運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-09-01 第35回国会 参議院 文教委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年九月一日(木曜日)    午前十時十四分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     清澤 俊英君    理事            安部 清美君            北畠 教真君            加瀬  完君    委員            小幡 治和君            杉浦 武雄君            野田 俊作君            千葉千代世君            豊瀬 禎一君            相馬 助治君            柏原 やす君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    文部省管理局長 福田  繁君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査  (名城大学に関する件)  (当面の文教政策に関する件)   ―――――――――――――
  2. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  本日は、まず名城大学に関する件につき調査を進めます。質疑の通告がございますので、この際発言を許します。
  3. 杉浦武雄

    杉浦武雄君 私はきわめて簡単でありますけれども名城大学のことについて政府質問をいたしたいと、かように考えておるものでございます。  元来、私ども名古屋に住んでおるわけでありますが、名城大学生徒六千人を持っておりまして、その地方においては相当勢力を持っておる学校であるのみならず、生徒といたしましては遠く九州あたりからも来ておるというような状況でございまして、すこぶる価値の高い学校となっておるわけでございます。その学校が数年来混乱を来たしておるのであります。御承知の方が多いと存じますけれども設立者であります田中寿一氏はその創設当時の努力に引き続いて払われたる努力というようなものは、相当高く買っていいのではないかというふうに思われる人であったと思われます。ところが、創業者というものは、必ずしもこれを維持していく上において適当な人でない場合があるのでありまして、田中さんもその一人ではないかというふうに思うのであります。元来一つ仕事に本気になって打ち込みますと、その仕事――自分から離れたその仕事自分個人経済とを混同するきらいはいつでも生ずるのであります。この場合にもそれがあったろうと思うのです。田中さんは学校経営と、それから自分の個人的の経済とをこれをごっちゃにして、初めのうちは自分のものを学校に入れ込むという形でやっておられたろうと思うのです。そうして成功する。もっと大きくしようために金が足りない。金が足りなくなったときに、今度はいろいろな意味において学校の金を自分の方へ使うといったようなことは、これは人間として陥りがちな欠陥でありまして、田中さんにもそれがあったのじゃないかと思うのです。乱れの初めはそこから始まりまして、ここ数年来、乱れ乱れておるわけであります。  現在、愛知県におります私ども国会議員に属する者は、全員、田中さんのやり方に反対をいたしておるのであります。また、われわれに連なる実業家その他の有力者方も、おおむね私どもと同意見を持っておるのであります。また、生徒、卒業生などもほぼ同じでありまして、私はこれほど多数の者が意見一致でもって立ち向かっておる仕事というものを見たことがないと言ってもいいくらいに、皆私どもと同じような考えを持っておるわけであります。  かようなわけでありまして、私どもは数年来、この学校のうまくいくようにという方向について、努力をいたして参っておるのであります。荒木文部大臣が就任なさった当初におきましても、私どもお目にかかって学校状況を陳情いたしました。その当時、大臣は、自分もそのことは聞いておるのだというので、非常な関心を持っておられることを聞いて感謝いたしたわけでありましたが、最近私どもはこの問題に関して払いましたる一つ方法は、これは本年の八月十日の衆議院における文教委員会で、横山委員政府に対して質問をいたしておるのであります。それによりますと、政府の答えは幾つかあるのでありますけれども、結局は、この問題は円満に話し合い解決をしていきたいと思っておるのだ、それがその方面に努力を払ってみてもうまくいかないような場合に、それは法律でいくという手もあるかもしれない、しかし、法律でいった場合に、必ずしもよき効果が得られるかどうかということは、これは疑う理由もあるのだと、こういうようなわけで、そうはいきたくはないのだ、なるべくそれは避けたいのだ、で、できることならばここに文部省が選んだ調停委員等があって、骨を折ってくれているから、それらの人の働きによって今までこの文教に携わっておった関係のあった旧理事というような方にはやめてもらい、これに関係のない新しい理事に立ち会ってもらう、参加してもらう、こういうようにし、さらに地元の人の協力を得、国会における諸君の気持なんかを参酌して、ものをまとめていくというこの基本線でものをまとめていきたい、こういう考え文部省考え方である、こういうふうにおっしゃっておられたのであります。そこで私はお伺いをいたしたいのでありますが、文部省はまず第一に理事に対して辞職勧告をなさっていらっしゃるのであります。その勧告行方は一体どうなったのかということをまずお伺いいたしたい。同時に、それが効果がない場合には、効果がないっぱなしで済むものなのか、どうも仕方がないとあきらめるべきものなのか、何かまだ打つ手がないのか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  4. 福田繁

    説明員福田繁君) ただいまの御質問でございますが、御承知通り名城大学紛争問題につきましては、文部省といたしましても、今おあげになりましたような基本的な考え方で処理して参ったのであります。しかしながら、御承知通り名城大学理事者間の紛争というものは、これは訴訟の連続でございます。従って、法律的な問題を解釈して参りませぬとすっきりした形にはならないと思っております。で、七月以来三人の調停委員をお願いいたしまして、いろいろ御苦労願ったわけでございますが、すべてその調停委員勧告はいれられないという状態に至っております。従って、その結果、この辞表を出さなかった七人の役員に対しまして、文部大臣から辞職勧告が行なわれたのであります。しかし、その結果につきまして、はなはだ残念でありますけれども、その勧告もついにやはり承認されない、いれられないというような状態になっております。で、一たんは辞表を出したこともございますけれども、直ちにそれを撤回するというような事態になっているわけであります。従って、そういう状況で今日まできておりますけれども、この問題は法律に従った勧告でございますので、現在の法制のもとにおきましては、勧告以上の拘束力はない、しかし、その趣旨文部省といたしましては、勧告いたしました以上は、何らかの形においてそれを実現するように努力しなければならないことは当然のことだと考えております。で、いろいろ法律問題が輻湊いたしておりますが、今月の十九日に一つの問題が、仮処分決定でありますが、決定いたしまして、そうして今までの理事長でありました田中寿一さんは理事長職務執行停止を受けました。そうして新たに裁判所から職務代行者が選任されましたので、その職務代行者中心にいたしまして、私どもの今まで考えておりました理事会の再編というものができるかどうか、いろいろ現在検討中でございます。一つきっかけといたしましては、今回の職務代行者の選任ということがきっかけになりはしないか、かように考えておりますので、私どもとしましては、少なくとも文部大臣から出されました勧告行方は、あくまでその趣旨を貫きたい、こういうような決意をもって現在進行させておるわけであります。
  5. 杉浦武雄

    杉浦武雄君 浦部全徳君が新しく理事長を代行することになっておるようであります。浦部君は、私は個人的によく知っておる人でありまして、裁判所でもなるほどいい人を選んだものだというふうに、私自身が感心しておるようなわけでありまして、この人を中心にあの問題を処理していこうとすれば、これ以上の方法はないだろうと私自身も思っているようなわけでございます。ところが、何しろ田中さんはそう簡単にいく人ではないのでありますから、浦部君の声望なり、浦部君の手腕相当のものであるといたしましても、なかなかそう簡単に浦部君の力でいけるものではないと思うのであります。争われたる仮処分の問題におきましては、両方とも精を尽くして争っておったようでありまするから、おそらくは田中さんの方でもこれでおれは勝つのだというふうに思っておったであろうと思うのであります。ところが、ふたをあけたところが負けてしまった、こういうことでありますると、強気の田中さんでありましても、勝つと思ったのが負けたのでありますから、いささか自分立場に不安を感じ、疑惑を感ずるであろうと思うのであります。そこで、今が一番いい働きかけのときであるというふうに思いますので、私は文書による勧告というようなこともむろんお願いいたしたいと思いまするけれども、さらにそれよりも誠意を尽くした説得、納得させるように田中さんを説くという文部省働きかけというものが必要じゃないかと思うのであります。強気の田中さんのときにそんなことを持っていっても、さらにこたえないというような人であるように思いますが、今はおそらくはいささか弱気になっていると思うのであります。ことに、現在ただいまでは田中さんは理事長をやめられ、田中さんが頼みにしておりました理事二名が理事の地位を失ったということになっておりまするが、さらに来月の何日かになりますと、もう一つ仮処分の問題がきまって参ります。それがきまって参りますると、不幸にして田中さんの方が都合が悪くいきますと、理事の数が田中さんの方が不利だ。同数でありますけれども委員長がそこを采配をふるうわけでありますから、考え方によれば田中さんの方が不利だというような立場に追い込まれて参るのであります。かようなわけでありまするので、今こそ田中さんを説得する一番いい時期だ。負けてしまって、法律でぎゅっと押えてしまう、こういうような手荒なことをせずにでも、今ならば話し合い田中さんは応ずるのじゃないかという状況にあるように思われるのでありますが、文部省はだれか向こうにやるなり、あるいは田中さんを呼ぶなりしてそういう手をお尽くしになるお気持はありませんか。私はそれを希望いたしておるわけでございます。
  6. 福田繁

    説明員福田繁君) ただいまの点でございますが、今度の仮処分決定におきましては、御承知通り今までの理事会というものが、法律、規則に基づく正常な運営がなされていない、いわばめちゃくちゃな運営をやってきた結果、こういう判決になったものと私ども考えております。従って、この機会裁判所判決がありまして、今後理事会運営というものが正常化されていく一つきっかけをつかむものだと考えております。ただし、今お述べになりましたように、現在の理事会の構成は田中派が多数を占めております。従って、今月のあるいは末になるかもしれませんが、もう一つ仮処分決定というものがなされるかどうかによって、代行者職務執行やり方というものが変わってくるのじゃなかろうか、こういうふうに私ども考えておるわけであります。従って、浦部代行者がこの名城大学再建について信念相当自信を持って事に当たるというようなお話のようでありますので、私どもといたしましては、もしさような見地で各界の協力を得られながら代行人再建をはかっていくということであれば、やはり先決問題は、理事会中心にして大学の再建をはかっていくのが一番いいんじゃないか、かように考えておりますので、昨日も浦部代行人に私はお会いいたしましたし、また三人の調停委員の中で二人はきのう浦部代行人にお会いして種々懇談をいたしたようなわけであります。従って、私どもはそういう事態を、浦部さんも少し様子を見てほしいと言っておりますので、その方に若干の時日をかけても様子を見たいと考えております。従って、今おっしゃるような、出中寿一さんに会ってどうだというようなお話もございますけれども、聞くところによると、そうまだ弱気のようには見受けられぬのであります。従って、直ちにその説得がきくかどうかこれはわかりませんけれども、しかしながら、機会があれば私どもお会いすることは喜んでお会いしたいと思います。
  7. 杉浦武雄

    杉浦武雄君 田中寿一氏に会うことも考えておるけれども、次の仮処分決定の結果を見た上の方がいいじゃないかというようなお考えのように聞こえましたけれども、もしそうでありまするならば私は逆だと、こう思っておるのです。さきの仮処分決定を見ますると、かなり詳細にいろいろなことが書いてあります。これを読んでみますると、田中さんも負けるべくして負けたというようなふうにお考えになっておるのじゃないかと思います。従って、次の、今月の中ごろだか十九日ごろだったかというようなお話がありますけれども、その第二の仮処分決定でも、ことによったらこれは負けやしないかというような気持は起こしておられるだろうと思うのです。そのときが実は一番いいときであって、田中さんが負けてしまって、まる負けになってどうにもならないのだというところまで持っていって押えるということは、円満主義文部省の態度とも思えぬような気がいたしますが、その点についてもう一つ考え直し願って、一刻も早く解決をさしていただくというふうにしたいと思うのです。というのは、学年の募集の時期に差しつかえて参りまして、ぐずぐずしておりますると、学生募集ができぬといったようなことになるおそれがあるので、私は今の時期においては一刻も早くこの問題を解決すべきだと、かように考えておるのでさような意見を申し述べるわけでございます。
  8. 福田繁

    説明員福田繁君) ただいまの御意見でございますが、これは御意見として十分尊重いたしたいと思っておりますが、しかしながら、昨日私ども浦部代行人といろいろお話をいたしたわけであります。しかしながら、その浦部さんのお話の中にも、田中さんの問題については自分もいろいろ考えているので、今後しばらく成り行きを見てほしいと、こういうようなことも言っておられるのでありまして、従って、私どもとしては今直ちに会っていい結果が出るかどうかはわからないと思います。今中しましたように、むしろ浦部さんは、聞くところによりますと、名古屋でも非常にりっぱな、信望のある方のように伺っておりますので、この方が何か成算を持っておいでにならなければ、私はこういう混乱した学校代行人を引き受けるはずはないと思います。従って、そういった面からきのうお会いしましたときにも非常な信念と何か確信らしきものを持っておいでのようでありました。とりあえず浦部さんにさしあたりの理事会正常化をはかるための一つの処置は、あるいは学校のいろいろ教職員学生団体等で実際の経営管理をやっている姿はすみやかに解消するというような非常に強い信念を持って事に当たられておるようでございますので、私どもとしてはその線を一応御信頼申し上げて、今後しばらく見守った方がいいんじゃないか、こういうふうな考えを持っておる次第であります。
  9. 杉浦武雄

    杉浦武雄君 もう一点お伺いしたいのですが、この事件を解決するにあたって非常に困る点は、法律的のきめ手がないというような点だと思うのです。  実際、いろいろお伺いいたしてみましても、自分自身が調べてみましても、これでもってぎゅっと押さえるのだというようなものが見当たらないわけでございます。それが非常な難儀な点で、やるとなれば学校解散といったような最後の手しかないのだというような厄介なことになっておるのであります。この前の衆議院委員会のときに出たお話の中に、結局するところ私立学校法の不備がこういうような問題を引き起こしたのだ、だからそういうような点については取り調べるつもりであるというようなお言葉があったのですけれども、あの当時から現在までに若干お取り調べになったことがありますか。これは何もこの学校の問題だけで言うわけじゃありませんけれども、関連して、大切なことだと思ってお伺いいたします。
  10. 福田繁

    説明員福田繁君) この前、衆議院委員会で申し上げた点でございますが、現在の私立学校法の中には、学校法人管理運営の面におきましていろいろな不備な点があります。従って、制定当時に予想しなかったような問題もいろいろ起きて参りまして、確かに法人が自主的に管理いたしますにいたしましても、管理運営の面で非常に欠陥がございます。それを寄付行為で補うということも可能でございますけれども、やはり法的な根拠を持ちませぬと、いろいろ厄介な問題が起きますので、そういういろいろな不備な点を研究すべきじゃないかというようなこともございまして、たまたまこの名城問題もありまして、この名城のいろいろな理事会運営あるいは評議員会運営等が、ちょうど私立学校法の盲点をついたような事柄が相当ございます。そういったことも一つの刺激になりまして、学校法人運営調査会というものを文部大臣諮問機関として今年の春設置いたしました、これはもう数回以上、いろいろ研究いたしております。  要するに、私立学校自主性公共性をもって運営されるべきでありますけれども、とかく裁判ざたになりますと、他の場合と違いまして、やはり学生生徒教育という問題がありますので、そういう教育に非常に重大な支障があるというような状態になりますと、これはやはり法人管理運営としては非常に困る面が多々あるわけであります。従って、少なくとも学校紛争が起きないようにするには、何か法律的に不備な点があれば、それを研究して是正すべきじゃないか、また、紛争が起こりましていろいろやってみましても、何らいい方法が見つからぬということであれば、何かやはりそこに措置を講ずべきじゃないか、こういうようなことで、大体学校紛争に限定いたしましても、この八月の暑い盛りにも相当研究をいたして参ったのであります。従って、これは他日答申が出るものと考えておりますが、そういった点を目下研究いたしております。名城の問題に必ずしも関連はいたしておりませんけれども、しかしながら、名城の問題が長引くというようなことになれば、あるいはさようなことも実現しないと困るのではないかというような意向も調査会の中に相当強くなってきているわけなんであります。  以上が大体の概要でございます。
  11. 杉浦武雄

    杉浦武雄君 もうちょっと。文部省が新しく裁判所から選任せられた浦部代行人を、ある程度まで信用をなさって、あるいは非常に強く信用なさって、その手腕に信頼しているというお心持はよくわかりました。私自身浦部君を信頼しておるのでございます。どうか一つこの浦部君の働きにできる限りの援助を与えてやって下すって、この問題が円満に解決するように文部当局のいろいろな御配慮をお願いいたしたいと、こう思います。  以上で終わります。
  12. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 今の問題に関連して。昨日配付された「名城大学問題経過報告書」、名城大学学長日比野信一名で出されておるこの経過報告ですね、これは大体文部省の把握としては真実を伝えていますか。
  13. 福田繁

    説明員福田繁君) 実はその報告書を私は全部読んでおりませんのですが、大体聞くところによると、今までの経過教授側でいろいろ資料を集められて作ったように聞いております。大体よろしいんじゃないかと思っておりますが、しかし、詳細は私まだ見ておりませんので、その点はお答えできないと思います。
  14. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 この報告書が大体真実を伝えておるとし、またただいまの杉浦先生質問を通じてもわかりますように、大体この問題を取り上げて一カ年近くなると思いますね。そうして先ほどの監理局長答弁では、浦部さんという人ですか、この人を信頼して当分まかせておるということですが、その方向は是認できるとして、大体名城大学問題をいつごろまでに正しい方向文部省として解決しようとするめどを持っておられるかどうか
  15. 福田繁

    説明員福田繁君) これは二十九年から足かけもう七年も紛争を続けている問題でございますので、私どもとしても一朝一夕に簡単に片づく問題ではないと当初から考えております。しかし、ことしの一月に三人の調停委員を委嘱しました際には、調停委員も、学生教育の問題は非常に重要であるからこれはゆるがせにできないというので、できるだけ早く――少なくともまあその当時の考え方としては一学期中に何とか解決をはかっていきたいというような心組みもあったようでございますけれども、しかし、実際にやってみますと、まあ志と違いまして現在のような情勢になっております。従って、私ども学生教育という問題を考えた場合には、なるべくすみやかにこれは解決をはからなければならぬと考えておりますけれども、現在のような状態でそれがなかなか遅々として進みにくいというような状況でございます。
  16. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 文部省の見通しというか、あるいは解決に対する決意というものが今の答弁でははなはだ不明確で、情勢分析答弁のようなんですが、私の方から具体的に聞くのですが、少くとも来年の――今年度の終わりですね、新しく三十六年度の学生募集し始める前には円満解決できる、ないしはしたいというお考えありますか。
  17. 福田繁

    説明員福田繁君) 私ども考えとしては、それは三十六年の四月を待たなくとも解決さしたいと思いますけれども、全体の方々協力的な立場に立ってて下さればそれは直ちに解決すると思いますが、あくまで協力しないという方たちがおればこれはやはり相当長引くということは御了承いただきたいと思います。
  18. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 今の段階協力的でないと判断しておられるのはどういうグループの人ですか。
  19. 福田繁

    説明員福田繁君) これはまあ学校経営陣だけを考えた場合におきましては、まあ従来の田中寿一さんの独裁的な経営について事が起こったのでありますから、従って現在のところでは田中寿一さんの一派の方々理事、監事にも多数を占めております。そういう方々は現在のところ協力しようというお気持はないように見受けております。
  20. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 この報告書にあります全学教授団教職員組合学生自治会等は、現段階においては文部省考え方、あるいは方針というものについて好ましい状況協力的ですか。
  21. 福田繁

    説明員福田繁君) これは、私どもはあまり多数の方にお会いしたわけじゃありませんけれども、しかし、しょっちゅう私どものところにいろいろな御連絡や意見を持ってきて下さる、そういう代表の方は少なくとも私どもの、文部省のとっている措置協力して下すっているものと考えております。
  22. 相馬助治

    相馬助治君 この問題は何回も衆議院、参議院の文教委員会で取り扱って、しかもまた今日に至るまでにも解決をしない、この過程においては、若干文部省が本問題について認識を誤っていたのではないかという節が従来はあったと思うのですが、ただいまの質問に答えての福田局長答弁はきわめて明快で、今日までのこの紛争の原因が明らかにやはり田中理事長にあるという立場をとっておられることは私は正しいと、こういうふうに思うのです。というのは、私は当時文教委員長であったために田中自身にも会いましたし、調停に立たれた河野勝斎氏にも前後三回ほど会って話を承りましたが、本問題について田中理事長の方は教職員組合行き過ぎだとか、学生会行き過ぎだとか、教授の中によこしまな考えを持って学校を乗っ取る傾向の者があるとかいうようなことをたびたびおっしゃっておりますが、数ある中には一人二人は行きがかり上暴言を吐いたり何かしたりした人があるいはあるかもしれないけれども、問題は教育問題以前であるということを福田局長も、そうして文部大臣も明瞭に御認識なすっていただきたいと思うのです。それを認識されているような傾向があるので喜んでおりますが、一面で言えることは、田中さんの考え方は、おれの作った学校だから煮て食おうと焼いて食おうといいじゃないか、こういうことに尽きるのです。そうして得てして学校だとか会社の独裁者というものには、独裁者の欠点の反面にいい点を持っているものです。何か信念的な、何か筋の通ったりっぱな考えというものがあるのですが、この独裁者というものは、もう全く類例を見ないむちゃくちゃな独裁者で、さっき申しましたように、おれの学校だからどうしようといいじゃないかと、この考えが一貫しておるので、どうにもきめ手の法律がないというような点では、非常に監督者である文部省に対して私どもお気の毒に思います。全く調べてみると杉浦さんが指摘したように、きめ手の法律がないので困るのですけれども、しかし、文部省の全面的な力をもってして、そして事態を今のように、福田局長のように誤らずに認識されていれば、私はこの問題は解決し得る問題だと、こういうふうに考えます。従って早く、この参議院、衆議院文教委員会がこの種の一つの大学の問題を四回も五回も同じことをやる、こういうことがないように、一つ荒木文部大臣においてはでき得る限りの力をもって学年たちのために断固として解決をしていただきたい。そのためには田中寿一氏にこの場から去ってもらうということが何にもまして先決的な要件であるということは、私は時間がないから長々とこれ以上は述べませんが、いろいろな観点から本人にも前後二回にわたって会って、そういう上から確信を持っておりまするし、前の文教委員会における各委員の結論もそうであると思いまするので、一応付言して、特に文部省に対してお願いをしておきたいと思います。  それからなお、蛇足のようですが、一言つけ加えたいことは、杉浦先生がおっしゃるように、田中さんが今参っておるから、今話したらいいじゃないかというこの考え方、ちょうど私が文教委員長のときにそれと同じ考え方をしたのです。誤解を受けるのじゃないかと思いながらも田中さんに信書を出して、私は田中さんに来てもらって、長時間会って、ある点では首を下げて頼んだのです。私があなたに何か会うということは、教授団、学生団から誤解されるかもしれない、しかし、これは教育の問題だから、一つどうなのだ、あなたの設置者としての功績はだれも認めておるから、あなたが静かにその席を去ることによって、大学もきっと残るし、また私も顕彰するようにしてやるということを言うたのですけれども、てんで棒にも何にもかからぬという状態なので、杉浦先生のお考え方も非常にいいと思うのですけれども、そういう機会が二回も三回もあって、事ここに至って、文部省でもさじを投げかけているということですから、一つその辺も考えられて、ちょっと一部から批判を受けても文部省のこの問題は責任でないのですから、断固としてやって下さいということを私はお願いしたい。
  23. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 文部大臣からちょっと御所信を。
  24. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 杉浦委員始め皆様方から、名城大学のことでいろいろ御心配をいただいている趣きを承りまして、非常に心丈夫でございます。  これより先、私、就任早々、現地の国会議員の方々の御来訪をいただきまして、そのとき事情も承りましたし、その後もまた担当局長等からも経過等を一応は承ったわけでございます。そのときも申し上げましたのですが、今もお話が出ました通り、すっきりと文部省立場から結論を出すという方法がございません。そうでなくても、しかし、私立学校というものは、やはり学校法人という立場においても、また、大学の自治という誇りからいっても、こういうふうなごたごたを世間に見せるようなことそれ自身が不名誉なわけですから、なるべく自主的に御解決を願うというのが第一義ではなかろうか。幸い超党派の立場において地元の国会議員の方々中心になって、さらには名古屋市当局その他もこの国会議員の方々のお立場に立って、円満解決をしたいというお気持も多分にあり、また具体的にも御努力を願っておるということを承りまして、非常に心丈夫に思ったわけでございます。  そこで、結論的には、具体的にいつまでにどういうやり方でこうなるのだ、あるいはするのだと申し上げかねますけれども、御意見等も十分に念頭に置きまして、誠意をもって、なるべく早く学生たちが困りませんように、円満にこの問題が決着点に到達するような心がまえでおるということを申し上げまして、お答えにいたしたいと思います。
  25. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 他に御質疑はございませんか。――御発言もなければ、本件に関する質疑はこの程度といたしたいと思います。   ―――――――――――――
  26. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 次に、当面の文教政策に関し調査を進めたいと思います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  27. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 きのう大臣と各委員との間に応答された、日教組と文部省との関係の問題ですが、大体、昨日の応答によりまして、大臣が日教組というものをどのように見ておられるかの概略を把握することはできたのですが、なおこの点に関しまして、なお不明確な点があると思いますので、さらにただしたいと思います。  昨日の委員会におきまして大臣は、日教組と交渉を持たない理由を幾つかあげられましたが、私の把握いたしましたところでは、その一つは憲法その他の法律上から交渉しないのが常識であるという法律理論。第二には今回の日教組の要求書の内容が主として立法に関するもので、これは国会において議員または政治家を通じてやればよいのであるという、交渉の内容、題目に対する、何といいますか、不適当だという判断。第三には交渉の相手は、これは第一と関連するのですが、任命権者である県教委であるから、自分はその資格もないし、従って、何か建設的な意見でもあれば文書に書いてくれ、だから交渉相手ではないので交渉しないのだという考え方。それから第四は、昨日も加瀬委員からきょう問題にすると言われたのですが、いわゆる日教組の体質改善要求と申しますか、日教組の考え方自分の、ないしは自分たちの、あるいは文部省のと言ってもよろしいと思うのですが、考え方と相いれないものであるから話し合ってもだめなんだ、大体、以上大まかに要約いたしますと、言葉のてにをはは違いましても、大略としてはそのように大臣が、文部省と原則的に交渉を持つ必要がない、あるいは回答文にあるように、その資格も権限もないのだ、こういう考えの根拠とされておると判断したのですが、以上のように把握して差しつかえありませんか。
  28. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 大体、今仰せの通り考え方であります。ただ最後の、立場が違うという言葉でおっしゃいましたが、私は昨日、日教組のよって立ちます基本が倫理綱領にうたわれている、その法則のもとに日教組というものは成り立っている、こう存じますが、その考え方が現在の憲法秩序下において考えました場合、日教組自身がそうお考えになることは御自由であるにいたしましても、その考え方に立って文部大臣と交渉するとおっしゃる意味で立場が違う、こういうことで申し上げたように記憶いたしております。それ以外は仰せの通り気持でおります。
  29. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 まず第一にお尋ねいたしたいのですが、昨日の二、三の委員質問に対する大臣の御答弁にも、たとえば陳情とか、口角あわを飛ばすような激論、こういったことでなくして、じっくり話し合ったような場があればいいとか、演出効果たっぷりに云々とかいう言葉があったと思うのです。このことは私が第一に申し上げた憲法その他法律上から考えて、大臣の日教組に対する回答文の中に資格がない、あるいはその権限がないといった問題を越えて大臣考えておられる、あるいは日教組が要求したいわゆる団体交渉の形式とか、あるいは全く見解の違ったものに対して激論が展開されるといったような具体的な障害になる問題が排除されれば、言いかえますると、その形式にこだわらなければ法的な問題、あるいはその権限、義務の関係は別にして、きのうも大臣が言われたように、日教組五十万の団体が存在するという厳然たる事実に立って、また、従来も日教組の正式代表と文部大臣ないしは総理大臣がたびたび話し合いを続けてきたというこの慣行に従って、法律あるいはその権限、義務の関係は抜きにして話し合いをしていく余地ないしは考え方は残っておると私は大臣考えを把握したんですが、そのように判断してよろしいですか。
  30. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 私は、中央交渉という、団体交渉めいた場を持つことは、先ほど御指摘下さいましたような考え方に立って、なすべきではない、かように思いますが、日教組の執行部を形成しておられるほどの方々は、それぞれ現場教師としてのベテランであろうと思います。その現場教師のベテランたる、体験に基づいての現場教師の改善意見――これをこうしたらということは当然あり得ると思います。そういう貴重な、建設的なお話を現場教師それ自身立場において聞かしてやろうと、こうおっしゃるのならば、これは、これを拒む理由はない、そうは思います。しかしながら、それが話し合いとかなんとかいう言葉の置きかえで表現されましょうとも、日教組という倫理綱領に基礎を置くところ団体の意思を体しておいでになりまする限り、その立場においては、やはり制約された行動半径しかないはずでございますから、そういうお話ならば、話し合いその他の穏やかな表現がございましょうとも、本質的には同じことじゃなかろうか、まあそういう気持できのうも申し上げたかと思います。そういうふうに私は考えております。
  31. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 八月二十九日付の内藤初等中等教育局長名による槙枝日教組書記次長に対する連絡事項というものは、多少の表現の技術の問題は別として、基本的な考え方は、昨日来の大臣答弁ないしはお考え方と一致しておると、いわゆる正式の文部省の見解である、このように判断してよろしいですか。
  32. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) その通り御理解下さいましてけっこうでございます。
  33. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 地公法の五十二条の一、二、三項を御存じだと思うのですが、これによりまして任意団体としての日教組が組織されておると思うのですが、現場教師の偽わらない意見というのは、大臣考え方が、私はAという小学校でこのような教育をし、あるいは算数をこういうふうに教えてきたが、ここに隘路があるとか、文部省の予算の出し方はこういう点で科学振興上支障を来たしておると、こういたっ範囲内であればよろしいけれども、日教組の大会という正式機関の決定による、地公法五十二条にいうところの給与、勤務条件その他の事項という、いわゆる職員団体が交渉することを認められている事項に関する限りは、一切、日教組を相手にする必要はないというお考えですか。
  34. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 本来の教職員組合の本質的ならち内における問題につきまして交渉されますことは、これはあり得ると思うのです。しかしながら、それは、その相手方はあくまでも――教育制度が地方分権の建前をとっておると私は心得ますが、その意味において、やはり任命権者たる都道府県の教育委員会というものに対して、本来の教職員組合として取り上ぐべき課題についてお話し合いをなさるべきであって、それをいきなり、直接文部大臣とお話し合い下さいましても、少なくとも地方分権的な特色は現われ得ないということのみならず、きのう以来申し上げておりますように、それ自身が飛躍しまして、途中を抜きにして適当でない。ですから、都道府県の教育委員会とお話し合い下すって、できることならば、教育委員会ないしは教育長と教職員組合とのお話し合いが客観、妥当性を持った結論として導き出されたものを教えていただけばありがたい。もし、意見が違いましても、そのふるいにかけた結果が地方色を盛り込みながら私どものところにお伝えいただいた方が本筋だ、ほんとうにまじめに検討すべき対象として御意向が出てくるものだ、こういう気持でおります。
  35. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 先ほどお尋ねしました八月二十九日付のものにも書いてあるのですが、あるいは日教組の要求書その他の文書にも書いてあるのですが、御承知のように、大臣は過去数カ年間において、少なくとも日教組という団体と文部省というものとが主として文教行政、その中で特に勤務評定を間にはさんで紛争を続けてきたというふうに一般の父兄は理解しておると思うのです。そうしてこの事態ができるだけ早く解消してほしいという希望を持っておったことも保守革新を問わず争えない事実であると思うのです。従って現段階においても、いわゆる自民党とか、あるいは社会党、共産党といったような、それぞれ一定のイデオロギーを持つ父兄の立場は別にして、いわゆる世にいうところの国民あるいは父兄大衆というものが、ここで新たに新大臣のもとで、あるいは新内閣のもとで、文部省と日教組の争いが再度激化してくることを望んでいないということは容易に判断できると思うのですが、この判断について大臣はどういうふうに把握しておられますか。
  36. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) これまた先日申し上げましたように、今の憲法に基づき制定せられた諸教育制度を通じまして、教職員に限らず、一切の公務員が、任命権者のなすところの勤務評定を通じて人事管理がなされることに異存のあるべきはずがない。法治国においてはこれは当然のことであり、少なくとも教職員以外の公務員は、中央、地方を問わず、全部が民主主義下の国民代表たる国会できまりました法律制度に基づく勤務評定に服しておるわけであります。ひとり日教組の、特に指導部からのハッパかけによりまして、教職員だけが絶対反対を呼号された。現にことしの行動方針にも明らかに廃止させるということを御決定になっておる。そういう基本線に立って日教組がやかましく言われるから、文部省との間に不必要に混乱が起こるかのごとく見える。私がお目にかからないと、それが今度は都道府県の段階に逆戻りをして、紛争が起きるとよくおっしゃいますけれども、都道府県の教育委員会ないし教育長、むろん全国的な立場文部省、何もそこに混乱を起こそうとすることさらな意思はないということを私は全国民が知っていただいておると思う。何となれば、法治国であるから。法治国であるから、守らない方があるから混乱が起こるのだ、こういうふうに国民一般はお考えになっておると思います。ですから、混乱が起こるであろう、それをどう思うかとおっしゃいますけれども、一般国民は日教組が混乱させないようにさえ決心して下さいますれば天下泰平だと思っておると思います。
  37. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたはやはり誤解と錯誤に基づいて御発言なさっておると思うのですよ。勤務評定の問題というのが起こったのは、あなたのおっしゃるように、地方分権に基づく都道府県教育委員会なり、当面の評定者である地方教育委員会なりが勤務評定というものをやり出した、それで問題を起こしたのではない。文部省がやり始めたから問題が起こった。しかも、法律々々と言うけれども、昨日も申し上げたように、法律に制定してある精神とははるかに遠い立場で勤務評定というものを解釈したところに問題がある。率直に言うならば、あなたは地方分権であるから地方で交渉しろと言うが、それならば都道府県教育委員会なり地方教育委員会なりで交渉して、勤務評定は中止いたしましょう、しばらく見合わせましょう、あるいは形式を変えましょうという取りつけが各関係者の間にできましたら、それを文部省は率直に認めますか。今までは認めておらなかった。ハッパをかけたという言葉をあなたは申しましたが、ハッパをかけたのは文部省です。猛烈なハッパをかけて地方教育委員会の独立性もあるいは都道府県教育委員会の法で許された行政権というものもまるで押しかぶせたようなやり方をしてきたのは文部省だ。そこで文部省と交渉しなければこの諸々の問題は解決できないという解釈が、これは日教組だけではない、国民大多数のものも当然考えている。そういう点を、十分私は文部大臣のお人柄は信じます、信じますけれども、そういう過去の文部行政というものを十二分に御認識の上御発言なさいませぬと、あなたの今までの御発言は誤解と錯誤に基づく御発言としか思えません。この点御承知でございますか、今までの経過を。
  38. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 一々記録的なことを調査する時間的余裕もございませんから全部を知っておるとは申し上げかねます。申し上げかねますけれども、先ほど来申し上げますように、教職員だけが例外ではないはずですから、そこで、文部省が従来お説の通りのことを申しましたにしても、これは法律を守るということは民主主義の基本原則だ、いろはのいであるから、そういうふうにやろうじゃありませんかという角度から言っただろうと思います。それ以外に、本来の文部大臣が地方分権に差し出がましく言えない。その限度を、らちを越えて言ったことありせば、それは言い過ぎであり、出過ぎであろうと思いますけれども、少なくとも文部省にそういう出過ぎたことをやり得るような心臓の人はいないように思うのでございますが、(笑声)結局は、私はその受取り方のニュアンスの違い、誤解等はあったと思いますけれども、基本的な考え方でそういうめちゃをやったことはあるはずがない。かように感じております。
  39. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは感じでは困ります。あるはずがないかあるか十二分に御調査をなさった上今度の問題の処理に当たっていただきたい。あるはずがないことがあった。第一、勤務評定というものを現段階のような形式でやろうと発意した都道府県教育委員会なり、地方教育委員会なりというものはありません。文部省が指示されたことからそもそも起こった。法律的と言いますけれども法律には国家公務員と地方公務員の平等の取り扱いの原則というのが御承知のように基本的にありますが、国家公務員である国立学校教職員の勤務評定の方法と地方教職員の勤務評定の方法とはまるっきり違います。府県になりますと、府県では、勤務評定を実施しておらないのに、任命権者が府県である教職員は実施しておる、こういうこともあります。勤務評定というものを実施するという形はとっていますけれども、現実的には実施していない府県がたくさんある。市町村になりますと、ほとんど勤務評定を実施しておらない。しかしながら、身分が市町村の公務員である教職員は実施されておる。しかもその実施は、当然これは都道府県教育委員会関係であるならば、府県の人事委員会というものが発議者になって、人事管理の立場からこれは当然行なわるべきだ。ところが、そういう地方人事委員会勧告を待って都道府県教育委員会が勤務評定の計画を立てたというところはどこもございません。人事委員会はそっちのけです。法律的に非常に不備です。こういう点を十分御認識いただきたいと思う。  それから、関連で立ったついでにもう一つ言いますが、あなたは倫理綱領というものを日教組が持っているからああいう考え方では交渉に当たられない、話し合いしたってむだだと、こう言われる。あなたの御説明の中には出ていませんけれども、新聞紙の文部省関係の方、あの御発言の中には、あれは一つの革命理論だ、こういうようにおっしゃっておる。社会秩序を破壊する革命理論である、こうおっしゃっておる。そうであるならば、日本の法律は破防法というのがあるのですから、破防法の対象で日教組という団体は解散を命ぜられるべきだ、あるいは破防法の対象として当然の問題が起こってくるわけです。そういう問題がないということは、憲法で保障されておる団体であり、あの考え方も憲法の中に許容されておる考えだと認めなければならない。それならば、憲法で許容されておって、何も法律の処罰の対象にならないような団体の考え方を、文部大臣が一方的に、あれは革命理論であるとか、あれはけしからぬ、ああいう考え方の者は会わないと言うことさえ、あなたが憲法というものを軽視するところである。憲法で保障されておる団体、憲法で保障されておる考え方というものに対して、あなたが独断でけしからぬということこそ憲法軽視だと私は思うのです。前後の二つについてはっきりとお答えをいただきたい。
  40. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) これは、倫理綱領及び初めて教師となる人にということは、これはあわせて総合的に読んだ人で、私が指摘しますように、革命理論というか、階級闘争理念は明らかに書いてある。また、その階級闘争の理念に基づいて、教育の場において、社会革命をしろ、それをモットーとしていくのだということも明らかに出ておる。これを読んで、そう感じ取らないやつは、感じ取らないやつが誤りであると私は思います。破防法を適用されないじゃないかとおっしゃいますけれども、だから憲法に認められておるのだ、それを私みたいに言うことは憲法を軽視しておるのだというようなお話ですけれども、憲法は共産党といえども認めておりますから、(笑声)今の倫理綱領が理念的にこうだということと、破防法を適用しないじゃないかということとは別個だと思います。破防法の適用は私の承知します限りでは、共謀して凶器を持ってある行為をしなければ適用しないとなっておりますから、すれすれのところではあろうけれども、(笑声)それほどではないということであって、これは私の論議すべき限りじゃございません。法務大臣がお答えしなければ適切じゃございませんが、常識的に考えてもそういう筋合いのものだ。これは私のみならず、子供たちの父母、一般国民の大多数は常識的にそう思っております。口に出して言わないだけであります。
  41. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたはわけがわからなくなると常識的々々々と言うけれども、あなたの常識は一般国民の識者には通用しない常識ですよ。いやしくも一国の文教の府にある者の自己の常識、しかも一般に通じないような常識論をもって施政の方針とされては大きに迷惑だ。(「私どもは非常に通じている」と呼ぶ者あり)それは、通ずるという人があるならば、自民党の一部のよくよくがりがりな、まるで非常識な者にしか通じない議論だ。(「その通り」と呼ぶ者あり)それだけ申し上げて、あとは倫理綱領の問題ではとっくり申し上げます。
  42. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 常識というのはあくまでも常識であります。それが国民的な常識であるかいなか、国民の大多数がそう思っておるかどうかは何で判断するか、それは私が言ったからそれがきまるものじゃむろんございません。それは憲法に基づいて、主権者が意思を表示する正式の場である選挙を通じて国民の意思は現われると思います。その国民の意思が明瞭にこれを是認しておる、そういう意味で申し上げたのであります。
  43. 岩間正男

    ○岩間正男君 革命の問題、倫理綱領の問題は、今豊瀬委員質問をやっておるのですから、これはあとに回しましょう。  そこで、よく法治国々々々と何回も使うんですね。都合のいいときは使う。しかし、都合が悪いときは引っ込めておる。こういう使い分けをやっておる。そこで、今問題になっている、団体交渉をやるやらない一つの根拠になっている地公法の五十二条ですね。この問題を関連してちょっと聞いておきたい。府県の単位団体を作ること、これはいい。そうしてさらにまたそのあとの第二項、第三項で連合体を作り、これに加入する、これはよろしい、こう認めている。私たちはこの法案が出され、これを審議する過程の中で――これは審議記録はあるだろうと思う。なぜこういうものが必要か、その連合体を認める必要があったか、これは労働慣行があったわけです。実際は連合体なんかを認めたくはなかったのかもしれない。しかし、憲法で保障された団結権、団体交渉権、さらに日教組の今までの労働組合の長い歴史がある。政府との間に折衝をずっとやってきた。そういう中で労働慣行が明確に出されてきて、それを何とかこの法文の中にうたって生かそうとしたのが、この地公法の連合体を作る、あるいはこれに加入する自由を認めたところの原則じゃないかと私は思う。この点御存じですか。この点を認めれば――何のために連合体というものが必要なんですか、対文部省との交渉が必要であった。そうしてそういうことは今までの運動の中に事実たくさんあったわけだ。ここに今、日教組の闘争史があります。これは文部省の記録じゃないけれども、もっとある意味では大衆的なものです。この中に、たとえば昭和二十二年の三月だったと思いますが、日教組の前身の全教組の時代、当時私は責任者をやっていたわけですが、時の文部大臣高橋誠一郎、これは徹夜にわたって交渉をしたことがある。その中の記録にはっきり現われている、文部省にも記録があるでしょうから、それを読んで下さい。記録がないとすれば怠慢です。労働組合運動のあり方をはっきり認めている。そうしてそのような既成事実をちゃんと交渉の中で明確にされて、そういう事実を生かすために地公法の中へこれがはっきり努力されて入ったものです。ここのところを文部大臣はどう解釈されるのですか。あなたは法治国々々々と言っているが、法律の解釈そのもので、しかも今焦点になっているこの法律の解釈というものはそれは非常にごまかしじゃないか。どういうふうに解釈されますか。都合いい解釈だけじゃだめですよ。今までの歴史的事実と労働慣行の上にはっきり立って立法精神というものを明確にやってもらいたい。記録あるのですから……。
  44. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 今の御指摘の点はあり得たと思います。それは、そもそも公務員法を与えましたのはマッカーサー司令部であったことは御承知通りであります。当時、労働三法も同然ですけれども、当時のマッカーサー司令部の考え方は、あらゆる官公吏にことごとく団結権、団体交渉権、罷業権を与えるという建前であった。そうすることが日本をばらばらにするのに都合がいいとGHQが思ったものですから、そういう法律を与えておった。そのときには、そうしなければ、団体交渉しなければ文部大臣法律違反であった時代のことであると思います。その後、二・一スト等が出まして、驚いたマッカーサー司令部が法律の改正を要求して、国家公務員は、たしか昭和二十三年の暮れだったと思いますが、百五項目の改正要綱を英語で書いて与えた。それに基づいて御無理ごもっともの国会はその通りに改正をした。地方公務員法についても、その後一、二年おくれたかと思いますが、そういうことで団体交渉権などというものは官公吏には適当でない、そういうことで法律上は団体交渉権がなくなったわけでございまして、今日では日教組……(「既得権が残っている」と呼ぶ者あり)既得権がございましょうとも、法律上剥奪されたわけでございます。今日では日教組も文部大臣も、御指摘のような意味での団体交渉の資格は両方ともないわけだと私は心得ております。
  45. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 問題を先ほどのことに返したいのですが、だいぶ私の質問に対しては通り道をして異なった答えをされましたが、大臣は私の郷土の大先輩ですので、その点はがまんいたしまして質問を継続したいと思います。  まず第一に、先ほどの大臣答弁の中にもあったのですが、今岩間委員意見を出したのですが、私がお尋ねしたのは、たとえば地公法の五十二条の1、2、3、それぞれいわゆる交渉、任意団体としての組織が認められているし、同時に地公法によって交渉事項というものが法律で定められておりますね、この事項に関する限りは、五十二条において法律が任意団体を認めているという建前から、交渉事項として認められている事項であるならば、話し合いに応じるつもりがあるかどうかということを言っているのです。
  46. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは応じることはあり得ると思います。しかし、前提があります。純粋の教職員組合ということであるならば、交渉団体じゃないのですから、団体交渉はできませんけれども、お話し合いという場を持ってもしかられることはなかろうと思います。しかし、惜しむらくは、今の日教組は任意団体であることは御自由でございましょうけれども、たびたび申し上げているように、特異の、独特の、職員組合を超越した他の労働組合にもないような独特の理念のもとに団結されております。その代表者――執行部が交渉だ何だとおっしゃいましても、その問題に関してとおっしゃいましても、これは適当でなかろう、そう思います。
  47. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 ただいまの大臣答弁は加瀬委員が御指摘しましたように、明らかに憲法に違反すると思いますが、このことは後ほどの倫理綱領の問題で触れたいと思います。それは私が先ほど申し上げましたように、一般的な父兄というものはここであらためて文部省と日教組との間のいずれが正しいか、間違っているかは別問題として、紛争を再起してもらいたくないということは否定できないと思います。池田内閣がきわめて低姿勢のもとに発足しているのもあの岸内閣の暴虐を国民におわびしたまことにりっぱな態度であろうと思います。この中でひとり文部大臣だけが非常に高姿勢だというのは、これは私どもが社会党に所属しているとか、あるいは特定のイデオロギーを持っているという立場を離れ、一般父兄の見るところ、この点は大臣が十分考えてもらいたいと思う。  私は話をさらに進めていきたいと思うのですが、先ほど大臣がおっしゃった法治国という、だから勤評を守るのは当然だとおっしゃいます。大臣は少なくとも地方の市長もやられましたし、また現在は大臣ですし、立法府にも属しておりますので、憲法は十分御承知と思いますが、憲法では、国民の基本的人権の確立と同時に、義務を定めております。法治国において法律を守るというのは国民の義務に属する問題です。それと同時に、二十幾つかにわたって憲法では基本的人権を明確に保障いたしております。従って現行法規であれ、あるいは憲法であれ、改正したいという意見を持ち、改正すべき努力を持つのはこれは教員であれ、農民であれ、国民の基本的人権に属する問題です。従って勤務評定というもの、あるいは文教政策に関する法律が好ましくないと思い、教育上支障があると考えれば、いかなる国民も主権者としてこれを改正するように要求し、あるいは憲法に定められる請願権を行使したり、あるいは陳情あるいは憲法で保障するところの集会、デモ等の行動に出るのは当然であります。大臣は単に義務の方だけ強調せずして、これを改正ないしは新たに制定していこうとする教職員の、ないしは一般国民の努力を否定するような考え方は捨ててもらいたいと思います。これは私の意見ですが、ここで具体的な質問に移りますが、任命権者であり、交渉の当体であるところの都道府県教育委員会話し合いをし、そこで意見の一致し、地方色の盛り込まれたものを持って来ればいいということでありますが、加瀬委員も指摘されたように、一つは現在の教育諸問題というものは地方教育委員会においてすべて決定できるものではありません。特にその予算のごときは大きく国家予算に義務教育の場合、負っています。さらに文教政策においてもまたしかりです。従って、たとえば医師会が厚生省と交渉し、あるいは農民が農林省と交渉する。このような法的にオーソライズしない一般の人々でさえも、憲法の主権者であるという建前から当該行政庁の長官に会って話をするのは当然ですし、要求をするのもまたしかり。まして大臣は逆にこういった人々の該当者の意見を進んで聞くようになさるのが現在の憲法下の大臣として、あるいは文部省としての当然の建前だと思う。従って、地方教育委員会と都道府県教組との要求交渉あるいは話し合いというのは、これは大臣が御存じないはずはないですが、年間のうちに数十回、多いところでは百回以上繰り返されていると思う。そうしてそこで一体となって文部省に要求している事項もあります。また意見の合わない事項については日教組という五十万の任意団体が意思決定をして、文部省大臣話し合いをし、その中から全国的な紛争ないし教育の改善のために努力したいという熱意を示すのは当然であると思います。従って、先ほどから、昨日から大臣がたびたび言っておられる資格権限という問題は別にして、やはりそれぞれの人々が大臣を相手に問題を解決したいと意思し、このことを文部省話し合いをしたいという意思決定をした場合には、法律上の権限、義務の問題を除いて大臣としては胸襟を開いて五十万の団体と原則的には話し合いをすべきものであると思うのです。その中で大臣考えておられる日教組に対する注文なり、あるいは個々の問題は、こういうふうな持ち込み方をしてもらいたいというのは、その中で、初めて相互の話し合いの中で解決さるべき問題で、あの人間はおかめだからおれは女性と認めませんといったような封建時代の将軍のような考え方一つの団体の代表を見ていくことは、大臣はお忘れになっていると思いますが、全国都道府県教育長協議会でなされたあいさつの中にも前文にはきわめてりっぱなことを言っておられる。これをお忘れになったのか、一官僚が勝手に書いたのを読まれただけで忘れたのかもしれませんけれども教育というものは政党政派の別にかかわらず、不変のものであって、大臣の更迭によってゆらぐものでない、とこういうふうに言っておられます。従って、私は交渉の内容は法的な問題、いろいろの疑義があろうけれども、過去数カ年間、文部省と日教組が日本の教育界において激しい戦いをした事実に立脚して、現段階において新たにここに荒木大臣のもとに日本の教育界に紛争を持ち込むの愚を避けて、その話し合いの内容なり、方法なりは、十分両者の代表の中で解決されるとして、交渉であるとか団体交渉であるとか、法的な権限はどうかといった問題は抜きにして、大乗的な教育界に新たに紛争を起こさせないという立場に立って、日教組と原則的に話し合いをしてもらいたい。このように考えるんですが、大臣はどうですか。
  48. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) お前は憲法を知っているかということからお話が出ましたが、私も日本国民として一応は心得ているつもりでございます。基本的人権、自由権の尊重すべきことも当然のことと心得ております。ただ同時に、基本的人権と自由権は乱用を許さない。社会公共の福祉との関連において、これに貢献される責任を負うという限度内において基本的人権と自由権があると心得ております。さらに、教育委員長会議等で私が冒頭に申しましたことを引用なさいまして、忘れておりはせぬかという仰せでありましたけれども、けんけん服膺して、自分の信ずるそのままを申し上げておりまして、きのう以来申し上げているはずでありまして、明らかにその線に沿って、そのらち内において申し上げているつもりでございます。新たな紛争を起こさないために会えとおっしゃいますが、会えば騒いでやらない、会わなければ騒いでやるぞという考えをまず一つお捨て下さいませぬと、混乱というものは避けられないと思います。ですから、混乱があるかもしれないから心配だとおっしゃるならば、ぜひ私は皆さん方から、日教組の執行部に会わないからといって騒ぐなよということを一つ忠告していただきたいと思うのであります。
  49. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 言葉じりをとって論難、攻撃するのは、私の快しとしないところですが、会えば騒がないということでなくして、やはり民主主義の原則というものは、それが人生観なりあるいは社会観なりの異なるものがあっても、最後は相手の立場というか、その思想なり、内容なりを容認するかしないかは別問題として、そういう人間が存在するという、人権宣言の立場や、日本国憲法の原則論に立って、当然その相手の立場を容認しながら話し合いをしていくというのが原則論です。ましてあなたは大臣ですから、たとえば小学校の校長が何人か集まって、こういう問題がありますといって大臣に会いに来たときも、当然会ってしかるべきであるし、あるいは音楽教育会といったような特定の教科の代表が来ても会われるのがいいことであるし、昨日も大臣が言われたように、五十万の団体が十数年にわたって現存しているし、そうして日本の文教行政において文部省政府と今日まで、話し合いという言葉が悪いか、あるいは交渉という言葉は不適当か別問題として、相互に問題解決努力してきたことも事実ですし、またそのことをはさんで紛争を起こしてきたことも事実です。だから、やはり大臣というものは、日本の文教行政に関する限りはできるだけ当事者との話し合いをし、意見を聞きながらそれを取り入れて進めていくという原則的な態度をとるべきであるし、まして五十万の団体を認めると昨日おっしゃった以上は、やはりその代表と会って日本の教育界の前進に努めて努力されることが至当だと思うんですが、このお考えもやはり賛成できないとおっしゃるのですか。
  50. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) おっしゃるそのお気持はよくわかるのでございます。で、私が一個人であれば、自分の常識を高める意味においても日教組の委員長にでもだれにでも、こっちから進んででもお目にかかっていろいろなお考え承りたいと思います。しかしながら、文教のこの責任者として、また学校の教職の日教組の構成員五十万とともに教育の面において手を携えて奉仕をする立場にあるわけですから、その立場の者が、公の立場においていわば集団を形成して、団体交渉だ、おれたちはこういう考えだぞという、特異の、普通の公務員という立場からは考えられないような特別の理念に立ったその集団を相手として会うの会わないのとおっしゃっても、かえって事がめんどうになって、責任の帰属が不明瞭になる。それを公の立場にあるがゆえにおそれているので申し上げているだけでございます。たとえば、妙なたとえですけれども、私も日教組の教職員の五十万も同じ家庭内において、親子というか、兄貴と弟というか、そういう関係で子供たち、その背後にある父母、そういう人たちによき教育をという立場でやっておるわけで、それにもかかわらず、その子供どもがたくさんいて、十二人もおって、それがわざわざうちから外へ出て、街頭で大声で面会々々と叫び出さぬでも、同じ部屋の中で向かい合って話したらどうか。そういう気持を申し上げているだけでございまして、何も私は日教組の執行部であるから憎しとなんぞ思っていない。できるだけ、同じ教育のためにともに手を取り合って、建設的な話し合いをしていきたいという気持は十分に持っております。ただ、限定された法治国においては考えられないような前提に立った集団を形成しておられる立場からの代表だから、ちょっとお目にかかっては弊害があるだろうと、そう申し上げているだけのことで、奇妙きてれつなことを、ことさらに申し上げようとは少しも思わない。もうあたりまえの、雨が降ったら天気が悪い式の常識そのもので申し上げておるわけです。
  51. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大体答弁が堂々めぐりし始めたと思うのですが、なるほど教職員というものと教育委員会、ないしは文部省といったものも、日本の教育を前進させるという立場では前段でおっしゃった通りであるし、従って、日教組五十数万で組織される組合員あるいは教職員も教研集会を持ち、教科課程の問題について重大な関心を持ち、いろいろ努力しておられる。この点で内輪から、何というか、同じ教育を進める立場に立って話し合いをしたいものだとおっしゃるお考えはよくわかる。このお考えについて私は何も否定しようと思いません。しかし、これはそこまででとどまるならば日本国憲法も必要ではありませんし、日本国憲法の一つの建前が団結権というものを生存権として肯定しておる立場も否定されると思う。少なくとも憲法で、あるいは法律において団結権が保障され、組合を作り、それを通してその当事者と、自分たちの憲法で定める賃金とか労働条件等について交渉をするというのは、近代の一つの個人尊重の思想の最も花と言われるものである。従って、たとえば民間企業におきましても、何かものを生産し、利潤を上げていくという立場に立てば、ある面においては経営者とそこに働く従業員というのは一致する面がありましょう。それはあなたの言われる前段の同じ立場に立つのであります。しかし、一たび給与を上げてもらいたい、労働時間を短縮してもらいたいということになれば、これは内輪という立場でなくて、正式に対等の立場に立って経営者と交渉する権利を与えなければならないというのが憲法の定めであります。こうしなければ人権は保障されないし、人類社会は発展していかないというのが近代法理論の建前であります。だから前段の場合もありましょうし、それは大臣がたびたび文部省においても、その他においても現場の教員と会っておられる、そのことで十分と思う。しかし、少なくとも法律でオーソライズされておる職員団体、そしてそれからさらに発展しておる任意団体の代表が会いたいという立場に立てば、それは個人の立場で話せばいいじゃないかということを抜きにして、先ほど申しましたように、その人が共産主義思想を持っていようと、あるいはアナーキストであろうとも、憲法の建前からすると、資本主義理論を持っておる人といささかの差別もなく、あなたとしては教職員として遇すべき立場にあるでしょう。これは憲法の定めですよ。従って、日教組が、あなたの考えからすると好ましくない倫理綱領のもとに結集していようとも、少なくとも地公法五十二条に定められておる任意団体であることには間違いない。従って教職員五十万の全員が、共産主義を持っていようとも、あるいはアナーキストであろうとも、その任意団体の代表として会うということが当然のことではないですか。相手の思想なり傾向が自分たちと全く相いれないことにあるからということで会わないということは、これは封建時代の考え方です。新憲法はこれを明確に否定しています。だから私が言っているのは、大臣の真意は、交渉の形式とか、テーマとか、あるいは方法といったものについて日教組に注文があり、その限りにおいてはあなたが言われたように私どもも十分に日教組の幹部に話をする余地があるけれども、倫理綱領を掲げている以上は会えないということは、これは明らかに大臣答弁は憲法違反です。信仰、思想、いかなる門閥において、差別されない――あなたはそうしたら日教組が資本主義理論に立った組合になればお会いになれるのですか、自民党の政策を謳歌すればお会いになるというのですか。その点はどうですか。
  52. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 教職員組合が法上認められている、その通りであります。また教職員組合として本来の教職員組合を作る目的が、今あなたおっしゃったように、やれ給料の問題だ、あるいは労働時間の問題だ、そういうことに通常教職員団体の関心を持つべき範囲内においての交渉団体であることは私もわかります。しかし、その交渉相手はやはり任命権者たる、現場において地域的な教育の第一義的な責任者という立場を制度上とっている都道府県教育委員会であるべきだ、これまたお認め下さることと思います。ところが、実際はどうかとなると、倫理綱領の理念のもとに任意団体、全国団体をお作りになっているのだけれども、それはすでにしてお取り上げになる課題そのものが、テーマそのものが教職員組合本来のテーマをはるかに超越した非常に広義的な政治団体の掲げるような政治課題をお取り上げになり、それを中心にして、そして文部大臣と団体交渉とおっしゃるから、そういう問題をかりに持っておいでになってもどうにもならぬでしょうという、実際問題としてきのう来申し上げているようなことでお会いしない方が適当だと、こう申し上げておるのであります。団体交渉じゃなくたって会ったらいいじゃないかと、それは共産主義であろうと何であろうと私はお会いするということは一向やぶさかでない。やぶさかでないけれども、団体として、代表としておいで下さるならば、現在の憲法秩序を守るという性格を持ったものとしておいで下さらなければ、具体的に相談する以上は個人としておいでになるのは共産主義であろうと何であろうとお会いするにはやぶさかでないが、団体としての意思を伝えるために、またその課題を相手にのみ込ませるようにというのであるならば、やはり今の憲法秩序内に、すなおに万人が認める姿でおいでになりませぬと、これは李下に冠を正すように思われてもお互いに迷惑だ、こういうことでございます。
  53. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 ちょっと問題が派生しますが、ただいま大臣は、憲法秩序を破壊するがごとき形においてという趣旨のことをおっしゃった。日本教職員組合五十万は、現在の大臣が把握される段階では、日本国憲法を破壊する団体である、ないしは破壊する目的を持っている団体である、破壊しようとする行動をとっている団体である、このように規定しているように受け取れるのですが、その点を明確に御答弁願いたいと思います。
  54. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 憲法は法治主義、議会主義、デモクラシーを基本としている。その趣旨を取り入れまして教育基本法もできております。教育基本法には、教育は中立であるべきと書いてある。ところが、倫理綱領や、「新しく教師になった人々に」というやつを読んでみますと、教職員には中立はあり得ないと明確に書いてあるという前提のもとに団結せられておる方が、その団結の上に立った集団意思を代表しておいでになるという方とはお会いしても結論は出ないであろう。また、そのこと自身が憲法及び教育基本法から流れてくる法律制度には正面から立ち向かおうとする一種の政治団体としてならばわかりますが、政治団体ならば、これはやはり国会おいで下さいませぬと、行政府おいで下さってもどうにもなるまい、そういうことで、もうどの角度から見ましても今の姿で今の課題をとらえ、今のやり方おいで下さる限りは、お目にかからない方が国民の大多数がそれを望んでおる、こう思いますからお目にかかりたくない、こういうことであります。
  55. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 なかなか大臣は言葉のあやが上手で、回りに煙幕を張るような、核心をつかないような御答弁をなさいますが、私の質問したのは、日本教職員組合という団体は憲法を破壊しようとしておる団体であると認められておるか、あるいはそういうことをすでに行動に移しつつある、ないしはそれを目的とする団体であると認定されるかどうか、日教組という任意団体の認定をお尋ねしておるのです。簡単にお答え願います。
  56. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 教職員組合というのは、いわば経済団体であるべきものと私は考えます。にもかかわらず、日教組の現実のあり方と倫理綱領の掲げるところでは、教職員組合の範囲を逸脱しておるという点において、すでにして教職員でありながら、教職員組合と名づけつつ看板に偽りがある状態じゃなかろうか。現実行動もまさしく法を無視した行動を今までしていらっしゃった、そのことを日教組の執行部はやれやれとけしかけられたことも事実です。そういう現実行動を裏づけとして国民が見てとっている日教組の今の姿は、少なくとも私は今の憲法秩序の法治国としてあるまじき姿であろうと考えます。
  57. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 憲法秩序にあるまじき姿と今おっしゃったのですが、先ほどは日教組が憲法秩序に明らかに違反してと、こうおっしゃったわけです。それは言葉じりはとらえません。しかし、大臣法律とおっしゃる場合と、私が言っているように憲法を破壊し、あるいは破壊しつつある団体であると認定するかどうかは非常に大きな問題です。日本の法律の中にも憲法違反の法律もかなりありますし、裁判所で問題になった法律もかなりありますし、法律と憲法というものはウエートが違いますから、私が申し上げなくてもわかります。だから、私が端的にお尋ねしておるのは、前々回の大臣の御答弁の中で日本教職員組合か憲法秩序を破壊しておる団体だとおっしゃったから、それを目的とする団体という範囲で認められておるのか、あるいはすでに憲法秩序を破壊している団体と認めておるのかと聞いておるのです。
  58. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 目的においてすでに教育基本法にいうところの教職員に中立はあり得ないといっておられることも、私は妥当でない一点だと思いますが、現実の行動も、国民全般が知っておりますように、法を無視した現実行動があった。法秩序を維持することが今の憲法下の法治国の当然の要請であると思いますけれども、悪法は法にあらず式の考え方を持っていらっしゃるかどうかわからぬが、現実には集団の名において法を無視した言動は幾らでもあった。それは私が申さぬでも日教組御自身が御存じであり、国民の大多数が知っています。ですから、そういうことはどうも穏当でないと国民一般が私は見ていると、こういう前提に立ってものを申し上げておるわけであります。私は裁判官じゃございませんから判決を下す資格はございませんよ。ございませんが、国民大多数の、少なくとも子供を持つ父母の気持を率直に代弁する意味合いにおいて申し上げれば、私は以上のことは正しい批判であると心得ております。
  59. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、同僚議員も関連質問したいということでございますので、私は日教組のきょうの一番大きな中心になるところの倫理綱領の問題をどう見るかということは後ほどにいたしまして、大臣考え方全体を集約しますと、倫理綱領がある限りは、また倫理綱領によって日教組が行動を展開しておる限りにおいては、日教組と会うことはできないのだ、これが改善されれば、少なくとも地公法五十二条並びに五十五条ですか――五十何条かにこれこれの事項について交渉することができるし、文書によって協定することができるという条項がございますね、給与あるいは勤務条件等について。そういう法律において定められている事項に関する限りは、いわゆる任意団体であれ、職員団体であれ、文部行政を進めていく上に、あるいは日本の教育を前進させていく意味においてプラスになる、あるいはマイナスになるような事態があっても、当然行政官であるあなたがいみじくもおっしゃったように、裁判官でない行政官であるあなたとしては、話し合いを進めていくという基本的な考え方をお持ちだ、こう判断してよろしいですか。
  60. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは再々申し上げますように、交渉してよろしいと定めてある事柄について当面の交渉相手たる都道府県教育委員会というものと御交渉なさるのは、これは当然であり、また交渉に応ずるのも教育委員会として当然の責任だと思うのであります。それは一つも否定いたしません。ところが、それについて交渉相手方にあらざる文部大臣のところに、教育委員会をほうったらかして、いきなり直接団体交渉をしようじゃないかとおっしゃっても、教育委員会から私はしかられるでしょう。おれを差しおいてなぜちょっかいしたかとしかられたくないから私はお目にかかりたくない。その意味では、教職員組合として、本来、法が認める、あるいは慣例が認めている限度内の交渉をなさることは、これは当然権利であり、また教育委員会が今申し上げるように、これを相手とすることは当然のことである。それ以外の政治問題においてならば、教育委員会といえどもお相手いたすわけにはいかぬだろうと思う。法律の制度によって定まった教育の実体そのものを、現に法律はそうでありながら変えるのだという問題を教育委員会におっしゃっても、法律を改正しない限りは実行できない。また、その政治課題を私のところに持ってきて、どうだ話し合いをしようじゃないかとおっしゃってもできもしないことだし、そのことは改正の意見があるならば、文書でもお出し下さると、かえって明確になり、参考になってよろしいとお答えを前に申し上げましたし、私の方の回答の言葉にも申している通りでございまして、繰り返し何度も申し上げて、はなはだ恐縮でしたが、二度、三度にわたるお尋ねですからお答え申し上げます。
  61. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 地公法五十二条の三項の任意団体を結成してよろしいという定めは、岩間君が指摘しましたように、当時は団体交渉権あるいは団体協約権もありました、それが次第に先ほどあなたが経過を述べられたような形においてだれが反対であった、賛成であったは抜きにして、とにかく地公法が制定されたわけですね。従ってあの任意団体を作ってよろしいというのは、お互いがダンス・パーティをやったり、レクリエーションをやったりするために作ってよろしいというのではない。少なくとも職員団体を結成するという目的は、憲法、法律の建前から定められた条項についていわゆる労組法並びに労働基準法でいうところの相手と交渉するために作ってよろしいということですよ。    〔委員長退席、理事北畠教真君着席〕  従って、職員団体が他の職員団体と連合体を作るということを法律が許すということは、その団体が一つの意思を決定することであるし、下級の職員団体が交渉権として認められておる事項についてその団体が委任されることができるし、従ってその団体がそれぞれの必要なところに話し合いを進めていくということも認めておるわけですよ。教育委員会と交渉するだけでは解決できない問題がずいぶんあるでしょう。従って、大臣と交渉していく、文部省話し合いをするということは、十数年の慣行であります。また、あなたが今までのいろいろの経験から御判断になっても、当然必要なことだと思うのです。だから先ほどもちょっとお尋ねいたしましたように、法律で定められておる事項ないしはそれ以外のことでも、いわゆる行政の長であるあなたが、いかなる団体であれ、教育に関して会いたいと申し入れ、そうしてそれを希望するならば、会って、そこであなたの意見を言い、その団体の意向も開いて日本の教育を進めていく、あるいは文教行政を推進していくというのがこれが民主主義のルールだと私は指摘しているのですが、そのことも否定されるのですか。
  62. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 民主主義の団体であるとおっしゃるならば、特に教育に関して教職員組合、日教組というものがそうだとおっしゃるならば、その日教組の憲法たるべき倫理綱領なり、あるいは新しく教師となる人にというのに、教育の中立を否定したり、あるいは階級闘争理念を明記したりというふうなことで日教組というものを作り上げないで、そういう前提を抜きにして、今あなたが御指摘になりました法律に規定してある交渉事項というものに限ってお話しになる限りは、これは正式には都道府県教育委員会、または、全国的な問題で団体交渉という立場はお互いにないけれども、何か残った話をしてみたりと言われるならば、それはおのずから話は別ですが、大前提として、どうしても教育の中立は守っていただきたい、しかも階級闘争理念でやってみせるのだという勢いのいいやつはちょっと旗をおろしてきて下さいませぬと、おっかなびっくりで、こっちもまともに話もできそうにないものですから、そこでお断わり申し上げている、そういうことでございます。
  63. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連、どうも労働組合として認めたくないというようなことが腹の中にあるのだろうと思うのです。そうじゃないですか。よくこの倫理綱領の問題が出て、これが非常に一つの障害に少なくともあなたの現在の意識ではなっているようですね。そこで、私倫理綱領の中に、やはり具体的に指摘してもらいたい、根拠がわからないのですよ。ただ、そういう言葉で言い回したり、それからこういう説明の返答書で解説しただけではなく、もっと具体的にやらなければ日本の教育の実体はわからない、この点から明確にする必要があるわけですね。そこで、倫理綱領があなたのところにあると思いますが、十カ条あります、この中で、この十カ条のどこがいけないというのですか。たとえば今あなたが憲法秩序を破壊するような具体的なものが倫理綱領と言われておる。そうしてこの倫理綱領十カ条ございますから、この十カ条ではっきり明確に指摘してもらいたい、どういうところか。
  64. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 私は日教組の、それ自身のよって立つ憲法ですから、全部暗記しておりませんが、その中で述べられておることは、まず労働者であるとおっしゃることすらも私は理解できない。教師であるのが前提であって、知識労働者であるというのが付加されるのならばわかります。公務員というものが知識労働者であることは間違いはない。しかし、教師はあくまでも教師であることははっきりあらゆる法制に書いてある。労働者であるということは日教組が独自におっしゃったことであって、労働者であるがゆえに団結せよ、団結して階級闘争の理念で戦えと明記してある。その労働者認識のゆえに、一再ならず職場放棄その他の事柄が行なわれた。もし、これが物を作る製造工場でありますならば、ストライキをやって物の生産がストップしたって、また倍働けば物は回復できる。人間の脳みその時々刻々変化してやまざる、海綿のごとく育ち盛りの子供の脳みそというものは、きょうという日がなくなったら再び取り返しがつかない。私が申し上げぬでも皆さんがよく御存じの通り。そういうことからいたしまして、一瞬間といえども職場放棄ということはあらしめてならないと、少なくとも子供たちの父母は願っている。その父母の願いこそが基本となって教職員の意識が決定されないならば、国民の気持に私は背反するものと思う。そういう意味からいったって、労働者団結せよ、しかもそれは階級闘争理念に基づいてやれ、(「どこにそんなこと書いてある」と呼ぶ者あり)ちゃんと書いてあります。倫理綱領をごらんになればわかる。一定の姿で、しかも新しく教師となる人にというものの中には、中立はあり得ないと明記してある。それがあわせて一本となって倫理綱領が成り立っていると思いますが、それがそうでないというなら別に立証していただかなければいかぬが、そうだと私は考えますが、その前提に立って考えても、最小限度教育が中立であり得ないということは教育基本法違反だといえないこともない。そういう前提常識からいろいろ交渉したいとおっしゃいましても、おそらく話し会いの場は平行線であることが初めからはっきりしているのじゃなかろうか。こういうことで、むだではないかという気持も含めて、お会いできない、こう申し続けているわけでございます。
  65. 岩間正男

    ○岩間正男君 最初に特に念を押しておきたいと思いますが、質問いたしましたことについて、端的に明確にお答えいただきたい。つまり、私たち今非常に重大なところにいるわけです。この論議は決して簡単なものではない。日本の教育の将来をはっきりやはりする上において重要な問題です。従って、私たちむだなことをなるだけ省いて質問したいと思っております。従って、的を得た質問をしたいと思いますが、これについて的を得たやはり答弁をしていただきたい。私は、倫理綱領十カ条あるのだが、これの一体どれがいけないのか、そうしてその中で、ことにあなたたちの言われている憲法秩序におけるこの秩序を破壊するという根拠がこれにあるとおっしゃるのだから、それがどこか、その点をお伺いしているのです。ところが、どうもあちこち言われましたけれども、結局私の質問したことにはお答えがないわけです。その中で一つ労働者の問題があったのですが、教師は労働者であるというのはいけないとおっしゃるのですか。まず一つ聞いておきます。これはいけないとおっしゃるのですか。あなたは少なくとも知識労働者という名前をつけなくちゃならない。これもおかしい話です。今それならば、それは区別をするときに、労働者を分けるときに、肉体労働者、そうして肉体労働者だけを労働者と考えた時代はあります、これは戦争前あたりにあったのです。荒木元の文相、荒木大将、あなたではない。しかし、労働者という概念は戦後変わっておって、これこそが常識である。それを分けたりすることが一つおかしいということ、これははっきりしておきたいのです。ここで議論すると参議院の権威にも関する問題だからやりたくない。これは労働者、しかも労働者でなければならないという理由というものははっきりしているのだ。つまりこれは過去の教育の反省からくるものです。過去の教育でこれは何か神聖なもの、労働は神聖なもの、従って、これはかすみを食って生きているといわれたのが戦争時代、荒木時代です。これは支配者が教師に臨む態度でありました。そのために生活権は確立されなかった。食えなかった。これが最大の権力に支配されたところの根源です。私自身もそういう体験を持っている。何ぼ自分の正しいもの、そうして平和の問題、こういう問題について、やはりわれわれはほんとうに子供の将来を考えて正しい教育をしようと思っても、上からの指令がある。そうして軍国主義的な指令によってこういうものを教えろというふうなときに、生活権が確立していない、食えない、権力者に対してどうしてもこれは迎合せざるを得ないというところに置かれたのが過去の日本の教員の姿です。従って、戦後の教員のなぜ一体運動が始まったかというと、まず第一に、われわれ自身の生活権を確立すること、政治的、社会的、経済的地位をはっきり確立するというのが、少なくとも教員組合運動の発足です。そうしてそのことというのは、日本のこれは教育のためには非常に重要だと、このことなしに日本の教育を改めようとしたってできないわけです。依然として権力支配が及んでくるのです。従って、最低の生活権を確立すると訴えたのは戦後における教員組合運動の始まりです。そしてそのことは不十分でありますけれども、とにかくそれを獲得する方向をとった。そういう中でわれわれははっきり自分の肉体ないし頭脳を通じてそうして報酬を得ているのだ、従って労働者である。労働者であるということについて何らおかしい感じを持つ者でない。おかしい考えを持っているのは過去にある一つの何か教育者というものは精神的なものだけであって、そうして武士は食わねど高ようじ式な、精神的にやっていればいいんだ、食わなくてもとにかく高潔なことを教えてればいいんだ、そうして実際には食えないことのために実によこしまなことをやらされたというのが、それが過去の姿です。それを変えるために、はっきりと労働者としての自覚を持とう、従ってその要求を実現するためには憲法に保障される団結権を持とう。団結権の結果は、これは当然団体交渉権というものはこれは当然つきものでありますから、このようにしてわれわれの生活を確保し、社会的、政治的、経済的地位を確立するというのがこれははっきりした要求であった、この点をまず文相は否定されますか。どうですか。こういう一体動き方というものは戦後におけるこれは教員の自覚より始まった実ににがにがしい過去の戦争時代の何ともならないところのあの忌まわしいわれわれの体験から、これを再び繰り返すまいと思って始まったのがこの自覚だ。従ってこの倫理綱領の中にあるところの一つのこれは基本的な考えなのです。これが今まっこうからあなたと対立しているようでありますが、私の今申し上げましたような点について一体どうお考えになりますか。この点について伺いたいと思います。
  66. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは、今おっしゃったことは、新しく教師となる人にというやつの中に非常に詳しく解説を書いてあるようですが、今のお話のごとく、そういう反省というか、過去の体験に顧みての一つの心意気を表わされた意味においてはよくわかります。ただ、労働者であるということは書いてある。教職員であるということははっきり書いてない。労働者というだけでやっていただいたのじゃ見当違いになりはせぬか。従って、知識労働者という立場において、労働者であることは当然といたしまして、それは先ほどもお話が出ましたように、あくまでも教職員労働者の行動半径のうちでであります。それが実際問題としては政治課題をとらえて、あたかも政治団体のごとく行動し、しかも法を無視した行動までも当然のごとくやられるところに国民的の疑惑があるということで懸念がありますから、先ほど来の話に及んだわけであります。
  67. 岩間正男

    ○岩間正男君 大へんなことです。教師として書いてないなどということは大へんなこれはしいるものである。あなたは十条をお読みになりましたか。少なくとも十条の倫理綱領、文部省、何をあげなさい。文部大臣にあげないでは不公平だからちゃんと資料をあげて下さい。日教組の倫理綱領くらいなけりゃ文部省でも困るでしょう。読むから見ていて下さい。一、教師は日本社会の課題にこたえて青少年とともに生る。これはまあ私は当然だと思いますね、教員として。二、教師は教育機会均等のためにたたかう。これはいけませんか。これはようございますか。一々念を入れておきます。(笑声)。三、教師は平和をまもる。これはどうですか。(「黙っていればいいんだから」と呼ぶ者あり)反論があったら言って下さい。四、教師は科学的真理に立って行動する。五、教師は教育の自由の侵害をゆるさない。六、教師は正しい政治をもとめる。七、教師は親たちとともに社会の頽廃とたたかい、新しい文化をつくる。八、教師は労働者である。九、教師は生活権をまもる。十、教師は団結する。そこでこの三つのことは、これは労働組合に関係したことでしょう、「労働者である」以下は。しかし、その前の問題はこれは何ですか。つまり教師であることを、教師であるとは言っていません。しかし、これは少なくとも新しい教育が指向し、教育基本法が指向し、憲法が指向するところの具体的な問題を幾つか取り上げて、その中の最も重点的な問題を取り上げたのが、先の七条じゃないですか。そう解釈していいと思う。ところが、あなたは教師であるということを書いてないから、これはけしからぬと言われるが、これは全く事実をしいるものだと思いますけれども、どうでございますか。今の問題についていかがですか。
  68. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは項目の一つ一つは私らも賛成するにやぶさかでないことはたくさんございます。ところが、教師は労働者であると単純に断定されているところは必ずしも私どもは理解できない。
  69. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは総合的に、やはりそこだけをとってやれば、象の足だけを見て、この足は不格好だと、こういうようなことになるので、十カ条あるのですから十カ条を総合して、これは一体何をなしているのか。少なくとも教員が終戦後苦しい敗残の中から立ち上がって過去の忌まわしい反省から自覚を起こして、そして運動を始めた。この中には一つは、今申しました教員自身経済的、社会的、政治的地位の確立、これが一つ。そしてさらに日本の教育の徹底的民主化という、これは考えがあるわけです。現にその時代の中央労働委員会の、なくなった末弘中労委会長ですが、現に私が、これは私のことを申しておかしいのですが、かつて教員組合の責任者をしておりましたころに、ある日手紙をくれた。それは、日本の労働組合の目的、そしてことに教員組合の目的というものは、単に経済的地位の、これは確立だけじゃ足らぬ、やはり日本の教育の徹底的民主化ということが非常に重要な課題になっているという手紙をくれたことがある。ですからそういう点から考え、またはっきり日本の憲法を守る建前から、私は今の教育の現状をながめれば、集約してくれば、こういうことになるのじゃないか。「教師は日本社会の課題にこたえて青少年とともに生る」これは過去の反省から来ています。やはり青少年とともに生きるということでやっていましたけれども、これは不十分だ、頭が絶えず上の方に向いていて、ほんとうに子供の実態に触れて、そして生活をともにし、そこでほんとうに子供を育てていくことを考えていなかった。そういうことが倫理綱領の中に出てくる。それから「教師は教育機会均等のためにたたかう」これは重大問題です。過去の教育というのはやはりそういう点では非常にむしろ階級的だった貧しい者は教育できなかった。どんなに優秀な頭脳、才能を持っていても家庭が貧しいために小学校までで終わる子供というのが何ぼあったかしらないのです。われわれはそういうのを幾らも見ているのです。涙が出るほど見ている。こういう中で戦争を廃止した日本だから、もう戦争の軍事費をこれは教育に回わすべきだ、そして文化国家の名に値するような教育をやるべきだ、そして教育機会均等を確立する。これが憲法二十六条の精神じゃないですか。ところが、憲法二十六条の精神は、これはどうですか、何も守られていないじゃないですか、三分の一しか守られていない現状です。「義務教育は、これを無償とする。」この無償の原則というのを見てごらんなさい。これを読むと、あとで詳しく予算で追及するわけですが、現在施行されている教育費というのは、どうですか。統計的にはいろいろ出すようになっているけれども、実際はそうじゃない。私は一週間ほど前に三陸の津波被災地帯を歩いてきた。あの津波の最大激甚地である志津川というところ、ここではもう子供が給食をやりたい、給食を今までやってなかったのだが、もうやる以外にないのです。町の八割以上がやられている。ところが、文部省はこのごろ給食の施設費だけ出している。見たところに三百万円のところに百万円しか出していない。こういう格好で給食の施設をやって、あとは父兄の負担です。こういう形で見てくると、教育機会均等というものは全く破壊されてしまう。そのために金のある者が少々ぼんくらでもこれは高等学校へ行き、大学へ行った。こういう連中が支配階級についた。そしてほんとうに貧しい子供たちはどんな優秀な者でも下積みにされてきた。これが日本のひっくり返った転倒した社会の現状だったのです。だから、これに対して当然社会秩序を守るというのが、これは憲法の精神だと思う。「教師は平和をまもる」これは私はくどくどと言う必要はない。九条の精神をどこまでも守っていく、これは当然大きな日本の教師の任務でなければならない。「教師は科学的真理に立って行動する」これは言うまでもないことでしょう。真理がねじ曲げられておったというのは戦争中の非常に忌まわしい記憶です。これに対してどこまでも守っていく「教師は教育の自由の侵害をゆるさない」、これもくどくど申し上げる必要はないと思います。自由の侵害が今日非常に行なわれているから、これに対してあくまでもこれを守るために、単にこれはもう言葉だけじゃいかぬ、やはり団結してこれに対してあくまでこのような不当なことをやめさせるためにこれはやっていく。単に口先だけで真理を守りなさい、守りなさいと言い、戦争に落とされたというのは過去の忌まわしい記憶です。正しいと思うものはやはり行動してもはっきりその正しいものを守っていくというのが当然新しい一つの倫理でなければなりません。口先だけで言っていて、実際は正しいことであってもそれがごまかされ、そして実際は権力に押されて戦争に追い落とされたというのが日本の過去の忌まわしい記憶です。従って平和を守り、あくまでも真実を守るためにはやはり行動をもってその裏づけをする。これは新しい教育の倫理だと思います。  次の「教師は正しい政治をもとめる」、その次の、第七の「教師は親たちとともに社会の頽廃とたたかい、新しい文化をつくる」、どこに、何が悪いものがありますか。これが新しい時代の当然なさねばならないところの教師として、またほんとうに日本の現実に立ち、そして憲法をほんとうに守り、再び過去の戦争のあの惨禍を繰り返さない、愚かさを繰り返さない立場に立てば当然だと思います。ところがおかしいですね。これを文部大臣はお読みになったのですか。全部お読みになってそういうことを言っていらっしゃるのですか。それは官僚が下の方でいいあんばいな文字を、片々たる事項を引っぱり出して事実をしいようとして作った文章ならいざ知らず、私は今あげたこういう条項で全くこれはおかしくないと思いますが、この点はっきりお考えを伺いたいと思います。
  70. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 一通り拝見いたしました。日教組の執行部においては御自分でお作りになったわけですから、それを信条としていらっしゃる限りは正しいとお考えになっていることは、これはどうも否定するわけにいきますまい。それを一般国民がどうとっておるかということが私は問題だと思います。そのことは、具体的には現実に日教組の行動された実績そのものが物語るのであって、私はそういう角度からものを申し上げておるのであります。倫理綱領そのものがみずから御解釈になり、みずから信じられることを言われればお説の通りであろうかと思います。実際行動はそれを裏切っておる。
  71. 岩間正男

    ○岩間正男君 どういうことをおさしになるのかわからないのですが、文部大臣の耳に入るだけの声で、そしてこれでもって一般国民の声というふうにされたら大へんなことだと思うのです。これはどういうことをさしていらっしゃいますか。具体的におっしゃっていただきたいのです。
  72. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと議事進行。文部大臣はさきの御答弁で倫理綱領がいかぬとこうおっしゃった。そこで岩間委員が倫理綱領のこういう点、こういう点、どこが悪いかを御質問になった。今は倫理綱領じゃないと、実際行動だと、こう御説明を変えておられる。それではまずいですから、初めの質問のお答えをしていただくようにお取り計らいを委員長においてお願いします。
  73. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 私は倫理綱領と新しく教師となる人のためにというやつと合わせて一本で読んでみて、それから受ける考え方は、労働者よ団結せよ、階級闘争の考え方でしっかり団結していこうじゃないか、教職員の中立ということはあり得ない、社会を改革するためにしっかりやろうじゃないかということで貫かれておると私は解釈いたします。また、事実そういうことであろうから日教組の今日までの行動はそれを裏書きするがごときことであると、こう認識しております。
  74. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 先ほどからの質問で私が残しておりました、大体大臣考え方としては結論に近づいたと思うのですが、いろいろ今日までの日教組の行動と、それからそれを規定づけておる倫理綱領、この二つを先ほど私が質問した憲法秩序を破壊しておる、こういう判断に立っておるから会わないのだ、こういうふうに大臣はおっしゃっておると思うのです。そこで八月二十九日付の内藤初等中等局長の回答の中にはいろいろありますけれども、集約される点は、大略、……等の文言は、日教組により現在の憲法秩序に基づく社会制度を根本からくつがえすための手段として青少年が利用されることをおそれておると、こういう判断が一つ、だから会わないのだ、これをなお集約していくと、日教組の議会民主主義に対する見解は、初歩的な誤りを犯している、なかなかりっぱな文章のような気がするのですが、こういう点が大体倫理綱領がある限り会わないという理由だとおっしゃっていると思うのです。そこで大臣は、問題はきわめて重大だと思うのです。少なくとも十五年の歴史を持ち五十万の、幾らかの脱落者があっても五十数万の組織を持っている日本教職員組合という団体が、憲法秩序を破壊しようとしておる団体であるという大臣の規定づけ、あなたは個人なら会うとおっしゃったが、あなたが個人的に日教組をそう判断されることに私はあえて異論を申しません。あなたが大臣だから、文部省の最高責任者がそういう判断をするというところに問題があるのです。だから新しく教師となる者のためにということや、倫理綱領全体を把握してそこに流れておるものを合わせて一本というような三百代言的な答弁でなくして、私が言いました現在の憲法秩序に基づく社会制度を根本からくつがえそうとするところはこことこことここである、議会民主主義に対する初歩的な誤りを犯しているのはここである、こういう点を、主となるべき倫理綱領が憲法秩序を破壊しようとしておるという判断をされた根拠となるものを、倫理綱領並びに新しく教師となる者のためにという二つの中から具体的に指摘して御答弁願いたいと思うのです。
  75. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 私は憲法の趣旨に一応のっとって教育二法があると思います。教育基本法には中立をうたっております。しかし、倫理綱領と新しく教師となる者のためにというものの中には、教師に中立はあり得ないという趣旨のことがある、そのことはまさしく憲法秩序から出てくるところの法律に、まっこうから法律を否定されるような意向が盛られておると私は思います。さらに団結して階級闘争理念を持っておられることは通覧して否定できないと思っております。初歩的な誤りと申し上げることは、用語は適切でないかもしれませんけれども、きのう以来、質疑応答によって申し上げました通り、少なくとも制度上、日教組も文部大臣も団体交渉をする資格を持っていないにもかかわらず、二度にわたっても要求書というものをお出しいただいて中央交渉を持てと要請される、そのことを私は、立法問題としてしか取り扱えないことについて、団体交渉の資格のないことを承知しながら、しかも行政府の長でしかない私に、団体交渉によって話し合えば何とかなるがごとく思っていらっしゃるかどうか知らぬが、そういうことを要請されるそのことが、私は非常に、わざと幼稚なことを言っていらっしゃるかどうか知らぬけれども、一種の誤りを犯しておられるのではないか、かように思う次第でございます。
  76. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大体三点あげられたのですが、教師の政治的中立はあり得ないという倫理綱領の立場、それから労働者であるという、あるいは教師は団結する、こういう点から階級闘争の理念である、こういう御判断ですか。
  77. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは新しく教師となる人のためにというものを読まなければわかりませんが……。
  78. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 それならば、大臣に、まず第一に、中立性の問題でお尋ねしたいのですが、文部省の回答の中に「教師にもまた「政治的中立」などは求むべくもないはずである。」「政治的には「なんでもやる」という積極的立場に団結しなければならない。」こういうカッコがあるところは綱領解説の中から取ったのだと、こう言っておられますね。この中で、大臣は憲法と教育基本法をあげられました。ここで私は教育基本法を読んだり、あるいは論争しようと思いませんけれども大臣に端的にお尋ねしたいのは、いわゆる法律に定めるところの教育の中立と教師個人の政治的中立というものが、法律においてイコールであることを規制しておるかどうか。
  79. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ちょっと相済みませんが、もうちょっと具体的に注釈を加えて下さいませんか。
  80. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 法律に定める、いわゆる教育の中立に関する定め、いわゆる教育の中立というものと教師個人の中立というものが法律において完全に一つでなければならないという定めになっていますかと聞いています。
  81. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは必ずしも一致すべきことを当然のこととはしていないでしょう。
  82. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 まだ答弁に問題があります。一致すべきことを規定してないということは、私は敷衍してくれということだから簡単に説明しますが、教育の中立というものと教師自身の政治的中立というものは明らかに憲法によって別個のものである、こう判断しておるのです。ところが、大臣のただいまの答弁を聞くと、どうもニュアンスとしては、一致するのが望ましいのだけれども法律は必ずしもそういうふうに規定していないのだ、というふうに受け取れたのですが、もし、そうだとすれば、憲法ないしは教育基本法のどこに教師の中立と教育の中立の一致性を要求ないしは希望している条項がありますか。
  83. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは教育が中立であることを要請しておる。個人の問題に触れておるとは思っておりません。
  84. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 教育の中立を求めておるということで、教師の政治的中立というのは法律には一切定めてない、こういう御回答だと判断しますが、それでよろしいですか。
  85. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 教師が教師として、教育の場において教育そのものに関して行動します場合には、これは中立であることが当然であって、私の申しますのは、教師たる個人が政治的にいかなる理念を持つかは別問題だという意味において別だと、こう理解しております。
  86. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 だから教育というものは、教育基本法ないしは学校教育法あるいは労働基準法の教育、研究その他の調査という言葉にもある通り、一応法律において教育という場合は、概念規制がされておるわけですね。従ってそれを今さら説明いたしませんけれども法律に定められておる教育という範囲内においては、教師であれあるいは外部の人であれ、その中立は法律で定められております。しかし、教師自身が、今あなたがおっしゃったように、アナーキストであれ、共産主義であれ、その人の信条あるいは政治的な立場、これは中立を法律は一切定めていない、こういう判断ですが、大臣もその通り肯定されますね。
  87. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それはその通り理解します。理解しますが、ちょっと注釈を加えさしていただきますけれども、教師が教師の集団として行動されるときに、ある一党一派を支持するという立場をとったときには、その集団としてはすでにもう教師の場を離れた一種の政治団体としての団体の意思だろうとしか解釈できないと、そういうふうに私は念頭には置いて今までの話を申し上げております。
  88. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大体衣の下からよろいが見え始めてきたようですが、法律において、いわゆる教育に従事する人間が、法律に定めるところの教育活動の範囲内においての中立というものは、いわゆる政治的中立というものは、これは明らかに法律で定めている。しかし、本人が団体を結成しようが、あるいは特定の宗教団体に入ろうが、あるいは政治結社に入ろうが、公務員としてのいわゆる具体的な活動の中に幾分の規制はありますね、団体役員になってならないとか。しかし憲法は、明らかに先ほど申し上げましたように、二十数項目によって国民の基本的権利を保障しています。そのいずれをとりましても、信仰、学問、思想の自由あるいは信教の自由等、どういう考え方も持ってよろしいですし、またいかなる団体に所属してもよろしいのですから、いわゆる法律に定める教育活動という中において守らるべき政治的中立というものは、それ以外の場所において、団体を通そうがあるいは個人の行動を通そうが、それは教育の政治的中立とは全く無関係である、このように判断するのですが、もう一度明確に答えて下さい。
  89. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それはその通りと理解します。
  90. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、倫理綱領ないしは新しく教師となる人のためにの中には、教師が法律に定めるところの教育の中立性というものを侵すべきであると規定しておるのはどこですか、ほかにありませんか。この回答書を読みましても、政治的中立はないと、こう言っているのはけしからぬのだ、これが憲法秩序を破壊するのだと、こうおっしゃっていますね。だから今の私とあなたとの質疑応答で明らかになりましたように、教育はなるほど中立性が法律で定められている。しかし、教師自身の中立性というのは、政治的定めはありません。そこで倫理綱領の二十九日付の文事によると、綱領解説の中にあるということですが、綱領解説でも別のやつでもよろしいですが、どこに教育の中立を侵してよろしいと書いておるところがありますか、それを指摘して下さいと言っているのです。
  91. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 中立はあり得ないという考え方で、その基礎の上に立って日教組という団体を作っておられる。その団体が教育の問題について中立であるべき文部大臣に対して、団体交渉という形で話し合いたいとおっしゃっても、それは平行線ではなかろうかということを申したのであって、日教組それ自身が倫理綱領ないし新しく教師となる人のためにという中で、中立があり得ないと言われようと言われまいと、そのことそれ自身にかれこれ申す資格は私自身にはない。それはないけれども、そういう性格づけの団体の方と団体交渉という形でお会いして何になるであろう、平行線でしかないであろう。いわんや中立なるべき文部大臣自身がお目にかかると、それ自身に弊害を伴うおそれがある。そういうことでそれは御答弁したつもりであります。
  92. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 今の御答弁大臣が、日教組がどういう考え方を持っていようとそれは容喙すべきではない。これは一つあった、その通りですね。ところが、倫理綱領に基づいて、いわゆるあなたの文章によると、今の憲法秩序に基づく社会制度を根本からくつがえすための手段として教育をしておる。こういう団体とは会えないのだ、と、こうおっしゃっておる。そこで問題を私は先ほどからしぼっておるのですが、あなたのところの回答を取りますと、教師もまた政治的中立などは求むべくもないはずである、教師の政治的中立を否定して現行の憲法秩序に基づく社会秩序を転覆しようと意図しておるのだと、こうおっしゃっておるのです。ところが、先ほどの大臣答弁では教育の中立と教師の政治的中立とは明らかに異なる。だから私は話を進めて、倫理綱領のどこに現在の教育の中立を法律で規制しておるものを破壊してよろしいと言っていますか、それを指摘して下さいと、こう言っておる。だから、日教組の具体的行動の問題は後に聞きます。あなたの回答文によるところの倫理綱領に限定して問題をしぼりたいと思います。どこに教育の中立を破壊する、したい、すべきであるという規定をしていますか。
  93. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは教師は労働者である。労働者は団結する。しかも団結は階級闘争の考え方教育の場おいて社会の改革に向かって努力していくのだ。そのことを倫理綱領とその注釈書といったような規定を読みましたときにそういう意図がうかがえる。そういうことを申しております。従って、そういう理念に立って団結されておるその日教組執行部とお目にかかることは、教育の中立の場においてお話すべき私としては適当でないから団体交渉という形ではお目にかからない。日教組それ自身がそういうものを持たれることは御自由ではあるけれども、お目にかかりたいという前提からいけば、その根本の考え方を私どもと同じような気持に立ってやっていただかないと教育に関してはお話がしにくいだろう。こういうことであります。
  94. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連、この大臣の先ほどの御説明では倫理綱領の中に中立を否定しておる。こういうお話で、そこでどこで否定しておるかという問題になりますが、全体を読んで類推すればそういうことになる。そこで規定はしておらない。中立という問題が倫理綱領の中に出ておるのは、六の「教師は正しい政治をもとめる」という中で、「これまでの日本の教師は、政治的中立の美名のもとにながくその自由を奪われ時の政治権力に、一方的に奉仕させられてきた。」こういう教師であってはならないということを言っておる。これは大臣もお認めになる。そこで政治は一部の権力に奉仕するものではない、こう結んで、これが正しい倫理綱領の表現です。文部省はこの倫理綱領の表面に出ておるものを取らないで、そして労働組合の一員としての個人としての教師の政治的自由というものを若干解説したうちのしかも表現のしようによってはいかにも第三者には教育的中立を日教組の組合員の全員は侵しているのだと解釈されるような取り出し方と書き方をして、この回答の内容としている。ですから、大臣に私は倫理綱領そのものの中にある中立という問題は、中立の美名のもとに一方的政治権力に奉仕するような教師であってはならない。教師はあくまでも、他の面で岩間委員が指摘したように憲法で、あるいは教育基本法で当然教師の任務として行なわなければならないことを行なうのだ。そういう意味で労働者意識ということにこだわっておりますが、そういう面で労働者としての意識を持つということで、これは一向文部大臣の御心配のような内容はないと解釈できると思うし、それが正しいと思う。ことさらに解説書の一部を歪曲して取り出してアッピールするなんということは、もってのほかです。この点御認識がございますか。ただ出されたものを倫理綱領の中ではなく、説明書の一部をことさら抽出したものをもっていろいろと今までの御説明の材料のように、出ているようにお書きになるけれども、そうではなくて倫理綱領の中にこうあるのではないかという点を明らかに御指摘おできになるのですか。
  95. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) これはあくまでも言葉じりはつかませないようにという考え方でもできておりましょうし、全体を総合して読んで、それからどういう判断をするかということは、批判をする立場から見れば当然のことだと思います。私はそういう意味で、総合判断の上に立って、さようにこちらは考えておりますということを、その御返事申したところの中では申したわけです。
  96. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなた常識的にとおっしゃいましたが、常識的とは、日本語を日本人が文章で読んで解釈できるその結論をもって常識としなければならぬので、あなたが別の角度のめがねをかけてそれで判断して、こう解釈できるということでは困ると思う。さっき豊瀬委員の御指摘のように、国会議員の一人としての荒木さんがどういう解釈をなさろうが御自由です。しかし、文部大臣としての御解釈は、客観性を持ってなければならぬ。それは出された表現を正しく判断する第三者の意見と一致するものでなければならぬと思う。そこで、私は関連質問でありますからもうやめますが、倫理綱領を問題にするなら、倫理綱領を御研究なさって、参考意見ももっといろいろとお聞きになって、正しい御解釈をなさいましてから御意見を御発表していただきたいと思います。ただいまの大臣の御見解は私どもはいただくわけには参りません。
  97. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 今、加瀬委員も指摘されたように、もし教育の中立という法律的な規制が、教師の政治的中立まで規制しているという判断に立っておられるとするならば、明らかに文部大臣は憲法違反です。現行の憲法秩序を破壊しようとするのはあなたです。これはもう明らかに憲法十九条、二十条、その他いろんなところに明記されております。そこで先ほどからお尋ねいたしておりますように、教師の政治的中立ということは、今の憲法あるいは教育基本法、あるいは政治、経済情勢の中から、教師個人の立場を明記したものであって、教育に関する問題ではありません。そこで、今、大臣は具体的に加瀬委員質問に対して、きわめてばくとした答弁でしたが、第八項の「教師は労働者である」十の「教師は団結する」こういう点から階級闘争理論を持っているから、教育の中立を侵していることになる、このようにおっしゃったと思うのです、大局……。そこで私はただいまの大臣答弁の中で、教育の中立を侵すという点にしぼって質問したいのですが、教師の倫理綱領の八の「教師は労働者である」あるいは「教師は団結する」という、ここのどういう表現、どの事項が教育の中立性を侵させるようなアクチブな態度をとっているか、これを明確に指摘してもらいたいと思うのです。教師自身が、先ほども言いましたように、現行憲法を改正すべきであるという判断を持つのは、これは憲法に許されている基本的人権です。個々人の問題は、これは何度も大臣が確認されております。そこで労働者であるということ、団結するということが、なぜ、また一歩譲って倫理綱領が階級闘争を肯定していると、譲ってそれを肯定した場合でも、なぜ教育の中立を、教師個人の、あるいは組合員個人の倫理思想というものを規定している倫理綱領がどこで教育の自由を侵すことになるか、その点を二つ、一つは具体的な表現文字の中から、どこで教育の中立を侵そうとしておるか、あるいはそれと同時に、そのことからどうして階級闘争ということが出てくるか。またさらには、階級闘争ということがどうして教師自身の、一歩譲って階級闘争を肯定しているとしても、そのことが法律に定める教育活動の中で、教育の中立をどういうふうに侵そうとするか、それは法律の中のどこに違反しますか。
  98. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 大体今の話の前提を考えないといかぬと思うのですが、私が日教組の執行部がおいで下さってお答えさせた趣旨は、二回にわたって中央交渉を持ちたいというお申し入れであったのです。それは勤務評定廃止なしいは新しい学習指導要領を中止しろということ等を初めとする課題をとらえての中央交渉をしたいというお申し出に対してお答えしたことに関連するわけであります。それはお目にかからないという理由は、法制上もその資格がないということも申しましたし、また第二回目においては、今御指摘のようなことも付言して、向こうからそういうことを私が新聞記者会見で言ったというようなことを取り上げて、向こうから指定してこられましたから、それに応じてお答えしたわけですが、その倫理綱領及び新しく教師となる者のためにというものを通覧して、いろいろ以上申し上げたようなことを私は考えるということを申し上げたわけですが、その考え方に立って日教組というものができている、そして政治課題をとらえて団体交渉をしようとおっしゃる。そしてまた一方におきましては、一九六〇年の行動方針もきまっているようですが、明らかにそれは階級闘争の考え方において文部省を敵と規定される。そういう一連の考え方を持った方とお話し合いをすることそれ自身が、文部大臣という教育の中立性を、現実に行政府として担当する立場からいえば、そこら辺にむしろ誤解を生じやせぬかという意味で、お会いすることそのことが教育の中立性を害する、弊害もあろうかという意味合いで、お断わりを申し上げた、こういう話の筋道でございますから、今御指摘の点だけをぽつんと取り上げて、かれこれ御質問下さいましても、少しニュアンスが違ってくるかと思います。
  99. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 先日の理事会の協定もありますし、まだずいぶん問題が残っておりますけれども、あと次回の委員会その他に譲ることにいたしまして、時間まで質問させていただきたいと思います。私は大局的に全体を通じて判断したからという、こういうおっしゃり方では、具体的に先ほどから何度も指摘しておりますように、日本教職員組合という五十数万の教師の現存している組織体に対する、あなた自身の見解ならいざ知らず、大臣の見解としては、これはとうてい了承されるべき問題ではないと思います。従って、大臣がそのことを、冒頭に私がきのうのあれを指摘したのは、あなたの中に倫理綱領というのが出てきたからです。少なくとも大臣が倫理綱領を一つの根拠として、日教組を憲法秩序を破壊しようとする団体だからという規制をしてある以上は、少なくとも明確に、どこにそういう規定があり、そのことから全体を通してこう出てくるということは、全体的に把握すべき問題ではなくして、個々の表現の中から、個々の思想の裏づけの中から、全体的にこういう思想があるという指摘がなければならないと思うのです。そこで、私はまず第一番に、きょうの問題としては、あなたの回答にあるところの教育の中立性と教師の中立性は、明確に区別すべきものである、この点は私と意見が一致しました。この点には異議がないと思います。そうして倫理綱領の解説の中にも、あなたの方の文章にありますように、教師の政治的な中立ということはあり得ないと規定しているけれども教育の中立を破壊しようと意思していること、あるいは破壊すべきであるという表現を使っていることは、倫理綱領の中に全然ないということもお認めいただくと思いますが、そのことは異議ございませんか。
  100. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 具体的な直接的な用語としては、ないことは認めます。総合的に判断して申しておるわけであります。
  101. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、総合的判断されると、教育の中立を侵すという意思が、あるいは思想が、倫理綱領の中に規定されておると、こういう御判断ですか。
  102. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) そういうおそれがあると表現しておったかと記憶しますが、明らかにそれを文言で指摘して断定したことは記憶しておりません。おそれがあると、だからお目にかかってもさらにかえって疑惑を深め、弊害があろうということに結びつけてお答えしたつもりです。
  103. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 その通りに表現せられてありますけれども、私はただいまの答弁では了承できかねます。従って、次回までには大臣の方で、倫理綱領の中では主としてこことここ、新しく教師となる者のためにというところではこことここ、こういう点をあげていくと、あなたの御指摘なさったように、教師の政治的中立の否定ではなくして、教育の中立の否定である、こういう点を明確に指摘していただきたいと思う。なお、あなたの回答の中には、「平和の擁護、民族の独立、搾取と貧乏と失業のない社会の実現は、われわれに課された歴史的課題であり、」云々と、これも現在の憲法秩序を根本からくつがえすための手段として利用されるおそれを抱かせるに十分であります、こう言っております。この点につきましても、平和の擁護というのが、なぜ現行憲法秩序を破壊するか、日本民族の独立ということがなぜ憲法の精神に相反するか、こういった点も、抽象的な概括観念としてでなくて、民族の独立ということは一般通念ではこういうことをするのだ、平和を守るということは一般通念ではこういうことをするのだ、だからこれは憲法を破壊するのだ、そうしてこういうことの解決は、新しく教師となる者のためにという中に、こういうことを具体的に展開しようとしているということを指摘してもらいたい。私が最初に指摘しました一つは倫理綱領、それと日教組の具体的行動の中で倫理綱領が具体的に――倫理綱領のどこが、倫理綱領のこのことが、憲法秩序を破壊しようとしている、このことがこの時点において日教組の行動となって現われて現行の憲法秩序を破壊しようとしている具体的事例であったという、倫理綱領とあなたが指摘しておったその日教組の行動という二つを――全部をあげなさいとは言いませんけれども、重要な個所は対比しながら、倫理綱領並びに日教組の活動の中で、はたして初歩的な誤りを犯しておるものであるか、あるいは現在の憲法秩序を根本からくつがえす手段として日教組が行動するおそれを十分に持っておるかどうかを、いま少しく具体的な事実に即して御指摘願うことを要望いたしまして、一応きょうに関する限りは私の質問を終わりたいと思います。
  104. 岩間正男

    ○岩間正男君 最後に、これはまだまだもちろん入ったばかりで、いろいろ結論が、今の資料なんかももらってやりたいと思いますが、現段階で特に念を押しておきたい。  昨日、小林委員長が総評の代表として池田総理に会いましたね。これは御存じでしょう。これは認められているわけですか。私がお聞きしたいのは、政府の政治行動の一貫性という問題です。歴代の内閣は今まで会っていた。文部大臣は会っていた。あなたのときに会われなくなった。しかもこれは自民党内閣としてはどうなんだ――自民党内閣としては一貫性はないわけですね。これははっきり認められますね。これは認められなければならない。もう一つの問題は、最高責任者の首相は労働組合の代表の有力な一成員として小林委員長には会った。この会ったのは労働組合の代表として、これは会ったのであります。従いまして、これは小林委員長が労働組合の委員長としてはっきりお認めにならなければならないと思うのでありますね。ところが、この点はあなたの今までのお話からいくと、労働者であるということさえ倫理綱領の中で問題になってくる。しかも労働組合の団体としては会わないんだということを声明されておる。そうすると、最高責任者の首相と閣僚の間に意見の不一致があるということは、これは明確な事実です。この二つの問題、つまり自民党の時間的継続の中におけるこういう政治的行動の不一貫性並びに今度は上下の関係における不一致性、これは明確に今日明らかにされなければならない問題でありますが、これについて文部大臣は、これはどうお考えになっているか。この点、ごまかすことはできない問題でありますから、この事実の上に立ってはっきりおっしゃって下さい。
  105. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) まあ総理がどういう意味合いでどういう都合で会いましたか、私は承知いたしません。しかし、私は教育の直接の担当者であり、責任者だという立場において考えましたときに、昨日来の御質問に対してお答えした通り考え方で行動しておる、これまた一つの事実であります。形の上の一貫性がないとおっしゃれば、そうも見えますけれども、問題は本質的に考えるべきものじゃなかろうか。前の松田文部大臣もお会いになったことは私は承知しておりますけれども、どういうお考えで、何のために、会われた結果どういう成果を上げられたかどうかということは、全然別個のことで、形は違うかしりませんけれども、本質的には同じかもしれない。私は人様がお会いになりましたことを私自身は知らない。その趣旨考え方の内容は、私は昨日来何度も申し上げたような考え方によってお会いできないと考えるわけでございます。
  106. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一つ。私は大へんなことになると思う、これはどう考えても……。内閣はかわっても、文部大臣がかわったら文部行政が変わっていかぬというのは、これはあなたの出したこれですな、「政党政派の別にかかわらず、その基本は不変のものであり、大臣の更迭等によってゆらぐべきものではないと考えるのであります。」この言葉は侵すことはできないと思うのですね。ところが歴代の文部大臣は会ってきた。あなたの時代になって会わない。解釈はしかじかかくのごときものだ、そうして理由を申しておられますけれども、その理由が成り立つものならば、今までの会ったということは、これは非常に政治的にけしからぬことになるのであります。今までが正しければ、あなたのやり方はこれは間違いである。一体これはどう考えればいいのですか。社会党内閣になり、共産党内閣になればこれは違いますよ。これは変わったって仕方がないと思う、ある程度ね。しかし、一貫した自民党内閣でしょう。そうして文相がかわったからといって、この時間的変化の中でこの基本的な問題は変わっているのです、事実。これは重大な問題です。次に今度は政府の統制の問題として、最高責任者の総理が労働組合の代表として日本最大のとにかく組織を持っておる連合体の総評に会った。その構成員の有力なメンバーとして五人のうちの一人として日教組の委員長が会っている。ところが、この首相の統率のもとにある文部大臣、閣僚のあなたが、任免権の行使のもとにあるところのあなたが会われない。これは明らかに政治行動の不一致ですよ。一貫しませんよ。私はこういう点で、これは池田内閣の少なくとも労働行政、教育行政というものは首尾一貫しないという事実は具体的にこれはごまかすことのできない問題だと思うのであります。この点重大じゃないですか。これは国民の前に私は明らかにしなければならない。これはどんなに弁解されようとも事実です。私は決して別に議論をしているわけではない。事実によってこれはただしているのであります。これは日本の今度の政治に対する信頼の問題について、大体内閣のこれは一つの統制の問題について、そうして国民の前に明らかにする政治的な責任においてこれは重大である問題であると思うのであります。これは御答弁非常に苦しいだろうと思うのでありますけれども、こういう点から考えて、すでに首班が、内閣がそのようなことを決定して、しかも労働者の代表として会っているその組合の執行委員長に会わないなどということは、私は非常にこれはおかしいし、支離滅裂だということを申すことができると思うのであります。私はこういう点からも考えて、あなたの今後の日教組の問題というものはもう少しやはり目を開いていかれたい。そうして事実、先ほどからいろいろ要求されました資料に基づいてさらにこの問題は、日本の教育行政の基本とも関連しますから、今後さらに具体的に明らかにして参りたいと思います。
  107. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 再度申し上げますが、総理は会った。私は会わない。まさに形は違っておりますが、私は団体交渉という形でお会いする筋合いはないからお会いしなかった。総理がお会いしたのは、どういうことかといえば、新聞の報ずるところによれば、文部大臣は会わないと言っているが、どうなんだ、お前の方針かどうかと聞いたと書いてある。それは、おれはまかしているから、文部大臣が会わないということはそれは彼自身の責任において会わないということを言ったらしい。私は念を押しておりませんけれども、これは一体会うか会わぬかということは、それ自身教育の実体じゃないのであって、今までの何といいますか、形だけの問題にとらわれ過ぎて、事が重大にとらえられ過ぎていると私は思うのであります。会う会わぬということは、形は不一致かもしれませんが、本質的な問題としては大したことじゃないと私は思っております。
  108. 加瀬完

    ○加瀬完君 資料要求。それと一点。  きょう出された資料は、「都道府県教育委員長協議会、都道府県教育長協議会臨時総会における文部大臣あいさつ」こういうものを出されましたが、出された内容は、お話をされた内容を伝えておらない。こういう資料を出されちゃ困る。お話をされた通りのものを出してくれなければ困る。文部省の資料の出し方というのは大体ずるけておって出さない。出すと都合の悪いことは省いたものを出す。これは国会侮辱だ。こういうことをなされるかどうか答えて下さい。  それからもう一つ文部省は予算要求をいたしております。で、きょう委員会があれば、骨格的なものでもどういう予算要求をしているのかということは、委員会委員に配付をして、一応われわれの参考に供すべきのが当然だと思います。これを資料として文部省の現在予算要求書を御提出をお願いいたします。  それから、これは大臣に簡単にお答えをいただくわけでございますが、先ほどからの御説明の中に、都道府県教委なり、地方教委なりと、都道府県教委あるいは地方教委との当然交渉権を持つ教組が話し合いをするのは筋道だ、こうおっしゃる。そこで給与でも勤評でももちろん法律の適用内のことで話し合いをされて、一つの妥結点が生まれるならば、これに文部省はいやおういうはずのものではないと思うが、そう了解してよろしゅうございますね。
  109. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 勤評そのものは、これは法律に基づいて教育委員会が実施するわけでございます。それに対して地域教職員組合意見を述べられることは、それはあり得るでしょうが、実施する責任者、実施権者というものは教育委員会だと思います。これは団体交渉によってやるやらぬということまでも相談さるべき筋合いのものじゃない、私はそう思っております。(「答弁になっておらぬ」と呼ぶ者あり)
  110. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は法律の適用範囲においてどういう妥結点が出ようとも、それにいやおうは言わないであろう、こう念を押しておる。これはその通り了解していいでしょう。法律の適用範囲以外に文部省が解釈するというのなら別だが、法律の適用範囲で、どのような妥結点を得ようとも、これは当然保障されてしかるべきことで、文部省がいろいろ言う筋合いではないであろう、こういうこと、これは御了承いただけるでしょう。
  111. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 法律趣旨にのっとって施行されることを希望します。
  112. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと悪いですけれども、はっきり言って下さい。法律趣旨にのっとってだって、昨日の地方課長は、法律にもないものを持ち出して、これが類推だと、こう言った。こういうことをされては困る。(「そうだ」と呼ぶ者あり)法律にはちゃんと、何が適用範囲であるか、この法律の目的は何か、法律の内容は何かということは、必然の解釈として出てくる。その法律の適用範囲のことでお互いが話し合ってきめるのに、文部省がいろいろ言う権限はない。だから、これは適用範囲で話し合うことについては御自由だと、こう、今までの大臣の御説明からすれば了解できると思うのですが、それでよろしいでしょう。
  113. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) まあ同じことを申し上げますが、法律趣旨に従って執行さるべきもの、それ以上のことを脱線して文部省がかれこれ言うべきではない。それは明確に申し上げられると思います。
  114. 北畠教真

    理事(北畠教真君) それじゃ本日はこれで散会いたします。    午後一時十二分散会