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1960-08-11 第35回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年八月十一日(木曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————   委員異動 八月十日委員坂本昭君及び小柳勇君辞 任につき、その補欠として江田三郎君 及び松本治一郎君を議長において指名 した。 本日委員松本治一郎君、江田三郎君及 び大谷藤之助辞任につき、その補欠 として坂本昭君、小柳勇君及び横山フ ク君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉武 恵市君    理事            加藤 武徳君            高野 一夫君            坂本  昭君            藤田藤太郎君    委員            鹿島 俊雄君            勝俣  稔君            紅露 みつ君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            横山 フク君            秋山 長造君            江田 三郎君            小柳  勇君            藤原 道子君            田畑 金光君            村尾 重雄君            竹中 恒夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 中山 マサ君    労 働 大 臣 石田 博英君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    厚生政務次官  田中 正巳君    厚生省児童局長 大山  正君    厚生省年金局企    画数理室長   坂中 善治君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○社会保障制度に関する調査  (厚生行政基本方針に関する件) ○労働情勢に関する調査  (労働行政基本方針に関する件)   —————————————
  2. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ただいまから社会労働委員会開会をいたします。  初めに委員異動を御報告をいたします。八月十日付をもって、坂本昭君、小柳勇君が辞任し、その補欠として江田三郎君、松本治一郎君が選任されました。八月十一日付をもって松本治一郎君が辞任し、その補欠として坂本昭君が選任されました。右御報告を申し上げます。  この際、理事補欠互選の件についてお諮りをいたします。委員外転出のため、欠員となりました前理事坂本昭君の補欠互選を行ないます。その方法は、便宜上成規の手続を省略して、委員長指名とすることにいたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認め、それでは理事坂本昭君を指名いたします。   —————————————
  4. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 社会保障制度に関する調査の一環として、厚生行政基本方金に僕する件を議題にいたします。この際、中山厚生大臣から、所信表明を聴取いたしたいと思います。
  5. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 私は、今回池田内閣発足にあたりまして、厚生大臣の重責を負うことになりました。厚生行政につきましては、多少の経験を有しておりますが、何分にも不敏なものでございますので、幸いに各位の御協力、御援助を得まして、この大任を果たして参りたいと存じておりますものでございます。  本日、当委員会が御審議を行なわれるに先立ちまして厚生省所管の諸行政に関し、所信の一端を申し述べたいと存じます。  あらためて申し上げるまでもなく、社会保障制度を確立し、国民生活の安定と、国民福祉の向上をはかることは、福祉国家の実現を期する上に、きわめて重要な意義を有するものでありまして、わが内閣の最優先施策とされているのであります。厚生行政は、これら諸施策推進するにあたり、その中核をなすものとして、きわめて重要な役割を有しているのであります。私といたしましても、全力を傾けて社会保障制度充実強化、特に当面の問題として、社会保障の二大支柱である所得保障と、医療保障中心に、母子福祉対策、低所得層対策、その他厚生行政進展に努める所存であります。  まず、第一の問題といたしましては、国民年金の円滑なる実施であります。国民年金制度は、将来国民所得保障の分野における中核体となるべきものであり、その健全な発展いかんは、国民生活の、安定にきわめて大きな影響を及ぼすものと考えられるのであります。政府におきましては、昨年十一月から無搬出制男福祉年金の支給を開始するとともに、昭和三十六年四月から保険料の徴収を開始する拠出制年金について、鋭意諸般の準備を進めているところであり、なお、今後ともその円滑適正な実施努力して参る所存であります。なお、本制度改善充実につきましては、改善を望む意見もあり、政府としてもその余地のある限り改善することはもちろんで、目下慎重にその検討を行なっているところであります。  第二は、国民保険達成であります。医療に関する国民保険達成につきましては、昭和三十六年三月を目途に努力を重ねているところでありまするが、関係各位の非常な御努力により順調な進展を見つつあり、ほぼ計画通り実現し得る見込みであります。今後は、僻地医療対策の一そうの推進をはかり、本年七月発足を見ました医療金融公庫と相待って、公私医療機関整備等国民保険基礎条件である医療体制整備を期するとともに、皆保険内容改善充実の方向に向かって努力いたしたいと存じております。なお、これに関連いたしまして、現在医療制度調査会に新しい情勢に適合した適切な医療制度について、根本的な調査審議をわずらわしており、国民保険進展に応じた適切な医療制度の樹立に資したいと考えております。  次に、母子福祉対策についてであります。母子福祉対策については、第三十四国会において母子福祉団体に対する母子福祉資金の貸付が認められ、実施を見たところでありますが、今後は、その有効適切な運用をはかるとともに、母子健康センター充実保育所整備等、本施策の一そうの推進全力を傾けて参る所存であります。  また、低所得層対策につきましては、国民所得の著しい上昇にもかかわらず、とかく取り残されがちな階層でありますので、政府といたしましても、これが対策にさらに努力いたしたいと存じております。  さらに、健康な国民生活の基盤となる生活環境改善でありますが、四年後にオリンピックの東京開催を控え、その整備改善を要望する声が大きく盛り上がっており、今後、上下水道、清掃施設等環境衛生施設整備充実につきましては一そうの努力を払いたいと念じております。  以上のほか、結核対地小児麻痺対策等公衆衛生施策強化老齢者身体障害者等の援護、児童健全育成等に格段の努力を傾注いたしますとともに、自然公園整備同和対策推進等努力をいたしたいと存じております。  以上申し上げました諸問題を中心に、厚生行政進展のために各位の御協力、御支援を得まして、できる限り努力いたして参る決意でおりますので、ここに重ねて各位の御協力お願い申し上げる次第でございます。   —————————————
  6. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) この際、御報告を申し上げたいと思います。委員異動について八月十一日付をもって江田三郎君が辞任をし、その補欠として小柳勇君が選任されました。先ほどの報告に追加いたしますので御了承をいただきます。   —————————————
  7. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) ここで一言申し上げておきたいことがございます。と申しますのは、昨日の読売及びそのほかの朝刊におきまして出ておりました問題がございますが、これは昨日の衆議院委員会におきましても、私はかようなお話を申し上げておいたのでございます。まだ省議も行なわれておりませんことは皆様承知通りでございます。これから省議を行ない、各局のいろいろなる考案された問題につきまして省議の格好においてこれをまとめ、また、わが党内には御承知通り社会部会というものがございまするので、そこでまた党としての考え、また、新たに政調会に生まれました低所得者階層に対するところの特別委員会というものが賀屋興宣先生をその委員長としてできておりますので、こういうふうな、党内においても二つ立場において、今後いかにすべきかということを非常に重視されまして、お話し合いがあっておるのでございます。ですから厚生省といたしまして、まとめましたもの、また、その二つ委員会におきましてまとまりましたものをつき合わせて、そして初めてコンクリートなものかでき、それから大蔵省ともこれはお話し合いをいたしましての予算折衝というような段取りにいくように私どもは配慮いたしておりましたわけでございます。しかるに、まあ言論の自由と申しましょうか、文筆の自由と申しましょうか、どういうことでございましたか、ある程度の施策を考慮中に、これがいかなるはずみでございましたか、ああいうことになりまして、私ども関係者一同は実に驚いたわけでございます。これは偽らざるところの実情お話し申し上げておることでございますが、こういう今を御了承下さいまして、あそこに出ておりましたものが、わが党がやりまする厚生省の持っておりまするものの最終的なものだということは、いかにしましても申し上げられないことは御承諾いただけると思いますが、三十日、この月末においてこういうことがまとまるという予定を私ども持っておりましたのが実情でございます。どうぞ、こういうことを一つ了承、御理解をいただきまして、あれはまだわれわれの最後的の考えでも何でもないのだ、一部ではあるかもしれないけれども、それがすべてではないということの御了解を得たいと思いまして、私は御審議をお始めなさいますに先立ちましてありのままの姿を申し上げておきたいと、こう考えおります。
  8. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 質疑に入る前に田中政務次官からごあいさつがございます。
  9. 田中正巳

    説明員田中正巳君) 私はこのたび厚生政務次官に任命をされました。政府においては社会保障中心にする厚生行政の画期的な伸展を期しておりますし、また、国民もこれを望んでいるようでございます。このような時期にこのような大事な使命を果たすべく中山厚生大臣を補佐し、委員各位の御指導と御鞭撻をいただきまして、このようなことを望む全国民の要望にこたえたいと思っておりまするので、よろしく御叱正、御鞭撻のほどをひとえにお願いを申し上げまして、一言ごあいさつといたしたいと思います。
  10. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  11. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記を始めて。山厚生大臣厚生行政に対する基本方針に関し、質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  12. 坂本昭

    坂本昭君 このたびかねて尊敬しております中山先生大臣に御就任せられましたことを心からお再び申し上げたいと思います。また、大臣補佐役として、かねがね各種の会で一緒に討論をして参りました田中先生が次官としてりっぱな補佐役をされることにわれわれとしては非常な安心感を抱くものでございます。特に私は、去年厚生省の中にありましたたった一つ婦人の課長の席が、いろいろな紆余曲折がありましたけれども、ついに婦人として確保せられた、あのことがやはり今日御婦人としての最初大臣就任を見るに至った、こういう一つ基因を作ったものである、私はそう考えております。従って、婦人大臣として初めての御就任でありますけれども、これは決して偶然のことではなく、もちろん中山先生のすぐれた手腕によることは当然でありますけれども、やはり社会が御婦人による社会保障、もちろん母子福祉対策のみならず、広く社会保障全般に対して、婦人の手による、まあいわば台所に直結したといいますか、そういう具体性を持った社会保障を要求している一つの現われとして出てきた、私はそう思いますので、今後ともそのような御決意——厚生大臣の席は御婦人でなければならぬということになると、これはいろいろ苦情が出るかもしれませんが、少なくとも厚生行政の中には御婦人が専任してしかるべき地位というものがたくさんありますから、それらについては十分確保せられるような御努力をまずお願い申し上げておきたいと思います。  そこで、ただいま大臣から最初にお断わりいただきましたが、今のお断わりにつきましては若干私は異議がございます。せっかくのお断わりに異議を差しはさむのははなはだおかしいかもしれませんが、なるほどきのうの各紙に出されました社会保障拡充新聞発表というものは、私はけっこうだと思うのです。ただし、いつも責任を持たなければならないということですね。責任を持たないでやることは、これは従来の保守政党皆さんとしては単なる選挙対策であると、皆さんが単なる選挙対策として、国民をごまかす手段としてこういうことをなさっておいて、そうしてあとこれを新聞記者文筆の自由だというならば、きょう御来店の新聞記者諸君今後は心して一つ書いていただきたい。一切書くのをやめてもらったら一番いいと思うのですね。だから私はその点でこうした新聞発表は、単なる選挙対策であってはならないのですが、しかし、内容を特に読みますというと、この社会保障拡充に対する厚生省原案に、これでもまだ手ぬるいという意見がある、これははなはだ私は解しかねるのであります。従って私は、これはまだまとまらないもので、どうか今月の終わりまで待ってくれというけれども、私はそうは言わさない。大臣が今お手元にないとするならば、少なくとも項目はあげてあるのですから、本日は各局長からある程度の厚生省原案を出していただきたい。私たち野党としてはもちろん、これはもう与野党一致して推進するものであります。ですからわれわれもよろしいと、これはもう中山厚生大臣を支持して徹底的にこれだけは仲よくやっていこうという決意をわれわれも、表明してちっともかまわないのです。ですから大臣は、これは新聞社か勝手に書いたのだというふうな、そういうふうにされないで、今現在、素案でもけっこうです、これだけの決意を持っているという大臣としての決意のほどを見せていただき、そうすればわれわれも、また次の委員会までにいろいろ検討いたします。そして野党としても、この点は支持できると、この点は一つ大いに支援します、そういう決意をもってこたえたいと思うのです。まず以上の点をお伺いしておきたいと思います。
  13. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) まことに身に余るお言葉をちょうだいいたしまして感謝をいたしております。  この厚生行政というものは私がずっと前から政務次官をいたしましたときから見ておりましても、与野党ともに争いの場ではないということは、実に判然といたしております。お互いに何とかして国民生活一つ向上させようと、いわゆる衛生福祉の面で何とかして一歩でも前進ということをすべての委員のお方様方お願いいただいておるということで、ただ、わが党といたしましては、予算とのにらみ合わせということで、これまで野党方々の申し出に対して、その通りのことができなかったことはまことに残念に思ったことが多々あるのでございまするけれども、こういう出たものに対して責任を待て、これが選挙対策であってはならないではなかろうかというお言葉でございまして、これはごもっともだと思います。何かP・P運動のようにお考えいただくことはまことにつらいことでございまして、今こういうふうにして新聞に出ておりますことも、あるいはある部分では、これは以上のものも出てくるかもしれないという私は淡い希望を持っておるのでございます。微に入り細に入り私が申し上げましてもまたいかがかと思うのでございまするが、決して選挙対策ではございません。池田総理が私にこの席につけとおっしゃいましたときには、ただただ社会福祉をやりたいのだから受けろとおっしゃった。私はあのお言葉に信頼を持って、ほんとうにやって下さるのだ、総理は結局財政通でいらっしゃる、だから大体のいわゆる自然増とかいう、そういうもののあり方を御存じの上でこういうことをおっしゃっていらっしゃるのだろうと私は勝手ではございますが、そうとりましたのでございまするから、その後もやっぱり減税よりも社会保障というような言葉がよく言われておりますることに私非常に大きな希望をかけておる次第でございます。どうぞ、そういうわけで、私どもは心から低所得者階層に対しては、もっと努力して差し上げたい。母子福祉年金についても、私も地方未亡人会に参りましても、いろんな戸を聞き、こういうことはこういうふうにしたいということは党にも申し上げてございますし、また、省にも申し入れをしております次第でございますから、私ども選挙というようなことを抜きにいたしまして、この問題を責任ある立場にあるものとして考えているということは、ここで申し上げておきたいと思います。
  14. 坂本昭

    坂本昭君 選挙対策のP・Pだけにとどまらず、具体的に責任を持っておやりになるということばを一つここではお約束の百葉と承っておきます。  そこで、本日の所信表明の中で、大きな問題として大臣が指摘されたのは、やはり年金の問題と保険の問題だと思います。で、最初大臣の一応大ざっぱな御意見でけっこうでありますが、年金並びに保険についてどういうふうにしていくつもりであるか、もう少し掘り下げて一つ意見を承らしていただきたいと思います。しろうと大臣ではございませんから。
  15. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 年金につきましてはおととしの夏でございましたか、私もこの年金特別委員に入れていただいたことでございまして、その当時も私もいろいろと実は希望を申し述べたのでございまするが、ああいう画期的なこれは制度でございますので、結局二つに分かれて、その福祉の方と拠出の方とございましたのでございますが、いろいろ申しましたけれども、今のところでは私ども、私だけじゃございません。ほかの委員さん方もしきりにお願いになりましたこともそのときに入れられなかったこともあったのでございます。それで、福祉年金にいたしましても、結局御老人方に千円というようなことでございまして、身体障害者には千五百円、それで、身体障害者方々からも、しきりにこれではとてもやっていけない。その一級は両腕、両眼というような徹底的な気の毒な立場だけにやっているじゃないかと、片足のものはどうだ、同じように不自由じゃないかというようなお言葉も聞かされております。まことにわかるのでございますが、たとえば死別未亡人母子家庭に対してあの通りのことになっておるのでございますが、地方に出ましても、生別をどうしてくれるのだ、死別の場合よりも生別母子の方がつらいんだ。これは確かに適切な声でございます。しかし、その当時もそういう話もございましたけれども、これは保険としての建前はどうしてもとれないというようなお話がございました。それで省の方にもお願いいたしまして、この点も何とかならないものかと、しかし、どうしても保険という建前にはこの生別はならないということでございまするから、それならば、何かほかのワク内でそういうお方々にも少し国の情愛というものを示してあげるべきではなかろうかというようなことが福祉年金の方で出て参っているわけでございます。しかし、私が驚きましたのは、奈良の菖蒲池の未亡人大会に行きまして、わずか千円と言ってくれるな、これで進学も思い切らなければならなかったその子供が上にいかれるようになった。制服も買うてやって、その制服をその晩抱いて寝て、感激であった。関係皆様方ありがとうと言って泣かれたときには、私は、実に妙な気がしたのでございます。こんなことででも喜んでいただいているのだ、もっとしなきゃならぬというような心持ちで実は帰って参りました。だから、いろいろ年金福祉の面につきましても私は改善すべきところはあると、こう信じております。それで、その点を今厚生省でもっぱらどうしたならば幾分かでもましになるかということで御心配していただいているのでございますが、また、拠出制年金でございます、四十年は長いじゃないかというお声、まあしかし、二十五年かけていたださましたらというような話もし、また、いろいろな難点があるということは私ども承知をいたしております。かけられない方はどうするのだというようなお声も聞いておりますが、何と申しましても、これは福祉年金でなくて保険立場でございまするから、おっしゃる通りのことをしていくこともできませんが、また、貨幣価値が変わって参りますので、五年ごとにはもう一ぺんこれを一つ徹底的に考え直すという規定も入っておりますので、これから、まあ私が好んで申しまするところのエスカレーター式に一階々々上がっていこうという考えでおるわけでございます。昨日も衆議院の方で出ましたが、金持貧乏人も百円、百五十円じゃないか、なるほどそういうことでございますけれども、やはり、まあ私昨日の答弁を申し上げれば、やはり金持だって貧乏人だって三等の汽車に乗ろうと思ってその切符を買えばみんなやはり一つの箱に乗るじゃございませんかと言って、まあ当を得ないかもしれませんけれども、そういうことも申し上げたような次第でございまして、いろいろの面でまあ手を入れなければならないところがあるということは私どもも察しておる次第でございます。  それから保険でございますが、この保険がどうも調整金が足りないとか、あるいはいろいろと給付率が悪いじゃないかとか、いろいろお小言をちょうだいいたしておりますので、私どもはどれだけの予算をいただけるかまだそれ未知数でございます。しかし、その予算のいただける範囲内におきまして改善をしていきたいということを考えております。
  16. 坂本昭

    坂本昭君 国民年金については、先般私も全国の社会保障推進協議会方々を御案内していろいろと大臣の御意見を伺いました。ただ、ここで国民年金にあまりに重点を置き過ぎて、実は厚生省昭和十七年から営々として築き上げてきた厚生年金保険ですね、このことについて全然触れていないことは非常にこれは重大な手落ちだと思うのです、おそらく大臣としては、たまたまここでは国民全般が関心を持っているから国民年金のことだけ触れたと思うのですが、実は厚生年金保険の方にもっと大事な点がある。特に年金については、今のような制限の緩和の問題だとか、金額を引き上げる問題とか、そういうこともありますが、今私たちが特に国会の中で一番考えなければならないのは、積立金の問題だと思うんです。この積立金のことについて一切触れないということは、つまり党内事情あるいは省内事情によるものだと思いますが、実はこれがむしろ一番大事なことなんです。で、先般は、大臣は私にまかしておきなさい、積立金については私がやりますと言ったのですが、この際、この積立金国民年金積立金もさることながら、さらに厚生年金のすでに四千億に近い積立金、この問題については、毎回各大臣の御就任並びに通常国会になったりきに、ずっと議論されてきている。これは中山大臣としてもしろうとでありませんから、十分御承知の上に就任されているはずであります。しかも、もうすでに八月の中旬に達しようとして、この問題に対する各種審議会もそれぞれ審議を続けております。ですから、一つこの国会の場において、大臣責任ある御答弁を、特に被用者の年金国民年金、両方についての方針と現段階の実情をここで一つ御説明いただきたい。
  17. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) この国民年金の方の積立金は、大体初年度三百九十億くらいに、もし順調に参りますれば得られるんではなかろうか。ですからいろいろその中で、問題なしにもしこれが集まるとなりますれば、それだけある。これはやはり国民がわずかな金を積み立ててくれるのでございますから、私どもは、何とかしてこれは国民福祉のために還元をさせてもらいたいというのが、私どもが心から願っておることでございます。また、厚生年金の方におきましては、これもまた、やはり働いて下さる方々の結局汗の結集と申しましょうか、そういうお金でございますので、これまでも、今もうすでに多くの御要望も私が参りましてからも還元融資につきましていただいております。ですから、これは働く人達のための何といいますか、住宅だとか、あるいはそのほかの福祉のために、これまで私もどこまでそれが還元されているかしりませんけれども、とにかく御要望を見ましても、相当のお金がこれに還元融資されておるということを承知いたしております。今御指摘のお金の額全部が還元されていないかもしれませんが、これにはみんなが努力をいたして、党といたしましても、またいろいろの御要望に沿いましてこういうことをやつていることは事実でございます。   —————————————
  18. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) この際、追加御報告を申し上げます。  十一日付をもって大谷藤之助君が辞任せられ、その補欠として横山フク君が選任せられました。   —————————————
  19. 坂本昭

    坂本昭君 中山大臣の声が、最初は大きかったのが、だんだん小さくなってきたんですが、選元融資になると一つも聞えなくなってきました。厚生大臣は、テレビなどでは非常にりっぱな体格で写真に写っておりまして、九月か十月ごろになってき、だんだん小さくなって消えてしまったら困るのです。特に今、その程度のことでは、国会委員会ではこれは納得いたしません。この間大臣は、社会保障制度推進協議会で集まった全国の人たちには、胸はたたかなったけれども、胸をたたかんばかりにして、大蔵省と厚生省との今の積立金の使用の問題については、まあ一つ私にまかしてもらいたい、かるがゆえに私が大臣就任しているのであると、大へん大みえを切られたのですが、きょうはだんだんと声が小さくなってきている。これははなはだ不思議にたえません。少くとも厚生年金積立金は、ことしたしか百十五億の還元融資だったと思いますがね。つまり三千六百億がこの春ぐらいだったと思いますが、もう四千億に近い積立金がたまつてきているのじゃないかと思います。それがその中から、わずかに利子にも足らない百十五億だけが還元融資されているのが現状なんですよ。私たちは、むしろその四千億でも還元してくれと言いたいくらい、もちろん四千億全部とは言いませんが、また、一つには、こういう問題があります。そういうものを借りて、たとえば保育所や養老院を建てるという行き方、実はこれは、ある面ではいい面もありますが、私たちとしては、金を借りないで、国が一般予算からこれを出して建ててしまう、二つあるんですよ。ですから、還元融資をただふやすことに汲々として、そうして今度は一般予算の方が削られるような、そういうことを厚生大臣がなさったとすると、これはまた大へんわれわれとしては迷惑なことになるんです。しかし、その前になるのは、少くとも今大臣が言われたと通り、零細なる労働者から、取りげたところの強制貯蓄的な厚生年金積立金、それからまた、国民年金積立金、これに対して、これはもう大蔵省の資金運用部資金との直接取引になる。ですから、当委員会大臣の明確なるこの所信を披瀝していただかないというと、これは本日の所信表明にはなりません。で、一つその点はもう少し明確にしていただきたい。
  20. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 大きなずうたいをしておって、だんだん声が小さくなったとおっしゃるのでございますけれども、もっと大きな声で言ってよかったら、幾らでも申し上げます。ですけれども、私がこの間申し上げたのは、この国民年金の話でございました。全国の総評の方々がおいでになって、先生もお越しになったんですが、私はこの厚生年金の方の積立金のことは、まことに頭の働きが悪くて、どれだけあるかということを聞き取っておりませんでしたし、今先生の御指摘をいただきました百十五億しか還元されていないというお話を聞きまして、実は少いのに驚いておるようなことなんでありますが、それで私は、年金の方は今度新たにいただく分でございまするから、厚生省もこれは何とかしてこちらにいただいて、そうして使いたい、一応大蔵省にお預けすることは、利上の点もございますから、お預けしてもいいんですけれども、それはこちらで使わせてもらいたいという意向を持っておるということを申し上げましたのでございます。そういうわけでございまするから、これからの努力でございまするから、よく池田総理がおっしゃいますが、過去のことは言うてくれるな、今後のやり口を見ておってくれ、池田総理でございましたら、麦飯を食えとある新聞が言うておりましたが、そのときは非常に食料事情が悪かったので、やむを得ず麦をよけい入れて食べなければならぬということを言われたのであって、あたりまえのことをいって悪口を言われた。今度は十年先になったら今の所得が二倍になる、これもあたりまえであって、今度はあたりまえのことを言われて、それをほめておられる。実におかしな工合だとどこの新聞かで書いておられたと思いますが、その通りであると思います。でございまするから、過去の四千というような数が百十五になっておるというようなことは、過去のことはおっしゃらないで下さい。それで一つ今後私ども努力、これは大蔵省ともやはりやらなければなりませんし、いたしますが、私どもが必死になってやっておるところを一つごらんいただきまして、その上で御批判をいただきましたならば非常に幸いであろうかと思います。
  21. 坂本昭

    坂本昭君 過去のことはもちろん問いませんが、せっかく百十五億まで還元融資がきているのに、過去は問わないでくれということですが、これが帳消しになって減らされたら、これはとんでもないことになる。過去は過去で、過去の実績の上に立って、たとえば厚生年金積立金は、当然来年度の予算では、私は百億では許さない。許さないどころではない。この厚生年金積立金の使用を、今の資金運用部資金の委員会に一任するというやり方をやめてもらいたいということなんです。実は国民年金の方に今みんな国民の関心がいってしまつて、国民年金の初年度三百九十億の積立金だけが今問題になっておりますが、これは実はこれはまだ小さいのです。その十倍の、四千億の厚生年金保険積立金の方があるのですよ。これをどうするかという決意は、来年度の国民年金積立金のこれの使用の問題と、両方と結びついている。で、私がここで非常に繰り返して申し上げるのは、すでに国民年金審議会では、三つの案を出している。そしてその三案の中で、この八月の終わりには決定されるのですよ。そういうところまで国民年金の三百九十億については問題が煮詰まってきている。そこで今度厚生年金積立金については、来年度の予算の問題がもう煮詰まってきている。だからこの際、もっと明確な大臣の意図を説明していただきたい。もし必要ならば、担当の各局長から具体的な数をあげていただいて、そしてそれに基づいて大臣国民年金積立金については三案あるうちの、どれに一番重点を置いてやっているかという決意を、この場合はお聞きするだけでもやむを得ません、まあ結果を見るわけにはいきませんから。しかし、九月の初めというと、かなり政府間の交渉というのは進んでおりますから、私はそういう点で別に大臣をここでとっちめようという意味じゃなくて、一番私たちが真剣に考えて、そして今度の秋の選挙のときには、私はこれをもって一つ保守と革新の争いの場として、私は従来もその点今まで議論をしてきました。しかし、秋にはそれを徹底してやる。もし大臣が、もう今度の国民年金積立金は全部厚生省でやる、それからそれで保育所や養老院を徹底的にやるということになったら、これは私、負けました。負けましたよ、この選挙には。しかし、まだそこまでいかないから、大臣のもっと具体的な説明を聞かして下さい。
  22. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 坂本先生のような優秀な先生を負かすことは、これはどうも工合が悪いように思います庁で、そこまでは多分いかないであろうと私は思っております。先生は当選しておいてもらわなきゃいけません。そういうわけでございまするが、とにかく決意ばかり申し上げましても、御承知通り、交渉相手のあることでございまするから、私がここで決意を申し上げましても、その通りに、何と申しましょうか、実行できない場合には、これは約束の違反になりますから、私は決意を申し述べることはいたしませずに、努力をするというお約束をしておきたいと思います。私一人が、これは私がどこかの国の独裁者であれば、こういたしますと、そうしてさせ得る力がありますけれども、悲しいかなや民主主義国家の厚生大臣という、悲しい立場に立たされておりますので、これは努力の約束しかよういたしません、ということを私は申し上げておきたいと思います。もし関係の方からお聞きになった方が御希望であれば、関係局長と話をしてもらいましょう。
  23. 坂本昭

    坂本昭君 民主主義はそんなに悲しいものではないはずなんですね。それで少なくとも国民年金積立金については、三案出ております、一案、二案、三案と、その中で大臣として、厚生省としてはどの案に一番の熱意を置いている、また、どの案に一番の具体性をもって、それで予算の編成なども努力していくつもりか、そこを聞かして下さいと重ねてお伺いをする次第です。
  24. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) まだ具体的答申案が手元にきておりませんので、また何と申しましょうか、申し過ぎも控えておきたいと思います。審議会に対する何といいますか越権行為になるということを私はおそれますから。
  25. 坂本昭

    坂本昭君 それでは今非常にこの年金問題は全国民的な問題になっておりますので、この際、こまかいところまでは、もう時間の関係もありますから、担当局長から全国には国民年金、特に拠出制に対してはこれを拒否するというような運動も起こらんとしているような際であります。で、積立金をどう利用するかということについて、この国会の場で、ある程度の御説明をして——もちろん結論はないでしょう、また、審議会の答申は出てないとしても、審議会では問題点としてこのように論ぜられている、厚生省としてはこれについて、一案についてはこうだ、二案についてはこうだ、その程度の責任ある御答弁だけは、せめてこの際伺っておきたい。
  26. 坂中善治

    説明員(坂中善治君) 局長がおりませんから、私からお答え申し上げます。  第一案は、国民生活の向上最優先案というわけでございます。これは従って積立金のほとんどを、国民生活の直接の福祉向上に役立つように使いたいという案でございます。第二案は、ある程度の利ざやだけを利用して、その間非常に無料あるいは低利の福祉施設をやりたいという案でございます。第三案は、それと同じでございますが、これは厚生年金国民年金両方の積立金を一本にしてやるという案でございます。これについてどれを最も優先して考えるということは、一応国民年金審議会の結論に待ちたいという考えを持っておりますので、どれを最も優先するかということは、ここでちょっとお答え申し上げかねるのでございます。
  27. 坂本昭

    坂本昭君 それではいろいろ問題はたくさんありますが、この際、特に御婦人の初めての大臣として就任せられました大臣に、この所信の中にも、母子健康センター充実保育所整備、この二つをあげております。せめてこの点は一番の御専門ですから、これについてどの程度の具体的な計画を持っておられるか、この際これはけっこう私は選挙のPRに十分なると思いますから、大きな市で一つ説明して下さい。
  28. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) どうも坂本委員は、選挙のことがよほど気におなりになるようでございますが、私は選挙などということは考えたくないと思うのでございます。なぜならば、大臣になったから選挙は大丈夫だろうと、おっしゃいますけれども(「党の選挙」と呼ぶ者あり)党の選挙ですか。その点はどうも先生が選挙々々とおっしゃいますから、私も自然その方へ追い込まれていって、変な答弁をして申しわけございませんが、しかし、たとえば選挙もいろいろやはり今看板を掲げてみたところが、その実績によって国民は判断して、なかなか看板ぐらいにはだまされないのが、今日の国民の政治意欲の私は向上した状態であると思っておりますのでございますが、母子健康センターというものは、御承知通り、一万二万の小さい都市に対するこれは施策でございまするが、これは非常に喜ばれているようでございます。それで私が婦人局長をいたしておりました当時に、これは婦人局の要望でできたものでございます。その翌年は倍になったかと思っております。ですから非常に医療の施設から遠い御婦人方の単なるその病気の相談だけでなく、二階は御承知通り母親教室になっておりますから、フルに利用していただいてという考えで、本年もこの点を、数を第一回目が五十三カ所、三十四年度が五十カ所、三十五年度が四十五カ所増加しておりますから、今年もこれよりも少なくない数でふやしていきたいと思います。私どもがこれをいたしました目的は、御承知通り、あのときに同時発足いたしましたのが売春防止法であります。まあ都市の御婦人方はいろいろと病院がございますので、まことに失礼なことを申し上げるようでございますが、いろいろな病気にそういう新しい防止法ができましたために、もしも何かの不遇なことで、そういうものになりましたら、すぐ御相談にいらっしゃるかもしれませんが、都心から遠いところの御婦人方の御相談相手になってもらうため、それから御承知通り、精薄児が非常に多く出ております。聞くところによりますと、遺伝によるものはそのパーセンテージが低くて、そうして妊娠中毒とか、これは私この間大阪の思斎擁護学校へ行って参りましたが、いろいろそういうかわいそうな病気が妊娠中毒症によって起きるもの、あるいはお産の当時の、何と申しましょうか、産み方と申しますか、産ませ方ということによって、脳の圧迫などからそういう人もできてきているというようなパーセンテージの方が多いんだという話も聞いておりますので、この母子健康センターにおきましては、精薄児の生まれることを未然に防ぐということによる方法をこれは推進していかなければならないというようなことから、これに特に過去においても身を入れて参りましたのでございます。そういうことで、母子健康センターはどうしてもふやしていかなければならないということでございますが、始めました数がまことにわずかでございます。そういうことでございますが、保育所の問題、これも現代の生活様式というものが、主人のもうける金だけでは、あるいは子供が大きくなって参りましたら、やっていかれない階層もありまして、子供が大きくなってきたにもかかわらず、妻もまた働きに出ておるというような階層、あるいは母が病気になっておるというような家庭の子供たちを収容する所でございまして、現代の生活様式において最も重要なところであろうかと思っております。私もさっそく保育所を見て参りましたが、この中には非常に改善しなければならない点がございます。たとえば、少し大きいほどの子供の十人に対する一人の保母さんというような、それに同じ数の小さい子供に対して一人の保母さん、こういうことも、やはり手入れをしていかなければならないと思います。おしめをとっととかえてやらなければならない。ぬれたおしめをしておりますと、御承知通り、子供の性格がだらしなくなるとかいう話しも聞かされておりまして、保育所というものは非常に重要であろうかと思いますので、いろいろな方途を講じまして、その数もふやしていきたいというのが私の心情でございます。
  29. 藤原道子

    ○藤原道子君 まず第一に、中山さんおめでとうございます。日本で初めての婦人大臣が出現いたしたということは、社会一般から非常に大きな期待を持たれておりまして、あなたの言動はすなわちその影響するところが大きいと思います。どうか御自重なさいまして、しかも大胆に勇敢に福祉行政と取っ組んでやっていただきたいということを、お祝いとともに御要望を申し上げたいと思います。  私は、まだ大臣が、御就任になりまして日も浅いことでございますから、あまり突っ込んだ御質問をいたしますことは、きょうは御遠慮しておきたいと思います。で、今御所信を伺いまして、ただ、二、三の点だけ御要望申し上げ、おただししておかなければならないというふうに考えまして、時間の関係もございますので、ごく簡単に一つ済ましたいと思います。  坂本さんの言葉ではないけれども、私はいつも厚生大臣に初めてごあいさつするときには、厚生大臣よ、強くなれ、ということをいつも申し上げておるのです。どうも厚生省が一番大事な省でありながら、いつも冷飯的な省のように扱われております。消費面を担当する省だから、金をもらうんだからという気持が、厚生省全体にあるんじゃないかと思う。私は、それは絶対に正反対だと思うのです。厚生行政がうまくいけば、それこそ国民も健康になるのでございます。あるいは環境衛生が整うことによって、児童の不良化も防げるであろう。私は、ほんとうの意味においての生産を上げていくところの大切な省だと考えているわけです。ところが、とかく大臣が御遠慮がちになる傾向が従来強うございました。で、中山さんにお願いしたいことは、先ほど来のお言葉を伺いまして、最初の御所信よりだんだん弱くなっているような心配があるわけです。それは民主主義でございますから、あなた一人のお考えでできるなどとは思っておりませんが、あなたがぱんと一つ筋を立ててがんばっていただくことによって、最初あなたの御就任のときに池田さんがお約束なさったことを果たさざるを得ないように持ち込んでいただきたいと思うのでございます。あなたはしろうと大臣でない、いつも厚生省では、大臣がかわるつどにしろうとだものですから、非常に苦労している。今度はあなたはしろうととは言えないわけなんです。りっぱなくろうとでいらっしゃいますから、そういうこともあわせて強く強く進んでいただきたいということをお願い申し上げておきます。  私は先日、中山さんのテレビに出られたのを拝見し、その御所信を伺ったのです。その中に、大臣が、世界各国の人から、敗戦十五年でこんなにも社会福祉行政が整ったということは驚異であるといって驚かれている、ところが、国内では評判が悪い、これはおかしなことでございますとあなたが言ってらしった。なるほど法律だけ見れば、日本の厚生行政はりっぱなんです。ところが中身が整っていないところに、国内における不評判がある。で、先日来の内閣の発表を見ますと、低所得者の、何といいますか、十年間に所得を倍にする、それから生活保護の改正をする、こういうことをしきりにうたってらしって、うれしいことだと私は思っている。過去のことは聞いてくれるなと言われるけれども、過去を言わなければわからない点がございますので、若干申し上げてみたいのでございますが、私は、何としても、政治の根本は、一人でも飢えに泣く者があってはならない、一人でも飢えに泣く者があるということは、政治のよろしきを得ない証拠だと思う。そこで中山さんが大臣になられたのを契機といたしまして、生活保護に対してどのような考えを持っていらっしゃるか。二六%の基準引き上げをするというようなことがきのうの新聞に出ているようでございますけれども、この点についてどういうふうに考えていらっしゃるか。今の生活保護は非常にりっぱなんですよ。ところが、施行基準を見ると、一カ月におふろが三回——三・五ですか、パンツが二年に四着ですね、こういう低い低い基準なんです。これでは母心としてもやっていけないということはおわかりだろうと思いますが、生活基準の引き上げについて、まずどのようにお考えになっておられるか、それから一つお答えを願いたい。法律の、少なくとも生活保護に恥じない改正をしていただきたい。
  30. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) いつもながら御婦人の方は、党は違っても、やはり婦人という立場で、いろいろとあたたかいお言葉を賜わっておりますことをまことにありがたく私は感激をいたしております。私がこの立場に立って、もしも自分の力一ぱいを発揮しなかったならば、もう女なんてだめだということになれば非常に困るという責任感を(藤原道子君「その通りです」と述ぶ)持っておるのでございます。まあ憲法には御承知通り、すべて国民は法のもとに平等である、国民が平等ですから、代議士も平等でなければならぬと思いまするが、戦後十五年になって、初めて婦人大臣にされたということは、今まで不平等であったとも私は言えると思うのであります。それで、池田総理のえらいところは、新憲法を完成されたという点にも、また私は言えるとこう確信をいたしておるのでございまするが、そういうわけで、また、社会党がりっぱになられまして、天下をおとりになるときには、藤原厚生大臣ができるよう私も業績を残しておかなければならぬという点で、非常に私も責任を実は感じておる次第でございまするから、まことに道遠しでございまするけれども、懸命の努力をするつもりでございます。女というものは弱いものだ、弱くなるなという御鞭樋を野党皆さんにいただいて、私も大いに気を強くいたしております。それでぜひ一つ野党皆さん方にしっかり私をたたいていただきますれば、野党方々もこう言ってらっしゃるじゃないかという私は一つの武器をきょうも与えられた。こう考えて実は喜んでおる次第でございまするが、児童の問題というものはまことに終戦後は御承知通り、ばらばらであって犯罪を犯しておりました。二十五年までにピークが上がって、それから下がって参りまして、二十九年からまた上がりかけた。しかも話を聞きますると、このごろは徒党を組んでやっておる。集団的なことをやっているということで、こういう非行児童の問題も非常に心配でございます。ところが警視庁でヨーロッパに行って調査してきた結果を見ますると、生活扶助とか、そういうものだけでは青年の非行はとめられない。それはヨーロッパにおいてスエーデンのようなりっぱな社会保障制度のあるところですらも、警視庁が行って調査した結果におきましては、生活保障と関係なしに児童の非行というものが増大しておるという話を聞かされまして、これに対する対策というものは非常に考えなければならないということも考えておるのでございます。外人が日本を見て驚いたということはこれは事実でございます。その形態だけかどうか知りませんけれども、とにかくあれほどの痛手を受けておりながらという、何と申しましょうか、驚きを私は聞かされたのでございまするが、これは事実であろうと思うのであります。  低所得者に対するところの問題でございまするが、わが政調会の中には低所得者階層に対する対策委員会すら、今度は発足いたしております。ですから、私はここにもささえられてこの問題は前進すると思っております。飢えに泣く人、私は昨晩聞いて実に驚いたことがあるのでございますが、いわゆるパンツが一年に幾らとかいう数字をお出しになりましたが、同様に配給をした養老院の問題ですが、それをそこにおるところの酒の好きな人が配給物資を売って、そうしてぼろぼろのパンツを着てそれで酒を飲んでおる。それで養老院においてすらも、同じように配分してもそこに差がついてきて、始末のいい人は大事にもらったものを整理してためておく。そうすると酒を飲む人はもらったものを売って酒にかえて、ぽろぽろの姿をしておるという。養老院においてすらもそういう平等の配給のもとにあるところで格差がもうできておるということは、実に驚くべきことであると言って、昨晩養老院問題で陳情に来た大阪の人がこれを言ってくれまして、人間の性格というものの救われない姿というものを私は現実に聞かされて驚いたのでありまするが、飢えに泣く人がないように、むろんこれは私どもの念願でございます。ぜひ一つせめて飢えに泣く人のないように。しかし、今お話し申し上げましたようなことで配給物を売ってでも家族を食うや食わずにしておく人もあるのではなかろうかという心配が私は出てきたのでございます。しかし、それはその人自身の立場でございまして、政府といたしましては、一応厚生行政を進めまして、そういう人がないように努力をしなければならぬということ、政府のいたしますことと、現実の社会におけるところのあり方というものの違い、これをどう救うかということはまた別の問題であろうとは思いまするけれども、私どもはそれに向って行きたいと思うのでございます。筋を通して、筋を立てて、どなたがお考えになりましてもこれならばこれでやむを得ないというところまでは努力をいたしたい、こう考えております。
  31. 藤原道子

    ○藤原道子君 ぜひこれはすりかえないようにしてほしいのですが、養老院にはそういう人もいるだろうと思います。しかし、私の伺いたいのは、生活保護法が国民の最低限度の生活を保障する、この法律でいう最低限度の生活とは、健度にして文化的なる生活ができるものでなければならないと法律は規定しておる。ところが、今の基準からいくと、おふろは一カ月に三回だとか、パンツは二年にやっと三枚半、四枚に今年からなった。ところが、養老院でじっとしておるおじいさんと違って、生活保護を受けている中には遊び盛り、働き盛りの人もあるわけです。その子供が二年に。パンツ四枚で健康にして文化的な最低限度の生活と言えるかどうかという点に私は問題があると思います。ですから、あなたの考えている最低限度の生活、これが今の生活保護法で適正とお考えになっているかどうか、これはあなたの考え方によって、やはりこの引き上げには大きなウエートがかかってくると私は思いますので、パンツの例を出しただけです。一カ月にして嗜好品は十五円というのでしょう。一カ月で嗜好品十五円、一体何を出しているのだか私たち理解できない。タベ生活保護基準というのを読んでみて、さらに驚きを新たにいたしましたので、ちょっとその点を伺っただけです。それをあわせてあとで御答弁願いたい、時間がないようでございますから。  それから先ほど来中山さんの御説明を聞いていると、社会保障ということを社会保険保険保険だという言葉が出ておる。私は国民年金というものは社会保険でいくのだという考えならさして魅力ないのです。社会保障の確立ということを自民党さんは非常に宣伝している。社会保障社会保険は私は違うと思います。ですから、国民年金の運営にあたって社会保険考え方を強く押し出していくということになれば、あまり社会保障ということを大きく言ってもらっちゃ困る。私どもは、社会保障というものは国家がある程度のものを出して、それでお年寄りなり未亡人なり、あるいは身体障害者を保護していくということにその根本がなければならないように私は考える。これが間違いかどうか、私はあくまでも社会保障の精神でやっていただきたい、こういうふうに考えております。  それからさらに続けて申し上げます。きょうのニュースだと思ったのですが、船員保険でずいぶんまだごたごたしておりましたが、七年間のごたごたの結果が通算してAの会社に勤めていた、Bの会社に勤めていた、それを船員保険では通算して支払うということが決定した、こういうことを聞いて非常にうれしいと思います。私はブラジルへ参りましたけれども、ブラジルのような国ですら労働者に労働手帳が支給されて、ABCDかわるつど、ずっとそれが通算して厚生年金保険が生きているわけです。私はそこまでこなければうそだと思いますが、この厚生年金保険に対しまして厚生省ではどういうふうに考えていらっしゃるか、この船員保険が解決したのを機会に、やはり厚生年金一般についてもそういうふうなお考えがあるかどうかということもこの際一つお示し願いたい。それから生活保護にしても、社会保障の一環としてお考えいただきたいということもこれに続いての質問になっているわけでございますから、お願いいたします。
  32. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 今のお話でございますが、生活保護階層対策を引き上げるということは党も懸命になっていらっしゃいますし、私もそのつもりでございます。憲法でいうところの、いわゆる福祉国家的な今のことはむろん私どもが何と申しましょうか、最終目的として考えております。これはあれができましたときに、私はあの敗戦の直後、あれが直ちにその通り実現できるとは私はお作りになった方もお考えになっていないのじゃなかろうか、徐々にそれに向かって進むというのがわれわれの理想であると考えられているのじゃなかろうかということは私の私見でございますが考えておりますが、その方向に向かっていく。しかし、何と申しましても、これは働いている方々の税金によってまかなっていることでございまするから、このボーダー・ライン層というものがございまして、それに落ちてない人たちは、あまりこれを上げていきますと、どこでほんとうに線を引いていいかわからなくなっちゃうのじゃないかと思うのであります。懸命になって、このグループに入らないで、歯をくいしばってがんばっている人のことも考えて、やっぱりバランスのとれたものにしていかなければなりませんから、手放しで、いわゆる保障を受けている人たちだけのことを考えていくということもむずかしいのでございますから、その間の調整をとっていくということが、私は私どもの使命ではなかろうかと思います。早くそういう人たちに十分のことをしてあげて、その人たちが抜け切っていただいて、どんどんラインの上に上っていただければ、これは私ども希望するところでございまするから、その方向に向かっていこうと思っていますることを、どうぞ一つ承知おきを願いたいと思うのでございます。何と申しましても、この限られたる国民の税金において、これを税金を上げますれば、またあなた方にたたかれたることでございますから、税金を上げないで、できるだけ減税をやりつつ、幾分か減税をやりつついかなければなりませんので、なかなかこれはむずかしい問題でなかろうかと思うのでございます。それで、できるだけのことをしたい。それで今出て参りました二六%というような数も出ておりますしいたします。この間の調整に私どもはこれから苦慮していくところでございまするが、これくらいのパンツしかないじゃないか、おふろもこれくらいしか入れないじゃないか、それは十分なことをしてあげられるならば、したいというのが親心でございます。だれでも自分の子供に対して、子供の要求通りしてやりたいというのは、いかなる親も私は同じであろうと思いまするけれども、持っている財布の重みのかげんで、子供の要求通りいかれないというのが、われわれ母親がなめてきたこれは実感でございます。そういうわけでございまするから、九千万の国民をかかえておりまして、その人たちに納得のいく線を出すということは、私どもの使命ではございませんでしょうか。いわゆる国民年金というものは保険では考えるな、保障で考えろともおっしゃっていらっしゃいますが、保障で考えている線は、福祉年金の方でこれは出ておると思います。お粗末ではございますが。しかし、やっぱりこの大勢の人を相手にいたしますと、私は国民年金というものは、一種の拠出制のものは保険的の考えを加味していかざるを得ないというのが、私は建前ではなかろうかと思っておるような次第でございまするが、できるだけ今の保障という面は福祉の方でこれは充実させなければならないと考えております。先ほどもこういうものを拒否する運動が始まっていると聞いておりますが、どうぞそういう運動をなさらないでいただきたいのであります。いかなる施策も、初めは私はお粗末のものであると思います。いかなる大山の巨木といえども、初めから巨木ではないのでございます。初めは地殻を割って出たかわいい二葉なんです。それが年を経て巨木になるのでございますから、どうか一つ、あまり早く結論に飛び込まないでいただきたい、育てていくという気持を政府は持っておりますし、皆様方もお持ちいただきたいということを私はお願いいたしたいのでございます。  この船員の保険の通算の問題でございますが、これはそこまで参りましたこと、まことに喜ばしいことに存じます。これもやはり話し合いでそこまで参りました。今日池田内閣がこの世に出ましてから、三池炭鉱の問題あるいは富士の問題も話し合いでもって解決ができるようになって参りましたが、この線でお互いに話の広場において問題を解決していくように努力したいと私ども考えております。
  33. 藤原道子

    ○藤原道子君 いかなる巨木といえども最初から巨木でない、育てていかなければならない、これはその通り。ところが、生活保護はできてからもう十四、五年たちますか、十三年くらいたっているわけです。ところが、ここに不思議なことは、生活保護の施行がだんだんきびしくなっているということ、ここに問題がある。非常にきびしくなっている。ですから、結核療養所に行ってみると、たった二十四万しかない病床が六万床もあいている。入院している人がないから配置統合するのだ、こういうことを厚生省では言っておるようですけれども、そんならば、入院するほど重い結核患者はいないのか、やっぱり医療扶助の適用が非常にきびしくなって、一部負担が重箱のすみを楊子でせせるほどきびしくなっている。ここではうまい答弁をするのです、厚生省は。現地へ行くと手のひらを返すようにひどい扱いでいるのですよ。幸いに中山さんが大臣になられたのだから、私は生活保護の適用、医療扶助からすべて含めて、もっとあたたかい親心をもってやってほしいと思う。私たちもいきなり大木になるなんということは言いませんよ。だけれども、大木がしり細りになっちゃっている。これなら次第に枯れてしまうのじゃないかという心配を持つわけです。その点を申し上げているということを一つお忘れなくお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、今の御答弁、先ほど坂本さんへの御答弁でございましたけれども、何といいますか、保険がすべて所得の高下なく、一律に取り上げる、汽車の切符を買うのだってこうだと言われたけれども、そういう考え方で私は厚生大臣やってもらっちゃ困ると思う。池田さんのたばこも四十円だ、ニコヨンさんのたばこも四十円だ。だから公平だというわけには私はいかないと思う。だから、その点も私は国民全体が考えている今度の拠出年金に対しての不満なんです。それから積立金の使用の点もむろんございます。それから適用の開始の年令の問題も問題です。けれども、あなたにお願いしたいことは、貧乏人金持も同じ額なら公平じゃないかという考えだったら、これは問題があるのじゃないかと思うのです。就任早々のあなたに私は何もにくまれ口をきくつもりはないのですよ。あなたのおしりをひっぱたいたつもりで言っているのですから、そのつもりで聞いてもらいたい。  それから生活保護の適用外にあるボーダー・ライン層があるから、生活保護の適用が上げられないのだという考え方はおかしい。だからこそ今度は低額所得の対策を自民党さんは大幅に打ち出した。だれが見ても選挙対策だと言っていますよ、国民は。そうしてここで質問すれば、それはできません。こうです、ああですと言う。ところが新聞にぱっと出たものは国民は、飢えたる者が、それこそ旱天に慈雨のごとき再びをもってそれだけは胸へ入っちゃうのです。ここの論議なんということは国民にはわからないのですよ。ですから、できることでなければ発表しないでもらいたい。煮詰まってから発表してもらいたい。それでなければ新聞記者が書いたからと、新聞記者こそいい迷惑だ、私はそう考える。ですから、低額所得層に対する対策も一面に出ておる、生活保護の引き上げも出ておるのですから、両々相待って、私はやってもらいたい、今の低額所得に対しての言いわけは、生活保護の最低基準がものをいっているのです。ここに問題があると思う。中山さんにお願いいたします。ぜひとも、低額ボーダー・ライン層が一千万を突破しているなんということは、あまり世界に対して自慢したことじゃないと思いますので、この点については特にお心をしていただきたい。そう思います。  それから、国民の血の出るような税金でやっているから、むだに使えない、むだに使ってもらっちゃ困る。使い方一を心してほしい、これをお願いしておきます。ここにあなたの所信表明の中にも、環境衛生の問題について、「生活環境改善でありますが、四年後にオリンピックの東京開催をひかえ、その整備改善」が要望されている。私はさか立ちしておると思う。お客さんが来るからお化粧するなんて、ふだんやっていなかった方がおかしい。お客さんが来るから環境衛生の整備ができるなら、ふだんだってできるはずです。予算は使えるはずです。ですから、政治は、ほんとうは国民生活をどう守るかということを考えていただきたい。外国のお客さんに見せる政治というのは私は偽わりの政治だと思いますので、その点も御要望を申し上げまして、中山さんは、どうか私たちが初めて送り出した——送り出したという言葉が適当かどうか知りませんけれども——婦人大臣です。婦人大臣は、やはり人命尊重、新しい生命を生む私たちが、やはりその生命を尊重することが基盤になった政治というものと取っ組んでいただきたいということを、心からお願い申し上げまして、私の質問を終わります。今の御答弁だけ伺いたいと思います。
  34. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) この結核の問題でございまするが、私どももいろいろと御陳情いただいております。昨日は日患の方々の御陳情もいただきました。そういうわけでございまするから、本部で考えておりますることが、あるいは末端においてその通りに行なわれていないかもしれません。(藤原道子君「かもしれませんじゃないのだ」と述ぶ)ですからいたしまして、厚生省にも話をいたしまして、できるだけの温情を尽くしていきたいと思っております。  それで今の環境衛生の問題でございますが、これはオリンピックがあるからやるのだ……しかし、藤原さんも家庭を運営した家庭婦人としては、ちょっとどうかと思います。やっぱりお正月がきますと大掃除をいたします。(藤原道子君「政治は違う」と述ぶ)先ほど政治は家庭に直結しているというお話でありましたから、それはみずからの論旨をくつがえしていらっしゃるのであります。お客様が来るというとふとんを新しく作り変えたり私はいたして参りました。藤原さんはどうか存じませんけれども……そういうわけでございますから、やっぱり一つの政治というものはめどを置かなければならないということが大事でございまして、日本国もどうしてもお金が少ないのですから、資源が少ないのですから、外国の人たちに、今度来る人たちに、日本に行ってもきたない国だと言われないように、ちょうどイタリアあたりが観光行政というものに重点を置きまして外貨をかせいでおるという話も聞いておりますので、これを一つのめどといたしまして、日本という国はしばらくいても心地いいところであったと言うてもらいたいというのが私どもの観光団誘致の一つ施策考えるわけでございます。私の知った外人が、日本に来てしんぼうができないのはお便所である、実にきたない。これはいろいろいなかに行って日本旅館へ行って泊まるのでありますから、そういうこともございますし、なかなか私どもといたしましても、いろいろと心配をいたしておるのでございます。来るお客様にやっぱり居心地をよくさせなければならぬということであります。東京あたりはいかがかと思いますが、私の町の大阪もやっぱりし尿処理なんかも五分の一しかできていない、早く水洗便所にしなければいかぬのじゃないかということもございまして、ふだんからやっていないからだめじゃないかとおっしゃいましたけれども、ふだんやっておりますのにプラスいたしまして、より以上やろうという考え方でございますので、どうぞ御了承願いたい、決して偽りの政治をするつもりはございません。真心の政治ということが私どものモットーであり、それが十分に実現されていないといううらみはあるかもしれませんけれども、とにかく懸命にやっておるということだけは御理解が、願いたいと思います。
  35. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、中山大臣が今までの経験を生かしてよりよい厚生行政をやっていただけるものと期待しておるのであります。そこで私は一、二点だけお伺いしておきたい。  今盛んに真心の政治をやる、そういう意味できょうのごあいさつの中で社会保障二つの柱を立てて、年金医療制度の問題をお話になりました。私も社会保障の柱は年金医療制度中心になって進んでいくものだとこう思っております。そこで、私は真心をもって今度の拠出年金をおやりになるのですから、一つ遠慮なしにやっていただきたい、ここで祝いているようにいろいろ意見があるから改善をすることはもちろんである。その立場から検討していく、こういうことになりますと、今度の拠出年金は三十六年四月から実施にあたって今までいろいろ意見があるものに対して改正をやる、こういう決意がここに現われているものだと私は思うですからそれをお考えいただきたいと思います。で、厚生行政立場から私は遠慮なさらなくてもいい、今一番困っているのは農民です。今度の拠出年金は農民なんです。ことし一年間の所得を見ましても、法人、会社は五〇%所得がふえている。農民は、農林、水産をまぜて五・四%しかふえていない。こういうところにおいて、農民が不満に思っているのは、農業共済のかけ捨ての問題が農村で非常に問題になっている。今度年金も四十年かけて、四十五年目に三千五百円、百円と百五十円をかける、こういう形の問題が心配だ、一律にかける。所得は、国の施策で、片一方は五〇%、その一〇%以下、五%、水産を含んで五%、農家の所得といえば二、三%という所得のふえ方しかない、こういうところに一律にもって、四十五年後に三千五百円しかもらえないというようなことが、ほんとうにかける気になれるかどうかというのが、私は拠出年金に対する不満の一審大きいものだと思う。だから私は、ここで改善をする、もちろんであるということを、その立場からここで言われているのですから、そういう今の所得の不公平の問題をできるだけ公平にする立場から、この年金を改正される、こういうおつもりで書かれたと思うのですが、間違いございませんか、これを一つ聞きたい。
  36. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 背から国の宝と言われております農民階層の所得が、ほかの階屈の所得よりも非常に下がっておるという、今御指摘でございました。水産にしてもしかり、御承知通り、水産業者は、敗戦のためにいろいろと働く場所も狭められていっておりまして、遺憾に存じておりますが、こういう問題は農林省の方において、十分な一つ施策を施していただきまして、この人たち階層の所得の向上をはかっていただかなければなるまいかと思っておりまするが、四十年かけて三千五百円、これは国民年金をお読みいただいて御了承いただいていることと思いまするが、五年に一度、国民年金は、いわゆる貨幣価値がまた変わりゆくということも考えられるので、これを五年に一度は再検討するということが、国民年金には明らかに出ていると私は記憶いたしておりますが、そういうわけで、四十年かけて三千五百円じゃないか。しかし、どうしても御都合の悪い方はまあ二十五年というような、ほかの制限もございまして、そんなことでは三千五百円もらえないじゃないかということをおっしゃると思いまするが、まあ何とかして、かけ捨てをしていただいたのでは意欲が上がりませんので、この防止ということにつきまは、省においても研究をしておるのでございます。また、物価水準にスライドするように行なうことは、もちろん国民年金の局の方におきましても懸命になって考えております。こういうことをよく国民に知っていただきまして、そうして納得して、こういうことに御協力願いたい、こう考えております。
  37. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、私の申し上げているのは、四十年かけて、五年とめおいて、四十五年後に三千五百円支払うというのが今の保険です。しかし、農業保障やその他のかけ捨ての問題その他があって、所得の少ない農民が、政治の動きとしては、片一方で五〇%以上も一年間に所得をふやしている。農民は二、三%しか一年に所得がふえていない、こういう状態で、同じ額をかけていって、そうしてその掛金そのものにも問題があるし、それからかけたあと四十五年後に、そういう状態になるというところに保険の、といいますか、年金に対する不満がある。そういう不満をごしんしゃくされて、ここで改善することはもちろんであるということをお書きになったと私は思いますから、今度の施行——年金そのものは五年後に検討することはわかっております、法律は。しかし、今度の出発にあたって、一番困っている農民が掛金を拒否するというような、拒否といいますか、これでは困るという農民全体の叫びでありますから、法律ができてから二年目に、三十六年四月から実施するのですから、今度この書かれている意味は、出発にあたって今度の国会で改正を、できるだけ手直しして出発されるものですか、そういう具合に理解していいですかということを聞いておる。そこのところだけ答えてもらえばいい。
  38. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) 不備な点はその余地のある限りこれから手入れをいたしまして何とか御納得のいくようにしたいということを厚生省としては考えております。
  39. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それではその点はそういう工合に改正をして出発されるという工合に理解をいたします。  それからもう一つの点はこの医療制度でありまするが、私はこまかいことはきょうは触れません、医療制度の問題の国保の問題を触れておきます。ここで先ほど言われましたが、四〇%国の負担にして、今二五%ですから、地方財源が非常に切迫して制限診療その他でことしの三月一ぱいに施行しなければならぬ市町村が非常に困っている状態で、こういうことをお出しになったのだと私は思う。これは出発点としてはまことによろしいと私は思います。だから、これは単なる新聞に出たということでなしに、こういうことをやっぱし含んで、それから三年先にはどうする、本来いえば保険料といいますか、私たち保険税という格好に主張しておりますけれども保険料としても、三年なら三年、四年なら四年先には全部無料で病気をなおしてもらえる、健康管理をしてもらえるというところに医療制度の根源の問題があると私は思うのですから、だからそういう意味でこういうことをお出しになった、だからぜひこの問題は単なる新聞が出したということでなしに、もっと責任を持って実施しようというかまえを一つお話しを願いたい。
  40. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) ただいま御指摘下さいましたいろいろの不満をやはり地方から陳情の形で私どもも聞いております。それで、そういう問題もこれから取り組みまして、また省議も実際やっておりませんのでございますから、こういう場で大いに一つ研究してもらいたい、こう考えております。
  41. 小柳勇

    小柳勇君 私は一般的な質問は後日に譲りまして、具体的に急を要します問題を一つだけ大臣並びに関係当局から聞いておきたいと思います。  それは福岡の遠賀郡岡垣村の報恩母の家という乳幼児の収容施設が先般完全焼失いたしました。これは乳幼児百三名を収容している施設でありますが、完全焼失いたしましたために、いまなおその乳幼児は分散して収容してありますが、私は八月七日の日に視察に参りました。ちょうど炎天下でありますが、今トタン尾根のバラックを急造中のように見受けて帰りました。しかも収容されました乳幼児は、まだ屋外に、昼でありますから、木陰の中にハンモックに寝たりなどして収容してありましたけれども、非常に悲惨な状態であります。聞くところによりますと、建坪は今まで六百坪二階建木造でありまして個人の家であった、しかも火災保険もかかっていなかった、従って、それの復興について非常に困難がありましたが、いろいろ方々の御努力によって一応の希望を持って今再建にかかっておる、社会局長児童局長ども非常に特別の御配慮は仰いでおるようでありますが、具体的な予算を申しますと、今一応の再起計画として四百坪、坪当たり五万三千円くらいで建てますと、二千百万円くらいの予算が必要である、建てるだけでそれだけ要るが、その中で四分の一の県費の負担がどうしても必要である、そうしますと五百万でございますが、福岡県は御存じのように、炭鉱離職者などで非常に金も余裕はございません。そういうところで県費の五百万円についてもすぐこれが県会で通るかどうかということについても問題がある、そういうことで二千万円の再建計画についてはまだ見通しも立たないという情勢のようであります。しかし、私はこのような百三名に及ぶ乳幼児の収容施設が個人の力にまかせられてはならぬのではないかという気がいたして帰りました。新たな、計画は、社団法人なり財団法人にして再建したいという構想のようでございますが、いずれにいたしましても、国がもっとあたたかく援助してやって、早急に再建して乳幼児が安んじて育つようにしてやらなければならぬのではないかと思いますが、大臣まだ就任早早でありますので、詳しい事情をお知りにならなかったら、今後の再建に一つ全力を尽くしていただくと同時に、関係当局からこれに対するお考えを聞いてみたいと思います。私の質問はこれだけにして、きょうは終わりたいと思います。
  42. 中山マサ

    国務大臣中山マサ君) ただいまのお話を伺いまして、今ここでちょっと尋ねましたらふろ場からの出火だそうでございますね、百三人というような乳幼児がそういうおそろしい火の中から救い出されたということは、不幸中の幸いであったと私も考えるのでございますが、それを預かっていらっしゃる皆さん方の御心配もなみなみならないものがあるであろうと私も考えます。これだけのお金が要る、私も存じておりますように、福岡県はいろいろ難問題をかかえていらっしゃいまして苦しんでいらっしゃると思いますのでございますが、私といたしましては、何とか努力をいたしまして、当局にも一つここでこれに対するお考えを述べていただきまして、まあいかなる子供も国の子でございます。何とかこれに対して手を打たなければなるまいと、こう考えております。
  43. 大山正

    説明員(大山正君) ただいまお話がございましたように、関係者の間でただいまいろいろ再建計画を立てておるように私ども承知いたしております。お話にもありましたように、現在まで個人の施設でございますので、現在の児童福祉法では個人施設に対しましては公費補助の道がないのでございますが、法人に切りかえるというような方法によりまして、私どもも県と十分打ち合わせしまして、できるだけ努力をいたしたいと考えます。
  44. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  45. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それでは速記を始めて。  本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認めます。  暫時休憩をいたします。  なお午後は、十二時四十分より開会をいたします。    午後零時八分休憩    —————・—————    午後一時開会
  47. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 休憩前に引き続き社会労働委員会を再開いたします。  労働情勢に関する調査の一環として、労働行政基本方針に関する件を議題といたします。  この際、石田労働大臣から所信表明を聴取いたします。
  48. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) このたび私は再び労働省を担当いたすことになりました。この機会に所信を申し述べ、皆様の理解と協力を仰ぎたいと存じます。  私は、雇用の改善をはかること、労働者、特に中小企業労働者の生活を向上すること、よき労使慣行の確立をはかることの三原則により労働行政を進めていく所存であります。かかる立場に立って労働政策を進めることは、わが国経済の拡大発展をより円滑ならしめ、その成長を促進することに通ずると信ずるのであります。  最近のわが国の雇用情勢を見ますと、労働力需給の地域的、産業的不均衡が目立つようになって参りました。今後においても、新規学卒者の激増、貿易自由化、産業構造の変革による需給不均衡の増大が予想され、労働力が地域間、産業間で円滑に移動し得るための強力な措置をとることがますます必要になって参ります。また、技術革新と産業構造の高度化に対処するため技能水準の高い労働者を大量に養成することは、わが国経済発展のための重要な雇用政策の目標であります。このような見地から、雇用問題については労働力の流動性増大と技能水準の向上の二つを柱として諸種の対策を進めて参りたいと存ずるのであります。  経済拡大の裏には、中小零細企業の労働者、家内工業に従事する者、あるいは未亡人、孤児等不遇な人たちがややもすれば取り残されるおそれがあります。働く人々に対する政策のてこ入れを行って大企業労働者との間の格差を縮小是正し、経済発展の利益をこれらの恵まれぬ労働者を対象として、その労働条件の向上と労働福祉の増進のため強力な施策実施することを第二の重点といたしたいと考えます。  この二つの重点施策を進めるには、わが国労働経済の的確な科学的調査分析が必要であると考えますので、統計調査と資料分析の機能の整備充実をはかり、政策の基礎固めを行ないたいと存ずるのであります。  最後に申し上げたいのは、よき労使慣行を確立するということであります。労使関係の問題の解決は、労使が忍耐と寛容の精神に基づいて平和的に話し合うための健全なルールを作り上げていくことから生れてくることを強調いたしたいのであります。政府としては、諸般の施策を通じ、今後労使関係について、まず衆力を排除し、法秩序が守られるよう努力を傾注するとともに、進んで労使が経済繁栄に協力するようにいたして参りたいと存じます。三池争議についてもこのような見地から憎しみと反目の渦を静め、友愛と互譲によって事態の解決がはかられることを期待し、その収拾に努力いたしているのであります。  労働行政の運営にあたっては、皆様の御意見を十分拝聴しながら、ただいま申し述べました方針に従い、力を尽くしたいと存ずる次第であります。よろしく御協力お願いいたします。
  49. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 石田労働大臣労働行政に関する基本方針に関し、質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  50. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、石田労働大臣が経験者としてのよりよい労働行政をやってもらえるものだと期待をいたしております。その立場から二、三点就任されてまだ日は間近かでありまして、今後具体的な政策に入られるのでありますけれども、何といっても予算的な問題はこれから準備する時期でもございましょうし、そういう意味からいいましてもお尋ねをしておきたいと思うわけでございます。  第一の問題は、私は、労働問題というと経済政策にどう労働者保証を盛り上げて経済政策を作っていくかというところにあると思います。で、そういう立場から申し上げますと、労働問題の第一に出てくるのは雇用問題だと思います。今日統計を見ますと、新規学卒者が大体九十万人ずつくらいふえていく、四十年を境にして幾らかダウンをいたしますが、そういう傾向にあります。最近の日本の経済の拡大は、昨年一年度の統計を見ましても非常に発展をいたしております。発展をいたした経済の拡大の中心をなしているのは、何といっても技術革新的な、生産増強的な要素に集中されていることであり、そういうところに就労する労働者は、新規学卒者の就労というものは相当効果を上げている。しかし、何といっても経済の二重構造の中では、中小企業を初めとして倒産しているところもあるわけであります。そういうところの倒産、企業整備されて失業した者、今日中年層の家族を持った失業者の失業対策というものは非常に重要だと思います。ほとんど就労の機会がない。たまたま就労の機会があっても、労働省の毎月勤労統計なんかを見ましても、その就労しているところは恒常的なものでなしに、社外工とか、臨時工とかいうのに入っていっているのが私は主たる問題ではなかろうか。これは今の現実の雇用問題の処理にこういう重要問題がある。これをどうするかというのが一つの問題です。  それからもう一つは、やはり機械化、生産増強という形からくる人間みんなの幸福、要するに民族みんなの働く者の幸福ということを考えれば、人間の手で作っていった製品というものを今度は機械の手で作るということ、その潤いはおしなべて国民が受けるということでなければならぬ。これは何といっても先進国がやっているように、完全雇用というものをやろうとすれば、労働時間の短縮をやって、おのずから勤労の再びの中で生活を築いていく、社会に労働力をもって貢献をしていくというところに中心がおかれなけれねばならぬじゃなかろうか。こういう工合に考えるわけであります。だからこの二点について、今お話しの雇用の改善、中小企業者の生活の向上、それから労使慣行の確立という三つの柱でおやりになると言いますけれども、私たちが心配しております具体的な問題がこのごあいさつの中に出てきていないわけであります。ですからこのまず二点についてお話を承わりたいと思います。
  51. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) まあ技術革新の進行のほかにエネルギー革命と申しますか、それから貿易の自由化の進行、そういうような要素が加わりまして雇用の状態にかなり大きな変化を生じてきておりまするし、今後その変化が増大するであろうと思います。これについて一番なさなければならぬことは、そういう情勢に対応する労働力の流動性を確保するということであろうと存じます。そこで、その労働力の流動性を確保いたしまするために今、まあ画期的と申しますと少しほらの方が先へいくようでありますが、私としましては、雇用の増大を目標にし、しかも労働力の流動性を確保いたしますための具体的な方策を考究中でございます。ただ、ただいま藤田委員お話のように、私も就任間もないわけでありまして、まだその具体的な構想のまとまりを現在示していない段階でありますので、所信表明の中には抽象的に申し上げたわけであります。なお、その場合におきましても、やはり中年個の失業者諸君の転職ということが他の若年層の人たちに比べて困難であることは、これは言うまでもございません。これにつきましては、やはり中年層の人々も積極的に職業訓練が受けられるような、現在別に年令の制限はしてございませんけれども、訓練所の運営、やり方等において積極的に職業訓練が受けられるように、そして新しい経済界の要求に応ぜられる機能、水準が確保せられるような行政指導をやって参りたいと思っている次第であります。  それからもう一つの労働時間の短縮でありますが、技術革新、その他の経済活動の進歩による利益の均霑を多く受けて、そうして全体がその利益の均霑を受けるようにいたしますためには、やはり最終的には労働時間が漸次短縮されていくことが理想であろうと考えております。ただ、その理想に現実をどう合わせていくかということに問題があるのでありまして、労働時間の短縮を理想として労働政案を進めていくということについては藤田委員の御意見と全く同乗であります。
  52. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 就任早々であるから具体案がまだできてない、これは私は時間が短いからまことにごもっともだと思う。しかし、石田さんは、労働大臣をこの前にもおやりになって、日本の労働情勢についてはまあベテランの中に入られる方だと思うのです。ですから、今おっしゃったように、一つの問題は、中年層の方々に訓練所で技術訓練をうけるという状態を行政指導をする。行政指導というのは、単にこう行きなさいということではなしに、やはり訓練を受けられるという、たとえば訓練手当の問題であるとか、訓練場をどう増設して、地域的にその条件を作るとか、こういうことが出てこなければ私は意味のないことだと思う。だから、そういう点はなお具体的なお話があればなんですが、そういう具体的な問題も一つ考えてもらわなければならぬ問題だと私は思います。  それから技術革新、貿易自由化や、そういうものに伴って、打来の理想として時間短縮ということを今おっしゃいました。しかし、将来の理想じゃなしに、今の日本の生産力が、昨年一年で三〇%も生産性が上がっており、経済力が実質一六%も上がっているという今日の事態の中で、それじゃ生産した品物がどこで消費され、消費されるに応じて経済がどういう工合に回転をしていくかということになって参りますと、もう現実の早急の問題だと私は思うのです。生活を保護して貧困な生活を守るということも一つの重要な方法でございましょうけれども、おしなべて社会で生きようとすれば、おしなべて自分の持っている労働力が社会に提供されて、社会に貢献するという、この立場を、この考え方というものを生かそうとすれば、今のようにどんどんと就労の場が減っていくという状態の中では私は解決しない。将来の就労じゃなしに、今日の現実の問題として、私は労働時間の短縮、雇用拡大という問題はそこから出てこなければならない。経済の国内消費と、輸出貿易に関する問題は、私は申し上げませんけれども、私はその問題の、単に将来の理想だという、実現に努力をしたいということだけでは、問題は解決しない。今日からやらなきゃならぬ問題じゃないかと思いますから、お尋ねをしたわけです。そこらあたりをもう一つ
  53. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) この雇用の増大と、労働力に流動性を持たす、これがための具体的施策というものを持っていないわけではないのでございますが、持っておるわけでありますけれども、それはやはり関係各省との連絡調整、あるいはその案自体も、さらに検討を加えて、まとまったものにしてから申し上げたいと、こう思うわけでございます。経過的な段階においていろいろ申しますことは、どうもものをまとめる上に必ずしも有利でないことがございますので、そう申し上げるので、かなり具体的に考えておるわけであります。特に、その訓練所の増設とか、あるいは特に中年層の労働力に流動性を持たせるためには、住宅の問題をそれにあわせて考えないといけませんから、そういう点も一緒に新しい政策の中に織り込んでいきたいと思っております。  労働時間の短縮は、将来——遠い将来の理想ということで申し上げたのではなくて、これは労働政策としての一つの理想であります。目標であります。ただ、それを現実とどう合わせていくか。従って私は、可能な産業、可能な職域からそれが進められていくことがいいのだと言い得るわけでありまして、今やらないということを言っているわけじゃないのであります。今でも可能なものからは、やはりそういう方向に努力を続けられることが好ましいと考えておる次第であります。
  54. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 最近経済の、何年のうちには何倍になる——二倍とか、三倍とか、五倍という議論がよく出てくるわけでございます。で、生産が幾ら伸びても、それに対する国民生活福祉というものがつながらなければ、これは意味のないことなんであります。それがまた経済改善、繁栄という形にならなきゃ、これは意味のないことでありますから、経済が何倍になる、こういうことになれば、あわせて、それに対して所得がどう伴っていくかという問題に具体性がなければ、私はこの問題は相関連して経済力の成長にはならないと思います。この前の内閣のときに、経済が十年に二倍になる——所得は幾らになるのだと突っ込んでいくと、六割増しだというようなところで落ちていって、結局その二倍論がへっ込んでしまった、まあこういうことも考えていきますときに——私はきょうは注文でございますから、そういう点は十分な配慮のもとに、国全体が福祉国家として発展する中で、完全雇用——こういう形の時間短縮、完全雇用という目標を達成するための具体案というものをぜひ考えて、労働大臣は作ってもらいたいと思うわけです。  それから——それは私要請をしておきますが、具体的な少し問題になりますと、私は労働行政上、失業対策、生活保護といいますか、そういう立場から、失業というても、非常に地域、産業によってアンバランスであります。全体の産業がそれじゃ失業をしているか、全体の地域でおしなべて失業になっているかというと、相当、地域においても、産業においてもアンバランスがございます。ですから、たとえば日雇いの問題を取り上げてみても、二十一・五日というものが政府がやるといっても、地域的に地方財政のもとでやれないところがある。こうゆうところには、たとえば地方財政に負担をかけない方法で二十一・五日の就労を完成するためにはどうするかというような問題が一つございます。一般的な地域問題、また、産業的には、たとえば、今日まで問題になっておりました駐留軍の離職者の問題も一つありますが、炭鉱の労働者の離職問題、それから今日の技術革新に伴って、その経済競争の中で敗れるといいますか、おくれをとるといいますか、そういう産業の中でも、それが地域的に失業の偏在というものが出てきていることも事実なのであります。だから、そういうものには私はやっぱり特別な保証政策をとってあげないと、片一方では一〇〇%就労の場ができたけれども、片一方では五〇%もいっていない、こういうアンバランスが非常に私は失業対策の面でも現われてきておると思います。ですから、私はそういう面で、地域的には、地方財源の関係において、一つ失業対策をどういう方法で救っていくか、産業別にはどういう工合にしてやっていくか、こういう構想を一つお聞かせ願いたい、こう思います。
  55. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 失対事業の現在の各地における状況につきましては、あとで職業安定局長から答弁をいたさせます。ただ、その事業の性質から考えまして、原則として、現在とっておりますようなある程度の地方負担をされることが妥当な建前だと考えておるわけでありますが、それがその土地の地域的事情によりまして、財源等困難な場合における処置は、これは別途考慮すべきものと考えるのでございます。  それから、先ほど駐留軍の離職者等を中心とする産業別に起こって参ります需給のアンバランス是正、これは前段にお答え申しましたように、労働力の流動性を持たせるような総合的施策によってこれを埋めて参りたい。住宅の問題、あるいは移転に要する費用の問題、さらに新しい仕事に適応する技能教育の問題、こういうものをあわせて行なうことによって埋めて参りたい、こう考えておる次第であります。
  56. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ただいまお話しのように、各地の失業情勢は地域によって非常に苦しいところと割合楽なところと、このようなアンバランスがあることは御指摘の通りであります。そこで、現在の政府の進め方といたしまして、要するに、失業対策事業、公共事業、民間就労、そういうものをあわせて職安に登録をされた失業者諸君に対して一定の口数を確保する、こういう考え方で進んでおります。特に、失業情勢の悪い大体十六ばかりの地域につきましては、先般も建設、農林、その他関係各省と打ち合わせまして、次官会議、閣議等でも決定をいたしまして、失業者多発地帯としてこれを指定いたしまして、重点的に公共事業その他の事業をあわせて実施する、こういう考え方で進んでおるところであります。  なお、さらに、ただいま御指摘のように、地方公共団体の財政が悪化しておるために、国からの割り当てがあってもなかなかそれをこなすことができないというようなところに対しましては高率補助制度を適用いたしまして、そういうような情勢の悪いところについては失対の一般の補助よりも率を高くして補助する。こういうことをやっております。今後においてもこのような考え方を強化して進めて参りたいと、このように考えております。
  57. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 きょうは最初の日でありますから、注文だけにこの問題はしておきますが、次は保険行政の問題です。私は保険行政の問題について、大臣おいでになったのですから、私は最初に言っておきたいのですが、それは失業保険の問題です。この前の国会で失業保険基金ができたから政府の出し分を少なくして、そうしてやっていこう、失業保険という、失業保障の問題は、出発点はどこにあるか、失業した人は、今は三カ月、六カ月、七カ月、九カ月という段階的な失業保険手当が出て、中年層、先ほども私が申し上げましたように、ほとんど社外工か臨時工以外にはゼロに近いような状態でおられる中年層が、失業保険をその四段階で区切られたらあとはどこいへく。この問題が重要な問題としてあるのにもかかわらず、この前の国会では失業保険を三分の一の政府負担を四分の一にする、こういう格好に強引にやってしまった。ことし一ぱいでは基金は幾らできるかというと、失業保険積立金は九百億になるという、そういう状態でありながら、政府の出し分を少なくして、内容改善はない、訓練中の者に対する手当は少し伸びたり、少しの手直しができましたけれども、根本的に失業保障の建前に立つ保障というものをたな上げにしてしまつて、失業保険行政をやってきた。私は、これは労働大臣は根本的に労働行政で変えてもらいたい。今度の国会ではぜひこの問題は変えてもらいたいという強い私は要求を持っている。だから、労働大臣はこの問題についてまずどうお考えになっているか、きょう聞いておきたい。
  58. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) ただいま政府の負担の減少した問題につきましては、前国会においては、今後三年間の間にその情勢を検討した上、政府は根本的な改正案を提出するという附則がついているのでございますので、その方針に従いまして実情を見て検討を加えていきたいと思っております。それから給付の問題、これはもちろんできるだけ長く給付されることが望ましいことは言うまでもございませんが諸般の情勢を勘案いたしました上でできる限りの検討を加えたいと思っております。しかし、それ以上に失業の発生を防ぐことにこの失業保険積立金の運用を考えたい。そういうふうに現在思っておる次第でございます。
  59. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 後段でおっしゃったこと、まことにその通りだと思うのです。だから、私は労働問題の第一の問題は雇用の問題だとして取り上げているわけであって、失業保険の具体的な支給を受けなきゃならぬ人が出てくることは悲しいことなんであります。ですから、そういう悲しいことを起こさないという根本の問題は大いにこれから力を入れてもらわなきゃならぬ。しかし、失業している者が生活に困っているという現実を、これをそのままにおいておくわけにはいかぬ。保険経済がよくなればなるほど片一方では失業者の悲しい状態が出ないというところに力を入れると同時に、その今、今日苦しんでおられる失業者を、保険経済が向上すればするほど、その中で優遇していく、擁護をしていくというのが私は失業保障、今日失業保険として行なわれている建前じゃなかろうかと思うのです。だから、その出題は将来考究する問題じゃなしに、私は労働大臣としての考え方は、この前出てきたようなものの考え方でなしに、片一方では失業の出ないという対策はこれは根本の問題ですから、積極的にやるが、今の失業している人にこれだけ経済がよくなっている状態について、早急に救済をするといいましょうか、そういう形の施策を立てられるべきが至当ではなかろうか、こう思うのです。
  60. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 失業保険の給付の改善につきましては、前国会である程度の改正を見られたものと承知をしております。しかし、目標としては藤田委員のおっしゃられる通りでございますが、それと保険経済並びに雇用の増大をはかるために、積立金を使用するというような、他の施策の面もあわせてなお考究をいたしたいということを申し上げたのであります。
  61. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の問題は、ぜひ重要な問題として、至急に考えていただきたいということを私は申し上げておきます。  それから三つの原則の中で、中小企業の労働者の生活の向上ということが言われている、大原則の中に言われているのですが、この大原則の中で言われている問題は、私は現われてくる一番重要な問題は、最低賃金制の問題だと思います。それからまた、家内労働者の保護の問題ではなかろうかと、こう思います。そうすると、中小企業の労働者は、一つの面では社会保険、たとえば健康保険だとか、厚生年金とか、ああいう保険、失業保険、そういうものに加入をしてない状態が非常に多くあります。それからその労働者が長時間労働で、基準法の脱法行為で、大臣みずから数十万件の違反があるというようなことが、この国会——委員会でも議論されたことを覚えておるわけであります。中小企業の労働者には退職金規定というものが出て参りましたけれども、これもなかなかあの状態ではいけませんし、改善しなきゃなりませんが、あれを適用していないところもある、こういう工合に考えて参りますと、私は何といっても最低の生活保障という形は、今のような業者間協定に賃金の決定をまかすでなしに、私は国際原則からいっても、労働対等の立場で、中立の委員が入られる三者構成でもよろしゅうございますけれども、そういう形で最低生活の規制というものが行なわれるというところにもっと力をいたされていいんじゃないか。最低賃金のときは石田労働大臣だと記憶しますが、私はあの最低賃金ができたときより今日の事態というものは、相当な経験の上からいって、最低賃金がその間一年あまりの間にどれだけできたかということを考えてみられて、もっと積極的な方法をおとりにならなきゃならぬのじゃないか、そういう意味からいって、この関連した中小企業者に対する保証政策、生活引き上げの問題の関係についての御意見を承わります。
  62. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 中小企業の労働者諸君の生活の向上、労働条件の向上ということが中小企業の体質改善のためにもあるいは中小企業の経営の安定のためにも、私はよき労働力を確保するために必要だと考えております。さらにこれによって大企業との賃金格差を縮小するという方向に指導して参りたいと、こう思っておるわけでありますが、しかし、それに対する立法措置は案外たくさんできております。最低賃金制にいたしましても、あるいは中小企業退職金共済制度にいたしましても、あるいは失業保険の小規模の事業に対する拡張適用にいたしましても、そのほか健康保険その他についても、制度的にはたくさんできておるわけでありますが、遺憾ながらまだそれができて間がないせいか、いわゆる行政上の成果というものが上がっておらないというのが実情でございます。従って、これら中小企業の勤労者の生活の条件を向上するための諸施策を、行政的効果を上げるために、たとえばサービス月間と申しますか、そういうようなものを定めまして、行政効率をあげていく積極的な運動というものを行ないたい、こういうふうに考えまして、それによってまず行政効果を上げていくということが、現在の段階で一番必要なことじゃないだろうか、こう思っているわけでございます。  それから家内労働に対する対策につきましては、現に審議会で検討中でございます。成案を待って、政府としての態度をきめ、できるだけすみやかに、家内労働法というようなものを制定したいという考えでございます。  それから最低賃金法の、これは御指摘の通り、私の前の時代に提案をいたしたものでございますが、業者間協定を中心とする運営について、その当時質疑応答を繰り返しましたので、現在ここで重複は避けますが、その後その運営を通じて検討を要することが幾つかあることは、私も同感であります。ただ、現在それによる適用労働者数が二十五万人程度でありまして、まあ微微たるものであります。従って、とにかく現在の段階におきましては、できるだけ早い機会に、少なくともこれを十倍程度にふやすような積極的な指導をやって、そうしてこれによって最低賃金制というものの理解を深める、さらに御指摘の本質的な最低賃金制への切りかえということができる素地を作りたい。まあ現在の段階では、現行法をさらに普及するということに力を注いで参りたいと存じている次第であります。
  63. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 中小企業労働者の問題にしても、やはり経済政策の問題との関連なしには言えない。むしろそれが中心であると私は思う。で、この前の最賃法または家内工費をきめるときの状態と、今日の日本の経済の状態、それから展望というものを考えてみるとき、格段の差が私はあると思う。だから当時の議論を私は繰り返しませんけれども、私は今日の状態の中で、労働大臣は中小企業労働者、家内労働者の生活を明き上げるには、もう一度あの当時の議論を十分に振り返ってみて、今日の日本の経済の推移と展望の中に立って、私は考え直してもらいたいということを申し上げたいと思うのです。それでなければ、十年一日のごとく、中小企業に対する保護施策その他育成というようなものなしに、ただつぶれたらいいというような格好の状態の中で、おざなりの中小企業労働者の生活を引き上げると言ってみたところで、私は実は上がらないと思いますから、技術革新その他の問題がこれに関連してきますが、それとあわせて積極的なこの問題を具体策として立ててもらいたいということを、特にお願いをしておきます。  それからもう一つつけ加えておきたいのですが、たとえばこれだけは議論をしておいてもいいと思うのですが、家内労働者を、最賃ができた関連産業だけ家内工賃をきめる、こういうことは、このことだけはこれはもう何といっても改めなければならぬ問題だと、私たちは思っております。しかし、きょうこの問題について、議論はいたしませんが、こういう例もあることですから、ぜひ大臣が経験者でありますから、こういう問題の具体策を立ててもらいたいということをお願いをしておきます。  それから次の問題は、実は労使慣行の積み立て云々ということが原則の中に入っているわけでございまして、正常な労使関係というものを積み立てていくということはこれは必要なことでございます。しかし、私は何といってもまだまだ団体交渉が行なわれなかったり、中小企業の例を見てみても、昔と同じ感じで、徒弟として扱う、組合を作って要求をする、組合を作る者に対する、組合を作ることに対する問題から始まって、できた組合が団体交渉をしていく、そんな団体交渉に応じられたいというような格好の交渉拒否からくる深刻な中小企業争議というものをたくさん私は見受けるわけであります。こういう問題からいろいろの問題が私は起こってくると、正常に、労使対等で労働条件その他の問題をきめるということのルールが確立していったら、おのずからそこで力のバランスによって問題が解決していくと思う。その団体交渉以前の問題、今の労働三法の概念が使用者に十分に知悉されていない、労働問題以前の問題がたくさんあるのが、私はいろいろ深刻な長い争議になっている問題点ではなかろうかと思うのです。だから、大臣はそういうことはよく御存じだと私は思うのですが、そういう点について、新しく大臣におなりになって、そういう問題をどうしてそれじゃ直していこうというお考えに立っておられるか、一つ聞いておきたい。
  64. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 特に中小企業の労使関係が、御指摘のように、なかなかうまくいかない状態にあることはよく承知しております。その原因が幾つかございますが、その原因が幾つかあるうちの相当部分が経営者の無理解と申しますか、そういうものにあることもよく承知しております。従って、こういう点につきましては、やはり私のときに設立を認められました労働協会の活動に期待しますと同時に、労働省といたしましても、出先機関を督励いたしまして、経営者に対する労働教育というものを進めていきたいと思っております。その具体的な方法の一つといたしまして、労働協約というものの作り方、内容、その他についても全然承知していないものがあります。就業規則もできていないものが多い。そういう状態に指導を与えますために労働省として就業規則、労働協約のサンプルと申しますか、ひな形と申しますか、そういうものを作りまして、そうして労働協約が結ばれ、かつ団体交渉その他が円滑にいくような行政上の指導をして参りたい、こう考えておるわけであります。
  65. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は労働行政については、この前石田大臣のときにも申し上げましたが、私は労働行政というのはやっぱり職安行政であるとか、保険行政であるとか、やはりそういうものが中心になってこなければいかぬと、常々そう思っております。その労働問題の根本的な問題は、何といっても失業者のない完全雇用の中で働く者が豊かな生活をする、そういう中でおのおのの権利が労使間の間に、正当な状態の中で、対等の中で問題を処刑していくという工合に発展していくのだ、こういうことになってきますと、私は労働問題として、今日の日本の産業労働力の農民、中小企業とありますけれども、産業労働力の五〇%を雇用労働者といわれるのがもう来ようとしている状態なんです。今後、日本の経済が発展するに応じて、また必然的に雇用労働者が産業労働力の中の非常に大きなウエートを占めていく工業力として発達していくことも、これも私は自明の理だと、こう思うのです。そういう意味において、何といっても労働問題を解決するには、国の経済政策を——労働保護、ILOというりっぱな機関があるわけですから、こういう形の中で国の経済施策というものがそういうものを保護し、中心として立てられるところに私は国の政治のうまみというものが、福祉国家の姿というものがある。これはまあこの前の労働大臣もそういうつもりでやるのだと、こういうことでございましたから、今も変わりはないと私は思いますけれども、そういう点の所見を承っておきたいと思います。
  66. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) ILOの条約、決議につきましてはあとう限りこれを尊重して、あとう限りのものをすみやかに批准していくという考え方は、二年前に申し上げたことと全く同様でございます。  それから労働行政の大きな目的というものは御指摘の通り、労働者諸君の生活の向上に重点を置いていくことは、やはり言うまでもないことでありまして、事実私どもの方の役所の人員の九五%はそういう方面の仕事に携わっております、しかし、どうも往々にして労政関係の面ばかりが新聞その他に取り上げられがちであります。これはほんとうの労働行政の本質とは違うのでありまして、だんだん労政局などの仕事はあまり忙しくならないようになっていくことが本質だと思っております。そういう方向に向けて努力をいたしたいと思いますが、まあ労政局の仕事があまり繁盛しないように、使用者側はもちろんでありますが、組合側におきましても一つ協力お願いを申し上げたいと存じます。
  67. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃ私は今の問題に関連して、もう一言申し上げておきたいと思うのですが、日本では労働三法、要するに労組法、労調法、基準法がございます。しかし、基準法の面をとってみても、基準監督というものが実際にできているか。おそらく私は大臣みずから、きょうじゃありませんが、相当な基準法の違反行為があるということを認められるような状態であるわけです。こういうやはりせっかく作った法律を守っていくという、その監督行政というものに対する考え方を、今度の来年度の予算で監督官をふやして、安全保障、衛生の問題とか、また基準法違反で長時間働いているとか、いろいろの問題を適正に直していくためのそういう問題を考えなければならぬのじゃないかと、こういう工合に一つ思います。  それからもう一つは違った問題ですけれども、ILOの問題です。で、このILOの問題は条約を尊重して今後やっていきたい、そのこと自身はまことにけっこうなんであります。しかし、あのILOの条約をつぶさに大臣一つ今度は腰を入れられて、勉強してもらいたい。ILOの条約ばかりじゃありません。勧告、また問題によっては決議の形式によって、国際労働基準を上げるために努力をしているわけであります。いろいろの分科委員会によってきめたものをどう実施しているかという点検もむろん行なわれているわけであります。だから日本も理事国として参加しているのでありますから、やはり全般の条約、勧告、決議、こういうものに対する問題を私はむしろ八十何カ国の中で十カ国の理事国が指導の立場に立たなければいかぬ、その常任理事国の日本がILO全体の問題について私は怠慢であっては絶対にならない、こういう工合に思うわけでありますから、ぜひ大臣は今度ILO全体の問題について十分に一つ努力をしてもらって、そうしてどういう工合に日本の労働基準を上げていくか、また、あわせて指導的立場で世界の労働基準をどうして上げていくか、政府中心になるのは労働大臣でありますから、ぜひこの問題は私は国際問題として努力をしていただきたいということをお願いをしておきます。  それから何と言っても昨年から懸案になっておる八十七号の問題、それから最賃の二十六号の問題、今の最賃を上げていいのかどうかということが議論にございますが、この問題、百五号の問題や、厚生省が主として関係しますが、百二号の社会保障の問題、こういう取り上げてみれば非常にたくさんな、日本が現実この問題と取り組んで解決しなければならぬ問題があるわけであります。この問題も、ぜひ積極的に石田労働大臣の在任中に、こういう関係する条約批准の問題は全部解決する、こういう心がまえで、一つぜひやってもらいたい、御所見を伺います。
  68. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 最後のILO条約の問題でございます。八十七号条約は来たるべき通常国会にはぜひ提出をいたすつもりであります。  それから私の在任中に残りもできるだけ片づけるようにというお話でありますが、いつまで、在任するかどうかわかりませんが、私は積極的に一〇条約を尊重するという建前を貫きたいと存じております。  それから最賃に関する条約の批准につきましてはただいま検討中でございます。  それから労働基準法の運営についてあるいはその監督行政の現状についての御意見でありましたが、この中で安全衛生等の効果を上げまするためには、特に中小企業に対してそういう施設の改善を行なうための低利融資の方法を特に講じたいと考えております。  それから他の基準法の実施の状況でございますが、この基準法につきましては、わが国の産業界、特に中小企業の現状に比べて法律の方が進みすぎているという意見がままございます。それらも一つの理由となって労働法の改正などということが取り上げられるわけであります。労働三法の検討ということはただいま御承知のように、東大の石井教授が中心になって御研究中でございますので、それはその結論を待って、さらにその結論を世論に問うた上で考えたいと存じております。しかし、基準法が産業界の実情から進み過ぎているという議論に対しましては、進み過ぎておるからこれを後退せしめるというのではなくて、進んでいるものに行政指導によってこれをあわせて進んでいる方に近づけていくというふうにやって参りたいということは、前回私が就任いたしましたときも関係者に申し渡しておることでございますが、今後も同様の方針でいきたい。ただ現状との間にかなりのギャップがあることは事実でございますから、この悪質なものについては摘発等を果断にやることは当然でありますが、しかし、それよりもむしろ指導に重きを置きまして、そうして産業界の現状を基準法の要求に近づけるというふうに積正極的にやって参りたい。その方法の一つとしては、集団的な指導と申しますか、関係者を集合させて、それに対して指導をする、こういう方法を今積極的にとっているのでありまして、その件数は延べ二十数万件に上っておる次第であります。
  69. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の最後にお話しになりました、この前もそういう方針だったから、今度もそういう方針を指示していきたい、こういう気持はけっこうです、けっこうですけれども、私はやはり解決するという腹をきめなければこういう問題は解決しないのでありますから、そういう積極的な施策方針をぜひ立ててもらいたい、これだけ強く要望しておきます。
  70. 小柳勇

    小柳勇君 労働行政のベテランである新大臣就任せられたこと私もお祝い申し上げたいと存じます。  今三つの原則を労働行政のベテランであることを明らかにされて所信の一端を聞いたのでありますが、全般的な問題については改めて後日質問いたします。  緊急を要する雇用問題について質問いたしておきたいと思います。先般新聞紙上で雇用推進公団というような構想をかなり詳細に発表されましたが、でき得れば私はこの所信表明と同じにそのようなことも付言されると期待しておったのであります。このようなものがもし公表できるといたしましたならば、ただいまその骨子を話しになりますると、これに関連いたしまして質問を進めていきたいと思います。
  71. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 先般雇用推進公団に対する構造がたしか毎日新聞であったと思いますが、掲載されたことは承知いたしておりますが、私どもの方から積極的に発表したものではございません。ただ、あの記事に載っているようなものを考えまして、そういう考え総理まで概略説明をいたしておいたことは事実であります。その考えは、基金といたしましては失業保険積立金、それに一般会計、両建てにいたしまして、そうして事業は、現在労働福祉事業団に入っております職業訓練の事業、それから石炭離職者援護会のやっております事業、それを包含をいたしまして、目的は労働力の流動性を持たせる、地域的なアンバランスは住宅とか、あるいは移転資金とか、そういうものを給与することによってこれを調整し、作業的職能的アンバランスは技能教育を積極的に推進することによって調整する、こういう構想でございます。ただ、まだ全体としてまとめて申し上げる段階にございませんので、こういうことを考えているという程度であります。できるだけすみやかに労働省としての最終案を取りまとめまして御批判を得たいと存じておる次第でございます。
  72. 小柳勇

    小柳勇君 あの記事によりますと、すでにもう予算も三百億ぐらいの想定をしながらも構想を掲げておったわけです。そうしますと、私どものように、今失業者をかかえて全般的なものをどうするかという苦しい立場にありますものはまことに旱天に慈雨を得たような喜びを持ってあの構想を迎えた。それが今の大臣答弁によりますると、説明はしておいたけれどもというような、まだ確信に満ちた答弁を聞くことはできないわけですが、具体的に三百億ぐらいの構想を持つ雇用推進公団が、総理大臣がこれを聞かれて、しかも、金の面については詳しい総理大臣が聞かれて、どのような御返答であり、かつ、これが希望を持ってわれわれが今後これに期待してよろしいかどうかお聞きしておきたいと思います。
  73. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) まあ、私と総理との間の話はごかんべんを願いたいと存じます。ただ私としましては、ぜひこれを実現いたしたい、三百億という数字は、まあ、これも私の気持でありますが、むしろ職業訓練等も加えますならば、やはりもっとも多額なものを考えていきたいと考えておる次第であります。私もまあベテランのつもりじゃございませんが、いささか経験のあるものとして、全く見込みのないことを考えているわけではございませんので、今後の新しい施政の中心としてこれを扱っていきたい決意であることを申し上げておきます。
  74. 小柳勇

    小柳勇君 私どもとしては、そのような構想が実現することを期待いたしておるものでありますが、関連いたしまして、そのような雇用推進の機関ができると同時に、離職いたしましたものが、失業者などが特ちより相集まって民間的な離職者雇用推進団体、あるいは失業救済センター、そのようなものを作らなければ政府のやる政政策は待ち切れないという声もあるわけです。そうゆうような民間の離職者雇用推進団体、センターなどが、構想が実現するように、労働行政としてこれを推進してもらいたい、そういうものができた場合は実現する方向に御援助願いたいと思うわけですが、大臣としてのお考えを聞いておきたいと思います。
  75. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 雇用促進のための施策はあとう限りすみやかにいたしまして、打ち切れないというふりな状態をできるだけなくしたいという考えでございまするが、民間でこれと同種類のものを研究された場合というお話でありますが、具体的な内容はちょっと私今お話し承っただけではわかりませんが、しかし、民間、政府を問わず、雇用推進のために役に立つ事業については当然政府は積極的に援助も協力もする決意でおります。
  76. 小柳勇

    小柳勇君 関連いたしまして、そのような離職者たちが今願っておりますのは、たとえば駐留軍などが撤退いたしますとその施設があく、あるいは自衛隊などの移動によりましてその施設もあく、そういう場合に優先的にその土地を貸与するなり施設を貸与する、そういうようなことも再三再四委員会では問題になりました。大臣答弁では努力するように善処するという話はありますが、非常に手ぬるいわけです。財産の政府からの貸与などについては非常に手ぬるいわけですが、大臣再任のこの機会にこういう問題に対する大臣決意を聞いておきたいと思います。
  77. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 駅留軍の離職者の問題につきましては、私は前に労働大臣になります前に、私どもの党のその方の委員長をいたしておりまして、それからその後官房長官としてこれにあずかって参りましたので、この問題の処理について、問題はやっぱり具体的な事例の一つ一つをすみやかにするということが肝心で、抽象的な大ワクを幾らきめてみてもなかなか効果が上がらないということはよく承知しておりますので、その具体的な事例について積極的な協力をして参りたいと思っております。ただ、そういう場合に、自分の現在持っておる条件から新しい仕事を割り出しがちでありまして、社会なり国の経済なりの要請の問にギャップを生ずることが間々あるわけであります。そういう点が一つのガンになっておりますので、そういう点も一つ話し合いをして参りたいと、こういうふうに思っている次第であります。
  78. 小柳勇

    小柳勇君 芦屋の軍事基地で九月でほとんどの者が離職するわけです。約二千名に近い数でありますが、各職業安定所で懸命に就職あっせん、職業訓練などをやっておりますが、その成果はまだ十分でありません。従って、石炭離職者と同じように、広域職業紹介など万全を期しませんと、失業保険がなくなって路頭に迷うというようなことも発生しますが、関係当局は相当努力しておられることは認めますが、この際次の委員会がまた九月にありますので、急を要しますので、大臣決意を聞いておきたいと思います。
  79. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) ただいま御指摘の問題につきましては、先般とりあえず失業保険を二ヶ月延長するという措置を講じたわけでありますが、広域職業紹介、あるいは職業訓練等につきまして、石炭離職者と同様の熱意をもって対処する方針でおります。
  80. 小柳勇

    小柳勇君 最後に、これは中小企業の労働者の保護の問題について決意を聞いておきまするが、昨日も小さい組合でありますが、千名ぐらいの組合でありますが、今不当労働行為が露骨に現われておる。会社側の方で労働講座を開いて組合分裂を策するし、あるいは組合役員に対して昇職の辞令を一方的に出そうとするきらいがある。そういうことで、露骨に組合をたたきつぶすというような行為が方々で見られるわけです。きのうは労働省の組合課長にちょっと実情を聞いただけでございまするが、都労委などでは相当そういう問題を取り扱っておりまするし、地方でもそういう事態が発生しておるように見受けます。このような中小企業労働者の生活向上とも関連することでありまするが、私はそういう小さい組合については、やってはならぬけれども、労働省が保証する立場で不当労働行為がありまするような場合にはそういう使用者なり資本家なりに対して若干の指示なり教育をするくらいの熱意がなければ、中小企業労働者の生活安定はできないのではないかという心配を持っておるものであります。大きな組合は総評なり地区労働などで連帯的に守って参りまするが、小さい組合はそういう地区労に入ってもやられる。総評に加盟するとなおやられるということで、上部団体に加盟できない、みずからの小さい力でみずからを守るというような、非常な苦境に立っておるようであります。特に三池争議などがありますと、それと対照的に、向こうの方に、大きな争議に気をとられておるときに、小さい企業の組合の中で不当労働行為や不当弾圧が発生する。こういうことが顕著に私の方にも、手元に訴えが参っておりまするので、大臣就任の機会にそういう中小企業労働者を守るという立場で、中小企業の労働運動についても格別の配慮を順いたいと思うわけでありまするが、大臣の所見を聞き、私の質問を終わります。
  81. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御指摘の問題、具体的な例については私は報告を受けておりませんので、具体的な例については触れませんが、考え方は先ほど藤田委員の御質問にお答えした通り考え方でございます。中小企業の労働問題の悪化いたします原因の幾つかあるうちの相当部分が、経営者の無理解から来ているということをはなはだ遺憾に存じておる次第であります。従って、これを是正いたしますためには、先ほども申しましたように、労働協会の積極的な活動に待ちますと同時に、労働省といたしましても出先機関を督励をいたしたいと存じております。ただ、具体的な事例に直接労働省が囲うすることは、これはもう避けなければならぬことは、小柳委員先刻御承知通りだと思いますが、それと相矛盾しないように労働省の与えられた権限の範囲でできるだけ努力をしていく決意でございます。
  82. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 本件に対する本日の質疑は、この程度といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認めます。  それでは本日はこれにて散会をいたします。    午後二時七分散会