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1960-09-07 第35回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年九月七日(水曜日)    午前十時四十分開会   —————————————   委員異動 八月三十一日委員久保等辞任につ き、その補欠として光村甚助君を議長 において指名した。 九月六日委員藤原道子君及び光村甚助辞任につき、その補欠として千葉信 君及び久保等君を議長において指名し た。 本日委員紅露みつ君及び千葉信辞任 につき、その補欠として大谷贇雄君及 び藤原道子君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉武 恵市君    理事            藤田藤太郎君    委員            大谷 贇雄君            鹿島 俊雄君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            山本  杉若            横山 フク君            秋山 長造君            久保  等君            藤原 道子君            田畑 金光君            村尾 重雄君            竹中 恒夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 中山 マサ君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    厚生省社会局長 太宰 博邦君    厚生省保険局次    長       山本太郎君    農林省農地局長 伊東 正義君    労働政務次官  岡崎 英城君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君    建設省河川局長 山内 一郎君   —————————————  本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査  (厚生行政基本方針に関する件) ○労働情勢に関する調査  (労働行政基本方針に関する件)
  2. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。    委員異動を御報告いたします。八月三十一日付をもって久保等君が辞任し、その補欠として光村甚助君が選任されました。九月六日付をもって藤原道子君及び光村甚助君が辞任し、その補欠として千葉信君及び久保等君が選任されました。九月七日付をもって紅    露みつ君及び    千葉信君が辞    任し、その補欠として大谷贇雄君及び藤原道子君が選任されました。  以上御報告いたします。   —————————————
  3. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それでは社会保障制度に明する調査の一環として、厚生行政基本方針に関する件を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑がおありの方は順次御発言を願います。
  4. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 この際、大臣社会保険医療関係につきまして要望と御質問をいたしたいと思います。  第一に、要望事項といたしましては、先般来より、大臣におかれましては、医療担当者側委員貝選任に関することでありますが、特に中央社会保険医療協議会委員がいまだに指名されておりません。これはすでに一年有余そのままでございまして、社会保険医療審議の場であるこの協議会の不開催ということは、国民の間におきましても相当大きな批判をもって論ぜられております。また、この協議会の円満適正なる運営なくしては、社会保険医療の完全なる実施不正旭と思います。従って、この委員会の構成は、一日も早くやっていただかなければならぬ、そう思うのでありますが、また、この委員選任とからみまして、非常に困難な事情のあることもよく承知しております。従いまして、なみなみならぬ御努力厚生当局にお願いをしなければならぬと思いまするが、先般これとうらはらの関係にありまする、支払基金理事、幹事の選任につきましては、大臣の格別な御配慮によりまして、委員の任命が行なわれました。従いまして、これらの関連から見ましても、歴代厚生当局のお手がけになられ、解決のつかない事柄につきまして、大臣の御配意がありますれば、あるいは支払基金理事選任同様な形で、医療協議会委員選任も可能と思いますので、この点なお一段の御配慮をもって、折衝にお当たりになられ、一日も早く委員の指名を完了いたしまして、審議をしていただくことを強く要望する次第であります。  続いて御質問を二、三点申し上げたいのでありまするが、ただいま申し上げました医療協議会委員等選任にからむ問題の底には、これから御質問いたしまする事柄関連をいたしております。それは第一に、昭和三十二年十二月に医療費改訂を行ない、その際に点数表改訂が行なわれました。その際の医療掛当者側希望あるいは意見というものは、あまり取り入れられてなかったのでありまして、これらの問題から端を発しまして、特に点数表二元化というような問題がからみまして今日に至っておるような状況と思うのであります。従いまして、この際に、特に点数表合理的改正ということは、どうしても急速に行なわれなければならないのでありまして、また、現在一般医療におきましても、甲乙二表というような、きわめて不合理な医療費算定基準がきめられております。すなわち一物二価というようなきわめて、不合理なものがきめられております。こういったことは一日も早くごれを改訂いたしまして、また、医師会側におきましても強い要望があるようでありますから、これに対する措置を急速に行なっていただく。また、歯科医療の方におきましても、補綴点数更正というものを強く要望されているようであります。とにかく約ニカ年間にわたりまして、新しい点数表実施され、その間にいろいろな欠点もあり、また、長所もあったと思います。そういったことを要約いたしまして、医療担当者側からも意見が出ているようでありますから、この点につきましては、率直にこれを是正して、合理的な点数表をもって今後は実施すべきものと思います。この点につきまして、大臣は先月二十日に談話を御発表になられまして、それに触れておられますが、この際少しく具体的に、それに関する今後の御方針について承りたいと存じます。
  5. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) この間、この基金理事の問題につきまして、その関係のお方様方をお目にかかりました際に、御要望にございました甲乙二表の一本化という問題は、委員会——衆議院委員会であったと記憶いたしますが、これが強く前から出ておりますることにも考慮をいたしまして、そうしてこの際御要望のように、甲乙一本化については、さっそく手をつけて努力すべきであろうという考え方におきまして、厚生省の方にそういうことを申し出でまして、そうしてさっそくとこの問題に取り組んでもらうように、指令をいたしました次第でございます。  また、この補綴の問題でございまするが、この問題もやはり今仰せになりましたように、その当時のときには、これで大体いいだろうというような見解のもとに、ああいうことになりましたのでございましょうが、しかし、やはり実際にやってみますると、そこにも納得のいかない点もおありであったろうと私は考えるのでございます。そういう問題も一緒にいたしまして、甲乙の一本化を検討いたしまするときに、これもあわせて検討してもらいたいと考えている次第でございます。
  6. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 ただいまのお答えで、御意思はよくわかりました。どうかさようなお気持で、できるだけ急速に、この作業を行なうようにお願いする次第であります。  続いて医療費改訂問題でありまするが、これまた医療担当者側におきましては、切実な要望事柄でございまして、私どもも数回にわたって最近陳情を受けております。昭和二十六年に単価改正が行なわれまして、続いて昭和三十二年十二月に八・五%、これは単価に換算いたしますと、一円という引き上げが行なわれたわけでございまするが、まだその引き上げの実態を検討いたしてみますると、とうてい医療担当者側要望にはほど遠いように思うのであります。さようなことであります。従って、この際、医療費改訂、端的に申し上げますると、単価引き上げという問題は、やはり御考慮あってしかるべきではないか、かように考えておりましたところ、今回、大臣談話発表の中に、医療費改訂地域差撤廃等については、諸般事情を勘案して、できるだけその方向に進んでいきたいということでございまするが、いろいろ今後の皆保険対策あるいは諸般情勢を勘案いたしますると、この際、この医療費改訂というものは急速に行なって、一応医療担当者側希望も満たすことが必要である。と申しまするのは、医療は御承知通り、他の業種と違いまして、人間人間のつながりをもって発生するもの、行なわれるものでありまして、単なる経済的単価改訂では解決がつきません。従って、多分に、皆保険になりますると自由診療というものの世界から離れて参りまして、全く一つの規制された医療を行なうことになるわけでありますけれども、今後の医療担当者側生計状態を見ましても、また特に、私的診療所等状態を見ますると、非常に苦しい状態が多くあるのであります。設備の改善等も簡単にいかないというようなことも、これらの医療費の低額に起因しているようなこともあるのであります。従って、この際、できるだけこの改訂については早急に行なって、この皆保険医療に魂を入れることが必要じゃないか、かように考えます。しかしながら、この医療費改訂につきましては、相当莫大な財政負担を伴いまするものでありますので、その点につきましては、十分大臣におかれましても、担当者側希望を御聴取の上、また、御協議をいただきますれば、あるいは妥当な線がおのずから出て参りまして、保険者、被保険者の御同意も得られるような線になるのではないか、かように考えるのであります。従いまして、ここに御発表がありましたので、この改訂の時期、あるいは今後の方針を具体的にお示しいただきますれば、非常にしあわせに思うのであります。その点について一つお示しをいただきたい。
  7. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 現在の診療報酬というものが安過ぎるのかどうかということは、私どもといたしましてもいろいろ考えさせられる点もあるのでございまするが、しかし、この問題も十分調査をいたしてみませんことには、改訂に踏み切りますにつきましても、やはりこれは、そのお金を受け取る医療機関及びその関係者側だけに影響する問題ではございませずして、いわゆる保険者である国あるいは被保険者の側におきましても、相当なる影響があるのでございまするから、ことに今度は国保というものが徹底されるようになって参りますると、十分なる査をいたしませずしていたずらに要望によってのみ踏み切るということは、その影響が非常に甚大であるという点から考えましても、よくよく調査の上で、一つ慎重にやって参りたい、こう考えている次第でございます。
  8. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 もちろん医療費算定については、ただいま御答弁通りと思うのでありますが、とにかく医療費改訂地域差撤廃については、その方向検討を進めていくということは、やはり現行の医療報酬算定というものが適正でないということになるのではないかと思われるのでありまするが、この点についてもう少し詳しくお答えをいただきたい。
  9. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 適正ではないということが御要望の中にはっきり現われております。考えてみますれば、前に改訂がございました時期からは、すでに二年という年月がたっておりますしいたしまして、いろいろな経済状態というようなものも逐次変わって参っております。そういう点から考えますれば、医療担当者のおっしゃることも決して無理があるとは私は考えておりませんので、こういうふうなこともにらみ合わせまして、適正なるものに仕上げたいと考えております。
  10. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 具体的にその御答弁を得られないのはごもっともと思うのでありますが、現実のところ、昭和二十六年に要求いたしました医療担当者単価が、三十二年にわずかに一円の引き上げということであります。二十六年当心に要求いたしました単価と、三十二年に医療担当者側から要求されました単価の格一尉を見ましても、三十二年に要求いたしました当時の単価引き上げというものは、医師会歯科医師会側から出されておりまするが、大体これを平均してみますると、六円八十銭程度引き上げ要望されたと思うのであります。これに対して一円であるということは、これは医療担当者にとりましても納得のできないところであったと思うのであります。しかし、当時、諸般の、被保険者側財政負担等考えまして、担当者側でもこれを了承しておる、こういう事実であります。従って、こういうようないろいろな犠牲が払われております。また、点数表におきましても、さっき申し上げました通り、不合理なものの是正も行なわれておらないというようなことが累積いたしまして、今回のいわゆる中央社会保険医療議会委員の推薦という問題にもなるのであります。従って、こういったような現地の姿からみましても、とにかく適正ではないというふうに思われるのであります。しかし、この算定については、それぞれ数字的な経理も担当者側にあることと思うのでありますが、この点については一つ率直に厚生大臣は、これを受け入れると申しまするよりも理解をし、そうして今回御発表になられました改訂趣旨をはっきりと一つ生かしていく、そういうことでないと、皆保険趣旨といたしまして、完全、円満なる社会保険医療実施ということは困難であると考えますので、この点なおつけ加える次第であります。よろしく御承知をお願いいたす次第であります。  続いて、現在の社会保険診療事務簡素化ということが、要望されております。今回の談話発表の中にも、担当医事務簡素化については、努力をすると言っておられますが、この問題も、私ども数回にわたって関係方面から陳情を受けておりまするが、なかなか実施されない。要は請求書審査を行なうという建前から、簡素化と申しまするよりも、むしろこれが強化されていくというふうな傾向すらあったのであります。こうなって参りますると、現在、低単価によって稼働力を増強して、その収入を補っております担当者にとっては、この事務量の増加というものは非常に負担であります。従って、ふなれな技術者医療担当者が、この事務の煩瑣に巻き込まれているということは、一面正常な医療施行の上に、大きな暗影を投げ与え、支障を来たします。従って、医療担当者に対して、人格を十分にお知りになられて、できるだけ請求書記載等につきましても、簡素化をはかる、もちろん保険者側におきましても、医療費を支払うという前提がございまするので、これに対しまする審査、監査というものが、いつでもできるというような状況は、これは当然なければならぬ。カルテ等の保存をいたしますればいつでもできることであります。従って、請求書につきましては、できるだけ簡素化をしていかなければ、現在のような状況下において十分な支払いが行なわれないと弄えるわけであります。この点につきましては、今回どうも簡素化について協力をすると言われますが、実際には現われていないようであります。この点について一つ意見を承っておきます。また、専門的なことでございますれば、事務担当の方からでもけっこうであります。
  11. 山本浅太郎

    説明員山本太郎君) ただいまの御意見前々からよく承っておる次第でありまして、私どもその線でただいま仰せになりましたような線で極力改善方研究をいたしてみたいというふうに考えております。ただ本質的にはただいま仰せになりましたが、そうしたものが結局支払い前提であります審査を必要とするという過程をたどりますので、審査が十分にできるという本質は失ってはならないことは申すまでもございません。そういう十分に審査ができるという前提において、どの程度事務簡素化ができるかという点は非常に問題でございます。これは先の話でございますが、究極的に医療費担当者側からのそうした苦情を合理的に解決するためには、件数払い方式というものをもっと広げるというようなことで解決できることが一番抜本的なやり方ではないか。ただいま大臣からもお話になりましたように、甲乙の一本化というような機会が一つのチャンスではないかというように考えておりますので、そういう際にはよくただいまの御趣旨を生かすような配慮研究を進めたい、かように存じておる次第であります。
  12. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 ただいまのお返事をお伺いいたしまして、もちろん先ほど申し上げました通り審査というものが当然前提でありまするが、これは診療録等基本等によって事後にできる。従って、保険医を信用する前提に立っていきません限り、なかなかこの簡素化はできない。従って、ある程度やはり踏み切っていかなければ、この簡素化というものは実が上がらない、かように思います。ただいまの件数払いということになりますると、これは支払い方式の根本的な問題になりますので、これは事務簡素化というよりも支払い方式の変更ということであります。従って、そういうようなことでなく、できるだけ煩瑣な事務を省略するということが、診療能力の今後にも影響がありまするので、これについては格段に検討の上で善処を願いたいと思います。  続いて、次の点は制限診療に関しましてお話がございました。この制限診療についてはもちろん大臣談話にも、無制限にこれを広げることは保険経済の上から至難であることはよくわかります。しかし、医療本質生命尊重ということに根源があるのでありまして、新しい医療取り入れ技術取り入れということはどうしても保険医療から見ると不可欠であります。従って、この制限診療撤廃によりまする保険財政の膨脹、また、帰納いたしますると、これが被保険者負担によって行なわれるのである。そのためにこれができないということでなく、一定国庫負担国原補助によりましても、この制限診療というものはできるだけ撤廃しなければならない。もちろん、これは医療担当者におきましては、単にこれを制限診療撤廃によって収入を増強するということでなく、医療本質を確立するという意味から制限診療というものはやめなければならぬと思うのであります。言いかえますると、自由診療保険診療の間に格差があってはならない、これは生命尊重根源から鉄則であります。従って、こういう方面から主張が行なわれ、また、大臣もこれに対してお答えがございましたが、とにかく漸次これを撤廃していくことは財政上の切り回しも必要でありますが、さような考え方に立脚いたしませんと、今後社会保険医療の完全なる適正なる発達はあり得ないと思うのでありまして、そういう思想が一つ医療担当者にとっては根本的なものでございまするから、その理解をどうか深めていただきまして、この制限診療に関する漸次撤廃適正化をはかることが必要と考えます。この点について一つ御所信を承りたい。
  13. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 現在の保険診療制限診療であるというお言葉でございまするが、そういうこともあるいは言い得られるかもしれませんけれども、私どもといたしましては、これは規格診療である、こう考えております。これをお医者様もむろん私どもは御信用申し上げているのでございまするけれども、やはりそこに何かよりどころを持っていたい、社会保険のことでございまするので、そういうつもりで今はいるわけでございまするが、次第に私どもはこういうものは少しずつそういう方向へ向かっていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  14. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 続けて、談話発表に、治療指針等あるいは診療基準と申しますか、治療指針等改訂についても触れられておりまするが、この際御質問したいことは、この治療指針はやはりただいま御発言があった社会保険診療規格診療、ある程度規格をもって診療するという延前から、この治療指針というものがきめられているのはよくわかります。あるのでありますが、あまりこの治療指針規格というものを画一的にこまかくきめていくことは医療本質から見ますると私は不適切と思うのであります。少なくとも医療というものは、同一疾病でありましても患者の個々の状態によってその治療方針も変わってくるのであります。従って、非常に複雑であります。ある程度これは保険医担当医の判定、判断にまかせませんと、あまり規格的な、規格によって縛りますと治療ができないのであります。こういったことはできるだけ幅を持たし、あとはこの担当医診断能力診療能力にも帰するのでありまするが、医療は決して規格等によってきめることはできない、従って、こういうことについては医療担当者側希望というものは高度に取り入れていただく。しかしながら、ただいま御発言のございました通り、それが直ちに医療の幅の拡大となって経済に相当響いてくるというようなことも、これは、まあ、ひいては多少考えなければなりません。この治療指針等については大幅に医療担当者側意見を聞くことが適正な医療を行なうゆえんじゃないか、かように考えるのでございます。この点につきましても非常に専門的な点でございまするので、事務当局の御答弁を願います。
  15. 山本浅太郎

    説明員山本太郎君) ただいま仰せになりましたことは非常にごもっともでございます。政府といたしましても、いたずらに治療指針とか、あるいは治療基準といったようなものを現在以上に広げていくというような考えは持っておりません。また、現在の治療指針におきまして、最近の医学、医術の進歩にそぐわないというような点もだんだん出て参りますので、そういう点は学会意見に基づきまして、できるだけすみやかにその内容を合理的なものに改めていくような努力を怠らないようにしていきたいと存じます。ただ、現在、御承知のように、結核以下の若干の疾病につきまして治療指針が出ておりますのは申すまでもないことと存じますけれども治療について医師としてよるべき準拠があることが望ましいということ、及びその治療にあたりまして、治療の方法が財政的に非常に大きく影響するといったような特殊なものに限りまして治療指針が出ておるのでございまして、そういう見地から見ますと、たとえばこれは今学会でも研究していただいておるところでございますが、ガンのようなものについては現在出ておりませんので、そういう特殊なものにつきましては考慮する必要があると存じますけれども、ただいたずらに保険財政への顧慮といったようなことで、結果的に医師の拘束となるような、不利となるような指針というものは作るような考えは持っておらない次第でございます。しかしながら、先ほど申しましたように、治療指針がそういう使命のもとに生まれておることの事情もよく医師方々、に御理解いただきまして、また、所在の治療指針というものは必ずしも一切の医師自由判断を規制しておるわけではございませんので、治療にあたりまして医師が十分その場合においてとるべき応用といいますか、例外といいますか、そういう場合も見ておる次第でございますので、現在の指針がそう医師にとって窮屈であるということは当たらないのではないかというふうに考えておりますので、いずれにしましても、そのときそのときにおきまする最も合理的な、また、新しい薬等が必要になったというような場合におきましては、それも取り入れるというような趣旨で、せっかく設けられております指針のほんとうの意味が達成されるように運営し、努力していきたいと、かように感じておる次第でございます。
  16. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 まあただいまの御答弁、一応うなずける点もありますが、また、うなずけない点は、とにかくこの治療方針というものはいずれも学問的ないろいろの意見から全く分かれている場合が相当ございます。必ずしも一定治療方針治療指針というものはきまらないのでありまして、学問的にもそういう違いが所々にあります。従って、それは担当医はいろいろ異なった学科の教育を受けている方々でありますので、従って、それらの知識も取り入れていくということの自由がなければならぬ。ある場合にはどうも指導的な監査が行なわれますと、その際に画一的な処置を要求したり、ちょっと変わった診療治療方針に関しましては注意しろというようなことは聞いております。そういうことがあってはならないのでありまして、あくまでもただいま御答弁のように、学会等の等申は絶対でありますので、これらを無視して治療指針の決定はあり得ないと思いますが、今度この学会意見、こういったものを中心にしていだたきますれば、医療担当者側要望も満たされる、かように考えますので、努めてこの方面においては御配意があることを私ども要望いたします。  それからこれは今回の談話発表の中にはございません保険民に対しまする監査の問題でございますが、もちろん社会保険医療は制約診療でございますので、従って、不適正な医療に関してはこれを是正する、また、保険者側におきましても必然だと思います。被保険者側も同様であります。しかしながら、この医療というものは先ほど申し上げました通り、その患者の個々の状態によって人なってくる。一律にいかない。また、患者の状態によっては、先ほど申し上げまするように、生命尊収の本意から、治療指針がありましてもそれをこえてでも完全な治療を施したい、また、早期治療を望みたいということもあり得るのです。そういったことで、幅を持ったものでありませんと疾病、病気は完全な治療は望めないのであります。こういったようなことから、医療担当者側においてもいろいろ処置が行なわれますが、そういう際に監査が行なわれる。たとえば一つの例を申し上げますると、一件当たりの点数が非常に高いというようなときに監査が行なわれることがあります。しかし、中央におきまする指導、厚生省方針というものが、決してそうであるとは私申し上げません。案外末端等に参りますると、そういったことでどうも監査が行なわれる。はなはだしい場合には保険財政の膨張をこれによって防ぐ、押えるというような要素すらあったこともあるのであります。最近は非常に改善されております。しかし、これはまだ最近、ここに出ておりませんが、しかし、末端にはそういったゆがめられた監査があるといったようなことも聞いております。改善されたことも聞いておりますが、この点についても御配慮を願っておきたい。これらの点は御答弁をいただかなくてもけっこうであります。  最後に、ただいままで御質問いたしました事柄は、大臣談話の全部ではございませんが、あげられたものにつきまして私は御質問をいたしまして御答弁をいただきましたが、問題は、これらの問題につきましては、非常に根強い、また、古いいろいろな長い間の懸案となっておることが多いのでありまするから、にわかにこれが解明されるとも私は考えませんので、少なくとも熱意を持って当たっていただきませんと、今後の社会保険医療というものがくずれてくる。その現われが中央社会保険医療物羨会の委員選任が不可能になっておるというような状況に立ち至っておりますので、どうかそれらの点を十分にお含みをいただきまして、中央社会保険医療協議会がとにかく開かれなければならぬ、こういうことによって、この場において適正にこれらが論議せられますよう、格段の大臣の御努力を私は要望する次第でございます。  なお重ねて、先ほど申し上げました通り支払基金等につきましては異例な大臣の御熱意によって解決した。従って、私どもは非常に期待をいたしておりますので、この点についても敬意を払うと同町に、重ねて御努力を願いますよう申し上げまして、質問を終わる次題でございます。
  17. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 この際、私も大臣に御質問をいたしたい。ただいまの鹿島委員に対しまする御答弁、大方は私といたしましても、大臣の熱意、あるいは経験に徴せられましての政治的な感覚の立場から適切な御答弁をなさったように感ずるわけでありますが、なお、私としても二、三不満な点がございまするので、率直にこの機会にお尋ねしたいと思うわけです。  先般のこの委員会において、大臣は所信の表明をなさいました。われわれはその御演説を拝聴いたしまして、多大な期待をかけておるわけでございます。ところがその後、いろいろと政府の御都合なりあるいは自民党内における政調会等の考え方等を新聞等によって拝見いたしますというと、最初の三大政策である公共投資、減税、社会保障、この三つの柱でもってやるということであり、特に当初は社会保障ということ重点的に、優先的に取り扱われるようにわれわれは期待もし、また、新聞等によってもそういうような感じを持ったわけでございます。そうした環境下において所信の表明をいただきまして、先般も問題になりましたが、低額所得者対策の一つの生活保護費に対しまする新大臣考え方、非常に私はけっこうであろうと思っておったわけです。だんだんその線もいろんな関係からして後退の余儀なきょうな状況にあるように私は感じるわけです。事実でなければけっこうでございまするが、そういう感じをこのはだに感じて、私は非常に遺徳に思っておるわけであります。せっかくの婦人大臣が出られまして、愛情のある政治をするということをモットーにして立ち上がっておられるにかかわりませず、周囲の男性の大臣諸公が、各省の所管関係からいたしましてか、あるいは、その他いろいろな面からでありましょうが、愛情の欠ける政治になりかかりつつあるということを私は非常に懸念いたしております。また、年金の問題にいたしましても、生別母子に対しましてまでもあたたかい手を伸べるんだということでありましたが、どうやらそれも雲行きが怪しいように考えられる。あるいはまた、環境衛生の問題は私も非常に関心を持っておりまするが、せっかくの大臣考え方が、これまた予算の面において相当窮屈なものに圧縮されていきつつあるように考えられるわけです。要約いたしますというと、最初は脱兎のごとき勢いで立ち上がられました大臣が、処女のごとき状態に追い込められていくということは、はなはだ一般国民に対しても、ことに低額所得者に対しては悲しむべき実情であろうと私は思う。来年度こそ国庫の自然増収から考えましても、この機会が最も絶好の私は社会保障確立の時期だろうと思うにかかわりませず、大臣の熱意いかんにかかわらず、そういう客観情勢が出てくるということははなはだ遺憾であり、そういう空気に対しましては、われわれもともどもに協力申し上げなければならぬと思うわけでありまするが、今日の大臣のまず決意と申しまするか、こういう空気に対しまして、はたして今後どういう態度をもって、どういう方針をもって立ち向かわれまするのか、最初にこの点をお聞き申し上げたいと思います。
  18. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) ただいま竹中委員から御懇篤なるお言葉を賜わりまして、感謝をいたしておる次第でございますが、なるほど、新聞に出てきておりますのを見ますると、何か後退したかのごとき錯覚を与えるような記事も出ていないとは私は申しませんのでございます。しかし、仕事はこれからだと私は思っております。厚生省といたしましては省議を終えまして、しっかりした予算をちゃんときめておりますのでございまして、まあ、いろいろと新政策によって出てきました面も見ておりますると、まだ生活扶助にいたしましてもこれこれでなければならぬということを言われたこともございませんし、また、何と申しましょうか、生別母子世帯におきましても、生別という名の母子世帯ということはどうも国民年金上いかがかと思うけれども、しかし、他の方法によってこれを補おうというような声も出ておりまして、新聞で御承知通り、これは今後検討するということがはっきりと明示してございますので、私も、まだ仕事はこれからだと思っております。予算をずっと見てみますると、むしろ、予算の面では三十九億七千九百万円ほどふえておるのでございます。でございまするから、どうぞ一つこういう点もともととごらんいただきまして、決して社会保障の問題が後退はしていないということを、予算の数字で一つごらんいただきましたらいかがかと思うのでございまして、今後ともぜひ一つ皆様方に御激励をいただきまして、私どもの予期しておりますることへ必ず到達できまするように、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。
  19. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 御決意は非常にけっこうでございます。予算の面で三十九億何がしふえたということでございまするが、厚生省は二千七百億円からの要求予算をなさって、はたしてこれがどれだけ獲得できるか。前年度に比べて一千二百億円以上の増額要求をなさって、それがはたしてどういうような扱いを受けるか。ただ自然増分だけまかなわなきゃならないような程度のことに往々にしてなるわけです。この点を私は懸念するわけでございまして、そうした点においては、新大臣の政治力を十分に発揮なさらなければ結果的には後退する、かように私は考えるわけです。総予算各項目のうちの一、二がふえましても、それは社会保障制度全般から見れば決して進歩でなく、あくまでも後退でございまするので、そういう点を私は非常に懸念いたしております。  続いてお伺いしたいことは、今、鹿島委員から医療報酬金の問題が質問されました。私が考えてみまするのに、過去数年来、医療担当者側厚生省関係、あるいは他の七団体との間に大きなトラブルがあり、感情的なそごがございまして、きわめて権威あるべきはずの医療協議会すら開かれないということについては、一体だれの責任かということが問題になると思うのです。この責任の追及につきましては、それぞれの立場から言い分があって、今日この席上においてとやかく申すわけではございませんが、責任の所在のいかんにかかわりませず、受ける影響、悪影響、マイナスの面は国民全大衆が受けるわけであります。そういたしますというと、やはり行政官庁がこうした感情の払拭をはかる、あるいはトラブルの原因を取り除かなければ、私は永久に医療保険というものの進歩発達はないと思う。抜本的な考え方をなさらなければ、ただこの機会にこうやくを張るような応急処置だけでいくということは、国民皆保険前提とした今日——前提でない、すでに皆保険になっている今日、非常に遺憾であると思うのであります。こうした点について二、三お聞きしたいと思うわけですが、まず第一にお聞きしたい点は、先ほど単価問題について御答弁がございました。非常に大臣は、単価そのものが適正か不適正かということでなくして、医療担当者仰せは十二分にわかる、こういうことなんです。わかるということは、やはり不適正であるというにおいを僕は感ずるわけです。医療担当者の方から申し出があっても適正であれば、わかるのでなくして、それはあなたの方の考えが間違っているのじゃないかということを私は直ちに説得してもらえると思う。やはり理解のある説得によってでなければ、納得でなければ政治はいかぬと思うわけです。どうも、わかるという限りは説得をするに十二分な根拠がないのじゃなかろうかと一応考えられるのです。単価についても、科学的データなり、経済指数なり、いろいろなことによってむずかしい議論が出てくるわけでありまして、そういう議論をこれまたここで展開しようと思いませんが、要約するところは、わかるという限りはどこかに不満足な点がある、かように私は考えるわけであります。少なくとも厚生当局としては、不適正な単価でもって医療担当者医療をさしておるとは、これは言えないはずなんです。あくまでも適正であるという建前でなければ、一日も人命を預かる医者に不適正な料金でさしておるということは、これまた非常に済まないわけでございますからして、こういう公開の席上での大臣の御答弁としては当然適正であるべき考え方に立って御答弁をなさることは、これは当然であると思うのでありますが、今のおっしゃった御答弁の中にありますようなニュアンスというものはだれが考えても私は当然であると思うわけなんです。そこで単価問題についてはきわめて影響するところが多い。保険者、被保険者あるいは事業主各方面の意向も尊重しなければならないから、十二分な慎重な検討の上で善処したい、こういう御答弁があったわけです。ところが一方、甲乙を単表化する問題につきましては、それほどの慎重性があるような心がまえのようには私は今の御答弁では受け取れなかったのです。で、私は単価と同様に点数の問題も非常に重要だと思うのです。御承知のように、今日甲乙一本化するということにつきまして、何か経済的な理由で、乙表では非常に損するから甲表にするとか、あるいは甲表は損だから乙表をとるのだというような誤った考え方関係者の間にすら持たれておる。従って、新聞紙上においてもそういうような表現をされておりますが、私は報酬金の考え方というものは点数と単価の相乗積でございますが、点数というものは各医療行為のバランスを示すものでございまして、乙表をとったら損だとか、甲表をとったら得だということはあり得べからざることだ。バランスさえとれていればいい。そのバランスをとるのには、総請求点数のワク内操作による一本化ということでありますので、あるいはそう慎重な考え方をせずに、大臣の御答弁を私の受け取った受け取り方では単価ほどに考えられないのは、そういうワク内操作でできる被保険者保険者、事業主にあまり影響なくしてワク内操作でできるのだというふうに私はとれるわけなのです。また、それはほんとうでございまして、点数のアンバランスの是正ということはあくまでもこれはバランスの問題だ。経済価値を裏づける問題とは少しく意味が違うわけなのです。その点数に単価をかけまするから、結論的には経済指数は出てくるわけですが、一応考え方としてはそうでなければならぬと思うのです。そこで私お聞きするわけなのですが、一物二価はいけないのだということで、すでに前回の衆議院社労委員会においては医療担当者の要求するまでもなく、一本化ということを決議されておる。これは当然のことであろうと思う。この参議院の社会労働委員会においてもその当時から単表化であるべきであるということは各委員が異口同音に唱えておったにもかかわりませず、複表によって実施された。その実施されたことの結果がいろいろ問題があるというのですが、少なくとも衆議院においてそういうような決議がなされてから今日単表化をするについて厚生当局として、はたしてどの程度の科学的な調査が進められておるかという問題なのです。かりに要求がなされたからすみやかにする、早急にするように事務当局大臣が指令されたということですが、この医療行為のバランスというものはそう簡単に私できるものじゃないと思うのです。短時日にできるものじゃないと思うのです。また、短時日にすれば必らず後日問題が出てくると思うのです。従って、今回考えられておられることが単表化はするが、暫定的なものであって、恒久的なものではないんだ、こういうような考えで臨まれるのか、あるいはまた、単表化するについて相当な科学的な基礎を持った調査に基づいてやるものであるというようなことで単表化にふんぎられるのか、そうした点について私は非常な将来に憂慮するような事態が発生してくると思うのです。やはり相当な調査がなければ、朝令暮改的なことはかえって弊害があるのじゃなかろうかと思いますので、まずその単表化につきまする準備ができておるかどうか、ただ要求がある。あるいは率直に申し上げまして、解散を目睫に控えた今日、各方面にいろいろな刺激がいけないのだから、まあまあとりあえずやろう、こういうことなのか。私は医療報酬問題というものはそういうふまじめといっては語弊がございまするが、そういう信念のない行き方であっては非常に大きな禍根を残すと思う。そうした点についての厚生当局が単衣化に対する現在までの調査の実績なりあるいは今後行なおうとする方法なりあるいはこれが完了を予定する時期なり等につきましてお伺いしたい。
  20. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) ただいまの御発言の中にその単価が安いというようなことを認めたではないかというようなお話がございましたが、それは二年前にこれはきまりましたことでございまして、その当時はまあこれでやむを得ないであろうというところに参っておったのであろうかと私はこういうふうに察しておるのでございまするが、しかし、いろいろと経済状態も変わって参りまして、そうして国のいわゆる経済も伸展しておりますし、それにつきましてはいろいろこの変化からこういう御要望が議会の方から出ているのではなかろうかというのが私ども考え方でございまして、それならばこれをもう一度考え直してそして慎重に調査をして、そしてこれが妥当であると厚生省当局、あるいは医療担当者のお方だけでなく、国民もまたこれで妥当であろうという線まで持っていくのが私は適当であろうかと思うのでございます。それで甲乙二表というものは私が申すまでもなく非常に立て方が違うということでございます。それで一本化をはかると申しますことは、必ずしも容易なことではございません。竹中委員仰せになった通りでございます。これはそこつにいたしますればあとに憂いを残すのでございますから、まあ二で割っていったらいいじゃないかというような、そういう問題ではないのでございまするから、これをどう扱うかということは今後やはり十分に研究していかねばならないと思います。選挙があるから一つちょっとアドバルーンを上げた程度でというようなことは、こういう人命の問題につきましては絶対に考えてはならないことであるし、また、だれも考えようとしていないと私は思うのでございます。目下の考え方といたしましては、抽象的に言えることは、もっと合理的に、甲だけでいけとおっしゃる方もございます。しかし、そういうわけにもいくまいと思います。また、乙だけということもできませんので、二つの点をよくよく勘案しまして、より合理的に、しかも医療担当者の取り扱い方が簡便で、事務簡素化にもまたここで一歩前進するというようなものにしていかなければ、ここで変えていくという意味はなくなるのじゃないかという考え方をいたします。今中しました通りにこれは一つの、これを一本にするのだということは一つの目標と申しますか、理想でございますので、現在作業する人は、これは非常にむずかしい困難な面に私は直面すると思うのでございます。しかし、むずかしいからと言ってそれを放置しておくということはできませんので、各関係者のお知恵拝借でもって、何とか一つすべてのものが、まあこれならば何とかやっていこうという気持になっていただくまでやらなきゃならないので、きょう言ってそれならばもうちょっと先でできるという問題ではないと思います。やはり慎重にやっていってこそほんとうに何と申しますか、これを一本化したということがよかったと皆様にお考えいただくことじゃなかろうかと、こう考えております。
  21. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 事務局の方の……。
  22. 山本浅太郎

    説明員山本太郎君) ただいま大臣から申されたような趣旨でいろいろ考えております。気持はただいま大臣が申し上げました通りでございまして、もともと建前と言いますか、そういう立て方の性格が非常に違うものを、二つのものを一つにするということでございますので、今仰せのように、非常に作業の上では困難が生ずることを覚悟していることは事実でございます。ただいま竹中先生からお尋ねがございましたが、必要な調査はどうなっているかというお尋ねでございますが、政府管掌の健康保険につきましては頻度表の新しいものが現在得られております。ところが、国民健康保険につきましては三十年のものしかございません。御承知のように、三十年当時と今日とでは国民健康保険の進み方は飛躍的に違っております。当時主として農村だけがとっておったといったような国保が、現在におきましては、東京を初め大都市においても相当進んで参っております。そういう大きな国民健康保険の進み方の経緯がございますので、国民健康保険につきましては、どうしても早急に新しい頻度表を符なければならないということがまず作業の絶対的な必要要件でございます。従いまして、甲乙一本化につきまして早急に準備にかかれという御下命が大臣からございましたので、直ちに前々から事務的には考えておったところでございますが、国民健康保険につきましての頻度表の調査に現在取りかかっているような次第でございます。
  23. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 甲乙一本化という表現が私はいけないのじゃないかと思うのです。今事務当局の御答弁の中に、乙表というものは三十三年十月以前の古い考え方によって組み立てられている。ただ機械的に八・五%を増減した。これは考え方の、報酬の点数なんですね。甲表の方は申すまでもなく、新しい角度から、新医療体系の角度から立てられた。この異質のものを一本化するというような表現が大体誤解を招いている。あるいは混乱を来たす原因だろうと思う。甲乙一本化でなしに、新しく医療費というものはこうあるべきだという、権威のある頻度調査に基づいたところの点数表ができなければうそだろうと思う。大体、二年前に二つの表を出された厚生省自体が間違っておるのである。あの当時から権威のあるものならば、甲乙複表ということはないはずなんです。ただ、当時の情勢からして、医療担当者の感情なり、思惑なり、あるいは保険者側考え方響を考えて、まあ妥協的といいますか、風波を立てないように、自由選択さす建前の方が賢明だろうという政治的配慮からきておるのでありますが、ニカ年経過した今日におきましては、そういう配慮を抜きにして、甲を直すのだとか、乙を直すのだとか、あるいは足して二で割るというようなものでは、およそ権威のないものしかできないと思う。だから、そういう意味合いで、甲乙一本化するという言葉自体が何か誤解を招くと思いますので、そういう考え方を改めたいと、かように考えております。  そこで、次に大臣にお伺いするわけです。これは少し意地の悪い聞き方かもわかりませんが、今大臣は、だれが考えても適正な単価にしたいとおっしゃったけれども、それでは一体だれが決定するのか。法律的な解釈からいえば、医療協議会だろうと思うのです。医療協議会がはたして適正な単価が決定できるかという問題なんです。払う側と受ける側とが寄りまして、反対の立場の人が寄って、しかも委員のバランスは、六人対十八人というような、きわめてはっきりした採決をとる立場の条件下において、公正妥当な適正な単価が決定できるかと思うのです。従って、それに対しては、厚生当局が積極的な指導をなさって、公正妥当な単価が決定されるように指導なさるのか、あるいはあくまでもただ単に諮問という形においてなさるのか、こういう点に、相当単価決定にあたってのデリケートな問題ですが、私は妥当な線が出るか出ぬかという分かれ道だろうと思うのです。おそらく私は、医療協議会において妥当な線が、受ける側から満足するような線は、おそらく反対側からは満足せぬだろうと思うのですが、一体私は適正単価というものの決定はむずかしいと思うのです。その点はどうお考えですか。
  24. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 今のお話、大へん御心配でございますが、また、私どももやはりそれは心配の種にはいたしておるのでございますが、しかし、この医療審議会におきまして、いろいろの立場のお方からお話をいただきまして、そこで何とか一つの線を出していただきましたならば、そこだけでなく、国会という、大所高所から物事をお考え下さるこの国会もございますので、そこでもまたお考えをいただきまして、そういう方面のお考えを私どもが勘案いたしまして、そうしてまた、私どもは私どもの立場としての進言をいたしたいと、こう思っております。
  25. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 大へん私驚いたのですが、単価問題を決定するのに、国会がその権限があるのでしょうか。政府所管の報酬金に対しては、国の予算でもってきめなければならないのですから、政府所管の健保勘定に関しまする限りは、国会においても予算の面からの決定権があると思うのですが、負担をする四百億円のうち、かりに一円上げたとしても、二百何十億円という大きな負担は、われわれ国会議員なりが論議すべき筋合いの対象でないところが負担するわけなんですから、そういうことを国会で審議して、その国会で審議したことが医療協議会を制約できるかどうかということです。もっとも、最終段階においては政府が行政措置をとるということなら、これは別でございますが、おそらくそういうことは、納得ずくの政治をする場合において、官権を使って、医療協議会の答申がどうあろうとも、あるいは国会の意見だけを尊重してやるということは実際できないと思う。そうしたら、この場合の一応の御答弁としては筋が通ったようですが、実際問題としては私は困難だろうと思う。従って、私が意地の悪いことをお聞きすると申し上げたのはそこなんです。  これを前提として実はお聞きしたいことは、やはり米価審議会があって、年々お米の価格を御決定になっている。同様に、社会保険の報酬金の審議会というものは当然なければならぬと思うのです。今のように医療協議会できめるのだということでありましたならば、なかなかこれは適正な単価はきまりにくいと思う。やはり、医療担当者あるいは保険者というような直接関係のある人の会合でなくして、経済学者なり実際の経済界に活躍しておられる学識経験者等を集められまして、抜本的な策を立てて、社会保険の報酬金というものを今後算定していかなければならぬ。今選挙対策ではないとおっしゃいましたが、対策であろうとなかろうと別でありますが、そのときそのときに要求があるたびに、厚生当局が中にはさまつて苦労なさって、そうしてまあまあというようなことでは、私は決していくものではないと思う。これはあなたよりも、むしろ総理にお聞きしたいのですが、所得倍増計画というものがございますが、十年先になって国民一般が所得が倍増される、低額・所得者は五倍になるのだというようなけっこうなお考えのようですが、今のような状態で、単価がくぎづけのような状態で、あるいはたまさか二年に一ぺんくらい単価を変えるというような状態で、十年たったときに、医療担当者だけは所得が倍増しない、実質的には二分の一に減ぜられるような状態になる。少なくとも、年間七・二%なり九%の産業の成長率を考えられて、これが反映して賃金ベースがプラスされていくということでありますならば、やはり単価審議会というようなものがありまして、そこで当然それににらみ合わせたところのスライドがあってしかるべきであって、医者が単価を上げろと言うから上げるとか、下げろと言うから下げるのだというような権威のないことではなくして、国が法律を作って、単価審議会というようなものを作って、経済実態からしてごうあるべきだというような決定ができる機関がほしいと思う。これは厚生当局でそういうお考えをお持ちになって、法律を政府提案でなさるということも一つの方法でありましょう。あるいはそういうことを考えておらないということでありますならば、議員立法でやるということも方法でありましょうが、きょうはそこまでの具体的なことは申しませんが、考え方としては、医療担当者の賃金ベースだけは何ら諮るべき機関がない。官公吏の公務員給与については人事院が勧告する、あるいはその他の一般の俸給者に対しては民間のそれぞれの機関を持ってやっていらっしゃるにかかわらず、社会保険の報酬金だけは言わなければ上げない。言えば、考えてみよう。その場合には、反対の圧力がかかって、トラブルが起こる。大体この五、六年間、医師会あるいは歯科医師会厚生省、あるいは一般の保険関係の団体とがうまくいかなかったのは、制限診療の問題に良心のうずきを感じておる、それから報酬金と、この二つの問題が大きな禍根を残しておると思う。先ほど制限診療ではないとおっしゃいましたが、規格診療と申しますが、規格を作ることによってきまった方針を守るということは、制限診療なんです。言葉は違うようですが、結果的に見ましたならば、一つ規格をお作りになって、その基盤の上に立ってこういう方針でやるのだということは、スタンダードになる。単なるスタンタードならよいが、そのスタンタードをこえると、監査なりあるいは審査会においてお目玉を受けるということは、結局制限診療という、やる方の医者から見るならば、そういう感じを持つわけです。そういう点を、医療保険の円満なる発達を考えるならば、どうしてもこの際、社会保険報酬金に対する正しい算定方式を作るということと、制限診療か、規格診療か、その言葉のあやは別としまして、医者の良心によって必要な治療を即刻行ない得るというような体制でなければならないと思うのです。規格診療であろうと、制限診療であろうと、あくまでも医者の人格なりあるいは技術なりを信頼なさって、医療常識によって医療をやるのだということは、これは一つのスタンダードであって、それ以上こまごましたことで、患者も見ない立場において机上でもっていろんな制限なり規格をするということは非常に危険である。病気はもとよりケース・バイ・ケースで治療しなければならぬにもかかわりませず、あらかじめ予定のない病気を規格でもってやるということ自体が私は不自然だと思う。この二つが解決しない限りは私は医療行政は円満にいかぬと思うのでございまするので、根本的な医療行政の面においての考え方を一応こうした機会にお考え願いたいという私は熱望を持っているわけですが、そういう点に対しまして、大臣はどういうようなお考えであられるか。単価審議会の問題と、制限診療に対します問題、特に私が一番憂えますることは、医薬は日進月歩している、保険財政はきまっていて、保険料率はきまっており、賃金ベースが上がるから自然にふくれるだろうということを言われるのでありますが、私は決して賃金ベースが上がった場合に保険勘定がふえていくとは考えられません。おそらく保険料率というものは世界で相当高い、あるいは一時は世界で最高の料率をとっていたわけでありますが、おそらく今の制限下において、健保の黒字が出た場合は保険料率を下げるということになりまして、決して医学の進歩に追随していって保険財政がふえていくということは考えられない。その場合には当然国民に負担能力がなければ国家が負担しなければならない、こういうような点から考えましても、非常に私は医療というものはむずかしい問題でございまして、なかなかそう簡単な考え方をして取り扱うというわけにはいかぬと思いますから、以上の三点を、制限診療に対する考え方、医薬進歩に対する今後の対策、及び所得倍増等に関連いたしまして、医療担当者が十年先どうなるか、やはりそういう長期的な考え方をしてやってこそ私は納得づくの政治であり、また、事実そうなきゃならぬ、かように考えまするので、この三点についてのお考えをお聞きいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  26. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 私先ほど言葉が足りませんで失礼をいたしましたのでございまするが、むろん最後は厚生省の責任をとっておりまする厚生大臣がこれを決定しなければならぬことだと思いますけれども、そこに至りまするまでに医療審議会で、そこに委員におなり下さいますお方様方のお考えを述べていただき、そうしてまた国会という大きなワクという意味でなしに、そこにいらっしゃいまする良識ある方々のお吉葉を、御意見をも聴取し、また、先ほどいろいろ御質問の中にも出て参りました学識経験者の御意見をも聴取いたしまして、これでよかろうという最後の決定は、この大臣の責任においてするのが行くべき道であろうかと思うのでございます。それで制限診療ということでございまするが、やはり一応の、何にでも一つの軸というものは置いておかなければ、やはりよりどころというものは必要ではなかろうかと思いますので、本来ならば、この制限診療撤廃しろとお医者様からおっしゃいますのは、ケース・バイ・ケースの病気に直面なさいましてそうお考えになるのは、私は御無理はないとは存じまするけれども、そこまで参りますると、やはりそれに対する国の責任も出て参りまするし、また、一般患者の支払い能力ということも出て参りましょうし、いろんな問題でまだそこまで私どもの気持は進展をいたしておりません。先ほども前の委員の方にお答え申しましたように、そういう目途に向かってじりじりと進んでいきたいと、まあ経済も進展いたしますが、病気もいろいろと昔は四百四病といっておりしまたが、きょうはもう四百四病どころの騒ぎではございません。万病というようなことさえ言われる時代になって参りまして、伝染病も、諸外国との交通がひんぱんになりますと、予期しないものまでも、ついこの間も、せっかく私が小児麻痺対策で二億一千万円の予備費を出していただくことに成功をいたしましたら、そのとたんに翌日の新聞で、今度はまた小児麻痺と言うのか言わないのか知りませんけれども、二つの新しいまた病菌が出てきて、それもまた肢体を麻痺させるんだというようなことを新聞で読みまして、なるほど病気も日進月歩するわいと私は思ったのでございます。そういうわけでございまして、これは非常に困難な問題であろうかと思いますので、まあ本来ならばすべてのものを撤廃するのがこれはもう一番いいことでございましょう。しかし、そこまではまだ私どもとしては、行ってはどうも船がひっくり返りそうにも思いまするので、じりじりと一つ天候を見ながらとでもと申しましょうか、前進させていってこの病気に対処したいと思っておるのでございます。お説の通り、まあいろいろとこの問題につきまして、今ある審議会だけではどうか、その中ででもいろいろとそういうことをお考えになっていただくこともお願いをしていって、何とか一つこの病気というものに対する私どもの体制というものを固めていきたいということを私も心から願っております。
  27. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 竹中委員、簡単にお願いいたします。
  28. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 われわれは明日から北海道の方へ実は視察に行くのですが、今小児麻痺のことが出ましたが、おそらく現地に参りますというと、今回千人からの患者が出ております。六十数人の子供が死んでおるというような惨状を呈しておるわけです。おそらく国としてこれに対してどういうような考え方をしているかというような質問をわれわれ受けると思うのですが、今北海道のあの問題に対して、とりあえずどういう対策を講じておられるかということを、後刻でもけっこうです、今簡単に御答弁ができ得ますならばお伺いしたいと思います。
  29. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) ああいう病気が出まして、昨年は二千人台でございました。それがもうことしは三千人台になっておりまして、非常に悪化をいたしております。自衛隊も出動いたしまして、懸命になってそのビールスの何といいますか、消毒に努めて下さっていることをテレビで私も見て承知をいたしておるのでございまするが、なかなか大へんなことでございまして、夕張の町の人たちは村八分にされてよそに行くこともできないような格好でございます。親はその病人をかかえて、死にいく姿を見て泣いておるところも出て参りまして、私も非常に心を痛めております。それで二億一千九百十八万円だと記憶いたしておりますが、来年度の予算まで待っておりますると、今度は来年の夏季のこの病気の攻勢に対しては、とてもこれは国としては準備ができませんので、それだけの予備費を出していただきまして、そしてついこの問までは検定も一ポツト二十万人分だと承知いたしておりますが、それではとても追いつきませんので、向こうも非常に人数が足りない、また場所も足りないというので御苦労をいただいておりまするが、これを六十万人分までぜひ一つスピードアップしていきたい。この間も北海道長官に出会いましたら、自分は注射液が今の病人にきくと思ってやいやい言うておったけれども、もう発病した人には効能がないのだと聞いてがっかりしたというお話でございましたが、来年の一月からこれをまた来年度の対策としてこの予備費は取ってあるのでございまして、それで何といいましょうか、経済状態の悪い人、これは聞くところによりますと、まだ法定伝染病にもなっていないと聞いておりまするので、非常に悪い状態でございます。芦、して文明病と言う人もございますが、聞くところによりますと、やはり不潔なところからこの病気は蔓延するということも聞いておりましてあまり文明病でもなさそうでございますが、そういうわけでございまするから、結局六カ月から一年六カ月までの子供には、三回注射が必要なんでございますね、それでいわゆる貧しいと申しますと語弊がございますが、割合この注射液が高うございますので、そういう手元の不自由な人たちには無料で、減免の考え方を持っているということが一つでございます。それでもし集団発生をいたしましたようなところには強制的に零才から一年、一年六カ月ぐらいの子供には予防注射をするというところまでただいま進展いたしております、これが対策でございます。
  30. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 委員長……。
  31. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 簡単でございますか。あと委員の申し入れがたくさんございますから。
  32. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 ただいま竹中委員大臣への御質疑の中で、非常に重要な点がございました。私の先ほどの質問に対しまして、重ねて御答弁をお願いいたしたいと思います。それは先ほど来申し上げておりまする八月の二十日付で談話発表されましたその中で、医療費改訂地域差撤廃を、諸般事情を勘案して、その方向で今後検討して参りたい、かようなことが言われております。この医療費改訂は、現在どの角度から見ましても、現在のものを引き下げようという意見はない、そういうことはございません。むしろ医療担当者側では、先般大臣に対しまして、医師会、歯科医師会ともに、単価改訂引き上げに関する陳情をした。従って、医療費改訂そのものは、少なくともこの引き上げ、その上昇率につきましては、私は申し上げません。少なくともその方向にあるということは、医療担当者側にとっても、今回の発表はさような受け取り方をしていると思うのであります。また、さように信じ、大臣のこの御決断、御発表については、大きな期待をもって見ているという現状であります。また、さように聞いております。従って、先ほどの御答弁によりますと、医療費改訂というものに関しましては、現在の医療費が適正か不適正であるかということを考えてというようなことではないと思う。率直にやはり医療費引き上げというこれは方向にある。そういう解釈も成り立つのであります。また、そうなければならぬと思います。その点財政負担の点から見れば、どの程度引き上げるかについては、もちろんこれはこの場で、この状態におきまして御発言があるとも考えられませんし、また、さようなことはあり得ないと思いますが、そういった要素をもっていると解しておりますが、この点について……。
  33. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 決してそれを下げていくということはないと思いますのでございます。上げてほしいという御要望なんでございますから。下げたのではむちゃくちゃで、どの程度かということは、今おっしゃった通り、まだ研究ができておりませんのに、私が先走ることはいけないことでございますので、下げることはないということだけはここで申し上げておきます。
  34. 鹿島俊雄

    鹿島俊雄君 ちょっと私の言い方が徹底を欠いたと思うので、下げるということを言ったのではない。下げるという要素は少しもない、また、そういう意見はどこにもないということを申し上げたので、医療費改訂ということは、即医療費引き上げであるということに解釈できるので、この談話発表の、改訂は、医療費引き上げ意味するものである、かように解するということを申し上げた。ただいまの御答弁で大体了承いたします。
  35. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 谷口委員おそれ入りますが、関連事項についてだけお願いいたします。
  36. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 それでは私は関連事項だけお伺いいたします。実は先刻来聞いておりますと、医療費を上げるということは必要であるが、これは各方面にいろいろ関係があるから十分検討しなければならぬというお話ですが、実は昭和二十六年に医療費を一円五十銭上げていただきましたときに、その当時のいろいろの計数を見ますというと、十七円ぐらいに上げてもらいたいというのが、わずかに一円五十銭だけ上がったのでございます。そのかわりに、あるいは保険収入保険財政につきましては、特別な措置、言いかえれば、初めは二五ないしは三〇、あとに二八%の課税措置が行なわれたのであります。そうして同時にこの一円五十銭上げるということは、これは暫定単価である、適正なる単価を見出さんならぬから、そのために診療報酬審査会というのを作って、これによって適正単価を見出すといって六年ばかりたってとうとうそれができなんだ。そうしておいて先刻も話が出ましたように、三十二年に一円くらいの値上げをしたのですが、これも聞くところによると、間もなく医薬品の基準価格が下がったためにほとんど一円も上がっておらぬというのが一般の話で、言えかえれば、全体の物価その他はずんずん上がっているのにかかわらず、医療費だけは少しも上がっておらぬ。現にその証拠といたしまして開業医者の中で税金を払い切らぬという人間は比較的少なかったのです。ところが、現在東京都におきましても二〇%くらいの税金未納者がいるそうでございますし、税金を払い切らぬ、いわゆる三十万円に達せぬ方がいるそうです。先日大阪の医師会長に聞いてみますというと、大阪もほぼ同様であるということであります。また、熊本に帰って熊本の模様を聞くと、一五%くらいの税金を納めることができぬ人がだんだんふえているという状況でございますので、大臣も御承知でしょうが、先日も東京では医療経営の困難のために自殺した医者も出ているような状況です。従って、国民所得がだんだん上がってくるし、あるいは倍増計画なども起こっている時期ですからして、ぜひとも医療関係者に対しては一つ、一日も早くある程度単価引き上げと申しますか、医療費の値上げというような方面には非常に早目に急いで一つやっていただきたいと思うのでございます。これがまた研究に五、六年もかかるようなことであったら、もうそのうちには医療関係者は非常に貧困な状況に陥ります。ことに今回はベース・アップなどによって勤務医師にもずっと俸給を増さんならぬという時分に、病院経営者あたりにおきましては、とうていその払いができぬようになって自滅しなければならぬような状態であります。従って、最近私どもがよく聞きますると、これまでは学校を出る人間は比較的優秀な者が医科を希望しておりましたが、最近は医科には入らぬ、それよりか工科の方に入るというので医科志望者が減っております。ひいては非常に国民医療に大きな影響があると思いますから、この点は一つ大臣もいろいろとごめんどうなこともあると思いますけれども医療費の値上げにつきましては急速にこれを行なうようにしていただきたい。  それからもう一つついでに申し上げたいのは、先刻制限医療の話がございましたが、これは診療指針とか何とかいうのができておりますけれども、われわれ大学の方ではもうむずかしいことを教えても、出てから使用する場合がないからあの診療指針は簡単なものを教えておけばいいんだというようなことまで言って絶望しているような教授連もたくさんございますので、その制限診療、あるいは診療指針という方面にも一つおまかせにならずいろいろと御心配をいただきたい。非常に急いでおりますから私はそれだけお伺いして、以上で終わります。
  37. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 御趣旨のようなことを承りますと、どうしてもそういう方面一つ明るくするためには、私どもも大いに努力しなければなりませんが、それにつきましては、やはりそういう実態を調査して、どれくらいのお方がそういう状態におありになるか、医療の営業の実態ですね、これもぜひ私どもとしては把握したいと思う。そうすると、他の問題の施策に対しまして、指導の指針が生まれてくるのではなかろうかと思います。また、高度の学問をして、それで人間生命を預かるという仕事に携わっていただいている方が、自殺などしたというようなことは、まことに私どもとしては考えられないことでございまして、実に困る状態であると思います。そういうことをぜひ私どもも把握をさせていただきたい。医師方々におかれましても、こういう点でぜひ一つ御協力が願いたいと思います。
  38. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はきょうは災害の問題についてお伺いしたいのでありますが、その前に一言だけ大臣にお伺いしておきたいと思います。  その第一点は、大臣が御就任なさってから当時の勢いと、今日の政治的立場と申しましょうか、厚生行政の面ではだんだんとあとずさりをしておるような感じをわれわれは受けます。八月十一日の委員会においても、いろいろの議論がされました。ところが、問題はいろいろ新政策の中で理屈はついておりますけれども、政府自身としても社会保障、公共投資、減税という三本の柱で新しい内閣の行政をやろうとしておりながら、厚生行政があとずさりをしている。私は非常にこれは残念だと思う。予算上の財源の問題に問題があるようにも一つは言われますけれども経済がこれだけ伸びていくという状態で、社会保障がこういう工合にあとずさりをしてきたら何が残るか。結局日本の経済の繁栄というものがすぼんでいくという以外に、だれが考えても私は手がないと思います。だから、今こそ厚生大臣はしっかりと国民の生活福祉を確立するためにがんばるときではなかろうか、私はそう思う。たとえば具体的な一つの問題を取り上げてみても、国保の問題もだんだんとあとずさりをして、精神、それから結核というところの七〇%というようなところにだんだん話が向いていきそうであります。生活保護の問題にしても、だんだんと初めの勢いとは違って、何かこう形式的にちょいとさわっておくという程度にあります。それから年金もこの前の委員会で国民年金の問題も大臣はここでお約束されたように、たくさんの国民の要望があって、国民の意に沿うような対処をして、来年一月から実施をすると、ここでお約束された。ところが、その国民年金の問題もなかなか出てくるものを見てみると、てにをはをちょっと直す程度の問題のような意見が出てくる。これは非常に残念でございます。これと関連して五人未満の労働者が置きざりになって、これが拠出制の年金に入るんだが、こういう格好でいいのか、あらゆる社会保険は五人未満全部に適用するということが今日実現するときである。だから、五人以下の厚生年金への加入という問題も、これは積極的に考えるときではなかろうかと私は思う。たとえば日雇い健保の問題もそうでございます。一番困っている人をまず一番手厚く手当をするというのが、私は人間生活の最底の保障を生活保護という憲法の精神に沿ってやっていく、そこらあたりの手当が非常に足らぬ。そういうところに大臣は閣議においても、政府の政策においても左右されちゃいかぬと私は思う。その点の所信を私はこの際聞いておきたい。
  39. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) いろいろな点を今おあげいただきましたのでございまするが、私ども厚生省といたしましては、まだ退歩したつもりは持っておりません。厚生省厚生省としての予算を今持っておりまして、まだこれからこの問題につきましていろいろと折衝するときは残されておると、こういう考えでおりますのでございまするから、その点もうすでに私どもが、何と申しましょうか、後退してしまったという結論は少しお早いのではないかと、こう考えております。
  40. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は後退してしまったとは言ってないんです。あなたの勢いがこのごろ何かすぼんでいっているような感じを私は受けるから、しっかりやりなさいと激励をしているわけです、きょうは。たとえばことしの経済の中から自然増が千五百億以上あるとか、その他の財源は今の内閣は独占資本を守る内閣だと、こう言われているように、一千億からの租税特別措置はそのままだというようなこともあるし、また、そのほか財源もたくさんあるのだから、それを使って生活福祉の方に使うということ、厚生大臣はしっかりがんばってやりなさい。だから厚生省のおきめになったものをわれわれ委員に配付して、そうしてみんなが知って、これだけは必要だということをみんなだってPRして、国の政治の中でこれを実現させよう、国の政治としてするようにすべきではないか。厚生省はきめてる、きめてると言うが、何をきめているのか。この前事務局案が出たら、あれは違います、あれは違いますと、あの案の取り消しに一生懸命で、そんなことではだめです。あれは最低限度です。われわれはあれは不満だけれども、ああいうことも厚生省でお考えになったら実現するためにみんなでやってやろうというところに厚生行政、この社会労働委員会委員のお気持というものが一致している。そういう工合におやりにならなければ、厚生省はいいものをきめている、今折衝しているんだというが、何を要求しているかわれわれにわからぬというのではだめだ。これでは話にならぬ。私はだからあなた方がりっぱなものをきめてわれわれに出されて、この点は足らぬじゃないか、この点はこうやらなければならぬじゃないか。厚生省の省議できまった案ですら注文をつけて、世論を呼び、それをこの委員会意見、また、国民が願っていることだから、それを内閣の中で実現されることが私は厚生大臣の任務じゃないかと思う。それを意見として申し上げます。
  41. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 非常に御激励をいただきまして力強く思っております。私どももむろんがんばるつもりでございますけれども、どうも私の声が低くなっちゃったという、声でもってこちらの覚悟をはかっていただくということはちょっとおかしいと思いますが、私どもはがんばれるだけ最後までがんばるつもりでおることは判然といたしておることを申し上げまして、御激励を感謝いたします。
  42. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の質問関連して私お尋ねしたいのですが、もちろん私の質問も激励という意味ではありますが、ただ単に激励だけで事が済まされないような感じがするわけであります。  一、二の点をお尋ねしたいと思うのですが、先ほど来大臣の御答弁を聞いておりますと、就任当時と今日の心がまえ、決意は全然変わらない、それはその通りだと考えておりますが、しかし、池田内閣が組閣早々、ことに池田総理がたしか伊勢神宮参拝の旅先であったかと思いますが、その談話の中で、これからやる自分の仕事の一番中心は社会保障の確立である、こういうことを述べられたわけです。社会保障、減税、公共投資、こういうのがおそらく政治の中心であり、また、今後の政策の配列だろうとわれわれはそう見ていたわけであります。ところが、今お話を承りますと、社会保障は決して後退しない、厚生省としてはそんなことは考えていない、こういうお話でございますが、九月五日自民党が発表せられましたこの新政策を読んでみますと、まだ十分正確には読んでおりませんが、この政策を全般的にながめてみますと、最重点を置かれた社会保障が実は一番下に位置されておる。この政策において第一順位に上がっているのはやはり公共投資で、経済の成長につながる公共投資を積極的に進めよう、こういうことです。次に減税の問題が取り上げられておりますが、やはり社会保障が非常に後退しているということは、この政策をすなおに読めばうなづけるわけで、この点は先ほどの大臣答弁といささか食い違っておる印象を受けるわけですが、この点について見解を承りたいと思います。
  43. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) そういうふうな順位になっておるということは私も新聞では読んでおります。しかし、絶えず総理がおっしゃっておりますことは、社会保障をやるのだというお言葉は、伊勢神宮において仰せになりましたと同じことをまだおっしゃっていらっしゃいます。でございますから、私はまだそれを信用し——私は信用しておるのでございます。いわゆる公共の投資というものも相当にしていただいて、国の産業を上げていただき、それによりまして、私どもが社会保障に使うだけの金をやはり生み出していただかなければならないということも考えなければなりませんので、私はそうこの順位には、私といたしましては、そうこだわって考えていないのでございます。
  44. 田畑金光

    ○田畑金光君 この新政策は、大体の経緯を聞いておりますと、大臣御存じのように、経済審議会の答申は経済の成長率を年率七・二%と見ていたわけですが、総理みずから筆を加えて三十六年から三十八年までは九%の成長率として、その上に立つ財政経済あるいは金融政策を立てていこう、こういう構想に出発しておるわけです。この政策全体を貫くものに池田総理の性格が最もよく私は出ておると、こう思うのです。で池田総理の政策に対する考え方の基本的な心がまえというのがよくこれに現われておると私は見ておるわけです。ところが、この社会保障の画期的な拡充という面を見ますと、今藤委員からお話がありましたように、国民健康保険の面を見ましても、医療給付費の七割引き上げの問題はいつの間にか正面からなくなってきておる、こういうことです。福祉年金の面を見ましても、一番福祉年金として問題として取り上げられてきた所得制限の問題もいつの間にかこれは消えておるわけです。生活保護の問題についても、生活扶助基準引き上げの問題が一番大切だったはずだが、これもなくなっているわけです。そうしますと、大臣が約束された厚生行政に対する社会保障充実の基本的な態度、より以上に……私は大臣というよりも池田内閣、池田総理自身が国民に約束いたしました社会保障の充実強化というものが、この政策の条文から見ますと相当後退する、というよりも、まさに順位が大きく逆転しておる、こういう工合に見るわけですが、この点について大臣はどのように考えられておられるか、承りたいわけです。
  45. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 今のところは、一々の問題をとって参りますると仰せ通りであります。しかし、総理があそこまでも確約なさいましたことでございまするから、このままでいくかどうかということは、私まだ今後に残っておると思いまして、私どもはもっと努力をして、今の仰せのような点についてもっと努力をしていって、お約束の線をこれを当然行なっていただくようにお願いするような努力が、私どもに課せられているのではないかということを考えるのでございますが、しかし、厚生行政全体としては、いろいろな予算の面を考えましても、そんなに後退をしているのだという感じを私は全体として受けないのでございます。こういう努力するべき点はまだ残っておると思う。しかし、これがいよいよになりますまではまだ時期もあることである、私はこう考えておるような次第でございます。
  46. 田畑金光

    ○田畑金光君 ちょっとその点、二、三継続したいのですが……。
  47. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 関連質問ですから、簡単にお願いいたします。
  48. 田畑金光

    ○田畑金光君 この政策については、新聞の伝えうるところによりますと、昨日の閣議で各閣僚も了承されたと聞いておりますが、事実そうですが。
  49. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 私は地方に派遣をされておりまして、昨日は残念ながら閣議を欠席しておりまするので、その実情を存じていない次第でございます。
  50. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあ不幸にして欠席されて、また幸いに今みたような答弁になったわけですが、おそらく出席されると、池田総理に心からの心服をされておる厚生大臣だけに、おそらく賛成されただろうと見るのですが、私の申したいことは、これが単なる政府の宣伝のための政策発表でないならば、私は強く大臣考えていただきたいわけですが、いやしくも自民党、ことに池田総理のみずから手を加え、みずから書いた政策の基本的な骨格がこれであるとするならば、おそらく近く始まるであろう予算の編成の中においても、社会保障の基本的なあり方というものはやはりこの政策に盛られたものが中心となろうと、こう考えられるわけです。ただでさえ大蔵省に腰の弱い厚生省の諸君が、自民党の政策の全般の中において社会保障の占める地位がこのように低い、あるいは内容が不十分なものであっては、私は幾ら大臣が、その時期にくれば大いにがんばると言っても先は見えていると、こう思うのです。やはり私は、こういう自民党の政策を樹立するこの過程において、なぜ社会保障というものをあれだけ表面に掲げたにかかわらず、今日このように後退したか、このときこそ私はやはり大臣は——厚生省は一番がんばるべき時期であったと思うのです。取り返しのつかない私は失敗をしてしまったと、こう指摘したいわけです。それでもなおかつ大臣としては、来たるべき予算編成の時期においては約束通りやっていくということならば、暫く時間を私はかして見守りたいと思いますが、いささか政党内閣において、しかも総選挙を前にして政策を作る段階において、こういう取り扱いをされたということは返す返すも遺憾であり、私は、内閣全体の社会保障に対する考え方は先が見えたと、こういう気持を持つわけです。ことに私は、この政策に関して批判しますといろいろな問題がありますが、総理大臣が低姿勢でおられて大へん国民も印象をよくしているわけです。これはけっこうなことだと思うのです。お陰で池田ファンも相当あるようですから、慶賀にたえないわけです。ただしかし私は、最敬礼するから、政治家が低姿勢であるから、それでブームがわくということはこれは少しおかしい話でございまして、今の憲法のもとには、総理大臣以下特別公務員として国民の公僕であるから、当然低姿勢であるのがあたりまえであると、こう思うのです。今日の低姿勢は政策の面でほんとうに低姿勢であるかどうかということ、親切な政治が貫けるかどうかということ、そういうことを私は考えたときに、やはり今のような内閣の性格として、池田さんがほんとうに低姿勢としてやっていく政治家であるならば、文字通り日の当たらない人方に対する施策の面で親切があるかどうか、ここが私はほんとうの低姿勢であると思うのです。そういう意味において、社会保障を第一位に掲げられたということは、名実ともに低姿勢でいくものと、こう思っておりましたところが、いつの間にか社会保障はずっと後退してしまった。何しろ金がかかる、生産的でない、こういうようなことでもって財界等から圧力が加ってきて、今度は公共投資が重点に置かれた。こうなってきますと、いよいよ池田内閣の性格をよく出してきたような印象を受けるわけでございまして、私は厚生大臣を大いに激励いたしますが、単なる激励だけじゃこれは済まされぬと思うのです。やはり国民をごまかさないように、一つほんとうの低姿勢は政策の中で低姿勢であることを具体的に今後の施策において示されるように、そのことを一つがんばっていただくとともに、同時に私は池田内閣にもうすでに大きく一つ反省してもらわなければならない。こういうことを指摘したいわけですが、まあいろいろ申し上げても大臣の所管外の問題になりますので、私はこの点だけを強く申し上げて、政策を曲げて社会保障は全く後退しきっておりますから、これは取り返しのつかない姿になっておりますので、どうぞ一つ国民からまたこういう批判が出てきておるということを十分閣議等においても主張されて、池田総理の蒙をひらかれるように健闘下さるよう期待いたしております。
  51. 久保等

    久保等君 私も厚生大臣に対する要望ということになると思うのですが、やはりまあこれだけの新政策を総選挙を前にして出されたことは、特に発表でありますだけに、新聞で伝えられるところが大臣の先ほどのお言葉ですと若干少し悲観的な報道に過ぎるようなお話でございましたが、そういうことであるならば非常に私も幸いだと思うのですが、ただしかし、やはりこういった社会保障の問題は金の問題だと思うのです。まだ、非常に金のかかる問題でありますだけに、金の裏づけのない抽象的な言葉の表現では信用しない、といって別にこちらが特別人を悪くしてものを考えるわけじゃないのですけれども、非常な不安を覚えざるを得ないのです。ただいまもお話にありましたように、特に経済成長率の問題について七・二%を九%に見込んだという問題もいろいろ議論があるところだと思うのです。しかし、問題は何かいろいろ政策をやる場合に、金の裏づけがなければ、政策を幾ら並べ立ててみてもこれは全く机上のプランに終わるというところから、非常に問題があります。経済の成長率を九%に見ていたという一つの総理の決意があの数字の上に現われておると思うのです。従って、社会保障制度の問題にもやはり大よそのアウト・ラインでも示されてしかるべきだと思う。減税の場合でも国税、地方税を含めて最低一千億円以上の減税をやるということが一応はっきりしておると思う。しかし、社会保障制度の問題について、それならば一体こまかい各費目についてはどうするか。それこそ明年度の予算編成にあたっての大蔵省との予算折衝に残されておるわけです。あるいはこれからの努力厚生省の手中にあると思いますし、厚生大臣初め事務当局の非常な御努力要望したいと思うのですが、ただしかし、一体どの程度のめどで社会保障をやるか、また、やろうとしておるのかという具体性が残念ながらうかがえない。厚生当局は一千億円の社会保障というようなことで非常な準備をしておられると思うのですが、それならば一千億円なのか、五百億円なのか、二百億円なのか、百億円なのか、ここらの問題についての表示が何らなされておらないので、また、先ほどもお話もありましたけれども、生活保障の問題を一つとってみても、これは一つ一つの問題だから、そういう問題をとって来年度の問題に掲げてみても、生活保護の問題一つとってもこれは決して小さな問題ではないと思う。それならば一体生活保護の問題についての扶助基準をどの程度に引き上一げるか。せめて二〇%、一・五%程度という何らかの数字が示されなければ、やはり新政策といって私は国民の前に訴える価値がないと思います。拡充整備をするのだ、できるだけ今言った基準等の引き上げについても努力するというのでは、一体どの程度努力をされるのかかいもく見当がつかない。厚生大臣は従来と何ら変わらない決意をもって今後努力されるのだというお話を聞いて、その点では私は今後大いに厚生大臣の御努力に期待いたしたいと思うのですが、ただこれだけの相当精微な一応大綱が発表せられたからには、しかも社会保障制度を最重点にやるのだという総理がああいった談話発表せられたような経緯からするならば、少なくとも一千億円なら一千億円といったような大ワクの大体のめどなりあるいはそれぞれの費目というか、それぞれの項目について何パーセント程度引き院げ、あるいはまた、所得制限の問題についてもこの程度の所得制限の緩和をするのだという何らかのそこらの基準というものが示されてしかるべきだ。残念ながらそれらの点が示されておらない。しかも、力説されているあるいは公共投資あるいは減税、もちろん私どもはそれらのことについて決して反対する者ではありません。しかし、社会保障制度と対比して考えた場合に、単に社会保障制度というものが一つの大きな何かしら、先ごろ厚生大臣はアサガオになりたくはないと言われたが、そうありたいし、ぜひそうしてほしいが、アサガオになるかならぬか明年度の予算を見なければ最終的には断定しがたいが、客観的に見ますと、ここ一、二日の国民の気持も私はやはり何かしら一つの非常に大きな不安を覚えていると思う。それが新聞の誤報であるならば幸いでありますが、私はそうじゃないと思う。やはりああいう政策を発表された数字的な根拠等を、発表された限りにおいて検討しても、当初の意気込みというものが影が薄くなってきたという印象を受ける。だから、ぜひ新政策を発表せられるにあたっては、厚生大臣に総予算のワクなりあるいは。パーセント程度でいいから、何らかの数字的な根拠の裏づけがなければ、私はやはり信頼しろといっても、信頼しろという方が無理じゃないかと思う。そういう点の大ワクについての大臣の所信が、この新政策に対する若干の言葉足らずという面があるとするならば、ここで具体的な数字を私が質問をいたしました範囲内においてお答え願えれば幸いだと思うのです。
  52. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) いろいろと御激励やら御心配やらいただいておりまして、私もぜひ当初の態度で臨みたい。そうしてまた、総理がそれほどの決意を述べられたのでございますから、その御決意を私は一つやはり頼みの綱といたしましてやっていかなければならないと思っておりますが、しかし、ここで今さっそく数字を申し上げる程度のところまではきていないことを残念ながら申し添えておきまして、今後、まだ余日があるのでございますから、私どもが全力をあげて一つこれの巻き返しと申しますかに努力をしなければならぬと思います。
  53. 藤原道子

    藤原道子君 私はきょう委員会で各委員からそれぞれ御発言があったことは、要するに、日本の社会保障を推進していきたい、この一点にあると思うのです。私たち野党といえども、この社会保障に対してはぜひ実現させたい、この気持に燃えておればこそいろいろ申し上げておるのでありまして、中山さんも虚心たんかい、その気持はくみ取ってほしいのです。私はあなたが初めて委員会にお出になったときに、どうぞ強くなって下さい、こういうことを申し上げた。今その時期だと思うのです。私は野党ではございますが、初めて出た婦人の厚生大臣に、ぜひあなたに成功してほしいのです。ところが、今朝私は、あなたは先ほど新聞が少し非観的に書き過ぎるようにおっしゃいましたが、けさテレビで池田さんの言葉を直接聞いて実はがっかりしているのです。いろいろございますが、時間がございません。ただ一つ生活保護の基準の引き上げについての新聞記者の質問に対して、生活保護の基準の引き上げ一つ取り上げても、もし基準を引き上げればその線すれすれのところにいる人がこれに入ってくる。その数は膨大だ。だからそう簡単に生活保護基準の引き上げということもやりにくい、慎重を要するというようなことをおっしゃる。私は生活保護の基準を引き上げれば、ボーダー・ライン層が入ってくることは当然初めからわかっていたと思う。人たるに値する生活、ここに考えがあるならば、そういうことを総理が新聞記者会見で言われたというところに池田さんの社会保障に対する考え方がもうすべてわかったような気がした。これは大へんだ、中山さん骨が折れるなあとその瞬間に私は思ったのです。従いまして、総理を御信頼申し上げているということだととんだ結果になるように私は考えられてならないのです。(笑声)これは笑いごとじゃございません。従いまして、厚生省事務当局におかれましても、大臣を助けて、相当の決意をもって当たらなければだめでございます。そういう感じをけさ私は受けた。このごろ地方に参りますと、麦飯は忘れたころに食わされる、こういうことを一般が言っております。従って、私どもはこれ以上失望させたくないのです。大衆を。しかもあなたが、就任されたときに、愛情の政治をやるのだ、こういうことを発表されておる。これに対してどれだけ多くの人が期待しているか。中山厚生大臣にすがる気持でいる国民大衆は多いと思うのです。どうかこれらの祈りをも含めて、あなたは今後ほんとうに強くなっていただきたい。私は野党ではございますが、今度の池田さんのだんだんに後退する気持、後退ではないとおっしゃるけれども、明らかに後退であるということは、あなたきっと思っていると思うのです。大臣としてそういうことは発言できないあなたの苦衷は私よくわかりますので、答弁は要りません。しかし、強くなって、全国の女性もやはりあなたの成功を祈っております。ぜひがんばって下さいということを強く要望申し上げて、きょうは時間がございませんので、この程度でおきます。
  54. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は最近起きておりまする風水害の災害の問題について一、二お尋ねをしておきたいと思います。  第一点は、これは災害救助法は厚生省の担当でございますから、災害基本法を昨年の風水害対策特別委員会、また、内閣自身が当たって基本法を早急に作って、あらゆる国の災害についてはこのものさしで救済をし、それから処置をするのだ、こういうことがあって、その基本法はいつ出すかというと、早急に出したい。早急に出したいというところでとどまっておる。昨年からいいますと来年早々に出すという約束を総理はしている。ところが、いまだに日の目を見てない。だから災害基本法というのはいつ出てくるのか、いつどういう構想でお出しになるか、これをまず一つ聞きたい。
  55. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) この災害基本法の問題は、今内閣で検討しておるということを聞いております。
  56. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 内閣で検討しているということを聞いておりますだけでは私は済まされない。そうでしょう。災害救助法というのは厚生省の担当なんですよ。これに関連してどういうところが基本になってたくさんの災害が出るかということは、きょうは建設省、農林省きておりますから、私はそのおのおのの方にお尋ねをしたいと思っているのですが、全体の国民生活の基礎に立つ災害救助法というのは厚生省の担当なんです。厚生省がいち早く、この災害基本法というものを内閣が作るにしても、鞭撻をし、そして責任をもって早く出すということでなければいかぬのじゃないかと思います。内閣が作っておりますなんという答弁では私は納得できません。
  57. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 補足して私から答弁申し上げますが、災害基本法は、たしか早急に出したいという当時の総理の御答弁があったかと、私も聞いております。それにつきまして、これは今もお話しになっておりましたように、各省に関連することでございまするので、便宜内閣の方におきましてその検討をいたしておるわけであります。もうそれから今日まで時間もだいぶたっておりますけれども、いろいろなことがあったのでございましょう。いまだにまだ成案を得るまでには至っていない。私もまた社会局に参りましてここしばらくでございますので、これは内閣の方にもさらに私どもも応援するところは応援し、それから鞭撻するところは鞭撻いたしまして、それを早急に成案を得るように努力いたすつもりでございますが、今日までのところでは、まだ御報告申し上げるまでのものには固まっていないようでございます。
  58. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、私は努力というか、今日までまだ実現してないことを非常に残念に思う。早急にこの具体化を一つやってもらいたいという強い要望をしておきます。  そこでことしに入りましてから十二号台風、十六号台風の被害が各所に起きております。主としてそれは集中豪附という形で、風の被害より雨の被害というものが多い。で雨の被害で区域区域をとってみますと、たとえば京都、兵庫、和歌山、静岡ですか、という工合に区域々々をとってみますと、集中豪雨のために非常にたくさんの被害を受けておる、災害救助法を市町村ことに発動している、こういうことになっております。だから私はここでお聞きしたいのですが、昨年の三十四災の土木関係、たとえば公共事業それから農林とか、それから民生の問題、学校とか、いろいろの災害救助の問題があるわけです。だから昨年の三十四年度に実施されたあの救助法の横すべりということで、政府はあの法律の精神に沿って横すべりで補助対策をお立てになるのかどうか、これをお聞きしたいんです。これは厚生省にも、建設省にも、農林省にも、おいでになっておりますから、農業災害について、河川その他の建設災害について、昨年の三十四年にできましたあの特別法と同じ精神、同じ額で対策をお立てになる——それは頻度によります、頻度はよく調査せられたらいいと思いますが、そういうことをおやりになるのかどうか、この三者からまずお聞きしたい。
  59. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 私の方の関係は御質問にもありましたように、まず災害の応急救助、災害救助法を発動いたしまして、私の方が時々連絡をとり、また、指揮もいたして、やらしております。大体一応そういう面におきましては法律の運営が妥当にいっているものとただいまのところ考えておるわけであります。お尋ねのそういう災害の応急救助の段階が終わりましたあと、いろいろ復旧の問題につきまして、まあ特別な補助を与えるかどうかという問題であるかと思いますが、これは厚生省にも関係あることでございまするが、また、他の農林省なり、あるいは建設省なりという他省にも関係のあるごとであります。私の方でも目下いろいろ検討している段階でございます。
  60. 山内一郎

    説明員(山内一郎君) 建設省所管の公共土木施設災害に関しましてお答えをいたしたいと存じます。従来公共土木施設の災害復旧につきましては、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法という法律に基づきまして現在復旧をやっているところでございます。それによりまして一応補助率それから採択の範囲、こういうものがきめられておりますが、この法律を適用するにはあまりにも非常な大災害である、たとえば昭和二十八年の全国的の災害、それから昨年の伊勢湾台風の災害、こういうものにつきましては特別立法をもちまして、その適用の区域それから国庫負担率の引き上げ、こういうことをやって参ったわけでございます。本年もだいぶ災害が発生をいたして参りまして、それでは基本法でゆくのか、特別立法でゆくのかということを現在検討中でございますが、災害の発生ごとに一つ一つ特別立法を出すというのも非常な手数がかかる、この際何とかしてその基本法の中へ恒久的な考え方でそういう特別なものを入れるべきじゃないか、こういう御意見も非常に多うございますので、ただいまそういう意味におきまして恒久立法というような考え方で現在検討中でございます。
  61. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 御質問の点でございますが、十六号等の被害は、私どもの農地とか施設の被害は約二十五億ぐらいでございます。ことしの災害の発生を昨年と比べてみますと、昨年は八月末までに二百十億くらいございます。本年は百二十億くらいで、ちょうど半分くらいの災害の被害が出ております。何か特別立法、去年のようなことを考えるかどうかというお話でございますが、現在私どもの方といたしましては、今の法律で、災害がひどい町村等によりますと、施設につきましては十割までの補助がございます。あるいは、農地につきましては九割というのもございます。非常にひどいところでありますと累進的にそういう補助率の適用もございますので、私どもの現在の考え方としましては、まだ特別立法をしまして昨年のようなことをするというようなことまでは考えておらないような次第でございます。
  62. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、まず河川局長にお尋ねをしたいと思うんです。基本法と特別立法、昨年行なった特別立法というのは高率補助ですね。高率補助の問題との差額があるので、どちらをとるか今考究中だ、できれば災害基本法という形で一本にまとめて頻度の高い災害については同じようなことでやりたいという考えを持っていると、こういうことであったと承知するのですが、そうですね。
  63. 山内一郎

    説明員(山内一郎君) 本年度の災害を特別立法化するという点につきましては、そうなるかどうかわかりませんが、ともかく大災害のたびごとに特別立法が出てくるというのは非常にわずらわしい点がございますので、現在持っております負担法というものを一部改正をして大災害でも適用できるようにと、そういう考え方を持って現在進んでおります。はたしてその結果本年度の災害がそれに適用になるかどうかという点についてはまだ相当間があいている、考慮の余地がある、こういうように思っております。
  64. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、私のお尋ねしたいのは、昨年災害を受けたような所が重ねて受けている。それで場所によっては昨年の三十四年で高率補助で工事が行なわれかけたやつがもっとひどい状態になっているというのが現状だと思うのです。だから、ことしの問題が高率補助になるかならないかということを今考えるということでなしに、それはまあそういうことも法律上の問題ですからそうですけれども、私はやはり去年の災害を受けた同じような所が受けているわけですから、去年より災害が少なければそういう議論の余裕があると思うのです。ひどい災害を受けている所に、私はそういうことを法律の問題だから検討されるのはけっこうですけれども、やはり補助対象等については昨年と同じ高率補助というような格好で処置をするということを私は考えてもらわなければ、市町村はもたぬと思うのです。これを強く申し上げたいと思います。それでどうですか。御意見を拝聴したい。
  65. 山内一郎

    説明員(山内一郎君) ただいまお話しがございましたように、本年度特殊的な豪雨で非常な災害を受けた、しかもそれが昨年度の特別立法によりまして現在復旧している個所である、こういうような点がいろいろ調べて参りますとあるわけでございますが、その点につきましては、現在の現行法で参りますと特例法にはならないわけであります。しかし、その点はただいま御指摘のように確かにこれは矛盾の点がございます。従って、そういうものも救済できるような何か方法はないか、それも恒久化して一緒の中に入れるわけでありますが、そういう点について現在検討いたしている最中でございます。
  66. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それはいつ時分にその結論がでるのですか。非常に困っている状態です。
  67. 山内一郎

    説明員(山内一郎君) 目下検討中でございまして、何月ということはちょっと申し上げられませんが、極力急いでそういたしたいと思います。
  68. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、私は河川局長、皆さんに私の意見一つ申し上げたいのです。私は京都の問題を特に詳しく調査して参りましたが、今の災害救助法では、家が流れた、家が流れたら仮設住宅を建てる。それから農地については今おっしゃったような救済がある。しかし、堤防が決壊して非常に大きな町に水がついた、たとえば天井まで水がついた場合、家のものがほとんどなくなっても、私有財産ということで補助対象にならぬ。融資ぐらいの点が関の山。そうすると、河川の改修というものが行なわれていないために、単にたき出しその他によって事が済んで、水が引いてしもうたらしまいだ。私はここが災害救助の根本の問題だと思うんです。今度の公共土木、堤防が決壊したとか橋が落ちたとか学校がつぶれたとかいうのなら、それが今の高率補助の前段の先ほど私が申し上げましたような対象が一つ出てきます。米がとれなかった場合にどうするかという問題も順次対策も向上してきております。しかし、問題は、河川の改修で、堤防決壊、堤防をつけるところに堤防をつけてないために住民が水につかって非常に困っている。こういうことで何ら国が対策を立てないというようなことをほっていいのかどうか。これは災害基本法というものを作ってそういうときにはどうするか。国がそういうところで補助をたくさん出して河川の改修を早くやる、こういう工合に総合的な対策を立てないと、毎年水がつくたびにそういう格好になっている。お気の毒この上なしで、昨年からことしにかけてもう住民は悲嘆のどん底に落ち込んでいる。そういう意味で、河川の改修というものが非常に大事じゃないか、災害救助の。だから、今水がたくさんついて困っている、そういう者に対する救助をやっぱりこのためにやらなきゃならぬ。農地の災害について、米がとれなくなったら食べられない。食っていく道がないんですから、農民は。そういう者に対する農林省の関係は、国でやはり昨年行なわれたような積極的なものをやってもらいたい。厚生省人間生活ですからやってもらいたい。もう一つ一番基本になるのは、河川の問題について力を入れてもらいたいと私は思う。そうすればずっとそういう住民の被害というものはなくなっていくという気がするんです。具体的な例を一つ取り上げてみたいんですが、たとえば関西を流れている一番大きい川は淀川です。これには琵琶湖の水の宇治川と、それから大きい災害がありました木津川と桂川。今度の雨は桂川流域だけが降ったわけです。そうしますと、淀川の堤防が持たないからといって、京都の嵐山の向こうの亀岡から向こうというのは雨が降るとダムになるわけです。三千町歩のたんぼが六割までダムになってしまう。これは毎年です。雨が降るたびにダムになる。なぜダムになるかというと、入り口をあけない。入り口をあけると、桂川の嵐山から下の堤防が決壊する。もう一つ下へ下がれば、淀川の堤防があぶない。だから、これはやむを得ないので水の流れる道を開かない。大体秒にして四千五百から五千トンくらいの水が流れてきたやつを、千八百トンしか下へ流さない。その差額が全部水につかっている。あそこにりっぱな堤防がございます。あの保津川、桂川の上流の亀岡から上も大きいです。大きい堤防も、堤防の役割も何にもない。水に全部つかってしまってダムの中に沈没してしまう、何時間か——ことしの雨ですと大体十時間以上沈没している。そのために米がとれない。そこにいる住民は全部水浸しで、屋根までつかっている。これは毎年繰り返している。住民にどういうことが起きるかというと、ダイナマイトを持ってきて、あの入口を百メートルぶちこわしてしまって、われわれはどうしてくれるのだという意見が沸騰いたしているわけでございます。これが亀岡のあの入口でございます。もうちょっと上に上りますと、もうちょっと河川のダムのきわの所まで行きますと、ほんとうにまともな堤防がない。だから、それが全部川のようになってそこに流れていく、こういうことになっているわけでございます。これは一つ淀川河川の根本的な水利の問題として建設省は考えていただきたいと思うのです。一つの方法は、下の淀川河川を強化して、漸次上の水を少しずつよけい流すという方法をとるか、幹線路に防災ダムをこさえて、その一千トンか一千五百トンのコントロールを行なうというようなことをやらぬ限り、いつまでたっても、これだけ文化が発達している中で、あそこの住民だけは、あのあたりは雨が降ったらダムになるのですよ。山陰線の亀岡駅というのが大体三メートルくらい水につかった、水の底になってしまった。そういうことでいいのかということを私は言いたいわけでございます。だから、これは一つ十分に考えてもらいたい。  もう一つの問題は、これは根本の問題ですから、ここで今どうするという御意見がありましたら承りますけれども、もう一つの問題は、あの集中豪雨がありますと、もう家も何もかもみな流していくわけです。ちょっと低い所では土砂が家の中にみな、戸締まりも何も……、土砂が家の中に一ぱい入るわけです。去年の水害対策のときに、私はそういう家の中に入った土砂を取り除く費用を国が出してやるべきだ、何とかしてやれ。そうしたら、それは完全にいたしますとこの災害対策委員会で各省の関係者が答弁している。ところが、実際に見てみると、床上浸水と半壊の住宅百戸に対して三、要するに三%の救助をする。その一単位は五千円だというのです。百戸に対して一万五千円の土砂取り除きの費用を出すということなんです。一軒に百五十円の土砂取り除き料なんというものは、今日の社会でどうなのか。私は災害対策委員会でそういうことをみな納得したから、ああ、何とかしてもらえると思って帰って実施の面を見てみると、百分の三だというので私は驚いているのです。これはどういうことになっているのか。私は、これは建設省の関係か、厚生省関係か、そこらあたりの問題はよくわからぬから一つお答えを願いたい。前段については河川局長から構想を一つ聞かしてもらいたい。後段についても……。
  69. 山内一郎

    説明員(山内一郎君) ただいま淀川水系全般の治水の問題につきまして、いろいろ御意見をいただきましてまことにありがとうございましたが、われわれといたしましても、一つの川の治水の問題は、水系全般を考えていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。つまり桂川の上流か淀川の海に至る間というものを一つ考え方でやって、現在治水事業を極力やって参っておるわけでございますが、御承知のように、淀川自体につきましてもまだ完全ではない。亀岡付近の桂川の水系についてもまだ完全ではない。逐次何とかして全般のレベルを高めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  ただいまお話のございましたように、亀岡周辺というものは水のために凶作というような、災害のたびごとに不幸なことになっているわけでございますが、できるだけ上流の方にダムを作りまして洪水を調節をする、こういうようなダムの調査も現在やっております。また、そういうような大きなダムがない場合には、砂防堰堤を各小さな渓流でも作りまして、できるだけ洪水を亀岡周辺に集中しないように、しかも集中したといたしましても、時間的にずっとおくらせまして、現在のような被害の状況にはならないように、こういうようなつもりで現在やっております。  本年度も、前国会におきまして治山治水緊急措置法というものを通していただきまして、その線に沿いまして、従来あまり継続的な考え方の治水事業費はなかったのでございますが、今年度から継続的な考え方の治水事業費ができたというので、極力その線に沿ってやって参りたいと思います。  後段の点につきましては、私の所管ではございませんので、ちょっとお答えがしかねると思います。
  70. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 後段の件でございますが、これは賀茂川の台風のときからの問題かと思いますが、土砂が住居なり何なりに入り込んだ場合の——大体そのときの経験を基礎といたしまして、それの除去を行ない得る戸数というものを、お尋ねのように半壊及び床上浸水になった戸数の三%という一応の基準は作ってございます。これは半壊及び床上浸水した戸数の大体三%、ただしこれは基準でございまして、実際の場合にはこの程度で足りない場合も出てくることはあり得ることでございます。その場合には、私の方ではその実情を認定いたしまして、認めてしかるべきものは認めているつもりでございます。ただいまお話しのように、何かそれでかたくなに押えるようなことを考えておるのじゃないかというような御懸念のようでございますが、その点はただいま申し上げたことで御了承いただきたいと思います。
  71. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その三%は基準であることは認めている。それじゃ、認定して、床の上に一尺も二尺もたまった家がずっと百戸あったといたします。三%で一戸当たり百五十円で土砂を出せといったって、家もそんなにしてしまったら腐ってしまうし、手もない。どうにもならぬ。ただ、冠水したときには土砂が入りませんから、そういう所と、河川の流域にある年じゅう土砂が家一ぱいに入るような所に、ただ機械的に半壊、床上浸水三%というのは、その単位が五千円というのはあまりにも機械的でほんとうに困っているのですよ。困っているという実情を、ただ機械的にそういうことを考えるなんということじゃなしに、単に水がたまって冠水したときには土砂が入りませんから、そういう所にはそういう基準でもよろしゅうございます。しかし、河川の流域にある家がつかった場合には、全部と言っていいほど床上、もっと、天井裏まで土砂につかっている所が非常に多い。その区域に半壊や床上浸水が百戸以上たとえばあったとしても、一万五千円をそこにもっていって何の足しになる。政府のお答えになったことは、土砂の入ったのを取り除く費用は国で持ちますといって、この災害特別委員会検討された結果がこれだとは、私はもう何とも説明のしょうがないと思います。だから、これはたとえばそういう土砂が入った家が集中していたら五千円単位で、一戸床上に土砂が入った場合には、程度にもよりますけれども、少なくとも全般の五〇%とか三〇%とか認定して、その上のワクまで出すつもりである、こういうことで理解していいですか。
  72. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 大体それで御理解いただいて差しつかえないと思います。三%と申しますのは、一応この範囲ならば自由にやっていただく。しかし、災害によりましてはこれをこえる場合もございます。また、土砂がどの程度入るかということは、これまた一がいにどうこう言えないのでございます。私どもはその実情に合って必要なものは出すつもりでございますから、そう御了承いただいてけっこうでございます。
  73. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 重ねて言っておきますが、土砂が入った、取りのける費用はそれじゃ持ってやる、ちょっと一人や二人で取りのけるやつもあるし、二十人も三十人もかかる所もありまして、どうにもならないような所もありますから、そういう費用は国が持ってやる、こういうことを認識して、申請をして、あなたの方は許可してやる、こういうことでいいですね。よろしゅうございますね。——はい、わかりました。  それでは河川局長にもう一言お尋ねしておきたいのです。というのは、さきに淀川水系のお話がありました。これは宇治川にもダムが一つできます。それから木津川にもダムができる。保津川の方にはまだダム計画がないからこういう議論が起きてくるわけですが、もしも住民が、極端な話をしますと、あそこの住民があそこの入口百メートル、百五十メートルを取りのけば、岩をぶち割って取りのけるということになれば、桂川も淀川も持たぬわけですね。そういう事実問題が出てきた場合、私は法律でいかぬと言って取り押えることができるかどうか、これは非常に問題ですよ。それで住民は水がつかった、私有財産だから何の補助もない。米が取れなかった場今日、公共土木——橋の場合には補助はある。何回も、去年も二回、ことしもついた。そういうときに何の補助の対象にならない。単に低利の融資があるだけだ、それで押え切れるかどうかということが問題だ。しかし、私は、ここでこの議論をして、そういう激しいことをやるとかやらぬとかいうことを言っているわけじゃなしに、そのくらいの問題だから、一つ至急にダムを作って何とかコントロールするとかいうことをしてもらいたいということを私はお願いしているわけです。それから沿線の所から出て、あそこにちようど八木町という相当大きな町がある。全部つきます。水がさっと引いたらそれじゃ何の補助もない、一銭もない。これはもうこの前の台風からいろいろみんなあるわけで、そういうものまでなかなか国が見切れないというなら、つかないようにしてあげなければいかぬのじゃないか。そこを私は言っているわけでございます。  それから岐阜にしてもありましたし、それから静岡県にもございました、和歌山県、兵庫県にもありましたが、私はやっぱりこういう問題は、淀川水系の問題は別としまして、集中豪雨のことを予想して堰堤その他処置が十分でなかった問題なんかで私はたくさんの被害を受けている所が多いと思う。先ほど砂防工事とおっしゃいましたが、これは非常に大事なことです。金もかかることですけれども、これもやはり集中豪雨を幾らか防ぐために必要なことでございましょう。私は、ここは社労委員会ですからあまり専門的なことは申し上げませんけれども、ただ、住民が困る基礎的になっているのは、河川の改修といいますか、堤防がなければならぬ所に堤防がない今のような問題があるから、住民や農地の方でみんな困っているということでございますから、私はこういう公共土木の問題、農地の問題については、三十四年度の特別立法で高率補助でおやりになったことを、ぜひ農林省も建設省も、法律の問題は今度の国会が開かれなければ論議はできませんけれども、しかし、手はずとしてはあの精神をもってやっていただきたい。伊勢湾台風のときに災害特別の高率補助が生まれました。あのときは、振り返りまして、たしか六月幾日からの災害は全部含めてあの高率補助の中に入れるということを私はこの委員会で記憶をいたしておるわけでありますから、そういう意味で同じ程度の被害があったときには、うそ偽りを言って国から金を取ろうというようなことは災害ではない、皆さん方も調査をされるわけですから。ぜひ三十四年度の特別補助のクラスに今度の被害を入れていただきたい。きょうは九月の七日でございますが、しかし、今年これで災害はないとは言い切れないと思います。まだまだ十月までには台風災害という問題をわれわれは心配しなければならない。そういう中において基本法を急がれることが第一で、それから次には、やはり昨年と同じような被害を受けた場合には同じ措置をもって救済するということ、こういうことを私はここで約束してほしいのです。今ちょうど大臣もおいでになっておりますから、極力農林省も造設省も厚生省もそれを努力するということをお約束していただきたいと思います。
  74. 山内一郎

    説明員(山内一郎君) 治水全般の問題、それから災害復旧の点、いろいろお話がございましたが、治水全般の問題につきましては、要するに、災害が起こらないように洪水調節ダム、砂防、堰堤、あるいは河川の堤防、こういうものを総合的に考えまして、できるだけ少なくなるように従来もやっておりましたが、本年度からさらに先ほどの特別措置法の線に基づきまして、従来よりも早くやるようにして参りたいと思っております。それから災害復旧の特別立法の点につきましても、御趣旨がよくわかりましたので、一つ大いに検討したいと思っております。
  75. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) 先ほどの答弁についてちょっと誤解を招く点があるので補足いたします。  住居なり庭などに運ばれた泥の除去ということでございます。これも災害救助法の性質からいたしまして、無制限にまた何でもやるというわけに参らぬことは申すまでもないことであります。大体基準が設けてございまして、日常生活に著しい支障を及ぼしている場合、あるいは敷地などの場合におきましては、家の出入りがそのために困難である、あるいは家屋のあれにいたしましても、自分の家の居室や炊事場というような生活にどうしても欠くことのできない部分がそこに埋まっているというような、災害救助法の性質からきますところの制限があることは申すまでもないことかと思いますが、念のために申し上げておきます。
  76. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、バラック倉庫に入った砂利まで云々ということは言っておりません。しかし、家に入った、ただ炊事場のこれだけを取るなんというそういう機械的な話じゃなしに、昼の敷いてある床下に入っている泥は別だというようなことに今の話はなると思いますが、そんなことはあなた、どうですか、とんでもないことだ。日日生活している炊事場も庭も——庭というのは中の土間のことでございますが、それに畳が三間あるか二間あるか知らないが、そこの床の下から上にかけてのその土砂を除くということが日常生活に関係あることじゃないですか。炊事場ということじゃ話にならない。そういうことに理解してよろしいですか。
  77. 太宰博邦

    説明員(太宰博邦君) それでいいと思いますが、まさかこれは炊事場ということを申し上げているのじゃなくて、居室もその床下に土砂があれば畳が腐りますから、それは当然のことであります。ただお話のように、人が住んでいない離れであるとか、納屋とか、そういうもの、それから庭でも通路はやりますけれども、庭全体、そういうことではない、大体そう先生と食い違うところはないと思います。
  78. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 だいぶおくれて何ですが、先ほどの竹中委員の御質問関連して、時間もだいぶたっておりますから一つ簡単に厚生当局にお尋ねしたいと思います。というのは、北海道の夕張市を中心として非常に幼い生命がおかされております小児麻痺の対策について、先ほどの竹中委員質問中山大臣が答えたのでありますが、非常に自分も心痛している、二億七千万円の予備費の支出をはかって、なおお気の毒な人たちは、高価な注射であるが、三回ばかり無料でこれを施すようにしているとか、あるいは、二十万人の予防注射、これを六十万人の予防の薬を用意したとか、いろいろ御答弁があったのですが、私御答弁を承っておって、少し物足らなさを感じたわけでございます。というのは、御質問がなければ、またお答えがなければ、別にお聞きしようとは思ってなかったのですが、今わが国全体の小児麻痺対策は別として、北海道夕張を中心としておかされている小児麻痺の蔓延は、ソビエト政府なり、またアメリカの人たちなり、世界各国の人たちに非常な心配をかけ、また、協力を事実いただいております。それに対して現状は一体どういう対策を厚生省が持っておられるか。なおまた、今後の見通し等について、どう考えておられるか、伺えれば聞きたいと思うのです。
  79. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 北海道に限定いたしまして、特に今全国の三分の一の発生数を見ておりますポリオの対策につきまして、少し具体的なことを私の方から申し上げます。  厚生省全体といたしまして、このポリオ対策に非常に力を入れておりますことは、先ほど大臣から申された通りで、非常に重点的に考えておりまして、しかるがゆえに、とりあえず、本年度できるように、来年度の予算を待てませんものですから、予備費を認めていただくということは決定したわけでございます。現に起こっております北海道の対策といたしましては、第一に、すでにかかっている気の毒な患者さん、これを早く治療し、また、これ以上犠牲にならぬようにすることが、これは第一でございます。その点では呼吸麻痺を患者の中で起こす者がありまして、これが一番致命傷になりますので、国内にあります数が少のうございましたが、可能な限りの呼吸蘇生器、鉄の肺と言っておりますが、これを国内からまず移送するということをいたしまして、しかしながら、日本の国内で使い得る鉄の肺が非常に少なかったものでございますから、この不足分を、アメリカの同情を得まして八台、すでに北海道に急送を受けまして、これで今の致命のための犠牲はとにかく救助する、こういう対策を整えております。まだ今後も足りませんので、さらに持ち運びの簡易な、胸だけに当てます蘇生器を二十五台備えるべく、現在、もうその半数が着きましたが、これを備えて、本年の致命の犠牲は救う、こういう手はずを整えているわけでございます。もちろん、そのほかに、こういうような呼吸麻痺を起こさない患者、すでに千名近く出ておりますが、この者に対する治療といたしましては、伝染病予防法によりまして、昨年指定をいたしましたために、これは国と地方公共団体の力によりまして、昨年以前のごときことはなく、これは十分に公費をもって治療ができるように、ほかの法定伝染病と同じように取り扱っております。もちろん北海道に予定しておりましたものの何十倍とかかるわけでございます。これは北海道に集中いたしまして、あとで数がたくさん起こったために、一人々々が決して不公平になるというようなことのないように、これらの措置をいたしております。もちろんこの予算が不足いたしますれば、伝染病予防費でございますので、義務費といたしまして、翌年足らざるは補えるような形になっております。もちろんもうすでにこれだけ発生しておりますので、予防注射が直ちに北海道の本年度の蔓延を防止できる、あるいは治療に役立つかという点については、これは学問的にも非常に悲観的でございますが、しかし、すでに北海道にどんどんとあちこちで出ておりますために、学問的にはさようなことがありましても、親御さんの心配というものはたとえそうであっても万が一の僥幸ということがございまして、今年の現在はやっておる流行に対しても予防接種をとにかくやりたい、こういうことでございますので、今まで大体この発病年令である三才以下でございますが、主として、その者に対する予防注射液を四万人分すでに実施済みでございますが、今年まだ中央に若干手待ちのありますものを次々と重点的に要請に応じて再分配する、こういうことにいたしております。しかし、大量の点は今回の予備費等の追加によりまして、一月以降三月までに九十六万人分が予防接種ができるように、これには生産とそれから検定と何方伴いますが、これは全部処置をいたしております。これによりまして北海道の心配な点はもとより、来年再び起こらぬための対策にも十分やっていく、こういう予定にいたしております。もちろん全国どこに飛び火するかわかりませんので、同じような意味で今後の流行に対しては全国的な措置も並行してやる。昨年の例と比べますと、昨年は主として西日本の方に集団流行が多かった。今年は東日本に突如として流行が飛びまして、実はいろいろな疫学者のあらかじめの推測も願っておったのでございますが、これは予測ができませんで、ほんとうの意味で場所的に突如として集団的にあちこちに起こる、こういうふうな地方性を持っております。従って、来年は予測するのも不可能でございますので、全国的にとにかく一番有効な予防接種の措置を徹底する、これに中心を置いているわけでございます。
  80. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 藤原委員、簡単にお願いをいたします。
  81. 藤原道子

    藤原道子君 時間が大へんおそくなりましたので、ごく簡単にお伺いしたいと思います。さっき藤田さんの関連質問で伺おうと思いましたが、ちょっと時期を失いました。河川局長にお伺いしたいのでございますが、災害が天災と同時に人災が相当手伝っているように思うのです。私は、局長も御案内だと思いますが、狩野川とそれから黄瀬川の合流点から約二百メートルぐらい離れた所に住んでいるわけなんです。そこに静岡県公社の住宅、いわゆる建て売り住宅、一昨年三回、昨年二耐水害を受けた。ことに昨年の場合は床上一メートル四十センチぐらい、まあどうっと水を受けて、五分ぐらいの間だったものですから、家財全部水浸しにしたというような状態なんです。おととしの水害以来対策を当局にいろいろ要求してきたのですが、まだそのまま延び延びになっているというのが現状なんです。ところが、最近調査いたしましたところが、そこはすでに昭和十四年に大水害があって、建設省では遊水地帯として設定しようとしたところが、地元の反対にあって、遊水地帯設定ができなかったということがわかったわけなんです。そこで局長にまずお伺いしたいのは、遊水地帯として危険だから設定しようというその土地が、同じく建設省の管轄下にある公庫の住宅、これがそこへ建設されるという事態に納得がいかないのですが、そういう場合にはどういう監督になっているのでしょうか。それをちょっと、所管違いだと言われればそれまでですが、おわかりでございましたら、その点をちょっとお伺いしたい。
  82. 山内一郎

    説明員(山内一郎君) われわれも治水事業につきまして極力やっておりますが、その事業の進捗と、人口の増加といいますか、あるいは産業の開発、こういうようなものがまだ並行的ではなくて、治水事業がややおくれている、こういうような区間を持っているわけでございます。それをできるだけ促進するようにやっているわけでございますが、ただいまおっしゃいましたような、まだ治水施設といいますか、そういうものが完備していないというような所に住宅を作る、あるいは治水計画からいきますと、そこはまだ当分あとの仕事になってしまう。遊水地帯あるいは当分あとの仕事になってしまう、こういうような状態もよく把握しておるわけでございます。従って、住宅を作る場合に、そういうところをできるだけ避けていただくように、あるいは河川の堤防のない川岸に住宅ができるということは非常に災害上危険である、こういうようなこともよく徹底するようにやっておるわけでございますが、残念ながらこういう事態を生じたわけでございまして、よく今後住宅建設あるいは工場の立地の問題とか、そういう点等よく私の方と話し合いをいたしまして、防災施設のある程度完備したところにそういうものを作っていただくと、こういうことでよく連絡あるいは指導して参りたいと思っております。
  83. 藤原道子

    藤原道子君 私は、個人がそこへ家を建てたならばあまり問題にしない。事は公社なんです。国の予算を相当に投入しておる公庫が遊水地帯でもうすでに大災害を受けたあとへ建てた。しかもそれが売り渡し住宅なんです。そこで入るときに、そこへ家を建てようとしたときに、すでに地元の住民からは危険じゃないかという声があったそうです。私たち全然知らずに、地元の人が入札して、私が沼津であまり帰らないものですから、まあ無理に買わせられたわけですが、そのときにも行ってみたらば、たんぼより低いのです。危険じゃないかと言いましたら、公社の方では、いいえ護岸工事が進みますから絶対に危険はございません、こういう確言をしたわけなんです。で、私まあ、そこを買ったわけなんです。ところが、昨年、一昨年と五回にわたって災害を受けたわけなんです。ところがこれに対して公庫で、これは国の財産なんだから危険じゃないか、だからしかるべき替え地をもってそこへ移築すべきじゃないか、人命の問題もあるし、国の財産ということもあるのだからというようなことを申し上げましても、承知で買ったのだから仕方がない、あるいはまた、公庫にはそういう場合の損益金というようなものの経常費がないから御自分で金を借りるようには努力いたします、御自分で越してもらいたいというわけなんですね。ところが、私それでは理屈が合わないと思うのです。それで余裕のある人は越しました。ところが、どうしても余裕のない人が今九軒残っているのですが、水害期に非常に不安におののいているわけです。私は越そうと思えば越せます。けれども、私が越せばよけい公庫で知らぬ顔をすると思って私は一年半ばかり家を明けっぱなしにしておつき合いをしているわけなんです。この間も公社はこういうことを言ったそうです。もしあすこがかりに流れても保険がかけてあるから大丈夫だ、国の損失はない、こういうことを言っているということを耳にいたしましたが、これはもう私は許せないと思うのです。人命財産に対して一体どう考えているのかということを私は考えるわけなんです。で、私は自分が住んでいるから今まで遠慮してあまりさわらなかった。地元の県会議員なり、市会議員が当たっておりましたが、幸いきょうは河川局長がお見えになりましたので、遊水地帯ということを一応設定しようとしたが失敗に終わった。ところが、そこへ公社が住宅を建てた、そしてもう五回にわたって大災害を受けているのに、これに対して対策が何ら講じられない。金のある人は越すけれども、退職金で買ったとか何とかいうような人、越せない人だけが九軒残っている。この人たちは出水期を控えて毎日雨が降ればすぐたたみを上げる、こういう不安におののいておりますが、これは買ったのだから仕方がない、こういうことで済ませるものかどうか、そういう点についてあなたのお答えになれる範囲をお答えいただきますと同時に、正気で一体それでいいものか、公社が建てた住宅ならば民衆はみんな安心して入ります。ところが、そこが案外そうでなかった、それで抗議をすれば承知で買ったのだから仕方がないとか、もし流れても保険に入っているから損失はない。これじゃ私は公庫というものの使命がそれでいいのかどうかと、こう考えるのですが、この点についてのお答えを伺いたい。
  84. 山内一郎

    説明員(山内一郎君) お話の点は、まことにごもっともでございまして、私まだ詳細なことを承知しておりませんので、的確なお答えができないのでございますが、よく住宅局と具体的に一つ話し合いをいたしまして調査を早くやりたい、こういうふうに思います。
  85. 藤原道子

    藤原道子君 今県の公社では、結局市の替え地を見つけてそこへ移しかえて何とかしたい、ただし、移築は個人が負担してくれ、こういうことであるらしいのですが、それのできない人が住んでいるのですから、これは責任を持ってやる、法律にないからできないというのですが、法律になかったら法律の改正をしたらいいと思う、大した金額ではないのでございます。これも一つどうぞ十分御相談をいただきまして、あすこに住んでいる九軒の人の人命を守り、不安を取り除く、公社の持つ公共性を考えてしかるべく至急に御解決を願いたい、このことを強く御要望申し上げまして質問を終わります。
  86. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  87. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それじゃ速記を始めて。  本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認めます。午後は二時十分より開会をいたします。暫時休憩をいたします。    午後一時三十七分休憩    —————・—————    午後二時二十七分開会
  89. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ただいまより委員会を再開をいたします。  労働情勢に関する調査の一環として、労働行政基本方針に関する件を議題にいたします。  それに先だちまして岡崎政務次官よりごあいさつがございますので発言を許します。
  90. 岡崎英城

    説明員(岡崎英城君) 私は、先般の内閣の更迭に伴いまして労働政務次官に就任いたしました岡崎英城でございます。実に経験の浅い浅学非才の者でございますが、どうか皆様の御支援、御鞭撻をお順いいたしたいと思います。  ここに大臣とともに参りまして、同道してごあいさつ申し上げるはずでございましたが、ちょうどそのとき公用がございまして、非常に失礼でございますが欠席いたしましたので、ここにおくれましてつつしんでごあいさつを申し上げます。
  91. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それでは前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  92. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 岡崎政務次官が御就任されましたが、どうか今後この次からの委員今人にはぜひ大臣がおいでになるときは政務次官は出ないというような格好でなしに、ぜひ一つ御出席を願って、御意見なり御高配を承りたいとお願いしておきます。  きょうは大臣が特別な用事で出張されているようでございますから、一般的な問題をお伺いしたいと思っておったんですけれども、私の方も御遺憾申し上げまして、具体的な問題の一、二を一つお伺いしたいと思います。職安局長見えておりますから、きょうは私たちがよく今日の労働行政を知るために雇用状況それから今後の労働力人口の推移、それから日本の経済の成長の中におけるたとえば投資の問題とか、その中の労働吸収量の問題であるとか、それから高年令者が非常に就職が悪いですから、この就業のための訓練所行政の問題であるとか、そう一般職安行政に関する一般的な問題についてお尋ねしたいと思います。
  93. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 最近の雇用、失業情勢は、一般的な経済の好転の影響を受けまして、一般的に申せば好調を持続しております。  本年の上期における情勢を申し上げますと、一月から五月の平均の数字で申し上げますると、労働力人口は昨年同期の四千三百二十八万から四千四百一万と七十三万人の増、就業者は四千二百六十万人から四千三百四十七万人と八十七万人の増、こういう状況になっております。  各産業におきまするところの雇用者の状況を見ますと、これは労働省の毎月勤労統計による数字でございますが、本年の一月から四月の平均を昨年の回収と比べてみますると、全産業平均におきまして、昭和三晩年を一〇〇といたしました場合に、前年同期が一二五・一、本年が一三七・七で、前年同期に比べますると一〇・一%の増加になっておるわけでございます。これを産業別に見ますと、建設業、製造業、卸売、小売業、金融、保険業等はそれぞれ前年同期に比べまして一割前後の大幅な増加を示しておりますが、逆に鉱山業、マイニングの関係におきましては、石炭鉱業の不振等を反映いたしまして、前年同期と比べまして五・六%の減少を見ております。  失業保険の需給状況等について見ましても、休業者の実人員はことしの一月から五月を前年と比べてみますと、四十九万一千人から四十三万四千人、五万七千人の減少になっております。  以上のように、一般的に申しますれば、景気好調の影響を受けまして雇用状況も一般的には好調に推移いたしておるということが申せると思います。特にこの労働力不足という面が最近目立っておりますのは、一つは熟練労働力が需要に応じて供給が十分でないということと、新規学校卒業者がやはり求人に対して求職者が少ない、こういう問題でございます。  まず、新規学校卒業者について申し上げますと、本年の三月の中学校卒業者中の求職者は大体四十三万五千人でございましたが、これに対する求人は九十四万八千人、約二倍に近い数字が出ておるわけでございます。それから高校卒業生につきましても、本年の三月本業生中の求職者が約二十九万五千人でありますが、それに対する求人が五十二万七千人、これも倍に近いような数字を示しておりまして、新規学校卒業者に対するところの求人というものは非常に多い、求人を必ずしも充足できない、こういう状況でございます。  第二番目に熟練労働力の問題につきましては、これは本年の二月に労働省におきまして、主要な産業と職種につきまして各企業が現在どれほどの熟練労働者を要求しておるか、またさらに、今後半歳ばかりの間に大体これに加えてさらにどれくらいを必要とするかという需要の調査をいたしましたところ、これはまああまり具体的、詳細な調査ではございませんけれども、総ワクにおきまして約八十万人ばかり熟練労働者が不足しておる、こういう数字が出ておるわけでございます。  以上のように、最近の経済好調を反映いたしまして、熟練労働力に対するところの需要がきわめて多い、供給がそれに追いつかないという問題と、新規学校卒業者、若年労働力に対するところの需要がやはり非常に多い、求職者はそれに追いつかないという点が問題点であると思われるのであります。しかしながら、その反面におきまして、やはり第一番目に、産業によりましては、これは御承知のように、最近の産業構造の変化、あるいは技術革新、あるいはエネルギー革命等のいろいろな理由もあります。その最も代表的なものは、言うまでもなく石炭産業でございまするが、石炭関係においては多数の離職者が発生しておる、こういう状況でございます。また、ただいま御指摘がございましたが、若年労働力に対するところの需要というものは多いわけでございますが、中、高年令層に対するところの需要というものは少ないわけでございます。従いまして、中、高年令層の就職難をいかに打開していくかということがやはり大きな問題になるわけでございます。これは先ほど申し上げましたたとえば石炭産業等におけるところの離職者をいかに円滑に配置転換するかという問題にもつながる問題でございまして、これらの問題につきましては、私どもは以上のような一般的な雇用情勢の好調の背後におきまして、労働力の需給の不均衝が非常にあるという現状からいたしまして、これらに対するところの全国的な視野に立っての労務需給調整というものを考えていかなければならない時期である、かように思っております。その意味におきまして職業安定所の活動を全国的な視野に立って、今までの住居地中心主義ということだけでなしに、場合によっては、広域職業紹介というような活動を積極的に行なうことによってその不均衡をなくしていくという方向努力しなければならないと考えておるわけでございます。また、それと同時に、職業訓練の問題につきましては、これは二つの面から今後積極的な拡大が要請されると考えられるのであります。  一つは、先ほど申し上げました熟練労働力が現在足りない。将来日本の経済の発展に伴って若年労働力に対するところの要請というものは今後ますます増大いたしまするから、それに対応して、まず学校教育の課程における理工系の課程の増大という問題、これはまあ文部省の関係でございますが、これとあわせまして、労働省の関係におきましても、職業訓練所を長期的な計画によってこれの収容定員を増大させ、また、その課程も、今後の産業界の要請にあわせまして漸次その必要な近代的な職種の部門というものを拡大していく、こういう方向で進まなければならないと考えております。それが第一の問題であります。  弟二番目に、離職者、それから中、高年令層に対するところの就職難、これを緩和いたしまするために、こういうような人たちに対するところの職業訓練、轉職訓練というものをやはり積極的に実施いたしまして、他産業、他企業に配置転換することを容易にさせてあげるということからも、職業訓練の今後増大の必要性というものが要請されるわけでありまして、以上のような二つの見地から、職業訓練所の定員の増加と、職種内容の、需要に合わせての今後の発展という問題をわれわれは推進して参りたいと考えておるところでございます。以上のような考え方をもちまして、今後の雇用失業情勢に対処するわれわれの基本的な考え方といたしたいと思っております。
  94. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の失業者の把握は、労働力調査の結果に出てくる完全失業者というものだけでは把握がなかなかむずかしいんで、だから、他にどういう把握の仕方をしようとしておられますかね。
  95. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 労働力調査のいわゆる完全失業者と申しますのは、先生御承知のように、一週間通じて一時間も働かないというような者でございます。また、これは世帯をもとにしての抽出調査でございまするから、これを現実問題として利用するということは非常に問題があると考えております。一つの指標としては役に立つと思いますが、職安行政の業務を遂行するための基盤にはそれをなし得ないというふうに考えております。従いまして、われわれといたしましては、職安行政遂行のためには、全国職業安定所組織から出て参りますところの求職者、それから求人というものを詳細に具体的に把握いたしまして、これをもとにして職安の業務を推進していく、こういう方向で参りたいと思っております。なお、そのほかに、現在の労働力調査の結果を補うためには、統計調査部において実行しております毎月勤労統計、これの関係も、もう少し、賃金、雇用の面を具体的に把握できるように今後改正しなければならないと考えておりまして、これは統計調査部の方で目下作業いたしておりますが、最近の要請に応じてその改菩方を考えていく。大局的な作業をいたしまする際にはそういうものをあわせて使う。また、事実上の職業安定行政の労務需給調整機能を果たすためには、各地の職安を通じて把握するところの求人求職状況、こういうものを中心にして業務を進めて参りたいと考えております。
  96. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それではお尋ねしますが、一つは、三十五年までに、三十年を基本にして一三七・七の就労の増加があったというんだが、それの分析はできませんか。新学卒とか、中年層とか、雇われているのは普通の社員として雇われているか、社外工、臨時工として雇われているか、そういう分析をしたのはないですか。これが一つです。それから失業者の減とおっしゃったのは、労働力調査の統計の減ですね。これはあまり問題にならない。それからもう一つは、これはまあ大臣にお聞きした方がいいのですが、就労可能——就労の問い産業への政府の投資のコントロールの、要するに要請、完全雇用の立場からの要請というようなものをおやりになっているかどうかですね。それから時間短縮の研究はどの程度までおやりになっているか。この四つ、聞かして下さい。
  97. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 先ほど申し上げました昭和三十年を一〇〇にいたしまして、三十五年の一月から四月が三七・七%増大になっておると申し上げましたのは、労働省統計調査部の毎月勤労統計の数字でございます。従いまして、毎月勤労統計、これは御承知のように、一定の事業所を抽出いたしまして、これを八大産業に分けまして、その指数をとっているわけでございます。従いまして、その中におきまする中年層がどのくらいであるとか、そういうような分析はこの統計からは不可能でございます。実は中年層の問題につきましては、私ども最近の職安の各地の状況を見ていまして、どうも中年層の就職難というものは、景気がよくなってもなかなか解消できない、こういうことを、まあわれわれ痛感しておるわけでございます。従いまして、私どもはまあただいまいろいろ、われわれの方で集め得られるだけの資料は集めております。これはまあ時間もございませんから、この席ではくだくだしくなりますから申し上げることを省略いたしますけれども、後ほどまた、あるいは御説明をいたしたいと想いますが、中年層の就職問題につきましては、これはたとえば求人状況をとってみますると、二十才以下、あるいは二十五才以下というような者に対するところの求人の割合というものは非常に高い。逆に四十才以上、あるいは五十才以上という者に対するところの求人というものは、総求人数の中の比率が非常に少ないというような資料もございます。それから就職率等を見ましても、中高年令層が若年令と比べて低いという数字が出ております。また、中高年令属の者が就職活動を——その就職するまでにどの程度の活動を、運動を、何と申しますか、就職活動をするかというような数字につきましても、たとえば二十才以下の人が大体一カ月未満の就職活動で就職した者が六割一分というような数字になっておるのに対しまして、四十一才から五十才というような人は、一カ月未満の就職活動で就職した率は二五・六%、逆に三カ刀から六カ月かかったというような率が三四・二%というように、非常に局い率を占めておる、まあこういうようないろいろな調査がございます。こういうようなことから分折いたしましても、われわれは中高年令層の方の就職というものが、なかなか現在は容易でない、こういう感じを持っておるわけでございます。  それから第二番目に、労働力の吸収の可能性が高いような離業に対して、労働力の吸収を要請する問題について、われわれは今後日本の経済を発展させていきますために、そのような配慮関係者において行なわれるべきであると考えております。で、まあこの面につきまして、実は労働大臣が先般日経連の首脳部と会談いたしました際にも、今のその熟練工が不足しておるというような状況について、熟練労働力の需要がどのくらいであるかということを、一つ各企業から、なまの数字としてほしい、その意味で、その関係調査を行ないたいので、協力してもらいたいという申し入れをいたしましたと同町に、いろいろな企業におきまして、中高年令層に対するいろいろ適職というものを、われわれの調査だけでも中高年令層の適職というものは相当あるわけでございます。そういうところについては、中高年令層の人々をなるべくとってもらうように一つ関係者の間で研究してもらいたいという申し入れを実は先般いたしまして、日経連の方の関係者におきましてもそういう問題は非常に重大だと思うので、われわれも今後調査する。また、そういうような問題についても一つわれわれとしても傘下の各企業に呼びかけて、一つ協力しよう、こういうような話し合いがあったわけでございます。今後におきましても、このような努力を続けて参りたいと思っております。  それから、労働時間の問題でございますが、これは本来労働大臣の方からお答えいたすのが筋であると思います。私の立場からももちろん関係がございますけれども、そう思いますけれども、まあ労働省の考え方を申し上げますると、やはり労働時間というものは、これは方向としては短縮するという方向に向かうことが望ましいと考えております。その意味におきまして、特にいろいろ問題がございまするけれども、現在問題になっておりますところの中小企業あるいは零細企業等におきまするところの基準法の精神に沿わないような長時間労働というものは、これを排除していくという方向に向かって基準監督機関において今後目標を立てて指導をいたしたいと考えておるわけでございます。大企業等におきましても、交代制の採用等の方法によりまして労働時間の短縮を漸次はかるということが望ましいわけでございます。ただ、問題になりまするのは、中小企業等におきまして、これは御承知のように、生産性というものが非常に低い状況でございます、そのため経営も困難であるというような状況もございまするから、中小企業におきまする労働時間の短縮については、単に監督機関において法律に照らして指導するということだけでなしに、やはり中小企業の生産性を高める、中小企業の経営を助成するという中小企業対策が裏づけとして進められることが必要であろうと考えております。私どもといたしましては、この労働時間の短縮の問題につきましては、やはり雇用の面からいたしましても非常に重大な問題であると思っておりまするので、労働省の各部局におきまして連携を密接に保ちまして、そのような方向においてわれわれは努力して参りたいと考えております。
  98. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働時間の短縮が経済の中でどういう位置を占めるかというようなことは政治的になりますから、あなたに求めるのは無理だと思いますが、しかし、外国の例を見ても、機械が発達してくれば、自然、労働時間短縮という問題を問題にするのじゃなしに、全部が勤労するという立場から、機械をたくさん作るのだから、みんな短く働いて幸福に暮らそうじゃないかというのは当然なので、そういう立場から、事務当局としてはどうお考えになっているか、研究されているかということだけを聞きたい。だからそういう熱意を、一つ政治論議を離れて、そういう問題が世界の常識なのだから、事務当局でうんと進めてもらわなければ、将来の問題に合わないと私は思う。そういう立場から。それから今までの資料はみないただきたいと思うのです。それでないとよくわかりませんが、ただ職業別訓練所、高中年の人が云々という実態の把握ということが、労働省の今の調査では無理だと、私は今答弁を聞いて考えておるわけで、それじゃそれに対してどうすれば実態把握できるかということを、たとえば労働力調査を開始するとか、こういう方向に開始したらいいとか、雇用審議会がやったようなもので潜在失業の摘出をやるとか、いろいろの方法があるが、事務局としてはどうお考えになっているか。  それからもう一つ職業訓練所——学校教育の問題はこのごろ出てきておりますけれども、理工科系の問題、しかし、職業訓練所は今各府県で一カ所、できていないところもあるわけですが、それを各府県の職業訓練所をどういう格好にしていくか、また、府県ごとの訓練所の増置という問題も問題になってきておりますから、だから、労働省は来年度どういう計画でこれをふやそうとしているかということをお聞きしたい。
  99. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 中高年令層の問題につきましては、断片的な資料が先ほど申し上げましたようにございますが全国総合的な資料は今のところないわけです。そこで私どもといたしましては、今回特にこの職業安定所の窓口における業務統計、これは求職求人それぞれ出て参るわけでございます。それを年令別に分析する作業をいたしたいと思いまして、実はつい最近でございますが、各地の職業安定所に通達を出しましてその調査をやってもらうことにいたしました。これが出て参りますれば、現在の中高年令層の就職難の状況というものは、もう少しはっきり把握できるのではないかと、また、それを見ました上で、さらにこれを補完し、発展さしていくためにいろいろな調査の内部の改善につきましても検討してみたいと考えております。  それから職業訓練所でございますが、職業訓練所につきましては、現在、本年度におきましては公共職業訓練の受講生が五万七千人でございます。これは一般職業訓練所、現在の設置個所が大体二百八十四、それから総合職業訓練所が四十二、身体障害者の訓練所が八と、合わせて三百三十四、こういう状況で約五万七千人の人員を訓練しておるわけでございまするが、これを今後の経済の要請にかんがみまして、大体昭和四十四年度にその人員を十三万八千人程度、これは目下精細な作業をしておりまするので、若干また変更あるかもしれませんが、大体のその数字といたしましては十三万八千人程度に増大させるという計画のもとに進めて参りたい、その意味におきまして来年度におきましても、これは目下予算の作業中でございますので数字が確定しておりません。いずれ機会をあらためて御説明申し上げたいと思っておりますが、一般職業訓練所及び総合職業訓練所を来年度においても個所数をふやす、人数は大体現在の五万七千人を八万人程度ぐらいに増加させるというようなことを中心にいたしまして目下予算の作業をしております。そういうようなことで、長期的には先ほど申し上げましたような目標を一応念頭に置きつつ来年度の予算を編成いたしたいと考えております。
  100. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大体今の現状について、これはあとは資料をいただけば大体アウト・ラインがわかると思うのですが、どうですかね。職安行政をおやりになっておって、労働力の調査の統計は労働力調査によって出てくる。一時間以上働いたものについてはその完全失業者に入ってこない。その一時間から三十四時間までの把握もあの状態じゃまだ十分でない。職安の窓口の問題を見てみても、職安は賃金が安いから奥さんも働きたいと思っても奥さん働けない。登録にならぬ。そこらで生活保護法でいけば差し引かれると、そういう問題も一つある。それから実際問題として、今度今年は国務調査をおやりになるのだから、そういう問題も覚悟して調査に乗り出しておられると思うのですけれども、実際職安行政を一般論としては毎勤の統計や労働力調査というものを見たり、職安の窓口、求職何ぼあって求人何ぼあったりするのを並べてみたりすると、一般論としては何か統計ができて操作しているような格好になるやろうけれども、実際問題としてどうですか。失業の実態の把握と、将来労働力を把握する面において今の労働力の調査では職安行政、あなた局長として自信が持てないと思う。私何べん聞いても自信が持てないからあなたも同じように持てないのではないかと思うのだがね。私は前からも言っているのだが、今度の国勢調査に十分にそれを取り入れてはっきりと労働力をどう利用するかと、今のようにちょっと工業が伸びてきたら農業の過剰労働力や零細企業の労働力がざあっと大波のように流れて入ってくる。それでとまったらそれがまたずっと引いて、資力のないものだけが、労働力のないものだけが残ってしまうということになるので、だから私は、ここで労働力の配置という、三年とか五年とか八年とかの、今の十五歳以上の人口の中で産業労働力を見て、そしてその中で農業労働者を大体生活できる単位は幾ら、中小企業や労働力、生産能力と、あわせてそれをどういう工合な位置に置いていくか。雇用労働肴をどういうふうな格好にしていくかという計画を、単に経済企画庁の所得倍増論のようなところへ、私どもが見てもなるかならぬかわからぬようなところへまかしておかぬで、労働省の職安でそういう計画をお立てになって、そして多くの学者やいろいろな意見を一ぺん掘り出して、完全雇用の時間短縮をいつの計画にどうするかというものを出して、みんなの意見を聞いて、そしてその立場から日本の産業投資経済に対する基礎をこしらえていくというところへいかないと、私はいつも、前の職安局長もそうだし、あなたもそうだが、内心ではお気の毒だと私は思っておる。こういう資料で、つかめないような資料であっちもこっちも絵をいっぱい書いてみて、その絵の継ぎ足しがどうなるか、さっぱり自信がないという格好で、一生懸命説明されているという格好、もっと思い切ってそういうことをお立てになったらどうなのか。でなければこれさっぱりつかめないということなんですがね。そういう点はどういう工合に考えておられますかね、職安局長
  101. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 職安の労務需給調整活動を積極的に行ないます現実の資料といたしましては、先ほど申し上げました職安の窓口における求人、求職を中心にいたしました調査、これを内容を改善して参りますればさしあたりのところはこれでやれると思います。今現在そのような措置は講じさせることにいたしております。ただ先生の今言われましたように、今後の五年あるいは十年という先を見まして、そして、長期的な経済計画に即応した雇用計画というものを立てて参りますためには、私もこれは現在の労働力調査だけでは不十分な面が多いというふうに考えております。こういう面につきまして、実は労働省、私どもはこの統計を使って仕事をする方の立場でございますが、労働省の労働統計調査部でこのような関係をまとめることになっておりますので、労働統計調査部とも連絡をいたしまして、労働統計調査部から今後の労働力調査の改称の問題につきまして、総理府の統計局の方にいろいろ今意見を申し入れておるところでございますので、さしあたりの段階といたしましては、国勢調査の中にわれわれの希望も入るというふうにしてもらいたいということで、これも総理府の統計局の方に統計調査部の方から申し入れをしております。以上のようなこととあわせまして、現在の毎月勤労統計だけにとどまらず賃金雇用に関するところの実態を、いま少し動的に把握するというために、来年度におきましては統計調査部で実施する賃金調査、これにつきましては大幅に現在の内容を改訂して参りたいということで、目下作業を進めておりますので、こういうようなものができますれば、われわれとして利用者の立場から非常に役に立つというふうに考えております。なお、民間の方も入れて将来の雇用計画について十分検討した方がいいという御意見、まことにごもっともでございます。この問題につきましては、内閣の雇用審議会におきましては、関係者の方々、現在はこの離職問題を真剣に検討しておられますが、こういうような雇用審議会等の場におきまして、今後の長期的な雇用計画という問題について、十分に御意見を伺って、それらをもとにしてわれわれの計画を立てていくということにいたしたいと考えております。
  102. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ最近経済企画庁が所得二倍論、九%にして短縮論が出ております。賀屋さんの委員会で見ると、低所得者五倍論というやつが出ておるわけですね。その賀屋さんのあれを見てみると、私は何が何やらわからないようなことになってくる。五倍になったらまことにけっこうなんだけれども、慈善事業のような格好でこれはできるかということを非常に、私はよくわからないんですけれどもね。だから政府がああいう自民党、与党として、まあ賀屋さんのやつは政府でないでしょうが、とにかくに今の自民党が政府を持っておるんだから、ああいう格好で自民党の政府がお出しになるなら、やはり裏づけというものはあってしかるべきだ。そんな労働力の職安行政の面でも、そういう問題、裏づけにするような問題といったら、ちょっと言い過ぎかもしらぬけれども、そういう構想というものが政府与党にあるならあるように、労働行政も単に職安の窓口のことだけじゃなしに、計画があってしかるべきだと私は思っておる。しかし、その問題はあなたに追求しても無理だから私はやりませんけれどもね。そういうところから考えてくると、どうも統計の出てくるやつだけが報告を受けたということになるのだから、一つ労働省の中で職安の行政の中で十分にお考えを願いたいと思うのです。  それからもう一つ保険行政ですね。失業保険の問題ですね、昨年ああいう格好でまあ失業保険の会計がよくなったから、総合計画のなんかの基金に使われるという、失業公団かなんかにやられるという格好、失業保険基金は預金部運用資金に入っているのか。自主管理なのかどうかということですね。それから将来、今年でたしか九百億あまりになると思うのですが、年あらたまったんですから、失業者の救済ということ、救済というか給付なんかそういう格好の救済ですね、どういう工合に使われるおつもりなんかどうか、そこらの意見一つ
  103. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 失業保険の問題につきましては、御承知のように、さきの国会におきまして、待期の短縮、それから特定地域におけるところの給付期間の延長、職業訓練中の給付の延長、就職仕度金の支給というようなことについて、給付内容の改善を行なったわけでございますが、その際におけるいろいろ御審議の結果の御意見もわれわれ十分拝聴しております。そこで、特に来年度におきましては、目下いろいろ検討しておりまするけれども、一般の保険の問題につきましては、給付の最低の額を、これを引き上げるという問題、それから日雇いにつきましては、日雇の保険料を引き上げる、こういう問題につきましては、当面緊急に措置を要する問題であると考えられまするので、これについてわれわれとしては目下検討いたしております。これを職業安定審議会その他の機関に諮問いたしました上で成案を考えて参りたいと思っております。  なお、それ以外の問題につきましても、いろいろ検討を要する問題があると思います。これは総理大臣から社人会保障制度審議会に、現在他の社会保険とあわせまして、根本的な検討を諮問いたしておるところでございます。社会保障制度審議会におきましても、各般の問題とにらみ合わせまして、目下真剣な検討を続けておられまするので、われわれといたしましては、この答申の結果を待って、さらに根本的な内容の検討に若手したい、このように考えております。  それから失業保険金の積立金の運用の問題でございますが、現在は失業保険の積立金が七百七十億程度でございます。これにつきまして、現在もこの運用収入の相当額を職業訓練というような施設に使わせてもらっておるわけでございますが、先ほど来申し上げました最近の雇用、失業情勢にかんがみましてこれらの積立金というものを、一定額は、これはいろいろな雇用、失業情勢の今後の推移を見なければなりませんので、安全な程度の額は、これは常時置いておかなければならないと思いますが、それ以外の問題につきましては、その運用収入等を自由に使うということができて、そうしてそれを被保険者の利益のために運用することができれば、これはまことに望ましいことであると考えまして、最近の雇用、失業情勢に応じて、被保険者の利益をはかるために、たとえば労働力の流動性の確保の問題であるとか、あるいはさらに職業訓練関係の充実に使う額を増加さしてもらう、こういうようなことが必要であると考えますので、目下成案を練っております。これにつきましては、大蔵省その他関係各省と折衝を要しますので、この段階では、まだ先がどうなるかということは申し上げる段階ではありませんけれども、私どもとしては、ただいまのような基本的な考え方の上に立ちまして、積立金も被保険者の利益のために使わせてもらうという方向に向かって成案を考えたいと思っておるところでございます。
  104. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 失業保険の問題は、日雇いの今の失業保険の問題も含んでおるわけで、お答えがあったわけですが、これは非常に重要な問題ですから、来年度の予算には、年新たになったのだから、あれは非常に不満な問題だから、あなた局長になられたのだから、それは一つ真剣にこの問題と取り組んでもらいたいと思うんです。で、特に日雇い労働者の失業保険というものはあれでいいかというと、だれでもいいとは言えないと思います。それからもう一つは失対事業の問題です。失対事業の問題で、来年度の構想はどういうことかいうことと、PWの八割賃金なんというものは、労働の質と量とによってだんだんと事業効果を要請している中で、あれでいいのかどうかということが出てくるわけであります。PWそのものが、一般賃金を調査されることはいいけれども、それで八割というようなもので規制するということがいいかどうか。全部はずせとは私は今直ちには言いませんけれども、一部はそういうほんの軽易な労働の基準というものをPWで、まあ八割というのは根本的に問題になりましょうけれども、PWの尺度というものがあってもいいかもわかりませんけれども、しかし、今の賃金で生活ができるかとか、十年間で低所得五倍論というものが出ているときに、根本的に私はあの考え方と見合って考えなければいかぬ、壁に突き当たっているんじゃないか。日雇い労務者の賃金というものは、片方は働いている。働いていない人の五倍にしようというのに、働いている人に、そんな三百円やそこらで十七、八日間働いて、賃金を五千円、六千円しかやっていないというようなことが許されるかどうか。片方ではえらいのぼりで、選挙対策か知らぬけれども、高いのぼりを上げる。片方の実質的な行政においてはちびちびととまっている。どうも自民党と政府と一緒になってしまって恐縮ですけれども、そういう感じを受けるわけだから、だからそこらあたりについて、あなたの労働省としてどう考えているかということをお聞きしたい。それからまあそこまで踏み込んでいないなら努力してもらわなければならぬ。
  105. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 現在の失業対策事業につきましては、いろいろな問題があることは御指摘の通りでございます。現在の失業対策事業を、緊急失業対策法に基づきまして実施いたしました当初の考え方におきましては、この失対事業というものは、失業者を他の産業に配置転換、吸収させるための臨時的な措置として考えられておったものでございます。私どもは根本的に考えまして、やはり失業対策事業というものはそういうものでなければならない、このような考えを持っておりますしただ現状見てみますると、失業対策事業に従事する労務者の層というものは停滞する傾向がある。しかもその内容を見てみますると、四十才以上、あるいは五十才以上というような人々が非常にその大きな部分を占めるに至っておるという点に問題があるのではないかと思います。またそうでない、そこまで中、高年令層に達しないような人々におきましても、失対事業に従事しておりますと、よその産業なり事業所なりに進んで入っていこうという気分にとかくならないで、そのままずっと、まああまり楽ではもちろんありませんが、今のままでしばらくずっとやりたいというような気分でやっておりますうちに、だんだんとまた停滞してしまう、こういう傾向が率直に申して見受けられるのでございます。私どもはそういうような点から現在の失対事業というものを見てみますと、やはり改善を要する面があるのではないか。それは第一番目に、失対事業に従事しておられる労務者諸君の中で、これはたとえば一定の職業訓練等を受けてもらいまして、職を多少身につければ、他の事業所に転換することが容易になるような人が相当おられるわけでございます。こういうような人につきましては職業訓練を受けてもらう、もちろんその間における生活は保障しなければなりません。生活を保障しつつ職業訓練を受けて、他の事業所に転換してもらう、こういうような点についても、われわれはもう少し措置を講じた方がいいのではないかという考え方を持っております。また、中高年令層のような方々については、これに適するような事業を考えていくことが必要ではないかというような点で、現在の失対事業の体系というものをもう少し考え直して、合理的にする必要があるのではないかという点を、まず第一に考えております。  それから第二番目に、賃金問題でございます。これはただいま八割というお話がございましたけれども、一般の同種同地域の労働者の平均賃金よりも、やはり若干下回るということは、これは先ほど申し上げました失対事業の基本的な考え方からして、やむを得ないことではないかと考えております。ただ、八割がいいかどうかというような点については問題がございます。現在の緊急失対法に基づく規則の中にも、八〇%ないし九〇%というような幅を設けておりまするから、そういう面について十分考えて参りたいと思っております。  PWの問題でございますが、現在このPWというものは、失対事業だけでなしに、他の面についても利用されておることは御承知通りでございまするから、PWを単に廃止するという場合には、やはりそれにかわる適当なる方法というものを、やはり考えなければならない。その適当な方法をどういうふうにしたらいいかということについて、これはわれわれも真剣に検討いたしておる最中でございます。これにかわるべき適当な方法がありますれば、われわれとしても適当な合理的な方法によってやって参りたいと考えております。  なお、生活保証とのバランスの問題でございます。これはたとえば五倍増とかあるいは二六%増とかいろいろな考え方があるわけでございます。私どもといたしましては、今のPWというものの方式によって、失対事業の労務費負担額というものをきめて参る際に、今の生活保護関係とのバランスというものは、もとよりこれは考えていかなければならないと思っております。ただそのもとにつきまして、いろいろな議論があることは御承知通りでございます。今後、政府あるいは自民党の内部において、いろいろ調整が行なわれると思いますが、われわれの関係におきましても、そういうものとの均衡というものを十分考えながら、作業を進めて参りたいと考えております。
  106. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はPWそのものを議論しているのではないのです。私は失対事業そのものを議論している。今の緊急失業対策事業法というものができたのは、振り返ってみたらあなたのおっしゃる通り、もっと極端に言えば、吉田さんのポケット・マネーを出して、そして人よこせというので、何とか金をやって、ほうきとなにを持たしてやらしておったというのが出発なんです。本質的に今の失対事業というのは、三百何十億の金を出して、やはりそれはそれなりに事業効果を、実際やっている地方自治体がやはり、要求をしているんです。要求して、その内容もそういう工合になってきているんです。だからそういう形で、今の緊急失対事業法の法律だけからきて、そういうものに戻るべきだといって、それだから一般の賃金を考えて、ふやさなきゃいかぬというのは理屈じゃないと私は思います。失業対策事業というのは国家がやろうと、地方自治体がやろうと、そこで仕事をして、生計を立てればいいんだから、私たちの立場からいえば、そういう国の公共事業がたくさん行なわれて、そこに失業者を吸収するというのが、一番的確だと思っている。だからそういう工合にして、事業の効果はあがって、そこに単に一般の地域の賃金がどうあろうと、事業効果に応じて賃金がどんどん、それの二割増しなり五割増しになっても、私はいいと思う。そういう事業がどんどんこれから国の事業として行なわれて、失業を吸収するということで、それに賃金のワクをはめちゃいかぬというのが一つ、それからもう一つの内容を言えば、昔に立ち返ったような事業について、どうするかという議論は大いに残っているところだと思いますけれども、今の公共事業に莫大な金を投じたって、失業者の吸収なんて一つもしていない。これも労働省としては、重大な問題だと私は思う。手持ち労働によって、公共事業がみな行なわれて、労務者吸収でありながら、吸収がほとんどされてないということなんですから、私はそういう議論は、もうここで長くなるからいたしませんけれども、しかし、そういう工合にして、問題は労働力、生産という工合につながっていく。失業対策事業でやろうと、民間でやろうと、単に地方自治体でやろうと、需要と供給で、働いて、労働力の提供において、賃金が上がっていくという建前でなくて、それをワクにはめてしまって云々というような議論は、もう私はすべきじゃないのではなかろうかと思う。だからそういう立場から、どういう事業をして、的確に効果をして、失業者自体を、適切に事業を起こして吸収するということが、今の急務ではなかろうか、私はそう思っている。そういう意味からの計画ということになるのですけれども、きょうは職安局長だけしかおみえになっていない、で、関連して基準行政の問題に、もうここでひっかかってきますから、私はもうこれでやめます。やめますが、ただ、次官にお願いしておきたいことは、このいろいろな問題があっても、来年度の予算を立てるときに、労働省としてはどう考えているのだという問題が、私は衆参の社労委員会に提出されて、議論をして、そうして見積もりをして、予算要求とか、それから行政に反映するという道をとられるのが当然だと私は思う。それをひた隠しに隠して、それで閣内において力があるとかないとかいう議論は別としましても、きまってしまったものを、一生懸命に汗を流して、衆参の社労委員会で説明をしているというような格好は、もうとってもらいたくない。そうでしょう。われわれは厚生行政労働行政を、どうしたら国民の利益になり、国の経済の中で、どういう位置をとり、どういう正常な労働行政をとったら一番いいかという委員会なんだから、そこの意見も聞かずして、勝手にきめておいて、ひた隠しに、汗を流してきめたやつを説明していくという格好は、私はやめてもらいたい。だから早急に、ぎょうじゃありませんが、来月には国会も開かれます。開かれなくても、社労委員会は開かれますから、そこへ的確に労働省の方針をお出しになって、そうして十分に意見を戦わして、そうしていいものを見つけて、来年度の行政の基礎を作ってもらいたいということを、私は次官にお願いしておきたいと思います。今初めておいでになったのだから、約束せいとは、そこまで私は言いませんけれども、それはぜひ実現してもらいたいし、単に職安行政ばかりじゃない、ほかにもいろいろ労働省の行政はありますから、それはぜひこの次の委員会には、資料とともに出してもらって、十分にわれわれが研究し、議論ができるような場を作ってもらって、そうしてその上に立って、来年度の行政の基礎資料を作ってもらいたい。これを私はお願いしておきたいと思います。そうでないと、何かつんぼさじきにいつもいるような格好じゃ、国のためにも、国民のためにも、私はよろしくないと思う。ぜひそういうことにしてもらいたいとお願いしておきます。  それから職安局長には先ほどからお話のありましたような資料をみんなに一つ配っていただきたいと思うのです。それから労働省のこの関係の資料がたくさん出て、最近資料を送っていただいておりますけれども、皆さんに、委員一つぜひ配っていただきたい。そうして問題点があったら説明を加えてもらいたい。ぜひみんながわかるようにしてほしい、こういう工合にお願いします。  それから今度の国勢調査について最後に聞いておきますが、どういう角度から調査事項の中に雇用状態、労働力配置の問題を要求されたか、聞いておきたいのですがね。
  107. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) お尋ねの資料の問題につきましては、御要望通りに取り計らいます。  国勢調査につきましては、ただいま実はいろいろこちらから要望しましたが、非常に技術的な問題もありまして、手元に実は持っておりませんので、後ほどお届けいたします。
  108. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) この際、委員長からも申し上げておきますが、ただいま藤田委員からの御要望もありましたように、雇用状況に関する統計資料は、きわめて重要でありまするので、至急各委員に御配付のほどをお願いいたします。
  109. 岡崎英城

    説明員(岡崎英城君) ただいま藤田委員からお話のございました御趣旨は十分体しまして、大臣とも相談しまして、御要望に沿うように努力いたしたいと思います。
  110. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認めます。  それではこれで散会をいたします。    午後三時三十一分散会