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1960-08-11 第35回国会 参議院 地方行政委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年八月十一日(木曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————   委員異動 本日委員松澤兼人辞任につき、その 補欠として成瀬幡治君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     増原 恵吉君    理事            小林 武治君            鈴木  壽君            基  政七君    委員            石原幹市郎君            大沢 雄一君            郡  祐一君            西郷吉之助君            白井  勇君            館  哲二君            占部 秀男君            木下 友敬君            成瀬 幡治君            松永 忠二君            米田  勲君            中尾 辰義君            大竹平八郎君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君   説明員    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁保安局参    事官      町田  充君    警察庁警備局長 三輪 良雄君    自治政務次官  吉田 重延君    自治省行政局長 藤井 貞夫君    自治省財政局長 奧野 誠亮君    警 視 総 監 小倉  謙君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選の件 ○地方行政改革に関する調査  (地方公務員給与に関する件)  (市町村職員共済組合法災害見舞  金に関する件)  (警備警察に関する件)   —————————————
  2. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) ただいまから委員会を開会いたします。  初めに委員異動がありましたので、御報告いたします。  本日付をもって委員松澤兼人君が辞任をされ、その補欠として成瀬幡治君が委員に選任されました。   —————————————
  3. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 次に、理事辞任許可及び補欠選挙についてお諮りいたします。  西郷君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございましたが、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。  つきましては、直ちにその補欠互選を行ないたいと存じますが、互選方法は、成規の手続を省略して、便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 御異議ないと認めます。  それでは、小林君を理事に指名いたします。   —————————————
  6. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 本日は、地方行政改革に関する調査を議題といたします。
  7. 占部秀男

    占部秀男君 三点ばかりお伺いをしたいと思うのですが、第一の点は、公務員給与問題についての点でありますが、御承知通り、去る九日に人事院勧告が行なわれたわけであります。この人事院勧告の問題については、これは、政府が出すか出さないか、受けて立つか立たないかという問題もありますけれども、大よそ現在の情勢では、いずれにしても臨時国会かあるいは特別国会には、この内容は出てみなければわからぬけれども、給与法改正案が出ると、かようにわれわれはまあ見ておるわけでありますし、昨日の内閣委員会でもこの問題が取り上げられて、すでにそうした問題についての質疑等も行なわれておるわけであります。いずれにしても七年ぶりの勧告でありますし、この報告は実現されるものとわれわれはまあ考えておるわけであります。そこで問題は、給与法改正そのものは、言うまでもなく国家公務員給与改正でありますけれども、公務員ということの立場から言いますならば、地方公務員も同じでありまして、これはもう毎勧告の場合、中央が行なわれれば、やはり地方県市町村段階でも給与引き上げあるいは手直し等が行なわれておる。これはもう言うまでもなく慣例的になっておるわけでありまするので、念のために、今度の給与法改正が実行される場合には、やはりこれと同じ、これと見合って県市町村段階、いわゆる地方公務員においても同じような引き上げが行なわれ得るであろうし、また自治省としても、さような方向でこの問題を処理してもらえると思うのでありますけれども、この点はいかがでございますか。
  8. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 人事院給与ース引き上げに関する勧告が最近提出されたわけでありますが、この勧告取り扱いにつきましては、昨日の内閣委員会におきましても、官房長官あるいは総務長官から言明をせられましたように、ただいま慎重にいろいろの諸点を総合的に勘案しながら検討中でございます。お話がございましたように、地方公務員の場合につきましては、国家公務員について給与引き上げ措置その他の改善措置が講ぜられることに相なりますれば、これに準じた措置をとるということが従来のしきたりでもあり、また、公務員法自体建前からいって当然のことでございますので、国家公務員について何らかの措置が講ぜられるということになりますれば、それに準じた措置を講ずる、必要なそれについての取り扱いをきめていきたいと考えているわけであります。
  9. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、問題となる点が、今度の勧告の問題に関しては二つあると思うのです。一つは、これは率直に言って、自治省のこの問題に対する行政指導をどうするかという問題、もう一つ財政措置の問題、この二つが私は今度の勧告では特に、まあ毎々そうでありますけれども、問題になると思うのであります。  そこで、最初の行政指導の問題ですが、言うまでもなく、県段階大都市段階では、自治省から強力な行政指導がなされなくとも、国家公務員に準じたこの給与引き上げの問題についての扱いを十分処理することができると思うし、また現実に、過去においてもそういう形がとられてきたのでありますけれども、中小都市であるとか、特に町村の場合には、なかなかそうはいろいろの事情で参らないような事実もあるわけであります。そこで、こういうような中小の自治体に対して、やはり国家公務員給与引き上げがあれば、地方公務員給与もこれに準じて上げなければならないという形の、そうした実施ができるような、具体的なやはり行政指導というものを考えていかなければならないじゃないかと思うのですが、かりに国公実施段階になれば、そういうような点について、自治省として何かお考えがございますか。
  10. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 勧告取り扱い自体について、なお政府当局としてこれから検討をいたす段階でございますので、私たちといたしましては、これをそのまま受け入れるということを前提にして、細目にわたってどういう指導をやっていくかというようなところまでまだ無論検討いたしてございません。勧告内容自体につきまして、われわれといたしましても今検討いたしている最中でございます。しかしながら、方針がまあ決定いたすという状態に相なりますれば、従来ともやってきたと思いますけれども、そういう方針に基づいて、一般的な行政指導というものをやっていきたいと考えております。お説のように、従来、小さな市あるいは町村等につきましては、その指導について徹底を欠くうらみがあったという点は事実あったと思うのでありますが、これらの点につきましては、先般も、特に市町村給与合理化という点につきまして、当委員会においてもいろいろ御配慮をいただきました。その趣旨をもあわせ盛り込みまして指導の通達も出し、また、それぞれブロック会議その他の機会を通じまして、目下強力にこれの実施指導をいたしておる段階でございまして、最も効果的な方法で、方針が確定された場合におきましては、それが実施をされるように、われわれといたしましては、その指導に遺憾のない措置を講じて参りたいと考えております。
  11. 占部秀男

    占部秀男君 この点については、まあ勧告がされただけでありますので、あまり細目にわたって今御質問する段階でもないと思いまするので、もっとこまかい点については、あとで一つ質問をいたしたいと考えておるのでありまするが、いずれにしても、さような指導をしていただけるということになりますと、特にこの際念を入れてお聞きしておきたいことは、国家公務員地方公務員とでは、同じ公務員としても、職場実態あるいはいろいろな財政的な規模またそれを取りまく環境、こういう中から幾らかのニュアンス的な違いがあるわけであります。で、やはり地方公務員給与の問題について御指導を願える場合には、実態に即したような問題の処理ができるように、弾力性のある形で一つやってもらいたいと思うのです。たとえば、号俸表扱いにしても、国家公務員そのままを機械的にやられたのではどうにもならぬという実態が出てくる場合もあると思うのでありますが、われわれは、何も国家公務員の方がそう高くなければならぬとか、そういう意味のことを言っているのではなくて、むしろ逆に、低いところがたくさんあって、それがそのまま押しつけられるという形もありますので、やはりそういうときには、この間の決議の内容もあり、よりよい形のものを特に市町村団体に作らしたいという考え方も、これはお互いさま持っているわけでありますので、決して無理なことを考えているのではありませんが、やはり弾力性のある取り扱い方を、実態に即した形の方針をお願いしたいと思うのですけれども、こういう点はいかがですか。
  12. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 根本的には、公務員給与というものは、同じべースでもって考えていくのが本来の建前だと思います。従いまして、従来もそういう方針指導をしてきております。ただそれかといいまして、たとえば、ある県あるいはある大都市等におきまして、当方が示しました基準そのままでなければけしからんというようなきめつけ方をしたことはございません。そういうような点につきましては、まあ再建団体再建促進というようなやむを得ざる事情から申しまして、いろいろきびしく指導をやった面も事実ございますけれども、一般的に言って、本来の線といたしましては、やはりそう公務員である限りは本質的に異なったことはあるはずはございませんので、一応の線というものは同一のレベルに置く。しかし、具体的な適用にあたっては、それこそまあ地方自治建前がございますので、それぞれの地方団体実情に適した方法でもってものを考える、ある程度のそこに弾力性を認めていくということにつきましては、われわれとしても異議を持っておるわけではございません。  なお、今度の勧告案自体について見ますると、御承知のように、従来のものと比べまして、ある程度号俸の幅がふえております。そういうような点からいたしまして、従来各地方団体において相当運用に苦慮をしておったような点につきましては、相当程度改善をされるのではないかという感じを持っております。
  13. 占部秀男

    占部秀男君 なお、この勧告案内容の問題についてここで言っても仕方がないと思うのでありますけれども、どうも勧告案の今度の内容を見ると、上厚下簿の線が非常に強いようにもわれわれは思われるわけです。昨日の内閣委員会における質問でも、やはりこの点が大きな問題となって、集中的に質疑応答が行なわれたと、かようにまあ私は了承しておるのでありますが、国家公務員職場の場合と、地方公務員職場の場合とでは、その職場が持つ環境といいますか、内容といいますか、この職場の動きが相当違うところがあることは御存じ通りです。たとえば、中小都市あるいはまあ大都市にしても、公務員、その当該市の職員は、ほとんどがその市の出身の者が多い。その町村出身の者が多い。そういう中から、しかも他の県市町村に行ってまた帰ってくるというような、何といいますか、移動的な問題の少ないというところから、やや職場内容が仲間的な気持国家公務員の場合に比べて私は強いのではないかという感じを持っておるのです。そういう場合に、どうも上厚下薄のこうした形が機械的に押しつけられるということになるというと、かえって市町村の運営について、あとあとひびがいくようなことが出てこないともこれは保証し得ない点が実際問題としてはあると思うのですが、こういう上厚下薄の問題については、やはり相当弾力性を持たしてもらわんといかぬと思うのでありますけれども、こういうような点については、局長の御見解はいかがでございますか。
  14. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 今度の勧告案自体につきまして、上厚下薄というような批判もかなり、でておるようであります。私たちといたしましても、この勧告案内容自体につきまして、どうしてこういうふうになったのかということについては、事務的に人事院当局とも連絡をとりまして、目下それらの点についても検討を実は加えておる段階でございます。お話しになりましたような職場の問題、特に地方団体職場関係というものの若干の特異性というものもあるいはあるかもしれません。あるかもしれませんですが、現在も、実は御承知のように、都道府県等につきましては、国の俸給表行政一で申しますと、これの三等級というものを部長級ということにいたして大体格づけを考えておる。事実、その運用でもってそれほどの弊害というものも実は聞いておらないのであります。従いまして、まあ私たちといたしましては、この立て方自体について、この際根本的に改めるというようなことを考えるのはむしろいかがかという感じはいたしておりますけれども、なお勧告案内容等につきましては、われわれ自体としても、やはり腹に入るような検討を加えまして、実情に著しく合わないというような点がございましたら、それらについては検討するにやぶさかではないという態度でございますけれども、本質的には、国家公務員の場合と地方公務員の場合と、取り扱いを異にすべき筋合いのものではあるまいではないかという考えでございます。
  15. 占部秀男

    占部秀男君 次の問題は、今度のこの勧告案実施に伴う財政上の問題でありますが、これは、奥野局長の方が中心だと思うのですけれども、藤井局長から御答弁願っても、それはけっこうでございますが、御存じのように、今度の勧告案がどういうような内容的なものとして給与法になるかということは、今後の問題になってくると思うのですが、かりにこの勧告案をそのまま実施をしたというような場合には、これはもう自治省の方で詳しく試算をされておることと思うのですが、ちょっと考えてみましても、五百五、六十億の金は要るのではないかという感じがするわけです。ことしの地財計画上の給与費が六千億ちょっとあるわけですが、これをかりに国家公務員ベース引き上げの率をそのまま当てはめて、二一・四%上がったとしても、七千二、三百億の金になるわけですが、この七千二、三百億の金から、教員関係義務教育国庫負担金なんかの半額をもらって、それを引いたとしても、やはり六千五、六十億はどうしても要るんじゃないかというふうにわれわれは考えておるわけですが、試算のおよその——今度の勧告案をそのまま実施した場合、今、自治省はどのくらいの財源が要るかということを見積もられているのか、その点についてちょっとお聞きしたいと思うのです。
  16. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 人事院勧告をその通り実施するとして計算いたします場合にも、地方公務員の構成がどうなっておるか、それぞれの号俸に当てはまる人員がどのような区分になっておるかというようなことで、数字がかなり変わってくるわけであります。しかし、精査すれば非常に異同があるわけでありますけれども、大ざっぱな点で申しますと、三十五年度の分としては総額で六百九十億円、義務教育費国庫負担金のようなものを考慮いたしまして、一般財源で五百五十億円必要だということになるわけであります。来年度になりますと、人員の増、要するに中学校の生徒数がふえますので、教員をふやさなければならないというような問題も入って参りますので、総額で七百七十億円、一般財源で六百二十億円というふうに見込まれておるわけであります。
  17. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、本年度はかりにこれをこのまま実施したとして五百五十億、来年度になると六百二十億というのですが、現在の地方財政状態は、私が言うまでもなく、こういうような大きな金を出し得る余地はなかなかないわけでありますし、特に従来からの例からいっても、財政措置は、たしか七年前のときにも財政措置をしてもらったし、さらにはいろいろな手直しの場合でも財政措置は行なわれておると思うのでありますが、どうも新聞を見ると、大蔵省関係で、地方公務員の金が国家公務員に比べて非常に大きくかかるということから相当難色を示しておるというような内容のものが二、三ちらほら見えてきておるようですが、もしもそういうようなことでかりに財政措置が行なわれないとかというような大へんなことができると、これは、地方公務員の方は、今度の勧告というものは描かれたもちになってしまうという心配があるわけです。そういうことは、自治省がついておるのですから、万々ないとは思うのですけれども、この際その点を明確にしていただきたいと思うのですが、やはり要るだけの金については財政措置をしてもらえるのだと、こういうような形でわれわれは考えておいてよろしゅうございますか。
  18. 吉田重延

    説明員吉田重延君) 本日は、大臣が全国都道府県知事会に主宰をいたして出席いたしておりますので、大へん失礼でございますが、私がかわってまかり出たわけでありますが、従来も御意見の通り措置をしておる模様でございますので、そうしたことで財政的な措置をいたすつもりでおります。
  19. 占部秀男

    占部秀男君 今、次官から財政措置をするという点が明確になったので、一安心をしたわけですが、その際にも、こういうことは私はないと思うのですけれども、たとえば金があまりかかり過ぎるので、一部分財政措置はするけれども、一部分はしないというようなことになると、これはどうも、従来の勧告案と違って、今度は少し金が大きいので、私はそういう点も率直に言って心配をしているのですが、部分はするけれども、一部分はしないということがあると、これは非常に特に市町村団体などは困ってくる問題になると思うのですが、そういうことのないように措置はやはりしてもらえると覧てよろしゅうございますか。従来通りのような方向措置をしてもらえると考えてよろしゅうございますか。
  20. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 御承知のように、毎年度地方財政計画を立てます際には、当然給与費につきましても、所要額の全額を計上して参っておるわけでございます。ただ、かりに三十五年度の中途から給与改訂実施するというようなことになりました場合に、あたかも地方出先機関に国から予算を配分して、それを使って出先機関が行なっていくようなつもりで地方自治団体給与財源措置追加交付を受ける、こういうような考え方に陥ってはならない、こう思っているわけであります。自治団体でございますから、経費のやりくりも自由でございますし、自然増収自然減収ということも税収入においてはあり得るわけでございますけれども、そのようなことを考慮して、やはり必要な財源措置をしていかなければならない、こう思っておるわけであります。従いまして、かりに地方財政計画に見込んでおります以上に個々の財源において相当な増収があったといたしますと、それは別に使って、給与増額財源だけは別途に国から受けられるのだ、こういうような錯覚に陥っては困る、こういうような気持を持っておるわけです。
  21. 占部秀男

    占部秀男君 ちょっと局長の御答弁ですと、心配が逆にふえてきたのですが、それは私のひがみかもしれませんけれども、というのは、私の今言ったのは、従来やったような措置方法でやってもらえるかどうかという問題を申し上げたので、どうも局長が言われたような、きちっと筋を通して言われると、結局、本年は地財計画だけで八百億近くの増収を見込んでいるわけです。その結果を勘案して、相当自治省の方で、何かこの給与費措置の場合に、弾力性を持って一々査定をして、何かだいぶ渋るような感じを私は受けるのですが、そういうような意図でございますか。
  22. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 別にそういう意図はございません。従来通り考え方措置いたします。こうお答えすればよろしいわけであります。ただ私たちは、今の経済状態が続いていきますと、ある程度増収が期待できるのではなかろうか、こう思うのであります。その増収財源を、ただ増収があるということで、いたずらに予算膨脹をやられてしまっても困るのではないかという懸念をいたしますので、あえて余計なことまで申し上げたわけであります。
  23. 占部秀男

    占部秀男君 局長のお気持はわかるのですけれども、その給与費の問題とは別に、その県、その市町村財政全体の問題に関連してお答えがあったと思うのですが、そういうとり方でよろしゅうございますか。
  24. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) その通りであります。ただ、私が増収と言いますのは、前年度よりも余計税収入があるというような意味で申し上げるのではなくて、すでに地方交付税の計算をいたしております。基準財政収入額の算定という形で当該団体税収入も一応見込みを立てておるわけであります。その見込みよりもふえる場合の増収を申し上げているわけです。単なる従来の実績よりもふえたというような増収財源のことは、何ら問題にはここにいたしていないわけであります。
  25. 占部秀男

    占部秀男君 それで、この問題については、問題は、まだ勧告案が出たばかりですが、従って、この次の委員会のときにもっと深くお尋ねをしたいと思います。一応きょうはこの問題についてはこれだけで……。
  26. 米田勲

    米田勲君 ちょっと関連して。人事院勧告に即応して公務員給与引き上げが行なわれるということは、もう必至だろうと思うのです。その場合の自治省として最終的な地方公務員給与引き上げ結論を得る時期ですね。それはいつごろの予定ですか。
  27. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 先刻も申し上げましたように、地方公務員につきましては、国家公務員取り扱いというものが決定をいたしました後におきまして、これに準じた措置を講じていくということが建前でございます。従いまして、今のところ、国家公務員について、勧告取り扱いをどういうふうにしていくか、実施の時期をどうするか、また法律案の提出時期をどうしていくかというような点については、目下検討中でございまして、まだ結論は得ておりません。従って、今の段階においては、地方公務員についてどうするか、しかもそれをいつやるかということについては、いまだお答えをいたす段階には立ち至っておらないのであります。
  28. 米田勲

    米田勲君 筋から言えばそうだが、実際自治省としては、地方公務員給与改善の問題については当然責任がある場所でしょう。だから、国家公務員の方がきまったらそれに準じてやるのですというようなことでは、あまりに消極的な立場ではないか。自治省としては、地方公務員を今度の勧告に即応してこうしたい、ごうすべきだというやはり結論が一応得られなければならない。何か、国家公務員の方がきまったらそれに準じてやるのだからいい、それまではこちらに案はないのだとうい立場なんですか。どうもそれだと、あまりに消極的な立場ではないですか。
  29. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) これも御承知通りでございますが、府県の場合について申し上げてみますると、府県の場合には、国の人事院に対応するような機関として、実は人事委員会というものがございます。この人事委員会人事院と同じような立場から資料も収集し、給与について引き上げ措置が必要であるというふうな結論に立ち至りました場合においては、やはり同じような勧告をする制度に実はなっておるわけであります。そういう意味では、地方団体自体は、国と同じように、一つ機関として職能がそれぞれきまっておる建前に実はなっておるのであります。そういう意味で、人事院が一種の独立性をもっておりますと同じように、人事委員会につきましても、やはり独立性を持っておるのであります。ただ、自治省といたしまして、事を考えて参りまする場合においては、地方公務員建前においても、やはり国家公務員との対応というものを考えていかなければならぬということに相なっておりますために、国において施策が講ぜられるということになりますれば、当然少なくともその限度というものは、地方公務員についても同様の取り扱いをしなければならぬという建前を従来からとってきておるのであります。それと、一般の地方公務員自体についてどういうふうにすべきかというような点について、自治省独自の判断をしていろいろやるということにつきましては、それぞれの地方団体につきましても独自の事情があることでございます。また、国家公務員取り扱い方についても影響を及ぼすことでございますので、私たちといたしましては、そういう建前は従来からもとってきておりませんし、またそういうことをやる方がいいというようなことには実は考えておらないのであります。
  30. 米田勲

    米田勲君 これは、地方自治体の方には、人事委員会というものがあって、勧告することになっておりますけれども、従来そういう建前であっても、大綱はこちらの方で立てて示すでしょう。全然示さないのですか、地方人事委員会勧告を受けて、地方自治体は自由に裁量してやっていくことを認めますか。認めないでしょう。
  31. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 従来のたとえばベース・アップの場合、あるいはその他の給与改善の場合におきましては、やはり地方人事委員会といたしましても、国の人事院の動向というようなものについては、常に注意を払っておるわけでありまして、人事院について何らかの措置が講ぜられる場合におきましては、人事委員会についても、こんなに見合った何らかの勧告をいたしておることが実情でございます。従いまして、それぞれの県では、第一次的には人事委員会勧告その他の措置要求というものをもとにして措置を講ずるということに相なっておるわけであります。
  32. 米田勲

    米田勲君 その建前はわかります。わかるけれども、地方人事委員会人事院勧告と相当違うものを勧告するはずはないのですよ、従来とも。そうしてこれにはやはり財源の問題がある程度ぶつかりますからね。従って、地方自治体が自由意思でどうこうするというよりは、やはりこちらとの財源関係をにらんでやっていくことになるのが、普通実際の問題として、そういう実情じゃないかと思うのです。それが、今の最初の御答弁だと、国家公務員の方でどういうふうになるか、きまったあとでそれに準じてやるのだと言う、建前はそうかもしれないが、しかし、積極的に地方公務員給与改善のことは、ここの場所でもずいぶん論議になっておるし、あなた方もずいぶん今まで研究をして進めているわけなんです。だから、こういう場合にやはり積極的に自治省も、地方公務員給与引き上げに対しては、こういう角度からこういうふうにすべきでないかという結論を得て、そうしてまあ閣議なら閣議、必要な場所に主張するような態度であってほしいと僕らは思うわけですよ。だから、いつ結論を得るのだという質問を聞いて、いつだという答弁をしてもらえばよかったのだが、それが、国家公務員法がきまったらそれに準ずるというきわめて消極的な話なので、もう少し積極的にそういうことは検討すべきじゃないかという考え方建前建前ですが、しかし、実際の運用の問題としては、相当新たに積極的に検討を加えてもらって、従来この地方公務員給与の較差が非常にあるし、改善を要するという結論にもなっているのだし、この機会に、積極的にあなた方の方でも一つ考え方結論を出して、しかるべく折衝を行なうべきではないかというふうに考えるのですが、どうですか、この点は。
  33. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) まあ建前の方を最初申し上げたわけなんですが、われわれ自身としても、現在の地方公務員給与のベースのあり方等については、それぞれ事務的に意見も持っておるわけであります。見解も持っておるわけであります。従って、そういう考え方というのは、政府の本勧告案をどうするかということの態度決定をいたしまする際においては意思表示をするということは、当然あり得るわけなんです。ただ、今政府全体として本勧告案取り扱いについてなお検討中であるという段階において、私たち事務当局として、これ以上のことを申し上げるのはいかがかという意味で私申し上げたのであります。
  34. 米田勲

    米田勲君 今のところ、そうすると、そういう検討のいつ結論を得るとは言えないわけですか。
  35. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) はあ。
  36. 松永忠二

    ○松永忠二君 一つ、今度の勧告にあたって、従来金額も等級によって共通したものが相当あったわけなんですが、今度の勧告では、各級で金額が共通したものが非常に少ないわけです。各級別に金額が非常に共通点がないわけです。従って、非常に複雑になってきているという感じがするわけで、何かわれわれは、給与の面については、あまり複雑にするということについてはよくはないのじゃないか、ある程度職種という点を非常に考えるとしても、金額なんかについては共通点を求めていくような、まあある意味では単一的なグラフを描かれるような給与というものが必要ではないかという感じがするわけですが、これなんかについては、やはり地方公務員実情から考えてみて、こういう方向がいいのか、それともやはり給与は簡単で、しかも単純性を持ったものというものができ得るなら、そういう方向を求めていくべきであると考えておられるのか。相当、今のお話で、地方公務員給与についても、一応見解をお持ちのようでありますけれども、この点についてはどんなふうなお考えを持っているのか。
  37. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 一般的に言えば、俸給表その他というものは、やはり簡明でわかりやすいということがいいのだと思います。ただ、まだわれわれといたしましても、勧告内容をそれほど自信をもって研究をいたしておるわけではございませんが、今御指摘になりました、共通の金額の号給というものがないという点については、これは私のそんたくでございますけれども、現在たとえば四等級から三等級に上がるという場合に、同じ金額が同等級にまたがっております。この場合におきましては、四等級から三等級に昇格いたしましても、その同じ号俸に当たるものにそのまま上がっていく。従って、格づけだけ上がりますけれども、上ったことによって、俸給は全然上がらないということが現在の運用実態であります。それはそれとしてあるいはいいのかもしれませんが、やはり格が上がれば若干でも俸給がそれに伴って上るということの方が、むしろ人事行政上からいっても合理的なのではないかという、そういう声が人事院にも反映しまして、そういう措置が講ぜられたのではないか。これは私の想像でございますが、そういう意味では、人事行政上の問題といたしてみますれば、今度の措置では、私の考えでは一歩前進ではないかというふうに考えております。
  38. 松永忠二

    ○松永忠二君 あなたの見解も一つの見解でしょうけれども、私たち一つ考え方とすれば、いたずらに複雑になって、しかも非常に職種別に複雑なものが出てきているという考え方もあるわけなんです。そういうような点で、今お話のあった地方人事委員会がこういう問題について独自の見解を立てて、そうしてこれについて実施をしていくということについては、自治省としても何も権限的にも関与すると点はいかがですか。ころでないと思うのですが、こういう
  39. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 先刻来申し上げましたように、国家公務員地方公務員というものは公務員でございますので、本質的な性格から申しますれば、これは相違のあるべき筋合いのものではない。ただ、職務の段階その他につきましては、規模その他について国の場合とは大いに異なるところもございます。また、県と市町村では同一に論ぜられない場合もあるわけでございます。そういう意味において、地方地方である程度独自のことを考えられるということは、これはむしろやむを得ないところでございまして、そういうような個々の問題について、とやかくわれわれの方といたしましてはくちばしを入れるつもりはございません。ただ、全体的な問題といたしまして、給与の根本的なあり方自体が、他の地方公共団体との均衡並びに国家公務員との均衡ということも考慮していかなければならぬという建前になっておりますので、そういう根本原則というものは踏みはずさないようにという点については、従来ともそういう態度で指導して参っておるのであります。個々の問題について、この号俸が少しゆがんでおる、あるいは金額が国の俸給と全く同一でなければ、その俸給表というものはいけないのだというような態度で指導はしておらないのであります。
  40. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっと関連してお尋ねしておきますがね。政府は順法ということを盛んに言っておりますから、私は、当然五月から政府はおやりになるものと思います。自治体もおやりになるものと思います。そういうときに立ちますと、当然財政的なものが一番問題になる。しかも、政府は新しい立場に立っていろいろ施策を大体九月上旬ごろに発表されるやに承わっておる。特に減税の問題もあるわけです。ですから、財源の問題からいろいろと考えてくるときに、今考えておられる減税の方向がどんなふうであるかという問題が一つと、それから、財政措置財政措置とおっしゃいますけれども、やはり交付税の率等の問題も私は大きな問題になってくると思う。ですから、そういう問題等の検討をしておられるのか。そうでなくて、今度だけは簡単に補正予算でもらって、そうして来年度になってから一つ考えたらいいじゃないかという考え方なのか。一つ方針だけ私明らかに承わっておきたいと思う。
  41. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) 私からお答えするのが適当かどうか存じませんが、一応お答えさせていただきます。  財政の問題でございますので、やはり本年度やるにいたしましても、来年度以降も当然どうするかということを予定して計画してかからなければならない。今年度だけを切り離して、こういう多額の財政需要を生ずる問題につきまして措置をするということは穏当でない、かように考えておるわけでございます。また、来年度以降どうするかという問題つきましても、減税とか、公共投資とか、社会保障とか、どういうように財源を振り分けていくかということがきまらなければ、やはりこの問題だけを切り離してきめるということも困難ではなかろうかと思うのであります。同時にまた、国の財政では、これをそのままやれ、地方財政ではやれるとかやれないとかいう問題を無視してきめてかかるということも穏当ではないと思うのであります。やはり国家公務員地方公務員と分かれておりますけれども、待遇は従来も同じ考え方でやって参りましたし、今後も同じ考え方でやらなければならないし、やってもらえるものという考え方を持っておるわけでございます。そういうことで、先ほど、米田さんからいつやるかというお尋ねがあったわけでございますけれども、そういう全体の問題とからみ合わせて、なるべく早くきめていかなければならない性格のものではなかろうか、こう思っておるわけであります。当然私たちは、国家公務員について行われるとすれば地方公務員について行われる。また行われるような両方の財政措置をしていかなければならない、こういう考え方をしておるわけであります。
  42. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そのもとに立って、私は、九月という一つのものがあります。出た以上は、今まで政府のしばしばの言明から見まして、完全実施をおやりになる、こういう前提に立つわけです。とすれば、今あなたがおっしゃるようなことをやるには、それじゃ具体的に、たとえば今年度は補正で国から出る金だけでやっていく、しかし、来年度からは交付税を引き上げなくちゃならぬから引き上げる、それとからんで減税の問題も出てくると思う。そうすると、減税はおよそどのくらいの規模のものを予定しておる、中身の方は別として、いやいや地方の方は全然減税はやらないという方針なのか、その辺のところを、もう少し私は具体的に御説明願わないと、やはり財政措置はやるやるとおっしゃいますけれども、言葉だけで中身がないじゃないかという点ですが……。
  43. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) かりに人事院勧告を時期も合わせてその通り実施するというようなことにいたします場合には、先ほど申し上げましたように、莫大な金額を必要とするわけであります。一県当たり十数億円の金が要るという問題になります。こういうものを、ただ国から一方的に金を追加するだけで片付けられる性格のものではないと思います。自然地方公布税法を改正いたしまして、単位費用も引き上げるという立法措置も講じなければならないと思います。同時に、地方公布税の算定がえをいたします場合に、基準財政需要額が増額になって参るわけでございますけれども、基準財政収入額もやはり算定し直さなければならない。言いかえれば、相当な増収がなければやれないことであります。当初国の予算見込みました、あるいはまた、当初地方財政計画見込みましたものよりも、もっと大きな増収がなければ実施できないということであります。従いまして、まず増収基準財政収入額に反映させなければなりませんが、これも算定がえをしなければなりません。そうやって、基準財政需要額と基準財政収入額を控除いたしました差額の財源措置、これが従来の算定よりか相当大きくなってくるわけだろうと思うわけでありまして、それだけのものが同時に地方公布税が増額にならなければできない、こういう問題になってくる筋合いだと思います。財政措置をする場合には、今申し上げましたような法律改正も当然伴うのだ、こういうふうに考えておるわけであります。
  44. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたのおっしゃるのは、片一方、どうしても減税というのは、政府の公約として地方の方にもある程度やらなくちゃならぬ。たとえば、遊興飲食税は、この委員会で何べんか約束済みの問題で、またほかにもあると思う。ですから、そういう中で、どうしても基準財政需要額等がふえてきた。ですから交付税法を、法改正をおやりにならなくちゃならぬ。従って、完全実施をおやりになる建前であるから、早く今度召集された国会の早いうちに、たとえば二八・五%を三〇に引き上げるとかいうような法律的な措置がなされるというふうに了解していいのか。これはまあもうちょっと検討さしてくれとおっしゃるけれども、やるという前提に立てば、それ以外に方法はないじゃないか。それが大筋じゃないかというふうに考えておりますが、いかがですか。
  45. 奧野誠亮

    説明員奧野誠亮君) かりに国家公務員について給与改善措置を行なうといたしました場合に、その財源はやはり国税の自然増収だろうと思います。そうしますと、国税の自然増収があれば、地方税にも自然増収があろうかと思います。国税の自然増収がございますれば、地方公付税の自然増収にもなってくるわけでございまして、そういうふうなところを考えて参りますと、必ずしも、今直ちに交付税率を引き上げなければやれないのだ、こういう性格のものではないと思います。ただ問題は、かりに減税が行なわれるといたしますれば、それに伴って地方財源は減ってくる、そのままじゃとても地方財政はやっていけないから、従来行なわれましたように、国税の減税の結果減少してくる地方交付税を補てんするために、地方交付税の税率にはね返す、こういうことは検討される問題にはなろうかと思いますけれども、ただ、給与改善措置が行なわれるから直ちに地方交付税の税率引き上げ、こういう筋合いのものじゃない、かように思っておるわけであります。
  46. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたのおっしゃる筋はよくわかるのです。ところが、すでに八百億の自然増を見込んだのです。そこで、おっしゃるように、今年度五百五十億、平年度六百二十億という数字が出てくれば、これは自然増収だけじゃまかなえないのです、幾ら何と言っても。と思いますから、だから、当然自治省としては、私は、交付税率の引き上げを勘案して、そうして私は対政府と折衝されるのが当然のことじゃないかというふうに考える。またわれわれはそれを期待しておる。そうしないと、まあお前の方はこのくらいの自然増があるからとおっしゃって、一県で大体十何億というところもありましよう、そういうようなものを、全部あれ以上に上回った自然増があるという格好で押し付けられたのでは、辞令はもらったけれども中身は何もなかった、そういうことです。ですから、私はそういう方法一つ努力してもらいたい。あるいは、もっと言えば、それがこの問題に対する大筋ではないかというふうに考えておるのですが、なかなかこれは事務当局としては困難なことかもしれませんし、また、時期的にも言明される時期じゃないかもしれませんけれども、少なくとも私はそういうことを考え、また、当然あなた方は、大蔵省あるいは閣内においてそういう点は主張されるものと期待しておるわけでありますけれども、これは、今すぐこうしますという答弁は、これはできないことはわかりますから、そういう大筋だけは、基準財政需要額でなくて、自然増があるからいいということで逃げられないで、また、大蔵省にそんなことで押えつけられぬようにがんばっていただかなければならぬと思います。これは希望意見です。
  47. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  48. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 速記を始めて。   —————————————
  49. 占部秀男

    占部秀男君 次の問題ですが、問題はちょっと小さいような感じがしますが、地方公務員の側から言うと大きな問題ですけれども、昨年の伊勢湾台風のときや、その前の大きな災害の場合に、地方公務員の、県市町村職員に対する災害見舞の給付の問題が、去年は特例法を設けて追加給付をしたわけですが、本年は、どういうわけか、その特例法が出されていない。こういうことで放置されているわけでありますけれども、これは、どういうわけで一体ことしは特例法を出さなかったのか。チリ災害の問題なんですが、そういう点についてお伺いしたいのです。
  50. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) チリ災害の特例措置でございますが、これは、原則的には、昨年の伊勢湾台風と同程度の被害のあったものにつきまして、それに対する対策を講ずるという建前で諸般の措置が講ぜられたのであります。従いまして、件数が、正確に覚えておりませんが、昨年の伊勢湾台風の際は、特例法案がたしか二十四、五件あったと思います。今申し上げましたような原則でやったものでありますから、先般のチリ災害の場合には、案件がたしか八、九件にしぼられたと思います。しぼること自体についてはいろいろ異議もあったと思いますが、やはり特例措置でございますので、そういうような一定の基準を設けられたことはやむを得なかったのではないかと思うのであります。そういう基準で参りますと、なるほど今度の市町村職員の場合におきまして、被害を受けました地区は相当集中しております。集中しているために、局部的に非常に目立つわけでございますけれども、全体として見ますと、伊勢湾台風の場合におきましては、市町村職員の被害について見ますと、全体で四千五百戸ばかりでありました。これに対しまして、今回の場合は、被害は三百八十一戸でございます。こういうことで、全国的に見ますと、と申しまするか、全体の集計として見ますと、被害度というものが少なかったということから、一般方針に照らしまして、今度の特例措置が認められなかった、こういうことでございます。それと、もう一つは、昨年も、むろん被害の程度が激しかったことにもよるのでありますが、国家公務員についても実は同様の措置が講ぜられたのであります。やはり災害見舞金ということでございますし、共済組合の給付内容自体も国と地方では同じでございます。そういうような点から、市町村についても当然措置を講ずべきであったのであります。今回の場合は、国の場合におきましても、実は今までのところ特例措置というものは講じておらないのであります。その対応の問題と、この二つの点から、先般の特例法の提出に至らなかったというのが実情でございます。
  51. 占部秀男

    占部秀男君 今度追加給付についての特例を出さなかったということについての政府側の基準的な見解、これは私もわからないわけではないのでありますけれども、しかし、そういうあり方自体は、市町村共済なりあるいはまた地方共済なり、共済制度そのものの本質からいって、少し筋が違うような気がするのです。というのは、伊勢湾台風のときと同程度といって、範囲が局地的だからというけれども、追加給付をしようというのは、広い範囲に災害が起こったから追加給付しようというよりも、当該職員なら職員のその災害によるところの被害程度がより深刻であるから、従って追加給付をしてやる必要があるのではないか、こういうふうに私は本質的に言えば考えられるのじゃないかと思うのです。そういうようなふうに考えたときに、やはり今度は伊勢湾台風のような広い土地ではなかったにしても、職員個々の家庭的の立場から言うならば、同じ被害、同程度の被害を受けている問題でありますから、従って、何らかの措置をしてもらわなければならぬと私らも考えるわけです。特に、国家公務員の場合には適用しないということが政府方針としてきまったというお話でありますけれども、今度のチリ災害の実態を見てみますと、国家公務員で災害をこうむった者はほとんどないわけなんです。ほとんどが市町村職員あるいは学校職員、あるいは郵便局の、いわゆる全逓の、郵政関係職員の方、こういうことで、国家公務員の人は適用しなくてもほぼ済むような私は実態じゃないかと思うのです。これは少し言い過ぎかもしれませんけれども。やはり被害をこうむった大部分は地方公務員である。こういうような観点からいっても、これは何らかの一つ措置をしてもらわぬと、非常に不公平になるのじゃないか。地域の問題は別にして、被害を受けた職員立場からいうならば、伊勢湾台風の問題と今度の問題と同じなんですから、従って、これは何らかの措置をしてもらわぬと、それはどうも市町村職員としても、県の職員としてもおさまらぬ。教員の方としてもおさまらぬと、こういうことになってくるのではないかと思うのですが、こういう点について、何か私はそういうような措置をとってもらう必要があると思うのですけれども、今さら特例法を出すというわけにはいかぬでしょうけれども、何らか、市町村共済組合法の改正をしてもらうとか、あるいは何とかしてこの問題を処理してはもらえんですか。その点について一つ御見解を承わりたい。
  52. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 災害見舞金は、現在最高三カ月ということになっております。これに対して、昨年の伊勢湾台風の際には、二カ月以内の継ぎ足しを認めることに道を開いたわけであります。道を開きまして、それに応じて事実それぞれ措置が完了しておるわけでございます。今お話のございましたように、あまり野放図に、たとえば二カ月というようなことが、それが三カ月にも四カ月にもなるというようなことになって参りますと、これはそもそも見舞金の基本額の決定の仕方に問題があるわけでして、そこにやはりおのずから限度がなければならぬと思います。しかし、組合があるわけですから、その組合でもって被害の程度に応じてこれが何とか継ぎ足しの措置を講じてやるべきではないかという意見が起きてくる。しかも、それをまかなうためには、現在連合会で災害の積立金を実は持っております。その積立金をなしくずしをすることによってその支給も十分にやれるということであれば、そのこと自体はやはり組合の自主的運営にまかすということが、これは姿としてもいいのではないかというふうに私は率直に考えておるのです。ところが、現行法の建前では、給付の内容が法定されております。従いまして、災害見舞金の場合も、付加給付というものが認められない建前に実はなっている。そこに一つの隘路があると思います。先般の国家公務員の場合は、共済組合法の改正によりまして、そのつどの特別立法でなくて、法定給付は別表できまっておりますけれども、特例的に付加給付をやります場合においては、それぞれ政令できめれば付加給付がやれるというふうに道が開かれておるわけです。少なくとも私は、市町村共済の場合においても、そこまでの道はつけるべきではないか、道をつけておきますれば、あとはやはり組合の判断、あるいはまたわれわれの判断というものによって、具体的な適切な一つ解決が見出されるように、そういう道をつけるべきではないかということが根本的な考え方で、これはまだはっきり確定したわけではございませんけれども、将来の市町村共済を含めての地方公務員の年金制度の改正の場合においても当然考慮に入れなければなりませんが、あるいはそれまでの措置といたしましても、さしあたり市町村共済組合法の改正で、国家公務員共済組合法と同じレベルにまでは持っていくと、すなわち、必要な場合におきましても付加給付がやり得るのだという道だけを一般的に道をつける、それぞれ災害があったらそのつどやるというのではなくして、一般的に必要のありました場合はということで道をつけるという方向は、一つ考えてみてもいいのじゃないかということを考えております。それを具体的にどうするかとか、いつやるかということについては、今のところはまだ決定をいたしておりません。
  53. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、考えていただいていることについては、私はほんとうにこれは職員の方の立場に立つとありがたいと思うのですけれども、問題はチリ災害という一つの現実の事実があるわけですね。そこで、将来は退職年金法の問題にからむ市町村共済の大きな問題があるわけでありますけれども、その前に、やはりこういう現実の問題を処理できるような形の問題の処理の方法ということが、私は一番望ましいというふうに感じるわけです。たとえば、チリ災害ならチリ災害の問題を残されてしまって、今度はあとでやられてしまっても、チリ災害を受けたその人、その職員だけが不平等な扱いを受ける、こういうことに現実問題としてはなってくるわけですから、従って、われわれが希望することは、何とか退職年金にからむ問題の前にこの問題を出して、そして三十五年度からこれを施行するということにすれば、チリ災害の問題も、これは網をかぶせることができるわけですから、そういうような方向で近い国会に法改正をぜひしてもらいたいと思うわけです。しかもその法改正内容が、今局長も言われた通り地方公務員だけ特別の優遇措置国家公務員に準じてするということならば、これはまだいろいろ問題はあると思うのですけれども、すでに国家公務員の共済組合法では問題はそうなっておるのですから、一般的な形で、従って、同じような扱いをしてもらうことは当然であるというふうに考えるわけなんですが、そういう点については何か困難がございますか。なければ、この際は、近い国会で改正をしてもらうということで、一つこの問題を地方の人たちにも安心をさしてやりたいというふうに考えるわけですけれども、その点はいかがでございますか。
  54. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 先刻も申し上げましたように、付加給付の道を開くということにつきましては、私としては、なるべく近い機会に積極的に考えてみたいという気持を持っております。好ましいことではございませんけれども、これからまた台風の季節に入る。災害がないにこしたことはございませんけれども、また大災害があるやもはかり得ない。そういうような場合に、そのつど特別立法をやらなければならぬということでもいかがかと思われるのであります。そういう点もにらみ合わせまして、できるだけ早い機会に措置をしたいという考えを私は持っておるということを申し上げております。
  55. 占部秀男

    占部秀男君 念を入れてお尋ねするのですが、かりにそういうような場合に、地方共済の方は、あれはたしか定款の変更だけでよかったのですね。そういうわけですね。
  56. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) はい。
  57. 占部秀男

    占部秀男君 私の質問はこれで終わります。よろしくお願いします。
  58. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  59. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 速記を起こして。   —————————————
  60. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、最近新聞紙上にたびたび掲載をせられておりまするいわゆる山谷の問題、交番襲撃の問題について若干の質問をいたしたいと思うのであります。  第一回が七月の二十六日の夜に起こったわけでありますが、原因は、きわめて新聞紙上の伝えるところによりますというと簡単である。簡易旅館に泊まっておる酔っぱらいと、それからその旅館主とのけんかが原因になって、そうして警官が酔っぱらいを派出所に引致をしたというようなことに端を発して、そうして当夜は約千人が襲撃をして、警官が七人も負傷をしたと、こういうことなんであります。これが一回で終わったことならば、これは世間にあり得ることなんで、同じ階層の集団がときに酔っぱらった上で一つやってやれというヤジウマ気分も手伝ってやられたというので、大して問題ないのでありますが、しかし、第一回から続けて、八月の六日の夜までに五回も続けられた。しかも、わずか半月の間に、大東京のまん中で、とにかく千人、時には三千人というような集団が一つの交番に襲撃をして、ただ交番を破壊をし、そうして警官に対して投石をするというだけでなく、一番大事な、しかも公共交通機関であるところの都電自体までもとにかく停車をさして、そうしてこの新聞の写真を見ますというと、電電の窓をむちゃくちゃにしたというようなことを考えてみまするというと、これは私は、単なるヤジ的な襲撃というようなことで葬り去るには、事自体というものがあまりにも大きいように実は考えておるわけであります。私自身も、これは終戦前でございますが、あの山谷地帯の簡易旅館にしばらく泊まりまして、そうしてあそこに根城をおろしている人たちのいわゆる人生行路と申しますか、そういうものを私は調査した経験がある。これは、当時の財団法人の労資協調会というのから私は委嘱をされまして、膨大な一つの本になって、今あるかどうか知りませんが、これは私は徹底的に調査をしたことがある。その当時に私が感じたことは、あそこにおる人たちの大部分というものは非常に純真なものだということを言えると思うのであります。これはまあ、終戦後の今日とはだいぶいろいろ世の中が違っておりますから、そのまま当てはめて言うことはできぬと思うのでありますが、まあそういう私は感じを持ったのであります。そうするというと、たび重なってああいうような一つの無法地帯を作ったというようなことについて、一体原因はどこにあるのかということが、きょう私がお尋ねする一番の根本なのであります。まあいろいろ言われております。マンモス交番の新設というような問題が非常に反感を買ったと、山谷は、御承知通り、わずか人口は、私どもあの地帯は二万足らずだと思っております。ところが、いわゆる職安を通さないで行く、いわゆる労働自由市場と申しますか、こういうのが山谷は非常に多い所であります。そういう点で、マンモス交番というようなものが新設をせられたに対しての反感というようなこと、また、この交番の新設について、これは誤解と思うのでありますが、それから、これは警視庁の課長から言明をせられておるようでありますが、この交番の新設について、相当地元の旅館主の寄付を集めたということの誤解というものが、今でも山谷の住民の人たちが相当根強く持っておるのじゃないかと、こういうものに対する反抗、それからさらには、一部の扇動家といいますか、私は、先ほど申し上げた通り、終戦前の調査ではあるけれども、少なくとも大部分の者は純真性を持っておると、こう思うのでありますが、それが数回にわたってああいう行動をとられたということについては、だれか特別な立場にある人たちが特にその扇動によってこういう計画的暴動というものを起こしたと、こういうように私どもは考えるのです。いずれにいたしましても、民主主義の基本は、他人に迷惑をかけないという、こういうことであります。自分が気に入らなければすぐに実力を行使する、そうしてあえてこれを反省もしない、それを重ねてやるというようなことになれば、これは、世間で言う、あの地帯というものは無法地帯だ、こう断定せられることも無理ではないのでありますが、こういう点において、取り締まりの方面からいたしますれば、いろいろむずかしい点があると思うのであります。これを直ちに警察力を総動員して、そうしてこれを検挙だけに没頭するというようなことはかえって不測の問題を起こす、この心配もあると思うのであります。しかしながら、今申し上げた通り、数回にわたって、しかも東京のまん中で集団行動、実力の行使をやり、そうして公共機関であるところの都電までも停車させ、そうして都電自体をあの通りに破壊をする、こういうようなことになりますというと、あのまわりにおります住民からいいましても非常に不安感に襲われる、こういうようなわけなんでございますが、この原因について、当局としてはどういうように御判断をせられておるか、まずその点から伺いたいと思います。
  61. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 最近、山谷に起こりましたたび重なる暴力事犯、集団の騒ぎというものは、私どもも非常に残念に思い、また事の重大性を考えておったわけでございます。ただいまお話のように、あそこには一万以上のいわゆる山谷のドヤ街という所に住民がおるわけでございますが、お話のように、その大部分というものは、別に特別の悪質なものというわけではなくて、非常に自由を求める純真な人が多いのであろうと思います。いろいろ複雑な事情があるようでございまして、最大の原因だというものを、私どもとしてもまだつかんではおらぬのでありますが、ただいまお話にございましたように、一つには誤解がある。これは全く都費独自によって建設をいたしましたわけでございますけれども、何か、最近において、一晩十円ほど値上げになった、それが回されておるというようなうわさが立つ、相当な識者のうちにもそれを信ずる人があるくらいでありますから、土地の人たちがそういうことを信じ込んで、非常な反感を持つということも考えられるわけであります。また、あの地帯につきましては、多くのものは特別犯罪的な要素を持っておらぬわけでございましょうが、相当に前科のあるようなもの、あるいは犯罪を犯して隠れ込むものも中にはおるわけであります。また売春行為等に関係するものもあるわけであります。また暴力団等にするひもというようなものもその中に介在するというようなことで、全部が全部というわけではございません。先ほどお話のように、多く、その大部分というものは、別にそうした関係がなしに、あそこに住んで労働に従事するというものが多いわけでありますが、非常に複雑な社会といいますか、構成になっておる。これに対しまして、警視庁としましては、やはり悪質な、売春に関係するものであるとか、あるいは犯罪の捜査であるとか、いろいろな面から、かなり最近において、正しい取り締まりではございますけれども、従来よりもきびしく警察活動が行なわれておったことは事実でございます。従いまして、そのやさきにあれだけの大きなものができたので、ただいまの寄付等の誤解と相待って、非常に警察に対する反感というものが起こっておったのではないか。そこに、ただいまお話のように、一部非常に、これも根の深いものとは思いませんけれども、扇動するような分子が出てくる、これは、取り締まられる側からいたしますれば、警察というものはじゃま者でございます。従いまして、そういう方面からの扇動というものもあったのではないかと思います。たまたま時期としては非常に暑い時期でございまして、まあ酒を飲んで夕涼みがてらに出ておる。何か事があればそこに蝟集するというような群衆心理的な要素も加わっておるのではないかと思います。警視庁といたしましても、これらの原因の究明ということを根気強くただいま実施をいたしておるところでございますが、これに対しての警備取り締まりの措置といたしましては、これもただいまお話のように、非常な強圧的な態勢でやるというようなことは、いたずらに感情を激発するばかりでなく、宿に戻ってまたいつでも出てくるという態勢の人たちでありますから、そういうふうな強力な措置というものが必ずしも当を得ているとは考えられません。しかし、交通を杜絶し、はなはだしきは交通機関にまで破壊行動に及ぶ。あるいは交番に対して石を投げ、その中の器物をこわすというようなことに相なることは、どうしても見のがすわけには参りません。それで、警視庁といたしましては、やはり中心はそうした不法に対して強く取り締まる。しかし、方法としては、柔軟な考え方をもって、あるいは手ぬるいというような御批判があるかと思いまするけれども、長い目で見ていただいて、平穏を長く確保するような方向に持っていくということに腐心をいたしておるようでございます。従いまして、警備の面におきましては警備の面から、また刑事におきましては捜査の面から、保安の面からいたしましては営業その他いろいろ防犯上の措置というようなことで、多面的に施策を講じ、特に浅草の警察署のみにまかせるということでなしに、本庁の責任において総合的に山谷の問題を処理していくという方に持っていくという考え方で、現在鋭意努力をしておる状況でございます。その暴力行為に及んだ者等につきましては、なかなか割り出しがむずかしいのでありますが、現在まで若干の者について逮捕をいたし、そういう面からもさらに悪質な者についての取り締まりに手を伸ばしていくというようなことも考えておるわけでありまするし、最近におきましては、少なくとも交通の杜絶するようなことのないように、これだけは十分に規制措置を講ずるということにいたしまして、ここのところ、そういう面におきましては平穏を維持しておるような状況でございます。非常にお答えとして十分なものでございません。われわれも目下警視庁を通じていろいろと検討をいたしている最中でございますので、正確なお答えを申し上げかねるのでありますが、今まで私ども得ましたものによりまして考えておる点をお答え申し上げた次第でございます。
  62. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、昨年の三月から本年の二月の過去一年間のあの地帯の犯罪件数でありますが、これはまあ、私が言うまでもなく、もうそちらではっきりいたしておるのでありますが、殺人が二件、強盗が九件、強姦が四件、暴行傷害強迫恐喝が合計二百三十七件、浅草六区とともに、その犯罪の件数というものは非常にずば抜けて多い。そのほか届出のないものがむろんあるでありましょうが、しかしながら、検挙率が七三%と、こう言っておるわけでありますが、私は専門家でないからよくわかりませんけれども、七三%の検挙率というものは、特にあの地帯でこれだけの検挙率を上げているということは、私はかなり大きなものじゃないかと思うのです。これは過去一年間でありますが、その当時はマンモス交番でなく、従来何人いたか知りませんが、普通の交番を中心にして、そしてこれだけのいわゆる検挙率を上げているわけなんです。過去においても、検挙率の面から言えば相当な成績を上げているにもかかわらず、今長官の言われた大交番を作って、これがいろいろな誤解を招いているというようなことなんですが、それ以前の交番でもこれだけの検挙率を上げているにもかかわらず、何がゆえに本年になって大交番を、誤解を招くようなものを作らなければならなかったのか。その原因というものは一体どこにあったのか。この点を一つ伺いたい。
  63. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) この前、ただいまお話のような小さい交番の際にも検挙率が相当上がっているということでございますが、これは、むしろ本署等から相当の人間を繰り出して捜査をやるということで、交番の機能として成績を非常に上げておったというわけではないようであります。警視庁といたしましては、新宿それから池袋等の盛り場につきまして相当大きな交番を設置して、いわゆるチンピラ、暴力団等の取り締まりに任じ、その盛り場の平穏をはかるということをやっておったわけでございますが、この山谷街につきましても、ただいまお話のように、相当犯罪率が高いということから、さりとて警察署を設置するというようなほどのことまでいく段階でないということで、やはり警察としては、重点を置くという意味において、近くに相当数の警察官を派遣しておくことが妥当であろうということで作ったものと考えておるわけであります。ただ、そこに配置する要員あるいは構成というようなことについては、なお研究を要する問題があるのではないかというふうに考えますけれども、あれだけの地帯であり、相当事件の多い所でありますので、やはり一々署まで事件の処理として持ってくるということでなしに、近くで相当のことまで運べるような施設を設ける、機関を置くということは、これは一応妥当なことではないかというふうに考えるわけであります。
  64. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今長官のお話は、チンピラ、暴力団を取り締まるという新宿、池袋、そういったような、非常に集団的に多い所を取り締まるというので大交番を作ったというように、通り一ぺん的なチンピラ、暴力団取り締まりのような立場に立って山谷を見ているというところに、私は非常に警察当局としてはもう少し検討を要する問題が残っていたのじゃないかと思うのであります。これは、非常に学問的にむずかしく申しますれば、もう少し社会必理学といいますか、そういう点についての検討、研究というものが何か足らないのじゃないかと思うのですが、そういう点について、ただ取り締まるというだけでは、あの地帯というものはいかないわけでありまして、先ほど申し上げました通り、また長官からの答弁の中にもあった通り、まあいろいろ複雑な分子があすこは入っているわけです。しかし、そこにはそこで一つの、何と言いますか、世界があります。いわゆる仁義があるわけです。そうしてなるべく、何と言いますか、他人と言いますか、外部のいろいろな制肘と言いますか、そういう点をできるだけ避けていこう。要するに、もう自分は、どこの本籍で、そうして過去に何をしていたのかということを言わないで仕事ができるということが一つのあそこの世界なんです。そこを何か、しかつめらしい、改まった態度の取り締まりというようなことは、社会必理学の上から見ても、私は反感というものを燃やすのじゃないか、そういう意味からいって、あそこをただ普通のチンピラとか暴力団の集団のような格好で考えられる警察当局のお考えには、いささか私は別な議論を持っておるわけなんであります。この点についての御見解はいかがですか。
  65. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 確かに、ただいまお話のように、新宿、池袋等の盛り場に対する警察の態度と山谷街等のああいう複雑な所における態度とは、当然異なって施策が講ぜられなければならぬと私も考えます。警視庁といたしましても、通り一ぺんに同じ考えでやったことではないと思いますが、社会心理学と申しますか、そういうような点についての研究も十分に遂げるべき性格のものであったように反省されるわけであります。ただ、地元におきましても、昨年以来山谷地区環境浄化推進運動というようなものが非常に盛り上がってきております。さっき申しました寄付の誤解というようなものも、自分の方で寄付してもいいから、一つしっかりしたものを建てて、浄化運動に警察も十分に協力してもらいたいというような地元の希望、要望などもあって、そういうふうなことも一つの警視庁が決意するに至った理由ではないかと思うのであります。しかしながら、先ほど申し上げましたように、非常に複雑な地域でありますので、新宿、池袋のような所と同一に論じ、また同一に考えて施策を講ずべきものではないということ、これは、私自身ただいまそう考えておりまするし、そういう意味からいたしましても、あの交番の運営等につきましても、先ほど申しました要員とかあるいはその構成というようなこと、また住民に対する態度というようなことについても、おのずから相当柔軟な考えを持って対処していくべきだろうと思います。警視庁も、今度の事件を契機といたしまして、そういう点について各方面からのまた御意見等も承わって、十分に検討してもらうことを希望いたしておるような次第であります。
  66. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 あそこの簡易旅館で、浅草旅館組合に加入しておるものがたしか百八十軒、それから未加入のものが約六十軒あるわけであります、従前——従前といってもだいぶ前の話で、先ほど申し上げました終戦前の、だいぶ前の話なんですが、この簡易旅館の旅館主自体というものが、当時としては、やはり宿泊者に対する一片の同情といいますか、何か同じような立場におられるというようなことで、非常になごやかにいっていたらしいですね。最近数もふえまして、ことに旅館組合に入っていない、未加入というような経営者が出ておるのでありますが、当局でお調べになったところによりますと、この旅館組合に加入をしておるもの、あるいは、また、未加入のもののいわゆる経営者というものはどうなんですか。そういった意味からいって、多少ボス的な存在といいますか、そういうような立場にある者もかなり出てきているのじゃないでしょうか。それは、暴力団とのひもがどうなっておるかは、私はわかりませんが、そういうような点はいかがですか。
  67. 町田充

    説明員(町田充君) お話の通り、現在山谷地区には約百八十軒、浅草署管内のものが百五十軒、南千住署管内のものが三十軒、合わせて百八十軒、そのほかに、ただいま御指摘の通り、組合に加入していない業者が大体六十軒でございます。こういう経営者の実態がどうであるかということにつきましては、私ども詳細な資料を持ち合わせておりませんが、少なくとも組合に加入しておりますような業者は、先ほど長官からお話のございました、山谷地区環境浄化推進運動というふうな運動の有力なメンバーにもなりまして、そのほかの町内あるいは防犯協会、そういうものと協力しながら、何とか山谷地区の環境を明るくしていこう、こういうふうな運動の推進母体となっている状況でございまして、御指摘のような、いわゆるボスというのはどういう意味でおっしゃっているのかわかりかねますが、いわゆる町中で言われているような、そういうボス的な存在には必ずしもなっていないのじゃないか、私どもそういうふうに見ております。
  68. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私、ボスというのは、たとえば、御承知通り、あそこには、むしろ職安を通らないで、そうしていわゆる自由労働市場というものが、これは公のものではないが、やみのものがあるわけであります。それで、いわゆる人手が足りない関係もありますから、各方面から毎朝大勢やつて来て、そうしてあそこで値段をつけて、おれの方はきょうは千円出す、おれの方は千二百円出す、普通は六百円で、そうして頭を百五十円はねるとか二百円はねるということで、あそこで商談と言っちゃ何ですが、要するに商談が成立して、そうして各持ち場持ち場に行くわけですが、そういう中で、かりに旅館主のボスというようなものができて、そういう何々組とか、あるいは何々建設会社というようなものと種々連絡をとって、そうして一つの顔になっている、こういうような連中は、あなた方の調査の方においては、そういうものははっきりしておらないのですか。その意味です。
  69. 町田充

    説明員(町田充君) 御指摘のような、いわゆる自由労働市場と申しますか、そういう労働者の狩り集めをやっておりますような人間はこれは、むしろそういう旅館の経営者とは別な何々組というふうな組がございまして、そういう連中が毎朝一定の時期になると現場に出て来て、労働者の就職をあっせんしているというふうな状況であって、旅館業の経営者とは必ずしも同一人物ではございませんで、そういったことをもっぱら仕事にしている連中が別にあるようであります。
  70. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そうすると、重ねて伺いますが、そういった連中というのは、旅館主と特別な関係を持っていないで、ほんとうの独自の立場で別にあると、ごう解釈していいのですか。
  71. 町田充

    説明員(町田充君) ただいままで、そういういわゆる立ちん坊で検挙した事例も二、三ございますが、そういうものは、すべて検挙いたしました事例では、旅館業の経営者とは別個な人間でございます。
  72. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、長官にお尋ねしたいが、先ほどの概括的な質問についての答弁の中にも入っていたのですが、私は、一回やそこらならば、これはすぐに捜査をして、そうしてその核心をつかむということは、それはなかなかむずかしいと思います。実際問題として。ところが、五回もやつて、またきのうか一昨日か、女性が殺されておりますね。ああいうことがたび重なると、これは女性が殺されたけれども、単なる殺人だから普通の犯罪でしょうが、ああいう集団的暴行が五回も繰り返されている、しかもわずかの間に、そうすると、先ほどの長官のお話で、まだ調査中というお話でありますが、何か特殊な、私はああいう所で政治的な意図を持って扇動しているというようなことは考えられないと思うのです。しかし、何かこのごろ、集団で実力行使をやれば何でもできるのだ、交番の一つや二つは何でもないのだという考えのもとに、ある一部の者がああいうような扇動をあえてしたというような形勢くらいは、もう五回もやっているのだから、警察当局としては、それくらいの核心はつかめないのですか。
  73. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 警視庁としても、その点について鋭意検討いたしているわけでございますが、けさほど報告を受けた状況から申し上げますと、だいぶそういうものに近づいてきておる、だんだん見当がつきかけてきているという状況でございます。これは単に、今お話のように、政治的意図をもってやるというようなことではなしに、やはり取り締まりに対する反発と申しますか、そういうことがむしろ中心になって、一部の者がどうも扇動をしている形跡があるというふうな状況でございますが、まだここではっきりと、どういう団体のどういう構成員であるかというところまで申し上げる段階ではございませんが、警視庁としても、ただいま御指摘のような点については、鋭意努力をいたしておりまするし、日ならずしてそういう核心に到達し得るのではないかというふうに考えております。
  74. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 大体私も想像しているところなんでありますが、まあその問題はそれ以上追及いたしません。それで、時間もございませんから、今後の取り締まりについてなんですが、これは、先ほど長官もお話の通り、ただびしびし力だけでやるというわけにもいかん。それはまた、あそこの当該署長もそういうことをたびたび言明されているので、この点、私は非常にけっこうだと思うのですが、先ほども申しました通り、あそこは非常な特殊な所であって、従って、取り締まりだけでなく、あそこは職安関係からいえば労働省とか、さらに厚生省との問題とか、それからまたいま一つ、あそこは日比谷公園を一回り迂回したくらいの、そんな大した広い所じゃないのですが、あそこにおられる商店が、あの自由労働者が帰ってきて、そしておそらくその宿代八十円なり百円なり引いたものは飲食費にほとんど使われるわけですな。従って、これがあの町に落とす金というものは非常に大きいと思うのです。ある人に言わせれば、一カ月一億八千万から一億、これは、いろいろ調査のあれによって違ってくると思うのですが、そういう意味においては、一つの商人の立場から言えば大事な所なんです。そういうようなことで、びしびしやられたのじゃ、これは自由労働者自体でなく、商店街自体も非常に迷惑をする。そうかといって、あのままほうっておけば、今度はほかの隣接の町会あたりが、これは、現に私も多少調べたのですが、ずいぶんな迷惑とか、それからいま一つは不安を持っている。あんなことをやっていると、だんだん広まってくるというと、今度はこっちの方の交番に来やせぬだろうか、そういう非常な不安がある。従って、取り締まりは、たびたび申します通り、ただ力だけではいかぬ、やはり労働省とか、それからあるいは厚生省とかいうような関係各省との連絡というものは、私は非常に必要ではないかと思うのでありますが、これは従来どうですか。そういうことは行なわれておりましたか。
  75. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 警察自体といたしましては、先ほど申しあげましたように、基本的には強い態度をとるけれども、やり方としては柔軟な多方面の施策を講じて、まあ長い目で見ていただいて、あそこを平穏化するということに努めていくということを申し上げたのでございますが、ただいまお話の各省との連絡等につきましては、従来はやはり十分ではなかったのではないかと思います。今度の事件を契機といたしまして、閣議におきましても、一の問題がとり上げられ、また労働省、厚生省等においても、それぞれの立場において、またお互いに協力し合って施策を講ずる方向に出てきておりまするし、特に東京都におきましては、そういう点について具体的に施策を進めるような段階に来ているように思います。私どもから申すのは何でございますが、ああいう地帯における平穏を維持するということは、警察はもちろん警察としてやらなければならなりませんが、警察だけの取り締まりによってこれを十分に目的を果たしていくということはできないわけでありまして、ただいまお話のように、関係各省あるいは都の関係部局というようなものが一致して、あの地域についての恒久の対策というものを基本的に立てていただいて、また、それに対する市民の協力というものを得るような施策を講じて、そうしてその上で、なおかつ警察対象となるような事態について警察が取り締まりを厳にしていくというような、むしろ警察が先ばしるのでなくて、あとからついていくというような方向になることが一番望ましいのではないかというふうに考えております。今後は、警視庁といたしましても、そういう都各部局との連絡も十分にしていくようなつもりでおるわけでございます。
  76. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 最後に申し上げますのは、とにかくあそこの今後警察当局の取り締まりなり、そうしてあの問願に対処をどうするかということは、これは単に東京に住んでいる者、ことにその隣接町会というような小さい問題ではなく、これはもう大きく治安という問題も含めて、また同じような所は日本に今たくさんあるわけですね。まあそういう点で、非常にこの今後のあなた方の対処の方法については、大きな関心を持ってやっておられるわけでありますから、どうか一つ、そういう意味をもって、少なくとも山谷は無法地帯だと、無法地帯であり、それから山谷ナイターが始まるのだというようなことを一つ越こさせないように、一つ十分の御検討、取り締まりをお願いしまして、私、質問を終わります。
  77. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 速記をちょっととめて。    〔速記中止〕
  78. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 速記を起こして。  午前中はこの程度とし、暫時休憩をいたします。    午後零時二十八分休憩    —————・—————    午後一時二十八分開会
  79. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 休憩前に引き続き、委員会を開会いたします。  治安関係についての質疑を続行いたします。
  80. 米田勲

    米田勲君 きょうはあまり時間がない予定のようですから、たくさんのことをお尋ねしたいのですが、大体しぼって、三つくらいの点についてお聞きしたいと思います。  最初の問題は、岸前総理の傷害事件のことであります。私たちは、直接国会の中でいろいな討議をする場合には、政敵である岸前総理に対しては、いろいろな批判も持っておったし、いろいろなことを言うてきたが、どうもしかし、総理が傷害事件にあうといったような重大な事件が発生して、きわめて遺憾だと思うんです。日本には最近そういう事件が起こらないようになってきたと思っておったんだが、またまたこういうことが起こってきた。少し時期が過ぎておるのですが、警視総監あるいは警察庁長官にいろいろお聞きして、今後こういう問題の再発が完全に防止されるようなことにしていただきたいと考えて、いろいろな角度から一つお聞きしたいのであります。  そこで、最初にお導ねしたいのですが、この傷害事件は、私どもがこの委員会でお伺いするのはきょうが初めてなので、新聞の報道程度のことしか今のところわかっていないわけであります。そこで最初に、この事件の性格といいますか、本質的なものをどういうふうに事件を取り扱ってみてお考えになっておるのかということを最初に警視総監にお伺いしたい。
  81. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 事件の概要につきましては、もうすでに大体のところ御存じだと思いまするから、ただいま御指摘のございましたまあ性格といいますか、どういう意味合いのものであろうか、こういうような点についてのお答えをいたしたいと思いますが、この犯人の荒牧退助というものは、ずっと前に、相当以前ですが、いわゆる大化会とかいう右翼の団体に関係を持っておったことがあるのであります。しかしながら、その後そういうような団体のものからもあまり相手にされないような状況になったらしいのであります。それで、終戦後郷里の方で製薬関係の仕事をしておりましたのが、それが思わしくいかないということで上京して参りまして、そしてもとの知人関係などからだんだん知り合いを尋ねて、小づかい銭をもらうといいますか、そういうような生活を送っておった模様でございます。事件に関係が直接あるかないかということは別にいたしまして、この荒牧退助が知り合っておった、あるいは若干の小づかい銭のようなのをもらっておったというようなふうに思われる人たちについてのいろいろな調査をいたしてみたのでございますが、結局、この岸総理に傷害を与えたというそのこと自体についての関係というものは判明できない。まあ感じといたしましては、荒牧退助が自分で平素大きなことを言っておる。しかも、岸総理に対するいろいろな意味合いの批判というものもあるというようなことで、岸総理に傷害を与えるということで、あいつえらいことやったというようなことで、その後自分を相当見直してくれるんじゃないかというような気持でやったのではないかという感じを受けておるのでございます。本人が言っておりますことは、岸総理の安保問題に対するやり方というものが非常に手際がよくなかった、そういうようなやり方ではいけないと、そこで岸総理に対して傷害を与えれば、岸総理を初めとして、政治家一般というものがもっと反省をしてくれるんじゃないかというような気持でやったと、こういうことを申しておりまするけれども、まあ大体の感じといたしましては、先ほど申し上げたようなことではないかというふうな私どもは感じをもっておるのでございます。しかしながら、これはなお現在検察庁において目下取り調べをいたしておりますので、さらに真相というものは判明するであろうと思いますが、一応そういうような感じを持っております。
  82. 米田勲

    米田勲君 ただいまのお話ですと、結論づけて御答弁を解釈すると、単純な傷害事件であるというふうに考えられるというお話ですが、私は、場所が総理官邸でなければ、この問題を単なる傷害事件だというふうに見ても見れないことはないと考えますが、場所が場所だけに、ただ単にそういうふうにみなすということは、どうも疑問があるわけです。  そこでお聞きをいたしますが、総理官邸の平常における出入者に対する警戒措置というか、警備措置のようなものをとっておられるかどうか、平常の場合。それをちょっとお聞きしたい。
  83. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 以前と違いまして、その厳重さという意味におきましてはだいぶん変わっておりますけれども、しかしながら、出入りする人物につきましては、その門のところ、あるいは玄関のところにおきましていろいろ注意をし、不審に思われるような者につきましては、これに対して職務質問を行なうというような措置をとっております。荒牧退助の場合はちょっと状況が違いまして、御存じと思いますが、当日自民党の総裁公選の大会がありまして、そのあと池田総裁の祝賀のパーティーですか、そういうようなものを総理官邸で行なうというようなことで、いろいろな人が集まったわけです。その荒牧退助というものも、実は公会堂の方の大会に行っておりまして、その記章をそのままつけまして、そうしてそのパーティーに臨んだ。こういうようなことでありまするから、そのパーティーに出席する資格のあるメンバーの一人として出席したというような形になっております、平常の場合とはちょっと状況が違う。
  84. 米田勲

    米田勲君 平常の場合は相当厳重に警戒をして、だれでもあすこへ出入りできるという状況ではないことは、われわれもふだんから知っているわけです。特に安保問題をめぐって相当激しいデモが行なわれた際で、これは異常なくらい警戒を厳重にして、あの付近に近寄らせないようにしているわけです。それとこの犯人が中に入ったことと比べると、非常に状況が違うのです。事件の内容なり本質をお聞きすると、単なる個人でやった傷害事件のようにお話があるわけですが、この日の総理官邸に入れるものというものは限定されていたはずです。そう予想されるわけです。一体どれくらいの人数の人が入れるようになっておったのか、警戒する側の方ですよ、あらかじめおそらく聞いていたのではないかと思う。こういう者はきょうのレセプションには入れるようになっているのだという話は、あらかじめわかっていたと思うのだが、どれくらいの人数のものと、どういう範囲のものが官邸に入れるようなふうになっておったのか。それを承知して警戒しておったのか。そのは点どうですか。
  85. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) どのくらいの人数のものかということについては私は聞いておりませんが、ただ、自民党の総裁の祝賀のパーティーという意味合いで、その自民党の党員あるいはそういうような記章をつけておるとか、そういうような者は出入りできる、こういうような状況にあったのであります。そこで、当時の警戒といいますか、門に立っている警察官などにもそういうような記章も見せておるし、それほどの疑いといいますか、きつい疑いを持って一々調べるということはしない。これは適当であろうと思いますが、そういうような状況であります。
  86. 米田勲

    米田勲君 犯人の今までの生活だとか、あるいは経歴、そうしてまた、事件の本質は何かということに対する答弁から見ると、簡単に、レセプションがあるからといって、総理官邸に入れる性質の人物ではないようにお聞きするわけです。これが何か背後関係でもあって、自民党なり総理と何かつながりがあるか、自民党の有力者と何らかの関係があるとか、こういうふうに把握されておるなら、あそこへやすやすと入れたということについては何も不思議に思われないわけです。やはりどうもお聞きすると、流れ者みたいなもので、小づかい銭をたかって生活しておるというのだから、全く無頼の徒みたいなものですが、そうなると、だれとも関係のない、そういう放浪者みたいな性格の者が、少なくとも平常においては相当厳重に警戒されておるこの総理官邸にやすやすと入れたということ自体がどうも不思議でならないわけです。これは、警視総監の方の警備に重大な欠陥があったか、それとも犯人が何か背後関係があって、顔か何かで入れるような条件があった。その二つのうちのいずれかではないかと予側されるわけです。この点はいかがですか。
  87. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 先ほど申し上げましたように、はっきりした記章と申しますか、つけておるわけです。
  88. 米田勲

    米田勲君 書いたものですか。
  89. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) ピンク色の、何と申しますか、いろいろなパーティーの際に渡されます花飾り、リボンですか、そういうものですね。ですから、そういうようなものをつけておるということで、これは当然自民党と関係のある何らかの人がパーティーに行くものと、こういうような感じを持っておったわけであります。なお、いろいろな知り合い関係が本人についてわかってきておるわけでありますが、その中には、もちろん自民党関係の人たちもあるわけでございまして、そういう人たちとの面識というものも当然あるわけであります。
  90. 米田勲

    米田勲君 そうすると、こういうふうに解釈していいですか。荒牧という容疑者は、現在までに至る生活、あるいは経歴等は先ほどお話を聞いたようなものであるが、少なくともこの日のレセプションに総理官邸に集まった人の中に、記章をつけていたといっても、顔でこの人が入ることができるような関係にあったということは言えるのですね。記章をつけていたから入れたというだけでは、どうも私としては納得できない。記章はつけているのはもちろんだが、顔でもってその中に入っていくことが不思議でないという状況のもとに置かれていたのではないか。それは、自民党の有力な人たちとの知り合いか何かで、その男が入るということは不思議な条件でなかった、不思議に思われるような条件でなかったというふうに解釈してもいいのですか。
  91. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 大体そういうような状況であったと思います。
  92. 米田勲

    米田勲君 私、正確なことはわからないのですが、新聞記者関係から聞いたところによると、この日、警視庁の方からということですから、あなたかどうかわかりませんが、警視庁の方から、右翼の連中が官邸の中に二、三十人入っているので警戒する必要があるのじゃないかということを進言した。ところが、それは何ら差しつかえないという、これは自民党のだれが答えたということまではわかりませんけれども、そういうことであったので、一応の注意は促したけれども、その後そういった点に特に警戒体制を強化するといったようなことはしなかったのはそういうわけである、こういうことを記者の関係から聞いたのですが、あらかじめそういう注意を喚起したようなことはあったのですか。どうですか。
  93. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) それはちょっと場所のお間違いでありまして、日比谷の公会堂に、総裁公選の行なわれました会場には、私どもの方から見ておりましても、右翼と見られるような人物が二、三十名傍聴席に入っている。これはやはり警戒をすべきであるということで、こちらも私服の警察職員等を出しまして警戒をさしたわけであります。そういうような事実はございます。
  94. 米田勲

    米田勲君 そうすると、ただいまの私の申し上げたのは、総裁公選の会場の方であって、総理官邸の方ではない。そうすると、その日にはそういう注意を喚起するようなことはなかったと考えていいわけですね。それでは、どうも警備にも大して欠陥がない。その犯人が容易に総理官邸の中に入ることができた。これは、人数が相当限定された会合であろうと思われるのに入ることができた。それは要するに、保守党の諸君のある程度の人と顔見知りであって、レセプションの席につながるのに何ら不思議のない存在であった。こういうことになりますと、先ほど警視総監が言っていた、最近東京へ流れ込んできて、あちらこちら知り合いから小づかい銭をたかって暮らしている、行ってだれにも相手にされないようになっている人物で、たまたま安保にからむ国会の運営等についてけしからぬと言って、悲憤慷慨したか何かわかりませんが、傷害に及んだ、こういうお話と、私はどうも両方並べたときに、どうしてもはっきりしない個所ができてくる。これだと、ずばりそのものを言えば、右翼のこういう暴力団であるか、団に関係する一人であるかは別として、こういう犯人が入れるというような条件になっているということは、どうも自民党の有力者の人たちと、最近盛んにばっこしている右翼の暴力団との間につながりがあるのではないか。何もつながりがないというふうにはどうも解釈ができないわけです。もしつながりがないのだということになれば、この犯人がやすやすとレセプションに参加できるような条件にあったということは割り切れない。これは、いろいろ詳しく背後関係は取り調べされているだろうと思いますが、どうもその二つを並べて考えてみると、こういう人物、右翼団体にかつて加盟しておったというような、その後どうなっているかはっきりわかりませんが、こういう右翼の暴力団と自民党の有力者の間には平常からつながりがあるのではないか。私ときどき耳にするのですが、参議院会館のある議員の秘書、きょうはある議員のと言っておきますが、秘書の部屋を右翼の暴力団のメンバーがたびたびにわたって出入しているということが、相当多くの人から黙認されている。そういうことなどとあわせ考えると、どうも右翼の暴力団と自民党の有力者との間に平生においてつながりがある。だから、こういう事件がこういう場所で発生できるような条件が容易にできたのだ、こういうふうに考えられますが、警視総監の判断はどうですか。
  95. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) この人物がいわゆる暴力団のメンバーであるというふうに直ちに言い得るとは私は思いません。というのは、過去において——過去といいましても、大化会という右翼団体に入りましたのが大正十二年でございます。相当前のことでございます。その後二、三の恐喝のような事件がございますが、それも昭和十年ごろのことでございますから、従いまして、この人物が現在いわれているいわゆる暴力団の一メンバーであるということは、私は言えない。でありまするから、こういうような事件があったから、直ちにこれでどうこうということを言うのはちょっと私はいかがかと、かように考えます。
  96. 米田勲

    米田勲君 警視総監、それはあなた、そう言われるかもしれませんが、大正十二年ごろ荒牧という犯人は右翼の暴力団に加盟をし、関係をしておった。それは大へんな昔の話ですよ。その後そういうかかわり合いがない、特に東京に最近来た、こういうことになると、総理官邸にゆうゆうとレセプションにどうして参加できるのでしょうか。私は、そういう流浪者みたいな性格の者が、少なくも、これは国会の中に見学に入ってきたというのでもだいぶ問題だ。ましてや、だれでも自由に入ることのできない総理官邸の中の、しかしレセプションに参加するメンバーとして容易に入ることができたということは、あなたの言っている経歴、人物などというものと比べて、あまりにも食い違いが大きすぎる。納得できないのですよ。これは、現在もこういうものとつながりがあって、こういう顔があって、容易にそこに入ることができる条件にあったのだということならいいけれども、あなたの一方の話は、ずっと昔に暴力団、右翼の連中に関係しておったと言うが、大正十二年といったら大昔の話でしょう。そうしたら、今はそういうことに関係していないのであれば、その点は、レセプションに参加できるような顔ではないのじゃないですか。いればすぐ変なのがいると、だれしも不思議に思われるのじゃないですか。その辺がその話がどうも二つ並べるとおかしいのですよ。人物の経歴を聞くと、そんな所に容易に入ることができないはずだ。その男がレセプションに参加しておったという、いかに記章を持っておったとはいいながら、そのことと、この二つが、どうも私には解釈できないのですよ。だから、現在でも右翼の暴力団と関係があるかどうか、あるのでないかということ、もしそういう特定の右翼の暴力団に関係がないとしても、保守党の有力者との間には、顔でもってつながる何ものかがあるのではないか。この二つの条件のどちらかがなければ、記章をつけているからといって、たくさんの人が見ている中にゆうゆうと入っていける条件は成立しないのじゃないですか。その点はどうですか。あなた自身冷静に判断して、私の疑問は当然だと思いませんか。
  97. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 実は、その点につきましては、私は先ほども申し上げたつもりなんですが、と言いますのは、今回の事件がありましてから、その背後関係といいますか、平に関係者があるのじゃないかということで、いろいろ本人の交友関係あるいは知人関係等を捜査をいたしておるわけでございます。そういうような捜査の結果から見まして、この人物が、だいぶ前であるけれども、そういうような右翼の団体に加盟しておったころの知り合いになった者と、東京に来てから会っているということももちろんありますし、それから、自民党の関係者の中にも、この人間が行って面接しておる、あるいは小づかい銭をもらっているというような状況というものはあるわけでございます。そういうような状況で、まあ自民党の関係の一部の人には顔見知りである。また、総裁公選の大会の会場に出るリボンといいますか、記章というものも手に入れておる。それで、日比谷の会場が終わるときに、これから総理官邸で祝賀。パーティーがありますからということを聞いて、それで、そのままそこから総理官邸に来た。こういうようなことでございます。でありまするから、状況として、この人物の写真などもごらんになればあれですが、一見そう、何といいますか、不審なというようなことも見受けられないような風貌でございまして、そういうような。パーティーに記章を持ってきておるということであれば、これはやはりそれをとめる、とめなくちやならぬというだけの条件というものはなかった。こういうふうに思うわけでございます。
  98. 米田勲

    米田勲君 どうも私の疑問は依然として解消しないのですが、水かけ論になりそうなので……。そうすると、もう一つそのことについてお聞きしておきますが、このレセプションには、右翼団体のメンバーはある程度の数参加したわけですね、このお祝いに。
  99. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) そういうことはないというふうに聞いております。
  100. 米田勲

    米田勲君 何だか、話の経過を聞いておると、あなたの答弁の言葉の中には、右翼の人たちとも顔のつながりがあってという言葉があるわけです。私は、どうしてそんな所に入り込んで、人に怪しまれないでレセプションに参加できるような条件が成立したのだろうという疑問に対して答弁されている中に、そういう言葉があるということは、結局、そのパーティーに、レセプションに右翼の人たちも参加をしておったということを裏書きしているのじゃないですか。私の質問に対するあなたの答弁ですが…。
  101. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) もう一度簡単に申し上げますと…
  102. 米田勲

    米田勲君 いやいや、簡単にというのじゃない。私の質問しているところはそこなんです。ほかのことじゃない。
  103. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 自民党の関係者から総裁公選の会場に出席し得る記章をもらって、その会場に出席し、それで、祝賀パーティーが総理官邸であるからということで、そのまま総理官邸に来たということでございます。
  104. 米田勲

    米田勲君 どうもおかしいのじゃないですか。記章をつけていたから入れたという一つの条件はあります。しかし、記章をつけていても、その中に参加をしたメンバーから、だれにも知り合いがない、そのレセプションに出る人は少数の人間に限られているはずなんだから、そういう人たちからも、だれからも怪しまれないでそこへ参加できるということは、顔見知りだということになるわけです。そうでしょう。その質問をしたときに、あなたは、自民党の人たちとも知り合いがあったし、右翼の云々という言葉があったのです。だから、レセプションには、右翼の団体の人も何人か参加をしていたということに当然なるのじゃないですか。総裁公選の会場でなく、レセプションに参加したメンバーの中には、右翼の人たちもいたのでしょう。
  105. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 私が申し上げたのは、本人が東京に来ましてから、どういうような知り合いといいますか、そういうものを持っておるかということの説明といたしまして、もとの右翼団体におったときの知り合いというものもあったし、それから自民党あるいは自民党の関係者の一部の者との知り合い関係もあった、こういうことを申し上げたのであります。
  106. 米田勲

    米田勲君 その記章をだれからもらったという話を僕は聞いてないのです。記章をどこから入手したという話は一つも聞いていない。そのレセプションに参加するのに、記章をつけておったということは一つの入り得る条件であった。しかし、それけだけでは、限定されたメンバーがレセプションに参加しているのですから、だれでも知り合いがない、どうも見たことのないやつだ、そんなものが参加しているというようなことになれば、不審が必ず起こるはずなのに、それがなかったということは、顔見知りであったのではないかという疑問ですよ。それを質問したところが、あなたは、自民党の人たちとも知り合いであった、それから右翼の人たちとも云々という答弁がたしかあったはずです。だから私は、レセプションという場所に、限られたその所で怪しまれなかった理由、そこに参加できた条件がどうして成立したのかということをお聞きした際に、出てきている自民党の人たち、右翼の人たちと、こう出ているのだから、当然そのレセプションには右翼の人たちも参加をしておったというあなたの答弁を裏書きしていることになるのじゃないですか、あなたの言葉は。そうでなければ、どうしてレセプションに参加できる条件が成立したのですか、だれにも怪しまれないで。そういう私の質問に対して、右翼の人々とをいう言葉は出ないはずです。私は、どこから記章を入手したのですかということを聞いていないのだから、一つもそれには触れていないのだから。
  107. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 私申し上げた趣旨は、先ほど申し上げたことなんですが、祝賀。パーティーについて、右翼関係者とどうこようというな意味で私は申し上げたつもりじゃなかったのです。申し上げ方が悪かったら私は訂正いたしますが、要するに、自民党の関係者との間に顔見知りがあるということが、そういうような。パーティーに出ておっても特別不審がられるというようなことにはならなかった。こういうことでございます。
  108. 米田勲

    米田勲君 そうすると、自民党の人たちと顔見知りがあるというその条件が、祝賀パーティーに不審がられず容易に、参加できる条件であるのだとすると、これは、やはり自民党の人たちとは、平常この犯人は何らかの形のつき合いはあったということになりますね。何らかの形のつき合いがあった、そういうことになりますね。どうですか。
  109. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 一部の人たちとのつき合いといいますか、顔見知りであったということは、その通りでございます。
  110. 米田勲

    米田勲君 これは、肝心なところはわからないのですが、大体私の頭には、聞こうと思ったことの輪郭が出てきたわけですが、私はどうも、前にもここで聞いたことがあるのですが、右翼団体に対する警視庁、と言ってもいいし、警察庁長官の方と言ってもいいのだが、平常の対策というか、またこんな調査ということになると、あとからお聞きしなければならぬこととダブってきますが、何か不注意な面があるのじゃないですか。さっぱり調べていないという言葉はあれだが、片つ方の左翼団体というか、学生とか、労働組合のたちだとか、革新政党の君たちだとか、そういう者や、それから学校の先生、教授、そういう者に対しては、どうも非常に警戒して調査を進めておるようだが、右翼団体の者に対してはきわめて寛大で、あまり気にしていないという傾向が依然として続いておるようだが、これは、やはり右翼団体と自民党の人たちが何らかの形でいろいろつながりがある、そのせいでそういうことになっておるのではないですか。どうですか。
  111. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 右翼であろうと、左翼でありましょうとも、いわゆる不法行為に出るおそれのあるといいますか、そういうような意味合いで注意をすべき団体あるいは人たちについては、同じように注意をいたしております。今おっしゃったような、右翼だから寛大ということは絶対ございませんから、その点は1御了承願います。
  112. 米田勲

    米田勲君 これはどうですか、警視総監。この事件は、非常に民主政治の発達の過程では遺憾な事件ですよ。遺憾な事件というか、考え方によっては重大な事件ですよ。少なくとも、どういうことであろうと、傷害を及ぼすとか、殺すとか、それは河上丈太郎さんもそういう目にあっているのですが、そういう事件は重大な事件だと思う。その警備の最高責任者である警視総監は、一国の総理が刺されるという事件が起こった場合には、あなたの責任はどういうふうに感じておりますか。あなた自身の立場の責任は…。
  113. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 私は、どういうような事情のもとでありましても、総理公邸の中で一国の総理が刺されるというような、こういう事件が発生いたしましたことにつきましては、まことに遺憾に存じております。ただ、先ほど申し上げましたように、当時のいろいろな状況等から考えまして、その警備に格別の手落ちがあったということは考えられない。ああいうような状況であったということは、はなはだ残念ではあるけれども、やむを得ない状況であった、かように考えておるのであります。
  114. 米田勲

    米田勲君 私は、警視総監が部下に命じてあそこを警衛させたのに、特段の欠陥があったとか、手落ちがあったとかいうふうには考えないけれども、しかし、そういう事件を起こすような条件があって、その条件を警備の上で乗りこえることができなかった、そういう苦しい立場にあったというふうに私は解釈するのです。警備はある程度やったのだが、こういう人間が容易に首相官邸に入り込めるという特殊な条件があったことを阻止することができなかった。そういう点では、私は、警備に不備があったとか、特別に欠陥があったとかいうふうには考えないけれども、これは、旧憲法時代であったら、総理が刺されたというような大事件が起こったら、私は、もう警察庁長官も警視総監も、引責辞職するのが建前じゃないかと思うのです。はなはだ遺憾であったといったようなことでは相済まぬ事件ではないか。そのくらいの取り締まりの責任に当たっている人は重大な身の処し方をしないと、ああいうテロ事件が今後もなお発生する、重大視していないのだから。どういうわけであなた方二人は引責辞職をされないのか。私は不思議に思っているのだが、これは、民主政治の中で、ああいう事件が起こったからといって、あなた方が引責辞職をするということは筋ではないのかもしらぬが、はなはだ遺憾であったというような程度のことしかお考えでないのですか。どうですか。長官どうですか。
  115. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 私も警視総監と同じような考えでございまして、あのことによって私どもが引責辞職をすることは考えておりません。
  116. 米田勲

    米田勲君 それでは、第二に移さしていただきます。  次は、国会の周辺のデモに関連した事件でございます。長官と警視総監にそれぞれお聞きをしたいのですが、非常な心配をなさって、たくさんの警官隊を国会の内外に配備をして、警備に当たった警察官もさぞや着かれたであろうと思いますが、これは、いったいあなた方どういうふうに考えておりますか。一カ月余にわたって国会の周辺に請願デモだとか、デモと一括して言ってもいいのですが、ああしてたくさんの人が押し寄せたのは、動機をどういうふうに見ていますか。あのデモが一カ月余にわたってたくさんここに押し寄せた。ああいう問題の発生した動機を何と見ていますか。取り締まりに直接当たられたのですから、そういうことは研究されただろうと思う。それぞれどういうふうにお考えですか。
  117. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 国会周辺におきまするあのおびただしいデモが長期にわたって行なわれたということにつきましては、非常に複雑な私は要因があったように思います。まず、安保改定阻止闘争と申しますか、これが組織的に動き出したのが昨年の四月ごろからでございますが、非常に集団的に強く行動が行なわれてきたのが、昨年の十一月二十七日の例の国会乱入事件等を引き起こしたデモ、さらにその後一月に入りまして、一月十六日、岸総理がアメリカに立たれるときの羽田空港のロビー占拠事件というようなことがございまして、引き続き国会で安保問題が論議され、その間に大衆運動も逐次盛り上がってきたように思うのであります。しかしながら、特に激しくなりましたのは、五月十九日から二十日にかけての国会のいわゆる会期延長と安保改定の議決のあったあとでございます。私どもの見るところでは、それまでは、相当多数の者が動員をされておりますが、いわゆる全学連の主流派の率いる集団と、安保改定阻止国民会議のリードする集団との間には、その行動の仕方というものについて非常な開きがあったわけであります。一方はやはり相当過激な行動をいたしておる、国民会議のリードする方は相当整然と、まず整然と行なわれておったように思います。ところが、十九、二十品以後におきましては、もちろん両者の間に本質的な違いはあったわけでございますけれども、非常にその様相が、近づいてきたというふうに考えられるのであります。これは、ああいう状況において議決されたということも一つの要因でありましょう。また、それをきっかけにして、大衆運動を指導する指導の仕方にも私は一つの原因があったのではないかというふうに思うのでありますが、ともかくも非常に多くの人数が国会周辺に押しかけてくるという状況になったわけでございまして、どれがその原因であると、一つだけ取り上げて言うわけには参らんと思いますけれども、国会のあり方にも一つの原因があったでありましょうし、また、大衆運動を指導する指導者の考え方にも、私はやはり相当大きな要因があったように思うのであります。
  118. 米田勲

    米田勲君 アメリカの国会で外交委員会委員長が言っておるわけですが、日本における安保条約反対のこの国民的なデモは、決して一部国際共産党の扇動によるものであるというような、そういう認識では真相を見ておるのではない。そういうことも多小はあるであろうが、むしろ長崎、広島の原爆を受けた日本の国民が、平和に対して異常なまでに強い関心を持っておることの現われであるというふうに見ないと、日本の国民の動向を正確に把握するのに間違いを来たすということを言っているのですよ。ところが、前岸総理が絶えず新聞等を通じて発表される談話等は、一部国際共産党の扇動によるデモである、こういうふうに言っておるのですが、岸総理の言っておることは別にして、取り締まりの当局である責任者の皆さんは、そういうふうにはお考にえなっておらぬのではないか。一部共産党の扇動によって——あの三十日余り、四十日近い毎日のデモですね、そして私たちの目から見ると、まず職業といわず、年令といわず、男女性別といわず、あらゆる人たちを網羅したデモに発展しているわけです。これの取り締まりに当たられる最高の責任者である皆さんは、やはり岸総理と同じような見方をしているのかどうか。この際ちょっとお聞きしておきたいわけです。
  119. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 先般来のあの動きは、ただいまお話のように、一部では国際共産主義の扇動によるものであるというふうに片づけている向きもあります。いや、そういうものではないという意見もございます。私どもの考えといたしましては、共産主義運動として宣伝、扇動された部面ももちろんあると、しかしながら、あれだけの大きな動きというものが、すべて国際共産主義運動の使嗾、扇動によって行なわれたものとは私は考えておりません。
  120. 米田勲

    米田勲君 それでは、問題を特定の日にしぼってお聞きをしますが、六月十五日に、国会の構内及び外周に相当数の警官隊が出動しておりますが、あの日の出勤した警官の数、それから当日与えた任務、それから現地最高指揮者はだれであったか、これをお聞きしたい。
  121. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 六月十五日に警備に当たりました警察官の総数は約一万六百でございます。そのうち国会関係に出ました警察官の総数は、当初構内には三千九百名、その後事態の悪化に即応いたしまして二千七百名というものを増派いたしております。  当日の警備対象といいますと、国会周辺あるいは総理官邸あるいはアメリカ大使館、その他いろいろあるわけでございますが、国会関係だけについて申し上げますと、衆参両院議長から、国会の警備につきまして警察官の派遣要請がありまして、国会構内に対して入れないように、もし入ってきた場合にはこれを排除する、あるいは逮捕するというような方針を示されておったのであります。
  122. 米田勲

    米田勲君 それは、議長の方からの要請はそれでわかるのですが、あなたの方でどういう任務を与えて出動させたか。国会の関係の警官隊にはどういう任務を与えて出勤させたか。
  123. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 先ほどもお話がございましたが、そのころのいわゆる国会周辺におけるデモ行動というものは、連日にわたって行なわれまして、相当多数の組合員、あるいは学生、大衆団体等が来ておるわけであります。そこで、警視庁の方針といたしましては、でき得る限り不必要なトラブルは起こさないようにしたいということで、警察官も、当日はほとんど全員を国会構内に入れまして、いわゆる内張り戦術と申しますか、あまり外部のデモ隊というものを刺激しない、しかしながら、これが国会の中に突入してくるとか、非常に悪質な事犯があるという際には、これは断固として取り締まりしなければなりませんけれども、考え方としましては、普通にはトラブルは起こしたくないという方針で警備に当たらしておったのでございます。
  124. 米田勲

    米田勲君 現地の指揮者はだれですか。
  125. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 指揮者は藤沢管理官、第一方面本部長の事務取扱、欠員中でございましたので、事務取扱をしております。それから、国会構内に直接の関係につきましては、伊藤第五方面本部長、これが責任者でございます。
  126. 米田勲

    米田勲君 この十五日の日、暴力団がトラックに乗り込んで、デモ隊の群衆の中に非常な速力で突っ込んだ事件は知っていますか。その突っ込んだあとに、同じように右翼の暴力団だと思われる者たちがこん棒その他をふるって、特にそのときちょうどそこを通行中であった芸能団体のデモ隊、それから大学教授団のデモ隊、これになぐり込んだ事件があるわけです。僕らの方でも写真も持っておりますが、この事件は知っておりますか。続けてそれではお聞きしますがね。その際に、暴力団がデモ隊にこん棒を持ってなぐり込みをかけて、血だらけになって倒れる者が相当あって、大混乱だったわけです。あなたはそれを御存じだというお話ですが、その際に、その傷害事件をきわめて近い距離で警官隊の多くの人が目撃しておるという状況にあったということは、あなた御存じですか。ちょっと正式に速記録に載るように……。
  127. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 御指摘の事件は、維新行動隊という団体の事件であろうと思います。これは、先ほどちょっとお話がございましたけれども、約百二十名くらいの者が宣伝カー一台、トラック一台及びバス一台にそれぞれ分乗して、その近くまでやってきた。これを現場におりました交通係員が警告をいたしまして車からおろさした。それでおりて、こういうことであるから、ほかの方へ行けという話をしたのでありまするが、いや、われわれもやはりこのデモ隊と同じように歩いていくということは一向差しつかえないのじゃないかというようなことで、歩いて参りまして、それが学生側から暴力団帰れというような声がかかる。あるいは、維新行動隊の方からは、これは天下の公道ではないか、われわれが歩いていくのをなぜ通さないのだというようなことで、ヤジリ合いになり、学生側から投石なども行なわれた状況、こういうようなことで、この維新行動隊の数名がデモ隊学生の中になぐり込みをかけたというような、学生が引いたという関係で、先ほどお話のありました新劇人ですか、そういうような人のところにも行った。こういうような状況があるのでございます。その後さらにこの車をデモ隊の中に突っ込んでいこうとした。それを警察官が飛び乗ってとめておる、こういうような状況があるのでございます。そういうような状況は、構内におって見ておった警察官があるということは、お話の通りでございます。
  128. 米田勲

    米田勲君 警視総監は、直接現場におられたのじゃなくて、報告を聞いてそういうふうな説明をなさっておるのだと思いますけれども、当日の状況としては、相当早いスピードで車をデモ隊の中に突っ込んでおいて、直後なぐり込みをかけてきたという状況です。あなたのお話だと、だいぶその間に並行して歩いていたといったような経過があるようでありますが、私は、そこのところの右か左かを今あなたと論争する気はない。ただ、最終的にデモ隊の中に暴力団がこん棒をふるってなぐり込みに入った。これはもう写真で明確です。一方はもう受太刀になって逃げているのですから、その事件があったということをおそらくあなたも知っておられるのだと思いますが、私の聞きたいのは、そういう傷害事件が発生したすぐ近くに、相当数の警官隊が目撃をしておった。そういう状況にあった。目撃をしているという状況にあった。このことを御存じかどうかということです。
  129. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 目撃しておった者もあると思います。
  130. 米田勲

    米田勲君 そこで、この学生が、芸能団体や教授団体が襲撃されたので、引き返してきて応援もしただろうと思いますが、その目撃をしている警官隊に対して、なぜ右翼のああいう暴力行為を取り締まろうとしないのだということで、食ってかかったような状況だと思います。そんな穏やかな言い方をしたのではないと思うが、とにかく非常に強く抗議をした。ところが、いろいろ暴言を吐いた警官もおりますが、そのことはともかくとして、われわれは任務を与えられてここにおるのであって、その傷害事件はわれわれの与えられた任務とは別であるから行動できないということを明確に言った警官がいるわけです。これを御存じですか。
  131. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) そのような言葉につきましては、私は存じておりませんが、ただ、そういうような事件がありましたので、その構内に警備のためにおりました部隊の中の一部をさいて現場に急行させた、こういう状況はございます。
  132. 米田勲

    米田勲君 それは、構内におってその現場に出動させたというより前に、初めから配置についておった警官隊がその状況を最初から目撃しているという、そういう状況にあった。この点はお知りにならないわけですね、お二人とも首をひねっておられるから。これは、学生たちは単純ですから、それは、学生団体を指揮している指揮者の中にはいろいろな考え方を持った者もいますよ。しかし私は、ああやって集まってきている学生皆が指揮者と同じ気持でおるとは絶対に考えられないので、この警官隊の任務は、確かにあなた方から与えられた配置についておっただろうけれども、右翼の暴力団が、デモ隊の芸能人、女の人も入っていた、そういうところになぐり込みをかけたら、警官隊はそれを阻止するとか何とかという行動に直ちに入らなかった。これは事実です。それで、学生は非常に憤慨して、警官隊に、相当乱暴な言葉で、なぜ取り締まらないかということでかかった。そのやりとりがある。そのやりとりは、そういう失言があったかどうかということはここで言いたくないのだが、直ちに取り締まりに入らなかったという状況は、大勢の人が見て知っている。そこでお聞きしたいのは、一体一つの任務を与えて、ある程度の警官隊を現地に派遣した際に、予期しなかった突発事件、たとえば傷害事件が目前において、発生した場合に、与えられた任務があれば、その任務を一時はずして、その傷害事件のとにかく拡大しないように行動をするというようなことを許さないのかどうか。任務を与えられておれば、たとえそこでどういう事件が発生しょうとも、その事件に対しては、別な者が指揮者によって行動させられ、初めから任務を与えられた警戒措置についているのは、その傷害事件には行動を起こさなくても警官の責任は問われない、その警官の責任は問われないというふうにあなた方の方は解釈をして任務を与えているのかどうか。その点をお聞きしたい。
  133. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 米田委員のお話の中で、私ちょっと納得できない点が一つあるのですが、国会の構内にほとんど全部の警察官を配置いたしまして、そこで警備、待機させているわけです。構外におきましては、その当時おりました警察官は、麹町署の署員が六名でございます。この六名が、先ほどちょっと申し上げましたが、なぐり込みのありましたときに、これをとめようとし、またその他必要な行動をしているわけでありまして、米田委員がおっしゃった、警察隊がいるのに何もしなかったとおっしゃいましたが、その警察隊というのはどこの場所におったというふうな御質問ですか。その点を一つ、ちょっと納得できないのですが
  134. 米田勲

    米田勲君 このなぐり込みをかけられた人数の多少を言っているのではないのですよ。私は、人数の多少を言っているのではなくて、このなぐり込みをかけた、傷害事件が発生したことを目撃できる位置に警察官はいた。その警察官は直ちにそれを拡大防止する行動をとらなかった、こういうことなんですよ。
  135. 松永忠二

    ○松永忠二君 ちょっと関連。今、米田委員の言われているのは、相当あなた方はよく御承知だと思うのです。いろいろなものに出ているわけですよ。岸総理に対する猪俣浩三氏の質問によって明確にわかっているわけです。その構内にいた警察官に対して援助を求めたところが、入ってはいかぬ。早く出ろ。それから、われわれは部署が違うのだ、こういうふうに答えて、その救援をしなかったということなんです。構内にいた警察官が、部署が違うと、こう言って傍観していただけではなくて、あの鉄条綱を越えて柵内に逃げ入ろうとしたら、入ってはいかぬ、早く出ろと言って、それを追い払った。こういうことを今米田委員が言っているのです。こういう事態が、これが相当非難の的になっているというくらいのことについては、おそらく警視総監も、それから警察庁長官も、そういう事実があったことについては、一部そういうことが言われているということについて、知らないということは私はないと思う。これは今出てきているここにもあるし、あるいはもうすでに「朝日ジャーナル」等にも、当日のそのことについて、それが一つの重要な問題として指摘されていることは明確です。「維新行動隊のなぐりこみ」というところにそういう点が明確にある。また、社会党の真相の報告書の中にも、社会党の秘書団が救援に出ろと言っても動かなかった。あるいは社会党の三議員がこれについて強く要請をした。こういう事態も明確になっているわけであります。そういうことについて、今米田委員のお話があったので、そういうことが言われているとか、そういう事実があったように言われているというような、そういう点も御存じがないのか。そういうことを私もあわせてお聞きをしたいわけです。
  136. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) ただいまのお話のようなことは、私はもちろん存じております。で、私がちょっと米田委員の御質問に関連して申し上げたのは、そういう話のありましたのは、構内に配置されている警察官のことなんであります。そこで、構内に配置されている警察官につきましては、そういう事件がありましたので、直ちにその中の第四機動隊の一個中隊に任務を与えまして、これが有刺鉄線を越えて構外に出ておるのでございます。そこで、構外から有刺鉄線の柵を乗り越えて避難をしてこられた人たちは、構内から同通用門に向かって、左側の植え込みの中に六、七名、右側の植え込みの中に三、四十名、その中には、有刺鉄線その他でけがをされた人もありますので、そういう人は警察の救護班に連れて行きまして救護措置をしておる、こういうような状況でございます。  ただ、お話のございました、その場におりました警察官がどういうことを言ったかどうかということにつきましては、そういう書いたものも私の方で見ましたので、いろいろ調査をいたしておるのでございます。
  137. 松永忠二

    ○松永忠二君 その点について、やはり質問書の中に、当時丸ノ内署の部隊八十三名がおくれた事情については書いてあるのですね。これは、当日どういうわけでおくれたか、早く来なかったかということについて質問したのに対して回答が寄せられておるわけなんです。ところが、あなたの方で出されている「六・一五国会突入事件を中心にして」という、警察庁が昭和三十五年の六月に浜中英二氏の名前で出しているこれには、こういうふうに書いてある。「警察官数名が、直ちにその制止と検挙にあたりました。同時に、国会構内に配置されていた警備部隊の一部が、周囲をとりまくデモ隊をかきわけて、現場に急行し、」と、こう書いてある。もし警察庁のこれが事実であれば、そういう不安はないはずである。また同時に、この質問に対する内閣総理大臣の答弁に、当日おくれて参加したことには事情があった、こういうように言われている。明らかに私は矛盾をしていると思うし、また、そういう発言を、どういうことを言ったかどうかということは知らないとしても、この構内にいた人たちが動かなかった。そうして八十三名というのは、別個の人たちが丸ノ内署の部隊から行くし、その後指示を受けて出たことについては、これはあるけれども、今話の出ている、現実にそこに、行なわれたとき同時にかき分けてという、こういう報告は事実ではないということを私は指摘をしたいわけです。これについては、警察庁の長官はどういうふうなことでそういうふうなことを発表されておるのですか。
  138. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 私の承わっておりまする範囲で申しますというと、猪俣議員の御質問は、丸ノ内署員八十三人が現場に到着したのがおそいではないか、こういうお尋ねに対して、人事院ビル前で、右翼の情報はありましたけれども、来ます方向がわからないので待機をしておった。それが当時すでに相当のデモ隊があります中を自動車で行きますためにおくれたという御説明を、その御質問に関する限りお答えをいたしておるのでございます。なお、その右翼が突入いたしましたものに対する対策は、その部隊だけでございませんで、構内におりました第四機動隊の一個中隊が出ましたのと、それから方面警察隊として城東大隊の一個分隊九名、これが出動をして、八十三名の麹町署員、これだけのものが現場で七名の現行犯を逮捕、並びにその他全員八十二名を麹町署に連行して取り調べ、さらに、そのうち十九名を緊急逮捕したというふうに言っているのであります。
  139. 松永忠二

    ○松永忠二君 今のことは、具体的に時間等も明確になっているわけなんです。で、丸ノ内署の警察署から八十三名の警官がトラックで現場に到着したのは相当おそい、その前に、国会構内に警察官が待機していたが、この警官は、逃げ込んだ人に表へ出ろと言った。そして社会党の秘書団が救援に出ろと言っても動かなかった。その後、栗山議員が非常に強硬に言ったので、それでは指揮を受けると言って、指揮を受けてから構内から出てきたわけです。その間には相当な時間をとっているので、だから、ここに出てきているように、「警察官数名が、直ちにその制止と検挙にあたりました。同時に、国会構内に配置されていた警備部隊の一部が、周囲をとりまくデモ隊をかきわけて、現場に急行」した、これが事実であるならば、こういう批判はないわけです。そういうことでないから批判を受けているのであって、この点について、なお的確に調査をする必要があると私は思う。現にそこに配置された者があるわけです。こういうことであるならば、何ら批判されるわけがないのに、あらゆるものにそれが批判されているというところに、この報告と事実とは相違をしていると私たちは断定をしているわけなんです。
  140. 米田勲

    米田勲君 今、松永さんが言う通り、あなた方は、その報告されたものを見て、その報告書が非常に合理的に書かれてあるから、機を失せず行動されたように思い違いをされているわけです。ところが、現場で傷害事件が発生したときの状況としては、そういう警官隊が機を失せずして出動して、その傷害事件の制止なり検挙に努めたということではないところに問題があるのです。それは時間がずれてから、あとからはやりましたよ。その点はいいんですよ。問題ない。しかし、私の言いたいのは、一つの任務が与えられておるからといって、突発的な傷害事件が起こっているのに、直ちに機を失せず警官が行動に入らない。自分は違う任務をもらっているのだから、そういうのは自分の任務でないということまで言って、直ちに行動に入らないという、そういう当日の状況にあったので、一体あなた方はどういうことをふだんから警官に教育をし指示をしているのか、きわめて疑問だから聞いているんです。その報告書のようなことになっているのなら、私は何も質問する必要はない。しかし、あの日はたくさんの人が見ているのだから、その報告書の通りでないということはとにかく明らかなんだ。とにかくある程度の警官隊は、傷害事件の発生を目の前にしていながら、直ちにそれに対して適切な行動に移らなかった。しかも、それを要求した者たちの要求に対してすら、われわれは違う任務を与えられて、その任務についているのだから、その行動はできないと言ってかえって拒否をしている。行動を要請されているのに、そういう実態であったのですよ。あなた方は現地の人たちの報告書だけ見て、これで全く手落ちがなかった、批判をしているやつは、何かあれは事をかまえるために批判をしているのじゃないかと思い込んでいるかもしれない、あなた方は。報告書の通りであったら、批判をしている人たちの言うことはおかしい。しかし、実際現地の時間的な実情からいって、私どもの言っている通りなんです。それはいろいろなものに出ているし、たくさんの証人がいます。なぜこういうようなことになるのだということなんです。私は、その点について常識的に考えて、いかなる任務を与えられていようと、傷害事件が発生し、あるいは場合によっては人命がそこなわれるかもしれないという、そういう事件が起こったら、いかなる任務を与えられてそこに任務についておった者といえども、直ちにその事に向かって行動すべきだと思う。そんな指揮を受けてこなければやりませんなんというばかげた警察官の教育をしているのだとしたら、それは大へんなことですよ。どうですか、その辺は。あなた方は、どうしてもその報告書を信頼して、私らの言っていることは間違っている、事件の発生と同時に、機を失せず手を打ったんだ、ここに書いてあるようなことであったというふうに思い込まれているのであれば、私はもう少したくさんの証人をあげて、あなた方の言い分は絶対に違っていると、そういうことを主張したいのですが、いかがですか。
  141. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 先ほどちょっとお読みになりました、現場におりました数名の警察官が、これは直ちに制止行為をしておるわけです。それと、この構内から急行いたしました第四機動隊の一個中隊が現場に行きました時間、これはもちろん時間のズレがございます。そこで、それではその目撃しておった警察官がなぜすぐ出なかったかという点の御質問ですが、これは、国会構内に配置されておりますのが、いろいろな部隊単位といいますか、部隊ごとの任務を与え、それで配置をしておるわけでございます。従いまして、その当時そういう事件が発生いたしましたことを知りまして、指揮官が第四機動隊の一個中隊に出動していけということで、これが多分門の中から見て左側ですか、左側の方の有刺鉄線をくぐって出て、そこにおったデモ隊をかきわけて現場に行ったと、かような状況でございます。そこで、そういうことでなくて、もっと、見ておった警察官がすぐ出ればいいじゃないかと、こういうような御質問でございますが、この点は、私はごもっともな御質問だと存じます。ただ、先ほども申し上げましたように、部隊としての任務を与えられておりましたので、しかも、第四機動隊がその方に行くということでありましたので、そこの目撃しておった警察官が、自分の判断ですぐ出て行くということはしなかったというのが真相であろうと思いますが、まあこういうような点につきましては、事柄の重要性という点から考えまして、検討を要する点もあろうと思っております。
  142. 松永忠二

    ○松永忠二君 あなた今おっしゃるけれども、そういうことについては、警視庁も警察職員服務規定の中に明確にしてあるじゃないですか。「急訴に対する措置」、第十三条に、「急訴に接したときは、勤務の当否、管轄の内外にかかわらず、迅速、機宜の措置をとらなければならない。」と、こういうふうにつまり規定されているわけです。従って、助けを求めも、所管が違うというようなことについては言い得ない状況であるし、機動部隊の指示がなければ、構内から飛び出していけないということではないと、こういう点についてやはり遺憾な点があったということについては、私は事実だと思う。こういうことがあなたの規定の中に明確にされている。そのときの行為は、これをこのまま行動に移したものではかったという判断を私たちはしているのだが、それは誤りでないわけですか。
  143. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) その点は、さらに私としましても検討したいと思いますが、その規定は、何といいますか、通常の場合の規定である。通常の場合も当然そうあるべきであることは申すまでもありませんが、先ほども申し上げましたように、国会構内に部隊として配置をされ、警備を命ぜられておる。しかも、その構内の部隊の中から第四機動隊の一個中隊が現場に行けというような指示を受けているというような状況でありましたので、現場におりました警察官が自己の判断で国会構内から構外に出て現場に行くということをしなかったと、こういうのが実情であろうと思いますが、この点は、さらに検討したいと思います。
  144. 米田勲

    米田勲君 警視総監、あなたはそういう考え方で警察官に任務を与えておるとすれば、責任問題ですよ、これは。平常の場合は、そういう松永さんが指摘していることだと言う。平常とは何事ですか。国会の構内を守ることは傷害事件よりも重大だとあなたは言っておるのだが、もってのほかですよ、そんな言い方は。国会の構内を守ることも重要な任務ですよ。これは僕は軽視はしません。しかし、国会の構内を守るという任務は平常の場合とは違うのだというようなものの考え方で、直ちにその傷害事件が発生したときにそれに対して行動を起こされないというようなことを妥当と認めるようなものの言い方はもってのほかですよ。いかなる任務を与えられていようと、人命が失われるかもしれない。人が傷ついておるという実情を見て、警官隊が一人であろうと二人であろうと、そのことに対して防止するとか阻止をするとか、そういう行動に出ないというようなやり方は間違っていますよ。警視総監の口から、平常の場合にはそうだが、国会を守る部隊であるから云々といったような言い方をされるというのはけしからぬです。あなた自身がそういう感覚だからいけない。おそらくあなたのそういう感覚だから、国会の構内に入ってくるやつらは徹底的にやっつけるけれども、そこで発生する傷害事件は大して重視しないというような警察官の態度を作り上げてしまっているんじゃないですか。そう言われても、あなたの答弁は弁解の余地のないような答弁じゃないですか。非常の場合とか、そんな平常の場合にとか区別できるのですか、この場合。国会の構内にはまだだれも入り込んでいないのです。不祥事件は起っていないのです。入ると同時に発生したというのなら別ですよ。何かの事件が生じたら、与えられた任務の方についてそれに行動するのがあたりまえ、こっちの方はやれなかった、それはわかる。しかし、こっちは平静になっているのです、与えられた任務の方は。そのときに傷害事件の発生しておるのに、自分に与えられた任務はここであって、そういう事件は自分の担当でなかったというようなことを警察官が要請しておるのに答えるなんていうことは大体筋違いですよ。それを警視総監が肯定するように言っておるのは怠慢ですよ。もってのほかですよ。どうですか。
  145. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) ただいま警視総監が申しましたのは、米田さんのお話のような意味で申したものではないと思うのでありまして、先ほど松永さんの御指摘になった規定というものは一般の規定であって、今度の国会の場合は、部隊行動として特別の任務を持っていたと思う。しかも、機動隊の出動ということが——私は実はその時間がどれくらいであったか存じませんので、あるいは事実と違うかもしれませんが、警視総監のお話は、機動隊が出るということがわかって、自分らが個別に単独に行動しないという措置をとったのだという趣旨で申し上げたのだろうと思います。私の考えといたしましては、その間に非常な時間のずれがあったといたしまするならば、たとい国会の構内において任務を与えられて、警備の任務を与えられておりましても、非常な緊急の事態におきましては、その現場で目撃している部隊の指揮官の判断によって、直ちに出て、最善の措置を講ずるということは、当然なすべきものであろうと思いますが、そのときの状況として、機動隊が出るということでありますれば、本来の任務に自分たちはつくということをするのも、あながち間違った行動ではなかったのじゃないか。ただ、時間の関係が私つまびらかでありませんので、一般的に私は、国会構内の部隊警備というようなものについて、今御指摘のような暴力団の激しい行動があるというような際には、以上申し上げましたような措置をとるのが妥当な方法ではないかというふうに考えるわけであります。
  146. 木下友敬

    ○木下友敬君 今の時間的の関係御存じないようだが、私は見ておるのです。それを参議院の面会所の前に僕らはいすに腰かけており、僕らのうしろには警官が数名おった。そこでお尋ねしたいのですが、参議院の面会所におった警官は、あれはどこの所属、部隊長はどこにおり、どういう人であるか。構内々々といいましても、門の中におるのと、それから面会所の石段の上におるのでは、もう構内と構外との境におるわけだから、目の前で傷害事件を見ておって動かなかった警官があるのだけれども、あれはどこに属しておった者かということだけは知りたい。
  147. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) ただいま聞きましたら、城東警察署の警察官だそうであります。
  148. 木下友敬

    ○木下友敬君 僕らの前でトラックが、私は全速力と思ったが、あとで聞くと、あれは全速力じゃないそうです。ほんとうにアクセルをふかしてばっと出ている。見かけは非常にあの速力は、少なくともわれわれが言う全速力ではないけれども、あの大衆行動の中に突っ込んだ場合には、これは理論的には、比較的には、現実的には最高速力だと言ってもいいくらい、僕はびっくりしてそれを見たわけなんです。そうしてまた同時に暴漢がなぐり込んできて、私らのうしろには警察官が数名おる。私らも早く行ってくれと言ったけれども動かない。にやにやして動かない。私は、その場合に、その警官は、機動部隊第五ですか、第四機動部隊の者が出るというようなことをその警官たちが知っているはずがない。とっさのことなんです。第四機軸部隊の一部が出るということはそれよりあとのことで、即座にその警官がそういうことを知っているはずがないと思うのです。私は、ああいうときには、警官は、自分はそういう任務を与えられていても飛んで行って助ける。あるいは、子供が水に落ちているのを飛んで行って助けるというようなことは巡査だけじゃない。われわれもそういう仕事をしなきゃならぬと同じように、ああいう現場を見れば、職務のいかんにかかわらず、飛んで行けというような教育がしてあるはずだと思う。私は、目撃者の一人として非常に遺憾だと思うのですよ。まあお役所の方は、なるたけ責任のないように解釈してものを考えて、特にこういう委員会のごときは、つるりつるりと責任にならぬように御答弁になることは、これはいつものことだから、われわれなれておる。だけど、あの場合は、目撃した僕としては、非常に私はびっくりしたものだから、もう少しまじめに、悪いところがあったらば、それは悪いというように答える方が私はいいと思うのですが、どうですか。
  149. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 今お話の点は、私も始めて聞きましたので、その点は検討してみたいと思います。
  150. 米田勲

    米田勲君 先ほどから問題になっているのは、結局結論づけるのに、傷害事件が発生をした。しかるに、それを目撃しておる警察官がいるのに、直ちに行動をしないばかりでなく、出動の要請をしておる者にさえも、別な任務を与えられておると言って拒否をしておる。そういう事態を経過して、やがて時間を経過してから、別な警官隊が行って事態収拾に当たった。こういう経過なんですよ。従って、私はきわめてあの場合適切でないと思う、措置としては。報告書を見て満足されておっては困るのだ。警視総監は、その報告書を見れば、満足な、満点の報告書ですよ。事件が発生し、直ちに出動したと、そういうものを見て、みんなが万全の措置を講じたと満足をしておるのは、自己満足というものですよ。それだったら、たくさんの人が非難をしない。私はそのとこに一つ問題があると思う。これは、平常における警察官の教育に問題がある。それと同時に、もう一つ私の言いたいのは、このあとに発生をした事態がこのことに相当原因があるということなんですよ。それは何かというと、具体的に言うなら、デモ隊に対してあくまでもきびしく当たる警察官が、暴力団がデモ隊になぐり込みをかけて傷害事件が起こっておるのに、それに対してはきわめて緩慢に、しかも、出動要請をしておるのに、それさえも拒否をするというような態度であるということが、その場合の空気としては、きわめて暴力団に対して寛大な措置を警視庁がとっておるのじゃないかというふうに、もちろんそうは私は思いませんけれども、たくさんの人にはそういう印象を与えてしまう。これは、先ほど首相官邸の中に右翼の暴力団が容易に入り込めるような条件ができておるということとあわせて、民衆には非常な悪い印象を与えておる。悪い憶測をさせるようなことになってしまっておる。この点については、実情を過ぎ去ったことだからといって軽視しないで、今後こういうようなことのないように、十分な平素から訓練なり教育をしておいてもらわなくちゃならぬ。警察庁長官のようにあっさり言われるなら、これは、あなた方見ているわけではない。現場で指揮をとっているわけではないから、報告書を見て先ほどの答弁をしたことはやむを得なかったと思うのですが、何だかんだと言いくるめて、事態を知っているわれわれにそういうような答弁━警視総監のような答弁で事が済むと思われたら困るのですよ。  ところで、その後学生たちは、暴力団に対しては、もう警視庁が非常に寛大だというか、緩慢だというので、不満を持っている。そういうことから、単純な若い人たちだから、かあっとなったのでしょう。門を押し破って中へ入って抗議集会を開くと言い出した。この抗議集会というのは、安保反対の抗議集会じゃなかったのですよ。このときの学生の抗議集会というのは、暴力団がデモ隊をなぐりつけて血を流しておっても、警察がこれを直ちに取り締まらぬのはけしからぬという抗議集会なんです。そこで押し破って入った。押し破って入ったことは悪い。学生のやったことは確かに悪い。地上にすわったことは御存じだと思う。抗議集会をやると言って、地面にすわったことは御承知でしょう、警視総監は。中へ入って乱暴を始めたのではないということはわかっでしょう。押し破っでのは、これは確かにいけないことたす。しかし、それからあと入り込んできて地面にすわって抗議集会をやると言ってすわり込んだのはわかっているでしょうね。中へ入ってきてから、あちこちで乱暴を始めて、警察官にかかっていったとか、そういう門を破ったときの行動、引き続き中へ入って乱暴をしたのではないということは、報告でも明らかだと思うのですが、どう報告を受けていますか。——わからないならわからないでいいのですよ。わからないものを考えてまで言ってもらわなくてもいいのですから……。
  151. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 入ってからの状況、それは、すわり込みをしておったということを聞いておりますし、また、いろいろな歌を歌う。あるいはいろいろな演説をやる。あるいは、最後には国会の正門の玄関の方に行って、向こうでやるんだというようなことで動き出したと、こういうような報告を受けております。
  152. 米田勲

    米田勲君 激高した原因が、先ほどから論議されたようなことが主たる原因になったと思われるという私の判断です。これは、多くの人もそう見ております。安保反対の抗議集会ではなしに、むしろその先刻行なわれた暴力団の傷害事件に対する警察官の緩慢の措置、直ちに要請しても行動してくれなかった、それに対する抗議集会をやろうという考えで、乱暴をして門を破って中へ入った。しかし、中へ入って引き続き乱暴したのではない。これは、地面にすわって抗議集会を開いた、こういう状況です。大体警視総監もそう見ておるようですが、この場合、昨年の十一月二十七日の日に、やはり同じように門を破って入ってきた。そして、まあ警察官の実力行使があるという話があって、議長に、僕ら、少しく時間をくれ、ぜひ退去するように骨を折るからということで、社会党の衆参議員が来て、全学連の幹部を集めて、ずいぶん罵倒されたけれども説得し、教育大学の学生が一番先に引き上げたのがきっかけになって、そうして相当時間はかかりましたけれども引き上げた。あのときは、そのために流血の惨事は起きなかった。国会の構内にまあ入ってきたという状況においては同じ状況なんですね。しかし、十一月二十七日の日は、あなた方が直ちに実力行使に移らなかったおかげで、時間はかかったけれども、私たちの説得で引き上げた。ところが、今度の場合は、十五日の場合は、抗議集会を開いて地面にすわっておる学生の群に対して警官隊が突入をしたことは事実です。このとき、現地で排除をするという突入の指揮をとったのはだれでしょうか。
  153. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) ただいまのお話ですが、私の方の承知しておりますところによりますると、構内で抗議集会を開こうということは、これは、米田さんも今お断わりがありましたのですが、私の方の見解としましては、これは、右翼の取り締まりについて警察が緩慢であるから、これに対する抗議集会を開く、こういう意味では私は絶対にない、これは当時の学生のその前からのいろいろな状況を見ますると、前もって国会構内に突入するという計画を持って、いろいろの道具も持ち出てきておるわけであります。その点は、私は米田委員とは全く見解を異にするのであります。今までの私の方の捜査の状況から見ましても、そういうような右翼の取り締まりについての緩慢さということに対する抗議ということではない。あらかじめ別の意図で国会突入を計画して入ってきた、こういうふうに存じておるのであります。  そこで、国会の構内に入りましてからの学生の状況でありますが、八時二十分ごろには宣伝カーまで中に入りまして、いろいろな学連歌の合唱その他シュプレヒコール等を行なったのであります。その後社会党の議員が行かれまして、学生の説得を行なわれましたけれども、これに従わない。ますますいきり立つ。一方南通用門付近の学生は、車両を引き出し、さらに門の柵沿いのあたりの学生からは依然投石が続けられるというような状況であったのであります。その後、午後十時ごろになりまして、学生たちが、国会正門の内側でさらに大会を開ごう、こういうことを叫びながら、包囲していた警察部隊に突っ込んできたのであります。そうして正門方向に移動をしようとしましたので、これを警察部隊が制止し、そこで徐々にこれを、負傷者等もここに出ておりますが、南通用門方向に制圧しまして構外に出した、こういうような状況になっておるのであります。
  154. 米田勲

    米田勲君 警視総監、あなたが現場でずっと指揮をとったり、見ていたわけじゃないでしょうね。あなたは、ラジオ関東の記者があの乱闘の中で放送をしていた放送をお聞きになりましたか。ラジオ関東の記者の放送を聞きましたか。
  155. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 聞きました。
  156. 米田勲

    米田勲君 私の先ほど聞いた、学生の部隊に対して突撃を指令した人はだれだということについてはお答えがないのですが……。
  157. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) このときの責任者は、前にも申し上げましたが、伊藤第五方面本部長であります。
  158. 米田勲

    米田勲君 あのラジオ関東の記者の放送は、あなたもお聞きになっていると言うからお聞きをしますが、あのときの警官隊の態度は、警察官として冷静な態度で行動しておったとあなたは判断しますか。警官隊は任務を遂行するためにきわめて冷静な態度で、警察官としての冷静な態度で行動をとっておったとあなたは判断しますか。どうですか。
  159. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 御指摘のありましたラジオ関東の記者の放送といいますか、これは、もっとずっとあとのことについての放送でありまして、そのときのあれじゃないと私は承知しております。
  160. 米田勲

    米田勲君 午前二時ごろですよ。だからこの時間の延長です。
  161. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) これは、もう例のあれですね。警察の車両にどんどん放火して、投石をして来る。これに対して、警察側がやむを得ず催涙ガスを使用して、そのあとこの人たちを三方面に制止といいますか、排除といいますか、そういう行為をしました、そのときのことであろうと思います。
  162. 米田勲

    米田勲君 私の聞いたことに答えてくれませんか。冷静に警察官として終始行動したとあなたは思われますかと言うのです。警察官は。
  163. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 私は、すべての警察官が全く冷静であったというふうには思いません。これは、一部の警察官の中には、当時の異常な雰囲気によりまして興奮をしておったという者もあったと思います。
  164. 米田勲

    米田勲君 一部の警察官の中に興奮をして行動をとった者がいるというどとですが、それはどういう意味ですか。あなたの言われるのは、一部の警察官が興奮をして云々というのは、それはどういう意味なんですか、具体的に言えば……。
  165. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 御指摘のありました、その冷静さを十分保っていなかっつたという点があったんではないかと思います。
  166. 米田勲

    米田勲君 精神的に興奮をしておったということは、私は言いたくて言っているのではないのです。行動の上において、冷静さを失って行動していた者が相当あったのではないか。単に精神的に興奮をしておる者がおったというふうなことではなく、行動の上にもまた、警察官としての冷静さを欠いて行動している者が相当数あったというふうに私は考えるのですよ。あなたはどうお考えになるのですか。
  167. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 警察官の中に、そういうような異常な雰囲気の状況もありましたので、必要な警察活動を行なうにつきまして、何といいますか、一部に行き過ぎた行為があったんではなかろうかというようなことで、そういうような具体的なお話のありました場合には、そのことにつきましてできるだけの調査をいたしているような状況でございます。
  168. 米田勲

    米田勲君 あったのではなかろうかなどと、今どき、まだそういうような疑問を持つような程度にしか警視総監は実情を知っておらぬとすれば、これははなはだもって遺憾ですよ。あなたの方では、一体警察官がそういう行動をとる場合に、どういう限度において行動をとらせるように教育しているのか、私はちょっと理解ができない。なぜかというと、この日の学生を国会構外に排除する、あるいは逮捕をするという行動に移ってからの大体警察官の行動は、これはもうただものではなかった。あれを見ていた者は、これはもう、あれをとめに入ること、学生の行動をとめに入るとかということをかりに考えても、とてもおそろしくて、あの警察官の行動の前には、そういうことをして入って行くことすらできない。まあ阿修羅のごとき警察官の態度でした。そのためにさまざまの行動が行なわれている。こういう場合に、一体どうなんですか、警規総監。警棒の使い方をどこまで許したのですか、この日は。警棒の使用の仕方はどこまで許したのですか、この任務、行動に入らせるときには。
  169. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 警棒の使用につきましては、この場合だから特別どうこうという特別の指示をいたしたことはございません。通常定められております規定に従って使用する、こういうことでございます。
  170. 米田勲

    米田勲君 総監は、このときの状況の写真を、まあたくさん写されておりますが、見ておられるはずです。自分のことに関係していることですから。多くの学生の頭から警棒の一方をふるってなぐっている写真はもう無数にあるでしょう。この日の写真に、学生が頭をかかえて、こうやっているのを、警官が警棒の片方を握って、こう振り上げてなぐっておるという写真はたくさんごらんになったでしょう。こういう任務を与えたのか、どうかそれをお聞きしたい。
  171. 松永忠二

    ○松永忠二君 ちょっと関連。今の御答弁と一緒に……。  今、振り上げてやった、これは、やはり武器として警棒を使用したのだと僕は思うのですが、武器として警棒を使用したのかどうか、そういうことを指示したのかどうか、あわせて一つ……。
  172. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 当日の具体的な学生側の激しい行動に対しまして、これを制止する、あるいは排除するというためには、用具としての使用のみでなくて、武器としての使用もこれはやむを得ないということで、そういう使用もいたしました。
  173. 米田勲

    米田勲君 それは警視総監、その行動に移るときに、武器として使用してもよろしいということを明らかに指示してやったのですね。どうですか。あらかじめ指示しましたか。
  174. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) これは、先ほど申し上げましたように、特別そのときに指示をいたしたわけでありません。通常の場合、武器として使用し得る条件のあります場合には使用し得ることになっておりますから、その一般的な原則に従って使用した、こういうことでございます。
  175. 松永忠二

    ○松永忠二君 ちょっと関連。武器として使用したのは、ここに質問書にある、三回が武器として使用されたのですか。第一回は午後五時三十五分。第二回は午後十時ごろ。第三回は正門付近において車両等に対する放火の学生の排除、この三回が武器として使用されたのですか。
  176. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) その通りであります。
  177. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、一体その逃げていく学生、それから、ここに明確に出ているんですが、二度目の武器として使用したということに、「警官隊は、指揮車の上に学生看護班まで追いあげて打った。女子看護班の悲鳴が聞こえた。」それから、さっき話の出た、「最前列の学生は両手で頭をかかえながら倒れた。」こういうふうに、こう逃げていく学生、そうして看護のところへ乗っかってまた打ったという、そういうときに、一体警職法にきめられている武器使用の条件というのはあるのですか。それを一つ法的に聞かせて下さい。警職法に明確に出ているように第七条に、「武器の使用」というところには、武器を使用するときの条件と危害を加えていい条件というのがあるわけですが、武器として使用したのは、明らかに危害を加えるという条件がなければ、これを武器として使用することはできないと私は思います。逃げていく学生をうしろからたたく、それから、指揮の車に乗っている者に対して警棒をふるうという、そういうことは、一体武器としての危害条件をどこに備えているのか。武器使用条件の危害条件というのがあるわけですが、この危害条件のどこを一体備えているのか。御説明を願いたいと思います。これは、警察庁の長官からでもけっこうです。
  178. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 武器使用に関する規定としましては、警職法第七条がございますが、第七条によりまして、この警察官の職務執行に対して抵抗し、もしくは逃亡しようとするとき、その警察官において他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由ある場合において武器を使用することができることになっております。ただいま御指摘のように、はっきりと逃げて、これを逮捕するためでなしに使用するということはこれはもちろんこの規定外でございまして、そういうことはもちろん許されないことであろうと思われます。ただ、あの場合におきまして、逮捕のために使用する場合、または抵抗する者に対して使用するということは、これは当然許されるべき筋のものであろうと思います。
  179. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、私のお聞きしたいのは、使用条件としては、犯人の逮捕もしくは逃亡の防止のため、それから、自己もしくは他人に対する防護のため、公務執行に対する抵抗の抑止のためという、これが、使用の条件と、明確にあなた方の方で解説されておるのにもあります。危害条件というのは、正当防衛、緊急避難に該当する場合、あるいは緊急逮捕、通常逮捕と、こういうふうになっているわけです。武器として使用したからといってそれで直ちに危害条件を備えているとは限らない。で、正当防衛であり、緊急避難であり、あるいは緊急逮捕、通常逮捕と、いうこういうときに使用条件と危害条件とを備えているわけです。従って、振り上げて武器として使うことも許されるけれども、使用条件ですらも満足に備えていないではないですか。犯人の逮捕もしくは逃亡の防止のためと、まあこれは使用条件として、逃げていくものを逮捕するのだとか、あるいは公務執行に対する抵抗ということはないわけだけれども、私は、この場合使用条件は確かにある、武器として使用する条件はあるけれども、それを振り上げてその学生の頭をたたく条件はない。どこに一体法律的に危害条件を備えているのか。武器使用として警棒を使用して危害を加えてもいいという法的な条件はどこにあるかということを私は聞きたい。今指摘をしたそういうときに、逃げていく学生ですよ。そういうのがないとおっしゃるならば、幾らでも事例を僕はここでおあげしましょう。幾らでも出ている。逃げていく学生、頭をかかえて避難する学生、そうしてまた看護している、指揮車に乗っている、そういう学生に対して警棒を武器として使用する一体条件はあるか。危害条件はどこに備えているのか。そこを一つ法的に、危害条件を備えて、警棒を武器として使用し得る理由を一つ法的にお示しいただきたい。
  180. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 明らかに逃げていく者について、これに危害を加えてよろしいという法的根拠はございません。
  181. 松永忠二

    ○松永忠二君 そういうことになると、私の今申し上げたようなことに対して警棒を使ったということは、これは法的に違法である。もしそういうものがあるとすれば、僕は違法として断定をして差しつかえないというような判断をすべきだと思うのですが、そういう事例もあったことについてあなたは認めますか。全然ないというようなお話なんですか。どうなんですか。
  182. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) ああいう集団の場合におきまして、抵抗を示して、これに対して武器を使用するという際に、かなわぬと思ってうしろを向く。それに対して武器が当たるというような場合ももちろんあり得たであろうと思いますが、あの当日において、確かに過剰な使用というものも私はあったんではなかろうかと思います。
  183. 松永忠二

    ○松永忠二君 それでは、この警棒使用のことで、私はもう一つお伺いをしたいのですが、これは、六月十六日の一時ごろの大学の教授団、研究者グループに対する警察官の行動というものが、相当いろいろなものが出ていることは御承知だと思う。その具体的な例は、ごらんをいただくとわかるように、「ジャーナル」に清水という人が明確に書いている。八月号の「世界」には、法大教授の湯川、それから早稲田大学の天野、なお「ジャーナル」には東大助教授の五十嵐と、具体的に名前を書いて、明確に、とにかくわれわれは教授団なんだ、ちょうちんも掲げて、そして通用門の近くのチャペルのところに避難をしている。それに対して、警察官が警棒をふるって使った。「「何を」といって警棒で私たちになぐりかかってきます。「この野郎」「全学連め」「共産主義者」というような罵声とともに」云々と、「公務執行妨害」と叫んでまたなぐりました。」こう書いてある。これは、武器使用の条件すら備えていない。武器の使用条件は、今言った、犯人の逮捕もしくは逃亡の防止、自己もしくは他人に対する防護のため、公務執行の抵抗抑止のため、こういう条件を使用条件として掲げているわけです。ところが、この教授団、研究者グループに対して加えた警棒の使用は、使用の条件さえなさない。それであるのに、危害条件もないのに警棒を使用してやることは、これは断然警棒使用として許しがたいことだと私たちは思う。こういう事実があったことについて、あなたは御存知ありませんか。そうしてまたこれについて、警棒使用に至ったことについては、明らかに誤りであったということについて、そういう見解をお持ちでないのですか。この点を長官並びに警視総監からお尋ねをしたい。
  184. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 私どもの聞いておるところでは、今お話しのような話も別に聞いているわけでございますが、私どもの承知いたしているところでは、十六日の午前一時二十分ごろ発生した事件ではないかと思うのでありますが、正門前におきましてやむを得ず催涙ガスを使用し、学生の排除を実施中のできごとでありまして……
  185. 松永忠二

    ○松永忠二君 そのあとです。
  186. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 当時南通用門方向に約四百名ほどの学生を規制しておったわけでありますが、この学生たちは、依然として石を投げることによって警察官に抵抗し、また道路上に、竹ざおを横にかまえた組織不明の一団もございまして、これも石やプラカード、たき火の残り火などを警察官に投げつけて、規制活動を妨害しておったのであります。そのときに、一人のたすきをかけた人が現われて、行動をやめろ、話し合おうということで、警察部隊の指導官に申し出られた事実があるのであります。で、この指導官は、学生排除の任務を遂行中であって、学生たちからはなお激しい投石が行なわれ、負傷者が続出しておる最中でもあるので、穏健な教授団などが暴徒集団の中に含まれていたということは考えられない状況でありましたので、話し合いを行なう段階でないというふうに答えて、規制を続けたというふうに聞いているのであります。従いまして、深夜の混乱のさなかでもありますし、群集の中にまざっていたと思われます大学教授団等の中にも負傷された方が出たことも推定されるわけでありますが、これを事前に学生集団その他と分離して、穏やかな措置をとるということができ得なかったものと考えるのであります。これはもちろんその中に、一部には、先ほど総監からもお話がありましたように、非常な長時間にわたっての投石その他で、負傷者も警察側に非常に多く出ております。興奮した状況下において、一部行き過ぎたものがないとは申しませんが、全体の集団としての動きとしては、以上申し上げたような状況にあったように承知いたしておるわけであります。
  187. 松永忠二

    ○松永忠二君 ちょっと待って下さい。あなたの御答弁は全く違うのですよ。正門前にその学生と一緒にまざっていた教授団、研究者のグループのことを言っているのじゃなくて、南通用門の車庫の近くにうずくまって避難をいるそれらの教授団、しかも、ちょうちんを掲げている、そういうものに対してこういう暴行が行なわれたという、この点については、そういう点は具体的に示されておるか。これについては警視庁の方では調査をされたのか。そこにいた第五機動部隊ということも明確になっているわけであります。そしてこれについては武器として使用した、いろいろ使用したという話だけれども、報告が何も出てない。一回、二回、三回——三回だけではなくて、これはもう少しまだあとの、つまりその武器の使用、いわゆる武器としての警棒使用ということ、これは何も報告が出てない。こういう点について、すでに質問等でも指摘をされて、調査を急速にやりたいというようなことを言われているわけで、これは、内閣総理大臣の答弁のあれとして出ている。そこで、私の申し上げているのは、警察庁長官の言われたのではない、それとは別個の場所である。これについては、私がさっき言った通り、使用の条件すら備えてないから、もちろん危害状況も備えていない。こういうことに対して、警棒をそういうふうな使い方をすることは、これは違法だということについては、どう一体長官は考えるのか、警視庁の総監はそういう事実をその後調査をされたのかどうか、そのことについて再度長官から、そういう状態の中で警棒を使うということ、しかも、それで危害を加えるというようなことについては、警棒使用ということの、全く武器として使用することはできないという状態だと、そういう見解を持っておられるのか。そういうときでそういうことをしてもいいのか。警棒をそういうふうに使っていいのかということです。  もう一つは、そういう事実について警視総監の方は調査をされておるのかどうか。もうすでに回答後しばらくたっているので、これについてどういう調査をされているのか。具体的に人まで名前を書いて各新聞や雑誌に出ているから、調べようと思えばすぐこれは調べることができるから、おそらく私ははっきりして調べられていると思うから、総監からは、その調査の結果についてお知らせをいただき、長官からは、警棒使用にあたって、そういうときに使用する条件はない、危害条件はないのだということについて、はっきりした見解を伺いたい。
  188. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) ただいま私お答えしたのが、おそらく松永委員のお話の場合ではないかと私思うのでありますが、もしお話のように、全然うずくまって、何にもしていないというものに対して警棒をふるうということは、これは一つの仮定として私申し上げますが、そういう警棒の使用はもちろん不法でございます。
  189. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) ただいまの御指摘の事件につきましては、私も聞きまして、できる限りの調査をいたしておるのでありますが、先ほど警察庁長官から御説明のありました事案がその事案のことであると私は存じております。そこで、教授団等に対する警察活動、なかんずく警棒の問題につきましていろいろなお話もありますので、私の方で知り得た限りにおきましては、部内においていろいろ調査をいたしておるのであります。ただ、いろいろ抗議に来られた方にもお話しして、一つ具体的にその事情を聞きたいということで、関係者に連絡、または関係者に、一つ被害状況なり何なりというものを具体的によく説明していただきたいということを申し入れてあるのでありまするが、なかなかまあ警察に対してそういうような申し出がないのであります。そこで、部内だけの調査で今のところは終わっておりますが、そのうち検察庁の方に警察官の職権乱用を問題として告発もされまして、検察庁の方でさらに捜査をされるということになっておりますが、その状況も私どもとしましては十分拝聴して、私どもの調査もさらに徹底していきたい、かように考えておりますが、いずれにしましても、具体的にさらに、この場所でこういうことがあったというようなことを、そういうまあ書いたものでなくて、御本人なり、あるいはそのそばにおった方からでもお話ししていただければ、さらに私どもの調査も徹底し得ると思いますが、できる限り部内においてできる調査はいたしておるつもりであります。
  190. 松永忠二

    ○松永忠二君 そういうことでは私納得いきません。  それで、まず長官に聞くのは、ここに東大文学部助手清水徹という人の名前がはっきりしているでしょう。それでここに、「それならば、目のつかぬところにかくれていれば、かまわぬであろうし、たとえ見つかっても、説明すれば納得するであろう、こう考えた私は、妻を連れてうすぐらい閉ざされた門の外の片すみにへばりつきました。すると七、八人の警官が私たちの姿を見つけてかけよってきました。「そこで何をしてるんだ」といいおわるやいなや「何を」といって警棒で私たちになぐりかかってきます。」これは警棒使用としては違法であるかどうかということを私は聞いている。  それともう一つ総監に……。部内で御調査をなさっているというお話だけれども、私は今あげたのは、これは清水君という、現に「世界」にもこういう名前を明確に書いて、事実はっきりした教授、助教授の人たちが、自分の名前を明確にして「世界」に出しているわけです。ほんとうにこの点について今後——私は警棒の使用を全部が間違っているということを言っているわけじゃなくて、こういうことについてとにかく問題があったということであるなら、なぜこの人たちを呼んで調べないのか。そんなことは、きょうにでもあしたでもできるごとじゃないですか。部内だけで調べるなんて、そんな部内で調べることの方がむしろ困難であって、具体的に出頭してもらってその状況を聞く、明確に調べるということはできるじゃないですか。部内だけで調べる理由はないじゃないですか。そうしてそういうことについて一応の見解を持っているということが、今後のこういう問題に対する警視庁としてのいわゆる考え方として、当然そこまでやはり行くべき問題だと私は思うのです。だから、この今読んだ具体的事実が事実とすれば、これはもう明らかに警棒使用の限界を越えているということについて、明確に一つ長官に答弁を聞きたい。
  191. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) ただいまお読みになったことが事実であるとするならば、当然違法の使用でございます。
  192. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 先ほど申し上げましたように、実は関係者に出頭をお願いしても、出頭していただけないのが状況なんでございます。しかし中には、具体的に話を伺っている方もございますので、そういうものと私どもの調査とつき合わせまして、進めておるわけであります。
  193. 松永忠二

    ○松永忠二君 結論はどうですか。進めて、今の段階における見解はどうなんですか。
  194. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) いや、その事案につきましては、まだ出頭していただけませんし……。
  195. 松永忠二

    ○松永忠二君 事案じゃありませんよ。この今の問題について……。
  196. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 今の教授グループといいますか、教授団の中で、まあ被害を受けられたような方についての調査、これにつきましては、一部御本人からいろいろ事情を聞いておる点もございます。しかしながら、多くの方が、実は検察庁の方に告訴もされておる関係かと思いますが、私どもに対して話をしていただけない、こういうような状況であります。
  197. 松永忠二

    ○松永忠二君 そういう今言ったような問題について、警視庁としては、的確に調べる必要があると考えておやりになっておるのかどうか。
  198. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 私は、そういうような行き過ぎた行為というものがかりにありますならば、これは当然矯正すべきでありますので、これはできる限りの調査をいたしております。ただ、部内だけの調査ではなかなか徹底いたさない。どうしてもやはり関係者に直接具体的な状況をお聞きして、つき合わせて調査を進めていかなければ徹底いたしませんので、今後もその点は努力をいたして参りたいと思います。
  199. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 関連して。総監、あれですか。来てもらいたいと言っても来ないというような意味のこともおっしゃったようですが、来てもらうことももちろん方法でしょう、むしろあなたの方から出かけていって知るというようなこともあり得ると思うのですが、そういうことはどうです。
  200. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) そういうことで、学校といいますか、その関係の方に御連絡をした方もあるのであります。しかし、今警察官がうちの方に来られては困る、こういうようなことで、どうも延び延びになっておる、こういうような状況もあるのであります。でありますから、私どもとしましては、代表的な意味で警視庁に抗議に来られた方を通じまして、できるだけ一つ具体的な状況を知りたいから、関係者の方に一つよく事情を話しに来ていただきたい、また場合によれば、こちらからも出向いてもいい、こういうことは申し上げておるのであります。
  201. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 先ほどからあなた方のお答えになるのを聞いてみますと、何か部内だけで、いろいろな下からの報告といいますか、そういうものを土台に御判断なさっているのじゃないかという強い感じを受けざるを得ないのですが、今の問題について、その点だけしぼって申し上げますと、やはりこれは、あなた方のおっしゃっていることが実情と違うということは、私どもがはっきり言えるのですが、しかし、あなた方自身としても、単に私どもがそれを言うのだ、しかし、われわれは、こういう内部的な調査の結果、こういうことだけしかっかんでおらないのだ、このことだけでは双方とも解決が一つかないと思うのですから、よく事情を、いわゆる部内だけの調査でなしに、関係者の方々からも、場合によっては来ていただくなり、あるいはあなた方の方から出向いて行って、これは方法はいろいろあろうと思います。学校に制服で何人ものこのご出向いていく。あるいは私宅へ出かけていくというような方法をとらなくても、いろいろな方法があるのじゃないかと思うのですが、そういうことが、われわれの今お聞きしておるようなこととあなた方のつかんでいることは違うのだという平行線をたどるようなことでない、一つの結果を出すために、慎重にしかも急速にごの問題についての調査方を私はぜひやってほしいと思うのですがね。そういう今の総監のお言葉からすれば、これからも努力を続けるとおっしゃいましたが、その点について、あらためてどうでしょう。そういうふうにやってもらうべきものだと思うが、見解を聞きたいと思うのです。
  202. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 前にも申し上げましたように、今までも、そういうようなことで抗議に来られた方や、あるいは大学の関係で、こちらで知っておる方、教授などを通じましていろいろお願いをしているのでありますが、ただいまのお話の通り、今後も一つ極力努力をいたして参りたいと考えます。
  203. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 私は、今回の問題、国会周辺の問題なり、いろんなことにつきまして、やはり考えさせられることの一つは、警官のあり方、正しい警察権の使用というようなもの、これは一体どう考え、どう将来築き上げていくかということが非常に大きな問題だと思うのです。個々の問題について、たとえば、ああやったからこうなるとかいうことを一々僕らここであげつらっていくこともいけないと思いますが、そういうものから全般を通じての警察官としてのあり方、職権の使用の仕方、こういうものは、私は、非常に今回の問題を契機に、みんな真剣に考えなければならぬと思うのです。今までの質問をなさった方々も、そういう点で、たとえば警官の警棒の使用の限界なり範囲なりというものにいろいろ問題があるのだ、そういうことのもし範囲を逸脱し、限界をこえるようなことをしたとするならば、これを契機に、将来そういうことのないようなことをみんな望んでの質問なり、あるいは皆さんに対する見解の表明なりを求めておられる。そういうものをやるためにはやはり、いや、おれたちはこういうふうに事態を把握しているのだ、いや、こういう事実があるのだ、こう言っておったらば、なかなか話が一致していかないと思うのです。おそらくあなた方も、かりにそういう事態があったとすれば、これは行き過ぎでございますというようなお答えがありましたが、将来とも、やはりあなた方としても、行き過ぎや不法な警棒の使用なりあるいは職権のいわゆる乱用なりということがあっては困ると、そういうことは十分考えておられると思いますから、そういうことのために、一つできるだけ早く事態というものを明らかにしてやることが私は先決問題だろうと思う。もちろん、検察当局においても、告訴されたことによって調べられると思いますけれども、直接のあなた方自身の把握の仕方においても、それが一日も早くできなきゃならぬと私は思うので、そういう意味で、今総監のお答えがありましたから、私今一応了解しますけれども、なおあらためてその点を申し上げて、要望しておきたいと思います。
  204. 米田勲

    米田勲君 先ほど私のお聞きしたことから、ずいぶん発展して、いろいろの方から関連質問があったのですが、結局私は、あなた方に考えてもらいたいことは、当日の警察官の行動は非常に冷静さを欠いておったということをはっきり反省してもらいたいということですよ。何も私は、ああでもない、こうでもないと言って、あなた方と論をしたいためにやっているのじゃないのですよ、これは。ここでこんなものを引っぱり出して、今あなた方に何だかんだと言っている意味は、一つの行動をとったあとに、人間というものは、組織も同じだが、謙虚に反省してみる必要があるのじゃないですか。私はそう思うのですよ。あなた方のとった行動のうちに、マイナスばかり、悪い面ばかりきょう私は言っているようであるが、それは、いい面をどんどんあげていったのでは反省にならぬからである。何もあなた方をやり込めてどうごうしようという気よりは、一つの行動をとったら、謙虚に反省してみる必要がある。当日の警官隊の行動の中には、常軌を逸している者が相当おったということですよ。あなた方は、自分たちの現地部隊の責任者からいろいろ報告を受けているが、その報告書は、きわめて妥当に書いてありますよ。あなた方がそう思い込むのも無理はないかもしらぬ。しかし、実際の状況で、多くの警察官が非常に常軌を逸して、感情的になって行動をしている。従って、警棒の使用にしても、警棒をもって頭を割らなければどうにもならない始末でないものにまで警棒を武器として使用して、頭を割っている。大体当日ここに赤十字の腕章をして、倒れた学生の看護に入ったものまで頭を割られている。学生を説得して、何とかしてこの事態を平穏にしたいと思って、夢中になって中に入っていって、毒意で行動した教授の人たちも頭を割られている。たくさんの写真をごらんなさい。無手ですよ。そりゃ、何か棒でも持ってかかっていったのに警棒をふるったというのならば、これはやむを得ないと思うけれども、素手で、頭をかかえて、それに向かって警官隊がおおいかぶさって、警棒をこうふるっているじゃありませんか。この写真が相当あるでしょう。とにかく当日は、そりゃ警棒を武器として使用しなければならない条件をも考えて指示はしたろうけれども、少なくも国民に傷を負わさなければ任務を遂行できないという場合は、よほどの時だという教育をして下さい。必要以上に国民に傷を負わせて事態を収拾することばかりが能ではありません。素手で頭をかかえている、そういう者に警棒をふるって、頭を割らなければ任務を遂行できないはずはないでしょう。それに、当日あなた方の警察官は、逃げていく女の学生の髪をむしり取っているではありませんか。その髪がこれくらいになっているのですよ、当日むしり取っている髪だけでも。見ましたか、警視総監。女の子の、学生のうしろ髪を引きむしって、むしり取った髪がこれくらいあったのですよ。常軌を逸しているというのはここでもはっきりしている。うしろ髪を引きむしって、三本や五本引きむしるならまだしも、こんなにもなるのですよ、学生は髪をむしり取られているのですよ。写真にとって、ちゃんと証拠に残っているのです。それからまた、学生を逮捕して、ほとんど重傷で、血だらけになって、動くこともどうすることもできない学生を地下室へ手錠をはめたまま投げてあったじゃないですか。これは僕らは、警察官に対して、これは手錠をはずせ、逃亡するおそれも何もない、本人は虫の息になって動けなくなっているのに、何のための手錠をかけている。こんなものはずして、早く救急車で病院へ連れて行かなければあぶないじゃないかと、強硬に話してようやくですよ。あの態度を見ると、全く常軌を逸して、警察官が何に一体きょうはなっているのだという感じですよ。あの地下室に、たくさん累々と並べた血だらけの学生を手錠をかけたまま、地下室へ相当時間ほうり込んでいたことを聞いてないですか。そういうことは警視総監に報告はしないかもしれない。しかし、それは事実なんですよ。僕らが行って、やいのやいの言って、救急車早く呼んでこいと言って、それこそどなるようにしてやっとなんですよ。本人が逃亡するからやむを得ず手錠をかけるのじゃないですか。学生はもうなぐられて、血だらけになって、動くことも逃げることもできなくなっているのに、手錠をかけて地下室へほうり込んでおくというのは、これは憎しみだけですよ。その行動は、これは一体冷静な警察官の行動ですか。私は、警察官の全部が冷静さを欠いて職権を乱用し、無軌道なことをしたとは言わない。しかし、そういう警察官も相当おったということを反省していただかなくちゃならぬ。今後の問題のために、自分らのやったことは全部非合法なことはなかった、すべて妥当な行動であったというふうにあなた方自身が考えている以上、こんなことは再び三たび、何度でも起こりますよ。その意味から考えて、私はあなた方にこのことを質問しているのですよ。カメラマンとかラジオの放送記者だとか、そういうものまでなぐったりしているでしょう。これは明らかに一見してわかるのですよ、あの場合。そういう報道陣の者までなぐったり、赤十字の腕章をつけて看護に入った者までなぐっているでしょう。これはもう常軌を逸している。それをあなた方上層部の人たちが報告書だけ見て、自分たちの警察官のやったことはすべて合理的であった、違法はない、行き過ぎはないというふうに考えているのであれば、僕らは今後のためにあえてしつこくやらなければならない。警視総監のような答弁の仕方では、私はもう何十日でもこれは食い下がりますよ。自分たちの方にも行き過ぎがあって、警棒の使用についても今後十分反省しなければならぬという謙虚な気持であれば、もうそれ以上言う必要はない、こっちは。しかし、あなた方が、今調査中だとか、部内の調査によるとまだはっきりしないとか、何かそういうものを見て、書いたたくさんの人たちが、またそういう打撃を受けた人たちが言っておることがすべてうそのような答弁をされたのでは、私らはやめられない。どうですか。警察庁長官、警視総監、われわれの質問意図をはっきり了解して答弁してもらいたい。自分たちのやったことはあくまで合理的だ。違法ではない。行き過ぎはなかったとあえて答弁するなら、はっきりそうして下さい。僕らはまだまだやる。どうですか。
  205. 柏村信雄

    説明員(柏村信雄君) 今回の長時間にわたりますデモ、特に六月十五日のああした負傷者を多数出した事案等、これはいろいろと事情も複雑にあると思いまするけれども、警察としても、先ほど来申し上げておりまするように、不十分な点とか、あるいは行き過ぎの点ということが感知される問題があるわけでございまして、われわれとしては、こうした事態について、正しきものは十分にこれを賞揚するとともに、行き過ぎあるいは不法というようなものにつきましては十分に反省し、さらに、今後ああしたものの警備実施の実際につきましても、いろいろと工夫をこらしまして、善処して参りたいと、こう考えておるわけであります。
  206. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 六月十五日の事件の際における警察官の行動の中に、行き過ぎが全くなかったというふうには私は全然考えておりません。いろいろな御批判もありますし、そういうような行き過ぎた行動というものにつきましては、できるだけその真相を明らかにして、これに対してどういう措置をするということを考えていかなければならない。こういうような意味合いで、私ども、特別な捜査班を設けて、捜査を進めておるのであります。中には、必ずしも妥当な行動でなかったというふうなことが判明したものもございます。また一方において、いろいろな雑誌やなんかで言われておる中にも、これは全くうそであるというようなことは私は全然考えません。しかし中には、やはり相当一方的な一面からのみの見解であるということ、あるいは誤解に基づくもの、これも私は中にあると思います。でありまするから、私どもの方の調査と、それからそういうようないろいろな出版物あるいは直接関係された方々の話をできるだけ聞くということによって真相を明らかにして、これに対する措置は公正にとって参りたい。そのことが今後の警察のためにぜひ必要である。かように考えてやっておるのでございます。決して全然行き過ぎというものはなかったというふうに私は考えておりません。
  207. 米田勲

    米田勲君 警視総監の答弁は納得しませんよ。あなたは、やはり自分たちのとにかく合法的なものであり、妥当なものであったという立場を固執しようとしておる。何のためにその署名入りで発表しておるものまで、誇張した一方的な見方だと言いたいんですか。それを反論するものがあって言っているんですか。今松永さんがわざわざ読み上げたそれについても、具体的にあなたは反論するものがあってそういうことを言うんですか。誇張があるとか、一方的だとか。  大体自分たちの仲間の警察官に、お前たちは警棒の使用の行き過ぎがあった者はないのかとか、違法をやった者はないのかと聞いたって、私は違法なことをしましたという者はおりますか。小学校の子供だって、私はそんなことをしなかったと言うにきまっておりますよ。そうして仲間の者だけだったら、仲間というものは親近感がありますから、その仲間から、あいつは違法なことをしたとお互いに言いたくもないし、言わないですよ。だから、そこはあなた方の方の上層部の責任者が、いろいろな人の言っていることを謙虚に考えて、そうして今後の警察官の行動なりについて十分考えていかなければならぬという、そういうものの考え方をしないで、あなたのような考え方をしていることは非常に危険な考え方ですよ、あなたは。証拠があがらんかったら、僕らの言っておることは、それは正当な主張をしていないという断定なんですか。どうもあなたの考え方には謙虚さがないのだな。調べて、あったらあったらと、仮定ばかり言っておる。あるから言っておるんですよ。あなたは、警察官に、女の学生のうしろ髪を引き抜いたのがいるかと質問したことがありますか。調査させたことありますか。あの日の乱闘のあとに、とにかくこんなのが二つくらいあったでしょう、髪の毛。そんな髪の毛が容易にできますか。それは、逃げて行く学生をうしろから髪を引っぱって、倒しておいて、なぐっておる実情を見ておる。それほどまでたくさんの具体的なことがあって、私は全員がそういうことをしたとは言わないけれども、相当常軌を逸して行動をしていると言っているのに、調査調査と、これからどうするのですか。
  208. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) いろいろな出版物や抗議、あるいはいろいろな人の話、そういう面で、警察官の当日の行動に関する批判というものは、私の方でもすべて集めて、これに基いて警察としても調査をやっておるわけでございます。でありますから、決して私どもの方もいいかげんなことで済ますという気持は全然ございません。でありまするから、具体的にとにかくこういう場合はこうだということをおっしゃっていただいたことにつきましては、それについて調査もしますし、また、今までされてなくても、今後におきましても、そういう具体的な話があります場合には、それに基づいてさらに突っ込んだ調査をしていく、こういうような気持で、極力真相を明らかにしたい、こういうふうに考えております。
  209. 米田勲

    米田勲君 それでは、警視総監に聞くが、これからどれだけ時間と労力を費しても、われわれの方でそういうふうに事実をあげていって証拠立てていったときには、あなた責任とりますね。それだけわれわれにやらせるならば、警棒の不当な使用をしたとか、不法行為があったという事実があったら、あなた責任をとりますね。それをはっきりして下さい。そうでなかったら、われわれはこれから時間をかけてあなたの言うような立証をしていっても、あなたに責任をとる約束がなければだめです。そういう明らかにして調査だなんて言っているのは逃げ道なんです。お互いにこれからそんなわずらわしい、たくさんの人を証人にして事実を明らかにして、そういう点がありましたら遺憾であったと、ただ一言言われるだけに、われわれは莫大な時間と労力を費すのはあほらしい。あなたのように、事実が明らかにならなければ反省する意思が全然ないようなものの言い方は全く遺憾ですよ。当日の写真を十枚ぐらい並べてみただけで、これは警棒使用に行き過ぎの部分があるなということは、謙虚な人であったら直ちに言えるのですよ。そういうふうなことを言うと、何か問題があるのですか。だから、故意にそういうふうにがんばっているのですか。
  210. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) これはもう、その後においても、警棒使用その他警察行動につきましては、そういうようないろいろ批判されておる面もあるから、とにかく適正にやるようにということは、極力部内に徹底するように指示はしておるわけであります。ただ、具体的な問題についての真相が明らかにならないままで、その警察官をどうこうするということはできませんので、その点は、やはり具体的に一つ一つ明らかにしていきたい。一般的には、そういう行き過ぎた行為がないように、またこういうような批判もあるということを極力部内に言いまして、警察活動を適正にしていく、こういうことは非常な努力を講じてやっておるわけであります。この点、一つ御了承願いたいと思います。
  211. 米田勲

    米田勲君 警視総監、私がこういうことを言っているのは、何か、それをやった警察官その人あるいはその責任者を法律上云々するという、そういうことまで予想をしてここで言っているんじゃないんです。それははっきり理解してもらわなくちや……。私は、今後こういうようなデモ隊の取り締まり等で必要以上のけが人を出してまでやられては困る。警棒の使用についても、またああいうデモ隊に対する警察官の認識についても、ああいう行動をとるときの警察官の心がまえについても、十分教育をしてもらわなきゃならぬという考えがあるから言っているんですよ。だれそれの警察官がこういうことをしたということを明らかにして、その警察官の責任を法的にとらせるのだ、追及するのだ、そんなことを僕自身言っているのじゃない。あなた方が、そういう一つの事態があった、そのあとに相当謙虚に反省をしていてくれれば、そういうことをたえず教育をしてくれるから、この次にそういう事態が発生するときには、むやみなことが起きないという安心感があるわけです。ところが、あなた方自身があの事態を大した認識をしていない。あの警棒のふるい方も、あの日の警察官の行動も冷静にほとんど行なわれているのだ、こういう認識であれば、繰り返される、こういうことが、それが問題なんです。違法があれば、事実があがれば反省するとか何とかという段階ではないのではないですか。たくさんの立証されるものがあるのだよ。そんなことをここで法廷のように証人を連れてきてこの者がなぐられた、この者もなぐられた、そんなことを委員会で論争する気はないのですよ、私は、証拠を証拠を、調査調査をと言っているが。あなたの方でそういう謙虚に反省する意思がないから、報告書だけを見て、すべて合理的にあのことが行なわれたのだという認識だから、しつこいほどこういった話が発展している。もう四時過ぎてしまっている。率直な気持でどうなんですか、警視総監。やっぱりあなたはそう言うのですか。事実が明らかになったら、そうすれば検討するとか反省をするとか、そう言うのですか、あなたは。そういう態度でこの国会周辺のデモ事件の警備に当たり、行動した警察官の行動をながめ、反省をしているのですか。まことにあなたは謙虚でない。今まで調査をし、見た写真のうち、僕が指摘しているようなものをあなたは見ているでしょう。うそを言っているのじゃないのですよ。女の子の髪の毛のことだって、赤十字の腕章を巻いている者がやられていることだって、地下室の方にぶつ倒れて、身動きもできないような者に手錠をはめて放置していたことだって、写真や何かに残っているのですよ。そういうものを見ただけで、警察官の行動に少し常軌を逸している、違法な行動もあったのだなということを判断できないのですか、あなたは。それなら不適任です、あなたは警視総監として。もう一度見解をお聞きしたい、あいまいなことでなく。
  212. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 当日の全体の警察官の行動の中で、行き過ぎた行為があったのではないかということは、私は、いろいろな写真なり出版物等から見ましても、そういうような感じというものは持っております。でありますから、そういうような行き過ぎた行為があったとすれば、その点を明らかにするということは、どうしても本人たちに対する今後の指導からいっても必要でありますし、また全体に対しても必要でありますから、そういう意味合いで、できるだけ材料を集めて調査を進めているのであります。調査の中で、すでに大体判明してきているものもあったのであります。またその中には、事情が一般に言われているものと違っているというものもありました。いろいろなことで、調査をできるだけ早く進めていきたい。そうして、申すまでもありませんが、今後の警察官の適正なる行動ということにつきましては、いろいろな面からの検討を加えて、適正に指導をしていきたい、こういう気持は十分持っております。御了承願います。
  213. 米田勲

    米田勲君 もう長くなりましたから、僕があまり論議をしておってもしようがないのだが、ぜひ警視総監にも警察庁長官にもお考えを願いたのは、労働運動に対する正当な認識の仕方を教育して下さいよ。あるいはまた、国会の周辺に請願等のデモに来ている、そういう行動に対するもう少し冷静な認識というか、警察官として正当な認識を持てるような教育をして下さい。私は、ずっとこの問題の中で見ておって、ああいうデモに来る人たちに対して、一つの憎しみの感情を警察官は持ち過ぎているのではないかという感じが強く持たれてならない。われわれの同僚の山本議員も、そこで自民党の秘書団三十名ぐらいからなぐられたりけられたりしているときだって、カメラマン等が見ておって、その場の写真をとっているような騒ぎが起っているのに、ちょっと離れている所にいる警察官は、そこに出向こうともしない。社会党の議員だということは、たすきをかけていれば一見してわかるのです。たった一人だったために、彼は、自民党の秘書団が自民党の宣伝カーからおりてきて、三十人くらいの者になぐる、けるをやられて、そうしてそれから幾らも離れない所におる警官隊が、そういう騒ぎが起っているから、何かと注目するはずなんです。そういうことにすら何らの措置をとろうとしない。私たちに言わせると、デモに来るやつらは違法なことをやっているんだ、憎いやつだ、それに激励をしたり応援をしたりしている社会党の議員もけしからぬやつだというような感情を現地の警察官が持ち過ぎているのじゃないか。これは、そういう点で、先ほど右翼の団体の傷害事件のときの話とあわせてみて、世上一般に流布されてる、何か右翼の暴力団に対しては取り締まりなどが緩慢で、そうして労働組合や学生などの政治的なデモ、そういうものに対しては過酷な当り方をするというように一般的に流布されていることが、一つ一つのこの問題を見ていくと、あながち否定のできないような感じがするわけですよ。だから僕は、きょうばいろいろな角度から、どういうお考えでおるかということを聞いてみたかったんです。結論づけるのに、もう少し、そういう行動を起こすときには、ああいう場合ですから、冷静さを——必ずしも僕らだってそういう当事者になれば冷静さを欠かないと断言できないけれども、しかし、少なくともあなた方の立場とすれば、そういうものが一人でも二人でもおれば、これはやはり責任を感じて、自後の措置としては、そういうことが繰り返されないような、そういう努力が必要だと思う。少なくとも十五日の警棒の使用は、相当数違法があったということは事実ですよ。それを今証人を集めて、警察官の責任を法的に追及するなどということは、私個人はしたくない。しかし、それよりももっと大事なことは、あなた方自身がそういうことを深く考えて、平常警察官の教育等に当たってもらわなければならぬということですよ。その御本人が、どうもあまりそういうことについては謙虚な気持ちになりたくないというのでは困るから、しつこく申し上げた。  委員長、私、まだあるのですがね。どうも相当時間がたって、夏の暑いのに長時間にわたったし、まあよく考えてくれるだろうと思いますから、きょうのところはこれで終わって、もしあらためてやるような機会があれば、またいろいろお話し合いをしたい、こう思います。
  214. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  215. 増原恵吉

    委員長増原恵吉君) 速記を起こして。  それでは、本日の質疑はこの程度で終了いたします。次回の委員会は、九月七日午前十時より開会の予定でございます。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時十三分散会