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1960-09-02 第35回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年九月二日(金曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 大野 市郎君 理事 吉川 久衛君    理事 小枝 一雄君 理事 中村 寅太君    理事 角屋堅次郎君 理事 芳賀  貢君       倉成  正君    高石幸三郎君       中馬 辰猪君    赤路 友藏君      茜ケ久保重光君    足鹿  覺君       石野 久男君    久保 三郎君       中澤 茂一君    西村 関一君       日野 吉夫君    松浦 定義君       小松信太郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 南條 徳男君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局審査部         第一審査長)  八尋  昇君         農林政務次官  田口長治郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農 林 技 官         (農林経済局企         業市場課長)  鈴木 一美君         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    太田 康二君         農林事務官         (農林経済局肥         料課長)    山路  修君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部         長)      酒折 武弘君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (振興局長)  増田  盛君         食糧庁長官   須賀 賢二君         農林事務官         (食糧庁総務部         長)      岡崎 三郎君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    村田 豊三君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部食品課長) 黒河内 修君         水産庁次長   高橋 泰彦君         通商産業事務官         (軽工業局長) 秋山 武夫君         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   富谷 彰介君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局鉱         山課長)    西家 正起君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  広瀬 真一君         運輸事務官         (船員局長)  土井 智喜君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部業務課         長)      小口喜久二君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  遠藤 鉄二君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会会         長)      荷見  安君         参  考  人         (全国販売農業         協同組合連合会         会長)     石井英之助君         参  考  人         (朝日麦酒株式         会社社長)   山本為三郎君         参  考  人         (栃木麦酒麦         耕作組合連合会         副会長)    植野 伝造君         参  考  人         (ビール酒造組         合技術員)   美馬  勲君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 九月二日  委員石坂繁君、三田村武夫君、石田宥全君及び  山田長司辞任につき、その補欠として安倍晋  太郎君、八木徹雄君、久保三郎君、石野久男君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員石野久男君及び久保三郎辞任につき、そ  の補欠として山田長司君及び石田宥全君議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件(ビール麦問題、  甘味資源問題、大豆価格問題、肥料問題、農林  水産物の輸送問題、鹿児島県国分第二代行干拓  問題)  農林水産金融に関する件(農家負債整理問題)  農林漁業災害に関する件(発盛鉱山煙害問  題)  農林水産業団体に関する件(漁業協同組合問  題)      ————◇—————
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  まずビール麦問題について次の参考人より意見を聴取することといたします。すなわち全国販売農業協同組合連合会会長石井英之助君、全国農業協同組合中央会会長荷見安君、朝日麦酒株式会社社長山本為三郎君、栃木麦酒麦耕作組合連合会会長植野伝造君の四君であります。  この際参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ、当委員会調査のため、わざわざ御出席をいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  ビール麦問題は八月十二日の当委員会におきましてそれぞれ関係当事者から御意見を聴取いたしたのでありますか、まだ根本的解決を見るに至っておらないと承っております。つきましては、当委員会調査参考に資するため参考人各位におかせられましては、それぞれのお立場より忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。なお、参考人の御意見は、初め十分以内で簡潔にお述べいただきまして、あとは質疑によりお答えをお願いいたします。それではまず参考人の荷見安君からお願いいたします。
  3. 荷見安

    荷見参考人 ただいまお話のありましたビール麦の問題につきまして、私の知っておりますことを申し上げたいと思います。  このビール麦問題と申しますのは、申し上げるまでもなく、ビール麦耕作いたしておる農民が、従来の関係麦耕作連盟ですか、麦耕連を通じまして、各会社販売事務を世話をいたしておったのでありますが、これが農業協同組合方面におきまして、農業協同組合事業であります共同販売事業としてそれを取り上げたいというような話が、昨年の秋に起こりまして、その問題から、従来の取り扱いをいたしておりました麦耕連関係のものとの間にいろいろ意見の不一致を来たしまして、農民関係にも、ビール麦耕作しております農民層に対しましてもいろいろの不安を与えておったわけでございます。それで私どもはいろいろ両者の円満な調整ができまして、そういう紛議がなくなりますようにと考えまして、朝日麦酒山本社長と御協議を遂げたのでありますが、本年の四月七日に一応大綱の協定ができ上がりましたので、それをビール酒造組合全国農業協同組合中央会の両団体におきまして公表をいたした次第でございます。その内容につきましては、取りきめをいたしました趣旨取り扱いについての条項というようなことからなっておりまして、きわめて簡単でございますから申し上げますと、四月七日にいたしました協定趣旨は「一、三十五年産ビール麦取扱いについて関係者の間にいろいろ意見の相違がありビール麦耕作者に対しても不安を与えていたことは遺憾である。二、ビール麦が多年会社との特約栽培実行している点を尊重し、その趣旨にもとらないような取扱いをすることが適当である。従ってその取扱い支障を生ずることのないようにして耕作者の不安を除くため次の取決めをする。」というのでありまして、その取りきめは、「ビール麦取扱いについて、一、ビール麦耕作者実績はこれを認めるものとする。二、ビール会社の負担している手数料等経費は現状を越えないものとする。三、生産技術指導等ビール各社希望を尊重して行うものとする。四、本年のビール麦取り扱いについては、単協会社契約済みのものはそのまま実行し、経済連、全販連等系統販売ルートに乗せる手続の進んでいるものについては、そのルートを通じて取り扱うものとする。その際の具体的取引条件については従来の実績を尊重して必要ある場合更に協議の上公正を期する。単協から経済連、全販連ルートを通ずるものは、各単協より経済連を通じ、全販連取り扱い委託したものにより、全販連ビール各社単協別売り渡し明細書を添付し、売り渡し申込書を提出するものとする。この場合、契約単協会社との間に成立し、その後の受け渡し等は全販連に委任されたるものとする。」かような条項の取りきめをいたしました。それはただいま私が申し上げましたように、ビール会社ビール麦耕作者との間にいろいろ意見の行き違いなどがありましては、はなはだその販売に不安を招くわけでございますので、さようなことのないようにしようというのであります。それでその内容につきましては、別に御説明を申し上げるほどのことはございませんが、要するにこの協定ビール麦耕作者の三十五年産ビール麦販売につきまして、農協ルートを通ずるものも、麦耕連ルートを通ずるものも、不安がなく、公正な取引ができますようにという趣旨を申し合わしたのであります。しかしてその申し合わせに基づきまして、その事務的の取り扱いについては、いろいろ農協側ビール酒造組合との事務の間に取りきめをいたして参ったのであります。申し上げるまでもなく、いろいろトラブルのありましたものをかようにルートを作ろうということにいたしたのでございますから、かなりその打ち合わせ等にも時間を要したことは私もよく承知いたしておりますが、ただいまにおきましては、大体申し込みから代金取り扱いに至るまでの過程について、事務的に協定が進みまして、支障なくなっておると感じておりますが、その事務的の内容の問題につきましては、実は詳細に私申し上げるほどの用意がここにございません。もしも必要がございますれば、いずれあるいはその協定参考書類のようなものは、あとでととのえまして御報告いたしてもよろしいと思いますが、本日はそれを用意して参っておりません。  要は、私もまたビール会社山本社長も、こういう仕事はとにかく商取引の問題でございますから、売方と買方との間に何らこだわりのないような円滑な取引ができるということを主といたしまして取り扱いについての協定をいたしたわけでございます。また従来の取り扱いぶりもございまして、そういうことはただ一方のみの自由な決定にもできかねることでありますので、会社側農協側とがよく協議を遂げまして、円滑な取引ができるということが望ましいと私も考えておりますし、山本社長の側ともそのことは従来のお話し合いの間において完全に意見が一致いたしたので、さような取り扱いをいたしたというのがこれまでの経過でございます。  その間いろいろ世間に、私から見ますと、当たっておることもありましょうし、あるいは必ずしも当たらないようなこともございましょうが、それが世間にはいろいろに伝えられておるように感じております。これはどれがこう、それがどうということを私申し上げるわけではございませんが、さような経過協定を四月七日にいたしまして、その後事務の方でそれの実行方法協定いたしまして、ただ当初協定をいたしました四月七日の内容につきましては、その後もいささかも私としては趣旨を変更になっておらぬと考えておる次第でございます。  私から申し上げることはその程度でございます。
  4. 小山長規

    小山委員長 ありがとう存じました。次は全国販売農業協同組合石井英之助参考人にお願いいたします。
  5. 石井英之助

    石井参考人 全販連ビール麦共同販売の問題につきましての従来の考え方なり進め方につきまして、この機会に申し上げておきたいと思います。  全販連におきましては、御承知通りに各種の農林産物共同販売を担当いたして、単協から県段階経済連、それから全販連へと販売委託を積み上げまして、これを需要者の方に共同販売するということを使命といたしておりますことは御承知通りでございますが、これはまた御承知通り農協事業の重要な部門として、できるだけ多くのものについて共同販売の実を上げていこうということが、全販連ということだけでなしに、農協全体としての大きな目標になっておるわけでございます。  そこで現に行なっておりまするものにつきまして申し上げますと、たとえば酒造メーカー大手方々には原料カンショ及び切りぼしというようなものを委託販売を積み上げまして、協和醗酵であるとか三楽であるとか、そのほかいろいろ大手酒造メーカーに全販連契約をいたしまして、そして一手に契約をして、それぞれの会社のそれぞれの工場に原料を納めておる。また油脂の製造会社大手に対しましても、主として菜種を共同販売をして、全版が本社と契約をいたして販売をしておる。こういうような仕事をそれぞれやっておるわけであります。  そこでこのビール麦につきましても、数年来やはり同じような共同販売というものをした方がよろしいのじゃないかという声がだんだん出ておったわけでございますが、ビール会社ビール麦耕作者との間におきましては、長い御関係がございまして、なかなか簡単に理解もできないという事情で参ったのでございますが、系統農協の建前としては、やはりこれは系統共販販売をすることが筋であろう、だから、できればあくまでそういうふうにしたいというので、全販連に対しましても、地方からそれの実現についてしばしば御要請を受けておったというような実情でございます。私ども、ほかの農林水産物についてそういう共同販売をやっておりましたのは、もちろん工業原料につきましては、需要者側の御要望の点を十分考えませんければ販売も円滑に参らぬわけでありますから、常に需要者とは密接な連絡をとっていろいろ御懇談もし、御協議もして、支障のないような取引関係、いわば長期的に安定をした取引関係設定ということに努方をしておるわけで、各方面の御理解を得まして、そういう意味の長期安定取引関係設定ということが地についてきたように考えておるのでございます。ビール麦につきましても、需要者側の御理解、御協力を得まして、そういう安定した取引関係設定というものができれば生産者側需要者側との間に非常に好都合ではないか、かような考え方をいたしておるわけでございます。栽培上の問題についても、需要者の側としてはいろいろ御苦心になり御心配になっておる点があるわけでございますから、そういう点に合致をするようなことにいたして、できれば生産についても支障の起こらぬような配慮をいたして進めて参りたい、かように考えておるわけでございます。ほかの販売品につきましても、生産面指導というものが農協側としてはこれから事業を発展させるためにぜひ必要であるということで、生産部門指導にも農協側としてさらに積極的な努力をいたしたいというのが今日のわれわれの課題でございます。そういうことも含めまして、共同販売を実現したい、こういう考え方でおるわけでございます。昨年たまたま茨城で起こりましたことが発端になりまして、いろいろその間には誤解もあり、また行き違い等もございまして、ビール会社の方とわれわれの方との関係は必ずしも円滑に参らず、一時は私どもも非常に苦しみ、また困った事態もあったのでございますが、幸いにして今荷見会長からお話しのありましたようなことで、当面の問題の処理ということについて大きな基本線了解山木社長との間に成立をいたしました。私どもとしては、その大筋に沿うて事務的な取りきめ、協定をいたしまして今日まで参ったのであります。そこで、その間には、やはり長い今までの伝統の切りかえという問題もあるわけでございますから、両者の間必ずしも円滑にも参らなかった点がございますことは事実でございますが、私ども根本考え方は申し上げたようなわけでございますから、私どもといたしては、十分にお話し合い機会があり、御懇談機会があれば必ず御了解が願える、そうして、長期的に安定した取引関係は、よく御相談をして参ればできるものだ、こう実は確信をしておる。と申しますのは、現在やっております仕事関係を通じてそういうふうに思いますので、今までにはいろいろ行き違いもございましたけれども、その後のお話し合によってだんだん落ちついて参りまして、現在の時点におきましては、おおむね了解点に達しておるように思っております。その実行上の問題につきましては、全国広範でございますから部分的にまだまだという点もございますけれども、すでに一部代金の支払いを受けるというところまで参っておりますから、今後お話し合いをいたしますれば、先ほどお話しのあった協定趣旨は必ず実現できるものと、また実現せねばならぬ、かように考えておる次第でございます。  私ども考え方というようなものを申し上げまして、御了解を得たいと存じます。
  6. 小山長規

    小山委員長 ありがとうございました。  それでは、次は朝日麦酒社長山木為三郎参考人にお願いいたします。
  7. 山本為三郎

    山本参考人 私は、まず自分の立場を御了解を願いたい。ビール四社は差しつかえのないことは一括してものを取り運ぶということにいたしております。私は従来二十何年間やっておりましたが、今から三年前交代制をとりまして、代表理事三人のうち当番理事がやっております。ちょうど私は昨年十月から病気をいたしまして、本年三月まで東大病院に入院をいたしておりましたが、その間にこういう問題が起こっておったそうです。ある方から、この問題を何とか解決しなければ農林省も農中もお困りだから、君、一ぺん話に行かないかということでございまして、やあ、何かわかりませんが伺いましょうということで、本年の一月の五日だったと思いますが、荷見会長がわざわざ御足労下さいまして、いろいろ伺ったのであります。私は、現在代表理事ではあるが当面の責任者ではない。しかし、しいての御希望ならばあなたも仲人立場にお立ち下さい、私も仲人立場で、二人で全販連ビール会社の間の話を取りまとめましょうということにいたしまして、ようやくレールに乗ったのであります。自然私はビール会社を説得する立場に立ちました。私は十日から大阪へ旅行をいたしますので、一月九日に農林大臣経済局長お立ち会いのもとに荷見会長申し合わせをいたしまして、四月七日に、ただいまおっしゃったものと大同小異、趣意は大体変わらないものが取りまとまりまして、それで私はビール四社にお話しをしまして、私の提案を聞いてもらったわけであります。私が病院におりました関係上いろいろなことがスムースに取り運ばないのと、ビール会社そのもの立場については、私も大体心がけておりますが、もっと大きい問題は、明治二十年前後からビール会社の慫慂によってビール麦というものが日本で初めて作られて、ともに苦労をして今日のビール麦生産に至った。その相手方の、ただいま申しますれば麦耕運と申しますか、地方によっては違いますが、そのわれわれの協力者である組合方々了解を得なければならぬ、その方によく了解をしてもらわなければ、ビール会社だけではどうにもなりませんので、荷見さんがおそらく私のところに二十何回か足をお運び下さったにかかわらず、私が三月に退院いたしまして初めてレールに乗りまして、四月七日に私と荷見先生とで共同声明ができ上がったということでございます。初めからこれはわかっておった、これであるべきはずでございましたが、われわれの協力者であるいわゆる麦耕連と申しますか、麦耕連及びその他のわれわれの協力者方々の説得のために時間を費やしたのであります。ただいまここでお読み上げを下さった通り、この趣意はいまだに変わっておりません。私と荷見会長との間のあの申し合わせば今日もなお生きておりまして、この通り実行をいたしております。あるいは各地におきまして小さい疑義が生じ、あるいは紛議があるかもしれませんが、これはあまり私は詳細は聞いておりません。実はここへ参りますのに、もう少し確かめて来たいと思いましたが、昨夜六時近くにきょうの会合を伺って、けさ十時というので、十時前にこちらへ参りましたので何にも詳しいことは聞いておりませんが、今荷見会長のお読み下さったあの申し合わせ通り実行をいたしておりますし、実行をいたす覚悟でございますので、どうぞ御了承を願いたいと存じます。  全敗連その他のことにつきましては、私は大きい意見を持っておりませんので、ここで皆さんに御説明いたしますことは至難でございますが、ただ先ほど申し上げましたように、明治八年に北海道でビールの麦を作りまして、それはごく少量でございますが、その後明治二十年を過ぎて、一は京都府の一部において、一は関東地方におきましてビール麦耕作されました。御承知通り二条麦と申しますのが初めてでございまして、六条麦の四条を退化せしめて二条を発育せしめる、ビール製造にはこれてなければ良質のものができないというのでこの品種を取り上げましたところが、なかなか耕作にも困難であるし、六条麦にかわるに二条麦でありますために収穫は少ない、ビールに使ってみれば外国品種ビールとでき上がったものが大そう違うというので、われわれの先輩はきょうまで七十年間、皆さんの御想像以上の苦労をして、今日この品種ができ上がりました。このうちの一部分のものは、外国の最も優秀な品種よりすぐれているとは申しませんが、それに匹敵するまでに到達いたしました。これは世界に誇ってよいものだと私は信ずるのであります。しかして収穫におきましても、われわれの技術陣指導者と学者の研究、耕作農民方々のなみなみならぬ御努力によりまして、所によりましては、六条麦とひとしい、あるいはそれ以上収穫ができておる所があるのであります。  それやこれやを考えてみますと、私どもビール四社は、この耕作方々を無視してビール製造はあり得ないのであります。この方々の過去の功労に対して敬意を表し、これに対してできるだけの力を没入いたしまして、この仕事のいま一段の完成をしたい、こういうことがございますので、決してわれわれのビール会社系統販売に反対ではありませんが、この長い歴史を持った農民方々とのこの精神的きずなは捨て切れないのであります。観念的にはわかっておりながら、これはなかなかできないことであります。七十幾年の長い間のいろいろの事情もありますし、またただいまおっしゃったようなカンショのような品質のものでなくて、地味と品質とそれに対する耕作とはそう簡単なものではございません。  それやこれやで、われわれの専門技術者は、現在耕作しておる方々の最も都合のよい方法をとりたい、またより今後も新しい品質を採用して、よいビールを作るかてとしたいと考えて、日夜やっておりますので、われわれもそれをむげに捨てることができませんので、ただいまのようないろいろ御迷惑をかけておる点があると思います。今後もただいまの農中ないしは全販連の御趣意はよくわかっておりますので、でき得る限りその方向に進めたいと存じておりますが、今すぐにそれに引きかえるということは、ビール会社都合よりも、われわれの協力者である現在の耕作者というものを横に見ますと、意のごとく参らぬ点をいかにも遺憾に存じます。どうぞこの点は皆さんも御了承を願いたいと存じます。  七十年の長い間ともに涙を流してこの麦ができまして、日本ビールが本年は五百万石に達したという功労の一半は、この農民諸君の力によったのだということを私は深く信じておる次第であります。どうぞそういう趣意でわれわれがこれを行なっておることをぜひ御了承願いたいと存じます。決してこれに対する農協その他の組合運動に対する反対運動ではない、自分の協力者に対する敬意とわれわれの好意であることをどうぞ御了承願いたいと存ずるのであります。  おかげで本年は荷見会長と私の申し合わせ通り実行して、あるいは小さいいざこざはあったかも存じませんが、皆さん御満足を願っておると存じます。所によってはおれのところを先にやってくれとかなんとかいうこともございましょうが、私はそれは皆さんの身勝手だと思います。おかげで都合よく取り運んでおりますので、御安心を願いたいと思います。  くだらぬことを申し上げましたが、一言私の立場を釈明いたした次第であります。ありがとうございました。
  8. 小山長規

    小山委員長 ありがとうございました。  それでは、次は栃木麦酒麦耕作組合連合会会長植野伝造君にお願いいたします。
  9. 植野伝造

    植野参考人 実は本日は本県の会長の坪山徳弥先生が呼び出しになりましたが、御承知通り、過日本県の移民政策に関しまして、ブラジルの方に出張されまして、この間お帰りになりまして、いろいろそれの跡始末等多忙のため本日出られませんで、私に行けというお話でしたが、私この春胃ガンを手術して静養中でございまして、出席しかねるところでございましたが、当委員会の意向は、できるだけ役員の方という希望があったそうでありまして、私出席した次第でございます。こういう機会は初めてでありまして、要領を得ませんが、私麦作農民という立場で一つ申し上げてみたいと思います。  私は田畑で二町七反ばかり作っておりまして、ビール麦は戦前より、まだ子供のうちから私の家では作っております。ただいま朝日麦酒さんで申される通り、本県は三十年程度も、ビール麦が作り始まると同時にビール麦を作っております。私のじいさま時代からビール麦は作っております。戦前はやはり現在のように栃木県は全国第一の量を生産し、昭和十六年に統制になりまして麦酒が政府買い上げになりまして、ずっと昭和二十四年に相当麦が買えるようになり、その時分から食糧が相当緩和されたためにビール会社に酒造用として麦を売る、ビール麦が売れるというようなことで、その時代から本県においてはビール麦耕作組合を作りまして、各農家も農協を通じて会社契約して栽培しておりました、昭和二十四年度には大体本県において最初に契約したのは、六万俵かそこらと記憶しております。その後逐年経済の伸張とともにビールの消費が増大して、年々増石と同時に生産契約数量もふえまして、昨年度においては本県は五十八万俵という数字を契約しておりまして、この春の異常天候によりまして本県は末曽有に麦が悪うございまして、非常に心配したのでございますが、いろいろの方法を講じまして格外の麦まで買っていただきまして約六十万俵の麦を全部会社へ売り渡しまして、何ら異状なく麦の取引が済んでおります。このビール麦取引系統共販という問題は、昨年の秋お隣の茨城県から端を発して問題になったと思いますが、私の県においては、芳賀郡に水橋という村がありますが、その村が一つ脱落して耕作連と契約しなかったのでございます。ほかの町村は全部耕作連を通じて販売しております。それからまた現在においてはこの秋まきつけする麦すらも全部に近い町村が契約を申し込んでおるような次第でございまして、この過去の伝統を、何ら耕作農民が不自由のない契約栽培が、決して私は悪いものと思っておりません。われわれは昔から生産者から消費者へ直結する販売方法としたならば、これは一番いい方法である。過日アメリカへ私の方の川俣憲二先生が視察に行きまして今のアメリカですらもこの生産物を消費者に直結した販売方法というものを今盛んに研究しておるそうです。お帰りになりまして話を聞くのに、日本ビール麦のように昔から生産者が一致して直接消費者に販売するというようなことは非常にいいケースである。将来すべてのものがこういうふうになれば、中間経費が少なくなって、その生産者の取る費用が多くなる、これが最も望ましい方法であるということであります。私もまさしくそういう方法をすべてのものがとれればまことにいいと思いますが、日本の人口問題もございましてなかなかそうはいきませんけれども、農産物のようなものこそ、鮮魚のごとく生産地から消費地へ直接持っていって、新鮮なものを早く渡せる方法と同じようにすベきで、私はビール麦の現在の町村農協会社に直接売るという方法は共販でないということは決して断言できないと思います。農民がこぞって自分の農協を通じて消費者の会社に売ることに対しては、私は共販で差しつかえない、こういう確信を持っておりまして、本県の耕作農民耕作連を通じて売ることにいささかの不安もございませんことを、ここに確言しておきます。
  10. 小山長規

    小山委員長 ありがとうございました。  本問題について質疑の通告がありますのでこれを許します。西村関一君。
  11. 西村関一

    ○西村(関)委員 ただいま各参考人方々から所信を披瀝せられまして、私もいろいろ啓発されるところが多かったのでございますが、またそれぞれのお立場から責任者の皆様方が腹を割ってお話し合いをしていただくということによりまして、今起こっております若干の問題が、必ず解決に導かれるという確信を持たしめられた次第でございます。その点は皆様方の御努力に対して心から深く感謝を申し上げる次第でございます。つきましては二、三の点につきましてお尋ねをいたしたいと思いますので、いろいろ多岐にわたる点もあるかと思いますが、できるだけ腹蔵なくお答えをいただきたいと思うのでございます。  まず最初に山本為三郎参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、新規格と旧規格との価格差の問題でございます。この前山内理事が本委員会においでになりましたときに、新規格に移行するに伴って価格を上げるのが常識であるから、その点については善処したいということを申されたのでございます。その点につきまして、その後どのような御検討をなさっていらっしゃいますか、お伺いいたしたいと思います。  それから、それに関連をいたしまして、ビール麦の旧規格の三等及び大粒大麦の三等の現行規格はどうなっておりますか。  第三番目には、本年度は天候の関係から細身が多くて、ビール大麦に合格しないで大粒大麦の四等以上のもののうち、麦芽用に適するものをビール会社の方では買いつけておられますが、この場合の価格はどうなっておりますか。  第四番目には、そういうことになりますと、旧規格のビール大麦は現行大粒大麦の二等と整粒歩合におきまして同じであります。もちろんビール麦としてのその他の規格は違いますけれども、整粒歩合においては同じでございます。従って麦芽適として会社が買いつけたものは、旧規格であればほぼ三等に合格したであろうと想定されます。新規格の三等は二千百七十四円であり、麦芽適の大粒大麦三等は一千九百五十六円でありますから、二百十八円引き下げられたことになります。一方麦芽適として会社が買い付けられた九千百五十六円は政府のビール醸造用売却価格の三等二千百十四円に比べましても百五十八円安になります。こういったような関係につきまして会社側はどのようにお取り扱いになり、またどのようなお考えを持っていらっしゃいますか。まずこの新規格と旧規格の価格差の問題について最初にお伺いいたしたいと思います。
  12. 山本為三郎

    山本参考人 実はビール原料ビール三社、四社の技術担当常務が従来担当いたしております。ことに昭和十七年にビール原料公社というものを作りまして、上は私が見ておりましたが、これは担当役員が全部専門的なことでやっておりますので、実はただいまお話のようなことは私は全然わかりません。ここへ今その担当の技術者を私同伴して参りましたから、それから説明いたさせまして、あるいは補足する必要があったら私がいたしたいので御了承願いたいと思います。
  13. 小山長規

    小山委員長 参考人追加の取り扱いについてお諮りいたします。     〔「参考人に追加したらいい」と呼ぶ者あり〕
  14. 西村関一

    ○西村(関)委員 そのように取り扱っていただきたいと思います。
  15. 小山長規

    小山委員長 それではビール酒造組合技術員の美馬勲君を参考人に追加することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 小山長規

    小山委員長 御異議なしと認めます。  それでは美馬参考人
  17. 美馬勲

    ○美馬参考人 ビール麦の規格を変えた起こりは、過去四回、五回にわたりまして毎年食糧庁におきまして実態検査をやり、戦後作りましたビール麦の規格が普通大麦の規格を焼き直したという関係上、実態と合っておりません。それで実際出回った麦を、今申し上げた通りに四カ年ばかり会社の倉庫へ入ったのを各工場で食糧庁自体が実態検査をやりまして、規格が現物と離れておる。御承知のように二条麦は六条麦よりも粒がずっと大きくなっておりますので離れておるということで、規格が変わったのであります。それが昨年実施されまして、昨年度は平年作であったために何も問題は起こりませんでした。それで、会社といたしましては、その検査の規格を変えたのは二条麦の実態に合わすということで変えられたのであるが、検査の指定外に入ったビール麦品質の試験をまだやっておりません。ことし初めてその検査の結果が出たわけでございます。それによって勘案いたしまして、上げるべきものは上げるという考え方で、これはせんだって山内理事がお答えした線と同じでありまして、研究しております。
  18. 西村関一

    ○西村(関)委員 この新規格によりましてことし規格外になったものが大体どのくらいございますか。そういう数量を現在おつかみになっていらっしゃいますか。その点お伺いしたい。
  19. 美馬勲

    ○美馬参考人 それは昨年のように平年作でありますと、耕作技術の進んだ現在では——昨年は相当残麦が出て規格外というようなことを考える必要もなかったのでございますが、本年のように非常に天候が早天続きで分けつしたものが実らないとか、水分不足のために、われわれ枯れうれと申しておりますが、枯れうれして充実しなかったというような天候の関係がありますので、一がいにその結果を出すことができない。以上でございます。
  20. 西村関一

    ○西村(関)委員 その点、食糧庁の方ではその数字をつかんでおられますか。ちょっと参考人の方には済みませんが……。
  21. 岡崎三郎

    ○岡崎説明員 私からお答え申し上げます。実は私どもの方の調査では毎月ごとの調査になっておりまして、まだ八月の調査は出ておりませんので、八月末で、これも実は軒並み全部こちらの照会したものが集まっているわけじゃございませんが、その結果から申しますと、大体二割程度が検査において等外となっているようでございます。
  22. 西村関一

    ○西村(関)委員 その的確な数字につきましては、あとで資料としてお出しをいただきたいと思う。  それからことしのような不可抗方によるところの規格外のものが今食糧庁の方では二割くらいの程度であろうというお話でございますが、これらに対しまして、前の小枝政務次官はこの価格の点については何とか考慮しなければならぬ問題だということを本委員会においても言明しておられますが、会社側におかれましてはこれに対して何らかの補償をするというお考えはございませんでしょうか。
  23. 美馬勲

    ○美馬参考人 補償をするということでなく、これは事実天候によるものでございまして、相当細い麦でございますので、先ほど醸造に適するというお話が出ましたが、それは会社のふるいの目がきまっておりまして、幾らふるってもそれは機械で調整することができませんで、救済の意味において、ふるったそのまま飼料に払い出すといった関係上ぎりぎりの線までことしは制限つけずに買っております。
  24. 西村関一

    ○西村(関)委員 それはそのぎりぎりの線と言われますが、それにもかからないのがどれくらいありますか。
  25. 美馬勲

    ○美馬参考人 わかりません。
  26. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そのぎりぎりというのは何ミリですか。
  27. 西村関一

    ○西村(関)委員 二・二ですか。
  28. 美馬勲

    ○美馬参考人 二・二です。
  29. 西村関一

    ○西村(関)委員 その点、現在おわかりならないにしても、おわかりになるときがあると思いますから、それはどうですか、いずれはおわかりになるのでよう。そのときに一つ資料としてお出しをいただきたいと思います。
  30. 小山長規

    小山委員長 参考人よろしゅうございますか。
  31. 美馬勲

    ○美馬参考人 どのくらいの程度にあるかということは農家が持っておるので、御質問の点が私にはよく了解できませんでしたが、ビール麦の昨年度の契約数量は全国で二百十五万七千俵でございますが、それは約四万町歩ちょっとあれば十分できます。ところが農林省の統計でも御承知通りに、ことしは八万町歩作っております。これは政府が食糧用として輸入する外麦はほとんどビール麦です。従いまして、ビール麦というものを食糧にするということが非常に普遍しまして、現に栃木県あたりの、会社から以前出した品種でございますが、改良二条種なんというものはまとまって相当新潟県に出ております。
  32. 西村関一

    ○西村(関)委員 その点じゃないのです。わかりました。今、私の質問外のことをいろいろおっしゃっていますが、今の規格外のビール麦がどの程度出てくるかということに対しておわかりにならないという御答弁でございますから、これはやむを得ないと思います。それでその点につきまして、全販の方ではどのようにおつかみになっていらっしゃいますか、石井会長さん、お答え願いたいと思います。
  33. 石井英之助

    石井参考人 私もその数字は具体的には承知をいたしておりませんので、もし調査でわかるようでございますれば、後刻調査をいたしてお話を申し上げたいと思います。
  34. 西村関一

    ○西村(関)委員 ぜひ一つ資料として御提出を願いたいと思います。  その次に契約数量の問題についてお尋ねいたしたいと思いますが、例の豊凶作のために一一〇%というものがきめられておりますが、契約数量の一一〇%をこえるビール大麦の取引価格につきまして若干お尋ねをいたしたいと思います。七ールの消費量は近年飛躍的に増加して参っておりますが、原料麦の需給の見通しはどのようでございますか。ことしはだいぶ足りないとかいうようなことが言われておりますが、計画栽培をやっていらっしゃいます会社側といたしまして、ビールの消費量が飛躍的に増加しておりまする今日、需給の見通しがどうなっておりますか。そういう点をどういうふうにおつかみになっていらっしゃいますか。それから第二点は本年度産の麦は明年度以降のビール麦に使用されるものと思いますが、本年の契約総数とビール大麦として確保しておられるところの数量との関係はどうなっておりますか。第三点は、これは卑近なことでございますが、ビール一本に対してビール麦の原価が幾らになっているか。百  二十五円のビールのうちでビール麦の原価は一体どのくらいになっているか。第四点はビール麦に合格したもので契約数量の一一〇%をこえたものの会社買付価格は幾らになっているか。第五点は本年度のように明らかに需給のバランスがとれていない供給不足のときに、経済べースで常識的に考えますならば、契約価格と同等ないし、もしくはそれ以上に買っていただいてもいいと思うのでございます。契約栽培であれば契約面積が確定し、その面積から生産されるところのビール麦は全部会社が同等の価格で買い付けるということが必要だと考えるのでございますが、一一〇%をこえるところのものにつきましては百円下げる、こういうことになっていると伺っております。百円下げるという根拠は、一体どういうところからこういうふうにせられたのでございますか。その点もお伺いをいたしたいと思います。この五点について、契約数量の一一〇%をこえるビール大麦の取引価格についてお尋ねをいたしたいと思います。
  35. 山本為三郎

    山本参考人 ただいまのこと、これはおそれ入りますが、今後こういう場合は御質問の趣意を前に言っていただきませんと、そういう資料がございません。ことにただいまの御質問のように原料がどのくらいかといわれますと、ビール各社はあるいは麦をたくさん使っておる、米を使っておる、あるいは澱粉を使っておる、これは会社の機密でございまして、この価格のおおよそはわかりますが、正確にはわかりかねます。おそらく概念的なことだろうと存じますが、私今資料を持っておりませんので、後刻何かの方法でお目にかけましょう。  さて、一割増加がどうこうということ、これは昔からの習慣でありまして、この取り扱いは後刻当該係員から御説明いたさせますが、ただ一等大きい問題は、外麦の輸入の問題というようなものはわれわれとしては好ましくないのだ。よい麦で値段が実は安い。オーストラリアから麦をとりますと、内地の麦は一トンについて六万五—七千円でございますが、安いものは五万五千円以下であります。麦はよろしい、値段は安い。しかしわれわれは日本ビールを作るのでありますから、そんな麦は買いたくございません。ただ急激な需要増加のために、麦の芽をはやしますいわゆる製麦の設備がございません。各工場に現在持っております製表工場が一単位当たり大体四億から五億円ございまして、おそらく一カ年にこの設備を十くらい作らなければなりませんが、四、五十億の金を要します。場所と金の関係で、需要の方が先に走っているためにそれが間に合いませんので、外麦をとっているわけであります。自然内地の麦の買い入れもこの製麦能力に制約されているということでございます。本年、来年の間にこの能力を一致さしたいというのでせっかくやっておりますから、明年一ぱいには何とか皆さんの御希望に沿うようにしたいと思います。そういうことが今の麦買い入れの制約になるだろうと思います。  その他のことは私はわかりませんので係の者から御説明申し上げます。
  36. 西村関一

    ○西村(関)委員 一々お係の方から伺っておりますと時間がかかりますので、あとで資料としてお出しいただきたいと思いますから、そのように願います。  前もって事前にどういう内容かという質問の要旨を申し上げなかったのは、今山本さんのおっしゃった通りでございますが、しかし突然にきょうの委員会でこれをやるということになったのですから、私の質問も突然に用意をいたしましたので、この点は御了承願いたいと思います。  それで、ただいまの点につきましては、今の山本参考人の御言明を信頼いたしまして、一日も早く製麦施設を完備していただいて、外麦を輸入するといったようなことのないように、日本耕作農民の手によって十分にこの需要がまかなわれるように、速急にその取り進め方を御努力願いますよう重ねて御要望申し上げたいと思います。  それから次の問題でございますが、先ほど植野参考人のお話の中にもございましたように、規格にはずれたものに対してもいろいろ方法を講じて会社側に十分に買っていただいて、六十万俵でありましたかの数量をあげることができたというお話でございまして、長い間の会社との関係、歴史、伝統というものがあって、先ほど山本参考人のお話にありましたような、切っても切れない間柄でございますから、いろいろそこに考慮を払われたということは当然うなずけるところでございますが、そういったようなことが全般的に、麦耕運関係以外の共販関係耕作者に対しても同等に、同等とまでいかなくても同等に近い程度までに取り扱いがなされることが望ましいと思うのでございますが、それにはなかなか時日を要するというお話でございまして、その点もごもっともな点だと思うのでございますが、そういったところに、従来いわれております差別問題というものが起こって参っておると思う。この前の当委員会における各参考人の御供述を伺いましても、また本日のお話を伺いましても、そういう差別というものはないし、今後もあり得ないということでございまして、私はあくまでもそれを信用して参りたいと思うのでございますが、しかしながらどうも麦耕連扱いのものに対しましては、契約栽培のワクをふやしていこう、それから麦耕運扱いでない共販関係のものに対しては、契約栽培の反別の面積なりあるいは数量なり、そのワクをふやさないばかりか、むしろ減らすような傾向があるし、また全然取引をしないということが文書やあるいは口頭で言われたという例も各所にあると聞いておりますが、先ほどの参考人のお話とははなはだそごする問題だと思うのでございまして、私はそういうことは単なる流説であると思いたいのでありますけれども、そういう点につきまして、もう一度念のために山本参考人からお伺いをいたしたいと思います。
  37. 山本為三郎

    山本参考人 ただいまお話しのことに一つの条件を私申し述べたいと思います。それは私と荷見会長との申し合わせば、過去においてわれわれの契約栽培の相手方であった方、いわゆる実績というのはそういうものなんですから、その方で全販連経済連のいわゆるルートに乗った方ということでありますから、われわれの解釈からはどなたも同じ苦労人であったと思うのです。そういう意味の方に対してはおそらく感情的な問題も差別待遇もなかっ  たと思います。ただ私が心配いたしますことは、昨年の夏からことしの春にかけて私と荷見会長との話ができますまでに相当神経戦になったんだろうと思いますので、それの余波だったと思います。これは徐々になくなりますし、そんなことはあり得ることでございませんから、どうぞ御安心おき願いたいと思います。
  38. 西村関一

    ○西村(関)委員 その点につきまして、はなはだおそれ入りますが、いわゆる契約栽培というものと売買契約というものとの違いが、それによっておのずからそこに——あなたのところは契約栽培じゃないんだ、ただ売買契約なんだということで、おのずから差別が出てくるところがあるやに伺いますか、その点いかがでございましょうか。
  39. 山本為三郎

    山本参考人 それは契約方法の相違でありますから、感情問題よりも、いろいろの取り扱いに相違があるだろうと思います。一方では自分らがこういう麦を作ってくれといって作らせたものと、できたものを持ってこられたというのとの間には取引上の相違はあると思いますが、感情ないしは精神面においては私はないことだと思いますし、またあってはならないと思います。
  40. 西村関一

    ○西村(関)委員 その点につきまして、売買契約ということだけでなしに、従来の麦耕運方々契約をなすっていらっしゃるように、契約栽培というような方式に一元化して——そこに一ぺんにはいかないにいたしましても、逐次そのような方向に一元化していく、そしてまた全販の系統共販による契約も逐次認めていきたいし、円滑に話し合いを進めることによって問題を解決していきたいという御言明でございますから、そういうことが問題になっている契約栽培か売買契約かということを、近い将来一元化していこう、こういうお考えをお持ちでございましょうかどうでございましょう。
  41. 山本為三郎

    山本参考人 これは先ほど荷見会長の御朗読になりました中にもあります通り、今後のことは、もう一度ビール各社の間で討議をいたし、また麦耕連その他との間にも打ち合わせが必要と思います。それができますと、私と荷見会長とでもう一度話をいたしまして、善処したいと思います。今ここでの言明は避けたいと思います。できるだけのことはいたすつもりでございます。
  42. 西村関一

    ○西村(関)委員 それから協定の当事者でございますが、これはビール会社と各単協との間になされておると思うのでございますけれども、その点、単協でなしにやはり中央の全販連との間に協定を結ばれる——会社農協との直接契約分の契約書を見ましても、単なる売買契約にすぎないということを先ほど御指摘申し上げたのでありますが、そういうところに問題がある点から考えまして、何とか全販連との間に直接協定をせられることが望ましいと思うのでございますが、今の山本参考人のお話では、今言明はいたしかねるけれども十分誠意をもって荷見会長との間に今後話し合いを進めたいということでございますから、その点は了承いたしまして、全販連の方はそれに対してどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  43. 石井英之助

    石井参考人 私どもの方は、当初にお話を申し上げました通り系統共販ということで十分に需要者の側とお話し合いをいたしまして、全販とビール各社との間に契約をいたして系統共販の実を上げたい、かように考えておるわけでございます。その線に沿うてできる限りお話し合いを進めて実現を期したい、かような希望を持っておる次第でございます。
  44. 西村関一

    ○西村(関)委員 先ほど山本参考人のお話では、大筋の取りきめについては荷見会長との間にできておるし、またその精神、建前によって処理をしていく考えである、なおその事務的な処理についてはこの建前にのっとって進められておるというお話でございましたが、何しろ先ほどのお話の中にもございましたように、長い間の麦耕連皆さんとの御関係があり、そこにはなかなか理屈で割り切れない面もあるということは本委員も認めるのでございますが、事務的な取り扱いの上において次のような差別の実態と申しますか、そういったものがあるやに伺っておりますので、その点山本参考人におかれましてはあるいは御存じでないかもわかりませんから、お伺いをいたしまして、おわかりになっていらっしゃる点はお答えをいたたき、そうでないものはお調べをいただいて善処をしていただきたいと思うのでございます。われわれの現地調査によりますと、耕作台帳用紙を麦耕連以外のところには配付しなかったということ、それから作況調査に立会しなかったということ、第三は下見会用の見本袋を配付しなかったし、下見会にも立会しなかったということ、四番目には特殊票筆の配付をしなかったということ、第五番目には受け渡しをおくらせたということ、そのような事柄を通しまして、生産団体としてはこれらに対しまして契約栽培の建前と協定の精神に従って忠実に守ってきておる。耕作者先ほどお話しになりました協定の精神に従って忠実にその一つ一つに具体的に対処して参っておりますのに、現地調査の結果で確認したところによりますと、そういう事実がある。これははなはだ遺憾だと思いまして、その点について、はなはだ恐縮でございますが、もう一度山本参考人に御所信をお伺いいたしたいと思います。
  45. 山本為三郎

    山本参考人 ただいまのようなことは、私はあまり聞いておりませんのでわかりません。現地のいろいろの錯綜した事情もあったやに存じます。われわれの従来契約しておる麦耕連と、その反対の立場にある方々が双方ともにいろいろなことを発言されていやが上に神経を高ぶらしておられるということがあるだろうと思います。そういうことに災いされて、ビール会社にもあるいは多少の手落ちが起こっているんじゃないかと思います。これで本年無事に済みますれば、来年度はもっとこれが円滑にいくだろうと思いますし、またいくようにしなければならないと思うのであります。どうしたって今しばらくは——しばらくであるかどうか存じませんが、この両建というものは除くことはできませんから、当該係の者にも私がよく申しまして、ただいまのようなことの起こらぬようにいたしますが、それは双方ともに何か誤解があるんだろうと思いますから、どうぞあしからず御了承を願いたいと思います。
  46. 西村関一

    ○西村(関)委員 確かに今お話しのありましたように、いろいろな誤解もあり、感情のもつれもあり、それらの点も十分に考慮しなければならぬということは私も了承いたしますが、同時に今お話しございましたように、山本参考人の御趣旨のあるところを下部の実際の仕事に当たられる方々にまで、十分に協定趣旨なり精神なりを徹底さしていただく御努力を積み重ねていただきたいと思います。  なお、受け渡し日につきまして、従来の関係から麦耕連の方がスムースにいって、早くその日が決定した、その他のものはおくれておるということが自然に考えられますけれども、そういったことがあまりにきわ立って目立っておるというようなことなども、やはり同じビール麦耕作している農民立場に立ちますと、割り切れないものが出て参ると思いますので受け渡し日につきましては、一つ麦耕連系のビール麦の過半数の府県別受け渡し平均月日を求めて、共販農民への支払い起算日としていただきたい。できるならばそうしていただきたい。また私の県のごとく——滋賀県でありますが、一県全体が麦耕連共版一本になっております。そういうところは隣接府県の平均日を求めて、そこに起算の基準を置いていただきたいということをお願いいたしたいのでございますが、その点一つ御考慮をいただけますか。いかがですか。
  47. 山本為三郎

    山本参考人 御趣旨を伝えましてできるだけそういたします。御承知通り、たとえば滋賀県では朝日麦酒と麒麟麦酒がとっておるというようなことになっておるんじゃないかと思います。両社の都合と割り振りもございましょうし、できるだけそういうことにしたいと思いますし、また来年度はもっと早くにこれが整いますから、よく懇談をいたしまして、御趣意をできるだけ体するようにいたさせます。
  48. 西村関一

    ○西村(関)委員 その次にお伺いいたしたいのは、手数料と指導費の問題でございますが、手数料と指導費の関係はどうなっておりますか。指導関係につきまして全販連の方ではどのように措置をしておいでになりましょうか。  それから協定書によりますと、全販連の方は耕作台帳の整備から作況調査、下見会を手落ちなく会社希望を尊重して実施して参ったということであります。また会社側といたしましても下見会を自主的に進めて参ったという点を明確に認めておられる。会社側はあるときには契約栽培の建前を立論の根拠にして、あるときは販売契約だからといって逃げる。そういったようなことは一貫性がない。そこに先ほど申し上げたような差別扱いをなくすよう誠意をもって話し合っていこう、着々その線に近づきつつあるということがいわれておりまするにかかわらず、その点がまだ現地においては十分に行なわれてないというような点がございますので、先ほどの御言明がございますからその点は私は重ねて伺いませんけれども、手数料と掛算費の問題につきまして、会社側といたしましてはどのようにお考えでございましょうか。その場合、当然のことと思いますが、手数料、指導費等の請求、支払いは、全敗連会社との間に麦代金と同様行なわれるのが当然であると考えますが、その点いかがでございましょう。
  49. 山本為三郎

    山本参考人 ただいまの後段の問題である各地の耕作者との問題でありますが、あなた方がそんなことをおっしゃらなくとも各地の耕作者がもっとビール会社に接近してお話しになったらいいと思うのです。それでいかなければわれわれにも訴えなさったらいいと思います。今御心配のようなことは、あるいはあるのかもしれませんが、私は大したことではないと思います。それならば各地に工場等もございまして話をいたしておりますから、どうぞそういう面に一ぺんお戻しを願って、各地の工場ともっと親密に話をしろということを一つお話を願いたいと思います。われわれもそれだけのことを申して参りますから、いろいろ誤解もございましょうから、どうぞそういうことのないように御配慮願いたいと思います。  手数料のことは私はよくわかりません。ただ指導費は全販連からいただきますものには当方は直接指導をしておりません。指導したものに対しては会社はそれの実費はお支払いをいたします。指導してそれに要する費用は支払います。これは私と荷見会長の間には話をいたしました。集荷手数料というものは私はよく知りません。集荷手数料が要ればお取り下すったらいいと思います。これについては私は存じませんが、ビール会社指導によって生ずる費用はお支払いをいたしますことを申し上げました。そういうことでございます。
  50. 西村関一

    ○西村(関)委員 手数料、指導費の問題につきまして私の伺いたいのは、やはり当然支払わるべきものだと思いますが、全販連を通じてやっていただくのが至当じゃないか、こう思いますので、その点御所見を伺ったのでございます。それから各麦耕連所属以外の耕作者がもっと会社に接近しろと言われる点はごもっともだと思いますし、その点はあまりそういうことは従来ある場所においては行なわれなかったかもわかりませんが、われわれといたしましてもこのことは申さなければならぬと思いますけれども、しかしそうだからといって委員会においてわれわれが耕作農民の声を代表していろいろお伺いするということはわれわれの当然の義務でございますから、その点も一つ誤解のないように御了承いただきたい。こまかいことでも何でも私はその点はしろうとでございますけれども勉強いたしまして耕作者立場から会社側にいろいろ伺っておりますので、麦耕連だからあるいは麦耕連以外の耕作者だからというような区別をつけないで、やはり日本耕作者全体という立場から、ビール麦を作っている耕作農民立場から伺っておりますので、そういったようなことはあまり委員会で言わぬ方がといったようなお考えはどうぞ一つ御訂正をいただきたいと思うのでございます。  これはよけいなことを申しましたが、三十六年度産につきましてお伺いをいたしたいと思います。第一は種子の問題でございますが、種子の配布につきましては差別しないということを前委員会において伺ったのでございます。播種期も近づいておりますから、会社側は種子を十分に確保していらっしゃいますかどうか。また種子はいつごろまでに配布を完了せられる予定でございますか、それが第一点。  第二点はビール消費の伸びから見まして、三十六年の契約量は相当大幅に増加できると思います。会社側の計画ではどのようになっておりますか。また、これは繰り返して恐縮でございますが、麦耕連関係のものだけに増反させるということでなしに、共販関係のものにも増反させるというようなお考えをお持ちいただいておると思いますが、その点一つ麦耕連関係耕作者だけでなしに、ビール消費の伸びと関連して、それ以外の共販関係耕作者にも増反させるというようなお考えをお持ちいただいているかどうか。それからまた会社側の各府県別の種子配布計画、また契約予定量というものをお立てになっていらっしゃると思いますが、その点きょうにわかでございますから、資料をお持ちになっておられなければ、後ほどこれらの点についての資料を本委員会に御提出を願いたいと思います。  第三点は播種期までに一カ月ぐらいしかございませんが、各府県別の契約数量の予定、従って種子の配布計画というものができていると思いますが、その点もどのようになっておりますか、御調査を願って本委員会に御報告を願いたいと思います。種子の問題につきまして、以上三点お伺いをいたしたいと思います。
  51. 山本為三郎

    山本参考人 前段の問題でちょっと私言い漏らしましたが、指導費は、各単組でなければ指導はできませんから、そこをわれわれの方から指導いたしましたところへ金を払うことはやむを得ないと思います。それは全販連仕事ではありません。ビール会社指導でありますから、ビール会社はこれは直接に支払います。そうしなければわかりません。それからただいまのようなことは決してあなた方に差し出がましいことを申したのではありませんが、少なくとも各組合がもっと身近にものをお運びになる必要があるのではないかということを申し上げたわけであります。  さて次の問題の種子の問題その他は、実は来年度どのくらいのビールを作るかということは大体九月中旬になりまして初めて大蔵省とともに来年度の予想をいたします。その上でないときまりません。また各社は九月の終わりから十月に支店長会議を開きまして、来年度のビールの売れ行きを相談いたしますから、その上でなければわれわれは来年度の契約の数量はきめられません。  次にどのくらいの麦を買い入れることになるかということは、先ほど申しました通り製麦能方の許す最高限度でありますから、それが麦を買い入れる数量になると思います。これもおそらく九月中旬以後でないと定まりません。各工場のビール生産と製麦とをつなぎまして、来年度の計画を立てますから、これは販売の方からものがきまって参りますから、そうでなければ確定はいたしません。おそらく各社は十月になるだろうと思います。  ただいまの種麦の配布その他のことにつきましては、あるいは九月になるかもしれませんが、少なくとも各会社は九月の中旬以後でなければ工場長会議を開きません。御承知通り本年は十月一日に新しい販売機構ができますので、それやこれやを見守っておりますので、来年度の計画というものは各社ともいまだブランクになっております。きまりましたらばできるだけ早くお知らせを申し上げます。
  52. 西村関一

    ○西村(関)委員 そういたしますと、毎年契約をなさるのは、そのような販売計画が立ってから後になさるのですか。あるいはまたその穂麦を配布なさる場合も、それから後になさるということなのですか。それでは播種期にはずれるではございませんか、その点はどうなんでございますか。
  53. 山本為三郎

    山本参考人 私はあまり詳しいことは存じませんが、大体私はそういう計画だと思います。例年は増加というものが昨年、本年のようなものではありませんので、大体例年のことを踏襲してやっておりました。ところが昨年以来増加がこういうきびしいものになって参りました。勢い製造能力、原料その他のことを考慮するのでおそくなります。それまでに各会社は便宜やることもございましょうが、ほんとうの計画は九月の終わり、十月にならぬと行ないません。できるだけ早くこれを行なうことにいたします。
  54. 西村関一

    ○西村(関)委員 それから先ほどお伺いいたしました種麦の確保は十分に手をしていらっしゃるわけでございますか。  もう一つは、種麦の配布については、麦耕運関係以外の共販系統の耕作者にも差別なく配布するという、私はもちろんそうだとは思いますが、その点も問題がありますから、念のために伺っておきたいと思います。
  55. 美馬勲

    ○美馬参考人 種麦は昨年麦をまくときに各県の麦耕連を通しまして契約してあります。そして各麦耕連での所要量を会社は聞きまして、その数量に見合ったものをまた会社単協契約して作ってあるので、現在昨年計画した数量は大体確保しておりますが、それはそういうワクの中に入った種麦であります。会社の自由になるようなならないような格好になっております。なお本年度は今お話のございましたように、非常にビールが伸びておるために種子麦がおそらく足りないと思います。各県で県営採種圃もあることですから、どういう結果が出るかは私はわかりませんが、おそらく種麦は不足を来たすと思います。従いましてこれは今後の問題ですが、種麦を均分に配布してもすべてが足りないという結果がことしは出ると思います。そうしたら種麦所要量をもらえないところは不平が出るかもしれませんが、あらかじめ御了承を願っておきたいと思います。ことしはそういう計画で昨年の計画通りは確保しておりますが、不足するということはいえると思います。
  56. 西村関一

    ○西村(関)委員 そこにやはり問題があると思うのがですね。やはり麦耕連を通じて一応の調査をしておられるようでございますが、従来の関係からある程度その実態は認めるといたしましても、全体の種麦が足りないということが予想されておるときに、実際に種麦がなくて困るというのは麦耕連以外の共販系統の耕作者の諸君でないかということが今から予想される。そういったようなことが起こりますと、これは先ほど山本、荷見両氏の協定趣旨にも沿わないことにもなって参りますし、そういったことを未然に防いで参るということが実際の事務を取り扱っておられる側の注意すべき点ではないかと思うのでございますが、そういったような点についての手当が十分でないと、たちまち問題が協定趣旨からはずれるような結果になると思う。その点はいかがでございましょうか。
  57. 美馬勲

    ○美馬参考人 昨年の計画におきましては大体全部あるということで計画を立てたのでございますが、今お話のようにことしは非常にビールが伸びたために原料の作付も多いように予想されておりますその結果足りないのでありまして、昨年度はそういう不足ということは感じられないで耕作しておるのであります。
  58. 山本為三郎

    山本参考人 今お尋ねになっているのは、麦耕連方々麦耕連でない方方との均分がくずれるのじゃないかというお話なんですが……。
  59. 美馬勲

    ○美馬参考人 ただ問題は麦が麦耕運契約したときに全部数量ができておるのです。それ以外には会社は持っておらないためにこれをどういうふうに分けるか、この全般との問題が契約した後に起こってきたところに問題があるのです。
  60. 西村関一

    ○西村(関)委員 今の御答弁で明らかになりましたように、やはり問題が起こる可能性がありますので、山本参考人におかれましてはその点なおよく御考慮を下さいまして、御協定趣旨に沿うように未然に紛議を避けるような措置を、絶対量がありますからなかなかむずかしいと思いますけれども、万全の措置を講じていただきたい。播種期も一カ月後に近づいておる今日でありますから、速急にその点山本参考人におかれましては荷見参考人とよくお話し合いをいただきまして、なお具体的なお話し合いをなさる場合にその問題も含めて一つ御考慮を願いたいと思います。  なお私はいろいろなことをお伺いしたいのでございますが、時間もたっておりますし、同僚の方からも質問があるようでございますから、最後に一点だけ要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思いますが、先ほどからもお話が出ておりますようにビールの消費が非常に伸びております。おそらくここ数年には何層倍というような伸びをするのじゃないかというようなことがいわれております。これに対しまして、これは食糧庁関係農林関係にも責任があると思いますけれども、大裸麦の耕作にかえてビール麦耕作するということが当然考えられると思うのでございますが、そういったような場合に、先ほどもお話しのございましたように、外国産のビール麦を輸入するということでなしに、製麦施設というものの関連があるということがございました。これは一、二年のうちに解決される問題といたしまして、できるだけ日本耕作農民立場を考慮せられましてそしてまた従来の長い歴史と伝統のある麦耕連関係農民諸君と共販関係耕作農民諸君との間の問題を一日も早く、われわれも努力をいたしますが、関係当局においても努力せられまして、今までの会社側または技術者側、耕作者側それぞれの立場から非常な努力をせられて、苦心惨たんの結果今日の成果を上げられたことが、さらに一段の飛躍を遂げるために、それぞれの関係者が十分な了解協力のもとに事業がますます進展するような努力をしていただきたいと思うのでございます。  それから麦耕連関係の方に対しましても、きょうは参考人として植野さんにおいでいただいておりますが、麦耕連関係農民諸君といえども、これはやはり系統農協組合員であられるということには間違いないと思うのでございまして、今問題になっておりますような点について、従来の関係がございましょうが、やはり日本農協事業というものの本来の建前に立って麦耕連関係皆さん方もこの問題の解決のために大所高所から一つ御協力を願いたいということを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 小山長規

    小山委員長 参考人にはまことに御迷惑ですが、あと久保委員から二十分ばかりあるそうでございますから、もうちょっとおそれ入りますが、ごしんぼう願いたいと思います。  久保三郎君。
  62. 久保三郎

    久保委員 大体ただいままで御質疑がありましたので、私は簡単に、せっかくビール関係の最高責任者がおいでになりましたので、二、三点お尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、この問題が出てきた原因というかその問題点は何かというと、先ほど山本参考人からもお話がありましたが、なるほどビール会社ビール麦耕作者の間は七十年の伝統と歴史を持ってきた。その間においてビール会社のなみなみならない御努力もあったろうし、耕作農民ももちろん苦労があったと思います。これは初期におけるビール生産という問題からきた問題でありまして、この功績を全然否定しようとかあるいはいけないとかいうことをわれわれは言っておるのではないのでありまして、本問題を取り上げた原因は、すでにそういう七十年の歴史と伝統だけで処理すべき時代ではないだろう、それが昨年からいわゆる下部単協というか下部の耕作農民から出て参った一つの声だ。この声を率直に取り上げないでいたのでは本問題はなかなか解決できないだろうし、さらにビール生産もほんとうに軌道に乗らないだろう。よってここに公正な取引が必要である。かようにわれわれは考えておるわけであります。そういう意味で麦耕連植野さんもおいでになりますから、われわれの考え方をもう少し申し上げて皆様方の御高見を拝聴したいと思います。  いわゆる初期における功績はこれは認めざるを得ないし、賞賛していいと思います。しかしながら、今日この農業に関連する産業と耕作農民との間は、御案内の通り寡占あるいは独占という形態と、もう一つ農民との間の問題になってくる。この本質的な問題をわれわれは当委員会を中心にして何とか解決したいというのが念願であります。決して麦耕連が全部いけない、いわゆる系統共販は今ごろになって何を言うかということではないのであります。いずれにしてもこの点を解決することがビール会社の責任であり、あるいは農協自体の責任であり、さらにはこれを等閑視して、農民から声が出てきたときに何かしょうとしている、便々たるこの農林政策ではないか、だからこういう点からわれわれは考えていきたい。  そこで山本参考人に私の考えを申し上げたいのは、なるほど今年度の問題については、今までの行きがかり上いろいろな、いわゆる麦耕連に対するあなた方の関係を一切断ち切ることができなかった。これは事実そうだと思う。しかしながら来年度からの問題については、やはり先ほど申し上げたような観点からこれを御処理なさるのが、私はしかるべき方法ではないかと思う。さらにこれは言うまでもないことであるが、先輩である荷見全中の会長さん、あるいは全販の会長さんに申し上げます。農協自体も、耕作農民から強いこういう意思表示がなければ、どうも今まではあまり動きそうになかったのじゃないか。これを少し反省して、しかる後においてビール会社と虚心たんかいに交渉なさるべきであった。まずこういうことを考えてもらいたい。  さらに麦耕連の代表である植野さんにお伺いしたいのであるが、なるほど今日までやってこられて、今日やっている事態についても何ら支障がないと言えばそれまでであります。生産者から消費者であるいわゆるビール会社に直接品物を渡す取引関係は、それはそれでいい。生産者とは、いわゆる単協生産者である。一農民生産者である。県段階農民団体も、いわゆる系統共販もやはり生産者である。こういうことを考えれば、あながち麦耕連のみが生産者の代表とは言いがたい。さらに過去においてのいわゆるビール会社との取引条件というか、そういうものをこのまま持続することがはたして農民のためになるかどうかをここで再思三考すべきだと思うのであります。決して今までやったことが悪いというのではないが、さらに前進しなかったならば、いわゆるビール会社の独占あるいは寡占というものに対して耕作農民を守ることは不可能であろう、こういうことを私は考えるのであります。たとえば先ほど申し上げました指導費問題一つとりましても、なるほどそれにはそれだけの理屈があるでありましょう。しかしこれは生産物についてくるものでなければならぬ。しかるにこれが生産物についてこないで、麦耕連という組織にとどまること自体において性格があいまいである、私はこういうふうに思うのであります。こういう点を改善されるならば、今の麦耕連の組織でもいいし、改善されない限りは、残念ながら、このいわゆる買い主であるところのビール会社と公正な取引を持続することは困難である、私はこういうふうに思う。よってこの問題について、御列席の参考人から、それぞれ、簡単でけっこうでありますが、われわれの考えが間違っておるかどうか、これを一つ御所見を承りたい。
  63. 荷見安

    荷見参考人 お話のように、農協仕事も戦後荒廃の中から立ち上がりまして、いろいろの面に整備されつつあることは御承知通りでございまして、その過程におきましてこのような問題も発生していると思います。今の麦耕連も、今お話し通り農協の人であります。それから共販を唱えている全販、経済連の系統の人も農協の人でありまして、これがお互いに何か円滑な溶解ができず仕事ができないということでありますれば、私どももはなはだ相済まぬと思っておるのでありまして、同じ農協内部のことでございますから、できる限り協調させるように努力しなければいかぬと思います。  それから第二点のいわゆる消費者と生産者の直接取引という問題でございますが、この生産者より消費者への直接取引というダイレクト・トランザクションという言葉は、これは組合関係においてできている言葉でございまして、大体組合の解釈からいたしますと、生産者が生産いたしましたものを組合委託いたしまして大量集荷をする、それが連合会に参りまして、また  一そう集中されて消費者に対する供給が大量に継続的に安定するということが、この直接取引というものの趣旨でございますから、私は直接取引という趣旨は、さようにこれまでの組合会の解釈におきましてはなっているので、生産者個人がことに日本のような零細なる生産者が、直接に消費者に連絡をするとかいうことは、これは日本の実情には合わぬのではないかと考えております。その段階におきまして、単協あるいは県連あるいは全購連というような形態のありますことは御承知通りでございますが、これを組合理論の理想から申しますれば、なるたけ消費者が時期的に継続いたしまして数量がまとまりまして、それが需要されるように市場が動きますことが、消費者のためにも利益でございますし、生産者のためにも利益でざいますので、いわゆるこの直接取引という意味はそういうことで組合理論からはずっと数十年以上発足しておりますので、私の感じもそういうことであるということだけつけ加えて申し上げておきます。
  64. 石井英之助

    石井参考人 農協側考え方は、ただいま荷見会長からお話のあった通りであります。ことに全販連といたしましては、系統共販というものを担当する部門といたしまして、でき得る限り大量に販売委託を積み上げて共同販売実行することを念願としているわけであります。その実行については、組織の組合経済連の意向、希望に基づいて善処いたしたい、かように考えている次第であります。
  65. 山本為三郎

    山本参考人 ただいまだいぶものすごい御攻撃を受けました。ビール会社が独占であり寡占であるという決定を衆議院でされましたことは、実に私は驚きました。ビール会社は四軒でございますが、独占のようだとは言われましたが、独占、寡占であるという決定は、きょう初めて衆議院でされたわけでございます。自戒自重いたしまして、そういうことの実の出ませんようにしたいと考えております。町におきましてはビール四社は血の出るような競争をしておることはごらんの通りでございまして、どうぞこれだけは確認をしておいていただきたいと思います。  さて、私がただいま申しましたことは系統共販を否定してはおりません。が、しかしこれにいく段階として現在の状態をしばらく見守りたいと言っておるのであります。決してそれを否定はいたしておりません。といって私どもは、今急にこの方向を変えることは、品質確保、品種改良の見地から急角度の転換はできないと言っておるのでありますから、これも御了承を願っておきたいと思います。  その他のことは御注意によりまして、帰りまして各社にも十分御趣意を徹底させることにいたします。ありがとうございました。
  66. 植野伝造

    植野参考人 私に特に御質問なされたことは——皆さんのことに関連して、私も産業組合時代より農民運動をやっております。農業会、農協とずっと役員をしておりまして、決して組合運動に対して反対するものではございません。しかし先ほど申し上げた通りビール麦に関してよその県はいかようか私知りませんが、本県に関し耕作農民指導して各単協さんの集まりで共販することによって、いささかのいざこざもございませんものでございまして、これは改良することによって幾らでも農民に利益がもたらされるということならば、やぶさかではありません。しかし現在のような麦作状況からしますると、本県のような大きな麦の産地においては、使用量に制限のあるビール麦に関しては、私たち栃木県の麦作農民には、そういうことによって非常に憂えられることができるんじゃないかという懸念を持っております。
  67. 久保三郎

    久保委員 ビール会社は、山本参考人からのお話によれば私の意見とはだいぶ違う、そういうことはないだろうと思いますが、まあいずれにしてもビール麦を御使用になるところはビール四社だけでございまして、そのほかに食用にも幾らかなるでしょう。あるいは規格外の残麦が洋酒とか、雑酒になるということがあるでしょうが、大半はお宅の方でお買い上げになるわけです。そういう意味では独占あるいは寡占ではないだろうかということで申し上げたんです。誤解がありましたら解いていただきたい。別に非難ではございません。攻撃でもございません。ただ農協のお二人の最高責任者に申し上げたいのは、あるいは麦耕連の代表の植野さんに申し上げたいのは、先ほどもお話の中にありましたが、いわゆる耕作農民立場を守って、ビール会社ビール会社の今日の立場を守っていいビールを作ると同時に、耕作農民の利益も増進していくという公正な取引がやはり必要ではないかという意味であります、くだいて言えば……。なるほど七十年の中には大へんな苦労もあったろう。最近におけるビールの伸び、こういうことからいきますれば、いわゆるその伸びたところのものは、卒直に申し上げてやはり耕作農民に相当お返しをいただきたい、そういう意味も含めてあります。  今全中並びに全販のお二人からいろいろお話を伺いましたが、私はその原則論をお聞きしたいのではないのであります。実際言うと、もう少し突っ込んで申し上げたいのでありますが、こういう席でありますから、あまり申し上げて角を立ってはいけませんが、せっかくこれから軌道に乗せようということで首脳部はやっておられますようでありますから申し上げませんが、少なくとも農協の中で二つになっていること自体がどういうことなのか、麦耕連の代表も農協の一責任者でありましょう、そういう方々と同じ農協の全国段階がしのぎを削るような戦いをやらねばならぬいわゆる宿命というのはどこからきているか、こういうことも御反省いただかないと、これは今後はなかなか軌道に乗らないんではないか、こういうふうに考えるものであります。これは先ほど山本参考人からお話のように、直ちに今までの取引形態、契約形態を変えるわけにいかぬということでありますが、その通りでありましょう。しかし中身を変えていただきたいと私は強く希望いたします。  それからもう一つは、指導費の問題にからんでいわゆる直接会社生産指導したものは云々とおっしゃるが、全国段階を通して今までの方式の指導というよりは会社のいわゆる希望をそのまま受け継ぐのならば、それは系統共販でも麦耕連も同じではないかと私たちは思うのです。どうもその点が私はふに落ちません。たとえばことしの問題にしても下見には立ち会いはできない、できないというよりは御遠慮申し上げる。ところが往復文書によりますれば、人手も足りないからというようなことが事いてあります。先般山内参考人もおいでになってのお話では、どうもあまり気持のいい所ではないから御遠慮申し上げたというようなことをお述べになりましたが、事情はその通りだと思うのです。その辺に、ビール麦生産する耕作農民ビールを作る会社とが、何か間然として一致しないところがあっては全体のためにならぬじゃないか、こういう点を私は麦耕連皆さん農協ビール会社も反省してもらうことがまず先決だろうと思う。そういう上に乗っかって初めて来年度の問題はスムーズにいくので、そういう御用意があるか、まず第一に山本さんいかがでしょう。
  68. 山本為三郎

    山本参考人 御趣意はわかりました。できるだけそういう方向に向けます。ただいろいろな感情のもつれもありますために、先ほど西村さんのお話のように、なるべく各単協の方がビール会社とよくお話しなさって——実はビール会社からいうと、これは反乱軍なんです。反乱軍、新党なんですから、そういう面も会社にも注意しますが、あなたの方からもどうぞ一つその方々に知っていただいて、僕はもう来年はよほど緩和して、レールに乗ると思いますので、どうぞこのまましばらく見ておいていただきたいと思います。ということは、今までのいろいろな経緯があるようでございますから、政党の新党と一緒でなかなかいきません。われわれにおっしゃる前に、どうぞ一つそれを成長さしていただきたいと私はお願いするような次第でございます。実にむずかしい感情問題が、ビール会社というよりも、過去の契約しておる方と、今度そうなった方との間がなかなかうまくいっていないことは私も認めますが、各会社とも首脳者、ビール四社の社長は、それはとらねばいかぬということをやかましく言っておる。だから一両年のうちにこういうものがなくなるということを前提に御了承願いたいと思っております。
  69. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ちょっと関連して。この問題は前会の十二日にも参考人に来てもらって、大体論じ尽くされておる。きょうは荷見さん、石井さん初め山本さんとトップ・レベルですが、聞いていると、いかにも穏やかで、万事話はわかっているというようなことでいいのですが、しかし一段下がると、何ら問題が解明されていないと思うのですよ。私はむしろ前会の方が、たとえば全中の森川君とか、全販の岩下君、それから会社担当理事の山内君、こういう人たちがまじめに議論しておるし、あなた方は表面だけいかにもなごやかなことを言っているが、じゃ、十二日から今日の間にどれだけ問題が解決されているかというと、全然前進していないから、再度お願いしたようなことになるわけであります。  それで、簡単にお尋ねしますが、問題は荷見さんと山本さんの文書、いわゆる荷見、山本文書の内容というものは、われわれ以前から十分検討している。きょうのお話も聞いて了解しておるわけですが、いわゆる山本さんの言われるような実績なるものを両者が是認して、今後の会社ビール麦原料に関しては、集荷の形態は、既存の麦耕連を流れるものと、もう一つは、やはり農協の共販事業を通じて全販連を通ずるものの二本建でいくということを確認しておるのがこの両者の文書の基本だというふうに私は理解しておる。そうでないとすれば、これは弁明していただきたいと思うのですが、そうなると、やはり全販連の系統の場合にも、麦耕連の場合も、結局生産者の耕作するというそれは変わりないのですね。どっちへいくものも農民栽培しているということについては変わりない。それを、今度は分かれて、麦耕連系統の農協と、全販連系統の単協に出て——麦耕連の方は全国組織はない、県の麦耕連しかないです。県の麦耕連から会社、それら共販の方は生産者、農協経済連、全販連というような、一応そういう段階を通して最終的には会社に入るわけです。ですから会社から見ると、二本建にはなっておるが、とにかく生産者の栽培するビール原料麦を買うということについては何らの変わりがないわけです。ですからこの二本建を認めるということになれば、現在全販の実績が少ないとしても、生産者の意思によって次第に系統利用の方で会社に売り込みたい。これは一つの方向だ。そういう場合にはやはり今年度の実績はこれだけだから現地の生産者の希望とか意思を加味した場合には来年度は全販連の方はこれだけに取り扱いが拡大するという見通しは当然立つわけです。そうであるならば、やはりその見通しの上に立ってこのビール麦の種子の確保というものは当然必要になってくると思う。それがことしは作柄が悪いからして種子の確保が十分でない。しかも麦耕連の方だけは何とか手当てがついたが、もう一つの全販連関係の方については確信が持てぬということになると、事実上は二本建てを採用したが、結果的には作柄等を大きな理由にして全販系統の集荷とか会社との販売関係というものはむしろ後退するような心配があるのではないかと思わわれる。ですからこの点は荷見・山本文書の内容というものを、荷見さんはやはり全販あるいは関係県の中央会等を通じても、あなたからよく知らしてもらいたいと思う。たとえば栃木県の麦耕連会長の坪山さんは、これは県の農協中央会の会長でしょう。しかも経済連の幹事をやっているじゃないですか。ですからたとえば全国的に三連会長会議をやるとか、あるいは共販のために中央会とたとえば経済連会議をやるという場合には、そういう農協の精神とかあなたが今言った高邁な精神の上に立って、権威ある全国の役員をやっている諸君が、その精神を把握できないはずはないと思う。ですからやはり時代の趨勢に従ってこういうことに荷見さんと山本さんの話し合いはできておるのだからして、やはりそれぞれの県においても生産者の意思というものを尊重してやってもらいたい。農協精神はそこにあると思う。加入脱退も任意だということから、二本建の中において現地の生産者は選択の自由というような形で、そうして自分の作った農協をだんだん正しい軌道に発展させるという気持が強まっていけば、これはもう自然にこの問題というものは、下の方から解決されてくるとわれわれは思うのですが、たとえば種物の問題とかいろいろなことで制約を加えるとなかなか順調に伸びないのですからして、この農協内部の問題についてはやはり文書契約した一番の中心の荷見さんから全販とか関係の県のそれぞれの中央会とか経済連の方へ趣旨を徹底してもらう。それからやはり山本さんの方からは、ビール四社を中心にして会社の社長クラスくらいはわかつておると思うが、実際業務を運営する諸君は、やはりお家の大事をはかる。なかなか大将の言うことを実は聞いてやっておらないと思うのです。ですから、そういう点についても人格者である山本さんの意思が四社にまず共通に反映して、それが下へ流れるようにしてもらえば、これは山本さんの言われる通り、ことしより来年の方がさらに前進すると私たちは実は考えておるので、そうしてもらいたいと思います。  もう一つの問題は、全販連から会社関係についていろいろ文書でこの問題はこうしてもらいたいというような申し入れとか話し合いをずいぶんやっておるわけです。それは結局全販連が荷見・山本会談に加わっていないのですから、全販の石井さんの方ではこの両者契約内容に基づいてこういうふうに話し合いがなっているから、会社の方でもこうしてもらいたいということを全販連から会社に今度は直接言うのですが、これがなかなか進まないのです。だから今後の問題ですが、これはやはりさらに前進させて、荷見さん、山本さんに、全販あるいは暫定的には麦耕運の代表者も、さらに実際に集荷業務をやっておる機関の代表も加わるということにして、今後の契約あるいは集荷態勢の問題辛についても進めてもらえれば非常にいいじゃないかというように私は考えるのですが、これらの点に対して皆さん方の御意見を一応聞かしてもらいたいと思います。
  70. 山本為三郎

    山本参考人 ちょっと今の話は少し違います。山本や荷見はきれいなことを言っているがという話がありましたが、そんなことは絶対にありません。それは失礼でしょう。(芳賀委員「その通りじゃないですか」と呼ぶ)その通りです。実際その通りなんですよ。二人で話をしたらその通りのことは確認してやっている。決してうそは言っていない。下の人は、下へいけば下へいくほどそれは怒りますよ。ちょうど全学連と一緒ですよ。下の方では争いをしていますよ。私どもうそは言っていません。私と荷見さんとはいまだかつて口角あわを飛ばして争ったことはありません。それを確認してその通りやろうと言っただけです。私はうそを言っ  ておりません。その通りなんです。けれども下にいけばいくほどいろいろな小さいことが起こりますから、これは仕方がないじゃありませんか。  それからもう一つお願いしたい。私と荷見さんのやったことは、一等初めに申し上げました通りビール会社とこの系統農協、共販の問題がうまくいきませんので、私と荷見会長とが中に入って双方まとめたから二人がおりますので、決して私はビール会社——だからきょうも私はビール酒造組合代表理事としては出席できませんといってお断わり申し上げた。それできょうは、荷見会長と二人が中へ入りましたので、私はその立場でここへ出てきてお話し申し上げておるので、決してそこへ、たとえば坪山さんが入ったり全販連がお入りになってはうまくいかない。ことに、それじゃ坪山さんだけ入って皆がまかすか、そうはいかない。今滋賀県なんかはここへお入りになっておりません。京都もお入りになっておりません。そこでわれわれとしては七〇%近いものを作ってござる麦耕連に相当の重点を置いて話をいたしておりますが、加えられないのです、事情違いますので。それでそれを考慮いたしまして、私と荷見さんとでお話を申し上げておるわけなんです。きょう私がここへ出ておりますのは、その中に入りました——朝日麦酒社長山本個人の立場で入っておりますので、どうかこれだけは御了承願いたい。決して全販連を疎外したとかないしは麦耕連その他のものを疎外したのではなくて、私と荷見さんで常識的にお話し合いをいたしまして、ここでまずこれならば妥当だという結論を得ましたものを、私は帰ってビール四社に話をいたし、荷見さんは全販連にお話を願いまして、それで御了解を得て、そこで初めて共同声明ということになったのでありまして、決して私はうそを言っておりません。だから双方の間も、ただだんだん下へいけばいくほど感情問題がありますために、ただいまのような申しわけないことがあるかもしれません。けれどもわれわれは決してここでそんな体裁のいいことを申し上げてするわけではございませんから、これだけは御了承願いたいと思います。
  71. 荷見安

    荷見参考人 私実は事務を担当しておる参事などよりそちらが詳しくないというおしかりかと思います。私どももできるだけ担当部分につきましては勉強しておるつもりでありますが、あるいは説明が要を尽くさなかったというふうなお感じだったかと思います。私はただいま申しましたいわゆる直接取引のような問題も、先ほど別の参考人の方から一つの意味を限定されてお話があったようでありますから、それに対する私の理論的見解を申し上げたわけでありまして、ほかにそういう直接取引の話が出ておりませんければ、私はよけいなことを申し上げる気はなかったのであります。そういう話に対応しました私の話とお聞き取り願えばよろしい。  それから今のビール麦の今後の取り扱いにつきましては、この協定をいたしますときに山本さんともいろいろ話しておったのでありますが、できるだけ平静に落ちつきまして感情というようなものを除きましてよく話し合いをいたして、穏当な結論といいますか、方向を見出すようにしたいということをお話し合いをいたしております。従いまして、ただいま御質問のようなところも非常に重点なところでありますので、今後もできる限り双方の事情を明らかにいたしまして、公正な結論を得、処理ができるようにしたいと思います。ただ何分今時分の話は多数の人がいろいろの考えを持っておりまして、それを了承させながらおさめなければいけませんので、理論一点張りにもいきかねるような事情もございます。それで私はあまり感情に激しないように、それからおのおのの事情も正確に認識をいたしますように、その認識の基礎の上に立ちまして、その事実に即して最も妥当な結論を得るようにいたしたいという私の心がけを申し上げておきます。  さしあたりは三十六年産ビール麦の種子の問題がございます。これも前々から数回お話がありましたように、取り急いで方法を具体的にきめなければいかぬ、かように思っておりますので、これは急いで相談をいたしたいと考えております。  なお、これに関連していろいろ意見の相違のありますものが農協の基盤にあります。やはり単協を組織しております農家の団体の間のあるいは見解の相違というようなことになっている分がございます。単協のみではございません。これが連合会過程においてもさようなことになっている分があることははなはだ遺憾であります。ただその他の団体におきましては、そういう意見の相違というふうなものはございません。これもまたわれわれも努力はいたしておるのでありますが、組合組合精神の普及、組合の体質改善の不徹底というようなことから起こっておる残念な事柄でありますが、現在の組合の段階におきましてはさような事実があることは私は承知いたしております。  余分なことでありますが、われわれ本年は全国各府県に、組合の本旨に沿うような体質改善運動を、単協組合長を全部集めまして、各県別に開きまして、なるたけ組合の本旨に沿うような事業ができますようにというので、努力をいたしておる段階でございまして、まだ十分なものではございませんので、いろいろ御指摘のような欠陥、不適当なところがあると思います。これにつきましては今後もできる限り努力をいたして参りたい、かように考えておりますので、その考え方だけ申し上げておきます。
  72. 石井英之助

    石井参考人 ただいまの芳賀さんのお話について一言申し上げておきたいと思います。ただいまのお話では前回の参考人意見はきわめて率直であった、そしていろいろと不満、行き違いの点を述べておったが、きょうははなはだ工合のいいような話で、どうもそこに食い違いがあるようだ、こういう点に御疑問が起ったのではないかと思いますが、その点につきましては私はかように考えております。前回の参考人各位お話し申し上げたことは事実として確かにあった点を申し上げたと思います。ところがその後いろいろ残っておりました問題点について双方で話し合いをいたしまして、そうして今の代金の支払いの問題等もすでに緒についておりますので、私どもとしてはその後いろいろビール会社側でも御努力を願って、ほぼ三十五年産麦の取引につきましてはめどがついた、かように今日の段階においてなっておりますので、そこに至りますまでの間は今山本さんからもお話がありましたように、末端におきましてはいろいろ誤解もあり、行き違いもあった結果と思いますけれども、われわれとしてもはなはだおもしろくないというような事態は確かにございました。ございましたが、現在の時点においてはそれらの問題もおおむね片がついて、まずまず三十五年産は決着ということになり、そうしていろいろ御心配をしての御発言がございました。種の問題につきましても、会社側とされては決して差別的なことをする考えはないのだという御言明もあり、われわれお話を申し上げておるところでも、そういう点については十分考えるということでございますので、現在の時点におけるわれわれの見込みとしては、ビール会社側は山本さんのおっしゃるような線に沿うて、誠意をもって善処されるということの御信頼を申し上げ得るような状態になったという認識をもちまして、先ほど来申し上げておるようなことを申し上げたわけですから、決して当たりさわりのないようなことを申し上げておるわけではございませんことを御了解願いたいと思います。
  73. 芳賀貢

    ○芳賀委員 参考人と議論する考えはないのですが、ただ申しておきたいのでありますが、この問題は公取の調査の対象にもなっておる。従来の会社生産者との間、あるいは麦耕連が介入して契約内容とか、条件等についても何か独禁法違反の疑いがあるのじゃないか、これは調査事案として調査中でありますからここで言う必要はありませんが、委員会としてもわれわれもいろいろ苦慮しておるわけです。何も皆様方に何回も来てもらってやるべき問題ではないのです。  最後に農林省にお尋ねしますが、ビール麦の確保の場合はどういうことになっているのですか、われわれの通常の常識でいうと、麦の種子等については農家自身が最も優良であると認めた分を完全に保管して、次年度の栽培にその麦を使用するということになっておるのが通例だというふうに考えておるのですが、きょうの参考人等の御意見によるとそうではなくて、別に採種圃というものがあって、その採種圃で収穫されたものでなければ次年度のビール麦の種子として使用することができないという仕組みになっておるということであるが、その点は農林省としてどういう指導をやっておるのか、従来はどういうことでこれが栽培されておるか、その点をちょっと説明してもらいたい。
  74. 増田盛

    ○増田説明員 ビール麦の種子の問題でお尋ねでございますが、大体採種段階は確かに今お話し通り農家でやっておるわけであります。しかし優良種子の確保並びに普及の系列からいいますと、一般の麦と同様にまず原々種それから原種、それが採種圃に下ってくる。そしてそれを採種圃の段階で増殖して農家に配布するというのが常識でございます。麦の原々種において最ももとになる新しい品種に関しましては、昔からビール会社が自分の試験地なり圃場を持って努力せられてきたのでありますが、私どもの方の試験研究機関におきましても、数年来栃木県の南河内に試験地を設けまして、現在国の指定試験地といたしまして、ビール麦の優良品種の造成に努めておりますことは御承知通りでありますが、この各会社の試験地並びに国の試験地、こういうものを合わせまして、原々種をビール会社で圃場で増殖される。さらにそれを原種の段階で増殖し、そして採種ということでございます。従いまして、私どもの方で今ちょっと種子の更新率について覚えがないのでありますが、おそらく二カ年で八割程度のものは更新するということになっておると思います。あるいはビール麦については一〇〇%更新することを目標にして各県で指導していると思うわけでございますが、この場合に、ただいまの仕組みから申し上げますと、ビール麦の採種というものは、特に普通の麦よりも細心な注意が要るわけでありますが、特別むずかしいという問題ではないのでありまして、計画的にやって参りますと、私は不足になるということは考えられないわけであります。受けて立つ農家にしても希望者が多いわけであります。ただ現実の問題は、採種組合委託契約をしておやりになる場合、しかも私ども指導といたしましては、農協が中心になって採種組合を作るようにやっておるわけであります。この単位農協を中心にした採種組合というものの委託契約が正常に行なわれますならば、種子が不足するということはないのではないか。ただその委託契約をした当該農家の種子が、特別に災害のために減収を来たした、あるいは品質が不良であるというようなことがありますと、まれにはあるいは種子が不足するという現象も起こるだろうと思うのでありますが、この場合におきましても、計画がよほどの余裕を見て行なわれますならば、済み得るのではないか。万全の注意を払っても種子が不足だという場合には、自家種子で更新するということも可能なはずでございます。こういうことをいろいろ考えますと、種子の絶対量に不足するというのは、ちょっと私のふに落ちぬわけでありまして、先ほど来いろいろお話を承っておりますが、この際、ビール麦の種子全般にわたりまして、各県でどういうふうにやっておりますか、おそらく県によって違うでしょう。それからビール麦の種場というものも、たとえば大麦の場合には、関東でございましても、全国的に需要があっても、種場はある特定の県なり市町村に集中するという問題もあります。その場合におきまして、発注する方と受けて立つ県との関係がどうなっておるか。幸いにいたしまして、本ビール麦につきましても、従来は麦耕連がやっておられるわけでありますが、ただいまお話しのように、農協団体の一方の全国団体であります全販連というものがおやりになれば、採種という点に手ぬかりがあってはならぬはずであります。こういう問題は全体を含めて、やはり計画を周到にしてやっておくならば、私は絶対に過不足の問題は起こらぬじゃないかというふうに考えております。
  75. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の振興局長のお話であれば、何も来年の種子の心配はないと思うのです。ただ私は、ないないということであれば、麦耕連が指定採種か何かやっておるか、あるいは会社の指定採種圃でとれた種子以外は絶対にそれをまいた場合は買い上げしないというような厳密な条件でもあれば別なんですが、私も農業をやっておるのですが、農民の気持としては、なるたけ新しい優良品種の、多収穫の売れ口のいいものを作りたいという意欲はみな持っているわけです。だからほんとうはとれた中から一番いい種を確保しておくというのは、米作農家でも麦作農家でもあたりまえのやり方なんです。災害とかにあって、あまり種子がとれぬということであれば、これは政府が災害対策で種をあるところから確保して、ないところへ回すということもやっているのですから、もしも今年の気候条件等によってどうしても来年裁培したいという農家に対して種子が不足であるという場合には、当然政府としても努力して善処する必要があると思う。ですから全販連系統で集める種の中にも、当然食糧事務所で検査する場合には、品質とか規格というものを十分検討して等級をつけるわけでしょう。だから農協で集荷した中から一番種に最適の一等品なら一等品の規格品というものを何十俵とか何百俵確保して、そうして全販連系統の来年作付しようと思う人に対して、もう九月まくのでしょうから、そういうことはやれると思う。それをあまりかた苦しく考えて、ないないということを騒ぎ立てるから、みなが必要以上の騒ぎを起こすと思うのですが、今の振興局長の答弁のように、自家種子で十分である、心配ないということであれば、その点農林省当局から関係方面にも十分不安のないように通達を出してもらって、それからまた会社や全販、全中等においてもそれぞれ善処してもらいたいということを私からも申し上げて、それで差しつかえなければ私の質問を終わりたいと思います。もし差しつかえあれば御答弁願いたい。
  76. 山本為三郎

    山本参考人 差しつかえありません。
  77. 西村関一

    ○西村(関)委員 先ほど芳賀委員の発言に対して、山本参考人のお話の中に少し誤解があったと思いますが、芳賀委員山本参考人がうそを言われたと、いうことは決して言ってない。速記を見ればわかる。ただあなたもお認めになっていらっしゃいますように、荷見・山本文書の精神が十分下部末端まで伝わってない、また下部の事情についても最高幹部である方々において十分に把握しておられないという点を指摘せられたと思うのであります。それにつきまして、うそを言うというようなことならば質問に答えないし帰るというようなことを言われましたが、その点は速記から削除していただくよう委員長において善処を願いたい、こういうふうに思いますので、一つ委員長よろしくお願いいたします。
  78. 小山長規

    小山委員長 委員長において善処いたします。
  79. 久保三郎

    久保委員 参考人希望を申し上げます。いろいろ率直な御意見を伺いまして大へん参考になりました。いずれにしても、まあトップ・レベルにおいては誤解もないようでありますが、取引条件も麦耕連系統共販では違っているし、会社としての指導も、系統共販にはやらぬということで取引の条件が違うということであっても、これは耕作農民にとれば大へん不安なことであって、気になるのであります。実際は、率直に言って、いいビールをお作りになれば、あなたの方はそれでいいと思う。そのためにその需要にこたえて農民はいい生産をすればいいので、その取引はどこまでも公明に公正にやつていただきたい。そのためには、先ほどお話がありましたように、私は冒頭のあなたのお話を忘れましたが、きょうはビール会社の代表ではなくて、全中の荷見さんと御一緒に仲介の労をとられるという立場にあるそうであります。それを確認すれば、今後三十六年度産の問題についても、今までいろいろ希望なりあるいは不安がそれぞれ農民の中にありますから、これを一刻も早く取り除いてほしい、こういうように私は希望します。いろいろ率直にお述べいただきましてありがとうございました。
  80. 小山長規

    小山委員長 参考人各位にはまことに長時間にわたり、しかも昼食時間を過ぎましたのにごしんぼういただきまして、当委員会調査に御協力いただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後二時三十分より再開することとして、暫時休憩いたします。     午後一時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時五十九分開議
  81. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。甘味資源問題及び大豆の価格問題について質疑の通告がありますので、これを許します。芳賀貢君。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 昨日保留していた問題について、寿にビート問題について若干お尋ねします。  第一の点は、農林大臣からも御説明がありました今後の北海道におけるビート工場の建設の基本的な方針でありますが、一千トン規模の工場を三十七年から七カ年計画で八つ作る、そういう構想については大体承ったのであります。これはやはりコストの上からいうと非常に大きな欠陥があるということも明らかになったので、この際、一体政府の方針は、国民経済の立場から見た場合には、昨日私が指摘した通り、一千五百トンの政府案による百十日操業した場合と、一千トンの百二十日操業した場合において、そのコストの差というものは一ピクルについて五百三十五円、一斤にすると五円三十五銭という大きなコストの差ができるわけです。ですから、これを国民経済的な見地から言った場合には、国民にそういう高い砂糖を消費させるということはとるべき政策でないことは自明のことであります。一体政府としては、この点については国民経済的見地から今後会社の建設計画を進めるのか、あるいは申請会社に対して全部工場の建設を認めるという、そういう方針に基づいて、コストが高くなっても、国民負担がふえても差しつかえない、そういう見地で進められるのか、その基本的な方針はやはりこの際明らかにしてもらう必要があると思うので、この点を農林大臣から明確にしていただきたいと思います。
  83. 南條徳男

    ○南條国務大臣 御質問の点については、昨日も申し上げたのでございますが、国民経済の問題からコストを安くしろというお話、ごもっともでございます。さようなこともごもっともとして採用する問題でございますが、また一面、北海道の寒地農業、ことに畑作振興という面から申しまして、国策に沿うたビートの振興ということを至急に拡大したいという目標から、これが二、三年来この方向にきたのでございまして、北海道庁としては、特にまた北海道開発という面から非常にこのことを要望したのでございます。そこで政府もこの政策に乗ってビートの増反という計画が出てきておるわけでございます。従いまして、できるだけコストの安いものを作るということと、反面できるだけ早く北海道の開発に資するような工場誘致をしたい、かようなことでこの八カ年、八工場誘致案というものができたと思うのであります。でございますから、初年度はこの千トン計画ということでお説のように多少生産コストが高くなるという面もございますけれども、この二、三年来作りました既設の工場でも、最初は原料関係で一千トン、一千二百トンで始まっておるので、最初から千五百トンというようなもので始まったという工場はあまりないのでございます。一両年の間にこれが千五百トンになっておるわけでございます。そこで、会社側生産意欲というようなことにも大いに依存いたしまして、できるだけコスト・ダウンするような方向に向かいながら、また一面早く生産を高め、北海道の畑作を振興したい、こういうことでこういう案ができておることと思っております。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 根本的に安い砂糖を作るということであれば、これはやはり適正規模な工場ということで出発しなければならぬ。それから最初の年が千トンで、あとはだんだんふえるというのは、政府案ではそういうことはうたっていない。たとえば明年度から建設しても、八カ年後においての全体の十五工場というような場合にも、既存の七工場以外の八工場は原料が二百十万トンに達した場合において、そのときの時点で一工場千トンということになっておる。ここに問題があるのですから、この点は大臣として間違いのないようにお考え願いたいと思います。  それから次にお尋ねしたいのは、これは就任間もないのですが、実は当農林委員会としては、昨年の七月二十九日から八月六日までの間、主として北海道におけるビートの問題、あるいは国有林野事業の問題、寒地農業の問題等について相当精密に委員会調査を行なったわけです。特にビートの調査を行なった理由は、昨年の春の通常国会において、たとえばビートの振興会法であるとか、納付金法であるとか、あるいは関税の引き上げ、砂糖消費税の引き下げ等、一連の措置によって国内における糖業振興を進めるということに方針がきまったわけです。従って、これに基づいてわれわれは北海道におけるビート関係調査を行なったわけです。ここに報告しておるのは相当膨大なものですが、ただ特に今度の問題に関連のある問題だけを私から参考に大臣に申しておきます。当然委員会調査の結論というものは政府においても尊重するという答弁が当時の所管大臣から行なわれておって、こういう点が指摘されておるわけです。既設のテンサイ工場は現在七工場であるが、これらの工場のビート処理能力は公称日産千二百トンまたはそれ以下であるが、実際能力は千五百トンまたはそれ以上であることは隠れもない事実であり、生産の合理化、コストの低下をはかるためには将来処理能力の一そうの増強をはかることが必要である。それがためには工場自体にビート増反の努力をなさしめることはもちろんであるが、政府としても現有の能力をもってしては原料テンサイ等の処理ができないことが明白となる時期までは新工場の乱設を抑制する等、既設工場の原料確保については明確な見通しのもとに万全の措置を講ずべきである。ビート生産の現状を深く考慮することなしに、いたずらに工場の新設のみを急ぐ場合においては、経営上の無理をビート生産農民にしわ寄せするか、または国家財政によけいの負担をかけることは火を見るよりも明らかである。今日町村の中には固定資産税の増収を日当てとする工場誘致運動に狂奔する向きもあるように見受けられるが、このような効きに便乗し、あるいはこれと相呼応する工場新設の申請はすべてこれを一たん白紙に返し、テンサイ振興百年の大計を樹立するため、土地改良、土層改良を中心とし、その他、品種改良、価格、融資、その他諸般の事情を織り込んで、甘味資源総合対策及びテンサイ生産長期計画を根本的に再検討し、両者の総合調整をはかり、これらの対策及び計画と完全にマッチした、筋の通ったテンサイ行政を実施するものとし、既存施設をもってしては原料処理ができないことが何人の目にも明確になるまでの間は、いかなる地点においても、またいかなる会社に対しても工場新設を許可すべきではない。これが中心になった当委員会の報告の核心であります。ですから、これによりましても、工場建設の場合はやはり既存工場の中にも新鋭工場についてはすべて実際の企業能力というものが千五百トン、千六百トンの能力を持っておる。だからそれを発揮した場合には現在の糖価斤当たり五十三円十四銭をさらに下回るということは見通しの上で確実でありますから、やはりこのような原則の上に立って諸般の処置を講ずべきである、そういう点と、それから現在まで行なわれておる会社の申請運動あるいは誘致運動というものは、長期計画からながめた場合には、これは不適正と認められるような点が非常に多いので、一応これを白紙に戻して、北海道なら北海道の長期生産計画というものを基盤にして、それに見合った新工場の建設計画を立てるべきであるというのが趣旨でありまですから、この点を農林大臣おいても十分確認された場合においては、おのずからその方向というのはきまると思うのです。これは農林省の事務当局の諸君も、大臣以外は全部知っていることですから、この基本をくずさないようにいくべきでないかとわれわれは苦慮しているわけですが、この点については、委員会調査結果というものを前大臣以来これを継承して尊重してお進めになるかどうか。その点はいかがですか。
  85. 南條徳男

    ○南條国務大臣 もちろん当委員会の、ただいまお話のありました点については十分尊重いたしまして、その方針で今後も進みたいということで、今後も変わりございません。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その次にお尋ねしたい点は、現在いろいろ紛争が続いておるのですが、農林省当局としては、この工場設置個所に対する農地転用の許可というものに対してどういう基準を設けて、その基準に照らして今後処理しようとするか、この点が明らかにならぬと、何か農林省にこれに対する非常に大きな権限があって、農林省の意にさからうものに対してはあくまでも排除するというような必要以上の危惧も伝わっておるので、この際やはり行政的の見地から、たとえば農地法に示された第四条の転用そのものの取り扱いというものをどういうふうに進めるか。これはやはり法律に基づいた純粋な態度から示してもらいたいと思います。
  87. 南條徳男

    ○南條国務大臣 この工場の農地転用の問題につきましては、北海道のテンサイ糖の生産計画とにらみ合わせまして、農林省としては行政的に妥当な線を考えて進めておるのでありまして、従いまして生産計画にマッチしないというような場合においては、農林省としては簡単には農地転用の許可は与えられないということになるのではないかと思うのであります。ただし、だからといって無意味に申請者に対して決してそれを許可せぬとか、するとかいうような不公平な取り扱いは絶対にしない方針であります。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、これは大臣より食糧庁長官にお尋ねしますが、昨年の秋の国会において——委員会の開催日は議事録を見ればわかりますが、その当時新工場の問題が取り上げられたときに、食糧庁長官から、工場の新設申請については七会社から申請が出ておる。これに対してホクレンは第二工場を建てたいという意思を持っておるが、どういう形で手続をしておるかということをわれわれ委員の方からただしました結果、ホクレンとしては十勝の西部地域に第二工場を建てたい希望を持っておるので、この建設地の選定とか決定については農林省においてしかるべく検討して、ぜひ第二工場を適当な地域に建てるようにきめてもらいたい。そういう書類は出ておるが、これは申請ではなくて、農林省当局から見た場合には陳情とみなす、そういう答弁が当時食糧庁長官から行なわれたわけです。他の会社のは農地転用の申請であります。ホクレンは農林省の判断によって政府所轄の適当な地に、農林省におまかせするから適地を選定して許可されたいという申請が出されておるのです。これは農林省として見た場合には申請でなくて陳情とみなすという答弁がありました。その後ホクレンからは、陳情じゃこれは正式に取り上げられないとするならば、やはり他の会社と同じように農地転用の申請をするよりほかないじゃないか。そういうことでさらに正式な転用の許可に対する申請が出された。これはこういう経緯があるわけです。ですから、これを取り上げた場合に、たとえばホクレンが、去年の春きまった国の甘味資源の十カ年計画の精神に即応して協力するという場合においては、むしろ前者のような謙虚な気持で農林省に対して第二工場新設の申請を出すということは、これはわれわれが見ても何も無謀な挙ではなかったと思う。しかしそういうことをやった場合には、農林省としては、これは申請ではない、陳情だというふうに一蹴された結果、それでは自分で適地を選ぶ場合においては十勝の清水町が一番立地条件から見ても、工場の立地から見ても適当である、こういうので転用申請が出されたという結果になっているのです。これは食糧庁長官が直接答弁された問題ですが、こういう点については新しい農林大臣にその経緯なるものが十分わかるように言ってあるかどうか。そういうのが頭にないと従来の答弁のように、目の玉へ指を入れるとか、あるいはおそく出してけしからぬとかということになるのですが、この点を長官から明らかにしてもらいたい。
  89. 須賀賢二

    ○須賀説明員 昨年ホクレンの第二工場新設の問題につきまして、当委員会でいろいろ御質疑のありました段階におきましては、ただいま芳賀委員からお話のありましたような趣旨においてお答えを申し上げたと思います。また事実その当時におきましては、ホクレンからいろいろ計画のお話等ございましたが、それほど具体的ではなかった。第二工場を建設したいという計画ないし御趣旨をわれわれの方へお話しになったという段階であったのであります。その後ホクレンの方で具体的に適地を選定されまして、正規の手続によりまして本年五月に許可申請を出してこられた。現在は、もちろん申し上げるまでもございませんが、他の会社の申請と全く同じような考えで処理をいたしておるわけでございます。なおこの経過等は、それほど詳しく一々大臣には申し上げておりませんけれども、大臣の了承を得ております。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣、そういうことになっているのです。ですから問題が行き詰まった場合、あるいは当委員会調査等においても、現在までの申請の形というのが問題がある。ですからこれを一応白紙なら白紙に返す、農林省にまかすならまかすということまでいきませんと、解決がつかぬのです。ただ正式の転用許可が早かったおそかったで論ぜられると問題になりますので、その点について大臣から、了承したという言明をしておいてもらいたい。
  91. 南條徳男

    ○南條国務大臣 ただいまのホクレンが出願してきたことについては、私も就任当時長官からも聞いております。また私はそういうことを承知の上で御質問に答えたつもりでございまして、御趣旨のことは十分今後も了承いたして善処したいと思います。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお伺いしたいのは、最近の新聞等の伝えるところによると、この際政府としては、砂糖についても自由化を進めるという基本方針に立って、その段階としては、まず粗糖の関税引き上げを行なう。昨年の関税定率法の改訂によりまして、現在は一キロ四十一円五十銭の関税を課しているわけです。これを今度は六円五十銭上げて、一キロ四十八円に引き上げる、こういうことが伝えられておるのです。そうしてそうなった場合には、現在の一般に市販する標準糖価を——去年の基本方針によりますと七十三円というものを基準にして、これでいった場合には大体国内のテンサイ糖は何とかやっていけるではないかということになっているのですが、今度は関税の引き上げに伴って標準糖価を二円上げて七十五円にするという、そういう内容が報道されているのですが、一体政府としては将来の自由化というものを考えに入れて、今後の方針を自由化に置いて、そして段階として関税の引き上げを行ない、標準糖価の引き上げ等を行なって糖業政策を進めるのか、その点ここで明らかにしてもらいたいと思います。これは重大なことですから、農林大臣から……。
  93. 須賀賢二

    ○須賀説明員 ちょっと私からお許しを得て申し上げます。  砂糖関税引き上げの考え方が、新聞等を通じましてある程度流れておるわけでございますが、現在の段階を率直に申し上げますと、農林省といたしまして、大蔵省並びに関税審議会に対しまして一つの考え方を持ち込みまして、今交渉いたしておることは事実でございます。現在の糖価水準は七十三円ということになっているわけでございますが、現在の農林省から交渉いたしておりますものは、七十五円程度の糖価水準になるというものでございます。しかしながら、これは今回の関税率の全面的改正の考え方の一部として農林省として持ち出しておる問題でございますが、お話しのように、砂糖の自由化の問題等の今後の方針等を十分詰めまして、それに合わせての関税率の改正であるというところまでは話が詰まってない。むしろ、特に私どもが最近重点的に取り上げておりまする結晶ブドウ糖、精製ブドウ糖、いわゆるブドウ糖対策等との関連において考えておるわけでございます。目下の段階では、私どもといたしましては砂糖の自由化は考えるにいたしましても、まだ時間的にもかなり先の問題であるとも考えておりますし、またその場合には、関税率の問題は今回提案しておるものとは別途に十分詰めて検討いたしまして、今度の糖価水準七十五円という線で直ちに自由化に踏み切る一つの前提として考えておるというわけにはちょっと参らぬのではないか、さように考えておるわけであります。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 お尋ねしているのは、砂糖の自由化という問題が根本になって、前提として関税引き上げということが行なわれるというふうにわれわれは考えておるのです。ですからこの点について農林大臣は——福田大臣の場合には、砂糖あるいは乳製品等に対しては自由化はしないということを当委員会で言明されたのですが、内閣がかわり、大臣がかわったら、またどういうふうに気が変わっているかわかりませんから、その点についてどうなるのですか。
  95. 南條徳男

    ○南條国務大臣 砂糖の自由化は当分する方針じゃございません。従いまして、ただいま長官から申し上げました関税率の引き上げ等の云々のことは、今自由化というような場合の意味の関税引き上げでないということでございまして、さように御了承願います。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは大事な点ですが、当分の間というのは、たとえば甘味資源の十カ年計画が去年から発足していますから、この十カ年計画の達成というのは非常に国としても努力しなければ困難な問題が多いわけです。だから当分というのは、たとえばこの十カ年計画の達成されるまでの間は自由化はしないのならしない、こういうことでないと困るのですが、その途中でもやるのか、いかがですか。
  97. 須賀賢二

    ○須賀説明員 砂糖の自由化につきましては、われわれの方といたしましても、具体的に年次的な見通し等を描きまして、いつごろどういう時点においてこれが可能であるか、あるいはその裏づけ態勢が整うかというような見通しは現在の段階ではつけかねておるわけでございます。目下の段階では、十カ年計画に基づきまして、国内自給度向上の方向を強く打ち出しております段階でございますし、まだこれに対する的確なる見通しも持たなければいけません。またかりに自由化等の構想を考えてみましても、世界各国の例を見ましても、砂糖については完全に自由化をしているというような例はほとんどないわけでございまして、自由化をする場合におきましても、その具体的な方法内容等につきましては、わが国の国情から見ましても十分なる検討を要するわけでございます。従いまして私どもといたしましては、現在打ち出しておりまする国内自給度の向上という線を、積極的に進めていくという線に最大の努力を払うつもりでございまして、現段階におきましては、具体的な年次計画等を描いて砂糖の自由化を考えるという段階には私どもとしては考えておりません。
  98. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、今の農林省の構想を実現して、キロ当たり六円五十銭関税が引き上げられて、これは国の税収入がそれだけふえるわけですね。そうすると国が税収を関税引き上げに求めるという考え方でいくのか、昨年春やられたように、関税を引き上げた分だけを国内のビート糖とかあるいは精製ブドウ糖の保護のために、それに見合った分をまた砂糖消費税の引き下げでやっていく考えか、この点も明らかにしてもらいたい。できるだけ農林大臣からお伺いしたいと思います。
  99. 須賀賢二

    ○須賀説明員 そういう点も、まだそれほどこまかく詰めて検討いたしておるわけではございません。ただ私どもの予想いたしますることとしましては、ある段階において砂糖の自由化を行ないますと、特に国内において生産されまするテンサイ糖並びにブドウ糖等につきましては、何らかの保護政策と申しますか、生産維持増強の裏づけ措置を必要とするであろうと考えております。それには財源を必要とするわけでございますが、これを関税の引き上げでいくか、あるいは別途の政治的措置をやりますか、それらの点は今後の問題として十分検討して参りたいと考えております。
  100. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これはその動機が未熟じゃないですか。税をふやす目的でやるとすれば話はわかるが、しかし新内閣では一千億減税とか何とか言っているときに、砂糖の関税だけ引き上げて、標準糖価をまた二円上げて、関税引き上げを理由にして国民に無理に高い砂糖を消費させるなんということは、現在とるべき手段ではない。もし理由を立てるとすれば、関税障壁を高めることによって、たとえば一方においては消費税の引き下げ等を行なって強力に国内の糖業を保護する、そういう一貫した筋の通った話でやるというならば話はわかりますが、いや、消費税の方は何も考えていない、関税引き上げだけは行なおうということになると、じゃ税金をまた国民から間接税の形でとらなければ国の財政はやっていけないかどうか、こういう点はやはり農林大臣の方がよくわかるのではないですか、あなたは農林大臣じゃないでしょう。
  101. 須賀賢二

    ○須賀説明員 ちょっと大臣に御答弁を願います前に、七十五円の問題がございますので、私から先ほどのお答えの続きとして申しますが、今回七十五円の引き上げを大蔵省と交渉しておりますのは、糖価水準を七十五円べースに置きますと、現在農林省で重点的に進めておりまする結晶ブドウ糖、精製ブドウ糖育成の裏づけとして非常に有効でございます。そういう角度から七十五円ベースに引き上げることを目下やっているわけでございます。別に財政収入等の問題としてやっておるわけではございません。
  102. 南條徳男

    ○南條国務大臣 ただいまの長官の説明が大体具体的だと思いますが、私も就任早々でありまして、こまかい内容についてはまだ存じておりませんが、要は甘味資源の需給というものを大いに今後確保したいということは、当委員会においても種々論議されておることと思います。そこで日本における将来の甘味資源の需給増強ということについては、その一つの方法としてビートの増産計画も考えられておることと思うのであります。また一方においては、澱粉の処理につきまして、最近澱粉が非常に過剰である。そこヘブドウ糖の製法がだんだん進歩して参りまして、最近においてはいろいろな酵素法のようなものもありますし、今後この澱粉の資源も甘味資源として十分確保していかなければならないということも考えるわけであります。それにはどうしても価格差というようなことについても、生産を増強する面があると思いますので、さような面から全体の甘味資源の増強とにらみ合わせて、砂糖とこれらの澱粉糖との格差のようなものを考えるときに、一面保護政策をとるというようなことから考えた案ではないかと思うのでございまして、要は日本の輸入砂糖をできるだけ防遏さして国内の甘味資源を増強することに役立つということが農林省のねらいであると思います。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、たとえば関税引き上げ分を国内の糖業振興のための目的をもって使うなら使うということをはっきりしてもらわないと、ただ国民に砂糖を二円上げますといったって、国民は納得しないです。大蔵省の税金はふやして、さあ一千億減税しますといったって、金持ちも貧乏人も全部砂糖を使う場合は、一斤二円負担が重くなるのでしょう。そういうインチキの税収をやって、一面で一千億減税なんといったって、これはだれも納得しないと思うのです。ですからそういうことをやる目的というものは、たとえば、繰り返すようですが、北海道で千トン工場を千二百トン工場にした場合においても、コストの差が大体一斤で三円二十五銭くらい違う。そういうことも先に想定して、小さい工場を建てれば標準糖価を上げなければならぬ。その場合には今度は七十三円を七十五円にして関税を上げる。何にも国民経済には貢献しないのです。もし自由化になったって、国内のコストを引き上げるような政策を進めて、さあ自由化になったからお前ら競争してみろと言ったって、全然国際競争はできないから、こういう誤まりは早期に発見して是正してもらいたいということを私は特に指摘しておく次第であります。  時間がありませんから次にお尋ねしますが、ホクレンの問題に移ります。これは農林省当局でもいいですが、ホクレンの方からは、たとえば正式に開かれるホクレン総会の第二工場建設の要請の決議とか、あるいは全道農協組合会議の要請の決議、あるいは全道農協大会の要請決議、あるいは北海道における道議会の農務委員会が道庁が作りました八カ年契約に対し意見を付している。その意見書の中にはホクレン工場を優先すべきであるという点が大体盛られているわけです。その次に北海道知事に対して計画は全面的に農林省は認定されますが、それにあわせて北海道知事を通じて新工場建設等に対しては意見を徴しておられると思うわけです。その場合にわれわれの承知している範囲では、やはり道知事としても、北海道全体の農民あるいは関係団体あるいは道議会等の意向も総合した場合には、ホクレンの第二工場を優先すべきである、そういう意見が出されておるというふうに考えますので、その点と、さらにホクレンが第二工場を建てる転用の許可申請、さらに建設計画等を出した場合の、たとえば五カ村なら五カ村の集荷地域、この関係町村内の農業協同組合はそれぞれ総会においてこれを要望して、しかもその地域で生産された原料については全面的にホクレンの第二工場が実現してそこへ全面出荷をする、こういうようなそれぞれの正式の機関においてきめられた書類というものは、農林省にすでに出されておると思いますが、これらの点については事務的にどういうふうにそれを扱われておるのか。これはほごで投げ込んであるのか、それとも取り上げて検討しておるのか、農林大臣にそういうものが見せてあるのですか、いかがですか。
  104. 須賀賢二

    ○須賀説明員 いろいろな形におきまして現地から意向が上がって参っておるわけであります。それらにつきましては、一々われわれの方で陳情は陳情、請願は請願、それぞれの形におきまして処理をいたしております。それで特にホクレンの問題につきましては、道庁当局からも種々御意見等も承っておるのでございまして、それらの点もあわせまして、先般私どもが合同会社考え方を提案いたします段階におきましても、道庁当局にもホクレンの問題もあわせまして十分打ち合わせをいたしまして、その上で合同会社案を提案をしたというような経過になっておる次第でございます。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですからこういう現地の声、声なき声ではなくて正式に出している声ですが、これは尊重されるお考えですか。こういうものはやはり全然政治的に扱わないというお考えですか、大臣いかがですか。
  106. 南條徳男

    ○南條国務大臣 十分尊重いたすつもりでおります。
  107. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一点だけビート問題でお尋ねいたしますが、昨年テンサイの納付金制度というものが法律できめられて、この対象になっておるのは御承知の日甜の会社です。これは五カ年間に十六億五千万の納付金を国に納付するということになっておるのだが、やはりこれらの特別の納付金の対象になっておるような会社あるいは工場等については、納付金が遅滞なく経営の中から納付できる条件というものは与えてやらないと、きまっているのだから出せといったって、これは納付できないような事情にもなると思うのですが、こういう点については昨年の委員会の審議を通じての政府の答弁、あるいは時の食糧庁長官の渡部伍良君なんかは、これは周到に配慮してやっておるということを述べておるのですが、現在においてもその意向というものは変わっていないかどうか。これは特にきのう私が指摘した十五工場設置の場合の日甜士別工場の集荷地域なんかに比べると、どうもふに落ちないような点があるのですが、この点お伺いいたしたい。
  108. 須賀賢二

    ○須賀説明員 日甜からはただいま御指摘のように五年間にわたりまして納付金を所定の法律によって納めていただくことになっておるわけでございます。従いまして今後の工場新設とも関連をいたしまして、日甜に与えます影響等も私どもといたしましても十分配慮いたしたい。納付金法に基づきます納付金は円滑に納付できますよう、それらの裏づけ、背景等につきましては従来と変わらない綿密な配慮をいたすつもりでございます。なお今回の合同会社案につきましても、これは日甜とは直接には関係はないわけでございますけれども、しかしいろいろな面でやはり影響を持ってくるわけでございますので、あの案を提示いたしました直後に、日甜においでを願いまして、私の方から別途詳しく説明をいたしまして、その影響等につきましても十分検討をお願いし、また御意見等も拝聴いたしておるわけでございます。それらの点につきましては今後も引き続き十分気をつけて参りたい、かように考えております。
  109. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、現在てん菜生産振興臨時措置法という法律が、これは昭和二十八年一月に公布されまして、十年間の時限法ということになっておるので、三十七年に一応終わるわけです。これが今日までテンサイ振興に大きな役割を果たしてきた、この制度がなければ現在のようにテンサイ振興ができなかったのじゃないかとわれわれは判断しているのですが、この基本的な制度について、これを強めるとか弱めるとかによって非常に今後違いがきますから、これを基本にして、さらに国内のテンサイ糖あるいは国内の糖業というものを発展させるために、国としても強力な制度というものをますます拡充して進めていくというようなお考えに立っておられるかどうか、この点が一番ビート工業というものに危険性があるかないかということにもかかってくると思いますので、大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  110. 南條徳男

    ○南條国務大臣 ただいまの御質問は全くその通りでございまして、政府においても三十七年に期限が切れますが、その後改正すべき点があればもっとこれを強化する、ともかくも改正してこれを運用しようという考えであります。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、国内大豆の今後の取扱いの問題であります。これは昨日も同僚の松浦委員から大臣に対して質疑が行なわれたので重複は避けますが、昨日質疑を聞いておってもはっきりしない点は、今年の十月から完全AA制にするのかしないのかという点であります。この点はいかがですか。
  112. 南條徳男

    ○南條国務大臣 これは大豆を十品目に加えて、日本承知したときには、今年の十月ということにはなっておるのですが、それに対してはいろいろな法の整備をしなければならない関係、また国内の大豆保護というような建前からいたしまして、関税引き上げの措置等もあるものですから、今月もう九月ですが、ジュネーブのガットの総会に持ち出しまして折衝等をしなければきまらぬということになっておるわけであります。
  113. 芳賀貢

    ○芳賀委員 十月といったって迫っていまして、ぼつぼつ九月になれば収穫期になって、たととえば農産物価格安定法の命ずる点からいっても、おそくても十月の上旬ごろには政府が安定法に基づく買い上げ価格というものを決定して公表しなければならぬことになっておるわけです。ですから農産物価格安定法との関連もありますし、最近は新聞等によっても、大豆については十月から自由化に踏み切るということが強く伝わっておりますので、この点はやはり大臣から率直に答弁してもらいたいと思うのです。
  114. 南條徳男

    ○南條国務大臣 これにつきましてはいろいろ法の改正を必要とする面があります。従いまして十月と申しましても、臨時国会を開いて臨時国会でさような措置をするか、またはその他の機会にするかという問題がございますから、それが十月までに間に合うかということも考えなければならぬと思うのでございます。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは大臣も今ちょっと触れられたのですが、昨日からジュネーブでガットの関税協定が始まったわけです。対象は一応十六品目ですが、その中で農産物としては大豆、アズキ、雑豆、精製ラード、それから脱脂粉乳、こういうものが農産物では七品目くらい列挙されておりますが、これをやはりガットの関税協定に持ち出すという以上、当然関税の引き上げとかそういうことが計画されて日本側からこれを持ち出されると思うわけです。そういうことになると自由化との間にどういう関係があるかということは、これは農民も国民もみんな気がつくわけです。それはもうすでにやるとかやらぬとかいうことくらいはきまっていないと困ると思うのです。福田農林大臣の時代は、最初は、今年の十月やると言っておったが、あとではそれはなかなかできがたい。それで三十六年四月ごろから自由にせざるを得ないというような答弁が行なわれたのですから、そういう構想であれば、そうだということを言ってもらえばいいわけです。  それからもう一つはっきりしてもらいたい点は、もし自由化にするということになれば、今の特割制による輸入許可ということは今度はこれをやめるということになって、国内大豆の市場価格というものは相当大幅に暴落することは必至であります。前内閣の時代には、自由化にする場合においても、農家の庭先で六十キロ一俵三千二百円の価格で全量買い上げをするということは、これは福田前農林大臣がしばしば国会において言明しておるわけです。ですからそれを自由化するような考えに立った場合には実施しなければならぬことに当然なるわけですが、それらの点に対してはどういう準備を進めておるか。
  116. 南條徳男

    ○南條国務大臣 この点は昨日も御質問に答弁したのでありますが、政府としてはたとい自由化になった場合におきましても、三十五年度産の大豆につきましては全量買い上げるという方針には変わりありません。
  117. 芳賀貢

    ○芳賀委員 全量買い上げするのですか、三千二百円で。
  118. 南條徳男

    ○南條国務大臣 三千二百円で買い上げることに変わりありません。
  119. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはずっと続けますか。
  120. 南條徳男

    ○南條国務大臣 昨日も申し上げましたように、三十五年度産につきましてはさようにいたしますということであります。
  121. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは自由化をやる場合、農民に対して庭先渡しの手取り六十キロ一俵三千二百円で全量国が買い上げをするという点が大臣からはっきりされましたが、それはどういう根拠でお買いになりますか。農産物価格安定法に基づいて三千二百円という最低支持価格をきめて、それによって制限買い上げという条項を改正して、そして米とはちょっと違いますが、少なくとも麦と同じように、申し出がある場合においては全量買い上げというやり方を採用することになると思いますか、その点を明らかにしておいてもらいたい。
  122. 南條徳男

    ○南條国務大臣 その方針でございますから、従来の安定法を改正いたしまして全量買い上げるということになるわけでございます。
  123. 芳賀貢

    ○芳賀委員 事務的なことになりますが、三千二百円というその買い上げ価格をはじき出す必要がありますね。それはやる気なら、一万円米価でも何でもあなた方は作る練達の士ですから、やれぬことはないが、需給均衡とか需給の趨勢とか、そういうインチキな算定を用いるとなかなか三千二百円という数字は今までは出てこないわけです。今度は政府の方針に基づいて、担当の経済局長にしても食糧庁長官にしても、必ず数字を出さなければ買い上げにはなりませんからね。これは作業できるのですね。
  124. 須賀賢二

    ○須賀説明員 農産物価格安定法の関係でございますので私からお答えいたしますが、AA制を実施をいたしました場合には、三十五年産の大豆については三千二百円の農家手取りになるような買い上げをいたしたいと考えておるわけであります。その場合根拠法は、農産物価格安定法によって買い上げることを予定いたしております。現行法の価格のきめ方等におきまして、さような価格になるかならないかは、なお検討してみなければならぬところでありますが、もし現行の法律及び政令等においてきめられておりまする価格算定の方法で三千二百円ということにならないようなことが万一ありますれば、それに伴うような臨時のきめ方を工夫しなければならぬ、三十五年産につきましてはさような方法で検討して参りたいと思っております。
  125. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ三十六年からどうするつもりですか。
  126. 須賀賢二

    ○須賀説明員 三十六年産からは農安法本来の行き方でいきたい、さように考えております。
  127. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。農安法の根拠に基づいて試算すれば、大体三千二百円になる、ということになれば、農安法がなくなったり、また根拠に大きな変化を与えるなら別ですよ。しかし今後も農安法があるとなれば、三十六年の経済事情とか、国内のいろいろな政治事情というものが激変するということは、今何らの予見される材料がないでしょう。そういう場合に三十六年は農安法に戻るということは、これはばかばかしい答弁じゃないですか。どこをもとにしてそういうことを言うんですか。
  128. 須賀賢二

    ○須賀説明員 三十五年産につきまして三千二百円で買い上げるという趣旨は、AA制になりました直後におきまして、大豆の農家の手取り価格に大きな変動を与えることを避けたい、従って三千二百円というのは、過去三年の平均をとって、三千二百円というものを私どもの方では価格の目安に置いておるわけであります。従ってこれは三十五年産大豆の買い上げをいたします価格でございます。従いまして現在の農安法の付録算式等で三千二百円ということに出ないということも一応考えられます。その場合には、政令等を改正いたしまして、三十五年産につきましてはそういう価格を臨時にきめるような方法を工夫してみる必要があるんじゃないか、さように考えておるわけでございます。三十六年産については本来の農安法の価格を適用する、さように考えております。
  129. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは非常に大事な点なんですが、きょうは三十五年は全量三千二百円で庭先で買うということを大臣から言明されたが、そうすると、今の内閣とか自民党の政権担当の期間というのは一年きりで、あとのことはわからぬということになるのですが、南條さんどうですか。
  130. 南條徳男

    ○南條国務大臣 決してさようなことはございません。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、アズキ、雑豆等は、これは外国日本との価格差もあって、保護政策としてはリンク制を採用して、あまり筋の通ったやり方ではないが、リンク制の形でカバーしてきたわけです。これは南條さんも御承知と思いますが、こういうやり方はもうだんだん自由化ということになるとやりづらくなると思います。しかし自由化にしてしまうと、今度は非常な打撃をアズキとか、一般の雑豆等に受けるわけです。ですからこれに対する措置というのはどういうふうにやっていこうとするのか、従前通りああいう方式で保護するかどうかという点についても、この機会に明らかにしてもらいたい。  それからもう一つ、乳製品を自由化するという考え方が大体きまったようですが、これを実施するとすればいつごろから実施するのか、前の大臣はやらぬと言ったのですが、今度の内閣は乳製品も自由化するということに方針をきめた、これは全国の酪農農民あるいは乳業関係団体の間にも非常にショックを与えておるわけでありますが、この点についても明確にしてもらいたい。特にガットの関税協定で、脱脂粉乳だけが品目に載っておりますが、この関税引き上げをやるということは、やはり自由化の前提になるように考えられますので、乳製品と雑豆、この二点はいかがですか。
  132. 南條徳男

    ○南條国務大臣 政府委員からかわって答弁させます。
  133. 坂村吉正

    ○坂村説明員 ただいまの御質問でございまするが、雑豆等につきましては、現在お話しのようにジュネーブの関税交渉で関税を上げようということを提案いたしておりますけれども、これは従来の方針と決して変わったわけではございませんで、自由化をするという考え方でやっておるわけじゃございません。従いまして雑豆につきましても従来の方針のように、これは自由化することは困難だということで現在は考えておるわけでございます。  それから乳製品につきましても、一部について関税の引き上げということも現在交渉の場に出しておりますけれども、これにつきましても、特にこれを自由化するという考え方でやっておるわけではございません。従来の方針通り自由化は困難だという態度に変わりございません。ただ実際問題といたしまして、国内でも生産方面の合理化というような問題も考えなければいかぬという点もございまするので、そういうようなものと、あるいは一部割当をしてでも入れてくるというような場合もございます。たとえば現在のように豚肉あるいは乳製品等、非常に品不足のため緊急輸入をするというような事態もございまするので、そういう場合の一つの措置として関税も上げておこう、こういう考え方でやっておるわけでございます。
  134. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大体わかりましたけれども、きょうはどういうのですか、大臣、ばかに低姿勢で、私が質問しても……。(笑声)  これに関連して大豆以外の豆類の輸入の場合、これは関税定率法では一〇%の関税をかけているのですが、そのほかにジェトロの関係で約二〇%の徴税金を納付させておるというやり方をとってきたのですが、今度の関税の引き上げという思想からいくと、この徴税金の方の措置はどういうことになるのでしょうか。
  135. 坂村吉正

    ○坂村説明員 豆類につきましては、お話のように関税は一〇%、そのほかに課徴金というようなものもジェトロの関係でとっております。従って、実際は二〇%の負担がかかっておる、こういうようなことになっておるわけでございます。その一〇%の分を関税でとるのがいいのか、あるいは現在のようにジェトロで課徴金みたいなものでとる方がいいのか、いろいろな問題があろうと思いますけれども、一応政府といたしましては、関税で堂々ととっていく方が、やはり今後の施策をやっていく上にも妥当ではないか、こういうことで関税でとるという考え方に踏み切って交渉の場に出しておるということでございます。
  136. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点はわかりましたが、それでは大臣にお尋ねします。今後いろいろな関税引き上げ等が、競合する農産物の面で行なわれる。そういう場合に日本の農業というのは非常に国際競争力が弱いわけです。ですから、原則としては競争力を高めるという基本的な問題を解決しなければいかぬわけです。それには個々の農民の経営能力だけでは解決できないので、結局国としても強い施策を講じ、あるいは流通面の保護政策であるとか、あるいは品種改良であるとか、耕地の生産性の増大とか、そういう問題を考えた場合、今後関税引き上げ等をやって国の収益がふえるという場合には、やはり重点施策としてこれらの増加された収益というものに目的を与えて、そうして国内の国際的に競争する農産物の強力な対策に充てるということにすることは、どうしても必要だと思いますが、そういうお考えはないですか。
  137. 南條徳男

    ○南條国務大臣 全くお説の通りでございまして、今後といえども政府としては日本の農産物価格に対して十分保護政策をとる方向でございます。従いましてそれらについてももっと農家の保護政策を強化したいという建前から農業基本法というようなものも制定して、そうして、その内容等については十分御趣旨のようなことを盛っていきたい、こういうことでございます。
  138. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これで大豆の問題は一応質疑を閉じます。      ————◇—————
  139. 小山長規

    小山委員長 それでは次に農林水産金融に関する件について調査を進めます。  農家負債整理の問題について質疑の通告がありますので、これを許します。芳賀君。
  140. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農家負債整理の問題について大臣にお尋ねいたします。これは昨年の通常国会において、二月に社会党から寒地農業振興法と農家負債整理法の二案が出まして、政府の方からも北海道寒冷畑作地の振興措置法なるものが出まして、いろいろ審議の結果、社会党提案の寒地農業振興法と政府提案の北海道畑地農業振興法を調整しまして、これは政府案の大幅修正ということで成立させた経緯は御承知通りであります。そのとき当委員会において附帯決議を付しまして、これは各党一致の附帯決議ですが、たまたま私が提案代表になりまして、その中の趣旨は、政府としてはすみやかに全国の農家のこげついた負債の実情というものを調査して、これを解決するために特別の措置、いわゆる立法措置を講ずべきであるというのが第一点であります。それからこの特別措置が実現するまでの間は、現在あるところの自作農創設資金ですね、この制度というものを活用する必要がある。活用の方向としては、まず一戸当たりの貸付限度については、これは現在農林漁業金融公庫の業務方法書の規定に基づいて一戸当たりの最高限度が二十万になっておるが、これは現在のいろいろな農村の経済事情にかんがみても適切でない。たとえば去年は伊勢湾台風等もあって、毎年災害対策の一環として自創資金に対する依存度が高まってきているわけなんです。ですからこの二十万円という限度を、たとえば業務方法書の改訂等によって、北海道についてはおおむね五十万円、内地府県についてはおおむね四十万円限度にこれを改訂すべきであるという点がその第二点ですね。それからそれをやるためには、どうしても自作農貸金のワクの拡大をやらなければ、限度だけの引き上げではできないからして、通例貸し出しの自創資金に合わせて、負債整理の目的も含めて自創資金のワクの拡大というものを財政投融資の中で行なって、そうしてこの三点を中心にして農家負債整理の特別措置法ができるまではやるべきだ、こういうような委員会の附帯決議ができておる。もうすでに一年以上たっておりますが、これらの点に対しては遅々としてというよりも全然何も政府はやっておりませんが、一体この委員会の附帯決議の趣旨に沿って政府としてはどういうふうなことを今後やろうとしておるのか、その点について責任ある答弁をお願いいたします。
  141. 南條徳男

    ○南條国務大臣 これは前内閣のときのことでございますが、御承知のこの委員会の御決議もあったと思いますが、三十五年度におきましては、自創資金の前年度百億を三十億増加しまして、百三十億にいたしておるのでござまいす。また負債整理で一戸当たりの限度二十万円をさらに四十万円あるいは五十万円という趣旨でございますが、これを引き上げることについても実態調査をする必要があるというので、その方針で進めております。七月ころからですか、北海道だけはただいま財務局、道庁、農林省の出先機関がこの実態調査をいたしておる最中でございまして、内地にも実態調査をする方針であります。
  142. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この三十五年度内に先ほど指摘しました立法措置は、国会が開かれておりませんからすぐできないとしても、今やれるものは中間的ではあるが業務方法書の改訂を行なって貸付限度の引き上げをやるということは、これはこの行政措置の範囲内でやれることです。ですからこれは南條さんの在任中に当然やれる仕事なんですが、これをあえておやりになる意思があるかないか、それからやるとすればどのくらいの目標でこの限度引き上げを行なうか、その点はどうなんです。
  143. 南條徳男

    ○南條国務大臣 ただいま、従いまして大蔵省とも打ち合わせの上、実態調査をいたして、はたしてどの程度の引き上げが妥当であるかということの調査が済み次第、そういうふうにしたい、こういうことであります。
  144. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですからその目標はどこへ置いているのですか。調査を終わってどのくらいに引き上げる考えか、いろいろ陰で言っておられるようですから、率直に述べてもらいたい。
  145. 南條徳男

    ○南條国務大臣 目標は、従って実態調査をした上でそれが出てくると思う。全然その調査なくして、ただ目標だけを言ってもどうかと思います。
  146. 芳賀貢

    ○芳賀委員 追及する考えはないですけれども、出先で大臣もこれについては相当熱意を持って年度内にたとえば三十万円に引き上げるとかなんとか言っておるのですが、まだ確信がなければ追及してもしようがないのですがね。それじゃ年度内はなかなかむずかしいですな。
  147. 南條徳男

    ○南條国務大臣 さようなことではなく、実態調査ができました上で十分大蔵省とも折衝して実現したいという意図を持っておることに変わりはございません。
  148. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それからもう一点。実はこれは大臣には関係ないことなんですが、去年の十一月の臨時国会の会期中に、自創法の問題について、社会党の私どもの方で自創法の改正案というものを作りまして、実はこれをすぐ出すという形でなくて、与党の皆さんにも十分御説明をして、できれば共同で進めたいという考え方の上に立ちまして、私どもの改正案を当委員会理事会において吉川さんの農林委員長時代にお示しして、そうしてすみやかに御検討を願って結論を出してもらいたいということでしたが、今日に至っても何も答弁がない。これは委員会のことですから大臣に関係はないが、その場合に社会党の与党に示した改正案の内容というものは、金利については現行の五分を三分五厘に引き下げて、それから据置期間については現行の三年、十七年を五年、二十年にこれを改める。五年据え置き、二十年償還、それから貸付限度についてはこれを業務方法書にまかさないで、法律の中にこれをうたうことにして、その規定は北海道の地域においては五十万、内地各府県においては四十万円の限度までは貸し出しを行なう。それからもう一点はこの法律が通った場合は、この法律の改正以前に政府が貸し出して、まだ据置期間で償還に入っていないのが大部分ですから、その場合には償還を開始する場合には、金利については改正された三分五厘を適用する。この四点についての改正案というものをわれわれが用意して、与党、自民党の皆さん方に当委員会理事会を通じて示したという経過があるわけです。ですからこの点についても、速急に検討されて、今後善処される場合においては、このようなわれわれの構想についても期待に沿うような措置を南條農林大臣のもとにおいて進めてもらいたい。その熱意のほどをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  149. 南條徳男

    ○南條国務大臣 御趣旨のほどは十分了承いたしまして、検討いたします。      ————◇—————
  150. 小山長規

    小山委員長 次に農林漁業災害に関する件について調査を進めます。  発盛鉱山煙害問題について質疑の通告がありますので、これを許します。中澤茂一君。
  151. 中澤茂一

    ○中澤委員 鉱山局にお伺いしますが、発盛鉱業所の現在の煙害事件というものは御承知ですか。
  152. 西家正起

    ○西家説明員 存じております。
  153. 中澤茂一

    ○中澤委員 鉱山課長さんですか。
  154. 西家正起

    ○西家説明員 鉱山課長でございます。
  155. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたではあまり突っ込んだ御質問をしても、問題がちょっと重大な段階ですから、あれですから、十三日の当委員会で問題を徹底的に究明することにしたいと思うのですが、一点だけ申し上げておきます。  昨年五百トン製練を一千トンにふやした許可、これはあれだけの重大な農作物に被害が出ることを鉱山局は予想して許可したものかどうか、この一点だけをお聞きします。
  156. 西家正起

    ○西家説明員 実は煙害問題と申しますのは非常にむずかしい問題でございまして、製練をやりまして煙を出す限り、普通は被害の大小はございましても、必ず害があるというふうになっておるのでございます。完全にこれを防止する方法といたしましては硫酸設備を設ける、これしか現在のところ方法はないわけでございます。そのほかに、なるべく被害を少なくする方法というのは煙塵回収装置その他をつけまして、できるだけ煙害におけるSO2の含有量を少なくするというような方法がございますが、発盛につきましては、なるほど銅の生産を増強したのでございますが、根本的に硫酸設備を設けるということになりますと非常に大きな問題でございまして、場合によっては企業自身もできなくなるということも考えられますので、その点は一応現在の段階では見送っておるのでございます。そこまでいきませんが、除塵装置を設けましてこれに伴ってSO2ガスの含有量をできるだけ減小させるというような方向で一応許可したわけでございます。しかしながら、現在の段階では、これでも十分だということはもちろん言えないことでございます。
  157. 中澤茂一

    ○中澤委員 課長さんでは問題が重大でちょっとあれですから、十三日の当委員会参考人として大日本鉱業の社長松浦弘、それから大日本鉱業の鉱業所でございますが、発盛鉱業所長の高橋善雄、この二人を十三日の当委員会へお呼び願うようにお取り計らいを願いたいと存じます。それから同日重大な問題ですから、鉱山局長並びに保安局長、できることならば通産大臣、この三氏をお呼びの手配を願いたい、こう存じます。      ————◇—————
  158. 小山長規

    小山委員長 この際参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。すなわち次回の当委員会発盛鉱山煙害問題について参考人の出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 小山長規

    小山委員長 御異議なしと認め、そのように決定いたします。なお参考人の人選等につきましては委員長に御一任願うことといたします。      ————◇—————
  160. 小山長規

    小山委員長 次に肥料価格問題について質疑の通告がありますので、これを許します。芳賀貢君。
  161. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先般十二日の当委員会において、肥料価格の問題について質疑を行なったのですが、当日の政府答弁によりますと、八月中に肥料審議会を開いて新肥料年度の硫安価格等については決定を行なう。それに対しては硫安工業合理化の基本対策を肥料審議会に同時に出さなければいかぬことになっている。     〔委員長退席、中村(寅)委員長代   理着席〕 しかしこれが整わぬ場合においても、これと切り離して価格問題については八月一ぱいに決定を行なうという、こういう言明が経済局長からも行なわれたわけでございますが、もうすでに九月二日になっておって依然として決定か行なわれていない。この点について経過の御説明を願いたい。
  162. 坂村吉正

    ○坂村説明員 ただいま芳賀委員の御質問でございますが、先般の委員会におきまして私の答弁ということで、八月中に審議会を開いて価格を決定するという御答弁を申し上げたというふうに伺いましたが、私そういう答弁をした記憶はございません。実は今までの肥料審議会の経過からいいまして、硫安工業の合理化についての根本対策を政府は立てて、それをこの次の審議会で価格を決定する場合に提出しろという要望がございますので、政府といたしましては硫安工業の根本対策をできるだけ早く出さなければならぬ、固めるように努力をしておる、それをできるだけ見通しといたしましては八月中にはきめたいということで努力をいたしております、こういうことでございまして、その際の関連しての御質問で、どうしてもきまらなかった場合にはどうするか、いわゆる価格の問題と硫安工業の合理化の問題とは関連のない問題ではないか、こういう御質問でもございまして、その点につきましては仰せのように関連のない問題でございます。そうしてその価格がきまらないために八月一ぱい過ぎましても価格がきまらないで、消費者あるいはその他の末端で混乱や不安を起こすという事態が起こった場合には、それについてはどうするか、あるいは適切な措置をとるか、こういうお話がございましたので、そういう事態が起こりました場合には、そのときに応じまして適切な措置をとりたい、こういうことを申し上げておるのでございます。そういうような事情でございますが、その後政府におきましても硫安工業の根本対策につきましていろいろ関係各省相談をいたして、急いで結論を出すために努力をいたしておるのでございますが、まだ実際問題として具体的にどういう方向でやるかというところまでの結論に至っていない状況でございます。この点は非常に遺憾でございまするが、八月ももう過ぎまして九月に入りましたので、末端の消費者あるいは配給系統等におきましても、そのためにあるいは価格決定が硫安工業の合理化の問題と関連して、いろいろそういうゆがめられた形できめられるのじゃないかという心配であるとか、あるいははたしてマル公がきまるであろうか、そういう心配とか、そういうようなものがだいぶあろうと思うのです。そういうような情勢もぼつぼつありますので、私どもといたしましては、今まで機会あるごとに、あるいは配給を扱っております、あるいは消費者の関係の代表でありますところの全購連であるとか、あるいは一部の配給をやっております全肥商連、いわゆる商人系統の団体であるとか、そういうようなところを通じまして、従来の方針通り硫安のマル公というものは必ず近いうちにきめるのだから、決してそういうような不安を持たないように、心配しないようにというふうに指導して参っております。それから七月の中ごろからでありますけれども、全国で肥料につきましての協議会をブロック会議でやっております。この席にも農林省から出まして、そういう不安を持つ心配は一つもないからと、るる説明をいたしまして、御心配が起こらぬようにその指導をいたして参った次第であります。そういたしまして、政府の方針としてはできるだけ早くその根本対策をきめる、こういうことで政府の最高部の方におきましても、いろいろ審議をしておるというような状況でございます。
  163. 芳賀貢

    ○芳賀委員 言うまでもなく、毎年の新肥料年度は八月から始まるわけですが、通例ですと、七月中にもう新年度の価格をきめておくということは当然のことなんですね。今度の場合には今局長の言われた通り、価格に合わせて硫安工業の合理化の基本対策というものを審議会に同時的に出せという要望があって作業が一方はおくれておると私も考えるのですが、それじゃこの硫安工業合理化の基本対策というものはいつごろまとまるのですか。
  164. 富谷彰介

    ○富谷説明員 肥料部長でございます。ただいま基本対策を農林、通産両省で作りまして、財務当局と折衝中でございますが、すでに閣議の話題にも上がったということを大臣から承っております。私どもとにかくマル公決定というものがそんなに延ばせない、従ってわれわれとしましては、目標といたしましては今月中、できれば中旬までということで目下急いでやっております。
  165. 芳賀貢

    ○芳賀委員 実は通産省の軽工業局長に来てもらわぬと、せっかくの質疑があまり価がないわけですが、それで作業がまだおくれておるとしても、基本対策ができて、そうして審議会を開くということであれば、新肥料年度の硫安価格決定というのはそれを十分反映さしてきめるということに当然なると思うのです。対策ができても反映しないような、なまぬるい価格ということになると、むしろ切り離した方がいいということこなると思うのですが、この点については特に通産省としてはどうお考えになっておりますか。局長に答弁願いたい。
  166. 秋山武夫

    ○秋山説明員 決算委員会の要求でそちらの方に行っておりまして、ただいまの御質問のごく終わりの方に入って参りましたので、まことに恐縮でございますが、もう一度一つ。
  167. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは簡単なことなんですが、肥料審議会の開会が非常におくれておる。その理由は、前回の八月十二日の当委員会においても、農林省から経済局長を通じて十分説明されておる。そのときの政府の説明等によりますと、おそくても八月一ぱいには新年度の肥料価格というものはきめたい、しかし硫安工業の合理化の基本対策と  いうものを肥料審議会に出せという強い要請があるので、できれば同時に出したい、そういう構想で進めているのだが、どうしてもこの基本対策の策定がおそくなるという場合には、切り離して新年度の肥料価格をきめるようにする。こういう言明は前回の委員会において行なわれておるわけです。その後全然問題が進んでおりませんから、きょうはどういうわけでおくれておるかという点を今ただしたのです。その結果、肥料部長の説明によると、九月の中旬ころには閣議においても基本対策というものが閣議了解ということになると思うので、そのころ肥料審議会を開いて提出できるというような答弁があったので、それではあくまでも基本対策と合わしてやるということになれば、当然新しい肥料年度の価格というものは基本対策の趣旨というものを反映して決定されると思うがどうか、その質問を今やっておったときにあなたが入ってきたわけです。
  168. 秋山武夫

    ○秋山説明員 前回の委員会に私出席できませんで、いきさつを詳細存じておりませんが、ただいまもお話ございましたように、基本対策とマル公決定とは、少なくとも七月二十日の肥料審議会の決議の御趣旨から申しますと、同時にという書き方になっております。私どももとにかく間に合う限りできるだけ同時に決定したいということで努力をしておるわけであります。御承知のように農林、通産両省でまとめました案で、肥料生産業者に対して補給金を交付することによってこの際マル公を円滑にきめ得るようにということで、大蔵省とも累次折衝しておるわけでございます。ただいま実は決算委員会でちょうど主計局長も出ておりましたので、委員会の合間に横の方でちょっと交渉したりなんかしましたが、私どもとしましても、できるだけ一日も早くこれはきめなければならぬと考えておりますが、肥料審議会は中立委員も国会の先生方も入っておられますし、頭からそれを無視した考え方でいくということは私ども立場としてもちょっとやり得ませんので、できるだけ同時に決定したいということで努力しております。
  169. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは私が言うまでもなく、肥料需給安定法に基づいた政府の任務は、毎年度の需給計画を立てるという点と、価格についても決定を行なう、この二点であって、別に合理化計画を出すとかなんとかいうことは、それに付帯して生ずる基本的な問題になりますが、それだからといって、いつまで延ばしてもいいというようなことを、もし肥料審議会の発意によって、それをいいことにして延ばせるとすれば重大問題だと思います。肥料審議会の越権だと思う。彼らの任務というのは、七月一ぱいに政府から諮問案が出て、これに対して適切な答申をする、あるいは建議をするというところに任務が限定されておるにもかかわらず、基本対策が出なければいつまで延びてもかまわぬというような、そういう審議会の意向であるとすれば、これは重大問題だと思うのです。ですから、それに便乗してずるずるべったりに延ばしているというのは、政府としてもおかしいのじゃないですか。
  170. 田口長治郎

    ○田口説明員 御承知通り、肥料問題はなるべく早く決定しなければならぬ、こういうことで今努力しておる次第でございますが、大蔵省、通産省、農林省、一つの案のまとめ方ということについて、ほとんど毎日やっておるような次第でございます。要は、一日も早く一つ合理化案を決定して、同時にマル公もきめてしまおう、こういうことで非常に急いでおりますが、今日までまだこれが具体化しないことは遺憾に存じておるのでございます。ただ、私どもがいろいろ全購連あるいはその他の方面へ行って、末端の価格といいますか、支払い関係におきまして、九月程度までは著しく御迷惑をかけない、こういうような話も承っておるのでございまして、一日も早く決定をしなければなりませんが、物は動いており、そして決済は御迷惑を著しくかけていない、こういうこともありまして、なるべくならばこの合理化案と一緒に決定したい、こういう気持で急いでおるのでございます。
  171. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、もう作業はずっと進んでおると思いますが、合理化対策の基本的な点はどういう点ですか。
  172. 秋山武夫

    ○秋山説明員 こまかく私から申し上げるまでもなく、すでにあるいは御承知かと思いますが、昭和二十九年から第一次合理化計画を実行いたしておりまして、その当時の目標は、時価六十五ドルを五十ドルまで下げたいということで着手したわけであります。その間、実は逆に電力、それから、その当時は石炭もあったのでありますが、労賃も若干あるというようなマイナス要素がありまして、目標十五ドル引き下げに対して十ドルということで終わったような次第であります。続いて、昨三十四年度に第二次合理化計画というものを作りまして、これは三十八年度までに四十七ドルまで下げるということで、第二次計画を実行いたしておるわけであります。この間に、御承知のような石油化学あるいはまた製鉄関係のコークスのガスの事情等がだいぶ変わって参りまして、化学工業界がだいぶ変化をした。コークス・ガスも使いますし、あるいは天然ガスも吹き出してきたというようなことで、安い燃料がまだまだ得られそうだということがだんだんはっきりして参りましたので、極力これを織り込んでいくということにさらに改訂をいたしまして、現在第二次改訂合理化計画というものを実行させております。これは三十八年度まで四十七ドルでありました目標を、もう五ドル引き下げて四十二ドルまで下げていこうということで、極力これを進めておるわけであります。
  173. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の線でいくと、たとえば昨年きめた肥料価格は、一トン、五十五ドルを基本にして、硫安四十キロ、  一かますが七百八十九円ということになっておる。これを第三次合理化計画に基づいて、三十八年には四十二ドルにするということになると、四十キロ、一かますにすれば六百五円までにこれが下がらなければいけないということになるのです。そうなると、現在の価格よりも大体百八十五円、三十八年度までにコスト切り下げが合理化計画に基づいて実行されなければ達成はできないということになるのですが、その見通しの上に立って基本対策というものが進められておるかどうか、その点はどうですか。
  174. 秋山武夫

    ○秋山説明員 四十二ドル目標に達しました場合、これは裸の原価でございますから、それに若干の普通の利子、利潤を見込みますし、かます当たり六百五十円ということになる予定で現に進めておるわけでございます。
  175. 芳賀貢

    ○芳賀委員 五十五ドルで七百九十円なら、四十二ドルで六百五十円になるのですか。
  176. 富谷彰介

    ○富谷説明員 五十五ドルと申しますのは、これは昨年のマル公でございまして、マル公には当然利子、利潤が入っておるわけでございます。それから現在の目標の、さっき局長の申しました合理化計画の五十五ドルを四十二ドルヘというのは、総平均の裸の原価でございます。ちょうどたまたま五十五ドルといっているのでまぎらわしいのでありますが、合理化計画におきましては、利子、利潤を入れた加重平均、そういうことになっております。その点違いますから申し上げます。     〔中村(寅)委員長代理退席・吉川   (久)委員長代理着席〕
  177. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最近新聞によりましても、政府として硫安工業に対する一応の態度がきまったということが出ておりますが、その特色として、輸出価格と国内価格との格差について、それを肥料を消費する国内の農民に対して補給する、価格差補給金を出すという案がだいぶ固まっておるようですが、その点はどうなっておりますか。
  178. 秋山武夫

    ○秋山説明員 私、政府としてきまったという記事を読んでおりませんので正規のことを申し上げられないのでありますが、実際は政府側としてもはっきりきめかねる点が残っております。先刻も申しましたように、実は大蔵省がなかなかわれわれの要求しております補給金案に対して同調して参りませんので、連日説得を続けておるわけでございます。従いまして、もう数日あるいは若干の日をかしていただかないと、政府案として最終的に態度をきめるということに至り得ないかと考えておりますが、できるだけ急ぐ考えであります。
  179. 田口長治郎

    ○田口説明員 新聞記事はよく存じませんが、農林省としては、農民に補給金をつけるという考えは全然持ちません。
  180. 芳賀貢

    ○芳賀委員 実は自民党はそういう方針をきめている。あなたの党の方で、農民に補給金を出す、これは筋が通らぬのです。これは田口さんの言う通りだと思います。いずれにしても、とにかく硫安会社のいわゆる国内価格と輸出価格の差というものは、肥料輸出法の規定に基づいて毎年全部たな上げにされているわけです。これが純粋の出血かどうかということには問題がある。会社によっては出血になっているところもあるし、会社によっては何も出血になっておらないところも内容的には伏在しておるわけですから、たとえば今百十五億円のたな上げが赤字として積み重なっておったとしても、これが純然たる会社の赤字と認定することはできないわけです。ですから、それをカバーするために今度は直接輸出価格差補給金を出すということなら批判が大きいから、逆に農民にやるということにして、ほんとうは金を会社の方に回わすということになると思うのです。たとえば七百五十円になった場合に、それから五十円農民にやって七百円の肥料を使わすというようなことはなかなかなさらぬと思うのです。これは非常にインチキな構想なんですが、これがまだきまらぬということになれば、基本対策もできない、肥料審議会も開けないということになると、一体どうなんですか。こういう点がきまらなくても基本要綱だけできれば肥料審議会を開くのか、補給金問題が片づかなければできないのか、あるいはこの基本対策ができ上がるのか、この点はどうですか。これは通産省の方から聞いた方がよいと思いますが……。
  181. 秋山武夫

    ○秋山説明員 けさの日経で、党でそういう方針をきめましたという記事は私読みましたが、これまた事実に反しておりまして、実は党の方でその相談を始めていただいたばかりでございます。昨日正規の合同部会を開いていただいたという段階でございまして、その席ではいろいろ議論もございましたが、内容的にはまだきまったものではございませんで、これから正式に党の機関に諮っていくという状態で、おそらく来週早々そういう運びに至ろうと私ども期待いたしております。
  182. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ちょっと局長に聞きますが、政府と党というのはどういう関係なんですか。何か政府の下に党があったりして、いやそれは党の方が違うのだ——あなた方は政府の機関でしょう。だから、政府として考えていることと政党が考えていることに、たまに違いがあってもいいと思うのですが、いやそれは党の方が違うのだということになると、あなた方は自民党という党から何か政府職員として派遣されて仕事をやっているように思える。今はそういう内輪の機構になっているのですか、参考までにちょっと……。
  183. 田口長治郎

    ○田口説明員 その芳賀さんの持っていらっしゃる新聞記事が、どうも芳賀さんが言っておられるようなそういう意味かどうかよくわからないのですが、何か農民が購入する肥料の価格を下げる意味の記事でないかしらと思うのですが、とにかく農民がこの安定法によって当然下がるべきものを、それに補給金をつけるというような、これははなはだ不合理でもございましょうし、また法律で下がるようになっているものを補給金で下げるということになれば、永続性ということも考えなければなりませんから、この点は農民に補給金をつけてはいかぬというふうに考えておりますし、あくまでもそういう方向で貫くつもりでございますから……。
  184. 芳賀貢

    ○芳賀委員 こういうことに時間を使いたくないが、政府としての考えがこうであるというのならわかるのです。それが政府の役人が、いや自民党の発表したのは違いますというようなことになると、それでは一体自民党という党から役所へ派遣されておるのか、そこらがわからなくなる。それで軽工業局長に、党のやつが違うのだということになれば、一体あなたはどういう立場でものを言っているかということを聞いているのです。
  185. 秋山武夫

    ○秋山説明員 私、もちろん党員ではございませんのですが、昨日自民党の合同部会にに呼ばれましていろいろ参考意見を聞かれたわけでございますが、そういう意味で昨日の事実をたまたま知っておったので、新聞に載ったことはその事実とは少し違うようでございますということを申し上げたわけで、党の正式機関に諮られるかどうかということは、私は推測で申し上げたのでございます。
  186. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間がないですから、あと二点くらい尋ねますが、それは基本対策の方で一番問題になる従来の輸出会社のたな上げ分をどうするかという点と、それから今後合理化を進めるとしても、やはり国際競争の場合には外国の肥料産業というものがさらに高度に進んでいくということになれば、日本がある程度まで追いついた場合にまた向こうが先へいく場合もある。ですから輸出関係の分に対して、あくまでも政府がそれを責任を持ってカバーしていくという思想の上に立って、今後基本対策を立てるかどうかという点が非常に大事だと思う。ですから、その点に対する方針をお尋ねしたいのと、それから田口さんも言われましたが、やはり現在肥料二法というのは厳存しておるから、国内価格をきめる場合には、やはり肥料需給安定法に基づいて、あの法律が示した精神通り今後もやはり価格決定をやっていくということは、これは当然なことであります。この点についてもある程度の不安が伝わっておるわけですが、これに対する見解というものを明らかにしてもらいたいと思います。あくまでも内需のバルク・ライン方式を貫く、これは当然なことですが、この際確認しておきたいと思う。  もう一点、これに付随して、基本対策を立てて積極的な合理化を進めるということになれば、もちろん先ほどの答弁にもありました通り、今年度の新しい価格をきめる場合にもそれが反映されるとなれば、私たちの想定では、少なくとも前年度に比べて一かます五十円くらいの価格の引き下げを行なわなければ所期の目的は達成できないというふうに見ておるわけですが、この三点について明らかにしていただきたいと思います。
  187. 坂村吉正

    ○坂村説明員 ただいま御質問のように、合理化の問題と、それから現在肥料二法の建前で価格をきめる問題と、これは価格の算定の問題とは別個の問題でありまして、合理化は合理化で硫安工業の合理化を進めていく、一方マル公をきめる問題は、現在の方式に従ってこれをきめていくという態度につきましてははっきりいたしております。そういう考え方で、できるだけ早く本年度のバルクをきめたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  また次の問題の、従来の方式で計算をするとすれば、五十円くらい下がるはずだというお話でございますが、この点は計算をして詰めてみなければわかりませんが、実際どのくらい下がるかというようなことは、申し上げられる段階ではございませんけれども、これは昨年は一部操短もいたしておりますし、本年の需給計画におきましては、ほとんどフル操業といってもいいような稼働状況にもなりますし、あるいは一部合理化も進んでおりますし、そういう点から考えましても、去年に比べましては、相当の値下がりになるということは大体の方向としては申し上げられるのじゃないかというふうに考えております。
  188. 秋山武夫

    ○秋山説明員 輸出会社に現にたな上げされておりまするメーカーの売掛債権ですが、実は今回の基本対策はむしろ今後そういう輸出会社にたまっていかないことを趣旨として考えようという方向でものを考えておりますが、さしあたりまだ具体的な日程に上っておりませんですが、大体これは現行税法の規定から、税法上の規定に従った処理をすれば、全部とまではいかぬが、相当程度実際上は国の負担という形において今後処理され得るであろうという見通しで考えております。
  189. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一点、価格の下がるという見通しなんですが、今経済局長言われたように、去年の操短が現在フル操業になっておる。ですから、操短を解除しただけでも、大体われわれの推定では一かます四十円は下がるという見通しの上に立っておる。それに今度は強力な合理化が進むとなれば、少なくとも五十円は下がらなければ、政府が熱意を持ってやったということにはならぬでしょう。その点はしっかり腹を据えてかからぬと、肥料審議会くらいいいかげんにごまかしても、国民や農民をごまかすことは絶対できないと思うのですが、そのような心がまえはお持ちと思いますが、いかがですか。
  190. 坂村吉正

    ○坂村説明員 大体ことしの価格がどのくらい下がるかという問題につきましては、まだ最後まで原価計算を詰めておる段階でございません。  それから、昨年の操短も本年は大体解除されておるというような状況におきまして、芳賀委員の四十円くらいというお話でございますが、これも実際ほんとうに詰めてみなければ、大体どのくらいの金額になりますか、わからない段階でございますので、現在のところ金額がどうであるかということは申し上げられる段階ではございません。しかしある程度は去年の価格に比べれば下がる、こういうことははっきり申し上げていいのじゃないかというふうに考えております。
  191. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 小松信太郎
  192. 小松信太郎

    ○小松(信)委員 先ほど芳賀委員の御質問に対しましての経済局長さんの御答弁のお言葉の中に、八月中に肥料審議会を開くように努力はする、しかしながらどうしても開くわけにいかないために農民の間に混乱が起きるような場合には、何らかの方法を講ずる、こういうふうな意味のことがあったと記憶しているのですが、それはだいぶ違うと私は思うのです。この前の八月十二日のこの農林委員会におきまして、どうして八月中に開けないのか。努力する努力するというようなことだけでは満足し得ないから、もっと具体的に答弁していただきたい、そしてもしも八月中に開き得ないならば、農民が安心し得るような何らかの具体的な方法を講じてほしい。あなたはそうします、こういうふうに答弁してあるのです。その中では、もしも農民の間に混乱が起きたならばということは少しも触れておらない。このままにしておくと混乱が起きるおそれがあるから、そうしたおそれが起きる前に起きないような方策を講じてほしい、こういうふうに私はあなたにお願いしたわけです。そうしたらあなたは、そうします。しかもこういう言葉で結んであります。あなたの答弁ですが、「万一早い機会に基本対策というものがどうしてもできないというような事態になりましたら、その際にはやはり現在の法律がございますし、その法律の精神に沿いまして、農民の安心をするような措置をとりたいというふうに考えております。」そこで私はたたみかけまして、「そうしますと、八月中には基本対策を立てまして正式に審議会を開くことに努力はする。しかしどうしてもやむを得ない場合には、それにかわってとにもかくにも農民が安心し得るような方法は講ずる、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。」と念を押した。あなたは「その通りでございます。」こういうことになっておる。どこにも混乱が起きた場合にはどうだということは言っておらないわけでございます。そこで実はただいま朗読いたしましたように、八月中には必ず審議会を開くように努力はするけれども、万やむを得なかったといたしましても、そのときには農民が安心するような方策はとると、ここではこういうふうになっておりますが、その前にやりとりがあるわけですから、そういうことで結んであるわけです。でありますから、私は当然八月中に審議会の招集があるものであると考えておりましたところが、ございませんので、しかしそれならば今の朗読しました通り何らかの具体的な方策は講じられたものであると考えておるのですが、さっぱり具体的な方策というものは——私はよくわかりませんが、どんな方策をとられたのですか、どうですか、その点一つ。
  193. 坂村吉正

    ○坂村説明員 その点につきましては先ほども芳賀委員の御質問に対しましてお答え申し上げたのでございますが、消費者の代表であり、あるいは消費者の系統の配給機関である全購連の系統、あるいは商人系統の団体、そういう団体を通じまして肥料の価格はとにかくできるだけ早くきめるのであるから、あるいは価格がきまらないとかあるいはゆがめられてきめられるのじゃないかとか、そういうふうな危惧を起こさないようにというようなことの趣旨の徹底をはかりますと同時に、肥料の問題について七月の中旬ごろから全国でもブロック会議をいたしておりまして、そしてその場合にもそこに農林省から関係官が出向きまして、そういうような趣旨で安心をして肥料の価格はできるだけ早くきまることを待ってもらいたい、こういうことで趣旨の徹底をはかってきております。
  194. 小松信太郎

    ○小松(信)委員 ブロック会議をもって今話されたような内容について了解をするように努方された、こういうことでございますが、少しも了解されてないらしいのですよ。ということは、農家自体が今度は心配しているのです。この前は、このままでやっていくと心配し始めるから、心配をしないうちに安心するような方法を講じていただきたい、こういうふうに申し上げた。ところが今とられたような方法だけではやはり心配しておるのです。どうしたんだ、どうしたんだと盛んに言ってきておるわけなのです。そこで、今度は九月の中ごろには肥料審議会を持たれるというただいまの御答弁でございますが、今度は間違いなくやるのですか。
  195. 坂村吉正

    ○坂村説明員 その点につきまして、は、先ほど通産省からも御答弁ございましたように、基本対策につきましても、これはきわめて近いうちに見通しもつくであろうという情勢でもございまするし、その問題を離れましても、中旬ないし下旬までに審議会を開いて価格をきめるということに持っていきませんと、今の状況では私は消費者である農民あるいは配給関係の者等におきましても、これは相当困った事態になると考えておるのでございますので、ぜひともそういうことに持っていきたいと考えております。
  196. 小松信太郎

    ○小松(信)委員 ただいまの御答弁には中旬もしくは下旬ということになっているでしょう。先ほどは中旬というように私は聞いておった。また半月延びちゃうのですか。それがいけないのですよ。あなた方のうちでどういう御相談があろうとあるまいと、そうしたことが農民がわからんければ、あなた方の努力はなんぼされても、農民が安心ということには通じないわけなのです。今の御答弁でも、先ほどは中旬というお話でございましたが、もう一度質問し直しますると、今度は中旬あるいは下旬ということになってしまうのですね。やはり一応この委員会なら委員会できめられましたことは、その通り実行されませんと、私は国会に対する国民の信頼というものは非常に薄くなってしまうのじゃないかと思うのです。その点をきょうはぜひはっきりしていただきたい。
  197. 坂村吉正

    ○坂村説明員 先ほどあるいは肥料部長の答弁の中で中旬という言葉があったように私も記憶しておりますが、それは合理化対策が中旬までにはきまるということを期待しておりますという答弁だったのじゃないかというふうに、私考えておるのでございます。そういたしまして、その後審議会を開いて価格をきめたい、こういう考え方で今農林、通産両方とも考えておりますので、安全度を見ますれば中旬ないし下旬の間には審議会を開いて価格をきめたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  198. 小松信太郎

    ○小松(信)委員 中旬ないし下旬というのは安全度を見た上でのお言葉ですね。今度は間違いないのですね、安全度を見られたのだから。そういうわけでしょう。
  199. 田口長治郎

    ○田口説明員 大体今の言葉でいくつもりでございますが。
  200. 小松信太郎

    ○小松(信)委員 やはりきちっとしたところを言っていただけませんか。そうすると安心するのです。それでも今度は一カ月おくれているのです。ここへきてわかったようなわからないような、二重にも三重にも意味がとれるようなそういう言葉では、私はますます混乱に陥るだろうと思う。はっきり一つお答え願いたい。
  201. 田口長治郎

    ○田口説明員 経済局長の言葉を借りて、安全度を加味して九月下旬までには実行する。
  202. 小松信太郎

    ○小松(信)委員 必ずと言っていただけませんか、安全度を加味するのですから。
  203. 田口長治郎

    ○田口説明員 安全度を加味しておるのでございますから下旬、末日よりも早くなるつもりでございます。
  204. 小松信太郎

    ○小松(信)委員 早くなるともおそくなることはないという意味ですか。
  205. 田口長治郎

    ○田口説明員 そうでございます。      ————◇—————
  206. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 次に農林水産物の輸送問題について質疑の通告がありますので、これを許します。松浦定義君。
  207. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 私はずっと以前から問題になっておりました国鉄貨物運賃の公共割引政策の問題で実は当局の御方針を承って質疑をいたしたい、こういう考えでおったのでありますが、昨日と今日と非常に重要問題が山積して、時間の関係もございますので、この点については当局としての御答弁をいただくんじゃなくて、むしろ私の方から要望として一言だけ申し上げておきたいと思うわけであります。  御承知通りの公共割引政策の問題については、昭和二十八年二月一日から十三回にわたって、実は今月、すなわち九月の三十日まで延期をされておるわけであります。なぜこの延期が再再行なわれておるかということについては、やはり延期することが正しいということが認められたわけでありまして、この九月の三十日以降に至りましても、私どもとしてはやはりこの特別割引というものは存続すべきである、こういうことを従来から農林水産物資等を通じて重要な問題であるということで、再々決議あるいはまた申し合せ等をいたして、当局にその善処方を要望いたしておったのであります。この問題は最終的には重要な問題であるからというので、経済閣僚懇談会の名においてさらに善処してもらうということが実は条件になっておったのであります。御承知通り、岸内閣が池田内閣にかわり、いろいろの都合がありまして、おそらくそのことについても時間的には私どもも十分ではないということを了承せざるを得ないと思います。しかしながらこの九月三十日という一応決定いたしました期間内にはやはり何らかの結論を出してもらうということで質問をいたしたいと思ったのでありますが、先ほどからのいろいろ時間の関係等がございますので、幸いにいたしまして、来たる九月十三日に当農林委員会が開催することになるのであります。でありますから、私はこの十三日に当委員会が開かれます場合において少なくとも何らかの回答をしていただくということをここにつけ加えまして、この問題については自後の質問に譲りたいと思います。  そこで、同様国鉄関係の問題であります国鉄貨物駅の集約化について、私は簡単に御質問申し上げたいと思うのでありますが、この問題にいたしましても、やはり公共割引と同じような関係を持つ荷主あるいは消費者という立場から参りますと、相当私は今日まで各駅で扱っておったものが、今政府から、つまり国鉄の方から案として出されておりますものが実施されるということになりますと、非常に不利な条件になる事態が多くある、こういうふうに思うのでありますが、このことにつきまして、今日の状態ではどういうような考え方でお進めをしていらっしゃいますのか、この点について一つお聞きいたしたいと思います。
  208. 遠藤鉄二

    ○遠藤説明員 国鉄の車扱いの取り扱い駅の集約の問題でございますが、すでにどういう理由でこういうことを国鉄はやるのかということにつきましては、かねてから御説明申し上げておりまして、大体各地方でも趣旨そのものにつきましてはあまり御異論はないように見ております。しかしながら趣旨はよくてもその地方——町、村につきましてはこれは重大な問題でございまして、われわれが考えております集約輸送が実施いたしますれば、全体の輸送サービスは早くもなりまするし、荷作りも軽減、荷役関係もよくなるということで、輸送サービスが改善されるのでございますけれども、その町、村につきましては、トラックの輸送する距離が何キロか延びるというようなことで不利な点がございます。あるいは特に北海道等につきましては冬季降雪のために道路がとまってしまうというようないろいろな事情がございますので、私どもの各下部機構の現地の局等に命じまして、実施する際には十分に地元の御了解を得るように努力をさすようにいたしております。もっともこれは荷主さんの御同意はもちろん、自治体の方の御理解を得るようにしておるのでございまするが、ただいままでは全国で約二百程度の駅の廃止をいたしました。本年度はさらに相当の数を集約いたすつもりではございまするが、今申し上げましたように、その際には地元の御理解を得るように極力努力をいたしまして、無理なく、円満に進めますように現地を指導いたしておる次第でございます。
  209. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 非常に理解のある御趣旨であるように伺いますが、現地ではやはり相当これについては混乱をしておるのであります。たとえば三年ないし五年という期間でありますから、どこどこは三十七年度だ、どこどこは三十八年度だといったような一応の予想といいますか、そういう期間的なものを示しながら話し合いを進めておるといったようなふうに私は聞いておるわけであります。そういうことでありますと、今お話のように、今までの二百がこれから五百だ、最後にはやはり三千八百というものを一斉に減らすという原案だそうでございますから、そのスピードではなかなか目的にはいかないということでありますと、最終段階にいっては相当強硬な方針でいかれるんじゃないかというふうな心配をするわけであります。ちょうど今局長のお話の中に北海道等の御意見がありましたが、私は北海道だけのことを実は言おうとは思いません。しかしこの内容を見てみますと、たとえば現行の駅と駅との間隔が平均五・二キロですが、おそらく北海道では十キロ以下の駅というものはほとんどないじゃないかと思う。十キロから十二キロ、十五キロまでの間においてその地帯の発展のためにようやく集荷し、あるいは物を配っておるというような現状だと思う。でありますから、全国一律にこれをおやりになるのではないというふうに実はお聞きをいたしておるのでありますが、特にこの問題については現地でほんとうに話し合いをするということでありますならば、やはり今のお説のようなことが現地末端の局あるいは駅まで十分周知徹底をいたしておきませんと、私はむだな問題を起こすのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、特に北海道のような、御承知通り一級国道あるいは二級国道といたしましても、おそらく小樽から札幌、あるいは札幌から旭川までで、あとのところは舗装道路というものは全然ないわけです。おそらく本州では大体集約されるようなところはもう十分な道路網が完成しておりますから、五キロが十キロ、あるいは十五キロになってもそう大した不便を感じないわけです。だから、そういうような道路の完成と相待って行なわれないと、非常事態において地主ばかりでなく、生産者自体も非常に困る大きな原因になるのではないか。こういう点について、特に北海道のような特殊事情については相当善処されるような御意向があるのかないのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  210. 遠藤鉄二

    ○遠藤説明員 ただいまお話のございましたような趣旨でやっておりますし、今後もさようにいたしたいと存じております。
  211. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 ただいまの局長の言をそのまま私は信頼したいと思います。しかし事態がきたときに、努力はしたけれども、結果はこうだということでは困ると思います。  そこで私はキロの問題を申しましたが、たとえば年間二万トンである。特にこれが一日の量が三十トン以下などというものについては廃止をする、こういうような原則であるようであります。そこは先ほど申したように、やはり北海道のようなこれから開発をするというような地帯においては、やはりその原則というものは距離の点においても、あるいは荷物の量においても特別な扱いをしてもらう。これははっきり数字の上で表わしてもらわなければいかぬと思うんです。これは年間が一万トンでもやむを得ぬ。あるいはまた一日の量が二十トンでも、これはもう仕方がないというふうにはっきりしていただかなければならぬと思うんです。皆さんの方の規定の基準では、先ほどお話のあったような季節的な荷物が非常に輻湊する場合とか、特に降雪地帯についてはいろいろ考慮するという字句はありますけれども、量の点については依然として動かぬのでありますから、これはやはり年間量を一万トンなら一万トンにするとか、一日の量を二十トン以内であっても、そういう点についてはこうだということを数字の点で一つ表わしてもらってから話し合いをしないというと、ただ考慮しようというだけでは、私は趣旨が徹底しないと思うんです。従って今のお話を数字をあげて、年間あるいは一日の量についての数字を改定してでも、これはあらかじめ数字を示して徹底するというような御努力ができるかできないか、この点について伺います。
  212. 遠藤鉄二

    ○遠藤説明員 二万トンという基準でございますけれども、それは二万トン以下を全部やれということではございませんので、選定するについて全国的の基準といいまするか、一応何かありませんと、選定もできませんので、第一次の原案を作るにつきましてはその程度で引いて原案を作ってみて、道路の事情でありますとかその他を考慮しながら取捨選択していく、こういうことでございまして、二万トンあるから絶対にということではないのでありますので、御了解を願いたいと思います。
  213. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 理屈はそれで私はわかると思うんですが、現地で話し合いをするときにはその理屈通りにはいかないから、私は申し上げておるので、たとえば北海道とか東北とかいう広範な地帯においては、特にその点については考慮しなければならぬということを明確にしておいていただきたい、こういうことを申し上げておるのです。数字はあげないけれども、私が申し上げましたような点について、十分これから現地に対しても話し合いができるようにする、こういうふうに了解されたと考えてもよろしゅうございますか。
  214. 遠藤鉄二

    ○遠藤説明員 現地の駅等におきまして、従来も計画に乗りますと、それは三年、五年先のものは別でございますが、近いうちに実施したいと思うときには局の幹部が参りまして、全部御説明申し上げて——これは完全に賛成ということにはいかないのでございます。大勢の方がいらっしゃいますから、少数の方はあくまでいやだとおっしゃる場合も残るのでございますけれども、何とか全体的には御理解を得たということで実施をするように努力いたしておりますし、今後もやるつもりでございます。現地をそういうように指導いたします。
  215. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 速記をやめて。     〔速記中止〕
  216. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 速記を始めて。     —————————————
  217. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 鹿児島県国分第二代行干拓問題について質疑の通告がありますのでこれを許します。中馬辰猪君。
  218. 中馬辰猪

    ○中馬委員 鹿児島県国分第二代行干拓について、漁業権があるにかかわらず農林省においては一円の漁業補償もいたしていないのであります。これについてはどういう措置をされたのか。漁業権がないということでされたのか、漁業権があったけれども、漁業権者の同意を得てやったのか、どうですか。
  219. 伊東正義

    ○伊東説明員 御質問の国分第二代行干拓委託を受けてやっておるのでございます。われわれも実は最近陳情がございまして調べてみたのですが、補償を払っていないことは事実でございます。ところが当時公有水面の埋立権の免許の申請をしました国分の町長の方から県の方へ、そこには漁業権がないという公文を出した。漁業権がないという公文が町長から来ているものですから、それを前提にしまして漁業権の補償なしで工事をしたという実情らしいのです。らしいと申し上げては恐縮ですが……。それで私の方といたしましても、その間に調査してみる必要があると思いまして、実は公有水面の埋め立ての申請をしましたときには、漁業権があれば漁業権者の同意等が当然必要でございますので、その当時どうであったかというようなことを、県それから農地事務局に今照会をいたしまして、その結果によりまして、漁業権があったとしますれば当然補償すべきものでありますから、さかのぼってでもいたします。今調査中でございますが、実情は今申し上げたようなことでございます。
  220. 中馬辰猪

    ○中馬委員 町長から漁業権がないという証明書がいっていることは事実だと思いますけれども、漁業権があるかないかということは町長の権限ではなくて、知事かあるいは農林大臣でなければいけないと思います。証明権を持っていない町長の証明で処理したということに大きな誤りがあったと思います。私県の水産部で調査したところでは、歴然として漁業権は残っておりますし、抹殺をしたいきさつもない。従って漁業権は残っているが、漁業権の補償はない。それであるいは手続等の間違いであったならば、今局長のおっしゃったように、ぜひすみやかに漁業権の補償をしてもらいたい、かように思います。政務次官の方から何かこの点について……。
  221. 田口長治郎

    ○田口説明員 全国の沿岸の漁業権の中で共同漁業権のないところはほとんどないのですから、従って国分の代行干拓のところにも漁業権があると思います。もし漁業権があれば当然補償しなければならぬ、こう考えております。
  222. 中馬辰猪

    ○中馬委員 来年度の予算でこれに対する補償をするように強く要求をいたしたいと思いますが、いいですか。
  223. 伊東正義

    ○伊東説明員 当然支払うべきであるという結果が出ましたならば、なるべく早く支払う手続をいたします。     —————————————
  224. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 次に農林水産業団体に関する件について調査を進めます。漁業協同組合問題について質疑の通告がありますのでこれを許します。石野久男君。
  225. 石野久男

    石野委員 漁業協同組合、水産業協同組合法の第十八条に、組合は漁民をもって構成することになっておりますが、船主に雇われている、いわゆる漁船に乗り組んでいる漁業労働者の組合加入状況は今どんなふうになっているか、お聞かせ願いたい。
  226. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 御質問の組合員資格の点でございますが、これは漁業協同組合法第十八条に「組合組合員たる資格を有する者は、組合の地区内に住所を有し、且つ、漁業を営み又はこれに従事する日数が一年を通じて三十日から九十日の間で定款の定める」云々、このように規定されております。従いまして組合員の中には漁業経営者だけではなくて、いわゆる経営者に使われております漁業労務者であっても、この第十八条の規定に該当する限りにおいては組合員たる資格を有するものと考えております。その数の点の御質問ですが、ただいま具体的な資料の持ち合わせがございませんが、概数で約三分の一というふうに記憶いたしております。
  227. 石野久男

    石野委員 その三分の一というのは、いわゆる船主でなくて、船に乗っている者で、今の十八条の条件を満たす者という意味ですね。
  228. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 さようでございます。
  229. 石野久男

    石野委員 水産業協同組合法の第一条の目的には、「漁民及び水産加工業者の協同組織の発達を促進し、もってその経済的社会的地位の向上と水産業の生産力の増進とを図り、国民経済の発展を期することを目的とする。」こういうふうにあるのですが、実際には一部の船主、いわゆる網元でございますが、この網元だけが協同組合をやっているという傾向になっている、零細漁民が入っておっても名ばかりで、実質的な協同組合の運営とかなんとかいうものはみな船主が牛耳っているところが非常に多いのじゃないかと思われるのです。従ってこの漁業協同組合というのは、漁業協同組合法本来の目的からいたしますると、それを十分に充足していないという面が、各地において、協同組合の実態としてあるのじゃないか、こういうふうに見られるのですが、水産庁はどう見ておりますか。
  230. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 組合法の第一条に書いてありますこの目的、それからただいま説明いたしました組合員資格という点から申しますれば、組合員は単なる船主ないしは網主だけで構成されるべきものではなくて、漁業労務者もこの資格がある限りにおきましては組合員になることが望ましいわけでございます。しかしながら現在の漁業協同組合法におきましては、いずれも加入、脱退、設立の自由を原則として参っておりますので、御指摘のように、ある地区においては漁業労務者の加入がなされていない地区もございます。しかしながら組合員の加入につきましては、もし労務者側にその加入の意思がありますれば、正当な理由がなければ加入を拒んではならないという規定もございますので、漁業労務者側に意思があるにもかかわらず、組合が不当にその加入を拒んでいるということはあってはならない事態であろうというふうに考えて参って、そういう考え方指導をして参っておる次第でございます。
  231. 石野久男

    石野委員 水産庁はそういう意味で指導しておる、従ってやっぱりほんとうにこの協同組合が漁業労働者を組合に入れられるような方策を常に考えなければいけないし、また組合は、先ほど話のありましたように、自由な意思によって加入あるいは脱退ができるわけでございまして、それはその通り法にきまっているのでございますが、しかし事実上協同組合に船員が入れないような事情にするということは、法の第二十五条によっても許されていないわけです。  ところが、たとえば茨城県の那珂湊の第一漁業協同組合のごときは、これは出資組合でございますけれども、出資金一口五万円というようなことになっておるようです。これではどうしたって漁業労働者、いわゆる船乗りというものは入ることは不可能じゃないですか。こういう場合当局は自動的に組合加入を、この出資金一口五万円というもので押えているというふうに見受けられるのですが、これはどう解釈いたしますか。
  232. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 ただいま御指摘の那珂湊におきまする第一漁業協同組合でございますか、この実態につきましてはまだ十分承知していないわけでございますので、はたして実態のその通りのお答えになりますかどうかわかりませんが、一般的な問題としてお答えいたしたいと思います。  この漁業協同組合が経済事業を目的としておりまするために、相当の出資額を必要とすることは避けがたいわけでございます。従いまして、ただいまの漁業協同組合の一般の情勢を見ますと、概して出資金が不足でございまして、そのために十分な経済活動ができないような傾向もございますので、私どもとしては、なるべく事あるごとに出資の増強をするように実は勧奨して参っておる次第でございます。ただ、その際一番問題になりまするのは、御指摘のように漁業従事者の関係でございます。その点が非常に私どもの悩みでございまして、漁業協同組合の経済事業を発展させるためには出資はどうしても増強いたしたい、しかし一方それをあまりにも強調いたしますと、御指摘のように漁業従事者の出資能力から見ましてかなり困難になってくるというのが漁業協同組合法の一つの矛盾でございます。従いまして、この点につきましてはただいま漁業制度調査会におきまして、この点を重要なる問題の一つとして取り上げております。この経済事業をやっていくための出資の問題と漁業従事者、特に組合の経済事業とはあるいは直接的に関係しないといっては言い過ぎでありますが、経済事業に対してはやや関心の薄い漁業労働者を、その漁業協同組合員の中に入れていく場合に、そのような矛盾をどう考えていくかという問題が制度調査会の大きな問題としてただいま討議中でございまして、私どもの聞いている範囲での大きな筋でも、やはりこの点は一つ何らかの工夫をこらしてみたい、従いまして、従事者の出資の問題につきましては何らかの工夫が必要なんじゃないだろうか、このようにさえ言われておるようでございます。長々と申しましたが、要するにここら辺が現行の漁業協同組合法の一つの悩みでございまして、この点につきましては改正の機会に一つ何とかしたいとただいま検討中の問題の一つでございます。
  233. 石野久男

    石野委員 出資金の問題は制度改正のときに何か考えなければならぬ、しかし水産庁の方としては漁業協同組合を育てるためには出資を増強するようにということを勧奨しておるというお話でございますが、しかし事実上、これは田口次官にも一つお聞き願いたいのですが、法の目的からいいますと、漁民をとにかくこの協同組合の中に入れてこそ経済的な発展なり社会的な問題を解決するようにしていきたいという目的を持っていながら、事実上一口五万円などという出資組合の形になりましたら、これはとてもじゃないが船員は入れない。だから、この協同組合は、もともと漁業労働者を入れないということを、この定款の中で、出資金の規定の中ではっきりと出していることになる。それでは法の目的は達せられないということになるのであるから、今のように制度改正のときに云々ということでは、現実差し迫った問題として、法は漁業労働者に対して、少なくともこのような組合では協同組合に加入を拒んでいるということにもなってくるわけですから、こういう問題は早急に指導を正しくして、漁業協同組合の中に漁業労働者を入れるということを考えるべきじゃないか。制度改正よりも前に考えなかったら、全然法の目的は漁業労働者には及ばないということになって参りますことはどういうふうに考えますか。
  234. 田口長治郎

    ○田口説明員 ただいまのお話、水産庁次長が説明いたしましたように、全国の漁業組合の経済活動から申しますと、まだまだ出資金が足らないのでございまして、出資漁業協同組合というのは経済活動をやるのが一つの大きな目的でございますから、せっかく五万円と、こうきめておる那珂湊の第一漁業協同組合の出資金を減らすという指導はやるべきでないし、またやれないと思うのでございます。従って、そこに大きな矛盾があるのでございますから、この問題はやはり法の改正で解決すべきで、それまではどうも暫定的にこういうふうにしようというような、そういう問題ではないと考えるのでございます。
  235. 石野久男

    石野委員 法律がそうなっておるからということと、それからもう一つは出資金が五万円になっているからそれを減らせということは言えないということだが、出資金は組合員は一口だけしか持てないということじゃなしに、幾口でも持てるということになっているわけです。ですから、その点は出資金を増強させるということと、一口五万円ということとは、これは考え方の点では非常に問題があろうかと思うのでございます。私はやはりそうした出資を増強するということについて、どうしても増強しなければならぬから一口十万円あるいは十五万円というような指導であるならば、こんな水産業協同組合法というものは必要でなくなってくるだろうと思うのです。漁業協同組合法というものもその目的が全然違ってきて、政府なりあるいは水産庁の考えていることはやはり船主の層だけをその組合の中で守ろうということになってくるのであるから、これはやはり法律改正前であろうとも、指導の面で適切にやれるはずだと私は思う。これは早急に、この法律の改正云々じゃなしに、出資金の増強ということが、すぐ一口の金額をこういうふうに五万円というような大口にしているというようなことについて、何か適切な指導をして、そこに働いている漁業労働者もこの協同組合の中に入れるようにすべきであろうと思う。法律の改正があるまではできないというようなことは、これは非常にその考え方に誤りがあるのじゃないか、指導が非常に片寄っておりはせぬかというように私は思う。重大だと思うのですが、次官はどういうように考えますか。
  236. 田口長治郎

    ○田口説明員 石野さんも御承知通り農協にいたしましても、あるいは漁業協同組合にいたしましても、なるべくたくさんの出資をやらせなければならぬ。こういうような必要な場合に、それは千円の一口を五十品持ったら五万円になるじゃないか、こういうようなことも理屈ではございますけれども、一口千円と、こうきめた場合におきましては、なかなかこの千円をそれじゃおれが五十口持とう、あるいは百口持とう、こういう人が出てこないのでございまして、結局千円ときめれば普通の人が千円だから、私は一つ五口程度持とう、こういうところにレベルを引かれてしまうことが普通でございまして、さりとて経済事業をやりますためには、どうしても出資総額を多くしなければならぬ、そういうような必要があるから、地方によってはその点を防止するために、一口を割合に大きくしておる事情があると思うのでございますが、あながちこの種類の人を入れないために、一つ一口金額を大きくしよう、こういうような意味ではないと思うのでございまして、その点は非常にむずかしい。理論としてはまさに一口千円を五十口持たせれば五万円になるじゃないか、こういうことでございますけれども、実際はなかなかそういかないためにそういうことをやっておるのだろうと思うのでございまして、今まで各地の状態を見てみますと、どうもそういう傾向があって、幾口持つということは各人が自由でございますから、強制力も何もないのでございまして、その点も非常にむずかしい問題だと思っております。
  237. 石野久男

    石野委員 私は別にこれでごたごた何したくはないのですが、しかしそれは当局が言われたように、協同組合が経済活動をするには資金が豊富な方がいい。だからそういうような意味で一口を大口にするのだというようなことの意味だけでは、資金量をふやすということの十分な答えにはならないのではないか。むしろ私たちの考え方からすれば、小口にすれば、乗り組んでいる船員の方々も相当いるわけで、大体のところによりますと船にはやはり五十人、七十人という人が乗り組んでいるのでありまして、それらの人がかりに千円一口であればそこだけで相当なものが出てくる、余分に集まるわけでございます。だから、あまり今既存のものに対してとやかく干渉することは好ましくないからというので、御発言があったのだろうと思いますけれども、どこもここもみな五万円という口になっているのではございません。あるところは千円というところもあるのでございます。そういうときにこういうような那珂湊第一漁業協同組合というような五万円一口ということになりますと、これは完全にこの面から漁業労働者の組合加入をはばまれているというようにわれわれは見ます。従って水産庁としてこういうものに対しては適切な指導をすべきであるというふうに考えますし、また当局としてもこの協同組合が経済活動をするために資金が必要なんだからという意味でこのことを考えるとするならば、むしろ私の言ったことに対して努力するという御発言があってもよろしかろうと思う。それはできないというような御発言ではちょっと当局の考え方はおかしいのではないかと思いますが、いま一度お考えを聞かしていただきたいと思います。     〔吉川(久)委員長代理退席委員長   着席〕
  238. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 ただいまの問題は、結局第二十五条の「加入制限の禁止」の問題だというふうに考えられます。要するに組合員たる資格を持っている者が組合に加入しようとするときには正当な理由がないのに加入を拒んではならないという二十五条の規定がございまするが、その場合に一口五万円であるということがこの事項に該当するかどうかというような点も一つの問題点ではないかというように考えるわけでございます。この組合の監督につきましては、知事の監督の権限にあるわけでございまするが、なお御指摘のような問題も具体的には承知しておりませんので、なお現地に照会して実態もよく調ベた上で、この第二十五条に該当するかどうかということによっての措置も、県当局に対してあるいは勧告する、相談に乗るというようなこともあろうかと考えております。
  239. 石野久男

    石野委員 ただいまの問題は次長が言われたように、法の二十五条の正当な理由がございませんのにその加入を拒むということの要件になると私は思っているのです。従ってただいまの御答弁のように一つ調査し、またいろいろな指導してやっていただきたいと思います。  私は水産庁にお尋ねしますが、現在の漁業労働者の生活はどういうふうになっているかということを一つお聞きしたいのですが、漁業労働者は船員法によって保護されているわけでございますけれども、実際にはこの船員法自体は大型船舶を大体対象にしておりまするから、中以下の船主というものは実際に船員法を実施されるとつぶれてしまうのだ、こういうふうに船主自身が言っているわけです。これは非常に重大なことでございますので、私はやはり水産庁が何か新しい漁業労働者の保護法律というものを考えなければならないのではないかとさえも思っておるのでございますが、その点について水産庁は常時この実態を知っているわけでございますが、御所見があったら一つ聞かしてもらいたい。
  240. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 ただいまの御質問の漁業労務者の問題でございますが、実はこれはなかなか複雑な問題が御指摘のようにございます。それで上の方は御承知のように国際漁業に従事する捕鯨船その他以西底びき等に乗り組む高級な——比較の問題でございますが、かなり高級な漁業労働者というものと、それから中ぐらいのところには、たとえば茨城県あたりですと底びき漁船あるいはまき網漁船等に乗り組む方々、この階層がございます。ただいま那珂湊だけに問題を限らずに一般的に申しますと、さらにその下には兼業の労務者が相当あるわけでございます。これはあるいは零細な漁業経営者として沿岸の漁業の経営に当たり、ある時期がくれば漁業労務にも従事するというようないろいろな階層があるわけでございます。上の方の階層につきましては御指摘のように船員法その他でも相当の支援がございますので、この点につきましては問題が解決されるあるめどが十分ではないにしてもあるわけですが、中小企業と申しますか、中小漁業経営層と申しますか、これに従事する労務者の賃金その他の問題は上層部に比較してかなり低いようでございます。ただいま那珂湊等で問題になりました組合の加入の問題で問題を起こすのは、むしろ一番最下層の方々が多いわけですが、この点になりますとむしろ漁業者であると同時に漁業労働者であるというような格好でいろいろと対漁業権その他の問題につきましても各種の漁村における問題を持っておるようでございます。以上が大体の私ども理解の仕方でございますが、特に中小企業層における専業労務者、それから下層の兼業の沿岸漁業労務者というものの生活につきましては、決して国際漁業に従事しておりますりっぱな漁業労働者というような賃金には達していないというように考えておるわけでございます。
  241. 石野久男

    石野委員 中小の漁業に従事しておる労働者の賃金内容が非常に低いのだということは、私が先ほど指摘した通りであり、次長もまたそれを認めておる。私の聞きたいのは、そういうような意味で今の船員法だけではなかなか中小の企業に従事している漁業労働者を守れないのじゃないか、だからそういう諸君——これは特に中小の船主が困っているというわけで、あれをやられるとおれらつぶれてしまう、こういう言い方をしておるわけでありますから、そういう実態を見て、この中小の漁業の経営者なりあるいはそこに働いている労働者を守るためには、別にまた保護的な法律が必要なんじゃないかということを僕は聞いているわけですから、そういう点についての意見を聞かしてもらいたい。
  242. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 御指摘のように中小企業層に属する漁業労務者に対して何らかの保護的な措置が必要であろうということについては全く同感でございます。しかし実態を見ますとかなり困難であります。たとえば賃金の問題一つをとりましても、御承知のように歩合制度をとっておるわけでございまして、この歩合制度の改正が一番の問題だと思いますが、むしろこれに手を触れようとしても、経営の側さらに労務者側、いずれの側からも歩合制度の改正につきましては格段意見が必ずしも出ていないということでございます。私どもとしては、歩合制度を根本的になくすることはできないにしても、何らかの格好で最低保障を加味したような歩合制度の線へなるべく持っていきたいというふうに、いろいろと調査もし、考えてもいるわけですが、なかなかこの問題を表面に出し、法制化しという段階には至っておらないわけでございまして、もう少し調査も重ね、あるいは口幅ったい言い方でありますけれども、実態的にも船主層からも労務者層からもわき上がってくるような声もほしいというふうに常々痛感しておるような次第でございます。
  243. 石野久男

    石野委員 船員の給料なり報酬というものは船員法の雇い入れ契約のときに労働条件の明示のところではっきりさせるようにしてあるはずでございます。そういう問題についてはすでに各船主は雇い入れのときにそういう条件を作り、それを届出しているはずだと思います。またそれの律し方というやつは非常にきびしくやりませんと、漁業労働者の生活を守るということはまたむずかしくなってくるわけでございまして、現行の船員法に基づいて雇い入れ契約をいたしました者に対する法律の律し方というものは、相当きびしく監視監督されなくてはいけないだろうと思いますが、そういう面について水産庁なり船員局の方ではどういうようなお考えでおられるか。特に大型の方は今よろしゅうございますから、私がきょう聞きたいのは中小の漁業経営者というものについてでございますけれども、一つお聞かせいただきたいと思います。
  244. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 これは労働問題になって参りますので、私どもの所管外でございますので、あるいはそういう意味ではっきりしたお答えができないわけでございますが、ただ現実の姿だけ御説明しておきたいと思います。  この労働関係の諸法規が漁業の中小企業の中では完全に行なわれておりません。これは遺憾ながらそういうことを認めざるを得ないというふうに考えております。しかしこれにはなかなかむずかしい問題がございまして、たびたび労働省なり運輸省なりからも御相談もあるわけですが、労働法規を規定通り守らせるためにはどうしたらいいかということの相談を受けるわけでございます。この点につきましては私どもとしてはもう少し中小企業体の経営が安定するという立場でそれぞれ苦心しているわけですが、なかなか中小企業体の漁業の経営が思ったように安定して参っておりません。従ってそういう不安な中小企業の中での労働問題ということにつきましては、私どもも的確に労働省なり運輸省なりに対してお願いもしにくいような情勢が相当ございます。それから現地に参りましていろいろとお話を承っても、船主なり水産庁にこうしてもらいたいのだというようなはっきりしたお話も実は労務者側からは承ることができないような面も相当ございます。しかし私どもとしては、そういう担当ではございませんが、そういう労働の問題もあることも十分承知しておりますし、ことに中小企業の経営の安定につきましてはなお一そう努力を傾けませんと、今のような不安定な経営の中ではなかなか解決することがむずかしいのじゃないだろうかということを心配しておるような次第でございます。
  245. 土井智喜

    ○土井説明員 船員法の規定に即しまして、ただいまお尋ねのありました漁船船員の労働関係につきまして申し上げます。  船員法は総トン数三十トン以上の漁船の船員に適用があるわけでございます。ただいま御指摘がありましたように、中小船主がこの船員法を守ることによって非常に不利益になるというような石野先生の先ほどの御説明でございましたけれども、船員法は包括的な規定は一応設けておりますけれども、大型船と小型の船に対してはそれぞれ規定が違うのであります。たとえば労働時間であるとか休暇制というような、そういう近代的な労働保護規定は漁船、ことに中小漁船については、適用をしておりません。ただ、ただいま御指摘になりました報酬でございますか、そういった点につきましても、漁業の場合は歩合制が主でございまするので、必ずしも一般の大型商船のごとくはっきりした給料の支払い方法を強制しているわけではございません。ただしそういう報酬については、一応法の建前としては、やはり歩合制による場合でもある最低限度だけは支払い義務を規定しております。あるいは毎月一回の支払いというようなことも規定してございます。なおただいま御指摘になりましたように、この法律の適用を受ける場合は、雇い入れ契約が結ばれますれば、その雇い入れ契約内容、すなわちそういったような報酬であるとかあるいは休日等につきまして管海官庁の公認を受けるというのが船員法の特色でございまして、それは契約自体について官庁も関与しておるというようなことになっております。しかしながら、ただいま水産庁からもお話がございましたように、漁業経営の不安定な事情からしまして、その契約に定められた事項の完全実施というようなこと、あるいは就業規則等で定められておるものの完全実施というようなことにつきまして、若干の不安定な要素があることは先ほど御説明になった通りでございます。
  246. 石野久男

    石野委員 私は別に中型以下の船主が船員法を実施するとつぶれると言うのじゃないのです。彼らがそう言っていると言っておるのですから、それは誤解のないようにしてほしいと思います。問題は、今お話がありましたように、法の五十三条にきめられておりますような給料の支払いについて、月一回以上、一定の期日にという条項は、那珂湊あたりの船主でも就業規則にちゃんと書いてあるわけです。また皆さんそれを要請しておるわけですが、そういうものの実施方というものは非常に問題なわけです。また、監督する立場からいえば、この規定の仕方は最低限ですから、実施させなければならないのじゃないか。そういうものが実施されないということになりますと、船員としての生活の保障が出てこないのですから、私は監督の責めにある皆さん立場からして、就業規則に出しておるものだけは最低限やらすべきだ、またそれがどういうふうに実施されておるかということを聞いておるわけです。ことに那珂湊あたりでは、今度そういう問題で若干の問題が起きました。サンマ船が出る前にその問題が起きましたが、実はわれわれ、サンマ漁期の問題があるので、一応問題の解決はあとに延ばしておりますけれども、こういう問題について当局のはっきりした指示と監督がないと、先ほど水産庁の次長が話しておりましたように、労働条件の問題については、現場に行って労働者から聞いても、はっきりしたことは言わないと言っておりましたけれども、実ははっきりしたことを言わないということの意味は、そういう意見がないのじゃないのです。あるのだけれども、それは船主と船方との関係、いわゆる親分、子分の関係が水産業界には非常に強く残っております。そういう関係からやれないのであるから、漁業経営あるいは漁業労働者の労働条件が民主化されるために、船員法なりあるいは労働組合というものが必要だと思っております。その意味で作られておるとしますと、そういう漁業労働者が言いたいことも言えないようにさせておる条件の中に、先ほどのような漁業協同組合に出資金五万円というような大口が出てきまして、どんなことがあっても漁業労働者は協同組合に入れないのです。二千円でも前借りしなければならないような事情にあるものが、とても五万円なんというのは出ないのですから、そういう点で、私は、管理監督、特に法に基づくところの契約条項なり何なりというものがはっきりと就業規則に出ておる場合の管理監督は厳密にやってもらわないといけないという意味で質問しておるのです。船員局の方ではそういう問題に対してはっきりした態度をとってきておるのであるかどうか、私はとるべきだと思うんだが、どうでしょうか。
  247. 土井智喜

    ○土井説明員 ただいまお話がございました就業規則でございますが、この那珂湊における船員の就業規則につきましては、昭和三十三年二月に管海官庁の方へ届出がございました。この法律の規定に基づいて船舶所有者が就業規則を定めて届け出ることになっております。関東海運局の那珂湊支局の方へ三十三年の二月に届出がございまして、その後実はその就業規則の内容に対しまして、船主会の方でそれを改正しよう、こういうような案が出されました。海運局の支局といたしましては、その内容を検討いたしまして、それに対して法律の規定から見て行き過ぎのある点についてはしかるべき指示をいたしたのでございます。それがことしの春でございます。もとより、その就業規則の制定、改正等につきましては、法律の規定に基づいてそういうような行為をなされたわけでございますが、ただ、ただいま御指摘になりましたように、就業規則に定められておる事項がそれじゃ完全に実施されておるかどうかということになりますと、もちろんこれはその船員の方でそれに対してすでに労働組合を作られておりまして、船主会に対してやはり団体交渉を行なっておるわけでございます。それでありますから、そういう点についてかりに不服あるいは不当な点についての申し出があれば、当然これは、管海官庁として、あるいは労務官なりそういった者が実情を調べて、もし法令の違反なりあるいは不当な点があるならば、それについて適切な措置をとるのが法令の建前でございます。しかるところ、那珂湊地区におきましては、その船主会の方と組合の方と団体交渉をこの八月六日から引き続いて行なっておるわけでございまして、サンマ漁期を前に控えまして、数次にわたって交渉が行なわれておるわけでございます。そして、一般的に申し上げるならば、この待遇等の問題についての団体交渉には、それ自体役所として関与すべきではないのでございます。ただそれが法令の違反とかあるいはそのほかたとえば労働委員会に対する申請とかいうようなことになった場合において、初めて役所側が乗り出すということになるのが一般の建前でございまして、ただいまのところこの団体交渉は引き続いて継続されておるわけでございますので、当局としてもその事情は十分注視しております。なお、ただいまもお話がございましたが、今後調査を進めていきたいと思います。
  248. 石野久男

    石野委員 今の話からしますと、団体交渉が行なわれておるんだから、その経緯を見ておるので、われわれが入るべきじゃない、こういうお話でございます。確かに、組合はことしの一月にできたので、団体交渉はこの八月になりましてから行なわれて、七月に要求を出したわけです。それまでにこの就業規則はあったというふうに、われわれ今までわからなかったわけだけれども、こういうものが官庁に届けられておったことを承知しておるわけです。その期間中、この届けられた就業規則は完全に実施されてなかったということも最近になってわかったわけです。漁船労働者というものはそれはわからなかったわけです。この就業規則自体が、実際を言いますと、ようやく最近になってこれがわかったというような事情になれば、この就業規則を官庁に届け出た船主は、実際は法規の面では一応何かの許可を得たり何かするについての法令的な許可を得るための形式だけはとったけれども、実質的にはやはり官庁を全部だましておったということにもなっておるわけです。そういう点では官庁の監督不行き届きがあるのじゃないかという点が一点あります。  もう一つは、団交に入っていると言うけれども、実を言うと団交を拒否しているわけです。船主の側では団交を拒否しておって話にならない。実はこの団交をするまでの段取りさえもできないという事情の中で、一時は船に乗るのをやめてサンマ漁期に出港を停止しようというかまえもありました。ありましたけれども、それはまだちょっと船主側もやはりなれていない点もあるだろうということで、一応は組合の側は低姿勢をとって今度サンマに出たのでありますけれども、事実上を申しますと、やはり労働組合というものを認めないというような形であり、団交はやらないという態度であるといたしますならば、漁業労働者の労働問題としてこれは非常に重要な問題でもあるわけです。私は、やはり船員局が団交をやっているのだからおれの方は干渉がましいことはしないということで逃げてはいけないのじゃないか。むしろそういう具体的な内容についてしさいに指導し、監督してやるという誠意をこの機会にお聞かせ願いたいと私は思うわけです。船員局の方では、そういう問題について先ほどの御答弁の通りであるのか、それとも私が要請するようなことについて何か御意見があったら、一つ聞かしてもらいたい。
  249. 土井智喜

    ○土井説明員 ただいま御指摘のありましたような、この就業規則をめぐりまして若干実態と規則と違うのではなかろうかというような申し出がありましたので、関東海運局の船員部長を那珂湊に派遣して調査させ、同時にその点について両当事者に対して意思表示をしたような次第でございます。  なお、ただいまもお話がございましたように、この団体交渉自体には、これは労働組合法あるいは労働関係調整法の建前からしましても、官庁は直接に関与すべきではないのでございますが、もしそういったような交渉においていろいろ法律上の問題等がありますれば、たとえば、それが船員の場合においては船員地方労働委員会というのがございますが、そういったところにいろいろあっせんの申請等を求め得られることになっておるわけでございます。その実質的な待遇問題についてのそういった点については、これは団体交渉に対して両当事者の交渉というようなものに不当に関与すべきではないという建前をとっておるわけでございますが、なお法令違反というような問題につきましては、これは事実そういう点があるかどうかというようなことについて、先ほどのお話もございますし、われわれの方の海運局の労務官もおることでございますので、なお十分調査を進めたいと存じます。
  250. 石野久男

    石野委員 団交の中にあなた方が入ってくるということはわれわれも望んでいません。ただ、やはり法令違反といいますか、皆さんのところに届け出ている就業規則の中には、たとえば四十四条によりますと、「報酬は航海ごとに計算し、毎月二十五日締め切り、精算のうえ、支払う」というふうになっておるわけですが、こういうものが実際は実施されていないわけです。むしろやはり事実上は、給料をもらうのは、最低額の保証が別表によりまして五千円になっておるわけです。それらのものを保証されませんで、結局みな先借りするわけです。月末に計算されるものをもらえないで、航海の最後まで、一航海が終わって全漁期が春職、夏職、秋職、冬職とありますけれども、その漁期ごとの計算になってしまって、もらうべき就業規則で保証されている月の分まで全部前借になってしまうわけです。こういうことから、また船主と船方というものの関係が、いつも封建的な立場で親分、子分の関係に縛りつけられてしまうわけです。就業規則で規定しているように、毎月々々最低額のものを払って、そうしてあとで精算するという形にすれば、そういうことはなくなる。そういうことが、監督が行き届いていないから、いつまでたっても、船方は親方に対して米一升貸してくれ、しょうゆ一升貸してくれというような形になってしまう。こういう事情がありますから、これは厳密に一つ調査していただきたいと思います。  それからなお、この那珂湊漁業組合関係で、漁業者の関係につきましては、那珂湊の魚市場で水揚げ手数料の問題が一つございます。水揚げ手数料は、今水揚げ高の五%を取っているわけです。そのうちの二%を漁業協同組合に還元しておるわけです。現在漁業労働者の報酬及び俸給は歩合制ということになっておって、天引き額というものが多ければ多いほど、自分たちのもらう分が少なくなるわけですね。しかも、その漁業協同組合というのは、今も申しましたように、漁業労働者が組合に入っておりませんから、天引きはそのままそちらにいってしまうわけです。漁業協同組合に入らないということは、一口五万円なんです。ほかにもまだ口はありますけれども、五万円などという口があるから、どうしても漁業協同組合に入らない、こういうことになるわけです。市場手数料の歩金のなには五%取られておる。五%のうち二%だけを、これは市場からまた漁業協同組合に返ってきましても、実はこれは漁業組合に入っていない漁業労働者には何の恩恵もないことになるわけです。私は、この際、こういうように還元する余裕があるなら、何も市場手数料としてそんな五%取らぬでもいいのじゃないか、むしろ最初から三%だけ取ったらいいのではないか、こういうふうに考える。こういう問題については、監督官庁としては、魚市場に対する監督をどのようにやっておるのか、またそれをどういうふうに見ておるのかということについて、一つ水産庁の方からはっきりした御答弁をいただきたい。
  251. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 御指摘の那珂湊の魚市場の手数料の問題でありますが、これは私どもの方の所管ではございませんので、はっきりしたお答えはいたしかねるわけでございますが、ただ一般的に、魚市場では、この種の歩戻しと申しますか、奨励金と申しますか、いろいろな名称はあるようでありますが、かなり広く行なわれておるようでございます。なお、この点が、ただいまの歩合金の計算の問題をめぐって、漁協に全部帰属すべきか、ないしはそうではなくて、最初から三%として差引いて、そのあとを適当な大仲経費その他の経費を引いて歩合金の計算にかえるべきかという点の問題があろうかと思いますが、その点については、なお実態をよく調査した上でお答えいたしたいと思います。
  252. 石野久男

    石野委員 これは水産庁の方の関係ではないのですか。どちらの関係になるのですか。
  253. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 農林経済局の一般の流通市場に関する監督の権限として、経済局長の権限になっております。
  254. 石野久男

    石野委員 経済局長が今おられないとすると、これは次官に一つお聞きしておきたいのですが、たとえば那珂湊のなにによりますと、サンマ引き網とかあるいはカツオ、マグロ、サバなどというような、こういうものについての計算の仕方はこういうようになっているのです。自己水揚げ——那珂湊で水揚げする場合のことでございますが、これは水揚高から市場手数料というものを引く。これが五%になるわけです。その残高になったものから今度大仲経費、いわゆる航海経費を引いて、そのものの四五%を船員に配分する、こういうことになっているのが実態でございます。今申しましたのは、この大仲経費を引く前に、さっきの水揚高から市場手数料を五%引いてしまつて、そのうち二%は漁協にぽんと入れてしまう。これは漁協を育てるためにということなら意味はわかります。漁協に対してお礼の意味で返すんだと思います。しかし、その漁協が、先ほど言いましたように、漁業労働者というものは全然そこに入れないような仕組みに相なっている、こういたしますると、これはもう完全に船主を守るような形になっていくわけです。これでは、漁業労働者というものは、あちらでもこちらでも自分たちの分け前をとられてしまうことになる。むしろそういうように二%は返すということならば、最初から三%ということにして、二%はそのまま残高として、その中から大仲経費を引く、こういう形にした方がかえって船主の方としては助かるわけですよ。そういうことがいいんじゃないかとわれわれは思うわけです。この辺のところに非常に疑義があります。私は、この際、経済局長はおられませんけれども、次官の方では、こういうややこしいことをやらないで、もう少しすっきりした形で三%だけ取って、あと二%は船主にそのまま持たしておく、大仲経費の方を差し引く前の形にして残しておく方がいいと思いますが、どのようにお考えになりますか。
  255. 田口長治郎

    ○田口説明員 この問題はなるべく早く実態を調査させまして、その上に立って一つ考えてみたいと思います。
  256. 石野久男

    石野委員 関係者もおられませんから、私はその問題は一つ早急に那珂湊の実態などを見ていただいて——これは那珂湊だけじゃない、各地の漁港における実態はこういう状態になっているんじゃないか、こういうように私は思います。漁業経営の民主化のためにも、特にまた漁業労働者の生活をどういうようにして守るかという問題にも非常に関係があると思うのです。私は水産庁に一つお聞きしておきたいのですが、先ほどから言っておりますように、漁業労働者の生活というものは非常にきびしいものがあるわけです。これは何とか一つ漁業労働者の生活改善というものを考えなければいかぬと思いますが、現在までにそういう点何か考えておられるのかどうか、また今まで考えておられないとすれば、今後どうするのか、そういう点についての水産庁の意見を承りたいと思います。
  257. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 この漁業労働の問題、ことに漁業労働者の問題につきましては、やはり水産庁も非常に関心のある点でございまして、現に今年度の予算でも、若干ではございますが、予算を計上して、その環境調査と申しますか、特に衛生状態の調査も手がけたわけでございまして、来年度も引き続き生活環境その他の調査にも適切な予算を組んで調査し、その調査した結果をそれぞれ厚生省ないしは労働省の方にもお伝えした上で、それぞれの所管で善処していただくというふうにして参りたいと思います。  なお、一口に漁業労働者の生活と申しましても、実はこれが一つの世帯の中でも漁業経営者という面もありますし、いろいろ複雑な関係にもありまするが、それを含めていわゆる漁家層の生活改善につきましては、今年度生活改善の専門の普及員の配置も終え、来年度はさらに増員したいという希望を持っておりまするので、生活改善普及員という格好でなお今後とも生活改善につきましては指導して参りたい、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  258. 石野久男

    石野委員 最後に一つ船員局長にお聞きしておきますが、那珂湊の場合は、もうすでに御承知のように、ああいう事情になっておるわけでございます。しかし、現実には団交は拒否された形になったままであります。しかも就業規則の実態というものは実施されていない、こういう事態でありまするので、これはぜひ一つ就業規則の実施方を監督し、指導してもらいたいということが一つ。それから、現実に船員労働組合というものができておりまして、これらの人々がいろいろな形で団交をやろうとしているときに、団交を拒否するという態度は、やはり近代的な経営の線からいいますと、まずいんじゃないかと思う。この点は一つ積極的に団交の中に入って、船員の諸君も決してむちゃなことは言っていないと思います。むしろ船主及び船員労働者の諸君が力を合わせて漁業の発展のためにやっていくという意味からも、団交はぜひ一つやらすようにすべきだと思います。そういう問題についてこの際もう一度船員局長意見を聞いておきたい。
  259. 土井智喜

    ○土井説明員 ただいまの第一点の実態と、それから規則等で定められていることの違いと申しますか、そういったようなことについてもっと調査し、監督を厳重にすべきじゃないかというお尋ね、まことにごもっともでございますし、われわれ地方関係官庁を通じましてさらに調査をさせるつもりでございます。  なお、その団交の問題でございまするが、これはやはり労働組合法等で定めておる手続に基づいて、たとえばもしそこに不当な意味での拒否というような事態がありますれば、これは労働委員会にあっせんの申請、あるいはそのほかの申し立てをするという道が開かれておるわけでございます。なお、そういうような点でそういう道も開かれてはおるわけでございますが、今まで労働組合としては結成後おそらく間もない事情もあるかと思いまするし、万事ふなれな点等で不要に摩擦を起こしているのではないかと想像される点もございまするので、そういった事情について、これは指導と申してははなはだ失礼な言い分になるかと思うのでありますけれども、なお実情は十分調査させるつもりでおります。
  260. 石野久男

    石野委員 私の言っているのは、組合ができてから間がないから、そのことから摩擦も出ておるのではないかというような船員局長意見もありますけれども、むしろあそこは船主協会の方が理解が足りないために持たれていないのが実情である。そういう点については、むしろ皆さんの方で、別に干渉とかなんとかいうのじゃなくて、そういう事情の説明をしませんと、あの人たちまだわからない面がたくさんあるわけです。そういう点は、やはり法の命ずるところといいますか、法の規定に従ってやるべきものはやり、主張すべきものは主張するというふうにすることが、やはり水産行政なり、あるいは船員局あたりのいろいろな仕事にもなろうと思いますので、私はそういう点を聞いておるのですから、一つ……。
  261. 土井智喜

    ○土井説明員 もちろん労働関係は両当事者が主体ではございまするが、何分にもこれは労働教育と申しますか、啓蒙的なことも必要である点は、ただいま石野先生からお話がありました通りでございます。いわんや漁業環境というものは、これは経営の不安定という面もございまするし、なおそのほかいろいろな事情から見まして、普通の労働関係と違っておる点もあるわけでございまするので、ただいま御指摘がありましたように、両当事者の点で十分そういった点について、ふなれな点、あるいは意思の疎通を欠いているような点もあろうかと想像されますので、これは労働教育と申してはあるいは失礼かもしれませんが、啓蒙的な意味で、官庁としても、十分その間の事情は両当事者にわかるように、そういう努力は今後も重ねていきたいと思います。
  262. 小山長規

    小山委員長 西村君。
  263. 西村関一

    ○西村(関)委員 ただいま石野委員から漁協にも入れない漁業労働者の問題についての質疑があったのでございますが、私は、これに関連いたしまして、内水面漁業の漁協問題、特に内水面漁協の整備統合ということに重点が置かれておりまするやさきにかかわらず、最近聞くところによりますと、内水面漁協の漁業権を制限するような動きがある。そういうことにつきましては水産当局はどのように関知しておられるか。今度の制度改正にあたりまして、大、中河川のうち、沼川住民の漁業生計依存度の高いものに限って農林大臣が指定することにする、そのものだけには漁業権を設定することができる、その他のものについては漁業権を設定することができない、また、ところによりましては、一般河川並びに一部の湖沼におきましては、漁場の地域住民一般のレクリエーションの場として、広く開放利用させるというような見地から、漁場管理区といったようなものを設定して、地方公共団体に漁場の管理を担当させる、こういうお考えが当局にあるかのごとく聞いておるのでありますが、そういうことになりますと、内水面漁業の漁協の漁業権が大幅に制限せられますために、非常に混乱を来たすのみならず、そのため内水面漁業振興の上にもゆゆしい事態が起こらないとも限らない。沿岸漁民の問題もさることでございますが、それ以上に低い生活に置かれておる、しかも同じように漁協にも入れない、非常に封建的な制度のもとにしぼられている内水面漁業に従事している漁業労働者の生活の問題にも関係してくると思うのでございますが、この点につきまして制度改正に伴うこれらの問題が、当局においてどのように考えられておるか、その一点だけをお伺いいたしたいと思うのであります。田口次官と水産庁次長の御両所から一つお答えを願いたいと思います。
  264. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 ただいま、漁業制度と申しますか、漁場利用制度と申しますか、それにつきましては根本的に改正する必要があろうということで、漁業制度調査会というので、すでに二年ほど御審議願っているわけでございまするが、その中の一つの議論といたしまして、内水面、ことに湖沼を除きまして、河川におきましては御案内のように専業者の数も非常に少ないということもあるわけですが、そのために漁業協同組合を作って、これに対して漁業権を免許するというようなきまった方式だけでない方法も考えた方がいいのじゃないかという議論があったわけでございます。その議論の考え方といたしましては、もちろんその方がいいという場所については従来通りの方式でやるけれども、必ずしも組合を無理やりに作らせなければならぬこともないであろう。かように漁業権を設定しないで、ほかの法令で繁殖保護ということをやっておる河川も相当多いわけでございますから、むしろそういう点にも着目して、何か漁業協同組合共同漁業権という画一的な方法でない、実情に合った方法がありはせぬかということが議論になっておる段階でございまして、今御指摘のような話ももちろんあったわけでございますが、まだ決定的にそういうふうにきまったという問題ではございまん。
  265. 西村関一

    ○西村(関)委員 その点につきましては、内水面漁業、特に河川及び一部の湖沼の漁業に従事いたしております君たちの間に非常に不安を与えております。今次長の方から御答弁がございましたような、例外として漁協以外の漁業権を設定するといったようなこともその土地の実情に応じて考えられるという議論があるというお話でございますが、それが一般化するというような印象を与えておるような向きがあると思いますので、そういったようなことになりますと、そうでなくても非常に低い収獲のもとに非常な苦労をしながら内水面の漁業に従事しておるところの者の生活権が脅かされるということになりますので、その点格段の御留意を願いたい。前国会における本委員会におきまして、福田農林大臣に内水面漁業の問題について私から質問をいたしましたときに、特にその点は注意して内水面漁業の振興についてはこれをおろそかにしないという答弁もあったのでございまして、このレクリエーションということも非常に大事ではございますが、同時にこれによって細々生活しているところの内水面漁業者の立場、生活権の問題をもお考え下さって、これらの問題について善処を願いたい。その点田口次官からお答え願いたいと思います。
  266. 田口長治郎

    ○田口説明員 河川漁業につきましてはいろいろなむずかしい問題があるのでございますが、これは結局各河川の実態が非常に違っておる、こういうことに原因するのでございまして、生産力のある程度高い河川、これはこの河川に生活を依存しておる漁業者が相当多いのでございますから、当然にこういうところでは漁業協同組合に漁業権を与えなければならぬ、こう考えております。ただ問題は、川でございますから非常に長いのでございまして、漁業組合の総会を開かなければ何事もきめられない、こういうことに困っておるのでございますから、これは一つ総代会なんかで相当重要な問題まできめられる、こういうような問題が一つと、それから、ああいう河川でありますので、何としても自然に発生した魚だけをとっては、もうふえる方が財布の方に追いつかないのでございますから、増殖放流ということが主眼になると思うのでございます。この場合にその財源をどこから求めるかという問題になるのでございますが、アユなんかの放流に対しては今日国もある程度助成をしております。関係者が出資する、これも一つの方法ですが、なかなか金額がまとまらない、そういうようなことで、ある程度レクリエーションなんかに入漁料を取ってそういう人を集める、こういうような方法をとるのも一つの行き方じゃないか、こういうような考えがありますから、その考えが多少混同されておると思うのでございます。それから、生産力の低い河川、これはどうしてもやはり放流で生産を維持する、こういうような必要のある川が非常に多いのでございますが、そういう川に対しては、ことに財源ということが今問題になっております。そういうようなことを漁業調査会でいろいろ考えておることが、いろいろ伝わると思うのでございますけれども、私どもといたしましては、やはり河川の漁業協同組合について、この漁業組合の運営を簡単にして、これをもとにして、やはり河川の生産力を維持、増進していく。これが本筋でございますから、今御心配になるような点は、あまり御心配にならないでもいいんじゃないか、こういうふうに考えるのでございます。  それから、石野さんのさっきの問題につきましては、高橋次長がお話ししましたように、茨城の県庁と連絡をとりまして、五万円が二十五条にどうも少し工合が悪いのじゃないか、こういうようなことについて、至急調査させたいと思います。
  267. 小山長規

    小山委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれに散会いたします。     午後六時三十二分散会