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1960-08-31 第35回国会 参議院 文教委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年八月三十一日(水曜日)    午前十時五十三分開会   —————————————   委員異動 八月十一日委員横山フク辞任につ き、その補欠として大谷藤之助君を議 長において指名した。 本日委員近藤鶴代辞任につき、その 補欠として野田俊作君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     清澤 俊英君    理事            安部 清美君            北畠 教真君            加瀬  完君    委員            小幡 治和君            杉浦 武雄君            野田 俊作君            宮澤 喜一君            千葉千代世君            豊瀬 禎一君            相馬 助治君            柏原 やす君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君  説明員    文部省初等中等   教育局地方課長  今村 武俊君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査  (当面の文教政策に関する件)   —————————————
  2. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月十一日、横山フク君が委員辞任され、その補欠として大谷藤之助君が委員に選任されました。また、本日、近藤鶴代君が委員辞任され、野田俊作君が委員に選任されました。  以上であります。   —————————————
  3. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 理事会経過について報告いたします。  本日は、当面の文教政策に関し文部大臣に対し質疑を行ないます。明日は、名城大学の件につき文部当局に対し質疑を行なうことにし、その後に文部大臣に対する質疑を継続いたすことにいたします。  なお、十月の委員会は一応十日に開会いたすことといたし、変更を必要とする事情の生じた場合は委員長に一任願い、後日御通知いたすことにいたします。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 加瀬完

    加瀬完君 新聞の論説でも、それから新聞投書欄等でも、文部大臣日教組話し合いをすべきであるとの意見が圧倒的でありますが、ことさら話し合いを断わられております大臣のお考えは一体那辺にあるか、その点をまずお伺いいたしたい。
  5. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私が日教組執行部の方にお目にかからないと申し上げておることは事実でございます。その趣旨は、お申し入れの筋が、たとえば勤務評定、あるいは新学習指導要領等について中央交渉、いわば対等の立場団体交渉的な話し合いをしたいと、こういうお申し入れでございますから、そういうふうな立場にはお互いがないから、そういう形でお目にかかることはいかがであろう、こう考えてお断わりを申し上げた次第でございます。もっとも、そういう立場でなくて、個人的と申しますか、現場教職員としてのお立場においての貴重な御意見等を拝聴することは、これは喜んで拝聴したいと、こういうことも申し添えてお答えをしておるような次第でございます。
  6. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、申し入れ趣旨が勤評や教科課程等の問題で中央交渉をしようと、いわゆる正式な団体交渉をしようという申し入れであるから断わるのであって、松田さんのような一般的な話し合いということであるならば、会うことは別に断わるというわけではない、こういうことですか。
  7. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 前大臣のときにどういう形で、どういう内容の話をされたかは私承知いたしませんけれども、私が今申し上げました意味は、先ほどのことで尽きておりますけれども、日教組という団体の決議に基づいての課題をお取り上げになって、それを中心に交渉をするというお話だから、それにはちょっとかりに応じましてもどうにも仕方がないだろう、こう考えましてお断わりしたという意味でございまして、個人的にとでも申しますか、純然たる現場教職員のお立場においての建設的な御意見を拝聴することは一つ異存ございません。
  8. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、現場教職員の声を聞くことを拒否する考えはないと、日教組であっても現場職員の声という形で話し合いをするならば応ずるということですか。
  9. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 日教組代表というお立場でなければいつでもお目にかかりたいと思っております。
  10. 加瀬完

    加瀬完君 そういう大臣のお立場に対して、たとえば毎日新聞は「話し合いという民主主義基本原則を忘れている」と論評をいたしておりますが、これについて大臣はどうお考えになりますか。
  11. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) それぞれの立場において御批判はむろんあろうかと思います。私が思いますのは、現場教職員としてのお立場からのいろいろ御意見があるとすれば、それは第一義的には都道府県教育委員会、そういうところと十分お話を下すって、そして都道府県ごと特殊性考慮に入れた建設的な御意見が出てくるはずと思います。そういうことをお聞かせ願うならばありがたいものだと、かよりに思っておるわけなので、新聞等でいろいろ御批判下さいますのは、むろん読んでおりますけれども、必ずしも私の考え方を十二分に御理解の上で御批判下すっているかどうか、そこら辺を私もつまびらかでありませんが、そり批判はどうありましょうとも、私の考え方は以上御披露をしたような気持意思表示をいたしておることを御了解いただきたいと思います。
  12. 加瀬完

    加瀬完君 大体教育現場の声を聞く、また聞きたいという点は大臣も前文部大臣と変わりがないと了解してよろしゅうございますね。
  13. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 繰り返し申し上げますが、現場教職員としてのお立場からの建設的な御意見、そういうとである限りは、私は毎日でもお聞かせ願いたいと思っております。
  14. 加瀬完

    加瀬完君 日教組はそれでは現場代表表でないというのは、どういう御認定ですか。
  15. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) それは率直に申し上げますが、日教組存在の基盤となっております倫理綱領ないしは新しく教師となる人のためにということで裏打ちされましたその兼本線が変われば別ですけれども、それがそのままの形で、日教組団体としてのいわば基本的な考え方、その考え方に立っての団体代表としての御意向、そういうことだと、必ずしも現場教師のすなおな建設的な御意見を総合して代表されるとも考えられませんので、そこでその意味も含めまして、中央交渉という形の団体代表としてのお立場からの交渉形式におけるお話し合いはまあいかがであろうか、こういうことで御返事申し上げておる次第であります。
  16. 加瀬完

    加瀬完君 私の伺っております前提をはっきりさせますが、中央交渉しろとか、しないとか、こういう問題は一応省きます。それから倫理綱領の問題はあと大臣の御見解を伺いますから、これも省きます。そこで今私が伺いたいのは、現場教職員の声を聞きたい、こう大臣はおっしゃる、しかしながら、日教組とは会いたくない。それじゃ日教組現場教職員代表ではないという御認定になってくる、それは一体どういうわけか。それから日教組現場代表でないとするならば、大臣が聞きたい現場代表というのはどういう方々をさすのか、あわせてこの二つをお答えをいただきたい。
  17. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 日教組執行部方々は、私は日本全国の五十万になんなんとする現場教師の建設的な意見代表しておられるとは認識いたしておりません。しからば具体的に現場教師とは何だ、こうおっしゃれば、極端に申し上げれば、一人々々の方がそうである。さらに第二段階としては、教職員組合としてのいわば正式の範囲と申しますか、都道府県ごとの地域的な特色を十分に考慮に入れられた現場教師の御意向教育委員等との話し合いによって集約せられたものが現場教師意向として尊重すべきものではなかろうか、かように考えております。
  18. 加瀬完

    加瀬完君 憲法団結権というのは、これは認められておる。それで各それぞれ法律的な根拠に基づいて結成された団体連合体を作ることもこれは当然また認められておることだ。また、今までの慣行からしてもこれは交渉団体として認められてきたし、あるいは交渉をした事実もあるわけです。現場の声を聞きたいというならば、この現場のそれぞれの正式手続によりまして結成された団体代表と会うことは、その団体がどういう考え方であろうとも、その意見を聞くことも当然これは民主主義ルールだと思う。一人一人の意見を聞くということはけっこうなことですが、数十万の教員の一人一人の意見を聞くことはこれはあり得ないことです。でき得ないことです。正式な、たとえば山口県の教員組合とか、東京都の教職員組合、こういういわゆる文部大臣の言う法的な正式機関意見を聞くということもこれは可能であるかもしれませんけれども、あるいは集約した建設的な意見という意味で、東京教職員組合東京教育委員会に対していろいろ申し入れをしたようなことを間接的に聞くということだけでこの文教問題の全般が解決できる問題じゃない。たとえば今あなたは総務会に行って予算関係の御説明をしたいとおっしゃっておられた。その予算関係にしても、義務教育国庫負担法というものがあって、少なくも二分の一というものは国の財源がひもになって地方にいっておる。しかも地方から出す分の、基準財政需要額基準財政収入額との不足額というものはこれは地方交付税としてやはり国の財源がいっている。あるいは一つの中学を作るにしても、一つ雨天体操場を作るにしても何分の一という補助基準というものは国できまっておる。この補助がふえるか、ふえないか、来るか、来ないかによって文教施設がプラスにもなれば、据え置きにもなるわけです。こう考えてくると、各府県の組織体連合体を作って、一応これは政府に対しましていろいろの要望もしなければならない当然の必要も当然あるわけです。またそういう要望をも聞き、あるいはいろいろ文部大臣のわからない点も教育現場の声として反映することも可能だと思う。それでいい点を、とるべき点をとって文教政策を進めていくことは、これは現文部大臣施政方針からいっても私は何もレールをはずれたことじゃないと思う。非常に現場の声を聞きたいというのが現場代表としてつかまえどころのない現状であるという御認識を持って、しかも現場組織された、正当な手続によって出てきた日教組現場代表としては聞かないということは、これはすなわち現場の声を聞く考えは毛頭ないということになるわけです。こういうように日教組を否定するという考え方文部大臣個人のお考えか、池田内閣としてそういう政策をお立てになっておるのか。池田内閣の今後の文教政策方針として日教組を否定するというお立場だと解してよろしゅうございますか。
  19. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 日教組という現に任意団体存在していることを否定するということは、言ってみたってどうにもなるものではない、その存在はむろん認めます。認めますけれども、今まで私に接触される限りにおいては、これこれのことについて中央交渉を要求するというお申し込みですが、その課題は、たとえば勤務評定は廃止させる、新しい学習課程はこれを中止させる、そういうことを課題として交渉をしたいとおっしゃいますから、このことはどうも日教組代表と私が交渉することによって決定のつくものではない、交渉するとならば、そういう立法問題はやはり立法府を通じてお話しをしていただかないと、あたかも立法府にあらざるものが立法問題を相談して処理できるかのごとく誤信されるむしろ弊害が伴うのではないか、こう考えまして、私はお目にかからぬと、こう言うのであります。それで今お話現場教師の貴重なる意見は聞くんだというが、日教組を否認するというようなことでは聞けないじゃないかというおしかりでございますけれども、それは私はその日教組という団体代表が建設的な意見考えられる全国的な現場教師意向をお取りまとめいただいて、詳しく、できれば文書にして意見を述べていただくことが最も適切じゃなかろうか、そうすることが現場教師の御意向を承るにしても十分に理解ができるんであって、それをただ口角あわを飛ばして話上合うという形はむしろ無用のことではないか、こういうふうに思いますので、以上のごとくお答えしたような次第であります。
  20. 加瀬完

    加瀬完君 日教組話し合いをしないというのは、池田内閣方針かどうか。
  21. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) これはあらためて何だ内閣、何大臣方針としてどうだ、こうだということではなくて、私は法治主義建前から、現憲法秩序建前から当然至極の常識範囲を出ない考え方を申し上げているにすぎない、さよう御了承いただきたいと思います。
  22. 加瀬完

    加瀬完君 憲法で保障されている当然至極の常識は、任意団体であろうと、何であろうとも、申し入れがあれば会って話をする、これが憲法で保障される団結権というものによって連合体を作っておって、その連合体話し合い申し入れをすれば、受けて立つというのが建前でしょう。
  23. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) それは私は、御高説ですけれども、いささか異存がございます。憲法に保障する団結権団体交渉権、これをもいささかも否定する意思はありませんが、そういう意味合いからの教職員組合あり方は、あくまでも地域団体としての教職員相互啓蒙団体でもありましょうし、切嵯琢磨団体でもありましょうし、経済条件改善を主張する交渉等のこともむろん含めての団体である。それがまさしく憲法にいうところの教職員をメンバーとする団体あり方——それを全国大任意団体にすることはむろん御自由でありますけれども、その全国大任意団体そのものと、文部大臣が、当然に申し入れがあったから交渉ということに応じなければならないという意味においての憲法上の存在ではない。それとても現状を認めて、そしてその上に立っての改善意見をお述べ下さることはむろんありがたく拝聴したい。しかし、立法問題を課題として、たとえば絶対反対、廃止だ、あるいは中止させるというふうなことで交渉とおっしゃいましても、そういう団体交渉的な資格はお互いが持っていない、憲法上、そういうことを申し上げたような次第であります。
  24. 岩間正男

    岩間正男君 関連。先ほどのこれは池田内閣全体の考えかどうかという質問に対して文相は、この問題をちょっとあいまいにされたと思うのです。これは何内閣とか何大臣とかいう考えじゃない、これは当然憲法の、法律建前に立つものの常識だというふうに逃げられたのです。これはそういう答弁では現実性はないと思うのです、そういう抽衆的な答弁では。これはこういうことになりますか、この前の岸内閣のときの松田文部大臣はよく日教組と会ったわけですね、あれは常識がなかったということですか、こう解釈していいのですか。あなたの今の説明からいえば、そういう結論が生まれてくるのです。今まで歴代大臣でほとんど日教組と会わない大臣というのはこれはないわけですね。ところが今のあなたのお話では、そういうふうに今度、会ったのがおかしい、会わないのがあたりまえだ、こういう解釈ではそうとらざるを得ない。そうすると今度何ですか、池田内閣になって、はっきり合わないのが正しいのだから当然これは法律の指向する方向によって会わないのだ、これは池田内閣方針だ、こう考えていいのですか。この点明確にして下さい。
  25. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 前大臣が、どういう課題についてどういうお気持でどういう形でお会いになったか私つまびらかにいたしませんが、私が申し上げますのは、前大臣のときどうありましょうとも、先刻来私が申し上げておることは、現行憲法憲法に基づくもろもろの関係法律制度上から見て、当然しごくの常識から私申し上げただけであって、池田内閣で新方針が打ち出された、あるいは岸内閣ではどうだったということでなく、どの内閣といえども憲法実施以後、その憲法に基づいて制定されました法律制度上当然しごくのことであると申し上げただけであります。
  26. 岩間正男

    岩間正男君 その点ですね、議論しても始まらないと思うし、必要があればあとでやりますけれども、これは今までのそういう歴代内閣がとってきた方針というものを全部ここで否定される、そして当然われわれは法の指向する方向に立つのだ、それが少なくとも新しい池田内閣方針だと言わないばかりのこれは今のお話なんですね。これはそうとっていいのですか。そうすると今までこれはもう何でしょう。私たち終戦後の組合運動に関係したもので、そしてはっきりした組織がまだ固まらない時代において、今最高裁判所長官をやっておる田中文相時代でありますが、その時代からさえこれは会っているのです。そうすると、これらの歴代——十何代の文相をそれから迎えていると思うのですが、その全部の会見団体交渉、こういうものは全部違法であった、ここではっきり改めるのだ、こうとらざるを得ないのですが、その点確認されますか。この点をあいまいにされては困るので、ここのところは非常に大きな問題です。  もう一つは、あなたの言うような抽象理論が一応かりに成り立つとしても……、これは成り立ちません。議論をすればあとではっきりすると思いますが、この点はまあ今省いておきます。私関連質問だから成り立つとしても、かりにしかし今までの慣行を無視して、それでもっていろいろな実績を上げておいた面をここで否定し、そうしてしかも現場の声を代表して組織されておる、正式に組織され、承認されておる団体との交渉を拒否する、こういうことが文部行政の前進のために望ましい、こうあなたは本気に考えておられるのかどうか、同時にそれがまた池田内閣のはっきりした新しい方針であるのかどうか、この点、一つ明らかにしておいてもらいたいと思う。これは重大なことです。
  27. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 繰り返し申し上げますが、池田内閣としてあらためて新方針として打ち出すがごとき問題でなくて、法治主義議会主義、新憲法秩序ということから当然の処置であろう、当然の考え方であろうと、こういうことを申し上げておるような次第でございます。また、そうした方が責任所在がはっきりして、日本教育のためにはむしろ望ましいのじゃなかろうかと私は存じております。
  28. 岩間正男

    岩間正男君 もう一つだけ、まあ関連ですが、どうも今のようなお話というのは、私は通用しないのじゃないかと思います。なるほど立法府法律は作られる、それで施行されます。しかしそれが完全無欠なものだという想定に立つとしたら、これは大へんなことです。民主主義根本を否定する問題です。これに対して現実的に適用を受ける現場の諸君が意見を述べる、反対意見もあるだろうし、賛成の意見もあるでしょう、この意見を集約して、しかも執行部であるところの行政官庁の長である文部大臣にその意見をあくまでも開陳する、そしてこれについて反対だったら反対意見を述べる、この法律はやめてもらいたい、こういうことをいうのが民主主義に許されたところの当然の権利であり、ルールなんです。これを法治国の建前だからそういうやり方をやるということはけしからぬというような考えに立つのは、これは少なくとも旧天皇制憲法下においてはいざ知らず、新しい憲法体制の中では許されないところの独断です。あなたは今いかにも正しいような抽象論を述べて、いかにもそれが押し通るようなことを言われたけれども、これは現実には即応しません。新しい憲法の精神にも即応しません。御承知のように立法府はきめるでしょう、しかしそれについて完全にもう百パーセント意見も述べることができない、反対意思表示もすることができないというような時代になったならば、これは民主主義そのものが死んでしまいます。明らかです。従って私はその本質論をやる時間は十分持っておらないのだが、関連の途中だからそのくらいにしますが、この点についてあなた釈明できますか。そういうようなことがまかり通って、しかもまた官僚独裁政治体制のようなものが復活しつつあるような形で今の言がなされ、それを根拠として実際の具体的な日教組との会見を拒否されるということになったら、これは非常にゆゆしい問題だし、またこれが池田内閣方針だということになるとすれば、われわれは池田内閣そのものを検討せざるを得ない、この点明確にしてもらいたい。
  29. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ただいまの御意見は、少し私の発言を誤解なすっておるのじゃないかとおそれます。先刻来申し上げるように、私が日教組代表交渉に応じないと申し上げたことは、立法府において法律の改正をしていただくのでなければ実現できないことを課題として、中央交渉という団体交渉で解決するがごとき形でお申し込みになりましたから、それは応じられません。応じてもかえって建前をくずすことであり、責任所在がはっきりしないからという意味でお断わりを申し上げました。ただし、そういう意見があるという御意向であるならば、たとえば勤務評定は、これは根本制度を廃止しろという要望として、ただ一片の紙に書いたものをお出し下すっても済むのじゃなかろうか、意見であるならば、それを課題として中央交渉団体交渉でどうかしようとする場を作ろうとおっしゃるなら、それは応じられない。私はこれは当然の常識だろうと思ってお答えをしたわけであります。ですから、現場教師意見というものは尊重すると申し上げた、当然のことであります。尊重せねばならない、聞かしていただかなければ実情に離れるおそれを感じます。だがら、それは望むところなんであって、それは団体交渉みたいなものでやらるべきじゃないじゃないか。そういう話し合いの場なら、都道府県教育委員会十分お話し下すって、その結晶を文部省にお伝えいただくことが建設的な意見として貴重なものになるんじゃなかろうかということを先刻来申し上げたのであります。もっとも直接でございましょうとも、私は、御意見ならば御意見として、陳情ならば陳情として、詳しくそのことを書いて、証拠を残して十分に意見をお伝え下さることがより適切じゃなかろうか。団体交渉課題とするには適当ではない。いわんや団体交渉をするお互い立場ではない。まあこういう建前を一貫して、先刻から申し上げたことを抽象的だとおっしゃいますが、その考え方が最も常識的な当然のすなおな考え方だと、そういう気持を申し上げた次第であります。
  30. 岩間正男

    岩間正男君 もう一つ。それはあなたはそうお考えになっていらっしゃるけれども、現実には、ことに終戦後の十五年の長い年月を費やして、とにかく民主主義の実践のためにこれはお互いにやってきたわけです。不十分なところもあったろうけれども、とにかく補いつつこれを進んできたわけです。そして、しかも歴代——十何人になると思いますが——文相はそれに応じてしてやってきた。そういうものをここで変えるというからには、よほどのはっきりした根拠がなければ私は不可能なことだと思うんです。ところが今のお話によりますというと、立法府でなければ変えられないような問題について、行政府にこれは団体交渉を申し込んでいる、これについては当然都道府県でまず先やるべきだ、そしてその結果を文書で出せばいいじゃないか、こういうような御意見のようです。ところが、今まで日教組運動について私たち議員としてその経過を見て参りましたけれども、これは国会でもあらゆる機会にあらゆる陳情、請願、要求を出しておると思うんです。国会の方に主力を注いでおったということは事実です。しかし、これは国会だけで決定するんではなくて、法案提出権というのは議員にもありますけれども、御承知のように政府にある。文部省にある。従って、当然その法案提出権のある執行者最高南責任者に対しまして、この意見を伝えるというのは私は当然なことだと思うんです。従って、この点何かあなたのお話では、立法府がやるべきことが行政府にきているという点でおかしいじゃないかという御意見がありましたから、この点はまず訂正される必要がある。第二の問題は、都道府県でこれは十分にやっておるんですよ。もう四年来になると思いますが、あらゆる都道府県に何回、何十回の、一体今までこれについての話し合いがなされておったかということは、これは新任の文部大臣はおわかりないかもしれませんけれども、われわれは実によく知っている。そしてその結果集結されて、しかも何回か検討された結論が、今日はっきり、これをとにかく文政の最高責任者に伝えよう、こういう形できているのが日教組の現在の態度だというふうに私は自分で了承しておるんです。しかもそれを一片の文書で出せばいいじゃないかというお話ですが、あなたは新任以来、日教組に会って少なくともこういう問題について十分聞かれて、そしてもう相対で、もう十分わかっておる、だから今度は文書でいいというならばまだ話はわかりますけれども、今までの事情については、どうも今までのお話の内容から伺いますというと、十分御存じないようだ。側近の者はどういう話をあなたに入れたかわかりませんけれども、十分御承知ありませんよ。そうしていて、一片の文書でいいじゃないかということでは、私はこれは、今の御説明ですが、納得できないし、また世論もこれを納得していないだろうと思う。そして慣例の上から見ましても、これは非常に大へんな転換をすることになるのでありますから、この点について私の希望したいことは、当然これを再検討して、こういうような、いわば官僚独善とも見られるような一方的なやり方については、私は改められる必要がある。かつて、今から十数年前に、田中文部大臣がそういう態度をとって、もう痛烈な非難を受けたのであります。世論の指摘を受けた。一週間にわたるところの激しい、これは世論の非難を浴びまして、とうとうその結果、率直に前非を悔いて、そしてわれわれの代表会見をしたことがある。これは私はあっぽれだと思う。で、荒木文部大臣は、少なくとも新憲法によって十数年の政治的訓練を経られた優秀な方なんだ。私はそういう点で、田中文相に劣るとは思わないのでありまして、この点から、十分にこれを考察して、私は世論の指向する方向、それからまた多くの現場教師の希望しておる、そしてその結論の方向に私は動かれることを切望したいのですね。関連質問ですから以上で終わりますけれども、これに対する見解をお聞きしたい。
  31. 千葉千代世

    千葉千代世君 文部大臣は、会わないのが当然な常識のようなことを今おっしゃったのですけれども、これから先、文教の府を担当していらっしゃる場合に、御自分の今まで持っていらした、いわゆる既成概念に合わない者には会わない、気に入らない者は会わない、こういう常識論で文部行政をやっていくおつもりなんでしょうか、どうでしょうか。  それからもう一つは、池田内閣方針でないようにおっしゃったわけですね。さっきは、自分の考えとして云々とおっしゃった。そうすると、池田内閣が働く者に対して一貫性を持った政策を持っていないということを私は考えておるのです。たとえば総評、これはいろいろな労働組合の連合体でございますが、総評に対して石田労相は、会って、やはり労働者のいろいろな意見を聞いて、それで労働行政の上に生かそうという努力をしていらっしゃる。それから池田総理も、これは会うということになっております。それからもう一つは、これは日教組が自治庁と交渉します場合には、これは会える、こういうこともあるわけです。それから全逓にしましても、まあ馘首された方が中心になって交渉する場合も、郵政大臣は会っている。それからもう一つは、任意団体云々と言ったのですが、日教組は、御承知のように、まあ団結権を保障されて、地方公務員法の第五十三条の三項によって、しかとできているわけです。ところが、全然——たとえば医師会の場合でございますと、全くの任意団体であって、団結権が保障されて云々じゃないわけです。しかし、これとても、全国のお医者さんが一緒になって意見をまとめ上げて、そして厚生大臣と会っている。こういうふうな、私はこの方が常識じゃないかと思うのです、かりに常識論から言ったにしてもですから、大臣がお持ちになっていらっしゃる常識論というものが、いかにも世論一般の常識のようなことを大臣代表してお答えになっているようですが、非常にナンセンスだと思うのです。  それからもう一つ法律上は日教組とは交渉すべき筋合いのものではないということを先ほど述べられておりますのですけれども、さっき申し上げましたように、地方公務員法の五十二条の三項によって認められた教職員の連合組織である。従いまして賃金を中心に、教職員の労働条件とか、あるいは改善のために努力をしている。そういうことがまた認められた教育公務員の労働組合があるとすると、現在、まあ国立学校の教師はもちろんですが、地方公務員であります小中学校の教師、それが半額国庫負担なわけなんです、国から費用をもらっているわけです、半額。それから高等学校を含めて、その支出基準も、教育公務員特例法によって国の基準に沿っている。それからまた、教育委員を公選制から任命制に切りかえたそれ以後の教育行政でも、法律、省令は、文部省の指導によって行なわれる面が非常に多いのです。こうしたことから、教育行政を円滑にしていくために、当然文部大臣日教組話し合いを進めていくということが必要じゃないか。先ほどから加瀬委員が言われたように、一人々々の現場教師に会って意見を聞いていくということは、しごく、大へん民主的のように見えるわけなんです。そうあるべきだと思います。しかし、文部大臣文部省にいらして、電波探知機をもって、一人々々の教員の胸の中をぴたっと照らしてやるということもできないわけです。そうすると学校なら学校でもって、そこの組合員が一緒になっていろいろな話し合い、要求、要望、たくさんのものを出し合ったものをまとめて、そうして市町村また県の連合体、それらをまたまとめ合って、日教組全体がまとめていくという、こういう民主的なルールといえば、やはり大ぜいの意見をまとめ合っていく、しかも、それが大臣が先ほどすなおにすなおにとおっしゃるが、これほどすなおなものはないわけです。大ぜいの意見を無視して、たとえば千葉県の安房郡の山の中のぽつんとした先生の意見、また九州の長崎の先生の意見をぽつんと出して、そのことを基準にしてやらないで、それらの先生がその地域の状況の中でどういう苦しみをして、たとえば勤評の問題についてもこういう実害がある、その点について非常に困るのじゃないか、こういう総合的な意見を持っていく場所として、私はやはり唯一の団結権を保障された連合体組織がその意見をくみ上げて、そして交渉していく、そういう窓口をみずから閉ざしていって、あなたは一人一人の意見なら聞くけれども、日教組執行部意見は聞かない——執行部は勝手に天下り的におれが執行部になりたいからといって出てきたのではない。一人々々現場に推され、組合費を払って——組合費を払えば助教授であろうが、年寄りであろうが若い者でも対等の権利の中で話し合っていって、そうしたものが次々重なってきたというのですから、そして選ばれている組合の中で組合の意見を無視したり、自分勝手な常識論でもし振り回すとすれば、その人はもうみなの批判によってこれは代表に選ばれないということ、そのくらいきびしいルールでもって民主的な連合体はできておるわけなんです。ですから、それを否定してしまって文書で、さっき一片の紙でいいと言われたのですが、こんなことは野蛮国のほんとうのファッショの国でしか通じないわけなんですが、私は大へん恐縮ですが、前にイギリスに行きましたときに、吉田総理が行った直後だったのですけれども、そのときにイギリスの首相が向こうの労働党の議長ですか、その人を紹介する際に、この人はイギリスの働く者の代表であって、イギリスの政治のバック・ボーンだということを言われて、吉田さんはこちらの方で不逞のやからと言ったばかりですから、目玉をむいておって寂として声がなかったということを聞いておったわけです。そういう話を聞いたときに、私はやはりその国の民主過程の進展の中でいろいろ紆余曲折があるかもしれませんが、私たち現場の声を一つ一つほんとうに文部大臣のところに言いにいきたいと思っても、文部大臣は忙しくて仕事ができないでしょう。きっとお会いにならないと思います。そうした場合にまとめ上げた意見の場を最大限に活用して文部行政に生かしていく、かりに勤評を廃止してほしいといったらば、廃止してほしいというからには、ただ抽象的にはいってきやしない。やはり現場でやってみてこういう点がいけない、こういう点がいいのだ、だけれどもマイナスの方が絶対的に多くてこれでは教育が進展しないから廃止してほしいという要求を出されたら、行政府はなるほどこういう意見がある、それならば自分たちはこういう意見をまとめて立法府であるわれわれに対して……今答弁の中にあなた方はいろいろ言うけれども、現場の先生方はこういうことをまとめて言ってきた、そういう役目を果たすこともあると思いますし、当然の義務だと思います。そういう点から考えました場合に、当然の常識でございましょうとかいった場合に、大へんな間違いが起きて、常識ということがあやまってこれはファッショに通ずるのではないかと、大へん言い過ぎですけれども思うわけです。そういうわけで池田内閣のとってきました各労働組合に対する各県の状況と、今、文部大臣日教組に対して何か日教組を否定したということに通ずるのじゃないかと思うのですが、そういう意味でそういう点についてどう思っていらっしゃいますか。
  32. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) いろいろと御忠言も含めての御発言で、自分もありがたいと思いますが、たとえば郵政大臣が全逓と会ったじゃないか、それは会わなければいけない制度でありますから会うのであって、私の場合は、会わねばならない制度がないから会わないと申し上げたのです。その他の任意団体でも会っている例もあるじゃないかという例も引いてのお話でございますが、それは私もそのことだけならば、会う会わないなんというのは、文教行政の実態じゃないですから、会うことは一向いといませんけれども、ただ思いますことは、現実に、たとえば勤務評定にいたしましても、至るところで絶対反対と大騒ぎをしていて、いまだに三県くらいは実施されていない。実施されないように努力をされたのが日教組ですから、だからその方々代表という立場で次の項目について団体交渉をしたい、すなわち勤務評定を廃止しろという課題交渉したいとおっしゃっても、私の立場においてはどうにもしようのないものなんであります。しようのないことを知りながらお会いすることそのことが、相手さんを侮辱することじゃないか、あるいはかえって弊害をかもすのじゃないか、そう思いますから、御意見がございますならば、一応法律を守った上で、その守った姿に立脚しての具体的な改善意見、廃止意見というものが出てくることもあり得ると思うのですよ。その上での御意見であるならばわかりますけれども、初めからだめだという態度でやられて、いまだにそれは廃止するのだ、こうおっしゃる立場からのお話では、ちょっとほかの任意団体とほかの大臣が会われるという例にひっかけておっしゃることは少し違うのじゃないか、こういうふうに私は思うのです。ですから、ことさららしく日教組を否認するとか、ことさららしく日教組を敵に回してどうだとか、そんな意思は毛頭ございません。むしろ逆に日教組の方では、一九六〇年の行動方針では、明らかに文部省は敵だとおっしゃるものですから、敵とおっしゃりぱなしで、交渉だ、何だとおっしゃっても、少しまじめな発言じゃないような気持もいたします。そういうこともひっくるめまして率直に常識的にお答えした、そういうように御了承いただきたいと思います。
  33. 千葉千代世

    千葉千代世君 他の大臣が会うのは、それぞれ会うべき理由があるのだ、自分はないとおっしゃった。私はあなただから日教組が会いたいのであって、日教組がかりに郵政大臣に面会を申し込んで、そうして教員の待遇改善云々と言ったら、郵政大臣が「それは私でなくて文部大臣でしょう。」と言うのは、これは常識だと思うのです。そういう意味で、あなただから日教組が会ってほしい、こういうわけなんです。だからその点これからもそういう考えで一貫して、そうして会わないでいくつもりなのかどうか、そこをはっきりしていただきたい。もうちょっと心をほぐして、そんなにこちこちになって私らをにらめつけなく大らかに……、私は日教組代表じゃない、私は一般の国民から選ばれてきたわけですから、ちょっと腹を割って、こういう点があったと……。あなたは敵だと言われたから憎らしい、そういうのじゃなくて、やっぱり問題点をはっきり摘出して、問題点を中心にして、なぜそうなったかということを考えもせずに、御自分の概念でもって、おれは会わぬとだだっこみたいなことを言っても、国家の大臣は務まりません。そこのところをはっきりしていただきたいと思います。
  34. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私は何もにらみつけて申し上げているわけじゃないのです。これは、どうも生まれつきの人相のしからしむるところで、方々でそういうふうなおしかりを受けますが、この点は悪しからずお目こぼしをいただきたいと思います。日教組と絶対に会わない、絶対的なことを申し上げているのじゃございません。もし日教組がいうところの倫理綱領というちょっと今の憲法下においては、いかがであろうかというような基本線でもって打ち立てられたその基盤に立って、すべての階級闘争ないしは団体交渉という形で会え、会わないかとおっしゃる限りにおいては、お会いすることそのことが弊害があります。こういう意味でお会いしないと考えております。ただし、これがほんとうの、だれが見ても常識的に現場教師の組合である、教職員組合であるという性格づけをしていただいて、文部省を敵などとおっしゃらないで、ともに日本教育をよりよくしていこうというお立場からの面会の御要望、そういうことであるならば、私はいつでもお会いできると思うのです。
  35. 加瀬完

    加瀬完君 その日教組考え方について、いろいろ御所見が発表されたわけでありますが、大臣の解釈のような解釈が正しいかどうかということも、むしろ会って十二分に話して、疑点をただし、あるいは大臣の見方によれば正しくないと思う点も訂正したらと要求したっていい問題です。私は、一方的にそういう解釈をして、自分の一方的解釈に自分を縛って、相手方の言い分も聞かないで会はないということがおかしいのじゃないかと思う。これはあと倫理綱領の問題はさらにお尋ねいたします。ところで、今までの大臣の御説明を承っておりますと、憲法に基づく諸制度からの常識論として日教組に会わないのは当然しごくのことだ、むしろ何か交渉とかいうことでなくて、申し入れたいような要求の点があるならば、文書要望として出せば事足りるのじゃないか、しかも、その文書要望にしたって、都道府県教育委員会というものに十分話し合えばいいことで、都道府県教育委員会に十分話し合ったその結論で問題解決のでき得ないようなものを集めて文部大臣のところへ要望すればよろしいのだ、こういう御見解のようです。そうすると、都道府県教育委員会というものが、あなたは法律々々と先ほどからおっしゃっていますが、法律にきめられている通りに位置づけられているか、あるいは運用の効果を保障されているか、こういう問題が出てきます。もっと率直に言うならば、日教組文部省を相手にしないで、都道府県教委に交渉して足りるのじゃないかというなら、文部省は勝手な指揮命令権もなしに指揮命令をして、がんじがらめに都道府県教委を縛りつけておいて権限を全然剥奪するような方向文部省が押しておって、それで交渉しろと言ったってらちがあかない。日教組文部大臣のところへ持ってこないで、都道府県教委に交渉の主体を移せというならば、今までのような法律にもないようなやり方で都道府県教委の権限を圧迫するようなやり方を文部省自身がやめればいい、その点の事情おわかりですか。
  36. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今初めのお話の、できれば、願わくは都道府県教育委員会と十分お話し合いをいただいて、そうして双方の意見の一致したような建設的な御意見はぜひ承りたい。また、意見が一致しませんでも、その段階で御検討をいただいて、意見が合わなければ合わないということで、各都道府県ごと特殊性もあるわけですから、それを私どもの方にお聞かせいただいて、意見として、あるいは陳情としてお聞かせいただけば、それが一番すなおにうまくいくのじゃなかろうか、そういう意味で申し上げたので、要すれば、直接でも御意見があれば文書にしてぜひお出しいただきたい。日教組お答えした中身にもそう申したわけであります。  それから文部省が権限を逸脱して、法律に違反して現場教育委員その他に支配的な権力的なことをしているのじゃないか、こうおっしゃいますが、そういうことはあるはずがない、もしあったとすれば、あった方が間違いである、取り消すべきだ、そういうふうに考えます。
  37. 加瀬完

    加瀬完君 あなたは長い間の行政官でありますから、法律の運用なり法律の活用なりというものは一番の専門家であるはずです。法律は、これはよき慣習が成文化されたものが法律なんで、従いまして、法律の基本的な性格としては、よき慣習なりあるいは慣行なりというものは尊重されるという事実は、商法なんか見ても明らかなことなんです。ところが教育委員会法ができて、教育地方分権のような形で、教育地方自治権という形で十二分の活動をして参りましたときに、一体歴代政府はどういう方法でこれに応じたか、一つ私は古いけれども勤評の問題を出してみましょう。勤務評定というものを、文部省は校長に勤務評定書を書かせて提出させなければならない義務なり権限なりというものは法律にありますか、まず伺いましょう。文部省法律にきめられないようなことも地方教育委員会に、やったはずがない、やっておればそれは間違いだというのだから、それでは間違いの例をこれから出しましょう。まず、あなた方が、校長に勤務評定書というものを書いて提出しなければならないという法律がどこにありますか、伺いましょう。
  38. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 学校教育法二十八条に、「校長は校務を掌り、所属職員を監督する。」という規定がございます。大体学校長が営造物としての学校の長であり、そうしてその責任者であるという立場において、所属職員の服務を監督するという立場において、教員職員の最も現場に直接して監督するものであり、そうしてまた、ある場合におきましては、人事について意見を述べる等の権限も与えられている、そういうことから類推いたしまして、校長は勤務評定ということをなすという権限を持っていると法律上解釈できると思います。
  39. 加瀬完

    加瀬完君 大学の学長なり学部長なりは勤務評定の立案をし、勤務の評定をしなければならない義務がはっきりと法律できまっている。校長は、あなたの今言ったような点は書かれているけれども、勤務評定書を作成したり、勤務評定書を提出したりしなければならないということがありますか。類推とは何ですか。
  40. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 法律は解釈して運用できる面もあるのでございまして、それが書いてなければできないという性格ではない。営造物の長であるという立場でありまして、そういう意味合いにおいて、勤務評定することは当然できると、かように考えます。
  41. 加瀬完

    加瀬完君 営造物の何ですって。営造物の長というのは何ですか。営造物の長じゃありませんよ、小中学校の校長は……。
  42. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 学校長は学校という営造物の責任者であり、長である。
  43. 加瀬完

    加瀬完君 委員長に要求いたしますが、法制局を出して下さい。営造物の管理は地方教育委員会にあって、校長にはそういう権限はありませんよ。
  44. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  45. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 速記を始めて。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 管理職手当を支給するときも、管理職という概念は一体どういうものだ、こういう点が問題になったわけです。そこで管理職手当の支給されている大学の学長なり学部長というものと、小学校長、中学校長というものの権限が非常に問題になった。それはああいう形で管理職手当が支給されたけれども、人事院の見解では事務当局は明らかに高等学校長以下の校長には管理権はないという態度をとっておる。その具体的な理由としては、任免権なり昇進権なりあるいは今言った営造物の管理権なり、こういうものが全然高等学校長以下にはないじゃありませんか。それからもう一つ、この管理権の中に勤務評定書を作成し勤務評定をするという権限が学部長や学長にある、小中学校長にはこれはない。あなた方は法律家だからわかるでしょう、勤務評定というものはどういう形になっておるか。都道府県教育委員会が立案をして、地方教育委員会がこれを行なう、校長というものはどこにもありませんよ。類推などという形で、都合のいいところだけ強制をすることにあやまちがある。
  47. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 営造物の管理者は教育委員会でございますが、営造物の運営を責任をもってやっていく、それは学校教育法の三十八条によって明瞭でありまして、学校長が営造物の責任者であり長であるということはあまりにも明瞭なことだと思います。それからまたそのような意味合いにおきまして、校長が勤務評定するということは理屈上当然だと考えております。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 文部大臣に聞きます。理屈上当然じゃない、あなた方が理屈上当然だと言うなら、法律で規定されておることをやることが当然だ。それで、これは何回も問題になったように、勤務評定都道府県教委の計画のもと、地方教育委員会が行なうものとするとある。校長が勤務評定をしなければならないということはどこにもない。類推とあなたは言いますが、法律にきまってないからあなた方類推形式をとらなければどうにもならないということじゃないですか。文部大臣はこれをどう思いますか。待って下さいよ、あなたに質問してない、文部大臣だ。従って、都道府県教育委員会がどういう計画を立てるか、地方教育委員会がいつこれを行なうかということは、これは都道府県教育委員会なり地方教育委員会にまかせられておる問題だ。固有の権限だ。指導助言はあっても、こういう形式で今まで文部省がやったように、勤務評定をしろというようなことを指揮命令できる権限は文部省にはない、文部大臣どう思いますか。
  49. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 権力をもって命令する権限はないと承知しております。指導助言の範囲をむろん出ない。そこで勤務評定については、都道府県教育委員会がこれを担当する、職員の任命権者として担当するわけでありまして、その先の詳しい規則その他をつまびらかにいたしませんので申しわけありませんけれども、一応想像を申し上げさしていただくならば、都道府県教育委員会法律の執行に関する規則を定める権限はあろうかと思いますが、その権限に基づいて今御指摘のようなことになしておるのではなかろうか、詳しくは私は法制局長にでも尋ねませんと申し上げかねることを重ねておわびを申し上げますけれども、そういうことでございまして、指導助言という立場においてこういうふうにしていただいたらどうだろうというアドバイスをした、それをとるとらぬは都道府県教育委員会の権限にある、そういう関係であろうかと思います。
  50. 加瀬完

    加瀬完君 そういう関係なんです。ところがそうでない、実際の文部省の今までの行政方針は。初等中等教育局長なり地方課長なりが、電話で命令をしたり、人を派して地方教育委員会なり都道府県教育委員会なりの実施状況に対して強い指示をしたり、また予算を流用してまで勤務評定の促進をはかっておるじゃありませんか。地方教育委員会がやるかやらないかきめればいい。その地方教育委員会がたじろごうが、県教育委員会が立案についていろいろ地域に応じた形式をとろうとすれば、その形式に対して難くせをつけて、いわゆる都道府県教育長の協議会の案と言って、そこには文部省の担当課長が行って十二分に文部省案というものを打ち立たせたものを側面から強行さしておるじゃありませんか。こういうやり方をするから、当然こういう問題によって派生をした法律の施行というものには問題がある、従ってこれは日教組の幹部ではない、現場大臣のおっしゃる一人々々の先生が、何とかこの問題はもっと今までの文部省の行政というものに対して新文部大臣に再考をしてもらわなければならない、こういう要望が当然出てくるわけです。法律に従っておらなかったのは文部省です。こういう実態を御理解していらっしゃいますか。
  51. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) それはさっき申し上げたことで一応尽きていると思いますが、あまりにも親切ごかしに、親切が度を過ぎて目立ち過ぎたことについてのおしかりと思うのですが、法律の執行はまさしく都道府県委員会にある、これは執行せねばならないと法律上義務づけられた立場だと思います。そこで、例外なしにどの都道府県においても実施せねばならぬけれども、なかなかそれがすったもんだで思うようにいかなかった県が三つ残っておると承知しますが、どうしてもやらねばならないことに、なるべく妥当な内容で、こうもしたらよかろうかと文部省で思いましたいことを都道府県委員会に御忠告申し上げる、参考に差し上げるということで、おしかりを受ける筋合いじゃないと思うのです。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 そういう権限は文部省にありませんよ。文部省設置法御存じでしょう、文部省にこういう形式で勤務評定はやるべきだ、いつまでに勤務評定は実施しなければならないといったようなことを指揮命令する権限は文部省にはありません。計画を立てることは県の随意だ、実施することも地方教育委員会の随意だ、従ってその計画内容や勤務評定の実施時期というものは、これはその教委にまかせられるべきものだ、それを形式を定め、内容を規定し、期日を定め、しかもPRの費用というものを他の予算から流用してまで強引にやるということは行き過ぎでなくて何ですか。これは現在の文部大臣責任ではありませんが、そういうやり方をしてきておる。法律論を聞けばさっきのようなあやふやなことを言っておる、問題にならないでしょう。
  53. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今のお話では格別お答えすることはないと思うのですけれども、それはいやしくも……。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 質問しているのに答える必要がないというのは何事です。
  55. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 特に答弁を御要求であったと思いませんけれども、念のためちょっと申し上げるという意味合いですが、法律上の権限がないのに権限を逸脱して、従来、文部省が行動したことありせば、その有無は私知りませんけれども、ありせばそれは慎まなければならぬことだと思います。思うに今までの御指摘の点は、文部省として希望的にこうもありたいという助言を申した範囲以上に出てないことだろうと思います。ただ、やり方によっては目立ち過ぎた、行き過ぎじゃないかと思われた点もあるいはあろうかと思いますけれども、そもそもの建前として、いやしくも権限がないものをやるということはあるはずがない、あらしめてならないと、こう考えて私はやりたいと思います。
  56. 相馬助治

    ○相馬助治君 関連して。私は加瀬委員が指摘しておることはきわめて重大だと思うのです。しかし、加瀬委員がちょっと言ったように、現荒木文部大臣責任ではないかと、こうおっしゃったものだから、私から答える筋合いではないというふうにとられたのだと思うのだが、しかしこの問題は、当委員会としてはやはり徹底的にたださなければならない内容を持っていると思うのです。そこで加瀬委員、これはやはり当面の今までの遂行した責任者であった内藤初中局長も呼んで、同時に今村君なんかも比較的これに新しいからああいうふうな何かわからない答弁をするので、建造物の長だから勤評をやれるのだという飛躍的な論では何人も納得できない、むしろうしろに控えている木田君あたりがベテランでやきもきしていると思うのです。ですから、そういう問題はあっさり初中局長もよくそれらの見解のあいまいもこたる点は明瞭にされて、同時に新大臣に対してもやはりそれだけの余裕と場所とをこの問題に関しては私は与えるべきだ、こう思うのです。私は加瀬委員の了解を得られればぜひとも、いわゆる日教組と会うか会わないかという問題は、ただ単に会うか会わないかの問題ではなくて、今までの歴代大臣がやってきたことと若干でなくて非常にニュアンスの違う態度に出られたことに対する問題、そしてそれに対する疑問、それに対する世の中の人の理解の仕方、こういう問題があるから、当委員会としてはその問題を私は徹底的にただして先へいきたい、こう考えていた。それで加瀬委員発言の途中から関連して会うか会わないかの問題を私は聞きたいと思っているうちに、そういう具体的な問題になったものですから、私自身もそういう質問の用意があるということを申し上げると同時に、加瀬委員にもはかってこの問題は、さっき言ったように明日でも場を新たにしつらえて徹底させたらいいのじゃないかと思います。
  57. 加瀬完

    加瀬完君 私は勤務評定を今論じているわけじゃない。法律尊重、法律尊重というけれども、文部省の今までの行政では、かりに一つをとれば勤務評定でも、管理職手当でも、法律から見れば明らかに疑義の持たれるような措置も行政措置として強引にやっておるのじゃないか。そういうやり方をして今までの行政自体が、地方教育委員会都道府県教育委員会の性格にしても曲げた解釈をやっておって、それで一方的に日教組任意団体だから会う必要はないというような考え方は、これは大臣の御見解である法律尊重という性格からいってもはなはだ首尾一貫しておらないのじゃないか。そういう過去の行政の積み重なりというのが現場の職員の反発を買っている具体的な幾つかの例もあるのだから、もっと虚心たんかいに法律尊重などという形式論を言わないで、ほんとうの意味法律尊重ならば、相馬委員岩間委員が前から出しておるが、今までの慣行というものを尊重する精神こそ法律尊重じゃないか。だから正当にこれは会うべきだ。法律尊重の上からは会わなければならないという筋だって成り立つ、こういうことを申し上げたいのです。どうですか。
  58. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 慣行はいい慣行ならばむろん踏襲すべきですが、適当でないと思う慣行は踏襲しない方が適当であると思っています。一般論として私はそう思う。そこで前大臣がどうした、こうしたということを例に引いておっしゃいますが、前大臣は前大臣としてのお人柄なりニュアンスの固有のものをお持ちだからおやりになったのでしょう。どういう内容でどういうやり方でおやりになったということをつまびらかにいたしません、とはさっき申し上げた通りでありますが、私は先刻のことをもう繰り返す煩を省きますけれども、今の姿のままで、そしてまた今申し上げているような立法論を課題として中央交渉をしたいとおっしゃっても会うべきではない、かように考えております。
  59. 加瀬完

    加瀬完君 それでは形式問題だけ整えば日教組を相手に十分話し合う余裕はある、こういうことですか。
  60. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 形式だけとおっしゃるとどういうことかわかりませんが、団体交渉ではない、何というか、プライベートに会ってみようという、言葉はどうありましょうとも、その交渉せんとする課題が、立法府を通じてしかできないことを、さもできるがごとき姿での話し合いということであり、または今の日教組の性格づけそのまま、あるいは今までの行動、そのことを当然なりとする立場からの日教組代表者にはお会いすべきじゃない、こう思っております。
  61. 加瀬完

    加瀬完君 それは内容も形式も日教組という現在の団体、あのような形で結成されている限りは会わないということですか。
  62. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) はい。
  63. 岩間正男

    岩間正男君 ハマグリが口を閉ざしたような態度を文相はおとりになるべきじゃない、今までの経緯、今一例を述べられたわけでありますけれども、勤評実施の過程の中で、たとえば群馬における予算流用の問題などは予算委員会で連日にわたって問題になったわけです。こういう基礎の上に立って行なわれたこの経緯について、新文相が詳細に御存じないのは、これは当然だろうと私は考えます。そうしてまた今の官庁のあり方からいえば、新しい大臣として入っていけば、事務官僚のいろいろな吹き込みによって、既成観念ができてしまうというのが事実だろうと思う。またこれを無視してはやれない、こういうところに立っているのはこれは事実です。なかなか官僚陣が、このごろまた旧体制の方に復活しつつある現状ではなおです。しかし、私は荒木文相に特にこの際お願いしたいと思うのですが、よく事態をほんとうに判断していただきたいと思う。文部省のやり方そのものについてはずいぶんこれは国民の声が、勤評実施のやり方についてはいろいろな今まで批判がなされているのです。そうしてその中では、あるいは納得のいかない、先ほどからあげられた二、三の例だけにとどまらない例があるのです。従ってこの原因をもっと厳正に判断して、その上に立ってこれは問題を決定する、そういう中で最も当事者であり相手であるところの五十万の代表に会って話を聞かれるというのは、少なくともこのような問題を善処し、さらに文政の新しい方向を打ち出すためには絶対必要だと思う。私はそういう点から、官僚の言いなり、それから彼らのいろいろ出した情報に立ってだけ行政をやっていけば現在では非常に危険だという感じを抱いております。従ってその点を私は再検討して、そうしてハマグリの口を閉ざさずもっと胸襟を開いてそういうような体制を打ち出すことが必要だ、これはなすべき、努力すべき今の仕事じゃないか、こう思うのですが、いかがですか。この点さっきの加瀬君の質問とあわせて一つの新しい角度に立って御答弁を願いたい、こう思うのです。
  64. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) また、実態の認識、調査、検討等しっかりやれという意味の御発言には同感でございます。しかし、私は今の、現在の私の認識において、先ほど来申し上げましたような趣旨に立ってお目にかからない方が、子供たちの父母ないしは一般国民の世論を推察いたしまして最も適切である、かように考えております。
  65. 相馬助治

    ○相馬助治君 今まで問題になった問題について、やはり私はお尋ねしたいのですが、私がお尋ねする立場は今までの考え方と若干違います。今まで質問された方は、日教組と会わないことは全くけしからぬではないかという完全な前提に立たれておる、現在荒木文相が会わないと言うておることはけしからぬという世論があると同時に、荒木文相の高姿勢も一つの形式であるという意見も若干あることは事実なんです。そこで私はそういう立場から私見をまじえずにこの問題についてあなたのほんとうの腹を一つ聞いておきたいと思うのです。というのは、日教組というものが過去の運動並びに現在の運動方針その他について荒木文相からいえば不満もあるであろうし、そうしてまたかくあらしめたいという点もあるであろうと思うのです。しかし、現実に今教育界の中で最も大きな職場の団結をしている一つのグループであるという、この事実はもう否定することができないのです。それから一人々々の先生の意見を聞くと言いますけれども、これはやはり現実的には言うべくして困難なことであるということも、文相はおわかりの通りだと思うのであります。そういたしますと、今の日教組がああいう形でこういうふうに言ってくるのでは会わない方がいいと思う、というだけでは、文教の最高のつかさとしての荒木文相責任は完全に果たされ得たと私は考え得られないのです。いま一歩出るべきだと思うのです。いま一歩出るべきだというのは何かといえば、法律的に現行法から日教組なんかとは会うべきでないと、こうもおっしゃっているかと思うと、会っても意味がないのだ、そのことは立法府に要求しなければならないところのものを、行政府の上長であるおれのところに持ってきてみてもそれは話がわからないのだし、また話がわかるわからないは別として、言いたいならば文書として出せばいいのだから、そのこと自体は国会に持っていけばいいという御発言もあったが、それは国会にも言うべきであるけれども、今のような政党責任内閣においては、明瞭にやはりこの教育に関する問題については、日教組がその意見なり希望するところは文相に持っていくということは、これは筋違いではないと言わざるを得ないと思うのです。ただ持ってくる者の顔つきが気に入らない、持ってきかたが気に入らないというならば、そのことを直し得るなら直させても、ともかく来ること自体がいけないのだということは、私はやはり考えるのに、世間すべての人が納得できないのだというふうに考えるのです。  それからもう一つは、荒木文相としては現在の日教組の性格のままでは、会っても意味がないというふうな意味の御発言もございましたが、しかし、これもやはり一度は会ってみてみずからの見解を述べ、先方の見解を聞きましても氷炭粗いれず、しかも会うこと自体が何ら文教の進展に資さないとした場合に、初めてその意見を具して面会を拒否しても私はおそくないのではないかと、私はこういうふうに考えるわけです。そこで私は一つ考え方として、意見を述べているのではなくて、お尋ねしている立場上からいえば、次のようなことです。やはり今までの荒木文相の高姿勢と伝えられているそのこと自体は、いいとか悪いとかいう議論もあるであろうけれども、それは別として、そういう形の中からは文教問題の解決と進歩とは望み得ない。いよいよ日教組がその闘争方針がかりに誤っている面があるとすれば、それが陰惨な形で裏面に隠れて、もっと悪い形でこれが発展しないとも言い得ないと心配している論者もあるが、耳をかすべきことだと思うのです。そこで大臣の腹を聞かしていただきたいことは、法律的に会わないと言っていることがほんとうに自分の腹なのか、それとも過去の日教組の業績その他から見て、会ってみても立法府に言わなければならないことをぐたぐたと言うだけなので、会うことに意味がなくて問題の混乱を深めるだけだからおれは会わないというのか、それとも日教組自体が選挙闘争その他に示すところの政党そのものに対するものの考え方、政治闘争に対するものの考え方についてふに落ちないところがあるからかくあらしめたい、かくあらしめたいというその姿に近づくような前提があるなら会うというゆるみがあるのか。いわば全く今のところではあの日教組は相手にせずというのか、それとも日教組自体が手続なり性格なりものの考え方について改め得る——改めるという言葉を言うと日教組側が怒るかもしれないが、文相側から言って改め得る最大の譲歩をして会うというならば、会う用意があるというのか。その辺の余裕並びにニュアンス、ゆるみ、こういうふうなものを、私は二度聞きませんから、本音めいたものがありましたならば、一つお尋ねをしておきたいと思うのです。
  66. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先ほど来申し上げることを繰り返すようになろうかと思いますが、今まで文書申し入れられた日教組中央交渉をやりたいというあのやり方及び内容に関する限り、ああいうことである限り、お目にかかるべきじゃないと、かように考えます。もっとも建設的な意見をお持合わせならば、それは会って談論風発するやり方でなくても、その意見を率直に書いてちょうだいした方がかえって便宜じゃないか、そういう御意見はお出し下されば十分に尊重して検討の材料にしたい、これは明瞭に今までも申し上げておるところであります。いずれにしましても、団体交渉という形をやる資格は、日教組にもなければ文部大臣にもない、その立場から今申し上げておるわけであります。で、本来の教職員組合としてのお考え等は、当然に任命権者たる都道府県教育委員との間に折衝さるべきものと思います。政治的立場において、政治団体であるがごとき立場で、政治課題をとらえて何とおっしゃいましょうとも、お目にかかるということそのことに弊害がありと、かように考えております。
  67. 岩間正男

    岩間正男君 むろんあなたは形式論を先頭に立てておられるのだが、今までだって正式的に見て、公式的に見ての団体交渉じゃないと思うのです。しかし、実質的に五十万の代表であり、民主的に構成された団体であり、しかも世界がこれを認めているのですよ。単に日本だけじゃありません。世界のあらゆる国が認めている。アメリカも認めていればその他の社会主義国も認めている日教組存在は厳とした事実です。五十万の働く教育現場におけるところのこれは代表なんです。これは古い憲法時代はいざ知らず、新しい憲法の指向するところによれば、当然私はこの一つの力というものを無視することはできないことだと思うのです。その上に立って話をしよう、そうしてそこから打開策を考える、これは私は今の政治をほんとうに民主的に運営するという立場をとられるなら、当然とられる態度だと思うのですね。何かあなたは正式に団体交渉ということでは会わない、こう言われているけれども、今までもそうですよ。そうしてしかも慣行的に実質的には団体交渉的にやられてきたのは事実です。そうしてそれにいろいろな条件をつけて会うということを第二に言われたけれども、これは私はおかしいのじゃないかと思うのです。これではあまりに五十万教員を私は無視した態度だと思うのですよ。少なくともこれは一つ憲法で保障されている厳とした存在なんです。その代表がはっきり一つの目的をもって面会を要求されている。これに対して、お前はこうでなければならぬ、こうだ、こうなってこい、その手を切ってこい、足を切ってこい、こういうことで会うことは、現実民主主義体制の中でありますか。そういうことを要求するそのことが、一つの現在の民主的な団体そのものの運営というものについての私は認識を欠いておるそのことを物語っているというふうにとられても仕方がないと思うのです。この点はどう御判断になったのですか。古い時代はいざ知りませんが、そんなことはありません。これは田中文部大臣さえそういうことをしなかった。有名な田中文部大臣さえしなかったのですよ。そういうことをしたら、これは団体交渉に、会うものではありませんよ。五十万の権利に関するそのことを知ってやられるならばいざ知らず……、そういうことを知ってすれば、向こうも絶対それは一つの五十万を代表しているものとして、そういう手を切ってこい、足を切ってこい、顔を洗ってこい、こういう格好で会うと言われて会いますか、会わないのは当然です。新しいそういうふうに一つの民主的な実体を持っているものの姿について、あなたは御検討になっているのですか。その上に立たなければ、この問題の打開というものはあり得ませんよ。私は今のようなことで、そうして実質的には会わない道を選ばれる、そういう形をとるべきじゃない、こう思うのですが、この点についてはっきりした態度をお伺いしたい。
  68. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) まあ日教組と通称される意味で、今も御指摘がありましたように、日本国内のみならず、世界的にも有名であり、実力者である、そのことは私も十分認めます。その実在しておる実力者を認めるということと、教育という中正なるべき課題について、しかも教育の実態について、立法論議でしか解決できないことを、さも解決できるがごとく粉飾する形でお目にかかるということは弊害あり、こう申し上げただけであって、五十万の団結を誇る実力者的存在日教組を私が否定しようとも、存在そのものがどうなるものでもない。それを否定しようとは毛頭思いません。
  69. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  70. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 速記を始めて。
  71. 岩間正男

    岩間正男君 先ほどから文部大臣は、日教組は立法的な問題で絶えず話をしようとしている、それから政治的なそういう話し合いだ、そういうことだから避けると言われておる。これはやはり何か誤解していられるのじゃないかと思います。勤評をああいう強力な形で実施されて、そしていろいろなことが職場で起こっておる。たとえば校長と教員の間で非常に今まで相当よくいっていたのが、この勤評というものができてから、どうもお互いに腹のさぐり合いになり、暗くなってきた。ものを言うのも十分に職場では言えない。こういう事態が起こっておることは文部大臣は御存じないだろうと思う。これは大へんです。教育を大きく破壊している。こういう問題は教育現場にいて教育をやるその当事者からいえば、これは根本的に重大な問題なんです。従って教育をほんとうによく進めるためには、どうしてもこういう勤評実施後に起こった問題について要求を出すというのは当然です。そしてその要求を出すその結論が当然これは勤評を廃止してもらいたいという要求にまでつながることは当然です。結果においては政治的なものにこれはつながらざるを得ない。日本現実の仕事というものはみなそうですよ。どんなものだって政治につながります。最後には。そういう意味では政治につながっておりますけれども、決して日教組が出している要求の根源にあるものは、これは最初から政治闘争をしようとかなんとかいうように把握するならば、全くこれは本末を転倒した誤った見解だということを私はここではっきり指摘しておきたい。従って当然今の教育をほんとうに明るく、そうして子供たちを伸び伸びと、しかもその職場で十分にこれを育てるという、少なくとも教育良心の上に立つならば、職場における実践家がこの勤評を問題にせざるを得ない。また非常に教育関心の深い父兄がこれを問題にせざるを得ないというのが実情です。これをはっきり把握してもらいたい。その上に立ってのこれは切実な要求とお考えにならないで、何かこれが政治的な、しかも立法府を通じて法案の改正を要求するような闘争だと、最初からそういうふうな先入観念でこの問題をおきめになっていられるということは、私はどうも今までの文部省の官僚の諸君がそういう先入観念でずっとやってきたその上に立っていられるような感じがするのです。もう初等中等教育局長なんか今までやったことはどうもそういう観念でやっておられる。これは大臣を誤り、日本の政治を誤り、日本教育を誤るものだ。この上に立ってとられることは私は望ましいことではないのであって、今のお話もそれを変えないうちは会わないというような一つの観念に立っているが、これは本末転倒して、一つの既成観念を作られて、その上に立ってあくまで門戸を閉ざされるということになると思うんですが、この点も私は十分検討してほしいんです。一体ほんとうに日教組の諸君がなぜこのような今日要求を出して切実に会おうとしているか、その根底をなすものは何か、一つ一つの職場の声の結集なんです。この点が理解されない限りは血の通った教育なんぞできるものじゃない。私はこの点について文相意見をただしたいと思うんです。
  72. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻も申し上げましたが、勤評は廃止しろと組織の機関に諮って結論を出されたその課題をひっさげて交渉とおっしゃるから、それならそれを廃止するという意見を持っていらっしゃるというだけであって、そのことについて、あるいは廃止すべきでない、あるいは廃止した方がいいという論議をすることは、これは立法府課題であるべきである。だから、廃止すべしという御意見ならば、それをちょっと電話ででもおっしゃって下されば済むことじゃないか、また、それに理由があるならば、むしろわんわん言って話し合うという場をことさら作るよりも、かくかくの理由によって結論はこうだと言って下さればわかることではないかということを申し上げておるわけであります。団体交渉課題たり得ないものだということを申し上げ、そういう課題をとらえての交渉ということはやるべきじゃない。やる立場お互い持っているわけじゃないんだから。いわんや課題がそれに適当じゃないんだからということを申し上げるにとどまるんです。なお、先刻お話の、いろいろな混乱が起きておるということを強く御指摘になりましたけれども、一体、公務員というものは、講釈めいて恐縮ですけれども、国家公務員であれ、地方公務員であれ、国民に奉仕するもの、それぞれの都道府県の住民に奉仕するもの、教職員といえどもその意味において国民に奉仕するもの、教職員教育委員教育長及び文部官僚とが一緒になって国民に奉仕する、そういう立場であるがゆえに、文教関係のみならず、あらゆる一切の公務員というものが、任命権者の定むるところの勤務評定に従って人事管理が行なわれるということを、国会は国民にかわって制度づけて下すっているんですから、それには教職員といえども当然従うべきである。それを日教組の名において絶対反対であると今まで言い続けているがゆえに混乱しただけであって、それを本気で実施するという気持で、すなおに相談するという立場を持たれたならば、私は無用の混乱は起きなかったと思う。今までそういう混乱の形をとりましょうとも、相談の結果が全国で三つの府県が実施していないだけであって、あとは一応実施しておる。だから法律は一応不満であろうとも、国会のにおいてきまった以上は、悪法は法にあらずなんということを言わないで、守った上で、ここ半年なり一年なり二年なりの実施を見て、それの体験に基づいての改善意見というものは当然あり得ると思うんでございますけれども、実施されない以前から、完全実施もしないで、それに反対する立場をとりながら、その立場方々がすぐ廃止しろとおっしゃっても少し無理じゃなかろうか、こういう気持で今ます率直に、露骨に意思を表示しておるにすぎないのであります。  以上の心境を申し上げまして、御理解をいただきたいと思います。
  73. 加瀬完

    加瀬完君 私は二点、文部大臣御自身の御認識で誤解があるのじゃないかと思いますので、伺います。  一つは、形式的な問題でありますが、日教組は、これは明日いろいろ問題にしたいと思いますが、ああいう形の倫理綱領を作った、そういう団体であるから会わない、こういう御説明新聞紙上等に報ぜられておりますが、今の勤評の問題でも、教科課程の問題でも、問題となったものは、現場の五十数万の教員の中に問題が起こって、それが文相の言われたように都道庁県で集約され、その問題が全国的に集まって、これだけはどうしても文部大臣交渉をしてもらわなければならない、国の行政府責任において解決を求むべき問題だというものが幾つか集まって、その内容を一つ聞いてもらいたいという要約された結論として出てきておる。これは日教組の幹部が机の上で作り上げた問題ではなくて、それぞれの機関を経て現場の一番の問題点というものが集約されたのであって、これは現場の声なんだ。現場の声は、それが形式的に立法府の問題であろうが、あるいは文部大臣交渉されたところで、どのように善意ある文部大臣が働いたって解決されない問題であろうが、一応現場現場としてのそういう声を積み上げてきたのだから、これは率直に聞いてあげるという御認識に立つのが当然じゃないか。しかし、現場の声ではない、幹部の声だという誤解のもとに御判断が下されているのじゃないかというのが一つ。  もう一つは内容の問題でありますが、先ほどからああいうやり方やああいう内容で中央交渉しろというようなことはだめだ。具体的に言うならば、立法府できめらるべき問題をおれのところに持ってきてもどうにもならぬじゃないかという御説明をしておられる。しかし、くどいようでありますが、先ほどから例に出しておる勤務評定の問題でも、法律論がそのまま形式となって行なわれるならこういう問題は起こらない。法律論の問題じゃなくて、行政措置としての問題が当を得ておらなかったから問題が起こる。法律にきまっているからそれをすなおにやって、やってから文句を言ったらいいだろうと言うけれども、勤務評定というものはああいう明文化されたものはなくても勤務の評定は行なわれておった。それをああいう形式を整えた勤務評定の行政措置を文部省が強引にやられたから問題が起こった。しかも、教育的にはこのようにプラスになった、こういう結論は出ておらない。今、現場の人々が要求してくるのは、行政措置としての今のようなやり方はもっと考慮されてよろしいではないか、それが立法問題に触れるならば、そこで行政府責任として立法を変えるような御意思というのが、教育にそうしなければプラスにならないという結論になれば、これは当然文部大臣としては内容的に要求さるべきものじゃないか、そういう見解で話をしたいと言っておるのです。文部大臣に何もかも責任をかぶせようと言っておるのじゃない。今、文部省との間で問題になっておる点は、立法の問題じゃありません。全部行政措置の問題であります。教科書の検定でもそうです。教科課程でもそうです。勤務評定だってそうです。管理職手当だってそうです。管理職手当を教頭なんかに支給しろという法律はないじゃありませんか。またそれを行政措置で予算を作って、そうして人事院に無理に教頭を管理職にするような人事院規則を作らせ、それでやる。逆でしょう。あなたは専門家だからよくわかっている。こういうやり方が問題になっている。だから何も勤務評定と教科課程の問題だけじゃない。  たとえば私はここに数字を持っております。今度の文部省の骨格予算でもいろいろ義務教育費の充実をあげております。義務教育費はどうなっておりますか御存じですか。これはある県の昭和三十四年度の市町村の教育費の決算額における実質支出額と基準財政需要額の比率ですけれども、これは不交付団体を除きまして交付団体だけを例にとりますと、市では中学校は、実質支出決算額に対する基準財政需要額の保障率は五七・三九%にしかいっていない、町になりますと四四・八四%ですよ。こういう必要とする基準財政需要額の保障率が四四・八四%ということで教育が行なわれますか。こういうものこそ文部省責任だ。こういう問題も当然現場からいろいろ出るわけであります。補助金だってそうです。校舎の五カ年計画なんと言ったって、実際幾ら五カ年計画やったって校舎は建たない計画でしょう。ここに地教委からの要求書があります。地方教育委員会要望でありますから、これは文部大臣御存じでしょう。昭和三十五年度の市町村の計画教室数は概算九千教室、それに対して国の財源裏づけは、負担対象として査定されたのは四千四百教室、単独起債による教室数が千九百、二千七百教室の四十億というものを市町村で持ち出しをしなければならない、地方自治体が持ち出しをしなければどうにもやりくりがつかないという問題がある。こういう問題だって当然現場の問題として出てくる。単に勤務評定を廃止しろ、教科課程を変えろという問題だけでなくて、もろもろの問題が出てくるのです。文部大臣にしても日教組に御注文がありましょう、それならそういう中央交渉という場で言いたいことを言えばいい。あなたの方の倫理綱領というのはどうもわれわれは正当には解釈できない、この点はどうだ、あの点はどうだと聞けばいい、そうして国民の前に堂々と開陳して、文部大臣はほんとうに国民のためにサービスしているのか、日教組意見——注釈を加えるならば、五十数万の現場の声として文部大臣に要求をされた、要望された日教組の要求というものがほんとうの教育のためを思っていないのかどうか。これは堂々と話し合って、いい点はいい、悪い点は悪い、聞くべき点は聞く、これは聞かれないということで国民に批判を仰げばいい。それが私は池田内閣が声明している線に沿う文部大臣のやり方だと思います。刑事被告人だってその利益や所信は弁護士を通じて堂々とこれは述べるだけの権利がある。任意団体であろうとも今までの慣行で十分文部省との交渉ができた団体が、大臣がかわればにべもなく一ぺんの法律論でもやって合う必要がない、合うに当たらない、交渉してもむだだということでは、摩擦が起こっても、あなたのおっしゃる建設的な意見というものは出てこないと思います。一度お会いになって、言うべきことは言って、その結果、会う必要がないかなというならばそれはまた話は別だ。あなたの方でもそんなだめな考え方に立っている教師が圧倒的多数いるということではこれは容易ならざる不安でしょう。それならば倫理・綱領に対して文部大臣として御注文をお出しになったらどうですか。会わない理由は内容、形式的にもどこにもないと思います。だからその誤解をおとりになって、中央交渉という言葉が悪ければ、あなたの方ではそうとらないで、とにかく会おう、しかしおれの方にも言分がある、それは十分お前の方にも、言うし、お前の方に言うべきことがあるならば、聞くべきことは聞くということで、もっと何といいますか、おっしゃられる常識論でお会いになることは一つも私は現在の荒木さんのお考えになっている文教行政に圧力を加えるものでもなければ、これを曲げるものでもないと思うのですが、この点いかがですか。私はやっぱり大臣日教組というものを誤解していらっしゃる。そこにそもそもの今のような御態度のもとが生じて来たんじゃないかと思って、形式的に内容的に一ついかがですかと、重ねてお伺いをするわけです。
  74. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私も格別奇をてらってどう考えるとか、そういう他意は一つもありません。きわめてすなおに考えて、今のようなお申し出には応じないことの方が双方の立場からかえっていいじゃないか、おっしゃるような問題は、さっき例示もされましたこと等も含めて、やはりその地域地域で任命権者もしくは学校施設の管理者等の方々とも十分お話し合い下すって、そうしてうまくいってないというなら、なぜだ、どういうところだということを現場的に検討を加えた上でお聞かせを下さらなければ、いきなりおっしゃってもそれでは実情はどうだろうか、また二重手間をとるだけのことではなかろうかというまじめな気持も含めまして、何もそう開き直って中央交渉だ何だとおっしゃらぬでもいいことじゃなかろうか。すなおにそう思うもんでございますから、先刻来同じことを申し上げて恐縮ですけれども、率直な私の考えを申し述べておるつもりでございます。御了承をいただきとうございます。
  75. 加瀬完

    加瀬完君 ですからね、そう、また私どもの方からいえば、大臣はこだわらなくてもよろしいじゃないか。今具体的に数字を上げたんでありますが、これは千葉県の数字でありますが、交付団体の中の中学校費は支出決算総額が二億七百二十一万九千円ですか、それに対しまして、基準財政需要額の保障するパーセントは五七・三九%にしか当たっておらない。これが教育委員会の調査によって出て来たわけです。これは教育委員会としては市町村当局にずいぶん要求をするでありましょうけれども、結局国の機構そのものが解決されない限りは、現状基準財政需要額の算定のような形では予算が組まれないという実情なんです。こういうものが各県からみな集まってくると思う。そうすれば、これは各県に交渉したってどうにもならない。基準財政需要額による保障くらいはやっぱり国、地方とも責任を持って教育費を組むべきだという強い行政指導が、あるいは財政的な裏づけというものがなければどうにもならないという問題が出てくるわけです。不足学級数の補充の問題なんかは特に補助を幾らにするか、補助率をどうするかということは文部省がきめるわけですから、文部省のきめ方がもっと幅が広がり率が上がらない限り地方の教室は建ってこない。こういう問題が千葉県なり山形県なりというものとどんなに交渉したってどうにもなりません。地方教育委員会は町村の議会なり理事者などと話し合って、まあ財政上やむを得ないからこれでがまんをしようということに話は落ちつくかもしれない。しかし実際教育をする現場の先生はそういうわけには参りません。文部省の資料でも家庭教育費といいますか、たとえば子供を塾に通わせたり、家庭教師を頼んだり、参考書を買ったり、この家庭教育費の高いところが非常に学力が高くて、低いところが学力が低いという統計をお出しになっているでしょう。そうなって来ると、義務教育であっても特別に故人の貧富の度合いによって子供の義務教育の成績が左右される。国は義務教育を保障しているはずだけれども保障されておらない。こういう結果も現場の先生でなければわかりません。そういうものが集約されて文部大臣にそういう意味陳情したり、話し合いたいということをあなたが拒否しなければならない理由がどこにありますか。あなたのおっしゃる建設的な意見じゃありませんか。そういう意見日教組であろうと、何であろうと出てくれば、当然あなた方は耳を傾けて聞くべきじゃありませんか。それをまた拒否しているという考え方は私はのみ込めません。あなた方その現場の事実をわからないのですか。いかがですか、この点は。こういうことまであなたは日教組という窓口を通してくるからには全部だめだというわけですか。
  76. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げますが、日教組を通じてくる限りは全部だめだとは今までも申し上げておりません。御意見があるならば文書でお出し下さって十二分じゃなかろうか、建設的な意見でありませば尊重して検討の材料にいたしたい、こう申し上げているのであります。交渉するということは、これは無用のことではなかろうかということであります。ことにその教職員は政治家ではないはずですから、その教職員団体である日教組執行部がいろいろ申されることは、いわば政治家的な、政治家でなければ言えそうにないことをおっしゃる。これはやはり国会を通じて、国会の皆さん方が代弁していただいて、責任がある立場でおっしゃっていただかないと事が間違うのじゃなかろうか。日教組というものは、何もそういう政治あたりについて国に責任を負う立場はないわけでありますから、そのことのためにかえって混乱をおそれるという気持で、先ほど来のことを結論的には申し上げているような次第でございます。御了承をいただきたいと思います。
  77. 加瀬完

    加瀬完君 この日教組たりとも、僻村の一教師たりとも国民であることには変わりがありません。あなたは国民に奉仕すると言う。それならば大臣だって公務員ですから、国民の声をすなおに聞いて、その国民の正当な要求を、あるいは正しい認識というものには裏づけを与えることが当然です。これは義務だと思います。奉仕をするという立場から立てば、お前たち根拠があるならば文書で出せ、文書を見れば十分わかるというのは、文書でも出してもらうけれども、文書の疑義をこちらからも聞く、文書に表わせない具体的な内容というものを話し合いの場に出して陳情をさせる、こういう形の方が国民の意見というものが十分聞けて、大臣立場からすれば、大臣としての国民に対する奉仕は、サービスはさらによくなるということじゃないですか。そういうことを私はこだわる必要はないことです。心配なのは話し合いをしても、それをひっつかまえて、実質的な交渉でぐうぐうぐういつまでもその時間を、空間を制限なく攻めつけられては、そういう交渉をされては困るということがあるかもしれませんけれども、そういう形をとれば、それ以後の交渉というものはそういう形をとる団体自体が放棄せざるを得ないことになるのですから、またこれは社会が判断するわけですから、そうであろうという仮定のもとに文部大臣がだから会わないという理由にはならない。文書で出せとおっしゃるならば、文書を出して本人にも会って十分聞いてやろう、こういうことに私は御譲歩をいただくというか、御態度を改めていただく方が文相のほんとうの考えにも合うのじゃないか。それが国民に対するサービスだと私は思うのであります。どうでしょうか、会ってですね、話をする。従来のような形で会って話を聞く、こういう形に御方針をお変えいただくわけには参りませんか。
  78. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) まあ先ほど来繰り返しいろいろと申し上げていることで御了承いただきたいと存じます。  なお、ついでながら、こういうことを私付言させていただきたいと思うのですが、それは日教組教職員団体であるわけですが、教職員の一人々々が文部大臣と一緒になって国民に奉仕する教育関係の公務員なわけですから、同じ、いわば味方の、奉仕する側におる人が、集団であるがゆえに、日教組という立場で、交渉だとか、こんなことは廃止しろとか、あるいは中止しろとかいうふうなことを言われるのが、どうもわざと他人行儀に仕向けられているような気持がいたしまして、(笑声)ちょっと理解しにくいのでございますが、そう言わないで、(「大臣の方がそうだよ」と呼ぶ者あり)たとえば、日教組の幹部であろうとも、一々新聞社に連絡して演出よろしくおっしゃらぬでも、いつ来たかわからぬような格好で、おい、こんなことを注意せぬとお前はやりそこなうぞと、こんなことを教えて下さってもよさそうなものだ、個人的には私はそういうふうな気持に思っております。あまり演出第一主義の、しかも大上段に振りかぶって、同じ味方の、国民に奉仕する公務員でありながら、まるで敵であるがごとくなぜせにゃいかぬのだろうかということに、私は、はなはだ妙なことを申し上げて恐縮ですけれども、率直にそう思うんですが、そのことも念頭に置きつつ、いわば、役人上がりだから法律々々と言うとおしかりを受けますけれども、しかし私どもは、そういう国民のためにサービスする一つのワクを国会で定められた制度として与えられておる。そのワクを逸脱して便宜的な行動をとることは、これは国民に申しわけないことだろう、こう考えて、今妙なことを申し上げた気持等も、率直に申し上げれば、総合しました判断としまして、るる先刻来申し上げておるような次第であります。せめて気持だけは御了承いただきたいと思っております。(「了承できませんよ」と呼ぶ者あり)
  79. 岩間正男

    岩間正男君 基本的な問題で聞くことがたくさんあるわけですが、きょうの機会は、別に譲ります。これはたくさん聞かなければならない。しかしその中で一つ、もう先ほどから話されておる文相の御発言の中で、どうしてもただしておきたいと思うんですが、私はやはり、この終戦後の教員の決意というものについて文相に御理解いただきたい。戦前の教育というのはこれは全く官僚支配です。権力支配です。そして全くもう上からの命令で言いなりほうだいにやっていく。その内容は軍国主義的な教育です、押しつける、それのもう執行機関みたいに、もうそういう役割をさせられた。右向けと言えば三年でも右を向いておって、四年でも右を向いておる。これで教育というのは、実際は、全くこれはもう死んだんです。民主的な教育もへちまもなかったんです。終戦後は、これはいかぬ、これが日本をやはりあのような戦争に追い込んだ根源だ。ここから立ち上がったのは、少なくとも教員諸君の私は、決意じゃないか。その中で、やはり教育の最も尊重されなくちゃならない部面というのは、教師と子供がここでほんとうに魂と魂がぶつかり合う、人格と人格がぶつかり合う。ここが最大に私は尊重されなくちゃならない場面だと思う。あとの問題は、これをどのようによくするか。私はそのためにこれはいろいろな施策があり、行政があるんだと思うんです。ところが、戦争前は全く文部大臣がこれを握っておって、そして精神総動員本部の具体的な運用をやっていたわけです。そしてその末端機関としてこれを使った。私はこういう点から考えるというと、やはり今の教員諸君が日本教育についていろいろな要求を持っておるわけです。子供を育てていくために対して、いろいろなこれは要求を持っているわけです。この要求が結集された形がこれは日教組の要求に今日なっている。もしも今のようにこれを伝える機関というものがなかったら、日教組というものは一体どこに意思表示をしますか。このことをお考えになったことがありますか。文部大臣がそのような話し合いに応じないということになったら、一体日教組はどこへ持っていけばいいのです、どこへ。あなたは、今まるで親子かあるいは仲間の親しい関係のように言いましたが、そういう立場から言ったって、どこに相談しますか。そういうものを閉ざすということは、ほんとうに今の教員諸君の実態を御存じないような気がする、残念ながら。そうして、一片の紙で出せばいいじゃないか、お前たち、何も教育の行政問題までいろいろ深入りする必要はないじゃないか、こういうお話です。これは私は非常に時代が違う。それから、政治的な話をすると言ったのですが、これはやはり、いろいろ教員は政治的ないろいろの見識を持つでしょう、また持っていいことで、それをいかにも教員はものを教える道具であればいいのだ、そこから逸脱してはならんのだ、こういう考えに立つとしたら、私は非常な誤りを犯すことになると思う。これははっきりしたやはり見識を持つべきですよ。見識のない先生に教わった子供なんてものは、みっともなくて、これは全く国を滅ぼすところの亡国的な姿ですよ。教育は、だから何か教員が政治的な一つの見解を述べることに対して、文相として、何かこれに対して否定的な御意見をお持ちになっていられるとしたら、これは大へんなことになると思う。私はこの二点、これは一つ日本の戦後における教育の大きな転換の中で現われてきたところの現象なんですがね。この現実を否定されるというなら、これはまた何をかいわんやです。はっきりこの点について私はたたかなければならないと考えております。しかし、否定されないという立場に立たれるなら、少なくとも今のように話し合いの門戸を閉ざすということは、どう考えたってこれは正しくないと思うし、世論の前にも私は答えることはできないと、こう思うのですが、この点について御見解を伺いたいと思います。
  80. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 門戸を閉ざすとおっしゃいますが、完全に閉ざしている意思を申し上げたのではございません。演出第一義と見えるような中央交渉などというものは適当ではない、御意見があれば、もう御遠慮なしに文書でお出し下さい、そういうことを申し上げております。さらにまた任命権者との関係においては、本来の教職員組合の行動半径内のことは、当然、任命権者とお話しにならなければいきなり文部省にきてお話しになったって筋違いだと思います。また、教職員一人々々が、新しい憲法下において、政治的見識を持ち、政治的論議をすることはもちろん自由でございます。ただ、教職員という団体が政治団体であるかのごとき行動をなさることは脱線じゃなかろうか。また、その脱線した姿のもとにおいて中央交渉などということは適当ではあるまい、まあこういうふうに考えておる次第であります。
  81. 加瀬完

    加瀬完君 時間があと二分ぐらいで終わりますけれどもね。また明日も続けて伺いたいと思いますから、もう一度文部大臣に御考慮をいただきたいと思うのですがね。文書で出せば事足りるというものの考え方が、あなたが、やはりそれは国民に対する奉仕者と、お言葉ではおっしゃいますが、考え方の中にはうらはらなものがあると私どもは判断しないわけには参りません。文書でも出せ、文書で足らないところがあったら話し合いも受けようと、これが国民に対する奉仕者としての当然な私は立場かと思う。  それから、任命権者、任命権者とおっしゃいますがね。任命権者だけでは、任命権者との間の話し合い、たけでは、解決できないたくさんの問題がある。特に教育財政の問題は任命権者には何らの力もない実態でしょう。都道府県教育委員会ではないのですよ。これは都道府県知事、都道府県議会というものを相手にしなければ、二分の一の財政問題の解決というものはできない。他の二分の一の財政問題というのは、文部省話し合いをしなければ、どうにもならない問題じゃありませんか。こういう点を——こまかくなりますけれども、もっと下僚からよく事情を聴取して御判断を改めていただきたいと思う。このごろの文部省の予算の力点というのは、管理予算ばかり組んでいる。管理予算ばかり——金額が少ないだけで、性格は管理予算だ。実際の教育活動の予算というものは、アピールするほどは裏づけられておりません。こういうやり方をしておって、二分の一弱の予算権を持っておる文部省が、そういういろいろ不満のある現場の先生方の声を、文書だけで出せば足りるということでは私は済まないと思う。会って話を聞くべきだと思う。あなたのおっしゃるように、今にも会いますよというスタイルが悪いというなら、スタイルを改めたら会ってやると、会う、こういう条件ならば会うという公式をあなたの方で御提示なされば——お答えは要りません。そういう点であす他の同僚からも重ねて伺いますが、私はあすにこの問題を、一応質問を保留いたしまして、きょうはこれで。
  82. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 文部大臣、あす何か日程が午後非常に詰まっておるとお伺いしておるのですが、まことに恐縮ですが十時十分までには一つ出ていただいて、なるべく午前中に質疑が終わるようにしたいと思いますので、十時十分までに出ていただきたいと思います。
  83. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 科学技術庁長官を兼務させられておりますかり、よんどころない、どうしてもやりくりがつかない場合がありましたときには、中時間が抜けるということも一つ御温情をもってお考えをいただきたいと、あらかじめお願いいたします。
  84. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) それは午後になるそうです、今、事務当局の方で聞きますと。なるべくはよけいなことをお伺いしょうとしているのじゃないのですから、そんなお取り計らいでおってもらいたいのです。
  85. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 資料要求しておきたいのですが、あすの会議前に八月五日付の荒木文部大臣に対する日教組の要求書並びにこれに対する回答内容、それから八月十五日ですか、今村さんの名前で日教組に対して連絡事項とか何とか出しましたね。これと、この内容と、それから八月十八日付の日教組小林委員長文部大臣に対する交渉再開申入書並びに各県の教育長会議だったと思いますが、この会議の中で大臣説明か見解表示をした、教育基本法改正に関する内容についての。あれは従来の例によりますと、必ず原稿を書いて、かなり多くの人々が見ておいて大臣の手元に出しておるはずですから、教育基本法の改正に関するところだけでけっこうですから、その点を文書にして出してもらいたいと思います。もちろん全部ですよ。委員会全部に出してほしいのです。
  86. 加瀬完

    加瀬完君 今、豊瀬君の最後の要望教育基本法の個所だけではなくて、教育長に訓示か祝辞か存じませんが、大臣の申し述べられた全文を一つ出してもらいたいと思います。
  87. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  88. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 速記を始めて。  それでは本日の委員会はこれをもって散会いたします。    午後一時五分散会