるのは、これは方面警察隊の連中が、かかれというのでかかってきている、四機動隊の方がおくれてかかってきているようであります。  さらにこの写真がちょうど激突したところであります。この写真を見ますと、広がってきた。議面の所は倒れているようです。  次の写真はトラックの上からとっている。逃げる学生の混乱です。これを見ますというと、人なだれとはどうも言いにくいと思う。将棋倒しとも言えないと思います。あとでまたこれをはずしてお手近に見ていただきたいのですが、これで圧死ということはちょっと考えられないのです。それぞれある程度行動半経は持っているのです。こういうものを見てみますというと、どうも人なだれの圧死の写真というものはないのですね。  それからさらに、これが——この女子学生は一番先頭に出ておって、それで男の学生あたりがこの辺で、たたかれてつかまっていますが、一生懸命逃げています。逃げていますが、最後にこの子も逮捕されます。この子の隣におった子はこの子ですが、この子もさっと私服警官にひったくられて、見るもむざんな逮捕の仕方であります。彼女は全然抵抗していません。抵抗していないのですがずるずると引きずられていって、たとえば前の社会党の鈴木委員長あたりが見たのは、女子学生の髪の毛を引っぱっていったというのですが、それで、やめろということでやめたそうですが、彼女のスラックスは穴が三つも四つもあいております。うしろでは逮捕する、前の方は警官がずっと押し寄せて排除するわけです。排除していったときに——この辺は第二、第四の機動隊の鉄かぶとが見えて、ここに女子が一人見えます。この彼女がさらにこの子です、ここですぐ逮捕されています。おそらく皆さんが言われるのは、このあとに人なだれが起こったと言われると思うのです。これは、ここにいる男の学生が手をこうやっているのは、学生が倒れる、倒れると、だから押したらいかぬと叫んでいるらしいのです。だがむしろこのときは倒れ方はこういうふうな倒れ方ですね。あなた方の写真を見るというと、こういうふうな倒れ方をしていますけれども、やはりこっちからこう排除してくるのですから、こういうふうにあおむけになって、バナナを折ったような格好で倒れていくのが自然じゃないかと思うのですね。このときあたりは、この辺にカメラ・マンがたくさんおりますから、カメラ・マンが見ておりますし、このトラックの上には学生が見ておりますから、この辺の人は全部、死んだら死んだとわかっておるのです。ところが一つもわかっていないのです。  そういう点で、私は非常な問題を感ずるのであって、特に先ほど樺さんの位置について御説明がありましたが、この一、二、三、四、五、六、七、八とたどっていきますと、一というのは大体この辺、二はここ、三はここ、四、五、六は一番先頭、つまり樺さんのうしろにおった子たちが一番先頭でやられている、七、八と、こういうふうにみんな前面に出ているということです。特に樺さんの位置について、大体旧議面のこの辺だという御指摘でしたが、大体この四という人がこの旧議面の玄関のそばまで行って、苦しいものだからこの上へ上がりたいなと思ってひょっとうしろを見たときに、樺美智子さんが歯を食いしばって目をむいてがんばっておったと、つまりここが樺美智子さんのわれわれが知っている最後の場所です。この辺まで来ている。このときに警官隊の攻撃はさっときているわけです。あまり距離がありません。そういう点で皆さん方の御説明と若干いろいろと認識の違った点が出てくることをはなはだ遺憾とするのですが、まあこの点については、またゆっくり討論するとして、もっと大事な点がありますので先を急ぎますが、それは、皆さんのお手元にある資料の五ページの終わりから三行目に学生P君と、二行目に学生Q君とありますが、このP君とQ君が一番のきめ手だと思います。つまりP君というのは彼女を倒れた現場から運び出して、そうしてQ君がそれを途中でかついで、そして救急車へ連れていくわけでありますから、このP君が明らかにならなければ、これは私は皆さん説明に断じて納得できません。ですからもう一ぺん私はここでP君とはだれか、Q君とはだれか、明かにしていただきたい。
  67. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) それは、先ほど申し上げました通り、今、坂本委員もおっしゃっておりますように、今後また証拠が出てきた場合は、これは再捜査するからとおっしゃっておりまするし、かたがたその他に及ぼす影響等も考えまして、従来ともそういうことはしておりませんから、一つ御了承願いたいと思います。
  68. 坂本昭

    坂本昭君 しかし、あなた方は、これで捜査を打ち切って、不起訴処分にしてしまったじゃありませんか。そうしておいて、今後、もう永遠に、これは隠されてしまいますよ。表ざたになりませんよ。そうして、この際、私がもうP君というのがほんとうにどこからどうもっていったかということが、これがもしインチキであったらどうなりますか。あなた方は、これは断じて間違いない、はっきりと、彼は、ここから、特に南門の左のさくの所を越して運んだ、ここには書いてありますが、それほど確実ならば、私はある程度言っていただいてもいいんじゃないかと思う。どうしても言うわけにいきませんか。
  69. 大川光三

    大川光三君 ただいま坂本委員から、このP君あるいはQ君、R君の具体的氏名発表せよという御要望でありますが、この法務委員会という公開の席上で具体的な名前発表されるということは、今後、たとえば騒擾罪は必ずしも打ち切ってないというような大臣の言明もありますから、そういう捜査の面に多少とも支障を来たすおそれがあると思いますので、匿名でも法務委員会としては十分真相を知ることができると考えまするので、この程度一つ御進行願ったらどうでしょうか。
  70. 坂本昭

    坂本昭君 それでは、大川理事からせっかくのお言葉もありますので、場合によれば、私は皆さんと別の機会に懇談するなり協議するなりすることによって、きょうはあえてここでは氏名発表することは一時保留させていただきましょう。ただ、学生P君は樺さんをどの地点からだれと運んだか、実地検証をしておられますか。
  71. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) P君と一緒に実地検証したかどうかというところまでは、私ども聞いておりません。
  72. 坂本昭

    坂本昭君 P君の運んだ一女性の患者をさらにQ君が引き継いで、救急車——これは小石川の救急車に乗せた患者と一致するかどうか、あなた方、実地検証もしてないとすると、これは、私は内容が非常に不確かだと思います。なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、私は医療関係の救援をやっておりましたから、おそらく皆さん以上に知っているはずだと自負しております。特に救援に当たった人たちの一人々々が漏れなく知っているのです。だから、皆さんが犯そうとしているあやまち、たとえば私たちも犯そうとしたあやまちがあったわけです。どうもそれと、このP・Qの関係が非常に似ているのではないかと思って私は心配している、これは、はっきりと検証しておかないというと、私がここで伏せ字のまま申し上げますが、Q君の患者は、これは樺美智子さんと見ていいと思います。しかしP君の運んだ患者は非常に不確かであります。私はその点だけ指摘しておいて、どうかこの点、私の疑問の納得できる方法を公開の席で、都合が悪ければ別の方法でもよろしいです、これは一つ必ずやっていただきたい。そうしなければ私は皆さん取り調べ捜査に対して、残念ながら非常に疑いを持たざるを得ない。どうか私の納得のできる程度の御説明は願っておきたい。  なお、P君が樺さんをどの地点から運んだかという実地検証しておられませんが、その地点が定期券の発見された場所というふうに見ておられるのですか。これは一つ遺留品の項目で書いておりますから、ぜひ御説明いただきたい。
  73. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 定期券が発見された場所からP君が樺さんを運んで、そうして南門の前の道路の所へ持ってきたというふうには認定していないと、私はそういうふうに聞いております。ただ南門の所へ持ってきた、樺さんを運んできた、その目撃がP君であるというふうに聞いておるので、ただその定期券が落ちておったのを発見されたのは、何もそのときではないのでありまして、その後発見されたのであります。定期券の落ちておった所に樺さんがおられたということは一応推定できるわけでありますが、樺さんがここに人事不省で横たわっておられたのをかついで南門の外まで持ってきたというふうに認定しておるとは聞いておりません。
  74. 坂本昭

    坂本昭君 そうすると、今この学生P君というのは、「樺美智子国会構内において負傷し、南通用門に向って左側柵の破壊個所から二、三名の男子学生によって構外に搬出され全学連宣伝カー付近に運ばれた。」のをP君が見ておったという意味なんですか。P君もその中の学生の一人として運んだという意味なんですか。これは、非常に大事な点があいまいですが、その点御説明をもう一ぺんいただきたいのです。見ておったのか、直接に運んだのか。運んだとすれば、構内の負傷地点から運んだのか、途中から運んだのか、明らかにしていただきたい。
  75. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) その点は、今まで受けました報告では、P君が運んだのではない、P君はその目撃者である。こういうふうに報告を受けております。
  76. 高田なほ子

    高田なほ子君 このP君とQ君というのは、あれですか、証人として調べられた人員の中に含まれている人物ですか。
  77. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) もちろんそうでございます。
  78. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、この証人発見が非常に困難だったためにというようなことで、冒頭に坂本委員から質問があったのですが、当局は百方手を尽くしたが確たる認人がつかめないというような答弁をしているわけですが、このP君とQ君というのは、確たる証言というような意味でここに記録したものですか。確たる証人としての発言とみなしてここに記録したわけですか。
  79. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 少なくともこの発表文に掲げられております学生の供述は、検察当局としまして確たる証拠として考えておるものであります。
  80. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、その確たる証人というのは、当局の方では全部住所、氏名なんかがはっきりしているわけですね。
  81. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) さようでございます。
  82. 高田なほ子

    高田なほ子君 その、している人、人物を、さっきの説明によると、刑訴法の建前からここでは言えない。しかしそれは、公判前に、裁判に影響する危険性がある場合にだけその氏名が言えないという意味ではないのでしょうか。先ほど大川さんから、議事進行があったのですけれども、やはり私は疑問なんです。裁判の公判前に、その裁判に赤白の色がつくようなことがあるといけないから、その氏名を公表しないということはあり得るけれども、どうも何の理由かはっきりしませんけれども氏名が公表されないというのが私には納得がいかないんですね。そうすると、くどいようですけれども、何かそういう騒擾罪か何かを適用して裁判にでもかかるという見通しがあるから、この氏名がここに公表できないと言っておられるんでしょうか。
  83. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 決してそういう考え方でやっておるのではないのでございまして、刑訴法の建前並びに検察庁捜査関係から申しまして、今後の捜査に影響するということがございましては困りますので、いたしておりません。
  84. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、P君Q君というのは、今後の捜査にもやっぱり出てくる人物として推定しておられるわけですか。
  85. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 検察庁に参考人として呼ばれる者が常にその氏名を、その事件起訴されまして、公判廷で証人として呼ばれるとかいう場合以外にも、常に検察当局によってその氏名を明らかにされる。あるいは供述内容をその氏名との関連において明らかにされるということになりますならば、検察庁としまして、その事件証人協力を十分得られなくなるおそれがあるのであります。そういう点からいきまして、検察当局としましては、公判廷でその者が証人に呼ばれるあるいは調書を提出するということは、これは憲法の保障する裁判の公開ということから、どうしてもやらなければならぬのでありますが、その他の場合におきましては、その氏名を秘匿してやるということによりまして、検察運営というものが可能になる。こういうふうに私どもは考えておるのであります。そういう意味合いにおきまして、その供述者の名前一つ一つあげることは、一つお許し願いたいと、かように述べておるわけでございます。  それから先ほどちょっとお話があったのでありますが、具体的に名前を明らかにしなければ、検察庁はうそを言っておるのではないかという疑いも生ずるのじゃないかというお話もございました。検察庁起訴処分において適正を欠くという疑いがあります場合には、別に検察審査会という制度がございます。そこに審査の申し立をされることによりまして、さらにそこで起訴の当否というものが審査される制度上の建前になっておるのでございまして、検察庁としまして偽りの発表をするというようなことは、そういうことからいたしましても、できる筋合いのものではございません。どうか一つ検察庁は公正中立の立場で仕事をしているということを、且つ適正を期して仕事をしているということを十分御理解いただければ幸いでございます。
  86. 高田なほ子

    高田なほ子君 私どもは、何も初めから検察庁がうそを言っているという、そういう前提でものを申し上げているわけじゃありません。この点は誤解しないでもらいたい。ただ、社会党の方からも告発状が出ているので、捜査証人、こういう問題については、当局としては百方手を尽くして、きわめて慎重に努力をした、こういう説明をしておられるわけです。御承知のように社会党から出ている告発状は、非常に重要なる告発状です。殺人にからまる告発状だ。そうだとしたならば当然樺さんの死因をめぐって、瀕死の樺さんを持ち運んだという確たる証人がここに出ておるような書類ですが、当然それは坂本さんが追及されたように、実地検証というものがされなければならない筋合いのものではないか、こういうふうに私考えられる。実地検証をした証人というのは何人くらいおるのですか。特にこの樺さんの瀕死の場合に、なぜ証人が出ているのに実地検証がされなかったのか、ここらに疑問を持ちます。
  87. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 先ほど私申し上げましたのは、実地検証をこのP君でございますか、P君の調べの際に実地検証をしたかどうかというお尋ねに対しまして、したかどうかについては私ども報告を受けていないと、こういうふうに申し上げたのでございまして、実地検証をしなかったというふうにお答えはしなかったのでございます。ただ、われわれとしましては、こういう参考人を取り調べた際に、実地に基づいてどの程度調べたかということまで報告を受けておりませんので、その点、せっかくお尋ねでございますが、御答弁いたしかねるのでございます。
  88. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは殺人容疑のあるような場面がここにこう幾つも出てきているのですから、今のところは実地検証をしたかしないかということの報告を受けていないと、こういうわけですから、報告を受けていないものは私は責めませんが、これは後日実地検証をしたかしないか、そこを明らかにしていただきたい。それはできますね。総務課長、できますか。
  89. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) その点は確かめて御返事できます。
  90. 高田なほ子

    高田なほ子君 注文がありますが、実地検証をしなかったという回答が出れば、そしなかった理由等についてもわれわれを納得させるような理由を付して明らかにしていただけるようにお約束していただきたい。できますか。
  91. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 検察官が、この学生P君その他の学生諸君を参考人として取り調べて、その供述を確信をもって信頼できるというふうに考えてわれわれの方に報告したのだと、こういうふうに考えておりますので、かりにしなくても、その理由は明らかになると、かように考えております。
  92. 小柳勇

    小柳勇君 私どもの不当弾圧対策委員会では、人権擁護という立場も含んで検事総長に告発状を出しました。その検事総長への告発状を持って、地検の野村検事正に会って、いろいろ当時の実情を話しながら告発したのでありますが、その結果について不起訴になっている。そうしますと、裁判で争うことはできないわけです。それで、きょう特に法務委員会委員長の許可を得て、樺美智子氏の死を中心にして、今、坂本委員が追及しているのでありますが、その中で私ども委員としても答弁が納得できない点が多々あるわけです。それは、直接調べられた検事でない、皆さんは上司として報告を受けて、それでやられておるので、やむを得ぬと思いますが、今の運び出した学生、あるいはそれを見たという学生の証言が中心になって全部が体系づけられて不起訴処分になされたと理解するわけです。それにはもちろん医者の鑑定もありましょう。医者の鑑定については、あとでまた坂本委員からいろいろ質問がありましょうが、そのような不十分な、われわれが聞いて、一般国民が、一般的に聞いて不十分な理由をもって不起訴処分にして……。そういうふうにいたしますと、捜査も一応打ち切りになるのが常識であろうと思うわけです。そうしますと、新たに証拠を出す場合には、坂本委員が今言われたように、P君などがはっきりいたしますと、ああこれだったかということで、坂本委員も全部——私も一応坂本委員から話を聞きながら捜査協力した一人でありますから、大体の見当がつくわけです。それが合致すれば、このP君は違いますよ、そういうことが言えますから、新たな証人が出れるわけですね。そういうものが明らかになりませんというと、これをあなた方は正確に正しいと言って主張されますけれども、このような野村検事正発表されたこのような発表を、私どもとしては十分完全に信ずることができない。従って、さっきの坂本さんの質問にも関連いたしますけれども、もしこの公開の席上ではいけないが、検察庁に行って野村検事正に会ったならば、坂本さんに、このP君、Q君については氏名が明らかにされるものであるかどうか。その点を一つ明らかにしておいてもらって、もしそれでもできないというならば、私はこの委員会として国会法務委員会の権威によって、もう少し究明していきたいと思うのです。
  93. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 告訴告発人には、不起訴になりました場合には、不起訴理由を、要求があれば説明することになっております。その説明の段階でどの程度のことを言うかということは、それぞれ担当した検事あるいはその上司の判断によりまして行なっております。もちろんそれについては納得のいく説明ということが前提になっておるわけでございますから、具体的にその氏名まで、だれが何と言っておるというところまで言うか言わないかということは、事件の性質とかあるいはその内容とかによってきまることであると思いまして、私どもも長年実務を扱って参りました上では、そういう点は具体的な事件に応じて説明しておりますので、これは事件を処理いたしました現場検事正が判断されることと思います。ただ、一般には今御指摘のような、だれが運んであそこまで持ってきたかという点については、明らかになっていないのであります。それをここにあげておりますようなP君が目撃しておるという証拠は明白になっておるのであります。しかし、それ以上のことは明らかになっていない。しかしその他のあらゆる証拠によりまして、犯罪嫌疑なしということで不起訴になったというのが本件処理の事情でございます。
  94. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、坂本委員なり私ども告発人でありますが、告発人が行っていろいろ聞く場合に、その直接調べられた方の意思によって氏名を明らかにする場合もあり得ると、こういうことを確認しておいてよろしゅうございますか。
  95. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) さようでございます。
  96. 小柳勇

    小柳勇君 それではわかりましたが、次に、私どもが今聞いておって問題にいたしますのは、これの一番中心になりますのは、警察官樺美智子氏は接触しておらぬということからいろいろ組み立てられております。そうしますと、今、坂本委員が言ったように、こちらの方としては接触しておったという写真などの証拠をあげながら今発言しておるわけです。そうしますと、事態は、これを判定された、作られたものよりも一歩前進して、新たな事態として再度捜査することができ得る、こういうことを理解していいですか。
  97. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 私ども報告を受けておるところによりますと、現場の写真等はこの席上配付になっております書面にもございますが、約千四百二十枚にわたって検討いたしておるということでございます。従いまして、これはあらゆる手を尽くしまして現場で写された写真を厳密に検討して調べておるのでございまして、おそらくは先ほど坂本委員も申されましたが、弁護団の方でも協力されたということでございますので、そういう写真なども検察庁としては見ておるのではないかと、これははっきり確言申し上げることはできないのでありますが、そういうふうに考えるのであります。従いまして、先ほど写真に基づいて御説明がございましたが、そういう写真などに基づいての検討ということは、すでに検察庁として一応いたしておるというように考えておる次第であります。
  98. 小柳勇

    小柳勇君 私は今の総務課長発言を聞きますと、少しおかしいと思うのですが、この委員会は、ただあなた方の見解を述べて、またこちらの見解を述べて、平行線でただ言い合うだけの委員会ではないと思うのですよ。そうしますと、一応あなた方の説明を聞いて、それに対して質問をして、そしてそれは私どもの見解ではこう違いますということを今証拠を見せてここで説明したわけです。しかも写真をもっと詳しく説明をしたわけです。これに対して、「担当の検事は、当然そういう写真を見ていると思います。」と言われましたが、接触していないという反論のために接触したという説明をしたわけです。この説明を聞いて、あなたはどう思いましたか。便々と、ただ坂本さんがしゃべった、私は聞いた、こういうことではこの委員会では済まされませんと思いますが……。
  99. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 若干私の申したところに言葉が足りなかったかと思いますが、検察庁でいろいろ見た、特に警察官学生諸君との接触場面における写真の中において、樺さんの写真がついに一枚も発見されなかったというように私ども聞いたわけなんでございます。そういうことを聞いておりますので、ただいま申し上げたようなことを申し上げたわけでございますが、なお、あるいは検察庁の方にもおいで下さるというお話でございますので、御疑問の点は、その際にさらに検察官の方にお申しいただければ、また捜査官といたしまして捜査が行き届かなかったというふうに考えた場合には、さらに検討いたすものと信じております。
  100. 小柳勇

    小柳勇君 議事進行についてですけれども、ずっと坂本委員の調べられたものについて発言を聞きながら、答弁を聞いて参りますと、非常にあいまいなものがあるわけです。そうしますと、実際はわれわれが判断するのには、もっと詳しく知っている人の話を聞かないで、何か非常にあいまいなものをここで承知したことになっては、これは問題が大きいのではないかと思いますが、委員長の御見解を聞きたいと思います。あとの審議の方法について……。
  101. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) あとで理事と相談してみます。
  102. 坂本昭

    坂本昭君 今のA君、O君、P君、Q君の問題がいろいろと論議が出ておりますが、先ほど大川理事からも好意的に議事進行の御発言がありまして、一応私も保留にしたのですが、実はこれは委員各位お聞き取りいただきたいのですが、私の見るところ、P君、Q君は住居侵入罪の疑いの対象にならない人であります。これは国会の中に入っていないのです。ですから、あとで問題にならない人なので、捜査の支障にもならないし、名前を言ったところでかまわない人だと私は大体見ているのですね。だから、そういう点でここでは今おいでになっている方も責任をもって言えないような立場なので、先ほど議事進行をかねて大川委員からも御発言がありましたから、願くは大川委員が後刻あるいは後日このことについて委員長並びに理事ともども適切なる御処置をしていただくならば、一応私としては、まだいろいろお聞きしたいことがありますので、この際は、あと議事を進めていきたい。その点、委員長並びに理事にお諮りして、何もかもあやふやなままにしていくということは、委員会としては非常に不本意なことでありますので、その点は、先ほど大川理事もせっかく仰せの言葉がありましたから、何か委員会として十分その点をお含み下さいましたならば、私も小柳委員も同じ考えですが、あと少し議事を進めていきたいと思います。
  103. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  104. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 速記を起こして下さい。
  105. 坂本昭

    坂本昭君 それでは次にお尋ねいたしますが、資料の六ページのちょうどまん中「樺美智子の遺留品」のところに、「六月十六日警視庁公安部公安日課庶務係警部補」となっておりますが、この氏名、これは明らかにできませんか。またあとに続いて、外事課の警部補にこの定期券を引き継いだと説明がありますが、これは別に、現職にある人ですから、私は名前を言っていただいても差しつかえないと思いますが、いかがですか。
  106. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 今まで述べましたと同じような理由で、この席では一つ述べるのを御容赦いただきたいと思います。
  107. 坂本昭

    坂本昭君 次に、ではこの遺留品の定期券が植え込み地帯で発見されておりますが、この定期券は、現在保管してあるか、どこにあるか、今どんな外見をしておるか。
  108. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) その詳細は、お尋ねのような点についてこまかく聞いておりませんけれども、もちろん証拠品としてこれを押収したしました以上は、押収の地点等についても実況検分を行なうとともに、証拠品として保管してあることは当然と考えております。
  109. 坂本昭

    坂本昭君 いろいろな不満な点がありますが、一応それでは議事進行の意味で続けて私伺って参ります。  この定期券がどのポケットに入っておったか、そういうことの調査をやっておられますか。つまり彼女はカーディガンを着ておった、その下にブラウスを着ておって、スラックスをはいておった。どこにこれを入れておったか。なぜこれを聞くかといいますと、財布はあの当時検案のときに、裁判長からの命令で財布は何というのですか、領置というのですか、保管命令というのですか、ちゃんと領置せられておるわけですね。で、財布が残って定期券が落ちたというのは、ちょっとしろうと目には異と感ずるのです。だから私はこの点についてどういうふうに皆さんの方ではお考えになっておられるか、そういうことを含めて、だからその定期券はどこに入ってあったか、どういうことで落ちたのであるか、定期券は落ちて財布は落ちなかったというのはどういうわけであるか、そこまでお調べになっておるかということを一応伺っておきます。
  110. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) もちろんその点については捜査をした報告を受けております。その詳細については、今ちょっと私も記憶をいたしておりませんけれども、ただスラックスのポヶットの中に——物入れはそこしかなかったというふうに聞いております。そうしてそこに入れてきたものと推定をされるとこういう説明であったというふうに記憶しております。それは東大を出ますときに、カバンを持っていたのを東大に預けて、そうして自分で持ってきましたのは、そのバッグの中からハンケチと小さいものだけを持ち出して、そうしてデモ隊に参加した、こういう友だちの証言もございまするので、それとあわせて捜査官としては右のような事実を認定したものと、さように承知をしております。
  111. 坂本昭

    坂本昭君 そうしますと、私が先ほど申し上げた財布が残って定期券が出たというその疑問に対しては、まだお答えがなかったと思いますが、その点はまたあまりこまかいことですから、お調べの上で、さきほどもたくさんいろいろお尋ねをしておりますから、一緒に一つ御回答をしていただきたいと思います。  それから次に七ページの今度は四行目に、着衣の上半身がずぶぬれで、それから次の三行目に泥土の付着が多量である、泥がたくさんついておったということになっておりますが、この泥と南門のそばの植え込みの泥とが同じものであるかということの調べはやってあるかどうか。
  112. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) その点につきましても捜査をしておるという報告は聞いております。聞いておりますが、土砂の鑑定をしたかしないかという点は確かめてございませんので、なお確かめまして、後刻一緒に報告さしていただきたいと思います。
  113. 坂本昭

    坂本昭君 先ほど地検へ私たち告発人の一人として参れば、ある程度の御説明をいただけるということで、また私たち学生協力を非常に勧めているのです。そういう点で、あの当時南門付近におった救護関係の者は、相当私掌握しております。たとえば植え込みの辺にずっとおった者もおるのです。それから南門のあたりで樺さんを知っている学生で、ずっと立っておった者もおるのです。それらを通じて、私は場合によればそういう人たちを連れて、またお伺いして、ただすべきはただすという気持を持っておりますので、先ほど来の答弁をまとめますと、そういう場合には快く聞いていただけるというつもりで、私も今後学生諸君協力を求めていきたいと思います。  そこで、時間の関係がありますので、今度は死因につきまして一つお尋ねをいたして参りたいと思います。  まず死因のところで、地検検事正発表された文章を見ますと、一番最初に、渡辺監察医が多数の圧死体を検案した自己の経験により災害死と検案した、そういうふうに最初から出ております。が、私は非常に疑問に思うのは、多数とは一体どれほどのことを言っているのか。それから圧死体と言っているけれども、圧死体とは一体人なだれか。圧死体はいろいろありますよ。たんすがひっくり返っても圧死です。天井のはりが落ちても圧死です。これを十ぱ一からげでみんな圧死圧死で片づけたら、これはとんでもないことになるので、せっかくここに地検が圧死の大家としての監察医をあげておられるが、一体どの程度を多数と言っておられるか。また圧死体とは人なだれを言っておるか。何かまあとにかく非常に斯界におけるこの方面の権威者ともまた経験者とも、何か非常に高く買っておられるようなので、その理由一つ説明いただきたい。
  114. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 渡辺監察医は十数例のこういう点についての事例をお持ちでそれについて自分の一つ一つの見解を持っておられそれを根拠とされたというふうに聞いております。
  115. 坂本昭

    坂本昭君 もちろんその十数例というのは、それは人なだれに関してですね。はりだとかたんすだとかいうものではないのもと一応伺って、次に伺いたいことは、「外景より見た死因」と、死因のところの三行目に書いてありますね。外景より見た死因に関する見解を出しているそうでありますが、外景から見てわかると。一体検察官、検察当局は、そういうふうに御判断されるのか、一つ伺っておきたいと思います。外景から何でもかでもすぐわかるというふうに見ておられるか。
  116. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) これは坂本先生に御説明申し上げるまでもないことでございますが、監察医務院死体の検案と申しますのは、変死体がありました場合に、一応外見上の観察をいたしまして、犯罪の容疑があるかどうかということの判断をする、通常の死であるのか、それとも何らかの犯罪に起因するような死であるのか、あるいは災害死であるのかというふうなことを判断する基準として行なわれる、死体解剖保存法に基づく手続でございますので、もちろんそれだけで検事が直ちにこれが圧死であるという確信を持つというふうなものではございません。判断の一資料になることは当然でございますけれども、そのために、さらに権威者に死体の解剖あるいは鑑定を求めるという手続を、本件に限らず、どのような事件でも、犯罪に起因する疑いが濃厚でありますれば、常に行なっておるのが犯罪捜査の常道でございますので、本件もそれに基づいて行なわれたもので、一つの判断の基準にはなると思いますが、どこまでもそれは一つの判断の資料として考える程度であるということを申し上げることができると思います。
  117. 坂本昭

    坂本昭君 そのことに関連して二つお願いがありますが、一つは、外見でわかるような写真があるならば、これは一つ見せていただきたい、提出していただきたいということが一つ。  それからもう一つ検察官は、死体検案者たる監察医の外景診断を非常に高く評価している。で、そのような名医の鑑定というものは、私もぜひ見せていただきたいので、それはいわゆる正規の鑑定書とは違うようですが、当委員会に提出できないものであるかどうか、いろいろと後学のためにわれわれとしては知りたいので、今の写真の点と、それから監察医の出した一つの参考意見といいますか、これは出していただけないかどうか。
  118. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) それは先ほど申し上げたと同じような理由によりまして、提出することはごかんべん願いたいと思います。
  119. 坂本昭

    坂本昭君 渡辺監察医が、どのような詳細な書面を出しているか、今のところそういうことになると皆目見当がつかなくなってきますが、実は皆さん承知通り週刊新潮の七月十八日号ですが、これには、「ここ十年間に五百体以上の圧死体を取り扱っている監察医務院東京都衛生局所属)では、どの監察医も圧死の検視解剖を数多く手掛けている。われわれから見れば「首をしめられて死んだ」などということは全くナンセンスである。」これは坂本批判でありますが、この週刊雑誌に取り上げられていることは、実は専門の医学界で出されたなら、私も取り上げますけれども、あえて意図しませんでしたが、今回の地検の野村検事正のあれを見ますと、明らかに渡辺監察医の所見を高く買っている。これに基づいて不起訴処分の結論を出したと思われる。そうなれば、いきおい私も、渡辺監察医に対して、批判せざるを得ない。私が一つだけ、今、皆さんにもわかる批判をしたいことは、ここにはっきりと、十年間に五百体以上圧死体を見ている、そうして、どの監察医も、圧死の検視解剖を数多く手がけていると書いてある。これは全くの大うそであります。一例でももしやっておったら見せて下さい。こういううそを言う医師をあなた方はどうして信頼しておられるか。一例もない。今度のこの樺美智子さんの問題は、学問的にも非常に重大であります。今日世界の文献の中で、あるのは、ロンドンの、先ほど言いました地下鉄の事故、これはシンプソンという人が報告した四例、その四例も、一番上は十八歳の少年です。これも圧死じゃなくて、病院へ行って、病院で脳内出血で死んでおります。あとは全部七つ、八つ以下の子供です。これが今日の世界でわかっている法医学の圧死の実情なんです。たとえば上野教授は、鑑定書の公表については、別にこんなもの公表せんでもいいだろう、もう外国に文献があるからというようなことを新聞で言っておられます。外国にあるのはたった四例だけですよ。そのほかによるべきもの一つもなし。中館教授も、今度のこの鑑定については、ロンドンの地下鉄の四例をもととしているというふうに私たちもこれを読みました。日本では、京都の駅で戦争中に出征兵士を送っておって、たくさんなくなったときに、二例解剖があります。しかしこれは詳しいことは書いてない、結局二重橋の場合も、弥彦神社の場合も、島倉ショーの場合も、一つもないのです。にもかかわらず、この監察医は、十年間に五百体手がけてやって、検視解剖を数多く手がけている、こういうことを言っている。どうしてこういううそを言っている人を皆さん方は一番初めに取り下げて、渡辺監察医の意見のごとくに、胸腹部圧迫による窒息死という結論をつけられたか、私たちはどうしても納得できない。こういううそつきの医師鑑定に対して、まず良心的に、どれだけ解剖をやっているか、はっきり証拠を出して下さい。これはあなたの方でも責任がある。あなたの方でも多数の圧死体を検案したと——ここでは検案と書いて、解剖と書いていない。しかしこれは世論に対する影響は重大なものがある。であるから、私は、一体どういうわけでこういううそを言っている人の意見をお取り上げになったか、その点について所見を明らかにしていただきたい。大臣にお伺いします。
  120. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 坂本先生は御専門でいらっしゃいますから、いろいろ御議論もございましょうと思いますけれども、週刊雑誌に出たことにつきましては、私たちは全然関係ないことでございますし、何ともそれを申し上げることはできませんが、ただ検察庁といたしましては、順序として、その当時の情勢から申しまして、監察医にとりあえず鑑定させ、同時に中館さんとかあるいは上野さんだとか、これだけで判断したのではないのでございまして、そういう次から次へと鑑定させ、同時にその鑑定に基づいて現場取り調べをいたしまして、そうして総合的に判断いたしまして、この結論を出しておるのでございまして、渡辺監察医だけの鑑定に基づいてやったというわけのものではございませんので、その点、御了承願いたいと思います。
  121. 坂本昭

    坂本昭君 それはちょっと大臣の言葉は、大臣として少しおかしいと思うのですが、つまり渡辺監察医は、これは鑑定書を出したのじゃないのです。つまり鑑定をやる場合には、鑑定の嘱託書を渡す、それから鑑定の許可証と二つ渡さなくちゃいけない。渡辺監察医はみずから詳細の書面を提出しただけのことで、あなたの方で鑑定を求められたのは、中館教授と上野教授、この二人だけですよ。次から次へとそれをたくさんの人に漫然と鑑定を依頼なんかしておられるはずがないのです。それは大臣、ちょっとお間違いであろうと思います。
  122. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 私の言葉が間違っておったのでございまして、渡辺医師からの書面でございまして、鑑定書ではございません。
  123. 坂本昭

    坂本昭君 次に、中館鑑定書についてちょっとお伺いいたしたいのですが、中館鑑定書がこの書面の中に取り扱われているところを見ますと、死因の中で、四行目の下の方に、「その窒息死胸腹部圧迫によって惹き起されたものと推定される。旨の鑑定書を提出したが、」と書いてあります。これは非常に注意深く私書いておられると思うのです。「推定される旨の鑑定書を提出した」、この「推定される旨」ということは、非常にあいまいですが、これは九分通りそうだと鑑定してあるのでございますか、お聞きしたい。私はその中館鑑定書を見ていないものですから……。
  124. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 九分というのが正確かどうかしりませんですが、とにかく胸腹部圧迫によって窒息死の結果を生じた、それが死因である、こういうふうに言っておられるのであります。
  125. 坂本昭

    坂本昭君 言っておられるのであって、新聞にも言っておられるのですが、鑑定書にどう書いてあるか。これは非常に学者は慎重であります。ですから、その点もまたあとで申し上げていきますが、今の御答弁では非常に不正確だということ。さらに次は上野教授の再鑑定について申し上げますが、上野教授の再鑑定に添付資料として幾つかのものが書かれてあります、この中に。この添付資料としたすい臓の顕微鏡標本は何枚ですか。非常にこまかいことをお尋ねしますけれども、実は皆さん方の、つまり鑑定態度を私は少し追及したいのであります。おそらく御存じないと思います。これはあまり専門的ですから、私から申し上げますと、上野教授が見られたのは、たった二枚の標本であります。すい臓というのはこれくらいあるのです。そうして切っていけば、何千枚も標本はできます。その中で大体尾部、しっぽの方二枚、二枚だけ顕微鏡を見ておられます。そうしてこれで再鑑定書を出しておられる。こんなことで正しい資料と言えるかどうか。これはもう一つの原則論としてお伺いいたしたい。
  126. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 大へん坂本先生の御専門の問題でございますので、正確を期する意味で、あとで書面で提出——どの範囲までお答えできるかという点もあると思いますけれども、検討さしていただきまして、書面でお答えすることにお許しいただきたい。
  127. 坂本昭

    坂本昭君 書面でけっこうでございます。  次に、もう少し専門的になりますが、専門的といってもあれなんですよ、弁護士の方などは十分御存じのことだと思いますから伺いますが、首の筋肉の出血のことなんです。これは今度の一番のポイントですから、局長さんも、課長さんもきょうおいでになるときには、大体それくらいのことは考えられて、入れ知恵をしていただいてくるのが当然の義務だと思うのですが、そこで、もしおわかりにならなければ、書面で出していただきたいのです。  胸部圧迫死のとき、胸を押されて圧迫された場合に、窒息死をいたします。窒息死の場合にはあっちこっち出血いたします。その出血の場合、頭にも出血する、目の中にも出血する。そういう場合に、首の前の方に特によけいに出血があるものか、ないものか。ちょっと専門的過ぎてお気の毒かもしれませんが、書面でけっこうです。お答えできますか。
  128. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) その点は、鑑定書をしさいに検討いたしませんと、お答えいたしかねると思いますが、私ども報告を聞いております範囲では、樺美智子さんの死体について、どのようにして死の結果が生じたかという点の鑑定で、その点について頸部のいわゆる扼痕あるいは出血、内頸における出血というものが、いかなる原因によって生じたかという点の鑑定がされておりますので、その場合に、抽象的な問題として、前の方に出るのかうしろの方に出るのかという点が問題になろうかと思いますが、鑑定書では必ずしも明確になっていないように記憶しておりますが、ただ外部及び内部における出血の原因が何であるかという点に重点を置いて鑑定がされておるというふうに承知いたしております。
  129. 坂本昭

    坂本昭君 私が今お伺いしたいのは、要点だけ、こまかいことはほとんどはずしております。で、この前、私には地検からかなりこまかい文書による質問状をいただきました。私の方はかなりこまかくそれに回答いたしまして回答と同時に要請もしてやった。しかし、われわれの要請は一顧だにされることなく、不起訴処分にされてしまったわけてすね。私はそういう地検からの質問状を見まして、もうあなた方には専門家がおられるし、また専門的な知識を持った検察官もおられると信じます。だから、きょうは非常に皆さんの方は準備が不誠意であります。誠実でない、あなたがむずかしいことを知っていると私は思わない。しかし、少なくともそういうこれを発表した責任のある技術官なり検察官なりが補佐する私は態度が必要であったと思う。何もかもこれ一つだけだ、お前たちこれでやってしまえ、わからぬところはわからぬと。そういうことでは国民はなかなか納得いたしません。これは樺さんのお父さんが悪い作文だと言われた通りなんですね。ですから、今のこともこれは文書一つお答えいただきたい。わかる人は私が何を聞いているかということがわかるのです。それは、たとえばこういうところに、特に潜水夫の一例報告などぽかっとつけてきている。潜水夫森茂男の水圧死の例というようなことが出てきている。水におぼれて、特に深い所に沈んで窒息死したようなときには、ここに出血があるのです。しかし、そういう出血の場合は、前の方ではなくて横の方、側頸部に、こういう所に出血が多いのです。決してこういう所にはこないのです。私はそういうような事実から、つまり個々にあるものを全部窒息死の一般所見として片づけて今度はされてしまっている。それに対して私はだから反駁をしているわけです。この書類をお書きになったほどの方ならば、私の質問の要点はわかりますから、ぜひこれは書面で必ず御答弁いただきたい。あとで速記録をごらんになって確かめてからでもけっこうです。また、せっかくここにこの潜水夫の水圧死というような、非常にむずかしいものを出してきておられます。この潜水夫の水圧死の場合は、頭の筋肉とそれから首の筋肉、こういう所に出血をしている。ところが、これを見ますというと、頭の方は高度の出血と書いてある。首の方はただ出血と書いてある。それから胸の上の方のところは著明な出血と書いてある。つまり頭は高度の出血、この辺は著明な出血、ここはただの出血、言いかえれば、この潜水夫が水圧を受けて圧死をしたときは、ここの出血は非常に少ないのです。頭だとかこの辺は非常に多いのです。樺美智子の圧死と仮定した場合、樺美智子さんの場合は、ここの出血が一番強くて、ここにも出血があります。ここはわずかであります。こっちもわずかであります。だから私は出血々々というが、樺美智子出血と潜水夫の出血では非常に違う。作文を書いてしまうというとごまかされるのです。しかし、今の私の質問にも一つお答えいただきたい。つまり潜水夫の水圧死の場合は、頭の出血と首の筋肉の血とどちらがひどかったか。これだけ見ると、高度、著明、ただの出血となっております。首の方が少ないように見えるが、この点をもう一ぺん念を押してお伺いしておきたい。これも文書でお願いします。よろしいですね。  それでは、次に、先ほど溺死のことを申しましたが、溺死の場合も前よりも横の筋肉の方に出血がある、で、樺さんの場合は横の筋肉の場合の出血がなくて、首の前だけ出血をしている、従って、やはりここは直接外力が加わったと見る方がよろしいのではないか、その方が理論的に筋が通るのではないか、中館教授もここにある三カ所のうち一カ所はどうもこれは押えたものと見た方がよろしい、圧痕反応も弱陽性だというふうに書いておられる、そのことについても今のような溺死の場合と比較して、むしろ、私は樺さんの場合に窒息死一般の出血と見るより、こういう前の所の珍しい出血は、やはり前から押えたと見る方がいいのではないか、これもそれでは文書でお答えいただきたい。  次に、上野教授の鑑定によりますと、窒息の徴候としてすい臓出血が四三%あるという新説を、今度の事件に関連して実は御発表になりました。実はこれは上野教授の昭和三十四年の教科書がございます、それにも書いてないのですよ。どうも法医学者というのは事件ごとに新しい学説を作っているみたいですね。私は実に学者としての権威に関すると思います。ここで一つ文書でお答えいただきたいことは、樺さんのように十二指腸の下がるところ、下行脚とすい臓の頭の出血しているのが一例でもあるか、つまり上野教授は窒息の場合はすい臓出血が四三%もある、一応そういわれるのですよ、じゃ樺さんのようにすい臓と十二指腸と並んだ所が一緒に出血しているのがあるか、私は一例もないと思います。私たちは、すい臓と十二指腸の所は一緒に突かれたと見ているわけです。だからそんなことはないと思います。しかし、これは東大の偉い先生が言っておられるのですから、一つこの点は文書で明確にお答えいただきたい。一例でもあるかということですね、よろしゅうございますか。これにちゃんと書いてあるのだから。
  130. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 一例でもあるかということは鑑定書に記載してお答えできることならばお答えいたしますけれども鑑定書に書いてないことはこれはお答えのしようがございませんから、その点はよく検討さしていただきたいと思いますが、できるだけ、ありますればもちろんこれはお答えできることと思いますが、簡単にお引き受けして、書いてないことじゃこれはお答えのしようがございませんので、その点はよく検討さしていただきたいと思います。
  131. 坂本昭

    坂本昭君 それはあなたの方でこれを書かれた人がおるでしょう、それは別に鑑定書を書いた中館さんでも、上野さんでもないのですから、これを書いた人が、私の今の質問に対して、両鑑定書にも基づき、そうして意見を出して下さったら、なるほどそうかということになるわけです。だからそういうふうに御了解いただいたらいいのです。ですから、今の質問は、あなたの方でお持ち帰りになって、そうしてこれを書かれたほどの方と御相談の上で御返答相なりたいということですから、わからなければわからないでけっこうですよ。  次は、これも少しむずかしくなりますから、速記録であと十分な御返事をいただきたいのですが、これには非常にはっきりと重要なことが書いてある。それはすい臓出血のところの(ハ)であります。(ハ)には、窒息によるすい臓出血は、消化酵素その他の存在という特殊な事情のため、溢血は周囲に大きく広がる特徴を持つ、この種のすい臓出血は、窒息以外の死因の場合にはほとんど見られないと。これは非常に重大な発表であります。これは、今度の場合の骨になるかもしれないのです。非常に重大な発表です。ところが、それでも非常にいろいろとあいまいなんですよ。たとえばほとんど見られない、ほとんどということは一体どういうことか、見られる場合もある。それからまた消化酵素その他の存在という特殊な事情、これは一体何のことをいうのですか、一番大事な、いわば鑑定の中枢というところにわからない点がある、これも文書でお答えをいただきたい。これはおそらく発表されたとき、新聞記者が勉強しておったら、わからぬ、これはどういうことですか、と聞きますよ。あのときも聞いたそうですが、これだけでしか御答弁なかったようですから、きょうあらためて私が、これはみんなが疑問に思う点ですから、十分御研究の上で御返事いただきたい。  さらに、結局私の結論を申し上げますと、こういうことを次から次にやっておって、これでも私ずいぶん省略したのですが、要するに、中館、上野両鑑定書を私は出していただきたい。で、これは法務委員会に私たちが提出を要請した場合に、何か拒む法的な根拠がございますか。
  132. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) その点につきましては、先ほど来大臣及び総務課長がお答えいたしました点とも重複するわけでございますが、基礎になりましたいわゆる証拠書類、これは供述調書も同じでございますから、そういうものを出すか出さないかということは、真重に私の方でも、この事件だけではございませんで、従来もいろいろな事件がございまして、検討をし尽くされた問題でございます。一つは、本件につきましては、こういう鑑定書には、それぞれの付属の写真とか、その他全部含まれております。こういうものが公表されることは、死者に対する名誉、あるいは家族に対する名誉という問題も一つございます。それから供述調書その他関係証拠書類を提出するということは、おのずからの捜査に関与して供述しました証人、参考人の供述の内容が、すべて外部に出るわけでございます。これは私ども長年の捜査の経験から申しましても、そういうことを全部外部へ発表されるなら、もう検察庁へ行って何も言うわけにいかぬという声は、しばしば聞くところでございまして、これは将来の犯罪捜査のための協力が得られなくなるおそれがあるという、将来の検察運営について非常に重大な支障を生ずるような大きな問題が一つございますので、何もこの事件を特別に伏せるとか、特別に何か秘密にしなければならないというだけの問題ではございませんで、将来検察庁へ出ていって検事が調べをする場合にも、下手なことを言うと、全部あとで外部へわかってしまう。これほど秘匿しておいて下さいと頼んだのにかかわらず、全部出されるならば、これは……(坂本昭君「鑑定書です」と述ぶ)まあそれに付け加えて申し上げるのですが、これは捜査協力できない、現に私どももそういう経験をしばしば持っておりますので、そういう点も含めまして、この問題を一つ御了承いただきたい。鑑定書についても、こういう御要望があることは承知いたしておりますので、検察部内におきましても慎重に検討いたしたのでございますが、今のような事柄が前提になりまして、この御要求には応じかねるという点で、一つ御了承いただきたい、こういうのが趣旨でございまして、何とぞ御了承願いたいと思います。
  133. 坂本昭

    坂本昭君 これは非常に重大なことでして、私はむしろ法務大臣にお伺いした方がいいと思うのですが、今のように調書の内容、P君、Q君の問題については一応保留いたしましたが、医学的な、法医学の鑑定書、死者に対する礼もあると申されましたが、その通りです。もちろん写真などの発表のときには御両親の御了解も得なければならぬ、また若い御婦人ですから、たとえば一見しただけでわかったという、その一見した写真を、全部裸の写真を出すわけにいかないでしょう。しかし、たとえば重大な圧痕があるとか、そういうような所だけを部分的にするとか、そういうことは医学的な良心に従って御遺族の方と相談してやればできぬことはない。それからまた、私は今あまり妥協はしたくないのですが、当委員会に対してどうも鑑定書を見せるのもいかぬということならば、私はむしろこれは委員会あたりにかりにちょっこり出すとか、そういうことくらいはいいんじゃないかと思うのですが、法医学上の大事な問題として、たとえば今度あたり日本における圧死の初めての解剖なんですよ、初めての解剖。それで、これが違っておったら学問のオリンピックに日本は恥をかく。当然これは私は学界でも討論さるべきだと思う。その場合には、鑑定書に書いた——どういう可能性があるとか何とか、鑑定書を出す場合には、非常にむずかしい内容をずいぶん書いて出されるのが通例のようですけれども、そういうようなことを省いて、純粋な医学の問題として討論していく。しかしそういう場合に、あなたの方では例の鑑定の嘱託書と鑑定の許可書を出している。従って、それぞれの大学はそれに基づいてやったことであるから、それの発表については、あなた方のある意味じゃ圧力がかかってきている。私は、だからそれが法的にどうしても除くことができないものか、捜査上に支障がある場合は別ですよ、支障がない、もうこれで全部片がついてしまった、しかし、たとえばすい臓の出血については、中館教授は外傷によるものだと言う、上野教授は窒息によるものだと言う。そうした場合に、これをどうやって議論して法医学を進めていく道がどこにあるか、そういう点を進めるために、あなた方はどういう態度、お考えをお持ちになっておられるか。そういう点で何も樺美智子さんについて、われわれはピンからキリまで反対だ、何かおかしいという意味じゃありません。これを機会に、今度あたり確かに学問的に非常に重大な問題を投げかけていると思う。これはこれでやっていって、私の考えが合うか間違うか、学問的に最終的に結着がついたときに、もちろん私もああそうでしたかと……。もちろん私たちとしては樺さんが事故死になることを望みますよ、事故死になることをほんとうに望みます、そういう結果が学問的に出ればそれでけっこうであります。だからそういうふうに一般的に——命度の問題は、これを契機として、一般的に大臣としては法医学の鑑定書を公表して、ある場合には国民に対する疑惑を解く、ある場合には法医学を進める、そういう点で法医学の鑑定書の公表という点について、どのような考えを持っておられるか、この点、大臣のお考えを承っておきたい。
  134. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) その点につきましては、先ほど来申し上げました通りに、今後の捜査関係もございまするし、この事件のみならずその他の事件捜査という問題につきましていろいろ関係もございまするからして、私たちは、今のところではそういうものを提出するということについてはお許し願いたい、かように考えております。ただ問題は、法医学の学問上の問題として将来法医学の研究の上において必要だという問題がありましたときには、そういう点についてまたよく慎重に考えさしていただきまして態度をきめたいと、かように考えておる次第でございまして、要は、今後の検察運営の上における重要性、それからまた法医学の学問の発展の上に必要だという、その点とのバランスと申しますか、比較でございまするか、そういう点について十分検討さしていただきたい、かように考える次第でございます。
  135. 坂本昭

    坂本昭君 この法医学の問題については、衆議院議長の清瀬議長が、拷問捜査ですか、例の何とか事件、二俣事件と幸浦事件ですか、あれで清瀬一郎弁護士が非常に法医学に対する攻撃をやっておられる、それから最近は正木ひろし弁護士が、これは古畑博士に対して法医学に対する挑戦ということをやっている、私たちやはり医学を学ぶ科学者のはしくれとしては、まことに心外にたえないのです。そして今度の実際に当たってみまして、法医学がいかに信頼されていないかということが非常によくわかりました。私は医者の一人として実に腹が立ったんです。いろいろ検討してみますと、たとえば有名になった下山事件、あのときの古畑教授の鑑定と中館教授の鑑定は相違いまして、他殺と自殺、ところがあのときの轢死体に対する解剖といったもの、あの当時わずかに三例くらいしか経験しておられなかったらしいですね、今度あたり圧死、これが初めてですよ、私は実にびっくりしたのです。日本の法医学というのは、相当医学の中でレベルが高いと思っておったら一番低い、しかもその内容たるや秘密主義、これはこの法医学を進展させない、ひいては裁判に暗黒性を持ってくるのではないか、このことは、私は別に社会党だからいつも反対するといっているのではなくて、これはもう清瀬議長は弁護士として率直に言っておられる、私はそういう点で、今回は今の鑑定書の公表問題について、大臣としては、おそらくこの法務委員会では今後も取り上げていただけると思うのです。どうか今のようなその場だけではなくて、一つ率直に真剣に御検討いただきたい。  なお、これはもう少し私鑑定などにおいて問題点があるので申し上げたいのですが、法医学の鑑定一般について考えてみますと鑑定の嘱託書と鑑定の許可書、これをささえて鑑定が行なわれるのですが、嘱託についての指揮権、一体これはだれにあるのか、一番大事な鑑定の嘱託の指揮権がだれにあるのか、何だかその辺がはっきりしない、これはこの際一つ法的な根拠はどうであるか、局長にお伺いしておきたい。
  136. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 検察官、検察事務官または司法警察職員が鑑定を嘱託する根拠の規定は、刑事訴訟法の第二百二十三条でございます。それによりますと、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。」こういうことになっておりまして、その鑑定を嘱託する手続のこまかいことは、裁判所または裁判官が鑑定を命ずる場合の百六十五条以下の規定が準用されることになっております。
  137. 坂本昭

    坂本昭君 そこで現実の問題として非常に私異様に感ずるのは、東京都ではなるほど地検の指揮によって行なわれております。ところが、地方へ行きますと、地方では警察によって行なわれている。これはあとでまたいろいろほかのこともお尋ねしたいと思いますが、少なくとも東京の場合と地方の場合とは違う。これは一体将来どうするおつもりか、またどちらをとっていかれるのがよろしいか、これは非常に大事な点なので、御方針を承っておきたい。
  138. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) 現行の刑事訴訟法の建前といたしましては、司法警察職員が捜査の第一次責任を負うものといたしまして、殺人その他の犯罪が起きた場合に、一般には司法警察職員が鑑定を嘱託しておるようでございます。ただ東京におきましては、従来からの慣例もございまして、そういう事件が発生した場合には、東京地方検察庁検察官において鑑定を嘱託するというしきたりになっております。これは、警察庁の人手の問題、それから捜査の初めから検察官が犯罪現場にも出かけてよく犯罪現場にも通暁するといったような慣例が、以前から東京地検にはございまして、そういう関係でそうなっているものと考えておりまして、私どもといたしましては、今にわかにこれをどちらかに統一するというようなことは、そこまで考えておりません。
  139. 坂本昭

    坂本昭君 そこで、東京都あたりで行なわれている監察医の制度ですね、私先ほどある監察医に対して非常な批判的なことを申し上げましたが、この監察医の制度、これはメディカル・エクザミナーといいますか、アメリカから来た方式だと思いますが、これは昔は七大都市でやっていたのが、今ではたしか東京、大阪、神奈川というふうに減少してきている。これはなぜ減少してきたのか、そうしてまたこういうふうなことを皆様としてはどういうふうにお考えになっていられるか、承りたい。
  140. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) この監察医の制度は、犯罪捜査をする者にとっては非常に好ましい制度だと、かように考えておりますが、その管轄は都道府県の管轄でございますし、さらには厚生省がこれを指導しておる立場になるんじゃないかと思います。できますならば、もう少し拡充していただきたい、かように考えておるんでございますが、各都道府県における財政上の理由等によりまして、だんだん戦後できましたものも、あまりたくさんできたわけじゃありませんが、漸次減らされていくように聞いておりまして、われわれとしてはそういう傾向は好ましくないと考えておる次第であります。
  141. 坂本昭

    坂本昭君 結局私は予算の問題だと思うんですね。これは一つ法務委員会でも御検討いただいて、結局こういうことがうまくいかないために非常に裁判鑑定がまずい結果になって、人権が侵害されるということもあると思うので、この点はわれわれも検討しなくちゃならぬと思うんですが、そこで伺いますが、一体鑑定料はお幾らを中館教授や上野教授にお払いになっておられますか、鑑定料の予算単価は幾らですか。
  142. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) よく調査いたしまして、お答えいたします。
  143. 坂本昭

    坂本昭君 これは私は医者ですから調べたんですが、一件八千円ですよ。一件八千円だと、今度の樺さんあたりのあれですと、顕微鏡の標本を何十枚、何百枚作るんですね、大へんなものですよ。まず八千円は材料費で飛んでしまうんです。大学だと、大学の一般研究費の中から出ますから、あとはちょっと人件費あたりに回るかもしれません。しかし、とにかくこの八千円の鑑定料というものは、人間一人の運命をきめるのにしてはあまりに安過ぎますわ。法務大臣、ちょうど予算編成期ですから、来年はこんなことでごたごたせぬように、一つ単価も考えていただきたい。この鑑定料の問題が、今日の日本の法医解剖の組織を非常に私は動かしているんじゃないかと思うんです。それは結局、地方へ行きますと、また減っていくんです。減っていきますと、ずっと低い単価で解剖をやるとなるというと、みんな損だということです。ではなぜそれを引き受けるかというと、悪い意味のボスなんです。何か警察にちょっとやっておけば、いろいろ困ったときにうまいこといくというようなことで、科学の上に成り立った法医鑑定じゃなくて、そういう経済の上に成り立った法医鑑定になってくるわけです。それがいろいろな各種の事件で、正木さんが「法医学への挑戦」といって、こんな本を書いているんです。全く医学に対する冒涜であって、私ども腹が立ちますよ。しかし、本を読んでみると、その通りなんです。たとえば正木さんが非常に怒っているのは、この中に、古畑教授がある実験をされたんですね、そうしたところが、それがおかしいので、正木さんが直接入院中山の古畑教授を訪問してちょっと文句を言ったんです。そうして、こう書いてありますが、「結論だけをそのままにして実験の方を変更した。その鑑定訂定書の原稿は、私が博士を訪問した二十三日の夜から二十四日中に作成され、二十五日にタイプができ、二十六日に裁判所に届けられたものである。」、つまり八千円の鑑定料でしょう、実験なんかをやり直したらとても大へんですから、内容だけ変えてしまったんです。デスク・ワークでぽろぽろと変えてしまって、結論だけを同じようにした。これは、こうなったら、鑑定は要らないんですよ。もうとにかく、何といいますか、たとえば物理学の実験でも、自分で作って、こういうふうにやったらこうなったといって、それで発表するんです。全くひどいものです。この場合は、三里塚事件というのは、これで青年が一人、殺人犯に問われるか、無罪かという境目になっているのです。そこで正木さんは、「私は現代の日本文化の奥底に何かおそろしいものがあって、それと対決しているような深刻な気持になった。」、そういうふうに法医学の悪口を書いているんです。私は、これはやはり鑑定料の点などにも関係があると思うんです。どうかこの点については、各大学が維持できるように十分の予算を組んでいただきたい。特にこれに関連して申し上げたいのは、この司法解剖の例数がどの程度か。あまりこまかいことを申し上げてもあれですから、私から申し上げますと、最近は非常に減っておりますね。東京は御承知通り東大と慶応だけが独占しているんです。昔は東大だけが独占していた。これを慶応が割り込んだについては、これは法務大臣のお耳に入れていいものかどうか問題ですが、何かこれはリベート関係があったようですね。そうしてやっと慶応が入って、今、東大と慶応だけです。これは私は独占というのはよくないと思うんですね。しかし、それにしても、東大と慶応と合わせてたしか三百例ぐらいですから、困っているわけですよ。東大と慶応合わせて三百、大阪が二百、神奈川が百ぐらい、千葉が六十というような調子なんです。非常に少なくて、なかなかできないということですね。まあこれは何といいますか、解剖そのものについての一般的な迷信もありますが、少なくとも司法解剖などは、たとえば島倉ショーの圧死事件、二重橋のような場合、もっと詰めてやっていただく必要があるのではないか。ですから、私の希望としては、大学に独占させないで、広く門戸を開いた方がいいんじゃないか。またそのためには、東京のような場合には、何かセンータを作って、そういう何といいますか、法医学の鑑定センターといいますか、解剖センターといいますか、そういう所でどんどんと若い法医鑑定者を育成をしていく、そういうようなこともお考えになっていただけないものか、この際、ちょっと伺っておきたいと思います。
  144. 神谷尚男

    説明員神谷尚男君) ただいまの坂本委員の御意見はきわめて傾聴に値するものだとわれわれ思っております。われわれの方といたしましても法医学界の現状につきましては決して満足いたしておるものではございません。特に大学において法医学を志す、一生の仕事としょうという者がだんだん少なくなっていく現状にあるということも耳にいたしまして、今日のように検察裁判ということが、できるだけ確かな物証によって行なわれるという傾向がせっかく醸成されつつあるのに、そういう現状であるという状況につきましては、きわめて嘆かわしいものであると考えておるのであります。そこで、昨年でございましたか、法務事務次官から文部省の事務次官にあてまして、大学の法医学の講座の充実ということも特にお願いいたしまして、予算上の手当も十分していただけるように文部当局の方にも法務省からお願いしたということもあるのでございます。ただいま坂本委員からそういう点について好意ある御発言があったのでございますが、十分その御趣旨を体しまして、われわれとしても今後この充実をはかって参りたいと存じます。どうか当法務委員会におかれましても、その方向をできるだけ推進していただきますよう、この席を借りまして、お願い申し上げたいと存じます。
  145. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  146. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 速記を起こして。  本件に関する本日の質疑はこの程度にとどめたいと存じます。  各委員から要求のありました資料につきましては、すみやかに本委員会に御提出を願います。  以上をもって本日の調査は終了いたしました。  次回の委員会は九月六日午前十時より開会する予定であります。  本日は、これをもって散会いたします。    午後一時四十三分散会