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大竹平八郎君 私は、最近新聞紙上にたびたび掲載をせられておりまするいわゆる山谷の問題、交番襲撃の問題について若干の
質問をいたしたいと思うのであります。
第一回が七月の二十六日の夜に起こったわけでありますが、原因は、きわめて新聞紙上の伝えるところによりますというと簡単である。簡易旅館に泊まっておる酔っぱらいと、それからその旅館主とのけんかが原因になって、そうして警官が酔っぱらいを派出所に引致をしたというようなことに端を発して、そうして当夜は約千人が襲撃をして、警官が七人も負傷をしたと、こういうことなんであります。これが一回で終わったことならば、これは世間にあり得ることなんで、同じ階層の集団がときに酔っぱらった上で
一つやってやれというヤジウマ気分も手伝ってやられたというので、大して問題ないのでありますが、しかし、第一回から続けて、八月の六日の夜までに五回も続けられた。しかも、わずか半月の間に、大東京のまん中で、とにかく千人、時には三千人というような集団が
一つの交番に襲撃をして、ただ交番を破壊をし、そうして警官に対して投石をするというだけでなく、一番大事な、しかも公共交通
機関であるところの都電
自体までもとにかく停車をさして、そうしてこの新聞の写真を見ますというと、電電の窓をむちゃくちゃにしたというようなことを
考えてみまするというと、これは私は、単なるヤジ的な襲撃というようなことで葬り去るには、事
自体というものがあまりにも大きいように実は
考えておるわけであります。私自身も、これは終戦前でございますが、あの山谷地帯の簡易旅館にしばらく泊まりまして、そうしてあそこに根城をおろしている人
たちのいわゆる人生行路と申しますか、そういうものを私は
調査した経験がある。これは、当時の財団法人の労資協調会というのから私は委嘱をされまして、膨大な
一つの本になって、今あるかどうか知りませんが、これは私は徹底的に
調査をしたことがある。その当時に私が
感じたことは、あそこにおる人
たちの大部分というものは非常に純真なものだということを言えると思うのであります。これはまあ、終戦後の今日とはだいぶいろいろ世の中が違っておりますから、そのまま当てはめて言うことはできぬと思うのでありますが、まあそういう私は
感じを持ったのであります。そうするというと、たび重なってああいうような
一つの無法地帯を作ったというようなことについて、一体原因はどこにあるのかということが、きょう私がお尋ねする一番の根本なのであります。まあいろいろ言われております。マンモス交番の新設というような問題が非常に反感を買ったと、山谷は、御
承知の
通り、わずか人口は、私どもあの地帯は二万足らずだと思っております。ところが、いわゆる職安を通さないで行く、いわゆる労働自由市場と申しますか、こういうのが山谷は非常に多い所であります。そういう点で、マンモス交番というようなものが新設をせられたに対しての反感というようなこと、また、この交番の新設について、これは誤解と思うのでありますが、それから、これは警視庁の課長から言明をせられておるようでありますが、この交番の新設について、相当地元の旅館主の寄付を集めたということの誤解というものが、今でも山谷の住民の人
たちが相当根強く持っておるのじゃないかと、こういうものに対する反抗、それからさらには、一部の扇動家といいますか、私は、先ほど申し上げた
通り、終戦前の
調査ではあるけれども、少なくとも大部分の者は純真性を持っておると、こう思うのでありますが、それが数回にわたってああいう行動をとられたということについては、だれか特別な
立場にある人
たちが特にその扇動によってこういう計画的暴動というものを起こしたと、こういうように私どもは
考えるのです。いずれにいたしましても、民主主義の基本は、他人に迷惑をかけないという、こういうことであります。自分が気に入らなければすぐに実力を行使する、そうしてあえてこれを反省もしない、それを重ねてやるというようなことになれば、これは、世間で言う、あの地帯というものは無法地帯だ、こう断定せられることも無理ではないのでありますが、こういう点において、取り締まりの方面からいたしますれば、いろいろむずかしい点があると思うのであります。これを直ちに警察力を総動員して、そうしてこれを検挙だけに没頭するというようなことはかえって不測の問題を起こす、この
心配もあると思うのであります。しかしながら、今申し上げた
通り、数回にわたって、しかも東京のまん中で集団行動、実力の行使をやり、そうして公共
機関であるところの都電までも停車させ、そうして都電
自体をあの
通りに破壊をする、こういうようなことになりますというと、あのまわりにおります住民からいいましても非常に不安感に襲われる、こういうようなわけなんでございますが、この原因について、当局としてはどういうように御判断をせられておるか、まずその点から伺いたいと思います。